拡張機能障害の治療又は防止における改善を提供するための方法及び組成物に関する必要性がある。
本発明は、拡張機能障害又は拡張機能障害と関連するか若しくは拡張機能障害から生じる状態を、治療、防止、又は軽減する方法、並びに拡張機能障害又は拡張機能障害と関連するか若しくは拡張機能障害から生じる状態を治療又は防止するために、個体においてAβ42に結合する抗体を提供するための医薬組成物及びキットに関する。
本発明は、個体において、療法的有効量の抗Aβ42抗体を提供することを含む、個体において、拡張機能障害又は拡張機能障害と関連する状態を防止又は治療する方法を提供する。
本発明は、個体において、拡張機能障害又は拡張機能障害と関連する状態を防止又は治療する際に使用される、療法的有効量の抗Aβ42抗体を含む組成物を更に提供する。
本発明は、拡張機能障害又は拡張機能障害と関連する状態を防止又は治療するための薬剤製造における、抗Aβ42抗体を含む組成物の使用を更に提供する。
本発明は、個体において、拡張機能障害又は拡張機能障害と関連する状態を防止又は治療する方法であって、
拡張機能障害を防止又は治療しようとする個体から得られた試料、好ましくは血漿試料を評価するか又は評価済であり、試料中のAβ42の量を決定することと、
個体が、拡張機能障害を発展させないか又は持たない個体におけるAβ42の量を示す対照で観察されるAβ42の量よりも多いAβ42の量を有する場合、
個体において抗Aβ42抗体を提供し、
それによって個体において拡張機能障害又は拡張機能障害と関連する状態を防止又は治療することと、
を含む、方法を更に提供する。
本発明は、個体が拡張機能障害を有するか又は発展させている可能性を決定する方法であって、
拡張機能障害を有するか又は発展させている可能性を決定しようとする個体から得られた試料、好ましくは血漿試料を評価するか又は評価済であり、試料中のAβ42の量を決定することと、
Aβ42の量が、拡張機能障害を発展させていないか又は持たない個体におけるAβ42の量を示す対照で観察されるAβ42の量よりも多い場合、個体が拡張機能障害を発展させるか又は有する可能性がより高いと決定し、
Aβ42の量が対照で観察されるAβ42の量と同じである場合、個体が拡張機能障害を発展させているか又は有する可能性がより低いと決定し、
それにより、個体が拡張機能障害を有するか又は発展させる可能性を決定することと、
を含む、方法を更に提供する。
本発明は、
抗Aβ42抗体及び/又は、
個体において抗Aβ42抗体を産生するためのワクチン又は免疫刺激組成物と、
以下に記載する列挙された実施の形態におけるキットの使用のための書面による指示と、
を備える、キットを更に提供する。
本発明は、
抗Aβ42抗体、好ましくはバピネオズマブ
を含む、医薬製剤であって、
この抗体が、皮下又は筋内投与のため、約1mg/ml~250mg/ml製剤、より好ましくは約10mg/ml~200mg/ml製剤、より好ましくは約40mg/ml~80mg/ml製剤、好ましくは80mg/ml製剤、又は好ましくは150mg/ml~200mg/mlの量で提供され、
任意選択で、製剤は塩を含まず、又、緩衝剤を含まない、
医薬製剤を更に提供する。
本発明の多様な(列挙された)実施の形態を本明細書に記載する。各実施の形態に明記された特徴は、他の明記された特徴と組み合わされて、本開示の更なる実施の形態を提供し得ることが認識されるであろう。
実施の形態1:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、拡張機能障害を防止又は治療する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態2:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心不全、より好ましくはHFpEFを防止又は治療する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態3:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、求心性肥大を防止又は治療する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態4:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室減速時間を維持するか又は減少させる方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態5:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心室中隔肥厚を維持又は防止する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態6:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室質量増加を維持又は防止する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態7:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心筋症、より好ましくは糖尿病性心筋症又は肥大性心筋症又は虚血性心筋症又は高血圧性心筋症を防止又は治療する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態8:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心臓グルコース取り込み減少を防止する、又は心臓トリアシルグリセロール集積を防止する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態9:個体、より好ましくはAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、肥満関連心筋症を防止又は治療する方法であって、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを、個体に、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量で、好ましくは1日1回14日間、投与することを含む、方法。
実施の形態10:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、拡張機能障害を防止又は治療する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態11:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心不全、より好ましくはHFpEFを防止又は治療する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態12:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、求心性肥大を防止又は治療する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態13:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室減速時間を維持するか又は減少させる方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態14:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心室中隔肥厚を維持又は防止する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態15:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室質量増加を維持又は防止する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態16:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心筋症、より好ましくは糖尿病性心筋症又は肥大性心筋症又は虚血性心筋症又は高血圧性心筋症を防止又は治療する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態17:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心臓グルコース取り込み減少を防止する、又は心臓トリアシルグリセロール集積を防止する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態18:個体、より好ましくはAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、肥満関連心筋症を防止又は治療する方法であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するために、ワクチン又は免疫刺激組成物を個体に投与することを含む、方法。
実施の形態19:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、拡張機能障害を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態20:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心不全、より好ましくはHFpEFを防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態21:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、求心性肥大を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態22:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室減速時間を維持するか又は減少させる際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態23:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心室中隔肥厚を維持又は防止する際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態24:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室質量増加を維持又は防止する際に使用される組成物であって、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態25:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心筋症、より好ましくは糖尿病性心筋症又は肥大性心筋症又は虚血性心筋症又は高血圧性心筋症を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、好ましくは抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態26:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心臓グルコース取り込み減少を防止する際に、又は心臓トリアシルグリセロール集積を防止するために使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態27:個体、より好ましくはAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、肥満関連心筋症を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体への、好ましくは約0.1mg/kg~15mg/kgの量の、好ましくは1日1回14日間の、療法的有効量の抗Aβ42抗体、より好ましくはバピネオズマブを含む、組成物。
実施の形態28:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、拡張機能障害を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態29:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心不全、より好ましくはHFpEFを防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態30:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、求心性肥大を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態31:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室減速時間を維持するか又は減少させる際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態32:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心室中隔肥厚を維持又は防止する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態33:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、左室質量増加を維持又は防止する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態34:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心筋症、より好ましくは糖尿病性心筋症又は肥大性心筋症又は虚血性心筋症又は高血圧性心筋症を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態35:個体、好ましくは肥満、又は前糖尿病、又は糖尿病、又は高齢の個体、より好ましくは肥満個体、又はAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、心臓グルコース取り込み減少を防止する際に、又は心臓トリアシルグリセロール集積を防止するために使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態36:個体、より好ましくはAβ42の量が上昇した、より好ましくは血漿Aβ42の量が上昇した個体において、肥満関連心筋症を防止又は治療する際に使用される組成物であって、個体において療法的有効量の抗Aβ42抗体を産生するための、ワクチン又は免疫刺激組成物を含む、組成物。
実施の形態37:医薬製剤、好ましくは皮下注射用製剤であって、
抗Aβ42抗体、好ましくはバピネオズマブと、
界面活性剤と、
ポリオールと、
を含み、
抗体が、皮下又は筋内投与のため、約1mg/ml~250mg/ml製剤、より好ましくは約10mg/ml~200mg/ml製剤、より好ましくは約40mg/ml~80mg/ml製剤、好ましくは80mg/ml製剤、又は50mg/ml~200mg/ml製剤の量で提供され、
任意選択で、製剤が塩を含まず、又は、緩衝剤を含まない、医薬製剤。
実施の形態38:個体が拡張機能障害を有するか又は発展させる可能性を決定する方法であって、
拡張機能障害を有するか又は発展させる可能性を決定しようとする個体から得られた試料、好ましくは血漿試料を評価するか又は評価済であり、試料中のAβ42の量を決定することと、
Aβ42の量が拡張機能障害を発展させないか又は持たない個体におけるAβ42の量を示す対照で観察されるAβ42の量よりも多い場合、個体が拡張機能障害を発展させるか又は有する可能性がより高いと決定することと、
Aβ42の量が対照で観察されるAβ42の量と同じである場合、個体が拡張機能障害を発展させるか又は有する可能性がより低いと決定することと、
を含み、
好ましくは、個体は過体重又は肥満であり、
好ましくは、対照は、拡張機能障害を発展させないか又は持たず、かつ高齢でなく、好ましくは約20歳~40歳の年齢であり、正常範囲内の肥満度指数を有する個体におけるAβ42の量を示し、
それにより、個体が拡張機能障害を有するか又は発展させる可能性を決定することと、
を含む、方法。上記の列挙された実施の形態のいずれか一項において、適切な実施形態に従った組成物の投与又は使用の前に、Aβ42、好ましくは血漿Aβ42の量に関して個体を評価してもよい。
発明の詳細な説明
等容性弛緩期は、正常拡張期に必須の期である。等容性弛緩期はエネルギー依存性であり、LVDD並びに関連臨床徴候、例えば求心性肥大及びその後の心不全で観察されるような、この弛緩期の異常は、例えば、心臓グルコース取り込み減少がある場合に起こるように、ATPの利用可能性に障害がある場合に起こる。
本明細書において、Aβ42への長期曝露は、心臓グルコース取り込みの減少、心臓TAGの集積、及び求心性肥大を含めた心臓機能障害を含む、心臓代謝障害を生じ、これらの転帰は、個体、特に高脂肪含量食餌を摂取する個体及び/又は過体重若しくは肥満の個体において、抗Aβ42抗体を提供することによって最小限になることが見出されてきている。
仮説によって束縛されることは望ましくないが、Aβ42に対する長期曝露は、心筋細胞炎症を引き起こすか又は別の方式で生じて、心筋細胞代謝障害、そのグルコース取り込みの減少、グルコースからTAGへの切り替え(shunting)及びTAG集積を導き、抗体を投与すると、血漿Aβ42が減少するか又は中和されて、それによってこれらの病的転帰が最小限になると考えられる。
1.定義
本明細書を解釈する目的のため、以下の定義が当てはまり、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、逆も同様である。
本明細書において使用される場合、数値xに関連する用語「約」は、文脈上別に示さない限り、±10%を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「アミロイドベータ」(Aβ又はAベータ)は、36~43アミノ酸のペプチド、好ましくはアルツハイマー患者の脳で見られるアミロイド斑の主要構成要素として、アルツハイマー病に決定的に関与するAβ42を示す。このペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来し、APPはベータセクレターゼ及びガンマセクレターゼによって切断されてAβを生じる。Aβ分子は凝集して、いくつかの型で存在し得る柔軟な可溶性オリゴマーを形成し得る。
本明細書において使用される場合、用語「抗アミロイドベータ抗体」又は「抗Aβ抗体」又は「抗Aベータ抗体」は、免疫グロブリン分子又はその断片、例えばCDR、可変ドメイン又はその断片、Fab、Dab断片又は全抗体を指す。抗Aβ抗体は、任意のアイソタイプ又はサブタイプであってもよく、異種、同種又は同系であってもよい。抗Aβ抗体は、任意のAβタンパク質若しくはペプチド又はこれと同じものを含む分子、例えばAPPに結合し得る。抗Aβ抗体は、可溶性型(すなわち、血漿中で、部分的に又は完全に可溶性である場合)又は不溶性型、例えば斑として存在する場合の、Aβ又はその断片に結合し得る。抗Aβ抗体はAβに結合して、それにより、血漿からのAβの枯渇及び身体からの排出を可能にし得るか、又は、Aβの中和を可能にし、例えばそれによって心筋細胞炎症等のAβの毒性効果を最小限にし得る。
本明細書において使用される場合、用語「拡張機能障害」は、一般的に、左室が、生理学的に正常な又は許容され得る圧で、適切な拡張終期容積を満たすことができないことによって特徴づけられる状態を指す。
本明細書において使用される場合、用語「E/A比」は、一般的に、E波対A波の比を指す。心エコー検査に際して、初期拡張性充満中に、僧帽弁を渡る血流のピーク速度は、E波に対応する。同様に、心房収縮はA波に対応する。これらの知見から、「E/A比」を計算する。正常条件下では、EはAよりも大きく、E/A比はおよそ1.5である。初期拡張機能障害において、弛緩が損なわれ、激しい心房収縮と共に、E/A比は1.0未満に減少する。疾患が進行するにつれて、左室コンプライアンスは減少し、これが左心房圧を増加させ、次に、弛緩が損なわれているにもかかわらず、早期左室充満を増加させる。E/A比のこの奇異な正常化は、「偽正常化」と称され得る。重度拡張機能障害の患者において、左室充満は、主に、初期拡張期中に起こり、2.0より大きいE/A比を生じる。
本明細書において使用される場合、「減速時間」は、最大E点からベースラインまで掛かる時間である。成人において、これは、通常、220ミリ秒未満である。
本明細書において使用される場合、用語「求心性肥大」は、一般的に、左室壁厚増加と関連するか、又は例えばLVIDdによって測定されるような、LVの拡張を伴わないLV質量増加と関連する、心臓肥大の1つの型を指す。高血圧又は筋力トレーニングでよく見られる圧の増加は、求心性肥大表現型を生じる。求心性肥大は、「遠心性肥大」とは異なり、後者は左室の拡張によって特徴づけられ、弁の欠陥又は耐久訓練で観察されるか又はこれらと関連する。遠心性肥大は、求心性肥大から発展し得る。拡張機能障害を有する個体、特に初期段階拡張機能障害を有する個体は、検出可能な求心性肥大を伴うことも伴わないこともある。
本明細書において使用される場合、用語「HFpEF」又は「駆出率が保たれた心不全」は、一般的に、LV圧増加に依存する、正常駆出率(心室容積の約50%か又はそれより多い)によって特徴づけられる心不全の1つの型を指す。
本明細書において使用される場合、「心筋症」は、一般的に、通常(しかし常にではない)不適切な心室肥大又は拡張を示す、機械的及び/又は電気的機能障害と関連する心筋疾患の不均一な群を指す。心筋症は、心臓に限定された原発性心筋症、好ましくは後天性心筋症、より好ましくは肥満関連心筋症であってもよい。肥満関連心筋症は、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患又は他の病因では説明できない、肥満個体において定義される心筋疾患である。この疾患の提示は、無症候性左室機能障害から、顕性拡張型心筋症及び心不全まで多様であり得る。
本明細書において使用される場合、用語「高齢個体」は、60歳を超える、より好ましくは65歳又は70歳又は75歳を超える個体を指す。
本明細書において使用される場合、用語「医薬的に許容され得る」は、活性成分(複数の場合もある)の生物学的活性の有効性に干渉しない、非毒性物質を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「治療する」、「治療している」又は「治療」は、疾患又は障害と関連して、一実施形態において、疾患又は障害を改善する(すなわち疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発展を遅延させるか又は抑止するか又は減少させる)ことを指す。別の実施形態において、「治療する」、「治療している」又は「治療」は、少なくとも1つの物理的パラメータを軽減するか又は改善することを指し、このパラメータには患者には認識不能なパラメータが含まれる。更に別の実施形態において、「治療する」、「治療している」又は「治療」は、疾患又は障害を、物理的に(例えば認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば物理的パラメータの安定化)、又はその両方で調節することを指す。例えば、状態の症状に関して、用語「軽減する」又は「軽減」は、本明細書において使用される場合、患者における状態の症状の頻度及び大きさの少なくとも1つを減少させることを指す。一実施形態において、用語「治療のための方法」又は「治療するための方法」は、本明細書において使用される場合、「治療する方法」を指す。
本明細書において使用される場合、用語「療法的有効量」は、言及される効果を達成するために十分である、本発明の化合物、例えば抗Aβ42抗体、又はこの抗体を産生するためのワクチン若しくは免疫刺激組成物の量を指す。したがって、抗Aβ42抗体、又はこの抗体を産生するためのワクチン若しくは免疫刺激組成物の療法的有効量は、Aβ42血漿発現又は産生によって仲介されるか又はこれらと関連する状態の治療又は防止に十分な量であろう。
「療法レジメン」は、疾病治療のパターン、例えば疾患又は障害の治療中に使用される投薬のパターンを意味する。
本明細書において使用される場合、被験体は、こうした被験体が、こうした治療から、生物学的に、医学的に、又は生活の質の上で利益を得るならば、治療が「必要で」ある。
3.発明を実施する形態
3.1 個体
本発明の方法を適用する個体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
個体は、治療時点で拡張機能障害を持たない場合がある。こうした個体は、拡張機能障害のリスクがある場合があり、すなわち拡張機能障害の1つ以上のリスク因子を有する場合がある。例えば、個体は、前糖尿病又は糖尿病、過体重又は肥満、女性である場合があり、アルツハイマー病又はAβが関与する他の神経疾患を有する場合もあるし、高齢である場合もある。個体は、上昇した量のAβ42、好ましくは上昇した量の血漿Aβ42を有してもよい。本発明は、拡張機能障害の発展を防止するため、又は拡張機能障害を防止するために、こうした個体に適用され得る。
別の実施形態において、個体は、治療時点で拡張機能障害を有する場合がある。こうした個体は、拡張機能障害に関して無症候性である場合もあるし、拡張機能障害に関して症候性である場合もある。本発明は、拡張機能障害を治療又は改善又は軽減するためにこうした個体に適用され得る。
一実施形態において、抗Aβ42抗体又は免疫刺激組成物が投与されるべき個体は、肥満であり、上昇した量の血漿Aβ42を有し、拡張機能障害を有する場合もあるし、有さない場合もある。こうした個体は、肥満関連心筋症を有する場合もあるし、肥満関連心筋症のリスクがある場合もある。
拡張機能障害の段階は、多様な等級づけ系に従って分類されてきている。例えば、American Society of Echocardiography及びEuropean Association of Cardiovascular Imagingに従った拡張機能障害の4つの基本的心エコーパターン(等級I~等級IV)が記載される:
等級I拡張機能障害。僧帽弁流入ドップラー心エコー図上で、E/A比は0.8以下であり、減速時間は200ms超である一方、充満圧の測定値であるE/e’比は、10未満の正常限界内である。このパターンは、通常、或る患者では加齢と共に発展する可能性があり、多くの等級Iの患者は、心不全のいかなる臨床的徴候又は症状も持たない。
等級II拡張機能障害は、「偽正常充満動力学」と称され、E/A比は0.8~2.0の間であり、減速時間は160ms~220msまで減少する。これは、中程度の拡張機能障害と見なされ、左心房充満圧上昇と関連し、E/e’比は10~14の間である。これらの患者は、より一般的には、心不全の症状を有し、多くは左心臓圧の上昇のため、左心房肥大を有する。
クラスIII拡張機能障害患者は、2超のE/A比及び14超のE/e’比を有する。これらの患者は、ヴァルサルヴァ法を行うと、心エコー上で拡張異常の逆転を示す。これは、「可逆性制限性拡張機能障害」と称される。
クラスIV拡張機能障害患者は、心エコー異常の可逆性を示さず、したがって「固定制限性拡張機能障害」を患うと言われる。
等級III及び等級IV拡張機能障害は、「制限性充満動力学」と称される。これらはどちらも、拡張機能障害の重度の型であり、患者は進行した心不全症状を有する傾向がある。
一実施形態において、等級I拡張機能障害(上記の通り)を有する、好ましくはAβ42の血漿量が上昇した患者に、抗Aβ42抗体を与え、より重度の拡張機能障害の発展を防止するか、又はそうでなければ拡張機能を維持する。
一実施形態において、等級II、等級III又は等級IV拡張機能障害(上述の通り)を有する、好ましくはAβ42の血漿量が上昇した患者に、抗Aβ42抗体を与え、拡張機能障害を治療するか若しくは逆転させるか、又は拡張機能障害の1つ以上の症状若しくは特性を治療するか若しくは逆転させる。
一実施形態において、個体は求心性肥大を有する場合がある。
治療が必要な個体は、正常左室直径を有する場合があり、正常心臓重量を有する場合がある。
治療が必要な個体は、LV減速時間増加を有してもよい。
治療が必要な個体は、心筋症、特に虚血性又は肥大性心筋症を有する場合がある。
治療が必要な個体は、拡張機能障害に加えて、収縮状態も有する場合がある。
治療の対象である個体は、心不全に関して症候性である場合があり、HFPpEFに関して症候性である場合もあるし、心不全又はHFpEFに関して無症候性である場合もある。心不全の症状には、一般的に、運動誘導性呼吸困難、発作性夜間呼吸困難及び起坐呼吸を含む息切れ、運動不耐性、疲労、頸静脈圧上昇、及び浮腫が含まれる。HFpEFの患者はストレス、特に心室負荷の血行動態的改変又は拡張圧増加に十分に耐えられない。しばしば、HFpEFの収縮期血圧には、より劇的な上昇がある。
心不全に関して無症候性又は症候性である個体は、肥満又は過体重、糖尿病又は前糖尿病である又はない場合があり、アルツハイマー病又はAβ関与を伴う他の神経疾患を有する又は有さない場合もあるし、高齢である場合もある。
3.2 LVDDに関する個体のスクリーニング
特に好ましい実施形態において、個体は、Aβの血漿量を評価するか又は測定し、任意選択で、拡張機能障害を持たないか又は拡張機能障害を持つリスクがない個体、例えば過体重若しくは肥満ではなく、又は前糖尿病若しくは糖尿病ではなく、又はアルツハイマー病を持たず、又は高齢でない個体の血漿中のAβの量を示す正常対照と比較することによって、LVDDの治療若しくは防止のために選択されるか、又はLVDDに関してスクリーニングされるか、又はLVDDを発展させるリスクに関して評価されてもよい。
一実施形態において、対照は、年齢マッチ対照であってもよい。評価しようとする個体が高齢である場合、対照は、約20歳~40歳の正常個体で見られるものと一致する、血漿中のAβ42の量を示し得る。
一実施形態において、対照は、約18.5kg/m2~24.9kg/m2の正常範囲の肥満度指数を有する個体由来の血漿中のAβ42の量を示す。
一実施形態において、血漿中のAβ42の量を示す対照は、単一個体から得られ得る。別の実施形態において、対照は、個体コホートから得られ得る。
本明細書の実施例において、拡張機能障害は、1日あたり約0.04mg/kgの量のAβ42ペプチドの投与によって誘導されることが確立されてきている。さらに、高脂肪食餌を採っている個体は、対照よりも約3倍高いAβ42ペプチド血漿量を発展させ得る。一実施形態において、治療のために選択されるべき個体は、約10pM~100pMのAβ42ペプチドの血漿量、又は対照中のAβ42ペプチド量の約1倍から少なくとも10倍を有し得る。
対照は、続く予防又は療法の実行に関する決定を行い得る、参照ポイントを提供し得る。決定は、予防又は治療に関して評価している個体から得られた試験試料と、対照との間の比較に基づいて行われ得る。
或る特定の実施形態において、対照は、別の集団によって、及び/又は治療に関して被験体を評価する前に得られているデータの形で提供され得る。例えば、対照は、市販のデータベース又は公的に利用可能なデータベースから得られ得る。
一実施形態において、個体は、LVDDの治療若しくは防止のために選択されるか、又はLVDDに関してスクリーニングされるか、又はLVDDを発展させるリスクに関して評価され、ここで、個体は、好ましくは正常対照におけるAβ又はその断片、好ましくはAβ42の量よりも多い量のAβ又はその断片、好ましくはAβ42の量を有する。
Aβ又はその断片、例えばAβ42の血漿量の測定のための方法は、当該技術分野に知られる(Kim et al., Sci. Adv. 2019;5:eaav1388 17 April 2019;Shie, FS et al., PLOSONE|DOI:10.1371/journal.pone.0134531 August 5, 2015;Balakrishnan K et al. Journal of Alzheimer’s Disease 8 (2005) 269-282;Luciano R et al., PEDIATRICS Volume 135, number 6, June 2015)。
或る特定の実施形態において、試験すべき試料は、体液、例えば血液、血清、血漿、尿、涙、唾液、CSF等である。
或る特定の実施形態において、個体由来の試料は、Aβ42レベルの検出前に処理する必要があり得る。例えば、試験前に、試料を遠心分離するか又は特定の濃度まで希釈するか又は特定のpHまで調整してもよい。逆に、薄すぎる試料を、試験前に濃縮することが望ましい可能性もある。
或る特定の実施形態において、Aβ42を測定してもよいし、Aβ42を含むペプチド又は複合体を測定してもよい。
他の実施形態において、Aβ42をAβ40と区別するAβ42 C末端配列を含むAβ42断片を測定してもよい。
上記方法を、拡張機能障害又は関連心不全、例えばHFPeFを検出するか、評価するか又は測定するための以下の診断法と組み合わせてもよいし、Aβ42の血漿量の評価を伴わずに、以下の方法を使用してもよい。
ドップラー流測定を伴う二次元心エコーは、拡張機能障害を評価するために一般的に使用される。拡張機能変化を明らかに立証するためには、運動が必要であり得る。拡張期中、LVが弛緩している際、血流は僧帽弁を流れ、初期拡張性僧帽弁速度(E)を引き起こし、次いで、後期拡張期中、左心房が収縮している際、更なる血液が弁を通じてポンピングされる(A)。E/A比は、拡張機能障害では改変され得る。
組織ドップラーイメージングは、僧帽弁輪速度を測定する心エコー技術である。この速度は、初期心筋機能障害の高感度マーカーであることが示されてきている。異常な能動的弛緩(active relaxation)では、初期拡張期中の僧房弁輪速度(E)が減少し、一方、後期拡張期中の僧房弁輪速度(A)は増加し、より低いE/A比を生じる。動物モデルにおいて、組織ドップラーイメージングは、拡張機能障害を評価するための信頼性があるツールと検証されてきている。
E波速度及びA波速度は、血液体積、僧帽弁解剖学的形態、僧帽弁機能、及び心房細動によって影響を受け、標準心エコーの信頼性をより下げる。これらの症例では、僧房弁輪の動き(前述の要因と独立した経僧帽弁流の測定値)を測定するため、組織ドップラーイメージングが有用である。心臓カテーテル設置は、拡張機能障害診断のための好ましい方法のままである。しかし、毎日の臨床診療においては、ドップラーを伴う二次元心エコーが、診断を確認するための最適な非侵襲性ツールである。心エコーが技術的に困難である患者に関しては、稀に、放射性核種血管造影を使用する。
カラーMモードドップラーによるLV流入伝播速度(VP)は、前負荷に比較的非感受性であるLV弛緩の別の指標である。VPは、動物及びヒトの両方において、等容性弛緩の時間定数(τ)とよく相関することが示されてきている。
近年、スペックルトラッキング心エコー(STE)は、歪み解析によって、心筋壁の動きの評価に関する有望な技術として出現してきている。心臓周期中のスペックルの移動をトラッキングすることによって、STEは、心筋変形の半自動化描写を可能にする。
心臓磁気共鳴(CMR)イメージングは、拡張機能障害を測定するための、より新しい技術である。心筋タグづけにより、特定の心筋領域を標識することが可能になる。拡張期中、これらの領域を追うことで、STEと同様の方式でこれらを分析することが可能になる。さらに、迅速拡張性のねじれのない動きをCMRタグづけで追うことで、等容性弛緩に直接関連づけ、弛緩の速度及び完了の指標として使用できる。
バイオマーカーもまた、LVDD診断のために評価され得る。B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)及びTnIは、HFバイオマーカーとして使用されてきており、入院と強い関連を示す。にもかかわらず、これらは非特異的であり、拡張機能障害とよく相関しない。近年、cMyBP-Cが損傷を受けた筋線維から放出される新規バイオマーカーであり得ると報告されてきている。さらに、上昇したS-グルタチオン化cMyBP-Cレベルが拡張機能障害患者の血液中で検出され得る。高血圧及び糖尿病は、心臓収縮性タンパク質であるcMyBP-Cの心臓酸化及びS-グルタチオン化を導いて、弛緩障害を導き、血中の修飾cMyBP-Cは、拡張機能障害の循環バイオマーカーに相当し得る。
3.3 抗Aβ抗体
本発明で使用される抗Aβ抗体は、一般的に、血漿又は細胞外会合Aβ42、特にオリゴマーAβ42に結合する。仮説によって束縛されることは望ましくないが、抗Aβ抗体の投与は、血漿又は細胞外会合Aβ42ペプチドを枯渇させるか、これらに結合するか、又はこれらを中和して、好ましくはAβ42誘導性又は関連心筋細胞炎症及び/又は心臓グルコース取り込み減少の最少化を通じて、拡張機能障害の最少化を生じる。
抗Aβ抗体は、表1に示すAβ42ペプチド上の以下のエピトープのいずれか1つに結合し得る。
抗Aβ抗体は、単量体Aβ42又はオリゴマーAβ42ペプチドに結合し得る。
抗Aβ抗体は、アミロイド原線維に結合し得る。
抗Aβ抗体は、アミロイド前原線維に結合し得る。
「選択的抗Aβ42抗体」、すなわちAβ42に結合するがAβ40には結合しない抗体;及び「選択的抗Aβ40抗体」、すなわちAβ40に結合するがAβ42には結合しない抗体、並びにその合成法は当該技術分野に知られる。例えば:Ida N. et al. J. Biol. Chem. 1996 271: 22908-22914;Axelsen T V et al. Mol. Immunol. 2009; 46: 2267-2273;Miller DL, et al J. Alzheimers Dis. 2011; 23: 293-305を参照されたい。
一実施形態において、抗Aβ抗体は、選択的抗Aβ42抗体であってもよい。
抗Aβ抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、ネズミ抗体であってもよく、又は別の哺乳動物種又は鳥類に由来してもよい。
抗Aβ抗体は、任意のアイソタイプ又はサブタイプであってもよい。例えば、抗Aβ抗体は、IgG、IgM、IgA、IgE又はIgDであってもよい。
好ましくは、抗体はIgG、より好ましくはサブタイプIgG1、IgG2又はIgG4である。
抗Aβ抗体は全抗体、すなわち関連するアイソタイプ又はサブタイプに共通のドメイン全てを含むものであってもよいし、抗Aβ抗体は、Aβペプチド上のエピトープへの抗Aβ抗体の結合を可能にするため、少なくともCDR及びフレームワーク領域を含む、全抗体の断片であってもよい。
抗Aβ抗体は、Fab、Dabの形であってもよい。
抗Aβ抗体は、バピネオズマブ、ソラネズマブ、ガンテネルマブ、クレネズマブ、アデュカヌマブ、BAN2401及びMEDI1814からなる群より選択されてもよい。これらの抗Aβ抗体及びその製造法は、表2に引用される特許明細書に記載される。表2に引用される特許明細書の全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
バピネオズマブ(AAB-001;Pfizer Inc., New York, NY、及びJanssen Pharmaceuticals, Inc., Raritan, NJ)は、ヒト化免疫グロブリン(Ig)G1抗Aβ mAbであり、5つのN末端残基に結合し、原線維性及び可溶性Aβの両方を除去する。
ソラネズマブ(LY2062430;Eli Lilly and Company, Indianapolis, IN)は、ヒト化IgG1 mAbであり、Aβの中央ドメイン(残基16~26)に結合し、単量体のクリアランスを増加させる。
ガンテネルマブ(Hoffman-La Roche, Basel, Switzerland)は、最初の完全ヒトIgG1抗Aβ mAbであり、Aβ原線維上に発現されるコンホメーションエピトープに結合する。このエピトープは、AβのN末端(3~12)及び中央(18~27)アミノ酸の両方を含み、したがって、ペプチドは、N末端近傍の中央領域でフォールディングされる必要がある。
クレネズマブ(MABT5102A;Genentech, Inc., South San Francisco, CA)は、Fcガンマ受容体の活性化を最小限にするよう、IgG4主鎖上で操作された抗体である。クレネズマブは、Aβペプチドの中央ドメイン(残基13~24)を好み、Aβの多数のコンホメーション(単量体、オリゴマー、原線維)に結合するが、単量体に対して、10倍より高いアフィニティでオリゴマーに結合する。クレネズマブに認識されるエピトープは、ソラネズマブのエピトープと重複し、これは、これらで交差反応性が観察されることを説明するが、Aβの多様な種に関して異なる結合プロファイルが観察されることは説明しない。クレネズマブ及びソラネズマブは、実際に、わずかに異なるエピトープ(それぞれ、残基13~24対16~26)をターゲティングすることが報告されており、ソラネズマブが結合するAβは、残基21と26との間にαらせん構造を所持する一方、クレネズマブが結合するAβは、残基21と24との間にランダムコイル構造を有することが示唆されている。αらせんエピトープは単量体Aβに存在するが、凝集種には存在しないことが提唱されてきており、これは潜在的に、ソラネズマブが単量体を好むが、クレネズマブがオリゴマーを含む多重種を認識することを説明する。
アデュカヌマブ(BIIB037;Biogen, Inc., Cambridge, MA)は、可溶性オリゴマー及び不溶性原線維を含むAβ凝集物と選択的に反応する完全ヒトIgG1 mAbである。アデュカヌマブはN末端(残基3~6)に結合し、Aβの凝集種上に存在するが、単量体には存在しない、コンホメーションエピトープを認識する。
BAN2401(BioArctic Neuroscience AB, Stockholm, Sweden、及びエーザイ株式会社、日本、東京)は、可溶性Aβ前原線維に選択的に結合し、これを除去する、ヒト化IgG1 mAbである。BAN2401は、アミロイド前駆体タンパク質中のE22G Arctic突然変異に由来した。
MEDI1814(MedImmune, UK and Astra Zeneca UK)は、Aβx-42(Aβ42)ペプチドに選択的に高アフィニティで結合するように、並びにFc領域に三重突然変異を導入することによって、エフェクター機能が非常に減少するように操作された、完全ヒトIgGλモノクローナル抗体である。in vitroで、MEDI1814は、Aβ42ペプチドの全ての型に特異的に結合するが、Aβ40ペプチドには結合しない。ラット及びカニクイザル(cynomolgous monkey)では、MEDI1814は全体を増加させ、遊離CSFAβ42レベルを減少させるが、総CSF Aβ40レベルには影響を及ぼさない。
抗Aβ抗体は、療法的有効量の抗Aβ抗体及び医薬的に許容され得るキャリアを含む、医薬組成物の形で提供されてもよい。医薬組成物は、固形型又は液体型であってもよく、とりわけ粉末、錠剤、溶液又はエアロゾルの形であってもよい。
医薬組成物が、医薬的に許容され得るキャリア及び/又は希釈剤を含むことが好ましい。適切な医薬キャリア、賦形剤及び/又は希釈剤の例は当該技術分野に既知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、多様なタイプの湿潤剤、無菌溶液等が含まれる。こうしたキャリアを含む組成物を、既知の慣用法によって配合してもよい。
非経口投与のための調製物には、無菌水性又は非水性溶液、懸濁物、及びエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性キャリアには、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁物が含まれ、生理食塩水及び緩衝媒体が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は不揮発性油が含まれる。静脈内ビヒクルには、液体及び栄養素補充剤、電解質補充剤(例えばリンゲルのデキストロースに基づくもの)等が含まれる。保存剤及び他の添加剤もまた存在してもよく、例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤、及び不活性ガス等がある。
3.4 抗体投与
抗Aβ抗体は、抗体の療法的有効量の全身集積を可能にする任意の既知の経路によって投与され得る。好ましくは、抗体は非経口投与される。投与は、注射によって、例えば静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋内(i.m.)、皮内(i.d.)注射によって、又は鼻内若しくは気管支内送達によって行われることが特に好ましい。療法抗体の他の非経口投与経路が、当業者に知られる。
投薬レジメンは、主治医及び臨床的要因によって決定されるであろう。医学業に既知であるように、任意の1人の患者に対する投薬量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与しようとする特定の化合物、性別、投与時間及び経路、全身の健康状態、並びに同時に投与される他の薬剤を含む、多くの要因に依存する。タンパク質性の薬学的活性物質は、用量あたり1ng/kg体重~15mg/kg体重の間の量で存在してもよいが、特に前述の要因を考慮して、この例示的な範囲の下又は上の用量が想定される。レジメンが連続注入である場合、これもまた、体重1キログラムあたり1分あたり1μg~10mg単位の範囲であるべきである。周期的評価によって、経過を監視してもよい。本発明の組成物は局所的又は全身性に投与され得る。
一実施形態において、抗体を0.1mg/kg~15mg/kg、好ましくは0.5mg/kg~10mg/kg、好ましくは約5mg/kgの量で投与する。これらの実施形態において、抗体をi.v.投与してもよい。これらの実施形態において、抗体を2週~4週ごとに1回投与してもよい。
一実施形態において、抗体を、10週~15週ごとに、i.v.投与によって、0.5mg/kg~5mg/kgの量で投与する。
一実施形態において、抗体を、4週ごとに、i.v.投与によって、100mg~500mg、好ましくは約400mg(体重に関わらず)の量で投与する。
一実施形態において、抗体を、4週ごとに1回、s.c.注射によって、100mg~300mgの量で投与する。
一実施形態において、抗体投与は、血漿中のAβ42の量又は活性を、上述のような、正常個体で観察されるものと同じか又はそれと近い量にまで減少させることを可能にする。
3.5 抗Aβ42製剤
抗Aβ42抗体を、皮下又は筋内投与のため、抗体構成要素が1mg/mL~250mg/mL、好ましくは10mg/ml~100mg/ml製剤、より好ましくは約40mg/ml~80mg/ml製剤、好ましくは80mg/ml製剤、又は好ましくは150mg/ml~200mg/mlである高タンパク質含量製剤の形で提供してもよい。高抗体含量製剤は、より多い用量の抗体をより少ない体積の製剤で投与することを可能にすることから、管理のため、又は拡張機能障害の防止若しくは治療のために、特に有用である。これは、自己非経口投与、特に自己皮下注射による投与中に被る痛みを最小限にする。
一実施形態において、本発明の抗Aβ42製剤は、安定性及び可溶性が改善され、凝集が最小限であり、抗体の高タンパク質含量での粘性が最小限であるよう適応されている。これらの改善は、界面活性剤及び/又はポリオールの取り込みから生じ得る。
界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート又はポロキサマーからなる群より選択され得る。一実施形態において、界面活性剤は、ポロキサマー、例えばポロキサマー188、ポロキサマー407;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばBrij35、Cremophor A25、Sympatens ALM/230であってもよい。ポリソルベートは、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート80(Tween80)、Mirj、及びポロキサマー、例えばポロキサマー188であってもよい。
界面活性剤は、約0.1mg/ml~1.5mg/ml製剤の量で含まれてもよい。
ポリオールは、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ラフィノース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、グリセロール、L-グルコネート及びその金属塩からなる群より選択されてもよい。好ましくは、ポリオールはソルビトール又はマンニトール、より好ましくはマンニトールである。
ポリオールは、約1mg/mL~50mg/mL製剤の量で含まれてもよい。
一実施形態において、製剤は、緩衝剤、例えば酢酸、コハク酸、グルコン酸、ヒスチジン、メチオニン、クエン酸、リン酸、クエン酸/リン酸、イミダゾール、その組み合わせ、及び他の有機酸緩衝剤の使用を必要としない。
特定の好ましい実施形態において、
抗Aβ42抗体、好ましくはバピネオズマブであって、
約1mg/mL~250mg/mL、好ましくは150mg/mL~250mg/ml製剤、より好ましくは約200mg/ml製剤の量で提供される、抗体と、
界面活性剤、好ましくは約0.1mg/mL~1.5mg/ml製剤の量のポリソルベート80と、
ポリオール、好ましくは約1mg/mL~50mg/mL製剤の量のマンニトールと、
を含む、注射可能水性医薬製剤であって、
酢酸、コハク酸、グルコン酸、ヒスチジン、メチオニン、クエン酸、リン酸、クエン酸/リン酸、イミダゾール、その組み合わせ、及び他の有機酸緩衝剤からなる群より選択される緩衝剤を含有しない、
医薬製剤を提供する。
3.6 Aβ免疫刺激組成物
Aβ免疫刺激組成物又はワクチンを個体に投与することによって、拡張機能障害又は関連状態の防止、治療又は改善のために、抗Aβ抗体を個体に提供してもよい。
抗Aβ抗体を産生するためのワクチン又は免疫刺激組成物は、個体において、抗Aβ抗体、一般的に、オリゴマーAβ42に結合可能な抗体の産生のための免疫原構成要素として、ペプチド免疫原を含んでもよい。
抗Aβ42抗体を産生するためのペプチド免疫原は合成であってもよいし、又は天然供給源に由来してもよい。
抗Aβ42抗体を産生するためのペプチド免疫原は、Aβエピトープを形成し得る。エピトープは、表1に示す通りであってもよく、又はIda、上記;Axelsen、上記;Miller、上記に論じられる通りであってもよい。
これらのペプチド免疫原、免疫刺激組成物又はこれらを含むワクチンは、表3に引用される特許明細書又は他の文献に記載される。表3に引用される特許明細書又は他の文献の全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
別の能動免疫アプローチは、ペプチド自体ではなく、AβをコードするDNAを注射する、DNA Aβ免疫である。注射されたDNAは免疫された個体中で翻訳されてAβペプチドを産生し、このペプチドが次いで、Aβに対するそれぞれの免疫反応を誘発する。
したがって、一実施形態において、抗Aβ抗体を生成するためのワクチン又は免疫刺激物質は、抗Aβ抗体、特にオリゴマーAβ42に結合する抗体を産生するための免疫原ペプチドをコードする核酸を含み得る。
核酸はDNAであってもよく、この場合、ワクチンはDNAワクチンである。
一実施形態において、ワクチンは、Aβ三量体ワクチンをコードする全長DNAを含む。全長DNA Aβ三量体ワクチンは、B細胞及びT細胞エピトープを含み得る。全長DNA Aβワクチンは、より広く多様な抗体エピトープでのより広い抗Aβ反応に対して開かれている利点を有する。
抗Aβ抗体を生成するか又は産生するためのDNAワクチン及びこうしたワクチンの使用は、表4に引用される文献に記載される。表4に引用される文献の全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
3.6 ワクチン投与
本明細書に記載のワクチン又は免疫刺激組成物は、任意の適切な標準投与経路によって投与される。組成物は、局所、経口、直腸、鼻又は非経口(例えば静脈内、皮下、又は筋内)経路によって投与され得る。特に好ましい実施形態において、組成物又はワクチンは、非経口で、特にi.p.、i.v.、s.c.又はi.m.注射によって投与される。
当業者に知られる技術を使用し、i.m.又はs.c.注射のために遺伝子銃を使用してもよい。
注射頻度は、患者反応に応じて多様であり得る。例えば、投与頻度は、主治医によって、患者の反応及び対応する抗体力価に応じて多様であり得る。例えば、同じ抗体力価を誘発及び/又は維持するために、低反応者である患者は、より頻繁な投与を必要とし得る一方、高反応者である患者は、より頻度の低い投与を必要とし得る。
注射頻度には、限定されるわけではないが、1年あたり1回~10回の投与、例えば1年あたり2回~8回、例えば1年あたり6回の投与が含まれ得る。
一実施形態において、組成物又はワクチンは、投与の必要があるヒト患者に、約4週~8週ごとに、好ましくは約5週~7週ごとに、特に約6週ごとに投与される。こうした投薬措置は、約12週~16週、例えば約12週続き得る。例えば、組成物又はワクチンは0週、6週、12週に投与される。さらに、続く投与間の遅延は延長され得る。
したがって、一実施形態において、本発明は、(a)約6週間間隔で2回以上の投与、その後、(b)約12週間間隔で2回以上の投与の投薬措置を提供する。一実施形態において、本発明は、(a)約6週間間隔で3回の投与(例えば0週、6週、及び12週で)、その後、(b)約12週間間隔で(例えば24週、36週、48週及び60週で)2回以上の投与(例えば3回、4回、5回以上)の投薬措置を提供する。
本発明に従って、約5μg~600μg、例えば約5μg~550g、約50μg~500μg、約100μg~500μg、例えば約75μg~300μg、例えば約50μg~150μg、例えば約15μg~125μg、例えば約25μg~100μg、例えば約50μg、75μg、100μg、150μg、200μg、300μg、400μg又は450μgのペプチド免疫原又はペプチド免疫原をコードするDNAをヒト患者に投与し得る。したがって、組成物又はワクチンは、用量あたり、これらの量の1つを含有し得る。一実施形態において、本発明の組成物は、用量あたり約150μg又は約50μgのペプチド免疫原又はペプチド免疫原をコードするDNAを含む。
実施例1-材料及び方法
Aβ42投与研究:凍結乾燥組換えAβ42(Millipore)及びスクランブル化対照ペプチド(ScrAβ42;Millipore)を、1% NH4OHに再懸濁し、H2O中、200ng/mlでアリコットし、4週間を超えずに-80℃で保存した。オスC57BL6マウスをAnimal Resource Centre(Perth, WA)から4週齢で得て、12時間明期/暗期周期、22℃の温度及び一定の湿度で、通常の齧歯類食餌を与え、ケージあたり4匹のマウスで飼育した。12週齢で、EchoMRIによって決定される体重及び体組成に従って、マウスをグループ分けした。次いで、マウスに1μgの組換えAβ42又はScrAβ42(コホートあたり、n=10/群)をi.p.注射によって1日1回5週間投与した。最終治療日、一晩絶食後、i.p.グルコース耐性試験(GTT)を行った。マウスに、以下のように調製した、放射性グルコーストレーサーを含むグルコース2g/kg除脂肪量を投与した。100μlの1μCi/μlグルコース類似体、[3H]-2-デオキシグルコース(2-DOG)、及び500μlの200μCi/mL U-14Cグルコースを蒸発乾固した後、1mLの50%グルコースに放射性トレーサーを再溶解した。これは、100μCi/mLの[3H]-2-DOG及び100μCi/mLのU-14Cグルコースを含有する、50%グルコース溶液を生じた。各マウスの尾先端を切り落とし、AccuCheck II血糖測定装置(Roche)を使用して、血液試料の血中グルコース濃度を測定した。一晩絶食マウスに、放射標識グルコース溶液の腹腔内注射(2g/kg体重、10μCi/動物)を介して、GTTを開始した。血中グルコース測定のため、注射の15分、30分、45分、60分及び90分後に更なる血液試料を採取した。各時点で、更に尾先端から血液試料(30μl)を採取し、100μlの生理食塩水中に希釈した。次いで、これらの試料を遠心分離し、上清を収集した。50μlの上清を500μlの蒸留水中に希釈し、次いで4mLのUltima Gold XRシンチレーション液(Packard Bioscience)中に懸濁した。Beckmanシンチレーションカウンター(LS6000 SC)を使用して、各溶液に対して液体シンチレーション計測を行うことによって、各時点の血液放射能を測定した。GTT終了時、頸椎脱臼によってマウスを屠殺した。心臓穿刺直後に血液を得て、心臓及び他の組織を直ちに取り除いた。心臓を氷冷PBS中で洗浄し、重量測定した後、液体窒素中で瞬間凍結した。心臓(30mg)、精巣上体脂肪パッド(30mg)及び四頭筋骨格筋(30mg)を1.5mlの蒸留水中でホモジナイズした。ホモジネートを4℃、3000rpmで10分間遠心分離した。400μlの上清を1.6mLの蒸留水に希釈し、次いで、14mLのUltima Gold XRシンチレーション液(Packard Bioscience)に懸濁した。Beckmanシンチレーションカウンター(LS6000 SC)を使用した液体シンチレーション計測によって、各試料の放射能([3H]-2-DOG6P及び[3H]-2-DOG両方)を測定した。3H放射能を使用して、各組織内へのグルコース取り込みを測定した。
心臓中のトリグリセリドへのU-14Cグルコースの取り込み及び総グリセリド含量を決定するため、クロロホルム/メタノール混合物を使用して、トリグリセリド抽出を行った。心臓試料(30mg)を2mLのクロロホルム/メタノール(2:1)中で手動ホモジナイズし、ホモジナイザーを更なる2mLのクロロホルム/メタノール(2:1)中でリンスし、10mL試験管中の元来の抽出物に、洗浄液を添加した。試験管に堅くキャップをし、回転装置上で一晩混合して、トリグリセリド抽出を最大限にした。次いで、2mlの0.6%生理食塩水を添加して、有機相及び水相の分離を促進し、その後、試験管を完全に混合し、次いで2000rpmで10分間遠心分離した。下層のクロロホルム相(トリグリセリドを含有する)を収集し、窒素下、45℃で蒸発乾固した。次いで、乾燥抽出物を250μlの100%エタノールに再溶解して、脂質を再溶解し、アリコットをアッセイ用に分配できるようにした。5mLのUltima Gold XRシンチレーション液(Packard Bioscience)中に100μlのトリグリセリド溶液を懸濁し、その後Beckmanシンチレーションカウンター(LS6000 SC)を使用してシンチレーション計測することによって、脂質画分内へのU-14Cグルコースクリアランス量を測定した。製造者の指示に従って、酵素蛍光測定アッセイ(BioVision)を使用して、総グリセリド含量を測定した。酵素反応中でリポタンパク質リパーゼを使用して、脂肪酸及びグリセロールを得た。定量化されたグリセロールをトリグリセリドの間接的な測定値として使用して、個体対組織重量とした(was 49ndividual to tissue weight)。
約20ミリグラムから30ミリグラムの組織を1mlのTrizol中でホモジナイズした後、室温(RT)で5分間インキュベーションすることによって、組織から総mRNAを抽出した。200μLのクロロホルムをホモジネートに添加し、15秒間振盪し、1分間RTでインキュベーションした後、上層の水相を抽出するために、4℃、12000gで10分間遠心分離した。等体積(細胞溶解物に関しては350μl/組織に関しては450μL)の70%エタノールを細胞/組織試料に添加し、Rneasyスピンカラム(Rneasy(商標)min Iキット、Qiagen)で更に精製した。SuperScript(商標)III転写系(Invitrogen)を使用して、相補DNA(cDNA)を合成した。OliGreenアッセイ(Quant-iT(商標)OliGreen(商標)ssDNAアッセイキット;Invitrogen)によってcDNAを定量化した。Beaconプライマーデザイナープログラムソフトウェアを使用して、全てのプライマーを社内設計し、Gene Works(Adelaide, Australia)によって合成した。広い濃度範囲でプライマー配列効率を試験した。FastStart Universal SYBR Green Master(ROX;Roche Applied-Science)をMX3005P(商標)多重定量的PCR(QPCR)系(Stratagene)上で使用して、遺伝子発現レベルを定量化した。対数変換CT値をcDNA濃度に対して正規化して、相対遺伝子発現レベルを決定した。
心臓機能に対するAβ42投与の効果を、12週齢オスC57BL6マウスの別のコホートで評価し、これらのマウスには、Aβ42又はScrAβ42(コホートあたりn=10/群)を、i.p.注射によって、1日1回5週間投与した。ペプチド投与の4週間後、以下のように心エコーによって、心臓機能を評価した。1.5%イソフルラン麻酔の吸入によってマウスを麻酔し、経験を積んだ獣医師により、15MHz直線配列トランスデューサとともにPhillips HD15診断超音波系を使用して心エコーを行った。ドップラーモードイメージングを使用して、僧帽弁を通る血流速度を分析した。これらの結果を使用して、減速時間及びE:A比を計算した。また、ドップラーイメージングを利用して、大動脈弁を通じた血流速度も測定した。次いで、この測定を使用して、駆出時間、ピーク大動脈流及び心拍を計算した。左室のMモードイメージングを使用して、拡張期(d)及び収縮終期(s)両方の、心室中隔厚(IVS)、左室内径(LVID)及び左室後壁(LVPW)、並びに収縮測定値、例えば駆出率及び短縮率を測定した。Troy et al.(1972)による式(1.05[LVIDd+LVPWd+IVSd]3-[LVIDd]3)を使用することによって、m-モードイメージングから、LV質量の概算を計算した。1週間後、頸椎脱臼により、マウスを人道的に屠殺した。心臓穿刺直後に血液を得て、心臓及び他の組織を直ちに取り除いた。心臓を氷冷PBS中で洗浄し、重量測定した後、液体窒素中で瞬間凍結した。
3D6-高脂肪食餌(HFD)防止研究:オスC57BL6マウスを4週齢でAnimal Resource Centre(Perth, WA)より得て、12時間明期/暗期周期、22℃の温度及び一定の湿度で、通常の齧歯類食餌を与え、ケージあたり4匹のマウスで飼育した。12週齢で、全てのマウス(n=24)に対して心エコーを行い、以下のように、心臓機能の治療前測定値を得た。1.5%イソフルラン麻酔の吸入によってマウスを麻酔し、経験を積んだ獣医師により、15MHz直線配列トランスデューサとともにPhillips HD15診断超音波系を使用して心エコーを行った。ドップラーモードイメージングを使用して、僧帽弁を通る血流速度を分析した。これらの結果を使用して、減速時間及びE:A比を計算した。また、ドップラーイメージングを利用して、大動脈弁を通じた血流速度も測定した。次いで、この測定を使用して、駆出時間、ピーク大動脈流及び心拍を計算した。左室のMモードイメージングを使用して、拡張期(d)及び収縮終期(s)両方の、心室中隔厚(IVS)、左室内径(LVID)及び左室後壁(LVPW)、並びに収縮測定値、例えば駆出率及び短縮率を測定した。Troy et al.(1972)による式(1.05[LVIDd+LVPWd+IVSd]3-[LVIDd]3)を使用することによって、m-モードイメージングから、LV質量の概算を計算した。次いで、全てのマウスに、脂肪からカロリーの43%を摂取する高脂肪食餌(HFD)(23.5重量%;D12451に基づくSF04-001高脂肪齧歯類食餌、Specialty Feeds, Glen Forrest, WA)を13週間与えた。12週齢で、マウスに0.75mg/kg体重のAβ42中和抗体3D6(#TAB-0809CLV、Creative Biolabs, Shirley, NY)又はInVivo IgG2aアイソタイプ対照抗体(#BE-0085、BioXCell, Lebanon, NH)のいずれかも、毎週、腹腔内(i.p.)注射を通じて(n=12/群)、13週間投与した。脂肪量、体重及び除脂肪量に基づいて、これらの変数が群間で可能な限り近い値でマッチするように、群を選択した。各ケージは各群の2匹のマウスを含有した。
治療期間の10週間後、マウスは経口グルコース耐性試験(OGTT)を受けた。5時間の絶食後、ハンドヘルド血糖測定装置(AccuCheck Performa)を使用し、マウスの尾出血を通じて、血中グルコースのベースライン読み取り値を収集した。次いで、強制経口投与を通じて50mgのグルコースをマウスに投与し、投与の15分、30分、45分、60分及び90分後に、血中グルコースを測定した。更に30μLの血液をベースライン、投与の15分、30分、及び60分後に、血清インスリン濃度分析のため、ヘパリン処理試験管に収集した。血液を4℃、10000gで10分間遠心分離し、上清を取り除くことによって血漿を収集した。マウス超高感度インスリンELISA(ALPCO, Salem, NH)を使用して、インスリン含量に関して、OGTT由来の血漿を分析した。インスリン耐性試験(ITT)、治療期間内の11週間。5時間の絶食後、ハンドヘルド血糖測定装置(AccuCheck Performa)を使用し、マウスの尾出血を通じて、血中グルコースのベースライン読み取り値を収集した。i.p.注射を通じて、53ndivid(53ndivid)をマウスに投与し、投与の20分、40分、60分、90分及び120分後に、血中グルコースを測定した。次いで、治療期間内の12週間、上述のように心エコーを行って、心臓機能の治療後測定値を得た。心臓機能パラメータの変化をベースライン測定値のパーセンテージとして表した。治療期間13週間後、マウスを屠殺した。治療期間終了時、5時間の絶食期間後に、頸椎脱臼によってマウスを屠殺した。心臓穿刺直後に血液を得て、心臓及び他の組織を直ちに取り除いた。心臓を氷冷PBS中で洗浄し、重量測定した後、液体窒素中で瞬間凍結した。
3D6-高脂肪食餌(HFD)治療研究:12週齢で、マウス(n=36)に心エコーを行って、心臓機能のベースライン測定値を得た。次いで、マウスを12匹の3つの群に分け、これには、固形試料/対照、HFD/対照及びHFD/3D6群が含まれた。拡張機能、脂肪量及び体重の測定値に基づいて、これらの変数が可能な限り近い値でマッチするように、群を選択した。次いで、2つのHFD群に、脂肪からカロリーの43%を摂取するHFD(23.5重量%;D12451に基づくSF04-001高脂肪齧歯類食餌、Specialty Feeds, Glen Forrest, WA)を22週間与え、一方、固形飼料群は標準的な固形飼料食餌のままだった。15週間の食餌期間後、全ての群に対して心エコーを再び行って、心臓機能の薬剤治療前測定値を得た。次いで、固形飼料/対照及びHFD/対照群に0.75mg/kg体重のInVivo IgG2aアイソタイプ対照抗体(#BE-0085、BioXCell, Lebanon, NH)を、I.P注射を通じて7週間投与する一方、HFD/3D6群に0.75mg/kg体重の3D6抗体(#TAB-0809CLV、Creative Biolabs, Shirley, NY)を投与した。次いで、治療期間6週間後、心エコーを行って、心臓機能の薬剤治療後の測定値を得た。薬剤投与の7週間後、頸椎脱臼によってマウスを人道的に屠殺し、心臓穿刺を通じて血液を直ちに得て、ヘパリン処理試験管に保存した。次いで、心臓、精巣上体脂肪パッド、腸間膜脂肪パッド、肝臓、四頭筋、後肢及び脳を直ちに切除した。心臓を拭いた後、重量測定し、全ての組織を液体窒素中で瞬間凍結して、-80℃で保存した。高感度ELISAキット(和光純薬工業株式会社)及びアッセイ緩衝液で1:10に希釈した血漿を使用して血漿Aβ42を測定した。KOH加水分解による抽出後、トリグリセリドGPO-PAPキット(Roche Diagnostics)を使用して、心臓TAGを測定した。
Aβ40投与研究:凍結乾燥組換えAβ40(Millipore)及びスクランブル化対照ペプチド(ScrAβ40;Millipore)を、1% NH4OHに再懸濁し、H2O中、200ng/mlでアリコットし、4週間を超えずに-80℃で保存した。オスC57BL6マウスをAnimal Resource Centre(Perth, WA)から4週齢で得て、12時間明期/暗期周期、22℃の温度及び一定の湿度で、通常の齧歯類食餌を与え、ケージあたり4匹のマウスで飼育した。12週齢で、EchoMRIによって決定される体重及び体組成に従って、マウスをグループ分けした。次いで、マウスに1μgの組換えAβ40又はScrAβ02(コホートあたり、n=12/群)をi.p.注射によって1日1回5週間投与した。ペプチド投与4週間後、以下のように、心エコーによって心臓機能を評価した。1.5%イソフルラン麻酔の吸入によってマウスを麻酔し、経験を積んだ獣医師により、15MHz直線配列トランスデューサとともにPhillips HD15診断超音波系を使用して心エコーを行った。ドップラーモードイメージングを使用して、僧帽弁を通る血流速度を分析した。これらの結果を使用して、減速時間及びE:A比を計算した。また、ドップラーイメージングを利用して、大動脈弁を通じた血流速度も測定した。次いで、この測定を使用して、駆出時間、ピーク大動脈流及び心拍を計算した。左室のMモードイメージングを使用して、拡張期(d)及び収縮終期(s)両方の、心室中隔厚(IVS)、左室内径(LVID)及び左室後壁(LVPW)、並びに収縮測定値、例えば駆出率及び短縮率を測定した。Troy et al.(1972)による式(1.05[LVIDd+LVPWd+IVSd]3-[LVIDd]3)を使用することによって、m-モードイメージングから、LV質量の概算を計算した。1週間後、頸椎脱臼により、マウスを人道的に屠殺した。心臓穿刺直後に血液を得て、心臓及び他の組織を直ちに取り除いた。心臓を氷冷PBS中で洗浄し、重量測定した後、液体窒素中で瞬間凍結した。高感度ELISAキット(和光純薬工業株式会社)及びアッセイ緩衝液で1:10に希釈した血漿を使用して血漿Aβ40を測定した。
実施例2-長期Aβ42投与は心臓代謝を改変する
1μg/日のAβ42のi.p.投与によって、Aβ42のin vivo効果を評価する一方、対照マウスには5週間の期間、スクランブル化Aβ42ペプチド(ScrAβ42)を投与した。Aβ42の投与は、ScrAβ42の投与と比較して、およそ3倍、血漿Aβ42を増加させた(図1A)。Aβ42が投与されたマウスにおいて、体重、体組成又は食物摂取の変化はなかった。ペプチド投与の5週間後、グルコーストレーサーを伴うGTTを行った。ScrAβ42又はAβ42投与マウスの間で、GTT全体で、全身グルコース耐性又は血漿インスリンには相違はなかった。しかし、GTT全体で2-DOG取り込みによりグルコース取り込みに関して組織を評価すると、心臓によるグルコース取り込みにおいて、約25%の減少がAβ42投与マウスで観察された(図1B)。14C-グルコース標識を使用して、グルコース利用を更に分析すると、Aβ42投与マウスにおいて、TAGへのより多いグルコース取り込み(図1C)及び総TAG増加(図1D)が明らかになった。これは、炎症及び小胞体ストレスを含む、心臓ストレス反応の指標である遺伝子発現変化と関連した(図1E)。
実施例3-長期のAβ42投与は心臓機能を改変する
Aβ42投与が心臓機能に影響を及ぼすかどうかを評価するため、心エコー前に、マウスにScrAβ42又はAβ42を5週間投与した。形態学的分析のため、心臓も収集した(図2)。Aβ42の投与は、心臓全重量(図2A)又は左室内部寸法(LVIDd;図2B)に影響を及ぼさなかった。しかし、拡張機能障害の指標は、E:A比減少(図2C)及び減速時間増加(図2D)を含めて、Aβ42投与マウスで明らかであった。初期拡張期Iの弛緩期中、左室内へのピーク血流速度を弛緩時間によって正規化した際(等容性弛緩時間;IVRT)、群間に有意な相違はなかった(図2E)。これは、左心房圧の指標であり、観察された拡張機能障害が等級1と分類され得ることを示唆する。さらに、短縮率(図2F)及び駆出率(図2G)は、どちらも、Aβ42投与マウスで減少しており、これらは収縮機能障害の指標である。
実施例4-抗Aβ42抗体の投与は、肥満発展において、拡張機能を維持する。
僧帽弁の心エコードップラーイメージングを使用して、拡張機能の重要な測定値である減速時間を評価した(図3)。高脂肪給餌の14週間後、対照抗体が投与されたマウスは、減速時間の増加を有し(図3A)、拡張機能悪化を示した。対照的に、3D6抗体が投与されたマウスは、減速時間維持又は減少のいずれかを示した(図3A)。ベースライン測定値に対して表すと、対照抗体が投与されたマウスは、減速時間の統計的に有意な約30%の増加を有し(図3B)、拡張機能障害を示した。対照的に、3D6抗体が投与されたマウスの減速時間はベースラインから変化しなかった(図3B)。ベースラインからの減速時間の相対的な変化は、対照及び3D6抗体投与群間で有意に異なった(図3B)。
実施例5-抗Aβ42抗体の投与は、肥満発展において、求心性肥大を防止する
心エコーMモードイメージングを使用して、左室の形態を特徴づけた(図4)。対照抗体が投与されたマウスは、肥満発展後の肥大の測定値である、拡張終期の心室中隔厚(IVSd)増加を有する傾向があり、これは3D6抗体が投与されたマウスでは観察されなかった(図4A)。高脂肪食餌前の値に比較して表すと、IVSdは、対照抗体が投与されたマウスで115%に有意に増加したが、3D6抗体が投与されたマウスでは、この値は95%だった(図4B)。高脂肪食餌前の値からのIVSdの相対変化は、対照及び3D6抗体投与群間で有意に異なった(図4B)。左室拡張の測定値である、拡張終期の左室内径(LVIDd)間には、群間で相違はなかった(図4C及び図4D)。しかし、対照抗体が投与されたマウスでは、肥満発展全体で、肥大の測定値である計算左室質量が有意に増加し、これは3D6抗体が投与されたマウスでは観察されなかった(図4E)。高脂肪食餌前の値と比較して表すと、左室質量は、対照抗体が投与されたマウスで、138%に有意に増加した(図4F)。高脂肪食餌前の値からの左室質量の相対変化は、対照及び3D6抗体投与群間で有意に異なった(図4F)。
実施例6-抗Aβ42抗体の投与は、確立された肥満において、拡張機能を維持し、心臓TAGを減少させる
拡張機能に対する、3D6での肥満マウスの治療の効果を評価するため、研究開始時(ベースライン)、固形飼料又はHFDの13週間後(治療前)及び毎週の3D6投与7週間後(治療後)に、心エコーを使用して、僧帽弁のドップラーイメージングを行った(図5)。固形飼料対照群において、ベースライン及び治療前の間ではDTに有意な変化はなかったが、ベースラインと比較して、治療後、DTは有意に増加した(図5A)。HFD対照群では、DTはベースラインから治療前で有意に増加し、治療後に更に増加した(図5A)。対照的に、HFD 3D6群は、ベースラインと治療前との間でDTの有意な増加を示したが、3D6投与後は、拡張機能は更には悪化しなかった(図5A)。治療期間終了時、群間でDTを調べると、DTは、固形飼料対照群に比較して、HFD対照群で有意に上昇した一方、DTは、HFD 3D6群で、固形飼料対照と有意に異ならなかった(図5B)。血漿Aβ42に対する介入効果を調べた。HFD対照群において、Aβ42レベルは、固形飼料対照群と比較して有意に増加した(図5C)。3D6抗体の中和機能と一致して、血漿Aβ42は、固形飼料対照と比較して、HFD 3D6群で上昇したままだった(図5C)。しかし、3D6治療は、肥満マウスにおいて、心臓TAG集積を減少させた(図5D)。
実施例7-Aβ40長期投与は心臓機能を改変しない
他のアミロイドベータペプチドがAβ42と同様に心臓機能障害を誘導し得るかどうかを決定するため、心エコー前に、i.p.注射によって5週間、1μg/日でAβ40又はスクランブル化Aβ40(ScrAβ40)をマウスに投与した(図6)。Aβ40の投与は、血漿Aβ40を有意に増加させた(図6A)。しかし、Aβ40の投与は、E:A比(図6B)及びDT(図6C)を含む、拡張機能の指標に対していかなる影響も持たず、或いは短縮率(図6D)及び駆出率(図6E)を含む、収縮機能の指標に対してもいかなる影響も持たなかった。さらに、Aβ40投与は、IVSd(図6F)、LVIDd(図6G)及びLV質量(図6H)を含む、心臓形態測定値にいかなる影響も持たなかった。
実施例8-考察及び結論
これらのデータは、Aβ42が心臓代謝及び機能を改変し、拡張期に特定の影響を有することを示す。仮説によって束縛されることなく、心臓代謝の改変又はリプログラミングは、Aβ42が仲介又は関連する炎症反応から生じ得ると考えられる。
マウスにAβ42を投与すると、心臓グルコース取り込みが減少し、グルコースがTAG合成に切り替えられ、TAG集積を導いた。グルコース取り込み及び利用の減少は、脂肪酸酸化への依存を増加させ、これにより心臓効率が減少する。これは、ベータ酸化からATPを産生するためにより大きなO2コストを要するためであり、これがATP産生を損ない、心臓弛緩障害を生じる。これは、Ca2+再取り込み及び膜イオンバランスの正常化がATP依存性であることから、拡張性弛緩期が大きなエネルギー及びATP要求を有するため、拡張機能障害を導く。さらに、弛緩期は収縮期よりはるかに長い。したがって、脂肪酸酸化に対する依存の増加は、観察される拡張機能障害を導く。
グルコース取り込み減少及びTAG集積は、肥満と関連する心筋症の表現型的特質であり、これによって、心臓代謝改変は、心臓の弛緩障害又は拡張機能障害を導き、これは心不全への進行を開始するのに十分である。長期に渡って、これは、求心性肥大を導く可能性があり、しばしば収縮期機能障害とも共に存在し得る。これと一致して、Aβ42をマウスに投与すると、拡張及び収縮機能の両方が損なわれた。しかし、心臓機能に対するこれらの影響は、Aβ40が投与されたマウスでは観察されず、心臓に対するアミロイドβの影響は、42アミノ酸のアイソフォームに限定されると示唆された。
これらのデータはまた、Aβ42機能の阻害が、肥満、並びにAβ42及びこれを含むタンパク質の正常血漿量より多い量を有する他の個体において、拡張機能障害の発展を防止し得ることも示す。高脂肪給餌の間ずっと、3D6 Aβ42中和抗体をマウスに投与すると、左室拡張(LVIDd)を伴わないIVSd及び左室質量の変化によって示される、拡張機能低下及び求心性肥大発展が防止された。さらに、確立された肥満誘導性拡張機能障害を伴うマウスに3D6 Aβ42中和抗体を投与すると、拡張機能の更なる低下が防止され、心臓TAG集積が減少した。
したがって、これらのデータは、Aβ42抗体を使用して、肥満、及びAβ42の正常血漿量より多いAβ42量を有する個体の状態において、拡張機能障害を防止し、心不全への進行を停止することができることを示す。
実施例9
Aβ42抗体を生成するためのワクチン接種を利用して、肥満関連心筋症又は循環Aβ42が上昇している心筋症を防止する。CAD106を、皮下注射を通じて、2.5mg/kg~250mg/kgの用量で、PBS中の免疫ペプチドの単回投与で投与してもよい。ワクチン接種プロトコルにはまた、最初の免疫から1ヶ月、2ヶ月及び3ヶ月後の免疫ペプチドの更なる筋内投与も含まれてもよい。