以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する実施例1~7は、パラボラ形式の反射面を有する反射鏡と、導波管の先端が誘電体部及び反射板により構成された給電部とを備えたアンテナ装置に適用がある。
実施例1のアンテナ装置は、給電部の導波管に円筒型のリング部材を取り付けたことを特徴とする。実施例2のアンテナ装置は、給電部の先端に固定された反射板及び誘電体部について、反射板の直径を誘電体部の直径よりも大きくしたことを特徴とする。
実施例3のアンテナ装置は、反射板側から誘電体部へネジ留めするように構成したことを特徴とする。実施例4のアンテナ装置は、誘電体部と反射板とを固定するネジを、電波の偏波面と重ならない位置に設けたことを特徴とする。
実施例5のアンテナ装置は、実施例2~4を組み合わせた構成とすることを特徴とする。実施例6のアンテナ装置は、実施例1~4を組み合わせた構成とすることを特徴とする。実施例7のアンテナ装置は、実施例1~3を組み合わせた構成において、1個のネジを反射板側の中央から誘電体部へネジ留めするように構成したことを特徴とする。以下、実施例1~7のアンテナ装置について説明する。
〔実施例1〕
まず、実施例1のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例1のアンテナ装置は、給電部の導波管に円筒型のリング部材を取り付けたものである。
図1は、実施例1のアンテナ装置の構成例を示す図である。このアンテナ装置1は、反射鏡10及び給電部11を備えて構成される。アンテナ装置1には、FPU等に備えた送受信回路19が取り付けられている。
尚、アンテナ装置1は、送受信回路19に接続される場合に加え、送信回路に接続される場合、及び受信回路に接続される場合にも適用がある。
反射鏡10は、パラボラアンテナ用の反射鏡であり、反射面の形状が放物面となるように形成されている。反射面は、給電部11側に形成されている。反射鏡10には、送受信回路19側に図示しない開口部が設けられており、当該開口部を介して、給電部11に備えた後述する導波管部20の先端に設けられた同軸コネクタ(図示せず)が送受信回路19に備えたコネクタ(図示せず)に接続される。
給電部11は、反射鏡10の反射面側に配置され、1次放射器を構成する。給電部11は、導波管部20、誘電体部21、反射板22-1及びシュペルトップ23を備えている。導波管部20には、当該導波管部20の内部から外部へ電波が漏れないように、当該導波管部20の周縁を覆うリング形状のシュペルトップ23が取り付けられている。このシュペルトップ23により、導波管部20から漏れていた電波を漏れないようにして活用することで、アンテナ装置1として高いアンテナ利得及びスピルオーバーの削減を実現することができる。
導波管部20は、反射鏡10の開口部を介して送受信回路19に接続され固定される。導波管部20は、送受信回路19が送信回路として機能する場合、その内部で送受信回路19から反射板22-1へ向けて電波が伝搬し、送受信回路19が受信回路として機能する場合、その内部で反射板22-1から送受信回路19へ向けて電波が伝搬する。
誘電体部21は、後述する図3に示す凸部21Eが導波管部20の一端の内部に挿入されることで、導波管部20に接続され固定される。
反射板22-1は、誘電体部21側から当該反射板22-1へ向けてネジ24が留められることで、誘電体部21に接続され固定される。
図2は、実施例1のアンテナ装置1に備えた給電部11の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)であり、図3はその分解図である。図2の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部11において、反射板22-1側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
尚、正面図(c)において、反射板22-1の中央には細長形状の溝が形成されているが、断面図(b)では溝は省略してある。この細長形状の溝は、アンテナ装置1を設置する際の回転方向の設置位置を示しており、例えば電波の垂直偏波面及び水平偏波面に対する反射鏡10及び給電部11の回転方向の設置位置の目印として用いられる。後述する図4、図5、図7~図9及び図18についても同様である。
また、図2には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。後述する図3~図9、図11及び図18についても同様である。さらに、図2の断面図(b)のネジ24について、その頭部とその反対側の先端部との間にあるネジ部(本体部)のいわゆる凹凸形状のネジ山の記載は省略してある。後述する図3及び図4の断面図(b)に記載されたネジ24、並びに図5の断面図(b)及び図6に記載されたネジ31についても同様である。
図1にて説明したとおり、この給電部11は、導波管部20、誘電体部21、反射板22-1及びシュペルトップ23を備えている。シュペルトップ23は、導波管部20の所定位置に取り付けられている。反射板22-1は、誘電体部21側から反射板22-1へ向けてネジ24が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。
図3を参照して、シュペルトップ23は、導波管部20の一端からその周縁に嵌め込みスライドさせることで、図2の側面図(a)に示すように、導波管部20の軸d方向の所定位置に取り付けられる。シュペルトップ23は、導波管部20の周縁との接触箇所(基部23Bの底面)を、例えば溶接することで取り付けられる。尚、シュペルトップ23に形成された基部23Bの底面に、導波管部20の表面に沿って軸d方向へ延びる取付用の板を設け、当該板に形成された孔にネジを挿入することで、シュペルトップ23を導波管部20にネジ留めしてもよい。
誘電体部21は、三角錐型の三角錐部21D、及び2段形状の円柱型の凸部21Eを備えている。誘電体部21の反射板22-1側(三角錐部21Dの底面)には、三角錐型の陥没部21Aが形成されている。また、誘電体部21に備えた三角錐部21Dの底面の円周に近い所定箇所には、ネジ24を挿入して貫通する4箇所の孔21B(図3には2箇所のみ図示してある)が形成されている。
誘電体部21の凸部21Eは、導波管部20の内部に挿入され、凸部21Eが導波管部20の内部に完全に収まった状態になる。この状態において、図2の断面図(b)に示すとおり、導波管部20の送受信回路19側には、空洞30が形成される。
反射板22-1は、円柱型に形成されている。反射板22-1には、誘電体部21に形成された陥没部21Aに対応する三角錐型の突起部22Aが形成されている。この突起部22Aは、アンテナ装置1が電波を送信する場合、送受信回路19から導波管部20及び誘電体部21を介して反射板22-1へ到達した電波を、導波管部20側へ戻さないようにし、反射鏡10へ効率的に反射させるために形成されている。
また、反射板22-1の誘電体部21側の面の円周に近い所定箇所には、ネジ24が誘電体部21の孔21Bを介して挿入されネジ留めされる4箇所の孔22B(図3には2箇所のみ図示してある)が形成されている。孔22Bは、ネジ24の先端を留める溝であるが、貫通孔であってもよい。
反射板22-1の突起部22Aは、誘電体部21の陥没部21Aに挿入され、ネジ24が誘電体部21の孔21Bを介して孔22Bに挿入されネジ留めされる。これにより、突起部22Aが陥没部21Aに完全に収まった状態になり、反射板22-1が誘電体部21に完全に固定された状態になる。
(シュペルトップ23)
次に、図2及び図3に示したシュペルトップ23について詳細に説明する。図10は、シュペルトップ23の構成例を示す正面図(a)及び側面図(b)である。
このシュペルトップ23は、円筒型に形成されており、リング部23A及び基部23Bを備えて構成される。リング部23Aは、電波が導波管部20から外部へ漏れないようにするための部材であり、基部23Bは、当該シュペルトップ23を導波管部20に取り付けるための部材である。シュペルトップ23は、導波管部20と同様に、アルミニウム、真鍮、銅等の金属で形成される。
このような構成のシュペルトップ23は、図3に示したとおり、基部23Bを有する側から導波管部20の一端の周縁に嵌め込まれ、基部23Bの基面23Cを導波管部20の周縁に沿って反射鏡10側へスライドさせる。そして、シュペルトップ23は、所定箇所にて、導波管部20の周縁との接触箇所である基面23Cを、例えば溶接することで取り付けられる。図2の断面図(b)に示したとおり、シュペルトップ23(リング部23A)と導波管部20との間には、一定の隙間25が形成される。
これにより、シュペルトップ23に備えた基部23Bを用いて、当該シュペルトップ23を導波管部20に取り付けることができる。
また、導波管部20の周縁を一定の隙間25を介して覆うリング部23Aにより、電波が導波管部20から外部へ漏れないようにすることができる。例えばアンテナ装置1が電波を送信する場合、導波管部20から漏れていた電波を、シュペルトップ23を用いて漏れないようにし、誘電体部21を介して反射板22-1へ誘導することができる。つまり、シュペルトップ23により、導波管部20から放射される不要電波を減少させることができる。
ここで、シュペルトップ23にて電波が反射することで、反射板22-1へ戻るエネルギーと、導波管部20の表面のd方向に流れる電流が打ち消されることとなる。特に、電流が打ち消されることで導波管部20の表面に流れる電流が小さくなるため、導波管部20から放射される電波が小さくなる。つまり、導波管部20に対して横方向(放射パターンでは90度前後の角度)に対して放射が減る、すなわちスピルオーバーが削減されることとなる。
したがって、シュペルトップ23により、導波管部20から漏れていた電波を漏れないようにして活用することで、より高いアンテナ利得を実現し、かつスピルオーバーの削減を実現することができる。そして、反射鏡10のサイズを小さくすることができ、アンテナ装置1全体としてコストを削減することができる。
図2の側面図(a)を参照して、電波の波長が40mmであり、周波数帯がCDバンドの場合、シュペルトップ23の幅は、例えばd1=11.2mm(約10mm)である。また、シュペルトップ23の取付位置について、誘電体部21側の導波管部20の端からシュペルトップ23の端までの距離を、例えばd2=20mmとすることができる。
尚、シュペルトップ23の幅及び取付位置は、電波の波長が長い場合はd1及びd2が長くなり、波長が短い場合はd1及びd2が短くなるように、波長に応じて決定される。また、図2、図3及び図10に示したシュペルトップ23は、当該シュペルトップ23を導波管部20に取り付けるための基部23Bを送受信回路19側に備えているが、誘電体部21側に備えるようにしてもよい。
以上のように、実施例1のアンテナ装置1によれば、給電部11は、導波管部20、誘電体部21、反射板22-1、及び、導波管部20に取り付けられたシュペルトップ23を備えるようにした。
これにより、シュペルトップ23にて、電波が導波管部20の内部から外部へ漏れないようにしたから、アンテナ利得を向上させることができ、アンテナの指向性を改善することができる。
(実施例1の他の例)
次に、実施例1の他の例について説明する。図11は、実施例1のアンテナ装置1に備えた他の給電部11の構成例を示す側面図である。この給電部11は、導波管部20、誘電体部21、反射板22-1、及びシュペルトップ23-1,23-2を備えている。シュペルトップ23-1,23-2は、導波管部20に取り付けられている。
図2に示した給電部11と図11に示す給電部11とを比較すると、両給電部11は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備えている点で共通する。一方、図2に示した給電部11は、1段(1個)のシュペルトップ23を備えているのに対し、図11に示す給電部11は、2段(2個)のシュペルトップ23-1,23-2を備えている点で相違する。
図11を参照して、電波の波長が40mmであり、周波数帯がCDバンドの場合、シュペルトップ23-1,23-2の幅は、例えばd1=11.2mm(約10mm)である。また、シュペルトップ23-1の取付位置について、誘電体部21側の導波管部20の端からシュペルトップ23-1の端までの距離を、例えばd2=20mmとすることができ、シュペルトップ23-2の取付位置について、例えばd3=70mmとすることができる。尚、シュペルトップ23-1,23-2の幅及び取付位置は、電波の波長が長い場合はd1,d2,d3が長くなり、波長が短い場合はd1,d2,d3が短くなるように、波長に応じて決定される。電波の波長をλとすると、例えばd1=λ/4,d2=λ/2,d3=d1+d2+λの値が用いられる。
このように、2段のシュペルトップ23-1,23-2を備えたアンテナ装置1によれば、図2に示した1段のシュペルトップ23を備えたアンテナ装置1に比べ、アンテナ利得を一層向上させることができ、アンテナの指向性を一層改善することができる。つまり、アンテナマスクを満たすと共に、アンテナ利得の向上を一層両立させたアンテナを実現することができる。
尚、アンテナ装置1は、3段以上のシュペルトップ23-1,23-2等を備えるようにしてもよい。
〔実施例2〕
次に、実施例2のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例2のアンテナ装置は、給電部の先端に固定された反射板及び誘電体部について、反射板の直径を誘電体部の直径よりも大きくしたものである。一般的なアンテナ装置では、反射板の直径と誘電体部の直径は同じであるが、実施例2では、誘電体部の直径を一般的なアンテナ装置のものと同じにし、反射板の直径を誘電体部の直径よりも大きくする。
図4は、実施例2のアンテナ装置1に備えた給電部の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)である。図4の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部12において、反射板22-2側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
図1に示した実施例1のアンテナ装置1において、実施例2のアンテナ装置1は、反射鏡10、及び、給電部11の代わりに給電部12を備えた装置である。給電部12は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-2を備えている。
図2に示した給電部11と図4に示す給電部12とを比較すると、給電部11,12は、導波管部20及び誘電体部21を備え、誘電体部21側から反射板22-1,22-2へネジ留めされている点で共通する。これに対し、給電部12は、シュペルトップ23を備えておらず、直径が反射板22-1よりも大きい反射板22-2を備えている点で給電部11と相違する。図4において、図2と共通する部分には図2と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
反射板22-2は、反射板22-1と同様に円柱型をなし、誘電体部21側の面の中央に三角錐型の突起部22Aが形成されている。反射板22-2には、反射板22-1と同様に、ネジ24が挿入される4箇所の孔22B(図示せず)が形成されている。反射板22-2は、誘電体部21側から反射板22-2へ向けてネジ24が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。
反射板22-2の突起部22Aは、誘電体部21の陥没部21A(図示せず)に挿入され、ネジ24が誘電体部21を介してネジ留めされる。これにより、突起部22Aが陥没部21A(図示せず)に完全に収まった状態になり、反射板22-2が誘電体部21に完全に固定された状態になる。
通常のアンテナ装置は、図1に示したアンテナ装置1のように、反射板22-1の直径と誘電体部21の直径は同じである。これに対し、反射板22-2の直径は、誘電体部21の直径よりも大きくしてある。
図12(a)は、反射板22-1の直径が誘電体部21の直径と同じ場合の電界分布を説明する図であり、図12(b)は、実施例2において、反射板22-2の直径が誘電体部21の直径よりも大きい場合の電界分布を説明する図である。
図12(a)に示すように、反射板22-1の直径が誘電体部21の直径と同じ場合、反射板22-1の縁付近で回析等の影響により、電界が乱れているのがわかる。一方、図12(b)に示すように、反射板22-2の直径が誘電体部21の直径よりも大きい場合、図12(a)よりも回折等の影響が少なく、電界の乱れが少ないことがわかる。
これは、図12(b)の場合、電波の節が反射板22-2の縁に近いためである。すなわちアンテナ装置1が電波を送信する場合、反射板22-2にて電界の乱れが少ないため、電波を効率良く反射板22-2へ放射することができる。このため、反射板22-2の大きさは、およそ波長×0.5×nに設計することが望ましい。nは正の整数である。
図13は、反射板22-2の直径とアンテナ利得の関係を示す図であり、(a)は周波数帯がCバンドの場合を示し、(b)は周波数帯がDバンドの場合を示す。周波数帯がCバンドの場合、反射板22-2の直径が100mmのとき、アンテナ利得は36.0dBiであり、反射板22-2の直径が140,145,200mmのとき、アンテナ利得は36.1dBiである。また、反射板22-2の直径が150mmのとき、アンテナ利得は35.9dBiであり、反射板22-2の直径が155,160mmのとき、アンテナ利得は35.8dBiである。
また、周波数帯がDバンドの場合、反射板22-2の直径が100mmのとき、アンテナ利得は36.3dBiであり、反射板22-2の直径が140,145,160mmのとき、アンテナ利得は36.4dBiである。また、反射板22-2の直径が150,155mmのとき、アンテナ利得は36.5dBiであり、反射板22-2の直径が200mmのとき、アンテナ利得は36.0dBiである。
図13(b)に示したDバンドの場合には、反射板22-2の直径が200mmのときに、これよりも小さい直径の反射板22-2よりもアンテナ利得が低下している。これは、反射板22-2が大き過ぎる場合、電波の放射方向を遮り、アンテナ利得に影響が出るためである。図13(a)及び(b)から、反射板22-2の直径は、適切な大きさに設計する必要がある。
以上のように、実施例2のアンテナ装置1によれば、給電部12は、導波管部20、誘電体部21、及び、通常よりも直径が大きい反射板22-2を備えるようにした。
これにより、通常の反射板22-1よりも直径が大きい反射板22-2を用いることで、電波の節が反射板22-2の縁に近くなり、反射板22-2における反射の乱れを少なくすることができる。
つまり、アンテナ装置1は、反射板22-2へ効率よく電波を放射することができるため、アンテナ利得を向上させることができる。また、反射板22-2の端付近では電界の乱れが少ないことから、不要な電波放射が減少するため、アンテナ指向性を改善することができる。
〔実施例3〕
次に、実施例3のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例3のアンテナ装置は、反射板側から誘電体部へネジ留めするように構成したものである。一般的なアンテナ装置では、誘電体部側から反射板へネジ留めするが、実施例3では、反射板側から誘電体部へネジ留めする。
図5は、実施例3のアンテナ装置1に備えた給電部の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)であり、図6はその分解図である。図5の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部13において、反射板22-1側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
尚、図5の正面図(c)のネジ31について、当該ネジ31の頭部の先端にドライバーを挿入してネジ留めする際の溝の記載は省略してある。後述する図7~図9及び図18の正面図(c)に記載されたネジ31についても同様である。
図1に示した実施例1のアンテナ装置1において、実施例3のアンテナ装置1は、反射鏡10、及び、給電部11の代わりに給電部13を備えた装置である。給電部13は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備えている。反射板22-1は、反射板22-1側から誘電体部21へ向けてネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。
図2に示した給電部11と図5に示す給電部13とを比較すると、給電部11,13は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備えている点で共通する。これに対し、給電部13は、シュペルトップ23を備えていない点で給電部11と相違する。また、給電部13は、反射板22-1側から誘電体部21へネジ留めされている点で、誘電体部21側から反射板22-1へネジ留めされている給電部11と相違する。図5及び図6において、図2及び図3と共通する部分には図2及び図3と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
図6を参照して、誘電体部21は、図3と同様に、三角錐型の三角錐部21D、及び2段形状の円柱型の凸部21Eを備えており、反射板22-1側(三角錐部21Dの底面)には、三角錐型の陥没部21Aが形成されている。また、誘電体部21に備えた三角錐部21Dの底面の円周に近い所定箇所には、反射板22-1側からネジ31が挿入されネジ留めされる4箇所の孔21C(2箇所のみ図示してある)が形成されている。孔21Cは、ネジ31の先端を留める溝であるが、貫通孔であってもよい。
誘電体部21の凸部21Eは、導波管部20の内部に挿入されることで、凸部21Eが導波管部20の内部に完全に収まった状態になる。この状態において、図5の断面図(b)に示すとおり、導波管部20の送受信回路19側には、空洞30が形成される。
反射板22-1は、図3と同様に円柱型をなし、誘電体部21側の面の中央に三角錐型の突起部22Aが形成されている。反射板22-1には、ネジ31が挿入される4箇所の孔22Cが形成されている。反射板22-1は、反射板22-1側から誘電体部21へ向けてネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。
反射板22-1の誘電体部21側の面の円周に近い所定箇所には、ネジ31を挿入して貫通する4箇所の孔22C(2箇所のみ図示してある)が形成されている。
反射板22-1の突起部22Aは、誘電体部21の陥没部21Aに挿入され、ネジ31が孔22Cを介して誘電体部21の孔21Cに挿入されネジ留めされる。これにより、突起部22Aが陥没部21Aに完全に収まった状態になり、反射板22-1が誘電体部21に完全に固定された状態になる。
尚、図5の側面図(a)等において、ネジ31の本数及び大きさ、並びに反射板22-1の中心からネジ31までの間の距離は、アンテナ利得及びアンテナの指向性に、ほとんど影響を与えない。
以上のように、実施例3のアンテナ装置1によれば、給電部13は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備え、反射板22-1は、反射板22-1側から誘電体部21へ向けてネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定されるようにした。
これにより、反射板22-1側からネジ31が挿入される場合の方が、誘電体部21側からネジ24が挿入される場合よりも、電波が反射板22-1にて反射する際に、ネジ31の影響を受け難くなり、電界の乱れを少なくすることができる。
つまり、実施例3のアンテナ装置1は、反射板22-1へ効率よく電波を放射することができるため、アンテナ利得を向上させることができる。この場合、スピルオーバーの削減も可能になる。また、反射板22-1において電界の乱れが少ないことから、不要な電波放射が減少するため、アンテナ指向性を改善することができる。
尚、実施例3のアンテナ装置1では、4個のネジ31が反射板22-1側から誘電体部21へ向けて挿入されネジ留めされるようにしたが、本発明は、ネジ31の個数を限定するものではない。例えば2個、3個または5個のネジ31を用いるようにしてもよい。また、1個のネジ31が反射板22-1側から誘電体部21へ向けて、反射板22-1の中央に挿入されネジ留めされるようにしてもよい。この場合も同様に、不要な電波放射が減少するため、アンテナ指向性を改善することができる。
〔実施例4〕
次に、実施例4のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例4のアンテナ装置は、誘電体部と反射板とを固定するネジを、電波の偏波面と重ならない位置に設けたものである。
図7は、実施例4のアンテナ装置1に備えた給電部の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)である。図7の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部14において、反射板22-1側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
図1に示した実施例1のアンテナ装置1において、実施例4のアンテナ装置1は、反射鏡10、及び、給電部11の代わりに給電部14を備えた装置である。給電部14は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備えている。反射板22-1は、反射板22-1側から誘電体部21へ向けてネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。
図5に示した給電部13と図7に示す給電部14とを比較すると、給電部13,14は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備えている点で共通する。これに対し、給電部14は、偏波面に重ならない位置にネジ31が挿入されるのに対し、給電部13は、偏波面に重なる位置にネジ31が挿入される点で、給電部13と相違する。図7において、図5と共通する部分には図5と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
図7の正面図(c)において、電波の垂直偏波及び水平偏波が振動する面(偏波面)が、紙面奥から手前へまたはその逆へ向けた部分PP’,QQ’を含む面とする。
4本のネジ31の位置は、図7の正面図(c)に示す反射板22-1の面において、電波の垂直偏波及び水平偏波が伝搬する部分PP’ ,QQ’の軸からそれぞれ45°の位置である。この場合、ネジ31がネジ留めされる、誘電体部21における4つの孔21C(図示せず)及び反射板22-1における4つの孔22C(図示せず)は、4本のネジ31に対応する位置に形成される。
尚、ネジ31を留める位置は、偏波面に重ならない位置であればどこでもよい。また、図7では、給電部14は、反射板22-1側からネジ31が挿入されるようにしたが、誘電体部21側からネジ24が挿入されるようにしてもよい。この場合、誘電体部21側からネジ24を留める位置は、電波の垂直偏波及び水平偏波が伝搬する部分PP’ ,QQ’の軸からそれぞれ45°の位置であってもよいし、偏波面に重ならない位置であればどこでもよい。
図14(a)は、従来技術において、ネジ24を誘電体部21側から挿入する場合の電界分布を説明する図であり、図14(b)は、実施例4において、ネジ31を反射板22-1側から挿入する場合の電界分布を説明する図である。尚、図14(b)において、ネジ31は偏波面に重ならない位置に設けられているため、この断面図には表れていない。
図14(a)に示すように、ネジ24を誘電体部21側から挿入する場合、ネジ24付近で電界が乱れていることがわかる。一方、図14(b)に示すように、ネジ31を反射板22-1側から挿入する場合、図14(a)よりも電界の乱れが少ないことがわかる。
これは、アンテナ装置1が電波を送信する場合、図14(a)では、ネジ24の(頭の)影響により電波を効率良く反射板22-1へ放射することができないからである。一方、図14(b)では、ネジ31が影響しないため、電波を効率良く反射板22-1へ放射することができる。これにより、アンテナ利得を向上させることができ、アンテナ指向性を改善することができる。
図15は、ネジ24,31を挿入する側とアンテナ利得の関係を示す図であり、反射板の直径が145mm、周波数が7.0GHzの場合を示している。従来技術において、ネジ24を誘電体部21側から挿入し、ネジ24の位置が偏波面に重なる場合((1)の場合)、アンテナ利得は36.4dBiである。
一方、ネジ24を誘電体部21側から挿入し、ネジ24の位置が偏波面に重ならない場合((2)の場合)、アンテナ利得は36.4dBiである。また、実施例4において、ネジ31を反射板22-1側から挿入し、ネジ31の位置が偏波面に重ならない場合((3)の場合)、アンテナ利得は37.1dBiである。
図15から、(3)の場合は(1)及び(2)の場合よりも、アンテナ利得が向上することがわかる。これは、電波が反射板22-1にて反射する際に、ネジ31の影響を受け難くなり、電界の乱れを少なくすることができるからである。
以上のように、実施例4のアンテナ装置1によれば、給電部14は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-1を備え、誘電体部21と反射板22-1とを固定するネジ31を、偏波面と重ならない位置に設けるようにした。
これにより、電波が反射板22-1にて反射する際に、ネジ31の影響を受け難くなり、電界の乱れを少なくすることができる。
つまり、実施例4のアンテナ装置1は、反射板22-1へ効率よく電波を放射することができるため、アンテナ利得を向上させることができる。また、反射板22-1において電界の乱れが少ないことから、不要な電波放射が減少するため、アンテナ指向性を改善することができる。
尚、実施例4のアンテナ装置1では、4個のネジ31が反射板22-1側から誘電体部21へ向けて、偏波面と重ならない位置に挿入されネジ留めされるようにしたが、本発明は、ネジ31の個数を限定するものではない。偏波面と重ならない位置に挿入されネジ留めされる限り、例えば2個、3個または5個のネジ31を用いるようにしてもよい。この場合も同様に、不要な電波放射が減少するため、アンテナ指向性を改善することができる。後述する図8及び図9に示す実施例5,6のアンテナ装置1についても同様である。
〔実施例5〕
次に、実施例5のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例5のアンテナ装置は、実施例2~4を組み合わせた構成としたものである。すなわち、実施例5のアンテナ装置は、反射板の直径を誘電体部の直径よりも大きくし、反射板側から誘電体部へネジ留めするように構成し、誘電体部と反射板とを固定するネジを、偏波面と重ならない位置に設けたことを特徴とする。
図8は、実施例5のアンテナ装置1に備えた給電部の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)である。図8の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部15において、反射板22-2側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
図1に示した実施例1のアンテナ装置1において、実施例5のアンテナ装置1は、反射鏡10、及び、給電部11の代わりに給電部15を備えた装置である。給電部15は、導波管部20、誘電体部21及び反射板22-2を備えている。反射板22-2の直径は、誘電体部21の直径(通常の反射板22-1の直径)よりも大きい。反射板22-2は、反射板22-2側から誘電体部21へ向けてネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。ネジ31を留める位置は、偏波面に重ならない位置であればどこでもよい。
以上のように、実施例5のアンテナ装置1によれば、実施例2~4のそれぞれのアンテナ装置1に比べ、アンテナ利得を一層向上させると共に、アンテナ指向性を一層改善することができる。
〔実施例6〕
次に、実施例6のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例6のアンテナ装置は、実施例1~4を組み合わせた構成としたものである。すなわち、実施例6のアンテナ装置は、給電部の導波管に円筒型のリング部材を取り付け、反射板の直径を誘電体部の直径よりも大きくし、反射板側から誘電体部へネジ留めするように構成し、誘電体部と反射板とを固定するネジを、偏波面と重ならない位置に設けたことを特徴とする。
図9は、実施例6のアンテナ装置1に備えた給電部の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)である。図9の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部16において、反射板22-2側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
図1に示した実施例1のアンテナ装置1において、実施例6のアンテナ装置1は、反射鏡10、及び、給電部11の代わりに給電部16を備えた装置である。給電部16は、シュペルトップ23が取り付けられた導波管部20、誘電体部21及び反射板22-2を備えている。シュペルトップ23は、導波管部20の所定位置に取り付けられている。反射板22-2の直径は、誘電体部21の直径(通常の反射板22-1の直径)よりも大きい。反射板22-2は、反射板22-2側から誘電体部21へ向けてネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。ネジ31を留める位置は、偏波面に重ならない位置であればどこでもよい。
以上のように、実施例6のアンテナ装置1によれば、実施例1~4のそれぞれのアンテナ装置1、及び実施例5のアンテナ装置1に比べ、アンテナ利得を一層向上させると共に、アンテナ指向性を一層改善することができる。
尚、実施例6のアンテナ装置1において、図9に示した給電部16の導波管部20に、図11に示した2段のシュペルトップ23-1,23-2を取り付けるようにしてもよい。この場合も、1段目のシュペルトップ23-1及び2段目のシュペルトップ23-2のサイズ及び取付位置は、図11と同様である。また、3段以上のシュペルトップ23-1,23-2等を備えるようにしてもよい。
例えば反射鏡10の直径が1.2mの場合、Cバンドではアンテナ利得36.6dBiを実現し、Dバンドではアンテナ利得37.3dBiを実現することができる。これは、開口効率にして約70%を実現できることを意味している。
図16は、シュペルトップ23の数とアンテナ利得の関係を示す図であり、(a)は周波数帯がCバンドの場合を示し、(b)は周波数帯がDバンドの場合を示す。周波数帯がCバンドの場合、シュペルトップ23が0個のとき、アンテナ利得は36.3dBiであり、シュペルトップ23が1個(1段)のとき、アンテナ利得は36.6dBiである。また、シュペルトップ23が2個(2段)のとき、アンテナ利得は36.6dBiであり、シュペルトップ23が3個(3段)のとき、アンテナ利得は36.6dBiである。
また、周波数帯がDバンドの場合、シュペルトップ23が0個のとき、アンテナ利得は37.1dBiであり、シュペルトップ23が1個のとき、アンテナ利得は37.3dBiである。また、シュペルトップ23が2個のとき、アンテナ利得は37.3dBiであり、シュペルトップ23が3個のとき、アンテナ利得は37.2dBiである。
図16から、シュペルトップ23が1,2,3個の場合、0個の場合よりもアンテナ利得が高いことがわかる。これにより、シュペルトップ23を設けることにより、アンテナ利得を向上させると共に、アンテナ指向性を改善することができる。
図17は、実施例6におけるアンテナ利得の特性を説明する図であり、(a)はシュペルトップ23が1段(1個)の場合を示し、(b)はシュペルトップ23が2段(2個)の場合を示す。横軸は、アンテナ装置1のアンテナ向き(°)を示し、縦軸は、アンテナ利得(dBi)を示す。太線は、アンテナマスクの特性を示し、Eの曲線は、電界面におけるアンテナ利得の特性を示し、Hの曲線は、磁界面におけるアンテナ利得の特性を示す。
図17(a)及び(b)に示すアンテナ利得の特性は、反射鏡10の直径が1.2m、周波数が7.0GHzの場合を示している。
図17(a)及び(b)から、アンテナの指向性がアンテナマスク内に収まっていることがわかる。したがって、アンテナ装置1は、アンテナマスクを満たすと共に、アンテナ利得の向上を両立させたアンテナを実現することができる。
〔実施例7〕
次に、実施例7のアンテナ装置について説明する。前述のとおり、実施例7のアンテナ装置は、実施例1~3を組み合わせた構成において、1個のネジを反射板側の中央から誘電体部へネジ留めするように構成したものである。すなわち、実施例7のアンテナ装置は、給電部の導波管に円筒型のリング部材を取り付け、反射板の直径を誘電体部の直径よりも大きくし、1個のネジを反射板側の中央から誘電体部へネジ留めするように構成したことを特徴とする。
図18は、実施例7のアンテナ装置1に備えた給電部の構成例を示す側面図(a)、断面図(b)及び正面図(c)である。図18の側面図(a)及び断面図(b)は、給電部17において、反射板22-2側の一部を示しており、断面図(b)は、正面図(c)の部分PP’の断面を示している。
図1に示した実施例1のアンテナ装置1において、実施例7のアンテナ装置1は、反射鏡10、及び、給電部11の代わりに給電部17を備えた装置である。給電部17は、シュペルトップ23が取り付けられた導波管部20、誘電体部21及び反射板22-2を備えている。シュペルトップ23は、導波管部20の所定位置に取り付けられている。反射板22-2の直径は、誘電体部21の直径(通常の反射板22-1の直径)よりも大きい。反射板22-2は、反射板22-2側の中央から誘電体部21へ向けて1個のネジ31が挿入されネジ留めされることで、誘電体部21に固定される。
反射板22-2が誘電体部21に固定された状態において、誘電体部21のネジ孔に挿入されているネジ31の先端部の長さは、例えばd4=3mmである。また、給電位置と、誘電体部21が導波管部20の内壁と接している箇所(送受信回路19側に最も近い箇所)との間の距離は、例えばd5=50.5mmである。この距離d5は、前述の実施例1~6においても同様である。
以上のように、実施例7のアンテナ装置1によれば、実施例1~6のそれぞれのアンテナ装置1と同様に、アンテナ利得を向上させると共に、アンテナ指向性を改善することができる。
尚、実施例7のアンテナ装置1において、図18に示した給電部17の導波管部20に、図11に示した2段のシュペルトップ23-1,23-2を取り付けるようにしてもよい。また、3段以上のシュペルトップ23-1,23-2等を備えるようにしてもよい。
以上、実施例1~7を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1~7に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば前記実施例5は、実施例2~4を組み合わせた構成とし、前記実施例6は、実施例1~4を組み合わせた構成とし、前記実施例7は、実施例1~3を組み合わせた構成において、1個のネジ31を反射板22-2側の中央から挿入してネジ留めするように構成した。これに対し、他の実施例として、実施例2,3を組み合わせた構成、実施例2,4を組み合わせた構成としてもよい。また、他の実施例として、実施例1,2を組み合わせた構成、実施例1,3を組み合わせた構成、実施例1,4を組み合わせた構成、実施例1~3を組み合わせた構成、実施例1,2,4を組み合わせた構成としてもよい。
また、実施例1または実施例2において、ネジ24を留める位置を、偏波面に重ならない位置とするようにしてもよい。例えば、ネジ24を留める位置は、電波の垂直偏波及び水平偏波が伝搬する部分PP’ ,QQ’の軸(図7の正面図(c)を参照)からそれぞれ45°の位置とする。