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JP2023039907A - ポリカーボネートポリオール組成物 - Google Patents

ポリカーボネートポリオール組成物 Download PDF

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JP2023039907A
JP2023039907A JP2022110599A JP2022110599A JP2023039907A JP 2023039907 A JP2023039907 A JP 2023039907A JP 2022110599 A JP2022110599 A JP 2022110599A JP 2022110599 A JP2022110599 A JP 2022110599A JP 2023039907 A JP2023039907 A JP 2023039907A
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polycarbonate polyol
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atom
polyurethane
polycarbonate
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Application number
JP2022110599A
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English (en)
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敏文 佐藤
Toshifumi Sato
拓也 磯野
Takuya ISONO
優太 日置
Yuta Hioki
椋 名倉
Ryo Nagura
浩司 西口
Koji Nishiguchi
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

【課題】分子量分布が狭く、熱的安定性が高く、低粘度かつ保管安定性が高いことで取り扱い性に優れるポリカーボネートポリオールを提供する。【解決手段】ポリカーボネートポリオールを含有する組成物。該ポリカーボネートポリオールが下記(1)~(4)の条件を満たす。(1)酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子の少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよく、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレンジオール由来の構造単位Aを含む(2)数平均分子量(Mn)が300以上8000以下(3)分子量分布(D)が1.7以下(4)下記式で算出される分子量分布変化率(ΔD)が0.20以下分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/DD:ポリカーボネートポリオールの分子量分布D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布【選択図】図1

Description

本発明はポリカーボネート系ポリウレタンの原料として有用なポリカーボネートポリオール組成物及びその製造方法に関する。本発明はまた、このポリカーボネートポリオール組成物を用いたポリウレタン及びその製造方法に関する。
従来、工業規模で生産されているポリウレタンの主たるソフトセグメント部の原料としてのポリオールは、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールに代表されるエーテルタイプ、アジペート系エステルに代表されるポリエステルポリオールタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプ、又はポリカーボネートジオールに代表されるポリカーボネートタイプに分けられる。
その中でもポリカーボネートジオールは1,6-ヘキサンジオールなどのジオール化合物とジメチルカーボネートなどのカーボネート化合物のエステル交換反応で合成される。ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンは、耐熱性および耐加水分解性において最良な耐久グレードとされており、耐久性フィルムや自動車用人工皮革、(水系)塗料、接着剤として広く利用されている(非特許文献1)。
"ポリウレタンの基礎と応用"96頁~106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
従来のエステル交換反応で得られるポリカーボネートジオールは、分子量分布が広く、低分子量体から高分子量体まで幅広く含むものであり、高分子量体を多量に含むために、粘度が高く取り扱い性が悪いといった問題があった。また、分子量分布が広いポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造した場合、高分子量成分がウレタン反応中に析出したり、ポリウレタンとなった後の濁りの原因となっていた。一方で低分子量成分を含むことで、加熱加工時の揮発分が問題になったり、使用時の熱安定性の低下が問題になったりしていた。
また、製造直後は分子量分布が狭いポリカーボネートジオールであっても、残存する不純物の影響で熱的に不安定であり、保管中や取り扱い中にポリカーボネートジオールの分子量分布が広がり、粘度が増加したり、得られるポリウレタンの物性が変化したりする課題があった。
本発明は、従来技術で達成できなかった、分子量分布が狭くかつ熱的に安定性が高く、ポリカーボネートポリオールであって、低粘度かつ保管安定性が高いことで取り扱い性に優れ、ポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタン本来の耐薬品性、耐熱性に加えて、柔軟性や機械的強度などの物性バランスに優れたポリウレタンを得ることができるポリカーボネートポリオール組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、上記従来の問題点を解決すべく検討を重ねた結果、特定の条件を満たすポリカーボネートポリオールを含有するポリカーボネートポリオール組成物により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成された。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネートポリオールを含有する組成物であって、前記ポリカーボネートポリオールが下記(1)~(4)の条件を満たす、ポリカーボネートポリオール組成物。
(1) 下記式(A)で表される構造単位Aを含む
(2) 数平均分子量(Mn)が300以上8000以下
(3) 分子量分布(D)が1.7以下
(4) 下記式で算出される100℃で12時間加熱後の分子量分布変化率(ΔD)が0.20以下
分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/D
D:ポリカーボネートポリオールの分子量分布
D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布
Figure 2023039907000002
(式(A)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
[2] 前記ポリカーボネートポリオールが、更に、下記式(B)で表される構造単位Bを含む、[1]に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
Figure 2023039907000003
(式(B)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。ただし、Rは前記式(A)中のRとは異なる。)
[3] 前記ポリカーボネートポリオールの分子鎖末端のうち、-R-OH基の割合が、全末端基の総モル量100%に対して、80モル%以上である、[1]又は[2]に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[4] 前記ポリカーボネートポリオールの1分子当たりの末端水酸基の数が1.8~6.0である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオ-ル組成物。
[5] 組成物中の金属元素およびリン元素の合計含有量が150質量ppm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[6] 組成物中のリン元素含有量が0.01~150質量ppmである、[1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[7] 組成物中のナトリウム元素含有量が0.01~150質量ppmである、[1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[8] 芳香環を有するリン化合物を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[9] 組成物中の下記式(1)で表される環状カーボネートXの含有割合が、該組成物の総質量100%に対して、1質量%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
Figure 2023039907000004
(式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子であり、該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。Zは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
[10] 前記環状カーボネートXが下記式(1A)で表される、[9]に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
Figure 2023039907000005
(式(1A)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子を表す。該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
[11] 前記ポリカーボネートポリオール中の前記構造単位Aの含有割合が、該ポリカーボネートポリオールを構成する全構造単位の総モル量100%に対して、70モル%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[12] 前記ポリカーボネートポリオールが植物由来の原料を用いて製造された、[1]~[11]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物。
[13] ポリオールYを開始剤として、重合触媒の存在下、下記式(1)で表される環状カーボネートXを開環重合する工程を含む、[1]~[12]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
Figure 2023039907000006
(式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子であり、該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。Zは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
[14] 前記環状カーボネートXが下記式(1A)で表される、[13]に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
Figure 2023039907000007
(式(1A)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子を表す。該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
[15] 前記環状カーボネートXがトリメチレンカーボネートである、[14]に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
[16] 前記ポリオールYが、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい、炭素数2~50のジオール化合物またはトリオール化合物である、[13]~[15]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
[17] 前記ポリオールYが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びシリコーンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴマーポリオールである、[13]~[16]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
[18] 前記開環重合後に前記重合触媒を失活および/または除去する工程を含む、[13]~[17]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
[19] リン元素を含む前記重合触媒を、前記環状カーボネートXと前記ポリオールYとの合計質量に対し、リン元素量として0.01~1000質量ppm使用して、前記開環重合を行う、[13]~[18]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
[20] 前記環状カーボネートXと前記ポリオールYの合計質量100部に対して50質量部以下の溶媒を用いて又は溶媒を使用しないで前記開環重合を行う、[13]~[19]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
[21] [1]~[12]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物を用いて得られたポリウレタン。
[22] ポリイソシアネートと鎖延長剤と前記ポリカーボネートポリオール組成物とを用いて製造された、[21]に記載のポリウレタン。
[23] [1]~[12]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物を用いるポリウレタンの製造方法。
[24] [13]~[20]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法によりポリカーボネートポリオール組成物を得ること、及び
前記得られたポリカーボネートポリオール組成物を用いて、ポリウレタンを製造することを含む、ポリウレタンの製造方法。
本発明のポリカーボネートポリオール組成物は、分子量分布が狭くかつ熱的な安定性が高く、低粘度で保管安定性が高いことで取り扱い性に優れる。
また、本発明のポリカーボネートポリオール組成物を用いて製造されたポリウレタンは、ポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタン本来の耐薬品性、耐熱性に加えて、柔軟性や機械的強度などの物性バランスに優れた特長を有し、弾性繊維、合成または人工皮革、塗料、高機能エラストマー用途に適しており、産業上極めて有用である。
実施例5-1及び比較例5-1における粘弾性測定結果(Log E’(Pa)/温度(℃))を示すグラフである。 実施例5-1及び比較例5-1における粘弾性測定結果(tanδ/温度(℃))を示すグラフである。
以下、詳細に本発明の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ポリカーボネートポリオール組成物]
本発明のポリカーボネートポリオール組成物は、ポリカーボネートポリオールを含有する組成物であって、前記ポリカーボネートポリオールが下記(1)~(4)の条件を満たすポリカーボネートポリオール組成物である。
(1) 下記式(A)で表される構造単位Aを含む
(2) 数平均分子量(Mn)が300以上8000以下
(3) 分子量分布(D)が1.7以下
(4) 下記式で算出される100℃で12時間加熱後の分子量分布変化率(ΔD)が0.20以下
分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/D
D:ポリカーボネートポリオール組成物の分子量分布
D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布
Figure 2023039907000008
(式(A)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
本発明のポリカーボネートポリオール組成物は、後述の通り、重合の起点となる開始剤としての水酸基を2個以上有するポリオールYと環状カーボネートXによる開環重合により製造されるポリカーボネートポリオールである。この開環重合には、開環重合を促進するために通常重合触媒が使用される。
このようにして製造されたポリカーボネートポリオールの1分子中の水酸基数は、特に副反応が起きなければ、開始剤ポリオールYの1分子中の水酸基数と等しい。
一方で、製造されたポリカーボネートポリオールには、目的とするポリカーボネートポリオールの他、末端が水酸基ではない副生物や、残留する重合触媒や原料モノマーなどの不純物を含むものであるため「ポリカーボネートポリオール組成物」と称しているが、ポリカーボネートポリオール組成物中のポリカーボネートポリオールの含有量は、ポリカーボネートポリオール組成物の総質量100%に対して通常80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、一般的には「ポリカーボネートポリオール」と称して市販ないしは取り扱われるものである。
よって、以下においては、本発明のポリカーボネートポリオール組成物を「本発明のポリカーボネートポリオール」又は単に「ポリカーボネートポリオール」と称すが、前述の通り、ポリカーボネートポリオール中に、重合触媒、その他の不純物を含むものである。
<構造単位A>
本発明におけるポリカーボネートポリオールは、下記式(A)で表される構造単位Aを含む。
Figure 2023039907000009
(式(A)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
構造単位Aは、本発明のポリカーボネートポリオールの製造原料である後述の環状カーボネートXに由来する構造単位である。
は後述の環状カーボネートXに由来して本発明のポリカーボネートポリオールに導入されたものであればよく、Rの炭素数は3以上で、その上限には特に制限はないが、本発明のポリカーボネートポリオールを用いて得られるポリウレタンの耐薬品性、低温特性、耐熱性の観点から、Rの炭素数は少ない方がよく、Rの炭素数は20以下が好ましく、10以下がより好ましく、炭素数8以下が更に好ましく、炭素数6以下が特に好ましい。
特に、Rの、側鎖置換基を除く、主鎖部分の炭素数は3~10、特に3~6、とりわけ3~4であることが好ましく、原料となる環状カーボネートの合成の容易さの観点からは3であることが最も好ましい。
<構造単位B>
本発明におけるポリカーボネートポリオールは、上記の構造単位Aに加えて、下記式(B)で表される構造単位Bを含んでいてもよい。
Figure 2023039907000010
(式(B)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。ただし、Rは前記式(A)中のRとは異なる。)
構造単位Bは、本発明のポリカーボネートポリオールの製造原料である後述のポリオールYに由来する構造単位である。
は後述のポリオールYに由来して本発明のポリカーボネートポリオールに導入されたものであればよく、Rの炭素数は3以上であればよく、特に制限はないが、炭素数4以上、特に8以上であると、本発明のポリカーボネートポリオールを用いて得られるポリウレタンの柔軟性、機械強度、耐加水分解性が優れたものとなるため好ましい。特に制限はないが、モノマーのポリオールYを使用した場合においては、Rの炭素数の上限は通常50以下である。
なお、上記式(B)において、Rは、式(A)中のRとは異なる旨定義されているが、RとRが同じであるものを排除するものではない。即ち、環状カーボネートXとポリオールYとで、Rを導入する部分とRを導入する部分が同じものを用いた場合、構造単位Aと構造単位Bとは、その由来は異なっていても同一となる。
構造単位Bには、後述のポリオールYに由来して多種多様な置換基や連結基を導入することができ、該置換基や連結基により、様々な機能を付与することができる。
例えば、ポリオールYとして水酸基を3つ以上有するポリオールを用いた場合、本発明のポリカーボネートポリオールには構造単位Bとして、下記式(B-1)で表されるような架橋構造を有する構造単位が導入される。このような架橋構造が導入されることで、本発明のポリカーボネートポリオールを用いて得られるポリウレタンに耐溶剤性、耐熱性、引張強度、硬度の向上といった効果が奏される場合がある。
Figure 2023039907000011
(式(B-1)中、Rは式(B)中のRが酸素原子を介する側鎖置換基を有する場合の残基を表す。)
<ポリカーボネートポリオール中の置換基>
上記の構造単位(A)および構造単位(B)はそれぞれ酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。特に構造単位(B)の由来となるポリオールYは多様な置換基や連結基を有する化合物が容易に手に入るので、ポリカーボネートポリオールに置換基や架橋構造を導入する場合は構造単位(B)に導入することが好ましい。置換基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子のいずれかを含むものが好ましく、特に酸素原子、窒素原子を含むものが好ましい。その中でも酸素原子を含む置換基として、エーテル基およびカルボキシル基は水への親和性、分散性が向上する観点で好ましく、水系のポリウレタン分散剤の用途などに好適である。また、窒素原子を含む置換基として、アミド基やイソシアヌル基は、ポリカーボネートポリオールとポリウレタンとの相溶性が向上し、透明性が向上する点で特に好ましい。
<構造単位Aと構造単位Bの割合>
本発明におけるポリカーボネートポリオール中の構造単位Aおよび構造単位Bの割合はそれぞれ原料として用いた環状カーボネートXおよびポリオールYの割合に依存する。構造単位Aの割合が少なすぎると、相対的に構造単位Bの量が多くなるためにポリカーボネートポリオールの分子量を適切な量に増加させることができない。またカーボネート結合の量が低下し、耐溶剤性や機械強度が低下する場合がある。一方で構造単位Bの割合が少なすぎると構造単位Bの有する置換基や架橋構造の効果を十分に発揮できない。
好適な構造単位Aと構造単位Bの割合(以下「(A):(B)」と称す場合がある。)は、モル比率で、(A):(B)=2:1~500:1が好ましく、5:1~200:1がより好ましく、10:1~100:1が更に好ましい。
なお、ポリカーボネートポリオール中の構造単位Aと構造単位Bの割合は原料に用いた環状カーボネートXとポリオールYの仕込み比率と転化率から計算することができる。またその他にもNMRでの解析やアルカリで加水分解して得られる各ジヒドロキシ化合物をガスクロマトグラフィーにより解析することによっても同様の値が求められる。
本発明におけるポリカーボネートポリオールは、特に構造単位Aを、該ポリカーボネートポリオールを構成する全構造単位の総モル量100%に対して、70モル%以上の含有割合で含むことで耐溶剤性や強度の観点から好ましく、この構造単位Aの含有割合は80モル%以上であることがより好ましく、85モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
一方で、構造単位Bによる各種機能を得る上で、構造単位Aの含有割合は、該ポリカーボネートポリオールを構成する全構造単位の総モル量100%に対して、99モル%以下、特に98モル%以下であることが好ましい。
なお、本発明のポリカーボネートポリオールにはポリカーボネートポリオール製造時の開環重合中のエステル交換反応等により、構造単位A,B以外の構造単位、構造単位A,Bが変化した構造単位が含まれている場合があるが、本発明のポリカーボネートポリオールの全構造単位とは、通常構造単位Aと構造単位Bの合計に該当する。
<数平均分子量(Mn)>
本発明のポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は300以上8000以下である。本発明のポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)の下限は好ましくは350、より好ましくは400である。一方、上限は好ましくは7000であり、より好ましくは6000、さらに好ましくは5000である。ポリカーボネートポリオールのMnが上記下限未満では、ウレタンとした際に柔軟性が十分に得られない場合がある。一方、上記上限超過では粘度が上がり、ポリウレタン化の際のハンドリングを損なう可能性がある。
ここで、数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算の数平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPCと略記する場合がある)の測定により求めることができる。具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に記載の通りである。
また、GPCでの解析が困難な場合は、NMRでの解析から算出された数平均分子量(Mn)や、水酸基価からの計算によって得られた数平均分子量(Mn)も同様に用いる場合がある。これらの測定方法についても後掲の実施例の項に記載される通りであるが、本発明のポリカーボネートポリオールのNMRにより測定された数平均分子量(Mn)は、上記と同様の理由から、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、350以上であることが更に好ましく、一方、8000以下であることが好ましく、7000以下であることがより好ましく、6000以下であることが更に好ましい。
また、水酸基から求めた数平均分子量(Mn)は、上記と同様の理由から、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、350以上であることが更に好ましく、一方、8000以下であることが好ましく、7000以下であることがより好ましく、6000以下であることが更に好ましい。
なお、後掲の実施例の項に記載の方法で求められる本発明のポリカーボネートポリオールの水酸基価の下限は好ましくは5mgKOH/g、より好ましくは10mgKOH/g、更に好ましくは15mgKOH/gで、上限は好ましくは500mgKOH/g、より好ましくは450mgKOH/g、更に好ましくは400mgKOH/gである。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限超過ではポリウレタンとした時に柔軟性や低温特性などの物性が不足する場合がある。
<分子量分布(D)>
本発明におけるポリカーボネートポリオールは分子量分布(D)が1.7以下である。分子量分布(D)は重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)により算出される。本発明のポリカーボネートポリオールの分子量分布(D)は好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下であり、更に好ましくは1.3以下、特に好ましくは1.2以下、とりわけ好ましくは1.1以下である。分子量分布(D)が上記上限以下の場合には、ポリカーボネートポリオールの粘度が低下し、取り扱い性に優れる。また、このポリカーボネートポリオールを用いて得られるポリウレタン中のポリオールの分子量が揃うことで結晶性が高まったり、ポリウレタンの伸縮時の強度や弾性が向上する。また耐熱性が向上する場合がある。また低分子量体が減り、均一のソフトセグメント構造を形成することができるために、耐へたり性、耐衝撃性、耐摩耗性といった力学的な耐久性が向上する場合がある。一方で分子量分布(D)が低すぎると、ポリカーボネートポリオールの結晶性が向上し、取り扱いが難しくなる場合もある。そのような場合は分子量分布(D)を適切な値に調整した方がよい場合もある。ここで、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算の数平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定により求めることができる。具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に記載の通りである。なお一般的に市販されているポリカーボネートジオールはジオールモノマーとカーボネート化合物(ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなど)のエステル交換により製造されており、分子量分布(D)は2.0以上である。
分子量分布(D)が1.7を超えるポリカーボネートポリオールでは、低分子量体から高分子量体まで幅広く含まれていることから、高分子量体が多量に含まれるために、粘度が高く取り扱い性が悪いといった問題がある。また、分子量分布が広いポリカーボネートポリオールを用いてポリウレタンを製造した場合に、高分子量の成分がウレタン反応中に析出したり、ポリウレタンとなった後の濁りの原因にもなる。一方で、低分子量成分は、加工加熱時の揮発分となり、使用時の熱安定性の低下や着色の原因となる。
ポリカーボネートポリオールの分子量分布(D)を1.7以下とするための手法は特に限定されないが、例えば以下のような手法を適切に組み合わせて実施することで達成できる。
重合の起点となる開始剤としてのポリオールYと環状カーボネートXを原料とする開環重合により、ポリカーボネートポリオールを重合する。
使用する原料の純度を高めて、開環重合を阻害したり、分子量分布を広げる副反応を引き起こすような不純物を取り除く。
適切な重合触媒や製造プロセス(温度、圧力、重合時間、溶媒、濃度など)を選択し、分子量分布が広がる副反応(エステル交換反応や末端封止)を抑制し、重合する。
得られたポリカーボネートジオールの分子量分布が広がらないように、触媒失活、触媒除去、残モノマーや不純物の除去などの後処理を適切に実施する。
分子量分布が狭くなるように精製工程(ろ過や晶析や蒸留や分液など)を実施する。
<分子量分布変化率(ΔD)>
ポリカーボネートポリオールの分子量分布(D)は加熱などによるエステル交換反応の進行により、増加する場合がある。特にエステル交換に関与する金属触媒などが含まれている場合は、その増加の傾向は顕著である。ポリカーボネートポリオールの分子量分布(D)が変化すると、保管中や取り扱い中(加熱下での溶解、移送、反応など)に粘度や融点などが上昇し取り扱い性が悪化する。また、加熱下に反応させて得られるポリウレタンの品質が安定しなかったり、物性が低下したりする問題がある。このため、粘度の高いポリカーボネートポリオールを保管したり、取り扱い(加熱下での溶解、移送、反応など)を行うに好適な温度である100℃程度の加熱下において、分子量分布(D)の変化が小さいポリカーボネートポリオールが好ましい。
本発明では、加熱による分子量分布(D)の変化の大きさに関して、下記式で算出される100℃で12時間加熱後の分子量分布変化率(ΔD)を指標とし、本発明におけるポリカーボネートポリオールは、この分子量変化率(ΔD)が0.20以下であることを特徴とする。
分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/D
D:ポリカーボネートポリオールの分子量分布
D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布
ポリカーボネートポリオールを安定に保管したり、取り扱い(加熱下での溶解、移送、反応など)を行うのに適切な熱安定性を有するポリカーボネートポリオールとして、本発明におけるポリカーボネートポリオールは、この分子量分布変化率(ΔD)は0.20以下であり、0.18以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.12以下であることが更に好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。
分子量分布変化率(ΔD)が0.20を超えると、ポリカーボネートポリオールの保管時や取り扱い(加熱下での溶解、移送、反応など)時に、ポリカーボネートポリオールの粘度が上がったり、このポリカーボネートポリオールを用いてポリウレタンを製造しているときに分子量分布が広がり、ポリウレタンの機械強度や耐溶剤性が下がったり、高分子量成分が生成し、ポリウレタンの濁りや着色の原因となることがある。
ポリカーボネートポリオールの分子量分布変化率(ΔD)の低減は、反応により得られるポリカーボネートポリオール生成物のエステル交換反応が起こりにくくすることによって達成できる。その方法としては特に限定されないが、例えば以下のような手法が挙げられる。
・ポリカーボネートポリオール製造時に、環状カーボネートXの開環重合のみに選択的に作用し、生成物のポリカーボネートポリオールのエステル交換反応に作用しない重合触媒を用いる。このような重合触媒としては、後述の重合触媒のリン化合物のうち、特に芳香環を有するリン化合物や、後述のナトリウム化合物などが挙げられる。
・ポリカーボネートポリオールの製造時に用いる重合触媒量を少なくする。具体的には、環状カーボネートXとポリオールYとの合計質量に対して、10000質量ppm以下、例えば0.01~1000質量ppm、好ましくは0.01~500質量ppmとする。
・ポリカーボネートポリオールの製造時に、環状カーボネートの転化率を高めて、ポリカーボネートポリオール中の残存量を減らす。
・製造されたポリカーボネートポリオール中に残留する重合触媒を後述の触媒失活剤により失活させる。
・製造されたポリカーボネートポリオール中に残留する重合触媒を晶析、脱気、再沈殿法、洗浄、カラムクロマトグラフィー、蒸留などで除去する。
・製造されたポリカーボネートポリオールに残留する副生物、残モノマー、残溶媒を晶析、脱気、再沈殿法、洗浄、カラムクロマトグラフィー、蒸留などで除去する。
・製造されたポリカーボネートポリオールを加熱又は冷却することで、残留する重合触媒を失活ないし析出させて除去する。
・製造されたポリカーボネートポリオールにpH安定剤や酸や塩基を添加して、触媒や不純物の中和を行い、失活させる。
・製造されたポリカーボネートポリオールの遠心分離やろ過を実施することにより、触媒や不純物を取り除く。
これらの手法は単独で効果が得られるが、複数組み合わせることでより大きな効果が得られる場合もある。
<末端-R-OH基の割合>
本発明におけるポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオールの分子鎖末端のうち、-R-OH基(ここでRは前記式(A)中のRである。)の割合が、全末端基の総モル量100%に対して、80モル%以上であることが好ましい。この-R-OH基割合が80モル%以上であれば、ウレタン重合時の反応性が多くのOH末端で一定となり、均一な重合が進み、分子量分布の狭い高強度のポリウレタンが得られる。この-R-OH基割合はより好ましくは85モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上である。-R-OH基割合の上限には特に制限はなく100モル%であってもよい。
-R-OH基割合を上記下限以上とするには、例えば下記のような手法が挙げられる。
使用する原料の純度を高めて、開環重合を阻害したり、分子量分布を広げる副反応を引き起こすような不純物を取り除く。
適切な重合触媒や製造プロセス(温度、圧力、重合時間、溶媒、濃度など)を選択し、分子量分布が広がる副反応(エステル交換反応や末端封止)を抑制し、重合する。
得られたポリカーボネートジオールの分子量分布が広がらないように、触媒失活、触媒除去、残モノマーや不純物の除去などの後処理を適切に実施する。
<1分子当たりの末端水酸基の数>
本発明のポリカーボネートポリオールの1分子当たりの末端水酸基の数は、1.8~6.0であることが好ましい。1分子当たりの末端水酸基の数が1.8以上であればポリウレタン製造時に十分に分子量が伸びて、高強度で耐溶剤性に優れるポリウレタンが得られる。一方、1分子当たりの末端水酸基の数が6.0以下であれば、ポリウレタン重合時に架橋反応が進行しすぎることがなく、ゲル化や粘度上昇の進行を抑制し、得られるポリウレタンの柔軟性や耐衝撃性を向上させることができる。この観点から、本発明のポリカーボネートポリオールの1分子当たりの末端水酸基の数は1.80~5.0がより好ましく、1.90~4.0が更に好ましい。特に柔軟なポリウレタンエラストマーとして使用するためには、1.90~2.10さらには1.95~2.05の場合が最も好ましい。また高強度のポリウレタンアクリレート、ポリウレタンフォーム、ウレタンコーティングとして使用する際には2.0~4.0が好ましい。
ポリカーボネートポリオールの1分子当たりの末端水酸基の数は、後述の実施例の項に記載の方法で求められる。
<金属元素・リン元素含有量>
本発明のポリカーボネートポリオールには、製造時の重合触媒に由来して通常金属元素及び/又はリン元素が含有される。
重合触媒として後述の金属化合物とリン化合物を用いた場合、本発明のポリカーボネートポリオール中の金属元素およびリン元素の合計含有量は150質量ppm以下であることが好ましく、120質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることが更に好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。金属元素およびリン元素の合計含有量の下限は特に制限はないが、通常0.01質量ppm以上である。
また、重合触媒として後述のリン化合物のみを用いた場合、本発明におけるポリカーボネートポリオール中のリン元素含有量は0.01~150質量ppmであることが好ましく、0.01~100質量ppmであることがより好ましく、0.01~50質量ppmであことが更に好ましい。
また、重合触媒として、後述の金属化合物のみ、好ましくはナトリウム化合物を用いた場合、本発明におけるポリカーボネートポリオール中のナトリウム等の金属元素含有量は0.01~150質量ppmであることが好ましく、0.01~100質量ppmであることがより好ましく、0.01~50質量ppmであることが更に好ましい。
いずれの元素においてもポリカーボネートポリオール中の含有量が上記上限よりも多いと、本発明のポリカーボネートポリオールの分子量分布変化率(ΔD)を0.20以下とすることができない場合がある。また、ポリカーボネートポリオールの着色の要因になったり、ウレタン反応時に重合不良や重合加速による不具合の原因になったりする。
一方で、これらの元素含有量を低くするには、原料を精製したり、使用触媒の量を減らしたり、残留触媒の失活及び/又は除去のための操作が煩雑となり、生産性が損なわれ、コスト面でも好ましくない。
ポリカーボネートポリオール中の金属元素及び/又はリン元素含有量を上記範囲とするには、ポリカーボネートポリオール製造時の触媒量を調整したり、製造されたポリカーボネートポリオールに前述のような触媒の失活及び/又は除去のための処理を行えばよい。
<ポリカーボネートポリオールの着色>
ポリカーボネートポリオールの着色はJIS K0071-1(1998)に準拠して、APHA値で評価できる。本発明のポリカーボネートポリオールのAPHA値は50以下が好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。APHA値が50を超えると、ポリカーボネートポリオールを原料として得られるポリウレタンの色調が悪化し、商品価値を低下させたり、熱安定性が悪くなったりする場合がある。ポリカーボネートポリオールのAPHA値は、後述の項に記載の方法で測定される。着色の低減は後に記載する触媒、重合方法、精製方法などを適切に選択することで実施できる。
<残存モノマー類等>
ポリカーボネートポリオール中には、製造時の原料モノマーとして使用した環状カーボネートXおよびポリオールYが残存することがある。ポリカーボネートポリオール中の原料モノマーの残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートポリオールに対する質量比として上限が好ましくは5質量%、より好ましくは3質量%、更に好ましくは1質量%である。特に本発明におけるポリカーボネートポリオール中の下記式(1)で表される環状カーボネートXの含有割合は、該ポリカーボネートポリオールの総質量100%に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下、さらには0.1質量%以下であることが更に好ましい。ポリカーボネートポリオール中の環状カーボネートX等のモノマー含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害したり、加熱時にポリカーボネートポリオールと更に反応し分子量分布変化率(ΔD)が上昇したりする場合がある。一方、その下限は特に制限はないが、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.01質量%、更に好ましくは0質量%である。
ポリカーボネートポリオール中の環状カーボネートの含有量はH-NMRにより、使用した環状カーボネートのピークとポリマーの各種構造単位の比から、質量%に変換することで分析される。また場合によってはGCやHPLCなどの分析手段を使用してもよい。分析値の下限として0.01質量%である。残存する環状カーボネート量を減らすためには、触媒、温度、時間などの反応条件を最適化することにより、環状カーボネートの転化率を向上させたり、精製工程において、分液、再沈殿、減圧留去などの操作において除去するなどの方法がある。
Figure 2023039907000012
(式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子であり、該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。Zは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
なお、式(1)で表される環状カーボネートXについしては、<環状カーボネートX>の項で詳述するが、好ましくは、環状カーボネートXは、下記式(1A)で表される。
Figure 2023039907000013
(式(1A)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子を表す。該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
<植物由来原料>
本発明におけるポリカーボネートポリオールは、後述の通り、植物由来の原料、即ち、植物由来の環状カーボネートXやポリオールYを用いて製造されたものであることが、環境負荷低減の観点から好ましい。
[ポリカーボネートポリオールの製造方法]
本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法には特に制限はないが、好ましくは環状カーボネートXと開始剤としてのポリオールYを原料として開環重合を行うことで製造される。この場合、開環重合を効率よく進行させるために、通常重合触媒を用いて、適切な反応温度にて撹拌しながら反応を実施することが好ましい。
例えば、本発明におけるポリカーボネートポリオールは、ポリオールYを開始剤として、重合触媒の存在下、下記式(1)で表される環状カーボネートXを開環重合することで製造される。
Figure 2023039907000014
(式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子であり、該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。Zは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
<環状カーボネートX>
環状カーボネートXは上記式(1)によって表される環状骨格の炭素鎖とカーボネート基を有する化合物であり、反応性(環開重合性)と入手の容易さから、好ましくは下記式(1A)で表される環状カーボネートである。
Figure 2023039907000015
(式(1A)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子を表す。該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
特に反応性が高く好ましい環状カーボネートXとしては、直鎖ジオール由来の環状カーボネート(トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなど)、側鎖置換基を有するジオール由来の環状カーボネート(原料として2-メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチルプロパンジオールなどを用いたもの)、2つのメチロール基を有する原料から合成したカーボネート類(原料としてトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびそのエーテル誘導体を用いたもの、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸およびそのエステル誘導体を用いたもの)、具体的には後掲の実施例の項に記載の(2-メチル-2-カルボキシメチル-トリメチレンカーボネート(cas:507471-78-5)、2-メチル-2-ベンジルオキシカルボニル-トリメチレンカーボネート(cas:247142-68-3)、他のエステル置換基が異なるものとして、2-メチル-2-ベンジルオキシカルボニル-トリメチレンカーボネート(cas:247142-68-3)、2-メチル-2-メチルオキシカルボニル-トリメチレンカーボネート(cas:184697-04-9)、2-メチル-2-プロペニルオキシカルボニル-トリメチレンカーボネート(cas:1373439-22-5)、2-メチル-2-メトキシエトキシエチルオキシカルボニル-トリメチレンカーボネート(cas:1006903-36-1)、5-メチル-5-(2,5,8,11-テトラオキサドデシル)-1,3-ジオキサ-2-オン(cas:1365611-65-9)などが挙げられる。(ここで、「2-」の2位とは、上記式(1A)におけるR、Rの置換位置を示す。)
また、これらの環状カーボネートは2量体、3量体といった環状オリゴカーボネートを形成する場合もあるが、それらを重合に用いてもよい。例えば、シクロビスブチレンカーボネート(cas:87719-16-2)やシクロビスヘキサメチレンカーボネート(cas:82613-63-6)などの直鎖の炭素数が4以上のカーボネートの場合においては、1量体の環状カーボネートよりも安定な大員環構造を形成するために熱安定性が高く、取り扱いや合成が容易で、重合の制御がしやすく好ましい場合がある。
これらの中でも環状カーボネートの取り扱いや合成が容易で反応性が高い上記式(1A)で表される環状カーボネートが好ましく、その中でも得られるポリウレタンの機械強度や耐溶剤性の観点からはトリメチレンカーボネートが最も好ましい。
また側鎖置換基にカルボン酸基やエステル基やエーテル基や水酸基やチオール基やスルホニル基やホスホニル基などを有する環状カーボネートを用いた場合には、水分散性、接着性、染色性、生体適合性、生分解性、生体中での低癒着性などに優れる場合があったり、架橋反応に用いる置換基として活用することができたりする場合がある。特にジエチレングリコールエーテル、トリエチレングリコールエーテルといったポリエチレングリコールエーテルに由来する構造単位があると、生体適合性、生分解性、親水性、生体中での低癒着性に優れるため、医療材料や親水性材料や生分解性材料に有用である。また側鎖置換基にカルボン酸基、エーテル基、水酸基、チオール基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、スルホニルアミド基、ホスホニル基などのイオン性の置換基又は高極性の置換基を有する環状カーボネートを用いた場合、リチウムイオンなどのイオン伝達性や電気伝導性やイオン性化合物の溶解性に優れ、電池材料や電子材料に用いる際には、電解質、電極、溶媒、添加剤などとして有用である。
本発明のポリカーボネートポリオールの製造には、このような環状カーボネートXの1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
<ポリオールY>
開始剤として用いるポリオールYは水酸基を2つ以上有する炭素数3以上のポリオールであり、下記式(2)で表される。
HO-R-OH …(2)
(式(2)中、Rは前記式(B)におけるRと同義である。)
ポリオールYのうち、ジオール類として具体的には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,20-エイコサンジオール等の直鎖状の末端ジヒドロキシ化合物類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのエーテル基を有するジヒドロキシ化合物類;ビスヒドロキシエチルチオエーテルなどのチオエーテルジオール類;2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(以下ネオペンチルグリコールと略記することがある)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ペンチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどの2,2-ジアルキル置換1,3-プロパンジオール類(ただし、アルキル基の炭素数は15以下);2,2,4,4-テトラメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,9,9-テトラメチル-1,10-デカンジオールなどのテトラアルキル置換アルキレンジオール類;3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状基を含むジヒドロキシ化合物類;2,2-ジフェニル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジビニル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチニル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメトキシ-1,3-プロパンジオール、ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)エーテル、ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)チオエーテル、2,2,4,4-テトラメチル-3-シアノ-1,5-ペンタンジオール等の分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4-ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、スピログリコール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4’-イソプロピリデンビス(2,2’-ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジヒドロキシ化合物類;9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル)フェニル)フルオレン等の芳香環を有するジヒドロキシ化合物;ジエタノールアミン、N-メチル-ジエタノールアミン等の含窒素ジヒドロキシ化合物類;ビス(ヒドロキシエチル)スルヒド等の含硫黄ジヒドロキシ化合物類;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類;等を挙げることができる。
また、オリゴマータイプのジオールとしては、ポリエーテルポリオール(ポリエチレンエーテルグリコ-ル(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)など)、ポリエステルポリオール(ブチレンアジペートジオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリグリコール酸由来のポリオール、ポリラクチド由来のポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール(1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオール、イソソルバイド、PTMGなどのジオールから構成されるもの)、ポリオレフィンポリオール(ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール(例えば日本曹達社製GI1000)など)、シリコーンポリオール(両末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン(例えば信越化学製KF6000)など)、パーフロロジオール(例えばソルベイ社製Fluorolink E10-H)といったものが挙げられる。
また、トリオール類としては、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,4-ヘキサントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン等の鎖状トリオール類;イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシメチル)、シクロドデカントリメタノール、1,3,5-ベンゼントリメタノール、1,3,5-シクロヘキサントリメタノール等の環状トリオール類;などが挙げられる。
4つ以上の水酸基を持つポリオール類としては、ペンタエリトリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、ビス(トリメチロールプロパン)、グルコースなどの糖類、ソルビトールなどの糖誘導体などが挙げられる。
これらのポリオールYの中でも、耐熱性と強度の観点から、炭素数が、好ましくは3~50、より好ましくは4~20、さらに好ましくは6~15、特に好ましくは6~12であるものが好ましい。ジオール化合物の形状としては、柔軟性の観点からは直鎖状のジオール類が好ましく、機械強度の観点からは環状構造を有するものが好ましい。
また、ポリウレタンに柔軟性やゴム弾性といった機能を発揮させるためには、前述のオリゴマータイプのポリオールが好ましい。またオリゴマータイプのポリオール(例えば、シリコーンポリオールやオレフィンポリオールなど通常ポリカーボネートジオールと相溶しない)を原料として得られた、本発明におけるポリカーボネートポリオールは、原料であるオリゴマータイプのポリオールとの相溶性が向上する。複数のポリオールを用いた際の相溶化剤として機能する場合があり、ポリウレタン合成時の反応性が向上したり、得られるポリウレタンの強度や透明性が向上することがある。また生体適合性や生分解性を有するオリゴマーポリオール(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコールなど)を使用することで、水溶性、水分散性、生体適合性、生分解性を付与できて、医療材料などに使用できる場合がある。
また、架橋機能を有するポリオールとして活用するためには、前述の3つ以上の水酸基を持つポリオールを活用することが好ましい。
3つ以上の水酸基を持つポリオールとしては、原料の入手性からはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが好ましい。また環状の副生物の生成を防ぎ、純度の高い放射状のポリオールを合成するためには、開始剤のポリオールYにおける水酸基の距離(水酸基と水酸基の間の原子数)が長い方が好ましく、環状のトリオール類が好ましい場合もある。
本発明のポリカーボネートポリオールの製造には、これらのポリオールYの1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
<重合触媒>
本発明のポリカーボネートポリオールを製造する場合には、重合を促進するために必要に応じて重合触媒(以下、触媒と称する場合がある)を用いることができる。その場合、得られたポリカーボネートポリオール中に、過度に多くの触媒が残存すると、該ポリカーボネートポリオールを用いてポリウレタンを製造する際に反応を阻害したり、反応を過度に促進したりする場合がある。またポリカーボネートポリオールの熱安定性が向上させたり、低下させたりする場合がある。
このため、ポリカーボネートポリオール中に残存する触媒量は、特に限定されないが、触媒となる原子換算の含有量として10000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは5000質量ppm以下、更に好ましくは1000質量ppm以下である。なお、本発明のポリカーボネートポリオールの触媒由来の金属元素、リン元素の好ましい含有量については前述の通りである。
触媒としては、一般に開環重合を促進する作用があるとされている化合物であれば制限なく用いることができる。
触媒の例を挙げると、酸化合物としては、硫酸、塩酸、ホウ酸、リン酸などが挙げられる。
塩基化合物としては、無機塩基化合物として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど、脂肪族アミン類としてトリエチルアミン、トリブチルアミンなど、環状アミン類として、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、アミノ酸類としてグリシンやリジンなどのおよびその誘導体などが挙げられる。
またリン化合物として、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸ジ-n-ブチル、リン酸ジイソブチル、リン酸ジ-n-エチルヘキシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸モノメチル、リン酸モノエチル、リン酸モノイソプロピル、リン酸モノ-n-ブチル、リン酸モノイソブチル、リン酸モノ-n-エチルヘキシル、リン酸モノラウリル、リン酸モノオレイル、リン酸モノステアリル、リン酸モノフェニル、3,3’-ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルホスフェート、チオリン酸エステル、メチルチオリン酸、エチルチオリン酸、ジメチルチオリン酸、ジエチルチオリン酸、N,N’-ビス[(トリフルオロメチル)メチル]ジフェニルホスホロアミドなどが挙げられる。
また、触媒となる金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表第1族金属の化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表第2族金属の化合物;チタン、ジルコニウム等の周期表第4族金属の化合物;ハフニウム等の周期表第5族金属の化合物;コバルト等の周期表第9族金属の化合物;亜鉛等の周期表第12族金属の化合物;アルミニウム等の周期表第13族金属の化合物;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表第14族金属の化合物;アンチモン、ビスマス等の周期表第15族金属の化合物;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等ランタナイド系金属の化合物などが挙げられる。これらのうち、周期表第1族金属の化合物、周期表第2族金属の化合物、周期表第4族金属の化合物、周期表第5族金属の化合物、周期表第9族金属の化合物、周期表第12族金属の化合物、周期表第13族金属の化合物、周期表第14族金属の化合物が好ましく、周期表第1族金属の化合物、周期表第2族金属の化合物がより好ましく、周期表第1族金属の化合物が更に好ましい。周期表第1族金属の化合物の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムの化合物が好ましく、リチウム、ナトリウムの化合物がより好ましく、ナトリウムの化合物が更に好ましい。リチウム、カリウム、ナトリウムの化合物の中でも、開環重合の反応性および得られるポリカーボネートポリオールへの熱安定性への影響の観点から、塩基性が弱い酢酸塩、ピバル酸塩、安息香酸塩などの脂肪族カルボン酸塩や芳香族カルボン酸塩が好ましく、入手性の観点から、酢酸塩、即ち酢酸ナトリウムが最も好ましい。
これらのうち、リン化合物は金属触媒と比較してポリマー間のエステル交換反応などの副反応が起こりにくく、分子量分布が狭い重合物を得られる点で好ましい。また得られたポリカーボネートポリオールへのエステル交換反応を引き起こす影響が少ないために、加熱時に分子量分布の広がりが少なく、熱安定性が高いポリカーボネートポリオールが得られる点においても好ましい。他のリン化合物と金属触媒が同時に含まれている場合に、リン化合物と金属触媒が相互作用し、リン化合物と金属触媒それぞれ不活化できる場合がある。特にリン化合物としては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸ジ-n-ブチル、リン酸ジイソブチル、リン酸ジ-n-エチルヘキシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジ(4-ニトロフェニル)、リン酸ジナフチルといったリン酸ジエステルが反応性の観点から好ましく、芳香環を有するリン化合物、中でも、リン酸ジフェニル、リン酸ジ(4-ニトロフェニル)、リン酸ジナフチルといった芳香族リン酸ジエステルが更に好ましく、入手の容易性からリン酸ジフェニルが最も好ましい。
これらの触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
触媒を用いることによる重合反応の活性化効果と分子量分布が広がる副反応の抑制、残留触媒量の低減の観点から、特に触媒としてリン元素を含有する触媒を用いる場合、環状カーボネートXとポリオールYとの合計質量に対して、リン元素量、即ち、リン元素換算の使用量として0.01~1000質量ppm用いることが好ましく、0.01~800質量ppm用いることがより好ましく、0.01~500質量ppm用いることが更に好ましい。
<ポリオールY以外のジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネートポリオールの製造には、本発明の効果を損なわない限り、開始剤のポリオールY以外のジヒドロキシ化合物(他のジヒドロキシ化合物と称する場合がある)を用いてもよい。具体的には直鎖状のジヒドロキシ化合物類、エーテル基を有するジヒドロキシ化合物類、分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類、脂環構造を含むジヒドロキシ化合物類等である。但し、他のジヒドロキシ化合物を用いる場合、本発明の効果を有効に得るために、ポリカーボネートポリオールの全構造単位に対して、他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は30モル%以下がより好ましく、20モル%以下が更に好ましく、10モル%以下が最も好ましい。
<植物由来の原料>
本発明で用いる環状カーボネートXは、植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。
植物由来の環状カーボネートXとしては、植物由来の1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、グリセロールといった植物由来のポリオールから得られた環状カーボネートが挙げられる。またカーボネート基部分の原料も植物由来であったり、二酸化炭素であったりすると、さらに好ましい。
また、開始剤であるポリオールYについても植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。植物由来のポリオールYとしては、ポリオールYの項に挙げたもので植物由来のものがすべて適用できるが、特に入手容易性の観点から1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、イソソルバイド、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、グルコースなどの糖由来のポリコールなどが好ましいものとして挙げられる。
<反応温度>
開環重合反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。その温度は特に限定されないが、下限は通常0℃、好ましくは20℃、より好ましくは60℃である。また反応温度の上限は、通常200℃、好ましくは150℃、より好ましくは140℃、更に好ましくは120℃、特に好ましくは100℃である。反応温度が上記下限を下回ると重合反応が実用的な速度では進行しなかったり、原料が溶解しなかったり、混合が不十分となる場合がある。また、反応温度が上記上限超過では、得られるポリカーボネートポリオールの分子量分布(D)が広がったり、着色したり、濁度が悪化するなどの品質上の問題が生じる場合がある。
<反応圧力>
開環重合は、反応が問題なく進行するケースでは常圧付近で実施する。ただし減圧下又は加圧下で反応が効率化する場合には、減圧下又は加圧下で生成物を抜き出しながら反応を実施する場合もある。また反応と同時に残存するモノマーや副生成物や触媒を減圧下で除去する場合もある。
<反応時間>
本発明のポリカーボネートポリオールを得るための開環重合反応に必要な時間は、使用する環状カーボネートXとポリオールY、触媒の種類や使用量により大きく異なるので一概に規定することはできないが、通常所定の分子量に達するのに必要な反応時間は50時間以下、好ましくは20時間以下、更に好ましくは10時間以下である。また重合終了後も加熱を継続していると、ポリカーボネートポリオールの分子量分布(D)が広がる可能性がある。その問題を解決するために、反応が終了後に速やかに冷却したり、晶析や分液といった精製を行ったり、後述の触媒失活剤を投入したりして、反応を停止させる場合がある。
<開環重合時の溶媒>
本発明のポリカーボネートポリオールを製造する際には反応性と生産性の観点から溶媒をできるだけ使用せずに重合することが好ましい。溶媒を使用する場合においても、使用量が少ない方が好ましく、具体的には環状カーボネートXとポリオールYの質量の合計質量100部に対して50質量部以下が好ましく、10質量部以下が更に好ましく、5質量部以下が最も好ましく、溶媒を用いずに開環重合を行ってもよい。
溶媒を用いる場合、好ましい溶媒としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド,N-メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。特に好ましい溶媒は、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等であり、これらの溶媒を適切な量を使用した場合には環状カーボネートXとポリオールYとの相溶性が向上し、均一に反応が可能になり、反応性が向上したり、分子量分布(D)が狭いポリカーボネートポリオールが得られる場合がある。ただし、溶媒を多く使用しすぎると、触媒濃度が低下し、重合速度が下がったり、反応時間が長くなり分子量分布が広がる場合もある。また溶媒が増えることで、重合反応や精製時の生産性が低下する。
<ポリカーボネートポリオールの精製>
前述の如く、重合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートポリオールには触媒が残存し、残存する触媒により、ポリカーボネートポリオールの熱安定性が低下したり、ポリウレタン化反応の制御ができなくなる場合がある。
ポリカーボネートポリオール中の残存触媒を除去するための精製方法としては、再沈殿や蒸留やカラムクロマトグラフィーや溶媒抽出などが挙げられる。特に有機溶媒に溶解する触媒を用いた場合には除去効率の観点から、再沈殿が好ましい。また水に溶解する触媒の場合は水(酸や塩基を含む場合もある)を用いた洗浄が好ましい。
<触媒失活剤>
前述のようにポリカーボネートポリオールに残存する触媒の影響を抑制するために、使用された触媒とほぼ等モルの例えばリン系化合物やアミン化合物等(以下、触媒失活剤と呼ぶ)を添加し、触媒を不活性化することが好ましい。更には触媒失活剤を添加後は、加熱処理等により、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
触媒失活剤は触媒の不活性化に適切な構造を有するものであり、含有元素、酸・塩基など、特に限定されない。前述の重合触媒に記載した化合物が酸性であれば、塩基化合物の触媒失活剤、重合触媒が塩基性であれば、酸性化合物の触媒失活剤が有効である場合がある。
触媒失活剤の例としては、例えば、含リン系化合物として、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。これらの含リン系化合物は金属の重合触媒に有効な場合がある。含窒素系化合物としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、n-ブチルアミン、アニリン、ピリジン、イミダゾールなどが挙げられる。含窒素系化合物は、重合触媒として使用したリン酸ジエステルの失活剤として有効な場合がある。
これらの触媒失活剤は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記触媒失活剤の使用量は、特に限定はされないが、使用された触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用された重合触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。これより少ない量の触媒失活剤を使用した場合は、反応生成物中の重合触媒の不活性化が十分でなく、得られたポリカーボネートポリオールの熱安定性が低下する場合がある。またポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートポリオールのイソシアネート基に対する反応性を安定化させることができない場合がある。また、この範囲を超える触媒失活剤を使用すると得られたポリカーボネートポリオールが着色してしまう可能性がある。
[ポリウレタン]
本発明のポリカーボネートポリオールを用いて本発明のポリウレタンを製造することができる。
本発明のポリカーボネートポリオールを用いて本発明のポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウレタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられる。
例えば、本発明のポリカーボネートポリオールとポリイソシアネート及び鎖延長剤を常温から200℃の範囲で反応させることにより、本発明のポリウレタンを製造することができる。
また、本発明のポリカーボネートポリオールと過剰のポリイソシアネートとをまず反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、更に鎖延長剤を用いて重合度を上げて本発明のポリウレタンを製造することができる。
<ポリイソシアネート>
本発明のポリカーボネートポリオールを用いて本発明のポリウレタンを製造するのに使用されるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族又は芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと称する場合がある)、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましい。
<鎖延長剤>
本発明のポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、後述するイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する場合において、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、通常ポリオール及びポリアミン等を挙げることができる。
その具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’-ジアミノピペラジン等のポリアミン類;及び水等を挙げることができる。
これらの鎖延長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、1,4-ブタンジオール(以下、14BDと称する場合がある)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
また、後述する水酸基を有するプレポリマーを製造する場合の鎖延長剤とは、イソシアネート基を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、具体的には<2-1.ポリイソシアネート>で記載したような化合物が挙げられる。
<鎖停止剤>
本発明のポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、一個のアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン等の脂肪族モノアミン類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<触媒>
本発明のポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒又はトリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジオクチルチンジネオデカネートなどのスズ系の化合物、更にはチタン系化合物などの有機金属塩などに代表される公知のウレタン重合触媒を用いることもできる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<本発明のポリカーボネートポリオール以外のポリオール>
本発明のポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、本発明のポリカーボネートポリオールと必要に応じてそれ以外のポリオールを併用しても良い。ここで、本発明のポリカーボネートポリオール以外のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、本発明のポリカーボネートポリオール以外のポリカーボネートポリオールが挙げられる。ここで、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールを合わせた質量に対する。本発明のポリカーボネートポリオールの質量割合は70%以上が好ましく、90%以上が更に好ましい。本発明のポリカーボネートポリオールの質量割合が少ないと、本発明のポリカーボネートポリオールの特徴である分子量分布(D)が小さく取り扱い性に優れるなどの効果が損なわれる可能性がある。
<溶剤>
本発明のポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応には溶剤を用いてもよい。
好ましい溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド,N-メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
これらの中で好ましい有機溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びジメチルスルホキシド等である。
また、本発明のポリカーボネートポリオール、ポリジイソシアネート、及び前記の鎖延長剤が配合されたポリウレタン組成物から、水分散液のポリウレタンを製造することもできる。
<ポリウレタン製造方法>
上述の反応試剤を用いて本発明のポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用できる。
その例としては、本発明のポリカーボネートポリオール、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場合がある)や、まず本発明のポリカーボネートポリオール、それ以外のポリオール及びポリイソシアネートを反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」と称する場合がある)等がある。
二段法は、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールとを予め1当量以上のポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する部分の両末端イソシアネート中間体を調製する工程を経るものである。このように、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい場合があり、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明のポリカーボネートポリオール、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
一段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基数と、鎖延長剤の水酸基数とアミノ基数との総計を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。
ポリイソシアネートの使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が副反応を起こし、得られるポリウレタンの粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、柔軟性が損なわれたりする傾向があり、少なすぎると、ポリウレタンの分子量が十分に大きくならず、十分なポリウレタン強度が得られなくなる傾向がある。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールの総水酸基数からポリイソシアネートのイソシアネート基数を引いた数を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。鎖延長剤の使用量が多すぎると、得られるポリウレタンが溶媒に溶けにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンが軟らかすぎて十分な強度や硬度、弾性回復性能や弾性保持性能が得られなかったり、耐熱性が悪くなる場合がある。
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a)予め本発明のポリカーボネートポリオール及びそれ以外のポリオールと、過剰のポリイソシアネートとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリカーボネートポリオール及びそれ以外のポリオール)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法
(b)予めポリイソシアネートと、過剰のポリカーボネートポリオール及びそれ以外のポリオールとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリカーボネートポリオール及びそれ以外のポリオール)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として末端がイソシアネート基のポリイソシアネートを反応させてポリウレタンを製造する方法。
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタン製造は以下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネートと本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールとを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応に使用する。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネートと本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールとを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
(1)の方法の場合には、鎖延長反応にあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解するなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
二段法(a)の方法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは1.0当量を超える量、より好ましくは1.2当量、更に好ましくは1.5当量であり、上限が好ましくは10.0当量、より好ましくは5.0当量、更に好ましくは3.0当量の範囲である。
このイソシアネート使用量が多すぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こして所望のポリウレタンの物性まで到達しにくい傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がらず強度や熱安定性が低くなる場合がある
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、下限が、好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、更に好ましくは2.0当量の範囲である。
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
また、二段法(b)の方法における末端が水酸基であるプレポリマーを作成する際のポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.7当量であり、上限が好ましくは0.99当量、より好ましくは0.98当量、更に好ましくは0.97当量である。
このイソシアネート使用量が少なすぎると、続く鎖延長反応で所望の分子量を得るまでの工程が長くなり生産効率が落ちる傾向にあり、多すぎると、粘度が高くなりすぎて得られるポリウレタンの柔軟性が低下したり、取り扱いが悪く生産性に劣ったりする場合がある。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに使用した本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合、プレポリマーに使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、下限が好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量であり、上限が好ましくは1.0当量未満、より好ましくは0.99当量、更に好ましくは0.98当量の範囲である。
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
鎖延長反応は通常、0℃~250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なり、特に制限はない。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低い為に製造時間が長くなることがあり、また高すぎると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
また、鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を添加することもできる。
触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ-ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。安定剤としては例えば2,6-ジブチル-4-メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ-ト、N,N′-ジ-2-ナフチル-1,4-フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施してもよい。
<水系ポリウレタンエマルション>
本発明のポリカーボネートポリオールを用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造することも可能である。特にカルボキシル基、エーテル基、アミド基などの極性基を有するポリカーボネートポリオールは水分散性が高く、本用途に特に有用である。
その場合、本発明のポリカーボネートポリオールを含むポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタンエマルションとする。
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の親水性官能基とは、例えばカルボン酸基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物としては、具体的には、2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2-メチロール酪酸、2,2’-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、3,5-ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の使用量は、水に対する分散性能を上げるために、その下限は、本発明のポリカーボネートポリオールとそれ以外のポリオールとの総質量に対して好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、更に好ましくは10質量%である。一方、これを多く添加しすぎると本発明のポリカーボネートポリオールの特性が維持されないことがあるため、その上限は好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%、更に好ましくは30質量%である。
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、プレポリマー工程においてメチルエチルケトンやアセトン、あるいはNーメチル-2-ピロリドン等の溶媒の共存化に反応させてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。また、溶媒を使用する場合は、水性エマルションを製造した後に蒸留によって溶媒を留去させるのが好ましい。
本発明のポリカーボネートポリオールを原料として、無溶媒で水系ポリウレタンエマルションを製造する際には本発明のポリカーボネートポリオールの水酸基価から求めた数平均分子量の上限は好ましくは5000、より好ましくは4500、更に好ましくは4000である。また、下限は好ましくは300、より好ましくは500、更に好ましくは800である。水酸基価から求めた数平均分子量が5000を超えたり、300より小さくなると、エマルジョン化が困難となる場合がある。
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステルなどに代表されるアニオン性界面活性剤、第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコール又はフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
また、水系ポリウレタンエマルションとする際に、プレポリマーの有機溶媒溶液に、必要に応じて中和塩化工程なしに、乳化剤の存在下、水を機械的に高せん断下で混合して、エマルションを製造することもできる。
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用する事が可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。特に本発明のポリカーボネートポリオールを用いて製造される水系ポリウレタンエマルションは、ポリカーボネートポリオール中に前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を有していることから、柔軟性がありコーティング剤等として従来のポリカーボネートポリオールを使用した水系ポリウレタンエマルションに比べて有効に利用する事が可能である。
<添加剤>
本発明のポリカーボネートポリオールを用いて製造した本発明のポリウレタンには、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、本発明のポリウレタンの特性を損なわない範囲で、添加、混合することができる。
熱安定剤として使用可能な化合物としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルぺンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体、特にヒンダードフェノール化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル系等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等を使用することができる。
ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、「Irganox1010」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox1520」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox245」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
リン化合物としては、「PEP-36」、「PEP-24G」、「HP-10」(いずれも商品名:株式会社ADEKA社製)、「Irgafos 168」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
イオウを含む化合物の具体例としては、ジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)などのチオエーテル化合物が挙げられる。
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられ、具体的には「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、「SANOL LS-2626」、「SANOL LS-765」(以上、三共株式会社製)等が使用可能である。
紫外線吸収剤の例としては、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料などの染料;カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機顔料;及びカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。
無機フィラーの例としては、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等が挙げられる。
難燃剤の例としては、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの添加剤の添加量は、ポリウレタンに対する質量比として、下限が、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.05質量%、更に好ましくは0.1質量%、上限は、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%、更に好ましくは1質量%である。添加剤の添加量が少な過ぎるとその添加効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリウレタン中で析出したり、濁りを発生したりする場合がある。
<ポリウレタンの物性評価>
本発明のポリウレタンは必要に応じて、各種厚みを有するシート状やフィルム状の成形体を作成することで、各種物性評価を行うことができる。
<シート状のポリウレタン成形体>
本発明のポリウレタンは加熱圧縮成形により、シート状のポリウレタン成形体を得ることができる。例えば以下のような手法で厚さ2mmのシート状に成形することができる。
圧縮成形用の金型(15cm×8cm×厚さ2mm)にPET製離型フィルム、ポリウレタン硬化物を設置後、更にPET製離型フィルム、金型の順に載せる。これらを予め余熱しておいた加熱プレス機(東洋精機製作所製、製品名「ミニテストプレス」)のステージ上に設置した後、加熱プレス機のステージを接触させ、加圧する(圧力:0.5MPa×温度:218~225℃×時間:2分間)。その後、加熱プレス機の圧力設定を徐々に上げ、13MPaで2分間加熱し成形を終了する。加熱プレス機の圧力を下げて金型を取り出し、予め冷却水を流して冷やしておいた冷却用プレス機(東洋精機製作所製、製品名「ミニテストプレス」)に設置し冷却(圧力10MPa×時間2分)することでシート状のポリウレタン成形体を得る。
なお、使用する金型のサイズを変えることで、厚さやサイズの異なるシート状のポリウレタン成形体を作成することができる。
<ポリウレタンフィルム・ポリウレタン板>
本発明のポリウレタンを使用してフィルムを製造する場合、そのフィルムの厚さは、下限が好ましくは10μm、より好ましくは20μm、更に好ましくは30μm、上限は好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、更に好ましくは100μmである。
フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、また、薄過ぎるとピンホールを生じたり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。ポリウレタンフィルムにおいてもポリウレタン成形体と同様の評価手法にポリウレタンの物性評価を行うことができる。
ポリウレタンフィルムは、例えば以下の方法で得ることができる。
ポリウレタン溶液を9.5milのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、60℃で1時間、続いて100℃で0.5時間乾燥させる。更に100℃の真空状態で0.5時間、80℃で15時間乾燥させた後、23℃55%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置し、ポリウレタンフィルムを得る。
<分子量>
本発明のポリウレタンの分子量は、その用途に応じて適宜調整され、特に制限はないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として5万~50万であることが好ましく、8万~30万であることがより好ましく、8万~15万であることがさらに好ましい。Mwが上記下限よりも小さいと十分な強度や硬度が得られない場合があり、上記上限よりも大きいと加工性などハンドリング性を損なう傾向がある。
<耐薬品性>
本発明のポリウレタンは、例えば以下に記載される方法での評価において、薬品に浸漬前のポリウレタンフィルムの質量に対する、薬品に浸漬後のポリウレタンフィルムの質量の変化率(%)が、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。また外観の形状や色に変化がなく、フィルムの溶出が起こらないことが好ましい。なおポリウレタンフィルムは後述の手法で作成する。この質量変化率が上記上限超過では、所望の耐薬品性が得られない場合がある。
<耐オレイン酸性>
本発明のポリウレタンは、例えば以下に記載される方法での評価において、薬品としてオレイン酸に浸漬前のポリウレタン試験片の質量に対する、オレイン酸に浸漬後のポリウレタン試験片の質量の変化率(%)が、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下が更に好ましく、5%以下が特に好ましく、3%以下が最も好ましい。
この質量変化率が上記上限超過では十分な耐オレイン酸性が得られない場合がある。
<耐エタノール性>
本発明のポリウレタンは、例えば以下に記載される方法での評価において、薬品としてエタノールに浸漬前のポリウレタン試験片の質量に対する、オレイン酸に浸漬後のポリウレタン試験片の質量の変化率(%)が、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下が更に好ましく、4%以下が特に好ましい。 この質量変化率が上記上限超過では十分な耐エタノール性が得られない場合がある。
<耐薬品性・耐オレイン酸性・耐エタノール性評価方法>
ポリウレタン溶液を9.5milのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、60℃で1時間、続いて100℃で0.5時間乾燥させる。更に100℃の真空状態で0.5時間、80℃で15時間乾燥させた後、23℃55%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置し、得られたフィルムから3cm×3cmの試験片を切り出し、精密天秤で試験片の質量を測定した後、試験薬品又は溶剤50mlを入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して約23℃の室温にて1時間浸漬する。試験後、試験片を取り出して紙製ワイパーで軽く拭いた後、質量測定を行い試験前からの質量増加比率を算出する。
<引張破断伸度、破断強度>
本発明のポリウレタンは以下のような方法で引張破断伸度、破断強度の評価をできる。打ち抜き機を用いてポリウレタンのシート状成形体(2mm厚シート)をダンベル状3号形に打抜き、引張試験機(AGS-10kNX、島津製作所製)および伸び系(DSES-1000、島津製作所製)を使用し、標線間距離20mm、引張速度200mm、n=3、室温23℃、湿度55%で引張試験を行い、ポリウレタン成形体が破断した際の応力(破断強度または引張強さと称する)、伸び率(破断伸度または切断時伸びと称する)を測定できる。この方法で測定する破断伸度の下限が好ましくは100%、より好ましくは200%、更に好ましくは300%であり、上限は好ましくは900%、より好ましくは800%、更に好ましくは700%である。引張破断伸度が上記下限未満では加工性などハンドリング性を損なう傾向があり、上記上限を超えると十分な耐薬品性が得られない場合がある。この方法で測定される破断強度の下限が好ましくは10MPa、より好ましくは20MPa、さらに好ましくは30MPaであり、上限は好ましくは80MPa以下、より好ましくは60MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。引張破断強度が上記下限未満では耐薬品性や機械強度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。
<ヤング率>
本発明のポリカーボネートポリオールとMDIと1,4-BDを用いて、HS含有量%を12%~13%として一段法で製造された、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が8万~21万のポリウレタン(以下、「特定ポリウレタン」と称す場合がある。)の上記引張破断伸度測定と同様の方法で測定する23℃でのヤング率は好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.06以上である。又好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。ヤング率が低すぎると耐薬品性が不足する場合がある。ヤング率が高過ぎると柔軟性が不十分であったり、加工性などのハンドリング性を損なったりする場合がある。更に、特定ポリウレタンの-10℃にした以外は上記引張破断伸度測定と同様の方法で測定するヤング率は好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.05以上である。又好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下である。-10℃でのヤング率が上記下限未満では耐薬品性が不足する場合がある。-10℃でのヤング率が上記上限を超えると低温での柔軟性が不十分であったり、加工性などのハンドリング性を損なったりする場合がある。
ここで、ヤング率とは、その初期伸度での応力値の傾きとして伸度1%時の応力の値であり、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
尚、前記HS含有率%は以下の式により算出することができる。
Figure 2023039907000016
上記式の各項はウレタン製造時に使用した原料にかかる数値である。
<100%モジュラス、300%モジュラス>
本発明のポリウレタンの100%モジュラス及び300%モジュラスは、上記破断伸度測定と同様の方法で測定される。
本発明のポリウレタンの室温23℃、湿度55%での100%モジュラスの下限は好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、更に好ましくは5MPa以上であり、上限は好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、更に好ましくは15MPa以下である。100%モジュラスが上記下限未満では耐薬品性や機械強度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。
更に、本発明のポリウレタンの-10℃での100%モジュラスの下限は好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、更に好ましくは5MPa以上であり、上限は好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、更に好ましくは15MPa以下である。-10℃での100%モジュラスが上記上限を超えると低温での柔軟性が不十分であったり、加工性などのハンドリング性を損なったりする場合がある。
さらに同様に測定された本発明のポリウレタンの300%モジュラスの値に関しては、下限が好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。上限は好ましくは80MPa以下、より好ましくは60MPa以下である。300%モジュラスが上記下限未満では耐薬品性や機械強度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。
<低温特性>
本発明のポリウレタンは、低温特性が良好であるが、本特許での低温特性とは、-10℃等の低温での引張試験における破断伸度、ヤング率、100%モジュラスにより評価できる。また、具体的には低温での柔軟性、耐衝撃性、耐屈曲性、耐久性のことである。
<耐熱性>
本発明のポリウレタンは、分子中のカーボネート結合の割合が高く耐熱性の高いポリカーボネートジオールを原料しているため耐熱性が高いが、以下のような手法で耐熱性を評価できる。
幅100mm、長さ100mm、厚み約50~100μmのウレタンフィルムを、ギヤオーブンにて温度120℃、400時間加熱を行い、加熱後のサンプルの重量平均分子量(Mw)が加熱前の重量平均分子量(Mw)に対して、下限が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上であり、上限は好ましくは120%以下、より好ましくは110%以下、更に好ましくは105%以下である。
<ガラス転移温度>
本発明のポリカーボネートポリオールとMDIと1,4-BDとを用いて、HS含有量12%~13%として一段法で製造された、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が8万~21万の特定ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)の下限は好ましくは-50℃、より好ましくは-40℃、更に好ましくは-30℃であり、上限は好ましくは50℃、より好ましくは30℃、更に好ましくは20℃である。Tgが上記下限未満では耐熱性や耐薬品性が十分でない場合があり、上記上限超過では低温特性が十分でない可能性がある。なおTgは後述の粘弾性測定におけるtanδピーク温度に相当する。
<硬さ>
ポリウレタンの硬さ(硬度という場合がある)は以下のような手法で測定される。
ポリウレタンの厚さ2mmのシート状成形体を3cm角に切り出し、3枚重ねにしたものを試験片とする(n=5)。アスカーゴム高度計ISO-A型(高分子計器株式会社製)を用いて接触15秒後の硬さを測定し、中央値から硬さ(ショアA硬度)を求める。高強度のポリウレタンのエラストマーとして使用するためには、下限としてはA30以上が好ましく、A50以上であるとより好ましく、A70以上であるとさらに好ましい。上限としてはA95以下が好ましく、A90以下がより好ましい。
<圧縮永久ひずみ>
本発明のポリウレタンは分子量分布の狭いポリカーボネートジオールをソフトセグメントとして使用することで、ソフトセグメントの分子量がそろっているために、圧縮永久ひずみが小さく、耐圧縮性、耐へたり性、形状記憶性、衝撃吸収、振動吸収に優れた耐久性の高いポリウレタンである。圧縮永久ひずみは以下の方法で評価される。
JIS K-6262に準拠し、打ち抜き機を用いてポリウレタンのシート状成形体(2mm厚シート)をφ13mmに打抜いた3枚重ねしたものを試験片としn=3作製する。このときの高さを厚み計を用いて採寸する。試験片を下部圧縮板(株式会社ダンベル)に載せ、スペーサー(4.72mm、株式会社ダンベル)、上部圧縮板、六角穴付きボルトで圧縮、固定する。これを循環式恒温槽に入れ、70℃で24時間温調する。その後、恒温槽から取り出し、速やかに圧縮板を開放、試験片を木製の台の上にて23℃で30分静置する。静置後の試験片高さから、圧縮永久ひずみを算出する。この方法で測定される圧縮永久ひずみ(%)としては、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、さらには70%以下が好ましく、60%以下であるとよりさらに好ましい。
<ポリウレタンの粘弾性測定(tanδピーク値・tanδピーク温度・tanδ半価幅>
ポリウレタンの粘弾性は以下のように測定することができる。
前述の手法でポリウレタンのシート状成形体(1mm厚シート)を作成し、粘弾性評価に用いる。DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、試験片寸法4×20×0.1mm、歪0.1%、周波数10Hz、引張モード、昇温速度3℃/min、温度範囲-100~200℃の条件で動的粘弾性を測定する。粘弾性の測定結果から(Log E’(Pa)/温度(℃)グラフ、(tanδ/温度(℃))グラフを作成し、そこからtanδ(損失正接)ピーク値・tanδピーク温度・tanδ半価幅を算出することができる。ポリウレタンにおいて、tanδのピーク値は高い方が、耐へたり性、耐摩耗性、衝撃吸収、振動吸収に優れる。tanδピーク値の値としては0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。また、tanδピーク温度は前述のガラス転移温度を表す。
<用途>
本発明のポリウレタンは、重合時の熱安定性やハンドリング性に優れ、強度、柔軟性のバランスに優れ、優れた耐薬品性を有し、樹脂として耐摩耗性や振動吸収性を有することから、フォーム、エラストマー、弾性繊維、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等に広く用いることができる。
特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、弾性繊維、医療用材料、床材、塗料、コーティング剤等の用途に、本発明のポリウレタンを用いると、耐薬品性、低温特性の良好なバランスを有するため、人の皮膚に触れたり、コスメティック用薬剤や消毒用のアルコールが使われたりする部分において耐久性が高く、また低温での柔軟性も十分で、かつ物理的な衝撃などにも強いという良好な特性を付与することができる。また、より厳しい低温での柔軟性が要求される自動車外装の中塗り塗料にも好適である。
本発明のポリウレタンは、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。その具体的用途として、圧延ロール、製紙ロール、事務機器、プレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等がある。また、OA機器のベルト、紙送りロール、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも使用できる。
本発明のポリウレタンは、また、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等に使用できる。また、丸ベルト、Vべルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。また、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等に使用できる。更に自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等が挙げられる。また、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等に使用できる
本発明のポリウレタンエラストマーは、更に、発泡ポリウレタンエラストマー、又はポリウレタンフォームとすることができる。ポリウレタンエラストマーを発泡又はフォームとする方法としては、例えば、水などを用いた化学発泡やメカニカルフロスなどの機械発泡のいずれでもよく、その他スプレー発泡やスラブ、注入、モールド成型で得られる硬質フォームや、同じくスラブ、モールド成型で得られる軟質フォーム等が挙げられる。
具体的な発泡ポリウレタンエラストマー又はポリウレタンフォームの用途としては電子機器および建築の断熱材や防振材、自動車シート、自動車の天井クッション、マットレスなどの寝具、インソール、ミッドソールや靴底等が挙げられる。
本発明のポリウレタンは、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板、スポーツ用品等の木材製品に適用できる。また、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる
本発明のポリウレタンは、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料、水系ウレタン塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
本発明のポリウレタンは、また、接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用でき、また、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる
本発明のポリウレタンは、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である
本発明のポリウレタンは、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工等に使用できる。
本発明のポリウレタンを弾性繊維として使用する場合のその繊維化の方法は、紡糸できる方法であれば特に制限なく実施できる。例えば、一旦ペレット化した後、溶融させ、直接紡糸口金を通して紡糸する溶融紡糸方法が採用できる。本発明のポリウレタンから弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以上235℃以下である。
本発明のポリウレタン弾性繊維はそのまま裸糸として使用したり、また、他繊維で被覆して被覆糸として使用することもできる。他繊維としては、ポリアミド繊維、ウール、綿、ポリエステル繊維など従来公知の繊維を挙げることができるが、なかでも本発明ではポリエステル繊維が好ましく用いられる。また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、染着タイプの分散染料を含有していてもよい。
本発明のポリウレタンは、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント、自動車用シーラント等に使用できる。
本発明のポリウレタンは、医療用材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、また、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
本発明のポリウレタンは、末端を変性させることによりUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー>
本発明のポリカーボネートポリオールを用いて、ポリイソシアネートとドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造することができる。その他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等を併用する場合は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリイソシアネートに、更にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。
また、その際の各原料化合物の仕込み比は、目的とするウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの組成と実質的に同等、ないしは同一とする。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、本発明のポリカーボネートポリオール、並びに必要に応じて用いられるその他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等のイソシアネートと反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下とする。この割合に応じて、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量を制御することができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量は小さくなる傾向となり、割合が少ないと分子量は大きくなる傾向となる。
この場合、本発明のポリカーボネートポリオールとその他のポリオールとの総使用量に対して、本発明のポリカーボネートポリオールの使用量を25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。本発明のポリカーボネートポリオールの使用量が前記の下限値より大きいと、得られる硬化物の硬度及び耐汚染性が良好となる傾向があり好ましい。
また、本発明のポリカーボネートポリオールとその他のポリオールとの総使用量に対して、本発明のポリカーボネートポリオールの使用量は、10質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。本発明のポリカーボネートポリオールの使用量が前記の下限値より大きいと、得られる組成物の粘度が低下し作業性が向上し、また得られる硬化物の機械的強度及び硬度や耐摩耗性が向上する傾向になり好ましい。
更に、鎖延長剤を用いる場合には、本発明のポリカーボネートポリオール、その他のポリオールと鎖延長剤とを合わせた化合物の総使用量に対して本発明のポリカーボネートポリオールとその他のポリオールの使用量を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。このポリオール量が前記の下限値より大きいと、液安定性が向上する傾向になり好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、粘度の調整を目的に溶剤を使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、反応系内の固形分100質量部に対して300質量部未満で使用可能である。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量は、反応系の総量に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお、この総含有量の上限は100質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量が20質量%以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に際しては付加反応触媒を用いることができる。この付加反応触媒としては、例えばジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジオクトエート等が挙げられる。付加反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。付加反応触媒は、これらのうち、ジオクチルスズジラウレートであることが、環境適応性及び触媒活性、保存安定性の観点から好ましい。
付加反応触媒は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常1000ppm以下、好ましくは500ppm以下であり、下限が通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上で用いられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時に、反応系に(メタ)アクリロイル基を含む場合には、重合禁止剤を併用することができる。このような重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
重合禁止剤は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下であり、下限が通常50ppm以上、好ましくは100ppm以上で用いられる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起きにくくなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、(メタ)アクリレートが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5~20時間程度である。
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量は500以上が好ましく、特に1000以上であることが好ましく、10000以下が好ましく、特に5000以下、とりわけ3000以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記下限以上であると、得られる硬化膜の三次元加工適性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記上限以下であると該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。これは、三次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり三次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
<活性エネルギー線硬化性重合体組成物>
以下に、上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物(以下、「本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物」と称す場合がある。)について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、該組成物の計算網目架橋点間分子量が500~10,000であることが好ましい。
本明細書において、組成物の計算網目架橋点間分子量は、全組成物中の網目構造を形成する活性エネルギー線反応基(以下、「架橋点」と称する場合がある)の間の分子量の平均値を表す。この計算網目架橋点間分子量は、網目構造形成時の網目面積と相関があり、計算網目架橋点間分子量が大きいほど架橋密度が小さくなる。活性エネルギー線硬化による反応では、活性エネルギー線反応基を1個のみ有する化合物(以下、「単官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合には線状高分子になり、一方で活性エネルギー線反応基を2個以上有する化合物(以下、「多官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合に網目構造を形成する。
よって、ここで多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基が架橋点であって、計算網目架橋点間分子量の算出は架橋点を有する多官能化合物が中心となり、単官能化合物は多官能化合物が有する架橋点間の分子量を伸長する効果があるものとして扱い、計算網目架橋点間分子量の算出を行う。また、計算網目架橋点間分子量の算出は、全ての活性エネルギー線反応基が同じ反応性を有し、且つ活性エネルギー線照射により全ての活性エネルギー線反応基が反応するものと仮定した上で行う。
1種の多官能化合物のみが反応するような多官能化合物単一系組成物では、多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基1個当りの平均分子量の2倍が計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物では(1000/2)×2=1000、分子量300の3官能性化合物では(300/3)×2=200となる。
複数種の多官能化合物が反応するような多官能化合物混合系組成物では、組成物中に含まれる全活性エネルギー線反応基数に対する上記単一系の各々の計算網目架橋点間分子量の平均値が組成物の計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物4モルと分子量300の3官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、組成物中の全活性エネルギー線反応基数は2×4+3×4=20個となり、組成物の計算網目架橋点間分子量は{(1000/2)×8+(300/3)×12}×2/20=520となる。
組成物中に単官能化合物を含む場合は、計算上、多官能化合物の活性エネルギー線反応基(つまり架橋点)にそれぞれ当モルずつ、且つ架橋点に単官能化合物が連結して形成された分子鎖の中央に位置するように反応すると仮定すると、1個の架橋点における単官能化合物による分子鎖の伸長分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値の半分となる。ここで、計算網目架橋点間分子量は架橋点1個当り平均分子量の2倍であると考える為、多官能化合物において算出した計算網目架橋点間分子量に対して単官能化合物により伸長された分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値となる。
例えば、分子量100の単官能化合物40モルと分子量1,000の2官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、多官能化合物の活性エネルギー線反応基数は2×4=8個となるので、計算網目架橋点間分子量中の単官能化合物による伸長分は100×40/8=500となる。すなわち組成物の計算網目架橋間分子量は1000+500=1500となる。
上記のことから、分子量WAの単官能性化合物MAモルと、分子量WBのfB官能性化合物MBモルと、分子量WCのfC官能性化合物MCモルとの混合物では、組成物の計算網目架橋点間分子量は下記式で表せる。
Figure 2023039907000017
このようにして算出される本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の計算網目架橋点間分子量は、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1,000以上であることが更に好ましく、また10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましく、6,000以下であることが更に好ましく、4,000以下であることが更に一層好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。
計算網目架橋点間分子量が10,000以下であると、該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。また、計算網目架橋点間分子量が500以上であると、得られる硬化膜の3次元加工適性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。これは、3次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり3次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の他の成分を更に含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤、光増感剤、添加剤、及び溶剤が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線反応性成分の総量に対して40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。なお、この含有量の上限は100質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量が40質量%以上であると、硬化性が良好となり、硬化物とした際の機械的強度が高くなりすぎることなく、3次元加工適性が向上する傾向にあるため好ましい。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、伸度及び造膜性の点では多い方が好ましく、また、一方、低粘度化の点では、少ない方が好ましい。このような観点から、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、前記活性エネルギー線反応性成分に加えて他の成分を含む全成分の総量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。なお、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量の上限値は100質量%であり、この含有量はそれ以下であることが好ましい。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む前記活性エネルギー線反応性成分の総量の含有量は、組成物としての硬化速度及び表面硬化性に優れ、タックが残らない等の面から、該組成物全量に対して、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更に一層好ましい。なお、この含有量の上限は100質量%である。
前記活性エネルギー線反応性モノマーとしては、公知のいずれの活性エネルギー線反応性モノマーも用いることができる。これらの活性エネルギー線反応性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの親疎水性や、得られる組成物を硬化物とした際の硬化物の硬度、伸度等の物性を調整する目的等で使用される。活性エネルギー線反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このような活性エネルギー線反応性モノマーとしては、例えばビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、及び(メタ)アクリレート類が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-i-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸-2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等の単官能(メタ)アクリレート;及び、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(n=5~14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(n=5~14)、ジ(メタ)アクリル酸-1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(n=3~16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1-メチルブチレングリコール)(n=5~20)、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸-1,9-ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;が挙げられる。
これらの中で、特に、塗布性を要求される用途では、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリルアミド等の、分子内に環構造を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、また、一方、得られる硬化物の機械的強度が求められる用途では、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸-1,9-ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性モノマーの含有量は、組成物の粘度調整及び得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更に一層好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性オリゴマーの含有量は、得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更に一層好ましい。
前記重合開始剤は、主に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射で進行する重合反応の開始効率を向上させる等の目的で用いられる。重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル重合開始剤が一般的であり、公知の何れの光ラジカル重合開始剤でも使用可能である。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更に、光ラジカル重合開始剤と光増感剤とを併用してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2-ヒドロキシ-1-〔4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル〕-2-メチル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
これらの中で、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇できる点から、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、及び、2-ヒドロキシ-1-〔4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル〕-2-メチル-プロパン-1-オンが好ましく、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び2-ヒドロキシ-1-〔4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル〕-2-メチル-プロパン-1-オンがより好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、ラジカル重合性基と共にエポキシ基等のカチオン重合性基を有する化合物が含まれる場合は、重合開始剤として、上記した光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤が含まれていてもよい。光カチオン重合開始剤も、公知の何れのものも使用可能である。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物におけるこれらの重合開始剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が10質量部以下であると、開始剤分解物による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記光増感剤は、重合開始剤と同じ目的で用いることができる。光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光増感剤としては、本発明の効果が得られる範囲で公知の光増感剤のいずれをも使用することができる。このような光増感剤としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸アミル、及び4-ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記光増感剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光増感剤の含有量が10質量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記添加剤は、任意であり、同様の用途に用いられる組成物に添加される種々の材料を添加剤として用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このような添加剤としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、雲母、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、金属酸化物、金属繊維、鉄、鉛、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、炭素材料類を総称して「無機成分」と称することがある);酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)、耐指紋剤、表面親水化剤、帯電防止剤、滑り性付与剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;及び、モノマー又は/及びそのオリゴマー、又は無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類;等が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記添加剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が10質量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記溶剤は、例えば本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗膜を形成するためのコーティング方式に応じて、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度の調整を目的に使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、イソブタノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の固形分100質量部に対して200質量部未満で使用可能である。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、前述の添加剤等の任意成分を含有させる方法としては、特に限定はなく、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。尚、前記任意成分をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。具体的には、例えば、二本ロール、三本ロール、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、遊星式撹拌機、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等で処理する方法が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、該組成物の用途や使用態様等に応じて適宜調節し得るが、取り扱い性、塗工性、成形性、立体造形性等の観点から、E型粘度計(ローター1°34’×R24)における25℃での粘度が、10mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましく、また、一方、100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、例えば本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量や、前記の任意成分の種類や、その配合割合等によって調整することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗工方法としては、バーコーター法、アプリケーター法、カーテンフローコーター法、ロールコーター法、スプレー法、グラビアコーター法、コンマコーター法、リバースロールコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、スロットダイコーター法、エアーナイフコーター法、ディップコーター法等の公知の方法を適用可能であるが、その中でもバーコーター法及びグラビアコーター法が好ましい。
<硬化膜及び積層体>
本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、これに活性エネルギー線を照射することにより硬化膜とすることができる。
上記組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が使用可能である。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He-Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ、太陽光等が適している。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜に選ぶことができ、例えば、電子線照射で硬化する場合には、その照射量は1~10Mradであることが好ましい。また、紫外線照射の場合は50~1,000mJ/cmであることが好ましい。硬化時の雰囲気は、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスでもよい。また、フィルムやガラスと金属金型との間の密閉空間で照射してもよい。
硬化膜の膜厚は、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、下限は好ましくは1μm、更に好ましくは3μm、特に好ましくは5μmである。また、同上限は好ましくは200μm、更に好ましくは100μm、特に好ましくは50μmである。膜厚が1μm以上であると3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となり、また、一方、200μm以下であると内部硬化性、3次元加工適性が良好であるため好ましい。また、工業上での使用の際には、下限は好ましくは1μmであり、上限は好ましくは100μm、更に好ましくは50μm、特に好ましくは20μm、最も好ましくは10μmである。
基材上に、上記の硬化膜からなる層を有する積層体を得ることができる。
積層体は、硬化膜からなる層を有していれば特に限定されず、基材及び硬化膜以外の層を基材と硬化膜との間に有していてもよいし、その外側に有していても良い。また、前記積層体は、基材や硬化膜を複数層有していてもよい。
複数層の硬化膜を有する積層体を得る方法としては、全ての層を未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法、下層を活性エネルギー線にて硬化、あるいは半硬化させた後に上層を塗布し、再度活性エネルギー線で硬化する方法、それぞれの層を離型フィルムやベースフィルムに塗布した後、未硬化あるいは半硬化の状態で層同士を貼り合わせる方法等の公知の方法を適用可能であるが、層間の密着性を高める観点から、未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。未硬化の状態で積層する方法としては、下層を塗布した後に上層を重ねて塗布する逐次塗布や、多重スリットから同時に2層以上の層を重ねて塗布する同時多層塗布等の公知の方法を適用可能であるが、この限りではない。
基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂等の種々のプラスチック、又は金属で形成された板等の種々の形状の物品が挙げられる。
硬化膜は、インキ、エタノール等の一般家庭汚染物に対する耐汚染性及び硬度に優れる膜とすることが可能であり、硬化膜を各種基材への被膜として用いた積層体は、意匠性及び表面保護性に優れたものとすることができる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、計算網目架橋点間分子量を考慮すれば、3次元加工時の変形に追従可能な柔軟性、破断伸度、機械的強度、耐汚染性、及び硬度を同時に兼ね備える硬化膜を与えることができる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、1層塗布により簡便に薄膜状の樹脂シートを製造することが可能となることが期待される。
硬化膜の破断伸度は、硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM-III-100)を用いて、温度23℃、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行って測定した値が、50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、120%以上であるであることが特に好ましい。
このような硬化膜及び積層体は、塗装代替用フィルムとして用いることができ、例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
以下において、各物性値の評価方法は下記の通りである。
[評価方法]
<モノマーの残量および転化率の定量>
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H-NMR(日本電子株式会社製ECZ-400)を測定し、各成分のシグナル位置より、原料モノマー(環状カーボネート、開始剤ジオール)を同定し、積分値より各々の含有量を算出した。その際の検出限界は、サンプル全体の質量に対する原料モノマーの質量として0.01質量%である。環状カーボネート含有率もこの手法で算出した。
<分子量の測定>
重量平均分子量及び数平均分子量の分析はH-NMRおよびGPCにより分析した。それぞれMn(NMR)、Mw(GPC)、Mn(GPC)と記載する。
H-NMRでの測定方法:ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H-NMR(日本電子株式会社製ECZ-400)を測定し、原料モノマーの転化率および開始剤の分子量から数平均分子量Mn(NMR)を推算した。
GPCでの測定方法:下記条件によるGPC測定によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw(GPC)と数平均分子量Mn(GPC)をそれぞれ求めた。
装置 :東ソー社製 HLC-8220
カラム :TSKgel Super HZM-N
(4.6mmI.D.×15cmL×4本)
レファレンスカラム:TSKgel Super H-RC
(6.0mmI.D.×15cmL×1本)
溶離液 :THF(テトラヒドロフラン)
流速 :1.0mL/min
カラム温度:40℃
RI検出器:RI(装置 HLC-8220内蔵)
<分子量分布(D)の算出>
GPCで測定された重量平均分子量Mw(GPC)/数平均分子量Mn(GPC)で、分子量分布(D)を算出した。
分子量分布変化率(ΔD)の計算に用いるD、D1は該当するサンプルの(D)の値を用いた。なお後述の実施例で記載した100℃、12h加熱後の分子量分布変化率(ΔD)は以下の式で算出される。
分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/D
D:ポリカーボネートポリオールの分子量分布
D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布
<含有無機成分量の測定>
ポリカーボネートジオール0.2gをケルダールフラスコに精秤し、濃硫酸と濃硝酸を用いて湿式分解した。室温まで冷却後、純水を用いて定容した溶液をICP-MS ELEMENT2(Thermo Fisher Scientific社製)で測定し、ポリカーボネートジオール中の含有元素含有量(質量ppm)を出した。その中のリンおよびナトリウムの標準溶液から検量した数値を用いて、リンおよびナトリウム含有量を算出した。その他の無機元素も同様の手法で測定することができる。また反応条件で揮発や分解がない無機成分を用いた場合、含有無機成分濃度(ppm)は、ポリカーボネートジオールの収量(g)に対する、仕込みに用いた触媒などの無機成分量(g)の比に相当する。
<ポリカーボネートジオールの組成分析、末端構造分析>
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H-NMR(日本電子株式会社製ECZ-400)を測定し、各成分のシグナル位置より、各原料モノマー(環状カーボネート、開始剤ジオール)に由来する構造単位を同定し、積分値より各々の含有量(モル%)を算出した。また同様に末端構造においても、積分値より各々の含有量(モル%)を算出した。末端水酸基以外の末端構造として検出できる構造は、アルキルカーボネート末端(例えばメチルカーボネートの場合)、フェニルカーボネート末端、カルボキシル基、エステル基、アルデヒド基であり、その際の検出限界は、サンプル全体のモル量に対する原料モノマーのモル量として0.01モル%である。
<ポリカーボネートポリオール1分子当たりの末端水酸基数>
原料とする開始剤ポリオールの1分子当たりの水酸基数(例えばジオールなら2、トリオールなら3とする)から、得られたポリカーボネートポリオールの末端水酸基以外の末端構造の数を引いた値をポリカーボネートポリオールの1分子あたりの末端水酸基数とする。
<水酸基価>
ASTM E1899-16の方法に準拠して、イソシアネート化試薬を用いた方法にてポリカーボネートジオールの水酸基価を測定した。
更に、測定された水酸基価から、下記式(I)により数平均分子量(Mn)を求めた。
数平均分子量=2×56.1/(水酸基価×10-3) …(I)
<溶融粘度の測定>
ポリカーボネートジオールを60℃に加熱し、溶融した後、E型粘度計(BROOKFIELD製DV-II+Pro、コーン:CPE-52)を用いて60℃で溶融粘度を測定した。分子量3000のポリカーボネートジオールの60℃の溶融粘度としては、30000mPa.s以下、25000mPa.s以下、20000mPa.s以下の順で好ましい。さらには15000mPa.s以下、よりさらには10000mPa.s以下であることが好ましい。分子量2000のポリカーボネートジオールの60℃の溶融粘度としては、20000mPa.s以下、15000mPa.s以下、10000mPa.s以下、8000mPa.s以下、6000mPa.s以下の順で好ましい。溶融粘度が高いとポリカーボネートジオールの取り扱い性が低下し、保管、移送、ウレタン重合時に十分なハンドリング性が得られない場合がある。また保管中や移送中に長期加熱で粘度が増加する場合には、移送や重合装置が閉塞したり、抜き出し不可、攪拌不可などのトラブルの要因にもある。
<APHA値の測定>
JIS K0071-1(1998)に準拠して、ポリカーボネートポリオールを比色管に入れた標準液と比較して測定した。試薬は色度標準液1000度(1mgPt/mL)(キシダ化学社製)を使用した。
[使用原料]
使用した原料に関して、略称とメーカーを以下に記載した。特別な記載がない限りは以下の原料を使用した。
トリメチレンカーボネート(TMC)東京化成工業株式会社
1,10-デカンジオール(DD)東京化成工業株式会社(植物原料由来品)
1,3-プロパンジオール(1,3PD)デュポン社製(植物原料由来品)
ジフェニルリン酸(DPP)東京化成工業株式会社
酢酸ナトリウム(AcONa)東京化成工業株式会社
オクチル酸スズ(Sn(Oct))東京化成工業株式会社
イソソルバイド(ISB)東京化成工業株式会社(植物原料由来品)
ジメチロールプロピオン酸(DMPA)東京化成工業株式会社
シクロドデカントリメタノール(CDTM)三菱ケミカル株式会社
イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)(ICTE)東京化成工業株式会社
1,3,5-ベンゼントリメタノール(PhTM)東京化成工業株式会社
トリメチロールプロパン(TMP)東京化成工業株式会社
以下の2つの環状カーボネート化合物はJournal of the American Chemical Society(2007),129(22),6994-6995(Goodwin,Andrew P.etal)に記載の手法で合成した。
2-メチル-2-カルボキシメチル-トリメチレンカーボネート(cas:507471-78-5)(TMC-Me-COOH)
2-メチル-2-ベンジルオキシカルボニル-トリメチレンカーボネート(cas:247142-68-3)(TMC-Me-COOBn)
以下の環状カーボネート化合物は、Polymer Vol.37,No.19,1996,p.4383に従って合成した。
シクロビスヘキサメチレンカーボネート(1,3,10,12-Tetraoxacyclooctadecane-2,11-dione cas:82613-63-6)(HMC-D)
以下の環状カーボネート化合物は、Macromolecules 2012,Vol.45,No.6,p2668に従って合成した。
5-メチル-5-(2,5,8,11-テトラオキサドデシル)-1,3-ジオキサ-2-オン(1)(cas:1365611-65-9)(TOTMC)
[ポリカーボネートジオールの製造と分析I]
<実施例1-1>
100mLガラス製反応容器にトリメチレンカーボネート(20g,0.20mol,30eq.)、1,10-デカンジオール(1.14g,6.5mmol,1.0eq.)、ジフェニルリン酸(49mg,200μmol,0.03eq.リン原子(Mw:31)として300ppm相当)を加え、窒素気流下、機械撹拌装置を用いて100℃で5h重合を行ってポリカーボネートジオール粗製物を得た。得られた反応液を塩化メチレン約20mLに溶解し、氷冷したメタノール100mLに滴下した。得られた液を撹拌すると、高粘度の液が沈殿し、その後メタノールを除去することで高粘度の液体を得た。この再沈殿操作を2回繰り返して得られたポリカーボネートジオールをエバポレーターで乾燥した。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD1-1」とする。
PCD1-1の反応の転化率、Mn(NMR)、Mn(GPC)、分子量分布(D)、触媒由来のリン含有量を測定し、結果を表1に示した。
なお、このPCD1-1中の構造単位A(TMC由来)と構造単位B(DD由来)のモル比をH-NMRで測定したところ、97:3であった。また、60℃での粘度は18000mPa・sであった。
末端構造および割合をH-NMRで確認したところ、水酸基以外の末端基は観測されなかった。ポリカーボネートポリオールの1分子当たりの末端水酸基数としては、2.0に相当する。末端水酸基の比率を確認したところ、トリメチレンカーボネートに由来する末端水酸基が全末端の99モル%以上であった。トリメチレンカーボネートの含有割合をH-NMRで確認したところトリメチレンカーボネートのピークは観測されなかった。
<実施例1-2>
実施例1-1のジフェニルリン酸の量を1/10に減らし、実施例1-1と同様の反応を行った。
試験管にトリメチレンカーボネート(20g,196mmol,30eq.)、1,10-デカンジオール(1.14g,6.5mmol,1.0eq.)、ジフェニルリン酸(4.9mg,200μmol,0.003eq.、リン原子として30ppm相当)を加え、窒素気流下、機械撹拌装置を用いて100℃で重合を行った。24h後に得られたポリカーボネートジオールを室温下に抜き出した。
このポリカーボネートジオールを「PCD1-2」とする。
このPCD1-2について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
<実施例1-3>
1Lセパラブルフラスコにトリメチレンカーボネート(471g,4.61mol,17.9eq.)、1,10-デカンジオール(45g,0.25mol,1.0eq.)を加え80℃で完全に融解させた後、ジフェニルリン酸(1.3g,5.2mmol,0.03eq.)を加え、窒素気流下、機械撹拌装置を用いて80℃で6h重合させて、ポリカーボネートジオール粗製物を得た。得られた反応液を塩化メチレン500gに溶解し、メタノール2Lに撹拌しながら滴下した。滴下が終了した後、静置したところ高粘度の液が沈殿した。その後、メタノールを除去することで高粘度の液体を得た。この作業を3回繰り返しポリカーボネートジオールを得た。
このポリカーボネートジオールを「PCD1-3」とする。
このPCD1-3について、実施例1-1と同様に分析を行って、結果を表1に示した。
なお、このPCD1-3中の構造単位A(TMC由来)と構造単位B(DD由来)のモル比をH-NMRで測定したところ、95:5であった。また、60℃での粘度は4200mPa・sであった。水酸基価を測定したところ、61.7mgKOH/gであり、水酸基価からから換算した分子量としては1819に相当する。着色を確認したところ、APHAは20であった。
末端構造および割合をH-NMRで確認したところ、アルキル末端に由来する末端基は観測されず、すべてが末端水酸基であり、1分子当たりの末端水酸基数は2.0である。末端水酸基の由来の比率をH-NMRで確認したところ、トリメチレンカーボネートに由来する末端水酸基が全末端の99モル%以上であった。またトリメチレンカーボネートのピークは観測されなかった。
<実施例1-4>
100mLガラス製反応容器にトリメチレンカーボネート(10.5g,0.10mol,17.9eq.)、1,10-デカンジオール(1.0g,5.7mmol,1.0eq.)、酢酸ナトリウム(42mg,513μmol,0.09eq.)を加え、窒素気流下、機械撹拌装置を用いて80℃で5h重合を行い、ポリカーボネートジオール粗製物を得た。得られた反応液をトルエン約20mLに溶解し、脱塩水20mLで分液洗浄を3回行った。得られたポリカーボネートジオールをエバポレーターで乾燥した。着色を確認したところ、APHAは25であった。
このポリカーボネートジオールを「PCD1-4」とする。
このPCD1-4について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
<比較例1-1>
実施例1-1と同様な手法でジフェニルリン酸と同じモル量のオクチル酸スズ(81mg,200μmol,0.03eq.Sn(Mw118.7)として1149ppm相当)を触媒として使用して、同様にポリカーボネートジオールを製造した。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD-H1-1」とする。
このPCD-H1-1について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
<比較例1-2>
反応温度を140℃と変更したこと以外は実施例1-2と同じ条件でポリカーボネートジオールを製造した。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD-H1-2」とする。
このPCD-H1-2について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
<比較例1-3>
1,3-プロパンジオールと1,10-デカンジオールとジフェニルカーボネートを用いた以下のエステル交換反応にて、実施例1-1と同等の組成および分子量のポリカーボネートジオールを製造した。
撹拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに1,3-プロパンジオール(1168.1g)、1,10-デカンジオール(82.7g)、ジフェニルカーボネート(3249.2g)、酢酸マグネシウム4水和物水溶液(7.2mL、濃度:8.4g/L)を入れ、窒素ガス置換した。撹拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、更に0.7kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた後に、170℃まで温度を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら60分間反応させて、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。その後、0.85質量%リン酸水溶液(2.8mL)を加えて酢酸マグネシウムを失活させて、更に3h同様の条件で留出させた後、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD-H1-3」とする。
このPCD-H1-3について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
なお、このPCD-H1-3中の構造単位A(1,3PD由来)と構造単位B(DD由来)のモル比をH-NMRで測定したところ96:4であった。また、60℃での粘度は40000mPa・sであった。
<比較例1-4>
1,3-プロパンジオールと1,10-デカンジオールとジフェニルカーボネートを用いた以下のエステル交換反応にて、実施例1-3と同等の組成および分子量のポリカーボネートジオールを製造した。
撹拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた1Lガラス製セパラブルフラスコに1,3-プロパンジオール(295.5g)、1,10-デカンジオール(20.9g)、ジフェニルカーボネート(798.9g)、酢酸マグネシウム4水和物水溶液(2.0mL、濃度:8.4g/L)を入れ、窒素ガス置換した。撹拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、更に0.7kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた後に、170℃まで温度を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら60分間反応させて、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。その後、0.85質量%リン酸水溶液(0.8mL)を加えて酢酸マグネシウムを失活させて、更に3h同様の条件で留出させた後、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD-H1-4」とする。
このPCD-H1-4について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
なお、このPCD-H1-4中の構造単位A(1,3PD由来)と構造単位B(DD由来)のモル比をH-NMRで測定したところ、95:5であった。また、60℃での粘度は9700mPa・sであった。水酸基価を測定したところ、60.8mgKOH/gであり、水酸基価からから換算した分子量としては1845に相当する。末端構造および割合をH-NMRで確認したところ、末端フェノキシ基が全末端基に対する割合で0.05%存在した。
<比較例1-5>
実施例1-3と同様の条件でジフェニルリン酸を用いた重合を行って、ポリカーボネートジオール粗製物を得、その後の再沈殿操作を実施せずにポリカーボネートジオールとした。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD-H1-5」とする。
このPCD-H1-5について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
<比較例1-6>
実施例1-4と同様の条件で酢酸ナトリウムを用いた重合を行い、ポリカーボネートジオール粗製物を得、その後の分液洗浄を実施せずにポリカーボネートジオールとした。
このポリカーボネートジオールを「PCD-H1-6」とする。
このPCD-H1-6について、実施例1-1と同様に分析を行って結果を表1に示した。
Figure 2023039907000018
以下の表2に、実施例1-1、実施例1-3、比較例1-3及び比較例1-4で得られたポリカーボネートジオールの構造単位A:構造単位Bモル比(表2中、「A:B」と記載する。)と分子量及び分子量分布(D)と60℃の粘度を示す。
Figure 2023039907000019
<考察>
実施例1-1~5と比較例1-1~4の比較で分かるように、特定の触媒および触媒量を用いて、適切な反応温度で開環重合を実施することで、分子量分布の狭いポリカーボネートジオールを得ることができた。
実施例1-1と比較例1-3および実施例1-3と比較例1-4の比較から、同等の組成および分子量のポリカーボネートジオールの比較において、分子量分布の狭いポリカーボネートジオールは粘度が低かった。
[分子量分布変化率(ΔD)の測定]
上記の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオールについて100℃、12hの加熱を行い、分子量分布(D)の変化を確認した。
100℃、12h加熱後の分子量分布変化率(ΔD)は以下の式で算出される。
分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/D
D:ポリカーボネートポリオールの分子量分布
D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布
<実施例2-1>
実施例1-1で得られたPCD1-1(2g)をガラス瓶に入れて、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<実施例2-2>
実施例1-3で得られたPCD1-34(2g)をガラス瓶に入れて、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<実施例2-3>
実施例1-4で得られたPCD1-4(2g)をガラス瓶に入れて、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<実施例2-4>
実施例1-4で得られたPCD1-4(2g)について、更に水洗浄を3回実施した。その後、ガラス瓶に入れて、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<比較例2-1>
実施例1-1で得られたPCD1-1(2g、P:47ppm含有)およびジフェニルリン酸(4.9mg、20μmol,P300ppm相当)をガラス瓶に入れて溶解させた後、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<比較例2-2>
実施例1-1で得られたPCD1-1(2g、P:47ppm含有)およびジフェニルリン酸(49mg、200μmol,P:3000ppm相当)をガラス瓶に入れて溶解させた後、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<比較例2-3>
比較例1-5で得られたPCD-H1-5をガラス瓶に入れて、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
<比較例2-4>
比較例1-6で得られたPCD-H1-6をガラス瓶に入れて、オーブンで100℃で12h加熱し、分子量分布変化率(ΔD)を調べた。
実施例2-1~4、比較例2-1~4の分子量分布変化率(ΔD)の測定結果を、触媒種及び触媒量と共に以下の表3にまとめた。
Figure 2023039907000020
<考察>
実施例2-1~2-4の結果から、本発明のポリカーボネートジオールは加熱下において分子量分布の変化率(ΔD)が小さく、加熱下において安定であった。
一方で比較例2-1~2-4で示されるようにPやNaなどの元素を含む化合物を多量に含有する場合は、加熱時に分子量分布が広がり、熱安定性が悪かった。
[ポリカーボネートジオールの製造と分析II]
異なる開始剤ジオールおよび環状カーボネートでポリカーボネートジオールの製造を行い、得られたポリカーボネートジオールについてH-NMRやMALDI-MASS分析を行い、目的のポリカーボネートジオールの構造が得られていることを確認した。
<実施例3-1>
実施例1-1の開始剤ジオールである1,10-デカンジオールをイソソルバイド(ISB)に変更して同様に重合を行い、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-1」とする。
<実施例3-2>
実施例1-1の開始剤ジオールである1,10-デカンジオールをジメチロールプロピオン酸(DMPA)に変更して同様に重合を行い、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-2」とする。
<実施例3-3>
植物由来の1,3-プロパンジオールを原料に合成したトリメチレンカーボネートを用いて、実施例1-1と同様にポリカーボネートジオールを合成した。このときの転化率は99.5%であった。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-3」とする。
<実施例3-4>
開始剤ジオール1,10-デカンジオール(1eq.)、環状カーボネートとして、トリメチレンカーボネート(30eq.)と2-メチル-2-カルボキシメチル-トリメチレンカーボネート(TMC-Me-COOH)(15eq.)、触媒としてジフェニルリン酸(0.03eq.)を使用し、実施例1-1と同様に操作を行い、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-4」とする。
H-NMRおよびMALDI-MASSでの解析において、理論量の末端水酸基およびカルボキシル基がポリカーボネートポリオール中に残っており、対応する構造のポリカーボネートポリオールが得られていることが確認できた。また、H-NMRの解析により、得られたポリカーボネートポリオール中のTMCとTMC-Me-COOHに由来する構造単位の割合は33.4:16.6であった。
<実施例3-5>
開始剤ジオール1,10-デカンジオール(1eq.)、環状カーボネートとして、トリメチレンカーボネート(30eq.)と2-メチル-2-ベンジルオキシカルボニルートリメチレンカーボネート(TMC-Me-COOBn)(15eq.)、触媒としてジフェニルリン酸(0.03eq.)を使用し、実施例1-1と同様に操作を行い、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-5」とする。
H-NMRおよびMALDI-MASSでの解析において、理論量の末端水酸基およびベンジルオキシカルボニル基がポリカーボネートポリオール中に残っており、対応する構造のポリカーボネートポリオールが得られていることが確認できた。
また、H-NMRの解析により、得られたポリカーボネートポリオール中のTMCとTMC-Me-COOBnに由来する構造単位の割合は23.4:13.1であった。
<実施例3-6>
開始剤ジオール1,4-ブタンジオール(1eq.)、環状カーボネートとして、シクロビスヘキサメチレンカーボネート(1,3,10,12-Tetraoxacyclooctadecane-2,11-dione cas:82613-63-6)(HMC-D)(6.6eq.)、触媒として1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)(0.1eq.)を用いて、実施例1-4と同様に操作を行い、ポリカーボネートジオールを得た。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-6」とする。
<実施例3-7>
開始剤ジオールの1,10-デカンジオールを水素化ポリブタジエンポリオール(日本曹達株式会社製 GI1000)5.0gに変更し、トリメチレンカーボネート5.0g、酢酸ナトリウム40mg、トルエン10mLを用いて、実施例1-4と同様の操作を行い、ポリカーボネートジオールを得た。反応開始時は2相に分離していたが、得られたポリカーボネートジオールは分離することなく均一であった。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-7」とする。
<実施例3-8>
開始剤ジオールの1,10-デカンジオールをポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製 PTMG1000)5.0gに変更し、トリメチレンカーボネート5.0g、酢酸ナトリウム40mg、トルエン10mLを用いて、実施例1-4と同様の操作を行い、ポリカーボネートジオールを得た。反応開始時は2相に分離していたが、得られたポリカーボネートジオールは分離することなく均一であった。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-8」とする。
<実施例3-9>
開始剤ジオールの1,10-デカンジオールをシリコーンジオール(カルビノール変性ジメチルシロキサン 信越化学株式会社製 KF6000)5.0gに変更し、トリメチレンカーボネート5.0g、酢酸ナトリウム40mg、トルエン10mLを用いて、実施例1-4と同様の操作を行い、ポリカーボネートジオールを得た。反応開始時は2相に分離していたが、得られたポリカーボネートジオールは分離することなく均一であった。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-9」とする。
<実施例3-10>
開始剤ジオールとして、1,3-プロパンジオール(1,3PD)(2.48g,1eq.)、環状カーボネートとして5-メチル-5-(2,5,8,11-テトラオキサドデシル)-1,3-ジオキサ-2-オン(1)(cas:1365611-65-9)(TOTMC)(86.2g,9.0eq.)、触媒としてジフェニルリン酸(0.16g,0.02eq.)を使用し、実施例1-1と同様の方法で130時間反応させた。
得られたポリカーボネートジオール組成物を、ヘキサン及びアセトンの混合液に溶解させ、展開溶媒をヘキサン及びアセトンの混合液から途中でジクロロメタン及びメタノールの混合液に変更して、カラムクロマトグラフィーで精製した。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD3-10」とする。
PCD3-10のリン原子の含有量を分析したところ、8ppmであった。また、PCD3-10の水酸基価を測定したところ、64.1mgKOH/gであり、水酸基価から換算した分子量としては1748に相当する。
実施例3-1~3-10の結果を下記表4にまとめた。
Figure 2023039907000021
[ポリカーボネートポリオールの製造と分析III]
ポリオールYを、それぞれ以下に示す各種置換基を有する水酸基を3つ有するトリオールに変更して、表5に示す触媒量、反応温度、反応時間でポリカーボネートポリオールの製造と分析を行った。H-NMRおよびMALDI-MASSでの解析において、理論量の末端水酸基およびベンジルオキシカルボニル基がポリカーボネートポリオール中に残っており、対応する構造のポリカーボネートポリオールが得られていることが確認できた。
<実施例4-1>
シクロドデカントリメタノール(CDTM)を用いた。得られたポリカーボネートポリオールを「PCD4-1」とする。
<実施例4-2>
イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)(ICTE)を用いた。得られたポリカーボネートポリオールを「PCD4-2」とする。
<実施例4-3>
1,3,5-ベンゼントリメタノール(PhTM)を用いた。得られたポリカーボネートポリオールを「PCD4-3」とする。
<実施例4-4>
トリメチロールプロパン(TMP)を用いた。得られたポリカーボネートポリオールを「PCD4-4」とする。
実施例4-1~実施例4-4で得られたポリカーボネートポリオールの転化率とMn(GPC)、分子量分布(D)を測定し、結果を表5に示した。
Figure 2023039907000022
[ポリウレタンの合成と評価]
得られたポリカーボネートジオールを用いて、ポリウレタンを合成し、物性評価を行った。
<実施例5-1>
実施例1-3で得られたPCD1-3を用いて、後述の合成法でポリウレタンを合成し、後述の物性評価を行った。
<PCD1-3>
分子量分布(D):1.08
ポリカーボネートジオール中の構造単位Aと構造単位Bのモル比:95:5
水酸基価:61.7mgKOH/g
水酸基価から求めた数平均分子量:1819
60℃での粘度 4200mPa・s
<比較例5-1>
比較例1-4で得られたエステル交換法で合成した分子量分布の広いPCD-H1-4を用いて、実施例5-1と同様の手法でポリウレタンを合成し、物性評価を行った。
<PCD-H1-4>
分子量分布(D):2.04
ポリカーボネートジオール中の構造単位Aと構造単位Bのモル比:95:5
水酸基価:60.8mgKOH/g
水酸基価から求めた数平均分子量:1845
60℃での粘度:9700mPa・s
<ポリウレタンの合成>
1Lのブリキタイプの反応器に、100℃で加熱溶融したPCD1-3:247.7gと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI):102.3gを仕込み、30分反応させプレポリマーを得た。その後、1,4-ブタンジオール(BG):22.8gを添加し、50秒間撹拌した後、別途100℃で温調しておいた金型上に流し込み、硬化させた。(仕込みモル比:MDI/BG/PCD=3/2/1、NCO/OH比=1.05)その後、100℃で1時間後硬化させ、ポリウレタン硬化物を得た。
<物性評価>
(圧縮成形)
圧縮成形用の金型(15cm×8cm×厚さ2mm)にPET製離型フィルム、ポリウレタン硬化物を設置後、更にPET製離型フィルム、金型の順に載せた。これらを予め余熱しておいた加熱プレス機(東洋精機製作所製、製品名「ミニテストプレス」)のステージ上に設置した後、加熱プレス機のステージを接触させ、加圧した(圧力:0.5MPa×温度:218~225℃×時間:2分間)。その後、加熱プレス機の圧力設定を徐々に上げ、13MPaで2分間加熱し成形を終了した。加熱プレス機の圧力を下げて金型を取り出し、予め冷却水を流して冷やしておいた冷却用プレス機(東洋精機製作所製、製品名「ミニテストプレス」)に設置し冷却(圧力10MPa×時間2分)することでシート状のポリウレタン成形体を得た。ポリウレタン成形体について、以下の物性評価を行い、結果を表6に示した。なお、粘弾性測定には厚さ1mmの金型を用いて、同様の手法で作成した厚さ1mmのシートを使用した。
(ポリウレタンの重量平均分子量(Mw))
ポリウレタンをジメチルアセトアミドに溶解し、濃度が0.14質量%になるようにジメチルアセトアミド溶液とした。GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC-8220」(カラム:TSKGEL
GMHXL-L・2本)〕を用いて、該ジメチルアセトアミド溶液を注入し、標準ポリスチレン換算で、ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を測定した。
(硬さ(15秒後))
ポリウレタン成形体を3cm角に切り出し、3枚重ねにしたものを試験片とした(n=5)。アスカーゴム高度計ISO-A型(高分子計器株式会社製)を用いて接触15秒後の硬さを測定し、中央値から硬さを求めた。
(100%モジュラス・300%モジュラス)
打ち抜き機を用いてポリウレタン成形体(2mm厚シート)をダンベル状3号形に打抜いた。引張試験機(AGS-10kNX、島津製作所製)および伸び計(DSES-1000、島津製作所製)を使用し、標線間距離20mm、引張速度200mm、n=3で引張試験を行い、伸び率が100%もしくは300%の際の応力をそれぞれ求めた。それらの値の中央値をそれぞれ100%モジュラスもしくは300%モジュラスとした。
(引張強さ・切断時伸び)
100%モジュラス・300%モジュラス測定時と同様の試験片、試験条件で引張試験を行い、破断した際の応力(引張強さと称する)、伸び率(切断時伸びと称する)を測定した。
(圧縮永久ひずみ)
JIS K-6262に準拠し、打ち抜き機を用いてポリウレタン成形体(2mm厚シート)をφ13mmに打抜いた3枚重ねしたものを試験片としn=3作製した。このときの高さを厚み計を用いて採寸した。試験片を下部圧縮板(株式会社ダンベル)に載せ、スペーサー(4.72mm、株式会社ダンベル)、上部圧縮板、六角穴付きボルトで圧縮、固定した。これを70℃で温調しておいた循環式恒温槽に入れ、24時間加熱した。その後、恒温槽から取り出し、速やかに圧縮板を開放、試験片を木製の台の上にて23℃で30分静置した。静置後の試験片高さを厚み計で測定し、それぞれの圧縮永久ひずみを算出し、n3の中央値を代表値とした。
(ポリウレタンの粘弾性測定(tanδピーク値・tanδピーク温度・tanδ半価幅)
上記の圧縮成形の金型のみを変更することにより、厚さ1mmシート状のポリウレタン成形体を得て、粘弾性測定を行った。
DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、試験片寸法4×20×1mm、歪0.1%、周波数10Hz、引張モード、昇温速度3℃/min、温度範囲-100~200℃の条件で動的粘弾性を測定した。
得られたポリウレタンの分析値を下の表6にまとめた。
また、粘弾性の測定結果を図1(Log E’(Pa)/温度(℃)グラフ、図2(tanδ/温度(℃))に示す。
Figure 2023039907000023
<考察>
実施例5-1では、用いたポリカーボネートポリオールの粘度が低いために、ポリウレタン製造中の液粘度が低下し、仕込み、攪拌、移送などが容易であり、ハンドリング性が向上した。またポリカーボネートジオールをあらかじめ100℃で溶融、保温し、ポリウレタンの製造を実施したが、途中で粘度が上昇したり、変質することはなかった。実施例5-1で得られたポリウレタン成形体は、ポリカーボネートポリオールとしての特徴である引張強さおよび切断時伸びに優れた機械強度の高いポリウレタンである。
実施例5-1と比較例5-1との比較から、分子量分布の狭いポリカーボネートポリオールでは、圧縮永久ひずみが低く、ポリウレタンの圧縮変形に対する復元性(耐へたり性)が高かった。また粘弾性測定におけるtanδ(損失正接)の値が高く、エラストマーとして使用した際に衝撃吸収や耐摩耗性に優れる。

Claims (24)

  1. ポリカーボネートポリオールを含有する組成物であって、
    前記ポリカーボネートポリオールが下記(1)~(4)の条件を満たす、ポリカーボネートポリオール組成物。
    (1) 下記式(A)で表される構造単位Aを含む
    (2) 数平均分子量(Mn)が300以上8000以下
    (3) 分子量分布(D)が1.7以下
    (4) 下記式で算出される100℃で12時間加熱後の分子量分布変化率(ΔD)が0.20以下
    分子量分布変化率(ΔD)=(D1-D)/D
    D:ポリカーボネートポリオールの分子量分布
    D1:100℃で12時間加熱後の該ポリカーボネートポリオールの分子量分布
    Figure 2023039907000024
    (式(A)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
  2. 前記ポリカーボネートポリオールが、更に、下記式(B)で表される構造単位Bを含む、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
    Figure 2023039907000025
    (式(B)中、Rは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数3以上のアルキレン基を表し、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。ただし、Rは前記式(A)中のRとは異なる。)
  3. 前記ポリカーボネートポリオールの分子鎖末端のうち、-R-OH基の割合が、全末端基の総モル量100%に対して、80モル%以上である、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  4. 前記ポリカーボネートポリオールの1分子当たりの末端水酸基の数が1.8~6.0である、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  5. 組成物中の金属元素およびリン元素の合計含有量が150質量ppm以下である、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  6. 組成物中のリン元素含有量が0.01~150質量ppmである、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  7. 組成物中のナトリウム元素含有量が0.01~150質量ppmである、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  8. 芳香環を有するリン化合物を含む、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  9. 組成物中の下記式(1)で表される環状カーボネートXの含有割合が、該組成物の総質量100%に対して、1質量%以下である、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
    Figure 2023039907000026
    (式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子であり、該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。Zは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
  10. 前記環状カーボネートXが下記式(1A)で表される、請求項9に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
    Figure 2023039907000027
    (式(1A)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子を表す。該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
  11. 前記ポリカーボネートポリオール中の前記構造単位Aの含有割合が、該ポリカーボネートポリオールを構成する全構造単位の総モル量100%に対して、70モル%以上である、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  12. 前記ポリカーボネートポリオールが植物由来の原料を用いて製造された、請求項1に記載のポリカーボネートポリオール組成物。
  13. ポリオールYを開始剤として、重合触媒の存在下、下記式(1)で表される環状カーボネートXを開環重合する工程を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
    Figure 2023039907000028
    (式(1)中、X~Xは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子であり、該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。Zは、側鎖置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
  14. 前記環状カーボネートXが下記式(1A)で表される、請求項13に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
    Figure 2023039907000029
    (式(1A)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基または水素原子を表す。該アルキル基は前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい。)
  15. 前記環状カーボネートXがトリメチレンカーボネートである、請求項14に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
  16. 前記ポリオールYが、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種、若しくは、これらの原子を含む置換基を有してもよい、炭素数2~50のジオール化合物またはトリオール化合物である、請求項13に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
  17. 前記ポリオールYが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びシリコーンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴマーポリオールである、請求項13に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
  18. 前記開環重合後に前記重合触媒を失活および/または除去する工程を含む、請求項13に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
  19. リン元素を含む前記重合触媒を、前記環状カーボネートXと前記ポリオールYとの合計質量に対し、リン元素量として0.01~1000質量ppm使用して、前記開環重合を行う、請求項13に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
  20. 前記環状カーボネートXと前記ポリオールYの合計質量100部に対して50質量部以下の溶媒を用いて又は溶媒を使用しないで前記開環重合を行う、請求項13に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法。
  21. 請求項1~12のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオール組成物を用いて得られたポリウレタン。
  22. ポリイソシアネートと鎖延長剤と前記ポリカーボネートポリオール組成物とを用いて製造された、請求項21に記載のポリウレタン。
  23. 請求項1~12のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオール組成物を用いるポリウレタンの製造方法。
  24. 請求項13~20のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオール組成物の製造方法によりポリカーボネートポリオール組成物を得ること、及び
    前記得られたポリカーボネートポリオール組成物を用いて、ポリウレタンを製造することを含む、ポリウレタンの製造方法。
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