JP2021006668A - 繊維集合体とその製造方法、および、前記繊維集合体を備えた複合体 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、これらの産業用途に合わせ様々な種類の繊維が繊維集合体の構成繊維として採用されているが、例えばポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂といった熱可塑性樹脂などを含有する繊維を構成繊維に採用した場合、例えば強度や耐溶剤性に劣ることがあり、十分な諸性能を有することで様々な産業用途へ好適に使用し得る、繊維集合体を提供するのが困難なことがあった。
この問題を解決可能な技術として、特表平6−506389号公報(特許文献1)には、ポリマー溶液にポリオレフィンやポリエステルなどを含んだ繊維を通過させることで、全表面にわたって当該ポリマー層を備える繊維(以降、表面改質繊維と称することがある)を製造する方法が開示されている。そして、特許文献1には本製造方法によって、全表面にわたってポリイミド層を備えたポリプロピレン繊維を製造できること、そして、当該表面改質繊維を用いてガス分離用複合膜を作製できることが開示されている。
また、表面改質繊維同士をバインダで一体化させて繊維集合体を調製した場合、調製した繊維集合体では図1に図示するように、間にポリイミド系樹脂(2)の層を介して繊維(1)同士が一体化しているため、繊維同士が一体化している部分に「繊維(1)−ポリイミド系樹脂(2)の層−バインダ(3)−ポリイミド系樹脂(2)の層−繊維(1)」と多数の界面が存在している。そして、当該界面の数が多いほど界面に剥離が発生する可能性は高まり、繊維同士の一体化している部分に破壊が発生し易い。その結果、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、繊維同士の一体化状態に変化が発生する恐れがあった。
このように従来技術を用いる限りでは、強度に優れた繊維集合体を提供するには限界があると考えられた。
「ポリイミド系樹脂と、前記ポリイミド系樹脂以外の有機樹脂を含有する繊維とを備える、繊維集合体であって、
前記ポリイミド系樹脂は、前記繊維の表面に被膜状に存在しており、
前記繊維集合体は、前記繊維間に前記ポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有している、
繊維集合体。」
である。
「前記繊維が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂のうち少なくとも一種類の有機樹脂を含有している、請求項1に記載の繊維集合体。」
である。
「請求項1〜請求項2に記載の繊維集合体を備えた、複合体。」
である。
「繊維集合体の製造方法であって、
(1)ポリイミド系樹脂以外の有機樹脂を含有し構成された繊維を備えていると共に、前記繊維同士が一体化している部分を有する、前駆繊維集合体を用意する工程、
(2)前記ポリイミド系樹脂の前駆体溶液あるいは前駆体分散液を、前記前駆繊維集合体へ付与する工程、
(3)前記前駆繊維集合体へ付与されている前記ポリイミド系樹脂の前駆体をイミド化する工程、
を備える、繊維集合体の製造方法。」
である。
具体的には、繊維同士が一体化してなる部分を有しているため、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、繊維の脱落が発生し難く、繊維同士の絡合状態に変化が発生し難い繊維集合体である。
また、間にポリイミド系樹脂の層を介することなく繊維同士が一体化しており、繊維同士の一体化している部分に破壊が発生し難い。そのため、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、繊維同士の一体化状態に変化が発生し難い繊維集合体である。
つまり、より強度に優れた繊維集合体を提供することができる。
以上から、本発明により、十分な諸性能を有することで様々な産業用途へ好適に使用し得る、繊維集合体を提供できる。
そのため、繊維同士が一体化してなる部分を有しているため、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、表面改質繊維の脱落が発生し難く、繊維同士の絡合状態に変化が発生し難い繊維集合体を製造できる。
また、間にポリイミド系樹脂の層を介することなく繊維同士が一体化しており、繊維同士の一体化している部分に破壊が発生し難い。そのため、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、繊維同士の一体化状態に変化が発生し難い繊維集合体を製造できる。
つまり、より強度に優れた繊維集合体を提供することができる。
以上から、本発明により、十分な諸性能を有することで様々な産業用途へ好適に使用し得る、繊維集合体を提供できる。
なお、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、室温雰囲気下(25℃、一気圧下)で測定を行った。また、各種測定結果あるいは算出結果は特に記載のない限り、測定あるいは算出によって求める値よりも一桁小さな値まで求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定あるいは算出によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
特に、芳香族ポリイミド系樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂などは耐溶剤性に優れていることから、これらのポリイミド系樹脂を採用することで耐溶剤性に優れ、十分な諸性能を有することで様々な産業用途へ好適に使用し得る、繊維集合体を提供でき好ましい。
また、繊維集合体が備えるポリイミド系樹脂の種類は、一種類であっても複数種類であってもよく、複数種類のポリイミド系樹脂が混合してなる混合樹脂を備えていても良い。
接着繊維は全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、複合繊維のような一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。接着繊維の熱融着性を発揮する成分の種類は適宜選択するが、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂などを使用できる。
繊維集合体を構成する繊維の質量に占める接着繊維の質量は、様々な産業用途に使用可能な繊維集合体を提供できるよう適宜調整する。具体的には、強度に優れる繊維集合体を提供できるよう、当該百分率は5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのが好ましく、20質量%であるのが最も好ましい。
ここでいう短繊維とは繊維長が100mm以下の繊維を指す。また、ここでいう長繊維とは繊維長が100mmよりも長い繊維を指し、繊維長が100mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な繊維(連続繊維)も長繊維とみなす。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c 直接法(C法)に則って測定された繊維長をいう。
また、直接紡糸法を用いて、紡糸溶液や溶融した樹脂を細径化して直接紡糸すると共に繊維を捕集して繊維ウェブまたは不織布を調製してもよい。
なお、繊維集合体が含有する繊維は一種類複であっても、複数種類であっても良い。
ポリイミド系樹脂は繊維の表面における少なくとも一部に存在していればよく、繊維における一体化している部分以外の場所に被膜状に存在している態様、および/または、繊維における一体化している部分に被膜状に存在している態様であることができる。なお、ポリイミド系樹脂による繊維表面の改質が効率よくなされるよう、繊維集合体の表面全体(具体的には、繊維と一体化部分の表面全体)にポリイミド系樹脂が被膜状に存在しているのが好ましい。なお、このような繊維集合体は後述で例示する繊維集合体の製造方法によって実現可能である。
(1)繊維集合体を厚さ方向に切断することで、繊維集合体の切断面に、繊維同士が一体化している部分の断面を複数形成した。なお、繊維集合体の切断面に、当該断面が露出している状態となった。
(2)当該断面に対し、電子顕微鏡を用いた分析に加え、XPS/ESCA (X線光電子分光分析)を用いた分析および/またはEDX(エネルギー分散型X線分析)を用いた分析を行った。
(3)分析を行った結果、いずれの当該断面においても繊維の表面の輪郭上にポリイミド系樹脂が検出されたと共に、繊維の表面の輪郭上にポリイミド系樹脂が不定形形状で存在しているのが確認された場合、繊維集合体を構成する繊維の表面にポリイミド系樹脂が被膜状に存在していると判断した。
(4)また、分析を行った結果、当該断面において一体化している部分を形成している、隣接して存在する両繊維の中心同士を最短距離で結ぶ直線上にポリイミドの存在が検出されなかった場合、測定した繊維集合体は繊維間にポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有していると判断した。
(5)上述の測定を行った結果、項目(3)および項目(4)を共に満足した場合、当該繊維集合体は、繊維の表面に被膜状に存在するポリイミド系樹脂を有すると共に、繊維間にポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有するものであると判断した。一方、項目(3)および項目(4)を共に満足しなかった場合、当該繊維集合体は上述の構成を満足する繊維集合体ではないと判断した。
本発明でいう、繊維(1)間にポリイミド系樹脂(2)を介することなく繊維(1)同士が一体化している部分とは、隣接するポリイミド系樹脂以外の有機樹脂を含有する繊維(1)同士が、図2に図示するようにバインダ(3)により接着一体化している部分、または、図3に図示するように繊維(1)表面を構成する樹脂(例えば、繊維接着の役割を担う低融点樹脂)により接着一体化している部分であって、繊維(1)の表面に被膜上に存在しているポリイミド系樹脂(2)と交わることなく、当該隣接して存在する繊維(1)の中心同士を最短距離で結ぶ直線(A)を形成できる状態を指す。
このように、特許文献1など従来技術にかかる表面改質繊維(1および2)同士をバインダ(3)で一体化させて繊維集合体を調製した場合、調製した繊維集合体では図1に図示するように、間にポリイミド系樹脂(2)の層を介して繊維(1)同士が一体化している。そのため、繊維(1)同士が一体化している部分に「繊維(1)−ポリイミド系樹脂(2)の層−バインダ(3)−ポリイミド系樹脂(3)の層−繊維(1)」と多数の界面が存在している。そして、当該界面の数が多いほど界面に剥離が発生する可能性は高まり、繊維(1)同士の一体化している部分に破壊が発生し易い。その結果、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、繊維同士の一体化状態に変化が発生する恐れがある。
このように、本発明にかかる繊維集合体では、間にポリイミド系樹脂(2)の層を介することなく繊維(1)同士が一体化しているため、繊維(1)同士が一体化している部分に「繊維(1)−バインダ(3)−繊維(1)」あるいは「繊維(1)−繊維(1)」と存在する界面の数が少ない。
そのため、繊維同士の一体化している部分に破壊が発生し難いため、取り扱い時や様々な産業用途に使用している時に、繊維同士の一体化状態に変化が発生し難い繊維集合体である。
つまり、より強度に優れる繊維集合体を提供することができる。
以上から、本発明により、十分な諸性能を有することで様々な産業用途へ好適に使用し得る、繊維集合体を提供できる。
例えば、空隙率は50〜99%であることができ、55〜97%であることができ、60〜95%であることができる。なお、本発明の「空隙率」は次の式から算出することができる。
P=[1−Mn/(t×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Mnは目付(g/m2)、tは厚さ(μm)、SGは構成繊維の比重(g/cm3)をそれぞれ表す。
例えば、通気度は1Cm3/cm2/sec〜100Cm3/cm2/secであることができ、5Cm3/cm2/sec〜90Cm3/cm2/secであることができ、15Cm3/cm2/sec〜80Cm3/cm2/secであることができる。なお、本発明の「通気度」は、JIS L 1096:1999(8.27.1 A法(フラジール法))に規定されている方法による測定値をいう。
(伸度の測定方法)
(1)測定対象から長方形の試料(短辺:50mm、長辺:200mm)を採取した。このとき、測定対象の生産方向が判明している場合には、当該生産方向と長辺方向が平行を成すようにして、試料を採取した。
(2)引張り試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン(登録商標)、TM−111−100)を使用し、つかみ間隔100mm、引張り速度50mm/min.の条件で、試料に破断が生じるまで長辺方向へ引張った。
(3)この時、次の式から得られる値を「伸度」とした。
L={(D−100)/100}×100
ここで、Lは伸度(単位:%)、Dは試料が破断した時のつかみ間隔の長さ(単位:mm)をそれぞれ意味する。このようにして、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(MD方向)の伸度(%)を測定した。
(4)前記試料の長辺方向と平行を成す方向に対し、短辺方向が平行を成すようにして測定対象から新たに長方形の試料(短辺:50mm、長辺:200mm)を採取した。
(5)上述した(4)の工程で採取した試料を(2)〜(3)の工程へ供することで、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(CD方向)の伸度(%)を測定した。
(強度の測定方法)
(1)測定対象から長方形の試料(短辺:50mm、長辺:200mm)を採取した。このとき、測定対象の生産方向が判明している場合には、当該生産方向と長辺方向が平行を成すようにして、試料を採取した。
(2)引張り試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン(登録商標)、TM−111−100)を使用し、つかみ間隔100mm、引張り速度50mm/min.の条件で、試料に破断が生じるまで長辺方向へ引張った。
(3)試料が破断するまでに測定される最大応力を「強度」とした。このようにして、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(MD方向)の強度(N/50mm)を測定した。
(4)前記試料の長辺方向と平行を成す方向に対し、短辺方向が平行を成すようにして測定対象から新たに長方形の試料(短辺:50mm、長辺:200mm)を採取した。
(5)上述した(4)の工程で採取した試料を(2)〜(3)の工程へ供することで、測定対象における試料の長辺方向と平行を成す方向(CD方向)の強度(N/50mm)を測定した。
(耐溶剤性の評価方法)
(1)測定対象から、一辺の長さが200mmの正方形状の試料を採取した。そして、試料における一方向(MD方向、測定対象の生産方向が判明している場合には、その生産方向)および前記一方向と垂直をなす方向(CD方向、測定対象の生産方向が判明している場合には、その生産方向と垂直をなす方向)の長さ(単位:mm)、MD方向およびCD方向の強度(単位:N/50mm)の各値を測定した。
(2)温度80℃のトルエンを500ml用意した。
(3)500mlの温度80℃のトルエン中に、試料を30分間浸漬した。そして、トルエン中から試料を取り出し、取り出した試料からトルエンを除去した。
(4)トルエンを除去した後の試料におけるMD方向およびCD方向の長さ(単位:mm)、MD方向およびCD方向の強度(単位:N/50mm)の各値を測定した。
(5)測定により得られた、トルエンを除去した後の試料におけるMD方向およびCD方向の長さ(単位:mm)の値を以下式へ代入し算出された値を、「MD方向ならびにCD方向の長さの変化百分率(単位:%)」とした。
MD方向ならびにCD方向の長さの変化百分率={|1−(B1〜2/A1〜2)|}×100
A1:浸漬処理前の試料における、MD方向の長さ(単位:mm)。
B1:浸漬処理しトルエンを除去した後の試料における、MD方向の長さ(単位:mm)。
A2:浸漬処理前の試料における、CD方向の長さ(単位:mm)。
B2:浸漬処理しトルエンを除去した後の試料における、CD方向の長さ(単位:mm)。
MD方向ならびにCD方向の強度の変化百分率={(B3〜4/A3〜4)}×100
A3:浸漬処理前の試料における、MD方向の強度(単位:N/50mm)。
B3:浸漬処理しトルエンを除去した後の試料における、MD方向の強度(単位:N/50mm)。
A4:浸漬処理前の試料における、CD方向の強度(単位:N/50mm)。
B4:浸漬処理しトルエンを除去した後の試料における、CD方向の強度(単位:N/50mm)。
また、膜構成樹脂中に繊維集合体を含んでいる複合膜とする、あるいは、別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層して積層体とするなど、繊維集合体を備えた複合体として様々な産業用途に使用してもよい。
本発明の繊維集合体の製造方法は、
(1)ポリイミド系樹脂以外の有機樹脂を含有し構成された繊維を備えていると共に、前記繊維同士が一体化している部分を有する、前駆繊維集合体を用意する工程、
(2)前記ポリイミド系樹脂の前駆体溶液あるいは前駆体分散液を、前記前駆繊維集合体へ付与する工程、
(3)前記前駆繊維集合体へ付与されている前記ポリイミド系樹脂の前駆体をイミド化する工程、
を備えている。
あるいは、繊維ウェブが接着繊維を含んでいる場合には、繊維ウェブを加熱することで接着繊維による繊維接着を行い、接着繊維表面を構成する接着成分により繊維同士を接着一体化した不織布を採用できる。
加熱方法は適宜選択でき、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する装置、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機、赤外線を照射し加熱できる装置などを用いた方法を採用できる。加熱装置による加熱温度は適宜選択するが、溶媒を揮発あるいは分解し揮発させ除去可能であると共に、前駆繊維集合体の構成繊維などの構成成分が意図せず分解や変性しない温度であるように適宜調整する。
なお、上述の加熱処理によって、あるいは、架橋剤などの添加剤と反応させることで、前駆繊維集合体の耐熱性を向上させたり不溶化させるなどして、前駆繊維集合体の物性を向上させてもよい。
ポリイミド系樹脂の前駆体溶液あるいは前駆体分散液を構成する、溶媒や分散媒の種類は適宜選択でき、水、NMP、DMAc、DMFなどを採用できる。ポリイミド系樹脂の前駆体溶液あるいは前駆体分散液の粘度や濃度などは、様々な産業用途に使用可能な繊維集合体を提供できるよう調整する。
ポリイミド系樹脂の前駆体溶液あるいは前駆体分散液を、前駆繊維集合体へ付与する方法は適宜選択できる。例えば、前駆繊維集合体の一方の主面あるいは両主面へ噴霧あるいは既知のコーティング方法(例えば、グラビアロールを用いたキスコーティング法、ダイコーティング法など)を用いて担持する方法や、前駆繊維集合体を浸漬する方法などを採用できる。なお、付与量ならびに付与する際の温度や湿度の条件などは、様々な産業用途に使用可能な繊維集合体を提供できるよう調整する。
特に、ポリイミド系樹脂の前駆体がイミド化する温度以上であり、繊維集合体の構成繊維における骨格をなす樹脂の融点および/または軟化点よりも低い温度の範囲で、熱処理を施すのが好ましい。本温度範囲で熱処理を施すことによって、繊維集合体を構成する繊維同士の一体化状態に変化が発生するのを防止して、繊維の表面に被膜状に存在するポリイミド系樹脂を形成でき好ましい。
以上の製造方法によって、本発明にかかる構成を満足する繊維集合体を製造できる。
また、膜構成樹脂中に繊維集合体を含んでいる複合膜とする、あるいは、別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層して積層体とするなど、繊維集合体を備えた複合体を調製する工程へ供し、複合体を調製してもよい。
芯成分がポリプロピレン(融点:168℃)からなり、鞘成分がポリエチレン(融点:135℃)からなる芯鞘型複合繊維(繊維径:7.4μm、繊維長:5mm)のみを分散媒に分散させてスラリーを形成した後、湿式抄造することで繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを無加圧下、温度140℃に設定した熱風循環式熱処理機へ供することで、乾燥させると同時に芯鞘型複合繊維の鞘成分を融解させ繊維接着させた。
このようにして、繊維同士が一体化している部分を有している前駆繊維集合体Aを製造した。
なお、比較例1ではこのようにして調製した前駆繊維集合体Aを、繊維集合体とみなした。
比較例1で調製した前駆繊維集合体Aを無加圧下、温度150℃に設定した熱風循環式熱処理機へ30分間供した。
このようにして、繊維同士が一体化している部分を有している前駆繊維集合体Bを製造した。
なお、比較例2ではこのようにして調製した前駆繊維集合体Bを、繊維集合体とみなした。
アクリル系樹脂のエマルジョンバインダ(固形分濃度:5質量%)中に、比較例1で調製した前駆繊維集合体Aを浸漬することで、前駆繊維集合体Aにアクリル系樹脂のエマルジョンバインダを含ませた。
その後、アクリル系樹脂のエマルジョンバインダを含ませた前駆繊維集合体Aを無加圧下、温度150℃に設定した熱風循環式熱処理機へ30分間供することで、乾燥させると同時に前駆繊維集合体中に存在するアクリル系樹脂を軟化させ構成繊維に付着させて、繊維集合体を製造した。
このようにして製造した繊維集合体は、繊維間に前記アクリル系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有していると共に、繊維表面にアクリル系樹脂が被膜状に存在してなるものであった。
ポリイミド系樹脂の前駆体であるポリアミック酸の水溶液(商品名:ユピア−LB[登録商標]、宇部興産株式会社製、固形分濃度:18.0±1.0質量%[測定条件:350℃、30分]、150℃以上の温度条件下に存在することによってポリイミド系樹脂となるポリアミック酸を含む)中に、比較例1で調製した前駆繊維集合体Aを浸漬することで、前駆繊維集合体Aにポリアミック酸の水溶液を含ませた。
その後、ポリアミック酸の水溶液を含ませた前駆繊維集合体Aを無加圧下、温度150℃(前駆繊維集合体Aの構成繊維における、骨格をなすポリプロピレンの融点および軟化点よりも低い温度)に設定した熱風循環式熱処理機へ30分間供することで、乾燥させると同時に前駆繊維集合体A中に存在するポリアミック酸をイミド化することでポリイミド系樹脂にして構成繊維に付着させて、繊維集合体を製造した。
このようにして製造した繊維集合体は、繊維間に前記ポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有していると共に、繊維表面にポリイミド系樹脂が被膜状 に存在してなるものであった。
浸漬により前駆繊維集合体Aに含ませるポリアミック酸の水溶液の量を増やしたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維集合体を製造した。
このようにして製造した繊維集合体は、繊維間に前記ポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有していると共に、繊維表面にポリイミド系樹脂が被膜状に存在してなるものであった。
芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)からなり、鞘成分が低融点ポリエチレンテレフタレート(融点:110℃)からなる芯鞘型複合繊維(繊維径:14μm、繊維長:5mm)のみを分散媒に分散させてスラリーを形成した後、湿式抄造することで繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを無加圧下、温度150℃に設定した熱風循環式熱処理機へ供することで、乾燥させると同時に芯鞘型複合繊維の鞘成分を融解させ繊維接着させた。
このようにして、繊維同士が一体化している部分を有している前駆繊維集合体Cを製造した。
次いで、前駆繊維集合体Cを無加圧下、温度150℃に設定した熱風循環式熱処理機へ30分間供した。
なお、比較例4ではこのように熱処理した前駆繊維集合体Cを、繊維集合体とみなした。
比較例1で調製した前駆繊維集合体Aの代わりに比較例4で調製した前駆繊維集合体Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維集合体を製造した。
このようにして製造した繊維集合体は、繊維間に前記ポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有していると共に、繊維表面にポリイミド系樹脂が被膜状に存在してなるものであった。
未延伸のポリオレフィンサルファイド繊維(融点:285℃、繊維径:17μm、繊維長:6mm)と延伸されたポリオレフィンサルファイド繊維(融点:285℃、繊維径:10μm、繊維長:6mm)を混合したスラリーを形成した後、湿式抄造することで繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブを無加圧下、温度150℃に設定した熱風循環式熱処理機へ供することで、乾燥させると同時に未延伸のポリオレフィンサルファイド繊維を軟化させ繊維接着させた。
このようにして、繊維同士が一体化している部分を有している前駆繊維集合体Dを製造した。
次いで、前駆繊維集合体Dを無加圧下、温度150℃に設定した熱風循環式熱処理機へ30分間供した。
なお、比較例5ではこのように熱処理した前駆繊維集合体Dを、繊維集合体とみなした。
比較例1で調製した前駆繊維集合体Aの代わりに比較例5で調製した前駆繊維集合体Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維集合体を製造した。
このようにして製造した繊維集合体は、繊維間に前記ポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有していると共に、繊維表面にポリイミド系樹脂が被膜状に存在してなるものであった。
比較例1で調製した前駆繊維集合体Aを無加圧下、温度200℃に設定した熱風循環式熱処理機へ30分間供した。加熱した後の前駆繊維集合体Aは、構成繊維が溶融して繊維集合体の形状が大きく変形した。
この結果から、本発明にかかる繊維集合体を製造するためには、繊維集合体の構成繊維における骨格をなす樹脂の融点(ポリプロピレンの融点:168℃)よりも低い温度の範囲で、熱処理を施すのが好ましいことが判明した。
そして、表1において構成を満たしていない項目については「−」印を記載した。また、表1において「PO」はポリオレフィン系樹脂。「PET」はポリエステル系樹脂、「PPS」はポリフェニレンサルファイド系樹脂、「Ac」はアクリル系樹脂、「PI」はポリイミド系樹脂を意味する。
なお、比較例3と実施例1を比較した結果から、繊維の表面にポリイミド系樹脂が被膜状に存在していることで、より長さの変化百分率が低く、より強度の変化百分率が高い、耐溶剤性に優れる繊維集合体を提供できたことが判明した。
2:ポリイミド系樹脂
3:バインダ
A:繊維の中心同士を最短距離で結ぶ直線
Claims (4)
- ポリイミド系樹脂と、前記ポリイミド系樹脂以外の有機樹脂を含有する繊維とを備える、繊維集合体であって、
前記ポリイミド系樹脂は、前記繊維の表面に被膜状に存在しており、
前記繊維集合体は、前記繊維間に前記ポリイミド系樹脂を介することなく繊維同士が一体化している部分を有している、
繊維集合体。
- 前記繊維が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂のうち少なくとも一種類の有機樹脂を含有している、請求項1に記載の繊維集合体。
- 請求項1〜請求項2に記載の繊維集合体を備えた、複合体。
- 繊維集合体の製造方法であって、
(1)ポリイミド系樹脂以外の有機樹脂を含有し構成された繊維を備えていると共に、前記繊維同士が一体化している部分を有する、前駆繊維集合体を用意する工程、
(2)前記ポリイミド系樹脂の前駆体溶液あるいは前駆体分散液を、前記前駆繊維集合体へ付与する工程、
(3)前記前駆繊維集合体へ付与されている前記ポリイミド系樹脂の前駆体をイミド化する工程、
を備える、繊維集合体の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2019120720A Active JP7323353B2 (ja) | 2019-06-28 | 2019-06-28 | 繊維集合体とその製造方法、および、前記繊維集合体を備えた複合体 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP7323353B2 (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0138903B2 (ja) * | 1983-10-31 | 1989-08-17 | Kureha Seni Kk | |
JPH1037054A (ja) * | 1996-07-19 | 1998-02-10 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 回路基板用基材とプリプレグ及びそれを用いたプリント回路基板 |
JP2004324007A (ja) * | 2003-04-24 | 2004-11-18 | Unitika Ltd | ポリイミド繊維用処理剤、それで処理されたポリイミド繊維、不織布及び複合材料 |
-
2019
- 2019-06-28 JP JP2019120720A patent/JP7323353B2/ja active Active
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0138903B2 (ja) * | 1983-10-31 | 1989-08-17 | Kureha Seni Kk | |
JPH1037054A (ja) * | 1996-07-19 | 1998-02-10 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 回路基板用基材とプリプレグ及びそれを用いたプリント回路基板 |
JP2004324007A (ja) * | 2003-04-24 | 2004-11-18 | Unitika Ltd | ポリイミド繊維用処理剤、それで処理されたポリイミド繊維、不織布及び複合材料 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP7323353B2 (ja) | 2023-08-08 |
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