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JP2023157999A - 窒化物半導体基板 - Google Patents

窒化物半導体基板 Download PDF

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JP2023157999A
JP2023157999A JP2023136035A JP2023136035A JP2023157999A JP 2023157999 A JP2023157999 A JP 2023157999A JP 2023136035 A JP2023136035 A JP 2023136035A JP 2023136035 A JP2023136035 A JP 2023136035A JP 2023157999 A JP2023157999 A JP 2023157999A
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Abstract

Figure 2023157999000001
【課題】窒化物半導体基板の結晶品質を向上させる。
【解決手段】下地基板を準備する工程と、下地基板上に第1下地層を形成する工程と、第1下地層上に金属層を形成する工程と、熱処理を行い、第1下地層中にボイドを形成する工程と、第2下地層を第1下地層の上方にエピタキシャル成長させ、該第2下地層の主面を鏡面化させる工程と、(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を第2下地層の主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を頂面に生じさせ、第2下地層の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、(0001)面を頂面から消失させ、表面が傾斜界面のみで構成される第1層を成長させる3次元成長工程と、第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層を成長させる平坦化工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物半導体基板の製造方法、窒化物半導体基板および積層構造体に関する。
III族窒化物半導体の単結晶からなる自立基板(以下、「窒化物半導体基板」ともいう)を得るために、様々な方法が開示されている(例えば特許文献1)。
特開2003-178984号公報
本発明の目的は、窒化物半導体基板の結晶品質を向上させることにある。
本発明の一態様によれば、
下地基板を準備する工程と、
前記下地基板上にIII族窒化物半導体からなる第1下地層を形成する工程と、
前記第1下地層上に金属層を形成する工程と、
熱処理を行い、前記第1下地層中にボイドを形成する工程と、
III族窒化物半導体の単結晶からなり、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する第2下地層を、前記第1下地層の上方にエピタキシャル成長させ、該第2下地層の前記主面を鏡面化させる工程と、
(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記第2下地層の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記第2下地層の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、前記(0001)面を前記頂面から消失させ、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層を成長させる3次元成長工程と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層を成長させる平坦化工程と、
を有する
窒化物半導体基板の製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、
上述の態様に記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記第2層をスライスすることにより得られる
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
Ge(220)面の2結晶モノクロメータおよびスリットを介して前記主面に対してCuのKα1のX線を照射し、(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、前記スリットのω方向の幅を1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMaから、前記スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMbを引いた差FWHMa-FWHMbは、FWHMaの30%以下である
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の他の態様によれば、
2インチ以上の直径を有する窒化物半導体基板であって、
多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記窒化物半導体基板の主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在せず、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面内で中心を通る直線上の各位置において(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、前記主面へ入射したX線と前記主面とがなすピーク角度ωを、前記直線上の位置に対してプロットし、前記ピーク角度ωを前記位置の1次関数で近似したときに、
前記1次関数の傾きの逆数により求められる前記(0001)面の曲率半径は、10m以上であり、
前記1次関数に対する、測定された前記ピーク角度ωの誤差は、0.05°以下である
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
III族窒化物半導体の単結晶からなり、鏡面化された主面を有し、前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が(0001)面である下地層と、
前記(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記下地層の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記下地層の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、(0001)面を前記頂面から消失させることにより形成され、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層と、
を有する
積層構造体が提供される。
本発明によれば、窒化物半導体基板の結晶品質を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。 下地構造体作製工程を示すフローチャートである。 (a)~(e)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 (a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略斜視図である。 (a)~(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 (a)~(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 (a)は、傾斜界面およびc面のそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件下での成長過程を示す概略断面図であり、(b)は、傾斜界面が拡大しc面が縮小する第1成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。 傾斜界面が縮小しc面が拡大する第2成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。 (a)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板を示す概略上面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のa軸に沿った概略断面図である。 (a)は、湾曲したc面に対するX線の回折を示す概略断面図であり、(b)および(c)は、c面の曲率半径に対する、(0002)面の回折角度の揺らぎを示す図である。 実施例の積層構造体の断面を蛍光顕微鏡により観察した観察像を示す図である。 多光子励起顕微鏡を用い、実施例の窒化物半導体基板の主面を観察した図である。 (a)は、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれについて、m軸方向に沿って(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った結果を示す図であり、(b)は、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれについて、a軸方向に沿って(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った結果を示す図である。 (a)は、実施例の窒化物半導体基板について、スリットを異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図であり、(b)は、比較例1の窒化物半導体基板について、実施例と同じ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図である。
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
上述の特許文献1における方法は、VAS(Void-assisted Separation Method)と呼ばれる。VAS法は、例えば、以下のようにして行われる。
まず、所定の下地基板上に、III族窒化物半導体からなる第1結晶層を形成する。第1結晶層を形成したら、第1結晶層上に金属層を形成する。金属層を形成したら、所定のガスを含む雰囲気中で熱処理を行うことで、金属層中に微細な穴を形成するとともに、金属層の網目(ナノネット)を介して第1結晶層中にボイドを形成する。第1結晶層中にボイドを形成したら、第1結晶層の上方に、III族窒化物半導体からなる第2結晶層を形成する。このとき、上述のボイドの一部が残存する。第2結晶層を形成したら、第2結晶層の成長温度から降温する際に、上述の残存したボイドを起因として、第2結晶層を下地基板から剥離させる。第2結晶層を剥離させたら、第2結晶層をスライスおよび研磨することで、高い結晶品質を有する窒化物半導体基板が得られる。
ここで、III族窒化物半導体の単結晶からなる結晶層を、c面を成長面として厚く成長させると、結晶層の表面における転位密度は、当該結晶層の厚さに対して反比例する傾向がある。
そこで、上述のVAS法において、第2結晶層の転位密度を低減させるため、第1結晶層の上方に第2結晶層を厚く成長させることが考えられる。
しかしながら、上述のVAS法では、第2結晶層の下地基板側には、結晶の初期核が引き合うことで生じた引張応力が蓄積している。一方で、第2結晶層に生じた引張応力によって、第2結晶層のc面は、凹の球面状に湾曲している。凹に湾曲したc面上に第2結晶層を厚く成長させると、第2結晶層が厚くなるにしたがって、第2結晶層に加わる応力が徐々に圧縮応力に変化していく。このため、第2結晶層のうちの下地基板側と表面側との応力差が徐々に大きくなる。応力差が過大となると、第2結晶層にクラックが生じてしまう可能性がある。
このように、VAS法において、c面を成長面として第2結晶層を厚く成長させることは困難となる。
本発明は、発明者が見出した上記知見に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
(1)窒化物半導体基板の製造方法
図1~図8を用い、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。図2は、下地構造体作製工程を示すフローチャートである。図3(a)~(e)、図4(a)~(c)、図6(a)~図8は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。図5は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略斜視図である。なお、図3(a)~(e)では、下地基板1の下側を省略している。また、図5は、図4(b)の時点での斜視図に相当し、下地構造体10上に成長する第1層30の一部を示している。また、図6(b)において、第2層40における細実線は、成長途中の結晶面を示し、図4(c)、図6(a)~図8において、点線は、転位を示している。
なお、以下では、ウルツ鉱構造を有するIII族窒化物半導体の結晶において、<0001>軸(例えば[0001]軸)を「c軸」といい、(0001)面を「c面」という。なお、(0001)面を「+c面(III族元素極性面)」といい、(000-1)面を「-c面(窒素(N)極性面)」ということがある。また、<1-100>軸(例えば[1-100]軸)を「m軸」といい、{1-100}面を「m面」という。なお、m軸は<10-10>軸と表記してもよい。また、<11-20>軸(例えば[11-20]軸)を「a軸」といい、{11-20}面を「a面」という。
図1に示すように、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法は、例えば、下地構造体作製工程S100と、3次元成長工程S200と、平坦化工程S300と、スライス工程S400と、研磨工程S500と、を有している。
(S100:下地構造体作製工程)
まず、例えば、上述のVAS法により下地構造体10を作製する。
具体的には、下地構造体作製工程S100は、例えば、下地基板準備工程S110と、第1下地層形成工程S120と、金属層形成工程S130と、ボイド形成工程S140と、第2下地層形成工程S150と、を有している。
(S110:下地基板準備工程)
まず、図3(a)に示すように、下地基板1を準備する。下地基板1は、例えば、III族窒化物半導体と異なる材料からなっている。具体的には、下地基板1は、例えば、サファイア基板である。なお、下地基板1は、例えば、Si基板またはガリウム砒素(GaAs)基板であってもよい。
下地基板1の直径は、例えば、2インチ(50.8mm)以上である。また、下地基板1の厚さは、例えば、300μm以上1mm以下である。
下地基板1は、例えば、エピタキシャル成長面となる主面1sを有している。主面1sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面である。
本実施形態では、下地基板1のc面が、主面1sに対して傾斜している。下地基板1のc軸は、主面1sの法線に対して所定のオフ角で傾斜している。下地基板1の主面1s内でのオフ角は、主面1s全体に亘って均一である。下地基板1の主面1sの中心におけるオフ角の大きさを、例えば、0°超1°以下とする。下地基板1の主面1s内でのオフ角は、後述する第2下地層6の主面6sの中心におけるオフ角に影響する。
(S120:第1下地層形成工程)
次に、図3(b)に示すように、下地基板1の主面1s上に、III族窒化物からなる第1下地層(第1結晶層)2を形成する。
具体的には、例えば、有機金属気相成長(MOVPE)法により、所定の成長温度に加熱された下地基板1に対して、III族原料ガスおよび窒素原料ガスを供給する。例えば、III族原料ガスとしてのトリメチルガリウム(TMG)ガスと、窒素原料ガスとしてのアンモニアガス(NH)と、を供給することで、第1下地層2として、低温成長GaNバッファ層と、GaN層と、を下地基板1の主面1s上にこの順で成長させる。なお、GaN層の成長時には、例えば、n型ドーパントガスとしてのモノシラン(SiH)ガスを供給することで、GaN層中にn型不純物をドーピングしてもよい。
このとき、第1下地層2としての低温成長GaNバッファ層の成長条件を、GaN層の所望の結晶品質が得られるよう調整する。具体的には、低温成長GaNバッファ層の成長温度を、例えば、400℃以上600℃以下とする。
また、このとき、第1下地層2としてのGaN層の成長条件を、後述のボイド形成工程S140において所望のボイドが形成されるよう調整する。具体的には、GaN層の成長温度を、例えば、1,000℃以上1,200℃以下とする。
また、このとき、例えば、第1下地層2の表面を鏡面化させる。なお、ここでいう「鏡面」とは、表面の凹凸の差が可視光の波長以下である面のことをいい、当該第1下地層2の表面には、c面以外のファセットが露出したヒロックが生じていてもよい。具体的には、第1下地層2の表面の二乗平均平方根粗さRMSを、例えば、10nm未満、好ましくは1nm未満とする。このように第1下地層2の表面を鏡面化させることで、後述のボイド形成工程S140においてボイドの出現具合を下地基板1の主面1s全体に亘って略均一にすることができる。
(S130:金属層形成工程)
次に、図3(c)に示すように、第1下地層2上に金属層3を形成する。例えば、真空蒸着またはスパッタにより、金属層3を形成する。
金属層3は、後述のボイド形成工程S140における熱処理により、自身の中に微細な穴を形成し、第1下地層2の分解を促進させ、第1下地層2にボイドを形成するよう構成される材料からなることが好ましい。具体的には、この条件を満たす金属層3としては、例えば、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、白金(Pt)または金(Au)などが挙げられる。本実施形態では、金属層3を、例えば、Ti層とする。
このとき、金属層3の厚さを、例えば、1μm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下とする。金属層3の厚さを1μm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下とすることで、後述のボイド形成工程S140において金属層3(金属窒化層5)の平坦性の低下を抑制することができる。これにより、金属窒化層5上に形成する第2下地層6の結晶品質の低下を抑制することができる。なお、金属層3の厚さの下限値は、特に限定されない。ただし、後述のボイド形成工程S140において金属窒化層5を安定的に形成する観点では、金属層3の厚さは、例えば、0.5nm以上とすることが好ましい。
(S140:ボイド形成工程)
金属層3を形成したら、所定の熱処理を行い、第1下地層2中にボイドを形成する。
具体的には、上述の下地基板1を電気炉内に投入し、所定のヒータを有するサセプタ上に下地基板1を載置する。下地基板1をサセプタ上に載置したら、ヒータにより下地基板1を加熱し、所定のガスを含む雰囲気中で熱処理を行う。
このとき、例えば、窒素(N)ガスおよび窒素含有ガスのうち少なくともいずれかを含む雰囲気中で熱処理を行う。窒素含有ガスとしては、例えば、NHガスおよびヒドラジン(N)ガスのうち少なくともいずれかが挙げられる。これにより、金属層3を凝集させつつ窒化し、表面に高密度の微細な穴(貫通孔)を有する網目状の金属窒化層5(金属窒化層5のナノネットともいう)を形成することができる。
さらに、このとき、例えば、水素(H)ガスおよび水素含有ガスのうち少なくともいずれかを含む雰囲気中で熱処理を行う。水素含有ガスとしては、例えば、上述のNHガスおよびNガスのうち少なくともいずれかが挙げられる。これにより、金属窒化層5の網目を介して第1下地層2の一部をエッチングし、該第1下地層2中に高密度のボイドを形成することができる。
なお、このとき、金属窒化層5のナノネットを形成する工程と、第1下地層2中にボイドを形成する工程とを、同時に行ってもよいし、或いは、異なる雰囲気で分けて行ってもよい。
また、このとき、熱処理条件を、第1下地層2の所定のボイド率が得られるように調整する。具体的には、雰囲気中の水素化物ガスの分圧比率を、例えば、10%以上95%以下、好ましくは50%以下とする。また、熱処理温度を、例えば、1,000℃以上1,100℃以下とする。また、熱処理時間を、例えば、1分以上100分以下とする。
以上のボイド形成工程S140より、図3(d)に示すように、ボイド含有第1下地層4を形成する。
(S150:第2下地層形成工程)
ボイド含有第1下地層4を形成したら、図3(e)に示すように、ボイド含有第1下地層4の上方に、III族窒化物半導体の単結晶からなる第2下地層(第2結晶層)6をエピタキシャル成長させる。
具体的には、例えば、下地基板1を所定の気相成長装置内に搬入する。次に、ハイドライド気相成長(HVPE)法により、所定の成長温度に加熱された下地基板1に対して、III族原料ガスおよび窒素原料ガスを供給する。例えば、塩化ガリウム(GaCl)ガスと、NHガスとを供給することで、第2下地層6としてのGaN層を、ボイド含有第1下地層4および金属窒化層5上にエピタキシャル成長させる。なお、第2下地層6としてのGaN層の成長時には、例えば、n型ドーパントガスとしてのジクロロシラン(SiHCl)ガスおよびテトラクロロゲルマン(GeCl)ガスの少なくともいずれかを供給することで、GaN層中にn型不純物をドーピングしてもよい。
第2下地層6の成長初期では、島状結晶の初期核が生成する。このとき、第2下地層6の島状結晶の頻度は、金属窒化層5のナノネット上に成長する際の過飽和度と、当該ナノネットの開口幅のばらつきとに依存する。第2下地層6を成長させていくと、島状結晶の初期核が横方向成長する。その後、隣接する初期核との距離が近づいたときに、初期核の表面が2つ存在しているよりも、初期核の表面が1つに結合したほうが、エネルギー的に安定となる。このため、隣接する初期核同士は、強制的に引き合う(会合する)。第2下地層6の全体に亘って初期核同士が会合していくことで、第2下地層6の主面6sが形成される。
このとき、例えば、第2下地層6の主面6sを鏡面化させる。なお、ここでいう「鏡面」は、上述と同様に、表面の凹凸の差が可視光の波長以下である面のことをいい、当該第2下地層6の主面6sには、c面以外のファセットが露出したヒロックが生じていてもよい。具体的には、第2下地層6の主面6sの二乗平均平方根粗さRMSを、例えば、10nm未満、好ましくは1nm未満とする。詳細は(4)において後述するが、第2下地層6の主面6sを鏡面化させることで、後述の第1層30の成長形態を、第2下地層6の成長初期に生じた島状結晶の成長形態から変化させることができる。これにより、後述の第1層30の最近接頂部間平均距離を3次元成長工程S200での第1成長条件に基づいて制御し、最近接頂部間距離を長くすることができる。
なお、このとき、下地基板1の主面1sに最も近い低指数の結晶面をc面としたことで、第2下地層6の鏡面化した主面6sに最も近い低指数の結晶面もc面となる。
また、このとき、第2下地層6の成長条件を、島状成長する結晶の初期核を所定の頻度で生成させるよう調整する。具体的には、第2下地層6の成長温度を、例えば、1,000℃以上1,100℃以下とする。また、第2下地層6の成長時におけるIII族原料ガスとしてのGaClガスの分圧に対する窒素原料ガスとしてのNHガスの流量の分圧の比率(以下、「V/III比」ともいう)を、例えば、1以上50以下とする。
また、このとき、第2下地層6の厚さを、例えば、100μm以上1.5mm以下、好ましくは200μm以上500μm以下とする。第2下地層6の厚さが100μm未満であると、第2下地層6の主面6sを鏡面化することが困難となる。これに対し、第2下地層6の厚さを100μm以上とすることで、第2下地層6の主面6sを容易に鏡面化することができる。これにより、第1層30の成長形態を、第2下地層6の成長初期に生じた島状結晶の成長形態から確実に変化させ、後述の3次元成長工程S200において3次元成長する第1層30の最近接頂部間距離を容易に長くすることができる。さらに第2下地層6の厚さを200μm以上とすることで、第2下地層6の主面6sを安定的に鏡面化することができる。一方で、第2下地層6の厚さが1.5mm超であると、第2下地層6にクラックが生じてしまう可能性がある。これに対し、第2下地層6の厚さを1.5mm以下とすることで、第2下地層6のクラックの発生を抑制することができる。さらに第2下地層6の厚さを500μm以下とすることで、第2下地層6のクラックの発生を安定的に抑制することができる。
また、このとき、第2下地層6は、ボイド含有第1下地層4から金属窒化層5の穴を介してボイド含有第1下地層4および金属窒化層5上に成長する。ボイド含有第1下地層4中のボイドの一部は、第2下地層6によって埋め込まれるが、ボイド含有第1下地層4中のボイドの他部は、残存する。第2下地層6と金属窒化層5との間には、当該ボイド含有第1下地層4中に残存したボイドを起因として、平らな空隙が形成される。この空隙が後述の剥離工程S380での第2下地層6の剥離を生じさせることとなる。
また、このとき、第2下地層6には、その成長過程で生じる初期核同士が引き合うことによって、引張応力が導入されている。このため、第2下地層6中に生じた引張応力に起因して、第2下地層6のc面が凹むように内部応力が働く。また、第2下地層6の主面6s側の転位密度が低く、一方で、第2下地層6の下地基板1側の転位密度が高くなっている。このため、第2下地層6の厚さ方向の転位密度差に起因しても、第2下地層6のc面が凹むように内部応力が働く。このため、第2下地層6のc面は、主面6sに対して凹の球面状に湾曲する。ここでいう「球面状」とは、球面近似される曲面状のことを意味している。また、ここでいう「球面近似」とは、真円球面または楕円球面に対して所定の誤差の範囲内で近似されることを意味している。上述のようにc面が湾曲することで、第2下地層6の主面6sの中心の法線に対してc軸がなすオフ角は、所定の分布を有する。
以上の下地構造体作製工程S100により、下地構造体10が得られる。
(S200:3次元成長工程(第1層成長工程))
その後、図4(b)、図4(c)、および図5に示すように、c面30cが露出した頂面30uを有するIII族窒化物半導体の単結晶を、第2下地層6の主面6s上に直接的にエピタキシャル成長させる。これにより、第1層(3次元成長層)30を成長させる。
このとき、c面以外の傾斜界面30iで囲まれて構成される複数の凹部30pを単結晶の頂面30uに生じさせ、第2下地層6の上方に行くにしたがって、該傾斜界面30iを徐々に拡大させ、c面30cを徐々に縮小させる。これにより、c面30cを頂面30uから消失させる。その結果、表面が傾斜界面30iのみで構成される第1層30を成長させる。
すなわち、3次元成長工程S200では、鏡面化した第2下地層6の主面6sをあえて荒らすように、第1層30を3次元成長させる。なお、第1層30は、このような成長形態を形成したとしても、上述のように、単結晶で成長させる。この点において、第1層30は、サファイアなどの異種基板上にIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる前に該異種基板上にアモルファスまたは多結晶として形成されるいわゆる低温成長バッファ層とは異なるものである。
本実施形態では、第1層30として、例えば、下地基板1を構成するIII族窒化物半導体と同じIII族窒化物半導体からなる層をエピタキシャル成長させる。具体的には、例えば、HVPE法により、下地基板1を加熱し、当該加熱された下地基板1に対してGaClガスおよびNHガスを供給することで、第1層30としてGaN層をエピタキシャル成長させる。
ここで、3次元成長工程S200では、上述の成長過程を発現させるために、例えば、所定の第1成長条件下で、第1層30を成長させる。
まず、図9(a)を用い、傾斜界面30iおよびc面30cのそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件について説明する。図9(a)は、傾斜界面およびc面のそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。
図9(a)において、太い実線は、単位時間ごとの第1層30の表面を示している。図9(a)で示されている傾斜界面30iは、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面とする。また、図9(a)において、第1層30のうちのc面30cの成長レートをGc0とし、第1層30のうちの傾斜界面30iの成長レートをGとし、第1層30においてc面30cと傾斜界面30iとのなす角度をαとする。また、図9(a)において、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αを維持したまま、第1層30が成長するものとする。なお、第1層30のc面30cのオフ角が、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αに比べて無視できるものとする。
図9(a)に示すように、傾斜界面30iおよびc面30cのそれぞれが拡大も縮小もしないとき、傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡は、c面30cに対して垂直となる。このことから、傾斜界面30iおよびc面30cのそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件は、以下の式(a)を満たす。
c0=G/cosα ・・・(a)
次に、図9(b)を用い、傾斜界面30iが拡大しc面30cが縮小する第1成長条件について説明する。図9(b)は、傾斜界面が拡大しc面が縮小する第1成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。
図9(b)においても、図9(a)と同様に、太い実線は、単位時間ごとの第1層30の表面を示している。また、図9(b)で示されている傾斜界面30iも、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面とする。また、図9(b)において、第1層30のうちのc面30cの成長レートをGc1とし、第1層30のうちの傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡の進行レートをRとする。また、傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡と、c面30cとのなす角度のうち、狭いほうの角度をαR1とする。R方向とG方向とのなす角度をα’としたとき、α’=α+90-αR1である。なお、第1層30のc面30cのオフ角が、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αに比べて無視できるものとする。
図9(b)に示すように、傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡の進行レートRは、以下の式(b)で表される。
=G/cosα’ ・・・(b)
また、第1層30のうちのc面30cの成長レートGc1は、以下の式(c)で表される。
c1=RsinαR1 ・・・(c)
式(c)に式(b)を代入することで、Gc1は、Gを用いて、以下の式(d)で表される。
c1=GsinαR1/cos(α+90-αR1) ・・・(d)
傾斜界面30iが拡大しc面30cが縮小するためには、αR1<90°となることが好ましい。したがって、傾斜界面30iが拡大しc面30cが縮小する第1成長条件は、式(d)とαR1<90°とにより、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
c1>G/cosα ・・・(1)
ただし、上述のように、Gは、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iの成長レートであり、αは、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iと、c面30cとのなす角度である。
または、第1成長条件下でのGc1が、基準成長条件下でのGc0よりも大きいことが好ましいと考えることもできる。このことからも、Gc1>Gc0に式(a)を代入することにより、式(1)が導出されうる。
なお、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iを拡大させる成長条件が最も厳しい条件となることから、第1成長条件が式(1)を満たせば、他の傾斜界面30iも拡大させることが可能となる。
具体的には、例えば、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが{10-11}面であるとき、α=61.95°である。したがって、第1成長条件は、例えば、以下の式(1’)を満たすことが好ましい。
c1>2.13G ・・・(1’)
または、後述するように、例えば、傾斜界面30iがm≧3の{11-2m}面である場合には、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが{11-23}面であるため、α=47.3°である。したがって、第1成長条件は、例えば、以下の式(1”)を満たすことが好ましい。
c1>1.47G ・・・(1”)
本実施形態の第1成長条件としては、例えば、3次元成長工程S200での成長温度を、後述の平坦化工程S300での成長温度よりも低くする。具体的には、3次元成長工程S200での成長温度を、例えば、980℃以上1,020℃以下、好ましくは1,000℃以上1,020℃以下とする。
また、本実施形態の第1成長条件として、例えば、3次元成長工程S200でのV/III比を、後述の平坦化工程S300でのV/III比よりも大きくしてもよい。具体的には、3次元成長工程S200でのV/III比を、例えば、2以上20以下、好ましくは、2以上15以下とする。
実際には、第1成長条件として、式(1)を満たすように、成長温度およびV/III比のうち少なくともいずれかをそれぞれ上記範囲のなかで調整する。
なお、本実施形態の第1成長条件のうちの他の条件は、例えば、以下のとおりである。
成長圧力:90~105kPa、好ましくは、90~95kPa
GaClガスの分圧:1.5~15kPa
ガスの流量/Hガスの流量:0~1
ここで、本実施形態の3次元成長工程S200は、例えば、第1層30の成長中の形態に基づいて、2つの工程に分類される。具体的には、本実施形態の3次元成長工程S200は、例えば、傾斜界面拡大工程S220と、傾斜界面維持工程S240と、を有している。これらの工程により、第1層30は、例えば、傾斜界面拡大層32と、傾斜界面維持層34と、を有することとなる。
(S220:傾斜界面拡大工程)
まず、図4(b)、図4(c)および図5に示すように、III族窒化物半導体の単結晶からなる第1層30の傾斜界面拡大層32を、上述の第1成長条件下で、第2下地層6上にエピタキシャル成長させる。
傾斜界面拡大層32が成長する初期段階では、下地基板1の主面1sの法線方向(c軸に沿った方向)に、c面30cを成長面として傾斜界面拡大層32が成長する。
第1成長条件下で傾斜界面拡大層32を徐々に成長させることで、図4(c)および図5に示すように、傾斜界面拡大層32のうちc面30cを露出させた頂面30uに、c面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pを生じさせる。c面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pは、当該頂面30uにランダムに形成される。これにより、c面30cとc面以外の傾斜界面30iとが表面に混在する傾斜界面拡大層32が形成される。
なお、ここでいう「傾斜界面30i」とは、c面30cに対して傾斜した成長界面のことを意味し、c面以外の低指数のファセット、c面以外の高指数のファセット、または面指数で表すことができない傾斜面を含んでいる。なお、c面以外のファセットは、例えば、{11-2m}、{1-10n}などである。ただし、mおよびnは0以外の整数である。
本実施形態では、上述の鏡面化した第2下地層6上に傾斜界面拡大層32を成長させ、且つ、式(1)を満たすように第1成長条件を調整したことで、傾斜界面30iとして、例えば、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができる。これにより、c面30cに対する{11-2m}面の傾斜角度を緩やかにすることができる。具体的には、該傾斜角度を47.3°以下とすることができる。
第1成長条件下で傾斜界面拡大層32をさらに成長させることで、図4(c)に示すように、第2下地層6の上方に行くにしたがって、傾斜界面拡大層32において、c面以外の傾斜界面30iを徐々に拡大させ、c面30cを徐々に縮小させる。なお、このとき、第2下地層6の上方に行くにしたがって、該下地基板1の主面1sに対する、傾斜界面30iがなす傾斜角度が徐々に小さくなっていく。これにより、最終的に、傾斜界面30iのほとんどが、上述したm≧3の{11-2m}面となる。
さらに傾斜界面拡大層32を成長させていくと、傾斜界面拡大層32のc面30cは頂面30uから消失し、傾斜界面拡大層32の表面は傾斜界面30iのみで構成される。これにより、錐体を連続的に結合させた傾斜界面拡大層32が形成されることとなる。
このように、傾斜界面拡大層32の頂面30uにc面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pを生じさせ、c面30cを消失させることで、図4(c)に示すように、該傾斜界面拡大層32の表面に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを形成する。複数の谷部30vのそれぞれは、傾斜界面拡大層320の表面のうち下に凸の変曲点であって、c面以外の傾斜界面30iのそれぞれが発生した位置の上方に形成される。一方で、複数の頂部30tのそれぞれは、傾斜界面拡大層320の表面のうち上に凸の変曲点であって、互いに相反する方向を向いて拡大した一対の傾斜界面30iを挟んでc面30cが(最後に)消失した位置またはその上方に形成される。谷部30vおよび頂部30tは、下地基板1の主面1sに沿った方向に交互に形成される。
本実施形態では、第2下地層形成工程S150において、下地基板1の主面1s上に、鏡面化した主面6sを有する第2下地層6を成長させた後、当該傾斜界面拡大工程S220において、傾斜界面拡大層32の表面に、c面以外の傾斜界面30iを生じさせる。これにより、複数の谷部30vは、第2下地層6の主面6sから上方に離れた位置に形成されることとなる。
以上のような傾斜界面拡大層32の成長過程により、転位は、以下のように屈曲して伝播する。具体的には、図4(c)に示すように、第2下地層6内においてc軸に沿った方向に延在していた複数の転位は、第2下地層6から傾斜界面拡大層32のc軸に沿った方向に向けて伝播する。傾斜界面拡大層32のうちc面30cを成長面として成長した領域では、傾斜界面拡大層32のc軸に沿った方向に向けて転位が伝播する。しかしながら、傾斜界面拡大層32のc軸に沿った方向に伝播した転位が、傾斜界面30iに露出すると、当該転位は、傾斜界面30iが露出した位置で、該傾斜界面30iに対して略垂直な方向に向けて屈曲して伝播する。すなわち、転位は、c軸に対して傾斜した方向に屈曲して伝播する。これにより、傾斜界面拡大工程S220以降の工程において、一対の頂部30t間での略中央の上方において、局所的に転位が集められることとなる。その結果、後述の第2層40の表面における転位密度を低減させることができる。
このとき、本実施形態では、下地基板1の主面1sに垂直な任意の断面を見たときに、複数の谷部30vのうちの1つを挟んで複数の頂部30tのうちで最も接近する一対の頂部30t同士が、下地基板1の主面1sに沿った方向に離間した平均距離(「最近接頂部間平均距離」ともいう)Lを、例えば、100μm超とする。傾斜界面拡大工程S220の初期段階から第2下地層6上に微細な六角錐状の結晶核を生じさせる場合などのように、最近接頂部間平均距離Lが100μm以下であると、傾斜界面拡大工程S220以降の工程において、転位が屈曲して伝播する距離が短くなる。このため、傾斜界面拡大層32のうち一対の頂部30t間の略中央の上方で充分に転位が集められない。その結果、後述の第2層40の表面における転位密度が充分に低減されない可能性がある。これに対し、本実施形態では、最近接頂部間平均距離Lを100μm超とすることで、傾斜界面拡大工程S220以降の工程において、転位が屈曲して伝播する距離を、少なくとも50μm超、確保することができる。これにより、傾斜界面拡大層32のうち一対の頂部30t間の略中央の上方に、充分に転位を集めることができる。その結果、後述の第2層40の表面における転位密度を充分に低減させることができる。
本実施形態では、例えば、第1層30において、最近接頂部間距離が100μm以下となる部分が無いことが好ましい。言い換えれば、下地基板1の主面1sに垂直な任意の断面を見たときに、第1層30の表面全体に亘って、最近接頂部間距離が100μm超となっていることが好ましい。これにより、後述の第2層40の表面全体に亘って、転位密度を略均一に低減させることができる。
一方で、本実施形態では、最近接頂部間平均距離Lを800μm未満とする。最近接頂部間平均距離Lが800μm以上であると、傾斜界面拡大層32の谷部30vから頂部30tまでの高さが過剰に高くなる。このため、後述の平坦化工程S300において、第2層40が鏡面化するまでの厚さが厚くなる。これに対し、本実施形態では、最近接頂部間平均距離Lを800μm未満とすることで、傾斜界面拡大層32の谷部30vから頂部30tまでの高さを低くすることができる。これにより、後述の平坦化工程S300において、第2層40を早く鏡面化させることができる。
また、このとき、傾斜界面拡大層320には、成長過程での成長面の違いに基づいて、c面30cを成長面として成長した第1c面成長領域60と、c面以外の傾斜界面30iを成長面として成長した傾斜界面成長領域70(図中灰色部)とが形成される。
また、このとき、第1c面成長領域60では、傾斜界面30iが発生した位置に谷部60aを形成し、c面30cが消失した位置に山部60bを形成する。また、第1c面成長領域60では、山部60bを挟んだ両側に、c面30cと傾斜界面30iとの交点の軌跡として、一対の傾斜部60iを形成する。
また、このとき、第1成長条件が式(1)を満たすことで、一対の傾斜部60iのなす角度βを、例えば、70°以下とする。
これらの領域については、詳細を後述する。
(S240:傾斜界面維持工程)
傾斜界面拡大層32の表面からc面30cを消失させた後に、図6(a)に示すように、表面において傾斜界面30iがc面30cよりも多く占める状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って第1層30の成長を継続させる。これにより、傾斜界面拡大層32上に、傾斜界面30iがc面30cよりも多く占める表面を有する傾斜界面維持層34を形成する。傾斜界面維持層34を形成することで、第1層30の表面全体に亘って確実にc面30cを消失させることができる。
このとき、傾斜界面維持層34の表面の一部においてc面30cが再度出現してもよいが、下地基板1の主面1sに沿った沿面断面において傾斜界面成長領域70の占める面積割合が80%以上となるように、傾斜界面維持層34の表面において、主に傾斜界面30iを露出させることが好ましい。なお、沿面断面において傾斜界面成長領域70の占める面積割合は、高ければ高いほどよく、100%であることが好ましい。
また、このとき、傾斜界面維持工程S240での成長条件を、傾斜界面拡大工程S220と同様に、上述の第1成長条件で維持する。これにより、傾斜界面30iを成長面として傾斜界面維持層34を成長させることができる。
また、このとき、第1成長条件下で、傾斜界面30iを成長面として傾斜界面維持層34を成長させることで、上述のように、傾斜界面拡大層32において傾斜界面30iが露出した位置で、c軸に対して傾斜した方向に向けて屈曲して伝播した転位は、傾斜界面維持層34においても同じ方向に伝播し続ける。
以上の3次元成長工程S200により、傾斜界面拡大層32および傾斜界面維持層34を有する第1層30が形成される。
本実施形態の3次元成長工程S200では、第2下地層6の主面6sから第1層30の頂部30tまでの高さ(第1層30の厚さ方向の最大高さ)を、例えば、100μm超1.5mm未満とする。
(S300:平坦化工程(第2層成長工程))
c面30cを消失させた第1層30を成長させたら、図6(b)および図7(a)に示すように、第1層30上に、III族窒化物半導体の単結晶をさらにエピタキシャル成長させる。
このとき、第1層30の上方に行くにしたがって、傾斜界面40iを徐々に縮小させ、c面40cを徐々に拡大させる。これにより、第1層30の表面に形成されていた傾斜界面30iを消失させる。その結果、鏡面化された表面を有する第2層(平坦化層)40を成長させる。
本実施形態では、第2層40として、例えば、第1層30を構成するIII族窒化物半導体と同じIII族窒化物半導体を主成分とする層をエピタキシャル成長させる。なお、平坦化工程S300では、所定の成長温度に加熱された下地基板1に対して、GaClガス、NHガスおよびn型ドーパントガスとしてのSiHClガスを供給することで、第2層40として、シリコン(Si)ドープGaN層をエピタキシャル成長させる。なお、n型ドーパントガスとして、SiHClガスの代わりに、GeClガスなどを供給してもよい。
ここで、平坦化工程S300では、上述の成長過程を発現させるために、例えば、所定の第2成長条件下で、第2層40を成長させる。
図10を用い、傾斜界面40iが縮小しc面40cが拡大する第2成長条件について説明する。図10は、傾斜界面が縮小しc面が拡大する第2成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。図10は、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが露出した第1層30上に、第2層40が成長する過程を示している。
図10においても、図9(a)と同様に、太い実線は、単位時間ごとの第2層40の表面を示している。また、図10において、第2層40のうちのc面40cの成長レートをGc2とし、第2層40のうちの傾斜界面40iの成長レートをGとし、第2層40のうちの傾斜界面40iとc面40cとの交点の軌跡の進行レートをRとする。また、傾斜界面40iとc面40cとの交点の軌跡と、c面30cとのなす角度のうち、狭いほうの角度をαR2とする。R方向とG方向とのなす角度をα”としたとき、α”=α-(90-αR2)である。また、図10において、第1層30におけるc面30cと傾斜界面30iとのなす角度αを維持したまま、第2層40が成長するものとする。なお、第2層40のc面40cのオフ角が、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αに比べて無視できるものとする。
図10に示すように、傾斜界面40iとc面40cとの交点の軌跡の進行レートRは、以下の式(e)で表される。
=G/cosα” ・・・(e)
また、第2層40のうちのc面40cの成長レートGc2は、以下の式(f)で表される。
c2=RsinαR2 ・・・(f)
式(f)に式(e)を代入することで、Gc2は、Gを用いて、以下の式(g)で表される。
c2=GsinαR2/cos(α+αR2-90) ・・・(g)
傾斜界面40iが縮小しc面40cが拡大するためには、αR2<90°となることが好ましい。したがって、傾斜界面40iが縮小しc面40cが拡大する第2成長条件は、式(g)とαR2<90°とにより、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
c2<G/cosα ・・・(2)
ただし、上述のように、Gは、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iの成長レートであり、αは、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iと、c面40cとのなす角度である。
または、基準成長条件下での第2層40のうちのc面30cの成長レートをGc0としたとき、第2成長条件下でのGc2が、基準成長条件下でのGc0よりも小さいことが好ましいと考えることもできる。このことからも、Gc2<Gc0に式(a)を代入することにより、式(2)が導出されうる。
なお、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iを縮小させる成長条件が最も厳しい条件となることから、第2成長条件が式(2)を満たせば、他の傾斜界面40iも縮小させることが可能となる。
具体的には、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iが{10-11}面であるとき、第2成長条件は、以下の式(2’)を満たすことが好ましい。
c2<2.13G ・・・(2’)
または、例えば、傾斜界面30iがm≧3の{11-2m}面である場合には、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが{11-23}面であるため、第2成長条件は、例えば、以下の式(2”)を満たすことが好ましい。
c2<1.47G ・・・(2”)
本実施形態の第2成長条件としては、平坦化工程S300での成長温度を、例えば、3次元成長工程S200での成長温度よりも高くする。具体的には、平坦化工程S300での成長温度を、例えば、990℃以上1,120℃以下、好ましくは1,020℃以上1,100℃以下とする。
また、本実施形態の第2成長条件として、平坦化工程S300でのV/III比を調整してもよい。例えば、平坦化工程S300でのV/III比を、3次元成長工程S200でのV/III比よりも小さくしてもよい。具体的には、平坦化工程S300でのV/III比を、例えば、1以上10以下、好ましくは、1以上5以下とする。
実際には、第2成長条件として、式(2)を満たすように、成長温度およびV/III比のうち少なくともいずれかをそれぞれ上記範囲のなかで調整する。
なお、本実施形態の第2成長条件のうちの他の条件は、例えば、以下のとおりである。
成長圧力:90~105kPa、好ましくは、90~95kPa
GaClガスの分圧:1.5~15kPa
ガスの流量/Hガスの流量:1~20
ここで、本実施形態の平坦化工程S300は、例えば、第2層40の成長中の形態に基づいて、2つの工程に分類される。具体的には、本実施形態の平坦化工程S300は、例えば、c面拡大工程S320と、本成長工程S340と、を有している。これらの工程により、第2層40は、例えば、c面拡大層42と、本成長層44と、を有することとなる。
(S320:c面拡大工程)
図6(b)に示すように、第1層30上に、上述の第2成長条件で、III族窒化物半導体の単結晶からなる第2層40のc面拡大層42をエピタキシャル成長させる。
このとき、第1層30の上方に行くにしたがって、c面40cを拡大させつつ、c面以外の傾斜界面40iを縮小させる。
具体的には、第2成長条件下での成長により、c面拡大層42は、傾斜界面維持層34の傾斜界面30iから、傾斜界面40iを成長面としてc軸に垂直な方向に沿った方向(すなわち沿面方向または横方向)に成長する。c面拡大層42を横方向成長させていくと、傾斜界面維持層34の頂部30tの上方で、c面拡大層42のc面40cが再度露出し始める。これにより、c面40cとc面以外の傾斜界面40iとが表面に混在するc面拡大層42が形成される。
さらにc面拡大層42を横方向成長させていくと、c面40cが徐々に拡大し、c面拡大層42の傾斜界面40iが徐々に縮小する。これにより、第1層30の表面において複数の傾斜界面30iにより構成された凹部30pが徐々に埋め込まれる。
その後、さらにc面拡大層42を成長させると、c面拡大層42の傾斜界面40iが完全に消失し、第1層30の表面において複数の傾斜界面30iにより構成された凹部30pが完全に埋め込まれる。これにより、c面拡大層42の表面が、c面40cのみにより構成される鏡面(平坦面)となる。
このとき、第1層30およびc面拡大層42の成長過程で、転位を局所的に集めることで、転位密度を低減させることができる。具体的には、第1層30においてc軸に対して傾斜した方向に向けて屈曲して伝播した転位は、c面拡大層42においても同じ方向に伝播し続ける。これにより、c面拡大層42のうち、一対の頂部30t間での略中央の上方において、隣接する傾斜界面40iの会合部で、局所的に転位が集められる。c面拡大層42において隣接する傾斜界面40iの会合部に集められた複数の転位のうち、互いに相反するバーガースベクトルを有する転位同士は、会合時に消失する。また、隣接する傾斜界面40iの会合部に集められた複数の転位の一部は、ループを形成し、c軸に沿った方向(すなわち、c面拡大層42の表面側)に伝播することが抑制される。なお、c面拡大層42において隣接する傾斜界面40iの会合部に集められた複数の転位のうちの他部は、その伝播方向をc軸に対して傾斜した方向からc軸に沿った方向に再度変化させ、第2層40の表面側まで伝播する。このように複数の転位の一部を消失させたり、複数の転位の一部をc面拡大層42の表面側に伝播することを抑制したりすることで、第2層40の表面における転位密度を低減することができる。また、転位を局所的に集めることで、第2層40のうち、転位がc軸に対して傾斜した方向に向けて伝播した部分の上方に、低転位密度領域を形成することができる。
また、このとき、c面拡大層42では、c面40cが徐々に拡大することで、c面40cを成長面として成長した後述の第2c面成長領域80が、厚さ方向の上方に行くにしたがって徐々に拡大しながら形成される。
一方で、c面拡大層42では、傾斜界面40iが徐々に縮小することで、傾斜界面成長領域70が厚さ方向の上方に行くにしたがって徐々に縮小し、厚さ方向の所定位置で終端する。このようなc面拡大層42の成長過程により、断面視で、c面40cが再度発生した位置に、傾斜界面成長領域70の谷部70aが形成される。また、傾斜界面40iにより構成された凹部が徐々に埋め込まれる過程で、断面視で、傾斜界面40iが消失した位置に、傾斜界面成長領域70の山部70bが形成される。
c面拡大工程S320では、c面拡大層42の表面がc面40cのみにより構成される鏡面となるため、c面拡大層42の厚さ方向の高さ(厚さ方向の最大高さ)は、例えば、傾斜界面維持層34の谷部30vから頂部30tまでの高さ以上となる。
(S340:本成長工程(c面成長工程))
c面拡大層42において傾斜界面40iが消失し、表面が鏡面化されたら、図7(a)に示すように、c面拡大層42上に、c面40cを成長面として所定の厚さに亘って本成長層44を形成する。これにより、傾斜界面40iを有さずc面40cのみを表面に有する本成長層44を形成する。
このとき、本成長工程S340での成長条件を、c面拡大工程S320と同様に、上述の第2成長条件で維持する。これにより、c面40cを成長面として本成長層44をステップフロー成長させることができる。
また、このとき、傾斜界面40iを露出させることなく、c面40cのみを成長面として、本成長層44を成長させることで、本成長層44の全体が、後述の第2c面成長領域80となる。
本成長工程S340では、本成長層44の厚さを、例えば、300μm以上10mm以下とする。本成長層44の厚さを300μm以上とすることで、後述のスライス工程S400において、本成長層44から少なくとも1枚以上の基板50をスライスすることができる。一方で、本成長層44の厚さを10mmとすることで、最終的な厚さを650μmとし、700μm厚の基板50を本成長層44からスライスする場合に、カーフロス200μm程度を考慮しても、少なくとも10枚の基板50を得ることができる。
以上により、c面拡大層42および本成長層44を有する第2層40が形成される。
(S380:剥離工程)
第2層40の成長が終了した後、図7(b)に示すように、第2下地層6、第1層30および第2層40を有する積層構造体90を、下地基板1から剥離させる。
具体的には、気相成長装置のチャンバ内を冷却する過程において、上述の積層構造体90と下地基板1との間に、これらの線膨張係数差によって、応力を発生させる。例えば、サファイアからなる下地基板1は、主にGaNからなる積層構造体90よりも大きい線膨張係数を有するため、下地基板1を積層構造体90に対して収縮させる応力を発生させる。
これにより、金属窒化層5と第2下地層6との間に形成された平らな空隙を起因として、上述の積層構造体90を下地基板1から自然に剥離させる。これにより、積層構造体90にクラックを生じさせることなく、積層構造体90を下地基板1から剥離させることができる。
以上の工程により、本実施形態の積層構造体90が得られる。
なお、以上の第2下地層形成工程S150から平坦化工程S300までの工程を、下地基板1を大気暴露することなく、同一の気相成長装置内で連続的に行う。これにより、第2下地層6と第1層30との間の界面、および第1層30と第2層40との間の界面に、意図しない高酸素濃度領域(傾斜界面成長領域70よりも過剰に高い酸素濃度を有する領域)が形成されることを抑制することができる。
(S400:スライス工程)
次に、図8に示すように、例えば、本成長層44の表面と略平行な切断面に沿ってワイヤーソーにより本成長層44をスライスする。これにより、アズスライス基板としての窒化物半導体基板50(基板50ともいう)を少なくとも1つ形成する。このとき、基板50の厚さを、例えば、300μm以上700μm以下とする。
このとき、基板50のc面50cの曲率半径を、第2下地層を第2層と同じ厚さで成長させ、3次元成長工程および平坦化工程を行わずに第2下地層をスライスした場合の窒化物半導体基板(すなわち従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板)のc面の曲率半径よりも大きくすることができる。これにより、基板50の主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのばらつきを、従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板のc軸オフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
(S500:研磨工程)
次に、研磨装置により基板50の両面を研磨する。なお、このとき、最終的な基板50の厚さを、例えば、250μm以上650μm以下とする。
以上の工程S100~S500により、本実施形態に係る基板50が製造される。
(半導体積層物の作製工程および半導体装置の作製工程)
基板50が製造されたら、例えば、基板50上にIII族窒化物半導体からなる半導体機能層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する。半導体積層物を作製したら、半導体積層物を用いて電極等を形成し、半導体積層物をダイシングし、所定の大きさのチップを切り出す。これにより、半導体装置を作製する。
(2)積層構造体
次に、図7(b)を用い、本実施形態に係る積層構造体90について説明する。
本実施形態の積層構造体90は、例えば、第2下地層6と、第1層30と、第2層40と、を有している。なお、第2下地層6は、単に「下地層」と言い換えることができる。
第2下地層6は、例えば、III族窒化物の単結晶からなっている。第2下地層6は、例えば、鏡面化された主面6s(の痕跡)を有している。第2下地層の主面6sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面である。
第1層30は、例えば、第2下地層6上に成長している。
第1層30は、例えば、III族窒化物半導体の単結晶の頂面30uに、c面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pを生じさせ、c面30cを消失させることで形成される複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを有している。第2下地層6の主面6sに垂直な任意の断面を見たときに、最近接頂部間平均距離は、例えば、100μm超である。
また、第1層30は、例えば、成長過程での成長面の違いに基づいて、第1c面成長領域(第1低酸素濃度領域)60と、傾斜界面成長領域(高酸素濃度領域)70と、を有している。
第1c面成長領域60は、c面30cを成長面として成長した領域である。第1c面成長領域60は、例えば、断面視で、複数の谷部60aおよび複数の山部60bを有する。
なお、ここでいう谷部60aおよび山部60bのそれぞれは、積層構造体90の断面を蛍光顕微鏡等で観察したときに発光強度差に基づいて観察される形状の一部分を意味し、第1層30の成長途中で生じる最表面の形状の一部分を意味するものではない。複数の谷部60aのそれぞれは、断面視で、第1c面成長領域60のうち下に凸の変曲点であって、傾斜界面30iが発生した位置に形成される。複数の谷部60aのうち少なくとも1つは、第2下地層6の主面6sから上方に離れた位置に設けられている。一方で、複数の山部60bのそれぞれは、断面視で、第1c面成長領域60のうち上に凸の変曲点であって、互いに相反する方向を向いて拡大した一対の傾斜界面30iを挟んでc面30cが(最後に)消失した位置に形成される。谷部60aおよび山部60bは、第2下地層6の主面6sに沿った方向に交互に形成される。
第1c面成長領域60は、断面視で、複数の山部60bのうちの1つを挟んだ両側に、c面30cと傾斜界面30iとの交点の軌跡として設けられる一対の傾斜部60iを有している。なお、ここでいう傾斜部60iは、積層構造体90の断面を蛍光顕微鏡等で観察したときに発光強度差に基づいて観察される形状の一部分を意味し、第1層30の成長途中で生じる最表面の傾斜界面30iを意味するものではない。
断面視で、一対の傾斜部60iのなす角度βは、例えば、70°以下、好ましくは、20°以上65°以下である。一対の傾斜部60iのなす角度βが70°以下であることは、第1成長条件において、第1層30のうちのc面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iの成長レートGに対する、第1層30のうちのc面30cの成長レートGc1の比率Gc1/Gが高かったことを意味する。これにより、c面以外の傾斜界面30iを容易に生じさせることができる。その結果、傾斜界面30iが露出した位置で、転位を容易に屈曲させることが可能となる。また、一対の傾斜部60iのなす角度βを70°以下とすることで、第2下地層6の上方に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを容易に生じさせることができる。さらに、一対の傾斜部60iのなす角度βを65°以下とすることで、c面以外の傾斜界面30iをさらに容易に生じさせることができ、第2下地層6の上方に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tをさらに容易に生じさせることができる。なお、一対の傾斜部60iのなす角度βを20°以上とすることで、第1層30の谷部30vから頂部30tまでの高さが高くなることを抑制し、第2層40が鏡面化するまでの厚さが厚くなることを抑制することができる。
一方で、傾斜界面成長領域70は、c面以外の傾斜界面30iを成長面として成長した領域である。傾斜界面成長領域70の下面は、例えば、第1c面成長領域60の形状に倣って形成される。傾斜界面成長領域70は、第2下地層6の主面6sに沿って連続して設けられている。
傾斜界面成長領域70では、第1c面成長領域60と比較して、酸素を取り込みやすい。このため、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度は、第1c面成長領域60中の酸素濃度よりも高くなる。なお、傾斜界面成長領域70中に取り込まれる酸素は、例えば、気相成長装置内に意図せずに混入する酸素、または気相成長装置を構成する部材(石英部材等)から放出される酸素等である。
なお、第1c面成長領域60中の酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下、好ましくは3×1016cm-3以下である。一方で、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度は、例えば、3×1018cm-3以上5×1019cm-3以下である。
第2層40は、例えば、成長過程での成長面の違いに基づいて、傾斜界面成長領域70と、第2c面成長領域(第2低酸素濃度領域)80と、を有している。
第2層40における傾斜界面成長領域70の上面は、例えば、断面視で、複数の谷部70aおよび複数の山部70bを有している。なお、ここでいう谷部70aおよび山部70bのそれぞれは、積層構造体90の断面を蛍光顕微鏡等で観察したときに発光強度差に基づいて観察される形状の一部分を意味し、第2層40の成長途中で生じる最表面の形状の一部分を意味するものではない。傾斜界面成長領域70の複数の谷部70aは、上述のように、断面視で、c面40cが再度発生した位置に形成されている。また、傾斜界面成長領域70の複数の谷部70aは、それぞれ、断面視で、第1c面成長領域60の複数の山部60bの上方に形成されている。一方で、傾斜界面成長領域70の複数の山部70bは、上述のように、断面視で、傾斜界面40iが消失した位置に形成されている。また、傾斜界面成長領域70の複数の山部70bは、それぞれ、断面視で、第1c面成長領域60の複数の谷部60aの上方に形成されている。
また、第2層40のうち傾斜界面成長領域70の上端で第2下地層6の主面6sに略平行な面が、第2層40で傾斜界面40iが消失した位置の境界面40bとなる。
第2c面成長領域80は、c面40cを成長面として成長した領域である。第2c面成長領域80では、傾斜界面成長領域70と比較して、酸素の取り込みが抑制される。このため、第2c面成長領域80中の酸素濃度は、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度よりも低くなる。第2c面成長領域80中の酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下、好ましくは3×1016cm-3以下である。
本実施形態では、第1層30の成長過程で、c面以外の傾斜界面30iが露出した位置で、該傾斜界面30iに対して略垂直な方向に向けて、転位が屈曲して伝播することで、第2層40では、複数の転位の一部が消失したり、複数の転位の一部がc面拡大層42の表面側に伝播することが抑制されたりしている。これにより、第2層40の表面における転位密度は、第2下地層6の主面6sにおける転位密度よりも低減されている。
その他、本実施形態では、第2層40の表面全体は+c面により構成されており、第1層30および第2層40は、それぞれ、極性反転区(インバージョンドメイン)を含んでいない。この点において、本実施形態の積層構造体90は、いわゆるDEEP(Dislocation Elimination by the Epitaxial-growth with inverse-pyramidal Pits)法により形成された積層構造体とは異なり、すなわち、ピットの中心に位置するコアに極性反転区を含む積層構造体とは異なっている。
(3)窒化物半導体基板(窒化物半導体自立基板、窒化物結晶基板)
次に、図11を用い、本実施形態に係る窒化物半導体基板50について説明する。図11(a)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板を示す概略上面図であり、(b)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図であり、(c)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板のa軸に沿った概略断面図である。
本実施形態において、上述の製造方法によって第2層40をスライスすることで得られる基板50は、例えば、III族窒化物半導体の単結晶からなる自立基板である。本実施形態では、基板50は、例えば、GaN自立基板である。
基板50の直径は、例えば、2インチ以上である。また、基板50の厚さは、例えば、300μm以上1mm以下である。
基板50の導電性は特に限定されるものではないが、基板50を用いて縦型のショットキーバリアダイオード(SBD)としての半導体装置を製造する場合には、基板50は例えばn型であり、基板50中のn型不純物は例えばSiまたはゲルマニウム(Ge)であり、基板50中のn型不純物濃度は例えば1.0×1018cm-3以上1.0×1020cm-3以下である。
基板50は、例えば、エピタキシャル成長面となる主面50sを有している。本実施形態において、主面50sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面50cである。
なお、基板50の主面50sは、例えば、鏡面化されており、基板50の主面50sの二乗平均粗さRMSは、例えば、1nm未満である。
また、本実施形態において、上述の製造方法によって得られる基板50中の不純物濃度は、フラックス法またはアモノサーマル法などによって得られる基板よりも低くなっている。
具体的には、基板50中の水素濃度は、例えば、1×1017cm-3未満、好ましくは5×1016cm-3以下である。
また、本実施形態では、基板50は、c面40cを成長面として成長した本成長層44をスライスすることで形成されるため、傾斜界面30iまたは傾斜界面40iを成長面として成長した傾斜界面成長領域70を含んでいない。すなわち、基板50の全体は、低酸素濃度領域により構成されている。
具体的には、基板50中の酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下、好ましくは3×1016cm-3以下である。
(c面の湾曲、およびオフ角のばらつき)
図11(b)および(c)に示すように、本実施形態では、基板50の主面50sに対して最も近い低指数の結晶面としてのc面50cは、例えば、上述した基板50の製造方法に起因して、主面50sに対して凹の球面状に湾曲している。
本実施形態では、基板50のc面50cは、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて球面近似される曲面状となっている。
本実施形態では、基板50のc面50fが上述のように凹の球面状に湾曲していることから、少なくとも一部のc軸50caは、主面50sの法線に対して傾斜している。主面50sの法線に対してc軸50caがなす角度であるオフ角θは、主面50s内で所定の分布を有している。
なお、主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのうち、m軸に沿った方向成分を「θ」とし、a軸に沿った方向成分を「θ」とする。なお、θ=θ +θ である。
本実施形態では、基板50のc面50cが上述のように凹の球面状に湾曲していることから、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θは、それぞれ、xの1次関数およびyの1次関数で近似的に表すことができる。
具体的には、例えば、主面50s内で中心を通る直線上の各位置において(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、主面50sへ入射したX線と主面50sとがなすピーク角度ωを、直線上の位置に対してプロットしたときに、ピーク角度ωを位置の1次関数で近似することができる。なお、ここでいう「ピーク角度ω」とは、主面50sへ入射したX線と主面50sとがなす角度であって、回折強度が最大となる角度のことをいう。上述のように近似された1次関数の傾きの逆数により、c面50cの曲率半径を求めることができる。
本実施形態では、基板50のc面50cの曲率半径は、例えば、上述した従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板のc面の曲率半径よりも大きくなっている。
具体的には、c面50cのX線ロッキングカーブ測定においてピーク角度ωを位置の1次関数で近似したときに、当該1次関数の傾きの逆数により求められるc面50cの曲率半径は、例えば、10m以上、好ましくは15m以上、より好ましくは19m以上、さらに好ましくは40m以上である。
本実施形態では、基板50のc面50cの曲率半径の上限値は、大きければ大きいほどよいため、特に限定されるものではない。基板50のc面50cが略平坦となる場合は、該c面50cの曲率半径が無限大であると考えればよい。
本実施形態では、基板50のc面50cの曲率半径が大きいことにより、基板50の主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのばらつきを、従来のVAS法の窒化物半導体基板のc軸のオフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
また、本実施形態では、c面50cのX線ロッキングカーブ測定においてピーク角度ωを位置の1次関数で近似したときに、位置の1次関数に対するωの誤差が小さい。本実施形態のωの誤差を、例えば、マスク層を用いたELO法などで加工した下地基板上に成長させた結晶層から得られる基板、または3次元成長工程においてc面が消失しなかった場合に第2層から得られる基板などよりも小さくすることができる。
具体的には、上述のように近似した1次関数に対する、測定されたピーク角度ωの誤差は、例えば、0.05°以下、好ましくは0.02°以下、より好ましくは0.01°以下である。なお、少なくとも一部のピーク角度ωが1次関数と一致することがあるため、当該誤差の最小値は、0°である。
(暗点)
次に、本実施形態の基板50の主面50sにおける暗点について説明する。なお、ここでいう「暗点」とは、多光子励起顕微鏡における主面50sの観察像や、主面50sのカソードルミネッセンス像などにおいて観察される発光強度が低い点のことを意味し、転位だけでなく、異物または点欠陥を起因とした非発光中心も含んでいる。なお、「多光子励起顕微鏡」とは、二光子励起蛍光顕微鏡と呼ばれることもある。
本実施形態では、VAS法により作製された下地構造体10を用いて基板50が製造されているため、基板50中に、異物または点欠陥を起因とした非発光中心が少ない。したがって、多光子励起顕微鏡等により基板50の主面を観察したときの暗点の95%以上、好ましくは99%以上は、異物または点欠陥を起因とした非発光中心ではなく、転位となる。
また、本実施形態では、上述の製造方法により、第2層40の表面における転位密度が、従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板における転位密度よりも低減されている。
これにより、第2層40をスライスして形成される基板50の主面50sにおいても、転位が低減されている。
また、本実施形態では、上述の製造方法により、加工を施さない状態の下地構造体10を用いて、3次元成長工程S200および平坦化工程S300を行ったことで、第2層40をスライスして形成される基板50の主面50sにおいて、転位の集中に起因した転位密度が高い領域が形成されておらず、転位密度が低い領域が均一に形成されている。
具体的には、本実施形態では、多光子励起顕微鏡により視野250μm角で基板50の主面50sを観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、転位密度が3×10cm-2を超える領域が存在せず、転位密度が1×10cm-2未満である領域が主面50sの80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上存在する。
言い換えれば、本実施形態では、基板50の主面50s全体を平均した転位密度は、例えば、1×10cm-2未満であり、好ましくは、5.5×10cm-2未満であり、より好ましくは3×10cm-2以下である。
また、本実施形態の基板50の主面50sは、例えば、上述の3次元成長工程S200での最近接頂部間平均距離Lに基づいて、少なくとも50μm角の無転位領域を含んでいる。また、本実施形態の基板50の主面50sは、例えば、重ならない50μm角の無転位領域を100個/cm以上の密度で有している。
次に、本実施形態の基板50における転位のバーガースベクトルについて説明する。
本実施形態では、上述の製造方法で用いられる第2下地層6の主面6sにおける転位密度が低いため、第2下地層6上に第1層30および第2層40を成長させる際に、複数の転位が結合(混合)することが少ない。これにより、第2層40から得られる基板50内において、大きいバーガースベクトルを有する転位の生成を抑制することができる。
具体的には、本実施形態の基板50では、例えば、バーガースベクトルが<11-20>/3、<0001>、または<11-23>/3のうちいずれかである転位が多い。なお、ここでの「バーガースベクトル」は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた大角度収束電子回折法(LACBED法)により測定可能である。また、バーガースベクトルが<11-20>/3である転位は、刃状転位であり、バーガースベクトルが<0001>である転位は、螺旋転位であり、バーガースベクトルが<11-23>/3である転位は、刃状転位と螺旋転位とが混合した混合転位である。
本実施形態では、基板50の主面50sにおける転位を無作為に100個抽出したときに、バーガースベクトルが<11-20>/3、<0001>または<11-23>/3のうちいずれかである転位の数の割合は、例えば、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。なお、基板50の主面50s内の少なくとも一部において、バーガースベクトルが2<11-20>/3または<11-20>などである転位が存在していてもよい。
(スリット幅を異ならせたX線ロッキングカーブ測定について)
ここで、発明者は、入射側のスリット幅を異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行うことにより、本実施形態の基板50を構成する結晶のモザイシティと、上述のc面50cの湾曲(反り)と、の両方を同時に評価することができることを見出した。
まず、X線ロッキングカーブ測定における結晶のモザイシティの影響について説明する。
ここでいう「結晶のモザイシティ」とは、結晶面方位のばらつきのことを意味する。結晶において、転位が多いほど、結晶面方位がランダムに傾き、結晶のモザイシティが高くなる傾向がある。特に、複数の転位が線状に配列し、リネージを形成している場合には、リネージを介して隣接する亜結晶粒同士の結晶面方位がずれ、結晶のモザイシティが高くなり易い。このように結晶のモザイシティが高い場合では、X線ロッキングカーブ測定を行うと、モザイシティに起因して、結晶面の回折角度の揺らぎ(変動、分布幅)が大きくなる。
次に、図12(a)を用い、X線ロッキングカーブ測定におけるc面50cの湾曲の影響について説明する。図12(a)は、湾曲したc面に対するX線の回折を示す概略断面図である。
X線の入射側のスリットの幅をaとし、基板の主面に照射されるX線の照射幅(フットプリント)をbとし、結晶のブラッグ角度をθとしたとき、基板の主面におけるX線の照射幅bは、以下の式(h)で求められる。
b=a/sinθ ・・・(h)
図12(a)に示すように、基板のc面が湾曲している場合では、c面の曲率半径をRとし、X線の照射幅bの範囲において湾曲したc面が形成する中心角度の半分をγとしたときに、c面の曲率半径Rは、X線の照射幅bに対して非常に大きい。このことから、角度γは、以下の式(i)で求められる。
γ=sin-1(b/2R)≒b/2R ・・・(i)
このとき、基板のc面のうちX線が照射される領域の入射側の端部(図中右側端部)では、基板の主面に対する回折角度は、θ+γ=θ+b/2Rとなる。
一方、基板のc面のうちX線が照射される領域の受光側の端部(図中左側端部)では、基板の主面に対する回折角度は、θ-γ=θ-b/2Rとなる。
したがって、基板のc面のうち上記入射側の端部における基板の主面に対する回折角度と、基板のc面のうち上記受光側の端部における基板の主面に対する回折角度との差分により、湾曲したc面に対するX線の回折角度の揺らぎは、b/Rとなる。
図12(b)および(c)は、c面の曲率半径に対する、(0002)面の回折角度の揺らぎを示す図である。なお、図12(b)の縦軸が対数スケールとなっており、図12(c)の縦軸がリニアスケールとなっている。
図12(b)および(c)に示すように、X線の入射側のスリットの幅aを大きくし、すなわちX線の照射幅bを大きくした場合では、X線の照射幅bに応じて、(0002)面の回折角度の揺らぎが大きくなる。また、c面の曲率半径Rが小さくなるにつれて、(0002)面の回折角度の揺らぎは徐々に大きくなる。また、X線の照射幅bを異ならせたときの、(0002)面の回折角度の揺らぎの差は、c面の曲率半径Rが小さくなるにつれて、大きくなる。
実際に、結晶のモザイシティが低い基板のX線ロッキングカーブ測定を行った場合では、入射側のスリットの幅aが狭いときには、(0002)面の回折角度の揺らぎのうち、c面の湾曲による成分が小さく、結晶のモザイシティによる成分が支配的となる。しかしながら、入射側のスリットの幅aが広いときには、(0002)面の回折角度の揺らぎにおいて、結晶のモザイシティによる成分と、c面の湾曲による成分との両方が重畳されることとなる。したがって、入射側のスリットの幅aを異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行えば、結晶のモザイシティと、c面の湾曲(反り)と、の両方を同時に評価することが可能となる。
ここで、本実施形態の基板50についてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの特徴について説明する。
以下において、Ge(220)面の2結晶モノクロメータおよびスリットを介して基板50の主面50sに対してCuのKα1のX線を照射し、(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅を「FWHMa」とし、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅を「FWHMb」とする。なお、「ω方向」とは、X線ロッキングカーブ測定において、基板50の中心を通り基板50の主面に平行な軸を中心軸として基板50を回転させたときの回転方向(周方向)のことをいう。
本実施形態の基板50では、上述のように、主面50sの広い範囲に亘って、転位が少なく、結晶のモザイシティが低い。
その結果、本実施形態の基板50の主面50s内に5mm間隔で設定した複数の測定点において、スリットのω方向の幅を0.1mmとして(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行ったときに、例えば、全測定点の95%以上、好ましくは100%において、(0002)面回折の半値幅FWHMbは、80arcsec以下、好ましくは50arcsec以下である。
また、本実施形態の基板50では、入射側のスリット幅を広くしてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの(0002)面の回折スペクトルが、入射側のスリット幅を狭くしてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの(0002)面の回折スペクトルよりも狭くなり難い傾向がある。
その結果、本実施形態の基板50では、スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMaは、例えば、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMb以上となりうる。
また、本実施形態の基板50では、上述のように、主面50sの広い範囲に亘って、転位が少なく、結晶のモザイシティが低い。さらに、基板50のc面50cの湾曲が小さく、c面50cの曲率半径が大きい。これらにより、本実施形態の基板50において、入射側のスリット幅を広くしてX線ロッキングカーブ測定を行ったとしても、(0002)面の回折角度の揺らぎはあまり大きくならず、また、入射側のスリット幅を異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったとしても、(0002)面の回折角度の揺らぎの差は小さくなる。
その結果、本実施形態の基板50の所定の測定点(例えば主面の中心)において、スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMaから、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMbを引いた差FWHMa-FWHMbは、例えば、FWHMaの30%以下、好ましくは22%以下である。
また、本実施形態の基板50の主面50s内に5mm間隔で設定した複数の測定点において、スリットのω方向の幅を異ならせて(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行ったときに、例えば、全測定点の95%以上、好ましくは100%において、FWHMa-FWHMbは、例えば、FWHMaの30%以下、好ましくは22%以下である。
なお、本実施形態の基板50では、FWHMa<FWHMbとなったとしても、|FWHMa-FWHMb|は30%以下となる。
なお、参考までに、上述の従来のVAS法の窒化物半導体基板では、比較的、c面10cの湾曲が大きく、c面10cの曲率半径が小さい。このため、従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板における差FWHMa-FWHMbは、例えば、FWHMaの50%以上となる。
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
(a)下地構造体10上に第1層30を3次元成長させることで、下地構造体10の第2下地層6に蓄積した引張応力を第1層30により相殺する応力相殺効果(応力緩和効果)を得ることができる。
第1層30による応力相殺効果が得られる理由の1つとして、例えば、以下のような理由が考えられる。
上述のように、3次元成長工程S200において、c面以外の傾斜界面30iを成長面として第1層30を3次元成長させることで、傾斜界面成長領域70が形成される。傾斜界面成長領域70では、第1c面成長領域60と比較して、酸素を取り込みやすい。このため、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度は、第1c面成長領域60中の酸素濃度よりも高くなる。つまり、傾斜界面成長領域70は、高酸素濃度領域として考えることができる。
このように、高酸素濃度領域中に酸素を取り込むことで、高酸素濃度領域の格子定数を、高酸素濃度領域以外の他の領域の格子定数よりも大きくすることができる(参考:Chris G. Van de Walle, Physical Review B vol.68, 165209 (2003))。第2下地層6、または第1層30のうちc面30cを成長面として成長した第1c面成長領域60には、第2下地層6のc面の湾曲によって、c面の曲率中心に向かって集中する応力が加わっている。これに対して、高酸素濃度領域の格子定数を相対的に大きくすることで、高酸素濃度領域には、c面30cを沿面方向の外側に広げる応力を生じさせることができる。これにより、高酸素濃度領域よりも下側でc面30cの曲率中心に向かって集中する応力と、高酸素濃度領域のc面30cを沿面方向の外側に広げる応力とを相殺させることができる。
このように第1層30による応力相殺効果を得ることで、第2下地層6中に引張応力が蓄積した状態で第2層40を厚く成長させたとしても、第2層400のうちの下地構造体10側と表面側とで応力差が生じることを抑制することができる。これにより、第2層40にクラック等が発生することを抑制することができる。
(b)本実施形態では、上述した第1層30による応力相殺効果を得ることで、第2層40から得られる基板50のc面50cの曲率半径を、従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板の曲率半径よりも大きくすることができる。これにより、基板50の主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのばらつきを、従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板のc軸のオフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
(c)3次元成長工程S200において、第1層30を構成する単結晶の表面にc面以外の傾斜界面30iを生じさせることで、傾斜界面30iが露出した位置で、該傾斜界面30iに対して略垂直な方向に向けて、転位を屈曲させて伝播させることができる。これにより、転位を局所的に集めることができる。転位を局所的に集めることで、互いに相反するバーガースベクトルを有する転位同士を消失させることができる。または、局所的に集められた転位がループを形成することで、転位が第2層40の表面側に伝播することを抑制することができる。このようにして、第2層40の表面における転位密度を低減することができる。その結果、従来のVAS法で得られる窒化物半導体基板よりも転位密度を低減させた基板50を得ることができる。
(d)上述のように、第2層40の成長過程で、複数の転位の一部を消失させたり、複数の転位の一部を第2層40の表面側に伝播することを抑制したりすることで、III族窒化物半導体の単結晶からなる結晶層を、c面のみを成長面として成長させた場合よりも、急激に早く、転位密度を低減することができる。その結果、転位密度を低減させた基板50を効率よく得ることができ、その生産性を向上させることが可能となる。
(e)3次元成長工程S200では、第1層30の頂面30uからc面30cを消失させる。これにより、第1層30の表面に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを形成することができる。その結果、第2下地層6から伝播する転位を、第1層30における傾斜界面30iが露出した位置で、確実に屈曲させることができる。
ここで、3次元成長工程において、c面が残存した場合について考える。この場合、c面が残存した部分では、下地基板から伝播した転位が、屈曲されずに略鉛直上方向に伝播し、第2層の表面にまで到達する。このため、c面が残存した部分の上方では、転位が低減されず、高転位密度領域が形成されてしまう。
これに対し、本実施形態によれば、3次元成長工程S200において、第1層30の頂面30uからc面30cを消失させることで、第1層30の表面をc面以外の傾斜界面30iのみにより構成することができ、第1層30の表面に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを形成することができる。これにより、第2下地層6から伝播する転位を、第1層30の表面全体に亘って、確実に屈曲させることができる。転位を確実に屈曲させることで、複数の転位の一部を消失させ易くし、または、複数の転位の一部を第2層40の表面側に伝播し難くすることができる。その結果、第2層40から得られる基板50の主面1s全体に亘って転位密度を低減することが可能となる。
(f)本実施形態では、ボイド形成工程S140と3次元成長工程S200との間に第2下地層形成工程S150を行い、第2下地層6の主面6sを鏡面化させる。これにより、第1層30の成長形態を、第2下地層6の成長初期に生じた島状結晶の成長形態から変化させることができる。
ここで、ボイド形成工程S140直後に第2下地層形成工程S150を行わずに3次元成長工程S200を行うと、第1層の成長初期から、ボイド含有第1下地層の上方に金属窒化層を介して、第1層が島状結晶として成長する。この場合、第1層の島状結晶の頻度は、上述のように、金属窒化層のナノネット上に成長する際の過飽和度と、当該ナノネットの開口幅のばらつきとに依存する。このため、第1層の頂部が密に形成され、第1層の最近接頂部間平均距離が短くなる。第1層の最近接頂部間平均距離が短くなると、転位が充分に集められない。その結果、第2層の表面における転位密度を充分に低減することができない可能性がある。
これに対し、本実施形態では、ボイド形成工程S140後に、第2下地層6の主面6sを鏡面化させることで、上述のように、第1層30の成長形態を、第2下地層6の成長初期に生じた島状結晶の成長形態から変化させることができる。
すなわち、鏡面化した第2下地層6上に成長する第1層30を、成長初期から島状結晶として成長させるのではなく、3次元成長工程S200での上述の第1成長条件に依存して3次元成長させることができる。このとき、第1層30の最近接頂部間平均距離は、上述の第1成長条件としての、c面30cのc軸方向の成長レートGc0と傾斜界面30iの傾斜方向の成長レートGとの違いに依存する。これにより、第1層30の最近接頂部間平均距離を第1成長条件に基づいて制御し、最近接頂部間距離を長くすることができる。
また、本実施形態では、ボイド形成工程S140後に、第2下地層6の主面6sを鏡面化させることで、ボイド含有第1下地層4および金属窒化層5の状態にかかわらず、第2下地層6の主面6sのモフォロジを全体に亘って略均一にすることができる。第2下地層6の主面6sのモフォロジを略均一にすることで、3次元成長工程S200において傾斜界面30iの発生状態を、第1層30の表面全体に亘って略均一にすることができる。これにより、第1層30の表面の一部に、最近接頂部間距離が短い領域が形成されることを抑制し、第1層30の表面全体に亘って、最近接頂部間距離を略均一に長くすることができる。
これらの結果、本実施形態では、第2層40の表面の一部に、転位密度が高い領域が形成されることを抑制し、第2層40の表面全体に亘って、転位密度を低くすることができる。
(g)III族窒化物半導体の単結晶からなる結晶層をスライスおよび研磨することで得られた自立基板を用いて3次元成長工程および平坦化工程を行う場合よりも、本実施形態の工程数を削減することができる。すなわち、自立基板を得るためのスライス工程および研磨工程を省くことができる。これにより、本実施形態の歩留まりを向上しつつ、製造コストを低減することができる。
(h)本実施形態では、第2下地層6の主面6s上へのマスク層の形成、および主面6sへの凹凸パターンの形成のうち、いずれの加工を施さない状態の下地構造体10に対して、3次元成長工程S200を行う。なお、ここでいう「マスク層」とは、例えば、いわゆるELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法において用いられ、酸化シリコンなどからなり所定の開口を有するマスク層のことを意味する。また、ここでいう「凹凸パターン」は、例えば、いわゆるペンデオエピタキシー法において用いられ、主面を直接パターニングしたトレンチおよびリッジのうち少なくともいずれかのことを意味する。ここでいう凹凸パターンの高低差は、例えば、100nm以上である。
上述のような構造を有しない状態で、3次元成長工程S200および平坦化工程S300を行うことで、第2層40をスライスして形成される基板50の主面50sにおいて、転位の集中に起因した転位密度が高い領域の形成を抑制し、転位密度が低い領域を均一に形成することができる。
また、上述のような構造を有しない状態で、3次元成長工程S200および平坦化工程S300を行うことで、所定の加工工程(マスク層形成工程、フォトリソグラフィ工程など)を不要とすることができ、本実施形態の工程数を削減することができる。これにより、本実施形態の歩留まりを向上しつつ、製造コストを低減することができる。
(i)本実施形態では、上述の鏡面化した第2下地層6上に第1層30を成長させ、且つ、3次元成長工程S200において式(1)を満たすように第1成長条件を調整することで、3次元成長工程S200において、傾斜界面30iとして、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができる。これにより、c面30cに対する{11-2m}面の傾斜角度を緩やかにすることができる。具体的には、該傾斜角度を47.3°以下とすることができる。c面30cに対する{11-2m}面の傾斜角度を緩やかにすることとで、複数の頂部30tの周期を長くすることができる。具体的には、下地基板1の主面1sに垂直な任意の断面を見たときに、最近接頂部間平均距離Lを100μm超とすることができる。
なお、参考までに、通常、所定のエッチャントを用い窒化物半導体基板にエッチピットを生じさせると、該基板の表面に、{1-10n}面により構成されるエッチピットが形成される。これに対し、本実施形態において所定の条件で成長させた第1層30の表面では、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができる。したがって、通常のエッチピットに比較して、本実施形態では、製法特有の傾斜界面30iが形成されると考えられる。
(j)本実施形態では、下地基板1の主面1sに垂直な任意の断面を見たときに、最近接頂部間平均距離Lを100μm超とすることで、転位が屈曲して伝播する距離を、少なくとも50μm超、確保することができる。これにより、第1層30のうち一対の頂部30t間の略中央の上方に、充分に転位を集めることができる。その結果、第2層40の表面における転位密度を充分に低減させることができる。
(k)3次元成長工程S200では、第1層30の表面からc面30cを消失させた後に、該表面において傾斜界面30iがc面30cよりも多く占める状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って第1層30の成長を継続させる。これにより、c面30cが消失した後に、傾斜界面30iが露出した位置で転位を屈曲させる時間を充分に確保することができる。ここで、c面が消失してから直ぐにc面成長をさせると、転位が充分に屈曲されずに、第2層の表面に向けて略鉛直方向に伝播してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、c面以外の傾斜界面30iが露出した位置で転位を屈曲させる時間を充分に確保することで、特に第1層30の頂部30t付近の転位を確実に屈曲させることができ、第2下地層6から第2層40の表面に向けて略鉛直方向に転位が伝播することを抑制することができる。これにより、第1層30の頂部30tの上方における転位の集中を抑制することができる。
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、基板50がGaN自立基板である場合について説明したが、基板50は、GaN自立基板に限らず、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体からなる自立基板であってもよい。
上述の実施形態では、基板50がn型である場合について説明したが、基板50はp型であったり、または半絶縁性を有していたりしてもよい。例えば、基板50を用いて高電子移動度トランジスタ(HEMT)としての半導体装置を製造する場合には、基板50は、半絶縁性を有していることが好ましい。
上述の実施形態では、3次元成長工程S200において、第1成長条件として主に成長温度を調整する場合について説明したが、第1成長条件が式(1)を満たせば、当該第1成長条件として、成長温度以外の成長条件を調整したり、成長温度と成長温度以外の成長条件とを組み合わせて調整したりしてもよい。
上述の実施形態では、平坦化工程S300において、第2成長条件として主に成長温度を調整する場合について説明したが、第2成長条件が式(2)を満たせば、当該第2成長条件として、成長温度以外の成長条件を調整したり、成長温度と成長温度以外の成長条件とを組み合わせて調整したりしてもよい。
上述の実施形態では、傾斜界面維持工程S240での成長条件を、傾斜界面拡大工程S220と同様に、上述の第1成長条件で維持する場合について説明したが、傾斜界面維持工程S240での成長条件が第1成長条件を満たせば、該傾斜界面維持工程S240での成長条件を、傾斜界面拡大工程S220での成長条件と異ならせてもよい。
上述の実施形態では、本成長工程S340での成長条件を、c面拡大工程S320と同様に、上述の第2成長条件で維持する場合について説明したが、本成長工程S340での成長条件が第2成長条件を満たせば、該本成長工程S340での成長条件を、c面拡大工程S320での成長条件と異ならせてもよい。
上述の実施形態では、スライス工程S400において、ワイヤーソーを用い、本成長層44をスライスする場合について説明したが、例えば、外周刃スライサー、内周刃スライサー、放電加工機等を用いてもよい。
上述の実施形態では、積層構造体90のうちの本成長層44をスライスすることで、基板50を得る場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、積層構造体90をそのまま用いて、半導体装置を作製するための半導体積層物を製造してもよい。具体的には、積層構造体90を作製したら、半導体積層物作製工程において、積層構造体90上に半導体機能層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する。半導体積層物を作製したら、積層構造体90の裏面側を研磨し、積層構造体90のうち、第2下地層6と、第1層30と、c面拡大層42と、を除去する。これにより、上述の実施形態と同様に、本成長層44と、半導体機能層と、を有する半導体積層物が得られる。この場合によれば、基板50を得るためのスライス工程S400および研磨工程S500を省略することができる。
以下、本発明の効果を裏付ける各種実験結果について説明する。
(1)実験1
(1-1)窒化物半導体基板の作製
以下のようにして、実施例および比較例1の窒化物半導体基板、および比較例2の積層構造体を作製した。なお、実施例については、窒化物半導体基板をスライスする前の積層構造体も作製した。また、以下において「窒化物半導体基板」を基板と略すことがある。
[実施例の窒化物半導体基板の作製条件]
(下地基板)
材質:サファイア
直径:2インチ
厚さ:400μm
主面に対して最も近い低指数の結晶面:c面
主面に対するマスク層等の加工なし。
(第1下地層)
低温成長バッファ層:
材質:GaN
成長温度:550℃
厚さ:50nm
GaN層:
材質:アンドープ(アンインテンショナリドープ)GaN
成長温度:1,050℃
厚さ:350nm
なお、GaN層の表面を鏡面化させた。
(金属層)
材質:Ti
厚さ:20nm
(熱処理条件)
2段階の熱処理を行った。
第1熱処理:
雰囲気:Nガス80%、NHガス20%
温度:1,050℃
時間:10分
第2熱処理:
雰囲気:Hガス80%、NHガス20%
温度:1,050℃
時間:20分
(第2下地層)
材質:アンドープ(アンインテンショナリドープ)GaN
成長温度:1,050℃
厚さ:約200μm
なお、第2下地層の主面を鏡面化させた。
(第1層)
材質:GaN
成長方法:HVPE法
第1成長条件:
成長温度を980℃以上1,020℃以下とし、V/III比を2以上20以下とした。このとき、第1成長条件が式(1)を満たすように、成長温度およびV/III比のうち少なくともいずれかをそれぞれ上記範囲のなかで調整した。
第2下地層の主面から第1層の頂部までの高さ:約450μm
(第2層)
材質:GaN
成長方法:HVPE法
成長温度:1,050℃
V/III比:2
なお、上記第2成長条件は、式(2)を満たす。
第1層の頂部から第2層の表面までの厚さ:約800μm
(剥離条件)
第2層成長温度からの降温時に自然剥離。
(スライスおよび研磨条件)
スライス位置:第2層の本成長層
スライス時カーフロス:200μm
両面研磨
窒化物半導体基板の最終厚さ:400μm
なお、実施例において同様の条件で複数の窒化物半導体基板を作製した。
[比較例1の窒化物半導体基板の作製条件]
比較例1では、従来のVAS法と同様の条件で基板を作製した。
(下地基板)
実施例と同じ。
(第1結晶層、金属層、および熱処理条件)
実施例の第1下地層、金属層、および熱処理条件と同じ。
(第2結晶層)
厚さを600μmとした点以外の条件は、実施例の第2下地層と同じ。
(第1層および第2層)
なし。
(剥離条件)
第2結晶層成長温度からの降温時に自然剥離。
(スライスおよび研磨条件)
スライス位置を第2結晶層とした点以外の条件は、実施例と同じ。
[比較例2の窒化物半導体基板の作製条件]
(下地基板)
実施例と同じ。
(第1結晶層、金属層、および熱処理条件)
実施例の第1下地層、金属層、および熱処理条件と同じ。
(第2結晶層)
厚さを1700μmとした点以外の条件は、実施例の第2下地層と同じ。
(第1層および第2層)
なし。
(1-2)評価
(蛍光顕微鏡による観察)
蛍光顕微鏡を用い、実施例において、窒化物半導体基板をスライスする前の積層構造体の断面を観察した。
(多光子励起顕微鏡による観察)
多光子励起顕微鏡を用い、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれの主面を観察した。このとき、視野250μmごとに主面全体に亘って暗点密度を測定することで、転位密度を測定した。なお、これらの基板における暗点の全てが転位であることは、厚さ方向に焦点をずらして測定することにより確認している。また、このとき、視野250μmでの全測定領域数に対する、転位密度が1×10cm-2未満である領域(低転位密度領域)の数の割合を求めた。
(X線ロッキングカーブ測定)
実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれについて、以下の2種類のX線ロッキングカーブ測定を行った。
X線ロッキングカーブ測定には、スペクトリス社製「X’Pert-PRO MRD」を用い、入射側のモノクロメータとしては、同社製「ハイブリッドモノクロメータ」を用いた。ハイブリッドモノクロメータは、X線光源側から順に、X線ミラーと、Ge(220)面の2結晶と、を有する。当該測定では、まず、X線光源から放射されるX線を、X線ミラーにより平行光とする。これにより、使用されるX線のフォトン数(すなわちX線強度)を増加させることができる。次に、X線ミラーからの平行光を、Ge(220)面の2結晶により、CuのKα1の単色光とする。次に、Ge(220)面の2結晶からの単色光を、スリットを介して所定の幅に狭め、基板に入射させる。なお、当該ハイブリッドモノクロメータを用いたときの分解能は、約24arcsecである。
なお、当該測定において基板に入射されるX線は、ω方向に沿った断面では基板側に向かう平行光とされるが、ω方向に直交する方向(基板の回転軸方向)に沿った断面では平行光になっていない。このため、X線がスリットから基板に到達するまでの間において、X線のω方向の幅はほぼ一定であるが、X線のω方向に直交する方向の幅は広がる。したがって、X線ロッキングカーブ測定において、所定の結晶面で回折されるX線の半値幅は、入射側のスリットのうち、X線が平行光となったω方向の幅に依存するものとなる。
(X線ロッキングカーブ測定1)
入射側スリットのω方向の幅を0.1mmとし、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれの、(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行った。このとき、それぞれの基板の主面内で中心を通りm軸方向およびa軸方向のそれぞれに沿った直線上の、5mm間隔で設定した複数の測定点において、該測定を行った。測定の結果、主面へ入射したX線と主面とがなすピーク角度ωを求めた。その後、ピーク角度ωを、直線上の位置に対してプロットし、ピーク角度ωを位置の1次関数で近似した。当該1次関数の傾きの逆数により、c面の曲率半径を求めた。
また、各測定点において、入射側スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMbを求めた。
(X線ロッキングカーブ測定2)
入射側スリットのω方向の幅を1mmとし、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれについて、X線ロッキングカーブ測定を行った。なお、該測定は、それぞれの基板における主面の中心で行った。測定の結果、入射側スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMaを求めた。さらに、それぞれの基板における主面の中心において、FWHMaに対するFWHMa-FWHMbの割合を求めた。
なお、X線ロッキングカーブ測定1および2において、それぞれの基板の主面に対して(0002)面のブラッグ角17.28°でX線が入射した場合、スリットのω方向の幅が0.1mmのとき、X線のフットプリントは約0.337mmとなり、スリットのω方向の幅が1mmのとき、X線のフットプリントは約3.37mmとなる。
(1-3)結果
結果を表1に示す。
Figure 2023157999000002
(実施例と比較例2との比較)
まず、実施例と比較例2とを比較する。
比較例2では、結晶層成長後に室温まで降温させた状態を確認したところ、第2結晶層が微細に割れていた。また、第2結晶層の割れた断面から、結晶が異常成長していた。このことから、第2結晶層の成長中に、第2結晶層が割れていたものと考えられる。比較例2では、充分な厚さおよび直径を有する第2結晶層を得ることが出来なかったため、窒化物半導体基板の作製を行わなかった。
これに対し、実施例では、第2層の成長が終了した後に室温まで降温させたところ、金属窒化層と第2下地層との間を境に、積層構造体が下地基板から剥離していた。剥離後の積層構造体には、割れ(クラック)が見られなかった。
(実施例と比較例1との比較)
表1、図13~図16を用い、実施例と比較例1とを比較する。図13は、実施例の積層構造体の断面を蛍光顕微鏡により観察した観察像を示す図である。図14は、多光子励起顕微鏡を用い、実施例の窒化物半導体基板の主面を観察した図である。図15(a)は、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれについて、m軸方向に沿って(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った結果を示す図であり、(b)は、実施例および比較例1の窒化物半導体基板のそれぞれについて、a軸方向に沿って(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った結果を示す図である。なお、図15(a)および(b)において、黒円印が実施例であり、白抜き円印が比較例1である。図16(a)は、実施例の窒化物半導体基板について、スリットを異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図であり、(b)は、比較例1の窒化物半導体基板について、実施例と同じ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図である。なお、図16(a)および(b)は、m軸に沿った方向の測定結果を示している。また、同図において、「Line width」は上述のX線のフットプリントを意味している。
図13に示すように、実施例の積層構造体では、第1層は、成長過程での成長面の違い(すなわち、酸素濃度の違い)に基づいて、c面を成長面として成長した第1c面成長領域と、傾斜界面を成長面として成長した傾斜界面成長領域と、を有していた。第1c面成長領域は、複数の凹部および複数の凸部を有していた。第1c面成長領域のうち一対の傾斜部のなす角度の平均値は、およそ45.1°だった。また、最近接頂部間平均距離は、およそ109μmであった。また、傾斜界面成長領域は、下地基板の主面に沿って連続して形成されていた。
表1に示すように、実施例の基板では、主面における平均転位密度が、比較例1の基板に比べて、大幅に低減され、5.5×10cm-2未満であった。
また、実施例の基板では、転位密度が3×10cm-2を超える領域が存在しなかった。なお、転位密度が最も高い領域であっても、当該転位密度は、1.6×10cm-2未満であった。また、実施例の基板では、転位密度が1×10cm-2未満である領域(低転位密度領域)が主面50sの90%以上存在していた。当該低転位密度領域における転位密度は、1.3×10~7.6×10cm-2だった。
また、図14において四角枠で示したように、実施例の基板の主面は、少なくとも50μm角の無転位領域を含んでいた。また、実施例の基板の主面は、重ならない50μm角の無転位領域を100個/cm以上の密度で有していた。
また、表1、図15(a)および(b)に示すように、実施例の基板では、c面の曲率半径が、比較例1の基板に比べて大きくなり、19m以上であった。
なお、実施例の基板では、c面の曲率半径を求めるため、c面のX線ロッキングカーブ測定においてピーク角度ωを位置の1次関数で近似したときの、1次関数に対する誤差が小さかった。具体的には、上述のように近似した1次関数に対する、測定されたピーク角度ωの誤差は、0.01°以下であった。
また、表1、図15(a)および(b)に示すように、実施例の基板では、全測定点(すなわち100%)において、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMbは、50arcsec以下であった。
図16(b)に示すように、比較例1の基板では、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときには、X線の回折スペクトルが狭かったが、スリットのω方向の幅を1mmとしたときには、X線の回折スペクトルが広がっていた。
このため、表1に示すように、比較例1の基板では、FWHMa-FWHMbは、FWHMaの50%以上であった。
これに対し、図16(a)に示すように、実施例の基板では、スリットのω方向の幅を0.1mmから1mmに広げた場合であっても、X線の回折スペクトルは若干広がるものの、その広がりは小さかった。
これにより、表1に示すように、実施例の基板では、FWHMa-FWHMbは、FWHMaの0%以上30%以下であった。
(まとめ)
以上の実施例によれば、下地構造体上に第1層を3次元成長させたことで、第1層による応力相殺効果を得ることができた。第1層による応力相殺効果を得ることで、第2下地層中に引張応力が蓄積した状態で第2層を厚く成長させたとしても、第2層にクラック等が発生することを抑制することができたことを確認した。
また、実施例によれば、3次元成長工程において、式(1)を満たすように第1成長条件を調整した。これにより、第1層の成長過程で、c面を確実に消失させることができた。c面を確実に消失させたことで、第1層における傾斜界面が露出した位置で、転位を確実に屈曲させることができた。その結果、窒化物半導体基板の主面における転位密度を効率よく低減することができたことを確認した。
また、実施例によれば、第2下地層形成工程において、第2下地層の主面を鏡面化させたことで、第1層の成長形態を、第2下地層の成長初期に生じた島状結晶の成長形態から変化させ、3次元成長工程において3次元成長する第1層の最近接頂部間距離を長くすることができた。これにより、基板の主面の一部に、高転位密度領域が形成されることを抑制し、基板の主面全体に亘って、転位密度を低くすることができたことを確認した。
また、実施例によれば、上述の鏡面化した第2下地層上に第1層を成長させ、かつ、式(1)を満たすように第1成長条件を調整したことで、最近接頂部間平均距離を100μm超とすることができた。これにより、基板の主面における転位密度を充分に低減させることができたことを確認した。また、最近接頂部間平均距離を100μm超とすることで、少なくとも50μm角の無転位領域を形成することができたことを確認した。
また、実施例によれば、上述した第1層による応力相殺効果を得たことで、実施例の基板のc面の曲率半径を、従来のVAS法に相当する比較例1の基板のc面の曲率半径よりも大きくすることができたことを確認した。
また、実施例によれば、上述のように、基板の主面の広い範囲に亘って、転位が少なく、該基板における結晶のモザイシティが低かった。これにより、実施例の基板では、主面の広い範囲に亘って、FWHMbが50arcsec以下となることを確認した。
また、実施例によれば、上述のように、結晶のモザイシティが低く、且つ、基板のc面の曲率半径が大きかった。これらにより、実施例では、入射側のスリットの幅を異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、半値幅の差FWHMa-FWHMbが、FWHMaの30%以下となることを確認した。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
下地基板を準備する工程と、
前記下地基板上にIII族窒化物半導体からなる第1下地層を形成する工程と、
前記第1下地層上に金属層を形成する工程と、
熱処理を行い、前記第1下地層中にボイドを形成する工程と、
III族窒化物半導体の単結晶からなり、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する第2下地層を、前記第1下地層の上方にエピタキシャル成長させ、該第2下地層の前記主面を鏡面化させる工程と、
(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記第2下地層の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記第2下地層の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、前記(0001)面を前記頂面から消失させ、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層を成長させる3次元成長工程と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層を成長させる平坦化工程と、
を有する
窒化物半導体基板の製造方法。
(付記2)
前記3次元成長工程では、
前記単結晶の前記頂面に前記複数の凹部を生じさせ、前記(0001)面を消失させることで、前記第1層の表面に、複数の谷部および複数の頂部を形成し、
前記主面に垂直な任意の断面を見たときの、前記複数の谷部のうちの1つを挟んで前記複数の頂部のうちで最も接近する一対の頂部同士が前記主面に沿った方向に離間した平均距離を、100μm超とする
付記1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記3)
前記3次元成長工程では、
最も接近する前記一対の頂部同士の前記平均距離を、800μm未満とする
付記2に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記4)
前記3次元成長工程では、
前記(0001)面を前記表面から消失させた後に、前記表面において前記傾斜界面が前記(0001)面よりも多く占める状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って前記第1層の成長を継続させる
付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記5)
前記平坦化工程の後に、前記第2層から少なくとも1つの窒化物半導体基板をスライスする工程を有し、
前記窒化物半導体基板をスライスする工程では、
前記窒化物半導体基板の前記(0001)面の曲率半径を、前記第2下地層を前記第2層と同じ厚さで成長させ、前記3次元成長工程および前記平坦化工程を行わずに前記第2下地層をスライスした場合の窒化物半導体基板の前記(0001)面の曲率半径よりも大きくする
付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記6)
前記窒化物半導体基板の前記(0001)面の曲率半径を、10m以上とする
付記5に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記7)
前記平坦化工程の後に、前記第2下地層、前記第1層および前記第2層を有する積層構造体を、前記下地基板から剥離させる剥離工程をさらに有する
付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記8)
前記3次元成長工程では、
前記傾斜界面として、m≧3である{11-2m}面を生じさせる
付記1~7のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記9)
前記3次元成長工程では、式(1)を満たす第1成長条件下で、前記第1層を成長させ、
前記平坦化工程では、式(2)を満たす第2成長条件下で、前記第2層を成長させる
付記1~8のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
c1>G/cosα ・・・(1)
c2<G/cosα ・・・(2)
(ただし、前記第1層のうちの前記(0001)面の成長レートをGc1とし、前記第2層のうちの前記(0001)面の成長レートをGc2とし、前記第1層および前記第2層のそれぞれのうち前記(0001)面に対して最も傾斜した前記傾斜界面の成長レートをGとし、前記第1層および前記第2層のそれぞれにおいて前記(0001)面に対して最も傾斜した前記傾斜界面と前記(0001)面とのなす角度をαとする。)
(付記10)
前記第2下地層を形成する工程から前記平坦化工程までを同一の気相成長装置内で連続的に行う
付記1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記11)
付記1~10のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記第2層をスライスすることにより得られる
窒化物半導体基板。
(付記12)
2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
Ge(220)面の2結晶モノクロメータおよびスリットを介して前記主面に対してCuのKα1のX線を照射し、(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、前記スリットのω方向の幅を1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMaから、前記スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMbを引いた差FWHMa-FWHMbは、FWHMaの30%以下である
窒化物半導体基板。
(付記13)
多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在せず、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する
付記12に記載の窒化物半導体基板。
(付記14)
2インチ以上の直径を有する窒化物半導体基板であって、
多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記窒化物半導体基板の主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在せず、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する
窒化物半導体基板。
(付記15)
前記主面は、少なくとも50μm角の無転位領域を含んでいる
付記12~14のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
(付記16)
前記主面内で中心を通る直線上の各位置において(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、前記主面へ入射したX線と前記主面とがなすピーク角度ωを、前記直線上の位置に対してプロットし、前記ピーク角度ωを前記位置の1次関数で近似したときに、
前記1次関数の傾きの逆数により求められる前記(0001)面の曲率半径は、10m以上であり、
前記1次関数に対する、測定された前記ピーク角度ωの誤差は、0.05°以下である
付記12~15のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板。
(付記17)
最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
前記主面内で中心を通る直線上の各位置において(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、前記主面へ入射したX線と前記主面とがなすピーク角度ωを、前記直線上の位置に対してプロットし、前記ピーク角度ωを前記位置の1次関数で近似したときに、
前記1次関数の傾きの逆数により求められる前記(0001)面の曲率半径は、10m以上であり、
前記1次関数に対する、測定された前記ピーク角度ωの誤差は、0.05°以下である
窒化物半導体基板。
(付記18)
III族窒化物半導体の単結晶からなり、鏡面化された主面を有し、前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が(0001)面である下地層と、
前記(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記下地層の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記下地層の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、(0001)面を前記頂面から消失させることにより形成され、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層と、
を有する
積層構造体。
(付記19)
前記第1層は、
前記(0001)面を成長面として成長した第1c面成長領域と、
前記傾斜界面を成長面として成長した傾斜界面成長領域と、
を有し、
前記第2層は、前記(0001)面を成長面として成長した第2c面成長領域を有する
付記18に記載の積層構造体。
(付記20)
前記傾斜界面成長領域は、前記下地層の前記主面に沿って連続して設けられる
付記19に記載の積層構造体。
(付記21)
前記第1c面成長領域は、
前記(0001)面が消失した位置に設けられる凸部と、
前記凸部を挟んだ両側に、前記(0001)面と前記傾斜界面との交点の軌跡として設けられる一対の傾斜部と、
を有し、
前記一対の傾斜部のなす角度は、70°以下である
付記19又は20に記載の積層構造体。
1 下地基板
2 第1下地層
3 金属層
4 ボイド含有第1下地層
5 金属窒化層
6 第2下地層
10 下地構造体
30 第1層
40 第2層
50 窒化物半導体基板(基板)

Claims (3)

  1. 2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
    前記主面は、重ならない50μm角の無転位領域を100個/cm以上の密度で有し、
    前記主面内で中心を通る直線上の各位置において(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、前記主面へ入射したX線と前記主面とがなす角度であって回折強度が最大となるピーク角度ωを、前記直線上の位置に対してプロットし、前記ピーク角度ωを前記位置の1次関数で近似したときに、
    前記1次関数の傾きの逆数により求められる前記(0001)面の曲率半径は、10m以上であり、
    前記1次関数に対する、前記直線上の各位置において測定された前記ピーク角度ωの誤差は、0.05°以下である
    窒化物半導体基板。
  2. 前記1次関数に対する、前記直線上の各位置において測定された前記ピーク角度ωの誤差は、0.01°以下である
    請求項1に記載の窒化物半導体基板。
  3. 酸素濃度は、5×1016cm-3以下である
    請求項1または請求項2に記載の窒化物半導体基板。
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