[go: up one dir, main page]

JP2023046507A - 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 Download PDF

Info

Publication number
JP2023046507A
JP2023046507A JP2021155132A JP2021155132A JP2023046507A JP 2023046507 A JP2023046507 A JP 2023046507A JP 2021155132 A JP2021155132 A JP 2021155132A JP 2021155132 A JP2021155132 A JP 2021155132A JP 2023046507 A JP2023046507 A JP 2023046507A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vinyl ester
ink composition
mass
water
ink
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021155132A
Other languages
English (en)
Inventor
太郎 戸塚
Taro Totsuka
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Pilot Corp
Original Assignee
Pilot Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Pilot Corp filed Critical Pilot Corp
Priority to JP2021155132A priority Critical patent/JP2023046507A/ja
Publication of JP2023046507A publication Critical patent/JP2023046507A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Pens And Brushes (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Abstract

【課題】本発明の課題は、筆跡耐水性に優れた筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体と、着色剤と、水と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具。
【選択図】なし









Description

本発明は、筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具に関するものである。
筆記具用インキ組成物は、通常の生活環境下で利用されることから、得られる筆跡は、水滴や汗などに触れる可能性が高い。このため、筆跡が水滴や汗、さらには流水などにより、滲んでしまったり、薄くなってしまったり、色調が変化したり、さらに酷くなると、消失してしまうことがあり、筆記具用インキ組成物において、筆跡の耐水性の向上は解決すべき課題である。
特に、溶媒に水を用いた水性インキ組成物により得られる筆跡は、水滴、汗さらには流水などによる影響が出やすく、筆跡の耐水性の向上は、溶媒に有機溶剤を用いたような油性インキ組成物に比べ、より強く求められている。
そこで上記課題を解決するため、着色剤に高分子染料や顔料を用いることや、耐水性付与剤として、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂などの各種樹脂剤を添加することが提案されている。(特許文献1、2など)
しかしながら、ある程度、筆跡の耐水性は向上するものの、十分に満足できるものではなく、更なる改善が求められている。
特許2043996号 特開昭58-080368号公報
本発明の目的は、上記のような課題を解決するもので、筆跡耐水性に優れた筆記具用水性インキ組成物を提供することであり、さらに、それを用いた筆記具を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.バーサチック酸ビニルエステル共重合体と、着色剤と、水と、を含んでなる、筆記具用水性インキ組成物であって、前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度が0℃以上であることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物。
2.前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体の含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.01質量%以上20質量%以下である、第1項に記載のインキ組成物。
3.前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体である、第1項または第2項に記載のインキ組成物。
4.多糖類を更に含んでなる、第1項ないし第3項のいずれか一項に記載のインキ組成物。
5.第1項ないし第4項のいずれか一項に記載のインキ組成物を収容してなる、筆記具。
6.ボールペンである、第5項に記載の筆記具。」とする。
本発明によれば、得られた筆跡に水滴が付着したり、筆跡が流水に晒されたとしても、筆跡の色調が変化したり、筆跡が消失したりすることがない、優れた筆跡耐水性を有する筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供することができる。
ノック式加圧ボールペンの一例のボールペンチップが没入した状態(非加圧状態)を示す縦断面図である。 ノック式加圧ボールペンの一例のボールペンチップが突出した状態(加圧状態)を示す縦断面図である。 図1の一部省略した要部拡大縦断面図である。 図2の一部省略した要部拡大縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り、質量基準であり、含有率とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
<筆記具用水性インキ組成物>
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により、インキ組成物と表す)は、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体と、着色剤と、水と、を含んでなることを特徴とするものである。
以下、本発明のインキ組成物における構成成分について、詳細に説明する。
<バーサチック酸ビニルエステル共重合体>
本発明のインキ組成物は、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含んでなる。
なお、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、バーサチック酸ビニルエステルと、バーサチック酸ビニルエステルと共重合が可能な他のモノマーの共重合体である。
以下、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体を単に、バーサチック酸ビニルエステル共重合体と称して説明する場合がある。
ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体は、耐水性付与剤として効果的に働き、得られる筆跡に耐水性を付与することができる。
ガラス転移温度が高くなると、被膜が強固となる傾向にあり、ガラス転移温度が低くなると、被膜が柔軟となり基材への接着性が良好となる傾向にある。インキ組成物中のガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体を用いると、形成された被膜の強度が一定以上となり、筆跡の強度が好適になる。後述するバーサチック酸ビニルエステルの疎水効果の作用も奏功し筆跡の表面に、耐水性と強度を有する被膜が形成され、該被膜により、着色剤と水との接触を防ぐことができるためと推測する。
よって、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含んでなる本発明のインキ組成物は、得られる筆跡に水滴が付着したり、筆跡が流水に晒されたとしても、着色剤の流出が抑えられ、筆跡の色調が変化したり、筆跡が消失することがなく、優れた筆跡耐水性を奏することができる。
また、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体は、ペン先において被膜を形成し、該被膜により、ペン先からのインキ漏れを抑制するなど、インキの垂れ下がりを抑える傾向にある。
本発明に用いるバーサチック酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度(以下、Tgということがある)は0℃以上であるが、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃以下である。バーサチック酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度が上記の数値以下であれば、耐水性を十分に有しながらも適度な柔軟性を有した被膜の形成が得られる。このため、被筆記面に対して接着性・密着性に優れるため定着性に優れた筆跡を得ることができる。上記により被筆記面に対する着色剤の定着性が向上し、より優れた筆跡耐水性を奏することができる。
よって、本発明に用いるバーサチック酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度は、0℃以上100℃以下であることが好ましく、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。
また、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以下であり、より好ましくは20mgKOH/g以下である。バーサチック酸ビニルエステル共重合体の酸価が上記の上限値以下であると、筆跡表面上に形成される被膜の疎水性が向上し、該被膜により、着色剤と水との接触を、より一層防ぐことができ、より優れた筆跡耐水性を得ることができる。また、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の酸価は好ましくは5mgKOH/g以上であり、より好ましくは10mgKOH/g以上である。バーサチック酸ビニルエステル共重合体の酸価が、上記の下限値以上であると、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、水との親和性を適度に有し、水性インキ組成物中において、安定に存在し得ることができ、インキの安定性を向上させることができる。
また、本発明に用いられるバーサチック酸ビニルエステル共重合体は、インキ組成物中に均一に分散されていることが好ましい。この場合、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、インキ組成物中で溶解せずに粒子状で存在し、筆記時に、水が蒸発して粒子同士が結着し造膜する。
この場合のバーサチック酸ビニルエステル共重合体の平均粒子径は、好ましくは、0.01μm以上2.0μm以下であり、より好ましくは、0.05μm以上1μm以下であり、さらに好ましくは、0.05μm以上0.5μm以下であり、0.05μm以上0.2μm以下である。
バーサチック酸ビニルエステル共重合体の平均粒子径が、上記数値の範囲内であると、バーサチック酸ビニルエステル共重合体がインキ中で安定に存在しやすく、優れたインキ安定性が得られる。さらには、筆跡表面上に、耐水性を付与できる被膜を均一に形成しやすいため、筆跡の発色性に悪影響を与えることなく、優れた耐水性と発色性を有する筆跡を得ることができる。
ここで、本発明において、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の平均粒子径とは、レーザー回折法により測定される体積基準の平均粒子径である。
また、本発明によるインキ組成物を製造する際に、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、予め水媒体に乳化分散された状態で、インキ組成物に添加されることも好ましい一形態である。これは、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、水性インキ中で安定して均一に存在しやすくなり、筆跡表面に耐水性に優れた被膜を均一に形成できる。このため、形成された被膜の影響を受けて筆跡の発色性が劣ることなく、筆跡に優れた耐水性を付与することができる。さらには、インキの経時安定性も良化できる。
また、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の最低造膜温度(以下、MFTということがある)は、好ましくは0℃以上50℃以下であり、より好ましくは、0℃以上30℃以下である。バーサチック酸ビニルエステル共重合体の最低造膜温度が、上記数値の範囲内であれば、筆記後、速やかに筆跡の定着性が得られ、均一な被膜を筆跡表面に形成できるため優れた筆跡発色性と、優れた筆跡耐水性を同時に奏することができる。
なお、MFTは、JIS K6828-2(2003)に準じて測定することができる。
本発明に用いられる、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、上述の通り、ガラス転移温度が0℃以上であって、バーサチック酸ビニルエステル及びバーサチック酸ビニルエステルと共重合が可能な他のモノマーの共重合体であれば、特に限定されない。
バーサチック酸ビニルエステルは、下記一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2023046507000001
上記一般式(1)において、RおよびRは、各々、アルキル基である。
、Rを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル、3-エチルブチル基、1-メチル-1-エチルプロピル基が挙げられる。
また、前記アルキル基のうち、分岐構造を有するアルキル基は、イソプロピル基(1-メチルエチル基)、tert-ブチル基(1,1-ジメチルエチル基)、sec-ブチル基(1-メチルプロピル基)、イソブチル基(2-メチルプロピル基)、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、イソペンチル基(3-メチルブチル基)、sec-ペンチル基(1-メチルブチル基)、1,1-ジメチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル、3-エチルブチル基、1-メチル-1-エチルプロピル基である。
また、本願発明において、式(1) 中、R及びR は、それぞれ独立に、炭素数1 ~ 7 のアルキル基を示し、R及びRの合計の炭素数は6~10であり、式(1)の 全体の合計炭素数は11~15であることが好ましい。また、R及びRは、少なくとも一方は、分岐構造を有するアルキル基であることが好ましい。
式(1) 中のR及びRおよび式(1)の 全体の合計炭素数が上記のようなものであると、筆跡表面に形成される被膜の疎水性が向上するため、より一層優れた、筆跡耐水性が得られる。これは、バーサチック酸ビニルエステルが、末端にあるRaが炭素数8~12のアルキル基であることや分岐構造であることにより、被膜形成時に疎水性部が筆跡表面に配向しやすく、筆記面側に極性基が配向しやすくなり、筆跡表面に効率的に耐水性を有する被膜を形成することができるためと推測する。
特に、上記効果の向上を考慮すると、式(1)の好ましい形態の一つとしては、Rはn‐ブチル基であって、Rはイソブチル基であって、R及びRの合計の炭素数は8であり、式(1)の 全体の合計炭素数は13であるものである。具体的には、下記一般式(2)で表されるバーサチック酸ビニルエステルが挙げられる。
Figure 2023046507000002
また、バーサチック酸ビニルエステルと共重合可能な他のモノマーとしては、特に、制限されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィン、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸などのアクリル系モノマー、酢酸ビニル、ビニルアルコール、が挙げられる。本明細書における「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称である。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記他のモノマーのなかでも、酢酸ビニルおよびアクリル系モノマーが好ましくい。これは、酢酸ビニルおよびアクリル系モノマーは、バーサチック酸ビニルエステルに共重合しやすく、被筆記面にしっかりと定着できる被膜を形成し、該被膜により着色剤の流出の抑制を向上でき、より優れた筆跡耐水性を得ることができるためである。また、極性を持つ酢酸ビニルおよびアクリル系モノマーを共重合することで疎水性の強いバーサミチック酸ビニルエステルに適度な親水性を付与することで基材への密着性の向上と水性インキ中での安定性を向上させることができる。
前記他のモノマーとしてアクリル系モノマーであると、非吸収面の被筆記面においても、耐水性に優れた筆跡を形成しやすく、この点からも、好ましい。
以上より、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の具体例としては、バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体、バーサチック酸ビニルエステル-酢酸ビニル共重合体、バーサチック酸ビニルエステル-エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、本発明において、筆跡耐水性を向上する観点から、バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体を用いることが特に好ましい。
さらに、バーサチック酸ビニルエステル共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の総質量に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは、40質量%以上である。バーサチック酸ビニルエステル共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量が上記の下限値以上であれば、筆跡耐水性を向上することができる。特に非吸収面に対する筆跡の耐水性が向上し、流水などの影響を受けても、筆跡が流れ落ち難くなる。
さらに、バーサチック酸ビニルエステル共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の総質量に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。バーサチック酸ビニルエステル共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量が上記の上限値以下であれば、バーサチック酸ビニルエステルのインキ組成物中の安定性が向上でき、良好な筆跡が得られやすい。
また、バーサチック酸ビニルエステル共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量が30質量%以下である、バーサチック酸ビニルエステル共重合体を用いる場合、SiOを含ませることで、耐水性を向上することができ、本発明の好適な一態様である。
バーサチック酸ビニルエステル共重合体を含んでなる市販品の一例としては、VANORA社製のAVE.191、DXV.4051、DXV.4198、DXV.4140、M1630.AV、DSV.4116、DSV.4135、DSV.4176、DSV.4186、DSV.4171などが挙げられる。
本発明のインキ組成物におけるバーサチック酸ビニルエステル共重合体の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。これは、0.01質量%以上でれば、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の耐水性付与剤としての効果を十分に得ることができ、20質量%以下であれば、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、インキ中で安定に存在しやすくなり、インキの粘度安定性も得られやすく経時安定性も良化できる。
また、チップ先端でインキが乾燥したとしても再筆記時の耐ドライアップ性が得られやすく好ましい。
筆跡耐水性の更なる向上を考慮すれば、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。
また、インキ組成物の粘度を低く抑え、インキ吐出性を良化し、カスレなどのない良好な筆跡を得ることを考慮すると、10質量%以下であるであることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
尚、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、1種または、2種以上の混合物として使用することも可能である。
<着色剤>
本発明で用いる着色剤は、特に限定されないが、筆記具用水性インキ組成物に用いられる顔料、染料などを使用することができる。
顔料としては、溶媒に分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、無機顔料、有機顔料、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。その他、染料などで樹脂粒子を着色したような着色樹脂粒子や、色材を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包または固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。
尚、顔料は、予め顔料分散剤を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等を用いてもよい。該顔料分散剤としては、水溶性樹脂、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが挙げられる。
染料としては、溶媒に溶解可能であれば特に制限されるものではない。例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、および各種造塩タイプ染料等が採用可能である。
これらの顔料および染料は、1種または、2種以上の混合物として使用してもかまわない。
本発明においては、顔料を用いることが好ましい。顔料を用いることで、耐水性、発色性により優れた筆跡を残すことができる。
これは、筆跡乾燥時に筆跡の被膜を形成するとともに、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は一定の疎水性を示すために顔料に吸着して被覆しやすいためと推測される。このため、水と着色剤、特に顔料との接触を防ぎ、筆跡から顔料の流出を効果的に抑制できるためと推測する。
本発明のインキ組成物における着色剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。着色剤の含有率が上記数値範囲内であれば、インキ吐出性が低下することなく、インキ組成物およびそれを用いて形成した筆跡の発色性を良好に維持することができる。
<水>
水としては、特に制限はなく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水または蒸留水などを用いることができる。
<その他の添加剤>
本発明のインキ組成物は、必要に応じて任意の添加剤を含むことができる。好適に用いることができる添加剤について説明すると、以下の通りである。
本発明によるインキ組成物は、多糖類を含むことが好ましい。多糖類のうち、いくつかのものは、後述する剪断減粘性付与剤として機能するが、そのような機能を有さない多糖類を、目的に応じて使用することができる。具体的には、インキ粘度の調整、耐ドライアップ性能向上などの効果をもたらすものとして、デキストリン、λ-カラギーナン等が挙げられる。さらには、分散安定性の改良効果をもたらすものとして、メチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体等が挙げられる。
中でも、本発明においては、デキストリンを用いることが特に好ましい。
デキストリンは、ペン先に被膜を形成し、その被膜によりインキ中の水分の蒸発を防ぐ効果を有する。
また、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、被膜形成能に優れ、筆跡表面に耐水性を有する被膜を形成し、筆跡の耐水性を向上する一方で、ペン先においては、強固な被膜が形成され、書き出し時にインキ吐出性が低下してしまう恐れがある。しかしながら、デキストリンを併用することで、筆跡には、耐水性を十分に付与できる非被膜を、ペン先には、適度な柔軟性を有する被膜を、形成できるようになる。このため、筆記時には、ペン先に形成された被膜は容易に破壊され、書き出し時にも優れたインキ吐出性が得られ、カスレなどない、良好な筆跡を残すことができる。
このため、バーサチック酸ビニルエステル共重合体と、デキストリンと、を併用することは、優れた筆跡耐水性と、優れた書き出し性能(耐ドライアップ性能)を得ることができるため、好ましい。
デキストリンを用いる場合、デキストリンの重量平均分子量は、5000~120000であることが好ましい。120000を超えると、ペン先に形成される被膜は硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がかすれやすくなる傾向があり、一方、5000未満だとデキストリンの吸湿性が高くなり、ペン先に生ずる被膜が柔らかくなりやすく、ペン先で安定した被膜が維持しにくく、インキ中の水分蒸発を抑制しにくい傾向となるためである。さらに、重量平均分子量が20000より小さいと、被膜は薄くなりやすい傾向にあるため、重量平均分子量が、20000~100000であることが最も好ましい。
デキストリンの含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、耐ドライアップ性能が得難い傾向にあり、5質量%を越えると、溶解安定性が劣る傾向があるためである。さらに、インキ中の溶解安定性を考慮すれば、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、耐ドライアップ性能の向上を考慮すれば、1質量%以上3質量%以下が最も好ましい。
また、本発明によるインキ組成物は、有機樹脂粒子を含んでなることが好ましい。
有機樹脂粒子を用いることにより、ペン先からのインキ漏れ抑制効果を付与することができる。
上述の通り、バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、ペン先において、被膜を形成し、該被膜により、ペン先からのインキ漏れを抑制し、インキの垂れ下がり抑制効果を有する傾向にある。そして、複雑な形状を有したボールペンチップを有するボールペンのペン先にも、被膜を形成し、インキの垂れ下がりを抑制することができる。このため、本発明において、有機樹脂粒子を用いることで、該有機樹脂粒子が、ボールとボールペンチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こすことと、ペン先へのバーサチック酸ビニルエステル共重合体の被膜形成による、二つのアプローチで、インキ漏れを抑制することができるようになる。このため、バーサチック酸ビニルエステル共重合体と有機樹脂粒子の二つが相互に働き、インキ漏れ抑制効果をより一層奏することができる。よって、この点においても、本発明のインキ組成物において、有機樹脂粒子を更に含んでなることは、効果的であり、好ましい。
特に、出没式筆記具、特に、出没式ボールペンのようなペン先が露出され、常時キャップオフ状態となり得る筆記具では、ペン先からインキが漏れ出してしまう可能性が高く、さらに耐ドライアップ性能にも考慮する必要がある。このため、本発明において、デキストリンおよび有機樹脂粒子を用いたインキ組成物とすることは、特に好ましい形態の一つである。
また、有機樹脂粒子は、ボールとボール座の間に入り、クッション効果を奏し、書き味を向上することができ、さらに、有機樹脂粒子を含んでなることで、ボール座の摩耗抑制効果も得られる。この点からも、本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合、有機樹脂粒子を用いることは、効果的である。
有機樹脂粒子は、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂粒子や、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン樹脂などの化学構造中に窒素原子を含む含窒素樹脂粒子や、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、セルロース樹脂粒子などが挙げられる。その中でも、バーサチック酸ビニルエステル共重合体と相性が良好で、ともにインキ中で安定に存在し、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の被膜形成能を阻害することなく、インキ漏れを抑制効果が得られやすいことを考慮すると、オレフィン樹脂粒子を用いることが好ましい。
これらの有機樹脂粒子は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記オレフィン系樹脂粒子の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ペン先からのインキ漏れ抑制効果や書き味を考慮すれば、ポリエチレンを用いることが好ましく、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどが挙げられる。その中でもインキ漏れ抑制効果を考慮すれば、低密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレンが好ましく、特に低密度ポリエチレンは、他種のポリエチレンよりも融点が低く、柔らかい性質があるため、ポリエチレン粒子が密着しやすく、粒子間の隙間を生じづらく、インキ漏れしづらいため、低密度ポリエチレンが好ましく、さらに、低密度ポリエチレンは、柔らかいため、書き味を向上するなど、好適に用いることが可能である。オレフィン系樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
また、有機樹脂粒子の含有率について、インキ組成物全量に対し、0.01質量%以上10質量%以下がより好ましい。これは、有機樹脂粒子の含有率が、0.01質量%未満だとインキ漏れを抑制しづらく、10質量%を越えると、凝集構造が強くなりやすく、書き味やドライアップ性能に影響が出やすいためである。さらに、より考慮すれば、0.02質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.03質量%以上1質量%以下が特に好ましく、最も好ましくは、0.05質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
また、本発明のインキ組成物は、界面活性剤を含んでなることが好ましい。
界面活性剤としてはノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、また、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤(アセチレン系界面活性剤)、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤なども挙げられる。
中でも、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の被膜形成能を阻害することなく、インキ組成物の被筆記面に対する、濡れ性および浸透性を向上させることができるため耐水性に優れた筆跡を被筆記面にしっかりと残すことができ、さらに、筆跡乾燥性も向上することができるため、用いることが好ましい。
特に、本発明においては、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体を用いた場合、前記界面活性剤と併用することで、非吸収面に対する筆記性も向上し、さらに、形成される筆跡の耐水性も向上できる傾向にあるため、好ましい。
また、リン酸エステル系界面活性剤を用いることも好ましい。リン酸エステル系界面活性剤は、インキ組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤として作用する。潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗を抑制し、書き味を向上するものであり、特に、リン酸基を有するリン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基が金属に吸着しやすい性質にあることから、ボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上しやすく、ボール座の摩耗抑制および書き味を向上させやすい。
このため、本発明によるインキ組成物をボールペンに適用する場合、リン酸エステル系界面活性剤を更に用いることは、優れた筆跡耐水性を得ながらも、優れた書き味を実現できる。なお、リン酸エステル系界面活性剤は、潤滑性だけでは無く、分散性の改良にも寄与しているため、インキ組成物をボールペン以外の筆記具に利用する場合にも有効に作用する。
リン酸エステル系界面活性剤としては、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系等のリン酸エステル系界面活性剤が挙げられるが、中でも、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。
本発明においてリン酸エステル系界面活性剤は、HLB値が5~15であることが好ましく、6~13であることが好ましい。また、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤が有するアルキル基またはアルキルアリル基の炭素数が6~30であることが好ましく、8~18であることがより好ましく、10~14であることが特に好ましい。これは、特定のHLB値および炭素数をもつ直鎖系のリン酸エステル系界面活性剤は、線とびやかすれなどが改善された良好な筆跡が安定して得られるなど優れた筆記安定性をもたらし、また、本発明に用いられる分散剤とともに分散効果を相乗的に改良し、同時に潤滑効果をもたらすことができるためである。
なお、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤のHLB値とは、リン酸エステル系界面活性剤の原料非イオン性界面活性剤のHLB値を意味するものであり、川上法から算出される値であり、下記式によって算出される。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基
の分子量)
なお、リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬株式会社)などが挙げられ、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A21
5C、同A219B、同A208Nが挙げられ、スチレン化フェノール系のリン酸エステ
ル系界面活性剤としては、プライサーフALが挙げられ、ノニルフェノール系としては、
プライサーフ207H、同A212E、同A217Eが挙げられ、オクチルフェノール系
としては、プライサーフA210Gが挙げられる。
本発明によるインキ組成物がリン酸エステル系界面活性剤を含む場合、その含有率はインキ組成物の総質量を基準として0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。
なお、上記のリン酸エステル系界面活性剤はアミン類やアルカリ金属類などのアルカリ性物質にて適宜中和して使用することもできる。
また、本発明においては、剪断減粘性付与剤を添加し、インキに適当な粘性を与えて実用に供することができる。。剪断減粘性付与剤とは、インキ組成物に剪断応力を加えたときに粘度が低下する特性を与えるものである。
用いられる剪断減粘性付与剤は従来公知のものから適宜選択することができる。その具体例としては、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、会合性ウレタンなどの合成高分子等が挙げられ、1種または、2種以上の混合物として使用することが可能である。
中でも、インキ組成物の経時安定性の改良も期待できるために、増粘多糖類が好適に用いられる。特に、着色剤が顔料である場合、キサンタンガム、サクシノグリカン、アルカシーガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、ウェランガムは、水性媒体中で三次元網目構造となって顔料の分散性をより高いレベルで発現できる点からより好適である。
また、上記増粘多糖類は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体のインキ中における安定化にも寄与し、バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、水性インキ中で安定して均一に存在しやすく、また、安定したインキ吐出性が得られるため、筆跡表面に耐水性の優れた被膜を均一に形成できるようになり、耐水性に優れた、均一で良好な筆跡を得ることができる点からも、好適である。
本発明によるインキ組成物が剪断減粘性付与剤を含む場合、その含有率はインキ組成物の総質量を基準として0.05質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
また、本発明によるインキ組成物は、水系樹脂(バーサチック酸ビニルエステル共重合体を除く)を更に含んでいても良い。本発明において、水系樹脂とは、水に対する親水性の高い樹脂をいう。このような水系樹脂としては、親水性基を有し、水中に均一に溶解し得る水溶性樹脂および微粒子の形態で水中に均一に分散し得る水分散性樹脂とが挙げられる。
水溶性樹脂は、水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有する高分子である。水溶性樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。これらの水溶性樹脂は、インキ組成物に含まれる、顔料粒子、バーサチック酸ビニルエステル共重合体、また、有機樹脂粒子などを均一に分散させる機能も有している。
バーサチック酸ビニルエステル共重合体は、被膜形成能に優れ、筆跡表面に耐水性を有する被膜を形成し、筆跡の耐水性を向上する一方で、ペン先において、強固な被膜が形成され、書き出し時にインキ吐出性が低下してしまう恐れがある。しかしながら、水溶性樹脂を適量併用することで、筆跡には耐水性を十分に付与する被膜を形成しながらも、ペン先に形成される被膜は、適度な柔軟性を有する被膜を形成できるようになる。このため、筆記時には、ペン先に形成された被膜は容易に破壊され、書き出し時にも優れたインキ吐出性が得られ、カスレなどない、良好な筆跡を残すことが可能となる。
水溶性樹脂の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
また、本発明のインキ組成物において、前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体に対する、水溶性樹脂の含有比(水溶性樹脂/バーサチック酸ビニルエステル共重合体)は質量基準で、1~10であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。
また、本発明のインキ組成物は、インキ物性や機能を向上させる目的で、水溶性有機溶剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、キレート剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明によりインキ組成物は、溶解安定性、水分蒸発乾燥防止などを目的として、
水溶性有機溶剤を本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。
そのような水溶性有機溶剤としては、(i)エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどの多価アルコール類、(ii)メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートやその他の高級アルコールなどのアルコール類、および(iii)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシブタノール、または3-メトキシ-3-メチルブタノールなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。これらを1種または、2種以上の混合物として使用することが可能である。
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸、酢酸およびクエン酸などが挙げられる。
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、オルトフェニルフェノールまたはその塩などが挙げられる。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、チアジアゾール、5-メルカプト-3-フェニル-1,3,4-チアジアゾール-2-チオン又はその塩、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはそのオリゴマー、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩などが挙げられる。
また、本発明において、水溶性有機溶剤以外の保湿剤を更に含んでいても良い。例えば、尿素、ソルビット、デキストリン、トリメチルグリシンなどのN,N,N-トリアルキルアミノ酸、ヒアルロン酸類などが挙げられ、好適に用いることができる。
本発明におけるインキ組成物は、適度な粘度を有することによって、インキ垂れ下がり、あるいは筆跡の滲みなどが良好に維持される。具体的には、本発明による
インキ組成物の粘度は、20℃環境下、剪断速度1.92sec-1で、100mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましく、1000mPa・s以上3500mPa・s以下であることがより好ましく、1500mPa・s以上3000mPa・s以下であることがさらに好ましい。インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、バーサチック酸ビニルエステル共重合体の分散安定性が良化し、良好なインキ吐出性を有し、カスレなどない良好な筆跡を得ることができる。
また、インキ組成物の表面張力は、20℃環境下において、25mN/m以上55mN/m以下が好ましい。表面張力が上記数値範囲内であれば、インキ組成物の被筆記面に対する、浸透性や濡れ性が良好となり、被筆記面に、耐水性に優れた被膜を有する筆跡が得られやすくなる。また、ボールペンチップ先端への被膜形成性が良化し、ペン先からの筆跡乾燥性、筆記性能をより考慮すれば、インキ組成物の表面張力は、30mN/m以上50mN/m以下が好ましい。
なお、表面張力は、20℃環境下において、協和界面科学(株)製の表面張力計測器を用い、白金プレートを用いて、垂直平板法によって測定して求められる。
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、マグネットホットスターラー、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー攪拌機、ホモディスパー、ホモミキサー、遊星式撹拌機などの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
<筆記具>
本発明の筆記具用水性インキ組成物を充填する筆記具の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用なものが適用でき、ボールペンチップをペン先とするボールペン、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどをペン先としたマーキングペンやサインペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの各種筆記具に用いることができる。また、本発明によるインキ組成物は、これらのうち、ボールペンに用いることが好ましい。
さらには、加圧式筆記具にも好適に用いられ、よって、加圧式ボールペンにも好適に用いられる。
これは、バーサチック酸ビニルエステル共重合体を用いた際に、ペン先のドライアップにより被膜が形成されるなどして、インキ吐出性に課題が生じる場合でも、加圧式筆記具に用いることで、インキ吐出性を向上させることできる。また、加圧式筆記具に用いることにより、インキの吐出量を増やすことで、より濃い筆跡を得られることやインキ吐出量が増加することで、筆跡の定着性を増すことができる。さらに、筆記面が平滑面やより耐水性、定着性を求めるような用途、例えばガラスやフィルムを筆記対象とした際には、加圧筆記具に用いることで、非吸収面に対する書出し性能の向上が図れることや筆跡を厚くできることから、優れた筆跡を形成することができる。このような複数の効果が相乗して得られるため加圧式筆記具との組合せは好ましい。
なお、加圧ボールペンとしては、インキ収容内に加圧ガスを封入し、この加圧ガスの圧力によってインキ組成物をチップ先端側へ押圧する加圧ボールペンや、ノック作動、キャップの装着、筆記時の筆圧によるペン先の移動などにより、インキ組成物の後端側に存在する空間部を圧縮し、この圧縮による圧力によってインキ組成物をチップ先端側へ押圧する、ノック式の加圧ボールペン、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式の加圧ボールペン、筆圧加圧式のボールペン等が挙げられる。
なお、筆記具は、筆記具本体内部をインキ貯蔵体とし、インキ組成物またインキを直に充填する構成であってもよい。また、筆記具は、インキ組成物またはインキを充填するインキ貯蔵体を筆記具本体内部に具備した構成であってもよい。
インキ貯蔵体としては、筆記具本体やペン芯などに着脱自在に交換可能であり、予めインキ組成物またはインキが充填されたカートリッジ式や、インキ瓶などのようなインキ収容体からインキ組成物またはインキを充填することが可能な吸入機構を備えたインキ吸入式、などが挙げられる。
吸入機構は、筆記具本体内に直に設ける構成であってもよく、コンバーターのように筆記具本体やペン芯などに着脱可能に装着する構成であってもよい。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具は、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内にペン先を収容可能な出没式筆記具が挙げられる。
本発明のインキ組成物は、チップ先端でインキが乾燥したとしても再筆記時の筆記性が良好であり、耐ドライアップ性能に優れる傾向にあることから、常にペン先が大気に晒されているような状況となる出没式筆記具に好適に用いることができる。
出没式筆記具は、耐ドライアップ性はもちろんのこと、ペン先からのインキ漏れ抑制についても考慮する必要がある。本発明のインキ組成物は、バーサチック酸ビニルエステル共重合体を用いることで、形成される被膜により、ペン先からのインキ漏れを抑制するなど、インキの垂れ下がりを抑える傾向にある。よって、この点からも、本発明のインキ組成物は、出没式筆記具に効果的に用いることができるといえる。
以上から、本発明のインキ組成物は、出没式筆記具、さらには、出没式ボールペン、さらには、ノック式加圧ボールペンに好適に用いることができる。
また、筆記具におけるインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、インキ供給機構は、例えば、以下の機構1~機構4などであってもよい。
(機構1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構。
(機構2)一時的にインキを貯留するくし溝とインキ流通路と空気通路を有するペン芯を介して水性インキ組成物をペン先に供給する機構。
(機構3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構。
(機構4)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、水性インキ組成物を直接、ペン先に供給する機構。
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
下記原材料および各配合量にて、室温で1時間撹拌混合して、筆記具用水性インキ組成物を得た。
得られたインキ組成物の粘度をB型回転粘度計(BLアダプター使用、東京計器(株)製)により測定したところ、20℃での回転速度0.5rpmにおける粘度は2070mPa・sであった。
さらに、pHメーター(商品名:D-51、(株)堀場製作所製)を用いて、20℃にてインキ組成物のpHを測定した結果、pH値は8.4であった。

・バーサチック酸ビニルエステル共重合体A 2.0質量%
(バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン、固形分50質量%、Tg:0℃、)
・水系樹脂 13.0質量%
(水溶性アクリル樹脂の36質量%水溶液)
・着色剤 7.0質量%
(カーボンブラック)
・剪断減粘性付与剤 0.4質量%
(キサンタンガム)
・多糖類 1.5質量%
(デキストリン)
・多糖類 0.05質量%
(メチルセルロース)
・界面活性剤 1.0質量%
(リン酸エステル系界面活性剤)
・界面活性剤 1.0質量%
(アセチレン系界面活性剤)
・有機樹脂粒子 0.25質量%
(オレフィン樹脂粒子)
・防腐剤 0.05質量%
(1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン)
・pH調整剤 1.0質量%
(トリエタノールアミン)
・水 72.75質量%
<実施例2~実施例10、比較例1~比較例3>
実施例2~実施例10、比較例1~比較例3は、インキ組成物に含まれる成分の種類や配合量を表に表される組成に変更した以外は、実施例1と同じ方法で筆記具用水性インキ組成物を得た。
Figure 2023046507000003
Figure 2023046507000004
上記実施例で使用した材料の詳細は以下の通りである。なお、表中の注番号に沿って説明する。
(1)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分50質量%、Tg:0℃、酸価14mgKOH/g、MFT:0℃、粒子径:100nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 40質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量: 60 質量%、商品名:AVE.191(VANORA社製)
(2)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分50質量%、Tg:10℃、酸価15.5mgKOH/g、MFT:10℃、粒子径:100nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 60質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量: 40 質量%、商品名:DXV.4051(VANORA社製)
(3)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分50質量%、Tg:10℃、酸価23mgKOH/g、MFT:10℃、粒子径:100nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量:63質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量:37 質量%、SiOの含有量:2.5質量%、商品名:DXV.4198(VANORA社製)
(4)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分45質量%、Tg:12℃、酸価23mgKOH/g、MFT:10℃、粒子径:40nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 20質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量: 80 質量%、商品名:DXV.4140(VANORA社製)
(5)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分45質量%、Tg:22℃、酸価19.5mgKOH/g、MFT:5℃、粒子径:100nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 60質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量: 40 質量%、商品名:DSV.4116(VANORA社製)
6)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分52質量%、Tg:21℃、MFT:20℃、粒子径:150nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 50質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量: 30 質量%、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるポリビニルアセテートの含有量:20%、商品名:DSV.4135(VANORA社製)
(7)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分45質量%、Tg:10℃、MFT:5℃、粒子径:120nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 26質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量:74質量%、SiOの含有量:1.4質量%、商品名:DSV.4176(VANORA社製)
(8)バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体のエマルジョン(固形分45質量%、Tg:25℃、MFT:20℃、粒子径:160nm、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 21質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- アクリル系モノマー共重合体におけるアクリル系モノマーの含有量:79質量%、SiOの含有量:1.4質量%、商品名:DSV.4186(VANORA社製)
(9)バーサチック酸ビニルエステル-酢酸ビニル共重合体のエマルジョン(固形分42質量%、Tg:-1℃、MFT:2℃、粒子径:2500nm、バーサチック酸ビニルエステル- 酢酸ビニル共重合体におけるバーサチック酸ビニルエステルの含有量: 85質量% 、バーサチック酸ビニルエステル- 酢酸ビニル共重合体におけるポリビニルアセテートの含有量:15質量%、商品名:WS.45.D(VANORA社製)
(10)アクリル樹脂のエマルジョン(固形分44質量%、Tg:5℃、酸価18mgKOH/g、MFT:7℃、)、商品名:Neo Cryl A-1127(楠本化成株式会社製)
(11)水溶性アクリル樹脂の36質量%水溶液、商品名:Joncryl HPD 196(BASF社製)
(12)商品名:サンデック#70FN、三和デンプン工業(株)製、重量平均分子量:30000
(13)メチルセルロース、商品名:メトローズSM-15、信越化学工業(株)製、
(14)商品名:プライサーフA215C、第一工業製薬(株)製、HLB値11.5
(15)商品名:ダイノール604、信越化学工業(株)製、
(16)オレフィン樹脂粒子の分散体(固形分40質量%)、商品名:ケミパールM200、三井化学(株)製
<試験・評価>
実施例および比較例のインキ組成物を、ノック作動により、インキ組成物の後端側に存在する空間部を圧縮し、この圧縮による圧力によって、チップ先端側へ押圧する、ノック式加圧ボールペン1のボールペンレフィル11に充填し、加圧状態で筆記したところ、いずれも筆記可能であった。
上記ノック式加圧ボールペンを試験用筆記具として、以下の試験および評価を行った。
なお、ここで、図1から図4にノック式加圧ボールペン1を示す。
ノック式加圧ボールペン1は、前軸2と後軸3を螺着することにより構成される軸筒本体を備える。
また、ピストン5内に、ボールペンレフィル保持部材9を介して着脱自在に圧入装着されたボールペンレフィル11が、軸筒本体内に配設される。
さらに、このノック加圧ボールペン1は、ボールペンチップ12の出没機構を有する。ここでボールペンレフィル11は、コイルスプリング16によって、後軸3の後端方向に付勢して摺動自在に配設されている。ボールペンチップ12は、摺動自在に配設されたボールペンレフィル11が、ノック体4が押圧されたときに前端に押されて、前端から突出する。
ボールペンレフィル11が備える、ポリプロピレン樹脂(以下、PP樹脂という)からなる透明のインキ収容筒には、上記したインキ配合のインキ組成物11Aが充填されている。さらに、インキ収容筒の後端には、インキ組成物11Aの消費に伴い追従するグリース状のインキ追従体(図示せず)が充填されている。
また、インキ収容筒の前端開口部には、ボールペンレフィル11が備える、ボール(直径0.38mm)を回転自在に抱持したボールペンチップ12の後端部が圧入嵌合されている。
尚、ボールの後方には、ボールを常時、チップ前端の内壁に押圧するコイルスプリング(図示せず)を配設することが好ましい。このような構造によって、インキ組成物11Aの漏れ出しを抑制することができる。
次に、ボールペンレフィル11が備えるボールペンチップ12(筆記前端部)の出没機構について説明する。
まず、ノック体4を前軸2の前端開口部2A方向に押圧(図1の矢印F方向)すると、後軸3の摺動孔3Aに摺動自在に配設したノック体4の外壁に形成した係止部4Cが、クリップ10の前端部の被係止部10Aに係止され、ボールペンレフィル11のボールペンチップ14の前端部が、前軸2の前端開口部2Aから突出した状態で維持される。
また、この出没機構は、クリップ10の後端部を押圧して、クリップの被係止部10Aに係止した係止部4Cを解除すると、コイルスプリング16の付勢力によって、ボールペンチップ14を前軸2の前端開口部2A内に没入することができる。
ボールペンレフィル11の後端部は、ピストン5内に圧入したボールペンレフィル保持部材9に圧入保持されており、ピストン5の後端部に形成した空気孔5Aからピストン5の内外を連通してある。
また、ピストン5を覆うようにシリンダー6が配設されており、このシリンダー6の前端面6Aと、ピストン5の外壁に形成した外壁段部5Bとが当接することにより、シリンダー6に連動してピストン5を前軸2の前端開口部2A方向に移動可能にする。
また、ピストン5とノック体4間にはコイルスプリング15を配設してあり、ノック体4を常時、後軸3の後端方向に付勢させることができる構成となっている。
以下に、出没機構の作動に伴い作動する加圧機構について詳述する。
ボールペンチップ12が没入した位置からノック体4を前軸2の前端開口部2A方向に前進させることにより、ノック体4内に装着された弾性体8が、シリンダー6の後端面に圧接され、空気孔6Bを閉鎖してシリンダー6内に密閉空間が形成される。
さらに、ノック体4の前軸2の前端開口部2A方向への前進に伴い、シリンダー6が前軸2の前端開口部2A方向に前進する。
ボールペンレフィル11は、ボールペンレフィル保持部材9に圧入保持され、ボールペンレフィル保持部材9は、ピストン5内に圧入してあり、ピストン5の外壁面とシリンダー6の内壁面6Cは、Oリング7によって互いに摺動自在に密閉してある。
ボールペンレフィル11の後端部は、ピストン5に連通し、ピストン5は、空気孔5aを通じてシリンダー6内に連通するので、シリンダー6の前端面6Aが、ピストン5の外壁段部5Bに当接するまで、シリンダー6内の空間部を圧縮する。これにより、ピストン5内の空間部も圧縮されるため、ボールペンレフィル11が備えるインキ収容筒の後端側から、インキ追従体を介してインキ組成物11Aに対して圧力を加えることができる。尚、当該圧力は、例えば、1050hPaであった。
さらにノック体4を前軸2の前端開口部2A方向に前進すると、シリンダー6を介してピストン5、ボールペンレフィル11を前進させ、ノック体4の外壁に形成した係止部4Cが、クリップ10の前端部の被係止部10Aに係止される。これにより、インキ収容筒の後端側からインキ組成物11Aに対し、圧力が加えられている状態であって、ボールペンレフィル11のボールペンチップ12が、前軸2の前端開口部2Aから突出した状態が維持される。
また、クリップ10の被係止部10Aに係止した係止部4Cを解除すると、先ず、スプリング15の付勢力によって、ノック体4が後軸3の後端方向に後退する。
この時、シリンダー6の後端面に圧接していた弾性体8もノック体4と共に、後軸3の後端方向に後退するため、シリンダー6の空気孔6Bが開放され、シリンダー6内、さらにはピストン5及びボールペンレフィル11の後端部の密閉状態が解除され、大気圧と同圧となる。
さらに、コイルスプリング14の付勢力によって、ピストン5及びボールペンレフィル11およびシリンダー6は、後軸3の後端方向に後退させられ、ボールペンレフィル11のボールペンチップ12を前軸2の前端開口部2Aから没入される。
<筆跡耐水性>
実施例および比較例のインキ組成物が充填された試験用筆記具(ノック式加圧ボールペン)を、加圧状態で、非浸透性の樹脂フィルムに筆記後、一晩放置した後に、得られた筆跡に、シャワーで流水を30秒間当てた後の筆跡の状態を、目視により観察し、下記の評価基準に従って、筆跡耐水性を評価した。得られた結果は表のとおりである。
◎筆跡に変化なし。
○色調が僅かに変化したり、筆跡の一部が流れ落ち消失してしまうなど、筆跡に極僅かな変化が見られたが、実用上問題のないレベルであった。
×色調が大きく変化したり、筆跡が流れ落ち消失してしまい視認が困難など、筆跡に大きな変化が観察された。
また、実施例のインキ組成物が充填された試験用筆記具(ノック式加圧ボールペン)のペン先を大気に晒した状態で、50℃、全乾の条件下で一晩放置した後、加圧状態で、非浸透性の樹脂フィルムに筆記したところ、良好な筆跡が得られ、実施例のインキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れていた。
また、実施例1のインキ組成物と実施例10のインキ組成物が充填された試験用筆記具(ノック式加圧ボールペン)のペン先を大気に晒した状態で、50℃、全乾の条件下で一晩放置した後、加圧状態で、非浸透性の樹脂フィルムに筆記し、ウスやカスレのない正常な筆跡が得られるまでにかかった文字数を測定し比較したところ、実施例10のインキ組成物が充填された試験用筆記具に比べ、実施例1のインキ組成物が充填されたインキ組成物が充填された試験用筆記具の方が少なく、実施例1のインキ組成物の方が、実施例10のインキ組成物に比べ、耐ドライアップ性能に優れていた。
また、実施例のインキ組成物が充填された試験用筆記具(ノック式加圧ボールペン)の軸筒部分に、40gの重りを付けて、ボールペンチップを吐出させて下向きにし、ボールペンチップのボールがボールペンチップのボールがボールペン用陳列ケースの底部に当接させた状態を保ち、20℃、65%RHの環境下に1日放置し、ボールペンチップ先端からのインキ漏れ量を測定したところ、いずれも、インキ漏れ量が20mg未満であり、インキの垂れ下がり抑制に優れていた。
なお、実施例で得られたインキ組成物(1.0g)を、直径0.5mmの超硬合金製ボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量(クリアランス)40μm)を先端に有するインキ収容体の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを株式会社パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:JUICE)に装着し、筆記用紙へ筆記したところ、筆記可能であった。
実施例1~実施例10のインキ組成物は、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体を含んでなることから、筆跡耐水性が良好であった。
一方、比較例1~比較例3のインキ組成物は、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体を用いていないため、筆跡耐水性において、満足できるインキ組成物ではなかった。
以上より、ガラス転移温度が0℃以上であるバーサチック酸ビニルエステル共重合体と、着色剤と、水と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物は、得られた筆跡に水滴が付着したり、筆跡が流水に晒されたとしても、筆跡の色調が変化したり、筆跡が消失したりすることがなく、筆跡耐水性に優れたものであること、さらには、前記筆記具用水性インキ組成物を用いた筆記具は、筆記具としても優れたものであることがわかった。
1 ノック式加圧ボールペン
2 前軸
2A 前端開口部
3 後軸
3A 摺動孔
4 ノック体
4A 被係止部
4C 係止部
5 ピストン
5A 空気孔
5B 外壁段部
6 シリンダー
6A シリンダー前面端
6B 空気孔
6C シリンダー内壁面
7 Oリング
8 密閉部材
9 ボールペンレフィル保持部材
10 クリップ
10A 被係止部
11 ボールペンレフィル
11A インキ組成物
12 ボールペンチップ
13、14 コイルスプリング受け部材
15、16、17 コイルスプリング
本発明のインキ組成物は、ボールペン、マーキングペン、万年筆、筆ペン、カリグラフィー用のペンなどの各種筆記具に用いることができ、該インキ組成物が収容されてなる筆記具は、耐水性に優れた筆跡をもたらすことができるなど、筆記具として優れたものである。























Claims (6)

  1. バーサチック酸ビニルエステル共重合体と、着色剤と、水と、を含んでなる、筆記具用水性インキ組成物であって、前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度が0℃以上であることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物。
  2. 前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体の含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.01質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載のインキ組成物。
  3. 前記バーサチック酸ビニルエステル共重合体が、バーサチック酸ビニルエステル-アクリル系モノマー共重合体である、請求項1または請求項2に記載のインキ組成物。
  4. 多糖類を更に含んでなる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のインキ組成物。
  5. 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のインキ組成物を収容してなる、筆記具。
  6. ボールペンである、請求項5に記載の筆記具。




JP2021155132A 2021-09-24 2021-09-24 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 Pending JP2023046507A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021155132A JP2023046507A (ja) 2021-09-24 2021-09-24 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021155132A JP2023046507A (ja) 2021-09-24 2021-09-24 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023046507A true JP2023046507A (ja) 2023-04-05

Family

ID=85778105

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021155132A Pending JP2023046507A (ja) 2021-09-24 2021-09-24 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023046507A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7254024B2 (ja) 水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペン
JP3398497B2 (ja) 水性インキ
JP4713372B2 (ja) 水性ボールペン用インキ組成物
JP2009185167A (ja) 水性ボールペン用インキ組成物
JP2023014347A (ja) 水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペン
JP2010126715A (ja) 筆記具用インキ組成物及び筆記具
JP2024163346A (ja) 水性ボールペン及び水性ボールペン用インキ組成物
JP2018193545A (ja) 筆記具用インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
JP7412896B2 (ja) 水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペン
JP2023046507A (ja) 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具
JP2018172479A (ja) 筆記具用インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
JP2004256722A (ja) 筆記具用金属光沢色インキ組成物
JP2003327889A (ja) 筆記具用金属光沢色インキ組成物
JP7097516B1 (ja) ボールペン用水性インク組成物
JP7210265B2 (ja) 水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペン
JP7554661B2 (ja) 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具
JP3934239B2 (ja) ボールペン用水性インキ組成物
JP2022101101A (ja) 筆記具用水性インキ組成物およびそれを用いた筆記具
JP7210264B2 (ja) 筆記具用水性インキ組成物
JP2008279629A (ja) 筆記具
JP2023057250A (ja) 皮膚筆記用ボールペン
JP2019011451A (ja) 筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
JP7101549B2 (ja) ボールペン用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
JP7039288B2 (ja) 筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
JP2000086964A (ja) ボールペン用水性インキ組成物及びそれを用いたボールペン