以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態における溶融金属温度測定装置は、比較的高温な溶融している金属(合金を含む)(溶融金属)の温度をその輝度値から測る装置である。この溶融金属温度測定装置は、測定対象の溶融金属を時系列に撮像した時系列な複数の画像を取得する画像取得部と、 前記画像取得部で取得した複数の画像それぞれから各最大輝度値もしくは平均輝度値を抽出することによって時系列な第1輝度データを生成する第1生成部と、前記第1生成部で生成した第1輝度データの第1代表値を求める第1代表値演算部と、前記第1生成部で生成した第1輝度データから、前記第1代表値演算部で求めた第1代表値より小さいデータであって、かつ、前記第1代表値から所定の第2閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第2輝度データを生成する第2生成部と、前記第2生成部で生成した第2輝度データの第2代表値を求める第2代表値演算部と、前記第2生成部で生成した第2輝度データから、前記第2代表値演算部で求めた第2代表値より大きいデータおよび前記第2代表値より小さいデータのうちの少なくとも前記第2代表値より大きいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第3輝度データを生成する第3生成部と、前記第3生成部で生成した第3輝度データの第3代表値を求める第3代表値演算部と、輝度値と前記溶融金属の温度との対応関係を表す対応関係情報を用いることによって、前記第3代表値演算部で求めた第3代表値を前記溶融金属の温度に換算することによって前記溶融金属の温度を求める温度換算部とを備える。以下、一例として、前記溶融金属が精錬の際の溶銑である場合について、より具体的に説明する。なお、溶融金属温度測定装置は、前記溶融金属が精錬の際の溶銑である場合に限らず、溶融している任意の金属の温度測定に用いられてよい。
図1は、実施形態における溶融金属温度測定装置の構成を示すブロック図である。図2は、一例として、精錬プロセスにおける溶鋼鍋中の溶銑の温度測定に適用される場合を説明するための模式図である。図3は、第1輝度データの生成手法を説明するための図である。図4は、第2輝度データの生成手法を説明するための図である。図3および図4の各横軸は、フレーム数(経過時間)であり、これらの各縦軸は、輝度値である。図5は、第1ないし第3輝度データの生成手法を説明するための図である。図5Aは、第1輝度データのヒストグラムであり、その第1代表値を示す。図5Bは、図5Aに示す第1輝度データから、発塵や発煙の影響を受けたデータを除去して第2輝度データを生成する様子をヒストグラムを用いて示す。図5Cは、第2輝度データのヒストグラムであり、その第2代表値を示す。図5Dは、図5Cに示す第2輝度データから、発炎や残存発塵や発煙の影響を受けたデータを除去して第3輝度データを生成する様子をヒストグラムを用いて示す。図5Eは、第3輝度データのヒストグラムであり、その第3代表値を示す。図5Aないし図5Eの各横軸は、輝度値(輝度値の各階級)であり、これらの各縦軸は、頻度である。図6は、輝度値と溶融金属の温度との対応関係を表す対応関係情報を説明するための図である。図6の横軸は、輝度値であり、その縦軸は、温度である。
実施形態における溶融金属温度測定装置Sは、例えば、図1に示すように、画像取得部1と、制御処理部2と、入力部3と、出力部4と、インターフェース部(IF)5と、記憶部6とを備える。
画像取得部1は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、測定対象の溶融金属を時系列に撮像した時系列な複数の画像(測定対象画像)を取得する装置である。画像取得部1は、例えば、測定対象の溶融金属を時系列に撮像して時系列な複数の測定対象画像を生成する撮像装置である。前記撮像装置は、例えば、カラーデジタルカメラやモノクロデジタルカメラ等である。前記撮像装置は、所定の時間間隔で連続的に溶融金属の静止画を生成することで前記時系列な複数の画像を取得してよいが、本実施形態では、例えばフレームレート36[fps]やフレームレート30[fps]やフレームレート24[fps]等の所定のフレームレートで溶融金属の動画を生成することで前記時系列な複数の画像を取得する。このため、本実施形態では、動画の各フレームが各測定対象画像となり、フレーム数(フレーム番号)で経過時間(測定対象画像の生成時点)が表される(フレーム数0は、測定開示時点を表す)。測定開始時点の時刻が分かれば、各測定対象画像の生成時刻が分かる。
あるいは、画像取得部1は、例えば、外部の機器との間でデータを入出力するインターフェース回路である。前記外部の機器は、前記時系列な複数の画像を記憶した、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリおよびSDカード(登録商標)等の記憶媒体である。あるいは、前記外部の機器は、前記時系列な複数の画像を記録した、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)およびDVD-R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記録媒体からデータを読み込むドライブ装置である。この画像取得部1としてのインターフェース回路は、有線または無線によって前記外部の機器に接続されてよい。あるいは、画像取得部1は、例えば、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であって、前記外部の機器は、ネットワーク(WAN(Wide Area Network、公衆通信網を含む))あるいはLAN(Local Area Network)を介して前記通信インターフェース回路に接続され、前記時系列な複数の画像を管理するサーバ装置である。なお、画像取得部1がインターフェース回路や通信インターフェース回路である場合では、画像取得部1は、IF部5と兼用されてもよい(すなわち、IF部5が画像取得部1として用いられてもよい)。
本実施形態では、画像取得部1は、略リアルタイムで温度を測定するために、例えば、図2に示すように、図略の高炉から出銑して溶鋼鍋(溶銑鍋)MIに貯留された溶銑の湯面を撮像するように、製鉄プラントに配設されたデジタルカメラ(以下、「カメラ」と略記する)1である。図2に示す例では、カメラ1として、製鉄プラントに既に設置されている、溶鋼鍋MIの溶銑を監視(モニタ)する監視カメラが流用される。このため、画像取得部1としてのカメラ1を設置する工数や前記カメラ1のコストが低減できる。このため、カメラ1は、分配器SUを介して監視モニタMDおよび溶融金属温度測定装置Sの制御処理部2それぞれに接続され、カメラ1は、その生成した溶銑の動画(映像信号)を分配器SUへ出力し、分配器SUは、前記溶銑の動画(映像信号)を2つに分け、一方の前記溶銑の動画(映像信号)を監視モニタMDへ出力し、他方の前記溶銑の動画(映像信号)を溶融金属温度測定装置Sの制御処理部2へ出力する。監視モニタMDには、溶銑の動画が映し出される。溶融金属温度測定装置Sの出力部4には、溶銑の動画が映し出される。
入力部3は、制御処理部2に接続され、例えば温度測定開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば温度測定の年月日等の、溶融金属温度測定装置Sの稼働を行う上で必要な各種データを溶融金属温度測定装置Sに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部4は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、入力部3から入力されたコマンドやデータ、および、溶融金属温度測定装置Sによって測定された温度等を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
なお、入力部3および出力部4は、タッチパネルより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部3は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部4は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として溶融金属温度測定装置Sに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い溶融金属温度測定装置Sが提供される。
IF部5は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であっても良い。
記憶部6は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、溶融金属温度測定装置Sの各部1、3~6を制御する制御プログラムや、画像取得部1で取得した複数の画像それぞれから各最大輝度値もしくは平均輝度値を抽出することによって時系列な第1輝度データを生成する第1生成プログラムや、前記第1生成プログラムで生成した第1輝度データの第1代表値を求める第1代表値演算プログラムや、前記第1生成プログラムで生成した第1輝度データから、前記第1代表値演算プログラムで求めた第1代表値より小さく、かつ、前記第1代表値から所定の第2閾値以上離れたデータを除去することによって時系列な第2輝度データを生成する第2生成プログラムや、前記第2生成プログラムで生成した第2輝度データの第2代表値を求める第2代表値演算プログラムや、前記第2生成プログラムで生成した第2輝度データから、前記第2代表値演算プログラムで求めた第2代表値より大きいデータおよび前記第2代表値より小さいデータのうちの少なくとも前記第2代表値より大きいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第3輝度データを生成する第3生成プログラムや、前記第3生成プログラムで生成した第3輝度データの第3代表値を求める第3代表値演算プログラムや、輝度値と前記溶融金属の温度との対応関係を表す対応関係情報を用いることによって、前記第3代表値演算プログラムで求めた第3代表値を前記溶融金属の温度に換算することによって前記溶融金属の温度を求める温度換算プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、溶融金属を撮像した画像か否かを判定するための前記所定の第1閾値Th1や前記対応関係情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部6は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部6は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部2のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部6は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置を備えて構成されてもよい。
そして、記憶部6は、前記対応関係情報を記憶する対応関係情報記憶部61を機能的に備える。前記対応関係情報は、例えば、複数のサンプルにおける画像の輝度値と実測温度とから予め作成され、対応関係情報記憶部61に記憶される。その一例が図6に示されている。図6に示す対応関係情報は、複数のサンプル(例えば複数の溶銑等)における輝度値に対する実測温度をプロットした各点を、いわゆるウィーンの近似式によって近似した近似曲線αであり、この近似曲線αを表す関数式で対応関係情報記憶部61に記憶される。あるいは、この近似曲線αに基づいて作成された、輝度値から温度を検索するルックアップテーブルで、前記対応関係情報は、対応関係情報記憶部61に記憶される。前記ウィーンの近似式は、黒体放射のエネルギー分布のうち、強度のピークより高周波数側を表す近似式である。
制御処理部2は、溶融金属温度測定装置Sの各部1、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、測定対象の溶融金属の温度を求めるための回路である。制御処理部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部2は、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部21、第1生成部22、第1代表値演算部23、第2生成部24、第2代表値演算部25、第3生成部26、第3代表値演算部27および温度換算部28を機能的に備える。
制御部21は、溶融金属温度測定装置Sの各部1、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、溶融金属温度測定装置Sの全体制御を司るものである。
第1生成部22は、画像取得部1で取得した複数の画像それぞれから各最大輝度値もしくは平均輝度値を抽出することによって時系列な第1輝度データを生成するものである。発塵や発煙や発炎は、常時、生じているものではないので、時系列な第1輝度データを生成することで、発塵や発煙の影響を受けていない、あるいは、発塵や発煙の影響の少ないデータを第1輝度データに含めることができ、発炎の影響を受けていない、あるいは、発炎の影響の少ないデータを第1輝度データに含めることができる。溶融金属の温度は、最大輝度に依存するので、画像全体のなかに発塵や発煙の影響を受けた画素があっても、画像全体のなかには、発塵や発煙の影響を受けていない画素、あるいは、発塵や発煙の影響の少ない画素がある可能性が高いので、画像の最大輝度値を抽出することで、発塵や発煙の影響を受け難く、ロバストに溶融金属の温度が測定できる。
より具体的には、第1生成部22は、画像取得部1で取得した複数の画像それぞれから各最大輝度値もしくは平均輝度値を抽出し、前記抽出した時系列な複数の最大輝度値もしくは平均輝度値から前記第1閾値Th1以下または未満のデータを除去することによって時系列な第1輝度データを生成する。上述のように、本実施形態では、画像取得部1は、製鉄プラントの監視カメラと兼用されるため、溶鋼鍋MIに溶銑が貯留していない場合の動画も取得される。このため、画像取得部1で取得した複数の画像それぞれから抽出した時系列な(フレーム順の)複数の最大輝度値には、例えば、図3に示すように、溶融金属を撮像せずに、空の溶鋼鍋を撮像した画像の最大輝度値も含まれる。第1生成部22は、前記抽出した時系列な複数の最大輝度値から前記第1閾値Th1以下または未満のデータを除去することによって、このような溶融金属を撮像せずに空の溶鋼鍋を撮像した画像の最大輝度値を除去し、溶融金属を撮像した画像の最大輝度値から成る有効な第1輝度データを生成する。前記第1閾値Th1は、例えば、複数のサンプルから適宜に予め設定される。図3に示す例では、第1生成部22は、第1閾値Th1以下の最大輝度値となっているフレーム数Xより前の各データを除去するとともに、第1閾値Th1以下の最大輝度値となっているフレーム数Yより後の各データを除去することによって、フレーム数Xからフレーム数Yまでの各フレームの各最大輝度値を第1輝度データの各データとして残し、これによって前記第1輝度データを生成する。もちろん、画像取得部1が溶融金属を撮像した時系列な複数の画像のみを取得する場合には、第1生成部22は、画像取得部1で取得した複数の画像それぞれから各最大輝度値を抽出することによって時系列な第1輝度データを生成してよい。
第1代表値演算部23は、第1生成部22で生成した第1輝度データの第1代表値を求めるものである。前記第1代表値は、前記第1輝度データの平均値、中央値または最頻値等である。本実施形態では、前記第1代表値は、前記第1輝度データの平均値(第1平均値)μ1である。図3に示す、フレーム数Xからフレーム数Yまでの各最大輝度値から成る第1輝度データD1では、第1代表値演算部23によって、図4および図5Aに示す第1平均値μ1が求められる。図5Aには、図3に示す第1輝度データD1について、最大輝度値(輝度値の階級)ごとにその頻度(発生数)を計数することによって作成された第1輝度データD1のヒストグラムが図示されている。
第2生成部24は、第1生成部22で生成した第1輝度データから、第1代表値演算部23で求めた第1代表値より小さいデータであって、かつ、前記第1代表値から所定の第2閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第2輝度データを生成するものである。前記第2閾値Th2は、例えば、複数のサンプルから適宜に予め設定されてよいが、本実施形態では、例えば、前記第2閾値Th2は、前記第1輝度データに基づいて求めた値である。より具体的には、前記第2閾値Th2は、前記第1輝度データの標準偏差σ1に基づいて求めた値(例えば1×σ1等)である。より詳しくは、第2生成部24は、前記第1輝度データの標準偏差σ1を求め、前記第2閾値Th2に1×σ1を設定する。図3に示す、フレーム数Xからフレーム数Yまでの各最大輝度値から成る第1輝度データD1では、第2生成部24によって、図4および図5Bに示す、第1平均値μ1より小さいデータであって、かつ、前記第1平均値μ1から1×σ1以上離れた前記データを除去することによって時系列な第2輝度データD2が求められる。図5Bでは、除去される前記データには、ハッチングが施されている。これにより、発塵や発煙の影響を受けたデータが第1輝度データから略除去され、発塵や発煙の影響を受けたデータを低減した第2輝度データが生成される。
第2代表値演算部25は、第2生成部24で生成した第2輝度データの第2代表値を求めるものである。前記第2代表値は、前記第1代表値と同様に、前記第2輝度データの平均値、中央値または最頻値等である。本実施形態では、前記第2代表値は、前記第2輝度データの平均値(第2平均値)μ2である。図3に示す第1輝度データD1に基づいて生成された第2輝度データD2では、第2代表値演算部25によって、図4および図5Cに示す第2平均値μ2が求められる。
第3生成部26は、第2生成部24で生成した第2輝度データから、第2代表値演算部25で求めた第2代表値より大きいデータおよび前記第2代表値より小さいデータのうちの少なくとも前記第2代表値より大きいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第3輝度データを生成するものである。第2代表値より大きいデータおよび前記第2代表値より小さいデータのうち少なくとも前記第2代表値より大きいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去することによって、発炎の影響を受けたデータが第2輝度データから略除去され、発炎の影響を受けたデータを低減した第3輝度データが生成される。前記第3閾値Th3は、例えば、複数のサンプルから適宜に予め設定されてよいが、本実施形態では、例えば、前記第3閾値Th3は、前記第2輝度データに基づいて求めた値である。より具体的には、前記第3閾値Th3は、前記第2輝度データの標準偏差σ2に基づいて求めた値(例えば1×σ2等)である。より詳しくは、第3生成部26は、前記第2輝度データの標準偏差σ2を求め、前記第3閾値Th3に1×σ2を設定する。
本実施形態では、第2生成部24による上述の情報処理では、除去しきれなかった発塵や発煙の影響(残発塵や残発煙の影響)を除去するために、第3生成部26は、第2生成部24で生成した第2輝度データから、第2代表値演算部25で求めた第2代表値より大きいデータおよび前記第2代表値より小さいデータのうちのいずれかであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第3輝度データを生成する。言い換えれば、第3生成部26は、第2生成部24で生成した第2輝度データから、第2代表値演算部25で求めた第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去することによって時系列な第3輝度データを生成する。図3に示す第1輝度データD1に基づいて生成された第2輝度データD2では、第3生成部26によって、図5Dに示す、第2平均値μ2より小さいデータであって、かつ、前記第2平均値μ2から1×σ2以上離れた前記データ、および、第2平均値μ1より大きいデータであって、かつ、前記第2平均値μ2から1×σ2以上離れた前記データを共に除去することによって時系列な第3輝度データD3が求められる。図5Dでは、除去される前記データには、ハッチングが施されている。
第3代表値演算部27は、第3生成部26で生成した第3輝度データの第3代表値を求めるものである。前記第3代表値は、前記第1代表値と同様に、前記第3輝度データの平均値、中央値または最頻値等である。本実施形態では、前記第3代表値は、前記第3輝度データの平均値(第3平均値)μ3である。図3に示す第1輝度データD1に基づいて生成された第3輝度データD3では、第3代表値演算部27によって、図4および図5Eに示す第3平均値μ3が求められる。
温度換算部28は、輝度値と溶融金属の温度との対応関係を表す対応関係情報を用いることによって、第3代表値演算部27で求めた第3代表値を前記溶融金属の温度に換算することによって前記溶融金属の温度を求めるものである。本実施形態では、温度換算部28は、記憶部6の対応関係情報記憶部61に記憶された、例えば図6に示す対応関係情報を用いることによって、第3代表値演算部27で求めた第3平均値μ3を温度に換算して溶銑の温度を求める。
これら制御処理部2、入力部3、出力部4、IF部5および記憶部6は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。これら各部2~6を構成するコンピュータは、例えば、製鉄プラントにおけるオペレーションルームに配置され、コンソールに組み込まれてよく(コンソールと兼用されてよく)、あるいは、コンソールと別体であってもよい。
次に、本実施形態の動作について説明する。図7は、前記溶融金属温度測定装置の動作を示すフローチャートである。
このような構成の溶融金属温度測定装置Sは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部2には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部21、第1生成部22、第1代表値演算部23、第2生成部24、第2代表値演算部25、第3生成部26、第3代表値演算部27および温度換算部28が機能的に構成される。
図7において、まず、溶融金属温度測定装置Sは、画像取得部1によって、測定対象の溶融金属を時系列に撮像した時系列な複数の画像を取得し、この取得した時系列な複数の画像を記憶部6に記憶する(S1)。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の第1生成部22によって、処理S1で画像取得部によって取得した複数の画像に基づいて時系列な第1輝度データを生成する(S2)。本実施形態では、例えば図3ないし図5に示す例において、第1生成部22は、画像取得部1で取得した複数の画像それぞれから各最大輝度値を抽出し、前記抽出した時系列な複数の最大輝度値から前記第1閾値Th1以下または未満のデータを除去することによって時系列な第1輝度データD1を生成する。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の第1代表値演算部23によって、処理S2で第1生成部22によって生成した第1輝度データの第1代表値を求める(S3)。本実施形態では、上述の例において、第1代表値演算部23は、第1代表値として、第1輝度データの平均値μ1を求める。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の第2生成部24によって、処理S2で第1生成部22によって生成した第1輝度データ、および、処理S3で第1代表値演算部23によって求めた第1代表値に基づいて時系列な第2輝度データを生成する(S4)。本実施形態では、上述の例において、第2生成部24は、第1輝度データの標準偏差σ1を求めて1×σ1を第2閾値Th2に設定し、処理S2で第1生成部22によって生成した第1輝度データD1から、処理S3で第1代表値演算部23によって求めた第1輝度データの平均値μ1より小さいデータであって、かつ、前記第1輝度データの平均値μ1から1×σ1以上離れた前記データを除去することによって時系列な第2輝度データD2を生成する。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の第2代表値演算部25によって、処理S4で第2生成部24によって生成した第2輝度データの第2代表値を求める(S5)。本実施形態では、上述の例において、第2代表値演算部25は、第2代表値として、第2輝度データの平均値μ2を求める。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の第3生成部26によって、処理S4で第2生成部24によって生成した第2輝度データ、および、処理S5で第2代表値演算部25によって求めた第2代表値に基づいて時系列な第3輝度データを生成する(S6)。本実施形態では、上述の例において、第3生成部26は、第2輝度データの標準偏差σ2を求めて1×σ2を第3閾値Th3に設定し、処理S4で第2生成部24によって生成した第2輝度データD2から、処理S5で第2代表値演算部25によって求めた第2輝度データの平均値μ2から1×σ2以上離れた前記データを除去することによって時系列な第3輝度データD3を生成する。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の第3代表値演算部27によって、処理S6で第3生成部26によって生成した第3輝度データの第3代表値を求める(S7)。本実施形態では、上述の例において、第3代表値演算部27は、第3代表値として、第3輝度データの平均値μ3を求める。
次に、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2の温度換算部28によって、輝度値と溶融金属の温度との対応関係を表す対応関係情報を用いて、処理S7で第3代表値演算部27によって求めた第3代表値を前記溶融金属の温度に換算することによって前記溶融金属の温度を求める(S8)。本実施形態では、例えば図3ないし図6に示す例では、温度換算部28は、記憶部6の対応関係情報記憶部61に記憶された、例えば図6に示す対応関係情報の近似曲線αを用いることによって、第3代表値演算部27で求めた第3輝度データの第3平均値μ3を温度に換算して溶銑の温度を求める。
そして、溶融金属温度測定装置Sは、制御処理部2によって、出力部4に、前記処理S8で求めた測定結果を出力し(S9)、本処理を終了する。なお、必要に応じて、前記測定結果は、IF部5から外部の機器へ出力されてもよい。
以上説明したように、実施形態における溶融金属温度測定装置Sならびにこれに実装された溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、第1輝度データから、第1代表値より小さいデータであって、かつ、前記第1代表値からの第2閾値以上離れた前記データを除去するので、発塵や発煙の影響を受けたデータを除去できる。上記溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、第2輝度データから、第2代表値より大きいデータおよび前記第2代表値より小さいデータのうちの少なくとも前記第2代表値より大きいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去するので、発炎の影響を受けたデータを除去できる。したがって、上記溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、溶融金属に発煙や発塵や発炎が生じても、より精度良く溶融金属の温度を測定できる。
本実施形態では、上記溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、第2輝度データから、第2代表値より大きいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データを除去するだけでなく、前記第2輝度データから、第2代表値より小さいデータであって、かつ、前記第2代表値から所定の第3閾値以上離れた前記データも除去するので、残発塵や残発煙の影響を受けたデータを除去できる。したがって、上記溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、溶融金属に発煙や発塵が生じても、さらにより精度良く溶融金属の温度を測定できる。
本実施形態によれば、精錬の際の溶銑の温度を求める溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムが提供できる。
なお、上述の実施形態において、第1生成部22は、前記複数の画像それぞれについて、所定の参照画像に基づいて設定した領域から前記最大輝度値を抽出してもよい。このような溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、最大輝度値を抽出する領域を設定することで、前記画像に溶融金属ではない被写体が映り込んでいる場合に、前記被写体の影響を低減できる。
図8は、この第1変形形態を説明するための図である。図8Aは、参照画像の一例を示し、図8Bは、画像取得部1で取得された画像に対し、図8Aに示す参照画像に最も相関の高い領域を探索している様子を示す。
第1生成部22は、前記参照画像を用いたパターンマッチングによって前記領域を設定する。より具体的には、例えば、図8Aに示すように、溶銑を貯留した溶鋼鍋を撮像した画像が参照画像RFとして用意され、記憶部6に予め記憶される。第1生成部22は、画像取得部1で取得した画像から最大輝度値を抽出する際に、まず、画像取得部1で取得した画像TPに対し、参照画像RFと最も相関の高い領域ARを探索し、前記最も相関の高い領域ARを、最大輝度値を抽出するための前記領域として設定する。より詳しくは、第1生成部22は、画像取得部1で取得した画像TPにおける参照画像RFと同サイズの領域と、参照画像FRと、の相関値を求める。この相関値の演算を、第1生成部22は、図8Bに示すように、画像取得部1で取得した画像TPにおける例えば平面視にて左上部から、所定の画素ずつずらしながら、右下部まで、全体に亘って順次に、実施し、各領域での各相関値を求める。第1生成部22は、これら複数の相関値の中から最も大きい相関値を求め、この求めた最も大きい相関値を持つ領域ARを、最大輝度値を抽出するための前記領域として設定する。なお、前記探索の際のずらし幅(画素数)を変え、粗い探索から始めて細かい探索へ移行することで、参照画像RFと最も相関の高い領域ARが探索されてもよい。そして、第1生成部22は、この設定した領域ARから前記最大輝度値を抽出する。
溶鋼鍋MIに貯留される溶銑の量が変化すると、カメラ1から見た、溶鋼鍋MIに貯留された溶銑の見え方が変化する。所定の参照画像に基づいて、最大輝度値を抽出するための前記領域を設定することで、溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、前記溶銑の見え方が変化した場合に対処できる。このため、溶銑の見え方に応じた複数の参照画像を用意することが好ましい。
また、上述の実施形態において、第1生成部22で生成した第1輝度データに対し、第1代表値演算部23で第1代表値を求める範囲であって、かつ、第2生成部24で第2輝度データを生成する前記範囲が入力部3から入力され、前記第1代表値演算部23は、前記入力部3に入力された前記範囲で前記第1代表値を求め、前記第2生成部24は、前記入力部3に入力された前記範囲で前記第2輝度データを生成してもよい。このような溶融金属温度測定装置S、溶融金属温度測定方法および溶融金属温度測定プログラムは、オペレータ(ユーザ)によって範囲を設定できるので、発煙や発塵や発炎の少ない区間の第1輝度データを指定できるから、より精度良く溶融金属の温度を測定できる。
図9は、この第2変形形態を説明するための図である。図9には、カメラ1で撮像した動画の各フレームそれぞれから抽出した各最大輝度値を、フレーム数の横軸と輝度値の縦軸とから成る座標空間に点(●)でプロットすることによって生成された、出力部4に表示される画面(範囲設定画面)SSが示されている。この範囲設定画面SSには、前記範囲を指定するための、垂直方向(上下方向)に延びる第1および第2バーSB1、SB2も表示されている。オペレータ(ユーザ)は、入力部3(例えばマウス)を操作することで、第1および第2バーSB1、SB2の各位置をフレーム数の横軸の方向に沿って変更し、これによって前記範囲が設定される。図9に示す例では、第1バーSB1は、フレーム数X+aに位置し、第2バーSB2は、フレーム数Y-bに位置しており(a、b>0)、フレーム数X+aからフレーム数Y-bまでの範囲が前記範囲として設定されている。第1代表値演算部23は、フレーム数X+aからフレーム数Y-bまでの範囲で第1代表値を求め、第2生成部24は、フレーム数X+aからフレーム数Y-bまでの範囲で第2輝度データを生成する。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。