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JP2023128175A - 二次電池用正極活物質、二次電池用正極および二次電池 - Google Patents

二次電池用正極活物質、二次電池用正極および二次電池 Download PDF

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JP2023128175A JP2022032341A JP2022032341A JP2023128175A JP 2023128175 A JP2023128175 A JP 2023128175A JP 2022032341 A JP2022032341 A JP 2022032341A JP 2022032341 A JP2022032341 A JP 2022032341A JP 2023128175 A JP2023128175 A JP 2023128175A
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Kasuaki Endo
博信 久保田
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Abstract

【課題】優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることが可能である二次電池を提供する。【解決手段】二次電池の正極活物質層に含まれる活物質は電極反応物質を吸蔵放出する中心部と表面に設けられた被覆部とを備える。中心部は2つ以上の結晶粒が互いに結合された多結晶体を含むと共に、互いに結合された2つの結晶粒の間に粒界を有する。被覆部は中心部の表面および粒界のそれぞれを被覆すると共に、その中心部に近い側から順に下地層および表面層を含む。下地層は1分子中に金属原子-炭素原子結合を有しない第1金属アルコキシドの反応物および1分子中に2つ以上の金属原子-炭素原子結合を有する第2金属アルコキシドの反応物を含む。表面層は1分子中に1つの金属原子-炭素原子結合を有する第3金属アルコキシドを含み、その第3金属アルコキシドは、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの少なくとも一方に結合されている。【選択図】図8

Description

本技術は、二次電池用正極活物質、二次電池用正極および二次電池に関する。
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として二次電池の開発が進められている。この二次電池は、正極(二次電池用正極)および負極と共に電解液を備えており、その正極は、正極活物質(二次電池用正極活物質)を含んでいる。
二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。具体的には、ポリアニオン系化合物および炭素からなる大粒径の正極活物質粒子と、ポリアニオン系化合物および炭素からなる小粒径の正極活物質粒子のカーボン複合化物とが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。Si・遷移金属表面組成比が80%以上である被覆層により被覆されたリチウム-遷移金属複合酸化物粉末が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。シランカップリング剤により表面処理された層(表面処理層)を有する正極活物質が用いられている(例えば、特許文献3参照。)。ポリアニオン系化合物および炭素からなる粒子が親油化処理剤により被覆された正極活物質が用いられている(例えば、特許文献4参照。)。リチウムイオンを吸蔵放出可能である正極材料を含む粒子と、その正極材料と結合可能であるシランカップリング剤と、そのシランカップリング剤と結合可能である高分子化合物とから得られる正極活物質が用いられている(例えば、特許文献5参照。)。
特開2011-034776号公報 特開2012-199101号公報 特開2012-169249号公報 特開2011-049161号公報 特開2013-191539号公報
二次電池の構成に関する様々な検討がなされているが、容量特性および負荷特性のそれぞれは未だ十分でないため、改善の余地がある。
よって、優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることが可能である二次電池用正極活物質、二次電池用正極および二次電池が望まれている。
本技術の一実施形態の二次電池用正極活物質は、電極反応物質を吸蔵放出する中心部と、その中心部の表面に設けられた被覆部とを備えたものである。中心部は、2つ以上の結晶粒が互いに結合された多結晶体を含むと共に、互いに結合された2つの結晶粒の間に粒界を有する。被覆部は、中心部の表面および粒界のそれぞれを被覆すると共に、その中心部に近い側から順に下地層および表面層を含む。下地層は、1分子中に金属原子-炭素原子結合を有しない第1金属アルコキシドの反応物および1分子中に2つ以上の金属原子-炭素原子結合を有する第2金属アルコキシドの反応物を含む。表面層は、1分子中に1つの金属原子-炭素原子結合を有する第3金属アルコキシドを含み、その第3金属アルコキシドは、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの少なくとも一方に結合されている。
本技術の一実施形態の二次電池用正極は、正極活物質層を備え、その正極活物質層が二次電池用正極活物質を含み、その二次電池用正極活物質が上記した本技術の一実施形態の二次電池用正極活物質の構成と同様の構成を有するものである。
本技術の一実施形態の二次電池は、二次電池用正極と負極と電解液とを備え、その二次電池用正極が上記した本技術の一実施形態の二次電池用正極の構成と同様の構成を有するものである。
本技術の一実施形態の二次電池用正極活物質、二次電池用正極または二次電池によれば、その二次電池用正極活物質が電極反応物質を吸蔵放出する中心部と共に被覆部(下地層および表面層)を備えており、その被覆部が中心部の表面および粒界のそれぞれを被覆しており、その下地層が第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含んでおり、その表面層が第3金属アルコキシドを含んでおり、その第3金属アルコキシドが第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの少なくとも一方に結合されているので、優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることができる。
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
本技術の一実施形態における二次電池用正極活物質の構成を表す断面図である。 図1に示した二次電池用正極活物質の詳細な構成を表す断面図である。 図1に示した二次電池用正極活物質の表面近傍の構成を拡大して表す模式図である。 図1に示した二次電池用正極活物質の表面近傍の構成を拡大して表す他の模式図である。 比較例の二次電池用正極活物質の詳細な構成を表す断面図である。 比較例の二次電池用正極活物質の問題点を説明するための断面図である。 本技術の一実施形態における二次電池用正極活物質の利点を説明するための断面図である。 本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す斜視図である。 図8に示した電池素子の構成を表す断面図である。 二次電池の適用例の構成を表すブロック図である。
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.二次電池用正極活物質
1-1.構成
1-2.動作
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
2.二次電池(二次電池用正極)
2-1.構成
2-2.動作
2-3.製造方法
2-4.作用および効果
3.変形例
4.二次電池の用途
<1.二次電池用正極活物質>
まず、本技術の一実施形態の二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」と呼称する。)に関して説明する。
ここで説明する正極活物質は、電極反応物質を吸蔵放出する物質であり、二次電池に搭載される正極の構成材料として用いられる。正極活物質が用いられる二次電池の詳細に関しては、後述する。
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属の具体例は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属の具体例は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。すなわち、以下で説明する正極活物質は、リチウムを吸蔵放出する物質であり、その正極活物質では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<1-1.構成>
図1は、本技術の一実施形態の正極活物質である正極活物質100の断面構成を表していると共に、図2は、図1に示した正極活物質100の詳細な断面構成を表している。図3および図4のそれぞれは、図1に示した正極活物質100の表面近傍の構成を拡大して模式的に表している。
ただし、図1では、正極活物質100の断面の形状を円形にしていると共に、図2では、正極活物質100の断面の形状を多角形にしている。また、図3では、線図を用いて被覆部120の構成を示していると共に、図4では、その線図と共に化学式を用いて被覆部120の構成を示している。
この正極活物質100は、図1に示したように、複数の粒子状であり、中心部110および被覆部120を含んでいる。すなわち、正極活物質100は、被覆部120により中心部110の表面が被覆されている被覆粒子である。
[中心部]
中心部110は、図1に示したように、正極活物質100のうちのリチウムを吸蔵放出する部分であり、リチウム含有化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。図1では、中心部110の断面形状が円形である場合を示しているが、その中心部110の断面形状は、特に限定されないため、楕円形などの他の形状でもよい。
このリチウム含有化合物は、リチウムと1種類以上の遷移金属元素とを構成元素として含む化合物である。ただし、リチウム含有化合物は、さらに、1種類以上の他元素を構成元素として含んでいてもよい。他元素の種類は、リチウムおよび遷移金属元素のそれぞれ以外の元素であれば、特に限定されないが、具体的には、長周期型周期表中の2族~15族に属する元素である。
リチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 、LiCo0.98Al0.01Mg0.012 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 2 およびLiMn2 4 などである。リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 、LiMnPO4 およびLiFe0.5 Mn0.5 PO4 などである。
ここで、中心部110は、図2に示したように、2つ以上の結晶粒111を含んでいるため、その2つ以上の結晶粒111が互いに結合された多結晶体を含んでいる。これにより、中心部110の断面形状は、多角形である。
2つ以上の結晶粒111のそれぞれは、表面111Xおよび粒界111Yを有している。表面111Xは、互いに結合された2つの結晶粒111間に存在していない面(露出面)である。粒界111Yは、互いに結合された2つの結晶粒111間に存在している面(非露出面)であり、すなわち2つの結晶粒111の結合面(界面)である。
これにより、多結晶体を含んでいる中心部110は、複数の表面111Xおよび複数の粒界111Yを有している。ただし、図2では、図示内容を簡略化するために、2つの結晶粒111および1つの粒界111Yだけを示している。
[被覆部]
被覆部120は、図1に示したように、中心部110の表面111Xに設けられているため、その中心部110の表面111Xを被覆している。ただし、被覆部120は、表面111Xのうちの全体を被覆していてもよいし、その表面111Xのうちの一部だけを被覆していてもよい。後者の場合には、互いに離隔された複数の場所において複数の被覆部120が表面111Xを被覆していてもよい。
特に、被覆部120は、図2に示したように、表面111Xを被覆しているだけでなく、粒界111Yも被覆している。これにより、2つ以上の結晶粒111のそれぞれの表面111Xは、被覆部120により被覆されていると共に、互いに隣り合う2つの結晶粒111は、粒界111Yを被覆している被覆部120の一部を介して互いに結合されている。
また、被覆部120は、図3および図4に示したように、中心部110に近い側から順に下地層121および表面層122を含んでいる。すなわち、被覆部120は、中心部110に近い側から順に下地層121および表面層122が配置された2層構造を有している。
ここで説明する被覆部120は、上記したように、下地層121および表面層122を含んでいるため、後述するように、第1金属アルコキシドの反応物、第2金属アルコキシドの反応物および第3金属アルコキシドを含んでいる有機無機ハイブリッド膜である。
(下地層)
下地層121は、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含んでいる。
この下地層121は、図3および図4に示したように、後述する網目状の構造を母体とする層であり、より具体的には、中心部110の表面を被覆する被膜状の層である。
被覆部120が下地層121を含んでいるのは、中心部110の表面111Xに被覆部120が設けられていても正極活物質100のイオン伝導性が向上するからである。この場合には、後述するように、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物のそれぞれが複数の細孔121Kを有しているため、その複数の細孔121Kを経由してリチウムイオンが移動しやすくなる。
(第1金属アルコキシド)
第1金属アルコキシドは、1分子中に金属原子-炭素原子結合を有しない金属アルコキシドのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。これにより、第1金属アルコキシドは、1つ以上のアルコキシ基が結合されている1つの金属原子を含んでいる。金属原子の種類は、金属アルコキシドを形成可能である金属原子であれば、特に限定されない。
具体的には、第1金属アルコキシドは、式(1)で表される化合物を含んでいる。第1金属アルコキシドの反応物が容易に形成されやすくなるため、下地層121が安定して形成されやすくなるからである。
M1-(OR1)a ・・・(1)
(M1は、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子およびジルコニウム原子のうちのいずれかである。R1は、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基および式(100)で表される基のうちのいずれかである。aは、3または4である。ただし、互いに隣り合う2つのR1は、互いに結合されていてもよい。)
-CR11=CH-C(=O)-R12 ・・・(100)
(R11は、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。R12は、1以上30以下の炭素数を有するアルキル基、1以上30以下の炭素数を有するアルコキシ基および1以上30以下の炭素数を有するアルケニルオキシ基のうちのいずれかである。)
金属原子(M1)の種類は、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子およびジルコニウム原子のうちのいずれかであれば、特に限定されないが、中でも、ケイ素原子であることが好ましい。第1金属アルコキシドの反応物がより容易に形成されやすくなるからである。
アルキル基(R1)は、炭素および水素により構成される1価の基であり、直鎖状でもよいし、1つまたは2つ以上の側鎖を有する分岐状でもよい。アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などである。
ただし、炭素数が3以上であるアルキル基の種類は、任意に選択可能である。具体的には、炭素数が3であるプロピル基を例に挙げると、そのプロピル基は、n-プロピル基でもよいし、イソプロピル基でもよい。また、炭素数が4であるブチル基を例に挙げると、そのブチル基は、n-ブチル基でもよいし、sec-ブチル基でもよいし、イソブチル基でもよいし、tert-ブチル基でもよい。
aの値は、金属原子(M1)の価数に応じて決定される値であるため、その金属原子(M1)の価数の値と同じ値である。これにより、上記したように、金属原子(M1)がケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子およびジルコニウム原子のうちのいずれかである場合には、aの値は3または4になるため、第1金属アルコキシドは、3つまたは4つのアルコキシ基(OR1)を含んでいる。
aの値が3である場合において、3つのR1の種類は、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。もちろん、3つのR1のうちの一部だけが互いに同じ種類でもよい。また、aの値が4である場合において、4つのR1の種類は、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。もちろん、4つのR1のうちの一部だけが互いに同じ種類でもよい。
なお、3つのR1のうちの互いに隣り合う任意の2つは、互いに結合されているため、第1金属アルコキシドでは、互いに結合された任意の2つのR1を含む環が形成されていてもよい。また、4つのR1のうちの互いに隣り合う任意の2つは、互いに結合されているため、第1金属アルコキシドでは、互いに結合された任意の2つのR1を含む環が形成されていてもよい。
アルコキシ基(R12)は、炭素、水素および酸素により構成される1価の基であり、上記したアルキル基と同様に、直鎖状でもよいし、1つまたは2つ以上の側鎖を有する分岐状でもよい。アルコキシ基の具体例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基などである。なお、アルコキシ基は、アルキルオキシ基と呼称される場合もある。
アルケニルオキシ基(R12)は、炭素、水素および酸素により構成されると共に1つの炭素間二重結合(>C=C<)を有する1価の基であり、上記したアルキル基と同様に、直鎖状でもよいし、1つまたは2つ以上の側鎖を有する分岐状でもよい。アルケニルオキシ基の具体例は、ビニルオキシ基およびアリルオキシ基などである。
金属原子(M1)がケイ素原子である場合における第1金属アルコキシドの具体例は、Si-(OCH3 4 、Si-(OC2 5 4 、Si-(OC3 7 4 およびSi-(OC4 9 4 などである。
金属原子(M1)がチタン原子である場合における第1金属アルコキシドの具体例は、特に限定されないが、Ti-(OCH3 4 、Ti-(OC2 5 4 、Ti-(OC3 7 4 およびTi-(OC4 9 4 などである。
金属原子(M1)がアルミニウム原子である場合における第1金属アルコキシドの具体例は、特に限定されないが、Al-(OCH3 3 、Al-(OC2 5 3 、Al-(OC3 7 3 およびAl-(OC4 9 3 などである。
金属原子(M1)がジルコニウム原子である場合における第1金属アルコキシドの具体例は、特に限定されないが、Zr-(OCH3 4 、Zr-(OC2 5 4 、Zr-(OC3 7 4 およびZr-(OC4 9 4 などである。
第1金属アルコキシドの反応物の構成は、特に限定されない。ここで、金属原子(M1)がケイ素原子であり、より具体的には第1金属アルコキシドがSi-(OC2 5 4 である場合を例に挙げると、その第1金属アルコキシドの反応物は、式(11)で表される構成を有している。
Figure 2023128175000002
第1金属アルコキシドの反応物では、式(11)に示したように、ケイ素原子同士が酸素原子を介して互いに結合されているため、その第1金属アルコキシドの反応物は、複数のケイ素原子-酸素原子結合を含んでいる。
この場合には、ケイ素原子および酸素原子が交互に結合されているため、複数の環が形成されている。これにより、各環の内側に空間(細孔121K)が設けられているため、第1金属アルコキシドの反応物は、複数の細孔121Kを有している。よって、第1金属アルコキシドの反応物は、ケイ素原子および酸素原子により形成された網目状の構造を有している。
もちろん、ここでは具体的な構成を示さないが、金属原子(M1)がチタン原子である場合においても同様に、第1金属アルコキシドの反応物は、複数のチタン原子-酸素原子結合を含んでいるため、複数の細孔121Kが設けられた網目状の構造を有している。
金属原子(M1)がアルミニウム原子である場合においても同様に、第1金属アルコキシドの反応物は、複数のアルミニウム原子-酸素原子結合を含んでいるため、複数の細孔121Kが設けられた網目状の構造を有している。
金属原子(M1)がジルコニウム原子である場合においても同様に、第1金属アルコキシドの反応物は、複数のジルコニウム原子-酸素原子結合を含んでいるため、複数の細孔121Kが設けられた網目状の構造を有している。
(第2金属アルコキシド)
第2金属アルコキシドは、1分子中に2つ以上の金属原子-炭素原子結合を有する金属アルコキシドのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。これにより、第2金属アルコキシドは、炭素鎖を介して互いに結合されていると共にそれぞれに1つ以上のアルコキシ基が結合されている2つ以上の金属原子を含んでいる。すなわち、2つ以上の金属原子は、炭素鎖を介して互いに結合されていると共に、その2つ以上の金属原子のそれぞれには、1つ以上のアルコキシ基が結合されている。
炭素鎖の種類は、2つ以上の金属原子と結合可能である鎖状の炭化水素基であれば、特に限定されない。金属原子の種類は、金属アルコキシドを形成可能である金属原子であれば、特に限定されない。
中でも、第2金属アルコキシドは、金属原子としてケイ素原子を含んでいるため、1分子中に2つ以上のケイ素原子-炭素原子結合を有していることが好ましい。第2金属アルコキシドの反応物が容易かつ安定に形成されやすくなるからである。
具体的には、第2金属アルコキシドは、式(2)~式(4)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第2金属アルコキシドの反応物が容易に形成されやすくなるため、下地層121が安定して形成されやすくなるからである。
(R3O)3 -Si-R2-Si-(OR4)3 ・・・(2)
(R2は、1以上20以下の炭素数を有するアルキレン基である。R3およびR4のそれぞれは、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
(OR8)3 -Si-R5-NH-R6-NH-R7-Si-(OR9)3 ・・・(3)
(R5~R7のそれぞれは、1以上20以下の炭素数を有するアルキレン基である。R8およびR9のそれぞれは、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
(R10)2 -Si-(OR11)2 ・・・(4)
(R10およびR11のそれぞれは、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
アルキル基(R3,R4,R8~R11)に関する詳細は、上記した通りである。
アルキレン基(R2,R5~R7)は、炭素および水素により構成される2価の基であり、上記したアルキル基と同様に、直鎖状でもよいし、1つまたは2つ以上の側鎖を有する分岐状でもよい。アルキレン基の具体例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基などである。
ただし、炭素数が3以上であるアルキレン基のアルキレン基の種類は、任意に選択可能である。具体的には、炭素数が3であるプロピレン基を例に挙げると、そのプロピレン基は、n-プロピレン基でもよいし、イソプロピレン基でもよい。また、炭素数が4であるブチレン基を例に挙げると、そのブチレン基は、n-ブチレン基でもよいし、sec-ブチレン基でもよいし、イソブチレン基でもよいし、tert-ブチレン基でもよい。
3つのR3の種類は、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。もちろん、3つのR3のうちの2つの種類だけが互いに同じ種類でもよい。ここで説明したことは、3つのR4、3つのR8、3つのR9、2つのR10、2つのR11のそれぞれに関しても同様である。また、ここで説明したことは、R5~R7に関しても同様である。
式(2)に示した第2金属アルコキシドの具体例は、(H3 CO)3 -Si-C2 4 -Si-(OCH3 3 、(H3 CO)3 -Si-C4 8 -Si-(OCH3 3 、(H3 CO)3 -Si-C6 12-Si-(OCH3 3 および(H5 2 O)3 -Si-C2 4 -Si-(OC2 5 3 などである。
式(3)に示した第2金属アルコキシドの具体例は、(H3 CO)3 -Si-C2 4 -NH-C2 4 -NH-C2 4 -Si-(OCH3 3 および(H5 2 O)3 -Si-C2 4 -NH-C2 4 -NH-C2 4 -Si-(OC2 5 3 などである。
式(4)に示した第2金属アルコキシドの具体例は、(H3 C)2 -Si-(OCH3 3 および(H5 2 2 -Si-(OC2 5 3 などである。
第2金属アルコキシドの反応物の構成は、特に限定されない。ここで、式(2)に示した第2金属アルコキシドが(H5 2 O)3 -Si-C2 4 -Si-(OC2 5 3 である場合を例に挙げると、その第2金属アルコキシドの反応物は、式(21)で表される構成を有している。
Figure 2023128175000003
第2金属アルコキシドの反応物では、式(21)に示したように、一部のケイ素原子同士が炭素鎖であるアルキレン基を介して互いに結合されていることを除いて、式(11)に示した第1金属アルコキシドの反応物の構成と同様の構成を有している。
すなわち、第2金属アルコキシドの反応物では、一部のケイ素原子同士が酸素原子を介して互いに結合されているため、その第2金属アルコキシドの反応物は、複数のケイ素原子-酸素原子結合を含んでいる。また、第2金属アルコキシドの反応物では、他のケイ素原子同士がアルキレン基を介して互いに結合されているため、その第2金属アルコキシドの反応物は、複数のケイ素原子-炭素原子結合を含んでいる。
この場合には、ケイ素原子および酸素原子が互いに結合されていると共に、ケイ素原子同士がアルキレン基を介して互いに結合されているため、複数の環が形成されている。これにより、各環の内側に空間(細孔121K)が設けられているため、第2金属アルコキシドの反応物は、第1金属アルコキシドの反応物と同様に、複数の細孔121Kを有している。よって、第2金属アルコキシドの反応物は、ケイ素原子、酸素原子および炭素原子により形成された網目状の構造を有している。
この第2金属アルコキシドの反応物では、第1金属アルコキシドの反応物と比較して、一部のケイ素原子の間にスペーサ121S(アルキレン基)が介在している分だけ細孔121Kの孔径が増加している。これにより、第2金属アルコキシドの反応物では、細孔121Kを経由してリチウムイオンがより移動しやすくなっている。
なお、第2金属アルコキシドの反応物は、第1金属アルコキシドの反応物と結合されていなくてもよいし、その第1金属アルコキシドの反応物と結合されていてもよい。
(表面層)
表面層122は、第3金属アルコキシドのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、図3および図4に示したように、下地層121に結合されている。これにより、表面層122は、後述する複数の炭化水素鎖122Nを母体とする層であり、より具体的には、中心部110から複数の方向に向かって放射状に延在する髭状の層である。
被覆部120が表面層122を含んでいるのは、その表面層122を利用して正極活物質100の充填性が向上するからである。この場合には、後述するように、第3金属アルコキシドが複数の炭化水素鎖122Nを有しているため、表面層122の表面自由エネルギーが低下する。これにより、正極活物質100における表面111Xの滑り性が向上するため、複数の正極活物質100が密に充填されやすくなる。
また、被覆部120(下地層121および表面層122)が中心部110の表面111Xおよび粒界111Yのそれぞれを被覆しているのは、その表面111Xだけでなく粒界111Yにおいても滑り性が向上するからである。これにより、正極活物質100においてイオン伝導性が担保されながら、複数の正極活物質100がより密に充填されやすくなる。
(第3金属アルコキシド)
第3金属アルコキシドは、1分子中に1つの金属原子-炭素原子結合を有する金属アルコキシドのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。これにより、第3金属アルコキシドは、1つのアルキル基および1つ以上のアルコキシ基のそれぞれが結合されている1つの金属原子を含んでいる。金属原子の種類は、金属アルコキシドを形成可能である金属原子であれば、特に限定されない。
この第3金属アルコキシドは、下地層121に含まれている第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの一方または双方に結合されており、より具体的には、下地層121中のケイ素原子に結合されている。
具体的には、第3金属アルコキシドは、式(5)で表される化合物を含んでいる。第3金属アルコキシドが第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの一方または双方に容易に結合されやすくなるため、表面層122が安定して形成されやすくなるからである。
R12-Si-(OR13)3 ・・・(5)
(R12は、8以上30以下の炭素数を有するアルキル基である。R13は、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
アルキル基(R12,R13)に関する詳細は、上記した通りである。3つのR13の種類は、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。もちろん、3つのR13のうちの2つの種類だけが互いに同じでもよい。
第3金属アルコキシドの具体例は、H178 -Si-(OCH3 3 、H2110-Si-(OCH3 3 、H3316-Si-(OCH3 3 、H4120-Si-(OCH3 3 およびH6130Si-(OCH3 3 などである。
ここで、第3金属アルコキシドがH3316Si-(OC3 7 3 である場合を例に挙げると、その第3金属アルコキシドは、図3および図4に示したように、下地層121に含まれている第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物のうちの一方または双方に結合されている。
具体的には、第3金属アルコキシドの一端部は、下地層121に含まれているケイ素原子に結合されている。また、第3金属アルコキシドの他端部(複数の炭化水素鎖122Nである-C1633)は、下地層121から離れる方向に向かって延在している。これにより、複数の炭化水素鎖122Nは、下地層121から放射状に延在していると共に、間隔を介して互いに離隔されながら配列されている。よって、第3金属アルコキシドは、複数の炭化水素鎖122Nにより構成された放射状の構造を有している。なお、図4中のYは、第3金属アルコキシドの一部を表しており、より具体的には、式(5)に示したアルキル基(R12)を示している。
(構成条件)
この正極活物質100に関しては、以下で説明する構成条件が満たされていることが好ましい。
(重量割合R1)
第1に、被覆部120の重量M120に対する第1金属アルコキシドの反応物の重量M1の割合である重量割合R1(重量%)は、特に限定されないが、中でも、5.0重量%~85.0重量%であることが好ましい。第1金属アルコキシドに由来する網目状の構造が形成されやすくなるため、下地層121が容易かつ安定に形成されやすくなるからである。この重量割合R1は、R1=(M1/M120)×100という計算式に基づいて算出される。ただし、重量割合R1の値は、小数点第二位の値を四捨五入した値とする。
(重量割合R2)
第2に、被覆部120の重量M120に対する第2金属アルコキシドの反応物の重量M2の割合である重量割合R2(重量%)は、特に限定されないが、中でも、1.0重量%~40.0重量%であることが好ましい。第2金属アルコキシドに由来する網目状の構造が形成されやすくなるため、下地層121が容易かつ安定に形成されやすくなるからである。この割合R2は、R2=(M2/M120)×100という計算式に基づいて算出される。ただし、重量割合R2の値は、小数点第二位の値を四捨五入した値とする。
(重量割合R3)
第3に、被覆部120の重量M120に対する第3金属アルコキシドの重量M3の割合である重量割合R3(重量%)は、特に限定されないが、中でも、5.0重量%~90.0重量%であることが好ましい。第3金属アルコキシドに由来する放射状の構造が形成されやすくなるため、表面層122が容易かつ安定に形成されやすくなるからである。この割合R3は、R3=(M2/M120)×100という計算式に基づいて算出される。ただし、重量割合R3の値は、小数点第二位の値を四捨五入した値とする。
(重量割合R4)
第4に、中心部110の重量M110と被覆部120の重量M120との和M100に対する被覆部120の重量M120の割合である重量割合R4(重量%)は、特に限定されないが、中でも、0.010重量%~2.000重量%であることが好ましい。正極活物質100中に占める被覆部120の割合が適正化されるため、リチウムの吸蔵放出量が担保されながら、正極活物質100においてイオン導電性が十分に向上すると共に正極活物質100の充填性が十分に向上するからである。この割合R4は、R4=(M120/M100)×100という計算式に基づいて算出される。ただし、重量割合R4の値は、小数点第四位の値を四捨五入した値とする。
(厚さ割合R5)
第5に、表面111Xを被覆している被覆部120の厚さT111Xと、粒界111Yを被覆している被覆部120の厚さT111Yとを比較した場合、その厚さT111Xに対する厚さT111Yの割合である厚さ割合R5(%)は、特に限定されないが、中でも、10%~100%であることが好ましい。粒界111Yの滑り性が十分に向上するため、正極活物質100の充填性が十分に向上するからである。この割合R5は、R5=(T111Y/T111X)×100という計算式に基づいて算出される。
なお、厚さ割合R5を算出する手順は、以下で説明する通りである。以下では、正極活物質100を用いた二次電池を用いる場合に関して説明する。この二次電池は、複数の正極活物質100を含む正極活物質層を備えている。
最初に、二次電池を解体することにより、正極活物質100を含む正極を回収したのち、その正極を切断することにより、正極活物質層の断面を露出させる。正極の切断方法は、特に限定されないが、具体的には、イオンミリングなどである。
続いて、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)などを用いて正極活物質層の断面を観察することにより、観察結果(電子顕微鏡写真)を取得する。観察倍率は、厚さT111X,T111Yのそれぞれを測定可能である倍率であれば、任意に設定可能である。
続いて、電子顕微鏡写真に基づいて、表面111Xを被覆している被覆部120の厚さT111Xを算出する。この場合には、互いに異なる10箇所において厚さT111Xを測定したのち、10個の厚さT111Xの平均値を算出する。
続いて、電子顕微鏡写真に基づいて、粒界111Yを被覆している被覆部120の厚さT111Yを算出する。この場合には、互いに異なる10箇所において厚さT111Yを測定したのち、10個の厚さT111Yの平均値を算出する。
最後に、厚さT111X,T111Yのそれぞれの算出結果に基づいて、厚さ割合R5を算出する。
<1-2.動作>
この正極活物質100では、電極反応時において、リチウムが中心部110から放出されると共に、そのリチウムが中心部110に吸蔵される。この場合には、上記したように、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<1-3.製造方法>
正極活物質100を製造する場合には、最初に、複数の中心部110(粉末状のリチウム含有化合物)を準備する。この中心部110は、上記したように、複数の結晶粒111が互いに結合された多結晶体(表面111Xおよび粒界111Y)を含んでいる。
続いて、アルカリ性溶媒中に、複数の中心部110と、第1金属アルコキシドと、第2金属アルコキシドと、第3金属アルコキシドとを投入したのち、そのアルカリ性溶媒を撹拌する。アルカリ性溶媒の種類は、アルカリ性を有している溶媒のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されないが、具体的には、エタノールとアンモニア水との混合物などである。
これにより、アルカリ性溶媒中において、複数の中心部110が分散されると共に、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドのそれぞれが溶解されるため、準備溶液が調製される。この準備溶液中では、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドのそれぞれが溶解されているアルカリ性溶液中に複数の中心部110が分散されるため、そのアルカリ性溶液が中心部110の表面に付着する。
続いて、準備溶液中から複数の中心部110を濾別したのち、洗浄用の溶媒を用いて複数の中心部110を洗浄する。洗浄用の溶媒の種類は、有機溶剤のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されないが、具体的には、アセトンなどである。
最後に、複数の中心部110を加熱することにより、その複数の中心部110を乾燥させる。
この場合には、中心部110の表面において、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドが互いに反応する。これにより、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含む下地層121が形成されると共に、第3金属アルコキシドを含む表面層122が形成される。また、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物のうちの一方または双方と第3金属アルコキシドとが互いに結合されるため、表面層122が下地層121に連結される。
よって、下地層121および表面層122を含む被覆部120が中心部110の表面に形成されるため、正極活物質100が完成する。
この場合には、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドのそれぞれの添加量、アルカリ性溶媒の撹拌条件および複数の中心部110の加熱条件などの各種条件を調整することにより、表面111Xだけでなく粒界111Yまで被覆するように被覆部120が形成される。
なお、正極活物質100を製造するために浸漬法を用いたが、他の方法を用いてもよい。他の方法の具体例は、塗布法およびスプレー法などである。塗布法を用いる場合には、中心部110の表面に準備溶液を塗布すると共に、スプレー法を用いる場合には、中心部110の表面に準備溶液を噴き付ける。
<1-4.作用および効果>
この正極活物質100によれば、その正極活物質100が中心部110および被覆部120(下地層121および表面層122)を備えており、その被覆部120が中心部110の表面111Xおよび粒界111Yのそれぞれを被覆している。また、下地層121が第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含んでおり、表面層122が第3金属アルコキシドを含んでおり、その第3金属アルコキシドが第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの一方または双方に結合されている。よって、以下で説明する理由により、優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることができる。
図5は、比較例の二次電池用正極活物質である正極活物質200の詳細な断面構成を表しており、図2に対応している。図6は、正極活物質200の問題点を説明するために、図5に対応する断面構成を表している。図7は、正極活物質100の利点を説明するために、図2に対応する断面構成を表している。
比較例の正極活物質200は、図5に示したように、中心部110および被覆部120を備えているが、その被覆部120が粒界111Yを被覆しておらずに表面111Xだけを被覆していることを除いて、本実施形態の正極活物質100(図2)の構成と同様の構成を有している。
比較例の正極活物質200では、図5に示したように、被覆部120が表面111Xを被覆している。この場合には、上記したように、中心部110の表面111Xに被覆部120が設けられていても正極活物質200のイオン伝導性が向上すると共に、表面層122を利用して正極活物質200の充填性が向上する。
しかしながら、被覆部120が粒界111Yを被覆していない。これにより、図6に示したように、正極活物質200が割れたため、2つの結晶粒111が粒界111Yにおいて互いに分離されると、被覆部120により被覆されていない結合面111Zが露出する。この結合面111Zは、いわゆる結晶粒111のバルク面である。正極活物質200が割れる原因としては、その正極活物質200を用いた正極の形成工程において、その正極活物質200を含む正極活物質層をプレスする場合などが挙げられる。
この場合には、結合面111Zの摩擦が大きいことに起因して、結晶粒111同士が互いに接触した際の滑り性が著しく低下するため、正極活物質200の充填性が著しく低下する。すなわち、複数の正極活物質200を含む正極活物質層がプレスされた際に、その複数の正極活物質200が密に配列されにくくなるため、その正極活物質層の体積密度が減少する。
しかも、高反応性を有する結合面111Zが露出すると、電極反応時、より具体的には正極活物質200と共に電解液を備えた二次電池の充放電時において、その電解液が結合面111Zと反応する。これにより、電極反応時において電解液の分解反応が促進される。
これらのことから、正極活物質200においてイオン伝導性は担保されるが、その正極活物質200の充填性が低下することに起因して正極活物質層の体積密度が減少すると共に、電解液が結合面111Zと反応することに起因して電解液の分解反応が促進される。よって、正極活物質200を用いた二次電池において、優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることが困難である。
これに対して、本実施形態の正極活物質100では、図2に示したように、被覆部120が表面111Xだけでなく粒界111Yも被覆している。この場合には、上記したように、中心部110の表面111Xに被覆部120が設けられていても正極活物質100のイオン伝導性が向上すると共に、表面層122を利用して正極活物質100の充填性が向上する。
この場合には、被覆部120が表面111Xだけでなく粒界111Yを被覆している。これにより、図7に示したように、正極活物質200が割れたため、2つの結晶粒111が粒界111Yにおいて互いに分離されても、その被覆部120により結合面111Zが被覆されているため、その結合面111Zが露出しない。
よって、表面層122の摩擦が小さいことに起因して、結晶粒111同士が互いに接触した際の滑り性が著しく向上するため、正極活物質100の充填性が著しく向上する。すなわち、複数の正極活物質100を含む正極活物質層がプレスされた際に、その複数の正極活物質100が密に配列されやすくなるため、その正極活物質層の体積密度が増加する。
また、被覆部120が粒界111Yを被覆していても、上記したように、複数の細孔121Kを経由してリチウムイオンが移動しやすくなるため、そのリチウムの吸蔵放出性が担保される。これにより、粒界111Yにおけるイオン拡散性が担保されると共に、その粒界111Yの界面抵抗が増加しにくくなる。
しかも、高反応性を有する結合面111Zが露出しないため、正極活物質200と共に電解液を備えた二次電池の充放電時において、その電解液が結合面111Zと反応しない。これにより、電極反応時において電解液の分解反応が抑制される。
これらのことから、正極活物質100においてイオン伝導性が担保されながら、その正極活物質100の充填性が向上することに起因して正極活物質層の体積密度が増加すると共に、電解液が結合面111Zと反応しないことに起因して電解液の分解反応が抑制される。よって、正極活物質100を用いた二次電池において、優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることができる。
特に、第1金属アルコキシドにおいて1つの金属原子に1つ以上のアルコキシ基が結合されていれば、網目状の構造を有する第1金属アルコキシドの反応物が容易に形成されやすくなる。よって、下地層121が安定して形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、第2金属アルコキシドにおいて2つ以上の金属原子が炭素鎖を介して互いに結合されていると共に2つ以上の金属原子のそれぞれに1つ以上のアルコキシ基が結合されていれば、網目状の構造を有する第2金属アルコキシドの反応物が容易に形成されやすくなる。よって、下地層121が安定して形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、第3金属アルコキシドにおいて1つの金属原子に1つのアルキル基および1つ以上のアルコキシ基のそれぞれが結合されていれば、放射状の構造を有する第3金属アルコキシドが容易に形成されやすくなる。よって、表面層122が安定して形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、第1金属アルコキシドが式(1)に示した化合物を含んでいれば、その第1金属アルコキシドの反応物が容易かつ安定に形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、式(1)中の金属原子(M1)がケイ素原子であれば、第1金属アルコキシドの反応物がより容易かつより安定に形成されやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
また、第2金属アルコキシドが1分子中に2つ以上のケイ素原子-炭素原子結合を含んでいれば、その第2金属アルコキシドの反応物が容易かつ安定に形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、第2金属アルコキシドが式(2)~式(4)のそれぞれに示した化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいれば、その第2金属アルコキシドの反応物がより容易かつより安定に形成されやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
また、第3金属アルコキシドが式(5)に示した化合物を含んでいれば、その第3金属アルコキシドが容易かつ安定に形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、重量割合R1が5.0重量%~85.0重量%であれば、第1金属アルコキシドに由来する網目状の構造が形成されやすくなる。よって、下地層121が容易かつ安定に形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、重量割合R2が1.0重量%~40.0重量%であれば、第2金属アルコキシドに由来する網目状の構造が形成されやすくなる。よって、下地層121が容易かつ安定に形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、重量割合R3が5.0重量%~90.0重量%であれば、その第3金属アルコキシドに由来する放射状の構造が形成されやすくなる。よって、表面層122が容易かつ安定に形成されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、重量割合R4が0.010重量%~2.000重量%であれば、正極活物質100中に占める被覆部120の割合が適正化される。よって、リチウムの吸蔵放出量が担保されながら、イオン導電性が十分に向上すると共に充填性も十分に向上するため、より高い効果を得ることができる。
また、厚さ割合R5が10%~100%であれば、その粒界111Yの滑り性が十分に向上する。よって、正極活物質100の充填性が十分に向上するため、より高い効果を得ることができる。
<2.二次電池(二次電池用正極)>
次に、上記した正極活物質を用いた本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
なお、本技術の一実施形態の二次電池用正極(以下、単に「正極」と呼称する。)は、ここで説明する二次電池の一部(一構成要素)であるため、その正極に関しては、以下で併せて説明する。
以下では、上記したように、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。
<2-1.構成>
図8は、二次電池の斜視構成を表していると共に、図9は、図8に示した電池素子20の断面構成を表している。ただし、図8では、外装フィルム10と電池素子20とが互いに分離された状態を示していると共に、XZ面に沿った電池素子20の断面を破線で示している。図9では、電池素子20の一部だけを示している。
この二次電池は、図8および図9に示したように、外装フィルム10と、電池素子20と、正極リード31と、負極リード32と、封止フィルム41,42とを備えている。ここで説明する二次電池は、可撓性または柔軟性を有する外装部材(外装フィルム10)を用いたラミネートフィルム型の二次電池である。
[外装フィルムおよび封止フィルム]
外装フィルム10は、図8に示したように、電池素子20を収納する外装部材であり、その電池素子20が内部に収納された状態において封止された袋状の構造を有している。これにより、外装フィルム10は、後述する正極21および負極22と共に電解液を収納している。
ここでは、外装フィルム10は、1枚のフィルム状の部材であり、折り畳み方向Fに折り畳まれている。この外装フィルム10には、電池素子20を収容するための窪み部10U(いわゆる深絞り部)が設けられている。
具体的には、外装フィルム10は、融着層、金属層および表面保護層が内側からこの順に積層された3層のラミネートフィルムであり、互いに対向する融着層のうちの外周縁部同士は、外装フィルム10が折り畳まれた状態において互いに融着されている。融着層は、ポリプロピレンなどの高分子化合物を含んでいる。金属層は、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。表面保護層は、ナイロンなどの高分子化合物を含んでいる。
ただし、外装フィルム10の構成(層数)は、特に、限定されないため、1層または2層でもよいし、4層以上でもよい。
封止フィルム41は、外装フィルム10と正極リード31との間に挿入されていると共に、封止フィルム42は、外装フィルム10と負極リード32との間に挿入されている。ただし、封止フィルム41,42のうちの一方または双方は、省略されてもよい。
この封止フィルム41は、外装フィルム10の内部に外気などが侵入することを防止する封止部材である。なお、封止フィルム41は、正極リード31に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでおり、そのポリオレフィンの具体例は、ポリプロピレンなどである。
封止フィルム42の構成は、負極リード32に対して密着性を有する封止部材であることを除いて、封止フィルム41の構成と同様である。すなわち、封止フィルム42は、負極リード32に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでいる。
[電池素子]
電池素子20は、図8および図9に示したように、正極21と、負極22と、セパレータ23と、電解液(図示せず)とを含む発電素子であり、外装フィルム10の内部に収納されている。
この電池素子20は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、正極21および負極22は、セパレータ23を介して互いに積層されていると共に、そのセパレータ23を介して互いに対向しながら巻回軸Pを中心として巻回されている。この巻回軸Pは、Y軸方向に延在する仮想軸である。
電池素子20の立体的形状は、特に限定されない。ここでは、電池素子20の立体的形状は、扁平状であるため、巻回軸Pと交差する電池素子20の断面(XZ面に沿った断面)の形状は、長軸J1および短軸J2により規定される扁平形状である。この長軸J1は、X軸方向に延在すると共に短軸J2よりも大きい長さを有する仮想軸である。また、短軸J2は、X軸方向と交差するZ軸方向に延在すると共に長軸J1よりも小さい長さを有する仮想軸である。ここでは、電池素子20の立体的形状は、扁平な円筒状であるため、その電池素子20の断面の形状は、扁平な略楕円形状である。
(正極)
正極21は、図9に示したように、正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bを含んでいる。
正極集電体21Aは、正極活物質層21Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体21Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムなどである。
ここでは、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、正極21が負極22に対向する側において正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
なお、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。正極活物質層21Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
正極活物質の構成は、上記した正極活物質100の構成と同様である。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、他の正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の正極活物質の構成は、中心部110の構成と同様である。
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムの具体例は、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物の具体例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびカルボキシメチルセルロースなどである。
正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料の具体例は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
(負極)
負極22は、図9に示したように、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bを含んでいる。
負極集電体22Aは、負極活物質層22Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体22Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、銅などである。
ここでは、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、負極22が正極21に対向する側において負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
なお、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。負極活物質層22Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
負極活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方などである。高いエネルギー密度が得られるからである。
炭素材料の具体例は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。
金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素の具体例は、ケイ素およびスズなどである。この金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2、または0.2<x<1.4)などである。
負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。
(セパレータ)
セパレータ23は、図9に示したように、正極21と負極22との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極21と負極22との接触(短絡)を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ23は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
(電解液)
電解液は、液状の電解質である。この電解液は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。
ここでは、溶媒は、非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。この非水溶媒は、エステル類およびエーテル類などであり、より具体的には、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などである。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
炭酸エステル系化合物は、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルである。環状炭酸エステルの具体例は、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどであると共に、鎖状炭酸エステルの具体例は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどである。
カルボン酸エステル系化合物は、鎖状カルボン酸エステルなどである。鎖状カルボン酸エステルの具体例は、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。
ラクトン系化合物は、ラクトンなどである。ラクトンの具体例は、γ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトンなどである。
なお、エーテル類は、ラクトン系化合物の他、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよび1,4-ジオキサンなどでもよい。
電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。リチウム塩の具体例は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(FSO2 2 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2 4 2 )、モノフルオロリン酸リチウム(Li2 PFO3 )およびジフルオロリン酸リチウム(LiPF2 2 )などである。高い電池容量が得られるからである。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、具体的には、溶媒に対して0.3mol/kg~3.0mol/kgである。高いイオン伝導性が得られるからである。
なお、電解液は、さらに、添加剤のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。添加剤の種類は、特に限定されないが、具体的には、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化環状炭酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、酸無水物、ニトリル化合物およびイソシアネート化合物などである。
不飽和環状炭酸エステルの具体例は、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。ハロゲン化環状炭酸エステルの具体例は、モノフルオロ炭酸エチレンおよびジフルオロ炭酸エチレンなどである。スルホン酸エステルの具体例は、プロパンスルトンおよびプロペンスルトンなどである。リン酸エステルの具体例は、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルなどである。酸無水物の具体例は、コハク酸無水物、1,2-エタンジスルホン酸無水物および2-スルホ安息香酸無水物などである。ニトリル化合物の具体例は、スクシノニトリルなどである。イソシアネート化合物の具体例は、ヘキサメチレンジイソシアネートなどである。
[正極リードおよび負極リード]
正極リード31は、図8および図9に示したように、正極21の正極集電体21Aに接続された正極端子であり、外装フィルム10の内部から外部に導出されている。この正極リード31は、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その導電性材料の具体例は、アルミニウムなどである。正極リード31の形状は、特に限定されないが、具体的には、薄板状および網目状などのうちのいずれかである。
負極リード32は、図8および図9に示したように、負極22の負極集電体22Aに接続されている負極端子であり、外装フィルム10の内部から外部に導出されている。この負極リード32は、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その導電性材料の具体例は、銅などである。ここでは、負極リード32の導出方向および形状に関する詳細は、正極リード31の導出方向および形状と同様である。
<2-2.動作>
二次電池の充電時には、電池素子20において、正極21からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子20において、負極22からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極21に吸蔵される。これらの充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<2-3.製造方法>
二次電池を製造する場合には、以下で説明する一例の手順により、正極21および負極22のそれぞれを作製すると共に、電解液を調製したのち、その正極21、負極22および電解液を用いて二次電池を組み立てると共に、その組み立て後の二次電池に安定化処理を施す。
[正極の作製]
最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤が互いに混合された混合物(正極合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。この溶媒は、水性溶媒でもよいし、有機溶剤でもよい。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層21Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが形成されるため、正極21が作製される。
[負極の作製]
上記した正極21の作製手順と同様の手順により、負極22を形成する。具体的には、最初に、負極活物質、負極結着剤および負極導電剤が互いに混合された混合物(負極合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層22Bを形成する。最後に、負極活物質層22Bを圧縮成型してもよい。これにより、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが形成されるため、負極22が作製される。
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法などの接合法を用いて正極21の正極集電体21Aに正極リード31を接続させると共に、溶接法などの接合法を用いて負極22の負極集電体22Aに負極リード32を接続させる。
続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体(図示せず)を作製する。この巻回体は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子20の構成と同様の構成を有している。続いて、プレス機などを用いて巻回体を押圧することにより、扁平形状となるように巻回体を成型する。
続いて、窪み部10Uの内部に巻回体を収容したのち、外装フィルム10(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳むことにより、その外装フィルム10同士を互いに対向させる。続いて、熱融着法などの接着法を用いて、互いに対向する融着層のうちの2辺の外周縁部同士を互いに接合させることにより、袋状の外装フィルム10の内部に巻回体を収納する。
最後に、袋状の外装フィルム10の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などの接着法を用いて融着層のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに接合させる。この場合には、外装フィルム10と正極リード31との間に封止フィルム41を挿入すると共に、外装フィルム10と負極リード32との間に封止フィルム42を挿入する。
これにより、巻回体に電解液が含浸されるため、巻回電極体である電池素子20が作製されると共に、袋状の外装フィルム10の内部に電池素子20が封入されるため、二次電池が組み立てられる。
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、正極21および負極22のそれぞれの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、二次電池が完成する。
<2-4.作用および効果>
この二次電池によれば、正極21が正極活物質を含んでおり、その正極活物質が上記した正極活物質100の構成と同様の構成を有している。よって、正極活物質100に関して説明した場合と同様の理由により、正極活物質においてイオン伝導性が担保されながら、正極活物質層21Bの体積密度が増加すると共に電解液の分解反応が抑制されるため、優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることができる。
特に、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
この他、正極21によれば、その正極21が正極活物質を含んでおり、その正極活物質が上記した正極活物質100の構成と同様の構成を有している。よって、正極活物質100に関して説明した場合と同様の理由により、正極21を用いた二次電池において優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることができる。
二次電池および正極21のそれぞれに関する他の作用および効果は、上記した正極活物質100に関する他の作用および効果と同様である。
<3.変形例>
次に、上記した二次電池の変形例に関して説明する。
二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例は、互いに組み合わされてもよい。
[変形例1]
多孔質膜であるセパレータ23を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいる。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子20の巻きずれが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が発生しても、二次電池が膨れにくくなる。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンなどは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱を促進させるため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。絶縁性粒子は、無機材料および樹脂材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機材料の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどである。樹脂材料の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などである。
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、多孔質膜に前駆溶液を塗布する代わりに、その前駆溶液中に多孔質膜を浸漬させてもよい。また、前駆溶液に複数の絶縁性粒子を添加してもよい。
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極21と負極22との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、二次電池の安全性が向上するため、より高い効果を得ることができる。
[変形例2]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
電解質層を用いた電池素子20では、セパレータ23および電解質層を介して正極21および負極22が互いに積層されていると共に、その正極21、負極22、セパレータ23および電解質層が巻回されている。この電解質層は、正極21とセパレータ23との間に介在していると共に、負極22とセパレータ23との間に介在している。ただし、電解質層は、正極21とセパレータ23との間だけに介在していてもよいし、負極22とセパレータ23との間だけに介在していてもよい。
この電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、正極21および負極22のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
この電解質層を用いた場合においても、正極21と負極22との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、電解液の漏液が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
<4.二次電池の用途>
最後に、二次電池の用途(適用例)に関して説明する。
二次電池の用途は、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などにおいて、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、主電源から切り替えられる電源でもよい。
二次電池の用途の具体例は、以下で説明する通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
電池パックは、単電池を備えていてもよいし、組電池を備えていてもよい。電動車両は、駆動用電源として二次電池を用いて走行する車両であり、その二次電池以外の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
ここで、二次電池の用途の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
図10は、二次電池の適用例である電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
この電池パックは、図10に示したように、電源51と、回路基板52とを備えている。この回路基板52は、電源51に接続されていると共に、正極端子53、負極端子54および温度検出端子55を含んでいる。
電源51は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子53に接続されていると共に、負極リードが負極端子54に接続されている。この電源51は、正極端子53および負極端子54を介して外部と接続されるため、充放電可能である。回路基板52は、制御部56と、スイッチ57と、熱感抵抗素子(いわゆるPTC素子)58と、温度検出部59とを含んでいる。ただし、PTC素子58は省略されてもよい。
制御部56は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部56は、電源51の使用状態に関する検出および制御などを行う。
なお、制御部56は、電源51(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ57を切断することにより、その電源51の電流経路に充電電流が流れないようにする。過充電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、4.20V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、2.40V±0.10Vである。
スイッチ57は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部56の指示に応じて電源51と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ57は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充電電流および放電電流のそれぞれは、スイッチ57のON抵抗に基づいて検出される。
温度検出部59は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。この温度検出部59は、温度検出端子55を用いて電源51の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部56に出力する。温度検出部59により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部56が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部56が補正処理を行う場合などに用いられる。
本技術の実施例に関して説明する。
<実験例1~7および比較例1~5>
以下で説明するように、図1~図4に示した正極活物質100を製造すると共に、図8および図9に示した二次電池(ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池)を作製したのち、その二次電池の特性を評価した。
[正極活物質の製造]
以下で説明する手順により、浸漬法を用いて正極活物質100を製造した。
最初に、エタノール25gにアンモニア水(濃度=28重量%)6gを添加したのち、そのエタノールを撹拌した。これにより、エタノール中においてアンモニア水が分散されたため、アルカリ性溶媒が得られた。
続いて、アルカリ性溶媒に複数の中心部110(リチウム含有化合物である粉末状のコバルト酸リチウム(LiCoO2 ))35gを添加したのち、そのアルカリ性溶媒に第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドを添加した。続いて、室温環境中(温度=20℃)中においてアルカリ性溶媒を撹拌(撹拌時間=120分間)した。これにより、準備溶液が調製された。
第1金属アルコキシドとしては、Si-(OC2 5 4 (TES)を用いた。第2金属アルコキシドとしては、(H3 CO)3 -Si-C2 4 -Si-(OCH3 3 (BTESE)または(H3 CO)3 -Si-C6 12-Si-(OCH3 3 (BTESH)を用いた。第3金属アルコキシドとして、H3316Si-(OCH3 3 (HDTMS)を用いた。
この場合には、重量割合R1~R4(重量%)のそれぞれが表1に示した値となるように、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドのそれぞれの添加量を調整した。
続いて、準備溶液を濾別することにより、その準備溶液が表面に付着された複数の中心部110を回収したのち、洗浄用の溶媒(アセトン)を用いて複数の中心部110を洗浄した。
続いて、複数の中心部110を加熱(加熱温度=80℃および加熱時間=120分間)することにより、その複数の中心部110を乾燥させた。これにより、第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含む下地層121と、第3金属アルコキシドを含む表面層122とが中心部110の表面111Xおよび粒界111Yのそれぞれに形成された。すなわち、下地層121および表面層122を含む有機無機ハイブリッド膜である被覆部120が形成された。
よって、中心部110および被覆部120(下地層121および表面層122)を含む正極活物質100が製造された(実施例1~7)。
厚さ割合R5(%)は、表1に示した通りである。正極活物質100を製造する場合には、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドを含むアルカリ性溶媒中に複数の中心部110を浸漬させる時間を十分に長くなるように設定することにより、表面111Xだけでなく粒界111Yも被覆するように被覆部120を形成した。この場合には、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドのそれぞれの添加量およびアルカリ性溶媒の撹拌時間などを変更することにより、厚さ割合R5を変化させた。
なお、比較のために、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドのうちのいずれか1つを用いなかったことを除いて同様の手順により、正極活物質を製造した(比較例1~3)。第2金属アルコキシドを用いなかった場合には、表面層122が形成されなかった。
また、比較のために、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドの全てを用いなかったことを除いて同様の手順により、正極活物質を製造した(比較例4)。この場合には、被覆部120が形成されなかった。
さらに、比較のために、粒界111Yに被覆部120(下地層121および表面層122)を形成せずに、表面111Xだけに被覆部120を形成したことを除いて同様の手順により、正極活物質を製造した(比較例5)。この場合には、第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドを含むアルカリ性溶媒中に複数の中心部110を浸漬させる時間を短くすると共に、アルカリ性溶媒の撹拌時間を短くする(具体的には、撹拌時間を30分以下とする)ことにより、粒界111Yを被覆せずに表面111Xだけを被覆するように被覆部120を形成した。厚さ割合R5が0%であるということは、粒界111Yが被覆部120により被覆されなかったことを表している。
[二次電池の作製]
以下で説明する手順により、二次電池を作製した。
(正極の作製)
最初に、正極活物質90質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)5質量部と、正極導電剤(ケッチェンブラック)5質量部とを互いに混合させることにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21A(厚さ=15μmであるアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成した。続いて、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型(ロール温度=130℃,線圧=0.7t/cm,プレス速度=10m/分)した。最後に、正極活物質層21Bが形成された正極集電体21Aを帯状(幅=48mm,長さ=300mm)となるように切断した。これにより、正極21が作製された。
(負極の作製)
最初に、負極活物質(炭素材料である人造黒鉛)90質量部と、ポリアミック酸を含むN-メチル-2-ピロリドン溶液(濃度=20重量%)10質量部とを互いに混合させたのち、そのN-メチル-2-ピロリドン溶液を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、バーコータ(ギャップ=35μm)を用いて負極集電体22A(厚さ=15μmである銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーの塗膜を乾燥(温度=80℃)させた。続いて、ロールプレス機を用いて塗膜を圧縮成型したのち、その塗膜を加熱(加熱時間=700℃,加熱時間=3時間)することにより、負極活物質層22Bを形成した。最後に、負極活物質層22Bが形成された負極集電体22Aを帯状(幅=50mm,長さ=310mm)となるように切断した。これにより、負極22が作製された。
(電解液の調製)
溶媒(環状炭酸エステルである炭酸エチレンおよび鎖状炭酸エステルである炭酸エチルメチル)に電解質塩(六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ))を添加したのち、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=50;50としたと共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/l(=1mol/dm3 )とした。これにより、電解液が調製された。
(二次電池の組み立て)
最初に、正極21の正極集電体21Aに正極リード31(アルミニウム箔)を溶接したと共に、負極22の負極集電体22Aに負極リード32(銅箔)を溶接した。続いて、セパレータ23(厚さ=25μmである微多孔性ポリエチレンフィルム)を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体を作製した。続いて、プレス機を用いて巻回体をプレスすることにより、断面の形状が扁平形状となるように巻回体を成型した。
続いて、窪み部10Uに収容された巻回体を挟むように外装フィルム10(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳んだのち、その融着層のうちの2辺の外周縁部同士を互いに熱融着させることにより、袋状の外装フィルム10の内部に巻回体を収納した。外装フィルム10としては、融着層(厚さ=30μmであるポリプロピレンフィルム)と、金属層(厚さ=40μmであるアルミニウム箔)と、表面保護層(厚さ=25μmであるナイロンフィルム)とが内側からこの順に積層された防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。
最後に、袋状の外装フィルム10の内部に電解液を注入したのち、減圧環境中において融着層のうちの残りの1辺の外周縁部同士を熱融着させた。この場合には、外装フィルム10と正極リード31との間に封止フィルム41(厚さ=5μmであるポリプロピレンフィルム)を挿入したと共に、その外装フィルム10と負極リード32との間に封止フィルム42(厚さ=5μmであるポリプロピレンフィルム)を挿入した。これにより、巻回体に電解液が含浸されたため、電池素子20が形成された。よって、外装フィルム10の内部に電池素子20が封入されたため、二次電池が組み立てられた。
(二次電池の安定化)
常温環境中(温度=20℃)において、二次電池を1サイクル充放電させた。充放電条件は、後述するサイクル特性を調べる場合の充放電条件と同様にした。これにより、正極21および負極22のそれぞれの表面に被膜が形成されたため、二次電池の状態が安定化した。よって、二次電池が完成した。
[二次電池の特性評価]
二次電池の容量特性および負荷特性を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
(容量特性)
ここでは、二次電池の容量を測定する代わりに、その容量に大きな影響を及ぼす正極活物質の充填性を表す指標である正極活物質層21Bの体積密度(g/cm3 )を調べた。この場合には、ハイト計を用いて正極活物質層21Bの厚さ(cm)などの寸法を測定すると共に、その正極活物質層21Bの重量を測定したのち、その寸法および重量に基づいて体積密度を算出した。
(負荷特性)
負荷特性を調べる場合には、最初に、常温環境中(温度=20℃)において二次電池を充放電させることにより、放電容量(1サイクル目の放電容量)を測定した。充電時には、0.5Aの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.2Vの電圧で電流が初期値の1/10の値(0.05A)に到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.2Aの電流で電圧が3.0Vに到達するまで定電流放電した。
続いて、同環境中において二次電池を充放電させることにより、放電容量(2サイクル目の放電容量)を測定した。充放電条件は、放電時の電流を0.1Cに変更したことを除いて、1サイクル目の充放電条件と同様にした。この0.1Cとは、1サイクル目の放電容量を1Cとした場合において0.1Cに相当する電流値であり、より具体的には1サイクル目の放電容量を10時間で放電しきる電流値である。
続いて、同環境中において二次電池を充放電させることにより、放電容量(3サイクル目の放電容量)を測定した。充放電条件は、放電時の電流を2Cに変更したことを除いて、1サイクル目の充放電条件と同様にした。この2Cとは、1サイクル目の放電容量を1Cとした場合において2Cに相当する電流値であり、より具体的には1サイクル目の放電容量を0.5時間で放電しきる電流値である。
最後に、負荷維持率(%)=(3サイクル目の放電容量(放電時の電流=2C)/2サイクル目の放電容量(放電時の電流=0.1C))×100を算出した。
Figure 2023128175000004
[考察]
表1に示したように、体積密度および負荷維持率のそれぞれは、正極活物質の構成に応じて大きく変動した。
具体的には、被覆部120を形成するために第3金属アルコキシドを用いなかったため、その第3金属アルコキシドを含む表面層122が形成されなかった場合(比較例1)には、体積密度および負荷維持率の双方が減少した。
また、被覆部120を形成するために第1金属アルコキシドまたは第2金属アルコキシドを用いなかったため、その第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含む下地層121が形成されなかった場合(比較例2,3)には、負荷維持率が減少したと共に、場合によっては体積密度も減少した。
さらに、被覆部120を形成するために第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドの全てを用いたが、その被覆部120が表面111Xだけを被覆するように形成された場合(比較例5)には、高い負荷維持率は得られたが、体積密度は減少した。
これに対して、被覆部120を形成するために第1金属アルコキシド、第2金属アルコキシドおよび第3金属アルコキシドの全てを用いた場合(実施例1~7)には、その第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含む下地層121が形成されたと共に、第3金属アルコキシドを含む表面層122も形成された。しかも、表面111Xだけでなく粒界111Yも被覆するように被覆部120が形成された。これにより、高い体積密度が得られたと共に、高い負荷維持率も得られた。
この場合には、特に、以下で説明する一連の傾向が得られた。
第1に、重量割合R1が5.0重量%~85.0重量%であり、重量割合R2が1.0重量%~40.0重量%であり、重量割合R3が5.0重量%~90.0重量%であると、十分な体積密度が得られたと共に、十分な負荷維持率も得られた。
第2に、重量割合R4が0.010重量~2.000重量%であると、十分な体積密度が得られたと共に、十分な負荷維持率も得られた。
第3に、厚さ割合R5が10%~100%であると、高い負荷維持率が維持されながら、体積密度がより増加した。
[まとめ]
表1に示した結果から、正極活物質100が中心部110および被覆部120(下地層121および表面層122)を備えており、その被覆部120が中心部110の表面111Xおよび粒界111Yのそれぞれを被覆しており、その下地層121が第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドの反応物を含んでおり、表面層122が第3金属アルコキシドを含んでおり、その第3金属アルコキシドが第1金属アルコキシドの反応物および第2金属アルコキシドのうちの一方または双方に結合されていると、高い体積密度および高い負荷維持率が得られた。よって、二次電池において優れた容量特性および優れた負荷特性を得ることができた。
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
具体的には、二次電池の電池構造がラミネートフィルム型である場合に関して説明した。しかしながら、二次電池の電池構造は、特に限定されないため、円筒型、角型、コイン型およびボタン型などでもよい。
また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明した。しかしながら、電池素子の素子構造は、特に限定されないため、積層型および九十九折り型などでもよい。この積層型では、正極および負極が互いに積層されていると共に、九十九折り型では、正極および負極がジグザグに折り畳まれている。
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
21…正極、21B…正極活物質層、22…負極、100…正極活物質、110…中心部、111…結晶粒、111X…表面、111Y…粒界、120…被覆部、121…下地層、122…表面層。

Claims (13)

  1. 電極反応物質を吸蔵放出する中心部と、
    前記中心部の表面に設けられた被覆部と
    を備え、
    前記中心部は、2つ以上の結晶粒が互いに結合された多結晶体を含むと共に、互いに結合された2つの前記結晶粒の間に粒界を有し、
    前記被覆部は、前記中心部の前記表面および前記粒界のそれぞれを被覆すると共に、前記中心部に近い側から順に下地層および表面層を含み、
    前記下地層は、1分子中に金属原子-炭素原子結合を有しない第1金属アルコキシドの反応物、および1分子中に2つ以上の金属原子-炭素原子結合を有する第2金属アルコキシドの反応物を含み、
    前記表面層は、1分子中に1つの金属原子-炭素原子結合を有する第3金属アルコキシドを含み、
    前記第3金属アルコキシドは、前記第1金属アルコキシドの反応物および前記第2金属アルコキシドのうちの少なくとも一方に結合されている、
    二次電池用正極活物質。
  2. 前記第1金属アルコキシドは、1つ以上のアルコキシ基が結合されている1つの金属原子を含み、
    前記第2金属アルコキシドは、炭素鎖を介して互いに結合されていると共にそれぞれに1つ以上のアルコキシ基が結合されている2つ以上の金属原子を含み、
    前記第3金属アルコキシドは、1つのアルキル基および1つ以上のアルコキシ基のそれぞれが結合されている1つの金属原子を含む、
    請求項1記載の二次電池用正極活物質。
  3. 前記第1金属アルコキシドは、式(1)で表される化合物を含む、
    請求項1または請求項2に記載の二次電池用正極活物質。
    M1-(OR1)a ・・・(1)
    (M1は、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子およびジルコニウム原子のうちのいずれかである。R1は、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基および式(100)で表される基のうちのいずれかである。aは、3または4である。ただし、互いに隣り合う2つのR1は、互いに結合されていてもよい。)
    -CR11=CH-C(=O)-R12 ・・・(100)
    (R11は、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。R12は、1以上30以下の炭素数を有するアルキル基、1以上30以下の炭素数を有するアルコキシ基および1以上30以下の炭素数を有するアルケニルオキシ基のうちのいずれかである。)
  4. 前記M1は、ケイ素原子である、
    請求項3記載の二次電池用正極活物質。
  5. 前記第2金属アルコキシドは、1分子中に2つ以上のケイ素原子-炭素原子結合を有する、
    請求項1または請求項2に記載の二次電池用正極活物質。
  6. 前記第2金属アルコキシドは、式(2)~式(4)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
    請求項5記載の二次電池用正極活物質。
    (R3O)3 -Si-R2-Si-(OR4)3 ・・・(2)
    (R2は、1以上20以下の炭素数を有するアルキレン基である。R3およびR4のそれぞれは、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
    (OR8)3 -Si-R5-NH-R6-NH-R7-Si-(OR9)3 ・・・(3)
    (R5~R7のそれぞれは、1以上20以下の炭素数を有するアルキレン基である。R8およびR9のそれぞれは、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
    (R10)2 -Si-(OR11)2 ・・・(4)
    (R10およびR11のそれぞれは、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
  7. 前記第3金属アルコキシドは、式(5)で表される化合物を含む、
    請求項1または請求項2に記載の二次電池用正極活物質。
    R12-Si-(OR13)3 ・・・(5)
    (R12は、8以上30以下の炭素数を有するアルキル基である。R13は、1以上10以下の炭素数を有するアルキル基である。)
  8. 前記被覆部の重量に対する前記第1金属アルコキシドの反応物の重量の割合は、5.0重量%以上85.0重量%以下であり、
    前記被覆部の重量に対する前記第2金属アルコキシドの反応物の重量の割合は、1.0重量%以上40.0重量%以下であり、
    前記被覆部の重量に対する前記第3金属アルコキシドの重量の割合は、5.0重量%以上90.0重量%以下である、
    請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の二次電池用正極活物質。
  9. 前記中心部の重量と前記被覆部の重量との和に対する前記被覆部の重量の割合は、0.010重量以上2.000重量%以下である、
    請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の二次電池用正極活物質。
  10. 前記表面を被覆している前記被覆部の厚さに対する、前記粒界を被覆している前記被覆部の厚さの割合は、10%以上100%以下である、
    請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の二次電池用正極活物質。
  11. 正極活物質層を備え、
    前記正極活物質層は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の二次電池用正極活物質を含む、
    二次電池用正極。
  12. 請求項11記載の二次電池用正極と、負極と、電解液とを備えた、二次電池。
  13. リチウムイオン二次電池である、
    請求項12記載の二次電池。
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