JP2024517701A - 組換え生産タンパク質の低分子量種を低減させる方法 - Google Patents
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Abstract
Description
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/181,903号明細書の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、2021年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/181,903号明細書の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
電子提出されたテキストファイルの説明
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年4月11日に作成されたコンピュータ可読フォーマットの配列表のコピーは、名称がA-2734-WO01-SEC_ST25であり、サイズが36キロバイトである。
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年4月11日に作成されたコンピュータ可読フォーマットの配列表のコピーは、名称がA-2734-WO01-SEC_ST25であり、サイズが36キロバイトである。
本発明は、バイオ医薬品製造の分野に関する。特に、本発明は、生産細胞培養中に組換え生産タンパク質の低分子量種の形成を低減させる方法及びそのような方法によって生産される組成物に関する。
操作した宿主細胞を使用した組換え法によるタンパク質の生産により、タンパク質産物の多彩なバリアントが生じる可能性があり、これらは、一貫した産物品質を確保するためにモニタリング及び/又は制御する必要がある。そのような産物バリアントは、例えば、タンパク質をコードする様々なメッセンジャーRNA(mRNA)転写物をもたらす翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、酸化、脱アミド化など)又は選択的RNAスプライシングから生じ得る。所望のタンパク質産物と比較して機能的特徴が変化したタンパク質産物のバリアントは、産物関連不純物に分類される。産物関連不純物は、タンパク質医薬品の全体的な有効性及び/又は安全性に影響を及ぼす可能性があるため、多くの場合、産物関連不純物をモニタリングし、最終タンパク質医薬品において特定の指定レベルに制御する必要がある。そのようなタイプの産物関連不純物の1つは、タンパク質の低分子量(LMW)種であり、これには、宿主細胞によって発現されるタンパク質のトランケート型、タンパク質分解プロセシングから生じるタンパク質の断片又は多鎖タンパク質の場合にはポリペプチド鎖の不完全なアセンブリが含まれ得る。細胞培養プロセス中に生産されるLMW種の量及び/又はタイプを低減させることは、医薬品からLMW種を除去するための更なる下流精製工程の必要性をなくすことができるため、特に有用である。したがって、細胞培養生産プロセス中にタンパク質のLMW種の形成を低減させる方法が望ましい。
本発明は、細胞培養生産プロセス中に宿主細胞によって発現されるタンパク質のLMW種の量をなくすか又は低減させる方法の開発に部分的に基づく。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、生産細胞培養のpHを制御することにより、タンパク質のLMW種を低減させる。他の実施形態では、本発明の方法は、宿主細胞によって発現されるタンパク質のスプライスバリアントアイソフォームを低減させるか又はなくすことにより、タンパク質のLMW種の数及び/又は量を低減させる。
特定の実施形態では、本発明は、組換えタンパク質組成物であって、低減された量の、タンパク質のLMW種を含む組換えタンパク質組成物を生産する方法を提供する。そのような一実施形態では、本方法は、タンパク質をコードする核酸を発現する哺乳動物細胞を、タンパク質が哺乳動物細胞によって発現及び分泌される期間にわたり、細胞培養培地中で培養することであって、培養培地のpHは、約6.90以下に維持される、培養することと、発現されたタンパク質を細胞培養培地から回収して組換えタンパク質組成物を得ることであって、組成物は、20%未満の、タンパク質の総LMW種を含む、得ることとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって生産される組換えタンパク質組成物は、任意選択により、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム法によって決定される、18%未満の、組換えタンパク質の総LMW種、例えば約15%以下又は約10%以下、例えば約2%~約10%、約1%~約8%又は約2%~約6%の、組換えタンパク質の総LMW種を含み得る。そのような実施形態では、組換えタンパク質組成物は、採取細胞培養液であり得る。特定の実施形態では、LMW種は、タンパク質のスプライスバリアントアイソフォームを含む。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、細胞培養培地のpHは、約6.70~約6.90のpH、約6.75~約6.85のpH又は約6.80のpHに維持される。細胞培養培地のpHは、好ましくは、少なくとも3日間又は少なくとも7日間であり得る細胞培養の生産期の持続期間にわたり、これらの範囲内に維持される。いくつかの実施形態では、細胞培養の生産期の持続期間は、約7日~約14日である。他の実施形態では、細胞培養の生産期の持続期間は、約12日~約15日である。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって生産される組換えタンパク質組成物は、6.90を上回るpH、例えば7.00、7.10、7.20、7.30又は7.40のpHに維持された培養培地中で培養された形質転換哺乳動物細胞によって生産された同じ組換えタンパク質の組成物と比較して低減された量の、タンパク質の総LMW種を含む。
他の実施形態では、本発明は、哺乳動物細胞からの組換えタンパク質の選択的スプライスバリアントアイソフォームの発現及び分泌を低減させる方法を提供する。一実施形態では、本方法は、シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと、組換えタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む核酸で哺乳動物細胞をトランスフェクトすることであって、第1のポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドと同じオープンリーディングフレーム内にあり、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドのカルボキシ末端の6アミノ酸内に存在する任意のグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む、トランスフェクトすることと、組換えタンパク質が発現され、且つ細胞培養培地中に分泌される条件下において、培地中で哺乳動物細胞を培養することと、細胞培養培地から組換えタンパク質を回収して組換えタンパク質組成物を得ることとを含む。そのような実施形態では、哺乳動物細胞によって発現される組換えタンパク質の選択的スプライスバリアントアイソフォームの数及び/又は量は、シグナルペプチドのC末端の6アミノ酸内にある任意のグリシン残基のグリシンGGTコドンを含む、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む哺乳動物細胞によって発現される選択的スプライスバリアントアイソフォームの数及び/又は量と比較して低減され得る。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、約6.90以下のpH、例えば約6.70~約6.90のpH、約6.75~約6.85のpH又は約6.80のpHに維持された細胞培養培地中で培養される。
本発明の方法の特定の実施形態では、シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後から4番目のC末端アミノ酸として存在するグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後から6番目のC末端アミノ酸として存在するグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。更なる他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後から6番目及び最後から4番目のC末端アミノ酸として存在する各グリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドにおける任意のグリシンGGGコドンの直前のヌクレオチドは、アデニン(A)以外のヌクレオチド、例えばシトシン(C)、チミン(T)又はグアニン(G)であり得る。特定の一実施形態では、第1のポリヌクレオチドにおける任意のグリシンGGGコドンの直前のヌクレオチドは、シトシン(C)である。第1のポリヌクレオチドは、トランスフェクトされた哺乳動物細胞からの組換えタンパク質の分泌を促進するのに好適な任意のシグナルペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号6~19のいずれか1つのアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする。一実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする。関連する実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号20のヌクレオチド配列を含む。
種々のタイプの組換えタンパク質が本発明の方法によって生産され得、それらには、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、変異タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、ペプチボディ、T細胞エンゲージ分子及び多重特異性抗原結合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質は、抗体又はその結合断片である。他の実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質は、T細胞エンゲージ分子、例えば単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子などの単鎖T細胞エンゲージ分子である。そのような一実施形態では、組換えタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子である。関連する実施形態では、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子をコードする核酸は、配列番号2~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。したがって、本発明は、配列番号2~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子をコードする単離された核酸及び発現ベクター並びに単離された核酸又は発現ベクターで形質転換された宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)も含む。いくつかの実施形態では、本発明は、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子を生産する方法であって、配列番号2~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む単離された核酸又は発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞を、T細胞エンゲージ分子が発現される条件下において細胞培養培地中で培養することと、培養培地又は宿主細胞からT細胞エンゲージ分子を回収することとを含む方法を提供する。
本発明は、本明細書に記載の方法によって生産される組換えタンパク質組成物も含む。そのような組換えタンパク質組成物は、他の細胞培養法によって生産される組換えタンパク質のLMW種の量及び/又は種類と比較して、組換えタンパク質のLMW種の量及び/又は種類が低減している。特定の実施形態では、本発明は、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子と、その1種以上のLMW種とを含む組成物を提供し、組成物は、20%未満の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含み、T細胞エンゲージ分子は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、組成物は、18%未満の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種、例えば約15%以下又は約10%以下、例えば約2%~約10%、約1%~約8%又は約2%~約6%の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む。いくつかの実施形態では、LMW種は、T細胞エンゲージ分子のスプライスバリアントアイソフォーム、例えば配列番号23の配列を含むスプライスバリアントアイソフォームを含む。組成物中のLMW種の量は、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム法によって決定され得る。
本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物を含む医薬製剤も本発明に含まれる。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物と、緩衝液、糖及び界面活性剤などの1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む。
本発明は、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物及びそのような組成物を含む医薬製剤を使用して、PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行う方法も含む。一実施形態では、本方法は、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物を含む医薬製剤を患者に投与することを含む。PSMA発現癌は、前立腺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、精巣癌、結腸癌、神経膠芽腫、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌及び黒色腫であり得る。特定の実施形態では、PSMA発現癌は、去勢抵抗性前立腺癌又は転移性去勢抵抗性前立腺癌などの前立腺癌である。
単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物の、任意の治療方法における使用又はPSMA発現癌を治療するための医薬の調製のための使用が特に企図される。例えば、本発明は、前立腺癌などのPSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行う方法で使用するための、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物又は医薬製剤を包含する。本発明は、前立腺癌などのPSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行うための医薬の調製における、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物又は医薬製剤の使用も含む。
本発明は、細胞培養生産プロセス中に宿主細胞によって発現される組換えタンパク質のLMW種の種類及び/又は量を低減させる方法に関する。タンパク質のトランケート型又は断片を含むタンパク質産物のLMW種は、典型的には、所望のタンパク質産物と比較して機能的活性が低減しており、最終タンパク質医薬品が所望の有効性を有することを確保するために、除去するか又は特定の量内に制御する必要があることが多い。組換えタンパク質製造プロセスの細胞培養段階中に生産されるLMW種の種類及び/又は量を低減させることで、LMW種の不純物を除去するために設計された工程又は単位操作をなくすことにより、より合理化された下流精製プロセスが可能になり得る。本発明の方法は、例えば、LMW種を除去するための更なる精製工程を必要とせずに、タンパク質のLMW種を20%未満含む組換えタンパク質組成物を生産するために使用され得る。
単一のポリペプチド鎖又は複数のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を含めた任意のタイプの組換えタンパク質が、本発明の方法に従って生産され得る。「組換えタンパク質」という用語は、タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトされた宿主細胞により、その宿主細胞が細胞培養中で培養されたときに生産される異種タンパク質を指す。組換えタンパク質には、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、変異タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、ペプチボディ、T細胞エンゲージ分子及び多重特異性抗原結合タンパク質が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、融合タンパク質である。「融合タンパク質」は、異種ポリペプチドに融合又は連結された少なくとも1つのポリペプチドを含有するタンパク質である。典型的には、融合タンパク質は、あるタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列と一緒にインフレームで付加され、任意選択によりリンカーによってその配列から分離されている、融合遺伝子から発現される。次いで、融合遺伝子が組換え宿主細胞によって発現されて、融合タンパク質が生産され得る。融合タンパク質は、免疫グロブリンタンパク質由来の断片、例えばリガンドポリペプチド、受容体ポリペプチド、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、酵素又は免疫グロブリンの成分ではない他のポリペプチドに融合又は連結されたFc領域を含み得る。
他の実施形態では、本発明の方法に従って生産される組換えタンパク質は、抗体又はその結合断片である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、一般に、2つの軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kDa)と、2つの重鎖ポリペプチド(それぞれ約50~70kDa)とを含む四量体免疫グロブリンタンパク質を指す。「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」という用語は、アミノ末端(N末端)からカルボキシル末端(C末端)に、単一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)及び単一の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)を含むポリペプチドを指す。免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)は、ヒトカッパ(κ)定常ドメイン又はヒトラムダ(λ)定常ドメインであり得る。「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」という用語は、アミノ末端(N末端)からカルボキシル末端(C末端)に、単一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)及び任意選択により免疫グロブリン重鎖定常ドメイン4(CH4)を含むポリペプチドを指す。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)に分類されており、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。IgGクラス抗体及びIgAクラス抗体は、サブクラス、即ちそれぞれIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4並びにIgA1及びIgA2に更に分けられる。IgG、IgA及びIgD抗体の重鎖は、3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する一方、IgM及びIgE抗体の重鎖は、4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)を有する。免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サブタイプを含む任意の免疫グロブリンアイソタイプ由来であり得る。抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインとの間(即ち軽鎖と重鎖との間)及び2つの抗体重鎖のヒンジ領域間で、ポリペプチド間ジスルフィド結合を介して、互いに連結されている。
免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般に、3つの超可変領域(「相補性決定領域」又はCDRと呼ばれることの方が多い)によって接合された比較的保存されているフレームワーク領域(FR)を含む同一の全体構造を示す。重鎖と軽鎖との各対の2つの鎖に由来するCDRは、典型的には、フレームワーク領域によって整列されることで、標的タンパク質の特定のエピトープに特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端に、天然に存在する軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の両方は、典型的には、以下のこれらの要素の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4と一致する。これらのドメインのそれぞれにおける位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための付番方式が考案されている。この付番方式は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987 and 1991,NIH,Bethesda,MD)又はChothia&Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883において定義されている。所与の抗体のCDR及びFRが、この方式を使用して同定され得る。免疫グロブリン鎖のアミノ酸に関する他の付番方式としては、IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system;Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.29:185-203;2005)及びAHo(Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-670;2001)が挙げられる。
本明細書において「結合断片」又は「断片」と互換的に使用される「抗原結合断片」は、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくともいくつかを欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合することができる抗体の一部である。抗原結合断片としては、単鎖可変断片(scFv)、ナノボディ(例えば、VHH断片)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片及び相補性決定領域(CDR)断片が挙げられるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ又はラクダなどの任意の哺乳動物供給源に由来し得る。抗原結合断片は、標的抗原との結合に関してインタクトな抗体と競合し得、且つこの断片は、インタクトな抗体の改変(例えば、酵素的切断若しくは化学的切断)により生成され得るか、又は組換えDNA技術若しくはペプチド合成を使用して新たに合成され得る。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体由来の少なくとも1つのCDR、例えば抗原に結合する抗体由来の重鎖CDR3を含む。他の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体の重鎖由来の3つのCDRの全て又は抗原に結合する抗体の軽鎖由来の3つのCDRの全てを含む。更なる他の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体由来の6つのCDRの全て(重鎖由来の3つ及び軽鎖由来の3つ)を含む。
抗体をパパインで消化すると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片(その各々が単一の抗原結合部位を有する)と、残部の「Fc」断片(免疫グロブリン重鎖定常領域の第1のドメイン以外の全てを含有する)が生成される。Fab断片は、軽鎖及び重鎖由来の可変ドメイン並びに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。このように、「Fab断片」は、1つの免疫グロブリン軽鎖(軽鎖可変領域(VL)及び定常領域(CL))と1つの免疫グロブリン重鎖のCH1領域及び可変領域(VH)とから構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fd断片」は、免疫グロブリン重鎖由来のVHドメイン及びCH1ドメインを含む。Fd断片は、Fab断片の重鎖成分を表す。免疫グロブリンの「Fc断片」又は「Fcドメイン」は、一般に、2つの定常ドメイン、即ちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択によりCH4ドメインを含む。
「Fab’断片」は、CH1ドメインのC末端において、抗体ヒンジ領域に由来する1つ以上のシステイン残基を有するFab断片である。
「F(ab’)2断片」は、ヒンジ領域において重鎖間のジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab’断片を含む二価の断片である。
「Fv」断片は、抗体由来の完全な抗原認識部位及び結合部位を含有する最小の断片である。この断片は、緊密な非共有結合状態にある、1つの免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)と1つの免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)との二量体からなる。この構成において、各可変領域の3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上で抗原結合部位が画定される。単一の軽鎖又は重鎖の可変領域(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFv断片の半分)は、VH及びVLの両方を含む結合部位全体よりも親和性が低いが、抗原を認識してこれに結合する能力を有する。
「単鎖可変抗体断片」又は「scFv断片」は、抗体のVH領域及びVL領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在し、任意選択により、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするペプチドリンカーをVH領域とVL領域との間に含む(例えば、Bird et al.,Science,Vol.242:423-426,1988;及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.85:5879-5883,1988を参照されたい)。
「ナノボディ」は、重鎖抗体の重鎖可変領域である。そのような可変ドメインは、そのような重鎖抗体の完全に機能的な最小の抗原結合断片であり、分子質量は、わずか15kDaである。Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853-57,2004を参照されたい。軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、特定の種の動物、例えばコモリザメ、テンジクザメ並びにラクダ科(Camelidae)、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びラマでは天然に生じる。これらの動物において、抗原結合部位は、単一ドメインであるVHHドメインに縮小されている。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成する。即ち、これらの機能的抗体は、構造H2L2を有するのみの重鎖のホモ二量体(「重鎖抗体」又は「HCAb」と称される)である。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含有し、且つCH1ドメインを欠く、IgG2定常領域及びIgG3定常領域と再結合する。ラクダ化VHHドメインは、高い親和性で抗原に結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.,Vol.276:26285-90,2001)、溶液中で高い安定性を有する(Ewert et al.,Biochemistry,Vol.41:3628-36,2002)ことが判明している。ラクダ化重鎖を有する抗体の作製方法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0136049号明細書及び同第2005/0037421号明細書に記載されている。代替の足場は、サメV-NAR足場により厳密に一致するヒト可変様ドメインから作製され得る。
組換えタンパク質が抗体又はその結合断片である実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」(又は「mAb」)という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。即ち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る、起こり得る天然に存在する変異以外は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、典型的には様々なエピトープを対象とする様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、個々の抗原部位又はエピトープを対象とするものである。モノクローナル抗体は、当技術分野で公知のあらゆる技術を使用して生産することができ、例えば免疫化スケジュールの完了後に動物(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニック動物)から採取した脾細胞を不死化することによって生産することができる。
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、モノクローナル抗体)又はその結合断片は、ヒト化抗体又はその結合断片である。「ヒト化抗体」とは、領域(例えば、フレームワーク領域)が、ヒト免疫グロブリン由来の対応する領域を含むように改変されている抗体を指す。一般に、ヒト化抗体は、齧歯動物又はウサギなどの非ヒト動物において最初に作られたモノクローナル抗体から生産することができる。典型的には抗体の非抗原認識部分に由来する、このモノクローナル抗体内の特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体内の対応する残基と相同となるように改変されている。ヒト化は、例えば、齧歯動物又はウサギ可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することにより、種々の方法を使用して実施することができる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書;Jones et al.,Nature,Vol.321:522-525,1986;Riechmann et al.,Nature,Vol.332:323-27,1988;Verhoeyen et al.,Science,Vol.239:1534-1536,1988を参照されたい)。別の種において作製された抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトフレームワーク領域(FR)又は特定のヒト生殖系列遺伝子由来のFRにグラフトすることができる。コンセンサスヒトFRを作り出すために、いくつかのヒト重鎖アミノ酸配列又はヒト軽鎖アミノ酸配列に由来するFRを整列させて、コンセンサスアミノ酸配列を同定することができる。
他の実施形態では、抗体(例えば、モノクローナル抗体)又はその結合断片は、完全ヒト抗体又はその結合断片である。「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する又はそれを示す可変領域及び定常領域を含む、抗体である。完全ヒト抗体は、内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常、マウス)を免疫化することによって生産することができる。そのような方法の一例では、トランスジェニック動物は、マウスの免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無効化し、ヒト重鎖タンパク質及びヒト軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含有するヒトゲノムDNAの大型断片をマウスゲノム中に挿入することによって生成される。次いで、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の完全相補体より少ない相補体を有する部分的に改変された動物を交雑して、所望の免疫系改変を全て有する動物を得る。免疫原が投与されると、これらのトランスジェニック動物は、その免疫原に免疫特異的である抗体を産生するが、こうした抗体は、可変領域を含めて、マウスアミノ酸配列ではなくヒトアミノ酸配列を有する。そのような方法の更なる詳細に関しては、例えば、国際公開第96/33735号パンフレット及び国際公開第94/02602号パンフレットを参照されたい。完全ヒト抗体の作製に好適な1つの特定のトランスジェニックマウス系統は、米国特許第6,114,598号明細書、同第6,162,963号明細書、同第6,833,268号明細書、同第7,049,426号明細書、同第7,064,244号明細書;Green et al.,1994,Nature Genetics 7:13-21;Mendezet al.,1997,Nature Genetics 15:146-156;Green and Jakobovitis,1998,J.Ex.Med,188:483-495;Green,1999,Journal of Immunological Methods 231:11-23;Kellerman and Green,2002,Current Opinion in Biotechnology 13,593-597に記載されているXenoMouse(登録商標)トランスジェニックマウス系統である。ヒト抗体を作製するためのトランスジェニックマウスに関連する追加の方法は、米国特許第5,545,807号明細書、同第6,713,610号明細書、同第6,673,986号明細書、同第6,162,963号明細書、同第5,939,598号明細書、同第5,545,807号明細書、同第6,300,129号明細書、同第6,255,458号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,874,299号明細書及び同第5,545,806号明細書、PCT公報の国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第90/04036号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/30498号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット並びに欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。
本発明の方法に従って生産され得る抗体、多重特異性抗原結合タンパク質及び融合タンパク質は、1つ以上の標的タンパク質に結合することができ、標的タンパク質には、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD28、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD147、IL-1α、IL-1β、IL-4、IL-5、IL-8、IL-10、IL-13、IL-15、IL-2受容体、IL-4受容体、IL-6受容体、IL-13受容体、IL-18受容体サブユニット、アンジオポエチン(例えば、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2又はアンジオポエチン-4)、血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(とりわけTGF-α及びTGF-β(例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5)を含む)、上皮増殖因子(EGF)受容体、VEGF受容体、HER2、FGF受容体、C5補体、ベータ-クロトー、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、CGRP受容体、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1型受容体(PAC1受容体)、IgE、腫瘍抗原、PD-1、PD-L1、HER-2、インテグリンアルファ4ベータ7、インテグリンVLA-4、B2インテグリン、TRAIL受容体1、2、3及び4、RANK、RANKリガンド、スクレロスチン、Dickkopf-1(DKK-1)、TLA1、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、細胞間接着分子-3(ICAM-3)、ロイコインテグリンアドヘシン、血小板糖タンパク質gp IIb/IIIa、心筋ミオシン重鎖、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、胸腺間質リンパ球新生因子(TSLP)、副甲状腺ホルモン、rNAPc2、MHC I、癌胎児性抗原(CEA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原である)、Fc-γ-1受容体、HLA-DR 10ベータ、HLA-DR抗原、L-セレクチン、IPN-γ、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)並びに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が含まれるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、本発明の方法に従って生産される組換えタンパク質は、T細胞エンゲージ分子である。「T細胞エンゲージ分子」という用語は、少なくとも1つのドメインを含む分子であって、そのドメインの構造が、分化抗原群3(CD3)などのT細胞の表面上の抗原への特異的結合を可能にする抗体(例えば、完全長免疫グロブリン分子)の最小の構造的特徴に由来するか又はそれを含むものを指す。したがって、T細胞エンゲージ分子は、一般に、1つ以上の結合ドメインを含み、その各々は、典型的には、特異的標的結合を可能にする抗体の最小構造要件を含む。この最小要件は、例えば、少なくとも3つの軽鎖「相補性決定領域」又はCDR(即ちVL領域のCDRL1、CDRL2及びCDRL3)並びに/又は3つの重鎖CDR(即ちVH領域のCDRH1、CDRH2及びCDRH3)並びに好ましくは軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の両方に由来する6つ全てのCDRの存在によって定義され得る。T細胞エンゲージ分子は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体由来のドメイン又は領域(例えば、CDR又は可変領域)を含み得る。本発明の方法に従って生産されるT細胞エンゲージ分子は、1つ以上のポリペプチド鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、T細胞エンゲージ分子は、単鎖ポリペプチドである。他の実施形態では、T細胞エンゲージ分子は、2つ以上のポリペプチド鎖を含む(例えば、ポリペプチド二量体又は多量体である)。特定の実施形態では、T細胞エンゲージ分子は、4つのポリペプチド鎖を含み、例えば抗体又は免疫グロブリンタンパク質の形式を有し得る。
本発明の方法に従って生産されるT細胞エンゲージ分子は、好ましくは、少なくとも二重特異性T細胞エンゲージ分子であり得る。「二重特異性T細胞エンゲージ分子」という用語は、2つの異なる抗原に特異的に結合することができる分子を指す。本発明の文脈において、そのような二重特異性T細胞エンゲージ分子は、標的細胞の細胞表面上の癌細胞抗原(例えば、ヒト癌細胞抗原)及びT細胞の細胞表面上のCD3(例えば、ヒトCD3)に特異的に結合する。本発明の方法に従って生産される二重特異性T細胞エンゲージ分子は、T細胞の表面上のCD3(例えば、ヒトCD3)並びに5T4、AFP、BCMA、ベータ-カテニン、BRCA1、CD19、CD20、CD22、CD33、CD70、CD123、CDH19、CDK4、CEA、CLDN18.2、DLL3、DLL4、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、EphA2、FLT3、FOLR1、gpA33、GPRC5D、HER2、IGFR、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-6、MAGE-12、MSLN、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC16、MUC17、PSCA、PSMA、RAGEタンパク質、STEAP1、STEAP2、TRP1及びTRP2から選択される標的癌細胞抗原に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、二重特異性T細胞エンゲージ分子は、上記の抗原のいずれかなどの癌細胞抗原に特異的に結合する第1のscFvと、CD3(例えば、CD3イプシロン)に特異的に結合する第2のscFvとを含む単鎖ポリペプチドである。他の実施形態では、二重特異性T細胞エンゲージ分子は、上記の抗原のいずれかなどの癌細胞抗原に特異的に結合する第1のscFvと、CD3(例えば、CD3イプシロン)に特異的に結合する第2のscFvと、単鎖Fcドメイン(scFcドメイン)とを含む単鎖ポリペプチドである。
抗体若しくはその抗原結合断片、多重特異性抗原結合タンパク質、融合タンパク質又はT細胞エンゲージ分子若しくはその結合ドメインは、類似の結合アッセイ条件下において、標的抗原に対し、他の無関係なタンパク質に対する親和性と比較して著しく高い結合親和性を有し、その結果、その標的抗原を区別することができる場合、その標的抗原に「特異的に結合する」。抗原に特異的に結合する抗体若しくはその結合断片、多重特異性抗原結合タンパク質、融合タンパク質又はT細胞エンゲージ分子若しくはその結合ドメインは、平衡解離定数(KD)が≦1×10-6Mでその抗原に結合し得る。抗体若しくはその結合断片、多重特異性抗原結合タンパク質、融合タンパク質又はT細胞エンゲージ分子若しくはその結合ドメインは、KDが≦1×10-8Mの場合、「高い親和性」で抗原に特異的に結合する。結合親和性は、アフィニティーELISA、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore(登録商標)装置によるもの)、Rathanaswami et al.Analytical Biochemistry,Vol.373:52-60,2008に記載されている結合平衡除外法(KinExA)及びKumaraswamy et al.,Methods Mol.Biol.,Vol.1278:165-82,2015に記載され、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio)で用いられているようなバイオレイヤー干渉法を含む多様な技術を使用して決定され得る。
特定の実施形態では、本発明の方法に従って生産される組換えタンパク質は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3イプシロンに特異的に結合する第2の結合ドメインとを含む二重特異性T細胞エンゲージ分子である。本発明の方法に従って生産され得るそのようなPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子の例は、例えば、国際公開第2010/037836号パンフレット、国際公開第2017/023761号パンフレット、国際公開第2017/121905号パンフレット、国際公開第2017/134158号パンフレット、国際公開第2018/098356号パンフレット、国際公開第2019/224718号パンフレット及び国際公開第2020/206330号パンフレットに記載されており、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って生産されるPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子は、単鎖T細胞エンゲージ分子である。本明細書で使用される場合、「単鎖T細胞エンゲージ分子」又は「単鎖T細胞エンゲージポリペプチド」は、1つのポリペプチド鎖のみからなる分子を指す。即ち、二重特異性T細胞エンゲージ分子中のドメインの全てが(任意選択によりペプチドリンカーを介して)互いに連結されて、単一のポリペプチド鎖を形成している。本発明の文脈におけるそのような単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子の一例は、国際公開第2017/134158号パンフレットに記載されている分子など、アミノからカルボキシルの順に、抗PSMA scFvドメイン、第1のペプチドリンカー、抗CD3 scFvドメイン、第2のペプチドリンカー及びscFcドメインを含む単鎖ポリペプチドである。一実施形態では、本発明の方法に従って生産される組換えタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む単鎖二重特異性T細胞エンゲージポリペプチドである。この単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージポリペプチドをコードする核酸は、本明細書に更に詳細に記載されており、配列番号2~5に記載のヌクレオチド配列を含む。
本発明の方法は、細胞培養生産プロセス中に宿主細胞によって発現又は生産される組換えタンパク質のLMW種の種類及び/又は量を低減させる。組換えタンパク質のLMW種とは、インタクトであり完全にアセンブリされた形態の組換えタンパク質の分子量よりも分子量が小さい、組換えタンパク質の断片、トランケート型又は他の不完全なバリアントを指す。LMW種としては、タンパク質分解断片、mRNAスプライスバリアントの細胞発現から生じるトランケート型及び多鎖ポリペプチドのタンパク質の場合の単一成分ポリペプチド(例えば、組換えタンパク質が抗体である場合には軽鎖又は重鎖のみの種)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、本発明は、組換えタンパク質組成物であって、低減された量の、タンパク質のLMW種を含む組換えタンパク質組成物を生産する方法を提供し、本方法は、タンパク質をコードする核酸を発現する哺乳動物細胞を、タンパク質が哺乳動物細胞によって発現及び分泌される期間にわたり、細胞培養培地中で培養することであって、培養培地のpHは、約6.90以下に維持される、培養することと、発現されたタンパク質を細胞培養培地から回収して組換えタンパク質組成物を得ることであって、組成物は、20%未満の、タンパク質の総LMW種を含む、得ることとを含む。
目的組換えタンパク質を発現するように操作した哺乳動物細胞株を作製するには、最初に、組換えタンパク質(又は多鎖タンパク質の場合にはその成分)をコードする1つ以上の核酸を1つ以上の発現ベクターに挿入する。本明細書で使用される「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」という用語は、特定の宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞において作動可能に連結されているコード配列の発現に必要である所望のコード配列及び適切な核酸制御配列を含有する、組換えDNA分子を指す。ベクターには、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター、プラスミド及び他の非ウイルスベクターが含まれ得る。発現ベクターは、転写、翻訳に影響を及ぼすか又はそれを制御する配列であって、イントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されているコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含み得る。「作動可能に連結される」とは、この用語が適用される構成要素が、それらの固有機能を果たすことができる関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結される」ベクター内の制御配列、例えばプロモーターは、この制御配列が正常に活性化することによってタンパク質コード配列の転写がもたらされ、コードされたタンパク質の組換え発現が生じるように配置される。哺乳動物細胞での発現のための発現ベクターに有用な核酸制御配列としては、プロモーター、エンハンサー並びに終結シグナル及びポリアデニル化シグナルが挙げられる。分泌シグナルペプチド配列は、任意選択により、発現ベクターによってコードされて、目的コード配列に作動可能に連結されることも可能であり、これにより、必要に応じて細胞から組換えタンパク質がより容易に単離されるように、組換え宿主細胞に、発現されたタンパク質を分泌させることができる。ベクターは、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする1種以上の選択マーカー遺伝子も含み得る。いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼなどのタンパク質レポーターを使用するタンパク質断片相補アッセイを用いるベクターが使用される(例えば、米国特許第6,270,964号明細書を参照されたい)。好適な哺乳動物発現ベクターは、当技術分野で公知であり、市販されてもいる。
典型的には、宿主細胞のいずれかにおいて使用されるベクターは、プラスミドを維持するための配列と、外因性ヌクレオチド配列のクローニング及び発現のための配列とを含有する。このような配列は、典型的には、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写制御配列及び翻訳制御配列、転写終結配列、ドナースプライス部位及びアクセプタースプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のための天然又は異種のシグナルペプチド配列(リーダー配列又はシグナルペプチド)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入するためのポリリンカー領域並びに選択マーカーエレメントの1つ以上を含む。ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築され得、更なるエレメントを個別に入手してベクターにライゲートし得る。
ベクター成分は、同種(即ち宿主細胞と同じ種及び/又は株に由来)、異種(即ち宿主細胞種又は株以外の種に由来)、ハイブリッド(即ち2つ以上の供給源に由来するフランキング配列の組み合わせ)、合成又は天然であり得る。ベクターにおいて有用な成分の配列は、マッピング及び/又は制限エンドヌクレアーゼ消化によってこれまでに確認されたものなど、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。加えて、それらは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又は好適なプローブでゲノムライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる。
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要とされ、シャイン・ダルガノ配列(原核生物)又はコザック配列(真核生物)を特徴とするものである。このエレメントは、典型的には、プロモーターの3’側及び発現されるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。
複製起点は、宿主細胞内のベクターの増幅を補助する。それらは、市販の原核生物ベクターの一部として含まれ得、また公知の配列に基づいて化学合成してベクターにライゲートされ得る。種々のウイルス起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)又はHPV若しくはBPVなどのパピローマウイルス)が、哺乳動物細胞でベクターをクローニングするのに有用である。
本発明の方法で使用される発現ベクター及びクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され且つポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている、プロモーターを含有する。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(即ち5’側;一般に約100~1000bp以内)に位置し、構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。従来、プロモーターは、誘導性プロモーター及び構成的プロモーターという2つのクラスの一方に分類される。誘導性プロモーターは、その制御下で、栄養素の有無又は温度の変化などの培養条件の何らかの変化に応じて、ポリヌクレオチドからの転写レベルの上昇を引き起こす。一方、構成的プロモーターは、それが作動可能に連結されている遺伝子を均一に、即ち遺伝子発現に対する制御をほとんど又は全く行わずに転写する。多様な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。好適なプロモーターは、制限酵素消化によって供給源の核酸からプロモーターを取り出し、ベクターに所望のプロモーター配列を挿入することにより、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される。哺乳動物宿主細胞とともに使用するのに好適なプロモーターは周知であり、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2型など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター、例えば熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられる。
高等真核生物による組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を増大させるために、エンハンサー配列をベクターに挿入し得る。エンハンサーは、プロモーターに作用して転写を増大させる、通常、約10~300bp長の核酸のシス作用性エレメントである。エンハンサーは、方向及び位置に比較的依存せず、転写単位の5’側及び3’側の両方の位置で見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が公知である(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的にはウイルス由来のエンハンサーが使用される。当技術分野で公知のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターを活性化するための例示的な増強エレメントである。エンハンサーは、ベクターにおいて、コード配列の5’側及び3’側のいずれにも位置し得るが、典型的にはプロモーターの5’側の部位に位置する。
適切な天然又は異種のシグナルペプチド配列(リーダー配列又はシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクター中に組み込んで、細胞外への組換えタンパク質の分泌を促進することができる。シグナルペプチド又はリーダーの選択は、組換えタンパク質が生産される宿主細胞のタイプに依存し、異種シグナル配列で天然シグナル配列を置き換えることができる。シグナルペプチドの例は、本明細書でより詳細に説明される。哺乳動物宿主細胞において機能する他のシグナルペプチドとしては、米国特許第4,965,195号明細書に記載されているインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列;Cosman et al.,1984,Nature 312:768に記載されているインターロイキン-2受容体のシグナル配列;欧州特許第0367566号明細書に記載されているインターロイキン-4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号明細書に記載されているI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド;及び欧州特許第0460846号明細書に記載されているII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチドが挙げられる。
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドをコードする領域の末端に対して3’側に位置し、転写を終結させる役割を果たす。通常、原核細胞における転写終結配列は、G-Cに富む断片とそれに続くポリT配列である。この配列は、ライブラリから容易にクローニングされるか、又は更にベクターの一部として商業的に購入されるが、当業者に公知の核酸合成方法を使用して容易に合成することもできる。
哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための例示的な転写制御配列及び翻訳制御配列は、ウイルスゲノムから切り出すことができる。一般に使用されるプロモーター及びエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2型、シミアンウイルス40(SV40)及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)に由来する。例えば、前初期遺伝子1のヒトCMVプロモーター/エンハンサーを使用することができる。例えば、Patterson et al.(1994),Applied Microbiol.Biotechnol.40:691-98を参照されたい。SV40ウイルスゲノム、例えばSV40起点、初期及び後期プロモーター、エンハンサー、スプライス並びにポリアデニル化部位に由来するDNA配列を使用して、哺乳動物宿主細胞中で構造遺伝子配列を発現させるための他の遺伝エレメントを提供することができる。ウイルス初期及び後期プロモーターは、いずれもウイルスの複製起点も含有し得る断片としてウイルスゲノムから容易に得られるため、特に有用である(Fiers et al.(1978),Nature 273:113;Kaufman(1990),Meth.in Enzymol.185:487-511)。Hind III部位から、SV40ウイルス複製起点の部位に位置するBgl I部位に延在するおよそ250bpの配列が含まれていれば、より小さい又はより大きいSV40断片も使用することができる。
選択マーカー遺伝子は、選択培養培地中で増殖した宿主細胞の生存及び増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物宿主細胞に、抗生物質若しくは他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン若しくはカナマイシンに対する耐性を付与するタンパク質;(b)細胞の栄養要求性欠損を補完するタンパク質;又は(c)複合培地若しくは規定培地から入手できない極めて重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。特異的選択マーカーとしては、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子及びテトラサイクリン耐性遺伝子がある。有利には、ネオマイシン耐性遺伝子も原核生物宿主細胞及び真核生物宿主細胞の両方における選択に使用することができる。
他の選択遺伝子を使用して、発現される遺伝子を増幅し得る。増幅は、増殖又は細胞生存に極めて重要なタンパク質の生産に必要とされる遺伝子が組換え細胞の累代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に好適な選択マーカーの例としては、グルタミンシンターゼ(GS)/メチオニンスルホキシミン(MSX)系、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)及びプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞の形質転換体を、その形質転換体のみが、ベクターに存在する選択遺伝子によって生存するように適合されている選択圧下に置く。培地中の選択薬剤濃度を連続的に上昇させる条件下で形質転換細胞を培養することによって選択圧をかけ、それにより選択遺伝子と、目的タンパク質をコードするDNAとの両方が増幅される。その結果、増幅されたDNAから多量の目的ポリペプチドが合成される。
発現ベクターが構築され、組換えタンパク質(又は多鎖タンパク質の場合にはその成分)をコードする1つ以上の核酸分子がベクターの適当な部位に挿入された後、完成したベクターは、増幅及び/又はポリペプチド発現に好適な宿主細胞に挿入され得る。選択された宿主細胞への発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、形質導入、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション又は他の公知の技術を含む周知の方法によって行われ得る。選択される方法は、ある程度、使用される宿主細胞のタイプに応じることとなる。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者に周知であり、マニュアル及び他の技術刊行物、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(2001)及びAusubel et al.(eds.)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,(1989)に記載されている。
本明細書で使用される場合、「形質転換」という用語は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、細胞が新たなDNA又はRNAを含有するように改変されている場合、細胞は、形質転換されていると見なされる。例えば、トランスフェクション、形質導入又は他の技術によって新たな遺伝物質を導入することにより、細胞がその天然状態から遺伝子改変された場合、細胞は、形質転換されている。トランスフェクション又は形質導入に続いて、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることにより、その細胞のDNAで組換えられ得るか、又はエピソームエレメントとして複製されることなく一過性に維持され得るか、又はプラスミドとして独立して複製され得る。形質転換DNAが細胞分裂とともに複製される場合、細胞は「安定的に形質転換」されていると見なされる。
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来性又は外因性DNAの取り込みを指す。多数のトランスフェクション技術が当技術分野で周知であり、本明細書で開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456;Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(上述);Davis et al.,1986,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier;Chu et al.,1981,Gene 13:197を参照されたい。本明細書で使用される場合、「形質導入」という用語は、ウイルスベクターを介して外来性DNAが細胞に導入されるプロセスを指す。Jones et al.,(1998).Genetics:principles and analysis.Boston:Jones&Bartlett Publを参照されたい。
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸で形質転換されているか又は形質転換されることが可能であり、それにより目的遺伝子を発現する細胞を指す。この用語には、目的遺伝子が存在する限り、親細胞の子孫の形態又は遺伝的構造が元の親細胞と同一であるか否かにかかわらず、親細胞の子孫が含まれる。好ましくは少なくとも1つの発現制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサー)に作動可能に連結されている、組換えタンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」である。宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、組換えタンパク質を合成し、これは、その後、(宿主細胞が培地中に分泌する場合)培養培地から収集され得るか、又は(分泌されない場合)生産する宿主細胞から直接収集され得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいか又は必要であるポリペプチドの改変(グリコシル化又はリン酸化など)及び生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易さなどの種々の要因に依存する。本発明の方法の特定の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。
例示的な宿主細胞としては、原核生物、酵母又は高等真核生物の細胞が挙げられる。原核生物の宿主細胞としては、グラム陰性微生物又はグラム陽性微生物などの真正細菌、例えば腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばエシェリキア属(Escherichia)、例えば大腸菌(E.coli)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)並びにシゲラ属(Shigella)及びバチルス属(Bacillus)、例えば枯草菌(B.subtilis)及びB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)並びにストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、組換えポリペプチドに好適なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又は一般的なパン酵母が下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかしながら、ピキア属(Pichia)、例えばP.パストリス(P.pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、シュワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えばシュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)並びに糸状菌、例えばニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えばA.ニデュランス(A.nidulans)及びA.ニガー(A.niger)などのいくつかの他の属、種及び株が本明細書で一般に利用可能であり、有用である。
脊椎動物宿主細胞も組換えタンパク質の発現に好適な宿主である。組換えタンパク質発現のための宿主として好適な哺乳動物細胞株は、当技術分野で周知であり、以下に限定されないが、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、以下に限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞又は懸濁培養での増殖用にサブクローニングされた293細胞)(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC 5細胞又はFS4細胞;哺乳動物骨髄腫細胞及びいくつかの他の細胞株が挙げられる。CHO細胞は、組換えタンパク質を発現させるための本発明の方法のいくつかの実施形態において好ましい哺乳動物宿主細胞である。
特定の実施形態では、本発明の方法は、形質転換宿主細胞(例えば、形質転換哺乳動物宿主細胞)を、組換えタンパク質が哺乳動物宿主細胞によって発現及び分泌される条件下及び期間で、細胞培養培地中で培養することを含む。「培養する」又は「培養すること」という用語は、多細胞生物又は組織の外部で細胞を増殖及び繁殖させることを指す。宿主細胞は、懸濁液中で又は固体基材に接着させた付着形式で培養され得る。細胞培養は、流動床バイオリアクタ、中空糸バイオリアクタ、ローラーボトル、振盪フラスコ又は撹拌槽バイオリアクタ内において、マイクロキャリアの有無にかかわらず確立され得る。いくつかの実施形態では、形質転換CHO細胞などの形質転換哺乳動物細胞は、小規模、例えば5リットル以下、3リットル以下又は1リットル以下の容量で生産バイオリアクタ中において培養され得る。他の実施形態では、形質転換哺乳動物細胞(例えば、形質転換CHO細胞)は、容積が少なくとも500リットル、少なくとも1,000リットル、少なくとも2,000リットル、少なくとも5,000リットル、少なくとも10,000リットル又は少なくとも15,000リットルの生産バイオリアクタ中で培養される。このような生産細胞培養は、数週間、更に数ヶ月にわたって維持することができ、その間、細胞は、所望の組換えタンパク質を生産する。
温度、溶存酸素含有量、撹拌速度などを含む、哺乳動物細胞に好適な培養条件は、当技術分野で公知であり、細胞培養の期又は段階によって変動し得る。細胞培養の「増殖期」とは、細胞が概して急速に分裂している指数関数的細胞増殖の期間(即ち対数期)を指す。増殖期中、細胞は、必要な栄養素及び添加物を含有する細胞培養培地中において、特定の細胞株の最適な増殖が達成されるような条件下(通常、加湿した制御雰囲気下で約25~40℃の温度)で培養される。細胞は、典型的には、増殖期に1~8日間、例えば3~7日間、例えば7日間にわたって維持される。特定の細胞株の増殖期の長さは、当業者が決定することができ、一般に、培養が増殖条件下で維持された場合に可能である最大生細胞密度の約20%~80%の範囲内の生細胞密度まで、特定の細胞が繁殖するのに十分な期間となる。細胞培養の「生産期」とは、対数的な細胞増殖が終了し、組換えタンパク質の生産が優勢となる期間を指す。生産期中、通常、組換えタンパク質の継続的な生産を補助するために培地が補充される。
本発明の方法の特定の実施形態では、細胞培養の増殖期から生産期への移行を推進するために培養条件が調整され得る。例えば、細胞培養の増殖期は、細胞培養の生産期よりも高い温度で起こり得る。いくつかの実施形態では、増殖期は、約35℃~約38℃の第1の温度で起こり得、生産期は、約29℃~約37℃、任意選択により約30℃~約36℃又は約30℃~約34℃の第2の温度で起こり得る。一実施形態では、培養の増殖期から生産期への移行を推進するために、約35℃~約37℃から約31℃~約33℃の温度への温度シフトが用いられ得る。例えば、カフェイン、酪酸塩及びヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)などのタンパク質産生の化学誘導剤は、温度シフトと同時に、その前及び/若しくは後又は温度シフトの代わりに添加され得る。誘導剤が温度シフト後に添加される場合、それらは、温度シフトの1時間~5日後、任意選択により温度シフトの1~2日後に添加され得る。
細胞培養培地という用語は、本明細書で使用される場合、インビトロ細胞培養中に宿主細胞の増殖及び生存を維持するのに十分な栄養素を含有する溶液を指す。典型的には、細胞培養培地は、緩衝液、塩、エネルギー源、アミノ酸、ビタミン及び微量必須元素を含有する。培養中の適切な宿主細胞の増殖を補助することのできる任意の培地が使用され得る。特定の培養宿主細胞における細胞増殖、細胞生存率及び/又は組換えタンパク質生産を最大化するための他の成分が更に補充され得る細胞培養培地は、市販されており、とりわけRPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地イーグル、F-12K培地、ハムF12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、ライボビッツL-15培地及び無血清培地(例えば、EX-CELL(商標)300シリーズ)を含み、これらは、American Type Culture Collection又はSAFC Biosciences及び他のベンダーから得ることができる。細胞培養培地は、無血清、無タンパク質、無増殖因子及び/又は無ペプトン培地であり得る。細胞培養培地は、通常の推奨濃度より高い濃度で使用され得る栄養素又は他のサプリメントの添加によっても富栄養化され得る。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される培養培地は、既知組成培地であり、これは、全ての成分が既知の化学構造及び濃度を有する細胞培養培地を指す。既知組成培地は、典型的には、無血清であり、且つ加水分解物又は動物由来成分を含有しない。
種々の培地配合物が、例えば、ある段階(例えば、増殖段階若しくは増殖期)から別の段階(例えば、生産段階若しくは生産期)への移行を推進させるために、且つ/又は細胞培養中の条件(例えば、灌流培養中に提供される濃縮培地)を最適化するために、培養期間中に使用され得る。増殖培地配合物は、細胞増殖を促進し、且つタンパク質発現を最小化するために使用され得る。生産培地配合物は、新たな細胞の増殖を最小化しつつ、目的組換えタンパク質の生産及び細胞の維持を促進するために使用され得る。細胞培養の生産期の過程で消費される、典型的には栄養素及びアミノ酸などのより濃縮された成分を含有する培地であるフィード培地は、活性培養、特に流加式、半灌流式又は灌流式で動作される培養を補い、且つ維持するために使用され得る。このような濃縮フィード培地は、細胞培養培地の成分の大部分を、例えばその通常の量の約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、16倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、400倍、600倍、800倍又は更に約1000倍で含有し得る。
本発明の方法では、哺乳動物細胞は、バッチ培養、流加培養又は灌流培養で培養され得る。「バッチ培養」とは、細胞培養を確立するために必要とされる全ての成分(形質転換宿主細胞、培養培地及び栄養素を含む)が培養プロセスの開始時に培養容器に提供され、培養物への補充が行われない細胞培養方法を指す。バッチ培養は、典型的には、ある時点で停止され、培地中の細胞及び/又は成分が採取され、回収された組換えタンパク質が任意選択により精製される。「流加培養」とは、追加の成分又は栄養素(例えば、フィード培地)が、培養プロセスの開始後に1回以上の不連続な時間に培養物に提供される、細胞培養方法を指す。流加培養は、典型的には、ある時点で停止され、培地中の細胞及び/又は成分が採取され、組換えタンパク質が任意選択により精製される。「灌流培養」とは、追加の成分又は栄養素(例えば、フィード培地)が、培養プロセスの開始後に連続的又は半連続的に培養物に提供される、細胞培養方法を指す。培地中の細胞及び/又は成分の一部は、灌流培養では典型的には連続的又は半連続的に取り出される。本発明の方法の特定の実施形態では、形質転換哺乳動物細胞は、灌流培養で培養される。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、少なくとも100×105細胞/mL、例えば約100×105細胞/mL~約10×107細胞/mL、約250×105細胞/mL~約900×105細胞/mL、約300×105細胞/mL~800×105細胞/mL又は約450×105細胞/mL~650×105細胞/mLの生細胞密度まで培養される。細胞密度は、血球計、コールターカウンター又は自動細胞分析器(例えば、Cedex自動細胞カウンター)を使用して測定され得る。生細胞密度は、死細胞のみに取り込まれるトリパンブルーで培養試料を染色することにより決定され得る。次いで、細胞総数を計数し、染色された細胞の数を細胞総数で除してその逆数を取ることにより生細胞密度が決定される。
実施例に記載されるように、細胞培養の生産期中に細胞培養培地を特定のpH範囲内に維持すると、形質転換哺乳動物細胞によって生産される組換えタンパク質のLMW種が低減することが予想外に見出された。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、組換えタンパク質をコードする核酸を発現する哺乳動物細胞を細胞培養培地中で培養することを含み、細胞培養培地のpHは約6.90以下に維持される。特定の実施形態では、細胞培養の生産期中の細胞培養培地のpHは、約6.70~約6.90、例えば、約6.70~約6.80、約6.75~約6.85、約6.78~約6.82、約6.80~約6.90又は約6.85~約6.90のpHに維持される。一実施形態では、細胞培養培地のpHは、約6.70に維持される。別の実施形態では、細胞培養培地のpHは、約6.80に維持される。更に別の実施形態では、細胞培養培地のpHは、約6.90に維持される。特定の実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質組成物は、6.90を上回るpH、例えば、7.00、7.10、7.20、7.30又は7.40のpHに維持された培養培地中で培養された形質転換哺乳動物細胞によって生産された同じ組換えタンパク質の組成物と比較して低減された量の、タンパク質の総LMW種を含む。
本発明の方法では、哺乳動物細胞は、組換えタンパク質が哺乳動物細胞によって発現及び分泌される所定の期間にわたり培養される。この期間(即ち細胞培養の生産期の持続期間)は、少なくとも3日、少なくとも7日、少なくとも10日又は少なくとも15日である。特定の実施形態では、細胞培養の生産期の持続期間は、約7日~約28日、約10日~約30日、約7日~約14日、約10日~約18日、約3日~約15日、約5日~約8日、約12日~約15日、約12日~約18日又は約15日~約21日である。いくつかの実施形態では、細胞培養の生産期の持続期間は、7日、8日、9日、12日、15日、18日又は21日である。好ましくは、細胞培養培地のpHは、細胞培養の生産期の全持続期間にわたり上記の範囲内に維持される。
本発明の方法は、発現された組換えタンパク質を宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)又は細胞培養培地から回収して組換えタンパク質組成物を得ることを更に含む。組換えタンパク質が細胞内で生産される場合(即ち哺乳動物宿主細胞によって分泌されない場合)、最初の工程として、宿主細胞を(例えば、機械的せん断、浸透圧ショック又は酵素的方法によって)溶解し、粒状破片(例えば、宿主細胞及び溶解断片)を、例えば、遠心分離、凝集、音波分離又は濾過(例えば、精密濾過、限外濾過、タンジェンシャルフロー濾過、交互タンジェンシャルフロー濾過及び深層濾過によるものを含む)によって除去する。特定の好ましい実施形態では、組換えタンパク質は、宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)によって培養培地中に分泌される。このような実施形態では、組換えタンパク質を、遠心分離又は精密濾過を通して宿主細胞から分離することができ、且つ任意選択により続いて限外濾過を通して濃縮することができる。いくつかの実施形態では、発現された組換えタンパク質は、精密濾過によって細胞培養培地から回収される。これら及び他の実施形態では、発現された組換えタンパク質は、交互タンジェンシャルフロー濾過によって細胞培養培地から回収される。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、宿主細胞又は細胞培養培地から回収された組換えタンパク質を1つ以上の単位操作によって更に精製又は部分精製して、細胞培養培地成分、宿主細胞タンパク質若しくは核酸又は他のプロセス若しくは産物関連不純物を除去することができる。「単位操作」という用語は、目的組換えタンパク質を精製するプロセスの一部として実施される機能的工程を指す。例えば、単位操作としては、目的組換えタンパク質の捕捉、精製、ポリッシング、ウイルス不活化、ウイルス濾過、濃縮及び/又は配合などの工程が挙げられ得るが、これらに限定されない。単位操作は、捕捉工程及びウイルス不活化工程など、単一の目的又は複数の目的を達成するように設計され得る。単位操作には、処理工程間の工程の保持又は保存も含まれ得る。当業者は、精製される組換えタンパク質の特徴、組換えタンパク質が発現される宿主細胞の特徴及び宿主細胞が増殖した培養培地の組成に基づいて、組換えタンパク質を更に精製するための適切な単位操作を選択することができる。
捕捉単位操作としては、目的組換えタンパク質に結合する薬剤を含有する樹脂及び/又は膜を利用する捕捉クロマトグラフィー、例えばアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)などを挙げることができる。このようなクロマトグラフィー材料は、当技術分野で公知であり、市販されてもいる。例えば、組換えタンパク質が抗体であるか又は抗体由来の成分(例えば、Fcドメイン)を含有する場合、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G又はプロテインLなどのリガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィーが、組換えタンパク質を更に精製するための捕捉クロマトグラフィー単位操作として用いられ得る。他の実施形態では、目的組換えタンパク質は、そのアミノ末端又はカルボキシル末端にポリヒスチジンタグを含み得、後にIMACを使用して精製され得る。組換えタンパク質を、FLAG(登録商標)タグ又はc-mycエピトープなどの他の精製タグを含むように操作して、その後、そのようなタグ又はエピトープを対象とする特異的抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
ウイルス夾雑物を不活化させ、低減させ、且つ/又はなくすための単位操作には、濾過プロセス及び/又は溶液条件の調整が含まれ得る。ウイルス不活化を達成するための1つの方法は、低pH(例えば、pH<4)でのインキュベーションである。低pHのウイルス不活化操作後、ウイルスが不活化された溶液を、後続の単位操作の要件とより適合するpHに再調整する中和単位操作が続き得る。低pHのウイルス不活化操作後、生じた濁り又は沈殿を除去するために深層濾過などの濾過が更に続く場合がある。温度又は化学組成の調整(例えば、界面活性剤の使用)も、ウイルス不活化を達成するために使用され得る。ウイルス濾過は、旭化成(Plavona(登録商標))及びEDM Millipore(VPro(登録商標))から入手可能なものなどのマイクロ濾過膜又はナノ濾過膜を使用して実施され得る。
ポリッシング単位操作では、目的タンパク質の精製並びに夾雑物及び不純物の除去に、種々のクロマトグラフィー方法が利用され得る。ポリッシュクロマトグラフィー単位操作は、フロースルーモード(目的タンパク質が溶離液中に含まれ、夾雑物及び不純物がクロマトグラフィー媒体に結合される)又は結合及び溶出モード(目的タンパク質がクロマトグラフィー媒体に結合され、夾雑物及び不純物が通過した後又はクロマトグラフィー媒体から洗い出された後に溶出される)のいずれかにおいて使用され得る薬剤を含有する樹脂及び/又は膜を利用する。このようなポリッシュクロマトグラフィー方法の例としては、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)及びカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)などのイオン交換クロマトグラフィー(IEX);疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);混合様式又は多様式クロマトグラフィー(MM)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HA);逆相クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)が挙げられるが、これらに限定されない。
原薬又は医薬品をバルク貯蔵するための、産物の濃縮及び所望の製剤緩衝液への目的組換えタンパク質の緩衝液交換は、限外濾過及びダイアフィルトレーションによって行われ得る。
本発明の方法によって生産される組換えタンパク質組成物は、好ましくは、20%未満の、組換えタンパク質の総LMW種を含む。本明細書に詳述されているように、本発明の方法は、細胞培養プロセス中に宿主細胞によって生産される組換えタンパク質のLMW種の種類及び/又は量を低減させ、これによりそのようなLMW種を特異的に除去するように設計された下流単位操作の必要性をなくす。特定の実施形態では、組換えタンパク質組成物は、採取細胞培養液である。「採取細胞培養液」という用語は、細胞、細胞破片又は他の大型微粒子を組換えタンパク質から分離するための1つ以上の操作によって処理された溶液を指す。そのような操作としては、上記したように、凝集、遠心分離、音波分離並びに種々の形態の濾過(例えば、深層濾過、精密濾過、限外濾過、タンジェンシャルフロー濾過及び交互タンジェンシャルフロー濾過)が挙げられるが、これらに限定されない。採取細胞培養液には、細胞培養溶解物及び細胞培養上清が含まれる。採取細胞培養液は、約0.1μm~約0.5μmの孔径を有する膜又はより好ましくは約0.22μmの孔径を有する膜で濾過することにより、微小粒子状物質及び可溶性凝集体を除去するために更に清澄化され得る。したがって、いくつかの実施形態では、組換えタンパク質組成物は、清澄化された採取細胞培養液である。
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質組成物は、組換えタンパク質の総LMW種を18%未満、例えば、組換えタンパク質の総LMW種を約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下又は約6%以下含む。特定の実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質組成物は、約1%~約18%の、組換えタンパク質の総LMW種、例えば約5%~約15%、約2%~約10%、約1%~約8%又は約2%~約6%の、組換えタンパク質の総LMW種を含む。特定の実施形態では、LMW種は、タンパク質のスプライスバリアントアイソフォームを含む。本明細書で使用される場合、「スプライスバリアントアイソフォーム」とは、タンパク質をコードする組換え遺伝子から生じた選択的にスプライシングされたmRNAから翻訳されるタンパク質のバリアントを指す。スプライスバリアントアイソフォームは、典型的には、目的とする組換えタンパク質と異なるアミノ酸配列を有し、組換えタンパク質のトランケート型であることが多い。
組換えタンパク質のLMW種は、標準的な還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム法(rCE-SDS)を使用して検出及び定量され得る。組換えタンパク質のLMW種の測定に好適である例示的なrCE-SDS法は、実施例1に記載されている。組換えタンパク質のLMW種を検出及び定量する他の方法は、当業者に公知であり、それらとしては、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC))、沈降速度超遠心分離及びモル質量を決定するための静的光散乱検出を伴うSE-HPLCが挙げられ得る。
本発明は、哺乳動物細胞からの組換えタンパク質の選択的スプライスバリアントアイソフォームの発現及び分泌を低減させる方法も提供する。組換えタンパク質のLMW種は、細胞培養プロセス中に、形質転換宿主細胞による望ましくないmRNAスプライスバリアントの発現から生じ得る。実施例3に記載されているように、分泌シグナルペプチドのカルボキシ末端(即ちC末端)にあるグリシン残基をコードするためにGGTコドンを使用すると、強力なスプライスドナー部位が形成され、組換えタンパク質のトランケート型を発生させる選択的スプライシング事象が引き起こされることが見出された。シグナルペプチドのC末端にあるグリシン残基をコードするためにGGTコドンをGGGコドンで置き換えると、選択的スプライスバリアントが排除され、形質転換宿主細胞によって生産されるLMW種の量が低減した。したがって、特定の実施形態では、本発明は、哺乳動物細胞からの組換えタンパク質の選択的スプライスバリアントアイソフォームの発現及び分泌を低減させる方法を含み、本方法は、シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと、組換えタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む核酸で哺乳動物細胞をトランスフェクトすることであって、第1のポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドと同じオープンリーディングフレーム内にあり、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドのカルボキシ末端の6アミノ酸内に存在する任意のグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む、トランスフェクトすることと、組換えタンパク質が発現され、且つ細胞培養培地中に分泌される条件下において、培地中で哺乳動物細胞を培養することと、細胞培養培地から組換えタンパク質を回収して組換えタンパク質組成物を得ることとを含む。この方法は、形質転換哺乳動物細胞によって発現される組換えタンパク質のLMW種を更に低減させるために、形質転換哺乳動物細胞を約6.90以下のpHに維持された細胞培養培地中で培養する上記の方法と組み合わせることができる。
上記のように、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、多くの場合、宿主細胞による組換えタンパク質の分泌を促進するために組換えタンパク質生産のための発現ベクターに組み込まれ、それにより培養培地から組換えタンパク質を直接回収することが可能となる。シグナルペプチドのC末端の6アミノ酸内に存在するグリシンコドンGGTは、組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列に偶然存在するスプライスアクセプター部位と一致し得るスプライスドナー部位として機能するようになされている。この潜在的スプライスドナー部位がシグナル配列のC末端内に位置していることから、発生し得るあらゆる選択的スプライシング事象により、組換えタンパク質のトランケート型がもたらされる可能性がある。したがって、シグナルペプチドのC末端の6アミノ酸内に存在する任意のグリシン残基のグリシンGGGコドンを含むシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することで、強力なスプライスドナー部位が排除されることにより、望ましくないスプライシング事象の可能性が低減する。
したがって、特定の実施形態では、本方法は、シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと、組換えタンパク質をコードする第2のポリペプチドとを含む核酸で哺乳動物細胞をトランスフェクトすることを含み、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドのC末端の6アミノ酸内に存在する任意のグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。「カルボキシ末端」、「カルボキシル末端」又は「C末端」とは、遊離カルボキシル基(-COOH)で終結するポリペプチド鎖の端部に位置するアミノ酸を指す。したがって、ポリペプチド鎖のC末端の6アミノ酸内のアミノ酸は、ポリペプチド鎖内のアミノ酸の最後から6番目、最後から5番目、最後から4番目、最後から3番目、最後から2番目又は最後のアミノ酸である。特定の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後から4番目のC末端アミノ酸として存在するグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後のC末端アミノ酸として存在するグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後から6番目のC末端アミノ酸として存在するグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。更なる他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドの最後から6番目及び最後から4番目のC末端アミノ酸として存在する各グリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む。上記の実施形態のいずれかでは、任意のグリシンGGGコドンの直前のヌクレオチドは、アデニン(A)以外のヌクレオチド(例えば、シトシン(C)、チミン(T)又はグアニン(G))であり得る。一実施形態では、任意のグリシンGGGコドンの直前のヌクレオチドは、シトシン(C)である。
第1のポリヌクレオチドによってコードされ得る例示的なシグナルペプチドとしては、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC(配列番号6)、MAWALLLLTLLTQGTGSWA(配列番号7)、MTCSPLLLTLLIHCTGSWA(配列番号8)、MEWTWRVLFLVAAATGAHS(配列番号9)、MEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号10)、MDIRAPTQLLGLLLLWLPGAKC(配列番号11)、MDIRAPTQLLGLLLLWLPGARC(配列番号12)、MDMRAPTQLLGLLLLWLPGARC(配列番号13)、MDTRAPTQLLGLLLLWLPGATF(配列番号14)、MDTRAPTQLLGLLLLWLPGARC(配列番号15)、METGLRWLLLVAVLKGVQC(配列番号16)、METGLRWLLLVAVLKGVQCQE(配列番号17)、MEAPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号18)及びMETPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号19)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする。他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号7のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする。更なる他の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号8のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする。第1のポリヌクレオチドは、C末端の6アミノ酸内に存在する任意のグリシンをコードするコドンがGGGであれば、上記のシグナルペプチドのいずれかのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号20のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号21のヌクレオチド配列を含む。更に別の実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、配列番号22のヌクレオチド配列を含む。
第2のポリヌクレオチドは、本明細書に記載の組換えタンパク質などの任意の所望の組換えタンパク質をコードし得る。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、抗体又はその結合断片である。他の実施形態では、組換えタンパク質は、抗体の軽鎖又は重鎖である。更に他の実施形態では、組換えタンパク質は、融合タンパク質である。特定の他の実施形態では、組換えタンパク質は、T細胞エンゲージ分子、例えば単鎖T細胞エンゲージ分子である。関連する実施形態では、組換えタンパク質は、単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子である。そのような一実施形態では、組換えタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。したがって、特定の実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質をコードする。そのような一実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。これら及び他の実施形態では、シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと組換えタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む核酸は、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
好ましくは、核酸は、組換えタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドと同じオープンリーディングフレーム内において、シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドを含む。「オープンリーディングフレーム」という用語は、ポリペプチドに翻訳される、開始コドン(例えば、DNAではATG又はRNAではAUG)で始まり、終止コドン(例えば、DNAではTAA、TGA及びTAG又はRNAではUAA、UGA及びUAG)で終了するコドンの連続区間を指す。したがって、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドが同じオープンリーディングフレーム内に位置する場合、シグナルペプチド及び組換えタンパク質は、同じmRNAに転写され、且つ同じポリペプチド鎖に翻訳される。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間にヌクレオチドが介在することなく、核酸内で第2のポリヌクレオチドに隣接して位置する。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、第1のポリヌクレオチドと、第2のポリヌクレオチドとを含む核酸で哺乳動物細胞をトランスフェクトすることと、組換えタンパク質が発現され、且つ細胞培養培地中に分泌される条件下において、培地中で哺乳動物細胞を培養することと、細胞培養培地から組換えタンパク質を回収して組換えタンパク質組成物を得ることとを含む。このような方法工程は、上で詳述されている。特定の実施形態では、核酸によるトランスフェクション後、哺乳動物細胞は、上記の細胞培養の生産期の持続期間中、約6.90以下のpHに維持された細胞培養培地中で培養される。一実施形態では、哺乳動物細胞は、細胞培養の生産期の持続期間中、約6.70~約6.90のpHに維持された細胞培養培地中で培養される。別の実施形態では、哺乳動物細胞は、細胞培養の生産期の持続期間中、約6.70のpHに維持された細胞培養培地中で培養される。更に別の実施形態では、哺乳動物細胞は、細胞培養の生産期の持続期間中、約6.80のpHに維持された細胞培養培地中で培養される。更に別の実施形態では、哺乳動物細胞は、細胞培養の生産期の持続期間中、約6.90のpHに維持された細胞培養培地中で培養される。
本発明の方法の特定の実施形態では、哺乳動物細胞によって発現される組換えタンパク質の選択的スプライスバリアントアイソフォームの数又は量は、シグナルペプチドのC末端の6アミノ酸内にある任意のグリシン残基のグリシンGGTコドンを含む、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む哺乳動物細胞によって発現される選択的スプライスバリアントアイソフォームの数又は量と比較して低減する。スプライスバリアントを検出及び定量するための技術は、当業者に公知であり、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイ、ノーザンブロット分析及びゲル電気泳動法が含まれ得る。
特定の実施形態では、本発明の方法に従って生産される組換えタンパク質は、単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子などのT細胞エンゲージ分子である。したがって、本発明は、単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子、例えば配列番号1のアミノ酸配列を含むT細胞エンゲージ分子をコードする単離された核酸も含む。「単離された分子」という用語(分子が例えばタンパク質、核酸、ポリペプチド又はポリヌクレオチドである場合)は、その起源又は誘導源により、(1)その天然状態ではそれに付随する、天然に会合した成分と会合していない分子、(2)同じ種に由来する他の分子を実質的に含まない分子、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される分子、又は(4)天然に存在しない分子である。したがって、化学合成されるか、又はそれが天然に生じる細胞と異なる細胞系で発現される分子は、その天然に会合する成分から「単離されている」ことになる。分子は、当技術分野で周知の精製技術を使用する単離により、天然に会合した成分を実質的に含まないようにもされ得る。本発明の核酸分子には、一本鎖及び二本鎖の両方の形態のDNA及びRNA並びに対応する相補的配列が含まれる。DNAには、例えば、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNA、PCR増幅DNA及びそれらの組み合わせが含まれる。本発明の核酸分子には、完全長遺伝子又はcDNA分子及びそれらの断片の組み合わせが含まれる。本発明の核酸は、ヒト供給源及び非ヒト種に由来し得る。一実施形態では、単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子をコードする単離された核酸は、配列番号2又は配列番号3のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子をコードする単離された核酸は、配列番号4又は配列番号5のヌクレオチド配列を含む。
「単離された核酸」又は「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在する供給源から単離された核酸の場合、核酸が単離された生物のゲノム中に存在する、隣接する遺伝子配列から分離された核酸である。例えば、PCR産物、cDNA分子又はオリゴヌクレオチドなど、鋳型から酵素的又は化学的に合成された核酸の場合は、このようなプロセスから得られる核酸は、単離された核酸であると理解される。単離された核酸分子とは、別個の断片の形態の核酸分子又はより大きい核酸コンストラクトの成分としての核酸分子を指す。一実施形態では、核酸は、夾雑内因性物質を実質的に含まない。核酸分子は、標準的な生化学的方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(2001)に概説されているもの)により、実質的に純粋な形態で、且つその成分であるヌクレオチド配列の同定、操作及び回収を可能にする量又は濃度において、少なくとも1回単離されたDNA又はRNAに由来したものであり得る。そのような配列は、好ましくは、典型的には真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列又はイントロンによって中断されていないオープンリーディングフレームの形態で提供且つ/又は構築されている。非翻訳DNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’側又は3’側に存在し得、この場合、これはコード領域の操作又は発現を妨害しない。特に明記しない限り、本明細書中で論じられている任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’への産生の方向は、転写方向と称され、RNA転写物の5’末端の5’側にあるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称され、RNA転写物の3’末端の3’側にあるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
本発明は、ベクター、例えば単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子をコードする核酸を含む上記の発現ベクター及び単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子をコードする核酸又は発現ベクターを含む宿主細胞又は細胞株、特に哺乳動物宿主細胞又は細胞株も包含する。いくつかの実施形態では、本発明の発現ベクターは、配列番号2~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む核酸を含む。関連する実施形態では、本発明は、配列番号2~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む単離された核酸又は発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞を提供する。特定の好ましい実施形態では、哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞である。加えて、本発明は、本明細書に詳述される発現ベクター及び形質転換宿主細胞又は細胞株を使用して、単鎖PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージ分子を生産する方法を含む。一実施形態では、本方法は、配列番号2~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む単離された核酸又は発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞を、T細胞エンゲージ分子が発現される条件下において、細胞培養培地中で培養することと、培養培地又は宿主細胞からT細胞エンゲージ分子を回収することとを含む。
本発明は、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質組成物も含む。そのような組換えタンパク質組成物は、他の細胞培養法によって生産される組換えタンパク質のLMW種の量又は種類と比較して、組換えタンパク質のLMW種の量又は種類が低減している。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質は、抗体又はその結合断片であり、組換えタンパク質組成物は、20%未満の、抗体又はその結合断片の総LMW種を含む。他の実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質は、融合タンパク質であり、組換えタンパク質組成物は、20%未満の、融合タンパク質の総LMW種を含む。特定の実施形態では、本発明の方法によって生産される組換えタンパク質は、T細胞エンゲージ分子、例えば単鎖T細胞エンゲージ分子であり、組換えタンパク質組成物は、20%未満の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む。
特定の関連する実施形態では、本発明は、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子と、その1種以上のLMW種とを含む組成物を提供し、組成物は、20%未満の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含み、T細胞エンゲージ分子は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子のそのような組成物は、T細胞エンゲージ分子の総LMW種を18%未満、例えばT細胞エンゲージ分子の総LMW種を約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下又は約6%以下含み得る。いくつかの実施形態では、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子の組成物は、約1%~約18%の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種、例えば約5%~約15%、約2%~約10%、約1%~約8%又は約2%~約6%の、T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む。実施例2に記載されているように、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子のLMW種は、機能アッセイにおいて活性をほとんど又は全く示さなかったため、生産プロセス中に生じるそのようなLMW種の量を制御することは、PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子含有組成物の効力を許容可能なレベルに維持するために重要である。いくつかの実施形態では、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子のLMW種は、T細胞エンゲージ分子のスプライスバリアントアイソフォームを含む。そのような一実施形態では、スプライスバリアントアイソフォームは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。本発明の組成物中の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子のLMW種の量又はレベルは、これらの種を検出及び定量するための上記の方法のいずれかによって決定され得る。特定の実施形態では、組成物中のLMW種の量又はレベルは、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)法によって決定される。そのような方法では、単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージポリペプチドのLMW種は、完全長単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージポリペプチド(即ち配列番号1の配列を含むポリペプチド)に対応するメインピークよりも早く溶出するため、rCE-SDS電気泳動図中のプレピークに対応する。いくつかの実施形態では、rCE-SDS法は、実施例1に記載されているように行われる。
本発明は、本明細書に記載の組換えタンパク質組成物のいずれか1つと、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬製剤を含む。例えば、特定の実施形態では、医薬製剤は、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物のいずれか1つと、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む。「薬学的に許容される」とは、用いられる投与量及び濃度でヒトレシピエントに対して非毒性であり、且つ/又はヒトに投与された場合にアレルギー若しくは有害反応を生じない分子、化合物及び組成物を指す。特定の実施形態では、医薬製剤は、組換えタンパク質組成物の例えばpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明性、色調、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解速度若しくは放出速度、吸収性又は透過性を改変、維持又は保存するための材料を含有し得る。そのような実施形態では、好適な材料としては、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(グルタミン酸塩、酢酸塩、炭酸水素塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩若しくは他の有機酸など);増量剤(マンニトール若しくはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン若しくはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、マンノース若しくはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなど);着色剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸若しくは過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール若しくはソルビトールなど);界面活性剤若しくは湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパールなど);安定性促進剤(スクロース若しくはソルビトールなど);等張化促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなど);希釈剤;賦形剤並びに/又は医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。治療使用のための分子を製剤化する方法及び好適な材料は医薬分野において知られており、例えばREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyに記載されている。
本明細書に記載の組換えタンパク質組成物を含む医薬製剤としては、液体製剤、凍結製剤及び凍結乾燥製剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬製剤が凍結乾燥されている場合、凍結乾燥材料は、投与前に適切な液体で再構成される。凍結乾燥材料は、例えば、注射用静菌水(BWFI)、生理食塩水、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)又は凍結乾燥前にタンパク質組成物が存在したものと同じ製剤中で再構成され得る。再構成容量は、凍結乾燥後のタンパク質含有量及び再構成溶液中の組換えタンパク質の所望の濃度に依存するが、約0.5ml~約5mlであり得る。再構成後の溶液は、所望の用量を投与するために、必要に応じて患者に投与する前に希釈剤(例えば、生理食塩水及び/又は静脈内溶液安定剤(IVSS))で更に希釈され得る。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬製剤は、本明細書に記載の組換えタンパク質組成物、緩衝液、安定剤及び任意選択により界面活性剤を含む。緩衝液は、製剤を生理学的pH又はわずかに低いpH、典型的には約4.0~約6.5のpH範囲内に維持するために使用される。好適な緩衝液としては、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、酢酸塩、トリス、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩及びリン酸塩緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、医薬製剤は、グルタミン酸塩緩衝液、特にL-グルタミン酸塩緩衝液を含む。グルタミン酸塩緩衝液を含む医薬製剤は、約4.0~約5.5のpH、約4.0~約4.4のpH又は約4.2~約4.8のpHを有し得る。
「安定剤」とは、組換えタンパク質の天然の立体構造を安定化し、且つ/又はタンパク質の物理的若しくは化学的分解を防止するか若しくは低減させる賦形剤を指す。好適な安定剤としては、ポリオール(例えば、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール及びトレイトール)、糖(例えば、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、マルトース、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、メレジトース及びラフィノース)並びにアミノ酸(例えば、グリシン、メチオニン、プロリン、リジン、アルギニン、ヒスチジン又はグルタミン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、安定剤として糖を含む。これら及び他の実施形態では、糖は、スクロースである。
特定の実施形態では、医薬製剤は、界面活性剤を含む。「界面活性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、溶解した液体の表面張力を低減させる働きをする物質を指す。界面活性剤は、例えば、液体製剤中の凝集、粒子形成及び/若しくは表面吸着を防止若しくは制御すること又は凍結乾燥及び/若しくは凍結乾燥製剤における再構成プロセス中にこれらの現象を防止若しくは制御することを含む、多様な目的のために医薬製剤中に含まれ得る。界面活性剤としては、例えば、有機溶媒及び水溶液の両方において部分的溶解性を示す両親媒性有機化合物が挙げられる。界面活性剤の一般的な特徴としては、水の表面張力を低減させ、油と水との間の界面張力を低減させ、且つミセルも形成するそれらの能力が挙げられる。本発明の医薬製剤に組み込まれ得る界面活性剤は、非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤の両方を含む。好適な非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリ(エチレンオキシド)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドなどのアルキルポリグルコシド、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA及びコカミドTEAが挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85などを含むポリソルベート;例えばポロキサルコール又はポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)としても知られるポロキサマー188、ポロキサマー407又はポリエチレン-ポリプロピレングリコールなどを含むポロキサマー及びポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。好適なイオン性界面活性剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性及び双性イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、石鹸、脂肪酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム及び他のアルキル硫酸塩などのスルホン酸塩系又はカルボン酸塩系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシル化獣脂アミン(POEA)及び塩化ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。双性イオン又は両性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン及びココアンホグリシン酸塩が挙げられる。特定の実施形態では、医薬製剤は、非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20である。別の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80である。
特定の実施形態では、本発明の医薬製剤は、約0.5mg/mL~約2mg/mLの本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物のいずれか、約5mM~約20mMのL-グルタミン酸、約0.005%~約0.015%重量/体積(w/v)のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)及び約7%~約12%(w/v)のスクロースを含む。他の実施形態では、本発明の医薬製剤は、約0.5mg/mL~約1.5mg/mLの本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物のいずれか、約8mM~約12mMのL-グルタミン酸、約0.008%~約0.012%(w/v)のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)及び約8%~約10%(w/v)のスクロースを含む。これらの製剤のpHは、約4.0~約4.4の範囲(例えば、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3又は約4.4のpH)である。特定の一実施形態では、医薬製剤は、約0.5mg/mLの本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物、約10mMのL-グルタミン酸、約0.010%(w/v)のポリソルベート80及び約9%(w/v)のスクロースを含み、医薬製剤は、約4.2のpHを有する。
医薬製剤は、好ましくは、非経口投与に好適である。非経口投与とは、胃腸管経由以外の経路による分子の投与を指し、腹腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、皮下、脳内、脳室内及び髄腔内投与が含まれ得る。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、静脈内投与に好適である。他の実施形態では、医薬製剤は、皮下投与に好適である。非経口投与に好適な例示的な医薬形態としては、滅菌水溶液又は分散液及び注射用滅菌溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。好ましくは、医薬製剤は、無菌であり、且つシリンジ又は他の注射デバイスを介した送達を可能にするのに十分な流動性を有する(即ち、製剤は、シリンジ又は他の注射デバイスを通過するのを妨げるほど過度に粘性のあるものではない)。滅菌は、滅菌濾過膜を通す濾過によって行われ得る。組成物が凍結乾燥される場合、この濾過方法を使用した滅菌は、凍結乾燥及び再構成前又は後のいずれかに行われ得る。非経口投与用医薬製剤は、凍結乾燥形態で又は溶液中に保存され得る。非経口製剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針で穿刺可能な栓を有する静脈内注射用溶液バッグ又はバイアルに入れられ得る。非経口製剤は、シリンジ、自動注射デバイス若しくはペン型注射デバイス又はそのような注射デバイスとの使用に適合されたカートリッジ中にも保存され得る。
非経口、皮下又は静脈内投与は、注射(例えば、針及びシリンジを使用)又は注入(例えば、カテーテル及びポンプシステムを介して)によって実施され得る。いくつかの実施形態では、本発明による投与は、静脈内注射又は静脈内注入を介するものであることが想定される。通常、静脈内(IV)注入は、ライン、ポート若しくはカテーテル(小型の可撓性チューブ)、例えば中心静脈アクセス、又は大静脈に留置されるカテーテルである中心静脈カテーテル(CVC)、又は末梢静脈に留置されるカテーテルである末梢静脈カテーテル(PVC)を介して投与される。一般に、カテーテル又はラインは、頸部の静脈(内頸静脈)、胸部の静脈(鎖骨下静脈若しくは腋窩静脈)、鼠径部の静脈(大腿静脈)又は腕の静脈(PICCライン若しくは末梢挿入型中心静脈カテーテルとしても知られる)を通して留置され得る。中心IVラインは、静脈を通して進められ、大型の中心静脈(通常、上大静脈、下大静脈)又は更に心臓の右心房に流入するカテーテルを有する。末梢静脈(PIV)ラインは、末梢静脈(腕、手、脚及び足の静脈)において使用される。ポートは、外部コネクタがない中心静脈ラインであり、代わりに、これは、シリコーンゴムで被覆され、皮膚の下に埋め込まれた小型リザーバを有する。薬剤は、皮膚に小さい針を刺し、シリコーンを突き刺してリザーバに入れることにより、断続的に投与される。針が引き抜かれると、リザーバカバーは自然に再封止される。カバーは、その耐用期間中に何百回もの針刺しを許容し得る。
上記の医薬製剤は、バイアル、シリンジ、自動注射器又は他の容器若しくは送達デバイスに充填され得、且つ任意選択により医薬製品を調製するための使用指示書(例えば、疾患、障害又は状態(例えば、癌)を治療するか、予防するか又はその発生を低減させるための医薬製剤を使用するための指示書を含む処方情報)とともにキットにパッケージ化され得る。医薬製剤は、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体、結晶又は脱水粉末若しくは凍結乾燥粉末として提供され得る。医薬製剤が凍結乾燥粉末として提供される実施形態では、キットは、医薬製剤を再構成するために必要な希釈剤(例えば、注射用滅菌水、生理食塩水、リン酸塩緩衝生理食塩水、製剤緩衝液)及び投与のための製剤を調製するための指示書も含み得る。医薬製剤が静脈内投与されることが意図されている特定の実施形態では、キットは、静脈内溶液安定剤(IVSS)の1つ以上のバイアルと、患者に送達するために医薬製剤を希釈する前に、IVSSを使用してIVバッグを前処理するための指示書とを更に含み得る。IVSSは活性医薬成分を含有せず、典型的には、防腐剤を含まない緩衝溶液である。一実施形態では、IVSSは、pH7.0で、クエン酸(例えば、20~30mM)、リジン塩酸塩(例えば、1~3M)及びポリソルベート80(0.05%~0.15%(w/v))を含む。特定の実施形態では、IVSSは、pH7.0で、25mMのクエン酸、1.25Mのリジン塩酸塩及び0.1%(w/v)のポリソルベート80を含む。
本明細書に記載の組換えタンパク質組成物及びそのような組成物を含む医薬製剤は、疾患、障害又は状態の治療、予防又はその発生の低減を必要とする患者においてそれを治療するか、予防するか又はその発生を低減させるために使用され得る。本明細書で使用される「治療」又は「治療する」という用語は、疾患、障害若しくは状態(例えば癌)を有するか又は疾患、障害若しくは状態(例えば癌)と診断された患者、疾患、障害又は状態の症状を有する患者、疾患、障害又は状態を発症するリスクがある患者或いは疾患、障害若しくは状態、疾患、障害若しくは状態の1つ以上の症状、疾患、障害若しくは状態を発症するリスク又は疾患、障害若しくは状態に対する素因の、治癒、回復、緩和、軽減、変化、寛解又は改善を目的とする疾患、障害又は状態の素因を有する患者に対する組換えタンパク質組成物又はその組成物を含む医薬製剤の適用又は投与を指す。「治療」という用語は、患者における疾患の進行の遅延若しくは停止、疾患の症状の数若しくは重症度の減少又は患者が疾患の症状を有さない持続期間の頻度若しくは長さの増加を含む、患者における疾患のあらゆる改善を包含する。「患者」という用語には、ヒト患者が含まれる。
特定の実施形態では、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物及びそのような組成物を含む医薬製剤は、PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行うために使用され得る。したがって、本発明は、PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物又はその組成物を含む医薬製剤のいずれかを患者に投与することを含む方法を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行う方法で使用するための、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物又はその組成物を含む医薬製剤を提供する。他の実施形態では、本発明は、PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行うための医薬の調製における、本明細書に記載の単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子組成物又はその組成物を含む医薬製剤の使用を包含する。
「癌」という用語は、細胞の制御されない異常増殖によって引き起こされる種々の状態を指し、新生物、原発性腫瘍、続発性腫瘍及び他の転移性病変を含む。「癌」という用語には、病期、グレード、侵襲性、攻撃性又は組織型にかかわらず、種々の癌性状態が包含される。PSMA発現癌とは、新生物、原発性腫瘍、続発性腫瘍及び他の転移性病変が、検出可能なレベル(例えば、組織学的又は放射線学的手段(PSMA PETスキャン)による)のPSMAタンパク質を表面に発現する細胞を含有する、癌性状態を指す。癌は、臨床的若しくは放射線学的手段によって検出される組織内の腫瘍の存在、生体試料(例えば、組織生検)中の癌性細胞若しくは異常細胞の検出、癌若しくは前癌性状態を示すバイオマーカー(例えば、前立腺特異抗原(PSA))の検出又は癌若しくは癌を発症するリスクを示す遺伝子型の検出を含むが、これらに限定されない多くの方法で検出され得る。PSMA発現癌としては、前立腺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、精巣癌、結腸癌、神経膠芽腫、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PSMA発現癌は、前立腺癌である。前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌(アンドロゲン除去療法に抵抗性である前立腺癌)であり得る。これら及び他の実施形態では、前立腺癌は、転移性前立腺癌、特に転移性去勢抵抗性前立腺癌である。
実行された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示目的のためにのみ提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1.生産培養のpH制御を通した組換えポリペプチドの低分子量種バリアントの低減
タンパク質の組換え生産によりタンパク質のバリアントが生じる可能性があり、その一部は機能的活性の低減など、望ましくない特性又は特徴を有し得る。そのような産物関連不純物の一例は、タンパク質の低分子量(LMW)種である。LMW種には、選択的mRNAスプライスバリアントなどのトランケート型の細胞発現;発現されたタンパク質の酵素的クリッピング;又は多鎖タンパク質の場合にはポリペプチド鎖の不完全なアセンブリに起因する、タンパク質の種々のトランケート型が含まれ得る。タンパク質のLMW種は原薬の純度及び全体的な活性に影響を及ぼし得るため、タンパク質生産中のLMW種の形成を制御することは重要である。本実施例では、生産細胞培養のpHが単鎖二重特異性T細胞エンゲージ分子のLMW種のレベルに及ぼす影響について記載する。
タンパク質の組換え生産によりタンパク質のバリアントが生じる可能性があり、その一部は機能的活性の低減など、望ましくない特性又は特徴を有し得る。そのような産物関連不純物の一例は、タンパク質の低分子量(LMW)種である。LMW種には、選択的mRNAスプライスバリアントなどのトランケート型の細胞発現;発現されたタンパク質の酵素的クリッピング;又は多鎖タンパク質の場合にはポリペプチド鎖の不完全なアセンブリに起因する、タンパク質の種々のトランケート型が含まれ得る。タンパク質のLMW種は原薬の純度及び全体的な活性に影響を及ぼし得るため、タンパク質生産中のLMW種の形成を制御することは重要である。本実施例では、生産細胞培養のpHが単鎖二重特異性T細胞エンゲージ分子のLMW種のレベルに及ぼす影響について記載する。
二重特異性T細胞エンゲージ分子は、Tリンパ球エフェクター細胞を標的癌細胞に向けるように設計される。二重特異性T細胞エンゲージ分子によって誘導される標的癌細胞へのT細胞の近接は、T細胞活性化を誘発し、標的癌細胞のT細胞媒介性細胞傷害をもたらす。癌細胞上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)とT細胞上の分化抗原群3イプシロン(CD3ε)とに結合する、半減期を延長した二重特異性T細胞エンゲージャーを、ヒトPSMAに対する結合特異性を有する単鎖可変断片(scFv)ドメインと、ヒトCD3εに対する結合特異性を有するscFvドメインと、単鎖Fcドメインとを含む単鎖ポリペプチドとして設計した。PSMA×CD3 T細胞エンゲージャーポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1に記載されている。PSMA×CD3 T細胞エンゲージャーポリペプチドをコードする配列番号2のヌクレオチド配列を含む核酸を哺乳動物発現ベクターにクローニングし、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に安定的にトランスフェクトした。
解凍後、T細胞エンゲージャーポリペプチド産生CHO細胞株を一連の振盪フラスコ内の無血清選択増殖培地で培養し、続いて3Lの2段振盪フラスコ内において既知組成の選択増殖培地で培養した(N-3、N-2)。培養物を温度36.0℃、5.0%CO2でインキュベートし、N-1及び生産(N)バイオリアクタに接種するのに十分な細胞量が得られるまで増殖させた。培養物をN-2振盪フラスコからN-1 3Lバイオリアクタ(作業容量1.5L)に移した。N-1バイオリアクタを、以下のパラメータ:温度36.0℃、pH6.90、64mmHgでの溶存酸素(DO)及び350RPMでの撹拌を用いて、バッチ式で4日間動作させた。3Lの生産(N)バイオリアクタ(作業容量およそ1.5L)に約10×105細胞/mLの初期生細胞密度で播種し、交互タンジェンシャルフロー(ATF)濾過システムを使用して、0日目から3日目までバッチ式で、次いで3日目から15日目まで灌流式で稼働させた。3日目から15日目まで、無血清の既知組成灌流培地を細胞培養物に初速度0.50バイオリアクタ容積/日で継続的に供給し、8日目までに初速度を1.0バイオリアクタ容積/日まで上昇させた。生産バイオリアクタを、以下のパラメータ:温度は当初36.0℃、7日目に32.5℃に低下、64mmHgでのDO及び350RPMでの撹拌で動作させた。生産培養のpHがT細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種の発生に及ぼす作用を評価するために、生産バイオリアクタのpH設定値を6.70、6.80、6.90及び7.10で評価した。グルコース濃度を4.0g/L以上に維持するために、必要に応じてグルコース溶液をバイオリアクタに供給した。ATF濾過システム内のフィルタをマイクロフィルタに切り替えて、T細胞エンゲージャーポリペプチドがフィルタを通過して透過液に入り、且つ細胞及び細胞破片がバイオリアクタ内に保持されるようにすることにより、バイオリアクタから採取した。マイクロフィルタからの透過液を収集して、採取細胞培養液(HCCF)を得た。培養物を評価するために、生産バイオリアクタから毎日試料を採った。Cedex HiRes細胞培養分析器(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN)を使用して生細胞密度(VCD)及び細胞生存率を求めた。
T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種を、還元及び変性条件下における流体力学的サイズの差異に基づいてポリペプチドを分離する還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)法を使用して、異なるpH設定値で動作させたバイオリアクタから収集したHCCF中で測定した。HCCFの試料をプロテインAクロマトグラフィーにより精製して、細胞破片及び他のマトリックス成分からT細胞エンゲージャーポリペプチドを分離させた。次いで、精製した物質の一部を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とβ-メルカプトエタノールとを含有する還元性試料緩衝液と混合した。試料を、70℃で10分間インキュベートした後、SDSゲル緩衝液(Beckman Coulter,Brea,CA)を充填した無被覆溶融シリカキャピラリーに25℃で電気運動的に注入した。ポリペプチドがUV検出窓を通過する際に、光ダイオードアレイ検出器によってポリペプチドを検出した。UV吸光度を220nmでモニタリングした。LMW種の定量は、完全長T細胞エンゲージャーポリペプチドに対応するメインピークよりも早く溶出するピークの相対面積百分率に基づくものであった。
これらの実験の結果は、生産バイオリアクタのpH設定値を低下させると、HCCF中のT細胞エンゲージャーポリペプチドの総LMW種が低減することを示している(図1、プロセス1細胞株)。生産バイオリアクタのpH設定値を7.10から6.70に調整した場合、HCCF中の総LMW種は、平均19.5%から平均11.6%に低減した(表1)。6.70~7.10のpH範囲にわたり、pHとLMW種との関係は二次最適曲線でモデル化可能であり、統計分析により、生産バイオリアクタのpHと総LMW種との間に強い相関関係があることが示され、決定係数は、R2=0.9、補正R2=0.89であった。一元配置ANOVA及びTukey-Kramer分析により、pH7.10の条件とpH6.80及び6.70の条件との間並びにpH6.80の条件とpH6.70の条件との間でLMW種のパーセンテージに統計学的有意差が示された(表1)。加えて、生産バイオリアクタのpHは細胞培養物の増殖(VCD)及び生存率(生細胞のパーセンテージ)に影響を与え、pH6.70のバイオリアクタでは、より高いpH値で動作させたバイオリアクタと比較して、培養12日目までVCDが低減した(図2)。しかしながら、pH設定値6.70で稼働させた生産バイオリアクタは、より高いpH設定値で稼働させた他のバイオリアクタと比較して、15日間の培養期間終了時の生存率が高くなった(図3)。
要約すると、本実施例に記載した実験により、生産バイオリアクタのpH設定値を低減させると、細胞培養生産プロセス中にPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種の形成が低減することが実証される。
実施例2.低分子量種バリアントは機能的活性に影響を及ぼす
PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種の特性及びそれらが原薬の機能的活性に及ぼす影響を更に特徴付けるために、LMW種を単離するためのカチオン交換(CEX)クロマトグラフィー法を開発した。一般に、CEXクロマトグラフィーは、主に表面電荷の不均一性に基づいてタンパク質を分離する。この方法でのピークの溶出は、より早く溶出する負に荷電した種(より酸性の種)及びより遅く溶出する正に荷電した種(より塩基性の種)による正味表面電荷に応じる。
PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種の特性及びそれらが原薬の機能的活性に及ぼす影響を更に特徴付けるために、LMW種を単離するためのカチオン交換(CEX)クロマトグラフィー法を開発した。一般に、CEXクロマトグラフィーは、主に表面電荷の不均一性に基づいてタンパク質を分離する。この方法でのピークの溶出は、より早く溶出する負に荷電した種(より酸性の種)及びより遅く溶出する正に荷電した種(より塩基性の種)による正味表面電荷に応じる。
実施例1に記載のPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドを発現する細胞から得たHCCFを、プロテインAクロマトグラフィーにより部分的に精製し、次いでCapto-SP ImpRes(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science,Marlborough,MA)を利用するCEXクロマトグラフィーカラムにロードした。移動相Aは、pH4.5で100mM酢酸塩、215mM塩化ナトリウムを含有し、移動相Bは、pH4.5で100mM酢酸塩、350mM塩化ナトリウムからなった。18カラム容量(CV)にわたり、0%~80%の移動相Bで作製した直線塩勾配を使用してタンパク質を分離した。溶離液を280nmでのUV吸光度によってモニタリングした。移動相を流量150cm/時でカラムにアプライした。代表的なクロマトグラムを図4に示す。図に示すように、T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種に富むピークは、完全長ポリペプチド(約20CVで溶出するメインピークで表される)よりも遅く溶出するため、LMW種は完全長ポリペプチドよりも正に帯電している(即ちT細胞エンゲージャーポリペプチドの塩基性種である)。LMW種に富むポストピークを収集し、精製水で1:6に希釈し、CEXカラムに再ロードして2回目の分離サイクルに供した。LMW種に富むポストピークをこの2回目のサイクルから収集し、精製水で1:6に希釈し、CEXカラムに再ロードして3回目の分離サイクルに供した。最後のLMW種に富むポストピークを収集し、製剤緩衝液(10mMグルタミン酸塩、9%(w/v)スクロース、pH4.2)に透析し、膜(Mustang E膜、Pall Corporation,Port Washington,NY)に通してエンドトキシンを除去した。T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種に富むこの画分を使用して、T細胞エンゲージャーポリペプチドを含有する原薬にLMW種を特定量(25%、50%又は75%)でスパイクした。実施例1に記載のrCE-SDS法によりスパイク済み原薬試料の分析試験を行って、試料中のLMW種の量を検証した(データは示さず)。
異なる量のLMW種をスパイクした原薬試料の活性を、細胞ベースの効力アッセイ及び結合アッセイで試験した。細胞ベースの効力アッセイでは、活性化T細胞応答エレメント(NFAT-RE)の核内因子によって駆動されるルシフェラーゼレポーターを発現するヒトCD4+T細胞エフェクター細胞株(Jurkat NFAT-RE Luc細胞;カタログ#J1621、Promega,Madison,WI)及びヒトPSMAを天然に発現する前立腺癌細胞株であるC4-2B細胞を使用した。PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドは、C4-2B細胞上のPSMAとJurkat NFAT-RE Luc細胞上のCD3とに結合し、それによりT細胞をC4-2B標的細胞に近接させ、T細胞を活性化させることで、結果としてNFAT-REが介在する発光が生じる。細胞を様々な原薬試料とともに3~6時間インキュベートし、次いでルシフェラーゼ基質を添加した。プレートリーダーで発光シグナルを測定することにより、T細胞活性化を評価した。様々な量のLMW種をスパイクした各原薬試料の細胞ベースの効力アッセイにおける活性を、T細胞エンゲージャーポリペプチドの参照標準物質の活性に対して正規化し、相対効力パーセントとして報告した。
結合アッセイでは、均質近接ベースのフォーマットを利用して、PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドがヒスチジンタグ付き前立腺特異的膜抗原(PSMAhis)及びビオチン化分化抗原群3イプシロン抗原(CD3ε-ビオチン)の両方に結合する能力を測定した。具体的には、様々な濃度のPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドを一定濃度のCD3ε-ビオチン及びPSMA-hisの両方並びにドナービーズ及びアクセプタービーズとともにインキュベートした。ドナービーズは、フタロシアニンと、光増感剤と、ストレプトアビジンとを含有するヒドロゲルでコーティングされていた。アクセプタービーズは、チオキセン誘導体とニッケルキレートとを含有するヒドロゲルでコーティングされていた。PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドがCD3ε-ビオチン及びPSMA-hisに結合すると、ストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズがビオチン化CD3εに結合し、ニッケルキレートでコーティングされたアクセプタービーズがPSMA-hisに結合し、これによりビーズが近接する。この複合体にレーザーを照射すると、周囲酸素がドナービーズによって一重項酸素に変換される。ビーズが近接している場合、一重項酸素によってアクセプタービーズ内で一連の化学反応が誘導され、光生成(発光)が生じ、これがプレートリーダーによって測定される。この結合アッセイでは、PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドがCD3ε-ビオチン及びPSMA-hisに結合したときに観察されるシグナルの用量依存的増大を測定した。試験原薬試料の活性を、5点平行線分析フォーマットを使用して、試験試料の反応をPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチド参照標準物質について得た反応と比較することにより決定し、相対効力パーセントとして報告した。
図5に示すように、活性アッセイの結果から、両方のアッセイにおける原薬の効力が、原薬中に存在するLMW種の量が増加するにつれて減少することが明らかとなる。T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種に富む試料(図では100%LMW種と表示されている)は、両方のアッセイにおいて活性をほとんど示さなかった。原薬が25%のLMW種を含有する場合でも、細胞ベースの活性アッセイにおける原薬の効力は、50%近く低減した。T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種は不活性の産物バリアントであることから、本実施例に記載の実験の結果は、例えば実施例1に記載の方法を使用して、生産プロセス中にこれらのLMW種の発生を制御することの重要性を強調している。
実施例3.選択的RNAスプライシングを防止するためのコドン最適化を介した組換えポリペプチドの低分子量種バリアントの低減
真核細胞では、ゲノムDNAはまず、タンパク質コード配列(エクソン)及び非タンパク質コード配列(イントロン)の両方を含有するプレメッセンジャーRNA(mRNA)に転写される。続いて、RNAスプライシング複合体であるスプライソソームがイントロンを除去し、エクソンを互いに接合させ、所望のタンパク質をコードする最終的な成熟mRNA配列を作り出す。スプライソソームは、プレmRNAのイントロン/エクソン接合部内のドナー部位、アクセプター部位及び分岐点部位を認識する。組換えタンパク質の生産では、イントロンは、典型的には目的タンパク質をコードする核酸配列に含まれない。むしろ、所望の成熟mRNA配列のDNAコピーである相補的DNA(cDNA)が使用される。しかしながら、組換えタンパク質をコードするcDNA内にコンセンサスに近いスプライスドナー部位及びアクセプター部位が存在すると、意図しない選択的スプライシング事象が誘発される場合があり得る。これにより、したがって、オーバーハング、欠失及び挿入を含めたタンパク質のアミノ酸配列に対する改変が生じ得る。更に、スプライスドナー部位又はアクセプター部位の存在は、必ずしもスプライシングの発生を意味するわけではなく、スプライシング事象は、ドナー部位及びアクセプター部位に隣接するヌクレオチド配列(例えば、組換えタンパク質をコードするcDNAが宿主細胞のゲノムに組み込まれる部位の周囲のゲノムコンテキスト)に依存し得ることから、配列分析のみに基づいてこれらの選択的スプライシング事象がいつ発生するかを予測することは、困難であり得る(例えば、Zheng et al.,RNA,Vol.11:1777-1787,2005;Rotival et al.,Nat.Commun.,Vol.10,1671,2019を参照されたい)。
真核細胞では、ゲノムDNAはまず、タンパク質コード配列(エクソン)及び非タンパク質コード配列(イントロン)の両方を含有するプレメッセンジャーRNA(mRNA)に転写される。続いて、RNAスプライシング複合体であるスプライソソームがイントロンを除去し、エクソンを互いに接合させ、所望のタンパク質をコードする最終的な成熟mRNA配列を作り出す。スプライソソームは、プレmRNAのイントロン/エクソン接合部内のドナー部位、アクセプター部位及び分岐点部位を認識する。組換えタンパク質の生産では、イントロンは、典型的には目的タンパク質をコードする核酸配列に含まれない。むしろ、所望の成熟mRNA配列のDNAコピーである相補的DNA(cDNA)が使用される。しかしながら、組換えタンパク質をコードするcDNA内にコンセンサスに近いスプライスドナー部位及びアクセプター部位が存在すると、意図しない選択的スプライシング事象が誘発される場合があり得る。これにより、したがって、オーバーハング、欠失及び挿入を含めたタンパク質のアミノ酸配列に対する改変が生じ得る。更に、スプライスドナー部位又はアクセプター部位の存在は、必ずしもスプライシングの発生を意味するわけではなく、スプライシング事象は、ドナー部位及びアクセプター部位に隣接するヌクレオチド配列(例えば、組換えタンパク質をコードするcDNAが宿主細胞のゲノムに組み込まれる部位の周囲のゲノムコンテキスト)に依存し得ることから、配列分析のみに基づいてこれらの選択的スプライシング事象がいつ発生するかを予測することは、困難であり得る(例えば、Zheng et al.,RNA,Vol.11:1777-1787,2005;Rotival et al.,Nat.Commun.,Vol.10,1671,2019を参照されたい)。
PSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドのLMW種のレベルの上昇(例えば、>20%)が、実施例1に記載の細胞株に由来するHCCF及び配列番号2のヌクレオチド配列を含む核酸で安定的にトランスフェクトした他の3つのCHO細胞クローンにおいて観察された。遺伝的特徴付けにより、経時的に一貫しており、細胞齢とは無関係である単一のトランケート型転写物バリアントの存在が明らかになった(図6)。コード配列に隣接するプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析を、様々なクローン及びプールから単離したゲノムDNA及びcDNA(RNAから調製)で実施した。この分析の結果により、バリアントは、cDNA PCR分析からは全てのクローン及びプールで検出されたが(図7)、ゲノムDNA PCR分析では検出されなかった(データは示さず)ことが示され、これにより、バリアントが選択的スプライシングに起因する転写物バリアントであることが確認された。
配列番号2のヌクレオチド53~60にあるカッパ可変1シグナルペプチド内の強力なスプライスドナー部位(GAG|gtgcg)と、配列番号2のヌクレオチド695~708にあるPSMA scFvドメイン内のスプライスアクセプター部位(ctatttcatcAG|TT)との組み合わせを使用する選択的スプライシングが、651ヌクレオチドの欠失をもたらすこの転写物バリアントの発生に関する機序である可能性があるとの仮説を立てた(図8)。この仮説を検証するために、カッパ可変1シグナルペプチドヌクレオチド配列内のコンセンサススプライスドナー部位を、ヌクレオチド55~57にあるグリシンコドンGGTをグリシンコドンGGGに置き換えることによって排除した。加えて、PSMA scFvヌクレオチド配列のコンセンサススプライスアクセプター部位を、ヌクレオチド700~703及び704~706にあるセリンコドンTCAをセリンコドンTCC(A|GTT~C|GTT)に置き換えることによって弱めた。コードされたPSMA×CD3 T細胞エンゲージャーポリペプチドのアミノ酸配列は、これらのコドン変化の影響を受けなかった。改変核酸配列(配列番号4)を哺乳動物発現ベクターにクローニングし、CHO細胞に安定的にトランスフェクトした。図9A及び9Bに示すように、バリアントは、改変核酸配列を発現するクローンから単離したRNAのノーザンブロット又はRT-PCR分析によって検出不可であったため、配列番号4に記載の最適化した核酸配列におけるこれらのコドン改変により、より短い転写物バリアントの発生が排除された。改変核酸配列を発現する細胞から得たHCCFを、実施例1に記載のrCE-SDS法により分析して、LMW種の量を定量した。改変核酸配列を発現する細胞から単離したHCCF中に存在するLMW種のパーセントは、元の細胞株由来のHCCF中に観察された23%のLMW種から5%未満に著しく低減した(図10)。これらの結果は、元の細胞株で観察されたLMW種のレベルの上昇が、代替転写物バリアントから生じるポリペプチドのトランケート型バリアントの産生に起因することを示唆している。カッパ可変1シグナルペプチド配列内の強力なスプライスドナー部位は天然に存在するため、配列の3’末端にあるGGTグリシンコドンをGGGグリシンコドンに置き換えるための本実施例に記載したコドン改変アプローチを、選択的スプライシングを回避するために、このシグナルペプチド又はカルボキシ末端の6アミノ酸内にグリシン残基を有するシグナルペプチドを使用して任意の組換えタンパク質産物の生産に使用することができる。
生産培養のpHがPSMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーポリペプチドをコードする改変核酸配列を発現するこの第2の細胞株のLMW種のパーセンテージにも影響を及ぼすか否かを判定するために、実施例1に記載したように細胞株を培養して増殖させた。生産バイオリアクタのpH設定値を6.70、6.90及び7.10で評価した。生産バイオリアクタ及び採取プロセスの動作パラメータは、実施例1に記載したものと同じであった。この第2の細胞株(プロセス2細胞株)から得たHCCF中のLMW種のパーセントは、T細胞エンゲージャーポリペプチドをコードする異なる核酸を含有するプロセス1細胞株から得たHCCF中のLMW種よりもはるかに低いが、生産バイオリアクタのpH設定値を低減させると、存在する総LMW種が更に低減するように思われる。図1、プロセス2細胞株を参照されたい。
本明細書において論じられ、且つ引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。開示された本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料に限定されず、これらは、変化し得ることが理解される。本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことも理解される。
当業者であれば、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を、単なるルーチン実験を使用して認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
Claims (52)
- 組換えタンパク質組成物であって、低減された量の、タンパク質の低分子量(LMW)種を含む組換えタンパク質組成物を生産する方法であって、
前記タンパク質をコードする核酸を発現する哺乳動物細胞を、前記タンパク質が前記哺乳動物細胞によって発現及び分泌される期間にわたり、細胞培養培地中で培養することであって、前記培養培地のpHは、約6.90以下に維持される、培養することと、
前記発現されたタンパク質を前記細胞培養培地から回収して前記組換えタンパク質組成物を得ることであって、前記組成物は、20%未満の、前記タンパク質の総LMW種を含み、前記タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、得ることと
を含む方法。 - 前記培養培地は、約6.70~約6.90のpHに維持される、請求項1に記載の方法。
- 前記培養培地は、約6.80のpHに維持される、請求項1に記載の方法。
- 前記期間は、少なくとも3日である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記期間は、約12日~約15日である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞は、灌流培養で培養される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞は、300×105細胞/mL~800×105細胞/mLの生細胞密度まで培養される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記発現されたタンパク質は、精密濾過によって前記細胞培養培地から回収される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞は、CHO細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記タンパク質をコードする前記核酸は、配列番号2又は配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記タンパク質をコードする前記核酸は、配列番号4又は配列番号5のヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組成物は、採取細胞培養液である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組成物は、約15%以下の、前記タンパク質の総LMW種を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組成物は、約10%以下の、前記タンパク質の総LMW種を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組成物は、約2%~約10%の、前記タンパク質の総LMW種を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記LMW種は、前記タンパク質のスプライスバリアントアイソフォームを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組成物中のLMW種の量は、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム法によって決定される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
- 哺乳動物細胞からの組換えタンパク質の選択的スプライスバリアントアイソフォームの発現及び分泌を低減させる方法であって、
シグナルペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと、前記組換えタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む核酸で哺乳動物細胞をトランスフェクトすることであって、前記第1のポリヌクレオチドは、前記第2のポリヌクレオチドと同じオープンリーディングフレーム内にあり、前記第1のポリヌクレオチドは、前記シグナルペプチドのカルボキシ末端の6アミノ酸内に存在する任意のグリシン残基のグリシンをコードするGGGコドンを含む、トランスフェクトすることと、
前記組換えタンパク質が発現され、且つ細胞培養培地中に分泌される条件下において、前記培地中で前記哺乳動物細胞を培養することと、
前記細胞培養培地から前記組換えタンパク質を回収して組換えタンパク質組成物を得ることと
を含む方法。 - 前記第1のポリヌクレオチドは、配列番号6~19のいずれか1つのアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする、請求項18に記載の方法。
- 前記第1のポリヌクレオチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする、請求項19に記載の方法。
- 前記第1のポリヌクレオチドは、配列番号20のヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載の方法。
- 前記組換えタンパク質は、単鎖T細胞エンゲージ分子である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組換えタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
- 前記第2のポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の方法。
- 前記組換えタンパク質は、抗体又はその結合断片である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記核酸は、配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞は、CHO細胞である、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組換えタンパク質組成物は、約10%以下の、前記タンパク質の総LMW種を含む、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
- 前記培養培地は、約6.90以下のpHに維持される、請求項18~28のいずれか一項に記載の方法。
- 前記培養培地は、約6.70~約6.90のpHに維持される、請求項29に記載の方法。
- 前記培養培地は、約6.80のpHに維持される、請求項29に記載の方法。
- 配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5から選択されるヌクレオチド配列を含む単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子をコードする単離された核酸。
- 請求項32に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
- 請求項32に記載の単離された核酸で形質転換された哺乳動物宿主細胞。
- 請求項33に記載の発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞。
- CHO細胞である、請求項34又は35に記載の哺乳動物宿主細胞。
- 単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子を生産する方法であって、
請求項34~36のいずれか一項に記載の哺乳動物宿主細胞を、前記T細胞エンゲージ分子が発現される条件下において細胞培養培地中で培養することと、
前記培養培地又は宿主細胞から前記T細胞エンゲージ分子を回収することと
を含む方法。 - 請求項1又は18に記載の方法によって生産された組換えタンパク質組成物。
- 単鎖PSMA×CD3 T細胞エンゲージ分子と、その1種以上のLMW種とを含む組成物であって、20%未満の、前記T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含み、前記T細胞エンゲージ分子は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、組成物。
- 約15%以下の、前記T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む、請求項39に記載の組成物。
- 約10%以下の、前記T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む、請求項39に記載の組成物。
- 約2%~約10%の、前記T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む、請求項39に記載の組成物。
- 約2%~約6%の、前記T細胞エンゲージ分子の総LMW種を含む、請求項39に記載の組成物。
- 前記LMW種は、前記T細胞エンゲージ分子のスプライスバリアントアイソフォームを含む、請求項39~43のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記組成物中のLMW種の量は、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム法によって決定される、請求項39~44のいずれか一項に記載の組成物。
- 請求項38~45のいずれか一項に記載の組成物と、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬製剤。
- PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、請求項46に記載の医薬製剤を前記患者に投与することを含む方法。
- 前記PSMA発現癌は、前立腺癌である、請求項47に記載の方法。
- PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行う方法で使用するための、請求項38~45のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記PSMA発現癌は、前立腺癌である、請求項49に記載の使用のための組成物。
- PSMA発現癌の治療を、それを必要とする患者において行うための医薬の調製における、請求項38~45のいずれか一項に記載の組成物の使用。
- 前記PSMA発現癌は、前立腺癌である、請求項51に記載の使用。
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