本開示は、一部には、GPC3に結合する新規抗体及びキメラ抗原受容体又はそれを含む改変細胞及びその改良された特性に基づく。
5.1.定義
本明細書に記載されるか又は参照される技法及び手順には、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3d ed.2001);Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,2003);Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.2009);Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Albitar ed.2010);及びAntibody Engineering Vols 1 and 2(Kontermann and Duebel eds.,2d ed.2010)に記載される広く利用されている方法論など、概して当業者によって従来の方法論を用いて良く理解されているもの及び/又は一般的に採用されているものが含まれる。本明細書において特に定義しない限り、本説明の中で用いられる科学技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有する。本明細書の解釈上、以下の用語の説明が適用されるものとし、適切な場合には常に、単数形で使用される用語は、複数形も含み、及び逆も同様であるものとする。示される用語のいずれかの説明が、参照により本明細書に援用されるいずれかの資料と矛盾する場合、以下に記載する用語の説明が優先するものとする。
用語「抗体」、「免疫グロブリン」、又は「Ig」は、本明細書では同義的に使用され、最も広義に使用され、具体的には、例えば、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長の又はインタクトなモノクローナル抗体を含む)、多エピトープ又はモノエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル又は一価抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を呈する限り、二重特異性抗体)、単鎖抗体及び以下に記載するとおりのこれらの断片(例えば、ドメイン抗体)を包含する。抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体及び/又は親和性成熟抗体並びに他の種、例えばマウス、ウサギ、ラマ等からの抗体であり得る。用語「抗体」には、特異的分子抗原に結合する能力があり、且つ2つの同一のポリペプチド鎖対から構成されるポリペプチドの免疫グロブリンクラス内にあるB細胞のポリペプチド産物が含まれることが意図され、ここで、各対は、1つの重鎖(約50~70kDa)及び1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分が約100~約130アミノ酸又はそれ以上の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分が定常領域を含む。例えば、Antibody Engineering(Borrebaeck ed.,2d ed.1995);及びKuby,Immunology(3d ed.1997)を参照されたい。抗体には、限定はされないが、合成抗体、組換え産生抗体、ラクダ科(Camelidae)種(例えば、ラマ又はアルパカ)由来を含む抗体又はそのヒト化変異体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体及び上記のいずれかの機能性断片(例えば、抗原結合断片)(これは、その断片の由来となった抗体の結合活性の一部又は全てを保持している抗体重鎖又は軽鎖ポリペプチドの一部分を指す)も含まれる。機能性断片(例えば、抗原結合断片)の非限定的な例としては、単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性等を含む)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合したFv(dsFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びミニボディが挙げられる。詳細には、本明細書に提供される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な一部分、例えば、抗原結合ドメイン又は抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗体の1つ以上のCDR)を含有する分子が含まれる。かかる抗体断片については、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1989);Mol.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers ed.,1995);Huston et al.,1993,Cell Biophysics 22:189-224;Plueckthun and Skerra,1989,Meth.Enzymol.178:497-515;及びDay,Advanced Immunochemistry(2d ed.1990)を参照することができる。本明細書に提供される抗体は、免疫グロブリン分子のいずれのクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はいずれのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)であることもできる。抗体は、アゴニスト抗体又はアンタゴニスト抗体であり得る。抗体は、アゴニスト抗体でもアンタゴニスト抗体でもないものであり得る。
「抗原」は、抗体が選択的に結合することのできる構造である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、又は他の天然に存在する化合物若しくは合成化合物であり得る。一部の実施形態において、標的抗原は、ポリペプチドである。特定の実施形態において、抗原は細胞と結び付いており、例えば、細胞上又は細胞内に存在する。
「インタクトな」抗体とは、抗原結合部位並びにCL及び少なくとも重鎖定常領域、CH1、CH2及びCH3を含むものである。定常領域には、ヒト定常領域又はそのアミノ酸配列変異体が含まれる。特定の実施形態において、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
「単鎖Fv」は、「sFv」又は「scFv」とも略され、つながって単一のポリペプチド鎖となったVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを更に含む。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
用語「重鎖のみの抗体」又は「HCAb」は、重鎖を含むが、4本鎖抗体に通常見られる軽鎖は欠いている機能性抗体を指す。ラクダ科動物(ラクダ、ラマ、又はアルパカなど)は、HCAbを産生することが公知である。
用語「結合する」又は「結合すること」は、例えば複合体を形成することを含めた、分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用及び/又はファンデルワールス相互作用を含めた非共有結合性相互作用であり得る。複合体は、共有結合性又は非共有結合性の結合、相互作用又は力によって一体に保持された2つ以上の分子の結合も含むことができる。抗体上の単一の抗原結合部位と、抗原など、標的分子の単一のエピトープとの間の全体としての非共有結合性相互作用の強度が、そのエピトープに対する抗体又は機能性断片の親和性である。一価抗原に対する結合分子(例えば、抗体)の会合速度(kon)に対する解離速度(koff)の比(koff/kon)が、解離定数KDであり、これは親和性に反比例する。KD値が低いほど、抗体の親和性は高くなる。KDの値は、抗体と抗原との複合体毎に異なり、kon及びkoffの両方に依存する。本明細書に提供される抗体の解離定数KDは、本明細書に提供される任意の方法又は当業者に周知の任意の他の方法を用いて決定することができる。1つの結合部位における親和性が、常に抗体と抗原との間の相互作用の真の強度を反映しているとは限らない。多価抗原など、複数の反復する抗原決定基を含有する複合抗原が、複数の結合部位を含有する抗体と接触する場合、1つの部位における抗体の抗原との相互作用により、第2の部位における反応の可能性が増加することになる。多価抗体と抗原との間のかかる複数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。
本明細書に記載される結合分子に関連して、「~に結合する」、「~に特異的に結合すること」などの用語及び類似の用語も本明細書で同義的に使用され、ポリペプチドなど、抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインの結合分子を指す。抗原に結合するか又は特異的に結合する結合分子又は抗原結合ドメインは、例えば、イムノアッセイ、Octet(登録商標)、Biacore(登録商標)、又は当業者に公知の他の技法によって同定することができる。一部の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技法を用いて決定するとき、それがいかなる交差反応性抗原よりも高い親和性で抗原に結合する場合、抗原に結合するか又は特異的に結合する。典型的には、特異的又は選択的反応はバックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍になることになり、バックグラウンドの10倍を超えることもあり得る。結合特異性に関する考察については、例えば、Fundamental Immunology 332-36(Paul ed.,2d ed.1989)を参照されたい。特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインが「非標的」タンパク質に結合する程度は、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又はRIAによって決定したとき、結合分子又は抗原結合ドメインのその特定の標的抗原への結合の約10%未満である。抗原に結合する結合分子又は抗原結合ドメインには、例えば治療用及び/又は診断用薬剤として、その結合分子が抗原を標的化するのに有用となるような十分な親和性で抗原に結合する能力を有するものが含まれる。特定の実施形態において、抗原に結合する結合分子又は抗原結合ドメインは、1μM、800nM、600nM、550nM、500nM、300nM、250nM、100nM、50nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、又は0.1nM以下の解離定数(KD)を有する。特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、抗原の中でも異なる種の抗原間で保存されているエピトープに結合する。
特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、「キメラ」配列を含むことができ、ここで、重鎖及び/又は軽鎖の一部分は、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である一方、1つ又は複数の鎖の残りの部分は、別の種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であるもの並びに所望の生物学的活性を呈する限り、かかる抗体の断片である(米国特許第4,816,567号明細書;及びMorrison et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-55を参照されたい)。キメラ配列には、ヒト化配列が含まれ得る。
特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、ヒト免疫グロブリン(例えば、レシピエント抗体)からの配列を含む「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、ラクダ科動物、ネズミ科動物、非ヒト霊長類)抗体の一部分を含むことができ、ここで、天然CDR残基は、所望の特異性、親和性及び能力を有するラクダ科動物、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(例えば、ドナー抗体)の対応するCDRからの残基に置き換えられている。一部の例では、ヒト免疫グロブリン配列の1つ以上のFR領域残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体には見られない残基を含むことができる。こうした修飾は、抗体性能を更に洗練させるために行われる。ヒト化抗体重鎖又は軽鎖は、少なくとも1つ又は複数の可変領域の実質的に全てを含むことができ、ここで、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分を含むことになる。更なる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-25(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-29(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-96(1992);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285-89(1992);米国特許第6,800,738号明細書;同第6,719,971号明細書;同第6,639,055号明細書;同第6,407,213号明細書;及び同第6,054,297号明細書を参照されたい。
特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、「完全ヒト抗体」又は「ヒト抗体」の一部分を含むことができ、ここで、これらの用語は、本明細書では同義的に使用され、ヒト可変領域と、例えばヒト定常領域とを含む抗体を指す。結合分子は抗体配列を含み得る。具体的な実施形態において、これらの用語は、ヒト起源の可変領域と定常領域とを含む抗体を指す。「完全ヒト」抗体は、特定の実施形態では、ポリペプチドに結合し、且つヒト生殖細胞系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞変異体である核酸配列によってコードされる抗体も包含し得る。用語「完全ヒト抗体」には、Kabat et al.によって記載されるとおりのヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に対応する可変及び定常領域を有する抗体が含まれる(Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体及び/又はヒト抗体の作製技法のいずれかを用いて作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991))及び酵母ディスプレイライブラリ(Chao et al.,Nature Protocols 1:755-68(2006))を含め、当技術分野において公知の様々な技法を用いて作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の調製には、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991);及びvan Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)に記載される方法も利用可能である。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してかかる抗体を産生するが、その内因性遺伝子座は能力が失われた状態となるように修飾されたトランスジェニック動物、例えば、マウスに抗原を投与することによって調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関して、Jakobovits,Curr.Opin.Biotechnol.6(5):561-66(1995);Brueggemann and Taussing,Curr.Opin.Biotechnol.8(4):455-58(1997);及び米国特許第6,075,181号明細書及び同第6,150,584号明細書を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術で作成されるヒト抗体に関して、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:3557-62(2006)も参照されたい。
特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、「組換えヒト抗体」の一部分を含むことができ、ここで、この語句には、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニック及び/又はトランスクロモソームの動物(例えば、マウス又はウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.et al.,Nucl.Acids Res.20:6287-6295(1992)を参照されたい)又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列とのスプライシングが関わる任意の他の手段によって調製、発現、作出若しくは単離された抗体など、組換え手段によって調製、発現、作出若しくは単離されたヒト抗体が含まれる。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有し得る(Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。しかしながら、特定の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又はヒトIg配列に関してトランスジェニックの動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され、従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来してその近縁でありながらも、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリーの範囲内に自然に存在しないものであり得る配列である。
特定の実施形態において、結合分子又は抗原結合ドメインは、「モノクローナル抗体」の一部分を含むことができ、ここで、この用語は、本明細書で使用されるとき、実質的に均一な抗体の集団から入手された抗体を指し、例えば、その集団を占める個々の抗体は、少量のみ存在し得る可能性のある天然に存在する突然変異、又はアミノ酸異性体化又は脱アミド、メチオニン酸化又はアスパラギン若しくはグルタミン脱アミドなどの周知の翻訳後修飾を除いては同一であり、各モノクローナル抗体が、典型的には抗原上の単一のエピトープを認識することになる。具体的な実施形態において、「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用されるとき、単一のハイブリドーマ又は他の細胞によって産生された抗体である。用語「モノクローナル」は、抗体を作製するいかなる特定の方法にも限定されない。例えば、本開示において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製され得るか、又は細菌又は真核生物の動物若しくは植物細胞において組換えDNA方法を用いて作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-28(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-97(1991)に記載される技法を用いてファージ抗体ライブラリからも単離され得る。クローン細胞株及びそれが発現するモノクローナル抗体の他の調製方法は、当技術分野において周知である。例えば、Short Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,5th ed.2002)を参照されたい。
典型的な4本鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とで構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgGの場合、4本鎖単位は、概して約150,000ダルトンである。各L鎖は、H鎖に1つの共有結合性ジスルフィド結合によって連結される一方、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに依存して1つ又は複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。各H鎖及びL鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いてα鎖及びγ鎖の各々について3つの定常ドメイン(CH)並びにμ及びεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いてその他端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の境界面を形成すると考えられる。VH及びVLの対が、一緒になって単一の抗原結合部位を形成する。種々の抗体クラスの構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology 71(Stites et al.eds.,8th ed.1994);及びImmunobiology(Janeway et al.eds.,5th ed.2001)を参照されたい。
用語「Fab」又は「Fab領域」は、抗原に結合する抗体領域を指す。従来のIgGは、通常、2つのFab領域を含み、各々がY字型IgG構造の2本のアームの一方に存在する。各Fab領域は、典型的には、重鎖及び軽鎖の各々の1つの可変領域及び1つの定常領域で構成される。より具体的には、Fab領域中の重鎖の可変領域及び定常領域は、VH及びCH1領域であり、Fab領域中の軽鎖の可変領域及び定常領域は、VL及びCL領域である。Fab領域中のVH、CH1、VL、及びCLは、本開示に係る抗原結合能を付与する様々な方法で配列され得る。例えば、従来のIgGのFab領域と同様に、VH及びCH1領域が1つのポリペプチド上にあり得、VL及びCL領域が別個のポリペプチド上にあり得る。代わりに、以下の節に更に詳細に記載するとおり、VH、CH1、VL及びCL領域が全て同じポリペプチド上にあり、種々の並び順で向きが決められ得る。
用語「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」、又は「Vドメイン」は、概して軽鎖又は重鎖のアミノ末端に位置している、長さが重鎖で約120~130アミノ酸及び軽鎖で約100~110アミノ酸である抗体の軽鎖又は重鎖の一部分を指し、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において用いられる。重鎖の可変領域は、「VH」と称され得る。軽鎖の可変領域は、「VL」と称され得る。用語「可変」は、可変領域のある種のセグメントが抗体間で配列に広範な違いを呈するという事実を指す。V領域は、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を定義付ける。しかしながら、可変性は、可変領域の110アミノ酸スパンにわたって均等に分布しているわけではない。代わりに、V領域は、各々約9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる高い可変性(例えば、超可変性)の短い領域によって隔てられている約15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる可変性の低い(例えば、比較的不変の)ストレッチからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、各々が、βシート構造を接続するループであって、場合によってはその一部を形成するループを形成する3つの超可変領域によって接続された、主としてβシート構造をとる4つのFRを含む。各鎖の超可変領域は、FRによってごく接近して一体に保持されており、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.1991)を参照されたい)。定常領域は、抗体による抗原への結合に直接的には関わらないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)への抗体の関与など、様々なエフェクター機能を呈する。可変領域は、種々の抗体間で配列が広く異なる。具体的な実施形態において、可変領域はヒト可変領域である。
用語「Kabatに係る可変領域残基の番号付け」又は「Kabatにあるとおりのアミノ酸位置の番号付け」及びこれらの変化形は、Kabat et al.,前掲における抗体編成の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域に使用される番号付け方式を指す。この番号付け方式を使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮、又はそれへの挿入に対応して、含有するアミノ酸が少なくなるか、又は追加されることになり得る。例えば、重鎖可変ドメインは、残基52の後ろの単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)及び残基82の後ろの3つの挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabat番号は、所与の抗体について、「標準的な」Kabat番号配列との抗体の配列の相同性領域におけるアラインメントによって決定され得る。Kabat番号付け方式は、概して、可変ドメインの残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)に言及するときに用いられる(例えば、Kabat et al.,前掲)。「EU番号付け方式」又は「EUインデックス」は、概して、免疫グロブリン重鎖定常領域の残基に言及するときに用いられる(例えば、Kabat et al.,前掲に報告されるEUインデックス)。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基の番号付けを指す。他の番号付け方式が、例えば、AbM、Chothia、Contact、IMGT、及びAHonによって記載されている。
用語「重鎖」は、抗体に関連して使用されるとき、アミノ末端部分が約120~130アミノ酸又はそれ以上の可変領域を含み、且つカルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づく、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)と称される5つの別個の種類(例えば、アイソタイプ)の1つであり得る。別個の重鎖はサイズが異なる:α、δ及びγは、約450アミノ酸を含有する一方、μ及びεは、約550アミノ酸を含有する。軽鎖と組み合わせになると、これらの別個の種類の重鎖は、5つの周知の抗体クラス(例えば、アイソタイプ)、それぞれIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMを生じ、これには、IgGの4つのサブクラス、即ちIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が含まれる。
用語「軽鎖」は、抗体に関連して使用されるとき、アミノ末端部分が約100~約110アミノ酸又はそれ以上の可変領域を含み、且つカルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖のおよその長さは211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づきカッパ(κ)又はラムダ(λ)と称される2つの別個の種類がある。
本明細書で使用されるとき、用語「超可変領域」、「HVR」、「相補性決定領域」、及び「CDR」は、同義的に使用される。「CDR」は、免疫グロブリン(Ig又は抗体)VH βシートフレームワークの非フレームワーク領域内にある3つの超可変領域(H1、H2又はH3)の1つ又は抗体VL βシートフレームワークの非フレームワーク領域内にある3つの超可変領域(L1、L2又はL3)の1つを指す。VHドメイン中のCDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3とも称される。VLドメイン中のCDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3とも称される。従って、CDRは、フレームワーク領域配列の範囲内に散在する可変領域配列である。
CDR領域は当業者に周知であり、周知の番号付け方式によって定義付けられている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に用いられている(例えば、Kabat et al.,前掲;Nick Deschacht et al.,J Immunol 2010;184:5696-5704を参照されたい)。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を参照する(例えば、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-17(1987)を参照されたい)。Chothia CDR-H1ループの終わりは、Kabatの番号付け規則を用いて番号付けしたとき、ループの長さに応じてH32~H34の間で変わる(これは、Kabatの番号付けスキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためである;35Aも35Bも存在しない場合、このループは32で終わる;35Aのみが存在する場合、このループは33で終わる;35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の折衷案に相当し、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアに使用されている(例えば、Antibody Engineering Vol.2(Kontermann and Duebel eds.,2d ed.2010)を参照されたい)。「contact」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。開発され、広く採用されている別の汎用的な番号付け方式は、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)である(Lafranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77(2003))。IMGTは、ヒト及び他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TCR)、及び主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に特化した総合情報システムである。ここで、CDRは、アミノ酸配列及び軽鎖又は重鎖内での位置の両方の観点から参照される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内でのCDRの「位置」は種間で保存されており、ループと呼ばれる構造中に存在するため、構造的特徴に従い可変ドメイン配列をアラインメントする番号付け方式を用いることにより、CDR及びフレームワーク残基が容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を、典型的にはヒト抗体からのアクセプターフレームワークにグラフト化及び置換する際に用いることができる。更なる番号付け方式(AHon)が、Honegger and Plueckthun,J.Mol.Biol.309:657-70(2001)によって開発されている。例えば、Kabatの番号付けとIMGT独自の番号付け方式を含め、番号付け方式間の対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat,前掲;Chothia and Lesk,前掲;Martin,前掲;Lefranc et al.,前掲を参照されたい)。これらの超可変領域又はCDRの各々からの残基を以下の表1に例示する。
所与のCDRの境界は、識別に用いられるスキームに応じて異なり得る。従って、特に指定されない限り、所与の抗体又は可変領域などのその領域の「CDR」及び「相補性決定領域」という用語並びに抗体又はその領域の個別のCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2)は、本明細書において上記に記載される公知のスキームのいずれかによって定義されるとおりの相補性決定領域を包含すると理解されなければならない。一部の例では、特定の1つ又は複数のCDRを識別するスキームは、IMGT、Kabat、Chothia、又はContact方法によって定義されるとおりのCDRなどと指定される。他の場合、CDRの特定のアミノ酸配列が与えられる。CDR領域は、様々な番号付け方式の組み合わせ、例えばKabat及びChothiaの番号付け方式の組み合わせ又はKabat及びIMGTの番号付け方式の組み合わせによっても定義され得ることに留意しなければならない。従って、「具体的なVHに示されるとおりのCDR1」などの用語は、上記に記載される例示的CDR番号付け方式によって定義されるとおりの任意のCDR1を含むが、それに限定されるものではない。可変領域(例えば、VH又はVL)が与えられれば、その領域内にあるCDRを異なる番号付け方式又はそれらの組み合わせによって定義し得ることを当業者は理解するであろう。
超可変領域は、以下のとおりの「伸長した超可変領域」を含み得る:VLにおける24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)、及び89~97又は89~96(L3)並びにVHにおける26~35又は26~35A(H1)、50~65又は49~65(H2)及び93~102、94~102又は95~102(H3)。
用語「定常領域」又は「定常ドメイン」は、軽鎖及び重鎖のカルボキシ末端部分を指し、抗体による抗原への結合に直接的には関わらないが、Fc受容体との相互作用など、様々なエフェクター機能を呈する。この用語は、免疫グロブリン分子のうち、抗原結合部位を含有する免疫グロブリンの他の部分、可変領域と比べて一層保存されたアミノ酸配列を有する部分を指す。定常領域は、重鎖のCH1、CH2、及びCH3領域並びに軽鎖のCL領域を含有し得る。
用語「フレームワーク」又は「FR」は、CDRに隣接する可変領域残基を指す。FR残基は、例えば、キメラ、ヒト化、ヒト、ドメイン抗体、ダイアボディ、線状抗体、及び二重特異性抗体に存在する。FR残基は、超可変領域残基又はCDR残基以外の可変ドメイン残基である。
用語「Fc領域」は、本明細書では、例えば、天然配列Fc領域、組換えFc領域、及び変異Fc領域を含め、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なる可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、多くの場合、Cys226位又はPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで広がると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付け方式による残基447)は、例えば抗体の作製中若しくは精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換えによって改変することにより、除去され得る。従って、インタクトな抗体の組成物は、全てのK447残基が除去されている抗体集団、いずれのK447残基も除去されていない抗体集団、及びK447残基を含む抗体と含まない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を備えている。例示的「エフェクター機能」としては、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御等が挙げられる。かかるエフェクター機能には、概して、Fc領域が結合領域又は結合ドメイン(例えば、抗体可変領域又はドメイン)と組み合わせになる必要があり、これは、当業者に公知の様々なアッセイを用いて評価することができる。「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、付加、又は欠失)のために天然配列Fc領域と異なるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、変異Fc領域は、天然配列Fc領域と比較して、又は親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を有し、例えば、天然配列Fc領域に、又は親ポリペプチドのFc領域に約1~約10個のアミノ酸置換、又は約1~約5個のアミノ酸置換を有する。変異Fc領域は、本明細書では、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、又はそれと少なくとも約90%の相同性、例えば、それと少なくとも約95%の相同性を備え得る。
本明細書で使用されるとき、「エピトープ」は、当技術分野における用語であり、結合分子(例えば、抗体)が特異的に結合することのできる抗原中の局所的領域を指す。エピトープは、線状エピトープ又は立体的、非線状若しくは不連続エピトープであり得る。ポリペプチド抗原の場合、例えば、エピトープは、ポリペプチドの連続したアミノ酸であり得る(「線状」エピトープ)か、又はエピトープは、ポリペプチドの2つ以上の非連続領域からのアミノ酸を含み得る(「立体的」、「非線状」又は「不連続」エピトープ)。当業者によれば、一般に、線状エピトープは、二次、三次又は四次構造に依存することも又はしないこともあると理解されるであろう。例えば、一部の実施形態において、結合分子は一群のアミノ酸に結合するが、それらのアミノ酸が天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれているかどうかは無関係である。他の実施形態において、結合分子がエピトープを認識して結合するために、エピトープを構成するアミノ酸残基が特定のコンホメーション(例えば、屈曲、ねじれ、旋回又は折り畳み)を呈する必要がある。
ペプチド、ポリペプチド又は抗体配列に関連して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」及び「相同性」とは、最大限のパーセント配列同一性が達成されるように配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、且ついかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮することなく、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一の候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性の決定を目的とするアラインメントは、当技術分野の技能の範囲内にある様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較下の配列の完全長にわたって最大限のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、アラインメントの測定に適切なパラメータを決定することができる。
用語「特異性」は、抗原の特定のエピトープに対する抗原結合タンパク質(CAR又は抗体など)の選択的な認識を指す。天然抗体は、例えば、単一特異性である。用語「多重特異性」は、本明細書で使用されるとき、抗原結合タンパク質(CAR又は抗体など)が2つ以上の抗原結合部位を有し、そのうちの少なくとも2つが異なる抗原に結合することを意味する。「二重特異性」は、本明細書で使用されるとき、抗原結合タンパク質(CAR又は抗体など)が2つの異なる抗原結合特異性を有することを意味する。用語「単一特異性」CARは、本明細書で使用されるとき、各々が同じ抗原に結合する1つ以上の結合部位を有する抗原結合タンパク質(CAR又は抗体など)を意味する。
用語「価」は、本明細書で使用されるとき、抗原結合タンパク質(CAR又は抗体など)に指定された数の結合部位が存在することを意味する。例えば天然の抗体又は完全長抗体は2つの結合部位を有し、二価である。このように、用語「三価」、「四価」、「五価」及び「六価」は、抗原結合タンパク質(CAR又は抗体など)にそれぞれ2つの結合部位、3つの結合部位、4つの結合部位、5つの結合部位及び6つの結合部位が存在することを意味する。
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」は、本明細書で使用されるとき、T細胞などの免疫エフェクター細胞に1つ以上の抗原特異性をグラフトするために使用することのできる遺伝子改変された受容体を指す。一部のCARは、「人工T細胞受容体」、「キメラT細胞受容体」、又は「キメラ免疫受容体」としても知られる。一部の実施形態において、CARは、1つ以上の抗原(腫瘍抗原など)に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、T細胞及び/又は他の受容体の細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。「CAR-T細胞」は、CARを発現するT細胞を指す。
用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で同義的に使用され、任意の長さのアミノ酸の重合体を指す。重合体は、線状又は分枝状であり得、これは、修飾アミノ酸を含み得、及びこれは、非アミノ酸によって分断され得る。これらの用語は、天然の修飾又は介入による修飾;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化又は任意の他の操作又は修飾を受けているアミノ酸重合体も包含する。この定義の範囲内には、例えば、限定はされないが、非天然アミノ酸並びに当技術分野において公知の他の修飾を含めてアミノ酸の1つ以上の類似体を含有するポリペプチドも含まれる。本開示のポリペプチドは、抗体又は免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバーをベースとし得るため、特定の実施形態において、「ポリペプチド」は、単鎖として存在し得るか、又は2つ以上の会合した鎖として存在し得ることが理解される。
本明細書では同義的に使用されるとおりの「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基、及び/又はその類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによるか、又は合成反応によって重合体に取り込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチド、及びその類似体を含み得る。「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、必ずしもそうとは限らないが、概して約200ヌクレオチド長を超えない、短い、概して一本鎖の合成ポリヌクレオチドを指す。用語「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」とは、互いに排他的というわけではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、オリゴヌクレオチドにも等しく全面的に適用可能である。本開示の結合分子を産生する細胞には、親ハイブリドーマ細胞並びに抗体をコードする核酸が導入された細菌及び真核生物宿主細胞が含まれ得る。特に指定のない限り、本明細書に開示される任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側の終端が5’末端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向が5’方向と称される。5’から3’への新生RNA転写物の付加方向が、転写方向と称される;RNA転写物の5’末端より5’側にあるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称される;RNA転写物の3’末端より3’側にあるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
「単離核酸」とは、自然中では天然配列に付随する他のゲノムDNA配列並びにリボソーム及びポリメラーゼなどのタンパク質又は複合体と実質的に分離されている核酸、例えば、RNA、DNA、又は核酸混合物である。「単離」核酸分子は、その核酸分子の天然の供給源に存在する他の核酸分子と分離されているものである。更に、「単離」核酸分子、例えばcDNA分子などは、他の細胞材料、又は組換え技術によって作製された場合には培養培地を実質的に含まないもの、又は化学的に合成された場合には化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。具体的な実施形態において、本明細書に記載されるとおりの抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、単離又は精製されている。この用語は、その天然に存在する環境から取り出されている核酸配列を包含し、組換えの又はクローニングされたDNA単離物及び化学的に合成された類似体又は異種システムによって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な分子は、単離された形態の分子を含み得る。具体的には、本明細書に記載されるCAR又は抗体をコードする「単離」核酸分子は、それが産生された環境では通常結び付いている少なくとも1つの混入核酸分子から同定され、分離されている核酸分子である。
特に指定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであって、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、バージョンによっては1つ又は複数のイントロンを含有し得る限り、イントロンも含まれ得る。
用語「制御配列」は、作動可能に連結されたコード配列が特定の宿主生物で発現するために必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列には、例えば、プロモーター、任意選択でオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが公知である。
本明細書で使用されるとき、用語「作動可能に連結された」、及び同様の語句(例えば、遺伝子融合した)は、核酸又はアミノ酸に関連して使用されるとき、それぞれ核酸配列又はアミノ酸配列が互いに機能的関係に置かれている作動可能な連結を指す。例えば、プロモーター、エンハンサーエレメント、オープンリーディングフレーム、5’及び3’UTR、及びターミネーター配列が作動可能に連結されていると、核酸分子(例えば、RNA)の正確な産生が起こる。一部の実施形態において、核酸エレメントが作動可能に連結されていると、オープンリーディングフレームの転写及び最終的にポリペプチドの産生(即ちオープンリーディングフレームの発現)が起こる。別の例として、作動可能に連結されたペプチドとは、機能ドメインが各ドメインの意図した機能を付与するのに互いに適切な距離に置かれているものである。
用語「ベクター」は、宿主細胞に核酸配列を導入するために、例えば、本明細書に記載されるとおりの結合分子(例えば、抗体)をコードする核酸配列を含め、核酸配列を運ぶ又は含むのに用いられる物質を指す。使用に適用可能なベクターとしては、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、及び人工染色体が挙げられ、これらは、宿主細胞の染色体への安定した組込みのための役割を果たし得る選択配列又はマーカーを含むことができる。加えて、ベクターは、1つ以上の選択可能マーカー遺伝子及び適切な発現制御配列を含むことができる。含めることのできる選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質又は毒素に対する耐性を提供し、要求栄養物質の欠乏を補完し、又は培養培地中にない重要栄養素を供給する。発現制御配列には、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどが含まれ得、これらは、当技術分野において周知である。2つ以上の核酸分子(例えば、抗体重鎖及び軽鎖又は抗体VH及びVLの両方)を共発現させようとするとき、両方の核酸分子を例えば単一発現ベクター又は別個の発現ベクターに挿入することができる。単一ベクター発現について、コード核酸は、1つの共通の発現制御配列に作動可能に連結され得るか、又は1つが誘導性プロモーター及び1つが構成的プロモーターなど、異なる発現制御配列に連結され得る。宿主細胞への核酸分子の導入は、当技術分野において周知の方法を用いて確認することができる。かかる方法としては、例えば、ノーザンブロット又はmRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸分析、遺伝子産物の発現についてのイムノブロッティング、又は導入された核酸配列若しくはその対応する遺伝子産物の発現を試験する他の好適な分析的方法が挙げられる。当業者によれば、所望の産物を産生するのに十分な量で核酸分子を発現させることが理解され、更に、当技術分野において周知の方法を用いて十分な発現が達成されるように発現レベルを最適化し得ることが理解される。
用語「宿主」は、本明細書で使用されるとき、哺乳類(例えば、ヒト)など、動物を指す。
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用されるとき、核酸分子をトランスフェクトされ得る特定の対象細胞及びかかる細胞の子孫又は潜在的な子孫を指す。かかる細胞の子孫は、次世代に起こり得る突然変異若しくは環境の影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組込みが原因で、核酸分子をトランスフェクトされる親細胞と同一ではないこともある。
本明細書で使用されるとき、用語「自家性」とは、それが後に個体に再導入されることになる同じ個体に由来する任意の材料を指すことが意味される。
「同種異系」は、同じ種の異なる個体に由来する移植片を指す。
用語「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」は、本明細書で使用されるとき、外因性核酸を宿主細胞に移入又は導入するプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞とは、外因性核酸によってトランスフェクトされている、形質転換されている、又は形質導入されているものである。細胞には、初代対象細胞及びその子孫が含まれる。
用語「薬学的に許容可能」は、本明細書で使用されるとき、動物、及びより詳細にはヒトにおける使用が連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
「賦形剤」は、液体又は固体の充填剤、希釈剤、溶媒、又は封入材料など、薬学的に許容可能な材料、組成物、又は媒体を意味する。賦形剤としては、例えば、封入材料又は添加剤、例えば、吸収促進剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、担体、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味剤、保湿剤、滑沢剤、香料、保存剤、噴射剤、離型剤、滅菌剤、甘味料、可溶化剤、湿潤剤及びこれらの混合物などが挙げられる。用語「賦形剤」は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全又は不完全)又は媒体も指すことができる。
一部の実施形態において、賦形剤は、薬学的に許容可能な賦形剤である。薬学的に許容可能な賦形剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含めた抗酸化剤;低分子量の(例えば、約10アミノ酸残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含めた、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール類;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;及び/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。薬学的に許容可能な賦形剤の他の例は、Remington and Gennaro,Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.1990)に記載されている。
一実施形態において、各成分は、医薬製剤の他の原材料と適合性があり、且つヒト及び動物の組織又は器官と接触した使用に好適で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、免疫原性、又は他の問題若しくは合併症がなく、妥当なリスク対効果比に見合っているという意味で「薬学的に許容可能」である。例えば、Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009;Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照されたい。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、それに曝露される細胞又は哺乳類にとって、用いられる投薬量及び濃度で非毒性である。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、pH緩衝水溶液である。
一部の実施形態において、賦形剤は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物、又は合成起源のものを含めた油及び水など、無菌の液体である。組成物(例えば、医薬組成物)が静脈内投与されるとき、水が例示的賦形剤である。生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も液体賦形剤として特に注射用溶液に用いることができる。賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなども挙げることができる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤も含有することができる。組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、散剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。経口組成物は、製剤を含め、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、標準的な賦形剤を含み得る。
医薬化合物を含め、組成物は、好適な量の賦形剤と共に、結合分子(例えば、抗体)を例えば単離又は精製された形態で含有し得る。
用語「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用されるとき、薬剤及び本明細書に提供される抗体又は医薬組成物を含む抗体又は治療用分子が所望の結果をもたらすのに十分な量を指す。
用語「対象」及び「患者」は、同義的に使用され得る。本明細書で使用されるとき、特定の実施形態において、対象は、非霊長類又は霊長類(例えば、ヒト)など、哺乳類である。具体的な実施形態において、対象はヒトである。一実施形態において、対象は、疾患又は障害の診断を受けた哺乳類、例えばヒトである。別の実施形態において、対象は、疾患又は障害を発症するリスクがある哺乳類、例えばヒトである。
「投与する」又は「投与」は、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、及び/又は本明細書に記載される若しくは当技術分野において公知の任意の他の物理的送達方法によるなど、体外に存在するとおりの物質を患者に注射するか又は他の方法で物理的に送達する行為を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」、「治療」及び「治療すること」は、1つ以上の療法の投与によって得られる、疾患又は病態の進行、重症度、及び/又は持続時間の低減又は改善を指す。治療は、患者が根底にある障害になおも罹患している可能性があるにも関わらず患者に改善が認められるような、根底にある障害に関連する1つ以上の症状の低下、軽減及び/又は緩和があったかどうかを評価することにより決定され得る。用語「治療」には、疾患の維持及び軽快の両方が含まれる。用語「維持する」、「維持すること」、及び「維持」は、対象が療法から得る有益な効果であるが、それが必ずしも疾患の治癒をもたらすとは限らないことを指す。
用語「予防する」、「予防すること」、及び「予防」は、疾患、障害、病態、又は1つ又は複数の随伴症状(例えば、糖尿病又は癌)が発生(又は再発)する可能性を低減することを指す。
本明細書で使用されるとき、癌の発症を「遅延させる」とは、疾患の発症を延ばす、妨げる、減速させる、遅らせる、安定化させる、及び/又は先送りにすることを意味する。この遅延は、治療下の疾患及び/又は個体の経過に応じて時間的に様々な長さであり得る。当業者に明らかなとおり、十分な又は有意な遅延は、個体が疾患を発症しない点において、事実上、予防を包含し得る。癌の発症を「遅延させる」方法とは、その方法を用いない場合と比較したときの、所与の時間フレーム内での疾患の発症確率を低減する方法、及び/又は所与の時間フレーム内での疾患の程度を低減する方法である。かかる比較は、典型的には、統計的に有意な数の個体を使用した臨床試験に基づく。癌の発症は、限定はされないが、コンピュータ体軸断層撮影(CATスキャン)、磁気共鳴画像法(MRI)、腹部超音波検査、凝固検査、動脈造影法又は生検を含めた標準方法を用いて検出可能であり得る。発症は、当初、検出不能であり得る癌の進行も指し得、出現、再発及び発生を含む。
「GPC3関連疾患又は障害」は、本明細書で使用されるとき、GPC3が発現する、又は過剰発現する細胞又は組織を含む疾患又は障害を指す。一部の実施形態において、GPC3関連疾患又は障害は、細胞上にGPC3が異常に発現する細胞を含む。他の実施形態において、GPC3関連疾患又は障害は、細胞内又は細胞上のGPC3にその活性の少なくとも1つが欠損している細胞を含む。
用語「約」及び「近似的に」は、所与の値又は範囲から20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、又はそれ未満を意味する。
本開示及び特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「ある(a)」、「ある(an)」及び「その」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形を含む。
本明細書において実施形態が用語「~を含む」を伴って記載される場合には常に、「~からなる」及び/又は「~から本質的になる」の用語で記載される他の点では類似した実施形態も提供されることが理解される。本明細書において実施形態が語句「~から本質的になる」を伴って記載される場合には常に、「~からなる」の用語で記載される他の点で類似した実施形態も提供されることも理解される。
「AとBとの間」又は「A~Bの間」などの語句で使用されるとおりの用語「~の間」は、A及びBの両方を含む範囲を指す。
「A及び/又はB」などの語句で使用されるとおりの用語「及び/又は」は、本明細書では、A及びBの両方;A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用されるとおりの用語「及び/又は」は、以下の実施形態の各々を包含することが意図される:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
5.2.GPC3結合分子
5.2.1.GPC3に結合する抗体
一態様において、本明細書では、グリピカン-3(GPC3)への結合能を有する抗体が提供される。GPC3は、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカーによって細胞表面に結合するヘパラン硫酸(HS)プロテオグリカンのグリピカンファミリーのメンバーである(Filmus and Selleck,J Clin Invest 108:497-501,2001)。GPC3遺伝子は、約70kDのコアタンパク質をコードし、このタンパクがフューリンによって切断されると、N末端40kD断片及びC末端30kD断片が生じ得る。GPC3のC末端部分には、2つのHS鎖が結合している。GPC3及び他のグリピカンファミリータンパク質は、細胞分裂及び細胞成長の調節において役割を果たす。GPC3は、HCC並びにその他の、黒色腫、肺扁平上皮癌、及び卵巣明細胞癌を含めた一部のヒト癌で高発現し(Ho and Kim,Eur J Cancer 47(3):333-338,2011)、しかし正常組織には発現しない。GPC3は、SGB、DGSX、MXR7、SDYS、SGBS、OCI-5、SGBS1及びGTR2-2としても知られる。ヒトGPC3の既知のアイソフォームは4つある(アイソフォーム1~4)。GPC3の4つのアイソフォームの核酸及びアミノ酸配列は公知であり、GenBankアクセッション番号:NM_001164617及びNP_001158089(アイソフォーム1);NM_004484及びNP_004475(アイソフォーム2);NM_001164618及びNP_001158090(アイソフォーム3);並びにNM_001164619及びNP_001158091(アイソフォーム4)が挙げられる。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、上記の4つのアイソフォームのいずれにも結合することができる。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒトGPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、1つ以上のGPC3活性を調節する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、アンタゴニスト抗体である。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、GPC3(例えば、ヒトGPC3)に対し、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)で結合する。結合親和性を測定する種々の方法が、例えばFabバージョンの目的の抗体及びその抗原で実施される、RIAによるもの(Chen et al.,1999,J.Mol Biol 293:865-81);例えばOctet(登録商標)Red96システムを用いた、Octet(登録商標)によるか、又は例えばBiacore(登録商標)TM-2000若しくはBiacore(登録商標)TM-3000を用いた、Biacore(登録商標)によるバイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによるものを含め、当技術分野において公知であり、本開示の目的上、そのいずれを使用することもできる。「オン速度」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」も、例えば、Octet(登録商標)Red96、Biacore(登録商標)TM-2000、又はBiacore(登録商標)TM-3000システムを用いた、上記に記載される同じバイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)技法で決定され得る。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、以下の第6節に記載されるものである。従って、一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、配列番号61~80及び117~125のいずれか1つの1つ以上のCDR配列を含む。CDR配列は、周知の番号付け方式に従い決定され得る。一部の実施形態において、CDRは、IMGTの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、Kabatの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、AbMの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothiaの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contactの番号付けに従う。一部の実施形態において、抗GPC3抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態において、抗GPC3抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号61に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号62に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号63に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号64に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号65に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号66に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号67に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号68に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号69に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号70に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号117に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号118に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号119に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号120に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号121に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号122に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。CDR配列は、周知の番号付け方式又はそれらの組み合わせに従い決定され得る。一部の実施形態において、CDRは、IMGTの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、Kabatの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、AbMの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothiaの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contactの番号付けに従う。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号71に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号72に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号73に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号74に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号75に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号76に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号77に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号78に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号79に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号80に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。CDR配列は、周知の番号付け方式又はそれらの組み合わせに従い決定され得る。一部の実施形態において、CDRは、IMGTの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、Kabatの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、AbMの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothiaの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contactの番号付けに従う。
一部の実施形態において、配列番号61に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号71に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号62に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号72に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号63に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号73に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号64に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号74に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号65に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号75に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号66に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号76に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号67に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号77に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号68に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号78に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号69に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号79に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号70に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号80に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号123に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号124に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122に示されるとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号125に示されるとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含む抗体が提供される。CDR配列は、周知の番号付け方式又はそれらの組み合わせに従い決定され得る。一部の実施形態において、CDRは、IMGTの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、Kabatの番号付けに従う。一部の実施形態において、CDRは、AbMの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothiaの番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contactの番号付けに従う。
他の実施形態において、本明細書では、(i)配列番号1~10のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR1;(ii)配列番号11~20のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii)配列番号21~30のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR3;(iv)配列番号31~40のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR1;(v)配列番号41~50のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR2;及び/又は(vi)配列番号51~60のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR3を含むGPC3に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、抗GPC3抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態において、抗GPC3抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号51のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号42のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号43のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号53のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号44のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号45のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号55のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号27のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号47のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号57のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号48のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号58のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号29のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号39のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号59のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部のより具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3と、配列番号40のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号50のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号60のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
一部の実施形態において、抗体は、更に、配列番号61~80及び117~125のフレームワーク領域を1つ以上含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、以下の第6節に例示される方法又は以下の節に記載される方法を用いて作成することができる。本明細書に記載されるフレームワーク領域は、CDR番号付け方式の境界に基づき決定される。換言すれば、例えば、Kabat、IMGT、又はChothiaによってCDRが決定される場合、そのときフレームワーク領域は、N末端からC末端に、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のフォーマットで可変領域内においてCDRに囲まれたアミノ酸残基である。例えば、FR1は、例えば、Kabat番号付け方式、IMGT番号付け方式、又はChothia番号付け方式によって定義するとき、CDR1アミノ酸残基のN末端側にあるアミノ酸残基として定義され、FR2は、例えば、Kabat番号付け方式、IMGT番号付け方式、又はChothia番号付け方式によって定義するとき、CDR1とCDR2とのアミノ酸残基間にあるアミノ酸残基として定義され、FR3は、例えば、Kabat番号付け方式、IMGT番号付け方式、又はChothia番号付け方式によって定義するとき、CDR2とCDR3とのアミノ酸残基間にあるアミノ酸残基として定義され、及びFR4は、例えば、Kabat番号付け方式、IMGT番号付け方式、又はChothia番号付け方式によって定義するとき、CDR3アミノ酸残基のC末端側にあるアミノ酸残基として定義される。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号61を含むVHドメインと、配列番号71を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号62を含むVHドメインと、配列番号72を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号63を含むVHドメインと、配列番号73を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号64を含むVHドメインと、配列番号74を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号65を含むVHドメインと、配列番号75を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号66を含むVHドメインと、配列番号76を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号67を含むVHドメインと、配列番号77を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号68を含むVHドメインと、配列番号78を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号69を含むVHドメインと、配列番号79を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号70を含むVHドメインと、配列番号80を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号117を含むVHドメインと、配列番号123を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号118を含むVHドメインと、配列番号123を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号119を含むVHドメインと、配列番号123を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号120を含むVHドメインと、配列番号123を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号121を含むVHドメインと、配列番号123を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号122を含むVHドメインと、配列番号123を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号117を含むVHドメインと、配列番号124を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号118を含むVHドメインと、配列番号124を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号119を含むVHドメインと、配列番号124を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号120を含むVHドメインと、配列番号124を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号121を含むVHドメインと、配列番号124を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号122を含むVHドメインと、配列番号124を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号117を含むVHドメインと、配列番号125を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号118を含むVHドメインと、配列番号125を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号119を含むVHドメインと、配列番号125を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号120を含むVHドメインと、配列番号125を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号121を含むVHドメインと、配列番号125を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号122を含むVHドメインと、配列番号125を含むVLドメインとを含む。一部の実施形態において、抗体はscFvである。
特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に提供される任意の抗体、例えば、以下の第6節に記載されるものと比べて特定のパーセント同一性を有するアミノ酸配列を含む。
2つの配列(例えば、アミノ酸配列又は核酸配列)の間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873 5877(1993)にあるとおり修正された、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:2264 2268(1990)のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに取り込まれている。本明細書に記載される核酸分子に相同なヌクレオチド配列を入手するには、例えば、スコア=100、ワード長さ=12に設定したNBLASTヌクレオチドプログラムパラメータでBLASTヌクレオチド検索を実施することができる。本明細書に記載されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を入手するには、例えば、スコア50、ワード長さ=3に設定したXBLASTプログラムパラメータセットでBLASTタンパク質検索を実施することができる。比較目的のギャップ付きアラインメントを入手するために、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389 3402(1997)に記載されるとおりGapped BLASTを利用することができる。代わりに、PSI BLASTを用いて、分子間の距離関係を検出する反復検索を実施することができる(同上)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI Blastプログラムを利用するとき、それぞれのプログラムの(例えば、XBLAST及びNBLASTの)デフォルトパラメータを使用することができる(例えば、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.govで国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)を参照されたい)。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers and Miller,CABIOS 4:11-17(1998)のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り込まれている。ALIGNプログラムをアミノ酸配列の比較に利用する場合、PAM120重み残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティー4を用いることができる。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップを許容して、又は許容せずに、上記に記載されるものと同様の技法を用いて決定することができる。パーセント同一性の計算では、典型的には、完全な一致のみが考慮される。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、参照配列と比べて置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗GPC3抗体は、GPC3に結合する能力を保持している。一部の実施形態において、参照アミノ酸配列中の合計1~10アミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失が行われている。一部の実施形態において、置換、挿入、又は欠失は、CDR以外の領域に(即ちFRに)存在する。任意選択で、本明細書に提供される抗GPC3抗体は、参照配列の翻訳後修飾を含む。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号61のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号71のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号62のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号72のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号73のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号74のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号76のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号67のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号77のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号68のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号78のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号80のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号117のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号118のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号120のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号121のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号122のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号117のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号118のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号120のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号121のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号122のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号117のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号118のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号120のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号121のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体又は抗原結合断片は、配列番号122のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインとを含み、ここで、この抗体は、GPC3に結合する。一部の実施形態において、抗体は、scFvである。
一部の実施形態において、例えばコンビナトリアルアラニンスキャニングによって機能的エピトープをマッピングすることにより、本明細書に提供される抗GPC3抗体との相互作用に必要なGPC3タンパク質中のアミノ酸を同定することができる。一部の実施形態において、エピトープの同定には、GPC3に結合した抗GPC3抗体の立体配置構造及び結晶構造を利用し得る。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に提供される抗GPC3抗体のいずれかと同じエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。例えば、一部の実施形態において、配列番号61を含むVHドメインと配列番号71を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号62を含むVHドメインと配列番号72を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号63を含むVHドメインと配列番号73を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号64を含むVHドメインと配列番号74を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号65を含むVHドメインと配列番号75を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号66を含むVHドメインと配列番号76を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号67を含むVHドメインと配列番号77を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号68を含むVHドメインと配列番号78を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号69を含むVHドメインと配列番号79を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号70を含むVHドメインと配列番号80を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、抗体はscFvである。
一部の実施形態において、本明細書では、本明細書に記載される抗GPC3抗体のいずれか1つと競合的にGPC3に特異的に結合する抗GPC3抗体、又はその抗原結合断片が提供される。一部の実施形態において、配列番号61を含むVHドメインと配列番号71を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号62を含むVHドメインと配列番号72を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号63を含むVHドメインと配列番号73を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号64を含むVHドメインと配列番号74を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号65を含むVHドメインと配列番号75を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号66を含むVHドメインと配列番号76を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号67を含むVHドメインと配列番号77を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号68を含むVHドメインと配列番号78を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号69を含むVHドメインと配列番号79を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号70を含むVHドメインと配列番号80を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122を含むVHドメインと配列番号123を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122を含むVHドメインと配列番号124を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号117を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号118を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号119を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号120を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号121を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、配列番号122を含むVHドメインと配列番号125を含むVLドメインとを含む抗GPC3抗体と競合的にGPC3に特異的に結合する抗体が提供される。一部の実施形態において、抗体はscFvである。
一部の実施形態において、本明細書では、上記に記載される抗GPC3抗体のいずれか1つを含むGPC3結合タンパク質が提供される。一部の実施形態において、GPC3結合タンパク質は、マウス、キメラ、ヒト化又はヒト抗体を含めたモノクローナル抗体である。一部の実施形態において、抗GPC3抗体は、抗体断片、例えばscFvである。一部の実施形態において、GPC3結合タンパク質は、本明細書に提供される抗GPC3抗体を含む融合タンパク質である。他の実施形態において、GPC3結合タンパク質は、本明細書に提供される抗GPC3抗体を含む多重特異性抗体である。他の例示的GPC3結合分子については、以下の節に更に詳細に記載する。
一部の実施形態において、上記の実施形態のいずれかに係る抗GPC3抗体又は抗原結合タンパク質は、以下の第5.2.2節~第5.2.8節に記載されるとおりの特徴のいずれかを単独で、又は組み合わせで取り込み得る。
5.2.2.抗体断片
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」には、その様々な抗体断片も含まれる。本明細書に提供される抗体としては、限定はされないが、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な一部分が挙げられる。本明細書に提供される免疫グロブリン分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)の免疫グロブリン分子であり得る。一部の実施形態において、抗体は、IgG抗体である。一部の実施形態において、IgG抗体は、IgG1抗体である。一部の実施形態において、IgG抗体は、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。
抗体の変異体及び誘導体には、抗原に結合する能力を保持している抗体機能性断片が含まれる。例示的機能性断片としては、Fab断片(例えば、抗原結合ドメインを含有し、且つジスルフィド結合によって架橋された軽鎖及び重鎖の一部を含む抗体断片);Fab’(例えば、Fabを含む単一の抗原結合ドメインと、ヒンジ領域までの重鎖の追加的な部分とを含有する抗体断片);F(ab’)2(例えば、重鎖のヒンジ領域で鎖間ジスルフィド結合によってつなぎ合わされた2つのFab’分子;これらのFab’分子は、同じ又は異なるエピトープを標的とし得る);二重特異性Fab(例えば、2つの抗原結合ドメインを有し、その各々が異なるエピトープを標的とし得るFab分子);scFvとしても知られる、可変領域を含む単鎖(例えば、例えば10~25アミノ酸の鎖によって一体に連結された抗体の単一の軽鎖及び重鎖からの抗原結合性を決定する可変領域);ジスルフィド結合したFv、又はdsFv(例えば、ジスルフィド結合によって一体に連結された抗体の単一の軽鎖及び重鎖からの抗原結合性を決定する可変領域);ラクダ化されたVH(例えば、VH界面にある一部のアミノ酸が、天然に存在するラクダ抗体の重鎖に見られるものである抗体の単一の重鎖からの抗原結合性を決定する可変領域);二重特異性scFv(例えば、2つの抗原結合ドメインを有し、その各々が異なるエピトープを標的とし得るscFv又はdsFv分子);ダイアボディ(例えば、第1のscFvのVHドメインが第2のscFvのVLドメインとアセンブルし、及び第1のscFvのVLドメインが第2のscFvのVHドメインとアセンブルすると形成される二量体化したscFv;ダイアボディのこれらの2つの抗原結合領域は、同じ又は異なるエピトープを標的とし得る);トリアボディ(例えば、ダイアボディと同じように形成されるが、ここでは単一の複合体中に3つの抗原結合ドメインが作り出される、三量体化したscFv;これらの3つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープを標的とし得る);及びテトラボディ(例えば、ダイアボディと同じように形成されるが、ここでは単一の複合体中に4つの抗原結合ドメインが作り出される、四量体化したscFv;これらの4つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープを標的とし得る)が挙げられる。
抗体断片を作製するための様々な技法が開発されている。従来、こうした断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化によって得られていた(例えば、Morimoto et al.,1992,J.Biochem.Biophys.Methods 24:107-17;及びBrennan et al.,1985,Science 229:81-83を参照されたい)。しかしながら、現在では、こうした断片は組換え宿主細胞によって直接作製することができる。例えば、Fab、Fv、及びscFv抗体断片は、いずれも大腸菌(E.coli)又は酵母細胞で発現させて、それから分泌させることができ、従ってこれらの断片の大量生産が容易に可能となる。抗体断片は、上記で考察される抗体ファージライブラリから単離することができる。代わりに、Fab’-SH断片を大腸菌(E.coli)から直接回収して化学的にカップリングすることにより、F(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al.,1992,Bio/Technology 10:163-67)。別の手法によれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む生体内半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片について、例えば、米国特許第5,869,046号明細書に記載されている。抗体断片を作製する他の技法は、当業者に明らかであろう。特定の実施形態において、抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である(例えば、国際公開第93/16185号パンフレット;米国特許第5,571,894号明細書及び同第5,587,458号明細書を参照されたい)。Fv及びscFvは、定常領域を有しないインタクトな組み合わせ部位を有する;従って、これらはインビボ使用時の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかにエフェクタータンパク質の融合体が生じるように構築され得る(例えば、Borrebaeck ed.,前掲を参照されたい)。抗体断片は、例えば、上記に引用する参考文献に記載されるとおりの「線状抗体」でもあり得る。かかる線状抗体は、単一特異性又は二重特異性などの多重特異性であり得る。
一部の具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体は、例えば、配列番号61~70及び117~122を含め、上記に記載されるVHドメインのいずれか1つと、例えば、配列番号71~80及び123~125を含め、上記に記載されるVLドメインのいずれか1つとを含むscFvである。より具体的には、一部の実施形態において、本明細書では、配列番号81のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号82のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号83のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号84のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号85のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号86のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号87のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号88のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号89のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号90のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号128のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号129のアミノ酸配列を含むscFvが提供される。
一部の実施形態において、本明細書では、配列番号81のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号82のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号84のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号86のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号87のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号88のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号89のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号90のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号128のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号129のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するscFvが提供される。
5.2.3.ヒト化抗体
本明細書に記載される抗体には、ヒト化抗体が含まれる。本明細書に開示されるヒト化抗体などのヒト化抗体は、限定はされないが、CDRグラフト(欧州特許第239,400号明細書;国際公開第91/09967号パンフレット;及び米国特許第5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書及び同第5,585,089号明細書)、ベニヤリング又はリサーフェシング(欧州特許第592,106号明細書及び同第519,596号明細書;Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489-498(1991);Studnicka et al.,Protein Engineering 7(6):805-814(1994);及びRoguska et al.,PNAS 91:969-973(1994))、チェインシャッフリング(米国特許第5,565,332号明細書)並びに例えば米国特許第6,407,213号明細書、米国特許第5,766,886号明細書、国際公開第9317105号パンフレット、Tan et al.,J.Immunol.169:1119 25(2002)、Caldas et al.,Protein Eng.13(5):353-60(2000)、Morea et al.,Methods 20(3):267 79(2000)、Baca et al.,J.Biol.Chem.272(16):10678-84(1997)、Roguska et al.,Protein Eng.9(10):895 904(1996)、Couto et al.,Cancer Res.55(23 Supp):5973s-5977s(1995)、Couto et al.,Cancer Res.55(8):1717-22(1995)、Sandhu JS,Gene 150(2):409-10(1994)、及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.235(3):959-73(1994)に開示される技法を含め、当技術分野において公知の種々の技法を用いて作製することができる。米国特許出願公開第2005/0042664 A1号明細書(2005年2月24日)も参照されたい(これらの各々は、参照により全体として本明細書に援用される)。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒトGPC3を含め、GPC3に結合するヒト化抗体であり得る。例えば、本開示のヒト化単鎖抗体は、配列番号61~80及び117~125に示される1つ以上のCDRを含み得る。非ヒト抗体をヒト化する様々な方法が、当技術分野において公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそこに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。こうした非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合に「インポート」残基と称され、これは、典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-25(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-27(1988);及びVerhoeyen et al.,Science 239:1534-36(1988))の方法に従い、ヒト抗体の対応する配列を超可変領域配列に置換することによって実施され得る。具体的な実施形態において、本明細書に提供される抗体のヒト化は、以下の第6節に記載されるとおり実施される。
ある場合には、ヒト化抗体はCDRグラフト法によって構築され、ここで、親非ヒト抗体のCDRのアミノ酸配列がヒト抗体フレームワークにグラフトされる。例えば、Padlan et al.は、実際に抗原と接触するのはCDR中の残基の約3分の1のみであることを明らかにし、それらを「特異性決定残基」、即ちSDRと呼んだ(Padlan et al.,FASEB J.9:133-39(1995))。SDRグラフト技法では、ヒト抗体フレームワークにSDR残基のみがグラフトされる(例えば、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)を参照されたい)。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作る際に使用するヒト可変ドメインの選択が重要となり得る。例えば、いわゆる「最良適合」法によれば、非ヒト抗体の可変ドメインの配列が既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングされる。非ヒト抗体に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして選択され得る(Sims et al.,J.Immunol.151:2296-308(1993);及びChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-17(1987))。別の方法では、特定のサブグループの軽鎖又は重鎖のヒト抗体全てのコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークが使用される。この同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体に使用し得る(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285-89(1992);及びPresta et al.,J.Immunol.151:2623-32(1993))。ある場合には、フレームワークは、最も豊富なヒトサブクラス、VL6サブグループI(VL6I)及びVHサブグループIII(VHIII)のコンセンサス配列に由来する。別の方法では、ヒト生殖細胞系列遺伝子が、フレームワーク領域の供給源として使用される。
超ヒト化(superhumanization)と呼ばれるCDRの比較に基づく代替的なパラダイムでは、FRの相同性は無関係である。この方法は、非ヒト配列と機能性ヒト生殖細胞系列遺伝子レパートリーとの比較からなる。次に、マウス配列と同じ又は近縁のカノニカル構造をコードする遺伝子が選択される。続いて、非ヒト抗体とカノニカル構造を共有する遺伝子の範囲内で、CDR内で最も高い相同性を有するものが、FRドナーとして選択される。最後に、それらのFRに非ヒトCDRがグラフトされる(例えば、Tan et al.,J.Immunol.169:1119-25(2002)を参照されたい)。
更に、抗体は、抗原に対するその親和性及び他の有利に作用する生物学的特性を保持したままヒト化されることが概して望ましい。この目標を実現するため、1つの方法によれば、親配列及び様々な概念的ヒト化産物を、その親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して分析する方法により、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者は精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の考えられる三次元コンホメーション構造を図解及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。そうしたものには、例えば、WAM(Whitelegg and Rees,Protein Eng.13:819-24(2002))、Modeller(Sali and Blundell,J.Mol.Biol.234:779-815(1993))、及びSwiss PDB Viewer(Guex and Peitsch,Electrophoresis 18:2714-23(1997))が含まれる。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能におけるその残基の見込まれる役割についての分析、例えば、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。このようにして、レシピエント配列及びインポート配列から、1つ又は複数の標的抗原に対する親和性の増加など、所望の抗体特性が実現するようにFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、抗原結合に影響を与える点では、超可変領域残基が直接的且つ最も実質的に関与する。
別の抗体ヒト化方法は、ヒトストリング含有量(HSC)と呼ばれる抗体ヒト化度(humanness)の計量に基づく。この方法は、マウス配列をヒト生殖細胞系列遺伝子のレパートリーと比較し、差をHSCとしてスコア化する。次に大域的な同一性尺度を用いるのでなく、むしろそのHSCを最大にすることによって標的配列がヒト化され、複数の多様なヒト化変異体が作成される(Lazar et al.,Mol.Immunol.44:1986-98(2007))。
上記に記載される方法に加えて、ヒト化抗体の作成及び選択には、経験的方法が用いられ得る。そうした方法には、ヒト化変異体の大規模ライブラリの作成及びエンリッチメント技術又はハイスループットスクリーニング技法を用いた最良のクローンの選択に基づく方法が含まれる。抗体変異体は、ファージ、リボソーム及び酵母ディスプレイライブラリから且つ細菌コロニースクリーニングにより単離され得る(例えば、Hoogenboom,Nat.Biotechnol.23:1105-16(2005);Dufner et al.,Trends Biotechnol.24:523-29(2006);Feldhaus et al.,Nat.Biotechnol.21:163-70(2003);及びSchlapschy et al.,Protein Eng.Des.Sel.17:847-60(2004)を参照されたい)。
FRライブラリ手法では、FR内の特定の位置に一纏まりの残基変異体が導入され、続いてライブラリのスクリーニングにより、グラフトされたCDRを最良に支持するFRが選択される。置換する残基は、CDR構造に寄与している可能性があると同定される「バーニア」残基(例えば、Foote and Winter,J.Mol.Biol.224:487-99(1992)を参照されたい)、又はBaca et al.J.Biol.Chem.272:10678-84(1997)によって同定されるより限定的な一組の標的残基からの一部又は全てを含み得る。
FRシャッフリングでは、選択された残基変異体のコンビナトリアルライブラリを作成する代わりに、FR全体が非ヒトCDRと組み合わされる(例えば、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)を参照されたい)。ワンステップFRシャッフリング法が用いられ得る。かかる方法は、結果として得られた抗体が、発現の増強、親和性の増加、及び熱安定性を含め、生化学的及び物理化学的特性の向上を呈したことに伴い、効率的であることが示されている(例えば、Damschroder et al.,Mol.Immunol.44:3049-60(2007)を参照されたい)。
「ヒューマニアリング」方法は、必須の最小特異性決定基(MSD)の実験的同定に基づくと共に、ヒトFRライブラリへの非ヒト断片の逐次的置換及び結合の評価に基づく。この方法論によれば、典型的には、特徴的なヒトVセグメントCDRを有する複数のサブクラスからの抗体のエピトープ保持及び同定が得られる。
「ヒトエンジニアリング」方法には、ヒトにおける免疫原性が低下した、それにもかかわらず元の非ヒト抗体の望ましい結合特性を保持している修飾抗体が生じるように、抗体のアミノ酸配列に特異的な変更を加えることによって非ヒト抗体又は抗体断片を改変することが関わる。概して、この技法には、非ヒト抗体のアミノ酸残基を「低リスク」、「中間リスク」、又は「高リスク」残基に分類することが関わる。この分類は大域的リスク/報酬計算を用いて実施され、ここで、特定の置換を設けることの(例えば、ヒトにおける免疫原性に関する)予想される利益が、結果として生じる抗体の折り畳みに対してその置換が影響を及ぼすであろうリスクと比べて判定される。非ヒト抗体の可変領域からのアミノ酸配列を特異的又はコンセンサスヒト抗体配列の対応する領域とアラインメントすることにより、非ヒト抗体配列の所与の位置(例えば、低リスク又は中間リスク)にある置換されるべき特定のヒトアミノ酸残基を選択することができる。アラインメントに基づき、非ヒト配列中で低リスク又は中間リスク位置にあるアミノ酸残基を置換して、ヒト抗体配列中の対応する残基に代えることができる。ヒト改変タンパク質の作製技法については、Studnicka et al.,Protein Engineering 7:805-14(1994);米国特許第5,766,886号明細書;同第5,770,196号明細書;同第5,821,123号明細書;及び同第5,869,619号明細書;及び国際公開第93/11794号パンフレットに更に詳細に記載されている。
例えば、Composite Human Antibody(商標)技術(Antitope Ltd.、Cambridge,英国)を用いて複合ヒト抗体を作成することができる。複合ヒト抗体を作成するために、複数のヒト抗体可変領域配列の断片から、T細胞エピトープが回避され、従って結果として得られる抗体の免疫原性が最小限となるようにして可変領域配列が設計される。
脱免疫化抗体は、T細胞エピトープが取り除かれている抗体である。脱免疫化抗体の作製方法については、記載されている。例えば、Jones et al.,Methods Mol Biol.525:405-23(2009),xiv、及びDe Groot et al.,Cell.Immunol.244:148-153(2006))を参照されたい。脱免疫化抗体は、T細胞エピトープが枯渇した可変領域とヒト定常領域とを含む。簡潔に言えば、抗体の可変領域がクローニングされ、続いて抗体の可変領域に由来するオーバーラップペプチドをT細胞増殖アッセイで試験することにより、T細胞エピトープが同定される。T細胞エピトープは、ヒトMHCクラスIIに対するペプチド結合を同定するインシリコ方法によって同定される。可変領域に、ヒトMHCクラスIIへの結合を消失させる突然変異が導入される。次に突然変異させた可変領域を利用して、脱免疫化抗体が作成される。
5.2.4.抗体変異体
一部の実施形態では、本明細書に記載されるGPC3に結合する抗体の1つ又は複数のアミノ酸配列修飾が企図される。例えば、限定はされないが、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能、グリコシル化、免疫原性の低下、又は溶解度を含め、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を最適化することが望ましい場合もある。従って、本明細書に記載されるGPC3に結合する抗体に加えて、本明細書に記載されるGPC3に結合する抗体の変異体が調製され得ることが企図される。例えば、抗体変異体は、コードDNAに適切なヌクレオチド変化を導入することにより、及び/又は所望の抗体又はポリペプチドの合成により調製され得る。アミノ酸の変更によって抗体の翻訳後プロセスが変化し得ることを理解する当業者。
化学修飾
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、例えば抗体に何らかの種類の分子を共有結合的に取り付けることにより、化学的に修飾される。抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック化基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞性リガンド又は他のタンパク質との連結、又は1つ以上の免疫グロブリンドメイン(例えば、Fc又はFcの一部分)とのコンジュゲーションによって化学的に修飾されている抗体が含まれ得る。多くの化学修飾のいずれも、限定はされないが、特異的化学切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝合成等を含め、公知の技法によって行うことができる。加えて、抗体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体には、抗体がグリコシル化される程度が増加又は低下するような変化が加えられる。抗体に対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、好都合には、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、又は取り除かれるようにアミノ酸配列を変化させることにより達成され得る。
本明細書に提供される抗体をFc領域に融合すると、それに結合している炭水化物が変化し得る。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、概してN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合している分枝状のバイアンテナ型オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。このオリゴ糖は、様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸並びにバイアンテナ型オリゴ糖構造の「ステム」におけるGlcNAcに結合したフコースを含み得る。一部の実施形態において、ある種の向上した特性を備える変異体を作り出すため、本明細書に提供される結合分子中のオリゴ糖の修飾が行われ得る。
他の実施形態において、本明細書に提供される抗体をFc領域に融合すると、本明細書に提供される抗体変異体は、前記Fc領域に(直接又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有し得る。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載されるとおり、MALDI-TOF質量分析法によって測定したときの、Asn297に結合した全てのグリコ構造体(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造体)の合計と比べた、Asn297における糖鎖内にある平均フコース量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域中の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEU番号付け);しかしながら、Asn297は、抗体の僅かな配列変異に起因して、位置297の±約3アミノ酸上流又は下流、即ち294位~300位にも位置し得る。かかるフコシル化変異体は、ADCC機能の向上を示し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書及び同第2004/0093621号明細書を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関連する文献の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;国際公開第2000/61739号パンフレット;国際公開第2001/29246号パンフレット;米国特許出願公開第2003/0115614号明細書;米国特許出願公開第2002/0164328号明細書;米国特許出願公開第2004/0093621号明細書;米国特許出願公開第2004/0132140号明細書;米国特許出願公開第2004/0110704号明細書;米国特許出願公開第2004/0110282号明細書;米国特許出願公開第2004/0109865号明細書;国際公開第2003/085119号パンフレット;国際公開第2003/084570号パンフレット;国際公開第2005/035586号パンフレット;国際公開第2005/035778号パンフレット;国際公開第2005/053742号パンフレット;国際公開第2002/031140号パンフレット;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体の産生能を有する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;及び国際公開第2004/056312号パンフレット、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号パンフレットを参照されたい)が挙げられる。
本明細書に提供される抗体を含む結合分子には、二分岐のオリゴ糖類が更に提供され、例えば、ここではFc領域に結合しているバイアンテナ型オリゴ糖がGlcNAcによって二分岐している。かかる変異体は、フコシル化の減少及び/又はADCC機能の向上を示し得る。かかる変異体の例については、例えば、国際公開第2003/011878号パンフレット(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号明細書(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号明細書(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合しているオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有する変異体も提供される。かかる変異体は、CDC機能の向上を示し得る。かかる変異体については、例えば、国際公開第1997/30087号パンフレット;国際公開第1998/58964号パンフレット;及び国際公開第1999/22764号パンフレットに記載されている。
本抗体とFc領域とを含む分子では、Fc領域に1つ以上のアミノ酸修飾が導入され得、それによりFc領域変異体が生じ得る。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
一部の実施形態において、本願は、エフェクター機能の全てではなく、一部を備える変異体であって、そのため、結合分子のインビボ半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(補体及びADCCなど)は不要又は有害である適用に望ましい候補となる変異体を企図する。インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイを行うことにより、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行うと、結合分子がFcγR結合を欠いていて(従ってADCC活性を欠いている可能性が高い)、しかしFcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。目的の分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号明細書(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。代わりに、非放射活性アッセイ方法が用いられ得る(例えば、ACTI(商標)フローサイトメトリー用非放射活性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射活性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代わりに又は加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えばClynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルで評価され得る。抗体がC1qに結合することができず、従ってCDC活性を欠いていることを確認するため、C1q結合アッセイも行われ得る。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレット及び国際公開第2005/100402号パンフレットにあるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化の評価には、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定も、当技術分野において公知の方法を用いて実施することができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
エフェクター機能が減少した結合分子には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号明細書)。かかるFc突然変異体には、残基265及び297がアラニンに置換された、いわゆる「DANA」Fc突然変異体(米国特許第7,332,581号明細書)を含め、アミノ酸位置265、269、270、297及び327位の2つ以上に置換を有するFc突然変異体が含まれる。
FcRへの結合が向上した、又は低下したある種の変異体が記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号明細書;国際公開第2004/056312号パンフレット、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい)。
一部の実施形態において、変異体は、ADCCを向上させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位における置換(残基のEU番号付け)を有するFc領域を含む。一部の実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるとおり、Fc領域に、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(即ち向上又は低下のいずれか)を生じさせる変化が加えられる。
半減期が増加し、且つ母体IgGの胎児への移入(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合が向上した結合分子について、米国特許出願公開第2005/0014934A1号明細書(Hinton et al.)に記載されている。こうした分子は、Fc領域によるFcRnへの結合を向上させる置換をそこに1つ以上有するFc領域を含む。かかるFc変異体には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号明細書)を有するものが含まれる。Fc領域変異体の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;及び国際公開第94/29351号パンフレットも参照されたい。
一部の実施形態において、システイン改変抗体を作り出すことが望ましい場合もあり、ここでは抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている。一部の実施形態において、置換される残基は、抗体の接触可能な部位に存在する。それらの残基をシステインで置換することにより、従って抗体の接触可能な部位に反応性チオール基が位置し、それを用いて抗体を薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分にコンジュゲートすることにより、本明細書に更に記載されるとおりのイムノコンジュゲートを作り出し得る。
置換、欠失、又は挿入
変異は、元の抗体又はポリペプチドと比較したときアミノ酸配列に変更を生じさせる、抗体又はポリペプチドをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失、又は挿入であり得る。置換突然変異誘発の目的の部位には、CDR及びFRが含まれる。
アミノ酸置換は、ロイシンをセリンに置き換えるなど、1つのアミノ酸を類似した構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換える結果であり得、例えば保存的アミノ酸置換であり得る。本明細書に提供される分子をコードするヌクレオチド配列への突然変異の導入には、例えば、アミノ酸置換をもたらす部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介性突然変異誘発を含め、当業者に公知の標準的な技法を用いることができる。挿入又は欠失は、任意選択で、約1~5アミノ酸の範囲であり得る。特定の実施形態において、置換、欠失、又は挿入は、元の分子と比べて25アミノ酸未満の置換、20アミノ酸未満の置換、15アミノ酸未満の置換、10アミノ酸未満の置換、5アミノ酸未満の置換、4アミノ酸未満の置換、3アミノ酸未満の置換、又は2アミノ酸未満の置換を含む。具体的な実施形態において、置換は、1つ以上の予想される非必須アミノ酸残基に作られる保存的アミノ酸置換である。許容される変異は、配列中に系統的にアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を作り、親抗体が呈する活性に関して、得られた変異体を試験することにより決定され得る。
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から複数残基を含むポリペプチドにまで及ぶ範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。
本開示には、保存的アミノ酸置換によって生じる抗体が含まれる。保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基が、同様の電荷の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる。上記に記載したとおり、同様の電荷の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。代わりに、突然変異は、飽和突然変異誘発によるなどして、コード配列の全て又は一部に沿ってランダムに導入され得、得られた突然変異体を生物学的活性に関してスクリーニングすることにより、活性を保持している突然変異体を同定することができる。突然変異誘発後、コードされるタンパク質を発現させることができ、タンパク質の活性を決定することができる。特性が維持されるか又は大きく変化しないように、保存的な(例えば、同様の特性及び/又は側鎖を有するアミノ酸基の範囲内での)置換が行われ得る。例示的置換を以下の表2に示す。
アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性によってグループ化され得る(例えば、Lehninger,Biochemistry 73-75(2d ed.1975)を参照されたい):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);及び(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。代わりに、天然に存在する残基は、共通する側鎖特性に基づきグループに分けられ得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。例えば、抗体の適切なコンホメーションの維持に関与しない任意のシステイン残基も、分子の酸化安定性を向上させて、異常な架橋を防止するために、例えばアラニン又はセリンなどの別のアミノ酸で置換し得る。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴うことになる。
ある種の置換変異体には、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することが関わる。概して、更なる研究に選択される1つ又は複数の結果として生じる変異体は、親抗体と比べて特定の生物学的特性の修飾(例えば、向上)を有することになり(例えば、親和性の増加、免疫原性の減少)、及び/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持していることになる。例示的置換変異体は親和性成熟抗体であり、これは好都合には、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイベースの親和性成熟技法を用いて作成され得る。簡潔に言えば、1つ以上のCDR残基を突然変異させて、変異体抗体をファージ上に提示し、詳細な生物学的活性(例えば結合親和性)に関してスクリーニングする。
例えば、抗体親和性を向上させるため、CDRに変化(例えば、置換)が加えられ得る。かかる変化は、CDR「ホットスポット」、即ち体細胞成熟過程において高頻度で突然変異を起こすコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/又はSDR(a-CDR)に加えられ得、ここで、結果として生じる変異体抗体又はその断片は、結合親和性に関して試験される。二次ライブラリの構築及びそこからの再選択による親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、チェインシャッフリング、又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)のいずれかによって成熟に関して選択される可変遺伝子に、多様性が導入される。次に二次ライブラリが作成される。次にこのライブラリがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異体が同定される。多様性を導入する別の方法には、CDRを標的とする手法が関わり、ここで、幾つかのCDR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化される。抗原結合に関与するCDR残基が、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを用いて特異的に同定され得る。親和性成熟に関するより詳細な説明は、以下の節に提供する。
一部の実施形態において、置換、挿入、又は欠失は、抗体が抗原に結合する能力がかかる変化によって実質的に低下しない限り、1つ以上のCDRの範囲内に存在し得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例えば、本明細書に提供されるとおりの保存的置換)がCDRに加えられ得る。本明細書に提供される変異体抗体配列の一部の実施形態において、各CDRは変化を受けていないか、又は1つ、2つ若しくは3つを超えるアミノ酸置換を含有しないかのいずれかである。
突然変異誘発の標的となり得る抗体中の残基又は領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells,Science,244:1081-1085(1989)によって記載されるとおり、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、1つの残基又は一群の標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を同定し、中性又は負電荷アミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えることにより、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。当初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に更なる置換が導入され得る。代わりに又は加えて、抗体と抗原との間の接触点を同定するために抗原抗体複合体の結晶構造が決定される。かかる接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的化又は除外することができる。変異体をスクリーニングすることにより、それが所望の特性を含むかどうかを決定し得る。
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100残基以上を含むポリペプチドにまで及ぶ範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体としては、酵素(例えば、ADEPT用)又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN末端又はC末端との融合が挙げられる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介性(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発など、当技術分野において公知の方法を用いて生じさせることができる。クローニングしたDNAに対し、部位特異的突然変異誘発(例えば、Carter,Biochem J.237:1-7(1986);及びZoller et al.,Nucl.Acids Res.10:6487-500(1982)を参照されたい)、カセット突然変異誘発(例えば、Wells et al.,Gene 34:315-23(1985)を参照されたい)、又は他の公知の技法を実施して、抗体変異体DNAを作製することができる。
5.2.5.インビトロ親和性成熟
一部の実施形態において、親抗体と比較したとき親和性、安定性、又は発現レベルなどの特性の向上を示す抗体変異体は、インビトロ親和性成熟によって調製し得る。天然のプロトタイプと同様に、インビトロ親和性成熟は、突然変異と選択の原理に基づく。抗体のライブラリが生物(例えば、ファージ、細菌、酵母、又は哺乳類細胞)の表面上に、又はそのコードmRNA若しくはDNAと(例えば、共有結合的又は非共有結合的に)会合して提示される。提示された抗体のアフィニティー選択により、抗体をコードする遺伝情報を保有している生物又は複合体を単離することが可能になる。通常、ファージディスプレイなどのディスプレイ方法を用いた2又は3ラウンドの突然変異及び選択により、低いナノモル濃度範囲の親和性の抗体断片が得られる。親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル濃度又は更にピコモル濃度の親和性を有し得る。
ファージディスプレイは、抗体の提示及び選択に広く採用されている方法である。Fd又はM13バクテリオファージの表面上に抗体がバクテリオファージコートタンパク質との融合体として提示される。選択には、「パニング」と称されるプロセスである、抗原への曝露により、ファージに提示された抗体をその標的に結合させることが関わる。抗原に結合したファージを回収し、それを使用して細菌を感染させることにより、更なる選択ラウンドのためのファージが作製される。レビューについては、例えば、Hoogenboom,Methods.Mol.Biol.178:1-37(2002);及びBradbury and Marks,J.Immunol.Methods 290:29-49(2004)を参照されたい。
酵母ディスプレイシステムでは(例えば、Boder et al.,Nat.Biotech.15:553-57(1997);及びChao et al.,Nat.Protocols 1:755-68(2006)を参照されたい)、Aga1pとのジスルフィド結合によって酵母細胞壁に付着する酵母凝集素タンパク質Aga2pの接着サブユニットに抗体が融合される。タンパク質がAga2pを介して提示されると、タンパク質が細胞表面から離れて投げ出されるため、酵母細胞壁上の他の分子との相互作用が起こる可能性が最小限となる。磁気分離及びフローサイトメトリーを用いてライブラリをスクリーニングすることにより、親和性又は安定性が向上した抗体が選択される。目的の可溶性抗原への結合は、酵母をビオチン化抗原及びフルオロフォアにコンジュゲートしたストレプトアビジンなどの二次試薬で標識することによって決定される。抗体の表面発現の変化を、単鎖抗体(例えば、scFv)に隣接するヘマグルチニン又はc-Mycエピトープタグのいずれかの免疫蛍光標識によって測定することができる。発現は、提示されるタンパク質の安定性と相関することが示されており、従って安定性並びに親和性の向上に関して抗体を選択することができる(例えば、Shusta et al.,J.Mol.Biol.292:949-56(1999)を参照されたい)。酵母ディスプレイの更なる利点は、提示されるタンパク質が、小胞体シャペロン及び品質管理機構を利用して、真核生物酵母細胞の小胞体で折り畳まれることである。成熟が完了すると、好都合には、酵母の表面上に提示しておきながら抗体親和性を「滴定」することができ、各クローンを発現させ及び精製する必要がなくなる。酵母表面ディスプレイの理論上の限界は、他のディスプレイ方法と比べて潜在的に小さい機能ライブラリサイズであるが、しかしながら、最近の手法では、酵母細胞配偶システムを用いることにより、1014サイズと推定されるコンビナトリアルな多様性が作り出されている(例えば、米国特許出願公開第2003/0186374号明細書;及びBlaise et al.,Gene 342:211-18(2004)を参照されたい)。
リボソームディスプレイでは、無細胞システムにおける選択のために抗体-リボソーム-mRNA(ARM)複合体が作成される。抗体の特定のライブラリをコードするこのDNAライブラリが、終止コドンを欠くスペーサー配列と遺伝子融合される。このスペーサー配列は、翻訳されてもなおペプチジルtRNAと結び付いていて、リボソームトンネルを占有するため、従って目的のタンパク質がリボソームから突き出されて折り畳まれることが可能になる。結果として得られるmRNAとリボソームとタンパク質との複合体は、表面結合型のリガンドに結合することができるため、抗体及びそのコードmRNAをリガンドによる親和性捕捉で同時に単離することが可能である。次に、リボソームに結合したmRNAを逆転写してcDNAに戻し、次にそれを突然変異誘発にかけて、続く選択ラウンドで使用することができる(例えば、Fukuda et al.,Nucleic Acids Res.34:e127(2006)を参照されたい)。mRNAディスプレイでは、抗体とmRNAとの間に、ピューロマイシンをアダプター分子として使用して共有結合が構築される(Wilson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:3750-55(2001))。
これらの方法は完全にインビトロで実施されるため、他の選択技術と比べると、これらは2つの主な利点をもたらす。第一に、ライブラリの多様性が細菌細胞の形質転換効率によって制限されるのでなく、試験管内に存在するリボソーム及び種々のmRNA分子の数によってのみ制限される。第二に、任意の多様化ステップ後にライブラリを形質転換しなくてもよいため、各選択ラウンドが終わる毎にランダム突然変異を例えば非校正ポリメラーゼによって容易に誘導することができる。
一部の実施形態において、哺乳類ディスプレイシステムが用いられ得る。
多様性は、標的化した方法において又はランダムな導入によっても抗体ライブラリのCDRに導入され得る。前者の手法は、高レベル又は低レベルの突然変異誘発によって抗体の全てのCDRを順次標的化すること、又は体細胞超突然変異の独立したホットスポット(例えば、Ho et al.,J.Biol.Chem.280:607-17(2005)を参照されたい)又は実験に基づいて若しくは構造的理由から親和性に影響を及ぼす疑いがある残基を標的化することを含む。多様性は、DNAシャッフリング又は類似の技法において、天然で多様性のある領域を置き換えることによっても導入され得る(例えば、Lu et al.,J.Biol.Chem.278:43496-507(2003);米国特許第5,565,332号明細書及び同第6,989,250号明細書を参照されたい)。代替的な技法は、フレームワーク領域残基にまで広がる超可変ループを標的化し(例えば、Bond et al.,J.Mol.Biol.348:699-709(2005)を参照されたい)、CDRにおけるループ欠失及び挿入を用いるか、又はハイブリダイゼーションベースの多様化を使用する(例えば、米国特許出願公開第2004/0005709号明細書を参照されたい)。CDRに多様性を生じさせる追加的な方法については、例えば、米国特許第7,985,840号明細書に記載されている。抗体ライブラリ及び/又は抗体親和性成熟の作成に使用し得る更なる方法については、例えば、米国特許第8,685,897号明細書及び同第8,603,930号明細書、及び米国特許出願公開第号明細書2014/0170705号明細書、同第2014/0094392号明細書、同第2012/0028301号明細書、同第2011/0183855号明細書、及び同第2009/0075378号明細書(これらの各々は、参照により本明細書に援用される)に開示されている。
ライブラリのスクリーニングは、当技術分野において公知の様々な技法によって達成することができる。例えば、抗体は、固体支持体、カラム、ピン、又はセルロース/ポリ(フッ化ビニリデン)膜/他のフィルタに固定化するか、吸着プレートに付着させた宿主細胞上で発現させるか若しくは細胞選別に使用するか、又はビオチンにコンジュゲートすることにより、ストレプトアビジンをコートしたビーズで捕捉するか、又はディスプレイライブラリをパニングする任意の他の方法で使用することができる。
インビトロ親和性成熟方法のレビューについては、例えば、Hoogenboom,Nature Biotechnology 23:1105-16(2005);Quiroz and Sinclair,Revista Ingeneria Biomedia 4:39-51(2010);及びこれらの中にある参考文献を参照されたい。
5.2.6.抗体の修飾
本開示の範囲内には、抗体の共有結合修飾が含まれる。共有結合修飾は、抗体の標的とするアミノ酸残基を、抗体の選択された側鎖又はN末端若しくはC末端残基と反応する能力のある有機誘導体化剤と反応させることを含む。他の修飾としては、グルタミニル及びアスパラギニル残基から、それぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミド、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(例えば、Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties 79-86(1983)を参照されたい)、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
この本開示の範囲内に含まれる抗体の他の種類の共有結合修飾には、上記に記載したとおり抗体又はポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変化させること(例えば、Beck et al.,Curr.Pharm.Biotechnol.9:482-501(2008);及びWalsh,Drug Discov.Today 15:773-80(2010)を参照されたい)及び例えば米国特許第4,640,835号明細書;同第4,496,689号明細書;同第4,301,144号明細書;同第4,670,417号明細書;同第4,791,192号明細書;又は同第4,179,337号明細書に示される方法で、抗体を種々の非タンパク質性ポリマーの1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンに連結することが含まれる。本開示のGPC3に結合する抗体は、半減期を延長させ、且つ/又は公知のFc媒介性エフェクター機能を付与するため、1つ以上の免疫グロブリン定常領域又はその一部分(例えば、Fc)に遺伝子融合させるか又はコンジュゲートすることもできる。
本開示のGPC3に結合する単鎖抗体は、GPC3に結合する単鎖抗体が別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列、例えばエピトープタグ(例えば、Terpe,Appl.Microbiol.Biotechnol.60:523-33(2003)を参照されたい)又はIgG分子のFc領域(例えば、Aruffo,Antibody Fusion Proteins 221-42(Chamow and Ashkenazi eds.,1999)を参照されたい)に融合したものを含むキメラ分子を形成するようにも修飾され得る。GPC3に結合する単鎖抗体は、以下に更に詳細に記載するとおりのGPC3結合キメラ抗原受容体(CAR)の作成にも使用され得る。
本明細書では、本開示のGPC3に結合する単鎖抗体と異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質も提供される。一部の実施形態において、抗体を遺伝子融合させるか又は化学的にコンジュゲートする異種ポリペプチドは、細胞表面に発現したGPC3を有する細胞に抗体を標的化するのに有用である。
本明細書では、GPC3抗原に結合する抗体のパネルも提供される。具体的な実施形態において、この抗体パネルは、種々の会合速度、種々の解離速度、GPC3抗原に対する種々の親和性、及び/又はGPC3抗原に対する種々の特異性を有する。一部の実施形態において、このパネルは、約10~約1000個の抗体又はそれより多くを含むか、又はそれからなる。抗体パネルは、例えば96ウェル又は384ウェルプレートにおいて、ELISAなどのアッセイに使用することができる。
5.2.7.抗体の調製
抗体の調製方法については、記載されている。例えば、Els Pardon et al,Nature Protocol,9(3):674(2014)を参照されたい。抗体(scFv断片など)は、ラクダ科動物種(ラクダ又はラマなど)を免疫し、それからハイブリドーマを入手することによるか、又は当技術分野において公知の分子生物学技法を用いて抗体のライブラリをクローニングし、続いて選択されなかったライブラリの個々のクローンでのELISAによるか、若しくはファージディスプレイを用いることによる選択によるなど、当技術分野において公知の方法を用いて入手し得る。
本明細書に提供される抗体は、抗体をコードする核酸を含有するベクターで形質転換又はトランスフェクトした細胞を培養することによって作製され得る。本開示の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を用いて入手することができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞又はB細胞などの抗体産生細胞から単離され、シーケンシングされ得る。代わりに、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機又はPCR技法を用いて合成することができる。入手後、ポリペプチドをコードする配列が、宿主細胞での複製能及び異種ポリヌクレオチドの発現能を有する組換えベクターに挿入される。本開示の目的上、当技術分野において利用可能且つ公知の多くのベクターを使用することができる。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入される核酸のサイズ及びベクターで形質転換される詳細な宿主細胞に依存することになる。本開示の抗体の発現に好適な宿主細胞としては、グラム陰性又はグラム陽性生物を含めた、古細菌及び真正細菌などの原核生物、糸状菌又は酵母などの真核微生物、昆虫などの無脊椎動物細胞又は植物細胞並びに哺乳類宿主細胞株などの脊椎動物細胞が挙げられる。宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切となるように改良された従来の栄養培地で培養される。宿主細胞によって産生された抗体は、当技術分野において公知のとおりの標準的なタンパク質精製方法を用いて精製される。
ベクター構築、発現、及び精製を含む抗体作製方法については、Plueckthun et al.,Antibody Engineering:Producing antibodies in Escherichia coli:From PCR to fermentation 203-52(McCafferty et al.eds.,1996);Kwong and Rader,E.coli Expression and Purification of Fab Antibody Fragments,in Current Protocols in Protein Science(2009);Tachibana and Takekoshi,Production of Antibody Fab Fragments in Escherichia coli,in Antibody Expression and Production(Al-Rubeai ed.,2011);及びTherapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.,2009)に更に記載されている。
当然ながら、抗GPC3抗体の調製には、当技術分野において周知の代替的方法が用いられ得ることが企図される。例えば、適切なアミノ酸配列、又はその一部分が、固相技法を用いた直接的なペプチド合成によって作製され得る(例えば、Stewart et al.,Solid-Phase Peptide Synthesis(1969);及びMerrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149-54(1963)を参照されたい)。手動の技法を用いるか、又は自動化によるインビトロタンパク質合成が実施され得る。抗GPC3抗体の様々な部分を個別に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて組み合わせることにより、所望の抗GPC3抗体が作製され得る。代わりに、抗体は、例えば米国特許第5,545,807号明細書及び同第5,827,690号明細書に開示されるとおり、抗体を発現するように改変されたトランスジェニック動物の細胞又は乳などの体液から精製され得る。
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、概して関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物で産生される。免疫する種において免疫原性のあるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン又は大豆トリプシンインヒビターへと、二官能性薬剤又は誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl2、又はR1N-C-NR(式中、R及びR1は、独立に、低級アルキル基である)を使用して関連抗原をコンジュゲートすることが有用であり得る。利用し得るアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコルは、当業者が過度の実験を行うことなく選択し得る。
例えば、動物が、例えば100μg又は5μgのタンパク質又はコンジュゲート(それぞれウサギ又はマウスについて)を3容量のフロイント完全アジュバントと合わせ、その溶液を複数部位に皮内注射することにより、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫される。1ヵ月後、動物は、フロイント完全アジュバント中、元のペプチド又はコンジュゲートの5分の1~10分の1の量で、複数部位における皮下注射によってブーストされる。7~14日後、動物が採血され、抗体力価に関して血清がアッセイされる。動物は、力価がプラトーに達するまでブーストされる。コンジュゲートは、組換え細胞培養物中でタンパク質融合体としても作られ得る。ミョウバンなどの凝集剤も免疫応答の増強に好適である。
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から入手され、即ち、微量に存在し得る自然に発生する可能性のある突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて、その集団を占める個々の抗体は、同一である。従って、修飾語「モノクローナル」は、個別的な抗体の混合物ではないという抗体の性質を指し示している。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ方法を用いて作られ得るか、又は組換えDNA方法(米国特許第4,816,567号明細書)によって作られ得る。
ハイブリドーマ方法では、適切な宿主動物が免疫されることにより、免疫化に使用したタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生する、又はその産生能を有するリンパ球が引き出される。代わりに、リンパ球がインビトロで免疫され得る。次にポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を用いてリンパ球を骨髄腫細胞と融合すると、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986)。
免疫剤としては、典型的には抗原タンパク質又はその融合変異体が挙げられることになる。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59-103。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳類細胞である。このように調製されたハイブリドーマ細胞を播種し、好ましくは、融合しない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する1つ以上の物質を含有する好適な培養培地で成長させる。好ましい不死化骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、及びHAT培地などの培地に感受性のあるものである。
ハイブリドーマ細胞が成長中の培養培地は、抗原に対するモノクローナル抗体の産生に関してアッセイされる。ハイブリドーマ細胞が培養されている培養培地を、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の存在に関してアッセイすることができる。かかる技法及びアッセイは、当技術分野において公知である。例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード分析によって結合親和性が決定され得る。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、それらのクローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準方法(Goding、前掲)によって成長させ得る。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、哺乳類においてインビボで腫瘍として成長させ得る。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、好適には、培養培地、腹水、又は血清から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の免疫グロブリン精製手順によって分離される。
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるものなど及び上記に記載したとおりの組換えDNA方法によっても作られ得る。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子への特異的結合能を有するオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、シーケンシングされる。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源としての役割を果たす。単離されたところで、DNAは、発現ベクター中に置かれ得、次に、それは、本来、免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされ、それによってかかる組換え宿主細胞でモノクローナル抗体が合成される。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関するレビュー論文としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256-262(1993)及びPliickthun,Immunol.Revs.130:151-188(1992)が挙げられる。
更なる実施形態において、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載される技法を用いて作成した抗体ファージライブラリから抗体を単離することができる。続いて文献には、極めて大型のファージライブラリを構築する戦略として、チェインシャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10:779-783(1992))並びにコンビナトリアル感染及びインビボ組換えによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の産生が記載されている(Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265-2266(1993))。従って、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法に代わる実行可能な代替法である。
DNAは、例えば、コード配列を置換することによるか(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部をコード配列に共有結合的につなぎ合わせることによっても修飾され得る。かかる非免疫グロブリンポリペプチドを置換して、ある抗原に特異性を有する1つの抗原結合部位と、異なる抗原に特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出すことができる。
キメラ又はハイブリッド抗体は、インビトロで、架橋剤が関わるものを含めた、合成タンパク質化学における公知の方法を用いても調製され得る。例えば、ジスルフィド交換反応を用いるか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素が構築され得る。この目的に好適な試薬の例としては、イミノチオラン及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが挙げられる。
原核細胞における組換え産生
本開示の抗体をコードするポリ核酸配列は、標準的な組換え技術を用いて入手することができる。所望のポリ核酸配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離され、シーケンシングされ得る。代わりに、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機又はPCR技法を用いて合成することもできる。入手後、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主における複製能及び異種ポリヌクレオチドの発現能を有する組換えベクターに挿入される。本開示の目的上、当技術分野において利用可能且つ公知の多くのベクターを使用することができる。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入される核酸のサイズ及びベクターで形質転換される詳細な宿主細胞に依存することになる。各ベクターが、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅又は発現、又は両方)及びそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて様々な成分を含有する。ベクター成分としては、概して、限定はされないが、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート及び転写終結配列が挙げられる。
一般には、これらの宿主に関連して、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターが使用される。ベクターは通常、複製部位並びに形質転換細胞における表現型選択を提供する能力を有するマーキング配列を担持している。例えば、大腸菌(E.coli)は、典型的には、大腸菌(E.coli)種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例については、Carter et al.、米国特許第5,648,237号明細書に詳細に記載されている。
加えて、これらの宿主に関連して、形質転換ベクターとしては、宿主微生物と適合性のあるレプリコン及び制御配列を含有するファージベクターが使用され得る。例えば、大腸菌(E.coli)LE392などの感受性のある宿主細胞の形質転換に使用することのできる組換えベクターの作製では、GEM(商標)-11などのバクテリオファージを利用し得る。
本願の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5’側)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には誘導性と構成的との2つのクラスに分かれる。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の有無又は温度の変化に応答して、その制御下にあるシストロンの転写レベルの増加を惹起するプロモーターである。
種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが、周知である。選択されたプロモーターは、供給源DNAから制限酵素消化によってプロモーターを取り出し、単離されたプロモーター配列を本願のベクターに挿入することにより、本抗体をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。標的遺伝子の増幅及び/又は発現を仕向けるために、天然プロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方が使用され得る。概して、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較すると、異種プロモーターでは、発現させる標的遺伝子のより大規模な転写及びより高い収率が可能となるため、一部の実施形態では異種プロモーターが利用される。
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム及びtac又はtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌で機能する他のプロモーター(他の公知の細菌又はファージプロモーターなど)も同様に好適である。それらの核酸配列は公開されており、従って当業者は、リンカー又はアダプターを使用することにより任意の必要な制限部位を供給して、標的ペプチドをコードするシストロンにそれらを作動可能にライゲートすることが可能である(Siebenlist et al.Cell 20:269(1980))。
一態様において、組換えベクター内にある各シストロンは、発現したポリペプチドが膜を越えて移行するように仕向ける分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの一成分であり得るか、又はそれは、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明の目的上選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識され、プロセシングされるもの(即ちシグナルペプチダーゼによって切断されるもの)でなければならない。異種ポリペプチドにとって天然のシグナル配列を認識せず、プロセシングしない原核生物宿主細胞について、そのシグナル配列を、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp又は耐熱性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換することができる。
一部の実施形態において、本開示に係る抗体の産生は宿主細胞の細胞質で起こり得るため、従って各シストロン内に分泌シグナル配列が存在する必要はない。ある種の宿主株(例えば、大腸菌(E.coli)trxB-株)は、ジスルフィド結合形成に有利に作用する細胞質条件を提供し、そのため、発現したタンパク質サブユニットの適切な折り畳み及びアセンブルが可能となる。
本開示の抗体の発現に好適な原核生物宿主細胞としては、グラム陰性又はグラム陽性生物など、古細菌及び真正細菌が挙げられる。有用な細菌の例としては、大腸菌属(Escherichia)(例えば、大腸菌(E.coli))、バチルス綱(Bacilli)(例えば、枯草菌(B.subtilis))、腸内細菌、シュードモナス属(Pseudomonas)種(例えば、緑膿菌(P.aeruginosa))、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、霊菌(Serratia marcescens)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、赤痢菌属(Shigella)、根粒菌、ビトレオシラ属(Vitreoscilla)、又はパラコッカス属(Paracoccus)が挙げられる。一部の実施形態において、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態において、宿主として大腸菌(E.coli)細胞が使用される。大腸菌(E.coli)株の例としては、株W3110(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),pp.1190-1219;ATCC寄託番号27,325)、及び遺伝子型W3110 AfhuA(AtonA)ptr3 lac Iq lacL8 AompT A(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する株33D3(米国特許第5,639,635号明細書)を含めたその誘導体が挙げられる。大腸菌(E.coli)294(ATCC 31,446)、大腸菌(E.coli)B、大腸菌(E.coli)1776(ATCC 31,537)及び大腸菌(E.coli)RV308(ATCC31,608)などの他の株及びその誘導体も好適である。これらの例は、限定でなく、むしろ例示である。定義付けられた遺伝子型を有する上述の細菌のいずれかの誘導体を構築する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309-314(1990)に記載されている。概して、適切な細菌は、細菌の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮に入れて選択する必要がある。例えば、レプリコンを供給するのにpBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410などの周知のプラスミドが使用されるときは、宿主として大腸菌(E.coli)、セラチア属(Serratia)、又はサルモネラ属(Salmonella)種を好適に使用することができる。
典型的には、宿主細胞は、最小限の量のタンパク質分解酵素を分泌するはずであり、望ましくは細胞培養物中に追加のプロテアーゼ阻害薬が配合され得る。
宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切となるように改良された従来の栄養培地で培養される。形質転換とは、DNAが染色体外因子としてか、又は染色体組込み体によるかのいずれかで複製可能となるようにDNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、かかる細胞に適切な標準的技法を用いて行われる。概して、細胞壁バリアを相当量含有する細菌細胞には、塩化カルシウムを利用したカルシウム処理が用いられる。別の形質転換方法では、ポリエチレングリコール/DMSOが利用される。用いられる更に別の技法は、エレクトロポレーションである。
本願の抗体の産生に使用される原核細胞は、当技術分野において公知の、選択された宿主細胞の培養に好適な培地で成長させる。好適な培地の例としては、ルリアブロス(LB)+必要な栄養素の補足物質が挙げられる。一部の実施形態において、培地は、選択薬剤も含有し、これは、発現ベクターの構成に基づき、発現ベクターを含有する原核細胞の成長を選択的に可能にするように選択される。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を成長させるため、培地にアンピシリンが添加される。
炭素、窒素、及び無機リン酸塩供給源以外の任意の必要な補足物質も単独で導入されるか、又は複合窒素供給源などの別の補足物質若しくは培地との混合物として導入される適切な濃度で含まれ得る。任意選択で、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコール酸、ジチオエリスリトール及びジチオスレイトールからなる群から選択される1つ以上の還元剤を含有し得る。原核生物宿主細胞は、好適な温度及びpHで培養される。
本願の発現ベクターにおいて誘導性プロモーターが使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本願の一態様では、ポリペプチドの転写制御にPhoAプロモーターが使用される。これに応じて、形質転換宿主細胞は、誘導のためリン酸塩制限培地で培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods 263:133-147(2002)を参照されたい)。当技術分野において公知のとおり、利用されるベクターコンストラクトによっては、種々の他の誘導物質が使用され得る。
発現した本開示の抗体は、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、典型的には、概して、浸透圧ショック、音波処理又は溶解といった手段による微生物の破壊を伴う。細胞の破壊後、遠心又はろ過によって細胞デブリ又は全細胞が取り除かれ得る。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製され得る。代わりに、タンパク質を培養培地中に運び込んで、そこで単離することもできる。産生されたタンパク質の更なる精製のため、培養液から細胞が取り出され、培養上清がろ過され、濃縮され得る。発現したポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイなどのよく知られている方法を用いて更に単離し、同定することができる。
代わりに、タンパク質産生は、発酵プロセスによって大量に行われる。組換えタンパク質の産生には、様々な大規模流加発酵手順が利用可能である。本開示の抗体の産生収率及び品質を向上させるため、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞で産生される異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解性を促進することが実証されている。Chen et al.J Bio Chem 274:19601-19605(1999);米国特許第6,083,715号明細書;米国特許第6,027,888号明細書;Bothmann and Pluckthun,J.Biol.Chem.275:17100-17105(2000);Ramm and Pluckthun,J.Biol.Chem.275:17106-17113(2000);Arie et al.,Mol.Microbiol.39:199-210(2001)。
発現した異種タンパク質(特にタンパク質分解に感受性を示すもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるため、本発明には、例えば、米国特許第5,264,365号明細書;米国特許第5,508,192号明細書;Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63-72(1996)に記載されるとおり、タンパク質分解酵素が欠損している特定の宿主株を使用することができる。タンパク質分解酵素が欠損した、且つ1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換された大腸菌(E.coli)株が、本願の抗体をコードする発現システムにおける宿主細胞として使用され得る。
更なるアッセイ及び使用のため、本明細書で産生される抗体を更に精製して、実質的に均一な調製物を入手することができる。当技術分野において公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の手順は、好適な精製手順の例示である:イムノアフィニティー又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでの、又はDEAEなどの陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫安塩析、及び例えばSephadex G-75を使用したゲルろ過。本開示の結合分子のイムノアフィニティー精製について、一部の実施形態では、例えば、固相に固定化したプロテインAを使用することができる。プロテインAが固定化される固相は、好ましくは、ガラス又はシリカ表面を含むカラム、より好ましくはコントロールド・ポア・グラスカラム又はケイ酸カラムである。一部の実施形態において、カラムは、汚染物質の非特異的接着を防止するため、グリセロールなどの試薬でコートされている。次に固相が洗浄され、固相に非特異的に結合した汚染物質が取り除かれる。最後に、固相から溶出によって目的の抗体が回収される。
真核細胞における組換え産生
真核生物発現には、ベクター成分として、概して、限定はされないが、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子及びエンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列の1つ以上が含まれる。
真核生物宿主において用いられるベクターは、成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドをコードするインサートも含み得る。好ましくは、選択される異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、プロセシングされるもの(即ちシグナルペプチダーゼによって切断されるもの)である。哺乳類細胞発現では、哺乳類シグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。かかる前駆領域のDNAは、本願の抗体をコードするDNAにインリーディングフレームでライゲートすることができる。
概して、哺乳類発現ベクターには複製起点成分は必要ない(典型的にはSV40起点が使用され得るが、これは、それが初期プロモーターを含有するという理由に過ぎない)。
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含有し得る。選択遺伝子は、抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、又はテトラサイクリンに対する耐性を付与し;栄養要求性欠乏を補完し;又は複合培地からは利用可能でない決定的栄養素を供給するタンパク質をコードし得る。
選択スキームの一例では、宿主細胞の成長を止める薬物が利用される。異種遺伝子による形質転換が成功した細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生し、従って選択レジメンを生き残る。かかるドミナント選択の例は、薬物のネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳類細胞に好適な選択可能マーカーの別の例は、本願の抗体をコードする核酸を取り込む能力がある細胞の同定を可能にするものである。例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、初めに、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地で全ての形質転換体を培養することによって同定される。野生型DHFRが用いられるときの例示的な適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。代わりに、ポリペプチドをコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)などの別の選択可能マーカーで形質転換又は共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質などの選択可能マーカーに対する選択薬剤を含有する培地での細胞成長によって選択することができる。
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識される、且つ所望のポリペプチド配列をコードする核酸に作動可能に連結されているプロモーターを含有する。真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始点から70~80塩基上流に見られる別の配列が含まれ得る。ほとんどの真核生物の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加シグナルであり得る。これらの配列全てが真核細胞発現ベクターに挿入され得る。
哺乳類宿主細胞におけるベクターからのポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2型など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから入手されるプロモーターによって制御することができ、但し、かかるプロモーターは宿主細胞システムと適合性を有するものとする。
高等真核生物による本開示の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増加する。現在、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)からの多くのエンハンサー配列が公知である。例としては、複製起点の後期側にあるSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化の増強エレメントに関しては、Yaniv,Nature 297:17-18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、ポリペプチドコード配列の5’側又は3’側の位置でベクターにスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’側の部位に位置する。
真核生物宿主細胞(酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、ヒト細胞、又は他の多細胞生物からの有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有する。かかる配列は、一般には、真核生物又はウイルスDNA又はcDNAの5’非翻訳領域、場合によっては3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。一つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。
本明細書のベクターにおけるDNAのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、脊椎動物宿主細胞を含め、本明細書に記載される高等真核生物細胞が挙げられる。培養下(組織培養下)での脊椎動物細胞の増殖は、ルーチンの手順となっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(浮遊培養下で成長させるためにサブクローニングされた293又は293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞癌株(Hep G2)である。
宿主細胞は、抗体産生のため上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切となるように改良された従来の栄養培地で培養され得る。
本願の抗体の産生に使用される宿主細胞は、種々の培地で培養し得る。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地が、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,762号明細書;同第4,560,655号明細書;又は同第5,122,469号明細書;国際公開第90/03430号パンフレット;国際公開第87/00195号パンフレット;又は米国特許第Re.30,985号明細書に記載される培地のいずれかを、宿主細胞のための培養培地として使用し得る。これらの培地のいずれにも、必要に応じてホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量元素(通常、マイクロモル濃度範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は均等なエネルギー供給源が補足され得る。任意の他の必要な補足物質も、当業者に公知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞でこれまで用いられているものであり、当業者に明らかであろう。
組換え技術を用いると、抗体を細胞内で産生することができるか、細胞膜周辺腔で産生することができるか、又は培地中に直接分泌させることができる。抗体が細胞内で産生される場合、最初のステップとして、宿主細胞又は溶解断片のいずれかである粒子状残屑が例えば遠心又は限外ろ過によって取り除かれる。抗体が培地中に分泌される場合、概して初めにかかる発現システムからの上清は、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、前述のステップのいずれかにPMSFなどのプロテアーゼ阻害薬が含まれ得、偶発的汚染物質の成長を防止するために抗生物質が含まれ得る。
細胞から調製されたタンパク質組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、ここで、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技法である。アフィニティーリガンドを付着させるマトリックスは、ほとんどの場合にアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。コントロールド・ポア・グラス又はポリ(スチレン-ジビニル)ベンゼンなど、機械的に安定したマトリックスでは、アガロースで実現し得るよりも速い流量及び短い処理時間が可能となる。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫安塩析など、他のタンパク質精製技法も、回収しようとする抗体に応じて利用可能である。1つ又は複数の任意の予備的精製ステップに続いて、目的の抗体と汚染物質とを含む混合物が、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され得る。
5.2.8.抗体を含む他の結合分子
別の態様において、本明細書では、本明細書に提供される抗GPC3抗体を含む結合分子が提供される。以下の第5.3節に記載されるとおりの本明細書に提供されるキメラ抗原受容体(CAR)に加えて、一部の実施形態では、本明細書に提供されるGPC3に対する抗体は、他の結合分子の一部である。本開示の例示的結合分子をここに記載する。
融合タンパク質
様々な実施形態において、本明細書に提供される抗体は、別の薬剤、例えば、タンパク質ベースの実体と遺伝子融合させるか、又は化学的にコンジュゲートすることができる。抗体は、薬剤に化学的にコンジュゲートされるか、又は他の方法で薬剤に非共有結合的にコンジュゲートされ得る。薬剤は、ペプチド又は抗体(又はその断片)であり得る。
従って、一部の実施形態において、本明細書では、融合タンパク質を作成するため異種タンパク質又はポリペプチドと(又はその断片、例えば、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500アミノ酸の又は500アミノ酸を超えるポリペプチドと)組換え融合されるか又は化学的にコンジュゲート(共有結合性又は非共有結合性のコンジュゲーション)される抗体並びにその使用が提供される。詳細には、本明細書では、本明細書に提供される抗体の抗原結合断片(例えば、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3)と、異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドとを含む融合タンパク質が提供される。
更に、本明細書に提供される抗体は、精製を容易にするため、ペプチドなどのマーカー又は「タグ」配列と融合することができる。具体的な実施形態において、マーカー又はタグアミノ酸配列は、ヘキサヒスチジンペプチド、ヘマグルチニン(「HA」)タグ、及び「FLAG」タグである。
部分(ポリペプチドを含む)を抗体と融合させるか又はコンジュゲートする方法は、公知である(例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 243-56(Reisfeld et al.eds.,1985);Hellstrom et al.,“Antibodies for Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery 623-53(Robinson et al.eds.,2d ed.1987);Thorpe,“Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies:Biological and Clinical Applications 475-506(Pinchera et al.eds.,1985);“Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy 303-16(Baldwin et al.eds.,1985);Thorpe et al.,Immunol.Rev.62:119-58(1982);米国特許第5,336,603号明細書;同第5,622,929号明細書;同第5,359,046号明細書;同第5,349,053号明細書;同第5,447,851号明細書;同第5,723,125号明細書;同第5,783,181号明細書;同第5,908,626号明細書;同第5,844,095号明細書;及び同第5,112,946号明細書;欧州特許第307,434号明細書;欧州特許第367,166号明細書;欧州特許第394,827号明細書;国際公開第91/06570号パンフレット、国際公開第96/04388号パンフレット、国際公開第96/22024号パンフレット、国際公開第97/34631号パンフレット、及び国際公開第99/04813号パンフレット;Ashkenazi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:10535-39(1991);Traunecker et al.,Nature,331:84-86(1988);Zheng et al.,J.Immunol.154:5590-600(1995);及びVil et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337-41(1992)を参照されたい)。
融合タンパク質は、例えば、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリング、及び/又はコドンシャッフリング(まとめて「DNAシャッフリング」と称される)の技法によって作成され得る。DNAシャッフリングは、例えば、より高い親和性及びより低い解離速度の抗体を含め、本明細書に提供されるとおりの抗体の活性を変化させるために用いられ得る(例えば、米国特許第5,605,793号明細書;同第5,811,238号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,834,252号明細書;及び同第5,837,458号明細書;Patten et al.,Curr.Opinion Biotechnol.8:724-33(1997);Harayama,Trends Biotechnol.16(2):76-82(1998);Hansson et al.,J.Mol.Biol.287:265-76(1999);及びLorenzo and Blasco,Biotechniques 24(2):308-13(1998)を参照されたい)。抗体、又はコードされる抗体は、組換え前にエラープローンPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、又は他の方法に供することによって変化させ得る。本明細書に提供される抗体をコードするポリヌクレオチドが、1つ以上の異種分子の1つ以上の成分、モチーフ、セクション、パーツ、ドメイン、断片等と組み換えられ得る。
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗体が二次抗体にコンジュゲートされて、抗体ヘテロコンジュゲートが形成される。
様々な実施形態において、抗体は薬剤と遺伝子融合される。遺伝子融合は、抗体と薬剤との間にリンカー(例えば、ポリペプチド)を置くことによって達成され得る。リンカーは、可動性リンカーであり得る。
様々な実施形態において、抗体は、治療用分子に遺伝子的にコンジュゲートされ、ここで、ヒンジ領域が抗体を治療用分子に連結する。
本明細書では、本明細書に提供される様々な融合タンパク質の作製方法も提供される。本明細書に提供される融合タンパク質の作製には、上記の第5.2.7節に記載される様々な方法も利用し得る。
具体的な実施形態では、本明細書に提供される融合タンパク質は、組換え発現させる。本明細書に提供される融合タンパク質の組換え発現には、タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを構築する必要があり得る。本明細書に提供されるタンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドが入手されたところで、当技術分野において周知の技法を用いて分子の産生用ベクターを組換えDNA技術によって作製し得る。このように、本明細書では、コードヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによるタンパク質の調製方法が記載される。当業者に周知の方法を用いて、コード配列と適切な転写及び翻訳制御シグナルとを含有する発現ベクターを構築することができる。そうした方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技法、合成技法、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に提供される融合タンパク質若しくはその断片又はCDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターも提供される。
発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞に移入させることができ、次にそのトランスフェクト細胞が従来技術によって培養され、本明細書に提供される融合タンパク質が産生される。このように、本明細書では、異種プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に提供される融合タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞も提供される。
本明細書に提供される融合タンパク質の発現には、種々の宿主-発現ベクターシステムが利用され得る。かかる宿主-発現システムは、それによって目的のコード配列が産生され、続いて精製され得る媒体に相当するが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトされると、本明細書に提供される融合タンパク質をインサイチューで発現し得る細胞にも相当する。それらとしては、限定はされないが、コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E.coli)及び枯草菌(B.subtilis))などの微生物;コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces) ピキア属(Pichia));コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞システム;コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させるか、又は組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞システム;又は哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現コンストラクトを保有する哺乳類細胞システム(例えば、COS、CHO、BHK、293、NS0及び3T3細胞)が挙げられる。組換え融合タンパク質の発現には、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞又は真核細胞を、特に組換え抗体分子全体を発現させるために使用することができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞が、ヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せるとき、抗体又はその変異体の有効な発現システムである。具体的な実施形態において、本明細書に提供される融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターによって調節される。
細菌システムでは、有利には、融合タンパク質を発現させることを意図した使用に応じて、幾つもの発現ベクターが選択され得る。例えば、融合タンパク質の医薬組成物を作成するため、かかる融合タンパク質を大量に産生させようとするときには、精製が容易な融合タンパク質産物の高度な発現を導くベクターが望ましいものであり得る。かかるベクターとしては、限定はされないが、大腸菌(E.coli)発現ベクターpUR278(Ruther et al.,EMBO 12:1791(1983))(融合タンパク質が産生されるように、コード配列が個々にベクターにlacZコード領域とインフレームでライゲートされ得る);pINベクター(Inouye&Inouye,Nucleic Acids Res.13:3101-3109(1985);Van Heeke&Schuster,J.Biol.Chem.24:5503-5509(1989))などが挙げられる。pGEXベクターも、外来性ポリペプチドをグルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために使用し得る。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、溶解細胞から、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着及び結合と、続く遊離グルタチオンの存在下での溶出によって容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され、そのため、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出させることができる。
哺乳類宿主細胞では、幾つものウイルスベースの発現システムを利用し得る。発現ベクターとしてアデノウイルスが使用される場合、目的のコード配列がアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び三部構成のリーダー配列にライゲートされ得る。次に、このキメラ遺伝子がインビトロ又はインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)に挿入すると、感染した宿主において生存可能であり、且つ融合タンパク質の発現能を有する組換えウイルスが生じることになる(例えば、Logan&Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 1:355-359(1984)を参照されたい)。挿入されたコード配列の効率的な翻訳には、特異的な開始シグナルも必要であり得る。そうしたシグナルとしては、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。更に、挿入断片全体の翻訳を確実にするため、開始コドンは所望のコード配列のリーディングフレームとインフェーズでなければならない。これらの外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方の、種々の起源であり得る。発現効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含めることによって増強し得る(例えば、Bittner et al.,Methods in Enzymol.153:51-544(1987)を参照されたい)。
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、又は遺伝子産物を所望の特異的な方式で修飾し及びプロセシングする宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のかかる修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。それぞれの宿主細胞が、タンパク質及び遺伝子産物を翻訳後プロセシングし及び修飾する特徴的及び特異的な機構を有する。発現させる外来性タンパク質の正しい修飾及びプロセシングが確実となるように、適切な細胞株又は宿主システムを選択することができる。そのために、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、及びリン酸化のための細胞機構を備える真核生物宿主細胞が使用され得る。かかる哺乳類宿主細胞としては、限定はされないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(いかなる免疫グロブリン鎖も内因的に産生することのないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が挙げられる。
組換えタンパク質の長期にわたる高収率の産生には、安定発現を利用し得る。例えば、融合タンパク質を安定に発現する細胞株が改変され得る。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりむしろ、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)によって制御されるDNA、及び選択可能マーカーによって宿主細胞を形質転換し得る。外来性DNAの導入後、改変細胞を強化培地で1~2日間成長させ得、次に選択培地に切り換える。組換えプラスミド中の選択可能マーカーが選択に対する耐性を付与するため、細胞は、その染色体にプラスミドを安定に組み込むことが可能となり、成長してフォーカスを形成し、次にこれをクローニングし、拡大して、細胞株にすることができる。有利には、この方法を用いて、融合タンパク質を発現する細胞株を改変し得る。かかる改変細胞株は、結合分子と直接又は間接的に相互作用する組成物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
限定はされないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska&Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell 22:8-17(1980))遺伝子をそれぞれtk-、hgprt-又はaprt-細胞において利用できることを含め、幾つもの選択システムを使用し得る。また、代謝拮抗薬耐性を以下の遺伝子の選択基準として用いることができる:dhfr、メトトレキサートに対する耐性を付与する(Wigler et al.,Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980);O’Hare et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));gpt、ミコフェノール酸に対する耐性を付与する(Mulligan&Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));neo、アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与する(Wu and Wu,Biotherapy 3:87-95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596(1993);Mulligan,Science 260:926-932(1993);及びMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.62:191-217(1993);May,TIB TECH 11(5):l55-2 15(1993));及びhygro、ハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre et al.,Gene 30:147(1984))。組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法をルーチンで適用することにより所望の組換えクローンが選択され得、かかる方法については、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);及びChapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds.),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley&Sons,NY(1994);Colberre-Garapin et al.,J.Mol.Biol.150:1(1981)(これらは全体として参照によって本明細書に援用される)に記載されている。
融合タンパク質の発現レベルは、ベクター増幅によって増加させることができる(レビューについては、Bebbington and Hentschel,“The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning”,Vol.3(Academic Press,New York,1987)を参照されたい)。融合タンパク質を発現するベクターシステム中のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害薬レベルが増加すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加することになる。増幅領域は融合タンパク質遺伝子と結び付いているため、融合タンパク質の産生も増加することになる(Crouse et al.,Mol.Cell.Biol.3:257(1983))。
宿主細胞には、本明細書に提供される発現ベクターが複数コトランスフェクトされ得る。ベクターは、同一の選択可能マーカーを含有し得、そのため、それぞれのコードするポリペプチドを等しく発現させることが可能となる。代わり、複数のポリペプチドをコードし、且つそれらを発現する能力のある単一のベクターが使用され得る。コード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含み得る。
本明細書に提供される融合タンパク質は、それが組換え発現によって産生された後に、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン分子)の精製についての当技術分野において公知の任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインA後の特異的抗原に対する親和性によるもの、サイズ排除カラムクロマトグラフィー、及びカッパ選択アフィニティークロマトグラフィー)、遠心、溶解度の差によるか、又はタンパク質を精製する任意の他の標準的な技法によって精製され得る。更に、本明細書に提供される融合タンパク質分子は、精製を容易にするため、本明細書に記載されるか又は他に当技術分野において公知の異種ポリペプチド配列に融合することができる。
イムノコンジュゲート
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される抗GPC3抗体のいずれかが、化学療法剤又は薬物、増殖抑制剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素又はその断片)又は放射性同位体など、1つ以上の細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされたものを含むイムノコンジュゲートも提供する。
一部の実施形態において、イムノコンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、ここで、抗体が、限定はされないが、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号明細書、同第5,416,064号明細書及び欧州特許第0 425 235 B1号明細書を参照されたい);モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのアウリスタチン(米国特許第5,635,483号明細書及び同第5,780,588号明細書、及び同第7,498,298号明細書を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、及び同第5,877,296号明細書;Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993);及びLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシン又はドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006);Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362(2006);Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005);Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000);Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002);King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002);及び米国特許第6,630,579号明細書を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;及びCC1065を含めた1つ以上の薬物にコンジュゲートされている。
一部の実施形態において、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載されるとおりの抗体が、限定はされないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、アリューリテス・フォルディイ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ阻害薬、クルシン、クロチン、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害薬、ゲロニン、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセン類を含めた酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートしたものを含む。
一部の実施形態において、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載されるとおりの抗体が放射性原子にコンジュゲートしてラジオコンジュゲートを形成しているものを含む。ラジオコンジュゲートの作製には、種々の放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が挙げられる。ラジオコンジュゲートが検出に使用されるとき、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばtc99m又はI123、又はこの場合もヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素19、炭素13、窒素15、酸素17、ガドリニウム、マンガン又は鉄など、核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、mriとしても知られる)のためのスピン標識を含み得る。
抗体と細胞傷害性薬剤とのコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル類(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド類(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビスジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート類(2,6-ジイソシアン酸トルエンなど)及びビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)など、種々の二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作られ得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるとおり調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、ラジオヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための例示的キレート剤である。国際公開第94/11026号パンフレットを参照されたい。
リンカーは、細胞内でのコンジュゲートされた薬剤の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得るが、本明細書では非切断可能リンカーも企図される。本開示のコンジュゲートに用いられるリンカーとしては、限定なしに、酸解離性リンカー(例えば、ヒドラゾンリンカー)、ジスルフィド含有リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー(例えば、アミノ酸、例えばバリン及び/又はシトルリンを含むペプチドリンカー、例えば、シトルリン-バリン又はフェニルアラニン-リジンなど)、光解離性リンカー、ジメチルリンカー、チオエーテルリンカー、又は多剤輸送体媒介性耐性を回避するように設計された親水性リンカーが挙げられる。
本明細書におけるイムノコンジュゲート又はADCは、限定はされないが、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)(これらは、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Rockford,IL.,米国から)市販されている)を含むがこれらに限定されない架橋剤試薬で調製されるようなコンジュゲートを企図する。
他の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、例えば診断用分子にコンジュゲートされるか、又は組換え融合される。かかる診断及び検出は、例えば、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼなどの様々な酵素;限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチン又はアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;限定はされないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンなどの蛍光物質;限定はされないが、ルミノールなどの発光物質;限定はされないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン又はエクオリンなどの生物発光物質;225Acγ放出、オージェ放出、β放出、α放出又は陽電子放出放射性同位体などの化学発光物質などを含むがこれらに限定されない検出可能物質に抗体をカップリングすることによって達成し得る。
5.3.キメラ抗原受容体
別の態様において、本明細書では、GPC3に結合する本明細書に提供される抗体(例えば、scFv)を含む細胞外抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。本scFv断片を含む例示的CARについては、以下の第6節に例示する。
一部の実施形態において、本明細書に提供されるキメラ抗原受容体(CAR)は、(a)本明細書に提供されるとおりのGPC3に特異的に結合する1つ以上の抗体を含む細胞外抗原結合ドメイン、及び任意選択で1つ以上の追加的な結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含む。各成分及び追加的な領域について、以下に更に詳細に記載する。
5.3.1.細胞外抗原結合ドメイン
本明細書に記載されるCARの細胞外抗原結合ドメインは、1つ以上(1、2、3、4、5、6つ又はそれ以上のいずれか1つなど)の抗体を含む。これらの抗体は、互いにペプチド結合によって直接、又はペプチドリンカーを介して融合され得る。
抗体
本開示のCARは、本明細書に提供される抗体を1つ以上含む細胞外抗原結合ドメインを含む。これらの抗体は、起源が同じであるか又は異なり得、サイズが同じであるか又は異なり得る。例示的抗体としては、限定はされないが、上記の第5.2節に記載されるscFv断片が挙げられる。
一部の実施形態において、本明細書では、(a)抗GPC3抗体(例えば、scFv)を含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むCARが提供され、ここで、抗GPC3抗体は、例えば、表3及び表4のCDRを1つ以上含むものを含め、上記の第5.2節に記載されるとおりの抗GPC3抗体である。
より具体的には、一部の実施形態において、本明細書では、(a)抗GPC3抗体(例えば、scFv断片)を含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むCARが提供され、ここで、抗GPC3抗体(例えば、scFv)は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号51のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号42のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号43のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号53のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号44のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号45のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号55のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(vii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号27のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号47のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号57のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(viii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号48のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号58のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(ix)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号29のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号39のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号59のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(x)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号40のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号50のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号60のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。一部の実施形態において、抗体(例えば、scFv)は、配列番号61~70及び117~122の群から選択されるVHドメインと、配列番号71~80及び123~125の群から選択されるVLドメインとを含む。より具体的な実施形態において、抗体は、配列番号81~90、128及び129のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むscFvである。
他の実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、1つ以上の追加的な抗原結合ドメインを更に含む。1つ以上の追加的な抗原に結合する1つ以上の追加的な結合ドメイン、例えば、1つ以上の追加的な抗原を標的化する1、2、3、4つ又はそれ以上の追加的な抗体結合領域(抗体)。
一部の実施形態において、本開示のCARによって標的化される1つ又は複数の追加的な抗原は、細胞表面分子である。抗体は、特別な疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとしての役割を果たす抗原を認識するように選択され得る。一部の実施形態において、抗原は、腫瘍抗原である。一部の実施形態において、腫瘍抗原は、腫瘍特異抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)である。TSAは、腫瘍細胞にユニークであり、体の他の細胞上に存在しない。TAA関連抗原は、腫瘍細胞にユニークでなく、代わりに抗原に対して免疫寛容状態を誘導できない条件下で正常細胞上にも発現する。腫瘍上の抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することが可能な条件下で起こり得る。TAAは、胎児発生中、免疫系が未熟であり、応答することができないときに正常細胞上に発現する抗原であり得るか、又はTAAは、通常正常細胞上に極めて低いレベルでのみ存在するが、腫瘍細胞上にはるかに高いレベルで発現する抗原であり得る。
細胞外ドメインの抗原結合ドメインに加えて、本明細書に提供されるCARは、リンカー(例えば、ペプチドリンカー)、膜貫通ドメイン、ヒンジ領域、シグナルペプチド、細胞内シグナル伝達ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメインの1つ以上を更に含み得、これらの各々について以下で更に詳細に記載する。
例えば、一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞など)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド及びこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激分子に由来する。一部の実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD137に由来する。一部の実施形態において、GPC3 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメインなど)を更に含む。一部の実施形態において、GPC3 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチドなど)を更に含む。一部の実施形態において、ポリペプチドは、N末端からC末端に、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、GPC3 CARは単一特異性である。一部の実施形態において、GPC3 CARは一価である。一部の実施形態において、GPC3 CARは多重特異性である。一部の実施形態において、GPC3 CARは多価である。
ペプチドリンカー
本CARに複数の抗体が存在する場合、様々な抗体が互いにペプチドリンカーで融合され得る。一部の実施形態では、抗体は、いかなるペプチドリンカーもなしに、互いに直接融合される。異なる抗体をつなぐペプチドリンカーは、同じであるか又は異なり得る。CARの異なるドメインもペプチドリンカーで互いに融合され得る。
CARの各ペプチドリンカーは、抗体及び/又は様々なドメインの構造的及び/又は機能的特徴に応じて同じ又は異なる長さ及び/又は配列を有し得る。各ペプチドリンカーは、独立に選択され、最適化され得る。CARに使用される1つ又は複数のペプチドリンカーの長さ、可動性の程度及び/又は他の特性は、限定はされないが、1つ以上の特定の抗原又はエピトープに対する親和性、特異性又はアビディティを含め、特性に何らかの影響を及ぼし得る。例えば、2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないことを確実にするために、より長いペプチドリンカーが選択され得る。一部の実施形態において、CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に短いペプチドリンカーが置かれ得る。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、隣接するドメインが互いに対して自由に動けるように、可動性残基(グリシン及びセリンなど)を含む。例えば、グリシン-セリンの二つ組が好適なペプチドリンカーであり得る。
ペプチドリンカーは、任意の好適な長さであり得る。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100アミノ酸長又はそれ以上のいずれかである。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、約100、75、50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5アミノ酸長又はそれ以下のいずれかを超えない。一部の実施形態において、ペプチドリンカーの長さは、約1アミノ酸~約10アミノ酸、約1アミノ酸~約20アミノ酸、約1アミノ酸~約30アミノ酸、約5アミノ酸~約15アミノ酸、約10アミノ酸~約25アミノ酸、約5アミノ酸~約30アミノ酸、約10アミノ酸~約30アミノ酸長、約30アミノ酸~約50アミノ酸、約50アミノ酸~約100アミノ酸、又は約1アミノ酸~約100アミノ酸のいずれかである。
ペプチドリンカーは、天然に存在する配列、又は天然に存在しない配列を有し得る。例えば、重鎖単独抗体のヒンジ領域に由来する配列が、リンカーとして使用され得る。例えば、国際公開第1996/34103号パンフレットを参照されたい。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは可動性リンカーである。例示的可動性リンカーとしては、限定はされないが、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当技術分野において公知の他の可動性リンカーが挙げられる。当技術分野において公知の、例えば、国際公開第2016014789号パンフレット、国際公開第2015158671号パンフレット、国際公開第2016102965号パンフレット、米国特許出願公開第20150299317号明細書、国際公開第2018067992号パンフレット、米国特許第7741465号明細書、Colcher et al.,J.Nat.Cancer Inst.82:1191-1197(1990)、及びBird et al.,Science 242:423-426(1988)に記載されるとおりの他のリンカーも、本明細書に提供されるCARに含まれ得、この各々の開示は参照により本明細書に援用される。
5.3.2.膜貫通ドメイン
本開示のCARは、細胞外抗原結合ドメインに直接又は間接的に融合することのできる膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、天然の供給源又は合成の供給源のいずれにも由来し得る。本明細書で使用されるとき、「膜貫通ドメイン」は、細胞膜、好ましくは真核細胞膜において熱力学的に安定している任意のタンパク質構造を指す。本明細書に記載されるCARでの使用に適合性のある膜貫通ドメインは、天然に存在するタンパク質から入手され得る。代わりに、それは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメント、例えば、細胞膜において熱力学的に安定している疎水性タンパク質セグメントであり得る。
膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインの三次元構造に基づき分類される。例えば、膜貫通ドメインは、αヘリックス、2つ以上のαヘリックスの複合体、βバレル、又は細胞のリン脂質二重層にまたがる能力を有する任意の他の安定構造を形成し得る。更に、同様に又は代わりに、膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインが膜を越える通過回数及びタンパク質の向きを含め、膜貫通ドメイントポロジーに基づき分類され得る。例えば、1回膜貫通タンパク質は細胞膜を1回横切り、複数回膜貫通タンパク質は細胞膜を少なくとも2回(例えば、2、3、4、5、6、7回又はそれ以上)横切る。膜タンパク質は、細胞の内側及び外側に対するその末端及び1つ又は複数の膜貫通セグメントのトポロジーに依存して、I型、II型又はIII型として定義され得る。I型膜タンパク質は、膜にまたがるセグメントを1つのみ有し、タンパク質のN末端が細胞の脂質二重層の細胞外の側に存在して、タンパク質のC末端が細胞質の側に存在するような向きにある。II型膜タンパク質も、膜にまたがるセグメントを1つのみ有するが、タンパク質のC末端が細胞の脂質二重層の細胞外の側に存在して、タンパク質のN末端が細胞質の側に存在するような向きにある。III型膜タンパク質は、膜にまたがるセグメントを複数有し、膜貫通セグメントの数並びにN末端及びC末端の位置に基づき更に細分され得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるCARの膜貫通ドメインは、I型1回膜貫通タンパク質に由来する。一部の実施形態では、複数回膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインも、本明細書に記載されるCARにおける使用に適合性があり得る。複数回膜貫通タンパク質は、複合(少なくとも2、3、4、5、6、7個又はそれ以上の)αヘリックス又はβシート構造を含み得る。一部の実施形態において、複数回膜貫通タンパク質のN末端及びC末端は脂質二重層の両側に存在し、例えば、タンパク質のN末端が脂質二重層の細胞質の側に存在し、タンパク質のC末端が細胞外の側に存在する。
一部の実施形態において、CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα、β又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、GPC3、IL-2Rβ、IL-2Rγ、IL-7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及び/又はNKG2Cの膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152及びPD1からなる群から選択される分子に由来する。
一部の具体的な実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8αに由来する。一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号103のアミノ酸配列を含むCD8αの膜貫通ドメインである。
本明細書に記載されるCARに使用される膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメントの少なくとも一部分も含むことができる。一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないαヘリックス又はβシートである。一部の実施形態において、タンパク質セグメントは、少なくとも約20アミノ酸、例えば、少なくとも18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸、又はそれ以上である。合成膜貫通ドメインの例は、当技術分野において、例えば、米国特許第7,052,906号明細書及び国際公開第2000/032776号パンフレット(これらの関連性のある開示は、参照によって本明細書に援用される)において公知である。
本明細書に提供される膜貫通ドメインは、膜貫通領域と、膜貫通ドメインのC末端側に位置する細胞質領域とを含み得る。膜貫通ドメインの細胞質領域は、3アミノ酸以上を含み得、一部の実施形態では、脂質二重層において膜貫通ドメインの向きを定めることを促進する。一部の実施形態において、膜貫通ドメインの膜貫通領域に1つ以上のシステイン残基が存在する。一部の実施形態において、膜貫通ドメインの細胞質領域に1つ以上のシステイン残基が存在する。一部の実施形態において、膜貫通ドメインの細胞質領域は、正電荷アミノ酸を含む。一部の実施形態において、膜貫通ドメインの細胞質領域は、アミノ酸のアルギニン、セリン及びリジンを含む。
一部の実施形態において、膜貫通ドメインの膜貫通領域は、疎水性アミノ酸残基を含む。一部の実施形態において、本明細書に提供されるCARの膜貫通ドメインは、人工疎水性配列を含む。例えば、膜貫通ドメインのC末端に、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが存在し得る。一部の実施形態において、膜貫通領域は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、又はバリンなど、大部分が疎水性のアミノ酸残基を含む。一部の実施形態において、膜貫通領域は疎水性である。一部の実施形態において、膜貫通領域は、ポリ-ロイシン-アラニン配列を含む。タンパク質又はタンパク質セグメントのハイドロパシー、即ち疎水性又は親水性特性は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、カイト(Kyte)及びドーリトル(Doolittle)のハイドロパシー分析によって判定することができる。
5.3.3.細胞内シグナル伝達ドメイン
本開示のCARは、細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)を含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを発現する免疫エフェクター細胞の正常エフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、細胞の特化した機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含めたヘルパー活性であり得る。従って、用語「細胞質シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞が特化した機能を果たすように仕向けるタンパク質の一部分を指す。通常、細胞質シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞質シグナル伝達ドメインのトランケートされた一部分が使用される範囲内において、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりにかかるトランケートされた一部分を使用し得る。従って、用語の細胞質シグナル伝達ドメインには、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分である、細胞質シグナル伝達ドメインの任意のトランケートされた一部分が含まれることが意図される。
一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、CARは、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインから本質的になる細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「一次細胞内シグナル伝達ドメイン」は、刺激する役割を果たす免疫エフェクター機能を誘導する細胞質シグナル伝達配列を指す。一部の実施形態において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ、即ちITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有する。「ITAM」は、本明細書で使用されるとき、多くの免疫細胞に発現するシグナル伝達分子の尾部に概して存在する保存されたタンパク質モチーフである。このモチーフは、6~8アミノ酸だけ隔てられたアミノ酸配列YxxL/Iの2つのリピートを含み得(式中、各xは、独立に、任意のアミノ酸である)、保存されたモチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iをもたらす。シグナル伝達分子内にあるITAMは、細胞内でのシグナル伝達に重要であり、これは、少なくとも一部には、シグナル伝達分子の活性化に伴うITAM中のチロシン残基のリン酸化によって媒介される。ITAMは、シグナル伝達経路に関与する他のタンパク質のドッキング部位としても機能し得る。例示的ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列としては、CD3ζ、FcRγ(FCER1G)、FcRβ(Fcε Rib)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。
一部の実施形態において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインからなる。一部の実施形態において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、野生型CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインである。一部の実施形態において、CD3ζの一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号105のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、野生型CD3ζの一次細胞内シグナル伝達ドメイン。一部の実施形態において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、Q65Kなど、1つ以上の突然変異を含む、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインの機能突然変異体である。
5.3.4.共刺激シグナル伝達ドメイン
多くの免疫エフェクター細胞が、細胞増殖、分化及び生存を促進し、且つ細胞のエフェクター機能を活性化させるために、抗原特異的シグナルの刺激に加えて、共刺激を必要とする。一部の実施形態において、CARは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。用語「共刺激シグナル伝達ドメイン」は、本明細書で使用されるとき、細胞内でシグナル伝達を媒介してエフェクター機能などの免疫応答を誘導するタンパク質中の少なくとも一部分を指す。本明細書に記載されるキメラ受容体の共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激タンパク質からの細胞質シグナル伝達ドメインであり得、共刺激タンパク質は、シグナルを伝達し、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球又は好酸球などの免疫細胞によって媒介される応答を調節するものである。「共刺激シグナル伝達ドメイン」は、共刺激分子の細胞質部分であり得る。用語「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定はされないが、増殖及び生存など、免疫細胞による共刺激応答を媒介する免疫細胞(T細胞など)上にあるコグネイト結合パートナーを指す。
一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、単一の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上(約2、3、4つ、又はそれ以上のいずれかなど)の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、同じ共刺激シグナル伝達ドメインの2つ以上を含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載される任意の2つ以上の共刺激タンパク質など、異なる共刺激タンパク質からの2つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインなど)と、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。一部の実施形態において、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと一次細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインなど)とは、互いに任意選択のペプチドリンカーを介して融合される。一次細胞内シグナル伝達ドメインと、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとは、任意の好適な順序で配列され得る。一部の実施形態において、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインと一次細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインなど)との間に位置する。複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、相加的又は相乗的刺激効果を提供し得る。
宿主細胞(例えば、免疫細胞)で共刺激シグナル伝達ドメインが活性化すると、細胞がサイトカインの産生及び分泌、食作用特性、増殖、分化、生存、及び/又は細胞傷害性を増加又は減少させるように誘導され得る。任意の共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインが、本明細書に記載されるCARにおける使用に適合性を有し得る。共刺激シグナル伝達ドメインの1つ又は複数の種類は、エフェクター分子が発現することになる免疫エフェクター細胞の種類(例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、又は好酸球)及び所望の免疫エフェクター機能(例えば、ADCC効果)などの要因に基づき選択される。CARに使用される共刺激シグナル伝達ドメインの例は、限定なしに、B7/CD28ファミリーのメンバー(例えば、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BTLA/CD272、CD28、CTLA-4、Gi24/VISTA/B7-H5、ICOS/CD278、PD-1、PD-L2/B7-DC、及びPDCD6);TNFスーパーファミリーのメンバー(例えば、4-1BB/TNFSF9/CD137、4-1BBリガンド/TNFSF9、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BAFFR/TNFRSF13C、CD27/TNFRSF7、CD27リガンド/TNFSF7、CD30/TNFRSF8、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40/TNFSF5、CD40リガンド/TNFSF5、DR3/TNFRSF25、GITR/TNFRSF18、GITRリガンド/TNFSF18、HVEM/TNFRSF14、LIGHT/TNFSF14、リンホトキシン-α/TNF-β、OX40/TNFRSF4、OX40リガンド/TNFSF4、RELT/TNFRSF19L、TACI/TNFRSF13B、TL1A/TNFSF15、TNF-α、及びTNFRII/TNFRSF1B);SLAMファミリーのメンバー(例えば、2B4/CD244/SLAMF4、BLAME/SLAMF8、CD2、CD2F-10/SLAMF9、CD48/SLAMF2、CD58/LFA-3、CD84/SLAMF5、CD229/SLAMF3、CRACC/SLAMF7、NTB-A/SLAMF6、及びSLAM/CD150);及び任意の他の共刺激分子、例えば、CD2、CD7、CD53、CD82/Kai-1、CD90/Thy1、CD96、CD160、CD200、CD300a/LMIR1、HLAクラスI、HLA-DR、Ikaros、インテグリンα4/CD49d、インテグリンα4β1、インテグリンα4β7/LPAM-1、LAG-3、TCL1A、TCL1B、CRTAM、DAP12、デクチン-1/CLEC7A、DPPIV/CD26、EphB6、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TSLP、TSLPR、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、及びNKG2Cなどを含めた、共刺激タンパク質の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。
一部の実施形態において、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83に特異的に結合するリガンド(CD83及びMD2など)からなる群から選択される。
一部の実施形態において、本開示のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、CD137(即ち4-1BB)に由来する共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインと、CD137の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号104のアミノ酸配列を含むCD137の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
共刺激シグナル伝達ドメインが免疫細胞の免疫応答を調節する能力を有するような、本明細書に記載される共刺激シグナル伝達ドメインのいずれかの変異体も本開示の範囲内にある。一部の実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインは、野生型の対応物と比較したとき、最大10アミノ酸残基(例えば、1、2、3、4、5、又は8)の変異を含む。1つ以上のアミノ酸変異を含むかかる共刺激シグナル伝達ドメインは、変異体と称され得る。共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸残基を突然変異させると、その突然変異を含まない共刺激シグナル伝達ドメインと比べてシグナル伝達が増加し、免疫応答の刺激が増強されることになり得る。共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸残基を突然変異させると、その突然変異を含まない共刺激シグナル伝達ドメインと比べてシグナル伝達が減少し、免疫応答の刺激が低下することになり得る。
5.3.5.ヒンジ領域
本開示のCARは、細胞外抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメインを含み得る。ヒンジドメインは、概してタンパク質の2つのドメイン間に見られるアミノ酸セグメントであり、タンパク質に可動性をもたらし、ドメインの一方又は両方が互いに対して動くことを可能にし得る。エフェクター分子の膜貫通ドメインに対する細胞外抗原結合ドメインのかかる可動性及び動きをもたらす任意のアミノ酸配列を使用することができる。
ヒンジドメインは、約10~100アミノ酸、例えば、約15~75アミノ酸、20~50アミノ酸、又は30~60アミノ酸のいずれか1つを含有し得る。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75アミノ酸長のいずれか1つであり得る。
一部の実施形態において、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインである。当技術分野においてヒンジドメインを含むことが公知の任意のタンパク質のヒンジドメインは、本明細書に記載されるキメラ受容体における使用に適合性がある。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインの少なくとも一部分であり、キメラ受容体に可動性を付与する。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、CD8αに由来する。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、CD8αのヒンジドメインの一部分、例えば、CD8αのヒンジドメインの少なくとも15(例えば、20、25、30、35、又は40)個の連続するアミノ酸を含む断片である。一部の実施形態において、CD8αのヒンジドメインは、配列番号102のアミノ酸配列を含む。
IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD抗体など、抗体のヒンジドメインも、本明細書に記載されるpH依存的キメラ受容体システムにおける使用に適合性がある。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1とCH2とをつなぎ合わせるヒンジドメインである。一部の実施形態において、ヒンジドメインは抗体のものであり、抗体のヒンジドメインと抗体の1つ以上の定常領域とを含む。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインと抗体のCH3定常領域とを含む。一部の実施形態において、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインと抗体のCH2及びCH3定常領域とを含む。一部の実施形態において、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD抗体である。一部の実施形態において、抗体は、IgG抗体である。一部の実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。一部の実施形態において、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域とCH2及びCH3定常領域とを含む。一部の実施形態において、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域とCH3定常領域とを含む。
天然に存在しないペプチドも、本明細書に記載されるキメラ受容体のためのヒンジドメインとして使用し得る。一部の実施形態において、Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間のヒンジドメインは、(GxS)nリンカー(式中、x及びnは、独立に、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12を含む3~12の整数、又はそれ以上であり得る)などのペプチドリンカーである。
5.3.6.シグナルペプチド
本開示のCARは、ポリペプチドのN末端にシグナルペプチド(シグナル配列としても知られる)を含み得る。一般に、シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞内の所望の部位に標的化するペプチド配列である。一部の実施形態において、シグナルペプチドは、エフェクター分子を細胞の分泌経路に標的化し、エフェクター分子の脂質二重層への組込み及びアンカリングを可能にすることになる。本明細書に記載されるCARにおける使用に適合性のある、天然に存在するタンパク質のシグナル配列又は合成の天然に存在しないシグナル配列を含むシグナルペプチドについては、当業者に明らかであろう。一部の実施形態において、シグナルペプチドは、CD8α、GM-CSF受容体α及びIgG1重鎖からなる群から選択される分子に由来する。一部の実施形態において、シグナルペプチドはCD8αに由来する。一部の実施形態において、CD8αのシグナルペプチドは、配列番号101のアミノ酸配列を含む。
5.3.7.CARと1つ又は複数の追加的なドメインとを含むポリペプチド
以下の第6節に示すとおり、CARと、外因的に導入されたp40及びCCL-19とを発現する改変された免疫エフェクター細胞が、意外にも、優れた効果をもたらした。例えば、p40及びCCL-19アーマードCAR-T細胞は、対応するネイキッドCAR-T細胞と比べて、より低用量でより高い有効性を呈した。
従って、別の態様において、本明細書では、本明細書に提供されるCARと、IL-12のp40サブユニット及びCCL-19の少なくとも一方とを含むポリペプチドが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、本明細書に提供されるCARとp40とを含むポリペプチドが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、本明細書に提供されるCARとCCL-19とを含むポリペプチドが提供される。他の実施形態において、本明細書では、本明細書に提供されるCARとp40及びCCL-19の両方とを含むポリペプチドが提供される。一部の実施形態において、p40は、配列番号135のアミノ酸配列を含むヒトp40であり、及び/又はCCL-19は、配列番号136のアミノ酸配列を含むヒトCCL-19である。
本ポリペプチドにおいて、CAR、p40及び/又はCCL-19は、いかなる順序で配列され得る。例えば、ポリペプチドにCAR、p40及びCCL-19が全て存在する場合、一部の実施形態において、本明細書に提供されるポリペプチドは、N末端からC末端に、CAR、p40及びCCL-19を含む;一部の実施形態において、本明細書に提供されるポリペプチドは、N末端からC末端に、CAR、CCL-19、及びp40を含む;一部の実施形態において、本明細書に提供されるポリペプチドは、N末端からC末端に、CCL-19、p40、及びCARを含む;一部の実施形態において、本明細書に提供されるポリペプチドは、N末端からC末端に、p40、CCL-19及びCARを含む;一部の実施形態において、本明細書に提供されるポリペプチドは、N末端からC末端に、p40、CAR、及びCCL-19を含む;及び一部の実施形態において、本明細書に提供されるポリペプチドは、N末端からC末端に、CCL-19、CAR、及びp40を含む。
本明細書に提供される様々なポリペプチドの一部の実施形態において、CAR、p40及び/又はCCL-19は、互いにペプチドリンカーを介して連結される。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、2A自己切断型ペプチドなどの自己切断型ペプチドであり、そのためCAR、p40及び/又はCCL-19は、細胞で切断を受けると別個のポリペプチドになる。2Aペプチドのメンバーは、それが初めに記載されたウイルスにちなんで名付けられる。例えば、初めて記載された2AペプチドであるF2Aは、口蹄疫ウイルスに由来する。この自己切断型18~22アミノ酸長2Aペプチドは、プロリン残基とグリシン残基との間の「リボソームスキッピング」を媒介し、下流翻訳に影響を及ぼすことなくペプチド結合形成を阻害する。これらのペプチドは、複数のタンパク質がポリタンパク質としてコードされることを可能にし、このポリタンパク質が翻訳を受けると解離して成分タンパク質となる。自己切断型ペプチドは、アフトウイルス、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)など、トセア・アシグナ(thosea asigna)ウイルス(TaV)及びブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(Donnelly et al.,J.Gen.Virol.,82:1027-101(2001);Ryan et al.,J.Gen.Virol.,72:2727-2732(2001)を参照されたい)並びにタイロウイルス(例えば、タイラーマウス脳脊髄炎)及び脳心筋炎ウイルスなどのカルジオウイルスを含め、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ウイルスのメンバーに見られる。FMDV、ERAV、PTV-1、及びTaVに由来する2Aペプチドは、それぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」及び「T2A」と称されることもあり、例えばDonnelly et al.,J.Gen.Virol.,78:13-21(1997);Ryan and Drew,EMBO J.,13:928-933(1994);Szymczak et al.,Nature Biotech.,5:589-594(2004);Hasegawa et al.,Stem Cells,25(7):1707-12(2007)に記載されるとおり、本開示に包含される。更に他の実施形態において、本明細書では、例えば、Shah and Muir,Chem Sci.,5(1):446-461(2014)及びTopilina and Mills,Mobile DNA,5(5)(2014)に記載されるとおりの、インテイン媒介性タンパク質スプライシングシステムが使用される。当技術分野において公知の他の方法も本コンストラクトに用いることができる。
一部の実施形態において、2A自己切断型ペプチドは、F2A、E2A、P2A、T2A、又はこれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態において、自己切断型ペプチドは、配列番号138のアミノ酸配列を含む2A自己切断型ペプチドP2A断片である。具体的な実施形態において、自己切断型ペプチドは、配列番号139のアミノ酸配列を含むT2A断片である。
一部の具体的な実施形態において、p40とCCL-19とは、第1の自己切断型ペプチドによって連結される。一部の実施形態において、第1の自己切断型ペプチドは、配列番号139のアミノ酸配列を含む19自己切断型ペプチドT2A断片である。一部の実施形態において、本明細書に提供されるIL-12のp40サブユニットとCCL-19とを含むドメインは、配列番号134のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CARは、第2の自己切断型ペプチドによってドメインに連結される。一部の実施形態において、第2の自己切断型ペプチドは、配列番号138のアミノ酸配列を含む2A自己切断型ペプチドP2A断片である。具体的な実施形態において、本明細書に提供されるCARは配列番号133のアミノ酸配列を含む。
別の態様において、本明細書では、本明細書に提供されるCAR、IL-12のp40サブユニット、及び/又はCCL-19を含む上記に記載されるポリペプチドをコードする核酸が提供される。
5.3.8.例示的CAR
例示的CARは、以下の第6節に示すとおり作成される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号91のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号92のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号93のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号94のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号95のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号96のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号97のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号98のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号99のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号100のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号107のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号108のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号109のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号110のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号111のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号112のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号113のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号114のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号115のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号116のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号130のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号131のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号133のアミノ酸配列を含む、又はそれからなるCARが提供される。
特定の実施形態において、本明細書に提供されるCARは、以下の第6節に例示するCARのいずれか1つと比べて一定のパーセント同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号91のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号92のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号93のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号94のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号95のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号96のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号97のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号99のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号100のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号107のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号108のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号109のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号110のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号111のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号112のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号113のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号114のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号115のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号116のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号130のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号131のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。一部の実施形態において、本明細書では、配列番号133のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含むGPC3 CARが提供される。
一部の実施形態において、本明細書では、本明細書に提供されるGPC3 CARのいずれかをコードする単離核酸が提供される。核酸配列及びベクターに関する更に詳細な説明を以下に提供する。
5.4.改変免疫エフェクター細胞
更に別の態様において、本明細書では、本明細書に記載されるCARのいずれか1つを含む宿主細胞(免疫エフェクター細胞など)が提供される。
従って、一部の実施形態において、本明細書では、(a)1つ以上の抗GPC3抗体を含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むCARを含む改変免疫エフェクター細胞(T細胞など)が提供され、ここで、抗GPC3抗体は、例えば、表3及び表4のCDRを1つ以上含むものを含めた、上記の第5.2節に記載されるとおりの抗GPC3抗体であり、より具体的には、一部の実施形態において、抗GPC3抗体(例えば、scFv)は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号51のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号42のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号43のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号53のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号44のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号45のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号55のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(vii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号27のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号47のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号57のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(viii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号48のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号58のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(ix)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号29のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号39のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号59のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(x)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号40のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号50のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号60のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。一部の実施形態において、本免疫エフェクター細胞に発現するCAR中の抗体(例えば、scFv)は、配列番号61~70及び117~122の群から選択されるVHドメインと、配列番号71~80及び123~125の群から選択されるVLドメインとを含む。より具体的な実施形態において、本免疫エフェクター細胞のCAR中の抗体は、配列番号81~90、128及び129のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むscFvである。一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152及びPD1からなる群から選択される。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞など)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド及びこれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激分子に由来する。一部の実施形態において、CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメインなど)を更に含む。一部の実施形態において、CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチドなど)を更に含む。一部の実施形態において、ポリペプチドは、N末端からC末端に、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
他の具体的な実施形態において、本明細書では、配列番号91~100、107~116及び130~131のアミノ酸配列、又は配列番号91~100、107~116及び130~131のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むCARを含む改変免疫エフェクター細胞(T細胞など)が提供される。
一部の実施形態において、改変免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核球(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、又は胚性幹細胞である。一部の実施形態において、改変免疫エフェクター細胞は自家細胞である。一部の実施形態において、改変免疫エフェクター細胞は同種異系細胞である。
2つ以上の異なるCARを含む(又は発現する)改変免疫エフェクター細胞も提供される。本明細書に記載されるCARのいずれか2つ以上を組み合わせて発現させ得る。それらのCARは異なる抗原を標的化し、従って相乗効果又は相加効果をもたらし得る。2つ以上のCARは、同じベクター上にコードされても又は異なるベクター上にコードされ得る。
改変免疫エフェクター細胞は、1つ以上の治療用タンパク質及び/又は免疫チェックポイント阻害薬など、免疫調節薬を更に発現し得る。例えば、国際特許出願PCT/中国特許出願公開第2016/073489号明細書及びPCT/中国特許出願公開第2016/087855号明細書(これらは、全体として参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
5.4.1.ベクター
本開示は、本明細書に記載されるCARのいずれか1つのクローニング及び発現のためのベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、哺乳類細胞など、真核細胞における複製及び組込みに好適である。一部の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターの例としては、限定はされないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアベクター、単純ヘルペスウイルスベクター及びこれらの誘導体が挙げられる。ウイルスベクター技術は、当技術分野において周知であり、例えばSambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)並びに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。
哺乳類細胞への遺伝子移入のため、幾つものウイルスベースのシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムに好都合なプラットフォームを提供する。当技術分野において公知の技法を用いて異種核酸をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。次に組換えウイルスを単離し、改変哺乳類細胞にインビトロ又はエキソビボで送達することができる。幾つものレトロウイルスシステムが当技術分野において公知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。幾つものアデノウイルスベクターが当技術分野において公知である。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。一部の実施形態では、自己不活性化レンチウイルスベクターが使用される。例えば、免疫調節薬(免疫チェックポイント阻害薬など)のコード配列を担持する自己不活性化レンチウイルスベクター及び/又はキメラ抗原受容体を担持する自己不活性化レンチウイルスベクターを、当技術分野において公知のプロトコルでパッケージングすることができる。得られたレンチウイルスベクターは、当技術分野において公知の方法を用いた哺乳類細胞(初代ヒトT細胞など)の形質導入に使用することができる。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、トランス遺伝子の長期にわたる安定した組込み及び子孫細胞におけるその伝播が可能であるため、長期遺伝子移入を実現するのに好適なツールである。レンチウイルスベクターは、免疫原性も低く、非増殖性細胞を形質導入することができる。
一部の実施形態において、ベクターは、本明細書に記載されるCARをコードする核酸のいずれか1つを含む。核酸は、例えば、制限エンドヌクレアーゼ部位及び1つ以上の選択可能マーカーを用いることを含め、当技術分野における任意の公知の分子クローニング方法を用いてベクターにクローニングすることができる。一部の実施形態において、核酸は、プロモーターに作動可能に連結される。哺乳類細胞における遺伝子発現のため、様々なプロモーターが探索されており、本開示では、当技術分野において公知のプロモーターのいずれも使用し得る。プロモーターは、大まかには、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターなどの調節性プロモーターのカテゴリーに分けられ得る。
一部の実施形態において、CARをコードする核酸は、構成的プロモーターに作動可能に連結される。構成的プロモーターは、異種遺伝子(トランス遺伝子とも称される)が宿主細胞で構成的に発現することを可能にする。本明細書で企図される例示的構成的プロモーターとしては、限定はされないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒト伸長因子-1α(hEF1α)、ユビキチンCプロモーター(UbiC)、ホスホグリセロキナーゼプロモーター(PGK)、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、及びニワトリβ-アクチンプロモーターとCMV初期エンハンサー(CAGG)が挙げられる。トランス遺伝子発現をドライブすることにおけるかかる構成的プロモーターの効率は、膨大な数の研究において広く比較されている。例えば、Michael C.Milone et alは、CMV、hEF1α、UbiC及びPGKが初代ヒトT細胞でキメラ抗原受容体発現をドライブする効率を比較し、hEF1αプロモーターが最も高いレベルのトランス遺伝子発現を誘導したのみならず、CD4及びCD8ヒトT細胞において最適に維持されたと結論付けた(Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009))。一部の実施形態において、CARをコードする核酸は、hEF1αプロモーターに作動可能に連結される。
一部の実施形態において、CARをコードする核酸は、誘導性プロモーターに作動可能に連結される。誘導性プロモーターは、調節性プロモーターのカテゴリーに属する。誘導性プロモーターは、物理的条件、改変免疫エフェクター細胞の微小環境、又は改変免疫エフェクター細胞の生理学的状態、誘導因子(即ち誘導剤)又はこれらの組み合わせなど、1つ以上の条件によって誘導することができる。
一部の実施形態において、誘導条件は、改変哺乳類細胞における、及び/又は医薬組成物の投与を受ける対象における内因性遺伝子の発現を誘導しない。一部の実施形態において、誘導条件は、誘導因子、照射(電離放射線、光など)、温度(熱など)、酸化還元状態、腫瘍環境、及び改変哺乳類細胞の活性化状態からなる群から選択される。
一部の実施形態において、ベクターは、レンチウイルスベクターを通してトランスフェクトされた宿主細胞の集団から、CARを発現する細胞を選択するため、選択可能マーカー遺伝子又はレポーター遺伝子も含有する。選択可能マーカー及びレポーター遺伝子には、両方とも宿主細胞における発現を可能にするのに適切な調節配列が隣接し得る。例えば、ベクターは、核酸配列の発現の調節に有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列並びにプロモーターを含有し得る。
一部の実施形態において、ベクターは、CARをコードする核酸を2つ以上含む。一部の実施形態において、ベクターは、第1のCARをコードする第1の核酸配列と、第2のCARをコードする第2の核酸配列とを含む核酸を含み、ここで、第1の核酸は、自己切断型ペプチドをコードする第3の核酸配列を介して第2の核酸に作動可能に連結される。一部の実施形態において、自己切断型ペプチドは、T2A、P2A及びF2Aからなる群から選択される。
5.4.2.免疫エフェクター細胞
「免疫エフェクター細胞」は、免疫エフェクター機能を果たすことのできる免疫細胞である。一部の実施形態において、免疫エフェクター細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介する免疫エフェクター細胞の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、好中球、及び好酸球が挙げられる。
一部の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態において、T細胞は、CD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4+/CD8+、CD4-/CD8-又はこれらの組み合わせである。一部の実施形態において、T細胞は、CARが発現してGPC3+腫瘍細胞などの標的細胞に結合すると、IL-2、TFN、及び/又はTNFを産生する。一部の実施形態において、CD8+ T細胞は、CARが発現して標的細胞に結合すると、抗原特異的標的細胞を溶解させる。
一部の実施形態において、免疫エフェクター細胞はNK細胞である。他の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、樹立細胞株、例えばNK-92細胞であり得る。
一部の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、造血幹細胞、多能性幹細胞、iPS、又は胚性幹細胞などの幹細胞から分化する。
改変免疫エフェクター細胞は、T細胞などの免疫エフェクター細胞にCARを導入することによって調製される。一部の実施形態において、CARは、上記に記載される単離核酸のいずれか1つ又はベクターのいずれか1つをトランスフェクトすることによって免疫エフェクター細胞に導入される。一部の実施形態において、CARは、CELL SQUEEZE(登録商標)などのマイクロ流体システムに細胞を通過させながら細胞膜にタンパク質を挿入することによって免疫エフェクター細胞に導入される(例えば、米国特許出願公開第20140287509号明細書を参照されたい)。
ベクター又は単離核酸を哺乳類細胞に導入する方法は、当技術分野において公知である。記載されるベクターは、物理的、化学的、又は生物学的方法によって免疫エフェクター細胞に移入させることができる。
ベクターを免疫エフェクター細胞に導入する物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルボンバードメント、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞の作製方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New Yorkを参照されたい。一部の実施形態において、ベクターはエレクトロポレーションによって細胞に導入される。
ベクターを免疫エフェクター細胞に導入する生物学的方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクターは、遺伝子を哺乳類細胞、例えばヒト細胞に挿入するために最も広く用いられている方法となっている。
ベクターを免疫エフェクター細胞に導入する化学的手段としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ並びに水中油型エマルション、ミセル、ミセル混合物及びリポソームを含めた脂質ベースのシステムなど、コロイド分散系が挙げられる。インビトロでの送達媒体として使用される例示的コロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるCARのいずれかをコードするRNA分子が従来方法(例えば、インビトロ転写)によって調製され、次にmRNAエレクトロポレーションなどの公知の方法によって免疫エフェクター細胞に導入され得る。例えば、Rabinovich et al.,Human Gene Therapy 17:1027-1035(2006)を参照されたい。
一部の実施形態において、形質導入又はトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞は、ベクター又は単離核酸の導入後にエキソビボで増殖させる。一部の実施形態において、形質導入又はトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞は、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、10日間、12日間、又は14日間のいずれかにわたって培養して増殖させる。一部の実施形態において、形質導入又はトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞は、改変哺乳類細胞を選択するため更に評価され、又はスクリーニングされる。
レポーター遺伝子は、潜在的なトランスフェクト細胞の同定及び調節配列の機能の評価に用いられ得る。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物又は組織に存在しない、又はそれが発現しない遺伝子であって、一部の容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性としてその発現が明らかになるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Tei et al.FEBS Letters 479:79-82(2000))。好適な発現システムは周知であり、公知の技法を用いて調製されるか、又は商業的に入手され得る。
CARをコードする核酸が改変免疫エフェクター細胞に存在するかを確認する他の方法としては、例えば、サザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRなど、当業者に周知の分子生物学的アッセイ;特定のペプチドの有無を例えば免疫学的方法(ELISA及びウエスタンブロットなど)によって検出するなど、生化学アッセイが挙げられる。
5.4.3.T細胞の供給源
一部の実施形態において、T細胞の拡大及び遺伝子修飾前に、対象からT細胞の供給源が入手される。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含め、幾つもの供給源から入手することができる。一部の実施形態において、当技術分野で利用可能な幾つものT細胞株を使用し得る。一部の実施形態において、T細胞は、Ficoll(商標)分離など、当業者に公知の幾つもの技法を用いて対象から採取された血液ユニットから入手することができる。一部の実施形態において、個体の循環血液からの細胞がアフェレーシスによって入手される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含めたリンパ球を含有する。一部の実施形態において、アフェレーシスによって採取された細胞は、洗浄することにより血漿画分が取り除かれ、続く処理ステップのため、細胞が適切な緩衝液又は培地中に置かれ得る。一部の実施形態において、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。一部の実施形態において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、且つマグネシウムを欠いていることができるか、又は全てではないが、大半の二価カチオンを欠いていることができる。カルシウムが存在しない中での初期活性化ステップは、活性化の拡大につながり得る。当業者であれば容易に理解するとおり、洗浄するステップは、半自動「フロースルー」遠心機(例えば、Cobe 2991細胞処理装置、Baxter CytoMate、又はHaemonetics Cell Saver 5)を製造者の指示に従い使用することによるなど、当業者に公知の方法によって達成され得る。洗浄後、細胞は、例えば、Ca2+不含、Mg2+不含PBS、PlasmaLyte A、又は緩衝剤を含む若しくは含まない他の生理食塩水など、種々の生体適合性緩衝液に再懸濁され得る。代わりに、アフェレーシス試料の望ましくない成分が取り除かれ、細胞が培養培地に直接再懸濁され得る。
一部の実施形態において、T細胞は、末梢血リンパ球から、赤血球の溶解と、例えばPERCOLL(商標)グラジエントを通した遠心によるか、又は向流遠心エルトリエーションによる単球の枯渇とによって単離される。ポジティブ又はネガティブ選択技法により、CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+及びCD45RO+T細胞など、T細胞の特異的なサブ集団を更に単離することができる。例えば、一部の実施形態において、T細胞は、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗CD3/抗CD28(即ち3×28)コンジュゲートビーズと共に、所望のT細胞のポジティブ選択に十分な時間にわたってインキュベートすることにより単離される。一部の実施形態において、この時間は約30分である。更なる実施形態において、この時間は30分~36時間の範囲又はそれ以上及びこれらの間にある全ての整数値である。更なる実施形態において、この時間は少なくとも1、2、3、4、5、又は6時間である。一部の実施形態において、この時間は10~24時間である。一部の実施形態において、インキュベーション時間は24時間である。白血病患者からT細胞を単離するために、24時間などのより長いインキュベーション時間を用いると、細胞収率が増加し得る。より長いインキュベーション時間は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を腫瘍組織又は免疫無防備状態の個体から単離する場合のように、他の細胞型と比較したときにT細胞が少ない任意の状況下でT細胞を単離するために用いられ得る。更に、より長いインキュベーション時間を用いると、CD8+ T細胞の捕捉効率が増加し得る。従って、一部の実施形態において、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させておく時間を単純に短縮するか、又は延長することにより、及び/又はT細胞に対するビーズの比率を増加させるか、又は低下させることにより、培養開始時又は処理中の他の時点でT細胞のサブ集団を優先的に選択又は選択排除することができる。加えて、ビーズ又は他の表面上の抗CD3及び/又は抗CD28抗体の比率を増加させるか、又は低下させることにより、培養開始時又は他の所望の時点でT細胞のサブ集団を優先的に選択又は選択排除することができる。当業者であれば、複数の選択ラウンドも用いられ得ることを認識するであろう。一部の実施形態では、選択手順を実施し、活性化及び拡大プロセスに「選択されなかった」細胞を使用することが望ましい場合もある。「選択されなかった」細胞も更なる選択ラウンドに供することができる。
ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択される細胞にユニークな表面マーカーに対する抗体の組み合わせで達成することができる。一つの方法は、ネガティブ選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用するネガティブ磁気免疫付着又はフローサイトメトリーによる細胞選別及び/又は選択である。例えば、CD4+細胞をネガティブ選択によって濃縮するには、モノクローナル抗体カクテルが、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含む。特定の実施形態において、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、及びFoxP3+を典型的には発現する調節性T細胞を濃縮する、又はポジティブ選択することが望ましい場合もある。代わりに、特定の実施形態では、抗C25コンジュゲートビーズ又は他の同様の選択方法によって調節性T細胞を枯渇させる。
ポジティブ又はネガティブ選択による所望の細胞集団の単離について、細胞及び表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度は様々であり得る。特定の実施形態では、細胞とビーズとの接触が最大限となることを確実にするため、ビーズ及び細胞が一緒に混合される容積を大幅に減少させる(即ち細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合もある。例えば、一実施形態において、20億細胞/mlの濃度が用いられる。一実施形態において、10億細胞/mlの濃度が用いられる。更なる実施形態において、1億細胞/ml超が用いられる。更なる実施形態において、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、又は5000万細胞/mlの細胞濃度が用いられる。更に別の実施形態において、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、又は1億細胞/mlの細胞濃度が用いられる。更なる実施形態において、1億2500万又は1億5000万細胞/mlの濃度が用いられ得る。高い濃度を用いると、細胞収率、細胞活性化、及び細胞拡大が増加することになり得る。更に、高い細胞濃度を用いると、CD28陰性T細胞など、目的の標的抗原の発現が弱いものであり得る細胞、又は多くの腫瘍細胞が存在する試料(即ち白血病血液、腫瘍組織等)からの細胞をより効率的に捕捉することが可能となり得る。かかる細胞集団には、治療的価値があり得、入手することが望ましいと言い得る。一部の実施形態において、高濃度の細胞を用いると、通常、CD28発現が弱いCD8+ T細胞をより効率的に選択することが可能となる。
一部の実施形態において、より低い濃度の細胞を使用することが望ましい場合もある。T細胞と表面(例えば、ビーズなどの粒子)との混合物を大幅に希釈することにより、粒子と細胞との間の相互作用が最小限となる。これにより、粒子に結合すべき所望の抗原を高量で発現する細胞が選択される。例えば、CD4+ T細胞はCD8+ T細胞よりも高いレベルのCD28を発現し、希釈濃度でより効率的に捕捉される。一部の実施形態において、用いられる細胞の濃度は、5×106/mLである。一部の実施形態において、用いられる濃度は、約1×105/mL~1×106/mL、及び間にある任意の整数値であり得る。
一部の実施形態において、細胞は、回転器上にて、2~10℃、又は室温のいずれかで、様々な速度で様々な長さの時間にわたってインキュベートされ得る。
刺激のためのT細胞は、洗浄ステップ後に凍結することもできる。理論によって拘束されるものではないが、凍結及び続く解凍ステップは、細胞集団中の顆粒球及びある程度の単球が除去されるため、より一様な産物をもたらし得る。血漿及び血小板を除去する洗浄ステップ後、細胞を凍結用溶液中に懸濁し得る。多くの凍結用溶液及びパラメータが当技術分野において公知であり、これに関連して有用となり得るが、一つの方法は、20%DMSO及び8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、又は10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン及び7.5%DMSO、又は31.25%plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、及び7.5%DMSOを含有する培養培地、又は例えば、Hespan及びPlasmaLyte Aを含有する他の好適な細胞凍結用培地を使用することを伴う。次に細胞は毎分1°の速度で-80℃に凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相中に貯蔵される。他の制御された凍結方法並びに-20℃での又は液体窒素中への制御されていない即時の凍結が用いられ得る。
一部の実施形態において、凍結保存された細胞は、本明細書に記載されるとおり解凍され、洗浄され、室温に1時間静置しておかれた後に活性化される。
本開示では、本明細書に記載されるとおりの拡大された細胞が必要になる可能性があるときよりも前の時点で対象から血液試料又はアフェレーシス産物を採取することも企図される。このように、拡大する細胞の供給源は、必要な任意の時点で採取することができ、本明細書に記載されるものなど、T細胞療法から利益を得るであろう幾つもの疾患又は病態に対するT細胞療法において後に使用するため、T細胞などの所望の細胞を単離し、凍結することができる。一実施形態において、血液試料又はアフェレーシスは、概して健常な対象から取られる。特定の実施形態において、血液試料又はアフェレーシスは、疾患を発症するリスクがあるが、依然として疾患を発症していない、概して健常な対象から取られ、後の使用のため、目的の細胞が単離され、凍結される。特定の実施形態において、T細胞は、拡大され、凍結され、及び後の時点で使用され得る。特定の実施形態において、試料は、本明細書に記載されるとおりの詳細な疾患の診断直後に、但しいずれの治療よりも前に、患者から採取される。更なる実施形態において、細胞は、限定はされないが、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線照射、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩、及びFK506など、抗体、又は他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、及び照射など、薬剤による治療を含め、幾つもの関連性のある治療モダリティの前に、対象からの血液試料又はアフェレーシスから単離される。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリン及びFK506)、又は成長因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害するか(ラパマイシン)、いずれかである(Liu et al.,Cell 66:807-815(1991);Henderson et al.,Immun 73:316-321(1991);Bierer et al.,Curr.Opin.Immun.5:763-773(1993))。更なる実施形態において、細胞は、患者のために単離され、骨髄又は幹細胞移植、フルダラビン、外照射放射線療法(XRT)、シクロホスファミドなどの化学療法剤、又はOKT3若しくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを使用したT細胞除去療法と併せて(例えば、その前、それと同時又はその後に)後に使用するため凍結される。
一部の実施形態において、T細胞は、患者から治療後直ちに入手される。これに関連して、ある種の癌治療、詳細には、免疫系に損傷を与える薬物による治療に伴い、治療直後の、患者が通常であれば治療から回復しているところである期間は、入手されるT細胞の品質が、エキソビボでのその拡大能力の点で最適であり、又は向上したものであり得ることが観察されている。同様に、本明細書に記載される方法を用いたエキソビボ操作に伴い、それらの細胞は生着及びインビボ拡大の亢進に好ましい状態にあり得る。従って、本開示の文脈の範囲内では、この回復期の間に、T細胞、樹状細胞、又は他の造血系細胞を含め、血液細胞を採取することが企図される。更に、特定の実施形態では、特に療法後の定義付けられた時間ウィンドウ中、動員(例えば、GM-CSFによる動員)及びコンディショニングレジメンを用いて、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生及び/又は拡大に有利に作用する条件を対象に作り出すことができる。例示的な細胞型としては、T細胞、B細胞、樹状細胞及び他の免疫系細胞が挙げられる。
5.4.4.T細胞の活性化及び拡大
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCARでT細胞を遺伝子修飾する前又はその後に、概して、例えば、米国特許第6,352,694号明細書;同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;同第6,867,041号明細書;及び米国特許出願公開第20060121005号明細書に記載されるとおりの方法を用いてT細胞を活性化し、拡大することができる。
概して、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドがそこに取り付けられた表面との接触によって拡大することができる。詳細には、T細胞集団は、表面に固定化された抗CD3抗体、又はその抗原結合断片、又は抗CD2抗体との接触によるか、又はカルシウムイオノフォアと併せたプロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)との接触によるなど、本明細書に記載されるとおり刺激され得る。T細胞の表面上にあるアクセサリー分子の共刺激について、アクセサリー分子に結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、T細胞集団を抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+ T細胞又はCD8+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体及び抗CD28抗体が使用され得る。抗CD3抗体の例としては、UCHT1、OKT3、HIT3a(BioLegend、San Diego,米国)が挙げられ、当技術分野において一般に公知の他の方法を用い得るのと同様に用い得る(Graves J,et al.,J.Immunol.146:2102(1991);Li B,et al.,Immunology 116:487(2005);Rivollier A,et al.,Blood 104:4029(2004))。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon,仏国)が挙げられ、当技術分野において一般に公知の他の方法を用い得るのと同様に用い得る(Berg et al.,Transplant Proc.30(8):3975-3977(1998);Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):13191328(1999);Garland et al.,J.Immunol Meth.227(1-2):53-63(1999))。
一部の実施形態において、T細胞に対する一次刺激シグナル及び共刺激シグナルは、種々のプロトコルによって提供され得る。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中にあるか、又は表面にカップリングされ得る。表面にカップリングされるとき、薬剤は同じ表面に(即ち「シス」構成で)カップリングされ得るか、又は別個の表面に(即ち「トランス」構成で)カップリングされ得る。代わりに、一方の薬剤が表面にカップリングされ、他方の薬剤が溶液中にあり得る。一実施形態では、共刺激シグナルを提供する薬剤が細胞表面に結合しており、一次活性化シグナルを提供する薬剤が溶液中にあるか、又は表面にカップリングされている。特定の実施形態では、両方の薬剤が溶液中にあり得る。別の実施形態において、薬剤は、可溶性形態であり得、次にFc受容体を発現する細胞又はその薬剤に結合するであろう抗体若しくは他の結合体などの表面に架橋結合され得る。これに関連して、本開示における特定の実施形態でT細胞の活性化及び拡大への使用が企図される人工抗原提示細胞(aAPC)について、例えば、米国特許出願公開第20040101519号明細書及び同第20060034810号明細書を参照されたい。
一部の実施形態では、T細胞は、薬剤がコートされたビーズと組み合わされ、続いてビーズと細胞とが分離され、次に細胞が培養される。代替的実施形態では、培養前に、薬剤がコートされたビーズと細胞とは分離されるのでなく、一緒に培養される。更なる実施形態では、ビーズ及び細胞が初めに磁力などの力の印加によって濃縮され、その結果、細胞表面マーカーのライゲーションが増加し、それによって細胞刺激が誘導される。
例として、細胞表面タンパク質は、抗CD3及び抗CD28が付着している常磁性ビーズ(3×28ビーズ)をT細胞に接触させることによってライゲートされ得る。一実施形態において、細胞(例えば、104~4×108個のT細胞)及びビーズ(例えば、推奨される1:100の力価の抗CD3/CD28 MACSiBead粒子)が、緩衝液、好ましくはPBS(カルシウム及びマグネシウムなどの二価カチオン不含)中に組み合わされる。当業者は、任意の細胞濃度が用いられ得ることを容易に理解し得る。例えば、標的細胞が試料中に極めて希少で、試料の僅か0.01%を占めるに過ぎないこともあり、又は試料全体(即ち100%)が目的の標的細胞を含むこともある。従って、任意の細胞数が、本開示の文脈の範囲内にある。特定の実施形態において、細胞と粒子との接触が最大限となることを確実にするため、粒子及び細胞が一緒に混合される容積を大幅に減少させる(即ち細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合もある。例えば、一実施形態において、約20億細胞/mLの濃度が用いられる。別の実施形態において、1億細胞/mL超が用いられる。更なる実施形態において、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、又は5000万細胞/mLの細胞濃度が用いられる。更に別の実施形態において、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、又は1億細胞/mLの細胞濃度が用いられる。更なる実施形態において、1億2500万又は1億5000万細胞/mLの濃度が用いられ得る。高い濃度を用いると、細胞収率、細胞活性化、及び細胞拡大が増加することになり得る。更に、高い細胞濃度を用いると、CD28陰性T細胞など、目的の標的抗原の発現が弱いものであり得る細胞をより効率的に捕捉することが可能となり得る。かかる細胞集団には、治療的価値があり得、特定の実施形態において入手することが望ましいと言い得る。例えば、高濃度の細胞を用いると、通常、CD28発現が弱いCD8+ T細胞をより効率的に選択することが可能となる。
一部の実施形態において、混合物は、数時間(約3時間)~約14日間又は間にある任意の1時間単位の整数値にわたって培養され得る。別の実施形態において、混合物は、21日間にわたって培養され得る。一実施形態において、ビーズ及びT細胞は、約8日間にわたって一緒に培養される。別の実施形態において、ビーズ及びT細胞は、2~3日間にわたって一緒に培養される。T細胞の培養時間が60日以上となり得るように、数回の刺激サイクルが望ましいこともある。T細胞培養に適切な条件には、血清(例えば、ウシ胎仔血清又はヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、及びTNF-α又は当業者に公知の細胞を成長させるための任意の他の添加剤を含め、増殖及び生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地若しくはRPMI培地1640又はX-vivo 15(Lonza))が含まれる。細胞を成長させるための他の添加剤としては、限定はされないが、界面活性剤、プラスマネート並びにN-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。培地は、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム及びビタミンを追加した、無血清若しくは適切な量の血清(又は血漿)又は定義付けられた一組のホルモン、及び/又はT細胞の成長及び拡大に十分な量の1つ又は複数のサイトカインが補足されているかのいずれかの、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15及びX-Vivo 20、optimizerを含み得る。抗生物質、例えば、ペニシリン及びストレプトマイシンは、実験培養液中にのみ含まれ、対象に注入されることになる細胞の培養液中には含まれない。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)及び雰囲気(例えば、空気+5%CO2)に維持される。様々な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特性を呈し得る。例えば、典型的な血液又はアフェレーシス末梢血単核球産物は、細胞傷害性又は抑制性T細胞集団(TC、CD8)よりもヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を多く有する。CD3及びCD28受容体を刺激することによってT細胞をエキソビボで拡大すると、約8~9日目より前には主にTH細胞からなるT細胞集団が生じる一方、約8~9日目の後には、T細胞集団は、TC細胞集団がますます大きく占めるようになる。従って、治療目的によっては、主にTH細胞が占めるT細胞集団を対象に注入することが有利であり得る。同様に、抗原特異的なTC細胞サブセットが単離された場合、そのサブセットを更に大きい程度にまで拡大することが有益であり得る。
更に、CD4及びCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーが大きく異なるが、しかし大部分は細胞拡大プロセスの経過中に再現性良く異なる。従って、かかる再現性により、活性化T細胞産物を特定の目的に合うように調整する能力が可能となる。
5.4.5.外因的に導入されたp40及びCCL-19を発現するCAR-T細胞
特定の実施形態において、本明細書に提供されるT細胞は、外因的に導入されたp40及びCCL-19を更に発現する。上記及び以下の第6節に記載するとおり、かかるCAR-T細胞は、意外にも優れた効果を実証した。
かかるCAR-T細胞は、上記の第5.3.7節に記載されるポリペプチドをT細胞に導入することによって作製し得る。
より具体的には、一部の実施形態において、外因的に導入されたp40及びCCL-19を発現するCAR-T細胞は、第5.3.7節に記載されるポリペプチドをコードする1つ以上の核酸を導入することによって作製し得る。
CAR、p40及びCCL-19は、各々、別個のポリペプチドとしてT細胞に別個に導入することができる。例えば、本明細書に提供されるCARをコードする核酸、p40をコードする核酸、及びCCL-19をコードする核酸が、T細胞に別個に導入される。
代わりに、これらの3つのうちの任意の2つ又は3つ全てが、細胞での翻訳時に切断されることになる1つの核酸によって単一のポリペプチドとしてT細胞に一緒に導入され得る。例えば、自己切断型ペプチドリンカーで連結された本明細書に提供されるCARとp40とを含むポリペプチドをコードする核酸がT細胞に導入され、別個に、CCL-19をコードする核酸がT細胞に導入される。同様に、自己切断型ペプチドリンカーで連結された本明細書に提供されるCARとCCL-19とを含むポリペプチドをコードする核酸がT細胞に導入され、別個に、p40をコードする核酸がT細胞に導入される。一部の実施形態において、自己切断型ペプチドリンカーで互いに連結されたCAR、p40及びCCL-19の3つ全てを含むポリペプチドをコードする核酸がT細胞に導入され得る。自己切断型ペプチドリンカーについては、上記に更に詳細に記載している。一部の実施形態において、2A自己切断型ペプチドは、F2A、E2A、P2A、T2A、又はこれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態において、自己切断型ペプチドは、配列番号138のアミノ酸配列を含む2A自己切断型ペプチドP2A断片である。具体的な実施形態において、自己切断型ペプチドは、配列番号139のアミノ酸配列を含むT2A断片である。
代わりに、本明細書に提供されるCAR-T細胞は、複数の領域、例えば、CARをコードする領域、p40をコードする領域、及び/又はCCL-19をコードする領域を含むポリヌクレオチドによって作製することができる。異なる領域が同じプロモーターによって制御され得る。例えば、一部の実施形態において、本明細書では、1つのプロモーターから複数の遺伝子を発現させるため、配列内リボソーム進入部位(IRES)が使用される。他の実施形態において、異なる領域は別個のプロモーターによって制御される。
他の特性の中でも特に、外因的に導入されたp40及びCCL-19を発現するCAR-T細胞は、外因的に導入されたp40及びCCL-19のないCAR-T細胞と比較したとき、高いレベルのIL-23を有する。一部の実施形態において、IL-23のレベルは少なくとも20%高い。一部の実施形態において、IL-23のレベルは少なくとも50%高い。一部の実施形態において、IL-23のレベルは少なくとも80%高い。
5.5.ポリヌクレオチド
特定の実施形態において、本開示は、GPC3に結合する本抗体及び本明細書に記載されるGPC3に結合する抗体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。本開示のポリヌクレオチドは、RNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAには、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAが含まれ;及び二本鎖又は一本鎖であり得、一本鎖の場合、コード鎖又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、cDNAの形態である。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチドである。
特定の実施形態において、本開示は、本明細書に提供されるGPC3 CARをコードするポリヌクレオチドを提供する。本開示のポリヌクレオチドは、RNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれ;及び二本鎖又は一本鎖であり得、一本鎖の場合、コード鎖又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、cDNAの形態である。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチドである。
本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドの変異体に更に関し、ここで、変異体は、例えば、本開示のGPC3に結合する抗体又はCARの断片、類似体、及び/又は誘導体をコードする。特定の実施形態において、本開示は、本開示のGPC3に結合する抗体又はCARをコードするポリヌクレオチドと少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、及び一部の実施形態では、少なくとも約96%、97%、98%又は99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。本明細書で使用されるとき、語句「参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一」のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドにつき最大5個の点突然変異を含み得ることを除いては、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味するものと意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを入手するために、参照配列中のヌクレオチドの最大5%が欠失しているか若しくは別のヌクレオチドに置換され得るか、又は参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドが参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端位置に存在し得るか、又はこれらの末端位置間のいずれかにおいて、参照配列中のヌクレオチド間に個々に散在するか、若しくは参照配列内で1つ以上の連続する一纏まりになって散在するかのいずれかで存在し得る。
ポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、又は両方に変化を含有し得る。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、サイレントな置換、付加、又は欠失を生じさせるものの、コードされるポリペプチドの特性又は活性は変化させることのない変化を含有する。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、ポリペプチドのアミノ酸配列に(遺伝子コードの縮重に起因して)変更を生じさせないサイレント置換を含む。ポリヌクレオチド変異体は、種々の理由から、例えば、特定の宿主にコドン発現を最適化するため(即ちヒトmRNAのコドンを大腸菌(E.coli)などの細菌宿主に好ましいものに変更するため)作製され得る。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、配列の非コード領域又はコード領域に少なくとも1つのサイレント突然変異を含む。
一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、コードされるポリペプチドの発現(又は発現レベル)が調節され、又は変化するように作製される。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、コードされるポリペプチドの発現が増加するように作製される。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、コードされるポリペプチドの発現が減少するように作製される。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、親ポリヌクレオチド配列と比較したとき、コードされるポリペプチドの発現の増加を示す。一部の実施形態において、ポリヌクレオチド変異体は、親ポリヌクレオチド配列と比較したとき、コードされるポリペプチドの発現の減少を示す。
本明細書に記載される核酸分子を含むベクターも提供される。ある実施形態において、核酸分子は、組換え発現ベクターに導入することができる。本開示は、本開示の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書で使用されるとき、用語「組換え発現ベクター」は、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列をそのコンストラクトが含み、且つmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを細胞内で発現させるのに十分な条件下でベクターが細胞と接触したときに、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの発現を可能にする遺伝子修飾されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味する。本明細書に記載されるベクターは、全体としては天然に存在しないものであるが、しかしながら、ベクターの各部は、天然に存在するものであり得る。記載される組換え発現ベクターは、限定はされないが、DNA及びRNAを含め、任意の種類のヌクレオチドを含むことができ、これは、一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても又は一部が天然の供給源から入手され得、及び天然の、非天然の又は変化したヌクレオチドを含有し得る。組換え発現ベクターは、天然に存在する又は天然に存在しないインターヌクレオチド結合、又は両方の種類の結合を含み得る。天然に存在しない又は変化したヌクレオチド又はインターヌクレオチド結合は、ベクターの転写又は複製を妨げない。
ある実施形態において、本開示の組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主の形質転換又はトランスフェクションに使用することができる。好適なベクターには、プラスミド及びウイルスなど、増殖及び拡大若しくは発現又は両方に向けて設計されたものが含まれる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences、Glen Burnie,Md.)、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla,Calif.)、pETシリーズ(Novagen、Madison,Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala,スウェーデン)、及びpEXシリーズ(Clontech、Palo Alto,Calif.)からなる群から選択することができる。λGT10、λGT11、λEMBL4、及びλNM1149、λZapII(Stratagene)などのバクテリオファージベクターが使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI01.2、pBI121、pBI101.3、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、ガンマレトロウイルスベクターであり得る。
ある実施形態において、組換え発現ベクターは、例えば、Sambrook et al.、前掲、及びAusubel et al.、前掲に記載される標準的な組換えDNA技法を用いて調製される。環状又は線状である発現ベクターのコンストラクトは、原核生物又は真核生物宿主細胞で機能する複製システムを含むように調製することができる。複製システムは、例えば、ColE1、SV40、2μプラスミド、λ、ウシパピローマウイルスなどに由来することができる。
組換え発現ベクターは、必要に応じて、及びベクターがDNAベースか、それともRNAベースかを考慮に入れて、ベクターを導入しようとする宿主の種類(例えば、細菌、植物、真菌、又は動物)に特異的な調節配列、例えば転写及び翻訳開始及び終止コドンなどを含み得る。
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主の選択を可能にする1つ以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質耐性、重金属耐性等、栄養要求性宿主における原栄養性をもたらす補完などが挙げられる。記載される発現ベクターに好適なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ヒスチジノールx(histidinol x)耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
組換え発現ベクターは、本開示のヌクレオチド配列に作動可能に連結された天然又は非天然プロモーターを含むことができる。例えば、強い、弱い、組織特異的、誘導性及び発生段階特異的など、プロモーターの選択は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと組み合わせることも当業者の技術の範囲内にある。プロモーターは、非ウイルス性プロモーター又はウイルス性プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター、又はマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復配列に見られるプロモーターであり得る。
組換え発現ベクターは、一過性発現用、安定発現用、又は両方のいずれにも設計することができる。組換え発現ベクターは、構成的発現用又は誘導性発現のためにも作ることができる。
更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作ることができる。本明細書で使用されるとき、用語「自殺遺伝子」は、その自殺遺伝子を発現する細胞の死滅を引き起こす遺伝子を指す。自殺遺伝子は、その遺伝子が発現する細胞に対して薬剤、例えば薬物への感受性を付与し、細胞が薬剤と接触するか又はそれに曝露されたときに、その細胞の死滅を引き起こす遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼが挙げられる。
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは単離されている。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。
本明細書に記載される核酸分子を含む宿主細胞も提供される。宿主細胞は、異種核酸を含有する任意の細胞であり得る。異種核酸は、ベクター(例えば、発現ベクター)であり得る。例えば、宿主細胞は、細胞による物質の産生、例えば細胞による遺伝子、DNA若しくはRNA配列、タンパク質又は酵素の発現のために、何らかの方法で選択され、修飾され、形質転換され、成長し、使用され、又は操作される任意の生物からの細胞であり得る。適切な宿主が決定され得る。例えば、宿主細胞は、ベクター骨格及び所望の結果に基づき選択され得る。例として、数種類のベクターの複製のために、原核生物宿主細胞にプラスミド又はコスミドを導入することができる。限定はされないが、DH5α、JM109、及びKCB、SURE(登録商標)コンピテント細胞、及びSOLOPACK Gold細胞などの細菌細胞は、ベクター複製及び/又は発現のための宿主細胞として使用することができる。加えて、大腸菌(E.coli)LE392などの細菌細胞は、ファージウイルスのための宿主細胞として使用できる可能性がある。宿主細胞として使用することのできる真核細胞としては、限定はされないが、酵母(例えば、YPH499、YPH500及びYPH501)、昆虫及び哺乳類が挙げられる。ベクターの複製及び/又は発現のための哺乳類真核生物宿主細胞の例としては、限定はされないが、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、COS、Saos、PC12、SP2/0(American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas,VA、CRL-1581)、NS0(European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Salisbury,Wiltshire,英国、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL-1646)及びAg653(ATCC CRL-1580)マウス細胞株が挙げられる。例示的ヒト骨髄腫細胞株は、U266(ATCC CRL-TIB-196)である。他の有用な細胞株としては、CHO-K1SV(Lonza Biologics、Walkersville,MD)、CHO-K1(ATCC CRL-61)又はDG44など、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
5.6.医薬組成物
一態様において、本開示は、本開示の抗体、抗体を含む結合分子若しくは治療用分子、又は改変免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物を更に提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は、治療有効量の、本開示の抗体、抗体を含む結合分子若しくは治療用分子又は改変免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。
一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の、本明細書に提供される抗体と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の、本明細書に提供される抗体を含む治療用分子(融合タンパク質、イムノコンジュゲート及び多重特異性結合分子など)と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
他の実施形態において、本明細書では、治療有効量の、本明細書に提供される抗体を含むCARと、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
他の実施形態において、本明細書では、治療有効量の、本明細書に提供される改変免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
他の実施形態において、本明細書では、治療有効量の、例えばベクター内にある、本明細書に提供される核酸と、例えば遺伝子療法に好適である薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
具体的な実施形態において、用語「賦形剤」は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全又は不完全)、担体又は媒体も指し得る。医薬賦形剤は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物又は合成起源のものを含めた油及び水など、無菌の液体であり得る。生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も液体賦形剤として用いることができる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。本組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤も含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、散剤、徐放性製剤などの形態をとり得る。好適な医薬賦形剤の例については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co.,Easton,PAに記載されている。かかる組成物は、精製された形態にあるなど、本明細書に提供される活性成分の予防有効量又は治療有効量を、患者への適切な投与に適った形態を提供するために好適な量の賦形剤と共に含有することになる。製剤は、投与様式に適していなければならない。
一部の実施形態において、賦形剤の選択は、一部には、詳細な細胞、結合分子及び/若しくは抗体並びに/又は投与方法によって決まる。従って、種々の好適な配合がある。
典型的には、許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる投薬量及び濃度で被投与者にとって非毒性であり、緩衝剤、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを含めた抗酸化剤;保存剤、等張化剤、安定化剤、金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);EDTAなどのキレート剤及び/又は非イオン性界面活性剤が挙げられる。
緩衝剤は、特に安定性がpH依存的である場合、治療有効性が最適となる範囲にpHを制御するために使用され得る。本開示での使用に好適な緩衝薬剤としては、有機酸及び無機酸の両方及びそれらの塩が挙げられる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。加えて、緩衝剤は、ヒスチジン及びトリスなどのトリメチルアミン塩を含み得る。
微生物の増殖を遅らせるため、保存剤が加えられ得る。本開示での使用に好適な保存剤としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。
等張化剤は、時に「安定化剤」としても知られ、組成物中の液体の張性を調整又は維持するために存在し得る。タンパク質及び抗体などの大型の荷電生体分子と共に使用されるとき、等張化剤は、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用することができ、それによって分子間及び分子内相互作用の可能性を減じるため、多くの場合に「安定化剤」と称される。例示的等張化剤としては、多価糖アルコール類、三価以上の糖アルコール類、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールなどが挙げられる。
更なる例示的賦形剤としては、(1)増量剤、(2)溶解度促進剤、(3)安定化剤及び(4)変性又は容器壁への接着を防止する薬剤が挙げられる。かかる賦形剤としては、多価糖アルコール類(上記に列挙した);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど;有機糖類又は糖アルコール類、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール類(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコールなど;含硫還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウムなど;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、例えば、ラフィノースなど;及び多糖類、例えば、デキストリン又はデキストランなどが挙げられる。
治療用薬剤の溶解を促進し、且つ治療用タンパク質を撹拌誘発性の凝集から保護するため、非イオン性界面活性剤又はデタージェント(「湿潤剤」としても知られる)が存在し得、これは、活性治療用タンパク質又は抗体の変性を引き起こすことなく製剤が剪断表面応力に曝露されることも可能にする。好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート類(20、40、60、65、80等)、ポロキサマー類(184、188等)、PLURONIC(登録商標)ポリオール類、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル類(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80等)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することのできるアニオン性デタージェントとしては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びジオクチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性デタージェントとしては、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
医薬組成物をインビボ投与に使用するために、それは、好ましくは、無菌である。医薬組成物は、滅菌ろ過膜を通したろ過によって無菌にされ得る。本明細書における医薬組成物は、概して、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針を突き刺すことのできる栓を有する静注液バッグ又はバイアルに入れることができる。
投与経路は、好適な方法での長時間にわたる単回又は複数回ボーラス又は注入、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内又は関節内経路による注射又は注入によるか、局所投与、吸入によるか、又は持続放出若しくは長時間放出によるなど、公知の一般に認められた方法に従う。
別の実施形態において、医薬組成物は、制御放出又は持続放出システムとして提供され得る。一実施形態では、制御放出又は持続放出を実現するため、ポンプを使用し得る(例えば、Sefton,Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201-40(1987);Buchwald et al.,Surgery 88:507-16(1980);及びSaudek et al.,N.Engl.J.Med.321:569-74(1989)を参照されたい)。別の実施形態では、予防用又は治療用薬剤(例えば、本明細書に記載されるとおりの融合タンパク質)又は本明細書に提供される組成物の制御放出又は持続放出を実現するため、ポリマー材料を使用することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release(Langer and Wise eds.,1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance(Smolen and Ball eds.,1984);Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61-126(1983);Levy et al.,Science 228:190-92(1985);During et al.,Ann.Neurol.25:351-56(1989);Howard et al.,J.Neurosurg.71:105-12(1989);米国特許第5,679,377号明細書;同第5,916,597号明細書;同第5,912,015号明細書;同第5,989,463号明細書;及び同第5,128,326号明細書;国際公開第99/15154号パンフレット及び同第99/20253号パンフレットを参照されたい)。持続放出製剤に使用されるポリマーの例としては、限定はされないが、ポリ(2-メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド類(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド類(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)類(PLGA)、及びポリオルトエステル類が挙げられる。一実施形態において、持続放出製剤に使用されるポリマーは、不活性であり、浸出性不純物を含まず、貯蔵時に安定性があり、無菌であり、且つ生分解性である。更に別の実施形態において、制御放出又は持続放出システムは、特定の標的組織、例えば、鼻道又は肺に近接して置かれ得、従って全身用量のごく一部のみが必要となる(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release Vol.2,115-38(1984)を参照されたい)。制御放出システムについては、例えば、Langer,Science 249:1527-33(1990)によって考察されている。当業者に公知の任意の技法を使用して、本明細書に記載されるとおりの1つ以上の薬剤を含む持続放出製剤を作製することができる(例えば、米国特許第4,526,938号明細書、国際公開第91/05548号パンフレット及び同第96/20698号パンフレット、Ning et al.,Radiotherapy&Oncology 39:179-89(1996);Song et al.,PDA J.of Pharma.Sci.&Tech.50:372-97(1995);Cleek et al.,Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853-54(1997);及びLam et al.,Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.24:759-60(1997)を参照されたい)。
本明細書に記載される医薬組成物は、治療下の詳細な適応症の必要に応じて2つ以上の活性化合物又は薬剤も含有し得る。代わりに又は加えて、本組成物は、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤又は増殖抑制剤を含み得る。かかる分子は、好適には、意図される目的に有効な量において組み合わせで存在する。
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法によるか、又は界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリメタクリル酸メチル)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノパーティクル及びナノカプセル)又はマクロエマルションにも封入され得る。かかる技法については、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th editionに開示されている。
様々な組成物及び送達システムが公知であり、限定はされないが、リポソーム、マイクロパーティクル、マイクロカプセルへの封入、本明細書に提供される抗体又は治療用分子の発現能を有する組換え細胞、レトロウイルスベクター又は他のベクターの一部としての核酸の構築等を含め、本明細書に提供される治療用薬剤と共に使用することができる。
一部の実施形態において、本明細書に提供される医薬組成物は、結合分子及び/又は細胞を、治療有効量又は予防有効量など、疾患又は障害の治療又は予防に有効な量で含有する。治療又は予防有効性は、一部の実施形態では、治療される対象の定期的評価によってモニタされる。数日以上にわたる反復投与については、病態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで治療が繰り返される。しかしながら、他の投薬量レジメンが有用であることもあり、それを決定することができる。
5.7.方法及び使用
別の態様において、本明細書では、抗GPC3抗体、キメラ抗原受容体(CAR)、及び/又は組換え受容体を発現する改変細胞を含めた、本明細書に提供されるGPC3結合分子を使用する方法及びその使用が提供される。
5.7.1.治療方法及び使用
かかる方法及び使用は、例えば、GPC3を発現するか又はGPC3発現に関連し、及び/又は細胞又は組織がGPC3を発現する疾患、病態又は障害を有する対象への分子、細胞又はそれを含有する組成物の投与が関わる治療方法及び使用を含む。一部の実施形態において、分子、細胞及び/又は組成物は、疾患又は障害の治療を達成するのに有効な量で投与される。使用には、かかる方法及び治療における、及びかかる治療方法を実行するための医薬の調製における抗体及び細胞の使用が含まれる。一部の実施形態において、本方法は、疾患又は病態を有するか又は有する疑いがある対象に、抗体又は細胞、又はそれを含む組成物を投与することによって行われる。一部の実施形態では、それによって本方法は対象の疾患又は障害を治療する。
一部の実施形態において、本明細書に提供される治療は、疾患又は障害、又はそれに関連する症状、有害作用若しくはアウトカム、又は表現型の完全な又は部分的な改善又は低減を生じさせる。治療の望ましい効果としては、限定はされないが、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の好転が挙げられる。これらの用語には、それを含意するわけではないが、疾患の完治又は任意の症状又は全ての症状若しくはアウトカムへの1つ又は複数の影響の完全消失が含まれる。
本明細書で使用されるとき、一部の実施形態において、本明細書に提供される治療は、疾患又は障害の発症を遅らせ、例えば、疾患(癌など)の発症を延ばし、妨げ、減速させ、遅延させ、安定化させ、抑制し、及び/又は先送りする。この遅延は、治療下の疾患及び/又は個体の経過に応じて時間的に様々な長さであり得る。当業者に明らかなとおり、十分な又は有意な遅延は、個体が疾患又は障害を発症しない点において、事実上、予防を包含し得る。例えば、転移の発症など、後期の癌を遅延させることができる。他の実施形態において、本明細書に提供される方法又は使用は、疾患又は障害を予防する。
一部の実施形態において、疾患又は障害は、GPC3関連疾患又は障害である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、GPC3陽性癌、即ちGPC3を発現又は過剰発現する癌である。GPC3陽性癌の例としては、限定はされないが、HCC、黒色腫、卵巣明細胞癌、卵黄嚢腫瘍(YST)、神経芽細胞腫、肝芽腫、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)、肺扁平上皮癌、肺腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、精巣非セミノーマ胚細胞腫瘍、脂肪肉腫、子宮頸部上皮内新生物、副腎腺腫、シュワン腫、胎児性腫瘍、胃癌(α-フェトプロテインを産生する胃癌など)、結腸直腸癌、食道癌及び甲状腺癌が挙げられる。一部の実施形態において、疾患又は障害は、HCCである。一部の実施形態において、疾患又は障害は、黒色腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、卵巣明細胞癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、卵黄嚢腫瘍(YST)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、神経芽細胞腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肝芽腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肺扁平上皮癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肺腺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、大細胞肺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、小細胞肺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、精巣非セミノーマ胚細胞腫瘍である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、脂肪肉腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、子宮頸部上皮内新生物である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、副腎腺腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、シュワン腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、胎児性腫瘍である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、胃癌(α-フェトプロテインを産生する胃癌など)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、結腸直腸癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、食道癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、甲状腺癌である。
一部の実施形態において、本方法は、養子細胞療法を含み、ここで、提供されるGPC3標的化CARを発現する遺伝子改変細胞が対象に投与される。かかる投与は、疾患又は障害の細胞が破壊の標的となるように、GPC3を標的化する形で細胞の活性化(例えば、T細胞活性化)を促進し得る。
一部の実施形態において、本方法は、疾患又は障害を有する、そのリスクがある、又はそれを有する疑いがあるものなどの対象、組織、又は細胞への細胞又は細胞を含有する組成物の投与を含む。一部の実施形態において、細胞、集団、及び組成物は、例えば、養子T細胞療法などの養子細胞療法で治療されることになる特定の疾患又は障害を有する対象に投与される。一部の実施形態において、細胞又は組成物は、疾患又は障害を有するか又はそのリスクがある対象など、対象に投与される。一部の実施形態において、それによって本方法は、GPC3を発現する癌の腫瘍量を減じることによるなどして、疾患又は障害の1つ以上の症状を治療し、例えば改善する。
養子細胞療法のための細胞の投与方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0170238号明細書;米国特許第4,690,915号明細書;Rosenberg,Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85(2011);Themeli et al.,Nat Biotechnol.31(10):928-933(2013);Tsukahara et al.,Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9(2013);及びDavila et al.,PLoS ONE 8(4):e61338(2013)に記載されるとおり、公知である。これらの方法は、本明細書に提供される方法及び組成物に関連して用いられ得る。
一部の実施形態において、細胞療法(例えば、養子T細胞療法)は、自己移植によって行われ、ここで、細胞療法を受けることになる対象又はかかる対象に由来する試料から細胞が単離され、且つ/又は他の方法で調製される。従って、一部の態様において、細胞は、治療を必要としている対象に由来し、その細胞が、単離及び処理後に、同じ対象に投与される。他の実施形態において、細胞療法(例えば、養子T細胞療法)は同種異系移植によって行われ、ここで、細胞療法を受けることになるか又は最終的に受ける対象、例えば第1の対象以外の対象から細胞が単離され、且つ/又は他の方法で調製される。かかる実施形態において、次に、細胞は、同じ種の別の対象、例えば第2の対象に投与される。一部の実施形態において、第1及び第2の対象は、遺伝学的に同一である。一部の実施形態において、第1及び第2の対象は、遺伝学的に類似している。一部の実施形態において、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラス又はサブタイプを発現する。他の実施形態において、細胞療法(例えば、養子T細胞療法)は同種異系移植によって行われる。
一部の実施形態において、細胞、細胞集団又は組成物が投与される対象は、ヒトなどの霊長類である。対象は、雄又は雌であり得、乳児、若年、青年、成人及び老年対象を含め、任意の好適な年齢であり得る。一部の例において、対象は、疾患、養子細胞療法及び/又は毒性アウトカムの評価について妥当性が確認されている動物モデルである。
GPC3に結合する抗体及びキメラ抗原受容体などのGPC3結合分子並びにそれを発現する細胞は、任意の好適な手段、例えば注射、例えば静脈内又は皮下注射、眼内注射、眼窩周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、球後注射、球周囲注射又は後部強膜近傍送達によって投与することができる。一部の実施形態において、それらは、非経口、肺内及び鼻腔内並びに局所治療が必要であれば病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。
疾患又は病態の予防及び/又は治療において有効となり得る本明細書に提供される予防用又は治療用薬剤の量は、標準的な臨床技法によって決定することができる。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから導き出された用量反応曲線から推定され得る。疾患の予防又は治療には、結合分子又は細胞の適切な投薬量は、治療しようとする疾患又は障害の種類、結合分子の種類、疾患又は障害の重症度及び経過、治療用薬剤が予防目的で投与されるか、それとも治療目的で投与されるか、過去の療法、患者の病歴及び薬剤に対する応答並びに主治医の裁量に依存し得る。組成物、分子及び細胞は、一部の実施形態において、好適には患者に一度に投与されるか又は一連の治療にわたって投与される。
例えば、疾患の種類及び重症度に応じて、抗体の投薬量は、約10μg/kg~100mg/kg又はそれ以上を含み得る。複数回用量が間欠的に投与され得る。初期のより高い負荷用量と、続く1回以上のより低い用量が投与され得る。一部の実施形態において、医薬組成物が、本明細書に記載される抗体のいずれか1つを含む場合、医薬組成物は、投与経路に応じて、1日約10ng/kg~最高約100mg/kg(個体の体重)又はそれ以上の投薬量、例えば、約1mg/kg/日~10mg/kg/日で投与される。詳細な投薬量及び送達方法に関する手引きは、文献に提供される(例えば、米国特許第4,657,760号明細書;同第5,206,344号明細書;及び同第5,225,212号明細書を参照されたい)。
結合分子を含有する遺伝子改変細胞のコンテクストでは、一部の実施形態において、対象は、約100万~約1000億個の細胞及び/又は体重1キログラム当たりその量の細胞の範囲で投与され得る。一部の実施形態において、医薬組成物が、本明細書に記載される改変免疫細胞のいずれか1つを含む場合、医薬組成物は、少なくとも約104、105、106、107、108、又は109細胞/kg(個体の体重)のいずれかの投薬量で投与される。投薬量は、疾患又は障害及び/又は患者及び/又は他の治療に特有の属性に応じて異なり得る。
一部の実施形態において、医薬組成物は単回投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は複数回(2、3、4、5、6回、又はそれ以上のいずれかなど)投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、投与サイクル中に1回又は複数回投与される。投与サイクルは、例えば、1、2、3、4、5週間又はそれ以上、又は1、2、3、4、5ヵ月、又はそれ以上であり得る。詳細な患者に対する最適な投薬量及び治療レジームは、医学分野の当業者が患者を疾患徴候に関してモニタし、それに応じて治療を調整することによって決定し得る。
一部の実施形態において、細胞又は抗体は、別の抗体又は改変細胞若しくは受容体又は細胞傷害性薬剤若しくは治療用薬剤などの薬剤など、別の治療介入と同時に又はそれと逐次的に任意の順番で投与されるなど、併用治療の一部として投与される。
一部の実施形態において、細胞又は抗体は、1つ以上の追加の治療用薬剤と共に、又は別の治療介入に関連して、同時に共投与されるか、又は任意の順番で逐次的に共投与されるかのいずれかである。一部のコンテクストでは、細胞は別の療法と共に時間的に十分に近接して共投与され、従って細胞集団が1つ以上の追加の治療用薬剤の効果を増強することになり、又はその逆である。一部の実施形態において、細胞又は抗体は、1つ以上の追加の治療用薬剤より前に投与される。一部の実施形態において、細胞又は抗体は、1つ以上の追加の治療用薬剤より後に投与される。
特定の実施形態において、細胞が哺乳類(例えば、ヒト)に投与された後、幾つもの公知の方法のいずれかによって改変細胞集団及び/又は抗体の生物学的活性が測定される。評価されるパラメータとしては、例えばイメージングによるインビボでの、又は例えばELISA若しくはフローサイトメトリーによるエキソビボでの、抗原に対する改変又は天然T細胞又は他の免疫細胞の特異的結合が挙げられる。特定の実施形態において、改変細胞が標的細胞を破壊する能力が、例えば、Kochenderfer et al.,J.Immunotherapy,32(7):689-702(2009)、及びHerman et al.J.Immunological Methods,285(1):25-40(2004)に記載される細胞傷害性アッセイなど、当技術分野において公知の任意の好適な方法を用いて測定され得る。特定の実施形態において、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2及びTNFなど、ある種のサイトカインの発現及び/又は分泌を評価することによっても測定され得る。一部の態様において、生物学的活性は、腫瘍量又は負荷の減少など、臨床アウトカムを評価することによって測定される。
一部の具体的な実施形態において、本明細書では、対象の疾患又は障害を治療する方法であって、例えば、表3及び表4のCDRを有するものを含めた、上記の第5.2節に記載されるとおりのGPC3に結合する抗体、より具体的には、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号51のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号32のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号42のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号52のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号33のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号43のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号53のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号34のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号44のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号54のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号35のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号45のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号55のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号56のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(vii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号27のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号47のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号57のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(viii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号48のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号58のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(ix)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号29のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号39のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号49のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号59のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は(x)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号40のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号50のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号60のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む抗GPC3抗体を含む結合分子を対象に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態において、抗体は、配列番号61~70及び117~122の群から選択されるVHドメインと、配列番号71~80及び123~125の群から選択されるVLドメインとを含む。一部の実施形態において、疾患又は障害は、GPC3関連疾患又は障害である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、GPC3陽性癌、即ちGPC3を発現又は過剰発現する癌である。GPC3陽性癌の例としては、限定はされないが、HCC、黒色腫、卵巣明細胞癌、卵黄嚢腫瘍(YST)、神経芽細胞腫、肝芽腫、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)、肺扁平上皮癌、肺腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、精巣非セミノーマ胚細胞腫瘍、脂肪肉腫、子宮頸部上皮内新生物、副腎腺腫、シュワン腫、胎児性腫瘍、胃癌(α-フェトプロテインを産生する胃癌など)、結腸直腸癌、食道癌及び甲状腺癌が挙げられる。一部の実施形態において、疾患又は障害は、HCCである。一部の実施形態において、疾患又は障害は、黒色腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、卵巣明細胞癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、卵黄嚢腫瘍(YST)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、神経芽細胞腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肝芽腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肺扁平上皮癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肺腺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、大細胞肺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、小細胞肺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、精巣非セミノーマ胚細胞腫瘍である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、脂肪肉腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、子宮頸部上皮内新生物である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、副腎腺腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、シュワン腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、胎児性腫瘍である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、胃癌(α-フェトプロテインを産生する胃癌など)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、結腸直腸癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、食道癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、甲状腺癌である。
他の具体的な実施形態において、本明細書では、対象の疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に提供されるCAR、例えば、表3及び表4のCDRを有するもの、及び配列番号61~70及び117~122の群から選択されるVHドメインと配列番号71~80及び123~125の群から選択されるVLドメインとを含むものを例えば含めた、上記の第5.2節に記載されるとおりのGPC3に結合する抗体(scFvなど)を含むCARを発現する改変免疫エフェクター細胞を対象に投与することを含む方法が提供される。より具体的な実施形態において、疾患又は障害を治療するための本免疫エフェクター細胞のCAR中の抗体は、配列番号81~90、128及び129のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むscFvである。他の具体的な実施形態において、疾患又は障害を治療するための改変免疫エフェクター細胞(T細胞など)は、配列番号91~100、107~116及び130~131のアミノ酸配列、又は配列番号91~100、107~116及び130~131のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むCARを含む。一部の実施形態において、疾患又は障害は、GPC3関連疾患又は障害である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、GPC3陽性癌、即ちGPC3を発現又は過剰発現する癌である。GPC3陽性癌の例としては、限定はされないが、HCC、黒色腫、卵巣明細胞癌、卵黄嚢腫瘍(YST)、神経芽細胞腫、肝芽腫、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)、肺扁平上皮癌、肺腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、精巣非セミノーマ胚細胞腫瘍、脂肪肉腫、子宮頸部上皮内新生物、副腎腺腫、シュワン腫、胎児性腫瘍、胃癌(α-フェトプロテインを産生する胃癌など)、結腸直腸癌、食道癌及び甲状腺癌が挙げられる。一部の実施形態において、疾患又は障害は、HCCである。一部の実施形態において、疾患又は障害は、黒色腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、卵巣明細胞癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、卵黄嚢腫瘍(YST)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、神経芽細胞腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肝芽腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肺扁平上皮癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、肺腺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、大細胞肺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、小細胞肺癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、精巣非セミノーマ胚細胞腫瘍である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、脂肪肉腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、子宮頸部上皮内新生物である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、副腎腺腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、シュワン腫である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、胎児性腫瘍である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、胃癌(α-フェトプロテインを産生する胃癌など)である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、結腸直腸癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、食道癌である。一部の実施形態において、疾患又は障害は、甲状腺癌である。
5.7.2.診断及び検出方法及び使用
別の態様において、本明細書では、GPC3及び/又は抗体によって認識されるそのエピトープの存在の検出によるなど、検出、予後判定、診断、病期分類、1つ以上の組織又は細胞型への特定の治療の結合の決定及び/又は対象における治療法の決定の通知のための、本明細書に提供される結合分子、例えばGPC3に結合する抗体及びかかる抗体を含有する分子(コンジュゲート及び複合体など)の使用が関わる方法が提供される。
一部の実施形態において、診断又は検出方法における使用のための抗GPC3抗体(本明細書に記載される抗GPC3抗体のいずれか1つなど)が提供される。更なる態様において、生体試料中のGPC3の存在を検出する方法が提供される。特定の実施形態において、本方法は、生体試料中のGPC3タンパク質の存在を検出することを含む。特定の実施形態において、GPC3はヒトGPC3である。一部の実施形態において、本方法は、GPC3を発現する疾患又は障害に関連した診断及び/又は予後判定方法である。本方法は、一部の実施形態において、生体試料を抗体と共にインキュベート及び/若しくはプローブすること並びに/又は対象に抗体を投与することを含む。特定の実施形態において、生体試料は、腫瘍又は癌組織又は生検又はその切片など、細胞又は組織又はその一部分を含む。特定の実施形態において、接触は、試料中に存在するGPC3に抗GPC3抗体が結合することを許容する条件下での接触である。一部の実施形態において、本方法は、抗GPC3抗体と試料中のGPC3との間に複合体が形成されるかどうかを検出すること、例えばかかる結合の有無又はレベルを検出することなどを更に含む。かかる方法は、インビトロ方法であっても、又はインビボ方法であり得る。一実施形態において、抗GPC3抗体は、抗GPC3抗体又は改変抗原受容体による治療に適格な対象を選択するために使用され、例えば、ここで、GPC3が患者選択のためのバイオマーカーである。
一部の実施形態では、細胞、組織試料、ライセート、組成物、又はこれらに由来する他の試料など、試料を抗GPC3抗体と接触させて、抗体と試料(例えば、試料中のGPC3)との間の結合又は複合体の形成を決定又は検出する。同じ組織タイプの参照細胞と比較して、供試試料において結合が実証又は検出された場合、それは、関連する疾患又は障害の存在及び/又は抗体を含有する療法薬が、試料の由来である組織又は細胞又は他の生物学的材料と同じであるか又はそれと同じタイプである組織又は細胞に特異的に結合するであろうことを指示するものであり得る。一部の実施形態において、試料はヒト組織からのものであり、罹患組織及び/又は正常組織からのもの、例えば、治療しようとする疾患又は障害を有する対象からのもの及び/又はかかる対象と同じ種であるが、治療しようとする疾患又は障害を有しない対象からのものであり得る。ある場合には、正常組織又は細胞は、治療しようとする疾患又は障害を有する対象からのものであるが、所与の対象に存在する癌と同じ又は異なる臓器からの正常組織など、それ自体は罹患細胞又は組織でない。
特異的抗体-抗原結合の検出について当技術分野で公知の様々な方法を用いることができる。例示的イムノアッセイとしては、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ネフェロメトリック阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及びラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。アッセイ機器及び適合性のあるイムノアッセイ手順が利用可能かどうかによって決まることの多い本方法の様々な使用の必要性に応えるため、指標部分、又は標識基が使用され得る。例示的標識としては、放射性核種(例えば、125I、131I、35S、3H、又は32P及び/又はクロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、(85Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、又はβ-ガラクトシダーゼ)、蛍光部分又はタンパク質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP、又はBFP)、又は発光部分(例えば、Quantum Dot Corporation、Palo Alto,Calif.によって供給されるQdot(商標)ナノパーティクル)が挙げられる。上記に指摘した様々なイムノアッセイの実施において用いられるべき様々な一般的技法が公知である。
特定の実施形態において、標識された抗体(抗GPC3抗体など)が提供される。標識としては、限定はされないが、直接検出される標識又は部分(蛍光、発色団、高電子密度、化学発光及び放射性標識など)並びに酵素又はリガンドなど、例えば酵素反応又は分子相互作用によって間接的に検出される部分が挙げられる。他の実施形態において、抗体は標識されず、その抗体のいずれかに結合する標識された抗体を使用してその存在が検出され得る。
5.8.キット及び製品
更に、本明細書に記載される抗体、キメラ抗原受容体又は改変免疫エフェクター細胞のいずれかを含むキット、単位投薬量、及び製品が提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物のいずれか1つが入ったキットが提供され、これは好ましくは、その使用に関する説明書を提供する。
本願のキットは、好適な包装内にある。好適な包装としては、限定はされないが、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密封されたMylar又はプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットは、任意選択で、緩衝液及び説明的情報など、追加の構成要素を提供し得る。従って、本願は、バイアル(密封されたバイアルなど)、ボトル、ジャー、フレキシブル包装などを含む製品も提供する。
製品は、容器と、容器上にあるか又は容器と関連付けられたラベル又は添付文書とを含み得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなど、種々の材料で形成され得る。概して、容器は、本明細書に記載される疾患又は障害(癌など)の治療に有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針を突き刺すことのできる栓を有する静注液バッグ又はバイアルであり得る)。ラベル又は添付文書は、組成物が個体の特定の病態の治療に使用されることを表示する。ラベル又は添付文書は、個体への組成物の投与に関する説明書を更に含むことになる。ラベルは、再構成及び/又は使用に関する指図を表示し得る。医薬組成物を保持する容器は、複数回使用バイアルであり得、これによれば、再構成した製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)が可能である。添付文書とは、治療薬製品の商業用パッケージに慣例上含まれる、適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌及び/又はかかる治療薬製品の使用に関する警告についての情報を含む説明書を指す。加えて、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液など、薬学的に許容可能な緩衝液を含む第2の容器を更に含み得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、及びシリンジを含め、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。
キット又は製品は、薬局、例えば、院内薬局及び調剤薬局での貯蔵及び使用に十分な量で包装された、複数単位用量の医薬組成物及び使用説明書を含み得る。
簡潔にするため、本明細書では特定の略号が使用される。一例は、アミノ酸残基を表す一文字略号である。アミノ酸並びにその対応する三文字及び一文字略号は、以下のとおりである:
本開示は、概して、多くの実施形態を説明する際に肯定的文言を用いて本明細書に開示される。本開示は、具体的には、物質又は材料、方法ステップ及び条件、プロトコル、手順、アッセイ又は分析など、特定の主題が完全に又は部分的に除外される実施形態も含む。従って、本明細書において本開示が何を含まないかを本開示が概して明示していないとしても、それにも関わらず、本明細書には、本開示に明示的に含まれない態様が開示される。
幾つもの本開示の実施形態が説明されている。それにも関わらず、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変形形態がなされ得ることが理解されるであろう。従って、以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される開示の範囲を限定するのでなく、例示することが意図される。
以下は、本研究で使用される様々な方法及び材料の説明であり、本開示の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らがその開示と見なすものの範囲を限定するように意図するものでなく、また以下の実験が実施されたこと及び実施し得る実験の全てであることを表明するように意図するものでもない。現在時制で書かれる例示的説明が必ずしも実施されたとは限らず、むしろそうした説明が、本開示の教示に関連するデータなどを生成するために実施され得ることが理解されるべきである。使用される数字(例えば、量、百分率等)に関しては正確さを確保するよう労力を注いだが、幾らかの実験誤差及び偏差は考慮されなければならない。
6.1.実施例1-抗GPC3抗体の作成
動物の免疫化及び免疫応答試験
GenScriptの注文サービスを通してハイブリドーマプラットフォームによりGPC3に対する抗体を生じさせた。ヒト組換えタンパク質GPC3(ACRO、カタログ番号GP3-H5223)は、GenscriptによりImmunoPlus(商標)技術によって修飾された。雌Balb/c及びC57bl/6マウスに、200μLのフロイント完全アジュバント(Sigma、カタログ番号F5881)及び50μgのGPC3融合タンパク質(配列番号106)を含有する1:1エマルションを皮下免疫した。次に、免疫を増強するため、2週間毎に、マウスにおいてフロイント不完全アジュバント(Sigma、カタログ番号F5506)及び25μg GPC3融合タンパク質を含有する1:1エマルションで皮下注射と交互の腹腔内注射を採用した。409番及び416番を別として、他のマウスの血清力価は5回の免疫後に105を上回った。
抗体力価が最も高かった2匹のマウス(410番及び412番)が、25μg GPC3融合タンパク質(アジュバントなし)の腹腔内ブーストを受け、ハイブリドーマ融合に選択された。2匹の免疫化マウスの血清は、典型的なGPC3+ HepG2細胞(ATCC、カタログ番号HB-8065)に対しても有意な結合活性を示した。試験採血血清中の抗体は、410番マウスについて19.1から始まって112への、及び412番マウスについて19.1から62.9へのHepG2細胞に対する結合を示した。
抗GPC3抗体のスクリーニング
GenScriptのサービスを通して、完全長ヒト、マウス又はカニクイザルGPC3をコードするcDNA(それぞれNM_004484.3、NM_016697.3又はXM_005594608.2)をプラスミドPLVX-puro(Clontech、カタログ番号632164)に合成し、次にこれらのプラスミドをそれぞれPLVX-huGPC3、PLVX-muGPC3又はPLVX-cmGPC3と命名した。高力価組換えレンチウイルスを作製し、SK-HEP-1細胞(ATCC、カタログ番号HTB-52)に形質導入した。100μLレンチウイルス上清(100倍濃縮)を6ウェルプレート内の50万個の標的細胞に加え、この混合物を遠心機(1200g、32℃、90分)でインキュベートした。ピューロマイシンでスクリーニングした後、GPC3のインビトロ細胞外発現をフローサイトメトリーによってモニタした。PEコンジュゲート抗GPC3特異的モノクローナル抗体(R&D、カタログ番号FAB2119P)を検出抗体として使用した。この方法の後、標識されたSK-HEP-1-huGPC3の平均蛍光強度(MFI)はSK-HEP-1細胞の7.67倍の高さになった(MFI値、それぞれ1350、176)。標識されたSK-HEP-1-cmGPC3のMFIは、SK-HEP-1細胞の4.36倍の高さになった(MFI値、それぞれ768、176)。同時に、標識されたSK-HEP-1-muGPC3のMFIもSK-HEP-1細胞より高くなった。
最終回のブーストから3日後、力価が良好なマウスの脾細胞を無菌的に調製し、標準的なハイブリドーマ作成プロトコルに従いsp2/0細胞と融合した。ヒト又はカニクイザルGPC3をトランスフェクトしたSK-HEP-1細胞を96ウェルU字底プレート(BD)に1×105細胞/ウェルの密度で播いた。ハイブリドーマ上清をプレートに移し、細胞と4℃で1時間インキュベートした。次に細胞を染色緩衝液(BSA/1×PBS)で2回洗浄した。PEコンジュゲートヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson、カタログ番号115115164)を加え、暗所下4℃で30分間インキュベートした。次に細胞を2回洗浄し、100μLの染色緩衝液に再懸濁した。フローサイトメトリーによって蛍光強度を測定し、FlowJoによって分析した。
ハイブリドーマ上清を一次スクリーニングに使用した。この一次結合スクリーニングにより、抗原特異的結合抗体を産生することができる30個のハイブリドーマが同定された。陽性結合体をサブクローニングのために選択した。各選択された株のハイブリドーマ細胞を96ウェルプレートに1細胞/ウェルの密度で播いた。このプレートを、加湿したインキュベーターに37℃、5%CO2で10~12日間置いた。単一クローンをピッキングし、FACSによって試験した。選択されたサブクローンを精製し、結合アッセイ、交差ファミリー結合アッセイ及びビニングアッセイで更に評価した。
モノクローナル抗体は、迅速ELISA SBA Clonotyping System-HRPキット(Southern Biotech、カタログ番号5300-05)によって同定した。ハイブリドーマ細胞からTRIzolによって全RNAを抽出し、抗体サブタイプの特異的及びユニバーサルプライマー(Takara、カタログ番号6210A)を使用することによりcDNAに逆転写した。マウス免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖V領域断片をRACE-PCR(Takara、カタログ番号28001488)によって増幅し、pMD18-Tベクターシステム(Takara、カタログ番号D101A)にサブクローニングした。挿入された断片をベクター特異的プライマーによってシーケンシングした。最後に、LAb19301、LAb19302、LAb19303、LAb19304、LAb19305、LAb19306、LAb19307、LAb19308、LAb19309及びLAb19310のユニークなV領域ヌクレオチド/タンパク質配列を入手した。Clonotyping System-HRP(SouthernBiotech)を使用して抗体アイソタイプを決定した。選択された抗原特異的クローンのCDR配列を、以下のとおり表3及び表4に示す。
抗GPC3抗体の精製
回収されたハイブリドーマ上清を、pHを7.0に調整した後のプロテインAカラム(GE Healthcare、カタログ番号17040201)にロードした。抗体をグリシンによって溶出した後、1Mトリスを用いて直ちに中和した。Nano Dropによって抗体濃度を試験した。SDS-PAGE(GenScript カタログ番号M42012)によってタンパク質の純度を評価した。濃度はA280法によって決定した。タンパク質発現の代表的なデータを表5に要約した。
抗GPC3抗体の親和性
組換えヒトGPC3に対する抗体の結合反応速度を表面プラズモン共鳴(SPR)(例えば、Biacore)によって測定した。単純1対1ラングミュア結合モデル(Biacore評価ソフトウェア)を用いて結合速度(K
a)及び解離速度(K
d)を計算した。平衡解離定数(K
D)を比K
d/K
aとして計算する。測定された抗ヒトGPC3抗体の結合親和性を表6に示す。
FACSによるGPC3細胞株への結合
SK-HEP-1-huGPC3細胞及びSK-HEP-1-cmGPC3を96ウェルU字底プレート(BD)に1×105細胞/ウェルの密度で播いた。精製抗体を染色緩衝液で希釈し、細胞と共に4℃で1時間インキュベートした。次に細胞を染色緩衝液(BSA/1×PBS)で2回洗浄した。PEコンジュゲートヤギ抗マウスIgG Fc抗体を加え、暗所下4℃で30分間インキュベートした。次に細胞を2回洗浄し、100μL染色緩衝液に再懸濁した。フローサイトメトリーによって蛍光強度を測定し、FlowJoによって分析した。
表7に示すとおり、全ての抗体がSK-HEP-1-huGPC3に特異的に結合することができ、しかし空のSK-HEP-1細胞には結合できない。加えて、一部のGPC3抗体は、マウスGPC3とも交差反応することができ、これが安全性評価方法をもたらすことになる可能性がある。
6.2.実施例2-単一特異性scFvベースのキメラ抗原受容体(CAR)の調製及びインビトロスクリーニング
N末端からC末端に、CD8αヒンジドメイン(配列番号102)、CD8α膜貫通ドメイン(配列番号103)、CD137共刺激シグナル伝達ドメイン(配列番号104)、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメイン(配列番号105)を含むCAR骨格ポリペプチドをコードするCAR骨格配列を化学的に合成し、予め修飾したPT7ベクターへと、構成的T7プロモーターの下流に、それに作動可能に連結してクローニングした。得られたCAR骨格ベクターを「PT7-T7-LB193」と命名した。このベクターのマルチクローニング部位(MCS)により、CAR骨格ベクターへと、CAR骨格配列の上流に、それに作動可能に連結して、抗GPC3 scFv断片のN末端に融合したCD8αシグナルペプチド(配列番号101)をコードする核酸配列に作動可能に連結されたコザック配列を含む核酸配列を挿入することが可能であった。CD8αシグナルペプチド及び抗GPC3 scFv断片をコードする核酸配列を化学的に合成し、当技術分野において公知の分子クローニング技術によってPT7-T7-LB193へと、MluI(5’-ACGCGT-3’)(配列番号140)及びSpeI(5’-ACTAGT-3’)(配列番号141)制限部位でクローニングした。RNAのインビトロ転写に必要なエレメントをpUC57ベクター(GenScript、カタログ番号SD1176)にクローニングすることにより、PT7-T7-LB193ベクターを構築した。
それぞれLAb19301~LAb19310モノクローナル抗体(配列番号81~90)のVH及びVLを組み合わせることによって10個の抗GPC3 scFv、LAb19301~LAb19310 scFvを作成し、PT7-T7-LB193ベクター骨格へと単一特異性CARを構築した。ヒトCD8αリーダー配列、ヒトCD8α膜貫通ドメイン並びにヒトT細胞受容体のCD137及びCD3ζ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを融合してキメラ抗原受容体を作成することにより、各抗GPC3 scFvを更に修飾した。選択されたscFvクローンをコードする核酸配列を、CD8αシグナルペプチドをコードする核酸配列の3’側に作動可能に連結した。融合核酸配列を化学的に合成し、当技術分野において公知の分子クローニング技術によってPT7-T7-LB193 CAR骨格へと、MluI(5’-ACGCGT-3’)(配列番号140)及びSpeI(5’-ACTAGT-3’)(配列番号141)制限部位でクローニングした。
GPC3 CAR DNAを線状化し、次にmMESSAGE mMACHINE T7 RNA転写キット(ThermoFisher #AM1344)を用いてRNAを合成した。全てのRNAの作成に転写キットを用いた。インビトロ転写したRNAをポリアデニル化して翻訳開始効率を増強するため、全てのmRNAについて、ポリ(A)テール付加キット(ThermoFisher #AM1350)を使用してRNAの3’末端に少なくとも150ヌクレオチド長のポリ(A)テールを付加した。キャップ付加及びポリ(A)テール付加の後、RNeasy Miniキット(QIAGEN #74104)でRNAを精製した。
T細胞精製
HemacareからPBMCを購入した(#17044560)。Pan T細胞単離キット(Miltenyi #130-096-535)を使用して、以下に記載するとおり製造者のプロトコルに従いPBMCからヒトT細胞を精製した。細胞数を決定し、細胞懸濁液を300gで10分間遠心した。次に上清を全て吸引し、細胞ペレットを107個の総細胞当たり40μLの緩衝液に再懸濁した。107個の総細胞当たり10μLのPan T細胞ビオチン-抗体カクテルを加え、徹底的に混合し、冷蔵庫(2~8℃)で約5分間インキュベートした。次に107個の細胞当たり30μLの緩衝液を加えた。107個の細胞当たり20μLのPan T細胞マイクロビーズカクテルを加えた。細胞懸濁混合物を十分に混合し、冷蔵庫(2~8℃)で更に10分間インキュベートした。磁気分離に最低でも500μLが必要であった。磁気分離のため、好適なMACS分離器の磁場にLSカラムを置いた。このカラムは、3mLの緩衝液でリンスすることによって調製した。次にカラムに細胞懸濁液を入れ、非標識細胞を含有するフロースルーを収集し、これが濃縮T細胞画分に相当した。カラムを3mLの緩衝液で洗浄し、通過する非標識細胞を収集することによって更なるT細胞を収集した。これらの非標識細胞もやはり濃縮T細胞に相当し、前のステップからのフロースルーと合わせた。次に、プールした濃縮T細胞を遠心し、RPMI-1640+300IU/mL IL-2に再懸濁した。
続いて、調製したT細胞をヒトT細胞TransActキット(Miltenyi#130-111-160)で製造者のプロトコルに従い予め48時間活性化し、ここでは抗CD3/CD28 MACSiBead粒子を10μL/百万のビーズ対細胞比で加えた。
CAR-T細胞の調製のため、予め活性化したT細胞を5×106細胞で130μLエレクトロポレーション緩衝液(Celetrix#13-0104)に再懸濁し、エレクトロポレーションのために10μgのmRNAを加えた。エレクトロポレートされないTリンパ球を陰性対照として使用し、種々の抗GPC3 scFv CARを発現するエレクトロポレートしたT細胞の陽性率は、67.4%~85.6%であった(図1)。
細胞傷害性アッセイ
標的細胞は、GPC3陽性ヒト肝細胞癌(HCC)細胞株HepG2.Luc(ATCC#HB-8065)、Huh7.Luc(Cobioer#CBP60202)又はGPC3陰性細胞株SK-HEP1.Luc(ATCC#HTB-52)、A549.Luc(ATCC#CRM-CCL-185)細胞株のいずれかであった。細胞株の全ては、当技術分野において公知の技法によってホタルルシフェラーゼを発現するように改変した。GPC3 CAR-T細胞及び標的細胞を種々の比(各2×103細胞/ウェル)で混合し、384ウェルプレートにて24時間培養した。CAR-Tが腫瘍細胞に及ぼす細胞傷害性をアッセイするため、One-glo発光ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega#E6110)を製造者のプロトコルに従い調製し、共培養細胞に加えて、ウェル内の残留ルシフェラーゼ活性を検出した。ルシフェラーゼは腫瘍細胞においてのみ発現するため、ウェル内の残留ルシフェラーゼ活性は、ウェル内の生存標的細胞の数と直接相関する。エフェクター細胞の非存在下で標的細胞に培養培地を加えることにより、ルシフェラーゼ活性最大値を入手した。細胞傷害性アッセイを開始した時点でTriton X-100を1%の終濃度で加えることにより、ルシフェラーゼ活性最小値を決定した。式:比細胞傷害性%=100%×(1-(RLU試料-RLU最小値)/(RLU最大値-RLU最小値))によって比細胞傷害性を計算した。
図2~図3に示されるとおり、GPC3 CAR-T細胞は、GPC3陽性HCC細胞株HepG2.Luc及びHuh7.Luc細胞に対して種々のレベルの細胞傷害性を用量依存的に呈した。しかし、UnTと比較したとき、GPC3陰性細胞株SK-HEP1.Luc及びA549.Lucに対して強力な細胞傷害性を示したCAR-T細胞はなかった。細胞傷害性データによれば、これらのクローンの中でも特に、LIC19301 CAR-T細胞、LIC19303 CAR-T細胞及びLIC19309 CAR-T細胞が最も強力であった。LIC19301 CAR-T細胞、LIC19303 CAR-T細胞及びLIC19309 CAR-T細胞は、HepG2.Luc細胞及びHuh7.Luc細胞の両方に対して5:1のE/T比でほぼ100%の細胞傷害性を示した。
IFN-γ及びTNF-α放出
GPC3陽性癌細胞に対する細胞傷害活性に加えて、GPC3 CAR-T細胞がIFN-γ及びTNF-αを産生する能力を分析した。GPC3 CAR-T細胞及び標的細胞(Huh7又はSK-HEP1)を2のE/T比(各2×103標的細胞/ウェル)で混合し、384ウェルプレートにて24時間培養し、培養上清中における産生されたIFN-γ及びTNF-αの濃度をELISAによって測定した。結果として、上記の10種類のscFvクローンに由来する全てのGPC3 CAR-T細胞が、GPC3の発現に依存してIFN-γ及びTNF-αを産生する能力を示した。IFN-γ及びTNF-α放出はCAR及びGPC3抗原の両方に特異的であったが、異なるCAR-T細胞間で様々であり、細胞傷害性効力との有意な相関は示されなかった。図4に示されるとおり、CAR-T細胞によって分泌されたIFN-γ及びTNF-αの濃度は、GPC3ベースの活性化後に、5809.7~24997.2pg/mL(IFN-γ)及び1638.1~5667.9pg/mL(TNF-α)の範囲内で有意に増加した。LIC19303 CAR-T細胞、LIC19304 CAR-T細胞、LIC19305 CAR-T細胞及びLIC19309 CAR-T細胞は、試験した全てのCAR-T細胞の中でGPC3陽性Huh7細胞と共培養した後に最も高いサイトカイン放出レベルを呈する一方、GPC3陰性SK-HEP1細胞と共培養すると、いずれの抗GPC3 CAR-T細胞も特異的活性化及びサイトカイン分泌を示さなかった。
6.3.実施例3-インビボでの養子移植後のGPC3 CAR-T細胞の抗腫瘍効果
LIC19309 CAR-T細胞のインビボ抗腫瘍有効性をNCGマウス異種移植モデルで評価した。このモデルは、NOD/NjuマウスにおけるPrkdc及びIl2rg遺伝子座の逐次的なCRISPR/Cas9編集によってNOD/Njuとコアイソジェニックなマウスを生じさせることにより作成した。NOD/Njuは、Sirpa(SIRPα)遺伝子に突然変異を保因しているため、外来性造血幹細胞を生着させることが可能である(Schuler et al.,Cell,1986,46(7):963-972;Sugamura et al.,Annual review of immunology,1996,14(1):179-205;Yamauchi et al.,The Journal of the American Society of Hematology,2013,121(8):1316-1325)。
Prkdcノックアウトにより、適切なT細胞及びB細胞形成を欠くSCID様表現型が生じる。Il2rg遺伝子のノックアウトにより、SCID様表現型が更に悪化する一方で、加えてNK細胞産生が減少することになる。この「三重免疫不全」のマウス系統は、SCID及びヌードマウスを含めた、よく使用される免疫不全マウス系統と比べて免疫無防備状態が一層亢進している。Prkdc及びIl2rgは、T細胞、B細胞、NK細胞、及びそれより程度は低いが樹状細胞の成熟及び形成に影響を及ぼすSCID(重症複合免疫不全症)ファミリーの遺伝子の一部である。DNA依存性プロテインキナーゼ酵素の触媒サブユニットをコードするPrkdc遺伝子を破壊すると、成熟するT細胞及びB細胞の抗体多様性を伝播させるのに必要なV(D)J組換えに要求される機能が低下する。IL-2及び複数のIL受容体(IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21)に見られる共通のγサブユニットをコードするIl2rgを破壊すると、未熟リンパ球(T細胞、B細胞及びNK細胞)及び他の白血球が成熟に達することが、これらの受容体による結合及びサイトカイン媒介性シグナル伝達の誘導が必要であるために妨げられる。NCGマウス系統は、異種移植片細胞、組織及びヒト免疫系成分の宿主となる能力を有する他の三重免疫不全モデルと同様であり、従って、腫瘍生物学及び免疫腫瘍学の研究、感染性疾患、移植片対宿主病(GvHD)、造血、及び組織移植研究が可能となる。
この系統は、2016年にCharles Riverに更に移され、現在、NOD-Prkdcem26Cd52Il2rgem26Cd22/NjuCrl及び株コード:572と命名されて、北米の顧客に利用可能となっている。NCGモデルの性能データについては、例えば、Shultz et al.,The Journal of Immunology,1995,154(1):180-191;Covassin et al.,Clinical&Experimental Immunology,2011,166(2):269-280;及びMa and Huang,The FEBS journal,2014,281(23):5186-5193に記載された。
皮下異種移植モデルについては、6~7週齢のNCGマウス40匹の右前肢にHuh7細胞を皮下接種した(1×10
7細胞/マウス)。平均腫瘍容積が100mm
3近くになったとき(異種移植片接種後6日目)、マウスを3群に無作為化し、それぞれLIC19309 CAR-T細胞(2M/マウス)、エレクトロポレートされていないT細胞(2M/マウス)及び溶媒のみで尾静脈注射によって治療した。腫瘍サイズをデジタルノギスで週2回測定した。腫瘍容積は、以下の式に従って計算した:
マウス血中のヒトCD3陽性T細胞も養子移植後7、14及び21日目にFACSによって検出した。
図5(パートa)に示されるとおり、UnT群と比較して、LIC19309 CAR-T細胞の養子移植を投与されたマウスは、16日目に腫瘍サイズの78.9%の減少(100.0mm3対474.8mm3)があることが認められ、このことから、LIC19309 CAR-T細胞が腫瘍退縮に効力があることが示唆された。図5(パートb)に示されるとおり、マウス末梢血細胞におけるCAR遺伝子コピー数をデジタルPCRによって検出し、LIC19309 CAR-Tは、7日目から少なくとも2週間続く標的依存性の有意な拡大を呈した。14日目におけるLIC19309 CAR-T細胞のコピー数は、0日目と比べて281.4倍であった(107.888対0.3833)。この実験中、3つの群のいずれにおいても、マウスの体重減少は認められなかった(図5、パートc)。
6.4.実施例4-抗GPC3ヒト化抗体の作成
マウス抗体のヒト化設計
抗体ヒト化の実施には、抗体LAb19309及びLAb19305を選択した。ヒトIgG生殖細胞系列データベースで抗GPC3 mAbの可変ドメイン配列を検索した。各抗体との相同性が高い3つのヒトフレームワーク配列を、軽鎖及び重鎖の両方についてのヒトアクセプターとして選択した。ヒト化VH鎖又はVL鎖は、マウス抗体のCDRをヒト生殖細胞系列のFRにグラフトすることによって調製した。一部の例では、復帰突然変異がマウス生殖細胞系列と一致することもあり得るが、他の場合、それは、(体細胞突然変異の場合のように)一致しないこともあり得る。3つの重鎖のヒト化LAb19309及びLAb19305可変ドメインは、それぞれ9VH1、9VH2、9VH3及び5VH1、5VH2、5VH3と称される一方、3つの軽鎖のヒト化可変ドメインは、VL1、VL2、VL3と称された。ヒト化VH及びVLの配列情報並びに対応するヒト生殖細胞系列を表8に示す。
ヒト化抗体の作製及び親和性
ヒト化可変重鎖及びヒト化可変軽鎖を上記に記載したとおり設計した。ヒト化VLドメインをヒトκ定常領域(hIgKCL、配列番号126)と融合することによってキメラ軽鎖(LC)を構築し、ヒト化VHドメインをヒトIgG1定常領域(hIgG1CH、配列番号127)と融合することによってキメラ重鎖(HC)を構築した。重鎖及び軽鎖の設計したプラスミドをpTT5ベクターに挿入して完全長ヒトIgGの発現プラスミドを構築し、これは、GenScriptのサービスに外注した。リーダー配列を含むヒト化重鎖(即ち9VH1-hIgG1CH、9VH2-hIgG1CH、9VH3-hIgG1CH、5VH1-hIgG1CH、5VH2-hIgG1CH、5VH3-hIgG1CH)発現配列は、配列番号144~149に示す。リーダー配列を含むヒト化軽鎖(即ちVL1-hIgKCL、VL2-hIgKCL、VL3-hIgKCL)発現配列は、配列番号150~152に示す。
重鎖及び軽鎖の完全長を有する抗GPC3ヒト化抗体全体は、HC及びLCプラスミドの共形質導入によって作成した。マウスVHをhIgG1CHと融合することによるキメラ重鎖及びマウスVLをhIgKCLと融合することによるキメラ軽鎖を含むキメラLAb19309-hIgG1及びLAb19305-hIgG1も陽性対照として作成した。
10mL HEK293-6E細胞培養物においてヒト化抗体を発現させた。細胞をスピンダウンし、上清を確保した。培地に分泌された粗抗体を使用して、Biacoreにより親和性の順位付けを実施した。親和性の順位付けについては、Fc捕捉方法で抗体をセンサーチップに固定化した。GPC3を検体として使用した。次にHEK293又はCHO-S細胞培養物における発現のために幾つかの結合体を選択した。培地に分泌された組換えIgGを、樹脂Aアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。精製したIgGは、SDS-PAGEにおいて非還元条件下では約150kDaバンドとして移動し、還元条件下では約50kDa及び約25kDaバンドとして移動した。SDS-PAGEから判断すると、ヒト化IgGの純度は、全て90%を超えていた。
Biacore T200を使用して、GPC3に結合する精製抗体の親和性を個々に確認した。Fc捕捉方法で抗体をセンサーチップに固定化した。GPC3を検体として使用した。表面を再生した後、別の抗体を注入した。全ての抗体が分析されるまで、このプロセスを繰り返した。Biacore T200評価ソフトウェアを用いて実験データを局所的に1:1相互作用モデルに当てはめることにより、抗体のオフ速度を求めた。解離(kd)及び会合(ka)速度定数(KD)のデータをkaに対するkdの比から計算した。抗体に対するGPC3の親和性を表9及び表10に要約した。
6.5.実施例5-ヒト化単一特異性scFvベースのCARの調製及びインビトロスクリーニング
ヒト化抗体の親和性の順位付けに基づき、それぞれhuLIC19309a及びhuLIC19309bと名付けたキメラ抗原受容体の構築のために9VH1VL3-hIgG1 mAb及び9VH3VL2-hIgG1 mAbのVH鎖及びVL鎖を選択した。
huLIC19309a CARについては、9VL3及び9VH1領域を、リンカーペプチド(配列番号132)を介して融合することにより、LAb9VH1VL3 scFv(配列番号128)を構築した。得られたCAR(huLIC19309a CAR)は、配列番号130を含む。同様に、huLIC19309b CARについても、9VL2及び9VH3配列をリンカー(配列番号132)で融合することにより、LAb9VH3VL2 scFv(配列番号129)を構築した。得られたCAR(huLIC19309b CAR)は、配列番号131を含む。
N末端からC末端に、CD8αヒンジドメイン(配列番号102)、CD8α膜貫通ドメイン(配列番号103)、CD137共刺激シグナル伝達ドメイン(配列番号104)、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメイン(配列番号105)を含むCAR骨格ポリペプチドをコードするCAR骨格配列を化学的に合成し、予め修飾したレンチウイルスベクター(pLSINK-BBzBB)へと、インビトロ転写のため構成的hEF1αプロモーターの下流に、それに作動可能に連結してクローニングした。このベクターのマルチクローニング部位(MCS)により、抗GPC3ヒト化scFv断片のN末端に融合したCD8αシグナルペプチド(配列番号101)をコードする核酸配列に作動可能に連結されたコザック配列を含む核酸配列をCAR骨格ベクターへと、CAR骨格配列の上流に、それに作動可能に連結して挿入することが可能であった。CD8αシグナルペプチド及び抗GPC3ヒト化scFv断片をコードする核酸配列を化学的に合成し、当技術分野において公知の分子クローニング技術によってpLSINK-BBzBB CAR骨格へと、EcoRI(5’-GAATTC-3’)(配列番号142)及びSpeI(5’-ACTAGT-3’)(配列番号141)制限部位でクローニングした。
pMDLg.pRRE(Addgene#12251)、pRSV-REV(Addgene#12253)及びpMD2.G(Addgene#12259)を含有するレンチウイルスパッケージングプラスミド混合物を、CARコンストラクトを発現するベクターと、ポリエーテルイミド(PEI)との予め最適化された比で予め混合し、次に25℃で5分間インキュベートした。次にトランスフェクション混合物にHEK293細胞を加えた。その後、細胞を5%CO2の細胞インキュベーターにおいて37℃で一晩インキュベートした。4℃及び3000gで15分間遠心した後に上清を回収し、0.45μm PESフィルタでろ過し、続いて超遠心によりレンチウイルスを濃縮した。次に上清を慎重に廃棄し、予め冷却しておいたDPBSでウイルスペレットを注意深くリンスした。ウイルスを適切に溶離させて、-80℃で保存した。CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞株の形質導入によるタイトレーション方法により、ウイルス力価を決定した。
CAR-T細胞調製
AllcellsからPBMCを購入した(#LP190116)。PBMCからヒトT細胞を精製し、実施例2の方法を用いて予め活性化した。
CAR-T細胞の調製のため、予め活性化したT細胞を1mL完全培地(Tex MACS GMP培地+300IU/mL IL-2)中に1×106細胞/mLで再懸濁し、トランスフェクションのために異なるレンチウイルス(MOI=10)を加えた。トランスフェクトされていないTリンパ球(UnT)を陰性対照として使用した。LIC19309、huLIC19309a及びhuLIC19309b CAR-Tの陽性率は、それぞれ62.4%、53.6%及び34.3%であった(図6)。
細胞傷害性アッセイ
標的細胞は、GPC3陽性ヒト肝細胞癌(HCC)細胞株HepG2(ATCC#HB-8065)、Huh7(Cobioer#CBP60202)、PLC/PRF/5(ATCC#CRL-8024)又はGPC3陰性細胞株K562(ATCC#CCL-243)、Kato III(ATCC#HTB-103)、A549(ATCC#CRM-CCL-185)、NUGC4(JCRB#01262018)のいずれかであった。細胞株の全ては、当技術分野において公知の技法によってホタルルシフェラーゼを発現するように改変した。GPC3 CAR-T細胞及び標的細胞を種々の比(各2×103細胞/ウェル)で混合し、384ウェルプレートにて24時間培養した。CAR-Tが腫瘍細胞に及ぼす細胞傷害性をアッセイするため、One-glo発光ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega#E6110)を製造者のプロトコルに従い調製した。
図7及び図8に示されるとおり、ヒト化GPC3 CAR-T細胞は、GPC3陽性HCC細胞株HepG2.Luc、Huh7.Luc及びPLC/PRF/5.Luc細胞に対して種々のレベルの細胞傷害性を用量依存的に呈した。3:1のE/T比では、LIC19309 CAR-T細胞は、HepG2細胞、Huh7細胞及びPLC/PRF/5細胞に対して、それぞれ98.30%、94.06%及び82.33%の強力な殺傷効率を示した。同じ条件で、huLIC19309a CAR-T細胞及びhuLIC19309b CAR-T細胞の両方が、これらの3つの細胞株に対して93.75%、97.47%、73.51%及び97.00%、94.06%、72.21%の同等の細胞傷害効力を示したことから、抗体ヒト化によってCAR-T細胞の効力は損なわれないことが指摘される。CAR-T細胞のいずれも、UnTと比較したとき、GPC3陰性細胞株に対して有意な細胞傷害性を示さなかった(図8)。
IFN-γ及びTNF-α放出
GPC3陽性癌細胞に対する細胞傷害活性に加えて、ヒト化GPC3 CAR-T細胞がIFN-γ及びTNF-αを産生する能力を分析した。GPC3 CAR-T細胞のみ又はGPC3 CAR-T細胞を標的細胞(HepG2、Huh7又はPLC/PRF/5)と種々のE/T比(各2×103標的細胞/ウェル、E/T=3:1、1:1、1:3)で混合し、384ウェルプレートにて20時間培養し、2つの培養上清中の産生されたIFN-γ及びTNF-αの濃度をHTRFによって測定した。IFN-γ及びTNF-α放出はCAR及びGPC3抗原の両方に特異的であったが、異なるCAR-T細胞間で様々であり、細胞傷害性効力との有意な相関は示されなかった。図9及び図10に示されるとおり、IFN-γ及びTNF-αの放出レベルは、抗原特異的CAR-Tの活性化に伴って有意に増加した。huLIC19039a CAR-T細胞をGPC3陽性HepG2細胞と3:1のE/Tで20時間共培養した後に、IFN-γ放出レベルは1015.99pg/mLから31037.50pg/mLに増加し、TNF-αは21.51pg/mLから5447.91pg/mLに増加した。同じ条件で、HepG2と20時間共培養した後のhuLIC19309b CAR-T細胞及びLIC19309 CAR-T細胞のIFN-γ放出レベルは、それぞれ24848.92pg/mL及び29339.66pg/mLである一方、TNF-α放出レベルは、それぞれ6080.85pg/mL及び5256.41pg/mLであった(図9及び図10)。総合的に見れば、ヒト化huLIC19309a CAR-T細胞及びhuLIC19309b CAR-T細胞は、非ヒト化LIC19309 CAR-T細胞と同等のサイトカイン放出レベルを呈した。
6.6.実施例6-インビボでの養子移植後のヒト化GPC3 CAR-T細胞の抗腫瘍効果
インビボ有効性試験の実施には、LIC19309 CAR-T細胞及びhuLIC19309b CAR-T細胞を選択した。皮下異種移植モデルについて、6~7週齢のNCGマウス28匹の右前肢にHuh7細胞を皮下接種した(1×10
7細胞/マウス)。平均腫瘍容積が100mm
3近くになったとき(異種移植片接種後6日目)、マウスを7群に無作為化し、それぞれhuLIC19309b CAR-T細胞(0.33、1、3M/マウス)、LIC19309 CAR-T細胞(0.33、1、3M/マウス)及び溶媒のみ(媒体)で尾静脈注射によって治療した。腫瘍サイズをデジタルノギスで週2回測定した。腫瘍容積は、以下の式に従い計算した:
図11(パートa)に示されるとおり、1747.02mm3の平均容積の対照群(媒体)と比較して、3M huLIC19309b CAR-T細胞治療のG7群マウスには、平均容積が17日目に45.41mm3と、腫瘍サイズの97.4%の減少があることが認められ、2匹のマウスは無腫瘍状態であり、これは、huLIC19309b CAR-T細胞の強力な抗腫瘍有効性を示すものであった。G4の3M LIC19309 CAR-T細胞で治療したマウスは、容積が564.75mm3と、67.7%の腫瘍減少を示した。腫瘍容積データに基づけば、ヒト化huLIC19309b CAR-T細胞は、0.33M、1M及び3Mの3つの用量全てにおいて、LIC19309 CAR-T細胞と比べて有意なインビボ有効性の利点を示した。
CAR-T拡大効力を分析するため、養子移植後7、14、21及び28日目に、ddPCR(ドロップレットデジタルPCR)によってマウス血中のCARコピー数も検出した。図11(パートb)に示されるとおり、huLIC19309b CAR-Tは、7日目から14日目に標的依存性の有意な拡大を呈し、119.09コピー/ngの最も高いコピー数に達した。ピークに達した後も、これは約50コピー/ngを2週間にわたって維持した。
マウスの体重は、腫瘍量と負の相関を示した。腫瘍量が増加し、全般的な行動状態が悪化するにつれ、同時に対照群(媒体)のマウスの体重は減少した。17日目、対照群の平均体重は19.50gであった一方、LIC19309 CAR-T細胞治療マウスの平均体重は、0.33M、1M及び3Mの用量で19.95g、22.61g及び23.34gであった。媒体又はLIC19309 CAR-T細胞治療マウスと比較すると、huLIC19309b CAR-T細胞治療マウスは、17日目に、0.33M、1M及び3Mの用量で21.41g、23.21g、及び25.57gのより重い体重を示したことから、huLIC19309b CAR-T細胞の有効性がより強力で、且つマウスの状態がより健康であることが指摘される(図11、パートc)。
6.7.実施例7-ヒトIL12p40及びヒトCCL-19を過剰発現するCAR-T細胞の調製
6.7.1.キメラ抗原受容体の構築
ヒト化抗GPC3 scFv CAR(H93 CAR)を構築するため、N末端からC末端に、CD8αヒンジドメイン(配列番号102)、CD8α膜貫通ドメイン(配列番号103)、CD137共刺激シグナル伝達ドメイン(配列番号104)、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメイン(配列番号105)を含むCAR骨格ポリペプチドをコードするCAR骨格配列を化学的に合成し、予め修飾したレンチウイルスベクター(pLSINK-BBzBB)へと、インビトロ転写のため構成的hEF1αプロモーターの下流に、それに作動可能に連結してクローニングした。このベクターのマルチクローニング部位(MCS)により、抗GPC3ヒト化scFv断片(即ち配列番号129のアミノ酸配列を含む上記に記載されるLAb9VH3VL2 scFv)のN末端に融合したCD8αシグナルペプチド(配列番号101)をコードする核酸配列に作動可能に連結されたコザック配列を含む核酸配列をCAR骨格ベクターへと、CAR骨格配列の上流に、それに作動可能に連結して挿入することが可能であった。CD8αシグナルペプチド及び抗GPC3ヒト化scFv断片をコードする核酸配列を化学的に合成し、当技術分野において公知の分子クローニング技術によってpLSINK-BBzBB CAR骨格へと、EcoRI(5’-GAATTC-3’)及びSpeI(5’-ACTAGT-3’)制限部位でクローニングした。得られたH93 CARのアミノ酸配列は、配列番号131である。H93 CARは、上記に記載されるhuLIC19309b CARの別名である。このCARコード領域を図12の上部に提示する。
H93 CAR骨格をベースとして、H93M CARベクター中のMCSにより、別の2A自己切断型ペプチド(例えば、配列番号138に示されるP2A断片)のC末端に融合した2A自己切断型ペプチド(例えば、配列番号139に示されるT2Aペプチド)によって連結されたヒトIL12p40(配列番号135)及びヒトCCL-19(配列番号136)をコードする核酸配列を含む核酸配列をCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインのC末端の上流に、それに作動可能に連結して挿入することが可能となった。P2Aペプチド及びIL12p40-T2A-CCL-19ペプチドをコードする核酸配列を化学的に合成し、pLSINK-BBzBB CAR骨格へと、HpaI(5’-GTTAAC-3’)(配列番号143)及びMluI(5’-ACGCGT-3’)(配列番号140)制限部位でクローニングした。得られたH93M CARのアミノ酸配列は配列番号133であり、H93M CARをコードする核酸配列は配列番号137に示される。H93MのCARコード領域は、図12の中央部に提示する。いかなる理論にも拘束されないが、H93M CAR-T細胞でIL12p40が過剰発現すると、TCR刺激時にT細胞によって上方制御されることが報告されている内因性IL-23α p19サブユニットとIL-23を形成する可能性がある。例えば、Ma,et al.,“Interleukin-23 engineering improves CAR T cell function in solid tumors”.Nat Biotechnol.2020 Apr;38(4):448-459を参照されたい。
pMDLg.pRRE(Addgene#12251)、pRSV-REV(Addgene#12253)及びpMD2.G(Addgene#12259)を含有するレンチウイルスパッケージングプラスミド混合物を、CARコンストラクトを発現するベクターと、ポリエーテルイミド(PEI)との予め最適化された比で予め混合し、次に25℃で5分間インキュベートした。次にトランスフェクション混合物にHEK293細胞を加えた。その後、細胞を5%CO2の細胞インキュベーターにおいて37℃で一晩インキュベートした。4℃及び3000gで15分間遠心した後に上清を回収し、0.45μm PESフィルタでろ過し、続いて超遠心によりレンチウイルスを濃縮した。上清を慎重に廃棄し、予め冷却しておいたDPBSでウイルスペレットを注意深くリンスした。ウイルスを適切に溶離させて、-80℃で保存した。CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞株の形質導入によるタイトレーション方法により、ウイルス力価を決定した。
6.7.2.CAR-T細胞調製
TPCSからPBMCを購入した(#A19Z284097)。Pan T細胞単離キット(Miltenyi #130-096-535)を使用してPBMCからヒトT細胞を精製し、実施例2の方法を用いて予め活性化した。
CAR-T細胞の調製のため、予め活性化させたT細胞を24ウェルプレートに0.5×106細胞/ウェルの密度で播いた。次に、ウェルに精製したウイルスを加えた。一晩経った後、形質導入細胞を収集後に24ウェルG-Rex(Wilson Wolf #80192M)に入れ、遠心し、新鮮なRPMI-1640+300IU/mL IL-2で再懸濁した。非形質導入T細胞(UnT)を陰性対照として使用した。7日目、ネイキッドのH93 CAR-T細胞及びH93M CAR-T細胞のCAR陽性率は、それぞれ39.3%及び32.5%であった(図13)。
6.7.3.IL-23及びCCL-19発現
H93M CARの構造を確かめるため、CAR-T細胞を正常条件(RPMI-1640+300IU/mL IL-2)で培養し、IL-23及びCCL-19の分泌を分析した。簡潔に言えば、細胞を6ウェルプレートにて1×106細胞/mLで培養し、それぞれ12、14及び17日目に上清を回収した。ヒトIL-23キット(CISBIO#62HIL23PEG)及びCCL-19 ELISAキット(Abcam#ab100601)を使用して、製造者のプロトコルに従いIL-23及びCCL-19の量を決定した。図14に示されるとおり、H93 CAR-T細胞及びUnT(IL-23の発現もCCL-19の発現も検出されなかった)と比較して、H93M CAR-T細胞のみに、IL-23(106細胞当たり286.9pg~106細胞当たり570.3pg)及びCCL-19(106細胞当たり65.4pg~106細胞当たり237.2pg)の分泌があった。
6.8.実施例8-インビトロCAR-T細胞反復チャレンジアッセイ
インビトロでCAR-T細胞の持続性及び枯渇を評価するため、CAR-T細胞反復チャレンジモデルをセットアップした。CAR-T細胞を数ラウンドにわたってGPC3陽性腫瘍細胞で何度も刺激して、枯渇表現型のCAR-T細胞を獲得した。再チャレンジアッセイには3つの処理群があった:H93 CAR-T群(初期CAR-T細胞は、H93 CAR-T細胞であった)、H93M CAR-T群(初期CAR-T細胞は、H93M CAR-T細胞であった)及びUnT(初期T細胞は、CARによる形質導入のないT細胞であった)。再チャレンジの初回ラウンド(ラウンド1)については、6ウェルプレートにおいてCAR-T細胞を腫瘍細胞と1:1のE/T比で共培養した。一晩経った後、ウェル内のCAR-T細胞を穏やかに収集し、遠心し、新鮮なCAR-T培養培地(RPMI-1640+300IU/mL IL-2)に再懸濁した。次に新しいプレートにCAR-T細胞を更に2日間加えた。その後、ウェル内のCAR-T細胞を収集し、再び新鮮培地に再懸濁し、新鮮腫瘍細胞を播種した新しいプレートに加えた(ラウンド2)。加える新鮮腫瘍細胞の数は、前のラウンドの終了時におけるCAR-T細胞の陽性率によって計算した。この手順は、残留CAR-T細胞の細胞数及び生存率に依存して、数ラウンドにわたって繰り返すことができた。各ラウンドの腫瘍細胞再チャレンジから24時間後に、CAR+ T細胞におけるCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の枯渇マーカーPD-1及びLAG3を分析した。各ラウンドの終了時にT細胞をカウントし、刺激から72時間後にGPC3陽性HCC細胞株PLC/PRF/5に関して細胞傷害性アッセイを実施した。
6.8.1.T細胞の拡大
H93M CAR-T細胞の拡大機能の利益を決定するため、再チャレンジの各ラウンドの終了時に全T細胞の細胞数及び生存率を記録した。
図15Aに示されるとおり、PLC/PRF/5細胞で繰り返し刺激すると、H93M CAR-T群(ラウンド6の時点で138.4倍)では、H93 CAR-T群(ラウンド6の時点で10.5倍)及びUnT群(ラウンド6の時点で0.2倍)との比較において細胞の有意な拡大が生じた。並行して、H93M CAR-T群の細胞生存率は高いままであったが、それと比較して、H93 CAR-T群及びUnT群は各刺激後に徐々に減少した(図15B)。
6.8.2.細胞傷害性アッセイ及びサイトカイン放出
1:1の全T細胞:標的細胞比でのCAR-T再チャレンジアッセイにおいて、2ラウンドが終わる毎にCAR-T細胞の細胞傷害性も評価した。標的細胞はGPC3陽性PLC/PRF/5細胞であり、これは、当技術分野において公知の技法でホタルルシフェラーゼを発現するように改変されたものであった。2ラウンドが終わる毎に収集した細胞と標的細胞とを混合し(各2×103細胞/ウェル)、384ウェルプレートで24時間培養した。CAR-T細胞が腫瘍細胞に及ぼす細胞傷害性をアッセイするため、One-glo発光ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega#E6110)を製造者のプロトコルに従い調製し、共培養細胞に加えて、ウェル内の残留ルシフェラーゼ活性を検出した。ルシフェラーゼは腫瘍細胞においてのみ発現するため、ウェル内の残留ルシフェラーゼ活性は、ウェル内の生存標的細胞の数と直接相関する。エフェクター細胞の非存在下で標的細胞に培養培地を加えることにより、ルシフェラーゼ活性最大値を入手した。細胞傷害性アッセイを開始した時点でTriton X-100を1%の終濃度で加えることにより、ルシフェラーゼ活性最小値を決定した。式:比細胞傷害性%=100%×(1-(RLU試料-RLU最小値)/(RLU最大値-RLU最小値))によって比細胞傷害性を計算した。
図16Aに示されるとおり、H93M CAR-T群は、ラウンド3の後、H93 CAR-T群よりも高い細胞傷害性を示し、但し、例外的に、ラウンド1の後は等しい細胞傷害性を示した(21.1%対22.4%)。具体的に言えば、H93M CAR-T群はラウンド3の後に74.4%の平均細胞傷害性を呈し、ラウンド5(80.7%)及びラウンド7(83.4%)の後、やや増加した。一方、H93 CAR-T群では比較的低い細胞傷害性が観察され、それぞれ52.7%(ラウンド3)、57.9%(ラウンド5)及び47.0%(ラウンド7)の平均細胞傷害性を示した。H93M CAR-T群がGPC3陽性HCC細胞株PLC/PRF/5.Luc細胞に対して持続的な高レベルの細胞傷害性を有したことが指摘される。
再チャレンジアッセイでのH93 CAR-T細胞との比較におけるH93M CAR-T細胞のGPC3陽性腫瘍細胞に対する持続的細胞傷害活性を更に確かめるため、CAR-T細胞をPLC/PRF/5.Luc細胞と1:1のE/T比(全T細胞:標的細胞)で24時間共培養した後に、TNF-α及びIFN-γ産生をELISAによって分析した。結果として、H93M CAR-T群のTNF-α及びIFN-γ産生能力は、H93 CAR-T群と比較して有意に高く、全てのラウンドで細胞傷害効力との有意な相関を示した。図16B及び図16Cに示されるとおり、H93M CAR-T群の細胞によって分泌されるTNF-α及びIFN-γの濃度は、ラウンド3の後ラウンド5までに、451.2~1151.1pg/mL(TNF-α)及び18353.7~37072.7pg/mL(IFN-γ)の範囲内で有意に増加した一方、H93 CAR-T群の細胞によって分泌されるTNF-α及びIFN-γの濃度は、ラウンド3の後ラウンド7までに、197.1~129.2pg/mL(TNF-α)及び4993.1~1672.1pg/mL(IFN-γ)の範囲内で徐々に減少した。
6.8.3.陽性CAR-T細胞率の変化
2ラウンドが終わる毎にH93 CAR-T細胞及びH93M CAR-T細胞の陽性率を計算し、これは刺激ラウンドに伴って30%~86%の範囲内でほぼ同じように増加した。最後に、H93 CAR-T細胞及びH93M CAR-T細胞の陽性率は、ラウンド5の後には増加しなかった(図17)。H93M CAR-T細胞は、ラウンド5の再チャレンジ後に細胞傷害性が増加し(図16A)、CAR+%がフラットになった(図17)ことと比較して、高い細胞傷害性を示した。
6.8.4.T細胞の枯渇
再チャレンジアッセイにおいて各ラウンドの24時間後に、T細胞枯渇を評価した。2つの枯渇マーカーとしてのPD-1及びLAG-3を、それぞれ抗ヒトPD-1抗体(Biolegend#329908)及び抗LAG-3抗体(Invitrogen#17-2239-42)を用いて標識し、CD4+CAR+ T細胞及びCD8+CAR+ T細胞ダブルポジティブサブセットの発現レベルを分析した。図18A~図18Dに示されるとおり、H93M CAR-T群は、全てのラウンドで、H93 CAR-T群と比較したとき枯渇マーカーPD-1及びLAG3の発現の減少を示した。特にラウンド3~5において、H93M CAR-T群におけるCD4+CAR+ダブルポジティブサブセットのPD-1発現は13%~18%であった一方、H93 CAR-T群は30%を上回った(図18A)。H93M CAR-T群は、全てのラウンド(R2~R7)でCD4+CAR+ダブルポジティブサブセットにおいてH93 CAR-T群(30%~49%)よりも有意に低いLAG-3発現(12%~25%)を有した(図18C)。CD8+CAR+ダブルポジティブサブセットでは、H93M CAR-T群におけるPD-1の発現レベルはH93 CAR-T群と比べてなおも低く(ラウンド3~ラウンド7で1.3%~4.1%対5.6%~9.4%)(図18B)、H93M CAR-T群のLAG3発現レベルはラウンド3~ラウンド5で56.6%~82.9%であり、これはH93 CAR-T群(82.7%~88.1%)よりも低かったことから(図18D)、H93M CAR-T細胞が枯渇に抵抗する能力を有することが指摘される。
6.9.実施例9-細胞遊走アッセイ
CCL-19の走化機能を評価するため、細胞遊走アッセイを実施した。レスポンダーT細胞の走化性を96ウェルtranswellチャンバ(Corning)における5μm細孔径のポリカーボネートフィルタを通した遊走によって測定した。CAR-T細胞及びUnT細胞をGPC3陽性ヒトHCC細胞株PLC/PRF/5細胞で刺激し、30時間後に共培養上清を収集した。次に下側チャンバに125μLの上清を入れ、上側チャンバで75μLの未処理T細胞(0.075M)をインキュベートした。4、6及び8時間後、上側チャンバから下側チャンバに遊走したT細胞を血球計数チャンバによってカウントした。細胞遊走アッセイには、3つの処理群があった:H93 CAR-T群(下側チャンバの上清は、PLC/PRF/5細胞と共培養したH93 CAR-T細胞からのものであった)、H93M CAR-T群(下側チャンバの上清は、PLC/PRF/5細胞と共培養したH93M CAR-T細胞からのものであった)及びUnT群(下側チャンバの上清は、PLC/PRF/5細胞と共培養したUnT細胞からのものであった)。
図19Aに示されるとおり、種々の時点において、PLC/PRF/5細胞と共培養したH93 CAR-T細胞及びPLC/PRF/5細胞と共培養したUnT細胞と比べて、PLC/PRF/5細胞と共培養したH93M CAR-T細胞の上清中には(CCL-19の分泌を伴う)、より多くのT細胞が引き込まれた(H93M CAR-T群対H93 CAR-T群:P<0.0001)。具体的には、H93M CAR-T群は、6時間で上側チャンバの全てのT細胞を完全に引き込む(0.104M)一方、CCL-19の産生のないH93 CAR-T群及びUnT群は、それぞれ0.032M及び0.026Mと、8時間経っても少数のT細胞が遊走したに過ぎなかった。加えて、CCL-19 ELISA(Abcam#ab100601)によって共培養上清中のCCL-19の濃度を測定した。この結果は、PLC/PRF/5細胞と共培養したH93M CAR-T細胞からの上清にCCL-19の分泌があったことを示しており(4590.15±380.85pg/mL)、H93M CAR-T細胞の走化機能が更に確認された(図19B)。
6.10.実施例10-インビボでの養子移植後のCAR-T細胞の抗腫瘍効果
CAR-T細胞のインビボ抗腫瘍有効性をNCGマウス異種移植モデルで評価した。皮下異種移植モデルについて、6~7週齢のNCGマウスの右前肢にHuh7細胞を皮下接種した(1.5×106細胞/マウス)。平均腫瘍容積が100mm3近くになったとき(異種移植片接種後11日目)、マウスを6群に無作為化し、それぞれH93 CAR-T細胞(0.2M又は0.6Mの投薬量で)、H93M CAR-T細胞(0.2M又は0.6Mの投薬量で)、UnT(2.3Mの投薬量、CAR-T群と同じ全T細胞の細胞数)及び溶媒のみ(媒体)で尾静脈注射によって治療した。腫瘍サイズをデジタルノギスで週2回測定した。腫瘍容積は、以下の式に従い計算した:腫瘍容積=((長さ)×(幅)2)/2。養子移植後0、7、14、21及び28日目にそれぞれマウス血中のCAR-T細胞のコピー数もデジタルPCRによって検出した。
媒体、UnT及びH93 CAR-T細胞で治療したマウスを20日目に動物倫理的理由で犠牲にし、これらの3群の腫瘍容積は2000mm3を超えるまでに達していた。H93M CAR-T細胞で治療したマウスは、27日目(投薬量:0.2M)及び49日目(投薬量:0.6M)まで記録を継続した。図20Aに示されるとおり、UnT群及びH93 CAR-T細胞群と比較して、H93M CAR-T細胞の養子移植を投与されたマウスは、20日目にそれぞれ76.8%及び74.6%の腫瘍サイズの減少を伴うことが認められ(584.3mm3対2514.7mm3、2297.3mm3)、20日目以降もなお、腫瘍サイズは徐々に減少したことから、H93M CAR-T細胞には、より低い投薬量(0.2M/マウス)でH93 CAR-T細胞よりも良好な治療可能性があることが示唆された。投薬量を0.6M/マウスに増量したとき、図20Bに示されるとおり、H93M CAR-T細胞の投与には、腫瘍成長に及ぼす明らかな阻害効果が認められ、20日目に成長阻害率はUnTとの比較で96.0%であったが(101.6mm3対2514.7mm3)、但し、H93M CAR-T細胞治療群及びH93 CAR-T細胞治療群に同様の腫瘍退縮が認められた(101.6mm3対137.3mm3)。34日目、H93M CAR-T細胞で治療したマウスは、ほぼ無腫瘍であった。
マウス末梢血細胞におけるCAR遺伝子コピー数をデジタルPCRによって検出し、H93M CAR-T細胞は、0.2M投薬量で21日目に有意な拡大を呈し、続いて減少した一方、H93 CAR-T細胞及びUnTで治療したマウスでは、治療全体を通して明らかな拡大はなかった(図20C)。0.2M投薬量では、21日目におけるH93M CAR-T細胞のコピー数は、0日目と比べると335.6倍であった(133.4175コピー対0.3975コピー)。H93M CAR-T細胞及びH93 CAR-T細胞は、両方とも、0.6M投薬量では7日目以降にも有意な拡大を示し、H93M CAR-T細胞はH93 CAR-T細胞よりも良好な拡大能力を有した(21日目に272.2850コピー対83.6275コピー)(図20D)。
この実験中、0.2M投薬量であろうと0.6M投薬量であろうと、3つの群のいずれにおいてもマウスの体重減少は認められなかった(図21A及び図21B)。しかし、H93 CAR-T細胞で治療したマウスは、0.2M投薬量で20日目に立毛、後弯姿勢及びるい痩といった症状を示す一方、H93M CAR-T細胞で治療したマウスは、正常であった。0.6M投薬量では、両群のマウスとも正常な外見を有した。
H93M CAR-T細胞におけるIL-23の活性化依存的産生を確かめるため、ヒトIL-23キット(CISBIO#62HIL23PEG)及びヒトIFN-γキット(CISBIO#62HIFNGPEG)を使用することにより、CAR-T細胞による治療後のNCGマウス末梢血中におけるIL-23及びIFN-γの分泌レベルを分析した。図22Aに示されるとおり、H93M CAR-T細胞治療群は、H93 CAR-T細胞治療群と比較して、低用量(0.2M、21日目)で最大3倍高いIL-23分泌レベルを示した。高用量(0.6M)では、H93M CAR-T細胞治療マウス及びH93 CAR-T細胞治療マウスで同様の低いIL-23レベルが認められた(図22B)。並行して、マウス末梢血中では活性化依存的産生であったIFN-γの分泌挙動もIL-23と同様であったことから(図22C及び図22D)、H93M CAR-T細胞におけるIL-23の活性化依存的産生が指摘される。
H93M CAR-T細胞のインビボでの抗腫瘍効果を調べるため、免疫組織化学(IHC)を用いて腫瘍部位におけるT細胞の浸潤並びにマクロファージ及び樹状細胞(DC)の動員を研究した。端的には、組織パラフィン切片スライドを60℃で60分間加熱し、次にキシレンで3回、各10分間脱脂し、100%、100%、95%、90%、80%、70%アルコール及び水で各5分間再水和した。スライドを抗原回復緩衝液中で20分間煮沸することにより抗原回復を実施し、次に、スライドを抗原回復緩衝液に浸漬して室温(RT)に冷却した後に、スライドをメタノール中3%過酸化水素で10分間処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を取り除いた。非特異的バックグラウンド染色を低減するため、スライドをブロッキング緩衝液(DPBSで希釈した5%ヤギ血清)と共に2~8℃で一晩インキュベートした。
一晩経った後、スライドをRTで30分間インキュベートし、次に希釈した一次抗体と共に37℃で2時間及び二次抗体HRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体(Fuzhou Maixin Biotech.Co.,Ltd.#KIT-5002)と共に暗所下RTで15分間インキュベートした。DAB基質を製造者の指示に従い調製し、200~500μLのDAB基質をスライドに加え、暗所下で2分間インキュベートした。蒸留水で5分間洗浄することによって染色を停止させた。最後に、ヘマトキシリンで対比染色した後にスライドに中性バルサムを加えてマウントし、1%塩酸アルコールで分別し、アルコールで脱水した。
H93M CAR-T細胞が低い投薬量(0.2M)で抗腫瘍能力を亢進させる機構を解明するため、TCRα(H-1)(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY#sc-515719)を使用したIHCにより、治療したマウスの腫瘍組織におけるT細胞浸潤を調べた。図23に示されるとおり、H93M CAR-T細胞治療群では、H93 CAR-T細胞及びUnT治療群と比較して、3匹のマウス全ての腫瘍部位へのT細胞浸潤の改善があった。H93M CAR-T細胞治療群では、より多くのT細胞が腫瘍巣中心部にまで浸潤した一方、3匹のH93 CAR-T細胞治療マウスの中では、1匹のマウスのみが腫瘍境界領域に少ないT細胞浸潤を有したに過ぎず、他のマウスは腫瘍部位にT細胞をほとんど有しなかった。UnT治療群では、3匹のマウスの中に、腫瘍部位にT細胞浸潤が認められるマウスはなかった。
加えて、腫瘍組織中のマクロファージ及びDCの動員を調べた。抗CD68抗体(Abcam#ab125212)及び抗CD11c抗体(Cell signaling technology#97585S)を使用して、腫瘍組織中のマウスマクロファージ及びDCを検出した。図24に示されるとおり、CD68+マクロファージ(左欄)及びCD11c+ DC(右欄)をDABによって染色した。腫瘍部位へのマクロファージ及びDCの動員は、H93M CAR-T細胞治療群で有意に高かった一方、UnT及びH93 CAR-T細胞治療群は、腫瘍組織の周縁部にマクロファージの動員があるに過ぎなかった。これらのデータは、H93M CAR-T細胞が、H93 CAR-T細胞及びUnTと比較して、腫瘍組織におけるマクロファージ及びDCの動員をより多く誘導することができ、腫瘍組織において自然免疫応答を引き出す効力がより高いことを明らかにしている。
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