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JP2021054075A - 多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池 - Google Patents

多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池 Download PDF

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JP2021054075A JP2020163708A JP2020163708A JP2021054075A JP 2021054075 A JP2021054075 A JP 2021054075A JP 2020163708 A JP2020163708 A JP 2020163708A JP 2020163708 A JP2020163708 A JP 2020163708A JP 2021054075 A JP2021054075 A JP 2021054075A
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昇三 増田
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晋大 福田
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佃  明光
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Abstract

【課題】電極との接着性、低温でのシャットダウン特性、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を有する二次電池用セパレータに適した多孔性フィルムを提供すること。【解決手段】ポリオレフィン製多孔質膜基材と、前記ポリオレフィン製多孔質膜基材の少なくとも片面に設けられた第一多孔質層と、前記第一多孔質層の表面に設けられた第二多孔質層を備える多孔性フィルムであって、前記第一多孔質層は耐熱性樹脂及び無機粒子を含み、前記耐熱性樹脂は融点が200℃以上であるか融点を有さず、前記第二多孔質層は接着性樹脂からなる多孔質凹凸構造を有する、多孔性フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池に関するものである。
リチウムイオン電池のような二次電池は、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機などのポータブルデジタル機器用途、電動工具、電動バイク、電動アシスト補助自転車などのポータブル機器用途、および電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの自動車用途など、幅広く使用されている。
リチウムイオン電池は、一般的に、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成を有している。
二次電池用セパレータとしては、ポリオレフィン系多孔質膜基材が用いられている。二次電池用セパレータに求められる特性としては、多孔構造中に電解液を含み、イオン移動を可能にする特性と、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、イオン移動を停止させることで、発電を停止させるシャットダウン特性が挙げられる。
前記特性のみならず、二次電池用セパレータには、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性の付与が求められてきている。リチウムイオン電池が異常発熱した場合、上記のシャットダウン特性が作動した後、さらに電池が加熱されることで、二次電池用セパレータの収縮により、短絡部位が発生する場合がある。また、リチウムイオン電池に衝撃が加わることで、局所的に圧力がかかった状態で発熱し、二次電池用セパレータの破膜が発生する場合もある。このような二次電池用セパレータの破膜が発生すると、電池内部で短絡が発生する可能性がある。
さらに、二次電池の製造工程において、正極、セパレータ、負極を積層した積層体を運搬する際に、積層体を維持するため、または、捲回した正極、セパレータ、負極の積層体を円筒型、角型などの缶に挿入する場合、積層体をプレスしてから挿入するが、その際に形が崩れないようにするため、もしくは、積層体をプレスすることで、より多くの積層体を缶の中に入れ、エネルギー密度を上げるため、さらにはラミネート型において、外装材に挿入した後に形状が変形しないようにするために、電解液を含浸する前のセパレータと電極との接着性が求められている。また一方では、リチウムイオン電池には高出力化、長寿命化、高容量化といった優れた電池特性が求められている。
これらの要求に対して、特許文献1では、両表層がフッ化ビニリデンを含む共重合体からなる融点145℃以下の微多孔層で、中間層がポリオレフィンからなる融点140℃以下の微多孔層であることを特徴とする三層構造微多孔膜より構成される、優れたシャットダウン特性を有するリチウム電池用セパレータが提案されている。
また、特許文献2では、シャットダウン特性と耐熱性の向上を目的として、耐熱性高分子と無機フィラーの耐熱性多孔質層を微多孔膜に積層する二次電池用セパレータが提案されている。
また、特許文献3では、電極との接着性と耐熱性の向上を目的として、耐熱性高分子とアクリル系樹脂と無機フィラーの耐熱性多孔質層を微多孔膜に積層する二次電池用セパレータが提案されている。
特開2002−216734号公報 特開2009−231281号公報 特開2019−29315号公報
特許文献1では、融点が145℃以下である微多孔質層を備えることを提案しているが、このような微多孔質層ではシャットダウン後の高温領域に到達した際、熱収縮率が大きくなり、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を十分に確保することができず、接着性樹脂を有していないことから電極との接着性を有していない。
特許文献2では、比較的分子量の低い耐熱性樹脂を使用していることから、耐熱性多孔質層の強度が低くなり、耐熱性多孔質層を設ける工程および/または電池製造工程での無機フィラーの粉落ちが発生したり、耐熱性多孔質層と微多孔膜との密着性が低くなることでセパレータの耐熱破膜性を確保することができず、微多孔膜のシャットダウン特性を十分活用できない。また接着性樹脂を有していないことから電極との接着性を有していない。
特許文献3では、耐熱性高分子とアクリル系樹脂を単層で使用していることから、耐熱性高分子とアクリル系樹脂を増量すると耐熱性、電極との密着性が向上するが、電池特性が悪化する。一方、耐熱性高分子とアクリル系樹脂を減量すると電池特性が向上するが、耐熱性、電極との密着性が悪化し、上記特性の両立が困難である。
したがって、本発明の目的は、上記問題に鑑み、電極との接着性、低温でのシャットダウン特性、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を有する二次電池用セパレータに適した多孔性フィルムを提供することである。また、本発明の目的は、多孔性フィルムをセパレータとして用いた優れた高容量、高出力、長寿命の二次電池を提供することである。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。
上記課題を解決するため本発明の多孔性フィルムは次の構成を有する。
(1)ポリオレフィン製多孔質膜基材と、前記ポリオレフィン製多孔質膜基材の少なくとも片面に設けられた第一多孔質層と、前記第一多孔質層の表面に設けられた第二多孔質層を備える多孔性フィルムであって、
前記第一多孔質層は耐熱性樹脂及び無機粒子を含み、
前記耐熱性樹脂は融点が200℃以上であるか融点を有さず、
前記第二多孔質層は接着性樹脂からなる多孔質凹凸構造を有する、多孔性フィルム。
(2)前記多孔性フィルムの落球破膜温度が280℃以上である、(1)に記載の多孔性フィルム。
(3)前記多孔性フィルムのシャットダウン温度が140℃以下である、(1)または(2)に記載の多孔性フィルム。
(4)前記多孔性フィルムのシャットダウン温度とメルトダウン温度の差が70℃以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(5)前記耐熱性樹脂がポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(6)前記接着性樹脂がフッ素樹脂、アクリル樹脂およびオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータ。
(8)(7)に記載の二次電池用セパレータを有する二次電池。
本発明によれば、電極との接着性、低温でのシャットダウン特性、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を有する二次電池用セパレータに適した多孔性フィルムを提供することができる。また、多孔性フィルムをセパレータとして用いた優れた高容量、高出力、長寿命、低コストの二次電池を提供することが可能となる。
本発明の多孔性フィルムは、ポリオレフィン製多孔質膜基材と、前記ポリオレフィン製多孔質膜基材の少なくとも片面に設けられた第一多孔質層と、前記第一多孔質層の表面に設けられた第二多孔質層を備える多孔性フィルムであって、前記第一多孔質層は耐熱性樹脂及び無機粒子を含み、前記耐熱性樹脂は融点が200℃以上であるか融点を有さず、前記第二多孔質層は接着性樹脂からなる多孔質凹凸構造を有する、多孔性フィルムである。
以下、本発明について詳細に説明する。
[多孔質層]
(第一多孔質層の耐熱性樹脂)
第一多孔質層には、シャットダウン温度とセパレータが溶融する温度との温度差が大きいという特性、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を付与するために、耐熱性樹脂を用いる。
耐熱性樹脂とは、融点が200℃以上である樹脂または融点を有さない樹脂を意味する。融点が200℃以上である樹脂とは、JIS K7121(2012)に準拠して測定する示差走査熱量分析装置(DSC)にて、昇温、冷却した後の2回目の昇温時の吸熱ピークが200℃以上である樹脂をいう。融点を有さない樹脂とは、DSCにて、昇温、冷却した後の2回目の昇温時の吸熱ピークを有さず、ベースラインのシフトを有さない樹脂のことをいう。融点が200℃以上である樹脂または融点を有さない樹脂の特徴を有する耐熱性樹脂を用いないとセパレータに溶融する温度を高くすることや、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を付与することができない。
上記のような耐熱性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂、セルロースおよびその誘導体などの樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂のうち1種を単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、好ましくは、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂であり、より好ましくは、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミドイミド樹脂であり、最も好ましくは芳香族ポリアミド樹脂である。
芳香族ポリアミド樹脂としては、例えばメタ配向芳香族ポリアミド樹脂、パラ配向芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。どちらを用いてもよいが、多孔性フィルムを二次電池用セパレータとして用いた場合の電池特性や熱収縮率が優れる点からパラ配向芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。
好適に用いることができる芳香族ポリアミド樹脂としては、次の式(1)および/または式(2)で表される繰り返し単位を有するものである。
Figure 2021054075
Figure 2021054075
本発明においては耐熱性樹脂の共重合比率又は対数粘度を調節することで、耐熱性樹脂の親水性を調整することができ、後記する相分離工程での耐熱性樹脂の析出速度を調整することができる。耐熱性樹脂を早く析出させることで第一多孔質層の表層を緻密化し、第二多孔質層の多孔質凹凸構造の形成を容易にすることができ、また、耐熱性樹脂のフィブリルを均一に成長させることでポリオレフィン製多孔質膜基材と第一多孔質層との密着性を向上させ、第一多孔質層の耐熱性と強度を高くし、電池組立時や塗工時の無機粒子の脱落を抑制することができる。このような観点から、上記式(1)と式(2)で表される繰り返し単位からなる共重合体が好ましい。
当該共重合体の共重合比率は、上記式(1)で表される繰り返し単位が80モル%以上であることが好ましい。当該共重合比率は、ポリオレフィン製多孔質膜基材と第一多孔質層との密着性を高くし、後述する多孔性フィルムのシャットダウン性を十分に発現させる観点から、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、上記式(1)で表される基本単位の共重合比率の上限は、99モル%以下が好ましい。
ここで、式(1)又は式(2)中の、Ar、ArおよびArとしては、例えば、次の式(3)〜(7)のいずれかで表される基から選ばれる基などが挙げられる。
Figure 2021054075
また、式(6)又は式(7)中の、XおよびYとしては、−O−、−CO−、−CO−、−SO−、−CH−、−S−、−C(CH−などから選ばれるが、これに限定されるものではない。
さらに、これらAr〜Arにおける芳香環上の水素原子の一部が、フッ素原子、臭素原子、塩素原子などのハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基などの置換基で置換されていてもよい。特に、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基などの電子吸引性の置換基を有すると、電気化学的な耐酸化性に優れ、セパレータとして用いたときに正極側における酸化などの変質を防げるため好ましい。なかでも置換基としてハロゲン基がより好ましく、塩素原子が最も好ましい。
また、Ar〜Arにおける結合手は、オルト配向性、メタ配向性、パラ配向性のいずれであってもよいが、パラ配向性を有しているものが全芳香環の50モル%以上を占めていることが好ましく、全芳香環の100モル%を占めていることがより好ましい。ここでいうパラ配向性とは、芳香環において主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。
また、分子量の指標である対数粘度(ηinh)の下限は、耐熱性樹脂を早く析出させることで第一多孔質層の表層を緻密化し、第二多孔質層の多孔質凹凸構造の形成を容易にする観点、及びポリオレフィン製多孔質膜基材と第一多孔質層との密着性、耐熱性、第一多孔質層の強度を高くし電池組立時、塗工時の無機粒子の脱落を抑制する観点から、4.0dl/g以上であることが好ましい。第二多孔質層の多孔質凹凸構造の形成を容易にし、耐熱性、ポリオレフィン製多孔質膜基材と第一多孔質層との密着性を高くし、後述する多孔性フィルムのシャットダウン特性を十分に発現させる観点から、対数粘度の下限は、4.5dl/g以上であることがより好ましい。対数粘度の上限は、塗工液の無機粒子との分散性、生産性の観点から、7.0dl/g以下が好ましい。
第一多孔質層に上述した共重合比率及び/又は対数粘度を適宜調整した耐熱性樹脂を用いることにより、多孔性フィルムに耐熱性を付与することができる。
さらに、第一多孔質層に低温シャットダウン特性を付与したい場合は、第一多孔質層に有機樹脂を含有させることが好ましい。ここで低温シャットダウン特性とは、後述するシャットダウン温度が140℃以下となる特性をいう。二次電池が高容量化、高出力化した際に、発熱開始温度のさらなる低温化の観点から、シャットダウン温度は、135℃以下がより好ましい。
有機樹脂は、例えば、融点が140℃以下の有機樹脂を用いることが好ましい。有機樹脂として、融点が140℃以下の範囲内であれば特に限定されないが、非水電解液二次電池であるリチウムイオン電池に用いる場合、水分の系内への持ち込みを著しく嫌うことから、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどを好ましく用いることができ、特に高密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレンなどからなる粒子を好ましく用いることができる。
(第一多孔質層の無機粒子)
第一多孔質層に耐異物性を付与するために、第一多孔質層は無機粒子を含む。耐異物性とは、正極、負極からの活物質の脱落物や電池の製造工程中に混入する異物に対しての耐性のことをいう。
無機粒子としては、酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粒子、窒化アルミニウム、窒化硅素などの無機窒化物粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子などが挙げられる。これらの粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
第一多孔質層における無機粒子の含有量は、第一多孔質層の空隙率、電池特性の観点から、第一多孔質層全体100質量%において、80質量%以上97質量%未満であることが好ましく、熱収縮と電池特性の両立の観点から、85質量%以上95質量%未満がより好ましい。無機粒子の含有量を前記範囲内とする場合、耐熱性、第一多孔質層の強度、第一多孔質層とポリオレフィン製多孔質膜との密着性が悪化し、粉落ちが発生する場合があるが、上述した耐熱性樹脂の共重合比率、対数粘度の範囲とすることで、熱収縮、電池特性、耐熱性と第一多孔質層とポリオレフィン製多孔質膜との密着性を両立することができる。
用いる無機粒子の1次平均粒子径は、第一多孔質層の強度、空隙率の観点から0.10μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.10μm以上2.5μm以下である。1次平均粒子径の下限を0.10μm以上とすることで、第一多孔質層が緻密になり、ポリオレフィン製多孔質膜基材の孔を閉孔させてしまうことで透気度が高くなり電池特性が悪化することを防止できる。また、1次平均粒子径の上限を5.0μm以下とすることで、第一多孔質層が不均一な構造となり十分な熱収縮率が得られなくなることを防ぎ、また第一多孔質層の膜厚が増大し、電池特性が低下することを防止できる。
また、第一多孔質層の空隙率と第一多孔質層強度を両立するためには1次平均粒子径の異なる無機粒子を2種類以上含むことが好ましく、0.30μm以上2.5μm以下の1次平均粒子径の無機粒子と0.10μm以上0.30μm未満の1次平均粒子径の無機粒子が含まれていることがより好ましい。無機粒子の1次平均粒子径は、ゼータ電位測定、等電点測定やレーザー回折散乱法、動的光散乱法などの粒度分布測定などから測定することができる。
用いる無機粒子の形状としては、球状、板状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、いずれの形状であってもよい。その中でも、表面修飾性、分散性、塗工性の観点から球状であることが好ましい。
(第二多孔質層の接着性樹脂)
第二多孔質層に電極との接着性を付与するために、第二多孔質層は接着性樹脂を含む。接着性樹脂とは、電極と多孔性フィルムとを接着させる工程、つまり熱プレス工程もしくはプレス工程において、熱またはプレスにより樹脂の一部が電極の活物質間の隙間に入り込み、アンカー効果を発現することで電極と接着する樹脂のことをいう。
接着性樹脂は、150℃未満に融点を有する樹脂または非晶性樹脂の少なくとも1種類を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、接着性樹脂に90質量%以上含まれることをいう。150℃未満に融点を有する樹脂または非晶性樹脂の少なくとも1種類を主成分とすることで、電極との高い接着性が得られるため好ましい。
電極と多孔性フィルムとを接着させる工程は熱プレス工程もしくはプレス工程のみが用いられることが多いが、その際、150℃未満に融点を有する樹脂、または非晶性樹脂であれば、熱またはプレスにより第二多孔質層の一部が電極の活物質間の隙間に入り込み、
アンカー効果を発現することで電極との接着が可能となるため好ましい。
150℃未満に融点を有する樹脂は、140℃未満に融点を有する樹脂であることが好ましく、130℃未満に融点を有する樹脂であることがより好ましく、100℃未満に融点を有する樹脂であることがさらに好ましい。150℃以上の融点を有する樹脂を主成分として用いた場合、十分な電極との接着性が得られない場合がある。150℃未満に融点を有する樹脂とは、JIS K7121(2012)に準拠して測定する示差走査熱量分析装置(DSC)にて、昇温、冷却した後の2回目の昇温時の吸熱ピークが150℃未満である樹脂をいう。
非晶性樹脂とは、示差走査熱量分析装置での測定において、−20〜300℃において融点を有さない、すなわち、吸熱ピークを有さず、かつガラス転移温度が150℃未満である樹脂をいう。ここでガラス転移温度とは、例えば「JIS K7121:2012プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、昇温、冷却した後の2回目の昇温時の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点を意味する。
本発明の第二多孔質層に用いる接着性樹脂としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂などが挙げられ、これらのうち1種類だけを用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。これらのうち、電気的安定性と耐酸化性の点から、フッ素樹脂、アクリル樹脂およびオレフィン樹脂より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、フッ素樹脂又はアクリル樹脂を用いることがさらに好ましい。
フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのホモポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンポリマーなどのコポリマーが挙げられる。また、ホモポリマーとテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレンなどとのコポリマーなども挙げられる。これらのフッ素樹脂の中でもポリフッ化ビニリデン、特には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体からなる樹脂が、電気的安定性と耐酸化性の点から好適に用いられる。
前記フッ素樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5万以上200万以下であり、より好ましくは10万以上150万以下であり、さらに好ましくは20万以上100万以下である。フッ素樹脂の重量平均分子量が5万より小さい場合、十分な電極との接着性が得られない場合がある。また、フッ素樹脂の重量平均分子量が200万より大きい場合、粘度上昇によりハンドリング性、塗工性が低くなる場合がある。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。ポリ(メタ)アクリル酸の単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの単量体としてはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(多孔質層の製造)
本発明における多孔質層とは、内部に空孔を有する層をいう。ここで、第一多孔質層、第二多孔質層の組成や形成方法は特に制限されないが、一例として第一多孔質層の耐熱性樹脂として芳香族ポリアミド樹脂と無機粒子を含む多孔質層、第二多孔質層の接着性樹脂としてフッ素樹脂を含む多孔質層について以下に説明する。
第一多孔質層を形成するための塗工液(第1の塗工液)を調製する順序としては特に限定はされないが、無機粒子を均一分散し、第1の塗工液中の無機粒子の1次平均粒子径を均一にする観点から、芳香族ポリアミド樹脂と非プロトン性有機極性溶媒を混合、溶解させた溶解液と、無機粒子と非プロトン性有機極性溶媒を分散させた分散液を混合し、さらに必要に応じてその他の有機樹脂、添加剤等を添加し、第1の塗工液を調製することが好ましい。
例えば、ジアミンと酸ジクロライドを原料として溶液重合などの公知の製法により製造された芳香族ポリアミド樹脂を含有する溶解液と、無機粒子を分散させた分散液から第1の塗工液を調製する。
ここで、無機粒子を分散させる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性有機極性溶媒を用いることができる。この中でも、後工程での多孔構造の形成を容易にする観点から、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
第1の塗工液中には、芳香族ポリアミド樹脂と無機粒子以外にも、必要に応じて、有機樹脂、分散剤、増粘剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等を添加してもよい。
第1の塗工液の分散方法としては、特に限定はされないが、耐熱性、電解液の濡れ性の観点から、第1の塗工液中の無機粒子が均一分散し、無機粒子の1次平均粒子径が均一であることが重要であり、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミルなどを用いて、無機粒子を溶媒に分散したのち、当該溶媒に有機樹脂を分散させることが好ましい。
特に、耐熱性樹脂を加えて分散するときは、第1の塗工液中の無機粒子の1次平均粒子径の均一性の観点から、ビーズミルを用いて分散することが好ましく、ビーズミルに用いるビーズ径は0.1〜1mmが好ましく、使用するビーズの材質は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニア強化アルミナなどを用いることが好ましい。
また、耐熱性樹脂を加えての分散は、複数回行うことが好ましく、さらに樹脂を溶媒と混合する際に使用する混合装置の周速は、無機粒子を溶媒に分散する速度より高速でかつ、段階的に高速にすることが、第1の塗工液中の無機粒子の1次平均粒子径の均一性の観点から好ましい。
第1の塗工液の粘度は、耐熱性の観点から、50〜4,500mPa・sが好ましく、より好ましくは、100〜4,300mPa・s、更に好ましくは500〜4,000mPa・sである。第1の塗工液の粘度は、第1の塗工液の固形分濃度、有機樹脂と無機粒子の混合比率、有機樹脂の分子量によって制御することができる。
第二多孔質層を形成するための塗工液(第2の塗工液)は、フッ素樹脂と、フッ素樹脂を溶解させる溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性有機極性溶媒を用いて調製することができる。この中でも、後工程での多孔構造の形成を容易にする観点から、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
また、第2の塗工液は、耐熱性と電極との接着性のバランスを向上するために、添加剤として、耐熱性樹脂の貧溶媒を添加することが好ましい。ここで、耐熱性樹脂の貧溶媒とは、25℃の溶媒100mL中に上記樹脂が1g以上溶解しない溶媒を意味する。
第2の塗工液に耐熱性樹脂の貧溶媒が含まれると、第2の塗工液を、溶媒を含んだ状態の第一多孔質層に塗工した際に、第一多孔質層上の第2の塗工液が接触した箇所で貧溶媒によってソルベントショックが起こり、第一多孔質層中の耐熱性樹脂が凝集及び析出する。その結果、第2の塗工液が第一多孔質層上の接触箇所に固定され、第2の塗工液が第一多孔質層全体に広がることが防がれ、第一多孔質層上の多孔質凹凸構造が形成される。
貧溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒および水等が挙げられる。中でも後述する塗工液を凝固させる工程で用いられる水が特に好ましい。
添加する貧溶媒の量は、第二多孔質層の樹脂100質量部に対して、500質量部以下が好ましい。添加する貧溶媒の量が500質量部より多くなると、第二多孔質層の樹脂が第2の塗工液中で凝固するなど、第2の塗工液の安定性が十分に得られない場合がある。
フッ素樹脂の固形分濃度は、3〜15質量%が好ましく、電池特性の観点から、5〜10質量%がさらに好ましい。
第2の塗工液の粘度は、多孔質凹凸構造を形成するために、第1の塗工液の粘度よりも低い粘度であることが好ましい。第2の塗工液の粘度は透気性および接着性の観点から、5〜150mPa・sが好ましい。後述する第2の塗工液を塗工する方法を用いて存在領域と非存在領域を形成する観点からは、5〜120mPa・sがより好ましく、5〜90mPa・sが更に好ましい。第2の塗工液の粘度は、塗工液の固形分濃度、樹脂の含有比率、樹脂の分子量によって制御することができる。
次に、得られた第1の塗工液をポリオレフィン製多孔質膜基材上に塗工し、溶媒を含んだ状態の第一多孔質層上に第2の塗工液を塗工し、耐熱性樹脂と接着性樹脂の貧溶媒である純水を使用した水槽中に浸漬させることで第一多孔質層および第二多孔質層が凝固・相分離が起こり、第一多孔質層と第二多孔質層が多孔質構造を形成する。そして、水切り、乾燥を行うことで、第一多孔質層および第二多孔質層を積層した多孔性フィルムを作製できる。
第1の塗工液の塗工方法としては、公知の方法を用いればよい。例えば、ディップコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、コンマコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、パット印刷などの方式が挙げられる。この中でも、生産性の観点から、ディップコーティング、グラビアコーティングが好ましく、第1の塗工液をポリオレフィン製多孔質膜の両面に塗工する場合は、ディップコーティングが特に好ましい。
第2の塗工液の塗工方法としては、例えば、スプレーコート、ダイコート、カーテンコート、インクジェットなどの方式が挙げられる。これらの中でも、多孔質凹凸構造を形成する観点から、スプレーコート方式が好ましい。
スプレーコートのスプレーノズルは、広範囲の粘度の第2の塗工液に対応する観点から、2流体系スプレーノズルが好ましく、均一塗工の観点から、外部混合方式が好ましい。スプレーノズルのノズルの直径は、3〜20mmが好ましく、第2の塗工液の供給安定性の観点から、8〜20mmが好ましい。
第2の塗工液の流量は、20〜200mL/mが好ましく、電池特性の観点から、20〜100mL/mが好ましい。外部混合方式を用いる場合のエア角度は、30〜70°が好ましく、エア圧力は、0.02〜0.1MPaが好ましい。
(多孔質層の特性)
電池特性と電極との接着性と耐熱性の特性バランスの観点から、第二多孔質層の表面構造は多孔質凹凸構造である。多孔質凹凸構造の多孔質構造とは、第二多孔質層の表面に直径50nm〜5μmの空孔が存在し、第二多孔質層の表面の上記空孔の割合が、20〜70面積%である構造をいう。なお、空孔および第二多孔質層の表面の空孔割合は、電界放射型走査電子顕微鏡を用いて2値化処理を行うことによって評価することができる。
多孔質凹凸構造の凹凸構造については、以下のように評価することができる。すなわち、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製“VH−6000”)にサンプルをセットし、スイングヘッドズームレンズ(キーエンス株式会社製“VH−ZST”)を倍率20倍にセットし照明を同軸落射に設定する。そのうえで、画質UPモードの解像度アップを選択し視野幅1.3cm×1.7cmの撮像を行い、計測・スケールの自走面積計測(粒子カウント)で“輝度“を選択し計測を実施し、次に抽出対象を暗い領域を選択した後に2値化抽出することによって評価することができる。明部は、凸部となり、暗部は凹部となる。凸部は、第二多孔質層のみであり、凹部は第一多孔質と第二多孔質層となる。
多孔質凹凸構造とは、上記評価方法で、撮影場所を変更し無作為に10回分の撮影を行い、テキストデータファイルで書き出しをした際に、全測定面積における凸部の面積比を示す“総面積率”が10%以上、50%以下である構造を意味する。また、その際の1つの凸部の面積は0.05cm以上、1.0cm以下であることが好ましい。上記範囲であれば、期待されるイオン透過性、電極との接着性および均一にイオン透過できることから期待されるサイクル特性を示すことが可能となる。
第一多孔質層及び第二多孔質層全体の空隙率は50体積%以上80体積%以下が好ましく、55以上体積%80体積%以下がより好ましく、さらに好ましくは55体積%以上75体積%以下である。第一多孔質層及び第二多孔質層全体の空隙率が50体積%以上であると電池特性の悪化を防ぐことができる。第一多孔質層及び第二多孔質層全体の空隙率が80体積%以下であると例えば耐熱性を十分に発現できる。また、第一多孔質層及び第二多孔質層全体の空隙率が50体積%未満であるとイオンの透過性が低くなり、電池特性が悪化する場合があり、空隙率が80体積%より高くなると、耐熱性が低下したり無機粒子の粉落ちが発生する場合がある。
第一多孔質層及び第二多孔質層の膜厚の合計は、1μm以上6μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1.5μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは2μm以上4μm以下である。ここで、「第一多孔質層及び第二多孔質層の膜厚の合計」とは、ポリオレフィン製多孔質膜基材の片面に第一多孔質層及び第二多孔質層を有する場合は第一多孔質層及び第二多孔質層の合計膜厚をいい、ポリオレフィン製多孔質膜基材の両面に第一多孔質層及び第二多孔質層を有する場合は両面の第一多孔質層及び第二多孔質層の膜厚の合計をいう。第一多孔質層及び第二多孔質層の膜厚の合計が1μm以上であると十分な耐熱破膜性が得られる。また、当該膜厚の合計が6μm以下であると十分な多孔構造が得られ電池特性が低下を防ぐことができる。また、コスト面でも有利となる。
[ポリオレフィン製多孔質膜基材]
本発明において、ポリオレフィン製多孔質膜基材としては、内部に空孔を有する多孔膜、不織布、または繊維状物からなる多孔膜シートなどが挙げられる。ポリオレフィン製多孔質膜基材を構成する樹脂としては、電気絶縁性であり、電気的に安定で、電解液にも安定である樹脂から構成されていることが好ましい。
また、シャットダウン機能を付与する観点から、用いる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましく、融点が200℃以下の熱可塑性樹脂がより好ましい。ここでのシャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、発電を停止させる機能のことである。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィンが挙げられ、多孔質膜基材はポリオレフィンを含むポリオレフィン製多孔質膜基材である。また、ポリオレフィン製多孔質膜基材は、融点が200℃以下であるポリオレフィンを含むポリオレフィン製多孔質膜基材であることがより好ましい。
ポリオレフィンとしては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、およびこれらを組み合わせた混合物などが挙げられる。ポリオレフィン製多孔質膜基材としては、例えばポリエチレンを90質量%以上含有する単層のポリオレフィン製多孔質膜基材、ポリエチレンとポリプロピレンからなる多層のポリオレフィン製多孔質膜基材などが挙げられる。
ポリオレフィン製多孔質膜基材の製造方法としては、例えばポリオレフィン系樹脂をシートにした後に延伸することで多孔質化する方法やポリオレフィン系樹脂を流動パラフィンなどの溶剤に溶解させてシートにした後に溶剤を抽出することで多孔質化する方法が挙げられる。
上記方法で得られたポリオレフィン製多孔質膜基材には、ポリオレフィン製多孔質膜基材と第一多孔質層との密着性の観点から表面処理を行ってもよい。
ポリオレフィン製多孔質膜基材の厚みは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。ポリオレフィン製多孔質膜基材の厚みが50μmより厚くなるとポリオレフィン製多孔質膜基材の内部抵抗が高くなる場合がある。また、ポリオレフィン製多孔質膜基材の厚みが3μmより薄くなると製造が困難になり、また十分な力学特性が得られない場合がある。
ポリオレフィン製多孔質膜基材の透気度は、50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下であることが好ましく、より好ましくは50秒/100cc以上500秒/100cc以下である。透気度が1,000秒/100ccよりも大きいと、十分なイオン移動性が得られず、電池特性が低下してしまう場合がある。透気度が50秒/100ccよりも小さい場合は、十分な力学特性が得られない場合がある。
[多孔性フィルム]
多孔性フィルムの落球破膜温度は280℃以上が好ましい。落球破膜温度は、一定荷重時に短絡する温度を意味し、耐熱性を評価する指標になる。落球破膜温度が280℃より低い場合、電池が異常発熱した際に、電池が短絡し、さらに発熱する場合がある。二次電池の耐熱性の付与の観点から、落球破膜温度は、300℃以上がより好ましく、さらに好ましくは350℃以上である。
多孔性フィルムのシャットダウン温度は140℃以下が好ましい。シャットダウン温度が140℃以下の場合、二次電池が高容量化、高出力化した際に、発熱開始温度が低下しても、シャットダウン機能が十分に作動することができる。シャットダウン温度は、二次電池が高容量化、高出力化した際に、発熱開始温度のさらなる低温化の観点から、130℃以下がより好ましい。
多孔性フィルムのシャットダウン温度とメルトダウン温度との差(シャットダウン温度−メルトダウン温度)(以下、単に「シャットダウン温度とメルトダウン温度との差」ということもある)は70℃以上が好ましい。上記温度差は、シャットダウン温度の低温化、メルトダウン温度の高温化のいずれでも達成することができる。
シャットダウン温度とメルトダウン温度との差が70℃以上の場合、発熱によって溶融することで多孔構造が閉鎖した後の完全溶融までの温度差が大きくなり、電池が短絡し、発熱を抑制することができる。短絡防止の観点から、シャットダウン温度とメルトダウン温度との差は100℃以上がより好ましい。
シャットダウン温度とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、発電を停止させる温度のことをいう。メルトダウン温度とは、シャットダウン温度以上に発熱した場合に、多孔性フィルムが溶融し、電池が短絡する温度のことをいう。なお、本発明におけるシャットダウン温度とメルトダウン温度は、実施例の項に記載の方法により、昇温しながら透気度を測定し、その透気度変化で評価することができる。
多孔性フィルムの透気度は、50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下であることが好ましく、より好ましくは50秒/100cc以上500秒/100cc以下である。透気度が50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下の場合、十分なイオン移動性、十分な電池特性、十分な力学特性が得られる。
[二次電池]
本発明の多孔性フィルムは、リチウムイオン電池等の二次電池用セパレータに好適に用いることができる。リチウムイオン電池は、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成となっている。
正極は、活物質、バインダー樹脂、および導電助剤からなる正極材が集電体上に積層されたものである。活物質としては、LiCoO、LiNiO、Li(NiCoMn)Oなどの層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnなどのスピネル型マンガン酸化物、およびLiFePOなどの鉄系化合物などが挙げられる。
バインダー樹脂としては、耐酸化性が高い樹脂を使用すればよい。具体的にはフッ素樹脂、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂などが挙げられる。
導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料が用いられている。
集電体としては、金属箔が好適であり、特にアルミニウム箔が用いられることが多い。
負極は、活物質およびバインダー樹脂からなる負極材が集電体上に積層されたものである。活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料、スズやシリコンなどのリチウム合金系材料、Liなどの金属材料、およびチタン酸リチウム(LiTi12)などが挙げられる。
バインダー樹脂としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂などが用いられる。
集電体としては、金属箔が好適であり、特に銅箔が用いられることが多い。
電解液は、二次電池の中で正極と負極との間でイオンを移動させる場となっており、電解質を有機溶媒にて溶解させた構成をしている。電解質としては、LiPF、LiBF、およびLiClOなどが挙げられるが、有機溶媒への溶解性、イオン電導度の観点からLiPFが好適に用いられている。
有機溶媒としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、およびスルホランなどが挙げられ、これらの有機溶媒を2種類以上混合して使用してもよい。
二次電池の作製方法としては、まず活物質と導電助剤をバインダー溶液中に分散して電極用塗布液を調製し、この塗布液を集電体上に塗工して、溶媒を乾燥させることで正極、負極がそれぞれ得られる。乾燥後の塗工膜の膜厚は50μm以上500μm以下とすることが好ましい。
得られた正極と負極の間に二次電池用セパレータを、それぞれの電極の活物質層と接するように配置し、アルミラミネートフィルム等の外装材に封入し、電解液を注入後、負極リードや安全弁を設置し、外装材を封止する。このようにして得られた二次電池は、耐熱破膜性が高く、かつ優れた電池特性を有し、また、低コストでの製造が可能となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
[測定方法]
(1)融点、ガラス転移温度
JIS K7121(2012)に準拠して、PerkinElmer製DSC(示差走査熱量分析装置)にて、異なる測定パンに6〜7mgの耐熱性樹脂および接着性樹脂をそれぞれ入れ測定用試料とし、以下の条件にて測定した。初めに昇温、冷却した後、2回目の昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を融点とした。測定温度範囲に吸熱ピークを有さない場合は融点を有さないものとした。ガラス転移温度は昇温、冷却した後の2回目の昇温時の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度とした。
昇温、冷却速度:±10℃/min
測定温度範囲:−20〜300℃
(2)電極との接着性
活物質がLi(Ni5/10Mn2/10Co3/10)O、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂、導電助剤がアセチレンブラックとグラファイトの正極(測定サイズ:15mm×100mm)と多孔性フィルムを、活物質と第二多孔質層が接触するように設置し、熱ロールプレス機にて0.5MPa、80℃、0.2m/分で熱プレスを行い、ピンセットを用いて手動で剥離させ、接着強度を下記4段階にて評価を行った。
同様に、活物質が黒鉛、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂、導電助剤がカーボンブラックの負極(測定サイズ:15mm×100mm)と多孔性フィルムとの接着強度も測定し、正極および負極のそれぞれの評価結果を統合した平均接着強度を接着強度として判定した。
・接着強度が優:強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が良:やや強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が可:弱い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が悪:極弱い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
(3)表面の多孔性(空孔割合)
多孔性フィルムの表面にイオンコーターを用いてイオンコートを行い、サンプルを作製した。得られたサンプルを、日立ハイテクノロジー社製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S4800を用いて加速電圧1.5kVにて、表面を撮影倍率2万倍で観察し、画像データを得た(スケールバーなどの表示がない、観察部のみの画像)。MVTec社製HALCON Ver.10.0を用いて画像解析を行い、空孔割合を算出した。
画像解析方法としては、まず256階調モノクロ画像に対して、11画素平均画像Aと3画素平均画像Bをそれぞれ生成し、画像B全体の面積(Area_all)を算出した。次に画像Bから画像Aを差として除去し、画像Cを生成し、輝度≧10となる領域Dを抽出した。抽出した領域Dを塊ごとに分割し、面積≧100となる領域Eを抽出した。その領域Eに対して、半径2.5画素の円形要素でクロージング処理した領域Fを生成し、横1×縦5画素の矩形要素でオープニング処理した領域Gを生成することで、縦サイズ<5の画素部を除去した。そして、領域Gを塊ごとに分割し、面積≧500となる領域Hを抽出することで、フィブリル領域を抽出した。
さらに画像Cにて画像≧5となる領域Iを抽出し、領域Iを塊ごとに分割し、面積≧300となる領域Jを抽出した。領域Jに対して、半径1.5画素の円形要素でオープニング処理した後、半径8.5画素の円形要素でクロージング処理した領域Kを生成し、領域Kに対して、面積≧200となる領域Lを抽出した。領域Lにおいて、面積≧4,000画素の暗部を明部で埋めた領域Mを生成することでフィブリル以外の未開孔部の領域を抽出した。
最後に、領域Hと領域Mの和領域Nを生成し、和領域Nの面積(Area_closed)を算出することで、未開孔部の面積を求めた。なお、空孔割合の計算は、以下の式により算出した。
空孔割合(面積%)=(Area_all−Area_closed)/Area_all×100
上記の方法にて、同じ多孔性フィルムの両面において10ヶ所ずつ測定し、その平均値の値を空孔割合とした。
(4)表面の凹凸性
多孔性フィルムを、10cm×10cmの大きさで任意の場所より切り出し、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製“VH−6000”)にセットし、スイングヘッドズームレンズ(キーエンス株式会社製“VH−ZST”)を倍率20倍にセットし照明を同軸落射に設定した。そのうえで、画質UPモードの解像度アップを選択し視野幅1.3cm×1.7cmの撮像を行った。
その後、マイクロスコープに付帯したソフト(キーエンス株式会社製“VH−6000通信ソフト”)にて計測・スケールの自走面積計測(粒子カウント)で“輝度”を選択し計測を実施した。次に抽出対象として“暗い領域”を選択し、“明るさムラ除去(強)”の画像を選択して、“しきい値”は0で2値化抽出を行った。
計測結果をテキストデータファイルで書き出した。同測定を、撮影場所を変更し無作為に10回を行った。テキストファイル内に記録された“総面積率”の値を凸部の面積比とし、“面積”の値を凸部の面積とした。
(5)落球破膜温度
50mm×50mmサイズの試料を切り出しサンプルとした。切り出したサンプルを真ん中にφ12mmの穴が開いた金属枠で固定した。φ12mmの孔部にφ10mmのタングステン球を置き、熱風オーブンにセットした。5℃/分で昇温を行い、タングステン球が落下した温度を各サンプルにつき5回測定して平均した温度を落球破膜温度とした。
(6)多孔質層の膜厚
ミクロトームにて多孔性フィルムからサンプル断面を切り出し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡にて観察して、その観察領域内において、最も高い点を選択し、多孔質層の底面(ポリオレフィン製多孔質膜基材側)から当該最も高い点までの距離を多孔質層の膜厚として計測した。100mm×100mmサイズのサンプルから任意の5箇所についてそれぞれ観察、選択、計測し平均した値を多孔質層の膜厚とした。
なお、計測した多孔質層の膜厚は、第一多孔質層の1層当たりの膜厚と第二多孔層の1層当たりの膜厚の合計膜厚である。
(7)シャットダウン温度、メルトダウン温度
多孔性フィルムを30℃の雰囲気中にさらして、5℃/分で昇温し、その間に膜の透気度を測定した。王研式透気抵抗度計による多孔性フィルムの透気度が最初に100,000秒/100cmを超える時の温度を、多孔性フィルムのシャットダウン温度と定義した。また、メルトダウン温度は、透気度が100,000秒/100cm以上となり、その後、最初に10秒/100cm以下になった時の温度を、多孔性フィルムのメルトダウン温度と定義した。なお、メルトダウン温度の測定の上限は250℃である。
多孔性フィルムの透気抵抗度は、王研式透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)を用いてJIS P8117(2009年)に従って測定した。
(8)透気度
王研式透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)を使用して、JIS P8117(2009年)に準拠して測定した。
(9)面積熱収縮率
50mm×50mmサイズの試料を切り出しサンプルとした。切り出したサンプルの長手方向の長さ(50mm)をLMD1(mm)、幅方向の長さ(50mm)をLTD1(mm)と表した。サンプルを150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間静置し加熱処理を行い、加熱処理後、放冷した。
オーブンから取り出したサンプルの長手方向および幅方向についてそれぞれ最も長さが短くなっている箇所の寸法を測定し、長手方向の長さをLMD2(mm)、幅方向の長さをLTD2(mm)と表した。面積熱収縮率は以下の式に基づいて算出した。
面積熱収縮率(%)=(LMD1×LTD1−LMD2×LTD2)/LMD1×LTD1×100
測定は各サンプルにつき5回実施して平均した。
(10)塗工液の粘度
塗工液の粘度μ(mPa・s)は、粘度計(BROOKFIELD社製コーンプレート型DV−I PRIME、コーンスピンドルCPA−52Z)を用い、回転数1.5rpmの条件にて、25℃での塗工液の粘度を測定した。
(11)サイクル特性
電池作製
正極シートは、正極活物質としてLi(Ni5/10Mn2/10Co3/10)Oを92質量部、正極導電助剤としてアセチレンブラックとグラファイトを2.5質量部ずつ、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部を、プラネタリーミキサーを用いてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させた正極スラリーを、アルミ箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した(塗布目付:9.5mg/cm)。
この正極シートを40mm×40mmに切り出した。この時、活物質層の付いていない集電用のタブ接着部が、前記活物質面の外側に5mm×5mmの大きさになるように切り出した。幅5mm、厚み0.1mmのアルミ製のタブをタブ接着部に超音波溶接した。
負極シートは、負極活物質として天然黒鉛98質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1質量部、負極結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて水中に分散させた負極スラリーを、銅箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した(塗布目付:5.5mg/cm)。
この負極シートを45mm×45mmに切り出した。この時、活物質層の付いていない集電用のタブ接着部が、前記活物質面の外側に5mm×5mmの大きさになるように切り出した。正極タブと同サイズの銅製のタブをタブ接着部に超音波溶接した。
次に、多孔性フィルムを55mm×55mmに切り出し、多孔性フィルムの両面に上記正極と負極を活物質層が多孔性フィルムを隔てるように重ね、正極塗布部が全て負極塗布部と対向するように配置して電極群を得た。1枚の90mm×200mmのアルミラミネートフィルムに上記正極・負極・多孔性フィルムを挟み込み、アルミラミネートフィルムの長辺を折り、アルミラミネートフィルムの長辺2辺を熱融着し、袋状とした。
ジエチルカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1モル/リットルとなるように溶解させ、電解液を作製した。袋状にしたアルミラミネートフィルムに電解液1.5gを注入し、減圧含浸させながらアルミラミネートフィルムの短辺部を熱融着させてラミネート型電池とした。
作製したラミネート型電池の放電レート特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率にて評価した。
充電条件が3C、4.25Vの定電流充電、放電条件が3C、2.7Vの定電流放電を500回行った。
〈放電容量維持率の算出〉
(500回後の放電容量)/(1回目の放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。上記ラミネート型電池を5個作製し、その平均値を放電容量維持率とした。
○:放電容量維持率が70%以上、△:放電容量維持率が60%以上70%未満、×:放電容量維持率が60%未満で判断した。
(実施例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに、ジアミン全量に対して85モル%に相当する2−クロロ−1,4−フェニレンジアミンと15モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた。そこへ酸ジクロライドとして、ジアミン全量に対して99モル%に相当する2−クロロテレフタロイルクロライドを添加し撹拌を行うことで芳香族ポリアミド樹脂を重合して重合溶液を得た。
次に、得られた重合溶液を酸ジクロライド全量に対して97モル%の炭酸リチウムで中和し、さらに15モル%のジエタノールアミン、25モル%のトリエタノールアミンにて中和し、芳香族ポリアミド樹脂濃度が10質量%である芳香族ポリアミド樹脂溶液を得た。
得られた芳香族ポリアミド樹脂はDSCで吸熱ピークトップを有さず、融点を有さない耐熱性樹脂であるといえる。また、得られた芳香族ポリアミドの対数粘度ηinhは4.8dl/gであった。
得られた芳香族ポリアミド樹脂溶液にN−メチル−2−ピロリドンを加えて攪拌機で1次分散して分散液を得た。また、アルミナ粒子(1次平均粒子径0.4μm)にN−メチル−2−ピロリドンを加えて攪拌機で1次分散した分散液を得た。1次分散したそれぞれの分散液を芳香族ポリアミド樹脂とアルミナ粒子の合計100質量部に対して、芳香族ポリアミド樹脂が8質量部、アルミナ粒子が92質量部になるように混合し、次いで、芳香族ポリアミド樹脂とアルミナ粒子の合計の固形分濃度が27質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを添加して混合液を得た。
その混合溶液を攪拌機でさらに1次分散し、さらにビーズミルを用いて2次分散を行った。2次分散ではφ0.5mmのジルコニア強化アルミナをビーズとして使用し、周速5m/sで1回分散した後、周速7m/sで1回分散し、周速10m/sで2回分散を行い得られた分散液を第一多孔質層の塗工液とした。第一多孔質層の塗工液の粘度は、1500mPa・sであった。
第二多孔質の塗工液は、フッ素樹脂(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、融点130℃)が8質量%、N−メチル−2−ピロリドンが85質量%、純水が7質量%になるように混合し、攪拌機で分散して作製した。得られた第二多孔質の塗工液の粘度は、60mPa・sであった。
ポリエチレン多孔質膜基材(厚み5μm、透気度120秒/100cc)の両面に第一多孔質層の塗工液をディップコートにて塗工した。N−メチル−2−ピロリドンを含んだ状態の第一多孔質層の塗工液の表面に、第二多孔質層の塗工液を外部混合方式の2流体スプレーノズル(ノズル径:1mm)を使用して、エア角度が60°、エア圧力が0.04MPaとなるようにスプレーコートで両面に塗布した。その後、水槽に浸漬し、N−メチル−2−ピロリドンが揮発するまで乾燥することで第一多孔質層及び第二多孔質層を形成し、多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
(実施例2)
第二多孔質の塗工液を、フッ素樹脂(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、融点130℃)が11質量%、N−メチル−2−ピロリドンが82質量%、純水が7質量%になるように混合し、攪拌機で分散して作製した。得られた第二多孔質の塗工液の粘度は、100mPa・sであった。それ以外は実施例1と同様にして多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で得られた第一多孔質層の塗工液をディップコートにて、ポリエチレン多孔質膜基材(厚み5μm、透気度120秒/100cc)の両面に塗工し、その後、水槽に浸漬し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥することで多孔質層を形成し、第二多孔質層を設けない多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
(比較例2)
第二多孔質層の塗工液をスプレーコートでポリエチレン多孔質膜基材(厚み5μm、透気度120秒/100cc)の両面に塗布した以外は実施例1と同様に多孔質層を形成し、第一多孔質層を設けない多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
(比較例3)
芳香族ポリアミド樹脂の含有量が8質量部となるように、実施例1で得られた芳香族ポリアミド樹脂溶液と、アルミナ粒子84質量部、フッ素樹脂(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、融点130℃)8質量部を混合し、芳香族ポリアミド樹脂の固形分濃度が27質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを添加して混合液を得た。
その混合溶液を攪拌機でさらに1次分散し、さらにビーズミルを用いて分散を行った。分散はφ0.5mmのジルコニア強化アルミナをビーズとして使用し、周速5m/sで1回分散した後、周速7m/sで1回分散し、周速10m/sで2回分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液をディップコートにて、ポリエチレン多孔質膜基材(厚み5μm、透気度120秒/100cc)の両面に塗工し、その後、水槽に浸漬し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥することで多孔質層を形成し、多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1で得られた第一多孔質層の塗工液と第二多孔質層の塗工液を2層ダイコートにて、ポリエチレン多孔質膜基材(厚み5μm、透気度120秒/100cc)の両面に塗工し、その後、水槽に浸漬し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥することで第一多孔質層と第二多孔質層を形成し、多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
(比較例5)
第二多孔質の塗工液を、フッ素樹脂(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、融点130℃)が18質量%、N−メチル−2−ピロリドンが75質量%、純水が7質量%になるように混合し、攪拌機で分散して作製した。得られた第二多孔質の塗工液の粘度は、200mPa・sであった。それ以外は実施例1と同様にして多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの特性の測定結果を表1に示す。
Figure 2021054075
表1から、実施例1、2では、電極との接着性、低温でのシャットダウン特性、高温時での寸法安定性および耐熱破膜性を有する二次電池用セパレータに適した多孔性フィルムが得られることが分かった。

Claims (8)

  1. ポリオレフィン製多孔質膜基材と、前記ポリオレフィン製多孔質膜基材の少なくとも片面に設けられた第一多孔質層と、前記第一多孔質層の表面に設けられた第二多孔質層を備える多孔性フィルムであって、
    前記第一多孔質層は耐熱性樹脂及び無機粒子を含み、
    前記耐熱性樹脂は融点が200℃以上であるか融点を有さず、
    前記第二多孔質層は接着性樹脂からなる多孔質凹凸構造を有する、多孔性フィルム。
  2. 前記多孔性フィルムの落球破膜温度が280℃以上である、請求項1に記載の多孔性フィルム。
  3. 前記多孔性フィルムのシャットダウン温度が140℃以下である、請求項1または2に記載の多孔性フィルム。
  4. 前記多孔性フィルムのシャットダウン温度とメルトダウン温度の差が70℃以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性フィルム。
  5. 前記耐熱性樹脂がポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルム。
  6. 前記接着性樹脂がフッ素樹脂、アクリル樹脂およびオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータ。
  8. 請求項7に記載の二次電池用セパレータを有する二次電池。
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