JP2763071B2 - 眼鏡用レンズ - Google Patents
眼鏡用レンズInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、眼鏡レンズに係り、更に詳しくは紫外及び
近紫外域において反射特性を、そして可視域において反
射防止特性を有する眼鏡レンズに関する。 [発明の背景] 紫外線は眼にとって有害光線とされ、例えば白内障の
遠因となることは知られている。 また紫外線による問題は、染色された眼鏡レンズにも
認められる。すなわち、最近プラスチックレンズを分散
染料で染色したり(例えば特公昭55−17156号公報参
照)、染色し難いと言われているガラスレンズの場合に
は、その表面に、水酸基等の官能基を有するラダー型シ
リコンオリゴマー(特開昭62−55621号公報)やポリウ
レタン等の高分子(実開昭60−90422号公報)からなる
硬化塗膜を形成させることにより、ガラスレンズを分散
染料で染色することが行なわれているが、上記の方法で
染色されたレンズは、紫外線により染料が酸化、分解等
の化学変化を受け、変色、退色して耐光性を著しく損な
うことが問題となっている。 そこで眼鏡レンズ表面に低屈折率物質膜と高屈折率物
質膜とを交互積層してなる多層紫外域反射膜を設けるこ
とが行なわれている。この多層反射膜においてはその層
数が増加する程、反射率も増大する(「薄膜光学ハンド
ブック」日本学術振興会薄膜第131委員会編303頁参
照)。しかしながら前記構造の多層紫外域反射膜は、紫
外域に反射領域を設定した場合、紫外域に増反射効果が
現われるが、同時にその波長領域の近傍に広範囲に亘っ
て高反射率を有する二次的ピーク(リップルとも呼ばれ
るので、以下リップルという)が現われる。特にこの反
射膜の設計において、増反射領域を可視域に近接した近
紫外領域に設定すると、リップルがもたらす可視域での
表面反射の増加や、それに伴なう透過率の減少が起り、
この様な反射膜を眼鏡レンズに設けた場合、眼鏡レンズ
における光学性能において大きな障害になる。 [発明の目的] 従って本発明の目的は、多層紫外域反射膜を設けるこ
とにより生ずる光学性能上の障害を解消した新規眼鏡レ
ンズを提供することにある。 [目的を達成するための手段] 本発明の目的は、レンズ基板または表面処理が施され
たレンズ基板上に低屈折率物質膜と高屈折率物質膜を交
互積層してなる多層紫外域反射膜層と、低屈折率物質膜
と高屈折率物質膜を交互積層してなる可視域反射防止膜
層と、を有する眼鏡レンズにおいて; 前記多層紫外域反射膜層の一方の面とレンズ基板また
は表面処理レンズ基板との間及び前記多層紫外域反射膜
層の他方の面上に、高屈折率物質からなり、且つその光
学的膜厚がλ/8以下である、前記多層紫外域反射膜層に
よるリップルを抑えることができる第1の調整膜がそれ
ぞれ設けられ、 さらに前記多層紫外域防止膜層の前記他方の面上に設
けられた第1の調整膜上に、前記可視域反射防止膜層
が、低屈折率物質からなり、且つその光学的膜厚が約λ
/2である、該可視域反射防止膜層と前記多層紫外域反射
膜層との間の分光反射特性を整えることができる第2の
調整膜を介して設けられている ことを特徴とする眼鏡レンズより達成された。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の眼鏡用レンズにおいて、レンズ基板として
は、ガラスレンズ基板及びプラスチックレンズ基板のい
ずれも用いられる。これらのレンズ基板はその表面が表
面処理されていても良く、該表面処理の具体例として、
レンズ基板上に有機物(例えば有機ケイ素化合物)、無
機物(例えばコロイダルシリカ)又はこれらの混合物か
らなる硬化膜を形成することが挙げられる。 また本発明の眼鏡用レンズは、その前提条件として、
前記レンズ基板上に多層紫外域反射膜層を有するもので
ある。この多層紫外域反射膜層は、例えば低屈折率物質
と高屈折率物質とをそれぞれの層の光学的膜厚がλ/4と
なるように交互積層することにより形成される。低屈折
率物質として弗化マグネシウムおよび酸化珪素の一種ま
たは二種が用いられ、また高屈折率物質として酸化チタ
ン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウ
ム、酸化ネオジウムおよび酸化タンタルの一種または二
種以上が用いられる。 本発明の眼鏡用レンズは、前記多層紫外域反射膜層の
一方の面とレンズ基板又は表面処理レンズ基板との間及
び前記多層紫外域反射膜層の他方の面上に、前記多層紫
外域反射膜厚によるリップルを抑えるための第1の調整
膜が設けられていることを1つの特徴とするものであ
る。この第1の調整膜は、前記の高屈折率物質よりな
り、その光学的膜厚はλ/8以下とするのが好ましい。 また本発明の眼鏡用レンズは、前記多層紫外域反射膜
層の面上に設けられた第1の調整膜上に、可視域反射防
止膜層が、該可視域反射防止膜層と前記多層紫外域反射
膜層との間の分光反射特性を整えるための第2の調整膜
を介して設けられていることをもう1つの特徴とするも
のである。この可視域反射防止膜層の形成法の一例とし
て、上記低屈折率物質と高屈折率物質とを交互に積層し
た混合層(実施例では2層又は3層)を光学的膜厚λ/4
程度蒸着し、次に光学膜厚λ/4又はλ/2程度の高屈折率
物質の層、そして光学的膜厚λ/4程度の低屈折率物質の
層を順次積層する方法が挙げられる。また前記可視域反
射防止膜層と多層紫外域反射膜層との間の分光反射特性
を整えるために、前記第1の調整膜と可視域反射防止膜
層との間に設けられる第2の調整膜は、前記の低屈折率
物質よりなり、その光学的膜厚はλ/2程度とするのが好
ましい。 [実施例] 以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明
はこれらの実施例に限定されるものではない。 [実施例1] 無機ガラスレンズ(ホーヤ(株)製LHI−IIレンズ
屈折率1.6)の表面に有機ケイ素化合物含有の有機物表
面硬化膜を施したものを真空槽内に設置し、レンズ表面
を120℃以下としながら下地層として酸化珪素からなる
無機表面硬化膜を蒸着させた。次に多層紫外域反射膜層
によるリップルを抑えるため、高屈折率物質として酸化
ジルコニウムを用い、これを光学的膜λ/8で蒸着して第
1の調整膜を形成し、その上に多層紫外域反射膜層を蒸
着した。この紫外域反射膜層は基板側から低屈折率層と
して酸化珪素、高屈折率層として酸化ジルコニウムを各
々光学的膜厚λ/4で交互に高、低屈折率物質をそれぞれ
7層づつ蒸着し最後は低屈折率物質を光学的膜厚λ/4で
蒸着した。従って紫外域反射膜層の合計層数は15層とな
る。その上に再びリップルを抑えるための第1の調整膜
を形成させるため、高屈折率物質として酸化ジルコニウ
ムを光学的膜厚λ/8で蒸着した。次いで該紫外域反射膜
層に可視域の反射防止層を蒸着した場合の分光反射率特
性を整えるための第2の調整膜として酸化珪素を光学的
膜厚λ/2で蒸着した。次に可視域反射防止膜層を蒸着し
た。該反射防止膜層の形成は基板側の第一層に高屈折率
物質として酸化ジルコニウム、第二層に低屈折率物質と
して酸化珪素を使用した等価屈折率1.626の2層疑似等
価膜を光学的膜厚λ/4相当分蒸着し、その上に高屈折率
物質として酸化ジルコニウムを使用した光学的膜厚λ/4
の層を蒸着し、最後に低屈折率物質として酸化珪素を使
用した光学的膜厚λ/4の層を蒸着することによって行な
った。 第1図にこの実施例1で得られた、多層蒸着膜層を有
する眼鏡用レンズ(屈折率1.6)の近紫外域における分
光反射率曲線を示す。 第1図より、350〜410nmの近紫外域で反射率は80%以
上となり、380nmにおいて最大反射率95%となることが
明らかである。一方可視域に入り430nmより長波長側で
は反射率が急激に減少して最小反射率は0.1%程度であ
り、可視域全体での反射率を表すY値は0.67%であっ
た。可視域反射防止膜を設けないものの反射率はY値で
9.14であり、また従来技術の反射防止膜(λ/8高屈折率
層を使用)を設けたものは3.40%であり、さらに眼鏡レ
ンズ自体の表面反射率は5.32%であるので、本実施例1
の多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズは可視域反射防止
効果において極めてすぐれていることが明らかである。 [実施例2] 可視域反射防止膜層を変えた以外は、実施例1と同様
にして多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズを得た。 可視域反射防止膜層は以下のようにして形成した。す
なわち、第1の調整膜、多層紫外域反射膜層、第1の調
整膜、第2の調整膜を順次設けたガラス基板上に、高屈
折率物質として酸化ジルコニウム、低屈折率物質として
酸化珪素を用いた対称型三層等価膜で等価屈折率1.65、
等価膜厚λ/4としたもの、および高屈折率物質として酸
化ジルコニウムを用いた光学的膜厚λ/4の層、さらに低
屈折率物質として酸化珪素を用いた光学的膜厚λ/4の層
をこの順番で蒸着することにより可視域反射防止膜層を
形成した。 第1図に、この実施例2で得られた、多層蒸着膜層を
有する眼鏡用レンズの近紫外域における分光反射率曲線
を示す。 第1図より350〜410nmの近紫外域で反射率は80%以上
であり、360nmにおいて最大反射率93%となることが明
らかである。一方可視域に入り430nmより長波長側では
反射率が急激に減少し515nmと580nmにおいて反射率は0.
1%以下となり、可視部全体の反射率を表すY値は0.73
%であって、すぐれた結果が得られた。 実施例1と2を比較すると、反射防止効果は実施例1
の方が優れているが、実施例1の場合は近紫外域におけ
る反射率の高い部分が380nmと可視域に近く実施例2の
場合は360nmと若干可視域より遠くなり紫外線を反射す
る波長帯が短波長側による。このことは当該多層膜を着
色物の紫外線照射による退色防止に使用する場合におい
て反射する波長帯を選択できる利点がある。 [実施例3] レンズ基板として、屈折率1.8のガラスレンズ(ホー
ヤ(株)製THI−II)を使用した以外は実施例1と同様
にして多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズを得た。本実
施例3で得られた眼鏡用レンズの分光反射率曲線を第2
図に示す。 第2図より350〜410nmの近紫外域で反射率は80%以上
であり、380nmにおいて最大反射率96%となることが明
らかである。また可視域の反射率はY値で1.38%であっ
た。従来技術の反射防止膜(λ/8高屈折率膜使用)を設
けた場合の反射率はY値で4.07%であり、本実施例3の
眼鏡用レンズの可視域反射防止効果の方がはるかにすぐ
れていた。 [実施例4] レンズ基板として実施例3で用いたと同一の屈折率1.
8のガラスレンズ(ホーヤ(株)製THI−II)を用い、実
施例2と同一の方法で成膜して多層蒸着膜層を有する眼
鏡用レンズを得た。その近紫外域における分光反射率曲
線は第2図に示すように、350〜410nmの近紫外域におけ
る反射率は80%以上であり、365nmにおいて最大反射率9
4%であった。また可視域の反射率はY値で1.45%であ
り、可視域反射防止効果にすぐれていた。 [実施例5] レンズ基板として屈折率1.7のガラスレンズ(ホーヤ
(株)製LHI)用いた以外は実施例1と同様にして多層
蒸着膜層を有する眼鏡用レンズを得た。得られた多層蒸
着膜層を有する眼鏡用レンズの近紫外域における分光反
射率曲線は図示しないが、350nmから410nmの近紫外領域
において80%以上の反射率を有し380nmに於て最大反射
率95.3%を示した。また可視域の反射率はY値で0.95%
であった。従来技術の反射防止膜(λ/8高屈折率膜使
用)を設けたものの反射率はY値で3.67%であり本実施
例5の多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズの可視域反射
防止効果の方がはるかにすぐれていた。 [実施例6] レンズ基板として実施例5で用いたと同一屈折率1.7
のガラスレンズ(ホーヤ(株)製LHI)を用い実施例2
と同一の方法で成膜して多層蒸着膜を有する眼鏡用レン
ズを得た。得られた多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズ
の近紫外域における分光反射率曲線は図示しないが、34
5nmから415nmの近紫外領域において80%以上の反射率を
有し365nmに於いて最大反射率93.5%を示した。また可
視域の反射率はY値で1.01%であり、可視域反射防止効
果にすぐれていた。 [発明の効果] 以上詳述したように、本発明によれば、レンズ基板上
に多層紫外域反射膜層を設けた眼鏡用レンズにおいて、
前記多層紫外域反射膜層によるリップルを抑えるための
第1の調整膜、可視域反射防止膜層、及び該可視域反射
防止膜層と前記多層紫外域反射膜層との間の分光反射特
性を整えるため第2の調整膜を所定の配列で設けること
により、近紫外域においてすぐれた反射特性を、そして
可視域においてすぐれた反射防止特性を有する眼鏡用レ
ンズが得られた。
近紫外域において反射特性を、そして可視域において反
射防止特性を有する眼鏡レンズに関する。 [発明の背景] 紫外線は眼にとって有害光線とされ、例えば白内障の
遠因となることは知られている。 また紫外線による問題は、染色された眼鏡レンズにも
認められる。すなわち、最近プラスチックレンズを分散
染料で染色したり(例えば特公昭55−17156号公報参
照)、染色し難いと言われているガラスレンズの場合に
は、その表面に、水酸基等の官能基を有するラダー型シ
リコンオリゴマー(特開昭62−55621号公報)やポリウ
レタン等の高分子(実開昭60−90422号公報)からなる
硬化塗膜を形成させることにより、ガラスレンズを分散
染料で染色することが行なわれているが、上記の方法で
染色されたレンズは、紫外線により染料が酸化、分解等
の化学変化を受け、変色、退色して耐光性を著しく損な
うことが問題となっている。 そこで眼鏡レンズ表面に低屈折率物質膜と高屈折率物
質膜とを交互積層してなる多層紫外域反射膜を設けるこ
とが行なわれている。この多層反射膜においてはその層
数が増加する程、反射率も増大する(「薄膜光学ハンド
ブック」日本学術振興会薄膜第131委員会編303頁参
照)。しかしながら前記構造の多層紫外域反射膜は、紫
外域に反射領域を設定した場合、紫外域に増反射効果が
現われるが、同時にその波長領域の近傍に広範囲に亘っ
て高反射率を有する二次的ピーク(リップルとも呼ばれ
るので、以下リップルという)が現われる。特にこの反
射膜の設計において、増反射領域を可視域に近接した近
紫外領域に設定すると、リップルがもたらす可視域での
表面反射の増加や、それに伴なう透過率の減少が起り、
この様な反射膜を眼鏡レンズに設けた場合、眼鏡レンズ
における光学性能において大きな障害になる。 [発明の目的] 従って本発明の目的は、多層紫外域反射膜を設けるこ
とにより生ずる光学性能上の障害を解消した新規眼鏡レ
ンズを提供することにある。 [目的を達成するための手段] 本発明の目的は、レンズ基板または表面処理が施され
たレンズ基板上に低屈折率物質膜と高屈折率物質膜を交
互積層してなる多層紫外域反射膜層と、低屈折率物質膜
と高屈折率物質膜を交互積層してなる可視域反射防止膜
層と、を有する眼鏡レンズにおいて; 前記多層紫外域反射膜層の一方の面とレンズ基板また
は表面処理レンズ基板との間及び前記多層紫外域反射膜
層の他方の面上に、高屈折率物質からなり、且つその光
学的膜厚がλ/8以下である、前記多層紫外域反射膜層に
よるリップルを抑えることができる第1の調整膜がそれ
ぞれ設けられ、 さらに前記多層紫外域防止膜層の前記他方の面上に設
けられた第1の調整膜上に、前記可視域反射防止膜層
が、低屈折率物質からなり、且つその光学的膜厚が約λ
/2である、該可視域反射防止膜層と前記多層紫外域反射
膜層との間の分光反射特性を整えることができる第2の
調整膜を介して設けられている ことを特徴とする眼鏡レンズより達成された。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の眼鏡用レンズにおいて、レンズ基板として
は、ガラスレンズ基板及びプラスチックレンズ基板のい
ずれも用いられる。これらのレンズ基板はその表面が表
面処理されていても良く、該表面処理の具体例として、
レンズ基板上に有機物(例えば有機ケイ素化合物)、無
機物(例えばコロイダルシリカ)又はこれらの混合物か
らなる硬化膜を形成することが挙げられる。 また本発明の眼鏡用レンズは、その前提条件として、
前記レンズ基板上に多層紫外域反射膜層を有するもので
ある。この多層紫外域反射膜層は、例えば低屈折率物質
と高屈折率物質とをそれぞれの層の光学的膜厚がλ/4と
なるように交互積層することにより形成される。低屈折
率物質として弗化マグネシウムおよび酸化珪素の一種ま
たは二種が用いられ、また高屈折率物質として酸化チタ
ン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウ
ム、酸化ネオジウムおよび酸化タンタルの一種または二
種以上が用いられる。 本発明の眼鏡用レンズは、前記多層紫外域反射膜層の
一方の面とレンズ基板又は表面処理レンズ基板との間及
び前記多層紫外域反射膜層の他方の面上に、前記多層紫
外域反射膜厚によるリップルを抑えるための第1の調整
膜が設けられていることを1つの特徴とするものであ
る。この第1の調整膜は、前記の高屈折率物質よりな
り、その光学的膜厚はλ/8以下とするのが好ましい。 また本発明の眼鏡用レンズは、前記多層紫外域反射膜
層の面上に設けられた第1の調整膜上に、可視域反射防
止膜層が、該可視域反射防止膜層と前記多層紫外域反射
膜層との間の分光反射特性を整えるための第2の調整膜
を介して設けられていることをもう1つの特徴とするも
のである。この可視域反射防止膜層の形成法の一例とし
て、上記低屈折率物質と高屈折率物質とを交互に積層し
た混合層(実施例では2層又は3層)を光学的膜厚λ/4
程度蒸着し、次に光学膜厚λ/4又はλ/2程度の高屈折率
物質の層、そして光学的膜厚λ/4程度の低屈折率物質の
層を順次積層する方法が挙げられる。また前記可視域反
射防止膜層と多層紫外域反射膜層との間の分光反射特性
を整えるために、前記第1の調整膜と可視域反射防止膜
層との間に設けられる第2の調整膜は、前記の低屈折率
物質よりなり、その光学的膜厚はλ/2程度とするのが好
ましい。 [実施例] 以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明
はこれらの実施例に限定されるものではない。 [実施例1] 無機ガラスレンズ(ホーヤ(株)製LHI−IIレンズ
屈折率1.6)の表面に有機ケイ素化合物含有の有機物表
面硬化膜を施したものを真空槽内に設置し、レンズ表面
を120℃以下としながら下地層として酸化珪素からなる
無機表面硬化膜を蒸着させた。次に多層紫外域反射膜層
によるリップルを抑えるため、高屈折率物質として酸化
ジルコニウムを用い、これを光学的膜λ/8で蒸着して第
1の調整膜を形成し、その上に多層紫外域反射膜層を蒸
着した。この紫外域反射膜層は基板側から低屈折率層と
して酸化珪素、高屈折率層として酸化ジルコニウムを各
々光学的膜厚λ/4で交互に高、低屈折率物質をそれぞれ
7層づつ蒸着し最後は低屈折率物質を光学的膜厚λ/4で
蒸着した。従って紫外域反射膜層の合計層数は15層とな
る。その上に再びリップルを抑えるための第1の調整膜
を形成させるため、高屈折率物質として酸化ジルコニウ
ムを光学的膜厚λ/8で蒸着した。次いで該紫外域反射膜
層に可視域の反射防止層を蒸着した場合の分光反射率特
性を整えるための第2の調整膜として酸化珪素を光学的
膜厚λ/2で蒸着した。次に可視域反射防止膜層を蒸着し
た。該反射防止膜層の形成は基板側の第一層に高屈折率
物質として酸化ジルコニウム、第二層に低屈折率物質と
して酸化珪素を使用した等価屈折率1.626の2層疑似等
価膜を光学的膜厚λ/4相当分蒸着し、その上に高屈折率
物質として酸化ジルコニウムを使用した光学的膜厚λ/4
の層を蒸着し、最後に低屈折率物質として酸化珪素を使
用した光学的膜厚λ/4の層を蒸着することによって行な
った。 第1図にこの実施例1で得られた、多層蒸着膜層を有
する眼鏡用レンズ(屈折率1.6)の近紫外域における分
光反射率曲線を示す。 第1図より、350〜410nmの近紫外域で反射率は80%以
上となり、380nmにおいて最大反射率95%となることが
明らかである。一方可視域に入り430nmより長波長側で
は反射率が急激に減少して最小反射率は0.1%程度であ
り、可視域全体での反射率を表すY値は0.67%であっ
た。可視域反射防止膜を設けないものの反射率はY値で
9.14であり、また従来技術の反射防止膜(λ/8高屈折率
層を使用)を設けたものは3.40%であり、さらに眼鏡レ
ンズ自体の表面反射率は5.32%であるので、本実施例1
の多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズは可視域反射防止
効果において極めてすぐれていることが明らかである。 [実施例2] 可視域反射防止膜層を変えた以外は、実施例1と同様
にして多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズを得た。 可視域反射防止膜層は以下のようにして形成した。す
なわち、第1の調整膜、多層紫外域反射膜層、第1の調
整膜、第2の調整膜を順次設けたガラス基板上に、高屈
折率物質として酸化ジルコニウム、低屈折率物質として
酸化珪素を用いた対称型三層等価膜で等価屈折率1.65、
等価膜厚λ/4としたもの、および高屈折率物質として酸
化ジルコニウムを用いた光学的膜厚λ/4の層、さらに低
屈折率物質として酸化珪素を用いた光学的膜厚λ/4の層
をこの順番で蒸着することにより可視域反射防止膜層を
形成した。 第1図に、この実施例2で得られた、多層蒸着膜層を
有する眼鏡用レンズの近紫外域における分光反射率曲線
を示す。 第1図より350〜410nmの近紫外域で反射率は80%以上
であり、360nmにおいて最大反射率93%となることが明
らかである。一方可視域に入り430nmより長波長側では
反射率が急激に減少し515nmと580nmにおいて反射率は0.
1%以下となり、可視部全体の反射率を表すY値は0.73
%であって、すぐれた結果が得られた。 実施例1と2を比較すると、反射防止効果は実施例1
の方が優れているが、実施例1の場合は近紫外域におけ
る反射率の高い部分が380nmと可視域に近く実施例2の
場合は360nmと若干可視域より遠くなり紫外線を反射す
る波長帯が短波長側による。このことは当該多層膜を着
色物の紫外線照射による退色防止に使用する場合におい
て反射する波長帯を選択できる利点がある。 [実施例3] レンズ基板として、屈折率1.8のガラスレンズ(ホー
ヤ(株)製THI−II)を使用した以外は実施例1と同様
にして多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズを得た。本実
施例3で得られた眼鏡用レンズの分光反射率曲線を第2
図に示す。 第2図より350〜410nmの近紫外域で反射率は80%以上
であり、380nmにおいて最大反射率96%となることが明
らかである。また可視域の反射率はY値で1.38%であっ
た。従来技術の反射防止膜(λ/8高屈折率膜使用)を設
けた場合の反射率はY値で4.07%であり、本実施例3の
眼鏡用レンズの可視域反射防止効果の方がはるかにすぐ
れていた。 [実施例4] レンズ基板として実施例3で用いたと同一の屈折率1.
8のガラスレンズ(ホーヤ(株)製THI−II)を用い、実
施例2と同一の方法で成膜して多層蒸着膜層を有する眼
鏡用レンズを得た。その近紫外域における分光反射率曲
線は第2図に示すように、350〜410nmの近紫外域におけ
る反射率は80%以上であり、365nmにおいて最大反射率9
4%であった。また可視域の反射率はY値で1.45%であ
り、可視域反射防止効果にすぐれていた。 [実施例5] レンズ基板として屈折率1.7のガラスレンズ(ホーヤ
(株)製LHI)用いた以外は実施例1と同様にして多層
蒸着膜層を有する眼鏡用レンズを得た。得られた多層蒸
着膜層を有する眼鏡用レンズの近紫外域における分光反
射率曲線は図示しないが、350nmから410nmの近紫外領域
において80%以上の反射率を有し380nmに於て最大反射
率95.3%を示した。また可視域の反射率はY値で0.95%
であった。従来技術の反射防止膜(λ/8高屈折率膜使
用)を設けたものの反射率はY値で3.67%であり本実施
例5の多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズの可視域反射
防止効果の方がはるかにすぐれていた。 [実施例6] レンズ基板として実施例5で用いたと同一屈折率1.7
のガラスレンズ(ホーヤ(株)製LHI)を用い実施例2
と同一の方法で成膜して多層蒸着膜を有する眼鏡用レン
ズを得た。得られた多層蒸着膜層を有する眼鏡用レンズ
の近紫外域における分光反射率曲線は図示しないが、34
5nmから415nmの近紫外領域において80%以上の反射率を
有し365nmに於いて最大反射率93.5%を示した。また可
視域の反射率はY値で1.01%であり、可視域反射防止効
果にすぐれていた。 [発明の効果] 以上詳述したように、本発明によれば、レンズ基板上
に多層紫外域反射膜層を設けた眼鏡用レンズにおいて、
前記多層紫外域反射膜層によるリップルを抑えるための
第1の調整膜、可視域反射防止膜層、及び該可視域反射
防止膜層と前記多層紫外域反射膜層との間の分光反射特
性を整えるため第2の調整膜を所定の配列で設けること
により、近紫外域においてすぐれた反射特性を、そして
可視域においてすぐれた反射防止特性を有する眼鏡用レ
ンズが得られた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例1,2で得られた眼鏡用レンズ
の分光反射率曲線図、第2図は本発明の実施例3,4で得
られた眼鏡用レンズの分光反射率曲線図を示す。
の分光反射率曲線図、第2図は本発明の実施例3,4で得
られた眼鏡用レンズの分光反射率曲線図を示す。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.レンズ基板または表面処理が施されたレンズ基板上
に低屈折率物質膜と高屈折率物質膜を交互積層してなる
多層紫外域反射膜層と、低屈折率物質膜と高屈折率物質
膜を交互積層してなる可視域反射防止膜層と、を有する
眼鏡レンズにおいて; 前記多層紫外域反射膜層の一方の面とレンズ基板または
表面処理レンズ基板との間及び前記多層紫外域反射膜層
の他方の面上に、高屈折率物質からなり、且つその光学
的膜厚がλ/8以下である、前記多層紫外域反射膜層によ
るリップルを抑えることができる第1の調整膜がそれぞ
れ設けられ、 さらに前記多層紫外域防止膜層の前記他方の面上に設け
られた第1の調整膜上に、前記可視域反射防止膜層が、
低屈折率物質からなり、且つその光学的膜厚が約λ/2で
ある、該可視域反射防止膜層と前記多層紫外域反射膜層
との間の分光反射特性を整えることができる第2の調整
膜を介して設けられていることを特徴とする眼鏡レン
ズ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62246218A JP2763071B2 (ja) | 1987-09-30 | 1987-09-30 | 眼鏡用レンズ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62246218A JP2763071B2 (ja) | 1987-09-30 | 1987-09-30 | 眼鏡用レンズ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6488517A JPS6488517A (en) | 1989-04-03 |
JP2763071B2 true JP2763071B2 (ja) | 1998-06-11 |
Family
ID=17145268
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62246218A Expired - Lifetime JP2763071B2 (ja) | 1987-09-30 | 1987-09-30 | 眼鏡用レンズ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2763071B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016186661A (ja) * | 2016-07-19 | 2016-10-27 | Hoya株式会社 | 光学部材 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6059220U (ja) * | 1983-09-28 | 1985-04-24 | ホーヤ株式会社 | 眼鏡レンズ |
-
1987
- 1987-09-30 JP JP62246218A patent/JP2763071B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6488517A (en) | 1989-04-03 |
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