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JP2020147653A - フィルム用アクリル樹脂組成物、及びアクリル樹脂フィルム - Google Patents

フィルム用アクリル樹脂組成物、及びアクリル樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】トリミング性と表面硬度を両立しつつ、耐折り曲げ白化性を有するフィルムを形成できるアクリル樹脂組成物を提供すること。【解決手段】平均粒子径が70nm以上110nm以下の架橋弾性体層(A)と、シェル層(B)とを含む多層構造重合体粒子(C)、及び、メタクリル酸メチルを75重量%以上含有する熱可塑性樹脂(D)、を含有するフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。(A)は、アクリル酸アルキル(a−1)75重量%以上、及び(メタ)アクリル酸アリル(H)を含む架橋エラストマー層を含む。(B)は、メタクリル酸メチル(b−1)50重量%以上、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(b−2)、及び連鎖移動剤を含む。(E)に対する(A)の重量割合が15.5%以上21%未満、(E)に対する(b−2)の重量割合が0.8%以上3%未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルム用アクリル樹脂組成物、並びに、それを用いたアクリル樹脂フィルム、積層フィルム、及び成形品に関する。
ゴム状弾性体を含むアクリル系樹脂組成物を加工成形してなるアクリル系樹脂フィルムは、透明性や硬度、耐候性、二次成形性等の優れた特性を活かして、様々な用途に使用、展開されている。例えば、自動車内外装部品の表面にフィルムをラミネートして使用する塗装代替としての加飾・保護用途や、携帯電子機器やパソコンや家電等の製品の外装の加飾・保護用途や、反射防止性、防眩、防汚性などの機能付与、建材、家具、床材等の加飾・保護用途等があげられる。
このような平面形状あるいは立体形状を有する表面の加飾・保護などの用途に適用する際、アクリル系樹脂フィルムには、圧空成形、真空成形、熱プレス成形、インサート/インモールド成形、3次元ラミネート成形等の二次成形が施される。
アクリル系樹脂フィルムやこれを用いた加飾・保護フィルムの二次成形をする際に、あるいは、成形後又は加飾基材への積層後にフィルムをトリミングする際に、フィルムに割れやクラックを生じたり、白化を生じたりしやすいが、これらは、製品の外観不良となり、加飾・保護に際しての歩留まりを低下させる。このためアクリル系樹脂フィルムには、トリミングの際に割れやクラックを生じない優れた耐割れ性(以下、トリミング性ともいう)と、引っ張りや折り曲げ、切断時の応力によって生じる白化が少ないこと(以下、耐折り曲げ白化性という)を両立することが求められる。また、加飾・保護を施した部材表面が使用に際して容易に傷つかないことも必要であるため、アクリル系樹脂フィルムには一定の表面硬度を有していることも求められる。
さらに近年、自動車内装部材の表面のように、立体形状を有する基材に、各種の絵柄や図柄、光沢や艶消し、エンボスなどの各種表面形状を施したり、耐候性、反射防止性、防眩性、防汚性、日焼け止め剤などに対する耐薬品性などの種々の機能を付与することが求められる場合には、アクリル系樹脂フィルムの表面に凹凸形状を賦型したり、各所の機能を付与するための添加剤を添加したり、フィルムに表面処理やコーティング層の積層などが行われることがある。このような表面形状の付与、添加剤の使用、表面処理やコーティングなどを行う場合には、表面の凹凸部分や、添加剤、硬質で脆性のコーティングなどに起因して、アクリル系樹脂フィルムが割れやすくなりやすい。このため、アクリル系樹脂フィルムには、表面硬度や耐折り曲げ白化性といった特長を維持しつつ、従来よりも一層の耐割れ性(トリミング性)の向上が求められている。
このような種々の加飾や機能性付与を可能にするため、各種のアクリル系樹脂フィルムが提案されているが、表面硬度とトリミング性と耐折り曲げ白化性は互いにトレードオフの関係にあり、これらを十分なレベルで兼ね備えたアクリル系樹脂フィルムはまだ見出されていない。
以上で述べた用途に適用可能なアクリル系樹脂フィルムを提供するには、例えば、アクリル系樹脂フィルムを構成する熱可塑性重合体の還元粘度、ゴム含有重合体の粒子径、ゴム含有量等を規定する方法(特許文献1)、アクリル系重合体の還元粘度、多層構造アクリル系重合体の含有量を規定する方法(特許文献2、及び特許文献3)、粒子径の異なるゴム粒子を併用し、高温加工時のフィルムの白濁を抑える方法(特許文献4)等が知られている。これらのフィルムは透明性やフィルム成形性が優れる。
しかしながら、特許文献1〜4に記載のアクリル系樹脂フィルムは、フィルムの耐折曲げ白化性を考慮して開発されていない。このため、特許文献1〜4に記載のアクリル系樹脂フィルムについて、複雑な形状の成形品にフィルムを積層する場合に、コーナー等に応力が集中することにより、フィルムの白化が生じやすい。フィルムの白化が生じると、アクリル系樹脂フィルムを備える成形品の商品価値が著しく毀損される。さらに、これらのアクリル系樹脂フィルムは、ゴム状弾性体の使用量が多く、成形性や耐割れ性を充分に高くするとフィルムの表面硬度が低下する場合があった。
表面硬度が高く、耐折曲げ白化性に優れたフィルムとして、メタクリル酸エステル系樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)、及びゴム含有グラフト共重合体(C)を含むメタクリル系樹脂組成物(D)をフィルム化してなるアクリル系樹脂フィルムが、特許文献5にて提案されている。
特許文献5では、ゴム含有グラフト共重合体(B)及びゴム含有グラフト共重合体粒子(C)を構成するゴム粒子の量を、それぞれ最適化したり、ゴム含有グラフト共重合体(B)及びゴム含有グラフト共重合体粒子(C)の層構成や、各層の組成を最適化したりすることによって、アクリル系樹脂フィルムに二次成形を施す際等におけるフィルムの白化の発生を抑制すると開示されている。
ところが、特許文献5に記載のアクリル系樹脂フィルムは、粒子径が大きいゴム含有グラフト共重合体(B)を一定量使用する結果、依然として白化が大きく、折り曲げや二次成形後、加飾成形後の切断時などに十分に白化が小さくなるフィルムを実現できておらず、濃色や高い透明性を必要とする加飾の際に問題となる可能性があった。まだ全体的にゴム状弾性体の使用量が少なく、トリミング時のクラックや割れの抑制は必ずしも十分ではなかった。
特許文献6及び9では、コアのゴムの粒子径と架橋グラフト交叉剤の濃度の関係を規定したコアシェルゴムを用いたアクリル樹脂フィルムが開示されている。しかし、このフィルムでは白化は生じにくいものの、トリミング性が低く、最も高いトリミング性を有すると考えられる特許文献9の実施例6でさえトリミング性が十分ではなかった。また、マトリクス樹脂成分よりもアクリル酸アルキル成分が多く軟質と考えれられるコアシェルゴムのグラフトポリマーの含有量が多い。そのため、マトリクス樹脂相が軟質化するために表面硬度が低く、特許文献9の実施例6の鉛筆硬度は実際には2Bであった。
特許文献7では、コアシェルゴムの架橋グラフト交叉剤の濃度が低く、ゴム成分量を全体の25−40重量%と比較的高濃度で配合するアクリル系樹脂フィルムが開示されている。この文献では架橋度の低いゴム成分を高濃度で配合するため、トリミング性には優れるものの、そのトレードオフとして表面硬度が著しく低くなり、白化が生じやすいといった問題があった。
特許文献8では、アクリレート成分含有量が低い耐熱性の高いメタクリル樹脂マトリクスと、粒子径の比較的大きなコアシェルゴムを5−30重量%含有するアクリル樹脂フィルムが開示されている。このフィルムは、表面硬度は高いものの、ゴム成分が少なく、更にゴム粒子内部に硬質の架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含有するため、トリミング性が低い、また粒子径の大きなコアシェルゴムを使用するため、白化も比較的大きい、という問題があった。
特開平8−323934号公報 特開平10−279766号公報 特開平10−306192号公報 特許第3835275号公報 特許第5782521号公報 特許第4836362号公報 特許第4809542号公報 特許第5973658号公報 特許第4291994号公報
本発明は、上記現状に鑑み、トリミング性(トリミング時の耐割れ性)と表面硬度を両立しつつ、二次成形時や切断時の白化が少ない耐折り曲げ白化性を有するフィルムを形成できるフィルム用アクリル樹脂組成物、並びに、それを用いたアクリル樹脂フィルム、積層フィルム、及び成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、架橋弾性体層の粒子径と架橋・グラフト交叉剤の使用量が特定の関係を満たし粒子径が特定範囲にある特定組成の架橋弾性体層の存在下に、特定のグラフト率を満足するように特定組成のシェル層を重合してなる多層構造重合体粒子を、樹脂組成物全体に対する架橋弾性体層の割合及びシェル層のアクリル酸アルキルエステルの割合がそれぞれ特定範囲に収まるように、メタクリル酸メチルを主体とする熱可塑性樹脂に配合することで、従来達成されていないレベルの優れたトリミング性と表面硬度を両立しつつ、優れた耐折り曲げ白化性も有するアクリル樹脂フィルムを提供できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のものである。
[1] 平均粒子径が70nm以上110nm以下の架橋弾性体層(A)と、該架橋弾性体層(A)にグラフト重合している一層以上のシェル層(B)とを含む多層構造重合体粒子(C)、及び、
メタクリル酸メチルを75重量%以上含有する熱可塑性樹脂(D)、を含有する、フィルム用アクリル樹脂組成物(E)であって、
架橋弾性体層(A)は、アクリル酸アルキル(a−1)75重量%以上、(メタ)アクリル酸アリルである架橋・グラフト交叉剤(H)、及び、他のモノマー(a−2)0重量%以上25重量%未満を含む単量体成分の重合体から構成される架橋エラストマー層を1層以上含み、
シェル層(B)は、メタクリル酸メチル(b−1)50重量%以上、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(b−2)、他のモノマー(b−3)0重量%以上50重量%未満、及び、連鎖移動剤を含有し、多官能性単量体を含まない単量体成分の重合体から構成され、
アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が15.5重量%以上21重量%未満であり、
アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対するアクリル酸アルキルエステル(b−2)の重量割合が0.8重量%以上3重量%未満であり、
多層構造重合体粒子(C)は、以下の1)〜4)を満たす、フィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
1)多層構造重合体粒子(C)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が、40重量%を超え、60重量%以下である。
2)架橋弾性体層(A)の平均粒子径d(nm)と、架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量w(但し、前記含有量wは、前記架橋エラストマー層を構成する前記単量体成分のうち、架橋・グラフト交叉剤(H)を除く成分の合計量を100重量部とした時の、架橋・グラフト交叉剤(H)の量の比率を示す)が、次の関係式を満たす。
0.029d≦w≦0.045d
3)架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率が、51%以上80%以下である。
4)多層構造重合体粒子(C)の全体量に対するアクリル酸アルキルエステル(b−2)の重量割合が、2重量%以上5重量%未満である。
[2] フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される75μm厚さのフィルムが、以下の5)〜7)を満たす、[1]に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
5)前記フィルムを23℃条件下でカッターにて切断し、形成された切断部に、目視で確認できるクラックがない。
6)23℃における引張破断伸度が、50%以上である。
7)前期フィルムの表面硬度が鉛筆硬度でHB以上である。
[3] フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される125μm厚さのフィルムが、以下の8)を満たす、[1]又は[2]に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
8)JIS P8115に準拠したMIT試験の測定回数が50回以上である。
[4] フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される125μm厚さのフィルムが、以下の9)を満たす、[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
9)23℃にて前記フィルムを15%延伸した時の延伸部位のヘイズ値が20%以下である。
[5] フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される125μm厚さのフィルムが、以下の10)を満たす、[4]に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
10)23℃にて前記フィルムを15%延伸した時の延伸部位のヘイズ値が10%以下である。
[6] 平均粒子径が150nm以上400nm以下の架橋弾性体層を含む多層構造重合体粒子(G)を、フィルム用アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対して0.5〜2.5重量%の割合で、さらに含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成されるアクリル樹脂フィルム(F)。
[8] 有機溶剤を含む液が塗布される対象として使用される、[7]に記載のアクリル樹脂フィルム(F)。
[9] [7]又は[8]に記載のアクリル樹脂フィルム(F)、及び
該フィルム(F)に積層された他のフィルム、を含む、積層フィルム。
[10] 成形品本体、並びに
該成形品本体の表面に積層された、[7]又は[8]に記載のアクリル樹脂フィルム(F)及び/又は[9]に記載の積層フィルム、を含む、成形品。
本発明によれば、トリミング性(トリミング時の耐割れ性)と表面硬度を両立しつつ、二次成形時や切断時の白化が少ない耐折り曲げ白化性を有するフィルムを形成できるフィルム用アクリル樹脂組成物、並びに、それを用いたアクリル樹脂フィルム、積層フィルム、及び成形品を提供することを提供することができる。本発明のアクリル樹脂フィルムは、優れた耐折り曲げ白化性を有するので、3次元形状を持つ成形品の表面に積層してもフィルムの白化が抑制される。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
<アクリル樹脂組成物(E)>
本発明のアクリル樹脂組成物(E)は、少なくとも、多層構造重合体粒子(C)、及び、熱可塑性樹脂(D)、を含有するものである。本発明の好適な実施形態によると、アクリル樹脂組成物(E)においては、熱可塑性樹脂(D)からなるマトリックス中に、多層構造重合体粒子(C)が分散している。
<熱可塑性樹脂(D)>
本発明で使用する熱可塑性樹脂(D)は、メタクリル酸メチルを75重量%以上含有するアクリル樹脂である。熱可塑性樹脂(D)中のメタクリル酸メチル割合は、硬度、成形性の観点から、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。また、上限値は100重量%であってもよいし、99重量%以下であってもよく、また、98重量%以下であってもよい。
アクリル樹脂は、耐熱性や剛性、表面硬度等を改善するため、特定の構造を有する構成単位が共重合や官能基修飾、変性等により導入されたものであってもよい。このような特定の構造としては、例えば、特開昭62−89705号、特開平02−178310号、及び国際公開第2005/54311等に示されているようなグルタルイミド構造、特開2004−168882号や特開2006−171464号等に示されているようなラクトン環構造、特開2004−307834号等に示されているような、(メタ)アクリル酸単位が熱的に縮合環化して得られるグルタル酸無水物構造、特開平5−119217号に示されているようなマレイン酸無水物構造、及び国際公開第2009/84541に示されるようなN-置換あるいは非置換マレイミド構造、国際公開第2013/157529等に示されるような、芳香族環が水素添加されたアルファメチルスチレン等の芳香族ビニル構造等が挙げられる。これらの構造がアクリル樹脂に導入されることで、分子鎖が剛直となり得る。その結果、耐熱性の向上、表面硬度の向上、加熱収縮の低減、耐薬品性の向上等の効果が期待できる。
熱可塑性樹脂(D)に含まれていてよい、メタクリル酸メチル以外の他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、芳香族ビニル誘導体、シアン化ビニル誘導体、又はハロゲン化ビニリデン等が挙げられる。これら他のモノマーは、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
前記アクリル酸誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−−フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、及びアクリル酸グリシジル等のアクリル酸エステル類が挙げられる。
前記メタクリル酸誘導体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸アダマンチル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。
前記芳香族ビニル誘導体としては、スチレン、ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等が挙げられる。
前記シアン化ビニル誘導体としては、アクリルニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
前記ハロゲン化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン、及びフッ化ビニリデン等が挙げられる。
アクリル樹脂の製造方法は、特に限定されないが、公知の懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、分散重合法等の重合法を適用可能である。また、公知のラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法のいずれを適用することも可能である。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、アクリル樹脂と少なくとも部分的に相溶性を有する熱可塑性樹脂を、アクリル樹脂と併用してもよい。アクリル樹脂とともに用いることができる熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶質の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、オレフィン−(メタ)アクリル酸誘導体樹脂、セルロース誘導体(セルロースアシレート等)、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、及びPHBH樹脂等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−N置換、又は非置換マレイミド樹脂、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、及びスチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の中では、スチレン系樹脂やポリカーボネート樹脂が、アクリル樹脂との相溶性に優れ、アクリル樹脂フィルムのトリミング性、耐溶剤性、低吸湿性等を向上できる可能性があることから好ましい。
<多層構造重合体粒子(C)>
多層構造重合体粒子(C)は、架橋弾性体層(A)と、該架橋弾性体層(A)にグラフト重合している一層以上のシェル層(B)とを含む、多層構造の重合体粒子である。本発明の好ましい実施形態によると、架橋弾性体層(A)は、粒子状のものであり、シェル層(B)は、架橋弾性体層(A)の粒子の表面側に位置しており、多層構造重合体粒子(C)は、いわゆるコアシェル構造を有することが好ましい。
本発明で使用する多層構造重合体粒子(C)においては、多層構造重合体粒子(C)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が、40重量%を超え、60重量%以下である。当該範囲内では、優れたトリミング性(トリミング時の耐割れ性)、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを提供することができ、特に表面硬度を向上させることができる。好ましくは41重量%以上58重量%以下であり、より好ましくは45重量%以上55重量%以下である。架橋弾性体層(A)の重量割合が40重量%以下では、一定のトリミング性を維持するための多層構造重合体粒子(C)のアクリル樹脂組成物(E)中の配合量が増加し、溶融粘度、溶融弾性の増加によるフィルムの外観品質や寸法精度の低下、表面硬度の低下の可能性がある。架橋弾性体(A)の重量割合が60重量%を超えると、後述するグラフト率を一定範囲に維持するのが難しくなり、多層構造重合体粒子(C)と熱可塑性樹脂(D)の界面の親和性が不足して、トリミング性の低下や、多層構造重合体粒子(C)の分散不良によるアクリル樹脂フィルム中のフィッシュアイなどの外観欠陥の増加の可能性がある。なお、後述するように、架橋弾性体層(A)は、その粒子内に同心球状の硬質あるいは半硬質のコア粒子を含む場合がある。架橋弾性体層(A)がこのようなコア粒子を含む場合、架橋弾性体層(A)の重量にはコア粒子の重量も含むものとする。
また、多層構造重合体粒子(C)をアクリル樹脂組成物(E)に配合するにあたっては、アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が15.5重量%以上21重量%未満となるような量で多層構造重合体粒子(C)は配合される。当該範囲内では、優れたトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを提供することができる。好ましくは17重量%以上20.9重量%以下であり、より好ましくは18重量%以上20.8重量%以下である。アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が15.5重量%未満の場合はトリミング性が低下したり耐折り曲げ白化性が悪化する可能性がある。また21重量%を超える場合は表面硬度が低下する可能性がある。
架橋弾性体層(A)は、アクリル酸アルキル(a−1)75重量%以上、(メタ)アクリル酸アリルである架橋・グラフト交叉剤(H)、及び、他のモノマー(a−2)0重量%以上25重量%未満を含む単量体成分の重合体から構成される架橋エラストマー層を含むものである。該架橋エラストマー層は、1層のみであってもよいし、2層以上から構成されるものでもよい。また、後述するように架橋弾性体層(A)の粒子は、その内部にコア粒子を含むものであってもよい。
前記架橋エラストマー層の単量体成分は全部を混合して1段階で重合されてもよい。また、フィルムの靱性、耐白化性等を調節する目的で、適宜、2段階以上の多段階に分けて重合されてもよく、各段階の単量体成分の組成は、同一であってもよいし、互いと異なるものであってもよい。
アクリル酸アルキル(a−1)としては、重合性に優れ、安価であり、ガラス転移温度が低い重合体を与える等の点から、アクリル酸の炭素数1以上22以下のアルキルエステルを特に好ましく用いることができる。
好ましい単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル等があげられる。これらは、単独で使用されてもよく、2種以上を併用されてもよい。
アクリル酸アルキル(a−1)の量は、架橋エラストマー層の単量体成分100重量%において75重量%以上である。この範囲でアクリル酸アルキル(a−1)を使用すると、アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性や引張破断時の伸びが良好であり、優れたトリミング性を達成することができる。好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上である。上限値は100%以下であればよく、架橋・グラフト交叉剤(H)及び他のモノマー(a−2)の量に応じて設定される。
アクリル酸アルキル(a−1)以外の他のモノマー(a−2)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル等のメタクリル酸エステル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸、及びその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸、及びその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸誘導体、無水マレイン酸、N−アルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイン酸誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル及び芳香族ビニル誘導体が特に好ましい。
他のモノマー(a−2)の量は、アクリル酸アルキル(a−1)及び架橋・グラフト交叉剤(H)の量に応じて設定され、架橋エラストマー層の単量体成分100重量%において0重量%以上25重量%未満である。他のモノマー(a−2)の使用量が多くなると、アクリル樹脂フィルムの耐衝撃性が低下しやすく、引張破断時の伸びが低下し、十分なトリミング性を達成できない場合がある。好ましくは1重量%以上30重量%未満であり、より好ましくは5重量%以上20重量%未満である。なお、他のモノマー(a−2)は任意のモノマーであり、使用しなくともよい。
架橋エラストマー層では、架橋・グラフト交叉剤(H)としてアクリル酸アリル及び/又はメタクリル酸アリル(両者をあわせて(メタ)アクリル酸アリルともいう)を使用する。これによって架橋構造を形成するとともに、架橋弾性体層(A)に対してシェル層(B)をグラフト重合させるためのグラフト点を形成する。(メタ)アクリル酸アリルの量は、架橋エラストマー層の単量体成分100重量%において0.1重量%以上10重量%以下が好ましく、0.5重量%以上5重量%以下がより好ましく、1重量%以上4重量%以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アリルの使用量が前記範囲内であれば、適切な架橋弾性体層(A)の架橋度とシェル層(B)のグラフト率を実現できるため、優れたトリミング性及び耐折り曲げ白化性を達成することができ、また、成形時における樹脂組成物の流動性の観点からも好ましい。
ただし、架橋エラストマー層では、(メタ)アクリル酸アリル以外の多官能性単量体を併用してもよく、そのような多官能性単量体としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、及びジプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
また、架橋弾性体層(A)において、後述するシェル層(B)によるグラフト被覆効率を高める目的で、架橋弾性体層(A)の(メタ)アクリル酸アリルの量を、架橋弾性体層(A)の粒子内部と表面近傍で変更してもよい。具体的には、特許第1460364号公報や特許第1786959号公報等に示されているように、架橋弾性体層(A)の粒子の表面近傍において、(メタ)アクリル酸アリルの含有量を該粒子の内部よりも多くすることにより、架橋弾性体層(A)のシェル層(B)による被覆を改善し、熱可塑性樹脂(D)への分散性を良好にしたり、多層構造重合体粒子(C)と熱可塑性樹脂(D)の界面の剥離によるトリミング性の低下を抑制したりすることができる。さらに、相対的に少量のシェル層(B)で充分な被覆が得られることから、多層構造重合体粒子(C)全体の配合量を削減でき、溶融粘度の低下によるアクリル樹脂フィルムの溶融加工性、フィルム加工精度の向上、表面硬度の向上等が期待できる。なおこの場合、後述する架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量wは、架橋エラストマー層を構成する全単量体成分のうち、架橋・グラフト交叉剤(H)を除く成分の合計量を100重量部とした時の、架橋・グラフト交叉剤(H)の総量の比率を示す。
架橋エラストマー層の単量体成分には、架橋エラストマー層を構成する重合体の分子量や架橋密度の制御、及び重合反応の不均化停止による重合体の二重結合末端量と関連する熱安定性の制御等の目的で、連鎖移動剤を加えてもよい。連鎖移動剤は、通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いられる。連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、及びt−ドデシルメルカプタン等の炭素原子数2以上20以下の単官能あるいは多官能のメルカプタン化合物、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素あるいはそれらの混合物等が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、架橋エラストマー層の単量体成分の総量100重量部に対して、0重量部以上0.1重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0重量部以上0.2重量部以下である。しかし、架橋エラストマー層において連鎖移動剤は任意の成分であり、使用しなくともよい。
架橋弾性体層(A)の粒子は、架橋エラストマーによって形成された単一層からなるか、あるいは、架橋エラストマーによって形成された2層以上の多層からなるものであってもよいが、架橋エラストマー層の内部に硬質又は半硬質の重合体からなるコア粒子を備える、同心球状の多層構造を有していてもよい。このようなコア粒子としては、例えば特公昭55−27576号等に示されるような硬質の架橋メタクリル樹脂粒子や、特開平4−270751に示されるような、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル-スチレンからなる半硬質の架橋粒子、さらには架橋度の高い架橋ゴム粒子等が挙げられる。このようなコア粒子を備えることにより透明性や色調等の改善が期待できる場合がある。
コア粒子の硬質又は半硬質の重合体を構成する単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等のアクリル酸アルキル、スチレン、αメチルスチレン等の芳香族ビニル、アクリロニトリル等のシアン化ビニル、無水マレイン酸やマレイミド類等のマレイン酸誘導体、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体等が挙げられる。
これらのなかでは特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリル等が好ましい。また多官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸アリルや、架橋エラストマー層について上述した化合物を使用できる。さらに硬質又は半硬質の架橋樹脂層の重合時には、これらの単量体に加えて、架橋密度の制御やポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤は架橋エラストマー層の重合と同様の連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤の使用量は、硬質又は半硬質の架橋樹脂層の総量100重量部に対して、0重量部以上2重量部以下が好ましく、より好ましくは0重量部以上0.5重量部以下である。
本発明において、架橋弾性体層(A)の平均粒子径は70nm以上110nm以下である。当該範囲内では、優れたトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを提供することができる。好ましくは75nm以上100nm以下である。ここで、架橋弾性体層(A)の平均粒子径は、日機装株式会社製、Microtrac粒度分布測定装置MT3000等のレーザー回折式の粒度分布測定装置を使用し、ラテックス状態での光散乱法を用いて測定できる。
本発明において、架橋弾性体層(A)の平均粒子径と架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量は、フィルムのトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性に大きく影響するため、本発明の効果を達成するには、特定の関係を満足するように両値を設定することが望ましい。具体的には、架橋弾性体層(A)の平均粒子径d(nm)と、架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量wが、次の関係式:
0.029d≦w≦0.045d
を満足するように、架橋弾性体層(A)の平均粒子径と架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量を設定する。上記関係式の範囲内においては、優れたトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを実現することができる。wが0.029d未満の場合は、耐折り曲げ白化性が悪化する可能性がある。またwが0.045dを超えると、トリミング性が低下する可能性がある。ただし、架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量wは、前記架橋エラストマー層を構成する単量体成分のうち、架橋・グラフト交叉剤(H)を除く成分の合計量を100重量部とした時の、架橋・グラフト交叉剤(H)の量の比率を示すものである。
<シェル層(B)>
シェル層(B)は、架橋弾性体層(A)の粒子の存在下に、シェル層用の単量体成分をグラフト重合して、架橋弾性体層(A)にシェル層(B)の重合体をグラフト結合させることで形成することができる。なお、前記グラフト重合では、架橋弾性体層(A)にグラフト結合していない重合体成分(フリーポリマーともいう)が一部生じる場合があるが、このフリーポリマーも多層構造重合体粒子(C)に含まれるものである。
シェル層(B)は、多層構造重合体粒子(C)のうち架橋弾性体層(A)の占める部分以外を占める。多層構造重合体粒子(C)の全体量に対するシェル層(B)の重量割合は40重量%以上、60重量%未満である。シェル層(B)の重量割合が40重量%未満であると、後述するグラフト率を一定範囲に維持することが難しく、アクリル樹脂フィルム(F)中の多層構造重合体粒子(C)の分散性が低下してフィルム中のフィッシュアイなどの外観欠陥の原因となったり、トリミング性や耐折り曲げ白化が低下する可能性がある。シェル層(B)の重量割合が60重量%以上であると、グラフトポリマーのグラフト交叉部位が、架橋弾性体層(A)粒子の内部に侵入しやすくなり、架橋弾性体層が硬くなるためにトリミング性が低下する可能性がある。またアクリル樹脂フィルム(F)中で一定の架橋弾性体層(A)の含有量を維持するためにアクリル樹脂フィルム(F)に配合する多層構造重合体粒子(C)の量が多くなり、アクリル樹脂組成物(E)の溶融粘度や溶融弾性の増大を来し、寸法精度や外観品質の優れたアクリル樹脂フィルムの溶融成膜が難しくなる可能性がある。またアクリル樹脂フィルム中で熱可塑性樹脂(D)と比較してやや軟質のシェル層(B)の比率が高くなると、フィルムの表面硬度の低下を来しやすい。
シェル層(B)は、メタクリル酸メチル(b−1)50重量%以上、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(b−2)、他のモノマー(b−3)0重量%以上50重量%未満、及び、連鎖移動剤を含有し、多官能性単量体を含まない単量体成分の重合体から構成されるものである。シェル層(B)は1層のみからなるものであってもよいし、2層以上から構成されるものであってもよい。
メタクリル酸メチル(b−1)の量は、シェル層(B)の単量体成分100重量%において50重量%以上である。この範囲でメタクリル酸メチル(b−1)を使用すると、熱可塑性樹脂(D)との相溶性に優れ、フィルムの透明性を高めることができると共に、優れたトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを実現することができる。好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上限値は100重量%未満であればよく、後述するアクリル酸アルキルエステル(b−2)、及び他のモノマー(b−3)の量に応じて設定されるが、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下、さらに好ましくは95重量%以下である。
炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(b−2)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル等があげられる。これらは、単独で使用されてもよく、2種以上を併用されてもよい。前記アルキルの炭素数は1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。
本発明において、多層構造重合体粒子(C)の全体量に対するアクリル酸アルキルエステル(b−2)の重量割合、及び、アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対するアクリル酸アルキルエステル(b−2)の重量割合を、それぞれ特定範囲に設定する。前者は2重量%以上5重量%未満であり、好ましくは2.1重量%以上4.5重量%以下であり、より好ましくは2.2重量%以上4.0重量%以下である。後者は0.8重量%以上3重量%未満であり、好ましくは0.8重量%以上2.5重量%以下であり、より好ましくは0.8重量%以上2.0重量%以下であり、さらに好ましくは0.8重量%以上1.5重量%以下である。以上の範囲を満足するように、アクリル酸アルキルエステル(b−2)の使用量、シェル層(B)の使用量、及び、多層構造重合体粒子(C)の使用量をそれぞれ設定することで、優れたトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを実現することができる。前者が2重量%未満であるか、後者が0.8重量%未満の場合は、トリミング性や耐折り曲げ白化性が低下する可能性がある。前者が5重量%以上であるか、後者が3重量%以上の場合、フィルムの表面硬度が低下する可能性がある。
メタクリル酸メチル(b−1)とアクリル酸アルキルエステル(b−2)を除く他のモノマー(b−3)としては、例えば、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル以外のアクリル酸エステル、スチレン及びその核置換体等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、N−置換マレイミド類、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
他のモノマー(b−3)の量は、メタクリル酸メチル(b−1)及びアクリル酸アルキルエステル(b−2)の量の量に応じて設定され、シェル層(B)の単量体成分100重量%において0重量%以上50重量%未満である。より好ましくは0重量%以上30重量%未満であり、さらに好ましくは0重量%以上10重量%未満である。なお、他のモノマー(b−3)は任意のモノマーであり、使用しなくともよい。
また、他のモノマー(b−3)として、反応性紫外線吸収剤であるモノマーを使用してもよい。つまり、シェル層(B)が、反応性紫外線吸収剤に由来する構成単位を含んでもよい。これにより、耐候性、耐薬品性が良好なアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
反応性紫外線吸収剤としては、公知の反応性紫外線吸収剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類を使用することができる。具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。より好ましくは、コスト及び取り扱い性から、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。
反応性紫外線吸収剤を使用する場合、反応性紫外線吸収剤の量は、シェル層(B)の単量体成分100重量%において0.01重量%以上5重量%以下が好ましく、0.1重量%以上3重量%以下がより好ましい。
シェル層(B)の単量体成分は、連鎖移動剤を含有する。シェル層(B)において連鎖移動剤を使用することで、シェル層(B)を構成する重合体の分子量、後述するグラフト率や、架橋弾性体層(A)に結合していないフリーポリマーの生成量等を制御することができる。シェル層(B)における連鎖移動剤としては、架橋エラストマー層について上述した連鎖移動剤と同様の連鎖移動剤を使用できるが、なかでも、メルカプタン化合物が好ましく、t−ドデシルメルカプタン、nードデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等が特に好ましい。
シェル層(B)の単量体成分は、(メタ)アクリル酸アリルを含む多官能性単量体を含まないものであり、したがって、シェル層(B)は架橋構造を実質的に有しないものである。ここで、多官能性単量体とは、メタクリル酸メチル(b−1)やアクリル酸アルキルエステル(b−2)と共重合し得る炭素−炭素不飽和結合を1分子中に2個以上有する化合物を指し、具体的には、架橋エラストマー層について上述したものが挙げられる。
本発明において、架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率は、51%以上80%以下である。当該グラフト率とは、架橋弾性体層(A)に結合しているシェル層(B)の重合体成分の重量の、架橋弾性体層(A)の重量に対する比率を示すものである。当該グラフト率が前記範囲内にあると、優れたトリミング性、表面硬度、及び、耐折り曲げ白化性を兼ね備えたフィルムを実現することができる。好ましくは55%以上75%以下であり、より好ましくは60%以上70%以下である。グラフト率は、架橋弾性体層(A)に用いる架橋剤やグラフト交叉剤の種類や使用量、シェル層(B)の部数、重合温度、重合時のシェル層を構成する単量体の濃度、シェル層に用いる連鎖移動剤の種類や使用量を選択すること等によって調節することが可能である。グラフト率が51%未満の場合は、多層構造重合体粒子(C)と熱可塑性樹脂(D)の界面接着が弱くなる可能性があり、アクリル樹脂フィルム(F)中の多層構造重合体粒子(C)の分散性が低下してフィルム中のフィッシュアイなどの外観欠陥の原因となったり、トリミング性や耐折り曲げ白化が低下する可能性がある。グラフト率が80%を超えると、グラフトポリマーのグラフト部位が、架橋弾性体層(A)粒子の内部に侵入しやすくなり、架橋弾性体層が硬くなるためにトリミング性が低下する可能性がある。グラフト率は、例えば、多層構造重合体粒子を、有機溶剤により、架橋弾性体層+グラフトポリマー部分と、グラフトしていないポリマー分に成分分別する等の公知の方法により測定できる。
<多層構造重合体粒子(C)の製造法>
多層構造重合体粒子(C)の製造方法は、特に限定されず、公知の乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、又は分散重合法が適用可能である。樹脂構造の調整幅が大きい点から、乳化重合法が特に好ましい。
多層構造重合体粒子(C)の乳化重合において使用される開始剤としては、有機系過酸化物、無機系過酸化物、及びアゾ化合物等の公知の開始剤を使用することができる。具体的には、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパ−オキサイド、スクシン酸パ−オキサイド、パ−オキシマレイン酸t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用できる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上併用されてもよい。
これらの開始剤は、熱分解型のラジカル重合開始剤として使用されてもよく、あるいは、これら開始剤を、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸等の還元剤と、硫酸第一鉄、又は硫酸第一鉄と、エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウムの錯体等の触媒と組み合わせた、レドックス型重合開始剤系として使用してもよい。
これらの中でも、重合安定性、粒子径制御の点から、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物を用いるか、もしくは、t−ブチルハイドロパーオキサイドやクメンハイドロパーオキサイド等の有機系過酸化物を用いたレドックス型開始剤系を使用するのがより好ましい。
上記の無機系過酸化物又は有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法等の公知の方法で添加することができる。アクリル樹脂フィルムの透明性の点から、単量体に混合して添加する方法、及び乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
多層構造重合体粒子(C))の乳化重合に使用される界面活性剤には特に限定はない。乳化重合には、公知の界面活性剤が広く使用できる。好ましい界面活性剤としては、例えば、オレイン酸、牛脂脂肪酸、N−ラウリルザルコシン酸、アルキルエーテルカルボン酸、アルキルスルフォン酸、アルキルエーテルスルフォン酸、アルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルスルフォコハク酸、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸、脂肪酸、アルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸、アルキルフェニルエーテルリン酸、サーファクチン等の酸基含有化合物のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中では乳化安定化能に優れた陰イオン性界面活性剤が好ましく、スルホン酸系、硫酸モノエステル系、リン酸系の界面活性剤が特に好ましい。これらの界面活性剤は単独で使用されても、2種以上併用されてもよい。
乳化重合により得られる多層構造重合体粒子(C)のラテックスから、公知の方法により、多層構造重合体粒子(C)を分離、回収することができる。例えば、ラテックスに水溶性電解質を添加して凝固させた後、固形分の洗浄及び乾燥の操作により、多層構造重合体粒子(C)を回収できる。また、ラテックスに対する噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理により、多層構造重合体粒子(C)を分離し、適宜洗浄、乾燥後回収することもできる。
より好ましくは、アクリル樹脂フィルムの外観欠陥や内部異物を低減する目的で、多層構造重合体粒子(C)の分離、回収に先立ち、予め多層構造重合体粒子(C)のラテックスをフィルターやメッシュでろ過して、環境異物や、重合スケール等の、異物欠陥原因となる物質が除去される。
フィルターやメッシュの目開きは、例えば、それぞれ、多層構造重合体粒子(C)の平均粒子径よりも2倍以上大きいものが使用可能である。フィルターやメッシュとしては、液状媒体のろ過に用いられる公知のフィルターやメッシュを使用可能である。フィルターやメッシュの形式、目開き、濾過精度、及び濾過容量等は、対象となる用途、除去すべき異物の種類、大きさや量、生産性に応じて適宜選択されるが、好ましくはフィルターの目開きあるいは濾過精度は、0.5μm以上100μm以下であり、より好ましくは1μm以上50μm以下である。
<多層構造重合体粒子(G)>
本発明のアクリル樹脂組成物(E)は、多層構造重合体粒子(C)に加えて、比較的大粒径の架橋弾性体層を含む多層構造重合体粒子(G)を少量含有するものであってもよい。多層構造重合体粒子(G)はアクリル樹脂に耐衝撃性と耐割れ性とを付与する効果に優れており、これを多層構造重合体粒子(C)と併用することによって、アクリル樹脂フィルムのトリミング性と表面硬度のバランスをより良好なものとすることができる。
多層構造重合体粒子(G)は、多層構造重合体粒子(C)と同じく、架橋エラストマー層を1層以上含む架橋弾性体層を含むものであるが、該架橋弾性体層の平均粒子径は150nm以上400nm以下である点で、多層構造重合体粒子(C)とは異なる。前記平均粒子径は、より好ましくは200nm以上350nm以下である。
多層構造重合体粒子(G)は、典型的には、多層構造重合体粒子(C)と同じく、架橋弾性体層よりも表層側に位置するシェル層を含む。つまり、多層構造重合体粒子(G)は、架橋弾性体層と、シェル層とを含むのが好ましい。
多層構造重合体粒子(G)は、その架橋弾性体層の平均粒子径が多層構造重合体粒子(C)のそれよりも大きいことと、多層構造重合体粒子(C)におけるようなモノマー構成やその比率に関する限定がないこととを除いて、多層構造重合体粒子(C)と原料、製造方法等は概ね同様である。特に好ましくは、多層構造重合体粒子(G)の架橋弾性体層は、架橋エラストマー層の内部に硬質あるいは半硬質の重合体からなるコア粒子を備える同心球状の多層構造を有する。このようなコア粒子としては、例えば特公昭55−27576号等に示されるような硬質の架橋メタクリル樹脂粒子や、特開平4−270751号や国際公開第2014/41803等に示されるような、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体等からなる半硬質層を有する架橋粒子等が挙げられる。このようなコア粒子を導入することにより、多層構造重合体粒子(C)よりも粒子径の大きい多層構造重合体粒子(G)の透明性、耐折り曲げ白化性、耐割れ性等を改善させることができる。
多層構造重合体粒子(G)の配合割合は、当業者が適宜設定することができるが、アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対して0.5〜2.5重量%の割合であることが好ましい。配合割合がこの範囲内にあると、多層構造重合体粒子(G)を配合することによる効果を享受しつつ、良好な耐折り曲げ白化性も達成することができる。より好ましくは1.0〜2.0重量%の範囲である。配合割合が2.5重量%を超えると、トリミング性は高くなるが、耐折り曲げ白化性が著しく悪化する可能性がある。
本発明のアクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル樹脂フィルムに使用される従来公知の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光拡散剤、艶消し剤、滑剤、顔料や染料等の着色料、有機架橋粒子や無機粒子からなるアンチブロッキング剤、金属や金属酸化物からなる赤外線反射剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤は、これらに限定されない。これらの添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、添加剤の種類に応じた任意の量で用いることができる。
<アクリル樹脂フィルム(F)>
本発明のアクリル樹脂フィルム(F)は、上述したアクリル樹脂組成物(E)から構成されるものであって、優れたトリミング性(トリミング時の耐割れ性)、表面硬度、及び、二次成形時や切断時の白化が少ない耐折り曲げ白化性を兼ね備えたものである。
アクリル樹脂フィルムのJIS K6174に準じて測定されるヘイズ値は1.3%以下が好ましく、1.1%以下がより好ましく、0.8%以下がさらにより好ましく、0.6%以下が特に好ましい。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、該フィルムの厚みが75μm又は125μmである時に、以下の5)〜9)の要件のいずれか、又は全てを満足することが好ましい。
5)厚みが75μmのフィルムを23℃条件下でカッターにて切断し、形成された切断部に、目視で確認できるクラックがない。具体的な試験方法は実施例の項中の記載による。後述する判定基準の「5+」又は「5」に該当する。この物性は、優れたトリミング性(トリミング時の耐割れ性)を示すものである。
6)厚みが75μmのフィルムの23℃における引張破断伸度が、50%以上である。好ましくは53%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは58%以上、より更に好ましくは60%以上であり、特に好ましくは63%以上であり、最も好ましくは65%以上である。破断点伸度は、テンシロン引張試験機を用いて、チャック間距離40mm、引張速度200mm/分の条件で測定される値であるが、試験方法の詳細は実施例の項中の記載による。
7)厚みが75μmのフィルムの表面硬度は、JIS K5600−5−4に準じて測定される鉛筆硬度でHB以上の硬さである。当該鉛筆硬度はHBであってもよいし、HBを超える硬さ(Hなど)であってもよい。試験方法の詳細は実施例の項中の記載による。
8)厚みが125μmのフィルムの、JIS P8115に準拠したMIT試験の測定回数が50回以上である。好ましくは60回以上、より好ましくは65回以上、さらに好ましくは70回以上、特に好ましくは75回以上である。試験方法の詳細は実施例中の「MIT試験」における記載による。
9)23℃にて、厚みが125μmのフィルムを15%延伸した時の延伸部位のヘイズ値が20%以下である。好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下である。試験方法の詳細は実施例中の「室温延伸後ヘイズ値(耐折り曲げ白化性)」における記載による。この物性は、優れた耐折り曲げ白化性を示す指標である。
前記5)のトリミング性、6)の引張破断伸度、7)の表面硬度、及び8)のMIT試験での測定回数に関しては、アクリル樹脂組成物(E)全体に占める架橋弾性体層(A)の割合又はアクリル酸アルキルエステル(b−2)の割合や、多層構造重合体粒子(C)中のアクリル酸アルキルエステル(b−2)の量、架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率などが大きく影響し、これらの数値をそれぞれ、本発明で規定している範囲内のものとすることによって、前記5)、6)、7)、及び8)の要件を満足することが可能になる。
前記9)室温延伸後ヘイズ値に関しては、架橋弾性体層(A)の平均粒子径と架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量の関係式や、架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率などが大きく影響し、これらの数値をそれぞれ、本発明で規定している範囲内のものとすることによって、前記9)の要件を満足することが可能になる。以上に加えて、アクリル樹脂組成物(E)全体に占める架橋弾性体層(A)の割合も制御することによって、室温延伸後ヘイズ値の数値をより低くすることが可能になる。
<アクリル樹脂フィルム(F)の製造方法>
アクリル樹脂フィルム(F)は、公知の加工方法により製造できる。公知の加工方法の具体例としては、溶融加工法、カレンダー成形法、プレス成形法、及び溶剤キャスト法等が挙げられる。溶融加工法としては、インフレーション法やTダイ押出法等が挙げられる。また、溶剤キャスト法では、アクリル樹脂組成物を溶剤に溶解・分散させた後、得られた分散液(ドープ)を、ベルト状基材上にフィルム状に流涎する。次いで、流涎されたフィルム状のドープから溶剤を揮発させることにより、アクリル樹脂フィルムを得る。
これらの方法の中では、溶剤を使用しない溶融加工法、特にTダイ押出法が好ましい。溶融加工法によれば、製造するフィルムの厚さの制限が少なく、表面性に優れたフィルムを高い生産性で製造でき、且つ溶剤による自然環境や作業環境への負荷や、製造コストを低減することができる。
アクリル樹脂組成物を、溶融加工法又は溶剤キャスト法によりフィルムに成形する場合、アクリル樹脂フィルムの外観品質の向上の点から、フィルター又はメッシュを用いるろ過を用いて、アクリル樹脂フィルムの外観欠陥や内部異物等の原因となる、アクリル樹脂組成物中の環境異物や重合スケール、劣化樹脂等を除去することが好ましい。
溶融加工によるフィルム製造時には、溶融混合によるアクリル樹脂組成物の調製時、溶融したアクリル樹脂組成物のペレット化時、及びTダイによるフィルム製膜工程のうちの、1以上の任意のタイミングでろ過を行うことができる。溶剤キャスト法では、多層構造重合体粒子(C)と熱可塑性樹脂(D)及び他の成分を溶剤と混合した後、キャスト製膜を行う前にろ過を行えばよい。
このようなフィルターやメッシュとしては、フィルターやメッシュが溶融加工条件に応じた耐熱性、耐久性や、キャスト用の溶剤、ドープ等に対する耐性を有する限りにおいて、公知のフィルターやメッシュを特に制限なく利用できる。
アクリル樹脂フィルムを溶融加工により製造する場合、特に高品質のアクリル樹脂フィルムを得るためには、濾過容量が大きく、フィルムの品質を損なう樹脂劣化物や架橋物等の発生原因となる、溶融樹脂の滞留が少ないフィルターが好ましい。例えばリーフディスク型フィルターやプリーツ型フィルターを用いるのが、ろ過効率や生産性の上で好ましい。
アクリル樹脂フィルムをTダイ押出法により製造する場合、フィルムの厚み精度を向上させるために、たとえば押出成形されたフィルムのTD方向(押出方向に対して垂直な方向)のフィルム厚み分布をオンラインで測定し、これに基づいてフィルムを押出中のTダイのリップクリアランスを自動調整する、自動ダイ装置を使用することができる。適切な制御方法を用いて自動ダイを適用することにより、アクリル樹脂フィルムの厚み精度を向上できる可能性がある。
アクリル樹脂フィルムの製造において、必要に応じて、フィルムを成形加工する際に、溶融状態のフィルム両面を冷却ロール又は冷却ベルトに同時に接触させる(挟み込む)ことにより、表面性のより優れたフィルムを得ることができる。この場合、溶融状態のフィルムを、アクリル樹脂組成物のガラス転移温度−80℃以内、好ましくはガラス転移温度−60℃以内の温度に維持したロール又は金属ベルトに同時に接触させるのが好ましい。
より好ましくは、このような挟み込みを行うためのロールの少なくとも一方として、例えば特開2000−153547号や特開平11−235747等に開示されたような弾性を有する金属スリーブを有するロールを使用し、低い挟み込み圧力を用いてロール鏡面又は特定の表面形状の転写を行うことで、平滑性に優れた、あるいは適度な表面粗度を有しフィルム表面の滑り性が優れフィルム同士のブロッキングが抑制された、内部歪のより少ないフィルムを得ることができる。
また、目的に応じて、フィルムの成形に引続いて、一軸延伸あるいは二軸延伸を行うことも可能である。一軸あるいは二軸延伸は、公知の延伸装置を用いて実施できる。二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、縦延伸の後、縦方向を緩和しつつ横延伸を行い、フィルムのボウイングを低減させる方法等、公知の形式で実施することが可能である。
さらに、用途の必要に応じて、アクリル樹脂フィルムの片面又は両面に、ヘアライン、プリズム、凹凸形状、艶消し表面、一定の表面粗度を有する粗面、フィルム端部へのナーリング等の表面形状を付与してもよい。このような表面形状の付与は、公知の方法で実施できる。例えば、押出直後の溶融状態のフィルム、又は繰り出し装置から繰り出された成形済みのフィルムの両面を、少なくとも一方の表面に表面形状を有する2本のロール又はベルトで挟み込むことにより、ロールの表面形状を転写する方法が挙げられる。
アクリル樹脂フィルムの厚さは特に限定されず、フィルムの用途に応じて適宜決定される。アクリル樹脂フィルムが、積層フィルムの基材として用いられる場合、アクリル樹脂フィルムの厚さは、積層フィルムにおける基材以外の機能層の厚さを考慮して決定される。アクリル樹脂フィルムの厚さとしては、例えば、20μm以上500μm以下が好ましく、40μ以上300μm以下がより好ましい。
以上説明したアクリル樹脂フィルムは、好ましい態様によれば、有機溶剤に対する耐性に優れる。このため、アクリル樹脂フィルムは、有機溶剤を含む液が塗布される対象(被塗物)として好ましく使用することができる。
有機溶剤を含む液としては、特に限定されず洗浄液等であってもよい。典型的には、有機溶剤を含む液は、機能層形成用の塗布液であるのが好ましい。
<積層フィルム>
積層フィルムは、前述のアクリル樹脂フィルムと、少なくとも一種の機能層又は他のフィルムからなる層を備える。積層フィルムは、アクリル樹脂フィルムの片面のみに機能層又は他のフィルムからなる層を備えてもよく、両面に備えてもよい。また、複数の機能層又は他のフィルムを重ねてアクリル樹脂フィルムに積層してもよい。またアクリル樹脂フィルムの両面に備える場合、それぞれの面には異なる機能層又は他のフィルムからなる層を備えてもよい。
機能層としては特に限定されない。機能層としては、従来より公知の種々の機能層を特に限定なく採用することができる。機能層の具体例としては、ハードコート層、低屈折層、高屈折層、防眩層、光拡散層、艶消層、耐薬品層、耐指紋層、防汚層、帯電防止層、偏光層、着色層、意匠層、エンボス層、遮光層、反射層、導電層、ガスバリア層、ガス吸収層、接着層、及びプライマー層等が挙げられる。積層フィルムは、これらの機能層を、2種以上組み合わせて備えていてもよい。また一つの機能層が、二つ以上の複数の機能を兼ね備えても良い。
前記他のフィルムとしては特に限定されず、上述の機能層と同様の機能を有するフィルム又はシートや、アクリル樹脂フィルム又は機能層若しくは他の機能を有するフィルム層の最表面を保護するための表面保護フィルム、積層フィルムを対象となる表面に転写するための離型層を備えた転写フィルムなどが挙げられる。
各機能層又は他のフィルムの厚さは特に限定されず、積層フィルムの使用目的や、機能に応じて適宜設定される。典型的には、積層フィルムの厚さは、20μ以上1mm以下が好ましく、40μm以上700μm以下がより好ましい。
<成形品>
本発明の成形品は、成形品本体の表面に、前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムが積層されたものである。かかる成形品の好ましい用途としては、車輌内装材、建材、電気・電子機器の筐体等の、3次元形状や立体意匠を有する成形体、部材に対する表面保護や加飾用途が挙げられる。
また、上記の成形品は、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、又は無機材料からなる部材の表面の少なくとも一部を被覆する用途にも好適に用いることできる。部材の材料としては熱可塑性樹脂としては、ビスフェノール系骨格、フルオレン系骨格あるいはイソソルバイド系骨格等を有するポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(AS樹脂、ABS樹脂、MAS樹脂、スチレンマレイミド系樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂等)、飽和ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びベンゾキサジン樹脂等が挙げられる。無機材料としては、硬質ガラス、軟質ガラス、各種鋼材、ステンレス材、銅板、アルミニウム系材料、チタン系材料、セラミック材料、石材等が挙げられる。
上記の成形品は、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアリレート樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等の透明性を有する樹脂からなる部材の表面の被覆用途に好適に用いることができる。
成形品の用途の具体例としては、インストルメントパネル、車載ディスプレイ前面板、コントロールパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ドアトリム、アームレスト、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード、シフトレバー、ベンチレーター等の自動車内装用途;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、エンブレム、ロゴ類、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品、カメラモジュールカバー、フロントグリル等の自動車外装用途;スマートフォンや携帯電話、パーソナルコンピューター、ゲーム機、音楽プレイヤー等の携帯電子機器のハウジング、表示窓、ボタン等、テレビ、DVDプレイヤー、ステレオ装置、炊飯器、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、加湿器、除湿機、扇風機、その他の家庭用電子電気機器;家具製品等の筐体、フロントパネル、ボタン、表面化粧材等の用途、さらには家具用外装材用途;壁面、天井、床、バスタブ、便座、等の建築用内装材用途;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途;窓枠、扉、手すり敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途;鉄道車両、航空機、船舶、オートバイ、自転車等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途等が挙げられる。
前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムを用いる場合、複雑な立体形状を備え、表面の硬度、耐擦傷性、耐薬品性、防汚性、反射特性、及び防眩性等が制御された、外観にすぐれる成形品を容易に製造できる。このため、上記の成形品は、以上の用途の中でも、例えば、平面形状あるいは曲面形状、立体形状を有する車載ティスプレイ前面板等の用途に好ましく用いられる。
前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムを備える成形品を、成形体、部材等の表面へ積層する方法として、公知の方法を特に制限なく使用できる。特に3次元形状を有する成形体、部材の表面に、前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムからなる層を形成する表面加飾あるいは表面保護の方法としては、例えば、特公昭63−6339号、特公平4−9647号、特開平7−9480号、特開平8−323934号、特開平10−279766号等に記載の方法と同様な、フィルムインモールド成形法又はフィルムインサート成形法や、特許第3733564号公報や特許第3924760号公報に記載の方法と同様な3次元ラミネート成形法等が好ましく使用できる。
上記フィルムインモールド成形法又はフィルムインサート成形法は、前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムに必要に応じて機能層、印刷加飾層やバッカーシート、接着層、バインダー層等を積層し、真空成形、圧空成形、熱プレス成形等により予め形状を付与した、又は、付与しない加飾用フィルムを、射出成形金型内に挿入した状態で、金型キャビティに熱可塑性樹脂の射出成形を行うことにより、射出成形体の表面にフィルムを積層一体化させる方法である。上記3次元ラミネート成形法は、同様に必要に応じて、前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムに機能層、印刷加飾層やバッカーシート等を積層し、さらに接着層を積層後、熱で軟化させた接着層付きの加飾フィルムを、真空状態もしくは圧空状態で成形体表面に貼り付ける成型方法である。その際、樹脂温度、成形条件あるいは前述のアクリル樹脂フィルム、及び/又は積層フィルムへの機能層、印刷層、加飾層、蒸着層、接着層、エンボス形状などの立体意匠やバッカーシートの有無などの選定は、成形法や基材樹脂の種類、用途等を勘案し適宜設定することができる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下で「部」は「重量部」を示す。
(平均粒子径の測定方法)
各架橋弾性体層の粒子の平均粒子径は、各架橋弾性体層のラテックスの状態で、レーザー回折式の粒度分布測定装置(日機装株式会社製、Microtrac粒度分布測定装置MT3000等)を使用して測定した体積平均粒子径である。
(グラフト率の測定方法)
多層構造重合体粒子(C)2gを秤量し、メチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製CP60E)にて30000rpmで1時間遠心分離を行い、不溶分と可溶分を分離した。得られたメチルエチルケトン不溶分を用いて、次式によりグラフト率を算出した。
グラフト率(%)=[(メチルエチルケトン不溶分の重量−R)/R]×100
ただし、Rは、多層構造重合体粒子(C)2g中の、架橋弾性体層(A)を構成する単官能単量体の仕込み重量である。
(製造例1)
<多層構造重合体粒子(C1)の製造>
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
・脱イオン水 200部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.12部
(東邦化学工業株式会社製、商品RD−510Yのナトリウム塩)
・ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
・エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.0048部
・硫酸第一鉄 0.0012部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、表1に示した架橋弾性体層(A1)の原料混合物にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.1部を溶解し、180分かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、架橋弾性体層(A1)の粒子を得た。架橋弾性体層(A1)の粒子の体積平均粒子径は82nmであった。重合転化率は99.0%であった。
その後、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.2部を仕込んだ後、表1に示したシェル層(B1)の原料混合物を240分かけて連続的に添加した。添加終了後、1.0時間重合を継続し、多層構造重合体粒子ラテックスを得た。重合転化率は99.9%であった。得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して多層構造重合体粒子(C1)の粉末を得た。多層構造重合体粒子(C1)について測定したグラフト率は69%であった。
(製造例2)
<多層構造重合体粒子(C2)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A2)、シェル層(B2)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C2)の粉末を得た。架橋弾性体層(A2)の粒子の体積平均粒子径は80nmであった。多層構造重合体粒子(C2)について測定したグラフト率は70%であった。
(製造例3)
<多層構造重合体粒子(C3)の製造>
重合初期に仕込むポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを0.135部とし、表1に示した架橋弾性体層(A3)、シェル層(B3)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C3)の粉末を得た。架橋弾性体層(A3)の粒子の体積平均粒子径は86nmであった。多層構造重合体粒子(C3)について測定したグラフト率は61%であった。
(製造例4)
<多層構造重合体粒子(C4)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A4)、シェル層(B4)の原料混合物を用いた以外は製造例3と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C4)の粉末を得た。架橋弾性体層(A4)の粒子の体積平均粒子径は85nmであった。多層構造重合体粒子(C4)について測定したグラフト率は64%であった。
(製造例5)
<多層構造重合体粒子(C5)の製造>
重合初期に仕込むポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを0.28部とし、表1に示した架橋弾性体層(A5)、シェル層(B5)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C5)の粉末を得た。架橋弾性体層(A5)の粒子の体積平均粒子径は72nmであった。多層構造重合体粒子(C5)について測定したグラフト率は62%であった。
(製造例6)
<多層構造重合体粒子(C6)の製造>
重合初期に仕込むポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを0.06部とし、表1に示した架橋弾性体層(A6)、シェル層(B6)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C6)の粉末を得た。架橋弾性体層(A6)の粒子の体積平均粒子径は103nmであった。多層構造重合体粒子(C6)について測定したグラフト率は66%であった。
(製造例7)
<多層構造重合体粒子(C7)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A7)、シェル層(B7)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C7)の粉末を得た。架橋弾性体層(A7)の粒子の体積平均粒子径は77nmであった。多層構造重合体粒子(C7)について測定したグラフト率は90%であった。
(製造例8)
<多層構造重合体粒子(C8)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A8)、シェル層(B8)の原料混合物を用いた以外は製造例3と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C8)の粉末を得た。架橋弾性体層(A8)の粒子の体積平均粒子径は78nmであった。多層構造重合体粒子(C8)について測定したグラフト率は50%であった。
(製造例9)
<多層構造重合体粒子(C)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A9)、シェル層(B9)の原料混合物を用いた以外は製造例3と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C9)の粉末を得た。架橋弾性体層(A9)の粒子の体積平均粒子径は85nmであった。多層構造重合体粒子(C9)について測定したグラフト率は66%であった。
(製造例10)
<多層構造重合体粒子(C10)の製造>
重合初期に仕込むポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを0.04部とし、表1に示した架橋弾性体層(A10)、シェル層(B10)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C10)の粉末を得た。架橋弾性体層(A10)の粒子の体積平均粒子径は112nmであった。多層構造重合体粒子(C10)について測定したグラフト率は65%であった。
(製造例11)
<多層構造重合体粒子(C11)の製造>
重合初期に仕込む乳化剤をポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムに代えてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.28部とし、架橋弾性体層(A)の重合後に添加する乳化剤をポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムに代えてジオクチルスルホコハク酸ナトリウムとし、表1に示した架橋弾性体層(A11)、シェル層(B11)の原料混合物を用いた以外は製造例1と同様の重合を行った。得られたラテックスの塩析を塩化マグネシウムに換えて塩化カルシウムを用いて行った以外は同様に凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C11)の粉末を得た。架橋弾性体層(A11)の粒子の体積平均粒子径は80nmであった。多層構造重合体粒子(C11)について測定したグラフト率は84%であった。
(製造例12)
<多層構造重合体粒子(C12)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A12)、シェル層(B12)の原料混合物を用いた以外は製造例11と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C12)の粉末を得た。架橋弾性体層(A12)の粒子の体積平均粒子径は80nmであった。多層構造重合体粒子(C12)について測定したグラフト率は150%であった。
(製造例13)
<多層構造重合体粒子(C13)の製造>
表1に示した架橋弾性体層(A13)、シェル層(B13)の原料混合物を用いた以外は製造例11と同様の重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして多層構造重合体粒子(C13)の粉末を得た。架橋弾性体層(A13)の粒子の体積平均粒子径は80nmであった。多層構造重合体粒子(C13)について測定したグラフト率は135%であった。
(製造例14)
特許第4291994号の製造例5に従い、多層構造重合体粒子(C14)を製造した。架橋弾性体層の粒子径は80nm、シェル層のグラフト率は90%であった。
Figure 2020147653
(製造例15)
<多層構造重合体粒子(G)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
・脱イオン水 220部
・ホウ酸 0.3部
・炭酸ナトリウム 0.03部
・N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 0.09部
・ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.09部
・エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
・硫酸第一鉄 0.002部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を80℃にし、ビニル単量体(メタクリル酸メチル100%)25部と、メタクリル酸アリル1部と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部との混合液のうち25%を一括して仕込み、45分間の重合を行った。
続いてこの混合液の残り75%を1時間にわたって連続添加した。添加終了後、同温度で2時間保持し重合を完結させた。また、この間に0.2部のN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを追加した。このようにして、コア(架橋弾性体層(G1))の1層目となる重合物の粒子のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。
得られたコア(架橋弾性体層(G1))の1層目となる重合物の粒子のラテックスを窒素気流中で80℃に保ち、過硫酸カリウム0.1部を添加した。次いで、ビニル単量体組成物(アクリル酸ブチル82重量%、及びスチレン18重量%)50部と、メタクリル酸アリル1部とからなる混合液を5時間にわたって連続添加した。この間にオレイン酸カリウム0.1部を3回に分けて添加した。混合液の添加終了後、重合を完結させるためにさらに過硫酸カリウムを0.05部添加し2時間保持した。このようにして、コア(架橋弾性体層(G1))の重合物の粒子のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。コア(架橋弾性体層(G1))の粒子の体積平均粒子径は230nmであった。
コア(架橋弾性体層(G1))の重合物の粒子のラテックスを80℃に保ち、過硫酸カリウム0.02部を添加した後、ビニル単量体組成物(メタクリル酸メチル93.3重量%、及びアクリル酸ブチル6.7重量%)15部を1時間にわたって連続添加した。ビニル単量体組成物の追加終了後1時間保持し、架橋弾性体層(G1)に内層シェルがグラフト重合した粒子のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
架橋弾性体層(G1)に内層シェルがグラフト重合した粒子のラテックスを80℃に保ち、ビニル単量体組成物(メタクリル酸メチル50重量%、及びアクリル酸ブチル50重量%)10部を0.5時間にわたって連続添加した。ビニル単量体組成物の追加終了後1時間保持し、2層構造のコア(架橋弾性体層(G1))と、2層のシェル(グラフトポリマー層(G2))とからなる多層構造重合体粒子のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
得られた多層構造重合体粒子のラテックスを塩化カルシウムで塩析凝固、熱処理、乾燥を行い、白色粉末状の多層構造重合体粒子(G)を得た。多層構造重合体粒子の平均粒子径は250nmであった。
(実施例1)
製造例1で得た多層構造重合体粒子(C1)を40部と、熱可塑性樹脂(D)(メタクリル系重合体 住友化学製 スミペックスMG5、メタクリル酸メチル含量:95重量%)60部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、シリンダ温度を200℃〜260℃に調整した58mmΦ単軸押出機((株)日本精鋼所製)を使用し、スクリュー回転数90rpm、吐出量130kg/時間にて溶融混練を行い、ストランド状に引き取り、水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて切断して、アクリル樹脂組成物のペレットを得た。
得られたアクリル樹脂組成物のペレットを、Tダイ付90mmΦ単軸押出機を用いて、シリンダ設定温度180℃〜240℃にて吐出量130kg/hrにて溶融混練し、ダイス温度240℃にてTダイより吐出し、90℃に温調した金属性キャストロールと60℃に温調した弾性金属スリーブを備えたタッチロールに両面を接触させて冷却固化しつつ成膜して巻き取り、厚さ75μm、および125μmのアクリル樹脂フィルムを得た。
〔実施例2〜12、及び比較例1〜8〕
多層構造重合体粒子(C)及び熱可塑性樹脂(D)の種類及び使用量(部)、並びに多層構造重合体粒子(G)の使用量(部)を、それぞれ表2及び表3に記載の種類及び量(部)に変更した。なお、表2中、熱可塑性樹脂(D)の「HM」はクラレ製パラペットHM(メタクリル酸メチル含量:100重量%)、「EX」は住友化学製スミペックスEX(メタクリル酸メチル含量:95重量%)を意味する。これらの変更の他は、実施例1と同様にして、実施例2〜12、及び比較例1〜8の厚さ75μm、および125μmのアクリル樹脂フィルムを得た。
[比較例9]
特許第4291994号の実施例6に従い、製造例14で得た多層構造重合体粒子(C14)を使用し、熱可塑性樹脂(D)としてスミペックスEXを使用して、厚さ75μm、および125μmのアクリル樹脂フィルムを得た。
[比較例10]
市販のアクリル樹脂フィルム(住友化学社製、製品名テクノロイ(登録商標)S014G、コアシェルゴム含有アクリル樹脂フィルム)を使用した。
得られた各実施例、比較例のアクリル樹脂フィルムを用いて、以下の方法に従って、全光線透過率、ヘイズ、引張破断伸度、トリミング性、MIT試験、表面硬度、及び、室温延伸後ヘイズ(耐折り曲げ白化性)について評価を行った。これらの評価結果を、表2及び表3に記す。
<全光線透過率、ヘイズ値>
日本電色工業製Haze Meter NDH7000SPを用いて、JIS K6174に準じ、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルムの全光線透過率およびヘイズ値、及び、後述する室温延伸後の試験片のヘイズ値を測定した。
<引張破断伸度>
厚さ75μmのアクリル樹脂フィルムを押出成形時のMD方向にJIS B6732 SDK−600型ダンベル形状に打ち抜いた試験片を使用し、テンシロン引張試験機を用いて、標線間距離40mm、引張速度200mm/分の条件で、引張破断伸度の測定を行った。引張破断伸度の値は、5つの試験片を用いて得られた測定結果のうち、最も高い値と、最も低い値とを除いた平均値である。
<トリミング性>
厚さ75μmのアクリル樹脂フィルムを約A4サイズに切り出し、23℃×12時間以上静置後、以下の条件にて評価を実施した。
フィルム上端部(長辺側)をセロハンテープで黒画用紙に固定した後、黒画用紙とフィルムを合わせて、上端部のみセロハンテープでカッター台(オルファカッターマットB160)に固定した。フィルム右端部および下端部からの距離10cm×10cmの位置にカッター(エヌティー株式会社製 NTカッター Q−100P)の刃先がフィルムに貫通するように差し、カッター刃の角度を切削方向(水平手前方向)に向かって水平方向から45°に維持し、切削方向にカッターを動かし、フィルム下端部まで切削した。切削速度は約20cm/sとした。同一のフィルム試験片を用いて、切削位置を2cmずつ左側に移動して5回の切削試験を行い、下記の判定基準にて1〜5+の判定を行い、5又は5+を合格とした。なお、カッター刃は1サンプル(n=5)実施毎に刃先を折り取り、新しい刃先を使用した。
判定基準
5+:(合格)切削痕は直線状で、全てのサンプルで試験後の切削痕に目視でクラックの発生なし。さらに切削時の感触が延性的である(連続的でスムースな切削感触である)
5:(合格)切削痕は直線状で、全てのサンプルで試験後の切削痕に目視でクラックの発生なし。切削時の感触が脆性的である(少なくとも一部にパリパリと不連続な切削感触がある)
4:切削痕は直線状であるが、小さなクラック(長さ1mm以下)が切削痕長さ10cmあたり10個以下発生する
3:切削痕がギザギザであり、大きなクラック(長さ1mm以上)が発生する
2:切削痕がギザギザであり、切削時にフィルム全体が割れることがある
1:初回の切削時にフィルム全体が割れ、n=5での測定が不可能である
<MIT試験>
JIS P8115に準拠し、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルムを押出成形時のMD方向にJIS B6732 SDK−600ダンベル形状に打ち抜いた試験片を使用し、TOYOSEIKI製FOLDING ENDURANCE TESTERを用いて23℃でn=5にて測定を行ない、最小値と最大値を除く3点の平均値をMIT値とした。測定条件はANGLE:75、SPEED:175、MODE:N、荷重100g、折り曲げ装置のR:0.38,T:0.25にて実施した。
<表面硬度>
マイズ試験機製 No.601―BI 鉛筆硬度試験機を用い、JIS K5600−5−4に準じて、500gの荷重にて鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定は、厚さ75μmのアクリル樹脂フィルムに対して実施した。
<室温延伸後ヘイズ値(耐折り曲げ白化性)>
厚さ125μmのアクリル樹脂フィルムをJIS B6732 SDK−600ダンベル形状に打ち抜き、テンシロン引張試験機を用いて、23℃で標線間距離40mm、引張速度500mm/分の条件で、15%の延伸を行った。延伸後のサンプルについて、23℃で12時間静置した後に、上述した条件でヘイズ値を測定した。
Figure 2020147653
Figure 2020147653
表2より、実施例1〜12では、いずれも、直線状の切削痕に目視でクラックの発生が認められずトリミング性(トリミング時の耐割れ性)に優れている上、鉛筆硬度がHBと良好で、更には、室温延伸後のヘイズ値が20%未満と良好な耐折り曲げ白化性も有することが分かる。
一方、表3より、比較例1〜10では、トリミング性、表面硬度、及び耐折り曲げ白化性のいずれか1以上の評価結果が不十分なものであり、製造されたフィルムは、優れたトリミング性、表面硬度、及び耐折り曲げ白化性を兼ね備えたものではなかった。
なお、比較例1及び3は架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率の要件を満足しておらず、比較例2はアクリル樹脂組成物(E)中の架橋弾性体層(A)の重量割合の要件を満足していない。比較例4は多層構造重合体粒子(C)中のアクリル酸アルキルエステル(b−2)の量の要件を満足していない。比較例5及び6は、架橋弾性体層(A)の体積平均粒子径と架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量の関係式の要件を満足しておらず、比較例6は架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率の要件も満足していない。比較例7〜9は、多層構造重合体粒子(C)中の架橋弾性体層(A)の量の要件を満足しておらず、架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率の要件や、多層構造重合体粒子(C)中のアクリル酸アルキルエステル(b−2)の量の要件も満足していない。

Claims (10)

  1. 平均粒子径が70nm以上110nm以下の架橋弾性体層(A)と、該架橋弾性体層(A)にグラフト重合している一層以上のシェル層(B)とを含む多層構造重合体粒子(C)、及び、
    メタクリル酸メチルを75重量%以上含有する熱可塑性樹脂(D)、を含有する、フィルム用アクリル樹脂組成物(E)であって、
    架橋弾性体層(A)は、アクリル酸アルキル(a−1)75重量%以上、(メタ)アクリル酸アリルである架橋・グラフト交叉剤(H)、及び、他のモノマー(a−2)0重量%以上25重量%未満を含む単量体成分の重合体から構成される架橋エラストマー層を1層以上含み、
    シェル層(B)は、メタクリル酸メチル(b−1)50重量%以上、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(b−2)、他のモノマー(b−3)0重量%以上50重量%未満、及び、連鎖移動剤を含有し、多官能性単量体を含まない単量体成分の重合体から構成され、
    アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が15.5重量%以上21重量%未満であり、
    アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対するアクリル酸アルキルエステル(b−2)の重量割合が0.8重量%以上3重量%未満であり、
    多層構造重合体粒子(C)は、以下の1)〜4)を満たす、フィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
    1)多層構造重合体粒子(C)の全体量に対する架橋弾性体層(A)の重量割合が、40重量%を超え、60重量%以下である。
    2)架橋弾性体層(A)の平均粒子径d(nm)と、架橋・グラフト交叉剤(H)の含有量w(但し、前記含有量wは、前記架橋エラストマー層を構成する前記単量体成分のうち、架橋・グラフト交叉剤(H)を除く成分の合計量を100重量部とした時の、架橋・グラフト交叉剤(H)の量の比率を示す)が、次の関係式を満たす。
    0.029d≦w≦0.045d
    3)架橋弾性体層(A)に対するシェル層(B)のグラフト率が、51%以上80%以下である。
    4)多層構造重合体粒子(C)の全体量に対するアクリル酸アルキルエステル(b−2)の重量割合が、2重量%以上5重量%未満である。
  2. フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される75μm厚さのフィルムが、以下の5)〜7)を満たす、請求項1に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
    5)前記フィルムを23℃条件下でカッターにて切断し、形成された切断部に、目視で確認できるクラックがない。
    6)23℃における引張破断伸度が、50%以上である。
    7)前期フィルムの表面硬度が鉛筆硬度でHB以上である。
  3. フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される125μm厚さのフィルムが、以下の8)を満たす、請求項1又は2に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
    8)JIS P8115に準拠したMIT試験の測定回数が50回以上である。
  4. フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される125μm厚さのフィルムが、以下の9)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
    9)23℃にて前記フィルムを15%延伸した時の延伸部位のヘイズ値が20%以下である。
  5. フィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成される125μm厚さのフィルムが、以下の10)を満たす、請求項4に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
    10)23℃にて前記フィルムを15%延伸した時の延伸部位のヘイズ値が10%以下である。
  6. 平均粒子径が150nm以上400nm以下の架橋弾性体層を含む多層構造重合体粒子(G)を、フィルム用アクリル樹脂組成物(E)の全体量に対して0.5〜2.5重量%の割合で、さらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム用アクリル樹脂組成物(E)から構成されるアクリル樹脂フィルム(F)。
  8. 有機溶剤を含む液が塗布される対象として使用される、請求項7に記載のアクリル樹脂フィルム(F)。
  9. 請求項7又は8に記載のアクリル樹脂フィルム(F)、及び
    該フィルム(F)に積層された他のフィルム、を含む、積層フィルム。
  10. 成形品本体、並びに
    該成形品本体の表面に積層された、請求項7又は8に記載のアクリル樹脂フィルム(F)及び/又は請求項9に記載の積層フィルム、を含む、成形品。
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