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JP2023054698A - 硬化性組成物キット、膜付き基体および物品 - Google Patents

硬化性組成物キット、膜付き基体および物品 Download PDF

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JP2023054698A JP2021163704A JP2021163704A JP2023054698A JP 2023054698 A JP2023054698 A JP 2023054698A JP 2021163704 A JP2021163704 A JP 2021163704A JP 2021163704 A JP2021163704 A JP 2021163704A JP 2023054698 A JP2023054698 A JP 2023054698A
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彩夏 安部
Ayaka Abe
友哉 牛尾
Tomoya Ushio
広和 小平
Hirokazu Kodaira
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】撥水性および耐久性に優れる膜を基体の表面に形成できる硬化性組成物キット;撥水性および耐久性に優れる膜を備える膜付き基体;ならびに前記膜付き基体を有する物品の提供。【解決手段】下記の接着層形成用組成物と機能層形成用組成物とを有する硬化性組成物キット;基体側から順に、前記接着層形成用組成物を用いて形成された接着層と、前記機能層形成用組成物を用いて形成された機能層とを有する膜を備えた膜付き基体;膜付き基体を有する物品。接着層形成用組成物は密着成分Aと、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる成分B1とを少なくとも含む。機能層形成用組成物は撥水成分Dと、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる成分B2とを少なくとも含む。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性組成物キット、膜付き基体および物品に関する。
大型施設、ビル等において、外壁、窓の清掃コストの削減のために、基体表面に撥水性、防汚性等を有する膜を形成することが知られている。反応性シリル基を有するオルガノシラン化合物を用いることで、撥水性、耐候性、透明性に優れる膜を基体の表面に形成できる(例えば、特許文献1)。
特許第6036132号公報
近年、建材等の屋外で使用される基体に形成する膜は、使用期間の長期化が進んでいるため、耐湿性等の耐久性のさらなる向上が求められている。本発明者によれば、特許文献1に記載の撥水膜付き基体にあっては、撥水膜の耐久性が不充分となる場合がある。
本発明は、撥水性および耐久性に優れる膜を基体の表面に形成できる硬化性組成物キット;撥水性および耐久性に優れる膜を備える膜付き基体;ならびに前記膜付き基体を有する物品を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 基体と、前記基体の少なくとも一部の表面に設けられた膜とを備える膜付き基体であって;前記膜は、前記基体側から順に接着層と機能層とを少なくとも有し;前記接着層は、下記の接着層形成用組成物を用いて形成され、かつ、前記機能層は、下記の機能層形成用組成物を用いて形成されている、膜付き基体。
接着層形成用組成物:前記基体の表面と接着可能な密着成分Aと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B1と、前記密着成分Aおよび前記架橋成分B1を溶解可能な第1の溶媒C1とを含む、組成物。
機能層形成用組成物:前記膜に撥水性を付与可能な撥水成分Dと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B2と、前記撥水成分Dおよび前記架橋成分B2を溶解可能な第2の溶媒C2とを含む、組成物。
[2] 前記接着層形成用組成物および前記機能層形成用組成物のいずれか一方または両方が、酸触媒をさらに含む、[1]の膜付き基体。
[3] 前記接着層形成用組成物における前記密着成分Aに対する前記架橋成分B1の質量比が、10/90~90/10である、[1]または[2]の膜付き基体。
[4] 前記機能層形成用組成物における前記撥水成分Dに対する前記架橋成分B2の質量比が、1/99~50/50である、[1]~[3]のいずれかの膜付き基体。
[5] 基体と、前記基体の少なくとも一部の表面に設けられた膜とを備える膜付き基体であって;前記膜は、前記基体側から順に接着層と機能層とを少なくとも有し、
前記接着層が、下記の密着成分Aと下記の架橋成分B1との部分加水分解共縮合物を含み;前記機能層が、下記の撥水成分Dと下記の架橋成分B2との部分加水分解共縮合物を含む、膜付き基体。
密着成分A:前記基体の表面と接着可能な成分。
架橋成分B1:ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる成分。
撥水成分D:前記膜に撥水性を付与可能な成分。
架橋成分B2:ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる成分。
[6] 前記密着成分Aが、下式1で表される化合物1および前記化合物1の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、[1]~[5]のいずれかの膜付き基体。
Si(X …式1
式1中、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアナート基である。
[7] 前記架橋成分B1および前記架橋成分B2のいずれか一方または両方が、下式2で表される化合物2および前記化合物2の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、[1]~[6]のいずれかの膜付き基体。
Si-(Y)-SiX …式2
式2中、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、Yは、2価の有機基である。
[8] 前記撥水成分Dが、下式3で表される化合物3および前記化合物3の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、[1]~[7]のいずれかの膜付き基体。
-(SiR O)-(SiR -(Y-Si(R3-n(X …式3
式3中、Xは、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり;Yは、下式g1で表される2価の連結基であり;Rは、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり;RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり;Rは、炭素数1~10のアルキル基、-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rであり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基または-O-Si(Rであり;Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり;kは、10~200であり;lは、0~2であり;mは、0または1であり;nは、1~3の整数である。
-(R)-Z-(R)- …式g1
式g1中、-Z-は、-O-、-(CF-、アルキレン基、下式g2で表される基、下式g3で表される基および下式g4で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つであり;RおよびRは、それぞれ独立して単結合またはZと異なる2価の基であり;aは、1~10である。
Figure 2023054698000001
式g3、式g4中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり;式g4中、bは、1~10である。
[9] 前記RおよびRが、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基である、[8]の膜付き基体。
[10] 基体の材質が、ガラス、樹脂および金属からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]~[9]のいずれかの膜付き基体。
[11] [1]~[10]のいずれかの膜付き基体を有する物品。
[12] 建材用または輸送機器用である、[11]の物品。
[13] 基体の少なくとも一部の表面に膜を設けるための硬化性組成物キットであり;下記の接着層形成用組成物と下記の機能層形成用組成物とを有する、硬化性組成物キット。
接着層形成用組成物:前記基体の表面と接着可能な密着成分Aと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B1と、前記密着成分Aおよび前記架橋成分B1を溶解可能な第1の溶媒C1とを含む、組成物。
機能層形成用組成物:前記膜に撥水性を付与可能な撥水成分Dと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B2と、前記撥水成分Dおよび前記架橋成分B2を溶解可能な第2の溶媒C2とを含む、組成物。
[14] 前記密着成分Aが、下式1で表される化合物1および前記化合物1の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、[13]の硬化性組成物キット。
Si(X …式1
式1中、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアナート基である。
[15] 前記架橋成分B1および前記架橋成分B2のいずれか一方または両方が、下式2で表される化合物2および前記化合物2の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、[13]または[14]の硬化性組成物キット。
Si-(Y)-SiX …式2
式2中、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、Yは、2価の有機基である。
[16] 前記撥水成分Dが、下式3で表される化合物3および前記化合物3の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、[13]~[15]のいずれかの硬化性組成物キット。
-(SiR O)-(SiR -(Y-Si(R3-n(X …式3
式3中、Xは、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり;Yは、下式g1で表される2価の連結基であり;Rは、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり;RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり;Rは、炭素数1~10のアルキル基、-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rであり;Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基または-O-Si(Rであり;Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり;kは、10~200であり;lは、0~2であり;mは、0または1であり;nは、1~3の整数である。
-(R)-Z-(R)- …式g1
式g1中、-Z-は、-O-、-(CF-、アルキレン基、下式g2で表される基、下式g3で表される基および下式g4で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つであり;RおよびRは、それぞれ独立して単結合またはZと異なる2価の基であり;aは、1~10である。
Figure 2023054698000002
式g3、式g4中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり;式g4中、bは、1~10である。
[17] 前記RおよびRが、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基である、[16]の硬化性組成物キット。
[18] 前記接着層形成用組成物および前記機能層形成用組成物のいずれか一方または両方が、酸触媒をさらに含む、[13]~[17]のいずれかの硬化性組成物キット。
[19] 前記密着成分Aに対する前記架橋成分B1の質量比が、10/90~90/10である、[13]~[18]のいずれかの硬化性組成物キット。
[20] 前記撥水成分Dに対する前記架橋成分B2の質量比が、1/99~50/50である、[13]~[19]のいずれかの硬化性組成物キット。
本発明の硬化性組成物キットによれば、撥水性および耐久性に優れる膜を基体の表面に形成できる。
本発明の膜付き基体は、撥水性および耐久性に優れる膜を備える。
本発明の物品は、撥水性および耐久性に優れる膜を備える膜付き基体を有する。
実施例の機能層形成用組成物1の外観を示す写真図。 比較例の機能層形成用組成物5の外観を示す写真図。
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
「反応性シリル基」は、加水分解性シリル基およびシラノール基の総称である。ここで、加水分解性シリル基は、加水分解反応してシラノール基を形成し得る基である。
「ビスシラン」とは、二価の有機基の両末端に反応性シリル基を有する化合物である。
反応性シリル基を有する有機化合物の「部分加水分解縮合物」とは、反応性シリル基の一部または全部が加水分解反応し、次いで、脱水縮合することによって生成するシロキサン結合を有するオリゴマー(多量体)を意味する。
式1で表される化合物を「化合物1」と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
式g1で表される基を「基g1」と記す。他の式で表される基も同様に記す。
化合物に由来する成分または構造単位を「化合物由来成分」と記す。例えば、化合物1に由来する成分、構造単位を「化合物1由来成分」と記す。
組成物がある成分を「実質的に含まない」とは、該成分の含有量が該組成物の全量に対して0.3質量%以下であることをいう。
数値範囲を示す「~」は、~の前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
<硬化性組成物キット>
本発明の硬化性組成物キットは、基体の少なくとも一部の表面に膜を設けるためのものである。撥水性、防汚性の付与が求められる基体であれば、基体は特に限定されない。基体の詳細および好ましい態様については、後述の<膜付き基体>の項で詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物キットは、特定の接着層形成用組成物と特定の機能層形成用組成物とを備える。以下、接着層形成用組成物、機能層形成用組成物について順に説明する。
(接着層形成用組成物)
接着層形成用組成物は、基体の表面と接着可能な密着成分Aと、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B1と、密着成分Aおよび架橋成分B1を溶解可能な第1の溶媒C1とを含む。
接着層形成用組成物は、加水分解縮合のための触媒、水をさらに含むことがある。接着層形成用組成物は本発明の効果を損なわない範囲であれば、密着成分A、架橋成分B1、第1の溶媒C1、触媒および水以外の任意成分をさらに含んでもよい。
密着成分Aは、基体に対する膜の接着性に寄与する成分である。密着成分Aは、基体の表面に対して接着性を示す化合物であれば特に限定されない。
耐候性、耐湿性等の耐久性に優れる点で、密着成分Aは、化合物1および化合物1の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなることが好ましい。
Si(X …式1
式1中、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアナート基である。
としては、塩素原子、炭素数1~4のアルコキシ基、イソシアナート基が好ましい。また、化合物1の4個のXは、同一であることが好ましい。
好適な化合物1としては、例えば、Si(NCO)、Si(OCH、Si(OC、Si(Cl)が挙げられる。
好ましい実施態様において、密着成分Aは化合物1であってもよく、化合物1の部分加水分解縮合物であってもよく、化合物1とその部分加水分解縮合物との混合物であってもよい。密着成分Aは、例えば、未反応の化合物1を含む、化合物1の部分加水分解縮合物であってもよい。
化合物1、化合物1の部分加水分解縮合物としては、市販品を用いてもよい。また、化合物1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋成分B1は、接着層形成用組成物の架橋剤として機能する成分である。架橋成分B1は、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる。例えば、架橋成分B1は、ビスシランであってもよく、ビスシランの部分加水分解縮合物であってもよく、ビスシランとその部分加水分解縮合物との混合物であってもよい。架橋成分B1は、例えば、未反応のビスシランを含む、ビスシランの部分加水分解縮合物であってもよい。
耐湿性等の耐久性に優れる点で、ビスシランとしては化合物2が好ましい。
Si-(Y)-SiX …式2
式2中、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、Yは、2価の有機基である。
加水分解性基は、加水分解反応によって水酸基となる基である。Xの加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、イソシアナート基、ハロゲン原子が挙げられる。
化合物2の加水分解性基、水酸基は、膜付き基体の用途、使用目的等に応じて適宜選択できる。
化合物2の安定性と加水分解反応の進みやすさとのバランスの点から、Xとしては、アルコキシ基、イソシアナート基が好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。そのため、Xとしては、メトキシ基、エトキシ基、イソシアナート基が特に好ましい。
化合物2において、複数個存在するXは互い同じ基でもよく、互いに異なる基でもよい。入手しやすさの点で、Xは互い同じ基であることが好ましい。
式2において、Yは、両末端の反応性シリル基を連結する2価の有機基である。2価の有機基のYの炭素数は1~8が好ましく、1~3がより好ましい。
の炭素数が前記下限値以上であると、膜の疎水性が充分に高く、また、膜の耐湿性が優れる。Yの炭素数が前記上限値以下であると、加水分解性基の比率が充分に高く、膜の密着力が優れる。
としては、アルキレン基、フェニレン基、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するアルキレン基が挙げられる。例えば、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CHCHCHCHCHCH-、-CHC(CHCH-、-C(CHCHCHC(CH-、-CHCHOCHCH-、-CHCHCHOCHCHCH-、-CH(CH)CHOCHCH(CH)-、-C-が挙げられる。
化合物2としては、例えば、(CHO)Si(CHSi(OCH、(CO)Si(CHSi(OC、(OCN)Si(CHSi(NCO)、ClSi(CHSiCl、(CHO)Si(CHSi(OCH、(CO)Si(CHSi(OCが挙げられる。
ビスシラン、ビスシランの部分加水分解縮合物として、市販品を用いてもよい。また、ビスシランは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
接着層形成用組成物は密着成分Aと架橋成分B1とを含む。そのため、接着層形成用組成物は、密着成分Aと架橋成分B1との部分加水分解共縮合物を含み得る。耐湿性等の耐久性に優れた膜を形成しやすい点で、接着層形成用組成物は、密着成分Aと架橋成分B1との部分加水分解共縮合物の溶液であることが好ましい。
好ましい実施態様においては、接着層形成用組成物は、化合物1と化合物2との部分加水分解共縮合物を含み得る。接着層形成用組成物が化合物1と化合物2との部分加水分解共縮合物を含むと、化合物1由来成分および化合物2由来成分の両方が均一に分布した層として接着層を形成しやすいと考えられる。また、耐湿性等の耐久性がさらに優れる。
接着層形成用組成物が密着成分Aと架橋成分B1との部分加水分解共縮合物を含む場合、この部分加水分解共縮合物とは別に、密着成分Aと架橋成分B1を含んでいてもよい。
第1の溶媒C1は、接着層形成用組成物の液状媒体である。第1の溶媒C1は、密着成分Aおよび架橋成分B1の固形分を溶解可能な液状の化合物であれば特に限定されない。
第1の溶媒C1としては、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素、酢酸エステルが挙げられる。耐湿性等の耐久性に優れた膜を形成しやすい点では、アルコールが好ましい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールが好ましく、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノールがより好ましく、2-プロパノールがさらに好ましい。
第1の溶媒C1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用した混合溶媒であってもよい。
触媒としては、例えば、酸触媒、塩基触媒、有機金属触媒が挙げられる。
酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、燐酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸が挙げられる。なかでも、耐久性および液ライフ性の点から、硝酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸が好ましく、硝酸、p-トルエンスルホン酸がより好ましく、硝酸がさらに好ましい。
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。
有機金属触媒としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸エステルチタン錯体、チタンエチルアセトアセテート等のチタン触媒;ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニア触媒;アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等のアルミニウム触媒等が挙げられる。
酸触媒、アルカリ触媒、有機金属触媒の各水溶液を使用し、加水分解に必要な水を反応系に存在させてもよい。
なかでも、触媒としては酸触媒が好ましい。本発明者の検討によれば、例えば、特許第6134006号公報に記載の有機金属触媒を用いた従来の組成物では、縮合反応が進みやすく、白濁が生じやすい。そのため、外観、透明性に優れる膜を形成しにくく、液ライフ性が不充分であるという問題がある。
この問題に対して、本発明の好ましい実施態様においては、触媒として酸触媒を使用できる。接着層形成用組成物が酸触媒を含む場合、有機亜鉛触媒の場合と比較して縮合反応が穏やかに進みやすい。そのため、外観、透明性に優れる膜を形成しやすく、接着層形成用組成物が液ライフ性に優れる。
任意成分としては、金属酸化物の超微粒子、染料および顔料等の着色材料、防汚性材料、各種樹脂等の種々の添加剤が挙げられる。ただし、膜の撥水性および耐久性に優れる点で、接着層形成用組成物は、任意成分としての添加剤を含まないことが好ましい。
密着成分Aに対する架橋成分B1の質量比(架橋成分B1/密着成分A)は、10/90~90/10が好ましく、30/70~80/20がより好ましく、40/60~70/30がさらに好ましい。
密着成分Aに対する架橋成分B1の質量比が前記数値範囲の下限値以上であると、膜が耐湿性等の耐久性にさらに優れる。
密着成分Aに対する架橋成分B1の質量比が前記数値範囲の上限値以下であると、撥水性、特に膜の微小な水滴に対する滑落性がさらに優れる。
接着層形成用組成物における密着成分Aに対する架橋成分B1の質量比は、接着層形成用組成物の調製に用いた密着成分Aおよび架橋成分B1の量から算出できる。例えば、化合物1由来成分に対する化合物2由来成分の質量比は、接着層形成用組成物の調製に用いた化合物1および化合物2の量から算出できる。
接着層形成用組成物における第1の溶媒C1の量は、密着成分Aと架橋成分B1との合計100質量部に対して、400~100,000質量部が好ましく、500~20,000質量部がより好ましく、1,000~10,000質量部がさらに好ましい。
第1の溶媒C1の含有量が前記数値範囲の下限値以上であると、接着層に斑が発生しにくい。第1の溶媒C1の含有量が前記数値範囲の上限値以下であると、経済性、作業性が優れ、接着層の厚さを制御しやすい。
接着層形成用組成物が触媒を含む場合、触媒の量は密着成分Aと架橋成分B1との合計100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。
触媒の含有量が前記数値範囲の下限値以上であると、加水分解縮合反応が進行しやすい。触媒の含有量が前記数値範囲の上限値以下であると、縮合反応が穏やかに進み、外観、透明性に優れる膜を得やすい。
接着層形成用組成物が水を含む場合、水の量は密着成分Aと架橋成分B1との合計100質量部に対して、1~500質量部が好ましく、1~300質量部がより好ましい。ただし、接着層形成用組成物は水を含まなくとも、接着層の形成において雰囲気中の水分を利用することで加水分解反応を進行させることができる。
化合物1等の密着成分Aおよびビスシランの加水分解性基が塩素原子である場合、これらの化合物は反応性が高くなる。この場合、貯蔵安定性の点で、接着層形成用組成物は触媒および水を実質的に含まないことが好ましい。
(機能層形成用組成物)
機能層形成用組成物は、膜に撥水性を付与可能な撥水成分Dと、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B2と、撥水成分Dおよび架橋成分B2を溶解可能な第2の溶媒C2とを含む。
機能層形成用組成物は、加水分解縮合のための触媒、水をさらに含むことがある。機能層形成用組成物は本発明の効果を損なわない範囲であれば、撥水成分D、架橋成分B2、第2の溶媒C2、触媒および水以外の任意成分をさらに含んでもよい。
撥水成分Dは、膜の撥水性、防汚性等に寄与する成分である。撥水成分Dは、膜の表面に対して撥水性、防汚性を付与し得る化合物であれば特に限定されない。
撥水成分Dとしては、種々のオルガノシラン化合物が挙げられる。なかでも、静的撥水性および動的撥水性に優れる点で、撥水成分Dは、化合物3および化合物3の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなることが好ましい。
-(SiR O)-(SiR -(Y-Si(R3-n(X …式3
式3中、Xは、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基である。
の加水分解性基としては、Xと同様の基または原子が挙げられる。化合物3の加水分解性基、水酸基は、膜付き基体の用途、使用目的等に応じて適宜選択できる。
化合物3の安定性と加水分解反応の進みやすさとのバランスの点から、Xとしては、アルコキシ基、イソシアナート基、ハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。そのためXとしては、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
化合物3中にXが複数個存在する場合、Xは互い同じ基でもよく、互いに異なる基でもよい。入手しやすさの点で、Xは互い同じ基であることが好ましい。
式3中、nは1~3の整数であり、化合物3が有する反応性シリル基の加水分解性基または水酸基(X)の個数を示す。nが1以上であると、機能層と接着層との密着性が良好となる。nは、機能層と接着層との密着性の点から、2または3が好ましく、3がより好ましい。
式3中、Rはそれぞれ独立して1価の炭化水素基である。Rは1価の炭化水素基であれば特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
なかでも、Rとしては、1価の飽和炭化水素基が好ましい。1価の飽和炭化水素基の炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。Rとしては、合成が簡便であることから、炭素数が1~6のアルキル基が好ましく、原料の入手や取り扱いが容易である点から、炭素数が1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
化合物3が有する反応性シリル基のRの個数は、3-n個である。反応性シリル基にRが複数個存在する場合には、Rは互いに同じ基でもよく、異なる基でもよい。この場合、入手しやすさの点でRは互いに同じ基であることが好ましい。
式3中、Yは、下式g1で表される2価の連結基である。
-(R)-Z-(R)- …式g1
基g1において、-Z-は、-O-、-(CF-、アルキレン基、ヘテロ原子を有してもよいアルキレン基、基g2、基g3および基g4からなる群から選ばれるいずれか1つであり、aは、1~10である。
化合物3において、m個の-Z-は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
Figure 2023054698000003
基g1のアルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。入手しやすさ、コストを考慮すると、-C-、-CHCHCH-が好ましい。
基g1のヘテロ原子を有してもよいアルキレン基において、ヘテロ原子としては、エーテル性酸素原子(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、イミノ基(-NH-)等が挙げられる。ヘテロ原子を有してもよいアルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
基g3、基g4において、Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基である。Rとしては、R、Rと同様のアルキル基が挙げられる。なかでも、メチル基が好ましい。
基g4において、bは、1~10であり、1~8が好ましく、1~6がより好ましい。
基g1中、RおよびRは、それぞれ独立して単結合またはZと異なる2価の基である。
-Z-が、-(CF-、基g2、基g3または基g4である場合、RおよびRとしては、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。入手しやすさ、コストを考慮すると、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい。
-Z-が、-O-、アルキレン基、またはヘテロ原子を有してもよいアルキレン基である場合、RおよびRはいずれも単結合である。
また、lが0の場合、-Z-が-O-の場合にはRはZと異なる2価の基である。
式3中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基である。Rは、炭素数3以下の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
(SiR においてそれぞれのRは互いに同じ基でもよく、異なる基でもよい。入手しやすさの点で、Rは互いに同じ基であることが好ましい。
式3中、lは、0~2である。
式3中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基である。
は、炭素数3以下の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
(SiR O)においてそれぞれのRは互いに同じ基でもよく、異なる基でもよい。入手しやすさの点で、Rは互いに同じ基であることが好ましい。
式3中、kは、10~200であり、10~150が好ましく、15~120がより好ましい。kが前記数値範囲内であると、膜において静的撥水性および動的撥水性を両立しやすい。ただし、化合物3は、SiR Oの繰り返し単位の数が異なる混合物となることがある。化合物3がこのような混合物の場合、各繰り返し単位の数は平均値で示される。平均値で示す場合、繰り返し単位の数は必ずしも整数で示されるわけではないが、好ましい数値の範囲は同様である。
式3中、Rは、炭素数1~10のアルキル基、-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rである。
が、炭素数1~10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖状でもよく、環状でもよく、分枝状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基または-O-Si(Rであり、Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基である。
、Rに関し、炭素数1~12のアルキル基は直鎖状でもよく、環状でもよく、分枝状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。
なかでも、入手しやすさ、静的撥水性および動的撥水性がさらに優れる点で、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
化合物3においてRが炭素数1~10のアルキル基である場合、Rが-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rである場合と比較して、膜が微小な水滴に対する滑落性が優れる。この場合、Rは炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数が1~5の直鎖状アルキル基がより好ましい。
が炭素数1~10のアルキル基である場合の化合物3としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。各化合物中、kは10~200であり、lは0~2である。
CH(Si(CHO)Si(CHSiCl
CH(Si(CHO)Si(CHSi(OCH
CH(Si(CHO)Si(CHSi(OC
(Si(CHO)Si(CHSiCl
(Si(CHO)Si(CHSi(OCH
(Si(CHO)Si(CHSi(OC
化合物3においてRが-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rである場合、Rが炭素数1~10のアルキル基である場合である場合と比較して、膜が耐湿性にさらに優れ、耐薬品性にも優れる。この場合、各末端の反応性シリル基は互いに同一であってもよく、異なってもよい。
が-Y-Si(R3-n(Xである場合の化合物3としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。各化合物中、kは10~200であり、lは0~2である。
ClSiC(Si(CHO)Si(CHSiCl
(CHO)SiC(Si(CHO)Si(CHSi(OCH
(CO)SiC(Si(CHO)Si(CHSi(OC
が-O-Si(Rである場合の化合物3としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
Figure 2023054698000004
Figure 2023054698000005
Figure 2023054698000006
Figure 2023054698000007
化合物3は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、化合物3は、合成してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製X-22-1968が挙げられる。
化合物3の合成方法は公知である。Rが炭素数1~10のアルキル基または-Y-Si(R3-n(Xである場合の化合物3は、例えば、特開2014-74118号公報に記載の方法によって合成できる。また、Rが-O-Si(Rである場合の化合物3は、例えば、特開2018-2933号公報に記載の方法、特開2019-112539号公報に記載の方法によって合成できる。
好ましい実施態様において、撥水成分Dは化合物3であってもよく、化合物3の部分加水分解縮合物であってもよく、化合物3とその部分加水分解縮合物との混合物であってもよい。撥水成分Dは、例えば、未反応の化合物3を含む、化合物3の部分加水分解縮合物であってもよい。
架橋成分B2は、機能層形成用組成物の架橋剤として機能する成分である。架橋成分B2は、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる。
例えば、架橋成分B2は、ビスシランであってもよく、ビスシランの部分加水分解縮合物であってもよく、ビスシランとその部分加水分解縮合物との混合物であってもよい。架橋成分B2は、例えば、未反応のビスシランを含む、ビスシランの部分加水分解縮合物であってもよい。
機能層形成用組成物の架橋成分B2のビスシランは、接着層形成用組成物の架橋成分B1のビスシランと同じであってもよく、異なっていてもよい。ただし、加水分解の反応速度を揃えやすい点で、架橋成分B2のビスシランは、架橋成分B1のビスシランと同じ反応性シリル基を有することが好ましい。
耐湿性等の耐久性に優れる点で、ビスシランとしては化合物2が好ましい。化合物2の詳細および好ましい態様は、架橋成分B1について説明した内容と同様である。好ましい実施態様において、架橋成分B2の化合物2は架橋成分B1の化合物2と同じであってもよく、異なっていてもよい。
ビスシラン、ビスシランの部分加水分解縮合物として、市販品を用いてもよい。また、ビスシランは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
機能層形成用組成物は撥水成分Dと架橋成分B2を含む。そのため、機能層形成用組成物は、撥水成分Dと架橋成分B2との部分加水分解共縮合物を含み得る。耐湿性等の耐久性に優れた膜を形成しやすい点で、機能層形成用組成物は撥水成分Dと架橋成分B2との部分加水分解共縮合物の溶液であることが好ましい。
好ましい実施態様においては、機能層形成用組成物は、化合物1と化合物2の部分加水分解共縮合物を含み得る。機能層形成用組成物が化合物1と化合物2の部分加水分解共縮合物を含むと、化合物1由来成分および化合物2由来成分の両方が均一に分布した層として接着層を形成しやすいと考えられる。また、撥水性、特に膜の微小な水滴に対する滑落性がさらに優れる。
機能層形成用組成物が撥水成分Dと架橋成分B2の部分加水分解共縮合物を含む場合、この部分加水分解共縮合物とは別に、撥水成分Dと架橋成分B2を含んでいてもよい。
第2の溶媒C2は、機能層形成用組成物の液状媒体である。第2の溶媒C2は、撥水成分Dおよび架橋成分B2の固形分を溶解可能な液状の化合物であれば特に限定されない。
第2の溶媒C2として使用可能な化合物としては、第1の溶媒C1と同様のものが挙げられる。また、第2の溶媒C2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用した混合溶媒であってもよい。
耐湿性等の耐久性に優れた膜を形成しやすい点では、第2の溶媒C2のSP値は8.0~13.0が好ましく、8.0~12.0がより好ましい。
SP値が前記数値範囲内となる溶媒としては、例えば、酢酸ブチル(SP値:8.5)、酢酸プロピル(SP値:8.8)、酢酸イソプロピル(SP値:8.4)、酢酸エチル(SP値:9.1)、酢酸メチル(SP値:9.6)、1-ヘキサノール(SP値:10.7)、シクロヘキサノール(SP値:11.4)、2-ブタノール(SP値:10.8)、イソブタノール(SP値:11.2)、1-ブタノール(SP値:11.4)、2-プロパノール(SP値:11.5)、2-メチル-1-プロパノール(SP値:10.5)、メチルエチルケトン(SP値:9.3)、アセトン(SP値:10.0)、トルエン(SP値:8.8)、キシレン(SP値:8.8)、メタクリル酸メチル(SP値:8.8)、ジアセトンアルコール(SP値:10.2)が挙げられる。
第2の溶媒C2が混合溶媒の場合、SP値は、水以外の混合溶媒全体のSP値として算出する。
SP値はFedorsの方法により推算される溶解度パラメータδ[cal/cm1/2である。Fedorsの方法は、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147(1974)に記載されており、求める化合物の構造式において、原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積のデータよりSP値を推算する方法である。
機能層形成用組成物の触媒の詳細および好ましい態様は、接着層形成用組成物について説明した内容と同様である。液ライフ性に優れる点で、機能層形成用組成物は酸触媒を含むことが好ましい。
機能層形成用組成物の任意成分の詳細および好ましい態様は、接着層形成用組成物について説明した内容と同様である。
膜の性能の点で、機能層形成用組成物は、任意成分としての添加剤を含まないことが好ましい。
撥水成分Dに対する架橋成分B2の質量比(架橋成分B2/撥水成分D)は、1/99~50/50が好ましく、1/99~30/70がより好ましく、1/99~20/80がさらに好ましく、1/99~10/90が特に好ましい。
撥水成分Dに対する架橋成分B2の質量比が前記数値範囲の下限値以上であると、膜が耐湿性等の耐久性にさらに優れる。
撥水成分Dに対する架橋成分B2の質量比が前記数値範囲の上限値以下であると、撥水性、特に膜の微小な水滴に対する滑落性がさらに優れる。
機能層形成用組成物における撥水成分Dに対する架橋成分B2の質量比は、機能層形成用組成物の調製に用いた撥水成分Dおよび架橋成分B2の量から算出できる。例えば、化合物3由来成分に対する化合物2由来成分の質量比は、機能層形成用組成物の調製に用いた化合物3および化合物2の量から算出できる。
機能層形成用組成物における第2の溶媒C2の量は、撥水成分Dと架橋成分B2との合計100質量部に対して、400~100,000質量部が好ましく、500~3,500質量部がより好ましく、500~2,000質量部がさらに好ましい。
第2の溶媒C2の含有量が前記数値範囲の下限値以上であると、機能層に斑が発生しにくい。第2の溶媒C2の含有量が前記数値範囲の上限値以下であると、経済性、作業性が優れ、機能層の厚さを制御しやすい。
機能層形成用組成物が触媒を含む場合、触媒の量は、撥水成分Dと架橋成分B2の合計100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
触媒の含有量が前記数値範囲の下限値以上であると、加水分解縮合反応が進行しやすい。触媒の含有量が前記数値範囲の上限値以下であると、縮合反応が穏やかに進み、外観、透明性に優れる膜を得やすい。
機能層形成用組成物が水を含む場合、水の量は撥水成分Dと架橋成分B2との合計100質量部に対して、1~50質量部が好ましい。ただし、機能層形成用組成物は水を含まなくとも、機能層の形成において雰囲気中の水分を利用することで加水分解反応を進行させることができる。
化合物3等の撥水成分Dおよびビスシランの加水分解性基が塩素原子である場合、これらの化合物は反応性が高くなる。この場合、貯蔵安定性の点で、機能層形成用組成物は触媒および水を実質的に含まないことが好ましい。
(作用機序)
以上説明した本発明の硬化性組成物キットにあっては、接着層形成用組成物および機能層形成用組成物の両方が、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分を含む。ビスシランは、両末端の反応性シリル基を除く二価の有機基の部分が加水分解されない。そのため、接着層および機能層の各層の形成に際して、ビスシランの周囲の成分が加水分解反応した後においてもビスシランの二価の有機基の部分は化学結合が維持される。その結果、耐湿性等の耐久性に優れる膜を形成できる。
また、本発明の硬化性組成物キットにあっては、機能層形成用組成物が撥水成分Dとしてオルガノシラン化合物を含むため、撥水性、防汚性に優れる膜を形成できる。
<膜付き基体>
本発明の膜付き基体は、基体と、基体の少なくとも一部の表面に設けられた膜とを備える。基体の形状は平板でもよく、全面または一部が曲率を有していてもよい。基体の厚さは膜付き基体の用途により適宜選択できる。一般的な厚さとしては、例えば、1~10mm程度である。
基体の材質としては、例えば、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、木材、繊維、これらの2種以上の複合材料が挙げられる。窓ガラス等の用途においては、ガラス、透明樹脂等の透明な基体が好ましく、ガラスが特に好ましい。
ガラスとしては、例えば、通常のソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスが挙げられる。なかでもソーダライムガラスが特に好ましい。プラスチックとしては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリフェニレンカーボネート等の芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
基体がソーダライムガラスである場合は、Naイオンの溶出を防止する膜を設けることが耐久性の点で好ましい。基体がフロート法で製造されたガラスである場合は、表面錫量の少ないトップ面に膜を設けることが耐久性の点で好ましい。
本発明の膜付き基体において接着層は、接着層形成用組成物を用いて形成され、かつ、機能層は、機能層形成用組成物を用いて形成されている。接着層形成用組成物、機能層形成用組成物の詳細および好ましい態様は、<硬化性組成物キット>の項で説明した内容と同様である。
接着層は、接着層形成用組成物を用いて形成される層である。そのため、接着層は密着成分Aと架橋成分B1との部分加水分解共縮合物を主に含むと考えられる。
この部分加水分解共縮合物に加えて、接着層は、密着成分Aの部分加水分解縮合物、架橋成分B1の部分加水分解縮合物をそれぞれさらに含み得ると考えられる。
機能層は、機能層形成用組成物を用いて形成される層である。そのため、機能層は撥水成分Dと架橋成分B2との部分加水分解共縮合物を主に含むと考えられる。
この部分加水分解共縮合物に加えて、機能層は撥水成分Dの部分加水分解縮合物、架橋成分B2の部分加水分解縮合物をそれぞれさらに含み得ると考えられる。
膜付き基体において、膜は基体の少なくとも一部の表面に形成される。基体の表面において、膜が形成される領域は特に限定されず、用途に応じて必要とされる領域に形成すればよい。基体が板状である場合、通常、基体の両方の主面またはいずれか一方の主面の全面に形成される。
基体の表面に設けられた膜は、基体側から順に接着層と機能層とを少なくとも有する。膜は、接着層と機能層の間にさらに中間層等を有してもよいが、接着層と機能層のみで構成される膜が好ましい。
(膜付き基体の製造方法)
本発明の膜付き基体の製造方法は、接着層形成用組成物を用いて接着層を形成し、かつ、下記の機能層形成用組成物を用いて機能層を形成することを特徴とする。
接着層形成用組成物を用いて接着層を形成する方法、機能層形成用組成物を用いて機能層を形成する方法は特に限定されない。例えば、以下の方法1、方法2が挙げられる。
・方法1:接着層形成用組成物を基体表面に塗布し、大気中または窒素雰囲気中において第1の溶媒C1を必要に応じて加熱等により除去して基体表面に未硬化の塗膜1を設ける。次いで、塗膜1が硬化可能な条件で塗膜1を硬化して接着層を形成した後、接着層の表面に機能層形成用組成物を塗布し、大気中または窒素雰囲気中において第2の溶媒C2を必要に応じて加熱等により除去して塗膜2を設ける。その後、塗膜2が硬化可能な条件で硬化して機能層を形成する。
・方法2:接着層形成用組成物を基体表面に塗布し、大気中または窒素雰囲気中において第1の溶媒C1を必要に応じて加熱等により除去して基体表面に未硬化の塗膜1を設ける。次いで、基体表面に設けた未硬化の塗膜1の表面に機能層形成用組成物を塗布し、大気中または窒素雰囲気中において第2の溶媒C2を必要に応じて加熱等により除去して塗膜2を設けた後、塗膜1および塗膜2を硬化して接着層および機能層を形成する。
方法2においては、機能層形成用組成物(未硬化の塗膜2)の硬化は、接着層形成用組成物(未硬化の塗膜1)の硬化と同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
接着層形成用組成物および機能層形成用組成物を同時に硬化する場合、接着層形成用組成物および機能層形成用組成物に同一の硬化条件を適用する。
一方、接着層形成用組成物および機能層形成用組成物を別々に硬化する場合、接着層形成用組成物および機能層形成用組成物に同一の硬化条件を適用してもよく、接着層形成用組成物および機能層形成用組成物で異なる硬化条件を適用してもよい。
接着層形成用組成物および機能層形成用組成物の塗布方法は特に限定されない。はけ塗り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スキージ塗布、スプレー塗布、手塗り等の種々の塗布方法を使用できる。
接着層の硬化条件、機能層の硬化条件も特に限定されず、各組成物の組成、濃度等により適宜制御される。好ましい条件として、例えば、温度:20~60℃、湿度:50~90%RHの条件が挙げられる。硬化時間は、用いる組成物の種類、濃度、硬化条件等によるが、概ね1~72時間が好ましい。
接着層の厚さは膜に耐湿性、密着性、基体からのアルカリ等のバリア性を付与できる厚さであれば特に限定されない。経済性の点で、50nm以下の厚さが好ましい。接着層の厚さの下限は単分子層の厚さである。
機能層の厚さは膜に静的撥水性および動的撥水性の双方に優れる性能を付与できる厚さであれば特に限定されない。経済性の点で、50nm以下の厚さが好ましい。機能層の厚さの下限は単分子層の厚さである。
(作用機序)
以上説明した本発明の膜付き基体にあっては、特定の架橋成分B1を含む接着層形成用組成物を用いて接着層が形成され、かつ、特定の架橋成分B2を含む機能層形成用組成物を用いて機能層が形成されている。また、架橋成分B1、架橋成分B2は、ビスシランおよびビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる。
ここでビスシランは、両末端の反応性シリル基を除く二価の有機基の部分が加水分解されない。そのため、接着層および機能層の各層の形成に際して、ビスシランの周囲の成分が加水分解反応した後においてもビスシランの二価の有機基の部分は化学結合が維持される。その結果、膜が耐湿性等の耐久性に優れる。
また、本発明の膜付き基体にあっては、機能層が撥水成分Dとしてオルガノシラン化合物を含む機能層形成用組成物を用いて形成されるため、膜が撥水性、防汚性に優れる。
(用途)
本発明の膜付き基体は、これを有する物品として使用できる。すなわち、本発明の物品は、本発明の膜付き基体を有する。物品は、撥水性、防汚性の付与が望まれている設備、装置、器具、部品等であれば特に限定されない。
本発明の物品は、撥水性、防汚性および耐久性に優れる膜を備える膜付き基体を有する。そのため、本発明の物品は、輸送機器用物品としての用途、建材用部品としての用途に好適に用いられる。
輸送機器用物品としては、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器の窓ガラス(フロントガラス、サイドガラス、リアガラス等)、ボディー、ミラー、バンパー等が挙げられる。
建材用部品としては、家、ビル、高層ビル等の外装に使用される窓等の建築用部材;鏡、看板、掲示板、スクリーン、台所用品、台所設備、洗面設備、入浴設備、排気装置、エアコンディショナー等の空調設備のフィン、フィルター、冷蔵庫、冷凍庫のフィン、フィルター、その他の水洗浄が実施される設備、装置、器具、部品等の装飾建材;が挙げられる。
他にも、物品として、医療用設備、医療用機械器具、眼鏡、インクジェットプリンター部品、便器、革靴、カーペット等が挙げられる。
本発明の膜付き基体、前記膜付き基体を有する物品は、その膜表面が静的撥水性および動的撥水性の双方に優れるため、表面への水滴の付着が少なく、付着した水滴がすみやかに除去される。加えて風圧との相互作用により、付着した水滴は表面を急速に移動し、表面に非常に溜まりにくい。そのため、水分が誘発する悪影響を排除できる。また、膜が耐湿性等の耐久性にも優れるため、例えば、輸送機器用物品、建材用物品のように屋外で長期間使用される場合でも、優れた撥水性を維持できる。
本発明の膜付き基体またはこの基体を具備する輸送機器用物品は、特に、各種窓ガラス等の透視野部での用途において、水滴の飛散により視野の確保が非常に容易となり、車輌等の運行において安全性が向上する。また、水滴が氷結するような環境下でも膜表面には着氷しにくく、着氷したとしても付着力が小さいため自然落下しやすい。さらに、水滴の付着がほとんどないため、清浄の作業回数を少なくでき、しかも清浄作業が容易となる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。例1~3は実施例であり、例4、5は比較例である。
<測定方法>
(水接触角)
各例の膜付き基体の表面の機能層に置いた約2μLの蒸留水の接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500)を用いて測定した。機能層の表面における異なる5箇所で測定を行い、その平均値を水接触角として算出した。算出には2θ法を用いた。
(水転落角)
水平に保持した各例の膜付き基体の表面の機能層に30μLの水滴を滴下した後、膜付き基体を徐々に傾け、30μLの水滴が表面上を1mm移動した時の膜付き基体と水平面との角度を測定した。機能層の表面における異なる2箇所で測定を行い、その平均値を水転落角として算出した。
<評価方法>
(耐湿性)
耐湿性試験として、各例の膜付き基体を80℃、95%RHの環境下で140時間暴露した。この耐湿性試験の後、前記方法により水接触角、水転落角を測定した。耐湿性試験後の水接触角が100°以上であり、かつ、水転落角が10°以下であるとき、その膜が耐湿性に優れていると評価した。
<材料>
・密着成分A:TEOS(Si(OC))。
・架橋成分B1:BTMSE((CHO)SiCHCHSi(OCH)。
・第1の溶媒C1:2-プロパノール(SP値:11.5)。
・撥水成分D:PDMS(ポリジメチルシロキサン、信越化学工業株式会社製、x-22-1968)。x-22-1968の化学構造は、C(Si(CHO)Si(OCHであると考えられる。ここで、kは25~35である。
・架橋成分B2:BTESE((CO)SiCHCHSi(OC
・第2の溶媒C2:酢酸ブチル(SP値:8.5)および2-プロパノール(SP値:11.5)との混合溶媒(混合溶媒のSP値:9.1)。
<組成物の調製>
(機能層形成用組成物1)
PDMS:1g、BTESE:0.076g、酢酸ブチル:7.09g、2-プロパノール:1.67gを混合し、触媒として10%硝酸水溶液:0.167gを滴下した後60℃で3時間攪拌し、機能層形成用組成物1を得た。得られた機能層形成用組成物1は透明であった(図1参照)。
(機能層形成用組成物2)
PDMS、BTESEの質量比の組成が表1に示す通りとなるようにPDMS、BTESEの使用量を変更した以外は機能層形成用組成物1と同様にして、機能層形成用組成物2を調製した。
(機能層形成用組成物3)
BTESEを使用せず、質量比の組成が表1に示す通りとなるようにPDMSの使用量を変更した以外は、機能層形成用組成物1と同様にして機能層形成用組成物3を調製した。
(機能層形成用組成物4)
質量比の組成が表1に示す通りとなるようにPDMS、TEOSを使用した以外は機能層形成用組成物1と同様にして機能層形成用組成物4を調製した。
(機能層形成用組成物5)
PDMS:1g、BTESE:0.076g、酢酸ブチル:6.99g、2-プロパノール:1.67gを混合し、アルミニウム系の有機金属触媒として信越化学工業株式会社製のCAT-AC:0.1gを滴下した後60℃で3時間攪拌し、機能層形成用組成物5を得た。3時間攪拌した後、機能層形成用組成物5には白濁が発生した(図2)。縮合反応が過度に進行したことで、液ライフ性が悪化したと考えられる。そのため、機能層形成用組成物5は膜付き基体の機能層の形成に使用しなかった。
(接着層形成用組成物1)
TEOS:0.230g、BTMSE:0.203g、2-プロパノール:8.727gを混合し、0.463%硝酸水溶液を0.84g滴下した後25℃で3時間攪拌し、接着層形成用組成物1を得た。
(接着層形成用組成物2)
TEOS、BTMSEの組成が表1に示す通りとなるように、TEOS、BTMSEの使用量を変更した以外は接着層形成用組成物1と同様にして、接着層形成用組成物2を調製した。
Figure 2023054698000008
<例1>
基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライムガラス基板(水接触角5°、300mm×300mm×厚さ2mm)を用い、該ガラス基板の表面に、上述の通り調製した接着層形成用組成物1の0.5gをスキージコート法によって塗布し、25℃で1分間乾燥し、未硬化の接着層を形成した。次いで、形成した未硬化の接着層の表面に、上述の通り調製した機能層形成用組成物1の0.5gをスキージコート法によって塗布し、50℃、60%RHに設定された恒温恒湿槽で1時間保持して機能層を形成しながら同時に接着層を硬化した。その後、酢酸ブチルを染み込ませた紙ウェスで機能層の表面を拭き上げ、その後、再び50℃、60%RHに設定された恒温恒湿槽で47時間保持して機能層をさらに硬化し、基体側から順に接着層と機能層とを有する膜を備えた膜付き基体を得た。膜付き基体の初期の水接触角および水転落角、耐湿性試験後の水接触角および水転落角を表2に示す。
<例2~5>
表1に示す通り、機能層形成用組成物、接着層形成用組成物を変更した以外は、例1と同様にして各例の膜付き基体を得た。膜付き基体の初期の水接触角および水転落角、耐湿性試験後の水接触角および水転落角を表2に示す。
Figure 2023054698000009
例1~3の膜付き基体は、初期の撥水性に優れ、また、耐湿試験後の撥水性が高く耐久性にも優れることを確認した。
例4の膜付き基体はビスシランを用いずに調製した機能層形成用組成物3から形成された機能層を有し、特許第6036132号公報に記載の撥水膜付き基体の構成に対応する。この例4の膜付き基体は、例1~3の膜付き基体と比較して、耐湿試験後の水接触角の低下が大きく、耐久性に劣っていた。
例5の膜付き基体は、ビスシランを用いずその代わりにTEOSを用いて調製した機能層形成用組成物4から形成された機能層を有し、特許第6134006号に開示の膜の構成に類似する。この例5の膜付き基体は、例1~3の膜付き基体と比較して、耐湿試験後の水接触角の低下が大きく、耐久性に劣っていた。また、耐湿試験後の水転落角の増加が大きい点でも耐久性に劣っていた。
本発明の硬化性組成物キットによれば、撥水性および耐久性に優れる膜を基体の表面に形成できる。
本発明の膜付き基体は、撥水性および耐久性に優れる膜を備える。
本発明の物品は、撥水性および耐久性に優れる膜を備える膜付き基体を有する。

Claims (20)

  1. 基体と、前記基体の少なくとも一部の表面に設けられた膜とを備える膜付き基体であって、
    前記膜は、前記基体側から順に接着層と機能層とを少なくとも有し、
    前記接着層は、下記の接着層形成用組成物を用いて形成され、かつ、前記機能層は、下記の機能層形成用組成物を用いて形成されている、膜付き基体。
    接着層形成用組成物:前記基体の表面と接着可能な密着成分Aと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B1と、前記密着成分Aおよび前記架橋成分B1を溶解可能な第1の溶媒C1とを含む、組成物。
    機能層形成用組成物:前記膜に撥水性を付与可能な撥水成分Dと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B2と、前記撥水成分Dおよび前記架橋成分B2を溶解可能な第2の溶媒C2とを含む、組成物。
  2. 前記接着層形成用組成物および前記機能層形成用組成物のいずれか一方または両方が、酸触媒をさらに含む、請求項1に記載の膜付き基体。
  3. 前記接着層形成用組成物における前記密着成分Aに対する前記架橋成分B1の質量比が、10/90~90/10である、請求項1または2に記載の膜付き基体。
  4. 前記機能層形成用組成物における前記撥水成分Dに対する前記架橋成分B2の質量比が、1/99~50/50である、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜付き基体。
  5. 基体と、前記基体の少なくとも一部の表面に設けられた膜とを備える膜付き基体であって、
    前記膜は、前記基体側から順に接着層と機能層とを少なくとも有し、
    前記接着層が、下記の密着成分Aと下記の架橋成分B1との部分加水分解共縮合物を含み、
    前記機能層が、下記の撥水成分Dと下記の架橋成分B2との部分加水分解共縮合物を含む、膜付き基体。
    密着成分A:前記基体の表面と接着可能な成分。
    架橋成分B1:ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる成分。
    撥水成分D:前記膜に撥水性を付与可能な成分。
    架橋成分B2:ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる成分。
  6. 前記密着成分Aが、下式1で表される化合物1および前記化合物1の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜付き基体。
    Si(X …式1
    式1中、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアナート基である。
  7. 前記架橋成分B1および前記架橋成分B2のいずれか一方または両方が、下式2で表される化合物2および前記化合物2の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の膜付き基体。
    Si-(Y)-SiX …式2
    式2中、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、Yは、2価の有機基である。
  8. 前記撥水成分Dが、下式3で表される化合物3および前記化合物3の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の膜付き基体。
    -(SiR O)-(SiR -(Y-Si(R3-n(X …式3
    式3中、
    は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
    は、下式g1で表される2価の連結基であり、
    は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
    およびRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり、
    は、炭素数1~10のアルキル基、-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rであり、
    は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基または-O-Si(Rであり、
    は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり、
    kは、10~200であり、
    lは、0~2であり、
    mは、0または1であり、
    nは、1~3の整数である。
    -(R)-Z-(R)- …式g1
    式g1中、
    -Z-は、-O-、-(CF-、アルキレン基、下式g2で表される基、下式g3で表される基および下式g4で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つであり、
    およびRは、それぞれ独立して単結合またはZと異なる2価の基であり、
    aは、1~10である。
    Figure 2023054698000010
    式g3、式g4中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり、
    式g4中、bは、1~10である。
  9. 前記RおよびRが、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基である、請求項8に記載の膜付き基体。
  10. 基体の材質が、ガラス、樹脂および金属からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜付き基体。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の膜付き基体を有する物品。
  12. 建材用または輸送機器用である、請求項11に記載の物品。
  13. 基体の少なくとも一部の表面に膜を設けるための硬化性組成物キットであり、
    下記の接着層形成用組成物と下記の機能層形成用組成物とを有する、硬化性組成物キット。
    接着層形成用組成物:前記基体の表面と接着可能な密着成分Aと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B1と、前記密着成分Aおよび前記架橋成分B1を溶解可能な第1の溶媒C1とを含む、組成物。
    機能層形成用組成物:前記膜に撥水性を付与可能な撥水成分Dと、ビスシランおよび前記ビスシランの部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる架橋成分B2と、前記撥水成分Dおよび前記架橋成分B2を溶解可能な第2の溶媒C2とを含む、組成物。
  14. 前記密着成分Aが、下式1で表される化合物1および前記化合物1の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、請求項13に記載の硬化性組成物キット。
    Si(X …式1
    式1中、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアナート基である。
  15. 前記架橋成分B1および前記架橋成分B2のいずれか一方または両方が、下式2で表される化合物2および前記化合物2の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、請求項13または14に記載の硬化性組成物キット。
    Si-(Y)-SiX …式2
    式2中、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、Yは、2価の有機基である。
  16. 前記撥水成分Dが、下式3で表される化合物3および前記化合物3の部分加水分解縮合物のいずれか一方または両方からなる、請求項13~15のいずれか一項に記載の硬化性組成物キット。
    -(SiR O)-(SiR -(Y-Si(R3-n(X …式3
    式3中、
    は、それぞれ独立して加水分解性基または水酸基であり、
    は、下式g1で表される2価の連結基であり、
    は、それぞれ独立して1価の炭化水素基であり、
    およびRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり、
    は、炭素数1~10のアルキル基、-Y-Si(R3-n(Xまたは-O-Si(Rであり、
    は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基または-O-Si(Rであり、
    は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり、
    kは、10~200であり、
    lは、0~2であり、
    mは、0または1であり、
    nは、1~3の整数である。
    -(R)-Z-(R)- …式g1
    式g1中、
    -Z-は、-O-、-(CF-、アルキレン基、下式g2で表される基、下式g3で表される基および下式g4で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つであり、
    およびRは、それぞれ独立して単結合またはZと異なる2価の基であり、
    aは、1~10である。
    Figure 2023054698000011
    式g3、式g4中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基であり、
    式g4中、bは、1~10である。
  17. 前記RおよびRが、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基である、請求項16に記載の硬化性組成物キット。
  18. 前記接着層形成用組成物および前記機能層形成用組成物のいずれか一方または両方が、酸触媒をさらに含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物キット。
  19. 前記密着成分Aに対する前記架橋成分B1の質量比が、10/90~90/10である、請求項13~18のいずれか一項に記載の硬化性組成物キット。
  20. 前記撥水成分Dに対する前記架橋成分B2の質量比が、1/99~50/50である、請求項13~19のいずれか一項に記載の硬化性組成物キット。
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