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JP2866921B2 - イネ玄米人工被膜種子、その製造および栽培方法 - Google Patents

イネ玄米人工被膜種子、その製造および栽培方法

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Publication number
JP2866921B2
JP2866921B2 JP8057979A JP5797996A JP2866921B2 JP 2866921 B2 JP2866921 B2 JP 2866921B2 JP 8057979 A JP8057979 A JP 8057979A JP 5797996 A JP5797996 A JP 5797996A JP 2866921 B2 JP2866921 B2 JP 2866921B2
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JP
Japan
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rice
brown rice
seed
coated
artificial
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JP8057979A
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秀樹 内藤
文宏 根本
清明 丸山
武人 芦澤
長生 林
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NORINSUISANSHO NOGYO KENKYU SENTAA SHOCHO
Original Assignee
NORINSUISANSHO NOGYO KENKYU SENTAA SHOCHO
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Publication date
Application filed by NORINSUISANSHO NOGYO KENKYU SENTAA SHOCHO filed Critical NORINSUISANSHO NOGYO KENKYU SENTAA SHOCHO
Priority to JP8057979A priority Critical patent/JP2866921B2/ja
Publication of JPH09248017A publication Critical patent/JPH09248017A/ja
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  • Pretreatment Of Seeds And Plants (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脱ぷ(もみ殻を除
去)したイネ玄米に人工被膜を形成したイネ玄米人工被
膜種子、その製造および栽培方法に関し、特に無病化、
直播における苗立促進に適したイネ玄米人工被膜種子、
その製造および栽培方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、多くの病害に対して抵抗性の弱い
良食味米品種の作付けの急増、およびイネ種子の広域流
通が顕著になるにつれ、種子伝染性病害発生が増加して
いる。イネの重要病害のほとんどは種子伝染性病害であ
り、根本的根絶法がないため、その種子汚染はさらに拡
大しつつある。従来の種子伝染性病害の防除技術として
は、病原菌汚染種子を消毒するために化学合成種子消毒
剤による種子浸漬、粉衣等による種子消毒および育苗箱
への施薬、これら両者の組合わせ処理法が行われてい
る。しかし農薬による環境汚染問題があり、特に種子消
毒剤等の廃液処理問題が顕在化し、農薬使用量の低減が
求められている。
【0003】一方、米の低コスト生産のための直播栽培
においても、安定生産、省力化のための苗立ち安定化技
術の確立が求められている。従来の直播における苗立ち
安定化技術としては、湛水直播栽培のための種子のカル
パ−コーティング技術が開発されている。これは種もみ
の上から酸素供給物質をコーティングし、これを土中で
溶解させて苗立ちを促進するものである。しかしこの方
法では、前記病害に対する防除効果はなく、また低温時
における生育促進効果も小さい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、農薬
を使用せず、またはその使用量を少なくすることにより
環境に悪影響を与えず、かつ根本的に種子伝染性病害を
根絶できる種子の無病化技術を確立するとともに、直播
栽培において、特に寒冷地において、省力的な種子の発
芽および苗立安定化技術を確立することができるイネ玄
米人工被膜種子、その製造および栽培方法を提案するこ
とである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は次のイネ玄米人
工被膜種子、その製造および栽培方法である。 (1) イネ種子を脱ぷし、種子伝染性病原菌が潜在し
ているもみ殻を除去し、洗浄して得られるほぼ無菌の
ネ玄米の外表面を、農薬で消毒することなく人工被膜で
被覆してることを特徴とする無病化イネ玄米人工被膜
種子。 (2) 人工被膜が水性粘結剤および固体粒子からなる
請求項1記載の無病化イネ玄米人工被膜種子。 (3) 水性粘結剤がカルボキシメチルセルロースまた
は水溶性ポリアクリル樹脂である請求項2記載の無病化
イネ玄米人工被膜種子。 (4) 固体粒子が粉末活性炭またはタルクである上記
(2)記載の無病化イネ玄米人工被膜種子。 (5) イネ種子を脱ぷし、種子伝染性病原菌が潜在し
ているもみ殻を除去し、洗浄して得られるほぼ無菌の
ネ玄米の外表面を、農薬で消毒することなく人工被膜
被覆することを特徴とする無病化イネ玄米人工被膜種子
の製造方法。 (6) イネ玄米の外表面を、農薬で消毒することなく
水性粘結剤で被覆し、この水性粘結剤に固体粒子を付着
させて人工被膜を形成することを特徴とする上記(5)
記載の方法。 (7) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のイ
ネ玄米人工被膜種子を播種して栽培し、米を生産するこ
とを特徴とするイネ玄米人工被膜種子の栽培方法。 (8) 播種が育苗箱播種または直播である上記(7)
記載の方法。
【0006】本発明のイネ玄米人工被膜種子は、脱ぷす
なわちもみ殻を除去したイネ玄米の外表面を人工被膜で
被覆したものである。すなわち本発明の種子はイネの種
子において、病原菌類が住家としており、また種子の迅
速な吸水、発芽を阻止しているもみ(籾)殻を除去した
玄米に、土壌病原菌や種々な傷害を防止し、さらに吸熱
効果を高めるための人工被膜で被覆して種子としたもの
である。
【0007】イネの種子伝染性病害としていもち病、ば
か苗病、もみ枯細菌病などがあり、これらにイネが汚染
されると、種もみ自体が病害菌に汚染されるため、従来
は種もみの消毒が必要と考えられていた。ところが本発
明者の検討の結果、種もみに付着している病原菌のほと
んどはもみ殻に付着あるいは組織中に潜在しており、こ
のもみ殻を除去した玄米にはほとんど病原菌が付着して
いないことがわかった。
【0008】このように脱ぷした玄米は、もみ殻に潜在
または付着している病原菌が除去されているが、播種し
たときに土壌病原菌、水棲病原菌、その他の菌による攻
撃を受けやすく、外部から病原菌に感染したり、発芽や
苗立ちが悪くなったりしやすい。そこで本発明では脱ぷ
した玄米の外表面に人工被膜を形成して、外部の菌から
玄米を保護する。脱ぷを行う種もみは、水稲でも陸稲で
もよく、その品種は限定されないが、水稲が特に適して
いる。
【0009】種もみの脱ぷは、塩水選・水洗等で不良種
もみ、混在物等を除去したのち、種もみの水分等を調整
し、脱ぷ機により脱ぷしてもみ殻を除去する。このとき
玄米表面、特に胚や胚乳部分を傷つけないようにし、ま
た玄米に混在する脱離したもみ殻の屑を流水による水洗
等で速やかに洗浄し分離して、もみ殻に付着している菌
が玄米を汚染しないようにすることが重要である。脱ぷ
機としては摩擦型もみすり機、真空脱ぷ機等が挙げられ
るが、摩擦型もみすり機が好ましい。こうして病原菌に
よる汚染を極力防止して調製した玄米は農薬による消毒
を行うことなく、外表面を人工被膜で被覆する。
【0010】上記の玄米を被覆する人工被膜としては、
玄米の全外表面を覆うように固体被膜を形成することが
でき、この固体被膜は水性の粘結剤により玄米表面に付
着しているのが好ましい。このような固体被膜としては
水性粘結剤と固体粒子(ゲルを含む)から形成されるの
が好適である。この場合玄米表面に付着した水性粘結剤
層に固体粒子を付着させて固体被膜を形成したものが好
ましいが、水性粘結剤と固体粒子の分散体により被膜を
形成したものでもよい。
【0011】水性粘結剤は水に溶解または分散して粘結
性を示す粘結剤であり、カルボキシメチルセルロース
(CMC)、水溶性ポリアクリル樹脂、ポリアクリル酸
ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコー
ル、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、ゼラチンな
どがあげられる。この中ではCMC、水溶性ポリアクリ
ル樹脂などが好ましい。水溶性ポリアクリル樹脂はポリ
アクリル樹脂に酸基を導入して水溶性にしたものであ
り、塗料用として市販されているものがそのまま使用で
きる。
【0012】被覆材となる固体粒子としては、粉末活性
炭、タルク、カオリン、ベントナイト、ゼオライト、シ
リカ、アルミナ等の無機質固体粒子、セルロース、樹
脂、菌体等の有機質固体粒子があげられ、吸水してゲル
状になるものでもよい。これらの中では無機質固体粒子
が好ましく、特に活性炭、タルクが好ましい。寒冷地に
おけるように低温時に発芽させる場合は、吸熱性の高い
色、例えば黒または黒に近い色のものが好ましく、活性
炭はその目的に適している。固体粒子の粒径は1〜10
0μm、好ましくは5〜50μm程度のものが好まし
い。
【0013】本発明のイネ玄米人工被膜種子の製造方法
は、前記の通り脱ぷしたイネ玄米の外表面に、これらの
水性粘結剤および固体粒子により人工被膜を形成し、玄
米の全体を外表面から被覆する。この場合水性粘結剤に
より固体粒子が固着して被膜を形成するのが好ましく、
粘結剤と固体粒子の混合分散物で玄米の外表面を被膜す
ることもできるが、玄米の表面に水性粘結剤の被膜を形
成し、これに固体粒子を付着させるのが好ましい。
【0014】以下、好ましい製造方法について説明す
る。まず被膜形成に先立って、玄米表面の洗浄、浸種処
理等の前処理を行う。玄米表面の洗浄は、脱ぷ時におけ
るもみ殻の断片等の混在する異物、および脱ぷ時に混在
する病原菌汚染もみから、玄米に付着する病原菌を除去
するために、流水(好ましくは水道水)中に脱ぷ玄米を
浸漬して洗浄する。洗浄時間は室温で1時間以上、好ま
しくは15〜20時間程度である。
【0015】浸種処理は水性粘結剤の被膜を形成しやす
いように、また発芽を促進するために玄米に吸水させる
工程であり、前記洗浄時の流水浸漬1時間でも玄米は吸
水し、乳白色となるが、さらに吸水させた方が播種後の
苗立ちが良好になる場合が多い。この場合、室温で10
〜30時間、好ましくは約15〜20時間洗浄を兼ねて
流水中に浸漬することができる。洗浄、浸種は網袋等に
入れて行うのが好ましく、洗浄、浸種した玄米は水から
引上げて余分の水を切り、玄米表面が湿っている程度に
軽く陰干しをする。
【0016】被膜の形成は水性粘結剤による1次被覆処
理、および固形粒子による2次被覆処理を行うのが好ま
しい。1次被覆処理は上記の陰干した半乾きの玄米を、
場合によっては洗浄、浸種をしなかった玄米をそのま
ま、または場合によって少量の水を添加して適当に湿ら
せた状態で、水性粘結剤を付着させて被覆する。これに
より玄米表面に粘結剤(糊)の被膜を形成する。
【0017】水性粘結剤は粉末の状態で、あるいは水に
溶解または分散させた状態で玄米に接触させて玄米に付
着させることができる。粉末で付着させる場合は、玄米
表面の水に吸着して湿潤し、糊状の被膜を形成する。水
に溶解または分散した状態の粘結剤は糊状となっている
ので、そのまま玄米表面に付着して糊状の被膜を形成す
る。上記の被覆処理は、玄米を軽く転がすようにすると
良く被覆されるので、少量処理ではビニール袋を用いて
手で回転するように被覆し、大量の場合にはカルパー被
覆に用いるような被覆処理機を用いるのがよい。
【0018】粘結剤の使用量は粘結剤の種類、形態等に
よって異なるが、CMCの場合は玄米100gに対して
粉末として1〜10g、好ましくは2〜5g、CMC水
溶液の場合はこれを0.5〜5重量%、好ましくは1〜
2重量%の水溶液として用いる。また水溶性ポリアクリ
ル樹脂を用いる場合は、玄米100gに対して市販の塗
装用の水溶性ポリアクリル樹脂をそのまままたは2〜3
倍に希釈した液を1〜10ml、好ましくは5〜8ml
添加して用いることができる。上記の量は玄米の湿り気
の程度、1回での処理量等により異なってくるので目安
の量である。
【0019】2次被覆処理は上記1次被覆処理した玄米
に、粘結剤が湿潤して糊状である間に、固体粒子と接触
させることにより、固体粒子を粘結剤に付着させ、固体
粒子と粘結材が一体化した被膜を形成する。固体粒子の
使用量は種類、粒径等により異なるが、玄米100gに
対して活性炭5〜15g、好ましくは8〜11g、タル
ク10〜30g、好ましくは16〜23g程度が好適で
ある。固体粒子の被覆は1次被覆の場合と同様な方法で
まんべんなく被覆する。上記の固体粒子の使用量は目安
の量であり、少なすぎると被覆が良好にできないので多
めにして被覆後、余分の固体粒子をふるい等で除去すれ
ばよい。
【0020】得られた玄米人工被膜種子はこのままでは
被覆資材が脱落しやすいので、後処理として室温または
30〜40℃の乾燥機内で10〜24時間乾燥させ、玄
米に被覆資材をしっかり固着させ、完成品を得る。こう
して得られた玄米人工被膜種子はそのまま播種してもよ
く、また保存、貯蔵、運搬後播種してもよい。この種子
は一般の種もみと同様に播種することができるが、被膜
が剥離しないように取扱う必要がある。
【0021】本発明の栽培方法は、上記の玄米人工被膜
種子を田畑に播種して栽培し、米を生産する。播種の方
法は直播方式でも移植方式でもよく、直播方式の場合で
も苗立が良好である。播種、栽培等は通常の種もみの場
合と同様に行うことができる。寒冷地等において低温時
に発芽させる場合は、活性炭等の暗黒色系の被膜剤で被
覆した種子を用いるのが好ましい。
【0022】播種期が低温である関東以北の地域での直
播の阻害要因は低温時での苗立不良である。これを解決
するためには、出芽、苗立ちを促進する方法を採ればよ
い。ここで種子として用いる玄米は吸水が早く、出芽が
早い特性を持っているが、さらに黒色の被覆資材を用い
て吸熱効果を高めれば、より早い出芽と苗立ちの安定化
が得られる。
【0023】
【発明の効果】本発明の玄米人工被膜種子は種もみのも
み殻を除去し、種子伝染性病原菌が潜在しているもみ殻
を除去して得られるほぼ無菌の玄米の外表面を、さらに
洗浄により脱ぷ時に表面に付着したもみ殻のくず、病原
菌等を洗い落し調製した玄米表面を、農薬で消毒するこ
となく人工被膜で被覆しているため、農薬を使用しない
で種子付着病原菌を極少ないし無にすることができ、こ
れにより育苗期や本田における種子伝染性病害に対する
農薬使用量の大幅な削減、および種子消毒剤の廃液処理
問題の解消などが可能となる。また玄米を人工被膜で被
覆しているため土壌病原菌や水棲病原菌から玄米を保護
し、出芽率を高めることができる。さらに苗立が良好な
ため、直播による安定栽培が可能であり、省力化に役立
つ。その上保存も容易であり、寒冷地における適用も可
能である。
【0024】人工被膜として水性粘結剤と固体粒子から
なるもの、特に水性粘結剤被膜を介して固体粒子被膜を
形成した被膜を形成することにより、上記の効果はさら
に高くなる。
【0025】本発明の玄米人工被膜種子の製造方法は、
イネ種子を脱ぷして人工被膜を形成するため、上記のよ
うな種子を効率よく製造することができる。
【0026】イネ玄米の外表面を水性粘結剤で被覆し、
この水性粘結剤に固体粒子を付着させて人工被覆を形成
することにより、病原菌の防除と種子の保護効果のさら
に高い被膜種子をより効率的に製造することが可能であ
る。
【0027】本発明の栽培方法は上記の玄米人工被膜種
子を播種して栽培するため、病害を少なくして米を生産
することができるとともに、直播による省力化、寒冷地
での安定栽培なども可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態について
説明する。製造例1イネの種子(もみ)を脱ぷ機(摩擦
型籾すり機)により籾殻を除去して玄米とし、流水(水
道水)に1晩洗浄をかねて浸種した後、室内で余分の水
を切り陰干した。この洗浄、浸種玄米をそのまま、1次
被覆処理として次の水性粘結剤で被覆した。 (1)市販CMC粉末4g/玄米100g (2)市販塗装用水溶性ポリアクリル樹脂の2倍希釈液
6ml/玄米100g (3)市販CMC粉末0.5〜1gを50mlの水に良
く溶解した溶液6ml/玄米100g
【0029】次に2次被覆処理として、1次被覆処理後
直ちに同様な方法で次の固体粒子被覆剤を被覆した。 (1)市販粉末活性炭10g/玄米100g (2)市販タルク(滑石、含水珪酸マグネシウム)20
g/玄米100g 得られた被覆種子はそのまま播種するもの以外は4℃の
冷蔵庫に保存した。
【0030】上記の被覆種子、または被覆しない種もみ
もしくは玄米を用いて、以下の試験を行った。
【0031】試験例1 脱ぷし被膜を形成しない状態の玄米およびもみ殻をそれ
ぞれ下記培地の上に置き、約25℃の定温器内で3〜1
週間保持して病原菌の出現率を調査した。病原菌検出培
地として、いもち病にはジャガイモ寒天培地(PS
A)、ばか苗病には駒田培地、もみ枯細菌病にはS−P
G培地(もみ枯細菌用選択培地)を用いた。結果を図1
ないし図3に示す。
【0032】図1ないし図3の結果より、種もみに付着
する病原菌はもみ殻に付着しており、脱ぷによりもみ殻
を分離することにより、病原菌を除去することができ、
これにより得られる玄米にはほとんど病原菌が付着しな
いか、場合によっては皆無にできることがわかる。
【0033】試験例2 製造例1でCMC粉末と活性炭で被覆して製造した被膜
種子(CK)、被覆しない無処理玄米および種もみ(品
種はキヌヒカリ)を、被覆直後と4℃の冷蔵庫で2週間
保存後のものについて出芽率を調べた。試験は市販の園
芸用小型プランターに育苗用粒状培土をいれ、これに各
種子を条播した。このとき1プランターに100粒播
種、2反復とした。約30℃の出芽機に約3日保持後、
温室に出し、播種数に対し地面上に芽が出た数(出芽
率)を調査した。結果を図4に示す。
【0034】図4の結果より、被膜種子の出芽率は玄米
よりも高く、また保存後のものが若干高い出芽率を示し
ており、保存により出芽率に悪影響は見られず、耐保存
性が高いことがわかる。
【0035】試験例3 移植栽培でのばか苗病およびいもち病発病抑制効果と生
育状態を調べた。品種キヌヒカリのばか苗病汚染種子を
用い、製造例1の方法により玄米として被覆処理を行っ
た。得られた被覆種子、無処理玄米、および種もみを、
常法により育苗箱へ播種し、ビニール育苗ハウス内で約
20日間育苗した後、通常の方法で本田へ機械移植し
た。7月上旬にばか苗病発病株率、いもち病発病率及び
株当たり病斑数、生育状態(草丈、茎数)を調査した。
結果を図5〜図7に示す。PTは水溶性ポリアクリル樹
脂とタルク、PKは水溶性ポリアクリル樹脂と活性炭、
CTはCMC水溶液とタルクにより被覆した種子を示
す。
【0036】図6のいもち病発病株率は、当年は初発病
が早く、調査が遅くなったため、玄米無病化種子でも、
種子伝染以外の他の田圃からの伝染により発病したた
め、発病が多くなったが、もみ区(現在の通常の栽培は
全てこのもみ播種である)に比較し発病は少ない傾向が
見られた。特に玄米無処理区はもみ区の隣に移植されて
いたため、もみ区からの伝染で発病が多くなった。図5
のばか苗病はCMC−タルク被覆の場合に発病株が見ら
れたがもみ区に比べて少なく、他の区はゼロとなってお
り、病害防除効果が高いことがわかる。また図7から生
育状態は各区とも同等であり、被覆による阻害は認めら
れない。
【0037】試験例4 湛水直播栽培でのいもち病発病抑制効果と生育状態を調
べた。各被覆処理をした玄米種子(品種キヌヒカリ)を
風乾後、5月19日に播種直前に水を落とした田面に手
で湛水直播し、播種後、水を入れた。7月6〜7日にい
もち病発病株率、株当たり病斑数、苗立率、生育状態
(草丈、茎数)を調査した。結果を図8および図9に示
す。苗立率、株当たり病斑数は対照としたもみ播種区に
対する比率で示している。またPTは水溶性ポリアクリ
ル樹脂とタルク、PKは水溶性ポリアクリル樹脂と活性
炭、CTはCMC水溶液とタルクにより被覆した種子を
示す。
【0038】図8の結果より、玄米被膜種子播種区では
もみ区に比較し苗立率は同等以上、いもち病の発病程度
は格段に低いことがわかる。また図9の結果より生育状
態は各区ともほぼ同等であり、特に活性炭被膜の場合生
育状態が若干良くなる傾向を示している。これらのこと
から被膜種子は湛水直播方式に十分適用可能であること
がわかる。
【0039】試験例5 低温下における生育促進効果を調べた。供試品種はキヌ
ヒカリとどまんなか(山形産)であり、キヌヒカリは浸
種後玄米に水溶性ポリアクリル樹脂と活性炭(黒色)被
覆処理(PK1)、どまんなかは無浸種の玄米に水溶性
ポリアクリル樹脂と活性炭(黒色)被覆処理(PK2)
した。これらの種子を育苗箱(畑状態)播種と、湛水直
播(バットを用いた水田状態として湛水土中直播)の両
栽培法で播種した。育苗環境は温度16〜18℃、人工
照明として、約3,000luxで日中12時間照明を
行う人工気象室内で実験した。播種翌日から播種後12
日まで経時的に出芽率、生育状態(草丈、茎数)を調査
した。結果を図10および図11に示す。
【0040】図10および11の結果より、黒色の活性
炭による玄米被覆種子は通常のもみ播種に比較し、畑状
態での育苗、湛水直播状態での育苗において顕著な出芽
及び苗立ち率の向上促進効果が認められた。すなわち図
10において、もみ播種に比べて被覆種子の畑状態での
出芽は4日以上早期に始まり、苗立ち率が70%以上に
達するのは1週間以上早期である。また図11の湛水状
態(湛水土中直播条件)ではさらにその差が大きくな
り、播種12日後の出芽率は被覆種子で56〜80%に
対し、もみでは38%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1におけるばか苗病菌の出現率を示すグ
ラフである。
【図2】試験例1におけるいもち病菌の出現率を示すグ
ラフである。
【図3】試験例1におけるもみ枯細菌の出現率を示すグ
ラフである。
【図4】試験例2における出芽率を示すグラフである。
【図5】試験例3におけるばか苗病の発病株率を示すグ
ラフである。
【図6】試験例3におけるいもち病の発病株率を示すグ
ラフである。
【図7】試験例3における生育状態を示すグラフであ
る。
【図8】試験例4におけるいもち病の発病抑制効果を示
すグラフである。
【図9】試験例4における生育状態を示すグラフであ
る。
【図10】試験例5における育苗箱での出芽率を示すグ
ラフである。
【図11】試験例5における湛水直播での出芽率を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−316817(JP,A) 特公 昭57−21283(JP,B2) 特公 平6−40767(JP,B2) 実公 平3−35046(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01C 1/06 A01C 1/04

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イネ種子を脱ぷし、種子伝染性病原菌が
    潜在しているもみ殻を除去し、洗浄して得られるほぼ無
    菌のイネ玄米の外表面を、農薬で消毒することなく人工
    被膜で被覆してることを特徴とする無病化イネ玄米人
    工被膜種子。
  2. 【請求項2】 人工被膜が水性粘結剤および固体粒子か
    らなる請求項1記載の無病化イネ玄米人工被膜種子。
  3. 【請求項3】 水性粘結剤がカルボキシメチルセルロー
    スまたは水溶性ポリアクリル樹脂である請求項2記載の
    無病化イネ玄米人工被膜種子。
  4. 【請求項4】 固体粒子が粉末活性炭またはタルクであ
    る請求項2記載の無病化イネ玄米人工被膜種子。
  5. 【請求項5】 イネ種子を脱ぷし、種子伝染性病原菌が
    潜在しているもみ殻を除去し、洗浄して得られるほぼ無
    菌のイネ玄米の外表面を、農薬で消毒することなく人工
    被膜で被覆することを特徴とする無病化イネ玄米人工被
    膜種子の製造方法。
  6. 【請求項6】 イネ玄米の外表面を、農薬で消毒するこ
    となく水性粘結剤で被覆し、この水性粘結剤に固体粒子
    を付着させて人工被膜を形成することを特徴とする請求
    項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし4のいずれかに記載のイ
    ネ玄米人工被膜種子を播種して栽培し、米を生産するこ
    とを特徴とするイネ玄米人工被膜種子の栽培方法。
  8. 【請求項8】 播種が育苗箱播種または直播である請求
    項7記載の方法。
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