JP2024086249A - 光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる光ファイバ用ガラス母材の製造方法を提供する。【解決手段】光ファイバ用ガラス母材の製造方法は、長手方向に延在する出発石英管の周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する工程と、ガラス微粒子堆積体を焼結して透明ガラス管材を作製する工程と、透明ガラス管材の内部をエッチングすることにより、透明ガラス管材の内部から出発石英管を含む領域を除去する工程と、出発石英管が除去された透明ガラス管材にガラスロッドを挿入する工程と、透明ガラス管材を加熱することにより、透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程と、を備える。出発石英管の厚みは0.5mm以上3.0mm以下である。除去する工程では、透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上となるようにエッチングを行う。【選択図】図2
Description
本開示は、光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法に関する。
特許文献1には、光ファイバにおけるコアとなるコアガラスの製造方法が開示されている。この製造方法では、出発石英管の外周にガラス微粒子堆積体を堆積させて焼結することにより、透明ガラス管材が製造される。そして、透明ガラス管材の内部にエッチング用ガスを導入して出発石英管を除去した後に、透明ガラス管材を中実化することで光ファイバ用コアガラス母材を製造する。
ところで、特許文献1に記載されたガラス母材の製造方法では、ガラス微粒子を堆積する際に出発石英管にOH基が付着し、ガラス微粒子堆積体の焼結時に出発石英管から透明ガラス管材にOH基が浸透し、後工程において光ファイバ用ガラス母材にOH基が拡散してしまうことがある。この場合、光ファイバ用ガラス母材を線引きして得た光ファイバにおいて伝送損失が増加する。
本開示は、光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる、光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法は、長手方向に延在する出発石英管の周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する工程と、ガラス微粒子堆積体を焼結して透明ガラス管材を作製する工程と、透明ガラス管材の内部をエッチングすることにより、透明ガラス管材の内部から出発石英管を含む領域を除去する工程と、出発石英管が除去された透明ガラス管材にガラスロッドを挿入する工程と、透明ガラス管材を加熱することにより、透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程と、を備える。出発石英管の厚みは0.5mm以上3.0mm以下である。除去する工程では、透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上となるようにエッチングを行う。
本開示によれば、光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)一実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法は、長手方向に延在する出発石英管の周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する工程と、ガラス微粒子堆積体を焼結して透明ガラス管材を作製する工程と、透明ガラス管材の内部をエッチングすることにより、透明ガラス管材の内部から出発石英管を含む領域を除去する工程と、出発石英管が除去された透明ガラス管材にガラスロッドを挿入する工程と、透明ガラス管材を加熱することにより、透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程と、を備える。出発石英管の厚みは0.5mm以上3.0mm以下である。除去する工程では、透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上となるようにエッチングを行う。
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)一実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法は、長手方向に延在する出発石英管の周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する工程と、ガラス微粒子堆積体を焼結して透明ガラス管材を作製する工程と、透明ガラス管材の内部をエッチングすることにより、透明ガラス管材の内部から出発石英管を含む領域を除去する工程と、出発石英管が除去された透明ガラス管材にガラスロッドを挿入する工程と、透明ガラス管材を加熱することにより、透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程と、を備える。出発石英管の厚みは0.5mm以上3.0mm以下である。除去する工程では、透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上となるようにエッチングを行う。
この光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、除去する工程において、透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上となるようにエッチングを行う。かかる方法によれば、光ファイバ用ガラス母材内に拡散したOH基が十分に除去される。これにより、光ファイバ用ガラス母材を線引きして得た光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる。
また、この光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、出発石英管の周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体が製造される。かかる方法によれば、ガラス微粒子を堆積させる対象物である出発石英管が中空であり、対象物に孔を開ける必要が無いため、例えば当該対象物が中実であり、孔開けする場合と比較して、光ファイバ用ガラス母材を効率良く製造することができる。その結果、光ファイバを効率良く製造することが可能となる。
(2)上記(1)に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法において、除去する工程では、エッチングする回数が1回以上5回以下であり、エッチングが1回実施された場合の透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上であってもよい。これにより、エッチングする回数が5回以下となるので、除去する工程において出発石英管を含む領域の除去に要する時間が低減される。その結果、光ファイバ用ガラス母材の製造にかかる時間を低減することができる。
(3)上記(1)または(2)に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法において、除去する工程では、透明ガラス管材及び出発石英管の断面積の減少量が748mm2以下となるようにエッチングを行ってもよい。かかる方法によれば、エッチングに用いられるガスの使用量と光ファイバ用ガラス母材の製造にかかる時間とを低減することができる。その結果、光ファイバ用ガラス母材をより効率良く製造することができる。
(4)上記(1)から(3)の何れかに係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法において、除去する工程では、断面積の減少量が163mm2以上722mm2以下となるようにエッチングを行ってもよい。この場合、母材から作製される光ファイバの伝送損失をより一層低減することができると共に、母材の製造にかかる時間を更に低減することができる。
(5)上記(1)から(4)の何れかに係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法において、ガラス微粒子堆積体を作製する工程で用いられる出発石英管のOH基濃度は、15ppm以下であってもよい。かかる方法によれば、当初から出発石英管に含まれるOH基の量が十分に少ないため、光ファイバ用ガラス母材内に拡散するOH基の量が減少する。これにより、光ファイバ用ガラス母材を線引きして得た光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる。また、上記方法によれば、除去する工程において、光ファイバ用ガラス母材内に拡散したOH基を十分に除去するために必要なガスの量と必要な時間とを低減することができる。
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかにおいて、出発石英管の内径に対する外径の比は、1.05以上1.70以下であってもよい。かかる方法によれば、出発石英管の内径に対する外径の比が1.05以上であり、出発石英管の肉厚が十分に大きいので、出発石英管において座屈が発生するときの荷重である座屈荷重が十分大きくなる。これにより、透明ガラス管材を作製する工程においてガラス微粒子堆積体が焼結される際に生じる収縮力によって、出発石英管に曲がりが生じてしまうことが抑制される。その結果、曲がりを除去する必要が無くなるため、光ファイバ用ガラス母材の製造における歩留まりの低下を抑制することができる。
また、上記方法によれば、出発石英管の内径に対する外径の比が1.70以下であり、出発石英管の肉厚が十分に小さいので、出発石英管のコストが低減されると共に、除去する工程における透明ガラス管材及び出発石英管の断面積を減少させる際に光ファイバ用ガラス母材を線引きして得た光ファイバにおける伝送損失を低減するために必要な減少量が低減される。これにより、光ファイバ用ガラス母材をより効率良く製造することができる。
(7)一実施形態として、光ファイバの製造方法は、上記(1)から上記(6)のいずれかに記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法によって製造される光ファイバ用ガラス母材を準備する工程と、光ファイバ用ガラス母材を線引きして光ファイバを製造する工程と、を備える。この場合、伝送損失を低減した光ファイバを効率良く製造することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本開示の実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法によって製造される光ファイバ用ガラス母材の一例を説明する。光ファイバ用ガラス母材1は、図1に示すように、コア部2及びクラッド部3を備える。コア部2は、例えばシリカ系ガラスからなる。コア部2には、例えば、ゲルマニウム(Ge)及び塩素(Cl)の少なくとも一種が添加され、クラッド部3より屈折率が高くなるように構成される。コア部2にはアルカリ金属群が添加されてもよい。クラッド部3は、コア部2の外側に設けられ、コア部2を取り囲むように構成される。クラッド部3は、例えばシリカ系ガラスからなり、フッ素(F)が添加されてもよい。
図2を参照して、本開示の一実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法を説明する。図2は、光ファイバ用ガラス母材の製造方法を含む光ファイバの製造方法を説明するためのフローチャートである。この光ファイバの製造方法では、光ファイバ用ガラス母材の製造方法により光ファイバ用ガラス母材が製造されることにより、光ファイバ用ガラス母材が準備される(ステップS1からステップS5)。そして、当該光ファイバ用ガラス母材が線引きされて光ファイバが製造される(ステップS6)。
図2から図7を参照して光ファイバ用ガラス母材の製造方法(ステップS1からステップS5)について詳細に説明する。図3は、ガラス微粒子堆積体を作製する工程を説明するための模式図である。図4は、ガラス微粒子堆積体を焼結してクラッド用の透明ガラス管材を作製する工程を説明するための模式図である。図5は、透明ガラス管材の内部から出発石英管を含む領域を除去する工程を説明するための模式図である。図6は、透明ガラス管材にコア用のガラスロッドを挿入する工程を説明するための模式図である。図7は、透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程を説明するための模式図である。
まず、図3に示されるように、出発石英管11の周囲にガラス微粒子を堆積させて、ガラス微粒子堆積体12を作製する(ステップS1:ガラス微粒子堆積体を作製する工程)。このガラス微粒子堆積体12を作製する工程では、最初に出発石英管11を準備する。そして、出発石英管11が回転可能となるように出発石英管11の上端を支持部Tで支持する。支持部Tで支持された出発石英管11は、上下方向にも移動可能となっている。その後、出発石英管11の外周上に、例えばVAD(Vapor-phase Axial Deposition)法を用いてガラス微粒子を堆積させ、ガラス微粒子堆積体12を作製する。具体的には、出発石英管11の下方に設置されたバーナ20を用いて、スス付けにより、ターゲットとして機能する出発石英管11の周囲にガラス微粒子を堆積させながら、出発石英管11を回転及び上下にトラバースさせて、ガラス微粒子堆積体12を作製する。この工程で製造されるガラス微粒子堆積体12は、光ファイバ用ガラス母材1のクラッド部3に対応する。
ガラス微粒子堆積体12を作製する工程で用いる出発石英管11は、例えば純石英ガラス製のパイプである。純石英ガラスとは、不純物の濃度を所定値以下に抑えた合成石英ガラスである。この所定値は、例えば、20ppm以下であってもよいし、10ppm以下であってもよいし、例えば1ppm以下である。また、出発石英管11のOH基濃度は、例えば、15ppm以下であってもよいし、10ppm以下であってもよい。例えば、出発石英管11は、無水合成石英管であり、出発石英管11のOH基濃度は1ppm以下であってもよい。例えば、出発石英管11は、長手方向に延在している。出発石英管11の長手方向における長さは、800mm以上3000mm以下であってもよいし、1400mm以上2400mm以下であってもよく、例えば1900mmである。出発石英管11の厚みは、0.5mm以上3.0mm以下であってもよい。
また、出発石英管11は、中空のパイプであり、後述するガラス微粒子堆積体12を焼結する際にガラス微粒子堆積体12から受ける収縮力に十分に対応できる強度を有している。即ち、出発石英管11は、所定値以上の座屈荷重を有している。座屈荷重とは、座屈が発生する際の荷重であり、出発石英管11のような細長い部材が圧縮力により曲がることを防ぐための指標として用いることができる。座屈荷重は、断面二次モーメントIの値に基づいて算出することができる。断面二次モーメントIは、出発石英管11の曲げにくさを示し、曲げモーメントにどの程度耐えられるかを示す指標である。
出発石英管11の断面が中空な円形状である場合、当該断面に平行な方向に関する断面二次モーメントIは、以下の式(1)で表される。Dは、出発石英管11の断面における外径である。dは、出発石英管11の断面における内径である。
本発明者らの知見によれば、出発石英管11の外径Dを内径dで除した値を外径/内径比Rとした場合、Rが1.05以上1.70以下である出発石英管11を用いることにより、ガラス微粒子堆積体12を焼結させた際の収縮による出発石英管11の座屈を抑制できることがわかってきている。なお、出発石英管11における外径/内径比Rは、1.20以上1.41以下であってもよい。出発石英管11における外径/内径比Rがこのような範囲又は値であることにより、出発石英管11の座屈をより一層抑制しつつ、製造コストを抑制することができる。
また、ガラス微粒子堆積体12を作製する工程では、より具体的には、バーナ20に供給される可燃性ガス(例えば水素)の燃焼により得られる火炎内でガラス原料ガスからガラス微粒子を生成し、ガラス微粒子を上述した出発石英管11の外周上に堆積させてガラス微粒子堆積体12を作製する。バーナ20には、可燃性ガスに加え、ガス供給システム(不図示)から供給されるガラス原料ガス(例えばSiCl4)と酸素(O2)が導入される。バーナ20の火炎内では、以下に示す、ガラス原料ガスの加水分解反応及び燃焼反応によりガラス微粒子(SiO2)が生成され、火炎内で生成されるガラス微粒子が、バーナ20からガラス微粒子堆積体12へ吹き付けられる。
SiCl4+2H2O → SiO2+4HCl
ガラス微粒子堆積体12におけるススの嵩密度は、0.20g/cm3以上0.61g/cm3以下であってもよく、例えば、0.36g/cm3以上0.42g/cm3以下である。なお、このガラス微粒子堆積体12の作製工程では、酸水素バーナからOH基も発生することがあり、発生したOH基が出発石英管11等に浸透し、OH基濃度が上昇する。
SiCl4+2H2O → SiO2+4HCl
ガラス微粒子堆積体12におけるススの嵩密度は、0.20g/cm3以上0.61g/cm3以下であってもよく、例えば、0.36g/cm3以上0.42g/cm3以下である。なお、このガラス微粒子堆積体12の作製工程では、酸水素バーナからOH基も発生することがあり、発生したOH基が出発石英管11等に浸透し、OH基濃度が上昇する。
なお、上記のガラス微粒子の堆積工程では、VAD法でのガラス微粒子堆積体12の製造方法を説明したが、OVD(Outside Vapor Deposition)法を用いて、出発石英管11の外周上にガラス微粒子堆積体12を作製してもよい。
続いて、スス付けが終了した後(ステップS1:終了)に、図4に示されるように、ガラス微粒子堆積体12を焼結して透明ガラス管材13を作製する(ステップS2:透明ガラス管材を作製する工程)。透明ガラス管材13を作製する工程では、ガラス微粒子堆積体12を加熱炉21で透明ガラス化して、透明ガラス管材13を作製する。透明ガラス管材13は、光ファイバ用ガラス母材1のクラッド部3となる。加熱炉21の温度は、例えば1500℃である。本実施形態では、上述した外径/内径比Rを有する出発石英管11を用いているため、この工程でガラス微粒子堆積体12を焼結しても、出発石英管11が曲がらない(座屈しない)ようになっている。
そして、透明ガラス管材13を作製する工程では、透明ガラス管材13を作製した後に、透明ガラス管材13が更に800℃以上1300℃以下で熱処理されることによりアニール処理される。これにより、透明ガラス管材13の表面の不均一性が除去される。具体的には、透明ガラス管材13の表面における傷、凹凸、及び異物等による不均一性が除去される。透明ガラス管材13の内部の歪みが除去される。透明ガラス管材13の表面に付着したガラス微粒子による曇りが除去される。なお、ガラス微粒子堆積体12の焼結及びアニール時の熱処理により、出発石英管11及びその周辺に浸透している又は当初より含有されているOH基が径方向の外側に向かって拡散する。
続いて、透明ガラス管材13を作製した(ステップS2:終了)後に、図5に示されるように、透明ガラス管材13の内部の出発石英管11を含む領域を除去する(ステップS3:出発石英管を含む領域を除去する工程)。出発石英管11を含む領域を除去する工程では、透明ガラス管材13の周囲に加熱源22を配置する。透明ガラス管材13及び出発石英管11を出発石英管11の長手方向において加熱源22に対して相対的に移動させながら透明ガラス管材13の内部をガス23でエッチングする(気相エッチング)。このとき、出発石英管11がエッチングにより除去されると共に、透明ガラス管材13の内側側面13aがエッチングされる。加熱源22は、加熱温度を切り替えることが可能な誘導炉である。ガス23は、エッチングに使用可能なガスであればよく、例えば、六フッ化硫黄ガス(SF6)である。
出発石英管11を含む領域を除去する工程における気相エッチングでは、透明ガラス管材13の第1の端13cから第2の端13dまで加熱源22を移動させる操作は、例えば1回以上5回以下実施される。この回数では、透明ガラス管材13の第1の端13cから第2の端13dまでの片道の移動を1回とする。加熱源22を第2の端13dから第1の端13cまで戻す操作は、回数にカウントされない。また、1回の操作による出発石英管11及び透明ガラス管材13の断面積の減少量(エッチング量)は、例えば、149mm2以上である。エッチング量の合計(以下、「合計エッチング量」と表記する)は、例えば、748mm2以下であり、163mm2以上722mm2以下であってもよい。このようなエッチングにより、加熱処理等によってOH基が拡散している領域を除去することができる。なお、出発石英管11を含む領域を除去する工程では、透明ガラス管材13の第1の端13c及び第2の端13dをエッチングする際の速度は、透明ガラス管材13の第1の端13c及び第2の端13d以外(平行部)をエッチングする際の速度の0.95倍より遅くてもよい。
また、気相エッチングでは、透明ガラス管材13及び出発石英管11の内部に導入されるガス23の量は、合計エッチング量に対応しており、例えば100sccm以上1000sccm以下である。また、気相エッチングにおいて加熱源22に対する透明ガラス管材13及び出発石英管11の相対的な移動速度は、例えば、3.0mm/min以上15.0mm/min以下で、例えば、9.0mm/minである。加熱源22の温度は、1000℃以上2000℃以下である。なお、合計エッチング量は、例えば、149mm2以上722mm2以下であってもよい。
続いて、出発石英管11を含む領域を除去した後(ステップS3:終了)に、即ち透明ガラス管材の内部に拡散しているOH基を除去した後に、図6に示されるように透明ガラス管材13の内孔13b内に、別途作製したガラスロッド14を挿入する(ステップS4)。ガラスロッド14は、光ファイバを製造する際に光ファイバ用ガラス母材1のコア部2となる。上述したように、出発石英管11が座屈を抑制できる強度を有しているため、出発石英管11が取り除かれた内孔13bが曲がっておらず、ガラスロッド14を透明ガラス管材13内に容易に挿入することができる。
最後に、図7に示されるように、減圧された環境において透明ガラス管材13とガラスロッド14とを一体化する(ステップS5:透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程)。透明ガラス管材とガラスロッドとを一体化する工程では、加熱源22の温度を例えば2000℃程度に昇温し、透明ガラス管材13の内孔と外側との圧力の差を減圧雰囲気で、例えば-0.5kPaから-15kPa程度にする。程度にする。透明ガラス管材13を、透明ガラス管材13の長手方向において加熱源22に対して相対的に移動させながら加熱することにより、透明ガラス管材13とガラスロッド14とを一体化する。このとき、加熱源22に対する透明ガラス管材13の相対的な移動速度は、例えば10mm/minとなる。なお、一体化する工程では従来の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明は省略する。以上により、図1に示す光ファイバ用ガラス母材1を得ることができる。そして、このように準備された光ファイバ用ガラス母材1を線引きして光ファイバを製造する(図2のステップS6を参照)。
ここで、上述した光ファイバ用ガラス母材1の製造方法において、出発石英管11の物性値及び出発石英管11を含む領域を除去する際のエッチング量を変更した場合のシミュレーションによる実験結果について説明する。このシミュレーションでは、上記実施形態に示す光ファイバ用ガラス母材1の製造方法により光ファイバ用ガラス母材1を製造する。
表1は、実験例1から実験例13のシミュレーションにおける実験条件をまとめた表である。表1では、合計エッチング量(mm2)、出発石英管11の外径/内径比R、及び出発石英管11におけるOH基濃度(ppm)、光ファイバ用ガラス母材1から製造した光ファイバに1380nmの波長の光信号を入力した場合の減衰量α1.38(dB/km)、及び光ファイバ用ガラス母材1の製造コストが示されている。なお、エッチング回数は、狙いのエッチング量になるように回数を調整した。また、光ファイバ用ガラス母材1の製造コストは、出発石英管11を中実なガラスロッドに置き換えてガラス微粒子堆積体を作製し、ガラスロッドを除去するためにガラスロッドに孔を開ける工程を備える比較例に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法における各値に対する相対値として示されている。光ファイバ用ガラス母材1の製造コストは、比較例と同じであればB、比較例より良くなればA、比較例より悪くなればCとした。なお、「製造コストが比較例と同じ」である場合、製造コストは、比較例に対して0.99倍より大きく1.01倍より小さいものとする。また、「比較例より製造コストが良い」場合、製造コストは、比較例に対して0.99倍より小さいものとする。「比較例より製造コストが悪い」場合、製造コストは、比較例に対して1.01倍より大きいものとする。また、表1では、減衰量α1.38が、0.6dB/km未満である場合を「A」、0.6dB/km以上1.3dB/km未満である場合を「B」、1.3dB/km以上2.0dB/km未満を「C」、2.0dB/km以上である場合を「D」としてそれぞれ記載されている。さらに、減衰量α1.38がA、B及びCである場合を光ファイバから出力される光信号の品質が基準を上回っている場合としている。
実験例1から実験例13では、まず、表1に示される外径/内径比R及びOH基濃度を有する出発石英管が準備される。そして、当該出発石英管11にガラス微粒子が堆積されてガラス微粒子堆積体12が製造される。続いて、ガラス微粒子堆積体12は、1500℃で焼結されることにより、透明ガラス化されて透明ガラス管材13になる。続いて、透明ガラス管材13の内部から出発石英管11を含む領域が除去され且つ上述した合計エッチング量となるように、気相エッチングが実施される。続いて、透明ガラス管材13の内部にガラスロッド14が挿入され、透明ガラス管材13とガラスロッド14とが一体化されることにより、光ファイバ用ガラス母材1が製造される。
実験例1、2、4、5、6、9、10、12では、減衰量α1.38がA,B及びCのいずれか(2.0dB/km未満)であり且つ光ファイバ用ガラス母材の製造コストが比較例における光ファイバ用ガラス母材の製造コストと同一または該製造コストを下回っている。実験例3及び13では、減衰量α1.38がD(2.0dB/km以上)であり、光ファイバ用ガラス母材から製造した光ファイバから出力される光信号の品質が基準を下回っている。すなわち、実験例3及び13では、α1.38が規格を超える。実験例7、8、11では、光ファイバ用ガラス母材の製造コストが、比較例における光ファイバ用ガラス母材の製造コストを上回っている。
実験例1から実験例3では、合計エッチング量を減少させた場合の減衰量α1.38及び製造コストの変化を評価している。このシミュレーションでは、実験例1における合計エッチング量が163mm2である場合に、実験例2及び実験例3における合計エッチング量を149mm2及び141mm2と減少させた場合の減衰量α1.38及び製造コストの変化を示している。実験例1と実験例2及び実験例3との対比から明らかなように、合計エッチング量を減少させると、光ファイバ用ガラス母材内に拡散したOH基を十分に除去することができなくなるので、該光ファイバ用ガラス母材から製造した光ファイバから出力される光信号の品質が基準を下回る。具体的には、実験例1において減衰量α1.38がBである場合に、実験例2の減衰量α1.38が増加してCとなり、実験例3の減衰量α1.38が増加してDとなる。なお、合計エッチング量が減少すると光ファイバ用ガラス母材の製造コストが低減する傾向がある。また、減衰量α1.38が増加することにより、光ファイバ用ガラス母材1から製造した光ファイバに1550nmの波長の光信号を入力した場合の減衰量α1.55(dB/km)が増加する可能性もある。
実験例4から実験例7では、除去する工程における合計エッチング量を増加させた場合の減衰量α1.38及び製造コストの変化を評価している。このシミュレーションでは、実験例4における合計エッチング量が465mm2である場合に、実験例5から実験例7における合計エッチング量を722mm2、748mm2及び774mm2と増加させた場合の減衰量α1.38及び製造コストの変化を示している。実験例4と実験例5から実験例7との対比から明らかなように、合計エッチング量を増加させるとエッチングに用いられるガスの使用量及び光ファイバ用ガラス母材の製造にかかる時間が増加するので、製造コストが増加する。具体的には、実験例4において製造コストが(A)である場合に、実験例5の製造コストが実験例4より増加し(A)、実験例6の製造コストが(B)に増加し、実験例7の製造コストが(C)に増加する。なお、実験例5から実験例7では、実験例4と比較して減衰量α1.38は増加しない。
実験例8から実験例11では、外径/内径比Rを変化させた場合の合計エッチング量、減衰量α1.38及び製造コストの変化を評価している。このシミュレーションでは、実験例10における外径/内径比Rが1.20である場合に、実験例8、実験例9及び実験例11における外径/内径比Rを1.71、1.41及び1.04と変化させた場合の合計エッチング量、減衰量α1.38及び製造コストの変化を示している。
実験例10と実験例8及び実験例9との対比から明らかなように、外径/内径比Rを増加させると出発石英管の肉厚が増加し、出発石英管のコストが増加すると共にOH基の除去に必要な合計エッチング量が増加するので製造コストが増加する。具体的には、実験例10において合計エッチング量が481mm2、製造コストが(A)である場合に、実験例9の合計エッチング量が639mm2に増加し、製造コストが実験例10より増加し(A)、実験例8の合計エッチング量が802mm2に増加し、製造コストが(C)に増加する。なお、実験例8では、実験例10と比較して減衰量α1.38が増加している。また、実験例9では、実験例10と比較して減衰量α1.38に大きな変化はない。
実験例10と実験例11との対比から明らかなように、外径/内径比Rを減少させると、出発石英管の肉厚が減少し、断面二次モーメントが小さくなり座屈荷重が小さくなるので、光ファイバ用ガラス母材において曲がり部分が大きくなる。その結果、歩留まりが悪化するので製造コストが増加する。具体的には、実験例10において製造コストが(A)である場合に、実験例11の製造コストが(C)に増加する。なお、実験例10において合計エッチング量が481mm2である場合に、実験例11では、外径/内径比Rが減少することにより合計エッチング量が320mm2に減少している。
図8は、出発石英管の外径/内径比Rと製造コストとの関係を示す図である。図8では、実験例3、4、8から13における出発石英管の外径/内径比Rと製造コストとの関係をグラフにプロットして近似曲線が引かれている。当該曲線により、製造コストが比較例の1倍以下となる場合、出発石英管の外径/内径比Rが例えば1.05以上1.70以下であることが確認される。
実験例12及び実験例13では、無水合成石英管ではない石英管に出発石英管11を置き換えた場合の減衰量α1.38及び製造コストの変化を評価している。このシミュレーションでは、実験例12で用いた出発石英管のOH基濃度が1ppm未満である場合に、実験例13で用いた出発石英管のOH基濃度を増加させ、1ppm以上且つ200ppm未満とした場合の減衰量α1.38及び製造コストの変化を示している。実験例12と実験例13との対比から明らかなように、出発石英管のOH基濃度が増加すると光ファイバ用ガラス母材内に拡散するOH基の質量が増加するので、同じ合計エッチング量となるようにエッチングしても、該光ファイバ用ガラス母材から製造した光ファイバから出力される光信号の品質が基準を下回る。具体的には、実験例12において減衰量α1.38がAである場合に、実験例13において、減衰量α1.38が増加してDとなる。なお、実験例13では、実験例12と比較して製造コストは悪化しない。
以上の結果から、出発石英管のOH基濃度が1ppmより小さいこと、合計エッチング量が149mm2以上748mm2以下であること、及び出発石英管の外径/内径比Rが1.05以上1.70以下であることの少なくともいずれかにより、減衰量α1.38をA、B及びCとすることができると共に光ファイバ用ガラス母材の製造コストを比較例よりも0%から6%程度低減可能であることが確認される。この製造コストの低下は、海底用ファイバ等の長距離伝送用の光ファイバを大量に生産する際のコスト削減に大きく寄与する。
ここで、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法による作用効果を説明する。最初に、光ファイバ用ガラス母材の製造方法の課題についてより詳細に説明する。本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、ガラス微粒子堆積体12の焼結時に出発石英管11から透明ガラス管材13にOH基が浸透し、後工程において光ファイバ用ガラス母材1にOH基が拡散する。このOH基は光ファイバにおける減衰量α1.38の低下の原因となるため、出発石英管を含む領域を除去する工程においてOH基が透明ガラス管材13から除去される。
図9の(a)部及び(b)部は、光ファイバ用ガラス母材の製造方法におけるOH基の挙動について説明するための図である。ガラス微粒子堆積体を作製する工程において、ガラス微粒子の堆積に用いるバーナ20から発生するOH基が出発石英管11の外周に吸着して浸透する。これにより、図9の(a)部に示される分布d1のように、出発石英管11の外周にOH基が分布する。分布d1は、ガラス微粒子堆積体12及び出発石英管11の断面におけるOH基の分布を示している。そして、透明ガラス管材を作製する工程から出発石英管を含む領域を除去する工程までにおいてOH基が透明ガラス管材13内に拡散する。図9の(b)部に示される例では、透明ガラス管材13がアニール処理された後、OH基が透明ガラス管材13の内部に分布d2のように分布する。分布d2は、透明ガラス管材13及び出発石英管11の断面におけるOH基の分布を示している。そして、出発石英管を含む領域を除去する工程において、透明ガラス管材13の内側側面13aがエッチングされることによって、透明ガラス管材13からOH基が除去される。
ここで、除去する工程において合計エッチング量(透明ガラス管材13及び出発石英管11の断面積の減少量)が少ないとOH基を十分に除去できずに、減衰量α1.38が増加する。また、減衰量α1.38が増加することにより、減衰量α1.55が増加する可能性もある。一方、除去する工程において、合計エッチング量が多いとエッチングに用いられるガス23の使用量及び光ファイバ用ガラス母材1の製造にかかる時間が増加する。以上のことから、減衰量α1.38の増加を抑制することができると共に、エッチングに用いられるガス23の使用量及び光ファイバ用ガラス母材1の製造にかかる時間を低減することができるように、合計エッチング量が適切に設定されることが望まれている。
そこで、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、除去する工程において、合計エッチング量が149mm2以上となるようにエッチングを行う。かかる方法によれば、光ファイバ用ガラス母材1内に拡散したOH基が十分に除去される。これにより、光ファイバ用ガラス母材1を線引きして得た光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる。具体的には、減衰量α1.38の低下を抑制することが可能となる。これにより、減衰量α1.55の低下を抑制することも可能となる。
また、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、出発石英管11の周囲に、ガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体12が製造される。かかる方法によれば、ガラス微粒子を堆積させる対象物である出発石英管11が中空であり、対象物に孔を開ける必要が無いため、例えば対象物が中実であり、孔開けする場合と比較して、光ファイバ用ガラス母材1をより効率良く製造することができる。その結果、光ファイバをより効率良く製造することが可能となる。
また、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、除去する工程において、エッチングする回数が1回以上5回以下であり、エッチング量(エッチングが1回実施された場合の透明ガラス管材13及び出発石英管11の断面積の減少量)が149mm2以上であってもよい。ここで、透明ガラス管材13が光ファイバのコアとなる場合、出発石英管11を含む領域を除去する工程においてエッチングを実施する際に透明ガラス管材13を誤って削ってしまうとコアガラスの屈折率分布が設計からずれてしまう。したがって、エッチング量は、例えば60mm2以下に制限される。一方、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、透明ガラス管材13は光ファイバのクラッドとなるので、エッチング量を149mm2以上とすることが許容される。これにより、除去する工程において出発石英管11の除去に要する時間が低減される。その結果、光ファイバ用ガラス母材1の製造にかかる時間を低減することができる。また、エッチング回数が多いと光ファイバ用ガラス母材の製造時間が増えて、製造コストが増加する。本実施形態に係るファイバ用ガラス母材の製造方法では、エッチング回数を5回以下にすることによっても、光ファイバ用ガラス母材1の製造にかかる時間を低減し、光ファイバ用ガラス母材1の製造コストを抑えることができる。
また、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、除去する工程において、合計エッチング量が748mm2以下となるようにエッチングを行ってもよい。かかる方法によれば、エッチングに用いられるガス23の使用量と光ファイバ用ガラス母材1の製造にかかる時間とを低減することができる。その結果、光ファイバ用ガラス母材1をより効率良く製造することができる。
また、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、除去する工程では、合計エッチング量が163mm2以上722mm2以下となるようにエッチングを行ってもよい。この場合、光ファイバ用ガラス母材1から作製される光ファイバの伝送損失をより一層低減することができると共に、光ファイバ用ガラス母材1の製造にかかる時間を更に低減することができる。
また、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、ガラス微粒子堆積体を作製する工程で用いられる出発石英管11のOH基濃度は、15ppm以下であってもよい。かかる方法によれば、当初から出発石英管11に含まれるOH基の量が十分に少ないため、光ファイバ用ガラス母材1内に拡散するOH基の量が減少する。これにより、光ファイバ用ガラス母材1を線引きして得た光ファイバにおける伝送損失を低減することが可能となる。また、上記方法によれば、除去する工程において、光ファイバ用ガラス母材1内に拡散したOH基を十分に除去するために必要なガス23の量と必要な時間とを低減することができる。
また、本実施形態に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法では、出発石英管11の外径/内径比Rは、1.05以上1.70以下であってもよい。かかる方法によれば、出発石英管11の外径/内径比Rが1.05以上であり、出発石英管11の肉厚が十分に大きいので、出発石英管11において座屈が発生するときの荷重である座屈荷重が十分大きくなる。これにより、透明ガラス管材13を作製する工程においてガラス微粒子堆積体12が焼結される際に生じる収縮力によって、出発石英管11に曲がりが生じてしまうことが抑制される。その結果、曲がりを除去する必要が無くなるため、光ファイバ用ガラス母材1の製造における歩留まりの低下を抑制することができる。
また、上記方法によれば、出発石英管11の外径/内径比Rが1.70以下であり、出発石英管11の肉厚が十分に小さいので、出発石英管11のコストが低減されると共に、除去する工程における透明ガラス管材13及び出発石英管11の断面積を減少させる際に光ファイバ用ガラス母材1を線引きして得た光ファイバにおける伝送損失を低減するために必要な合計エッチング量が低減される。これにより、光ファイバ用ガラス母材をより効率良く製造することができる。
また、本実施形態に係る光ファイバの製造方法では、光ファイバ用ガラス母材の製造方法によって製造される光ファイバ用ガラス母材1を準備する工程と、光ファイバ用ガラス母材1を線引きして光ファイバを製造する工程と、を備える。この場合、伝送損失を低減した光ファイバを効率良く製造することができる。
以上、本開示に係る光ファイバ用ガラス母材の製造方法及び光ファイバの製造方法について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態や変形例に適用することが可能である。
1…光ファイバ用ガラス母材
2…コア部
3…クラッド部
11…出発石英管
12…ガラス微粒子堆積体
13…透明ガラス管材
13a…内側側面
13b…内孔
13c…第1の端
13d…第2の端
14…ガラスロッド
20…バーナ
21…加熱炉
22…加熱源
23…ガス
T…支持部
2…コア部
3…クラッド部
11…出発石英管
12…ガラス微粒子堆積体
13…透明ガラス管材
13a…内側側面
13b…内孔
13c…第1の端
13d…第2の端
14…ガラスロッド
20…バーナ
21…加熱炉
22…加熱源
23…ガス
T…支持部
Claims (7)
- 長手方向に延在する出発石英管の周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する工程と、
前記ガラス微粒子堆積体を焼結して透明ガラス管材を作製する工程と、
前記透明ガラス管材の内部をエッチングすることにより、前記透明ガラス管材の内部から前記出発石英管を含む領域を除去する工程と、
前記出発石英管が除去された前記透明ガラス管材にガラスロッドを挿入する工程と、
前記透明ガラス管材を加熱することにより、前記透明ガラス管材と前記ガラスロッドとを一体化する工程と、
を備え、
前記出発石英管の厚みは0.5mm以上3.0mm以下であり、
前記除去する工程では、前記透明ガラス管材及び前記出発石英管の断面積の減少量が149mm2以上となるようにエッチングを行う、光ファイバ用ガラス母材の製造方法。 - 前記除去する工程では、エッチングする回数が1回以上5回以下であり、エッチングが1回実施された場合の前記断面積の減少量が149mm2以上である、
請求項1に記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法。 - 前記除去する工程では、前記断面積の減少量が748mm2以下となるようにエッチングを行う、
請求項1に記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法。 - 前記除去する工程では、前記断面積の減少量が163mm2以上722mm2以下となるようにエッチングを行う、
請求項1に記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法。 - 前記ガラス微粒子堆積体を作製する工程で用いられる前記出発石英管のOH基濃度は、15ppm以下である、
請求項1に記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法。 - 前記出発石英管の内径に対する外径の比は、1.05以上1.70以下である、
請求項1に記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ファイバ用ガラス母材の製造方法によって製造される光ファイバ用ガラス母材を準備する工程と、
前記光ファイバ用ガラス母材を線引きして光ファイバを製造する工程と、
を備える、光ファイバの製造方法。
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