実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
本明細書で引用した刊行物、特許および特許出願は、そのまま本明細書の説明の一部を構成する。
本明細書において単数形で表される構成要素は、特段文脈で明らかに示されない限り、複数形を含むものとする。
実施例で説明される具体的な構成の一例を挙げるならば、一対の無線機の送受信において、送信機は偏波が伝搬周波数とは異なる周波数で回転する回転偏波を用いて、送受信機が共有するチャネルを測定するためのチャネル測定信号を送信し、受信機は受信波の偏波位相を測定する動作を行う。一対の無線機は、送信機と受信機の役割を交代しつつ上記動作を繰り返し,偏波位相の動的変化を予想する。予想した時間軸上の偏波位相の系列あるいはこれに基づいた情報を物理鍵として情報を秘匿して通信する。
その他の一例を挙げるならば、一対の無線機の送受信において、送信機は偏波が伝搬周波数とは異なる周波数で回転する回転偏波を用いて送受信機が情報信号を送信し、同時に回転偏波と直交する別の回転偏波で共有するチャネル測定信号を送信し、受信機はチャネル信号と情報信号を分離しチャネル信号により受信波の偏波位相を測定する動作を行う。一対の無線機は、送信機と受信機の役割を交代しつつ上記動作を繰り返し,偏波位相の動的変化を予想する。予想した時間軸上の偏波位相の系列あるいはこれに基づいた情報を物理鍵として情報を秘匿して通信する。
また、その他の一例を挙げるならば、上記のように偏波位相の動的変化を予想し,予想した時間軸上の偏波位相の差分の系列を物理鍵として情報を秘匿して通信する。
また、その他の一例を挙げるならば、上記のように偏波位相の動的変化を予想し,第一の無線機の送信機は予想した時間軸上の偏波位相の系列を物理鍵としてランダム系列の信号を秘匿して送信し,第二の無線機の受信機は予想した時間軸上の偏波位相の系列を物理鍵として受信信号から信号を復元する。第二の無線機の送信機は復元した信号を予想した時間軸上の偏波位相の系列を物理鍵として秘匿して送信し,第一の無線機の受信機は予想した時間軸上の偏波位相の系列を物理鍵として受信信号から信号を復元する。この復元した信号が送信に用いたランダム信号と一致した場合に,予想した時間軸上の偏波位相の系列を物理鍵として情報を秘匿して通信する。
<1.送受信機の回路構成>
実施例1による回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの例を、図1A〜図3Bを用いて説明する。図1Aは回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの無線機の構成を説明する図であり、図1Bは一対の該無線機が偏波位相を用いた物理鍵を共有する原理を説明する図である。ここで、回転偏波とは伝播周波数とは異なる周波数で偏波ベクトルが回転する電磁波の形態をいうものとする。本実施例では回転偏波は、伝播周波数と回転周波数を独立に制御でき、例えば回転周波数を伝播周波数の1/10、例えば100kHz程度にできるため、汎用の商用デジタル信号処理デバイスでも処理が可能である。
図1Aにおいて、物理鍵を準備するに際しては、チャネル測定信号発生回路4の出力に、第一の乗算回路5によってチャネル測定符号発生回路6の出力が掛け合わされる。掛け合わされた信号は、第一の切替器3の第一入力となる。
チャネル測定信号発生回路4の生成するチャネル測定信号は、回転偏波の位相変化を知ることができれば特に限定しない。例えば、チャネル測定信号発生回路4は単一周波数の信号を発生する。この信号は、偏波ベクトルを計測するのが目的であり、信号の強度が空間的に直交する受信機のアンテナによって計測できれば良いので単一の周波数でよい。しかし、実際には外来信号が存在するので、この単一周波数の信号が本来通信を行う相手の送信機から来たものかは判別が困難な場合がある。このため、チャネル測定符号発生回路6により、通信を行う一対の無線機で共有する情報(符号)でチャネル測定用のトーン信号を特徴付けることが望ましい。
情報信号を秘匿して通信する際には、情報信号発生回路1の出力が、第二の乗算回路2によって物理鍵生成回路19から出力される物理鍵符号と掛け合わされる。掛け合わされた信号は、第一の切替器3の第二入力となる。情報信号発生回路1は、通信したい所望の情報信号を生成する。実施例では、情報信号の周波数<回転偏波の回転周波数<搬送波信号の周波数とした。
第一の切替器3の出力が二分岐され、第一の分岐は第一の乗算回路23により送信回転偏波余弦波発生回路21の出力と掛け合わされる。第一の乗算回路23の出力は、第三の乗算回路26により送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバートされる。第三の乗算回路26の出力は第一の送受信切替回路41の第一端子と結合する。第一の切替器3の出力の第二の分岐は、第二の乗算回路24により送信回転偏波正弦波発生回路22の出力と掛け合わされる。第二の乗算回路24の出力は、第四の乗算回路27により、受信搬送波発生回路25の出力でアップコンバートされる。第四の乗算回路27の出力は、第二の送受信切替回路42の第一端子と結合する。
第一の送受信切替回路41の第二端子に、第一の送受信アンテナ51が結合し、第二の送受信切替回路42の第二端子に第二の送受信アンテナ52が結合している。第一の送受信切替回路41および第二の送受信切替回路42は、ベースバンド回路9からの信号で制御される。送信回転偏波余弦波発生回路21の出力と送信回転偏波正弦波発生回路22の出力は、cos波とsin波の関係となっており、第一の送受信アンテナ51と第二の送受信アンテナ52により、空間に偏波面が回転する電磁波が形成される。以上が送信系の説明である。
受信系では、第一の送受信切替回路41の第三端子の出力は、第五の乗算回路32によって受信搬送波発生回路31の出力がダウンコンバートされた後に三分岐される。第一の分岐は第七の乗算回路35によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力が掛け合わされ、第一の同相信号計測回路11に入力される。第一の同相信号計測回路11による計測結果が、物理鍵生成回路19に入力される。第二の分岐は第九の乗算回路38によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力が掛け合わされ、第一の直交信号計測回路13に入力される。第一の直交信号計測回路13による計測結果が、物理鍵生成回路19に入力される。第三の分岐は第三の乗算回路15によって、物理鍵生成回路19で生成された物理鍵に対する復元鍵が乗じられ、同相情報信号計測回路17に入力される。
第二の送受信切替回路42の第三端子の出力は、第六の乗算回路33によって受信搬送波発生回路31の出力がダウンコンバートされた後に三分岐される。第一の分岐は第八の乗算回路36によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力が掛け合わされ、第二の同相信号計測回路12に入力される。第二の同相信号計測回路12による計測結果が、物理鍵生成回路19に入力される。第二の分岐は第十の乗算回路39によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力が掛け合わされ、第二の直交信号計測回路14に入力される。第二の直交信号計測回路14による計測結果が、物理鍵生成回路19に入力される。第三の分岐は第四の乗算回路16によって、物理鍵生成回路19で生成された物理鍵に対する復元鍵が乗じられ、直交情報信号計測回路18に入力される。
以上の受信系では、第一および第二の送受信切替回路41,42の出力のうち、第一の分岐と第二の分岐の信号を用いて、回転偏波の位相変化あるいは偏波面の回転角度を検出して、物理鍵を生成する。第三の分岐の信号を用いて、暗号化された情報信号を物理鍵により複号化する。
なお、図1Aでは回路構成上、情報信号発生回路1とチャネル測定符号発生回路6と同相情報信号計測回路17と直交情報信号計測回路18の信号を、同じオーダーの周波数領域にしている。また、三の乗算回路15、第四の乗算回路16の入力は、偏波回転周波数以上の周波数を有し、情報信号周波数からみると高周波信号となる。このため、それらを直接合成すると「偏波回転周波数以上の周波数」領域における位相の違いに起因する信号の増減が発生する可能性がある。よって、信号を独立に処理して同相情報信号計測回路17と直交情報信号計測回路18に入力し、これらの出力を信号処理して、得られる情報信号の品質向上を図ることが望ましい。
<2.送受信機の動作シーケンス>
<2−1.予備ステップ;偏波回転の時系列変化の共有>
図2は図1Aの動作の一例を説明する流れ図である。図1Aの構成の無線機が第1局と第2局の2台で交信を行う例を説明する。第1局と第2局は同一構成とする。一連の動作は、ベースバンド回路9が制御するものとする。
初めに予備ステップとして、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機のうち、第一の無線機(第1局)は、第一の切替器3でチャネル測定符号発生回路6の出力が掛け合わされたチャネル測定信号発生回路4の出力を選択する。
選択したチャネル測定信号発生回路4の信号を二分岐して、一方に送信回転偏波余弦波発生回路21の出力を掛け合わせて、さらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後、第一の送受信切替回路41を介して第一の送受信アンテナ51から放射する。二分岐した他方に送信回転偏波正弦波発生回路22の出力を掛け合わせて、さらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後、第二の送受信切替回路42を介して第二の送受信アンテナ52から放射する。これにより、空間に回転偏波を形成することができる(S201)。
第二の無線機(第2局)は、第一の送受信アンテナ51と第二の送受信アンテナ52で、送信された回転偏波を受信する(S202)。受信された回転偏波の位相は、第1局と第2局の間の回転偏波の伝搬路の状態の影響を受ける。伝搬路の状態は、伝搬路中の反射面の状態や障害物の有無でも変化するために、受信された回転偏波の位相は時間的に変化するものと考えられ、その変化を外部から推測することは困難である。
第一の送受信アンテナ51の受信信号を第一の送受信切替回路41によって第五の乗算回路32の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートする。ダウンコンバートされた信号は三分岐される。予備ステップにおいては、そのうち以下の二分岐を用いる。
第一の分岐を第七の乗算回路35によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に第一の同相信号計測回路11に入力し、その計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。第二の分岐を第九の乗算回路38によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に第一の直交信号計測回路13に入力し、その計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。
第二の送受信アンテナ52の受信信号を第二の送受信切替回路42によって第六の乗算回路33の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートする。ダウンコンバートされた信号は三分岐される。
第一の分岐を第八の乗算回路36によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に第二の同相信号計測回路12に入力し、その計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。第二の分岐を第十の乗算回路39によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に第二の直交信号計測回路14に入力し、その計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。
以後,第一の無線機と第二の無線機は例えば一定間隔ごとに送受信の役割を交代して同様の動作を繰り返す。送受信の間には所定の待機時間(S203)を設ける。所望の繰り返し動作が終了した後,各無線機は得られた偏波位相の測定値の時系列により,他の無線機が得たであろう偏波位相の測定値の時系列を補間計算により推定する(S204)。
本実施例では、物理鍵生成回路19は入力された四つの情報信号より回転偏波の偏波角度を計算し、その計算結果から物理鍵符号を生成する。入力された四つの情報信号は、アンテナ51で受信した回転偏波の直交する2方向の偏波ベクトルと、アンテナ52で受信した回転偏波の直交する2方向の偏波ベクトルを示し、これらにより受信した回転偏波の偏波面の回転を知ることができる。アンテナ51とアンテナ52は、通常直交配置となっている。
物理鍵生成回路19は無線機が受信する偏波角度の変化を計算しており、各時刻の偏波角度を計算し蓄積し、それらが周期性を持つようになったかを診断する。しかるのちに,その周期性を持っている偏波角度の時間軸状の軌跡における他の無線機が得られているであろう偏波角度により暗号化を行う。本実施例では、一対の回転偏波無線機が偏波回転の時系列変化を共有し、共有した時系列偏波位相より物理鍵を生成する(S205)。そして、動的変化する偏波位相を鍵として情報を秘匿伝送する。
物理鍵の生成方法としては、回転偏波の一周期の変化パターンそのものから1つ鍵(符号)を作り、パターンが同じ期間は同じ鍵を使い続けるものがある。また、変化パターンの各タイミングで、そのタイミングの位相(偏波角度)に基づいた鍵を作ってもよい。後者では、鍵は送信タイミングによって変わるので、より秘匿度が高くなる。
<2−2.情報の通信>
次に第一ステップとして、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機のうち第一の無線機は、物理鍵生成回路19が生成した物理鍵符号が第二の乗算回路2によって掛け合わされた情報信号発生回路1の出力を、第一の切替器3で選択する。選択した信号を二分岐して、一方に送信回転偏波余弦波発生回路21の出力を掛け合わせて、さらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後、第一の送受信切替回路41を介して第一の送受信アンテナ51から放射する。他方に送信回転偏波正弦波発生回路22の出力を掛け合わせて、さらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後、第二の送受信切替回路42を介して第二の送受信アンテナ52から放射する(S206、S207)。以上により、空間に物理鍵符号で暗号化された情報信号による回転偏波を形成する。
第二の無線機は、秘匿化された情報信号を受信する(S208)。第一の送受信アンテナ51の受信信号を第一の送受信切替回路41によって第五の乗算回路32の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートした後に二分岐する。一方を第七の乗算回路35によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に、第一の同相信号計測回路11に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。他方を第九の乗算回路38によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に、第一の直交信号計測回路13に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。
第二の送受信アンテナ52の受信信号を第二の送受信切替回路42によって第六の乗算回路33の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートした後に二分岐する。一方を第八の乗算回路36によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に、第二の同相信号計測回路12に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。他方を第十の乗算回路39によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に、第二の直交信号計測回路14に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。物理鍵生成回路19は入力された四つの計測信号より受信信号の回転偏波が伝搬路から受ける影響(変化パターン)をモニタすることができる。
以後,第一の無線機と第二の無線機は送受信の役割を交代して同様の動作を繰り返す。所望の繰り返し動作が終了した後,各無線機は得られた受信信号の時系列と予備ステップで得られた偏波角度の時系列により生成された物理鍵を用いて、該受信信号の時系列より他の送信機が送信した情報信号の時系列を再現する(S209,S210)。
図1Bは回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機が、他の無線機が情報信号の送信時に用いた角度を推定する動作の一例を説明する図である。第1局(Master)と第2局(Slave)間で、所定タイミングでチャネル測定信号(cM)を送信(Tx)および受信(Rx)しているものとする。図中の横軸が時間を示しており、cMはチャネル測定符号が重畳されたチャネル測定信号の送受信タイミングを示す。図中のPAは一連の送受信動の開始を告げるために送信される従来技術のプリアンプルであり、無線システムを構成する全無線機が使用する固定のビット系列である。
図1Bにおいて、無線機が受信したタイミングが図下方に示される。プリアンプルの直後、第2局(Slave)がチャネル測定信号(cM)を送信し、第1局(Master)がこれを受信して回転偏波の位相を記録する。電波の伝搬遅延時間はゼロと仮定している。回転偏波の位相は、第一〜第四の同相信号計測回路11〜14で所定の基準値との比較で測定することができる。
図1Bの軌跡は、回転偏波のある偏波面が回転する角度を示している。送信側の無線機では、送信回転偏波余弦波発生回路21と送信回転偏波正弦波発生回路22によって偏波面を回転して送信しているので、無線チャネルの影響がないと仮定すれば、軌跡は正弦波または余弦波のパターンとなる。しかし、送受信機間に特有の無線チャネルが存在するために回転偏波の偏波面には位相遅れが発生し、軌跡は無線チャネルに依存したパターンとなっている。
チャネル測定信号の伝送が終了したら、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機は、自己が受信した信号から、偏波角度の時間軸上の軌跡を適当な補間計算で求める。図1B中、第1局(Master)と第2局(Slave)が受信した信号の軌跡を異なる形の四角マークで示し、推定した軌跡を丸マークで示す。求められた偏波角度の軌跡が連続的と判断できる場合は、互いに他の無線機が送信時に使用した物理鍵符号の元となる偏波角度を該軌跡より推定する。
該推定値を用いて、既に物理鍵生成回路の内部に得られている物理鍵符号で秘匿された情報信号の受信結果を、推定された偏波角度から生成される物理鍵符号の逆符号により復元する。情報信号の復元が終了した後直ちに該偏波角度の情報を消去する。求められた偏波角度の軌跡が連続的と判断できない場合は、情報の秘匿通信が実現されなかったとみなし、物理鍵生成回路の内部に得られている受信信号を破棄して予備ステップから第一ステップに至る処理を初めからやり直す。
以上のように、第1局(Master)と第2局(Slave)は、偏波角度の軌跡あるいは回転偏波の位相の変化情報を、物理鍵符号の元となる情報として共有することができる。無線チャネルは、原理的に第1局(Master)と第2局(Slave)のみが共有しうるものであるため、偏波角度の軌跡を第三者が知ることは困難である。このため、秘匿性の高い通信が可能となる。また、回転偏波の偏波が回転する周波数は搬送波の周波数よりも低いため、回転偏波の位相の変化情報を測定することは、一般的な回路でも比較的容易である。たとえば、搬送波の周波数は通常300MHzから3GHzの間であるが、回転偏波の回転周波数はその1/10程度にすることができる。なお、偏波角度の軌跡から物理鍵を生成する方法は、偏波角度そのものを用いてもよいし、あるいは偏波角度から任意の関数を用いて生成してもよく、特に限定されるものではない。
なお、図1Bで、マスターとスレイブのマークは同じカーブの上に載っているが、実際はマスターとスレイブでは、送信回転偏波余弦波発生回路21や送信回転偏波正弦波発生回路22の位相が同じではなく、アンテナの向きも同じではない場合には、横軸の時間が共通だとすると、マスターとスレイブのマークは横軸方向にずれる。図1Bでは、説明のため同一カーブの上にマークしている。いずれにしても、マスターとスレイブ間で同一のカーブを共有できるという点が重要である。
図3Aは、自無線機が得る偏波角度の時系列より他の無線機の偏波角度の時系列を求める補間計算の例を説明する図である。第1局(Master)と第2局(Slave)間で、(A)のタイミングでチャネル測定信号(cM)を送信(Tx)および受信(Rx)しているものとする。
図(B)は,等時間で一対の無線機が交互に送受信を繰り返す場合に単純な内挿計算で得られる偏波位相の時系列変化である。一方の無線機は白丸の時系列を得て,他の無線機は黒丸の時系列を得る。偏波角度の変化が滑らかであれば同図に示すように自無線機の時系列より他無線機の時系列を単純な補間計算により推定することができる。
図(C)は,無線機が一回のチャネル測定信号を受信する際に異なる近接する3点で偏波角度を測定する例である。この場合は一回のチャネル測定信号の受信において得られる複数時間の偏波角度より時間軸上の偏波角度の変化の方向を知ることができる。よって、内挿計算と外挿計算を併用することにより,他無線機が得る偏波角度の時系列をより正確に推定することが可能となる。
以上のように、夫々の無線機は物理鍵生成回路19の中で、得られた偏波角度変化の時間軸状の軌跡を計算している。該軌跡が、回転偏波の一周期で周期性を持ったと判断したとき、相手先の無線機も同じく回転偏波の一周期で周期性を持つ偏波角度変化の軌跡を得たと判断する。なお、両無線機は通信に用いる偏波回転の周波数を共有していることを前提にしている。偏波角度変化の軌跡上で自無線機が得ていない偏波角度を他無線機が得る偏波角度と推定し、該推定偏波角度を物理鍵として情報信号に重畳して互いに他の無線機に対して送信する。各無線機は自己が得た偏波角度を測定しているので、他の無線機が暗号化に用いた推定偏波角度を自己が得た偏波角度を用いて再現することで、物理鍵で秘匿された信号を再生可能となる。具体的な再現手法では、両無線機は同一の偏波角度変化の軌跡を共有するはずだが、その絶対時間(周期性を持つ軌跡の開始点)は不明なので、偏波角度軌跡を用いた相関計算を含むことになる。
<2−3.暗号鍵生成回路の具体例>
本実施例では、図1Aに示す同相信号計測回路11,12および直交信号計測回路13,14によって、チャネル測定信号発生回路4が用いられる「チャネル測定期間」に「受信偏波シフトの時系列特性」を得ることができる。図3Aでも説明したように、この特性は周期性をもつ偏波角度軌跡である。本実施例では、回転偏波の一周期分に相当する偏波シフトの系列を物理鍵として用いることを想定している。例えば回転偏波の一周期を時間軸上に8分割し、偏波位相の分解能を16段階とすれば、16進数が8個並ぶ系列が物理鍵として採用できる。その種類は16の8乗となる膨大な数になる。時間軸方向の分割数や分解能を増やせば、さらに組み合わせが増えて秘匿性が向上するが、計算の負担が増加する。
この軌跡を物理鍵生成回路19内のメモリに入れる。一例としては、回転偏波の一周期を分割した数、例えば8個のメモリである。このメモリに軌跡の値を離散化して取り込む。例えば、16値である。この離散値を物理鍵として情報信号発生回路1の出力(具体的にはデジタル信号)の1ビット或いは複数ビット毎に偏波角度軌跡を離散化した値の1メモリ分の値を掛けて送信する。相手方の無線機も同様の送信過程を行う。
上記のように本実施例では相手無線機が得る偏波角度を推定し、これを物理鍵として情報を暗号化して送信している。受信時は受信した回転偏波から得られる偏波角度を物理鍵として信号を複号化している。このため、物理鍵生成回路19が出力する暗号化のための偏波角度軌跡の離散値と、同相情報信号計測回路17および直交情報信号計測回路18によって得られる複号化のための偏波角度軌跡の離散値を共に夫々格納するメモリが必要となる。
このとき、前項に述べたように、受信信号の偏波角度軌跡と複号鍵の系列の時間軸が一致していない場合には、時間軸を一致させるためタイミング調整が必要である。例えば、物理鍵を両無線機で既知であるトレーニング信号に重畳する。一番単純な例は物理鍵及びトレーニング信号を8個の系列とすることである。トレーニング信号の内容は既知のため、両無線機が同じ偏波シフトの軌跡を共有していれば、物理鍵を8回シフトさせた8回の計算のいずれかで、他の無線機からのトレーニング信号を正しく復元できる。両無線機が偏波シフトの軌跡を共有していない場合は、トレーニング信号を復元できないので、その場合は情報信号の送信は見合わせ、再度暗号鍵の生成(予備ステップ)に戻る。
情報信号発生回路1の出力には通常プリアンプと呼ばれる単純な系列(例えば、オール1あるいは1と0の繰り返し)が含まれているので、図1の実施例では、上記のタイミング調整には、情報通信開始時にプリアンプをトレーニング信号に用いることを想定している。
図3Bは、ベースバンド回路9の他の例を示すブロック図である。この例では、上記のタイミング調整を予備ステップ(図2のS201〜S205のステップ)の間に実行可能とする例である。
図3Bのベースバンド回路9では、物理鍵生成回路19の出力がチャネル測定信号発生回路4に掛けられる経路が追加されている。具体的には、チャネル測定符号発生回路6の出力と切り替えて第一の乗算回路5によってチャネル測定信号発生回路4に掛け合わせるために、新たな切替器3000を挿入している。この構成によれば、図2の予備ステップのS205の処理の後、情報通信前に、切替器3000は物理鍵生成回路19の出力を第一の乗算回路5に入力し、物理鍵生成回路19の出力とチャネル測定信号発生回路4の出力を乗算して送信する。受信側では、暗号化されたチャネル測定信号発生回路4の出力を複号できるように調整する。以上の構成で、チャネル測定信号発生回路4の出力をトレーニング信号に用いることができるが、トレーニング信号は両無線機間で既知であれば特に制限はない。
物理鍵生成回路19は、偏波角度軌跡の離散値を共に夫々格納する第1メモリ群3001と第2メモリ群3002を備えている。第1メモリ群3001と第2メモリ群3002のメモリ数は、例えば8個等任意でよい。第1メモリ群3001は送信信号を暗号化する物理鍵として、例えば図1Bに示す偏波面の回転角度の軌跡を離散的に格納する。
第2メモリ群3002は、同じく図1Bに示す偏波面の回転角度の軌跡を離散的に格納する。第2メモリ群3002の軌跡を複号用の暗号鍵とするため、受信信号の第三の分岐に第三の乗算回路15により乗算する、また、第四の乗算回路16により乗算する。物理鍵生成回路19で生成された物理鍵に対する復元鍵が乗じられ、同相情報信号計測回路17と直交情報信号計測回路18に入力され、結果が演算回路3003に入力される。
演算回路3003では、複号結果とチャネル測定信号発生回路4の出力のスライディング相関を計算し、例えば加算した結果が最大になるように第2メモリ群3002の出力タイミングを調整する。相関計算はソフトウェアで行ってもよいし、ハードウェアで行ってもよい。具体的にはFPGA(Field Programmable Gate Allay)あるいはマイコンで計算は可能である。
本実施例に拠れば、無線チャネルが回転偏波に与える影響に関する情報を一対の無線機で共有する。このため、自己(第1)の無線機が測定して得られた偏波位相の時間軸上の離散値を用いて,他(第2)の無線機が測定して得られる偏波位相の時間軸上の異なるタイミングでの離散値を補間計算にて推定する。そして、自己(第1)の無線機は、推定した他(第2)の無線機が測定して得られる偏波位相の時間軸上の異なるタイミングでの離散値を用いて情報の暗号化を行い送信する。受信した他(第2)の無線機は自己が測定して得た偏波位相の時間軸上の離散値を用いて受信した信号を複号化する。
以上のように、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機が、互いに他の無線機が情報の秘匿のために用いた動的に変化する偏波角度を互いに交信することなく共有可能となる。よって、該動的変化する偏波角度を用いて生成された物理鍵を用いた情報の秘匿通信が可能となり、且つ該物理鍵を外部者は知ることも盗むこともできないので、情報信号のセキュアな伝送が実現できる。
実施例による回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の例を、図4〜図5を用いて説明する。本実施例は、回転偏波を用いて情報信号を秘匿して通信を行う一組の無線機が、チャネル測定信号と情報信号を同時に伝送可能とするものである。回転偏波は直交する2成分を持っており、それらは独立に用いると、チャネル測定信号と情報信号の両方を同時に送信することができる。
図4は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの無線機の構成を説明する図である。本実施例と実施例1の図1Aとの構成上の差異は送信系にあるので、送信系を中心に説明する。
チャネル測定信号発生回路4の出力に、第一の乗算回路5によってチャネル測定符号発生回路6の出力が掛け合わされた後二分岐される。二分岐された第一の分岐が第十一の乗算回路193に入力し、第十一の乗算回路193に結合する第二の送信回転偏波正弦波発生回路191と掛け合わされる。第十一の乗算回路193の出力が、負の重みをつけて第一の加算回路195の第一入力端子に入力される。第二の分岐が第十二の乗算回路194に入力し、第十二の乗算回路194に結合する第二の送信回転偏波余弦波発生回路192と掛け合わされる。第十二の乗算回路194の出力が、第二の加算回路196の第一入力端子に入力される。
情報信号発生回路1の出力が第二の乗算回路2に入力し、第二の乗算回路の出力が二分岐される。第一の分岐が第一の乗算回路23に入力し、第一の乗算回路23に結合する第一の送信回転偏波余弦波発生回路21と掛け合わされる。第一の乗算回路23の出力が、第一の加算回路195の第二入力端子に入力される。第二の分岐が第二の乗算回路24に入力し、第二の乗算回路24に結合する第一の送信回転偏波正弦波発生回路22と掛け合わされる。第二の乗算回路24の出力が、第二の加算回路196の第二入力端子に入力される。
第一の加算回路195の出力は、第三の乗算回路26により送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバートされる。第三の乗算回路26の出力は、第一の送受信切替回路41の第一端子と結合する。第二の加算回路196の出力は、第四の乗算回路27により送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバートされる。
第三の乗算回路26の出力は、第一の送受信切替回路41の第一端子と結合する。第四の乗算回路27の出力は、第二の送受信切替回路42の第一端子と結合する。第一の送受信切替回路41の第二端子に、第一の送受信アンテナ51が結合し、第二の送受信切替回路42の第二端子に第二の送受信アンテナ52が結合する。第一の送受信切替回路41および第二の送受信切替回路42は、ベースバンド回路9からの信号で制御される。
図5は図4の動作の一例を説明する流れ図である。実施例1の図2と比較すると、交信開始直後の予備ステップ(偏波回転の時系列変化の共有)は同様である。一対の該無線機が偏波位相を用いた物理鍵を共有する原理は、図1Bで説明したものと同様である。
ただし、実施例2の図4の回路構成では、チャネル測定信号と情報信号を同時に伝送可能であるため、物理鍵を共有した以降では、情報信号を偏波移送由来物理鍵で符号化し(S206)、秘匿化した情報信号と偏波移送計測用信号を同時に送信する(S507)。送信された信号は、同時に受信され(S508)、情報信号の復元と偏波位相時系列の変化の推定が並行して行われる(S509)。以降、S206〜S509を繰り返す。
実施例2において、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機が他の無線機が情報信号の送信時に用いた角度を推定する動作は、図1Bと同様である。
本実施例では情報信号の伝送とチャネル測定信号が空間的に直交して回転偏波で伝搬する。よって、第一の同相信号計測回路11および第一の直交信号計測回路13および第二の同相信号計測回路12および第二の直交信号計測回路14の出力を用いて、物理鍵生成回路19は他の無線機が送信する物理鍵で秘匿された情報信号とチャネル測定信号を同時に再生することができる。
図4に示すように、受信系の回路構成は図1Aと同様である。実施例1では、アンテナ51,52で受信された信号は、ダウンコンバートされた後それぞれ三分岐され、うち2つで情報信号が、うち1つでチャネル測定信号が時間的に異なるタイミングで処理される。本実施例では、アンテナ51,52で受信された信号は、ダウンコンバートされた後それぞれ三分岐され、うち2つで情報信号が、うち1つでチャネル測定信号が並行して処理される。
回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機は情報信号の受信と同時に、異なる時刻で得られた偏波角度の時間軸上の軌跡を適当な補間計算で求める。求められた偏波角度の軌跡が連続的と判断できる場合は、互いに他の無線機が送信時に使用した物理鍵符号の元となる偏波角度を該軌跡より推定して、該推定値を用いて既に物理鍵生成回路の内部に得られている物理鍵符号で秘匿された情報信号の受信結果を推定された偏波角度から生成される物理鍵符号の逆符号により復元する。
情報信号の復元が終了した後直ちに該偏波角度の情報を消去する。求められた偏波角度の軌跡が連続的と判断できない場合は、情報の秘匿通信が実現されなかったとみなし、物理鍵生成回路の内部に得られている受信信号を破棄して予備ステップから第一ステップに至る処理を初めからやり直す。
本実施例に拠れば、回転偏波を用いて情報信号を秘匿して通信を行う一組の無線機が、チャネル測定信号と情報信号を同時に伝送可能となる。よって、全体の通信時間の中で物理鍵を生成する時間を短縮できるので、偏波角度を用いた物理鍵によって情報を秘匿する通信システムのスループットを向上させる効果がある。
実施例による回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の例を図6および図2を用いて説明する。本実施例では、時間とともに変化する偏波位相をもとに物理鍵を生成する際に、時間変動する偏波位相を平均化して物理鍵を生成する。
図6は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。図1の実施例と異なる点は、以下のとおりである。
本実施例では、物理鍵生成回路19が生成する偏波位相を時系列的に蓄える送信FIFO(First In First Out Memory)61を備える。また、送信FIFO61に蓄えられた異なる連続した時系列の偏波位相を、あらかじめ定められた個数だけ蓄える送信偏波位相バンク62を備える。また、送信偏波位相バンク62の全内容を加算する送信偏波位相加算器63を新たに具備する。送信偏波位相加算器63の出力が、第二の乗算回路2に物理鍵生成回路の直接出力に代わって入力される。物理鍵生成回路19は、周期性を持っている偏波角度の時間軸状の軌跡における他の無線機が得られているであろう偏波角度を送信FIFO61に順次送っている。
また、物理鍵生成回路19が生成する偏波位相を入力して予め定められた時間だけ遅延させる偏波位相出力遅延回路64を備える。また、偏波位相出力遅延回路64の出力を時系列的に蓄える受信FIFO65を備える。また、受信FIFO65に蓄えられた異なる連続した時系列の偏波位相をあらかじめ定められた個数だけ蓄える受信偏波位相バンク66を備える。また、受信偏波位相バンク66の全内容を加算する受信偏波位相加算器67を新たに具備する。受信偏波位相加算器67の出力が第三の乗算回路15および第四の乗算回路16に物理鍵生成回路の直接出力に代わって入力される。物理鍵生成回路19は、周期性を持っている偏波角度の時間軸状の軌跡における自己の無線機が得るであろう偏波角度を受信FIFO65に順次送っている。
図6の動作の一例を説明する流れ図は図2と同様である。本実施例では情報信号の秘匿に用いる一般的に時間とともに変化する偏波位相をもとに生成される物理鍵に対して、時間変動を平均化することができる。よって、他の無線機が使用した偏波位相を推定する際に、補間計算の精度を大きく劣化させるパルス的な外来ノイズ等に起因する短時間の突発的な電波伝搬変動を吸収することができる。したがって、一対の無線機が他の無線機が使用した物理鍵の推定値の精度を上げることが可能となり、秘匿された情報信号の再生精度が向上するので、無線通信のスループット向上に効果がある。
実施例による回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の例を、図7を用いて説明する。
図7は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。図6の実施例と異なる点は、新たに同期信号発生回路8と、同期信号発生回路8の出力と第一の乗算回路5の出力を切り替えて第一の切替器3の入力とする第三の切替器7を具備することである。
同期信号発生回路8は通信を行う一対の無線機の時間軸上の同期を取るために使用し、一対の無線機が共有する特別な波形を生成する。例えばデジタル通信において予め決められた0/1の符号系列を伝送する波形である。
本実施例においては、図1乃至図6で説明した通信手順の前段階として、同期信号発生回路8の出力を第一の切替器3および第三の切替器7によって選択して送信する。
本実施例に拠れば、通信を行う一対の無線機が行う処理の時間軸を一致させることが可能となるので、互いに他の無線機が用いる物理鍵に用いた偏波位相の推定の程度を向上させることができるので、秘匿された情報信号の再生精度が向上する効果がある。
実施例による回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の例を、図8〜図9を用いて説明する。
図8は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。
図7の実施例と異なる点は、新たにランダム符号生成回路55と、ランダム符号生成回路55の出力と情報信号発生回路1の出力を切り替えて第二の乗算回路2の入力とする第三の切替器56を具備し、ランダム符号生成回路55の出力と同相情報信号計測回路17の出力および直交情報信号計測回路18の出力を比較して第三の切替器56を制御することである。
図9は図8の動作の一例を説明する流れ図である。初めに予備ステップとして、各無線機が物理鍵を生成する(S205)までの処理は、図2と同様である。なお、実施例4と同様に、最初に同期信号発生回路8からの同期信号の送受信を行うが、図9では省略している。
次に第一ステップとして、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機のうち第一の無線機は第三の切替器56でランダム符号生成回路55を選択し、第一の切替器3で該ランダム符号生成回路55の出力が掛け合わされた送信偏波位相加算器63の出力を選択する。選択した信号を二分岐して、一方に送信回転偏波余弦波発生回路21の出力を掛け合わせてさらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後、第一の送受信切替回路41を介して第一の送受信アンテナ51から放射する。他方に送信回転偏波正弦波発生回路22の出力を掛け合わせてさらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後、第二の送受信切替回路42を介して第二の送受信アンテナ52から放射する。これにより空間に
暗号化されたランダム符号による回転偏波を形成する(S901)。
第二の無線機は、第一の送受信アンテナ51の受信信号を第一の送受信切替回路41によって第五の乗算回路32の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートする。ダウンコンバートされた信号を二分岐して、一方を、第七の乗算回路35によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に、第一の同相信号計測回路11に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。他方を、第九の乗算回路38によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に、第一の直交信号計測回路13に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。
第二の送受信アンテナ52の受信信号を第二の送受信切替回路42によって第六の乗算回路33の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートする。ダウンコンバートされた信号を二分岐して、一方を、第八の乗算回路36によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に、第二の同相信号計測回路12に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。他方を、第十の乗算回路39によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に、第二の直交信号計測回路14に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。物理鍵生成回路19は入力された四つの計測信号より受信信号を作成する。以後,第一の無線機と第二の無線機は送受信の役割を交代して同様の動作を繰り返す。
所望の繰り返し動作が終了した後,各無線機は得られた受信信号の時系列と予備ステップで得られた偏波角度の時系列により、生成された物理鍵を用いて受信したランダム信号の複号化を行う(S904)。そして、受信信号の時系列より他の送信機が送信したランダム符号生成回路55の出力が掛け合わされたチャネル測定信号発生回路4の出力の時系列を再現する(S905)。
引き続き第二ステップとして、回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機のうち第一の無線機は、再現したランダム符号生成回路55の出力が掛け合わされたチャネル測定信号発生回路4の出力の時系列が元のランダム符号生成回路55の出力が掛け合わされたチャネル測定信号発生回路4の出力の時系列と一致しない場合は、予備ステップにもどり動作を再開する。
一致する場合は回転偏波を用いて通信を行う一組の無線機のうち第一の無線機は、第一の切替器3で物理鍵生成回路19が生成した物理鍵符号が掛け合わされて秘匿化された情報信号発生回路1の出力を選択する(S206)。選択した信号を二分岐して、一方に送信回転偏波余弦波発生回路21の出力を掛け合わせてさらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後第一の送受信切替回路41を介して第一の送受信アンテナ51から放射する。他方に送信回転偏波正弦波発生回路22の出力を掛け合わせてさらに送信搬送波発生回路25の出力でアップコンバート後第二の送受信切替回路42を介して第二の送受信アンテナ52から放射する。これにより空間に回転偏波を形成する(S207)。
第二の無線機は、第一の送受信アンテナ51の受信信号を第一の送受信切替回路41によって第五の乗算回路32の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートする。ダウンコンバート後に二分岐して、一方を第七の乗算回路35によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に、第一の同相信号計測回路11に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。他方を第九の乗算回路38によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に、第一の直交信号計測回路13に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。
第二の送受信アンテナ52の受信信号を第二の送受信切替回路42によって第六の乗算回路33の入力として、受信搬送波発生回路31の出力でダウンコンバートする。ダウンコンバートした後に二分岐して、一方を第八の乗算回路36によって受信回転偏波余弦波発生回路34の出力を掛け合わせた後に、第二の同相信号計測回路12に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。他方を第十の乗算回路39によって受信回転偏波正弦波発生回路37の出力を掛け合わせた後に、第二の直交信号計測回路14に入力しその計測結果を物理鍵生成回路19に入力する。物理鍵生成回路19は入力された四つの計測信号より受信信号の復元鍵を作成する(S208)。
以後,第一の無線機と第二の無線機は送受信の役割を交代して同様の動作を繰り返す.所望の繰り返し動作が終了した後,各無線機は得られた受信信号の時系列と予備ステップで得られた偏波角度の時系列により生成された物理鍵を用いて該受信信号の時系列より他の送信機が送信した情報信号の時系列を再現する(S209、S210)。
本実施例によれば、ランダム符号を用いることにより、一対の無線機が互いに互いの受信状況が確かに共有できているかの確認をすることができる。すなわち、図9で説明したように、情報信号の伝送の前にチャネル測定信号を用いて、互いに互いの受信状況を推定する。本実施例では、図1Bに示すような受信偏波シフトの時系列特性を得た後、外部者に対して漏洩しても問題ないダミー情報信号として、ランダム信号の相互送受信を行う。即ち、第1局が得られた「受信偏波シフトの時系列特性」を物理鍵としてランダム信号を秘匿化して第2局におくり、第2局は得られた「受信偏波シフトの時系列特性」より補間計算を用いて第1局が使用した物理鍵を推定して、該推定物理鍵を用いて受信信号からランダム信号を再現する。引き続き、再現したランダム信号を第2局は得られた「受信偏波シフトの時系列特性」を物理鍵として第1局に秘匿された信号(ランダム信号の再生信号)を送り、第1局は信号を受信し、続いて「チャネル測定信号」の送受信結果により得られている「受信偏波シフトの時系列特性」より補間計算を用いて第2局が使用した物理鍵を推定して、該推定物理鍵を用いて受信信号からランダム信号を再現する。
この再現ランダム信号と当初送信したランダム信号が一致した場合に、伝送すべき情報信号を第1局は第2局に送信する(S206以降)。
本実施例に拠れば、第1局および第2局を取り囲む電波環境の変化を常に監視し、同電波環境が静的とみなせ偏波シフトの物理鍵により情報が秘匿伝送可能な場合にのみ情報伝送を限定できるので、本発明の通信システムにおける情報伝送の信頼度向上に効果がある。
図10は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。本実施例では、時間とともに変化する偏波位相をもとに物理鍵を生成する際に、時間変動分を用いて物理鍵を生成する。
図1Aの実施例と異なる点は、時系列的に得られる物理鍵生成回路19が生成する偏波位相の差分をとることである。そのために、時系列的に変化する偏波位相をそのまま第一入力とし遅延回路46を介して第二入力とする送信差分計算回路45と、時系列的に変化する偏波位相をそのまま第一入力とし遅延回路47を介して第二入力とする受信差分計算回路48とを新たに具備する。
送信差分計算回路45の出力が第二の乗算回路2に物理鍵生成回路19の直接出力に代わって入力する。また、受信差分計算回路48の出力が第三の乗算回路15および第四の乗算回路16に物理鍵生成回路19の直接出力に代わって入力する。
本実施例では情報信号の秘匿に用いる一般的に時間とともに変化する偏波位相をもとに生成される物理鍵に対して、時間変動分を用いて物理鍵を生成するので、物理鍵の時間変動を大きくすることができ、無線機を取り囲む電波環境の動的変化が少ない場合でも、物理鍵の特定を困難にすることができ、無線通信の情報秘匿度を向上させる効果がある。
実施例による回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の例を、図11および図12を用いて説明する。本実施例は、情報信号送受信時の回転偏波の回転周波数とは別に、チャネル測定用信号送受信時の回転周波数を設定可能とするものである。
図11は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。図1Aの実施例と異なる点としては、受信回転偏波余弦波発生回路34および受信回転偏波正弦波発生回路37と並列してチャネル測定用受信回転偏波余弦波発生回路85およびチャネル測定用受信回転偏波正弦波発生回路87が設置されている。また、受信回転偏波余弦波発生回路34とチャネル測定用受信回転偏波余弦波発生回路85および受信回転偏波正弦波発生回路37とチャネル測定用受信回転偏波正弦波発生回路87が、それぞれベースバンド回路9で制御される第五の切替回路86および第六の切替回路88で選択される。
さらに、送信回転偏波余弦波発生回路21および送信回転偏波正弦波発生回路22と並列してチャネル測定用送信回転偏波余弦波発生回路81およびチャネル測定用送信回転偏波正弦波発生回路83が設置されている。また、送信回転偏波余弦波発生回路21とチャネル測定用送信回転偏波余弦波発生回路81および送信回転偏波正弦波発生回路22とチャネル測定用送信回転偏波正弦波発生回路83が、それぞれベースバンド回路9で制御される第三の切替回路82および第四の切替回路84で選択される。
チャネル測定信号発生回路4が第一の切替器3で選択される場合は、チャネル測定用送信回転偏波余弦波発生回路81とチャネル測定用送信回転偏波正弦波発生回路83およびチャネル測定用受信回転偏波余弦波発生回路85とチャネル測定用受信回転偏波正弦波発生回路87が、夫々第三の切替回路82と第四の切替回路84および第五の切替回路86および第六の切替回路88で選択される。
情報信号発生回路1が第一の切替器3で選択される場合は、送信回転偏波余弦波発生回路21と送信回転偏波正弦波発生回路22および受信回転偏波余弦波発生回路34と受信回転偏波正弦波発生回路37が、夫々第三の切替回路82と第四の切替回路84および第五の切替回路86および第六の切替回路88で選択される。チャネル測定用送信回転偏波余弦波発生回路81とチャネル測定用送信回転偏波正弦波発生回路83およびチャネル測定用受信回転偏波余弦波発生回路85とチャネル測定用受信回転偏波正弦波発生回路87の周波数は予め定めておく。
本実施例によると、情報信号を送受信するための回転偏波の回転周波数とは別個独立に、物理鍵の生成に用いるチャネル測定用信号の回転周波数を定めることができる。
図11の動作は基本的に図2で示したものと同様でよいが、チャネル測定用信号の送受信時と、情報信号の送受信時で、上記のように回転偏波正弦波および回転偏波余弦波の周波数を切り替える処理が必要となる。
本実施例に拠れば、無線システムを構成する無線機が有するデジタル信号処理能力に応じて、物理鍵を得るために偏波角度を測定する回転偏波の周波数を柔軟に設定できるので、無線通信における情報の秘匿度向上に効果がある。
図12は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。本実施例は、情報信号送受信時の回転偏波の回転周波数とは別に、チャネル測定用信号送受信時の回転周波数を柔軟に設定可能とするものである。
図11の実施例と異なる点は、チャネル測定用送信回転偏波余弦波発生回路81とチャネル測定用送信回転偏波正弦波発生回路83およびチャネル測定用受信回転偏波余弦波発生回路85とチャネル測定用受信回転偏波正弦波発生回路87に代えて、周波数が変更可能な機能を追加した点である。
すなわち、ベースバンド回路9の制御信号によって同一の周波数で変化する各々、チャネル測定用周波数可変送信回転偏波余弦波発生回路91とチャネル測定用周波数可変送信回転偏波正弦波発生回路93およびチャネル測定用周波数可変受信回転偏波余弦波発生回路95とチャネル測定用周波数可変受信回転偏波正弦波発生回路97が設置されることである。
本実施例では図11の実施例と比較して、物理鍵を生成するためのチャネル測定用の回転偏波の周波数を、無線システムの稼働中に柔軟に変更することが可能となる。本実施例に拠れば、種々の無線環境において無線機が有するデジタル信号処理能力に応じ、物理鍵を得るための回転偏波の周波数を柔軟に設定できるので、無線通信における情報の秘匿度向上の効果を増大することができる。
図13は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。本実施例は、情報信号送受信時の回転偏波の回転周波数とは別に、チャネル測定用信号送受信時の回転周波数を柔軟に設定可能とするものである。
図11の実施例と異なる点は、チャネル測定用送信回転偏波余弦波発生回路81とチャネル測定用送信回転偏波正弦波発生回路83およびチャネル測定用受信回転偏波余弦波発生回路85とチャネル測定用受信回転偏波正弦波発生回路87に代えて、夫々複数の異なる周波数の信号発生回路で構成される回路群とした点である。
すなわち、チャネル測定用周波数送信回転偏波余弦波発生回路群71とチャネル測定用周波数送信回転偏波正弦波発生回路群73およびチャネル測定用周波数受信回転偏波余弦波発生回路群75とチャネル測定用周波数受信回転偏波正弦波発生回路群77が設置されることである。
また、各群内の異なる周波数の信号発生回路を同一の周波数となるように夫々、チャネル測定用送信余弦回転偏波周波数切替器72とチャネル測定用送信正弦回転偏波周波数切替器74およびチャネル測定用受信余弦回転偏波周波数切替器76とチャネル測定用受信正弦回転偏波周波数切替器78によって切り替えている。
本実施例では図10の実施例と比較して、図11の実施例と同様に物理鍵を生成するためのチャネル測定用の回転偏波の周波数を無線システムの稼働中に柔軟に変更することが可能となる。本実施例に拠れば、種々の無線環境において無線機が有するデジタル信号処理能力に応じ、物理鍵を得るための回転偏波の周波数を柔軟に設定できるので、無線通信における情報の秘匿度向上の効果を増大することができる。
図14は回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムの他の無線機の構成を説明する図である。本実施例は、情報信号やチャネル測定用信号の送受信を同時に行いうるものである。
図1Aの実施例と異なる点は、第一の送受信切替回路41および第二の送受信切替回路42に代わって第一のサーキュレータ43および第二のサーキュレータ44が具備されることである。第一のサーキュレータ43および第二のサーキュレータ44の第一端子は、夫々第一の送受信アンテナ51と第二の送受信アンテナ52に結合する。第一のサーキュレータ43および第二のサーキュレータ44の第二端子は、夫々第五の乗算回路32と第六の乗算回路33に結合する。第一のサーキュレータ43および第二のサーキュレータ44の第三端子は、夫々第三の乗算回路26と第四の乗算回路27に結合する。
本実施例に拠れば、無線機が送信と受信を同時に行うことができるので、図1Aの実施例と比べて、物理鍵を生成するための偏波角度の時間軸上の分布を密にできる。このため、他の無線機の用いた偏波角度の推定値の精度を上げることができ、情報を秘匿して通信を行う無線システムのセキュア性を向上させる効果がある。
図15は、実施例の回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムを適用した、昇降機監視・制御システムの構成図の例である。
本実施例の昇降機監視・制御システム1100は、昇降機が設置される建物1101の内部を複数の昇降カゴ1111が昇降する。建物1101の内部の床部および天井部には、回転偏波機能を有する基地局回転偏波無線機1103と基地局2直交偏波一体アンテナ1102が結合し設置される。昇降カゴ1111の外部天井と外部床面には、其々端末局2直交偏波一体アンテナ1112が設置され、高周波ケーブル1114を用いて無線端末機1113に結合している。これらの無線機としては、実施例1〜10で説明したものを採用している。
基地局回転偏波無線機1103と無線端末機1113は、建物1101の内部を無線伝送媒体とするので、建物1101の内壁および昇降機の外壁により電磁波は多重反射を受け、複数の無線端末機1113が送信する電磁波が基地局回転偏波無線機1103に到達する際の偏波は同一ではない。また、昇降カゴ1111は建物に対してその相対位置を変えるので、基地局回転偏波無線機1103と無線端末機1113が無線通信を行う場合に、そのつど複数の無線端末機1113から基地局回転偏波無線機1103に到達する電磁波の偏波は変化する。
本実施例によれば、昇降機と固定設置の回転偏波無線機との間で、秘匿性の高い無線通信を行うことができる。
図16は、実施例の回転偏波を用いてセキュア通信を行う無線システムを適用した変電設備監視・制御システムの構成図の例である。
本実施例の変電設備監視・制御システム1200は、複数の変電機1201を具備し、同変電機1201には無線端末機1203と無線端末機2直交偏波一体アンテナ1202が結合し設置されている。複数の変電機1201の近傍に、無線基地局1211が設営され、無線基地局1211は回転偏波送受信を行う回転偏波無線機1213と回転偏波無線機2直交偏波一体アンテナ1212が結合し設置される。これらの無線機としては、実施例1〜10で説明したものを採用している。
変電機の寸法は数mのオーダーであり無線機が使用する電磁波の周波数である数百MHzから数GHzに対応する波長に比べ圧倒的に大きいため、該複数の変電機1201により電磁波は多重反射を受け、多重波干渉環境が形成される。したがって、各変電機1201に固定設置される無線端末機1203からの送信波は、異なる偏波で無線基地局1211に設置される回転偏波無線機1213に到達する。
本実施例によれば、回転偏波無線機1213と複数の無線端末機1203との間で、秘匿性の高い無線通信を行うことができる。
以上説明した実施例によれば、偏波位相の情報を用いて物理鍵を生成し,同鍵で情報を秘匿して通信を行う無線システムが実現できる。すなわち、一対の無線機が回転偏波を用いて通信を行い、自己の受信した偏波角度の時系列的変化から他の無線機が受信する偏波角度を推定し、同偏波角度を物理鍵として情報を秘匿する。回転偏波で通信を行う無線機を取り囲む環境の変化が回転偏波の周波数に比べて無視できる場合、即ち数マイクロ秒から数ミリ秒のオーダーで該環境が静的である場合、偏波位相を用いた物理鍵による情報のセキュア通信が可能となる。