以下、複数の実施形態による燃料噴射弁を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態による燃料噴射弁を図1に示す。燃料噴射弁1は、例えば、図示しない車両に搭載された内燃機関としてのガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」という)に適用される。燃料噴射弁1は、燃料としてのガソリンを噴射しエンジンに供給する。
燃料噴射弁1は、ノズル部10、ハウジング20、ニードル30、可動コア40、固定コア50、コイル55、アッパハウジング70、スプリング63、スプリング65等を備えている。
ノズル部10は、ノズル端部11、ノズル筒部12を有している。
ノズル端部11は、例えば金属により有底筒状に形成されている。ノズル端部11は、噴孔13、弁座14を有している。噴孔13は、ノズル端部11の底部を内側から外側へ貫くよう複数形成されている。弁座14は、ノズル端部11の底部の内側において噴孔13の周囲に環状に形成されている。
ノズル筒部12は、例えば金属等の磁性材料により筒状に形成されている。ノズル筒部12は、軸方向の一端の内周壁がノズル端部11の外周壁に嵌合するようノズル端部11と一体に設けられている。ここで、ノズル筒部12とノズル端部11とは、例えば溶接により接合されている。
ハウジング20は、例えば金属等の磁性材料により筒状に形成されている。ハウジング20は、ノズル部10の噴孔13とは反対側に接続するよう設けられている。
より詳細には、ハウジング20は、外筒部21、外側環状部22、内筒部23、内側環状部24を有している(図2参照)。
外筒部21は、筒状に形成されている。外側環状部22は、外筒部21の軸方向の一端から径方向内側へ延びるよう環状に形成されている。内筒部23は、外側環状部22の内縁部から外筒部21とは反対側へ延びるよう筒状に形成されている。内側環状部24は、内筒部23の外側環状部22とは反対側の端部から径方向内側へ延びるよう環状に形成されている。
外筒部21の外側環状部22とは反対側の端部の内周壁には、径方向外側へ凹む環状のハウジング凹部201が形成されている。ハウジング凹部201は、外筒部21の軸方向に2つ形成されている。
ノズル部10のノズル筒部12のノズル端部11とは反対側の外周壁には、環状のノズル段差面121が形成されている。ハウジング20は、内側環状部24の端面がノズル段差面121に当接し、内筒部23の内周壁がノズル筒部12の外周壁に当接するようノズル筒部12の噴孔13とは反対側に接続するよう設けられている。
ニードル30は、例えば非磁性の金属により形成されている。ニードル30は、ニードル本体31、鍔部34を有している。
ニードル本体31は、棒状に形成されている。鍔部34は、ニードル本体31の端部から径方向外側へ延びるよう環状に形成されている。ニードル30は、ノズル筒部12およびノズル端部11の内側において軸方向に往復移動可能なようノズル部10の内側に設けられている。
ニードル30には、軸方向流路301、径方向流路302が形成されている。軸方向流路301は、ニードル本体31のノズル端部11とは反対側の端面から軸方向へ延びるようにして形成されている。径方向流路302は、ニードル本体31の径方向に延びて軸方向流路301とニードル本体31の外壁とを接続するよう形成されている。これにより、ニードル30に対しノズル端部11とは反対側の燃料は、軸方向流路301および径方向流路302を経由してニードル本体31の外周壁とノズル筒部12の内壁との間へ流通可能である。
ニードル30は、ニードル本体31のノズル端部11側の端部である一端が弁座14から離間(離座)または弁座14に当接(着座)し、噴孔13を開閉する。以下、適宜、ニードル30が弁座14から離間する方向を開弁方向といい、ニードル30が弁座14に当接する方向を閉弁方向という。
可動コア40は、例えば金属等の磁性材料により筒状に形成されている。可動コア40は、鍔部34に対しノズル端部11側においてニードル30に対し軸方向に相対移動可能なようニードル本体31の径方向外側に設けられている。可動コア40は、鍔部34により、ニードル30に対し開弁方向の相対移動が規制される。
固定コア50は、例えば金属等の磁性材料により筒状に形成されている。固定コア50は、コア凹部501、コア凹部502を有している。コア凹部501は、固定コア50の軸方向の一端の外周壁から径方向内側へ凹むよう環状に形成されている。コア凹部502は、固定コア50の軸方向の一端の内周壁から径方向外側へ凹むよう環状に形成されている。
固定コア50には、磁気絞り部15、スリーブ51が設けられている。
磁気絞り部15は、例えば非磁性の金属により筒状に形成されている。磁気絞り部15は、コア凹部501に嵌合するよう設けられている。ここで、磁気絞り部15と固定コア50とは、例えば溶接により接合されている。
スリーブ51は、例えば非磁性の金属により筒状に形成されている。スリーブ51は、コア凹部502に嵌合するよう設けられている。
固定コア50は、可動コア40に対し噴孔13とは反対側に設けられている。ここで、磁気絞り部15のコア凹部501とは反対側の端部は、ノズル筒部12のノズル端部11とは反対側の端部に接続している。磁気絞り部15とノズル筒部12とは、例えば溶接により接合されている。
スリーブ51の噴孔13側の端部の内周壁は、鍔部34の外周壁と摺動可能である。また、スリーブ51の噴孔13側の端面は、可動コア40の噴孔13とは反対側の端面に当接可能である。
固定コア50の内側には、円筒状のアジャスティングパイプ62が圧入されている。スプリング63は、例えばコイルスプリングであり、固定コア50の内側のアジャスティングパイプ62とニードル30との間に設けられている。スプリング63の一端は、アジャスティングパイプ62に当接している。スプリング63の他端は、ニードル30に当接している。スプリング63は、ニードル30、可動コア40を噴孔13側、すなわち、閉弁方向に付勢可能である。スプリング63の付勢力は、固定コア50に対するアジャスティングパイプ62の位置により調整される。
コイル55は、筒状に形成され、固定コア50とハウジング20との間に設けられている。コイル55は、樹脂製の筒状のボビン551に導線を巻くことにより形成されている。
より具体的には、コイル55およびボビン551は、固定コア50、磁気絞り部15およびノズル筒部12の外周壁と、ハウジング20の外筒部21の内周壁との間に設けられている(図2参照)。
アッパハウジング70は、例えば金属等の磁性材料により略C字状に形成されている(図3参照)。アッパハウジング70は、固定コア50とハウジング20との間においてコイル55に対し噴孔13とは反対側に設けられている。ここで、アッパハウジング70の内周壁と固定コア50の外周壁とは密着している。また、アッパハウジング70の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とは密着している。
コイル55は、電力が供給(通電)されると磁力を生じる。コイル55に磁力が生じると、磁気絞り部15を避けて、固定コア50、アッパハウジング70、外筒部21、外側環状部22、ノズル筒部12、可動コア40に磁気回路が形成される(図2参照)。
これにより、固定コア50と可動コア40との間に磁気吸引力が発生し、可動コア40は、ニードル30とともに固定コア50側に吸引される。これにより、ニードル30が開弁方向に移動し、ニードル30の端部が弁座14から離間し、開弁する。その結果、噴孔13が開放され、噴孔13から燃料が噴射される。このように、コイル55は、通電されると、可動コア40を固定コア50側に吸引しニードル30を弁座14とは反対側、すなわち開弁方向に移動させることが可能である。
なお、可動コア40が磁気吸引力により固定コア50側(開弁方向)に吸引されると、ニードル30の鍔部34は、スリーブ51の内側を軸方向に移動する。このとき、鍔部34の外周壁とスリーブ51の内周壁とが摺動する。そのため、ニードル30は、鍔部34側の端部の軸方向の往復移動がスリーブ51により案内される。
また、可動コア40は、磁気吸引力により固定コア50側(開弁方向)に吸引されると、固定コア50側の端面がスリーブ51の噴孔13側の端面に衝突する。これにより、可動コア40は、開弁方向への移動が規制される。
可動コア40が固定コア50側に吸引されている状態でコイル55への通電を停止すると、ニードル30および可動コア40は、スプリング63の付勢力により、弁座14側へ付勢される。これにより、ニードル30が閉弁方向に移動し、ニードル30の端部が弁座14に当接し、閉弁する。その結果、噴孔13が閉塞される。
スプリング65は、例えばコイルスプリングであり、一端が可動コア40の噴孔13側の面に当接し、他端がノズル筒部12の内周壁に形成された環状のノズル段差面122に当接した状態で設けられている(図2参照)。スプリング65は、可動コア40を固定コア50側、すなわち、開弁方向に付勢可能である。スプリング65の付勢力は、スプリング63の付勢力よりも小さい。そのため、コイル55に通電されていないとき、ニードル30は、スプリング63により弁座14に押し付けられ、可動コア40は、鍔部34に押し付けられる。
本実施形態では、ニードル30にストッパ66が設けられている。ストッパ66は、例えば非磁性の金属等により環状に形成されている。ストッパ66は、可動コア40に対し噴孔13側において、内周壁がニードル本体31の外周壁に嵌合するよう圧入されている。ここで、可動コア40は、鍔部34とストッパ66との間において、ニードル本体31に対し軸方向に相対移動可能である。ストッパ66は、可動コア40の噴孔13側の面に当接することで、ニードル30に対する可動コア40の閉弁方向の移動を規制可能である。
図1に示すように、コイル55およびボビン551の周囲、ならびに、固定コア50の外周壁は、樹脂からなるモールド部56によりモールドされている。
燃料噴射弁1は、コネクタ部57を備えている。コネクタ部57は、モールド部56から径方向外側へ突出するよう樹脂によりモールド部56と一体に形成されている。
コネクタ部57およびモールド部56には、端子553がインサート成型されている。端子553は、金属等の導体により形成され、一端がコイル55に接続し、他端がコネクタ部57の内側に位置している。
端子553のコイル55側の端部は、ボビン延伸部552によりモールドされている。ボビン延伸部552は、ボビン551から噴孔13とは反対側へ延びるようボビン551と一体に形成されている(図1参照)。
固定コア50、磁気絞り部15、ノズル部10の内側には、燃料流路100が形成されている。燃料流路100は、噴孔13に接続している。
固定コア50の噴孔13とは反対側の端部には、図示しない配管が接続される。これにより、燃料流路100には、燃料供給源(燃料ポンプ)からの燃料が配管を経由して流入する。燃料流路100は、燃料を噴孔13に導く。
固定コア50の噴孔13とは反対側の端部から燃料流路100に流入した燃料は、固定コア50およびアジャスティングパイプ62の内側、軸方向流路301、径方向流路302、ニードル30とノズル部10との間を流通し、噴孔13に導かれる。
固定コア50の噴孔13とは反対側の端部の内側には、フィルタ2が設けられている。フィルタ2は、燃料流路100を流れる燃料中の異物を捕集可能である。
端子553には、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」という)が接続される。ECUは、演算部としてのCPU、記憶部としてのROM、RAM、入出力部としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。ECUは、車両の各部に設けられた各種センサからの情報等に基づき、車両に搭載されたエンジン、機器および装置等の作動を制御し、車両の走行等を制御する。
ECUは、端子553を経由してコイル55への通電を制御することで、燃料噴射弁1およびエンジンの作動を制御し、車両を制御する。ECUにより、コイル55に通電されると、固定コア50と可動コア40との間に磁気吸引力が生じ、可動コア40およびニードル30がスプリング63の付勢力に抗して開弁方向に移動する。そのため、ニードル30が弁座14から離間し、開弁する。これにより、燃料流路100内の燃料は、噴孔13を経由して燃料噴射弁1の外部であるエンジンの燃焼室に噴射される。
次に、アッパハウジング70について詳細に説明する。
図3に示すように、アッパハウジング70は、本体71、切欠き部72、凹部73を有している。
<14>本体71は、例えば金属等の磁性材料により環状に形成されている。切欠き部72は、本体71の周方向の一部を切り欠くようにして形成されている。これにより、アッパハウジング70の本体71は、周方向の一部で分断され、軸方向から見てC字状に形成されている。
凹部73は、本体71の外周壁から径方向内側へ凹むよう形成されている。凹部73は、本体71の周方向に等間隔で5つ形成されている。本体71に凹部73を形成することで、本体71を径方向に容易に変形させることができる。
<1>アッパハウジング70は、第1テーパ面St1、第1筒状面Sc1を有している。
図3は、固定コア50とハウジング20との間に組み付ける前のアッパハウジング70を示している。第1テーパ面St1は、アッパハウジング70の本体71の外周壁に形成されている。第1テーパ面St1は、アッパハウジング70の本体71の軸を中心とする仮想テーパ面Stv1上に位置する(図3参照)。ここで、仮想テーパ面Stv1は、本体71の軸方向の一方側から他方側へ向かうに従い所定の割合で本体71の軸に近付くテーパ状の仮想面である。
第1テーパ面St1は、アッパハウジング70に対し噴孔13とは反対側から噴孔13側へ向かうに従い所定の割合でアッパハウジング70の軸に近付くようテーパ状に形成されている(図2、3参照)。
第1筒状面Sc1は、アッパハウジング70の本体71の内周壁に形成されている。第1筒状面Sc1は、アッパハウジング70の本体71の軸を中心とする仮想筒状面Scv1上に位置する(図3参照)。ここで、仮想筒状面Scv1は、本体71の軸方向において本体71の軸からの距離が一定の円筒状の仮想面である。
第1筒状面Sc1は、アッパハウジング70の軸を中心とする円筒面状に形成されている(図2、3参照)。
<3>図2に示すように、ハウジング20は、第2テーパ面St2を有している。第2テーパ面St2は、アッパハウジング70の外周壁に形成された第1テーパ面St1に径方向で対向するようハウジング20の外筒部21の内周壁に形成されている。第2テーパ面St2は、外筒部21の軸方向の噴孔13とは反対側から噴孔13側へ向かうに従い所定の割合で外筒部21の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
図2に示すように、固定コア50は、第2筒状面Sc2を有している。第2筒状面Sc2は、アッパハウジング70の内周壁に形成された第1筒状面Sc1に径方向で対向するよう固定コア50の外周壁に形成されている。第2筒状面Sc2は、固定コア50の軸を中心とする円筒面状に形成されている。
次に、固定コア50とハウジング20との間へのアッパハウジング70の組み付け方法、すなわち、燃料噴射弁1の製造方法について説明する。
燃料噴射弁1の製造方法は、下記の工程を含む。
(ハウジング組み付け工程)
ノズル端部11、ノズル筒部12、スプリング65、ニードル30、可動コア40、ストッパ66、磁気絞り部15、固定コア50、スリーブ51等を一体に組み付けた後、ハウジング20をノズル筒部12に組み付ける。具体的には、ハウジング20をノズル部10のノズル端部11側から挿入し、内側環状部24をノズル段差面121に当接させる。その後、ノズル筒部12とハウジング20とを溶接により固定する。
(コイル組み付け工程)
ハウジング組み付け工程の後、ボビン551、ボビン延伸部552および端子553と一体のコイル55を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、コイル55を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、コイル55を磁気絞り部15とハウジング20との間に位置させる。
(アッパハウジング組み付け工程)
コイル組み付け工程の後、アッパハウジング70を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、アッパハウジング70を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、アッパハウジング70の切欠き部72にボビン延伸部552が位置した状態で、アッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入する。
<2>図4に示すように、アッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、まず、アッパハウジング70の外周壁すなわち第1テーパ面St1がハウジング20の外筒部21の噴孔13とは反対側の端部の内周壁に接触する。この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1筒状面Sc1の内径は、第2筒状面Sc2の外径より大きい。そのため、アッパハウジング70の周方向の少なくとも一部において、アッパハウジング70の内周壁すなわち第1筒状面Sc1と固定コア50の外周壁との間に隙間Sp1が形成される。
また、この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部の外径は、第2テーパ面St2の噴孔13側の端部の内径より大きい。
この状態で、アッパハウジング70を噴孔13側へさらに移動させると、アッパハウジング70の第1テーパ面St1とハウジング20の第2テーパ面St2とが摺動する。このとき、アッパハウジング70は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。そのため、アッパハウジング70の第1筒状面Sc1が固定コア50の第2筒状面Sc2に当接し、密着する。これにより、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とが密着する(図4、5参照)。
(モールド工程)
アッパハウジング組み付け工程の後、溶融した樹脂を固定コア50とハウジング20との間、および、固定コア50の周囲と金型との間に流し込み、モールド部56およびコネクタ部57を形成する。このとき、溶融した樹脂は、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側から、凹部73および切欠き部72を通ってコイル55側へ流れる。これにより、コイル55の周囲が樹脂で覆われる。
次に、本実施形態と第1比較形態とを対比し、第1比較形態に対する本実施形態の技術的に有利な点について説明する。
第1比較形態は、アッパハウジング70およびハウジング20の構成が第1実施形態と異なる。図6に示すように、第1比較形態では、アッパハウジング70の外周壁は、円筒面状に形成されている。ハウジング20の外筒部21の内周壁は、円筒状に形成されている。このように、第1比較形態では、アッパハウジング70は第1テーパ面St1を有しておらず、ハウジング20は第2テーパ面St2を有していない。
また、外筒部21の内周壁には、環状の段差面205が形成されている。アッパハウジング70は、段差面205に当接し、噴孔13側への移動が規制されている。
第1比較形態では、アッパハウジング70は、組み付け前において、内径が固定コア50の外径より大きく、外径がハウジング20の外筒部21の内径より大きい。そのため、アッパハウジング70は、組み付け時、外周壁がハウジング20の外筒部21の内周壁に接触した状態で圧入される。これにより、アッパハウジング70の組み付け後、アッパハウジング70の周方向の少なくとも一部において、固定コア50の外周壁とアッパハウジング70の内周壁との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるおそれがある。
したがって、コイル55への通電時、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路の形成が困難になるおそれがある。この場合、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることが困難になるおそれがある。そのため、燃料噴射弁の駆動に必要なエネルギーが増大するおそれがある。
一方、本実施形態では、アッパハウジング70が第1テーパ面St1を有し、ハウジング20が第2テーパ面St2を有することにより、アッパハウジング70の組み付け後、アッパハウジング70の第1テーパ面St1とハウジング20の第2テーパ面St2とが密着するとともに、アッパハウジング70の第1筒状面Sc1と固定コア50の第2筒状面Sc2とが密着する。
したがって、コイル55への通電時、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である(図2参照)。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
図2において、部材同士が圧入により密着している箇所を太い一点鎖線で示す(以下同様)。本実施形態では、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)とハウジング20の内周壁(第2テーパ面St2)とが密着し、アッパハウジング70の内周壁(第1筒状面Sc1)と固定コア50の外周壁(第2筒状面Sc2)とが密着し、当該箇所において磁気ギャップおよび磁気抵抗が小さくなっている。
また、本実施形態では、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部と第2テーパ面St2の噴孔13側の端部とは、僅かに離間している。一方、第1テーパ面St1の噴孔13とは反対側の端部と第2テーパ面St2の噴孔13とは反対側の端部とは、当接している。
そのため、モールド工程のとき、溶融した樹脂が、アッパハウジング70に対し噴孔13とは反対側から第1テーパ面St1と第2テーパ面St2との間に入り込むのを抑制できる。これにより、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが離間するのを抑制できる。
また、本実施形態では、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能なため、可動コア40の挙動によって生じる誘導起電力を大きくすることができ、誘導起電力を信号としたときに制御性を向上させることができる。
誘導起電力を信号とする制御としては、例えば、検出した誘導起電力に基づき、ニードル30の閉弁を検知する例(特開2017−61882号公報)を採用できる。
以上説明したように、<1>本実施形態では、アッパハウジング70は、外周壁または内周壁の一方である外周壁に形成された第1テーパ面St1、および、外周壁または内周壁の他方である内周壁に形成された第1筒状面Sc1を有する。ハウジング20または固定コア50の一方であるハウジング20は、第1テーパ面St1に径方向で対向する第2テーパ面St2を有する。ハウジング20または固定コア50の他方である固定コア50は、第1筒状面Sc1に径方向で対向する第2筒状面Sc2を有する。
そのため、アッパハウジング70の組み付け前において第1テーパ面St1、第2テーパ面St2、第1筒状面Sc1、第2筒状面Sc2の径を適宜設定することにより、アッパハウジング70の組み付け時、アッパハウジング70をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50とハウジング20との間に挿入することで、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを軸方向に摺動させつつ、アッパハウジング70を径方向内側に変形させ、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とを当接および密着させることができる。
これにより、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とが密着する。
したがって、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
また、<2>本実施形態では、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1筒状面Sc1の内径は第2筒状面Sc2の外径より大きい。第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向している状態では、第1筒状面Sc1は第2筒状面Sc2に当接する。
そのため、アッパハウジング70の組み付け時、アッパハウジング70をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50とハウジング20との間に容易に挿入することができる。また、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを密着させるとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とを密着させることができる。これにより、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。
また、<3>本実施形態では、第2筒状面Sc2は、固定コア50に形成されている。第2テーパ面St2は、ハウジング20に形成されている。
そのため、アッパハウジング70の組み付け時、アッパハウジング70を、径方向外側すなわち引張り側ではなく、径方向内側すなわち圧縮側に変形させることができる。これにより、アッパハウジング70の強度を確保できる。
また、<7>本実施形態では、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部と第2テーパ面St2の噴孔13側の端部とは、離間している。
つまり、<13>本実施形態では、アッパハウジング70は、噴孔13側の端部の外周壁とハウジング20の内周壁とが離間するよう設けられている。
本実施形態では、アッパハウジング70のハウジング20の内側への組み付け前において、アッパハウジング70の第1テーパ面St1の縮径する割合である縮径率は、ハウジング20の第2テーパ面St2の縮径率より僅かに大きい。そのため、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の外周壁が先にハウジング20の内周壁に接触する。アッパハウジング70の圧入完了後、アッパハウジング70の噴孔13側の端部の外周壁(第1テーパ面St1)とハウジング20の内周壁(第2テーパ面St2)とは僅かに離間する。
したがって、モールド工程のとき、溶融した樹脂が、アッパハウジング70に対し噴孔13とは反対側からアッパハウジング70の第1テーパ面St1とハウジング20の第2テーパ面St2との間に入り込むのを抑制できる。これにより、アッパハウジング70の第1テーパ面St1とハウジング20の第2テーパ面St2とが離間するのを抑制できる。したがって、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を確実に形成可能である。
また、<14>本実施形態では、アッパハウジング70は、周方向の一部に切欠き部72を有し、軸方向から見てC字状に形成されている。
そのため、アッパハウジング70の組み付け時、アッパハウジング70を径方向内側へ変形させることが容易である。これにより、アッパハウジング70の組み付け後、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とをより一層密着させることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態による燃料噴射弁の一部を図7に示す。第2実施形態は、アッパハウジング、固定コア、ハウジングの構成等が第1実施形態と異なる。
<1>本実施形態では、第1テーパ面St1は、アッパハウジング70の本体71の内周壁に形成されている。第1テーパ面St1は、アッパハウジング70に対し噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合でアッパハウジング70の軸に近付くようテーパ状に形成されている(図7参照)。
第1筒状面Sc1は、アッパハウジング70の本体71の外周壁に形成されている。第1筒状面Sc1は、アッパハウジング70の軸を中心とする円筒面状に形成されている(図7参照)。
図7に示すように、固定コア50は、第2テーパ面St2を有している。第2テーパ面St2は、アッパハウジング70の内周壁に形成された第1テーパ面St1に径方向で対向するよう固定コア50の外周壁に形成されている。第2テーパ面St2は、固定コア50の軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で固定コア50の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
図7に示すように、ハウジング20は、第2筒状面Sc2を有している。第2筒状面Sc2は、アッパハウジング70の外周壁に形成された第1筒状面Sc1に径方向で対向するようハウジング20の外筒部21の内周壁に形成されている。第2筒状面Sc2は、ハウジング20の外筒部21の軸を中心とする円筒面状に形成されている。
また、外筒部21の内周壁には、環状の段差面205が形成されている。アッパハウジング70は、段差面205に当接していない。
次に、固定コア50とハウジング20との間へのアッパハウジング70の組み付け方法について説明する。
本実施形態の燃料噴射弁1の製造方法のうち「ハウジング組み付け工程」、「コイル組み付け工程」、「モールド工程」は第1実施形態と同様のため説明を省略し、「アッパハウジング組み付け工程」についてのみ以下で説明する。
(アッパハウジング組み付け工程)
コイル組み付け工程の後、アッパハウジング70を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、アッパハウジング70を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、アッパハウジング70の切欠き部72にボビン延伸部552が位置した状態で、アッパハウジング70を固定コア50の外側に圧入する。
<2>図8に示すように、アッパハウジング70を固定コア50の外側に圧入するとき、まず、アッパハウジング70の内周壁すなわち第1テーパ面St1が、第2テーパ面St2に対し噴孔13とは反対側において固定コア50の外周壁に径方向で対向する。この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1筒状面Sc1の外径は、第2筒状面Sc2の内径より小さい。そのため、アッパハウジング70の周方向の少なくとも一部において、アッパハウジング70の外周壁すなわち第1筒状面Sc1とハウジング20の内周壁との間に隙間Sp1が形成される。
また、この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部の内径は、第2テーパ面St2の噴孔13側の端部の外径より小さい。
この状態で、アッパハウジング70を噴孔13側へさらに移動させると、アッパハウジング70の第1テーパ面St1と固定コア50の第2テーパ面St2とが接触し摺動する。このとき、アッパハウジング70は、内径および外径が拡大するよう径方向外側に変形する。そのため、アッパハウジング70の第1筒状面Sc1がハウジング20の第2筒状面Sc2に当接し、密着する。これにより、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とが密着する(図7、8参照)。
以上説明したように、<1>本実施形態では、アッパハウジング70は、外周壁または内周壁の一方である内周壁に形成された第1テーパ面St1、および、外周壁または内周壁の他方である外周壁に形成された第1筒状面Sc1を有する。ハウジング20または固定コア50の一方である固定コア50は、第1テーパ面St1に径方向で対向する第2テーパ面St2を有する。ハウジング20または固定コア50の他方であるハウジング20は、第1筒状面Sc1に径方向で対向する第2筒状面Sc2を有する。
そのため、アッパハウジング70の組み付け前において第1テーパ面St1、第2テーパ面St2、第1筒状面Sc1、第2筒状面Sc2の径を適宜設定することにより、アッパハウジング70の組み付け時、アッパハウジング70をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50とハウジング20との間に挿入することで、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを軸方向に摺動させつつ、アッパハウジング70を径方向外側に変形させ、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とを当接および密着させることができる。
これにより、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とが密着する。
したがって、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
なお、本実施形態のようにアッパハウジング70の内縁部の軸方向の長さとアッパハウジング70の外縁部の軸方向の長さとが同じ場合、アッパハウジング70の内周壁に形成される磁路の面積は、アッパハウジング70の外周壁に形成される磁路の面積より小さくなる。本実施形態では、アッパハウジング70は、アッパハウジング70の内周壁すなわち第1テーパ面St1が、固定コア50の外周壁すなわち第2テーパ面St2と摺動しつつ、固定コア50に圧入される。そのため、圧入側であるアッパハウジング70の内周壁が固定コア50の外周壁に安定して密着する。これにより、アッパハウジング70の内周壁および外周壁のうち磁路面積が小さくなる側である内周壁の磁路面積を確保し易くなる。本実施形態は、この点で第1実施形態に対し有利である。
また、<2>本実施形態では、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1筒状面Sc1の外径は第2筒状面Sc2の内径より小さい。第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向している状態では、第1筒状面Sc1は第2筒状面Sc2に当接する。
そのため、アッパハウジング70の組み付け時、アッパハウジング70をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50とハウジング20との間に容易に挿入することができる。また、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを密着させるとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とを密着させることができる。これにより、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。
また、<7>本実施形態では、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部と第2テーパ面St2の噴孔13側の端部とは、離間している。
つまり、<13>本実施形態では、アッパハウジング70は、噴孔13側の端部の内周壁と固定コア50の外周壁とが離間するよう設けられている。
本実施形態では、アッパハウジング70の固定コア50の外側への組み付け前において、アッパハウジング70の第1テーパ面St1の縮径する割合である縮径率は、固定コア50の第2テーパ面St2の縮径率より僅かに大きい。そのため、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70を固定コア50の外側に圧入するとき、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の内周壁が先に固定コア50の外周壁に接触する。アッパハウジング70の圧入完了後、アッパハウジング70の噴孔13側の端部の内周壁(第1テーパ面St1)と固定コア50の外周壁(第2テーパ面St2)とは僅かに離間する。
したがって、モールド工程のとき、溶融した樹脂が、アッパハウジング70に対し噴孔13とは反対側からアッパハウジング70の第1テーパ面St1と固定コア50の第2テーパ面St2との間に入り込むのを抑制できる。これにより、アッパハウジング70の第1テーパ面St1と固定コア50の第2テーパ面St2とが離間するのを抑制できる。したがって、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を確実に形成可能である。
(第3実施形態)
第3実施形態による燃料噴射弁の一部を図9に示す。第3実施形態は、アッパハウジング、固定コア、ハウジングの構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング80は、内側部材81、外側部材85を有している。
内側部材81、外側部材85は、それぞれ、例えば金属等の磁性材料により略C字状に形成されている(図10、11参照)。
図9に示すように、アッパハウジング80は、固定コア50とハウジング20との間においてコイル55に対し噴孔13とは反対側に設けられている。ここで、アッパハウジング80の内側部材81の内周壁と固定コア50の外周壁とは密着している。また、内側部材81の外周壁と外側部材85の内周壁とは密着している。さらに、アッパハウジング80の外側部材85の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とは密着している。
コイル55は、電力が供給(通電)されると磁力を生じる。コイル55に磁力が生じると、磁気絞り部15を避けて、固定コア50、アッパハウジング80、外筒部21、外側環状部22、ノズル筒部12、可動コア40に磁気回路が形成される(図9参照)。
次に、アッパハウジング80について、より詳細に説明する。
<14>図10に示すように、内側部材81は、内側部材本体82、切欠き部83を有している。
内側部材本体82は、例えば金属等の磁性材料により環状に形成されている。切欠き部83は、内側部材本体82の周方向の一部を切り欠くようにして形成されている。これにより、アッパハウジング80の内側部材本体82は、周方向の一部で分断され、軸方向から見てC字状に形成されている。
図11に示すように、外側部材85は、外側部材本体86、切欠き部87、凹部88を有している。
外側部材本体86は、例えば金属等の磁性材料により環状に形成されている。切欠き部87は、外側部材本体86の周方向の一部を切り欠くようにして形成されている。これにより、アッパハウジング80の外側部材本体86は、周方向の一部で分断され、軸方向から見てC字状に形成されている。
凹部88は、外側部材本体86の外周壁から径方向内側へ凹むよう形成されている。凹部88は、外側部材本体86の周方向に等間隔で5つ形成されている。外側部材本体86に凹部88を形成することで、外側部材本体86を径方向に容易に変形させることができる。
上記構成により、アッパハウジング80の内側部材81および外側部材85は、周方向の一部に切欠き部83、切欠き部87を有し、軸方向から見てC字状に形成されている。
<4>アッパハウジング80の内側部材81は、第1テーパ面St1、第1筒状面Sc1を有している。
図10は、固定コア50とハウジング20との間に組み付ける前のアッパハウジング80の内側部材81を示している。第1テーパ面St1は、アッパハウジング80の内側部材本体82の外周壁に形成されている。第1テーパ面St1は、アッパハウジング80の内側部材本体82の軸を中心とする仮想テーパ面Stv1上に位置する(図10参照)。ここで、仮想テーパ面Stv1は、内側部材本体82の軸方向の一方側から他方側へ向かうに従い所定の割合で内側部材本体82の軸に近付くテーパ状の仮想面である。
第1テーパ面St1は、アッパハウジング80に対し噴孔13とは反対側から噴孔13側へ向かうに従い所定の割合でアッパハウジング80の軸に近付くようテーパ状に形成されている(図9、10参照)。
第1筒状面Sc1は、アッパハウジング80の内側部材本体82の内周壁に形成されている。第1筒状面Sc1は、アッパハウジング80の内側部材本体82の軸を中心とする仮想筒状面Scv1上に位置する(図10参照)。ここで、仮想筒状面Scv1は、内側部材本体82の軸方向において内側部材本体82の軸からの距離が一定の円筒状の仮想面である。
第1筒状面Sc1は、アッパハウジング80の軸を中心とする円筒面状に形成されている(図9、10参照)。
アッパハウジング80の外側部材85は、第2テーパ面St2、第2筒状面Sc2を有している。
図11は、固定コア50とハウジング20との間に組み付ける前のアッパハウジング80の外側部材85を示している。第2テーパ面St2は、アッパハウジング80の外側部材85の内周壁に形成されている。第2テーパ面St2は、アッパハウジング80の外側部材本体86の軸を中心とする仮想テーパ面Stv2上に位置する(図11参照)。ここで、仮想テーパ面Stv2は、外側部材本体86の軸方向の一方側から他方側へ向かうに従い所定の割合で外側部材本体86の軸に近付くテーパ状の仮想面である。
第2テーパ面St2は、アッパハウジング80に対し噴孔13とは反対側から噴孔13側へ向かうに従い所定の割合でアッパハウジング80の軸に近付くようテーパ状に形成されている(図9、11参照)。
第2筒状面Sc2は、アッパハウジング80の外側部材本体86の外周壁に形成されている。第2筒状面Sc2は、アッパハウジング80の外側部材本体86の軸を中心とする仮想筒状面Scv2上に位置する(図11参照)。ここで、仮想筒状面Scv2は、外側部材本体86の軸方向において外側部材本体86の軸からの距離が一定の円筒状の仮想面である。
<6>図12に示すように、内側部材81の軸方向の長さL1は、外側部材85の軸方向の長さL2より大きい。
図9に示すように、内側部材81の噴孔13側の端面は、外側部材85の噴孔13側の端面に対し噴孔13側に位置している。また、内側部材81の噴孔13とは反対側の端面は、外側部材85の噴孔13とは反対側の端面に対し噴孔13とは反対側に位置している。つまり、外側部材85は、軸方向において内側部材81の軸方向の長さの範囲内に位置している。
図9に示すように、固定コア50は、第3筒状面Sc3を有している。第3筒状面Sc3は、内側部材81の第1筒状面Sc1に径方向で対向するよう固定コア50の外周壁に形成されている。第3筒状面Sc3は、固定コア50の軸を中心とする円筒面状に形成されている(図9参照)。
図9に示すように、ハウジング20は、第4筒状面Sc4を有している。第4筒状面Sc4は、外側部材85の第2筒状面Sc2に径方向で対向するようハウジング20の外筒部21の内周壁に形成されている。第4筒状面Sc4は、外筒部21の軸を中心とする円筒面状に形成されている(図9参照)。
また、外筒部21の内周壁には、環状の段差面205が形成されている。アッパハウジング80の外側部材85は、段差面205に当接し、噴孔13側への移動が規制されている。
次に、固定コア50とハウジング20との間へのアッパハウジング80の組み付け方法について説明する。
本実施形態の燃料噴射弁1の製造方法のうち「ハウジング組み付け工程」、「コイル組み付け工程」、「モールド工程」は第1実施形態と同様のため説明を省略し、「アッパハウジング組み付け工程」についてのみ以下で説明する。
(アッパハウジング組み付け工程)
コイル組み付け工程の後、アッパハウジング80を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、まず、アッパハウジング80の外側部材85を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、外側部材85の切欠き部87にボビン延伸部552が位置した状態で、外側部材85をハウジング20の外筒部21の内側に挿入または圧入する。これにより、外側部材85は、段差面205に当接し、噴孔13側への移動が規制される。
その後、アッパハウジング80の内側部材81を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、内側部材81の切欠き部83にボビン延伸部552が位置した状態で、内側部材81を外側部材85の内側に圧入する。
<5>図13に示すように、内側部材81を外側部材85の内側に圧入するとき、まず、内側部材81の外周壁すなわち第1テーパ面St1が、第2テーパ面St2に対し噴孔13とは反対側においてハウジング20の外筒部21の内周壁に径方向で対向する。この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1筒状面Sc1の内径は、第3筒状面Sc3の外径より大きい。そのため、アッパハウジング80の内側部材81の周方向の少なくとも一部において、内側部材81の内周壁すなわち第1筒状面Sc1と固定コア50の外周壁との間に隙間Sp1が形成される。
また、この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部の外径は、第2テーパ面St2の噴孔13側の端部の内径より大きい。
この状態で、内側部材81を噴孔13側へさらに移動させると、内側部材81の第1テーパ面St1と外側部材85の第2テーパ面St2とが接触し摺動する。このとき、内側部材81は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。そのため、内側部材81の第1筒状面Sc1が固定コア50の第3筒状面Sc3に当接し、密着する。
また、このとき、外側部材85は、内径および外径が拡大するよう径方向外側に変形する。そのため、外側部材85の第2筒状面Sc2がハウジング20の第4筒状面Sc4に密着する。
これにより、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とが密着し、第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とが密着する(図9、13参照)。
なお、内側部材81は、定寸圧入ではなく、荷重で管理する。これにより、外側部材85および内側部材81の両方を定寸圧入する場合に生じる第1テーパ面St1および第2テーパ面St2のばらつきを抑制できる。
図10、11に示すように、アッパハウジング80を固定コア50とハウジング20との間に組み付ける前の状態では、内側部材81の軸と切欠き部83の両端部とを結ぶ直線の成す角θ1は、外側部材85の軸と切欠き部87の両端部とを結ぶ直線の成す角θ2より大きい。アッパハウジング80を固定コア50とハウジング20との間に組み付けた後の状態では(図9、13参照)、内側部材81の軸と切欠き部83の両端部とを結ぶ直線の成す角θ1は、外側部材85の軸と切欠き部87の両端部とを結ぶ直線の成す角θ2と同程度となる。
本実施形態では、固定コア50の硬度をH1、内側部材81の硬度をH2、外側部材85の硬度をH3、ハウジング20の硬度をH4とすると、固定コア50、内側部材81、外側部材85、ハウジング20は、例えば熱処理により、H1、H4>H2、H3の関係を満たすよう形成されている。そのため、アッパハウジング80を固定コア50とハウジング20との間に組み付けるとき、内側部材81および外側部材85を径方向に容易に変形させることができる。
次に、本実施形態と第2比較形態とを対比し、第2比較形態に対する本実施形態の技術的に有利な点について説明する。
第2比較形態は、磁性材リング79をさらに備える点で第1比較形態と異なる。磁性材リング79は、例えば金属等の磁性材料により略C字状に形成されている。磁性材リング79は、固定コア50とハウジング20との間においてアッパハウジング70に対し噴孔13とは反対側に設けられている。
磁性材リング79は、組み付け前において、内径が固定コア50の外径より小さく、外径がハウジング20の外筒部21の内径より小さい。そのため、磁性材リング79は、組み付け時、内周壁が固定コア50の外周壁に接触した状態で圧入される。ここで、磁性材リング79は、アッパハウジング70に当接するまで押し込まれる。
第2比較形態では、磁性材リング79の圧入時にスプリングバックが生じるおそれがある。そのため、磁性材リング79の組み付け後、アッパハウジング70の磁性材リング79側の端面と磁性材リング79のアッパハウジング70側の端面との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるおそれがある。
したがって、コイル55への通電時、固定コア50、磁性材リング79、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路の形成が困難になるおそれがある。この場合、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることが困難になるおそれがある。そのため、燃料噴射弁の駆動に必要なエネルギーが増大するおそれがある。
一方、本実施形態では、アッパハウジング80の内側部材81が第1テーパ面St1を有し、アッパハウジング80の外側部材85が第2テーパ面St2を有することにより、アッパハウジング80の組み付け後、内側部材81の第1テーパ面St1と外側部材85の第2テーパ面St2とが密着するとともに、内側部材81の第1筒状面Sc1と固定コア50の第3筒状面Sc3とが密着し、外側部材85の第2筒状面Sc2とハウジング20の第4筒状面Sc4とが密着する。
また、本実施形態では、内側部材81の圧入時にスプリングバックが発生することはなく、内側部材81と固定コア50および外側部材85とが密着した状態を維持できる。
したがって、コイル55への通電時、固定コア50、アッパハウジング80の内側部材81および外側部材85、ならびに、ハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である(図9参照)。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
また、本実施形態では、アッパハウジング80の外側部材85は、ハウジング20の段差面205に当接し、噴孔13側への移動が規制されている。そのため、内側部材81を外側部材85の内側に圧入しても、外側部材85とボビン551との距離を一定に保つことができる。
また、本実施形態では、内側部材81の外側部材85の内側への組み付け前において、内側部材81の第1テーパ面St1の縮径する割合である縮径率は、外側部材85の第2テーパ面St2の縮径率より僅かに大きい。そのため、アッパハウジング組み付け工程で内側部材81を外側部材85の内側に圧入するとき、内側部材81の噴孔13とは反対側の端部の外周壁が先に外側部材85の内周壁に接触する。
以上説明したように、<4>本実施形態では、アッパハウジング80は、内側部材81、および、内側部材81の径方向外側に設けられた外側部材85を有する。内側部材81は、外周壁に形成された第1テーパ面St1、および、内周壁に形成された第1筒状面Sc1を有する。外側部材85は、第1テーパ面St1に径方向で対向するよう内周壁に形成された第2テーパ面St2、および、外周壁に形成された第2筒状面Sc2を有する。固定コア50は、第1筒状面Sc1に径方向で対向する第3筒状面Sc3を有する。ハウジング20は、第2筒状面Sc2に径方向で対向する第4筒状面Sc4を有する。
そのため、アッパハウジング80の組み付け前において第1テーパ面St1、第2テーパ面St2、第1筒状面Sc1、第2筒状面Sc2、第3筒状面Sc3、第4筒状面Sc4の径を適宜設定することにより、アッパハウジング80の組み付け時、外側部材85を固定コア50とハウジング20との間に挿入した状態で、内側部材81をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50と外側部材85との間に挿入することで、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを軸方向に摺動させつつ、内側部材81を径方向内側に変形させて第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とを当接および密着させるとともに、外側部材85を径方向外側に変形させて第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とを当接および密着させることができる。
これにより、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とが密着し、第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とが密着する。
したがって、固定コア50、アッパハウジング80およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
また、本実施形態では、アッパハウジング80を内側部材81と外側部材85の2つの部材で構成することにより、部材1つあたりの径方向の大きさ、すなわち、幅を小さくできる。そのため、アッパハウジング80の組み付け時、アッパハウジング80の内側部材81および外側部材85を径方向に容易に変形させることができる。これにより、アッパハウジング80の組み付け荷重が低減し、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とがより密着するとともに、第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とがより密着し、第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とがより密着する。
また、<5>本実施形態では、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第1筒状面Sc1の内径は第3筒状面Sc3の外径より大きい。第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向している状態では、第1筒状面Sc1は第3筒状面Sc3に当接する。
そのため、アッパハウジング80の組み付け時、内側部材81をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50の径方向外側に容易に挿入することができる。また、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを密着させるとともに、第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とを密着させることができる。これにより、固定コア50、アッパハウジング80およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。
また、<6>本実施形態では、内側部材81の軸方向の長さは、外側部材85の軸方向の長さより大きい。
仮に、内側部材81の軸方向の長さと外側部材85の軸方向の長さとが同じ場合、内側部材81の内周壁に形成される磁路の面積は、外側部材85の外周壁に形成される磁路の面積より小さくなる。本実施形態では、内側部材81の軸方向の長さが外側部材85の軸方向の長さより大きいため、内側部材81の内周壁に形成される磁路の面積と、外側部材85の外周壁に形成される磁路の面積とを同程度にすることができる。これにより、固定コア50、アッパハウジング80およびハウジング20において、より効率的な磁気回路を形成可能である。
また、内側部材81の噴孔13側の端面は、外側部材85の噴孔13側の端面に対し噴孔13側に位置している。さらに、内側部材81の噴孔13とは反対側の端面は、外側部材85の噴孔13とは反対側の端面に対し噴孔13とは反対側に位置している。つまり、外側部材85は、軸方向において内側部材81の軸方向の長さの範囲内に位置している。
そのため、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2との軸方向における接触長さを最大限確保でき、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2との間の磁路の面積を最大限確保できる。
(第4実施形態)
第4実施形態による燃料噴射弁の一部を図15に示す。第4実施形態は、アッパハウジング80、固定コア50の構成等が第3実施形態と異なる。
本実施形態では、第1テーパ面St1および第2テーパ面St2は、アッパハウジング80に対し噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合でアッパハウジング80の軸に近付くようテーパ状に形成されている(図15参照)。
固定コア50の外周壁には、環状の段差面505が形成されている。アッパハウジング80の内側部材81は、段差面505に当接し、噴孔13側への移動が規制されている。
次に、固定コア50とハウジング20との間へのアッパハウジング80の組み付け方法について説明する。
(アッパハウジング組み付け工程)
コイル組み付け工程の後、アッパハウジング80を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、まず、アッパハウジング80の内側部材81を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、内側部材81の切欠き部83にボビン延伸部552が位置した状態で、内側部材81を固定コア50の外側に圧入する。これにより、内側部材81は、段差面505に当接し、噴孔13側への移動が規制される。
その後、アッパハウジング80の外側部材85を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、外側部材85の切欠き部87にボビン延伸部552が位置した状態で、外側部材85を内側部材81の外側に圧入する。
<5>図16に示すように、外側部材85を内側部材81の外側に圧入するとき、まず、外側部材85の内周壁すなわち第2テーパ面St2が、第1テーパ面St1に対し噴孔13とは反対側において固定コア50の外周壁に径方向で対向する。この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第2筒状面Sc2の外径は、第4筒状面Sc4の内径より小さい。そのため、アッパハウジング80の外側部材85の周方向の少なくとも一部において、外側部材85の外周壁すなわち第2筒状面Sc2とハウジング20の外筒部21の内周壁との間に隙間Sp1が形成される。
また、この状態、すなわち、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第2テーパ面St2の噴孔13側の端部の内径は、第1テーパ面St1の噴孔13側の端部の外径より小さい。
この状態で、外側部材85を噴孔13側へさらに移動させると、外側部材85の第2テーパ面St2と内側部材81の第1テーパ面St1とが接触し摺動する。このとき、外側部材85は、内径および外径が拡大するよう径方向外側に変形する。そのため、外側部材85の第2筒状面Sc2がハウジング20の第4筒状面Sc4に当接し、密着する。
また、このとき、内側部材81は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。そのため、内側部材81の第1筒状面Sc1が固定コア50の第3筒状面Sc3に密着する。
これにより、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とが密着し、第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とが密着する(図15、16参照)。
また、本実施形態では、アッパハウジング80の内側部材81は、固定コア50の段差面505に当接し、噴孔13側への移動が規制されている。そのため、外側部材85を内側部材81の外側に圧入しても、内側部材81とボビン551との距離を一定に保つことができる。
また、本実施形態では、外側部材85の内側部材81の外側への組み付け前において、外側部材85の第2テーパ面St2の縮径する割合である縮径率は、内側部材81の第1テーパ面St1の縮径率より僅かに大きい。そのため、アッパハウジング組み付け工程で外側部材85を内側部材81の外側に圧入するとき、外側部材85の噴孔13とは反対側の端部の内周壁が先に内側部材81の外周壁に接触する。
以上説明したように、<4>本実施形態では、アッパハウジング80の組み付け前において第1テーパ面St1、第2テーパ面St2、第1筒状面Sc1、第2筒状面Sc2、第3筒状面Sc3、第4筒状面Sc4の径を適宜設定することにより、アッパハウジング80の組み付け時、内側部材81を固定コア50とハウジング20との間に挿入した状態で、外側部材85をコイル55に対し噴孔13とは反対側から内側部材81とハウジング20との間に挿入することで、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを軸方向に摺動させつつ、外側部材85を径方向外側に変形させて第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とを当接および密着させるとともに、内側部材81を径方向内側に変形させて第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とを当接および密着させることができる。
これにより、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第3筒状面Sc3とが密着し、第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とが密着する。
したがって、第3実施形態と同様、固定コア50、アッパハウジング80およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。
なお、本実施形態では、アッパハウジング80の組み付け時、内側部材81を固定コア50に圧入する。そのため、圧入側である内側部材81の内周壁が固定コア50の外周壁に安定して密着する。これにより、アッパハウジング80の内側部材81の内周壁および外側部材85の外周壁のうち磁路面積が小さくなる側である内側部材81の内周壁の磁路面積を確保し易くなる。
また、<5>本実施形態では、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向していない状態では、第2筒状面Sc2の外径は第4筒状面Sc4の内径より小さい。第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向している状態では、第2筒状面Sc2は第4筒状面Sc4に当接する。
そのため、アッパハウジング80の組み付け時、外側部材85をコイル55に対し噴孔13とは反対側からハウジング20の外筒部21の径方向内側に容易に挿入することができる。また、アッパハウジング80の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とを密着させるとともに、第2筒状面Sc2と第4筒状面Sc4とを密着させることができる。これにより、固定コア50、アッパハウジング80およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。
(第5実施形態)
第5実施形態による燃料噴射弁の一部を図17に示す。第5実施形態は、アッパハウジングの構成等が第3実施形態と異なる。
<8>本実施形態では、アッパハウジング90は、底部91、内側延伸部92、外側延伸部93を有する。
<14>底部91、内側延伸部92、外側延伸部93は、例えば金属等の磁性材料により一体に形成されている。底部91は、略C字状に形成されている。内側延伸部92は、底部91の内縁部から底部91の軸方向へ延びるよう略C字の筒状に形成されている。外側延伸部93は、底部91の外縁部から底部91の軸方向へ延びるよう略C字の筒状に形成されている。アッパハウジング90は、周方向の一部に切欠き部を有し、軸方向から見てC字状に形成されている。
ここで、内側延伸部92と外側延伸部93との間には、略C字状の溝部900が形成されている。また、外側延伸部93には、外周壁から径方向内側へ凹む凹部94が形成されている。凹部94は、例えば外側延伸部93の周方向に等間隔で5つ形成されている。
アッパハウジング90は、固定コア50とハウジング20との間においてコイル55に対し噴孔13とは反対側に設けられている。ここで、アッパハウジング90の底部91の外縁部は、ハウジング20の段差面205に当接している。
<9>本実施形態は、中間部材95をさらに備える。中間部材95は、例えば金属等の磁性材料により略C字の筒状に形成されている。中間部材95の内周壁は、中間部材95の軸方向の一方側から他方側へ向かうに従い所定の割合で中間部材95の軸に近付くようテーパ状に形成されている。中間部材95の外周壁は、中間部材95の軸方向の一方側から他方側へ向かうに従い所定の割合で中間部材95の軸から離れるようテーパ状に形成されている。
中間部材95は、アッパハウジング90の内側延伸部92と外側延伸部93との間、すなわち、溝部900に設けられている。ここで、中間部材95は、軸方向の2つの端面のうち、径方向の長さ、すなわち、幅が狭い方の端面が底部91に対向するよう設けられている。また、中間部材95は、一方の端面が底部91に当接した状態で、他方の端面が、アッパハウジング90の内側延伸部92および外側延伸部93の底部91とは反対側の端面に対し噴孔13とは反対側に位置する。
中間部材95は、内側延伸部92と外側延伸部93との間に設けられた状態において、アッパハウジング90の内側延伸部92を底部91の径方向内側へ付勢可能であり、アッパハウジング90の外側延伸部93を底部91の径方向外側へ付勢可能である。
そのため、図15に示すように、中間部材95が溝部900に設けられた状態において、中間部材95の内周壁とアッパハウジング90の内側延伸部92の外周壁とが密着し、中間部材95の外周壁とアッパハウジング90の外側延伸部93の内周壁とが密着し、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁とが密着し、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが密着している。
ここで、アッパハウジング90の内側延伸部92の外周壁は、内側延伸部92の軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で内側延伸部92の軸に近付くようテーパ状に形成されている。アッパハウジング90の外側延伸部93の内周壁は、外側延伸部93の軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で外側延伸部93の軸から離れるようテーパ状に形成されている。
次に、固定コア50とハウジング20との間へのアッパハウジング90の組み付け方法について説明する。
(アッパハウジング組み付け工程)
コイル組み付け工程の後、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、まず、アッパハウジング90を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、切欠き部にボビン延伸部552が位置した状態で、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。これにより、アッパハウジング90は、段差面205に当接し、噴孔13側への移動が規制される(図18参照)。
その後、中間部材95を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、切欠き部にボビン延伸部552が位置した状態で、中間部材95をアッパハウジング90の溝部900に圧入する。
図18に示すように、中間部材95を溝部900に圧入するとき、中間部材95を溝部900に圧入する前の状態、すなわち、中間部材95の内周壁と内側延伸部92の外周壁とが径方向で対向せず、中間部材95の外周壁と外側延伸部93の内周壁とが径方向で対向していない状態では、内側延伸部92の内周壁は、軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で軸から離れるようテーパ状に形成されており、噴孔13とは反対側が固定コア50の外周壁から離間している。また、この状態では、外側延伸部93の外周壁は、軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で軸に近付くようテーパ状に形成されており、噴孔13とは反対側がハウジング20の外筒部21の内周壁から離間している。
また、この状態では、内側延伸部92の外周壁は、軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で軸に近付くようテーパ状に形成されている。また、外側延伸部93の内周壁は、軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で軸から離れるようテーパ状に形成されている。
この状態で、中間部材95を溝部900に挿入し噴孔13側へ移動させると、中間部材95の内周壁と内側延伸部92の外周壁とが接触し摺動するとともに、中間部材95の外周壁と外側延伸部93の内周壁とが接触し摺動する。このとき、内側延伸部92は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。そのため、内側延伸部92の内周壁が固定コア50の外周壁に当接し、密着する。
また、このとき、外側延伸部93は、内径および外径が拡大するよう径方向外側に変形する。そのため、外側延伸部93の外周壁がハウジング20の外筒部21の内周壁に当接し、密着する。
これにより、アッパハウジング90および中間部材95の組み付け後、中間部材95の内周壁と内側延伸部92の外周壁とが密着し、中間部材95の外周壁と外側延伸部93の内周壁とが密着するとともに、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁とが密着し、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが密着する(図17参照)。
上記構成により、コイル55への通電時、固定コア50、アッパハウジング90、中間部材95、ハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である(図17参照)。
以上説明したように、<8>本実施形態では、アッパハウジング90は、底部91、底部91の内縁部から底部91の軸方向へ延びるよう形成された内側延伸部92、および、底部91の外縁部から底部91の軸方向へ延びるよう形成された外側延伸部93を有する。
また、<9>本実施形態は、内側延伸部92と外側延伸部93との間に設けられた中間部材95をさらに備える。
そのため、アッパハウジング90の組み付け前においてアッパハウジング90の内側延伸部92の内径、外側延伸部93の外径、固定コア50の外径、ハウジング20の内径、中間部材95の内径および外径を適宜設定することにより、アッパハウジング90および中間部材95の組み付け時、アッパハウジング90をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50とハウジング20との間に挿入し、中間部材95を内側延伸部92と外側延伸部93との間に挿入することで、中間部材95の内周壁と内側延伸部92の外周壁とを軸方向に摺動させるとともに、中間部材95の外周壁と外側延伸部93の内周壁とを軸方向に摺動させつつ、内側延伸部92を径方向内側に変形させ、外側延伸部93を径方向外側に変形させることができる。
これにより、アッパハウジング90および中間部材95の組み付け後、中間部材95の内周壁と内側延伸部92の外周壁とが密着し、中間部材95の外周壁と外側延伸部93の内周壁とが密着し、内側延伸部92の内周壁と固定コア50の外周壁とが密着するとともに、外側延伸部93の外周壁とハウジング20の内周壁とが密着する。
したがって、固定コア50、アッパハウジング90、中間部材95およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
また、<10>本実施形態では、中間部材95は、内側延伸部92を底部91の径方向内側へ付勢可能に設けられている。そのため、内側延伸部92の内周壁と固定コア50の外周壁とをより密着させることができる。
また、<11>本実施形態では、中間部材95は、外側延伸部93を底部91の径方向外側へ付勢可能に設けられている。そのため、外側延伸部93の外周壁とハウジング20の内周壁とをより密着させることができる。
また、<12>本実施形態では、中間部材95は、アッパハウジング90とともに磁気回路を形成可能である。そのため、固定コア50、アッパハウジング90、中間部材95およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を確実に形成可能である。
(第6実施形態)
第6実施形態による燃料噴射弁の一部を図19に示す。第6実施形態は、アッパハウジングの構成等が第5実施形態と異なる。
本実施形態は、第5実施形態で示した中間部材95を備えていない。
図19に示すように、本実施形態では、アッパハウジング90が固定コア50とハウジング20の外筒部21との間に設けられた状態において、アッパハウジング90の噴孔13とは反対側の内周壁と固定コア50の外周壁とが密着し、アッパハウジング90の噴孔13とは反対側の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが密着している。
ここで、アッパハウジング90の噴孔13側の内周壁と固定コア50の外周壁とは離間し、アッパハウジング90の噴孔13側の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とは離間している。
なお、溝部900の底面、すなわち、底部91の噴孔13とは反対側の端面に対し噴孔13側において、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁とは離間し、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とは離間している。
つまり、アッパハウジング90の噴孔13とは反対側の端部から、溝部900の底面に対し噴孔13側にかけて、アッパハウジング90の内周壁は固定コア50の外周壁に密着し、アッパハウジング90の外周壁はハウジング20の外筒部21の内周壁に密着している。
そのため、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁との間の磁路面積、および、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁との間の磁路面積を確保できる。
次に、固定コア50とハウジング20との間へのアッパハウジング90の組み付け方法について説明する。
(アッパハウジング組み付け工程)
コイル組み付け工程の後、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に挿入する。具体的には、アッパハウジング90を固定コア50の噴孔13とは反対側から挿入し、切欠き部にボビン延伸部552が位置した状態で、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に圧入する。
図20に示すように、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に圧入するとき、圧入する前の状態では、アッパハウジング90の内周壁は、軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で軸に近付くようテーパ状に形成されている。また、この状態では、アッパハウジング90の外周壁は、軸方向の噴孔13側から噴孔13とは反対側へ向かうに従い所定の割合で軸から離れるようテーパ状に形成されている。
この状態で、アッパハウジング90を噴孔13側へ移動させると、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁とが接触し摺動するとともに、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが接触し摺動する。このとき、内側延伸部92は、内径および外径が拡大するよう径方向外側に変形する。そのため、内側延伸部92の内周壁が固定コア50の外周壁に密着する。
また、このとき、外側延伸部93は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。そのため、外側延伸部93の外周壁がハウジング20の外筒部21の内周壁に密着する。
これにより、アッパハウジング90の組み付け後、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁とが密着し、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが密着する(図19、20参照)。
上記構成により、コイル55への通電時、固定コア50、アッパハウジング90、ハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である(図19参照)。
以上説明したように、<8>本実施形態では、アッパハウジング90は、底部91、底部91の内縁部から底部91の軸方向へ延びるよう形成された内側延伸部92、および、底部91の外縁部から底部91の軸方向へ延びるよう形成された外側延伸部93を有する。
そのため、アッパハウジング90の組み付け前においてアッパハウジング90の内側延伸部92の内径、外側延伸部93の外径、固定コア50の外径、および、ハウジング20の内径を適宜設定することにより、アッパハウジング90の組み付け時、アッパハウジング90をコイル55に対し噴孔13とは反対側から固定コア50とハウジング20との間に挿入することで、内側延伸部92の内周壁と固定コア50の外周壁とを軸方向に摺動させるとともに、外側延伸部93の外周壁とハウジング20の内周壁とを軸方向に摺動させつつ、内側延伸部92を径方向外側に変形させ、外側延伸部93を径方向内側に変形させることができる。
これにより、アッパハウジング90の組み付け後、内側延伸部92の内周壁と固定コア50の外周壁とが密着するとともに、外側延伸部93の外周壁とハウジング20の内周壁とが密着する。
したがって、固定コア50、アッパハウジング90およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
また、<13>本実施形態では、アッパハウジング90は、噴孔13側の端部の外周壁とハウジング20の内周壁とが離間するよう、および、噴孔13側の端部の内周壁と固定コア50の外周壁とが離間するよう設けられている。
したがって、モールド工程のとき、溶融した樹脂が、アッパハウジング90に対し噴孔13とは反対側から、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁との間、および、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の内周壁との間に入り込むのを抑制できる。これにより、アッパハウジング90の内周壁と固定コア50の外周壁とが離間するのを抑制でき、アッパハウジング90の外周壁とハウジング20の内周壁とが離間するのを抑制できる。したがって、固定コア50、アッパハウジング90およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を確実に形成可能である。
(第7実施形態)
第7実施形態による燃料噴射弁の一部を図21に示す。第7実施形態は、アッパハウジングの構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁は、仮想テーパ面Stv1から所定距離d1離れている。
そのため、第1実施形態と比べ、アッパハウジング組み付け工程において、アッパハウジング70をハウジング20の外筒部21の内側に圧入するとき、アッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁(第1テーパ面St1)からハウジング20の外筒部21の内周壁に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、アッパハウジング70の組み付け性を向上できる。
また、アッパハウジング70の組み付け後においても、アッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁(第1テーパ面St1)からハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、ハウジング20の外筒部21の内周壁のうち、アッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁に対向する部分に生じる応力を低減できる。
(第8実施形態)
第8実施形態による燃料噴射弁の一部を図22に示す。第8実施形態は、アッパハウジングの構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70の凹部73の底面と本体71の内周壁(第1筒状面Sc1)との距離d2は、第1実施形態の凹部73の底面と本体71の内周壁(第1筒状面Sc1)との距離(図3参照)より小さい。そのため、本体71は、凹部73において径方向に容易に変形可能である。よって、特にアッパハウジング70の本体71の周方向の端部は、径方向に容易に変形可能である。
そのため、第1実施形態と比べ、アッパハウジング組み付け工程において、アッパハウジング70をハウジング20の外筒部21の内側に圧入するとき、特にアッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁(第1テーパ面St1)からハウジング20の外筒部21の内周壁に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、アッパハウジング70の組み付け性を向上できる。
また、アッパハウジング70の組み付け後においても、特にアッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁(第1テーパ面St1)からハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、ハウジング20の外筒部21の内周壁のうち、アッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁に対向する部分に生じる応力を低減できる。
(第9実施形態)
第9実施形態による燃料噴射弁の一部を図23に示す。第9実施形態は、アッパハウジングの構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70は、内側凹部74をさらに有する。内側凹部74は、本体71の内周壁から径方向外側へ凹むよう形成されている。内側凹部74は、本体71の周方向に等間隔で6つ形成されている。内側凹部74は、本体71の周方向において、隣り合う2つの凹部73の間に形成されている。
ここで、内側凹部74の底面と本体71の外周壁(第1テーパ面St1)との距離の最大値d3は、凹部73の底面と本体71の内周壁(第1筒状面Sc1)との距離d4より小さい。そのため、本体71は、内側凹部74において径方向に容易に変形可能である。よって、特にアッパハウジング70の本体71の周方向の端部は、径方向に容易に変形可能である。
そのため、第1実施形態と比べ、アッパハウジング組み付け工程において、アッパハウジング70をハウジング20の外筒部21の内側に圧入するとき、特にアッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁(第1テーパ面St1)からハウジング20の外筒部21の内周壁に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、アッパハウジング70の組み付け性を向上できる。
また、アッパハウジング70の組み付け後においても、特にアッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁(第1テーパ面St1)からハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、ハウジング20の外筒部21の内周壁のうち、アッパハウジング70の本体71の周方向の端部の外周壁に対向する部分に生じる応力を低減できる。
(第10実施形態)
第10実施形態による燃料噴射弁の一部を図24、25に示す。第10実施形態は、アッパハウジングの構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70は、軸方向凹部75をさらに有する。軸方向凹部75は、アッパハウジング70の本体71の噴孔13とは反対側の端面から軸方向に円形に凹むよう形成されている。これにより、本体71の軸方向凹部75の径方向外側において、隣り合う2つの凹部73の間、および、本体71の周方向の両端部に、円弧状の壁部76が形成されている。よって、本体71は、壁部76が本体71の径方向内側に容易に変形可能である。
そのため、第1実施形態と比べ、アッパハウジング組み付け工程において、アッパハウジング70をハウジング20の外筒部21の内側に圧入するとき、特にアッパハウジング70の壁部76の外周壁からハウジング20の外筒部21の内周壁に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、アッパハウジング70の組み付け性を向上できる。
また、アッパハウジング70の組み付け後においても、特にアッパハウジング70の壁部76の外周壁からハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)に対し作用する径方向の力を低減できる。これにより、ハウジング20の外筒部21の内周壁のうち、アッパハウジング70の壁部76の外周壁に対向する部分に生じる応力を低減できる。
(第11実施形態)
第11実施形態による燃料噴射弁の一部を図26に示す。第11実施形態は、ハウジングの構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、ハウジング20の外筒部21の内周壁には、環状の段差面205が形成されている。アッパハウジング70は、段差面205に当接し、噴孔13側への移動が規制されている。
次に、本実施形態の燃料噴射弁1の製造方法のうち「アッパハウジング組み付け工程」について説明する。
(アッパハウジング組み付け工程)
図27に示すように、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが径方向で対向しておらず、第1筒状面Sc1と固定コア50の外周壁との間に隙間Sp1が形成された状態で、アッパハウジング70を噴孔13側へさらに移動させると、アッパハウジング70の第1テーパ面St1とハウジング20の第2テーパ面St2とが摺動する。このとき、アッパハウジング70は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。そのため、アッパハウジング70の第1筒状面Sc1が固定コア50の第2筒状面Sc2に当接し、密着する。アッパハウジング70を噴孔13側へさらに移動させると、アッパハウジング70の噴孔13側の面の外縁部が段差面205に当接する。これにより、アッパハウジング70の組み付け後、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが密着するとともに、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2とが密着する(図27参照)。
本実施形態では、第1実施形態と同様、アッパハウジング70のハウジング20の内側への組み付け前において、アッパハウジング70の第1テーパ面St1の縮径する割合である縮径率は、ハウジング20の第2テーパ面St2の縮径率より僅かに大きい。つまり、軸に対する第1テーパ面St1の傾斜角であるテーパ角は、第2テーパ面St2のテーパ角より大きい。そのため、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の外周壁が先にハウジング20の内周壁に接触する。これにより、アッパハウジング70の圧入時のむしれを抑制できるとともに、圧入荷重を低減できる。
第1テーパ面St1と第2テーパ面St2とが摺動しながらアッパハウジング70が噴孔13側へ移動するとき、第1筒状面Sc1と第2筒状面Sc2との面圧より、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の外周壁(St1)とハウジング20の内周壁(St2)との面圧の方が大きい。そのため、アッパハウジング70が噴孔13側へ移動するとき、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の外周壁およびハウジング20の内周壁の少なくとも一方が変形または潰れる。これにより、アッパハウジング70の外周壁とハウジング20の内周壁とが密着する。したがって、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を確実に形成可能である。
また、本実施形態では、アッパハウジング組み付け工程の終期に、アッパハウジング70の噴孔13側の面の外縁部が段差面205に当接する。これにより、アッパハウジング70は、噴孔13側への移動が規制される。そのため、ハウジング20に対するアッパハウジング70の位置のばらつきを抑制し、アッパハウジング70とボビン551との距離を一定にできる。アッパハウジング70とボビン551との距離を一定にすることにより、モールド工程でアッパハウジング70とボビン551との間に流れ込んだ高温の樹脂によって、ボビン551のアッパハウジング70側の突起であるボビン突部550を確実に溶融できる。したがって、アッパハウジング70とコイル55との間のシール性を向上できる。
上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第12実施形態)
第12実施形態による燃料噴射弁について説明する。第12実施形態は、アッパハウジングおよびハウジングの構成等が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、ハウジング20の母材硬度は、アッパハウジング70の母材硬度より低い。また、ハウジング20の外筒部21の内周壁のうち第2テーパ面St2に対応する部分は、例えばショットブラスト、切削抵抗の増大、スパロール等による表面処理によって、表面硬度が母材硬度より高くなっている。なお、外筒部21の内周壁のうち第2テーパ面St2に対応する部分の表面硬度と、アッパハウジング70の外周壁のうち第1テーパ面St1に対応する部分の表面硬度とは、同程度である。
上記構成により、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、特にハウジング20の内周壁が、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の外周壁により押され、ハウジング20の内部すなわち母材が圧縮されるように変形する。これにより、アッパハウジング70の外周壁とハウジング20の内周壁とをより密着させることができる。
また、上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第13実施形態)
第13実施形態による燃料噴射弁について図28に基づき説明する。第13実施形態は、アッパハウジングの構成等が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)は、アッパハウジング70の軸方向における中央部が径方向外側へ突出するよう曲面状に形成されている。アッパハウジング70の外周壁は、アッパハウジング70の軸を含む平面による断面において、円弧状となるよう形成されている(図28参照)。
なお、第1テーパ面St1は、アッパハウジング70の軸方向における中心C1よりも噴孔13側の部分が、中心C1から噴孔13側に向かうに従い軸に近付くようテーパ状に形成されている。ここで、第1テーパ面St1の縮径率は、中心C1から噴孔13側に向かうに従い大きくなるよう変化している。
また、第1テーパ面St1は、アッパハウジング70の軸方向における中心C1よりも噴孔13とは反対側の部分が、中心C1から噴孔13とは反対側に向かうに従い軸に近付くようテーパ状に形成されている。ここで、第1テーパ面St1の縮径率は、中心C1から噴孔13とは反対側に向かうに従い大きくなるよう変化している。
上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第14実施形態)
第14実施形態による燃料噴射弁について図29に基づき説明する。第14実施形態は、アッパハウジングの構成等が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70は、外周凹部77を有している。外周凹部77は、アッパハウジング70の本体71の外周壁から径方向内側に凹むよう形成されている。外周凹部77は、本体71の噴孔13側の端部から本体71の軸方向の中央部にかけて形成されている。これにより、本実施形態の第1テーパ面St1の軸方向の長さは、第11実施形態の第1テーパ面St1の軸方向の長さより小さくなっている。そのため、第1テーパ面St1と第2テーパ面St2との接触する部分の面積である接触面積も、第11実施形態より小さくなっている。
上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との圧入長を低減し、摺動する部分の移動量を低減することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との摺動する部分の移動量を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第15実施形態)
第15実施形態による燃料噴射弁について図30に基づき説明する。第15実施形態は、アッパハウジングの構成等が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、ハウジング20の第2テーパ面St2は、軸方向の特定の箇所である特定箇所SL1に対し噴孔13側と噴孔13とは反対側とで縮径率が異なっている。第2テーパ面St2の特定箇所SL1に対し噴孔13側の部分の縮径率は、第2テーパ面St2の特定箇所SL1に対し噴孔13とは反対側の部分の縮径率より大きい。
特定箇所SL1は、第2テーパ面St2の軸方向の中心C2よりも噴孔13側に設定されている。第2テーパ面St2の特定箇所SL1に対し噴孔13とは反対側の部分は、円筒状に近いテーパ状に形成されている。
アッパハウジング70の噴孔13側の端面と外周壁とにより形成される角部は、曲面状に面取りされている。
本実施形態では、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)が、第2テーパ面St2の特定箇所SL1に対し噴孔13とは反対側の部分と摺動するとき、アッパハウジング70は、径方向内側にほとんど変形しない。つまり、このとき、アッパハウジング70は、ハウジング20に仮圧入される。
一方、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)が、第2テーパ面St2の特定箇所SL1に対し噴孔13側の部分と摺動するとき、アッパハウジング70は、内径および外径が縮小するよう径方向内側に変形する。つまり、このとき、アッパハウジング70は、ハウジング20に本圧入される。
上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との面圧が大きくなる部分(特定箇所SL1に対し噴孔13側)の圧入長を低減し、大きな面圧が作用した状態で摺動する部分の移動量を低減することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との、大きな面圧が作用した状態で摺動する部分の移動量を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第16実施形態)
第16実施形態による燃料噴射弁について説明する。第16実施形態は、アッパハウジングとハウジングとの間の構成等が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)またはハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)の少なくとも一方に潤滑油が塗布される。
上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との摩擦係数を低減することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との摩擦係数を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第17実施形態)
第17実施形態による燃料噴射弁について説明する。第17実施形態は、アッパハウジングおよびハウジングの構成等が第16実施形態と異なる。
アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)またはハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)の面粗度が所定値より小さい場合、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との摩擦係数が大きくなるおそれがある。
そこで、本実施形態では、アッパハウジング70とハウジング20との摩擦係数が所定値以下となるよう、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)またはハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)の面粗度を所定値以上に設定している。
上記構成により、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との摩擦係数を低減することができる。また、アッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)またはハウジング20の外筒部21の内周壁(第2テーパ面St2)の面粗度を所定値以上に設定することにより、微細な凹凸を有する第1テーパ面St1、第2テーパ面St2に潤滑油を保持することができる。これにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70とハウジング20との摩擦係数を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第18実施形態)
第18実施形態による燃料噴射弁について説明する。第18実施形態は、アッパハウジング組み付け工程が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング組み付け工程でアッパハウジング70をハウジング20の内側に圧入するとき、静止摩擦力によりアッパハウジング70の移動が妨げられない程度以上、かつ、アッパハウジング70の外周壁とハウジング20の内周壁とが焼き付かない程度以下の速度でアッパハウジング70をハウジング20に圧入する。
上記のように、アッパハウジング70の圧入時の速度を最適化することにより、焼き付きを抑制しつつ、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70の圧入時の速度を最適化することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第19実施形態)
第19実施形態による燃料噴射弁について図31に基づき説明する。第19実施形態は、アッパハウジングの構成等が第11実施形態と異なる。
本実施形態では、アッパハウジング70は、パンチ凹部78を有している。パンチ凹部78は、アッパハウジング70の本体71の噴孔13とは反対側の面の外縁部において噴孔13側に凹むよう形成されている。
本実施形態では、アッパハウジング組み付け工程において、まず、パンチ凹部78が形成されていないアッパハウジング70を段差面205に当接するまでハウジング20に圧入する。このときのアッパハウジング70の外周壁(第1テーパ面St1)とハウジング20の内周壁(第2テーパ面St2)との面圧は、第11実施形態と比べ、小さくなるよう設定されている。
アッパハウジング70が段差面205に当接した後、アッパハウジング70の本体71の噴孔13とは反対側の面の外縁部に治具を押し当て、パンチ凹部78を形成する。これにより、アッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端部の外周壁が径方向外側へ変形する。その結果、アッパハウジング70の外周壁とハウジング20の内周壁とが密着する。したがって、固定コア50、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を確実に形成可能である。
上記のように、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することにより、組み付け性を向上できる。また、アッパハウジング70の圧入時のアッパハウジング70とハウジング20との面圧を低減することにより、むしれをより一層効果的に抑制できる。そのため、コイル55側に異物が落下すること、および、レアショートを抑制できる。
(第1参考形態)
第1参考形態による燃料噴射弁の一部を図32に示す。第1参考形態は、固定コアの構成等が第2比較形態と異なる。
本参考形態では、固定コア50は、コア外周凹部506を有している。コア外周凹部506は、固定コア50の外周壁から径方向内側へ凹むよう環状に形成されている。コア外周凹部506は、固定コア50の軸方向において、アッパハウジング70に対し噴孔13とは反対側に形成されている。
磁性材リング79は、内縁部がコア外周凹部506に嵌り込むようにして設けられている。ここで、磁性材リング79の内縁部とコア外周凹部506とは密着している。また、磁性材リング79の噴孔13側の端面とアッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端面とは密着している。また、磁性材リング79は、コア外周凹部506との係合により、軸方向への移動が規制されている。
磁性材リング79は、組み付け前において、内径が固定コア50の外径D1およびコア外周凹部506の円筒状の底面の外径D2より小さく設定されている。そのため、磁性材リング79は、組み付け時、内周壁が径方向外側へ押し広げられた状態で固定コア50に圧入され、アッパハウジング70に押し付けられた状態でコア外周凹部506に嵌り込む。
第2比較形態では、磁性材リング79の圧入時にスプリングバックが生じるおそれがある。そのため、磁性材リング79の組み付け後、アッパハウジング70の磁性材リング79側の端面と磁性材リング79のアッパハウジング70側の端面との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるおそれがある(図14参照)。
一方、本参考形態では、磁性材リング79は、コア外周凹部506との係合により軸方向への移動が規制されているため、磁性材リング79の圧入時にスプリングバックが生じたとしても、アッパハウジング70の磁性材リング79側の端面と磁性材リング79のアッパハウジング70側の端面との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるのを抑制できる。
したがって、コイル55への通電時、固定コア50、磁性材リング79、アッパハウジング70およびハウジング20において、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である(図32参照)。よって、コイル55へ入力した電流に対して、効率的に吸引力を発生させることができ、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減できる。これにより、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
(第2参考形態)
第2参考形態による燃料噴射弁の一部を図33に示す。第2参考形態は、磁性材リングおよび固定コアの構成等が第1参考形態と異なる。
本参考形態では、磁性材リング79には、リング凸部791が形成されている。リング凸部791は、磁性材リング79の内周壁から径方向内側に突出するよう形成されている。リング凸部791は、磁性材リング79の軸方向から見たとき、磁性材リング79の内周壁に沿って略C字状に形成されている。リング凸部791は、磁性材リング79の内周壁の軸方向において中央に形成されている。リング凸部791を形成する壁面は、磁性材リング79の軸を含む平面による断面において、円弧状となるよう形成されている。
固定コア50は、コア凹部507をさらに有している。コア凹部507は、コア外周凹部506の円筒状の底面から径方向内側に凹むよう環状に形成されている。コア凹部507は、リング凸部791の形状に対応するよう、コア凹部507を形成する壁面が、固定コア50の軸を含む平面による断面において、円弧状となるよう形成されている。
磁性材リング79は、内縁部がコア外周凹部506に嵌り込み、かつ、リング凸部791がコア凹部507に嵌り込むようにして設けられている。ここで、磁性材リング79の内縁部とコア外周凹部506とは密着し、リング凸部791とコア凹部507とは密着している。また、磁性材リング79の噴孔13側の端面とアッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端面とは密着している。また、磁性材リング79は、コア外周凹部506との係合、および、リング凸部791とコア凹部507との係合により、軸方向への移動が規制されている。
上記構成により、本参考形態においても、第1参考形態と同様、磁性材リング79の組み付け後、アッパハウジング70と磁性材リング79との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるのを抑制できる。したがって、コイル55への通電時、磁気ギャップおよび磁気抵抗の小さい効率的な磁気回路を形成可能である。よって、燃料噴射弁1の駆動に必要なエネルギーを低減でき、燃料噴射弁1の消費電力を低減できる。
(第3参考形態)
第3参考形態による燃料噴射弁の一部を図34に示す。第3参考形態は、磁性材リングおよび固定コアの構成等が第2参考形態と異なる。
本参考形態では、リング凸部791を形成する壁面は、磁性材リング79の軸を含む平面による断面において、矩形を構成する辺のうち3辺に対応する形状となるよう形成されている。
コア凹部507は、リング凸部791の形状に対応するよう、コア凹部507を形成する壁面が、固定コア50の軸を含む平面による断面において、矩形を構成する辺のうち3辺に対応する形状となるよう形成されている。
上記構成により、本参考形態においても、第2参考形態と同様、磁性材リング79の組み付け後、アッパハウジング70と磁性材リング79との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるのを抑制できる。
(第4参考形態)
第4参考形態による燃料噴射弁の一部を図35に示す。第4参考形態は、固定コアの構成が第2参考形態と異なる。
本参考形態では、固定コア50は、第1参考形態で示したコア外周凹部506を有していない。
磁性材リング79は、リング凸部791がコア凹部507に嵌り込むようにして設けられている。ここで、磁性材リング79の内周壁と固定コア50の外周壁とは密着し、リング凸部791とコア凹部507とは密着している。また、磁性材リング79の噴孔13側の端面とアッパハウジング70の噴孔13とは反対側の端面とは密着している。また、磁性材リング79は、リング凸部791とコア凹部507との係合により、軸方向への移動が規制されている。
上記構成により、本参考形態においても、第2参考形態と同様、磁性材リング79の組み付け後、アッパハウジング70と磁性材リング79との間に磁気ギャップとしての隙間が形成されるのを抑制できる。
(第20実施形態)
第20実施形態による燃料噴射弁を図36に示す。第20実施形態は、複数の構成要素が追加されている点等で第1実施形態と異なる。
本実施形態の燃料噴射弁1は、シリンダヘッド6の燃焼室7の上側中央に形成されたヘッド穴部8に設けられ、燃焼室7の鉛直方向上側から燃焼室7の内部に向けて燃料を噴射する。このように、本実施形態は、所謂センター噴射式の内燃機関に適用される。センター噴射式の内燃機関の場合、燃料噴射弁の周囲には点火プラグ等の部品が配置されるため、燃料噴射弁1の燃料入口101に接続される燃料配管のカップ9から燃焼室7までの距離が比較的大きい。そのため、本実施形態の燃料噴射弁1の燃料入口101から噴孔13までの長さは比較的大きい。
図36に示すように、本実施形態は、パイプインレット41、ロアOリング5、フランジインレット18、ターミナル555、ターミナルモールド部58、外周モールド部59、リテーナ17等をさらに備えている。
パイプインレット41は、例えばステンレス等の金属により筒状に形成されている。パイプインレット41は、軸方向において内径および外径が異なるように形成されている。そのため、パイプインレット41の内側および外側には、円環状の段差面が複数形成されている。
パイプインレット41の一方の端部には、燃料入口101が形成されており、燃料配管のカップ9が接続される。燃料入口101と噴孔13とは燃料流路100により連通している。燃料入口101から流入した燃料は、燃料流路100を経由して噴孔13まで流通可能である。
パイプインレット41の他方の端部は、固定コア50の噴孔13とは反対側の端部に圧入されている。ロアOリング5は、例えばゴム等の弾性部材により環状に形成されている。ロアOリング5は、パイプインレット41の他方の端部の内周壁と固定コア50の噴孔13とは反対側の端部の外周壁との間において径方向に圧縮された状態で設けられている。これにより、パイプインレット41の他方の端部と固定コア50の噴孔13とは反対側の端部との間が液密に保持されている。
フランジインレット18は、例えばステンレス等の金属により環状に形成されている。フランジインレット18は、パイプインレット41の固定コア50とは反対側の部位に圧入されている。
ターミナル555は、例えば金属等の導体により形成されている。ターミナルモールド部58は、樹脂によりコネクタ部57と一体に形成され、コネクタ部57とともにターミナル555をモールドしている。ここで、ターミナル555の一端は、コネクタ部57の内側の空間に露出している。
本実施形態は、端子553に代えて導通部554を備えている。導通部554は、例えば金属等の導体により形成されており、一端がコイル55に接続され、ボビン延伸部552およびモールド部56により覆われている。ここで、導通部554の他端は、モールド部56から露出している。
ターミナルモールド部58は、パイプインレット41の径方向外側においてパイプインレット41の軸方向においてパイプインレット41の外壁に沿うようにして設けられている。ターミナル555の他端と、導通部554の他端とは、溶接により電気的に接続されている。
外周モールド部59は、樹脂により形成され、モールド部56の外周壁の一部、パイプインレット41の外周壁の一部、フランジインレット18の一部、ターミナルモールド部58、および、コネクタ部57の一部を覆っている。
リテーナ17は、例えば金属により形成され、外周モールド部59の噴孔13とは反対側の端部に設けられている。
図37〜39に示すように、外周モールド部59の外壁に複数のモールド凹部593が形成されている。モールド凹部593は、外周モールド部59の外壁から凹みつつ、外周モールド部59の内側のターミナルモールド部58に沿って延びるよう形成されている。モールド凹部593により、外周モールド部59の形成時の樹脂の全体的な流れを均一にでき、各部の肉厚を保持できる。
リテーナ17は、例えばステンレス等の金属により形成されている。リテーナ17は、ばね部171、嵌め込み部172、当接部173、リテーナ保持部174を有している。
ばね部171は、矩形板状の部材に長手方向に延びる複数の切り欠きを形成するとともに、当該部材を長手方向に湾曲させ、軸方向から見て略C字状となるよう形成されている。これにより、ばね部171は、軸方向に弾性変形可能である。
嵌め込み部172は、ばね部171の周方向の中央から軸方向に延びるように形成されている。嵌め込み部172は、燃料配管等の他部材に嵌め込み可能である。これにより、リテーナ17の周方向(回転方向)の位置決めが可能である。
当接部173は、ばね部171の嵌め込み部172とは反対側の端部に形成されている。当接部173は、外周モールド部59から露出するフランジインレット18に当接可能である(図36参照)。
リテーナ保持部174は、ばね部171の周方向の両端部に形成されている。リテーナ保持部174は、外周モールド部59の外壁に係合可能である。
リテーナ17は、当接部173がフランジインレット18に当接し、リテーナ保持部174が外周モールド部59の外壁に係合するようにして設けられている。
燃料噴射弁1をシリンダヘッド6のヘッド穴部8に設けるとき、嵌め込み部172を燃料配管等の他部材に嵌め込むことにより、燃料噴射弁1の周方向(回転方向)の位置決めが可能である。また、燃料噴射弁1をヘッド穴部8に設けた状態では、リテーナ17のばね部171は、軸方向に圧縮されている。そのため、フランジインレット18にばね部171の付勢力が作用し、燃料噴射弁1は燃焼室7側へ付勢される。これにより、燃焼室7で発生する燃焼圧により燃料噴射弁1がヘッド穴部8を抜け出る方向に移動するのを抑制できる。
図40に示すように、外周モールド部59のコネクタ部57に隣接する部分には、リブ591が形成されている。これにより、外周モールド部59のコネクタ部57に隣接する部分を補強することができる。そのため、コネクタ部57に接続されるハーネスやコネクタ部57の近傍を掴む人の手等から外周モールド部59に外力が作用しても外周モールド部59の破損を抑制できる。
外周モールド部59のフランジインレット18の近傍には、肉盗み部592が形成されている。これにより、外周モールド部59の内部にボイドが形成されるのを抑制できる。
図41に示すように、ターミナルモールド部58は、保持部581を有している。保持部581は、ターミナルモールド部58の長手方向に2つ形成されている。ターミナルモールド部58は、パイプインレット41等を外周モールド部59により樹脂成形で覆う前の状態において、保持部581でパイプインレット41の外周壁を挟み込むようにして設けられる。ここで、ターミナルモールド部58は、導通部554の端部とターミナル555の端部とが当接するよう設けられる。
図42に示すように、ターミナル555の端部には、プレス加工によりプレス穴部556が形成されている。導通部554の端部とターミナル555の端部とは、例えばプロジェクション溶接により溶接されている。具体的には、ターミナル555のプレス穴部556に大電流を流し、発熱によりプレス穴部556と導通部554との間を溶かし、溶接する。プロジェクション溶接により、溶接抵抗のばらつきを抑制でき、溶着を安定させることができる。
図41、43に示すように、ターミナルモールド部58には、モールド穴部582が形成されている。モールド穴部582は、ターミナルモールド部58を樹脂で成形するときにターミナル555を保持するために形成されている。そのため、ターミナル555をターミナルモールド部58で覆った後において、ターミナル555は、モールド穴部582を経由して目視可能なよう露出している。モールド穴部582は、ターミナルモールド部58の長手方向に4つ形成されている。
ターミナルモールド部58には、溶着突起583、584が形成されている。溶着突起583は、ターミナルモールド部58の長手方向において各モールド穴部582を挟むようにして複数形成されている。溶着突起583は、ターミナルモールド部58の外壁から突出するようターミナルモールド部58の周囲に環状に形成されている。
溶着突起584は、ターミナルモールド部58のコネクタ部57とは反対側の端部の外壁から突出するようターミナルモールド部58の周囲に環状に形成されている。
モールド部56のターミナルモールド部58側の端部には、溶着突起561が形成されている(図42参照)。溶着突起561は、モールド部56の外壁から突出するよう、露出した導通部554の周囲に形成されている。
外周モールド部59の形成時、溶融した樹脂の熱により溶着突起583が溶けて外周モールド部59の一部と一体となる。これにより、モールド穴部582の周囲をシールでき、外部からの水等がモールド穴部582を経由してターミナル555に付着するのを抑制できる。これにより、ターミナル555の腐食を抑制できる。
また、外周モールド部59の形成時、溶融した樹脂の熱により溶着突起584および溶着突起561が溶けて外周モールド部59の一部と一体となる。これにより、ターミナル555と導通部554との溶接個所の周囲をシールでき、外部からの水等が当該溶接個所に付着するのを抑制できる。これにより、当該溶接個所の腐食を抑制できる。
図36に示すように、外周モールド部59の形成時、溶融した樹脂をゲートG1〜G4から型に流し込む。ゲートG1、G2は、外周モールド部59の周方向のうちターミナルモールド部58に対応する箇所に設けられている。ゲートG1とゲートG2とは、外周モールド部59の長手方向に所定距離離れた位置に設けられている。
ゲートG3は、パイプインレット41の軸を挟んでゲートG1とは反対側に設けられている。ゲートG4は、パイプインレット41の軸を挟んでゲートG2とは反対側に設けられている。
ゲートG1〜G4の位置を上記のように設定することにより、外周モールド部59のウェルドをゲートG1とゲートG3との間、および、ゲートG2とゲートG4との間に形成することができる。これにより、外周モールド部59のウェルドがターミナルモールド部58の溶着突起583、584の近傍に形成されるのを抑制することができる。したがって、溶着突起583、584によるシール性を確保することができる。
図36に示すように、パイプインレット41の燃料入口101側の端部には、アッパOリング3、スペーサ4、リングストッパ16が設けられている。
パイプインレット41の燃料入口101側の端部には、パイプ大径段差面411、パイプ小径段差面412、ストッパ係止部413が形成されている。パイプ大径段差面411は、パイプインレット41の外周壁においてパイプインレット41の軸に対し略垂直となるよう円環の平面状に形成されている。
パイプ小径段差面412は、パイプインレット41の外周壁のパイプ大径段差面411に対し燃料入口101側においてパイプインレット41の軸に対し略垂直となるよう円環の平面状に形成されている。パイプ小径段差面412の内径および外径は、パイプ大径段差面411の内径より小さい。
ストッパ係止部413は、パイプインレット41の燃料入口101側の端部の外周壁から径方向外側へ突出するよう環状に形成されている。
スペーサ4は、例えばステンレス等の金属により環状に形成され、パイプ大径段差面411に当接するよう設けられている。アッパOリング3は、例えばゴム等の弾性部材により環状に形成され、スペーサ4のパイプ大径段差面411とは反対側の面に当接するよう設けられている。リングストッパ16は、パイプ小径段差面412とストッパ係止部413との間に設けられている。ストッパ係止部413の外径は、リングストッパ16の内径より大きい。これにより、ストッパ係止部413は、リングストッパ16を係止し、パイプインレット41からのリングストッパ16の脱落を抑制している。
リングストッパ16の外径は、アッパOリング3の内径より大きい。これにより、リングストッパ16は、パイプインレット41からのアッパOリング3の脱落を抑制できる。
燃料配管のカップ9がパイプインレット41の燃料入口101側の端部に接続されると、アッパOリング3は、カップ9の内周壁とパイプインレット41の外周壁との間で径方向に圧縮された状態となる。これにより、カップ9とパイプインレット41との間が液密に保持される。
カップ9の内径は、パイプインレット41の固定コア50側の端部の内径より大きい。そのため、カップ9の内側および燃料流路100が燃料で満たされているときのアッパOリング3の受圧面積は、ロアOリング5の受圧面積より大きい。これにより、パイプインレット41に対し燃焼室7側に作用する燃圧の方が、パイプインレット41に対しカップ9側に作用する燃圧より大きくなる。したがって、カップ9の内側および燃料流路100が高圧の燃料で満たされたとしても、パイプインレット41と固定コア50との分離を抑制できる。
図44に示すように、リングストッパ16は、ストッパ本体161、段差面部162、ゲート痕163を有している。リングストッパ16は、例えば樹脂により形成されている。
ストッパ本体161は、略円環状に形成されている。段差面部162は、ストッパ本体161の一方の端面の外縁部から他方の端面側へ凹むよう形成されている。ここで、段差面部162は、ストッパ本体161の内周壁と外周壁とを接続していない。段差面部162は、ストッパ本体161の周方向に等間隔で2つ形成されている。ゲート痕163は、リングストッパ16を射出成型するときに形成される突起であり、ストッパ本体161の段差面部162が形成された位置の外周壁から外側へ向かって突出するよう形成されている。リングストッパ16は、段差面部162が形成されていることにより、表裏の判別が容易である。
リングストッパ16は、段差面部162が形成されていない面をアッパOリング3に向けた状態で、例えばストッパ本体161の段差面部162が形成されている面の特定の2つの箇所P1を指等で押してパイプインレット41側に押し込み、内縁部がストッパ係止部413を乗り越えることで、パイプ小径段差面412とストッパ係止部413との間に取り付けられる。
図46に示すように、第3比較形態では、段差面部162は、ストッパ本体161の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されている。ゲート痕163は、段差面部162から板厚方向に突出するよう形成されている。
第3比較形態では、段差面部162がストッパ本体161の内周壁と外周壁とを接続するよう形成されているため、リングストッパ16をパイプインレット41に取り付けるとき、例えばストッパ本体161の段差面部162が形成されている面の特定の2つの箇所P1を指等で押してパイプインレット41側に押し込んだ場合、ストッパ本体161が、段差面部162の形成された部分で歪んだり大きく変形したりするおそれがある。
一方、本実施形態では、段差面部162はストッパ本体161の内周壁と外周壁とを接続していないため、ストッパ本体161の強度を確保でき、リングストッパ16をパイプインレット41に取り付けるとき、ストッパ本体161の特定の2つの箇所P1を指等で押してパイプインレット41側に押し込んだとしても、ストッパ本体161の歪みや大きな変形を抑制できる。
図48〜50に示すように、フランジインレット18は、フランジ本体181、幅狭部182、フランジ突部183を有している。フランジインレット18は、例えばステンレス等の金属により形成されている。
フランジ本体181は、略円環の板状に形成されている。幅狭部182は、フランジ本体181の周方向の一部に形成され、フランジ本体181の他の部分よりも径方向の幅が狭い。フランジ突部183は、幅狭部182から径方向外側へ突出するよう形成されている。
図48に示すように、フランジインレット18は、内周壁がパイプインレット41の外周壁に嵌合するようパイプインレット41に圧入されている。ここで、フランジインレット18の噴孔13側の面の内縁部は、パイプインレット41の外周壁において円環の平面状に形成されたフランジ係止段差面416に当接している。これにより、フランジインレット18は、噴孔13側への移動が規制されている。
ターミナルモールド部58には、ターミナルモールド凹部585が形成されている。ターミナルモールド凹部585は、ターミナルモールド部58の外壁のうちパイプインレット41に対向する部分から凹むようにして形成されている。ターミナルモールド凹部585には、フランジ突部183が係合している。これにより、パイプインレット41の周方向(回転方向)におけるターミナルモールド部58およびコネクタ部57の位置決めが可能である。
フランジインレット18のフランジ本体181のフランジ係止段差面416とは反対側の面は、外周モールド部59から露出している。リテーナ17の当接部173は、外周モールド部59から露出するフランジインレット18に当接している。リテーナ17からの燃焼室7側への付勢力(荷重)は、フランジインレット18を経由してフランジ係止段差面416に作用する。
パイプインレット41には、パイプ環状凹部414、415が形成されている。パイプ環状凹部414は、フランジインレット18の燃料入口101側においてフランジインレット18の外周壁から径方向内側に凹むよう環状に形成されている。パイプ環状凹部415は、フランジインレット18の噴孔13側においてフランジインレット18の外周壁から径方向内側に凹むよう環状に形成されている。
パイプインレット41の軸を含む断面において、パイプ環状凹部414と外周モールド部59との界面には、少なくとも1箇所の曲がり部を有するラビリンス状の経路R1が形成されている(図48参照)。そのため、例えばパイプインレット41の外周壁と外周モールド部59の上端との間に水が入り込んだとしても、経路R1が障害となり、水がフランジインレット18側へ流れるのを抑制できる。
また、パイプインレット41の軸を含む断面において、パイプ環状凹部415と外周モールド部59との界面には、少なくとも1箇所の曲がり部を有するラビリンス状の経路R2が形成されている(図48参照)。そのため、例えばフランジインレット18の外縁部と外周モールド部59との間に水が入り込んだとしても、経路R2が障害となり、水がモールド穴部582のターミナル555側等へ流れるのを抑制できる。
図51、52に示すように、固定コア50のパイプインレット41側の端部には、コア端部500、コア大経部52、コア小径部53が形成されている。
コア端部500は、略円筒状に形成されている。コア大経部52は、コア端部500に対し噴孔13とは反対側において略円筒状に形成されている。コア大経部52の外径は、コア端部500の外径より小さい。コア小径部53は、コア大経部52に対し噴孔13とは反対側において略円筒状に形成されている。コア小径部53の外径は、コア大経部52の外径より小さい。パイプインレット41は、噴孔13側の端部の内周壁がコア大経部52の外周壁に嵌合するよう固定コア50に圧入されている。
ロアOリング5は、径方向に圧縮された状態で、パイプインレット41の噴孔13側の端部の内周壁とコア小径部53の外周壁との間に設けられている。
コア大経部52には、リークパス溝部521が形成されている。リークパス溝部521は、コア大経部52の外周壁の周方向の一部を削るようにして形成されている。これにより、リークパス溝部521とパイプインレット41の噴孔13側の端部の内周壁との間に、空間としてのリークパス520が形成されている。
パイプインレット41と固定コア50との圧入後、ロアOリング5によるシールが不十分な場合、燃料流路100にエアーを吹き込むと、エアーは、ロアOリング5とパイプインレット41またはコア小径部53との間、および、リークパス520を経由してコア端部500とパイプインレット41との間から外部へ流れ出る。そのため、パイプインレット41と固定コア50との圧入後、燃料流路100にエアーを吹き込み、コア端部500とパイプインレット41との間からのエアーの流出の有無を検査することにより、ロアOリング5によるシール性が確保されているか否かを確認することができる。
図53に示すように、導通部554とターミナル555とはプロジェクション溶接により溶接されており、プレス穴部556と導通部554との間に、ターミナル555と導通部554とが溶融し冷え固まった溶接部W1が形成されている。
図54に示すように、ニードル30の鍔部34の噴孔13側の端面である鍔部端面341は、SR形状すなわち球面状に形成されている。また、可動コア40の噴孔13とは反対側の端面の内縁部には、テーパ面部401が形成されている。テーパ面部401は、噴孔13とは反対側から噴孔13側へ向かうに従い可動コア40の軸に近付くようテーパ面状に形成されており、鍔部端面341と接触可能である。そのため、燃料噴射弁1の作動時、可動コア40に対するニードル30の傾きが発生しても、可動コア40と鍔部34との接触部位が相対的にずれて、鍔部端面341とテーパ面部401との全周当たりを維持できる。これにより、片当たりによる摩耗の発生を抑制できる。また、鍔部端面341を球面状に形成しているため、鍔部端面341とテーパ面部401との接触状態を常に同一に維持でき、軸線方向に対するニードル30の変位を抑えることができる。
図55に示すように、ノズル部10には、ノズル凹部123、ノズル凸部124が形成されている。ノズル凹部123は、ノズル筒部12の外周壁から径方向内側に凹むよう環状に形成されている。ノズル凸部124は、ノズル凹部123の円筒状の底面から径方向外側に突出するよう環状に形成されている。ノズル凸部124の噴孔13側の端部、および、噴孔13とは反対側の端部は、テーパ面状に形成されている。
ノズル凹部123およびノズル凸部124の径方向外側には、燃焼ガスシール19が設けられている。燃焼ガスシール19は、例えば樹脂等により略円筒状に形成されている。燃焼ガスシール19は、燃料噴射弁1をヘッド穴部8に設けた状態において、ヘッド穴部8の内周壁とノズル筒部12との間で径方向に圧縮された状態となる。燃焼ガスシール19により、燃焼室7で発生した燃焼ガスがヘッド穴部8を経由してシリンダヘッド6の外部に流出するのを抑制できる。
高温の燃焼ガスに晒される環境において、燃焼ガスシール19に燃焼圧が継続的に作用すると、時間の経過とともに燃焼ガスシール19が変形するクリープ変形が生じるおそれがある。そのため、例えばノズル凸部124が形成されていない場合、燃焼ガスシール19が燃焼室7とは反対側に移動し、燃焼ガスシール19によるシール性が低下するおそれがある。
本実施形態では、燃料噴射弁1をヘッド穴部8に設けた状態では、燃焼ガスシール19の内周壁にノズル凸部124が食い込んだ状態となる。これにより、燃焼ガスシール19の内周壁には、ノズル凸部124の形状に沿った形状のシール凹部191が形成される(図55参照)。そのため、燃焼ガスシール19にクリープ変形が生じたとしても、シール凹部191がノズル凸部124に係止されることで、燃焼ガスシール19が燃焼室7とは反対側に移動するのを抑制できる。したがって、燃焼ガスシール19によるシール性の低下を抑制できる。
(他の実施形態)
上述の第3実施形態では、内側部材81の軸方向の長さが、外側部材85の軸方向の長さより大きい例を示した。これに対し、他の実施形態では、内側部材81の軸方向の長さは、外側部材85の軸方向の長さ以下であってもよい。
また、上述の実施形態では、第1テーパ面の噴孔側の端部と第2テーパ面の噴孔側の端部とが、離間している例を示した。これに対し、他の実施形態では、第1テーパ面の噴孔側の端部と第2テーパ面の噴孔側の端部とは、当接していてもよい。
また、上述の第5実施形態では、中間部材95を内側延伸部92と外側延伸部93との間に圧入する前の状態において、中間部材95の内周壁および外周壁をテーパ状に形成し、アッパハウジング90の内周壁および外周壁をテーパ状に形成し、内側延伸部92の外周壁および外側延伸部93の内周壁をテーパ状に形成する例を示した。これに対し、他の実施形態では、中間部材95を内側延伸部92と外側延伸部93との間に圧入したとき、内側延伸部92が径方向内側に付勢され、または、外側延伸部93が径方向外側へ付勢され、アッパハウジング90の内周壁が固定コア50の外周壁に密着し、アッパハウジング90の外周壁がハウジング20の外筒部21の内周壁に密着するのであれば、中間部材95の内周壁および外周壁、アッパハウジング90の内周壁および外周壁、内側延伸部92の外周壁および外側延伸部93の内周壁は、テーパ状に限らず、筒状等どのように形成されていてもよい。
また、上述の第5実施形態では、中間部材95を磁性材料により形成する例を示した。これに対し、他の実施形態では、中間部材95は、非磁性の材料により形成されていてもよい。
また、上述の第6実施形態では、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に圧入する前の状態において、アッパハウジング90の内周壁および外周壁をテーパ状に形成する例を示した。これに対し、他の実施形態では、アッパハウジング90を固定コア50とハウジング20との間に圧入したとき、アッパハウジング90の内周壁が固定コア50の外周壁に密着し、アッパハウジング90の外周壁がハウジング20の外筒部21の内周壁に密着するのであれば、アッパハウジング90の内周壁および外周壁は、テーパ状に限らず、筒状等どのように形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、アッパハウジングが、噴孔側の端部の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが離間するよう、または、噴孔側の端部の内周壁と固定コア50の外周壁とが離間するよう設けられている例を示した。これに対し、他の実施形態では、アッパハウジングは、噴孔側の端部の外周壁とハウジング20の外筒部21の内周壁とが当接するよう、または、噴孔側の端部の内周壁と固定コア50の外周壁とが当接するよう設けられていてもよい。
また、上述の実施形態では、アッパハウジングが、周方向の一部に切欠き部を有し、軸方向から見てC字状に形成されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、アッパハウジングは、周方向の一部に切欠き部を有さず、軸方向から見て環状に形成されていてもよい。
また、第2〜4参考形態では、リング凸部791を、磁性材リング79の内周壁の軸方向において中央に形成する例を示した。これに対し、他の参考形態では、リング凸部791を、磁性材リング79の内周壁の軸方向において噴孔13側の端部、または、噴孔13とは反対側の端部に形成してもよい。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。