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JP2022039999A - クランクプーリ装置 - Google Patents

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JP2022039999A
JP2022039999A JP2021128810A JP2021128810A JP2022039999A JP 2022039999 A JP2022039999 A JP 2022039999A JP 2021128810 A JP2021128810 A JP 2021128810A JP 2021128810 A JP2021128810 A JP 2021128810A JP 2022039999 A JP2022039999 A JP 2022039999A
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friction
crank pulley
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JP2021128810A
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Inventor
利夫 今村
Toshio Imamura
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Mitsuboshi Belting Ltd
Original Assignee
Mitsuboshi Belting Ltd
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Abstract

【課題】予め潤滑剤を封入せずとも、作動時に異音等の問題を解消し、補機駆動ベルトシステムにおいて、エンジン始動等によりクランク軸へ過大なトルクが入力される際に生じるベルト張力の過大な増加やベルト張力の過大な変動を効果的に抑制できるクランクプーリ装置を提供する。【解決手段】エンジンのクランク軸211に相対回転可能に同心配置された内輪2と外輪5との間で回転トルクの伝達を行うクランクプーリ装置1であって、内輪2と外輪5とは、クラッチ機構部3と渦巻ばね4とを介在させて連結されており、クラッチ機構部3は、内輪2に対して摩擦係合する摩擦板34・35と、摩擦板34・35を付勢する皿ばね32とを備え、摩擦板34・35は、内輪2から所定以上の回転トルクが加わった際に摩擦係合が解除され、内輪2を摺動する摩擦係数を有し、渦巻ばね4は、クラッチ機構部3と外輪5との間に介装されている。【選択図】図3

Description

本発明は、エンジンのクランクシャフトに取り付けられるクランクプーリ装置に関する。
自動車等のエンジンのクランクシャフトには、オルタネータ等の補機類を駆動するためのベルトが巻き掛けられるクランクプーリ装置が取り付けられている。
一般に、自動車等のエンジンのクランクシャフトは、気筒内の爆発力によって回転力が付与されるので、その回転速度に変動が生じる。そして、このようなクランクシャフトの回転速度の変動が補機駆動ベルトシステムに伝達されると、それに伴いベルトの走行速度も変動する。そのため、補機の駆動軸に連結されたプーリとベルトとの間でスリップが生じたり、ベルトの張力が大きく変動したりする。このようなベルトのスリップや張力の変動は、ベルトの異音の発生やベルト等他の部分の寿命低下等の原因となる。また、ベルトのスリップを防止するために、当該ベルトの初期張力を比較的高く設定することがあり、この場合には、クランクシャフトの回転抵抗が増大し、エンジンの燃費性能を低下させることもあった。
クランクシャフトの回転速度変動は、各気筒における燃焼爆発時期に同期して生じるものである。このため、エンジン始動によるクランキング動作中(間欠的動作中)の各気筒における燃焼爆発時において、クランクシャフトの回転速度変動は、クランクシャフトの常用回転域など通常トルクの入力時よりも過大なトルクをクランクシャフトに入力させる。特にクランキング初期段階に過大なトルクをクランクシャフトに入力させる。つまり、エンジン始動による過大トルク入力時に、クランクシャフトの回転速度変動は最大化し、上記通常トルク入力時よりもベルトの張力が過大に増加するとともに、ベルトの張力が過大に変動する問題等、ベルト等他の部分への影響が顕在化し易くなる。特に、最近は、信号待ち等のアイドル状態でエンジンを停止させ、このアイドルストップ後にエンジンを再始動するシステムを備えた車両が増加しており、エンジン停止・再始動の頻度が顕著に増加したことに伴い、上記問題がより顕在化する虞があった。
このため、特許文献1には、上記のような頻繁なエンジン始動によりクランクシャフトへ過大なトルクが入力され、頻繁に、ベルトの張力が過大に増加するとともに、ベルトの張力が過大に変動する問題に対応すべく、内輪11と、外輪12と、内輪の外周に設けられたカム面21と、外輪の内周に設けられ、カム面に向けてスライド自在に設けられると共にばねで付勢されたピストン22と、を備えてなるカム機構部13を介して連結することにより、補機駆動ベルトシステムにおいて、エンジン始動等によりクランクシャフト(以下、クランク軸という)へ過大なトルクが入力される際に生じるベルト張力の過大な増加やベルト張力の過大な変動を効果的に抑制できるクランクプーリ装置、が提案されている。
特開2019-65917号公報
しかしながら、従来(特許文献1)のクランクプーリ装置では、カム機構部における金属部材同士(ピストンとカム面)が圧接状態で摺動するように構成されているため、カム機構部の動作が繰り返された際に、(1)異音(キーキー音等の摺動音)、(2)カム面におけるピストン先端部が圧接状態で摺動する部分の異常摩耗、ならびに、(3)ピストンとシリンダーとの焼き付き、等の問題が生じるのを防止するため、予め(組付け段階で)、潤滑剤(グリース)をカム機構部に封入しておく必要があった。もし、潤滑剤をカム機構部に封入しなかった場合、装置の作動時に、カム機構部において異音や異常摩耗等の問題が発生するおそれがあった。
本発明は、予め潤滑剤を封入せずとも、装置の作動時に、異音等の問題を解消し、補機駆動ベルトシステムにおいて、エンジン始動等によりクランク軸へ過大なトルクが入力される際に生じるベルト張力の過大な増加やベルト張力の過大な変動を効果的に抑制できるクランクプーリ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、エンジンのクランク軸上に相対回転可能に同心配置された内輪と外輪との間で回転トルクの伝達を行うクランクプーリ装置であって、
前記クランク軸に取り付けられる前記内輪と前記外輪とは、クラッチ機構部とダンパ機構部とを介在させて連結されており、
前記クラッチ機構部は、前記内輪に対して摩擦係合する摩擦板と、前記摩擦板を付勢する弾性部とを備え、前記摩擦板は、前記内輪から所定以上の回転トルクが加わった際に前記摩擦係合が解除され、前記内輪を摺動する摩擦係数を有し、
前記ダンパ機構部は、伸縮可能なばね部材であり、前記クラッチ機構部と前記外輪との間に介装されている。
上記構成によれば、下記(I)及び(II)の効果を発揮する。
(I)クランク軸の駆動状態において、所定未満の回転トルクがクランク軸に伝達される場合、すなわち、クランク軸からクランクプーリ装置への通常トルク入力時は、クラッチ機構部において、弾性部に付勢された摩擦板と内輪とが強く摩擦係合したロック状態に維持され、且つ、ダンパ機構部において、ばね部材が伸縮変形(渦巻ばねなら、拡径変形又は縮径変形)する際に自己弾性復元力が作用することによって、クランク軸の(通常の)回転速度変動が効果的に緩和される。これにより、外輪に巻き付けられるベルトの張力の(通常の)変動が効果的に抑制されつつ、内輪から外輪へ回転トルクが円滑に伝達される。
(II)クランク軸の駆動状態において、所定以上の回転トルクがクランク軸に伝達される場合、すなわち、クランク軸からクランクプーリ装置への過大トルク入力時は、クラッチ機構部において、弾性部に付勢された摩擦板と内輪とが強く摩擦係合したロック状態から、摩擦係合が解除されて、摩擦板が内輪を摺動(スリップ)する係合解除状態に移行することによって、通常の回転トルクよりも過大な回転トルクを、クランク軸に取り付けられた内輪から外輪に伝達されないようにする。すなわち、その間、内輪と外輪との間に係合作用がほとんど働かない状態で内輪と外輪とが顕著に相対回転する。その結果、内輪から外輪へ伝達されるトルクのうち、通常トルクよりも過大なトルクが伝達されない。そのため、エンジン始動等によりクランク軸へ過大なトルクが入力される際に生じる、外輪に巻き付けられたベルトの張力の過大な増加やベルトの張力の過大な変動を効果的に抑制できる。
そして、上記(I)の効果を発揮する際には、クラッチ機構部において、ロック状態が維持される(係合解除状態にはならない)ことから、摩擦による異音の問題は生じない(特許文献1では、通常トルク入力時でも、ピストンがカム面を摺動して異音が発生していた)。
また、本発明は、上記クランクプーリ装置において、前記摩擦板が、非金属性の摩擦材であってもよい。
上記構成によれば、上記(II)の効果を発揮する際に(係合解除状態に移行し、摩擦板が内輪を摺動(スリップ)する際に)、摩擦板が金属部材である場合に比べて、摩擦による異音を抑制することができる。そのため、クラッチ機構部およびダンパ機構部に、金属部材同士が圧接状態で摺動するように構成された部分が存在しないようにすることができる。これにより、予めクラッチ機構部およびダンパ機構部に潤滑剤(グリース)を使用(封入、塗布等)する必要はなく、クランクプーリ装置の作動中に異音や異常摩耗等の問題が発生するのを防止することができる。
また、本発明は、上記クランクプーリ装置の前記クラッチ機構部において、前記内輪と前記摩擦板とが摩擦係合又は摺動する、係合面は、前記内輪、前記外輪、前記クラッチ機構部、及び、前記ダンパ機構部とを連結させるために必要な隙間を除いて、密閉されていてもよい。
上記構成によれば、係合面に油等の異物が侵入しないようにして、異物の混入による、伝達トルクの低下や伝達トルクの不適当な水準での遮断動作・異音を防止することができる。これにより、予め潤滑剤を使用(封入、塗布等)せずとも、クランクプーリ装置の作動時に、遮断動作・異音等を防止することができる。
予め潤滑剤を封入せずとも、装置の作動時に、異音等の問題を解消し、補機駆動ベルトシステムにおいて、エンジン始動等によりクランク軸へ過大なトルクが入力される際に生じるベルト張力の過大な増加やベルト張力の過大な変動を効果的に抑制できるクランクプーリ装置を提供することができる。
本実施形態に係るクランクプーリ装置を含む補機駆動ベルトシステムの概略構成図である。 本実施形態に係るクランクプーリ装置の全体図(組立図)である。(a)正面図、(b)右側面図、(c)背面図 本実施形態に係るクランクプーリ装置のI-I断面図である。 本実施形態に係るクランクプーリ装置のII-II断面図である。 本実施形態に係るクランクプーリ装置の、内輪及びクラッチ機構部の分解図である。 本実施形態に係るクランクプーリ装置の、外輪及び渦巻ばねを主体とする構成の分解図である。 比較例2、参考例1に係るクランクプーリ装置の断面図(特許文献1の図2)である。(比較例2:特許文献1の第1実施形態、カム機構部への潤滑剤封入なし)(参考例1:特許文献1の第1実施形態、カム機構部への潤滑剤封入あり) エンジンベンチ試験機の概略構成図である。
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るクランクプーリ装置1について説明する。
本実施形態のクランクプーリ装置1は、例えば、図1に示す補機駆動ベルトシステム201に適用することができる。
(補機駆動ベルトシステム201)
補機駆動ベルトシステム201は、図1に示すように、エンジンのクランク軸211に取り付けられたクランクプーリ装置1と、オルタネータ(ALT)の軸218に接続されたオルタネータプーリ212と、エアコン・コンプレッサ(AC)に接続されたACプーリ213とを有する。また、クランクプーリ装置1とオルタネータプーリ212とのベルトスパン間に、オートテンショナ(A/T)214が設けられる。
エンジンの出力は、Vリブドベルトのような1本のベルト215を介して、クランクプーリ装置1から時計回りに、オルタネータプーリ212、ACプーリ213に対してそれぞれ伝達されて、オルタネータ、エアコン・コンプレッサの各補機が駆動される。
(クランクプーリ装置1)
クランクプーリ装置1は、図2及び図3に示すように、エンジンのクランク軸211に取り付けられる内輪2と、内輪2に対して相対回転可能に同心配置される外輪5と、内輪2と外輪5との間に介在されて連結されている、クラッチ機構部3及び渦巻ばね4(ダンパ機構部)とを備えている。このクランクプーリ装置1では、エンジンのクランク軸211に取り付けられた内輪2と外輪5との間で回転トルクの伝達を行う。
なお、エンジンのクランク軸211に沿った方向(以下、軸方向)の一端側(クランクプーリ装置1の背面側)を後側(後)、軸方向の他端側(クランクプーリ装置1の正面側)を前側(前)とし、クランクプーリ装置1の径方向の一方(外方)を外側(外)、径方向の他方(内方)を内側(内)とする(図3等参照)。
(内輪2)
内輪2は、図3~図5に示すように、エンジンのクランク軸211が一体回転可能に取り付けられる筒状のボス部21と、ボス部21の後端から径方向外方に延びたリング状の外延部22とを有している(断面L字状に形成されている:図3参照)。
ボス部21の前端(外周面)には、周方向に延びる凹溝23(後述するスナップリング66を係止する溝)が形成されている。また、ボス部21の内周面には、軸方向に延びる凹溝210(クランク軸211を取付けるためのキー溝)が形成されている(図4参照)。
(外輪5)
外輪5は、円筒状のプーリ部材であり、図3~図6に示すように、内筒部51と、内筒部51の外側に配置された外筒部52と、内筒部51の前端と外筒部52の前端とを連結する円環板部53とを有する(断面コ字状に形成されている:図3参照)。また、外筒部52の外周には、ベルト215が巻き掛けられるベルト溝521が形成されている。
内筒部51、外筒部52、及び円環板部53で囲まれた空間54内に、渦巻ばね4とクラッチ機構部3の一部(第1ホルダー37の筒部371)とが収容されている。また、内筒部51には、渦巻ばね4の内端部41(後述)を係止するための切欠511が1カ所形成されている(図4参照)。
(内輪2と外輪5との支持形態)
外輪5の径方向に関しては、図3に示すように、外輪5は、滑り軸受63を介して内輪2(外周面)に相対回転可能に支持されている。この滑り軸受63は、予め(クランクプーリ装置1への組付け前に)、外輪5の内筒部51の内周面に相対回転不能に圧入されている。これにより、外輪5と内輪2との相対回転時には、滑り軸受63の内周面が内輪2(外周面)に対して摺動する。
外輪5の軸方向に関しては、図3及び図6に示すように、外輪5は、外輪5の前側に配置される、スナップリング66、押え板65、及び、摩擦板64と、外輪5の後側に配置される、皿ばね61、押え板62、及び、滑り軸受63により、軸方向に移動不能に支持されている。
スナップリング66は、内輪2のボス部21の前端(外周面)に形成された凹溝23に嵌合し、外輪5の軸方向の位置決めの基点となるC形状の平座金である。
押え板65は、スナップリング66の後面に係止されて、摩擦板64を支持する、円環板状に形成された平座金である。
摩擦板64は、押え板65と外輪5(前面)との間に前後方向に挟まれる、円環板状に形成された非金属製の摩擦材である。摩擦板64の材質は、後述する摩擦板34・35と同じである。これにより、外輪5と内輪2との相対回転時には、摩擦板64の後面が外輪5(前面)に対して摺動する。
皿ばね61は、自己弾性力を有するばね部材であり、前後方向(軸方向、皿ばね61の高さ方向)に圧縮させた状態で、内輪2におけるボス部21(外面)と外延部22(前面)とが接続する隅部24に係合させることにより、前後方向に拡大する自己弾性復元力が働き、外輪5及び滑り軸受63を前側に付勢する(押し付ける)。これにより、摩擦板64と外輪5(前面)との摺動面、ならびに、押え板62と滑り軸受63との摺動面に、適度な摩擦力(外輪5を軸方向に移動不能に維持できる程度の摩擦力)を与える。
押え板62は、皿ばね61と滑り軸受63(縁部632)との間に挟まれる、円環板状に形成された平座金である。
滑り軸受63は、外輪5の内筒部51の内周面に圧入(内嵌)されて、外輪5と一体回転可能に取り付けられる基部631と、基部631の後端から外側に延びて、外輪5(内筒部51)の後面に接触する縁部632とを有する(断面L字状に形成されている:図3参照)、金属製軸受(所謂メタル軸受)である。
また、滑り軸受63の摺動面(内輪2と接触する基部631の内周面、及び、押え板62と接触する縁部632の後面)は、ポリ四フッ化エチレンの潤滑材を含有する樹脂組成物(低摩擦材)で構成されている。これにより、滑り軸受63と内輪との相対回転時には、押え板62の前面が滑り軸受63(縁部632の後面)に対して摺動する。
(渦巻ばね4:ダンパ機構部)
渦巻ばね4は、図3及び図6に示すように、外輪5の内筒部51、外筒部52、及び円環板部53で囲まれた空間54内に収容され、外輪5(内筒部51)とクラッチ機構部3(第1ホルダー37)との間に介装している。この渦巻ばね4は、内輪2と外輪5との間で伝達される回転トルクの変動を吸収する役割を果たす。
渦巻ばね4(ばね数1)は、帯状のばね材を渦巻形に巻いたものである。また、内端部41が略90°内側に折り曲げられており、外端部42が略90°外側に折り曲げられている(図4、図6参照)。渦巻ばね4は、例えば2~4巻きに形成されており、その材質や寸法等は、渦巻ばね4が変形(拡径変形又は縮径変形)する際に有効な自己弾性復元力を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。
例えば、渦巻ばね4の材質を、ばね用オイルテンパー線(JISG3560:2017に準拠)にして、寸法を、ばね線の厚み6mm、ばね線の幅25mm、巻き径(外径)100mmにして、巻き数を2巻き半にして、巻き方向を前側(クランクプーリ装置1の正面側)からみて、右巻き(内端部41から外端部42に向かう際、時計回り)にする。
また、渦巻ばね4は、内端部41が、外輪5の内筒部51に形成された切欠511(図4参照)に相対回転不能に連結されており、外端部42が、クラッチ機構部3の第1ホルダー37の筒部371に形成された切欠372(図4、図5参照)に連結されている。また、渦巻ばね4は、クランクプーリ装置1への組付け段階で、プリロード(巻締め動作等)は不要であり付与されていない。また、渦巻ばね4が変形(拡径変形又は縮径変形)する際に自己弾性復元力が作用する。
なお、ダンパ機構部としては、伸縮可能なばね部材であれば、ねじりコイルばね、板状のばね部材(板ばね)、皿状のばねを使用してもよい。本実施形態のクランクプーリ装置1の場合、エンジンレイアウト上、比較的(例えばオルタネータプーリ装置と比べて)、径方向長さ(外径)の制約は小さく、軸方向(前後方向)長さの制約は大きい。そのため、軸方向(前後方向)長さを径方向長さ(外径)よりも小さくしなければならない。このため、クランクプーリ装置1用として有効にダンピング機能を発揮させるために、ダンパ機構部を形成するばね部材(ばね数1の場合)は、軸方向(前後方向)長さを径方向長さ(外径)よりも小さくし難い「ねじりコイルばね」とはせず、軸方向(前後方向)長さを径方向長さ(外径)よりも小さくし易い「渦巻ばね」とする方がよい。なお、ねじりコイルばねを採用する場合は、周方向に複数配置(ばね数は例えば4)を余儀なくされ、部品点数が増加する場合がある。
(クラッチ機構部3)
クラッチ機構部3は、図3及び図5に示すように、皿ばね32(弾性部)で付勢された1対の摩擦板34・35が内輪2(外延部22)に対して摺動可能に摩擦係合するように(圧接された状態に)構成されている。具体的には、内輪2(外延部22)の前側には、第1ホルダー37、及び、摩擦板35が配置され、内輪2(外延部22)の後ろ側には、第2ホルダー31、皿ばね32、押え板33、及び、摩擦板34が配置される。このクラッチ機構部3は、内輪2と外輪5との間の過大な回転トルクの伝達を遮断する。
第1ホルダー37は、外側に延びる外縁部373と、外縁部373の内端から前側に延びる(前側に延びて折り返される二重構造の)筒部371と、筒部371の後端から内側に延びる円環板部374と、円環板部374の内端から後側に折り曲げられた内縁部375とからなる、鋼板製のプレス加工部材である。この鋼板製のプレス加工部材の厚さは例えば1.6~2.3mm(実施例1は2.0mm)である。また、プレス加工部材の材質は、例えば、比強度が比較的大きい高張力鋼板である。なお、実施例1では、自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板(SPFC)を使用している。
また、外縁部373には、リベット38を挿通するための貫通孔376が周方向に複数(実施例1は等分8カ所)形成されている。また、筒部371には、渦巻ばね4の外端部42を係止するための切欠372が1カ所形成されている(図4、図5)。また、円環板部374の後面には、摩擦板35を相対回転不能に係止するための凸部377が周方向に複数(実施例1では等分8カ所、摩擦板35の前面に形成された複数の凹部351と嵌合)形成されている。
また、内縁部375は、クランクプーリ装置1の組立状態で、その後端面と内輪2(外延部22)との間の間隙が僅か(例えば0.4mm程度)となるように形成されている。これは、特には摩擦板35と内輪2(外延部22)との係合面(クラッチ係合面)に、外部からの異物(油、砂等)が侵入するのを極力抑制するためである。
摩擦板35は、第1ホルダー37(円環板部374)と内輪2(外延部22)との間に前後方向に挟まれる、円環板状に形成された非金属製の摩擦材である。摩擦板35の前面には、凹部351が周方向に複数(実施例1では等分8カ所、第1ホルダー37の円環板部374の後面に形成された複数の凸部377と嵌合)形成されている。また、摩擦板35の材質は、例えば、ドラムブレーキ装置に使用される周知のブレーキライニングなどの摩擦材料(フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をマトリクスとする繊維強化複合材料)で全体を形成してもよく、あるいは、上記のような摩擦材料で摩擦板35の後面(係合面:クラッチ係合面)を被覆してもよい(実施例1では摩擦材料で摩擦板35全体を形成)。これにより、摩擦板35と内輪2との相対回転時には、摩擦板35の後面が内輪2(外延部22の前面)と摺動可能となる。
第2ホルダー31は、外側に延びる外縁部311と、外縁部311の内端から後側に延びる筒部312と、筒部312の後端から内側に延びる円環板部313と、円環板部313の内端から前側に折り曲げられた、周方向に形成された複数の内縁部314(図5参照)と、内縁部314と周方向に隣接して形成された複数の切欠315(図3、図5参照)とからなる、鋼板製のプレス加工部材である。この鋼板製のプレス加工部材の厚さ、材質は、第1ホルダー37と同じである。
また、外縁部311には、リベット38を挿通するための貫通孔316が周方向に複数(実施例1では等分8カ所)形成されている。また、内縁部314及び切欠315は、内周に周方向に交互に複数(実施例1では共に等分6カ所、切欠315は、押え板33の内周に形成された複数の爪331と嵌合)形成されている。
また、内縁部314は、クランクプーリ装置1の組立状態で、その前端面と内輪2(外延部22)との間の間隙が僅か(例えば0.4mm程度)となるように形成されている。これは、特には摩擦板34と内輪2(外延部22)との係合面(クラッチ係合面)に、外部からの異物(油、砂等)が侵入するのを極力抑制するためである。
皿ばね32は、自己弾性力(伸縮可能)を有するばね部材であり、前後方向(軸方向、皿ばね32の高さ方向)に圧縮させた状態で、第2ホルダー31における筒部312(内面)と円環板部313(前面)とが接続する隅部317に係合させることにより、前後方向に拡大する自己弾性復元力が働き、摩擦板34を付勢することにより、摩擦板34と摩擦板35との間(一対の摩擦板34・35の間)に挟まれた、内輪2(外延部22)を付勢する(押し付ける)。これにより、摩擦板35と内輪2(外延部22の前面)との係合面(クラッチ係合面)、ならびに、摩擦板34と内輪2(外延部22の後面)との係合面(クラッチ係合面)に、適度な摩擦力(詳細には、クランク軸211への通常トルク入力に、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが強く摩擦係合したロック状態に維持され、クランク軸211への過大トルク入力時に、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが摺動(スリップ)する係合解除状態に変化させ得る水準の摩擦力)を与える。なお、皿ばね32は、自己弾性力(伸縮可能)を有する弾性材であればよく、コイルばねでも、ゴム部材でもよい。
押え板33は、皿ばね32の前面に係止されて、摩擦板34を支持する、円環板状に形成された平座金である。押え板33の前面には、押え板33に対して、摩擦板34を相対回転不能に係止するための凸部332が周方向に複数(実施例1では等分8カ所、摩擦板34の後面に形成された複数の凹部341と嵌合)形成されている。
また、押え板33の内周には、爪331が周方向に複数(実施例1では等分6カ所、第2ホルダー31の内周に形成された複数の切欠315と嵌合)形成されている。
摩擦板34は、押え板33と内輪2(外延部22)との間に前後方向に挟まれる、円環板状に形成された非金属製の摩擦材である。摩擦板34の後面には、凹部341が周方向に複数(実施例1では等分8カ所、押え板33の前面に形成された複数の凸部332と嵌合)形成されている。摩擦板34の材質は、摩擦板35と同様に、例えば、ドラムブレーキ装置に使用される周知のブレーキライニングなどの摩擦材料(フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂をマトリクスとする繊維強化複合材料)で全体を形成してもよく、あるいは、上記のような摩擦材料で摩擦板34の前面(係合面:クラッチ係合面)を被覆してもよい(実施例1では摩擦材料で摩擦板34全体を形成)。これにより、摩擦板34と内輪2との相対回転時には、摩擦板34の前面が内輪2(外延部22の後面)と摺動可能となる。
ここで、摩擦板34・35(あるいは係合面)は、皿ばね32によって付勢された状態で、内輪から所定以上の回転トルクが加わった場合(後述:エンジン始動等によりクランク軸211へ入力されるトルクが通常時よりも過大な場合)に、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)との摩擦係合が解除され、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが摺動(スリップ)する摩擦係数を有する、非金属製の摩擦材が選択される。
リベット38は、第1ホルダー37の貫通孔376と第2ホルダー31の貫通孔316とに通されて、一体回転可能に接合され、第1ホルダー37と第2ホルダー31との間の空間を準密閉構造とするための接合部材である(実施例1では、8個使用(材質:リベット用丸鋼))。
上記構成により、クラッチ機構部3は、摩擦板35と内輪2(外延部22の前面)との係合面(クラッチ係合面)、ならびに、摩擦板34と内輪2(外延部22の後面)との係合面(クラッチ係合面)に、油等異物が侵入しないよう、準密閉構造にしている。これにより、内輪2と外輪5との間での伝達トルクの低下や伝達トルクの不適当な水準での遮断動作を防止することができる(クラッチ機構部3の効果が低下することを防止)。
(クランクプーリ装置1の動作)
図1に示す補機駆動ベルトシステム201にクランクプーリ装置1を組み入れた場合のクランクプーリ装置1の動作について、エンジンのクランク軸211の常用回転域などクランク軸211へ入力されるトルクが通常の範囲内の場合と、エンジン始動等によりクランク軸211へ入力されるトルクが上記通常時よりも過大な場合とに分けて説明する。
(I.クランク軸の常用回転域などクランク軸へ入力されるトルクが通常の範囲内の場合)
クランク軸211へ入力されるトルクが通常の範囲内の場合、下記(i)、(ii)2つの場合がある。
(i)内輪2の回転速度が外輪5の回転速度より速くなった場合(内輪2が加速する場合)
内輪2の回転速度が外輪5の回転速度より速くなった場合、内輪2は、外輪5に対して回転方向(図4の矢印方向)と同じ方向に相対回転する。
クランクプーリ装置1に外力が付与されていない状態(静止時)を起点とすると、渦巻ばね4が拡径変形する。
そして、この渦巻ばね4が拡径変形すると、縮径方向の自己弾性復元力が次第に増加し、内輪2と外輪5との相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力が内輪2と外輪5との間に付与される。
この時、クランク軸211へ入力されるトルクが通常の範囲内につき、クラッチ機構部3(クラッチ係合面)において、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが摺動(スリップ)しない程度の摩擦係合作用で、内輪2と外輪5とが周方向に弾性的に相対回転しながら内輪2から外輪5へ正(正回転方向)のトルクが伝達される。
これにより、従来(特許文献1)のクランクプーリ装置と同様に、ベルト215の張力変動を抑制することができる。
(ii)内輪2の回転速度が外輪5の回転速度より遅くなった場合(内輪2が減速する場合)
内輪2の回転速度が外輪5の回転速度より遅くなった場合、内輪2は、外輪5に対して回転方向(図4の矢印方向)と逆方向に相対回転する。
クランクプーリ装置1に外力が付与されていない状態(静止時)を起点とすると、渦巻ばね4が縮径変形する。
そして、この渦巻ばね4が縮径変形すると拡径方向の自己弾性復元力が次第に増加し、内輪2と外輪5との相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力が内輪2と外輪5との間に付与される。
この時、クランク軸211へ入力されるトルクが通常の範囲内につき、クラッチ機構部3(クラッチ係合面)において、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが摺動(スリップ)しない程度の摩擦係合作用で、内輪2と外輪5とが周方向に弾性的に相対回転しながら内輪2から外輪5へ負のトルクが伝達される。
これにより、従来(特許文献1)のクランクプーリ装置と同様に、ベルト215の張力変動を抑制することができる。
(II.エンジン始動等によりクランク軸211へ入力されるトルクが上記通常時よりも過大な場合)
クランク軸211へ入力されるトルクが上記通常時よりも過大な場合、内輪2の回転速度が外輪5の回転速度より顕著に速くなる(内輪2が急加速する)。
そうすると、渦巻ばね4が拡径変形し、縮径方向の自己弾性復元力が増加し、内輪2と外輪5との相対回転により生じた位相差を解消する方向の回動付勢力が内輪2と外輪5との間に付与される。
この時、クランク軸211へ入力されるトルクが上記通常トルクよりも過大なため、クラッチ機構部3(クラッチ係合面)において、1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが摺動(スリップ)する。そして、この摺動後、再び1対の摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが強く摩擦係合したロック状態に転じ始めるまでの間、内輪2と外輪5との間に摩擦係合作用がほとんど働かない状態になり、内輪2と外輪5とが顕著に相対回転する(つまり、内輪2は急加速状態のまま空転し、外輪5は急加速しない)。
その結果、内輪2から外輪5へ伝達されるトルクのうち、通常トルクよりも過大なトルクが伝達されない。
これにより、従来(特許文献1)のクランクプーリ装置と同様に、エンジン始動等によりクランク軸211へ過大なトルクが入力される際に生じるベルト215の張力の過大な増加やベルト215の張力の過大な変動を効果的に抑制することができる。
なお、上記動作IIの場合に含まれるが、クランク軸211の過大な回転変動(例えば、突発故障によるエンジン停止)により、内輪2の回転速度が外輪5の回転速度より顕著に遅くなった場合(内輪2が急減速した場合)でも、内輪2は急減速状態のまま空転し、外輪5の急減速を回避できるため、補機駆動ベルトシステム201への影響を抑制可能である。
上記構成によれば、下記(I)及び(II)の効果を発揮する。
(I)クランク軸211の駆動状態において、所定未満の回転トルクがクランク軸211に伝達される場合(クランク軸の常用回転域などクランク軸へ入力されるトルクが通常の範囲内の場合)、クラッチ機構部3において、皿ばね32に付勢された摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが強く摩擦係合したロック状態に維持され、且つ、渦巻ばね4が伸縮変形(拡径変形又は縮径変形)する際に自己弾性復元力が作用することによって、クランク軸211の(通常の)回転速度変動が効果的に緩和される。これにより、外輪5に巻き付けられるベルト215の張力の(通常の)変動が効果的に抑制されつつ、内輪2から外輪5へ回転トルクが円滑に伝達される。
(II)クランク軸211の駆動状態において、所定以上の回転トルクがクランク軸211に伝達される場合(エンジン始動等によりクランク軸211へ入力されるトルクが上記通常時よりも過大な場合)、クラッチ機構部3において、皿ばね32に付勢された摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが強く摩擦係合したロック状態から、摩擦係合が解除されて、摩擦板34・35が内輪2(外延部22)を摺動(スリップ)する係合解除状態に移行することによって、通常の回転トルクよりも過大な回転トルクを、クランク軸211に取り付けられた内輪2から外輪5に伝達されないようにする。すなわち、その間、内輪2と外輪5との間に係合作用がほとんど働かない状態で内輪2と外輪5とが顕著に相対回転する。その結果、内輪2から外輪5へ伝達されるトルクのうち、通常トルクよりも過大なトルクが伝達されない。そのため、エンジン始動等によりクランク軸211へ過大なトルクが入力される際に生じる、外輪5に巻き付けられたベルト215の張力の過大な増加やベルト215の張力の過大な変動を効果的に抑制できる。
そして、上記(I)の効果を発揮する際には、クラッチ機構部3において、ロック状態が維持される(係合解除状態にはならない)ことから、摩擦による異音の問題は生じない(特許文献1では、通常トルク入力時でも、ピストンがカム面を摺動して異音が発生する。
また、上記構成によれば、摩擦板34・35は、非金属性の摩擦材であることから、上記(II)の効果を発揮する際に(係合解除状態に移行し、摩擦板34・35が内輪2(外延部22)を摺動(スリップ)する際に)、摩擦板34・35が金属部材である場合に比べて、摩擦による異音を抑制することができる。そのため、クラッチ機構部3および渦巻ばね4に、金属部材同士が圧接状態で摺動するように構成された部分が存在しないようにすることができる。これにより、予めクラッチ機構部3および渦巻ばね4に潤滑剤(グリース)を使用(封入、塗布等)する必要はなく、クランクプーリ装置1の作動中に異音や異常摩耗等の問題が発生するのを防止することができる。
また、上記構成によれば、クラッチ機構部3において、摩擦板34・35と内輪2(外延部22)とが摩擦係合又は摺動する、係合面(クラッチ係合面)は、内輪2、外輪5、クラッチ機構部3、及び、渦巻ばね4とを連結させるために必要な隙間を除いて、密閉されている。これにより、係合面(クラッチ係合面)に油等の異物が侵入しないようにして、異物の混入による、伝達トルクの低下や伝達トルクの不適当な水準での遮断動作・異音を防止することができる。これにより、予め潤滑剤を使用(封入、塗布等)せずとも、クランクプーリ装置1の作動時に、遮断動作・異音等を防止することができる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、図4、図6に示すように、ダンパ機構部を形成する渦巻ばね4の巻き方向を前側(クランクプーリ装置1の正面側)からみて右巻き(内端部41から外端部42に向かう際、時計回り)としていたが、渦巻ばね4の巻き方向を前側(クランクプーリ装置1の正面側)からみて左巻き(内端部41から外端部42に向かう際、反時計回り)としてもよい。
次に、上記実施形態のクランクプーリ装置1を実施例1とし、実施例1のクランクプーリ装置1に対して、クラッチ機構部3における、1対の摩擦板34・35に対する皿ばね32の付勢力を大きくしたクランクプーリ装置を比較例2とし、特許文献1の第1実施形態(図7、特許文献1の図2に相当)に記載された従来のクランクプーリ装置を比較例2とし、比較例2のクランクプーリ装置のカム機構部に潤滑剤を封入しておいたものを参考例1として、各供試体(実施例1、比較例1、比較例2、及び、参考例1)のクランクプーリ装置を、図8のベルトシステムに取り付けて、エンジン始動試験を行い、各供試体に対して評価を行った。
(実施例1)
実施例1は、上記実施形態に記載したクランクプーリ装置1である。詳細な構成については、上記実施形態において記載している。
(比較例1)
比較例1は、下記以外の構成は、実施例1のクランクプーリ装置と同じである。
実施例1と異なる点は、クラッチ機構部3における、1対の摩擦板34・35に対する皿ばね32の付勢力(皿ばね32の前後方向に拡大する自己弾性復元力)であり、比較例1のクランクプーリ装置の皿ばね32は、実施例1の皿ばね32の付勢力100(指数)に対し、付勢力を200(指数)にしたことである。
従って、エンジン始動等によりクランク軸211へ入力されるトルクが通常時よりも過大となった場合(前述のIIの場合)でも、クラッチ機構部(クラッチ係合面)において、1対の摩擦板と内輪(外延部)とが摺動(スリップ)する係合解除状態に変化するクラッチ機構を作動させることができず、1対の摩擦板と内輪(外延部)とが強く摩擦係合したロック状態が維持される。
なお、渦巻ばね(ダンパ機構部)については、実施例1と同じ構成である。このため、クランク軸211の常用回転域などクランク軸211へ入力されるトルクが通常の範囲内の場合(前述のIの場合)は、実施例1と同様の動作が為されるようになっている。
(比較例2:図7、特許文献1の図2)
比較例2は、金属部材同士が圧接状態で摺動するように機構部(ダンパ機構部およびクラッチ機構部)が構成された、従来のクランクプーリ装置である、特許文献1の第1実施形態(図7、特許文献1の図2)において、カム機構部に潤滑剤を封入しなかったものである。
(参考例1:図7、特許文献1の図2参照)
参考例1は、比較例2の従来のクランクプーリ装置(特許文献1の第1実施形態(図7、特許文献1の図2))において、予め、カム機構部に潤滑剤を封入しておいたものである。
(評価試験)
上記各供試体(実施例1、比較例1、比較例2、及び、参考例1)のクランクプーリ装置を、図8のエンジンベンチ試験機200に取り付けて、エンジン始動試験を行った。このエンジン始動試験で、エンジン始動時の下記評価項目について、時系列に検出、記録し、実施例1と他例との評価結果を比較して、本発明の効果の検証を行った。なお、クランクプーリ径は、全て140mmである。
・第1評価項目は、ベルト張力(張り側)である。
・第2評価項目は、エンジン始動動作中の問題発生有無である。
(試験機)
図8に示すエンジンベンチ試験機200は、図1の補機駆動ベルトシステム201を含む試験装置であって、エンジン210のクランク軸211に取り付けられたクランクプーリ装置1(実施例1、比較例1、比較例2、及び、参考例1)と、オルタネータ(ALT)の軸218に接続されたオルタネータプーリ212と、エアコン・コンプレッサ(AC)に接続されたACプーリ213とを有する。また、クランクプーリ装置1とオルタネータプーリ212とのベルトスパン間に、オートテンショナ(A/T)214が設けられる。
エンジンの出力は、1本のベルト(Vリブドベルト)215を介して、クランクプーリ装置1から時計回りに、オルタネータプーリ212、ACプーリ213に対してそれぞれ伝達されて、各補機(オルタネータ、エアコン・コンプレッサ)は駆動される。
(計測装置)
図8において、ベルト張力の検出は、張り側B部ベルトスパン間(図1参照)のベルト背面に押し当てたアイドラプーリ(不図示)の軸に取り付けたひずみ計(不図示)により、軸ひずみを検出し、これを電気信号に変換する。
上記ひずみ計で検出された軸ひずみの電気信号は、PC(不図示)の演算制御部に送られ、当該演算制御部により、ベルト張力(データ)に演算される。最終的に、PCの演算制御部により、クランクプーリ装置(外輪)のベルト張力データは、デジタル表示可能な液晶画面などからなる表示部に数字表示されるとともに、デジタル出力され記録される。なお、PCは、操作盤(タッチパネル)、演算制御部、及び、表示部を備えたパーソナルコンピュータである。
また、人間(熟練した試験員)の聴感による官能試験(クランクプーリ装置より30cm離れた位置で、耳で聞いて判定)等により、エンジン始動動作中の異音等問題の有無を評価した。
(条件)
雰囲気温度25℃、ベルトの初期張力400Nにて、エンジンの始動(クランキング)試験を行った。雰囲気温度は、実車によるエンジン始動時を想定した温度である。
(エンジン始動動作)
電子制御装置(不図示)からエンジン始動信号がスタータモータ(不図示)に送られ、スタータモータが起動し、クランキングが始まる。このとき(各気筒における燃焼爆発前)の、クランク軸の回転速度は200rpm程度である。 電子制御装置から燃料噴射信号および点火信号が燃料噴射装置(不図示)および着火装置(不図示)に送られ、各気筒における燃焼爆発が順々に開始される。
各気筒における燃焼爆発時期に同期して、クランク軸211の回転速度が上昇してゆく。クランク軸211の回転トルク(動力)がクランクプーリ装置(外輪)に伝達されて、更に、ベルト215を介して、オルタネータプーリ212、及び、ACプーリ213に対してそれぞれ伝達される。
エンジンが始動されると、スタータモータによるクランキング動作が停止する。
(評価結果)
評価結果を、表1に基づいて説明する。
・クランキング終了時(約1秒後)のベルト張力は、各供試体のいずれも500N程度であった。
・ベルト張力およびベルト張力変動の抑制効果
具体的な、気筒内爆発時のベルト張力の値より、特に、2発目の気筒内爆発時のベルト張力およびベルト張力変動の大きさに関する、実施例1と比較例1との差異量は、800Nである。これは、実施例1の比較例1に対するベルト張力およびベルト張力変動の抑制効果に相当する。その抑制効果は約32%に達する。
なお、実施例1、比較例2、及び、参考例1については、気筒内爆発時のベルト張力の値は同水準であった。
・エンジン始動動作中の問題発生有無
比較例2については、エンジン始動動作中(潤滑剤のカム機構部への封入無しに、カム機構部の動作が繰り返された際)に、異音(キーキー音)の発生が認められた。
(評価結果)
Figure 2022039999000002
(考察)
1)クランクプーリ(外輪)の回転速度およびベルト張力(張り側B部のベルト張力)は、クランキング中(約1秒間)の各気筒における燃焼爆発中、特に、1発目の気筒内爆発時と2発目の気筒内爆発時において、最も過大に増加し、かつ最も過大に変動することがわかった。
2)この1発目の気筒内爆発時と2発目の気筒内爆発時に着目すると、クランクプーリ(外輪)の回転速度およびベルト張力(張り側B部のベルト張力)の大きさおよび変動幅は、実施例1の方が比較例1の場合よりも顕著に小さく、ベルト張力の過大な増加やベルト張力の過大な変動を効果的に抑制できていることがわかった。
3)ダンパ機構部及びクラッチ機構部を備えるクランクプーリ装置であっても、金属部材同士が圧接状態で摺動するように構成されたクランクプーリ装置(比較例2、参考例1)においては、上記機構部に予め潤滑剤を封入しておかなかった場合(比較例2)、エンジン始動動作中に異音(キーキー音)が発生し、上記機構部に予め潤滑剤を封入しておいた場合(参考例1)は、エンジン始動動作中に異音(キーキー音)等の問題が発生しないことがわかった。
なお、比較例2について、さらにエンジン始動動作等が頻繁に繰り返された場合、異音のみならず、機構部(カム面)の異常摩耗や、ピストンとシリンダーとの焼き付き等の問題が顕在化することが推察される。
また、上記機構部(ダンパ機構部及びクラッチ機構部)に金属部材同士が圧接状態で摺動するように構成された部分が存在しないクランクプーリ装置(実施例1、比較例1)においては、エンジン始動動作中に異音(キーキー音)等の問題が発生しないことがわかった。
(得られた効果)
実施例1において、エンジン始動時には、異音等の問題を生じさせることなく、内輪から外輪へ伝達されるトルクのうち、通常トルクよりも過大なトルクは伝達されない結果となった。これは、機構部(ダンパ機構部及びクラッチ機構部)に金属部材同士が圧接状態で摺動するように構成された部分が存在しないこと、ならびに、通常トルクの入力時よりも過大なトルクがクランク軸に入力された際に、内輪と外輪との間に摩擦係合作用がほとんど働かない状態で内輪を急加速状態のまま空転させて、外輪を急加速させないこと、が可能であったためと考えられる。
結果として、予め潤滑剤を封入せずとも、装置の作動時に、異音等の問題を生じさせることなく、補機駆動ベルトシステムで特に問題となる、エンジン始動によりクランクシャフトへ過大なトルクが入力される際に生じるベルト張力の過大な増加やベルト張力の過大な変動を効果的に抑制できることが伺えた。
1 クランクプーリ装置
2 内輪
3 クラッチ機構部
31 第2ホルダー
32 皿ばね
33 押え板
34 摩擦板
35 摩擦板
37 第1ホルダー
38 リベット
4 渦巻ばね
5 外輪

Claims (3)

  1. エンジンのクランク軸上に相対回転可能に同心配置された内輪と外輪との間で回転トルクの伝達を行うクランクプーリ装置であって、
    前記クランク軸に取り付けられる前記内輪と前記外輪とは、クラッチ機構部とダンパ機構部とを介在させて連結されており、
    前記クラッチ機構部は、前記内輪に対して摩擦係合する摩擦板と、前記摩擦板を付勢する弾性部とを備え、前記摩擦板は、前記内輪から所定以上の回転トルクが加わった際に前記摩擦係合が解除され、前記内輪を摺動する摩擦係数を有し、
    前記ダンパ機構部は、伸縮可能なばね部材であり、前記クラッチ機構部と前記外輪との間に介装されている、ことを特徴とするクランクプーリ装置。
  2. 前記摩擦板は、非金属性の摩擦材であることを特徴とする、請求項1に記載のクランクプーリ装置。
  3. 前記クラッチ機構部において、前記内輪と前記摩擦板とが摩擦係合又は摺動する、係合面は、前記内輪、前記外輪、前記クラッチ機構部、及び、前記ダンパ機構部とを連結させるために必要な隙間を除いて、密閉されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクランクプーリ装置。
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