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JP2022121447A - 熱伝導性シート、その装着方法及び製造方法 - Google Patents

熱伝導性シート、その装着方法及び製造方法 Download PDF

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JP2022121447A JP2022091002A JP2022091002A JP2022121447A JP 2022121447 A JP2022121447 A JP 2022121447A JP 2022091002 A JP2022091002 A JP 2022091002A JP 2022091002 A JP2022091002 A JP 2022091002A JP 2022121447 A JP2022121447 A JP 2022121447A
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thickness
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大希 工藤
Daiki Kudo
弘通 岩▲崎▼
Hiromichi Iwasaki
健太 黒尾
Kenta Kuroo
一浩 並木
Kazuhiro Namiki
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Sekisui Polymatech Co Ltd
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Abstract

【課題】厚みの薄い熱伝導性シートであって、低荷重で圧縮した場合であっても熱抵抗値を低くすることが可能な熱伝導性シートを提供する。【解決手段】シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、前記バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填材(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである熱伝導性シート。【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導性シートに関し、例えば、発熱体と放熱体の間に配置して使用される熱伝導性シートに関する。
コンピュータ、自動車部品、携帯電話等の電子機器では、半導体素子や機械部品等の発熱体から生じる熱を放熱するためにヒートシンクなどの放熱体が一般的に用いられる。放熱体への熱の伝熱効率を高める目的で、発熱体と放熱体の間には、熱伝導性シートが配置されることが知られている。
熱伝導性シートは、伝導効率をより一層高めるために発熱体、放熱体に対する追従性が求められる。したがって、加熱により軟化ないし溶融する、いわゆるフェーズチェンジシートと呼ばれる相変化型の熱伝導性シートが検討されている。例えば、特許文献1では、アルキル基導入シリコーンオイルと、α-オレフィンと、熱伝導性フィラーとを少なくとも含み、常温ではパテ状であり、加熱により軟化し流動化する放熱シートが開示されている。
また、熱伝導性シートとしては高分子ゲルを利用した熱伝導性シートも知られている。例えば、特許文献2には、高分子ゲルと、常温では固形ないしペースト状で加熱すると液体になる化合物と、熱伝導性フィラーとを含む組成物からなる放熱シートであって、加熱によって軟化することを特徴とする熱軟化放熱シートが開示されている。
また、特許文献3には、熱伝導性樹脂層を含む熱伝導性シートであって、熱伝導性樹脂層が、ワックスを含むバインダー樹脂と、該バインダー樹脂中に分散する熱伝導性充填材とを含む熱伝導性シートにおいて、バインダー樹脂にシリコーンゲルが使用されることが開示されている。
以上の各特許文献1~3に開示されるフェーズチェンジシートや、シリコーンゲルなどの高分子ゲルを利用した熱伝導性シートは、柔軟性が高いため、放熱体、発熱体に対する追従性が良好であり、それにより、熱伝導性能を高くすることが可能になる。
特開2004-331835号公報 特開2002-234952号公報 特開2001-291807号公報
しかしながら、上記したような従来の熱伝導性シートは、厚みが薄い場合、高温下において、発熱体及び放熱体の間に圧縮して装着する際の荷重が低荷重であると、発熱体及び放熱体に対する追従性が悪くなり、そのため熱抵抗値が高くなる(熱伝導性が低下する)という問題があることが分かった。一方、熱伝導性シートを高荷重で圧縮すると、熱抵抗値は低くなるものの、発熱体及び放熱体に対する負荷が高くなるため、低荷重の条件であっても熱抵抗値の低い熱伝導性シートが望まれる。
そこで、本発明は、厚みの薄い熱伝導性シートであって、低荷重で圧縮した場合であっても熱抵抗値を低くすることが可能な熱伝導性シートを提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、前記バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填材(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである、熱伝導性シートが上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、前記バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填材(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである、熱伝導性シート。
[2]80℃において荷重40psiで測定される熱抵抗値R40(℃・in/W)及び測定時厚さT40(mm)と、80℃において荷重10psiで測定される熱抵抗値R10(℃・in/W)及び測定時厚さT10(mm)とで算出される下記式(1)で示される傾きαが0.4以下である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
α=(R40-R10)/(T40-T10)・・・(1)
[3]前記炭化水素系化合物(B)の融点が、23℃より高く80℃以下である上記[1]又は[2]に記載の熱伝導性シート。
[4]前記炭化水素系化合物(B)が結晶性ポリアルファオレフィンである上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
[5]前記炭化水素系化合物(B)の含有量が、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対して、0.5~15質量部である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
[6]前記熱伝導性充填材(C)の体積充填率が、30~85体積%である上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
[7]上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱伝導性シートと、放熱体とを備え、前記熱伝導性シートが前記放熱体の表面に装着される放熱部材。
[8]シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、前記バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填剤(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである、熱伝導性シートを、第1の部材の表面に配置する工程と、前記熱伝導性シートを加熱する工程と、前記熱伝導性シートの前記第1の部材側の面とは反対側の面に第2の部材を配置し、かつ前記熱伝導性シートを加圧して、前記第1及び第2の部材間に前記熱伝導性シートを組み付ける工程とを備える熱伝導性シートの装着方法。
[9]前記炭化水素系化合物(B)が23℃より高い融点を有し、前記熱伝導性シートを、前記融点以上に加熱する上記[8]に記載の熱伝導性シートの装着方法。
[10]硬化性シリコーン組成物(A1)と、炭化水素系化合物(B)と、異方性充填材を含む熱伝導性充填材(C)と、相溶性物質(D)とを少なくとも混合させて、混合組成物を得る工程と、前記混合組成物を加熱により硬化する工程とを備える熱伝導性シートの製造方法。
[11]前記相溶性物質(D)がアルコキシシラン化合物である上記[10]に記載の熱伝導性シートの製造方法。
本発明によれば、厚みの薄い熱伝導性シートであって、発熱体及び放熱体などに装着する際に低荷重で圧縮した場合においても熱抵抗値を低くすることが可能な熱伝導性シートを提供することができる。
熱抵抗を測定する測定機を説明する図である。
[熱伝導性シート]
以下、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートについて詳しく説明する。
本発明の熱伝導性シートは、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填材(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである。
本発明の熱伝導性シートは、以上の構成を有することで、高温加熱時(すなわち、使用時)に一定の柔軟性を確保し、厚みが薄いにもかかわらず、発熱体、放熱体などに対して高い荷重を作用させることなく追従性を確保でき、熱伝導性が良好になる。
熱伝導性シートの厚みが薄いにも関わらず、発熱体、放熱体などに対して、低荷重で追従性が良好となる原理は定かではないが、以下のように推定される。本発明の熱伝導性シートはバインダー成分として、炭化水素系化合物(B)を含有する。炭化水素系化合物(B)は、加熱時に軟化、溶融、低粘度化することにより、熱伝導性シートの柔軟性が高まり、これにより発熱体、放熱体との追従性が向上する。これに加えて、本発明の熱伝導性シートは熱伝導性充填材(C)として、シートの厚さ方向に配向する異方性充填材を含んでいる。これにより、シートの厚さ方向の熱伝導パスが形成されやすくなる。これらの要因により、熱伝導性シートの熱伝導性が向上すると考えられる。
なお、炭化水素系化合物(B)は、シリコーンマトリクス(A)に相溶されず、バインダー成分において、シリコーンマトリクス(A)が海成分、炭化水素系化合物(B)が島成分となる海島構造になると推定される。バインダー成分が海島構造を有することで、炭化水素系化合物(B)は、加熱時に軟化、溶融、低粘度化などしてもシリコーンマトリクス(A)によって保持され続け、柔軟性を高めながらもポンプアウトも抑止できる。また、シリコーンマトリクス(A)が海成分を構成することで、熱伝導性シートは所定の反発弾性を備えるので、発熱体、又は放熱体との間などに空気層ができずに安定して組み付けることができる。
<厚さ>
本発明の熱伝導性シートの厚さは、0.05~0.5mmである。熱伝導性シートの厚さが0.05mm未満であると、熱伝導性シートの発熱体や放熱体に対する追従性が悪くなり、熱抵抗値が高くなる傾向がある。一方、熱伝導性シートの厚さが0.5mmを超えると、小型の電子機器などに使用し難くなる。熱伝導性シートの厚さは、好ましくは0.08~0.5mmであり、より好ましくは0.1~0.4mmである。
本発明の熱伝導性シートは、このように比較的厚みが薄いものであるが、上記したように、発熱体と放熱体の間に組み込む際に、低荷重であっても熱抵抗値を低くすることができる。
<傾きα>
本発明の熱伝導性シートは、80℃において荷重40psi(0.276MPa)で測定される熱抵抗値R40及び測定時厚さT40と、荷重10psi(0.069MPa)で測定される熱抵抗値R10及び測定時厚さT10とで算出される下記式(1)で示される傾きαが0.4以下であることが好ましい。
α=(R40-R10)/(T40-T10)・・・(1)
傾きαを0.40以下とすることにより、低荷重においても発熱体、放熱体などに対して、追従性が良好になり、熱伝導性に優れる熱伝導性シートとなる。傾きαは、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましく0.1以下である。なお、熱抵抗値R40及びR10の単位は℃・in/Wであり、厚さT40及びT10の単位はmmである。
熱伝導性シートは、一般に、相対的に高荷重である荷重40psiで測定した場合の方が、相対的に低荷重である荷重10psiで測定した場合よりも、熱抵抗値は低くなる。このため、厚みの変化に対する熱抵抗値の変化を示す式(1)で表される傾きαは、その値が低く0に近づくにつれて、低荷重であっても高荷重のときと同等に近い熱抵抗値を示すことを意味する。したがって、傾きαを小さく調整することにより、低荷重であっても熱抵抗値の低い熱伝導性シートを得ることができる。
傾きαは、炭化水素系化合物(B)や熱伝導性充填材(C)の配合量、後述する熱伝導性シートの製造方法などにより調整することができる。
荷重40psiで測定される熱抵抗値R40及び荷重10psiで測定される熱抵抗値R10は、実施例に記載の方法で測定することができる。
<圧縮率>
本発明の熱伝導性シートは、40psiにおける圧縮率が15%以上であることが好ましい。熱伝導性シートの圧縮率が15%以上となると、加熱した際の柔軟性が高く、使用時に発熱体や放熱体に対する追従性が向上し、熱伝導性が良好となる。上記圧縮率は、使用時の柔軟性を高め、熱伝導性を向上させる観点から、18%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
また、上記圧縮率は、50%以下が好ましい。圧縮率が50%以下になることで、取扱い性、信頼性が良好になりやすくなり、電子機器への組み付けや切断加工も容易になり、さらには、ポンプアウトなども生じにくくなる。これら観点から、上記圧縮率は、40%以下がより好ましく、38%以下がさらに好ましい。
圧縮率は、実施例に記載の方法で測定される。
<シリコーンマトリクス(A)>
シリコーンマトリクス(A)は、室温(23℃)及び高温下(80℃)のいずれにおいても流動性を有しないシリコーンであるとよい。シリコーンマトリクス(A)は、流動性を有しないので、常温及び高温下において熱伝導性シートの保形性を確保できる。
また、本発明のシリコーンマトリクス(A)としては例えばシリコーンゴムを使用すればよい。シリコーンゴムを使用することで圧縮変形が容易となり、発熱体と放熱体の間に組み付けやすくなる。また、熱伝導性シートに一定の圧縮特性を付与できるので、信頼性を高めることができる。
シリコーンマトリクス(A)に使用するシリコーンとしては、縮合反応型、付加反応型のいずれでもよいが、熱伝導性充填材を高充填し易く、また触媒等により硬化温度を容易に調整できることから、付加反応型が好ましい。シリコーンマトリクス(A)は、例えば、硬化性シリコーン組成物(A1)を硬化することで得ることができる。硬化性シリコーン組成物(A1)は、例えば主剤と硬化剤からなるとよい。
硬化性シリコーン組成物(A1)は、付加反応型の場合、熱伝導性充填材を高充填し易いという観点から、主剤としてのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと硬化剤としてのハイドロジェンオルガノポリシロキサンとを含有することが好ましい。
なお、硬化性シリコーン組成物(A1)は、硬化前は液状であることが好ましい。硬化性シリコーン組成物(A1)は、硬化前に液状であることで、熱伝導性フィラーを高充填しやすく、さらには、炭化水素系化合物(B)を硬化性シリコーン組成物(A1)中に分散させやすくなる。なお、本明細書において液状とは、常温(23℃)、1気圧下で液体のものをいう。
また、シリコーンマトリクス(A)は、熱伝導性シートの保形性を確保できるようにするために、3次元架橋しているシリコーンマトリクスを使用することが好ましい。そのためには、例えば付加反応型の場合、1分子中にアルケニル基を少なくとも3以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、またはケイ素原子に付加する水素を少なくとも3以上有するハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含有する硬化性シリコーン組成物(A1)を硬化させればよい。
シリコーンマトリクス(A)の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、例えば15~70体積%程度であればよく、好ましくは17~50質量%、より好ましくは20~39質量%である。
<炭化水素系化合物(B)>
本発明で使用する炭化水素系化合物(B)は、室温で液状、あるいは、一定の温度(例えば、23℃より高く80℃以下の温度)に加熱することで溶融する化合物を使用すればよい。熱伝導性シートは、炭化水素系化合物(B)として液状あるいは加熱により溶融する化合物を含有することで、高温加熱時に柔軟性を高めることができ、上記した傾きαを小さくしたり、圧縮率を高くしやすくなる。
炭化水素系化合物(B)の融点は、高温(例えば、80℃)加熱時に溶融できる観点から、好ましくは80℃以下であるが、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下、よりさらに好ましくは50℃以下である。
炭化水素系化合物(B)は、室温、1気圧下で固体状であることが好ましい。室温で固体であることで、取扱い性を高め、例えば後述する切断加工を室温近傍の温度で行うとき、所定の剛性を有することで、容易に熱伝導性シートを得ることができる。したがって、炭化水素系化合物の融点は常温(23℃)より高いことが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることがさらに好ましい。なお、炭化水素系化合物の融点は、熱重量示差熱分析(TGDTA)を用い昇温速度1℃/minで測定したDTA曲線の吸熱ピークの温度である。また、炭化水素系化合物が混合物である場合は、融点は上記温度範囲の中の最大の吸熱ピークとする。
炭化水素系化合物の具体例としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、ワセリン、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。これらの中では、常温における取り扱性などの観点から、パラフィンワックス、ワセリン、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが好ましい。なお、ワセリンは、半固形状炭化水素系化合物であり、イソパラフィン、シクロパラフィン、ナフテンなどの複数の炭化水素系化合物の混合物である。また、ワセリンとしては例えば日本薬局方に定義される白色ワセリンを例示できる。
上記の中でもポリアルファオレフィン(PAO)が好ましく、中でも結晶性を有する結晶性ポリアルファオレフィン(CPAO)がより好ましい。ポリアルファオレフィンは、α-オレフィンの重合体である。α-オレフィンの種類に特に制限はなく、直鎖であっても、分岐鎖を有してもよく、また、環状構造を有してもよい。ポリアルファオレフィンは、例えば炭素数2~30、好ましくは炭素数6~20のα-オレフィンの重合体である。結晶性ポリアルファオレフィンは、例えばα-オレフィンの炭素数を大きくして、側鎖結晶性ポリアルファオレフィンとしてもよい。
ポリα-オレフィンは、単一のα-オレフィンの重合体であってもよいし、2種以上のα-オレフィンの共重合体であってもよい。
熱伝導性シートにおける、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対する、炭化水素系化合物(B)の含有量は、好ましくは0.5~15質量部である。
炭化水素系化合物(B)の含有量が0.5質量部以上であると、熱伝導性シートは、高温下で一定の柔軟性を有し、発熱体と放熱体の間などに組み付けられた際の熱伝導性が向上しやすくなる。
一方で、上記含有量が15質量部以下であると、シリコーンマトリクス(A)が熱伝導性シート中に一定量含有されることになり、熱伝導性シートの保形性を良好にできる。さらには、熱伝導性シートは、適度な反発弾性を有しやすくなり、発熱体又は放熱体との間に空気層ができずに安定して組み付けやすく、信頼性が高められる。
これら観点から、炭化水素系化合物(B)の含有量は、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、2質量部以上がよりさらに好ましく、また、40質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下がよりさらに好ましい。
なお、シリコーンマトリクス(A)は、後述する硬化性シリコーン組成物(A1)から形成されるものである。したがって、後述する混合組成物においては、硬化性シリコーン組成物(A1)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対する、炭化水素化合物(B)の含有量が、上記した炭化水素化合物(B)の含有量と同じになる。後述する熱伝導性充填材(C)、異方性充填材、及び非異方性充填材の含有量も同様である。
また、バインダー成分は、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)からなるとよいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、シリコーンマトリクス(A)以外の樹脂成分や、炭化水素系化合物(B)以外の可塑剤などをバインダー成分として含有してもよい。
<熱伝導性充填材(C)>
本発明の熱伝導性シートは、熱伝導性充填材(C)をさらに備える。熱伝導性充填材(C)は、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分中に分散され、かつバインダー成分に保持されるとよい。
熱伝導性充填材は、熱伝導性シートの厚さ方向に配向する異方性充填材を含有する。これにより、熱伝導性シートは、熱伝導性を高めやすくなる。厚さ方向に配向すると、上記した圧縮率を高くしにくくなるが、本発明では、炭化水素系化合物(B)をシリコーンマトリクス(A)中に分散させることで、厚さ方向の圧縮率を高くできる。
なお、異方性充填材は、厚さ方向に配向する場合、その長軸方向が厳密に厚さ方向に平行である必要はなく、長軸方向が多少厚さ方向に対して傾いていても厚さ方向に配向するものとする。具体的には、長軸方向が20°未満程度傾いているものも厚さ方向に配向している異方性充填材とし、そのような異方性充填材が、熱伝導性シートにおいて、大部分であれば(例えば、全異方性充填材の数に対して60%超、好ましくは80%超)、厚さ方向に配向するものとする。
熱伝導性充填材(C)の含有量は、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対して、好ましくは150~3000質量部、より好ましくは200~2000質量部、さらに好ましくは300~1000質量部である。熱伝導性充填材(C)を150質量部以上とすることで、一定の熱伝導性を熱伝導性シートに付与できる。また、1500質量部以下とすることで、バインダー成分に熱伝導性充填材(C)を適切に分散できる。また、後述する混合組成物の粘度が必要以上に高くなったりすることも防止できる。
また、熱伝導性シート全量に対する熱伝導性充填材の体積充填率は、好ましくは30~85体積%であり、より好ましくは50~83体積%であり、さらに好ましくは61~80体積%である。体積充填率を上記下限値以上とすることで、一定の熱伝導性を熱伝導性シートに付与できる。また、上限値以下とすることで、熱伝導性シートの製造が容易になる。
(異方性充填材)
異方性充填材は、形状に異方性を有する充填材であり、配向が可能を充填材である。異方性充填材としては、繊維材料、鱗片状材料などが挙げられる。異方性充填材は、アスペクト比が高いものであり、具体的にはアスペクト比が2を越えるものであり、アスペクト比は5以上であることが好ましい。アスペクト比を2より大きくすることで、異方性充填材を厚さ方向などの一方向に配向させやすくなり、熱伝導性シートの厚さ方向などの一方向の熱伝導性を高めやすい。また、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100である。
なお、アスペクト比とは、異方性充填材の短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比であり、繊維材料においては、繊維長/繊維の直径を意味し、鱗片状材料においては鱗片状材料の長軸方向の長さ/厚さを意味する。
熱伝導性シートにおける異方性充填材の含有量は、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、30~300質量部であることがより好ましく、50~250質量部であることがさらに好ましい。
異方性充填材の含有量を10質量部以上とすることで、熱伝導性を高めやすくなる。また、500質量部以下とすることで、後述する混合組成物の粘度が適切になりやすく、異方性充填材の配向性が良好となる。さらに、シリコーンマトリクス(A)における異方性充填材の分散性も良好になる。
異方性充填材は、繊維材料である場合、その平均繊維長が、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~350μm、さらに好ましくは50~300μmである。平均繊維長を10μm以上とすると、熱伝導性シート内部において、異方性充填材同士が適切に接触して、熱の伝達経路が確保され、熱伝導性シートの熱伝導性が良好になる。
一方、平均繊維長を500μm以下とすると、異方性充填材の嵩が低くなり、バインダー成分中に高充填できるようになる。
また、繊維材料の平均繊維長は、熱伝導性シートの厚さよりも短いことが好ましい。厚さよりも短いことで、繊維材料が熱伝導性シートの表面から必要以上に突出したりすることを防止する。
なお、上記の平均繊維長は、異方性充填材を顕微鏡で観察して算出することができる。より具体的には、例えば電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて、任意の異方性充填材50個の繊維長を測定して、その平均値(相加平均値)を平均繊維長とすることができる。
また、異方性充填材が鱗片状材料である場合、その平均粒径は、10~400μmが好ましく、15~300μmがより好ましく、20~200μmがさらに好ましい。平均粒径を10μm以上とすることで、熱伝導性シートにおいて異方性充填材同士が接触しやすくなり、熱の伝達経路が確保され、熱伝導性シートの熱伝導性が良好になる。一方、平均粒径を400μm以下とすると、熱伝導性シートの嵩が低くなり、バインダー成分中に異方性充填材を高充填することが可能になる。
なお、鱗片状材料の平均粒径は、異方性充填材を顕微鏡で観察して長径を直径として算出することができる。より具体的には、例えば電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて、任意の異方性充填材50個の長径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。
異方性充填材は、熱伝導性を有する公知の材料を使用すればよいが、後述するように磁場配向により配向する場合には、反磁性を備えるとよい。一方で、流動配向により配向し、あるいは、異方性充填材を配向しない場合には反磁性を備えなくてもよい。
異方性充填材の具体例としては、炭素繊維、又は鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。これらの中では、炭素系材料は、比重が小さく、バインダー成分中への分散性が良好なため好ましく、中でも熱伝導率の高い黒鉛化炭素材料がより好ましい。黒鉛化炭素材料は、グラファイト面が所定方向に揃うことで反磁性を備える。
また、異方性充填材としては、窒化ホウ素も好ましい。窒化ホウ素は、特に限定されないが、鱗片状材料として使用されることが好ましい。鱗片状の窒化ホウ素は、凝集されてもよいし、凝集されていなくてもよいが、一部又は全部が凝集されていないことが好ましい。なお、窒化ホウ素なども、結晶面が所定方向に揃うことで反磁性を備える。
また、異方性充填材は、特に限定されないが、異方性を有する方向(すなわち、長軸方向)に沿う熱伝導率が、一般的に30W/m・K以上であり、好ましくは60W/m・K以上であり、より好ましくは100W/m・K以上、さらに好ましくは200W/m・K以上である。異方性充填材の熱伝導率は、その上限が特に限定されないが、例えば2000W/m・K以下である。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法などにより測定できる。
異方性充填材は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、異方性充填材として、少なくとも2つの互いに異なる平均粒径または平均繊維長を有する異方性充填材を使用してもよい。大きさの異なる異方性充填材を使用すると、相対的に大きな異方性充填材の間に小さな異方性充填材が入り込むことにより、異方性充填材をバインダー成分中に高密度に充填できるとともに、熱の伝導効率を高められると考えられる。
異方性充填材として用いる炭素繊維は、黒鉛化炭素繊維が好ましい。また、鱗片状炭素粉末としては、鱗片状黒鉛粉末が好ましい。異方性充填材としては、黒鉛化炭素繊維と鱗片状黒鉛粉末を併用することも好ましい。
黒鉛化炭素繊維は、グラファイトの結晶面が繊維軸方向に連なっており、その繊維軸方向に高い熱伝導率を備える。そのため、その繊維軸方向を所定の方向に揃えることで、特定方向の熱伝導率を高めることができる。また、鱗片状黒鉛粉末は、グラファイトの結晶面が鱗片面の面内方向に連なっており、その面内方向に高い熱伝導率を備える。そのため、その鱗片面を所定の方向に揃えることで、特定方向の熱伝導率を高めることができる。黒鉛化炭素繊維および鱗片黒鉛粉末は、高い黒鉛化度をもつものが好ましい。
上記した黒鉛化炭素繊維、鱗片状黒鉛粉末などの黒鉛化炭素材料としては、以下の原料を黒鉛化したものを用いることができる。例えば、ナフタレン等の縮合多環炭化水素化合物、PAN(ポリアクリロニトリル)、ピッチ等の縮合複素環化合物等が挙げられるが、特に黒鉛化度の高い黒鉛化メソフェーズピッチやポリイミド、ポリベンザゾールを用いることが好ましい。例えばメソフェーズピッチを用いることにより、後述する紡糸工程において、ピッチがその異方性により繊維軸方向に配向され、その繊維軸方向へ優れた熱伝導性を有する黒鉛化炭素繊維を得ることができる。
黒鉛化炭素繊維におけるメソフェーズピッチの使用態様は、紡糸可能ならば特に限定されず、メソフェーズピッチを単独で用いてもよいし、他の原料と組み合わせて用いてもよい。ただし、メソフェーズピッチを単独で用いること、すなわち、メソフェーズピッチ含有量100%の黒鉛化炭素繊維が、高熱伝導化、紡糸性及び品質の安定性の面から最も好ましい。
黒鉛化炭素繊維は、紡糸、不融化及び炭化の各処理を順次行い、所定の粒径に粉砕又は切断した後に黒鉛化したものや、炭化後に粉砕又は切断した後に黒鉛化したものを用いることができる。黒鉛化前に粉砕又は切断する場合には、粉砕で新たに表面に露出した表面において黒鉛化処理時に縮重合反応、環化反応が進みやすくなるため、黒鉛化度を高めて、より一層熱伝導性を向上させた黒鉛化炭素繊維を得ることができる。一方、紡糸した炭素繊維を黒鉛化した後に粉砕する場合は、黒鉛化後の炭素繊維が剛いため粉砕し易く、短時間の粉砕で比較的繊維長分布の狭い炭素繊維粉末を得ることができる。
黒鉛化炭素繊維の平均繊維長は、上記したとおり、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~350μm、さらに好ましくは50~300μmである。また、黒鉛化炭素繊維のアスペクト比は上記したとおり2を超えており、好ましくは5以上である。黒鉛化炭素繊維の熱伝導率は、特に限定されないが、繊維軸方向における熱伝導率が、好ましくは400W/m・K以上、より好ましくは800W/m・K以上である。
熱伝導性シートは、異方性充填材を含有する場合、異方性充填材はシート表面において露出していてもよいし、露出していなくてもよいが、露出することが好ましい。熱伝導性シートのシート表面は、異方性充填材が露出することで、非粘着面とすることができる。熱伝導性シートは、シートの主面となるものであり、シートの両表面のうち、いずれか一方のみに異方性充填材が露出していてもよいし、両方に異方性充填材が露出していてもよい。熱伝導性シートは、シート表面が非粘着であることで、電子機器などに組み付けるときに摺動などさせることが可能になり、組み付け性が向上する。
(非異方性充填材)
本発明における熱伝導性充填材(C)は、さらに非異方性充填材を含有し、上記した異方性充填材と非異方性充填材とを併用してもよい。
非異方性充填材は、特に、一方向に配向した異方性充填材と併用することで、配向した異方性充填材の間の隙間に介在し、熱伝導性をより一層高くできる。非異方性充填材は、形状に異方性を実質的に有しない充填材であり、後述する磁力線発生下又は剪断力作用下など、異方性充填材が所定の方向に配向する環境下においても、その所定の方向に配向しない充填材である。
非異方性充填材は、そのアスペクト比が2以下であり、1.5以下であることが好ましい。このようにアスペクト比が低い非異方性充填材は、異方性充填材と併用する場合、異方性充填材の隙間に配置されやすくなり、熱伝導率を向上させやすくなる。また、アスペクト比を2以下とすることで、後述する混合組成物の粘度が上昇するのを防止して、高充填にすることが可能になる。
非異方性充填材の具体例は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、非異方性充填材の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。
非異方性充填材において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛などが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。
これらの中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましい。
非異方性充填材は、上記したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非異方性充填材の平均粒径は、例えば0.1~200μmである。例えば異方性充填材と併用する場合には、非異方性充填材の平均粒径は0.1~50μmであることが好ましく、0.5~35μmであることがより好ましく、1~15μmであることがさらに好ましい。平均粒径を50μm以下とすることで、異方性充填材と併用しても、異方性充填材の配向を乱すなどの不具合が生じにくくなる。また、平均粒径を0.1μm以上とすることで、非異方性充填材の比表面積が必要以上に大きくならず、多量に配合しても混合組成物の粘度は上昇しにくく、非異方性充填材を高充填しやすくなる。
非異方性充填材は、例えば、非異方性充填材として、少なくとも2つの互いに異なる平均粒径を有する非異方性充填材を使用してもよい。
また、非異方性充填材の平均粒径は0.1~200μmであることが好ましく、0.5~100μmであることがより好ましく、1~70μmであることがさらに好ましい。
なお、非異方性充填材の平均粒径は、電子顕微鏡等で観察して測定できる。より具体的には、例えば電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて、任意の非異方性充填材50個の粒径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。
非異方性充填材の含有量は、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対して、50~2500質量部であることが好ましく、100~1500質量部であることがより好ましく、200~750質量部であることがさらに好ましい。50質量部以上とすることで、熱伝導性シートの熱伝導性を良好にできる。一方で、1500質量部以下とすることで、非異方性充填材がバインダー成分中に適切に分散して、含有量に応じた熱伝導性を高める効果を得ることができる。また、混合組成物の粘度が必要以上に上昇することも防止できる。
異方性充填材の含有量に対する、非異方性充填材の含有量の質量比は、特に限定されないが、0.5~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1.1~2.5であることが好ましい。質量比を上記範囲内とすることで、非異方性充填材が、異方性充填材の間に適度に充填され、効率的な伝熱パスを形成することができるため、熱伝導性シートの熱伝導性をより一層向上させることができる。
(添加剤)
熱伝導性シートにおいて、バインダー成分には、さらに熱伝導性シートとしての機能を損なわない範囲で種々の添加剤を配合させてもよい。添加剤としては、例えば、分散剤、カップリング剤、粘着剤、難燃剤、酸化防止剤、着色剤、沈降防止剤などから選択される少なくとも1種以上が挙げられる。また、上記したように硬化性シリコーン組成物(A1)を硬化させる場合には、添加剤として硬化を促進させる硬化触媒などが配合されてもよい。硬化触媒としては、白金系触媒が挙げられる。
また、後述するように混合組成物には、相溶性物質(D)が配合されることがある。相溶性物質(D)は、熱伝導性シートを製造する過程で揮発し熱伝導性シートには残存しなくてもよいが、配合された相溶性物質(D)の少なくとも一部が残存してもよい。
[熱伝導性シートの製造方法]
本発明の熱伝導性シートは、例えば、以下の工程X、及び工程Yを備える製造方法により製造できる。
工程X:硬化性シリコーン組成物(A1)と、炭化水素系化合物(B)と、異方性充填材を含む熱伝導性充填材(C)と、相溶性物質(D)とを少なくとも混合させて、混合組成物を得る工程
工程Y:工程Xで得た混合組成物を加熱により硬化する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
(工程X)
工程Xでは、硬化性シリコーン組成物(A1),炭化水素系化合物(B)、及び異方性充填材を含む熱伝導性充填材(C)に加え、相溶性物質(D)を混合することで、混合組成物を得る。相溶性物質(D)は、炭化水素系化合物(B)及び硬化性シリコーン組成物(A1)に対して、相溶ないし溶解する物質である。炭化水素系化合物(B)は、硬化性シリコーン組成物(A1)に対する相溶性が低いが、相溶性物質(D)を使用することで、硬化性シリコーン組成物(A1)中に均一に混合できる。そのため、炭化水素系化合物(B)は、硬化性シリコーン組成物(A1)を硬化して得られるシリコーンマトリクス(A)においても均一に混ざっている。
工程Xでは、上記各成分を混合して、混合組成物を得ることができる限り、その混合方法や混合順は特に限定されず、硬化性シリコーン組成物(A1)、炭化水素系化合物(B)、熱伝導性充填材(C)、相溶性物質(D)、及び必要に応じて任意で添加されるその他の成分を任意の順番で適宜混合して、混合組成物を得るとよい。
また、硬化性シリコーン組成物(A1)は、上記のとおり、例えば主剤と硬化剤とからなるが、そのような場合、主剤、硬化剤、炭化水素系化合物(B)、熱伝導性充填材(C)、相溶性物質(D)、及び必要に応じて任意で添加されるその他の成分を任意の順番で混合して、混合組成物を得てもよい。
また、炭化水素系化合物(B)は、相溶性物質(D)に溶解させたうえで、硬化性シリコーン組成物(A1)や、その他の成分と混合させることが好ましい。
この場合、炭化水素系化合物(B)と相溶性物質(D)の混合物、硬化性シリコーン組成物(A1)(あるいは、主剤及び硬化剤)、熱伝導性充填材(C)、及び必要に応じて任意で添加されるその他の成分を任意の順番で混合して、混合組成物を得るとよい。
このように、工程Xにおいて炭化水素系化合物(B)を相溶性物質(D)に溶解させておくと、炭化水素系化合物(B)は、シリコーンマトリクス(A)においてより一層均一に混合できる。
なお、炭化水素系化合物(B)を相溶性物質(D)に溶解させる場合、適宜加熱してもよい。このとき加熱温度は、相溶性物質(D)の融点より高い温度まで加熱することが好ましく、例えば40℃以上に加熱して溶解してもよい。また、加熱温度の上限は、主剤と硬化剤とに混合する場合、混合の過程で熱伝導性シリコーンが実質的に硬化しない温度とすることができる。一方、主剤と硬化剤とにそれぞれ相溶性物質(D)を混合する場合には、相溶性物質(D)が揮発し難い温度とすることができ、例えば80℃以下に加熱して溶解してもよい。
また、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)と混合した状態は、相溶性物質(D)が介在することで、透明またはやや白濁した均一な混合物である。他方、相溶性物質(D)を含まない場合には、固形の炭化水素系化合物が分散した状態または液状の炭化水素系化合物が2層分離した状態となる。
<相溶性物質(D)>
本発明で使用される相溶性物質(D)は、炭化水素系化合物(B)に溶解し、かつ硬化性シリコーン組成物(A1)に対して相溶する物質であるとよい。相溶性物質(D)は、常温(23℃)、1気圧で液状である物質であることが好ましい。相溶性物質(D)は、後述する通り、例えば、工程Yの50~180℃程度の加熱により揮発する成分である。相溶性物質(D)は、硬化時の加熱により揮発することで、熱伝導性シートにおける熱伝導性充填材(C)の含有割合を大きくできる。また、混合組成物は、相溶性物質(D)を含有することで、粘度が低下する。そのため、熱伝導性充填材(C)の配合量を多くしやすくなり、さらには、後述する磁場配向などにより異方性充填材を所定の方向に配向させやすくなる。
相溶性物質(D)としては、アルコキシシラン化合物、炭化水素系溶媒、アルコキシシロキサン化合物などが挙げられる。これら化合物は、炭化水素系化合物(B)及び硬化性シリコーン組成物(A1)に対する溶解性ないし相溶性が高いため、混合組成物において、硬化性シリコーン組成物(A1)に対する炭化水素系化合物(B)の分散性を高めることができる。これにより、熱伝導性シートにおいても、炭化水素系化合物(B)が適切に分散され、保形性、信頼性、高温下における柔軟性などを確保しやすくなる。
相溶性物質(D)は、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
相溶性物質(D)としては、アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。アルコキシシラン化合物を使用することで、硬化により得られた熱伝導性シートの表面に気泡などが見られず外観が良好となる。
相溶性物質(D)として使用されるアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子(Si)が持つ4個の結合のうち、1~3個がアルコキシ基と結合し、残余の結合が有機置換基と結合した構造を有する化合物である。アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基及び有機置換基を有することで、硬化性シリコーン組成物(A1)に対する炭化水素系化合物(B)の分散性を高めるこができる。
アルコキシシラン化合物の有するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、及びヘキサトキシ基が挙げられる。アルコキシシラン化合物は、硬化性シリコーン組成物(A1)中に二量体として含有されていてもよい。
アルコキシシラン化合物の中でも、入手容易性の観点から、メトキシ基及びエトキシ基の少なくともいずれかを有するアルコキシシラン化合物が好ましい。アルコキシシラン化合物の有するアルコキシ基の数は、硬化性シリコーン組成物(A1)及び炭化水素系化合物(B)との相溶性、溶解性などの観点から、2又は3であることが好ましく、3であることがより好ましい。アルコキシシラン化合物は、具体的にはトリメトキシシラン化合物、トリエトキシシラン化合物、ジメトキシシラン化合物、ジエトキシシラン化合物から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
アルコキシシラン化合物が有する有機置換基に含まれる官能基としては、例えば、アクリロイル基、アルキル基、カルボキシル基、ビニル基、メタクリル基、芳香族基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ヒドロキシル基、及びメルカプト基が挙げられる。ここで、硬化性シリコーン組成物(A1)の硬化触媒として白金触媒を用いる場合、オルガノポリシロキサンの硬化反応に影響を与え難いアルコキシシラン化合物を選択して用いることが好ましい。具体的には、白金触媒を利用した付加反応型のオルガノポリシロキサンを用いる場合、アルコキシシラン化合物の有機置換基は、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ヒドロキシル基、又はメルカプト基を含まないことが好ましい。
アルコキシシラン化合物は、シリコーンマトリクス(A)における炭化水素系化合物(B)の分散性を高める観点から、ケイ素原子に結合したアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン化合物、すなわち、有機置換基としてアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。したがって、ジアルキルジアルコキシシラン化合物、アルキルトリアルコキシシラン化合物が好ましく、中でもアルキルトリアルコキシシラン化合物が好ましい。
ケイ素原子に結合したアルキル基の炭素数は、例えば1~16であるとよい。また、トリメトキシシラン化合物、トリエトキシシラン化合物などのトリアルコキシシラン化合物においては、炭化水素系化合物の分散性を高める観点から、上記アルキル基の炭素数が6以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましく、また、炭素数が12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
一方で、ジメトキシシラン化合物、トリエトキシシラン化合物などのジアルコキシシラン化合物においては、炭化水素系化合物の分散性を高める観点から、上記アルキル基の炭素数は1以上であればよく、また、炭素数10以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
アルキル基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アルキル基含有アルコキシシラン化合物の中でも、炭化水素系化合物(B)の分散性を良好にする観点から、n-デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシランがさらに好ましく、炭化水素系化合物(B)との溶解性の観点からn-デシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシランがよりさらに好ましい。
相溶性物質(D)として使用されるアルコキシシロキサン化合物は、二つ以上のシロキサン結合を有し、少なくとも一つのケイ素原子にアルコキシ基が結合した構造を有する。アルコキシシロキサン化合物は、シロキサン結合を構成するケイ素原子のうち、少なくとも一つのケイ素原子に有機置換基が結合した構造を有する。アルコキシシロキサン化合物は、アルコキシ基を及び有機置換基を有することで、炭化水素系化合物(B)の分散性を高めることができる。
アルコキシシロキサン化合物の有するアルコキシ基及び有機置換基としては、上記アルコキシシラン化合物の説明で例示したものを挙げることができ、炭化水素系化合物(B)の分散性を高める観点から、少なくともアルキル基を有することが好ましい。
アルコキシシロキサン化合物としては、例えば、メチルメトキシシロキサンオリゴマー、メチルフェニルメトキシシロキサンオリゴマー、メチルエポキシメトキシシロキサンオリゴマー、メチルメルカプトメトキシシロキサンオリゴマー、及びメチルアクリロイルメトキシシロキサンオリゴマーなどが挙げられる。
アルコキシシロキサン化合物は、一種類又は二種類以上を使用することができる。
相溶性物質(D)として使用される炭化水素系溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。中でも硬化性シリコーン組成物(A1)との相溶性の観点から芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。芳香族炭化水素系溶媒としては、炭素数6~10程度の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられ、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、t-ブチルベンゼンなどが挙げられ、好ましくはトルエン、キシレンなどである。
混合組成物において、硬化性シリコーン組成物(A1)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対する、相溶性物質(D)の含有量は、6~60質量部であることが好ましい。6質量部以上であると、硬化性シリコーン組成物(A1)に対して炭化水素系化合物(B)の混合の均一性を十分に高めるこができる。また、60質量部以下とすることで、相溶性物質(D)の使用量に見合った効果を得ることができる。これら観点から、相溶性物質(D)の上記含有量は、10~50質量部がより好ましく、15~45質量部がさらに好ましい。
このとき、炭化水素系化合物(B)の混合が均一でない場合は、炭化水素系化合物が溶け残り、例えば固形の炭化水素系化合物が分散した状態になってしまう。このような分散した固形物は、混合組成物中では充填材としての性質が生じてしまうおそれがある。すなわち、溶け残りの固形物が粘度を上昇させる充填材の一部となるため、結果として熱伝導性充填材の配合量を多くしにくくなるおそれがある。
また、混合組成物において、炭化水素系化合物(B)の分散性を高める観点から、相溶性物質(D)の含有量は、炭化水素系化合物(B)の含有量よりも多くすることが好ましい。
なお、相溶性物質(D)は、工程Yの加熱により、一部又は全部が揮発することが好ましい。したがって、相溶性物質(D)は、熱伝導性シートに含有されなくてもよいが、混合組成物における含有量よりも少ない量で熱伝導性シートに含有されてもよい。
なお、混合組成物における、相溶性物質(D)以外の成分(すなわち、硬化性シリコーン組成物(A1)、炭化水素系化合物(B)、熱伝導性充填材(C)、その他の添加剤など)の詳細な説明は、上記の通りである。また、混合組成物における炭化水素系化合物(B)及び熱伝導性充填材(C)の含有量も上記のとおりである。ただし、上記では、各成分の含有量は、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部を基準とする量が示されるが、混合組成物においては、硬化性シリコーン組成物(A1)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部を基準とする量とする。
(工程Y)
工程Yは、混合組成物を加熱により硬化する工程である。混合組成物を加熱する際の温度は、硬化性シリコーン組成物(A1)を加熱により硬化できる限り、特に限定されず、室温(23℃)より高ければよいが、好ましくは50℃以上の温度で加熱するとよい。また、加熱温度は、特に限定されないが、熱伝導性シート、混合組成物が熱劣化しない程度の温度であればよく、例えば180℃以下、好ましくは150℃以下である。また、混合組成物の加熱は、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。2段階以上で行う場合は、少なくともいずれかの段階で加熱温度が上記範囲内であればよいが、全ての段階で加熱温度が上記範囲内であるほうが好ましい。また、加熱時間合計は、例えば10分~3時間程度である。また、2段階以上で行う場合、例えば1段階目において混合組成物を半硬化させ、2段階目移行の加熱により混合組成物を全硬化させるとよい。
工程Yでは、混合組成物は、ブロック状、シート状などの所定の形状に成形し、かつ加熱して硬化させるとよい。また、工程Yでは、混合組成物は、熱伝導性充填材(C)として用いる異方性充填材を一方向に配向したうえで加熱により硬化させるとよい。異方性充填材は、磁場配向法、流動配向法により配向させることができるが、磁場配向法により配向させることが好ましい。
磁場配向法では、混合組成物を金型などの内部に注入したうえで磁場に置き、異方性充填材を磁場に沿って配向させるとよい。そして、硬化性シリコーン組成物(A1)を硬化させることで配向成形体を得るとよい。混合組成物の硬化は、上記の通りの加熱条件により行うとよい。
配向成形体としてはブロック状のものとすることが好ましいが、シート状のものであってもよい。シート状のものとすることで、配向成形体は、スライスすることなくそのまま熱伝導性シートとして使用することができる。一方でブロック状とすることで、異方性充填材の配向性が高められる。
磁場配向法では、金型内部において、混合組成物に接触する部分には、剥離フィルムを配置してもよい。剥離フィルムは、例えば、剥離性の良い樹脂フィルムや、片面が剥離剤などで剥離処理された樹脂フィルムが使用される。剥離フィルムを使用することで、配向成形体が金型から離型しやすくなる。
磁場配向法において使用する混合組成物の粘度は、磁場配向させるために、10~300Pa・sであることが好ましい。10Pa・s以上とすることで、熱伝導性充填材(C)が沈降しにくくなる。また、300Pa・s以下とすることで流動性が良好になり、磁場で異方性充填材が適切に配向され、配向に時間がかかりすぎたりする不具合も生じない。なお、粘度とは、回転粘度計(ブルックフィールド粘度計DV-E、スピンドルSC4-14)を用いて25℃において、回転速度10rpmで測定された粘度である。
ただし、沈降し難い熱伝導性充填材(C)を用いたり、沈降防止剤等の添加剤を組合せたりする場合には、混合組成物の粘度は、10Pa・s未満としてもよい。
磁場配向法において、磁力線を印加するための磁力線発生源としては、超電導磁石、永久磁石、電磁石等が挙げられるが、高い磁束密度の磁場を発生することができる点で超電導磁石が好ましい。これらの磁力線発生源から発生する磁場の磁束密度は、好ましくは1~30テスラである。磁束密度を1テスラ以上とすると、炭素材料などからなる上記した異方性充填材を容易に配向させることが可能になる。また、30テスラ以下にすることで、実用的に製造することが可能になる。
流動配向法では、混合組成物に剪断力をかけて、面方向に沿って異方性充填材が配向された一次シートを製造する。より具体的には、流動配向法では、まず、工程Xにおいて調製された混合組成物に対して剪断力を付与しながら平たく伸長させてシート状(一次シート)に成形する。剪断力をかけることで、異方性充填材を剪断方向に配向させることができる。シートの成形手段として、例えば、バーコータやドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に混合組成物を塗工し、その後、必要に応じて乾燥したり、混合組成物を半硬化させたり、全硬化させたりするとよい。一次シートの厚さは、50~5000μm程度とすることが好ましい。一次シートにおいて、異方性充填材はシートの面方向に沿う一方向に配向している。
流動配向法で使用する混合組成物は、シート状に伸長させるときに剪断力がかかるように比較的高粘度である。混合組成物の粘度は、具体的には3~500Pa・sであることが好ましい。
一次シートは、後述するようにブロックとせずにそのまま熱伝導性シートとして使用してもよい。また、一次シートを、配向方向が同じになるように複数枚重ねて積層した後、必要に応じて加熱により硬化させつつ、熱プレス等により一次シートを互いに接着させることで積層ブロック(ブロック状の配向成形体)を形成してもよい。
また、積層ブロックを形成する場合には、一次シートの互いに重ね合わせる面の少なくとも一方に、真空紫外線を照射させた後、一次シートを重ね合わせてもよい。真空紫外線を照射された面を介して、一次シートを重ね合わせると、一次シート同士が強固に接着できる。また、真空紫外線を照射させる場合には、一次シートを作製する際に混合組成物を全硬化させておいてもよく、一次シートを重ね合わせて積層ブロックを形成する際には加熱などにより硬化させる必要はない。
流動配向法でも、混合組成物の硬化は、上記の通りの加熱条件により行うとよい。
上記のとおり、ブロック状の配向成形体を形成する際には、得られた配向成形体を、異方性充填材が配向する方向に対して垂直に、スライスなどにより切断して、シート状成形体とするとよい。スライスは、例えばせん断刃などで行うとよい。シート状成形体は、スライスなどの切断により、切断面である各表面においてバインダー成分から異方性充填材の先端が露出することになる。
切断により得られたシート状成形体は、そのまま熱伝導性シートとしてもよいが、さらに別の処理をしてもよい。例えば切断面である各表面を研磨するなどしてもよい。表面の研磨は、例えば、研磨紙を使用して行うとよい。
[熱伝導性シートの使用方法]
本発明の熱伝導性シートは、電子機器内部などにおいて使用される。具体的には、熱伝導性シートは、2つの部材の間に介在させられ、一方の部材から他方の部材に熱を伝導させるために使用される。具体的には、熱伝導性シートは、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、電源などの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、電子機器の金属筐体などが挙げられる。熱伝導性シートは、両表面それぞれが、発熱体及び放熱体それぞれに密着し、かつ圧縮して使用されるとよい。
[熱伝導性シートの装着方法]
本発明は、熱伝導性シートの装着方法も提供する。本発明の熱伝導性シートは、上記のとおり、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填剤(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである。
本発明の熱伝導性シートは、以下の工程1~工程3を有する装着方法によって、2つの部材間(第1及び第2の部材間)に安定して装着させることができる。
工程1:上記熱伝導性シートを、第1の部材の表面に配置する工程
工程2:熱伝導性シートを加熱する工程
工程3:熱伝導性シートの第1の部材側の面とは反対側の面に第2の部材を配置し、かつ熱伝導性シートを加圧して、第1及び第2の部材間に熱伝導性シートを組み付ける工程
本装着方法において、第1及び第2の部材は、特に限定されないが、一方が発熱体で、他方が放熱体であるとよい。発熱体、放熱体の詳細な説明は上記の通りである。
(工程1)
工程1では、熱伝導性シートを、第1の部材の表面に配置する。熱伝導性シートの配置方法は、特に限定されないが、熱伝導性シートの一方の面が、第1の部材に接触するように配置するとよい。
本方法では、後述する通り、工程1の後に工程2を行うことが好ましい。その場合、熱伝導性シートは、加熱前のコシがある状態で第1の部材の表面に配置されることになるため、工程1の作業性が良好となる。
(工程2)
工程2では、熱伝導性シートを加熱する。工程2は工程1の後に行ってもよいし、工程1の前に行ってもよいし、工程1と並行して行ってもよいが、工程2は、上記の通り工程1の後に行うことが好ましい。すなわち、工程2では、第1の部材の表面に配置された熱伝導性シートを加熱することが好ましい。
工程2では、熱伝導性シートを、炭化水素系化合物(B)の融点以上の温度に加熱するとよい。したがって、熱伝導性シートは、常温(23℃)より高い温度に加熱されるとよいが、炭化水素系化合物(B)を確実に溶融させ、組み付け時(後述する工程3)において、熱伝導性シートの柔軟性を高める観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上に加熱されるとよい。
また、必要以上に熱伝導性シートを加熱することを防止する観点から、熱伝導性シートは、100℃以下に加熱すればよく、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下に加熱されるとよい。
工程2において、熱伝導性シートを炭化水素系化合物(B)の融点以上に加熱させると、その溶融された炭化水素系化合物(B)を介して、工程3における加圧により第1及び第2の部材に容易に固定させることができる。
熱伝導性シートの加熱方法は、特に限定されず、赤外線ヒーター、熱風ヒーター、伝熱ヒーターなどの加熱装置により熱伝導性シートを加熱すればよい。
従来、フェーズチェンジシートは、第1及び第2の部材のいずれかを構成する発熱体の加熱により、軟化ないし溶融されることが一般的であるが、本装着方法において熱伝導性シートは、発熱体とは別の加熱装置により、第1及び第2の部材の間に挟み込まれる前に加熱されることが好ましい。このような態様によれば、熱伝導性シートを、電子機器の使用前に第1及び第2の部材に固定させることが可能になる。したがって熱伝導性シートを設計通りの圧縮率などで圧縮させて組み付けたりすることも可能になる。
(工程3)
工程3では、熱伝導性シートの第1の部材側の面とは反対側の面に第2の部材を配置し、かつ熱伝導性シートを加圧して、第1及び第2の部材間に熱伝導性シートを組み付ける。
工程3では、第1の部材の表面上に配置された熱伝導性シートの上にさらに第2の部材を配置させるとよく、これにより、熱伝導性シートは、第1及び第2の部材の間に挟み込まれた状態となる。
工程3は、工程2と並行して行ってもよいが、工程2の後に行うことが好ましい。したがって、工程3では、第1の部材の表面上に配置され、かつ既に加熱された、熱伝導性シートの上にさらに第2の部材を配置させるとよい。
なお、本装着方法では、工程1、工程2、及び工程3の順に行うことがより好ましい。このような順番で各工程を行うと作業性が向上する。
工程3において第1及び第2の部材の間に挟み込まれた熱伝導性シートは、工程2により加熱されており、したがって工程3では、その加熱された状態で、さらに厚さ方向に加圧されるとよい。ここで、加圧は、例えば、第1及び第2の部材に挟み込まれた熱伝導性シートを、第1及び第2の部材によってさらに厚さ方向に押圧されることで行われるとよい。
また、熱伝導性シートは、工程3の加圧時には、炭化水素系化合物(B)の融点以上の温度となり、炭化水素系化合物(B)が溶融されているので、その溶融された炭化水素系化合物(B)によって熱伝導性シートを第1及び第2の部材に固定させるとよい。
以上の通り、本発明の熱伝導性シートは、加熱された状態において一定以上の柔軟性を有するので、工程3の加圧により、第1及び第2の部材に追従させることができる。したがって、第1及び第2の部材が凹凸を有していても、熱伝導性シートを第1及び第2の部材に密着させて、熱抵抗が上昇することを防止できる。また、第1及び第2の部材に高い応力を作用させることなく、熱伝導性シートを組み付けることができる。さらに、熱伝導性シートは、加熱されても保形性を有するので、上記のように、圧縮された状態で使用されても、ポンプアウトを抑止し、信頼性が高められる。さらに、熱伝導性シートは、加熱前においては一定のコシを有するので、組み付け時の作業性を向上させることができる。
[放熱部材]
本発明は、上記した熱伝導性シートと、放熱体と備え、熱伝導性シートが、放熱体の表面に装着された放熱部材も提供する。このような放熱部材は、例えば、熱伝導性シートを放熱体の表面上に配置し、かつ熱伝導性シートを放熱体の表面に固定させることで得るこ
とができる。ここで、熱伝導性シートは、例えば炭化水素系化合物(B)の融点以上の温度に加熱して、かつ加圧することで放熱体の表面に固定させるとよい。この際、熱伝導性シートは、加熱した後で放熱体の表面に配置してもよいし、放熱体の表面に配置した後で加熱してもよい。
また、放熱部材は、熱伝導性シートの放熱体側の面とは反対側の面に発熱体を配置することで、放熱体と発熱体の間に熱伝導性シートを装着させることができる。装着方法としては、上記工程2、3を備える方法で行うとよく、その詳細は上記の通りであるので省略する。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
本実施例、比較例で得られた熱伝導性シートは、以下の方法により評価した。
[熱抵抗値、傾きα]
熱抵抗値は、図1に示すような熱抵抗測定機を用い、以下に示す方法で測定した。具体的には、各試料について、本試験用に大きさが30mm×30mmの試験片Sを作製した。そして各試験片Sを、測定面が25.4mm×25.4mmで側面が断熱材21で覆われた銅製ブロック22の上に貼付し、上方の銅製ブロック23で挟み、ロードセル26によって圧力40psi(0.276MPa)の荷重をかけた。ここで、下方の銅製ブロック22はヒーター24と接している。また、上方の銅製ブロック23は、断熱材21によって覆われ、かつファン付きのヒートシンク25に接続されている。次いで、ヒーター24を発熱させ、温度が略定常状態となる10分後に、上方の銅製ブロック23の温度(θj0)、下方の銅製ブロック22の温度(θj1)、及びヒーターの発熱量(Q)を測定し、以下の式(2)から各試料の熱抵抗値R40を求めた。なお、温度は、熱伝導性シートが80℃となるように発熱量を調整した。
熱抵抗値=(θj1-θj0)/Q ・・・ 式(2)
式(2)において、θj1は下方の銅製ブロック22の温度、θj0は上方の銅製ブロック23の温度、Qは発熱量である。
また、ロードセル26によって圧力10psi(0.069MPa)の荷重をかけた以外は、上記と同様にして熱抵抗値R10を算出した。
上記のとおり算出した荷重40psiで測定した熱抵抗値R40(℃・in/W)、荷重40psiにおける測定時の熱伝導性シートの厚さT40(mm)、荷重10psiで測定した熱抵抗値R10(℃・in/W)、荷重10psiにおける測定時の熱伝導性シートの厚さT10(mm)から、下記式(1)により傾きαを求めた。
α=(R40-R10)/(T40-T10)・・・(1)
低荷重における熱抵抗値は、傾きαの値に基づいて以下の基準で評価した。
A 傾きαが0.1以下
B 傾きαが0.1超0.4以下
C 傾きαが0.4超1以下
D 傾きαが1超
[圧縮率]
熱伝導性シートを、10mm×10mmのサイズでカットして、80℃環境下で0.276MPa(=40psi)で圧縮したときの圧縮率を測定した。具体的には10mm×10mmの大きさで表面が平坦な台座と、平行に押圧する押圧子の間に試験片を挟み、0.276MPaで試験片を圧縮したときの厚みT2を測定し、初期厚みT1に対する圧縮率(%)[100×(T1-T2)/T1]を算出した。
[実施例1]
炭化水素系化合物(B)としての側鎖結晶性ポリアルファオレフィン(CPAO、融点(Tm):42℃)と、相溶性物質(D)としてのn-デシルトリメトキシシランを表1の配合量に従って23℃で混合させて、相溶性物質(D)に炭化水素系化合物(B)を溶解させた混合物を得た。得られた混合物と、硬化性シリコーン組成物(A1)としてのシリコーン主剤1(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)、シリコーン硬化剤(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)と、触媒(白金系触媒)とを均一に混合した後に熱伝導性充填材(C)とを表1の配合量に従って混合させて、混合組成物を得た。
なお、熱伝導性充填材(C)としては、非異方性充填材としてアルミニウム粉末(球状、平均粒径3μmm、アスペクト比1~1.5、熱伝導率236W/m・K)を使用した。また、異方性充填材として鱗片黒鉛粉末(平均粒径40μm、アスペクト比10、熱伝導率550W/m・K)、黒鉛化炭素繊維1(平均繊維長77μm、アスペクト比8、熱伝導率1200W/m・K)、及び黒鉛化炭素繊維2(平均繊維長150μm、アスペクト比15、熱伝導率900W/m・K)を使用した。なお、各実施例、比較例における熱伝導性充填材(C)の体積充填率は66体積%であった。
また、融点は熱重量示差熱分析(TGDTA、株式会社島津製作社製「DTG-60」)で昇温速度1℃/minの条件で測定したDTA曲線の吸熱ピークの温度である。
続いて、熱伝導性シートよりも充分に大きな厚さに設定された金型に上記混合組成物を注入し、8Tの磁場を厚さ方向に印加して異方性充填材を厚さ方向に配向した後に、80℃で60分間加熱することで硬化性シリコーン組成物(A1)を硬化して、ブロック状の配向成形体を得た。
次に、せん断刃を用いて、ブロック状の配向成形体をシート状にスライスすることにより、異方性充填材が露出しているシート状成形体を得てから、さらに150℃で2時間加熱し、そのシート状成形体を熱伝導性シートとした。熱伝導性シートは、厚みが0.2mmのものと、厚みが0.3mmのものとの2種類を作製した。
それぞれの熱伝導性シートについて、荷重40psiで測定される熱抵抗値R40及び測定時厚さT40と、荷重10psiで測定される熱抵抗値R10及び測定時厚さT10とを上記のとおり測定して、傾きαの算出及低荷重時の熱抵抗の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2~4]
各成分の配合量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例1と同様にして熱伝導性シートを得た。熱伝導性シートは、厚みが0.2mmのものと、厚みが0.3mmのものとの2種類を作製した。
それぞれの熱伝導性シートについて、荷重40psiで測定される熱抵抗値R40及び測定時厚さT40と、荷重10psiで測定される熱抵抗値R10及び測定時厚さT10とを上記のとおり測定して、傾きαの算出及低荷重時の熱抵抗の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
側鎖結晶性ポリアルファオレフィン(CPAO)の配合量を表1のとおりとし、相溶性物質(D)としてジメチルジメトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様にして熱伝導性シートを得た。なお、実施例5では、炭化水素系化合物(B)は相溶性物質(D)に溶解しにくい傾向にあり、溶解に時間を要したが、問題なく熱伝導性シートを得ることができた。熱伝導性シートは、厚みが0.2mmのものと、厚みが0.3mmのものとの2種類を作製した。
それぞれの熱伝導性シートについて、荷重40psiで測定される熱抵抗値R40及び測定時厚さT40と、荷重10psiで測定される熱抵抗値R10及び測定時厚さT10とを上記のとおり測定して、傾きαの算出及低荷重時の熱抵抗の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
炭化水素系化合物(B)として、日本薬局方における白色ワセリンを表1に配合量で使用した以外は、実施例1と同様にして熱伝導性シートを得た。熱伝導性シートは、厚みが0.2mmのものと、厚みが0.3mmのものとの2種類を作製した。
それぞれの熱伝導性シートについて、荷重40psiで測定される熱抵抗値R40及び測定時厚さT40と、荷重10psiで測定される熱抵抗値R10及び測定時厚さT10とを上記のとおり測定して、傾きαの算出及低荷重時の熱抵抗の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1、2]
炭化水素系化合物(B)を使用せずに、表1の配合に従って各成分を混合して得た混合組成物により、熱伝導性シートを作製したこと以外は実施例1と同様に実施した。比較例1で得られた熱伝導性シートの評価結果を表1に示す。
[比較例3]
相溶性物質(D)使用せずに、表1の配合に従って各成分を混合して得た混合組成物を使用したこと以外は実施例1と同様に実施したが、炭化水素系化合物(B)が硬化性シリコーン組成物(A1)に分散せずにブロック状の配向成形体を得ることができなかった。
Figure 2022121447000001

実施例1~6の熱伝導性シートは、本発明の要件を満足する熱伝導性シートであり、高温下における圧縮率が高く、柔軟性に優れていた。また、厚みが薄いにも関わらず、傾きαの値が小さく、低荷重において、発熱体や放熱体に対する追従性などに優れ、熱抵抗値が低いものであった。特に、炭化水素系化合物(B)を2質量部以上8質量部以下の範囲で配合し、かつ相溶性物質(D)としてn-デシルトリメトキシシランを用いて得た実施例2、3、6の熱伝導性シートは、傾きαの値がより低く、低荷重における熱抵抗値が特に低いものであった。
各実施例で得られた熱伝導性シートは、炭化水素系化合物(B)の融点よりも低い室温においては、比較的剛性があるシートであったため、上記の通りスライスにより熱伝導性シートを得ることができ、取扱い性に優れていた。また、80℃においても、液状になることも液状物が流れ出ることもなかったため、長期間圧縮してもポンプアウトなどが生じず、信頼性も良好であった。さらには、熱伝導性シートの表面に気泡などが見られず、外観が良好であった。
比較例1及び2の熱伝導性シートは、高温下において圧縮率が低く、一定の柔軟性を有していなかった。また、傾きαの値が実施例と比較して大きくなっており、低荷重において、発熱体や放熱体に対する追従性などが不十分となり、熱抵抗値が高いものであった。
比較例3では、相溶性物質(D)使用しなかったため、熱伝導性シートを得ることができなかった。
21 断熱材
22 下方の銅製ブロック
23 上方の銅製ブロック
24 ヒーター
25 ヒートシンク
26 ロードセル
S 試験片
θj0 上方の銅製ブロックの温度
θj1 下方の銅製ブロックの温度

Claims (11)

  1. シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、
    前記バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、
    前記熱伝導性充填材(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、
    厚さが0.05~0.5mmである、
    熱伝導性シート。
  2. 80℃において荷重40psiで測定される熱抵抗値R40(℃・in/W)及び測定時厚さT40(mm)と、80℃において荷重10psiで測定される熱抵抗値R10(℃・in/W)及び測定時厚さT10(mm)とで算出される下記式(1)で示される傾きαが0.4以下である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
    α=(R40-R10)/(T40-T10)・・・(1)
  3. 前記炭化水素系化合物(B)の融点が、23℃より高く80℃以下である請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
  4. 前記炭化水素系化合物(B)が結晶性ポリアルファオレフィンである請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  5. 前記炭化水素系化合物(B)の含有量が、シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の合計100質量部に対して、0.5~15質量部である請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  6. 前記熱伝導性充填材(C)の体積充填率が、30~85体積%である請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性シートと、放熱体とを備え、前記熱伝導性シートが前記放熱体の表面に装着される放熱部材。
  8. シリコーンマトリクス(A)と炭化水素系化合物(B)の混合物であるバインダー成分と、前記バインダー成分に分散される熱伝導性充填材(C)とを備え、前記熱伝導性充填剤(C)が厚さ方向に配向する異方性充填材を含み、厚さが0.05~0.5mmである熱伝導性シートを、第1の部材の表面に配置する工程と、
    前記熱伝導性シートを加熱する工程と、
    前記熱伝導性シートの前記第1の部材側の面とは反対側の面に第2の部材を配置し、かつ前記熱伝導性シートを加圧して、前記第1及び第2の部材間に前記熱伝導性シートを組み付ける工程と
    を備える熱伝導性シートの装着方法。
  9. 前記炭化水素系化合物(B)が23℃より高い融点を有し、前記熱伝導性シートを、前記融点以上に加熱する請求項8に記載の熱伝導性シートの装着方法。
  10. 硬化性シリコーン組成物(A1)と、炭化水素系化合物(B)と、異方性充填材を含む熱伝導性充填材(C)と、相溶性物質(D)とを少なくとも混合させて、混合組成物を得る工程と、
    前記混合組成物を加熱により硬化する工程と
    を備える熱伝導性シートの製造方法。
  11. 前記相溶性物質(D)がアルコキシシラン化合物である請求項10に記載の熱伝導性シートの製造方法。
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