JP2727865B2 - 高強度高耐食性継目無鋼管の製造方法 - Google Patents
高強度高耐食性継目無鋼管の製造方法Info
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- Heat Treatment Of Steel (AREA)
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高強度で高耐食性に
優れた油井管等としての使用に適した高強度高耐食性継
目無鋼管を製造する方法に関する。
優れた油井管等としての使用に適した高強度高耐食性継
目無鋼管を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】オイルショック以降は、石油、天然ガス
の需要が増加し、世界各国で油田、ガス田の開発が進め
られてきたが、それに伴って採掘し易い鉱床の数が減少
し、最近では採掘の困難な深く、しかも産出物中に湿潤
な硫化水素や二酸化炭素の含まれる腐食性雰囲気の油
井、ガス井の割合が多くなってきている。深い油井、ガ
ス井においては、数千mの長い油井管、ガス井管(以下
油井管という)を吊下げる形になり、地上付近の油井管
に大荷重がかかるため高い強度が要求される。また、硫
化水素や炭酸ガスなどの腐食性環境下では、耐食性、特
に耐硫化物応力腐食割れ性(以下耐SSCC性という)
に優れた油井管が要求される。このため、油井、ガス井
の掘削および採油、採ガスなどの油井管として使用する
継目無鋼管は、高強度でしかも高耐食性に対する要求が
従来にも増して厳しくなってきている。
の需要が増加し、世界各国で油田、ガス田の開発が進め
られてきたが、それに伴って採掘し易い鉱床の数が減少
し、最近では採掘の困難な深く、しかも産出物中に湿潤
な硫化水素や二酸化炭素の含まれる腐食性雰囲気の油
井、ガス井の割合が多くなってきている。深い油井、ガ
ス井においては、数千mの長い油井管、ガス井管(以下
油井管という)を吊下げる形になり、地上付近の油井管
に大荷重がかかるため高い強度が要求される。また、硫
化水素や炭酸ガスなどの腐食性環境下では、耐食性、特
に耐硫化物応力腐食割れ性(以下耐SSCC性という)
に優れた油井管が要求される。このため、油井、ガス井
の掘削および採油、採ガスなどの油井管として使用する
継目無鋼管は、高強度でしかも高耐食性に対する要求が
従来にも増して厳しくなってきている。
【0003】従来から油井管の強度設計は、降伏応力
(YS)によって行われるのが普通であり、耐食性に影
響を及ぼす硬度は、引張り強度(TS)と等価であるこ
とから、高強度高耐食性油井管製造のポイントとして
は、高降伏応力(YS)、低引張り強度(TS)、すな
わち高降伏比(YR=YS/TS)化が挙げられる。高
降伏比化を達成するには、従来からC−Si−Mn−C
r鋼にMoを添加し、焼入れ性の良好な材料を使用する
方法、焼入れ焼戻しを繰返すことによって組織を細粒化
する方法、抽伸等の冷間加工を施し組織を細粒化する方
法の単独または組合わせが採用されていた。
(YS)によって行われるのが普通であり、耐食性に影
響を及ぼす硬度は、引張り強度(TS)と等価であるこ
とから、高強度高耐食性油井管製造のポイントとして
は、高降伏応力(YS)、低引張り強度(TS)、すな
わち高降伏比(YR=YS/TS)化が挙げられる。高
降伏比化を達成するには、従来からC−Si−Mn−C
r鋼にMoを添加し、焼入れ性の良好な材料を使用する
方法、焼入れ焼戻しを繰返すことによって組織を細粒化
する方法、抽伸等の冷間加工を施し組織を細粒化する方
法の単独または組合わせが採用されていた。
【0004】前記耐SSCC性の評価法としては、シェ
ル試験法、NACE試験法(定荷重法)、SSRT法
(低歪速度引張り試験法)の3種類が知られている。こ
れらはいずれも同じ傾向を示すが、厳しさはシェル試験
法が最大である。シェル試験法は、厚さ1.7mm、幅
4.5mmの試験片の長さ方向中央部に直径0.7mm
の孔を2個穿孔し、この部分に3点曲げで応力を付加し
た状態で、室温、0.5%CH3COOH、1気圧、H2
S飽和の環境下に200〜500時間保持して、割れ限
界応力をSc値(耐食性指数)で評価するものである。
このSc値とロックウエル硬さHRCとの間には、図7
に示す関係が存在し、Sc値を上げるには硬度HRCを
低下させる必要があり、強度が低下する。
ル試験法、NACE試験法(定荷重法)、SSRT法
(低歪速度引張り試験法)の3種類が知られている。こ
れらはいずれも同じ傾向を示すが、厳しさはシェル試験
法が最大である。シェル試験法は、厚さ1.7mm、幅
4.5mmの試験片の長さ方向中央部に直径0.7mm
の孔を2個穿孔し、この部分に3点曲げで応力を付加し
た状態で、室温、0.5%CH3COOH、1気圧、H2
S飽和の環境下に200〜500時間保持して、割れ限
界応力をSc値(耐食性指数)で評価するものである。
このSc値とロックウエル硬さHRCとの間には、図7
に示す関係が存在し、Sc値を上げるには硬度HRCを
低下させる必要があり、強度が低下する。
【0005】上記従来のC−Si−Mn−Cr鋼にMo
を添加する方法と、焼入れ焼戻しを繰返すことによって
組織を細粒化する方法を組合わせれば、強度が0.2%
耐力で100ksi(70kgf/mm2)級、110
ksi(77kgf/mm2)級の継目無鋼管の量産が
可能であるが、より安定した耐食性を得るため、または
より高い耐食性を得る場合は、C−Si−Mn−Cr鋼
へのMoの添加と、抽伸等の冷間加工を施し組織を細粒
化する方法を組合わせる必要があり、その分コストが増
加して高価なものとなり、工業製品として成立しない。
を添加する方法と、焼入れ焼戻しを繰返すことによって
組織を細粒化する方法を組合わせれば、強度が0.2%
耐力で100ksi(70kgf/mm2)級、110
ksi(77kgf/mm2)級の継目無鋼管の量産が
可能であるが、より安定した耐食性を得るため、または
より高い耐食性を得る場合は、C−Si−Mn−Cr鋼
へのMoの添加と、抽伸等の冷間加工を施し組織を細粒
化する方法を組合わせる必要があり、その分コストが増
加して高価なものとなり、工業製品として成立しない。
【0006】この対策としては、重量%でC:0.15
〜0.45%、Si:0.1〜1%、Mn:0.3〜
1.8%、Sol.Al:0.01%以下、Ti:0.
005〜0.1%とZr:0.01〜0.2%の1種ま
たは2種、N:{0.002+[Ti(%)+Zr
(%)]/8}%以下、AlN:0.005%以下を含
み、残部が実質的にFeからなる低合金鋼管に対し、8
80〜980℃から焼入れを行った後、600〜730
℃で焼戻しを行うと共に、600〜730℃の温度域に
おいて塑性加工を全歪量が1〜20%となるよう1回ま
たは複数回行い、しかる後に800〜950℃からの焼
入れと600〜730℃での焼戻しを行う方法(特開平
1−283322号公報)等が提案されている。
〜0.45%、Si:0.1〜1%、Mn:0.3〜
1.8%、Sol.Al:0.01%以下、Ti:0.
005〜0.1%とZr:0.01〜0.2%の1種ま
たは2種、N:{0.002+[Ti(%)+Zr
(%)]/8}%以下、AlN:0.005%以下を含
み、残部が実質的にFeからなる低合金鋼管に対し、8
80〜980℃から焼入れを行った後、600〜730
℃で焼戻しを行うと共に、600〜730℃の温度域に
おいて塑性加工を全歪量が1〜20%となるよう1回ま
たは複数回行い、しかる後に800〜950℃からの焼
入れと600〜730℃での焼戻しを行う方法(特開平
1−283322号公報)等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平1−283
322号公報に開示の方法は、油井管の2回焼入れに軽
度の温間塑性加工を導入し、焼入れで得たマルテンサイ
トに対し、軽度の温間塑性加工を加えることによってフ
ェライトの再結晶が促進され、2回目の焼入れにおける
再結晶粒の粗大化を防止することによって、2回焼入れ
のみでは得られない細粒晶を得ることによって110k
si(77kgf/mm2)級以上の強度とこれに要求
される耐SSCC性を確保するもので、焼入れしたの
ち、軽度の温間塑性加工を加え、再度焼入れ焼戻しが必
須であり、操作が繁雑となる欠点を有している。
322号公報に開示の方法は、油井管の2回焼入れに軽
度の温間塑性加工を導入し、焼入れで得たマルテンサイ
トに対し、軽度の温間塑性加工を加えることによってフ
ェライトの再結晶が促進され、2回目の焼入れにおける
再結晶粒の粗大化を防止することによって、2回焼入れ
のみでは得られない細粒晶を得ることによって110k
si(77kgf/mm2)級以上の強度とこれに要求
される耐SSCC性を確保するもので、焼入れしたの
ち、軽度の温間塑性加工を加え、再度焼入れ焼戻しが必
須であり、操作が繁雑となる欠点を有している。
【0008】この発明の目的は、焼入れ焼戻しを行った
継目無鋼管に対し、特定温度域での温間加工によって腐
食性雰囲気に晒される鋼管内外周面の硬度を残留歪を減
少させて低減させ、耐食性の向上できる高強度高耐食性
継目無鋼管の製造方法を提供することにある。
継目無鋼管に対し、特定温度域での温間加工によって腐
食性雰囲気に晒される鋼管内外周面の硬度を残留歪を減
少させて低減させ、耐食性の向上できる高強度高耐食性
継目無鋼管の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく種々試験研究を重ねた。その結果、焼入れ
焼戻しを行った鋼管に対し、特定温度域での温間加工に
よって肉厚の内外面近傍に軽度の塑性歪を加えると、低
温で塑性加工を付与すれば加工硬化をもたらすものが、
逆に組織変化を生ずることなく、特定温度域での温間加
工故に材料に残っていた製管時の内外面近傍の残留歪が
減少し、腐食性雰囲気に晒される鋼管内外周面の硬度が
低下して耐食性が向上し、高強度高耐食性継目無鋼管が
得られるという従来の常識では考えられない効果が得ら
れることを究明し、この発明に到達した。
を達成すべく種々試験研究を重ねた。その結果、焼入れ
焼戻しを行った鋼管に対し、特定温度域での温間加工に
よって肉厚の内外面近傍に軽度の塑性歪を加えると、低
温で塑性加工を付与すれば加工硬化をもたらすものが、
逆に組織変化を生ずることなく、特定温度域での温間加
工故に材料に残っていた製管時の内外面近傍の残留歪が
減少し、腐食性雰囲気に晒される鋼管内外周面の硬度が
低下して耐食性が向上し、高強度高耐食性継目無鋼管が
得られるという従来の常識では考えられない効果が得ら
れることを究明し、この発明に到達した。
【0010】すなわちこの発明は、C≦0.30%、S
i:0.05〜1.00%、Mn:0.30〜1.20
%、S≦0.03%、Cr:0.50〜1.50%、M
o:0.10〜2.00%、Ni≦0.50%、Cu≦
0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなる鋼管に対し、焼入れ焼戻し後、400〜750
℃でかつ最終焼戻し温度以下の温間で鋼管に断面塑性率
10〜90%の塑性歪を加えるのである。
i:0.05〜1.00%、Mn:0.30〜1.20
%、S≦0.03%、Cr:0.50〜1.50%、M
o:0.10〜2.00%、Ni≦0.50%、Cu≦
0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなる鋼管に対し、焼入れ焼戻し後、400〜750
℃でかつ最終焼戻し温度以下の温間で鋼管に断面塑性率
10〜90%の塑性歪を加えるのである。
【0011】
【作用】この発明における鋼管の化学成分、焼入れ焼戻
し後の温間加工における温度ならびに断面塑性率の限定
理由について詳述する。Cは強度靭性を確保するうえで
必要不可欠な元素であるが、多すぎると高温焼入れにお
ける焼割れが発生するため上限を0.30%とした。S
iは脱酸元素としておよび強度確保のため必要である
が、0.05%未満では脱酸が十分でなく、1%を超え
ると靭性、表面性状を損なうため、0.05〜1.00
%とした。Mnは脱酸および強度確保のため必要な元素
であるが、0.30%未満では脱酸が十分でなく、1.
20%を超えると鋼の清浄性を損なうため、0.30〜
1.20%とした。Sは鋼の清浄性を損ない靭性、延性
を劣化させるので、その上限を0.03%とした。Cr
は焼入れ性および耐食性能を確保するのに必要な元素で
あるが、0.50%未満ではその効果が十分でなく、
1.50%を超えると焼入れ性が一層向上するが、靭性
が低下するので、0.50〜1.50%とした。Moは
焼入れ性の改善に不可欠な元素であるが、0.10%未
満ではその効果が十分でなく、2.00%を超えると焼
割れが発生するので、0.10〜2.00%とした。C
uは多すぎると孔食等の耐食性劣化、高温で赤熱脆性を
生じるため、上限を0.10%とした。Niは耐食性能
向上に有効な元素であるが、多すぎると孔食等の耐食性
劣化を生じるため、上限を0.50%とした。
し後の温間加工における温度ならびに断面塑性率の限定
理由について詳述する。Cは強度靭性を確保するうえで
必要不可欠な元素であるが、多すぎると高温焼入れにお
ける焼割れが発生するため上限を0.30%とした。S
iは脱酸元素としておよび強度確保のため必要である
が、0.05%未満では脱酸が十分でなく、1%を超え
ると靭性、表面性状を損なうため、0.05〜1.00
%とした。Mnは脱酸および強度確保のため必要な元素
であるが、0.30%未満では脱酸が十分でなく、1.
20%を超えると鋼の清浄性を損なうため、0.30〜
1.20%とした。Sは鋼の清浄性を損ない靭性、延性
を劣化させるので、その上限を0.03%とした。Cr
は焼入れ性および耐食性能を確保するのに必要な元素で
あるが、0.50%未満ではその効果が十分でなく、
1.50%を超えると焼入れ性が一層向上するが、靭性
が低下するので、0.50〜1.50%とした。Moは
焼入れ性の改善に不可欠な元素であるが、0.10%未
満ではその効果が十分でなく、2.00%を超えると焼
割れが発生するので、0.10〜2.00%とした。C
uは多すぎると孔食等の耐食性劣化、高温で赤熱脆性を
生じるため、上限を0.10%とした。Niは耐食性能
向上に有効な元素であるが、多すぎると孔食等の耐食性
劣化を生じるため、上限を0.50%とした。
【0012】温間加工における温度を400〜750℃
でかつ最終焼戻し温度以下としたのは、400℃未満に
低下すると加工軟化せず、逆に硬化し、750℃以下で
も最終焼戻し温度を超えると、鋼管全体が焼鈍されて軟
化してしまい、所定の強度が得られないため、400〜
750℃でかつ最終焼戻し温度以下とした。温間加工に
おける断面塑性率を10〜90%としたのは、10%未
満では弾性域を超えて歪がかけられず、90%以上を与
えるにはかなり大きなクラッシュ量、オフセット量を与
えなければならず、鋼管の変形および作業的な面で有効
でない。
でかつ最終焼戻し温度以下としたのは、400℃未満に
低下すると加工軟化せず、逆に硬化し、750℃以下で
も最終焼戻し温度を超えると、鋼管全体が焼鈍されて軟
化してしまい、所定の強度が得られないため、400〜
750℃でかつ最終焼戻し温度以下とした。温間加工に
おける断面塑性率を10〜90%としたのは、10%未
満では弾性域を超えて歪がかけられず、90%以上を与
えるにはかなり大きなクラッシュ量、オフセット量を与
えなければならず、鋼管の変形および作業的な面で有効
でない。
【0013】この発明における鋼管の焼入れ焼戻しは、
焼入れ焼戻しによりマルテンサイト組織化し、降伏応力
YSが90〜125ksi、引張り強度TSが100〜
140ksi、JIS Z 2245に規定のロックウ
エル硬さ試験方法による硬度HRC30以下となるよ
う、1回ないしは複数回実施する。このようにして得ら
れた焼入れ焼戻し後の鋼管は、400〜750℃でかつ
最終焼戻し温度以下の温間加工によって、断面塑性率1
0〜90%の塑性歪を施すから、組織変化や肉厚中央部
の強度を低下させることなく、腐食性雰囲気に接する鋼
管内外周面の硬度が低下し、耐SSCC性に代表される
耐食性が向上するのである。その理由は、明らかではな
いが、前記特定温度域での温間加工により付与された塑
性歪によって、鋼管内外面部に残っていた製管時の残留
歪が減少し、残留歪に起因する硬化が低減して鋼管内外
周面の硬度が低下するもの考えられる。この発明におけ
る塑性歪の付与は、加工時の温度における降伏応力より
やや大きい適切な応力がかかるよう、図2に示すとお
り、矯正機の中央ロールオフセット量(O)および図3
に示すロール開度(K)(クラッシュ量)を設定するこ
とによって、塑性変形量を制御するのである。なお、図
4はオフセットによる塑性変形域δ0を、図5はクラッ
シュによる塑性変形域δcを示すもので、このときの断
面塑性率ξ0、ξcはそれぞれ管直径dと管肉厚tを用い
ると、ξ0=δ0/d、ξc=δc/tで表される。図6
はオフセット、クラッシュ量と断面塑性率ξ0、ξcの
関係の一例を示すグラフである。
焼入れ焼戻しによりマルテンサイト組織化し、降伏応力
YSが90〜125ksi、引張り強度TSが100〜
140ksi、JIS Z 2245に規定のロックウ
エル硬さ試験方法による硬度HRC30以下となるよ
う、1回ないしは複数回実施する。このようにして得ら
れた焼入れ焼戻し後の鋼管は、400〜750℃でかつ
最終焼戻し温度以下の温間加工によって、断面塑性率1
0〜90%の塑性歪を施すから、組織変化や肉厚中央部
の強度を低下させることなく、腐食性雰囲気に接する鋼
管内外周面の硬度が低下し、耐SSCC性に代表される
耐食性が向上するのである。その理由は、明らかではな
いが、前記特定温度域での温間加工により付与された塑
性歪によって、鋼管内外面部に残っていた製管時の残留
歪が減少し、残留歪に起因する硬化が低減して鋼管内外
周面の硬度が低下するもの考えられる。この発明におけ
る塑性歪の付与は、加工時の温度における降伏応力より
やや大きい適切な応力がかかるよう、図2に示すとお
り、矯正機の中央ロールオフセット量(O)および図3
に示すロール開度(K)(クラッシュ量)を設定するこ
とによって、塑性変形量を制御するのである。なお、図
4はオフセットによる塑性変形域δ0を、図5はクラッ
シュによる塑性変形域δcを示すもので、このときの断
面塑性率ξ0、ξcはそれぞれ管直径dと管肉厚tを用い
ると、ξ0=δ0/d、ξc=δc/tで表される。図6
はオフセット、クラッシュ量と断面塑性率ξ0、ξcの
関係の一例を示すグラフである。
【0014】
実施例1 C:0.27%、Si:0.16%、Mn:0.46
%、S:0.001%、Cr:0.98%、Mo:0.
70%、Ni:0.02%、Cu:0.02%を含有す
る外径244.5mm、肉厚15.11mm、長さ12
mの鋼管に対し、920℃で5分、1回目の焼入れを行
ったのち、600℃で30分の焼戻しを行い、引続き8
90℃で5分、2回目の焼入れを行ったのち、690℃
で30分の焼戻しを行った。そして640〜660℃の
温度で対向6ロール式の図1に示す傾斜ロール式矯正機
によりクラッシュおよびオフセット加工で断面塑性率5
0〜60%で塑性加工を実施した。なお、図1中の1は
継目無鋼管、2は矯正ロールを示す。製造された鋼管の
降伏応力、引張り強度、外周部、肉厚中央、内周部のロ
ックウエル硬さおよびSc値を測定した。また、比較の
ため、従来法としてし温間矯正機にてクラッシュまたは
オフセット加工を実施しない以外は同一条件で焼入れ焼
戻しを行って得た鋼管について、同様の測定を実施し
た。その結果を表1に示す。
%、S:0.001%、Cr:0.98%、Mo:0.
70%、Ni:0.02%、Cu:0.02%を含有す
る外径244.5mm、肉厚15.11mm、長さ12
mの鋼管に対し、920℃で5分、1回目の焼入れを行
ったのち、600℃で30分の焼戻しを行い、引続き8
90℃で5分、2回目の焼入れを行ったのち、690℃
で30分の焼戻しを行った。そして640〜660℃の
温度で対向6ロール式の図1に示す傾斜ロール式矯正機
によりクラッシュおよびオフセット加工で断面塑性率5
0〜60%で塑性加工を実施した。なお、図1中の1は
継目無鋼管、2は矯正ロールを示す。製造された鋼管の
降伏応力、引張り強度、外周部、肉厚中央、内周部のロ
ックウエル硬さおよびSc値を測定した。また、比較の
ため、従来法としてし温間矯正機にてクラッシュまたは
オフセット加工を実施しない以外は同一条件で焼入れ焼
戻しを行って得た鋼管について、同様の測定を実施し
た。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】表1に示すとおり、従来法においては、鋼
管の肉厚方向に硬度を均一に揃えるような焼戻しおよび
温間加工条件にしていたので、高強度にするとそれに伴
い硬度も上昇し、耐食性、特に耐SSCC性に悪影響を
及ぼしたが、本発明法においては、強度が同等で腐食性
雰囲気に接触する鋼管内外表層面のみ硬度を下げること
ができ、耐SSCC性を示すSc値を、大幅に向上させ
ることができる。
管の肉厚方向に硬度を均一に揃えるような焼戻しおよび
温間加工条件にしていたので、高強度にするとそれに伴
い硬度も上昇し、耐食性、特に耐SSCC性に悪影響を
及ぼしたが、本発明法においては、強度が同等で腐食性
雰囲気に接触する鋼管内外表層面のみ硬度を下げること
ができ、耐SSCC性を示すSc値を、大幅に向上させ
ることができる。
【0017】実施例2 表2にa〜eで示す本発明対象鋼と、同表にf〜hで示
す本発明対象外の鋼とからなる外径244.5mm、肉
厚11.99mmの熱間加工管に対し、表3に示すとお
り、1回目の焼入れ焼戻しを行ったのち、2回目の焼入
れ焼戻しを行い、ついで640〜660℃の温度で対向
6ロール式の傾斜ロール式矯正機によりクラッシュまた
はオフセット加工で塑性加工を行った。また、比較のた
めにさらに通常の2回焼入れ焼戻しも行った。製造され
た各鋼管の降伏応力、引張り強度、内外周部、肉厚中央
部のロックウエル硬さおよびSc値を測定した。その結
果を表4に示す。
す本発明対象外の鋼とからなる外径244.5mm、肉
厚11.99mmの熱間加工管に対し、表3に示すとお
り、1回目の焼入れ焼戻しを行ったのち、2回目の焼入
れ焼戻しを行い、ついで640〜660℃の温度で対向
6ロール式の傾斜ロール式矯正機によりクラッシュまた
はオフセット加工で塑性加工を行った。また、比較のた
めにさらに通常の2回焼入れ焼戻しも行った。製造され
た各鋼管の降伏応力、引張り強度、内外周部、肉厚中央
部のロックウエル硬さおよびSc値を測定した。その結
果を表4に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】表4に示すとおり、本発明法では鋼管の内
外周部硬度は、中央部に比較して2〜3低下し、これに
伴って外周部および内周部のSc値が1〜2向上してい
る。これに対し比較例では、強度が高いもののSc値が
低いか、強度、硬度、Sc値のいずれかが劣っている。
外周部硬度は、中央部に比較して2〜3低下し、これに
伴って外周部および内周部のSc値が1〜2向上してい
る。これに対し比較例では、強度が高いもののSc値が
低いか、強度、硬度、Sc値のいずれかが劣っている。
【0022】
【発明の効果】以上述べたとおり、この発明方法によれ
ば、腐食性雰囲気に接触する鋼管の内外表層のみ塑性歪
を付与して硬度を下げることによって、Sc値を上昇さ
せ、高強度と高耐食性の双方を満足させ、冷間抽伸等に
よることなく高強度高耐食性油井管を量産することが可
能となり、製造設備、製造能率および製造コストの面で
著しく有利となり、高グレードの油井管を低コストで工
業的に製造することができる。
ば、腐食性雰囲気に接触する鋼管の内外表層のみ塑性歪
を付与して硬度を下げることによって、Sc値を上昇さ
せ、高強度と高耐食性の双方を満足させ、冷間抽伸等に
よることなく高強度高耐食性油井管を量産することが可
能となり、製造設備、製造能率および製造コストの面で
著しく有利となり、高グレードの油井管を低コストで工
業的に製造することができる。
【図1】実施例で使用した傾斜ロール式矯正機の概念図
である。
である。
【図2】オフセット量の説明図である。
【図3】クラッシュ量の説明図である。
【図4】オフセットによる塑性変形域δ0を示す概念図
である。
である。
【図5】クラッシュによる塑性変形域δcを示す概念図
である。
である。
【図6】オフセット、クラッシュ量と断面塑性率ξ0、
ξcと塑性変形域δ0、δcの変化の一例を示すグラフ
である。
ξcと塑性変形域δ0、δcの変化の一例を示すグラフ
である。
【図7】Sc値とロックウエル硬さHRCとの関係を示
すグラフである。
すグラフである。
1 継目無鋼管 2 矯正ロール
Claims (1)
- 【請求項1】 C≦0.30%、Si:0.05〜1.
00%、Mn:0.30〜1.20%、S≦0.03
%、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.10〜
2.00%、Ni≦0.50%、Cu≦0.10%を含
有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼管に
対し、焼入れ焼戻し後、400〜750℃で、かつ最終
焼戻し温度以下の温間で鋼管に断面塑性率10〜90%
の塑性歪を加えることを特徴とする高強度高耐食性継目
無鋼管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11408192A JP2727865B2 (ja) | 1992-04-06 | 1992-04-06 | 高強度高耐食性継目無鋼管の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11408192A JP2727865B2 (ja) | 1992-04-06 | 1992-04-06 | 高強度高耐食性継目無鋼管の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05287380A JPH05287380A (ja) | 1993-11-02 |
JP2727865B2 true JP2727865B2 (ja) | 1998-03-18 |
Family
ID=14628595
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11408192A Expired - Fee Related JP2727865B2 (ja) | 1992-04-06 | 1992-04-06 | 高強度高耐食性継目無鋼管の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2727865B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013129879A (ja) | 2011-12-22 | 2013-07-04 | Jfe Steel Corp | 耐硫化物応力割れ性に優れた油井用高強度継目無鋼管およびその製造方法 |
JP6287363B2 (ja) * | 2014-03-06 | 2018-03-07 | 新日鐵住金株式会社 | 疲労特性に優れた中空材とその製造方法 |
-
1992
- 1992-04-06 JP JP11408192A patent/JP2727865B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05287380A (ja) | 1993-11-02 |
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