以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。図1を参照して、車両1は、自動運転キット(以下、「ADK(Autonomous Driving Kit)」と表記する)200と、車両プラットフォーム(以下、「VP(Vehicle Platform)」と表記する)2とを備える。
VP2は、ベース車両100の制御システムと、ベース車両100内に設けられた車両制御インターフェースボックス(以下、「VCIB(Vehicle Control Interface Box)」と表記する)111とを含む。VCIB111は、CAN(Controller Area Network)のような車内ネットワークを通じてADK200と通信してもよい。なお、図1では、ベース車両100とADK200とが離れた位置に示されているが、ADK200は、実際にはベース車両100に取り付けられている。この実施の形態では、ベース車両100のルーフトップにADK200が取り付けられる。ただし、ADK200の取り付け位置は適宜変更可能である。
ベース車両100は、たとえば市販されるxEV(電動車)である。xEVは、電力を動力源の全て又は一部として利用する車両である。この実施の形態では、ベース車両100としてBEV(電気自動車)を採用する。ただしこれに限られず、ベース車両100は、BEV以外のxEV(HEV、PHEV、FCEVなど)であってもよい。ベース車両100が備える車輪の数は、たとえば4輪である。ただしこれに限られず、ベース車両100が備える車輪の数は、3輪であってもよいし、5輪以上であってもよい。
ベース車両100の制御システムは、統合制御マネージャ115に加えて、ベース車両100を制御するための各種システムおよび各種センサを含む。統合制御マネージャ115は、ベース車両100に含まれる各種センサからの信号(センサ検出信号)に基づいて、ベース車両100の動作に関わる各種システムを統合して制御する。
この実施の形態では、統合制御マネージャ115が制御装置150を含む。制御装置150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、及び記憶装置153を含む。プロセッサ151としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、各種の車両制御(たとえば、ADK200からの指示に従う自動運転制御)及び後述する検査に係る処理(図7及び図8参照)が実行される。ただし、これらの処理は、ソフトウェアではなく、専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。なお、制御装置150が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
ベース車両100は、ブレーキシステム121と、ステアリングシステム122と、パワートレーンシステム123と、アクティブセーフティシステム125と、ボディシステム126とを含む。これらのシステムは、統合制御マネージャ115によって統合制御される。この実施の形態では、各システムがコンピュータを備える。そして、システムごとのコンピュータが車内ネットワーク(たとえば、CAN)を通じて統合制御マネージャ115と通信する。以下では、各システムが備えるコンピュータを、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。
ブレーキシステム121は、ベース車両100の各車輪に設けられた制動装置と、制動装置を制御するECUとを含む。この実施の形態では、制動装置として油圧式ディスクブレーキ装置が採用される。ベース車両100は、車輪速センサ127A,127Bを備える。車輪速センサ127Aは、ベース車両100の前輪に設けられ、前輪の回転速度を検出する。車輪速センサ127Bは、ベース車両100の後輪に設けられ、後輪の回転速度を検出する。ブレーキシステム121のECUは、車輪速センサ127A,127Bで検出された各車輪の回転方向及び回転速度を統合制御マネージャ115へ出力する。
ステアリングシステム122は、ベース車両100の操舵装置と、操舵装置を制御するECUとを含む。操舵装置は、たとえば、アクチュエータにより操舵角の調整が可能なラック&ピニオン式のEPS(Electric Power Steering)を含む。ベース車両100は、ピニオン角センサ128を備える。ピニオン角センサ128は、操舵装置を構成するアクチュエータの回転軸に連結されたピニオンギヤの回転角(ピニオン角)を検出する。ステアリングシステム122のECUは、ピニオン角センサ128で検出されたピニオン角を統合制御マネージャ115へ出力する。
パワートレーンシステム123は、ベース車両100が備える車輪の少なくとも1つに設けられたEPB(Electric Parking Brake)と、ベース車両100のトラッスミッションに設けられたP-Lock装置と、シフトレンジを選択可能に構成されるシフト装置と、ベース車両100の駆動源と、パワートレーンシステム123に含まれる各装置を制御するECUとを含む。EPBは、前述の制動装置とは別に設けられ、電動アクチュエータによって車輪を固定状態にする。P-Lock装置は、たとえば、アクチュエータにより駆動可能なパーキングロックポールによってトランスミッションの出力軸の回転位置を固定状態にする。詳細は後述するが、この実施の形態では、ベース車両100の駆動源として、バッテリから電力の供給を受けるモータを採用する(図5参照)。パワートレーンシステム123のECUは、EPBとP-Lock装置との各々による固定化の有無、シフト装置によって選択されたシフトレンジ、並びにバッテリ及びモータの各々の状態を、統合制御マネージャ115へ出力する。
アクティブセーフティシステム125は、走行中の車両1について衝突の可能性を判定するECUを含む。ベース車両100は、車両1の前方及び後方を含む周辺状況を検出するカメラ129A及びレーダセンサ129B,129Cを備える。アクティブセーフティシステム125のECUは、カメラ129A及びレーダセンサ129B,129Cから受信した信号を用いて、衝突の可能性があるか否かを判定する。アクティブセーフティシステム125によって衝突の可能性があると判定された場合には、統合制御マネージャ115が、ブレーキシステム121に制動指令を出力して、車両1の制動力を増加させる。この実施の形態に係るベース車両100が初期(出荷時)からアクティブセーフティシステム125を備える。しかしこれに限られず、ベース車両に対して後付け可能なアクティブセーフティシステムが採用されてもよい。
ボディシステム126は、ボディ系部品(たとえば、方向指示器、ホーン、及びワイパー)と、ボディ系部品を制御するECUとを備える。ボディシステム126のECUは、マニュアルモードでは、ユーザ操作に従ってボディ系部品を制御し、自律モードでは、ADK200からVCIB111及び統合制御マネージャ115を経て受信する指令に従ってボディ系部品を制御する。
車両1は自動運転可能に構成される。VCIB111は、車両制御インターフェースとして機能する。車両1が自動運転で走行するときには、統合制御マネージャ115とADK200とがVCIB111を介して相互に信号のやり取りを行ない、ADK200からの指令に従って統合制御マネージャ115が自律モード(Autonomous Mode)による走行制御(すなわち、自動運転制御)を実行する。なお、ADK200は、ベース車両100から取り外すことも可能である。ベース車両100は、ADK200が取り外された状態でも、ユーザの運転によりベース車両100単体で走行することができる。ベース車両100単体で走行する場合には、ベース車両100の制御システムが、マニュアルモードによる走行制御(すなわち、ユーザ操作に応じた走行制御)を実行する。
この実施の形態では、ADK200が、通信される各信号を定義するAPI(Application Program Interface)に従ってVCIB111との間で信号のやり取りを行なう。ADK200は、上記APIで定義された各種信号を処理するように構成される。ADK200は、たとえば、車両1の走行計画を作成し、作成された走行計画に従って車両1を走行させるための制御を要求する各種コマンドを、上記APIに従ってVCIB111へ出力する。以下、ADK200からVCIB111へ出力される上記各種コマンドの各々を、「APIコマンド」とも称する。また、ADK200は、ベース車両100の状態を示す各種信号を上記APIに従ってVCIB111から受信し、受信したベース車両100の状態を走行計画の作成に反映する。以下、ADK200がVCIB111から受信する上記各種信号の各々を、「APIシグナル」とも称する。APIコマンド及びAPIシグナルはどちらも、上記APIで定義された信号に相当する。ADK200の構成の詳細については後述する(図2参照)。
VCIB111は、ADK200から各種APIコマンドを受信する。VCIB111は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドを、統合制御マネージャ115が処理可能な信号の形式に変換する。以下、統合制御マネージャ115が処理可能な信号の形式に変換されたAPIコマンドを、「制御コマンド」とも称する。VCIB111は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドに対応する制御コマンドを統合制御マネージャ115へ出力する。
統合制御マネージャ115の制御装置150は、ベース車両100の制御システムにおいて検出されたベース車両100の状態を示す各種信号(たとえば、センサ信号、又はステータス信号)を、VCIB111を介してADK200へ送る。VCIB111は、ベース車両100の状態を示す信号を統合制御マネージャ115から逐次受信する。VCIB111は、統合制御マネージャ115から受信した信号に基づいてAPIシグナルの値を決定する。また、VCIB111は、必要に応じて、統合制御マネージャ115から受信した信号をAPIシグナルの形式に変換する。そして、VCIB111は、得られたAPIシグナルをADK200へ出力する。VCIB111からADK200へは、ベース車両100の状態を示すAPIシグナルがリアルタイムで逐次出力される。
この実施の形態において、統合制御マネージャ115とVCIB111との間では、たとえば自動車メーカーによって定義された汎用性の低い信号がやり取りされ、ADK200とVCIB111との間では、より汎用性の高い信号(たとえば、公開されたAPI(Open API)で定義された信号)がやり取りされる。VCIB111は、ADK200と統合制御マネージャ115との間で信号の変換を行なうことにより、ADK200からの指令に従って統合制御マネージャ115が車両制御を行なうことを可能にする。ただし、VCIB111の機能は、上記信号の変換を行なう機能のみには限定されない。たとえば、VCIB111は、所定の判断を行ない、その判断結果に基づく信号(たとえば、通知、指示、又は要求を行なう信号)を、統合制御マネージャ115とADK200との少なくとも一方へ送ってもよい。VCIB111の構成の詳細については後述する(図2参照)。
ベース車両100は、通信装置130をさらに備える。通信装置130は、各種通信I/F(インターフェース)を含む。制御装置150は、通信装置130を通じて車両1の外部の装置(たとえば、後述するモバイル端末UT及びサーバ500)と通信を行なうように構成される。通信装置130は、移動体通信網(テレマティクス)にアクセス可能な無線通信機(たとえば、DCM(Data Communication Module))を含む。通信装置130は移動体通信網を介してサーバ500と通信する。無線通信機は、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。また、通信装置130は、車内又は車両周辺の範囲内に存在するモバイル端末UTと直接通信するための通信I/Fを含む。通信装置130とモバイル端末UTとは、無線LAN(Local Area Network)、NFC(Near Field Communication)、又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信を行なってもよい。
モバイル端末UTは、車両1のユーザによって携帯される端末である。この実施の形態では、モバイル端末UTとして、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、モバイル端末UTとしては、任意のモバイル端末を採用可能であり、ラップトップ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ又はスマートグラス)、又は電子キーなども採用可能である。
上述の車両1は、MaaS(Mobility as a Service)システムの構成要素の1つとして採用され得る。MaaSシステムは、たとえばMSPF(Mobility Service Platform)を含む。MSPFは、各種モビリティサービス(たとえば、ライドシェア事業者、カーシェア事業者、保険会社、レンタカー事業者、タクシー事業者等により提供される各種モビリティサービス)が接続される統一プラットフォームである。サーバ500は、MSPFにおいてモビリティサービスのための情報の管理及び公開を行なうコンピュータである。サーバ500は、各種モビリティの情報を管理し、事業者からの要求に応じて情報(たとえば、API、及び、モビリティ間の連携に関する情報)を提供する。サービスを提供する事業者は、MSPF上で公開されたAPIを用いて、MSPFが提供する様々な機能を利用することができる。たとえば、ADKの開発に必要なAPIは、MSPF上に公開されている。
図2は、車両1の構成の詳細を示す図である。図1とともに図2を参照して、ADK200は、車両1の自動運転を行なうための自動運転システム(以下、「ADS(Autonomous Driving System)」と表記する)202を含む。ADS202は、コンピュータ210と、HMI(Human Machine Interface)230と、認識用センサ260と、姿勢用センサ270と、センサクリーナ290とを含む。
コンピュータ210は、プロセッサと、APIを利用した自動運転ソフトウェアを記憶する記憶装置とを備え、プロセッサによって自動運転ソフトウェアを実行可能に構成される。自動運転ソフトウェアにより、自動運転に関する制御(後述する図3参照)が実行される。自動運転ソフトウェアは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。コンピュータ210は、通信モジュール210A及び210Bをさらに備える。
HMI230は、ユーザとコンピュータ210とが情報をやり取りするための装置である。HMI230は、入力装置及び報知装置を含む。ユーザは、HMI230を通じて、コンピュータ210に指示又は要求を行なったり、自動運転ソフトウェアで使用されるパラメータ(ただし、変更が許可されているものに限る)の値を変更したりすることができる。HMI230は、入力装置及び報知装置の両方の機能を兼ね備えるタッチパネルディスプレイであってもよい。
認識用センサ260は、車両1の外部環境を認識するための情報(以下、「環境情報」とも称する)を取得する各種センサを含む。認識用センサ260は、車両1の環境情報を取得し、コンピュータ210へ出力する。環境情報は、自動運転制御に用いられる。この実施の形態では、認識用センサ260が、車両1の周囲(前方及び後方を含む)を撮像するカメラと、電磁波又は音波によって障害物を検知する障害物検知器(たとえば、ミリ波レーダ及び/又はライダー)とを含む。コンピュータ210は、たとえば、認識用センサ260から受信する環境情報を用いて、車両1から認識可能な範囲に存在する人、物体(他の車両、柱、ガードレールなど)、及び道路上のライン(たとえば、センターライン)を認識できる。認識のために、人工知能(AI)又は画像処理用プロセッサが用いられてもよい。
姿勢用センサ270は、車両1の姿勢に関する情報(以下、「姿勢情報」とも称する)を取得し、コンピュータ210へ出力する。姿勢用センサ270は、車両1の加速度、角速度、及び位置を検出する各種センサを含む。この実施の形態では、姿勢用センサ270が、IMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサを含む。IMUは、車両1の前後方向、左右方向、及び上下方向の各々の加速度、並びに車両1のロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の各々の角速度を検出する。GPSセンサは、複数のGPS衛星から受信する信号を用いて車両1の位置を検出する。自動車及び航空機の分野においてIMUとGPSとを組み合わせて高い精度で姿勢を計測する技術が公知である。コンピュータ210は、たとえば、こうした公知の技術を利用して、上記姿勢情報から車両1の姿勢を計測してもよい。
センサクリーナ290は、車外で外気にさらされるセンサ(たとえば、認識用センサ260)の汚れを除去する装置である。たとえば、センサクリーナ290は、洗浄液及びワイパーを用いて、カメラのレンズ及び障害物検知器の出射口をクリーニングするように構成されてもよい。
車両1においては、安全性を向上させるため、所定の機能(たとえば、ブレーキ、ステアリング、及び車両固定)に冗長性を持たせている。ベース車両100の制御システム102は、同等の機能を実現するシステムを複数備える。具体的には、ブレーキシステム121はブレーキシステム121A及び121Bを含む。ステアリングシステム122はステアリングシステム122A及び122Bを含む。パワートレーンシステム123は、EPBシステム123AとP-Lockシステム123Bとを含む。各システムがECUを備える。同等の機能を実現する複数のシステムのうち、一方に異常が生じても、他方が正常に動作することで、車両1において当該機能は正常に働く。
VCIB111は、VCIB111AとVCIB111Bとを含む。VCIB111A及び111Bの各々はコンピュータを含む。コンピュータ210の通信モジュール210A、210Bは、それぞれVCIB111A、111Bのコンピュータと通信可能に構成される。VCIB111とVCIB111Bとは、相互に通信可能に接続されている。VCIB111A及び111Bの各々は、単独で動作可能であり、一方に異常が生じても、他方が正常に動作することで、VCIB111は正常に動作する。VCIB111A及び111Bはどちらも統合制御マネージャ115を介して上記各システムに接続されている。ただし、図2に示すように、VCIB111AとVCIB111Bとでは接続先が一部異なっている。
この実施の形態では、車両1を加速させる機能については、冗長性を持たせていない。パワートレーンシステム123は、車両1を加速させるためのシステムとして、推進システム123Cを含む。
車両1は、自律モードとマニュアルモードとを切替え可能に構成される。ADK200がVCIB111から受信するAPIシグナルには、車両1が自律モードとマニュアルモードとのいずれの状態かを示す信号(以下、「自律ステート」と表記する)が含まれる。ユーザは、所定の入力装置(たとえば、HMI230又はモバイル端末UT)を通じて、自律モードとマニュアルモードとのいずれかを選択できる。ユーザによっていずれかの運転モードが選択されると、選択された運転モードに車両1がなり、選択結果が自律ステートに反映される。ただし、車両1が自動運転可能な状態になっていなければ、ユーザが自律モードを選択しても自律モードに移行しない。車両1の運転モードの切替えは、統合制御マネージャ115によって行なわれてもよい。統合制御マネージャ115は、車両1の状況に応じて自律モードとマニュアルモードとを切り替えてもよい。
車両1が自律モードであるときには、コンピュータ210が、VP2から車両1の状態を取得して、車両1の次の動作(たとえば、加速、減速、及び曲がる)を設定する。そして、コンピュータ210は、設定された車両1の次の動作を実現するための各種指令を出力する。コンピュータ210がAPIソフトウェア(すなわち、APIを利用した自動運転ソフトウェア)を実行することにより、自動運転制御に関する指令がADK200からVCIB111を通じて統合制御マネージャ115へ送信される。
図3は、この実施の形態に係る自動運転制御においてADK200が実行する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、車両1が自律モードであるときに、APIに対応する周期(API周期)で繰り返し実行される。車両1の運転モードがマニュアルモードから自律モードに切り替わると、自動運転開始を示す開始信号が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信されるとともに、以下に説明する図3に示す一連の処理が開始される。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
図1及び図2とともに図3を参照して、S101では、コンピュータ210が現在の車両1の情報を取得する。たとえば、コンピュータ210は、認識用センサ260及び姿勢用センサ270から車両1の環境情報及び姿勢情報を取得する。さらに、コンピュータ210はAPIシグナルを取得する。この実施の形態では、車両1が自律モード及びマニュアルモードのいずれである場合にも、車両1の状態を示すAPIシグナルがVCIB111からADK200へリアルタイムで逐次出力されている。自動運転制御の精度を向上させるために、自律モードにおいてはマニュアルモードよりも短い周期で統合制御マネージャ115からADK200に向けて車両1の状態が逐次送信されてもよい。コンピュータ210が取得するAPIシグナルには、前述の自律ステートのほか、車輪速センサ127A,127Bで検出された各車輪の回転方向及び回転速度を示す信号などが含まれる。
S102では、コンピュータ210が、S101で取得した車両1の情報に基づいて走行計画を作成する。たとえば、コンピュータ210が、車両1の挙動(たとえば、車両1の姿勢)を計算し、車両1の状態及び外部環境に適した走行計画を作成する。走行計画は、所定期間における車両1の挙動を示すデータである。すでに走行計画が存在する場合には、S102においてその走行計画が修正されてもよい。
S103では、コンピュータ210が、S102で作成された走行計画から制御的な物理量(加速度、タイヤ切れ角など)を抽出する。S104では、コンピュータ210が、S103で抽出された物理量をAPI周期ごとに分割する。S105では、コンピュータ210が、S104で分割された物理量を用いてAPIソフトウェアを実行する。このようにAPIソフトウェアが実行されることにより、走行計画に従う物理量を実現するための制御を要求するAPIコマンド(推進方向コマンド、推進コマンド、制動コマンド、車両固定コマンドなど)がADK200からVCIB111へ送信される。VCIB111は、受信したAPIコマンドに対応する制御コマンドを統合制御マネージャ115へ送信し、統合制御マネージャ115は、その制御コマンドに従って車両1の自動運転制御を行なう。自動運転中の車両1の状態は、コンピュータ210の記憶装置に逐次記録される。
続くS106では、車両1が自律モードであるか否かを、コンピュータ210が判断する。自律モードが継続している間は(S106にてYES)、上記S101~S105の処理が繰り返し実行されることにより、車両1の自動運転が実行される。他方、車両1がマニュアルモードになると(S106にてNO)、S107において、自動運転終了を示す終了信号が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信された後、図3に示す一連の処理は終了する。この実施の形態では、コンピュータ210とVCIB111と統合制御マネージャ115とが協働して車両1を自動運転で走行させるための制御を実行する。コンピュータ210とVCIB111(より特定的には、VCIB111に含まれるコンピュータ)と統合制御マネージャ115(より特定的には、制御装置150)との各々は、本開示に係る「制御装置」の一例に相当する。この実施の形態では、車両1が有人の状態であるときに車両1の自動運転が行なわれることを想定している。しかしこれに限られず、車両1が無人の状態であるときに車両1の自動運転が行なわれるようにしてもよい。自動運転制御は、図3に示した制御に限られず、他の制御(公知の自動運転制御)が採用されてもよい。
この実施の形態では、サーバ500が、第1検査項目について良否を判定する第1検査を実行する。また、車両1に搭載された制御装置150が、第1検査項目とは異なる第2検査項目について良否を判定する第2検査を実行する。サーバ500においては、プロセッサ(後述するプロセッサ501)と、プロセッサにより実行されるプログラムとによって、本開示に係る「第1検査装置」の一例が具現化される。また、制御装置150においては、プロセッサ151と、プロセッサ151により実行されるプログラムとによって、本開示に係る「第2検査装置」の一例が具現化される。
図4は、この実施の形態に係る第1検査及び第2検査の概要を示す表である。図4を参照して、この実施の形態に係る第1検査及び第2検査に関しては、第1検査項目よりも第2検査項目のほうが、要求されるリアルタイム性が高い。すなわち、要求されるモニタリング間隔及び判定間隔は、第1検査項目よりも第2検査項目のほうが短い。具体的には、第1検査項目は、経年劣化に起因した部品異常の有無を確認する項目である。第2検査項目は、タイヤの空気漏れの有無を確認する項目である。
この実施の形態では、サーバ500が、第1検査項目に対応する第1状態に基づいて第1検査を実行する。詳細は後述するが、第1状態は、車両1の自動運転中に車両1が備える第1センサによって検出され、車両1からサーバ500へ逐次送信される。サーバ500は、リモートで車両1の検査を行なう。この実施の形態に係る車両検査方法では、第1状態が、車両1の重量と、車両1の車速と、車両1の停車回数と、車両1の急ブレーキ回数と、車両1の位置と、車両1に搭載された蓄電装置(後述する図5に示すバッテリ160)のSOCとを含む。上記第1状態と各種車載部品の経年劣化(第1検査項目)との関係については後述する。
この実施の形態では、車両1に搭載された制御装置150が、第2検査項目に対応する第2状態に基づいて第2検査を実行する。詳細は後述するが、第2状態は、車両1の自動運転中に車両1が備える第2センサによって検出される。この実施の形態では、第2状態としてタイヤの空気圧が採用される。タイヤの空気漏れが生じると、タイヤの空気圧が低下する。スローリークの場合はタイヤの空気圧が徐々に低下する。制御装置150は、タイヤの空気圧の推移に基づいて、タイヤの空気漏れが生じているか否かを判断することができる。
図5は、車両1が備える第1センサ及び第2センサについて説明するための図である。図1及び図2とともに図5を参照して、車両1は、推進システム123Cに電力を供給するバッテリ160を備える。バッテリ160としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。
バッテリ160には、監視モジュール160aが設けられている。監視モジュール160aは、バッテリ160の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果を統合制御マネージャ115へ出力する。監視モジュール160aは、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。制御装置150は、監視モジュール160aの出力に基づいてバッテリ160の状態(たとえば、温度、電流、電圧、及びSOC)を取得することができる。SOCは、蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
車両1は、車両1の重量を検出する重量センサ170aをさらに備える。重量センサ170aによって検出される車両1の重量は、車体の重量に、車両1に乗った人の重量と、車両1に積載した物の重量とを加えた総重量である。この実施の形態では、ベース車両100が備えるサスペンション170に取り付けられた積載荷重センサを、重量センサ170aとして採用する。ただしこれに限られず、積載荷重センサに代えて又は加えて、ベース車両100内の各座席に設けられた圧力センサを、重量センサ170aとして採用してもよい。重量センサ170aが検出した車両1の重量は、統合制御マネージャ115へ出力される。
推進システム123Cは、MG(Motor Generator)20と、ECU21と、PCU(Power Control Unit)22とを含む。推進システム123Cは、バッテリ160に蓄えられた電力を用いて車両1の走行駆動力を発生させる。MG20は、たとえば三相交流モータジェネレータである。PCU22は、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)とを含む。PCU22は、ECU21によって制御される。SMRは、バッテリ160からMG20までの電路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両1の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
MG20は、PCU22によって駆動され、車両1の駆動輪Wを回転させる。また、MG20は、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ160に供給する。PCU22は、バッテリ160から供給される電力を用いてMG20を駆動する。車両1が備える走行用のモータ(MG20)の数は任意であり、1つでも2つでも3つ以上でもよい。走行用のモータはインホイールモータであってもよい。図5には、1つの駆動輪Wのみを模式的に示しているが、車両1における駆動輪Wの数及び駆動方式は任意である。車両1の駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。
車両1が備える各車輪(駆動輪Wを含む)には、車輪のタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ20bと、ブレーキシステム121に含まれる制動装置180と、制動装置180によって車輪に付与される制動力を検出するブレーキセンサ180aとが設けられている。空気圧センサ20bは、タイヤの空気圧とともにタイヤの温度も監視するTPMS(Tire Pressure Monitoring System)であってもよい。ブレーキセンサ180aは、ブレーキパッド(又は、ホイールシリンダ)に加わる油圧を検出する油圧センサであってもよい。4つの空気圧センサ20b及び4つのブレーキセンサ180aによってそれぞれ検出された車輪ごとのタイヤ空気圧及び制動力(たとえば、制動力に対応する油圧)は統合制御マネージャ115へ出力される。
この実施の形態では、車輪速センサ127A,127B(図1)、姿勢用センサ270(図2)、監視モジュール160a(図5)、重量センサ170a(図5)、及びブレーキセンサ180a(図5)の各々が、第1センサとして機能する。通信装置130は、車両1の自動運転中に第1センサによって検出された第1状態をサーバ500へ逐次送信する。
この実施の形態では、4つの空気圧センサ20bの各々が、第2センサとして機能する。制御装置150は、車両1の自動運転中に第2センサ(空気圧センサ20b)によって検出された第2状態(タイヤの空気圧)を用いて第2検査を実行する。そして、第2検査によって不良判定がなされた場合には、通信装置130が第2検査の結果を示す信号をサーバ500へ送信する。
図6は、サーバ500の構成について説明するための図である。図1及び図2とともに図6を参照して、サーバ500は、プロセッサ501、RAM502、及び記憶装置503を含む。記憶装置503は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置503には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置503に記憶されているプログラムをプロセッサ501が実行することで、後述する検査に係る処理(図9及び図10参照)が実行される。ただし、こうした処理は、ソフトウェアではなく、専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
記憶装置503は、推定アルゴリズムEをさらに記憶している。推定アルゴリズムEは、所定の入力情報と所定の出力情報との関係を規定する。推定アルゴリズムEに所定の入力情報が入力されると、推定アルゴリズムEは上記関係に従って所定の出力情報を出力する。
この実施の形態では、前述した第1状態、すなわち車両1の重量、車両1の車速、車両1の停車回数、車両1の急ブレーキ回数、車両1の位置、及びバッテリ160のSOCが、推定アルゴリズムEの上記入力情報に相当する。車両1の車速及び停車回数の各々は、たとえば車輪速センサ127A,127Bによって検出される。また、車両1の重量、車両1の急ブレーキ回数、車両1の位置、バッテリ160のSOCは、それぞれ重量センサ170a、ブレーキセンサ180a、姿勢用センサ270、監視モジュール160aによって検出される。
この実施の形態では、車両1に搭載された所定の対象部品(たとえば、部品A、部品B、部品C、部品D、・・・)の劣化進行度が、推定アルゴリズムEの上記出力情報に相当する。詳しくは、第1状態が推定アルゴリズムEに入力されると、その第1状態で車両1が自動運転を実行することによって対象部品の劣化が進行した程度(対象部品の劣化進行度)が、推定アルゴリズムEから出力される。
この実施の形態では、車両1に搭載されたMG20(駆動用モータ)とバッテリ160(駆動用バッテリ)とサスペンション170と制動装置180との各々が、対象部品として採用される。具体的には、自動運転中の車両1の重量が大きいほど、MG20、サスペンション170、及び制動装置180の各々の劣化が進行しやすくなる。車両1の急ブレーキ回数(積算回数)が増えるほど、サスペンション170及び制動装置180の各々の劣化が進行しやすくなる。バッテリ160のSOCが適正範囲から外れている時間が長くなるほど、バッテリ160の劣化が進行しやすくなる。車両1の停車回数(積算回数)が増えるほど、制動装置180の劣化が進行しやすくなる。また、走行を継続する車両1は停車後に発進するため、車両1の停車回数が増えるほど、車両1の発進回数が増えてMG20の劣化が進行しやすくなる。
推定アルゴリズムEの入力情報は、車両1の位置情報に基づいて取得される、気象情報(車両1が存在する地域の気象を示す情報)と、交通情報(車両1の周辺の交通状況を示す情報)と、路面情報(車両1が走行中の路面に関する情報)とをさらに含んでもよい。気象情報の例としては、気温、天気(たとえば、晴れ、くもり、雨、又は雪)が挙げられる。交通情報の例としては、渋滞情報が挙げられる。路面情報の例としては、平坦、上り坂、下り坂、悪路のような路面の種類が挙げられる。気温(又は、路面温度)が適正範囲から外れている時間が長くなるほど、ゴム製品(たとえば、タイヤ)は劣化しやすくなる。また、ゴム製品は、太陽光によっても劣化し得る。渋滞した道路を車両1が走行すると、MG20及び制動装置180の各々が劣化しやすくなる。車両1が上り坂を走行すると、MG20が劣化しやすくなる。車両1が下り坂を走行すると、制動装置180が劣化しやすくなる。車両1が悪路を走行すると、サスペンション170が劣化しやすくなる。
この実施の形態では、推定アルゴリズムEとして、AI(人工知能)によるアルゴリズムを採用する。推定アルゴリズムEは、ビッグデータ(たとえば、車両1と同一仕様の車両で実測されたデータ)を用いて機械学習された学習済みモデルであってもよい。ただしこれに限られず、推定アルゴリズムEは、ルールベースのアルゴリズムであってもよい。推定アルゴリズムEは、たとえば上述の関係(傾向)を示す数式又はマップであってもよい。推定アルゴリズムEは、OTAによって逐次更新されてもよい。
サーバ500は、車両に関する情報(以下、「車両情報」とも称する)を管理する。複数の車両の各々の車両情報が、サーバ500の記憶装置503に記憶されている。具体的には、車両を識別するための識別情報(車両ID)が車両ごとに付与されており、サーバ500は車両情報を車両IDで区別して管理している。車両情報は、たとえば車種、仕様、及び車両状況(たとえば、自動運転中か否か)を含む。この実施の形態では、車両情報が各対象部品の劣化度をさらに含む。図6中の表T1は、各車両の車両情報を示す。表T1において、「V-1」は車両1の車両IDに相当する。図6には、車両1(V-1)に関する車両情報(特に、対象部品ごとの劣化度)のみが示されているが、表T1は、サーバ500に登録された全ての車両に関する車両情報を示す。
サーバ500は、自動運転中の車両1から逐次受信する第1状態を推定アルゴリズムEに逐次入力し、推定アルゴリズムEから出力される対象部品ごとの劣化進行度を、表T1が示す対象部品ごとの劣化度に逐次加算する。自動運転中の各対象部品の劣化進行度は、推定アルゴリズムEによって推定され、表T1における対応する対象部品の劣化度に加算される。これにより、表T1が更新される。サーバ500は、推定アルゴリズムEから出力される各対象部品の劣化進行度を積算することによって、車両1の自動運転中における各対象部品の劣化進行度を取得することができる。なお、自動運転中以外における各対象部品の劣化進行度の推定方法は任意である。サーバ500は、たとえば所定のマップを用いて、自動運転中以外における各対象部品の劣化進行度を推定してもよい。
制御装置150は、所定の期間(以下、「運用期間」と称する)において車両1の自動運転を実行するように構成される。車両1の自動運転中は、図3に示した処理が実行され、制御装置150がADK200からの指令に従って車両1の各種システム(たとえば、図2に示したブレーキシステム121、ステアリングシステム122、パワートレーンシステム123、アクティブセーフティシステム125、及びボディシステム126)を制御する。車両1は、運用期間において、自動運転により所定のサービス(たとえば、物流サービス又は旅客輸送サービス)を提供してもよい。この実施の形態では、自動運転により旅客輸送サービスを提供する車両1が、運行領域内を予め決められた経路で巡回走行する。ただしこれに限られず、車両1は、都度の要求に応じて経路を決定し、決定された経路(オンデマンド経路)に従って自動運転による走行を実行してもよい。
図7は、車両1の制御装置150によって実行される第1検査に係る処理を示すフローチャートである。たとえば、車両1による自動運転が開始されると、図7に示す一連の処理が開始され、自動運転中は所定の第1周期で図7に示す一連の処理が繰り返し実行される。制御装置150は、たとえば、車両1の運転モードがマニュアルモードから自律モードに切り替わった場合に、車両1による自動運転が開始されたと判断する。
図1~図6とともに図7を参照して、S11では、第1センサによって検出された現在の第1状態(より特定的には、車両1の重量、車両1の車速、車両1の停車回数、車両1の急ブレーキ回数、車両1の位置、及びバッテリ160のSOC)を、制御装置150が取得し、記憶装置153に保存する。
続くS12では、S11で取得された第1状態の少なくとも1つが前回送信(後述するS13)から大きく変化したか否かを、制御装置150が判断する。具体的には、制御装置150は、S11で検出された第1状態と、直近にサーバ500へ送信された第1状態との乖離度合い(以下、「状態変化量」とも称する)が、所定水準を超えるか否かを判断する。前回値(直近に送信した値)と今回値(現在のセンサ検出値)との乖離度合い(状態変化量)は、たとえば差又は比率で表すことができる。差(絶対値)が大きいほど状態変化量が大きいことになる。また、比率が1に近いほど状態変化量が小さいことになる。所定水準は、第1状態ごとに任意に設定できる。
制御装置150は、第1状態ごとに状態変化量が所定水準を超えるか否かを判断し、少なくとも1つの第1状態の状態変化量が所定水準を超える場合には、S12においてYESと判断し、いずれの第1状態の状態変化量も所定水準を超えない場合には、S12においてNOと判断する。初回処理ルーチン(車両1が自動運転を開始した直後の処理ルーチン)では、前回値が存在しないため、S12においてYESと判断される。
S12においてYESと判断された場合には、通信装置130が、S13において、S11で取得された全ての第1状態を示す信号(以下、「第1検査信号」とも称する)を、車両1の車両IDとともにサーバ500へ送信する。その後、処理がS14に進む。他方、S12においてNOと判断された場合には、第1検査信号の送信(S13)が行なわれることなく、処理がS14に進む。
続くS14では、車両1が自動運転中であるか否かを、制御装置150が判断する。たとえば、車両1が自律モードである場合には車両1が自動運転中であると制御装置150は判断し、車両1がマニュアルモードである場合には車両1が自動運転中ではないと制御装置150は判断する。車両1が自動運転中である場合には(S14にてYES)、処理が最初のステップ(S11)に戻る。車両1が自動運転中ではない場合には(S14にてNO)、図7に示す一連の処理が終了する。
上記のように、車両1(通信装置130)は、車両1の自動運転中に第1センサによって検出された第1状態をサーバ500へ逐次送信するように構成される。この実施の形態では、第1センサによって検出された第1状態を示す第1検査信号が、図7のS13において、車両1からサーバ500へ逐次送信される。
図8は、車両1の制御装置150によって実行される第2検査に係る処理を示すフローチャートである。たとえば、車両1による自動運転が開始されると、図8に示す一連の処理が開始され、自動運転中は、所定の第2周期で図8に示す一連の処理が繰り返し実行される。第2検査のリアルタイム性を高めるため、第2周期(第2検査の実行周期)を第1周期(第1状態の検出周期)よりも短くしてもよい。
図1~図6とともに図8を参照して、S21では、第2センサ(空気圧センサ20b)によって検出された現在の第2状態(タイヤの空気圧)を、制御装置150が取得し、記憶装置153に保存する。続けて、制御装置150は、S22において、S21で取得された第2状態を用いて第2検査を実行する。第2検査においては、第2状態に異常が生じているか否かが判定される。具体的には、制御装置150は、タイヤの空気圧の推移に基づいて、車両1の車輪ごとにタイヤの空気漏れが生じているか否かを判断する。タイヤの空気漏れが生じていることは、タイヤ空気圧(第2状態)に異常が生じていることを意味する。制御装置150は、基準レベルを超えるタイヤ空気圧の低下がS22において所定回連続で確認された場合にタイヤの空気漏れが生じていると判断してもよい。
車両1において少なくとも1つの車輪についてタイヤの空気漏れが生じている場合には、第2検査によって不良判定がなされ(S22にてYES)、処理がS23に進む。S23では、通信装置130が、第2検査の結果(タイヤ空気圧異常)を示す信号(以下、「第2検査信号」とも称する)を、車両1の車両IDとともにサーバ500へ送信する。その後、処理がS24に進む。他方、車両1の全ての車輪についてタイヤの空気漏れが生じていない場合には、第2検査によって良判定がなされ(S22にてNO)、第2検査信号の送信(S23)が行なわれることなく、処理がS24に進む。
続くS24では、制御装置150が、前述した図7のS14と同様に、車両1が自動運転中であるか否かを判断する。そして、車両1が自動運転中である場合には(S24にてYES)、処理が最初のステップ(S21)に戻る。車両1が自動運転中ではない場合には(S24にてNO)、図8に示す一連の処理が終了する。
上記のように、制御装置150は、車両1の自動運転中に第2センサによって検出された第2状態を用いて第2検査を実行し(S21及びS22)、第2検査によって不良判定がなされた場合に(S22にてYES)、通信装置130が第2検査信号(第2検査の結果を示す信号)をサーバ500へ送信する(S23)。
図9は、サーバ500によって実行される第1検査に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、車両1の自動運転中に繰返し実行される。たとえば車両1の自動運転開始を示す開始信号をサーバ500が受信すると、以下に説明する図9に示す一連の処理が開始される。
図1~図6とともに図9を参照して、S31では、サーバ500が、車両1から逐次受信する第1状態(すなわち、図7のS13で送信される第1検査信号が示す第1状態)を用いて、車両1の各対象部品(MG20、バッテリ160、サスペンション170、制動装置180)の現在の劣化度を推定する。具体的には、サーバ500は、推定アルゴリズムE(図6)を用いて、直近に受信した第1検査信号が示す現在の第1状態から、自動運転中の経年劣化に起因した各対象部品の劣化進行度を推定する。サーバ500は、推定された各対象部品の劣化進行度を、表T1における対応する対象部品の劣化度に加算することによって、表T1(図6)を更新する。そして、サーバ500は、更新された表T1から各対象部品の現在の劣化度を取得する。なお、サーバ500は、次の第1検査信号を受信するまでの間は、直近に受信した第1検査信号が示す第1状態が維持されているものとみなす。
続くS32では、車両1においていずれかの対象部品に異常が生じているか否かを、サーバ500が判定する。具体的には、サーバ500は、車両1に搭載された対象部品ごとに現在の劣化度が所定の閾値を超えるか否かを判断する。この実施の形態では、S31及びS32において実行される車載部品の検査が、車両1に関する第1検査に相当する。上記閾値は、対象部品ごとに任意に設定できる。少なくとも1つの対象部品の劣化度が閾値を超える場合には、第1検査によって不良判定がなされ(S32にてYES)、処理がS33に進む。第1検査によって不良判定がなされたことは、いずれかの対象部品において経年劣化に起因した異常が生じたことを意味する。
S33では、サーバ500が、車両1について所定の交換処理を実行する。所定の交換処理では、第1検査の結果の記録、報知、及び送信の少なくとも1つが実行される。第1検査の結果は、交換が必要な部品(すなわち、劣化度が閾値を超える対象部品)を示す情報を含む。サーバ500は、第1検査の結果を記憶装置503に記録してもよい。サーバ500は、第1検査の結果を車両1又は所定の端末へ送信し、車両1のユーザに部品交換を促す報知処理を所定の報知装置(たとえば、HMI230又はモバイル端末UT)に実行させてもよい。サーバ500は、S33において、車両1の運用を禁止し、代わりの車両を手配するための処理を実行してもよい。
上記S33の処理が実行されると、処理がS34に進む。他方、車両1においていずれの対象部品の劣化度も閾値を超えない場合には、第1検査によって良判定がなされ(S32にてNO)、交換処理(S33)が行なわれることなく、処理がS34に進む。S34では、サーバ500が、車両1が自動運転中であるか否かを判断する。サーバ500は、たとえば車両1の自動運転終了を示す終了信号を受信した場合に、車両1の自動運転が終了したと判断する。車両1が自動運転中である場合には(S34にてYES)、処理が最初のステップ(S31)に戻る。車両1が自動運転中ではない場合には(S34にてNO)、図9に示す一連の処理が終了する。
図10は、サーバ500によって実行される第2検査に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえばサーバ500が車両1から第2検査信号を受信するたびに開始される。サーバ500が車両1から第2検査信号を受信したことは、車両1においてタイヤの空気漏れ(パンク)が生じたことを意味する。
図1~図6とともに図10を参照して、S40では、サーバ500が、車両1について所定の交換処理を実行する。S40では、図9のS33と同様に、検査結果(第2検査の結果)の記録、報知、及び送信の少なくとも1つが実行されてもよい。第2検査の結果は、交換又は修理が必要なタイヤ(空気漏れが生じたタイヤ)を示す情報を含む。S40の処理が実行されると、図10に示す一連の処理は終了する。
以上説明したように、この実施の形態に係る車両検査方法は、図7~図10に示した処理を含む。図7のS13(第1送信工程)では、車両1が、自動運転中に、車両1に搭載された第1センサによって検出された第1状態を示す信号(第1検査信号)をサーバ500へ送信する。図9のS32(第1判定工程)では、サーバ500が、車両1から受信した第1検査信号が示す第1状態を用いて、車両1について第1検査項目の良否を判定する。図8のS22(第2判定工程)では、車両1が、自動運転中に、車両1に搭載された第2センサによって検出された第2状態を用いて第2検査項目の良否を判定する。図8のS23(第2送信工程)では、第2検査項目について不良と判定された場合に、車両1が、第2検査項目の判定結果を示す信号(第2検査信号)をサーバ500へ送信する。こうした車両検査方法によれば、自動運転車両(たとえば、車両1)を管理するサーバ500の負荷を軽減しつつ自動運転車両のメンテナンスを適切に行なうことが可能になる。
第1及び第2検査に係る処理は、上述した態様に限られない。たとえば、第1検査に係る処理は、以下に説明するように変形されてもよい。以下、図11~図13を用いて、第1検査の変形例について説明する。
以下に説明する変形例では、サーバ500が、図11に示す一連の処理を実行する。また、車両1の制御装置150が、図7に示した処理に代えて、図12に示す一連の処理を実行する。さらに、サーバ500が、図9に示した処理に代えて、図13に示す一連の処理を実行する。
図11は、第1検査の変形例に関してサーバ500によって実行される要求処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定周期で繰り返し実行される。
図1~図6とともに図11を参照して、S51では、サーバ500が、登録された複数の車両の中から自動運転中の車両を抽出する。この変形例では、サーバ500に登録された各車両が、図1、図2、及び図5に示した構成を有し、図3に示した処理によって自動運転を行なうように構成される。サーバ500は、前述した開始信号及び終了信号(図3参照)によって、各車両が自動運転中か否かを判断してもよい。
続くS52では、サーバ500が、車種に基づいて自動運転中の車両を分類する。同一車種の車両は、同じグループに分類される。図11に示す表T2は、サーバ500に登録された複数の車両のうち、車両ID「V-12」、「V-16」、「V-37」、・・・で識別される各車両が、自動運転中であり、かつ、同じ車種(車種A)であることを示している。また、表T2は、サーバ500に登録された複数の車両のうち、車両ID「V-6」、「V-35」、「V-58」、・・・で識別される各車両が、自動運転中であり、かつ、同じ車種(車種B)であることを示している。車種の区分は、自動車メーカのカタログに従って定められてもよい。
続くS53では、サーバ500が、グループごと(車種ごと)に1台の代表車両を決定する。代表車両の決め方は任意である。ただし、いったん代表車両が決定されると、その代表車両が自動運転をやめるまでは、代表車両は変更されない。代表車両は、ランダムに決定されてもよいし、所定の基準に従って決定されてもよい。グループにおいて車両IDが最も若い車両が、代表車両として選ばれてもよい。たとえば、車種Aのグループにおいては車両ID「V-12」で識別される車両、車種Bのグループにおいては車両ID「V-6」で識別される車両が、代表車両として選ばれてもよい。また、各グループにおいてセンシングに関するスペックが高い車両が、優先的に代表車両として選ばれてもよい。
続くS54では、サーバ500が、第1状態を要求する信号(以下、「要求信号」とも称する)を各グループの代表車両へ送信する。S54の処理が実行されると、最初のステップ(S51)に戻る。
図12は、第1検査の変形例に関して代表車両によって実行される送信処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば代表車両がサーバ500から要求信号を受信すると、開始される。
図1~図6とともに図12を参照して、代表車両の制御装置150は、S11A、S13Aにおいてそれぞれ図7のS11、S13と同様の処理を行ない、代表車両に搭載された第1センサによって検出された第1状態を示す第1検査信号を、代表車両の車両IDとともにサーバ500へ送信する。代表車両に関する第1検査信号の送信(S13A)が完了すると、図12に示す一連の処理は終了する。図12に示す一連の処理は代表車両のみで実行される。上記の処理によって代表車両の電力が消費されるため、車両管理者から代表車両のユーザにインセンティブ(対価)が支払われてもよい。各ユーザのインセンティブは、サーバ500で管理されてもよい。
図13は、第1検査の変形例に関してサーバ500によって実行される判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえばサーバ500が代表車両から第1検査信号を受信すると、開始される。
図1~図6とともに図13を参照して、S31Aでは、サーバ500が、図9のS31と同様の処理を行ない、代表車両の各対象部品(MG20、バッテリ160、サスペンション170、制動装置180)の現在の劣化度を推定する。続けて、サーバ500は、S32Aにおいて図9のS32と同様の処理を行ない、代表車両においていずれかの対象部品に異常が生じているか否かを判定する。この変形例では、S31A及びS32Aにおいて実行される車載部品の検査が、代表車両に関する第1検査に相当する。代表車両に関する第1検査によって不良判定がなされると(S32AにてYES)、処理がS33Aに進む。サーバ500は、代表車両に関する第1検査によって不良判定がなされた場合に(S32AにてYES)、代表車両と同じグループに属する全ての車両において経年劣化に起因した部品異常が生じたと判定する。
S33Aでは、サーバ500が、代表車両と同じグループに属する全ての車両について所定の交換処理を実行する。所定の交換処理は、図9のS33と同様、第1検査の結果の記録、報知、及び送信の少なくとも1つであってもよい。ただし、S33Aでは、代表車両だけでなく、代表車両と同じグループに属する全ての車両について、所定の交換処理が実行される。たとえば、図11に示した車種Aのグループの代表車両(たとえば、車両ID「V-12」で識別される車両)に関する第1検査によって不良判定がなされた場合には(S32AにてYES)、S33Aにおいて、車両ID「V-12」、「V-16」、「V-37」、・・・で識別される各車両について、所定の交換処理が実行される。S33Aの処理が実行されると、図13に示す一連の処理は終了する。
他方、代表車両においていずれの対象部品の劣化度も所定の閾値を超えない場合には、第1検査によって良判定がなされ(S32AにてNO)、交換処理(S33A)が行なわれることなく、図13に示す一連の処理が終了する。
以上説明したように、上記変形例では、サーバ500によって管理される複数の車両の各々が、制御装置150と第1センサ(たとえば、車輪速センサ127A,127B、姿勢用センサ270、監視モジュール160a、重量センサ170a、及びブレーキセンサ180a)と第2センサ(たとえば、空気圧センサ20b)と通信装置130とを備える(図1、図2、及び図5参照)。車両に搭載された制御装置150は、当該車両を自動運転で走行させるための制御を実行するように構成される(図3参照)。サーバ500は、複数の車両の中から代表車両(第1車両)を選ぶ(図11参照)。代表車両の通信装置130は、代表車両の自動運転中に第1センサによって検出された第1状態をサーバ500へ逐次送信する(図11及び図12参照)。サーバ500は、代表車両から逐次受信する第1状態を用いて、代表車両と同じグループに属する複数の車両(第1車両及び第2車両)の各々について第1検査を実行する(図13参照)。同じグループに属する各車両は、同一車種であり、かつ、同時に自動運転で走行している。サーバ500は、本開示に係る「第1検査装置」の一例として機能する。
上記構成では、第1車両(代表車両)からサーバ500へ逐次送信される第1状態を用いて、第2車両(代表車両と同じグループに属する代表車両以外の車両)に関する第1検査が行なわれる。第2車両の第1センサによる検出値が第2車両からサーバ500へ送信されないことで、第2車両からサーバ500へ送信される情報量を軽減できる。上記構成によれば、各車両からサーバ500へ送信される情報量を軽減しつつ、多くの車両の検査を行なうことが可能になる。なお、各車両が分類される区分(グループ)は、車種ごとのグループに限られない。グループ分けの仕方は適宜変更である。
第2検査に関しては、上記変形例においても、前述した実施の形態と同様に行なわれる。すなわち、各車両の制御装置150が図8に示した処理を実行し、サーバ500が図10に示した処理を実行する。サーバ500によって管理される各車両の制御装置150が、本開示に係る「第2検査装置」の一例として機能する。各車両の制御装置150は、当該車両において、自動運転中に第2センサによって検出された第2状態を用いて第2検査を実行し、第2検査によって不良判定がなされた場合には、第2検査の結果をサーバ500へ送信する(図8参照)。車両ごとに図8に示した処理が実行され、各車両において第2検査が実行される。こうした構成により、前述の第1検査に加えて、リアルタイム性の高い第2検査(図4参照)を適切に行なうことが可能になる。
第1検査項目及び第2検査項目は、図4に示した項目に限られず適宜変更可能である。たとえば、タイヤの空気漏れの有無を確認する項目に代えて又は加えて、液漏れ(たとえば、ブレーキオイル漏れのようなオイル漏れ)の有無を確認する項目が、第2検査項目として採用されてもよい。エンジン(内燃機関)を備える車両では、エンジン冷却水温異常の有無を確認する項目が、第2検査項目として採用されてもよい。
車両の構成は、上記実施の形態で説明した構成(図1、図2、及び図5参照)に限られない。ベース車両が後付けなしの状態で自動運転機能を有してもよい。自動運転のレベルは、完全自動運転(レベル5)であってもよいし、条件付きの自動運転(たとえば、レベル4)であってもよい。車両の構成は、無人走行専用の構成に適宜変更されてもよい。たとえば、無人走行専用の車両は、人が車両を操作するための部品(ステアリングホイールなど)を備えなくてもよい。車両は、ソーラーパネルを備えてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、個人が所有する車両(POV)であってもよい。車両は、ユーザの使用目的に応じてカスタマイズされる多目的車両であってもよい。車両は、移動店舗車両、ロボタクシー、無人搬送車(AGV)、又は農業機械であってもよい。車両は、無人又は1人乗りの小型BEV(たとえば、マイクロパレット)であってもよい。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。