JP2023526433A - レダクターゼ酵素ならびにレダクターゼ酵素の製造方法および使用方法 - Google Patents
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Abstract
本開示は、N-(7-((2S,4R,5R)-4-フルオロ-3,3-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-4-オキソ-4,7-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)イソブチルアミドを還元する能力を含む、天然に存在する野生型ケトレダクターゼ酵素と比較して改良された特性を有するケトレダクターゼ酵素を提供する。該ケトレダクターゼ酵素をコードするポリヌクレオチド、該ケトレダクターゼ酵素を発現しうる宿主細胞、およびN-(9-((2R,3S,4S,5R)-4-フルオロ-3-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-6-オキソ-6,9-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)イソブチルアミドを合成するための該ケトレダクターゼ酵素の使用方法も提供する。【選択図】図1
Description
発明の分野
本発明は、ケトンからキラルアルコールへの還元を含む生体触媒プロセスおよび合成プロセスにおいて有用なケトレダクターゼ酵素に関する。そのような酵素は、ヌクレオシドおよびヌクレオチド、例えばフッ化ヌクレオチドの製造において特に有用でありうる。
本発明は、ケトンからキラルアルコールへの還元を含む生体触媒プロセスおよび合成プロセスにおいて有用なケトレダクターゼ酵素に関する。そのような酵素は、ヌクレオシドおよびヌクレオチド、例えばフッ化ヌクレオチドの製造において特に有用でありうる。
電子的に提出される配列表に対する言及
本出願の配列表は、「24998WOPCT-SEQTEXT-14MAY2021.txt」なるファイル名、2021年5月14日の作成日および24KBのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Web経由で電子的に提出される。EFS-Web経由で提出されるこの配列表は本明細書の一部であり、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
本出願の配列表は、「24998WOPCT-SEQTEXT-14MAY2021.txt」なるファイル名、2021年5月14日の作成日および24KBのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Web経由で電子的に提出される。EFS-Web経由で提出されるこの配列表は本明細書の一部であり、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
酵素は、生きた細胞の化学反応を(多くの場合、数桁)加速するように働くタンパク質分子である。酵素がなければ、ほとんどの生化学反応は遅すぎて、生命過程を行うことすらできない。酵素は大きな特異性を示し、反応へのその関与によって永久的に修飾されることはない。酵素は反応中に変化しないため、所望の化学変換のための触媒として費用効果的に使用されうる。
アルコールデヒドロゲナーゼとしても公知であるケトレダクターゼは、ケトンからキラルアルコールへの選択的還元を触媒する酵素の特定のクラスである還元酵素である。ケトレダクターゼまたはカルボニルレダクターゼクラスに属する酵素は光学活性アルコールの合成に有用である。ケトレダクターゼ酵素はケトンまたはアルデヒド基質を対応キラルアルコール生成物へと選択的に変換しうる。これらの酵素はまた、逆反応において、アルコールを対応ケトンまたはアルデヒドへと変換しうる。ケトンおよびアルデヒドの酵素的還元は、電子供与体として作用しうる補因子の関与を要し、一方、アルコールの酵素的酸化は、電子受容体として作用しうる補因子の関与を要する。
ケトレダクターゼ酵素は本質的によく知られており、ケトレダクターゼ酵素およびケトレダクターゼ酵素の配列をコードする多数の遺伝子が報告されている。例えば、カンジダ・マグノリエ(Candida magnoliae)(Genbankアクセッション番号JC7338;GI:11360538)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)(Genbankアクセッション番号10 BAA24528.1;GI:2815409)、スポロボロミセス・サルモニコロール(Sporobolomyces salmonicolor)(Genbankアクセッション番号AF160799;GI:6539734)およびロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)(Genbankアクセッション番号AAN73270.1;GI:34776951)を参照されたい。
ケトレダクターゼ酵素は、重要な化合物への代替合成経路を得るために、益々頻繁に使用されてきている。ケトレダクターゼ酵素が使用される場合、それは、精製された酵素として、または所望のケトレダクターゼを発現する全細胞として提供されうる。合成経路の改善に対するそれらの有望さを考慮して、特定のキラルアルコールを製造するための変換を行うために使用されうる追加的なケトレダクターゼ酵素を特定することが尚も必要とされている。
発明の概括
本開示は、特にヌクレオチド合成の一部として、ケトンをキラルアルコールに変換しうるケトレダクターゼ酵素に関する。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている当該ケトレダクターゼ酵素はフルオロヌクレオチドの合成においてケトンをキラルアルコールに変換しうる。特に、本明細書に記載されている当該ケトレダクターゼ酵素は、フッ化ヌクレオシド、例えば3’-フルオロ-チオ-グアノシン一リン酸または3’-F-チオ-GMPとしても公知である三ナトリウム O-{[(2R,3S,4S,5R)-5-(2-アミノ-6-オキシド-9H-プリン-9-イル)-3-フルオロ-4-ヒドロキシオキソラン-2イル]メチル}ホスホロチオアート水和物(1:6)の製造において有用でありうる。そのようなフッ化ヌクレオシドは、生物活性化合物として、および/またはより複雑な生物活性化合物の合成のための中間体として有用でありうる。
本開示は、特にヌクレオチド合成の一部として、ケトンをキラルアルコールに変換しうるケトレダクターゼ酵素に関する。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている当該ケトレダクターゼ酵素はフルオロヌクレオチドの合成においてケトンをキラルアルコールに変換しうる。特に、本明細書に記載されている当該ケトレダクターゼ酵素は、フッ化ヌクレオシド、例えば3’-フルオロ-チオ-グアノシン一リン酸または3’-F-チオ-GMPとしても公知である三ナトリウム O-{[(2R,3S,4S,5R)-5-(2-アミノ-6-オキシド-9H-プリン-9-イル)-3-フルオロ-4-ヒドロキシオキソラン-2イル]メチル}ホスホロチオアート水和物(1:6)の製造において有用でありうる。そのようなフッ化ヌクレオシドは、生物活性化合物として、および/またはより複雑な生物活性化合物の合成のための中間体として有用でありうる。
追加的な実施形態は当該ケトレダクターゼ酵素の製造方法および当該ケトレダクターゼ酵素の使用方法を記載する。
本発明の他の実施形態、態様および特徴は、以下の説明、実施例および添付の特許請求の範囲に更に詳細に記載されており、またはそれらから明らかであろう。
発明の詳細な説明
定義
特定の科学技術用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で特に示されていない限り、本明細書で用いる他の全ての科学技術用語は、本開示に関連する当業者によって一般に理解されている意味を有する。それでも、特に示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって以下の定義が適用される。化学名、一般名および化学構造は、同一構造を表すために互換的に用いられうる。化学構造と化学名との両方を用いて化合物が示されており、構造と名称との間に不明確さが存在する場合には、構造が優先される。特に示されていない限り、これらの定義は、用語が単独で用いられているか他の用語と組合せて用いられているかに無関係に適用される。したがって、「アルキル」の定義は「アルキル」ならびに「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「-O-アルキル」などの「アルキル」部分に適用される。
定義
特定の科学技術用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で特に示されていない限り、本明細書で用いる他の全ての科学技術用語は、本開示に関連する当業者によって一般に理解されている意味を有する。それでも、特に示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって以下の定義が適用される。化学名、一般名および化学構造は、同一構造を表すために互換的に用いられうる。化学構造と化学名との両方を用いて化合物が示されており、構造と名称との間に不明確さが存在する場合には、構造が優先される。特に示されていない限り、これらの定義は、用語が単独で用いられているか他の用語と組合せて用いられているかに無関係に適用される。したがって、「アルキル」の定義は「アルキル」ならびに「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「-O-アルキル」などの「アルキル」部分に適用される。
本明細書および本開示の全体で用いる以下の用語は、特に示されていない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、対応する複数対象物を含む。特に、単数形の項目(アイテム)のそれぞれは、一覧から選択される単一の項目、および一覧から選択される2以上の項目の混合物を含む。
本明細書中で用いる「少なくとも1つ」の項目または「1以上」の項目なる語は、それぞれ、一覧から選択される単一の項目、および一覧から選択される2以上の項目の混合物を含む。例えば、「少なくとも1つのケトレダクターゼ型酵素」(あるいは「ケトレダクターゼ型酵素」とも称される)は単一のケトレダクターゼ型酵素および2以上の異なるケトレダクターゼ型酵素の混合物を意味する。同様に、「少なくとも2つ」の項目および「2以上」の項目なる語は、それぞれ、一覧から選択される2つの項目の混合物、および一覧から選択される3以上の項目の混合物を含む。
本明細書および特許請求の範囲の全体において用いる「から本質的になる」およびその変形、例えば「から本質的になり」または「から本質的になっており」は、列挙されている要素または要素群の包含、および特定されている投与レジメン、方法または組成物の基本的または新規な特性を実質的に改変しない、列挙されている要素と類似または異なる性質の他の要素の随意的包含(すなわち、所望により包含されうること)を示す。
本明細書および特許請求の範囲に全体における「含む」なる語または「含み」もしくは「含んでおり」のような変形は、示されている要素または要素群の包含を意味するが、他の要素または要素群の除外を意味しないと理解される。整数の場合、「含む」なる語または「含み」もしくは「含んでおり」のような変形は、示されている整数または整数群の包含を意味するが、他の整数または整数群の除外を意味しないと理解される。文脈によって特に要求されない限り、単数形の語は複数形を含むものとし、複数形の語は単数形を含むものとする。「例えば」または「例:」なる語に続くいずれの具体例も網羅的または限定的であるとは意図されない。本明細書において「含む」なる語で実施形態が記載されている場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」なる語で記載されている、それ以外の点では同様の実施形態も提供されると理解される。
そうでないと明示されていない限り、本明細書中で挙げられている全ての範囲は包括的である。すなわち、範囲は範囲の上限および下限の値ならびにそれらの間の全ての値を含む。全ての範囲は、必ずしも明示的に記載されているわけではない含まれる全ての部分的範囲をも含むと意図される。例えば、本明細書に記載されている温度範囲、比率、当量の範囲などは範囲の上限および下限ならびにそれらの間の連続的な任意の値を含む。本明細書に記載されている数値および「約」なる語の使用は±1%、±2%、±3%、±4%、±5%および±10%の変動ならびにそれらの同等の数値を含みうる。数値で定義されたパラメーターを修飾するために使用される場合の「約」は、該パラメーターが、示されている数値の上下に10%も変動しうることを意味し、適切な場合には、示されているパラメーターは最も近い整数に丸められうる。例えば、約5mgの量は4.5mgと5.5mgとの間で変動しうる。また、本明細書中で用いる「または」なる語は、適切な場合に組合されうる選択肢を示す。すなわち、「または」なる語は、列挙されている個別の各選択肢およびそれらの組合せを含む。
本明細書中で用いる「アルキル」なる語は、水素原子の1つが結合により置換されている、特定されている数の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を意味する。種々の実施形態においては、アルキル基は1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)または1~3個の炭素原子(C1-C3アルキル)を含有する。アルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルおよびネオヘキシルが含まれる。1つの実施形態においては、アルキル基は直鎖状である。もう1つの実施形態においては、アルキル基は分岐している。
本明細書中で用いる「ハロゲン」および「ハロ」なる語は-F(フッ素)、-Cl(塩素)、-Br(臭素)または-I(ヨウ素)を意味する。
本明細書中で用いる「ハロアルキル」なる語は、アルキル基の水素原子の1以上がハロゲンで置換されている、前記で定義したアルキル基を意味する。1つの実施形態においては、ハロアルキル基は1~6個の炭素原子を有する。もう1つの実施形態においては、ハロアルキル基は1~3個の炭素原子を有する。もう1つの実施形態においては、ハロアルキル基は1~3個のハロゲン原子で置換されている。ハロアルキル基の非限定的な例には、-CH2F、-CHF2および-CF3が含まれる。「C1-C4ハロアルキル」なる語は、1~4個の炭素原子を有するハロアルキル基を意味する。
本明細書中で用いる「アルコキシ」なる語は-O-アルキル基を意味し、ここで、アルキル基は、前記で定義されているとおりである。アルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシおよびtert-ブトキシが含まれる。アルコキシ基は、その酸素原子を介して該分子の残部に結合している。
本明細書中で用いる「アリール」なる語は、約6~約14個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式環系を意味する。1つの実施形態においては、アリール基は約6~10個の炭素原子を含有する(C6-C10アリール)。もう1つの実施形態においては、アリール基はフェニルである。アリール基の非限定的な例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
化合物中の官能基が「保護されている(保護された)」と称される場合、その官能基は、化合物が反応を受けた際の保護部位における望ましくない副反応を排除するために修飾された形態となっている。本明細書中で用いる「PG」なる語は保護基を意味する。当業者は、本開示による化合物および方法における使用に適した保護基を容易に想定するであろう。適切な保護基は、当業者によって、そして例えばGREEN’S PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS(5th ed.,Peter G.M.Wuts編,2014)のような標準的なテキストを参照することによって認識される。本明細書に開示されている方法における使用に適した保護基には酸不安定性保護基が含まれる。本明細書における使用に適したPGの非限定的な例には、-S(O)2R8、-C(O)OR8、-C(O)R8、-CH2OCH2CH2SiR8および-CH2R8が含まれ、ここで、R8は、-C1-8アルキル(直鎖または分枝)、-C3-8シクロアルキル、-CH2(アリール)および-CH(アリール)2[ここで、各アリールは、独立して、フェニルまたはナフチルであり、所望により、前記の各アリールは、独立して、非置換であるか、または独立して-OCH3、-Cl、-Brおよび-Iから選択される1以上(例えば、1個、2個または3個)の基で置換されている]からなる群から選択される。
「置換されている(置換された)」なる語は、示されている部分の原子上の1以上の水素が、示されている群から選択されるもので置き換えられていることを意味する。ただし、存在状況下での該原子の正常な価数を超えないこと、および置換が安定化合物を与えることが必要とされる。置換基および/または変数の組合せは、そのような組合せが安定化合物を与える場合にのみ許容される。「安定化合物」または「安定構造」は、有用な純度までの反応混合物からの単離および有効な治療剤への製剤化(処方)に耐えるのに十分な程度に頑強な化合物を意味する。
いずれかの化合物において置換基または変数が複数回出現する場合、特に示されていない限り、各出現に関する定義は他の各出現における定義から独立している。例えば、「-N(C1-C3アルキル)2」なる表現を含む基の記載は、-N(CH3)(CH2CH3)、-N(CH3)(CH2CH2CH3)および-N(CH2CH3)(CH2CH2CH3)ならびに-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2および-N(CH2CH2CH3)2を意味する。
本明細書の本文、スキーム、実施例(具体例)および表における、満たされていない価数を有する任意の炭素またはヘテロ原子は、価数を満たすのに十分な水素原子を有すると想定されることも注目されるべきである。これらの水素原子のいずれか1以上は重水素でありうる。
本開示はまた、天然で通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって1以上の原子が置換されてること以外は本明細書中に列挙されているものと同一である同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に組み込まれうる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Clおよび123Iが含まれる。
ある同位体標識化合物(例えば、3Hおよび14Cで標識されているもの)は化合物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(すなわち、3H)および炭素-14(すなわち、14C)同位体は、調製および検出の容易さゆえに、特に好ましい。エピマー化が生じる部位における同位体置換はエピマー化過程を遅らせ又は減少させ、それにより、より活性または有効な化合物形態を、より長期間保持しうる.同位体標識化合物、特に、より長い半減期(T1/2>1日)を有する同位体を含有するものは、一般に、非同位体標識試薬を適切な非同位体標識試薬と交換することにより、本明細書における後記のスキームおよび/または実施例に開示されているものと同様の手順に従うことにより製造されうる。
本明細書における化合物は1以上の不斉中心(ステレオジェン中心)を含有する可能性があり、ラセミ体、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして存在しうる。分子上の種々の置換基の性質に応じて、追加的な不斉中心が存在しうる。そのような各不斉中心は、独立して、2つの光学異性体を生成し、混合物中の及び純粋な又は部分的に精製された化合物としての全ての可能な光学異性体およびジアステレオマーが本開示に含まれる。特定の立体化学を特定していない、本明細書に記載されている化合物の任意の式、構造または名称は、前記のとおりの存在するあらゆる異性体および任意の比率のそれらの混合物を含むと意図される。立体化学が特定されている場合、該開示は、純粋な形態または任意の比率での他の異性体との混合物の一部として、その特定の異性体を含むと意図される。
ジアステレオマー混合物は、当業者に周知の方法、例えばクロマトグラフィーおよび/または分別結晶により、それらの物理化学的差異に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離されうる。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、キラル補助剤、例えば、キラルアルコールまたはモッシャー酸塩化物)との反応によりエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換すること、ジアステレオマーを分離すること、および個々のジアステレオマーを、対応する純粋なエナンチオマーに変換(例えば、加水分解)することにより分離されうる。エナンチオマーは、キラルHPLCカラムを使用することによっても分離されうる。
開示されている化合物の立体異性体の全て(例えば、幾何異性体、光学異性体など)(化合物の塩および溶媒和物の立体異性体、ならびにプロドラッグの塩、溶媒和物およびエステルの立体異性体を含む)、例えば、種々の置換基上の不斉炭素により存在しうる立体異性体、例えば、エナンチオマー形態(これは不斉炭素の非存在下でさえも存在しうる)、回転異性体、アトロプ異性体およびジアステレオマー形態が、本開示の範囲内で想定される。化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含有しないことが可能であり、あるいは、例えば、ラセミ体として混合可能であり、または全ての他の立体異性体もしくは他の選択された立体異性体と混合可能である。キラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsにより定められているとおり、SまたはR立体配置を有しうる。
本開示は更に、全ての単離形態の化合物および合成中間体を含む。例えば、前記の化合物は、その任意の溶媒和物、水和物、立体異性体および互変異性体のような、該化合物の全ての形態を含むと意図される。
キラル化合物、特に糖におけるキラル化合物は、同等である多数の異なる様態で描写されうる、と当業者は認識するであろう。更に、リボース上の置換基の種類および位置化学的な位置は広範に変動可能であり、置換基に無関係に、立体化学的同等性の同一原理が適用される、と当業者は認識するであろう。そのような同等性の非限定的な例には、以下に例示されているものが含まれる。
同様に、ある化合物、特に、あるヘテロ原子および二重または三重結合を含有する化合物は、容易に相互変換する構造異性体である互変異性体でありうる、と当業者は認識するであろう。したがって、互変異性化合物は、同等である多数の異なる様態で描写されうる。そのような互変異性体の非限定的な例には、以下に例示されているものが含まれる。
化合物は、同様に本開示の範囲内である塩を形成しうる。本明細書における化合物への言及は、特に示されていない限り、その塩への言及を含むと理解される。本明細書中で用いる「塩」なる語は、無機酸および/または有機酸で形成される酸性塩、ならびに無機塩基および/または有機塩基で形成される塩基性塩を意味する。また、化合物が、塩基性部分、例えばピリジンまたはイミダゾール(これらに限定されるものではない)と、酸性部分、例えばカルボン酸(これらに限定されるものではない)との両方を含有する場合、双性イオン(「分子内塩」)が形成可能であり、本明細書中で用いる「塩」なる語に含まれる。薬学的に許容される(すなわち、無毒性で生理学的に許容される)塩が好ましいが、他の塩も有用である。化合物の塩は、例えば、塩が沈殿するような媒体中または水性媒体中で化合物を或る量(例えば、当量)の酸または塩基と反応させ、ついで凍結乾燥を行うことにより形成されうる。
代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシラートとしても公知である)などが含まれる。また、塩基性医薬化合物から薬学的に有用な塩を形成するのに適していると一般にみなされている酸は、例えば、P.Stahlら,Camille G.(編)HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE(2002)Zurich:Wiley-VCH;S.Bergeら,J.Pharm.Sci.(1977)66(1)1-19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217;Andersonら,THE PRACTICE OF MEDICINAL CHEMISTRY(1996),Academic Press,New York;およびTHE ORANGE BOOK(Food & Drug Administration,Washington,D.C.)に記載されている。これらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
代表的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩、有機塩基(例えば、有機アミン)、例えばジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミンとの塩、ならびにアミノ酸、例えばアルギニン、リジンとの塩などが含まれる。塩基性窒素含有基は、ハロゲン化低級アルキル(例えば、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチルおよびブチル)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、ジエチルおよびジブチル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリルおよびステアリル)、ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジルおよびフェネチル)などのような物質で四級化されうる。
全てのそのような酸性塩および塩基性塩は本発明の範囲内で薬学的に許容される塩であると意図され、全ての酸性塩および塩基性塩は、本発明の目的においては、対応化合物の遊離形態と同等であるとみなされる。
本明細書における1以上の化合物は、非溶媒和形態で、ならびに水、エタノールなどのような薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在することが可能であり、本開示は溶媒和形態と非溶媒和形態との両方を含むと意図される。「溶媒和物」は化合物と1以上の溶媒分子との物理的会合物を意味する。この物理的会合は種々の度合のイオン結合および共有結合(水素結合を含む)を含む。特定の例においては、溶媒和物は、例えば、1以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子内に組み込まれている場合、単離可能である。「溶媒和物」は、溶液相と、単離可能な溶媒和物との両方を含む。適切な溶媒和物の非限定的な例には、エタノラート、メタノラートなどが含まれる。「水和物」は、溶媒分子がH2Oである溶媒和物である。
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化、脂質化、ミリストイル化、ユビキチン化など)には無関係に、アミド結合によって共有結合した少なくとも2つのアミノ酸の重合体を示すために本明細書において互換的に用いられる。この定義には、D-アミノ酸およびL-アミノ酸、ならびにD-アミノ酸とL-アミノ酸との混合物、ならびにD-アミノ酸とL-アミノ酸とを含む重合体、ならびにD-アミノ酸とL-アミノ酸との混合物が含まれる。タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドは例えばヒスチジンタグのようなタグを含みうるが、配列同一性の割合を決定する際にはタグを含めるべきではない。
本明細書に開示されているポリペプチドに関して用いる「アミノ酸」または「残基」は配列位置における特定の単量体を意味する。アミノ酸は、本明細書においては、一般に公知である三文字記号またはIUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されている一文字記号のいずれかにより示される。同様に、ヌクレオチドは、一般に受け入れられている一文字コードにより示されうる。
遺伝的にコードされるアミノ酸に関して用いる略語は通常のものであり、以下のとおりである:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン酸(GluまたはE)、グルタミン(GlnまたはQ)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)およびバリン(ValまたはV)。
遺伝的にコードされるヌクレオシドに関して用いる略語は通常のものであり、以下のとおりである:アデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン(C)、チミジン(T)およびウリジン(U)。特に示されていない限り、略記されているヌクレオシドはリボヌクレオシドまたは2’-デオキシリボヌクレオシドのいずれかでありうる。ヌクレオシドは、リボヌクレオシドまたは2’-デオキシリボヌクレオシドのいずれかとして、個別に又は集合体として特定されうる。核酸配列が一文字略語の文字列として表されている場合、配列は、一般的な慣例に従い、5’から3’への方向で示され、ホスファートは示されない。
酵素に関して本明細書中で用いる「に由来」は、由来する元の酵素、および/または酵素が基づいているそのような酵素をコードする遺伝子を示す。例えば、配列番号7のケトレダクターゼ酵素は、配列番号1のケトレダクターゼ酵素をコードする遺伝子を複数世代にわたって人工的に進化させることにより得られた。したがって、この進化したケトレダクターゼ酵素は配列番号1のケトレダクターゼ「に由来」する。
「親水性アミノ酸または残基」は、Eisenbergら(1984,J.Mol.Biol.179:125-142)の標準化コンセンサス疎水性スケールにおいて0未満の疎水性を示す側鎖を有するアミノ酸または残基を意味する。遺伝的にコードされる親水性アミノ酸には、L-Thr(T)、L-Ser(S)、L-His(H)、L-Glu(E)、L-Asn(N)、L-Gln(Q)、L-Asp(D)、L-Lys(K)およびL-Arg(R)が含まれる。
「酸性アミノ酸または残基」は、アミノ酸がペプチドまたはポリペプチド内に含まれる場合に約6未満のpK値を示す側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を意味する。酸性アミノ酸は、典型的には、水素イオンの喪失ゆえに生理的pHにおいて負荷電側鎖を有する。遺伝的にコードされる酸性アミノ酸には、L-Glu(E)およびL-Asp(D)が含まれる。
「塩基性アミノ酸または残基」は、アミノ酸がペプチドまたはポリペプチド内に含まれる場合に約6より大きいpKa値を示す側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を意味する。塩基性アミノ酸は、典型的には、ヒドロニウムイオンとの会合ゆえに生理的pHにおいて正荷電側鎖を有する。遺伝的にコードされる塩基性アミノ酸には、L-Arg(R)およびL-Lys(K)が含まれる。
「極性アミノ酸または残基」は、2つの原子により共有される電子対がそれらの原子のうちの1つによってより強固に保持されている少なくとも1つの結合を有し生理的pHにおいて非荷電である側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を意味する。遺伝的にコードされる極性アミノ酸には、L-Asn(N)、L-Gln(Q)、L-Ser(S)およびL-Thr(T)が含まれる。
「疎水性アミノ酸または残基」は、Eisenbergら(1984,J.Mol.Biol.179:125-142)の標準化コンセンサス疎水性スケールにおいて0を超える疎水性を示す側鎖を有するアミノ酸または残基を意味する。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸には、L-Pro(P)、L-Ile(I)、L-Phe(F)、L-Val(V)、L-Leu(L)、L-Trp(W)、L-Met(M)、L-Ala(A)およびL-Tyr(Y)が含まれる。
「芳香族アミノ酸または残基」は、少なくとも1つの芳香環またはヘテロ芳香環を含む側鎖を有する親水性または疎水性のアミノ酸または残基を意味する。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸には、L-Phe(F)、L-Tyr(Y)、L-His(H)およびL-Trp(W)が含まれる。L-His(H)ヒスチジンは本明細書においては親水性残基または拘束残基としても分類される。
本明細書中で用いる「拘束(constrained)アミノ酸または残基」は、拘束された幾何学的形状を有するアミノ酸または残基を意味する。この場合、拘束残基には、L-Pro(P)およびL-His(H)が含まれる。ヒスチジンが拘束幾何学的形状を有するのは、それが比較的小さなイミダゾール環を有するからである。プロリンが拘束幾何学的形状を有するのは、それも5員環を有するからである。
「無極性アミノ酸または残基」は、2つの原子により共有される電子対がそれらの2つの原子によって概ね同等に保持されている結合を有する側鎖を有し(すなわち、側鎖は極性ではない)生理的pHにおいて非荷電である側鎖を有する疎水性アミノ酸または残基を意味する。遺伝的にコードされる無極性アミノ酸には、L-Gly(G)、L-Leu(L)、L-Val(V)、L-Ile(I)、L-Met(M)およびL-Ala(A)が含まれる。
本明細書中で用いる「脂肪族アミノ酸または残基」は、脂肪族炭化水素側鎖を有する疎水性アミノ酸または残基を意味する。遺伝的にコードされる脂肪族アミノ酸には、L-Ala(A)、L-Val(V)、L-Leu(L)およびL-Ile(I)が含まれる。
L-Cys(C)(およびSH含有側鎖を有する他のアミノ酸)が還元型遊離SHまたは酸化型ジスルフィド架橋形態のいずれとしてペプチド内に存在しうるのかは、L-Cys(C)がペプチドに正味の疎水性を付与するのか親水性を付与するのかに影響を及ぼす。L-Cys(C)は、Eisenbergの標準化コンセンサススケール(Eisenbergら,1984,前掲)において0.29の疎水性を示すが、本開示の目的においては、L-Cys(C)はそれ自身の特有のグループに分類されると理解されるべきである。システイン(または「L-Cys」または「[C]」)は、それが他のL-Cys(C)アミノ酸または他のスルファニルもしくはスルフヒドリル含有アミノ酸とジスルフィド架橋を形成しうる点で、特異であることに注目すべきである。「システイン様残基」には、システイン、およびジスルフィド架橋の形成に利用可能なスルフヒドリル部分を含有する他のアミノ酸が含まれる。
本明細書中で用いる「小さなアミノ酸または残基」は、合計3個以下の炭素および/またはヘテロ原子(α炭素および水素を除く)から構成される側鎖を有するアミノ酸または残基を意味する。小さなアミノ酸または残基は、前記の定義に従い、脂肪族、無極性、極性または酸性の小さなアミノ酸または残基として更に分類されうる。遺伝的にコードされる小さなアミノ酸には、L-Ala(A)、L-Val(V)、L-Cys(C)、L-Asn(N)、L-Ser(S)、L-Thr(T)およびL-Asp(D)が含まれる。
「ヒドロキシル含有アミノ酸または残基」は、ヒドロキシル(-OH)部分を含有するアミノ酸を意味する。遺伝的にコードされるヒドロキシル含有アミノ酸には、L-Ser(S)、L-Thr(T)およびL-Tyr(Y)が含まれる。
本明細書中で用いる「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、互いに共有結合している2以上のヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、全体がリボヌクレオチドから構成されていること(すなわち、RNA)、全体が2’デオキシリボヌクレオチドから構成されていること(すなわち、DNA)、またはリボヌクレオチドと2’デオキシリボヌクレオチドとの混合物から構成されていることが可能である。ヌクレオシドは、典型的には、標準的なホスホジエステル結合により互いに連結されるが、ポリヌクレオチドは1以上の非標準的な結合を含みうる。ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であることが可能であり、あるいはポリヌクレオチドは一本鎖領域と二本鎖領域との両方を含むことが可能である。更に、ポリヌクレオチドは、典型的には、天然に存在するコード化核酸塩基(すなわち、アデニン、グアニン、ウラシル、チミンおよびシトシン)から構成されるが、それは1以上の修飾および/または合成核酸塩基、例えばイノシン、キサンチン、ヒポキサンチンなどを含みうる。幾つかの実施形態においては、そのような修飾または合成核酸塩基は、アミノ酸配列をコードする核酸塩基である。
本明細書中で用いる場合、「ヌクレオシド」は、核酸塩基(すなわち、窒素含有塩基)と5炭素糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)とを含むグリコシルアミンを意味する。ヌクレオシドの非限定的な例には、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、チミジンおよびイノシンが含まれる。これに対して、「ヌクレオチド」なる語は、核酸塩基、5炭素糖および1以上のホスファート基を含むグリコシルアミンを意味する。幾つかの実施形態においては、ヌクレオシドはキナーゼによりリン酸化されて、ヌクレオチドを生成しうる。
本明細書中で用いる「ヌクレオシド二リン酸」は、核酸塩基(すなわち、窒素含有塩基)、5炭素糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)およびジホスファート(二リン酸)(すなわち、ピロホスファート)部分を含むグリコシルアミンを意味する。本明細書における幾つかの実施形態においては、「ヌクレオシド二リン酸」は「NDP」と略称される。ヌクレオシド二リン酸の非限定的な例には、シチジン二リン酸(CDP)、ウリジン二リン酸(UDP)、アデノシン二リン酸(ADP)、グアノシン二リン酸(GDP)、チミジン二リン酸(TDP)およびイノシン二リン酸(IDP)が含まれる。「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」なる語は幾つかの文脈においては互換的に用いられうる。
本明細書中で用いる「ヌクレオシド三リン酸」は、核酸塩基(すなわち、窒素含有塩基)、5炭素糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)およびトリホスファート(三リン酸)部分を含むグリコシルアミンを意味する。本明細書における幾つかの実施形態においては、「ヌクレオシド三リン酸」は「NTP」と略称される。ヌクレオシド三リン酸の非限定的な例には、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン三リン酸(TTP)およびイノシン三リン酸(ITP)が含まれる。「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」なる語は幾つかの文脈においては互換的に用いられうる。
本明細書中で用いる「保存的アミノ酸置換」は、ある残基を、類似側鎖を有する異なる残基で置換することを意味し、したがって、典型的には、ポリペプチド内のアミノ酸を、同一または類似の定められたアミノ酸クラス内のアミノ酸で置換することを含む。限定的なものではないが例えば、幾つかの実施形態においては、脂肪族側鎖を有するアミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン)で置換され、ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸は、ヒドロキシル側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、セリンおよびスレオニン)で置換され、芳香族側鎖を有するアミノ酸は、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジン)で置換され、塩基性側鎖を有するアミノ酸は、塩基性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、リジンおよびアルギニン)で置換され、酸性側鎖を有するアミノ酸は、酸性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)で置換され、および/または、疎水性もしくは親水性アミノ酸は、それぞれ別の疎水性もしくは親水性アミノ酸で置換される。
本明細書中で用いる「非保存的置換」は、ポリペプチド内のアミノ酸を、有意に異なる側鎖特性を有するアミノ酸で置換することを意味する。非保存的置換は、定められたグループ内ではなく、定められたグループ間のアミノ酸を用いることが可能であり、(a)置換領域におけるペプチド骨格の構造(例えば、グリシンからプロリンへの置換)、(b)電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さに影響を及ぼす。限定的なものではないが例えば、代表的な非保存的置換は、酸性アミノ酸から塩基性または脂肪族アミノ酸への置換、芳香族アミノ酸から小さなアミノ酸への置換、および親水性アミノ酸から疎水性アミノ酸への置換でありうる。
本明細書中で用いる「欠失」は、参照ポリペプチドからの1以上のアミノ酸の除去によるポリペプチドへの修飾を意味する。欠失は、酵素活性を保持しつつ及び/又は進化した酵素の改善された特性を保持しつつ、参照酵素を構成する1以上のアミノ酸、2以上のアミノ酸、5以上のアミノ酸、10以上のアミノ酸、15以上のアミノ酸または20以上のアミノ酸、アミノ酸の総数の最大10%またはアミノ酸の総数の最大20%の除去を含みうる。欠失はポリペプチドの内部部分および/または末端部分に導入されうる。種々の実施形態においては、欠失は連続的セグメントを含むことが可能であり、あるいは不連続でありうる。欠失は、典型的には、アミノ酸配列において「-」により示される。
本明細書中で用いる「挿入」は、参照ポリペプチドと比較した場合の1以上のアミノ酸の付加によるポリペプチドへの修飾を意味する。挿入はポリペプチドの内部部分またはカルボキシもしくはアミノ末端に存在しうる。本明細書中で用いる挿入は、当技術分野で公知の融合タンパク質を含みうる。挿入はアミノ酸の連続的セグメントであることが可能であり、あるいは、天然に存在するポリペプチドにおけるアミノ酸の1以上により分離されていることが可能である。
「アミノ酸置換セット」または「置換セット」なる語は、参照配列と比較した場合のポリペプチド配列におけるアミノ酸置換の一群を意味する。置換セットは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれ以上のアミノ酸置換を有しうる。
「機能的断片」および「生物活性断片」は本明細書において互換的に用いられ、アミノ末端および/もしくはカルボキシ末端の欠失ならびに/または内部欠失を有するが全長ポリペプチドの活性の実質的に全てを保持するポリペプチドであって、残りのアミノ酸配列が、それが比較されている配列における対応位置と同一である、ポリペプチドを意味する。
本明細書中で用いる「単離されたポリペプチド」は、それに天然で付随する他の夾雑物(例えば、タンパク質、脂質およびポリヌクレオチド)から実質的に分離されたポリペプチドを意味する。この用語は、天然に存在する環境または発現系(例えば、宿主細胞内のもの、またはインビトロ合成によるもの)から取り出された又は精製されたポリペプチドを含む。組換えポリペプチドは細胞内に存在すること、細胞培地内に存在することが可能であり、あるいは例えばライセートまたは単離された調製物のような種々の形態で調製されうる。したがって、幾つかの実施形態においては、組換えポリペプチドは、単離されたポリペプチドでありうる。
本明細書中で用いる「実質的に純粋なポリペプチド」または「精製されたタンパク質」は、ポリペプチド種が、存在する優勢な種である(すなわち、モルまたは重量ベースで、それは組成物中のいずれの他の個々の高分子種よりも豊富に存在する)、組成物を意味し、目的の種が、存在する高分子種の少なくとも約50%(モルまたは%重量)を構成する場合、概ね実質的に精製された組成物である。しかし、幾つかの実施形態においては、酵素含有組成物は、50%未満(例えば、約10%、約20%、約30%、約40%または約50%)の純度の酵素を含む。一般に、実質的に純粋な酵素またはポリペプチド組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上および約98%以上(モルまたは重量%)を構成する。幾つかの実施形態においては、目的の種は、本質的に均一になる(すなわち、通常の検出方法によっては組成物中で夾雑種が検出され得ない)まで精製され、この場合、組成物は単一の高分子種から本質的になる。溶媒種、小分子(500ダルトン未満)および元素イオン種は高分子種とは見なされない。幾つかの実施形態においては、単離された組換えポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチド組成物である。
「改善された酵素特性(酵素活性の改善)」は、参照酵素と比較した場合にいずれかの酵素特性の改善を示す酵素に関するものである。本明細書に記載されている酵素に関しては、比較は一般に野生型酵素に対して行われるが、幾つかの実施形態においては、参照酵素は別の改善された酵素でありうる。改善が望ましい酵素特性には、酵素活性(これは基質の変換率として表されうる)、熱安定性、pH活性プロファイル、補因子要求性、インヒビターに対する不応性(例えば、生成物阻害)、立体特異性および立体選択性(エナンチオ選択性を含む)が含まれるが、これらに限定されるものではない)。
「増強された酵素活性(酵素活性の増強)」は、参照酵素と比較した場合の、比活性の増加(例えば、生成された生成物/時間/タンパク質重量)または基質から生成物への変換率の増加(例えば、特定された量の酵素を使用した場合の、特定された時間内の出発量の基質から生成物への変換率)により表されうる、酵素の改善された特性を意味する。酵素活性を決定するための代表的な方法は実施例に記載されている。Km、Vmaxまたはkcat(それらの変化は酵素活性の増強につながりうる)の古典的な酵素特性を含む、酵素活性に関連するいずれかの特性が影響を受けうる。酵素活性の改善は対応野生型酵素の酵素活性の約1.5倍~最大2倍であることが可能であり、天然に存在する酵素または該ポリペプチドが由来する別の酵素の5倍、10倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、7000倍またはそれ以上の酵素活性でありうる。特定の実施形態においては、酵素は、親酵素の150~3000倍、3000~7000倍、または7000倍を超える範囲の酵素活性の改善を示す。任意の酵素の活性は拡散によって制限され、触媒代謝回転速度は、要求される補因子を含む基質の拡散速度を超えることができない、と当業者に理解される。拡散限界の理論上の最大値またはkcat/Kmは、一般に、約108~109(M-1s-1)である。したがって、酵素活性の改善は、酵素が作用する基質の拡散速度に関連する上限を有する。酵素活性は、キナーゼ活性を測定するために使用される標準アッセイのいずれかにより、またはポリペプチド産物とヌクレオシド塩基との間の反応を触媒してヌクレオシドを生成しうるヌクレオシドホスホリラーゼ酵素を用いた共役アッセイにより、またはHPLC、HPLC-MS、UPLC、UPLC-MS、TLCおよびNMR(これらに限定されるものではない)を含む、化学反応をアッセイするための伝統的な方法のいずれかにより測定されうる。本明細書に更に詳細に記載されているとおり、酵素活性の比較は、定められた酵素調製物、セット条件下の定められたアッセイおよび1以上の定められた基質を使用して行われる。一般に、ライセートを比較する場合、細胞数と、アッセイしたタンパク質の量とを決定し、同一発現系および同一宿主細胞を使用して、宿主細胞により産生されライセート中に存在する酵素の量の変動を最小限に抑える。
本明細書中で用いる「ベクター」は、DNA配列を細胞内に導入するためのDNA構築物である。幾つかの実施形態においては、ベクターは、DNA配列においてコードされるポリペプチドの適切な宿主における発現をもたらしうる適切な制御配列に機能的に連結された発現ベクターである。幾つかの実施形態においては、「発現ベクター」は、宿主細胞における発現を駆動するためにDNA配列(例えば、導入遺伝子)に機能的に連結されたプロモーター配列を有し、幾つかの実施形態においては、転写ターミネーター配列をも含む。
本明細書中で用いる「発現」なる語は、転写、転写後修飾、翻訳および翻訳後修飾(これらに限定されるものではない)を含む、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含む。幾つかの実施形態においては、この用語は細胞からのポリペプチドの分泌をも含む。
本明細書中で用いる「産生」なる語は細胞によるタンパク質および/または他の化合物の産生を意味する。この用語は、転写、転写後修飾、翻訳および翻訳後修飾(これらに限定されるものではない)を含む、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含むと意図される。幾つかの実施形態においては、この用語は細胞からのポリペプチドの分泌をも含む。
本明細書において、アミノ酸またはヌクレオチド配列(例えば、プロモーター配列、シグナルペプチド、ターミネーター配列など)が、それが機能的に連結されている別の配列に対して「異種」であると言えるのは、それらの2つの配列が天然において結合していない場合である。例えば、「異種ポリヌクレオチド」は、実験技術により宿主細胞内に導入される任意のポリヌクレオチドであり、この用語は、宿主細胞から取り出され、実験操作に付され、ついで宿主細胞内に再導入されるポリヌクレオチドを含む。
本明細書中で用いる「宿主細胞」および「宿主株」なる語は、本明細書において提供されるDNA(例えば、変異体をコードするポリヌクレオチド)を含む発現ベクターのための適切な宿主を意味する。幾つかの実施形態においては、宿主細胞は、当技術分野で公知の組換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換またはトランスフェクトされた原核細胞または真核細胞である。
「類似体(アナログ)」なる語は、参照ポリペプチドに対して70%超(すなわち、70%を超える)かつ100%未満の配列同一性(例えば、75%超、78%超、80%超、83%超、85%超、88%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超の配列同一性)を有するポリペプチドを意味する。幾つかの実施形態においては、「類似体」は、ホモアルギニン、オルニチンおよびノルバリン(これらに限定されるものではない)を含む、天然に存在しない1以上のアミノ酸残基、ならびに天然に存在するアミノ酸を含有するポリペプチドを意味する。幾つかの実施形態においては、類似体は1以上のD-アミノ酸残基をも含み、また、2以上のアミノ酸残基間の非ペプチド結合をも含む。
本明細書中で用いる「EC」番号は国際生化学分子生物学連合の命名委員会(Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(NC-IUBMB)の酵素命名を意味する。IUBMB生化学的分類は、酵素が触媒する化学反応に基づいた、酵素に関する数的分類系である。
本明細書中で用いる「ATCC」は、バイオレポジトリーコレクションが遺伝子および株を含む、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)を意味する。
本明細書中で用いる「NCBI」は米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biological Information)およびそれにおいて提供される配列データベースを意味する。
「コード配列」は、タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(例えば、遺伝子)の部分を意味する。
「天然に存在する」または「野生型」は、天然で見出される形態を意味する。例えば、天然に存在する又は野生型のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列は、生物に存在する配列であって、天然における供給源から単離可能であり、人間による操作によって意図的に修飾されていない配列であり、唯一の例外は、本明細書中で特定されている野生型ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列が例えばヒスチジンタグのようなタグを含みうることであり、タグは、配列同一性の割合を決定する際に含めるべきではない。本明細書においては、「野生型」ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は「WT」と称されうる。
「組換え」は、例えば細胞、核酸またはポリペプチドに関して用いられている場合、組換えが行われていなければ天然で存在しない様態で修飾されている物質または該物質の天然もしくは自然形態に対応する物質、あるいは、それと同一であるが、組換え技術を用いる操作により及び/又は合成物質から産生または誘導された物質に関するものである。非限定的な例には、とりわけ、細胞の天然(非組換え)形態内で見出されない遺伝子を発現する組換え細胞、またはさもなければ、異なるレベルで発現される天然遺伝子を発現する組換え細胞が含まれる。
「配列同一性の割合」、「同一性(%)」および「%同一である」は、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列間の比較を示すために本明細書において用いられ、2つの最適にアライメントされた配列を比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され、ここで、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、それらの2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。割合(%)は、同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基が両方の配列内に存在する位置の数、または核酸塩基もしくはアミノ酸残基がギャップを伴ってアライメントされた位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り算し、その結果に100を掛け算して配列同一性の百分率を得ることにより計算される。最適なアラインメントおよび配列同一性の割合の決定は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズム(例えば、Altschulら,1990,J.Mol.Biol.215:403-410;およびAltschulら,1977,Nucleic Acids Res.3389-3402を参照されたい)を使用して行われる。BLAST分析を行うためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationのウェブサイトから公に入手可能である。
簡潔に説明すると、BLAST分析は、まず、データベース配列における同じ長さの単語とアライメントされた場合に幾らかの正値閾値スコアTにマッチする又はそれを満足するクエリ配列内の長さWの短いワードを特定することにより高スコア配列ペア(HSP)を特定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(Altschulら,前掲)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含有する更に長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。ついでワードヒットを、累積アラインメントスコアが増加しうる限り、各配列に沿って両方向に伸長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合には、パラメーターM(マッチする残基のペアに関する報酬スコア;常に0より大きい)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0より小さい)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合には、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの伸長は以下の場合に停止される:累積アライメントスコアがその最大達成値から量X減少する;1以上の負スコア残基アラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になる;またはいずれかの配列の末端に到達する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXはアライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(HenikoffおよびHenikoff,1989,PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 89:10915を参照されたい)。
2つの配列に関する同一性の割合を得る際にBLASTと同様に機能する多数の他のアルゴリズムが利用可能である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおyびWaterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482のローカル・ホモロジー・アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443のホモロジー・アライメント・アルゴリズム、PearsonおよびLipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(GCG Wisconsin Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)。また、配列アラインメントおよび配列同一性(%)の決定は、GCG Wisconsin Softwareパッケージ(Accelrys,Madison WI)のBESTFITまたはGAPプログラムを、提供されるデフォルトのパラメーターを用いて使用する。
「実質的な同一性」は、少なくとも20残基の位置の比較ウィンドウにわたって、頻繁には少なくとも30~50残基のウィンドウにわたって参照配列と比較した場合に、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも85パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、より一層好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関するものであり、ここで、配列同一性の割合は、比較ウィンドウにわたって参照配列に対して合計20パーセント以下である欠失または付加を含む配列と参照配列を比較することにより計算される。ポリペプチドに適用される特定の実施形態においては、「実質的な同一性」なる語は、例えば、デフォルトのギャップウェイトを用いてプログラムGAPまたはBESTFITにより最適にアライメントされた場合に、2つのポリペプチド配列が少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性またはそれ以上の配列同一性(例えば、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。
所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列の番号付けの文脈で用いられる場合の「に対応する」、「に対する参照(言及)」または「に基づく」は、所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列が参照配列と比較される場合の、特定されている参照配列の残基の番号付けに関するものである。換言すれば、所与の重合体の残基番号または残基位置は、所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列内の残基の実際の数的位置によってではなく、参照配列に基づいて示される。例えば、所与のアミノ酸配列は、2つの配列の間の残基マッチを最適化するためにギャップを導入することにより、参照配列に対してアライメントされうる。これらの場合、ギャップは存在するが、所与のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列における残基の番号付けは、それがアライメントされた参照配列に基づいて行われる。
「立体選択性」は、化学的または酵素的反応において1つの立体異性体が別の立体異性体よりも優先的に形成されることを意味する。立体選択性は、1つの立体異性体の形成が他の立体異性体より優先される部分的なものであることが可能であり、あるいは、1つの立体異性体のみが形成される完全なものであることが可能である。立体異性体がエナンチオマーである場合、立体選択性はエナンチオ選択性と称され、両方のエナンチオマーの合計における1つのエナンチオマーの割合(典型的には百分率として示される)である。あるいは、それは一般に、式[主要エナンチオマー-副次的エナンチオマー]/[主要エナンチオマー+副次的エナンチオマー]に従いそれから計算されるエナンチオマー過剰率(EE)として(典型的には百分率として)、当技術分野において報告される。立体異性体がジアステレオ異性体である場合、立体選択性はジアステレオ選択性と称され、2つのジアステレオマーの混合物中の1つのジアステレオマーの割合(通常は百分率として示される)であり、あるいは、一般に、ジアステレオマー過剰率(DE)として示される。エナンチオマー過剰率およびジアステレオマー過剰率はステレオマー過剰率の一種である。
「高度に立体選択的」は、少なくとも約85%の立体異性過剰率で基質をその対応生成物に変換しうる化学的または酵素的反応に関するものである。
「化学的選択性」は、化学的または酵素的反応において1つの生成物が別の生成物よりも優先的に形成されることを意味する。
「変換」は基質から対応生成物への酵素的変換を意味する。「変換率」は、特定の条件下で一定時間内に生成物に変換される基質の割合を意味する。したがって、例えば、ポリペプチドの「酵素活性」または「活性」は基質から生成物への「変換率」として表されうる。
「キラルアルコール」は、一般式R1-CH(OH)-R2(ここで、R1とR2とは同一ではない)のアミンを意味し、本明細書においては最も広い意味で用いられ、例えば、異なる官能型および混合官能型の多種多様な脂肪族化合物および脂環式化合物を包含し、これらは、(i)キラル環状構造を形成する二価基か、または(ii)構造もしくはキラリティーにおいて互いに異なる2つの置換基(水素以外)かのいずれかを水素原子のほかに含有する第二級炭素原子に結合した第一級ヒドロキシル基の存在により特徴付けられる。キラル環状構造を形成する二価基には、例えば、2-メチルブタン-1,4-ジイル、ペンタン-1,4-ジイル、ヘキサン-1,4-ジイル、ヘキサン-1,5-ジイル、2-メチルペンタン-1,5-ジイルが含まれる。第二級炭素原子上の2つの異なる置換基(前記のR1およびR2)も広範に変動可能であり、アルキル、アラルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、シクロアルキル、カルボキシ、カルボアルコキシ、カルバモイル、モノ-およびジ-(低級アルキル)置換カルバモイル、トリフルオロメチル、フェニル、ニトロ、アミノ、モノ-およびジ-(低級アルキル)置換アミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルカルボキサミド、アリールカルボキサミドなど、ならびに前記のものにより置換されたアルキル、アラルキルまたはアリールを包含する。
固定化酵素調製物は、認識された多数の利点を有する。それらは、例えば、酵素調製物に貯蔵寿命をもたらすことが可能であり、反応安定性を改善することが可能であり、有機溶媒中での安定性を可能にし、反応流からのタンパク質除去を補助することが可能である。「安定」は、有機溶媒を含有する溶媒系において固定化酵素がその構造コンフォメーションおよび/またはその活性を保持しうることを意味する。安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり10%未満の活性を喪失する。安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり9%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり8%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり7%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり6%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり5%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり4%未満の活性である。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり3%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において、1時間当たり2%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり1%未満の活性を喪失する。
「熱安定(耐熱性)」は、上昇した温度(例えば、40℃~80℃)に或る時間(例えば、0.5時間~24時間)さらされた後、未処理酵素と比較して類似した活性(例えば、60%~80%以上)を維持するポリペプチドに関するものである。
「溶媒安定」は、種々の濃度(例えば、5%~99%)の溶媒(イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、ブチルアセテート、メチルtert-ブチルエーテルなど)に或る時間(例えば、0.5時間~24時間)さらされた後、未処理酵素と比較して類似した活性(例えば、60%~80%以上)を維持するポリペプチドに関するものである。
「pH安定」は、高または低pH(例えば、4.5~6、または8~12)に或る時間(例えば、0.5時間~24時間)さらされた後、未処理酵素と比較して類似した活性(例えば、60%~80%以上)を維持するポリペプチドに関するものである。
「熱および溶媒安定」は、熱安定かつ溶媒安定であるポリペプチドに関するものである。
本明細書中で用いる「生体触媒作用」、「生体触媒」、「生体内変換」および「生合成」は、有機化合物に対する化学反応を引き起こすための酵素の使用を意味する。
「有効量」なる語は、所望の結果をもたらすのに十分な量を意味する。当業者は、常套的な実験を用いて有効量を決定しうる。
「単離(単離された)」および「精製(精製された)」なる語は、天然で付随している少なくとも1つの他の成分から取り出された分子(例えば、単離された核酸、ポリペプチドなど)または他の成分を示すために用いられる。「精製された」なる語は絶対的な純度を必要とせず、相対的な定義として意図されている。
代表的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料も本開示の実施または試験において使用されうる。材料、方法および例は単なる例示に過ぎず、限定的なものではない。
略語
ACN、MeCN: アセトニトリル
DMSO: ジメチルスルホキシド
グラム: グラム
時: 時間
Hz: ヘルツ
IPA: イソプロピルアルコール
IPTG: イソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド
J: NMR結合定数
L: リットル
M: モル濃度、モル/リットル
mg: ミリグラム
min: 分
mL、ml: ミリリットル
mm: ミリメートル
mM: ミリモル/リットル
nm: ナノメートル
NaCl: 塩化ナトリウム
NADP: ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
OD600: 波長600nmでの光学濃度
PTFE: ポリテトラフルオロエチレン
RH: 相対湿度
RPM、rpm: 毎分回転数
RT: 室温、約25℃
TFA: トリフルオロ酢酸
THF: テトラヒドロフラン
UPLC: 超高速液体クロマトグラフィー
vol: 体積
v/v: 体積/体積
μg、ug: マイクログラム
μL、μl、uL、ul: マイクロリットル
ケトレダクターゼ
本開示は、ヌクレオシド、特にフルオロヌクレオシドの合成においてケトンをキラルアルコールに還元しうるケトレダクターゼ酵素に関する。実施形態においては、ケトレダクターゼ酵素は以下の変換が可能である。
ACN、MeCN: アセトニトリル
DMSO: ジメチルスルホキシド
グラム: グラム
時: 時間
Hz: ヘルツ
IPA: イソプロピルアルコール
IPTG: イソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド
J: NMR結合定数
L: リットル
M: モル濃度、モル/リットル
mg: ミリグラム
min: 分
mL、ml: ミリリットル
mm: ミリメートル
mM: ミリモル/リットル
nm: ナノメートル
NaCl: 塩化ナトリウム
NADP: ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
OD600: 波長600nmでの光学濃度
PTFE: ポリテトラフルオロエチレン
RH: 相対湿度
RPM、rpm: 毎分回転数
RT: 室温、約25℃
TFA: トリフルオロ酢酸
THF: テトラヒドロフラン
UPLC: 超高速液体クロマトグラフィー
vol: 体積
v/v: 体積/体積
μg、ug: マイクログラム
μL、μl、uL、ul: マイクロリットル
ケトレダクターゼ
本開示は、ヌクレオシド、特にフルオロヌクレオシドの合成においてケトンをキラルアルコールに還元しうるケトレダクターゼ酵素に関する。実施形態においては、ケトレダクターゼ酵素は以下の変換が可能である。
実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素は、野生型ケトレダクターゼまたは修飾ケトレダクターゼの参照アミノ酸配列と比較して1以上のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列を有し、これは、定められたケト基質に対する酵素の特性の改善をもたらす。
本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素は、商業的に入手可能な野生型ケトレダクターゼからの定向進化の産物であり、これは、以下の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、プロゾミックス(Prozomix)メタゲノムパネルをスクリーニングすることにより特定された。
MHHHHHHNKTIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTKGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGFFLPGEINNEAEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSTASITAYTNGGSYCISKFALLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGATLTDSWAGVELPAERFIASEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQLGDL(配列番号1)。
実施形態においては、本開示のケトレダクターゼ酵素は、例えば酵素活性、立体選択性、立体特異性、熱安定性、溶媒安定性の増強または生成物阻害の低減のような、配列番号1のケトレダクターゼ酵素と比較した場合の改善を示しうる。
幾つかの実施形態においては、本開示のケトレダクターゼ酵素は酵素活性の速度の改善、すなわち、基質を生成物に変換する速度の改善を示しうる。幾つかの実施形態においては、該ケトレダクターゼポリペプチドは、配列番号1の酵素により示される速度の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、150倍、200倍、400倍、1000倍、3000倍、5000倍、7000倍または7000倍以上の速度で基質を生成物に変換しうる。
幾つかの実施形態においては、そのようなケトレダクターゼポリペプチドはまた、少なくとも約80%のステレオマー過剰率で基質を生成物に変換しうる。幾つかの実施形態においては、そのようなケトレダクターゼポリペプチドはまた、少なくとも約90%のステレオマー過剰率で基質を生成物に変換しうる。幾つかの実施形態においては、そのようなケトレダクターゼポリペプチドはまた、少なくとも約99%のステレオマー過剰率で基質を生成物に変換しうる。
幾つかの実施形態においては、ケトレダクターゼポリペプチドは高度に立体選択的であり、該ポリペプチドは、約99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%を超えるステレオマー過剰率で、基質を生成物に還元しうる。
実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHHNKTIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTKGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGFFLPGEINNEAEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSTASITAYTNGGSYCISKFALLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGATLNDSWAGVELPAERFIASEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQLGDL(配列番号2)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHHNKTIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTKGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGFFLPGEINNEAEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASITAYTSGGSYCISKFALLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGATLNDSWAKVELPAERFIASEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQLGDL(配列番号3)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTKGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGFFLPGEINNEAEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASITAYTSGGSYCISKTALLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGATLNDSWAKVELPAEWFIASEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQLGDL(配列番号4)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTKGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGWFLPGEINNEAEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTSGGSYCISKTAQLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDSWAKVELPAEWFIASEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQLGDL(配列番号5)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTKGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGWFLPGEINNEAEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTSGGSYCISKTAQLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDSWAKVELPAELFIAPEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQTGDL(配列番号6)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号7に示すアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTAGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGWFLPGEINNEEEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTSGGSYCISKTAQLGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDSWAKVELPAELFIAPEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQEGDL(配列番号7)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTAGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGHFLPGEINNEEEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTSGGSYCISKTAELGMSKVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDSWAKAELPAELFIAPEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPQEGDL(配列番号8)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号9に示すアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTAGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKQTVNQVDILVNNTGHFLPGEINNEEEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTSGGSYCISKTAELAMSRVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDNWAKAELPAELFIAPEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPTEGDL(配列番号9)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTAGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKATVNQVDILVNNTGHFLPGEINNEEEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTPGGSYCISKTAELAMSRVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDNWAKAELPAELFIAPEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPTEGDL(配列番号10)。
追加的な実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素には、以下の配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するケトレダクターゼ酵素が含まれる。
MHHHHHPATIVVTGGTKGIGRAIVEKFAKEGFTVLTCARTAGDNFPENVHFFKADLSKKVEVLAFADFIKATVNQVDILVNNTGHFLPGEINNEEEGTLEAMIETNLYSAYYLTRALVGDMITKKEGHIFNICSYASIVPYTSGGSYCISKTAMLAMSRVLREELKPHHVRVTSILPGAVLNDNWAKAELPAELFIAPEDIAQIVWTAHCLPSTTVLEEILIRPTEGDL(配列番号11)。
幾つかの実施形態においては、本開示の改良されたケトレダクターゼ酵素は配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11の配列に基づいており、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11の参照配列に対して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含みうる。これらの差異はアミノ酸の挿入、欠失、置換またはそのような変化の任意の組合せでありうる。幾つかの実施形態においては、アミノ酸配列の差異は非保存的アミノ酸置換、保存的アミノ酸置換、および非保存的アミノ酸置換と保存的アミノ酸置換との組合せを含みうる。
追加的な実施形態は、本明細書に記載されているポリヌクレオチドおよび/または発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は大腸菌(E.coli)であることが可能であり、あるいは、異なる生物、例えばエル・ブレビス(L.brevis)であることが可能である。宿主細胞は、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素の発現および単離に使用可能であり、あるいは、基質を立体異性体生成物に変換するために直接使用可能である。
全細胞、細胞抽出物または精製ケトレダクターゼ酵素のいずれを使用して該方法を実施するかにかかわらず、単一のケトレダクターゼ酵素が使用可能であり、あるいは2以上のケトレダクターゼ酵素の混合物が使用可能である。
改善が望ましい酵素特性には、酵素活性、熱安定性、pH活性プロファイル、補因子要求性、インヒビターに対する不応性(例えば、生成物阻害)、立体特異性、立体選択性および溶媒安定性が含まれるが、これらに限定されるものではない。改善は、酵素活性のような単一の酵素特性、または酵素活性と立体選択性とのような異なる酵素特性の組合せに関するものでありうる。
以下の表1は、本明細書に開示されている配列番号および関連活性の一覧を示す。以下の配列は、特に示されていない限り、配列番号1のケトレダクターゼ配列に基づく。以下の表において、各行は配列番号を示す。突然変異(すなわち、残基変化)の数を記載している列は、配列番号1のケトレダクターゼ配列と比較した場合のアミノ酸置換の数を示す。該表の「変換」の列において、+は基質から生成物への10%未満の変換を示し、++は10~60%の変換を示し、+++は60%超の変換を示す。該表の「%DE」の列において、-はR選択性を示し、+は50%未満のS,S-ジアステレオマー生成物を示し、++は50%超のS,S-ジアステレオマー生成物を示す。
ケトレダクターゼをコードするポリヌクレオチド
もう1つの態様において、本開示は、本明細書に開示されているケトレダクターゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドを、遺伝子発現を制御する1以上の異種調節配列に機能的に連結して、該ポリペプチドを発現しうる組換えポリヌクレオチドを得ることが可能である。ケトレダクターゼをコードする異種ポリヌクレオチドを含有する発現構築物を適切な宿主細胞内に導入して、対応するケトレダクターゼポリペプチドを発現させることが可能である。
もう1つの態様において、本開示は、本明細書に開示されているケトレダクターゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドを、遺伝子発現を制御する1以上の異種調節配列に機能的に連結して、該ポリペプチドを発現しうる組換えポリヌクレオチドを得ることが可能である。ケトレダクターゼをコードする異種ポリヌクレオチドを含有する発現構築物を適切な宿主細胞内に導入して、対応するケトレダクターゼポリペプチドを発現させることが可能である。
種々のアミノ酸に対応するコドンが公知であるため、タンパク質配列が入手可能であれば、対象をコードしうる全てのポリヌクレオチドが示される。同一アミノ酸が代替コドンまたは同義コドンによりコードされる遺伝暗号の縮重は、本明細書に開示されている改良されたケトレダクターゼ酵素を全てがコードする非常に多数の核酸の作製を可能にする。したがって、特定のアミノ酸配列が特定されたら、当業者は、タンパク質のアミノ酸配列を変化させない方法で1以上のコドンの配列を単に改変することにより、幾つもの異なる核酸を作製することが可能である。この点に関して、本開示は特に、可能なコドンの選択に基づく組合せを選択することにより作製されうるポリヌクレオチドのありとあらゆる可能な変異(変動)を想定しており、そのような変異は全て、本明細書に開示されている任意のポリペプチドに関して具体的に開示されているとみなされるべきである。
種々の実施形態において、コドンは、好ましくは、タンパク質が産生される宿主細胞に適合するように選択される。例えば、細菌において使用される好ましいコドンは、細菌において遺伝子を発現させるために使用され、酵母において使用される好ましいコドンは酵母における発現に使用され、哺乳類において使用される好ましいコドンは哺乳類細胞における発現に使用される。例えば、配列番号3のポリヌクレオチドは大腸菌(E.coli)における発現のためにコドン最適化されている。
特定の実施形態においては、ケトレダクターゼのコドン使用を最適化するために、全てのコドンを置換する必要はない。なぜなら、天然の配列は好ましいコドンを含むからであり、また、好ましいコドンの使用は全てのアミノ酸残基に必要なわけではないからである。結果的に、ケトレダクターゼ酵素をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、全長コード領域のコドン位置の約40%、50%、60%、70%、80%または90%超において、好ましいコドンを含有しうる。
種々の実施形態においては、改良されたケトレダクターゼポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現をもたらすために種々の方法で操作されうる。発現ベクターに応じて、ベクター内への挿入の前の単離されたポリヌクレオチドの操作が望ましい又は必要でありうる。組換えDNA法を利用してポリヌクレオチドおよび核酸配列を修飾するための技術は当技術分野で周知である。Sambrookら,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press;およびCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel.F.編,Greene Pub.Associates,1998(2006年までの更新)に指針が記載されている。
幾つかの実施形態においては、本明細書におけるケトレダクターゼポリペプチドのいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドは、ケトレダクターゼポリペプチドの発現を促進するために種々の方法で操作される。幾つかの実施形態においては、ケトレダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ケトレダクターゼのポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現を調節するために1以上の制御配列が存在する発現ベクターを構成する。利用される発現ベクターに応じて、ベクター内への挿入の前の単離されたポリヌクレオチドの操作が望ましい又は必要でありうる。組換えDNA法を利用してポリヌクレオチドおよび核酸配列を修飾するための技術は当技術分野で周知である。幾つかの実施形態においては、制御配列には、とりわけ、プロモーター、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナルペプチド配列および転写ターミネーターが含まれる。幾つかの実施形態においては、適切なプロモーターは、宿主細胞の選択に基づいて選択される。細菌宿主細胞の場合、本開示の核酸構築物の転写を導くための適切なプロモーターには、大腸菌(E.coli)lacオペロン、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子(dagA)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)アルファ-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトース産生性アミラーゼ遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)アルファ-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)ペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)xylAおよびxylB遺伝子および原核生物ベータ-ラクタマーゼ遺伝子から得られるプロモーター(例えば、Villa-Kamaroffら,Proc.Natl Acad.Sci.USA 75:3727-3731[1978]を参照されたい)、ならびにtacプロモーター(例えば、DeBoerら,Proc.Natl Acad.Sci.USA 80:21-25[1983]を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な糸状菌宿主細胞のプロモーターには、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)酸安定性アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)アルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼおよびフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(例えば、WO 96/00787を参照されたい)の遺伝子から得られるプロモーター、ならびにNA2-tpiプロモーター[アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アルファ-アミラーゼおよびアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子に由来するプロモーターのハイブリッド]およびその突然変異体、トランケート化体およびハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な酵母細胞プロモーターは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子に由来するものでありうる。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは当技術分野で公知である(例えば、Romanosら,Yeast 8:423-488[1992]を参照されたい)。
幾つかの実施形態においては、制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列(すなわち、転写を終結させるために宿主細胞により認識される配列)である。幾つかの実施形態においては、ターミネーター配列は、酵素ポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端に機能的に連結される。選択された宿主細胞において機能的であるいずれかの適切なターミネーターが本発明において有用である。糸状菌宿主細胞のための代表的な転写ターミネーターはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)アルファ-グルコシダーゼおよびフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られうる。酵母宿主細胞のための代表的なターミネーターはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)シトクロムC(CYC1)およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得られうる。酵母宿主細胞のための他の有用なターミネーターは当技術分野で公知である(例えば、Romanosら、前掲を参照されたい)。
幾つかの実施形態においては、制御配列はまた、適切なリーダー配列(すなわち、宿主細胞による翻訳に重要なmRNAの非翻訳領域)である。幾つかの実施形態においては、リーダー配列は、ケトレダクターゼをコードする核酸配列の5’末端に機能的に連結される。選択された宿主細胞において機能的であるいずれかの適切なリーダー配列が本発明において有用である。糸状菌宿主細胞のための代表的なリーダーはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼおよびアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主細胞のための適切なリーダーは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)の遺伝子から得られる。
幾つかの実施形態においては、制御配列はまた、ポリアデニル化配列(すなわち、核酸配列の3’末端に機能的に連結された配列であり、これは、転写されると、ポリアデノシン残基を転写mRNAに付加するシグナルとして宿主細胞により認識される)である。選択された宿主細胞において機能的であるいずれかの適切なポリアデニル化配列が本発明において使用されうる。糸状菌宿主細胞のための代表的なポリアデニル化配列には、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼおよびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)アルファ-グルコシダーゼの遺伝子が含まれるが、これらに限定されるものではない。酵母宿主細胞のための有用なポリアデニル化配列が公知である(例えば、GuoおよびSherman,Mol.Cell.Biol.,15:5983-5990[1995]を参照されたい)。
幾つかの実施形態においては、制御配列はまた、シグナルペプチド(すなわち、ポリペプチドのアミノ末端に連結されたアミノ酸配列をコードし、コード化ポリペプチドを細胞の分泌経路に導くコード領域)である。幾つかの実施形態においては、核酸配列のコード配列の5’末端は、分泌ポリペプチドをコードするコード領域のセグメントに翻訳リーディングフレームで天然で連結されているシグナルペプチドコード領域を本質的に含有する。あるいは、幾つかの実施形態においては、コード配列の5’末端は、コード配列にとって外来であるシグナルペプチドコード領域を含む。選択された宿主細胞の分泌経路に発現ポリペプチドを導くいずれかの適切なシグナルペプチドコード領域が、操作されたポリペプチドの発現に有用である。細菌宿主細胞のための有効なシグナルペプチドコード領域は、バシラス(Bacillus)NClB 11837 マルトース産生性アミラーゼ、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)アルファ-アミラーゼ、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)サブチリシン、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)ベータ-ラクタマーゼ、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)中性プロテアーゼ(nprT、nprS、nprM)およびバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)prsAの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード領域であるが、これらに限定されるものではない。他のシグナルペプチドも当技術分野で公知である(例えば、SimonenおよびPalva,Microbiol.Rev.,57:109-137[1993]を参照されたい)。幾つかの実施形態においては、糸状菌宿主細胞のための有効なシグナルペプチドコード領域には、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼおよびヒューミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード領域が含まれるが、これらに限定されるものではない。酵母宿主細胞に有用なシグナルペプチドには、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)インベルターゼの遺伝子に由来するシグナルペプチドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
幾つかの実施形態においては、調節配列も使用される。これらの配列は宿主細胞の増殖に対するポリペプチドの発現の調節を促進する。調節系の例としては、調節化合物の存在を含む化学的または物理的刺激に応答して遺伝子の発現をオンまたはオフにするものが挙げられる。原核宿主細胞においては、適切な調節配列には、lac、tacおよびtrpオペレーター系が含まれるが、これらに限定されるものではない。酵母宿主細胞においては、適切な調節系には、ADH2系またはGAL1系が含まれるが、これらに限定されるものではない。糸状菌においては、適切な調節配列には、TAKAアルファ-アミラーゼプロモーター、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼプロモーターおよびアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
もう1つの態様において、本発明は、ケトレダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、それが導入される宿主のタイプに応じて1以上の発現調節領域(例えば、プロモーターおよびターミネーター、複製起点など)とを含む組換え発現ベクターに関する。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている種々の核酸および制御配列を互いに結合させて、1以上の簡便な制限部位(これは、そのような部位における、酵素ポリペプチドをコードする核酸配列の挿入または置換を可能にする)を含む組換え発現ベクターを得る。あるいは、幾つかの実施形態においては、本発明の核酸配列は、核酸配列または該配列を含む核酸構築物を発現用の適切なベクター内に挿入することにより発現される。発現ベクターの作製を含む幾つかの実施形態においては、コード配列は、発現用の適切な制御配列に機能的に連結されるように、ベクター内に配置される。
組換え発現ベクターは、組換えDNA法に簡便に付され酵素ポリヌクレオチド配列の発現をもたらしうる任意の適切なベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)でありうる。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞に対するベクターの適合性に左右される。ベクターは線状または閉環状プラスミドでありうる。
幾つかの実施形態においては、発現ベクターは自律複製性ベクター(すなわち、染色体の複製から独立して複製される染色体外実体として存在するベクター、例えばプラスミド、染色体外要素、ミニ染色体または人工染色体)である。ベクターは、自己複製を保証するための手段を含有しうる。幾つかの代替的実施形態においては、ベクターは、宿主細胞内に導入されるとゲノム内に組み込まれるベクターであって、それが組み込まれた染色体と共に複製されるベクターである。更に、幾つかの実施形態においては、トランスポゾンおよび/または宿主細胞のゲノム内に導入される全DNAを一緒に含む単一のベクターもしくはプラスミドまたは2以上のベクターもしくはプラスミドが使用される。
幾つかの実施形態においては、発現ベクターは、形質転換細胞の容易な選択を可能にする1以上の選択マーカーを含む。「選択マーカー」は遺伝子であり、その産物は殺生物物質またはウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求株に対する原栄養性などを付与する。細菌選択マーカーの例には、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)もしくはバシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のdal遺伝子、またはアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールもしくはテトラサイクリン耐性のような抗生物質耐性を付与するマーカーが含まれるが、これらに限定されるものではない。酵母宿主細胞のための適切なマーカーには、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1およびURA3が含まれるが、これらに限定されるものではない。糸状菌宿主細胞において使用される選択可能なマーカーには、amdS[アセトアミダーゼ;例えば、アスペルギルス・ニジュランス(A.nidulans)またはアスペルギルス・オリゼ(A.oryzae)に由来するもの]、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar[ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ;例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(S.hygroscopicus)に由来するもの]、hph(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG[オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ;例えば、アスペルギルス・ニジュランス(A.nidulans)またはアスペルギルス・オリゼ(A.oryzae)に由来するもの]、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)およびtrpC(アントラニル酸シンターゼ)ならびにそれらの同等物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の少なくとも1つのケトレダクターゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、該ポリヌクレオチドは該宿主細胞における少なくとも1つのケトレダクターゼの発現のための1以上の制御配列に機能的に連結されている。本発明の発現ベクターによりコードされるポリペプチドの発現における使用に適した宿主細胞は当技術分野で周知であり、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、ビブリオ・フルビアリス(Vibrio fluvialis)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)細胞;真菌細胞、例えば酵母[サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)(ATCCアクセッション番号201178)]を包含するが、これらに限定されるものではない。代表的な宿主細胞には、種々の大腸菌(Escherichia coli)株[例えば、W3110(ΔfhuA)およびBL21]も含まれる。細菌性選択マーカーの例には、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)もしくはバシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のdal遺伝子、またはアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールおよび/もしくはテトラサイクリン耐性のような抗生物質耐性を付与するマーカーが含まれるが、これらに限定されるものではない。
幾つかの実施形態においては、本発明の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム内へのベクターの組込みを可能にする又はゲノムから独立した細胞内でのベクターの自律複製を可能にするエレメントを含有する。宿主細胞ゲノム内への組込みを含む幾つかの実施形態においては、ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸配列と、相同組換えまたは非相同組換えによるゲノム内へのベクター組込みのための、ベクターの任意の他のエレメントとに基づく。
幾つかの代替実施形態においては、発現ベクターは、宿主細胞のゲノム内への相同組換えによる組込みを導くための追加的な核酸配列を含有する。追加的な核酸配列は、染色体内の的確な位置でベクターが宿主細胞ゲノム内に組込まれることを可能にする。的確な位置での組込みの可能性を高めるためには、組込みエレメントは、好ましくは、十分な数のヌクレオチド、例えば100~10,000塩基対、好ましくは400~10,000塩基対、最も好ましくは800~10,000塩基対を含有し、これらは、相同組換えの可能性を高めるために対応標的配列に対して高度に相同である。組込みエレメントは、宿主細胞のゲノム内の標的配列と相同な任意の配列でありうる。更に、組込みエレメントはノンコーディング(非コード化)核酸配列またはコーディング(コード化)核酸配列でありうる。一方、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム内に組み込まれうる。
自律複製の場合、ベクターは、当該宿主細胞内でベクターが自律複製することを可能にする複製起点を更に含みうる。細菌性複製起点の例としては、P15A ori、または大腸菌(E.coli)における複製を可能にするプラスミドpBR322、pUC19、pACYC177(これはP15A oriを含有する)もしくはpACYC184(これはP15A oriを含有する)の複製起点、およびバシラス(Bacillus)における複製を可能にするpUB110、pE194またはpTA1060が挙げられる。酵母宿主細胞において使用される複製起点の例としては、2ミクロン複製起点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3との組合せ、およびARS4とCEN6との組合せが挙げられる。複製起点は、宿主細胞内でその機能を温度感受性にする突然変異を有するものでありうる(例えば、Ehrlich,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1433[1978]を参照されたい)。
幾つかの実施形態においては、遺伝子産物の産生を増加させるために、本発明の核酸配列の複数のコピーが宿主細胞内に挿入される。核酸配列のコピー数の増加は、該配列の少なくとも1つの追加的なコピーを宿主細胞ゲノム内に組込むことにより、または増幅可能な選択マーカー遺伝子を該核酸配列と共に含めることにより(この場合、選択マーカー遺伝子の増幅コピーを含有し、それにより該核酸配列の追加的コピーを含有する細胞は、適切な選択剤の存在下で細胞を培養することにより選択されうる)達成されうる。
本発明において使用される多数の発現ベクターは商業的に入手可能である。適切な市販の発現ベクターには、Novagen(登録商標)のpET大腸菌(E.coli)T7発現ベクター(Millipore Sigma)およびp3xFLAGTM(商標)発現ベクター(Sigma-Aldrich Chemicals)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の適切な発現ベクターには、pBluescriptII SK(-)およびpBK-CMV(Stratagene)、ならびにpBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pREP4、pCEP4(Invitrogen)またはpPoly(Invitrogen)に由来するプラスミドが含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、Latheら,Gene 57:193-201[1987]を参照されたい)。
したがって、幾つかの実施形態においては、ベクターの増殖および変異体ケトレダクターゼの発現を可能にするために、少なくとも1つの変異体ケトレダクターゼをコードする配列を含むベクターを宿主細胞内に形質転換する。幾つかの実施形態においては、前記の形質転換宿主細胞を、変異体ケトレダクターゼの発現を可能にする条件下、適切な栄養培地内で培養する。宿主細胞を培養するのに有用な任意の適切な培地が本発明において使用され、これらには、適切なサプリメントを含有する最少培地または複合培地が含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、HTP培地内で宿主細胞を増殖させる。適切な培地は種々の商業的供給業者から入手可能であり、あるいは、公開されている調製方法(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ)に従い調製されうる。
ケトレダクターゼの発現のための宿主細胞
もう1つの態様においては、本開示は、本開示の改良されたケトレダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、該ポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるケトレダクターゼ酵素の発現のための1以上の制御配列に機能的に連結されている。本発明の発現ベクターによりコードされるケトレダクターゼポリペプチドの発現に使用される宿主細胞は当技術分野で周知であり、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バシラス・メガテリウム(B.megaterium)、バシラス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、バシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、ラクトバシラス・ケジル(Lactobacillus kejir)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・マイナー(Lactobacillus minor)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞[例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)(ATCCアクセッション番号201178)]を包含するが、これらに限定されるものではない。前記の宿主細胞のための適切な培地および増殖条件は当技術分野で周知である。
もう1つの態様においては、本開示は、本開示の改良されたケトレダクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、該ポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるケトレダクターゼ酵素の発現のための1以上の制御配列に機能的に連結されている。本発明の発現ベクターによりコードされるケトレダクターゼポリペプチドの発現に使用される宿主細胞は当技術分野で周知であり、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バシラス・メガテリウム(B.megaterium)、バシラス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、バシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、ラクトバシラス・ケジル(Lactobacillus kejir)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・マイナー(Lactobacillus minor)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞[例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)(ATCCアクセッション番号201178)]を包含するが、これらに限定されるものではない。前記の宿主細胞のための適切な培地および増殖条件は当技術分野で周知である。
ケトレダクターゼの発現のためのポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の種々の方法により細胞内に導入されうる。技術には、とりわけ、エレクトロポレーション、微粒子銃粒子衝撃、リポソーム媒介性トランスフェクション、塩化カルシウムトランスフェクションおよびプロトプラスト融合が含まれる。ポリヌクレオチドを細胞内に導入するための種々の方法が当業者に明らかであろう。
本発明の幾つかの実施形態においては、糸状菌宿主細胞は、以下のもの(それらに限定されるものではない)を含む任意の適切な属および種のものである:アクリヤ(Achlya)、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ビエルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コクリオボラス(Cochliobolus)、コリナスカス(Corynascus)、クリフォネクトリア(Cryphonectria)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、コプリヌス(Coprinus)、コリオラス(Coriolus)、ディプロディア(Diplodia)、エンドシス(Endothis)、フザリウム(Fusarium)、ジベレラ(Gibberella)、グリオクラジウム(Gliocladium)、フミコラ(Humicola)、ヒポクレア(Hypocrea)、ミセリオプトラ(Myceliophthora)、ムコール(Mucor)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、ポドスポラ(Podospora)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、ピリクラリア(Pyricularia)、リゾムコール(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィルム(Schizophyllum)、シタリジウム(Scytalidium)、スポロトリクム(Sporotrichum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、ティエラビア(Thielavia)、トラメテス(Trametes)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トリコデルマ(Trichoderma)、ベルチシリウム(Verticillium)および/もしくはボルバリエラ(Volvariella)、ならびに/またはそれらのテレオモルフもしくはアナモルフ、ならびにそれらの別名、バシオニムもしくは分類学的同等物。
本発明の幾つかの実施形態においては、宿主細胞は酵母細胞であり、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ピキア(Pichia)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)またはヤロウイア(Yarrowia)属種(species)の細胞を包含するが、これらに限定されるものではない。本発明の幾つかの実施形態においては、酵母細胞はハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・ジアスタティックス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コダマエ(Pichia kodamae)、ピキア・メンブランエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・オプチエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・クエルクウム(Pichia quercuum)、ピキア・ピジペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)またはヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)である。
幾つかの他の実施形態においては、宿主細胞は原核細胞である。適切な原核細胞には、グラム陽性細菌細胞、グラム陰性細菌細胞およびグラム可変性細菌細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。以下のもの(それらに限定されるものではない)を含む任意の適切な細菌生物が本発明において有用である:アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アリシクロバシラス(Alicyclobacillus)、アナベナ(Anabaena)、アナシスチス(Anacystis)、アシネトバクター(Acinetobacter)、アシドテルムス(Acidothermus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、アゾバクター(Azobacter)、バシラス(Bacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ブチリビブリオ(Butyrivibrio)、ブフネラ(Buchnera)、カンペストリス(Campestris)、カンプリオバクター(Camplyobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、クロマチウム(Chromatium)、コプロコッカス(Coprococcus)、エシェリキア(Escherichia)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、フェカリバクテリウム(Faecalibacterium)、フランシセラ(Francisella)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、ゲオバシラス(Geobacillus)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、イリオバクター(Ilyobacter)、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイクロバクテリウム(Microbacterium)、メソリゾビウム(Mesorhizobium)(Methylobacterium)、メチロバクテリウム(Methylobacterium)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ナイセリア(Neisseria)、パンテア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、ロドバクター(Rhodobacter)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ロゼブリア(Roseburia)、ロドスピリルム(Rhodospirillum)、ロドコッカス(Rhodococcus)、セネデスムス(Scenedesmus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、シネコッカス(Synecoccus)、サッカロモノスポラ(Saccharomonospora)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、セラチア(Serratia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)、トロフェリマ(Tropheryma)、ツラレンシス(Tularensis)、テメキュラ(Temecula)、サーモシネココッカス(Thermosynechococcus)、サーモコッカス(Thermococcus)、ウレアプラズマ(Ureaplasma)、キサントモナス(Xanthomonas)、キシレラ(Xylella)、エルシニア(Yersinia)およびザイモモナス(Zymomonas)。幾つかの実施形態においては、宿主細胞はアグロバクテリウム(Agrobacterium)、アシネトバクター(Acinetobacter)、アゾバクター(Azobacter)、バシラス(Bacillus)、ビフィドバクテリア(Bifidobacterium)、ブフネラ(Buchnera)、ジオバシラス(Geobacillus)、カンピロバクター(Campylobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エシェリキア(Escherichia)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エルウィニア(Erwinia)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、パンテア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、サルモネラ(Salmonella)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)またはザイモモナス(Zymomonas)属種である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主株はヒトに対して非病原性である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主株は工業菌株である。多数の細菌性工業菌株が公知であり、本発明に適している。本発明の幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はアグロバクテリウム属種(Agrobacterium species)[例えば、アグロバクテリウム・ラジオバクター(A.radiobacter)、アグロバクテリウム・リゾゲネス(A.rhizogenes)およびアグロバクテリウム・ルビ(A.rubi)]である。本発明の幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はアルスロバクター属種(Arthrobacter species)[例えば、アルスロバクター・アウレッセンス(A.aurescens)、アルスロバクター・シトレウス(A.citreus)、アルスロバクター・グロビフォルミス(A.globiformis)、アルスロバクター・ヒドロカルボグルタミクス(A.hydrocarboglutamicus)、アルスロバクター・マイソレンス(A.mysorens)、アルスロバクター・ニコチアナエネ(A.nicotianae)、アルスロバクター・パラフィネウス(A.paraffineus)、アルスロバクター・プロトフォンニアエ(A.protophonniae)、アルスロバクター・ロセオパルクフィヌス(A.roseoparqffinus)、アルスロバクター・スルフレウス(A.sulfureus)およびアルスロバクター・ウレアファシエンス(A.ureafaciens)]である。本発明の幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はバシラス属種(Bacillus species)[例えば、バシラス・チューリンゲンシス(B.thuringensis)、バシラス・アンスラシス(B.anthracis)、バシラス・メガテリウム(B.megaterium)、バシラス・サチリス(B.subtilis)、バシラス・レンツス(B.lentus)、バシラス・サーキュランス(B.circulans)、バシラス・プミルス(B.pumilus)、バシラス・ロータス(B.lautus)、バシラス・コアグランス(B.coagulans)、バシラス・ブレビス(B.brevis)、バシラス・フィルムス(B.firmus)、バシラス・アルカオフィウス(B.alkaophius)、バシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バシラス・クラウシイ(B.clausii)、バシラス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、バシラス・ハロデュランス(B.halodurans)、バシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)]である。幾つかの実施形態においては、宿主細胞は工業用バシラス(Bacillus)株であり、これらには、バシラス・サチリス(B.subtilis)、バシラス・プミルス(B.pumilus)、バシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バシラス・メガテリウム(B.megaterium)、バシラス・クラウシイ(B.clausii)、バシラス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)またはバシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)が含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、バシラス(Bacillus)宿主細胞はバシラス・サチリス(B.subtilis)、バシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バシラス・メガテリウム(B.megaterium)、バシラス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)および/またはバシラス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はクロストリジウム属種(Clostridium species)[例えば、クロストリジウム・アセトブチリカム(C.acetobutylicum)、クロストリジウム・テタニ(C.tetani)E88、クロストリジウム・リツセブレンセ(C.lituseburense)、クロストリジウム・サッカロブチリカム(C.saccharobutylicum)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(C.perfringens)およびクロストリジウム・ベイジェリンキー(C.beijerinckii)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はコリネバクテリウム属種(Corynebacterium species)[例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)およびコリネバクテリウム・アセトアシドフィルム(C.acetoacidophilum)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はエシェリキア属種(Escherichia species)[例えば、大腸菌(E.coli)]である。幾つかの実施形態においては、宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)W3110である。幾つかの実施形態においては、宿主は大腸菌(Escherichia coli)BL21またはBL21(DE3)である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はエルウィニア属種(Erwinia species)[例えば、エルウィニア・ウレドボラ(E.uredovora)、エルウィニア・カロトボラ(E.carotovora)、エルウィニア・アナナス(E.ananas)、エルウィニア・ヘルビコーラ(E.herbicola)、エルウィニア・プンクタタ(E.punctata)およびエルウィニア・テレウス(E.terreus)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はパンテア属種(Pantoea species)[例えば、パンテア・シトレア(P.citrea)およびパンテア・アグロメランス(P.agglomerans)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はシュードモナス属種(Pseudomonas species)[例えば、シュードモナス・プチダ(P.putida)、シュードモナス・エルジノーサ(P.aeruginosa)、シュードモナス・メバロニイ(P.mevalonii)およびシュードモナス属種(P.sp.)D-01 10]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はストレプトコッカス属種(Streptococcus species)[例えば、ストレプトコッカス・エクイシミリス(S.equisimiles)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)およびストレプトコッカス・ウベリス(S.uberis)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はストレプトマイセス属種[例えば、ストレプトマイセス・アンボファシエンス(S.ambofaciens)、ストレプトマイセス・
アクロモゲネス(S.achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(S.avermitilis)、ストレプトマイセス・セリカラー(S.coelicolor)、ストレプトマイセス・アウレオファシエンス(S.aureofaciens)、ストレプトマイセス・アウレウス(S.aureus)、ストレプトマイセス・フンギシディクス(S.fungicidicus)、ストレプトマイセス・ギリセウス(S.griseus)およびストレプトマイセス・リビダンス(S.lividans)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はザイモモナス属種(Zymomonas species)[例えば、ザイモモナス・モビリス(Z.mobilis)およびザイモモナス・リポリティカ(Z.lipolytica)]である。
アクロモゲネス(S.achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(S.avermitilis)、ストレプトマイセス・セリカラー(S.coelicolor)、ストレプトマイセス・アウレオファシエンス(S.aureofaciens)、ストレプトマイセス・アウレウス(S.aureus)、ストレプトマイセス・フンギシディクス(S.fungicidicus)、ストレプトマイセス・ギリセウス(S.griseus)およびストレプトマイセス・リビダンス(S.lividans)]である。幾つかの実施形態においては、細菌宿主細胞はザイモモナス属種(Zymomonas species)[例えば、ザイモモナス・モビリス(Z.mobilis)およびザイモモナス・リポリティカ(Z.lipolytica)]である。
本発明において有用である多数の原核生物および真核生物の株は、幾つかのカルチャー・コレクション、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)、およびAgricultural Research Service Patent Culture Collection,Northern Regional Research Center(NRRL)から公的に容易に入手可能である。
幾つかの実施形態においては、宿主細胞は、タンパク質の分泌、タンパク質の安定性、ならびに/またはタンパク質の発現および/もしくは分泌に望ましい他の特性を改善する特徴を有するように遺伝的に修飾される。遺伝的修飾は遺伝子工学技術および/または古典的な微生物学的技術(例えば、化学的またはUV突然変異誘発およびその後の選択)により達成されうる。実際、幾つかの実施形態においては、宿主細胞を作製するために組換え修飾と古典的な選択技術との組合せが用いられる。組換え技術を用いて、宿主細胞内および/または培地内のケトレダクターゼ変異体の収量が増加するように、核酸分子を導入し、欠失させ、抑制し、または修飾することが可能である。1つの遺伝子工学アプローチにおいては、コード化タンパク質の発現を抑制するためにインビボで遺伝子を特異的に標的化することにより、標的化遺伝子修飾を誘導するために、相同組換えを用いる。別のアプローチにおいては、siRNA、アンチセンスおよび/またはリボザイム技術が遺伝子発現の抑制において有用である。細胞内のタンパク質の発現を低減するための種々の方法が当技術分野で公知であり、それらには、タンパク質をコードする遺伝子の全部または一部の欠失、および遺伝子産物の発現または活性を破壊するための部位特異的突然変異誘発が含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、Chaverocheら,Nucl.Acids Res.,28:22 e97[2000];Choら,Molec.Plant Microbe Interact.,19:7-15[2006];MaruyamaおよびKitamoto,Biotechnol.Lett.,30:1811-1817[2008];Takahashiら,Mol.Gen.Genom.,272:344-352[2004];ならびにYouら,Arch.Microbiol.,191:615-622[2009]を参照されたい;それらの全てを参照により本明細書に組み入れることとする)。ランダム突然変異誘発、およびそれに続く、所望の突然変異のスクリーニングも有用である(例えば、Combierら,FEMS Microbiol.Lett.,220:141-8[2003];およびFironら,Eukary.Cell 2:247-55[2003]を参照されたい;それらを共に参照により本明細書に組み入れることとする)。
宿主細胞内へのベクターまたはDNA構築物の導入は、当技術分野で公知のいずれかの適切な方法を用いて達成可能であり、そのような方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、PEG媒介性形質転換、エレクトロポレーションまたは当技術分野で公知の他の一般的な技術が含まれるが、これらに限定されるものではない。
幾つかの実施形態においては、本発明の操作された宿主細胞(すなわち、「組換え宿主細胞」)を、プロモーターの活性化、形質転換体の選択またはケトレダクターゼポリヌクレオチドの増幅のために適宜改変された通常の栄養培地内で培養する。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用された条件であり、当業者に周知である。記載されているとおり、細菌、植物、動物(特に哺乳類)および古細菌由来の細胞を含む多数の細胞の培養および作製に関する多数の標準的な参考文献およびテキストが利用可能である。
幾つかの実施形態においては、本発明のケトレダクターゼを発現する細胞をバッチまたは連続発酵条件下で増殖させる。古典的な「バッチ発酵」は閉鎖系であり、この場合、培地の組成は発酵の開始時に設定され、発酵中に人為的に変更されることはない。バッチ系の変法は、本発明においても有用である「フェドバッチ(流加)発酵」である。この変法においては、発酵が進行するにつれて、基質を徐々に添加する。フェドバッチ系は、異化産物抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、および培地内の基質の量を制限することが望ましい場合に有用である。バッチ発酵およびフェドバッチ発酵は一般的であり、当技術分野で周知である。「連続発酵」は開放系であり、この場合、定められた発酵培地をバイオリアクターに連続的に添加し、同時に等量の馴化培地を処理のために除去する。連続発酵は、一般に、細胞が主に対数増殖期にある状態で、一定の高密度で培養を維持する。連続発酵系は定常状態の増殖条件を維持しようとする。連続発酵プロセスのための栄養素および増殖因子を調節するための方法、ならびに生成物形成速度を最大化するための技術は、応用微生物学の分野で周知である。
遺伝子産物の産生を増加させるために、本発明の核酸配列の複数のコピーが宿主細胞内に挿入される。核酸配列のコピー数の増加は、該配列の少なくとも1つの追加的なコピーを宿主細胞ゲノム内に組込むことにより、または増幅可能な選択マーカー遺伝子を該核酸配列と共に含めることにより(この場合、選択マーカー遺伝子の増幅コピーを含有し、それにより該核酸配列の追加的コピーを含有する細胞は、適切な選択剤の存在下で細胞を培養することにより選択されうる)達成されうる。
本発明の幾つかの実施形態においては、無細胞転写および翻訳系がケトレダクターゼの製造において有用である。幾つかの系が商業的に入手可能であり、該方法は当業者に周知である。
ケトレダクターゼの進化方法
幾つかの実施形態においては、本開示のケトレダクターゼを製造するために、還元反応を触媒するケトレダクターゼ酵素を大腸菌(E.coli)から得る(または誘導する)。幾つかの実施形態においては、特定の宿主細胞におけるケトレダクターゼの発現を増強するために、親ポリヌクレオチド配列をコドン最適化する。配列番号1として示されている親ポリヌクレオチド配列を大腸菌における発現のためにコドン最適化し、ケトレダクターゼ遺伝子の発現をT7プロモーターの制御下に配置した発現ベクター内に該コドン最適化ポリヌクレオチドをクローニングした。目的の遺伝子を発現するために必要なT7ポリメラーゼはlacプロモーターの制御下にあり、目的の遺伝子とT7ポリメラーゼとの両方がlacl抑制を受ける。IPTGの存在はT7ポリメラーゼの産生を活性化し、抑制を排除して、ケトレダクターゼ遺伝子の産生をもたらす。活性なケトレダクターゼを大腸菌において発現するクローンを特定し、遺伝子を配列決定して、それらの正体(同一性)を確認した。
幾つかの実施形態においては、本開示のケトレダクターゼを製造するために、還元反応を触媒するケトレダクターゼ酵素を大腸菌(E.coli)から得る(または誘導する)。幾つかの実施形態においては、特定の宿主細胞におけるケトレダクターゼの発現を増強するために、親ポリヌクレオチド配列をコドン最適化する。配列番号1として示されている親ポリヌクレオチド配列を大腸菌における発現のためにコドン最適化し、ケトレダクターゼ遺伝子の発現をT7プロモーターの制御下に配置した発現ベクター内に該コドン最適化ポリヌクレオチドをクローニングした。目的の遺伝子を発現するために必要なT7ポリメラーゼはlacプロモーターの制御下にあり、目的の遺伝子とT7ポリメラーゼとの両方がlacl抑制を受ける。IPTGの存在はT7ポリメラーゼの産生を活性化し、抑制を排除して、ケトレダクターゼ遺伝子の産生をもたらす。活性なケトレダクターゼを大腸菌において発現するクローンを特定し、遺伝子を配列決定して、それらの正体(同一性)を確認した。
本開示のケトレダクターゼは、親配列をコードするポリヌクレオチドを突然変異誘発および/または定向進化法に付すことにより得られうる。代表的な定向進化技術は、Stemmer,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747-10751;WO 95/22625;WO 97/20078;WO 97/35966;WO 98/27230;WO 00/42651;WO 01/75767および米国特許第6,537,746号に記載されている突然変異誘発および/またはDNAシャッフリングである。使用されうる他の定向進化法には、とりわけ、スタガード伸長プロセス(StEP)、インビトロ組換え(Zhaoら,1998,Nat.Biotechnol.16:258-261)、突然変異誘発性PCR(Caldwellら,1994,PCR Methods Appl.3:S136-S140)およびカセット突然変異誘発(Blackら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:3525-3529)が含まれる。
突然変異誘発処理後に得られたクローンを、所望の改善された酵素特性を有するケトレダクターゼに関してスクリーニングする。発現ライブラリーからの酵素活性の測定は、基質および生成物を測定するための標準的な化学分析技術、例えばUPLC-MS、ならびにNADHまたはNADPH濃度の(それがNAD+またはNADP+に変換される際の)減少(吸光度または蛍光の減少によるもの)の速度をモニターする標準的な生化学技術を用いて行われうる。この反応においては、ケトレダクターゼがケトン基質を対応ヒドロキシル基へと還元するにつれて、NADHまたはNADPHがケトレダクターゼにより消費(酸化)される。吸光度または蛍光の減少により測定される、単位時間当たりのNADHまたはNADPH濃度の減少の速度は、一定量のライセート(またはそれから調製された凍結乾燥粉末)におけるケトレダクターゼポリペプチドの相対的(酵素)活性を示す。所望の改善される酵素特性が熱安定性である場合、酵素調製物を所定温度にさらし、熱処理後に残存する酵素活性の量を測定した後、酵素活性が測定されうる。ついで、ケトレダクターゼをコードするポリヌクレオチドを含有するクローンを単離し、配列決定してヌクレオチド配列の変化を(もしあれば)特定し、宿主細胞において酵素を発現させるために該クローンを使用する。
ポリペプチドの配列が既知である場合、酵素をコードするポリヌクレオチドは、公知の合成方法に従い、標準的な固相法により製造されうる。幾つかの実施形態においては、最大約100塩基の断片を個別に合成し、ついで(例えば、酵素的もしくは化学的連結法またはポリメラーゼ媒介法により)連結して、任意の所望の連続的配列を形成させることが可能である。例えば、本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、例えばBeaucageら,1981,Tet.Lett.22:1859-69に記載されている古典的なホスホラミダイト法、またはMatthesら,1984,EMBO J.3:801-05に記載されている方法(例えば、それは自動合成方法において典型的に実施されている)を用いる化学合成により製造されうる。ホスホラミダイト法によれば、オリゴヌクレオチドを例えば自動DNA合成装置において合成し、精製し、アニーリングし、連結し、適切なベクター内にクローン化する。また、実質的に任意の核酸が、種々の商業的入手元、例えばThe Midland Certified Reagent Company,Midland,Tex.、The Great American Gene Company,Ramona,Calif.、ExpressGen Inc.Chicago,Ill.、Operon Technologies Inc.,Alameda,Calif.およびその他多数から入手可能である。
宿主細胞において発現されたケトレダクターゼ酵素は、とりわけ、リゾチーム処理、超音波処理、濾過、塩析、超遠心分離およびクロマトグラフィーを含む、タンパク質精製のための周知の技術のいずれか1以上を用いて、細胞および/または培地から回収されうる。大腸菌(E.coli)のような細菌からのタンパク質の高効率抽出および細胞溶解のための適切な溶液は、ミズーリ州セントルイス(St.Louis Mo.)のシグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から商品名CelLytic B(登録商標)として商業的に入手可能である。
ケトレダクターゼポリペプチドを単離するためのクロマトグラフィー技術には、とりわけ、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動およびアフィニティクロマトグラフィーが含まれる。特定の酵素を精製するための条件は正味電荷、疎水性、親水性、分子量、分子形状などのような要因に部分的に左右され、当業者には明らかであろう。
幾つかの実施形態においては、改良されたケトレダクターゼ酵素を単離するためにアフィニティ技術が用いられうる。アフィニティークロマトグラフィー精製の場合、タンパク質配列が、精製を可能にする認識配列でタグ付けされうる。一般的なタグには、セルロース結合ドメイン、ポリHisタグ、ジHisキレート、FLAGタグ、および当業者に明らかな他の多数のタグが含まれる。抗体はアフィニティ精製試薬としても使用されうる。ケトレダクターゼポリペプチドに特異的に結合する任意の抗体が使用されうる。
の対応異性体生成物への還元を触媒しうる。
特定の実施形態においては、本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素は、基質化合物N-(7-((2S,4R,5R)-4-フルオロ-3,3-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-4-オキソ-4,7-ジヒドロ-3H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)イソブチルアミド(化合物A):
から、対応する異性体生成物N-(9-((2R,3S,4S,5R)-4-フルオロ-3-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-6-オキソ-6,9-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)イソブチルアミド(化合物B):
への還元を触媒しうる。
幾つかの実施形態においては、化合物Aを化合物Bに還元する方法は、化合物Aを化合物Bに還元または変換するのに適した反応条件下、本明細書に開示されているケトレダクターゼと基質を接触させ又はインキュベートすることを含む。化合物Bは、3’-フルオロ-チオ-グアノシン 一リン酸または3’-F-チオ-GMPとしても公知の(三ナトリウム O-{[(2R,3S,4S,5R)-5-(2-アミノ-6-オキシド-9H-プリン-9-イル)-3-フルオロ-4-ヒドロキシオキソラン-2イル]メチル}ホスホロチオアート水和物(1:6))の合成の中間体である。したがって、3’-F-チオ-GMPを合成するための方法において、該方法は、本明細書に開示されているケトレダクターゼを使用して化合物Aを化合物Bにする工程を含みうる。幾つかの実施形態においては、生成物は、対応する(R)アルコールに対して約99%超、99.1%超、99.2%超、99.3%超、99.4%超、99.5%超、99.6%超、99.7%超、99.8%超または99.9%超のステレオマー過剰率を示す。
本明細書に記載されているとおり、幾つかの実施形態においては、ケトレダクターゼは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11の配列を含む参照配列と比較して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含みうる。幾つかの実施形態においては、これらのケトレダクターゼポリペプチドは配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のアミノ酸配列に対する1以上の修飾を有しうる。該修飾は置換、欠失および挿入を含みうる。置換は非保存的置換、保存的置換、または非保存的置換と保存的置換との組合せでありうる。
基質を生成物に還元するための方法の幾つかの実施形態においては、基質は、約99%を超えるステレオマー過剰率で生成物に還元され、ここで、ケトレダクターゼポリペプチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に対応する配列を含む。
基質を生成物に還元するためのこの方法のもう1つの実施形態においては、約100g/Lを超える基質および約5g/L未満のポリペプチドを使用してそれを実施した場合、基質の少なくとも約95%が約24時間未満以内で生成物に変換され、ここで、ポリペプチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に対応するアミノ酸配列を含む。
当業者に公知のとおり、ケトレダクターゼ触媒還元反応は典型的には補因子を必要とする。本明細書に記載されているケトレダクターゼ酵素により触媒される還元反応も典型的には補因子を必要とするが、操作されたケトレダクターゼの多数の実施形態は、野生型ケトレダクターゼ酵素により触媒される反応よりもはるかに少ない補因子を必要とするに過ぎない。本明細書中で用いる「補因子」なる語は、ケトレダクターゼ酵素と組合されて作用する非タンパク質化合物を意味する。本明細書に記載されている操作されたケトレダクターゼ酵素と共に使用されるのに適した補因子には、NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、NADPH(NADP+の還元型)、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)およびNADH(NAD+の還元型)が含まれるが、これらに限定されるものではない。一般に、補因子の還元型が反応混合物に添加される。還元型NAD(P)H形態は、所望により、補因子再生系を用いて酸化型NAD(P)+形態から再生されうる。
「補因子再生系」なる語は、補因子の酸化型を還元する反応(例えば、NADP+からNADPHへの反応)に関与する反応物の組合せを意味する。ケト基質のケトレダクターゼ触媒還元により酸化された補因子は補因子再生系により還元型に再生される。補因子再生系は、還元性水素当量の供給源である、補因子の酸化型を還元しうる化学量論的還元剤を含む。補因子再生系は、触媒、例えば、還元剤による補因子の酸化型の還元を触媒する酵素触媒を更に含みうる。それぞれNAD+またはNADP+からNADHまたはNADPHを再生するための補因子再生系は当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている方法において使用されうる。
使用されうる適切な代表的な補因子再生システムには、グルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼ、ギ酸およびギ酸デヒドロゲナーゼ、グルコース-6-リン酸およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、第二級(例えば、イソプロパノール)アルコールおよび第二級アルコールデヒドロゲナーゼ、ホスファイトおよびホスファイトデヒドロゲナーゼ、分子水素およびヒドロゲナーゼなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの系は補因子としてのNADP+/NADPHまたはNAD+/NADHのいずれかと組合せて使用されうる。ヒドロゲナーゼを使用する電気化学的再生も補因子再生系として使用されうる。例えば、米国特許第5,538,867号および第6,495,023号(これらを共に参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。金属触媒と還元剤(例えば、分子水素またはホルマート)を含む化学的補因子再生系も好適である。例えば、PCT公開WO2000/053731(これを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
「グルコースデヒドロゲナーゼ」および「GDH」なる語は本明細書において互換的に用いられ、それぞれD-グルコースおよびNAD+またはNADP+からグルコン酸およびNADHまたはNADPHへの変換を触媒するNAD+またはNADP+依存的酵素を意味する。
本明細書に記載されている方法の実施における使用に適したグルコースデヒドロゲナーゼには、天然に存在するグルコースデヒドロゲナーゼと、天然に存在しないグルコースデヒドロゲナーゼとの両方が含まれる。天然に存在するグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は文献に報告されている。例えば、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)61297 GDH遺伝子は大腸菌において発現され、その天然宿主において産生される酵素と同じ物理化学的特性を示すことが報告されている(Vasanthaら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:785)。Genbankアクセッション番号M12276に対応するバシラス・サチリス(B.subtilis)GDH遺伝子の遺伝子配列がLampelら,1986,J.Bacterial.166:238-243において報告されており、また、Genbankアクセッション番号D50453としてYamaneら,1996,Microbiology 142:3047-3056において修正形態で報告されている。天然に存在するGDH遺伝子には、ビー・セレウス(B.cereus)ATCC 14579(Nature,2003,423:87-91;Genbankアクセッション番号AE017013)およびビー・メガテリウム(B.megaterium)(Eur.J.Biochem.,1988,174:485-490,Genbankアクセッション番号X12370;J.Ferment.Bioeng.,1990,70:363-369,Genbankアクセッション番号GI216270)からのGDHをコードするものも含まれる。バシラス属種(Bacillus sp.)由来のグルコースデヒドロゲナーゼはPCT公開WO2005/018579に記載されており、その開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
天然に存在しないグルコースデヒドロゲナーゼは、公知方法、例えば突然変異誘発、定向進化などを用いて作製されうる。適切な活性を有するGDH酵素は、天然に存在するかしないかにかかわらず、PCT公開WO2005/018579(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)の実施例4に記載されているアッセイなどを用いて、当業者によって容易に特定されうる。
本明細書に記載されているケトレダクターゼ触媒還元反応は一般に溶媒中で行われる。適切な溶媒には、水、有機溶媒[例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、1-オクタノール、ヘプタン、オクタン、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、トルエンなど]およびイオン性液体(例えば、1-エチル4-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートなど)が含まれる。幾つかの実施形態においては、水および水性共溶媒系を含む水性溶媒が使用される。
代表的な水性共溶媒系は水および1以上の有機溶媒を含有する。一般に、水性共溶媒系の有機溶媒成分は、それがケトレダクターゼ酵素を完全には不活性化しないように選択される。適切な共溶媒系は、酵素活性アッセイ、例えば本明細書に記載されているアッセイを用いて、候補溶媒系において、定められた目的基質を使用して特定の操作されたケトレダクターゼ酵素の酵素活性を測定することによって容易に特定されうる。
水性共溶媒系の有機溶媒成分は、単一の液相を生成するように水性成分と混和性であることが可能であり、あるいは、2つの液相を生成するように水性成分と非混和性または部分混和性であることが可能である。一般に、水性共溶媒系を使用する場合、それは、有機溶媒中に水が分散した又はその逆の二相系になるように選択する。一般に、水性共溶媒系を使用する場合、水相から容易に分離されうる有機溶媒を選択することが望ましい。一般に、共溶媒系における有機溶媒に対する水の比は、典型的には、約90:10~約10:90(v/v)の有機溶媒対水、そして80:20~20:80(v/v)の有機溶媒対水の範囲である。共溶媒系は反応混合物への添加の前に予め形成されることが可能であり、あるいは、それは反応容器内でインシトゥで形成されることが可能である。
水性溶媒(水または水性共溶媒系)はpH緩衝化されていても、緩衝化されていなくてもよい。一般に、還元は、約10以下、通常は約5~約10の範囲のpHで行われうる。幾つかの実施形態においては、還元は、約9以下、通常は約5~約9の範囲のpHで行われる。幾つかの実施形態においては、還元は、約8以下、しばしば約5~約8の範囲、通常は約6~約8の範囲のpHで行われる。還元は約7.8以下または7.5以下のpHにおいても行われうる。あるいは、還元は、中性pH、すなわち約7のpHで行われうる。
還元反応の過程で、反応混合物のpHが変化しうる。反応混合物のpHは反応の過程で酸または塩基の添加によって所望のpHまたは所望のpH範囲内に維持されうる。あるいは、pHは、バッファーを含む水性溶媒を使用することにより制御されうる。所望のpH範囲を維持するための適切なバッファーは当技術分野で公知であり、例えばリン酸バッファー、トリエタノールアミンバッファーなどを包含する。バッファーと酸または塩基との添加の組合せも用いられうる。
グルコース/グルコースデヒドロゲナーゼ補因子再生系を使用する場合、式(1)に示されるとおり、グルコン酸(pKa=3.6)の同時生成は、生じる水性グルコン酸が別の手段で中和されないならば、反応混合物のpHを低下させる。達成される緩衝能までバッファーがグルコン酸を中和する標準的な緩衝化技術により、または変換過程と同時に塩基を添加することにより、反応混合物のpHは所望のレベルに維持されうる。緩衝化と塩基添加との組合せも用いられうる。所望のpH範囲を維持するための適切なバッファーは前記に記載されている。グルコン酸の中和のための適切な塩基としては、有機塩基、例えばアミン、アルコキシドなど、および無機塩基、例えば水酸化物塩(例えば、NaOH)、炭酸塩(例えば、NaHCO3)、重炭酸塩(例えば、K2CO3)、塩基性リン酸塩(例えば、K2HPO4、Na3PO4)などが挙げられる。変換過程と同時の塩基を添加することは、反応混合物のpHをモニターしながら手動で、あるいは、より簡便には、自動滴定装置をpHスタットとして使用することにより行われうる。部分緩衝能と塩基添加との組合せもプロセス制御に用いられうる。
ケトレダクターゼ触媒還元反応中に放出されたグルコン酸を中和するために塩基添加を用いる場合、変換の進行は、pHを維持するために添加される塩基の量によりモニターされうる。典型的には、非緩衝化または部分緩衝化反応混合物に還元過程で添加される塩基は水溶液として添加される。
幾つかの実施形態においては、補因子再生系はホルマートデヒドロゲナーゼ(ギ酸デヒドロゲナーゼ)を含みうる。「ホルマートデヒドロゲナーゼ」および「FDH」なる語は本明細書において互換的に用いられ、それぞれホルマートおよびNAD+またはNADP+から二酸化炭素およびNADHまたはNADPHへの変換を触媒するNAD+またはNADP+依存的酵素を意味する。本明細書に記載されているケトレダクターゼ触媒還元反応における補因子再生系としての使用に適したホルマートデヒドロゲナーゼには、天然に存在するホルマートデヒドロゲナーゼと、天然に存在しないホルマートデヒドロゲナーゼとの両方が含まれる。ホルマートデヒドロゲナーゼには、PCT公開WO2005/018579の配列番号70[シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)]および72[カンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii)]に対応するものが含まれ、これらは、PCT公開WO2005/018579(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)の配列番号69および71にそれぞれ対応するポリヌクレオチド配列によりコードされる。本明細書に記載されている方法において使用されるギ酸デヒドロゲナーゼは、天然に存在するか存在しないかにかかわらず、少なくとも約1μmol/分/mg、時には、少なくとも約10μmol/分/mgまたは少なくとも約102μmol/分/mg、最大約103μmol/分/mgまたはそれ以上の活性を示すことが可能であり、PCT公開WO2005/018579の実施例4に記載されているアッセイで活性に関して容易にスクリーニングされうる。
本明細書中で用いる「ホルマート」はギ酸アニオン(HCO2
-)、ギ酸(HCO2H)およびそれらの混合物を意味する。ホルマートは、塩、典型的にはアルカリまたはアンモニウム塩(例えば、HCO2Na、KHCO2NH4など)の形態、ギ酸、典型的にはギ酸水溶液の形態、またはそれらの混合物で提供されうる。ギ酸は中等度の酸である。ホルマートは、そのpKa(水中でpKa=3.7)から数pH単位以内の水溶液においては、平衡濃度のHCO2
-とHCO2Hとの両方として存在する。約pH4を超えるpH値では、ホルマートは主にHCO2
-として存在する。ホルマートがギ酸として提供される場合、反応混合物は、典型的には、所望のpH(典型的には約pH5以上)を得るために塩基を添加することにより低酸性化または緩衝化される。ギ酸の中和のための適切な塩基には、有機塩基、例えばアミン、アルコキシドなど、および無機塩基が含まれるが、これらに限定されるものではない。グルコース/グルコースデヒドロゲナーゼ補因子再生系を使用する場合、式(1)に表されるとおり、グルコン酸(pKa=3.6)の同時生成は、生じる水性グルコン酸が別の手段で中和されないならば、反応混合物のpHを低下させる。達成される緩衝能までバッファーがグルコン酸を中和する標準的な緩衝化技術により、または変換過程と同時に塩基を添加することにより、反応混合物のpHは所望のレベルに維持されうる。緩衝化と塩基添加との組合せも用いられうる。所望のpH範囲を維持するための適切なバッファーは前記に記載されている。中和のための適切な塩基としては、例えば水酸化物塩(例えば、NaOH)、炭酸塩(例えば、NaHCO3)、重炭酸塩(例えば、K2CO3)、塩基性リン酸塩(例えば、K2HPO4、Na3PO4)などが挙げられる。
ホルマートおよびホルマートデヒドロゲナーゼを補因子再生系として使用する場合、達成される緩衝能までバッファーがプロトンを放出する標準的な緩衝化技術により、または変換過程と同時に酸を添加することにより、反応混合物のpHは所望のレベルに維持されうる。pHを維持するために反応過程で添加するのに適した酸には、有機酸、例えばカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸など、鉱酸、例えばハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)、硫酸、リン酸など、酸性塩、例えばリン酸二水素塩(例えば、KH2PO4)、重硫酸塩(例えば、NaHSO4)などが含まれる。幾つかの実施形態はギ酸を使用し、それにより、ギ酸濃度と溶液のpHとの両方が維持される。
ホルマート/ホルマートデヒドロゲナーゼ補因子再生系を使用した還元反応中にpHを維持するために酸添加を用いる場合、変換の進行は、pHを維持するために添加される酸の量によりモニターされうる。典型的には、非緩衝化または部分緩衝化反応混合物に変換過程で添加される酸は水溶液として添加される。
補因子再生系を使用して本明細書に記載のケトレダクターゼ触媒還元反応の実施形態を実施する際、補因子の酸化型または還元型のいずれかが最初に提供されうる。前記のとおり、補因子再生系は酸化型補因子をその還元型に変換し、ついでそれをケトレダクターゼ基質の還元において利用する。
幾つかの実施形態においては、補因子再生系は使用されない。補因子再生系を使用せずに行われる還元反応においては、補因子を還元形態で反応混合物に添加する。
幾つかの実施形態においては、宿主生物の全細胞を使用して該プロセスを行う場合、全細胞が補因子を自然に提供しうる。代替的にまたは組合せて、細胞がグルコースデヒドロゲナーゼを自然にまたは組換えにより提供しうる。
本明細書に記載されている立体選択的還元反応を行う際に、ケトレダクターゼ酵素、および所望により用いられうる補因子再生系を含む任意の酵素は、精製された酵素の形態、酵素をコードする遺伝子で形質転換された全細胞の形態、および/またはそのような細胞のライセートの形態で、反応混合物に添加されうる。ケトレダクターゼ酵素をコードする遺伝子と、所望により用いられうる補因子再生酵素をコードする遺伝子とは、別々にまたは一緒に、同一宿主細胞内に形質転換されうる。例えば、幾つかの実施形態においては、1つのセットの宿主細胞のは、ケトレダクターゼ酵素をコードする遺伝子で形質転換されることが可能であり、別のセットは、補因子再生酵素をコードする遺伝子で形質転換されることが可能である。形質転換細胞の両方のセットは、全細胞の形態で、またはライセートもしくはそれに由来する抽出物の形態で、反応混合物において一緒に使用されうる。他の実施形態においては、宿主細胞は、ケトレダクターゼ酵素と補因子再生酵素との両方をコードする遺伝子で形質転換されうる。
ケトレダクターゼ酵素および/または所望により使用されうる補因子再生酵素をコードする遺伝子で形質転換された全細胞またはその細胞抽出物および/もしくはライセートは、固体(例えば、凍結乾燥物、噴霧乾燥物など)または半固体(例えば、粗ペースト)を含む種々の異なる形態で使用されうる。
細胞抽出物または細胞ライセートは、沈殿(硫酸アンモニウム、ポリエチレンイミン、熱処理など)、およびそれに続く、凍結乾燥前の脱塩操作(例えば、限外濾過、透析など)により、部分的に精製されうる。細胞調製物はいずれも、公知架橋剤を使用して架橋することにより安定化されうる。
幾つかの実施形態においては、改善した純度を有するケトレダクターゼ酵素が望ましいかもしれない。そのような実施形態においては、ケトレダクターゼ酵素を得るために使用される清澄化細胞ライセートをイソプロパノールで前処理して、イソプロパノールの体積%を25%にすることが可能である。イソプロパノールで処理されたライセートを室温で1時間から一晩インキュベートすることが可能である。ついでイソプロパノール処理ライセートを遠心分離し、ペレットを除去することが可能である。ついで上清をペトリ皿に移し、-80℃で少なくとも2時間凍結させることが可能である。ついで、標準的な自動法を用いて、サンプルを凍結乾燥することが可能である。図1に示されているとおり、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS;ラウリル硫酸ナトリウムとしても公知である)およびポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGEとしても公知である)を使用したゲル電気泳動は、イソプロピルアルコール(IPA)中で不溶性であるタンパク質が除去されて、精製されたケトレダクターゼが得られることを示している。図1において、Tは全培養であり、Lはライセート上清であり、S-IPAは25% IPA処理後の上清であり、SFP-IPAはIPA処理上清の振とうフラスコ粉末であり、P-IPAは、25% IPA処理により取り出されたペレットを意味する。
本明細書に記載されているケトレダクターゼ触媒還元反応を行うための適切な条件には、通常の実験によって容易に最適化されうる多種多様な条件が含まれる。そのような実験は、操作されたケトレダクターゼ酵素と基質とを実験的なpHおよび温度で接触させ、そして、例えば、本明細書で提供される実施例に記載されている方法を使用して、生成物を検出すること含むが、これらに限定されるものではない。
ケトレダクターゼ触媒還元は、典型的には、約15℃~約75℃の範囲の温度で行われる。幾つかの実施形態においては、反応は約20℃~約55℃の範囲の温度で行われる。更に他の実施形態においては、それは約20℃~約45℃の範囲の温度で行われる。反応は周囲条件下においても行われうる。
還元反応は、一般に、実質的に完全な又はほぼ完全な基質還元が達成されるまで、進行させる。基質から生成物への還元は、基質および/または生成物を検出することによる公知方法を用いてモニターされうる。適切な方法には、ガスクロマトグラフィー、HPLCなどが含まれる。反応混合物中で生成されるアルコール還元生成物の変換収率は、一般に、約50%を超え、また、約60%を超えることもあり、約70%を超えることもあり、約80%を超えることもあり、約90%を超えることもあり、約97%を超えることも多い。
実施例
実施例1:酵素の製造
前記のとおりに配列番号3~11として後記で示されるアミノ酸配列により表されうるケトレダクターゼ酵素をコードするプラスミドをそれぞれが含有する大腸菌(E.coli)培養物を、希釈剤としてルリア-ブレタニ(Luria-Bretani)ブロス(細胞用培養培地)を使用して、10-4、10-5および10-6の希釈度に連続希釈した。100μlの希釈液のそれぞれを、50μg/mlのカナマイシンで補足されたLB寒天を含有するペトリ皿上に広げた。プレートを30℃のインキュベーター内で一晩配置した。
実施例1:酵素の製造
前記のとおりに配列番号3~11として後記で示されるアミノ酸配列により表されうるケトレダクターゼ酵素をコードするプラスミドをそれぞれが含有する大腸菌(E.coli)培養物を、希釈剤としてルリア-ブレタニ(Luria-Bretani)ブロス(細胞用培養培地)を使用して、10-4、10-5および10-6の希釈度に連続希釈した。100μlの希釈液のそれぞれを、50μg/mlのカナマイシンで補足されたLB寒天を含有するペトリ皿上に広げた。プレートを30℃のインキュベーター内で一晩配置した。
ルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)(500ml LB+50μg/ml カナマイシン)の200μl/ウェルをラベル付き96ウェル浅(shallow)ウェルプレート内に分注した。該浅ウェルプレートをコロニーピッカーのプレートスタッカー内にローディングした。コロニーの大部分が互いに分離されるように十分に希釈されたコロニー(当業者には単一コロニーとして公知である)を含有する寒天プレートを浅ウェルプレートのユニークウェル内に採取した。コロニーを200rpm、30℃、85% RHで一晩増殖させた。
390μlのテリフィック(Terrific)ブロス(TB)増殖培地(ThermoFisher Scientificからカタログ番号A1374301として商業的に入手可能)(TB+50μg/ml カナマイシン)をラベル付き96ウェル深ウェル継代培養プレート内に分注した。一晩増殖培養物13μlを、マスター浅ウェルプレートの各ウェルから、対応するラベル付き深ウェル継代培養プレート内に移した。プレートを通気性フィルムで密閉し、プレートを250rpm、30℃、85% RHで2~2.5時間振とうした。振とう後、少なくとも1つのプレートの光学密度(OD600;波長600nmにおける光学密度)を増殖に関して測定した。このプレートのOD600が0.4~0.8の範囲にある場合、深ウェルプレートを1ウェル当たり40μlの誘導培地で誘導した。プレートを再密封し、250rpm、30℃、85% RHで、振とうしながら18~20時間インキュベートした。
インキュベーション後、全ての深ウェルプレートを4℃、4000rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨てた。プレートをヒートシールし、-80℃で保存した。
細胞プレートを-80℃の貯蔵庫から取り出し、室温で解凍した。100mM リン酸ナトリウム(pH6.0)、1mg/mL リゾチーム、0.50mg/mL ポリミキシンB硫酸塩(PMBS)、3単位/ml DNアーゼIおよび4mm MgCl2の細胞溶解バッファーを調製した。400μlの細胞溶解バッファーを各ウェル内に分注した。細胞溶解混合物をプレートシェーカー上で室温、000rpmで1.5~2時間振とうした。ついで細胞溶解混合物を4℃、4000rpmで15分間遠心分離して、酵素含有ライセート溶液(これは上清中に存在する)を調製した。幾つかの場合には、ライセート溶液を更に、25~30% イソプロパノールの溶液中のイソプロパノールと共に1~5時間インキュベートした。インキュベーション後、ライセートを前記のとおりに遠心分離した。
実施例2:ウェルプレートにおけるケトレダクターゼ反応
100% DMSO中の基質ケトンの100g/L溶液を調製し、等量のTHFを加えることにより、10×ケトンストック溶液を調製した。5.8g/Lの商業的に入手可能なケトレダクターゼKRED-P1 B10(Codexisから入手可能)、5.8g/LのNADPおよび11.5% イソプロパノール(100mM リン酸ナトリウム中)を6.0のpHまで混合することにより、反応バッファーを調製した。
100% DMSO中の基質ケトンの100g/L溶液を調製し、等量のTHFを加えることにより、10×ケトンストック溶液を調製した。5.8g/Lの商業的に入手可能なケトレダクターゼKRED-P1 B10(Codexisから入手可能)、5.8g/LのNADPおよび11.5% イソプロパノール(100mM リン酸ナトリウム中)を6.0のpHまで混合することにより、反応バッファーを調製した。
350μlの反応バッファーを1ml丸底ウェルプレートに加えた。10×ケトンストック溶液40μlを各ウェルに加え、ついで実施例1の酵素含有ライセート溶液10μlを加えた。プレートをヒートシールし、30℃、1000rpmで一晩振とうした。
一晩振とうした後、50% ACN/水+0.05% TFAの混合物190μlをフィルタースタック(Millipore MSRLN2250から商業的に入手可能な0.20μM 親水性PTFEを伴う丸底プレートの最上部のフィルタープレート)内に分注した。反応プレートを開封した。反応プレートからの10μlの反応混合物を、下方に受容プレートを伴う対応フィルタープレート内に移した。ついでプレートを4℃、4000rpmで3分間遠心分離した。フィルタープレートを取り除き、受容プレート内の透明溶液をヒートシールした。
基質および基質分解および生成物ピーク領域をモニターするために、ハイスループットスクリーニング法を用いて、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)により濾過溶液を分析した。流速1ml/分で1.5分間にわたって15% CH3CN/H2O + v 0.05% TFAのアイソクラティック法を用いてWaters HSS T3 1.8μm、2.1×75mmカラムにおいてUPLCを行った。出発物質は0.84分で溶出し、所望のエナンチオマーは1分で溶出し、望ましくないエナンチオマーは1.09分で溶出した。
実施例3:シェーカーフラスコにおける酵素製造
5mlのルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)(250ml LB+50μg/ml カナマイシン+1% グルコース)に10μlの大腸菌(E.coli)細胞を接種した。該大腸菌細胞のそれぞれは、前記のとおりに配列番号3~11に後記で示されるアミノ酸配列により表されうるケトレダクターゼ酵素をコードするプラスミドを含有しており、20% グリセロール中で-80℃で保存されていたものである。それをラベル付き15mL細胞培養チューブ内に分注した。細胞培養チューブを密封し、250rpm、30℃で、振とうしながら20~24時間インキュベートした。
5mlのルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)(250ml LB+50μg/ml カナマイシン+1% グルコース)に10μlの大腸菌(E.coli)細胞を接種した。該大腸菌細胞のそれぞれは、前記のとおりに配列番号3~11に後記で示されるアミノ酸配列により表されうるケトレダクターゼ酵素をコードするプラスミドを含有しており、20% グリセロール中で-80℃で保存されていたものである。それをラベル付き15mL細胞培養チューブ内に分注した。細胞培養チューブを密封し、250rpm、30℃で、振とうしながら20~24時間インキュベートした。
一晩増殖させた後、一晩増殖培養物[2~5mlの細胞培養物(0.2の開始OD600を有する)]を250mlのテリフィックブロス(TB)増殖培地(ThermoFisher Scientificからカタログ番号A1374301として商業的に入手可能)(TB+50μg/ml カナマイシン)に加えて、250mLの最終体積とした。フラスコを250rpm、30℃で3~4時間振とうした。振とう後、OD600が0.4~0.6に達するまで、増殖に関してOD600を測定した。この時点で、1mMのIPTG(250μlの1M IPTG)を培養物に添加して発現を誘導し、培養物を250rpm、30℃で20~24時間増殖させた。
追加的な増殖期間の後、培養物を既知重量の遠心分離ボトルに移し、4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、ボトル内の残存細胞ペレットを秤量した。ボトルの既知重量を引き算することにより細胞ペレットの重量を計算し、細胞ペレットの重量の5倍の容量で、5容量の50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH=7)に細胞ペレットを再懸濁させた。
再懸濁細胞ペレットからの細胞を、マイクロフルイダイザーを使用して細胞溶解し、細胞ライセートを集め、4℃、10000rpmで60分間遠心分離した。清澄化ライセートを更に、時折、25~30% イソプロパノールの溶液中のイソプロパノールで1~5時間処理した。インキュベーション後、前記のとおりにライセートを遠心分離した。清澄化上清をペトリ皿に移し、-80℃で約2時間凍結させた。標準的な自動化法を用いてサンプルを凍結乾燥した。
実施例4:バイアルにおけるケトレダクターゼ反応
配列番号3~11に後記に記載されているアミノ酸配列により表されうるそれぞれ10μLのケトレダクターゼ酵素を、1% グルコースおよび50μg/ml カナマイシン抗生物質で補足されたラベル付き15mL細胞培養チューブ内の5mLのルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)内に接種し、振とうインキュベーター内で30℃、250rpmで20~24時間、一晩増殖させた。
配列番号3~11に後記に記載されているアミノ酸配列により表されうるそれぞれ10μLのケトレダクターゼ酵素を、1% グルコースおよび50μg/ml カナマイシン抗生物質で補足されたラベル付き15mL細胞培養チューブ内の5mLのルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)内に接種し、振とうインキュベーター内で30℃、250rpmで20~24時間、一晩増殖させた。
5mLの一晩培養物を使用して、1Lフラスコ内の250mLのテリフィックブロス増殖培地(ThermoFisher Scientificからカタログ番号A1374301として商業的に入手可能)で継代培養した。継代培養物を振とうインキュベーター内で250rpm、30℃で3時間増殖させた。OD600測定値が0.4~0.6になったら、IPTGを導入して、1mMのIPTG最終濃度とした。継代培養物を18~20時間、一晩増殖させた。
増殖期間の後、培養物を遠心分離ボトルに移し、4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨てた。細胞ペレットを50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH=7)に再懸濁させた。
再懸濁細胞ペレットからの細胞を、マイクロフルイダイザーを使用して細胞溶解し、細胞ライセートを集め、4℃、10000rpmで60分間遠心分離した。幾つかの場合には、ライセート溶液を更に、25~30% イソプロパノールの溶液中のイソプロパノールと共に1~5時間インキュベートした。インキュベーション後、前記のとおりにライセートを遠心分離した。上清をペトリ皿に移し、-80℃で少なくとも2時間凍結させた。所望により、標準的な自動化法を用いてサンプルを凍結乾燥した。
ケトレダクターゼ酵素(20mg;継代培養から採取)および化合物A(20mg)を6つの4mLバイアルのそれぞれに添加した。
別のバイアルに、商業的に入手可能なケトレダクターゼ酵素(KRED-P1 B10;CODEXISから入手可能)の1mg/mL溶液1mLをNADPH(32mg)と共に加え、ついで100mM リン酸バッファー(pH=6.0)3mLを加えた。
ケトレダクターゼ酵素と化合物Aとを含有するバイアルのそれぞれに600μLの緩衝化溶液を加え、ついで120μLのIPAを加えた。バイアルの内容物をシェーカーで混合し、30℃で20時間維持した。
実施例5:ケトレダクターゼ反応
配列番号3~11に後記に記載されているアミノ酸配列により表されうるそれぞれ10μLのケトレダクターゼ酵素を、1% グルコースおよび50μg/ml カナマイシン抗生物質で補足された5mLのルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)内に接種し、振とうインキュベーター内で30℃、250rpmで20~24時間、一晩増殖させた。
配列番号3~11に後記に記載されているアミノ酸配列により表されうるそれぞれ10μLのケトレダクターゼ酵素を、1% グルコースおよび50μg/ml カナマイシン抗生物質で補足された5mLのルリア-ブレタニブロス(細胞用培養培地)内に接種し、振とうインキュベーター内で30℃、250rpmで20~24時間、一晩増殖させた。
5mLの一晩培養物を使用して、1Lフラスコ内の250mLのテリフィックブロス増殖培地(ThermoFisher Scientificからカタログ番号A1374301として商業的に入手可能)で継代培養した。継代培養物を振とうインキュベーター内で250rpm、30℃で3時間増殖させた。OD600測定値が0.4~0.6になったら、IPTGを導入して、1mMのIPTG最終濃度とした。継代培養物を18~20時間、一晩増殖させた。
増殖期間の後、培養物を遠心分離ボトルに移し、4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨てた。細胞ペレットを50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH=7)に再懸濁させた。
再懸濁細胞ペレットからの細胞を、マイクロフルイダイザーを使用して細胞溶解し、細胞ライセートを集め、4℃、10000rpmで60分間遠心分離した。幾つかの場合には、ライセート溶液を更に、25~30% イソプロパノールの溶液中のイソプロパノールと共に1~5時間インキュベートした。インキュベーション後、前記のとおりにライセートを遠心分離した。上清をペトリ皿に移し、-80℃で少なくとも2時間凍結させた。所望により、標準的な自動化法を用いてサンプルを凍結乾燥した。
20mgの商業的に入手可能なケトレダクターゼ酵素(KRED-P1 B10;CODEXISから入手可能)をNADPH(32mg)、ケトレダクターゼ酵素(250mg;継代培養から採取)および化合物A(250mg)とと共に反応容器に加えた。10mLのリン酸バッファー(0.1M、pH=6.0)および1mLのIPAを反応容器に加えた。温度を30℃に設定し、反応混合物を350rpmで撹拌した。20時間後、混合物を15℃に冷却した。NaCl(2g)を反応容器に加え、反応混合物を一晩、脱過飽和させた。固体を濾過し、2.5mL(10容量)の水で洗浄した。ウェットケーキを50℃の真空オーブン内に配置して一晩乾燥させた。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 11.68(s,2H),8.27(s,1H),5.96(d,J=5.4Hz,1H),5.83(d,J=8.1Hz,1H),5.22(t,J=5.4Hz,1H),5.07(dd,J=54.3,4.1Hz,1H),4.77(dddd,27.3,8.1,4.1,4.1Hz,1H),4.25(dddd,J=27.2,8.1,4.1Hz,4.1Hz,1H),3.61(m,2H),2.75(sept,J=6.8Hz,1H),1.12(d,J=6.8Hz,6H)。
13C NMR(125MHz,DMSO-d6)δ 180.2,154.8,149.3,148.4,137.4,120.1,92.8(d,J=183Hz),85.0,83.6(d,J=21.1Hz),83.5,72.6(d,J=16.1Hz),60.6(d,J=11.2Hz),34.8,18.8,18.8。
19F NMR(500MHz,DMSO-d6)δ -197.5。
前記および他の特徴および機能またはそれらの代替物の種々のものは多数の他の異なる系または適用へと望ましく組合されうると理解されるであろう。また、それにおける現在予期されない又は予想されない種々の代替、修飾、変更または改良が当業者によって後に行われうるが、これらもまた、以下の特許請求の範囲に含まれると意図される。
Claims (18)
- 配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
- 配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1記載のポリペプチド。
- 宿主細胞におけるコード化ポリペプチドの発現を導くのに適した1以上の制御配列に機能的に連結された請求項1~11のいずれか1項記載のポリペプチドを含む発現ベクター。
- 制御配列がプロモーターを含む、請求項11記載の発現ベクター。
- プロモーターが大腸菌(E.coli)プロモーターを含む、請求項12記載の発現ベクター。
- 請求項11記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
- 前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、請求項15記載の宿主細胞。
- ケトレダクターゼ酵素を含有する細胞ライセートを、20%を超えるイソプロパノールで処理することを含む、ケトレダクターゼ酵素を含有する細胞ライセートからタンパク質を沈殿させるための方法。
- イソプロパノールの体積%が約25%である、請求項17記載の方法。
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