JP2020165462A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1動力伝達経路を用いたギヤ走行モードによる走行時に、第2動力伝達経路に設けられた回止め部分で生じるガタ打ち音を簡便な手法で抑制する。【解決手段】第1動力伝達経路を用いたギヤ走行モードによる走行時に、一定の条件下で第2動力伝達経路の無段変速機の変速比γcvt を、最大変速比γmax からHigh ギヤ側(最小変速比側)へずらすガタ詰め制御を行なう(S5)。これにより、第1動力伝達経路および第2動力伝達経路の変速比の相違が大きくなり、その変速比の相違により第2動力伝達経路の第2クラッチの相対回転が大きくなるとともに第2クラッチの引き摺りトルクが大きくなるため、その引き摺りトルクによって第2動力伝達経路のスプライン嵌合部(回止め部分)がガタ詰めされてガタ打ち音の発生が抑制される。【選択図】図3
Description
本発明は車両用動力伝達装置の制御装置に係り、特に、入力軸と出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路が並列に設けられている車両用動力伝達装置の制御装置に関するものである。
(a) 入力軸と出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路が並列に設けられているとともに、(b) 前記第1動力伝達経路には第1断接装置および歯車式伝達装置が直列に設けられており、その歯車式伝達装置によって得られる第1変速比で動力伝達を行う一方、(c) 前記第2動力伝達経路には摩擦係合式の第2断接装置および無段変速機が直列に設けられており、前記第1変速比と略同じ第2変速比とその第2変速比よりも小さい第3変速比との間の任意の変速比で動力伝達を行うことができる、車両用動力伝達装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例であり、無段変速機は、前記入力軸に連結されたプライマリ側回転体と、前記出力軸に連結されたセカンダリ側回転体とを備えており、油圧式摩擦係合装置である第1クラッチC1、第2クラッチC2がそれぞれ第1断接装置、第2断接装置に相当する。そして、このような車両用動力伝達装置は、第1断接装置(C1)を接続するとともに第2断接装置(C2)を遮断することにより第1動力伝達経路を用いて走行する第1走行モードを成立させ、第1断接装置(C1)を遮断するとともに第2断接装置(C2)を接続することにより第2動力伝達経路を用いて走行する第2走行モードを成立させる制御装置を備えている。
ところで、上記無段変速機のプライマリ側回転体と入力軸とが、スプライン嵌合等の噛合い式の回止めを介して連結されている場合、第1走行モードによる走行時に第2動力伝達経路の変速比が第1変速比と略等しい第2変速比に保持されると、プライマリ側回転体は負荷が略0の遊動状態で入力軸と一体的に回転させられるため、その回止め部分でガタ打ち音が発生する可能性がある。組付性等の観点で、回止めには通常所定の遊びが設けられるため、その遊びに起因してガタ打ち音が発生する。無段変速機のセカンダリ側回転体と出力軸とがスプライン嵌合等の噛合い式の回止めを介して連結されている場合も、同様の問題が発生する。
これに対し、特許文献1では、第1走行モードによる走行時に第2断接装置を半係合させるとともに、無段変速機によって第2動力伝達経路の変速比を第2変速比(≒第1変速比)よりも大側および小側へ増減させるため、第2断接装置の係合トルクにより回止め部分に負荷が生じてガタ打ち音が抑制される。しかしながら、第2断接装置の半係合によって第1動力伝達経路および第2動力伝達経路に循環トルクが発生するため、駆動、被駆動等の走行状態によって変速比の増減方向を切り換えるなど、制御が複雑になるという問題があった。また、第2動力伝達経路の変速比に関し、第1変速比と略等しい第2変速比を挟んで大側および小側へ変速する必要があるため、無段変速機の変速比範囲の拡大や大型化の可能性があるなど、改善の余地があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、第1動力伝達経路を用いた第1走行モードによる走行時に、第2動力伝達経路に設けられた回止め部分で生じるガタ打ち音を簡便な手法で抑制することにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、(a) 入力軸と出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路が並列に設けられているとともに、(b) 前記第1動力伝達経路には第1断接装置および歯車式伝達装置が直列に設けられており、その歯車式伝達装置によって得られる第1変速比で動力伝達を行う一方、(c) 前記第2動力伝達経路には摩擦係合式の第2断接装置および無段変速機が直列に設けられており、前記第1変速比と略同じかその第1変速比よりも小さい第2変速比と、その第2変速比よりも小さい第3変速比との間の任意の変速比で動力伝達を行うことができるとともに、その第2動力伝達経路は前記入力軸および前記出力軸の少なくとも一方に噛合い式の回止めを介して連結されている、車両用動力伝達装置に関し、(d) 前記第1断接装置を接続するとともに前記第2断接装置を遮断することにより前記第1動力伝達経路を用いて走行する第1走行モードを成立させ、前記第1断接装置を遮断するとともに前記第2断接装置を接続することにより前記第2動力伝達経路を用いて走行する第2走行モードを成立させる車両用動力伝達装置の制御装置において、(e) 前記第1走行モードによる走行時に、前記第2断接装置が遮断状態のままその第2断接装置の前後の相対回転が大きくされるように、前記無段変速機によって前記第2動力伝達経路の変速比を前記第2変速比から前記第3変速比側へずらすガタ詰め制御を行うガタ詰め制御部を有することを特徴とする。
上記変速比は、(入力軸の回転速度)/(出力軸の回転速度)である。
上記変速比は、(入力軸の回転速度)/(出力軸の回転速度)である。
このような車両用動力伝達装置の制御装置においては、第1動力伝達経路を用いた第1走行モードによる走行時に、第2断接装置の前後の相対回転が大きくなるように、無段変速機によって第2動力伝達経路の変速比を第2変速比から第3変速比側へずらすガタ詰め制御が行われるため、第2断接装置の相対回転の増大でその第2断接装置に生じる引き摺りトルクによって回止めがガタ詰めされて、その回止め部分のガタ打ち音が抑制される。すなわち、摩擦係合式の第2断接装置は一般に、遮断状態においても潤滑油剤の存在などで相対回転時に引き摺りトルクが発生するため、相対回転の増大に伴って引き摺りトルクが大きくなると、回止め部分に負荷が生じてガタ打ち音を抑制することができる。
第2断接装置の引き摺りトルクによって第1動力伝達経路および第2動力伝達経路には循環トルクが生じるが、第2断接装置を半係合させる場合に比較して小さいため、駆動、被駆動等の走行状態に応じて変速比の増減方向を切り換えるなどの面倒な制御が不要であり、無段変速機によって第2動力伝達経路の変速比を第2変速比から第3変速比側へずらすだけで良く、簡便に実施することができる。また、第2動力伝達経路の変速比に関し、第1変速比と等しい変速比を挟んで大側および小側へ変速する必要がないため、無段変速機の変速比範囲の拡大や大型化の必要がない。
本発明は、駆動力源としてエンジン(内燃機関)を備えているエンジン駆動車両の車両用動力伝達装置に好適に適用されるが、駆動力源としてエンジンおよび電動モータを備えているハイブリッド車両や、駆動力源として電動モータのみを備えている電気自動車などにも適用され得る。第1断接装置および第2断接装置としては、例えば油圧等による摩擦係合装置が好適に用いられるが、第1断接装置は必ずしも摩擦係合式である必要はない。第2断接装置は、例えば摩擦係合部が潤滑油剤によって潤滑される湿式の摩擦係合装置が適当であるが、遮断状態(解放状態)における相対回転によって引き摺りトルクが発生する摩擦係合装置であれば、その引き摺りトルクによってガタ打ち音を低減する効果が得られる。歯車式伝達装置は、第1変速比のみで動力伝達するものでも良いが、変速比が異なる複数のギヤ段を備えていても良い。第1変速比は、入力軸および出力軸の回転速度が等しい「1」でも良い。無段変速機は、ベルト式やトロイダル式等の機械式の無段変速機が好適に用いられる。
無段変速機が配設される第2動力伝達経路には、更に歯車式等の変速機構が設けられても良いが、変速機構として無段変速機のみが設けられ、無段変速機の変速範囲がそのまま第2動力伝達経路の変速範囲であっても良い。第2動力伝達経路の第2変速比は、第1動力伝達経路の第1変速比に基づいて適当に定められる。第2変速比は例えば第2動力伝達経路の最大変速比とされ、第3変速比は例えば第2動力伝達経路の最小変速比とされる。無段変速機は、例えば前記入力軸に噛合い式の回止めを介して連結されたプライマリ側回転体と、前記第2断接装置を介して前記出力軸に連結されたセカンダリ側回転体とを備えて構成されるが、セカンダリ側回転体が噛合い式の回止めを介して出力軸に連結され、プライマリ側回転体が第2断接装置を介して入力軸に連結されても良いなど、種々の態様が可能である。プライマリ側回転体およびセカンダリ側回転体が、何れも噛合い式の回止めを介して入力軸、出力軸に連結されても良い。
車両用動力伝達装置が、例えば駆動力源からロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを介して入力軸に動力が伝達される場合、ガタ詰め制御部は、例えばロックアップクラッチが解放されていることを条件としてガタ詰め制御を行うように構成される。すなわち、ロックアップクラッチの解放時はトルクコンバータによってトルクが増幅されるため、ガタ打ち音が大きくなる傾向があり、循環トルクが生じるガタ詰め制御の実施を、ガタ打ち音が問題になる必要最小限に抑えることができる。なお、ロックアップクラッチの係合解放状態と関係なくガタ詰め制御を実施しても良いし、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを備えていない車両用動力伝達装置に本発明を適用することもできる。
ガタ詰め制御部は、例えば予め定められた低車速であることを条件としてガタ詰め制御を行うように構成される。すなわち、低車速ではエンジン音や風切り音が小さいため、ガタ打ち音が問題になる傾向があり、循環トルクが生じるガタ詰め制御の実施を、ガタ打ち音が問題になる必要最小限に抑えることができる。なお、車速と関係なくガタ詰め制御を実施しても良い。同じ理由で、アクセルが操作されていないアクセルOFFのクリープ走行時であることを条件としてガタ詰め制御が行われるようにしても良い。
ガタ詰め制御部は、例えば第1走行モードから第2走行モードへ切り換えられる際にガタ詰め制御を終了し、無段変速機によって第2動力伝達経路の変速比を第2変速比へ変速するように構成される。すなわち、第1走行モードによる走行時には、一般に第2動力伝達経路の変速比は、第1変速比と略同じか比較的第1変速比に近い第2変速比に保持されており、その状態で第1走行モードから第2走行モードへ切り換えられるため、ガタ詰め制御を終了して第2動力伝達経路の変速比が第2変速比へ変速されることにより、従来と同じ制御で第1走行モードから第2走行モードへ切り換えることができる。第2動力伝達経路の第2変速比が第1変速比よりも小さい場合は、第2変速比に保持したまま有段変速機のように断接装置を切り換えて第2走行モードへ切り換えることができる。第2変速比が第1変速比と略等しい場合は、第2変速比の状態で断接装置を切り換えて第2走行モードへ切り換え、その後、無段変速機の変速制御で第2変速比から所定の変速比へ変速しても良いし、第2変速比よりも小さい第2速ギヤ段の変速比へ変速した後に、有段変速機のように断接装置を切り換えて第2走行モードへ切り換えても良い。
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両10の駆動系統を説明する骨子図で、互いに平行な複数の軸が一平面内に位置するように展開して示した図である。この車両10は、走行用の駆動力源として機能するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた車両用動力伝達装置16とを備えている。車両用動力伝達装置16は、非回転部材としてのハウジング18内において、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ20、トルクコンバータ20に連結された入力軸22、入力軸22に連結された自動変速機24、自動変速機24の出力側に連結された出力軸26、カウンタ軸28、出力軸26及びカウンタ軸28に各々相対回転不能に設けられて噛み合う一対のギヤから成る減速歯車装置30、カウンタ軸28に相対回転不能に設けられたギヤ32に連結された差動歯車装置34、差動歯車装置34に連結された1対の車軸36等を備えている。このように構成された車両用動力伝達装置16において、エンジン12の動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義) は、トルクコンバータ20、自動変速機24、減速歯車装置30、差動歯車装置34、及び車軸36等を順次介して左右1対の駆動輪14へ伝達される。
トルクコンバータ20は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、及び入力軸22に連結されたタービン翼車20tを備え、流体を介してエンジン12の動力を入力軸22へ伝達する。トルクコンバータ20は、ポンプ翼車20pとタービン翼車20tとの間すなわちトルクコンバータ20の入出力回転部材間を直結可能なロックアップクラッチ38を備えている。
自動変速機24は、入力軸22に連結された無段変速機構としての公知のベルト式の無段変速機(CVT) 50、同じく入力軸22に連結された前後進切換装置52、前後進切換装置52を介して入力軸22に連結されて無段変速機50と並列に設けられた伝動機構としてのギヤ伝動機構54を備えている。すなわち、自動変速機24は、入力軸22と出力軸26との間に並列にギヤ伝動機構54及び無段変速機50を備えている。具体的には、車両用動力伝達装置16は、エンジン12の動力を入力軸22から前後進切換装置52およびギヤ伝動機構54を介して出力軸26へ伝達する第1動力伝達経路PT1と、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機50を介して出力軸26へ伝達する第2動力伝達経路PT2との複数の動力伝達経路を、入力軸22と出力軸26との間に並列に備えている。車両用動力伝達装置16は、車両10の走行状態に応じてその第1動力伝達経路PT1とその第2動力伝達経路PT2とが切り換えられる。
自動変速機24は、エンジン12の動力を駆動輪14側へ伝達する動力伝達経路を、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とで選択的に切り換える複数の係合装置を備えている。この係合装置は、第1動力伝達経路PT1を断接する第1係合装置(換言すれば係合されることでギヤ伝動機構54を介した第1動力伝達経路PT1を形成する為の係合装置である第1係合装置)としての第1クラッチC1及び第1ブレーキB1と、第2動力伝達経路PT2を断接する第2係合装置(換言すれば、係合されることで無段変速機50を介した第2動力伝達経路PT2を形成する為の係合装置である第2係合装置) としての第2クラッチC2とを含んでいる。第1クラッチC1、第1ブレーキB1、及び第2クラッチC2は、断接装置に相当するものであり、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる公知の油圧式の摩擦係合装置(摩擦クラッチ) で、摩擦係合板が潤滑油剤によって潤滑される湿式の摩擦係合装置である。
前後進切換装置52は、第1動力伝達経路PT1において入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に設けられており、ダブルピニオン型の遊星歯車装置52p、第1クラッチC1、及び第1ブレーキB1を備えている。遊星歯車装置52pは、入力要素としてのキャリア52cと、出力要素としてのサンギヤ52sと、反力要素としてのリングギヤ52rとの3つの回転要素を有する差動機構である。キャリア52cは入力軸22に一体的に連結され、リングギヤ52rは第1ブレーキB1を介してハウジング18に選択的に連結され、サンギヤ52sは入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に相対回転可能に設けられた小径ギヤ56に連結されている。又、キャリア52cとサンギヤ52sとは、第1クラッチC1を介して選択的に連結される。よって、第1クラッチC1は、前記3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に連結する係合装置であり、第1ブレーキB1は、前記反力要素をハウジング18に選択的に連結する係合装置である。
ギヤ伝動機構54は、小径ギヤ56と、ギヤ機構カウンタ軸58と、ギヤ機構カウンタ軸58回りにそのギヤ機構カウンタ軸58に対して同軸心に相対回転不能に設けられてその小径ギヤ56と噛み合う大径ギヤ60とを備えている。又、ギヤ伝動機構54は、ギヤ機構カウンタ軸58回りにそのギヤ機構カウンタ軸58に対して同軸心に相対回転可能に設けられたアイドラギヤ62と、出力軸26回りにその出力軸26に対して同軸心に相対回転不能に設けられてそのアイドラギヤ62と噛み合う出力ギヤ64とを備えている。出力ギヤ64は、アイドラギヤ62よりも大径である。ギヤ伝動機構54は、入力軸22と出力軸26との間の第1動力伝達経路PT1において、所定の変速比(変速段、ギヤ段) としての1つの変速比(変速段、ギヤ段) が形成される伝動機構である。ギヤ伝動機構54は、更に、ギヤ機構カウンタ軸58回りに、大径ギヤ60とアイドラギヤ62との間に設けられて、これらの間を選択的に断接する噛合い式クラッチD1を備えている。噛合い式クラッチD1は、前後進切換装置52と出力軸26との間の動力伝達経路に配設された第1動力伝達経路PT1を断接する第3係合装置、換言すれば第1クラッチC1と共に係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する為の係合装置である第3係合装置、として機能するものである。又、噛合い式クラッチD1は、油圧アクチュエータによって係合させられる際に回転を同期させる、同期機構としての公知のシンクロメッシュ機構S1を備えている。
第1動力伝達経路PT1は、噛合い式クラッチD1と噛合い式クラッチD1よりも入力軸22側に設けられた第1クラッチC1(又は第1ブレーキB1) とが共に係合されることで形成される。第1クラッチC1の係合により前進用動力伝達経路が形成され、第1ブレーキB1の係合により後進用動力伝達経路が形成される。第1動力伝達経路PT1が形成されると、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ伝動機構54を経由して出力軸26へ伝達することができる動力伝達可能状態となる。一方で、第1動力伝達経路PT1は、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が共に解放されるか、或いは噛合い式クラッチD1が解放されると、動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。
上記ギヤ伝動機構54は、第1動力伝達経路PT1の歯車式伝達装置であり、前進走行時に係合させられる第1クラッチC1は、歯車式伝達装置と直列に設けられた第1断接装置に相当する。前後進切換装置52を含めて歯車式伝達装置と見做すこともできる。また、第1クラッチC1が係合させられる前進走行時における第1動力伝達経路PT1の変速比である前進ギヤ変速比γgearは第1変速比である。この前進ギヤ変速比γgearは、車両発進時に用いられるもので、第2動力伝達経路PT2を含めて前進走行時の最大変速比である。前進ギヤ変速比γgearは、車両発進に適した値に設定されている。なお、本実施例では、噛合い式クラッチD1を第1断接装置と見做すこともできる。
無段変速機50は、入力軸22に設けられた有効径が可変のプライマリプーリ66と、出力軸26と同軸心の回転軸68に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ70と、それら各プーリ66、70の間に巻き掛けられた伝動ベルト72とを備え、各プーリ66、70と伝動ベルト72との間の摩擦力(ベルト挟圧力) を介して動力伝達が行われるベルト式の無段変速機構である。プライマリプーリ66では、プライマリプーリ66へ供給する油圧(すなわちプライマリ側油圧シリンダ66cへ供給されるプライマリ圧Ppri)が電子制御装置80(図3参照) により駆動される油圧制御回路74(図2参照) によって調圧制御されることにより、両シーブ66a、66b間のV溝幅を変更するプライマリ推力Wpri(=プライマリ圧Ppri ×受圧面積) が付与される。又、セカンダリプーリ70では、セカンダリプーリ70へ供給する油圧(すなわちセカンダリ側油圧シリンダ70cへ供給されるセカンダリ圧Psec)が油圧制御回路74によって調圧制御されることにより、両シーブ70a、70b間のV溝幅を変更するセカンダリ推力Wsec(=セカンダリ圧Psec ×受圧面積) が付与される。無段変速機50は、プライマリ推力Wpri(プライマリ圧Ppri)及びセカンダリ推力Wsec(セカンダリ圧Psec)が各々制御されることにより、各プーリ66、70のV溝幅が変化して伝動ベルト72の掛かり径(有効径) が変更され、変速比γcvt (=プライマリプーリ回転速度Npri /セカンダリプーリ回転速度Nsec)が変化させられると共に、伝動ベルト72が滑りを生じないように各プーリ66、70と伝動ベルト72との間の摩擦力が制御される。
上記無段変速機50の変速比γcvt は、第2動力伝達経路PT2の変速比に相当し、第2動力伝達経路PT2では、無段変速機50によって変速可能な低速ギヤ側(Lowギヤ側)の最大変速比γmax と高速ギヤ側(High ギヤ側)の最小変速比γmin との間の任意の変速比γcvt で動力伝達を行なうことができる。最大変速比γmax 、最小変速比γmin は、それぞれ第2変速比、第3変速比に相当し、最大変速比γmax は、第1動力伝達経路PT1における前記前進ギヤ変速比γgearと略同じでも良いが、本実施例では前進ギヤ変速比γgearよりも小さい所定の変速比とされている。無段変速機50のプライマリプーリ66、セカンダリプーリ70は、それぞれプライマリ側回転体、セカンダリ側回転体に相当し、プライマリプーリ66は噛合い式の回止めであるスプライン嵌合部76を介して入力軸22に動力伝達可能に連結されている。また、セカンダリプーリ70は、第2クラッチC2を介して出力軸26に連結されており、第2クラッチC2は、無段変速機50と直列に設けられた第2断接装置に相当する。
出力軸26は、回転軸68回りにその回転軸68に対して同軸心に相対回転可能に配置されている。第2クラッチC2は、無段変速機50よりも駆動輪14側、すなわちセカンダリプーリ70と出力軸26との間に設けられており、セカンダリプーリ70と出力軸26との間の動力伝達経路を選択的に断接する。第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2が係合されることで形成される。車両用動力伝達装置16は、第2動力伝達経路PT2が形成されると、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機50を経由して出力軸26へ伝達することができる動力伝達可能状態とされる。一方で、第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2が解放されると、動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。
このような車両用動力伝達装置16においては、ギヤ伝動機構54を有する第1動力伝達経路PT1を介してエンジン12の動力が出力軸26に伝達されるギヤ走行モード(実線矢印A参照)、および無段変速機50を有する第2動力伝達経路PT2を介してエンジン12の動力が出力軸26に伝達されるCVT走行モード(破線矢印B参照)が可能である。ギヤ走行モードは、第1クラッチC1及び噛合い式クラッチD1が係合させられ且つ第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が解放されることによって成立させられ、前進走行が可能となる。尚、第1ブレーキB1及び噛合い式クラッチD1が係合させられ且つ第2クラッチC2及び第1クラッチC1が解放されることにより、後進走行が可能となる。一方、CVT走行モードは、第2クラッチC2が係合させられ且つ第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が解放されることによって成立させられる。このCVT走行モードでは前進走行のみが可能である。ギヤ走行モードは第1走行モードに相当し、CVT走行モードは第2走行モードに相当する。
上記CVT走行モードには、CVT(中車速)走行モードおよびCVT(高車速)走行モードがあり、CVT(中車速)走行モードでは噛合い式クラッチD1が係合される一方で、CVT走行(高車速) モードでは噛合い式クラッチD1が解放される。CVT(高車速) 走行モードで噛合い式クラッチD1が解放されるのは、例えば走行中のギヤ伝動機構54等の引き摺りをなくすと共に、高車速においてギヤ伝動機構54や遊星歯車装置52pの構成部材(例えばピニオンギヤ) 等が高回転化するのを防止する為である。噛合い式クラッチD1は、駆動輪14側からの入力を遮断する被駆動入力遮断クラッチとして機能する。
このような車両10は、エンジン12の出力制御や無段変速機50の変速制御、ロックアップクラッチ38の係合解放制御、ギヤ走行モードとCVT走行モードとの切換制御、などを行なうコントローラとして、図2に示す電子制御装置80を備えている。図2は、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等に分けて複数の電子制御装置を用いて構成される。電子制御装置80は、車両用動力伝達装置16の制御装置に相当する。
電子制御装置80には、例えばエンジン回転速度センサ90、入力回転速度センサ91、出力回転速度センサ92、アクセル開度センサ94、スロットル弁開度センサ95、シフトポジションセンサ96などから、エンジン回転速度Ne 、入力軸22の回転速度である入力回転速度Nin、出力軸26の回転速度である出力回転速度Nout 、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θacc 、電子スロットル弁のスロットル弁開度θth、シフトレバー97の操作位置であるシフトポジションPshなど、各種の制御に必要な種々の情報が供給される。入力回転速度Ninは、タービン回転速度でプライマリプーリ回転速度Npri であり、出力回転速度Nout は車速Vに対応する。シフトレバー97のシフトポジションPshは、例えば前進走行用のD位置、後進走行用のR位置、動力伝達を遮断するN位置、手動変速可能なM位置などで、そのシフトポジションPshに応じて電子制御装置80により自動変速機24が制御されて所定のレンジ(動力伝達状態)が成立させられる。すなわち、D位置では自動変速機24を自動的に変速して前進走行するD(ドライブ)レンジが成立させられ、R位置では自動変速機24の第1ブレーキB1を係合して後進走行するR(リバース)レンジが成立させられ、N位置では自動変速機24の動力伝達を遮断するN(ニュートラル)レンジが成立させられる。また、M位置は、Dレンジを前提として選択操作されるシフトポジションPshで、前進走行時にパドルシフト等の変速操作部材の手動操作に従って無段変速機50の変速範囲を増減するM(マニュアル)レンジが成立させられる。
又、電子制御装置80からは、車両10に設けられたエンジン12、油圧制御回路74などに、エンジン12の出力を制御するためのエンジン出力指令信号Se 、無段変速機50の変速比γcvt を制御するためのCVT指令信号Scvt 、車両用動力伝達装置16の走行モードを切り換えるためのモード切換指令信号Sswt 、ロックアップクラッチ38を係合解放制御するためのロックアップ指令信号Slu、などが出力される。エンジン出力指令信号Se は、エンジントルクに関連するエンジン12のスロットル弁開度θthや燃料噴射量などを制御するための指令信号である。CVT指令信号Scvt は、無段変速機50の変速比γcvt に関連するプライマリ圧Ppri やセカンダリ圧Psec を制御するための指令信号である。モード切換指令信号Sswt は、走行モードの切換に関連する第1クラッチC1、第1ブレーキB1、第2クラッチC2、及び噛合い式クラッチD1をそれぞれ係合解放制御するための指令信号である。
電子制御装置80は、エンジン制御部82、変速制御部84、ロックアップ制御部85、モード切換制御部86、およびガタ詰め制御部88を機能的に備えている。エンジン制御部82は、基本的にはアクセル開度θacc に応じてエンジン12のトルクを増減するように、エンジン出力指令信号Se を出力してスロットル弁開度θthや燃料噴射量などを制御する。変速制御部84は、DレンジまたはMレンジの前進走行時に無段変速機50の変速比γcvt を制御するもので、CVT走行モードにおいて、例えばアクセル開度θacc 及び車速V等の運転状態に基づいて予め定められた変速マップに従って目標入力回転速度Nintgt を算出し、実際の入力回転速度Ninが目標入力回転速度Nintgt となるように、CVT指令信号Scvt を出力して無段変速機50の変速比γcvt を制御する。具体的には、例えばアクセル開度θacc が大きく車速Vが低い程入力回転速度Ninが相対的に高くなるように、言い換えれば変速比γcvt が大きいLowギヤ側になり、アクセル開度θacc が小さく車速Vが高い程入力回転速度Ninが相対的に低くなるように、言い換えれば変速比γcvt が小さいHigh ギヤ側になるように、変速比γcvt が制御される。変速制御部84は、例えば変速比γcvt を連続的に変化させるように定められるが、有段変速機のように変速比γcvt を段階的に変化させることも可能である。ロックアップ制御部85は、例えば車速V等の運転状態に基づいて予め定められたロックアップマップに従ってロックアップ指令信号Sluを出力し、ロックアップクラッチ38を係合解放制御する。具体的には、例えば車速Vが所定値以下の低車速ではロックアップクラッチ38を解放し、その所定値を超えたらロックアップクラッチ38を係合するように、ロックアップクラッチ38が係合解放制御される。
モード切換制御部86は、第1動力伝達経路PT1を用いて走行するギヤ走行モードと、第2動力伝達経路PT2を用いて走行するCVT走行モードと、を切り換えるモード切換制御を実行する。ギヤ走行モードの前進ギヤ変速比γgearは、自動変速機24における第1速ギヤ段「1st」の変速比γ1で、CVT走行モードにおける前進走行時の変速比γcvt の範囲の中で最もLowギヤ側の変速比は、自動変速機24における第2速ギヤ段「2nd」の変速比γ2である。この第2速ギヤ段変速比γ2は、ギヤ走行モードの前進ギヤ変速比γgearよりも小さい最大変速比γmax でも良いが、本実施例では最大変速比γmax よりも更に小さい変速比、すなわち有段変速(1→2変速)に適した所定の変速比が定められている。したがって、ギヤ走行モードとCVT走行モードとは、例えば通常の有段変速機の変速マップにおける第1速ギヤ段「1st」と第2速ギヤ段「2nd」とを切り換える為の変速線に従って切り換えられる。この変速マップは、例えばアクセル開度θacc および車速V等の運転状態に基づいて定められ、例えばアクセル開度θacc が小さく車速Vが高くなると、第1速ギヤ段「1st」から第2速ギヤ段「2nd」へアップシフトし、アクセル開度θacc が大きく車速Vが低くなると、第2速ギヤ段「2nd」から第1速ギヤ段「1st」へダウンシフトするように定められる。すなわち、車両発進時等の低車速時にはギヤ走行モードで走行し、所定車速以上ではCVT走行モードで走行する。
そして、例えばギヤ走行モードの第1速ギヤ段「1st」からCVT走行モードの第2速ギヤ段「2nd」へアップシフトする際には、無段変速機50の変速比γcvt が第2速ギヤ段変速比γ2とされた状態で、第1クラッチC1を解放するとともに第2クラッチC2を係合するクラッチツークラッチ変速を実行するモード切換指令信号Sswt を出力する。また、CVT走行モードの第2速ギヤ段「2nd」からギヤ走行モードの第1速ギヤ段「1st」へダウンシフトする際には、第2クラッチC2を解放するとともに第1クラッチC1を係合するクラッチツークラッチ変速を実行するモード切換指令信号Sswt を出力する。前記変速制御部84は、CVT走行モードによる走行時に、基本的には第2速ギヤ段変速比γ2〜最小変速比γmin の範囲内で無段変速機50の変速比γcvt を変速制御する。
ここで、ギヤ走行モードによる走行時には、第2動力伝達経路PT2の無段変速機50のプライマリプーリ66は遊動状態で入力軸22と一体的に回転させられるが、そのプライマリプーリ66と入力軸22とは、スプライン嵌合部76を介して連結されているため、僅かな回転変動などでそのスプライン嵌合部76でガタ打ち音が発生する。組付性等の観点で、スプライン嵌合部76には通常所定の遊びが設けられるため、その遊びに起因してガタ打ち音が発生する。特に、ロックアップクラッチ38の解放時はトルクコンバータ20によってトルクが増幅されるため、ガタ打ち音が大きくなる傾向がある。また、アクセル開度θacc が0であるアクセルOFFのクリープ走行等の低車速時には、エンジン音や風切り音が小さいため、ガタ打ち音が問題になる傾向がある。
ギヤ走行モードによる走行時に無段変速機50の変速比γcvt が最大変速比γmax に保持されると、第1動力伝達経路PT1の前進ギヤ変速比γgearとの相違により、第2クラッチC2は、それ等の変速比の相違に基づいて相対回転させられ、引き摺りトルクが発生し、その引き摺りトルクによってスプライン嵌合部76に負荷が生じる。しかし、最大変速比γmax は、前進ギヤ変速比γgearとの差が小さいため、第2クラッチC2の相対回転速度が小さく、スプライン嵌合部76をガタ詰めできるような十分な引き摺りトルクは得られない。言い換えれば、ギヤ走行モードによる走行時に無段変速機50の変速比γcvt が最大変速比γmax とされた場合に、第2クラッチC2の引き摺りトルクによる動力伝達損失が小さくなるように、その最大変速比γmax を前進ギヤ変速比γgearに近い変速比に設定することが望ましく、前進ギヤ変速比γgearと第2速ギヤ段変速比γ2との間の所定の変速比が最大変速比γmax とされる。
これに対し、本実施例ではガタ詰め制御部88が設けられ、ギヤ走行モードによる前進走行時にスプライン嵌合部76をガタ詰めするガタ詰め制御が行われるようになっている。このガタ詰め制御部88によるガタ詰め制御は、DレンジまたはMレンジによる前進走行時に図3のフローチャートのステップS1〜S11(以下、単にS1〜S11という。以後のフローチャートも同じ。)に従って実行される。
図3のS1では、第1速ギヤ段「1st」のギヤ走行モードか否かを判断し、ギヤ走行モードでなければそのまま終了し、ギヤ走行モードの場合はS2を実行する。S2では、ロックアップクラッチ38が解放状態(ロックアップOFF)か否かを判断し、ロックアップOFFでない場合はそのまま終了し、ロックアップOFFの場合はS3を実行する。S3では、車速Vが予め定められた判定車速V1以下の低車速か否かを判断し、V>V1の場合はそのまま終了し、判定車速V1以下の低車速の場合はS4を実行する。判定車速V1は、例えばエンジン音や風切り音が小さくてスプライン嵌合部76のガタ打ち音が問題になるような一定値(例えば10〜20km/時程度)で、アクセル開度θacc ≒0であるアクセルOFFのクリープ走行等を想定して設定される。S4では、第2動力伝達経路PT2の変速比すなわち無段変速機50の変速比γcvt が、最大変速比γmax か否かを判断し、変速比γcvt が最大変速比γmax でない場合はそのまま終了し、γcvt =γmax の場合はS5のガタ詰め制御を実行する。
S5では、無段変速機50の変速比γcvt をHigh ギヤ側である最小変速比γmin 側へ変速する。すなわち、変速制御部84は、第1速ギヤ段「1st」のギヤ走行モードによる走行時には、基本的には無段変速機50の変速比γcvt を最大変速比γmax に保持しているが、その変速制御部84による変速制御に優先して無段変速機50の変速比γcvt を最大変速比γmax から最小変速比γmin 側へずらすのである。図4は、この時の変速比γcvt の変化パターンの一例で、時間t1は、S4の判断がYES(肯定)になってS5が開始された時間であり、最大変速比γmax よりも小さい予め定められた一定値まで素早く変速し、その一定値に保持する場合である。図5に示すように、変速比γcvt を予め定められた一定の変化率で徐変(漸減)しても良いし、図6に示すようにパルス状に増減変化させたり、図7に示すように周期的に増減変化させたりするなど、種々の態様が可能である。
このように第2動力伝達経路PT2の変速比である無段変速機50の変速比γcvt が、最大変速比γmax から最小変速比γmin 側へ変速されると、第2動力伝達経路PT2の変速比(=γcvt)と第1動力伝達経路PT1の変速比(=γgear)との差が大きくなるため、その変速比の相違の増加に伴って第2クラッチC2の相対回転が大きくなる。第2クラッチC2は湿式の摩擦係合装置で潤滑油によって潤滑されているため、その相対回転に起因して第2クラッチC2に引き摺りトルクが発生し、その引き摺りトルクによりスプライン嵌合部76に負荷が生じてガタ詰めされ、ガタ打ち音が抑制される。図6、図7に示すように変速比γcvt を周期的に増減変化させる場合、その変化の位相をガタ打ちの周期と合わせることで、ガタ打ち音を効果的に低減することができる。
図3に戻って、次のS6ではロックアップ制御部85によりロックアップクラッチ38を係合(ロックアップON)させるロックアップ指令信号Sluが出力されたか否かを判断し、ロックアップONのロックアップ指令信号Sluが出力された場合は、S7で無段変速機50の変速比γcvt を最大変速比γmax まで戻してガタ詰め制御を終了する。また、S8では、ロックアップONのロックアップ指令信号Sluに従ってロックアップクラッチ38が係合させられる。S7で無段変速機50の変速比γcvt が最大変速比γmax まで戻されると、第2動力伝達経路PT2の変速比(=γmax)と第1動力伝達経路PT1の変速比(=γgear)と の差が小さくなるため、第2クラッチC2の引き摺りトルクが低減されて動力伝達損失が小さくなる。
S6の判断がNO(否定)の場合、すなわちロックアップOFF状態が維持される場合には、S9を実行する。S9では、モード切換制御部86により、第1速ギヤ段「1st」から第2速ギヤ段「2nd」へ切り換える変速指令の有無、すなわち第1動力伝達経路PT1を用いて走行するギヤ走行モードから第2動力伝達経路PT2を用いて走行するCVT走行モードへ切り換えるモード切換指令信号Sswt が出力されたか否か、を判断する。そして、ギヤ走行モードからCVT走行モードへ切り換えるモード切換指令信号Sswt が出力された場合はS10を実行し、前記S7と同様に無段変速機50の変速比γcvt を最大変速比γmax まで戻してガタ詰め制御を終了する。
S11では、モード切換指令信号Sswt に従って、第1速ギヤ段「1st」から第2速ギヤ段「2nd」へ切り換えるモード切換制御が行なわれる。本実施例では、S10で無段変速機50の変速比γcvt が最大変速比γmax まで戻されるため、従来と同様にしてモード切換制御を行なうことができる。すなわち、無段変速機50の変速比γcvt を最大変速比γmax から第2速ギヤ段変速比γ2へ変速した後に、第1クラッチC1を解放するとともに第2クラッチC2を係合するクラッチツークラッチ変速が行なわれる。前記S9の判断がNOの場合、すなわち第1速ギヤ段「1st」が維持される場合で、言い換えれば第1動力伝達経路PT1を用いて走行するギヤ走行モードが維持される場合は、S5のガタ詰め制御を継続するとともにS6以下の各ステップを繰り返し実行する。
図4〜図7における時間t2は、S6またはS9の判断がYESになり、S7またはS10の実行が開始された時間である。S7およびS10では、無段変速機50の変速比γcvt が例えば一定時間で最大変速比γmax まで戻されるように変速が行なわれる。時間t3は、無段変速機50の変速比γcvt が最大変速比γmax まで戻された時間で、ガタ詰め制御が終了した時間である。S7およびS10では、無段変速機50の変速比γcvt を速やかに最大変速比γmax まで戻したり、一定の変化率で漸増させて最大変速比γmax まで戻したりしても良い。
このように本実施例では、第1走行モードであるギヤ走行モードによる走行時に、一定の条件下で無段変速機50の変速比γcvt が、最大変速比γmax から最小変速比γmin 側へずらすガタ詰め制御が行われる。これにより、第1動力伝達経路PT1および第2動力伝達経路PT2の変速比の相違が大きくなり、その変速比の相違の増大により第2動力伝達経路PT2の第2クラッチC2の相対回転が大きくなるとともに、その第2クラッチC2の引き摺りトルクが大きくなる。そして、その第2クラッチC2の引き摺りトルクによってスプライン嵌合部76に負荷が作用し、その負荷によりスプライン嵌合部76がガタ詰めされて、ガタ打ち音の発生が抑制される。
上記第2クラッチC2の引き摺りトルクによって第1動力伝達経路PT1および第2動力伝達経路PT2には循環トルクが生じるが、第2クラッチC2は解放状態であるため、従来技術(特許文献1)のように半係合させる場合に比較して小さい。このため、駆動、被駆動等の走行状態に応じて無段変速機50の変速比γcvt の増減方向を切り換えるなどの面倒な制御が不要であり、無段変速機50によって第2動力伝達経路PT2の変速比(=γcvt )を最大変速比γmax からHigh 側すなわち最小変速比γmin 側へずらすだけで良く、簡便に実施することができる。また、第2動力伝達経路PT2の変速比に関し、ギヤ走行モードの変速比である前進ギヤ変速比γgearと等しい変速比を挟んで大側および小側へ変速する必要がなく、最大変速比γmax から最小変速比γmin 側へずらすだけで良いため、無段変速機50の変速比範囲の拡大や大型化の必要がなく、従来の無段変速機50をそのまま使用できる。
また、本実施例ではトルクコンバータ20によってトルクが増幅され、ガタ打ち音が大きくなるロックアップOFFを条件としてガタ詰め制御が行なわれるため、循環トルクが生じるガタ詰め制御の実施が、ガタ打ち音が大きい場合に限定され、循環トルクによる燃費性能の悪化が抑制される。
また、エンジン音や風切り音が小さくてガタ打ち音が問題になる低車速時、すなわち車速V≦V1、であることを条件としてガタ詰め制御が行なわれるため、循環トルクが生じるガタ詰め制御の実施が、ガタ打ち音が問題になる場合に限定され、循環トルクによる燃費性能の悪化が抑制される。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図8〜図10は、何れも前記図3の代わりに前記ガタ詰め制御部88によって実行される信号処理を説明するフローチャートである。図8は、図3に比較してS3を省略した場合、すなわち車速V≦V1の条件を設けることなくS5のガタ詰め制御を行なう場合で、判定車速V1よりも高車速でも一定の条件下でガタ詰め制御が実行される。
図9は、図8に比較して更にロックアップクラッチ38に関する要件(S2)を省略した場合で、ロックアップクラッチ38のON、OFFに拘らずS5のガタ詰め制御が実行される。この場合は、ロックアップ制御に関するS6〜S8も不要である。
図10は、Pレンジが選択されている状態でエンジン12の始動に伴ってガタ詰め制御が開始される場合で、図9におけるS5以下の各ステップがエンジン12の始動に伴って直ちに実行される。図10のR1〜R4は、前記S5、S9〜S11と同じである。すなわち、Pレンジの段階でR1を実行し、無段変速機50の変速比γcvt を最大変速比γmax よりもHigh ギヤ側の所定の変速比へ変速しておくことにより、DレンジまたはMレンジが選択されてギヤ走行モードでの発進、走行時にスプライン嵌合部76がガタ詰めされるようにしてガタ打ち音を抑制する。そして、モード切換制御部86により第1速ギヤ段「1st」から第2速ギヤ段「2nd」へ切り換える変速指令、言い換えればギヤ走行モードからCVT走行モードへ切り換えるモード切換指令信号Sswt が出力され、R2の判断がYESになったら、R3を実行してガタ詰め制御を終了する。この場合も、車速Vやロックアップクラッチ38のON、OFFに拘らずガタ詰め制御が実行され、実質的に図9の実施例と同様の作用効果が得られる。なお、PレンジからRレンジやNレンジへ切り換えられた場合、R1のガタ詰め制御を終了しても良いが、RレンジやNレンジへ切り換えられた場合も、そのままR1のガタ詰め制御を継続実施しても良い。また、DレンジまたはMレンジが選択された場合にR1以下の実行が開始されるようにしても良い。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
16:車両用動力伝達装置 22:入力軸 26:出力軸 50:無段変速機 54:ギヤ伝動機構(歯車式伝達装置) 76:スプライン嵌合部(回止め) 80:電子制御装置(制御装置) 88:ガタ詰め制御部 PT1:第1動力伝達経路 PT2:第2動力伝達経路 C1:第1クラッチ(第1断接装置) C2:第2クラッチ(第2断接装置) γgear:前進ギヤ変速比(第1変速比) γmax :最大変速比(第2変速比) γmin :最小変速比(第3変速比)
Claims (1)
- 入力軸と出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路が並列に設けられているとともに、
前記第1動力伝達経路には第1断接装置および歯車式伝達装置が直列に設けられており、該歯車式伝達装置によって得られる第1変速比で動力伝達を行う一方、
前記第2動力伝達経路には摩擦係合式の第2断接装置および無段変速機が直列に設けられており、前記第1変速比と略同じか該第1変速比よりも小さい第2変速比と、該第2変速比よりも小さい第3変速比との間の任意の変速比で動力伝達を行うことができるとともに、該第2動力伝達経路は前記入力軸および前記出力軸の少なくとも一方に噛合い式の回止めを介して連結されている、
車両用動力伝達装置に関し、
前記第1断接装置を接続するとともに前記第2断接装置を遮断することにより前記第1動力伝達経路を用いて走行する第1走行モードを成立させ、前記第1断接装置を遮断するとともに前記第2断接装置を接続することにより前記第2動力伝達経路を用いて走行する第2走行モードを成立させる車両用動力伝達装置の制御装置において、
前記第1走行モードによる走行時に、前記第2断接装置が遮断状態のまま該第2断接装置の前後の相対回転が大きくされるように、前記無段変速機によって前記第2動力伝達経路の変速比を前記第2変速比から前記第3変速比側へずらすガタ詰め制御を行うガタ詰め制御部を有する
ことを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
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