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JP2023127319A - 熱可塑性エラストマー組成物、射出成形品及びエアバッグ収納カバー - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物、射出成形品及びエアバッグ収納カバー Download PDF

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JP2023127319A
JP2023127319A JP2022031033A JP2022031033A JP2023127319A JP 2023127319 A JP2023127319 A JP 2023127319A JP 2022031033 A JP2022031033 A JP 2022031033A JP 2022031033 A JP2022031033 A JP 2022031033A JP 2023127319 A JP2023127319 A JP 2023127319A
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thermoplastic elastomer
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propylene
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誠司 松本
Seiji Matsumoto
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MCPP Innovation LLC
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Abstract

【課題】剛性を維持しながら、ティアライン部周辺の外観性とフローマーク性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最小値が1.30以上である、熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン単位の含有率が50~97質量%でエチレン単位の含有率が3~50質量%のプロピレン系ブロック共重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物と、この熱可塑性エラストマー組成物よりなる射出成形品及びエアバッグ収納カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置からなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーは、エアバッグ膨張時に設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々提案がなされている。
オレフィン系熱可塑性エラストマーからなるエアバッグ収納カバーとしては、例えば、特許文献1に、特定のプロピレン系重合体と、特定のオレフィン系ブロック共重合体と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物を特定量含む組成物を、有機過酸化物の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマー組成物が提案されている。また特許文献2に、エチレン単位の含有量が5~50質量%のポリプロピレンブロック共重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体を有機過酸化物と架橋助剤の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマー組成物が提案されている。
特開2016-186041号公報 特開2018-141092号公報
近年、エアバッグ展開出力向上による低温域でのエアバッグ収納カバーの破損が懸念されるため、安全性の向上、設計の自由度等の観点から剛性に優れた材料が望まれる。また、エアバッグ収納カバーは、従来より塗装工程を経て製造されているが、塗装ラインの増設等、塗装工程によるコストの問題があり、より安価に製造するために、近年では無塗装で製造可能な材料が望まれている。そして、無塗装のエアバッグ収納カバーに対し、意匠性の観点から、エアバッグ収納カバーのティアライン部(エアバッグ展開時にエアバグカバーを開裂させるために設けられたエアバッグカバーの薄肉部)の表面意匠側の艶むらやフローマーク性が改善された成形品が望まれている。
本発明者らの詳細な検討によれば、前記特許文献1に記載されている熱可塑性エラストマー組成物においては、フローマーク性が悪く、外観が不十分であるという問題が見出された。また、特許文献2の熱可塑性エラストマー組成物では意匠性(フローマーク性)の向上が図られていたが、ティアライン部周辺の外観が不十分であるという問題が見出された。
本発明はこのような従来技術の問題を鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、剛性を維持しながら、ティアライン部周辺の外観性とフローマーク性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定のプロピレン系ブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物において、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最小値が1.30以上であることで、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[10]に存する。
[1] 下記成分(A)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最小値が1.30以上である、熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン単位の含有率が50~97質量%でエチレン単位の含有率が3~50質量%のプロピレン系ブロック共重合体。
[2] キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最大値と最小値の比が1.15以下である、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 更に下記成分(B)を含有する、[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(B):プロピレン単位とエチレン単位及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位とからなるプロピレン系ランダム共重合体。
[4] 更に下記成分(C)を含有する[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物
成分(C):エチレン単位と炭素数が4以上20以下のα-オレフィン単位とからなるエチレン系共重合体。
[5] 前記成分(C)のα-オレフィン単位の炭素数が4以上8以下である、[4]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 前記成分(C)が架橋構造を有する、[4]又は[5]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7] 更に下記成分(D)を含み、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対する下記成分(D)の含有量が0.01質量部~1.00質量部である[6]に記載の熱可塑性エラストマー組成物
成分(D):有機過酸化物
[8] 更に下記成分(E)を含み、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対する下記成分(E)の含有量が0.01質量部~1.00質量部である[6]又は[7]に記載の熱可塑性エラストマー組成物
成分(E):架橋助剤
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いたエアバッグ収納カバー。
本発明によれば、剛性を維持しながら、ティアライン部周辺の外観性とフローマーク性に優れた射出成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品よりなるエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグが展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比(以下、単に「ダイスウェル比」と称す場合がある。)の最小値が1.30以上である。
成分(A):プロピレン単位の含有率が50~97質量%でエチレン単位の含有率が3~50質量%のプロピレン系ブロック共重合体。
<ダイスウェル比>
本発明者の検討により、前記成分(A)を含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、せん断速度60.80/s~6080/sの範囲における最小のダイスウェル比の値が1.30以上である場合に、ティアライン部周辺の外観性とフローマーク性に優れることが判明した。
せん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比が1を超えて大きいことは、成形に供された樹脂の流動方向に対して垂直方向に広がる力が働くことを意味する。本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、ダイスウェル比を1.30以上とすることで、低速から高速までの幅広い成形速度において、金型内で流動する樹脂の流動先端が安定となり、ティアライン部周辺の外観性とフローマーク性に優れるものと考える。
上記観点から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比の最小値は1.31以上であることが好ましく、1.35以上であることがより好ましく、1.40以上であることが更に好ましい。熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比の上限値に制限は無いが、通常は2.00以下である。
更に、せん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最大値と最小値の比が1.15以下であることで、ティアライン部周辺の外観性に優れたものとなり好ましい。せん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最大値と最小値の比が小さいことは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がその溶融状態で低速から高速においてせん断速度依存性をもたないことを意味する。
ティアライン周辺など金型の厚みが大きく変動する部位では、成形に供された溶融樹脂の流速が大きく変動するが、せん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最大値と最小値の比が1.15以下となるような熱可塑性エラストマー組成物とすることで、このような部位においても、安定的な金型シボ転写性が得られやすい傾向になる。
上記観点から、せん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最大値と最小値の比は1.10以下であることがより好ましい。
本発明において、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)におけるダイスウェル比は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D(JIS K7199)を使用して、下記条件で試料を押し出す押出工程中に測定した値であり、下記計算式(I)により算出される。
試験温度:210℃
L/D:10(D=1mm)
せん断速度:60.80/s~6080/s
St=Dm/Dt (I)
St,Dm,Dtは以下を示す。
St:ダイスウェル比
Dm:ダイの出口の下10mmの位置において、試験温度で測定した押出し試料の直径(mm)
Dt:試験温度で測定したキャピラリーダイの直径(mm)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比は、使用するゴム成分や、製造条件で制御できる。
例えば、後述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する組成物を成分(D)を架橋剤として、成分(E)を架橋助剤として用いて動的処理して架橋する(以下、「動的架橋」と称する場合がある。)し、架橋状態を制御することによって、所望のダイスウェル比を得る事が出来る。
樹脂成分である成分(A)、成分(B)とゴム成分である成分(C)の溶融時の粘度差が小さくしたり、粘度の低い(MFRが比較的高い)成分(C)を用いたりすることによって、成分(A)及び成分(B)と成分(C)の分散を共連続層に近づけることにより、ダイスウェル比を大きくする方向に制御できる。このとき、物性、特に低温耐衝撃性を損なわないよう制御するために粘度の高い(MFRが比較的低い)成分(C)を併用することが好ましい。或いは、成分(D)及び成分(E)を用いて後述の動的熱処理を行うことで所望の熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
成分(D)の有機過酸化物を用いて動的架橋する場合、成分(D)の-O-O-結合が開裂して生じる遊離ラジカルがポリマーから水素原子を引き抜きポリマーラジカルが生じる。ここで、ポリマーがポリプロピレンのような崩壊型ポリマーの場合、水素原子の引き抜きによって生じたポリマーラジカルにより分子鎖が切れて分解し(ポリマーラジカル開裂反応)、著しく高温強度が低下する。これに対して、ポリマーが架橋型ポリマーの場合、ポリマーラジカル同士が再結合し-C-C-結合を形成することで架橋が進行する。
また、成分(E)の架橋助剤を併用すると、成分(D)を使用して生じたポリマーラジカル同士の再結合を促進することができることに加え、崩壊型ポリマーのポリマーラジカル開裂反応を抑制することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、成分(A)、成分(B)が前記崩壊型ポリマーの性質を有し、成分(C)が前記架橋型ポリマーの性質を有するので、動的架橋処理時に成分(A)、成分(B)の分解を抑えながら成分(C)を適切に架橋させるよう成分(A)~(C)の性質に応じて成分(D)と成分(E)の使用量や使用条件を制御する。
これにより安定的に存在する成分(A)、成分(B)のマトリックスに、適切な架橋密度を持つ成分(C)のゴムドメインが存在する海島構造又は共連続を含む分散形態を形成することができ、所望のダイスウェル比や低温耐衝撃性を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)として、プロピレン単位の含有率が50~97質量%でエチレン単位の含有率が3~50質量%のプロピレン系ブロック共重合体を含有する。成分(A)を含むことで、剛性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のプロピレン単位の含有率の下限は、成分(A)全体に対し、通常50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。一方、成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のプロピレン単位の含有率の上限は、通常97質量%以下であり、好ましくは95質量%以下である。
成分(A)のプロピレン単位の含有率が上記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。成分(A)のプロピレン単位の含有率が上記上限値以下であることにより、低温耐衝撃性が良好となる傾向がある。このプロピレン単位の含有率は、組成の異なるプロピレン系ブロック共重合体の2種以上を混合して成分(A)を構成する場合、成分(A)全体としてのプロピレン単位の含有率が上記数値範囲内であればよい。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のエチレン単位の含有率の下限は、成分(A)全体に対し、通常3質量%以上であり、好ましくは5質量%以上である。一方、成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のエチレン単位の含有率の上限は、通常50質量%以下であり、好ましくは40質量%以下である。
成分(A)のエチレン単位の含有率が上記下限値以上であることにより、成分(C)との相溶性が良好となる傾向にある。成分(A)のエチレン単位の含有率が上記上限値以下であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向がある。このエチレン単位の含有率は、組成の異なるプロピレン系ブロック共重合体の2種以上を混合して成分(A)を構成する場合、成分(A)全体としてエチレン単位の含有率が上記数値範囲内であればよい。
なお、成分(A)中のプロピレン単位とエチレン単位の含有率及び後述のα-オレフィン単位の含有率、後述の成分(B)中のプロピレン単位とエチレン単位の含有率及び後述のα-オレフィン単位の含有率、成分(C)のエチレン単位の含有率及びα-オレフィン単位の含有率は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
成分(A)は、成分(A)全体に対してプロピレン単位とエチレン単位とを前述の好適な含有率で含むと共に、プロピレン単位とエチレン単位以外のα-オレフィン(以下、「他のα-オレフィン」と称す場合がある。)単位、α-オレフィン以外の単量体単位等を含有していてもよい。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・他のα-オレフィンブロック共重合体が挙げられる。
成分(A)中のプロピレン単位以外のエチレン単位、他のα-オレフィン単位、その他の単量体単位の合計の含有率は、3~50質量%であることが好ましい。
成分(A)がプロピレン・エチレン・他のα-オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン以外のα-オレフィン単位としては、炭素数4~20のα-オレフィン単位を挙げることができる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
これらの他のα-オレフィン単位は、成分(A)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体としては、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ヘキセンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-オクテンブロック共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレンブロック共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体を例示することができる。
好ましくは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとのブロック共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは3g/10分以上であり、より好ましくは5g/10分以上であり、更に好ましくは8g/10分以上である。また、成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、通常200g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以下である。成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133(2011年)に従って、230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(A)は、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.1~200g/10分の範囲内であるものを複数用いてもよい。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
また、成分(A)は市販のものを用いてもよい。成分(A)の市販品としては、例えば、プライムポリマー社製「PrimPolypro(登録商標)」、住友化学社製「住友ノーブレン(登録商標)」、サンアロマー社製「ポリプロピレンブロックコポリマー」、日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP」、LyondellBasell社製「Moplen(登録商標)」、LyondellBasell社製「ADFLEX(登録商標)」、LyondellBasll社製「Hifax(登録商標)」、ExxonMobil社製「ExxonMobilPP」、FormosaPlastics社製「Formolene(登録商標)」、Borealis社製「BorealisPP」、LGChemical社製「SEETECPP」、A.Schulman社製「ASIPOLYPROPYLENE」、INEOSOlefins&Polymers社製「INEOSPP」、Braskem社製「BraskemPP」、HanwhaTOTALPETROCHEMICALS社製「HanwhaTotal」、Sabic社製「Sabic(登録商標)PP」、TOTALPETROCHEMICALS社製「TOTALPETROCHEMICALSPolypropylene」、SK社製「YUPLENE(登録商標)」が挙げられる。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(B)として、プロピレン単位とエチレン単位及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位とからなるプロピレン系ランダム共重合体を含有することが好ましい。
成分(B)のプロピレン系ランダム共重合体は、成分(A)と成分(B)との相溶性を良好とし、成分(A)の結晶性を低減させることで金型への転写性を向上させる効果がある。
成分(B)のプロピレン系ランダム共重合体において、プロピレン単位の含有率は、好ましくは60~99質量%であり、より好ましくは80~98質量%である。成分(B)のプロピレン単位の含有率が上記範囲であると、後述の融解ピーク温度の範囲となり易いために好ましい。
成分(B)のプロピレン系ランダム共重合体は、プロピレン単位以外の構成単位として、エチレン単位及び/又はプロピレン単位以外のα-オレフィン単位を有する。成分(B)が含んでいてもよいプロピレン単位以外の構成単位としては、例えば、エチレン単位、1-ブテン単位、1-ペンテン単位、1-ヘキセン単位、1-へプテン単位、1-オクテン単位、1-ノネン単位、1-デセン単位、1-ウンデセン単位、1-ドデセン単位、1-トリデセン単位、1-テトラデセン単位、1-ペンタデセン単位、1-ヘキサデセン単位、1-ヘプタデセン単位、1-オクタデセン単位、1-ノナデセン単位、1-エイコセン単位、3-メチル-1-ブテン単位、3-メチル-1-ペンテン単位、4-メチル-1-ペンテン単位、2-エチル-1-ヘキセン単位、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン単位が挙げられる。これらは1種のみを含むものであっても、2種以上を含むものであってもよい。成分(B)がプロピレン単位以外に含むエチレン単位及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位としては、好ましくは、エチレン単位、1-ブテン単位等が挙げられる。
成分(B)のプロピレン系ランダム共重合体において、エチレン単位及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位の含有率は、好ましくは1~40質量%であり、より好ましくは2~20質量%である。成分(B)のエチレン単位及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位の含有率が上記範囲であると、後述の融解ピーク温度の範囲となり易いために好ましい。
成分(B)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上であり、より好ましくは1g/10分上である。また、成分(B)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、通常200g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以下である。成分(B)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133(2011年)に従って、230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(B)は、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.1~200g/10分の範囲内であるものを複数用いてもよい。
成分(B)の融解ピーク温度は、50℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましく、125℃以上であることが特に好ましい。一方、成分(B)の融解ピーク温度は、155℃以下であることが好ましく、154℃以下であることがより好ましく、153℃以下であることがより好ましい。成分(B)の融解ピーク温度が上記下限値以上であると耐熱性の観点で好ましい。成分(B)の融解ピーク温度が上記上限以下であると外観性能の観点で好ましい。
なお、成分(B)の融解ピーク温度は、JIS K7121に従い、以下の方法により測定することができる。
即ち、示差走査熱量計(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて、以下の工程(1)~(3)を順に実施して成分(B)の融解挙動を測定する。
各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を取得し、工程(3)において観測されるピークのピークトップを融解ピーク温度とする。
工程(1):試料5mgを室温から100℃/分の速度で40℃から200℃まで昇温し、昇温終了後、3分間保持する。
工程(2):200℃から10℃/分の速度で40℃まで降温し、降温終了後、3分間保持する。
工程(3):40℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
成分(B)のプロピレン系ランダム共重合体は、融解ピーク温度が100℃以上155℃以下であり、かつメルトフローレート(230℃、21.2N)が0.1~200g/10分であるものが特に好ましい。
成分(B)のプロピレン系ランダム共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
成分(B)は市販品として入手することもできる。これらに該当する市販品としては、プライムポリマー社製「Prim Polypro(登録商標)」、住友化学社製「住友ノーブレン(登録商標)」、日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP」、LyondellBasell社製「Moplen(登録商標)」、ExxonMobil社製「ExxonMobil PP」、Formosa Plastics社製「Formolene(登録商標)」、Borealis社製「Borealis PP」、LG Chemical社製「SEETEC PP」、A.Schulman社製「ASI POLYPROPYLENE」、INEOS Olefins&Polymers社製「INEOS PP」、Braskem社製「Braskem PP」、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社製「Sumsung Total」、Sabic社製「Sabic(登録商標)PP」、TOTAL PETROCHEMICALS社製「TOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene」、SK社製「YUPLENE(登録商標)」等があり、これらの中から適宜選択し、組み合わせて用いることができる。
<成分(C)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(C)として、エチレン単位と炭素数が4以上20以下のα-オレフィン単位とからなるエチレン系共重合体を含有することが好ましい。
成分(C)のエチレン系共重合体は、エチレン単位の含有率とα-オレフィン単位の含有率との合計を100質量%としたときに、エチレン単位の含有率が50~80質量%、α-オレフィン単位の含有率が20~50質量%であることが好ましい。エチレン単位及びα-オレフィン単位の含有率が上記範囲内であると、他の成分との親和性が良好となって熱可塑性エラストマー組成物の微分散性が向上する傾向にある。また、成分(C)が、後述の成分(D)の有機過酸化物の存在下で動的熱処理されることにより架橋構造を有する実施形態では、光沢度が低くなり、外観が改善される傾向にあり、好ましい。
成分(C)のエチレン系共重合体を構成するα-オレフィンは限定されないが、具体的には、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが挙げられる。これらのα-オレフィン単位は、成分(C)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、α-オレフィンとしては炭素数が4~8であるものが好ましく、1-オクテンがより好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体がα-オレフィン単位として1-オクテン単位を含むことで引張強さが良好となる。
本発明に用いる成分(C)として、具体的には、エチレン・1-ブテン共重合体ゴム、エチレン・1-ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・1-オクテン共重合体ゴムを例示することができる。これらは1種で用いてもよく、2種以上組み合わせ用いてもよい。中でも、エチレン・1-ブテン共重合体ゴム、エチレン・1-オクテン共重合体ゴムが好ましい。
成分(C)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)は限定されないが、通常80g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは50g/10分以下であり、より好ましくは40g/10分以下である。また、成分(C)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)は、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、より好ましくは0.10g/10分以上である。成分(C)のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に従い、190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
低温耐衝撃性に優れ、ティアライン部周辺の外観性やフローマーク性にも優れる観点から、成分(C)として粘度の低い(MFRが比較的高い)成分(Cl)と粘度の高い(MFRが比較的低い)成分(C2)とを併用することが好ましい。
この場合、成分(C1)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)の下限は3g/10分以上が好ましく、5g/10分以上がより好ましく、7g/10分以上が更に好ましい。成分(C1)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)の上限は200g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましく、80g/10分以下が更に好ましい。
一方、成分(C2)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)の下限は0.01g/10分以上が好ましく、0.05g/10分以上がより好ましく、0.1g/10分以上が更に好ましい。
成分(C2)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)の上限は3g/10分未満が好ましく、2g/10分以下がより好ましく、1g/10分以下が更に好ましい。
成分(C1)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)と成分(C2)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)の比(成分(C1)のMFR/成分(C2)のMFR)は1を超えて20000以下が好ましく、5以上2000以下がより好ましく、7以上800以下が更に好ましい。
成分(C)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.880g/cm以下であり、より好ましくは0.870g/cm以下である。一方、その下限については特に制限されないが、通常0.850g/cm以上である。成分(C)の密度はASTM D792により測定することができる。
成分(C)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、オレフィン重合用触媒として、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いることができ、重合方法としてはスラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法が挙げられる。
成分(C)は市販のものを用いてもよい。成分(C)の市販品としては、例えば、ダウ・ケミカル社製「Engage(登録商標)-XLT」シリーズ、「INFUSE(登録商標)」シリーズ、SK社製「Solumer(登録商標)」シリーズ、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズ、「三井EPT」、JSR社製「JSR EPR」、住友化学社製「エスプレン(登録商標)」、LANXESS社製「Keltan(登録商標)」が挙げられる。
成分(C)のエチレン・炭素数が4以上20以下のα-オレフィン共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(D)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、成分(D)の有機過酸化物は動的熱処理において架橋剤として作用する。この動的熱処理により、成分(C)が架橋構造を有するようになり、本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなるエアバッグ収納カバー等の成形品の光沢度を下げることができ、外観が特に良好となる。
成分(D)の有機過酸化物としては、芳香族系有機過酸化物及び脂肪族系有機過酸化物のいずれも使用することが可能である。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシン等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類が挙げられる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<成分(E)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、成分(E)は、動的熱処理において架橋助剤として作用する。
成分(E)の架橋助剤としては、例えば、硫黄、p-キノンジオキシム、p-ジニトロソベンゼン、1,3-ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の原料の配合割合について以下に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部あたり、成形外観と低温耐衝撃性の観点から通常5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上である。また、成形品の剛性、引張強度の観点から、通常100質量部以下であり、好ましくは90質量部以下であり、より好ましくは85質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計を100質量部としたときに、低温耐衝撃性の観点から通常40質量部以上であり、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上である。一方、製品の剛性、引張強度の観点から通常200質量部以下であり、好ましくは150質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100質量部としたときに、低光沢性の観点から通常0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.10質量部以上である。一方、低温耐衝撃性、成形外観の観点から通常1.00質量部以下であり、好ましくは0.80質量部以下であり、より好ましくは0.60質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(E)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100質量部としたときに、低光沢性の観点から通常0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.075質量部以上である。一方、フローマーク性の観点から通常1.00質量部以下であり、好ましくは0.80質量部以下であり、より好ましくは0.60質量部以下である。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
その他の成分としては、例えば、成分(A)、(B)及び(C)以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等の樹脂、酸化防止剤、充填材、熱安定剤、耐候助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(A)、成分(B)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(ただし、成分(A)、成分(B)に該当するものを除く。)を挙げることができる。また、成分(C)以外のエラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリブタジエンを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.01~3.0質量部の範囲で用いられる。
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラックを挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)、成分(B)及び成分(C)合計100質量部に対して、通常0.1~50質量部で用いられる。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及びその他の成分を所定量含有する組成物を成分(D)又は成分(D)と成分(E)の存在下で動的熱処理して製造される。
本発明において「動的熱処理」とは成分(D)又は成分(D)と成分(E)の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
動的熱処理を行う際の温度は、通常80~300℃、好ましくは100~250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1~30分である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を二軸押出機により動的熱処理を行う場合においては、二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)の間に下記式(1)の関係を保ちながら押出することが好ましく、下記式(2)の関係を保ちながら押出することがより好ましい。
2.6<NQ/R3<22.6 …(1)
3.0<NQ/R3<20.0 …(2)
二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)との間の前記関係が上記下限値より大きいことが熱可塑性エラストマー組成物を効率的に製造するために好ましい。一方、前記関係が上記上限値より小さいことが、剪断による発熱を抑え、外観不良の原因となる異物が発生しにくくなるために好ましい。
[成形品]
<成形方法>
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物を成形することにより成形品が得られる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、通常の射出成形法又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形品とすることができる。中でも射出成形により成形品を製造することが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
成形品を射出成形する際の成形温度は一般に150~300℃であり、好ましくは160~280℃である。射出圧力は通常5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。また、金型温度は通常0~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
<用途>
このようにして得られた成形品は、例えば、エアバッグ収納カバーとして用いることができる。エアバッグ収納カバーとしては、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適に用いられる。
本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
[熱可塑性エラストマー組成物及び成形品の物性]
<MFR>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成形性にも優れたものである。具体的にはISO 1133(2011年)に準拠した温度230℃、測定荷重21.18Nでのメルトフローレート(MFR)で通常0.5~50g/10分であり、1~40g/10分であることが好ましく、2~30g/10分であることがより好ましい。
<切断時引張強さ>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は引張強さにも優れたものである。具体的にはISO 37(2011年)に記載の1Aダンベルを用い、引張り速度500mm/min、23℃の雰囲気下にて測定した切断時引張強さが、通常5MPa以上であり、7MPa以上であることが好ましく、8MPa以上であることがより好ましい。
なお、切断時引張強さは、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<切断時伸び>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は切断時伸びにも優れたものである。具体的にはISO 37(2011年)に記載の1Aダンベルを用い、引張り速度500mm/min、23℃の雰囲気下にて測定した切断時伸びが、通常500%以上であり、600%以上であることが好ましく、700%以上であることがより好ましい。
なお、切断時伸びは、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<曲げ弾性率>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低温耐衝撃性の観点から、曲げ弾性率が700MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率は低温耐衝撃性と相関があり、曲げ弾性率が上記上限値以下であることで、優れた低温耐衝撃性を実現することができる。曲げ弾性率の上限は、低温衝撃性の観点から、600MPa以下であることがより好ましく、500MPa以下であることが更に好ましい。一方、曲げ弾性率の下限は剛性や成形品の形状保持特性の観点から、130MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、200MPa以上であることが更に好ましい。
なお、曲げ弾性率は、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<低温耐衝撃性>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は低温耐衝撃性に優れたものである。本発明において、低温耐衝撃性は後掲の実施例に示す方法による-45℃でのアイゾット衝撃強さにより評価される。本発明においては、-45℃でのアイゾット衝撃強さの値が、50kJ/m以上であることが好ましく、60kJ/m以上であることがより好ましく、70kJ/m以上であることが更に好ましい。
なお、-45℃でのアイゾット衝撃強さは、具体的には後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造原料]
<成分(A)>
A-1:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PP BC3B
プロピレン単位含有率:92.5質量%
エチレン単位含有率:7.5質量%
MFR(JIS K7210(1999年)):9g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
A-2:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン-プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PP BC03B
プロピレン単位の含有率:91.2質量%
エチレン単位の含有率:8.8質量%
MFR(JIS K7210):30g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
A-3:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン-プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PP BC06NCA
プロピレン単位の含有率:96質量%
エチレン単位の含有率:4質量%
MFR(JIS K7210):60g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
A-4:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
LyondellBasell社製HIFAX(登録商標)X1956A
プロピレン単位の含有率:90.1質量%
エチレン単位の含有率:9.9質量%
MFR(ISO 1133):1.1g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf)、カタログ値)
<成分(B)>
B-1:
サンアロマー社製 PC630A
プロピレン・エチレンランダム共重合体
MFR(JIS K7210(1999年)):7.5g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
B-2:
日本ポリプロ社製 ノバテック(登録商標)PP MG03E
プロピレン・エチレンランダム共重合体
MFR(JIS K7210(1999年)):30g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
<成分(C)>
C-1:
ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)8842
エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
密度:0.857g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):1.0g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
C-2:
三井化学社製 タフマー(登録商標)A0550S
エチレン・1-ブテン共重合体ゴム
密度:0.861g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
C-3:
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)8180
エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
密度:0.863g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
C-4:
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)8100
エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
密度:0.870g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):1.0g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
C-5:
三井化学社製 タフマー(登録商標)A4050S
エチレン・1-ブテン共重合体ゴム
密度:0.864g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):3.6g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
C-6:
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)8200
エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
密度:0.870g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):5.0g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
C-7:
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)8407
エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
密度:0.870g/cm(カタログ値)
MFR(ASTM D1238):30.0g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
<成分(D)>
D-1:
化薬ヌーリオン社製トリゴノックス101-40C(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物)
<成分(E)>
E-1:
三菱ケミカル社製アクリエステルTMP(トリメチロールプロパントリメタクリレート)
E-2:
和光純薬工業社製ジビニルベンゼン(ジビニルベンゼン55質量%とエチルビニルベンゼン45質量%の混合物)
<その他の成分>
F-1:
酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガノックス(登録商標)1010)
F-2:
酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガフォス(登録商標)168)
F-3:
離型剤(クローダジャパン社製商品名CRODAMIDE(登録商標)VRX-BE-(HU))
F-4:
黒色顔料(大日精化工業社製商品名PC40C(カーボン濃度40質量%品))
[熱可塑性エラストマー組成物の評価方法]
1) メルトフローレート(MFR)
ISO 1133(2011年)に準拠し、230℃、荷重21.18Nで測定した。
2) 切断時引張強さ・切断時伸び
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物から引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形した後、ISO 37(2011年)準拠(1Aダンベル)で打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、島津製作所製オートグラフ精密万能試験機「AG-XPlus」により、切断時引張強さ(単位:MPa)と切断時伸び(単位:%)を引張り速度500mm/min、23℃の雰囲気下にて測定した。
3) 曲げ弾性率
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物からISO 3167(2002年)準拠の多目的評価用試験片A(長さ180mmのダンベル)を成形し、ダンベルの末端を切り落として曲げ弾性率測定用試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)を作成した。島津製作所製オートグラフ精密万能試験機「AG-XPlus」により、ISO 178(2010年)従って、2mm/minの速度で曲げ弾性率を測定した。
4) ダイスウェル比
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D(JIS K7199)を使用して、下記条件で熱可塑性エラストマー組成物の押出工程中に測定し、下記計算式(I)により算出した。
試験温度:210℃
L/D:10(D=1mm)
せん断速度:60.80/s~6080/s
St=Dm/Dt (I)
St,Dm,Dtは以下を示す。
St:ダイスウェル比
Dm:ダイの出口の下10mmの位置において、試験温度で測定した押出し試料の直径(mm)
Dt:試験温度で測定したキャピラリーダイの直径(mm)
5) 低温耐衝撃性(アイゾッド衝撃強さ)
熱可塑性エラストマー組成物を、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強さ用の試験片として、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmに成形した。その後、ダンベルにノッチを入れ(ノッチの寸法と評価方法はISO 180(2013年)に準拠)、-45℃の条件で測定した。
(表中、(P)は「部分破壊(Partial break)」を示す。記載がないものは「完全破壊(Break)」を示す。
6) ティアライン外観
ティアライン外観は、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度20mm/s、シリンダー設定温度230℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物からティアライン入りの成形外観確認用試験片(厚さ3mm×幅100mm×長さ350mmのシートにゲートからそれぞれ5cm、12.5cm、20cm、27cmの位置に最薄部の厚みが0.7mmとなるようティアラインを設置)を成形し、そのティアライン上部付近の外観を目視観察し、下記基準で判定した。
(判定基準)
×:ティアラインが目立ち、外観が非常に悪い。
△:ティアラインが容易に確認される。
○:ティアラインが目立たない。
7) フローマーク性外観
フローマーク外観は、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度20mm/s、シリンダー設定温度230℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物からティアライン入りの成形外観確認用試験片(厚さ3mm×幅100mm×長さ350mmのシートにゲートからそれぞれ5cm、12.5cm、20cm、27cmの位置に最薄部の厚みが0.7mmとなるようティアラインを設置)を成形し、ティアラインを除く並行部の外観を目視観察し、下記基準で判定した。
(判定基準)
×:フローマークが目立ち、外観が非常に悪い。
△:フローマークが確認される。
○:フローマークが確認されない。
[実施例1]
成分(A-1):30質量部、成分(A-4):10質量部、成分(B-1):10質量部、成分(C-3):25質量部、成分(C-6):25質量部、(D-1):0.2質量部、(E-1):0.1質量部と、成分(A-1)、成分(A-4)、成分(B-1)、成分(C-3)及び成分(C-6)の合計100質量部に対して成分(F-1):0.1質量部、(F-3):0.05質量部、及び(F-4):黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)1.5質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向二軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ第1の供給口より30kg/hrの速度で投入し、180~210℃の範囲で昇温させ、溶融混練を行った後、ペレット化して熱可塑性エラストマー組成物を製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の評価結果を表-1に示す。
[実施例2~5、比較例1~5]
表-1、2に示す原料配合とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。ただし、比較例3、4、5については、成分(F-4)以外の他の成分を溶融混練してペレット化した後、射出成形前に成分(F-4)をブレンドして成形を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表-1、2に示す。
Figure 2023127319000001
Figure 2023127319000002
考察、表-1より、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェルの最小値が1.30以上に該当する実施例1~5はティアラインの外観が良好であり且つフォローマーク性にも著しく優れたものである事が分かる。また、曲げ弾性率の値からも剛性に優れている。
これに対して、表-2に示されるように、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェルの最小値が1.30以上を満たさない比較例1~3と5においてはティアライン外観性及びフローマーク外観の何れかが劣るものとなった。
また、成分(A)を含まない比較例4においては上記ダイスウェルの性能を満たし、良好なティアライン外観およびフローマーク外観であるが、剛性が著しく低く例えばエアバッグの展開時に樹脂カバーと自動車の車体やハンドル金具との固定部が破損したり、ティアライン以外の部分から開裂することが容易に想定されるため、剛性が求められる用途、例えば、エアバッグカバーとしての性能を満たすことが難しい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物によれば、剛性を維持しながら、ティアライン外観及びフローマーク外観に著しく優れた射出成形品を得ることができ、各種用途に好適に用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は例えば、エアバッグ収納カバー、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル等の自動車内装部品、マッドガード・グロメット等の自動車外装部品、家電部品、建材、家具として有用である。これらの中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物はエアバッグ収納カバーとして特に有用であり、エアバッグ収納カバーの中でも、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。

Claims (10)

  1. 下記成分(A)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最小値が1.30以上である、熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):プロピレン単位の含有率が50~97質量%でエチレン単位の含有率が3~50質量%のプロピレン系ブロック共重合体。
  2. キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃のせん断速度60.80/s~6080/sの範囲におけるダイスウェル比の最大値と最小値の比が1.15以下である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 更に下記成分(B)を含有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(B):プロピレン単位とエチレン単位及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位とからなるプロピレン系ランダム共重合体。
  4. 更に下記成分(C)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物
    成分(C):エチレン単位と炭素数が4以上20以下のα-オレフィン単位とからなるエチレン系共重合体。
  5. 前記成分(C)のα-オレフィン単位の炭素数が4以上8以下である、請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 前記成分(C)が架橋構造を有する、請求項4又は5に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 更に下記成分(D)を含み、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対する下記成分(D)の含有量が0.01質量部~1.00質量部である請求項6に記載の熱可塑性エラストマー組成物
    成分(D):有機過酸化物
  8. 更に下記成分(E)を含み、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対する下記成分(E)の含有量が0.01質量部~1.00質量部である請求項6又は7に記載の熱可塑性エラストマー組成物
    成分(E):架橋助剤
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
  10. 請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いたエアバッグ収納カバー。
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