図1に示されたターボ分子ポンプ111は、吸気口フランジ113により取り囲まれたポンプ吸気口115を有する。ポンプ吸気口115には、それ自体公知の形で、図示されていないレシピエントを接続できる。レシピエントから到来する気体は、ポンプ吸気口115を介してレシピエントから吸引され、そしてポンプを通してポンプ排気口117へと圧送できる。ポンプ排気口117には、例えばロータリベーンポンプ等の補助真空ポンプを接続できる。
吸気口フランジ113は、図1の真空ポンプの向きでは、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。下部分121には、側方にエレクトロニクスハウジング123が配置されている。エレクトロニクスハウジング123内には、例えば真空ポンプ内に配置された電動モータ125を作動させるための、真空ポンプ111の電気的及び/又は電子的な構成要素が収容されている(図3も参照)。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリに対する複数の接続部127が設けられている。さらに、データインタフェース129(例えばRS485規格に準拠するもの)及び電流供給接続部131が、エレクトロニクスハウジング123に配置されている。
取り付けられたこの種のエレクトロニクスハウジングを有さずに、外部の駆動エレクトロニクスに接続されるターボ分子ポンプも存在する。
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、通気用吸気口133が、特に通気弁の形態で設けられている。通気用吸気口133を介して、真空ポンプ111に通気を行える。下部分121の領域には、その上さらに、シールガス接続部135(パージガス接続部とも称される)が配置されている。シールガス接続部135を介して、パージガスを、ポンプによって圧送される気体に対して電動モータ125(例えば図3参照)を防護するために、モータ室137内に送り込める。モータ室137内で、真空ポンプ111に、電動モータ125が収容されている。下部分121には、その上さらに、2つの冷却剤接続部139が配置されている。この場合、一方の冷却剤接続部は、冷却剤用の吸気口として、そして他方の冷却剤接続部は、排気口として設けられている。冷却剤は、冷却目的で真空ポンプ内に導入可能である。存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)は、専ら空冷式に運転される。
真空ポンプの下面141は、ベースとして使用できるので、真空ポンプ111は、下面141を基準に縦置きで運転できる。しかも、真空ポンプ111は、吸気口フランジ113を介してレシピエントに固定してもよく、これにより、いわば懸架した状態で運転できる。さらに、真空ポンプ111は、図1に示されたのとは別の向きで整向されているときにも運転できるように構成してもよい。下面141を下向きではなく、横向きに、又は上向きに配置してよい真空ポンプの形態も実現可能である。その際、原則として、任意の角度が実現できる。
特に図示されたポンプよりも大きな、存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)は、縦置きでは運転できない。
図2に示された下面141には、さらに、種々のねじ143が配置されている。これらのねじ143によって、ここでは詳細には特定されない真空ポンプの構成部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下面141に固定されている。
下面141には、さらに固定孔147が配置されている。固定孔147を介して、ポンプ111を、例えば設置面に固定できる。このことは、特に図示されたポンプよりも大きな、存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)では、不可能である。
図2から図5には、冷却剤管路148が示されている。冷却剤管路148において、冷却剤接続部139を介して導入及び導出される冷却剤が循環可能である。
図3から図5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有する。プロセスガスポンプ段は、ポンプ吸気口115に作用するプロセスガスをポンプ排気口117へ圧送するためのものである。
ハウジング119内には、ロータ149が配置されている。ロータ149は、回転軸線151を中心に回転可能なロータシャフト153を有する。
ターボ分子ポンプ111は、ポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続された複数のターボ分子ポンプ段を有する。ターボ分子ポンプ段は、ロータシャフト153に固定された半径方向の複数のロータディスク155と、ロータディスク155同士の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されたステータディスク157とを有する。この場合、1枚のロータディスク155とこれに隣り合う1枚のステータディスク157とが、それぞれ1つのターボ分子ポンプ段を形成する。ステータディスク157は、スペーサリング159によって、互いに所望の軸方向の間隔を置いて保持されている。
真空ポンプは、さらに、半径方向で互いに内外に配置され、そしてポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段を有しない別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)が存在する。
ホルベックポンプ段のロータは、ロータシャフト153に配置されたロータハブ161と、ロータハブ161に固定され、そしてこのロータハブ161によって支持される円筒側面状の2つのホルベックロータスリーブ163、165を有する。ホルベックロータスリーブ163、165は、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で互いに内外に係合している。さらに、円筒側面状の2つのホルベックステータスリーブ167、169が設けられている。ホルベックステータスリーブ167、169は、同様に、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で見て互いに内外に係合している。
ホルベックポンプ段の、ポンピング作用を奏する表面は、側面によって、つまりホルベックロータスリーブ163、165及びホルベックステータスリーブ167、169の半径方向の内側面及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、ターボ分子ポンプに後続する第1のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、第2のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向の内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向の外側面に対向していて、そしてこの外側面と共に、第3のホルベックポンプ段を形成する。
ホルベックロータスリーブ163の下側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられてよい。チャネルを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173に接続されている。さらに、内側のホルベックステータスリーブ169の上側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられてよい。チャネルを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175に接続されている。これにより、互いに内外に係合する複数のホルベックポンプ段が、互いに直列で接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下側端部には、さらに、排気口117に通じる接続チャネル179が設けられてよい。
ホルベックステータスリーブ167、169の、上述したポンピング作用を奏する表面は、それぞれ、回転軸線151を中心に螺旋状に周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝を有する。他方、ホルベックロータスリーブ163、165の、これに対向する側面は、滑らかに形成されていて、そして真空ポンプ111の運転のための気体をホルベック溝内にて前方へ送り出す。
ロータシャフト153の回転可能な軸支のために、ポンプ排気口117の領域に転がり軸受181が設けられていて、ポンプ吸気口115の領域に永久磁石式の磁気軸受183が設けられている。
転がり軸受181の領域には、ロータシャフト153に、円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。スプラッシュナット185は、転がり軸受181の方へ増大する外径を有する。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも1つの掻落とし部材と滑り接触している。存在する別のターボ分子真空ポンプ(図示されていない)では、スプラッシュナットの代わりに、スプラッシュねじが設けられてよい。これにより、様々な構成が実現可能であるので、上記関係において、「スプラッシュ尖端部」との用語も用いられる。
作動媒体貯蔵部は、上下にスタックされた吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスク187には、転がり軸受181用の作動媒体、例えば潤滑剤が含浸されている。
真空ポンプ111の運転時、作動媒体は、毛管現象によって、作動媒体貯蔵部から掻落とし部材を介して、回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力に基づいて、スプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の、増大していく外径の方へと、転がり軸受181に向かって送られる。そこでは、例えば潤滑機能が満たされる。転がり軸受181及び作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内にて槽状のインサート189と軸受カバー145とによって囲繞されている。
永久磁石式の磁気軸受183は、ロータ側の軸受半部191と、ステータ側の軸受半部193を有する。これらは、それぞれ1つのリングスタックを有し、リングスタックは、軸方向に上下にスタックされた永久磁石の複数のリング195、197からなる。リング磁石195、197は、互いに半径方向の軸受間隙199を形成しつつ、対向していて、この場合、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に、そしてステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受間隙199内に存在する磁界は、リング磁石195、197の間に磁気的反発力を引き起こす。その反発力は、ロータシャフト153の半径方向の軸支を実現する。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153の支持部分201によって支持されている。支持部分201は、リング磁石195を半径方向外側で取り囲む。ステータ側のリング磁石197は、ステータ側の支持部分203によって支持されている。支持部分203は、リング磁石197を通って延びていて、そしてハウジング119の半径方向の支材205に懸架されている。回転軸線151に対して平行に、ロータ側のリング磁石195が、支持部分203と連結されたカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリング磁石197は、回転軸線151に対して平行に1つの方向で、支持部分203に結合された固定リング209と支持部分203に結合された固定リング211とによって固定されている。さらに、固定リング211とリング磁石197との間には、皿ばね213が設けられてよい。
磁気軸受内に、非常用軸受又は安全軸受215が設けられている。非常軸受又は安全軸受215は、真空ポンプの通常運転時には、非接触で空転し、そしてロータ149がステータに対して相対的に半径方向に過剰に変位するとようやく係合し、これにより、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突が阻止されるように、ロータ149に対する半径方向のストッパが形成される。安全軸受215は、非潤滑式の転がり軸受として構成されていて、そしてロータ149及び/又はステータと共に半径方向の間隙を形成する。間隙によって、安全軸受215は、通常のポンプ運転時には係合しないようになる。安全軸受215が係合する半径方向の変位は、十分に大きく寸法付けられているので、安全軸受215は、真空ポンプの通常運転時は係合せず、そして同時に十分に小さいので、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突があらゆる状況で阻止される。
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動する電動モータ125を有する。電動モータ125の電機子は、ロータ149によって形成されている。ロータ149のロータシャフト153は、モータステータ217を通って延びる。ロータシャフト153の、モータステータ217を通って延びる部分には、半径方向外側に又は埋入して、永久磁石アセンブリが配置されてよい。モータステータ217と、ロータ149の、モータステータ217を通って延びる部分との間には、中間室219が配置されている。中間219は、半径方向のモータ間隙を有する。モータ間隙を介して、モータステータ217と永久磁石アセンブリとは、駆動トルクを伝達するために、磁気的に影響し合える。
モータステータ217は、ハウジング内で、電動モータ125に対して設けられたモータ室137内に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(パージガスとも称され、これは例えば空気や窒素であってよい)が、モータ室137内へと到達し得る。シールガスを介して、電動モータ125を、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護できる。モータ室137は、ポンプ排気口117を介して真空引きすることもできる。つまりモータ室137に、少なくとも近似的に、ポンプ排気口117に接続された補助真空ポンプによって実現される真空圧が作用する。
ロータハブ161と、モータ室137を画成する壁部221との間には、さらに、それ自体公知のいわゆるラビリンスシール223が設けられてよい。これにより、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対するモータ室217のより良好なシールが達成される。
前述の、図1から図5に示された例示的なターボ分子ポンプ111は、受動型で永久磁石式の磁気軸受183と安全軸受215とを有する。図8に一実施例が示された、本発明に係る方法は、ロータの能動型の磁気軸受部又は能動制御型の磁気軸受を有する真空ポンプに関し、これに、例えば安全軸受215(図3参照)のような安全軸受が設けられているので、図6には、付加的に、能動型の磁気軸受部を有するそのような真空ポンプ10が示されていて、これは、以下に説明される。この真空ポンプ10は、ロータ149を軸支するための構成要素を除いて、前述の真空ポンプ111の全ての特徴を含んでよい。
図6は、真空ポンプ10を、模式的に著しく簡略化した図で示している。真空ポンプ10は、ロータ12を有し、ロータ12は、複数のターボロータディスク14を支持し、そしてモータ16によって、ロータ軸線18を中心として回転駆動可能であるので、図示されていないステータディスクに対して相対的に回転するターボロータディスク14が、ポンピング作用を生じさせる。図6では、ポンピング作用は、上から下へ進行する。
ロータ12は、複数の磁気軸受によって軸支されている。ロータ12に対する第1のラジアル軸受20が、ロータ12の、排気口側の端部に配置されている。同一のロータ端部に、スラスト軸受22が配置されている。ロータ12の、吸気口側の端部には、第2のラジアル軸受24が配置されている。
第1のラジアル軸受20とスラスト軸受22とは、能動制御型に構成されている。要するに、これらの軸受は、例えば電磁石を介して、ロータ12の理想位置からのロータ12の半径方向又は軸方向の変位に能動的に対抗できる。そのために、ラジアル軸受20の傍に、ラジアルセンサアセンブリ26が配置されていて、ラジアルセンサアセンブリ26によって、ロータ軸線16に対して直交する2つの空間方向で、第1の軸方向領域におけるロータ12の半径方向の変位が測定可能である。スラストセンサアセンブリも同様に設けられているが、ここでは単純化のために図示されていない。
第2のラジアル軸受24は、受動型に構成されていて、つまりロータ12に影響を与えるアクチュエータを有しない。というより、第2のラジアル軸受24は、例えばロータ側及びステータ側に複数の永久磁石を有する。
第2のラジアルセンサアセンブリ28が設けられていて、第2のラジアルセンサアセンブリ28によって、第2の軸方向領域におけるロータ12の変位が測定可能である。本実施形態において、第2のラジアルセンサアセンブリ28は、第1のラジアル軸受20と第2のラジアル軸受24との間にも、モータ16と第2のラジアル軸受24との間にも配置されている。そのために、第2のラジアルセンサアセンブリ28は、モータ16のモータ室32を画定する構成部材30に固定されている。
第1のラジアルセンサアセンブリ26と第2のラジアルセンサアセンブリ28とは、軸方向で互いに大きく離間されている。これらのラジアルセンサアセンブリによって、対応する軸方向領域でロータ12のそれぞれ異なる変位が測定されると、ロータ12が傾斜している、つまりロータ12のロータ軸線18がゼロ軸線とも称されてよい理想的なロータ軸線に対して非平行であると推測できる。傾斜が認識されると、直ちに、能動型の第1のラジアル軸受20がこれに対抗できる。そのために、第1のラジアル軸受20は、例えば、ロータ12をある程度その直立した姿勢へと押し戻すために、ロータ12に衝撃による影響を及ぼすことができる。この種の制御は、倒立振子のそれと比較可能である。ロータ12の上側の領域が傾倒し始めると、下側で衝撃がロータ12に導入され、この衝撃は、傾倒に対抗し、最良のケースでは、ロータ12を、直接に又は徐々にその直立した姿勢へと戻すので、ロータ軸線18は、ゼロ軸線に対して平行となっている。しかも例えば、同時に、傾斜だけが制御されるのではなく、ロータ12の半径方向の位置も同様に制御される。傾斜制御と位置制御とは、特に互いに重畳される。
例えば能動型の磁気軸受部のトラブルに際して、ロータ12と図示されていないステータとの接触を回避するために、ラジアル軸受20、24及びスラスト軸受22に、図示されていない安全軸受、例えば図3に示されたような安全軸受215がそれぞれ設けられている。
例示的なラジアルセンサアセンブリ34が、図7に示されている。第1及び第2のラジアルセンサアセンブリ26、28の一方又は両方が、相応に構成されてよい。
ラジアルセンサアセンブリ34は、複数のコイル38が取り付けられたリング状のボード36を有する。変位を測定されるべきロータは、このリングを通って延びていて、そのロータ軸線は、図平面に対して垂直に延びるはずである。ロータが変位されると、つまり図7において図平面に沿って摺動すると、これにより、コイル38における誘導電圧が変化して、測定信号の変化が生じる。つまりこの測定信号から、変位を推測できる。この場合、各移動方向x、yにおいて2つのコイルがそれぞれ反対側に設けられている。
例えば図1から図6に示された真空ポンプ10、111等の真空ポンプについて、原則として、能動型の磁気軸受部の様々な態様及び配置を有する様々な軸受構成が実現可能である。5軸の能動型の磁気軸受部を実現でき、5軸の能動型の磁気軸受部は、回転軸線を除いてロータ12、149を完全に能動制御し、そして非接触式に軸支する。さらに、1本又は2本の軸受軸線及び/又は1つの軸方向の又は2つのうちの1つの半径方向の2軸の軸受平面が、能動的ではなく受動的に作用する永久磁石式の磁気軸受で、接触式の尖頭形の滑り軸受で又は例えば玉軸受である転がり軸受で構成されてよい。受動的に作用する永久磁石式の磁気軸受は、典型的には、安全軸受(図3の安全軸受215参照)をも有するが、これに対して、接触式の滑り軸受又は転がり軸受を有しないことが多い。以下、「安全軸受」という用語は、常に、単軸、3軸、4軸又は5軸で作用する安全軸受の考えられる様々な実現可能な構成の全てを意味する。
真空ポンプ10、111の安全軸受215は、空間的に分離された複数の軸受箇所を有する。軸受箇所は、単列の総玉軸受として、又は対をなす、つまり最小の軸受間隙を置いて相互に調整される又は選定される、O字形又はX字形配置の総玉軸受対として構成されている。単列の玉軸受は、とりわけ純粋に半径方向に作用する軸受箇所に対して使用される。安全軸受215の耐久性及び/又は僅かな軸受荷重に対する要求が低いとき、純粋に軸方向の軸受箇所又は半径方向と軸方向との作用が組み合わされた軸受箇所に対して単列の玉軸受の使用も可能である。軸方向の軸受箇所又は半径方向と軸方向との作用が組み合わされた軸受箇所に対する高い要求は、調整された玉軸受対の使用により満たせる。
玉軸受の構成部材は、様々な材料からなる。玉軸受の内輪及び外輪は、鋼、特殊鋼又は転がり軸受に使用するための特殊な高いグレードの調質鋼から作製されている。転動体は、同様に、特殊な高いグレードの調質鋼又はセラミック材料からなってもよい。場合により存在する軸受保持器は、同様に、特殊な高いグレードの調質鋼、又は強度を向上させるための繊維成分を有する又は有しない、自己潤滑特性を有する耐摩耗性のプラスチックからなってよい。あらゆるケースで、鋼成分は、様々なタイプの熱処理によって、部分的に又は部分ごとに、完全に又は個々の表面に集中的に硬化されてよい。
総玉軸受は、例えば軸受保持器又は他の形態の転動体スペーサ等の、転動体に対するガイド要素を有しない。玉軸受には、できるだけ多くの玉が装填される。軸受輪壁部における特別な装填用切欠きは、玉を装填する動作を補助できる。考えられる転動体の数が、軸受保持器を有する構成に対してより多いと、一定の構成サイズで、軸受のより高い絶対耐荷重を実現できる。さらに、軸受保持器は、通常は、使用中に軸受の高い加速度に支障なく耐えるのに十分なロバスト性を有しない。
安全軸受215は、ステータの側で又はステータに固く緊締されていて、真空ポンプ10、111の通常運転時には完全に停止している。しかも、安全軸受215は、代替的に、ロータ149の側で又はロータ149に固く緊締されてもよく、真空ポンプ10、111の通常運転時に完全にロータ149と一緒に回転できる。「完全な停止」及び「完全な一緒の回転」とは、それぞれ、安全軸受215の全ての構成要素が、真空ポンプ10、111の通常運転中に、軸受荷重が作用しないと、相互に相対運動をほとんど行わないことを意味する。
安全軸受215がロータ側で緊締されているか又はステータ側で緊締されているかにかかわらず、安全軸受215の他方の自由回転可能な半部は、相手側に対して間隙を残して配置されていて、能動型の磁気軸受の通常動作で一般的な程度を超えてロータ12、149が変位するときにだけ、安全軸受215とステータにおける接触面との間で接触が形成され、ひいては変位を機械式に制限する非常用軸受部が形成される。安全軸受動作時にのみ、安全軸受215の内輪と外輪との間の回転が行われ、回転により、安全軸受215の摩耗が引き起こされる。接触面同士の間に残る遊びは、安全軸受遊びと称される。通常、安全軸受遊びは、一運動軸線又は一運動平面内でのシステムの絶対的な全体遊びと見なされる。ラジアル軸受では、これは、2つの接触面の直径の絶対差であり、2つの半径の間の差ではなく、これは、通常動作時に平均的に接触面の周りに作用する、実際の周方向の絶対的な間隙の大きさを表すだろう。このことは、同様に、接触面同士の間に相応の直線的な寸法が存在するスラスト軸受にも当てはまる。
能動型の磁気軸受20、22の動作時に、寄生連行作用によって、安全軸受215の自由回転可能な半部が、自動的に、安全軸受215の自由に離間した相手側と一緒に回転し始めるおそれがある。寄生連行作用は、例えば、安全軸受215の半部同士の間の電磁相互作用に起因する、又は安全軸受215の半部同士の間の回転数差又は速度差が極めて大きいときの狭い間隙でのガス摩擦に起因する。ロータ12、149に固定されていて、これと一緒に回転する安全軸受215の場合には、寄生連行作用は逆になり、安全軸受215の自由回転可能な半部は、全体的な基準系で見ると、ステータ側で停止したままに見える。
所望されない同時回転が継続的に生じるとき、これに、安全軸受215の不要な摩耗が伴う。この不要な摩耗に対抗するために、所望されない同時回転が抑制される又は十分に阻止されるような作用が、安全軸受215の自由回転可能な半部にもたらされる。この作用は、例えば機械式に接触し電磁式に作用する制動要素によって、又は例えばクランプされて装着された転動体又は意図的に非円形に構成された若しくは不完全な軸受要素等の独特な軸受構成によって行われる。
所望されない同時回転とは異なり、磁気軸受部のトラブル又は故障のとき、所定の運動範囲を越えるロータ12、149の変位が行われる。この変位は、安全軸受215の自由回転可能な半部と相手側との接触によって、空間的に制限されている。滑り摩擦効果及び静止摩擦効果によって、安全軸受215における自由回転可能な半部とその相手側との回転速度の極めて迅速でほぼ完全な均一化がもたらされる。これによって生じる非常用軸受部は、ロータ要素とステータ要素との間の所望されない接触による真空ポンプ10、111の大規模の損傷を阻止する。真空ポンプ10、111は、安全軸受動作状態にある。
トラブルの種類に応じて、安全軸受動作が、能動型の磁気軸受部の再開によって終了する、又はポンプが、ロータ12、149が停止するまで安全軸受動作を維持する。能動型の磁気軸受部の再開は、再始動、再稼働又は再安定化とも称される。安全軸受動作中に停止するまでの、特に真空ポンプ10、111の動作回転数から静止するまでの、ロータ12、149の停止動作、減速又は回転数低下のプロセスは、総じて、完全停止動作と称される。ロータ12、149が停止に至る前に、安全軸受動作中に再安定化が行われるとき、これは、特定の初期回転数及び終了回転数を有する部分停止動作と称される。部分停止動作は、例えば、真空ポンプ10、111の動作回転数から、動作回転数よりも低いがこれとほぼ同一である再安定化回転数まで行われる。これらの全てのプロセスは、安全軸受動作での実行時間とも称される、安全軸受動作の、開始時点と終了時点との間にある様々な長さの期間を含む。
トラブルの種類は、真空ポンプ10、111の表面で、真空ポンプ10、111の内部で又は真空ポンプ10、111の付近で、付加的なセンサの観察によって、例えば1つ又は複数の作用方向を検出する1つ又は複数の振動センサ及び/又は加速度センサによって、詳細に特定できる。真空ポンプ10、111のステータにおいてトラブル事象がそのようなセンサを用いて検出されると、トラブルの始まりは、能動型の磁気軸受部内でロータ12、149に対するラジアルセンサアセンブリ26、28の位置信号の監視だけによるよりも早期に認識可能である。機械的なトラブルは、通常、設備側又はステータ側に起因し、空間的なステータの変位をもたらす。変位が始まると、ロータ12、149は、安定化されたジャイロとして、能動型の磁気軸受部によって、位置が遅れてステータに追従する。ステータの、外部で作用する加速度及び運動の迅速で全周にわたる認識を、能動型の磁気軸受部によって、一方では、軸受制御を最適化するために利用できる。他方では、この認識は、生じる安全軸受摩耗の予測及びトラブルの継続時間の予測を可能にする。
磁気軸受部のトラブルについて起こり得る原因は、供給電圧の喪失である。この場合、安全軸受動作は、様々な形で回避又は遅延できる。一方では、真空ポンプ10、111又は能動型の磁気軸受部の要素又は制御部は、エネルギ貯蔵部、例えば能動型の磁気軸受部への非常用供給を確保する高容量のワンウェイ使用のバッテリ又は一次電池及び/又はアキュムレータ及び/又はコンデンサを有してよい。他方では、真空ポンプ10、111に設けられる駆動部が、駆動できるだけではなく、発電作用もできるように構成されてよい。これにより、回転エネルギは、電気エネルギへと戻るように変換され、その際、電気エネルギは、能動型の磁気軸受部への非常用供給を可能にする。
1つの安全手段又はそのような様々な安全手段の組合わせが存在すると、最後の安全手段が機能停止するまで、安全軸受が作動しない。しかし、ロータ12、149は、供給電圧が喪失するとそれ以上駆動できないので、ロータ12、149は、能動的に軸支されて自由に又は発電制動されて停止するまで停止動作する。ロータ12、149のそのような停止動作は、数秒から数時間の間継続し得、これは、真空ポンプ10、111内の真空の質及び維持と、例えば渦電流及び磁気反転損失によって引き起こされる構成要素の電磁損失の程度と、能動型の磁気軸受部のエネルギ消費量と、付加的な負荷抵抗による任意選択的な能動的な制動とに依存する。ロータ12、149が停止する前に、能動型の磁気軸受部の電圧供給を維持するための全ての安全手段が機能停止すると、安全軸受動作が導入される。このことは、一般的に、ロータ12、149が停止するまで、最終的な回転数の15%から20%未満の中速から低速までの回転数の再安定化を試みる可能性なしに、部分停止動作として行われる。
安全軸受動作時に生じる、安全軸受215の摩耗は、複数の要因に依存し、そのうちの、安全軸受動作時におけるロータ12、149の動作時間及び回転数が、主要な影響の要因をなす。別の1つの影響の要因は、安全軸受動作の開始時の、つまり安全軸受の半部の接触の瞬間の、安全軸受の自由回転可能な半部とその相手側との間の相対速度である。というのも、接触の瞬間に、安全軸受の即座の急激な加速が行われるからである。加速の極端に短い期間では、安全軸受215の自由回転可能な半部及びその相手側は、ロータ12、149と共に、カオス的で安定しない動作段階にある。
著しく簡略化すると、この動作段階は、複数のステップに分けられる。まず、接触する相手側が、安全軸受215の、自由回転する輪を連行し、次いで、この輪が、安全軸受215の転動体を連行する。その間、滑り摩擦を伴うその都度の相対運動が、全ての要素の間で、つまり相手側と、安全軸受の自由回転する輪と、安全軸受215の転動体と、安全軸受215の固定の輪との間で行われる。これに続いて、全ての要素は、安定した動作状態に至る。この動作状態では、大体においてカオス的ではない要素の転動、ひいては要素の設定通りの機能が行われる。安全軸受と相手側との間だけではなく安全軸受内における要素同士の間の短時間のカオス的な動作状態の間に、様々な摩擦状態、剥離力及び耐荷重の負荷ピークが生じる。耐荷重は、発生する加速度が高くなるほどより高くなっている。
安全軸受の動作の安定した動作状態に至った後でも、カオス的な挙動の一部が残存する。というのも、ロータ12、149が、安全軸受動作中に必然的に存在する安全軸受遊びの範囲内で自由に可動であって、安全軸受215内のその位置又はその接触点をいつでも変位できるからである。これは、典型的には、ロータ12、149の様々な固有運動モード及びジャイロ力によって行われるとともに、ロータ12、149の幾何学的な例えば慣性の主軸に対する、安全軸受215とロータ12、149とからなるシステムの、安全軸受動作中に安全軸受遊びによって変位される機械的な回転軸線の結果でもある。安全軸受遊びの運動範囲内で、不規則に、真空ポンプ10、111の構成及び/又は設置配向に応じて、つまり安全軸受位置に対するロータ12、149の重心の位置に依存して、及び/又は重力に対するロータ12、149の空間配向に依存して、様々な頻度で、安全軸受215内におけるロータの傾倒、揺動又は一般的にカオス的で不規則な変位が行われる。
安全軸受遊びによって、真空ポンプ10、111の構成及び/又は設置配向に依存して、安全軸受215の自由回転する半部及びその相手側が、安全軸受動作中に、一時的に又は持続的に、相互に転動を行うことも引き起こされる。回転軸受技術の分野において、軸受箇所が誤って設計されるときのこの事象は知られている。そこでは、このような構成は、内輪における隙間嵌めと周方向荷重とを有する回転軸といわれる。この場合、安全軸受215の自由回転する輪又は自由回転する半部の回転数は、ロータ12、149の回転数に一致せず、わずかに逸脱する。というのも、互いに対する転動が、付加的な伝達比を及ぼすからである。
さらに、安全軸受動作の全ての段階の間の高い動作負荷による安全軸受215、ロータ12、149及びステータの弾性変形も、付加的な影響要因として生じ得、そして前述の様々な作用を増強する。このような変形の固有振動数は、変形によって共振が発生せず、ひいては真空ポンプ10、111の構成要素の損傷がもたらされないように選択されるべきである。動的に生じる変形によって、場合によっては、ロータ12、149とステータとの間の予期されないかつ所望されない接触箇所も生じ、ロータ12、149とステータとは、一連の寸法の純粋に静的な公差を考慮すると、いずれにしても互いに対して十分な遊び又は間隔を有するが、動的な場合には、接触箇所を形成し、真空ポンプ10、111の構成要素の損傷を招いてしまう恐れがある。
安全軸受215は、持続的に動作するようには設計されていない、そして安全軸受動作中の安全軸受215の耐用期間は、通常、数分から数時間にすぎないので、安全軸受動作は、可能な限り短時間に維持されるべきである。あらゆる安全軸受動作によって、接触面同士の間のみならず安全軸受215内でも個々の要素、つまり転動体と内輪及び外輪との間で安全軸受215の摩耗がもたらされる。極端なケースでは、真空ポンプ10、111は、既に安全軸受動作に伴う重大なトラブル事象の後で、もはや動作可能ではなく、次の運転開始間に修理しなければならない。
図8には、ロータ12、149を軸支する能動制御型の磁気軸受20、22と、これに対応する安全軸受215とを有する真空ポンプ10、111(図1から図6参照)を運転するように設定された、本発明に係る方法の概略的なブロック図が示されている。方法は、しかも、能動制御型の磁気軸受部と安全軸受とを有する他の真空ポンプで用いてもよい。例えば、方法は、ジークバーン(Siegbahn)ポンプ段を有する真空ポンプで用いてよい。
方法300は、301で、トラブル事象が検出されることによって始まる。トラブル事象に際して、ロータ12、149が、ステータに対して、通常動作ではロータ12、149に対して設定された空間範囲から離脱する。トラブル事象は、例えば磁気軸受位置センサ26、28によって検出される。磁気軸受位置センサ26、28は、ロータ12、149の半径方向及び軸方向の位置を取得する。
トラブル事象によって安全軸受215に摩耗が生じ得る。したがって、方法によれば、310で、検出されたトラブル事象に割り当てられた摩耗増加量315-1が推定される。推定される摩耗増加量315は、例えば磁気軸受位置センサ26、28の測定データに基づいて推定できる。磁気軸受位置センサ26、28は、どの程度ロータ12、149がこの通常動作に対して設定された位置から離反したのか示す。摩耗増加量315-1は、これらの測定データと、これらの測定値に割り当てられた経験値とに基づいて推定される。
摩耗増加量315-1は、続いて、メモリ320へ伝送される。メモリ320は、安全軸受215の総摩耗についての変数を有し、したがって、安全軸受215の摩耗を記録するように設定されている。したがって、メモリ320は、真空ポンプ10、111に属し、安全軸受215の傍に配置されてよい(図3参照)。
摩耗増加量315-1は、安全軸受215の総摩耗についての変数325に加えられる又は加算される。安全軸受215の総摩耗についての変数325は、真空ポンプ10、111が設置される又は初動されるときにゼロで初期化される。摩耗増加量315-1及び安全軸受215の総摩耗についての変数325は、それぞれ、安全軸受215の最大許容摩耗に関する百分率として表される。最大許容摩耗のとき、安全軸受215の交換を伴う真空ポンプ10、111の保守が必要とされる。換言すると、摩耗増加量315-1及び安全軸受215の総摩耗についての変数325は、それぞれ、安全軸受215の全耐用期間の百分率に関する。
方法によれば、さらに、真空ポンプ10、111についての運転設定値のセット330が用意される。運転設定値のセット330は、310で検出されるトラブル事象の発生時に達成されるべき真空ポンプ10、111の運転状態を含む。達成されるべき運転状態は、例えば「真空を必ず維持する」及び「ターボ分子ポンプのロータをできるだけ迅速に停止させる」というものである。しかも、真空ポンプ10、111についての運転設定値のセット330は、「極端な状態」同士の間に、つまり「真空を維持する」と「ロータの停止」との間に分類されるべき、真空ポンプ10、111の達成されるべき別の運転状態を含んでよい。
340で、エレクトロニクスハウジング123(図1から図3参照)内に収容された、真空ポンプ10、111の制御装置が、真空ポンプ10、111のロータ12、149についてのトラブル事象が検出されたとの情報を、ステップ310から取得する。さらに、制御装置は、340で、メモリ320から安全軸受215の総摩耗についての変数325を取得し、真空ポンプ10、111についての運転設定値のセット330を取得する。340では、さらに、安全軸受215の総摩耗についての変数325と真空ポンプ10、111についての運転設定値のセット330との間で「仲介」が行われる。具体的には、安全軸受215の総摩耗についての変数325の値に基づいて、どのセット330の運転設定値を実行すべきか、つまり存在するトラブル事象に対してどのセット330の運転状態が達成されるべきか決定される。選定された達成されるべき運転状態に基づいて、さらに、350で、ロータ12、149を安定化させる手段を実行するか判定される。そのような手段は、ロータ12、149が能動型の磁気軸受部によって再び真空ポンプ10、111の通常運転のための所定の空間位置へ戻されることを含む。
350で、ロータ12、149を安定化させる手段を実行するべきではないと判定されると、真空ポンプ10、111は、360でシャットダウンされ、その際、停止するまでロータ12、149の完全停止動作が行われる。ロータ12、149の完全停止動作のために、360で、別の摩耗増加量315-2が特定される。別の摩耗増加量315-2は、完全停止動作の開始時におけるロータの回転数と完全停止動作時の摩耗についての経験値とに依存する。完全停止動作についての摩耗増加量315-2は、メモリ320へ伝送され、推定された摩耗増加量315-1に代えて、安全軸受215の総摩耗についての変数325に加えられる。したがって、推定された摩耗増加量315-1は、完全動作停止について特定された摩耗増加量315-2によって更新され、その際、例えば、摩耗増加量315-2と摩耗増加量315-1との間の差分が、安全軸受215の総摩耗についての変数325に加えられる。
350で、ロータ12、149を安定化させる手段を実行するべきであると判定されると、この手段は実際に実行される。したがって、手段は、310で検出されたトラブル事象以前に安定していたロータ12、149の前述の「再安定化」をもたらすはずである。370では、ロータ12、149を安定化させる又は再安定化させる手段が成功しているかチェックされる。該当するとき、ロータ12、149が再び通常運転のための所望の空間位置にあるので、真空ポンプ10、111は、380で、通常運転に戻される。
370で、ロータ12、149の安定化が成功していないと判定されると、390で、方法が340へ戻される前に、ロータ12、149を安定化させる手段を再び実行するべきか判定するために、特定の待機時間、待機される。同時に、390で、更新された摩耗増加量315-3が特定される。更新された摩耗増加量315-3は、失敗したロータ12、149を安定化させる試行に割り当てられている。摩耗増加量315-2と同様に、更新された摩耗増加量315-3は、推定された摩耗増加量315-1に代えて、真空ポンプ10、111の総摩耗についての変数325に加えられる。その際、同様に摩耗増加量315-3と摩耗増加量315-1との間の差分だけが、後から、つまり推定された摩耗増加量315-1が真空ポンプ10、111の総摩耗についての変数325に予め加えられた後で、真空ポンプ10、111の総摩耗についての変数325に加えられ得る。
390での待機時間の後に、ステップ340から380が繰り返され、つまりまず340で、ロータ12、149を安定化させる再度の新たな試行を行うべきか判定される。方法ステップ340から380が新たに実行されるとき、付加的に、310で検出されたトラブル事象が依然として存在するかチェックされる。該当しないとき、ロータ12、149の安定化が成功する確率が大幅に増加する。したがって、この場合、350で、ロータ12、149の安定化を実行するべきと判定される。しかし、ロータ12、149の安定化が再び失敗すると、これは370で判定されるが、ステップ390、340、350、370を反復的に繰返し可能で、その際、390での待機時間は、ロータ12、149を安定化させる試行が失敗するごとに長くなる。
付加的に、メモリ320における安全軸受215についての摩耗記録によって、つまり真空ポンプ10、111の総摩耗についての変数325によって、矢印395によって示唆されているように、ターボ分子ポンプについての運転設定値のセット330に影響を及ぼすことが可能である。例えば、トラブル事象のとき、真空ポンプ10、111の達成されるべき複数の運転状態の間の優先付けは、真空ポンプ10、111の総摩耗についての変数325の値に基づいて変更できる。この場合、真空ポンプ10、111についての運転設定値のセット330は、達成されるべき運転状態自体の他に、ロータ12、149を安定化させる手段を実行するべきか決定するために、340及び350で使用可能な、これらの運転状態の間の優先付けのための値も含む。
以下、安全軸受215についての摩耗の記録を、摩耗増加量315-1及び総摩耗についての変数325の数値例に基づいて詳説する。数値は、ターボ分子ポンプである真空ポンプ10、111にとって代表的なものである。ただし、数値は、真空ポンプのタイプに応じて異なり得、記載の値以外をとってよい。
前述のように、摩耗増加量315-1及び安全軸受215の総摩耗についての変数325は、それぞれ、安全軸受215の全耐用期間の百分率に関連している。摩耗の記録は、安全軸受215の総摩耗についての変数325が最初にゼロで初期化され、これに続いて、トラブル事象が検出されるたびに(図8のステップ310参照)摩耗増加量315-1の分だけ増加されるように行われる。安全軸受215の総摩耗についての変数325が100%の値に達すると、エラー通知が出力される。したがって、総摩耗についての100%の値は、安全軸受215の予想耐用期間に相当する。
安全軸受215の総摩耗についての変数325が、例えば真空ポンプ10、111の停止動作中にこの100%の値に達するとき、それにもかかわらず、安全軸受215の総摩耗についての変数325は、安全軸受215の摩耗をできるだけ完全に記録するために、真空ポンプ10、111の停止状態まで、引き続き摩耗増加量315-1の分だけ増加される。これにより、変数325は、真空ポンプ10、111の停止時に、100%より大きい値、例えば130%をとってよい。
しかもその逆に、安全軸受215の総摩耗についての変数325を100%の値で初期化することも可能である。この場合、変数325は、トラブル事象ごとに、それぞれ摩耗増加量315-1の分だけ減少される。エラー通知は、摩耗増加量のこの「負のカウント方法」では、変数325が0%の値に達すると出力される。完全な摩耗記録のために、変数325は、前述の例に相応して、真空ポンプ10、111の停止まで、負の値、例えば-30%をとってよい。
図8において看取されるように、様々なプロセス又は方法ステップ310、360、390が、様々な摩耗増加量315-1、315-2、315-3をもたらす。例えば、ステップ360において、真空ポンプ10、111の運転回転数、つまり真空ポンプ10、111の到達可能な終了回転数から停止状態までの完全停止動作は、真空を維持しつつ、41%の摩耗増加量315-2をもたらす。この摩耗増加量315-2は、簡単に表すと、2つの成分からなる。第1の成分は、安全軸受215の自由回転部分の初期加速度から生じ、本例では1%であり、他方、第2の成分は、停止状態までの安全軸受動作におけるロータ12、149の実際の停止動作から生じ、本例では40%である。しかし、ロータ12、149の停止動作の時間は、真空ポンプ10、111が存在する真空設備の通気によって又は真空ポンプ10、111の発電制動によって、例えば半分にされ得るとき、最初の近似で、摩耗増加量315もまた約20%の値へと半分になる。この場合、ロータの完全停止動作は、2つの成分を合計すると、21%の摩耗増加量315-2となる。
ステップ310(図8参照)で安全軸受動作をもたらすトラブル事象は、短時間で又は持続的に作用し得る。トラブル事象が短時間後になくなると、ロータ12、149の完全な完全停止動作は実行されない。というのも、能動型の磁気軸受部及びロータ12、149を再安定化させる、直後に実行される試行が即刻成功し得るからである。再安定化を伴う極めて短時間の安全軸受動作のそのようなケースにおいて、摩耗増加量315-3は、典型的には、3つの成分からなる。第1の成分は、ここでも安全軸受215の初期加速度から生じ、1%であり、他方、第2の成分は、再安定化の実際のプロセスから生じ、約1.5%の摩耗増加量315-3となる。第3の成分は、約0.5%の摩耗増加量315-3となる値で、停止するまでの安全軸受215の自由な停止動作に関連している。したがって、数秒の期間の短時間の安全軸受動作を伴うまれに生じる短時間のトラブルは、能動型の磁気軸受によるロータ12、149の再安定化が直ちに成功する最適なケースでは、総じて、3%の摩耗増加量315-3をもたらす。
ロータ12、149を再安定化するこの最初の試行が、例えば引き続き継続するトラブルに基づいて不成功であるならば、安全軸受動作の進行中に、更なる又は他の態様の摩耗増加量315-3が生じる。不成功の再安定化試行に、ロータ12、149の完全停止動作が続くとき、この完全停止動作は、前述のように、ロータが停止するまでの持続時間に応じて、摩耗増加量315-2について20%から40%の値をもたらす。しかし、他方、再安定化の終了後の安全軸受215の停止動作についての値が、この停止動作が行われないので、生じない。したがって、要約すると、より長く続くトラブルの間では、再安定化試行が不成功であり、これに続いて、真空ポンプ10、111の運転回転数から停止するまで真空ポンプ10、111の通気を伴う完全停止動作が行われ、より長く続くトラブルについての摩耗増加量315-2は、以下の成分、i)安全軸受215の加速度に基づいて1%と、ii)再安定化試行に基づいて1.5%と、iii)真空ポンプ10、111の通気を伴う迅速な完全停止動作に基づいて20%とからなる。したがって、合計では、摩耗増加量315-2は、本例では22.5%である。
しかも、真空ポンプ10、111の通気を伴う完全停止動作の代わりに、所定の期間の後に、又は真空ポンプ10、111が徐々に停止動作している間に所定の回転数を下回ると、再安定化の別の試行を行ってよい。所定の期間は、例えば、安全軸受動作の開始から2分、1分又は0.5分であり、他方、所定の回転数は、例えば、半分の運転回転数である。ロータ12、149の再安定化の新たな試行は、成功し得る。というのも、トラブルがその間に漸減している、又はロータ12、149が、低い回転数が維持されるとき、より低いジャイロ力に基づいてより良好に再安定化され得るからである。新たな再安定化の成功にかかわらず、新たな安定化は、例えば0.9%の摩耗増加量315-2又は315-3となる別の値を伴う。両方の再安定化試行が失敗すると、310(図8参照)で検出されるトラブルは、総じて、22.5%の代わりに23.4%の摩耗増加量をもたらし、これは、単一の再安定化試行とこれに続く真空ポンプ10、111の完全停止動作とを伴う前述の例について特定された。これに対して、第2の再安定化試行が成功すると、ロータ12、149の半分の動作回転数から停止状態までの部分停止動作の値は生じず、これは、約6%の摩耗増加量315-3の減少につながる。しかし、安全軸受215の自由な停止動作についての値が加えられ、この値は、ロータ12、149の既に低下された回転数に基づいて約0.2%である。トラブル後に第1の再安定化試行が失敗し、第2の再安定化試行が成功する場合において、摩耗増加量315-3は、結果として合計約17.6%である。
摩耗増加量315-1、315-2、315-3の値は、真空ポンプ10、111の運転パラメータ、例えば真空ポンプ10、111のロータ12、149の現在の回転数と、真空ポンプ10、111の設置姿勢と、安全軸受215の状態とに依存する。前述のように、真空ポンプ10、111の運転回転数で、摩耗増分量315-3に対する再安定化試行の値は、約1.5%であり、他方、半分の運転回転数では、対応する値は、約0.9%にすぎない。安全軸受動作に入るときの初期加速度の値は、真空ポンプ10、111の運転回転数で約1.0%、半分の運転回転数で0.4%である。安全軸受215の自由停止動作については、値は、真空ポンプ10、111の運転回転数で約0.5%、半分の運転回転数で0.2%である。
さらに、図8の方法ステップ310で検出される、トラブル事象の種類によって、安全軸受215の半部同士の接触ひいては安全軸受動作を引き起こす、ロータ12、149とステータとの、相互に接近する運動形態が認められる。これにより、トラブル事象の種類は、摩耗増分量315-1、315-2に対する、安全軸受の初期加速時に生じる値と、成功する再安定化を行う確率とに影響を及ぼす。運動形態がゆっくり増大する又は少なくとも連続して定常であるのみならず場合によっては持続するとき、最初の安全軸受接触は、遅く進行しがちである。これにより、安全軸受215は、軸受荷重がさらに低いとき、初期加速を完全に行うのにより多くの時間を得る。これに対して運動形態がカオス的で衝撃的であり、高い勾配及び場合によっては正負符号の変化を伴うとき、能動型の磁気軸受部の反応も複雑であり、カオス的な全体像に対応する。この場合、最初の安全軸受接触は、強い衝撃の間にランダムに行われがちであり、相応して、高い耐荷重を伴う迅速な安全軸受接触につながる。これは、ゆっくりとしたロータ12、149とステータとのカオス的ではない相互に接近する運動形態が続くトラブルと比較して、増加した摩耗増加量315-1、315-2、315-3を引き起こす。
近似的に、摩耗増加量315-1、315-2、315-3は、一次的にロータ12、149の回転エネルギに依存し、ひいては二次的にその回転数に依存すると仮定される。詳細には、摩耗増加量315-1、315-2、315-3に対する値は、様々なプロセスによって、ロータ12、149のその都度の回転数に依存して、及び/又は直接にそのときに存在する各々の回転エネルギに、若しくは安全軸受動作による、回転エネルギの所定の期間にわたって生じる損失に依存して特定できる。安全軸受動作による以外の態様でロータ12、149から取り出される又はロータに供給されるエネルギ量を考慮してもよい。そのようなエネルギ量は、例えばロータ12、149の駆動部への駆動エネルギ及び/又はロータ12、149の駆動部からの制動エネルギ、又はその都度存在する既知の真空圧及び/又は通流する気体量で、発生するロータ12、149のガス摩擦に基づく仮想計算された値である。
安全軸受動作を伴うトラブルの開始時における安全軸受の初期の加速によって生じる、摩耗増加量315-1、315-2、315-3に対する値は、パラメータとしてロータ12、149の回転数及び/又は回転エネルギを伴うまれに生じる事象として推測できる。トラブルの開始後に生じ、ある程度の期間継続する前述の別のプロセスでは、この期間と、期間の開始及び終了時のロータ回転数と、場合によっては期間にわたるロータ回転数の経過とが、摩耗増加量315-1、315-2、315-3に対する値の算定要素である。例えば、トラブルの終了後における安全軸受215の自由な動作停止の既知の期間が、安全軸受215のその都度残っている相対回転数又は回転残数を推定するために用いられる。安全軸受動作を伴う複数のトラブルが短時間で連続して発生すると、必要な加速度、ひいては安全軸受と相手側との間の速度差を考慮することによって、適合された減少した摩耗増加量315-1、315-2、315-3を特定できる。数秒どころか数分の十分に長い期間を有するプロセスによって生じる、摩耗増加量315-1、315-2、315-3に対する値は、パラメータとして、ロータ12、149の回転数及び/又は回転エネルギを用いてより正確に特定でき、そのとき、摩耗増加量315-1、315-2、315-3についての時間及び/又は回転数に依存する計算式が存在し、計算式では、その都度のプロセスの期間及び/又は回転数範囲に関して積分される。
摩耗増加量315-1、315-2、315-3に関与するプロセスは、様々な形で、ロータ12、149及び安全軸受215の構成要素の回転数及び/又は回転エネルギ、及び/又は目下発生している軸受荷重に依存する。プロセスは、例えば開始回転数及び終了回転数、又は各々の構成要素の回転数の経過、及びその間に作用する軸受荷重及び/又は存在する回転エネルギ、並びにその都度のプロセスの間のこれらのパラメータの連続的な経過に依存する。
その都度存在する軸受荷重は、単純化して示すと、同様に一次的に回転エネルギに依存し、したがって二次的に回転速度に依存する。構成及び/又は設置配向に応じて、通常、様々な軸受箇所の間に様々な軸受荷重又は部分軸受荷重の関係が存在し得る。例えば、真空ポンプ10、111の全ての設置配向において全ての軸受箇所の外側に重心を有するロータ12、149の片持ち式の軸受部によって、とりわけロータ12、149の回転軸線が、大体において空間内で水平に、つまり重力に対して直交方向に配置されているとき、ロータ12、149の回転軸線の方向に相互に離間された少なくとも2つの軸受箇所に、相互に逆向きに作用する高められた軸受力を生じさせ得る。
真空ポンプ10、111のロータ12、149及びステータの幾何学パラメータ、例えば軸受箇所からの距離、重心、質量慣性モーメントや固有振動数及び/又は曲げ臨界モードが知られていると、軸受箇所ごとの摩耗増加量315-1、315-2、315-3の関係の特定が可能である。さらに、空間内の真空ポンプ10、111の向き、つまり真空ポンプ10、111の構成要素に作用する重力の方向が知られていると、摩耗増加量315-1、315-2、315-3を相応に適合できる。というのも、例えば特定の向きで、標準の向きに対してより高い又はより低い、個々の軸受箇所の負荷が存在し得るからである。
安全軸受215の摩耗がそれぞれ異なる軸受箇所で大きく異なることが予想されるとき、安全軸受摩耗は、代替的に、総摩耗についての単一の変数325を用いてではなく、個々の軸受箇所ごとに、軸受箇所作用方向ごとに、それどころか軸受箇所部分セグメントごとに特定されて、記録される。例えば安全軸受動作中に回転軸線が空間内で水平に配置されるとき、固定の軸受箇所は、高いラジアル荷重を受け、これに伴う摩耗にさらされ得る一方、これに対して、軸方向の荷重及びこれに伴う摩耗は、最小限である。というのも、ロータ重量が、真空ポンプ10、111のこの空間配向に軸方向の耐荷重を生成しないからである。
能動型の磁気軸受部の全軸の能動的な位置検出(図6及び図7参照)によって、1つ又は複数の軸受箇所における接触の順序及び/又は真空ポンプ10、111の周における位置に関する1つの若しくは複数の最初の接触箇所を特定することがさらに可能である。順序に応じて、様々な摩耗増加量を軸受箇所ごとに特定して記録できる。軸受輪走行面の、局所的に制限された摩耗増加量は、安全軸受215の固定側の周において常に同じ位置に留まる最初の接触位置について、ひいては完全な耐荷重の最初の作用方向について空間分解して記憶できる。
摩耗増加量315及び安全軸受215ごとの結果として生じる総摩耗の、軸受箇所及び/又は軸受軸線に関連するそのような記憶は、ユーザに直接通信しても、数式に基づく計算によって、総摩耗値又は複数の部分摩耗値に計算し直してもよい。例えば、純粋に最大値又は最小値を考慮すると、安全軸あたりの全ての摩耗値の最大値又は最小値、つまり全ての部分値の最悪値又は最良値のみを、総摩耗と定義し、通信できる。さらに、総摩耗は、様々な部分値の重み付けによって、よりバランスのとれた形で計算し、通信できる。
摩耗についての境界値を上回るときのエラー通知及び/又は真空ポンプの確実な停止は、相応に、総摩耗の高さに基づいて行うだけではなく、個々の部分値又は部分値のうちの1つに基づいて行ってもよい、又は専ら個々の部分値又は部分値のうちの1つに基づいて行ってよい。様々な部分値の内部記憶は、一般的に、真空ポンプ10、111の後の時点での点検に際して、サービス技術者が、実際に摩耗した要素及び/又は最も強く摩耗にさらされた要素だけを交換し、隣り合う又は通常の範囲で摩耗にさらされた構成部材をより入念にコントロール下に置くことを可能にし、これにより、点検又は保守の品質及び効率が最適化される。
真空ポンプ10、111の供給電圧が喪失するとき、前述の非常用供給部は、少なくとも限られた期間にわたって、能動型の磁気軸受部の継続動作を確保できる。供給電圧の喪失によって、メモリ320内の各々の摩耗増加量315-1、315-2、315-3の記憶が場合によっては妨害される又は阻止される。しかし、供給電圧の前述の喪失は、例示的には、ダイオードによってエネルギが逆流しないように確保された中間記憶装置、例えばコンデンサより手前の供給電圧の低下の始まりを観察することによって、適時認識できる。例えば発電供給によって、非常用供給部の起動が可能であるとき、起動は、供給電圧の喪失直後に行える。この場合、安全軸受動作が起こらない。
非常用供給の間に、又は既に供給電圧の喪失の開始時に、ロータ12、149の残っている回転残数又は例えば非常用バッテリの充電残量等の他の運転パラメータは、場合によっては非常用供給及び能動型の磁気軸支の維持にとってもはや十分ではない。そのような状態を解消するために、喪失中のあらゆる時点で、能動型の磁気軸受部にとって不要な電気負荷の部分スイッチオフを、例えば残っている回転残数又は現在の発電フィードバック電圧等の運転パラメータに依存して行える。部分スイッチオフについて考慮される電気負荷は、例えばインタフェースモジュール又はアクセサリ構成部材である。個々の要素の順序、ひいては重要性は、予め又は動的に運転パラメータに基づいて確定できる。例えば、インタフェースモジュールは、能動的なデータ接続を有するとき、後でスイッチオフできる。
能動型の磁気軸受部の機能停止を遅らせるあらゆる可能性が利用されると、非常用供給の喪失前に、能動型の磁気軸受部の規則通りのスイッチオフ、例えば安全軸受215内へのロータ12、149のコントロールされたゆっくりとした穏やかな移動、及び/又は摩耗増加量315-1、315-2、315-3の最終的な記憶を実行できる。この場合、ロータ12、149の残りの停止動作について、予め設定された又は既知の運転パラメータに基づいて動的に適合された摩耗増加量が、まだ停止動作の実際の終了前に記憶される、又は少なくとも不揮発性バッファメモリに格納されるので、最終的な記憶を、供給電圧の再利用又は復帰に際して後から行える。
真空ポンプ10、111又は能動型の磁気軸受部の制御装置は、さらに、供給電圧の復帰ごとに、ロータ12、149の静止状態で能動型の磁気軸受部の以前のスイッチオフが行われていたかチェックできる。そのために、データ識別子が不揮発性メモリに設けられてよく、不揮発性メモリに、ロータ12、149が停止動作するとき、能動型の磁気軸受部の通常動作で、通常動作時のシャットダウン事象についての第1の値が割り当てられる。データ識別子は、ロータが回転し始めるたびに第2の値にリセットされる。データ識別子が、供給電圧の復帰に際して最初の値を有しないとき、おそらく、最後のシャットダウンが通常動作で行われていないだろう。
真空ポンプ10、111の運転パラメータが、継続的に又は少なくとも規則的に特定の時間間隔で不揮発式に記憶されるとき、供給電圧の喪失後に、後から摩耗増加量315-1、315-2、315-3を算定し、メモリ320において、総摩耗についての変数325に追加できる。しかし、このプロセスは、一方では不揮発式に、他方では常に又は少なくとも極めて頻繁にデータを記憶しなければならないメモリ320に高い要求を課す。したがって、メモリ320の予想耐用期間は、これが真空ポンプ10、111の総耐用期間を、安全軸受摩耗又は真空ポンプ10、111の他の構成要素の劣化よりも強く制限することがないように、十分に長くなければならない。
方法300を実行するとき、安全軸受摩耗に関与する前述の各プロセスについて、それぞれ個々の部分摩耗増加量は、可能な限り直接にメモリ320に記憶され得る。これにより、あらゆる時点で、総安全軸受摩耗の現在の状態が記憶されていて、これは、通信可能である。このことは、実際の安全軸受動作に加えて供給電圧の完全な喪失が生じるとき、例えばユーザが設備の非常停止によって所望されないトラブルシューティングを施し、次いで、場合によってはロータ12、149の十分な運転時間が残っていない、又は現在の摩耗増加量を記憶するための十分なエネルギが残っていないときでも有利である。
以下、図8の方法ステップ340、350、370及び390の反復的な実行を、一例に基づいて詳説する。これらの方法ステップの反復的な実行は、再安定化試行の繰り返しの実行に対応し、その間、ステップ390で生じる待機時間が反復ごとに増加する。
真空ポンプ10、111の制御装置は、付加的に、再安定化試行の反復的な実行の制御において使用される2つのカウンタを有する。第1のカウンタは、2つの再安定化試行の間の待機時間390を確定し、他方、第2のカウンタは、トラブル事象(図8のステップ310)の検出後の再安定化試行の回数を反映する数値を得る。真空ポンプ10、111の通常運転時に、つまりトラブル事象が発生しない限り、第1のカウンタ及び第2のカウンタは、まずは0で初期化される。
第1のカウンタに、第1のポンプ固有値が割り当てられている。各再安定化試行の開始時に、第1のポンプ固有値に第2のカウンタの現在値が乗算され、第1のカウンタに割り当てられる。第2のカウンタは、再安定化試行の回数を反映するので、これにより、後で詳説するように、再安定化試行の間の期間又は遅延が漸次延長される。
第1のポンプ固有値は、例えば10から99の範囲にあり、本数値例では10である。したがって、本例では、再安定化試行の間の待機時間は、第2の再安定化試行以降、10の倍数だけ漸次延長される。
増加後に、第1のカウンタは、毎秒1ずつ減少され、原則的に、第1のカウンタが0に等しいときにのみ再安定化試行が行われる。これにより、第1のカウンタは、再安定化試行の間の遅延又は待機時間390を制御する。
310(図8参照)においてトラブル事象が検出されると、直ちに、制御装置は、それぞれの短い期間の後で、例えば毎秒、再安定化試行を実行しようとする。しかし、その都度の再安定化試行は、第1のカウンタが0に等しいときにのみ実行されるので、その都度の再安定化試行は、第1のカウンタによって遅延できる。
第2のカウンタは、0で初期化されていて、第1のカウンタに、第1のポンプ固有値と第2のカウンタの値との積が割り当てられるので、第1のカウンタは、第1の再安定化試行の後でなお0に等しい。したがって、第1の再安定化試行の直後に第2の再安定化試行を行える。
これに続いて、第2のカウンタは、第2のポンプ固有値で増加され、この値は、例えば1から9の範囲にあり、本数値例では1である。したがって、本例では、第2のカウンタは、トラブル事象後に再安定化試行をカウントし、したがって、第1の再安定化試行後では1に等しい。
第1の再安定化試行が成功すると、真空ポンプ10、111は、通常運転に移行し、その際、第1のカウンタ及び第2のカウンタは、再び0にセットされる。しかし、第1の再安定化試行が失敗すると、1秒後に第2の再安定化試行が行われる。というのも、第1のカウンタが、依然として0に等しいからである。第2の再安定化試行の開始時に、本例では、まず第1のカウンタに値10が割り当てられ、つまり第2のカウンタの現在値1に第1のポンプ固有値10が乗算され、続いて、第2のカウンタが2に増加される。
第2の再安定化試行が成功すると、真空ポンプは、再び通常運転に移行し、一方、第1のカウンタ及び第2のカウンタは、再び0にセットされる。しかし、第2の再安定化試行が失敗すると、第3の安定化試行までの待機時間は、10秒である。というのも、第1のカウンタの値10が毎秒1ずつ減少され、第1のカウンタが再び0に等しいとき、ようやく次の再安定化試行が行われるからである。
トラブル事象が10秒後に依然として継続するとき、第3の再安定化試行が行われ、その際、第1のカウンタに、値20が割り当てられ、第2のカウンタは、第3の再安定化試行が失敗したときには値3を得る。その他の場合には、両方のカウンタは、再び0に等しい。
第3の再安定化試行が失敗した後では、第1のカウンタが0に等しく、更なる再安定化試行を行えるまで20秒かかる。したがって、2つの更なる再安定化試行の間の待機時間390は、再安定化試行が失敗するごとに、第1のポンプ固有値に対応する数の秒数だけ延長される。換言すると、新たな再安定化試行は、再安定化試行が失敗するごとに「魅力がなくなる」。
前述した複数の再安定化試行を反復して実行するとき、真空ポンプ10、111についての運転設定値の特定のセット330(図8参照)が用いられる。セット330には、例えば運転設定値「真空ポンプの運転を維持する」及び「再安定化試行を漸次遅らせる」が含まれる。これに対応して、再安定化試行は、ロータ12、149の完全停止動作をまずは阻止するために、反復的に実行され、しかも、次の再安定化試行までの待機時間は、再安定化試行が失敗するごとに長くなる。
1つ又は複数の静的な運転設定値、例えば「安全軸受動作をできるだけ長く回避する、安全軸受動作の期間をできるだけ短く維持する」に対して代替的に又は付加的に、運転設定値のセット330は、動的に適合可能で動作状態に反応する複数の運転設定値又は規則のセットを含んでよい。これらの運転設定値は、予め固定に設定されてよく、真空ポンプ10、111の運転状態又はユーザ設定値による優先順位に応じて変更してよい。さらに、運転設定値は、適応アルゴリズム又は自己学習アルゴリズムによって実行及び適合できる。
安全軸受動作の開始時には、真空ポンプ10、111の制御装置又は能動型の磁気軸受部の制御について、トラブル事象の保持及び経過が不明である。しかし、どの摩耗増加量315-2が、ロータ12、149の完全停止動作の最悪の場合に生じるか知られている。さらに、前述したように、再安定化試行によってそれぞれ付加的に生じる摩耗増加量315-3を推定できる。安全軸受動作を引き起こしたトラブルの種類及び重大度も、センサデータに基づいて知ることができる。
例えばユーザの設定値として、運転設定値のセット330には、さらに、真空ポンプ10、111の通気、ひいては迅速な外部の制動が可能であるか、又は設備電圧供給部へのエネルギフィードバックが可能であるか、ひいてはロータ12、149の発電制動が組み込まれた負荷抵抗なしで又は負荷抵抗を介して行えるかも含まれる。運転設定値のセット330の一部は、さらに、真空ポンプ10、111がその中に位置する真空設備の性質によって、又は直接にユーザによって設定されてよい。例えば相反する設定値「真空ポンプの運転を必ず維持する」又は「安全軸受摩耗を最小限に抑える」が含まれてよく、これらの設置値は、ユーザによって及び/又は真空設備又は真空ポンプ10、111の現在の運転状態に応じて優先付けられる。
運転設定値「真空ポンプの運転を必ず維持する」については、通常のように安全軸受動作で一般的にロータ12、149の駆動を停止させるのではなく、例えばプロセスバッチの中断、及びこれにより生じるその後のコストを回避するために、ロータを必要な限りできるだけ長く運転回転数で維持することが合理的であり得る。さらに、設備制御部は、場合により予備真空ポンプを運転回転数にする、及び/又は予備真空ポンプの弁スライダを真空設備へ向けて開き、これと同時に該当する真空ポンプを遮断するための時間を必要とし、これにより、真空システム内で安定維持される真空圧が保証される。トラブル事象が持続するとき、運転設定値「真空ポンプの動作を必ず維持する」は、特定の期間の後ではあまり重要でなくなり、別の運転設定値、例えば「設備及び真空ポンプをできるだけ迅速に停止させる」が、より高い優先度を有する。
運転設定値「真空ポンプをできるだけ迅速に停止させる」は、再安定化が行われないことを前提としている。その代わり、安全軸受動作と、これによりロータ12、149から取出し可能な回転エネルギは、安全軸受摩耗を犠牲にして、ロータ12、149における制動効果を最大化し、真空ポンプ10、111の停止を可能な限り短時間で行う可能性をなす。
極端な例をなす前述の運転設定値の他に、複数の別の運転設定値、例えば「絶対に可能な限り迅速に再安定化する」又は「安全軸受摩耗を最小限に抑えながらロータ回転数の少なくとも半分を維持する」が可能である。しかし、特別な周辺条件が存在しないとき、通常、運転設定値のセット330について「最適化された標準状態」が設定され、その主要目標は、僅かな安全軸受摩耗である。以下、そのような運転設定値のセット330の詳細を記載する。
トラブル事象が生じると、まず、トラブル事象が継続しているか又は収束しているかチェックされる。トラブル事象をもはや認識できないとき、再安定化試行が行われる。その際、再安定化試行の摩耗増加量315-3が、潜在的な完全停止動作の摩耗増加量315-2よりも小さくなければならないという規則が適用される。ロータ12、149の回転数が既に極めて低いとき、例えば真空システムがスイッチオフされ、誤って真空ポンプ10、111が停止する前に既に動かされる間は、ロータ12、149の完全停止動作は、安全軸受摩耗に関してより好ましい。これに対して、再安定化試行は、極めて低い回転数では、安全軸受動作を伴う更なるトラブル事象を再び招くおそれがあり、これは、更なる摩耗増加量315-1、315-2、315-3を生成する。
再安定化が成功しなかったとき、以前の試行から経過した時間が少ないほど、次の試行も失敗する確率が高くなる。というのも、例えばトラブル事象がまだ収束していない、又はロータ12、149が真空ポンプ10、111の不都合な設置姿勢で過度に多くの回転エネルギを有し、したがって、能動型の磁気軸受部の既存の手段による安定化が実行できないからである。両方のケースで、トラブル事象の終了を待つ、又は回転数又は回転エネルギの減少を待つのが好ましい。
トラブル終了は、例えば前述したセンサを用いて能動的に検出される。さらに、例えば所定の値又は運転回転数の一部として特定される値の分だけ、回転数、ひいては回転エネルギの減少を待ってよい。さらに、再安定化試行中の待機時間390を設定できる、又は運転回転数に依存して特定できる。前述の事象の1つ又は組合せが、新たに再安定化試行を惹起し、これは、今度は、この時点で予期される摩耗増加量315-3が、ロータ12、149の残りの停止動作についての摩耗増加量315-2より小さいときにのみ行える。代替的に、再安定化試行は、真空設備の運転状況によって又はユーザによって相応の要求が行われると、直ちに惹起される。