以下、実施形態に係るエンジン、その制御装置及び方法について説明する。図1は実施形態に係るエンジン20を示す概略図である。エンジン20は、燃料の燃焼によって動力を得る機械である。エンジン20は、乗物の動力源として用いられてもよいし、機械装置の動力源として用いられてもよい。乗物は、自動二輪車、自動三輪車、ATV(All Terrain Vehicle)、パーソナルウオータークラフト等の鞍乗型乗物であってもよいし、乗用の大型芝刈り機等の乗物であってもよい。
エンジン20は、エンジン本体30と、燃料噴射弁50と、点火装置52と、制御装置60とを備える。
エンジン本体30は、燃焼ガスによって機械的エネルギーを生成する機械構造部分である。燃料噴射弁50は、エンジン本体30に燃料を供給する弁である。点火装置52はエンジン本体30において燃料を点火させるための装置である。制御装置60は、エンジンのサイクルに応じて、燃料噴射弁50による燃料噴射タイミング、点火装置52による点火タイミング等を制御する。
上記エンジン20の始動は、燃料噴射弁50からエンジン本体30に供給された燃料を、点火装置52によって点火することによってなされる。しかしながら、エンジン20の始動環境等によっては、エンジン本体30における残留未燃ガス等の影響によって混合気濃度が燃焼に適した範囲から外れてしまうことがあり得る。そこで、そのような始動環境である場合等には、エンジン20における始動開始を判断してしてから排気動作が実行されたと判断するまで、燃料噴射弁50による燃料噴射を停止する。これにより、残留未燃ガスの影響が排除され、エンジン本体30における混合気濃度がなるべく希薄に近くなるようにリセットされる。この後、燃料噴射弁50からエンジン本体30に燃料が供給されると共に、点火装置52によって燃料が点火されるようにする。このため、燃焼に適した混合気濃度で、燃料が点火され、エンジンの始動が良好になされる。
より具体的な例を説明する。エンジン本体30は、気筒33と、ピストン34と、クランクシャフト40と、動弁機構46とを備える。
気筒33は、エンジン本体30のベースとなる本体32に形成されている筒状部分である。本体32は、燃焼室、ピストン34が動く空間、クランクシャフトが回転する空間等を形成する部分である。例えば、本体32は、上から下に向う順に、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、クランクケース、オイルパンが組合わされることによって構成される。シリンダーブロックに気筒33が形成される。気筒33は、ピストン34が動く円柱状の空間を形成する部分であり、燃焼室を形成する。シリンダーブロックの上にシリンダーヘッドが組合わされることによって、気筒33の上方開口がシリンダーヘッドによって閉じられる。シリンダーブロックの下にクランクケースが組合わされることによって、気筒33に対してシリンダーヘッドとは反対側に、クランクシャフト40が回転する空間が形成される。クランクケースの下に組合わされるオイルパンに、エンジン20内を循環するオイルが貯留される。上記気筒33の数は、特に限定されず、1気筒であってもよいし、2気筒であってもよいし、より多数の気筒であってもよい。
ピストン34は、気筒33内の一端側空間と他端側空間とを仕切った状態で、気筒33内に往復移動可能に配置される部材である。気筒33内をピストン34が移動することによって、気筒33内の空間において、圧縮、膨張、吸気及び排気が可能となる。
クランクシャフト40は、気筒33に対してシリンダーヘッドとは反対側の空間内で回転可能に配置される。クランクシャフト40の回転軸は、ピストン34の往復移動方向に対して直交するように設定される。クランクシャフト40は、シャフト40aとクランクアーム40bとクランクピン40cとを含み、本体32に回転可能に支持される。クランクシャフト40の回転軸は、シャフト40aの中心軸と一致している。クランクピン40cは、クランクアーム40bによって、シャフト40aに対してその回転軸からずれた位置に支持されている。クランクシャフト40の回転に伴って、クランクピン40cはクランクシャフト40の回転軸周りに回転する。ピストン34とクランクピン40cとがコンロッド38によって連結されている。そして、ピストン34の往復運動がコンロッド38を介してクランクシャフト40に回転運動として伝達される。また、クランクシャフト40の回転運動が、コンロッド38を介してピストン34に往復運動として伝達される。つまり、ピストン34の往復移動に連動してクランクシャフト40が回転することができる。なお、クランクアーム40bとクランクピン40cとは、気筒の数に応じて設けられる。
動弁機構46は、ピストン34の往復移動に連動して気筒33内への吸気動作及び排気動作を行う。かかる動弁機構46は、例えば、吸気弁47と、排気弁48と、弁47、48を開閉させる弁開閉部49とを備える。吸気弁47と排気弁48とは、気筒33の上側開口を閉じる部分、例えば、シリンダーヘッドに設けられる。
より具体的には、シリンダーヘッドのうち気筒33の上方開口を閉じる部分に吸気口が形成され、当該吸気口に吸気弁47が設けられる。吸気口は吸気ポート47P等を介して外気取入口に繋がっている。吸気ポート47Pから吸気口を通じて気筒33内に外気が吸気される。吸気弁47は、吸気口を閉じる閉位置と開く開位置との間で変位可能に支持されている。吸気弁47の開閉位置に応じて、外気が気筒33内に吸気される状態と当該吸気が抑制された状態とに切替えられる。吸気ポート47Pには、スロットルに対する操作等に応じて開閉制御されるスロットルバルブ47Vaを含む給気量調整装置47Vが設けられている。スロットルバルブ47Vaは、例えば、バタフライバルブである。スロットルバルブ47Vaの開閉度合に応じて、気筒33内への吸気量が調整され得る。
また、シリンダーヘッドのうち気筒33の上方開口を閉じる部分に排気口が形成され、当該排気口に排気弁48が設けられる。排気口は排気ポート48P等を介して外部排出口に繋がっている。排気口から排気ポート48P等を通じて気筒33内の気体が排出される。排気弁48は、排気口を閉じる閉位置と開く閉位置との間で変位可能に支持されている。排気弁48の開閉位置に応じて、気筒33内の気体が外部に排出される状態と当該排出が抑制された状態とに切替えられる。なお、1つの気筒33に対して吸気口及び吸気弁は1つあってもよいし、複数であってもよい。同様に、1つの気筒33に対して排気口及び排気弁48は1つであってもよいし、複数であってもよい。
弁開閉部49は、例えば、カムシャフト49a、回転伝達機構49b等を含む。カムシャフト49aは、吸気弁47及び排気弁48に対して気筒33とは反対側に回転可能に支持される。カムシャフト49aは、吸気弁47及び排気弁48に対応するカム部を有している。例えば、カムシャフト49aが回転することによって、ばね等によって開位置に向けて付勢されている吸気弁47及び排気弁48が、開位置と閉位置との間で往復移動される。回転伝達機構49bは、チェーン、ギヤ等のうちの少なくとも1つを含み、クランクシャフト40の回転運動を、カムシャフト49aを回転させる力として伝達する。つまり、ピストン34の往復移動に連動してクランクシャフト40が回転し、クランクシャフト40の回転が回転伝達機構49bによってカムシャフト49aに伝達され、当該カムシャフト49aが回転する。カムシャフト49aの回転によって吸気弁47及び排気弁48が開位置と閉位置との間で移動する。これにより、ピストン34の往復移動に連動して気筒33内への吸気動作及び排気動作が行われる。
なお、上記したように、気筒33の数は任意であり、吸気弁47及び排気弁48に対応するカム部は、気筒数に応じて設けられる。気筒33において、ピストン34の往復移動(クランクシャフト40の回転)に対する吸気弁47及び排気弁48の開閉タイミングは、回転伝達機構における伝達速度比(ギヤ比等)を調整することによって設定され得る。
燃料噴射弁50は、燃料を貯留する燃料タンクに接続されており、気筒33内に燃料を供給するために燃料を噴射する。燃料は、吸気ポート47Pに噴射されてもよいし、気筒33内に直接噴射されてもよい。図1では、燃料噴射弁50が、吸気ポート47P内であってスロットルバルブ47Vaの下流側に燃料を噴出する位置に設けられる例が示される。燃料噴射弁50から噴射された燃料は、吸気ポート47P内を通る外気と混合された状態で、気筒33内に供給される。燃料は、例えば、ガソリンである。
点火装置52は、気筒33内に、燃料を点火させるための点火エネルギーを供給する装置である。例えば、点火装置52は、高電圧回路から供給される電圧によって所定の点火タイミングで気筒33内の燃料に点火する。点火装置52は、本体32のうち気筒33の上方開口を閉じる部分、例えば、エンジンヘッドに設けられる。
制御装置60は、燃料噴射弁50及び点火装置52を制御する。制御装置60は、エンジン20に設けられたバッテリーからの電源供給を受けて動作するコンピュータによって構成されてもよい。制御装置60は、予め定める待機条件を満足すると、始動開始を判断してから動弁機構46による排気動作が実行されたと判断するまで、燃料噴射弁50による燃料噴射を停止した状態を維持する待機処理を実行する。また、制御装置60は、この待機処理を終了すると、燃料噴射弁50を制御して燃料噴射すると共に、点火装置52を制御して気筒33内の燃料に点火させる始動燃焼処理を実行する。
エンジン20は、エンジン20を始動させるためのスイッチ等の操作部、スタータモータ、クランクシャフト40の回転を検出する回転検出装置を備えている。
ここでは、エンジン20は、操作部として電源スイッチ21及びスタートスイッチ22を備える。電源スイッチ21及びスタートスイッチ22は、本エンジン20を格納する筐体、或いは、本エンジン20を操作するための操作パネル等に設けられる。電源スイッチ21及びスタートスイッチ22は、プッシュスイッチ、回転式スイッチ、タッチスイッチ等により構成される。電源スイッチ21がオン操作されることによって、制御装置60等に通電がなされ、エンジン20が始動可能な状態となる。スタートスイッチ22がオン操作されることによって、エンジン20が始動し、燃料の燃焼によるピストン34の往復移動及びクランクシャフト40の回転が継続する状態となる。エンジン20の電源のオンオフ操作、エンジン20の始動操作は、携帯電話、携帯キー等の携帯端末装置に対する操作によって受付けられてもよい。
スタータモータ24は、エンジン20の始動時において、クランクシャフト40を回転させる電気モータである。スタータモータ24は、別途設けられたバッテリーからの電源供給を受けて回転する。エンジンの始動時には、スタータモータ24の回転運動は、スタータワンウエイクラッチ等を介してクランクシャフト40に伝達される。気筒33内の燃料の燃焼によってエンジン20が始動すると、クランクシャフト40からスタータモータ24への動力伝達路がスタータワンウエイクラッチによって絶たれる。これにより、スタータモータ24の回転或いは停止とは関係無く、クランクシャフト40が回転してエンジン20が動作を継続することができる。
スタータモータ24が省略され、代りに、エンジン20の始動時において、利用者の足によるキックペダルの操作又は手によるスターティングハンドルの操作等の力によってクランクシャフトが回転してもよい。
回転検出装置26は、クランクシャフト40の回転を検出するセンサである。例えば、回転検出装置26は、クランクシャフト40と一体的に回転するロータ40Rの回転を検出するものであってもよい。より具体的には、例えば、回転検出装置26は、磁気センサであってもよい。この場合、ロータ40Rの外周の一部に磁性を有する1つ又は複数の突起40Raが設けられ、クランクシャフト40の回転に伴う磁場の変化に応じてクランクシャフト40の回転を検出してもよい。回転検出装置26は、クランクシャフト40の回転角(クランク角)を検出してもよい。例えば、ロータ40Rの周りに複数の突起40Raが一定角度で設けられており、各突起40Raを検出することによって、クランクシャフト40の回転角を検出してもよい。
回転検出装置26は、磁気センサでなくてもよく、その他、渦電流式変位センサ又は光学式センサであってもよい。回転検出装置26は、クランクシャフト40の回転を直接又は間接的に検出し得るものであればよく、このため、クランクシャフト40と動機した運動を行うスタータモータ24、カムシャフト49a、それらとクランクシャフト40間の回転運動伝達機構におけるシャフト等の回転を検出することによって、間接的にクランクシャフト40の回転を検出するものであってもよい。
エンジン20は、気筒33内の燃料燃焼前のエンジン20に係る温度を検出する温度検出部の一例として水温センサ27を備えていてもよい(図2参照)。水温センサ27は、エンジン20の冷却液の温度を検出する温度センサである。水温センサは、冷却液が流れる途中のいずれかに設けられる。冷却液の温度は、エンジン20の温度に応じて変化するため、冷却液の温度を検出することで、エンジン20に係る温度が検出される。温度検出部が水温センサ27であることは必須ではなく、温度検出部は油温センサ28であってもよい。油温センサ28は、エンジン20を循環するエンジンオイルの温度を検出する温度センサである。油温センサ28は、例えば、オイルパン内に貯まるエンジンオイルの温度を検出する位置に設けられる。
図2はエンジン20の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、水温センサ27、回転検出装置26、電源スイッチ21、スタートスイッチ22が制御装置60に接続されており、それらからの検出信号又は操作信号が制御装置60に与えられる。また、点火装置52、燃料噴射弁50及び給気量調整装置47Vが制御装置60に接続されており、制御装置60によって点火装置52による点火タイミング、燃料噴射弁50による燃料噴射タイミング、給気量調整装置47Vによる吸気量の調整がなされる。スタータモータ24は、スタートスイッチ22から制御装置60を介してオンオフ制御されてもよいし、スタートスイッチ22によって直接オンオフされてもよい。
制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ62、記憶部63等を備えるコンピュータによって構成される。記憶部63は、HDD(hard disk drive)、SSD(Solid-state drive)等の不揮発性記憶装置によって構成されている。記憶部63には、プログラム63a、待機条件設定条件63b等が格納されている。プロセッサ62が予め格納されたプログラム63aに従って処理を行うことで、後述するエンジン20の制御処理、特に、エンジン20の始動に関する処理が実行される。つまり、プログラム63aは、コンピュータである制御装置60にエンジン20の制御方法に係る処理を実行させるためのプログラムである。待機条件設定条件63bは、待機処理を実行する待機条件を規定する。待機条件設定条件63bにおける待機条件は、燃焼前のエンジン20に係る温度に基づいて設定された条件であってもよい。例えば、待機条件として熱間始動を想定した第1閾値温度が設定され、検出されたエンジン20に係る温度が当該第1閾値温度を超える又は以上である場合に、待機条件を満たすと設定されてもよい。また、例えば、待機条件として常温よりも低い定温環境を想定した第2閾値温度が設定され、検出されたエンジン20に係る温度が当該第2閾値温度を下回る又は以下である場合に、待機条件を満たすと設定されてもよい。より具体的には、第1閾値温度として摂氏40度~60度(例えば、50度)の値が設定され、第2閾値温度として摂氏10度~摂氏-10度(例えば0度)の値が設定されてもよい。プロセッサ62は、例えば、水温センサ27に基づく温度と待機条件設定条件に既定された温度とを比較することで、待機条件を満たすか否かを判断する。待機条件設定条件63bには、待機条件に、排気動作完了条件が対応付けられていてもよい。排気動作完了条件は、燃料噴射を行わない排気動作が開始された後、当該排気動作が完了するための条件である。排気動作完了条件は、例えば、クランクシャフト40の回転数によって規定されていてもよいし、時間によって規定されていてもよい。より具体的には、排気動作完了条件は、エンジン20の始動開始後、回転検出装置26によってクランクシャフト40の回転が検出された後の回転数によって規定されていてもよい。
図3は制御装置60による処理の一例を示すフローチャートである。
電源スイッチ21がオン操作されると、制御装置60が起動してステップS1の処理を実行する。ステップS1の処理は、予め定められた待機条件を満たすか否かの判定処理である。本実施形態では、ステップS1において、待機条件の一例として熱間始動か否かが判定される。熱間始動は、エンジン20が常温環境で放置された温度よりも高い温度条件での始動である。熱間始動は、例えば、エンジン20を停止した後、十分に冷却される前に、エンジン20が再始動される場合である。ステップS1における判定は、例えば、燃焼前のエンジン20に係る温度と待機条件設定条件63bに規定された第1閾値温度とを比較することによってなされる。燃焼前のエンジン20に係る温度は、例えば、水温センサ27によって検出された冷却液の温度である。冷却液の温度が第1閾値温度を超える又は以上である場合、熱間始動であると判定される。
燃焼前のエンジン20に係る温度は、気筒33内の温度と関係がある部分の温度であり、例えば、気筒33内の温度と正の相関関係を示す温度を有する部分である。かかる燃焼前のエンジン20に係る温度は、冷却液の温度である必要は無い。燃焼前のエンジン20に係る温度として、例えば、エンジン20の本体32のいずれかの部分における温度を検出してもよいし、エンジン20に循環されるエンジンオイルの温度を検出してもよいし、エアクリーナー室内の吸気温度を検出してもよい。第1閾値温度、第2閾値温度等は、エンジン20における気筒33の各検出部分に応じた温度に設定される。
熱間始動であると判定されると、ステップS2に進み、熱間始動用の排気動作完了条件を設定する。排気動作完了条件は、例えば、待機条件設定条件63bにおいて第1閾値温度を超える又は以上の場合に対する条件によって規定されており、制御装置60は、待機条件設定条件63bを参照することによって排気動作実行完了条件を設定してもよい。例えば、排気動作完了条件は、クランクシャフト40がN回転することとして規定されていてもよい。Nは1回転であってもよいし、2回転であってもよいし、3回以上の回転であってもよい。後述するように、4ストロークのエンジン20を前提とすると、Nは2以上であってもよい。設定された条件は、記憶部に一時的に記憶される。
ステップS1において熱間始動でないと判定された場合、ステップS11に進む。ステップS11の処理は、予め定められた別の待機条件を満たすか否かの判定処理である。本実施形態では、ステップS11において、待機条件の一例として低温始動か否かが判定される。低温始動は、エンジン20が常温環境で放置された温度よりも低い温度条件での始動である。低温始動は、例えば、エンジン20が厳寒環境に曝された状態で、エンジン20が始動される場合である。低温始動とは極寒環境での始動であってもよい。因みに、極寒環境とは、室温時の燃料噴射量ではエンジン始動が安定しない程度に低温である環境を指す。また、燃料噴射量や吸気量の調整が必要な程度に低温である環境を指す。このような環境下では、シリンダー内に気化されない燃料が溜まり易く、混合気濃度のバラつきが生じやすい。ステップS11における判定は、ステップS1と同様に、例えば、燃焼前のエンジン20に係る温度と待機条件設定条件63bに規定された第2閾値温度とを比較することによってなされる。燃焼前のエンジン20に係る温度は、上記と同様に、水温センサ27によって検出されたエンジンオイルの温度であってもよいし、気筒33内の温度と関係がある他の部分の温度であってもよい。
低温始動であると判定されると、ステップS12に進み、低温始動用の排気動作完了条件を設定する。排気動作完了条件は、ステップS2と同様に、待機条件設定条件63bにおいてクランクシャフト40の回転数によって規定されており、当該待機条件設定条件63bを参照することによって設定されてもよい。この場合の回転数は、熱間始動用の排気動作完了条件として規定される回転数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。設定された条件は、記憶部に一時的に記憶される。
ステップS2の後、及び、ステップS12の後、ステップS3に進む。つまり、ステップS2及びS12は、予め定められた待機条件を満足する場合であり、この場合に、ステップS3以降の処理を実行する。ステップS3では、スタートスイッチ22がオン操作されたか否かが判定される。スタートスイッチ22がオン操作される迄ステップS3の処理を繰返し、スタートスイッチ22がオン操作されるとステップS4に進む。なお、スタートスイッチ22がオン操作されると、スタータモータ24に回転開始信号が与えられ、スタータモータ24が回転する。スタータモータ24の回転によって、クランクシャフト40が回転すると共に、その回転に連動してピストン34が往復移動する。
ステップS4では、制御装置60は、回転検出装置26からの出力に基づいて、クランクシャフト40の回転の有無を検出する。クランクシャフト40の初回回転有りと検出されると、始動開始が判定され、ステップS5に進む。
ステップS5では、制御装置60は、クランクシャフト40の回転数を示すカウント変数に1を加算する(インクリメント処理)。この後、ステップS6に進む。
ステップS6では、制御装置60は、点火装置52に点火動作を行わせる。点火動作は、エンジン20の燃焼行程において気筒33内の燃料を点火する動作である。例えば、制御装置60は、回転検出装置26によって検出されるクランクシャフト40の回転角に同期したタイミングで点火装置52に点火動作を行わせる。
次ステップS7では、排気動作完了条件を満たすか否かが判定される。例えば、排気動作完了条件がクランクシャフト40の回転数によって規定されている場合、ステップS5でインクリメントされたカウント変数と、ステップS2又はステップS12において熱間始動用又は低温始動用として設定された排気動作完了判定条件とを比較することによって、排気動作完了条件を満たすか否かが判定される。つまり、回転検出装置26の検出結果に基づいて排気動作が終了するタイミングが判定される。例えば、排気動作完了条件が、クランクシャフト40が2回転することとして設定されている場合、クランクシャフト40の回転数が2回転以上となった場合(ロータ40Rの突起40Raの検出回数が3回以上となった場合)に、排気動作完了条件を満たすと判定してもよい。つまり、クランクシャフト40が排気動作完了条件として定められた回転数以上回転した場合、クランクシャフト40の回転に伴ってピストン34が所定回数以上往復移動したことが判明する。ピストン34が所定回数往復移動していれば、動弁機構46による排気動作が完了していると判断することができる。よって、クランクシャフト40の回転数に基づいて排気動作完了条件を満たすか否かが判定される。ステップS7において、排気動作完了条件を満たさないと判定されると、ステップS4に戻り、ステップS4、S5、S6の処理を繰返す。このため、クランクシャフト40が回転する毎にカウント変数がインクリメントされる。ステップS7において排気動作完了条件を満たすと判定されると、ステップS8に進む。
ステップS4、S5、S6の処理が、ステップS7において排気動作完了条件を満たすと判定される迄繰返される。この処理中、制御装置60は、燃料噴射弁50による燃料噴射を停止した状態を保つ。この一連の処理が、クランクシャフト40の初回の回転検出によって始動開始を判断してから、クランクシャフト40が排気動作完了条件に規定された回数回転して動弁機構46による排気動作が実行されたと判断するまで、燃料噴射を停止した状態を維持する待機処理の一例である。本実施形態では、待機処理において、点火動作が実行される(ステップS6参照)。しかしながら、ステップS6の処理が省略され、待機処理において点火動作が停止されてもよい。
ステップS8では、制御装置60は、燃料噴射弁50及び点火装置52に始動燃焼処理を実行させる。すなわち、制御装置60は、クランクシャフト40のクランク角に応じて、ピストン34が下死点に向けて移動する吸入行程において燃料噴射弁50から燃料を噴射して燃料を気筒33内に供給し、ピストン34が上死点付近に位置する燃焼行程初期において点火装置52によって気筒33内の燃料を点火する。これにより、エンジン20が始動される。
この後、ステップS9に進んで、クランク角に応じて燃料噴射弁50による燃料噴射及び点火装置52による点火を繰返すエンジン制御を実行する。
本実施形態において、ステップS1において熱間始動ではないと判定され、かつ、ステップS2において低温始動ではないと判定された場合は、予め定められた待機条件を満たさないと判断された場合である。この場合、始動開始を判断してから待機処理を経ずに始動燃焼処理を実行するため、ステップS21以降の処理を実行する。
まず、ステップS21において、模擬待機処理完了条件を設定する。模擬待機処理完了条件は、例えば、待機条件設定条件63bにおいて、第1閾値温度未満又は以下で、かつ、第2閾値温度を超える又は以上の場合(つまり、熱間始動ではなくかつ低温始動でもない場合)に対する条件として規定されており、制御装置60は、待機条件設定条件63bを参照することによって模擬待機処理完了条件を設定してもよい。模擬待機処理完了条件は、待機処理が実行されることとなる期間よりも短くなるような条件として設定されていてもよい。例えば、模擬待機処理完了条件は、排気動作完了条件と同様に、クランクシャフト40がN回転することとして規定されていてもよい。この場合の回転数は、排気動作完了条件として規定された回転数よりも少なくてもよい。これによって、混合気濃度のバラつきが比較的発生し難い場面では、クランクシャフトの回転数Nを最低限とすることができる。よって、不所望にクランクシャフトが回転しないため、ライダーのフィーリングが損なわれることを低減できる。例えば、排気動作完了条件がクランクシャフト40の2回転として規定される場合、模擬待機処理完了条件はクランクシャフト40が1回転することとして規定されてもよい。設定された条件は、記憶部に一時的に記憶される。
次ステップS22において、スタートスイッチ22がオン操作されたか否かが判定される。スタートスイッチ22がオン操作される迄ステップS22の処理を繰返し、スタートスイッチ22がオン操作されるとステップS23に進む。なお、スタートスイッチ22がオン操作されると、スタータモータ24に回転開始信号が与えられ、スタータモータ24が回転する。
ステップS23からステップS25において、上記ステップS4からS6と同様の処理が実行される。
ステップS25後のステップS26において、模擬待機処理完了条件を満たすか否かが判定される。例えば、模擬待機処理完了条件がクランクシャフト40の回転数によって規定されている場合、ステップS24でインクリメントされたカウント変数と、ステップS21において設定された模擬待機処理完了条件とを比較することによって、模擬待機処理完了条件を満たすか否かが判定される。例えば、模擬待機処理完了条件が、クランクシャフト40が1回転することとして設定されている場合、クランクシャフト40の回転数が1回転以上となった場合(ロータ40Rの突起40Raの検出回数が2回以上となった場合)に、模擬待機処理完了条件を満たすと判定してもよい。ステップS26において、模擬待機処理完了条件を満たさないと判定されると、ステップS23に戻り、ステップS23、S24、S25の処理を繰返す。ステップS26において模擬待機処理完了条件を満たすと判定されると、ステップS8に進み、始動燃焼処理を実行する。ステップS23、S24、S25の処理が、ステップS26において模擬待機処理完了条件を満たすと判定される迄繰返される。この処理中、制御装置60は、燃料噴射弁50による燃料噴射を停止した状態を保つ。この一連の処理が、模擬待機処理の一例である。
上記模擬待処理は省略されてもよい。この場合、ステップS11においてNOと判定された場合(つまり、待機条件を満足しないと判定された場合)、ステップS8に進んで、始動燃焼処理を実行してもよい。
図4は待機処理が行われる場合におけるエンジン20の各部の処理タイミングを示すタイミングチャートである。
図4に示すように電源スイッチ21がオン操作されると、制御装置60等が通電され、制御動作可能となる。この後、スタートスイッチ22がオン操作されると、スタータモータ24が回転し、スタータモータ24の回転によってクランクシャフト40が回転する。
この後、スタータモータ24の回転駆動によるクランクシャフト40の回転が、回転検出装置26によって検出される。この場合に、スタータモータ24による回転駆動から遅れてクランクシャフト40の回転が検出される場合がある。例えば、回転検出装置26が磁場の変化によってクランクシャフト40の回転を検出する磁気センサである場合、クランクシャフト40がある程度の回転速度を超えた場合に、回転検出装置26によって検出可能な程度に磁場の変化が生じる場合がある。このような場合には、スタータモータ24によるクランクシャフト40の回転開始後、クランクシャフト40の回転速度が検出限界を上回る回転速度に達してから、回転検出装置26によってクランクシャフト40の回転が検出されることがあり得る。
クランクシャフト40の回転が検出されると、制御装置60における待機条件制御フラグが立てられて、待機処理(ステップS4からS7参照)が実行される。この処理中、燃料噴射弁50から燃料噴射を停止する噴射カット指令が出力される。これにより、待機処理中、燃料噴射弁50からの燃料噴射が停止される。なお、待機処理中、点火装置52による点火動作を行わせる場合には(ステップS6参照)、当該待機処理中点火カット指令は出力されない。待機処理中、点火装置52による点火動作を停止する場合には、待機処理中点火カット指令が出力される(二点鎖線参照)。
続けて回転検出装置26によってクランクシャフト40の回転が検出され、その回転数が排気動作完了条件として規定された回転数(例えば2回転、回転検知数では3回)を超えたと判定されると、排気動作(待機処理動作)が完了したと判定される。
排気動作(待機処理動作)が完了すると、待機条件制御フラグがクリアされ、噴射カット指令がオフとなる。なお、排気動作中、点火カット指令が出力されていた場合には、同様にオフになる。続いてスタートスイッチ22がオン状態に保たれていると、スタータモータ24の回転が継続し、スタータモータ24によるクランクシャフト40の回転が継続する。排気動作完了後には、始動燃焼処理が実行され、燃料噴射弁50から燃料が噴射されると共に、点火装置52による点火動作がなされる。これにより、気筒33内の燃料が点火され、エンジン20が点火する。エンジン点火後、スタートスイッチ22のオン操作が解除され、スタータモータ24の回転が停止する。エンジン20の始動によって、クランクシャフト40はアイドリング回転状態を継続する。
図5は待機処理が行われる場合においてエンジン20の可動部の動作を示す説明図である。図5では4サイクルエンジンであることを前提とした動作が描かれる。
図5の(a)ではピストン34が上死点から下死点に向っている。この状態では、吸気弁47が開かれ、排気弁48が閉じられている。このため、外気が吸気口を介して気筒33内に流れ込むことができる。図5の(b)ではピストン34が下死点から上死点に向っている。この状態では、吸気弁47、排気弁48の両方が閉じられ、気筒33内の気体が圧縮される。図5の(c)ではピストン34が上死点付近に位置している。この状態では、吸気弁47、排気弁48の両方が閉じられ、気筒33内の気体が最も圧縮された状態となる。図5の(d)ではピストン34が下死点から上死点に向っている。この状態では、吸気弁47が閉じられ、排気弁48が開かれている。このため、気筒33内の気体が排気口を通じて外部に排出される。
始動燃焼処理及びエンジン20の通常動作制御処理においては(ステップS8及びS9参照)、図5(a)に示す工程において燃料噴射弁50から燃料が噴射される(吸気行程)。次の図5(b)に示す工程において気筒33内で燃料を含む混合気が圧縮される(圧縮工程)。次の図5(c)に示す工程によって、気筒33の混合気に含まれる燃料が点火装置52によって点火され、これにより、気筒33内の気体が膨張してピストン34が下死点に向けて押される(点火・膨張工程)。この後の図5(d)に示す工程によって、ピストン34によって気筒33内の燃焼後の気体が排出される。このように、ピストン34を2往復させる(クランクシャフト40を2回転させる)行程が上記順で1つのサイクルとして繰返される。
待機処理によって実行される排気動作においては、クランクシャフト40の回転によってピストン34が往復移動すると共に、クランクシャフト40の回転に連動して動弁機構46の吸気弁47及び排気弁48が動作する。上記とは異なり、図5(a)に示す工程において、燃料噴射弁50から燃料の噴射が停止される。このため、気筒33内への新鮮な外気導入を伴う吸気動作が実行される。
なお、制御装置60は、待機処理において、待機処理前よりも吸気ポート47Pにおける吸気通路面積を大きくするように、給気量調整装置47Vを制御してもよい。例えば、吸気ポート47Pにおける吸気通路面積は、給気量調整装置47Vのスロットルバルブ47Vaの開度によって調整される。待機処理前において、スロットルバルブ47Vaが吸気ポート47Pを最も閉じた状態とされている場合、待機処理において、スロットルバルブ47Vaを当該閉じた状態よりも開いた状態として、吸気ポート47P内を外気が流れ易いようにしてもよい。待機処理中におけるスロットルバルブ47Vaの開度は、アイドリング中の開度と同等であってもよいし、アイドリング中の開度と全開との間の開度であってもよい。待機処理における吸気ポート47Pからの吸気量は、アイドルスピードコントロールバルブによって調整されてもよい。アイドルスピードコントロールバルブは、吸気ポート47Pのバイパス流路における流量を調整するバルブであり、吸気量調整装置の構成部分と把握され得る。なお、吸気通路の面積を大きくすることは、少なくとも吸気がなされる行程(図5(a)参照)においてなされていればよい。
次の図5(b)に示す工程で気筒33内の気体が圧縮され、次の図5(c)に示す工程でピストン34が上死点付近に達する。図5(c)に示す工程において、点火装置52による点火動作が行われる場合、上記のように、気筒33内には新鮮な外気が取込まれているため、点火され難い。しかしながら、気筒33内に燃料が残留している場合、当該残留する燃料に点火がなされてもよい。この点火によって、エンジン20が点火され、続けてエンジンの通常動作制御がなされてもよい。
図5(d)に示す行程では、クランクシャフト40の回転によってピストン34が上死点に向う。これにより、排気動作が実行され、気筒33内に未燃ガスが残留していたとしても、当該残留未燃ガスが排気口から外部に排出される。
待機処理が、上記吸気動作(図5(a)参照)と排気動作(図5(d)参照)を含む期間実行されると、気筒33内の残留燃料を排出し易い。4サイクルエンジンを前提とすると、クランクシャフト40が2回転すれば、気筒数及び気筒の位置に拘らず、上記(a)(b)(c)(d)の全サイクルが実施され、気筒33内への新鮮な外気の導入及び気筒33内の気体の排出が実施される。このため、排気処理が完了したと判断する条件は、クランクシャフト40が2回転以上の所定回転したことであると設定されてもよい。このように、クランクシャフト40の回転数に基づいて排気動作の完了を判定することによって、経過時間等に基づいて排気動作の完了を判定する場合と比べて、精度よく、排気動作の完了タイミングを判断できる。
このように構成されたエンジン20、その制御装置60及び方法によると、始動を開始してから待機処理(排気動作)を実行する間には、燃料噴射が停止される。このため、待機処理では、ピストン34の往復に連動する動弁機構46の排気動作(排気弁48が開く動作)によって、気筒33内に残留する未燃ガスが排出される。その後の始動燃焼処理では、気筒33内の残留未燃ガスが一旦排出された状態で、気筒33内に燃料が供給される。このため、残留未燃ガスの影響を抑えることによって、エンジン20の始動時の気筒33内の混合気濃度のばらつきを抑えることができる。そして、残留する未燃焼ガスの影響による燃焼不良を防いで、始動性低下を防ぐことができる。
また、待機処理を行うか否かを判断する基準となる待機条件が、燃焼前のエンジン20に係る温度に基づいて設定されていると、気筒33内の残留未燃ガスに起因する混合気濃度に影響のある温度に応じて待機条件が設定され、残留未燃ガスの適切な排気が図られる。
すなわち、燃焼前の気筒33内において、ブローバイガス等による残留未燃ガスが残っている場合、気筒33内にさらに燃料を供給して点火しようとしても、混合気濃度が過濃となることによりうまく点火できない場合があり得る。エンジン20が熱間始動される場合、気筒33内の燃料が揮発し易くなるので、気筒33内の混合気濃度の影響を与え易い。そこで、燃焼前のエンジン20に係る温度に基づいて待機処理を行うか否かを判定し、特に、熱間始動であると判定される場合に、待機処理を行うようにする。これにより、熱間始動される場合に、影響を受けやすい残留未燃ガスの影響を排除して、円滑なエンジン20の始動が行われ得る。
また、低温始動時において、点火に失敗すると、気筒33内に過剰な燃料が残留してしまい、いわゆるプラグかぶりの状態を招くことがある。そこで、燃焼前のエンジン20に係る温度に基づいて待機処理を行うか否かを判定し、特に、低温始動であると判定される場合に、待機処理を行うようにする。これにより、低温始動される場合に、過剰に供給された燃料を一旦排出して、円滑なエンジン20の始動が行われ得る。
なお、熱間始動と判定されたとき、低温始動であると判定されたときのいずれかにおいてのみ、待機処理を行ってもよい。熱間始動と判定されたときと、低温始動であると判定されたときとで、待機処理を行う期間(クランクシャフト40の回転数、経過時間等)が異なっていてもよい。また、熱間始動又は低温始動において、燃焼前のエンジン20に係る温度に応じて、待機処理を行う期間(クランクシャフト40の回転数、経過時間等によって規定され得る)を異ならせてもよい。例えば、常温よりも高い温度を3段階に分け、各段階に応じて温度が高くなるほど待機処理を行う期間を長くするように当該期間を異ならせてもよい。
また、制御装置60は、待機処理を実行する際に、点火装置52による点火動作を実行させる。待機処理中において点火がなされれば、速やかなエンジン20始動がなされる可能性がある。
制御装置60は、待機条件を満足しない場合、始動開始を判断してから待機処理を経ずに始動燃焼処理を実行してもよい。これにより、待機不要な状態において、速やかなエンジン20始動を図ることができる。
待機条件を満足しない場合、制御装置60は、待機処理よりも短い期間で、燃料噴射を停止した状態を維持する模擬待機処理を実行し、模擬待機処理完了後に、始動燃焼処理を実行してもよい。この場合、待機条件を満足しない場合でも、模擬待機処理実行後に、始動燃焼処理が実行される。このため、待機処理の有無によって、エンジン20の始動に要する時間のばらつきを抑えることができる。
また、制御装置60は、少なくとも吸気動作(図5(a)参照)と排気動作(図5(d)参照)が行われる期間、待機処理を実行する。このため、気筒33に対する新鮮な外気の導入及び気筒33の気体の排出がなされるため、気筒33に残留する未燃ガスがさらに低減される。
また、制御装置60は、待機処理を実行する際、待機処理前に比べて吸気通路面積を大きくするように、給気量調整装置47Vを制御する。このため、気筒33に導かれる吸気量を多くできる。新鮮な外気が多く導入されることによって、気筒33内に残留する未燃ガスをさらに低減できる。
制御装置60は、クランクシャフト40の回転を検出する回転検出装置26の検出結果に基づいて排気動作が終了するタイミングを判断するため、排気動作が完了したタイミングを精度よく推定することができ、排気が終了するまでに燃料噴射されることが抑制される。
なお、上記実施形態では、クランクシャフト40の回転開始後、当該クランクシャフト40の回転数によって排気動作の完了の有無を判定しているが、他の基準で排気動作の完了の有無を判定してもよい。例えば、クランクシャフト40の回転検出後の時間を予め定めされた基準経過時間と比較し、基準経過時間を超えた場合に、排気動作が完了したと判定してもよい。基準経過時間は、クランクシャフト40の回転開始後、排気動作が行われるのに適切と想定される時間に設定されるとよい。
予め定める待機条件の判定は、エンジン20に係る温度ではない条件によって判定されてもよい。例えば、前回のエンジン停止時からの経過時間を、予め定められた閾値経過時間と比較し、経過時間が予め定められた閾値経過時間を経過していない場合に、待機条件を満たすと判定してもよい。また、エンジン20の諸状態から吸気ポート47P、気筒33内に燃料が残留していると想定される条件を、待機条件として設定してもよい。例えば、エンジン20の各部の温度、前回のエンジン停止時からの経過時間等を組合わせて待機条件を設定してもよい。待機条件は、気筒33当りの容積、排気量、気筒数、燃料噴射弁50による燃料噴射能力、気筒33の容積に対する当該燃料噴射能力等に鑑みて、経験的、実験的、推論的に設定されてもよい。
予め定める待機条件は、エンジン20に係る温度に関係無く、全ての条件において成立し得る条件として設定されてもよい。この場合、エンジン20に係る温度に関係なく、スタートスイッチ22をオン操作すれば、全ての場合において、待機処理(排気処理)が実行される。この場合、スタートスイッチ22をオン操作してからエンジン20が始動するタイミングを揃えやすい。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
本明細書及び図面は下記の各態様を開示する。
第1の態様は、気筒と、前記気筒内を往復移動するピストンと、前記ピストンの往復移動に連動して回転するクランクシャフトと、前記ピストンの往復移動に連動して前記気筒内への吸気動作及び排気動作を行う動弁機構と、を有するエンジン本体と、燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記気筒内の燃料に点火する点火装置と、前記燃料噴射弁及び前記点火装置を制御する制御装置であって、予め定める待機条件を満足すると、始動開始を判断してから前記動弁機構による排気動作が実行されたと判断するまで、燃料噴射を停止した状態を維持する待機処理を実行し、前記待機処理を終了すると、前記燃料噴射弁を制御して燃料噴射すると共に、前記点火装置を制御して気筒内の燃料に点火させる始動燃焼処理を実行する制御装置と、を備えるエンジンである。
このエンジンによると、始動開始してから待機処理を実行する間には、燃料噴射が停止される。これによって、待機処理では、ピストンの往復による動弁機構の排気動作によって気筒内に残留する未燃焼ガスが排出される。その後の始動燃焼処理が実行される状態では、気筒内の残留未燃ガスが排出された状態で、燃料の燃焼が実行される。このように始動前に残留した未燃焼ガスを排出することで、残留する未燃焼ガスの影響を抑えて、エンジンの始動時の燃焼室内の混合気濃度のばらつきを抑えることができる。これにより、例えば、残留する未燃焼ガスの影響による燃焼不良を防いで、始動性低下を防ぐことができる。
第2の態様は、第1の態様に係るエンジンであって、前記待機条件は、燃焼前の前記エンジンに係る温度に基づいて設定されるものである。この場合、気筒内の残留燃料に起因する混合気濃度に影響のある温度に応じて待機条件が設定され、残留燃料の適切な排気が図られる。
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るエンジンであって、前記制御装置は、前記待機処理を実行する際、点火動作を実施させるものである。この場合、待機状態での点火を許容することで、速やかなエンジン始動を図ることができる可能性がある。
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るエンジンであって、前記制御装置は、前記待機条件を満足しない場合、前記始動開始を判断してから前記待機処理を経ずに前記始動燃焼処理を実行するものである。この場合、待機不要な状況での速やかなエンジン始動を図ることができる。
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係るエンジンであって、前記制御装置は、前記待機条件を満足しない場合、前記始動開始を判断してから、前記待機処理が実行される期間よりも短い期間で、燃料噴射を停止した状態を維持する模擬待機処理を実行し、前記模擬待機処理を終了すると、前記始動燃焼処理を実行するものである。これにより、待機処理の有無で、始動にかかる時間のばらつきを抑えることができる。
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るエンジンであって、前記制御装置は、少なくとも前記吸気動作と前記排気動作とが行われる期間、前記待機処理を実行するものである。この場合、待機処理で、吸気動作が行われることにより、気筒内に残留する未燃ガスがさらに低減される。
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係るエンジンであって、前記気筒内への吸気量を調整する吸気量調整装置をさらに含み、前記制御装置は、前記待機処理を実行する場合、待機処理前に比べて吸気通路面積を大きくするものである。これにより、気筒に導かれる吸気量を多くでき、気筒内に残留する未燃ガスをさらに低減できる。
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係るエンジンであって、前記クランクシャフトの回転を検出する回転検出装置をさらに含み、前記制御装置は、前記回転検出装置の検出結果に基づいて、排気動作が終了するタイミングを判断するものである。この場合、制御装置が、吸気動作が終了したタイミングを精度よく推定することができ、排気が終了するまでに燃料噴射することを抑えることができる。
第9の態様は、エンジンにおける燃料噴射弁と点火装置とを制御するエンジンの制御装置であって、(a)予め定める待機条件を満足すると、始動開始を判断してから動弁機構による排気動作が実行されたと判断するまで、燃料噴射を停止した状態を維持する待機処理と、(b)前記待機処理を終了すると、前記燃料噴射弁を制御して燃料噴射すると共に、前記点火装置を制御して気筒内の燃料に点火させる始動燃焼処理と、を実行するものである。
このエンジンの制御装置によると、始動開始してから待機処理を実行する間には、燃料噴射が停止される。これによって、待機処理では、ピストンの往復による動弁機構の排気動作によって気筒内に残留する未燃焼ガスが排出される。その後の始動燃焼処理が実行される状態では、気筒内の残留未燃ガスが排出された状態で、燃料の燃焼が実行される。このように始動前に残留した未燃焼ガスを排出することで、残留する未燃焼ガスの影響を抑えて、エンジンの始動時の燃焼室内の混合気濃度のばらつきを抑えることができる。これにより、例えば、残留する未燃焼ガスの影響による燃焼不良を防いで、始動性低下を防ぐことができる。
第10の態様は、エンジンにおける燃料噴射弁と点火装置とを制御するエンジンの制御方法であって、(a)予め定める待機条件を満足すると、始動開始を判断してから動弁機構による排気動作が実行されたと判断するまで、燃料噴射を停止した状態を維持する処理と、(b)前記処理(a)を終了すると、前記燃料噴射弁を制御して燃料噴射すると共に、前記点火装置を制御して気筒内の燃料に点火させる処理と、を備える。
このエンジンの制御方法によると、始動開始してから待機処理を実行する間には、燃料噴射が停止される。これによって、待機処理では、ピストンの往復による動弁機構の排気動作によって気筒内に残留する未燃焼ガスが排出される。その後の始動燃焼処理が実行される状態では、気筒内の残留未燃ガスが排出された状態で、燃料の燃焼が実行される。このように始動前に残留した未燃焼ガスを排出することで、残留する未燃焼ガスの影響を抑えて、エンジンの始動時の燃焼室内の混合気濃度のばらつきを抑えることができる。これにより、例えば、残留する未燃焼ガスの影響による燃焼不良を防いで、始動性低下を防ぐことができる。
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。