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JP2023069186A - 栄養組成物、栄養組成物の製造方法、及び栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法 - Google Patents

栄養組成物、栄養組成物の製造方法、及び栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法 Download PDF

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JP2023069186A
JP2023069186A JP2021180870A JP2021180870A JP2023069186A JP 2023069186 A JP2023069186 A JP 2023069186A JP 2021180870 A JP2021180870 A JP 2021180870A JP 2021180870 A JP2021180870 A JP 2021180870A JP 2023069186 A JP2023069186 A JP 2023069186A
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copper
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protein
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JP2021180870A
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岳 河野
Takeshi Kono
貴広 小山
Takahiro Koyama
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
Original Assignee
Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Abstract

【課題】
本技術は、栄養組成物における銅の生体利用性を高めることを目的とする。
【解決手段】
本技術は、たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物であって、前記栄養組成物は、リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含み、且つ、前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含む、前記栄養組成物を提供する。前記栄養組成物は、前記たんぱく質成分を、前記栄養組成物100g当たり1g以上の含有量で含んでよい。前記たんぱく質成分は、乳たんぱく質、コラーゲン、大豆たんぱく質、乳たんぱく質分解物、コラーゲン分解物、及び大豆たんぱく質分解物のうちの1つ以上を含んでよい。また、本技術は、前記栄養組成物の製造方法及び銅の生体利用性の評価方法も提供する。
【選択図】なし

Description

本技術は、栄養組成物並びにその製造方法及び評価方法に関し、特にはたんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物並びにその製造方法及び評価方法に関する。
栄養補給のために、例えば流動食などの栄養組成物が用いられることがある。栄養組成物は、その目的や用途に応じて種々の栄養成分を含む。栄養成分のうちの1つとして銅があり、銅は、赤血球の形成を助ける栄養素として知られている。また、銅は、他にも種々の役割を有している。例えば、銅は約10種類の酵素の活性中心に存在し、エネルギー生成、鉄代謝、細胞外マトリクスの成熟、神経伝達物質の産生、及び活性酸素除去などに関与している。また、銅の不足は、銅欠乏症をもたらすこともある。
銅などの微量元素の吸収性を高めるための技術は、これまでにいくつか提案されている。例えば下記特許文献1には、「豆乳及び未分解のカゼインを含む乳蛋白質を主要な蛋白質源として含有することを特徴とする栄養組成物。」(請求項1)が開示されている。同文献には、「栄養組成物中に豆乳及び未分解のカゼインを含む乳蛋白質を含有することにより、天然微量元素の形態で銅及び亜鉛を補給することが可能であり、生体内への微量元素の優れた吸収を有する」(段落0011)ことが記載されている。
特開2000-157213号公報
栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を高めることができれば、当該栄養組成物の価値を向上させることができる。また、銅の生体利用性が向上された栄養組成物は、例えば銅の不足が懸念されるヒトにとって有用である。
以上を踏まえ、本技術は、栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を向上することを目的とする。
本発明者らは、特定の栄養組成物によって銅の生体利用性を向上させることができることを見出した。
すなわち、本技術は、以下を提供する。
[1]たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物であって、
前記栄養組成物は、
リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含み、且つ、
前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含む、
前記栄養組成物。
[2]前記栄養組成物は、前記たんぱく質成分を、前記栄養組成物100g当たり1g以上の含有量で含む、[1]に記載の栄養組成物。
[3]前記たんぱく質成分は、乳たんぱく質、コラーゲン、大豆たんぱく質、乳たんぱく質分解物、コラーゲン分解物、及び大豆たんぱく質分解物のうちの1つ以上を含む、[1]又は[2]に記載の栄養組成物。
[4]前記たんぱく質成分は、カゼインを含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[5]前記たんぱく質成分は、ミセル性カゼインを含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[6]前記栄養組成物は、前記ミセル性カゼインを、前記栄養組成物100g当たり1g以上の含有量で含む、[5]に記載の栄養組成物。
[7]前記たんぱく質成分は、カゼイン分解物又はコラーゲン分解物を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[8]たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物の製造方法であって、
前記栄養組成物は、
リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含み、且つ、
前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含む、
前記製造方法。
[9]前記製造方法は、
前記たんぱく質成分と前記銅とを含む混合物を調製する調製工程と、
前記混合物を殺菌する殺菌工程と、
を含む、[8]に記載の製造方法。
[10]前記殺菌工程は、前記混合物が100℃以上に維持される時間が3分以下であるように実行される、[9]に記載の製造方法。
[11]前記混合物のpHが6.5以下である、[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12]栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法であって、
たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物を、消化酵素を用いた消化処理に付して消化液を得る消化工程、
前記消化液を、水性液相を含む少なくとも二相が形成されるように分離する分離工程、及び
前記水性液相中の銅の量に基づいて前記栄養組成物中の銅の生体利用性を評価する評価工程
を含む前記評価方法。
本技術により、栄養組成物中の銅の生体利用性を高めることができる。これにより、当該栄養組成物の価値を高めることができる。また、当該栄養組成物によって、効率的に銅を補給することが可能となる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
リジノアラニンの生成を説明するための図である。 銅の生体利用性の測定方法を説明するための図である。 リジノアラニン含量及び銅の生体利用性の測定結果をプロットしたグラフである。
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
本技術の栄養組成物は、たんぱく質成分及び銅を含む。前記栄養組成物は、リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含み、且つ、前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含む。リジノアラニン含有量がこのように制御されていることによって、本技術の栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を高めることができる。そのため、本技術の栄養組成物は、銅の補給が求められるヒトにとって特に適している。リジノアラニン含有量は、以下で説明するように例えばたんぱく質成分の種類及び/又は殺菌工程における処理条件を調整することによって制御することができる。
また、本技術は、前記栄養組成物の製造方法も提供する。前記製造方法は、例えば、前記たんぱく質成分と前記銅とを含む混合物を調製する調製工程と、前記混合物を殺菌する殺菌工程と、を含む。好ましい実施態様において、前記殺菌工程は、前記栄養組成物のリジノアラニン含有量が、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg超とならないように実行される。後述のとおり、前記混合物の組成を調整することによって、及び/又は、殺菌工程の条件を調整することによって、リジノアラニン含有量をこのように制御することができる。また、栄養組成物中のリジノアラニン含有量をこのように制御することによって、栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を向上させることができる。
また、本技術は、たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法も提供する。前記評価方法は、消化酵素を用いた消化処理に栄養組成物を付して消化液を得る消化工程、前記消化液を遠心分離により少なくとも水性液相と沈殿相とに分離する分離工程、及び前記水性液相中の銅の量に基づいて前記栄養組成物中の銅の生体利用性を評価する評価工程を含む。当該評価方法によって、銅の生体利用性という観点から栄養組成物を評価することができ、例えば、より良い銅の生体利用性を有する栄養組成物を選択することができる。
以下で、本技術の組成物について、より詳細に説明する。
(1)たんぱく質成分
本技術の栄養組成物はたんぱく質成分を含む。前記たんぱく質成分は、たんぱく質、たんぱく質分解物、又は、たんぱく質及びたんぱく質分解物の組合せである。前記たんぱく質成分はさらにアミノ酸を含んでもよい。
前記たんぱく質は、動物性たんぱく質若しくは植物性たんぱく質であってよく、又はこれらの両方であってもよい。
前記動物性たんぱく質は、例えば乳たんぱく質、卵たんぱく質、及びコラーゲンのうちの1つ以上を含んでよい。前記乳たんぱく質は、特にはカゼイン、ホエイたんぱく質、又はこれらの両方であってよい。前記乳たんぱく質は、カゼインナトリウムやカゼインカルシウム等のカゼイネート、酸カゼイン、ミセラーカゼイン濃縮物(MCC)やミセラーカゼイン単離物(MCI)等のミセル性カゼイン濃縮物、乳たんぱく質濃縮物(MPC)、ホエイたんぱく質濃縮物(WPC)、又はホエイたんぱく質単離物(WPI)として、前記栄養組成物に配合されてよい。
前記植物性たんぱく質は、例えば大豆たんぱく質、米たんぱく質、及び小麦たんぱく質のうちの1つ以上を含んでよい。
前記たんぱく質分解物は、動物性たんぱく質の分解物又は植物性たんぱく質の分解物であってよく、又はこれらの両方であってもよい。これらの分解物は、例えば酵素処理により得られた分解物であってよい。
前記動物性たんぱく質の分解物は、例えば乳たんぱく質分解物、卵たんぱく質分解物、及びコラーゲン分解物のうちの1つ以上を含んでよい。前記乳たんぱく質分解物は、より具体的にはカゼイン分解物、ホエイたんぱく質分解物、又はこれらの両方であってよい。前記カゼイン分解物は、カゼインペプチドを含むものであってよい。前記ホエイたんぱく質分解物は、ホエイペプチドを含むものであってよい。このように、たんぱく質分解物は、ペプチド、特にはたんぱく質の分解によって生じたペプチドを含むものであってよい。
前記植物性たんぱく質分解物は、例えば大豆たんぱく質分解物、米たんぱく質分解物、及び小麦たんぱく質分解物のうちの1つ以上を含んでよい。
本技術の好ましい実施態様において、前記たんぱく質成分は、乳たんぱく質、コラーゲン、大豆たんぱく質、乳たんぱく質分解物、コラーゲン分解物、及び大豆たんぱく質分解物のうちの1つ以上を含む。例えば、前記たんぱく質成分は、カゼイン分解物又はコラーゲン分解物を含む。このようなたんぱく質成分によって、栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を高めることができる。これらのたんぱく質成分は、例えば前記栄養組成物に含まれるリジノアラニン含有量を低減させるために有用であり、当該低減によって、銅の生体利用性が高まると考えられる。
本技術の好ましい実施態様において、前記たんぱく質成分は、カゼインを含む。当該カゼインは、例えばカゼイネートとして前記栄養組成物に含まれてよい。当該カゼイネートは、例えばカゼインナトリウム、カゼインカリウム又はカゼインカルシウムである。栄養組成物は殺菌工程において加熱処理に付されることが一般的である。カゼインは熱安定性にすぐれているため、加熱処理に付される栄養組成物に含まれるたんぱく質として適している。
本技術の特に好ましい実施態様において、前記たんぱく質成分は、ミセル性カゼインを含む。ミセル性カゼインは、栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を高めるために特に適している。
前記たんぱく質成分は、さらにアミノ酸を含んでもよい。当該アミノ酸は、遊離アミノ酸として前記栄養組成物に添加されるアミノ酸であり、すなわち、前記たんぱく質又は前記たんぱく質分解物に含まれるアミノ酸でない。
本技術において、前記アミノ酸は、例えば必須アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン、ヒスチジン、リシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、及びスレオニンのうちの1以上)、非必須アミノ酸(アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシンのうちの1以上)、又は、必須アミノ酸及び非必須アミノ酸の両方であってよい。
また、本技術において、前記アミノ酸は、分岐鎖アミノ酸のいずれか1以上であってよく、すなわちバリン、ロイシン、及びイソロイシンのうちのいずれか1つ若しくは2つ、又は3つ全てを含んでよい。
前記たんぱく質成分の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば1g以上、1.2g以上、又は1.4g以上であり、好ましくは2g以上、より好ましくは3g以上であってよい。これにより、当該栄養組成物により、効率的なたんぱく質摂取が可能となる。
前記たんぱく質成分の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば15g以下、好ましくは12g以下、より好ましくは10g以下、8g以下、又は6g以下であってよい。たんぱく質成分の含有量が高まるにつれて、リジノアラニンの含有量が高まる可能性がある。そのため、前記たんぱく質成分の含有量が上記上限値以下であることによって、当該可能性を低減することができる。
前記たんぱく質成分の含有量は、前記栄養組成物に含まれる窒素含有量に、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に基づくたんぱく質成分ごとの窒素たんぱく質換算係数を乗じて得られる。前記窒素含有量は、例えば「食品表示基準について(平成27年3月30日消食第139号)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」(以下、食品表示基準における分析方法)に基づいて、すなわちケルダール法を用いて定量することができる。
例えば、前記たんぱく質成分はカゼインを含み、当該カゼインの含有量が、前記栄養組成物100g当たり、例えば0.5g以上であり、好ましくは1g以上、より好ましくは2g以上、さらにより好ましくは3g以上であってよい。また、この場合において、前記カゼインの含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば15g以下、好ましくは12g以下、より好ましくは10g以下であってよい。
また、例えば、前記たんぱく質成分はミセル性カゼインを含み、当該ミセル性カゼインの含有量が、前記栄養組成物100g当たり、例えば1g以上、好ましくは2g以上、より好ましくは3g以上であってよい。また、この場合において、前記ミセル性カゼインの含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば15g以下、好ましくは12g以下、より好ましくは10g以下であってよい。
(2)リジノアラニン
本技術の栄養組成物は、リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含む。より好ましくは、当該栄養組成物は、リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり2,700μg以下の含有量で含み、さらにより好ましくは2,300μg以下、2,000μg以下、1,500μg以下、1,000μg以下又は600μg以下の含有量で含む。たんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含有量をこのように制御することによって、当該栄養組成物中の銅の生体利用性を高めることができる。
本技術の栄養組成物のリジノアラニン含有量は、前記たんぱく質成分1g当たり、例えば0μg以上であってよく、特には1μg以上、10μg以上、又は100μg以上であってよい。
リジノアラニンは、たんぱく質のペプチド鎖中もしくは遊離の、複数のアミノ酸が関与する反応によって生成される。図1に示されるように、シスチン、システイン、ホスホセリン、又はセリンのβ脱離によってデヒドロアラニンが生成する。当該デヒドロアラニンにリジンが結合して、リジノアラニンが生成される。これらの反応が、たんぱく質のペプチド鎖間で生じた場合には、たんぱく質分子内もしくは分子間に、リジノアラニンによる架橋構造が形成される。
上記のデヒドロアラニンは、その他のアミノ酸とも反応し、架橋を形成し得る様々な物質が生成される。デヒドロアラニンが例えばシステインと反応するとランチオニンが生成され、同様にヒスチジンと反応すると、ヒスチジノアラニンが生成される。
たんぱく質を含む栄養組成物は、一般的には殺菌工程を経るものであり、当該殺菌工程において加熱処理されることに伴い、リジノアラニンが生成される。栄養組成物に含まれるたんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含有量を制御することによって、当該栄養組成物に含まれる銅の生体利用性を向上させることができる。
また、当該殺菌工程において、上記で述べた他のアミノ酸とデヒドロアラニンとが反応して生成される物質の含有量が制御されてもよく、当該生成を抑制することによっても、銅の生体利用性が向上されうる。
本明細書内において、たんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含有量は、たんぱく質成分を一定量はかりとって塩酸加水分解を行い、エバポレーター処理を行った後に一定量の0.02N塩酸に溶解し、重水素化リジンを内部標準としてLC-MSで定量することによって測定される。
この測定方法の詳細は、本明細書内以下の実施例に記載されている。
(3)銅
本技術の栄養組成物は銅を含む。前記栄養組成物は、前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含んでよく、好ましくは0.03mg以上、より好ましくは0.05mg以上の含有量で含む。このような含有量によって、生体に吸収される銅の量を高めることができ、銅摂取による効果がより強く発揮される。
前記銅の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば1mg以下、0.8mg以下、又は0.5mg以下であってよい。
前記銅の含有量は、評価サンプルを湿式分解による前処理をした後、ICP-MSに供することで測定される。前記銅の含有量の測定方法の詳細は、本明細書内以下の実施例において、銅の生体利用性の測定方法の一部として記載されている。
前記銅は、前記栄養組成物に配合可能な銅含有添加剤の構成成分として、前記栄養組成物に配合されてよい。当該銅含有添加剤として、例えばグルコン酸銅、銅含有ミネラル酵母、又は硫酸銅が挙げられる。本技術の栄養組成物は、このような銅含有添加剤を含んでよい。
本技術の一実施態様において、前記栄養組成物はグルコン酸銅を含む。前記グルコン酸銅の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば0.05mg以上であり、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは0.2mg以上であってよい。前記グルコン酸銅の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば1.5mg以下、好ましくは1.2mg以下、より好ましくは1.0mg以下であってよい。前記グルコン酸銅の含有量は、所望の銅含有量を踏まえ適宜調整されてよい。また、前記栄養組成物が銅含有ミネラル酵母又は硫酸銅である場合においても、これら成分の含有量は、所望の銅含有量を踏まえ適宜調整されてよい。
(4)他の成分
本技術の栄養組成物はさらに他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例として、糖質、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、油脂類、及び他の栄養成分を挙げることができる。本技術の栄養組成物は、これらの他の成分のうちの1つ以上を含んでもよい。
また、当該他の成分として、乳化剤、増粘剤、及びゲル化剤から選ばれる1以上の添加物が含まれてもよい。
これら他の成分は、例えば栄養組成物の投与対象若しくはその投与目的又は栄養組成物の形態若しくは物性などに応じて適宜選択されてよい。
(糖質)
前記糖質として、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類など、食品に添加可能な糖質が含まれてよい。当該二糖類は、例えば乳糖である。また、当該多糖類は、例えば、デキストリンである。すなわち、前記栄養組成物には、例えば乳糖及び/又はデキストリンが含まれてよい。
前記糖質(特には乳糖及び/又はデキストリン)の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば5g以上、7g以上、10g以上、好ましくは12g以上、より好ましくは15g以上であってよい。また、前記糖質(特には乳糖及び/又はデキストリン)の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば50g以下、好ましくは40g以下、より好ましくは30g以下であってよい。
(食物繊維)
前記食物繊維として、水溶性食物繊維及び不溶性食物繊維など、食品に添加可能な食物繊維が含まれてよい。当該水溶性食物繊維は、例えば、難消化性デキストリン、イヌリン、グァーガム分解物である。また不溶性食物繊維は例えば、セルロースである。すなわち、前記栄養組成物には、例えば難消化性デキストリンやイヌリンが含まれてよい。
前記食物繊維の含有量は、栄養組成物100g当たり例えば0.1g以上、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.7g以上の含有量で含んでよい。また、本技術の栄養組成物は、食物繊維を、前記栄養組成物100g当たり、例えば6g以下、5g以下、4g以下、3g以下、好ましくは2g以下、より好ましくは1.5g以下の含有量で含んでよい。
(ビタミン類)
前記ビタミン類は、例えばビタミンA、ビタミンB(例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸など)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンKのうちのいずれか1つ以上を含んでよい。
前記ビタミン類は、好ましくは水溶性ビタミンを含み、特にはビタミンCを含む。前記水溶性ビタミン(特にはビタミンC)の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば0.005g以上、0.01g以上、好ましくは0.02g以上、より好ましくは0.03g以上であってよい。また、前記水溶性ビタミン(特にはビタミンC)の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば0.20g以下、好ましくは0.15g以下、より好ましくは0.10g以下であってよい。
(ミネラル類)
前記ミネラル類として、例えば、前記銅以外のミネラルを含むミネラル含有化合物を挙げることができる。前記ミネラル含有化合物として、ナトリウム含有化合物、カリウム含有化合物、カルシウム含有化合物、リン含有化合物、マグネシウム含有化合物、鉄含有化合物、及び亜鉛含有化合物を挙げることができる。前記ミネラル含有化合物は、これらの化合物のうちの1つ又は2つ以上を含み、例えばこれらの全てを含んでもよい。
前記ナトリウム含有化合物の例として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、及び、クエン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウムを挙げることができる。前記ナトリウム含有化合物は、これらのうちのいずれか1つ、2つ、又は3つであってよい。
前記カリウム含有化合物の例として、塩化カリウム、炭酸カリウム及び、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムを挙げることができる。前記カリウム含有化合物は、これらのうちの1つ又は2つであってよい。
前記カルシウム含有化合物の例として、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム及び塩化カルシウムを挙げることができる。前記カルシウム含有化合物は、これらのうちの1つ又は2つであってよい。
前記リン含有化合物として、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、及びリン酸三カリウム、リン酸3カルシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウムが挙げられる。前記リン含有化合物は、これらのうちのいずれか1つ、2つ、又は3つであってよい。
前記マグネシウム含有化合物として、塩化マグネシウム、リン酸三マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムが挙げられる。前記マグネシウム含有化合物は、これらのうちのいずれか1つ、2つ、又は3つであってよい。
前記鉄含有化合物として、クエン酸第一鉄ナトリウム、塩化第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄及び硫酸第一鉄を挙げることができる。前記鉄含有化合物は、これらのうちのいずれか1つ、2つ、又は3つ以上であってよい。
前記亜鉛含有化合物として、グルコン酸亜鉛及び硫酸亜鉛、亜鉛酵母を挙げることができる。前記亜鉛含有化合物は、これらのうちのいずれか1つ又は2つであってよい。
(油脂類)
前記油脂類として、例えば大豆油又は菜種油などの植物由来油が用いられてよい。前記栄養組成物が前記油脂類を含むことによって、効率的なエネルギー摂取が可能となる。
前記栄養組成物が油脂類を含む場合、前記栄養組成物は、乳化されていてよく、例えば水中油型のエマルジョンを形成していてよい。当該乳化のために、前記栄養組成物は乳化剤をさらに含んでもよい。
前記油脂類の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば0.5g以上、好ましくは1.0g以上、より好ましくは1.5g以上であってよい。また、前記油脂類の含有量は、前記栄養組成物100g当たり、例えば7.0g以下、6.0g以下、又は5.0g以下、好ましくは4.5g以下、より好ましくは4.0g以下であってよい。
前記乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンエステル)、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、及び酵素分解レシチンのうちのいずれか1つ又は2つ以上の組合せが用いられてよい。
好ましい実施態様において、前記乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチンを含む。グリセリン脂肪酸エステルとして、例えばモノグリセリド、有機酸モノグリセリド、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができ、特には有機酸モノグリセリドを含む。当該有機酸モノグリセリドは、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、及びコハク酸モノグリセリドのうちのいずれか1つ又は2つ以上の組合せであってよい。
前記乳化剤の含有量は、本技術の栄養組成物100g当たり、例えば0.01g以上、好ましくは0.02g以上、より好ましくは0.05g以上であってよい。前記乳化剤の含有量は、本技術の栄養組成物100g当たり、例えば1g以下、0.5g以下、好ましくは0.4g以下、より好ましくは0.2g以下であってよい。
(増粘剤)
前記増粘剤として、例えばキサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、寒天、ペクチン、及びアルギン酸ナトリウムのうちいずれか1つ又は2つ以上の組み合わせが用いられてもよい。前記増粘剤により、本技術の栄養組成物は液状の他にとろみ状若しくは半固形状の物性が付与されてよく、又は、本技術の栄養組成物は胃内増粘性の物性が付与されてもよい。なお、前記増粘剤は、組成物をゲル化するために用いられる場合は、ゲル化剤とも呼ばれる。
本技術の栄養組成物はこのような物性を得ることで投与速度の調整、逆流や下痢の防止など、物性を調整した栄養組成物に期待される効果を発揮することができる。また、増粘剤の使用によりミネラルの利用性が低下する可能性があるが、本技術により銅利用性を向上させることができるので、増粘剤使用によるミネラル利用性の低下を防ぐことができるという効果も発揮される。
前記増粘剤の含有量は、本技術の栄養組成物100g当たり、例えば0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であってよい。前記増粘剤の含有量は、本技術の栄養組成物100g当たり、例えば5g以下、3g以下、好ましくは2g以下、より好ましくは1g以下であってよい。
本技術の栄養組成物は、例えば水、甘味料、果汁、野菜汁、香料、着色料、及び酸味料などの成分を含みうる。これらの成分の種類及び含有割合は、所望の物性、形状、味、又は外観に応じて当業者により適宜選択されてよい。
本技術の栄養組成物中の水の含有量は、当該栄養組成物100gに対して、例えば50g以上、好ましくは55g以上、より好ましくは60g以上であってよい。また、当該水の含有量は、当該栄養組成物100gに対して、例えば90g以下、88g以下、又は85g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは75g以下であってよい。
(5)栄養組成物の物性
本技術の栄養組成物は、流動性を有し、例えば液状又はペースト状であってよく、又は、流動性を有するゲル状物であってもよい。流動性を有することによって、当該栄養組成物は、例えば患者又は高齢者にとって、摂取しやすくなる。
本技術の栄養組成物は、乳化した状態にあってよく、好ましくは水中油型エマルジョン(O/W型)である。本技術の栄養組成物が油脂を含む場合は、当該栄養組成物は乳化されていることが望ましい。
本技術の栄養組成物は、銅の生体利用性が、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらにより好ましくは20%以上、25%以上、又は30%以上であってよい。
前記銅の生体利用性は、人工消化における「栄養組成物の胃消化により水性液相中に出た銅量」の「胃消化前の栄養組成物中に含まれる銅量」に対する割合であり、以下の式により求められる。
(生体利用性(単位:%))=(栄養組成物の胃消化により水性液相中に出た銅量)/(胃消化前の栄養組成物中に含まれる銅量)×100
前記銅の生体利用性の測定方法及び計算式の詳細は、後述の実施例に記載されている。
本技術の栄養組成物の浸透圧は、例えば100mOsm/L以上、好ましくは150mOsm/L以上であってよい。また、当該浸透圧は、例えば700mOsm/L以下、好ましくは650mOsm/L以下、より好ましくは400mOsm/L以下であってよい。
本技術の栄養組成物の20℃におけるpHは、例えば8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、又は6.0以下であってよい。また、当該pHは3.0以上、4.0以上、又は5.0以上であってよい。
本技術の栄養組成物の20℃における比重は、例えば0.8~1.5、好ましくは0.9~1.4、より好ましくは1.0~1.2であってよい。
本技術の栄養組成物の20℃における粘度は、例えば1mPa・s以上、10mPa・s以上、100mPa・s以上、又は1000mPa・s以上であり、より好ましくは10000mPa・s以上であってよい。
また、胃内増粘性の栄養組成物に関して、当該栄養組成物と人工胃液を混合する際に、栄養組成物に対する人工胃液の比率が、例えば25質量%、40質量%、50質量%、及び75質量%のうちのいずれかのときの20℃における粘度が例えば4000mPa・s以上であり、より好ましくは10000mPa・s以上であってよい。なお、胃内増粘性の栄養組成物は、摂取前(すなわち人工胃液との混合前)は、例えば4,000mPa・s以下、好ましくは1,000mPa・s以下であってよい。
栄養組成物の粘度は、B型回転粘度計を用いて測定することができる(測定温度:20℃、ローター回転数:6rpm)。また、栄養組成物の胃内増粘性は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物の粘度を測定することで評価することができる。
上記の人工胃液は、第十七改正日本薬局方の「6.09崩壊試験法」に基づいて調製することができる(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)。
本技術の一つの実施態様において、本技術の栄養組成物1g当たりのエネルギー量は0.4kcal以上、0.5kcal以上、0.6kcal以上、0.7kcal以上、0.8kcal以上、又は0.9kcal以上であってよい。このように、組成物1g当たりのエネルギー量が高いことによって、効率的なエネルギー摂取が可能となる。この実施態様において、本技術の栄養組成物1g当たりのエネルギー量は、例えば5kcal以下、4kcal以下、3kcal以下、2kcal以下、又は1.8kcal以下であってよい。
(6)飲食品組成物
本技術の栄養組成物は、飲食品組成物として用いられてよい。すなわち、本技術は、飲食品組成物である栄養組成物も提供する。前記飲食品組成物は、例えば液状又はペースト状の形態を有していてよく、又は、流動性を有するゲル状物であってもよい。
本技術の飲食品組成物は、経口栄養剤又は経腸栄養剤として利用されてよい。本技術の飲食品組成物は、例えば、たんぱく質の補給が求められるヒトへの栄養供給用、銅の補給が求められるヒトへの栄養供給用、又は、銅の不足が懸念されるヒトへの栄養供給用などの用途が表示された飲食品として提供又は販売されることが可能である。また、本技術の飲食品組成物は、摂取対象として例えば「たんぱく質補給が求められる方」、「銅の補給が求められる方」、又は「銅欠乏が懸念される方」などと表示して提供及び/又は販売されることが可能である。
本技術の飲食品組成物は、健常なヒトにより摂取されてよく、又は、疾患を有するヒト若しくは疾患を有するおそれがあるヒトであってもよい。当該疾患の例として、銅欠乏症が挙げられる。
例えば、未熟児、重度の低栄養からの回復中の乳児、又は持続性の下痢を患う乳児は、銅欠乏症を患うおそれがある。また、栄養素の吸収を阻害する病気(セリアック病、クローン病、嚢胞性線維症、熱帯性スプルーなどの、吸収不良を引き起こす病気)を患う成人、減量手術後(肥満外科手術)の成人、及び亜鉛を過剰摂取(銅の吸収が低下する)した成人も銅欠乏症を患うおそれがある。本技術の飲食品組成物は、このようなヒトにおける銅欠乏を防ぐため又は銅欠乏に対処するために用いられてよい。
また、透析患者も銅欠乏症を患う可能性がある。透析患者は、例えばリン制限により銅摂取量が減少する場合があり、又は、亜鉛補充による銅吸収阻害を受ける場合もあり、このような場合に銅欠乏症が生じうる。そのため、本技術の飲食品組成物は、透析患者における銅欠乏を防ぐため又は銅欠乏に対処するために用いられてよい。
また、経管栄養患者、特には長期経管栄養患者も、銅欠乏症を患う可能性がある。そのため、本技術の飲食品組成物は、経管栄養患者が摂取するために用いられてもよい。経管栄養患者における銅欠乏を防ぐため又は銅欠乏に対処するために用いられてよい。
「表示」行為には、需要者に対して本技術の組成物の用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起及び/又は類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び/又は媒体の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。
(7)医薬組成物
本技術の栄養組成物は、医薬組成物として用いられてよい。すなわち、本技術は、医薬組成物である栄養組成物も提供する。前記医薬組成物は、例えば液状又はペースト状の形態を有していてよく、又は、流動性を有するゲル状物であってもよい。
本技術の医薬組成物は、例えばヒトにおける銅欠乏状態を予防するために用いられてよく、又は、銅欠乏状態にあるヒトを処置するために用いられてよい。当該ヒトは、例えば銅欠乏症を患う可能性のあるヒト又は銅欠乏症を患っているヒトである。当該銅欠乏症を患う可能性のあるヒトは上記(6)において述べたとおりである。本技術の医薬組成物は、このようなヒトに投与するために用いられてよい。
本技術に係る組成物を医薬組成物として利用する場合、当該医薬組成物は、経口投与及び非経口投与のいずれで投与されてもよく、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、所望の剤形(液剤又はペースト)に製剤化されてよい。また、非経口投与の場合、例えば経鼻胃管、胃ろう、腸ろうを介して本技術の組成物を投与することができる。
また、製剤化に際しては、本技術に係る医薬組成物には、通常製剤化に用いられている添加剤(例えばpH調整剤、着色剤、矯味剤等)の成分が含まれてよい。また、本技術の効果を損なわない限り、本技術に係る医薬組成物には、公知の又は将来的に見出される急性期患者向けの状態を改善するための成分が含まれてもよい。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
(8)栄養組成物の製造方法
本技術の栄養組成物の製造方法は、前記たんぱく質成分と前記銅とを含む混合物を調製する調製工程と、前記混合物を殺菌する殺菌工程とを含む。これらの工程について、以下で説明する。
前記調製工程において、前記たんぱく質成分と前記銅とが混合される。例えば、前記たんぱく質成分を含むたんぱく質成分含有水溶液と前記銅を含む銅含有水溶液とが用意される。そして、これらの水溶液が混合されて混合物が得られる。当該混合物に、栄養組成物に含まれる他の成分(上記(3)で説明したとおりである)も添加されてよい。このようにして、殺菌工程に付される混合物が調製される。
一実施態様において、前記調製工程は、たんぱく質成分含有水溶液と銅含有水溶液との混合物に、さらに前記油脂類(及び前記乳化剤)を混合することを含んでよい。前記調製工程は、当該混合後に、混合物を乳化する乳化処理をさらに含んでよい。すなわち、この実施態様において、前記調製工程において、たんぱく質成分と銅とを含む乳化物が調製されてよい。そして、当該乳化物が、次の殺菌工程に付されてよい。
好ましくは、前記調製工程は、前記混合物(例えば前記乳化物)のpHを調整することを含んでよい。当該pHは、好ましくは6.5以下、より好ましくは6.4以下、さらにより好ましくは6.3以下に調整される。このような上限値以下のpHを有する混合物から、次の殺菌工程を経て製造された栄養組成物は、生体利用性に優れている。
なお、前記混合物の前記pHは、例えば3.0以上、4.0以上、又は5.0以上に調整される。pHが低すぎる場合は、前記混合物中の成分(例えばたんぱく質成分など)が変性するなどの悪影響が生じうる。
前記混合物(例えば前記乳化物)のpHを調整するために、当技術分野において既知のpH調整剤が用いられてよい。当該pH調整剤は、例えば有機酸、無機酸、又はこれらの組合せであってよい。前記有機酸は、例えばリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、及び酢酸のうちの1つ又は2つ以上の組合せであってよい。前記無機酸は、例えば塩酸、リン酸、炭酸及び硝酸のうちの1つ又は2つ以上の組合せであってよい。
前記殺菌工程において、前記調製工程において調製された混合物が殺菌される。前記殺菌工程は、前記栄養組成物のリジノアラニン含有量が、前記たんぱく質成分1g当たり3000μg超とならないように実行される。このようにリジノアラニン含有量が制御されることで、殺菌工程後の栄養組成物中の銅の生体利用性を高めることができる。
また、前記殺菌に付される前記混合物のpHは、上記調製工程に関して述べた数値範囲内に調整されていてよい。このようにpH調整された前記混合物を殺菌工程に付すことによって、得られた栄養組成物中の銅の生体利用性を向上させることができる。
好ましくは、前記殺菌工程は、前記混合物が100℃以上に維持される時間が3分以下、2分以下、又は1分以下であるように実行される。このように高温に維持される時間が短いことで、リジノアラニンの生成を防ぐことができる。
このような短時間殺菌を実行するために、当該殺菌は、例えば高温短時間殺菌(HTST)、超高温殺菌(UHT)、又は加圧加熱殺菌が採用されてよい。前記HTST及び前記UHTは、例えば直接加熱殺菌、又は間接加熱殺菌で行われてよい。直接加熱殺菌はインジェクション方式、又はインフュージョン方式で行われてもよく、間接加熱殺菌はプレート方式、チューブラー方式で行われてもよい。
前記製造方法は、前記混合工程において得られた組成物を、前記殺菌工程の前又は後に容器に充填する充填工程をさらに含んでよい。当該充填工程を当該殺菌工程の後に行う場合、当該充填工程は、無菌的に行われてよい。当該容器は、例えば紙パック、プラスチックバッグ、プラスチックボトル、プラスチックカップ、アルミパウチ、金属缶、又はガラス容器であってよい。当該充填工程によって、栄養組成物は、容器に充填された状態になる。本技術の栄養組成物は、容器に充填された状態で販売されてよい。
(9)栄養組成物の使用方法
本技術の栄養組成物の投与対象は、動物であってよく、特には哺乳動物、より特には霊長類、さらにより特にはヒト又は非ヒト霊長類であり、特に好ましくはヒトである。本技術の組成物が投与される対象がヒトである場合、当該ヒトの年齢は例えば0歳~120歳であってよい。例えば、本技術の栄養組成物は、上記(6)又は(7)において述べたとおりの対象に投与されてよい。また、本技術の栄養組成物は、上記(6)又は(7)において述べたいずれかの用途において投与されてよい。
本技術の栄養組成物は、例えば経口的に又は経管的に摂取されてよい。後者の場合、例えば経鼻胃管、胃ろう、腸ろうを介して、本技術の栄養組成物はヒトに投与される。本技術の組成物は流動性を有してよく、当該流動性によって、経口摂取しやすい。また、当該流動性は、経管栄養患者への経管的投与に適している。
(10)栄養組成物の栄養組成の例
本技術の栄養組成物の栄養組成の例を以下に説明する。
本技術の栄養組成物は、たんぱく質成分(特にはカゼイン)を含み、当該たんぱく質成分の含有量は、上記(1)で説明したとおりであってよい。
本技術の栄養組成物は、脂肪を、栄養組成物100g当たり例えば0.5g以上、好ましくは1g以上、より好ましくは1.5g以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、脂肪を、前記栄養組成物100g当たり、例えば5g以下、好ましくは4.5g以下、より好ましくは4g以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、糖質を含んでよい。当該糖質の含有量は、例えば上記(4)で説明したとおりであってよい。
本技術の栄養組成物は、食物繊維を含んでよい。当該食物繊維の含有量は、例えば上記(4)で説明したとおりであってよい。
本技術の栄養組成物は、灰分を、栄養組成物100g当たり例えば0.1g以上、好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.3g以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、灰分を、前記栄養組成物100g当たり、例えば1.5g以下、好ましくは1.2g以下、より好ましくは1.0g以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、固形分を、栄養組成物100g当たり例えば10g以上、好ましくは15g以上、より好ましくは20g以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、固形分を、前記栄養組成物100g当たり、例えば40g以下、好ましくは30g以下、より好ましくは25g以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、ナトリウム(Na)を、栄養組成物100g当たり例えば10mg以上、15mg以上、50mg以上、好ましくは100mg以上、より好ましくは150mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、ナトリウムを、前記栄養組成物100g当たり、例えば400mg以下、好ましくは300mg以下、より好ましくは250mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、カリウム(K)を、栄養組成物100g当たり例えば30mg以上、好ましくは50mg以上、より好ましくは70mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、カリウムを、前記栄養組成物100g当たり、例えば300mg以下、好ましくは250mg以下、より好ましくは200mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、カルシウム(Ca)を、栄養組成物100g当たり例えば10mg以上、好ましくは20mg以上、より好ましくは40mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、カルシウムを、前記栄養組成物100g当たり、例えば150mg以下、好ましくは120mg以下、より好ましくは100mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、リン(P)を、栄養組成物100g当たり例えば10mg以上、好ましくは20mg以上、より好ましくは40mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、リンを、前記栄養組成物100g当たり、例えば150mg以下、好ましくは120mg以下、より好ましくは100mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、マグネシウム(Mg)を、栄養組成物100g当たり例えば5mg以上、好ましくは10mg以上、より好ましくは20mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、マグネシウムを、前記栄養組成物100g当たり、例えば80mg以下、好ましくは60mg以下、より好ましくは50mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、塩素(Cl)を、栄養組成物100g当たり例えば30mg以上、40mg以上、50mg以上、好ましくは100mg以上、より好ましくは150mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、塩素を、前記栄養組成物100g当たり、例えば400mg以下、好ましくは300mg以下、より好ましくは250mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、鉄(Fe)を、栄養組成物100g当たり例えば0.2mg以上、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは0.8mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、鉄を、前記栄養組成物100g当たり、例えば2.0mg以下、好ましくは1.8mg以下、より好ましくは1.5mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、亜鉛(Zn)を、栄養組成物100g当たり例えば0.3mg以上、好ましくは0.6mg以上、より好ましくは1.0mg以上の含有量で含む。また、本技術の栄養組成物は、亜鉛を、前記栄養組成物100g当たり、例えば3.0mg以下、好ましくは2.5mg以下、より好ましくは2.0mg以下の含有量で含む。
本技術の栄養組成物は、銅(Cu)を含み、当該銅の含有量は、上記で説明したとおりであってよい。
(11)栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法
本技術は、栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法も提供する。前記評価方法は、たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物を、消化酵素を用いた消化処理に付して消化液を得る消化工程、前記消化液を、水性液相を含む少なくとも二相が形成されるように分離する分離工程、及び、前記水性液相中の銅の量に基づいて前記栄養組成物中の銅の生体利用性を評価する評価工程を含んでよい。これらの工程を実行することによって、栄養組成物中の銅の生体利用性を適切に評価することができる。
本技術に従う評価方法に含まれる各工程について以下で説明する。
前記消化工程において、たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物が、消化酵素を用いた消化処理に付される。当該消化処理によって消化液が得られる。前記消化酵素は、好ましくは胃内消化酵素であり、より具体的にはペプシンである。
前記消化処理は、例えば、前記栄養組成物を水に溶解すること、及び、得られた溶解液に消化酵素を添加することを含んでよい。前記栄養組成物の水への溶解により得られた溶解液は、例えばpHが1~3、特には1.5~2.5へ調整されてよい。
代替的には、前記消化処理は、消化酵素を含む水に前記栄養組成物を溶解することを含んでもよい。当該溶解により得られた液は、例えばpHが1~3、特には1.5~2.5へ調整されてよい。
前記消化処理において、栄養組成物が消化酵素を接触している状態が所定時間保持される。前記所定時間は、栄養組成物の種類又は想定される胃内滞在時間に応じて適宜設定されてよい。前記所定時間は、例えば30分~5時間であり、特には1時間~3時間であり、一実施態様において2時間であってよい。前記消化処理は、例えば30℃~40℃、特には35℃~40℃で行われてよく、一実施態様において37℃であってよい。
前記分離工程は、例えば遠心分離によって行われてよい。前記遠心分離は、例えば2000×g~100000×gで行われてよく、特には5000×g~75000×g、より特には10000×g~50000×gで行われてよい。前記遠心分離に付される時間は、例えば10分~60分、特には30分~50分であってよい。
前記分離工程において、例えば前記消化液が、少なくとも水性液相と沈殿相とに分離されてよく、例えば油相、水性液相、及び沈殿相の3相に分離されてよく、又は、水性液相及び沈殿相の2相に分離されてもよい。なお、前記分離工程において、油相及び水性液相の2相に分離されてもよい。
前記分離工程において、生成された水性液相が回収される。当該水性液相中に含まれる銅の量が、銅の生体利用性を評価するために利用される。
前記評価工程において、前記水性液相中の銅の量に基づいて、前記栄養組成物中の銅の生体利用性が評価される。例えば、前記評価工程において、前記水性液相中の銅濃度が定量されてよい。前記銅の量を決定するために(特には前記銅濃度の定量のために)、質量分析が行われてよく、例えば誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry, ICP-MSともいう)が実行されてよい。
また、前記評価工程において、前記栄養組成物全体に含まれる銅の量が参照されてよい。例えば、前記評価工程において、前記栄養組成物全体に含まれる銅の量と、前記水性液相中の銅の量とに基づき、栄養組成物中の銅の生体利用性が評価されてよい。前記栄養組成物全体に含まれる銅の量を決定するために(特には前記栄養組成物中の銅濃度を決定するために)、質量分析が行われてよく、例えばICP-MSが実行されてよい。
前記銅の生体利用性を表す指標は、例えば「(栄養組成物の胃消化により水性液相中に出た銅量)/(胃消化前の栄養組成物中に含まれる銅量)」を用いて算出される指標(特には数値によって示される指標)であってよい。
前記評価工程において、銅の量として、定量された量が用いられてよいが、代替的には質量分析結果における強度データなど、銅の量を間接的に表すデータが、銅の量として用いられてもよい。
また、前記評価工程において、銅の生体利用性を表す指標として、数値によって示される指標(例えば百分率指標)が用いられてよいが、必ずしも数値によって示される指標が導出されなくてもよい。例えば、2種以上の栄養組成物について、どの栄養組成物がより高い銅利用性を有するかが、銅の量に基づき評価されてよい。
一実施態様において、前記評価工程において、栄養組成物中の銅の生体利用性が測定されてよい。すなわち、生体利用性の尺度となる数値が決定されてよく、この場合、前記評価方法は、測定方法として利用されてよい。すなわち、本技術は、たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物中の銅の生体利用性の測定方法も提供する。
以下の実施例において本技術の評価方法のより詳細な例が示されているが、各工程における具体的な操作手順は、栄養組成物の種類に応じて適宜変更されてよい。
以下で実施例を参照して本技術をより詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
<試験1:銅の生体利用性の変化>
たんぱく質の種類や配合量を変更して、以下の表1に示す4種類の原料配合タイプの栄養組成物を設定した。原料配合タイプA及びBの栄養組成物は、増粘剤を含まない通常流動食であり、原料配合タイプC及びDの栄養組成物は、増粘剤を含むとろみ状の流動食である。これら栄養組成物のうち、たんぱく質源をカゼインナトリウムとしたものが原料配合タイプA又はCであり、たんぱく質源としてミセラーカゼイン濃縮物(MCC)を使用したものが原料タイプB又はDである。各配合タイプにより調製された組成物の栄養組成は、以下の表2に示される通りである。表2に示される値は、栄養組成物100g当たりの値である。
Figure 2023069186000001
Figure 2023069186000002
表1に記載のそれぞれの原料配合タイプに従い、原料を混合して原料組成物を調製した。その後、各原料配合タイプの原料組成物を3等分し、以下表3に記載のとおりの未殺菌、UHT殺菌、およびレトルト殺菌という3つの異なる殺菌条件で処理した。これにより、原料配合及び殺菌条件が異なる12種類の栄養組成物を調製した。調整後、これら栄養組成物のリジノアラニン含量および銅利用性を測定して、リジノアラニンの生成量と銅利用性の相関関係を確認した。リジノアラニン含量の測定方法及び銅の生体利用性(以下「銅利用性」ともいう)の測定方法は以下のとおりである。
<リジノアラニン含量の測定方法>
(サンプル調製)
たんぱく質成分20mg程度を含むよう栄養組成物サンプルをガラス瓶にはかりとり、終濃度が6M程度になるようHClを添加した後、ブチル栓とアルミキャップで蓋をし、ガラス瓶内を脱気により陰圧にした。前記サンプルを110℃で24時間酸加水分解した後、脱脂綿により濾過してナスフラスコに回収し、エバポレーター処理を行った。エバポレーター処理後のサンプルを5mLの0.02N塩酸に溶解し、0.22μmのフィルターを通した。前記0.02N塩酸には予め、内部標準として1μg/mLのL-リジン二塩酸塩4,4,5,5-d4 (Cambridge Isotope Laboratories, Inc)を加えた。
(LC-MS測定)
溶媒A(アセトニトリル/ギ酸=100/0.3)及び溶媒B(100mMギ酸アンモニウム)を使用し、「85-0%A、15-100%B(0-8min)」,「0%A、100%B(8-16min)」のグラジエント条件、0.6mL/minの流速でIntrada Amino acid column(150×3mm, Imtakt社)を使用し、サンプルのLC-MS分析を行った。リジノアラニン(m/z 234.10)はL-リジン4,4,5,5-d4 (m/z 151.0)を内部標準として補正することで定量した。
<銅の生体利用性の測定方法>
栄養組成物を、胃における消化を模した消化工程に付した。当該消化工程においては、ビーカー内で前記栄養組成物72gに対してMilliQ水を40g加え、6M HClでpHを2.0に調整した後に再度MilliQ水を加えて120gにメスアップして、消化処理されるサンプルを得た。チューブ内に前記メスアップ後のサンプル24gを定量し、3mLのペプシン溶液(2% w/vペプシン, 0.1M HCl、会社名:Sigma、品番:P7000-100G)を添加した。当該添加後、2時間,37℃,105rpmでウォーターバス(会社名:ヤマト科学株式会社、品番:BT100)にてインキュベートした。当該インキュベーション後、前記栄養組成物は、氷冷され、45,000×g、4℃で40分間遠心分離された。当該遠心分離によって、チューブ内に、上から油相、水性液相、及び沈殿相の3つの相が形成された。
消化工程及び遠心分離の前後におけるチューブ内の状態の模式図が図2に示されている。同図に示されるように、チューブT内の栄養組成物が、消化工程及び遠心分離を経ることによって、油相、水性液相、及び沈殿相の3つの相に分離される。これらの相のうち、水性液相を0.45μmのフィルター(会社名:東洋濾紙株式会社、品番:DISMIC-25CS)を通して回収した。上記フィルター後の水性液相を一定量(0.8g)チューブに測り取り、70%(v/v)の硝酸水溶液5mLを混合してヒートブロック(会社名:ジーエルサイエンス株式会社、品番:DigiPREP MS)により湿式分解を行った。具体的には、室温から65℃まで昇温し(0-25分)、30分間65℃で保持(25-55分)、その後65℃から105℃まで再び昇温し(55-80分)、105℃で50分間保持した。その時点で一度ヒートブロックから取り外して過酸化水素(30%v/v、1ml)を加え、更に20分間105℃で保持した。前記の加熱湿式分解後の溶液をMilliQ水で50mLに定容し、ICP-MS(Agilent 7700x, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)により銅濃度を定量した。また、前記栄養組成物全体に含まれている銅の濃度は、当該栄養組成物を前記と同様に湿式分解処理を行った後、ICP-MSに供することで測定した。定量された水性液相中の銅の濃度と栄養組成物全体に含まれている銅の濃度とに基づき、以下の式によって銅の生体利用性を算出した。
(生体利用性(単位:%))=(消化工程後の水性液相中の銅濃度×27)/(栄養組成物中の銅濃度×72/120×24)×100
(当該式において、「27」は、前記消化工程において、前記チューブ内に定量されたサンプルの24gに上記ペプシン溶液の3mL(≒3g)を加えた値である。また、「72」は、前記消化工程における、前記ビーカー内の栄養組成物の量の値である。また、「120」は、前記消化工程における、前記MilliQ水によるメスアップ後のサンプル量の値である。また、「24」は、前記消化工程において、前記チューブ内に定量されたサンプルの量の値である。)
栄養素の利用性は一般的に腸における消化後で評価されるが、銅については胃消化後の十二指腸から主に吸収されると報告されているため、胃消化後に可溶性区分(水性液相)に存在する銅で利用性を評価する方が実際の生体利用性を反映すると考えられる。したがって上記のとおりの消化工程及び遠心分離工程後に水性液相中に存在する銅の量は、栄養組成物中の銅の生体利用性の指標として利用することができる。すなわち、上記式における生体利用性は、(栄養組成物の胃消化により水性液相中に出た銅量)/(胃消化前の栄養組成物中に含まれる銅量)×100に相当する。
上記で述べた12種類の栄養組成物の配合タイプ、原料組成物のpH、殺菌条件、リジノアラニン含量および銅利用性は、表3に記載のとおりであった。配合および殺菌方法や条件を変更することによって、栄養組成物中のリジノアラニン含量が変動することが確認された。
また、当該12種類の栄養組成物のうち、増粘剤を含まない原料配合タイプAであり且つレトルト殺菌されたNo.011の栄養組成物の粘度を測定したところ、16.4mPa・sであった。また、増粘剤を含む原料配合タイプCであり且つレトルト殺菌されたNo.012の栄養組成物の粘度は、1662mPa・sであった。
Figure 2023069186000003
さらに、表3に示される結果より、栄養組成物中のリジノアラニン含量が増加するに従い、銅の利用性が低下することも分かる。これに関して、リジノアラニン含量および銅利用性をプロットした。当該プロットの結果を図3に示す。同図に示されるとおり、リジノアラニン含量および銅利用性の間には相関があることが分かる。
また、本試験により得られたリジノアラニン含量と銅利用性との間の相関関係から、たんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含量が3000μg程度で銅の利用性が10%程度となることが推定された。したがって、例えばたんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含量を3000μg以下とすることによって、栄養組成物の銅利用性を10%以上とすることができることが分かる。
また、栄養組成物の銅利用性を高めるために、たんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含量は、好ましくは2500μg以下、より好ましくは2300μg以下、さらにより好ましくは2100μgである。これにより、栄養組成物の銅利用性を20%以上、さらには30%以上とすることができる。
また、栄養組成物の銅利用性をさらに高めるために、たんぱく質成分1g当たりのリジノアラニン含量は、好ましくは1300μg以下、より好ましくは1200μg以下、さらにより好ましくは1100μg以下、特に好ましくは1000μg以下である。これにより、栄養組成物の銅利用性を50%以上とすることができ、60%以上、さらには70%以上とすることも可能である。
また、リジノアラニンの生成量を抑制するためには、レトルト殺菌よりも、UHT殺菌法が好ましいことも分かる。そのため、前記殺菌時において100℃以上に維持される時間が例えば3分以下、好ましくは2分以下、より好ましくは1分以下であることによって、リジノアラニンの生成量を抑制することができると考えられる。
さらに、リジノアラニンの生成量を抑制するためには、たんぱく質源としてカゼインNaよりもミセル性カゼインを使用する方が好ましいことも分かる。
<試験2:リジノアラニンの生成量に関する検証>
上記試験1では、銅の生体利用性がリジノアラニン含量に応じて変化することが示された。リジノアラニン含量を制御することができれば、銅の生体利用性をより確実に高めることができると考えられる。そこで、試験2では、リジノアラニン含量の変化をもたらす要因を検証した。具体的には、原料配合(たんぱく質の種類)がリジノアラニン含量に与える影響及び殺菌時のpHがリジノアラニン含量に与える影響を検証した。
栄養組成物として、以下の表4に記載したE、F、G、及びHの4種類の粘度可変タイプの流動食の原料配合を設計した。配合タイプE、F、G、及びHは、たんぱく質源を、夫々カゼインナトリウム、カゼイン分解物及び大豆たんぱく質、大豆たんぱく質、コラーゲン分解物とした栄養組成物である。各配合タイプにより調製された組成物の栄養組成は、以下の表5の通りである。
次に、表4に記載のそれぞれの配合タイプに従い原料を混合し、4種の原料組成物を調製した。さらに、原料配合タイプEにリンゴ酸、クエン酸、又は塩酸をさらに添加することにより原料組成物中のpHを6.0に調整したpH調整サンプル3種(以下、夫々E-1、E-2、又はE-3と言う)も調製した。このようにして得られた7種の原料組成物を、夫々容器に充填し、123℃で10.5分間レトルト殺菌をして栄養組成物を得た。その後、当該栄養組成物のリジノアラニン含量を測定した。
原料配合タイプFの栄養組成物は、当該栄養組成物に対する人工胃液の比率を40質量%として人工胃液と混合したときの20℃における粘度が15,810mPa・sである一方で、人工胃液との混合前の粘度は30mPa・s以下であった。
Figure 2023069186000004
Figure 2023069186000005
その結果、各サンプルのリジノアラニン含量は、以下の表6に示されるとおりであった。原料配合タイプE、F、G、及びHの結果の比較から、たんぱく質源の変更によりリジノアラニン含量が変動することが確認された。また、原料配合タイプE、E-1、E-2、及びE-3の結果の比較から、殺菌時のpHを低くすることによってリジノアラニンの含量を抑制できることが分かった。
なお、銅利用性については、原料組成物のpHが6である原料配合タイプE-1、E-2、及びE-3の銅利用性が、原料組成物のpHが6.8である原料配合タイプEのものよりも高く、pHを下げることで銅利用性が上がることが分かった。特にリジノアラニンの含量が低かった原料配合タイプHに関しては、銅利用性も90%以上であった。
Figure 2023069186000006
<試験3:たんぱく質、銅濃度を変更した組成での検証>
上記試験2では、リジノアラニン含量の変化をもたらす要因として、原料配合(たんぱく質の種類)や殺菌時のpHがリジノアラニン含量に与える影響を検証した。試験3では、栄養組成物中のたんぱく質濃度や銅濃度等を変更した組成物を調製し、リジノアラニン及び銅利用性の検証を行った。
脱塩牛乳乳清たんぱく質粉末(ミライ社製)、牛乳カゼインナトリウム粉末(フォンテラ社製)、乳糖(ミライ社製)、ミネラル混合物(富田製薬社製)、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)を温水にて混合溶解した後、調整脂肪(太陽油脂社製)を添加し、均質化を行った。このようにして得られた原料組成物を容器に充填し、120℃で4分以上レトルト殺菌をして表7に記載した栄養組成の液状組成物を調製した。
その後、当該組成物のリジノアラニン及び銅利用性を測定した。その結果、リジノアラニン生成量はたんぱく質1gあたり940μgで銅利用性は70%以上を示した。上記より、栄養組成物中のたんぱく質濃度や銅濃度が異なっていても、LAL生成量を低減することで同様の効果が得られることが示された。
Figure 2023069186000007

Claims (12)

  1. たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物であって、
    前記栄養組成物は、
    リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含み、且つ、
    前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含む、
    前記栄養組成物。
  2. 前記栄養組成物は、前記たんぱく質成分を、前記栄養組成物100g当たり1g以上の含有量で含む、請求項1に記載の栄養組成物。
  3. 前記たんぱく質成分は、乳たんぱく質、コラーゲン、大豆たんぱく質、乳たんぱく質分解物、コラーゲン分解物、及び大豆たんぱく質分解物のうちの1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の栄養組成物。
  4. 前記たんぱく質成分は、カゼインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  5. 前記たんぱく質成分は、ミセル性カゼインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  6. 前記栄養組成物は、前記ミセル性カゼインを、前記栄養組成物100g当たり1g以上の含有量で含む、請求項5に記載の栄養組成物。
  7. 前記たんぱく質成分は、カゼイン分解物又はコラーゲン分解物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  8. たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物の製造方法であって、
    前記栄養組成物は、
    リジノアラニンを、前記たんぱく質成分1g当たり3,000μg以下の含有量で含み、且つ、
    前記銅を、前記栄養組成物100g当たり0.01mg以上の含有量で含む、
    前記製造方法。
  9. 前記製造方法は、
    前記たんぱく質成分と前記銅とを含む混合物を調製する調製工程と、
    前記混合物を殺菌する殺菌工程と、
    を含む、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記殺菌工程は、前記混合物が100℃以上に維持される時間が3分以下であるように実行される、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記混合物のpHが6.5以下である、請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. 栄養組成物中の銅の生体利用性の評価方法であって、
    たんぱく質成分と銅とを含む栄養組成物を、消化酵素を用いた消化処理に付して消化液を得る消化工程、
    前記消化液を、水性液相を含む少なくとも二相が形成されるように分離する分離工程、及び
    前記水性液相中の銅の量に基づいて前記栄養組成物中の銅の生体利用性を評価する評価工程
    を含む前記評価方法。
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