〔第1実施形態〕
以下に、本開示に係る運転状態改善システム及び発電プラント、並びに運転状態改善方法、並びに運転状態改善プログラムの第1実施形態について、図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
図1は、本実施形態の石炭焚きボイラを表す概略構成図である。
本実施形態の石炭焚きボイラ10は、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。
本実施形態において、図1に示すように、石炭焚きボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と燃焼ガス通路13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁101は、複数の伝熱管とこれらを接続するフィンとで構成され、微粉燃料の燃焼により発生した熱を伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して、火炉壁の温度上昇を抑制している。
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数のバーナ(例えば21、22、23、24、25)を有している。例えばバーナ21、22、23、24、25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って複数段(例えば、図1では5段)配置されている。但し、火炉の形状や一つの段におけるバーナの数、段数、配置などはこの実施形態に限定されるものではない。
バーナ21、22、23、24、25は、微粉炭供給管26、27、28、29、30を介して複数のミル(粉砕機)31、32、33、34、35に連結されている。このミル31、32、33、34、35は、例えば、ミルのハウジング内に粉砕テーブル(図示省略)が駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示省略)が粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている。石炭が、複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、粉砕され、一次空気通風機(PAF:Primary
Air Fan)38Bから供給される搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)によりミルのハウジング内の分級機(図示省略)に搬送されて、所定の粒径範囲内に分級された微粉燃料を、微粉炭供給管26、27、28、29、30からバーナ21、22、23、24、25に供給することができる。
また、火炉11は、バーナ21、22、23、24、25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト(風道)37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)38Aが設けられている。
燃焼ガス通路13は、図1に示すように、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
燃焼ガス通路13は、図1に示すように、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出される煙道14が連結されている。煙道14は、空気ダクト37との間にエアヒータ(空気予熱器)42が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、バーナ21、22、23、24、25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
また、煙道14は、エアヒータ42より上流側の位置に脱硝装置43が設けられている。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道14内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。
煙道14に連結されるガスダクト41は、エアヒータ42より下流側の位置に、電気集塵機などの集塵装置44、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45、脱硫装置46などが設けられ、下流端部に煙突50が設けられている。
一方、複数のミル31、32、33、34、35が駆動すると、生成された微粉燃料が搬送用ガス(一次空気、酸化性ガス)と共に微粉炭供給管26、27、28、29、30を通してバーナ21、22、23、24、25に供給される。また、煙道14から排出された排ガスとエアヒータ42で熱交換することで、加熱された燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)が、空気ダクト37から風箱36を介してバーナ21、22、23、24、25に供給される。バーナ21、22、23、24、25は、微粉燃料と搬送用ガスとが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに微粉燃料混合気が着火することで火炎を形成することができる。火炉11内の下部で火炎が生じ、高温の燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路13に排出される。なお、酸化性ガスとして、本実施形態では空気を用いる。空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、燃料流量との適正化を図ることで使用可能になる。
また、火炉11は、バーナ21、22、23、24、25の装着位置より上方にアディショナル空気ポート39が設けられている。アディショナル空気ポート39に空気ダクト37から分岐したアディショナル空気ダクト40の端部が連結されている。従って、押込通風機38Aにより送られた燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各バーナ21、22、23、24、25に供給することができると共に、押込通風機38Aにより送られた燃焼用追加空気(アディショナル空気)をアディショナル空気ダクト40からアディショナル空気ポート39に供給することができる。
火炉11は、下部の領域CA1にて、微粉燃料混合気と燃焼用空気(二次空気、酸化性ガス)とが燃焼して火炎が生じる。ここで火炉11は、空気の供給量が微粉炭の供給量に対して、理論空気量未満となるように設定されることで、内部が還元雰囲気に保持される。即ち、微粉炭の燃焼により発生した窒素酸化物(NOx)が火炉11の領域CA2で還元され、その後、アディショナル空気ポート39から燃焼用追加空気(アディショナル空気)が追加供給されることで微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量が低減される。
その後、燃焼ガスは、図1に示すように、燃焼ガス通路13に配置される第2過熱器103、第3過熱器104、第1過熱器102、(以下単に過熱器と記載する場合もある)、第2再熱器106、第1再熱器105(以下単に再熱器と記載する場合もある)、節炭器107で熱交換した後、脱硝装置43により窒素酸化物が還元除去され、集塵装置44で粒子状物質が除去され、脱硫装置46にて硫黄酸化物が除去された後、煙突50から大気中に排出される。なお、各熱交換器は燃焼ガス流れに対して、必ずしも前記記載順に配置されなくともよい。
次に、熱交換器として、燃焼ガス通路13に設けられた過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107について詳細に説明する。図2は、石炭焚きボイラ10に設けられた熱交換器を表す概略図である。
なお、図1では燃焼ガス通路13内の各熱交換器(過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107)の位置を正確に示しているものではなく、各熱交換器の燃焼ガス流れに対する配置順も図1の記載に限定されるものではない。
図2に示すように、本実施形態のボイラ発電プラント1は、石炭焚きボイラ10に設けられた熱交換器(過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107)と、石炭焚きボイラ10が生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン110と、蒸気タービン110に連結され蒸気タービン110の回転によって発電を行う発電機115とを備える。
石炭焚きボイラ10で生成した蒸気により回転駆動される蒸気タービン110は、例えば、高圧タービン111と中圧タービン112と低圧タービン113とから構成され、後述する再熱器105、106からの蒸気が中圧タービン112に流入したのちに低圧タービン113に流入する。低圧タービン113には、復水器114が連結されており、低圧タービン113を回転駆動した蒸気が、この復水器114で冷却水(例えば、海水)により冷却されて復水となる。復水器114は、給水ラインL1を介して節炭器107に連結されている。給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ(CP)121、低圧給水ヒータ122、ボイラ給水ポンプ(BFP)123、高圧給水ヒータ124が設けられている。低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ124には、各蒸気タービン111、112、113を駆動する蒸気の一部が抽気されて、抽気ライン(図示省略)を介して高圧給水ヒータ124と低圧給水ヒータ122に熱源として供給され、節炭器107へ供給される給水が加熱される。
例えば、石炭焚きボイラ10が貫流ボイラの場合について、説明をする。節炭器107は、火炉壁101の各蒸発管に連結されている。節炭器107で加熱された給水は、火炉壁101を構成する蒸発管を通過する際に、火炉11内の火炎から輻射を受けて加熱され、汽水分離器126へと導かれる。汽水分離器126にて分離された蒸気は、過熱器102、103、104へと供給され、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、汽水分離器ドレンタンク127を介し、ドレン水ラインL2を介して復水器114へと導かれる。
また、貫流ボイラの起動時や低負荷運転時等においては、節炭器107から供給される給水が火炉壁101を構成する蒸発管を通過する際に全量が蒸発せず、その結果、汽水分離器126に水位が存在する運転状態(ウエット運転状態)となることがある。このウエット運転状態においては、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、ボイラ循環ポンプ(BCP)128を用いて循環ラインL6により、給水ラインL1の途中に合流させることで、節炭器107から火炉壁101を構成する蒸発管へと循環して供給してもよい。
燃焼ガスが燃焼ガス通路13を流れるとき、この燃焼ガスは、過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107で熱回収される。一方、ボイラ給水ポンプ(BFP)123から供給された給水は、節炭器107で予熱された後、火炉壁101を構成する蒸発管を通過する際に加熱されて蒸気となり、汽水分離器126に導かれる。汽水分離器126で分離された蒸気は、過熱器102、103、104に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器102、103、104で生成された過熱蒸気は、蒸気ラインL3を介して高圧タービン111に供給され、高圧タービン111を回転駆動する。高圧タービン111から排出された蒸気は、ラインL4を介して再熱器105、106に導入されて再度過熱される。再度過熱された蒸気は、蒸気ラインL5を介して、中圧タービン112を経て低圧タービン113に供給され、中圧タービン112および低圧タービン113を回転駆動する。各蒸気タービン111、112、113の回転軸は、発電機115を回転駆動して、発電が行われる。低圧タービン113から排出された蒸気は、復水器114で冷却されることで復水となり、給水ラインL1を介して、再び、節炭器107に送られる。
また、燃焼ガス通路13には、過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107など各熱交換器の伝熱管の間隙、または各熱交換器の間隙に図示しないスーツブロワ(除灰装置)が配置されていてもよい。スーツブロワは、燃焼ガス通路13の壁面に対して略垂直な方向に延在して配置される。スーツブロワは、燃焼ガス通路13の壁面に対して垂直方向を軸方向として、軸方向に直交する方向に蒸気(気体)を噴射し、また噴射方向も変動することができる噴射装置である。スーツブロワから過熱器102、103、104、再熱器105、106、節炭器107など熱交換器に向けて噴射された蒸気は、熱交換器の各伝熱管の表面に付着・堆積した燃焼灰を除去し、熱交換器の各伝熱管における熱交換効率の低下を抑制する。
次に、石炭焚きボイラ10周りの構成(ボイラシステム)の具体的構成例について、図3を用いて説明する。
図3に示すように、一次空気は、一次空気通風機38Bで昇圧され、PAFダンパD1を介して、冷空気流路と、熱空気流路に分岐する。熱空気流路では、一次空気の一部は熱空気としてエアヒータ42を介して加熱され、熱空気ダンパW1、W2、W3、W4、W5を介して冷空気と合流し、一次空気としてミル31、32、33、34、35へ供給される。
冷空気流路では、一次空気の一部は冷空気としてエアヒータ42をバイパスし、冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5を介して熱空気と合流し、一次空気としてミル31、32、33、34、35へ供給される。ミル31、32、33、34、35へ供給された一次空気は、搬送用ガスとして微粉燃料と共に微粉炭供給管26、27、28、29、30を通してバーナ21、22、23、24、25に供給される。
各ミルから排出される微粉燃料と一次空気の混合流体の温度は、図3のT1において計測される。すなわち、T1における温度は、ミルから排出される微粉燃料と一次空気の混合流体の温度であるミル出口温度となる。なお、各ミルのそれぞれに対してミル出口温度が計測される。
図3に示すように、二次空気は、押込通風機38Aで昇圧され、ダンパ(FDFダンパ)D2で流量を調整されて、エアヒータ42で加熱される。加熱された二次空気は、風箱36へ供給され、バーナ21、22、23、24、25からボイラ10の火炉11内へ供給される。
風箱36に対する二次空気の入口と火炉11内の差圧を風箱差圧とし、図3のP1において計測される。風箱36にはバーナ21、22、23、24、25へ供給される二次空気の流量を調整するダンパ(図示省略)が設けられている。
ボイラ10から排出される燃焼ガスである排ガスは、エアヒータ42で二次空気と熱交換する。ボイラ10から排出される排ガスの酸素濃度を、図3のM1において計測する。すなわち、M1における酸素濃度は、ボイラ10から排出される燃焼ガス(排ガス)の酸素濃度であるボイラ出口酸素濃度となる。エアヒータ42で熱交換後、すなわちボイラシステムで熱回収を終えた排ガスの温度(エアヒータ出口ガス温度)はT2において計測される。
また、それぞれのミル31、32、33、34、35へ供給される一次空気の流量である搬送用ガス流量は、図3のF3において計測される。
図3のように、複数台のミル31、32、33、34、35が設けられる構成において、発電プラント1を部分負荷(定格負荷より小さい負荷)で運転する場合、一部のミル(例えば32、33、34、35)が稼働(対応するバーナ22、23、24、25が点火)状態となり、その他のミル(例えば、ミル31)は停止(対応するバーナ21が消火)状態となる。この停止中のミル(例えば、ミル31)には、対応するバーナ(例えば、バーナ21)への火炉11内の燃焼ガスの逆流やバーナ21の冷却のために、冷空気が補助ガス(補助一次空気)として供給されている。なお、停止中のミルへは熱空気は供給されない。このように、停止中のミルへ供給される補助一次空気の流量である補助ガス流量についても、図3のF3において計測される。
次に、制御装置200について説明する。
制御装置200は、発電プラント1に対する制御を行う。特に本実施形態に係る制御装置200は、ボイラ10の運転状態の改善制御を行う。
図4は、本実施形態に係る制御装置200のハードウェア構成の一例を示した図である。
図4に示すように、制御装置200は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU1100と、CPU1100が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)1200と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)1300と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)1400と、ネットワーク等に接続するための通信部1500とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス1800を介して接続されている。
また、制御装置200は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
なお、CPU1100が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM1200に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ1400等に記録されており、このプログラムをCPU1100がRAM1300等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM1200やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
図5は、制御装置(運転状態改善システム)200が備える機能を示した機能ブロック図である。図5に示されるように、制御装置200は、調整確認部201と、評価部202と、調整部203と、を備えている。なお、調整確認部201と評価部202とは省略することとしてもよい。
調整確認部201は、運転パラメータが調整可能か否かを判定する。具体的には、後述するように運転パラメータには設定可能範囲が設定されているため、現在の運転パラメータの値と設定可能範囲の限界値との差分を確認する。例えば、対象の運転パラメータがミル出口温度である場合には、現在のミル出口温度と、設定可能範囲における上限値とを比較して、差分を算出する。そして、この差分が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する。
閾値は、現在の運転パラメータの値が設定可能範囲の限界値に十分近く、限界値まで調整してもボイラ効率改善の効果が期待できないと想定される差分の最大値として設定される。すなわち、閾値は、運転パラメータの値が限界値に近いことを判定可能なように設定されている。閾値については、各運転パラメータに対してそれぞれ設定されることが好ましい。
例えば、後述する調整部203による調整を行う前に、調整対象の運転パラメータに対して調整確認部201により確認を行い、差分が予め設定した閾値以上である場合に実際に調整処理を行う。一方で、差分が予め設定した閾値未満である場合には、この運転パラメータに対する調整処理は実行しない。すなわち、後述する調整部203は、設定可能範囲における運転パラメータの差分(調整可能量)が閾値よりも小さい運転パラメータに対しては、調整を行わない。
このように、調整確認部201において、運転パラメータの調整要否の確認ができることで、不要な調整処理の実行を抑制することができる。なお、調整確認部201における確認処理を実行せずに、後述する調整部203において調整処理を行うこととしても良い。
評価部202は、ボイラ10の運転状態値から算出される所定の評価指数(評価指標)を演算する。本実施形態において、評価指数とはボイラ効率の改善量である。すなわち、評価部202は、ボイラ10の運転状態値を用いて、ボイラ効率の改善量を評価する。なお、評価指数については、ボイラ効率の改善量に限定されず、運転状態の変化(運転パラメータの調整)に伴って変化する指標であれば設定可能である。
評価部202において、ボイラ効率の改善量は、運転パラメータの調整の前後における所定の運転状態値の変化に基づいて算出され、すなわち、運転パラメータの調整によって変化した運転状態値の変化により、ボイラ効率が改善したかどうかを評価する。なお、評価に使用する運転状態値は、ボイラ効率の改善量を算出可能なパラメータとして予め設定される。
本実施形態では、運転状態値は、ボイラ出口酸素濃度M1と、エアヒータ出口ガス温度T2である。ボイラ出口酸素濃度M1は、ボイラ10から排出される燃焼ガスの酸素濃度である。エアヒータ出口ガス温度T2は、ボイラ10から排出される燃焼ガスとボイラ10へ供給される空気との間で熱交換を行うエアヒータ42から排出された燃焼ガスの温度であり、ボイラシステムにおける熱回収を終えた燃焼ガスの温度を示している。
具体的には、評価部202では、エアヒータ出口ガス温度T2の変化によるボイラ効率改善量と、ボイラ出口酸素濃度M1の変化によるボイラ効率改善量とを算出する。
エアヒータ出口ガス温度T2の変化によるボイラ効率改善量は、エアヒータ出口ガス温度T2の変化量ΔT2に対する関数ηt2(ΔT2)によって算出される。エアヒータ出口ガス温度の変化量ΔT2とは、調整後のエアヒータ出口ガス温度であるT2aから、調整前のエアヒータ出口ガス温度であるT2bを減算したものである(ΔT2=T2a-T2b)。関数ηt2は、エアヒータ出口ガス温度T2の変化量ΔT2からボイラ効率改善量を算出するために予め定義された関数であり、理論式(設計式)であってもよく、過去の運転実績から求めた経験式であってもよい。
ボイラ出口酸素濃度M1の変化によるボイラ効率改善量は、ボイラ出口酸素濃度M1の変化量ΔCに対する関数ηm1(ΔC)によって算出される。ボイラ出口酸素濃度M1の変化量ΔCとは、調整後のボイラ出口酸素濃度M1であるC2aから、調整前のボイラ出口酸素濃度M1であるC1bを減算したものである(ΔC=C2a-C1b)。関数ηm1は、ボイラ出口酸素濃度M1の変化量ΔCからボイラ効率改善量を算出するために予め定義された関数であり、理論式(設計式)であってもよく、過去の運転実績から求めた経験式であってもよい。
そして、評価部202では、エアヒータ出口ガス温度T2の変化によるボイラ効率改善量ηt2(ΔT)と、ボイラ出口酸素濃度M1の変化によるボイラ効率改善量ηm1(ΔC)とを加算することによって、トータルボイラ効率改善量を算出する。すなわち、トータルボイラ効率改善量は、ηt2(ΔT)+ηm1(ΔC)として算出される。
評価部202における評価処理は、例えば、後述する調整部203において運転パラメータに対する調整処理が実行された後に、改善結果を確認するために実行される。また、評価部202における評価処理は、調整部203における調整処理の実行前に行うこととしてもよい。この場合には、例えば、運転パラメータの調整可能量に基づいてボイラ効率改善量の推定値を算出する。例えば、上述のように、トータルボイラ効率改善量の算出にηt2(ΔT)+ηm1(ΔC)を用いる場合には、各運転パラメータの現状値と調整可能量から、ΔT2とΔCを推定し、これに基づいてボイラ効率改善量の推定値を算出する。そして、推定されたボイラ効率改善量が予め設定した閾値以上である場合に、その運転パラメータに対して調整処理を行うことしてもよい。
調整部203は、評価指数に関する所定の運転パラメータに対して設定可能範囲が予め設定されており、評価指数に基づいて、設定可能範囲内において運転パラメータを調整する。
運転パラメータは、評価指数に対する影響度に基づいて予め設定される。影響度とは、運転パラメータの調整に対する評価指数の変化の大きさを表したものである。すなわち、影響度が高い運転パラメータを調整することによって、効果的に評価指数を調整することが可能となる。
本実施形態において、運転パラメータは、ミル出口温度、搬送用ガス流量、ボイラ出口酸素濃度、及び補助ガス流量のうち少なくともいずれか1つである。なお、評価指数への影響度が大きい運転パラメータであれば、上記に限定されず用いることが可能である。ミル出口温度とは、ミルから排出される微粉燃料と搬送用ガスの混合気の温度である。搬送用ガス流量とは、ミルへ供給される搬送用ガスの流量である。ボイラ出口酸素濃度とは、ボイラ10から排出される燃焼ガスの酸素濃度である。補助ガス流量とは、ボイラ10に対してミルが複数設けられている場合における停止中のミルへ供給される補助ガスの流量である。
そして、調整部203は、複数の運転パラメータを用いる場合に、評価指数に対する影響度が大きい運転パラメータから順番に調整を行う。評価指数に対する影響度とは、運転パラメータを調整した場合に評価指数を効果的に改善することができる度合いを示している。
本実施形態では、影響度を考慮して運転パラメータの調整順番は予め設定されている。具体的には、調整部203は、ボイラ出口酸素濃度M1、ミル出口温度T1、搬送用ガス流量F3h、及び補助ガス流量F3cの順番で、各運転パラメータを調整する。なお、順番は上記から変更を加えることとしても良いし、使用しない運転パラメータがある場合には、上記順番から該不使用の運転パラメータを省略してもよい。
各運転パラメータの調整について、それぞれ説明する。なお、以下の各運転パラメータの調整において操作対象とする機器(各ダンパなど)は、記載の手段に限定されるものでなく、調整目的が達成できれば、他の手段によってもよい。
まず、ミル出口温度を調整する場合について説明する。
調整部203は、ボイラ効率を改善するために、ミル出口温度T1を増加させる。具体的には、設定可能範囲の上限値まで、ミル出口温度T1の設定値を操作することによって、ミル出口温度を増加させる。
ミル出口温度T1の設定可能範囲は、使用する石炭性状に基づいて、上限値が設定される。なお、ミル出口温度T1の設定可能範囲に対して下限値を設定することとしても良い。石炭性状とは、例えば、O/C値(酸素と炭素のモル比)である。
このように、設定可能範囲の上限値までミル出口温度T1が増加されることによって、ボイラ効率が改善される。
図6は、ミル出口温度とボイラ効率との関係の一例を示す図である。図6では、ミル出口温度とエアヒータ42の出口ガス温度との関係と、ミル出口温度とボイラ効率との関係を示している。ミル出口温度の設定値を増加すると、ミル入口温度を増加させるために、熱空気ダンパW1、W2、W3、W4、W5の開度を増加させ、冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5の開度を減少させる制御が、制御装置220によって行われる。この操作により、エアヒータ42を通過する一次空気(熱空気)の流量が増加して(エアヒータ42をバイパスする冷空気の流量割合は減少する)、エアヒータ42における一次空気と排ガスの交換熱量が増加する。その結果、エアヒータ出口ガス温度が減少して、排ガスがボイラ系外に持ち出す熱量である排ガス損失が減少して、ボイラ効率が改善される。
次に、搬送用ガス(一次空気)流量を調整する場合について説明する。
調整部203は、ボイラ効率を改善するために、一次空気の流量を減少させる。具体的には、設定可能範囲の下限値まで、熱空気ダンパW1、W2、W3、W4、W5及び冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5を閉方向に操作する。一次空気の流量が減少すると、ボイラ10への燃料供給量に応じて設定された全空気流量を確保するために、FDFダンパD2を開方向に操作して二次空気流量を増加する制御が制御装置200によって行われる。この操作により、エアヒータ42を通過する二次空気流量が増加して、エアヒータ42における二次空気と排ガスの交換熱量が増加する。その結果、エアヒータ42の出口ガス温度が減少して、排ガスがボイラ系外に持ち出す熱量である排ガス損失が減少して、ボイラ効率が改善される。また、一次空気流量が減少すると、ミルへ供給する熱量を確保するために(ミル出口温度を設定値に保持するために)、ミル入口温度を増加させる操作、具体的には熱空気ダンパW1、W2、W3、W4、W5の開度を増加させ、冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5の開度を減少させる制御が、制御装置200によって行われる。この操作により、エアヒータ42を通過する一次空気(熱空気)の流量割合が増加して(エアヒータ42をバイパスする一次空気である冷空気の流量割合は減少する)、エアヒータ42における一次空気(熱空気)と排ガスの熱交換量が増加する。その結果、エアヒータ42の出口ガス温度が減少して、排ガスがボイラ系外に持ち出す熱量である排ガス損失が減少して、ボイラ効率が改善される。
搬送用ガス流量の設定可能範囲は、バーナ21、22、23、24、25及び微粉炭供給管26、27、28、29、30を通過する微粉燃料と搬送用ガスの固気二相流の沈降流速、及びミル内の微粉燃料の乾燥性の少なくともいずれか一方に応じて、搬送用ガス流量の下限値が設定される。乾燥性とは、ミル出口温度が下限値以上を確保可能であること(所望の乾燥がされたこと)を示す。なお、搬送用ガス流量の設定可能範囲に対して上限値を設定することとしても良い。
このように制御することで、エアヒータ42を通過する空気(一次空気の一部である熱空気と二次空気)の流量が増加し、エアヒータ42における一次空気と排ガスの熱交換量が増加する。その結果、エアヒータ42の出口の排ガス温度が減少して、排ガスがボイラ系外に持ち出す熱量である排ガス損失が減少して、ボイラ効率が改善される。このため、設定可能範囲の下限値まで搬送用ガス流量が減少されることによって、ボイラ効率が改善される。
なお、冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5の開度が制御下限値(例えば、5%)以上であることを確認し、流量の下限値まで減少する前に冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5の開度が制御下限値に到達した場合は、搬送用ガス流量を減少させる制御は終了させることが好ましい。制御下限値とは、搬送用ガス温度及び流量を安定的に制御するために最低限必要なダンパ開度である。
図7は、搬送用ガス流量とボイラ効率との関係の一例を示す図である。図7では、搬送用ガス流量と必要ミル入口空気温度との関係と、搬送用ガス流量とエアヒータ42の出口ガス温度との関係と、搬送用ガス流量とボイラ効率との関係とを示している。搬送用ガス流量と必要ミル入口空気温度との関係に示すように、冷空気ダンパR1、R2、R3、R4、R5が下限となる点P1があり、この点となるまで、搬送用ガス流量が下げられる。このように、搬送用ガス流量が減少すると、ボイラ効率が改善される。
次に、ボイラ出口酸素濃度を調整する場合について説明する。
調整部203は、ボイラ効率を改善するために、ボイラ出口酸素濃度を減少させる。具体的には、設定可能範囲の下限値まで、ボイラ10への供給空気量を減少する方向に操作することによって、ボイラ出口酸素濃度を減少させる。ボイラ10への供給空気量は、例えばFDFダンパD2を操作することによって操作される。
ボイラ出口酸素濃度M1の設定可能範囲は、予め設定されたボイラ出口酸素濃度M1の規定値に基づいて、下限値が設定される。なお、ボイラ出口酸素濃度M1の設定可能範囲に対して上限値を設定することとしても良い。ボイラ出口酸素濃度M1の規定値とは、例えば、灰中未燃分が予め設定された上限値以下となるように予め設定される。
ボイラ出口酸素濃度M1の設定を下げることで、ボイラ10へ供給される空気量が減少し、その結果、ボイラから排出される排ガス量が減少し、排ガス損失を低減することができる。このように、設定可能範囲の下限値までボイラ出口酸素濃度M1が減少されることによって、ボイラ効率が改善される。
なお、ボイラ出口酸素濃度M1を低減すると、排ガス中の一酸化炭素濃度の増加や風箱差圧P1の減少等の影響が発生する。排ガス中の一酸化炭素濃度の増加は、燃料の不完全燃焼により発生するものであり、ボイラ効率は低下する。また、風箱差圧P1の減少は、バーナにおける燃焼の不安定が発生する可能性がある。このため、一酸化炭素濃度の上限値や風箱差圧P1の下限値を予め設定しておき、ボイラ出口酸素濃度M1を下限値まで下げていったときに一酸化炭素濃度の上限値や風箱差圧P1の下限値に達した場合には、ボイラ出口酸素濃度M1を下げる制御を終了することが好ましい。
図8は、ボイラ出口酸素濃度とボイラ効率との関係の一例を示す図である。図8では、ボイラ出口酸素濃度(節炭器出口酸素濃度)と排ガス量との関係と、ボイラ出口酸素濃度と排ガス中の一酸化炭素濃度との関係と、ボイラ出口酸素濃度と灰中未燃分量との関係と、ボイラ効率と排ガス量との関係と、ボイラ効率と排ガス中の一酸化炭素濃度との関係と、ボイラ効率と未燃分量との関係とを示している。このように、ボイラ出口酸素濃度が減少すると、ボイラ効率が改善される。
次に、補助ガス流量を調整する場合について説明する。
調整部203は、ボイラ効率を改善するために、補助ガス流量を減少させる。具体的には、停止中のミル(例えば、ミル31)には補助ガスが供給され、この際、冷空気ダンパ(R1)が開で熱空気ダンパ(W1)が閉となっているため、補助ガスは冷空気ダンパ(R1)からの空気となる。このため、設定可能範囲の下限値まで、停止中のミルに対応する冷空気ダンパ(R1)を閉方向に操作することによって、補助ガス流量を減少させる。
補助ガスは、停止中のミルへ(例えば、ミル31)供給されると、その後に、対応する消火状態のバーナ(例えば、バーナ21)へ供給される。補助ガスが不足するとバーナの冷却が不十分となり、バーナの焼損が発生する可能性がある。このため、補助ガス流量の設定可能範囲は、バーナの使用上限温度に基づいて、下限値が設定される。補助ガス流量の設定可能範囲に対して上限値を設定することとしても良い。バーナの使用上限温度は、バーナの仕様(例えば、使用する材料や形状)また、バーナの冷却に必要となる補助ガスの流量は、ボイラ10の負荷(火炉11内の熱負荷)によって異なる流量となる。このため、バーナに熱電対等(図示省略)を設置してメタル温度を監視することで、ボイラ10の負荷に応じた補助ガス流量の下限値を設定することが好ましい。熱電対を設置できない場合(温度監視することができない場合)には、例えば、バーナの使用上限温度に対応した補助ガス流量の下限値を、ボイラ10の負荷(火炉11の熱負荷)に応じて異なった設定としてもよい。
このように、エアヒータ42をバイパスする一次空気(冷空気)から分岐される補助ガス流量が減少すると、ボイラ10への燃料供給量に応じて設定された全空気流量を確保するために、FDFダンパD2を開方向に操作して二次空気流量を増加する制御が制御装置200によって行われる。この操作により、エアヒータ42を通過する二次空気流量が増加して、エアヒータ42における二次空気と排ガスの交換熱量が増加する。その結果、エアヒータ出口ガス温度が減少して、排ガスがボイラ系外に持ち出す熱量である排ガス損失が減少して、ボイラ効率が改善される。
図9は、補助ガス流量とボイラ効率との関係の一例を示す図である。図9では、補助ガス流量と消火バーナのメタル温度との関係と、補助ガス流量とエアヒータ42の出口ガス温度との関係と、補助ガス流量とボイラ効率との関係とを示す図である。このように、補助ガス流量が減少すると、ボイラ効率が改善される。
次に、上述の制御装置200による運転パラメータ調整処理の一例について図10を参照して説明する。図10は、本実施形態に係る運転パラメータ調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。図10に示すフローは、例えば、ボイラ効率改善の調整制御の開始指示があった場合に実行される。
本実施形態では、運転パラメータに実行する優先順位を設定しているため、それに合わせて、番号A=1としてボイラ出口酸素濃度、番号A=2としてミル出口温度、番号A=3として搬送用ガス流量、番号A=4として補助ガス流量が設定されているものとする。
まず、運転パラメータの番号A=1に設定する(S101)。
次に、設定された番号の運転パラメータに対して、調整可能か否かの判定を行う(S102)。具体的には、現在の運転パラメータの値と、設定可能範囲の限界値と差分が閾値以上であるか否かを判定する。
調整可能である場合(S102のYES判定)には、設定された番号の運転パラメータに対して調整処理を実行する(S103)。
調整可能でない場合(S102のNO判定)には、S105が実行される。
次に、運転パラメータの調整後において、ボイラ効率改善量を評価する(S104)。評価されたボイラ効率改善量は、例えば発電プラント1の運転員等に通知されることとしても良い。
次に、運転パラメータの番号Aが最終番号(本実施形態では4)か否かを判定する(S105)。
運転パラメータの番号Aが最終番号でない場合(S105のNO判定)には、S106で番号Aに1を加算して(A=A+1)、S102を実行する。これにより、S102から番号A=2である運転パラメータに対して再度処理が実行される。
運転パラメータの番号Aが最終番号である場合(S105のYES判定)には、処理を終了する。
なお、目標とするボイラ効率の改善効果が得られるまで、上記処理を繰り返し実行することとしても良い。
上記のフローのように処理が実行されることによって、優先順位に従って各運転パラメータに対して調整処理が実行される。すなわち、図11に示すように、まず、ボイラ出口酸素濃度を調整する。具体的には、設定可能範囲内においてボイラ出口酸素濃度が減少される。そして、次にミル出口温度を調整する。具体的には、設定可能範囲内においてミル出口温度が増加される。そして、次に搬送用ガス流量を調整する。具体的には、設定可能範囲内において搬送用ガス流量が減少される。そして、次に、補助ガス流量を調整する。具体的には、設定可能範囲内において補助ガス流量が減少される。
このようにして、優先順位に従って各運転パラメータに対する調整処理が実行され、ボイラ効率の改善が行われる。
以上説明したように、本実施形態に係る運転状態改善システム及び発電プラント、並びに運転状態改善方法、並びに運転状態改善プログラムによれば、設定可能範囲内で、ボイラ10の運転状態値から算出される所定の評価指数に基づいて運転パラメータを調整する。このため、運転パラメータを調整して、評価指数の向上等を行うことが可能となる。そして、設定可能範囲内での運転パラメータの調整となるため、評価指数の向上等を行う運転パラメータが不適切な値に設定されることが抑制される。評価指数としてボイラ効率の改善量を用いることで、運転パラメータを調整してボイラ効率の改善を行うことが可能となる。
また、例えばAIを用いて運転パラメータを最適化する方法と比較して、導入コストの削減やモデルによる再現性の検証等を省略することが期待できる。
また、ボイラ10から排出される燃焼ガスの酸素濃度と、燃焼ガス及びボイラ10へ供給される空気との間で熱交換を行う空気予熱器42から排出された燃焼ガスの温度とに基づくことで、ボイラ効率の改善量を効率的に算出することができる。
また、評価指数に対する影響度に基づいて運転パラメータが設定されることで、効果的に評価指数に対する運転パラメータの調整処理を行うことが可能となる。評価指数に対する影響度が大きい運転パラメータから順番に調整を行うことで、影響度の大きい運転パラメータの調整を優先的に行い、効率的に評価指数に対する調整を行うことが可能となる。
また、運転パラメータとして、ミル出口温度、搬送用ガス流量、ボイラ出口酸素濃度、及び補助ガス流量のいずれか1つを用いることで、効果的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。ボイラ出口酸素濃度、ミル出口温度、搬送用ガス流量、及び補助ガス流量の順番で運転パラメータの調整を行うことで、評価指数(ボイラ効率)への影響度の大きい運転パラメータの調整を優先的に行うことができる。このため、効率的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。ミル出口温度を調整する場合にミル出口温度を増加させ、搬送用ガス流量を調整する場合に搬送用ガス流量を減少させ、ボイラ出口酸素濃度を調整する場合にボイラ出口酸素濃度を減少させ、補助ガス流量を調整する場合に補助ガス流量を減少させることで、効率的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る運転状態改善システム及び発電プラント、並びに運転状態改善方法、並びに運転状態改善プログラムについて説明する。
上述した第1実施形態では、優先順位を予め設定して各運転パラメータに対して調整処理を実行する場合について説明していたが、本実施形態では、処理を行う際の各運転パラメータの状態(現状値)に基づいて実行順番を決定する場合について説明する。以下、本実施形態に係る運転状態改善システム及び発電プラント、並びに運転状態改善方法、並びに運転状態改善プログラムについて、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
図12は、本実施形態における運転パラメータ調整処理を示すフローである。本実施形態では、運転パラメータとして、ミル出口温度、搬送用ガス流量、ボイラ出口酸素濃度、及び補助ガス流量を用いる場合を一例として説明する。
図12において、各運転パラメータに対する補助符合を、ミル出口温度をa、搬送用ガス流量をb、ボイラ出口酸素濃度をc、補助ガス流量をdとする。
まず、調整可能量の算出を行う(S201)。調整可能量とは、各運転パラメータにおいて、設定可能範囲における限界値と、現状値との差分である。S201では、各運転パラメータのそれぞれにおいて調整可能量(差分)が算出される。具体的には、ミル出口温度に対する調整可能量としてSa、搬送用ガス流量に対する調整可能量としてSb、ボイラ出口酸素濃度に対する調整可能量としてSc、補助ガス流量に対する調整可能量としてSdがそれぞれ算出される。
次に、ボイラ効率の改善量の期待値(改善期待値)を算出する(S202)。すなわち、評価部202において評価を行う。改善期待値は、調整可能量だけ運転パラメータを操作した場合に、ボイラ効率が改善される量の期待値(推定値)である。改善期待値は、調整可能量を変数として、所定の関数を用いて算出される。関数については、予め設定される。また、調整可能量から改善期待値が算出されれば、関数を用いる方法に限定されない。関数については、理論式(設計式)でも過去の運転データに基づく経験式であってもよい。
具体的には、ミル出口温度の調整可能量であるSaに対応して、改善期待値はΔEa=fa(Sa)として算出される。ここでfaは、調整可能量Saから改善期待値ΔEaを算出する関数である。搬送用ガス流量の調整可能量であるSbに対応して、改善期待値はΔEb=fb(Sb)として算出される。ボイラ出口酸素濃度の調整可能量であるScに対応して、改善期待値はΔEc=fc(Sc)として算出される。補助ガス流量の調整可能量であるSdに対応して、改善期待値はΔEd=fd(Sd)として算出される。
次に、調整処理を行う運転パラメータの選定を行う(S203)。具体的には、各運転パラメータに対応する改善期待値のうち最も値が大きいもの(MAX(ΔEa、ΔEb、ΔEc、ΔEd))が、閾値(Eth(i))より大きいか否かを判定する。すなわち、S203の判定処理では、MAX(ΔEa、ΔEb、ΔEc、ΔEd)>Eth(i)の判定処理を行っている。なお、iは繰り返し回数であり、初期値として1が設定されている。
S203が否定判定(NO判定)である場合には、S205が実行される。
S203が肯定判定(YES判定)である場合には、各運転パラメータに対応する改善期待値のうち最も値が大きいもの(MAX(ΔEa、ΔEb、ΔEc、ΔEd))に対応する運転パラメータに対して調整処理を実行する(S204)。このようにして、評価指数(ボイラ効率)に対する影響度(改善期待値)が大きい運転パラメータに対して調整処理が実行される。
そして、処理終了か否かの判定を行う(S205)。処理終了は、繰り返し回数であるiが所定の上限値に達したか否かで判定する。上限値とは、例えば4と設定された場合には、S201からS205までの処理が4回行われることとなる。なお、S205については、運転員等からの終了指示に基づいて判定を行うこととしてもよい。
処理終了である場合(S205のYES判定)には、処理を終了する。一方で、処理終了ない場合(S205のNO判定)には、iに1を足す(i=i+1)処理を行う(S206)。そして、S201から再度処理が実行される。
なお、iが変わるとEth(i)は値が変化する。具体的には、iが大きくなるに従って、Eth(i)は小さくなることが好ましい。Eth(i)を小さくする場合には、例えば所定量だけ値が減算される。なお、Eth(i)はiを変数とせず、Ethとして固定値としても良い。
このように処理が行われることによって、影響度としての改善期待値が大きい運転パラメータからボイラ効率改善のための調整処理が実行される。これによりボイラ効率が改善される。
以上説明したように、本実施形態に係る運転状態改善システム及び発電プラント、並びに運転状態改善方法、並びに運転状態改善プログラムによれば、ボイラ効率への影響度に基づいて運転パラメータの調整処理が実行されるため、効果的にボイラ効率の改善を行うことが可能となる。
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、上記の第1実施形態、及び第2実施形態については、それぞれ組み合わせることも可能である。
以上説明した各実施形態に記載の運転状態改善システム及び発電プラント、並びに運転状態改善方法、並びに運転状態改善プログラムは、例えば以下のように把握される。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、所定の運転パラメータに対して設定可能範囲が予め設定されており、ボイラ(10)の運転状態に基づく所定の評価指数に基づいて、前記設定可能範囲内において前記運転パラメータを調整する調整部(203)を備える。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、設定可能範囲内で、ボイラ(10)の運転状態に基づく所定の評価指数に基づいて運転パラメータを調整する。このため、運転パラメータを調整して、評価指数の向上等を行うことが可能となる。そして、設定可能範囲内での運転パラメータの調整となるため、評価指数の向上等を行う運転パラメータが不適切な値に設定されることが抑制される。例えばAIを用いて運転パラメータを最適化する方法と比較して、AIの導入コストの削減やモデルによる再現性の検証等を省略することが期待できる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記評価指数は、ボイラ効率の改善量であることとしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、評価指数としてボイラ効率の改善量を用いることで、運転パラメータを調整してボイラ効率の改善を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記ボイラ効率の改善量は、前記運転パラメータの調整の前後における所定の運転状態値の変化に基づいて算出され、前記運転状態値は、前記ボイラ(10)から排出される燃焼ガスの酸素濃度、及び前記燃焼ガスと前記ボイラ(10)へ供給される空気との間で熱交換を行う空気予熱器(42)から排出された前記燃焼ガスの温度であることとしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、ボイラ(10)から排出される燃焼ガスの酸素濃度と、燃焼ガス及びボイラ(10)へ供給される空気との間で熱交換を行う空気予熱器(42)から排出された燃焼ガスの温度とに基づくことで、ボイラ効率の改善量を効率的に算出することができる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記運転パラメータを前記評価指数に対する影響度に基づいて予め設定されることとしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、評価指数に対する影響度に基づいて運転パラメータが設定されることで、効果的に評価指数に対する運転パラメータの調整を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記調整部(203)を複数の前記運転パラメータを用いる場合に、前記評価指数に対する影響度が大きい前記運転パラメータから順番に調整を行うこととしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、評価指数に対する影響度が大きい運転パラメータから順番に調整を行うことで、影響度の大きい運転パラメータの調整を優先的に行い、効率的に評価指数に対する調整を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記運転パラメータをミル(31、32、33、34、35)から排出される流体の温度であるミル出口温度、前記ミル(31、32、33、34、35)へ供給される搬送用ガスの流量である搬送用ガス流量、前記ボイラ(10)から排出される燃焼ガスの酸素濃度であるボイラ出口酸素濃度、及び前記ボイラ(10)に対して前記ミル(31、32、33、34、35)が複数設けられている場合における停止中の前記ミルへ供給される補助ガスの流量である補助ガス流量のうち少なくともいずれか1つであることとしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、運転パラメータとして、ミル出口温度、搬送用ガス流量、ボイラ出口酸素濃度、及び補助ガス流量のいずれか1つを用いることで、効果的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記調整部(203)は、前記運転パラメータとして、前記ミル出口温度、前記搬送用ガス流量、前記ボイラ出口酸素濃度、及び前記補助ガス流量を用いる場合に、前記ボイラ出口酸素濃度、前記ミル出口温度、前記搬送用ガス流量、及び前記補助ガス流量の順番で、各前記運転パラメータを調整することとしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、ボイラ出口酸素濃度、ミル出口温度、搬送用ガス流量、及び補助ガス流量の順番で運転パラメータの調整を行うことで、評価指数(ボイラ効率)への影響度の大きい運転パラメータの調整を優先的に行うことができる。このため、効率的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記調整部(203)は、前記ミル出口温度を調整する場合に前記ミル出口温度を増加させ、前記搬送用ガス流量を調整する場合に前記搬送用ガス流量を減少させ、前記ボイラ出口酸素濃度を調整する場合に前記ボイラ出口酸素濃度を減少させ、前記補助ガス流量を調整する場合に前記補助ガス流量を減少させることとしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、ミル出口温度を調整する場合にミル出口温度を増加させ、搬送用ガス流量を調整する場合に搬送用ガス流量を減少させ、ボイラ出口酸素濃度を調整する場合にボイラ出口酸素濃度を減少させ、補助ガス流量を調整する場合に補助ガス流量を減少させることで、効率的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記調整部(203)は、複数の前記運転パラメータを用いる場合に、前記設定可能範囲における前記運転パラメータの調整可能量が閾値よりも小さい前記運転パラメータに対しては、調整を行わないこととしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、効率的に評価指数(ボイラ効率)に対する調整を行うことが可能となる。
本開示に係る運転状態改善システム(200)は、前記調整部(203)は、前記順番における各前記運転パラメータの調整を繰り返し行うこととしてもよい。
本開示に係る運転状態改善システム(200)によれば、各運転パラメータの調整を繰り返し行うことで、より確実に評価指数に対する調整を行うことが可能となる。
本開示に係る発電プラント(1)は、ボイラ(10)と、前記ボイラが発生した蒸気によって駆動されるタービン(110)と、上記の運転状態改善システム(200)と、を備える。
本開示に係る運転状態改善方法は、所定の運転パラメータに対して設定可能範囲が予め設定されており、ボイラ(10)の運転状態に基づく所定の評価指数に基づいて、前記設定可能範囲内において前記運転パラメータを調整する工程を有する。
本開示に係る運転状態改善プログラムは、所定の運転パラメータに対して設定可能範囲が予め設定されており、ボイラ(10)の運転状態に基づく所定の評価指数に基づいて、前記設定可能範囲内において前記運転パラメータを調整する処理をコンピュータに実行させる。