JP2597551B2 - 超電導撚線 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 （産業上の利用分野） 本発明は、エナメル絶縁を施した複数の超電導素線を
撚り合わせ磁場が激しく変動する超電導のパルスマグネ
ットや交流コイルなどに用いる超電銅撚線に関する。

（従来の技術） 従来の超電導撚線について第５図および第６図を参照
して説明する。なお、この種の超電導撚線としては、例
えばH.W.Nemuler,“Losses in superconducting Mult
ifilamentary Roebel Bars",IEEE trans,MAGG-17,P2274
（1981）が知られている。第５図は、複数の超電導素線
（１）を撚り合わせた超電導撚線を示し、第６図は第５
図に記した直線VI-VI部分の超電導撚線の断面図を示
す。超電導素線（１）は導体（２）の表面にエナメル絶
縁（３）を施したものである。また、導体（２）は複数
のNbTi極細線（４）を銅のマトリックス（５）に埋め込
んだものであり、ツイストしたものである。

このように超電導撚線は複数の超電導素線（１）を撚
り合わせたものであるため、磁場の変動によって導体
（２）に発生する渦電流損が小さくなり、またNbTi極細
線（４）を破損せずに導体（２）を短いピッチでツイス
トできることにより導体（２）の交流損失が小さくな
る。

（発明が解決しようとする問題点） 上記のような超電導撚線では、隣接した超電導素線
（１）が擦れた時の発熱により超電導状態は常電導状態
に転移する危険がある。これを防ぐために超電導撚線を
コイルに成形した後、コイルに樹脂を含浸して固めるこ
とにより超電導素線（１）が擦れないようにする方法が
ある。しかし、コイルの製造工程に樹脂の含浸工程が加
わる問題がある。

本発明は、超電導素線（１）が擦れないようにして超
電導状態を安定に保ち、しかもコイルの樹脂の含浸工程
を省略でき、製造工程を簡単にすることによりコイルの
品質を安定に保つようにした超電導撚線を提供すること
を目的とする。

〔発明の構成〕

（問題点を解決するための手段） 上記目的を達成するために、本発明においては、撚り
合わせた超電導素線の相互間に可撓性樹脂を充填して撚
線を形成したのち、その外周に前記超電導素線を緊縛す
るように基材に接着剤を処理した絶縁材を用いて巻回す
る。

（作用） このように構成された超電導撚線においては、超電導
素線が充てんした樹脂により互いに接着され、しかも緊
縛した絶縁材により互いに締め付けられるため、超電導
素線は擦れないようになる。また、超電導撚線を多重に
巻回してコイルを成形した後、加熱硬化処理により超電
導素線間に充填された可撓性樹脂および絶縁材に処理さ
れた接着剤により、超電導素線同士および超電導素線と
絶縁材間が密着固定でき超電導素線同士および超電導素
線と絶縁材との擦れによるクエンチの発生を抑制でき、
さらに、コイルに成形後樹脂の含浸工程を必要とてずに
超電導撚線を巻回した状態で接着固定することができ
る。

（実施例） 以下本発明の一実施例について、第１図および第２図
を参照して説明する。第１図は、超電導撚線の軸方向段
むき状態を示す。（１）は第５図に示した従来の撚られ
た超電導素線（１）と同じものであるが、超電導素線
（１）の間には可撓性に優れた樹脂（６）が充てんして
あり、樹脂（６）により隣接した超電導素線（１）は接
着されている。樹脂（６）としては例えばプリプレグ化
したエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、あるいは自己融着
性樹脂を使う。互いに接着した超電導素線（１）には、
これを緊縛するように絶縁材（７）が一様な厚さに巻回
してある。また、絶縁材（７）は基材に接着剤を処理し
たものであり、基材としては例えばガラス糸やアラミッ
ド糸を使い、接着剤としては例えばプリプレグ化したエ
ポキシ樹脂や自己融着性樹脂を使う。

第２図は、第１図に記した直線II-II部分の超電導撚
線の断面図を示す。（１）は第１図で説明したように従
来例の超電導素線と同じものであり、導体（２）の表面
にエナメル絶縁（３）を施したものである。超電導素線
（１）の間に空隙がないように樹脂（６）が充てんして
ある。樹脂（６）を充てんするには、液状の樹脂（６）
の中に超電導素線（１）を通すことにより超電導素線
（１）に樹脂（６）を塗布し、この超電導素線（１）を
撚り合わせた後に加熱したダイスに通しながら樹脂
（６）を硬化する。あるいは、撚り合わせた超電導素線
（１）の間に液状の樹脂（６）を加圧注入し、この超電
導素線（１）を加熱したダイスに通しながら樹脂（６）
を硬化する。樹脂（６）を充てんした後、第１図で説明
した絶縁材（７）を撚り合わせた超電導素線（１）上に
巻回する。

次に上記構成の作用を説明する。超電導素線（１）の
間に充てんし、互いの超電導素線（１）を接着した樹脂
（６）は、超電導素線（１）が互いに移動して擦れるこ
とのないようにする。また、超電導素線（１）の間に空
隙がないように充てんした樹脂（６）は超電導素線
（１）を全面的に接着する。樹脂（６）の可撓性は、超
電導撚線をコイルに成形した際に樹脂（６）に加わる応
力が高くならないようにする。超電導素線（１）を緊縛
した絶縁材（７）は、樹脂（６）の作用と同様に超電導
素線（１）が互いに移動して擦れることないようにす
る。また、基材に接着剤を処理した絶縁材（７）は、超
電導撚線をコイルに成形して加熱処理すると、超電導撚
線の隣接部が接着した強固なコイルができるようにす
る。

以下にこの実施例の効果を説明する。超電導素線
（１）は樹脂（６）および絶縁材（７）で互い擦れない
ようにされているため、超電導素線（１）に摩擦熱が発
生しない。しかも、本発明による超電導撚線を用いる
と、コイルに成形して加熱処理すれば強固なコイルがで
きるので、コイルの製造工程に樹脂の含浸工程が入らな
い。

次に本発明による他の実施例について第３図を参照し
て説明する。ただし、第１図および第２図に説明した実
施例と同じ部分については説明を簡略にする。第３図は
超電導撚線の構成図を示す。絶縁材（８）は、樹脂
（６）を充てんした超電導素線（１）を緊縛するよう一
様な厚さに巻回してあるが、絶縁材（８）は接着性を持
っていない。また、絶縁材（８）の上には帯状にそろえ
た絶縁材（７）が飛ばし巻きしてあり、絶縁材（７）は
第１図で説明したように接着性を持っている。絶縁材
（７）が飛ばされた部分は、絶縁材（７）の厚さと等し
い深さの溝（９）になっている。

上記のように構成した超電導撚線では溝（９）が液体
ヘリウムの通路になる。このため、この超電導撚線を用
いてコイルを作ると、コイルの内部に液体ヘリウムを導
いて超電導素線（１）を冷却することができる。

次に本発明の更に他の実施例について第４図を参照し
て説明する。

第４図も第３図と同じく超電導撚線の構成図を示す。
この超電導撚線は第３図に示した超電導撚線のように溝
（９）を持っているが、絶縁材（８）が施していない。
このように構成した超電導撚線では絶縁材（８）がない
ため、液体ヘリウムによる超電導素線（１）の冷却を絶
縁材（８）で妨げることがない。

さらに次の実施例について説明する。すなわち、絶縁
材（７）は基材に接着剤を処理したものであるが、この
接着剤と樹脂（６）を同一の樹脂にして、この樹脂を超
導電素線（１）の間と前記基材に同時に含浸してプリプ
レグ化することにより、樹脂（６）と絶縁材（７）を一
体化することができる。

〔発明の効果〕

以上説明したように本発明の超電導撚線は、超電導素
線が移動せず摩擦熱が発生しないので、超電導状態を安
定に保つことができる。また、本発明の超電導撚線を用
いてコイルを作ると、コイルの製造工程が簡単になるの
で、品質の安定したコイルが得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の超電導撚線の段むき図、第
２図は第１図のII-II線に沿う断面図、第３図および第
４図は、本発明のそれぞれ異なる他の実施例の超電導撚
線の表面図、第５図は従来の超電導撚線の表面図、第６
図は第５図のVI-VI線に沿う断面図である。 （１）……超電導素線、（２）……導体 （３）……エナメル絶縁、（４）……NbTi極細線 （５）……マトリックス、（６）樹脂 （７）……絶縁材、（８）……絶縁材 （９）……溝

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エナメル絶縁層を有し相互に撚り合わされ
   た複数の超電導素線の相互間に可撓性樹脂を充填し隣接
   した超電導素線同士を密着して撚線を形成し、この撚線
   の外周に絶縁物からなる基材に接着剤を施した絶縁材を
   巻回してコイルに成形してから加熱硬化し、超電導素線
   の相互間および前記撚線を形成する超電導素線と絶縁材
   間を固着してなることを特徴とする超電導撚線。
2. 【請求項２】絶縁材は所定の間隔を存してとばし巻きし
   たことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の超電導
   撚線。