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JP2020186318A - 磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルム - Google Patents

磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルム Download PDF

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JP2020186318A JP2019091927A JP2019091927A JP2020186318A JP 2020186318 A JP2020186318 A JP 2020186318A JP 2019091927 A JP2019091927 A JP 2019091927A JP 2019091927 A JP2019091927 A JP 2019091927A JP 2020186318 A JP2020186318 A JP 2020186318A
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学 三田村
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Wataru Yokoyama
渉 横山
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Abstract

【課題】芳香族ポリアミドフィルムを支持体とする磁気テープの長さがカートリッジ1巻あたり1,000m以上になっても高温高湿下で長期保存した際の寸度安定性に優れ、リール芯側でのテープ幅変化を抑制し、且つ走行耐久性に優れた磁気テープに最適な芳香族ポリアミドフィルムを提供すること。【解決手段】60℃、90%RH雰囲気下で10日放置後のフィルム幅方向の寸法変化量が500ppm以下であり、L値が40以上50以下であり、厚みが2μm以上15μm以下であることを特徴とする磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムとする。【選択図】なし

Description

本発明は、高温高湿下での寸度安定性に優れ、数TB級の高記録容量が必要とされる磁気テープ用途に最適な芳香族ポリアミドフィルムに関する。
近年、テラバイト級の情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となる一方、それらを記録、再生および保存するための高度な技術が要求されるようになってきた。記録媒体、再生媒体には、フレキシブルディスク、磁気ドラム、ハードディスクおよび磁気テープ(以下、本発明の磁気記録媒体とも称する)が挙げられるが、特に、磁気テープは1巻あたりの記録容量が大きく、ハードディスク等と比較して管理コストが安価なためデータバックアップ用、アーカイブ用途としてその役割を担うところが大きい。また、ビッグデータの取り扱いにより、磁気テープの使用用途の広がりによる幅広い環境条件下(特に、高温高湿条件下など)でのデータ保存に対する信頼性、更に高速での繰り返し使用による多数回走行におけるデータの安定した記録、読み出し等の性能に対する信頼性なども従来に増して要求される。
従来からデジタルデータ記録方式に用いられているコンピュータ用磁気テープは、記録再生システム毎に決められており、所謂D8型、DLT型、あるいはDDS型対応の磁気テープが知られている。そしてこれらの磁気テープは、非磁性支持体上に強磁性粉末、及び結合剤を含む磁性層が少なくとも設けられており、また他方の側には、巻き乱れの防止や良好な走行耐久性を保つためにバックコート層が設けられている。また、磁性層の厚み損失による再生出力の低下を改良するために、非磁性支持体上に無機質粉末を結合剤に分散してなる下層非磁性層と、該非磁性層が湿潤状態にあるうちに強磁性粉末を結合剤に分散してなる厚みが1.0μm以下と薄い上層磁性層を設けた磁気記録媒体が開示されている。
ところで、磁気テープは、一般に各層の塗布液を調製する工程、得られた塗布液を非磁性支持体上に塗布する工程、乾燥工程、カレンダー処理(平滑化処理)工程、所定の寸法に裁断する加工工程、そして得られたテープをカートリッジに巻き込む包装工程を経て製造される。そして、塗布工程、乾燥工程、あるいはカレンダー処理工程においては、原反ロールから引き出されたフィルム(長尺状支持体)の処理がその処理工程に応じて一定の張力(例えば、塗布工程や乾燥工程では、5kg/m前後の張力)下で実施されるため、フィルムが長手方向に伸ばされ易く、また製造後時間の経過と共に、カートリッジに巻き込まれた磁気テープが徐々に収縮して巻き締まりが生じ、テープが変形し易いとの問題がある。このような問題を解決する為に、特許文献1、2及び3では、非磁性支持体としてPET、PENと比較して高強度ゆえに薄手化・長尺化が可能な芳香族ポリアミドフィルムを用い、フィルム長手方向、幅方向及び厚み方向の熱膨張係数や湿度膨張係数に代表される可逆的な寸法変化を抑制することが提案されている。
特開2004−67872号公報 特開平9−71669号公報 特開2005−846968号公報
しかし、更なるデータストレージシステムの高容量化(数TB級)及び幅広い環境条件下での保存へのニーズに対して、支持体に芳香族ポリアミドフィルムを使用して磁気テープを薄手化しカートリッジ1巻中のテープ長さを更に長く巻いた場合、さらなる課題が顕在化した。特に高温高湿環境下で1巻のテープ長さが1,000mを超えるカートリッジを保管した際、カートリッジリールの芯側で厚み方向に面圧が加わり、テープ幅の変化が大きくなるため、サーボ特性等が著しく劣る問題が顕在化した。原因解析の結果、芳香族ポリアミドは、PET、PENと比べると可逆的な寸法安定性には優れるが、高温高湿下でカートリッジリールに巻いた状態で長期保存した場合、PET、PENよりも吸湿性が高い為、分子間に水分子が入り込むことで寸法変化しやすい性質(クリープ性)を有することを見出した。即ち、芳香族ポリアミドフィルムを支持体とする磁気テープは、従来よりも長く巻かれてカートリッジリール芯側に掛かる面圧が高くなった場合、吸湿性及び抗張力性の影響で寸法変形量が大きくなり、その結果、テープ幅方向に広がり、サーボ特性が劣る課題を生じた。
本発明の目的は、上記の課題を克服し、例えば芳香族ポリアミドフィルムを支持体とする磁気テープの長さがカートリッジ1巻あたり1,000m以上になっても高温高湿下で長期保存した際の寸度安定性に優れ、リール芯側でのテープ幅変化を抑制し、且つ走行耐久性に優れた磁気テープに最適な芳香族ポリアミドフィルムを提供することにある。
かかる問題点を解決するために、本発明は、以下の構成からなる。
(1)60℃、90%RH雰囲気下で10日放置後のフィルム幅方向の寸法変化量が500ppm以下であり、L値が40以上50以下であり、厚みが2μm以上15μm以下であることを特徴とする磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルム。
(2)上記(1)に記載の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムを巻き取ってなる、幅1,000mm以上、長さ1,000m以上である磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムロール。
(3)溶媒の含有量が5質量%未満である芳香族ポリアミドシートの表面温度を270℃以上の状態で3秒以上保持する熱処理を施す、上記(1)に記載の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
(4)上記(1)に記載の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも片面に磁性層を形成してなる磁気記録媒体。
本発明の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムを適用した磁気テープカートリッジは、芳香族ポリアミドを支持体とするテープの長さがカートリッジ1巻あたり1,000m以上になっても、高温高湿環境下でのリール芯側でのテープ幅変化を抑制し、寸度安定性に優れ且つ巻き取り特性に優れたものとなった。
本発明の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルム(以下、単に芳香族ポリアミドフィルムということがある)は、構成するポリマーが芳香族ポリアミドであるため、種々の特性を満足させることができる。ここで、芳香族ポリアミドとしては、例えば、次の化学式(1)及び/又は化学式(2)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
Figure 2020186318
Figure 2020186318
ここで、Ar、Ar、Arの基としては、例えば、次の化学式(3)で表されるもの等が挙げられる。
Figure 2020186318
また、上記X、Yの基は、−O−、−CH−、−CO−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−等から選ばれるが、これらに限定されるものではない。更に、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ、湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めていることが好ましい。ここでいうパラ配向性とは、芳香環上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸又は平行にある状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、フィルムの剛性及び耐熱性が不十分となる場合がある。更に、芳香族ポリアミドが次の化学式(4)で表される繰り返し単位を60モル%以上含有する場合、延伸性及びフィルム物性が特に優れることから好ましい。
Figure 2020186318
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの製造方法について、以下に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミドを得る方法は例えば、酸クロリドとジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合したり、水系媒体を使用する界面重合などで合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸クロリドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応から芳香族ポリアミドを得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行われる。
これらのポリマー溶液はそのまま製膜原液として使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶剤に再溶解して製膜原液を調製してもよい。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度ηjnh(ポリマー0.5gを98%硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5(dl/g)以上であることが好ましい。
粒子の添加方法は、粒子を予め溶媒中に十分スラリー化した後、重合用溶媒または希釈用溶媒として使用する方法や、製膜原液を調製した後に直接添加する方法などがある。
製膜原液には溶解助剤として無機塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを添加する場合もある。また、製膜原液としては、中和後のポリマー溶液をそのまま用いてもよいし、一旦、ポリマーを単離後、溶剤に再溶解したものを用いてもよい。溶剤としては、取り扱いやすいことからN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒が好ましいが、濃硫酸、濃硝酸、ポリリン酸等の強酸性溶媒を用いてもかまわない。製膜原液中のポリマー濃度は2〜40質量%程度が好ましい。
上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜しても差し支えないが、ポリマー溶液中に無機塩が含まれる場合には、これを抽出するために湿式工程が必要であり乾湿式法および湿式法を用いる。ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラムやエンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜が自己支持性をもつポリマー濃度(PC)35〜60質量%まで乾燥する。乾式工程を終えたシートは冷却された後、支持体から剥離されて次の湿式工程の湿式浴に導入され、脱塩、脱溶媒が行われる。湿式浴組成は、ポリマーに対する貧溶媒であれば特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いることができる。この際、シート中の不純物を減少させるために有機溶媒/水混合系の組成比(以下の数値は質量基準)は、有機溶媒/水=70/30〜0/100であるが、好ましくは60/40〜30/70、浴温度40℃以上であることが好ましい。湿式浴中には無機塩が含まれていてもよいが最終的には多量の水でシート中に含まれる溶媒や無機塩を抽出することが好ましい。
湿式工程を通ったシートは、続いて、テンター内で水分の乾燥と熱処理が行なわれるが、テンター内で熱処理されるまでにシート中の溶媒含有量が5質量%未満になるまで乾燥させることが重要である。溶媒含有量が5質量%以上の状態で熱処理工程に入ると、熱処理ムラが生じやすく、フィルム幅方向で物性に斑が生じたり、延伸工程中にシートが破断しやすくなる。この溶媒含有量は少ない方がより好ましく、0質量%付近まで完全に乾燥させることが望ましい。
以上のようにして形成されるシートは、湿式工程中、熱処理工程で目的とする機械的性質、寸法安定性向上のため延伸が行なわれる。延伸は、最初にシート長手方向、次いで幅方向に延伸、あるいは最初に幅方向、次いで長手方向に延伸する逐次二軸延伸法や長手方向、幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法などを用いることができる。これらの延伸方法は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルム化で行われている溶融製膜における延伸法としてよく知られているが、本発明のような溶液製膜で得るフィルムの場合には、シート中に溶媒や湿式浴成分が含有されており、またそれらはシート外への移動を含んだプロセスであるため目的とするフィルムを得るためには後述する手法を採ることが好ましい。
延伸方法としては、逐次二軸延伸法が装置上および操作性の点から好ましい。延伸条件としては、ポリマー組成等により適正な条件を選択することが必要であるが、シートの長手方向の延伸倍率は1.0〜1.5倍、幅方向の延伸倍率は1.2〜2.0倍であることが、目的の寸法安定性を得るうえで好ましい。また、延伸温度は270℃以上の温度で3秒以上行われるのが好ましく、270〜320℃の温度で3秒以上行われることがより好ましい。延伸温度が270℃未満であると結晶化不足となり、十分な吸湿率及び抗張力性等の寸法特性が得られないことがある。なお、延伸温度が320℃を超えると結晶化度が上がりすぎるためフィルムが脆くなり、フィルム破れが生じ易くなる。また、延伸の際のシート中の溶媒含有量は5質量%未満であることが好ましい。なお、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが熱収縮率を低減させるのに有効である。
なお、本発明における芳香族ポリアミドフィルムはもちろん単層フィルムでもよいが、積層フィルムであってもよい。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後、積層する方法が一つの例として挙げられる。さらに3層以上の場合も同様である。これら積層の方法としては、たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいて、その上に他の層を形成する方法などがある。
なお、上記のように得られた芳香族ポリアミドフィルムに対し、コロナ放電処理、プラズマ処理、除塵処理、或いは再熱処理などの各種処理を施してもよい。
次に、本発明の芳香族ポリアミドフィルムの物性について説明する。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、過酷な環境下でも使用しうるものであり、60℃、90%RH雰囲気下で10日放置後のフィルム幅方向の寸法変化量が500ppm以下であるため、高温高湿環境下で磁気テープとして使用された場合においても、可逆的な寸法変化及び不可逆的な寸法変化(クリープ)を合わせたトータルでの寸法変化を抑制することができる。ここで、本発明でいう芳香族ポリアミドフィルムの寸法変化とは、フィルムを切り出し、25℃、50%RHの雰囲気で24時間調湿後、長手方向の一辺を固定しもう一辺を0.55Nの荷重が均一にかかるよう水平に展張した状態で上記条件を設定し測定した場合の幅方向の寸法変化量のことである。詳細については後述する。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、長手方向のヤング率(EMD)が8GPa以上であることが好ましい。長手方向のヤング率が8GPa以上であると、薄膜化しても取り扱いやすく、磁気記録媒体とした場合にヘッドタッチが良好であり、磁気テープカートリッジの巻き取り適正が良好となる。逆に長手方向のヤング率が8GPa未満であると、磁気テープとしての巻き取り特性が低下しやすい。より好ましくはフィルムのすべての方向のヤング率が9GPa以上、さらに好ましくは10GPa以上である。ヤング率は特に上限はないが、通常は25GPa程度とするのが、ヤング率と伸度のバランスが良いことから好ましい。
また、本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、長手方向のヤング率と幅方向のヤング率(ETD)の比ETD/EMDが1≦ETD/EMD≦3であると、さらに良好な巻き取り特性が得られるので好ましく、ETD/EMDが1<ETD/EMD<2であるとさらに好ましい。
更に本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、ポアソン比が0.1以上0.5未満であると可逆的な寸法安定性と靱性が両立できるので好ましい。より好ましくは0.1以上0.3未満である。ポアソン比がこの範囲のフィルムは、特に、磁気テープの面圧、走行張力の高いシステム、例えば1巻のテープ長さが1,000mを超えるようなデータストレージシステムの高容量化(数TB級)に対応した磁気テープの支持体として有用である。ポアソン比が0.1未満または0.5以上であるとテープにかかる面圧、走行張力が高い場合には、テープ破断が発生することがある。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムの熱膨張係数は、好ましくは−5ppm/℃以上5ppm/℃以下、更に好ましくは−10ppm/℃以上10ppm/℃以下であると、温度変化による可逆的な寸法変化が小さく、磁気テープとしたときに良好なサーボトラッキングエラー特性を得やすいので好ましい。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムの湿度膨張係数は、好ましくは−5ppm/%RH以上5ppm/%RH以下、更に好ましくは−10ppm/%RH以上10ppm/%RH以下であると、吸湿変化による可逆的な寸法変化が小さく、磁気テープとしたときに良好なサーボトラッキングエラー特性を得やすいので好ましく、この範囲外であると不可逆的な湿度変化が良好でも可逆的な湿度変化に耐えきれず、サーボトラッキングエラー特性が低下する場合がある。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムの200℃(5分間)における熱収縮率は少なくとも一方向、好ましくはすべての方向で3%以下であることが好ましい。熱寸法安定性がこの範囲外であると、製品の加工工程でカールなどの平面性悪化を招き易く、巻き取り特性の点で劣ることがある。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムのすべての方向の伸度は10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上であるとテープが適度な柔軟性を持ち加工性に優れるので望ましい。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムには、フィルムに滑り性を付与するために粒子を含有させてもよい。含有される粒子の粒径および含有量は用途により適宜選択されるべきであるが、その平均一次粒径は0.001〜2μmであることが好ましい。また、フィルムに含有される粒子の含有量は0.001〜5質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。粒子の粒径、含有量が上記の範囲より大きい、または多いと磁気テープとしたときにはテープと磁気ヘッドとの密着性が悪く、電磁変換特性が低下する傾向にある。粒子の粒径、含有量が上記範囲より小さい、または少ないとフィルムの走行性が悪化し、耐久性の点で劣ることがある。
粒子の種類としては、SiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、カーボンブラック、ゼオライト、その他の金属微粉末などの無機粒子や、シリコン粒子、ポリイミド粒子、架橋共重合体粒子、架橋ポリスチレン粒子、テフロン(登録商標)粒子などの有機高分子などが挙げられる。フィルムに滑り性を付与する手法としては、粒子を添加する方法の他に、基材ポリマーに異種ポリマーをブレンドし、この異種ポリマーを製膜工程中で突起形成させる方法も用いることができる。
フィルムの表面粗さは、用途により適切な設計がなされるべきであるが、磁気記緑用途としてはRzで2〜500nm、より好ましくは3〜300nm、Raで0.1〜100nm、より好ましくは0.2〜50nm、Rzで2〜500nm、より好ましくは3〜400nmである。なおRaおよびRzの測定は、Digital Instruments社製の原子間力顕微鏡 NanoScopeIIIa、AFM(深針;単結晶シリコン、走査モード;タッピングモード、測定範囲;5×5μm、面素数;256×256、スキャン速度;1.0Hz、測定環境;室温、大気中)を使用し、フィルム幅方向に10点測定し、その平均値を算出して行う。
本発明における芳香族ポリアミドフィルムは、適切な熱処理を施すことでポリマー鎖分子間での結晶化が進行して機械的特性が向上するが、熱処理を施すほど芳香族ポリフィルムは吸収波長の変化に伴い色濃く変化する。特に、2μm以上15μm以下の薄い芳香族ポリアミドフィルムにおいては、L値が高いほど、結晶化の進行具合が十分ではないためポリアミドフィルムの吸湿率及び抗張力性が劣る。即ち、高温高湿環境下でテープ幅の寸法変化が大きくなるため、磁気テープとした際にサーボ特性等が著しく劣る問題が顕在化する。また、逆にL値が低すぎると、厚みムラによる色のコントラストが鮮明になるため幅方向の厚みムラが悪化するばかりか、芳香族ポリアミドフィルムが一部炭化して脆弱となりフィルムのヤング率等の機械的特性が著しく後退する。上記理由から、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、L値を40以上50以下とするのが良好な機械的特性を保つのに好ましく、より好ましくは、L値は41以上49以下とするのがよい。
フィルムのL値は、日本電色工業株式会社製測色色差計ZE2000を用い測定した。なおL値はフィルム厚みが薄くなると検出器の感度が鈍くなり適切な評価ができないことから、フィルム厚みが36μm以上になる最小の枚数を重ねて測定した値である。測定方法の詳細については後述する。
上述したフィルム幅方向の寸法変化量やL値を制御するためには、溶媒の含有量が5質量%未満である芳香族ポリアミドシートに対し、所定の条件にて熱処理を行いフィルムとする工程を経ることが好ましい。この際の熱処理条件としては、前記シートの表面温度が270℃以上となる状態で3秒以上保持することが好ましい。
上記の熱処理は、例えば、製膜工程の縦延伸時にしてもよく、横延伸時にしても構わない。また、一旦製膜して巻き取った後に再度巻き出して実施したりすることができる。
また、熱処理を施す手段としては、例えば、熱風や電気ヒーター(例えば赤外線ヒーターなど)を用いることができ、これらによりシート表面に与える熱量を適宜調整して上記熱処理条件を満たせばよい。
上記において、溶媒の含有量が5質量%以上の状態で熱処理を行うと、幅方向で乾燥ムラが生じやすく、フィルム全面で色むらが生じたり、搬送中にシートが破断しやすくなる。この溶媒含有量は少ない方がより好ましく、0%付近まで完全に乾燥させることが望ましい。また、フィルムの寸法特性は、シート表面の最高熱処理温度に依存するため、上述したように270℃以上で3秒以上処理することが好ましいが、より好ましくは270〜320℃の温度で3秒以上とする。熱処理温度が270℃未満であると結晶化不足となり、十分な吸湿率及び抗張力性等の寸法特性が得られないことがある。また、この320℃を超えるとフィルムが脆くなり、特に、磁気テープの面圧、走行張力の高いシステム、例えば1巻のテープ長さが1,000mを超えるようなデータストレージシステムの高容量化(数TB級)に対応した磁気テープの支持体として実用的でない場合がある。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの吸湿率は、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。吸湿率が2.0%を超えると高温高湿条件下に対する寸法安定性が悪化し易く、磁気テープのカールやしわなどが生じて平面性悪化を招いたりすることがある。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの密度は、1.48kg/m以上であることが好ましく、1.52kg/m以下であることが好ましい。フィルム密度が1.52kg/mを超えると分子鎖の剛直性、パッキング性が向上するため吸湿による寸法変化への影響は小さくなるが、一部炭化して脆弱となりフィルムのヤング率等の機械的特性が低下する傾向にある。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、単位時間あたりの生産性を向上させるために、幅1,000mm以上、長さ1,000m以上のロール体として巻き取り、磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムロールとすると安価に大量生産することができる。特に、磁気テープ1巻のテープ長さが1,000mを超えるようなデータストレージシステムの高容量化(数TB級)に対応した磁気テープの支持体としては最適である。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、コンデンサー、離形フィルム、プリンターリボン、音響振動板などの種々の用途に好ましく用いられるが、少なくとも片面に磁性層を設けた磁気記録媒体、中でも特に磁気テープとして用いられると、寸法安定性、剛性、表面平滑性などを兼ね備えた本発明の寸法安定性の効果が十分に発揮されるため、特に好ましい。
本発明においては、上記芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも片面に磁性層を形成して(設けて)磁気記録媒体とすることができる。特に本発明の芳香族ポリアミドフィルムが適用される磁気テープは、芳香族ポリアミドフィルム支持体の他に上層磁性層、下層非磁性層、下塗り層、及びバックコート層から構成されることが好ましい。磁気テープの製造方法については公知技術が適用できる。
磁気テープの支持体として使用する場合の芳香族ポリアミドフィルムの厚みは、好ましくは2〜15μmであるが、更に好ましくは2.4〜4.2μmである。フィルム厚みが2μmより小さいと、機械的強度が十分取れず走行耐久性に劣り、15μmより大きいと高容量の磁気テープの支持体として実用に耐えないことがある。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムが適用される磁気テープ、特に1巻のテープ長さが1,000mを超えるようなデータストレージシステムに対応した高密度磁気テープを得るに際し、支持体上に非磁性層や磁性層、バックコート層などを形成する手段としては、例えば、支持体フィルム上に塗布する湿式法や蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式法があり、特に限定されるものではないが、ここでは支持体フィルム上に塗布する湿式法を例にとって説明する。
非磁性層、磁性層、バックコート層などを塗布により支持体上に形成する手段としては、エクストルージョン塗工方式、ロール塗工方式、グラビア塗工方式、マイクログラビア塗工方式、エアーナイフ塗工方式、ダイ塗工方式、カーテン塗工方式、ディップ塗工方式、ワイヤーバー塗工方式など公知の手法を用いることができる。特に、非磁性層および磁性層を逐次重層方式で塗布する場合、磁性層の作製においてはエクストルージョン塗工方式を用いることが好ましい。例えば、非磁性層、磁性層、及び、バックコート層の形成を、非磁性支持体原反ロール(フィルムロール)から送り出された非磁性支持体芳香族ポリアミドフィルム上で連続して塗布して行い、非磁性層、磁性層、及び、バックコート層形成後、非磁性支持体を巻き取ることにより磁気記録媒体原反ロールを得て、カレンダー処理及び熱処理を施した後、磁気記録媒体原反ロールの一部を裁断することによりテープ状磁気記録媒体を得ることが好ましい。
ロール状態に巻かれた非磁性支持体を送り出して非磁性層、磁性層を形成した後に一旦巻き取り、再度非磁性支持体を送り出して、バックコート層を形成する方法では、安価に大量の磁気記録媒体を製造することは困難である。それに対し、上記のように、ロール状態に巻かれた非磁性支持体を送り出して非磁性層、磁性層を形成した後に、非磁性支持体を一度も巻き取らずにバックコート層を形成することにより、磁気記録媒体を安価に大量生産することができる。
また、生産性向上のために、各層を形成する際の非磁性支持体の搬送速度は、100m/分以上とすることが好ましく、より好ましくは200m/分以上、更に好ましくは300m/分以上、特に好ましくは400m/分以上である。塗布速度が速いほど生産性向上には有利である。但し、塗布速度が速すぎると塗布故障(塗布スジ、塗布ムラなど)が発生しやすくなるため、塗布速度は700m/分以下とすることが好ましい
磁性層中の強磁性粉末を所望の配向状態とするために、通常、磁性層塗布液の塗布後、湿潤状態にあるうちに磁性層塗布液に対してコバルト磁石およびソレノイドを用いて長手方向へ配向させることが好ましい。
各層形成用塗布液の乾燥は、例えば塗布された塗布液上に温風を吹き付けることにより行うことができる。乾燥風の温度は60℃以上とすることが好ましい。また、乾燥風の風量は、塗布量および乾燥風の温度に応じて設定すればよい。なお、磁性層塗布液の塗布後、配向処理のために磁石ゾーンに導入する前に、適度の予備乾燥を行うこともできる。
上記のようにして各層形成用の塗布液の塗布、乾燥後には、通常、磁気記録媒体にカレンダー処理が施される。カレンダー処理用のロ−ルとして、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロ−ルを用いることができる。カレンダー処理時の処理温度は、好ましくは50℃以上、更に好ましくは90℃以上である。カレンダー処理時の線圧力は、好ましくは200kg/cm(196kN/m)以上、更に好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上である。
カレンダー処理後の磁気記録媒体原反ロールに対し、熱処理工程を導入することが好ましい。カレンダー処理後のロールを張力が2〜5kg/mで40〜70℃の範囲で8〜40時間加熱処理することが好ましい。更には、1/2インチ幅に裁断後のパンケーキを張力0.3〜1.0N/本で40〜60℃の範囲で5〜30時間加熱処理する工程を組合せることが好ましい。
本発明の磁気テープにおける磁性層の厚さは、例えば0.01〜0.2μmであることが好ましい。
磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライト粉末および強磁性金属粉末を挙げることができる。用いられる六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等が挙げられる。磁性層において使用される強磁性金属粉末は、特に制限されるものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末を用いることが好ましい。これらの強磁性金属粉末には、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、RH、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでいても構わない。
本発明の磁気テープにおける非磁性層は、少なくとも非磁性粉末と結合剤とを含む層である。非磁性層の膜厚は0.1〜2.0μmであることが好ましい。非磁性層の膜厚が厚すぎると、磁気テープの総厚が厚くなり高容量化が難しくなる。一方、薄すぎると非磁性支持体の表面粗さの影響が磁性層表面に現れたり、磁性層表面の研磨剤、カーボンブラックを沈み込ませる効果が損なわれたりする。より好ましい非磁性層の膜厚は0.2〜1.5μmであり、特に好ましい膜厚は0.3〜1.0μmである。非磁性層は、実質的に非磁性であれば、特に制限されるものではなく、実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を含むこともできる。「実質的に非磁性である」とは、磁性層の電磁変換特性を実質的に低下させない範囲で非磁性層が磁性を有することを許容するということであり、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せで使用することができる。
本発明の磁気テープにおけるバックコート層の厚みは、例えば0.2〜0.8μm、好ましくは0.3〜0.6μmである。一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。
また、本発明の磁気テープは、非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗層を設けてもよい。本下塗層厚みは、例えば0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。この下塗層は公知のものが使用できる。
本発明の磁気テープにおいて、磁性層、非磁性層およびバックコート層には、目的に応じて、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑化効果、などをもつ種々の公知の添加剤を使用することができる。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)フィルム幅方向の寸法変化率
寸法変化率が最も大きくなる部分の測定を行うため、1,000m以上巻き取ったロールの巻き芯側から5m位置のフィルムを幅方向に5分割した各中央位置で幅方向30mm×長手方向110mmのフィルムサンプルを5点採取した。
25℃、50%RHの雰囲気で調湿後、各サンプルの中央部に長さ約20mm角の正方形をマーキングし、幅方向の長さをキーエンス株式会社製画像寸法測定器 IM7010(繰り返し精度±0.5μm、測定精度±2μm)で10回繰り返し測定し、平均値をT0とした。また、該サンプルを長手方向の一辺を固定しもう一辺を0.55Nの荷重が均一にかかるよう水平に展張し、60℃、90%RHの雰囲気下で10日間放置し、同様にして幅方向の長さの平均値(T1)を求め、最大値で評価した。
寸法変化率 = (T1−T0) / T0 × 106 (ppm)
(2)ヤング率(引張弾性率)
フィルムを幅方向に5分割した各中央位置で測定する方向の長さが150mmとなるように幅10mmのフィルムサンプルをフィルム長手方向、幅方向で各5点採取した。
オリエンテック社製ロボットテンシロンRTF−1210型を用いて、採取したフィルムをチャック間距離100mmの装置にセットして、引張速度200mm/分、温度23℃、相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から長手方向ヤング率および幅方向ヤング率を求め、その平均値で評価した。
(3)L値測定
フィルムL値は、日本電色工業株式会社製測色色差計ZE2000を用い測定した。
フィルムを幅方向に5分割し、それぞれのサンプルの中央位置5点を測定し、最小値と最大値を算出した。L値はフィルム厚みが薄くなると検出器の感度が鈍くなり適切な評価ができないことから、厚みが36μm以上になる最小の枚数を重ねて測定した。
(4)熱処理工程前のフィルムの残留溶媒濃度
熱処理工程前のシートを幅方向に5分割した各中央位置で幅方向20mm×長手方向20mmのサンプルを5点採取した。乾燥前のフィルムの質量を(株)島津製作所製電子分析天秤AUX−220用いて測定し、そのときの質量をG0とし、200℃で1時間乾燥後の質量をG1として、下記の通り評価した。
((G1−G0)/G0)×100 (質量%)
(5)フィルム密度測定
フィルム密度は、浸漬液ポリタングステン酸ナトリウム水溶液を使用したピクノメーター法で測定した。フィルムを幅方向に5分割し、それぞれのサンプルの中央位置5点を測定し、最小値と最大値を算出した。
・装置:天秤(株)島津製作所製電子分析天秤AUX−220
・恒温槽:ヤマト科学(株)製恒温水槽BK33
・ピクノメーター:リプキン−デビソン型ピクノメーター
・測定温度:23℃
(6)フィルムロール1,000m以上の巻き取り特性
1,000mm幅以上のフィルムを製膜し、破断することなく1,000m以上巻き取ることができる場合は○、1,000m以上巻き取ることができない場合は×とした。
(7)磁気テープ寸法変化率
芳香族ポリアミドフィルム上に下記組成の非磁性塗料を芳香族ポリアミドフィルム上に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布し、100℃で乾燥させた。更にその直後に下記組成の磁性塗料を乾燥後の厚さが0.08μmになるように塗布し、100℃で乾燥した。この時、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに交流磁場発生装置の中を通過させ配向処理を行った。また、この支持体の非磁性下層及び磁性層の形成面とは反対面側に、上記バックコート塗料を乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布・乾燥し、磁気記録積層原反ロールを得た。得られた磁気記録積層原反ロールを温度130℃の熱処理ゾーンにて張力3.0kg/mで走行させた(熱処理ゾーンの滞在時間は15秒である)。次いで、金属ロールのみから構成される7段のカレンダー処理機で温度90℃、線圧300kg/cm、巻取り張力4.0kg/mで表面平滑化処理を行った後、60℃で36時間加熱処理を行い、1/2インチ幅に裁断し磁気テープを作成した。1/2インチ幅に裁断後の張力を0.55Nとなるように調整した。その後、得られた磁気テープにサーボ信号を記録し、LTO用カートリッジに巻き取り、磁気テープカートリッジを作成した。
<上層磁性塗料液の調製>
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100質量部
ポリウレタン樹脂 15質量部
フェニルホスホン酸 3質量部
α−Al23(粒子サイズ0.15μm) 5質量部
板状アルミナ粉末(平均粒径:50nm) 1質量部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2質量部
シクロヘキサノン 110質量部
メチルエチルケトン 100質量部
トルエン 100質量部
ブチルステアレート 2質量部
ステアリン酸 1質量部
<下層用非磁性塗料液の調製>
非磁性無機質粉体 85質量部
α−酸化鉄、表面処理剤:Al23、SiO2
カーボンブラック 20質量部
ポリウレタン樹脂 15質量部
フェニルホスホン酸 3質量部
α−Al23(平均粒径0.2μm) 5質量部
シクロヘキサノン 140質量部
メチルエチルケトン 170質量部
ブチルステアレート 2質量部
ステアリン酸 1質量部
<バックコート用塗料液の調整>
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 40.5質量部
カーボンブラック(平均粒径:370nm) 0.5質量部
硫酸バリウム 4.05質量部
ニトロセルロース 28質量部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 20質量部
シクロヘキサノン 100質量部
トルエン 100質量部
メチルエチルケトン 100質量部。
得られた磁気テープカートリッジを60℃、90%RH環境10日放置後にリーダーテープ接合部から5m最外周側に入った部分の磁気テープを切り出した直後に(30分以内が好ましい)、カートリッジリール最外周部と最内周部のテープ幅の差を上記フィルムの寸法変化量測定と同様の方法にて測定した。なお、切り出した直後に測るのは、テープに掛かる面圧がフリーになり、磁気テープが元の状態に戻る前(可逆的変化を起こす前)のテープ寸法変化を測るためである。これを10回繰り返しその平均値を求め、その差を下記で評価した。
500ppm以下 : ○
500ppmを超える: ×
(8)サーボトラッキングエラー発生率
得られた磁気テープカートリッジを60℃、90%RH環境10日保存後、LTO−4ドライブ(IBM社製)にて全長走行させ、サーボ信号のオフトラックによるサーボトラッキングエラー発生率を求めた。エラー発生率は10巻走行させた時のエラー発生巻数の割合にて求めた。
10%以下 : ○
10%を超える: ×
以下に、本発明に係る具体的な実施例および比較例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
N−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)に、85モル%に相当する2−クロロパラフェニレンジアミン(以下CPA)と15モル%に相当するジフェニルエーテル(以下DPE)を溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するクロロテレフタル酸クロライド(以下CTPC)を添加して、重合前にポリエーテルサルホン(住友化学(株)製 スミカエクセル5400P)を芳香族ジアミン成分に対して5.0質量%、平均1次粒径が80nmのコロイダルシリカを芳香族ジアミン成分に対して0.45質量%になるように添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い、重合ポリマーを得た。
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8質量%の芳香族ポリアミド溶液Aを得た。
NMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い、重合ポリマーを得た。次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、平均1次粒径が16nmのシリカ(日本アエロジル株式会社製“AEROSIL”R972タイプ)をポリマーに対して0.3質量%添加して1時間の攪拌を行った後、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8質量%の芳香族ポリアミド溶液Bを得た。
次に、重合した芳香族ポリアミド溶液Aを濾過精度1.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通し、また、芳香族ポリアミド溶液Bを濾過精度5.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通した後に口金内部で積層した。この時の芳香族ポリアミド溶液AとBの積層比率(厚み比)は、50%ずつになるようにした。
エンドレスベルト上に、積層した芳香族ポリアミド溶液のBがベルト面になるよう流延し、120℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得た膜体をベルトから連続的に剥離した。
次に、溶媒抽出処理装置の槽内へ膜体を導入して、縦方向に1.15倍に延伸しながら残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行い、熱処理工程前の残留溶媒濃度が0質量%となるように調整した。
その後、得られた膜体を横延伸機のクリップに把持させて、熱処理工程で幅方向に1.5倍延伸を行ないながらフィルムの表面温度が270℃になるように熱風にて3秒間熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷し、フィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。このフィルムの厚みは、3.6μm、長手方向ヤング率が10.3GPa、幅方向ヤング率が15.5GPa、フィルムのL値46〜47、フィルム密度1.490〜1.506kg/m3、60℃、90%RH雰囲気下で10日放置後のフィルムの寸法変化率は長手方向300ppmであった。このフィルムを用いて作製した1,050mの磁気テープの寸法変化率は良好でサーボトラッキングエラー発生率も良好であった。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(実施例2)
熱処理工程前の残留溶媒濃度を4.8質量%に調整した以外は実施例1と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(実施例3)
熱処理工程においてフィルム表面温度が320℃となるように熱風にて熱処理した以外は実施例1と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(実施例4)
最終フィルムの厚みを2μmにした以外は実施例1と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(実施例5)
最終フィルムの厚みを12μmにした以外は実施例1と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ4,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(実施例6)
製膜工程では熱処理をせずに一度ロール状に巻き取った後に、巻き出しながらフィルムの表面温度が270℃になるように熱風にて3秒間熱処理を行い巻き取った以外は実施例1と同様に処理をしてフィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(比較例1)
熱処理工程においてフィルム表面温度が245℃となるように30秒間熱風にて熱処理した以外は実施例1と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(比較例2)
熱処理工程においてフィルム表面温度が350℃となるように熱風にて熱処理した以外は実施例1と同様に製膜したが、結晶化が進みすぎて一部炭化して脆弱化し、スリット時にフィルムの破断が発生した為、長さ500mの芳香族ポリアミドフィルムロールしか得られなかった。磁気テープの支持体としては使用できるものではなかった。
(比較例3)
熱処理工程前の残留溶媒濃度が15質量%、熱処理工程のフィルム表面温度が320℃となるように100秒間熱風にて熱処理した以外は実施例1と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ10,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性、このフィルムを用いた磁気テープの評価結果を表1に示した。
(比較例4)
最終フィルムの厚みを20μmにした以外は実施例3と同様に製膜してフィルム幅1,050mm、長さ3,000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。このフィルムを用いて作製しようとしたが、カートリッジ1巻あたり1,000m以上にすることができず、高容量の磁気テープの支持体として使用できるものではなかった。
(比較例5)
最終フィルムの厚みを1.8μmにした以外は実施例1と同様に製膜したが、フィルムが薄すぎて巻き取り特性に劣り、フィルムにシワが発生した為、長さ100mの芳香族ポリアミドフィルムロールしか得られなかった。磁気テープの支持体としては使用できるものではなかった。
Figure 2020186318

Claims (4)

  1. 60℃、90%RH雰囲気下で10日放置後のフィルム幅方向の寸法変化量が500ppm以下であり、L値が40以上50以下であり、厚みが2μm以上15μm以下であることを特徴とする磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルム。
  2. 請求項1に記載の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムを巻き取ってなる、幅1,000mm以上、長さ1,000m以上である磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムロール。
  3. 溶媒の含有量が5質量%未満である芳香族ポリアミドシートの表面温度を270℃以上の状態で3秒以上保持する熱処理を施す、請求項1に記載の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
  4. 請求項1に記載の磁気テープ用芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも片面に磁性層を形成してなる磁気テープ。
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