本発明は、治療目的でC/EBPα遺伝子発現および/または機能をモジュレートするための組成物、方法、およびキットを提供する。この組成物、方法、およびキットは、C/EBPα転写物を標的とする核酸構築物を含む。
C/EBPαタンパク質は、代謝プロセスおよび細胞増殖のクリティカルなレギュレータとして知られる。C/EBPα遺伝子をモジュレートすることは、治療目的で大きい可能性を有する。本発明は、C/EBPα転写物を標的とする核酸構築物を提供することにより、こうした必要性に対処する。この核酸構築物は、修飾を含むまたは含まない一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAを含みうる。
本明細書で用いられるC/EBPα遺伝子は、コード鎖と鋳型鎖とを含む二本鎖DNAである。それはまた本出願では標的遺伝子を意味しうる。
これに関連する「C/EBPα転写物」、「C/EBPα標的転写物」、または「標的転写物」という用語は、C/EBPαタンパク質をコードするC/EBPα mRNAでありうる。C/EBPα mRNAはC/EBPα遺伝子の鋳型鎖から転写され、ミトコンドリアに存在しうる。
C/EBPα遺伝子のコード鎖から転写されるC/EBPα遺伝子のアンチセンスRNAは、これ以降では標的アンチセンスRNA転写物と呼ぶ。標的アンチセンスRNA転写物は長い非コードアンチセンスRNA転写物でありうる。
本発明に関連する「低分子活性化RNA(small activating RNA)」、「低分子活性化RNA(short activating RNA)」または「saRNA」という用語は、特定の遺伝子の発現をアップレギュレートするまたはそれに対する正の作用を有する一本鎖または二本鎖のRNAを意味する。saRNAは、14〜30ヌクレオチドの一本鎖でありうる。saRNAはまた、各鎖が14〜30ヌクレオチドを含む二本鎖でありうる。この遺伝子は、saRNAの標的遺伝子と呼ばれる。C/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートするsaRNAは「C/EBPα−saRNA」と呼ばれ、C/EBPα遺伝子はC/EBPα−saRNAの標的遺伝子である。
一実施形態では、C/EBPα標的アンチセンスRNA転写物を標的とするC/EBPα−saRNAは、C/EBPα遺伝子発現および/または機能をアップレギュレートする。
これに関連する「標的」または「標的化」という用語は、C/EBPα遺伝子に対する作用を有することを意味する。作用は直接的または間接的でありうる。直接的作用は、C/EBPα標的アンチセンスRNA転写物との完全なまたは部分的なハイブリダイゼーションにより引き起こしうる。間接的作用は上流または下流でありうる。
C/EBPα−saRNAは、生物学的プロセスまたは活性に対する下流作用を有しうる。かかる実施形態では、C/EBPα−saRNAは、第2の非標的転写物に対する作用(アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれか)を有しうる。
これに関連する「遺伝子発現」という用語は、C/EBPα遺伝子からC/EBPα mRNAを生成する転写工程またはC/EBPα mRNAからC/EBPαタンパク質を生成する翻訳工程を含みうる。C/EBPα mRNAの増加およびC/EBPαタンパク質の増加は、両方ともC/EBPα遺伝子発現の増加または正の作用の指標となる。
遺伝子の「アップレギュレーション」または「活性化」とは、遺伝子の発現レベル、遺伝子によりコードされるポリペプチドのレベルもしくはその活性、または遺伝子の鋳型鎖から転写されるRNA転写物のレベルが本発明のsaRNAの不在下で観測されるよりも増加することを意味する。本発明のsaRNAは、標的遺伝子の発現に対する直接的または間接的なアップレギュレート作用を有しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、増殖細胞で効力を示しうる。細胞に関して本明細書で用いられる場合、「増殖」とは、急速に成長および/または複製している細胞を意味する。
I.本発明の組成物
本発明の一態様は、CEBPA遺伝子をアップレギュレートするsaRNAと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。かかるsaRNAは、これ以降では「C/EBPα−saRNA」または「本発明のsaRNA」と呼ばれ、本出願では同義的に用いられる。
saRNA設計
C/EBPα−saRNAはC/EBPα遺伝子をアップレギュレートする。一実施形態では、それはC/EBPα遺伝子の標的アンチセンスRNA転写物に相補的になるように設計され、標的アンチセンスRNA転写物をダウンレギュレートすることによりC/EBPα遺伝子発現および/または機能に対する作用を発揮しうる。
これに関連する「相補的」という用語は、ストリンジェント条件下で標的アンチセンスRNA転写物にハイブリダイズ可能であることを意味する。
本発明に関連する核酸配列を記述するために用いられるときの「センス」という用語は、配列が遺伝子のコード鎖の配列に対する同一性を有することを意味する。本発明に関連する核酸配列を記述するために用いられるときの「アンチセンス」という用語は、配列が遺伝子のコード鎖の配列に相補的であることを意味する。
DNAのチミジンはRNAのウリジンに置き換えられること、およびこの差は「アンチセンス」または「相補性」という用語の解釈を変えるものではないことを理解すべきである。
標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位(TSS:transcription start site)に対応する位置の100、80、60、40、20、または10kb上流までと、標的遺伝子の転写停止部位に対応する位置の100、80、60、40、20、または10kb下流までとの間のコード鎖の遺伝子座から転写しうる。
一実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位から+/−1kb以内に位置するコード鎖の遺伝子座から転写される。
他の実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位から+/−500、+/−250、または+/−100以内に位置するコード鎖の遺伝子座から転写される。
他の実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位から+/−2000ヌクレオチドに位置するコード鎖の遺伝子座から転写される。
他の実施形態では、コード鎖の遺伝子座は、標的遺伝子の転写開始部位に対応する位置から上流または下流の1000ヌクレオチド以下である。
他の実施形態では、コード鎖の遺伝子座は、標的遺伝子の転写開始部位に対応する位置から上流または下流の500ヌクレオチド以下である。
本明細書で用いられる「転写開始部位」(TSS)という用語は、転写の開始位置に対応するまたはそれをマークする遺伝子の鋳型鎖のヌクレオチドを意味する。TSSは、遺伝子の鋳型鎖のプロモータ領域内に位置しうる。
本明細書で用いられる「転写停止部位」という用語は、遺伝子の鋳型鎖の1ヌクレオチド以上でありうる領域を意味し、少なくとも1つの特徴部、限定されるものではないが例として、標的転写物の少なくとも1つの停止コドンをコードする領域、標的転写物の3’UTRの直前の配列をコードする領域、RNAポリメラーゼが遺伝子を放出する領域、スプライス部位またはスプライス部位の前の部分をコードする領域、および標的転写物の転写が終了する鋳型鎖の領域を有する。
本発明の標的アンチセンスRNA転写物に関連する「特定の遺伝子座から転写される」という語句は、標的アンチセンスRNA転写物の転写が特定の遺伝子座から開始されることを意味する。
標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子のゲノム配列のコード鎖に相補的であり、「ゲノム配列」への本明細書での参照はいずれも「ゲノム配列のコード鎖」に対する簡略表現である。
遺伝子の「コード鎖」は、TがmRNAのUに置き換えられること以外、産生されるmRNAと同一の塩基配列を有する。したがって、遺伝子の「鋳型鎖」は、産生されるmRNAに相補的かつ逆平行である。
したがって、標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の100、80、60、40、20、または10kb上流と、標的遺伝子の転写停止部位の100、80、60、40、20、または10kb下流との間に位置するゲノム配列に相補的な配列を含みうる。
一実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の1kb上流と標的遺伝子の転写停止部位の1kb下流との間に位置するゲノム配列に相補的な配列を含む。
他の実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の500、250、または100ヌクレオチド上流と、標的遺伝子の転写停止部位の500、250、または100ヌクレオチド下流の終了部との間に位置するゲノム配列に相補的な配列を含む。
標的アンチセンスRNA転写物は、CEBPA遺伝子のコード領域を含むゲノム配列に相補的な配列を含みうる。標的アンチセンスRNA転写物は、鋳型鎖の標的遺伝子のプロモータ領域にアライメントするゲノム配列に相補的な配列を含みうる。遺伝子は複数のプロモータ領域を有しうる。その場合、標的アンチセンスRNA転写物は、1つ、2つ、またはそれを超えるプロモータ領域にアライメントしうる。遺伝子のプロモータ領域を同定するために、アノテートされた遺伝子座のオンラインデータベースを使用しうる。ヌクレオチド配列の対に関連して用いられるときの「アライメント」という用語は、ヌクレオチド配列の対が互いに相補的であるかまたは互いに配列同一性を有することを意味する。
標的アンチセンスRNA転写物と標的遺伝子のプロモータ領域との間のアライメント領域は、部分的でありうると共に1ヌクレオチド長程度の短いものでありうるが、少なくとも15もしくは少なくとも20ヌクレオチド長、または少なくとも25ヌクレオチド長、または少なくとも30、35、40、45、もしくは50ヌクレオチド長、または少なくとも55、60、65、70、もしくは75ヌクレオチド長、または少なくとも100ヌクレオチド長でありうる。次の特定の各配置は、「アライメント」という用語の範囲内に含まれることが意図される。a)標的アンチセンスRNA転写物および標的遺伝子のプロモータ領域は、同一の長さでアライメントする(すなわち、それらの全長にわたりアライメントする)。b)標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子のプロモータ領域よりも短く、その全長にわたり標的遺伝子のプロモータ領域にアライメントする(すなわち、それはその全長にわたり標的遺伝子のプロモータ領域内の配列にアライメントする)。c)標的アンチセンスRNA転写物は、標的遺伝子のプロモータ領域よりも長く、標的遺伝子のプロモータ領域は、それにより完全にアライメントされる(すなわち、標的遺伝子のプロモータ領域は、その全長にわたり標的アンチセンスRNA転写物内の配列にアライメントする)。d)標的アンチセンスRNA転写物および標的遺伝子のプロモータ領域は、同一の長さまたは異なる長さであり、アライメント領域は、標的アンチセンスRNA転写物の長さおよび標的遺伝子のプロモータ領域の長さの両方よりも短い。
「アライン」および「アライメント」の以上の定義は、しかるべき変更を加えて、本明細書全体を通じて他のオーバーラップ配列、たとえばアライメント配列の記述にも当てはまる。明らかなように、標的アンチセンスRNA転写物がプロモータ領域以外の標的遺伝子の領域にアライメントすると記述されている場合、標的アンチセンスRNA転写物の配列は、標的遺伝子のプロモータ領域内ではなく記載の領域内の配列にアライメントする。
一実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、少なくとも1kbまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10kb、たとえば、20、25、30、35、もしくは40kbの長さである。
一実施形態では、標的アンチセンスRNA転写物は、その全長に沿って標的遺伝子のコード鎖の配列に少なくとも75%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%で相補的な配列を含む。
本発明は、標的アンチセンスRNA転写物を標的とするsaRNAを提供し、かかる標的アンチセンスRNA転写物を効果的かつ特異的にダウンレギュレートしうる。これは、標的アンチセンスRNA転写物内の領域との高度の相補性を有するsaRNAにより達成可能である。saRNAは、標的とすべき標的アンチセンスRNA転写物内の領域とのミスマッチが5以下、または4もしくは3以下、または2以下または1以下であるかあるいはまったくないであろう。
図3を参照すると、標的アンチセンスRNA転写物が標的遺伝子の鋳型鎖の領域との配列同一性を有するため、標的アンチセンスRNA転写物は標的遺伝子の鋳型鎖内の領域と部分的に同一であろう。このことから遺伝子の鋳型鎖または標的アンチセンスRNA転写物のいずれへの参照も可能になろう。saRNAが標的アンチセンスRNA転写物にハイブリダイズまたは結合する位置(すなわち鋳型鎖の同位置)は、「標的配列」または「標的部位」と呼ばれる。
saRNAのアンチセンス鎖(一本鎖または二本鎖にかかわらず)は、標的配列の逆相補体と少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、または100%同一である。したがって、saRNAのアンチセンス鎖の逆相補体は、標的配列との高度の配列同一性を有する。標的配列は、saRNAおよび/またはsaRNAの逆相補体と同一の長さすなわち同一のヌクレオチド数を有しうる。
いくつかの実施形態では、標的配列は少なくとも14かつ30未満のヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、標的配列は19、20、21、22、または23ヌクレオチドを有する。
いくつかの実施形態では、標的配列の位置は鋳型鎖のプロモータ領域内に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列は鋳型鎖のTSS(転写開始部位)コア内に位置する。本明細書で用いられる「コアTSS」または「TSSコア配列」とは、TSS(転写開始部位)の2000ヌクレオチド上流と2000ヌクレオチド下流との間の領域を意味する。したがって、TSSコアは4001ヌクレオチドを含み、TSSはTSSコア配列の5’末端を基準にして位置2001に位置する。CEBPA TSSコア配列は以下の表に示される。
いくつかの実施形態では、標的配列はTSSの1000ヌクレオチド上流と1000ヌクレオチド下流との間に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列はTSSの500ヌクレオチド上流と500ヌクレオチド下流との間に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列はTSSの250ヌクレオチド上流と250ヌクレオチド下流との間に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列はTSSの100ヌクレオチド上流と100ヌクレオチド下流との間に位置する。
いくつかの実施形態では、標的配列はTSSコア内のTSSの上流に位置する。標的配列は、TSSの上流の2000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、または100ヌクレオチド未満でありうる。
いくつかの実施形態では、標的配列はTSSコア内のTSSの下流に位置する。標的配列は、TSSの下流の2000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、または100ヌクレオチド未満でありうる。
いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSの周囲の+/−50ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSに実質的にオーバーラップする。いくつかの実施形態では、標的配列は、TSSコアのTSSにオーバーラップするかまたはTSSコアのTSSで開始もしくは終了する。いくつかの実施形態では、標的配列は、上流方向または下流方向のいずれかの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19ヌクレオチドがTSSコアのTSSにオーバーラップする。
鋳型鎖の標的配列の位置は、標的配列の5’末端の位置により定義される。標的配列の5’末端は、TSSコアの任意の位置でありうると共に、標的配列は、TSSコアの位置1〜位置4001から選択される任意の位置で開始しうる。本明細書の参照では、標的配列の最も5’側の末端がTSSコアの位置1〜位置2000にある場合、標的配列はTSSの上流にあると見なされ、標的配列の最も5’側の末端が位置2002〜4001にある場合、標的配列はTSSの下流にあると見なされる。標的配列の最も5’側の末端がヌクレオチド2001である場合、標的配列はTSS中心配列であると見なされ、TSSの上流でも下流でもない。
さらなる参照では、たとえば、標的配列の5’末端がTSSコアの位置1600にある場合、すなわち、TSSコアの1600番目のヌクレオチドである場合、標的配列はTSSコアの位置1600から開始し、TSSの上流にあると見なされる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは二本鎖を形成する2つの鎖を有し、一方の鎖はガイド鎖である。saRNA二本鎖は二本鎖saRNAとも呼ばれる。本明細書で用いられる二本鎖saRNAまたはsaRNA二本鎖は、鎖間ハイブリダイゼーションが二本鎖構造の領域を形成可能な2本以上の、好ましくは2本の鎖を含むsaRNAである。二本鎖saRNAの2つの鎖は、アンチセンス鎖またはガイド鎖およびセンス鎖またはパッセンジャー鎖と呼ばれる。
アンチセンス鎖saRNAまたはアンチセンスsaRNAと同義的に用いられるsaRNA二本鎖のアンチセンス鎖は、標的アンチセンスRNA転写物内の領域との高度の相補性を有する。アンチセンス鎖は、標的アンチセンスRNA転写物内または標的配列内の領域とのミスマッチが5以下または4もしくは3以下または2以下または1以下でありうるか、あるいはまったくないこともありうる。したがって、アンチセンス鎖は鋳型鎖の標的配列との高度の相補性を有する。センス鎖saRNAまたはセンスsaRNAと同義的に用いられるsaRNA二本鎖のセンス鎖は、鋳型鎖の標的配列との高度の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、標的配列は鋳型鎖のプロモータ領域内に位置する。いくつかの実施形態では、標的配列は鋳型鎖のTSSコア内に位置する。
標的配列を基準にしたsaRNA二本鎖のアンチセンス鎖および/またはセンス鎖の位置、TSSコア配列を参照することにより定義される。たとえば、標的配列がTSSの下流にある場合、アンチセンスsaRNAおよびセンスsaRNAはTSSの下流から開始する。他の例では、標的配列がTSSコアの位置200から開始する場合、アンチセンスsaRNAおよびセンスsaRNAはTSSの上流から開始する。
saRNA、標的遺伝子、標的遺伝子のコード鎖、標的遺伝子の鋳型鎖、標的アンチセンスRNA転写物、標的転写物、標的配列/標的部位、およびTSSの関係は図3に示されている。
本発明に関連する「鎖」は、天然に存在しないまたは修飾されたヌクレオチドを含めてヌクレオチドの連続配列を意味する。2つ以上の鎖は、個別分子でありうるかもしくは個別分子の一部を形成しうるか、またはたとえばポリエチレングリコールリンカーなどのリンカーにより共有結合しうる。saRNAの少なくとも1つの鎖は、標的アンチセンスRNAに相補的な領域を含みうる。かかる鎖は、saRNA二本鎖のアンチセンス鎖またはガイド鎖と呼ばれる。saRNAのアンチセンス鎖に相補的な領域を含むsaRNAの第2の鎖は、センス鎖またはパッセンジャー鎖と呼ばれる。
saRNA二本鎖はまた、二本鎖領域を含めてヘアピン構造を形成する少なくとも部分的に自己相補的な単分子から形成しうる。かかる場合、「鎖」という用語は、saRNAの他の内部領域に相補的なsaRNAの領域の1つを意味する。saRNAのガイド鎖は、標的アンチセンスRNA転写物内の配列とのミスマッチが5以下、または4もしくは3以下、または2以下または1以下であるかあるいはまったくないであろう。
いくつかの実施形態では、saRNAのパッセンジャー鎖は、ガイド鎖の対応するヌクレオチドに相補的でない少なくとも1つのヌクレオチド(ガイド鎖とのミスマッチと呼ばれる)を含みうる。ガイド鎖とのミスマッチはガイド鎖の優先的なローディングを促進しうる(ウー(Wu)ら著、プロス・ワン(PLoS ONE)、2011年、第6巻、第12号、p.e28580(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。一実施形態では、ガイド鎖との少なくとも1つミスマッチはパッセンジャー鎖の3’末端にありうる。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端はガイド鎖との1〜5ミスマッチを含みうる。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端はガイド鎖との2〜3ミスマッチを含みうる。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端はガイド鎖との6〜10ミスマッチを含みうる。
一実施形態では、saRNA二本鎖は増殖細胞で効力を示しうる。
saRNA二本鎖は、標的アンチセンスRNA転写物の領域とのsiRNA様相補性、すなわち、saRNA二本鎖のガイド鎖の5’末端を基準にしてヌクレオチド2〜6と標的アンチセンスRNA転写物の領域との間の100%の相補性を有しうる。加えて、saRNAの他のヌクレオチドは、標的アンチセンスRNA転写物の領域との少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、または100%の相補性を有しうる。たとえば、ヌクレオチド7(5’末端から数えて)〜saRNAの3’末端は、標的アンチセンスRNA転写物の領域との少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、または100%の相補性を有しうる。
これに関連する「低分子干渉RNA」または「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路に関与して特定の遺伝子を干渉するまたはその発現を阻害する典型的には20〜25ヌクレオチド長の二本鎖RNAを意味する。この遺伝子はsiRNAの標的遺伝子である。たとえば、APOA1遺伝子の発現を干渉するsiRNAは「APOA1−siRNA」と呼ばれ、APOA1遺伝子は標的遺伝子である。siRNAは、通常、約21ヌクレオチド長であり、2つの鎖の各末端に3’オーバーハング(たとえば、2ヌクレオチド)を有する。
siRNAは、標的遺伝子の1つ以上のRNA転写物の特定の配列に結合してその切断を促進することにより標的遺伝子発現を阻害する。典型的には、RNAiではRNA転写物はmRNAであるため、mRNAの切断は遺伝子発現のダウンレギュレーションをもたらす。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明では、可能な機序の1つは、本発明のsaRNAが標的アンチセンスRNA転写物の切断により標的遺伝子発現をモジュレートしうることである。
二本鎖saRNAは、1つ以上の一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含みうる。二本鎖saRNAおよびsiRNAに関連する「オーバーハング」または「テール」という用語は、saRNAまたはsiRNAの二本鎖構造から突出する少なくとも1つの非対合ヌクレオチドを意味する。たとえば、saRNAの1つの鎖の3’末端が他の鎖の5’末端を越えて延在するかまたはその逆が成り立つ場合、ヌクレオチドオーバーハングが存在する。saRNAは、少なくとも1ヌクレオチドのオーバーハングを含みうると共に、代替的に、オーバーハングは、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、またはそれを超えるヌクレオチドを含みうる。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドを含めてヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含みうるかまたはそれらからなりうる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそれらの任意の組合せに存在しうる。さらに、オーバーハングのヌクレオチドは、saRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または両末端に存在可能である。ハイブリダイゼーション時に1つ以上の一本鎖オーバーハングを形成するように2つのオリゴヌクレオチドを設計する場合、かかるオーバーハングは相補性の決定に関してミスマッチと見なさないものとする。たとえば、19ヌクレオチド長の一方のオリゴヌクレオチドと21ヌクレオチド長の他方のオリゴヌクレオチドとを含むsaRNAは、長い方のオリゴヌクレオチドが短い方のオリゴヌクレオチドに完全に相補的な19ヌクレオチドの配列を含む場合、本明細書に記載の目的では依然として「完全に相補的」と見なしうる。
一実施形態では、二本鎖saRNAのアンチセンス鎖は、3’末端および/または5’末端に1〜10ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一実施形態では、二本鎖saRNAのアンチセンス鎖は、その3’末端に1〜4ヌクレオチドのオーバーハングまたはその3’末端に1〜2ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一実施形態では、二本鎖saRNAのセンス鎖は、3’末端および/または5’末端に1〜10ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一実施形態では、二本鎖saRNAのセンス鎖は、その3’末端に1〜4ヌクレオチドのオーバーハングまたはその3’末端に1〜2ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一実施形態では、二本鎖saRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は両方とも3’オーバーハングを有する。3’オーバーハングは、1つ以上のウラシル、たとえば配列UUまたはUUUを含みうる。一実施形態では、オーバーハングのヌクレオチドの1つ以上はヌクレオシドチオホスフェートで置き換えられ、ヌクレオシド間結合はチオホスフェートとなる。一実施形態では、オーバーハングは、1つ以上のデオキシリボヌクレオシド、たとえば配列dTdTまたはdTdTdTを含む。一実施形態では、オーバーハングは配列dT*dTを含む。ただし、*はチオホスフェートヌクレオシド間結合である。
saRNAが標的遺伝子発現をモジュレートする機序にかかわらず、標的アンチセンスRNA転写物または標的配列を基準にして本発明のsaRNAを定義するのが便利であることは、当業者であれば分かるであろう。しかしながら、本発明のsaRNAは、代替的に標的遺伝子を基準にして定義しうる。標的アンチセンスRNA転写物は標的遺伝子のコード鎖のゲノム領域に相補的であり、一方、本発明のsaRNAは標的アンチセンスRNA転写物の領域に相補的であるため、本発明のsaRNAは、標的遺伝子のコード鎖の領域との配列同一性を有すると見なしうる。標的アンチセンスRNA転写物を基準にした本発明のsaRNAの定義に関して本明細書で考察される特徴はすべて、しかるべき変更を加えて、標的遺伝子を基準にした本発明のsaRNAの定義にも当てはまるため、標的アンチセンスRNA転写物との相補性に関するいずれの考察も標的遺伝子のゲノム配列との同一性を含むと理解すべきである。したがって、本発明のsaRNAは、標的遺伝子のゲノム配列との高いパーセントの同一性、たとえば、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%または100%の同一性を有しうる。ゲノム配列は、標的遺伝子の転写開始部位の上流または下流の2000、1000、500、250、または100ヌクレオチドまででありうる。それは標的遺伝子のプロモータ領域にアライメントしうる。したがって、saRNAは、標的遺伝子のプロモータ領域にアライメントする配列との配列同一性を有しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAを設計するために標的アンチセンスRNA転写物の存在を決定する必要はない。換言すれば、saRNAの設計は標的アンチセンスRNA転写物の同定を必要としない。たとえば、TSSコアのヌクレオチド配列、すなわち、標的遺伝子の転写開始部位の上流の2000ヌクレオチド領域の配列から標的遺伝子の転写開始部の下流の2000ヌクレオチドまでは、標的遺伝子のコード鎖のゲノム配列により、シーケンシングにより、またはデータベース検索により得られうる。鋳型鎖のTSSコアの位置1〜位置4001の任意の位置から開始するコアTSSコア内の標的配列を選択可能であり、次いで、saRNA配列を設計するためにそれを使用可能である。以上で考察したように、saRNAは、標的配列の逆相補体との高度の配列同一性を有する。
次いで、全ゲノムのsaRNA配列のオフターゲットヒット数、0ミスマッチ(0mm)ヒット数、および1ミスマッチ(1mm)ヒット数を決定する。「オフターゲットヒット数」という用語は、標的遺伝子の鋳型鎖のsaRNAの標的配列と同一の全ゲノム中の他の部位の数を意味する。「0mmヒット数」という用語は、saRNAの標的転写物以外の既知のタンパク質コード転写物のうち、その相補体にsaRNAが0ミスマッチでハイブリダイズまたは結合しうるものの数を意味する。換言すれば、「0mmヒット数」は、saRNA配列と完全に同一の領域を含むsaRNAの標的転写物以外の既知のタンパク質コード転写物の数をカウントする。「1mmヒット数」という用語は、saRNAの標的転写物以外の既知のタンパク質コード転写物のうち、その相補体にsaRNAが1ミスマッチでハイブリダイズまたは結合しうるものの数を意味する。換言すれば、「1mmヒット数」は、1ミスマッチのみを有してsaRNA配列と同一の領域を含むsaRNAの標的転写物以外の既知のタンパク質コード転写物の数をカウントする。一実施形態では、オフターゲットヒットなし、0mmヒットなし、かつ1mmヒットなしのsaRNA配列のみを選択する。本出願に開示されるsaRNA配列は、それぞれオフターゲットヒットなし、0mmヒットなし、かつ1mmヒットなしである。
2011年6月23日出願の米国特許出願公開第2013/0164846号明細書(saRNAアルゴリズム)(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法は、saRNAを設計するためにも使用しうる。saRNAの設計は、コーリ(Corey)らに付与された米国特許第8,324,181号明細書および米国特許第7,709,566号明細書、リー(Li)らに付与された米国特許出願公開第2010/0210707号明細書、ならびにボウティラ(Voutila)ら著、モレキュラー・セラピー−ヌクレイック・アシッズ(Mol Ther Nucleic Acids)、2012年、第1巻、p.e35(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)にも開示されている。
「存在の決定」とは、標的遺伝子の遺伝子座の周りのESTおよび/もしくはアンチセンスRNA転写物のデータベースを探索して好適な標的アンチセンスRNA転写物を同定すること、またはRT PCRもしくは任意の他の公知の技術を用いて細胞内の標的アンチセンスRNA転写物の物理的存在を確認することのいずれかを意味する。
いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAは一本鎖または二本鎖でありうる。二本鎖分子は第1の鎖と第2の鎖とを含む。二本鎖の場合、二本鎖の各鎖は、少なくとも14または少なくとも18ヌクレオチド長、たとえば、19、20、21、または22ヌクレオチド長でありうる。二本鎖は、少なくとも12、または少なくとも15、または少なくとも17、または少なくとも19ヌクレオチドの長さ全体にわたりハイブリダイズしうる。各鎖はちょうど19ヌクレオチド長でありうる。この長さを超えるオリゴヌクレオチド二本鎖はインターフェロン反応を誘導するリスクを増加させうるため、好ましくはsaRNAの長さは30ヌクレオチド未満である。一実施形態では、saRNAの長さは19〜25ヌクレオチドである。saRNA二本鎖を形成する鎖は等しいまたは等しくない長さでありうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、標的配列との少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、または100%の相補性を有する少なくとも14ヌクレオチドかつ30ヌクレオチド未満の配列を含む。一実施形態では、標的配列との少なくとも80%、90%、95%、98%、99%、または100%の相補性を有する配列は、少なくとも15、16、17、18、もしくは19ヌクレオチド長または18〜22または19〜21またはちょうど19ヌクレオチド長である。
本発明のsaRNAは、標的アンチセンスRNA転写物に相補的でない短い3’または5’配列を含みうる。一実施形態では、かかる配列は鎖の3’末端にある。配列は、1〜5ヌクレオチド長または2もしくは3ヌクレオチド長でありうる。配列はウラシルを含みうるため、2または3ウラシルの3’ストレッチでありうる。配列は、dTなどのデオキシリボヌクレオシドを1つ以上含みうる。一実施形態では、配列のヌクレオチドの1つ以上はヌクレオシドチオホスフェートで置き換えられ、ヌクレオシド間結合はチオホスフェートとなる。たとえば、限定されるものではないが配列は配列dT*dTを含む。ただし、*はチオホスフェートヌクレオシド間結合である。この非相補的配列は「テール」と呼びうる。3’テールが存在する場合、鎖はより長くなりうる。たとえば、19ヌクレオチド+3’テール(UUまたはUUUでありうる)。かかる3’テールは、saRNAと標的アンチセンスRNA転写物との間の相補性の決定に関してミスマッチと見なさないものとする。
したがって、本発明のsaRNAは、(i)標的アンチセンスRNA転写物の領域との少なくとも80%の相補性を有する配列と(ii)ウラシル残基を含みうるまたはそれからなりうる1〜5ヌクレオチドの3’テールとからなりうる。したがって、saRNAは、存在するのであれば3’テールを除いて、典型的にはその全長にわたり標的アンチセンスRNA転写物の領域との相補性を有するであろう。本出願に開示されるsaRNA配列はいずれもかかる3’テールを任意選択的に含みうる。したがって、saRNAの表および配列リストに開示されるsaRNA配列はいずれもかかる3’テールを任意選択的に含みうる。本発明のsaRNAは、ダイサーまたはドローシャの基質配列をさらに含みうる。
本発明のsaRNAはフランキング配列を含有しうる。フランキング配列は、本発明のsaRNAの3’末端または5’末端に挿入しうる。一実施形態では、フランキング配列は、saRNAにmiRNA構成を持たせるmiRNAの配列であり、ドローシャおよびダイサーで処理しうる。限定されるものではないが一例では、本発明のsaRNAは2つの鎖を有し、マイクロRNA前駆体、たとえばmiR−30骨格フランキング配列にクローニングされる。
本発明のsaRNAは、制限酵素の基質または認識配列を含みうる。制限酵素の認識配列は、本発明のsaRNAの3’末端または5’末端にありうる。制限酵素の例としては、NotIおよびAscIが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一実施形態では、本発明のsaRNAは安定に塩基対合されて一体化された2つの鎖からなる。いくつかの実施形態では、パッセンジャー鎖は、ガイド鎖の対応するヌクレオチドに相補的でない少なくとも1つのヌクレオチド(ガイド鎖とのミスマッチと呼ばれる)を含みうる。一実施形態では、ガイド鎖との少なくとも1つミスマッチはパッセンジャー鎖の3’末端にありうる。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端はガイド鎖との1〜5ミスマッチを含みうる。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端はガイド鎖との2〜3ミスマッチを含みうる。一実施形態では、パッセンジャー鎖の3’末端はガイド鎖との6〜10ミスマッチを含みうる。
いくつかの実施形態では、二本鎖saRNAは、3’オーバーハングを形成する各鎖の3’末端にいくつかの非対合ヌクレオチドを含みうる。各鎖の3’オーバーハングを形成する非対合ヌクレオチドの数は、1〜5ヌクレオチドもしくは1〜3ヌクレオチドの範囲内または2ヌクレオチドでありうる。3’オーバーハングは上述した3’テールに形成しうるため、3’テールは二本鎖saRNAの3’オーバーハングでありうる。
したがって、本発明のsaRNAは一本鎖でありうると共に、(i)標的アンチセンスRNA転写物の領域との少なくとも80%の相補性を有する配列と(ii)ウラシル残基を含みうる1〜5ヌクレオチドの3’テールとからなる。本発明のsaRNAは、存在するのであれば3’テールを除いて、その全長にわたり標的アンチセンスRNA転写物の領域との相補性を有しうる。上述したように、「標的アンチセンスRNA転写物に相補的」である代わりに、本発明のsaRNAはまた、標的遺伝子のコード鎖との「同一性」を有するものとして定義しうる。本発明のsaRNAは二本鎖でありうると共に、(i)標的アンチセンスRNA転写物の領域との少なくとも80%の相補性を有する第1の配列と(ii)1〜5ヌクレオチドの3’オーバーハングとを含む第1の鎖と、(i)第1の配列と二本鎖を形成する第2の配列と(ii)1〜5ヌクレオチドの3’オーバーハングとを含む第2の鎖とからなる。
本明細書に記載されるように、C/EBPα遺伝子の配列を用いてC/EBPα−saRNAを設計する。C/EBPα−saRNAを設計するために、C/EBPα遺伝子の配列からCEBPA遺伝子の標的アンチセンスRNA転写物の配列を決定しうる。しかしながら、かかる標的アンチセンスRNA転写物の存在を決定する必要はない。本発明の好適なC/EBPα−saRNAの配列は表1に提供される。したがって、配列番号2、4、6、8、10、および12から選択される配列を含む第1の鎖を有するC/EBPα−saRNAが提供される。任意選択的に、C/EBPα−saRNAは、これらの配列の3’末端に3’テールを含みうる。
一本鎖C/EBPα−saRNAは第1の鎖のみからなるが、二本鎖C/EBPα−saRNAは第2の鎖も有する。一本鎖CEBPA−saRNAは、表1および1Aのアンチセンス鎖から選択される配列を含む。二本鎖C/EBPα−saRNAは、第1の鎖(ただし、第1の鎖は、表1および1Aのアンチセンス鎖から選択される配列を含む)と、第2の鎖(ただし、第2の鎖は、表1および1Aの対応するセンス鎖である配列を含む)とを含む。アンチセンス鎖および/またはセンス鎖は3’オーバーハングを含みうる。
二機能または二元機能オリゴヌクレオチドもC/EBPα遺伝子発現のアップレギュレーションおよびC/EBPβ遺伝子発現のダウンレギュレーションのために設計される。二元機能オリゴヌクレオチドの一方の鎖はC/EBPα遺伝子発現を活性化し、他方の鎖はC/EBPβ遺伝子発現を阻害する。好ましい二元機能オリゴヌクレオチド配列は表2Aに示される。各鎖は、表2Bに示されるダイサーの基質配列をさらに含みうる。
本発明のsaRNAは、任意の好適な方法により、たとえば、合成によりまたは当業者に周知の標準的分子生物学技術を用いて細胞内の発現により生成しうる。たとえば、本発明のsaRNAは、当技術分野で公知の方法を用いて化学合成または組換え産生しうる。
saRNAの化学修飾
本明細書では、saRNAにおいて「修飾」または必要に応じて「修飾された」という用語は、A、G、U、またはCリボヌクレオチドに対する構造修飾および/または化学修飾を意味する。本発明のsaRNAのヌクレオチドは、非標準的ヌクレオチド、たとえば、天然に存在しないヌクレオチドまたは化学合成されたヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドを含みうる。本発明のsaRNAは、任意の有用な修飾、たとえば、糖、核酸塩基、またはヌクレオシド間結合(たとえば、結合ホスフェート/ホスホジエステル結合/ホスホジエステル骨格)に対する修飾を含みうる。ピリミジン核酸塩基の1個以上の原子は、任意選択的に置換されたアミノ、任意選択的に置換されたチオール、任意選択的に置換されたアルキル(たとえば、メチルもしくはエチル)、またはハロ(たとえば、クロロもしくはフルオロ)により置き換えうるかまたは置換しうる。特定の実施形態では、修飾(たとえば、1つ以上の修飾)は糖およびヌクレオシド間結合のそれぞれに存在する。本発明に係る修飾は、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、またはそれらのハイブリッドをもたらすリボ核酸(RNA)の修飾でありうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは本明細書に記載の少なくとも1つの修飾を含みうる。
他の実施形態では、saRNAはsaRNA二本鎖であり、センス鎖およびアンチセンス配列は独立して少なくとも1つの修飾を含みうる。限定されるものではないが例として、センス配列は修飾を含みうると共にアンチセンス鎖は非修飾でありうる。限定されるものではないが他の例として、アンチセンス配列は修飾を含みうると共にセンス鎖は非修飾でありうる。限定されるものではないがさらに他の例として、センス配列は2つ以上の修飾を含みうると共にアンチセンス鎖は1つの修飾を含みうる。限定されるものではないが例として、アンチセンス配列は2つ以上の修飾を含みうると共にセンス鎖は1つの修飾を含みうる。
本発明のsaRNAは、糖、核酸塩基、および/またはヌクレオシド間結合への修飾の組合せを含みうる。これらの組合せは、本明細書または2012年10月3日出願の国際公開第2013/052523号パンフレットに記載のいずれか1つ以上の修飾、特に式(Ia)〜(Ia−5)、(Ib)〜(If)、(IIa)〜(IIp)、(IIb−1)、(IIb−2)、(IIc−1)〜(IIc−2)、(IIn−1)、(IIn−2)、(IVa)〜(IVl)、および(IXa)〜(IXr))(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含みうる。
本発明のsaRNAは、分子の全長に沿って均一に修飾しうるかまたは修飾しえない。たとえば、本発明のsaRNAでは1つ以上またはすべてのタイプのヌクレオチド(たとえば、プリンもしくはピリミジン、またはA、G、U、Cのいずれか1つ以上もしくはすべて)を均一に修飾しうるかまたは修飾しえない。いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAのすべてのヌクレオチドXが修飾される。ただし、Xは、ヌクレオチドA、G、U、Cのいずれか1つ、または組合せA+G、A+U、A+C、G+U、G+C、U+C、A+G+U、A+G+C、G+U+C、またはA+G+Cのいずれか1つでありうる。
さまざまな糖修飾、ヌクレオチド修飾、および/またはヌクレオシド間結合(たとえば、骨格構造)は、saRNAの種々の位置に存在しうる。saRNAの機能が実質的に低減されないようにsaRNAの任意の位置にヌクレオチドアナログまたは他の修飾を配置しうることは、当業者であれば分かるであろう。本発明のsaRNAは、修飾ヌクレオチドを約1%〜約100%(全ヌクレオチド分を基準にして、または1つ以上のタイプのヌクレオチド、すなわち、A、G、U、もしくはCのいずれか1つ以上を基準にして)または任意の介在パーセント(たとえば、1%〜20%、1%〜25%、1%〜50%、1%〜60%、1%〜70%、1%〜80%、1%〜90%、1%〜95%、10%〜20%、10%〜25%、10%〜50%、10%〜60%、10%〜70%、10%〜80%、10%〜90%、10%〜95%、10%〜100%、20%〜25%、20%〜50%、20%〜60%、20%〜70%、20%〜80%、20%〜90%、20%〜95%、20%〜100%、50%〜60%、50%〜70%、50%〜80%、50%〜90%、50%〜95%、50%〜100%、70%〜80%、70%〜90%、70%〜95%の、70%〜100%、80%〜90%、80%〜95%、80%〜100%、90%〜95%、90%〜100%、および95%〜100%)で含有しうる。
いくつかの実施形態では、修飾はリボース環上でありうる。リボース上の2’−OH基は、リボヌクレアーゼからsaRNAを保護するために置換しうる。たとえば、2’−OH基は、2’−O−メチル(2’−OMe)、2’−フルオロ(2’−F)、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アリル(2’−O−アリル)などで置換しうる。
いくつかの実施形態では、修飾は、ヌクレオチドの二環式誘導体(LNA、ENA、CLNA、CENA、AENAなど)、非環式ヌクレオチド(UNA、PNAなど)、またはリボースの代わりにピラノース環を含むヌクレオチド(ANA、HNA)を含む。
いくつかの実施形態では、修飾は、saRNAのヌクレアーゼ耐性を増加させるために骨格上にありうる。限定されるものではないが例としては、ホスホロチオエート(PS)基もしくはボラノホスホネート(PB)基でホスフェート基(PO)を置き換えること、2’,5’−結合で3’,5’−ホスホジエステル結合を置き換えること、またはエステル結合の代わりにアミド結合にすることなどが挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾は核酸塩基上にありうる。たとえば、ウリジン(U)は、プソイドウリジン(ψ)、2−チオウリジン(s2U)、ジヒドロウリジン(D)、5−ブロモ−U、5−ヨード−Uなどで置き換えうる。プリンは2,6−ジアミノプリンで置き換えうる。
いくつかの実施形態では、修飾はsaRNAの末端にありうる。任意の末端修飾を用いて、ヌクレアーゼ耐性を増加させたり、非対称RISCアセンブリーを容易にしたり、細胞内へのsaRNA蓄積を支援したり、saRNA検出を可能にしたりしうる。たとえば、蛍光標識およびビオチンをsaRNAの末端に結合しうる。他の例では、反転デオキシリボースをsaRNAの末端で利用しうる。
いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAは、球状核酸(SNA)または環状核酸になるように修飾しうる。化学試薬または酵素により本発明のsaRNAの末端を結合して、遊離末端を有していない球状saRNAを生成しうる。球状saRNAは、その線状カウンターパートよりも安定でかつRNアーゼRエキソヌクレアーゼによる消化に耐性であることが予想される。球状saRNAは、A、G、U、またはCリボヌクレオチドに対する他の構造修飾および/または化学修飾をさらに含みうる。
いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAは反転dT修飾を含みうる。反転修飾は5’末端または3’末端にありうる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドの2’−OHは−OMeで置換され、2’−OMeと呼ばれる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドの2’−OHは−Fで置換され、2’−Fと呼ばれる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合が存在する。いくつかの実施形態では、本発明のsaRNAは脱塩基修飾を含みうる。
本発明のsaRNAは修飾の組合せを含みうる。saRNAは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を含みうる。たとえば、saRNAは、2’−F修飾と2’−OMe修飾とを交互に含みうる。いくつかの実施形態では、saRNAはその全長にわたり修飾しうる。
センス鎖の不活性化および/またはオフターゲットの低減に好適でガイド鎖の活性に干渉しない任意の修飾を使用しうる。
表3は、修飾CEBPA−saRNA配列および非修飾CEBPA−saRNA配列の例を含むが、これらに限定されるものではない。表3中、小文字は2’−OMe修飾を意味する。「(invdT)」は3’末端および/または5’末端に反転dTを含むことを意味する。「f」は、その前のヌクレオチドが2’−F修飾を有することを意味する。「s」は、ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合が存在することを意味する。「dT」はデオキシチミンを意味する。「dG」はデオキシグアノシンを意味する。「dA」はデオキシアデノシンを意味する。
saRNAコンジュゲートおよび組合せ
コンジュゲーションは、安定性および/または半減期の増加をもたらしうると共に、細胞、組織、または生物において本発明のsaRNAを特定の部位に標的化するのに特に有用でありうる。本発明のsaRNAは、他のポリヌクレオチド、色素、インターカレート剤(たとえば、アクリジン)、架橋剤(たとえば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(たとえば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(たとえば、EDTA)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(たとえば、PEG−40K)、MPEG、[MPEG]
2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカ、酵素、ハプテン(たとえば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(たとえば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ、タンパク質、たとえば、糖タンパク質、またはペプチド、たとえば、共リガンドへの特異的親和性を有する分子、または抗体、たとえば、癌細胞、内皮細胞、骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体、ホルモンおよびホルモンレセプター、非ペプチド種、たとえば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、または薬剤にコンジュゲートされるように設計可能である。核酸分子に好適なコンジュゲートは、2012年12月14日出願の国際公開第2013/090648号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
本発明によれば、C/EBPα−saRNAは、さまざまな機能を達成するために、RNAi剤、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、エンハンサーRNA、エンハンサー由来RNAまたはエンハンサー駆動RNA(eRNA)、マイクロRNA(miRNA)、miRNA結合部位、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、tRNA、三重螺旋形成を誘導するRNA、アプタマー、ベクターなどの1つ以上と共に投与しうるかまたはそれらをさらにコードしうる。1つ以上のRNAi剤、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、miRNA結合部位、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、tRNA、三重螺旋形成を誘導するRNA、アプタマー、またはベクターは、少なくとも1つの修飾または置換を含みうる。いくつかの実施形態では、修飾は、糖位置での核酸の化学置換、ホスフェート位置での化学置換、および塩基位置での化学置換から選択される。他の実施形態では、化学修飾は、修飾ヌクレオチドの取込み、3’キャッピング、高分子量非免疫原性化合物へのコンジュゲーション、親油性化合物へのコンジュゲーション、およびホスフェート骨格へのホスホロチオエートの取込みから選択される。好ましい実施形態では、高分子量非免疫原性化合物はポリアルキレングリコールであり、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、RNAポリメラーゼIIプロモータから共発現できるようにトランスジーンに結合しうる。限定されるものではないが一例では、C/EBPα−saRNAは緑色蛍光タンパク質(GFP)に結合される。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、DNAまたはRNAアプタマーに結合することによりC/EBPα−saRNA−アプタマーコンジュゲートを生成しうる。アプタマーは、高い選択性、親和性、および安定性を有するオリゴヌクレオチドまたはペプチドである。それは特異的かつ安定な三次元形状をとることにより標的分子へのきわめて特異的な緊密結合を提供する。アプタマーは、低分子、タンパク質、核酸などの種々の分子標的、さらには細胞、組織、および生物に結合するように、in vitro選択の繰返しラウンドまたは均等にSELEX(指数関数的富化によるリガンドの系統的進化)により工学操作された核酸種でありうる。核酸アプタマーは、典型的なワトソン・クリック塩基対合以外の相互作用により分子への特異的結合親和性を有する。核酸アプタマーは、ファージディスプレイまたはモノクローナル抗体(mAb)により生成されたペプチドのように、選択された標的に特異的に結合可能であり、かつ結合を介してその標的の機能能力をブロックする。いくつかの場合、アプタマーはまたペプチドアプタマーでありうる。いずれかの特異的分子標的では、核酸アプタマーは、たとえばSELEXにより核酸のコンビナトリアルライブラリーから同定可能である。ペプチドアプタマーは酵母ツーハイブリッド系を用いて同定しうる。したがって、当業者であれば、肝細胞などの標的細胞に本発明のsaRNAまたは細胞を送達するのに好適なアプタマーを設計可能である。DNAアプタマー、RNAアプタマー、およびペプチドアプタマーが企図される。肝臓特異的アプタマーを用いて本発明のsaRNAを肝臓に投与することは特に好ましい。
本明細書で用いられる場合、典型的な核酸アプタマーは、約10〜15kDaのサイズ(20〜45ヌクレオチド)であり、その標的に少なくともナノモル親和性で結合し、かつ関連性の高い標的を識別する。核酸アプタマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはリボ核酸とデオキシリボ核酸との混合でありうる。アプタマーは、一本鎖のリボ核酸、デオキシリボ核酸、またはリボ核酸とデオキシリボ核酸との混合でありうる。アプタマーは、少なくとも1つの化学修飾を含みうる。
アプタマーに好適なヌクレオチド長は約15〜約100ヌクレオチド(nt)の範囲内であり、種々の他の好ましい実施形態では、15〜30nt、20〜25nt、30〜100nt、30〜60nt、25〜70nt、25〜60nt、40〜60nt、25〜40nt、30〜40nt、次の値、すなわち、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40ntのいずれか、または40〜70ntの長さである。しかしながら、配列は、本明細書に記載の距離でアプタマーと2つの標的との相互作用に適合できるように十分な柔軟性を有して設計可能である。アプタマーは、ヌクレアーゼ活性および他の酵素活性からの保護を提供するようにさらに修飾しうる。アプタマー配列は、当技術分野で公知の任意の好適な方法により修飾可能である。
C/EBPα−saRNA−アプタマーコンジュゲートは、2つの部分を結合するための任意の公知の方法、たとえば、直接化学結合形成、ストレプトアビジンなどのリンカーを介する結合などを用いて形成しうる。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは抗体に結合しうる。標的細胞表面レセプターに対する抗体を生成する方法は周知である。本発明のsaRNA分子は、公知の方法を用いて、たとえば、RNA担体タンパク質を用いて、かかる抗体に結合しうる。次いで、得られた複合体は、対象に投与してレセプター媒介エンドサイトーシスにより標的細胞に取り込みうる。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、脂質部分、たとえばコレステロール部分(レットシンガー(Letsinger)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acid.Sci.USA)、1989年、第86巻、p.6553〜6556)、コール酸(マノハラン(Manoharan)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Biorg.Med.Chem.Let.)、1994年、第4巻、p.1053〜1060)、チオエーテル、たとえばベリル−5−トリチルチオール(マノハラン(Manoharan)ら著、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Ann.N.Y.Acad.Sci.)、1992年、第660巻、p.306〜309、マノハラン(Manoharan)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Biorg.Med.Chem.Let.)、1993年、第3巻、p.2765〜2770)、チオコレステロール(オーバーハウザ(Oberhauser)ら著、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、1992年、第20巻、p.533〜538)、脂肪族鎖、たとえば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(サイソン−ベーモアラス(Saison−Behmoaras)ら著、EMBOジャーナル(EMBO J)、1991年、第10巻、p.1111〜1118、カバノフ(Kabanov)ら著、FEBSレターズ(FEBS Lett.)、1990年、第259巻、p.327〜330、シバノルチュク(Svinarchuk)ら著、バイオシミー(Biochimie)、1993年、第75巻、p.49〜54)、リン脂質、たとえば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチル−アンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−Hホスホネート(マノハラン(Manoharan)ら著、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、1995年、第36巻、p.3651−3654、シーア(Shea)ら著、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、1990年、第18巻、p.3777〜3783)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(マノハラン(Manoharan)ら著、ヌクレオシズ・アンド・ヌクレオチズ(Nucleosides&Nucleotides)、1995年、第14巻、p.969〜973)、またはアダマンタン酢酸(マノハラン(Manoharan)ら著、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、1995年、第36巻、p.3651〜3654、)、パルミチル部分((Mishra)ら著、バイオシミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim.Biophys.Acta)、1995年、第1264巻、p.229〜237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(クルッケ(Crooke)ら著、ジャーナル・オブ・ファーマコロジ・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(J.Pharmacol.Exp.Ther.)、1996年、第277巻、p.923〜937)(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)にコンジュゲートしうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許出願公開第2013/0184328号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるリガンドにコンジュゲートされる。コンジュゲートは、リガンド−[リンカー]任意選択−[テザー]任意選択−オリゴヌクレオチド剤の式を有する。オリゴヌクレオチド剤は、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許出願公開第2013/0184328号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される式(I)を有するサブユニットを含みうる。
かかる核酸/脂質コンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第4,828,979号明細書、同第4,948,882号明細書、同第5,218,105号明細書、同第5,525,465号明細書、同第5,541,313号明細書、同第5,545,730号明細書、同第5,552,538号明細書、同第5,578,717号明細書、同第5,580,731号明細書、同第5,591,584号明細書、同第5,109,124号明細書、同第5,118,802号明細書、同第5,138,045号明細書、同第5,414,077号明細書、同第5,486,603号明細書、同第5,512,439号明細書、同第5,578,718号明細書、同第5,608,046号明細書、同第4,587,044号明細書、同第4,605,735号明細書、同第4,667,025号明細書、同第4,762,779号明細書、同第4,789,737号明細書、同第4,824,941号明細書、同第4,835,263号明細書、同第4,876,335号明細書、同第4,904,582号明細書、同第4,958,013号明細書、同第5,082,830号明細書、同第5,112,963号明細書、同第5,214,136号明細書、同第5,082,830号明細書、同第5,112,963号明細書、同第5,214,136号明細書、同第5,245,022号明細書、同第5,254,469号明細書、同第5,258,506号明細書、同第5,262,536号明細書、同第5,272,250号明細書、同第5,292,873号明細書、同第5,317,098号明細書、同第5,371,241号明細書、同第5,391,723号明細書、同第5,416,203号明細書、同第5,451,463号明細書、同第5,510,475号明細書、同第5,512,667号明細書、同第5,514,785号明細書、同第5,565,552号明細書、同第5,567,810号明細書、同第5,574,142号明細書、同第5,585,481号明細書、同第5,587,371号明細書、同第5,595,726号明細書、同第5,597,696号明細書、同第5,599,923号明細書、同第5,599,928号明細書、および同第5,688,941号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一実施形態では、saRNAは、マノハラン(Manoharan)ら(アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Alnylam Pharmaceuticals))に付与された米国特許第8106022号明細書および同第8828956号明細書(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意の炭水化物リガンドなどの炭水化物リガンドにコンジュゲートされる。たとえば、炭水化物リガンドは、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖でありうる。これらの炭水化物コンジュゲートRNA剤は、肝臓の実質細胞を標的としうる。一実施形態では、saRNAは、2つ以上、好ましくは2または3つの炭水化物リガンドにコンジュゲートされる。一実施形態では、saRNAは、1つ以上のガラクトース部分にコンジュゲートされる。他の実施形態では、saRNAは、少なくとも1つ(たとえば、2もしくは3つまたはそれを超える)のラクトース分子にコンジュゲートされる(ラクトースはガラクトースに結合されたグルコースである)。他の実施形態では、saRNAは、少なくとも1つ(たとえば、2もしくは3またはそれを超える)のN−アセチル−ガラクトサミン(GalNAc)、N−Ac−グルコサミン(GluNAc)、またはマンノース(たとえば、マンノース−6−ホスフェート)にコンジュゲートされる。一実施形態では、saRNAは、少なくとも1つのマンノースリガンドにコンジュゲートされ、コンジュゲートsaRNAはマクロファージを標的とする。
本発明のsaRNAは、考慮対象となる特定の方法で作用を有することが知られる他の活性成分と組み合わせて提供しうる。他の活性成分は、本発明のsaRNAと同時に、個別に、または逐次的に投与しうる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、異なる標的遺伝子をモジュレートするsaRNAと共に投与される。例としては、アルブミン、インスリン、またはHNF4A遺伝子をモジュレートするsaRNAが挙げられるが、これらに限定されるものではない。単一のsaRNAまたは2つ以上の異なるsaRNAの組合せを用いて、任意の遺伝子のモジュレーションを達成しうる。本発明のC/EBPα−saRNAと共に投与可能なsaRNAの例としては、限定されるものではないが2012年6月20日出願の国際公開第2012/175958号パンフレットに開示されるアルブミンまたはHNF4AをモジュレートするsaRNA、両方とも2011年10月10日出願の国際公開第2012/046084号パンフレットおよび国際公開第2012/046085号パンフレットに開示されるインスリンをモジュレートするsaRNA、2006年11月13日出願の米国特許第7,709,456号明細書および2010年4月23日出願の米国特許出願公開第2010/0273863号明細書に開示されるヒトプロゲステロンレセプター、ヒト主要ボールトタンパク質(hMVP)、E−カドヘリン遺伝子、p53遺伝子、またはPTEN遺伝子をモジュレートするsaRNA、および2006年4月11日出願の国際公開第2006/113246号パンフレットに開示されるp21遺伝子を標的とするsaRNA(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、C/EBPβ遺伝子の発現を阻害する低分子干渉RNAまたはsiRNAすなわちC/EBPβ−siRNAと共に投与される。本発明の好適なsiRNAの好ましい配列は表4に提供される。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、代謝、特に肝機能をレギュレートする1種以上の薬剤と共に投与される。限定されるものではないが一例では、本発明のC/EBPα−saRNAは、低密度リポタンパク質(LDL:low density lipoprotein)コレステロールレベルを減少させる薬剤、たとえば、スタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、エゼチミブ、ナイアシン、PCSK9阻害剤、CETP阻害剤、クロフィブラート、フェノフィブリック、トコトリエノール、フィトステロール、胆汁酸捕捉剤、プロブコール、またはそれらの組合せと共に投与される。C/EBPα−saRNAはまた、オービグ(Orvig)らに付与された米国特許第6287586号明細書に開示されるバナジウムビグアニド複合体と共に投与しうる。他の例では、C/EBPα−saRNAは、血清コレステロールを低減するために、ローデス(Rhodes)に付与された国際公開第2011/002838号パンフレット(その内容はその全体が参照により組み込まれる)に開示される組成物と共に投与しうる。組成物は、PCSK9タンパク質に選択的に結合して阻害する抗原結合タンパク質と、細胞においてPCSK9遺伝子の発現を阻害するRNAエフェクター剤とを含む。さらに他の例では、C/EBPα−saRNAは、ブルックス−ウイルソン(Brooks−Wilson)らに付与された欧州特許第1854880号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、コレステロールレベルをモジュレートするために、ABC1生物学的活性を有するABC1ポリペプチドまたはABC1活性を有するABC1ポリペプチドをコードする核酸と共に投与しうる。
他の実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAは、インスリン感受性を増加させるまたはII型糖尿病を治療する薬剤、たとえば、メトホルミン、スルホニル尿素、非スルホニル尿素分泌促進剤、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グルカゴン様ペプチド−1アナログ、およびジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤、またはそれらの組合せと共に投与される。本発明のsaRNAと組み合わせて投与しうる他の肝保護剤は、アダムス(Adams)ら著、ポストグラジュエート・メディカル・ジャーナル(Postgraduate Medical Journal)、2006年、第82巻、p.315〜322)(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
ガンキリンおよびFXRタンパク質
肝細胞癌(HCC)の発生は、肝過増殖および肝癌をもたらす遺伝子発現の漸進的変化を含む多工程プロセスである。肝癌の発癌時、腫瘍サプレッサータンパク質Rb、p53、肝細胞核因子4α(HNF4α)、およびC/EBP−αは中和される。これらのタンパク質の除去は、26Sプロテアソームの小サブユニット、癌により活性化されるガンキリンにより媒介される。ワング(Wang)らは、ガンキリンがC/EBPαのS193−phアイソフォームと相互作用してそれをユビキチンプロテアソーム系(UPS:ubiquitinproteasome system)媒介分解の標的とすることを開示している。ガンキリンレベルは、肝癌発生の初期に上昇する(ワング(Wang)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティケーション(J.Clin.Invest)、2010年、第120巻、第7号、p.2549〜2562(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。たとえば、ガンキリン遺伝子(PSMD10遺伝子としても知られる)のsiRNAおよび/またはガンキリン阻害剤を用いてガンキリンを阻害することにより、HCCの予防および/または治療を行いうる。
チャン(Jiang)らは、胆汁酸レセプター(BAR)またはNR1H4としても知られるファルネソイドXレセプター(FXR)がHDAC1−C/EBPβ複合体を介してガンキリンプロモータをサイレンシングすることにより静止肝臓におけるガンキリンの発現を阻害することを見いだした(チャン(Jiang)ら著、ヘパトロジー(Hepatology)、2013年、第57巻、第3号、p.1098〜1106(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。マウスにおけるFXRシグナリングの欠失は、12ヶ月齢でガンキリンプロモータの脱抑制および肝癌の自発的発生をもたらす。野生型マウスにおけるジエチルニトロソアミン(DEN)媒介肝癌もFXRの低減およびガンキリンの活性化を含む。高齢マウスにおける肝癌およびヒト患者における肝癌の検査から、肝癌の自発的発生時にFXRは低減するがガンキリンは増加することが判明した。チャン(Jiang)らは、C/EBPβ−HDAC1複合体を介してガンキリンプロモータを阻害し、腫瘍サプレッサータンパク質を分解から後続的に保護することにより、FXRが肝癌を予防すると結論した。FXRの安定化および核移行はガンキリンを阻害する。たとえば、FXRアゴニストもしくはアクチベータまたはNR1H4遺伝子のアクチベータを用いてFXRを活性化することにより、HCCを予防および/または治療しうる。
本発明のC/EBPα−saRNAは、ガンキリンをダウンレギュレートするまたはFXRをアップレギュレートする1種以上の治療剤と組み合わせて使用しうる。組合せは、HCCの予防および/または治療に対して相乗効果を有しうる。いくつかの実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAはガンキリンsiRNAと組み合わせて使用しうる。二本鎖ガンキリンsiRNAは、「RNAiによる内因性遺伝子発現の阻害」のセクション(ヒガシツジ(Higashitsuji)ら、キャンサー・セル(Cancer Cell)、2005年、第8巻、p.75〜87(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))にヒガシツジ(Higashitsuji)らにより開示された方法を用いて生成しうる。いくつかの実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAはFXRアゴニストと組み合わせて使用しうる。FXRアゴニストまたはアクチベータの例としては、限定されるものではないがタウロコール酸、オベチコール酸(OCA)、INT−767(インターセプト・ファーマシューティカルズ(Intercept Pharmaceuticals))、INT−777(インターセプト・ファーマシューティカルズ(Intercept Pharmaceuticals))、および米国特許出願公開第2014/0057886号明細書、米国特許第8546365号明細書、米国特許第7932244号明細書、米国特許出願公開第2014/0100209号明細書、米国特許第8445472号明細書、米国特許第8114862号明細書、米国特許出願公開第2014/0094443号明細書、米国特許第8410083号明細書、米国特許第8796249号明細書、米国特許出願公開第2014/0024631号明細書、米国特許第8377916号明細書、米国特許第8258267号明細書、米国特許第7786102号明細書、米国特許第7138390号明細書、米国特許第7994352号明細書、米国特許第7858608号明細書、米国特許第7812011号明細書、米国特許出願公開第2014/0148428号明細書、および米国特許出願公開第2006/0252670号明細書(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意のFXRアゴニストまたはアクチベータが挙げられる。
製剤、送達、投与、および用量
医薬製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を追加的に含みうる。この賦形剤は、本明細書で用いられる場合、所望の特定の剤形に適したあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体媒体、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固形結合剤、滑沢剤などを含むが、これらに限定されるものではない。医薬組成物を製剤化するための種々の賦形剤および組成物を調製するための技術は当技術分野で公知である(「レミングトン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、A.R.(A.R.Gennaro)編、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott,Williams&Wilkins)、メリーランド州ボルチモア、2006年(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。何らかの望ましくない生物学的作用、さもなければ医薬組成物のいずれか他の成分との有害な相互作用を生じることなどにより、任意の従来の賦形媒体が物質またはその誘導体に不適合性でありうる場合を除いて、従来の賦形媒体の使用は本開示の範囲内で企図しうる。
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト、ヒト患者、または対象に投与される。本開示の目的では、「活性成分」という語句は、本明細書に記載されるように送達されるC/EBPα−saRNAを一般に意味する。
本明細書に提供される医薬組成物の説明はヒトへの投与に好適な医薬組成物に主に向かっているが、かかる組成物が任意の他の動物、たとえば非ヒト動物、たとえば非ヒト哺乳動物への投与に一般に好適であることは、当業者であれば理解されよう。種々の動物への投与に好適な組成物にするためのヒトへの投与に好適な医薬組成物の改変はよく理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者であれば、かりに実験を行うとしても通常の実験を行うだけで、かかる改変の設計および/または実施が可能である。医薬組成物の投与が企図される対象としては、限定されるものではないがヒトおよび/もしくは他の霊長動物、哺乳動物(ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/もしくはラットなどの商業関連の哺乳動物を含む)、ならびに/またはトリ(家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくはシチメンチョウなどの商業関連のトリを含む)が挙げられる。
一実施形態では、本明細書に記載の製剤化saRNAの効力は増殖細胞において決定しうる。
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学技術分野で公知であるまたは今後開発される任意の方法により調製しうる。一般に、かかる調製方法は、活性成分を賦形剤および/または1種以上の他の副成分と一体化させる工程と、次いで、必要に応じておよび/または望ましい場合には分割、造形、および/または包装を行って所望の単回または複数回用量ユニットにする工程とを含む。
本発明に係る医薬組成物は、単回ユニット用量としておよび/または複数の単回ユニット用量として大量に調製、包装、および/または販売を行いうる。本明細書で用いられる場合、「ユニット用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別量のことである。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量および/またはかかる投与量の便利な部分量、たとえばかかる投与量の1/2もしくは1/3に等しい。
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容可能な賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象のアイデンティティー、サイズ、および/または病態に依存して、さらには組成物の投与経路に依存して変化するであろう。例として、組成物は、0.1%〜100%、たとえば、0.5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含みうる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は少なくとも1種のsaRNAを含有しうる。限定されるものではないが例として、製剤は、異なる配列を有する1、2、3、4、または5種のsaRNAを含有しうる。一実施形態では、製剤は、異なる配列を有する少なくとも3種のsaRNAを含有する。一実施形態では、製剤は、異なる配列を有する少なくとも5種のsaRNAを含有する。
本発明のsaRNAは、(1)安定性を向上させるために、(2)細胞トランスフェクションを向上させるために、(3)持続放出または遅延放出(たとえば、saRNAのデポ製剤から)を可能にするために、(4)生体内分布を変化させるために(たとえば、saRNAを特定の組織または細胞型に標的化するために)、(5)in vivoでコードタンパク質の翻訳を増加させるために、および/または(6)in vivoでコードタンパク質の放出プロファイルを変化させるために、1種以上の賦形剤を用いて製剤化可能である。従来の賦形剤、たとえば、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤または他の液体媒体、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤に加えて、本発明の賦形剤は、限定されるものではないがリピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア−シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、saRNAでトランスフェクトされた細胞(たとえば、対象への移植のために)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子ミミック、およびそれらの組合せを含みうる。したがって、本発明の製剤は、それぞれ一緒になってsaRNAの安定性の向上および/またはsaRNAによる細胞トランスフェクションの向上を行う量で1種以上の賦形剤を含みうる。さらに、本発明のsaRNAは、自己集合核酸ナノ粒子を用いて製剤化しうる。薬学的に許容可能な担体、賦形剤、および本発明のsaRNAを含む製剤で使用しうる核酸用の送達剤は、2012年12月14日出願の国際公開第2013/090648号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、アニーリングにより活性成分として二本鎖C/EBPα−saRNAを形成するそれぞれ21ヌクレオチド長の2つの単一RNA鎖を含む。組成物は、50mMトリス−HCl、pH8.0、100mM NaCl、および5mM EDTAからなる塩緩衝液をさらに含む。
他の実施形態では、本発明のsaRNAはデンドリマーと共に送達しうる。デンドリマーは高分岐状マクロ分子である。好ましい実施形態では、本発明のsaRNAは、標的化in vivo送達のために可撓性構造のポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーと複合体化される。この複合体はC/EBPα−saRNAデンドリマーと呼ばれる。デンドリマーは、高度の分子均一性、狭い分子量分布、特定のサイズおよび形状特性、ならびに高官能基化末端表面を有する。製造プロセスは、中心開始剤コアから開始される一連の繰返し工程である。各後続の成長工程は、より大きい分子直径および分子量ならびに前の世代よりも高反応性の表面部位を有する新しい世代のポリマーを与える。PAMAMデンドリマーは、表面上の第1級アミン基と構造内の第3級アミン基とを有する効率的なヌクレオチド送達系である。第1級アミン基は、ヌクレオチド結合に関与すると共に細胞内取込みを促進し、一方、埋め込まれた第3級アミノ基は、エンドソーム内でプロトンスポンジとして作用すると共に細胞質中への核酸の放出を増強する。このデンドリマーは、それにより運ばれるsaRNAをリボヌクレアーゼ分解から保護し、効率的な遺伝子標的化のためにエンドサイトーシスにより長期にわたりsaRNAの実質的放出を達成する。こうしたナノ粒子のin vivo効力はこれまでに評価されてきており、デンドリマーは末梢血単核細胞に優先的に蓄積すると共に識別可能な毒性を伴うことなく存続することが生体内分布研究から示される(シュウ(Zhou)ら著、モレキュラー・セラピー(Molecular Ther.)、2011年、第19巻、p.2228〜2238(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。PAMAMデンドリマーは、トリエタノールアミン(TEA)コア、ジアミノブタン(DAB)コア、シスタミンコア(ジアミノヘキサン(ヘキサ)コア)、ジアモノドデカン(DODE)コア、またはエチレンジアミン(EDA)コアを含みうる。好ましくは、PAMAMデンドリマーはTEAコアまたはDABコアを含む。
リピドイド
リピドイドの合成は広範に記載されており、これらの化合物を含有する製剤は、オリゴヌクレオチドまたは核酸の送達に特に適している(マーン(Mahon)ら著、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjug Chem.)、2010年 第21巻、p.1448〜1454、シュレーダ(Schroeder)ら著、ジャーナル・オブ・インターナル・メディスン(J Intern Med.)、2010年、第267巻、p.9〜21、アキンク(Akinc)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2008年、第26巻、p.561〜569、ラブ(Love)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2010年、第107巻、p.1864〜1869、ジークバルト(Siegwart)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2011年、第108巻、p.12996〜3001(それらはすべて、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
これらのリピドイドは、齧歯動物および非ヒト霊長動物において二本鎖低分子干渉RNA分子を効果的に送達するために使用されてきたが(アキンク(Akinc)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2008年、第26巻、p.561〜569、フランク−カメネツキー(Frank−Kamenetsky)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA.)、2008年、第105巻、p.11915〜11920、アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2009年、第17巻、p.872〜879、ラブ(Love)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2010年、第107巻、p.1864〜1869、ロイシュナー(Leuschner)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2011年、第29巻、p.1005〜1010(それらはすべて、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、本開示は、saRNAの送達におけるそれらの製剤および使用を記載する。複合体、ミセル、リポソーム、または粒子は、これらのリピドイドを含有した状態で調製可能であるため、局所および/または全身投与経路によりリピドイド製剤を注射した後、saRNAの有効な送達をもたらしうる。saRNAのリピドイド複合体は、限定されるものではないが静脈内経路、筋肉内経路、または皮下経路を含めて種々の手段により投与可能である。
核酸のin vivo送達は、限定されるものではないが製剤組成、粒子PEG化性、充填度、オリゴヌクレオチド対脂質比、および生物物理学的パラメータ、たとえば、限定されるものではないが粒子サイズをはじめとする多くのパラメータにより影響されうる(アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2009年、第17巻、p.872〜879(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。一例として、ポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質のアンカー鎖長がわずかに変化すると、in vivo効力が有意な影響を受ける可能性がある。限定されるものではないがペンタ[3−(1−ラウリルアミノプロピオニル)]−トリエチレンテトラミンヒドロクロリド(98N12−5としても知られるTETA−5LAP、ムルガイア(Murugaiah)ら著、アナリティカル・ケミストリー(Analytical Biochemistry)、2010年、第401巻、p.61(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、C12−200(誘導体およびバリアントを含む)、およびMD1をはじめとするさまざまなリピドイドを含む製剤は、in vivo活性に関して試験可能である。
本明細書で「98N12−5」と呼ばれるリピドイドは、アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2009年、第17巻、p.872〜879に開示されており、その内容はその全体が参照により組み込まれる(図2参照)。
本明細書で「C12−200」と呼ばれるリピドイドは、ラブ(Love)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2010年、第107巻、p.1864〜1869(図2参照)ならびにリウ(Liu)およびホワン(Huang)著、モレキュラー・セラピー(Molecular Therapy)、2010年、p.669〜670(図2参照)に開示されており、その両方の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。リピドイド製剤は、saRNAに加えて3もしくは4つまたはそれを超える成分を含む粒子を含みうる。一例として、特定のリピドイドを含む製剤は、限定されるものではないが98N12−5を含み、42%リピドイド、48%コレステロール、および10%PEG(C14アルキル鎖長)を含有しうる。他の例として、特定のリピドイドを含む製剤は、限定されるものではないがC12−200を含み、50%リピドイド、10%ジステロイルホスファチジルコリン、38.5%コレステロール、および1.5%PEG−DMGを含有しうる。
一実施形態では、全身静脈内投与のためにリピドイドを用いて製剤化されたsaRNAは肝臓を標的としうる。たとえば、saRNAを使用し、42%98N12−5、48%コレステロール、および10%PEG−脂質の脂質モル組成を含み、約7.5対1の全脂質対saRNAの最終重量比を有し、PEG脂質上にC14アルキル鎖長を有し、かつ約50〜60nmの平均粒子サイズを有する最終最適化静脈内投与製剤は、肝臓への製剤の分布が90%超になりうる(アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2009年、第17巻、p.872〜879(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。他の例では、C12−200(米国仮特許出願第61/175,770号明細書および国際公開第2010/129709号パンフレット(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)リピドイドを用いた静脈内投与製剤は、7対1の全脂質対核酸の重量比と、50/10/38.5/1.5のC12−200/ジステロイルホスファチジルコリン/コレステロール/PEG−DMGのモル比率と、80nmの平均粒子サイズとを有しうると共に、saRNAの送達に有効でありうる(ラブ(Love)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2010年、第107巻、p.1864〜1869(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。他の実施形態では、MD1リピドイド含有製剤は、in vivoでsaRNAを肝細胞に効果的に送達するために使用しうる。筋肉内経路または皮下経路に対して最適化されたリピドイド製剤の特徴は、標的細胞型および細胞外マトリックスを介する血流中への製剤の拡散能に有意に依存して異なりうる。効果的肝細胞送達を行うには内皮小孔サイズに基づいて150nm未満の粒子サイズが望まれるが(アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2009年、第17巻、p.872〜879(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、内皮細胞、骨髄細胞、および筋細胞(これらに限定されるものではない)をはじめとする他の細胞型に製剤を送達するためのリピドイド製剤化saRNAの使用は、同様なサイズ制限を受けない可能性がある。骨髄細胞および内皮などの他の非肝細胞にin vivoでsiRNAを送達するためのリピドイド製剤の使用は報告されている(アキンク(Akinc)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2008年、第26巻、p.561〜569、ロイシュナー(Leuschner)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2011年、第29巻、p.1005〜1010、チョー(Cho)ら著、アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Adv.Funct.Mater.)、2009年、第19巻、p.3112〜3118、第8回ジュダ・フォークマン国際会議(8th International Judah Folkman Conference)、マサチューセッツ州ケンブリッジ、2010年10月8〜9日(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。単球などの骨髄細胞への効果的送達では、リピドイド製剤は類似の成分モル比率を有しうる。リピドイドと、ジステロイルホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG−DMG(これらに限定されるものではない)をはじめとする他の成分とのさまざまな比を用いて、肝細胞、骨髄細胞、筋細胞など(これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな細胞型への送達のために、saRNAの製剤を最適化しうる。たとえば、成分モル比率としては、限定されるものではないが50%C12−200、10%ジステロイルホスファチジルコリン、38.5%コレステロール、および%1.5PEG−DMGが挙げられうる(ロイシュナー(Leuschner)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2011年、第29巻、p.1005〜1010(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。皮下送達または筋肉内送達のいずれかを介する細胞(たとえば、限定されるものではないが脂肪細胞および筋細胞)への核酸の局所送達のためのリピドイド製剤の使用はまた、全身送達に望まれる製剤成分の必ずしもすべてを必要としないこともあり、したがって、リピドイドとsaRNAとのみを含みうる。
リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子
本発明のsaRNAは、1種以上のリポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を用いて製剤化可能である。一実施形態では、saRNAの医薬組成物はリポソームを含む。リポソームは、主に脂質二重層で構成しうる人工調製ベシクルであり、栄養素および医薬製剤を投与するための送達媒体として使用しうる。リポソームはさまざまなサイズでありうる。たとえば、限定されるものではないが何百ナノメートルもの直径でありうると共に狭い水性区画により分離された一連の同心二重層を含有しうるマルチラメラベシクル(MLV:multilamellar vesicle)、50nmよりも小さい直径でありうるスモールユニセルベシクル(SUV:small unicellular vesicle)、および50〜500nmの直径でありうるラージユニラメラベシクル(LUV:large unicellular vesicle)でありうる。リポソーム設計は、非健常組織へのリポソームの結合を改善するためにまたは限定されるものではないがエンドサイトーシスなどのイベントを活性化するために、限定されるものではないがオプソニンまたはリガンドを含みうる。リポソームは、医薬製剤の送達を改善するために低pHまたは高pHを含みうる。
リポソームの形成は、物理化学的特性、たとえば、限定されるものではないが閉じ込められる医薬製剤およびリポソーム成分、脂質ベシクルが分散される媒体の性質、閉じ込められる物質の有効濃度およびその潜在的毒性、ベシクルの適用時および/または送達時に含まれる任意の追加のプロセス、最適化サイズ、意図される用途でのベシクルの多分散性および貯蔵寿命、ならびに安全かつ効率的なリポソーム製品のバッチ間の再現性および大量生産の可能性に依存しうる。
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、限定されるものではないが1,2−ジオレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、マリーナ・バイオテック(Marina Biotech)(ワシントン州ボセル)製のDiLa2リポソーム、1,2−ジリノレイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLin−DMA)、2,2−ジリノレイル−4−(2−ジメチルアミノエチル)−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)、およびMC3(米国特許出願公開第2010/0324120号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))から形成されるようなリポソーム、ならびに低分子薬剤を送達しうるリポソーム、たとえば、限定されるものではないがヤンセン・バイオテック(Janssen Biotech,Inc.)(ペンシルバニア州ホーシャム)製のドキシル(DOXIL)(登録商標)を含みうる。
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、限定されるものではないがin vitroおよびin vivoでオリゴヌクレオチドの送達に好適であることがこれまでに記載および証明されてきた安定化プラスミド−脂質粒子(SPLP)または安定化核酸脂質粒子(SNALP)の合成から形成されるようなリポソームを含みうる(ホイーラ(Wheeler)ら著、ジーン・セラピー(Gene Therapy)、1999年、第6巻、p.271〜281、チャン(Zhang)ら著、ジーン・セラピー(Gene
Therapy)、1999年、第6巻、p.1438〜1447ジェフズ(Jeffs)ら著、ファーマシューティカル・リサーチ(Pharm Res.)、2005年、第22巻、p.362〜372、モリッシー(Morrissey)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2005年、第2巻、p.1002〜1007、ジマーマン(Zimmermann)ら著、ネイチャー(Nature)、2006年、第441巻、p.111〜114、ヘイズ(Heyes)ら著、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J Contr Rel.)、2005年、第107巻、p.276〜287、センプル(Semple)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotech.)、2010年、第28巻、p.172〜176、ジャッジ(Judge)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティケーション(J Clin Invest.)、2009年、第119巻、p.661〜673、ド・フジュロル(deFougerolles)著、ヒューマン・ジーン・セラピー(Hum Gene Ther.)、2008年、第19巻、p.125〜132(それらの各内容はその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。ホイーラ(Wheeler)らによる独自の製造方法は界面活性剤透析法であった。これは後でジェフズ(Jeffs)らにより改良されて自発的ベシクル形成法と呼ばれる。リポソーム製剤は、saRNAに加えて3〜4つの脂質成分で構成しうる。例として、リポソームは、限定されるものではないがジェフズ(Jeffs)らにより記載されるように、55%コレステロール、20%ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、10%PEG−S−DSG、および15%1,2−ジオレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DODMA)を含有しうる。他の例では、特定のリポソーム製剤は、限定されるものではないが48%コレステロール、20%DSPC、2%PEG−c−DMA、および30%カチオン性脂質を含有しうる。この場合、ヘイズ(Heyes)らにより記載されるように、カチオン性脂質は、1,2−ジステアルルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、DODMA、DLin−DMA、または1,2−ジリノレニルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)を含みうる。他の例では、核酸−脂質粒子は、マクラクラン(Maclachlan)らに付与された国際公開第2009/127060号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、粒子中に存在する全脂質の約50mol%〜約85mol%を占めるカチオン性脂質と、粒子中に存在する全脂質の約13mol%〜約49.5mol%を占める非カチオン性脂質と、粒子中に存在する全脂質の約0.5mol%〜約2mol%を占める粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質とを含みうる。他の例では、核酸−脂質粒子は、マクラクラン(Maclachlan)らに付与された米国特許出願公開第2006/008910号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意の核酸−脂質粒子でありうる。限定されるものではないが例として、核酸−脂質粒子は、式Iのカチオン性脂質と、非カチオン性脂質と、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質とを含みうる。
一実施形態では、saRNAは、官能基化脂質二重層間に架橋を有しうる脂質ベシクル中に製剤化しうる。
一実施形態では、リポソームは、バリー(Bally)らに付与された米国特許第5595756号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される糖修飾脂質を含有しうる。脂質は、約10molパーセントの量のガングリオシドおよびセレブロシドでありうる。
一実施形態では、saRNAは、カチオン性脂質を含むリポソーム中に製剤化しうる。リポソームは、国際公開第2013/006825号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、カチオン性脂質中の窒素原子とsaRNA中のホスフェートとのモル比(N:P比)が1:1〜20:1でありうる。他の実施形態では、リポソームは、20:1超または1:1未満のN:P比を有しうる。
一実施形態では、saRNAは、脂質−ポリカチオン複合体中に製剤化しうる。脂質−ポリカチオン複合体の形成は、当技術分野で公知の方法によりおよび/または米国特許出願公開第2012/0178702号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように達成しうる。限定されるものではないが例として、ポリカチオンは、カチオン性ペプチドまたはポリペプチド、たとえば、限定されるものではないがポリリシン、ポリオルニチン、および/またはポリアルギニン、ならびに国際公開第2012/013326号パンフレット(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のカチオン性ペプチドを含みうる。他の実施形態では、saRNAは、脂質−ポリカチオン複合体中に製剤化しうると共に、これは、中性脂質、たとえば、限定されるものではないがコレステロールまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)をさらに含みうる。
リポソーム製剤は、限定されるものではないがカチオン性脂質成分の選択、カチオン性脂質の飽和度、PEG化性、全成分の比、および生物物理学的パラメータ、たとえばサイズの影響を受けうる。センプル(Semple)ら(センプル(Semple)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotech.)、2010年、第28巻、p.172〜176(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))の一例では、リポソーム製剤は、57.1%カチオン性脂質、7.1%ジパルミトイルホスファチジルコリン、34.3%コレステロール、および1.4%PEGc−DMAで構成された。
いくつかの実施形態では、LNP製剤の薬動学的挙動および/または生体内分布を変化させるために、脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)製剤中のPEGの比を増加もしくは減少させることができ、および/またはPEG脂質の炭素鎖長をC14からC18に改変することができる。限定されるものではないが例として、LNP製剤は、カチオン性脂質、DSPC、およびコレステロールと比較して、1〜5%のモル比率のPEG−c−DOMGの脂質を含有しうる。他の実施形態では、PEG−c−DOMGは、たとえば、限定されるものではないがPEG−DSG(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)またはPEG−DPG(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)などのPEG脂質で置き換えうる。カチオン性脂質は、当技術分野で公知の任意の脂質、たとえば、限定されるものではないがDLin−MC3−DMA、DLin−DMA、C12−200、およびDLin−KC2−DMAから選択しうる。
一実施形態では、saRNAは、国際公開第2012/170930号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の脂質ナノ粒子などの脂質ナノ粒子中に製剤化しうる。
一実施形態では、本発明の製剤で使用しうるカチオン性脂質は、限定されるものではないが国際公開第2012/040184号パンフレット、国際公開第2011/153120号パンフレット、国際公開第2011/149733号パンフレット、国際公開第2011/090965号パンフレット、国際公開第2011/043913号パンフレット、国際公開第2011/022460号パンフレット、国際公開第2012/061259号パンフレット、国際公開第2012/054365号パンフレット、国際公開第2012/044638号パンフレット、国際公開第2010/080724号パンフレット、国際公開第2010/021865号パンフレット、および国際公開第2008/103276号パンフレット、米国特許第7,893,302号明細書、同第7,404,969号明細書、および同第8,283,333号明細書、ならびに米国特許出願公開第2010/0036115号明細書および米国特許出願公開第2012/0202871号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のカチオン性脂質から選択される。他の実施形態では、カチオン性脂質は、限定されるものではないが国際公開第2012/040184号パンフレット、国際公開第2011/153120号パンフレット、国際公開第2011/149733号パンフレット、国際公開第2011/090965号パンフレット、国際公開第2011/043913号パンフレット、国際公開第2011/022460号パンフレット、国際公開第2012/061259号パンフレット、国際公開第2012/054365号パンフレット、および国際公開第2012/044638号パンフレット(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の式Aから選択される。さらに他の実施形態では、カチオン性脂質は、限定されるものではないが国際公開第2008/103276号パンフレットの式CLI−CLXXIX、米国特許第7,893,302号明細書の式CLI−CLXXIX、米国特許第7,404,969号明細書の式CLI−CLXXXXII、および米国特許出願公開第2010/0036115/号明細書の式I−VI(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)から選択される。さらに他の実施形態では、カチオン性脂質は、ゴーシュロン(Gaucheron)らに付与された米国特許第7223887号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるカチオン性脂質などの多価カチオン性脂質でありうる。カチオン性脂質は、ゴーシュロン(Gaucheron)らに付与された米国特許第7223887号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、2つの第4級アミン基を含む正荷電ヘッド基と、4つの炭化水素鎖を含む疎水性部分とを有しうる。さらに他の実施形態では、カチオン性脂質は、マイヤー(Maier)らに付与された米国特許出願公開第2013/0195920号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される生分解性脂質のように生分解性でありうる。カチオン性脂質は、マイヤー(Maier)らに付与された米国特許出願公開第2013/0195920号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)の式I〜IVに記載されるようにカチオン性脂質の脂質部分に位置する1つ以上の生分解性基を有しうる。限定されるものではないが例として、カチオン性脂質は、(20Z,23Z)−N,N−ジメチルノナコサ−20,23−ジエン−10−アミン、(17Z,20Z)−N,N−ジメミルヘキサコサ−17,20−ジエン−9−アミン、(1Z,19Z)−N5N−ジメチルペンタコサ−16,19−ジエン−8−アミン、(13Z,16Z)−N,N−ジメチルドコサ−13,16−ジエン−5−アミン、(12Z,15Z)−N,N−ジメチルヘンイコサ−12,15−ジエン−4−アミン、(14Z,17Z)−N,N−ジメチルトリコサ−14,17−ジエン−6−アミン、(15Z,18Z)−N,N−ジメチルテトラコサ−15,18−ジエン−7−アミン、(18Z,21Z)−N,N−ジメチルヘプタコサ18,21ジエン−10−アミン、(15Z,18Z)−Ν,Ν−ジメチルテトラコサ−15,18−ジエン−5−アミン、(14Z,17Z)−N,N−ジメチルトリコサ−14,17−ジエン−4−アミン、(19Z,22Z)−N,N−ジメイヒルオクタコサ−19,22−ジエン−9−アミン、(18Z,21Z)−N,N−ジメチルヘプタコサ−18,21−ジエン−8−アミン、(17Z,20Z)−N,N−ジメチルヘキサコサ−17,20−ジエン−7−アミン、(16Z,19Z)−N,N−ジメチルペンタコサ−16,19−ジエン−6−アミン、(22Z,25Z)−N,N−ジメチルヘントリアコンタ−22,25−ジエン−10−アミン、(21Z,24Z)−N,N−ジメチルトリアコンタ−21,24−ジエン−9−アミン、(18Z)−N,N−ジメチルヘプタコス−18−エン−10−アミン、(17Z)−N,N−ジメチルヘキサコス−17−エン−9−アミン、(19Z,22Z)−N,N−ジメチルオクタコサ−19,22−ジエン−7−アミン、N,N−ジメチルヘプタコサン−10−アミン、(20Z,23Z)−N−エチル−N−メチルノナコサ−20,23−ジエン−10−アミン、1−[(11Z,14Z)−1−ノニルイコサ−11,14−ジエン−1−イル]ピロリジン、(20Z)−N,N−ジメチルヘプタコサ−20−エン−10−アミン、(15Z)−N,N−ジメチルエプタコサ−15−エン−10−アミン、(14Z)−N,N−ジメチルノナコサ−14−エン−10−アミン、(17Z)−N,N−ジメチルノナコサ−17−エン−10−アミン、(24Z)−N,、N−ジメチルトリトリアコンタ−24−エン−10−アミン、(20Z)−N,N−ジメチルノナコサ−20−エン−10−アミン、(22Z)−N,N−ジメチルヘントリアコンタ−22−エン−10−アミン、(16Z)−N,N−ジメチルペンタコサ−16−エン−8−アミン、(12Z,15Z)−N,N−ジメチル−2−ノニルヘンイコサ−12,15−ジエン−1−アミン、(13Z,16Z)−N,N−ジメチル−3−ノニルドコサ−l3,16−ジエン−1−アミン、N,N−ジメチル1−[(1S,2R)−2−オクチルシクロプロピル]エプタデカン−8−アミン、1−[(1S,2R)−2−ヘキシルシクロプロピル]−N,N−ジメチルノナデカン−10−アミン、N,N−ジメチル1−[(1S,2R)−2−オクチルシクロプロピル]ノナデカン−10−アミン、N,N−ジメチル−21−[(1S,2R)−2−オクチルシクロプロピル]ヘンイコサン−10−アミン、N,N−ジメチル−1−[(1S,2S)−2−{[(1R,2R)−2−ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン−10−アミン、N,N−ジメチル−1−[(1S,2R)−2−オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン−8−アミン、N,N−ジメチル−[(1R,2S)−2−ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン−5−アミン、N,N−ジメチル3−{7−[(1S,2R)−2−オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン−1−アミン、1−[(1R,2S)−2−ヘプチルシクロプロピル]−N,N−ジメチルオクタデカン−9−アミン、1−[(1S,2R)−2−デシルシクロプロピル]−N,N−ジメチルペンタデカン−6−アミン、N,N−ジメチル−1−[(1S,2R)−2−オクチルシクロプロピル]ペンタデカン−8−アミン、R−N,N−ジメチル1−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、S−N,N−ジメチル1−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、1−{2−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]−1−[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)−N,N−ジメチル1−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]−3−[(5Z)−オクト−5−エン−1−イルオキシ]プロパン−2−アミン、1−{2−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]−1−[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)−1−(ヘキシルオキシ)−N,N−ジメチル3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−2アミン、(2S)−1−(ヘプチルオキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ9,12ジエン−1−イルオキシ]プロパン−2−アミン、N,N−ジメチル1−(ノニルオキシ)−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−2−アミン、N,N−ジメチル−1−[(9Z)−オクタデク−9−エン−1−イルオキシ]−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、(2S)−N,N−ジメチル−1−[(6Z,9Z,12Z)−オクタデカ−6,9,12−トリエン−1−イルオキシ]−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、(2S)−1−[(11Z,14Z)−イコサ−11,14−ジエン−1−イルオキシ]−N,N−ジメチル−3−(ペンチルオキシ)プロパン−2−アミン、(2S)−1−(ヘキシルオキシ)−3−[(11Z,14Z)−イコサ−11,14−ジエン−1−イルオキシ]−N,N−ジメチルプロパン−2−アミン、1−[(11Z,14Z)−イコサ−11,14−ジエン−1−イルオキシ]−Ν,Ν−ジメチル−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、1−[(13Z,16Z)−ドコサ−13,16−ジエン−1−イルオキシ]−N,N−ジメチル3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、(2S)−1−[(13Z,16Z)−ドコサ−13,16−ジエン−1−イルオキシ]−3−(ヘキシルオキシ)−N,N−ジメチルプロパン−2−アミン、(2S)−1−[(13Z)−ドコス−13−エン−1−イルオキシ]−3−(ヘキシルオキシ)−N,N−ジメチルプロパン−2−アミン、1−[(13Z)−ドコス−13−エン−1−イルオキシ]−N,N−ジメチル−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、1−[(9Z)−ヘキサデク−9−エン−1−イルオキシ]−N,N−ジメチル−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、(2R)−N,N−ジメチルH(1−メトイルオクチル)オキシ]−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−2−アミン、(2R)−1−[(3,7−ジメチルオクチル)オキシ]−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−2−アミン、N,N−ジメチル−1−(オクチルオキシ)−3−({8−[(1S,2S)−2−{[(1R,2R)−2−ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン−2−アミン、N,N−ジメチル−1−{[8−(2−オクチルシクロプロピル)オクチル]オキシ}−3−(オクチルオキシ)プロパン−2−アミン、および(11E,20Z,23Z)−N,N−ジメチルノナコサ−11,20,2−トリエン−10−アミン、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体から選択しうる。
一実施形態では、脂質は、国際公開第2012/170889号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような切断性脂質でありうる。
一実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子は、本明細書に記載のおよび/または当技術分野で公知の少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含みうる。
一実施形態では、カチオン性脂質は、当技術分野で公知の方法により、ならびに/または国際公開第2012/040184号パンフレット、国際公開第2011/153120号パンフレット、国際公開第2011/149733号パンフレット、国際公開第2011/090965号パンフレット、国際公開第2011/043913号パンフレット、国際公開第2011/022460号パンフレット、国際公開第2012/061259号パンフレット、国際公開第2012/054365号パンフレット、国際公開第2012/044638号パンフレット、国際公開第2010/080724号パンフレット、および国際公開第2010/21865号パンフレット(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように合成しうる。
一実施形態では、saRNAのLNP製剤は、3%脂質モル比率でPEG−c−DOMGを含有しうる。他の実施形態では、saRNAのLNP製剤は、1.5%脂質モル比率でPEG−c−DOMGを含有しうる。
一実施形態では、saRNAの医薬組成物は、国際公開第2012/099755号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のPEG化脂質の少なくとも1つを含みうる。
一実施形態では、LNP製剤は、PEG−DMG2000(1,2−ジミリストイル−sn−グルセロ−3−ホホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000)を含有しうる。一実施形態では、LNP製剤は、PEG−DMG2000と、当技術分野で公知のカチオン性脂質と、少なくとも1つの他の成分とを含有しうる。他の実施形態では、LNP製剤は、PEG−DMG2000と、当技術分野で公知のカチオン性脂質と、DSPCと、コレステロールとを含有しうる。限定されるものではないが例として、LNP製剤は、PEG−DMG2000と、DLin−DMAと、DSPCと、コレステロールとを含有しうる。限定されるものではないが他の例として、LNP製剤は、2:40:10:48のモル比でPEG−DMG2000と、DLin−DMAと、DSPCと、コレステロールとを含有しうる(たとえば、ゲアール(Geall)ら著、「自己増幅RNAワクチンの非ウイルス送達(Nonviral delivery of self−amplifying RNA vaccines)」、米国科学アカデミー紀要(PNAS)、2012年、PMID:22908294(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。限定されるものではないが他の例として、本明細書に記載のsaRNAは、米国特許出願公開第2012/0207845号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、非経口経路により送達されるナノ粒子中に製剤化しうる。カチオン性脂質はまた、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許出願公開第2013/0156845号明細書、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許出願公開第2013/0129785号明細書、Wasanらに付与された国際公開第2012/047656号パンフレット、チェン(Chen)らに付与された国際公開第2010/144740号パンフレット、アンセル(Ansellの)らに付与された国際公開第2013/086322号パンフレット、またはマノハラン(Manoharan)らに付与された国際公開第2012/016184号パンフレット(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるカチオン性脂質でありうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、ホープ(Hope)らに付与された米国特許出願公開第2013/0017223号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、第1および第2のカチオン性脂質などの複数のカチオン性脂質を用いて製剤化しうる。第1のカチオン性脂質は第1の性質に基づいて選択可能であり、かつ第2のカチオン性脂質は第2の性質に基づいて選択可能である。この場合、これらの性質は、米国特許出願公開第2013/0017223号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に概説されるように決定しうる。一実施形態では、第1および第2の性質は相補的である。
他の実施形態では、saRNAは、カリス(Cullis)らに付与された米国特許出願公開第2012/0276209号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、脂質粒子が固体コアを含む条件で1種以上のカチオン性脂質と1種以上の第2の脂質と1種以上の核酸とを含む脂質粒子を用いて製剤化しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、サティッシュチャンドラン(Satishchandran)らに付与された欧州特許第2298358号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、水中油型(o/w)エマルジョン中でカチオン性両親媒性物質と複合体化しうる。カチオン性両親媒性物質は、カチオン性脂質、修飾もしくは非修飾スペルミン、ブピバカイン、またはベンザルコニウムクロリドでありうると共に、油は、野菜油または動物油でありうる。限定されるものではないが例として、核酸−カチオン性両親媒性物質複合体の少なくとも10%は、水中油型エマルジョンの油相中にある(たとえば、サティッシュチャンドラン(Satishchandran)らに付与された欧州特許第2298358号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の複合体を参照されたい)。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、カチオン性化合物と中性脂質との混合物を含む組成物を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが例として、カチオン性化合物は、アンセル(Ansell)らに付与された国際公開第1999/010390号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に開示される)に開示される式(I)でありうると共に、中性脂質は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、およびスフィンゴミエリンからなる群から選択しうる。
一実施形態では、LNP製剤は、国際公開第2011/127255号パンフレットまたは国際公開第2008/103276号パンフレット(それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により製剤化しうる。限定されるものではないが例として、本発明のsaRNAは、国際公開第2011/127255号パンフレットおよび/または国際公開第2008/103276号パンフレット(その各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の脂質ナノ粒子(LNP)製剤のいずれかでカプセル化しうる。
一実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤はポリカチオン性組成物を含みうる。限定されるものではないが例として、ポリカチオン性組成物は、米国特許出願公開第2005/0222064号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)の式1〜60から選択しうる。他の実施形態では、ポリカチオン性組成物を含むLNP製剤は、本明細書に記載のsaRNAをin vivoおよび/またはin vitroで送達するために使用しうる。
一実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は浸透エンハンサー分子を追加的に含みうる。限定されるものではないが浸透エンハンサー分子は米国特許出願公開第2005/0222064/号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
一実施形態では、医薬組成物は、限定されるものではないがDiLa2リポソーム(マリーナ・バイオテック(Marina Biotech)、ワシントン州ボセル)、スマーティクルズ(SMARTICLES)(登録商標)/NOV340(マリーナ・バイオテック(Marina Biotech)、ワシントン州ボセル)、中性DOPC(1,2−ジオレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホコリン)ベースのリポソーム(たとえば、卵巣癌のためのsiRNA送達(ランデン(Landen)ら著、キャンサー・バイオロジー・アンド・セラピー(Cancer Biology&Therapy)、2006年、第5巻、第12号、p.1708〜1713)(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))、およびヒアルロナン被覆リポソーム(クワイエット・セラピューティクス(Quiet Therapeutics)、イスラエル国)などのリポソーム中に製剤化しうる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、パンズナー(Panzner)に付与された国際公開第2008/043575号パンフレットおよびエスラー(Essler)らに付与された米国特許第8580297号明細書(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意の両性リポソームを用いて製剤化しうる。両性リポソームは、カチオン性両親媒性物質と、アニオン性両親媒性物質と、任意選択的な1種以上の中性両親媒性物質とを含む脂質の混合物を含みうる。両性リポソームは、ヘッド基が1つ以上の両性基で置換された両親媒性分子をベースとする両性化合物を含みうる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、エスラー(Essler)らに付与された米国特許出願公開第2014/0227345号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、4〜9の等電点を有する1つ以上の両性基を含む両性脂質を用いて製剤化しうる。
ナノ粒子配合物は、炭水化物担体と核酸分子(たとえば、saRNA)とを含む炭水化物ナノ粒子でありうる。非限定的な例として、炭水化物担体は、限定されるものではないがアンヒドリド修飾フィトグリコーゲン型またはグリコーゲン型材料、フトグリコーゲンオクテニルスクシネート、フィトグリコーゲンベータ−デキストリン、アンヒドリド修飾フィトグリコーゲンベータ−デキストリンを含みうる。(たとえば、国際公開第2012/109121号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
脂質ナノ粒子製剤は、カチオン性脂質を急速排出脂質ナノ粒子(reLNP:rapidly eliminated lipid nanoparticle)として知られる生分解性カチオン性脂質に置き換えることにより改善しうる。限定されるものではないがDLinDMA、DLin−KC2−DMA、DLin−MC3−DMAなどのイオン化性カチオン性脂質は、経時的に血漿および組織に蓄積することが示されており、潜在的な毒性源でありうる。急速排出脂質の急速代謝は、ラットにおいて脂質ナノ粒子の耐容性および治療指数を1mg/kg用量〜10mg/kg用量程度改善可能である。酵素分解エステル結合の組込みは、カチオン性成分の分解および代謝プロファイルを向上可能であるが、依然としてreLNP製剤の活性が維持される。エステル結合は、脂質鎖内に内在しうるかまたは脂質鎖末端に端在しうる。内部エステル結合は、脂質鎖中の任意の炭素を置き換えうる。
一実施形態では、saRNAは、限定されるものではないがサイレンス・セラピューティクス(Silence Therapeutics)(英国ロンドン)製のアツプレックス(ATUPLEX)(商標)系、DACC系、DBTC系、および他のsiRNA−リポプレックス技術、ステムジェント(STEMGENT)(登録商標)(マサチューセッツ州ケンブリッジ)製のステムフェクト(STEMFECT)(商標)、ならびにポリエチレンイミン(PEI)またはプロタミンをベースとする核酸の標的化および非標的化送達(アレク(Aleku)ら著、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、2008年、第68巻、p.9788〜9798、ストラムバーグ(Strumberg)ら著、インターナショナル・ジャーナル・オブ・クリニカル・ファーマコロジー・アンド・セラピューティクス(Int J Clin Pharmacol Ther)、2012年、第50巻、p.76〜78、サンテル(Santel)ら著、ジーン・セラピー(Gene Ther)、2006年、第13巻、p.1222〜1234、サンテル(Santel)ら著、ジーン・セラピー(Gene Ther)、2006年、第13巻、p.1360〜1370、グートビール(Gutbier)ら著、プルモナリー・ファーマコロジー・アンド・セラピューティクス(Pulm Pharmacol.Ther.)、2010年、第23巻、p.334〜344、カウフマン(Kaufmann)ら著、マイクロバスキュラー・リサーチ(Microvasc Res)、2010年、第80巻、p.286〜293、ウェイド(Weide)ら著、ジャーナル・オブ・イムノセラピー(J Immunother.)、2009年、第32巻、p.498〜507、ウェイド(Weide)ら著、ジャーナル・オブ・イムノセラピー(J Immunother.)、2008年、第31巻、p.180〜188、パスコロ(Pascolo)著、エクスパート・オピニオン・オン・バイオロジカル・セラピー(Expert Opin.Biol.Ther.)、第4巻、p.1285〜1294、フォティン−ムレクゼック(Fotin−Mleczek)ら著、ジャーナル・オブ・イムノセラピー(J.Immunother.)、2011年、第34巻、p.1〜15、ソング(Song)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnol.)、2005年、第23巻、p.709〜717、ペール(Peer)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2007年、第6巻、第104号、p.4095〜4100、ド・フジュロル(deFougerolles)著、ヒューマン・ジーン・セラピー(Hum Gene Ther.)、2008年、第19巻、p.125〜132(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))など、リポプレックスとして製剤化しうる。
一実施形態では、かかる製剤はまた、限定されるものではないが肝細胞、免疫細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、抗原提示細胞、白血球などのさまざまな細胞型をin vivoで受動的または能動的に指向するように、構築または組成変更しうる(アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2010年、第18巻、p.1357〜1364、ソング(Song)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2005年、第23巻、p.709〜717、ジャッジ(Judge)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2009年、第119巻、p.661〜673、カウフマン(Kaufmann)ら著、マイクロバスキュラー・リサーチ(Microvasc Res)、2010年、第80巻、p.286〜293、サンテル(Santel)ら著、ジーン・セラピー(Gene Ther)、2006年、第13巻、p.1222〜1234、サンテル(Santel)ら著、ジーン・セラピー(Gene Ther)、2006年、第13巻、p.1360〜1370、グートビール(Gutbier)ら著、プルモナリー・ファーマコロジー・アンド・セラピューティクス(Pulm Pharmacol.Ther.)、2010年、第23巻、p.334〜344、バシャ(Basha)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol.Ther.)、2011年、第19巻、p.2186〜2200、フェンケ(Fenske)およびカリス(Cullis)著、エクスパート・オピニオン・オン・ドラッグ・デリバリー(Expert Opin Drug Deliv.)、2008年、第5巻、p.25〜44、ペール(Peer)ら著、サイエンス(Science)、2008年、第319巻、p.627〜630、ペール(Peer)およびリーバーマン(Lieberman)著、ジーン・セラピー(Gene Ther.)、2011年、第18巻、p.1127〜1133(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。肝細胞への製剤の受動標的化の一例は、in vivoアポリポタンパク質Eに結合して肝細胞へのこれらの製剤の結合および取込みを促進することが示されているDLin−DMA、DLin−KC2−DMAおよびDLin−MC3−DMAをベースとする脂質ナノ粒子製剤を含む(アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2010年、第18巻、p.1357〜1364(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。製剤はまた、限定されるものではないがホレート、トランスフェリン、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、および抗体による標的化的法により例証されるように、その表面上のさまざまなリガンドの発現を介して選択的に標的化可能である(コルハトカー(Kolhatkar)ら著、カレント・ドラッグ・デリバリー・テクノロジー(Curr Drug Discov Technol.)、2011年、第8巻、p.197〜206、ムサッチオ(Musacchio)およびトーチリン(Torchilin)著、フロンティアズ・イン・バイオサイエンス(Front Biosci.)、2011年、第16巻、p.1388〜1412、ユー(Yu)ら著、モレキュラー・メンブレン・バイオロジー(Mol Membr Biol.)、2010年、第27巻、p.286〜298、パティル(Patil)ら著、クリニカル・レビューズ・イン・セラピューティック・ドラッグ・キャリヤー・システムズ(Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.)、2008年、第25巻、p.1〜61、ブノワ(Benoit)ら著、バイオモレキュールズ(Biomacromolecules)、2011年、第12巻、p.2708〜2714、ザオ(Zhao)ら著、エクスパート・オピニオン・オン・ドラッグ・デリバリー(Expert Opin Drug Deliv.)、2008年、第5巻、p.309〜319、アキンク(Akinc)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2010年、第18巻、p.1357〜1364、スリニバサン(Srinivasan)ら著、メソッズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods Mol Biol.)、2012年、第820巻、p.105〜116、ベン−アリエ(Ben−Arie)ら著、メソッズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods Mol Biol.)、2012年、第757巻、p.497〜507、ペール(Peer)ら著、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J Control Release)、2010年、第20巻、p.63〜68、ペール(Peer)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2007年、第104巻、p.4095〜4100、キム(Kim)ら著、メソッズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods Mol Biol.)、2011年、第721巻、p.339〜353、スブラマニア(Subramanya)ら著、モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)、2010年、第18巻、p.2028〜2037、ソング(Song)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)、2005年、第23巻、p.709〜717、ペール(Peer)ら著、サイエンス(Science)、2008年、第319巻、第号、p.627〜630、ペール(Peer)およびリーバーマン(Lieberman)著、ジーン・セラピー(Gene Ther.)、2011年、第18巻、p.1127〜1133(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
一実施形態では、saRNAは固体脂質ナノ粒子として製剤化される。固体脂質ナノ粒子(SLN:solid lipid nanoparticle)は10〜1000nmの平均直径を有して球状でありうる。SLNは、親油性分子を可溶化することができ、かつ界面活性剤および/または乳化剤を用いて安定化することができる固体脂質コアマトリックスを有する。さらなる実施形態では、脂質ナノ粒子はセルフアセンブリー脂質−ポリマーナノ粒子でありうる(ザング(Zhang)ら著、ACSナノ(ACS Nano)、2008年、第2巻、第8号、p.1696〜1702を参照されたい(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、制御放出および/または標的化送達のために製剤化可能である。本明細書で用いられる場合、「制御放出」とは、治療アウトカムを達成する特定の放出パターンに適合する医薬組成物または化合物の放出プロファイルを意味する。一実施形態では、saRNAは、制御放出および/または標的化送達のために本明細書に記載のおよび/または当技術分野で公知の送達剤中にカプセル化しうる。本明細書で用いられる場合、「カプセル化」という用語は、密封、包囲、または収容を意味する。本発明の化合物の製剤に関して、カプセル化は、実質的、完全、または部分的でありうる。「実質的カプセル化」という用語は、本発明の医薬組成物または化合物の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.9超または99.999%超を送達剤内に密封、包囲、または収容しうることを意味する。「部分的カプセル化」とは、本発明の医薬組成物または化合物の10未満、10、20、30、40、50以下を送達剤内に密封、包囲、または収容しうることを意味する。有利には、カプセル化は、蛍光および/または電子顕微鏡写真を用いて本発明の医薬組成物または化合物の逃散または活性を測定することにより決定しうる。たとえば、本発明の医薬組成物または化合物の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.99%、または99.99%超が送達剤内にカプセル化される。
他の実施形態では、saRNAは、脂質ナノ粒子または急速排出脂質ナノ粒子中にカプセル化しうると共に、次いで、脂質ナノ粒子または急速排出脂質ナノ粒子は、本明細書に記載のおよび/または当技術分野で公知のポリマー、ヒドロゲル、および/または外科シーラント中にカプセル化しうる。限定されるものではないが例として、ポリマー、ヒドロゲル、または外科シーラントは、PLGA、エチレンビニルアセテート(EVAc)、ポロキサマー、ゲルサイト(GELSITE)(登録商標)(ナノセラピューティクス・インコーポレイテッド(Nanotherapeutics,Inc.)、フロリダ州アラチュア)、ハイレネッミス(HYLENEX)(登録商標)(ハロザイム・セラピューティクス(Halozyme Therapeutics)、カリフォルニア州サンディエゴ)、外科シーラント、たとえば、フィブリノーゲンポリマー(エチコン・インコーポレイテッド(Ethicon Inc.)、ジョージア州コーネリア)、ティセル(TISSELL)(登録商標)(バクスター・インターナル・インコーポレイテッド(Baxter International,Inc)、イリノイ州ディアフィールド)、PEG系シーラント、およびコシール(COSEAL)(登録商標)(バクスター・インターナル・インコーポレイテッド(Baxter International,Inc)、イリノイ州ディアフィールド)でありうる。
他の実施形態では、対象に注射する場合、脂質ナノ粒子は、ゲルを形成しうる当技術分野で公知の任意のポリマー中にカプセル化しうる。限定されるものではないが他の例として、脂質ナノ粒子は、生分解性でありうるポリマーマトリックス中にカプセル化しうる。
一実施形態では、制御放出および/または標的化送達に供されるsaRNA製剤はまた、少なくとも1種の制御放出コーティングを含みうる。制御放出コーティングとしては、限定されるものではないがオパドライ(OPADRY)(登録商標)、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ユードラギットRL(EUDRAGIT RL)(登録商標)、ユードラギットRS(EUDRAGIT RS)(登録商標)、およびセルロース誘導体、たとえば、エチルセルロース水性ディスパージョン(アクアコート(AQUACOAT)(登録商標)およびスリリース(SURELEASE)(登録商標))が挙げられる。
一実施形態では、制御放出および/または標的化送達製剤は、ポリカチオン性側鎖を含有しうる少なくとも1種の分解性ポリエステルを含みうる。分解性ポリエステルとしては、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の実施形態では、分解性ポリエステルは、PEG化ポリマーを形成するようにPEGコンジュゲーションを含みうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許出願公開第2013/0202652号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される標的化部分などの標的化部分を有する標的化脂質を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが例として、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許出願公開第2013/0202652号明細書の式Iの標的化部分は、所望の器官、組織、細胞、細胞型もしくは亜型、またはオルガネラに脂質が有利に局在化するように選択しうる。限定されるものではないが本発明で企図される標的化部分は、トランスフェリン、アニスアミド、RGDペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA:prostate specific membrane antigen)、フコース、抗体、またはアプタマーを含む。
一実施形態では、本発明のsaRNAは治療用ナノ粒子中にカプセル化しうる。治療用ナノ粒子は、本明細書に記載のおよび当技術分野で公知の方法により、たとえば、限定されるものではないが国際公開第2010/005740号パンフレット、国際公開第2010/030763号パンフレット、国際公開第2010/005721号パンフレット、国際公開第2010/005723号パンフレット、国際公開第2012/054923号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0262491号明細書、米国特許出願公開第2010/0104645号明細書、米国特許出願公開第2010/0087337号明細書、米国特許出願公開第2010/0068285号明細書、米国特許出願公開第2011/0274759号明細書、米国特許出願公開第2010/0068286号明細書、および米国特許出願公開第2012/0288541号明細書、ならびに米国特許第8,206,747号明細書、同第8,293,276号明細書、同第8,318,208号明細書、および同第8,318,211号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)の方法により製剤化しうる。他の実施形態では、治療用ポリマーナノ粒子は、米国特許出願公開第2012/0140790号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により同定しうる。
一実施形態では、治療用ナノ粒子、持続放出のために製剤化しうる。本明細書で用いられる場合、「持続放出」とは、特定の期間にわたり放出速度に適合する医薬組成物または化合物を意味する。期間は、限定されるものではないが何時間、何日間、何週間、何ヶ月間、および何年間かを含みうる。限定されるものではないが例として、持続放出ナノ粒子は、ポリマーおよび治療剤、たとえば、限定されるものではないが本発明のsaRNAを含みうる(国際公開第2010/075072号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2010/0216804号明細書、米国特許出願公開第2011/0217377号明細書、および米国特許出願公開第2012/0201859号明細書、(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、治療用ナノ粒子は標的特異的になるように製剤化しうる。限定されるものではないが例として、治療用ナノ粒子はコルチコステロイドを含みうる(国際公開第2011/084518/号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。一実施形態では、治療用ナノ粒子は癌特異的になるように製剤化しうる。限定されるものではないが例として、治療用ナノ粒子は、国際公開第2008/121949号パンフレット、国際公開第2010/005726号パンフレット、国際公開第2010/005725号パンフレット、国際公開第2011/084521号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2010/0069426号明細書、米国特許出願公開第2012/0004293号明細書、および米国特許出願公開第2010/0104655号明細書、(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のナノ粒子中で製剤化しうる。
一実施形態では、本発明のナノ粒子はポリマーマトリックスを含みうる。限定されるものではないが例として、ナノ粒子は、2種以上のポリマー、たとえば、限定されるものではないがポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、またはそれらの組合せを含みうる。
一実施形態では、治療用ナノ粒子はジブロックコポリマーを含む。一実施形態では、ジブロックコポリマーは、限定されるものではないがポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリシン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、またはそれらの組合せなどのポリマーと組み合わせてPEGを含みうる。
限定されるものではないが例として、治療用ナノ粒子はPLGA−PEGブロックコポリマーを含む(米国特許出願公開第2012/0004293号明細書および米国特許第8,236,330号明細書(それらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。限定されるものではないが他の例として、治療用ナノ粒子は、PEGとPLAまたはPEGとPLGAのジブロックコポリマーを含むステルスナノ粒子である(米国特許第8,246,968号明細書および国際公開第2012/166923号パンフレット(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、限定されるものではないが米国特許第8,263,665号明細書および同第8,287,910号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のマルチブロックコポリマーなどのマルチブロックコポリマーを含みうる。
一実施形態では、本明細書に記載のブロックコポリマーは、非ポリマーミセルとブロックコポリマーとを含むポリイオン複合体に含まれうる。(たとえば、米国特許出願公開第2012/0076836号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、少なくとも1種のアクリル系ポリマーを含みうる。アクリル系ポリマーとしては、限定されるものではないがアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレートおよびメタクリル酸コポリマー、アミノ、アルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリシアノアクリレート、およびそれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、少なくとも1種のアミン含有ポリマー、たとえば、限定されるものではないがポリリシン、ポリエチレンイミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ポリ(β−アミノエステル)、およびそれらの組合せを含みうる(たとえば、米国特許第8,287,849号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、ポリカチオン性側鎖を含有しうる少なくとも1種の分解性ポリエステルを含みうる。分解性ポリエステルとしては、ポリ(セリンエステル)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の実施形態では、分解性ポリエステルは、PEG化ポリマーを形成するようにPEGコンジュゲーションを含みうる。
他の実施形態では、治療用ナノ粒子、少なくとも1種の標的化リガンドのコンジュゲーションを含みうる。標的化リガンドは、当技術分野で公知の任意のリガンド、たとえば、限定されるものではないがモノクローナル抗体でありうる。(キルポーチン(Kirpotin)ら著、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、2006年、第66巻、p.6732〜6740(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
一実施形態では、治療用ナノ粒子は、癌を標的とするように使用しうる水性溶液中に製剤化しうる(国際公開第2011/084513号パンフレットおよび米国特許出願公開第2011/0294717号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、saRNAは、合成ナノ担体にカプセル化、結合、および/または会合しうる。合成ナノ担体は、限定されるものではないが国際公開第2010/005740号パンフレット、国際公開第2010/030763号パンフレット、国際公開第2012/13501号パンフレット、国際公開第2012/149252号パンフレット、国際公開第2012/149255号パンフレット、国際公開第2012/149259号パンフレット、国際公開第2012/149265号パンフレット、国際公開第2012/149268号パンフレット、国際公開第2012/149282号パンフレット、国際公開第2012/149301号パンフレット、国際公開第2012/149393号パンフレット、国際公開第2012/149405号パンフレット、国際公開第2012/149411号パンフレット、国際公開第2012/149454号パンフレットおよび国際公開第2013/019669号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2011/0262491号明細書、米国特許出願公開第2010/0104645号明細書、米国特許出願公開第2010/0087337号明細書および米国特許出願公開第2012/0244222号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)のに記載のものを含む。合成ナノ担体は、本明細書に記載のおよび/または当技術分野で公知の方法を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが例として、合成ナノ担体は、国際公開第2010/005740号パンフレット、国際公開第2010/030763号パンフレット、および国際公開第2012/13501号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2011/0262491号明細書、米国特許出願公開第2010/0104645号明細書、米国特許出願公開第2010/0087337号明細書、および米国特許出願公開第2012/024422号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により製剤化しうる。他の実施形態では、合成ナノ担体製剤は、国際公開第2011/072218号パンフレットおよび米国特許第8,211,473号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により凍結乾燥しうる。
一実施形態では、合成ナノ担体は、本明細書に記載のsaRNAを放出するために反応性基を含有しうる(国際公開第2012/0952552号パンフレットおよび米国特許出願公開第2012/0171229号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、合成ナノ担体は標的化放出のために製剤化しうる。一実施形態では、合成ナノ担体は、特定のpHでおよび/または所望の時間後にsaRNAを放出するように製剤化しうる。限定されるものではないが例として、合成ナノ粒子は、24時間後におよび/または4.5のpHでsaRNAを放出するように製剤化しうる(国際公開第2010/138193号パンフレットおよび国際公開第2010/138194号パンフレットならびに米国特許出願公開第2011/0020388号明細書および米国特許出願公開第2011/0027217号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
一実施形態では、合成ナノ担体は、本明細書に記載のsaRNAの制御放出および/または持続放出のために製剤化しうる。限定されるものではないが例として、持続放出に供される合成ナノ担体は、当技術分野で公知の、本明細書に記載の、ならびに/または国際公開第2010/138192号パンフレットおよび米国特許出願公開第2010/0303850号明細書(それらの各内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により製剤化しうる。
一実施形態では、ナノ粒子は経口投与のために最適化しうる。ナノ粒子は、少なくとも1種のカチオン性バイオポリマー、たとえば、限定されるものではないがキトサンまたはその誘導体を含みうる。限定されるものではないが例として、ナノ粒子は、米国特許出願公開第2012/0282343号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により製剤化しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許第8575123号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなモジュール組成物中に製剤化しうる。限定されるものではないが例として、モジュール組成物は、核酸、たとえば本発明のsaRNAと、少なくとも1種のエンドソーム分解成分と、少なくとも1種の標的化リガンドとを含みうる。モジュール組成物は、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許第8575123号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかの式などの式を有しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、ド・フジュロル(de Fougerolles)らに付与された米国特許第8546554号明細書(その内容はその全体が参照により組み込まれる)に記載されるような安定な核酸−脂質粒子(SNALP)を形成するように脂質配合物中にカプセル化しうる。脂質はカチオン性または非カチオン性でありうる。限定されるものではないが一例では、脂質対核酸比(質量/質量比)(たとえば、脂質対saRNA比)は、約1:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、もしくは約6:1〜約9:1の範囲内、または5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、もしくは11:1であろう。他の例では、SNALPは、63.0±20nmの粒子サイズおよび0.027の核酸/脂質比率を有して、40%2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン(リピドA)、10%ジオレオイルホスファチジルコリン(DSPC)、40%コレステロール、10%ポリエチレングリコール(PEG)−C−DOMG(モルパーセント)を含む。他の実施形態では、本発明のsaRNAは、ラム(Lam)らに付与された米国特許第7189705号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるエンドソーム膜不安定化剤を含む核酸−脂質粒子を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが例として、エンドソーム膜不安定化剤はCa2+イオンでありうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、アキン(Akine)らに付与された米国特許第8148344号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される製剤化脂質粒子(FLiP:formulated lipid particle)を用いて製剤化しうる。アキン(Akine)らは、FLiPが一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含みうると教示している。この場合、オリゴヌクレオチドは、親油性物質と、コンジュゲートオリゴヌクレオチドが凝集、混合、または会合されたエマルジョンまたはリポソームの少なくとも1つとにコンジュゲートされている。こうした粒子は、驚くべきことに、アキン(Akine)らに付与された米国特許第8148344号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、心臓、肺、および筋肉にオリゴヌクレオチドを効果的に送達することが示されている。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、タム(Tam)らに付与された米国特許第6086913号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、脂質製剤中に発現ベクターを含む組成物を用いて細胞に送達しうる。タム(Tam)により開示された組成物は血清安定性であり、アデノ随伴ウイルス(AAV:adeno associated virus)の第1のおよび第2の反転反復配列とAAVのrep遺伝子と核酸断片とを含む発現ベクターを含む。タム(Tam)の発現ベクターは脂質と複合体化される。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、ド・フジュロル(de Fougerolles)らに付与された米国特許出願公開第2012/0270921号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される脂質製剤を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが一例では、脂質製剤は、米国特許出願公開第2012/0270921号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の式Aを有するカチオン性脂質を含みうる。限定されるものではないが他の例として、米国特許出願公開第2012/0270921号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)の表Aに開示される例示的な核酸−脂質粒子の組成物は、本発明のsaRNAと共に使用しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、マウラー(Maurer)らに付与された米国特許出願公開第2012/0276207号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される脂質粒子中に完全にカプセル化しうる。粒子は、あらかじめ形成されたベシクルと治療剤との混合物を不安定化溶媒中に形成するように、あらかじめ形成された脂質ベシクルと荷電治療剤と不安定化剤とを含む脂質組成物を含む。この場合、前記不安定化溶媒は、ベシクルを破壊することなくあらかじめ形成された脂質ベシクルの膜を不安定化するのに有効である。
一実施形態では、本発明のsaRNAはコンジュゲート脂質を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが一例では、コンジュゲート脂質は、リン(Lin)らに付与された米国特許出願公開第2012/0264810号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような式を有しうる。コンジュゲート脂質は、カチオン性脂質と中性脂質と凝集を低減可能な脂質とをさらに含む脂質粒子を形成しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNA、フィッツジェラルド(Fitzgerald)らに付与された米国特許出願公開第2012/0244207号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるような中性リポソーム製剤中に製剤化しうる。「中性リポソーム製剤」という語句は、生理pHでほぼ中性または中性の表面電荷を有するリポソーム製剤を意味する。生理pHは、たとえば約7.0〜約7.5、またはたとえば約7.5、またはたとえば7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、もしくは7.5、またはたとえば7.3、またはたとえば7.4でありうる。中性リポソーム製剤の例は、イオン化性脂質ナノ粒子(iLNP:ionizable lipid
nanoparticle)である。中性リポソーム製剤は、イオン化性カチオン性脂質、たとえばDLin−KC2−DMAを含みうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、荷電脂質またはアミノ脂質を用いて製剤化しうる。本明細書で用いられる場合、「荷電脂質」という用語は、1または2つの脂肪アシル鎖または脂肪アルキル鎖と第4級アミノヘッド基とを有する脂質を含むことを意味する。第4級アミンは永久正電荷を有する。ヘッド基は、生理pHでプロトン化しうる第1級、第2級、第3級アミンなどのイオン化性基を任意選択的に含みうる。第4級アミンの存在は、第4級アミンの欠如した構造類似化合物(たとえば、第4級アミンが第3級アミンで置き換えられる)中のイオン化性基のpKaと比較してイオン化性基のpKaを変化させうる。いくつかの実施形態では、荷電脂質は「アミノ脂質」と呼ばれる。限定されるものではないが一例では、アミノ脂質は、ホープ(Hope)らに付与された米国特許出願公開第2011/0256175号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のアミノ脂質でありうる。たとえば、アミノ脂質は、ホープ(Hope)らに付与された米国特許出願公開第2011/0256175号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される構造(II)、DLin−K−C2−DMA、DLin−K2−DMA、DLin−K6−DMAとして開示される構造を有しうる。他の例では、アミノ脂質は、ムチアー(Muthiah)らに付与された国際公開第2009/132131号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される構造(I)、(II)、(III)、もしくは(IV)、または4−(R)−DUn−K−DMA(VI)、4−(S)−DUn−K−DMA(V)を有しうる。他の例では、本明細書に記載の製剤のいずれかで使用される荷電脂質は、マノハラン(Manoharan)らに付与された欧州特許第2509636号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の任意の荷電脂質でありうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、脂質とリポソームとリポプレックスとを含有する会合複合体を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが一例では、会合複合体は、マノハラン(Manoharan)らに付与された米国特許第8034376号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される式(I)により定義される構造、式(XV)による定義される構造を有するPEG−脂質、ステロイド、および核酸をそれぞれ有する1種以上の化合物を含む。saRNAは、米国特許第8034376号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかの会合複合体を用いて製剤化しうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、リバースヘッド基脂質を用いて製剤化しうる。限定されるものではないが例として、saRNAは、ヘッド基を含む双性イオン性脂質を用いて製剤化しうる。この場合、レオン(Leung)らに付与された国際公開第2011/056682号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の構造(A)または構造(I)を有する脂質のように、正電荷はアシル鎖領域の近傍に位置し、負電荷はヘッド基の先端部に位置する。
一実施形態では、本発明のsaRNAは脂質二重層担体中に製剤化しうる。限定されるものではないが例として、saRNAは、核酸−脂質−界面活性剤混合物を提供するために、約5mol%〜約20mol%の量の凝集防止剤と、約0.5mol%〜約50mol%の量のカチオン性脂質と、膜融合脂質と、界面活性剤との脂質混合物を含む脂質−界面活性剤混合物と組み合わせうると共に、次いで、緩衝塩溶液に対して前記核酸−脂質−界面活性剤混合物を透析して前記界面活性剤を除去し、かつ前記核酸を脂質二重層担体中にカプセル化し、かつ脂質二重層−核酸組成物を提供しうる。この場合、前記緩衝塩溶液は、前記核酸の約40%〜約80%をカプセル化するのに十分なイオン強度を有する。これについては、カリス(Cullis)らに付与された国際公開第1999/018933号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、心臓、肝臓、または腫瘍組織部位にsaRNAを選択的に標的化可能な核酸−脂質粒子中に製剤化しうる。たとえば、核酸−脂質粒子は、カリス(Cullis)らに付与された欧州特許第1328254号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、(a)核酸、(b)1.0モル%〜45モル%のカチオン性脂質、(c)0,0モル%〜90モル%の他の脂質、(d)1,0モル%〜10モル%の二重層安定化成分、(e)0,0モル%〜60モル%のコレステロール、および(f)0,0モル%〜10モル%のカチオン性ポリマー脂質、を含みうる。カリス(Cullis)は、前記カチオン性脂質、二重層安定化成分、他の脂質、コレステロール、およびカチオン性ポリマー脂質の各量を変化させることにより、心臓、肝臓、または腫瘍組織部位に対する組織選択率を付与可能であることから、前記心臓、肝臓、または腫瘍組織部位に核酸を選択的に標的化可能な核酸−脂質粒子が同定されると教示している。
送達
本開示は、薬剤送達の科学の進歩の可能性を考慮して任意の適切な経路により治療、医薬、診断、またはイメージングのいずれかのためにsaRNAを送達することを包含する。送達はネイキッド状態または製剤化状態でありうる。
本発明のsaRNAは、ネイキッド状態で細胞に送達しうる。本明細書で用いられる場合、「ネイキッド」とは、トランスフェクションを促進する作用剤を用いずにsaRNAを送達することを意味する。たとえば、細胞に送達されるsaRNAは修飾を含まないものでありうる。ネイキッドsaRNAは、当技術分野で公知のおよび本明細書に記載の投与経路を用いて細胞に送達しうる。
本発明のsaRNAは、本明細書に記載の方法を用いて製剤化しうる。製剤は、修飾型および/または非修飾型でありうるsaRNAを含有しうる。製剤は、限定されるものではないが細胞透過剤、薬学的に許容可能な担体、送達剤、生侵食性または生体適合性ポリマー、溶媒、および持続放出送達デポをさらに含みうる。製剤化saRNAは、当技術分野で公知のおよび本明細書に記載の投与経路を用いて細胞に送達しうる。
組成物はまた、直接浸漬または沐浴する方法、カテーテルを介した方法、ゲル剤、粉末剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、および/または滴剤による方法、組成物で被覆または含浸された布または生分解性材料などの基材を用いた方法など(これらに限定されるものではない)をはじめとする当技術分野のいくつかの方法のいずれかで、器官または組織に直接送達するために製剤化しうる。本発明のsaRNAはまた、レトロウイルス複製ベクター(RRV:retrovirl replicating vector)中にクローニングして細胞にトランスデュースしうる。
投与
本発明のsaRNAは、治療上有効なアウトカムをもたらす任意の経路により投与しうる。こうした経路としては、経腸、経胃腸、硬膜外、経口、経真皮、硬膜外(硬膜上)、大脳内(大脳中へ)、脳室内(脳室中へ)、皮膚上(皮膚上への適用)、真皮内(皮膚自体中へ)、皮下(皮膚下へ)、経鼻投与(鼻を介して)、静脈内(静脈中へ)、動脈内(動脈中へ)、筋肉内(筋肉中へ)、心臓内(心臓中へ)、骨内注入(骨髄中へ)、髄腔内(脊柱管中へ)、腹腔内、(腹膜中への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内、(眼を介して)、空洞内注射、(陰茎基部中へ)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経真皮(全身分布のためのインタクト皮膚を介する拡散)、経粘膜(粘膜を介する拡散)、吹送(経鼻吸入)、舌下、唇下、浣腸、点眼(結膜上へ)、または点耳が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、組成物は、血液脳関門、血管関門、または他の上皮性関門を通過できるようにする方法で投与しうる。2012年12月14日出願の国際公開第2013/090648号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される投与経路は、本発明のsaRNAを投与するために使用しうる。
剤形
本明細書に記載の医薬組成物は、局所、鼻腔内、気管内、または注射用(たとえば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)などの本明細書に記載の剤形で製剤化しうる。2012年12月14日出願の国際公開第2013/090648号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の液体剤形、注射用製剤、経肺剤形、および固体剤形は、本発明のsaRNA用の剤形として使用しうる。
II.使用方法
本発明の一態様は、C/EBPα−saRNAの使用方法および前記C/EBPα−saRNAと少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。C/EBPα−saRNAはC/EBPα遺伝子発現をモジュレートする。一実施形態では、C/EBPα遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのC/EBPα遺伝子の発現と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ増加する。さらに好ましい実施形態では、C/EBPα遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのC/EBPα遺伝子の発現と比較して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する。
一実施形態では、本明細書に記載のsaRNAの遺伝子発現の増加は増殖細胞で示される。
代謝調節
肝細胞は、いくつかの生命機能の維持に重要であると一般に認識されている。たとえば、それは炭水化物および脂質の代謝ならびに外因性および内因性の化合物の解毒を調節可能である。C/EBPαは、脂肪細胞、II型肺胞細胞、および肝細胞をはじめとする多くの細胞型の分化に重要な役割を果たすさまざまな組織で発現される。マウスでは、C/EBPαは、脂肪組織、肝組織、および肺組織に最も多く豊富に見いだされる。C/EBPαの機能的役割としては、限定されるものではないがα−1−アンチトリプシン、トランスサイレチン、およびアルブミンのレギュレーションが挙げられる。さらに、肝細胞系(HepG2)におけるC/EBPα遺伝子の発現は、内因性基質の代謝に関与すると共に主要な生体異物の解毒および代謝活性化に重要な役割を果たすモノオキシゲナーゼのスーパーファミリーであるシトクロムP450(CYP)のレベルの増加をもたらす[ジョウバー(Jover)ら著、FEBSレターズ(FEBS Letters)、1998年、第431巻、第2号、p.227〜230(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、主要なグローバルな健康問題であり、米国では3名中1名が罹患する。NAFLDは、過剰アルコール使用が原因とならない肝細胞への余分な脂肪(脂質)の蓄積である。それは肝臓の重量の5%〜10%超が脂肪であるときに脂肪肝(脂肪症)と呼ばれる。NAFLDは、脂肪肝炎、硬変、および肝癌に進行するおそれがある。それはメタボリック症候群、インスリン抵抗性、II型糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの代謝障害に関連付けられる。治療方法としては、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルの低下、インスリン感受性の向上、代謝リスク因子の治療、体重減少などが挙げられる[アダムス(Adams)ら著、ポストグラジュエート・メディカル・ジャーナル(Postgraduate Medical Journal)、2006年、第82巻、p.315〜322、ムッソ(Musso)ら著、カレント・オピニオン・イン・リピドロジー(Curr.Opin.Lipidol.)、2011年、第22巻、第6号、p.489〜496(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。
C/EBPαタンパク質は、肝機能および代謝の調節に重要な役割を果たす。肝臓へのC/EBPαの一次作用は、CD36タンパク質レベルの低下による脂肪酸取込みの減少、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP)、および脂肪酸シンターゼ(FAS)タンパク質のレベルの低下によるde novo脂質生成の減少、ペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターアルファ(PPARα)ならびにペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマコアクチベータ1−アルファおよび−ベータ(PGC−1αおよびβ)のタンパク質レベルの増加によるβ酸化の増加、アポリポタンパク質C−III(APOC3)および低密度リポタンパク質レセプター(LDLR:low density lipoprotein receptor)タンパク質のレベルの低下による肝脂質過負荷の減少、PGC−1βタンパク質レベルの増加による線維症への進行の減少、ならびにペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマ(PPARγ)タンパク質レベルの増加によるインスリン抵抗性の減少を含めて、図1に示される。さらに、C/EBPαは、図2に示されるように脂肪組織への二次作用を有する。白色脂肪組織(WAT:White adipose tissue)は、脂質生成組織および脂肪貯蔵組織であるだけでなく、エネルギーホメオスタシス、脂質代謝、食欲、妊性、ならびに免疫反応およびストレス反応を調節する重要な内分泌器官でもある。褐色脂肪組織(BAT:Brown adipose tissue)は、WATと比較して多数のより小さい脂質小滴およびかなりより多くの鉄含有ミトコンドリアを含有する。それは栄養エネルギー、エネルギー収支、および体重に重要な役割を果たす。BATの萎縮が肥満に関連付けられるという証拠が存在する。特に、BATにおける熱発生の障害は齧歯動物の肥満の病因に重要なことが研究から示唆された[トレイハーン P.(Trayhurn P.)著、ジャーナル・オブ・バイオサイエンシズ(J.Biosci.)、1993年、第18巻、第2号、p.161〜173]。C/EBPαは、肝脂肪症およびインスリン抵抗性を減少させると共にPGC−1αタンパク質レベルを増加させ、続いてWATの褐変、WATからBATへの変換、次いでBATの活性化を引き起こし、それにより体脂肪および体量を低減する。したがって、本発明のC/EBPα−saRNAは、肝機能の調節、脂肪症の低減、血清脂質の低減、NAFLDの治療、インスリン抵抗性の治療、エネルギー消費の増加、および肥満の治療に使用しうる。
一実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することによりin vitroおよびin vivoで肝代謝遺伝子をレギュレートする方法が提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することによりin vitroおよびin
vivoでNAFLDに関与する肝遺伝子をレギュレートする方法も提供される。遺伝子は、限定されるものではないがステロール調節エレメント結合因子1(SREBF1またはSREBF)、分化クラスター36(CD36)、アセチルCoAカルボキシラーゼ2(ACACB)、アポリポタンパク質C−III(APOC3)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)、ペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマコアクチベータ1アルファ(PPARγ−CoA1αまたはPPARGC1A)、低密度リポタンパク質レセプター(LDLR)、ペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマコアクチベータ1ベータ(PPARγ−CoA1βまたはPERC)、ペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターガンマ(PPARγ)、アセチルCoAカルボキシラーゼ1(ACACA)、炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBPまたはMLX1PL)、ペルオキシソームプロリフェレータ活性化レセプターアルファ(PPARαまたはPPARA)、FASN(脂肪酸シンターゼ)、ジグリセリドアシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)、および哺乳動物ラパマイシン標的(mTOR)を含む。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のSREBF1遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のCD36遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のACACB遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のAPOC3遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のMTP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のPPARγ−CoA1α遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のPPARγ遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のPPARα遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも175%、200%、250%、300%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のMLXIPL遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のFASN遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞のDGAT2遺伝子の発現を少なくとも10%、20%、好ましくは少なくとも30%、40%、50%だけ減少させる。
C/EBPα−saRNAはまた、BAT細胞において以上に開示される肝代謝遺伝子の発現をモジュレートする。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のSREBP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のCD36遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のLDLR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のPPARGC1A遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のAPOC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、99%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のACACB遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のPERC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のACACA遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のMLXP1遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のMTOR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%、75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のPPARA遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも200%、250%、300%、350%、400%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のFASN遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、BAT細胞のDGAT遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、100%、125%、150%、より好ましくは少なくとも200%、250%、300%だけ増加させる。
C/EBPα−saRNAは、またWAT細胞中で以上に開示される肝代謝遺伝子の発現をモジュレートする。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のSREBP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のCD36遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のLDLR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のPPARGC1A遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、好ましくは少なくとも40%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のMTP遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0倍、より好ましくは少なくとも5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0倍だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のAPOC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、より好ましくは少なくとも95%、99%だけ増加させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のACACB遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のPERC遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のACACA遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、50%、好ましくは少なくとも75%、90%、95%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のMLX1PL遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のMTOR遺伝子の発現を少なくとも20%、30%、40%、好ましくは少なくとも50%、75%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のFASN遺伝子の発現を少なくとも5%、10%、好ましくは少なくとも15%、20%だけ減少させる。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、WAT細胞のDGAT遺伝子の発現を少なくとも10%、20%、30%、より好ましくは40%、50%だけ減少させる。
他の実施形態では、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することによりインスリン抵抗性(IR:insulin resistance)を低減するまたはインスリン感受性を増加させる方法が提供される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することによりII型糖尿病、高インスリン血症、および脂肪症を治療する方法が提供される。肝細胞がインスリン抵抗性でありかつインスリンを効果的に使用できない場合、高血糖が発生する。その結果、膵臓のβ細胞はインスリンの産生を増加させ、高インスリン血症およびII型糖尿病もたらす。多くのレギュレータは、肝細胞のインスリン抵抗性に影響を及ぼす。たとえば、ステロール調節エレメント結合タンパク質1(SREBP1またはSREBP)は、コレステロールのマスターレギュレータであり、およびインスリン抵抗性の増加に関連付けられる。コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)のアップレギュレーションは、インスリン抵抗性の増加に関連付けられる。肝脂肪酸トランスロカーゼ/分化クラスター36(FAT/CD36)のアップレギュレーションは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non−alcoholic steatohepatitis)の患者においてインスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪症の増加に関連付けられる。リポタンパク質リパーゼ遺伝子(LPL)の肝特異的過剰発現は、肝特異的インスリン抵抗性を引き起こす。肝Xレセプター遺伝子(LXR)は、肝臓においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)−1c誘導脂肪酸合成のインスリン媒介活性化に中心的役割を果たす。他の因子は、トリグリセリド合成をレギュレートするジグリセリドアシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)および脂肪酸生合成をレギュレートする脂肪酸シンターゼ(FASN)を含む。一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、無治療の肝細胞と比較して肝細胞のFAT/CD36遺伝子の発現を少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは90%だけ低減する。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAは、無治療の肝細胞と比較して肝細胞のLPL遺伝子の発現を少なくとも20、30、40%、好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、より好ましくは少なくとも100、150、200、250、300、350、および400%だけ増加させる。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAは、無治療の肝細胞と比較して肝細胞のLXR遺伝子の発現を少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、より好ましくは少なくとも100、150、200、250、300、350および400%、さらにより好ましくは少なくとも450、500、550、600%だけ増加させる。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAはSREBP1遺伝子の発現を減少させる。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAはDGAT2遺伝子の発現を減少させる。他の実施形態では、C/EBPα−saRNAはCETP遺伝子の発現を減少させる。さらに他の実施形態では、C/EBPα−saRNAはFASN遺伝子の発現を減少させる。
C/EBPα−saRNAでモジュレートしうるNAFLDおよびIR遺伝子のまとめを表5に示す。表5中の略語:NAFLD:非アルコール性脂肪肝疾患、IR:インスリン抵抗性、DNL:de novo脂質生成、FA:脂肪酸、TG:トリグリセリド、LPL:リポタンパク質リパーゼ、HP:肝リパーゼ、CHOL:コレステロール。
本発明の一実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することによりin vitro血清コレステロールレベルを低減する方法が提供される。C/EBPα−saRNAを用いると血清コレステロールレベルは、無治療の血清コレステロールレベルと比較して少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは75%だけ低減する。また、本発明のC/EBPα−saRNAの投与によりin vivoで肝細胞のLDLレベルおよびトリグリセリドレベルを低減するおよびLDLの循環レベルを増加させる方法も提供される。循環LDLレベルは、C/EBPα−saRNAの不在下でのLDLレベルの循環と比較して少なくとも2倍、好ましくは3倍、好ましくは4倍、好ましくは5倍、好ましくは10倍、好ましくは15倍だけ増加しうる。肝トリグリセリドレベルは、C/EBPα−saRNAの不在下での肝トリグリセリドレベルと比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%だけ低減しうる。肝LDLレベルは、C/EBPα−saRNAの不在下での肝LDLレベルと比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%だけ低減しうる。
本発明の一実施形態では、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することによりNAFLDを治療するおよび脂肪肝サイズを低減する方法が提供される。C/EBPα−saRNAで治療された患者の脂肪肝のサイズは、無治療の患者と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%だけ低減される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することにより体重を低減するおよび肥満を治療する方法が提供される。C/EBPα−saRNAで治療された患者の体重は、C/EBPα−saRNA治療を受けない患者の体重によりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%だけ減少する。本発明のC/EBPα−saRNAは、1回、2回、3回、またはそれを超えて投与しうる。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することにより遊離脂肪酸の肝取り込みを減少させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することにより白色脂肪組織(WAT)炎症を低減する方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することによりde novo脂質生成を低減する方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することにより肝臓のβ酸化を増加させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することにより肝臓の褐色脂肪組織(BAT)を増加させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することにより肝脂質取込みを低減する方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することによりWATにおける脂質生成を減少させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAで治療することにより肝臓への脂質貯蔵を減少させる方法も提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAの治療により肝臓への脂質過負荷を軽減する方法も提供される。
他の実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAは肝機能を向上させるために使用される。限定されるものではないが一例では、C/EBPα−saRNAは、アルブミン遺伝子発現を増加させることにより血清アルブミンレベルおよび非コンジュゲートビリルビンレベルを増加させる。アルブミン遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのアルブミン遺伝子の発現と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ増加しうる。さらなる好ましい実施形態では、アルブミン遺伝子の発現は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのアルブミン遺伝子の発現と比較して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する。限定されるものではないが他の例として、C/EBPα−saRNAは、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルファフェクトプロテイン(AFP)、および肝細胞成長因子(HGF)の量を減少させる。ALT、AST、GGT、AFP、またはHGFの量は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAの不在下でのALT、AST、GGT、AFP、またはHGFのいずれかの量と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ減少しうる。
他の実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAは、C/EBPファミリーの他のメンバーのレベルを調節するために投与される。C/EBPα−saRNAは、C/EBPα−saRNAの用量に依存してC/EBPβ、C/EBPγ、C/EBPδ、およびC/EBPζの発現を増加させる。さらに他の実施形態では、細胞内のC/EBPαまたはC/EBPβタンパク質アイソフォームの比率は、前記細胞と本発明のC/EBPα−saRNAとを接触させることにより調節される。一実施形態では、C/EBPαの42KDaアイソフォームが増加する。一実施形態では、C/EBPβの30kDaアイソフォームが増加する。
ecCEBPA
CEBPA遺伝子座から転写される機能性ncRNAであるエクストラコードCEBPA(ecCEBPA)は、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT1)と相互作用してCEBPA遺伝子メチル化を防止することによりCEBPAメチル化を調節する。ecCEBPAノックダウンは、CEBPA mRNA発現の減少およびDNAメチル化の有意な増加をもたらすことが見いだされている(ラスキオ(Ruscio)ら著、ネイチャー(Nature)、2013年、第503巻、p.371〜376(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))。他の実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAはecCEBPAレベルをアップレギュレートするために使用される。
外科ケア
肝切除、すなわち、肝臓または肝組織の外科的切除は、肝不全、アルブミンおよび凝固因子の産生の低減を引き起こすおそれがある。肝切除後の適正な外科ケアが必要とされる。いくつかの実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAは、肝再生の促進および生存率の増加のために肝切除後の外科ケアに使用される。
過増殖障害
本発明の一実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAは、過増殖細胞の細胞増殖を低減するために使用される。過増殖細胞の例としては、癌細胞、たとえば、癌腫、肉腫、リンパ腫、および芽腫が挙げられる。かかる癌細胞は良性または悪性でありうる。過増殖細胞は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬などの自己免疫病態から生じうる。過増殖細胞はまた、過敏免疫系を有する患者がアレルゲンに接触することにより生じうる。過敏免疫系が関与するかかる病態としては、限定されるものではないが喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、およびアレルギー反応、たとえばアレルギーアナフィラキシーが挙げられる。一実施形態では、腫瘍細胞の発生および/または増殖が阻害される。好ましい実施形態では、固形腫瘍細胞増殖が阻害される。他の好ましい実施形態では、腫瘍細胞の転移が予防される。他の好ましい例では、未分化腫瘍細胞増殖が阻害される。
細胞増殖の阻害または増殖の低減とは、増殖が低減されるかまたは完全に停止することを意味する。したがって、「増殖の低減」は「増殖の阻害」の実施形態である。細胞の増殖は、本発明のsaRNAの存在下では、本発明のsaRNAで治療する前の前記細胞の増殖と比較してまたは均等な未治療細胞の増殖と比較して少なくとも20%、30%、もしくは40%、または好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、もしくは75%、さらにより好ましくは少なくとも80、90、もしくは95%だけ低減される。細胞増殖が過増殖細胞において阻害される実施形態では、「均等」な細胞は過増殖細胞でもある。好ましい実施形態では、増殖は、均等な健常(非過増殖)細胞の増殖速度に匹敵する速度に低減される。別の見方をすると、「細胞増殖の阻害」の好ましい実施形態は、増殖の正常健常レベルを達成するように過増殖を阻害することまたは細胞増殖をモジュレートすることである。
限定されるものではないが一例では、C/EBPα−saRNAは、白血病細胞およびリンパ腫細胞の増殖を低減するために使用される。好ましくは、細胞は、ジャーカット細胞(急性T細胞性リンパ腫細胞系)、K562細胞(赤白血病細胞系)、U373細胞(膠芽腫細胞系)、および32Dp210細胞(骨髄性白血病細胞系)を含む。
限定されるものではないが他の例として、C/EBPα−saRNAは、卵巣癌細胞、肝癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、ラット肝癌細胞、およびインスリノーマ細胞の増殖を低減するために使用される。好ましくは、細胞は、PEO1およびPEO4(卵巣癌細胞系)、HepG2(肝細胞癌細胞系)、Panc1(ヒト膵癌細胞系)、MCF7(ヒト乳腺癌細胞系)、DU145(ヒト転移前立腺癌細胞系)、ラット肝癌細胞、ならびにMIN6(ラットインスリノーマ細胞系)を含む。
限定されるものではないが他の例として、C/EBPα−saRNAは、腫瘍細胞増殖を低減するためにC/EBPβ遺伝子を標的とするsiRNAと組み合わせて使用される。腫瘍細胞は、HepG2細胞などの肝細胞癌細胞およびMCF7細胞などの乳癌細胞を含みうる。
一実施形態では、本発明のsaRNAは、過増殖障害を治療するために使用される。腫瘍および癌は、特に興味深い過増殖障害であり、すべてのタイプの腫瘍および癌、たとえば、固形腫瘍および血液癌が含まれる。癌の例としては、限定されるものではないが頸癌、子宮癌、卵巣癌、腎癌、胆嚢癌、肝癌、頭頸部癌、扁平上皮細胞癌、胃腸癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(たとえば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病)、脳癌(たとえば、星状細胞腫、膠芽腫、髄芽腫)、神経芽腫、肉腫、結腸癌、直腸癌、胃癌、肛門癌、膀胱癌、子宮内膜癌、形質細胞腫、リンパ腫、網膜芽腫、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、黒色腫、および他の皮膚癌が挙げられる。肝癌として、限定されるものではないが胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、または肝細胞癌(HCC:Hhepatocellular carcinoma)が挙げられうる。HCCは特に興味深い。
原発性肝癌は、全世界で5番目に多い癌であり、癌関連死亡の3番目に多い原因である。HCCは原発性肝癌の大多数を占める[エル−セラグ(El−Serag)ら著、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、2007年、第132巻、第7号、p.2557〜2576(その内容はその全体が本明細書に開示される)]。HCCは、癌細胞生物学、免疫系、およびさまざまな病因(ウイルス、毒物、および一般物)を含むいくつかの因子の相互作用による影響を受ける。HCC患者の大多数は、肝硬変を経て悪性腫瘍を発症する。現在、ほとんどの患者は進行期に診断されるため、HCC患者の大多数の5年生存率は依然として悲惨である。外科的切除、局所切除、および肝移植は、現在、HCCが治癒する可能性を有する治療選択肢に過ぎない。しかしながら、個別の肝機能および腫瘍負荷の評価に基づいて、患者の約5〜15%が外科的介入に適格であるに過ぎない。C/EBP転写因子ファミリーの結合部位は、正常な肝細胞機能の維持および傷害への反応に関与する多くの遺伝子のプロモータ領域に存在する(アルブミン、インターロイキン6反応、エネルギー恒常性、オルニチン回路調節、および血清アミロイドA発現を含む)。本発明は、C/EBPα遺伝子の発現をモジュレートするためにならびに肝硬変およびHCCを治療するためにC/EBPα−saRNAを利用する。
本発明の方法は、腫瘍体積を少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90%だけ低減しうる。好ましくは、1つ以上の新しい腫瘍の発生が阻害される。たとえば、本発明に従って治療された対象は、より少ないおよび/またはより小さい腫瘍を発生する。より少ない腫瘍とは、設定期間にわたり均等な対象よりも少ない数の腫瘍を発生することを意味する。たとえば、均等な対照(未治療)対象よりも少なくとも1、2、3、4、または5少ない腫瘍を発生する。より小さい腫瘍とは、腫瘍が均等な対象の腫瘍よりも重量および/または体積で少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、また90%小さいことを意味する。本発明の方法は、腫瘍負荷を少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、または90%だけ低減する。
設定期間は任意の好適な期間でありうる。たとえば、月数または年数で1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10でありうる。
限定されるものではないが一例では、細胞、組織、または器官と本発明のC/EBPα−saRNAとを接触させる工程を含む、未分化腫瘍の治療方法が提供される。未分化腫瘍は、一般に、分化腫瘍と比較してより悪い予後を有する。腫瘍の分化度は予後に関係するため、分化生物学的因子の使用は有益な抗増殖薬剤でありうるという仮説が立てられる。C/EBPαは、骨髄分化を回復して急性骨髄性白血病の造血細胞の過増殖を予防することが知られている。好ましくは、C/EBPα−saRNAで治療しうる未分化腫瘍としては、未分化小細胞肺癌腫、未分化膵腺癌、未分化ヒト膵癌、未分化ヒト転移前立腺癌、および未分化ヒト乳癌が挙げられる。
限定されるものではないが一例では、C/EBPα−saRNAは、標的化in vivo送達のためのC/EBPα−saRNAデンドリマーと呼ばれるPAMAMデンドリマー中に複合体化される。静脈内注射されるC/EBPα−saRNAデンドリマーの治療効果は、実施例1に示されるような臨床的に妥当なラット肝腫瘍モデルに実証される。48時間間隔で尾静脈注射により3回投与後、治療硬変ラットは、1週間以内に血清アルブミンレベルの有意な増加を示した。肝腫瘍負荷は、C/EBPα−saRNAデンドリマー治療群で有意に減少した。活性化RNA低分子による遺伝子標的化を全身静脈内投与で用いてHCC硬変ラットの肝機能の改善および腫瘍負荷の低減を同時に行えることが、この研究から初めて実証される。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、癌遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子をレギュレートするために使用される。好ましくは、癌遺伝子の発現はダウンレギュレートしうる。癌遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα−saRNAの不在下での発現と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%だけ低減する。さらなる好ましい実施形態では、癌遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα−saRNAの不在下での発現と比較して少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、より好ましくは少なくとも1/15、1/20、1/25、1/30、1/35、1/40、1/45、1/50、さらにより好ましくは少なくとも1/60、1/70、1/80、1/90、1/100に低減される。好ましくは、腫瘍サプレッサー遺伝子の発現は阻害しうる。腫瘍サプレッサー遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα−saRNAの不在下での発現と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、さらにより好ましくは少なくとも100%だけ増加する。さらなる好ましい実施形態では、腫瘍サプレッサー遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、本発明のC/EBPα−saRNAの不在下での発現と比較して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加される。癌遺伝子および腫瘍サプレッサー遺伝子の例としては、限定されるものではないがBcl−2−関連Xタンパク質(BAX)、BH3相互作用ドメインデスアゴニスト(BID)、カスパーゼ8(CASP8)、ディセーブルホモログ2相互作用タンパク質(DAB21P)、肝癌欠失1(DLC1)、Fas表面デスレセプター(FAS)、脆弱ヒスチジントライアド(FHIT)、成長停止・DNA損傷誘導ベータ(GADD45B)、ヘッジホッグ相互作用タンパク質(HHIP)、インスリン様成長因子2(IGF2)、リンパエンハンサー結合因子1(LEF1)、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)、タンパク質チロシンキナーゼ2(PTK2)、レチノブラストーマ1(RB1)、runt関連転写因子3(RUNX3)、SMADファミリーメンバー4(SMAD4)、サイトカインシグナリングサプレッサー(3SOCS3)、トランスフォーミング成長因子ベータレセプターII(TGFBR2)、腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリーメンバー10(TNFSF10)、p53、ディスインテグリン・メタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質17(ADAM17)、v−aktネズミ胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ1(AKT1)、アンギオポイエチン2(ANGPT2)、B細胞CLL/リンパ腫2(BCL2)、BCL2様1(BCL2L1)、バキュロウイルスIAPリピート含有2(BIRC2)、バキュロウイルスIAPリピート含有5(BIRC5)、ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、サイクリンD1(CCND1)、サイクリンD2(CCND2)、カドヘリン(CDH1)、カドヘリン13(CDH13)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1A(CDKN1A)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1B(CDKN1B)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A(CDKN2A)、CASP8・FADD様アポトーシスレギュレータ(CFLAR)、カテニン(カドヘリン関連タンパク質)ベータ1(CTNNB1)、ケモカインレセプター4(CXCR4)、E2F転写因子1(E2F1)、表皮成長因子(EGF)、表皮成長因子レセプター(EGFR)、E1A結合タンパク質p300(EP300)、Fas(TNFRSF6)関連ビアデスドメイン(FADD)、fm関連チロシンキナーゼ1(FLT1)、フリズルドファミリーレセプター7(FZD7)、グルタチオンS−トランスフェラーゼパイ1(GSTP1)、肝細胞成長因子(HGF)、ハーベイラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(HRAS)、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP1)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)、インスリンレセプター基質1(IRS1)、インテグリンベータ1(ITGB1)、キナーゼインサートドメインレセプター(KDR)、骨髄細胞白血病配列1(MCL1)、met癌原遺伝子(MET)、mutSホモログ2(MSH2)、mutSホモログ3(MSH3)、メタドヘリン(MTDH)、v−mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(MYC)、B細胞カッパ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサー核因子1(NFKB1)、神経芽腫RASウイルス(v−ras)癌遺伝子ホモログ(NRAS)、オピオイド結合タンパク質/細胞接着分子様(OPCML)、血小板由来成長因子レセプター、アルファポリペプチド(PDGFRA)、ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ、NIMA相互作用1(PIN1)、プロスタグランジンエンドペルオキサイドシンターゼ2(PTGS2)、PYD・CARDドメイン含有(PYCARD)、ras関連C3ボツリヌス毒素基質1(RAC1)、ras関連(RalGDS/AF−6)ドメインファミリーメンバー1(RASSF1)、リーリン(RELN)、rasホモログファミリーメンバーA(RHOA)、分泌フリズルド関連タンパク質2(SFRP2)、SMADファミリーメンバー7(SMAD7)、サイトカインシグナリングサプレッサー1(SOCS1)、シグナルトランスデューサ・転写アクチベータ3(STAT3)、転写因子4(TCF4)、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGFA)、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGFB1)、toll様レセプター4(TLR4)、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B)、血管内皮増殖因子A(VEGFA)、ウィルムス腫瘍1(WT1)、アポトーシスX連鎖阻害剤(XIAP)、およびYes関連タンパク質1(YAP1)が挙げられる。
一実施形態では、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することにより白色白血球数を増加させる方法が提供される。また、本発明のC/EBPα−saRNAを患者に投与することにより、敗血症または慢性炎症疾患(たとえば、肝炎および肝硬変)を有する患者および免疫無防備患者(たとえば、化学療法を受けている患者)の白血球減少を治療する方法も提供される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することにより、白血病およびリンパ腫を含めてプレB細胞およびB細胞悪性腫瘍を治療する方法も提供される。また、必要とする患者に本発明のC/EBPα−saRNAを投与することにより白血球、造血幹細胞、または間葉幹細胞を動員する方法も提供される。一実施形態では、C/EBPα−saRNAで治療された患者の白色白血球数は、C/EBPα−saRNA治療なしと比較して少なくとも50%、75%、100%、より好ましくは少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5倍、より好ましくは少なくとも6、7、8、9、10倍だけ増加する。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、肝細胞癌の治療でマイクロRNA(miRNAまたはmiR)をレギュレートするために使用される。マイクロRNAは、遺伝子発現をレギュレートする低分子非コードRNAである。それらは重要な生理学的機能に関与し、発癌のそれぞれ工程に関与しうる。それらは典型的には21ヌクレオチドを有し、前記mRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)に結合することによりmRNA翻訳の遮断またはmRNA分解の誘導を介して転写後レベルで遺伝子発現をレギュレートする。
腫瘍では、miRNA発現のレギュレーションは腫瘍発生に影響を及ぼす。HCCでは、他の癌の場合と同様に、miRNAは、細胞の成長および増殖、細胞の代謝および分化、アポトーシス、血管新生、転移、および最終的には予後に影響を及ぼす癌遺伝子または腫瘍サプレッサー遺伝子のいずれかとして機能する。[リン(Lin)ら著、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)、2008年、第375巻、p.315〜320、クタイ(Kutay)ら著、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J.Cell.Biochem.)、2006年、第99巻、p.671〜678、メング(Meng)ら著、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、2007年、第133巻、第2号、p.647〜658(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。本発明のC/EBPα−saRNAは、C/EBPα遺伝子の発現および/または機能をモジュレートすると共にHCC細胞でmiRNAレベルをレギュレートする。本発明のC/EBPα−saRNAによりレギュレートしうるmiRNAの例としては、限定されるものではないがhsa−let−7a−5p、hsa−miR−133b、hsa−miR−122−5p、hsa−miR−335−5p、hsa−miR−196a−5p、hsa−miR−142−5p、hsa−miR−96−5p、hsa−miR−184、hsa−miR−214−3p、hsa−miR−15a−5p、hsa−let−7b−5p、hsa−miR−205−5p、hsa−miR−181a−5p、hsa−miR−140−5p、hsa−miR−146b−5p、hsa−miR−34c−5p、hsa−miR−134、hsa−let−7g−5p、hsa−let−7c、hsa−miR−218−5p、hsa−miR−206、hsa−miR−124−3p、hsa−miR−100−5p、hsa−miR−10b−5p、hsa−miR−155−5p、hsa−miR−1、hsa−miR−150−5p、hsa−let−7i−5p、hsa−miR−27b−3p、hsa−miR−127−5p、hsa−miR−191−5p、hsa−let−7f−5p、hsa−miR−10a−5p、hsa−miR−15b−5p、hsa−miR−16−5p、hsa−miR−34a−5p、hsa−miR−144−3p、hsa−miR−128、hsa−miR−215、hsa−miR−193a−5p、hsa−miR−23b−3p、hsa−miR−203a、hsa−miR−30c−5p、hsa−let−7e−5p、hsa−miR−146a−5p、hsa−let−7d−5p、hsa−miR−9−5p、hsa−miR−181b−5p、hsa−miR−181c−5p、hsa−miR−20b−5p、hsa−miR−125a−5p、hsa−miR−148b−3p、hsa−miR−92a−3p、hsa−miR−378a−3p、hsa−miR−130a−3p、hsa−miR−20a−5p、hsa−miR−132−3p、hsa−miR−193b−3p、hsa−miR−183−5p、hsa−miR−148a−3p、hsa−miR−138−5p、hsa−miR−373−3p、hsa−miR−29b−3p、hsa−miR−135b−5p、hsa−miR−21−5p、hsa−miR−181d、hsa−miR−301a−3p、hsa−miR−200c−3p、hsa−miR−7−5p、hsa−miR−29a−3p、hsa−miR−210、hsa−miR−17−5p、hsa−miR−98−5p、hsa−miR−25−3p、hsa−miR−143−3p、hsa−miR−19a−3p、hsa−miR−18a−5p、hsa−miR−125b−5p、hsa−miR−126−3p、hsa−miR−27a−3p、hsa−miR−372、hsa−miR−149−5p、およびhsa−miR−32−5pが挙げられる。
限定されるものではないが一例では、miRNAは発癌性miRNAであり、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下ではC/EBPα−saRNAの不在下と比較して少なくとも0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1、1.5、2、2.5、および3だけダウンレギュレートされる。限定されるものではないが他の例として、miRNAは腫瘍抑制miRNAであり、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下ではC/EBPα−saRNAの不在下と比較して少なくとも0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1、より好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、さらにより好ましくは少なくとも60(70、80、90、100だけアップレギュレートされる。
幹細胞レギュレーション
本発明のいくつかの実施形態では、C/EBPα−saRNAは、自己再生多能性因子をレギュレートして幹細胞分化に影響を及ぼすために使用される。さまざま臨床状況、治療状況、および研究状況において、目的のタンパク質を発現するためにまたは細胞を異なる細胞表現型に変化させるために細胞の表現型の変化が使用されてきた。細胞の表現型の変化は、現在、DNAまたはウイルスベクターからタンパク質を発現することにより達成される。現在、パーキンソン病および糖尿病などの種々の疾患ならびに脊髄傷害などの傷害に対する治療の選択肢としてヒト胚性幹細胞の使用を評価するために行われている研究が存在する。胚性幹細胞は、任意の分化細胞型を生成するために多能性を維持しつつ無期限に成長する能力を有する。
多能性因子、細胞表現型変化因子、分化転換因子、分化因子、脱分化因子などの多くの因子は、細胞表現型を変化させるために利用され、個別再生医学、細胞療法、および他の疾患の療法の分野に有用である。たとえば、幹細胞の自己再生性および多能性は、OCT4、SOX2、NANOG、およびKLF遺伝子を含めて中心的調節回路の転写因子およびクロマチンリモデリング酵素などの一連の遺伝子によりレギュレートされる[ブーリロット(Bourillot)ら著、BMCバイオロジー(BMC Biology)、2010年、第8巻、p.125(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。この自己調節ネットワーク調節回路はまた、下流の遺伝子にも影響を及ぼす。オリゴヌクレオチドは、中心的調節回路をレギュレートするために利用されてきた。スー(Xu)らは、miRNA−145がOCT4、SOX2、およびKLF4の3’UTRを標的とすることを明らかにした。miRNA−145を低減すると分化が損なわれ、OCT4、SOX2、およびKLF4が上昇する。[スー(Xu)ら著、セル(Cell)、2009年、第137巻、p.1〜12(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)]。
一実施形態では、本発明のC/EBPα−saRNAは、自己再生多能性遺伝子をレギュレートするために使用される。多能性遺伝子の例としては、限定されるものではないがSOX2、OCT4、cKit、KLF4、KLF2、KLF5、NANOG、CDX2、およびSALL4が挙げられる。一実施形態では、多能性遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、C/EBPα−saRNAの不在下と比較して少なくとも20%、30%、または40%、好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、または75%、さらにより好ましくは少なくとも80、90、または95%だけ低減する。他の実施形態では、多能性遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、C/EBPα−saRNAの不在下と比較して少なくとも20、30、40%、より好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、さらにより好ましくは少なくとも80%だけ増加する。好ましい実施形態では、多能性遺伝子の発現は、本発明のC/EBPα−saRNAの存在下では、C/EBPα−saRNAの不在下での発現と比較して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、さらにより好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する。
一実施形態では、C/EBPα−saRNAは、細胞の上皮間葉転換(EMT:epithelial−mesenchymal transition)をレギュレートするために使用される。いくつかの腫瘍は、癌細胞の異なる系列への分化を介して自己再生および腫瘍開始能の保持が可能な癌幹細胞または癌幹様細胞を含有する。EMTは、癌幹様細胞、腫瘍の侵攻性および転移、ならびに腫瘍再発に関連付けられることが実証されている。[コング(Kong)ら著、キャンサーズ(Cancers)、2011年、第3巻、第1号、p.716〜729]。miR−200およびmiR−134などのmiRNA、線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などの成長因子、さらにはNotch−1およびWntシグナリング経路などの因子を含めて、EMTをレギュレートする多くの因子が存在する。限定されるものではないが一例では、C/EBPα−saRNAは、miR−134の発現をモジュレートすることによりEMTをレギュレートする。限定されるものではないが他の例では、C/EBPα−saRNAは、RUNX3、CTNB1、HGF、SMAD7、またはTGFB1遺伝子の発現をモジュレートすることによりEMTをレギュレートする。
III.キットおよびデバイス
キット
本発明は、本発明に係る方法を便宜的および/または効果的に行うためのさまざまなキットを提供する。典型的には、キットは、使用者が対象の複数の治療を行えるようにおよび/または複数の実験を行えるように、十分な量および/または数の成分を含むであろう。
一実施形態では、本明細書に記載のsaRNAを含むキットは、増殖細胞と共に使用して効力を示しうる。
一実施形態では、本発明は、本発明のC/EBPα−saRNA、またはC/EBPα−saRNA、他の遺伝子をモジュレートするsaRNA、siRNA、もしくはmiRNAの組合せを含む、in vitroまたはin vivoで遺伝子の発現をレギュレートするためのキットを提供する。キットは、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤をさらに含みうる。送達剤は、生理食塩水、緩衝溶液、リピドイド、デンドリマー、または本明細書に開示される任意の送達剤を含みうる。遺伝子の例としては、限定されるものではないがC/EBPα、C/EBPファミリーの他のメンバー、アルブミン遺伝子、アルファフェクトプロテイン遺伝子、肝特異的因子遺伝子、成長因子、核因子遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、多能性因子遺伝子が挙げられる。
限定されるものではないが一例では、緩衝溶液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸塩、および/またはEDTAを含みうる。限定されるものではないが他の例では、緩衝溶液は、限定されるものではないが生理食塩水、2mMカルシウムを含む生理食塩水、5%スクロース、2mMカルシウムを含む5%スクロース、5%マンニトール、2mMカルシウムを含む5%マンニトール、乳酸リンゲル液、塩化ナトリウム、2mMカルシウムとマンノースとを含む塩化ナトリウム(米国特許出願公開第2012/0258046号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)を含みうる。限定されるものではないがさらに他の例では、緩衝溶液は沈殿させうるかまたは凍結乾燥させうる。各成分の量は、一貫して再現性のあるより高濃度の生理食塩水または単純な緩衝配合物が得られるように変化させうる。成分はまた、ある期間にわたりおよび/またはさまざまな条件下で緩衝溶液中のsaRNAの安定性を増加させるために変化させうる。
他の実施形態では、本発明は、細胞に導入したときに細胞増殖を阻害するのに有効な量で提供される本発明のC/EBPα−saRNAと、任意選択的に標的細胞の増殖をさらにレギュレートするためのsiRNAおよびmiRNAと、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤とを含む、細胞増殖をレギュレートするためのキットを提供する。
他の実施形態では、本発明は、本発明のsaRNA分子と、任意選択的にLDL低減薬剤と、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤とを含む、細胞のLDLレベルを低減するためのキットを提供する。
他の実施形態では、本発明は、本発明のC/EBPα−saRNAと、任意選択的にsiRNA、eRNA、およびlncRNAと、パッケージおよび説明書ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤とを含む、細胞のmiRNA発現レベルをレギュレートするためのキットを提供する。
デバイス
本発明は、本発明のC/EBPα−saRNAを組み込みうるデバイスを提供する。このデバイスは、必要とする対象、たとえばヒト患者に即時送達するために利用可能な安定な製剤を含有する。限定されるものではないがかかる対象の例としては、過増殖障害、たとえば、癌、腫瘍、または肝硬変、および代謝障害、たとえば、NAFLD、肥満、高LDLコレステロール、またはII型糖尿病を有する対象が挙げられる。
限定されるものではないがデバイスの例としては、ポンプ、カテーテル、針、経真皮パッチ、加圧経鼻送達デバイス、イオン泳動デバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。デバイスは、単回投与、多数回投与、または分割投与のレジメントに従って本発明のC/EBPα−saRNAを送達するために利用しうる。デバイスは、生体組織を横切って、真皮内に、皮下に、または筋肉内に本発明のC/EBPα−saRNAを送達するために利用しうる。オリゴヌクレオチドの送達に好適なデバイスのより多くの例は、2012年12月14日出願の国際公開第2013/090648号パンフレット(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語および語句の意味を以下に提供する。本明細書の他の部分の用語の使用と本節に提供されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合、この節の定義を優先するものとする。
約:本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、挙げられた値の+/−10%を意味する。
組み合わせて投与される:本明細書で用いられる場合、「組み合わせて投与される」または「組合せ投与」という用語は、2種以上の作用剤、たとえばsaRNAを対象に同時にまたは患者に対する各作用剤の作用がオーバーラップしうるインターバル内で投与することを意味する。いくつかの実施形態では、それらは互いに約60、30、15、10、5、または1分以内に投与される。いくつかの実施形態では、作用剤の投与は、組合せ(たとえば、相乗)効果が達成されるように互いに十分接近した時間で行われる。
アミノ酸:本明細書で用いられる場合、1つまたは複数の「アミノ酸」という用語は、すべての天然に存在するL−アルファ−アミノ酸を意味する。アミノ酸は、次のように一文字または三文字の表記により同定される。アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、トレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リシン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)。ただし、最初にアミノ酸、続いてカッコ内にそれぞれ三文字コードおよび一文字コードが列挙される。
動物:本明細書で用いられる場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、「動物」は、任意の発生段階のヒトを意味する。いくつかの実施形態では、「動物」は、任意の発生段階の非ヒト動物を意味する。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(たとえば、齧歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長動物、またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物、トリ、爬虫動物、両生動物、サカナ、および虫を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子工学操作動物、またはクローンである。
およそ:本明細書で用いられる場合、「およそ」または「約」という用語は、関心対象の1つ以上の値に適用される場合、明記された参照値に類似した値を意味する。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に明記されていない限りまたは特に文脈から自明でない限り、明記された参照値のいずれの方向にも(それよりも大きい方向にも小さい方向にも)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれよりも少ない範囲内に入る値の範囲を意味する(かかる数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
会合:本明細書で用いられる場合、「会合」、「コンジュゲート」、「結合」、「装着」、および「テザー連結」という用語は、2つ以上の部分に対して用いられる場合、直接にまたはリンク剤として機能する1つ以上の追加の部分を介して、互いに物理的に会合または接続されて、構造が用いられる条件下で、たとえば、生理学的条件下で、これらの部分が、物理的に会合された状態を維持するように、十分に安定な構造を形成することを意味する。「会合」は、厳密に直接の共有化学結合を介する必要はない。また、それは、イオン結合、水素結合、または「会合」要素が物理的会合を維持するように十分に安定なハイブリダイゼーションに基づく結合をも示唆しうる。
二機能性:本明細書で用いられる場合、「二機能性」という用語は、少なくとも2つの機能が可能であるまたはそれを維持する任意の物質、分子、または部分を意味する。機能は、同一のアウトカムまたは異なるアウトカムに影響しうる。機能を発揮する構造は、同一であっても異なっていてもよい。
生体適合性:本明細書で用いられる場合、「生体適合性」という用語は、生細胞、組織、傷害のリスクをほとんどまたはまったく示さない器官もしくは系、毒性、または免疫系による拒絶に適合しうることを意味する。
生分解性:本明細書で用いられる場合、「生分解性」という用語は、生物の作用により無害な産物に分解可能であることを意味する。
生物学的活性:本明細書で用いられる場合、「生物学的活性」という表現は、生体系および/または生物で活性を有する任意の物質の特性を意味する。たとえば、生物に投与されたとき、その生物に対して生物学的作用を有する物質は、生物学的に活性であると考えられる。特定の実施形態では、saRNAの一部であっても、生物学的に活性であれば、または生物学的に関連があると見なされる活性を模倣するのであれば、本発明のsaRNAは、生物学的に活性であると考えうる。
癌:本明細書で用いられる場合、個体における「癌」という用語は、癌を引き起こす細胞に典型的な特性、たとえば、無制御な増殖、不死、転移能、速い成長および増殖の速度、ならびに特徴的なモルフォロジー特性を有する細胞の存在を意味する。多くの場合、癌細胞は、腫瘍の形態であろうが、かかる細胞は、個体内に単独で存在しうるか、または白血病細胞などの独立細胞として血流中を循環しうる。
細胞成長:本明細書で用いられる場合、「細胞成長」という用語は、細胞複製(すなわち増殖)により生じる細胞数の増大に主に関連付けられ、その速度は細胞死(たとえば、アポトーシスまたは壊死による)の速度よりも大きく、細胞集団のサイズの増加をもたらすが、特定の状況下では、その成長のごく一部は、個別細胞の細胞サイズまたは細胞質体積の増加にも起因する。したがって、細胞成長を阻害する作用剤は、増殖の阻害もしくは細胞死の促進のいずれかまたはその両方によりこれらの2つの対立するプロセスの平衡を変化させるように阻害を行いうる。
細胞型:本明細書で用いられる場合、「細胞型」という用語は、所与の起源(たとえば、組織、器官)の細胞、または所与の分化状態の細胞、または所与の病理もしくは遺伝子構成に関連付けられる細胞を意味する。
染色体:本明細書で用いられる場合、「染色体」という用語は、細胞に見いだされるDNAおよびタンパク質の組織化構造を意味する。
相補的:本明細書で用いられる場合、核酸に関する「相補的」という用語は、ヌクレオチド間または核酸間のハイブリダイゼーションまたは塩基対合を意味する。たとえば、二本鎖DNA分子の2つの鎖間またはオリゴヌクレオチドプローブと標的との間などは相補的である。
病態:本明細書で用いられる場合、「病態」という用語は、任意の細胞、器官、器官系、または生物の状態を意味する。病態は、疾患状態または単にエンティティーの生理学的提示もしくは状況を反映しうる。病態は、疾患の巨視的提示などの表現型病態または病態に関連付けられる根底にある遺伝子もしくはタンパク質の発現プロファイルなどの遺伝子型病態として特徴付けうる。病態は良性または悪性でありうる。
制御放出:本明細書で用いられる場合、「制御放出」という用語は、治療アウトカムをもたらす特定の放出パターンに適合する医薬組成物または化合物の放出プロファイルを意味する。
細胞静止:本明細書で用いられる場合、「細胞静止」とは、細胞(たとえば、哺乳動物細胞(たとえば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、菌類、原生動物、寄生生物、プリオン、またはそれらの組合せの成長、分裂、または増殖の阻害、低減、抑制を意味する。
細胞傷害性:本明細書で用いられる場合、「細胞傷害性」とは、細胞(たとえば、哺乳動物細胞(たとえば、ヒト細胞))、細菌、ウイルス、菌類、原生動物、寄生生物、プリオン、またはそれらの組合せを死滅させることまたはそれらに有害作用、毒性作用、もしくは致命的作用を引き起こすことを意味する。
送達:本明細書で用いられる場合、「送達」とは、化合物、物質、要素、部分、カーゴ、またはペイロードを送達する行為または方式を意味する。
送達剤:本明細書で用いられる場合、「送達剤」とは、標的細胞への本発明のsaRNAのin vivo送達を少なくとも部分的に促進する任意の物質を意味する。
不安定化:本明細書で用いられる場合、「不安定」、「不安定化する」、または「不安定化領域」という用語は、同一の領域または分子の初期型、野生型、または天然型よりも安定でない領域または分子を意味する。
検出可能な標識:本明細書で用いられる場合、「検出可能な標識」とは、ラジオグラフィー、蛍光、化学発光、酵素活性、吸光度などをはじめとする当技術分野で公知の方法により容易に検出される、他のエンティティーへの装着、組込み、または会合が行われる1つ以上のマーカ、シグナル、または部分を意味する。検出可能な標識としては、放射性同位体、発蛍光団、発色団、酵素、染料、金属イオン、リガンド(たとえば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびハプテン)、量子ドットなどが挙げられる。検出可能な標識は、ペプチド、タンパク質、またはポリヌクレオチド、たとえば、本明細書に開示されるsaRNAの任意の位置に位置しうる。それらは、場合により、N末端もしくはC末端または5’末端もしくは3’末端に位置するアミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはポリヌクレオチド中に存在しうる。
カプセル化:本明細書で用いられる場合、「カプセル化」というという用語は、密封、包囲、または収容を意味する。
工学操作:本明細書で用いられる場合、本発明の実施形態は、構造的か化学的かにかかわらず、出発点、野生型、または天然型の分子と異なる特徴または性質を有するように設計される場合、「工学操作」される。
均等な対象:本明細書で用いられる場合、「均等な対象」は、たとえば、類似の年齢、性別、および健康、たとえば、肝臓の健康もしくは癌の病期の対象、または本発明に係る治療を行う前の同一の対象でありうる。均等な対象は、本発明に係るsaRNAの治療を受けない点で「未治療」である。しかしながら、本発明のsaRNAで治療される対象が同一のまたは均等な従来の抗癌治療を受けるのであれば、従来の抗癌治療を受けてもよい。
エキソソーム:本明細書で用いられる場合、「エキソソーム」とは哺乳動物細胞により分泌されるベシクルである。
発現:本明細書で用いられる場合、核酸配列の「発現」とは、次のイベント、すなわち、(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(たとえば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(たとえば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる)、(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳、ならびに(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾の1つ以上を意味する。
特徴:本明細書で用いられる場合、「特徴」とは、特性、性質、または識別エレメントを意味する。
製剤:本明細書で用いられる場合、「製剤」は、少なくとも本発明のsaRNAと送達剤とを含む。
断片:「断片」とは、本明細書で用いられる場合、一部分を意味する。たとえば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化することにより得られるポリペプチドを含みうる。
機能性:本明細書で用いられる場合、「機能性」生物学的分子とは、特徴付けられる性質および/または活性を呈する形態の生物学的分子のことである。
遺伝子:本明細書で用いられる場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体の産生に必要な制御配列とほとんどの場合にコード配列とを含む核酸配列を意味する。しかしながら、遺伝子は翻訳されなくてもよく、その代わりに調節または構造RNA分子をコードしうる。
遺伝子は、植物、菌類、動物、細菌ゲノムもしくはエピソーム、真核、核、もしくはプラスミドのDNA、cDNA、ウイルスDNA、または化学合成DNAを含めて、全体または一部が当技術分野で公知の任意の起源に由来しうる。遺伝子は、発現産物の生物学的活性もしくは化学構造、発現の速度、または発現制御の方式に影響を及ぼしうる1つ以上の修飾をコード領域または非翻訳領域のいずれかに含有しうる。かかる修飾としては、1つ以上のヌクレオチドの突然変異、挿入、欠失、および置換が挙げられるが、これらに限定されるものではない。遺伝子は非中断コード配列を構成しうるか、または適切なスプライス部位により結合された1つ以上のイントロンを含みうる。
遺伝子発現:本明細書で用いられる場合、「遺伝子発現」という用語は、核酸配列がうまく転写されて、ほとんどの場合、翻訳されてタンパク質またはペプチドを産生するプロセスを意味する。明確さを期して、「遺伝子発現」の測定が参照される場合、測定は転写の核酸産物、たとえばRNAもしくはmRNAまたは翻訳のアミノ酸産物、たとえばポリペプチドもしくはペプチドの測定でありうることを意味すると理解すべきである。RNA、mRNA、ポリペプチド、およびペプチドの量またはレベルを測定する方法は、当技術分野で周知である。
ゲノム:「ゲノム」という用語は、核DNA成分、染色体または染色体外のDNA、さらには細胞質内ドメイン(たとえば、ミトコンドリアDNA)を含めて、生物の全DNA相補体を含むことが意図される。
相同性:本明細書で用いられる場合、「相同性」という用語は、高分子間、たとえば、核酸分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。いくつかの実施形態では、高分子は、配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一または類似である場合、互いに「相同」であると見なされる。「相同」という用語は、必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列)間の比較を意味する。本発明によれば、2つのポリヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つのストレッチに関して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、さらには99%であれば、相同であると見なされる。いくつかの実施形態では、相同ポリヌクレオチド配列は、ユニークに特定された少なくとも4〜5アミノ酸のストレッチをコードする能力により特徴付けられる。60ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチド配列では、相同性は、ユニークに特定された少なくとも4〜5アミノ酸のストレッチをコードする能力により決定される。本発明によれば、2つのタンパク質配列は、タンパク質が少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つのストレッチに関して少なくとも約50%、60%、70%、80%、または90%同一であれば、相同であると見なされる。
「過増殖細胞」という用語は、均等な健常細胞(「対照」と呼びうる)の増殖速度と比較して異常に高い速度で増殖する任意の細胞を意味しうる。「均等な健常」細胞とは、細胞の正常な健常カウンターパートである。したがって、それは、同一のタイプの細胞、たとえば、コンパレータ細胞と同一の機能を行う、同一の器官の細胞である。たとえば、過増殖肝細胞の増殖は健常肝細胞を基準にして評価すべきであり、一方、過増殖前立腺細胞の増殖は健常前立腺細胞を基準にして評価すべきである。
増殖の「異常に高い」速度とは、過増殖細胞の増殖速度が均等な健常(非過増殖)細胞の増殖速度と比較して少なくとも20、30、40%、または少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、または少なくとも80%だけ増加することを意味する。増殖の「異常に高い」速度とはまた、均等な健常細胞の増殖速度と比較して少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、または少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍、または少なくとも60、70、80、90、100倍だけ増加する速度を意味する。
本明細書で用いられる「過増殖細胞」という用語は、ほとんどの細胞と比較してより高速で天然で増殖する細胞を意味するものではなく、それは健常細胞である。生涯を通じて定常的に分裂することが知られる細胞の例は、皮膚細胞、胃腸管細胞、血液細胞、および骨髄細胞である。しかしながら、かかる細胞がそれらの健常カウンターパートよりも高速で増殖する場合、それらは過増殖である。
過増殖障害:本明細書で用いられる場合、「過増殖障害」とは、以上に定義される過増殖細胞を含む任意の障害でありうる。過増殖障害の例としては、新生物障害、たとえば癌、乾癬性関節炎、関節リウマチ、胃過増殖障害、たとえば炎症性腸疾患、皮膚障害、たとえば乾癬、ライター症候群、毛孔性紅色粃糠疹、および角化障害の過増殖異型障害が挙げられる。
過増殖細胞をいかに同定するかは当業者の熟知するところである。動物内の過増殖細胞の存在は、X線、MRI、CTスキャンなどのスキャンを用いて同定可能でありうる。MTT、XTT、MTS、WST−1アッセイなどの細胞増殖アッセイを用いてin vitroでサンプルを培養することによっても過増殖細胞を同定しうるか、または細胞増殖をアッセイしうる。in vitro細胞増殖はまた、フローサイトメトリーを用いて決定可能である。
同一性:本明細書で用いられる場合、「同一性」という用語は、高分子間、たとえば、オリゴヌクレオチド分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。たとえば、2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、最適比較目的で2つの配列をアライメントすることにより、行うことが可能である(たとえば、最適アライメントになるように第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することが可能であり、比較目的では異なる配列を無視することが可能である)。特定の実施形態では、比較目的でアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同一のヌクレオチドにより占有される場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列が最適アライメントになるように導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の関数である。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成可能である。たとえば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、レスク,A.M.(Lesk,A.M.)編、計算分子生物学(Computational Molecular Biology)、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、1988年、スミス,D.W.(Smith,D.W.)編、バイオコンピューティング:インフォマティクスとゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome
Projects)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク、1993年、フォン・ヘインジ,G(von Heinje,G)著、分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、アカデミック・プレス(Academic Press)、1987年、グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)およびグリフィン,H.G.(Griffin,H.G.)編、配列データのコンピュータ解析(Computer
Analysis of Sequence Data)、第I部、フマナ・プレス(Humana Press)、ニュージャージ、1994年、ならびにグリプスコウ,M.(Gribskov,M.)およびデベロー,J.(Devereux,J.)編、配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Mストックトン・プレス(M Stockton Press)、ニューヨーク、1991年(それらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような方法を用いて決定可能である。たとえば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているマイヤー(Meyers)およびミラー(Miller)のアルゴリズム(生物科学におけるコンピュータ利用(CABIOS)、1989年、第4巻、p.11〜17)により、決定可能である。2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、他の選択肢として、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムにより、決定可能である。配列間の同一性パーセントを決定するのに一般に利用される方法は、カリロ,H.(Carillo,H.)およびリップマン,D.(Lipman,D.)著、SIAMジャーナル・オブ・アプライアンス・マセマティクス(SIAM J.Applied Math.)、1988年、第48巻、p.1073(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものを含むが、これに限定されるものではない。同一性を決定するための技術は、公的に入手可能なコンピュータプログラムの形態で体系化されている。2つの配列間の相同性を決定する例示的コンピュータソフトウェアは、デベロー,J.(Devereux,J.)ら著、「GCGプログラムパッケージ(GCG program package)」、ニュクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)、1984年、第12巻、第1号、p.387、アルツシュール,S.F.(Altschul,S.F.)ら著、「BLASTP、BLASTN、およびFASTA」、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Molec.Biol.)、1990年、第215巻、p.403を含むが、これらに限定されるものではない。
遺伝子発現の阻害:本明細書で用いられる場合、「遺伝子発現の阻害」という表現は、遺伝子の発現産物の量の低減を引き起こすことを意味する。発現産物は、遺伝子から転写されるRNA(たとえば、mRNA)または遺伝子から転写されるmRNAから翻訳されるポリペプチドでありうる。典型的には、mRNAのレベルの低減は、それから翻訳されるポリペプチドのレベルの低減をもたらす。発現のレベルは、mRNAまたはタンパク質を測定するための標準的技術を用いて決定可能である。
In vitro:本明細書で用いられる場合、「in vitro」という用語は、生物(たとえば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工環境下、たとえば、試験管または反応容器、細胞培養物、ペトリ皿などで起こるイベントを意味する。
In vivo:本明細書で用いられる場合、「in vivo」という用語は、生物(たとえば、動物、植物、もしくは微生物、またはそれらの細胞)内に起こるイベントを意味する。
単離された:本明細書で用いられる場合、「単離された」という用語は、一体化された成分(自然環境または実験現場のいずれであるかにかかわらず)の少なくとも一部から分離された物質または要素を意味する。単離された物質は、一体化されていた物質に対してさまざまなレベルの純度を有しうる。単離された物質および/または要素は、それが最初に会合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはより多くから分離されうる。いくつかの実施形態では、単離された作用剤は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超の純度である。本明細書で用いられる場合、物質は、それが他の成分を実質的に含まないのであれば、「純粋」である。実質的に単離された:「実質的に単離された」とは、生成または検出された環境から化合物が実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、たとえば、本開示に係る化合物が富化された組成物を含みうる。実質的な分離は、重量基準で、本開示に係る化合物またはその塩の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%を含有する組成物を含みうる。化合物およびその塩を単離する方法は、当技術分野で慣用されているものである。
標識:「標識」という用語は、物質、化合物、または対象物を検出できるように対象物に組み込まれる物質または化合物を意味する。
リンカー:本明細書で用いられる場合、リンカーとは原子団(たとえば、10〜1,000原子)を意味し、限定されるものではないが炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、イミンなどの原子または基で構成可能である。リンカーは、第1の末端を修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドの核酸塩基または糖部分に、かつ第2の末端を検出可能剤または治療剤などのペイロードに装着可能である。リンカーは、核酸配列中への組込みを妨害しない十分な長さでありうる。リンカーは、本明細書に記載されるように、saRNAコンジュゲートを形成したりさらにはペイロードを投与したりするなど、任意の有用な目的に使用可能である。リンカーに組込み可能な化学基の例としては、限定されるものではないがアルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、またはヘテロシクリルが挙げられ、それらは、それぞれ本明細書に記載されるように任意選択的に置換可能である。リンカーの例としては、限定されるものではないが不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(たとえば、エチレンまたはプロピレングリコールモノマー単位、たとえば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、またはテトラエチレングリコール)、およびデキストランポリマー、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。他の例は、たとえばジスルフィド結合(−S−S−)またはアゾ結合(−N=N−)などの切断可能な部分をリンカー中に含んで還元剤または光分解を用いて切断可能であるが、これらに限定されるものではない。限定されるものではないが選択的に切断可能な結合の例としては、たとえばトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、もしくは他の還元剤および/または光分解を用いて切断可能なアミド結合、さらにはたとえば酸加水分解もしくは塩基加水分解により切断可能なエステル結合が挙げられる。
転移:本明細書で用いられる場合、「転移」という用語は、原発腫瘍として最初に生じた場所から体内の離れた位置に癌が広がるプロセスを意味する。転移はまた、原発腫瘍の広がりから得られる癌も意味する。たとえば、ある乳癌罹患者は、自身のリンパ系、肝臓、骨、または肺に転移を発症しうる。
修飾:本明細書で用いられる場合、「修飾」とは、本発明に係る分子の変化した状態または構造を意味する。分子は、化学的、構造的、および機能的なものを含めて、多くの方法で修飾されうる。一実施形態では、本発明のsaRNA分子は、非天然のヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの導入により修飾される。
天然に存在する:本明細書で用いられる場合、「天然に存在する」とは、人為的な支援を受けることなく天然に存在することを意味する。
核酸:本明細書で用いられる「核酸」という用語は、1つ以上のヌクレオチド、すなわち、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはその両方で構成された分子を意味する。この用語は、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドのモノマーおよびポリマーを含み、ポリマーの場合、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドは、5’→3’結合を介して結合一体化される。リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドのポリマーは一本鎖または二本鎖でありうる。しかしながら、結合は当技術分野で公知の結合のいずれかを含みうる。たとえば、核酸は5’→3’結合を含む。ヌクレオチドは天然に存在しうるか、または天然に存在する塩基対との塩基対関係を形成可能な合成により生成されたアナログでありうる。塩基対合関係を形成可能な天然に存在しない塩基の例は、限定されるものではないがアザおよびデアザピリミジンアナログ、アザおよびデアザプリンアナログ、ならびにピリミジン環の炭素原子および窒素原子の1つ以上がヘテロ原子、たとえば、酸素、硫黄、セレン、リンなどにより置換された他のヘテロ環塩基アナログを含みうる。
患者:本明細書で用いられる場合、「患者」とは、治療を求めているもしくはそれが必要な状態にあると思われる、治療を必要とする、治療を受けている、または治療を受けるであろう対象、あるいは特定の疾患もしくは病態に対して訓練された専門家によるケアを受けている対象を意味する。
ペプチド:本明細書で用いられる場合、「ペプチド」は、50アミノ酸長以下、たとえば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長である。
薬学的に許容可能:「薬学的に許容可能」という表現は、本明細書では、妥当な便益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題、または合併症を伴うことなく、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または製剤を意味する。
薬学的に許容可能な賦形剤:本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」という語句は、本明細書に記載の化合物以外で患者において実質的に非毒性かつ非炎症性の性質を有する任意の成分を意味する(たとえば、活性化合物の懸濁または溶解が可能な媒体)。賦形剤としては、たとえば、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、風味剤、香気剤、滑剤(流動促進剤)、滑沢剤、保存剤、プリントインク、収着剤、懸濁化剤または分散剤、甘味剤、および水和水が挙げられうる。例示的な賦形剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(第2)、カルシウムステアレート、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、マグネシウムステアレート、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、α化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クエン酸ナトリウム、ナトリウムデンプングリコレート、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
薬学的に許容可能な塩:本開示はまた、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩を包含する。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容可能な塩」とは、既存の酸部分または塩基部分をその塩形に変換することにより(たとえば、遊離塩基基と好適な有機酸とを反応させることにより)親化合物が修飾された開示化合物の誘導体を意味する。薬学的に許容可能な塩の例としては、アミンなどの塩基残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、さらには非毒性のアンモニウム、第4級アンモニウム、およびアミンカチオン、たとえば、限定されるものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含む。本開示に係る薬学的に許容可能な塩は、親化合物の従来型の非毒性塩、たとえば、非毒性の無機酸または有機酸から生成されたものを含む。本開示に係る薬学的に許容可能な塩は、塩基部分または酸部分を含有する親化合物から従来の化学的方法により合成可能である。一般的には、そのような塩は、水中もしくは有機溶媒中または両者の混合物中で、これらの化合物の遊離の酸形または塩基形と化学量論量の適切な塩基または酸とを反応させることにより、調製可能である。一般的には、エーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、「レミングトンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第17版、マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company)、ペンシルバニア州イーストン、1985年、p.1418、P.H.スタール(P.H.Stahl)およびC.G.ワーマス(C.G.Wermuth)編、「医薬塩:性質、選択、および使用(Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use)」、ワイリー−VCH(Wiley−VCH)、2008年、ならびにベルジェ(Berge)ら著、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(Journal of Pharmaceutical Science)、1977年、第66巻、p.1〜19(それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされる。
薬学的に許容可能な溶媒和物:「薬学的に許容可能な溶媒和物」という用語は、本明細書で用いられる場合、好適な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれた本発明の化合物を意味する。好適な溶媒は、投与される投与量で生理学的に耐容性である。たとえば、溶媒和物は、有機溶媒、水、またはそれらの混合物を含む溶液から結晶化、再結晶化、または沈殿により調製しうる。好適な溶媒の例は、エタノール、水(たとえば、一、二、および三水和物)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMEU)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、エチルアセテート、ベンジルアルコール、2−ピロリドン、ベンジルベンゾエートなどである。水が溶媒である場合、溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。
薬理学的効果:本明細書で用いられる場合、「薬理学的効果」とは、生物または系が外因性作用剤と接触した後またはそれに暴露された後に起こる生物または系において測定可能な生物学的現象のことである。薬理学的効果は、治療上有効なアウトカム、たとえば、1つ以上の症状の治療や改善、疾患、障害、病態、または感染の診断、予防、およびそれらの発症の遅延をもたらしうる。かかる生物学的現象の測定は、定量的、定性的、または他の生物学的現象に対して相対的でありうる。定量測定は統計的に有意でありうる。定性的測定は、程度または種類でありうると共に、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれを超えて異なりうる。それらは、存在するまたは不在である、より良好であるまたはより悪い、より多いまたはより少ないとして観測可能である。外因性作用剤とは、薬理学的効果を参照する場合、全体または一部が生物または系に対して外来性である作用剤のことである。たとえば、野生型バイオ分子への修飾は、構造的か化学的かにかかわらず、外因性作用剤を生じるであろう。同様に、生物または系では天然に見いだされない化合物、分子、または物質への野生型分子の組込みまたはそれらと野生型分子との組合せも外因性作用剤を生じるであろう。本発明のsaRNAは外因性作用剤を含む。薬理学的効果の例としては、限定されるものではないが細胞数の変化、たとえば、好中球、網状赤血球、顆粒球、赤血球(赤血球)、巨核球、血小板、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、または網状赤血球の増加または減少が挙げられる。薬理学的効果はまた、血液化学、pH、ヘモグロビン、ヘマトクリットの変化、酵素、たとえば限定されるものではないが肝酵素ASTおよびALTのレベルの変化、脂質プロファイル、電解質、代謝マーカ、ホルモン、または当業者に公知の他のマーカもしくはプロファイルの変化を含む。
物理化学的:本明細書で用いられる場合、「物理化学的」とは、物理的および/もしくは化学的な性質またはそれに関することを意味する。
予防:本明細書で用いられる場合、「予防」という用語は、感染、疾患、障害、および/もしくは病態の発生を部分的にもしくは完全に遅延すること、特定の感染、疾患、障害、および/もしくは病態の1つ以上の症状、特徴、もしくは臨床病変の発生を部分的にもしくは完全に遅延すること、特定の感染、疾患、障害、および/もしくは病態の1つ以上の症状、特徴、もしくは病変の発生を部分的にもしくは完全に遅延すること、感染、特定の疾患、障害、および/もしくは病態からの進行を部分的にもしくは完全に遅延すること、ならびに/または感染、疾患、障害、および/もしくは病態に関連付けられる病理発生のリスクを減少させることを意味する。
プロドラッグ:本開示はまた、本明細書に記載の化合物のプロドラッグを包含する。本明細書で用いられる場合、「プロドラッグ」とは、物質、分子、または要素が化学的または物理的な変化を受けたときに治療剤として作用すると見なされる形態をとる任意の物質、分子、または要素を意味する。プロドラッグは、共有結合されていても、何らかの方法で捕獲されていてもよく、哺乳動物対象への投与前、投与時、または投与後、活性薬剤部分を放出するかまたはそれに変換される。プロドラッグは、慣例的な操作によりまたはin vivoで修飾が切断されて親化合物になるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することにより、調製可能である。プロドラッグは、ヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基が、哺乳動物対象に投与されたときにそれぞれ遊離のヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基を生成するように切断される任意の基に結合されている化合物を含む。プロドラッグの調製および使用は、T.ヒグチ(T.Higuchi)およびV.ステラ(V.Stella)著、「新規な送達系としてのプロドラッグ(Pro−drugs as Novel Delivery Systems)」、A.C.S.シンポジウムシリーズ(A.C.S.Symposium Series)の第14巻、ならびにエドワードB.ロッシュ(Edward B.Roche)編、「薬剤設計における生体可逆性担体(Bioreversible Carriers in Drug Design)」、米国薬剤師協会(American Pharmaceutical Association)およびパーガモンプレス(Pergamon Press)、1987年(両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる)で考察されている。
予後予測:本明細書で用いられる場合、「予後予測」という用語は、特定の生物学的イベントが将来起こるであろうことまたは起こる可能性が非常に高いことの陳述または主張を意味する。
進行:本明細書で用いられる場合、「進行」または「癌の進行」という用語は、疾患もしくは病態のまたはそれらに向かう促進もしくは悪化を意味する。
増殖:本明細書で用いられる場合、「増殖」という用語は、成長、拡張、もしくは増大すること、または迅速に成長、拡張、もしくは増大を引き起こすことを意味する。「増殖」は、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖」とは、増殖性に対抗するまたは不適である性質を有することを意味する。
タンパク質:「タンパク質」とは、ペプチド結合により結合一体化されたアミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で用いられる場合、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを意味する。しかしながら、典型的には、タンパク質は少なくとも50アミノ酸長であろう。いくつかの場合、コードされたタンパク質は約50アミノ酸未満である。この場合、ポリペプチドはペプチドと称される。タンパク質が短いペプチドである場合、それは少なくとも約10アミノ酸残基長であろう。タンパク質は、天然に存在するもの、組み換えられたもの、もしくは合成されたもの、またはこれらの任意の組合せでありうる。タンパク質はまた、天然に存在するタンパク質またはペプチドの断片を含みうる。タンパク質は、単分子でありうるかまたは多分子複合体でありうる。タンパク質という用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学アナログであるアミノ酸ポリマーにもあてはまりうる。
タンパク質発現:「タンパク質発現」という用語は、アミノ酸配列またはタンパク質の検出可能なレベルが発現されるように核酸配列が翻訳を受けるプロセスを意味する。
精製された:本明細書で用いられる場合、「精製する」、「精製された」、「精製」とは、望ましくない成分、材料汚染、混合、または不完全から実質的に純粋または清澄にすることを意味する。
退縮:本明細書で用いられる場合、「退縮」または「退縮度」という用語は、表現型または遺伝子型のいずれかにおける癌の進行の逆転を意味する。癌の進行の遅延または停止は退縮であると見なしうる。
サンプル:本明細書で用いられる場合、「サンプル」または「生物学的サンプル」という用語は、その組織、細胞、または構成部分(たとえば、限定されるものではないが血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血、尿、膣液、および精液をはじめとする体液)の一部を意味する。サンプルは、たとえば、限定されるものではないが、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、外側皮膚切片、呼吸管、腸管、および泌尿生殖管、涙液、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官を含めて、全生物体、またはその組織、細胞、もしくは構成部分のサブセット、またはそれらの画分もしくは一部分から調製されるホモジネート、ライセート、または抽出物をさらに含みうる。サンプルは、タンパク質分子または核酸分子などの細胞成分を含有している可能性がある媒体、たとえば、栄養ブロスまたはゲルをさらに意味する。
シグナル配列:本明細書で用いられる場合、「シグナル配列」という語句は、タンパク質の輸送または局在化を指示可能な配列を意味する。
単回ユニット用量:本明細書で用いられる場合、「単回ユニット用量」とは、1回で/一時点/一経路/一接触点で、すなわち単回投与イベントで投与される任意の治療剤の用量のことである。
類似性:本明細書で用いられる場合、「類似性」という用語は、高分子間、たとえば、ポリヌクレオチド分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。互いの高分子の類似性パーセントの計算は、当技術分野で理解されている保存的置換を考慮して類似性パーセントを計算すること以外、同一性パーセントの計算と同一の方式で実施可能である。
分割用量:本明細書で用いられる場合、「分割用量」とは、単回ユニット用量または全一日用量を2つ以上に分割した用量のことである。
安定:本明細書で用いられる場合、「安定」とは、反応混合物から有用な純度への単離に耐えるのに十分なロバスト性のある、好ましくは、有効な治療剤への製剤化が可能である化合物を意味する。
安定化された:本明細書で用いられる場合、「安定化する」「安定化された」、「安定化領域」という用語は、安定にすることまたは安定になることを意味する。
対象:本明細書で用いられる場合、「対象」または「患者」という用語は、たとえば、実験、診断、予防、および/または治療の目的で、本発明に係る組成物が投与されうる任意の生物を意味する。典型的な対象としては、動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長動物、ヒトなど哺乳動物)および/または植物が挙げられる。
実質的に:本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、対象の特徴または性質の全体またはほぼ全体の範囲または度合いを呈する定性的条件を意味する。生物学技術分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象が、最終状態に達することおよび/または完全に進行することまたは絶対的結果を達成もしくは回避することは、あっても稀であるものと理解されよう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的および化学的な現象に固有の完全性の欠如の可能性を取り込むように本明細書で用いられる。
実質的に等しい:用量間の時間差に関して本明細書で用いられる場合、この用語は、±2%を意味する。
実質的に同時に:複数の用量に関して本明細書で用いられる場合、この用語は、2秒間以内を意味する。
に罹患している:疾患、障害、および/または病態「に罹患している」個体は、疾患、障害、および/または病態と診断されているまたはそれらの1つ以上の症状を呈する。
に罹患しやすい:疾患、障害、および/または病態「に罹患しやすい」個体は、疾患、障害、および/または病態の症状で診断されていないか、かつ/またはその症状を呈していなくてもよいが、疾患またはその症状を発症する傾向を有する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または病態(たとえば、癌)に罹患しやすい個体は、次のもの、すなわち、(1)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる遺伝子突然変異、(2)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる遺伝子多型、(3)疾患、障害、および/または病態に関連付けられるタンパク質および/または核酸の発現および/または活性の増大および/または低減、(4)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる習性および/または生活習慣、(5)疾患、障害、および/または病態の家族歴、ならびに(6)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる微生物への暴露および/またはその感染、の1つ以上により特徴付け可能である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または病態に罹患しやすい個体は、疾患、障害、および/または病態を発生するであろう。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または病態に罹患しやすい個体は、疾患、障害、および/または病態を発生しないであろう。
持続放出:本明細書で用いられる場合、「持続放出」という用語は、特定の期間にわたり放出速度に適合する医薬組成物または化合物の放出プロファイルを意味する。
合成:「合成」という用語は、ヒトの手により産生、調製、および/または製造されることを意味する。本発明に係るポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは他の分子の合成は、化学的もしくは酵素的でありうる。
標的細胞:本明細書で用いられる場合、「標的細胞」とは、任意の1つ以上の目的の細胞を意味する。細胞は、in vitro、in vivo、in situ、または生物の組織もしくは器官で見いだされうる。生物は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、最も好ましくは患者でありうる。
治療剤:「治療剤」という用語は、対象に投与したとき、治療効果、診断効果、および/もしくは予防効果を有する、ならびに/または所望の生物学的効果および/もしくは薬理学的効果を誘発する任意の作用剤を意味する。
治療上有効量:本明細書で用いられる場合、「治療上有効量」という用語は、感染、疾患、障害、および/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与したとき、感染、疾患、障害、および/または病態を治療、その症状を改善、その発生を診断、予防、および/または遅延するのに十分な送達作用剤(たとえば、核酸、薬剤、治療剤、診断剤、予防剤など)の量を意味する。
治療上有効なアウトカム:本明細書で用いられる場合、「治療上有効なアウトカム」という用語は、感染、疾患、障害、および/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象において、感染、疾患、障害、および/または病態を治療、その症状を改善、その発症を診断、予防、および/または遅延するのに十分なアウトカムを意味する。
全一日用量:本明細書で用いられる場合、「全一日用量」とは、24時間以内で投与または処方される量のことである。それは、単回ユニット用量として投与されうる。
転写因子:本明細書で用いられる場合、「転写因子」という用語は、たとえば、転写の活性化または抑圧により、DNAからRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を意味する。いくつかの転写因子は、転写のみの調節を行うが、他のものは、他のタンパク質と協奏的に作用する。いくつかの転写因子は、特定の条件下で転写の活性化および抑制の両方を行うことが可能である。一般的には、転写因子は、標的遺伝子の調節領域の特定のコンセンサス配列にきわめて類似した1つもしくは複数の特異的標的配列に結合する。転写因子は、標的遺伝子の転写を単独でまたは他の分子との複合体で調節しうる。
治療:本明細書で用いられる場合、「治療」という用語、特定の感染、疾患、障害、および/または病態を部分的にまたは完全に緩和、寛解、改善、軽減したり、その発症を遅延したり、その進行を阻害したり、その重症度を低減したり、かつ/またはその1つ以上の症状もしくは特徴の出現を低減したりすることを意味する。たとえば、癌を「治療」することは、腫瘍の生存、増殖、および/または拡がりを阻害することを意味しうる。治療は、疾患、障害、および/もしくは病態の徴候を呈しない対象に、ならびに/または疾患、障害、および/もしくは病態に関連付けられる病変を発生するリスクを低減する目的で、疾患、障害、および/もしくは病態の早期徴候を呈する対象に施すことが可能である。
「治療方法」という語句またはその均等語は、たとえば癌に適用する場合、個体において癌細胞の数を低減、排除、もしくは予防するようにまたは癌の症状を軽減するように設計された手順または行動方針を意味する。癌または他の増殖性障害の「治療方法」は、癌細胞もしくは他の障害が実際上完全に排除されること、細胞数もしくは障害が実際上低減されること、または癌もしくは他の障害の症状が実際上軽減されることを必ずしも意味するとは限らない。多くの場合、癌の治療方法は、成功する可能性が低い場合でさえも行われるであろう。ただし、それにもかかわらず、個体の病歴および推定余命を考慮して全体的に有益な行動方針と見なされる。
腫瘍成長:本明細書で用いられる場合、「腫瘍成長」または「腫瘍転移成長」という用語は、特に指定がない限り、腫瘍学で通常使用されるように用いられる。ただし、この用語は、主に腫瘍細胞成長の結果としての腫瘍または腫瘍転移の増加量または増加体積に主に関連付けられる。
腫瘍負荷:本明細書で用いられる場合、「腫瘍負荷」という用語は、対象が有する直径3mm超の全腫瘍小結節の全腫瘍体積を意味する。
腫瘍体積:本明細書で用いられる場合、「腫瘍体積」という用語は、腫瘍のサイズを意味する。mm3単位の腫瘍体積は、式:体積=(幅)2×長さ/2により計算される。
非修飾:本明細書で用いられる場合、「非修飾」とは、何らかの方法で変化させる前の任意の物質、化合物、または分子を意味する。非修飾とは、生体分子の野生型または未改変型を意味するが、常にそうであるとは限らない。分子は、一連の修飾を受けうるが、それにより、各修飾分子は、それに続く修飾のための「非修飾」出発分子として役立ちうる。
均等物および範囲
当業者であれば、通常の実験の域を出ることなく、本明細書に記載の本発明に係る特定の実施形態に対する多くの均等な形態が分かるであろう。またはそれらを確認できるであろう。本発明の範囲は、以上の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に明記される通りである。
特許請求の範囲では、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」などの冠詞は、相反する指示がない限りまたは特に文脈から自明でない限り、1つ以上を意味しうる。グループの1つ以上のメンバー間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、相反する指示がない限りまたは特に文脈から自明でない限り、グループメンバーの1つ、1つ超、またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、または他の方法でそれに適合する場合、満たされると考えられる。本発明は、厳密にグループの1つのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、または他の方法でそれに適合する、実施形態を含む。本発明は、グループメンバーの1つ超またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、または他の方法でそれに適合する、実施形態を含む。
また、「含む」という用語は、オープンであることが意図され、追加の要素または工程の組込みを許容することにも留意されたい。
範囲が与えられた場合、端点が含まれる。さらに、特に指定がない限りまたは特に文脈および当業者の理解から自明でない限り、範囲として表現された値は、文脈上明らかに異なる場合を除いて、範囲の下限の1/10単位まで、本発明のさまざまな実施形態で指定の範囲内の任意の特定の値または部分範囲を仮定しうると理解されるべきである。
それに加えて、先行技術に包含される本発明の特定の実施形態はいずれも請求項の任意の1項以上から明示的に除外されうると理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に公知であると見なされるため、たとえ本明細書で明示的に除外が明記されていないとしても、それらは除外されうる。本発明に係る組成物の特定の実施形態(たとえば、任意の核酸、それによりコードされたタンパク質、任意の製造方法、任意の使用方法など)はいずれも、先行技術の存在の有無にかかわらず、任意の理由でいずれか1項以上の請求項から除外しうる。
引用された出典、たとえば、本明細書に引用された参考文献、刊行物、データベース、データベース項目、および技術はすべて、たとえ引用に明確に記載されていないとしても、参照により本出願に組み込まれる。引用された出典の記載内容と本出願の記載内容とが矛盾する場合、本出願の記載内容が優先するものとする。
限定されるものではないが以下の実施例により本発明をさらに説明する。
(実施例)
材料および手順はPCT出願PCT/IB2014/003054号明細書に開示されている。
実施例1.C/EBPα−saRNAのin vitro研究
AW51(CEBPA−AW1−510000としても知られる)は、Hep3B、HepG2、PLC/PRF/5、SNU475細胞などのHCC細胞系パネルにトランスフェクトした。播種時に細胞を50nMのAW51でリバーストランスフェクトし、24時間後にフォワードトランスフェクトし、72時間で採取した。CEBPA mRNAおよびアルブミン(ALB)mRNAのレベルを測定した。図4A〜4Dおよび図5A〜5Dに示されるようにCEBPAおよびALBのmRNAのアップレギュレーションが観測された。
実施例2.修飾CEBPA−saRNAはCEBPAをアップレギュレートする
表3の修飾CEBPA−saRNAをDU145細胞にトランスフェクトした。播種時に細胞を2.5nMおよび10nM修飾CEBPA−saRNAでリバーストランスフェクトし、24時間後にフォワードトランスフェクトし、72時間で採取した。CEBPAおよびGAPDHのmRNAレベルを測定した。表6、図6Aの結果は、CEPBA−saRNAが大きい修飾に耐えうることを示している。
以下の表は、この実施例で使用した対照を含む。トランスフェクション対照としてAha1 siRNAを使用して2.5nMおよび10nMの濃度でトランスフェクトした。
CEBPA−saRNAをGalNacクラスターにコンジュゲートして(GalNac−CEBPA−saRNAと呼ばれる)、DU145細胞にトランスフェクトする。播種時に細胞を2.5nM、10nM、または50nM GalNac−CEBPA−saRNAでリバーストランスフェクトし、24時間後にフォワードトランスフェクトし、72時間で採取する。CEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルを測定する。
AW51(CEBPA−AW1−510000としても知られる)をGalNacクラスターにコンジュゲートして、DU145細胞にトランスフェクトする。播種時に細胞を2.5nM、10nM、または50nM GalNac−CEBPA−saRNAでリバーストランスフェクトし、24時間後にフォワードトランスフェクトし、72時間で採取する。CEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルを測定する。
実施例3.saRNAおよびsiRNAのin vitro用量反応および効力比較
DU145細胞における3種の非修飾CEBPA−saRNA(XD−03287、XD−03302、XD−03317)のEC50をDU145細胞におけるAHA1およびCEBPAに対するsiRNAのIC50と比較した。
saRNAのEC50試験では、0時間でDU145細胞(p15、8000細胞/ウェル)をCEBPA−saRNAでリバーストランスフェクトし(リポフェクタミン(Lipofectamine)2000、0.4μl/ウェル)、24時間でフォワードトランスフェクトし、72時間で採取した。100nMから2×希釈系列でXD−03287、XD−03302、XD−03317を投与した。CEBPA mRNAレベルはGAPDHに規格化した。
siRNAのIC50試験では、0時間でDU145細胞(p15、8000細胞/ウェル)に1回トランスフェクションを行って24時間で採取した。50nMから5×希釈系列でライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)CEBPA−siRNAおよびAxo非修飾AHA1を投与した。
表10および図7A〜7CにsiRNAのIC50値を示した。表11および図8A〜8CにsaRNAのEC50値を示した。saRNA/siRNAの傾き比が約5であることから異なる機序が示唆される。傾き平均および比の計算では、傾きを100%のY軸範囲で規格化した。この結果、siRNA(CEBPA−siRNAおよびAha−1−siRNA)では約0.5およびsaRNA(XD−03287、XD−03302およびXD−03317)では約2.7の平均傾きが得られる。EC50およびIC50は、変曲点(IP:infection point)すなわち半値活性の尺度である。したがって、CEBPA−saRNAは、低nM範囲のIC50を有してきわめて効力が高い。
実施例4.ヒト肝細胞におけるCEBPA−saRNAを用いたin vitro研究
一次ヒト肝細胞(ライフ・テクノロジーズ(LifeTechnologies))を非増殖培地に配置した。播種日、細胞をリバーストランスフェクション工程に付した。この際、saRNAトランスフェクション複合体を細胞に添加した後、単層として付着させた。24時間後、培地を変更してフォワードトランスフェクションを行った。翌日、培地を変更し、細胞採取前に細胞をさらに24時間インキュベートして分析に供した。AW51で肝細胞をトランスフェクトした。48時間および72時間でCEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルを測定した。対照としてAha−1−siRNAおよびFlucを使用した。表12および図9AにAha1、アルブミン、CEBPAの相対発現を示した。
材料
一次肝細胞解凍培地:凍結保存肝細胞回復培地(CHRM:Cryopreserved Hepatocyte Recovery Medium)、50mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号CM7000)
一次肝細胞プレーティング培地:ウシ胎仔血清、熱不活性化−50mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号16140−071)
インスリン−トランスフェリン−セレン(100X)−5mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号41400−045)
HEPES(1M)−5mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号15630−056)
L−グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン溶液−5mL(シグマ(Sigma)カタログ番号G1146)
デキサメタゾン−最終濃度40ng/mL(シグマ(Sigma)カタログ番号D8893)
ウィリアムE培地、フェノールレッドなし−全量500mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号A12176−01)
一次肝細胞維持培地:一次肝細胞維持サプリメント(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号CM4000)
ウィリアムE培地、フェノールレッドなし−全量500mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号A12176−01)
一次肝細胞培養プレート:コラーゲンI、被覆プレート、24ウェル(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号A11428−02)
トランスフェクション試薬:ハイパーフェクト(HiPerFect)トランスフェクション試薬(キアゲン(Qiagen)カタログ番号301704)
Opti−MEM I血清低減培地、フェノールレッドなし(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号11058−021)
プロトコル
saRNAアニーリング:
RNアーゼフリーの10mMトリス−HCl、20mM NaCl2、1mM EDTA中に1mMになるように各凍結乾燥saRNA鎖を再懸濁した。十分に混合して再懸濁を終了した。温和な撹拌により等体積のセンス鎖とアンチセンス鎖とを一緒に混合した。組み合わされた鎖の入ったチューブを95℃に加熱された水の入ったビーカ中に配置した。ビーカにカバーをかけて室温に冷却した。RNアーゼフリー水を用いて後続の希釈を行った。24ウェル方式では一般にストック溶液を10μMに希釈した。アリコートアニールsaRNAをアリコートして−20℃で貯蔵した。
一次肝細胞の解凍およびプレーティング:
水浴中でCHRMおよびプレーティング培地を37℃に加温した。氷晶が残留しなくなるまで凍結保存肝細胞を37℃の水浴中で解凍した。70%エタノールを用いてバイアルを消毒した。無菌組織培養フード内で解凍肝細胞をCHRM中に直接導入した。100×g(Thermo F−G1固定角ロータ中900rpm)で肝細胞を室温で10分間遠心分離した。上清を廃棄ボトル中に慎重に注いで捨てた。1×106凍結保存細胞当たり1mLのプレーティング培地中にペレットを再懸濁させた。ヌクレオカウンター(NucleoCounter)NC−200凝集細胞アッセイを用いて細胞をカウントし、細胞生存能を決定した。24ウェルプレートを用いて1ウェル当たり500μLのプレーティング培地中に2.0×105生存細胞をプレーティングした。
リバーストランスフェクション(播種直後):
トランスフェクトされる各ウェルに対して12μLの10μM saRNAを85μLのOpti−MEM中に希釈した。トランスフェクトされる各ウェルに対して3μLのハイパーフェクト(HiPerFect)を添加し、撹拌により十分混合した。トランスフェクション系を室温で15分間インキュベートした。200nMの最終saRNA濃度になるように100μLのトランスフェクション複合体を各ウェルに添加した。加湿インキュベータ中で5%CO2を用いてプレートを37℃でインキュベートした。5時間後、培地を500μLの予備加温維持培地に変更した。
フォワードトランスフェクション(播種24時間後):
トランスフェクトされる各ウェルに対して12μLの10μM saRNAを85μLのOpti−MEM中に希釈した。トランスフェクトされる各ウェルに対して3μLのハイパーフェクト(HiPerFect)を添加し、撹拌により十分混合した。トランスフェクション系を室温で15分間インキュベートした。インキュベーション時、培地を1ウェル当たり500μLの新鮮な予備加温維持培地に変更した。200nMの最終saRNA濃度になるように100μLのトランスフェクション複合体を各ウェルに添加した。プレートをインキュベータに戻した。24時間後、培地を500μLの新鮮な予備加温維持培地に変更した。ピーク遺伝子活性は細胞接種72時間後に生じた。細胞および/または上清を収集してこの時点で下流分析に供した。
増殖一次ヒト肝細胞におけるsaRNAトランスフェクションプロトコル
一次ヒト肝細胞(ライフ・テクノロジーズ(LifeTechnologies))を増殖培地に配置した。播種日、細胞をリバーストランスフェクション工程に付す。この際、saRNAトランスフェクション複合体を細胞に添加した後、単層として付着させる。24時間後、培地を変更してフォワードトランスフェクションを行う。翌日、培地を変更し、細胞採取前に細胞をさらに24時間インキュベートして分析に供した。AW51で肝細胞をトランスフェクトした。48時間および72時間でCEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルを測定した。対照としてAha−1−siRNAおよびFlucを使用した。表13および図9BにAha1、アルブミン、CEBPAの相対発現を示した。
材料
一次肝細胞解凍培地:
凍結保存肝細胞回復培地(CHRM)、50mL(ライフ・テクノロジーズ(Life
Technologies)カタログ番号CM7000)
一次肝細胞プレーティング培地:
ウシ胎仔血清、熱不活性化−50mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号16140−071)
インスリン−トランスフェリン−セレン(100X)−5mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号41400−045)
HEPES(1M)−5mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号15630−056)
L−グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン溶液−5mL(シグマ(Sigma)カタログ番号G1146)
デキサメタゾン−最終濃度40ng/mL(シグマ(Sigma)カタログ番号D8893)
ウィリアムE培地、フェノールレッドなし−全量500mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号A12176−01)
一次肝細胞維持培地:
一次肝細胞維持サプリメント(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号CM4000)
肝細胞成長因子ヒト−最終濃度40ng/mL(シグマ(Sigma)カタログ番号H5791)
表皮成長因子ヒト−最終濃度20ng/mL(シグマ(Sigma)カタログ番号E9644)
ニコチンアミド−最終濃度2.5μg/mL(シグマ(Sigma)カタログ番号N0636)
ウィリアムE培地、フェノールレッドなし−全量500mL(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号A12176−01)
一次肝細胞培養プレート:
コラーゲンI、被覆プレート、24ウェル(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号A11428−02)
トランスフェクション試薬:
ハイパーフェクト(HiPerFect)トランスフェクション試薬(キアゲン(Qiagen)カタログ番号301704)
Opti−MEM I血清低減培地、フェノールレッドなし(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)カタログ番号11058−021)
プロトコル
saRNAアニーリング:
RNアーゼフリーの10mMトリス−HCl、20mM NaCl2、1mM EDTA中に1mMになるように各凍結乾燥saRNA鎖を再懸濁した。十分に混合して再懸濁を終了した。温和な撹拌により等体積のセンス鎖とアンチセンス鎖とを一緒に混合した。組み合わされた鎖と共にチューブを95℃に加熱された水の入ったビーカ中に配置した。ビーカにカバーをかけて室温に冷却した。RNアーゼフリー水を用いて後続の希釈を行った。24ウェル方式では一般にストック溶液を10μMに希釈した。アニールsaRNAをアリコートして−20℃で貯蔵した。
一次肝細胞の解凍およびプレーティング:
水浴中でCHRMおよびプレーティング培地を37℃に加温した。氷晶が残留しなくなるまで凍結保存肝細胞を37℃の水浴中で解凍した。70%エタノールを用いてバイアルを消毒した。無菌組織培養フード内で解凍肝細胞をCHRM中に直接導入した。100×g(Thermo F−G1固定角ロータ中900rpm)で肝細胞を室温で10分間遠心分離した。上清を廃棄ボトル中に慎重に注いで捨てた。1×106凍結保存細胞当たり1mLのプレーティング培地中にペレットを再懸濁させた。ヌクレオカウンター(NucleoCounter)NC−200凝集細胞アッセイを用いて細胞をカウントし、細胞生存能を決定した。24ウェルプレートを用いて1ウェル当たり500μLのプレーティング培地中に1.0×105生存細胞をプレーティングした。
リバーストランスフェクション(播種直後):
トランスフェクトされる各ウェルに対して3μLの10μM saRNAを94μLのOpti−MEM中に希釈した。トランスフェクトされる各ウェルに対して3μLのハイパーフェクト(HiPerFect)を添加し、撹拌により十分混合した。トランスフェクション系を室温で15分間インキュベートした。50nMの最終saRNA濃度になるように100μLのトランスフェクション複合体を各ウェルに添加した。
加湿インキュベータ中で5%CO2を用いてプレートを37℃でインキュベートした。5時間後、培地を500μLの予備加温維持培地に変更した。
フォワードトランスフェクション(播種24時間後):
トランスフェクトされる各ウェルに対して3μLの10μM saRNAを94μLのOpti−MEM中に希釈した。トランスフェクトされる各ウェルに対して3μLのハイパーフェクト(HiPerFect)を添加し、撹拌により十分混合した。
トランスフェクション系を室温で15分間インキュベートした。インキュベーション時、培地を1ウェル当たり500μLの新鮮な予備加温維持培地に変更した。50nMの最終saRNA濃度になるように100μLのトランスフェクション複合体を各ウェルに添加した。プレートをインキュベータに戻した。24時間後、培地を500μLの新鮮な予備加温維持培地に変更した。ピーク遺伝子活性は細胞接種72時間後に生じた。細胞および/または上清を収集してこの時点で下流分析に供した。
表12〜13および図9A/9Bは、CEBPA−saRNAが増殖培地に暴露されたときに肝細胞のCEBPAおよびアルブミンをアップレギュレートすることを示している。したがって、CEBPA−saRNAは増殖細胞において効力を示す。siRNAは増殖細胞および非増殖性細胞の両方で効力を示す。
実施例5.CEBPA−saRNAを用いたin vitro研究
肝細胞系におけるCEBPA−51の生物学的作用:
研究目標:本研究の目標は、高分化HCC(HepG2、Hep3B)または低分化HCC(PLCPRF5)を表すHCC細胞系の内因性CEBPA転写レベルを測定してCEBPA−51によるトランスフェクション後のCEBPA mRNAおよびC/EBP−αタンパク質発現の相対増加を決定することであった。加えて、細胞増殖に及ぼすC/EBP−αアップレギュレーションの作用を評価した。
HEP3B、HEPG、およびPLCPRF5を含む肝細胞系パネルをCEBPA−51でトランスフェクトした。C/EBP−αタンパク質は、トランスフェクションの72時間後の細胞ライセートにおいてウェスタンブロットにより検出された(定量:RC−DCブラッドフォードアッセイ、参照タンパク質:チューブリン)。CEBPAの内因性転写レベルは、PLCPRF5細胞と比較してHep3BおよびHepG2細胞において有意に高かった。CEBPA−51による処置は、非トランスフェクト対照および非特異的RNA二本鎖(siFLUC)による処置と比較して、試験した3つすべてのHCC細胞系において、CEBPA mRNA転写レベルの有意な増加およびC/EBP−αタンパク質レベルの増加もたらした(図10Aおよび10B)。
WST−1増殖アッセイおよびSRB比色アッセイを用いて細胞増殖を測定した。結果は図11A〜11Fに示した。CEBPA−51は、HEP3BおよびHEPG2の細胞系では対照と比較して細胞増殖を低減したが、PLCPRF5細胞では低減しなかった。したがって、細胞増殖を阻害するCEBPA−51の能力は、HepG2およびHep3B細胞において確認された。これとは対照的に、PLCPRF5細胞はCEBPA−51処置による影響を受けなかった。
AW51のオフターゲット分析:
AW51の特異性は予測されたオフターゲット部位から確認された。バイオインフォマティクスオフターゲット分析を行った。AW51は、いずれの他のヒト転写物に対してもアンチセンス鎖の少なくとも2ミスマッチを有する。アンチセンス鎖に対して2ミスマッチを有する4つのオフターゲットのみが予測された。オフターゲットは、Huh7細胞およびPanc−1細胞において24時間のインキュベーションを行ってvitroで測定した。mRNAレベルはgapdhに対して規格化し、結果は図12A(Huh7細胞)〜12B(Panc−1細胞)に示した。AW51トランスフェクション後の潜在的オフターゲットの発現パターンから、AW51により遺伝子が有意に影響を受けないことが示された。
実施例6.CEBPA−saRNAの機序研究
鎖の選択/同定および切断の分析
5’末端の反転脱塩基修飾は、Ago2複合体中のガイド位置へのローディングを防止することが示されている。C/EBPA−saRNAのアンチセンス鎖(AS:Antisense strand)およびセンス鎖(SS:sense strand)の5’末端を反転脱塩基修飾(b)でブロックしてC/EBPA mRNA発現を測定し、C/EBPA mRNA発現に及ぼすブロック化ASおよび/またはSS鎖の影響を決定した。
RNAiは標的mRNAの切断を含む。CEBPA−saRNAが標的EST(AW665812)を切断するかを決定するために、中心3塩基対の突然変異を有する非切断配列を試験した(CEBPA−AW01−510500)。中心3塩基対の突然変異は、鎖がガイドとして機能するかにかかわらず、非切断性saRNAを生成する。
saRNAはすべて、水中で合成してアニールした。RP−HPLCでは90%の純度を有する。オリゴヌクレオチドサンプルの配列は以下の表に示した。
クリティカルな試薬
トランスフェクション。1μLリポフェクタミン(Lipofectamine)2000(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて10nMの最終オリゴヌクレオチド濃度で24ウェルディッシュ中で100,000細胞/ウェルで細胞をトランスフェクトした。
RNA単離。製造業者(キアゲン(Qiagen)、オランダ国フェンロー)のプロトコルに従ってRNイージ(RNeasy)ミニキットを用いて全RNAを単離した。
相補的DNA(cDNA)の合成。20μL反応で500ngのRNAを用いて製造業者(キアゲン(Qiagen))のプロトコルに従ってクオンティテクト(Quantitect)逆転写キットによりcDNAを合成した。
定量PCR。製造業者のプロトコルに従ってアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)7900HTリアルタイムPCRシステム(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))によりクオンティファストSYBRグリーン(QuantiFast SYBR Green)PCRマスターミックス(キアゲン(Qiagen))を用いて定量PCRを行った。各反応で12.5ngのcDNAを用いてトリプリケートウェルで反応を行った。
細胞系
37℃に維持されたインキュベータ内で5%CO2を用いて10%ウシ胎仔血清および1×L−グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、ミズーリ州セントルイス)が追加されたRPMI培地中にHepG2肝細胞癌細胞を保持した。
実験計画
実験はトリプリケートウェルで行った。100,000細胞/ウェルで24ウェルディッシュにHepG2細胞を接種し、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて10nM(f.c.)の各テストアイテムでリバーストランスフェクトした。24時間のインキュベーション後、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて10nM(f.c.)の各テストアイテムで追加のフォワードトランスフェクション工程を行った。予備試験により最大saRNA活性が2回目のトランスフェクション後に観測されることを確認した。2回目のトランスフェクションの48時間後、細胞を溶解して捕集し、定量逆転写PCR(qRT−PCR)によりCEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルを決定した。
データ評価
SDSソフトウェア(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))を用いてCt値を決定し、非トランスフェクト細胞に対して規格化することにより相対量を計算した。加えて、ハウスキーピング遺伝子GAPDHを内部対照として機能させた。トリプリケートでトランスフェクション実験を行い、トリプリケートでqPCRの決定を行った。統計的有意性はウェルチ補正を用いてt検定により決定した。
結果および考察
非トランスフェクト細胞と比較して、非修飾AW1−51配列、SS修飾AW1−51(CEBPA−AW01−510012)、および内部配列突然変異AW1−51(CEBPA−AW01−510500)でトランスフェクトした細胞で、2〜2.5倍のCEBPA mRNAアップレギュレーションが観測された(図13A)(すべてp<0.01で統計的に有意である)。非特異的対照(NC−500000)、AS修飾AW1−51(CEBPA−AW01−510014)、両鎖修飾(CEBPA−AW01−510013)を用いてトランスフェクションした後、CEBPA mRNAのアップレギュレーションは観測されなかった。この活性化パターンは、CEBPA転写活性化の下流標的であるアルブミン発現のアップレギュレーションにp<0.05で統計的に有意に一致した(図13B)。
反転脱塩基修飾は5’鎖がロードされないようにAgo2をブロックすることが知られているため、この修飾を両方の鎖に有するオリゴであるCEBPA−AW01−510014は不活性であると予想される。このことは実験で確認することができた。したがって、ASではなくSSに反転脱塩基修飾を行ってCEBPA活性化が観測されることから、ASはCEBPA mRNA発現をトリガーするためにAgo2にロードされるガイド鎖であることが示唆される。
Ago2による標的の切断は、ガイド鎖と標的配列(ゲノムDNAまたは遺伝子から生じるアンチセンスRNA転写物)との間の配列中心ミスマッチにより阻害される。中心突然変異を含有するCEBPA−saRNA配列(CEBPA−AW01−510500)は、非突然変異オリゴと比較してCEBPA活性化の差を示さなかったことから、CEBPA配列の切断はsaRNA活性に必要でないことが示唆される。
結論
AW1−51のアンチセンス鎖はsaRNA活性に関与するガイド鎖であることが実証された。さらに、センス鎖上の5’反転脱塩基修飾がCEBPA遺伝子活性化に何ら影響を及ぼさないことが示された。加えて、Ago2による標的アンチセンスRNA切断はsaRNA活性をトリガーするのに必要でなかった。
実施例7.一次ヒト肝細胞におけるCEBPA−51 saRNA活性
これまでに示されたように、CEBPA−saRNAは、静止肝細胞ではなく増殖肝細胞でCEBPA mRNAおよびアルブミンmRNAをアップレギュレートする(図9Aおよび図9B)。本研究では、増殖肝細胞に及ぼすCEBPA−saRNAの作用を再び評価し(図14)、アルブミン分泌(図15)および下流マーカ(図16A〜図16F)に及ぼす作用も調べた。
正常ヒト一次ヒト肝細胞におけるCEBPA−51の作用を評価した。培養下の一次肝細胞は増殖しないため、本研究では成長因子およびサイトカインの存在下で増殖するように誘導された一次肝細胞においてCEBPA−51CがEBPA転写物およびのアルブミンをアップレギュレートすることを実証する。さらに、本研究では、CEBPA−51が効率的な肝機能にきわめて重要な因子のレギュレーションを引き起こすことを示す。これらは、肝アラニングリオキシレートアミノトランスフェラーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルブミン、CYP3A4、およびHNF4Aを含む。
本研究の目的は、CEBPAおよびアルブミン発現に及ぼす正常ヒト一次肝細胞におけるCEBPA−51の効力を確証することであった。加えて、CEBPA−51が好ましい作用を引き起こすかを評価するために肝機能に重要な因子をスクリーニングした。これらの因子は、以下のものを含んでいた。
− アラニン−グリオキシレートアミノトランスフェラーゼ(AGXT)。AGXT発現は肝特異的であり、肝細胞の代謝機能に必要とされる。
− アルブミン。血清アルブミンはヒト血漿の主要タンパク質であり、肝臓により排他的に合成される。その主要機能は、血液のコロイド浸透圧を調節すること、さらには脂溶性ホルモン、胆汁酸塩、非コンジュゲートビリルビン、アポタンパク質、カルシウム、および特定の薬剤(ワルファリン、クロフィブラートなど)の担体分子として作用することである。
− シトクロムP450 3A4(CYP3A4)。CYP3A4は、薬剤代謝に関与する酸化酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーである。CYP3A4は、主に肝臓に見いだされる。シトクロムP450のこのファミリーにはいくつかの他のメンバーが存在するが、CYP3A4は最も一般的かつ汎用的なメンバーである。
− オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)。OTCは、尿素回路の一部としてミトコンドリアにおいてシトルリンおよびホスフェートを形成するカルバモイルリン酸とオルニチンとの間の反応を触媒する酵素である。
− 肝細胞核因子4−アルファ(HNF4A)。HNF4Aは、脂質の輸送ならびに薬剤およびグルコースの代謝に関与する遺伝子の肝特異的遺伝子発現のマスターレギュレータであると認識されている肝特異的転写因子である。
CEBPA−51、CEBPA、およびアルブミンの標的エンゲージメントを確認するために、肝機能プローブと協同して転写レベルを確認した。加えて、CEBPA−51でトランスフェクトした後の細胞培養培地中へのアルブミン分泌を測定するために、アルブミン特異的抗体を用いたELISAを行った。
材料および方法
本実験のテストアイテムはMTL−CEBPAのAPIであるCEBPA−51であった。加えて、陰性対照として非標的化二本鎖siFLUCおよびトランスフェクション効率対照としてAha−1 siRNAも使用した。これらのRNAオリゴヌクレオチド(以下の表を参照されたい)は、商業的に合成されたものであり(STファーム(ST Pharm)、韓国ソウル、補遺に分析証明)、アニールしてRNアーゼフリーH2O中に−20℃で10μMアリコートとして貯蔵した。
クリティカルな試薬
一次肝細胞解凍培地。各バイアルを解凍するために凍結保存肝細胞回復培地(CHRM)を使用した(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、CM7000)。
一次肝細胞プレーティング培地。ウシ胎仔血清、熱不活性化−50ml(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、16140−071)、インスリン−トランスフェリン−セレン(100×)−5ml(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、41400−045)、HEPES(1M)−5ml(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、15630−056)、L−グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン溶液−5ml(シグマ(Sigma)、G1146)、デキサメタゾン−最終濃度40ng/ml(シグマ(Sigma)、D8893)、フェノールレッドフリーのウィリアムE培地(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、A12176−01)。
一次肝細胞維持培地。一次肝細胞維持サプリメント(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、CM4000)、ヒト肝細胞成長因子−最終濃度40ng/ml(シグマ(Sigma)、H5791)、表皮成長因子−最終濃度20ng/ml(シグマ(Sigma)、E9644)、ニコチンアミド−最終濃度2.5μg/ml(シグマ(Sigma)N0636)、フェノールレッドフリーのウィリアムE培地−500ml(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、A12176−01)。
トランスフェクション。3μLのハイパーフェクト(HiPerFect)トランスフェクション試薬(キアゲン(Qiagen)、301704)を用いて50nMの最終オリゴヌクレオチド濃度で24ウェルコラーゲン被覆ディッシュ中で100,000細胞/ウェルで細胞をトランスフェクトした。プレーティング培地中で細胞を5時間インキュベートして単層を形成してから維持培地で置き換えた。第2の(フォワード)トランスフェクションでは、リバーストランスフェクションの場合と同一の条件を使用した。実験の残りの時間では維持培地を使用した。
RNA単離。製造業者(キアゲン(Qiagen)、オランダ国フェンロー)のプロトコルに従ってRNイージ(RNeasy)ミニキットを用いて全RNAを単離した。
相補的DNA(cDNA)の合成。20μL反応で500ngのRNAを用いて製造業者のプロトコルに従ってクオンティテクト(Quantitect)逆転写キット(キアゲン(Qiagen))によりcDNAを合成した。
定量PCR。製造業者のプロトコルに従ってアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)7900HTリアルタイムPCRシステム(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))によりクオンティテクトSYBR(Quantitect SYBR)マスターミックス(キアゲン(Qiagen))を用いて定量PCRを行った。反応はトリプリケートウェルで行った。
アルブミン酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA:Albumin Enzyme linked immunosorbent assay)。製造業者の説明書に従ってヒトアルブミンELISA定量セット(ベチル・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド(Bethyl Laboratories Inc)、米国)を用いてアルブミン含有量に関して、各実験群内でインキュベートした一次細胞の培養培地を測定した。コスター−3596−96(Costar−3596−96)ウェルプレート(平底、TC処理、非発熱、ポリスチレン、無菌プレート(コーニング(Corning)、米国)の各ウェル上にアルブミンに対するヒト特異的抗体を固定化した。インハウスで調製した試薬には以下のものが含まれていた。
ELISAプレートコーティング緩衝液。0.05M炭酸塩−重炭酸塩(シグマ(Sigma)、C−3041)、pH9.6。
ELISA洗浄緩衝液。50mMトリス、0.14M NaCl、0.05%トゥイーン20(Tween20)(シグマ(Sigma)、P1379)pH8.0)。
ELISAブロッキング緩衝液。50mMトリス、0.14M NaCl、1%BSA(シグマ(Sigma)、A−4503)、pH8.0)。
サンプル/コンジュゲート緩衝液。50nMトリス、0.14M NaCl、1%のBSA(シグマ(Sigma)、A−4503)、0.05%トゥイーン20(Tween20)(シグマ(Sigma)、P1379)。
酵素基質緩衝液。3,3’,5,5’テトラメチベンジジン(シグマ(Sigma)、T0440)。ELISA停止液。(シグマ(Sigma)、S5814)。
細胞系
ヒト正常一次肝細胞はライフ・テクノロジーズ(Life technologies)(HMCPTS)から購入した。リピートはすべて同一のバッチ(HU8200−A)に由来するものであった。
実験計画
相対遺伝子発現
標的転写物の相対定量ではトリプリケートで実験を行った。一次肝細胞プレーティング培地を用いて100,000細胞/ウェルの密度で24コラーゲン被覆ウェルディッシュ(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、A11428−02)にヒト一次肝細胞を接種し、続いて、細胞が依然として懸濁状態のまま50nM(f.c)のCEBPA−51で初回トランスフェクションを行った(リバーストランスフェクション)。次いで、5時間にわたり細胞で単層を形成し、その後、プレーティング培地を維持培地で置き換えた。リバーストランスフェクションの24時間後、50nMのCEBPA−51を用いて2回目の(フォワード)トランスフェクションを行った。リバーストランスフェクションの72時間後の採取時まで24時間ごとに新鮮な維持培地で置き換えた。その時点で細胞から抽出した全RNAを標的遺伝子発現に関してスクリーニングした。
ELISA
本研究の72時間の時点における培養培地を捕集し、96ウェルプレートのウェル上に固定されたヒト特異的抗アルブミン(ベチル・ラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)、A80−129A)を用いてELISAに供した。既知のアルブミン量の標準曲線(ベチル・ラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)、RS10−110−4)に10μg/ml、400ng/ml、200ng/ml、100ng/ml、50ng/ml、25ng/ml、12.5ng/ml、および6.25ng/mlを追加した。サンプルおよび既知の対照量をそのまま室温(20〜25℃)で3時間にわたり回転プレート上のELISAプレート上でインキュベートした。製造業者のプロトコルに詳述される適切な回数の洗浄後、1:150,000)の濃度でHRP検出抗体(ベチル・ラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)、A80−129P)を添加し、室温(20〜25℃)で3時間にわたり回転プレート上で1時間インキュベートした。5回の洗浄後、TMB基質を添加し、酵素呈色反応が現れるまで室温でインキュベートした。ELISA停止液の添加により反応を停止させ、450nmの光学濃度の吸光度をプレートリーダ上で測定した。
データ評価
相対発現
リバック方法(2−ΔΔCT)(リバックK(Livak K)およびシュミットゲンTD(Schmittgen TD)、2001年)を用いてリアルタイムPCRの結果を分析した。SDSソフトウェア(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))を用いてCt値を決定し、非トランスフェクト細胞に対して規格化することにより相対量を計算する。ハウスキーピング遺伝子GAPDHを内部対照として機能させる。トリプリケートでトランスフェクション実験を行い、トリプリケートでqPCRの決定を行った。統計的有意性はウェルチ補正を用いてノンパラメトリックt検定により決定した。
ELISA
各標準濃度に対して平均吸光度値からブランク値を減算して垂直(Y)軸にとり、対応するヒトアルブミン濃度を水平(X)軸にとり、曲線当てはめソフトウェア(エクセル(Excel))を用いて、未知サンプルのヒトアルブミンの量を決定するための標準曲線を作成した。未知サンプルで得られた吸光度値(Y軸)に対応するヒトアルブミン濃度(X軸)を用いて、未知サンプル中のヒトアルブミン濃度の大きさを計算した。
結果および考察
一次ヒト肝細胞へのCEBPA−51のトランスフェクションは、アルブミンと同様にCEBPA転写レベルを有意に2.5倍だけ増加させる(図14Aおよび14B)。有効なトランスフェクション効率を確認するために、Aha1−siRNAを対照として使用したところ、標的転写物が1/7に低減することが実証された(図14C)。
正常ヒト一次肝細胞におけるCEBPA−51の生物学的作用
CEBPA−51トランスフェクション後のCEBPA転写物の内因性発現レベルの増加を確認した後、分泌アルブミンのレベルに関して細胞の培養培地を測定した。ヒト特異的抗アルブミン抗体を用いたELISAアッセイでは、肝細胞からのアルブミンの分泌は有意に1.3倍だけ増加することが確認された(図15)。
CEBPAおよびアルブミン転写レベルの増加が肝機能に重要な因子のポジティブレギュレーションをも反映したものでもあるかを評価するために、CEBPA−51でトランスフェクトした一次肝細胞において次の転写物の発現レベルを評価した。図16Aでアラニン−グリオキシレートアミノトランスフェラーゼ(AGXT)は1.4倍だけ増加した。図16Bでアルブミンは1.5倍だけ増加した。図16CでシトクロムP450 3A4(CYP3A4)は1.5倍だけ増加した。図16Dでオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)は2.3倍だけ増加した。図16Eで肝細胞核因子4−アルファ(HNF4A)は1.5倍だけ増加した。さらに図16FでCEBPAは1.6倍だけ増加した。
結論
CEBPAは重要な肝臓富化転写因子として認識される。その生物学的機能はノックアウトおよびノックイントランスジェニック動物研究でより明らかになる。正常ヒト一次肝細胞において肝細胞機能にさらに適合するCEBPAおよびその下流エフェクターのCEBPA−51誘導アップレギュレーションの転写反応が、本研究から実証される。正常一次肝細胞は、アルブミン分泌の有意な増加および解毒酵素の有意なアップレギュレーションを伴ってCEBPA−51トランスフェクションに有利に反応することが見いだされる。
実施例8.カニクイザル線維芽におけるCEBPA−saRNAのsaRNA活性
細胞系
一次カニクイザル肝細胞は、プリマサイト・セル・カルチャー・テクノロジー(Primacyt Cell Culture Technology)(独国シュベリン)から入手した。CYNOM−K1カニクイザル胚性線維芽細胞(英国公衆衛生庁(Public Health England)、英国ソールズベリー)は、5%CO2を含む37℃に維持されたインキュベータ内で10%ウシ胎仔血清、1%非必須アミノ酸(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))および1×L−グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、ミズーリ州セントルイス)が追加されたMEM培地中に保持された。カニクイザル細胞においてCEBPA−51がCEBPA mRNAをアップレギュレートする能力は評価して交差反応性を確認した。最初に、CEBPA−51標的部位のカニクイザルゲノム配列を検証した。公用データベースから配列をアクセスすると共にgDNA誘導PCR産物の直接シーケンシングにより検証した。BLASTを用いてマカカ・ファスシクラリス(Macaca fascicularis)(カニクイザル)ゲノムに対するクエリー検索としてCEBPA51標的配列を使用した。クエリーをCEBPAのゲノム位置にマッピングしたところ、CEBPA−51配列とゲノム標的部位との間のミスマッチは存在しなかった。この配列情報を検証するために、一次カニクイザル肝細胞からgDNAを単離して標的部位のPCR産物を生成し、直接シーケンスに供した。得られた配列は、発表されたカニクイザルゲノム配列およびCEBPA−51標的部位にミスマッチを伴うことなくアライメントする。
カニクイザルゲノム標的配列の確認後、CEBPA−51をカニクイザル線維芽中にトランスフェクトして、CEBPA−51が交差反応性であるかおよび肝細胞以外の細胞においてCEBPA mRNAをアップレギュレートするかを決定した。非トランスフェクト細胞、siFLUCトランスフェクト細胞、およびCEBPA51トランスフェクト細胞のmRNAレベルを測定した。実験はトリプリケートで行った。100,000細胞/ウェルで24ウェルディッシュにCYNOM−K1細胞を接種し、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて10nM(f.c.)の各テストアイテムでリバーストランスフェクトした。24時間のインキュベーション後、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて20nM(f.c.)の各テストアイテムで追加のフォワードトランスフェクション工程を行った。予備試験により最大saRNA活性が2回目のトランスフェクション後に観測されることを確認した。2回目のトランスフェクションの24時間後、細胞を溶解して捕集し、定量逆転写PCR(qRT−PCR)によりCEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルを決定した。図17に示されるように、CEBPA−51による細胞への2回目のトランスフェクションの24時間後、非トランスフェクト細胞と比較して2倍のCEBPA mRNAアップレギュレーションが観測されたが、siFLUCではアップレギュレーションが見られなかった。このアップレギュレーションはp<0.05で統計的に有意であった。
したがって、CEBPA−saRNAの交差反応性はカニクイザル細胞系で確認された。カニクイザルのゲノム配列は、BLASTデータベースによりCEBPA−51標的配列とのミスマッチを含有しないことが実証された。このことは、一次カニクイザルgDNAのシーケンシングことによりさらに検証された。次いで、カニクイザル線維芽中へのトランスフェクションおよびCEBPA遺伝子活性化の観測によりCEBPA−51の交差反応性が確認された。
実施例9.ラット、カニクイザル、およびヒトの血清におけるin vitro安定性分析
本研究は、37℃で120minにわたりEDTA−K2を用いて抗凝固処理されたラット、カニクイザル、およびヒトの血漿におけるCEBPA−51およびリポソーム製剤化MTL−CEBPAの安定性を研究するin vitro安定性分析である。
PBS中の3μLの50μM CEBPA−51溶液または3μLのMTL−CEBPA溶液と30μLの血漿と混合し、37℃で0、5、10、20、30、60、および120minにわたり血漿中でインキュベートした。PBS中の3μLのCEBPA−51溶液または30μLのPBS中の3μLのMTL−CEBPA溶液のインキュベーションを非特異的分解の対照をとして機能させた。エッペンドルフ・マスターサイクラー(Eppendorf Mastercycler)を用いてシールされた96ウェルPCRプレート中でインキュベーションを行った。指定の時点でプロテイナーゼK処理によりインキュベーションを停止させ、血漿サンプル中に存在するすべてのヌクレアーゼを消化した。プロテイナーゼK処理後、CEBPA−51は、サンプル中およびSDSを含有する溶解緩衝液中で安定である。CEBPA−51はLNP製剤のMTL−CEBPAから放出される。
続いて、サーモフィッシャ(ThermoFisher)DNA Pac PA200カラム(4×250mm)を用いて高pH(11)および40℃で一般的AEX−HPLC法により変性条件下でサンプルを分析した。HPLCカラムからRNA鎖を分離溶出させるために、1mL/minの流量で18分間で250〜620mMの臭化ナトリウムグラジエントを使用した。検出は260nmでUV検出器を用いて行った。
これらの条件下で、CEBPA−51単独またはMTL−CEBPAから放出されたCEBPA−51の2つの一本鎖を互いにおよび分解産物から分離し、識別可能なピークとして評価可能であった。参照一本鎖を入手できず、しかもAEX−HPLCと質量分析とを組み合わせることができなかったため、2つの一本鎖の帰属はできなかった。したがって、2つの鎖は、グラジエント溶出時の保持時間に依存して標識された第1および第2の鎖であった。データの評価では、CEBPA−51単独およびMTL−CEBPA中のCEBPA−51の2つの一本鎖のピーク面積を評価したに過ぎない。T=0のピーク面積を100%に設定し、すべての他の時点をそれぞれの種の血漿でのT=0のピーク面積に規格化した。次いで、T=0に規格化したインタクト鎖%としてデータを報告した。
結果
製剤化されていないCEBPA−51:
CEBPA−51は、EDTAを用いて抗凝固処理されたラット血漿中で比較的安定であり、第1のピークの15%の分解および第2のピークの8%の分解が観測された(図18A参照)。CEBPA−51はヒト血漿中で約2時間にわたり約50%分解される(図18B参照)。CEBPA−51は、カニクイザル血漿中で最も安定でなく、両方鎖の約85%が2時間以内に分解した(図18C参照)。
CEBPA−51単独は、ヒトおよびカニクイザルの血漿中ではそれほど安定でなかったが、ラット血漿中では2時間にわたり比較的安定であったことがデータから実証される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ラット血漿中では、RNAの分解は、2価カチオンに依存する3’エキソヌクレアーゼにより主に誘導される。したがって、抗凝固剤としてのEDTAの使用はこの分解経路を効率的にブロックし、CEBPA−51は比較的安定である。これとは対照的に、ヒトおよびカニクイザルの血漿における主要分解経路はRNアーゼAに依存する。このエンドヌクレアーゼの活性は2価カチオンに依存しないため、リポソーム製剤による保護を含まないCEBPA−51はこれらの種の血漿中で分解される。
リポソーム製剤化CEBPA−51:
MTL−CEBPA中のCEBPA−51は、すべての種の血漿中で2時間にわたり安定であり、有意な分解は観測されなかった(図19A、19B、および19Cを参照されたい)。このことから、MTL−CEBPAのLNP製剤は2時間にわたり安定であり、血漿中でCEBPA−51を分解から完全に保護することが示唆される。
結果から、MTL−CEBPA製剤は血漿中で少なくとも2時間にわたりインタクトであると結論付けることができる。
実施例10.ラットにおけるin vivo薬動学的試験
本研究は、群1では2.175mg/kg MTL−CEBPAおよび群2では1.5mg/kg CEBPA−51の単回IV適用を1回行った後のラット血漿サンプル中のCEBPA−51およびリポソーム製剤化MTL−CEBPAを調べるPK研究である。各群は3匹の雄ラットを含む。0.25、0.5、1、2、3、6、12、24、および48時間後、両方の群で血液を採取した。
SDS含有緩衝液系でプロテイナーゼK処理により血漿のアリコートをホモジナイズした。プロテイナーゼK消化後、3M KClを用いてSDSを沈殿させ、遠心分離により除去した。相補的15mer蛍光標識ペプチド核酸(PNA)プローブの存在下で上清を加熱して、PNAと、CEBPA−51単独またはリポソーム製剤化MTL−CEBPAから放出されたCEBPA−51のアンチセンス鎖との間で安定な二本鎖を特異的に形成した。PNAは、CEBPA−51(この実施例では親化合物と呼ぶ)との間で二本鎖を形成したが、代謝物または合成からの不純物とも形成した。次いで、形成された二本鎖を蛍光検出器と組み合わされた非変性陰イオン交換高性能液体クロマトグラフィー(AEX−HPLC)により分析した。代謝物または合成不純物はAEX−HPLCにより主化合物から分離された。
未処置血漿ライセート中にスパイクされた既知濃度の親化合物から生成された外部校正曲線を用いてCEBPA−51の濃度を計算した。各サンプルで全ピーク面積から親化合物のピーク面積を減算することにより全代謝物/合成不純物レベルを決定した。次いで、得られたピーク面積を外部校正曲線と対比して定量した。
結果
製剤化されていないCEBPA−51:
CEBPA−51で処置されたラットから得られた血漿中で親化合物の高い分解が観測された。親化合物は、第1のサンプリング時点(投与の15分後、図20Aおよび20Bを参照されたい)で検出されたに過ぎなかった。代謝物は投与の60分後まで検出されたが、投与の2時間後では検出限界(BDL:blow detection limit)以下であった。
リポソーム製剤化CEBPA−51:
MTL−CEBPA製剤は血漿中で高い安定性を示した。親化合物は、MTL−CEBPAで処置されたラットから得られたすべての血漿ライセート中に見いだされた。親化合物と代謝物との比は約9:1であった。すなわち、リポソーム製剤化群ではインタクトな親が約88%であった。より後の時点では、親化合物の相対含量は「代謝物/不純物」よりも増加した。なぜなら、後者のシグナルは、クロマトグラムのマイナーな位置のピークのほとんどで検出限界以下であったからである(図21Aを参照されたい)。投与の48時間後、CEBPA−51は、依然としてラット血漿中に検出可能であった(図21Aおよび21Bを参照されたい)。
MTL−CEBPAのIV投与後に観測される代謝物は、検出されるRNAの約10%を占め、強い代謝からではなくRNA合成プロセスに由来しうることが本研究から示唆される。しかしながら、非カプセル化化合物(CEBPA−51)との比較は血漿中不安定性が原因で利用できないため、また、非製剤化CEBPA−51はきわめて急速なクリアランスを示すため、dsRNAの代謝変換は排除できない。
実施例11.CEBPA−saRNAを用いたCCL4誘導肝不全/線維症のin vivo研究
肝線維症は、慢性ウイルス性肝炎(たとえば、B型およびC型肝炎)、アルコール乱用、薬剤過負荷/毒性、胆汁鬱滞性肝傷害、先天性異常、肝細胞自己免疫発作などの慢性炎症性肝疾患の病理学的結果である。それは、肝星細胞(HSC:hepatic stellate cell)増殖および筋線維芽様細胞への分化により細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)およびコラーゲンの堆積をもたらすことにより特徴付けられる。四塩化炭素(CCL4)誘導肝線維症は、肝線維症および肝硬変の研究用として齧歯動物において十分に確立されたかつ広く認められた実験モデルである。ラットへの四塩化炭素の長期投与は、組織学的に観測可能な肝線維症を伴って肝機能の重篤な擾乱を引き起こす。
両性リポソーム(マリーナ・バイオテック(Marina Biotech)により提供されたNOV340スマーティクル(Smarticle)リポソーム)を用いて製剤化されたCEBPA51(MTL−CEBPAと呼ばれる)を用いて10週間にわたる研究を行った。CEBPA51(XD−03934)は、センス鎖に2’OMe修飾および5’反転脱塩基修飾を含むこと以外、AW51と同一の配列を有する。NOV340中の脂質は、Mochol、Chems、DOPE、およびPOPCを含む。四塩化炭素(CCL4)の腹腔内注射を週2回行ってスプラーグドーリーラットで肝不全を引き起こした。120〜150gの出発体重を有する雄スプラーグドーリーラットを使用した。動物に対してCCL4:オリーブ油(1:1の比)の腹腔内(i.p.)注射を2週間にわたり2ml/kgで週2回、続いて8週間にわたり1ml/kgで週2回(i.p)行った。動物の体重を週2回測定し、22±3℃の温度、50±20%の湿度、各12時間の明/暗周期、および1時間当たり15〜20回の新鮮空気交換を含む制御環境中に保持した。動物を群別(3匹の動物/ケージ)に収容し、敷料としてオートクレーブ処理トウモロコシ穂軸を使用し、研究期間中、認定照射実験齧歯動物食餌を用いて給餌、不断給餌を行った(ヌトリラボ(Nutrilab)ブランド、テトラゴン・ヒェミーPvt.Ltd(Tetragon Chemie Pvt.Ltd)、バンガロール)。
ビリルビン、体重、およびASTに基づいてラットをランダム化した。1群:シャム対照、2群:path対照−1、3群:path対照−2、4群:試験化合物−0.3mg/kg、5群:試験化合物−1mg/kg、6群:試験化合物−3mg/kg、試験化合物=MTL−CEBPAの群に分けた。4〜6群のラットは、CCL4の継続注射を併用して3mg/kgまでの尾静脈注射を介して8週目から始めて2週間にわたり試験化合物で処置した。3群のラットは、3mg/kgでNOV340/siFLUCが投与された。試験化合物のi.v.注射は、8週、8.5週、9週、および9.5週で行った。
CCL4投与の8週間後の線維症の状態を評価するために、path対照−1群で肝機能試験、ヒドロキシプロリンレベル、および病理組織診断を行った。CCL4投与の10週間後の線維症の状態を評価するために、path対照−2群で肝機能試験、ヒドロキシプロリンレベル、および病理組織診断を行った。疾患の進行を抑えたりまたは線維症を逆転させたりする能力により試験化合物の効力を評価した。評価パラメータは、体重(3日に1回)、肝機能試験(0日、42日(6週)、56日(8週)、63日(9週)、および70日(10週))、研究終了時の病理組織診断、および研究終了時のヒドロキシルプロリンアッセイ(path対照−1では8週および残りの群では10週)であった。病理組織診断には、研究終了時のすべての動物に対するH&E染色、マッソントリクローム染色、およびシリウスレッド染色が含まれていた。肝機能試験には、0、4、6、8、9、および10週で測定されるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン(TBIL)、総タンパク質(TP)、アルブミン、グロブリン、およびアルブミン/グロブリン比が含まれていた。図22A〜22Kに示される8週、9週、および10週のパラメータは、ビリルビン(75%減少、図22F)、循環アラニンおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(60%減少、図22Bおよび図22C)、およびプロトロンビン時間(20%減少、図22I)を含む臨床関連パラメータの逆転および略正常化を実証した。加えて、血清アルブミン(図22H)および総タンパク質(図22G)の有意な増加、アルカリホスファターゼ(ALP)(図22D)およびガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)(図22E)の有意な減少が見られた。肝ヒドロキシプロリンは、用量依存的に有意に減少した(図22K)。体重の有意な増加は関連毒性を伴うことなく観測された(図22A)。
病理診断結果は図23に示した。ナイーブ動物は、褐色を帯びた桃色で鮮明な境界を有して滑らかな健常肝臓を有していた。CCL4および媒体対照で処置された動物の肝臓は、表面全体に広がった複数の硬変結節を含んでより淡色のより堅固な肝臓を有していた。CCL4およびMTL−CEBPA(0.3mg/kg)で処置された動物の肝臓は、表面全体に広がった小さい結節を含んで淡色のより堅固な肝臓であった。この肝臓の色は、CCL4および媒体対照の群の肝臓の色よりも暗色であった。CCL4およびMTL−CEBPA(3mg/kg)で処置された動物の肝臓は、でこぼこの表面を有し非常に軽度の結節を形成して正常な褐色を帯びた色を有していた。
組織学的染色結果は図24A〜24Cに示した。図24Aはシャム対照である。図24Bは、NOV340/siFluc処置(陰性対照)を受けたCCL4処置ラットである。図24Cは、MTL−CEBPA処置を受けたCCL4処置ラットである。MTL−CEBPA処置動物は、対照群の動物よりも低減された線維組織および偽小葉形成を有していた。
以上で考察したデータは、CEBPA−saRNAがすべての臨床関連パラメータにわたり肝不全を逆転することを示した。多くのパラメータは正常に逆転された。血清アルブミンレベルは正常よりも良好でさえあった。
実施例12.急性肝不全を治療するin vivo研究
急性肝不全(ALF:Acute liver failure)は高い死亡率を有する臨床病態である。急性肝不全(ALF)は、既知の先行肝疾患を伴うことなく患者において肝細胞機能の急速かつ重篤な悪化により特徴付けられる病態である。肝毒性薬剤チオアセトアミド(TAA)は本研究でALFを引き起こすために使用した。SDラットのチオアセトアミド(TAA)誘発急性肝不全モデルを確立するために、次のパラメータを測定した。a)生存率、b)肝機能試験(LFT:lever function test)および生化学的パラメータ。
試験系
試験種:ラタス・ノルベギカス(Rattus norvegicus)。
株:スプラーグドーリーラット(SDラット)。
性別:雄。
体重/年齢:150〜200g/7〜8週齢。
群の数:4。動物/群の数:8。
供給元:ハーラン・ラボラトリーズ(Harlan Laboratories)。
試験期間:7日間。
6〜7週齢の雄SDラットをHarlanから調達した。22±3℃の温度、50±20%の湿度、各12時間の明/暗周期、および1時間当たり15〜20回の新鮮空気交換を含む制御環境中に動物を保持した。動物を群別(3匹の動物/ケージ)に収容し、敷料としてオートクレーブ処理トウモロコシ穂軸を使用した。受取り次第、動物を1週間隔離状態にした。消せないマーカペンを用いて動物の尾の付け根に一時的な数を割り当てた。隔離後、動物を実験部屋に移し、気候順化のために実験開始前の1週間にわたり飼育した。
装置:EM−360臨床化学アナライザー(エルバ・マンハイム(Erba Mannheim)、独国)。
疾患誘発
基礎パラメータの群間変動が10%未満になるように考慮して、−2日に基礎体重、ビリルビン、およびASTに基づいて、すべての動物を4つの群にランダム化した。試験番号、研究コード、群番号、性別、用量、ケージ番号、動物数、および動物数詳細を示すケージカードによりケージを同定した。1〜4群:0日に350mg/kg(mpk)、体積5ml/kgの用量で生理食塩水中のTAAの単回腹腔内(i.p)注射によりすべての研究動物に投与を行った。1群は何ら処置を受けず、病理学的対照として機能させた。2群には−24hで、3群には0hで、および4群にはTAA注射後24hでMTL−CEBPAを静脈内注射した。1、2、3、4、および5日に、LFTおよび生化学的パラメータ、たとえば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン(TBIL)、総タンパク質(TP)、アルブミン(ALB)、およびアンモニアに関して動物を評価した。研究の終了時、すべての利用可能な動物をCO2窒息で安楽死させ、血漿を採取して−80℃で貯蔵した。
適切なディスポーザブルシリンジおよび針を用いて尾静脈を介して試験品MTL−CEBPAを静脈内投与した。2、3、および4群の動物にMTL−CEBPAを投与した。用量はすべて、1ml/kg動物体重の投与体積で投与した。
観測
体重および動物死亡
すべての動物に対して個別に初期体重を記録し、その後、7日間の全試験期間にわたり1日1回記録した。健康状態の観測は同一時刻に毎日行った。これには、警戒感、髪質、ケージ内の動き、さらには鼻、眼、口、および耳からの何らかの排出物の存在が含まれる。各群の動物はすべて、TAA投与に起因する死亡に関して毎日モニターした。
生化学分析−LFT(ランダム化のため)
−2日に、弱いイソフルラン麻酔下で後眼窩穿刺法により血液サンプルを採取し、完全自動化ランダムアクセス臨床化学アナライザー(EM−360、製造元:エルバ・マンハイム(Erba Mannheim)、独国)によりALT、AST、ALP、GGT、TBIL、TP、ALB、およびアンモニアを推定するために血漿を分離した。次いで、総ビリルビン、体重、およびASTに基づいて動物をランダム化した。
生化学的パラメータの評価、TAA注射後のLFT
弱いイソフルラン麻酔下で後眼窩穿刺法によりすべての動物から血液サンプルを採取し(TAA注射後1日から研究が終了するまで)、ALT、AST、ALP、GGT、TBIL、TP、ALB、およびアンモニアを推定するために血漿を分離した。
統計解析
一元または二元配置分散分析(ANOVA)を用いて統計解析を行い、適用可能であれば、続いてダネット多重比較検定を行った。p<0.05は統計的に有意であると見なされた。データは平均値±SEMとして表した。
結果
肝臓機能パラメータおよび体重
−2日に、TAA注射によりALFを誘発するためにおよびMTL−CEBPAによる予防的、同時、および防止的治療のために、総ビリルビン(TB)、体重、およびASTレベルに基づいて、すべての動物を4つの群にランダム化した。
病理学的対照(TAA対照)群は、その基礎体重と比較して2、3、4日(p<0.01)、および5日(p<0.05)に体重の有意な減少を示した。異なる時間インターバルでの2群、3群、および4群のMTL−CEBPAの静脈内投与は、異なる日のTAA対照群と比較して1日から5日まで体重の有意な変化を示さなかった。
TAA群および試験品処置群で全研究期間(7日間)にわたり観測された死亡はなかった。局所(注射部位)徴候および一般的臨床徴候に関して動物を定期的にモニターした。TAA注射後1日にすべての動物に嗜眠状態が見られたが、後続日に正常状態が回復された。
TAAの単回i.p注射は、その基礎読取り値と比較して、1日(p<0.05)および2日(p<0.001)のALT、1日および2日(p<0.001)にAST、3日(p<0.05)のGGT、3日(p<0.05)のビリルビンなどの肝機能パラメータのほとんどで有意でない増加をもたらし、1日(p<0.01)、2日(p<0.001)、3日(p<0.05)のアルブミン、1日および2日(p<0.001)のアンモニアなどの他のパラメータの有意な減少をもたらした。
防止的MTL−CEBPA注射では示されないが、予防的、同時MTL−CEBPA注射では、処置後のさまざまな日のTAA対照と比較して、ALT(p<0.05)、AST(p<0.05)、ALP(p<0.001)、GGT(p<0.05)、ビリルビン(p<0.05)などの肝機能パラメータで、および総タンパク質(p<0.01)、アルブミン(p<0.01)、アンモニア(p<0.01)などの他のパラメータで、有意な改善が示された(図25A〜25H)。
考察および結論
本研究では、TAA注射を施すことによりSDラットにおいて腹腔内に急性肝不全モデルが確立された。TAA注射後、いずれの群でも死亡は観測されなかった。TAA注射は、病理学的対照(TAA対照)動物で観測されたその基礎レベルと比較して、AST、ALT、ビリルビン、GGT、総タンパク質、アルブミン、アンモニアなどの肝生化学的パラメータに有意な変化をもたらした。TAA対照動物では体重の有意な減少も観測された。予防的(−24時間)におよびTAA注射と同時(0時間)に注射した場合、MTL−CEBPA処置は、LFTパラメータおよびアンモニアの有意な改善を示した。
実施例13.糖尿病治療のin vivo研究
グルコース代謝の調節におけるCEBPAの役割を考慮して、CEBPA活性化が臨床関連血液パラメータを改善可能であるかを決定するために糖尿病のラットモデルで研究室を行った。高脂肪食により6匹のウィスターラットでII型糖尿病を誘発した。次いで、NOV340リポソーム中に製剤化された合計4.35mg/kgのCEBPA−saRNA(AW1−50)または非標的化FLUC siRNAを用いてラットを治療した。最後の治療の6日後、血液を採取し動物を屠殺して血清化学および重量の変化を評価した。
図26A〜26Nに示されるように、対照と比較して、NOV340−CEBPAで治療されたラットは、肝コレステロール、血清中AST、空腹時グルコース、およびトリグリセリド対HDL−c比の有意な減少を示した。また、体重さらには肝重量対体重比の有意な減少を有していた(図26Lおよび図26N)。インスリンレベルはCEBPA−saRNA治療(図26K)により増加する。こうした結果から、CEBPA−saRNAによるCEBPAアップレギュレーションは糖尿病の管理に有益でありうることが示唆される。CEBPA−saRNAはまた、脂肪肝疾患およびインスリン抵抗性を治療するためも使用しうる。
実施例14.NASH治療のin vivo研究
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝臓への脂肪の蓄積により誘発されうる肝炎および肝損傷である。それは非アルコール性脂肪肝疾患と呼ばれる病態群の一部である。NASHは、肝臓の瘢痕化を誘発しうると共に、このことからは硬変を生じうる。NASH治療におけるMTL−CEBPAの作用は、メチオニンコリン欠乏(MCD:methonine choline deficient)食で飼育されたる動物を用いて研究される。MCD食は、NASHに類似した肝傷害もたらす。
本研究では、C57BL/6マウスにおいてMCD誘発NASHを治療するためにCEBPA−saRNAを使用した。研究期間は6週間であった。0日の体重に基づいて雄7〜8週齢C57B/L6マウスをランダム化した。1群は4週間にわたり2群は6週間にわたり普通食を摂取した。3群は4週間にわたり4〜8群は6週間にわたりMCD食を摂取した。4週でビリルビン、体重、およびALTレベルに基づいて治療群(4〜8群)をランダム化した。4〜8群はi.v.注射によるPBS治療または治療剤治療を毎週2回受けた(4、4.5、5、および5.5週)。
1群および3群は4週で終了した。2群および4〜8群は6週で終了した。肝機能試験(LFT)(ALT、AST、ALP、アルブミン、総ビリルビン、および肝トリグリセリド(TG))ならびに肝臓の病理組織診断(H&E染色、オイルレッドO染色、およびマッソントリクローム)を行った。血清中サイトカイン/マーカ(IL1β、IL6、およびTNF−α)ならびにα2マクログロブリンを測定した。
図27A〜27Bは体重および飼料消費量の変化を示した。予想どおり、MCD食治療は、研究全体にわたり体重および飼料消費量の有意な減少を示した。治療群(G5〜G8)は、MCD食対照と比較して体重および飼料摂取量の有意な変化を示さなかった。したがって、MTL−CEBPA治療は体重および飼料消費量を変化さなかった。図27C〜27Gは、ALT、AST、ALP、ビリルビン、およびアルブミンのレベル変化を含むLFT結果を示した。MCD食を摂取した動物は、普通食対照と比較してALT、AST、ビリルビンなどのLFTパラメータの有意な増加およびタンパク質レベルの低減を示した。MTL−CEBPAによる治療は、ALTおよびASTのレベルの有意な減少を示した。低減はまた、MTL−CEBPA治療によりALPおよびビリルビンでも観測された。図27Hは、肝トリグリセリド(TG)のレベル変化を示した。肝TGは、MCD食対照群で有意に増加した。MTL−CEBPAによる治療は、肝TGレベルの有意な減少を示し、肝TGを逆転して正常レベルにした。
したがって、CEBPA−saRNA治療はNASH治療に使用しうる。
実施例15.CEBPA−saRNAによる他のin vivo研究−−DEN誘発HCCのラットモデルにおけるMTL−CEBPA効力の評価
本研究の目的は、MTL−CEBPAで治療することによるCEBPAの活性化がHCCのラットモデルにおいて臨床パラメータを改善するかを調べることであった。
実験計画:雄ウィスターラットをDENで処置してHCCを誘発した。簡潔に述べると、動物をDENで9週間処置した後、3週間無処置にした。次いで、体重に従って動物を3つの群にランダム化した(6〜7匹の雄/群)。1群は、1日に屠殺して処置前対照として機能させ、2および3群は、NOV340中に製剤化された非標的化dsRNA(siFLUC)またはMTL−CEBPAのいずれかにより4mg/kgの用量で3回i.v.処置した(1、3、および5日)。12日に、血液を採取し、すべての動物を屠殺した。腫瘍重量および肝重量を測定し、肝組織のセクションをmRNA分析のためにただちにフラッシュ凍結した。CEBPAおよびアルブミンのmRNAレベルをqRT−PCRにより決定した(ハウスキーピング遺伝子:GAPDH、トリプリケート測定)。
結果:図28に示されるように、NOV340/siFLUC(非標的化リポソーム対照、媒体対照)と比較して、MTL−CEBPAで処置された動物は、肝臓においてCEBPA mRNA発現の有意な増加を示した。アルブミンmRNA発現が増加する傾向が観測されたが、これは統計的に有意ではなかった。
図29A〜29Iに示されるように、NOV340/siFLUC対照と比較して、MTL−CEBPAで処置されたラットは、血清中アンモニア(p<0.05)の有意な減少、さらには体重(bw:body weight)、腫瘍体積、コレステロール、およびヘモグロビンの変化を示し、これらは統計的に有意な傾向にあった(bw:p=0.063、腫瘍体積:p=0.10、コレステロール:p=0.08、ヘモグロビン:p=0.05)。処置前対照と比較して、MTL−CEBPAで処置されたラットは、AST、ALT、およびビリルビンの有意な減少を示した(p<0.05)。
結論:HCCのDEN誘発ラットモデルでは、MTL−CEBPA処置は、NOV340/siFLUC対照と比較して、標的エンゲージメント(肝臓におけるCEBPA mRNAのアップレギュレーション)ならびにヘモグロビン、アンモニア、およびコレステロールを含めていくつかの疾患マーカで改善をもたらした。動物数がすくないため統計的に有意でないが、MTL−CEBPAで処置された群は、NOV340/siFLUC対照よりも約80%小さい平均腫瘍サイズを有して腫瘍成長阻害の傾向を示した。処置前疾患対照との比較に見られるように、MTL−CEBPAは、疾患症状を安定化させただけでなく、AST、ALT、およびビリルビンを含めていくつかの肝毒性血清中マーカを逆転し、CCL4線維症モデルでこれらのマーカに見られた利益と一致する。まとめると、こうした結果から、MTL−CEBPAは肝機能を改善可能であると共に、DEN誘発肝線維症およびHCCの広く使用されるラットモデルで腫瘍成長を低減可能であることが示唆される。
実施例16.CEBPA−saRNAとAgoタンパク質との相互作用の研究
HepG2細胞をビオチン化アンチセンス鎖(AS)およびセンス鎖(ss)−CEBPA51でトランスフェクトし、非トランスフェクト対照またはスクランブルビオチン対照と比較した。採取時点(72時間)で、ビオチン化コンジュゲートを1%ホルムアルデヒドで架橋し、続いてストレプトアビジンアガロースビーズ上に固定した。次いで、抗Ago1、Ago2、Ago3、およびAgo4との共免疫沈降(Co−IP)を行った。アイソタイプIgGを陰性対照として使用した。次いで、共免疫沈降されたコンジュゲートをダイナビーズ(Dynabead)−プロテインGで固定した。プルダウン免疫複合体を洗浄し、磁気カラム上で溶出させた。次いで、サンプルをSDS−PAGE上で分離し、それぞれのアルゴノート抗体に対してウェスタンブロッティングのためにPVDF上に移した。
図30Aに示されるように、Ago2は、SS−ビオチン鎖と比較してAS−ビオチン鎖上に強く現われる。Ago1、3、および4は、いずれの鎖上にも現われない。このことから、CEBPA−saRNAのアンチセンス鎖はAgo2とは会合するが、他のアルゴノートとは会合しないことが示唆される。
さらなる研究では、マウス胚性線維芽(MEF)細胞でAgo2をノックアウトした。野生型細胞およびAgo2ノックアウト細胞を24ウェルプレート中に9.8×105/ウェルで播種した。20nMのCEBPA51およびFlucを以上に記載したように(フォワード+リバース)トランスフェクトした。48時間の時点でRNAを採取してsaRNAの活性を決定した。図30Bに示されるように、CEBPA転写レベルは、CEBPA51でトランスフェクトされた野生型細胞でFlucの2倍だけ増加した。図30Cは、p21転写レベルがCEBPA51でトランスフェクトされた野生型細胞でFlucの4倍だけ増加したことを示した。しかしながら、Ago2ノックアウト細胞ではCEBPAも21も誘導が測定されなかった。Ago2はsaRNAによる遺伝子活性化に必要とされることが実証される。
実施例17.CEBPA−saRNAの製剤化
CEBPA−51 saRNAをリポソーム内にカプセル化する。使用した送達技術は、マリーナバイオテクノロジー(Biotech.)が所有するNOV340スマーティクルズ(SMARTICLES)(登録商標)技術である。このナノ粒子の脂質成分は、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2ジオレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステリル−ヘミスクシネート(CHEMS)、および4−(2−アミノエチル)−モルホリノ−コレステロールヘミスクシネート(MOCHOL)で構成される。NOV340は、6:24:23:47のモル比でPOPC、DOPE、CHEMS、およびMOCHOLからなる。ナノ粒子は生理pHでアニオン性であり、その特有の脂質比はリポソームに「pHチューナブル」特性および電荷を付与する。これらはマイクロ環境の周囲pHに依存して変化し、生理学的膜を横切る移動を容易にする。広範な即時肝分離を回避するためにスマーティクルズ(SMARTICLES)(登録商標)ナノ粒子のサイズを設定する。平均直径は概略で約50〜約150nm、または約100〜約120nmであり、i.v.注射後、より長時間の全身的分布および向上した血清中安定性が促進され、より広い組織分布がもたらされ、報告された肝臓、脾臓、および骨髄で高レベルになるようにする。
ホスホロアミダイトモノマーを逐次的にカップリングさせることによりCEBPA−51の各鎖を固体担体上に合成する。合成は、自動シンセサイザー、たとえば、アクタ・オリゴパイロット100(Akta Oligopilot 100)(GEヘルスケア(GE Healthcare))、および固体担体が充填された合成反応器(カラムタイプ)に対して特定の体積の試薬および溶媒の送入/送出を行うテクニクロム(Technikrom)シンセサイザー(アサヒ・カセイ・バイオ(Asahi Kasei Bio))を用いて行われる。プロセスは、反応器に接続された指定の貯蔵槽に試薬を仕込むことおよび適切な固体担体を反応槽に充填することから始まる。試薬および溶媒のフローは、流量および圧力の自動記録を行いながら一連のコンピュータ制御バルブおよびポンプにより制御される。固相法は、合成の各工程で溶液相中の試薬から反応生成物が固相に結合されるため、固体担体を溶媒で洗浄することにより反応生成物を効率的に分離することが可能である。
CEBPA−51合成の概要は以下の通りである。
CEBPA−51合成の詳細なフローチャートは以下の通りである。
溶液中に存在するCEBPA−51の一般サイズおよび純度は、主に二本鎖体と一本鎖体とを区別するためにサイズ排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)により決定される。CEBPA−51二本鎖の融点は配列特異的である。それは二本鎖の熱誘起「融解」(デハイブリダイゼーション)時に形成されるUV(260nm)対T(℃)曲線の変曲点として決定される。このTm値は、260nmの吸収増加(濃色効果)との関連で81.3℃と決定された。吸光係数は、ナトリウム塩として≧90%の含有率のオリゴヌクレオチドに基づいて260nmおよび25℃でPBS中で決定した。分子質量は、製造プロセス時にLC−MSにより両方の一本鎖に対して決定される。放出試験では、二本鎖を一本鎖に分離し、IPRP−HPLCとESI−MSとの組合せにより行われるMSにより各ピークを分析した。
不純物
産物関連不純物:
潜在的産物関連不純物は、マルチマー、アグリゲート、さらには伸長形、トランケート/分解形である。これらはSE−HPLCにより制御される。
さらに不完全または非効率な合成の結果として、欠如している点で異なるポリマー副産物、たとえば、n−1またはn−2ヌクレオチドを生じる可能性がある(すなわち、「n=21」の場合、センス鎖およびアンチセンス鎖の完全な鎖長の21merの代わりに20merまたは19mer)。また、1または2ヌクレオチドによる配列伸長が起こって、n+1またはn+2オリゴヌクレオチド(22−または23mer)を生じる可能性もある。しかしながら、後者の可能性はより低い。これらの変異体は、SE−HPLCでは分解能に制限があるために同定できないが、IPRP−HPLCでは決定可能である。
さらにまた、リボヌクレオチドの取込みまたは修飾の誤りが起こって、産物関連不純物を生じる可能性もある。後者は、イオン対逆相高圧クロマトグラフィー(IPRP−HPLC)MSまたはMS/MSシーケンシングのいずれかにより検出される。
プロセス関連不純物:
潜在的プロセス関連不純物は、化学合成で残留する試薬、反応剤、および溶媒を含む。製造プロセスで使用される固相および試薬による所与のRNA合成に基づいて、以下のプロセス関連不純物が予想されうる(表14)。
製剤
必要量のCEBPA−51をpH4.0の酢酸ナトリウム/スクロース緩衝液に周囲温度で溶解させ、かつ必要量の脂質を55℃で無水エタノールに溶解させる。クロスフローエタノール注入技術によりリポソームを調製する。リポソーム形成直後、サスペンジョンをpH9.0の塩化ナトリウム/リン酸緩衝液でオンライン希釈する。捕集した中間生成物を0.2μmの細孔サイズのポリカーボネート膜に通して押し出す。限外濾過により目標saRNA濃度を達成する。pH7.5のスクロース/リン酸緩衝液を用いて後続の透析濾過により非カプセル化薬剤物質および残留エタノールを除去する。その後、濃厚リポソームサスペンジョンを0.2μm濾過し、5±3℃で貯蔵する。最後に、バルク生成物を製剤化し、0.2μmで濾過し、20mlバイアル中に充填する。
注入のために濃縮溶液としてMTL−CEBPA提供する。各バイアルは、約7.5のpHの20mlのスクロース/リン酸緩衝液中に50mgのCEBPA−51(saRNA)を含有する。
以下の表15にMTL−CEBPAの組成を提供する。
サスペンジョンの形態でMTL−CEBPAを供給し、栓付き20mLガラスバイアル中にパッケージ化する。シリンジにより主容器から20mlを確実に抜き出せるように、20.6ml(21.4gと均等)のオーバーフィルがある。製造過剰はない。処方は以下の通りである。
賦形剤
MTL−CEBPA中の賦形剤は、次の2つの群:リポソーム形成脂質賦形剤(NOV340−マリーナ・バイオテック(Marina Biotech)が所有するスマーティクル(Smarticles)(登録商標)技術)および緩衝液形成賦形剤のスクロースおよびリン酸塩(表15も参照されたい)に分けることが可能である。リポソームおよびその組成物の開発については、アンドレアコス(Andreakos E.)ら著、アースリティス・アンド・リューマトロジー(Arthritis Rheum)、2009年、第60巻、第4号、p.994〜1005(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)により記載されている。使用したスクロース−リン酸緩衝液(pH7.5)は、賦形剤および薬剤物質との良好な適合性を有することが知られている。
リポソーム形成脂質賦形剤は、以下の表16に示されるように6:24:23:47のモル比で1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホエタノール−アミン(DOPE)、コレステリル−ヘミスクシネート(CHEMS)、および4−(2−アミノエチル)モルホリノ−コレステロールヘミスクシネート(MOCHOL)で構成される。
MTL−CEBPA製造プロセスの全体像は図31に示される。以下の表17は詳細プロセスである。
最初にエタノールに脂質を溶解させ、個別に酢酸ナトリウム/スクロース緩衝液pH4.0にCEBPA−51を溶解させることにより、MTL−CEBPAを調製した(工程1aおよび工程1b)。
次いで、2つの溶液を注入プロセスにより組み合わせて一次ベシクルを形成し、その後、エタノール濃度を急速に減少させ、pH調整緩衝液(塩化ナトリウム/リン酸緩衝液pH9.0)の添加によりpHを急速に増加させる(工程2)。
次いで、中間リポソーム混合物をポリカーボネート膜に通して押し出すことにより、大粒子および凝集物のサイズを低減する(工程3)。
次いで、バルク混合物を限外濾過により濃縮し、緩衝液を少なくとも7体積のスクロース/リン酸緩衝液pH7.5と交換することによりエタノールおよび塩の濃度を低減する(工程4)。次いで、生物汚染を低減するためにこのバルク生成物を0.2μmフィルターに通す(工程5)。生成物を最終目標濃度に調整し、0.2μm滅菌濾過により滅菌する(工程6)。続いて、バルク生成物を無菌バイアル中に充填する(工程7)。充填バイアルの最終放出試験を行う(工程8)。現在のインプロセス制御は以下のそれぞれの図に示されている。本明細書に規定される仕様に基づく薬剤生成物の最終放出は、この薬剤生成物で行われる。
最終バイアル充填および放出を含むプロセスの終了後、DPバイアル全体を−20℃以下で貯蔵する(工程9)。
pH4.0の緩衝液に可溶化されたCEBPA−51は、この環境で正に荷電されるMOCHOLと相互作用するため、リポソーム形成時点における脂質対薬剤比は、リポソーム内へのRNAのカプセル化効率に特に重要である。カプセル化収率を最適化するために、EtOH溶液中の脂質濃度を一定に維持し、溶液中のCEBPA−51の濃度を1.06〜3.44mg/mlの範囲内で変化させた。得られた結果から、溶液中のCEBPA−51濃度を減少させることによりカプセル化効率のわずかな増加が見られることを示唆する傾向が明確に示された。
容器クロージャ系
MTL−CEBPA用として選択した容器クロージャ系は、20mmクロージャを含む標準的20ml血清バイアル構成である。ガラスバイアルは、浸出の可能性を最小限に抑えて生成物の良好な保護を提供する透明USPタイプIボロシリケートガラスから作製される。このタイプのガラスはまた、凍結物の貯蔵に重要な良好な熱安定性を有する。栓は、標準的クロロブチルゴムコンパウンドから作製され、生成物接触表面は、生成物吸着の可能性を最小限に抑えるフルオロポリマーで被覆される。最後に、アルミニウムクリンプキャップは、バイアルに対する栓の確実なシールを提供し、使用時までゴムセプタムの外部界接部を潜在的汚染から保護する。
微生物学的属性
MTL−CEBPAは無菌単回使用バイアルとして提供される。微生物の成長を阻害するための保存剤は添加しない。ゴム栓付きの標準的ガラス血清バイアルおよびアルミニウムクリンプキャップは、微生物汚染を防止することが十分に証明されたバリアを提供する。
MTL−CEBPAの生物汚染は0.2μmフィルターに通して濾過することにより低減される。無菌バイアルに充填する直前に、生成物は滅菌グレード0.2μmフィルターに通すことにより滅菌される(工程6、DP)。パッケージング成分はすべて、「即使用可能」な無菌状態で提供される。それらは追加の処理を行うことなくISOクラス5環境の無菌条件下で取り扱われる。
MTL−CEBPAは−20℃±5℃で凍結貯蔵され、かつ光から保護される。輸送はドライアイスが充填されたクーラに入れて行われる。MTL−CEBPAは、−20℃で6ヶ月間まで貯蔵したとき安定であり、わずかな減少の傾向も変化の傾向も示さない(分析のバラツキの範囲内)。凍結状態では材料品質の急激な低下は非常に起こりにくいと考えられるため、−20℃で貯蔵された材料では12ヶ月の貯蔵寿命が提案される。
MTL−CEBPAはi.v.注入(250mL)により投与される。2.5mg/mLのsaRNAの濃度のMTL−CEBPAが室温で解凍され、その後、静脈内使用では濃度にかかわらず250mLの体積が得られるように0.9%正常生理食塩水中にサスペンジョンが希釈される。
試験品および希釈剤は、注入バッグを手で反転させて混合一体化させる(起泡を回避するため)。
MTL−CEBPAは、注入ポンプを用いて静脈(末梢または中心)内に60分間にわたり一定速度で投与される。
調製溶液の貯蔵:室温(15〜25℃)で少なくとも6時間の最大予想使用寿命。
CEBPA−51 saRNAおよびMTL−CEBPAの性質は表18−1および表18−2に示されており、一般に、MTL−CEBPAは乳白色サスペンジョンである。蛍光検出により測定されるsaRNAカプセル化は≧75%である。動的光散乱により測定される粒子サイズは、約50nm〜約150nmまたは約100〜約140nmである。動的光散乱により測定される多分散性指数は≦0.200である。動的光散乱により測定されるζ電位はpH7.2〜7.8の≦−30.0mVである。電位差測定法により測定されるpH値は約7.2〜約7.8である。凝固点降下により測定されるオスモル濃度は約280〜約400mOsmol/kgである。RP−HPLCにより測定される不純物saRNAは≦15%である。
saRNAのカプセル化:全体および「外部」遊離のsaRNA含有量は、リボグリーン(RiboGreen)とsaRNAとの複合体化による蛍光強度を測定して%カプセル化を決定するすることにより定量される。薬剤生成物サンプル溶液は、2つの異なる条件で分析され、外部のsaRNAに対しては未処理サンプルおよび全体のsaRNAに対してはトリトンX−100(Triton X−100)で処理されたサンプルが分析される。RNAの含有量は、既知濃度を含む標準から生成された校正曲線を用いて決定される。
カプセル化saRNAのパーセント含有量は次のように計算される。
E(%) %カプセル化saRNA
C
T saRNAの全含有量
C
F 遊離(外部)saRNAの含有量
粒子サイズおよび多分散性指数:リポソームのサイズおよびPDIは、ゼータサイザー・ナノZSインストラメント(Zetasizer Nano ZS instrument)(マルバーン(Malvern))を用いて光子相関分光法(PCS)により決定される。
ζ電位:表面電位は、ゼータサイザー・ナノZSインストラメント(Zetasizer Nano ZS instrument)(マルバーン(Malvern))を用いてレーザドップラ速度/レーザドップラ流速測定(LDV/LDA)により決定される。
pH:リポソーム薬剤生成物のpHは、ガラス電極を用いて20〜25℃で測定される。
オスモル濃度:オスモル濃度の決定は、オスモマット(Osmomat)030(ゴノテック(Gonotec))を用いた純水と比較する凝固点降下の原理に基づく。
残留エタノール:リポソームクルクミン薬剤生成物中の残留エタノールは、フレームイオン化検出器(GC/FID)を用いてヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより定量される。
不純物saRNA:saRNA不純物の含有量(面積%)は、ウォーターズ・エックスブリッジ(Waters XBridge)C18カラム(4.6×100mm、粒子サイズ3.5μm)を用いてイオン対逆相(IPRP)HPLCにより定量される。ナノ粒子は2%トリトンX−100(Triton X−100)緩衝液で破壊され、放出されたsaRNAは、水中100mMヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/7mMトリエチルアミン(TEA)および100%メタノールのグラジエントを用いてHPLCカラムで分離される。RNAは260nmで検出される。不純物(面積%)の含有量は、全ピーク面積(100面積%)から主要鎖(アンチセンス鎖、センス鎖)のピーク面積(%)を減算することにより決定される。
実施例18.一次ヒトPBMCにおけるCEBPA−51の免疫安全性研究
研究目標:本研究の目的は、ヒト血液細胞においてex vivoでTLR経路の活性化により測定されるCEBPA−51の免疫安全性を評価することであった。
実験計画:CEBPA−51によるサイトカインの誘導は、2名のヒトドナー(huPBMC)から単離された末梢血単核細胞で試験した。
TNF−α:huPBMCは、トランスフェクション試薬としてドータップ(Dotap)を用いて133nMのCEBPA−51または対照配列RD−01010(陽性対照)およびRD−01011(陰性対照)でトリプリケートでトランスフェクトした。トランスフェクション試薬は、モック対照として単独で使用した。加えて、対照ODN2216(CpG−オリゴヌクレオチド)およびRD−01002(コレステロールコンジュゲートsiRNA)は、トランスフェクションを用いずに500nMの濃度で直接添加した。20時間のインキュベーション後、トリプリケートトランスフェクションからの上清をプールし、市販のヒトTNF−αELISAアッセイ(デュプリケートでサンプルを測定した)を用いてTNF−α分泌を測定した。
IFN−α:huPBMCは、トランスフェクション試薬としてジーンポータ−2(Geneporter−2)を用いて133nMのCEBPA−51または対照配列RD−01010(陽性対照)およびRD−01011(陰性対照)でトリプリケートでトランスフェクトした。トランスフェクション試薬は、モック対照として単独で使用した。加えて、対照ODN2216(CpG−オリゴヌクレオチド)およびRD−01002(コレステロールコンジュゲートsiRNA)は、トランスフェクションを用いずに500nMの濃度で直接添加した。20時間のインキュベーション後、トリプリケートトランスフェクションからの上清をプールし、市販のヒトIFN−αELISAアッセイ(デュプリケートでサンプルを測定した)を用いてIFN−α分泌を測定した。
結果:ヒトPBMCによるサイトカインTNF−αおよびIFN−αの分泌は、CEBPA−51または対照オリゴでトランスフェクション後に測定した。CEBPA−51は、20時間のインキュベーション後、細胞培養培地へのいずれのサイトカインの有意な分泌も誘導しなかったが、陽性対照は予想されたサイトカイン放出をトリガーした(図32Aおよび32Bを参照されたい)。
結論:CEBPA−51は、CEBPA−51のトランスフェクション後、サイトカインTNF−αおよびIFN−α放出の欠如により示唆されるように、ヒトPBMCにおいてTLR−8またはTLR7/9の経路の活性化をトリガーしなかった。こうした結果から、化学修飾saRNAは免疫刺激活性がないことが示唆される。
実施例19.第I相試験および安全な開始用量の選択
提案されたファーストインヒューマン臨床試験
FIH試験は、進行肝癌の患者において安全性および耐容性を調べるためのRNAオリゴヌクレオチドMTL−CEBPAを用いた多施設オープンラベル第1相臨床試験であろう。
適応症
肝細胞癌または肝外の原発癌タイプに由来する二次肝腫瘍を呈する進行期癌により特徴付けられる組織学的進行癌を有し、いずれの療法も手術も適さないと見なされるまたは局所療法およびソラフェニブ後で進行している患者の治療。
試験目的
主目的:
肝細胞癌または肝外の原発癌タイプに由来する二次肝腫瘍を呈する進行期癌により特徴付けられる組織学的進行癌の参加者に3週間にわたりMTL−CEBPAの投与を毎週1回行って安全性および耐容性を決定すること。
副目的:
MTL−CEBPAの推奨第2相用量(RP2D)を決定すること、MTL−CEBPAの薬動学(PK:pharmacokinetics)パラメータを特徴付けること、MTL−CEBPAの薬力学(PD:pharmacodynamics)プロセスを評価すること、特に血清中のアルブミンおよびビリルビンに対するMTL−CEBPAの作用を特徴付けること、MTL−CEBPAの投与後のHCC患者の健康関連の生活の質の変化を評価すること。
バイオマーカ
バイオマーカストラテジー
予測バイオマーカ
組込み/排除バイオマーカ
これまでのところ、MTL−CEBPAの予測バイオマーカも遺伝子シグネチャーも同定されていない。したがって、試験の患者適格性基準はかかるバイオマーカを含まない。
探索予測バイオマーカ
CEBPA−51による前臨床データおよびツール化合物ならびに科学文献では、CEBPAに対するsaRNAへのHCC反応の複数のバイオマーカ仮説が提案される。たとえば、CEBPA saRNAに反応する腫瘍細胞成長停止は、CEBPA発現の基礎レベルに依存しうる。C/EBP−αタンパク質を不活性化する特定の調節機序は、CEBPA saRNAへの抵抗性をもたらし、その例として、PI3K−AKT経路活性化またはC/EBP−βのドミナントネガティブ型の過剰発現の結果としてのSer193の脱リン酸化が挙げられる。
本研究は、腫瘍反応に対するプロスペクティブ探索バイオマーカを含まない。しかしながら、腫瘍感受率/耐性のバイオマーカのレトロスペクティブ解析は保管された生検に基づいて行いうる。
MTL−CEBPAへの線維症肝または硬変肝の反応性について、これまでのところ決定的なバイオマーカ仮説は構築されていないが、特定のエンドクリンループ、たとえば、インスリンおよびTNF−αを介するものは、CEBPA活性をモジュレートすることが知られている。予測バイオマーカのプロスペクティブ解析は現時点では想定してないが、レトロスペクティブ解析は保管された組織に対して行いうる。
反応バイオマーカ
標的エンゲージメント
CEBPA−51 saRNAの分子標的はCEBPAプロモータである。CEBPA転写のアップレギュレーションは、CEBPA mRNAのqRT−PCRを介してまたはC/EBP−αタンパク質の免疫染色を介して組織サンプルで測定可能である。
いくつかの探索方法は、CEBPA発現の変化を測定して機序証明を確立するために探究されよう。拡張局面では、C/EBP−αタンパク質レベルの免疫染色のために治療前/後で循環腫瘍細胞(CTC:circulating tumour cell)が捕集されよう。いずれか対応のある治療前/後の生検から十分な組織が得られれば、前臨床モデルで用いられるqRT−PCR法によりCEBPA mRNAレベルを調べたり、さらには免疫染色法によりC/EBP−αタンパク質レベルを調べたりすることを目指すことになろう。WBCなどのサロゲート組織の使用はこれまでのところ検証されていないが、MTDが確立されれば導入しうる標的エンゲージメントを実証するための他の潜在的選択肢として探索されよう。
PDバイオマーカ
PDバイオマーカ、C/EBP−αの直接転写制御下にある肝特異的遺伝子およびそのそれぞれのタンパク質産物(基端バイオマーカ)、さらにはC/EBP−α依存の分化または増殖プログラムのマーカである下流遺伝子標的およびタンパク質(先端バイオマーカ)を含む。C/EBP−αのいくつかの基端バイオマーカは、血清中でモニター可能な分泌タンパク質、たとえば、アルブミン、AFP、トランスフェリン、凝固因子などである。
血清中アルブミンは、サンプル採取が容易でありかつ検証臨床アッセイが入手可能であることから一次肝特異的PDバイオマーカとして選択された。他の血清ベースのバイオマーカは、追加の探索PDバイオマーカとして研究中である。
治療前/後の腫瘍生検の入手可能性に依存して、細胞周期調節タンパク質p21の変化は、腫瘍細胞成長停止のマーカとしてIHCにより腫瘍切片で評価されよう。
サロゲート効力バイオマーカ
血清中アルブミンおよび総ビリルビンのレベルは本研究の副エンドポイントである。アルブミンおよびビリルビンは総合肝機能状態の検証バイオマーカである。加えて、アルブミンおよびビリルビンの血清中レベル(ALBIグレード)の組合せ尺度は、進行HCCおよび肝疾患の患者において生存率と相関することが示されている。血清中アルブミンおよびビリルビンは、両方とも肝疾患の前臨床モデルにおいてMTL−CEBPA治療に反応することが示されており、対照群と比較してアルブミンの改善およびビリルビンレベルの略正常化をもたらす。
CTCおよび循環DNAは腫瘍反応の探索バイオマーカとして拡張局面で採取されよう。血清中アルファ−フェトプロテイン(AFP)はHCC負荷の検証マーカである。しかしながら、AFP遺伝子はまた、正常肝臓においてC/EBP−αの制御下にあり、MTL−CEBPA治療がAFP血清中レベルを増加させることが期待される。肝臓および腫瘍における反応が反対であるため、AFPレベルは慎重に解釈する必要があるであろう。
肝機能状態は、血清中化学、たとえば、アルブミン、総タンパク質、ビリルビン、ALP、GGT、ALT、AST、およびアンモニアのレベルにより評価されよう。MTL−CEBPA治療に対する腫瘍反応はCTまたはMRIによりモニターされ、標準的基準(RECIST)を用いて評価されよう。
薬剤PKおよび生体内分布
MTL−CEBPAのADMEモニタリングは血漿中の総APIレベルの決定に限定されよう。遊離dsRNAの急速代謝およびクリアランスが理由で、全APIレベルは主にカプセル化CEBPA−51を表すであろう。ナノ粒子およびその脂質成分は個別にモニターされないであろう。循環状態のインタクトナノ粒子のレベルは、APIの合計レベルに比例すると推定される。CEBPA−51の組織内分布および代謝物は測定されないであろう。
バイオマーカアッセイ
すべての血清中バイオマーカは地方の公認実験室により評価されよう。生検の遺伝子発現は検証免疫組織化学(IHC:Immunohistochemistry)アッセイにより測定されよう。
プログラム特異的PKアッセイは参加者の血漿中の総APIを測定するために開発された。アッセイは、2つのRNA鎖を分離するためのCEBPA−51の熱変性、それに続く固定化相補的PNAプローブへのアンチセンス鎖のハイブリダイゼーションに基づく。このため、アッセイは、RNA二本鎖自体ではなく、アンチセンス鎖(およびPNAプローブにハイブリダイズ可能なその代謝物のいずれか)の濃度を測定する。アッセイは、独国のアキソラブスGmbH(Axolabs GmbH)により開発され、非臨床使用および臨床使用で検証された。
研究アウトカム尺度
主アウトカム尺度
生命徴候(血圧、脈拍、体温、呼吸数を含む)の連続測定、ECG(12リード)、および安全性実験室データ(血液学、凝固、臨床化学、凝血、ならびに補体因子B(Bb)および補体因子3a(C3a)の活性化断片を含む)、さらには参加者および研究者の両方による耐容性の評価の記述が収集されよう。
最初のMTL−CEBPA注入後に報告されたすべての有害イベントは、重症度、予測可能性、および試験薬剤との関係に関して、「関連なし」、「可能性あり」、「予想される」、または「明白である」に類別されよう。
MTL−CEBPAの安全性および耐容性は、毒性基準(NCI CTCAE v4.03)に従ってグレード分けされたならびに体組織および診断によりカテゴリー化された有害イベントの頻度により評価されよう。
副アウトカム尺度
MTL−CEBPAの血漿中濃度は、静脈内投与後に血漿中のMTL−CEBPAの薬動学的(PK)性質を決定するためにハイブリダイゼーションに基づくHPLCアッセイを用いた規定の時間点で分析されよう。
このプロトコルは、アルブミン、ビリルビン、肝酵素レベル、ケモカイン、および腫瘍マーカを含むサロゲートPDバイオマーカの測定の収集を計画する。腫瘍組織における遺伝子およびタンパク質の発現レベルはまた、静脈内投与後の肝腫瘍参加者におけるMTL−CEBPAの薬力学特性の決定を支持するであろう。
自己管理FACT−Hepアンケートを用いて、健康関連の生活の質のアンケートデータは、1日、15日、8週、およびパート1bのEOSで収集されよう。
研究設計
本研究は、多施設、オープンラベル、ファーストインヒューマンの第1相臨床試験であり、2つのパート、すなわち、用量漸増およびそれに続く用量拡大からなる。
パート1a − 用量漸増
研究の用量漸増パートは、標準的3+3設計に従う。量は約20〜約160mg/m2である。進行HCCの参加者または適格性基準を満たす二次肝腫瘍の参加者は、薬剤関連グレード3毒性(NCI−CTCAEバージョン4.03)が発生するまでまたは以上に規定されたように血清中アルブミンの最大改善が観測されるまで、次の用量、すなわち、28、47、70、98、130、160mg/m2の用量でそれぞれ3名の参加者からなる6つのコホートにリクルートされよう。用量漸増手順は以上に記載される。用量およびスケジュールは研究から生じるデータに依存して変更しうる。
第1の用量のコホートでは、最初の参加者は、研究の開始用量でMTL−CEBPA治療を受ける。MTL−CEBPAは、3週間にわたり週1回60分間の静脈内注入により投与され、続いて1週間の休止期間を設け、これにより4週間のサイクルを規定する。MTL−CEBPAの開始用量の決定は、齧歯動物およびカニクイザルにおけるGLP毒性試験に基づいた。これらのデータに基づいて、MTL−CEBPAの開始用量28mg/m2はヒトにおいて安全な開始用量であると見なされた。
臨床効果が得られる本研究のパート1aの参加者は、さらなるサイクルを受けるよう勧められよう。参加者はまた、特別にMTL−CEBPAの摂取を継続してもよく、研究者は、参加者が治療を継続可能になる前にケースバイケースでスポンサーと検討しなければならない。
3名のHCCのみの参加者の追加のコホートは、この群の患者でRP2Dを確認するためにパート1aの終了後かつパート1bの開始前に追加されよう。このコホートは、臨床データの審査後かつ本研究のパート1aへのHCC参加者のリクルート後にPIおよびスポンサーの安全委員会により適切であると見なされた場合にのみ考慮されよう。
RP2Dは、研究の用量拡大パートの参加者集団に有利なリスク/利益報酬を最大化する最も適切な用量として安全審査委員会(SRC:safety review committee)により規定されよう。
パート1b − 用量拡大
RP2Dが得られたら、進行HCCの12〜15名の適格参加者の追加の群が逐次的にリクルートされよう。各参加者は2サイクルで登録され、参加者が研究から身を引くまでRP2DでMTL−CEBPAが投与されよう。
臨床効果が得られる本研究のパート1bの参加者は、さらなるサイクルを受けるよう勧められよう。参加者はまた、特別にMTL−CEBPAの摂取を継続してもよく、研究者は、参加者が治療を継続可能になる前にケースバイケースでスポンサーと検討しなければならない。
研究エンドポイント
主エンドポイント
パート1aでは、主エンドポイントは、次のように定義される用量制限毒性(DLT:dose limiting toxicity)であろう。有害イベント共通用語基準(CTCAE:Common Terminology Criteria for Adverse Events)v4.03に基づいて3以上の任意の薬剤関連毒性グレード、たとえば、グレード≧3 3日間を超える適正治療にもかかわらず悪心、嘔吐、および下痢、参加者のパフォーマンスステータスの減少≧ベースラインと比較して2ポイント、グレード≧3 7日間を超える疲労、グレード≧3 ヘモグロビン、血小板、または好中球の異常臨床検査値、5日間を超える骨髄抑制、グレード≧3 ビリルビン異常臨床検査値(>3.0×ULN)、グレード4 ASTおよび/またはAST異常臨床検査値(>20.0×ULN)。
最初の28日間(すなわち最初のサイクル)で何らかの潜在的DLTの評価が行われるであろう。いずれの用量漸増も実施可能になる前に、コホートのすべての患者がDLT期間をクリアすべきであり、この目的では、可能な治療関連副作用を評価するために、本研究のパート1a時に前のコホートの最終参加者に第3の用量が投与された後の7日間以上のインターバルが必須である。
パート1bでは、MTL−CEBPAの安全性および耐容性は、毒性基準(NCI CTCAE v4.03)に従ってグレード分けされたかつ体組織および診断によりカテゴリー化された有害イベントの頻度により評価されされよう。
副エンドポイント
PKパラメータは、最大血漿中濃度(Cmax)、最大血漿中濃度に達する時間(Tmax)、血漿中濃度曲線下の面積(AUC)、および静脈内投与後のMTL−CEBPAの半減期(t1/2)により規定されよう。
このプロトコルは、進行HCCの参加者またはアルブミン、ビリルビン、肝酵素レベル、ケモカイン、CTC、腫瘍マーカ、ならびに腫瘍組織における遺伝子およびタンパク質の発現レベルをはじめとするサロゲートバイオマーカのベースラインからの変化の記述的分析を用いて二次肝腫瘍を呈する参加者において、MTL−CEBPAの臨床効力(PD)の評価を計画する。健康関連の生活の質は、FACT−Hepスコアのベースラインからの変化の記述的分析を用いて進行HCCの参加者において評価されよう。
研究の登録および辞退
スクリーニング段階では、参加者がICFに署名した後、次の基準が評価されよう。すなわち、各参加者は、本研究の選択基準のすべてを満たすべきであり、かつ除外基準をまったく満たすべきない。いかなる事情があろうとも、この規則の例外はありえないため、ウェーバはGCPに不適当かつノンコンプライアントであると見なされ、スポンサーにより承認されないであろう。
参加者は、リクルートの順にユニークな参加者治験IDが順次に割り当てられるであろう(たとえば、001、002など)。
選択基準
参加者は、研究への参加に適格であるために以下の選択のすべてを満たすべきである。
用量漸増の選択基準(パート1a)
研究の用量漸増パートは、進行HCCまたは二次肝腫瘍のいずれかのリクルート患者に重点を置くであろう。リクルートは観測された毒性に依存するであろう。それにもかかわらず、プロトコルは、パート1aで最大30名の参加者の募集を目指す。
進行HCCの患者の選択基準:組織学的に確認される進行HCC、手術または任意の他の治療に不適格であると見なされる患者、局所療法および/またはソラフェニブ後で進行している患者(ナイーブソラフェニブ患者は適格である)、MRIまたはCTにより測定される標的病変サイズ≧1.0cmを有する少なくとも1つの測定可能な病変、チャイルド・ピューAまたはクラスB7疾患、血小板≧75×109/L、血清中アルブミン>28g/Lかつ<35g/L、ALTおよびAST≦5×ULN
二次肝癌の患者の選択基準:従来の標準的療法に不応性の組織学的に確認される進行肝外固形腫瘍および不治の肝腫瘍または標準的療法が存在しないもの、肝臓に位置するMRIまたはCTにより測定される標的病変サイズ≧1.0cmを有する少なくとも1つの測定可能な病変、血小板≧100×109/L、血清中アルブミン>25g/L、ALTおよびAST≦3×ULN。
他の選択基準:いずれの治験特異的手順前にも得られる書面によるインフォームドコンセント、年齢≧16歳の男性または女性、ECOGパフォーマンスステータス0および1、利用可能な長期保存腫瘍組織または治療前腫瘍生検を行う能力および意欲、次のものにより実証される許容可能実験室パラメータ:ビリルビン≦50μmol/L、WBC≧2.0×109/L、好中球絶対数≧1.5×109/L、ヘモグロビン≧9.0g/dL、またはプロトロンビン時間(PT:Prothrombin time)<20秒間、次のものにより実証される許容可能腎機能:血清中クレアチニン≦1.5×ULNまたは計算クレアチニンクリアランス≧60mL/min/1.73m2(CKD−EPI式を用いて推定)、出産可能性のある女性の陰性血液妊娠検査、スクリーニング開始前の少なくとも2ヶ月間にわたりホルモン避妊剤を用いて確立される治療を用いる全研究期間にわたる出産可能性のある女性の安全な避妊:出産可能性のある女性の場合(スクリーニング開始前の少なくとも2ヶ月間にわたりホルモン避妊剤を用いない)、受胎調節に有効な方法の基準を満たす全研究期間にわたる二重の避妊法が必要とされる。すなわち、コンドーム、ペッサリー、子宮内避妊具などの少なくとも2つの有効な受胎調節法を使用しなければならない。出産可能性のあるパートナを有する男性の参加者は、バリア型避妊具を使用する必要があると共に、そのパートナは、治験期間中および最後の投与を行った後の3ヶ月間他の避妊法を使用する。男性の参加者も妊婦または授乳中の女性との性交を避けるかまたはコンドームを使用するように推奨されよう。予定訪問、治療計画、臨床検査、および他の研究手順を含むすべてのプロトコル要件を遵守する意欲および能力。
用量拡大(パート1b)の選択基準
このプロトコルは、進行HCCを有する12〜15名の参加者の募集を目指す。
手術または任意の他の治療に適格でないと見なされる局所療法およびソラフェニブ後で進行している患者(ナイーブソラフェニブ患者は適格である)、MRIまたはCTにより測定される標的病変サイズ≧1.0cmを有する少なくとも1つの測定可能な病変、チャイルド・ピューAまたはB7疾患、血小板≧75×109/L、血清中アルブミン>28g/Lかつ<35g/Lを有する肝機能障害、ALTおよびAST≦正常範囲の上限の5倍、ビリルビン≦50μmol/L、いずれの治験特異的手順前にも得られる書面によるインフォームドコンセント、年齢≧16歳の男性または女性、ECOGパフォーマンスステータス0および1、利用可能な長期保存腫瘍組織または治療前腫瘍生検を行う能力および意欲、次のものにより実証される許容可能実験室パラメータ:WBC≧2.0×109/L、好中球絶対数≧1.5×109/L、ヘモグロビン≧9.0g/dL、またはプロトロンビン時間(PT)<20秒、次のものにより実証され許容可能腎機能:血清中クレアチニン≧1.5×ULN、計算クレアチニンクリアランス≧60mL/min/1.73m2(CKD−EPI式)、または出産可能性のある女性の陰性血液妊娠検査、スクリーニング開始前の少なくとも2ヶ月間にわたりホルモン避妊剤を用いて確立される治療を用いる全研究期間にわたる出産可能性のある女性の安全な避妊:出産可能性のある女性の場合(スクリーニング開始前の少なくとも2ヶ月間にわたりホルモン避妊剤を用いない)、受胎調節に有効な方法の基準を満たす全研究期間にわたる二重の避妊法が必要とされる。すなわち、コンドーム、ペッサリー、子宮内避妊具などの少なくとも2つの有効な受胎調節法を使用しなければならない。出産可能性のあるパートナを有する男性の参加者は、バリア型避妊具を使用する必要があると共に、そのパートナは、治験期間中および最後の投与を行った後の3ヶ月間他の避妊法を使用する。男性の参加者も妊婦または授乳中の女性との性交を避けるかまたはコンドームを使用するように推奨されよう。予定訪問、治療計画、臨床検査、および他の研究手順を含むすべてのプロトコル要件を遵守する意欲および能力。
参加者除外基準
以下の除外基準のいずれかが満たされる場合、患者は試験に参加するべきでない。
進行HCC患者のための除外基準:チャイルド・ピュークラスB8、B9、またはC。
過去28日間以内にTACE、ソラフェニブ、または化学療法で治療された患者。
他の除外基準:15日間以内に従来の全身性癌指向治療または過去30日間以内に研究薬剤、スクリーニング時にグレード>1治療関連毒性(脱毛症を除く)、臨床的に有意な癌腹水を有する患者、過去3ヶ月間以内で食道静脈瘤から何らかの出血エピソードまたは他の無制御出血、最初のMTL−CEBPA注射前の過去7日間で血清中アルブミンが投与された患者。ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)による既知の感染、中枢神経系(CNS:central nervous system)転移を有する患者、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)(NYHA)クラスIよりも大きいとして特徴付けられる心不全の徴候および症状、フリデリシアの補正式を用いて≧450ms(男性)および≧460ms(女性)として定義される延長補正QT時間(QTc)インターバルを呈する患者、または他の臨床的に有意な心臓異常、過去30日間大手術、敗血症、閉塞性黄疸、または脳症の患者、の証拠特発性細菌性腹膜炎または腎不全または作用剤もしくは賦形剤へのアレルギー反応、妊婦または授乳中の女性、研究者の判断で、プロトコル特異的手順に従う参加者の能力に影響を及ぼしうる任意の他の病態(たとえば、既知または推定のコンプライアンスなど)。
治療割当て手順
パート1a − 用量漸増
参加者は2サイクルで登録されよう。研究の用量漸増段階は、図33に示されるように標準的3+3設計に従うであろう。3名の適格な参加者の6つのコホートが次の用量:28、47、70、98、130、160mg/m2で計画される。個別の用量は、デュボイス(DuBois)およびデュボイス(DuBois)(133)の体表面積(BSA:body surface area)計算を用いて参加者の直近の身長および体重に基づくであろう。
各用量コホートで最初の参加者は、研究開始用量でMTL−CEBPA治療を受ける。MTL−CEBPAは、60分間にわたる静脈内注入により3週間にわたり週1回、1日、8日、および15日に投与され、残りの1週間がこれに続く。これにより1サイクルが規定される。
後続の参加者は、治療関連副作用の評価ができるように最初の参加者の初回投与の7日間以上後にリクルートされよう。
以上に規定されるいずれの潜在的DLTの評価も最初の28日間(すなわち最初のサイクル)で行われるであろう。
有害イベントまたは毒性が明らかになるように、前のコホートの最後の参加者の最終投与との間に7日間以上の間隔をあけるべきである。その次のコホートに進む決定は、SRCによるすべての参加者に対する前のコホートの安全性および臨床データの審査を必要とするであろう。審査に従って、その次のコホートが開始されうる。決定は書面で記録され、記録は治験マスターファイル(TMF:Trial Master Filter)に保存されよう。
用量コホートの3名の参加者にDLTと認定される毒性がない場合、その次の用量レベルへの用量漸増を行いうる。用量コホートの3名の参加者のうち1名にDLTがある場合、さらなる3名の参加者がこの用量に登録されよう。これらの追加の3名の参加者にさらなるDLTがない場合、その次の用量レベルへの漸増を行いうる。しかしながら、これらの6名の参加者(3+3)のうち2名以上がDLTを呈する場合、さらなる用量漸増工程は行わず、この用量レベルが最大耐容用量(MTD:maximum tolerated dosa)と見なされよう。加えて、単一のコホートで2名の参加者がDLTを呈する場合、さらなる用量漸増工程は行わず、この用量レベルがMTDと見なされよう。すべての用量漸増決定はSRCの判断に基づくであろう。
3名のHCCのみの参加者の追加のコホートは、パート1aの終了後かつパート1bの開始前に追加しうると共に、パート1aと同一の投与レジメンを用いて中間用量のMTL−CEBPAを投与しうる。このコホートは、臨床データの審査後かつ本研究のパート1aへのHCC参加者のリクルート後にPIおよびスポンサーの安全委員会により適切であると見なされた場合にのみ考慮されよう。
RP2Dは、研究の用量拡大パートの参加者集団に有利なリスク/利益報酬を最大化する最も適切な用量としてSRCにより規定されよう。図33は用量漸増のフローチャートである。
パート1b − 用量拡大
本研究の漸増パートの終了後、進行HCCを呈する12〜15名の適格参加者は、本研究の用量拡大パートに2サイクルで順次に登録され、RP2DでMTL−CEBPAが投与されよう。
辞退の理由
参加者は次の理由で研究から継続を中断しうる。
患者による決定:参加者は、いつでも自由に不利益を伴うことなく研究への参加を辞退できる。グレード≧3 記載の予防手順で抑制されない研究投薬への注入関連アレルギー反応)。何らかの臨床有害イベント(AE:adverse event)、実験室異常、併発病、または他の医学的病態もしくは状況が起こるかまたは悪化して、本研究への参加の継続が参加者の最大利益にならない。疾患進行が確認される。ただし、研究者の意見で参加者が臨床効果を得られる場合を除く。研究者の判断でこのプロトコルへの重篤なノンコンプライアンス。参加者が妊婦になる。参加者が死亡する。
試験特異的中断基準:血清中アルブミン≧45mg/Lの増加に伴う利益の存在。参加者は、中断が参加者の得策である場合、または参加者の反応が良好であり、手術、RFA、TACE、ソラフェニブなど、研究の開始時には不適切であった他の従来療法を参加者が受けられる場合(すなわち病期の移行)、研究投薬の継続を中断するように研究者により推奨されうる。
研究の終了
患者は、いつでも自由にさらなる治療に対して不利益を伴うことなく(同意の辞退)研究(IPおよび評価)を辞退できる。かかる参加者は、理由および何らかのAEの存在を常に聞かれるであろう。可能であれば、研究者により観察および評価がされるであろう。AEは追跡されるであろう。
予定された研究の終了時および参加者が辞退に同意した場合、公的利用可能源または参加者との連絡に基づいて、生存者の医療ケアを検討しうる。こうしたデータはeCRFで集められよう。
追跡不能な参加者をなくすために、最近親者との連絡を含めて連絡の詳細を最初に収集し、現場スタッフまたは代表者により定期的に更新すべきである。
投与スキーム
MTL−CEBPAの投与は3週間にわたり週1回であり、残りの1週間がそれに続であろう[3+1週間=4週間=1サイクル]。進行中の前臨床実験の結果または研究から生じるデータに依存して他のスケジュールおよび投与量を検討しうる。
3名の適格参加者の6つのコホートが次の用量、すなわち、28、47、70、98、130、160mg/m2で計画される。
さらなる認可された治療選択肢が存在しない一次または二次肝腫瘍の患者において計画されたFIH第1相試験で治療の臨床利益が得られる患者では、延長治療が許容される。すなわち、臨床効果が持続する限り、治療を継続しうる。
ヒト開始用量の計算に関する考察
MTL−CEBPAは2つの肝疾患モデルで有効であった。CCL4モデルでは、0.3mg/kg程度の低い2週間に1回の用量は、疾患症状の一部の低減または逆転を示した。しかしながら、血清中アルブミンおよび肝ヒドロキシプロリンを含めて疾患に関連すすると考えられるいくつかのバイオマーカに対して最大の影響を及ぼすには、3mg/kgの最高用量が必要とされた。したがって、このモデルの最大有効用量は、2週間のbiwレジメンでおそらく3mg/kg以上であろう。DENモデルでは単回用量レベル(4mg/kgで3回投与)を評価したに過ぎない。したがって、より低用量が活性を有するか、より高用量が腫瘍および他の疾患メトリックに対して観測される影響をさらに向上させるかは明らかでない。したがって、1週間の治療の有効用量は4mg/kgと推定される。
MTL−CEBPAを用いたラットPKデータに基づいて、CCL4およびDENのモデルのbiwおよびtiwのスケジュールは、循環状態で薬剤蓄積をもたらさないはずであるため、単回用量に基づいてヒト用量推定が可能である。まとめると、DENモデルでの非常に短い治療期間を考慮すれば、意味のある抗腫瘍効果には3〜4mg/kgの反復用量で十分でありうると共に肝機能の向上には0.3〜3mg/kgの用量で十分でありうる。
非臨床毒性プログラムは、毒素動態プロファイリングおよび局所許容差評価を含めて、ラットおよびカニクイザルでの反復投与毒性検査を含んでいた。
4週間にわたり連続3日間で静脈内経路(1時間注入)により7.5mg/kgでカニクイザルに毎日投与されるMTL−CEBPA(合計で12回投与)は、臨床的に十分に耐容性であり、体重、食糧消費、臨床検査室パラメータの一過性の有害でない変化、さらには血小板数の減少ならびに代替および共有の補体経路の活性化を引き起こしたに過ぎない。1ヶ月間の研究継続時間にわたり週3回7.5mg/kg投与は、カニクイザルでNOAELとして規定された。4週間にわたり7.5mg/kgで静脈内経路(1時間注入)により連続3日間で毎日ラットにMTL−CEBPAを投与したところ(合計で12回投与)、より少ない体重増加および食物摂取、少数の動物で臨床徴候、血液学、凝固、および血清臨床化学パラメータの種々の変化、さらには注入位置における局所反応を誘発した。それらの大きさおよび可逆性は小さいため、これらの臨床病理学変化は有害であると見なされなかった。組織学的には、主要知見はいくつかの器官または組織でのマクロファージ空胞形成であり、これは微粒子状試験品のクリアランスを反映したものでありうるために有害であると見なされない。1ヶ月間の研究継続期間にわたり週3回7.5mg/kg投与は、ラットでHNSTDとして規定された。
治療期間の終了時、サルまたはラットにMTL−CEBPA関連眼科知見も心血管知見もなかった。
CEBPA−51をトランスフェクトした一次ヒト末梢血単核細胞(PBMC)でin
vitro免疫原性アッセイを行った。TNF−αおよびIFN−αの評価では誘発を示さなかったため、トール様レセプター(TLR)経路誘発による免疫刺激活性はなかった。
以上のように、1ヶ月間の研究持続時間にわたり週3回投与された7.5mg/kgは、ラットではHNSTDとしておよびサルではMTL−CEBPAのNOAELとして規定された。動物からヒトへの用量推定は、従来、体表面積(BSA)関連スケーリングまたは類似の数学的パラダイムに基づいていたが、これらの慣例は低分子抗癌剤で行われた研究に由来したものであり、リポソームAまたはMTL−CEBPAなどの他の脂質粒子送達系中のRNからなる生成物を用いた用量推定に適合する見込みは非常に少ない。BSAベースのクロス種スケーリングのそもそものきっかけは、体重関連MTDからの直接推定が細胞傷害性抗癌剤に対するヒト感受率を低めに予測し、体表面積当たりの用量で表した場合に種間のMTDのよりも良好な相関が得られたという報告に由来する。より大きい種よりも齧歯動物などのより小さい種のほうが低分子抗癌剤に対するに感受率が低い主な理由は、より小さい種がより大きい種よりも速く肝シトクロムP450系を介してかかる分子を代謝すること、および/または血中コンパートメントからのより速いクリアランスを呈することにある。これは全体として、ヒトを含めてより大きい種よりも急速または強力な解毒に寄与する。
非臨床開発を介して発展した脂質製剤化オリゴヌクレオチドの多くでは、齧歯動物でのMTDは、サルまたは他の非齧歯動物種に類似したまたはそれよりも少ない傾向があり、これがMTL−CEBPAの場合に当てはまる。このパターンは、齧歯動物ではサルのようなより大きい種よりも高いMTDを予測するBSAに基づくスケーリングの基本原則に一致しない。核酸ペイロードも賦形剤も肝シトクロムP450系と有意に相互作用することが示されておらず(または予想されておらず)、製剤は微粒子形態で血流を移動して低分子薬剤とは異なるユニークな薬動学的挙動およびクリアランス経路を呈するため、製剤化オリゴヌクレオチド生成物が低分子抗癌剤とは異なる挙動することは驚くべきことではない。
活性saRNA成分(CEBPA−51)の血漿中AUCは、類似の用量レベルではサルよりもラットのほうが実質的に小さいが、血液成分との相互作用から生じる毒性が存在しないため、かつ観測される一次作用(すなわち、種々の組織におけるマクロファージの空胞形成)が、血液、濃度ではなく組織と相関すると予想されるため、MTL−CEBPAにより生じる毒性は、循環状態の薬剤の量に関連しない。実際に、ラットでの循環系からのMTL−CEBPA(CEBPA−51)のより速いクリアランスは、マクロファージによるより急速な取込みを反映し、この結果、そうした細胞のより大きい活性化をもたらす可能性があり、かかる活性化からより顕在化した下流の後遺症をもたらす可能性があり、サルよりもラットのほうが非常に高い毒性度であることが説明されよう。したがって、同一のmg/kg用量レベルではサルよりもラットのほうがより少ない血漿暴露となり、従来のBSAに基づくスケーリングと一致するにように思われるが、この差はラットのほうが毒性度が低いことと相関しないのは間違いなく、ラットでの血中コンパートメントからの粒子のより速いクリアランスは、実際にはより大きい毒性の根底をなす可能性がある。換言すれば、このタイプの薬剤生成物では、種間の暴露を比較した場合、より小さいAUC値により反映されるより速いクリアランスは、細胞傷害性抗癌剤で見られたように、より低い感受率を示唆すると解釈すべきでない。
したがって、BSAに基づくスケーリングは、カニクイザルNOAELおよびラットHNSTDからのヒト均等用量(HED:human−equivalent dose)の計算に適用可能ではない。また、サルはMTL−CEBPAに対するヒト感受率のより良好な予測因子でありうる考えられるが、これは現時点では明らかにできない。したがって、薬理学的活性および臨床効力が害されるほど控えめに低くすることなく、十分な安全域を達成する初期臨床治験に適切な開始用量レベルを同定する試みを期して、ラットで7.5mg/kg/adm(4週間にわたる週3回の投与)のHNSTDおよびサルでのNOAELすなわち0.75mg/kgの1/10の用量レベルが適切な選択であると考える。この提案された開始用量レベルは、4週間のラットおよびサルの研究のHNSTDでは用量が初期治験で意図した週1回の投与とは対照的に毎週連続3日間投与されたことを考えると、さらに控えめである。したがって、MTL−CEBPAは、60分間静脈内(i.v.)注入として毎週1回投与される0.75mg/kg(28mg/m2)の意図された初回用量でヒトにおける使用を妨げる異常なまたは驚くべき毒性徴候を伴わずに安全かつ良好な耐容性であると予想されると結論付けられる。薬理学に基づいて、0.3〜3.0mg/kgで肝機能利益および約4mg/kgで腫瘍利益が見られると予想しうる。したがって、0.75mg/kgの用量で開始すると初期患者は、肝臓改善に奏効する有望な機会が与えられるが、直接的抗腫瘍活性を達成するには用量漸増が必要でありうる。
治験薬の投与量、調製、および投与
用量漸増時および用量拡大時、投与量はスケジュールに従うであろう。用量は、デュボイス(DuBois)およびデュボイス(DuBois)(133)の体表面積(BSA)計算を用いて参加者の直近の身長および体重に基づくであろう。
BSA(m2)=0.007184×身長(cm)0.725×重量(kg)0.425
MTL−CEBPAは、静脈内使用のために0.9%正常生理食塩水中に薬剤生成物サスペンジョンを希釈する前に室温で解凍される。作製される注入バッグの体積は、濃度にかかわらず250mLにすべきであり、フィルター(IMPの取扱いの説明に関してさらに詳しくは薬学マニュアルを参照されたい)のない注入ポンプを用いて静脈(末梢または中心)内に60分間にわたり一定速度で投与すべきである。
調製物は6hの最大使用寿命で室温(25℃)保存すべきである。
IMPと希釈剤および/または注入デバイスとの間の適合性の問題は予想されない。
参加者に対する治験薬投与の変更
進行中の前臨床実験の結果または研究から生じるデータに依存して他のスケジュールおよび投与量を検討しうる。
グレード≧3注入反応(たとえば、血圧低下、顔面潮紅、胸部絞扼感、背痛もしくは腹痛、心拍数上昇、発汗)のイベントでは、注入は、症状が鎮静化するまでただちに停止すべきである。次いで、注入を再開可能である。症状が再び現れた場合、研究者は注入を停止すべきである。この時点で投与された注入の体積は、CRFでキャプチャされよう。研究者は、実施前の何らかの用量変更計画について医療モニターと検討すべきである。これは、続く2日間にわたる残りの週用量の均等な分割をもたらしうる。次の投与は、記載のように3日間投与スケジュールに従う。
投与の変更にもかかわらず、症状が持続する場合、治療の継続を中断して、参加者に研究を辞退するように推奨すべきである。
併用される医薬/治療
試験治療開始前の4週間で何らかの治療および試験期間中に与えられすべての併用治療に関する情報は、治療の理由と共にeCRFに記録されよう。
禁止される投薬および手順
治験時、次の投薬は参加者の参加期間中は禁止される。他の治験薬、抗新生物剤。
予防的な投薬および手順
すべての参加者は、注入反応の可能性を低減するためにMTL−CEBPAの投与前に前投薬されよう(禁忌でない限り)。前投薬は、次のように注入開始の30〜60前に行うべきである。すなわち、ステロイド単回用量(すなわち8mg経口デキサメタゾンまたは静脈内10mg)、経口H2ブロッカー単回用量(すなわちラニチジン150mgまたはファモチジン20mgまたは均等な他のH2ブロッカー用量)、経口H1ブロッカー単回用量、10mgセチリジン(参加者がセチリジンに耐えなければ、ヒドロキシジン25mgまたはフェキソフェナジンで置き換えてもよい)。
治験医薬品の過量
MTL−CEBPAは治験薬であり、このプロトコルに挙げられた以外のすべての病態が禁忌である。
過量になった場合、既知の解毒剤はない。過量に起因する症状および徴候は、症状的に治療すべきである。不注意で意図したよりも高用量を摂取した参加者はすべて、回復して期待通り追跡が行われるまで、綿密にモニターして適切な支持的ケアを受けるべきである。
かかる過量は次のように記録すべきである。すなわち、関連AE/SAEを伴う過量は、eCRFの関連AE/SAEモジュールおよび過量eCRFモジュールにAE診断/症状として記録される。関連症状のない過量は、過量eCRFモジュールにのみ報告される。
研究の過程で過量が起こった場合、現場作業者は、1日以内に、すなわちただちに、ただし、気付いた日の次の営業日の終りまでにPIに通知しなければならない。過量はPIによりスポンサーに報告されるであろう。
SAEを伴う過量では、標準報告期限が適用される。他の過量では、報告は30日以内に行うべきである。
妊娠および母親の暴露
MTL−CEBPAは治験薬であるため、妊婦には禁忌であり、したがって、本研究への参加から除外される。出産可能性のある女性ではすべて、バリア型避妊具を使用すべきであり、MTL−CEBPAによる治療の終了後、少なくとも3ヵ月間継続すべきである。しかしながら、参加者が研究期間中に妊娠した場合、指示通りバリア型避妊具を使用したにもかかわらず、研究の即時中断が要求される。
試験医薬が精子または精液に影響を及ぼすか知られていないため、男性は治療時および最終処理後少なくとも3ヶ月間にわたり信頼性があるバリア型の避妊具を使用するように推奨される。
研究スケジュール
研究スケジュールは、研究のパート1aおよびパート1bに適用される。各治療サイクルは、1、8、および15日の治療の3週間と、それに続く残りの1週間とをからなる。
スクリーニング受診(−21日〜−1日):次のデータが登録時に集められ、CRFの適切な箇所に記録されよう。ICFに署名した日、人口統計データ、完全病歴、理学的検査、生命徴候の記録、行動スコア、体重(kg)、身長(cm)、および胴回り寸法(cm)。選択基準および除外基準に対する評価。ベースライン症状および因果関係の記録。従来医薬および併用医薬。出産可能性のある女性の血液妊娠検査。血液学評価のための6時間空腹時血液サンプル採取、凝血プロファイル、臨床生化学(LFT、腎臓プロファイルを含む)、脂質プロファイル、適切な腫瘍マーカ、サイトカインプロファイル、および補体活性化因子BbおよびC3a。12−誘導心電図。胸部X線。RECIST報告を有する肝臓および腹部のMRIまたはCTスキャン。(注釈:前のスキャンが試験治療開始の1ヶ月前以内で利用可能な場合、スキャンを繰り返すべきでない)。フィブロスキャンはHCC参加者のみで行われるであろう。FDG−PETスキャン(パート1bのみ)。腫瘍組織の放射線ガイド下肝生検は、記録資料が利用不可能な参加者で行われるであろう。腫瘍組織はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE:formalin fixed
paraffin embedded)サンプルであろう。
血清中アルブミンレベルが選択範囲外であるために最初のスクリーニング受診で不合格の参加者は、14日後に再スクリーニングが可能である。3回目のスクリーニングは許容できない。
1、8、および15日の訪問(+/−2日):特に明記されていない限り、手順および評価は投与前に行うべきである。標準的理学的検査、体重、および胴回り測定。前の訪問以来の新しい症状および新しい投薬、行動スコア、12誘導心電図の記録。投与前1日および投与後15日、8週、および研究訪問の終了時、FACT−Hep生活の質アンケート管理(パート1bの参加者のみ)。静脈(末梢または中心)内にカニューレを挿入する。血液学、凝血プロファイル、および臨床生化学(LFTおよび腎機能試験を含む)、ならびに補体活性化因子BbおよびC3aの6時間空腹時血液サンプル採取評価。8および15日のみ:適切な腫瘍マーカおよびサイトカインプロファイルのための血液サンプル採取。所要により、MTL−CEBPA注入の30分前にカニューレを介して前投薬を行う。投与スケジュールに従って60分間にわたりカニューレを介してMTL−CEBPAを静脈内投与する。投与前、投与後の15分、30分間、1時間、および2時間の時点で生命徴候(体重および胴回り測定以外)を記録。次の時点で注入前後のPKサンプル(1および8日のパート1a参加者のみ):投与前、注入直後、注入の終了から0.25時間、1時間、3時間、および6時間。投与の15日後のFDG−PETスキャン(パート1bの参加者のみ)(注釈:PKを除くすべての治療前血液サンプルは、MTL−CEBPAの投与の前日に分析した)。
2、9、および16日の訪問:新しい症状および投薬、生命徴候、および行動スコアの記録。血液学、凝血プロファイル、および臨床生化学(LFTおよび腎機能試験を含む)、ならびに補体活性化因子BbおよびC3aの6時間空腹時血液サンプル採取評価。注入終了の24時間後のPK(2および9日のパート1a参加者のみ)。
3および10日の訪問:パート1aの参加者のみの48時間PKサンプリング。
4および11日の訪問:パート1aの参加者のみの72時間PKサンプリング。
22日の訪問(+/−2日間):標準的理学的検査。新しい症状および投薬、生命徴候、および行動スコアの記録。出産可能性のある女性の血液妊娠検査。血液学、凝血プロファイル、臨床生化学(LFT、腎臓プロファイルを含む)、脂質プロファイル、適切な腫瘍マーカ、サイトカインプロファイル、ならびに補体活性化因子BbおよびC3aの評価の6時間空腹時血液サンプル採取。FACT−Hep生活の質アンケート管理(パート1bのみ)。胸部X線。
サイクル2の8週−22日の訪問(+/−2日):以上に列挙した22日の研究および手順に加えて、次のイメージング手順を行うべきである。MRI/CTスキャンを行い、その後、8週間ごとに行う。パート1bの参加者のみでFDG−PETスキャンを8週で行い、その後は繰り返さないであろう。
研究の終了時の訪問(29日または14日間、最終投与の+/−7日後):標準的理学的検査、体重、および胴回り測定。前の訪問以来の新しい症状および新しい投薬、生命徴候、および行動スコアの記録。FACT−Hep生活の質アンケート管理(パート1bのみ)。出産可能性のある女性の血液妊娠検査。血液学、凝血プロファイル、および臨床生化学(LFTおよび腎機能試験を含む)、ならびに補体活性化因子BbおよびC3aの6時間空腹時血液サンプル採取評価。早期辞退参加者のみ(すなわち、22日に行われなかった場合)、空腹時脂質プロファイル、適切な腫瘍マーカ、およびサイトカインプロファイルのための血液サンプル採取。フィブロスキャン(HCCのみを有する参加者)。腫瘍生検、治療後生検はきわめて望ましく、研究者の判断で行われるであろう。
早期終了訪問:参加者が研究を辞退する場合、以上に記載の評価を行うべきである。
予定外訪問:予定外訪問または電話連絡は有害イベント追跡のために行いうる。
妊娠訪問:試験期間中に妊娠する参加者のイベントでは、参加者は試験治療をただちに停止するように推奨されるべきである。辞退の理由はeCRFに記録されよう。また、研究訪問の終了に関してすべての評価を終えて以上に記載の試験薬剤の安全性を評価するために、研究者により参加者の観察および評価が行われるであろう。
レスポンダーのための治療計画:パート1aおよびパート1bの参加者は、最初に2サイクルで登録されある。最初のサイクルの終了時、参加者が臨床効果(たとえば、肝機能の向上)を呈し、研究の継続に合意すれば、参加者は、同一の治療レジメンベース(PKサンプル採取を除く)でMTL−CEBPAの追加のサイクルを受けてもよい。第2のサイクルの終了時、腫瘍反応が評価されよう。腫瘍進行を示さない参加者は、さらに2回の追加治療サイクルを受けるよう勧められよう。
この時点では、参加者は、離脱が参加者の得策である場合、または参加者の反応が良好であり、手術、RFA、TACE、ソラフェニブなど、研究の開始時には不適切であった他の従来療法を参加者が受けられる場合(すなわち病期の移行)、研究者により研究から離脱するよう推奨されうる。
参加者は、治療に対する反応が継続する限り、MTL−CEBPAのさらなるサイクルを受ける機会が与えられよう。
研究の手順/評価 − 患者報告アウトカム
癌療法の機能評価−肝胆道(FACT−Hep)バージョン4アンケートは、1日および15日および8週にRP2Dレベル(パート1b)でMTL−CEBPAを投与した後の参加者の健康関連の生活の質の変化を評価するために使用されよう。
FACT−Hepアンケート
癌療法の機能評価−肝胆道(FACT−Hep)は、検証された健康関連の生活の質アンケートであり、FACT−Generalと18アイテムモジュールとの組合せであり、肝胆道癌に関連付けられる治療の症状および副作用を測定するように特別に設計されている。FACT−Gは、物理的、社会的/家族的、情動的、および機能的な幸福を含めて生活の質の4つの次元を測定する多次元27アイテムインストルメントである。FACT−Hepはまた、肝胆道癌の症状および治療の副作用(追加の関心事)を評価する18アイテムモジュールを含む。
評価の方法
FACTHepは、予定訪問のアンケートのペーパーバージョンを用いて自己管理されよう。アンケートは、投与前1日ならびに投与後15日および22日(8週)に評価されよう。
PROアンケートの管理
FACITスケールは、参加者の自己管理用として設計されており、面接形式で管理することも可能である。自己管理では、参加者はページのトップの簡単な説明を読むように指示されるはずである。参加者の適正な理解が確認された後、いずれもスキップすることなく順にすべてのアイテムを終了するように奨励されるはずである。患者は、もっとも当てはまる反応を丸で囲むように奨励されるはずである。たとえば、参加者が現在のところ何ら治療を受けていなければ、参加者は、「治療の副作用に悩まされている」という質問に「まったくない」を丸で囲むべきである。面接管理は、バイアスのかからない参加者の反応を引き出すためのインタビューアの適切な所与の好適なトレーニングと見なされる。
スコアリング
FACT−Hepは、次の5つの次元、すなわち、「物理的幸福」、「社会的/家族的幸福」、「情動的幸福」、「機能的幸福」、および「追加の関心事」を含む。各次元は、次の5つのレベル、すなわち、「まったくない」、「ごくわずかのみ」、「いくらか」、「かなり」、および「きわめて」を有する。参加者は、過去7日間でFACT−Hep上の記述に当てはまる反応を示すように1行ごとに数値を丸で囲むかまたはマークすることによりFACT−Hepに現在の健康状態を等級付けする。これはFACT−Hepスコアである。
実験室安全性評価
サンプル捕集時間はイベントの研究スケジュールに含まれる。方法および参照範囲の詳細はTMFに保管されよう。ベースラインから有意に変化したかつ臨床問題があると見なされる臨床検査値は、有害イベントとして記録し、必要に応じて追跡しなければならない。
1サイクルで各参加者から収集される推定血液体積は以下に示される。
[a]総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、ALT、AST、血漿中アンモニア、腫瘍マーカ 総コレステロール、HDL−Cおよびトリグリセリドは、PDバイオマーカの精査のために評価される。[b]出産可能な女性に対して。
各参加者から各訪問で50mL未満、4週間のサイクル当たり合計で300mL未満が採取されよう。
局所臨床試験
実験室安全性評価用のサンプルはすべて、現地の慣行に従って各研究現場で収集され、ルーチン試験用の標準的方法を用いて現地の実験室で分析されよう。血液サンプルはすべて、スクリーニング時のMTL−CEBPA注入前、ならびに1、2、8、9、15、16、22日、およびEOS(脂質プロファイルを除く)に捕集すべきである。
臨床生化学パラメータおよび血液学パラメータが測定されよう。肝機能、アンモニアおよびグルコース、さらには脂質プロファイルを含む臨床生化学サンプルは、空腹状態(血液サンプルの6時間前)で収集すべきである。
[a]総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、ALT、AST、血漿中アンモニアは、スクリーニングでの適格性の精査のためおよびPDバイオマーカの審査のために評価される。[b]総コレステロール、HDL−Cおよびトリグリセリドは、スクリーニングにおいて、各サイクルの最後に(22日目)およびEOS(早期辞退参加者の場合)で、探索PDバイオマーカの審査のために評価される。
妊娠試験(血液)
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、スクリーニング時、22日、およびその後、8週間ごとに(参加者がさらなる治療サイクルを受ける場合)、出産可能性のある女性で測されよう。
腫瘍マーカ
以下のリスト中の最も好適なマーカは、癌病歴に基づいて選択され、スクリーニング時ならびに8、15、22、およびEOS(早期辞退参加者の場合)に行われよう。
イメージング
胸部X線:胸部X線はスクリーニング時および4週に照射されよう。さらなるX線は12週に照射され、その後、参加者がさらなるMTL−CEBPAサイクルを受けるのであれば、標準的な注意を払って照射されよう。
MRIまたはCTスキャン:胸部および腹部のMRIまたはCTスキャンは、スクリーニング時および8週(試験薬剤の1回目の投与の1ヶ月前以内)に行われよう。MRIは好ましい方法であるが、CTスキャンが許容される。MRIまたはCTスキャンを使用する場合、各参加者に対する評価方法に一貫性を有することが重要である。
次いで、MRI/CTスキャンは8週間ごとに行われよう。
フィブロスキャン:フィブロスキャンは、MTL−CEBPAによる治療前後に肝臓の線維性を評価するためにスクリーニング時および研究終了時にHCCの参加者でのみ行われよう。
FDG−PETスキャン:肝臓および腫瘍の代謝は、パート1bに登録された参加者のみでFDG−PETスキャンを用いて評価されよう。FDG−PETスキャンは、スクリーニング時、MTL−CEBPA注入後の15日、および再開CT時(すなわち8週)に行われよう。
患者はPET研究開始(すなわちFDG注射時間を基準にして)の少なくとも6h前にいかなる食品も糖も消費することが許されない。実際には、午前にPET研究が行われる予定の患者は真夜中を過ぎたら摂食すべきでなく、好ましくはPET研究前の夜に軽い食事(アルコールなし)をとる。午後にPET研究が行われる予定の患者は、8.00a.mよりも前に軽い朝食をとってもよい(すなわち、糖も糖含有サンドイッチ食材も含まないサンドイッチ2つまで)。投薬は指定通り行いうる。
肝生検
利用可能である場合、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍ブロックの形態の長期保存組織サンプルが各参加者で収集されよう。腫瘍ブロックが得られないかまたは存在しない場合、参加者はインフォームドコンセントプロセスの一部としてスクリーニング時の生検に合意していなければならない。
長期保存腫瘍組織は研究チームにより要求されるべきであり、記載のように送付されるべきである。長期保存腫瘍ブロックは、研究終了時または要求時、必要に応じてより早い時期に供給元に戻されよう。
治療後肝腫瘍生検はEOS訪問時がきわめて望ましい。
何ら凝固異常が起こらないように、必要に応じて新鮮凍結血漿および血小板を投与すべきである。
薬動学(PK)
最初のサイクルの1、2、3、および4、8、9、10、11日、および次の時間点、すなわち、試験薬剤投与前、注入終了直後、次いで注入終了から0.25時間、1時間、3時間、6時間、24時間、48時間、および72時間の時間点で、本研究の用量漸増パートの6つのそれぞれのコホートの各参加者から5mLの全血のPK血液サンプルがEDTAチューブ中に収集されよう。
臨床担当者は、予定の時間点でPK分析用の血液サンプルを採取するように勧められる。しかしながら、予定のサンプル時間からの偏りはプロトコル偏りと見なされない。採血の厳密な日時は、明瞭な形式を用いて記録しなければならない。
MTL−CEBPAの血漿中濃度は、ハイブリダイゼーションに基づくHPLCアッセイを用いて規定の時間点でセンターで分析されよう。
検体調製、取扱い、および貯蔵に関する説明は以下に記載される。
薬力学(PD)
肝機能試験、AFP腫瘍マーカ(HCC参加者用)、サイトカインプロファイル、およびCEBPA遺伝子発現は、MTL−CEBPAの薬理学的効果のサロゲートバイオマーカとして同定されている。
肝機能試験:アラニントランスアミナーゼ(ALT)、血清中アルブミン、血漿中アンモニア、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、および総ビリルビンは、1日(投与前)、2日、8日(投与前)、15日(投与前)、22日、およびEOS訪問時に測定されよう。これらのサンプルは現地の実験室で分析されよう。
AFP腫瘍マーカ:AFPは、1日(投与前)、8日(投与前)、15日(投与前)、22日、およびEOS訪問時(早期辞退参加者の場合)に試験されるであろう。これらのサンプルは現地の実験室で分析されよう。
脂質プロファイル:総コレステロール、HDL−C、およびトリグリセリドは、各サイクルの1、8、15、22日、およびEOS時(早期辞退参加者の場合)に探索PDバイオマーカの審査を可能にするように評価されよう。
サイトカインプロファイル:IL−2、IL−6、TNF−a、IFNg、IL−4、IL17a、IL−10は、スクリーニング時、8日(投与前)、15日(投与前)、22日訪問時、およびEOS訪問時(早期辞退参加者の場合)に試験されよう。サンプルは中央実験室で分析されよう。
CEBPA遺伝子発現は、長期保存腫瘍組織ならびに/またはスクリーニング訪問時およびEOS訪問時に新しい生検組織から得られるホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍生検サンプルで免疫化学染色アッセイを用いてCEBPαおよびp21タンパク質発現により研究されよう。
検体調製、取扱い、および輸送
検体調製、取扱い、および貯蔵のための説明書
PKサンプルおよびサイトカインプロファイルサンプルを除くすべてのサンプルは、現地の慣行に従って現場で収集され、ルーチン試験の標準的方法を用いて現地の実験室で分析されよう。
詳細な説明を与える研究者のための実験室マニュアルは、研究開始前にそれぞれの研究現場に提供されよう。研究者および委任現場作業者は、実験室マニュアルに規定された手順に従うべきである。
PKサンプルでは、5mLの全血がEDTA処理チューブ中に収集される。EDTAチューブはサンプリング直後に処理され、冷却遠心機(4℃)を用いて遠心分離されて血漿を生成する。得られたら、氷上のまま血漿は100μLの少なくとも2つのアリコートに分割されよう。アリコートは、以上に挙げたのと同一のプロトコルに従って遠心分離され、−80℃で貯蔵する前に液体窒素またはドライアイスを用いてスナップ凍結される。血液採取から血漿貯蔵までの推奨時間は30minである。
サイトカインプロファイルでは、3mLがEDTA処理チューブ中に収集されよう。チューブは血漿を生成するために遠心分離されよう。サンプルは、現場で−80℃で凍結貯蔵して中央実験室へ送付されよう(以下の節を参照されたい)。
長期保存腫瘍ブロックは、利用可能な場合、関連病理診断部から要求されるべきである。新たに得られた腫瘍組織サンプルはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)すべきである。ブロック(好ましくは)またはスライドは、IHC染色試験を行うために短縮した中央実験室へ送付されよう(以下の節を参照されたい)。
有害イベント(AE)
有害イベント(AE)は、試験治療との因果関係にかかわらず医薬品が投与された参加者または臨床試験参加者における任意の不利な医学的出現(既存の医学的病態の悪化を含む)と定義される。したがって、AEは、治験医薬品(IMP:investigational medicinal product)の使用に伴う一時的に研究の異常結果(たとえば、検査所見、心電図)、症状(たとえば、悪心、胸痛)、徴候(たとえば、頻脈、肝臓肥大)または疾患を含めて任意の不利な意図されない徴候でありうる。
AEは、インフォームドコンセントから研究訪問の終了まで研究全体を通じて収集されよう。「重篤有害イベント」の基準を満たさない局所および全身反応を含むAEすべては、適切なeCRFに取り込むべきである。
参加者により自然に報告された、または試験員からの自由回答式質問に答えて報告された、または観測によって明らかにされたAEはすべて、CRFに収集され記録されよう。AEを収集する場合、徴候および症状のリストを記録するよりも診断を記録するほうが有利である(可能であれば)。しかしながら、診断が既知であり、かつ一般にいその診断の一部でない他の徴候または症状がある場合、診断および各徴候または症状が個別に記録される。
インフォームドコンセントに署名された時点で存在している医学的病態はいずれも病歴と見なすべきであり、AEとして報告すべきでない。しかしながら、ICFに署名した後のいずれかの時点で悪化する場合、それはAEとして記録すべきである。
AE変動因子
次の変動因子は各AEに収集されよう。診断/症状(逐語的)。AEの開始日(発症日)および停止日(解消日)。NCI−CTCAE最大重症度。AEは重篤かどうか(重症度)。研究者による治験薬との因果律評価。IMPに対してとった行動。AEがIPからの参加者の辞退の原因であったか否か。アウトカム。
加えて、次の変動因子はSAEに収集されよう。AEが重篤なAEの基準を満たした日。研究者は重篤なAEに気付いた日。重篤なものとして分類した理由。入院日。退院日。入院理由。考えられる死亡原因。死亡日。行った事後分析。研究手順との因果関係評価。他の投薬との因果関係評価。追加の試験薬剤との因果関係評価。AEの説明。
試験時に生じたAEはすべて、関係があるかにかかわらず適切に報告しなければならない。AEはすべて、イベントが安定化するかまたは適正に解消するまで現地の慣行に従って追跡されよう。
AEはすべて、重症度および試験薬剤との関係をグレード分けしなければならない。
参加者に対するMTL−CEBPA投与の変更
代替的または中間的な用量およびスケジュールは、研究からの生じる臨床データに依存して必要となろう。これは、必要用量のスケジュール変更、分割、低減、または漸増中止を含みうる。
参加者のスケジュール変更
投与訪問はこのプロトコルに明記される許容時間ウィンドウ内で計画すべきである。しかしながら、参加者がスケジュール投与日に参加できない場合(たとえば、参加者の体調がよくない)、投与の計画を見直して、それに従って後続の試験訪問のタイミングを変更すべきである。
MTL−CEBPAの投与は1週間まで遅延しうる。参加者がその次の投与日に参加できない場合、参加者は研究を辞退すべきであり、EOS研究訪問はスケジュールすべきである。
参加者の用量およびスケジュールの変更
グレード≧3注入反応のイベントでは、上述された手順に従うべきである。この手順に従って、初回用量は連続した3日間に分割しうる。
分割用量スケジュールの一例は以下に示される。
3日間にわたる分割投与イベントでは、PKサンプルは、計画どおりに1日および8日、次いで、投与前、2、3日、および9、10日にすべきである。
いかなる場合も、用量およびスケジュールの変更は、実施前に医療モニターと検討すべきである。
参加者の用量変更
用量の漸増を中止(たとえば、特定のスケジュールでの開始用量がMTDを超えるような毒性をもたらす場合)または用量の低減の決定は、SRCにより勧められよう。
実施例20.製剤最適化研究
NOV340は、オリゴヌクレオチドのカプセル化に使用される十分に確立されたリポソーム製剤である。表19は製剤の脂質組成をモル比で示している。
本最適化研究はリポソーム内へにCEBPA−51のカプセル化効率を向上させるために行った。NOV340リポソーム中に製剤化されるオリゴヌクレオチドのプロセス開発および最適化のインハウス経験に基づいて、CEBPA−51の最適化の最臨界パラメータはカプセル化効率である。カプセル化効率(%)は、リポソーム会合オリゴヌクレオチド(カプセル化および膜結合)の量を、水含有量および不純物を除くカプセル化を意図したAPI溶液に溶解された全量で減算した値である。カプセル化効率を計算する場合、小スケールで調製する場合の高いプロセス損失も考慮すべきである。そうした損失はサンプリングならびにフィルタユニットおよびチューブのデッドボリュームによる。製造スケールを増加した場合、プロセス損失が低減されるであろう。したがって、脂質回収率に基づいたカプセル化効率も計算される。カプセル化効率を改善するために、RNAと脂質との間の相互作用を最大化させることは最も合理的な方向であった。これを達成するために、2つの異なるパラメータを変化させて評価した。第1は、リポソーム形成時の脂質対薬剤比であり、第2は、CEBPA−51を溶解するために使用される緩衝液のpHであった。RNAと脂質製剤との間の相互作用が主にMoCholとオリゴヌクレオチドとの間で起こる。MoCholは、酸性媒体中で正に荷電する6.5のpKaを有する両親媒性脂質である。正荷電MoCholと負荷電RNAとの間の相互作用の結果として、リポソーム内へのRNAのカプセル化が増加する。したがって、我々の仮説によれば、API緩衝液のpHを減少させるとMoChol荷電が増加してMoCholとCEBPA−51との間の相互作用が増加するため、増加したカプセル化効率が得られるであろう。第2の選択肢は、最適脂質対薬剤比、より簡単に言えば、「飽和点」(MoCholと相互作用可能なCEBPA−51の最大量)を同定することであった。したがって、リポソーム調製実験の過程で種々の脂質対薬剤比を試験した。API溶液中のCEBPA−51の濃度を減少させることにより脂質対薬剤比を変化させた。7つの異なるCEBPA−51濃度を試験した。
方法
リポソーム調製
クロスフローエタノール注入法によりリポソームを調製した。簡潔に述べると、脂質(POPC、Chems、およびDOPE)を55℃で無水EtOHに溶解させる。完全可溶化後、あらかじめ秤量されたMoCholを含有する他のボトル中に溶液を定量導入する。Cholに対するMoCholの分解を最小限に抑えるために、無水EtOHの選択および脂質の可溶化の2工程が必要であることが同定された。脂質の完全溶解後、エタノール脂質溶液を0.2μmフィルターに通して濾過し、加熱キャビネット中55℃に昇温されたインジェクター中に定量導入する。その間に、オリゴヌクレオチドを酢酸Na/スクロース緩衝液に溶解させ、0.2μmのフィルターに通して濾過し、RTのAPI緩衝液中に移す。NOV340製剤用のAPI緩衝液の標準的pHはpH4であるが、本最適化研究では、pH3.5およびpH4.0の緩衝液を使用した。注入モジュール中で脂質溶液とAPI緩衝液とを混合したとき、ポソームが形成する。リポソーム形成の直後、リポソーム製剤のpHを中和するために希釈緩衝液(RTでNaCl/Na2HPO4 pH9.0)を用いたオンライン希釈工程が存在する。リポソームに製剤化されたオリゴヌクレオチドは、IVボトル中に採取され、押出し前に室温で30分間撹拌される。次いで、リポソームのサイズおよびPdIを精密化するために、この中間サスペンジョンを0.2μmポリカーボネート膜に通して押し出す。押出し後、遊離RNAおよびEtOHは透析濾過により除去され、限外濾過による目標saRNA濃度に濃縮されている。バイアル中に充填する前に、リポソーム生成物は0.2μmのフィルターに通して無菌濾過する。
リポソームのサイズ測定
リポソームサイズの決定測定は、マルバーン(Malvern)ナノZS(224/SOP/002)を用いて動的レーザ光散乱(DLS:Dynamic−Laser−Light−Scattering)により行った。この系は、波長633nmの4mWヘリウム/ネオンレーザを備えており、173°の検出角で非侵入後方散乱技術でリポソームサンプルを測定する。リポソームは最適リポソーム濃度を達成するために水性相に希釈した。また、実験は25℃で行った。結果は、リポソーム均一性を決定する多分散性指数と共にリポソームサスペンジョン(z−平均平均値)の平均直径で表される。
リポソームのζ電位測定
リポソームのζ電位は、224/SOP/012に基づいてマルバーン(Malvern)ナノZSを用いて最終バルク生成物で測定した。
RNA吸光係数の定量
RNAの定量は、221/SOP/012に基づいてOD 260nmで分光光度計により行った。RNAはAPI溶液および最終バルク生成物で定量した。CEBPA−51製剤開発の非常に初期では、saRNAの各一本鎖の吸光係数を測定した。したがって、saRNAの定量は、各一本鎖の吸光係数値の平均を用いて行った。ハイパークロミシティー効果のため、平均吸光係数を用いたsaRNAの定量は、30台前半パーセント範囲に減少したカプセル化効率値をたらした。開発段階で、適正な吸光係数値はSTPharmにより決定され、適正なsaRNA定量、および最適化カプセル化効率をもたらした。CEBPA−51の定量に使用される第1の吸光係数は、30.1であり、更新された値は20.68.(L/(mole・cm))あった。
脂質の定量
サンプル中の脂質濃度は、222/SOP/004に基づいてHPLCを用いてバルク体積から測定した。
結果および考察
新旧吸光係数間の比較
製剤のプロセス最適化を開始する前に調製されたサンプルに対して両方の吸光係数値により計算して誘導されたカプセル化効率を表20に列挙する。更新される吸光係数は、リポソーム内へのCEBPA−51のカプセル化効率を顕著に改善することは、誘導された値から明らかである。しかしながら、saRNAの収率を最大化するためにさらなる最適化研究を最終配合物で行った。実際には、ほぼ30%の初期カプセル化効率から、最適化製剤では、ほぼ60%のカプセル化効率をもたらした。
pH3.5緩衝液中に可溶化されたAPIを含むリポソーム製剤
カプセル化効率に及ぼすAPI溶液のpHの作用を研究するために、API溶液のpHをpH4.0からpH3.5に低減した。加えて、API溶液中の3つの異なるCEBPA−51濃度を用いて、カプセル化効率に対する脂質対薬剤比の作用を調べた。pH3.5のAPI溶液を用いて調製されたすべての製剤およびそれらの特性を表21に列挙する。表22、23および24は、pH3.5のAPI溶液で調製された製剤とpH4.0のAPI溶液で調製されたそれらのそれぞれの製剤とを比較して示す。図34は、表22、23、および24示された結果をグラフとして表している。得られた結果から、API溶液中のRNAの低濃度(1.85mg/mL)で、API緩衝液のpHの変化がわずかに増加されたカプセル化効率をもたらすことは明らかである。他の2つの試験した濃度(2.25および2.65mg/mL)では、この方向への明らかな傾向は観測できなかった。加えて、pHの低減は、増加したサイズおよびPdIを含むリポソームの形成をもたらした。サイズおよびPdIのかかる増加は追加の押出しサイクルを必要とすることになり、RNA損失およびプロセス継続時間を増加させることになろうために推奨されない。したがって、注入緩衝液のpH4.0から3.5に低減することは選択肢とならない。脂質対薬剤比の変化に関して、API緩衝液中のRNA濃度を減少させることにより、カプセル化効率の増加が認められた。この傾向はAPI溶液の両方のpH値に対しても同じであるとように思われる。
脂質対薬剤比の最適化
リポソーム形成時点における脂質対薬剤比はリポソーム内へのRNAのカプセル化効率に特に重要である。これを最適化するために、EtOH溶液中の脂質濃度を同一に維持し、API溶液中のCEBPA−51の濃度を1.06〜3.44mg/mlの範囲内で変化させた。すべての他のプロセスパラメータを一定に維持し、API溶液のpHをpH4.0に保持した。調製したすべての製剤およびそれらの特性を表25に列挙する。同一の結果を図35にグラフとしてプロットする。得られた結果から、API溶液中のCEBPA−51濃度を減少させることによりカプセル化効率のわずかな増加が見られることを示唆する傾向が明確に示された。この時点で、最終生成物中の脂質濃度は、saRNAの最大収率を達成しようとする場合に考慮すべき主要な結果であることを述べることが重要である。一方、最終生成物中の増加した脂質濃度は、最終0.2μmの濾過でクリティカルとなり、ある時点で、フィルター膜は、フィルター膜領域に暴露される過度の脂質をブロックするおそれがある。したがって、目標は、単にRNA損失を最小限に抑えるだけでなく、それに加えて最終製品中の増加したCEBPA−51濃度を可能にする最適脂質濃度を達成することである。
最適化研究の確認
リポソーム内へのsaRNAのカプセル化効率の最適化を目指してすべての実験を行った後、2つのより大量の最終バッチを調製して結果を確認した。表26は、誘導されたデータを示しており、これはまた、すべての他の調製されたバッチの結果と共に図35にグラフで表される。得られたデータから、注入緩衝液中のCEBPA−51の濃度を2.38mg/mLに設定するように下された決定が明確に確認される。なぜなら、これにより、saRNAのより高いカプセル化効率と、最終リポソーム生成物中のCEBPA−51のより高い濃度との両方がもたらされるからである。
結論
本研究はリポソーム内へのCEBPA−51のカプセル化効率を最適化した。誘導された結果から、リポソームの製造はpH4.0のAPI緩衝を用いて行うべきであり、かつ液API溶液中のCEBPA−51濃度を約2.38mg/mLに設定すべきであることが示唆される。そうした設定では、NOV340と共にオリゴヌクレオチドを製剤化した場合に得られる典型的な収率であるより高い50パーセント程度の収率を有するリポソーム製剤が得られるはずである。
実施例21.使用安定性試験
51.80〜296.00mgのMTL−CEBPAを250mlの全注入体積に希釈して注入バッグ中0.21〜1.18mg/mlの最終濃度を得た。1つのタイプの注入バッグを使用し(バクスター・バイアフロ(Baxter VIAFLO)250ml塩化ナトリウム0.9%静脈内注入BP)、2つの代表的で典型的なスペースライン(PVCおよびPVCフリー)を評価のために選択した。0.21mg/mlの最低用量(28mg/m2の臨床用量レベルに対応する)を最悪のシナリオとして使用研究に選択した。
材料
5バイアルMTL−CEBPA薬剤生成物、ロットMIT1215−A、saRNA含有量:2.5mg/ml、公称容積20ml、注入バッグ:4×バクスター・バイアフロ(Baxter VIAFLO)250ml塩化ナトリウム0.9%静脈内注入BP(ref:FE1322)。注入スペースライン:1).2×ブラウン・インヒューフソマット(Braun Infusomat)(登録商標)スペースライン−ニュートラピュア(Neutrapur)(ポリウレタン)PVCフリー(ref:8700110SP)、2).2×ブラウン・インヒューフソマット(Braun Infusomat)(登録商標)スペースライン−PVC(DEHPフリー)(ref:8700036SP)。針:たとえば、BDミロランス(BD Mirolance)(ref:301300)。シリンジ:たとえば、BDシリンジ(ref:309658)。インキュベータQCGTBS01MM(23〜27℃)。
投与溶液の調製、サンプリング、および貯蔵
約21mlの0.9%正常生理食塩水を除去して約21mlの薬剤生成物で置き換えることによりMIT1215−A(2.5mg/ml)を注入バッグに希釈した。各スペースラインに対してデュプリケートバッグを準備し、合計4つの注入バッグとした。生理食塩水の除去前および除去後ならびに薬剤生成物の添加後、バッグの重量を測定した。薬剤生成物の添加量の計算に1.04g/mlの密度を用いた。2つのバッグ(#1および#2)をPVCフリースペースラインで接続し、残りの2つのバッグ(#3および#4)をPVCスペースラインで接続した。バッグは25±2℃で24時間保存した。
バッグ準備直後(時間点0時間)、8時間後、および24時間後、スペースラインを介してサンプル(各時間点および各バッグにつき4×0.5ml)を収集し、−20±5℃で保存した。8時間および24時間の時間点で、サンプリング前にラインを約30mlパージすることにより、スペースラインでインキュベートされた材料ではなく注入バッグからのサンプル材料を確実に収集するようにした。サンプルの分析はすべて、SEC−HPLC(含有量)およびRP−HPLC(脂質)の1回の分析ラン内で行った。
試験および判定基準
概要
合格基準は、注入用サスペンジョンの調製における約12倍のそれぞれの稀釈倍率(すなわち、saRNA含有量を2.5±0.5mg/mlから0.21±0.04mg/mlに希釈する)を考慮して薬剤生成物(DP:Drug Product)仕様に基づいて適用した。
結果
saRNA含有量
全saRNAの含有量は、222/SOP/013に基づいてUV検出を用いてRP−HPLCにより測定された。サンプルはすべて、同一のHPLCシーケンス内で分析した。結果を表28に列挙する。バッグはすべて、目標値に近いsaRNA濃度を含有し、観測期間全体を通して0.21±0.04mg/mlの合格基準を満たした。
POPC含有量
全POPCの含有量は、222/SOP/018に基づいてCAD検出を用いてRP−HPLCにより測定した。サンプルはすべて、同一のHPLCシーケンス内で分析した。結果を表29に列挙する。バッグはすべて、目標値に近いPOPC濃度を含有し、観測期間全体を通して0.29〜0.49mg/mlの合格基準を満たした。
DOPE含有量
全DOPEの含有量は、222/SOP/018に基づいてCAD検出を用いてRP−HPLCにより測定した。サンプルはすべて、同一のHPLCシーケンス内で分析した。結果を表30に列挙する。バッグはすべて、目標値に近いDOPE濃度を含有し、観測期間全体を通して1.13〜1.90mg/mlの合格基準を満たした。
CHEMS含有量
全CHEMSの含有量は、222/SOP/018に基づいてCAD検出を用いてRP−HPLCにより測定した。サンプルはすべて、同一のHPLCシーケンス内で分析した。結果を表31に列挙する。
MoChol含有量
全MoCholの含有量は、222/SOP/018に基づいてCAD検出を用いてRP−HPLCにより測定した。サンプルはすべて、同一のHPLCシーケンス内で分析した。結果を表32に列挙する。バッグはすべて、目標値に近いMoChol濃度を含有し、観測期間全体を通して1.71×2.84mg/mlの合格基準を満たした。
コレステロール含有量
全コレステロールの含有量は、222/SOP/018に基づいてCAD検出を用いてRP−HPLCにより測定した。サンプルはすべて、同一のHPLCシーケンス内で分析した。結果を表33に列挙する。バッグはすべて、最大許容限界未満のコレステロール濃度を含有し、観測期間全体を通して≦0.17mg/mlの合格基準を満たした。
結論
24時間にわたる室温における注入バッグ中のMTL−CEBPAの安定性および企図される注入ラインとの適合性を確認するために、使用試験を行った。
薬剤生成物は0.21mg/mlの意図された最低臨床用量で少なくとも8時間にわたり安定性および適合性を有することが、結果から確認される。
したがって、選択された材料(注入バッグおよびスペースライン)は薬剤生成物との適合性があり、かつ少なくとも8時間の時間内でMTL−CEBPAの臨床試験に使用可能であると、結論付け可能である。
実施例22.MTL−CEBPAの安定性試験
長期貯蔵は−20±5℃で行った。加速条件下の安定性は2〜8℃で調べた。安定性の指標となるパラメータを同定するためのストレス試験研究は、25±2℃および40±2℃で貯蔵して行った。表34は、継続時間、条件、および現時点で入手可能なデータを含めて、安定性試験で試験されたバッチの概要を示す。
安定性プログラムで使用した分析手順には、外観、pH、アッセイ、純度、脂質含有量、および粒子特性の試験が含まれていた。
安定性のまとめおよび結論
長期貯蔵条件(20±5℃)で貯蔵されたMTL−CEBPA(MIT0615−A)の一バッチで安定性データが得られた。ストレス試験データは25±2℃および40±2℃で貯蔵された同一のバッチで得られた。
6ヶ月間まで20±5℃で貯蔵されたMIT0615−Aでは変化は観測されなかった。ストレス条件下(25±2℃および40±2℃)で貯蔵されたサンプルは、MOCHOLの分解によるMOCHOLの減少および貯蔵によるコレステロールへの変換を示した。この分解は、25±2℃と比較して40±2℃でより顕在化された。
25℃で3日間(72時間)にわたるストレス試験下では、主要な脂質のMOCHOLの含有量が33.2mg/mlから27.8mg/mlに減少し(16%減少)、一方、40℃で3日後には30.1mg/mlから2.5mg/mlに減少した(25%減少)。このMOCHOL低減は分解生成物コレステロールの形成に対応し、コレステロールは25℃で3日後に1.1mg/mlから2.2mg/mlに、40℃で3日後に1.0mg/mlから8.2mg/mlに増加した。他の脂質賦形剤は、加速条件下で有意な変化を示さなかった。有意な変化は、他の脂質、全saRNA含有量およびその不純物でも観測されなかった。表35〜38は、異なる条件でのMTL−CEBPAの安定性試験およびストレス試験の結果を示す。
MTL−CEBPAは、少なくとも6ヶ月間にわたり長期貯蔵条件(20±5℃)で貯蔵されたとき安定であり、分析変動に由来する以外の減少または変化の傾向を示さない。それは2〜8℃(5±3℃)の加速条件下で少なくとも1ヶ月間にわたり安定である。
実施例23.CEBPA−saRNAを用いたCCL4誘発肝硬変のin vivo研究
本研究は、遅延投与を探究する腹水および生存率による実施例11の反復であった。四塩化炭素(CCL4)誘発肝線維症は、肝線維症および肝硬変の研究用として齧歯動物において十分に確立されたかつ広く認められた実験モデルである。ラットへの四塩化炭素の長期投与は、組織学的に観測可能な肝線維症を伴って肝機能の重篤な擾乱を引き起こす。
スプラーグドーリーラットの肝硬変はCCL4のi.p.注射により誘発した。120〜150gの開始体重を有する雄スプラーグドーリーラットを使用した。CCL4処置動物は、研究全体を通して体重の有意な減少を示した。CCL4処置動物は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、プロトロンビン時間(PT)、ビリルビンなどの肝機能試験(LFT)パラメータの有意な増加を示したが、8週間(最初のランダム化)までGGTの増加を示さなかった。path対照動物では8週間までアンモニアの有意な増加および総タンパク質の有意な減少が見られた。
8週でのMTL−CEBPA(1mpk)による治療は動物の体重の有意な改善を示した。LFTおよびアンモニアレベルは13週間まで有意に逆転した。総タンパク質レベルは有意に増加した。11週でのMTL−CEBPA(1mpk)による治療も13週間までLFTおよびアンモニアレベルの有意な逆転を示した。図36は、8週からのMTL−CEBPA治療が高アンモニア血症を逆転することを示した。
図37Aおよび図37BはMTL−CEBPA治療が腹水を低減することを示した。腹水は視覚的/理学的検査に基づいて0〜3のスケールで評価した。腹水の不在は0として、かろうじて触知可能な腹水は1として、側腹部の緊張を有する大量腹水は2として、および緊満性腹水は3と記録した。腹水は9週よりも前に認知可能であり、13週に高スコアに達した。
図38Aおよび図38Bの生存率グラフに示されるように、MTL−CEBPA治療は生存率の有意な改善をもたらした。
実施例24.マウスおよびラットにおけるCEBPA−51交差反応性
研究目標:本研究の目的は、ラットおよびマウスが前臨床肝疾患モデルのためのおよびMTL−CEBPA/CEBPA−51を用いた非臨床毒性研究のための適切な齧歯動物種であるかを調べることであった。
実験計画:本研究は、1)データベース検索による配列マッチングと、2)ラットおよびマウスのゲノムDNA(gDNA)のシーケンシングと、3)ラットおよびマウスの細胞系におけるCEBPAのアップレギュレーションラインの確認との3部で構成した。
最初に、CEBPAの配列相同性を公用データベースで評価した(BLAST検索)。CEBPA−51標的配列は、BLASTを用いてラタス・ノルベギカス(Rattus
norvegicus)(ウィスター(Wistar)株)およびムス・ムスクルス(Mus musculus)(C57BL/6J株)のゲノムに関するクエリー検索として使用した。
加えて、ラットおよびマウスの肝葉からゲノムDNAを単離し、標的部位のPCR産物を生成してダイレクトシーケンシングに供した。次いで、得られた配列と発表されたラットおよびマウスのゲノム配列とをBLASTを介して比較した。
次いで、ラット肝臓クローン−9細胞およびマウス肝臓AML12細胞にCEBPA−51をトランスフェクトしてCEBPA mRNAのアップレギュレーションを測定することにより、機能交差反応性を評価した。リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて20nM(f.c.)の各試験品(CEBPA−51またはsiFLUC、非標的化siRNA)で細胞をリバーストランスフェクトし、続いて、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を用いて各試験品の追加のフォワードトランスフェクション工程(20nM f.c.)を行った。2回目のトランスフェクションの24時間後、qRT−PCRによりCEBPA mRNAレベルを決定した(ハウスキーピング遺伝子:GAPDH、トリプリケートで測定)。
結果:BLAST検索によりCEBPA−51の配列とラットおよびマウスの標的部位(CEBPA遺伝子のゲノム位置)との間のミスマッチの不在を確認した。加えて、CEBPA−51とラットおよびマウスの肝臓のgDNAに由来する増幅配列との比較でミスマッチは見られなかった。
ラットクローン−9細胞およびマウスAML12細胞へのCEBPA−51のトランスフェクションの結果、それぞれ2倍(n=1)および1.7倍(n=2)のCEBPA mRNAアップレギュレーションになったが、非標的化対照RNA二本鎖(siFLUC)ではアップレギュレーションは観測されなかった。
ラットおよびマウスのCEBPAのゲノム配列は、BLASTデータベースによればCEBPA−51標的配列と同一である。これはラットおよびマウスの肝臓のgDNAのシーケンシングによりさらに検証された。CEBPA−51の機能交差反応性は、ラットおよびマウスの肝細胞系における初期試験でCEBPA遺伝子のアップレギュレーションを実証することにより検証された。したがって、肝癌および肝疾患のラットモデルおよびマウスモデルはMTL−CEBPA活性の前臨床評価に適していると考えられると共に、ラットはMTL−CEBPAの非臨床毒性試験に適した齧歯動物種と考えられる。
他の実施形態
本開示をその詳細な説明と組み合わせて説明してきたが、以上の説明は例示することを意図したものであり、添付の特許請求の範囲により規定される本開示の範囲を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。他の態様、利点、および変更は以下の特許請求の範囲内にある。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下、記載する。
[項1]
C/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートする単離された合成saRNAであって、配列番号77の領域に対して少なくとも80%相補的であり、14〜30ヌクレオチドを有する、単離された合成saRNA。
[項2]
一本鎖である、項1に記載のsaRNA。
[項3]
3’オーバーハングを含む、項2に記載のsaRNA。
[項4]
修飾されている、項2に記載のsaRNA。
[項5]
少なくとも2つの修飾を含む、項4に記載のsaRNA。
[項6]
前記修飾が2’−F、2’−OMe、反転デオキシリボース、またはヌクレオチド間のホスホロチオエート結合のいずれかを含む、項4に記載のsaRNA。
[項7]
配列番号35、37、39、41、43、45、47、49、93(AW51)、および109(CEBPA51)から選択される配列を含む、項2に記載のsaRNA。
[項8]
二本鎖であり、かつアンチセンス鎖とセンス鎖とを含む、項1に記載のsaRNA。
[項9]
前記アンチセンス鎖が、配列番号35、37、39、41、43、45、47、49、93(AW51)、および109(CEBPA51)から選択される配列を含む、項5に記載のsaRNA。
[項10]
前記センス鎖が、配列番号34、36、38、40、42、44、48、94、および110から選択される配列を含む、項6に記載のsaRNA。
[項11]
修飾されている、項8に記載のsaRNA。
[項12]
少なくとも2つの修飾を含む、項11に記載のsaRNA。
[項13]
前記修飾が2’−F、2’−OMe、反転デオキシリボース、またはヌクレオチド間のホスホロチオエート結合のいずれかを含みうる、項11に記載のsaRNA。
[項14]
前記修飾が前記センス鎖にある、項11に記載のsaRNA。
[項15]
前記修飾が前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の両方にある、項11に記載のsaRNA。
[項16]
コンジュゲートされている、項1に記載のsaRNA。
[項17]
炭水化物リガンドにコンジュゲートされている、項16に記載のsaRNA。
[項18]
細胞においてC/EBPα遺伝子をアップレギュレートする方法であって、前記細胞に項1〜15のいずれか一項に記載のsaRNAを投与する工程を含む、方法。
[項19]
前記細胞が増殖細胞である、項18に記載の方法。
[項20]
前記細胞が癌細胞である、項19に記載の方法。
[項21]
前記細胞が肝細胞癌(HCC)細胞である、項20に記載の方法。
[項22]
C/EBPα mRNAアップレギュレーションのEC50が1.0超である、項18に記載の方法。
[項23]
C/EBPα遺伝子が少なくとも20%だけアップレギュレートされる、項18に記載の方法。
[項24]
C/EBPα遺伝子が少なくとも2倍だけアップレギュレートされる、項22に記載の方法。
[項25]
細胞において、アラニン−グリオキシレートアミノトランスフェラーゼ(AGXT)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、または肝細胞核因子4−アルファ(HNF4a)から選択される遺伝子の発現をアップレギュレートする方法であって、C/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートする単離された合成saRNAまたはその医薬組成物を投与する工程を含み、前記saRNAが配列番号77の領域に対して少なくとも80%相補的であり、前記saRNAが14〜30ヌクレオチドを有する、方法。
[項26]
前記細胞が過増殖細胞である、項25に記載の方法。
[項27]
前記細胞が癌細胞である、項26に記載の方法。
[項28]
前記細胞が肝細胞癌(HCC)細胞である、項27に記載の方法。
[項29]
前記細胞が過増殖細胞でない、項25に記載の方法。
[項30]
前記細胞が一次ヒト肝細胞である、項29に記載の方法。
[項31]
前記C/EBPα遺伝子のコード鎖から転写されるアンチセンスRNA転写物が切断されない、項25に記載の方法。
[項32]
前記saRNAがAgo2タンパク質に会合する、項25に記載の方法。
[項33]
前記遺伝子発現が少なくとも20%だけアップレギュレートされる、項25に記載の方法。
[項34]
前記遺伝子発現が少なくとも2倍だけアップレギュレートされる、項26に記載の方法。
[項35]
治療を必要とする対象の肝線維症、肝不全、または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を治療する方法であって、C/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートする単離された合成saRNAまたはその医薬組成物を投与する工程を含み、前記saRNAが配列番号77の領域に対して少なくとも80%相補的であり、前記saRNAが14〜30ヌクレオチドを有する、方法。
[項36]
前記肝不全が急性肝不全である、項35に記載の方法。
[項37]
前記対象の総ビリルビン(TBIL)レベル、循環アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベル、アルカリホスファターゼ(ALP)レベル、ガンマ−グルタミル−トランスペプチダーゼ(GGT)レベル、肝ヒドロキシプロリンレベル、プロトロンビン時間、アンモニア、または肝トリグリセリド(肝TG)レベルが減少される、項35に記載の方法。
[項38]
前記対象の血清中アルブミンレベル、総タンパク質レベルが増加される、項35に記載の方法。
[項39]
前記対象の線維組織または偽小葉の形成が低減される、項35に記載の方法。
[項40]
治療を必要とする対象のII型糖尿病またはインスリン抵抗性を治療する方法であって、C/EBPα遺伝子の発現をアップレギュレートする単離された合成saRNAまたはその医薬組成物を投与する工程を含み、前記saRNAが配列番号77の領域に対して少なくとも80%相補的であり、前記saRNAが14〜30ヌクレオチドを有する、方法。
[項41]
前記対象の肝コレステロールレベル、血清中ASTレベル、空腹時グルコースレベル、トリグリセリド対HDL−c比、または肝臓対生体比が減少される、項40に記載の方法。
[項42]
前記対象のインスリンレベルが増加される、項40に記載の方法。
[項43]
前記saRNAが二本鎖であり、かつアンチセンス鎖とセンス鎖とを含む、項25、35、または40に記載の方法。
[項44]
前記saRNAの前記アンチセンス鎖および/または前記センス鎖が3’オーバーハングを含む、項43に記載の方法。
[項45]
前記saRNAが修飾されている、項43に記載のsaRNA。
[項46]
前記saRNAが少なくとも2つの修飾を含む、項45に記載のsaRNA。
[項47]
前記修飾が2’−F、2’−OMe、反転デオキシリボース、またはヌクレオチド間のホスホロチオエート結合のいずれかを含みうる、項45に記載のsaRNA。
[項48]
前記修飾が前記センス鎖にある、項45に記載のsaRNA。
[項49]
前記修飾が前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の両方にある、項45に記載のsaRNA。
[項50]
前記アンチセンス鎖が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、35、37、39、41、43、45、47、49、93(AW51)、および109(CEBPA51)から選択される配列を含む、項43に記載の方法。
[項51]
前記センス鎖が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、34、36、38、40、42、44、48、94(AW51)、および110(CEBPA51)から選択される配列を含む、項50に記載のsaRNA。
[項52]
リポソーム内にカプセル化された単離された合成saRNAを含む医薬組成物であって、前記saRNAがC/EBPα遺伝子またはその医薬組成物の発現をアップレギュレートし、前記saRNAが配列番号77の領域に対して少なくとも80%相補的であり、前記saRNAが14〜30ヌクレオチドを有する、医薬組成物。
[項53]
前記リポソームが、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステリル−ヘミスクシネート(CHEMS)、および4−(2−アミノエチル)−モルホリノ−コレステロールヘミスクシネート(MOCHOL)を含む、項52に記載の医薬組成物。
[項54]
POPC:DOPE:CHEMS:MOCHOLのモル比が約6:24:23:47である、項53に記載の医薬組成物。
[項55]
前記リポソームのサイズが約50nm〜約150nmである、項52に記載の医薬組成物。
[項56]
前記リポソームの前記サイズが100nm〜約120nmである、項55に記載の医薬組成物。
[項57]
前記saRNAが二本鎖であり、かつアンチセンス鎖とセンス鎖とを含む、項52に記載の医薬組成物。
[項58]
前記saRNAの前記アンチセンス鎖および/または前記センス鎖が3’オーバーハングを含む、項57に記載の医薬組成物。
[項59]
前記saRNAが修飾されている、項57に記載の医薬組成物。
[項60]
前記saRNAが少なくとも2つの修飾を含む、項59に記載の医薬組成物。
[項61]
前記修飾が2’−F、2’−OMe、反転デオキシリボース、またはヌクレオチド間のホスホロチオエート結合のいずれかを含みうる、項59に記載の医薬組成物。
[項62]
前記修飾が前記センス鎖にある、項59に記載の医薬組成物。
[項63]
前記修飾が前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の両方にある、項59に記載の医薬組成物。
[項64]
前記saRNAの前記アンチセンス鎖が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、35、37、39、41、43、45、47、49、93(AW51)、および109(CEBPA51)から選択される配列を含む、項57に記載の医薬組成物。
[項65]
前記saRNAの前記センス鎖が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、34、36、38、40、42、44、48、94(AW51)、および110(CEBPA51)から選択される配列を含む、項57に記載の医薬組成物。
[項66]
前記saRNAが配列番号109のアンチセンス鎖と配列番号110のセンス鎖とを有する、項52に記載の医薬組成物。
[項67]
前記saRNAが約2mg/mL〜約5mg/mLの濃度を有する、項52に記載の医薬組成物。
[項68]
前記saRNAが約2.5mg/mLの濃度を有する、項67に記載の医薬組成物。
[項69]
約7.2〜約7.8のpHを有する、項52に記載の医薬組成物。
[項70]
約7.5のpHを有する、項69に記載の医薬組成物。
[項71]
リン酸緩衝液を有する、項52に記載の医薬組成物。
[項72]
前記リン酸緩衝液がリン酸水素二ナトリウム二水和物およびリン酸二水素カリウムを含む、項71に記載の医薬組成物。
[項73]
凍結保護剤を含む、項52に記載の医薬組成物。
[項74]
前記凍結保護剤がスクロースである、項73に記載の医薬組成物。
[項75]
イオン強度調整剤を含む、項52に記載の医薬組成物。
[項76]
前記イオン強度調整剤が塩化カリウムである、項75に記載の医薬組成物。
[項77]
光から保護される、項52に記載の医薬組成物。
[項78]
栓付きガラスバイアル中に貯蔵される、項52に記載の医薬組成物。
[項79]
−20℃±5℃で凍結貯蔵される、項52に記載の医薬組成物。
[項80]
前記リポソーム内にカプセル化された前記単離された合成saRNAが少なくとも6ヶ月間にわたり安定性を維持する、項79に記載の医薬組成物。
[項81]
静脈内使用のために0.9%正常生理食塩水で希釈される、項52に記載の医薬組成物。
[項82]
対象の癌を治療する方法であって、前記対象に項52に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
[項83]
前記対象が肝細胞癌(HCC)を有する、項82に記載の方法。
[項84]
前記HCCが進行HCCである、項83に記載の方法。
[項85]
前記対象が二次肝腫瘍を有する、項82に記載の方法。
[項86]
前記医薬組成物の用量が約20〜約160mg/m2である、項82に記載の方法。
[項87]
前記医薬組成物が3週間にわたり週1回、1日目、8日目、およびに15日目に静脈内注入により投与される、項82に記載の方法。
[項88]
単離された合成saRNAをリポソーム内にカプセル化する方法であって、
前記saRNAを第1の緩衝液に溶解させてsaRNA溶液を形成する工程と、
前記saRNA溶液を0.2μmフィルターに通して濾過する工程と、
前記濾過されたsaRNA溶液と脂質溶液とを注入モジュール内で混合してリポソーム配合物を形成する工程と、
前記リポソーム配合物に第2の緩衝液を添加する工程とを含み、
前記saRNAがC/EBPα遺伝子またはその医薬組成物の発現をアップレギュレートし、前記saRNAが配列番号77の領域に対して少なくとも80%相補的であり、前記saRNAが14〜30ヌクレオチドを有する、方法。
[項89]
前記第1の緩衝液が酢酸Na/スクロースである、項88に記載の方法。
[項90]
前記saRNA溶液のpHが約4.0である、項88に記載の方法。
[項91]
前記saRNA溶液中の前記saRNAの濃度が約2.38mg/mLである、項88に記載の方法。
[項92]
前記脂質溶液が、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グルセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステリル−ヘミスクシネート(CHEMS)、および4−(2−アミノエチル)−モルホリノ−コレステロールヘミスクシネート(MOCHOL)を含む、項88に記載の方法。
[項93]
POPC:DOPE:CHEMS:MOCHOLのモル比が約6:24:23:47である、項92に記載の方法。
[項94]
前記第2の緩衝液が約9のpHを有する、項88に記載の方法。
[項95]
前記第2の緩衝液がNaCl/Na2HPO4である、項94に記載の方法。
[項96]
前記saRNAが二本鎖であり、かつアンチセンス鎖とセンス鎖とを含む、項88に記載の方法。
[項97]
前記saRNAの前記アンチセンス鎖が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、64(AW51)、および78(CEBPA51)から選択される配列を含む、項96に記載の方法。
[項98]
前記saRNAの前記センス鎖が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、50(AW51)、および79(CEBPA51)から選択される配列を含む、項97に記載の方法。