以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
<電動送風機を搭載した電気掃除機の構成>
以下、図1A、図1B、及び、図2を参照して、本実施形態に係る電動送風機200を搭載した電気掃除機400の構成について説明する。図1Aは、本実施形態に係る電動送風機200を搭載した電気掃除機400をスティック型として使用する際の斜視図である。図1Bは、電気掃除機400をハンディ型として使用する際の側面図である。図2は、電気掃除機400の掃除機本体410の縦断面図である。
なお、本実施形態では、電動送風機200がスティック型とハンディ型とを適宜切り替えて使用できる充電式の電気掃除機400に搭載されている場合を想定して説明する。しかしながら、電動送風機200は、スティック型のみやハンディ型のみ等の様々なタイプの電気掃除機400に搭載することができる。
図1Aに示すように、電気掃除機400は、塵埃を集塵する集塵室401と、集塵に必要な吸込気流を発生させる電動送風機200(図2参照)を収納する掃除機本体410と、掃除機本体410に対して伸縮自在に設けられた伸縮パイプ402と、伸縮パイプ402の一端に設けられたグリップ部403と、グリップ部403に設けられた電動送風機200(図2参照)の入切を行うスイッチ部404とを備えている。
図1Aに示す例では、電気掃除機400は、スティック状態になっており、伸縮パイプ402が伸ばされた状態になっている。スティック状態において、掃除機本体410の他端には吸口体405が取り付けられ、掃除機本体410と吸口体405とが接続部406で繋がれている。
一方、図1Bに示す例では、電気掃除機400は、ハンディ状態になっており、伸縮パイプ402が掃除機本体410内に収納され、グリップ部403が伸縮パイプ402側に近接した状態になっている。ハンディ状態において、持ち手となるハンディグリップ部407は、掃除機本体410の上面側に、近接されたグリップ部403と集塵室401との間に設けられている。また、掃除機本体410の他端部には吸口体408(隙間ノズル)が取り付けられ、掃除機本体410と吸口体408とが接続部406で繋がれている。
係る構成において、電気掃除機400は、グリップ部403のスイッチ部404を操作することで、掃除機本体410に収納された電動送風機200(図2参照)が作動し、吸込気流を発生させる。そして、電気掃除機400は、吸口体405(図1A参照)又は吸口体408(図1B参照)から塵埃を吸込み、接続部406を通して掃除機本体410の集塵室401に集塵する。
図2に示すように、掃除機本体410の内部には、吸引力を発生させる電動送風機200と、電動送風機200に電力を供給する電池ユニット420と、駆動用回路430とが設けられている。なお、図2に示す例では、電気掃除機400は、ハンディ状態になっており、掃除機本体410から吸口体408を取り外した状態になっている。
吸口体405(図1A参照)又は吸口体408(図1B参照)から吸い込まれた空気は、掃除機本体410に設けられた流路440を通って電動送風機200の前方に配置された集塵室401に送られ、集塵室401内に集塵される。そして、集塵室401で塵挨が分離された後の空気は、電動送風機200と、駆動用回路430とを通り、掃除機本体410に形成された排気口(不図示)から外部に排出される。
<電動送風機の構成>
以下、図3A乃至図6Bを参照して、電動送風機200の構成について説明する。図3Aは、電動送風機200の外観図である。図3Bは、電動送風機200の縦断面図である。図4は、送風機部201の側面図である。図5Aは、羽根車1側のモータハウジング2の斜視図である。図5Bは、羽根車1側のモータハウジング2の背面図である。図5Cは、羽根車1側のモータハウジング2の縦断面図である。図6Aは、羽根車1とは逆側のモータハウジング9の平面図である。図6Bは、羽根車1とは逆側のモータハウジング9の縦断面図である。
図2に示すように、電動送風機200は、電気掃除機400の内部に取り付けられる。その際に、電気掃除機400の下部側の吸口体405(図1A参照)又は吸口体408(図1B参照)の方向に羽根車1(図3B参照)が向くように、電動送風機200は、電気掃除機400に取り付けられる。
図3Aに示すように、電動送風機200は、モータハウジング2と、ファンケーシング3と、モータハウジング9と、を有している。モータハウジング2と、ファンケーシング3と、モータハウジング9は、それぞれ、略円筒形状に形成されている。モータハウジング2は、羽根車1(図3B参照)に近い側(羽根車1側)に配置されたハウジングである。モータハウジング9は、羽根車1(図3B参照)から遠い側(羽根車1とは逆側)に配置されたハウジングである。モータハウジング2は、モータハウジング9の上部に取り付けられる。その際に、モータハウジング9の外筒9bに設けられた突起部22がモータハウジング2の外筒2bに設けられた爪状突起20の取付穴21に嵌合することで、モータハウジング2とモータハウジング9とが固定される。これにより、モータハウジング2とモータハウジング9とを一体化されたモータハウジング19が形成される。モータハウジング19は、後記するボビン31(図3B参照)を覆うように設けられている。モータハウジング2の上部には、ファンケーシング3が取り付けられる。ファンケーシング3の上部には空気吸込口4が形成されている。また、ファンケーシング3の内部には、回転軸5が配置されている。
図3Bに示すように、電動送風機200は、送風するための送風機部201と、送風機部201の半径方向内側に送風機部201を駆動するための電動機部202とを有している。なお、図3Bは、代表的な空気の流れを実線矢印α1と破線矢印α2で示している。
送風機部201は、吸引空気流の上流から、回転翼である羽根車1と、羽根車1に近い側(羽根車1側)に配置された軸流型ディフューザ翼23と、羽根車1から遠い側(羽根車1とは逆側)に配置された後段の軸流型ディフューザ翼24と、翼なし軸流ディフューザ25とを有している。翼なし軸流ディフューザ25の下流には、排気口として機能する開口部16が設けられている。
図3B、並びに、図5A乃至図5Cに示すように、羽根車1に近い側(羽根車1側)に配置された軸流型ディフューザ翼23は、羽根車1の半径方向において、羽根車1側のモータハウジング2の内筒2aと外筒2bとの間に位置している。モータハウジング2の内筒2aと外筒2bと軸流型ディフューザ翼23は一体で成型されている。
図3B、並びに、図6A及び図6Bに示すように、羽根車1から遠い側(羽根車1とは逆側)に配置された後段の軸流型ディフューザ翼24は、羽根車1の半径方向において、羽根車1とは逆側のモータハウジング9の内筒9aと外筒9bとの間に位置している。モータハウジング9の内筒9aと外筒9bと軸流型ディフューザ翼24は一体で成型されている。
翼なし軸流ディフューザ25は、モータハウジング9の内筒9aと外筒9bから形成されている。モータハウジング9の内筒9aは、開口部16(排気口)に向かって流路面積が拡大するように、外径が小さくなっている。
電動機部202は、モータハウジング2の内筒2aと、モータハウジング9の内筒9aとで覆われている。電動機部202の内部には、開口部15と、冷却用の第2の流路14とが構成されている。
開口部15は、モータハウジング9のエンドブラケット13に設けられている。エンドブラケット13は、電動機部202の軸方向であって羽根車1とは逆側の軸受11を保持する金属部材13aと一体成型されている。エンドブラケット13には、軸受11の外輪に接着剤を流せるように、溝13bが複数設けられている。軸受11の外輪とエンドブラケット13の金属部材13aは、接着剤によって固定される。これによって、電動機部202は、組み立てが容易になり、軸受11を固定することができる。エンドブラケット13には、ボビン31(コイル巻きボビン)を周方向の固定と回転軸方向に抜けないように、3カ所に突起13cが設けられている。ボビン31は、コイルばね32を取り付けるためにロータコア7の周囲に配置される。ボビン31の外周側は、段差状に形成されている。つまり、ボビン31は、外周側に段差部を有している。金属部材13aの周方向の6カ所には、ボビン31の回転軸方向の位置決めを行うための台座13dが設けられている。第2の流路14は、少なくとも一部がステータコア8の外周と開口部15を通るように形成されている。
電動送風機200の側部には、羽根車1と、羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23と、後段の軸流型ディフューザ翼24と、翼なし軸流ディフューザ25を通る第1の流路17とが設けられている。第1の流路17は、吸口体405(図1A参照)又は吸口体408(図1B参照)で吸引された空気流が流れる流路である。
図3Bに示すように、電動送風機200は、第1の流路17と第2の流路14とが部分的に連通するように、第1の流路17と第2の流路14とを接続する接続部28を有している。つまり、第2の流路14と第1の流路17とは、羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23と後段の軸流型ディフューザ翼24の間の接続部28で連結されている。接続部28は、電動機202の内側から第1の流路17に亘って形成された円環状の流路である。接続部28は、半径方向の外側部分が後段の軸流型ディフューザ翼24に向けて下側に傾斜するように形成されている。接続部28は、モータハウジング2の内筒2aとモータハウジング9の内筒9aとの間に形成された隙間によって構成されている。
電動送風機200は、エンドブラケット13の開口部15から第2の流路14に冷却風が流入し、第1の流路17と第2の流路14とを接続する接続部28でのベンチェリ効果により、第2の流路14から接続部28に冷却風を送る。その際に、電動送風機200は、冷却風で電動機部202を冷却する。
なお、第2の流路14は、接続部28に対して回転軸方向の羽根車1とは逆側に設けられている。また、開口部15の開口面積は、接続部28の流路断面積以上の大きさに設定されている。これにより、電動送風機200は、接続部28でのベンチェリ効果を促進して、第2の流路14から接続部28に流れる冷却風で電動機部202を効率よく冷却できる。
ここで、接続部28の流路断面積は、接続部28の流路に直交する断面において、最小の面積となる断面積になっている。接続部28の断面にフィレットやR形状がある場合は、フィレットやR形状を無視して算出してもよい。
なお、開口部15からコイル30(巻線)の一部が出て、駆動用回路430(図2参照)に電気的に接続される。ここで、開口部15を通る構成の場合、コイル30を無くした際の面積が接続部28の流路断面積以上であれば良い。開口部15の構造は、四角孔でも、丸孔でも、他の形状の孔でも良い。
回転翼である羽根車1は、熱可塑性樹脂製である。羽根車1は、回転軸5の端部に螺刻されたねじに固定ナット18が螺着されることによって、回転軸5に固定されている。なお、本実施形態では、羽根車1は、固定ナット18を用いて回転軸5に固定されているが、圧入によって回転軸5に固定されるようにしても良い。また、図3B及び図4に示すように、本実施形態では、羽根車1は、斜流型羽根車になっているが、遠心型羽根車や、軸流型羽根車の形態であっても良い。
図3Bに示すように、電動機部202は、内部に、回転子であるロータコア7と、固定子33とを有している。固定子33は、ステータコア8と、コイル30と、ボビン31とを有している。ステータコア8は、ロータコア7の外周部に配置されている。ロータコア7は、モータハウジング2とモータハウジング9との内部に収納された回転軸5に固定されている。
ロータコア7は、希土類系のボンド磁石を含んでいる。希土類系のボンド磁石は、希土類系磁性粉末と有機バインダーとを混合して作られる。希土類系のボンド磁石としては、例えば、サマリウム鉄窒素磁石や、ネオジム磁石等を用いることができる。ロータコア7は、回転軸5に一体成形されるか、又は、回転軸5に固定されている。
ステータコア8は、円筒状の積層鋼板によって構成されている。すなわち、ステータコア8は、円環状の電磁鋼板を複数枚重ねることによって、全体として円筒状に構成されている。
ステータコア8は、コイル30を巻き回したボビン31の外側に圧入固定されている。ボビン31は、合成樹脂製(絶縁性)の材料によって形成されている。コイル30を巻き回したボビン31は、ステータコア8とロータコア7との間に設けられている。また、ステータコア8と羽根車1に近い側のモータハウジング2の間には、コイルばね32が配置されている。コイルばね32は、ロータコア7よりも外径側に配置されている。
モータハウジング2の内部において、羽根車1とロータコア7との間には、回転軸5を支持する軸受10が配置されている。また、モータハウジング9の内部において、ロータコア7を基準にして軸受10の反対側には、回転軸5を支持する軸受11が配置されている。電動送風機200は、回転軸5の一方側の軸受10と他方側の軸受11とで、回転軸5を回転自在に支持している。
図3B、並びに、図5A乃至図5Cに示すように、羽根車1に近い側のモータハウジング2のエンドブラケット12は、電動機部202の回転軸方向であって羽根車1側の軸受10を保持する金属部材12aと一体成型されている。金属部材12aには、軸受10の外輪に接着剤を流せるように、複数の溝12bが設けられている。軸受10の外輪とエンドブラケット12の金属部材12aは、接着剤によって固定される。このようなモータハウジング2は、圧入や焼き嵌めによって軸受10をエンドブラケット12に固定する必要がないため、容易に組み立てることができる。ただし、エンドブラケット12と金属部材12aとエンドブラケット13と金属部材13aは、圧入固定されても良い。
軸受10,11の外輪は、エンドブラケット12,13に接着材で固定されている。これにより、電動送風機200は、運転中に軸受10,11の外輪と金属部材12a,13aとが空回りすることを防止でき、振動騒音の発生を抑えることができる。
コイルばね32は、ステータコア8とモータハウジング2のエンドブラケット12との間に圧縮された状態で配置されている。これにより、電動送風機200は、ステータコア8とモータハウジング9とを介してコイルばね32の付勢力による予圧を軸受11に加えるとともに、モータハウジング2を介してコイルばね32の付勢力による予圧を軸受10に加えている。
ロータコア7の端部には、回転体(例えば、羽根車1、ロータコア7、回転軸5等)のアンバランス量を修正するためのバランスリング6が設置されている。電動送風機200は、バランスリング6における回転体のアンバランス量を切削等により修正することで、回転体のアンバランス量を最小化している。これにより、電動送風機200は、振動と騒音の低減を図っている。なお、バランスリング6は、非磁性体の金属材料により、例えば銅材、アルミニュウム材、ステンレス材等の機械加工や焼結品で製作される。
また、電動送風機200は、質量が比較的大きな回転体であるロータコア7やバランスリング6を、回転軸5の両端に設けられた軸受10,11で支持するとともに、コイルばね32により軸受10,11に予圧を加えている。このような電動送風機200は、回転軸の振れを抑えて、回転体の回転精度を向上させることができる。これによって、電動送風機200は、振動特性を向上させることができる。そのため、電動送風機200は、回転体の高速回転を可能とし、振動と騒音を低減することができる。
さらに、電動送風機200は、質量が比較的大きな回転体であるロータコア7やバランスリング6を2つの軸受10,11の間に配置している。そのため、電動送風機200は、軸受10,11間の距離を必要最小限に抑えることができる。したがって、電動送風機200は、軸方向寸法を短くすることができ、小型化を図ることができる。
図3A、並びに、図5A乃至図5Cに示すように、羽根車1に近い側(羽根車1側)のモータハウジング2の外筒2bの外周部には、周方向の3箇所に爪状突起20が設けられ、爪状突起20には取付穴21が設けられている。また、図6A及び図6Bに示すように、羽根車1から遠い側(羽根車1とは逆側)のモータハウジング9の外筒9bの外周部には、周方向の3箇所に突起部22が設けられている。モータハウジング2の取付穴21とモータハウジング9の突起部22とが嵌合されることによって、モータハウジング2とモータハウジング9は接続される。
図3Bに示すように、羽根車1を覆うファンケーシング3は、羽根車1に近い側のモータハウジング2の外筒2bの外周部とファンケーシング3の内面3aが接触し、モータハウジング2に固定される。なお、ファンケーシング3とモータハウジング2の固定は、接着剤や、圧入、又は、穴と突起の嵌合等により、ファンケーシング3と羽根車1の回転軸方向の位置決めができれば良い。ファンケーシング3には空気吸込口4が設けられている。
羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23は、羽根車1から流出した空気の流れと翼入口角度を略一致させることで、圧力損失を低減している。電動送風機200は、軸流型ディフューザ翼23により、空気の流れの回転方向速度成分を減少させることで、ディフューザ効果を高め、送風機効率を向上している。また、軸流型ディフューザ翼23の軸方向下流に設置された後段の軸流型ディフューザ翼24は、軸流型ディフューザ翼23から流出された空気の流れの回転方向速度成分を更に減少させる。また、後段の軸流型ディフューザ翼24の下流の翼なし軸流ディフューザ25は、軸方向端部の開口部16に向かって、半径方向の内向き側に流路断面積が拡大する形状になっている。これにより、電動送風機200は、回転軸5の軸方向の空気の流れの減速を大きくし、更なる送風機効率を向上させることができる。
ここで、電動送風機200内における空気の流れについて説明する。
図3Bに示すように、電動送風機200が電動機部202を駆動して羽根車1を回転させると、空気吸込口4から電動送風機200の内部に空気が流入する。電動送風機200は、内部に流入した空気を第1の流路17に沿って流す。第1の流路17は、実線矢印α1に示す経路のように形成されている。すなわち、第1の流路17は、ファンケーシング3の空気吸込口4からモータハウジング9のエンドブラケット13に設けられた開口部16までを通るように形成されている。
電動送風機200は、羽根車1が斜流型羽根車の場合に、羽根車1の回転によって内部の空気を昇圧しながら、空気に半径方向成分の圧力を与えることで、回転軸5の軸方向から傾いた空気の流れを発生させる。空気の流れは、羽根車1の出口において回転方向成分と回転軸5の軸方向成分とを持つ流れとなり、ファンケーシング3における羽根車1の出口からモータハウジング2に流出する。
モータハウジング2に流出した空気の流れは、羽根車1に近い側に配置された軸流型ディフューザ翼23と羽根車1から遠い側に配置された後段の軸流型ディフューザ翼24とに沿ってモータハウジング2,9の内部を通る。これにより、空気の流れは、軸流型ディフューザ翼24の出口に向かって進むにつれて、回転方向の速度が減速する。この後、空気の流れは、翼なし軸流ディフューザ25の内部を通る。翼なし軸流ディフューザ25の流路断面積は、モータハウジング9の開口部16に向かうにつれて、増大する。そのため、空気の流れは、モータハウジング9の開口部16に向かって進むにつれて、回転軸5の軸方向速度が減速する。そして、空気の流れは、翼なし軸流ディフューザ25で圧力回復された後、モータハウジング9の開口部16から外部に排気される。
また、電動送風機200は、接続部28でのベンチェリ効果により、空気を第2の流路14に沿って流す。第2の流路14は、破線矢印α2に示す経路のように形成されている。すなわち、第2の流路14は、モータハウジング9の内筒9aと電動機部202との間を通って、モータハウジング9のエンドブラケット13に設けられた開口部15から接続部28に向かい、接続部28で折り返し、モータハウジング9の内筒9aと外筒9bとの間を通って、接続部28からモータハウジング9のエンドブラケット13に設けられた開口部16に向かうように形成されている。このような第2の流路14は、少なくとも流路の一部がステータコア8の外周を通るように、形成されている。
第2の流路14と第1の流路17とは、羽根車1に近い側に配置された軸流型ディフューザ翼23の出口と羽根車1から遠い側に配置された後段の軸流型ディフューザ翼24との間の接続部28で連通している。第2の流路14は、接続部28の軸方向下流に側に設けられている。開口部15の開口面積は、接続部28の流路断面積以上の大きさに設定されている。
接続部28は、羽根車1側のモータハウジング2と羽根車1とは逆側のモータハウジング9で形成されている。接続部28は、ステータコア8の外周部から第1の流路17に向かうにつれて、後段の軸流型ディフューザ翼24側の軸方向へ傾斜している。これにより、第2の流路14を流れる空気の流れは、第1の流路17を流れる空気の流れと接続部28で円滑に合流できる。このような電動送風機200は、第2の流路14を流れる空気の風量を増加することができる。
第1の流路17を流れる空気の風速が速いため、第2の流路14内の空気は、静圧が低くなり、ベンチュリ効果により、エンドブラケット13の開口部15から接続部28へと向かう流れが発生する。第2の流路14は、モータハウジング9のエンドブラケット13の開口部15から電動機部202の内部に、電動機部202よりも温度の低い外部の空気を吸い込む。電動送風機200は、開口部15から吸い込んだ空気を軸受11とステータコア8の外周側に通すことで、開口部15から吸い込んだ空気で軸受11とステータコア8とボビン31に巻き回されたコイル30とを冷却する。
電動機部202の内部において、羽根車1側のエンドブラケット12では、羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23の出口で生じるベンチュリ効果による空気の流れと、ロータコア7の回転による旋回成分の空気の流れとがある。これらの空気の流れにより、軸受10と羽根車1側のエンドブラケット12が冷却される。
また、接続部28で第2の流路14から第1の流路17へ流れ込んだ空気は、羽根車1で昇圧された第1の流路17を流れる空気と合流する。合流した空気は、後段の軸流型ディフューザ翼24に流れ、翼なし軸流ディフューザ25を通ることで、減速され、羽根車1とは逆側のモータハウジング9の開口部16から排気される。
次に、図4を参照して、本実施形態の送風機部201の構成について説明する。なお、図4では、軸流型ディフューザ翼23を構成するモータハウジング2の外筒2b(図3B参照)と、軸流型ディフューザ翼24を構成するモータハウジング9の外筒9b(図3B参照)とが省略されている。
図4に示すように、羽根車1は、ハブ板26と、複数枚の羽根27とを有してている。ハブ板26と羽根27は、熱可塑性樹脂で一体成形されている。羽根車1は、ハブ板26が羽根車1の外周部において回転軸5の軸方向(図4の下方向)に進むにつれて外方向に傾斜した構成になっている斜流羽根車である。図4では、シュラウド板を持たないオープン型斜流羽根車の羽根車1を示しているが、羽根車1はシュラウド板の有無にかかわらず遠心羽根車であっても良い。
羽根車1の回転軸方向下流側に配置された軸流型ディフューザ翼23は、周方向等間隔に15枚の翼を有している。軸流型ディフューザ翼23は、羽根車1側のモータハウジング2の内筒2aと外筒2bの間に設けられている。軸流型ディフューザ翼23は、モータハウジング2と一体で成型されている。後段の軸流型ディフューザ翼24は、羽根車1とは逆側のモータハウジング9の内筒9aと外筒9bの間に設けられている。軸流型ディフューザ翼24は、モータハウジング9と一体で成型されている。また、後段の軸流型ディフューザ翼24は、羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23と同一の枚数の翼を有している。
軸流型ディフューザ翼23のシュラウド側(外周側)後縁の周方向位置と軸流型ディフューザ翼24のシュラウド側(外周側)前縁の周方向位置は、略一致している。ただし、軸流型ディフューザ翼23のシュラウド側(外周側)後縁の周方向位置と軸流型ディフューザ翼24のシュラウド側(外周側)前縁の周方向位置は、翼間ピッチ(360/翼枚数)を変えることで、変更することができる。なお、翼間ピッチを変えた場合に、電動送風機200は、風量特性を変化させることができる。例えば、電動送風機200は、翼間ピッチを15~50%に変える(小さくする)ことで、大風量側の効率を向上させることができる。また、本実施形態では、軸流型ディフューザ翼23と軸流型ディフューザ翼24の翼枚数を15枚としているが、これに限定されず、一体成型で成型できる範囲で翼枚数を変えても良い。
また、電動送風機200は、羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23を高さ方向に湾曲させている。これにより、電動送風機200は、ディフューザのハブ側(内筒2a側)の翼面(軸流型ディフューザ翼23の面)とハブ面(内筒2a)で生じる2次流れを抑えることができる。そのため、電動送風機200は、ディフューザ内部(軸流型ディフューザ翼23の内筒2a側の翼面と内筒2a)のはく離を抑制でき、電動機部202の冷却の高効率化が可能となる。
また、羽根車1から遠い側の軸流型ディフューザ翼24は、翼なし軸流ディフューザ25に向かうにつれ、翼厚さ24t(翼の後縁側の翼厚さ)が厚くなっている。羽根車1から遠い側の軸流型ディフューザ翼24の翼厚さ24tは、羽根車1に近い側の軸流型ディフューザ翼23の翼厚さ23t(翼の後縁側の翼厚さ)よりも厚くなっている。電動送風機200は、軸流型ディフューザ翼23の翼厚さ23tよりも軸流型ディフューザ翼24の翼厚さt24を大きくすることで、空気の流れの減速を緩やかにでき、静圧回復を高めて、電動機部202の冷却の高効率化が可能となる。
<電動機部の構成>
以下、図7A乃至図11を参照して、電動機部202の構成について説明する。
図7Aは、固定子33に用いられるボビン31の斜視図である。図7Bは、ボビン31の縦断面図である。図7Cは、ボビン31の横断面図である。図8は、コイル30を巻き回したボビン31にステータコア8を一体化した固定子33の斜視図である。図9は、固定子33にコイルばね32を配置した斜視図である。図10は、固定子33を羽根車1とは逆側のモータハウジング9に取り付けた状態の部分拡大図である。図11は、図9で示す固定子33にコイルばね32を配置した状態を羽根車1側のモータハウジング2に取り付けた状態の部分拡大図である。
図7A乃至図7Cに示すように、ボビン31は、内周壁34と、この内周壁34の外周側に位置する外周壁35とを有している。内周壁34と外周壁35との間に、コイル30が設けられている。
内周壁34は、ロータコア7(図3B参照)を囲むように、円筒状に形成されている。内周壁34の回転軸方向の一端には、複数の取付穴34aが形成されている。取付穴34aは、ボビン31をモータハウジング9のエンドブラケット13に固定するためのものである。取付穴34aがエンドブラケット13に設けた突起13c(図6A及び図6B参照)と嵌合することで、ボビン31は、エンドブラケット13に固定することができる。本実施形態では、取付穴34aは3カ所設けられている。
外周壁35は、回転軸方向に細長い、略四角状の複数の板部35aを備えている。なお、本実施形態では、外周壁35は、6枚の板部35aを備えている。各板部35aは、内周壁34の外周面に沿うように湾曲して形成され、内周壁34を取り囲むように配置されている。各板部35aは、周方向に間隔を空けて配置されている。なお、隣り合う板部35a同士の間隔は、好ましくは等間隔であるとよい。
各板部35aの外周面には、周方向に沿って伸びるステータコア8の位置決めリブ35bが形成されている。位置決めリブ35bは、ステータコア8の回転軸方向の一端を位置決めするためのものである。
また、各板部35aの外周面には、回転軸方向に沿って伸びるリブ35cが形成されている。リブ35cは、ステータコア8をボビン31に圧入固定するためのものである。リブ35cの高さは、およそ0.1mmである。
ボビン31は、合成樹脂製(絶縁性)の材料によって形成されている。位置決めリブ35bの反対側の端部からステータコア8を挿入することで、リブ35cが圧縮変形し、ステータコア8がボビン31に固定される。なお、リブ35cの高さは、0.1mmに限定されることなく、ステータコア8を無理なく圧入固定することができれば良い。また、ボビン31とステータコア8を強固に固定するために接着剤を用い固定しても良い。
ボビン31の内周壁34と外周壁35とは、ティース36によって接合されている。これら内周壁344と周壁354とティース36は、樹脂成型によって一体に構成されている。ティース36は、回転軸方向に細長く形成されている。また、ティース36の回転軸方向の長さは、板部35aの回転軸方向の長さよりも短く形成され、巻き回したコイル30が径方向にはみ出さないようになっている。
図8に示すように、ボビン31のティース36(図7B及び図7C参照)には、コイル30が巻き回されている。コイル30は、内周壁34と外周壁35との間に配置されている。ステータコア8は、外周壁35の位置決めリブ35bにより回転軸方向の位置が定まる。図3Bに示すように、ステータコア8とロータコア7は、径方向の中央位置が一致して同軸になるように、配置されている。図8に戻り、ステータコア8は、ボビン31の外周壁35に設けたリブ35cが変形することで、周方向の回転を抑制することができる。
図9に示すように、コイルばね32は、円筒状の圧縮ばねであり、ボビン31の外周壁35の板部35aの外周側に配置され、ステータコア8の端面上に付置している。コイルばね32の外径は、ステータコア8の外径よりも小さい。コイルばね32は、例えばステンレス材等の、非磁性体の金属材料で製作される。これにより、電動送風機200は、電動機部202の磁束の影響を受けることがなく、コイルばね32で軸受10,11に適正に予圧を与えることができる。また、電動送風機200は、電動機部202での漏れ磁束による渦電流等を抑制でき、高効率な運転を実現することができる。
図10に示すように、電動送風機200は、ボビン31の内周壁34に設けた取付穴34a(図7A及び図7B参照)と、モータハウジング9のエンドブラケット13に設けた突起13c(図6A及び図6B参照)とを嵌合できる。これにより、電動送風機200は、ボビン31をエンドブラケット13に固定できる。このとき、内周壁34はエンドブラケット13の金属部材13aの外周と接触する。
エンドブラケット13に設けた突起13c(図6A及び図6B参照)は、略三角形状を呈している。そのため、取付穴34a(図7A及び図7B参照)と突起13c(図6A及び図6B参照)とを嵌合させて、ボビン31をエンドブラケット13に取り付けると、ボビン31は、軸方向において、羽根車1側に移動することができず、抜けないようになっている。ただし、取付穴34a(図7A及び図7B参照)は軸方向に延在するように形成されているため、ボビン31は、軸方向において、羽根車1とは逆側に移動させることができる。
図11に示すように、ボビン31の内周壁34は、モータハウジング2のエンドブラケット12の金属部材12aの外周と重なるように非接触で近接して配置されている。内周壁34の端部とエンドブラケット12との間には、回転軸方向に隙間CLが設けられている。つまり、ボビン31の一端は、モータハウジング2とモータハウジング9とを一体化したモータハウジング19に固定され、ボビン31の他端は、モータハウジング19の他端に非接触で近接して配置されている。電動送風機200は、運転することで、電動機部202の固定子33のコイル30やステータコア8が発熱して、コイル30やステータコア8の温度が上昇する。これに伴い、樹脂製のボビン31が熱膨張により羽根車1側に伸びる。隙間CLは、たとえ樹脂製のボビン31が熱膨張により羽根車1側に伸びたとしても、内周壁34の端部とエンドブラケット12とが接触しないように、設定されている。
ボビン31の内周壁34は、羽根車1側の端面が金属部材12aの外周と非接触状態で近接して配置されるように、羽根車1とは逆側の端面をモータハウジング9のエンドブラケット13の金属部材13aに固定している。これにより、電動送風機200は、ボビン31と回転軸5との同軸度を得ることができる。このような電動送風機200は、ロータコア7とステータコア8の同軸度を得ることができるため、電動機部202の効率を向上させるとともに、振動騒音を低減することができる。
コイルばね32は、ステータコア8と羽根車1に近い側のモータハウジング2のエンドブラケット12の間に配置されている。コイルばね32の外径は、モータハウジング2の内筒2aの内径よりも小さくなっている。したがって、コイルばね32と内筒2aは、接触しない。これにより、電動送風機200は、コイルばね32の圧縮を阻害しないようになっている。
図3Aに示すように、電動送風機200は、モータハウジング2に設けた爪状突起20の取付穴21と、羽根車1とは逆側のモータハウジング9に設けた突起部22とを嵌合させて接続する。これにより、図3Bに示すコイルばね32が圧縮される。このとき、コイルばね32は、羽根車1に近い側に配置されたモータハウジング2のエンドブラケット12に設けられた金属部材12aを介して軸受10に予圧を加える。また、このとき、コイルばね32は、ステータコア8に固定されているボビン31と羽根車1から遠い側に配置されたモータハウジング9のエンドブラケット13に設けられた金属部材13aを介して軸受11に予圧を加える。つまり、コイルばね32が圧縮されることで、ボビン31の内周壁34の端部が金属部材13aの台座13dと接触し、軸受11に予圧が与えられる。このような電動送風機200は、回転体(例えば、回転軸5、羽根車1、バランスリング6、ロータコア7等)の回転精度を向上させることができ、電動機202を安定して駆動することができる。
電動送風機200を運転すると、羽根車1側の軸流型ディフューザ翼23と後段の軸流型ディフューザ翼24の間に設けられた接続部28でのベンチュリ効果により、エンドブラケット13の開口部15から冷却風が吸引される。冷却風は、電動機部202内部を流れ、軸受10,11や発熱源である固定子33のコイル30、ステータコア8を冷却する。電動送風機200は、特に固定子33のコイル30が冷却されることで、電動機部202の作動効率を向上させることができる。
また、電動送風機200は、回転体(例えば、回転軸5、羽根車1、バランスリング6、ロータコア7等)の中で質量が比較的大きいロータコア7やバランスリング6を、回転軸5の両端に設けられた軸受10,11で支持するとともに、コイルばね32により軸受10,11に予圧を加えている。このような電動送風機200は、回転軸の振れを抑えて、回転体の回転精度を向上させることができる。これによって、電動送風機200は、振動特性を向上させることができる。そのため、電動送風機200は、回転体の高速回転を可能とし、振動と騒音を低減することができる。
また、電動送風機200は、振動特性を向上させることができるため、回転体を高速に駆動することができる。これにより、電動送風機200は、羽根車1を小型にすることができる。したがって、電動送風機200は、外径の大きい送風機部201を小型化することができ、電動送風機200全体の大きさを小型化することができる。
さらに、電動送風機200は、質量が比較的大きな回転体であるロータコア7やバランスリング6を2つの軸受10,11の間に配置している。そのため、電動送風機200は、軸受10,11間の距離を必要最小限に抑えることができる。また、コイルばね32をロータコア7と軸受10を収納しているモータハウジング2のエンドブラケット12の間に配置している。そのため、電動送風機200は、2つの軸受10,11に予圧を加える加圧機構を設けるために、回転軸方向に構成を長くする必要がない。このような電動送風機200は、回転軸方向寸法を短くすることができるため、小型化することができる。
また、電動送風機200は、運転することで、電動機部202の固定子33のコイル30やステータコア8が発熱して、コイル30やステータコア8の温度が上昇する。これに伴い、樹脂製のボビン31が熱膨張により羽根車1側に伸びる。しかしながら、このとき、発熱量が比較的大きい固定子33のステータコア8の端面上に設けられたコイルばね32が圧縮されることで、軸受10,11に予圧が加わる。このような電動送風機200では、軸受10,11の予圧が抜けることがなく、予圧を安定して維持することができる。したがって、電動送風機200は、運転により各部の温度変化が生じても、安定して運転することができ、信頼性の高い構成を実現することができる。
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。