JP2023116026A - ステータコイルの絶縁状態観測方法、及びステータコイルの絶縁状態観測システム - Google Patents
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Abstract
【課題】回転電機が通常運転状態の場合と同様の電気的環境下において、ステータコイルの有限絶縁寿命試験を適切に実施することができる技術を提供する。
【解決手段】N相コイルにインバータINVを接続すると共に、N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置GSと、インバータINVとをN相コイルに接続する。コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体11と第2試験用導体12とを互いに接触させた状態で、第1試験用導体11を第1の相のコイルに接続し、第2試験用導体12を第2の相のコイルに接続する。試験状態で、電圧印加装置GSにより、通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧をN相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、運転状態電圧印加処理の実行中に、第1試験用導体11と第2試験用導体12との間の部分放電を検出する第1放電検出処理を行う。
【選択図】図10
【解決手段】N相コイルにインバータINVを接続すると共に、N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置GSと、インバータINVとをN相コイルに接続する。コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体11と第2試験用導体12とを互いに接触させた状態で、第1試験用導体11を第1の相のコイルに接続し、第2試験用導体12を第2の相のコイルに接続する。試験状態で、電圧印加装置GSにより、通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧をN相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、運転状態電圧印加処理の実行中に、第1試験用導体11と第2試験用導体12との間の部分放電を検出する第1放電検出処理を行う。
【選択図】図10
Description
本発明は、ステータコイルの絶縁状態を観測する技術に関する。
交流の回転電機におけるステータコイルの絶縁寿命について、2007年に国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)により規定されたIEC Standard 60034-18-41がある。この標準規格は、交流の回転電機における交流電圧の実効値が、概ね300ボルトから700ボルトの場合を対象としている。そして、この標準規格では、ステータコイルと同じ導線を用いた試験用導線(図1に示すツイストペアTP)にインパルス電圧を印加して、部分放電が発生しないことを合格条件としている。つまり、この標準規格は、絶縁寿命として、いわゆる無限寿命を規定している。
一方、回転電機により高い出力が求められるようになると、交流電圧の実効値も高くなり、交流電圧の実効値が700ボルト以上の場合に対応する標準規格として、2017年に、国際電気標準会議によりIEC Standard 60034-18-42が規定されている。この標準規格では、ステータコイルと同じ導線を用いた試験用導線(図2に示す平行結合バーCB)にインパルス電圧を印加して、規定された時間内に放電が規定回数以下しか発生しないことを合格条件としている。この標準規格では、放電が発生する回数が多くなるほど、絶縁性能が低下することに鑑みて、規定回数と絶縁寿命との関係が規定されている。つまり、この標準規格は絶縁寿命として、いわゆる有限寿命を規定している。
これらの標準規格は、共にステータコイルに電流が流れていない状態いわゆるオフライン状態でステータコイルの絶縁寿命を試験するための規定である。しかし、回転電機が回転する際には、回転電機を駆動させるための電流(回転磁界を与えるための電流)や、ロータの回転により発生する逆起電力に伴う電流が、ステータコイルに流れる。オフライン状態における試験では、ステータコイルに電流が流れていない状態で試験が行われるため、現実のステータコイルの絶縁寿命が正確に評価できない可能性がある。このため、ステータコイルに電流を流した状態、つまりオンライン状態でステータコイルの絶縁寿命を試験することが考えられる。
下記に出展を示す、東芝、及び東芝三菱電機産業システムによる論文には、オフライン試験の他、オンライン試験についても言及されている。例えば、当該論文のFig.4(本明細書に添付する図30に再掲)には、3相のステータコイルを備えた回転電機501にIGBTを用いたインバータ502を接続し、当該インバータ502と回転電機501との間に部分放電検出器503を備えた試験装置が例示されている。
Satoshi Hiroshima他、Toshiba Corporation and Toshiba Mitsubishi-Electric Industrial Systems Corporation、"Off-line and On-line Detection of PD in Inverter-Fed Random-Wound Motor Considering IEC Technical Specifications"、2012 Annual Report IEEE Conference on Electrical Insulation and Dielectric Phenomena、14-17 October 2012、Conference in Montreal, QC, Canada
上述したように、現在は、IEC Standard 60034-18-41及びIEC Standard 60034-18-42のように、オフライン試験によるステータコイルの絶縁寿命については標準化されている。しかし、オフライン試験では、実際の回転電機を駆動する際と同等のスイッチングパルス(インバータを駆動する際のスイッチングパルス)がステータコイルに印加されるわけではない。また、オフライン試験では、変調率等、回転電機の動作条件を変化させておらず、例えば回転電機が車両の駆動力源の場合、車両の走行状況等が適切に反映されていない。そして、オフライン試験では、ステータコイルに電流が流れていない。このように、オフライン試験では、実際の使用状況とは異なる条件下で試験が実施されており、ステータコイルの絶縁寿命を評価する上で課題がある。
上述した論文では、実際の回転電機を用いたオンライン試験が提案されている。しかし、有限寿命試験では、上述したように、試験における放電が規定回数以下しか発生しないことを合格条件とする。そして、試験の際には、試験の効率化(試験時間の短縮)、精度の担保(放電回数に応じた絶縁寿命の信頼性)等のため、環境条件を加味した加速試験が行われることが多い。例えば加速試験においては、回転電機を高温環境下において試験を実施することが考えられるが、この場合、ロータに配置された永久磁石の減磁が生じる場合があり正確な試験が実施できないおそれがある。一方、ロータを撤去して、ステータ及びステータコイルのみを試験対象とすると、ロータの回転に伴う逆起電力が適切に考慮されなくなり、やはり正確な試験が実施できないおそれがある。
また、オンライン試験では、供試体(ここでは回転電機)を稼働させて性能試験を行うための試験機であるダイナモ・ベンチ(Dynamo Bench)が利用される場合がある。部分放電の発生は、部分放電により生じた電磁波をアンテナにより検出ことによって検出されることが多いが、ダイナモ・ベンチはノイズを発生し易く、試験環境におけるバックグラウンドノイズが多くなる。つまり、部分放電が生じた際の電磁波とバックグラウンドノイズとの区別が難しく、当該電磁波を適切に検出できない場合がある。
上述したように、無限寿命及び有限寿命の双方についてオフライン試験には標準化された規格がある。しかし、現在、有限寿命を規定するオンライン試験については、標準化された規格は存在していない。即ち、永久磁石型の回転電機におけるステータコイルを対象として、適切にオンライン試験を行うためには、まだ課題がある。
上記背景に鑑みて、回転電機が通常運転状態の場合と同様の電気的環境下において、ステータコイルの有限絶縁寿命試験を適切に実施することができる技術の提供が望まれる。
上記に鑑みたステータコイルの絶縁状態観測方法は、1つの態様として、N相コイル(Nは任意の自然数)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測する方法であって、
前記N相コイルにインバータを接続すると共に、前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置を接続し、
前記コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体と第2試験用導体とを用い、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体とを互いに接触させた状態で、前記第1試験用導体を前記N相コイルにおける第1の相のコイルに接続し、前記第2試験用導体を前記N相コイルにおける第2の相のコイルに接続し、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体との間の部分放電を検出する第1放電検出処理を行う。
前記N相コイルにインバータを接続すると共に、前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置を接続し、
前記コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体と第2試験用導体とを用い、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体とを互いに接触させた状態で、前記第1試験用導体を前記N相コイルにおける第1の相のコイルに接続し、前記第2試験用導体を前記N相コイルにおける第2の相のコイルに接続し、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体との間の部分放電を検出する第1放電検出処理を行う。
また、ステータコイルの絶縁状態観測方法は、別の態様として、N相コイル(Nは任意の自然数)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測する方法であって、
前記N相コイルにインバータを接続すると共に、前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置を接続し、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記N相コイルにおける異なる相のコイル間の部分放電を検出する第2放電検出処理、及び、前記N相コイルとグランドとの間の部分放電を検出する第3放電検出処理の少なくとも一方を行う。
前記N相コイルにインバータを接続すると共に、前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置を接続し、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記N相コイルにおける異なる相のコイル間の部分放電を検出する第2放電検出処理、及び、前記N相コイルとグランドとの間の部分放電を検出する第3放電検出処理の少なくとも一方を行う。
また、上記に鑑みたステータコイルの絶縁状態観測システムは、1つの態様として、
前記N相コイルに接続されたインバータと、
前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置を制御する制御装置と、
放電を検出する放電検出装置と、
前記コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体と第2試験用導体とを互いに接触させた状態で、前記第1試験用導体が前記N相コイルにおける第1の相のコイルに接続され、前記第2試験用導体が前記N相コイルにおける第2の相のコイルに接続された試験用導体対と、を備え、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記制御装置は、前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記放電検出装置は、前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体との間に生じる部分放電を検出する。
前記N相コイルに接続されたインバータと、
前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置を制御する制御装置と、
放電を検出する放電検出装置と、
前記コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体と第2試験用導体とを互いに接触させた状態で、前記第1試験用導体が前記N相コイルにおける第1の相のコイルに接続され、前記第2試験用導体が前記N相コイルにおける第2の相のコイルに接続された試験用導体対と、を備え、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記制御装置は、前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記放電検出装置は、前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体との間に生じる部分放電を検出する。
また、上記に鑑みたステータコイルの絶縁状態観測システムは、別の態様として、
前記N相コイルに接続されたインバータと、
前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置を制御する制御装置と、
放電を検出する放電検出装置と、を備え、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記制御装置は、前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記放電検出装置は、前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記N相コイルにおける異なる相のコイル間に生じる部分放電、及び、前記N相コイルとグランドとの間に生じる部分放電の少なくとも1つを検出する。
前記N相コイルに接続されたインバータと、
前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置を制御する制御装置と、
放電を検出する放電検出装置と、を備え、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記制御装置は、前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記放電検出装置は、前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記N相コイルにおける異なる相のコイル間に生じる部分放電、及び、前記N相コイルとグランドとの間に生じる部分放電の少なくとも1つを検出する。
これらの方法及びこれらのシステムによれば、回転電機のロータを実際に回転駆動させることなく、ロータを回転駆動している状態と同様の電流及び電圧の状態を回転電機のステータにおいて再現することができる。よって、第1試験用導体及び第2試験用導体を用いる場合であっても、これらの試験用導体を用いない場合であっても、実際の回転電機の使用状態に近い環境でのコイル用導体の絶縁状態を比較的容易に観測することができる。この際、実際にロータを回転駆動するのではなく、電圧印加装置により通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧をN相コイルに印加するため、ロータを回転駆動する場合に生じる場合があるノイズの影響を受けることなく絶縁状態の観測を行うことができる。従って、部分的な絶縁破壊により生じる微弱な物理現象(例えば電磁波の発生、微少電流の発生など)も高精度に計測することができる。このように、これらの方法及びこれらのシステムによれば、回転電機が通常運転状態の場合と同様の電気的環境下において、ステータコイルの有限絶縁寿命試験を適切に実施することができる。
ステータコイルの絶縁状態観測方法、及びステータコイルの絶縁状態観測システムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
以下、N相コイル(Nは任意の自然数、本実施形態ではN=3)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測するステータコイルの絶縁状態観測方法及び絶縁状態観測システムについて図面を参照して説明する。はじめに国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)により規定された2つの標準規格について簡単に説明する。2つの標準規格は、オフラインによる無限寿命試験及びオフラインによる有限寿命試験である。ここで、オフラインとは、ステータコイルに電流が流れていない状態のことをいう。また、無限寿命試験とは、複数回インパルス電圧が印加されても絶縁破壊が発生しない(部分放電が発生しない)ことを合格条件とする試験であり、有限寿命試験とは、複数回インパルス電圧を印加された場合に部分放電が規定回数以下しか発生しないことを合格条件とする試験である。
図1及び図2は、絶縁被覆を備えたコイル用導体(ステータコイル)と同じ構造である第1試験用導体11と第2試験用導体12とを用いて形成された試験用導体対1の一例を示している。図1は、導電性の芯線が被覆された丸線13と称される導線(丸束巻線(round bundle winding)とも称される場合もある)を2本螺旋状に巻いたツイストペア(twisted pair)TPとして構成された試験用導体対1を例示している。また、図2は、断面が矩形状の導電性の芯線が被覆された平角線(rectangular bar winding)と称される導線を2本束ねた平行結合バー(parallel coupled bar)CBとして構成された試験用導体対を例示している。図2に示すように、平行結合バーCBは、それぞれ銅線16(芯線)が絶縁被覆17により被覆された平角線15を結束用絶縁被覆18により結束し、結束用絶縁被覆18の両端部において2本の平角線15を離間させ、その離間部に非導電性の充填剤19が充填されて形成されている。上述した標準規格では、これらの試験用導体対1が用いられる。
標準規格におけるオフラインでの無限寿命試験では、上述したツイストペアTPにおける部分放電を試験するターン間短絡試験(TT:Turn to Turn)、複数相のステータコイルの1相とグラウンド間の部分放電を試験する地絡試験(PG:Phase to Ground)、複数相のステータコイルの相間の部分放電を試験する相間短絡試験(PP:Phase to Phase)が規定されている。無限寿命試験では、複数回インパルス電圧が印加された場合に、その全てにおいて部分放電が発生しないことを合格条件としており、1回のインパルス電圧の印可時には、電気角で1周期のインパルス電圧が印加される。図3は、ターン間短絡試験におけるインパルス電圧の波形を示しており、図4は、地絡試験におけるインパルス電圧の波形を示しており、図5は、相間短絡試験におけるインパルス電圧の波形を示している。
この無限寿命試験は、回転電機の交流の電圧の実効値(root mean square value, RMS)が300ボルトから700ボルトの場合を対象としている。一般的に交流の回転電機は、直流と交流との間で電力を変換するインバータを介して直流電源と接続されている。上述したインパルス電圧の波高値は、インバータの直流側の電圧(直流リンク電圧Vdc)に基づいて規定されている。ターン間短絡試験におけるインパルス電圧の振幅は、交流の回転電機に接続されるインバータの直流側の電圧である直流リンク電圧(Vdc)の1.71倍、地絡試験におけるインパルス電圧の波高値は、直流リンク電圧(Vdc)の1.45倍、相間短絡試験におけるインパルス電圧の波高値は、直流リンク電圧(Vdc)の2.44倍に設定されている。
標準規格におけるオフラインでの有限寿命試験では、上述した平行結合バーCBにおける部分放電を試験するターン間短絡試験(TT)、複数相のステータコイルの1相とグラウンド間の部分放電を試験する地絡試験(PG)、複数相のステータコイルの相間の部分放電を試験する相間短絡試験(PP)が規定されている。有限寿命試験では、規定時間内に複数回インパルス電圧を印加された場合に部分放電が規定回数以下しか発生しないことを合格条件としており、図6及び図7に示すような複数周期のインパルス電圧が繰り返し印加される。この有限寿命試験は、回転電機の交流の電圧の実効値が700ボルト以上の場合を対象としている。そして、インパルス電圧の波高値は、それぞれの試験における絶縁寿命に応じて(絶縁破壊を生じるようになる時間と電圧との関係に応じて)設定されている。
ところで、標準規格におけるオフラインでの有限寿命試験には、下記(a)~(c)のような課題がある。
(a)オフライン試験では、実際のインバータと同様の変調パルスをステータコイルに印可できていない。
(b)オフライン試験では、ステータコイルには電流が流れていない。
(c)オフライン試験では、実際の回転電機の動作に応じた変調率の変化を行っておらず、ステータコイルに印可される変調パルスのデューティーが変化していない。
(a)オフライン試験では、実際のインバータと同様の変調パルスをステータコイルに印可できていない。
(b)オフライン試験では、ステータコイルには電流が流れていない。
(c)オフライン試験では、実際の回転電機の動作に応じた変調率の変化を行っておらず、ステータコイルに印可される変調パルスのデューティーが変化していない。
例えば、図7は、オフライン試験におけるサージ電圧を含むパルス波形の一例を示しており、図8は、実際の回転電機におけるサージ電圧を含む変調パルス波形の一例を示している。図7に示すように、オフライン試験で印加されるサージ電圧の振幅のピーク値は直流リンク電圧VdcのK倍で、ほぼ一定である。これに対して、図8に示すように、実際の回転電機では、サージ電圧のピーク値が一定ではなく、直流リンク電圧VdcのK倍を超えるものも多い。
標準規格における有限絶縁寿命試験には、上述した(a)~(c)のような課題があり、実際の回転電機におけるサージの影響が試験に正しく反映されているとは言えない。即ち、有限絶縁寿命が正しく試験できているとは言えず、ステータコイルに電流を流した状態、つまりオンライン状態でステータコイルの絶縁寿命を試験することが求められる。
例えば、図30は、そのようなオンライン状態での試験システムの一例を示している。この試験システムでは、3相のステータコイルを備えた回転電機501にIGBTを用いたインバータ502を接続し、当該インバータ502と回転電機501との間に部分放電検出器503を備えている。
このように実際の回転電機501を用いたオンライン試験では、供試体(ここでは回転電機)を稼働させて性能試験を行うための試験機であるダイナモ・ベンチ(Dynamo Bench)が利用される場合がある。部分放電の発生は、部分放電により生じた電磁波をアンテナにより検出ことによって検出されることが多いが、ダイナモ・ベンチはノイズを発生し易く、試験環境におけるバックグラウンドノイズが多くなる。つまり、部分放電が生じた際の電磁波とバックグラウンドノイズとが区別できず、当該電磁波が検出できない場合がある。
また、有限寿命試験では、上述したように、試験における放電が規定回数以下しか発生しないことを合格条件とする。そして、試験の際には、試験の効率化(試験時間の短縮)、精度の担保(放電回数に応じた絶縁寿命の信頼性)等のため、環境条件を加味した加速試験が行われることが多い。例えば加速試験においては、回転電機を高温環境下において試験を実施することが考えられるが、この場合、ロータに配置された永久磁石の減磁が生じる場合があり正確な試験が実施できないおそれがある。一方、ロータを撤去して、ステータ及びステータコイルのみを試験対象とすると、ロータの回転に伴う逆起電圧が考慮できなくなり、やはり正確な試験が実施できないおそれがある。
即ち、既存のオンライン試験には、下記(d)、(e)のような課題がある。
(d)ダイナモ・ベンチにより回転電機のロータを回転させながら部分放電の電圧を計測する(多くの場合、電磁波をアンテナにより検出する)ことが、バックラウンドノイズの影響によって困難である。
(e)有限絶縁寿命試験の場合、環境温度を上げて加速試験を実施するが、永久磁石を備えたロータを高温環境下に置いた場合には減磁等の問題があるため、加速試験を実施することが難しい。
(d)ダイナモ・ベンチにより回転電機のロータを回転させながら部分放電の電圧を計測する(多くの場合、電磁波をアンテナにより検出する)ことが、バックラウンドノイズの影響によって困難である。
(e)有限絶縁寿命試験の場合、環境温度を上げて加速試験を実施するが、永久磁石を備えたロータを高温環境下に置いた場合には減磁等の問題があるため、加速試験を実施することが難しい。
上記、(a)~(e)の課題に鑑みて、発明者らによって本明細書において説明するような、新たな試験方法並びに試験システム(ステータコイルの絶縁状態観測方法及び絶縁状態観測システム)が提案されている。以下、これらの方法及びシステムについて詳細に説明する。
図9から図12は、本実施形態に係る試験システム(絶縁状態観測システム)の模式的ブロック図である。図9及び図10は、上述したターン間短絡試験(TT)を行う場合の試験システムを示しており、図11及び図12は、上述した地絡試験(PG)又は相間短絡試験(PP)を行う場合の試験システムを示している。
また、図9及び図11は、複数相(ここでは3相)のステータコイルが中性点において互いに接続されたいわゆるスター結線のステータコイルを有する回転電機のステータコイルを試験対象とした試験システムを例示している。複数相のステータコイルの一端側は、中性点において互いに接続され、複数相のステータコイルの他端側は、直流と複数相の交流との間で電力を変換する1つのインバータINVの各相のアームに接続されている。本明細書では、適宜このシステムをシングルインバータシステムと称する場合がある。
また、図10及び図12は、複数相(ここでは3相)のオープン巻線を有する回転電機のステータコイルを試験対象とした試験システムを例示している。複数相のオープン巻線の一端側には、直流と複数相の交流との間で電力を変換する第1インバータINV1が接続され、複数相のオープン巻線の他端側には、直流と複数相の交流との間で電力を変換する第2インバータINV2が接続されている。本明細書では、適宜このシステムをデュアルインバータシステムと称する場合がある。尚、デュアルインバータシステムにおいても両インバータを区別するようがない場合には、総称して単にインバータINVと称する。
図9から図12に示すように、回転電機からはロータが取り外されている。つまり、発明者らによって提案されるオンライン試験では、実際にロータを回転させることなく、ステータコイルにおける電気的な状態を、ロータが回転している場合と同じ状態としている。ステータコイルには、インバータINVを介して駆動電圧が印加されるだけではなく、ロータの回転によって生じる逆起電圧(逆起電力、誘導起電圧、誘導起電力)も印加される。ロータが無い状態で、ロータの回転によってステータコイルに誘起される逆起電圧をステータコイルに印加するために、電圧印加装置GS(任意電圧波形発生電源、例えばグリッドシミュレータ)がステータコイルに接続されている。つまり、発明者らによって提案されるオンライン試験では、ロータが回転を停止した状態又はロータがステータに対向していない状態である試験状態で、電圧印加装置により、通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧をN相コイルに印加する運転状態電圧印加処理が実行される。尚、本明細書においては、ロータがステータに対向していない場合を含み、試験状態において逆起電圧を生じないロータを「エアロータ(air rotor)」と称する場合がある。
回転電機からロータが取り外されていることにより、ダイナモ・ベンチ等を用いてロータを回転させることはない。部分放電の発生は、例えば、放電により生じた電磁波を図9~図12では不図示のアンテナ(図16~図19におけるアンテナ4)により受信することで検出される。ダイナモ・ベンチを用いないことにより、バックグラウンドノイズが抑制されるので、部分放電が発生したことを適切に検出することができる。例えば、次第に印加電圧を上昇させながら試験を行った場合には、部分放電開始電圧(PDIV:Partial Discharge Inception Voltage)も適切に判定することができる。このように、図9~図12に例示したシステムは、上述した(d)の課題に対応したシステム構成となっている。
また、ロータが回転しない、或いはロータが存在しなくてもよいことから、環境温度等を変化させた場合の永久磁石の減磁も問題ではない。例えば、高い環境温度下における加速劣化試験も実行することができる。つまり、図9~図12に例示したシステムは、上述した(e)の課題にも対応したシステム構成となっている。
図13は、シングルインバータシステムにおけるステータコイルの電流及び電圧波形を示している。また、図14は、デュアルインバータシステムにおけるステータコイルの電流及び電圧波形を示している。図13及び図14に共通して、左は回転電機にロータを備えている場合の波形を示し、右はエアロータの場合、即ちステータコイルにグリッドシミュレータを接続した場合の波形を示している。
図13に示すシングルインバータシステムでは、ロータ有りの場合のサージ電圧のピーク値に比べてグリッドシミュレータを接続した場合のサージ電圧のピーク値が2.0%大きくなっているにすぎず、サージ電圧のピーク値はほぼ同等ということができる。また、サージ電圧の平均値についても、ロータ有りの場合の値に対してグリッドシミュレータを接続した場合の値が0.2%大きくなっているにすぎず、サージ電圧の平均値についても、ほぼ同等ということができる。
同様に、図14に示すデュアルインバータシステムでは、ロータ有りの場合のサージ電圧のピーク値に比べてグリッドシミュレータを接続した場合のサージ電圧のピーク値が0.5%大きくなっているにすぎず、サージ電圧のピーク値はほぼ同等ということができる。また、サージ電圧の平均値についても、ロータ有りの場合の値に対してグリッドシミュレータを接続した場合の値が0.8%大きくなっているにすぎず、サージ電圧の平均値についても、ほぼ同等ということができる。
エアロータの場合に、ロータがある場合と同様の逆起電圧をステータコイルに与える詳細な構成については後述するが、このように、本実施形態に係るステータコイルの絶縁状態観測方法、及びステータコイルの絶縁状態観測システムによれば、回転電機が通常の運転状態の場合と同様の電気的環境下において、ステータコイルの有限絶縁寿命試験を適切に実施することができる。
ところで、デュアルインバータシステムでは、一方のインバータの出力を正、他方のインバータの出力を負とすることによって、システムとして、1つのインバータにおける振幅の倍の振幅の電圧をステータコイルに印加することができる。このため、図15に示すように、シングルインバータシステムに比べて、デュアルインバータシステムでは、相対的にサージ電圧もピーク値も低くすることができる。発明者らの実験やシミュレーションによれば、1つの変調パルスに対して直流リンク電圧(Vdc)の2倍の電圧に達するサージ電圧が生じる割合が、ほぼ100%であるシングルインバータシステムに比べて、デュアルインバータシステムでは20%程度に抑制されることが確認された。
高いサージ電圧が発生する回数が少ないと、同じ絶縁能力を有していた場合に、部分放電開始電圧(PDIV)がより高くなる可能性がある。逆に考えると、デュアルシステムインバータシステムでは、シングルインバータシステムと同じ部分放電開始電圧(PDIV)を担保できるように設計する場合に、絶縁性能を低く抑えることができ、コストの低減が可能となる。
以下、本実施形態に係るステータコイルの絶縁状態観測システムの具体的な構成について説明する。図16及び図17のブロック図は、ターン間短絡試験を行う絶縁状態観測システム100(ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101)のシステム構成の一例を示しており、図18及び図19のブロック図は、地絡試験(又は相間短絡試験)を行う絶縁状態観測システム(地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102)のシステム構成の一例を示している。また、図16及び図18のブロック図は、シングルインバータシステムにおける絶縁状態観測システム100のシステム構成の一例を示しており、図17及び図19のブロック図は、デュアルインバータシステムにおける絶縁状態観測システム100のシステム構成の一例を示している。
はじめに、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101について説明する。図16のブロック図は、シングルインバータシステムにおいてターン間短絡試験を行う第1絶縁状態観測システム101Sのシステム構成の一例を示しており、図17のブロック図は、デュアルインバータシステムにおいてターン間短絡試験を行う第2絶縁状態観測システム101Dのシステム構成の一例を示している。
図16及び図17に示すように、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101は、N相コイル(ステータコイル)に接続されたインバータINV(デュアルインバータシステムでは第1インバータINV1及び第2インバータINV2)と、N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置GSと、電圧印加装置GSを制御する制御装置2と、試験用導体対1と、放電を検出する放電検出装置5とを備えている。上述したように、試験用導体対1は、コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体11と第2試験用導体12とを互いに接触させた状態で、第1試験用導体11がN相コイルにおける第1の相のコイルに接続され、第2試験用導体12がN相コイルにおける第2の相のコイルに接続されている。
制御装置2は、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータなどの論理演算装置を中核として構成されている。制御装置2は、ロータが回転を停止した状態又はロータがステータに対向していない状態である試験状態で、電圧印加装置GSにより、通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧をN相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行う。ここで、「ロータが回転を停止した状態」とは、ロータ及びステータを備えた通常の構成の回転電機においてロータが回転していない状態である。また、「ロータがステータに対向していない状態」とは、回転電機からロータが取り外されている状態である。また、「通常運転状態」とは、ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界によりロータを回転駆動している状態である。通常運転状態におけるロータに対して、試験状態におけるロータ(取り外されて存在していない場合も含む)を区別する場合には、上述したように「エアロータ」と称する。
通常運転状態において、ロータが回転していると、ステータコイルには逆起電圧が誘導される。しかし、ロータが回転を停止した状態又はロータがステータに対向していない状態である試験状態では、この逆起電圧が生じない。従って、「試験状態」において「通常運転状態」を再現するためには、逆起電圧に相当する電圧を別途ステータコイルに与える必要がある。本実施家形態の絶縁状態観測システム100(絶縁状態観測方法も含む)は、この逆起電圧に相当する電圧をステータコイルに与える「運転状態電圧印加処理」を行う点に特徴を有する。「運転状態電圧印加処理」の詳細については後述する。
放電検出装置5は、運転状態電圧印加処理の実行中に、第1試験用導体11と第2試験用導体12との間に生じる部分放電を検出する。つまり、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101は、運転状態電圧印加処理の実行中に、第1試験用導体11と第2試験用導体12との間の部分放電を検出する第1放電検出処理を行う。放電を検出する放電検出装置5として、本実施形態のターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101は、放電により生じる電磁波を受信するアンテナ4と、当該アンテナ4が受信した信号を表示及び記録する記録計としてのオシロスコープOSとを備えている。本実施形態のように、放電によって単発的に生じる信号を記録するため、オシロスコープOSは、スウィープ・トリガではなく1ショット・トリガにより記録可能な装置であると好ましい。オシロスコープOSは、アンテナ4が受信した信号をトリガとして、当該信号を記録する。尚、記録計は、オシロスコープOSに限らず、メモリハイコーダ等のデータ収集装置(DAQ:data acquisition device)や波形記録計であってもよい。
尚、部分放電が発生すると、電磁波を発生するだけではなく、ステータコイルを流れる電流が増加することも知られている。従って、アンテナ4及びオシロスコープOSに代えて、或いはこれらに加えて、部分放電によって増加する電流を検出可能な電流検出器(電流センサ)を放電検出装置5とすることもできる。尚、この電流センサはインバータINVをフィードバック制御するためにステータコイルを流れる電流を検出する電流センサ(例えば図23に示す電流センサ79)を兼用してもよい。
また、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101は、外気の温度及び湿度に拘わらず環境温度及び環境湿度を予め設定された一定の温度及び一定の湿度に保つことができ、試験用導体対1を収容できる恒温恒湿槽9をさらに備えていてもよい。ターン間短絡試験は、試験用導体対1を恒温恒湿槽9に収容した状態で実施することができる。環境温度など、環境条件を厳しくすることで、加速試験が実現でき、有限絶縁寿命試験を実施する時間を短縮することができる。ターン間短絡試験の際に設定される環境温度は、常温(20~25℃程度)よりも高い温度(例えば40~50℃)や、常温(20~25℃程度)よりも低い温度(-20~40℃)であり、環境湿度は例えば低湿の場合は20~30%、高湿の場合は80~90%である。例えば、いわゆる高温条件(一定の湿度で、外気温(常温)よりも高い一定の温度(40~50℃)に保たれた条件)や、高温・高湿条件(外気温(常温)よりも高い一定の温度(40~50℃)、及び、外気よりも高い一定の湿度(80から90%)に保たれた条件)において試験を行うことで、適切に加速試験を行うことができる。
つまり、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101は、一定の湿度、及び、外気温よりも高い一定の温度に保つことができ、試験用導体対1(第1試験用導体11及び第2試験用導体12)を収容できる恒温恒湿槽9を備えており、試験用導体対1(第1試験用導体11及び第2試験用導体12)を、一定の湿度、及び、外気温よりも高い一定の温度に保たれた恒温恒湿槽9内に配置した状態で、運転状態電圧印加処理及び第1放電検出処理を行う。当然ながら、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101は、恒温恒湿槽9を備えることなく構成されていてもよい。
続いて、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102について説明する。図18のブロック図は、シングルインバータシステムにおいて地絡試験(又は相間短絡試験)を行う第3絶縁状態観測システム102Sのシステム構成の一例を示しており、図19のブロック図は、デュアルインバータシステムにおいて地絡試験(又は相間短絡試験)を行う第4絶縁状態観測システム102Dのシステム構成の一例を示している。
図18及び図19に示すように、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102は、N相コイル(ステータコイル)に接続されたインバータINV(デュアルインバータシステムでは第1インバータINV1及び第2インバータINV2)と、N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置GSと、電圧印加装置GSを制御する制御装置2と、放電を検出する放電検出装置5とを備えている。ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101が試験用導体対1を備えているのとは異なり、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102は、試験用導体対1を備えていない。
論理演算装置を中核として構成されている制御装置2は、ロータが回転を停止した状態又はロータがステータに対向していない状態である試験状態で、電圧印加装置GSにより、通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧をN相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行う。試験状態、通常運転状態については上述した通りである。放電検出装置5は、運転状態電圧印加処理の実行中に、N相コイルにおける異なる相のコイル間に生じる部分放電、及び、N相コイルとグランドとの間に生じる部分放電の少なくとも1つを検出する。つまり、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102は、運転状態電圧印加処理の実行中に、N相コイルにおける異なる相のコイル間の部分放電を検出する第2放電検出処理、及び、N相コイルとグランドとの間の部分放電を検出する第3放電検出処理の少なくとも一方を行う。尚、放電検出装置5の構成については、ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101と同様であるから説明を省略する。
ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101と同様に、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102も、外気の温度及び湿度に拘わらず環境温度及び環境湿度を予め設定された一定の温度及び一定の湿度に保つことができ、ステータコイル(N相コイル)を収容できる恒温恒湿槽9をさらに備えているとよい。地絡試験(又は相間短絡試験)は、N相コイルを恒温恒湿槽9に収容した状態で実施することができる。環境温度など、環境条件を厳しくすることで、加速試験が実現でき、有限絶縁寿命試験を実施する時間を短縮することができる。地絡試験(又は相間短絡試験)の際に設定される環境温度は、常温(20~25℃程度)よりも高い温度(例えば40~50℃)や、常温(20~25℃程度)よりも低い温度(-20~40℃)であり、環境湿度は例えば低湿の場合は20~30%、高湿の場合は80~90%である。例えば、いわゆる高温条件(一定の湿度で、外気温(常温)よりも高い一定の温度(40~50℃)に保たれた条件)や、高温・高湿条件(外気温(常温)よりも高い一定の温度(40~50℃)、及び、外気よりも高い一定の湿度(80から90%)に保たれた条件)において試験を行うことで、適切に加速試験を行うことができる。
つまり、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102は、一定の湿度、及び、外気温よりも高い一定の温度に保つことができ、ステータコイル(N相コイル)を収容できる恒温恒湿槽9をさらに備えており、ステータコイル(N相コイル)を、一定の湿度、及び、外気温よりも高い一定の温度に保たれた恒温恒湿槽9内に配置した状態で、運転状態電圧印加処理、並びに、第2放電検出処理及び第3放電検出処理の少なくとも一方を行う。当然ながら、地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102は、恒温恒湿槽9を備えることなく構成されていてもよい。
ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101及び地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102に共通して、本実施形態では、電圧印加装置GSとしてグリッドシミュレータを用いる形態を例示している。しかし、電圧印加装置GSは、グリッドシミュレータに限らず、任意電圧波形発生電源(AWG:Arbitrary Waveform Generator)を用いて構成されていてもよい。任意電圧波形発生電源とは、プログラム等により設定された任意の波形を出力する電源装置である。
以下、「運転状態電圧印加処理」の詳細について説明する。本実施形態では、回転電機の回転に同期して回転する2軸の直交ベクトル空間(直交ベクトル座標系)における電流ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を実行して回転電機を制御する。電流ベクトル制御法では、例えば、永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と、このd軸に対して電気的にπ/2進んだq軸とのdq軸ベクトル座標系において電流フィードバック制御を行う。制御装置2は、制御対象となる回転電機の目標トルクに基づいてトルク指令T*を決定し、d軸電流指令Id*及びq軸電流指令Iq*を決定する。
dq軸の電流を一定と見なせる定常状態では、電圧方程式における時間微分の項はゼロとなるため、dq軸の電圧は下記式(1)に簡略化される。
ここで、Vd、Vqはそれぞれd軸電圧、q軸電圧であり、id、iqはそれぞれd軸電流、q軸電流であり、Rはステータコイルの抵抗(巻線抵抗)であり、ωは角速度であり、Ld、Lqはそれぞれd軸インダクタンス、q軸インダクタンスであり、φmは永久磁石の鎖交磁束(マグネット磁束)である。
図20は、ロータを有する通常の回転電機の電圧ベクトル図を示している。dq軸ベクトル座標系では上述したようにd軸を永久磁石による界磁磁束の方向に沿った方向としているので、マグネット磁束φmは、d軸上にある。Ldid及びLqiqは、それぞれd軸及びq軸の鎖交磁束成分としてマグネット磁束φmに加えられ、総合鎖交磁束(トータル磁束)φtとなる。
電機子電流iaは、d軸電流idとq軸電流iqとの合成である。そして、q軸と電機子電流iaとの角度は、無負荷時の逆起電圧ωMif(=ωφm)を基準にした電流位相角βに相当する。また、電機子電圧Vaは、逆起電圧ωMifに、d軸及びq軸の電機子反作用による電圧ωLqiq、ωLdidを加えた誘導性電圧V0に、さらに巻線抵抗Rによる電圧降下Riaを加えた電圧である。そして、q軸と電機子電圧Vaとの角度は、無負荷時の逆起電圧ωMif(=ωφm)を基準にした電圧位相角αに相当する。尚、図20に示すように、誘導性電圧V0は、トータル磁束φtよりも90°進んだ位相である。
図21は、ロータ無し(エアロータ)の回転電機の逆起電圧の振幅を補正した電圧ベクトル図を示している。Ld2、Lq2は、それぞれエアロータの回転電機におけるd軸インダクタンス、q軸インダクタンスを示している。永久磁石を備えたロータが存在しないため、「Ld2<Ld1」、「Lq2<Lq1」であり、トータル磁束φtは、ロータを備えた回転電機に比べて小さくなっている。尚、エアロータでは、「Ld2=Lq2」である。
ロータを備えた回転電機に比べてエアロータでは、このようにd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスが小さくなるため、電機子反作用による電圧(ωLq2iq、ωLd2id)も小さくなり、電機子電圧Va2も小さくなってしまう。つまり、出力電圧の振幅が小さくなってしまう。例えば、逆起電圧ωMifに補正用のゲイン「Ka」を乗じて、逆起電圧ωMifを補正することで、エアロータにおける電機子電圧Va2の大きさを、ロータ有りの場合の電機子電圧Vaの大きさと同等とすることができる。このゲイン「Ka」は下記のように求めることができる。
電機子電圧Vaは、交流電圧の実効値であり、直流電圧(直流リンク電圧Vdc)に対する交流電圧の実効値の割合を示す変調率Midxは、図20及び図21のベクトル図からも明らかなように、下記式(2)で示すことができる。尚、巻線抵抗Rによる電圧降下Riaについては、回転速度が大きくなると無視できるため、式(2)の右辺では「Va=V0」として立式している。
以下、計算式を簡潔に示すため、試験における計測ポイントにおいて固定値となる「ωLqiq」を「K1」、「ωLdid」を「K2」、「ωMif」を「K3」と置き換える。また、ロータ有りの回転電機の場合における「K1」を「K11(=ωLq1iq1)」、「K2」を「K21(=ωLd1id1)」とし、ロータ無し(エアロータ)の回転電機の場合における「K1」を「K12(=ωLq2iq2)」、「K2」を「K22(=ωLd2id2)」とする。
ここで、エアロータ場合における電機子電圧Va2の大きさを、ロータ有りの場合の電機子電圧Vaの大きさと同等とするため、下記式(3)に示すように、補正用のゲイン「Ka」を用いてエアロータにおける式(2)と、をロータ有りの回転電機における式(2)とが等しくなるようにする。
K11
2+(K21+K3)2 = K12
2+(K12+K3・Ka)2・・・(3)
式(3)を整理すると、下記式(4)となり、これを解くと下記式(5)となる。
(K3
2)Ka
2+(2・K22・K3)Ka+
(K22 2+K12 2-K11 2-K21 2-2・K12・K3-K3 2)・・・(4)
(K22 2+K12 2-K11 2-K21 2-2・K12・K3-K3 2)・・・(4)
このように、補正用のゲイン「Ka」により、エアロータの場合の電機子電圧Va2の大きさをロータ有りの場合の電機子電圧Vaの値と同等に補正することができる。しかし、図20と図21との比較より明らかなように、電圧位相が「α」から「α’」に変化している。このため、力率も変化することになる。精度の良い試験を行うためには、電機子電圧Va2の大きさを補正するだけでなく、エアロータの場合も電圧位相が「α」となるように位相を調整する必要がある。電機子反作用による電圧ωLq2iq、ωLd2idの位相を変化させることはできないから、逆起電圧ωMifの位相を変化させる。
ロータ有りの場合、図20に示すように、逆起電圧ωMifはq軸成分しか有していない。逆起電圧ωMifの位相を変化させるためには、d軸成分も必要である。図22は、ロータ無し(エアロータ)の回転電機の逆起電圧の振幅及び位相を補正した電圧ベクトル図を示している。図22に示すように、マグネット磁束φmの位相を「δ」変化させることにより、マグネット磁束φmよりも90°位相が進む逆起電圧ωMifの位相を変化させている。この「δ」及び、位相を変化させた場合の逆起電圧ωMifの振幅のゲイン「Ka2」は、以下のようにして求められる。
下記式(6)、(7)は、ロータ有りの場合のdq軸の電圧方程式であり、下記式(8)、(9)は、エアロータの場合のdq軸の電圧方程式である。尚、下記式(10)以降で相殺されるため、巻線抵抗Rによる電圧降下は省略している。
Vd1=-ωLq1iq-ωMif・sin(0) ・・・(6)
Vq1= ωLd1id+ωMif・cos(0) ・・・(7)
Vd2=-ωLq2iq-ωMif・Ka・sin(δ) ・・・(8)
Vq2= ωLd2id+ωMif・Ka・cos(δ) ・・・(9)
Vq1= ωLd1id+ωMif・cos(0) ・・・(7)
Vd2=-ωLq2iq-ωMif・Ka・sin(δ) ・・・(8)
Vq2= ωLd2id+ωMif・Ka・cos(δ) ・・・(9)
ここで、「Vd2=Vd1」、「Vq2=Vq1」、「sin(0)=0」、「cos(0)=1」であるから、式(6)、(8)より下記式(10)が成り立ち、整理すると下記式(11)となる。また、式(7)、(9)より、下記式(12)が成り立ち、整理すると下記式(13)となる。
-ωLq2iq-ωMif・Ka・sin(δ)=-ωLq1iq ・・・(10)
Ka・sin(δ)=(Lq1iq-Lq2iq)/Mif ・・・(11)
Ka・sin(δ)=(Lq1iq-Lq2iq)/Mif ・・・(11)
ωLd2id+ωMif・Ka・cos(δ)=ωLd1id+ωMif ・・・(12)
Ka・cos(δ)=(Ld1id-Ld2id)/Mif+1 ・・・(13)
Ka・cos(δ)=(Ld1id-Ld2id)/Mif+1 ・・・(13)
式(11)、式(13)より、下記式(14)が成り立つから、式(15)のように補正位相δを求めることができる。
tan(δ)= sin(δ)/cos(δ)
= Ka・sin(δ)/Ka・cos(δ) ・・・(14)
δ=tan-1(δ)
=tan-1((Lq1iq-Lq2iq)/(Ld1id-Ld2id+Mif))
=tan-1((Lq1-Lq2)iq/((Ld1-Ld2)id+Mif))・・・(15)
= Ka・sin(δ)/Ka・cos(δ) ・・・(14)
δ=tan-1(δ)
=tan-1((Lq1iq-Lq2iq)/(Ld1id-Ld2id+Mif))
=tan-1((Lq1-Lq2)iq/((Ld1-Ld2)id+Mif))・・・(15)
逆起電圧ωMifの振幅を補正するゲインは、図21のベクトル図において例示した「Ka」ではなく、「Ka2」となる。補正位相δが特定されると、下記式(16)のように、振幅を補正するゲイン「Ka2」も算出することができる。
図20及び図22に示すように、ロータ有りの場合の電機子電圧Vaと、エアロータの場合における補正後の電機子電圧「Va3」とを一致させることができる。これにより、力率を変化させることなく、エアロータの場合であっても、ロータ有りの場合と同様の変調率を実現することができる。
尚、このゲイン「Ka2」は「逆起電圧補正ゲイン」に相当し、「補正位相δ」は「逆起電圧補正位相」に相当する。上述したように、通常運転状態は、ロータに備えられた永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸とd軸に直交するq軸との直交ベクトル座標系における電流フィードバック制御により演算された振幅及び位相の交流電圧(Va)をN相コイルに印加し、ロータを回転駆動している状態である。そして、制御装置2は、運転状態電圧印加処理では、試験状態の交流電圧(Va3)の振幅が、通常運転状態の交流電圧(Va)の振幅と一致するような逆起電圧(ωMif)のゲインである逆起電圧補正ゲイン(Ka2)と、試験状態の交流電圧(Va3)の位相(α)が通常運転状態の交流電圧(Va)の位相(α)と一致するような逆起電圧(ωMif)の位相である逆起電圧補正位相(δ)とを用いて、直交ベクトル座標系における逆起電圧ベクトルを補正し、交流電圧(Va3)の振幅及び位相を演算する。
図23は、運転状態電圧印加処理においてステータコイルに上述したような電圧を印加して電流を流すように、インバータINV及び電圧印加装置GSを制御するための制御ブロック図を示している。図23は、シングルインバータシステムにおいてターン間短絡試験を行う第1絶縁状態観測システム101Sにおける制御ブロック図を例示しているが、デュアルインバータシステムにおいてターン間短絡試験を行う第2絶縁状態観測システム101D、シングルインバータシステムにおいて地絡試験(又は相間短絡試験)を行う第3絶縁状態観測システム102S、デュアルインバータシステムにおいて地絡試験(又は相間短絡試験)を行う第4絶縁状態観測システム102Dについても同様である。
制御装置2の演算部20は、インバータINV及び電圧印加装置GSを駆動するための駆動演算部21と、インバータINVを駆動制御するためのパラメータ及び電圧印加装置GSを駆動するためのパラメータを設定するパラメータ設定部22とを備えている。
パラメータ設定部22は、第1ルックアップテーブル(LUT1)24、第2ルックアップテーブル(LUT2)25、第3ルックアップテーブル(LUT3)26を備えている。第1ルックアップテーブル24及び第2ルックアップテーブル25は、回転電機の回転速度とトルク(電流)との関係を規定するパラメータを設定するためのテーブルであり、回転電機駆動パラメータ設定部23ということもできる。第1ルックアップテーブル24は、各時刻におけるトルク指令T*(d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*)が規定されたテーブルである。第2ルックアップテーブル25は、各時刻における速度に対応して磁極位置θが規定されたテーブルである。第3ルックアップテーブル(LUT3)26は、電圧印加装置GSを駆動するためのパラメータを設定する電圧印加装置駆動パラメータ設定部ということもできる。第3ルックアップテーブル26には、上述した逆起電圧補正ゲイン(Ka2)と、逆起電圧補正位相(δ)が設定されている。
駆動演算部21は、ローパスフィルタ(LPF)71と、座標変換部72と、比例積分制御部(PI)73と、変調率算出部74と、変調部75と、DAコンバータ(デジタルアナログコンバータ)77とを備えている。ローパスフィルタ(LPF)71と、座標変換部72と、比例積分制御部(PI)73と、変調率算出部74と、変調部75とは、インバータINVを駆動するためのインバータ駆動演算部である。DAコンバータ77は、電圧印加装置GSを駆動するための電圧印加装置駆動演算部である。
ローパスフィルタ(LPF)71は、ステータコイル(N相(ここでは3相)のコイル)の各相を流れる電流を検出する電流センサ79の検出結果の高周波ノイズを除去するフィルタである。座標変換部72は、ローパスフィルタ71を通過後の3相の電流値をdq軸ベクトル座標系の電流値に座標変換する。比例積分制御部73は、電流指令(id*、iq*)と、座標変換後の実電流(id、iq)の偏差に基づいて電流フィードバック制御を行う。変調率算出部74は、変調率を算出する演算部である。変調部75は、例えばパルス幅変調による変調パルスを生成する演算部である。DAコンバータ77は、第3ルックアップテーブル26のパラメータに基づき、電圧印加装置GSに出力させる電圧を設定する。
このように予め第2ルックアップテーブル25に各時刻に対応するロータの磁極位置θを設定しておくことで、エアロータのようにロータが存在しなくてもロータの回転に応じたスイッチングパルスによりインバータINVを駆動し、スイッチングパルスに応じた電圧をステータコイルに印加すると共にスイッチングパルスに応じた電流をステータコイルに流すことができる。また、各時刻において電圧印加装置GSに出力させる電圧が第3ルックアップテーブル26に設定されているので、制御装置2における演算部20の演算負荷を軽減させることができる。
このように、本実施形態の絶縁状態観測システム100(絶縁状態観測方法)では、試験状態においても、通常運転状態でロータを回転駆動している状態と同等の電圧をステータコイルに印加し、同等の電流をステータコアに流すことができる。つまり、通常運転状態と同じ条件で絶縁寿命試験を実施することができる。
また、本実施形態の絶縁状態観測システム100(絶縁状態観測方法)では、回転電機におけるロータの出力トルク及び回転速度の組み合わせにより定まる点を動作点として、複数の動作点のそれぞれに対応する運転状態電圧印加処理を行う場合に、当該複数の動作点のそれぞれのトルクについて予め演算した逆起電圧補正ゲイン(Ka2)及び逆起電圧補正位相(δ)を用いて、直交ベクトル座標系における逆起電圧ベクトルの補正を行う。
回転電機は、様々な運転状態で動作する。そして、ステータコイルに印加される電圧や流れる電流は、それぞれの運転状態において異なる。運転状態電圧印加処理及び放電検出処理が、回転電機の複数の動作点のそれぞれについて実施されることで、回転電機の様々な運転状態を考慮して適切にステータコイルの有限絶縁寿命試験を実施することができる。
回転電機が車両の駆動力源の場合、WLTCモード(世界統一試験サイクル(World wide-harmonized Light vehicles Test Cycle)に基づく駆動モード)に従った動作点が設定されていると好適である。WLTCモードは、実際の走行に近いように、市街地、郊外、高速道路における走行を平均的な使用時間配分で構成した走行モードであり、回転電機が実際に使用される環境に近い試験が実現できる。
尚、上述したように、予め回転電機のパラメータから逆起電圧補正ゲインKa2と、逆起電圧の補正位相δとを求め、ルックアップテーブルを用いて電圧印加装置GSを制御する方法に限らず、ロータが無い状態において、ロータ有りの場合の回転電機のパラメータから足りないdq軸電圧を計算し、2相3相変換を行って電圧印加装置GSを制御してもよい。通常運転状態における回転電機の電圧方程式は、下記式(17)で表される。
ここで、Ld_motor、Lq_motorは、それぞれ通常の回転電機(ロータ有りの回転電機)のd軸及びq軸のインダクタンスである。右辺第1項は巻線抵抗による電圧降下(降下電圧)、第2項は非定常状態の誘導起電圧(第1誘導起電圧)、右辺第3項は定常状態の誘導起電圧(第2誘導起電圧)である。
また、ここで、ロータ無し(エアロータ)の回転電機、即ちステータのみの回転電機におけるd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスを、それぞれLd_air、Lq_airとすると、ロータを無くしたことによるd軸及びq軸のインダクタンスの変動分は、下記式(18)及び下記式(19)で示されるように、d軸差分インダクタンスLd’、q軸差分インダクタンスLq’となる。
Ld’=Ld_motor-Ld_air ・・・(18)
Lq’=Lq_motor-Lq_air ・・・(19)
Lq’=Lq_motor-Lq_air ・・・(19)
従って、通常運転状態と同等の振幅及び位相の交流電圧(Va3)を得るために必要な電圧印加装置GSの出力電圧「Vd_GS、Vq_GS」は、下記式(20)で示される。尚、「ωφm」は逆起電圧であり、「ωφm=ωMif」である。
そして、システム全体の電圧方程式は下記式(21)となる。
式(21)において、右辺第1項は巻線抵抗による電圧降下(降下電圧)、第2項は非定常状態の誘導起電圧(試験時第1誘導起電圧)、右辺第3項は電圧印加装置GSの出力電圧(補正電圧)、右辺第4項は定常状態の誘導起電圧(試験時第2誘導起電圧)である。
ここでは、非定常状態の誘導起電圧(右辺第2項)について通常運転状態との差異が生じる。電圧印加装置GSの出力電圧は、下記式(22)に示すように、この非定常状態の誘導起電圧の変化分も補償された値であってもよい。
また、回転電機の逆起電圧に高調波が含まれる場合も同様の手順で電圧印加装置GSの出力電圧が調整されると好適である。
尚、式(21)及び式(22)で求められる電圧印加装置GSの出力電圧はdq軸ベクトル座標系での値であるから、下記式(23)に示すように、U,V,Wの3相の電圧に変換されて電圧印加装置GSから出力される。
図23のブロック図を参照して上述したように、電圧印加装置GSの出力電圧を決定するパラメータを予めルックアップテーブル(第3ルックアップテーブル26)に記憶させておくことで、制御装置2の演算負荷を軽減させることができる。しかし、制御装置2の演算能力が高い場合や、演算負荷に余裕がある場合には、電圧印加装置GSの値が都度演算されてもよい。図24は、その場合の制御ブロック図の一例を示している。各ブロックの機能については、式(17)~式(23)を示しながら説明した上記の記載から当業者に自明であるから詳細な説明は省略する。
以上、説明したように、通常運転状態における電圧方程式においてステータコイル(N相コイル(ここでは3相コイル))の電圧は、N相コイルの抵抗成分による降下電圧(巻線抵抗による電圧降下)と、通常運転状態におけるd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスに基づく非定常状態における誘導起電圧である第1誘導起電圧と、永久磁石による界磁磁束、通常運転状態におけるd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスに基づく定常状態における誘導起電圧である第2誘導起電圧との和で表される(式(17)参照)。ここで、通常運転状態におけるd軸インダクタンス(Ld_motor)と試験状態におけるd軸インダクタンス(Ld_air)との差をd軸差分インダクタンス(Ld’)とする(式(18)参照)。また、通常運転状態におけるq軸インダクタンス(Lq_motor)と試験状態におけるq軸インダクタンス(Lq_air)との差をq軸差分インダクタンス(Lq’)とする。永久磁石の界磁磁束(φm)、d軸差分インダクタンス(Ld’)、及びq軸差分インダクタンス(Lq’)に基づき第2誘導起電圧が演算された電圧を補正電圧とする(式(21)右辺第3項参照)。永久磁石の界磁磁束(φm)を用いず、試験状態におけるd軸インダクタンス(Ld_air)及び試験状態におけるq軸インダクタンス(Lq_air)に基づき第2誘導起電圧が演算された電圧を試験時第2誘導起電圧とする(式(21)右辺第4項参照)。試験状態におけるd軸インダクタンス(Ld_air)及び試験状態におけるq軸インダクタンス(Lq_air)に基づき第1誘導起電圧が演算された電圧を試験時第1誘導起電圧とする(式(21)右辺第2項参照)。運転状態電圧印加処理では、N相コイルの電圧を示す電圧方程式を、降下電圧と、試験時第1誘導起電圧と、試験時第2誘導起電圧と、補正電圧と、の和として演算する(式(21)参照)。
このように、本実施形態の絶縁状態観測システム100(絶縁状態観測方法)では、試験状態においても、通常運転状態でロータを回転駆動している状態と同等の電圧をステータコイルに印加し、同等の電流をステータコアに流すことができる。つまり、通常運転状態と同じ条件で絶縁寿命試験を実施することができる。
図25及び図26は、ロータを有する回転電機の場合(通常ロータ)、ロータ無し(エアロータ)の回転電機において電機子電圧Vaの振幅のみ補償した場合(エアロータ+振幅補償)、ロータ無し(エアロータ)の回転電機において電機子電圧Vaの振幅及び位相を補償した場合(エアロータ+位相補償+振幅補償)における、U相電流及びU相電圧(UV相間電圧)を比較している。図25に対して図26は相対的に回転電機の回転速度が高い場合の例である。図25及び図26に示すように、位相補償及び振幅補償を行うことによって、エアロータの場合にも通常ロータと同様の電圧及び電流が実現できている。尚、通常ロータに比べてエアロータの方が電流リップルが増加しているが、試験に与える影響はほとんどない。これは、エアロータでは通常ロータに比べてインダクタンスが小さくなることに起因している。
絶縁寿命試験を実施する場合には、試験条件として、直流リンク電圧Vdc、インバータINVのスイッチング周波数、試験用導体対1の温度(ターン間短絡試験用絶縁状態観測システム101の場合)、ステータの温度(ステータコイル(N相コイル)の温度)(地絡及び相間短絡試験用絶縁状態観測システム102の場合)が設定される。図15を参照して上述したように、シングルインバータシステムの場合と、デュアルインバータシステムの場合とでは直流リンク電圧Vdcが異なる。システム構成に応じて、適切に直流リンク電圧Vdcが設定されると好適である。尚、直流リンク電圧Vdcを実際に回転電機が使用される環境よりも低くし、温度を高くしてもよい。
また、有限絶縁寿命の計測には、印加電圧の高さに応じた絶縁破壊までの経過時間を計測する方法(図27)、試験用導体対1のキャパシタンスの変化を計測する方法(図28)、経過時間に応じた部分放電の発生回数を計測する方法(図29)などがある。
図27のグラフは、印加電圧と絶縁破壊までの経過時間との関係を示している。印加電圧が高くなるほど、絶縁破壊までの経過時間が短くなっていることが判る。絶縁破壊を生じるまで試験を実施することによって、図27に示すグラフが作成できる。経過時間を要求される寿命とすれば、耐性のある電圧を特定することができる。
ところで、絶縁破壊を生じるまで試験を継続した場合、インバータINVに過電流が流れ、インバータINVを破壊してしまうおそれがある。従って、絶縁破壊を生じた場合には、その時点以降の電圧の印加を中止して、試験を終了させることが好ましい。図16~図19に示すように、本実施形態では、絶縁破壊が生じて放電が発生した場合にオン状態となる、オシロスコープOSからの外部トリガ信号(条件1)に基づいて、判定部29が試験の終了を判定するように構成されている。また、絶縁破壊が生じてインバータINVに短絡電流が流れた場合に、電流が閾値を超えたこと(条件2)を検出して判定部29が試験の終了を判定するように構成されている。
1つの態様として、制御装置2は、タイマー(或いはカウンタ)から出力される時刻情報に基づき、第3ルックアップテーブル26に設定されたパラメータを出力し、電圧印加装置GSに電圧を出力させている。例えば、タイマー(或いはカウンタ)の値をリセットすることによって、第3ルックアップテーブル26からパラメータが出力されなくなる。これによって、電圧印加装置GSは電圧を出力しなくなる。このような構成の場合、タイマー(或いはカウンタ)が判定部29に相当する。
また、このように実際に絶縁破壊が生じるまで試験を行うのではなく、例えば、試験用導体対1のキャパシタンスの変化から寿命を判定してもよい。図28のグラフは、電圧の印可時間とキャパシタンスの変化との関係を示している。繰り返し電圧を印加している1つの試験用導体対1に対して例えばLCRメータ(抵抗値、キャパシタンス、インダクタンス等の回路定数を測定する測定器)を用いて一定時間ごとにキャパシタンスを計測することで、図28に示すようなグラフを作成する。キャパシタンスの変化に基づき、絶縁寿命を判定することができる。
また、繰り返し電圧が印加されると次第に絶縁性能が低下していく。従って、時間の経過と共に部分放電を発生する回数も増加する。従って、図29に示すように、電圧の印加時間と部分放電の回数との関係に基づいて絶縁寿命を判定することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、回転電機が通常運転状態の場合と同様の電気的環境下において、ステータコイルの有限絶縁寿命試験を適切に実施することができる。
1:試験用導体対、2:制御装置、4:アンテナ(放電検出装置)、5:放電検出装置、9:恒温恒湿槽、11:第1試験用導体、12:第2試験用導体、17:絶縁被覆、100:絶縁状態観測システム、GS:電圧印加装置、INV:インバータ、Ka2:逆起電圧補正ゲイン、Ld’:d軸差分インダクタンス、Lq’:q軸差分インダクタンス、R:巻線抵抗(N相コイルの抵抗成分)、Ria:電圧降下(降下電圧)、δ:補正位相、ωMif:逆起電圧
Claims (11)
- N相コイル(Nは任意の自然数)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測する、ステータコイルの絶縁状態観測方法であって、
前記N相コイルにインバータを接続すると共に、前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置を接続し、
前記コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体と第2試験用導体とを用い、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体とを互いに接触させた状態で、前記第1試験用導体を前記N相コイルにおける第1の相のコイルに接続し、前記第2試験用導体を前記N相コイルにおける第2の相のコイルに接続し、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体との間の部分放電を検出する第1放電検出処理を行う、ステータコイルの絶縁状態観測方法。 - 前記第1試験用導体及び前記第2試験用導体を、環境温度及び環境湿度が予め設定された一定の温度及び湿度に保たれた恒温恒湿槽内に配置した状態で、前記運転状態電圧印加処理及び前記第1放電検出処理を行う、請求項1に記載のステータコイルの絶縁状態観測方法。
- N相コイル(Nは任意の自然数)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測する、ステータコイルの絶縁状態観測方法であって、
前記N相コイルにインバータを接続すると共に、前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置を接続し、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記N相コイルにおける異なる相のコイル間の部分放電を検出する第2放電検出処理、及び、前記N相コイルとグランドとの間の部分放電を検出する第3放電検出処理の少なくとも一方を行う、ステータコイルの絶縁状態観測方法。 - 前記N相コイルを、環境温度及び環境湿度が予め設定された一定の温度及び湿度に保たれた恒温恒湿槽内に配置した状態で、前記運転状態電圧印加処理、並びに、前記第2放電検出処理及び前記第3放電検出処理の少なくとも一方を行う、請求項3に記載のステータコイルの絶縁状態観測方法。
- 前記通常運転状態は、前記ロータに備えられた永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と前記d軸に直交するq軸との直交ベクトル座標系における電流フィードバック制御により演算された振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加し、前記ロータを回転駆動している状態であり、
前記運転状態電圧印加処理では、前記試験状態の交流電圧の振幅が、前記通常運転状態の交流電圧の振幅と一致するような逆起電圧のゲインである逆起電圧補正ゲインと、前記試験状態の交流電圧の位相が前記通常運転状態の交流電圧の位相と一致するような逆起電圧の位相である逆起電圧補正位相とを用いて、前記直交ベクトル座標系における逆起電圧ベクトルを補正し、交流電圧の振幅及び位相を演算する、請求項1から4の何れか一項に記載のステータコイルの絶縁状態観測方法。 - 前記回転電機における前記ロータの出力トルク及び回転速度の組み合わせにより定まる点を動作点として、
複数の前記動作点のそれぞれに対応する前記運転状態電圧印加処理を行う場合に、当該複数の動作点のそれぞれのトルクについて予め演算した前記逆起電圧補正ゲイン及び前記逆起電圧補正位相を用いて、前記直交ベクトル座標系における前記逆起電圧ベクトルの補正を行う、請求項5に記載のステータコイルの絶縁状態観測方法。 - 前記通常運転状態は、前記ロータに備えられた永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と前記d軸に直交するq軸との直交ベクトル座標系における電流フィードバック制御により演算された振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加し、前記ロータを回転駆動している状態であり、
前記通常運転状態における電圧方程式において前記N相コイルの電圧は、
前記N相コイルの抵抗成分による降下電圧と、
前記通常運転状態におけるd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスに基づく非定常状態における誘導起電圧である第1誘導起電圧と、
前記永久磁石による界磁磁束、前記通常運転状態におけるd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスに基づく定常状態における誘導起電圧である第2誘導起電圧との和で表され、
前記通常運転状態におけるd軸インダクタンスと前記試験状態におけるd軸インダクタンスとの差をd軸差分インダクタンスとし、前記通常運転状態におけるq軸インダクタンスと前記試験状態におけるq軸インダクタンスとの差をq軸差分インダクタンスとし、
前記永久磁石の界磁磁束、前記d軸差分インダクタンス、及び前記q軸差分インダクタンスに基づき前記第2誘導起電圧が演算された電圧を補正電圧とし、
前記永久磁石の界磁磁束を用いず、前記試験状態におけるd軸インダクタンス及び前記試験状態におけるq軸インダクタンスに基づき前記第2誘導起電圧が演算された電圧を試験時第2誘導起電圧とし、
前記試験状態におけるd軸インダクタンス及び前記試験状態におけるq軸インダクタンスに基づき前記第1誘導起電圧が演算された電圧を試験時第1誘導起電圧とし、
前記運転状態電圧印加処理では、前記N相コイルの電圧を示す電圧方程式を、
前記降下電圧と、
前記試験時第1誘導起電圧と、
前記試験時第2誘導起電圧と、
前記補正電圧と、
の和として演算する、請求項1から4の何れか一項に記載のステータコイルの絶縁状態観測方法。 - N相コイル(Nは任意の自然数)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測する、ステータコイルの絶縁状態観測システムであって、
前記N相コイルに接続されたインバータと、
前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置を制御する制御装置と、
放電を検出する放電検出装置と、
前記コイル用導体と同じ構造である第1試験用導体と第2試験用導体とを互いに接触させた状態で、前記第1試験用導体が前記N相コイルにおける第1の相のコイルに接続され、前記第2試験用導体が前記N相コイルにおける第2の相のコイルに接続された試験用導体対と、を備え、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記制御装置は、前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記放電検出装置は、前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記第1試験用導体と前記第2試験用導体との間に生じる部分放電を検出する、ステータコイルの絶縁状態観測システム。 - 環境温度及び環境湿度を予め設定された一定の温度及び一定の湿度に保つことができ、前記第1試験用導体及び前記第2試験用導体を収容できる恒温恒湿槽をさらに備える、請求項8に記載のステータコイルの絶縁状態観測システム。
- N相コイル(Nは任意の自然数)を備えた回転電機用のステータにおける、絶縁被覆を備えたコイル用導体の絶縁状態を観測する、ステータコイルの絶縁状態観測システムであって、
前記N相コイルに接続されたインバータと、
前記N相コイルに試験電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置を制御する制御装置と、
放電を検出する放電検出装置と、を備え、
前記ステータに対して規定の位置にロータが対向するように配置され、前記N相コイルに印加された電圧によって生じる磁界により前記ロータを回転駆動している状態を通常運転状態として、
前記制御装置は、前記ロータが回転を停止した状態又は前記ロータが前記ステータに対向していない状態である試験状態で、前記電圧印加装置により、前記通常運転状態と同じ振幅及び位相の交流電圧を前記N相コイルに印加する運転状態電圧印加処理を行い、
前記放電検出装置は、前記運転状態電圧印加処理の実行中に、前記N相コイルにおける異なる相のコイル間に生じる部分放電、及び、前記N相コイルとグランドとの間に生じる部分放電の少なくとも1つを検出する、ステータコイルの絶縁状態観測システム。 - 一定の湿度、及び、外気温よりも高い一定の温度に保つことができ、前記N相コイルを収容できる恒温恒湿槽を更に備える、請求項10に記載のステータコイルの絶縁状態観測システム。
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