以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として苗を移植する移植機10を示す左側面図であり、図2は右側面図、図3は背面図、図4は正面図であると共に、図5は平面図である。
なお、以下の説明では、操縦ハンドル404を配置した側を後とし、その反対側、すなわちエンジン41を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
本実施の形態の移植機10は、図1から図5に示すとおり、機体を前進走行可能とする走行車体40と、走行車体40の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル404と、圃場に苗を植え付ける植付装置42と、植付装置42に苗を供給する苗供給装置43を備えている。
走行車体40は、機体前部にミッションケース39を設け、該ミッションケース39の前側に駆動装置であるエンジン41を設ける。前記ミッションケース39の左右両側の機体後側下部には、後輪となる走行輪44の左右位置を変更するトレッド調節が可能な車軸を覆う車軸カバー101が各々連結され、該車軸カバー101の機体外側端部には、機体後側に設ける走行輪44に駆動力を伝動する走行伝動ケース38を各々上下回動可能に装着する。
なお、左右の走行輪44は、走行伝動ケース38の機体外側に装着するものとする。
より正確には、左右の車軸カバー101が内部の車軸(図示省略)を支点として回転可能に装着され、これらの車軸カバー101に走行伝動ケース38を各々装着し、後述する昇降用油圧シリンダ300やローリングシリンダの伸縮により車軸カバー101が回転することで、走行伝動ケース38が上下回動する構成である。
そして、図1から図5、及び図10に示すとおり、前記ミッションケース39から伝動されて植付装置42及び苗供給装置43に駆動力を分岐供給する伝動ケース26に、少なくとも該伝動ケース26の左右側面と背面を覆うベースプレート400を設け、該ベースプレート400の後部にフレームステー401をボルト、ナット等の締結部材を介して着脱可能に設ける。そして、該フレームステー401に、機体後側上方に向かって円弧を描く形状で突出するハンドルフレーム402を設け、該ハンドルフレーム402の後部には、車高の上下調節や走行及び植付作業の伝動の入切等を操作する操縦部ユニット403を設けると共に、苗の植付を行わない移動時等に作業者が機体を操作する際に把持する操縦ハンドル404を設ける。該操縦ハンドル404はハンドルフレーム402を中心として機体左右方向で且つ機体後方に向かって屈曲する形状であり、左右の後部側には、前記走行輪44への伝動を入切するサイドクラッチ操作レバー405を各々設けている。また、操縦ハンドル404のうち、左右どちらか一側には、エンジン41の出力を増減操作する第1スロットルレバー406を設ける。
そして、前記ハンドル404の左右間には、操縦パネル47aを設け、該操縦パネル47aに、昇降用油圧シリンダ300を伸縮操作して走行車体40の車高を調節する車高調節レバー123と、左右の走行伝動ケース38及び伝動ケース26への駆動力の伝動を入切する主クラッチレバー125と、エンジン41の始動の可否を切り替えると共に停止操作を行う第1エンジンスイッチ407と、走行車体40の走行伝動を移動速、植付作業速、走行中立及び後進のいずれかに切り替える主変速レバー150を設ける。
エンジン41の始動を許可するときは、作業者は該第1エンジンスイッチ407を押し込んで回転させて入位置に操作する。これにより、エンジン41の始動操作が行われると、エンジン41が始動する。なお、エンジン41の始動は、セルスタータを用いるものでも、リコイルスタータを用いるものでもよい。また、エンジン41以外の駆動装置、例えば電動モータで作動するものであるときでも、第1エンジンスイッチ407が入位置にあるときに電動モータへの通電が行われて始動する構成とする。
エンジン41を停止させるときは、作業者が前記第1エンジンスイッチ407を軽く押し込むと、内装されたトルクバネ(図示省略)の力で切位置に切り替わり、これによりエンジン41が停止状態になる。
切操作時は第1エンジンスイッチ407を軽く押し込むだけでよいので、走行及び植付を即座に止めることができる。これにより、畝端に到達したときにすぐに走行と植付が停止するので、畝でない箇所での苗の植付動作が防止され、余分に消費される苗が減少する。また、次の植付作業を行う畝に機体を移動させる際、余分な移動が生じないので、燃料消費や作業時間が軽減される。
前記操縦ハンドル404の機体前側で、且つ伝動ケース26の上部には、後述する、作業者が投入する苗を左右の植付ホッパ20a,20bに搬送する苗供給装置43が設けられている。該苗供給装置43の後部と、ハンドルフレーム402の後側上部で且つ操縦パネル47aの前側に設ける補強連結ステー151に亘って、操縦ハンドル404及び苗供給装置43付近の強度を向上させると共に振動を低減させる、前後方向の補強フレーム152を設ける。
前記走行車体40は、一つの畝での苗の植付作業が終わると、作業者は機体の進行方向後側に移動し、旋回内側の操縦ハンドル404及びサイドクラッチ操作レバー405を把持して旋回内側の走行輪44への伝動を遮断して走行車体40を旋回操作し、次の植付作業条の始端側に移動する。このとき、作業者は操縦ハンドル404を把持したまま下方に向かって体重をかけて、走行車体40の機体前側を圃場面から上方に離間させることで、旋回走行を行いやすくする。
前記ミッションケース39の機体前側で且つ左右両側には、正面断面視でコの字形状のバンパー支持フレーム108を機体前側に突出させて設ける。そして、該左右のバンパー支持フレーム108の前方には、機体前側に突出するバンパー109を設ける。
なお、図6から図8に示すとおり、バンパー109は、板体の機体前側と左右両側を下方に折り曲げたバンパープレート109aと、該バンパープレート109aの上面に着脱可能なフロントウエイト109bと、バンパープレート109aから左右方向に延びるバンパーロッド109cで構成している。該フロントウエイト109bは、鉄等の比較的重量があり且つ硬度の高い素材の塊で構成し、バンパープレート109aよりも機体前側に突出する形状とする。
これにより、重量と硬度を有する塊であるフロントウエイト109bが最も機体前方に突出するので、障害物に接触したときにバンパープレート109aまで損傷が及ぶことを防止できる。
前記左右のバンパー支持フレーム108の機体前側で、且つ機体下部側には機体下側が開口部となる凹部(図示省略)を形成し、これらの凹部に、機体左右方向を長手方向とする前部梁フレーム110を差し込んで固定する。
該前部梁フレーム110を設けることにより、左右のバンパー支持フレーム108とミッションケース39とで機体前側にも四角形にフレームが組み上げられるので、機体前側の強度が向上する。特に、バンパー109が障害物に接触した際、前部梁フレーム110に左右のバンパー支持フレーム108を差し込んで固定しているので、左右のバンパー支持フレーム108の後部側に破損や衝撃が伝播しにくくなる。
また、ミッションケース39を機体に組み付ける際、左右のバンパー支持フレーム108の凹部を前部梁フレーム110に差し込んでから左右方向に移動させることにより、ミッションケース39の前後位置を固定したうえで左右位置を調節できるので、ミッションケース39の取付位置のずれにより組立作業が滞ることが防止される。
なお、前記ミッションケース39の前側で且つ左右一側に前記エンジン41の後部を積載し、エンジン41の前部は、前部梁フレーム110の左右中央部付近に配置するエンジンマウントに積載する構成とするが、エンジン41が配置される側のバンパー支持フレーム108とエンジン41は、上下方向に間隔を空けて配置する構成とする。即ち、バンパー支持フレーム108は、エンジン41を下方から受ける部材ではない。
上記構成により、バンパー109が障害物に接触したときの衝撃が、バンパー支持フレーム108からエンジン41に伝播することを防止できるので、エンジン41が破損することや、衝撃により作動不良を起こすことを防止できる。
また、バンパー支持フレーム108が衝撃で変形しても、エンジン41の積載状態に影響を及ぼしにくい構成となり、バンパー109が破損してもエンジン41の動力で作業や移動を行うことができる。
そして、前記バンパープレート109aの左右両側には、バンパーロッド109cを装着する左右方向の凹部を有するステップ支持プレート111を各々装着する。該左右のステップ支持プレート111は、前記前部梁フレーム110の機体後側で且つ左右両側に各々設ける補強アーム112を介して支持する構成とする。
該左右のステップ支持プレート111の上面は平坦であり、走行車体40の機体左右一側、即ち機体左側においては、作業者が機体前側から乗り降りする際に足を乗せる前側搭乗ステップ113の機体前側部分を装着する。一方、機体左右他側、即ち機体右側には、植付ホッパ20a,20bが植え付ける苗同士の前後間隔、所謂株間を設定する、株間主変速レバー801と株間副変速レバー802、及び主変速レバー150が植付速に操作されているときに、第1植付速または第2植付速を選択する植付変速レバー803を支持する、株間切替カバー114を形成する。
該前側搭乗ステップ113は、機体前側で且つ上下方向下側に位置する下部足載せ部113aと、下部足載せ部113aよりも機体後側で且つ上下方向上側に位置する上側足載せ部113bと、下部足載せ部113aと上側足載せ部113bの上下間に位置し、機体外側方向に向かって捻れて傾斜する中間傾斜部113cで構成される。下部足載せ部113aの表面には、滑り止め突起113dを複数形成するものとし、中間傾斜部113cは、乗り降りの際に作業者が足を心理的に乗せにくい傾斜角度で、且つ下部足載せ部113aと上側足載せ部113bの間で移動するときに跨いで通過される前後長さとする。
一方、該株間切替カバー114は、機体前側で且つ上下方向下側に位置する下側台部114aと、下側台部114aよりも機体後側で且つ上下方向上側に位置する上側台部114bと、下側台部114aと上側台部114bの上下間に位置し、機体外側方向に向かって捻れて傾斜すると共に、株間主変速レバー801と株間副変速レバー802、及び主変速レバー150が各々移動する移動溝を形成したレバー装着部114cで構成される。
なお、前記前側搭乗ステップ113と株間切替カバー114は左右対称な形状であり、機体左右一側に設けるものを株間切替カバー114とし、機体左右他側に設けるものを前側搭乗ステップ113としてもよい。
そして、前記上側足載せ部113b及び上側台部114bの機体後側には、機体側方から作業者が乗り降りすると共に、作業時の足場となる側部ステップ118を各々設ける。該側部ステップ118は、枠内に縦横に板体を配置して複数の空間部を形成しており、作業者の靴底に付着した土を下方に落下させる構成とする。また、前記左右の側部ステップ118の左右間には、搭乗する作業者の足場となる中央ステップ119を着脱可能に設ける。
以上により、フロアステップ122が構成される。
前側搭乗ステップ113、株間切替カバー114、左右の側部ステップ118及び中央ステップ119の取付は、各々独立して行う、即ち、一つの取付部材(ボルト等)で共締めしないものとする。これにより、部分的なメンテナンス作業時に各ステップ構成体を取り外す際、別のステップ構成体を取り外す必要が無く、メンテナンス作業の能率が向上する。
前記前側搭乗ステップ113の前側下部には、前側搭乗ステップ113への乗り降りの際に作業者が足を乗せる、乗降補助機構170を装着する。該乗降補助機構170は、機体外側に位置する、側面視でL字形状であり、屈曲部分より機体下側に機体前方に突出する第1突出部171aを有する外側支持アーム171と、機体内側に位置する、正面視でL字形状であり、屈曲部分より機体下側に機体外側に突出する第2突出部172aを有する内側支持アーム172と、第1突出部171aと第2突出部172aに亘って設ける乗降補助ステップ173で構成する。
前記外側支持アーム171は、ステップ支持プレート111と共に、共締めボルト174…で共締めして走行車体40に装着する。また、前記内側支持アーム172は、バンパープレート109aと共に、共締めボルト174…で共締めして走行車体40に装着する。
これにより、共締めボルト174…で複数の部材を締め込む構成となるので、走行車体40の機体前側付近の強度の向上が図られ、作業者の乗り降りの際に係る荷重による耐久性の低下が軽減される。
また、乗降補助ステップ173を設けたことにより、畝の高さ等に合わせて走行車体40の車高を高くしていても、作業者は乗降補助ステップ173に足を乗せ、前側搭乗ステップ113の下側足載せ部113aに足を段階的に載せて乗り込むと共に、逆の動作により降りることができるので、乗り降りの際に足を高く上げる必要や、多少なりとも飛び降りる必要が無く、作業者の身体への負担が軽減される。
そして、乗降補助ステップ173を、第1突出部171aと第2突出部172aに亘って設けたことにより、乗降補助ステップ173の左右幅内に外側支持アーム171と内側支持アーム172が位置しないので、作業者の足が外側支持アーム171と内側支持アーム172に接触することが防止される。
一方、走行車体40の車高を下降させたときや植付作業中は、前記乗降補助機構170は不要になるだけでなく、車高によっては畝面や畝の法面に接触して畝を崩し、苗の植付精度を低下させるおそれがある。
これを防止すべく、外側支持アーム171と内側支持アーム172の基部をダブルナット(図示省略)で装着し、共締めボルト174…を回動支点として外側支持アーム171と内側支持アーム172を回動可能に装着して、乗降補助機構170を上下回動可能に構成するとよい。
上記構成により、不要な時には乗降補助機構170を畝面から離間する上方に回動させることができるので、乗降補助機構170が畝を崩すことが防止され、苗の植付精度が維持される。
図1から図8に示すとおり、前記株間切替カバー114の下部には、自重により下方回動して畝面に接触し、走行車体40が畝の端に到達して接地しなくなるとさらに下方回動し、圃場端に到達したことを作業者に知らせる報知装置181を作動させる、畝端センサ182を支持する、畝端センサステー182aを設ける。該報知装置181は、走行車体40の各部に装着するブザーやランプ、あるいは、作業者の情報端末(タブレット、スマートフォン等)に通知する通信装置とする。
該畝端センサ182は、センサアーム183を回動可能に設け、該センサアーム183の下部に畝面接地ローラ184を回転可能に装着し、センサアーム183を下方に付勢する接地付勢スプリング185を設けると共に、センサアーム183の基部には、所定角度以上になると入(あるいは切)になる畝端検知スイッチ186を設けて構成する。該接地付勢スプリング185は、長孔に沿って角度調節可能な検知調節プレート187に上端部側を装着し、畝高さに合わせて作動する角度を変更可能に構成する。
この畝端センサ182は、苗の植付作業走行の開始時、走行車体40の車高調整により畝面に接地させる。回転自在な畝面接地ローラ184を接地させていることにより、畝面を崩しにくく、且つ微細な凹凸を均すことができ、苗の植付精度の向上が図られる。
そして、走行車体40が前進を続けて畝の端部に到達し、畝面接地ローラ184が畝面に接触しなくなると、接地付勢スプリング185の付勢力と、センサアーム183と畝面接地ローラ184の自重により、センサアーム183が下方回動して、畝端検知スイッチ186が押されない状態となる。畝端検知スイッチ186が押されなくなると、報知装置181に通電されることにより、報知装置181が作動し、作業者に走行車体40の機体前端付近が畝端に到達したことを報知する。
なお、畝端センサ182が畝端を検知した時点では、畝にはまだ数株分の植付スペースが残っているので、作業者は機体を即座に停止させるのではなく、残りの植付スペースに植え付けられる数の苗を苗供給装置43に投入しつつ、停止操作を準備する。
これにより、作業者は背後を振り返ることなく畝端への接近を知ることができるので、苗を畝上に植え付け終えるタイミングで機体を停止させることができ、余分な走行による燃料の消費や、次の作業条への移動距離が長くなることが防止される。
また、畝端が近付いた際、苗供給装置43に投入する苗の数を調整できるので、植付作業走行の停止操作が遅れて植付ホッパ20a,20bが植付動作を行っても、畝でない箇所に苗が放出されることが防止される。
なお、図4、図6及び図7に示すとおり、前記センサアーム183を左右一対のセンサアーム183a,183aとし、畝面接地ローラ184を左右の畝面接地ローラ184a,184aを各々回転可能に装着し、左右の畝端検知スイッチ186,186を各々設ける構成としてもよい。
これにより、左右のセンサアーム183,183のどちらか一方が下方回動して対応する畝端検知スイッチ186,186の一方が押されない状態になると、報知装置181が作動することにより、畝端が風雨により崩れて形状が乱れていても畝端が検知されやすく、作業者による植付作業走行停止操作がタイミングよく行える。
また、走行車体40の機体前側の左右両側で、且つ走行輪44よりも機体前側には、前部梁フレーム110の下部側に設けられて機体左右方向に突出する横フレーム16を介して、転動自在に支持した前輪45を設ける。
そして、前記走行伝動ケース38の前部の回動軸心位置には、ミッションケース39から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース39内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が走行伝動ケース38内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は走行伝動ケース38内の伝動機構を介して、走行伝動ケース38の伝動車軸に伝動し、走行輪44が駆動回転する構成としている。
また、前記走行伝動ケース38には、走行伝動ケース38の前部側を回動支点として走行輪44を上下させる、上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、走行伝動ケース38のミッションケース39への取付部には、上方に延びるアーム13が一体的に取り付けられており、アーム13がミッションケース39に固定された昇降用油圧シリンダ300のピストンロッド先端に取り付けた連結体の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、連結ロッドで連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に対応して伸縮作動可能な左右制御用油圧シリンダで連結している。
昇降用油圧シリンダ300が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右のアーム13は後方に回動し、これに伴い走行伝動ケース38が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ300のピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右のアーム13は前方に回動し、これに伴い走行伝動ケース38が上方に回動して、機体が下降する。
この昇降用油圧シリンダ300は、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動に伴って動作する畝面センサ14によって作動する。畝面センサ14の動作は機体の位置を基準とした畝上面高さを検出する動作となり、その畝面センサ14の検出動作に基づいて機体を畝上面高さに対応して設定高さになる構成で昇降用油圧シリンダ300が作動する構成としている。
また、左右水平制御用油圧シリンダが伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダと連結する左側のアーム13が回動して、左側の走行輪44のみを上下動させ、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダは、左右水平を基準として機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて作動して、機体を左右水平にする構成としている。
図1、図2及び図5に示すとおり、前記横フレーム16は、前部梁フレーム110に前後方向の軸中心にローリング回動可能に装着されており、該横フレーム16の左右両側部には、上下に長い縦フレーム17を装着する。そして、左右前輪45は、縦フレーム17の下端部側方に固着した前輪車軸18に回転自在に取り付けられている。従って、左右前輪45は、機体の左右中央の前後方向の軸心回りにローリング回動自在となっている。また、横フレーム16の左右両側部を基準として、縦フレーム17が上下調節可能に設けられており、前輪45の高さ調節をすることが出来る構成としている。
前記操縦ハンドル404は、機体後部に設けられており、走行輪44の伝動車軸より機体後側に位置している。具体的には、ミッションケース39に前端部を固定した機体フレーム19の後端部に取り付けられている。
機体フレーム19は、機体の左右中央で後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。
操縦ハンドル404は、機体フレーム19の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル404のグリップ部としている。
なお、図2では、グリップ部を左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル404の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
植付装置42は、先端が下方に向かう嘴状の複数の植付具と、植付具の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに植付具を上下動させる上下動機構21と、嘴状の植付具の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と植付具の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能とする開状態とに植付具を開閉する開閉機構とを備える。
図1から図5に示すとおり、本実施の形態の植付装置42は、第1植付ホッパ20aと第2植付ホッパ20bを左右に並べて配備した、二条植の構成としている。これらの第1植付ホッパ20a及び第2植付ホッパ20bは、ミッションケース39から伝動される伝動ケース26の左右両側部に設けられた上下動機構21に各々装着されている。
各苗収容体22は、上下に開口する筒状体と、その筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋とを有し、互いにループ状に連結している。
移動機構23は、連結した各苗収容体22が左右の植付ホッパ20a,20bの上方近傍を通過する状態で、機体平面視で左右に長い長円形状のループ状の軌跡で、連結した苗収容体22を左回りに周回動させる。
苗落下機構は、苗収容体22の底蓋を、その苗収容体22に対応する、植付ホッパ20a,20bの上方位置で開放する。
本実施の形態では、苗収容体22の外周に円筒外周部を形成し、その円筒外周部に外側から回動自在に接続する係合部(丸孔)を設けて、2つの苗収容体22を連結する連結体を複数形成した。そして、その連結体の係合部を苗収容体22の円筒外周部に回動自在に接続し、その円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体22が回動自在に連結する状態として、複数の苗収容体22を互いに連結した構成としている。すなわち、苗収容体22と連結体とで無端チェーンの如く連結した構成である。
これにより、苗収容体22は、直線的に移動する直線状部分28でも円弧状に移動する円弧状部分29でも隣接する苗収容体22との間隔が変わらないので、苗収容体22から左右の植付ホッパ20a,20bに苗を供給する個所で、苗収容体22の左右の植付ホッパ20a,20bを基準とした位置ズレが生じ難くなり、苗供給が適正に行われて適確な苗の植え付けが出来る。
苗供給装置43の移動機構23は、無端チェーンの如く互いに連結する苗収容体22を、左右に設けたスプロケットの外周の円弧状切欠部に巻き掛け、この左右のスプロケットを伝動ケース26内から取り出した動力で駆動回転することにより、各苗収容体22を周回動させる構成としている。
苗収容体22が周回する周回移動経路は、平面視で左右方向に延びる直線状部分28と、スプロケットにより直線状部分28から前側または後側に円弧状に曲がる円弧状部分29とを備えた長円状であり、左右の走行輪44より機体内側に配置されている。
前記苗供給装置43の苗収容体22は、直線状部分28では比較的安定して所定方向に移動するが、左右両側部の円弧状部分29では、苗収容体22同士の間隔が狭まったり広くなったりして、苗供給装置43の駆動に負荷を与えて破損させたり、苗の落下供給タイミングが不安定になったりするおそれがある。これを防止すべく、複数の苗収容体22の内周縁部で、且つ苗供給装置43の左右両外側部には、駆動回転するスターホイル240,240を各々設けており、該スターホイル240,240の外周縁部には等間隔に突起部が形成されている。これらの突起部を苗収容体22の間隔部に入り込ませることで、苗供給装置43の左右両側の円弧状部分29を通過するときの各苗収容体22の位置を各々保つことにより、過負荷の発生や、苗の落下供給タイミングのズレの発生を防止している。
作業者は、作業座席46に着座、あるいはフロアステップ122上に立って苗供給装置43に苗の供給作業を行うが、補充用の苗が無くなったときや何らかの問題、例えば苗の植付姿勢が連続して異常、苗が植え付けられない等、が生じたときは、走行車体40の走行の停止や、植付ホッパ20a,20bの駆動を止める必要がある。また、作業者のペースよりも走行速度や植付ホッパ20a,20bの昇降ペースが速いときは、エンジン41の出力を低下させ、作業を行いやすい速度に変化させる必要がある。
上記の操作を、図4及び図5に示すとおり、作業座席46に着座したまま、あるいはフロアステップ122上から降りることなく行うべく、前記苗供給装置43の機体前側で、且つ左右一側端部、即ち、作業座席46に着座した作業者の右手側には、エンジン41の始動の可否を切り替えると共に停止操作を行う第2エンジンスイッチ408を設けると共に、該第2エンジンスイッチ408よりも機体内側(機体左右他側)寄りとなる位置には、エンジン41の出力を増減操作する第2スロットルレバー409を機体左右方向に回動操作可能に設ける。
なお、前記第2エンジンスイッチ408は、第1エンジンスイッチ407と同じ操作方法であるが、エンジン41は、これら第1エンジンスイッチ407と第2エンジンスイッチ408の両方が入位置に操作されていなければ始動しないものとする。
これにより、移動時等作業者が機体の後方で操縦ハンドル404を握って操縦するときは第1エンジンスイッチ407で停止操作ができると共に、苗の植付作業時等走行車体40に搭乗しているときは第2エンジンスイッチ408を切操作してエンジン41を停止させることができるので、搭乗中に走行車体40から降りて第1エンジンスイッチ407を切操作しに行く必要が無く、植付あるいは機体に問題を生じさせる動作を中断することができる。
また、第2スロットルレバー409を走行車体40上から操作できるので、エンジン41の出力を増減操作する際に走行車体40を乗り降りする必要が無く、作業能率や作業精度が向上する。
また、左右の植付ホッパ20a,20bは、伝動車軸の位置よりも後側に配置している。
苗供給装置43は、左右の植付ホッパ20a,20bに合わせて苗収容体22が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
植付ホッパ20a,20bは、それぞれ第1落下供給位置31a及び第2落下供給位置31bで、苗収容体22から苗が落下供給される。
そして、左右の植付ホッパ20a,20bに対応して落下供給する苗を収容する苗収容体22を各別に設けており、苗収容体22が対応する左右の植付ホッパ20a,20bの上方にきたときのみ底蓋が開き、対応しない左右の植付ホッパ20a,20bの上方では底蓋が開かない構成としている。
すなわち、植付ホッパ20aに対応する苗収容体22は第1落下供給位置31aにきたときのみ、植付ホッパ20bに対応する苗収容体22は第2落下供給位置31bにきたときのみ、それぞれの底蓋が開いて対応する植付ホッパ20a,20bに苗が供給される構成となっている。
なお、第1落下供給位置31a及び第2落下供給位置31bは、左右の植付ホッパ20a,20bの条間を調節した際、対応する位置に移動可能な構成とする。
移動機構23の作動周期は、上下動機構21の作動周期に同期する設定にされており、左右の植付ホッパ20a,20bに対応する苗収容体22を合わせて1つの苗収容体ユニットとして、その苗収容体ユニットを複数連結した構成とすることにより、苗収容体22が左右の落下供給位置31a、31bを直列的に通過しながら、左右の植付ホッパ20a,20bに対応して苗供給漏れが生じることなく苗を供給でき、且つ左右の落下供給位置31a、31bを通過した後に苗が供給されなかった苗収容体22が生じなくすべく、余すことなく左右の植付ホッパ20a,20bに対応して苗を供給出来る構成としている。
本実施の形態の移植機10は、左右の植付ホッパ20a,20bが植え付けた苗に合わせて覆土鎮圧することに利用される覆土鎮圧輪37を左右の植付ホッパ20a,20bの苗植え付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。該左右の覆土鎮圧輪37は、一本の棒材を平面視J形状に屈曲させて構成した、各々別個に上下回動自在な鎮圧アーム370,370と、該左右の鎮圧アーム370,370の後部側に、各々左右一対回転自在に設けられる鎮圧回転体371,371で構成する。
なお、鎮圧アーム370は、機体内側に位置する一側端部が走行車体40の後部側に上下回動自在に装着され、後方に向かって突出する直線部分の後部を上方に屈曲させた後、機体外側に屈曲させ、さらに下方に屈曲させて機体内側の直線部分と同じ上下位置で機体前側に屈曲させている。そして、左右の鎮圧回転体371,371のうち、機体外側の鎮圧回転体371は機体前側に屈曲する機体外側の直線部分に設けられ、機体内側の鎮圧回転体371は機体内側の直線部分に装着される。
上記構成により、鎮圧アーム370の後部に、機体上方に向かって突出する回避部分372が形成され、左右の鎮圧回転体371,371は左右間隔を空けて配置される。これにより、植付ホッパ20a,20bが植え付けた苗は、左右の鎮圧回転体371,371の左右間隔部を通過しつつ周辺の土を均されると共に、回避部分372の下方を通過するので、覆土鎮圧輪37,37に押し倒され、植付姿勢が乱れることが防止される。
なお、左右の鎮圧アーム370,370は各々機体左右位置を調節可能に装着し、植付ホッパ20a,20bの条間設定に合わせて鎮圧する位置を変更可能に構成する。また、左右の鎮圧回転体371,371についても、各々左右位置を調節可能に構成すると、植付後の苗の周囲の土を確実に固められ、苗が倒伏や低温により生育不良を起こすことが防止される。
本件の移植機には、苗供給装置43に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業を行うべく、作業者が座る作業座席46を設けている。具体的には、苗供給装置43の前側となる機体左右中央位置に後向きに作業座席46を配置している。作業座席46に座る作業者は、苗供給装置43の前側部に向って後側向き姿勢で着座して、苗供給装置43の前側部、特に苗収容体22の周回移動経路における前側の直線状部分28に対応して苗補給作業を行う。
また、前記操縦パネル47aの左右他側には、ミッションケース39に内装され、左右の走行伝動ケース38及び伝動ケース26への駆動力の伝動を入切する主クラッチレバー125を設ける。
本発明の移植機において、機体後部の操縦ハンドル404による作業者の操作は、圃場への移動、輸送手段からの積み下ろし、倉庫への収納や、圃場端での旋回のときに行われるものである。一方、苗の植付作業時には、作業者は走行車体40の作業座席46に搭乗しており、操縦ハンドル404の操縦パネル47aでの操作を行うことは困難である。
従って、走行車体40上には、作業座席46に搭乗した作業者用の、車体上操縦部126を設ける。
図4及び図11に示すとおり、前記苗供給装置43の下部には、機体後側に上方傾斜する後部ステップ127を設け、該後部ステップ127の左右どちらか一側、本件では機体右側(作業座席46に着座した作業者を基準とすると左側)の端部に、図4、図5及び図11に示すとおり、車体上操縦部126を設ける。
該車体上操縦部126は、最も機体外側に、走行車体40の車高を調節して植付ホッパ20a,20bの植付深さを調節する第2車高調節レバー128を配置し、該第2車高調節レバー128よりも機体内側に、第2主クラッチレバー129を配置する。
なお、苗の植付作業時は、基本的に車高を固定する必要が無いので、第2車高調節レバー128は「高」ポジションと「低」ポジションのみを有する構成とする。
そして、前記後部ステップ127の外側端部には、第2車高調節レバー128を枠内に収めると共に車高の目安を示す表示目盛りを形成した車高調節レバーガイド130を機体前側に向かう上方傾斜姿勢で設け、該車高調節レバーガイド130の機体内側方には、第2主クラッチレバー129を枠内に収める主クラッチレバーガイド131を機体前側に向かう上方傾斜姿勢で設ける。
なお、第2車高調節レバー128は、第2主クラッチレバー129よりも機体前側への突出量を大きくする。
また、前記第2車高調節レバー128と第2主クラッチレバー129は、機体左右一側(機体右側)の前記取付支持プレート105、及び前後の梁フレーム106f,106rに基部側を回動可能に装着するものとすると、別途取付部材を設ける必要が無く、部品点数の削減が図られる。
さらに、前記車体上操縦部126よりも機体左右他側、即ち機体左側には、左右のサイドクラッチを入切操作するサイドクラッチペダル132L,132Rを、後部ステップ127の上面に露出させて設ける。
前記車高調節レバーガイド130と主クラッチレバーガイド131は、側部ステップ118の上面との間に一定の上下間隔Sを空けて配置するものとする。上記の上下間隔Sは、作業者の足を入り込ませても空間が確保される程度(例:15~20cm程度)とする。
上記構成により、フロアステップ122上、及び作業座席46に搭乗した作業者は、走行車体40から降りることなく植付深さの手動操作や、植付作業の入切を手動操作することができるので、作業能率が向上すると共に、苗の植付精度が向上する。
また、第2主クラッチレバー129を第2車高調節レバー128よりも作業座席46に近付く機体内側に配置したことにより、苗の補充や植付状態の修正、休憩等の際に使用する第2主クラッチレバー129に作業者の手が届きやすく、労力の軽減が図られる。
特に、問題の発生時に速やかに苗の植付作業を中断でき、苗の植え直し作業が不要になると共に、生育に適さず破棄される苗の数が減少する。
また、第2車高調節レバー128を第2主クラッチレバー129よりも機体前側に突出させたことにより、作業座席46から遠い側の第2車高調節レバー128を操作する際に腕を大きく伸ばす必要が無く、作業者の労力が軽減される。
そして、後部ステップ127に左右のサイドクラッチペダル132L,132Rを設けたことにより、走行車体40の進行方向が畝を基準とする直進方向から外れかけているときに前記サイドクラッチペダル132L,132Rのどちらかを操作して対応するサイドクラッチを一時的に切状態とすることで、走行車体40の進路を修正でき、苗の植付位置が左右方向に蛇行することが防止される。
また、車高調節レバーガイド130と主クラッチレバーガイド131、即ち車体上操縦部126と側部ステップ118の上下間に上下間隔Sが形成される構成としたことにより、作業座席46に搭乗する作業者の足の動きが妨げられず、作業者は楽な姿勢で操縦座席46に搭乗でき、労力の軽減が図られる。
作業座席46の左右両側で機体側面視で走行輪44の伝動車軸の上方位置に、苗供給装置43に補給する苗を収容可能な予備苗枠50を設けている。
前記予備苗枠50は、走行車体40の機体外側に突出する苗載支柱51の上部に支持ステー52を設け、該支持ステー52に回動状態と非回動状態を切替可能な苗載回動アーム53を設け、該苗載回動アーム53には上下方向の苗枠フレーム54,54を間隔を開けて配置すると共に、該苗枠フレーム54,54の同じ面に、補充用の苗を収容する苗箱や苗トレイ等の容器を載置する載置台55の一側端部を装着して構成する。
該載置台55は、上下方向に一つだけ設けてもよいが、容器の取り出しに支障の無い上下方向の間隔を空けて複数配置してもよい。
上記構成の予備苗枠50は、走行車体40の左右両側に各々設け、状況に合わせて支持ステー52上で苗載回動アーム53を回動させる。
例えば、苗の植付作業時には、載置台55の長手方向を機体前後方向に向けることで、載置台55から苗の容器を取り出したり、空になった容器を戻しやすくすることで、作業能率を向上させることができる。
また、この位置では載置台55が走行車体40の左右両側に位置するので、作業者が走行車体40の搭乗可能な部分の端部を把握しやすくなり、走行車体40上から足がはみ出し、姿勢を崩すことが防止される。
また、走行車体40に作業者が乗り降りするときには、苗載回動アーム53を約90度回動させる。
これにより、走行車体40の左右両側に乗り降りの空間部が形成される。
また、作業者は走行車体40の機体前側からも乗り降りすることができるが、苗載回動アーム53を回動させて苗枠フレーム54,54が機体前側に位置し、載置台55が機体後側に位置する状態とすると、作業者は苗枠フレーム54,54を手摺りとして用いることができるので、走行車体40の乗り降りを円滑に行うことができる。
また、載置台55に苗の容器を積載、あるいは取り出す際、機体後側からであれば容器の積載、取り出しを妨げる部材が無いので、作業能率が向上する。
圃場に苗を移植する際、圃場の土質や周辺の水環境、あるいは作業前の天候等の条件を考慮して、植え付けた苗の付近に水を供給する、所謂灌水作業を行うことがある。
本件の移植機には、図1から図5、及び図12、図13に示すとおり、機体前側の転輪45と機体後側の走行輪44に亘って側部支持フレーム60を上下回動可能に設け、この側部支持フレーム60には、作業座席46を支持する座席支持フレーム46aの基部と、水タンク600を積載する水タンクホルダ601を装着する。
この側部支持フレーム60は、転輪45と走行輪44の前後間に直線状に配置する前側フレーム61と、走行伝動ケース38の機体内側に直線状に配置する後側フレーム62と、走行伝動ケース38の下部側を通過して前側フレーム61の後端部と後側フレーム62の前端部を連結すると共に、座席支持フレーム46aの基部を装着する連結フレーム63で構成する。なお、前側フレーム61、後側フレーム62及び連結フレーム63は、相互に回動し合わない連結構成とし、側部支持フレーム60として一体に上下回動する構成とする。
さらに、前側フレーム61、即ち側部支持フレーム60の前端部には、転輪45に側部支持フレーム60を回動可能に連結する前側連結アーム64を装着する。この前側連結アーム64は、平面視でコの字形状であり、転輪45の車軸部分付近に、転輪45を挟み込む形で回動可能に装着するものとする。また、前側フレーム61の前側下部には、前側連結アーム64の下方を通過して転輪45の外周面、乃至外周面付近に先端部を臨ませる、転輪スクレーパ65を前後位置調節可能に装着する。
そして、後側フレーム62には、機体前後方向を長手方向とすると共に後輪44の車軸12が差し込まれる長孔66aが機体前後方向に形成された後側連結アーム66を設ける。この後側連結アーム66の前後端部は機体内側に向かって折曲支持部66bを形成しており、これら前後の折曲指示部66b,66bに水タンクステー601の下部を連結して取り付けるものとする。後側支持アーム66の長孔66aに車軸12が差し込まれることにより、転輪45の上下高さの変更、及び走行伝動ケース38の上下回動により走行車体40の車高を変更する際、側部支持フレーム60の上下回動が妨げられることが無い構成となる。
なお、上記の車軸12のうち、走行輪44に差し込まれる側とは反対側、即ち機体内側を延長した部分が、長孔66a内に入り込むものとする。また、後側連結アーム66と走行伝動ケース38は密接させず、数cm(例:3~8cm)程度の間隔を任意に調整して空けるものとする。
これにより、横フレーム16を操作して転輪45の左右位置を変更する以外に、側部支持フレーム60の左右位置を変更することで、畝幅に合わせたトレッド変更をより細かく行える。
そして、連結フレーム63の機体外側で、且つ前側フレーム61の後部側の上部には、座席支持フレーム46aの基部側を差し込む鉛直姿勢の支持ポスト67が配置される。なお、座席フレーム46aは、走行車体40を跨ぎ、左右の基部が左右の支持ポスト67,67に差し込まれる構成であるが、左右片方のみ支持ポスト67を設け、座席支持フレーム46aの下端側を支持ポスト67に差し込む構成としてもよい。
上記の連結フレーム63は、外側が前側フレーム61上に位置すると共に後側フレーム62の前端部に接する前側プレート63aと、外側が前側フレーム61の後端部に接すると共に後側フレーム62上に位置する後側プレート63bと、前側プレート63aと後側プレート63bを連結する左右プレート63c,63cで、上下が開放された枠形状に構成するものとする。なお、前側プレート63aと後側プレート63bは、走行伝動ケース38の下方を通過させるべく、長方形ではなく、不等辺多角形で構成するものとする。
上述した水タンクステー601は、前後方向を長手方向とする前後受けプレート602と、前後受けプレート602の前後間に複数、図12及び図13では二つ設けられている、左右方向を長手方向とする左右受けプレート603と、前後受けプレート602及び左右受けプレート603に亘って装着される、枠形状の水タンクガード604で構成する。
なお、図13では、水タンクステー601を装着した状態では側部支持フレーム60の構成が不明瞭になるので、取り外した状態で示している。
より詳細には、前後受けプレート602の前後両側には機体上側に向けて各々前後受け屈曲部602aが形成され、左右受けプレート603の前後両側には機体上側に向けて各々左右受け屈曲部603aが形成され、水タンクガード604は前後受け屈曲部602a及び左右受け屈曲部603aの上端部、乃至上端部付近に溶接等により装着される。なお、水タンクガード604は上端部付近よりも機体下方側に設けてもよく、さらには、上下方向に間隔を空けて複数設けてもよい。
そして、前後受けプレート602の下部側には、後側連結アーム66の前後の折曲指示部66b,66bと連結される、側面視L字形状の接続ステー605,605を前後一対設ける。前後の折曲指示部66b,66bと接続ステー605,605は、ボルト、ナット等の締結部材で接続することが考えられるが、水タンク600の荷重を受けて破断することを防止すべく、こうした部材同士の締結に用いる標準的なものに比べて、大径のものを用いることが望ましい。
上記の構成により、走行伝動ケース38の上下回動、及び縦フレーム17による転輪45の上下位置調節を行う際、側部支持フレーム60が連動して上下回動できると共に、側部支持フレーム60の前後移動量を抑えられる。したがって、作業座席46や水タンク600の前後位置の変動による重量バランスの変動が抑えられ、走行車体40の進行方向の乱れや、植付ホッパ20a,20bの植付姿勢の乱れが防止される。
また、走行伝動ケース38を上下回動させる際に連動して側部支持フレーム60が回動することにより、別途側部支持フレーム60を上下回動させる必要がなく、車高調節作業を能率よく行うことができる。
また、前側連結アーム64が転輪45を左右から挟み込む形で装着されることにより、転輪45が左右方向から支持されるので、作業座席46から受ける荷重に対して強い構成となり、破損が生じにくくなる。
また、前側フレーム61及び支持ポスト67が転輪45と走行輪44の前後間に直線状に配置されることにより、畝溝上にこれらの部材が位置するので、接触により畝が崩されることが防止され、植え付けた苗の生育に悪影響が生じるにくくなる。
また、後側連結アーム66に形成された長孔66a内に走行輪44の車軸12が差し込まれることにより、走行車体40の荷重及び接地抵抗を受けるべく高い強度で設計される車軸12を利用して水タンク600の荷重を受けることができるので、水タンクステー601や側部支持フレーム60の破損が防止される。
また、前側フレーム60に転輪スクレーパ65を装着したことにより、転輪45に付着した土を削ぎ落すことができるので、転輪45の直径が変化して走行車体40の進行方向が乱れることや、走行車体40の前後傾斜角度が変化して苗の植付姿勢が乱れることが防止される。
また、転輪スクレーパ65の前後位置が調節可能であることにより、転輪45に過度に接触して走行抵抗となることや、転輪45に付着した土を十分に除去できず効果が得られなくなることが防止される。
上記の構成で積載する水タンク600の容量は、強度を考慮すると10リットル程度であり、即ち水10kgと水タンク600自体の重量の数百グラムであることが望ましい。しかしながら、植付作業面積が広い圃場においては、作業能率の低下を防止すべく、水タンク600の交換頻度が少ないことが望ましい。なお、一例として、灯油等の輸送や貯留に用いる容量20リットルのポリタンクが挙げられる。
水タンクの大容量化に際し、荷重に加えて、水タンクの前後及び左右幅が問題となる。本願の移植機の構成に合わせて大容量の水タンクを積載するにあたり、走行伝動ケース38の上方の空間は、前後幅は問題ないが左右幅が確保できない、できるとしても走行輪44の内側に接触し得るおそれがあるので、走行輪44の機体外側の開放空間を用いることが望ましい。
大容量タンク610を走行輪44の機体外側に支持させるべく、図14から図17に示すとおり、走行伝動ケース38の回動基部側、即ち機体前側で且つ内側に内側ステー611を設ける。この内側ステー611は上部側を走行伝動ケース38の上面よりも大幅に上方に突出させると共に、下部側も走行伝動ケース38の下面より下方に突出させる。また、走行伝動ケース38の機体前側で且つ外側には、内側ステー611に対応する外側ステー612を装着し、この外側ステー612の下部は走行伝動ケース38の下方に突出させ、上部には角柱状の部材を走行伝動ケース38の上面よりも機体上方で受ける受け部を形成する。
この外側ステー612に形成する受け部には、中空の柱状部材、例えば六角柱状であるアウターチューブ613を機体左右方向に向けて装着する。この六角柱状のアウターチューブ613は、大容量タンク610の荷重を受けるべく、溶接等で強固に外側ステー612に固着するものとする。
なお、外側ステー612の機体後部側は機体外側に向けて曲げ部612aを形成し、この曲げ部612aの上端部をアウターチューブ613の後部側に接触させて溶着することで、より強度を向上させる。また、アウターチューブ613は外周面にボルト等の締結部材を差し込ませる受けナットを設けて、内側ステー611に形成するネジ溝(図示省略)に向けて締結部材をねじ込むと共に、内側ステー611と外側ステー612の下部側に形成される取付孔に締結部材を差し込み締結することで、取付強度を高めている。さらに、内側ステー611と外側ステー612の走行伝動ケース38に接触する面の一部にも取付孔を形成し、走行伝動ケース38の内部から露出するネジ軸にナット等を取り付け、上下方向に亘って耐荷重性を確保する構造とする。
そして、アウターチューブ613に対応する形状の柱状部材、例えば六角柱状のインナーチューブ614に、大容量タンク610の外周を包囲して支持するタンクガード615の左右の基部側を各々連結する。このタンクガード615の基部側にはインナーチューブ614を差し込む孔部が形成されており、インナーチューブ614を差し込んだ後、強度を向上させるべく溶接等により固着することが望ましい。また、タンクガード615のうち、大容量タンク610の左右側方に位置する部分は、基部側から前後方向中央位置付近にかけて上方傾斜する上方傾斜部615aを形成すると共に、前後方向中央位置付近から後方は走行輪44の接地面に対して略平行な姿勢となる、側面視でへの字形状とする。
このタンクガード615の後部側とインナーチューブ614の前後間には、機体前後方向を長手方向とする前後支持プレート616の前部側、及び後部側を各々連結する。前後支持プレート616の前部側には上方に屈曲する前側支持屈曲部616aを形成し、後部側には上方に屈曲する後側支持屈曲部616bを形成する。後側支持屈曲部616bは前側支持屈曲部616aよりも上方に突出するものとし、上方傾斜部615aが機体前側ほど下方に位置する構成により、大容量タンク610の出し入れを行いやすい構成とする。また、前側支持屈曲部616aの下部側、具体的にはインナーチューブ614よりも下部側には、機体前側に向かって屈曲する補強屈曲部616cを形成し、この補強屈曲部616cの上面をインナーチューブ614の下面に連結する構成とする。そして、前後支持プレート616の前後間部分のうち、機体外側を機体下方に向けて折り曲げ、さらに強度を向上させるものとする。
さらには、前側支持屈曲部616aは上端部付近、即ちインナーチューブ614に連結する位置よりも機体上側で機体前側に向けて屈曲させると共に、後側支持屈曲部616bは上端部付近、即ちタンクガード615の後部に連結する位置よりも機体上側で機体後側に向けて屈曲させるものとし、より大容量タンクの出し入れを行いやすくする。
そして、前後支持プレート616には、大容量タンク610の左右両側を支持する左右支持プレート617を一つ、あるいは各々間隔を空けて複数配置する。左右支持プレート617を一つ設けるときは、前後方向における前後支持プレート616は前後中間位置、乃至前後中間位置付近に配置されるものとする。左右支持プレート617の左右両側には、上方に屈曲する左右の支持屈曲部617a,617aを各々形成し、左右の支持屈曲部617a,617aの上端部をタンクガード615に各々溶接等により連結する。
なお、左右の支持屈曲部617a,617aの上端部の位置は左右で同じ、乃至略同じとするが、機体外側に位置する支持屈曲部617aはタンクガード615の枠内で連結し、機体内側に位置する支持屈曲部617aはタンクガード615の枠外で連結する構成とする。
これにより、大容量タンク610を出し入れ自在に支持する大容量タンクステー618が形成される。
この大容量タンクステー618は、インナーチューブ614をアウターチューブ613から引き出し切ることにより、取り外すことが可能である。これにより、大容量タンク610を積載しないときには大容量タンクステー618を取り外し、機体の左右幅をコンパクトにできるので、軽トラックの荷台からはみ出すことが防止されると共に、倉庫等に収納する際、収納スペースが確保しやすい。
一方、大容量タンク610を載置して苗の植付作業を行うときには、大容量タンクステー618が外れることは当然防止される必要があるが、左右方向に移動できてしまうと重量バランスに乱れが生じ、走行車体40の進行方向や、苗の植付姿勢に大きな乱れが生じるおそれがある。
作業中にはインナーチューブ614の左右方向の移動を規制し、非作業時に大容量タンクステー618を容易に着脱可能とするべく、アウターチューブ613及びインナーチューブ614に左右方向に間隔を空けて複数の調節孔を形成し、アウターチューブ613及びインナーチューブ614の調節孔同士の位置を合わせた状態で、ボルト、ナット等の装着部材の着脱により、装着状態と取り外し状態を切替可能に構成する。
上記の構成では、大容量タンクステー618を取り外し状態にした際に、装着部材を無くさないように保管する必要がある。アウターチューブ613またはインナーチューブ614に形成されている調節孔に装着部材を取り付けておけば、次に大容量タンクステー618を装着する際にすぐに用いることができるが、一旦ナットをボルトから取り外す等の作業が必要になる。また、圃場から移植機を持ち帰る際、装着部材を取り外す必要があるが、作業時に大容量タンクステー618の脱落を防止すべく強固な締結状態としていると、工具を用いないと取り外しができず、余分な時間が必要になると共に、工具を圃場に持ち込む手間もかかる。
この問題に対応させるべく、アウターチューブ613にパイプピンの回動アーム部の基部を装着し、この回動アーム部の端部に装着ピンを設けることが考えられる。これにより、装着ピンを抜き出しても回動アーム部がアウターチューブ613に設けられているので、装着ピンを無くすことが防止される。
図18及び図19に示すとおり、外側ステー612に形成する曲げ部612aは、アウターチューブ613と連結される部分以外においては、上方が開放されている。この曲げ部612aには、側面視への字形状のスクレーパプレート620を着脱し、このスクレーパプレート620には機体後側、即ち走行輪44の外周面に向けて走行輪スクレーパ621を後方への突出量を調節可能に装着する。
走行輪スクレーパ621を装着したことにより、走行輪44に付着した土を削ぎ落すことができるので、走行輪44の直径が変化して走行車体40の進行方向が乱れることや、走行車体40の前後傾斜角度が変化して苗の植付姿勢が乱れることが防止される。
また、走行輪スクレーパ621の後方への突出量が調節可能であることにより、走行輪44に過度に接触して走行抵抗となることや、走行輪44に付着した土を十分に除去できず効果が得られなくなることが防止される。
なお、走行輪44の外周面形状に合わせるべく、走行輪スクレーパ621の後端部、即ち走行輪44の外周面に接触する側は、スリット上の切り込みを入れ、端部が屈曲して土砂に作用する構成とするとよい。
上記の大容量タンクステー618は、アウターチューブ613とインナーチューブ614を角柱状にすることや、高密度の素材で構成することにより、片持ちであっても荷重に対する強度を確保できるが、強度の低下を確実に低減するのであれば、図20及び図21に示すとおり、走行輪44の車軸12の外周縁部に共周り防止用のカラー622を設け、このカラー622の外周縁部で且つ前後支持プレート616の直線上の後方位置に受けリング623を設ける。そして、前後支持プレート616には、受けリング623に形成する受け溝623aに入り込む後部延設プレート624を締結部材を介して装着する。
これにより、大容量タンクステー618を車軸12の強度を用いて支持することができるので、長期間に亘って使用しても荷重の影響で破損することが防止される。
水タンク600に貯留された灌水用の水は、走行車体40の底部で、且つ機体前後中央付近に設けられる灌水ポンプ700の動作によって汲み上げられると共に、植付ホッパ20a,20bが苗を植え付ける位置に排出される。該灌水ポンプ700は、植付ホッパ20a,20bの数に合わせて配置し、走行車体40の左右中央部を基準として、間隔を空けて左右に配置する。
前記灌水ポンプ700にホースを装着し、水タンク600から灌水ポンプ700を経由して散水ノズル710から水を排出する構成とすることもできるが、灌水ポンプ700のギアポンプ800の動作により、排出方向に送り出された水の一部が水タンク600側に戻されることがある。これにより、圃場に供給される1回当たりの灌水量が減少し、水不足により苗の生育が遅れたり、生育不良により収穫物の品質を低下させるおそれがある。
これを防止すべく、前記左右の側部ステップ118の機体外側の下部に、送水方向を一方に制限するチェックバルブ720を各々設け、水タンク600とチェックバルブ720の給水側を吸水ホース721で連結すると共に、チェックバルブ720の排水側と排水ノズル710を排水ホース722で連結する。また、チェックバルブ720と灌水ポンプ700を、中継ホース723で連結する。
より具体的には、図9で示すとおり、まず、機体前側から後側への送水を許容する方向に向けた吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725を上下に並べて側部ステップ118の機体外側端部の下部に装着する。そして、前記吸水ホース721の一側を水タンク600内に入り込ませ、他側を吸水チェックバルブ724の入口、即ち機体前側と連結し、前記排水ホース722の一側を排水チェックバルブ725の出口、即ち機体後側と連結し、他側を前記排水ノズル710に連結する。
前記灌水ポンプ700には、機体左右方向の第1中継ホース723aの基部側を装着し、端部側には、三又形状の分岐ジョイント723dの収束ポートを装着する。そして、該分岐ジョイント723dの吸水ポートと吸水チェックバルブ724の出口(機体後側)の間には、第2中継ホース723bを設け、分岐ジョイント723dの排水ポートと排水チェックバルブ725の入口(機体前側)の間には、第3中継ホース723cを設ける。
なお、排水ノズル710は、圃場に直接水を供給してもよいが、植付ホッパ20a,20bの上側開口部から内部に灌水をある程度の水勢で投入し、植付ホッパ20a,20b内に付着した泥土の除去に利用する構成としてもよい。
これにより、植付ホッパ20a,20bが開いている間に内部に入り込み、泥土を除去するスクレーパが不要になるので、部品点数の削減が図られる。
上記スクレーパが、植付ホッパ20a,20bの昇降に連動して所定の軌跡を描くものであれば、所定の軌跡で昇降させる機構の部品を削減できるので、部品点数の大幅な削減と、機体構成の簡略化が図られる。
さらに、泥土を灌水で圃場に戻すことができるので、圃場外を泥土で汚染することを防止できると共に、圃場内の養分の流出が軽減される。
上記構成により、チェックバルブ720が機体左右外側の空間部に配置されるので、詰まり等の問題が生じた際に原因の調査やメンテナンス作業が行いやすく、労力の軽減や作業時間の短縮が図られる。
また、吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725の送水方向が同じになる配置としたことにより、分解後の組付作業時に取付方向を間違えにくくなり、作業能率が向上する。
また、チェックバルブ720が水タンク600の後側で、植付ホッパ20a,20bの前側で、且つ灌水ポンプ700の機体外側に配置されることにより、吸水ホース721、排水ホース722、第1中継ホース723a、第2中継ホース723b及び第3中継ホース723cの屈曲を最低限に抑え、且つ重複しにくい配置とすることができる。
なお、吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725は透明な筒とし、内部のスプリングや逆流防止用のボールを外部から確認できるものとすると、送水方向が視認でき、取付間違いがより生じにくくなる。