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JP2022111655A - 樹脂組成物、フィルム及び成形体 - Google Patents

樹脂組成物、フィルム及び成形体 Download PDF

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JP2022111655A JP2021007221A JP2021007221A JP2022111655A JP 2022111655 A JP2022111655 A JP 2022111655A JP 2021007221 A JP2021007221 A JP 2021007221A JP 2021007221 A JP2021007221 A JP 2021007221A JP 2022111655 A JP2022111655 A JP 2022111655A
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Abstract

【課題】本発明は、フィルムの外観不良となるフィッシュアイを低減でき、且つきめの細かい艶消し性、透明性、耐薬品性に優れた、樹脂組成物、これを用いたフィルム、及び成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体と、を含有する樹脂組成物であって、前記第1の重合体は反応性基を有する重合体であり、前記第2の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が1以上3以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、前記第3の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、前記第2の重合体と前記第3の重合体の組成が異なる、樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物、フィルム及び成形体に関する。
フッ化ビニリデン系樹脂に代表されるフッ素系樹脂で構成されたフッ素系フィルムは、耐候性、耐薬品性、及び耐汚染性に優れているため、プラスチック、ガラス、スレート、ゴム、金属板、木板等の各種基材の表面にラミネートされる保護フィルムとして広く使用されている。また、フッ素系フィルムで表面が保護された基材は、建築物の内装材、外装材、家具、自動車の内装材、外装材等の多くの用途で使用されている。
特に近年では、見た目の高級感が重視されるようになり、フッ素系艶消しフィルムをラミネートしたものの使用が多くなっている。
艶消しフィルムの製法としては、主として(1)表面を荒らした金属製又はゴム製のマットロールによってフィルム表面に微細な凹凸を付与し、熱成形する方法、(2)砂又は金属等の微粒子をフィルム表面に吹き付けて微細な凹凸を付与する方法(サンドブラスト法)、(3)フィルムに艶消し剤をコーティングする方法、及び(4)微細な有機又は無機の充填剤(艶消し剤)をフィルム構成用樹脂中に添加する方法が知られている。
前記方法(1)では、フッ素系樹脂に添加した紫外線吸収剤等の添加剤によりマットロールが目詰まりするという問題や、薄いフィルムでは厚さ斑がそのまま艶斑となり、均一な艶消しフィルムが得られにくいという問題がある。前記方法(2)では、サンドブラスト時に被処理フィルムが伸びたり、破断したりする問題がある。前記方法(3)では、艶消し剤がフッ素系樹脂に対して非粘着(非接着)性であるため、フッ素系樹脂の表面に艶消し剤のコーティングを行なうことが困難である。
前記方法(4)で無機系艶消し剤を使用する場合として、特許文献1には、フッ化ビニリデン系樹脂中に無機系微粒子を分散させた艶消しフッ素フィルムが提案されている。
前記方法(4)で有機系艶消し剤を使用する場合として、特許文献2には、フッ化ビニリデン系樹脂に特定粒径の架橋アクリル樹脂を含有させた内外装建材用表面保護フィルムが提案されている。また、特許文献3には、フッ素系樹脂に非架橋のアクリル樹脂を含有させた艶消しフッ素フィルムが開示されている。
特開2002-80674号公報 特開2008-7709号公報 国際公開第2011/093300号
特許文献1で得られるフィルムは、耐薬品性及び艶消し性に優れるが、溶融押出の際に無機系艶消し剤の存在により樹脂の分解が促進され、得られるフィルムの発泡や着色など外観不良の問題が生じる場合がある。また、特許文献2で得られるフィルムは、耐候性及び艶消し性に優れるが、耐薬品性が充分とはいえない。特許文献3で得られるフィルムは、艶消し性および耐薬品性に優れるが、フィッシュアイと呼ばれる異物欠陥が多発するという課題がある。フッ素系フィルムが自動車の内装材、外装材等の用途で使用される場合、耐薬品性及び艶消し性に加え、より高い品質が求められており、特にフィッシュアイ低減に関する要望が多く挙がっている。
本発明の目的は、フィルムの外観不良となるフィッシュアイを低減でき、且つきめの細かい艶消し性、透明性、耐薬品性に優れた、樹脂組成物、これを用いたフィルム、及び成形体を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、樹脂組成物に特定のアクリル系重合体を二種以上添加することによって、フィルムの外観不良となるフィッシュアイを低減でき、且つきめの細かい艶消し性、透明性、耐薬品性に優れた樹脂組成物、これを用いたフッ素系フィルム、フッ素系積層フィルム及び積層成形体が得られることを見出した。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1]フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体と、を含有する樹脂組成物であって、前記第1の重合体は反応性基を有する重合体であり、前記第2の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が1以上3以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、前記第3の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、前記第2の重合体と前記第3の重合体の組成が異なる、樹脂組成物。
[2]前記第3の重合体の質量平均分子量が50000~500000である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]さらに、構成単位としてエステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルと、エステル基の炭素数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、を有し、かつ実質的に反応性基を有さない第4の重合体を含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記第4の重合体の質量平均分子量が500000以上5000000以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記フッ素樹脂の割合が40質量%以上98質量%以下である、[1]~[4]に記載の樹脂組成物。
[6]前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記第1の重合体の割合が1質量%以上20質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記第2の重合体の割合が1質量%以上40質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記第3の重合体の割合が0.1質量%以上10質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデンである、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]前記第1の重合体はアクリル系重合体である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]前記第1の重合体が有する反応性基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基及びイミン基よりなる群から選択された1つ以上である、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
[13][12]に記載のフィルムを有する成形体。
本発明により、フィルムの外観不良となるフィッシュアイを低減でき、且つきめの細かい艶消し性、透明性、耐薬品性に優れた樹脂組成物、これを用いたフッ素系フィルム、フッ素系積層フィルム及び積層成形体を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらの説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本実施形態に係る樹脂組成物、少なくとも、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体と、を有する。なお、第1の重合体は反応性基を有する重合体であり、第2の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が1以上3以下であるメタクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、第3の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、第2の重合体と第3の重合体は異なる組成の重合体である。
[フッ素系樹脂]
フッ素系樹脂としては、特段の制限はなく、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)系共重合体、フッ化ビニリデン系重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、得られるフィルムの光透過性、きめの細かい艶消し発現性、及びフッ素系樹脂と第1の重合体との相溶性の点で、フッ化ビニリデン系重合体が好ましい。
フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデン単位を含む樹脂であればよく、例えば、フッ化ビニリデン単位のみからなる単独重合体や、フッ化ビニリデン単位を含む共重合体が挙げられる。フッ化ビニリデン系重合体の総繰り返し単位数に対するフッ化ビニリデン単位の含有量は、特段の制限はないが、耐薬品性を向上させるために、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%、すなわちポリフッ化ビニリデンが最も好ましい。
フッ化ビニリデンと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、六フッ化プロピレン等のフッ素化されたビニル単量体;スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレン、(メタ)アクリル酸エステル等のビニル単量体が挙げられる。
なお、フッ素系樹脂は市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば(株)クレハ製の商品名KFT#850;アルケマ(株)製の商品名Kynar720、Kynar710が挙げられる。
フッ化ビニリデン系共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フッ素系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、特段の制限はないが、耐薬品性の点から20000以上が好ましく、50000以上がより好ましい。また、製膜性の点から、フッ素系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)は、1000000以下が好ましく、700000万以下がより好ましい。なお、本発明において、化合物の質量平均分子量(Mw)はゲルパーメーションクロマトグラフ(GPC)により以下の条件で測定して得られる値を示す。
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC-8320GPCシステム
カラム(ガード):TGKgel SupaerGuadH-H(東ソー(株)製、商品名)
カラム(メイン):TGKgel SupaerHZM-H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液 :0.01mmol/L LiClを含むDMF
カラム温度:40℃
検出器 :示差屈折率(RI)
フッ素系樹脂は、特段の制限はないが、温度230℃、荷重49Nの条件で測定されるMFRが5g/10min以上であることが好ましく、6g/10min以上がより好ましく、7g/10min以上がさらに好ましく、一方、40g/10min以下であることが好ましく、35g/10min以下がより好ましく、30g/10min以下がさらに好ましい。フッ素系樹脂(A)のMFRが5g/10min以上であれば成形加工性に優れ、40g/10min以下であれば工程安定性に優れる。
フッ素系樹脂の融点は、特段の制限はないが、耐熱性の点から、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましいく、一方、透明性の点から190℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。
フッ素系樹脂の屈折率は、特段の制限はないが、透明性向上のために、1.30以上が好ましく、1.40以上がより好ましく、一方、1.60以下が好ましく、1.50以下がより好ましい。また、フッ素系樹脂(A)の屈折率は、透明性向上のために、後述するアクリル系樹脂(C)の屈折率に近接していることが好ましく、具体的にその差は、0.25以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
[第1の重合体]
第1の重合体は反応性基を有する重合体であれば特段の制限はない。このように、反応性基を有する第1の重合体は、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られるフィルムや成形体の艶を抑え外観性を良くする艶消し剤として機能しうる。
第1の重合体は、特段の制限はなく、反応性基を有する、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応性基は、第1の重合体どうしを反応可能とする基を意味し、特段の制限はないが、好ましくは、カルボキシ基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基、イミン基、スルホン酸基、アジリジン基、アミン基、ユリア基、リン酸基、シアネート基、イミダゾール基又はオキサゾリン基が挙げられる。
なお、第1の重合体が有する反応性基は、該重合体を構成する単量体部分に有していればよい。すなわち、所望の反応性基を有する第1の重合体を製造するには、該所望の反応性基を有する単量体を重合することにより得ることができる。すなわち、反応性基を有する単量体を重合することにより得ることができる。反応性基を有する第1の重合体は、反応性基を有する単量体の単独重合体、反応性基を有する2種以上の共重合体、反応性基を有する単量体と反応性基を有さない単量体との共重合体であってもよい。
これらのなかでも、第1の重合体としては、反応性基を有する単量体と反応性官能基を有さない単量体との共重合体であることが好ましい。
上記のなかでも、第1の重合体は、フッ素系樹脂との相溶性の点で、反応性基を有する、(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系の単量体単位を主成分とする重合体である。(メタ)アクリル系の単量体単位としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含むことが好ましい。なかでも、フッ素系樹脂と第1の重合体との相溶性の点から、第1の重合体全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の合計含有率は70質量%以上がより好ましい。
第1の重合体が(メタ)アクリル系重合体である場合、該(メタ)アクリル系重合体は(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体であってもよいし、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよいし、(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、特段の制限はないが、(メタ)アクリル酸やスチレン等が挙げられる。
反応性基を有する(メタ)アクリル系の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルアルキル、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アクリル酸シアノエチル等が挙げられる。これらのなかでも、得られるフィルムや成形体の艶消し外観を良好にする点で、第1の重合体は反応性基として水酸基を含有する重合体であることが好ましく具体的には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを単量体単位として有する重合体であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びアクリル酸4-ヒドロキシブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、エステル基の炭素数が1以上の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであることが好ましく、一方、エステル基の炭素数が8以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであることが好ましく、エステル基の炭素数が6以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであることがより好ましく、エステル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであることがさらに好ましく、艶消し発現性が最も優れるという点から、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルが特に好ましい。
反応性官能基を有さない単量体としては、特段の制限はないが、反応性基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
反応性基を有さないメタクリル酸アルキルエステルとしては、特段の制限はなく、例えば、反応性基を有さないメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル及びメタクリル酸t-ブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、エステル基の炭素数が1以上のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、一方、エステル基の炭素数が13以下のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、エステル基の炭素数が9以下のメタクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、エステル基の炭素数が6以下のメタクリル酸アルキルエステルであることがさらに好ましく、なかでも、耐候性の点で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
反応性基を有さないアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、エステル基の炭素数が1以上のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、一方、エステル基の炭素数が12以下のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、エステル基の炭素数が8以下のアクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、エステル基の炭素数が6以下のアクリル酸アルキルエステルであることがさらに好ましい。
これらのなかでも、第1の重合体としては、反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であることが好ましく、反応性基と(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性基を有さないメタクリル酸アルキルエステルと、反応性基を有さないアクリル酸アルキルエステルと、の共重合体であることが好ましい。なお、各単量体の好ましい形態は上述の通りである。
第1の重合体が(メタ)アクリル系重合体である場合、該重合体を構成する全単量体成分100質量%に対する、反応性基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、得られるフィルムの艶消し性が良好となる点から5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、一方、樹脂組成物中での第1の重合体の分散性が良好となり、製膜性が良好となる点から80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
第1の重合体を構成する全単量体成分100質量%に対する、メタクリル酸アルキルエステルの割合は、耐候性が良好となる点から20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、一方、艶消し発現性の点で99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
第1の重合体を構成する全単量体成分100質量%に対するアクリル酸アルキルエステルの割合は、樹脂組成物中での第1の重合体の分散性が良好となることから0.5質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、一方、耐候性及び耐熱性の点で40質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
なお、上述の通り、反応性基を有さない単量体単位として、反応性基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられたが、第1の重合体は、さらにその他の反応性基を有さないビニル単量体単位を有していてもよい。具体的に、反応性基を有さない他のビニル単量体としては、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、その他の置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、第1の重合体を構成する全構成単位100質量%に対する、これら反応性基を有さない他のビニル単量体の含有量は、特段の制限はないが、得られるフィルムや成形体の耐水白化性の観点から、0質量%以上であることが好ましく、一方、50質量%以下であることが好ましい。
第1の重合体のガラス転移温度(Tg)は、特段の制限はないが、得られるフィルムや成形体の艶消し発現性が良好となる点や、フィルムや成形体中での分散性が良好となる点で120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。一方、耐水白化性が良好となる点で該ガラス転移温度(Tg)は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。なお、第1の重合体のTgは、各単量体成分の単独重合体のTgの値(ポリマーハンドブック[Polymer Handbook, J. Brandrup, Interscience, 1989]に記載されているもの)を用いてFOXの式から算出される。
第1の重合体の水酸基価は、特段の制限はないが、50mgKOH/g以上が好ましく、60mgKOH/g以上がより好ましく、一方、230mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基価が50mgKOH/g以上であれば、フッ素系樹脂と第2の重合体との樹脂混合物に対して、第1の重合体が非相溶となり、得られるフィルム又は成形体により良好な艶消し性が発現する。また、第1の重合体の水酸基価が230mgKOH/g以下であれば、温水中に得られるフィルムや成形体が曝された場合の白化がより抑えられるため好ましい。なお、水酸基価は、ビニル系重合体溶液の固形分1g中の水酸基を無水酢酸でアセチル化し、アセチル化に伴って生成した酢酸を中和するのに要した水酸化カリウムのmg数を滴定にて測定して、算出される。
第1の重合体の固有粘度は、特段の制限はないが、得られるフィルム又は成形体中での第1の重合体の分散性を良好とし、フィルム又は成形体中の異物を低減して、外観を良好とする点で0.3L/g以下が好ましく、0.15L/g以下がより好ましい。また、第1の重合体の該固有粘度は、得られるフィルムや成形体の艶消し性を良好とする点で0.05L/g以上がより好ましく、0.06L/g以上がさらに好ましい。なお、第1の重合体の固有粘度は、サン電子工業製AVL-2C自動粘度計を使用して、溶媒にはクロロホルムを用い、25℃で測定した値である。
第1の重合体の固有粘度を調節するには、例えば、メルカプタン等の重合調節剤を用いることができる。メルカプタンとしては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンが挙げられる。メルカプタンの含有量は、第1の重合体100質量部に対して、分散性を良好とする点で0.01質量部以上が好ましい。また、得られるフィルム又は成形体の艶消し性を良好とする点で、1質量部以下が好ましい。
第1の重合体の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるMw/Mnは2.3以下が好ましく、2.2以下がより好ましい。このMw/Mnが小さい程、第1の重合体の分子量分布は単分散に近くなるため、高分子量成分が減少し、フィルム中の異物による外観不良の発生が抑制される。なお、Mw/Mnはゲルパーメーションクロマトグラフ(GPC)により以下の条件で測定して得られる値を示す。
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC-8320GPCシステム
カラム :TGKgel SupaerHZM-H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器 :示差屈折率(RI)
第1の重合体のMwは30000以上が好ましく、50000以上がより好ましく、一方、250000以下が好ましく、200000以下がより好ましい。第1の重合体のMwが30000以上であれば樹脂組成物中での分散性がより良好となり、一方、250000以下であればきめの細かい艶消し外観を発現しやすくなる。
第1の重合体の製造方法としては、上述の通り、所望の組成となるように使用する単量体を選択し、重合することにより得ることができる。重合方法としては、特段の制限はなく、懸濁重合及び乳化重合が挙げられる。懸濁重合に用いる開始剤としては、公知の有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。懸濁安定剤としては、公知の有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子及びこれらの界面活性剤とを組み合わせたものが挙げられる。無機系の懸濁安定剤として、洗浄等の重合後処理により除去できるものが好ましく、例えば、第三リン酸カルシウムが挙げられる。
通常、懸濁重合は、懸濁安定剤の存在下に単量体等を重合開始剤と共に水性懸濁した料を用いて行なわれる。また、必要に応じて懸濁重合する際に単量体に可溶な重合体を単量体に溶解して重合することができる。懸濁重合後には、懸濁重合により得られるビーズ状物から、外観不良の原因となる、重合中に発生したクロロホルムに不溶な成分であるカレットを、篩別によって除去することが好ましい。篩別で用いる篩としては、充分な収率を確保する場合、150メッシュ以下が好ましく、50メッシュ以下がより好ましい。また、カレットを充分除去する場合には、50メッシュ以上が好ましく、150メッシュ以上がより好ましい。カレットとは、重合中に重合体が重合層の内壁面などラテックスと接触する部分に付着することで生じる塊状の物を指す。
第1の重合体中には、得られるフィルム又は成形体中の異物を低減して、フィルム又は成形体の外観を良好とする点で、300μm以上のカレットを含まないようにすることが好ましく、100μm以上のカレットを含まないようにすることがより好ましい。
無機系の懸濁安定剤を用いる場合は、得られるフィルム中のフィッシュアイの発生を抑制して印刷抜けを抑制するために、得られた第1の重合体のビーズ状物を水洗浄して、第1の重合体中の無機物の含有量を低減させることが好ましい。この水洗浄の方法としては、例えば、熱可塑性樹脂のビーズ状物に硝酸等の洗浄液を加えて分散させた後に固液分離する分散洗浄法、熱可塑性樹脂のビーズ状物に洗浄液を通過させる通過洗浄法が挙げられる。洗浄温度は、洗浄効率の点で、10~90℃が好ましい。
上述したような重合終了後の篩別や水洗浄等の後処理において、製品収率を低下させることなく篩別によりカレットを効率的に取除くために、また洗浄により効率的に無機物を除去するために、第1の重合体の平均粒子径は300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。また、この平均粒子径は、重合体の取扱性の点で10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。なお、第1の重合体の平均粒子径は、HORIBA(株)製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA-910を用いて測定することができる。
[第2の重合体]
第2の重合体は、構成単位として、エステル基の炭素数が1~3であり、反応性基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体である。なお、本発明において、実質的に反応性基を有さないとは、重合体を構成する単量体成分100質量%中の反応性基を有する単量体の合計割合が1.0質量%以下であることを意味するものとする。樹脂組成物中に、第2の重合体が含有されることにより得られるフィルム又は成形体中での第1の重合体の分散性を良好とし、フィルム又は成形体中の異物を低減して、フィルムの外観を良好とする効果が期待できる。
エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐候性の点で、メタクリル酸メチルが好ましい。
エステル基の炭素数が1~3のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも第2の重合体は、単量体単位として、メタクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸アルキルエステルと、を有する共重合体であることが好ましい。この場合、第2の重合体を構成する単量体成分100質量%に対する、エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルの割合は、耐候性の点で50質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、92質量%以上がさらに好ましく、一方、耐熱性の点で100質量%以下が好ましく、99.9質量%以下がより好ましい。
単量体成分100質量%中の、エステル基の炭素数が1~3のアクリル酸アルキルエステルの割合は、耐熱性の点で0質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、該割合は、耐候性の点で50質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
また、第2の重合体は、単量体単位として他のビニル単量体を有していても良い。具体的には、共重合可能な他のビニル単量体として、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、その他の置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリル酸低級アルコキシなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第2の重合体を構成する全単量体単位100質量%に対する、これらのビニル単量体の割合は、フィルムの耐水白化性の観点から、0質量%以上であることが好ましく、一方、49質量%以下であることが好ましい。
第2の重合体のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の点から80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。また、得らえるフィルム又は成形体の成形性の点から120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。
第2の重合体の重合方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法が挙げられる。
第2の重合体の質量平均分子量(Mw)は、機械特性の点から1万以上が好ましく、30000以上がより好ましく、一方、フィルム又は成形体の成形性の点から250000以下が好ましく、200000以下がより好ましい。
なお、第2の重合体として市販品を使用することもできる。これらの市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製の商品名アクリペットVH、アクリペットMD、アクリペットMFが挙げられる。
[第3の重合体]
第3の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、第2の重合体とは異なる組成を有する重合体である。樹脂組成物が第3の重合体を含有することにより、成形する際の製膜安定性が向上し、さらに得られるフィルムや成形体中のフィッシュアイを低減することができる。樹脂組成物が第3の重合体を含有することにより、上記効果が期待できるメカニズムは明らかではないが、下記の理由が考えられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、耐薬品性の向上及び艶消し機能の向上を目的として、フッ素系樹脂及び第1の重合体を含有している。しかしながら、上述の通り第1の重合体は反応性基を有するために、フィルム等を製造する際の溶融押出中に、第1の重合体どうしがせん断発熱により過剰に反応してしまい、粒子径の大きな異常重合体が形成されると、フッ素系樹脂中への分散性が低下し、滞留による樹脂の熱劣化が引き起こされてしまう。その結果、フィルムや成形体の製膜性が低下し、さらには得られるフィルムや成形体中にこれらに起因して、魚眼のような斑点や異物が形成されてしまう。しかしながら、本実施形態であれば、上述の通り、単量体単位として、特定の炭素数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを有する第3の重合体を含有するために、フッ素系樹脂組成物の滑性を向上することができ、その結果、溶融押出時のせん断発熱を低減し、第1の重合体の過剰な反応を抑制することで、第1の重合体のフッ素系樹脂中への分散性向上が可能であり、製膜性安定の向上及び、フィッシュアイの少ないフィルムや成形体を得ることができると考えられる。
エステル基の炭素数が4以上のアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロへキシルなどが挙げられる。これらのなかでも、エステル基の炭素数が18以下のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、エステル基の炭素数が8以下のアクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。なお、これらのアクリル酸アルキルエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステル基の炭素数が4以上のメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロへキシルなどが挙げられる。これらのなかでも、エステル基の炭素数が18以下のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、エステル基の炭素数が8以下のメタクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。なお、これらのメタクリル酸アルキルエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、第3の重合体は、単量体単位として、他の単量体単位を有していてもよい。このような他の単量体としては、炭素数1~3のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐候性の点で、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記のなかでも、第3の重合体は、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸n-ブチルとメタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、及びメタクリル酸2-エチルへキシルから選択される少なくとも1種の単量体と、メタクリル酸メチルと、を単量体単位として有する重合体であることが好ましく、なかでも、アクリル酸n-ブチルと、メタクリル酸n-ブチルと、メタクリル酸メチルと、を単量体単位として有する重合体であることが特に好ましい。
第3の重合体を構成する全単量体単位100質量%に対する、エステル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの合計割合は、特段の制限はないが、上述の通り、30質量%以上であり、なかでも、40質量%以上であることが好ましく、一方、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。当該割合が30質量%以上であれば、樹脂組成物により滑性をより付与できるため、押出機での混錬時のせん断発熱を抑制し、樹脂の熱劣化によるフィッシュアイの発生をさらに低減することができる。また、この割合が70質量%以下であれば、フッ素系樹脂への相溶性に優れ、分散不良によるフィッシュアイの発生をさらに低減できる。
第3の重合体が、炭素数4以上のアクリル酸アルキルエステルと炭素数4以上のメタクリル酸アルキルエステルの両方を単量体単位として有して構成される場合、これら合計量に対する炭素数4以上のアクリル酸アルキルエステルの割合は特段の制限はないが、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、一方、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
第3の重合体を構成する全単量体単位100質量%に対する、エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルの割合は、特段の制限はないが、耐候性を向上するために、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、一方、耐熱性向上のために70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
第3の重合体は、他のビニル単量体を含んでいても良い。具体的には、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、その他の置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリル酸低級アルコキシなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら共重合可能な他のビニル単量体の含有量は、フィルムの透明性の観点から、第3の重合体を構成する全単量単位100質量%に対して、0質量%以上であることが好ましく、一方、20質量%以下であることが好ましい。
第3の重合体の質量平均分子量(Mw)は、特段の制限はないが、50000以上が好ましく、80000以上がより好ましく、120000以上がさらに好ましい。また、第3の重合体の質量平均分子量(Mw)は、5000000以下が好ましく、4000000以下がより好ましく、3500000以下がさらに好ましい。質量平均分子量(Mw)が50000以上であれば、樹脂組成物によりより大きな滑性を付与できるため、押出機での混錬時のせん断発熱を抑制し、樹脂の熱劣化によるフィッシュアイの発生をさらに低減することができ、また、成形品表面へのブルームや成形加工時の金型へのプレートアウトが起こりにくくなる。一方、質量平均分子量(Mw)が5000000以下であれば、フッ素系樹脂への相溶性に優れ、分散不良によるフィッシュアイの発生をさらに低減することができる。また、溶融粘度をより低く抑えることができ、成形機内での滞留による樹脂の熱劣化を抑制することができる。得られる成形体がフィルムの場合は、熱劣化物に起因するフィッシュアイと呼ばれる欠陥が経時的に増加する等の不具合が生じにくくなり、比較的長時間に亘ってフィルム成形等の溶融押出をすることが可能となる。
第3の重合体は、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製の商品名メタブレンLが挙げられる。
第3の重合体の5%重量減少温度は特段の制限はないが、熱安定性向上のために、250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましく、270℃以上が特に好ましい。
樹脂組成物は、第3の重合体を2種以上含有していてもよい。
樹脂組成物は、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体以外にも他の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂組成物は、第4の重合体を含有していてもよい。
[第4の重合体]
樹脂組成物が第4の重合体(D)を含有することにより、樹脂組成物を成形する際、製膜安定性が向上するとともに、メヤニ発生を抑制することができる。
第4の重合体は、構成単位として、エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルと、エステル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、実質的に反応性基を有さない重合体である。
エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐候性の点で、メタクリル酸メチルが好ましい。
エステル基の炭素数が4以上のアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロへキシルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステル基の炭素数が4以上のメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロへキシルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、エステル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特段の制限はないが、エステル基の炭素数が18以下であることが好ましい。
第4の重合体を構成する単量体成分100質量%中の、エステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルの割合は、耐候性の点で70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。また、該割合は、耐熱性の点で90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
第4の重合体を構成する単量体成分100質量%中の、エステル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、耐熱性の点で10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、該割合は、耐候性の点で30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
また、第4の重合体は、共重合可能な他のビニル単量体を含んでいても良い。具体的には、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、その他の置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリル酸低級アルコキシなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら共重合可能な他のビニル単量体の含有量は、フィルムの耐水白化性の観点から、第4の重合体を構成する単量体単位100質量%に対して、0~50質量%であることが好ましい。
第4の重合体の質量平均分子量(Mw)は、特段の制限はないが、500000以上が好ましく、1000000以上がより好ましく、一方、5000000以下が好ましく、4000000以下がより好ましく、3500000以下がさらに好ましい。Mwが500000以上であれば、樹脂組成物のスウェル比が大きくなり、フィルム製膜時のメヤニ発生が抑制され、外観が良好となる。また、Mwが5000000以下であれば、得られるフィルムの透明性が良好となる。
第4の重合体は、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば三菱ケミカル(株)製の商品名メタブレンP;(株)カネカ製の商品名カネエースPA;ロームアンドハース(株)製の商品名アクリロイドが挙げられる。
樹脂組成物中、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、の合計100質量%に対するフッ素系樹脂の含有率は、40質量%以上が好ましく、47質量%以上がより好ましく、54質量%以上がさらに好ましい。また、該含有率は、98質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、96質量%以下がさらに好ましい。フッ素系樹脂の含有率が40質量%以上であれば、より耐薬品性に優れるフィルムが得られる。フッ素系樹脂の含有率が98質量%以下であれば、樹脂の熱劣化によるフィルムの黄変をより低減できる。
樹脂組成物中、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体と、の合計100質量%に対する第1の重合体の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。また、該含有率は、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。第1の重合体の含有率が1.0質量%以上であれば、得られるフィルムに良好な艶消し外観を付与することができる。第1の重合体の含有率が20質量%以下であれば、成型時の流動性および熱安定性が低くなりすぎず、樹脂の熱劣化をより抑制できる。
樹脂組成物中、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体と、の合計100質量%に対する第2の重合体の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。また、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。第2重合体の含有率が1.0質量%以上であれば、樹脂組成物中の第1の重合体の分散性がより向上し、分散不良によるフィッシュアイの発生をより低減できる。また、第2の重合体の含有率が20質量%以下であれば、得られるフィルムの耐薬品性がより良好となる
樹脂組成物中、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3重合体と、の合計100質量%に対する第3の重合体の含有率は、特段の制限はないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、該含有率は、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。第3の重合体の添加量が0.1質量%以上であれば、樹脂組成物により滑性を付与できるため、押出機での混錬時のせん断発熱を抑制し、樹脂の熱劣化によるフィッシュアイの発生をより低減できることから好ましい。第3の重合体の含有量が10質量%以下であれば、溶融粘度をより低く抑えることができ、成形機内での滞留による樹脂の熱劣化をより抑制できることから好ましい。得られる成形体がフィルムの場合は、熱劣化物に起因するフィッシュアイと呼ばれる欠陥が経時的に増加する等の不具合が生じにくくなり、比較的長時間に亘ってフィルム成形等の溶融押出をすることが可能である。
樹脂組成物中、フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体の合計100質量%に対する第4の重合体の含有量は、特段の制限はないが、0質量%以上であり、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。また、該含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。第4の重合体の含有量が1.0質量%以上であれば、フィルムのメヤニ発生が抑制され、フィルムの外観意匠性が向上することから好ましい。また、第4の重合体の含有量が20質量%以下であれば、メルトフラクチャーによるフィルムの膜厚変動や外観不良が発生しないことから好ましい。
本発明の樹脂組成物中には、必要に応じて、各種添加剤を配合することもできる。各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、展着剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、艶消し剤、加工助剤、耐衝撃助剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、着色剤、紫外線吸収剤、熱可塑性重合体等の各種添加剤が挙げられる。
これらは公知のものを使用することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、ヒドラジン系熱安定剤が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、オキシ安息香酸エステル、エポキシ化合物、ポリエステルが挙げられる。滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、高級アルコール、パラフィンが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、両イオン系帯電防止剤が挙げられる。これら添加剤はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物は、一般的なコンパウンド加工である押出機を用いた一軸混錬法、同方向二軸混錬法、異方向二軸混錬法などの公知の方法によって製造することができる。中でも、二軸混錬法などの混錬効果の大きい方法が好ましい。二軸押出機としては、東芝機械(株)製の商品名TEMシリーズなどが挙げられる。また、スクリュー構成としては、樹脂組成物を搬送する搬送部とニーディングゾーンや溶融物の送り方向が逆のスクリューセグメント(螺旋の巻き方向が逆のスクリューセグメント)などの樹脂組成物を混錬するための混錬部を有するスクリュー構成が挙げられる。
また、押出機は原料である樹脂組成物中の水分や溶融混錬された溶融物から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましい。ベントには真空ポンプのような減圧用ポンプを設置することが好ましい。このポンプにより、発生した水分や揮発ガスは効率よく押出機外部へ排出される。また、押出減量中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機のダイ部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。このスクリーンとしては、金網メッシュ、焼結金属不織布などを用いたフィルターパック、スクリーンチェンジャー、リーフディスクタイプおよびプリーツタイプのポリマーフィルターなどが挙げられる。
また、混錬効果を大きくする方法としては、スクリュー回転数をできるだけ高くし、樹脂組成物の供給量を少なくすることも挙げられる。このようにして溶融押出された樹脂組成物はせん断発熱しやすくなり、ヘッド部での樹脂温度が高くなる傾向にある。押出機内で溶融混錬された溶融物は、ヘッド部に設置された直径3~5mm程度のノズルを有するダイからストランドとして押出しされ、コールドカット法やホットカット法などでカットされ、ペレット化される。
また、樹脂組成物を混練する回数は限定されず、1段又はマスターバッチ化による多段階混練をすることができる。
樹脂組成物の形状としては、例えば、塊状物、粉体状物及びペレット状物が挙げられる。これらの中で、樹脂組成物の取扱い性の点で、ペレット状物が好ましい。
本発明において、フッ素系樹脂、第1の重合体および第2の重合体の200℃、荷重49N条件下で測定される4分間のMFR(JIS K7210 A法に準ずる)をそれぞれ、MFR(A)、MFR(B)及びMFR(C)としたとき、『MFR(A)>MFR(B)≒MFR(C)』の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすことで、溶融押出時にフッ素系樹脂と第2の重合体との樹脂混合物中への第1の重合体の分散性が向上し、フィルムの艶消し安定性が向上する。なお、MFR(B)≒MFR(C)は、MFR(B)とMFR(C)の差が±0.5g/10min以内であることを意味する。なお、MFR値は、JIS K7210に準じて測定した値であり、(株)テクノ・セブン製の商品名メルトインデクサーなどにて測定することができる。
[フィルム]
本実施形態に係る樹脂組成物を成形することによりフィルムを製造することができる。すなわち、フィルムは本実施形態に係る樹脂組成物を含有し、該フィルムは、艶消し性および耐薬品性に優れる。また、フィルム製造時の艶消し外観の製造振れが非常に小さいため、フィルムを得る際の生産性が良好である。さらに、フィルム製造時のフィッシュアイの発生を低減できることから、得られるフィルムは外観欠陥の極めて少ない特徴を有する。
フィルムの性能評価において、意匠の高級感を示す指標として、60度表面光沢度が用いられる。一般に、60度表面光沢度は低いことが好ましい。フィルムの60度表面光沢度は、5%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましい。また、該60度表面光沢度は70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。60度表面光沢度が70%以下であれば、得られるフィルムは艶消し性を有し、高級感や深み感等の意匠性や加飾性に優れる。また、60度表面光沢度が5%以上であれば、艶消し剤を多量に添加しなくてよく、フィッシュアイ等のフィルムの外観不良が低減する。なお、フィルムの表面光沢度は、JIS Z8741に準じて測定した値である。
60度表面光沢度の標準偏差は、生産安定性が向上し歩留りが良好となることから、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。
フィルムの算術平均粗さ(Ra)は、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましい。また、0.50以下が好ましく、0.45以下がより好ましく、0.43以下がさらに好ましい。Raが0.05以上であればギラツキ感が低く、高級感や深み感等の意匠性や加飾性に優れる。Raが0.50以下であれば、艶消しのきめが細かく、外観意匠性に優れる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601-2001に準じ測定した値である。
フィルムの輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)は、30以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。また、90以下が好ましく、85以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。Rsmが30以上であればギラツキ感が低く、高級感や深み感等の意匠性や加飾性に優れる。Rsmが90以下であれば艶消しのきめが細かく、外観意匠性に優れる。なお、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)は、JIS B0601-2001に準じ測定した値である。
フィルムの光の透過率としては、JIS K7361-1に準じて測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、83%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。全光線透過率が80%以上であれば、フィルムに印刷された加飾層を、加飾層が印刷されていない面から視認した際に美麗である。
フィルムのヘーズとしては、全光線透過率が80%以上であれば特に制限されない。艶消しフィルムとしての外観の美麗さの点から、ヘーズは95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。なお、フィルムのヘーズは、JIS K7136に準じて測定した値である。
フィルムのフィッシュアイ数としては、外観意匠性の点から、厚さ40μmのフィルムにおける0.05mm以上の大きさのフィッシュアイ数が20個/0.01m以下であることが好ましく、10個/0.01m以下であることがより好ましい。
フィルムの厚さは、フィルムの取扱い性、ラミネート性が良好となる点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、フィルム状に成形する製膜性、加工性が良好となる点から、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
フィルムの製造法としては、例えば、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法;カレンダー法が挙げられる。これらの中では、経済性が良好である点で、Tダイ法が好ましい。フィルムは、押出機等を用いたTダイ法で製膜した後、巻き取り機で紙管等の管状物に巻き取って、ロール状物品とすることができる。また、必要に応じて製膜工程中に、公知の延伸方法による一軸延伸(機械方向又は横方向(機械方向に垂直な方向))、二軸延伸(逐次二軸延伸、同時二軸延伸)等の延伸工程を設けることができる。溶融押出しをする場合は、外観不良の原因となる核や異物を取り除くために、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
また、フィルム表面には、必要に応じて、微細構造を形成することもできる。微細構造を形成する方法としては、例えば、熱転写法及びエッチング法が挙げられる。これらの中で、微細構造を有する金型を加熱した後に、フィルムの表面に、加熱された金型をプレスしてフィルムの表面に微細構造を形成する熱転写法が生産性や経済性の点で好ましい。上記の熱転写法としては、例えば、以下の方法(1)及び(2)が挙げられる。
(1)微細構造を有する金型をロール状物品から切り出されたフィルムに加熱プレスして微細構造を枚葉で熱転写させる方法。
(2)加熱されたベルト状の微細構造を有する金型にニップロールを用いてロール状物品から巻き出されたフィルムを挟みこみ加圧し、フィルムの表面に微細構造を熱転写させる連続賦形方法。
上記の微細構造を有する金型を製造する方法としては、例えば、サンドブラスト法、エッチング法及び放電加工法が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物により得られるフィルムは、他のフィルムと組み合わせて積層
フィルムとすることができる。特に、本実施形態に係る樹脂組成物により得られるフィルムは、他のアクリル樹脂層との積層フィルムとして使用することが好ましい。以下にこのような積層フィルムの具体的な形態について説明する。なお、以下では、便宜上、本実施形態に係る樹脂組成物により得られたフィルムを「フィルム(X)」と称し、他のアクリル樹脂層を「アクリル樹脂層(Y)」と称する場合もある。
[積層フィルム]
積層フィルムは、フィルム(X)と、アクリル樹脂層(Y)とが積層されたものである。このような積層フィルムとすることで、積層フィルムの成形性や加飾層の視認性が向上するため好ましい。なお、アクリル層以外にも、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の、その他の樹脂からなるフィルムを用いることもできる。
フィルム(X)とアクリル樹脂層(Y)の層の厚さの比率(以下「(X)/(Y)」と称す)は、積層フィルムの耐溶剤性、コスト、透明性および艶消し外観の点から、(X)/(Y)の値は1/99以上が好ましく、2/98以上がより好ましい。また、表面硬度および印刷適性の点から、(X)/(Y)の値は50/50以下が好ましく、20/80以下がより好ましい。なお、各フィルムの厚さは、積層フィルムを断面方向に70nmの厚さに切断したサンプルを、透過型電子顕微鏡にて観察することで算出できる。透過型電子顕微鏡の市販品としては、例えば日本電子(株)製の商品名J100Sが挙げられる。
フィルム(X)側から測定した積層フィルムの60度表面光沢度は、5%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましい。また、該60度表面光沢度は70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。60度表面光沢度が70%以下であれば、得られるフィルムは良好な艶消し性を有し、高級感や深み感等の意匠性や加飾性に優れる。また、60度表面光沢度が5%以上であれば、艶消し剤を多量に添加しなくてよく、フィッシュアイ等のフィルムの外観不良が低減する。
60度表面光沢度の標準偏差は、生産安定性が向上し歩留りが良好となることから、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましい。
フィルム(X)側から測定した、積層フィルムの算術平均粗さ(Ra)は、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましく、一方、0.50以下が好ましく、0.45以下がより好ましく、0.43以下がさらに好ましい。Raが0.05以上であればギラツキ感が低く、高級感や深み感等の意匠性や加飾性に優れる。Raが0.50以下であれば、艶消しのきめが細かく、外観意匠性に優れる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601-2001に準じ測定した値である。
フィルム(X)側から測定した、積層フィルムの輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)は、30以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましく、一方、90以下が好ましく、85以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。Rsmが30以上であればギラツキ感が低く、高級感や深み感等の意匠性や加飾性に優れる。Rsmが90以下であれば艶消しのきめが細かく、外観意匠性に優れる。なお、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)は、JIS B0601-2001に準じ測定した値である。
積層フィルムの光の透過率としては、JIS K7361-1に準じて測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、83%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。全光線透過率が80%以上であれば、フィルムに印刷された加飾層を、加飾層が印刷されていない面から視認した際に美麗である。
積層フィルムのヘーズとしては、全光線透過率が80%以上であれば特に制限されないが、フィルムとしての外観の美麗さの点から、ヘーズは95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい
積層フィルムの表面硬度に関しては、フィルム(X)側から測定した際の、その鉛筆硬度(JIS K5400)がBより高い硬度であることが好ましい。更にHB以上がより好ましく、F以上が最も好ましい。鉛筆硬度がBより高い硬度の積層フィルムを用いると、後述するインサート成形あるいはインモールド成形を施す工程中で傷が付きにくく、更に耐擦り傷性も良好である。車両用途に使用される場合、積層フィルムの鉛筆硬度はHB以上であることがより好ましい。積層フィルムの鉛筆硬度がHB以上であると、得られる積層体は、ドアウエストガーニッシュ、フロントコントロールパネル、パワーウィンドウスイッチパネル、エアバッグカバー等、各種車両用部材に好適に使用することが出来る。更に、鉛筆硬度がFより高い硬度であると、ガーゼ等表面の粗い布で擦傷しても傷がほとんど目立たないため、工業的利用価値が高くなる。積層フィルムの表面硬度は、上述したように、フィルム(X)とアクリル樹脂層(Y)の厚みの比率、或いはアクリル樹脂層(Y)を構成するアクリル樹脂組成物を選択することにより調整することができる。
積層フィルムのフィッシュアイ数としては、外観意匠性の点から、厚さ75μmのフィルム(膜厚比(X)/(Y)=9/91)における0.01mm以上の大きさのフィッシュアイ数が100個/0.5m以下であることが好ましく、75個/0.5m以下であることがより好ましく、50個/0.5m以下であることがさらに好ましい。なお、積層フィルムのフィッシュアイ数は、例えば、オフライン型のフィッシュアイカウンターにて測定することができる。オフライン型のフィッシュアイカウンターの市販品としては、(株)メック製の商品名LSC-4500が挙げられる。
積層フィルムの厚さは、フィルムの取扱い性、ラミネート性が良好となる点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましい。また、フィルム状に成形する製膜性、加工性が良好となる点から、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
[アクリル樹脂層(Y)]
アクリル樹脂層(Y)は、アクリル樹脂組成物(y)からなる層である。アクリル樹脂組成物(y)としては、ゴム含有重合体を含むアクリル樹脂組成物が好ましい。
ゴム含有重合体としては、例えば、公知のアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルと、グラフト交叉剤とを少なくとも重合体の構成成分とするゴム含有多段重合体が挙げられる。
ゴム含有多段重合体の具体例としては、エステル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルおよび/またはエステル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルと、グラフト交叉剤とを少なくとも重合体の構成成分とする弾性重合体(S)、エステル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルを少なくとも重合体の構成成分とする硬質重合体(H)を、この順に重合して形成したものが挙げられる。
弾性重合体(S)としては、例えば、エステル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルおよび/またはエステル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステル(S1)(以下「成分(S1)」という。)と、必要に応じて用いる他の単量体(S2)(以下「成分(S2)」という。)と、必要に応じて用いる多官能性単量体(S3)(以下「成分(S3)」という。)と、グラフト交叉剤(S4)(以下「成分(S4)」という。)を構成成分とする重合体であって、ゴム含有多段重合体を重合する際の最初に重合されるものである。
成分(S1)のうち、エステル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステルは、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、Tgの低いものが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。
成分(S1)のうち、エステル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルは、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(S1)は、成分(S1)~(S4)の合計100質量%に対し、柔軟性、透明性および加工性の点から、60~100質量%用いることが好ましい。
成分(S2)としては、例えば、エステル基の炭素数が9以上のアクリル酸アルキルエステル、炭素数4以下のアルコキシ基を有するアクリル酸エステル、アクリル酸シアノエチル等のアクリル酸アルキルエステル単量体;アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、スチレン、アルキル置換スチレン、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
成分(S2)は、成分(S1)~(S4)の合計100質量%に対し、柔軟性の点から、0~40質量%用いることが好ましい。
成分(S3)としては、例えば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール等のジメタクリル酸アルキレングリコール;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンが挙げられる。
成分(S3)は、成分(S1)~(S4)の合計100質量%に対し、柔軟性の点から、0~10質量%用いることが好ましい。
成分(S4)としては、例えば、共重合性のα,β-不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはフマル酸のアリルエステルが好ましく、メタクリル酸アリルがより好ましい。
成分(S4)は、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基又はクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。
成分(S4)は、成分(S1)~(S4)の合計100質量%に対し、柔軟性の点から、0.1~5質量%用いることが好ましく、0.5~2質量%がより好ましい。これら範囲の下限値は、グラフト結合の有効量の点で意義がある。また、上限値は、次に重合形成される重合体との反応量を適度に抑え、ゴム弾性体の弾性低下を防止する点で意義がある。
ゴム含有多段重合体中の弾性重合体(S)の含有率は、柔軟性、透明性および加工性の点から、5~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
弾性重合体(S)は2段以上に分けて重合してもよい。2段以上に分けて重合した場合、各段を構成する単量体成分の比を変えてもよい。
硬質重合体(H)は、ゴム含有多段重合体の成形性、機械的性質に関与する成分であり、エステル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステル(H1)(以下「成分(H1)」という。)と、必要に応じて用いる他の単量体(H2)(以下「成分(H2)」という。)を構成成分とする重合体であって、ゴム含有多段重合体を重合する際の最後に重合されるものである。成分(H1)及び成分(H2)の好ましい具体例は、それぞれ弾性重合体(S)の成分(S1)及び(S2)で挙げたものと同様である。
成分(H1)は、成分(H1)と(H2)の合計100質量%に対し、透明性の点から、51~100質量%用いることが好ましい。
硬質重合体(H)単独のTgは、機械的特性の観点から、60℃以上が好まく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、フィルムの成形性の観点から、Tgは150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
ゴム含有多段重合体中の硬質重合体(H)の含有率は、柔軟性、透明性および加工性の点から、30~95質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
ゴム含有多段重合体は、弾性重合体(S)及び硬質重合体(H)を基本構造体とする。また、弾性重合体(S)を重合させた後、硬質重合体(H)を重合させる前に、中間重合体(M)を1層以上重合させてもよい。中間重合体(M)は弾性重合体(S)の組成と硬質重合体(H)の組成の中間のある一点の組成を有する。中間重合体(M)を設けることによって、得られるフィルムの透明性を良好にすることができる。
ゴム含有多段重合体中の中間重合体(M)の含有率は、弾性重合体(S)及び硬質重合体(H)の合計100質量%に対して0~35質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましい。
ゴム含有重合体の平均粒子径は、これを主成分とするアクリル樹脂層(Y)を含む積層フィルムの機械特性、透明性の点から、0.03μm以上が好ましく、0.07μm以上がより好ましく、0.09μm以上がさらに好ましい。また、フィルムの透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましく、0.13μm以下がさらに好ましい。
ゴム含有重合体のアセトン可溶分の質量平均分子量(Mw)は、2万以上が好ましく、3万以上がより好ましい。また、8万以下が好ましく、7万以下がより好ましい。Mwが2万以上であれば、得られる積層フィルムの機械強度が向上し、成形加工時のクラックを抑制できる。また、得られる積層フィルムの耐ストレス白化性が発現する。Mwが8万以下であれば、得られる積層フィルムは柔軟性が高く、加工性に優れる。積層フィルムを鋼板などの基材に貼り合せた後、曲げ加工する際に曲げ部で白化が発生せず、得られる各種部材の外観が良好となる。
ゴム含有重合体のゲル含有率は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。また、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。ゴム含有重合体のゲル含有率が40質量%以上であれば、得られる成形体の機械的強度をより高くすることができ、取扱いがより容易となる。また、ゲル含有率が99質量%以下であれば、成形時の流動性及び熱安定性をより高くし溶融粘度をより低く抑えることができ、成形機内での滞留をより少なくでき、樹脂の熱劣化を抑えられるので好ましい。得られる成形体がフィルムの場合は、熱劣化物に起因するフィッシュアイが経時的に増加する等の不具合が生じにくく、長時間に亘ってフィルム成形等の溶融押出をすることが可能である。
ここでゴム含有重合体のゲル含有率は、下記式により算出して求めることができる。
G=(m/M)×100
式中、G(%)はゴム含有重合体のゲル含有率を示し、Mは所定量のゴム含有重合体の質量(抽出前質量ともいう。)を示し、mは該所定量のゴム含有重合体のアセトン不溶分の質量(抽出後質量ともいう。)を示す。
より詳細には、mはゴム含有重合体1g/100mLの濃度でアセトンに溶解し、65℃で4時間還流し、遠心分離を行い、残存した固体について還流、遠心分離、デカンテーションを再度行い、得られた固体を50℃で24時間乾燥して得たものである。
アクリル樹脂組成物(y)は、熱可塑性樹脂を含有していても良い。熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂であればよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることができる熱可塑性樹脂としては、透明性、耐候性などの品質が求められるアクリル系樹脂であることが好ましい。例えば、上述した第2の重合体が挙げられる。
アクリル樹脂層(Y)は、必要に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、艶消し剤、加工助剤、耐衝撃助剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、着色剤、紫外線吸収剤、熱可塑性重合体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
積層フィルムが基材の保護を目的として基材に積層される場合、アクリル樹脂層(Y)には耐候性付与のために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤の分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。分子量が300以上の紫外線吸収剤を用いると、例えば、射出成形金型内で真空成形又は圧空成形を施す際の紫外線吸収剤の揮発による金型汚れ等を防止することができる。また一般的に、分子量が高い紫外線吸収剤ほど、フィルム状態に加工した後の長期的なブリードアウトが起こりにくく、分子量が低いものよりも紫外線吸収性能が長期間に渡り持続する。
さらに、紫外線吸収剤の分子量が300以上であると、フィルムを製造するまでの間に、紫外線吸収剤が揮発する量が少ない。従って、残留する紫外線吸収剤の量が十分なので良好な性能を発現する。また、揮発した紫外線吸収剤が再結晶して経時的に成長し、これがフィルムに付着して、外観上の欠陥になるという問題も少なくなる。
紫外線吸収剤としては、公知のものを用いることができるが、特に分子量400以上のベンゾトリアゾール系又は分子量400以上のトリアジン系のものが好ましい。このような紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、BASF社の商品名チヌビン234、チヌビン1577、ADEKA社の商品名アデカスタブLA-31、アデカスタブLA-46が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は、アクリル樹脂組成物(y)を構成する樹脂100質量部に対して、耐候性の点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、製膜時の工程汚れを防止する点および成形体の透明性の点から、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。
また、アクリル樹脂層(Y)には、光安定剤を添加することが好ましい。光安定剤としては、公知のものを用いることができるが、特にヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤が好ましい。このような光安定剤の市販品として、例えば、ADEKA社の商品名アデカスタブLA-57、商品名アデカスタブLA-67、商品名アデカスタブLA-77、BASFジャパン社の商品名Chimassorb2020FDL、商品名Chimassorb944FDLが挙げられる。
光安定剤の添加量は、アクリル樹脂組成物(y)を構成する樹脂100質量部に対して、耐候性の点から、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、熱安定性の点から、2.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。2.0質量部以下であれば、成形時の熱安定性をより高くし樹脂の熱劣化による溶融粘度の上昇をより低く抑えることができ、成形機内での滞留をより少なくでき樹脂の熱劣化を抑えられるので好ましい。得られる成形体がフィルムの場合は、熱劣化物に起因するフィッシュアイと呼ばれる欠陥が経時的に増加する等の不具合が生じにくく、長時間に亘ってフィルム成形等の溶融押出をすることが可能である。
アクリル樹脂層(Y)には、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、公知のものを用いることができるが、特にフェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、フェノール性水酸基を含む化合物である公知のフェノール系酸化防止剤であればよい。このようなフェノール系酸化防止剤の市販品として、例えば、ADEKA社の商品名アデカスタブAO-50、商品名アデカスタブAO-60、商品名アデカスタブAO-80、BASFジャパン社の商品名Irganox1010、商品名Irganox1035、商品名Irganox1076が挙げられる。
酸化防止剤の添加量は、アクリル樹脂組成物(y)を構成する樹脂100質量部に対して、成形時の熱安定性および耐候性の点から、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.8質量部以上がさらに好ましい。また、製膜時の工程汚れを防止する点や成形体の透明性の点から、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。
[積層フィルムの製造方法]
フィルム(X)と、アクリル樹脂層(Y)とを積層することで、積層フィルムを提供できる。積層フィルムの製造方法としては、製造工程を少なくできる点から、フィルム(X)と、アクリル樹脂層(Y)とを同時に溶融押出しながら積層する共押出法が好ましい。
複数の溶融樹脂層を積層する方法としては、(1)フィードブロック法等のダイ通過前に溶融樹脂層を積層する方法、(2)マルチマニホールド法等のダイ内で溶融樹脂層を積層する方法、(3)マルチスロット法等のダイ通過後に溶融樹脂層を積層する方法が挙げられる。
フィルム(X)と、アクリル樹脂層(Y)とを同時に溶融押出しながら積層する場合、フッ素系フィルムの表面の艶消し性の点から、アクリル系樹脂層(Y)を冷却ロールに接するように溶融押出することが好ましい。具体的には、以下の工程を含む製造方法により、本発明の積層フィルムを製造することができる。2台の溶融押出機を用意し、それらのシリンダー温度及びダイ温度を200~250℃に設定する。一方の押出機内にてフィルム(X)の樹脂組成物を溶融可塑化する。それと同時に、他方の押出機内にてアクリル樹脂組成物(y)を溶融可塑化する。両押出機の先端のダイから押し出された溶融樹脂を、50~100℃に設定された冷却ロール上に共押出しする。
積層フィルムを構成するフィルム(X)と、アクリル樹脂層(Y)はそれぞれ複数層から構成されていてもよい。
溶融押出しをする場合は、印刷抜けの原因となる核や異物を取り除くため、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある各々の層を構成する樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
積層フィルムの厚さは、500μm以下が好ましい。積層成形品に用いるフィルムの場合は、その厚さは30μm以上好ましく、50μm以上がより好ましい。また、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。この厚さが30μm以上であると、成形品外観において充分な深みが得られる。また特に、複雑な形状に成形する場合、延伸によって充分な厚さが得られる。一方、厚さが400μm以下であると、積層フィルムが適度な剛性を有することになるので、ラミネート性、二次加工性等が向上する。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利になる。更には、製膜性が安定してフィルムの製造が容易になる。
[加飾フィルム]
フィルム(X)及び積層フィルムは、加飾フィルムとして使用することができる。加飾フィルムは、フィルム(X)または積層フィルムの少なくとも片方の面に絵柄層を有するものである。特に、印刷適性の観点からアクリル樹脂層に絵柄層を有するものが好ましい。
加加飾フィルムを構成する絵柄層は、公知の方法で形成できる。特に、印刷法で形成された印刷層と蒸着法で形成された蒸着層のうち一方又は両方を絵柄層として用いることが好ましい。この印刷層は、後述するインサート又はインモールド成形によって得られた積層体表面の模様又は文字等となる。印刷柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、0.5~30μm程度である。印刷層は、後述するインサート又はインモールド成形によって得られた積層体において所望の表面外観が得られるよう、その成形時の伸張度合いに応じて適宜厚さを選択すればよい。
[積層成形体]
積層フィルムを、更に基材に積層することで、フィルム(X)を表面に有する積層成形体を製造することができる。ここでは、アクリル樹脂層(Y)側の面が基材に接するように積層する。
基材は目的とする積層成形体に応じて適宜選択することができ、その材質としては、例えば、樹脂、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属が挙げられる。樹脂成形品であれば、ポリ塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
基材の厚さは、必要に応じて適宜設定可能であり、通常、20~500μm程度とすることが好ましく、50~300μmがより好ましい。前記基材の厚さであれば、フィルムの機械特性および取り扱い性などを維持することができる。
基材が二次元形状であって、かつ熱融着可能な材質である場合は、熱ラミネーション等の方法により基材と積層フィルムとを積層できる。熱融着が困難な金属部材等に対しては、接着剤を用いたり、積層フィルムの片面を粘着加工したりして積層すればよい。三次元形状の積層体の場合は、インサート成形法、インモールド成形法、3次元オーバーレイラミネート成形法等の公知の方法を用いることができる。
3次元オーバーレイラミネート成形法とは以下の方法をいう。まず、シートで仕切られた2つの密閉空間を形成して一方の空間側に成形体を配置し、両方の空間または成形体を配置している空間のみを減圧する。次いで、シートを加熱軟化し、一方の空間側から他方の空間側に向かってシート表面に成形体を押し当てた状態で、成形体を配置していない他方の空間のみを常圧に戻し、差圧を利用してシートを成形体に貼り付ける。
3次元オーバーレイラミネート成形法では、加熱されたシートが全体的に均一に圧力を受けて成形体の表面に貼り付けられるため、成形体の表面が曲面であっても良好にシートを成形体に貼り付けることができる。3次元オーバーレイラミネート成形を行うための装置としては、例えば、布施真空(株)製の「TOM(商品名)」が挙げられる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。略号は以下のものを示す。
MMA メチルメタクリレート
BA n-ブチルアクリレート
BDMA 1,3-ブチレングリコールジメタクリレート
AMA アリルメタクレート
MA メチルアクリレート
HEMA 2-ヒドロキシエチルメタクリレート
St スチレン
LPO ラウリルパーオキサイド
CHP クメンハイドロパーオキサイド
tBH t-ブチルハイドロパーオキサイド
RS610 モノn-ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム
(フォスファノールRS-610NA:東邦化学(株)製)
OTP ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
(ペレックスOT-P:花王(株)製)
nOM n-オクチルメルカプタン
EDTA エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
SFS ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート
[評価方法]
(1)第1の重合体の平均粒子径
HORIBA(株)製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA-910を用いて第1の重合体の質量平均粒子径を測定した。
(2)第1の重合体の固有粘度
クロロホルム溶媒中、25℃において、サン電子工業製AVL-2C自動粘度計により第1の重合体の固有粘度を測定した。
(3)ゴム含有重合体の平均粒子径
大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS-700(商品名)を用い、動的光散乱法でゴム含有重合体の質量平均粒子径を測定した。
(4)ゴム含有重合体のゲル含有率
抽出前質量Mとして0.5gのゴム含有重合体をアセトン50mLに溶解したアセトン溶液を、65℃で4時間還流させる。得られた抽出液に対し、高速冷却遠心機(日立工機(株)製、商品名:CR21G)を用いて、4℃において14000rpmの回転数で、30分間遠心分離を行う。溶液をデカンテーションで取り除き、残存した固体を得る。この固体に対し、還流、遠心分離、デカンテーションを再度繰り返し、得られた固体を50℃で24時間乾燥して得られたアセトン不溶分の質量を、抽出後質量mとして測定した。抽出前質量Mおよび抽出後質量mから下記式によりゴム含有重合体のゲル含有率G(%)を算出した。
ゲル含有率G(%)=(抽出後質量m(g)/抽出前質量M(g))×100
(5)60度表面光沢度
JIS Z8741に準じ、ポータブル光沢計(コニカミノルタ(株)製、商品名:GM-268Plus)を用い、積層フィルムのフィルム(X)側の60度表面光沢度を測定した。測定箇所は、フィルム製膜幅方向に等間隔で7箇所、フィルム製膜流れ方向に2箇所の、計14か所とし、全測定値を平均して測定値とした。
(6)全光線透過率、ヘーズ
全光線透過率はJIS K7361-1に準じ、ヘーズはJIS K7136に準じて、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製)商品名:NDH4000)を用いて、光源D65、温度25℃の条件で積層フィルムの全光線透過率、ヘーズを測定した。
(7)算術平均粗さ(Ra)および輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)
表面粗さ測定機((株)東京精密製、商品名:SURFCOM 1400D)を用い、JIS B0601-2001に準じ、測定長さ4.0mm、評価長さ4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.3mm/sの条件で、積層フィルムのフィルム(X)側の算術平均粗さ(Ra)および輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)を測定した。なお、フィルムのような長尺なサンプルを測定する場合は、幅方向(TD)または長手方向(MD)のいずれでも測定できるが、評価にあたっては、TDのみか、MDのみのどちらかで行う必要がある。
なお、算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
Figure 2022111655000001
輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)は、基準長さにおける、輪郭曲線要素の長さXsの平均であり、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。また、Xsiは一つの輪郭曲線要素に対する長さである。
Figure 2022111655000002
(8)耐薬品性評価1
積層フィルム(試験片)のフィルム(X)側の表面にガーゼを乗せ、その上にサンタンローション(商品名:Coppertone Waterbabies SPF50)を1滴垂らし、更にその上に5cm×5cmのアルミニウム製の板、及び500gの荷重をこの順に配置し、74℃で1時間放置した。次いで、試験片を中性洗剤で水洗・風乾し、試験片の表面を目視観察して下記の基準で耐薬品性を評価した。
○:試験片表面に変化はない。
△:試験片表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
×:試験片表面に溶剤あるいはガーゼの痕がはっきり残っている、または、溶剤が接触した面が白濁している。
(9)耐薬品性評価2
積層フィルム(試験片)のフィルム(X)側の表面に10%乳酸水溶液を1滴垂らし、80℃で24時間放置した。次いで、試験片を中性洗剤で水洗・風乾し、試験片の表面を目視観察して下記の基準で耐薬品性を評価した。
○:試験片表面に変化はない。
△:試験片表面に僅かに溶剤の痕が残っている。
×:試験片表面に溶剤の痕がはっきり残っている、フィルム表面が膨潤している、または、溶剤が接触した面が白濁している。
(10)フィルムのフィッシュアイ数
厚さ40μmのフィルム(X)における0.05mm以上の大きさのフィッシュアイ数を、夾雑物測定用表((株)朝陽会製)を使用して目視観察した。なお、0.01m範囲にカットしたフィルムを5枚測定し、全測定数を平均して、フィッシュアイ数を算出した。
(製造例1:水酸基含有重合体(1)の製造)
攪拌機、還流冷却器、窒素ガス導入口等の付いた反応容器内に以下の単量体混合物(1)を仕込んだ。次いで、容器内を充分に窒素ガスで置換した後、反応容器内の単量体混合物(1)を攪拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で3時間反応させた。この後、反応容器内の温度を90℃に昇温して、更に90℃で45分間保持して重合を完了し、目開き100μmのメッシュで篩別をし、通過したビーズを脱水、乾燥して水酸基含有重合体(1)を得た。
得られた水酸基含有重合体(1)のガラス転移温度は77℃、固有粘度は0.11L/g、Mw/Mnは2.1、平均粒子径は70μmであった。
<単量体混合物(1)>
MA :10部
MMA :60部
HEMA :30部
nOM :0.18部
LPO :1部
第三リン酸カルシウム:1.8部
脱イオン水:250部
(製造例2:ゴム含有重合体(2-1)の製造)
撹拌器、冷却管、熱電対、窒素導入管を備えた重合容器に、脱イオン水195部を入れた後、MMA0.3部、BA4.5部、AMA0.05部、BDMA0.2部、CHP0.025部、RS610 1.3部を予備混合したものを投入し、75℃に昇温した。昇温後、脱イオン水5部、SFS0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部からなる混合物を重合容器へ一度に投入し、重合を開始した。温度上昇ピークを確認後、15分間保持し、第一弾性重合体(S-1-1)の重合を完結した。
続いて、MMA9.6部、BA14.4部、AMA0.25部、BDMA1.0部、CHP0.016部を90分間にわたって重合容器内に滴下した。その後60分間保持し、第二弾性重合体(S-2-1)の重合を完結した。
なお、第一弾性重合体(S-1-1)のTgは-48℃、第二弾性重合体(S-2-1)のTgは-10℃であった。
続いて、MMA6.0部、BA4.0部、AMA0.075部、CHP0.0125部を45分間にわたって重合容器内に滴下した。その後60分間保持し、中間重合体(M-1)の重合を完結した。なお、中間重合体(M-1)のTgは60℃であった。
最後に、MMA57.0部、MA3.0部、tBH0.075部、nOM0.264部を140分間にわたって重合容器内に滴下した。その後60分間保持し、硬質重合体(H-1)の重合を完結した。なお、硬質重合体(H-1)のTgは79.3℃であった。
得られたラテックス状のゴム含有重合体(2-1)の平均粒子径は0.11μmであった。
ラテックス状のゴム含有重合体(2-1)100部を目開き62μmのSUS製メッシュを取り付けた振動型濾過装置で濾過した。次いで、酢酸カルシウム3.5部を含む80℃の熱水100部中に滴下して、ラテックスを凝析した。更に95℃に昇温して5分保持し、固化した。得られた凝析物を分離洗浄し、75℃で24時間乾燥して、粉体状のゴム含有重合体(2-1)を得た。ゴム含有重合体(2-1)のゲル含有率は70%、Mwは58,000であった。
Figure 2022111655000003
(製造例3:ゴム含有重合体(2-2)の製造)
各原料の割合を表1に示す割合に変更し、下記の方法によりゴム含有重合体(2-2)を製造した。
還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。次いで、この重合容器内にSFS0.6部、硫酸第一鉄0.00012部及びEDTA0.0003部の混合水溶液を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、第1段目の単量体混合物の1/15を仕込み、15分間保持した。
次いで、残りの第1段目の単量体混合物を、水に対する増加率が8%/時間となるように滴下した後、60分間保持し、重合体のラテックスを得た。第1段目の単量体混合物から得られた重合体のTgは4℃であった。
この重合体のラテックスにSFS0.6部を加え、15分間保持した。次いで、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、第2段目の単量体混合物を、水に対する増加率が4%/時間となるように滴下した後、120分間保持し、重合体のラテックスを得た。第2段目の単量体混合物から得られる重合体のTgは-37℃であった。
この重合体のラテックスにSFS0.4部を加え、15分間保持した。次いで、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、硬質重合体の単量体混合物を、水に対する増加率が10%/時間となるように滴下した後、60分間保持し、ゴム含有重合体(2-2)のラテックスを得た。尚、硬質重合体のTgは99℃であった。
得られたラテックス状のゴム含有重合体(2-2)の平均粒子径は0.28μmであった。
ラテックス状のゴム含有重合体(2-2)100部を目開き150μmのSUS製メッシュを取り付けた振動型濾過装置で濾過した。次いで、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して固形分を回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(2-2)を得た。得られたゴム含有重合体(2-2)のゲル含有率は90%、Mwは45,000であった。
(製造例4:アクリル樹脂組成物(y)の製造)
製造例2で得られたゴム含有重合体(2-1)を80部、および製造例3で得られたゴム含有重合体(2-2)を10部、アクリル系樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリペットMD)を10部、添加剤として、紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名:Tinuvin234)を1.4部、光安定剤((株)ADEKA製、商品名:LA-57)を0.3部、酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名:イルガノックス1076)を0.1部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
この混合物を脱気式押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM-35B、以下同様)を用いてシリンダー温度100~240℃、ダイ温度240℃の条件で、スクリーンメッシュで夾雑物を取り除きながらストランド状に押出し、水槽を通し冷却後に切断してアクリル樹脂組成物(y)のペレットを得た。
(製造例5:第2の重合体(1)の製造)
特開2003-313392号公報の製造例7の硬質(共)重合体(B-1)の製造方法に従い第2の共重合体(1)を得た。
(製造例6:第3の重合体(1)の製造)
特開2000-319516号公報の参考例2の共重合体組成物(b-2)の製造方法に従い第3の重合体(1)を得た。
(製造例7:第4の重合体(1)の製造)
特開2005-139416号公報の熱可塑性重合体(VII-1)の製造方法に従い第4の重合体(1)を得た。
[実施例1]
40mmφ単軸押出機1と30mmφ単軸押出機2の先端部にマルチマニホールドダイを設置した。
製造例4で得たアクリル樹脂組成物(y)のペレットをシリンダー温度230~240℃の単軸押出機1に供給して、溶融可塑化した。
これとは別に、フッ素系樹脂としてPVDF((株)クレハ製、商品名KFT#850)を68部、第1の重合体(1)として水酸基含有重合体(1)を9部、第2の重合体(1)を18部、第3の重合体(1)(Mw=160000)を0.8部、第4の重合体(1)(Mw=1500000)を5部、酸化防止剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-60)を0.8部混合した。
この混合物を、脱気式押出機を用いてシリンダー温度100~240℃、ダイ温度250℃の条件で、スクリーンメッシュで夾雑物を取り除きながらストランド状に押出し、水槽を通し冷却後に切断してペレット化した。このペレットをシリンダー温度200~230℃の単軸押出機に供給し、溶融可塑化した。
これらの溶融可塑化物を240℃に加熱したマルチマニホールドダイに供給して、フィルム(X)層の厚さが8.7μm、アクリル樹脂層(Y)の厚さが66.3μmの積層フィルムを得た。
その際、冷却ロールの温度を80℃とし、アクリル樹脂層(Y)が冷却ロールに接するようにして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示した。
[実施例2]
表2に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により75μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例1]
表2に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により75μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例2]
表2に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により75μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの評価結果を表2に示した。
Figure 2022111655000004
上記の実施例および比較例により、次のことが明らかになった。
実施例1および2で得られたフィルムは、算術平均粗さRaが0.1~1.0μmであり、輪郭曲線要素の平均長さRsmが30~100μmであり、艶消し外観のギラツキ感が極めて低く、高級感や深み感などの意匠性や加飾性が良好であった。また、日焼け止めや10%乳酸に対する耐薬品性にも優れる。さらに、0.05mm以上の大きさのフィッシュアイ数が20個/0.01m以下であり、欠陥が極めて少なく、外観が良好であった。特定のアクリル系重合体を二種以上添加することで、樹脂組成物に滑性およびロングラン性を付与することができるため、押出加工時の樹脂の熱劣化やダイ出口での樹脂劣化物の付着を防止し、フィッシュアイの発生を低減することができる。
一方、比較例1および2で得られたフィルムは、艶消し性および耐薬品性は良好であるものの、0.05mm以上の大きさのフィッシュアイ数が20個/0.01m以下であり、欠陥が多い為に外観に劣る。そのため、品質が要求される用途への展開が困難であり、例えば、直接または樹脂シートに積層後、印刷層を付与する際、インキ抜けなどの不具合が頻繁に発生する可能性がある。
本発明の樹脂組成物は、フィルムの外観不良となるフィッシュアイを低減でき、且つきめの細かい艶消し性、透明性、耐薬品性に優れている。
以上、説明したように、本発明の樹脂組成物から製造される艶消しフィルム、積層フィルム、加飾フィルム、積層シート及び積層成形品は、特に車輌用途、建材用途に適している。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器及び材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。

Claims (13)

  1. フッ素系樹脂と、第1の重合体と、第2の重合体と、第3の重合体と、を含有する樹脂組成物であって、
    前記第1の重合体は反応性基を有する重合体であり、
    前記第2の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が1以上3以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、
    前記第3の重合体は、構成単位としてエステル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30質量%以上有し、かつ実質的に反応性基を有さない重合体であり、
    前記第2の重合体と前記第3の重合体の組成が異なる、樹脂組成物。
  2. 前記第3の重合体の質量平均分子量が50000~500000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. さらに、構成単位としてエステル基の炭素数が1~3のメタクリル酸アルキルエステルと、エステル基の炭素数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、を有し、かつ実質的に反応性基を有さない第4の重合体を含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記第4の重合体の質量平均分子量が500000以上5000000以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記フッ素樹脂の割合が40質量%以上98質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記第1の重合体の割合が1質量%以上20質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記第2の重合体の割合が1質量%以上40質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記フッ素樹脂と、前記第1の重合体と、前記第2の重合体と、前記第3の重合体との合計100質量%に対する前記第3の重合体の割合が0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. フッ素系樹脂がポリフッ化ビニリデンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記第1の重合体はアクリル系重合体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記第1の重合体が有する反応性基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、アミド基、アミノ基、シアノ基及びイミン基よりなる群から選択された1つ以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
  13. 請求項12に記載のフィルムを有する成形体。
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