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JP2022545732A - エピジチオジオキソピペラジン誘導体又はその薬学的に許容される塩を含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物 - Google Patents

エピジチオジオキソピペラジン誘導体又はその薬学的に許容される塩を含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物 Download PDF

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JP2022545732A JP2022513352A JP2022513352A JP2022545732A JP 2022545732 A JP2022545732 A JP 2022545732A JP 2022513352 A JP2022513352 A JP 2022513352A JP 2022513352 A JP2022513352 A JP 2022513352A JP 2022545732 A JP2022545732 A JP 2022545732A
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ウォン カン,サン
キョン リ,ウン
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Vasthera CoLtd
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Abstract

Figure 2022545732000001
本発明は、エピジチオジオキソピペラジン(epidithiodioxopiperazine)環に分子内ジスルフィド結合を含む母核構造に基づくエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物に関する。

Description

本発明は、エピジチオジオキソピペラジン(epidithiodioxopiperazine)環に分子内ジスルフィド結合を含む母核構造に基づくエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物に関する。
癌とは、簡単に定義すると、体内で正常細胞より速く増殖して成長する細胞の総称である。癌を腫瘍ともいうが、腫瘍は、正常細胞が単に速く成長及び増殖して大きさが大きくなって塊りを形成する良性腫瘍と、異常に変形した細胞が成長及び/又は増殖して他の部位に転移する悪性腫瘍に分けられ、いわゆる癌とは、前記悪性腫瘍を意味する。
このような癌は、大きく固形癌と血液癌に分けられる。胃癌や肺癌などのように、特定臓器で発生し、成長して他の臓器に転移するのが固形癌である。それとは異なり、特定臓器ではなく、血液や免疫細胞を作る造血器官で発生する癌は、癌細胞が特定部位に位置するのではなく、血液やリンパ系を循環するので、血液癌という。
これら固形癌と血液癌は、由来、発生位置、転移機序が異なるように、治療法も異なる。固形癌においては、特定臓器で発生するので、特定臓器に限定される場合は手術や放射線治療を行い、それらの局所治療が困難な場合は抗癌治療を行う。しかし、血液癌においては、特定部位に限定されないので、疾患の進行程度に関係なく、抗癌療法が主な治療法となる。
韓国登録特許第10-1633975号公報
Kirby and Robins, 1980, The Biosynthesis of Mycotoxins, New York: Academic Press Shah and Larsen, 1991, Mycopathologia, 116: 203-208 Sekita et al., 1981, Can. J. Microbiol., 27: 766-772
本発明者らは、固形癌治療のための天然物由来及び/又はその機能を模倣した合成小分子化合物を見出すべく鋭意研究を重ねた結果、グリオトキシン、ケトミンなどの天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体及びそれに類似した母核構造を共有する合成小分子誘導体が乳癌、肺癌、胃癌、皮膚癌、結腸癌、前立腺癌及び膵臓癌の成長、増殖及び/又は転移を抑制する活性を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明は、エピジチオジオキソピペラジン(epidithiodioxopiperazine)環に分子内ジスルフィド結合を含む母核構造に基づくエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
本発明の天然及び合成小分子エピジチオジオキソピペラジン誘導体を含む薬学的組成物は、細胞の生存率には影響を与えることなく、乳癌、肺癌、胃癌、皮膚癌、結腸癌、前立腺癌及び膵臓癌細胞を効率的に死滅させるだけでなく、腫瘍を移植したマウスモデルにおいて、腫瘍の成長を阻害したり、さらに腫瘍の体積を減少させることができる。
天然エピジチオジオキソピペラジン(epidithiodioxopiperazine; ETP)化合物、グリオトキシン(gliotoxin)及びケトミン(chetomin)の乳癌(breast cancer)細胞に対する化合物の各処理濃度における(A)生存率、(B及びC)増殖抑制効果を示す図である。 グリオトキシンのトリプルネガティブ乳癌(triple-negative breast cancer; TNBC)細胞に対する細胞周期進行(cell cycle progression)抑制効果を示す図である。 天然エピジチオジオキソピペラジン化合物、グリオトキシンの乳癌細胞に対する転移活性(migratory activity)抑制効果を示す図である。 天然エピジチオジオキソピペラジン化合物、ケトミンの乳癌細胞に対する転移活性抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の様々な癌細胞及び正常細胞に対する細胞毒性効果を示す図である。A~Jはそれぞれ乳癌細胞、肺癌細胞、胃癌細胞、皮膚癌細胞、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、膵臓癌細胞、正常乳房細胞、正常線維芽細胞及び正常上皮細胞を表記ETP化合物で24時間処理し、Cell titer-Gloアッセイシステムで定量した細胞生存率を示す図である(n=3)。線形回帰プログラム(linear regression program, GraphPad Prism)によりIC50値を決定した。それをKに示す。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の乳癌細胞に対するコロニー形成(colony formation)抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の肺癌細胞に対するコロニー形成抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の胃癌細胞に対するコロニー形成抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の皮膚癌細胞に対するコロニー形成抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の結腸癌細胞に対するコロニー形成抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の前立腺癌細胞に対するコロニー形成抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の膵臓癌細胞に対するコロニー形成抑制効果を示す図である。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体のA549、SK-MEL-28、MKN-28及びLuc-MDA-MB-231異種移植に対する腫瘍成長抑制効果を示す図である。100mLのビヒクル対照群(0.1%DMSO)及び表記ETP化合物(300μg/kg)を3日おきに20日間腹腔内注射し、4週間後に各群のマウスから異種移植を摘出した。A~DはそれぞれA549、SK-MEL-28、MKN-28及びLuc-MDA-MB-231異種移植マウスにおいて測定した対照群(黒色)、A2(赤色)、A5(黄緑色)及びA10(黄色)処理による腫瘍異種移植体積及び質量を示す。グラフのデータは平均±S.E.Mで示した(n=4,**P<0.05)。Turkey HSD事後テストを伴う一元配置ANOVA(one-way ANOVA with Tukey HSD post hoc test)により統計的分析を行った。 合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の生体内癌細胞増殖抑制効果を示す図である。A及びCとB及びDはMDA-MB231由来腫瘍及びMKN28由来腫瘍のKi-67免疫染色により決定された増殖指数(proliferative index)と免疫組織化学を示す。グラフのデータは免疫蛍光染色における1フィールド当たりのKi-67細胞の数の平均±S.Dである(n=4,**P<0.001)。E及びFはそれぞれMDA-MB231及びMKN-28誘導腫瘍異種移植におけるTUNEL染色により決定されたETP-誘導アポトーシス発生率(apoptosis incidence)を示す。GはTUNEL染色における陽性対照群として用いられるDNaseで処理した試料である。具体的には、組織切片をDNase I(10U/mL)で2分間処理したものである。 ヒト化マウス(humanized mice)に移植した患者由来肺腺癌(patient-derived lung adenocarcinoma)に対する合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体の阻害効果を示す図である。
本発明は、化学式(1)で表されるエピジチオジオキソピペラジン(epidithiodioxopiperazine)環に分子内ジスルフィド結合を含む母核構造に基づくエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
Figure 2022545732000002
本発明は、エピジチオジオキソピペラジン環に分子内ジスルフィド結合を有する一連の天然又は合成小分子化合物が、それに含まれる分子内ジスルフィド結合により固形癌疾患に対して治療効果を発揮することを見出したことに基づくものである。具体的には、本発明者らは、代表的な天然物由来エピジチオジオキソピペラジン誘導体であるグリオトキシン及びケトミン、並びに核心作用機序を確認するために合成した小分子エピジチオジオキソピペラジン誘導体である5,7-ジメチル-2,3-ジチア-5,7-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-6,8-ジオン(A2)、5,7-ジアリル-2,3-ジチア-5,7-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-6,8-ジオン(A5)及び5a,10a-ジチオ-オクタヒドロジピロロ[1,2-a:1’,2’-d]ピラジン-5,10-ジオン(A10)の全てが乳癌、肺癌、胃癌、皮膚癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌などの固形癌に対して優れた治療効果を発揮することを確認したので、分子内ジスルフィド結合を含むエピジチオジオキソピペラジン誘導体であれば、その大きさや置換基の種類に関係なく、固形癌に対して治療効果を発揮することは明らかである。
例えば、本発明の薬学的組成物に含まれる前記エピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、それぞれ化学式(2)又は(3)で表される天然物由来のエピジチオジオキソピペラジン化合物であってもよい。
Figure 2022545732000003
Figure 2022545732000004
例えば、化学式(2)の化合物は、グリオトキシン(gliotoxin; GT)という代表的なETP化合物であり、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)、ペニシリウム種(Penicillium spp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの菌、その培養液、代謝物又は二次代謝物から分離される[非特許文献1,2]。
化学式(3)の化合物は、ケトミン(chetomin)というETP化合物であり、ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)から分離される[非特許文献3]。
また、本発明の薬学的組成物に含まれる前記エピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、化学式(1-1)で表される合成小分子化合物であってもよい。
Figure 2022545732000005
化学式(1-1)において、R~Rはそれぞれ独立して水素、C1-6直鎖もしくは分岐鎖アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)、C1-6アルコキシ-アリール-C1-6アルキル、又は5~10員ヘテロアリール-C1-6アルキルであるか、RとR、及びRとRがそれぞれ独立して互いに連結され、それらが結合された炭素及び窒素原子を含む4~10員ヘテロサイクルを形成する。
具体的には、化学式(1-1)で表される化合物は、化学式(4)~(14)で表される合成小分子化合物であるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2022545732000006
Figure 2022545732000007
Figure 2022545732000008
Figure 2022545732000009
Figure 2022545732000010
Figure 2022545732000011
Figure 2022545732000012
Figure 2022545732000013
Figure 2022545732000014
Figure 2022545732000015
Figure 2022545732000016
例えば、本発明の薬学的組成物に含まれる前記エピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、化学式(2)、(3)、(5)、(7)又は(14)の化合物であってもよい。
Figure 2022545732000017
Figure 2022545732000018
Figure 2022545732000019
Figure 2022545732000020
Figure 2022545732000021
前記エピジチオジオキソピペラジン化合物の誘導体とは、活性を示す母核としてエピジチオジオキソピペラジン環を含む化合物を意味する。前記誘導体は、化学式(4)で表される化合物の環のNH基又はCH基が当該技術分野で公知の種類の様々な置換基に置換された化合物であってもよく、通常の技術者にとって明らかな様々な化合物を結合させた構造を有する化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。化学式(4)の化合物構造の改変、置換は、例えば次の過程により当業者が容易に行うことができる。
Figure 2022545732000022
化学式(4)~(14)の化合物は、公知の方法を参照して当業者が合成することにより用いることができる。具体的な合成方法は、特許文献1に開示されている方法を参照した。
本発明の組成物は、PrxIIの細胞内活性を模倣することにより固形癌の予防又は治療効果を達成することができるが、具体的な作用機序がこれに限定されるものではない。例えば、本発明の組成物に含まれるエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、PrxIIの活性を模倣することができるので、ペルオキシレドキシン発現が低いか、全く発現しない癌細胞を標的化して抗癌活性を示すことができるが、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の組成物を用いて予防又は治療できる固形癌は、具体的には乳癌、肺癌、胃癌、皮膚癌、結腸癌、前立腺癌又は膵臓癌であるが、これらに限定されるものではない。
本発明における「薬学的に許容される塩」とは、前記化合物又は誘導体の望ましい生物学的及び/又は生理学的活性を有し、望ましくない毒物学的効果を最小限に抑えたあらゆる塩を意味する。本発明においては、分子内のジスルフィド結合を含むジケトピペラジン環を保持するものであれば、いかなる種類の塩であってもよい。塩としては、薬学的に許容される遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、通常の方法、例えば化合物を過剰量の酸水溶液に溶解し、その塩を水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン又はアセトニトリルを用いて沈殿させて作製する。等モル量の化合物及び水中の酸又はアルコール(例えば、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、次に上記混合物を蒸発させて乾燥させるか、又は析出した塩を吸引濾過させてもよい。ここで、遊離酸としては無機酸と有機酸を用いることができ、無機酸としては塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸などを用いることができ、有機酸としてはメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸(maleic acid)、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸(fumaric acid)、マンデル酸、プロピオン酸(propionic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリコール酸(glycollic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、塩基を用いて薬学的に許容される金属塩を形成することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、例えば化合物を過剰量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液に溶解し、溶解しない化合物の塩を濾過して濾液を蒸発、乾燥させて得る。ここで、金属塩としては、特にナトリウム、カリウム又はカルシウム塩を製造することが製薬上好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を好適な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
本発明によるエピジチオジオキソピペラジン化合物又はその誘導体の薬学的に許容される塩には、特に断らない限り、存在し得る酸性基又は塩基性基の塩が全て含まれる。例えば、薬学的に許容される塩としては、ヒドロキシ基のナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などが挙げられ、アミノ基のその他の薬学的に許容される塩としては、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)などが挙げられ、当該技術分野で公知の塩の製造方法で製造することができる。
本発明による組成物は、薬学的組成物の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含んでもよい。前記組成物は滅菌されているか、無菌性であり、その溶液も滅菌されているか、無菌性であり、水、緩衝剤、等張化剤、又は動物もしくはヒトに適用してもアレルギー又はその他の有害な反応を起こさない、当該技術分野の通常の知識を有する者に公知のその他の成分を含んでもよい。
本発明における「薬学的に許容される担体」には、任意のあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張化剤などが含まれる。薬学的活性物質用として上記媒体及び製剤を用いることは当該技術分野で公知である。活性成分と非混和性である通常の媒体又は製剤以外に、治療学的組成物におけるそれらの使用も考えられる。また、補充性活性成分を当該組成物に混入してもよい。
前記組成物は、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤などの剤形に製造してもよく、非経口で用いてもよい。前記組成物の用量は、血管再狭窄防止における通常の用量を用いることができ、患者の年齢、性別、健康状態、体内での活性成分の吸収度、不活性率、併用される薬物などに応じて異なる用量が適用されることが好ましい。
また、本発明は、前記薬学的組成物を必要とする個体に前記薬学的組成物を投与するステップを含む、固形癌を予防又は治療する方法を提供する。
本発明における「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与により固形癌の発症を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、前記薬学的組成物の投与により固形癌による症状を好転又は有利に変化させるあらゆる行為を意味する。
本発明における「個体」とは、固形癌が発症したか、発症するリスクのある、ヒトをはじめとする、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなどのあらゆる動物を意味し、本発明の薬学的組成物を個体に投与することにより、前記疾患を効果的に予防又は治療することができる。また、本発明の薬学的組成物は、公知の固形癌治療剤と並行して投与してもよい。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用できる合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効用量レベルは、患者の性別、年齢、体重、健康状態、疾病の重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与方法、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、配合又は同時に用いられる薬物が含まれる要素、並びにその他医学分野で公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、標的組織に送達できるものであれば、いかなる一般的な経路で投与してもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の薬学的組成物は、活性物質を標的細胞に送達することのできる任意の装置により投与することができる。好ましい投与方法及び製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。注射剤は、生理食塩液、リンゲル液などの水性溶剤や、植物油、高級脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶剤などを用いて作製することができ、変質を防止する安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pHを調節する緩衝剤、微生物の増殖を阻止する保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなど)などの薬学的担体を含んでもよい。
本発明の薬学的組成物は、固形癌の予防又は治療のために、有効成分としてエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物又はその薬学的に許容される塩以外の公知の固形癌の予防又は治療に用いられる公知の薬物、例えば公知の抗癌剤をさらに含んでもよい。さらに、これらの疾患の治療のために、公知の他の治療と併用してもよい。他の治療としては、化学療法、放射線治療、ホルモン治療、骨髄移植、幹細胞治療、他の生物学的治療、免疫治療などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、前記癌疾患は、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞性肺癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門周囲腺癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、尿管癌、腎臓細胞癌、腎盂癌、中枢神経系腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫、神経膠腫、神経膠肉腫、退形成星細胞腫、髄芽腫、頸部癌、脊索腫、咽頭癌、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、結腸直腸癌、胆管癌、絨毛膜癌、精上皮腫、睾丸腫瘍、ウィルムス腫瘍、ユーイング腫瘍、血管肉腫、内皮肉腫、腺癌、汗腺癌、皮脂腺肉腫、乳頭状肉腫、乳頭状腺癌、嚢性腺肉腫、気管支癌、髄様癌、肥満細胞腫、中皮腫、滑膜腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、乏突起膠腫、聴神経腫、血管芽細胞腫、髄膜腫、松果体細胞腫、上衣腫、頭蓋咽頭腫、上皮癌、胚性癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、線維肉腫、粘液腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫又はそれらの転移癌であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
実験例1:細胞株及び培養条件
ATCC(american type culture collection)から乳癌細胞株であるMDA-MB-231及びHs-578T、肺癌細胞株であるA549及びH460、胃癌細胞株であるMKN28及びMKN74、皮膚癌細胞株であるSK-MEL-5及びSK-MEL-28、結腸癌細胞株であるRKO及びHCT116、前立腺癌細胞株であるPC3、膵臓癌細胞株であるPanc-1細胞、正常乳房細胞株であるMCF-10A、正常肺線維細胞株であるIMR90、並びに正常結腸細胞株であるCCD-841を入手した。Hs-578T、H460、MKN28及びMKN74細胞は、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum; FBS, Hyclone)、100U/mLペニシリン(penicillin)、及び100U/mLストレプトマイシン(streptomycin)で補強した高濃度グルコース(high-glucose)RPMI 1640で培養し、MDA-MB-231、A549、PC3及びPanc-1細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンで補強した高濃度グルコースDMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)で培養した。SK-MEL-5及びSK-MEL-28細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンで補強した高濃度グルコースEMEM(Eagle's Minimum Essential Medium)で培養し、IMR90及びCCD-841細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンで補強した高濃度グルコースMEM(Minimum Essential Medium)で培養した。RKO細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンで補強した高濃度グルコースMcCoyで培養し、MCF-10A細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンで補強したDMEM F12で培養した。これらの細胞を5%CO大気、37℃で継代培養(sub-culture)した。
実験例2:細胞増殖アッセイ
細胞(2×10細胞/ウェル)を96ウェルプレートで24時間培養し、その後本発明の化合物で2時間処理した。前記細胞を新鮮な完全培地に播種し、表記時間をかけて培養した。細胞増殖は、前記細胞をWST-1試薬で1時間処理し、450nmでホルマザン生成物の吸光度をUV/VIS ELISAリーダーで測定した。
実験例3:細胞生存率アッセイ
細胞毒性を確認することのできるIC50値を決定するために、細胞(2×10細胞/ウェル)を96ウェルプレートに分注し、様々な濃度の表記化合物で24時間処理した。細胞生存率をCellTiter-Glo発光アッセイ試薬キット(Promega, G7570)で測定し、発光をEnvisionプレートリーダーで読み取った。ビヒクル対照群(0.1%DMSO処理細胞)に対する細胞成長の百分率を算出した。
実験例4:細胞周期アッセイ
細胞(2×10細胞/ウェル)を6ウェルプレートで24時間培養し、その後本発明の化合物で2時間処理した。前記細胞を新鮮な完全培地に播種し、さらに24時間培養した。前記細胞を4℃で70%エタノールに一晩固定し、冷たいPBSで洗浄し、その後RNase A(10μg/mL)を含有するPBS溶液に37℃で30分間再浮遊(re-suspended)させた。前述した浮遊細胞をヨウ化プロピジウム(propidium iodide; PI, 50μg/mL, Invitrogen)で5分間染色し、フローサイトメトリー(flow cytometry, FACS Calibur, BD)を行った。細胞集団(cell population)をModiFit LTソフトウェアで分析した。
実験例5:転移アッセイ
細胞(2×10細胞/ウェル)を6ウェルプレートで24時間培養し、その後本発明の化合物で2時間処理した。処理後に、0.5%FBSを含有する新鮮な培養培地でさらに12時間培養し、前記細胞を血清飢餓(serum-starved)させた。底層を0.1%ゼラチンB(Sigma Aldrich)で予めコーティングした24ウェルトランスウェル培養プレート(Costar)の上部チャンバ(upper chamber, 8μm気孔サイズ)に、血清飢餓させた細胞(5×10細胞/ウェル)を移した。下部チャンバには、20%FBSを含有する培養培地を充填した。プレーティングの24時間後に、上部チャンバ内の移動しない(non-migrated)細胞を除去した。上部から移動しない細胞を除去し、その後上部チャンバをメタノールで固定し、0.6%ヘマトキシリン(hematoxylin, DAKO)で染色した。染色された細胞の写真を撮って計数した。移動した細胞(migratory cells)の数は、3つのウェルにおける値を平均した。
実験例6:コロニー形成アッセイ
細胞(2×10細胞/ウェル)を6ウェルプレートで24時間培養し、その後本発明の化合物で2時間処理した。前記細胞を新鮮な完全培地(complete media)に播種し、さらに10日間培養した。前記細胞をPBSで洗浄し、クリスタルバイオレットで染色した。青色に染色されたコロニーを手動で計数した。
実験例7:マウス異種移植アッセイ
A549、SK-MEL-28、MKN-28及びLuc-MDA-MB-231細胞(2×10細胞)を100μLのマトリゲル(Matrigel)溶液(BD Biosciences)に浮遊させ、5週齢の雄マウスに皮下注射した。7日後に、マウスに100μLのビヒクルコントロール(0.1%DMSO)及び表記化合物(300μg/kg)を3日おきに20日間腹腔内注射した。A549、SK-MEL28及びMKN28細胞により誘導された腫瘍において、異種移植された腫瘍の幅(width; W)及び長さ(length; L)のキャリパー測定により次の式で腫瘍の体積を算出した。
(数1)
体積=[L×W]/2
Luc-MDA-MB-231細胞により誘導された腫瘍においては、2D光トポグラフィ(optical topography)により腫瘍体積を測定した。簡単に述べると、マウスにD-ルシフェリン溶液(150mg/kg, Caliper Life Sciences)を腹腔内注射し、10分後に2%イソフルラン(isoflurane)で麻酔し、次いでIVIS 200システム(Xenogen)により10秒間の映像を撮影した。
実験例8:免疫組織化学及び免疫蛍光
パラフィンブロックに包埋した腫瘍組織試料を4μmの厚さに切断した。標準プロトコルに従って組織切片を脱パラフィン化し、一連の等級化アルコール(a series of graded alcohols)に再水和した。抗原を抗原アンマスキング溶液(antigen unmasking solution; VECTOR, H-3300-250)に95℃で15分間浸漬し、温度が室温まで低下したらPBSで洗浄した。内在性ペルオキシダーゼ活性(endogenous peroxidase activity)をBLOXALL(登録商標) Endogenousブロッキング溶液(Blocking Solution)で低下させ、30分間インキュベーションした。0.1%Triton X-100に正常ヤギ血清を含有させたブロッキング溶液で1時間ブロッキングし、その後組織切片を抗Ki67抗体(1:100, Invitrogen, PA1-38032)と室温で2時間反応させた。免疫組織化学(immunohistochemistry; IHC)のために、スライドをPBSで3回洗浄し、0.1%Triton X-100でビオチン化した二次抗体(1:200)と室温で1時間インキュベーションした。スライド上にImmPACT(登録商標) DAB基質(VECTOR, SK-4105)を添加して陽の色を表した。免疫蛍光(immunofluorescence; IF)のために、洗浄したスライドを0.1%Triton X-100で蛍光体に結合した二次抗体(1:200)と1時間インキュベーションした。蛍光を可視化して共焦点顕微鏡(Nikon A1R)でイメージ化した。
実験例9:TUNELアッセイ
Luc-MDA-MB-231及びMKN-28異種移植腫瘍試料を外科的に分離し、その後OCT(optimal cutting temperature)化合物溶液に入れてドライアイス上で10分間凍結包埋し、次いで凍結試料を10μmの厚さに切断した。組織切片を蒸留水で10分間洗浄し、4%ホルマリンで20分間固定した。その後、組織切片をPBSで30分間洗浄し、透過化溶液(permeabilization solution, 0.1% Triton X-100)で5分間インキュベーションした。アポトーシス細胞(apoptotic cells)をIn situ細胞死検出キット(In situ Cell Death Detection Kit, Roche,11684795910)によりメーカーの指示に従って可視化した。細胞の画像を顕微鏡(Zeiss LSM880 Airyscan)により得た。
実験例10:患者由来腫瘍異種移植実験
動物実験は、ソウル大学校医科大学の動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee; IACUC)の承認を受け、ARRIVE(Animal Research: Reporting of In Vivo Experiments)指針を遵守した。患者由来(patient-derived)肺腫瘍を4週齢及び17週齢のNSG(NOD-scid-IL2Rgnull)及びヒト化(humanized)NSG(HuNSG)マウスの背中にそれぞれ皮下移植(subcutaneously implanted)した。PBSに溶解した化学式(7)の化合物(A5,300mg/kg)及び/又はペムブロリズマブ(pembrolizumab, humanized anti-PD-1 antibody, 5mg/kg)を前記マウスにそれぞれ3日おきに3週間及び5日おきに3週間腹腔内(intraperitoneally)注射した。腫瘍を28日間成長させ、除去して計量した。腫瘍体積をノギス(Vernier calipers)で3日おきに測定し、次の式で計算した。
(数2)
V=a×b/2
上記式において、a及びbはそれぞれ長軸及び短軸の外径(superficial diameter)を示す。
天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体による細胞毒性及び癌細胞増殖抑制効果
実験例1で準備した癌細胞のうち乳癌細胞株であるMDA-MB-231及びHs-578Tに対して、対照群ビヒクルとしてのDMSO及び天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体であるグリオトキシンで処理し、実験例2のように、処理化合物の各濃度における細胞毒性及び増殖率を算出した。その結果を図1に示す。
図1のAに示すように、グリオトキシン及びケトミンで処理すると、約200nMの濃度までは80%以上の高い細胞生存率を示す。これは、当該濃度でこれらの化合物が細胞毒性を有さないことを示唆するものであるので、以下の薬理活性を確認するための実験においては、上記範囲内の濃度を選択的に用いた。
一方、図1のB及びCに示すように、対照群であるDMSO処理細胞に比べて、グリオトキシン(100nM)又はケトミン(50nM)で処理した細胞において、増殖率が大幅に減少した。これは、天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体が効果的に癌細胞増殖を抑制することを示すものである。
天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体による癌細胞の細胞周期進行に対する阻害効果
実験例1で準備した癌細胞のうち乳癌細胞株であるMDA-MB-231及びHs-578Tに対して、天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体であるグリオトキシンで処理し、又は処理せず、実験例4のように、細胞周期を分析し、G1相の細胞百分率を算出した。その結果を図2に示す。
図2に示すように、グリオトキシンを添加して培養すると、G1相の細胞百分率が未処理群に比べて10%以上増加することが確認された。
天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体による癌細胞の転移活性抑制効果
実験例1で準備した癌細胞のうち乳癌細胞株であるMDA-MB-231及びHs-578Tに対して、対照群ビヒクルとしてのDMSO及び天然エピジチオジオキソピペラジン誘導体であるグリオトキシンで処理し、実験例5のように、FBS含有培地への細胞移動を観察し、移動した細胞数を計数した。その結果を図3及び図4に示す。
図3及び図4に示すように、グリオトキシン及びケトミンで処理すると、血清含有培地に誘導される乳癌細胞の移動が大幅に減少した。
合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による選択的な癌細胞死滅効果
本発明の合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による様々な癌細胞及び正常細胞に対する細胞毒性効果を確認した。その結果を図5に示す。図5に示すように、本発明の合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体は、3種の正常細胞(MCF-10A,IMR90,CCD-841)に比べて、各種癌細胞株において著しく低いIC50値を示した。これは、正常細胞でない癌細胞を選択的に死滅させることを示すものである。
合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による癌細胞コロニー形成抑制効果
実験例1で準備した癌細胞のうち、乳癌細胞株であるMDA-MB-231及びHs-578T、肺癌細胞株であるA549及びH460、胃癌細胞株であるMKN28及びMKN74、皮膚癌細胞株であるSK-MEL-5及びSK-MEL-28、結腸癌細胞株であるRKO及びHCT116、前立腺癌細胞株であるPC3、並びに膵臓癌細胞株であるPanc-1に対して、対照群ビヒクルとしてのDMSO、並びに合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体であるA2、A5及びA10で処理し、実験例6のように、これらの癌細胞に対するエピジチオジオキソピペラジン誘導体の死滅活性を肉眼で観察し、形成されたコロニー数を計数した。その結果を図6~図12に示す。
図6~図12に示すように、程度の差はあるが、A2、A5及びA10の全てにおいて、非特異的な細胞毒性(cytotoxicity)を示さない低い濃度(50nM及び200nM)でこれらの癌細胞のコロニー形成が効率的に阻害された。例えば、A10化合物においては、50nMの濃度でもほとんどの癌細胞に対してコロニー形成を抑制したが、A2及びA5においては、50nMの濃度で処理すると、対照群ビヒクル処理群と同等又は多少優れたコロニー形成抑制効果を示し、200nMに処理濃度を上昇させると、テストした細胞全体で肉眼でも確認可能なレベルで著しく優れたコロニー形成阻害効果を示した。
合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による異種移植に対する成長抑制効果
実験例7で準備した各種癌細胞株を注入して作製したマウス異種移植モデルにおいて、本発明の合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体での処理による腫瘍成長抑制効果を確認した。その結果を図13に示す。具体的には、30日までは本発明の化合物を投与して腫瘍大きさを測定し、最終日の30日にマウスを屠殺し、腫瘍を摘出してその体積と重量を測定した。対照群としては、本発明の化合物の代わりに、ビヒクルとしてDMSOを投与したマウスを用いた。図13に示すように、本発明の化合物での処理により、肺癌、皮膚癌、胃癌及び乳癌細胞株による全ての異種移植腫瘍の成長が大きく阻害され、形成された腫瘍の大きさが対照群に比べて著しく小さかった。これは、本発明の化合物が腫瘍の成長を効果的に阻害することを示すものである。
合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による生体内癌細胞増殖抑制効果
実験例8及び9における免疫組織化学、免疫蛍光及びTUNELアッセイを用いて、合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による生体内癌細胞増殖抑制効果を確認した。その結果を図15に示す。図15に示すように、本発明の化合物で処理すると、乳癌及び胃癌細胞株の両方において、腫瘍の増殖性に関与するKi-67の発現が対照群に比べて大幅に減少した。それに対して、癌細胞の死滅を測定するTUNEL染色を用いた場合、ビヒクル対照群及び本発明の化合物で処理すると、全てにおいて細胞死滅が観察されなかった。これらのTUNELアッセイの正確度は、組織切片をDNaseで処理して人為的にDNA損傷を誘発することにより検証した(図15のG)。これらは、本発明の化合物が癌細胞の死滅ではなく、増殖を効果的に抑制することにより、癌疾患に対する予防又は治療効果を発揮することを示唆するものである。
合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体による腫瘍成長抑制効果
実験例10で準備した患者由来肺腺癌腫瘍を移植して準備したマウスモデルを、代表的な合成エピジチオジオキソピペラジン誘導体であるA5で処理せず、又は単独もしくは癌免疫治療に用いられることが知られているヒト化抗体であるペムブロリズマブと併用して処理し、腫瘍の体積変化を周期的に観察した。その結果を図15に示す。
図15に示すように、NSGマウスの非処理対照群においては、時間経過に伴って腫瘍の体積が増加するのに対して、A5処理群においては、腫瘍の体積増加が抑制され、ヒト化NSGマウス(HuNSG)にA5を投与すると、非処理対照群に比べて腫瘍の大きさが減少するという効果を発揮するだけでなく、ペムブロリズマブ処理群やペムブロリズマブと併用して処理した実験群に比べて、A5単独処理群において、腫瘍の成長を抑制し、さらに腫瘍の大きさを減少させるという、より優れた効果を示した。
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。

Claims (7)

  1. 下記化学式(1)で表されるエピジチオジオキソピペラジン(epidithiodioxopiperazine)環に分子内ジスルフィド結合を含む母核構造に基づくエピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、固形癌の予防又は治療用薬学的組成物。
    Figure 2022545732000023
  2. 前記エピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、下記化学式(2)又は(3)の化合物である、請求項1に記載の組成物。
    Figure 2022545732000024
    Figure 2022545732000025
  3. 前記エピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、下記化学式(1-1)で表される化合物である、請求項1に記載の組成物。
    Figure 2022545732000026
    前記化学式(1-1)において、
    ~Rはそれぞれ独立して水素、C1-6直鎖もしくは分岐鎖アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)、C1-6アルコキシ-アリール-C1-6アルキル、又は5~10員ヘテロアリール-C1-6アルキルであるか、
    とR、及びRとRがそれぞれ独立して互いに連結され、それらが結合された炭素及び窒素原子を含む4~10員ヘテロサイクルを形成する。
  4. 前記化学式(1-1)で表される化合物は、化学式(4)~(14)の化合物から選択される少なくとも1つである、請求項3に記載の組成物。
    Figure 2022545732000027
    Figure 2022545732000028
    Figure 2022545732000029
    Figure 2022545732000030
    Figure 2022545732000031
    Figure 2022545732000032
    Figure 2022545732000033
    Figure 2022545732000034
    Figure 2022545732000035
    Figure 2022545732000036
    Figure 2022545732000037
  5. 前記エピジチオジオキソピペラジン誘導体化合物は、化学式(2)、(3)、(5)、(7)又は(14)の化合物である、請求項1に記載の組成物。
    Figure 2022545732000038
    Figure 2022545732000039
    Figure 2022545732000040
    Figure 2022545732000041
    Figure 2022545732000042
  6. 前記固形癌の予防又は治療は、PrxIIの細胞内活性を模倣することにより達成される、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記固形癌は、乳癌、肺癌、胃癌、皮膚癌、結腸癌、前立腺癌又は膵臓癌である、請求項1に記載の組成物。
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