以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、下記の式(1)に示されるヘミデスモゾーム活性化作用を呈するドーパキノン誘導体(以下、ドーパキノン誘導体と称す)は炭素元素24個、水素元素33個、酸素元素4個及び窒素元素1個から構成されている。
すなわち、C24H33O4N1の化学式であり、分子量は約399.5である。
このドーパキノン誘導体はドーパキノン1分子及び単素環炭素化合物1分子からなる。両分子の結合はエステル結合であり、ドーパキノン側鎖のカルボキシル基と単素環炭素化合物の水酸基がエステル結合している。
このドーパキノン誘導体は水酸基が少ないことから水に対する溶解性は低く、他方、油溶性を示す。ヘミデスモゾームが細胞膜に結合していることから脂溶性が高いことはヘミデスモゾームの近傍に近づきやすく、作用が直接的になることから好ましい。
このドーパキノン誘導体には2種類の官能基が存在しており、ドーパキノンと単素環炭素化合物の働きである。ドーパキノンはキノン基による抗酸化作用及び還元作用に優れており、この還元作用によりヘミデスモゾームの構築を安定化させる。ヘミデスモゾームは複数のタンパク質と細胞膜が結合し、立体構造を呈している。細胞膜とタンパク質の反応性は酸化により分断され、ヘミデスモゾームが断裂される。このドーパキノン誘導体の還元作用により細胞膜及びタンパク質結合が安定化し、ヘミデスモゾームも安定化する。
単素環炭素化合物は炭素鎖が立体的に配列しているため、細胞内の細胞膜に入り込み、裏打ち作用を示し、細胞を安定化させる。皮脂腺が多く、皮脂の酸化物により細胞が障害を受ける。この酸化障害に対して単素環炭素化合物が防御作用を呈する。
このドーパキノン誘導体は2種類の官能基の相乗作用によりヘミデスモゾームが安定化されて活性化される。ヘミデスモゾームの働きは色素細胞内で色素産生を増加させ、色素の分泌を高める。さらに、細胞間の結合を強固にして身体の機能と構造を高める。加えて、神経細胞の電気的伝達を高めて神経活動を高める。血管壁を強固にして出血を防ぐなどの基礎的な働きがある。
色素の場合、色素にはメラニンの他、タンパク質、ケラチンなどの分泌物が含有され、これらの色素が頭髪の色を構成している。色素が多くなることは頭髪の色を高めることになる。加齢により色素細胞の増殖が遅延して、色素分泌が低下することから、このドーパキノン誘導体は高齢者の頭髪色素細胞から色素分泌を促進して頭髪の色を濃くする働きがある。
このドーパキノン誘導体は脂溶性と水溶性の両性を示すことから、細胞膜と細胞質の両方に働くことができ、また、溶媒との親和性という点において化粧品や食品の溶媒に馴染み、溶解性が高まることから好ましい。また、体内への吸収にも優れており、食品とした場合には腸管から腸管絨毛細胞の細胞膜を介して体内へ吸収される。皮膚や頭皮からは皮脂に溶解して皮脂腺に浸透し、皮脂から毛包組織に吸収される。このようにドーパキノン誘導体の吸収性が高いことは好ましい。
この誘導体自体は細胞内でドーパキノンと単素環炭素化合物に分解され、これらの物質は安全性が高く、結果としてこのドーパキノン誘導体の安全性も高いことから好ましい。このドーパキノンをドーパキノンと単素環炭素化合物を原料として有機化学的に合成することができる。この有機合成された誘導体は標準物質として解析や分析に利用される。しかし、化学的な製造にはコストがかかり、かつ、有害な有機溶媒と重金属を使用することから、産業には利用しにくいという安全性上の欠点がある。
このドーパキノン誘導体の構造について化学的に合成された誘導体の重水素化クロロホルム中の600MHzのH−NMR(1H−NMR)解析(ブルカー製)により、ピークの位置は1.63、1.64、1.70、1.71、1.99、2.02、2.06、2.08、2.11、2.13、2.14、2.15、4.05、4.47、4.75、5.17、5.18、5.60、6.11、6.87及び7.29ppmに認められる。
また、化学的に合成された誘導体の重水素化クロロホルム中のC−NMR(13C−NMR)解析ではピークの位置は16.1、16.5、17.9、25.9、26.4、26.9、39.9、40.0、43.6、60.5、70.6、105.7、119.8、124.5、125.4、127.7、129.1、132.6、136.8、142.2、145.5、148.8、152.4及び172.7ppmに認められる。
このドーパキノン誘導体は天然由来であることから安全性が高く、また、頭髪細胞、毛根細胞、皮膚細胞、神経細胞、血管細胞、心筋細胞などへの利用性に優れている。仮に、この誘導体を大量に摂取した場合、生体内で分解されることから安全性が高い。
さらに、この誘導体は粉末にして水溶液と反応する際に水素ガスを発生する。発生する水素ガスは活性酸素を除去する働きがあるため、紫外線や酸化物質によって発生した活性酸素を除去して生体を安定に維持できることから好ましい。また、水素ガスはヒドロキシルラジカルを消去し、還元作用を呈し、かつ、抗酸化作用を発揮することから好ましい。
たとえば、この導体は皮膚表皮細胞に働いた場合、皮膚細胞を増殖させ、ケラチンを増加させる。このドーパキノン誘導体はヘミデスモゾーム活性化を介してケラチン合成酵素を活性化し、ケラチン量を増加させる。ケラチンは皮膚や毛髪を強固にすることから好ましい。
さらに、この誘導体は還元作用により炎症物質であるプロスタグランジンやキニン類の産生を抑制する働きもあり、抗炎症作用を有することは好ましい。
このドーパキノン誘導体の製造方法としては発酵法、酵素反応法や化学合成法などがある。たとえば、この誘導体の製造方法としてはブドウ芽、米糠などから抽出することができる。また、種々の植物からも抽出することができる。また、この抽出方法ではプロテアーゼやリパーゼなどの消化酵素を利用することは抽出効率が高められることから好ましい。
特に、ヒト皮膚由来の角化細胞及び線維芽細胞をブドウ芽発酵エキスとともに培養することにより細胞内でこのドーパキノン誘導体が合成され、細胞外に分泌されることは好ましい。
ブドウ芽、マキベリー、ウコン、アサイヤシ、バラ、ラベンダーなどの植物を納豆菌やベニコウジ菌で発酵させる発酵法もこのドーパキノン誘導体の製造方法として有用である。これらの発酵技術は日本では知識が豊富であり、食用としての実績も多く、かつ、安全性も高いことから好ましい。
さらに、高純度の誘導体を得る目的で精製されることは好ましい。精製の方法としては、分離用の樹脂を用いて分離用溶媒で抽出する精製操作を利用することは好ましい。
このドーパキノン誘導体は優れたヘミデスモゾーム活性化作用を発揮して化粧料に用いられることは好ましい。また、皮膚細胞のケラチン増加作用を呈することから、基礎化粧料、シャンプー、まつ毛増殖剤、育毛剤、毛髪用化粧料としても利用できる。たとえば、ヒト角化細胞や線維芽細胞に対して成長因子作用を呈することは好ましい。
このドーパキノン誘導体にエキスを添加した後、油脂に分散することは、得られる活性部分が油脂の中で安定に維持することから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。この誘導体は水溶性と油溶性の両方の溶媒に溶解する。この両親媒性の性質はこの誘導体の利用を広げることから好ましい。
医薬品として注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、育毛剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。特に、胃酸に対して耐性を示すことから、内容物が胃酸に対して保護されることから、腸溶性の製剤に利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。上記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。上記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、上記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに液体エキス担体を含有させることができる。上記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によってエキスを導入するための軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤としてヘミデスモゾーム活性化作用を目的とした食品、ヘミデスモゾーム活性化作用を目的とした健康食品、さらには、皮膚保護のための食品などに利用される。また、保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、毛色や毛艶の改善を目的として飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができ、ヘミデスモゾーム活性化作用及びケラチンの産生を呈する化粧料となる。化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。この誘導体は水溶性と油溶性の両方の溶媒に溶解する。この両親媒性の性質はこの誘導体の利用を広げることから好ましい。
また、この誘導体はヘミデスモゾーム活性化作用を利用した植物活性化剤としても利用される。すなわち、この誘導体は植物細胞の接着を強固にする作用により、植物の生育を活性化し、開花、結実、収穫量の増加をもたらす。たとえば、この誘導体にHB−101(株式会社フローラ製)の植物活力剤を結合することにより植物の成長を促進する働きが増強され、維持され、安定化されることから好ましい。
以下に、ブドウ芽と米糠を納豆菌とベニコウジ菌で発酵させた発酵液を培地としてヒト皮膚角化細胞を培養して順化して得られた培地で、さらに、ヒト皮膚線維芽細胞を培養して順化される順化培養液を精製する工程からなる式(1)に示されるヘミデスモゾーム活性化作用を呈するドーパキノン誘導体の製造方法について説明する。
この製造工程で用いる原料はブドウ芽、米糠、納豆菌、ベニコウジ菌、ヒト皮膚角化細胞、ヒト皮膚線維芽細胞である。製造工程は発酵と培養の組合せであり、最終的には順化される培養液を精製することにより目的とするドーパキノン誘導体が得られる。目的とするドーパキノン誘導体は式(1)で示されるドーパキノン1分子及び単素環炭素化合物1分子からなる物質である。
原料となるブドウ芽はブドウ(学名Vitaceae)の種子を発芽させた新鮮な芽部分である。ブドウ芽は化粧品原料や健康食品として利用される。用いるブドウ芽の産地は日本、アジア、欧米のいずれのものでも良く、特に、日本で無農薬で栽培されたブドウ芽は新鮮であり、安全性が高いことから好ましい。これは乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくできることから好ましい。
また、原料となる米糠の元となる米は遺伝子組み換え体ではないものが日本人の食文化に適していることから好ましい。産地は日本産、アメリカ産などいずれの産地でも良い。米糠は米の外皮・胚部分であり、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された米糠は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
これらの原料は使用に際して株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で乾燥され、粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
用いる納豆菌は学名Bacillus subtilisで日本では納豆の製造や食品加工に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。このうち、納豆素本舗製の納豆菌は高い発酵性を呈することから好ましい。
上記の発酵に関するそれぞれの添加量は、ブドウ芽1重量に対し、米糠は0.4〜20重量、納豆菌は0.002〜0.2重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
上記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により上記の材料を混合することは好ましい。さらに、発酵物は以下の工程により実施され、製造される。
この発酵の工程は静置法または撹拌法のいずれでも良いが、発酵を短時間で実施できる点から撹拌法が好ましい。発酵は40〜44℃で24時間から72時間行われることが好ましい。この納豆菌の発酵により発酵原料の食物繊維やタンパク質が分解されて低分子化される。
次に、上記の納豆菌発酵液は次にベニコウジ菌により発酵される。用いるベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusという糸状菌で、日本やアジアで食品の加工に用いられる食用の有用菌である。用いるベニコウジ菌は日本由来のものが発酵能力及び品質が高いことから好ましい、特に、有限会社紅麹本舗製のベニコウジ菌は使用実績が豊富で、品質が良いことから好ましい。
上記の発酵に関するそれぞれの添加量は上記の納豆菌発酵液1重量に対してベニコウジ菌は0.002〜0.1重量が好ましい。ベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
上記の発酵は清浄な培養用タンク内で静置法または撹拌法のいずれでも良いが、発酵を短時間で実施できる点から撹拌法が好ましい。発酵は38〜45℃で24時間から96時間行われることが好ましい。このベニコウジ菌の発酵で生じるエステル酵素反応による置換反応が生じる。
この発酵液は濾過布などにより濾過されたろ液はオートクレーブ滅菌され、細胞培養の培地として以下の培養工程に供される。
上記の発酵液にはタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルが含有され、かつ、pHも中性であり、細胞培養に適している。これを培地とする。ただし、納豆菌やベニコウジ菌の混入による細菌汚染を取り除く必要がある。
上記培養液を滅菌チューブに入れ、これにコラゲナーゼを1%程度添加して濾過滅菌する。これを細胞剥離液とする。予め、HIVなどのウイルス感染がないことを確認したヒトの顔面皮膚を消毒用エタノールで滅菌する。顔面皮膚に上記のコラゲナーゼ液を室温で約5分間浸漬する。コラゲナーゼにより表皮と真皮層が分離される。
表皮層と真皮層はコラゲナーゼにより剥離され、さらに、単一細胞まで分離される。この細胞を上記の培地に懸濁し、コラゲナーゼの働きを低下させる。細胞を分散し、セルストレーナーにより単一細胞のみを滅菌された遠沈管に移入する。
これを1500rpm、5分間の遠心分離により、単一細胞を遠沈させ、ここに培地を添加して再度、分散し、遠心分離により新鮮な培地に交換する。この細胞懸濁液を抗ケラチン抗体をコートした培養シャーレに移動させ、5%炭酸ガス下、37℃で1日間接着させる。
ケラチンは皮膚表皮細胞の表面に存在することから接着した細胞は角化細胞である。得られた細胞と培地を分けて付着したシャーレには新鮮な培地を添加して5%炭酸ガス下、37℃でさらに培養して角化細胞を増殖させる。
他方、上清の培養液には線維芽細胞が残存しているため、これを抗フィブロネクチン抗体をコートした培養シャーレに移動させ、5%炭酸ガス下、37℃で1日間接着させる。抗フィブロネクチン抗体に対する接着は線維芽細胞特有のものであり、この接着により皮膚線維芽細胞が得られる。付着した線維芽細胞を新鮮な培地で洗浄して線維芽細胞を増殖させる。
次に、細胞順化培養液の製造について説明する。上記の細胞工程により得られた角化細胞を新鮮な培地とともに、滅菌シャーレに播種する。細胞数は10000個程度、培地は5mL程度とする。これを5%炭酸ガス下、37℃で7日間培養する。培養の日数はコンフルエントになる前とする。培養後、上清を採取してろ過滅菌してこれを角化細胞順化培養液とする。
次に、角化細胞順化培養液を培地として皮膚線維芽細胞を培養する。10000個の細胞を角化細胞順化培養液の5mLともに滅菌シャーレに播種して5%炭酸ガス下、37℃で7日間培養する。培養後、上清を採取してろ過滅菌してこれを角化細胞及び線維芽細胞順化培養液とする。
上記の角化細胞及び線維芽細胞順化培養液から、目的とするドーパキノン誘導体を精製方法により分離し、精製する。精製の方法としては、分離用の樹脂を用いて分離用溶媒で抽出する精製操作を利用する。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることは好ましい。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性のドーパキノン、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製、HP−20及びHP−21)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオンHP−20、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはこれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオンHP−20及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。また、活性を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
ドーパキノン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするドーパキノン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、このドーパキノン誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、上記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
サカタのタネ(神奈川県)より購入したブドウ種子(日本産、長野県産)を用いた。この種子を水道水で水洗後、37〜39℃の恒温槽内に設置した水を含ませたガーゼの上に播種した。これを7日間培養して発芽させた。発芽したブドウ芽を粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、粉砕物を500g得た。
また、愛知県産の米糠をJAあいちより購入して用いた。洗浄後、これを粉砕して500gを発酵に利用した。これらの粉砕物をオートクレーブ滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、オートクレーブ滅菌された水道水10kgを添加し、攪拌した。
納豆素本舗製の納豆菌5gを添加して発酵させた。発酵温度は39〜42℃とし、40時間発酵させた。なお、発酵はタンパク質の変化をタンパク質定量法により測定して管理した。
発酵後、発酵液をろ過してろ液8.7kgを採取した。この発酵液をベニコウジ菌により発酵させた。すなわち、上記の発酵液8kgにベニコウジ菌の前培養液(有限会社紅麹本舗製)8gを添加して発酵させた。発酵温度は39〜40℃とし、38時間発酵させた。なお、この発酵でもタンパク質の変化をタンパク質定量法により測定して管理した。
発酵後、得られた発酵液を95℃で加熱煮沸して菌を死滅させた。これを冷却後、濾過してろ液を採取した。このろ液を滅菌したメンブレンフィルターにより減圧濾過して発酵液を採取した。発酵液として4.4kgを採取し、これを以下の細胞培養用の培地とした。
品質検査としてタンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルが含有されている点及び菌の混入がない点を事前に検査し、異常が認められないものを培地として以下の培養操作に用いた。
上記の培地をオートクレーブ後、冷却して滅菌チューブ(ファルコン製、15mL)に入れ、これにコラゲナーゼ(新田ゼラチン製)を1%程度添加して、これを濾過滅菌した。これを細胞剥離液とした。予め、HIVなどのウイルス感染がないことを確認したヒト(50歳、女性)の顔面皮膚を消毒用エタノールで滅菌した。
顔面皮膚に上記のコラゲナーゼからなる細胞剥離液を室温で約5分間浸漬した。コラゲナーゼにより表皮と真皮層が分離されたことを確認した。分離液を滅菌チューブに採取して単一細胞まで分散させた。
この採取された細胞を上記の培地に懸濁し、コラゲナーゼの働きを低下させた後、分散した細胞を分散し、セルストレーナー(ファルコン製)により濾過し、細胞のみを滅菌された遠沈管(ファルコン製)に移入した。
これを1500rpm、5分間の遠心分離により、細胞を遠沈させ、ここに上記の細胞培養用の培地を添加して再度、分散し、遠心分離により新鮮な培地に交換した。この細胞懸濁液を抗ケラチン抗体(ヒト型、モノクローナル抗体、コスモバイオ製、製品番号NM002276)をコートした培養シャーレ(ファルコン製)に移動し、5%炭酸ガス下、37℃で1日間培養した。
得られた細胞と上清を分けた。細胞が付着したシャーレには新鮮な培地を添加して5%炭酸ガス下、37℃でさらに培養して角化細胞を増殖させた。
培養の残った上清液を線維芽細胞採取用の抗フィブロネクチン抗体(ヒト型、モノクローナル抗体、タカラバイオ製、製品番号M001)をコートした培養シャーレに移動させ、5%炭酸ガス下、37℃で1日間培養した。付着した線維芽細胞を洗浄後、1%トリプシン液で剥離して線維芽細胞として以下の培養に用いた。
まず、上記の細胞採取工程により得られた角化細胞を新鮮な培地とともに、滅菌シャーレに播種した。細胞数は10000個とし、培地は5mL程度とした。これを5%炭酸ガス下、37℃で7日間培養した。培養の状態を顕微鏡下で観察し、コンフルエントになる前に採取した。この上清のみを採取してろ過滅菌してこれを角化細胞順化培養液とした。
次に、上記の抗フィブロネクチン抗体法で採取した皮膚線維芽細胞を培養した。10000個の線維芽細胞を前記の角化細胞順化培養液の5mLともに滅菌シャーレに播種して5%炭酸ガス下、37℃で7日間培養した。培養後、コンフルエントになる前に、上清を採取し、ろ過滅菌してこれを角化細胞及び線維芽細胞順化培養液とした。
上記の角化細胞及び線維芽細胞順化培養液を凍結乾燥機(タイテック製、フリーズトラップVA−140S)により凍結乾燥させて目的とする粉末20.9gを得た。
得られた粉末20gを精製水100mLに懸濁して4%エタノールで膨潤させたダイヤイオンHP−20(三菱化学製)500gに供した。4%エタノール1900mLで洗浄後、10%エタノール1000mLでさらに洗浄した。
これに60%エタノール800mLを添加し、目的とするドーパキノン誘導体を分画した。この精製操作を3回実施して最終精製物とした。得られた最終精製物を減圧乾燥器により乾燥し、粉末0.4gを得た。これを検体1とした。
以下に、ドーパキノン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体1を精製水に溶解し、濾過後、高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、重水素化クロロホルム中、600MHzの核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製)で解析した。構造解析の結果、検体1からドーパキノン誘導体が同定された。すなわち、ドーパキノン1分子及び単素環炭素化合物1分子がエステル結合した構造体が分析された。
H−NHR分析結果では、1.63、1.64、1.70、1.71、1.99、2.02、2.06、2.08、2.11、2.13、2.14、2.15、4.05、4.47、4.75、5.17、5.18、5.60、6.11、6.87及び7.29ppmにピークが認められた。
さらに、C−NMR分析結果では、16.1、16.5、17.9、25.9、26.4、26.9、39.9、40.0、43.6、60.5、70.6、105.7、119.8、124.5、125.4、127.7、129.1、132.6、136.8、142.2、145.5、148.8、152.4及び172.7ppmにピークが認められた。
以下に、C−NMRの解析結果のチャートを示した。(横軸単位はppm、縦軸単位はピーク強度を示す。)
上記の分析値は有機化学合成されたドーパキノン誘導体のピークと同一であり、目的とするドーパキノン誘導体として同定された。上記に加えて薄層クロマトグラフィーなどによる分析から、検体1に含まれるこの誘導体の純度は99.1%であった。
また、得られた検体1の粉末0.1gを精製水10mLに溶解した場合、水素ガスの発生が認められた。ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、PDD高感度分析システム)で定量した結果、1.6ppmの水素ガス濃度を検出した。
以下に、ヒト頭髪色素細胞を用いたヘミデスモゾーム産生に関する試験結果を示す。
(試験例2)
健常なヒト(50歳、女性)の頭部より毛髪を採取し、毛髪より毛母細胞をコラゲナーゼ細胞分散法により採取した。すなわち、毛髪を洗浄後、ここに1%コラゲナーゼ液を添加して頭髪を採取し、毛根部分を切断した。この先端部分を1%コラゲナーゼ液により分散して細胞を採取した。これを毛根細胞とした。
この毛根細胞より色素を含有する色素細胞を採取した。培地としては前記の培地を用いた。抗メラニン抗体(モノクローナル抗体、フナコシ製、製品番号ACR423BK)をコートした滅菌シャーレに毛根細胞懸濁液を播種した。
これを5%炭酸ガス下、37℃で1日間培養した。1日後、培地を除去して付着した細胞に新鮮な培地を添加した。顕微鏡下、色素の有無を確認して頭髪由来の色素細胞であることを確認した。その細胞の色素含有の陽性率は92%であった。これを色素細胞とした。
上記の色素細胞を培地に懸濁して細胞数を3000個に調製した。この3000個の色素細胞を培地3mLとともに、培養シャーレ(ファルコン製)で5%炭酸ガス下、37℃で1日間培養した。
1日後、検体1または溶媒対照として培地のみを10%濃度で添加し、さらに、3日間培養した。3日後に、細胞を1%トリプシン液にて採取して生細胞細数をトリパンブルー色素排除法により顕微鏡下、計数した。
さらに、細胞懸濁液をリン酸緩衝液に分散し、超音波破砕して細胞懸濁液を調製した。この細胞に含有される色素量について抗メラニン抗体を用いたELISA法により定量した。なお、この実験は5枚のシャーレを用いて2回実施し、その平均値で評価した。
その結果、検体1の添加群では溶媒対照群に比して色素細胞数は166%に増加した。また、色素量は溶媒対照群に比して241%に増加した。なお、前腕体毛由来の色素細胞を採取して同様の実験を実施した結果、検体1は色素細胞の増殖を行わず、色素量の増加も認められなかった。
また、前記の処理した色素細胞を採取して細胞懸濁液として抗ヘミデスモゾーム抗体(コスモバイオ製、モノクローナル抗体、NU−01−PLN)及びHRP標識抗マウスIgG1抗体(フナコシ製)を用いたELISA法でヘミデスモゾームを定量した。その結果、溶媒対照に比して検体1ではヘミデスモゾーム量が355%に増加した。
以下に、ヒト皮膚細胞を用いたケラチン産生の確認試験について述べる。
(試験例4)
コスモバイオ株式会社より購入したヒト皮膚由来の初代表皮培養細胞を用いた。細胞を専用の培養液に懸濁し、前培養して細胞を増殖させた。37℃、5%炭酸ガス下、炭酸ガス培養器内で培養した。その後、増殖期にある細胞をトリプシン含有培地にて剥離して実験に供した。生細胞数をトリパンブルー色素排除法により顕微鏡下で計数した。細胞数を1mLあたり1000個に調整して5mLずつ培養シャーレに播種してさらに、37℃、5%炭酸ガス下で培地中で培養した。これを紫外線照射装置(ロックタイト、出力88MH)により紫外線を照射して細胞にダメージを与えた。照射はシャーレの蓋を外して1時間実施した。
この紫外線照射により皮膚細胞が障害を受け、この障害に対する回復を試験した。なお、この方法は皮膚に対する試験物質の評価に実施される方法である。
ここに試験物質として上記の検体1及び溶媒対照として生理食塩液を用いた。これを37℃で3日間培養して生細胞数を顕微鏡下で計数した。さらに、細胞を精製水に分散して超音波破砕機(タイテック製)により細胞分散液を得た。この細胞分散液中に含まれるケラチン量について抗ケラチン抗体を用いたELISA法により定量した。なお、これらの実験は5枚のシャーレを用いて2回実施し、その平均値で評価した。
その結果、溶媒対照の細胞数を100%として検体1の添加による比率を求めた結果、検体1では細胞数は122%に増加した。ケラチン量については溶媒対照の値を100%とした場合、検体1により188%に増加した。また、この誘導体はヒト由来皮膚細胞に対して障害を与えず、細胞数を増加させたという結果から、安全性は高いと考えられた。
また、前記の処理した皮膚細胞を採取して細胞懸濁液として抗ヘミデスモゾーム抗体(コスモバイオ製、モノクローナル抗体、NU−01−PLN)及びHRP標識抗マウスIgG1抗体(フナコシ製)を用いたELISA法でヘミデスモゾームを定量した。その結果、溶媒対照に比して検体1ではヘミデスモゾーム量が311%に増加した。
以下に、ヒト血管内皮細胞を用いた血液漏出性についての確認試験について述べる。
(試験例4)
コスモバイオ株式会社より購入したヒト血管内皮細胞を用いた。1000個の細胞をコラーゲンをコートしたセルインサート(ファルコン)に播種して37℃、5%炭酸ガス下、炭酸ガス培養器内で培養した。これを24穴マイクロプレート(ファルコン製)に設定し、インサート側に0.01%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、和光純薬製)を添加し、ここに溶媒対照または検体1を10%濃度で添加した。
さらに、漏出を検出する蛍光マーカーとしてFITC(和光純薬製)を10μg添加した。これを5%炭酸ガス下、炭酸ガス培養器内で1日間培養した。1日後、下層の培養液を採取してろ過滅菌後、漏出したFITC量を分光蛍光光度計(日立製分光蛍光光度計F−2700、励起波長495nm、蛍光波長520nm)により定量した。溶媒対照に対する検体1の蛍光量を求めた。なお、これらの実験は5枚のシャーレを用いて2回実施し、その平均値で評価した。
その結果、検体1によりFITC量は23%となり、77%の抑制が認められた。SDSは細胞膜に浸透し、ヘミデスモゾームを減少させることから、検体1がヘミデスモゾームを強固にして漏出を防御した。これは血管壁の漏出モデルであり、検体1が血管壁の漏出を抑制した。
さらに、血管内皮細胞を採取して細胞懸濁液として抗ヘミデスモゾーム抗体(コスモバイオ製、モノクローナル抗体、NU−01−PLN)及びHRP標識抗マウスIgG1抗体(フナコシ製)を用いたELISA法でヘミデスモゾームを定量した。その結果、溶媒対照に比して検体1ではヘミデスモゾーム量が299%に増加した。