以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
図1(A−1)(A−2)に、本発明の一態様の発光デバイスを表す図を示す。本発明の一態様の発光デバイスは、陽極101と、陰極102、EL層103を有しており、当該EL層は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113および電子輸送層114を有している。なお、正孔輸送層112は第1の正孔輸送層112−1および第2の正孔輸送層112−2を有し、電子輸送層114は図1(A−2)のように第1の電子輸送層114−1および第2の電子輸送層114−2を有していることが好ましい。
なお、図1(A−1)(A−2)におけるEL層103には、これらに加えて電子注入層115が図示されているが、発光デバイスの構成はこれに限られることはない。上述の構成を有していれば、他の機能を有する層が含まれていても良い。
正孔注入層111は、EL層103に正孔を注入しやすくするための層であり、正孔注入性の高い材料を用いて構成される。正孔注入層111は、単独の材料で構成されていても良いが、第1の物質と第2の有機化合物とが含まれることが好ましい。第1の物質は第2の有機化合物に対し、電子受容性を示す物質である。また、第2の有機化合物はそのHOMO準位が−5.7eV以上−5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質である。第2の有機化合物が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔の誘起が程よく抑制され、また、誘起された正孔の正孔輸送層112への注入が容易となる。
第1の物質は、無機化合物と有機化合物のどちらも用いることが可能であるが、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する有機化合物等を用いることが好ましい。第1の物質としては、そのような物質の中から、上記第2の物質に対して電子受容性を示す物質を適宜選択すれば良い。このような有機化合物としては、例えば、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT−CN)、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロテトラシアノ−ナフトキノジメタン(略称:F6−TCNNQ)、2−(7−ジシアノメチレン−1,3,4,5,6,8,9,10−オクタフルオロ−7H−ピレン−2−イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT−CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’−1,2,3−シクロプロパントリイリデントリス[4−シアノ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’−1,2,3−シクロプロパントリイリデントリス[2,6−ジクロロ−3,5−ジフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’−1,2,3−シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。第1の物質が無機化合物である場合、遷移金属酸化物を用いることができる。特に、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物が好適であり、当該元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物としては、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが電子受容性の高さから好ましい。中でも、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
第2の有機化合物は、正孔輸送性を有する有機化合物であることが好ましく、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミンが好ましく、または9−フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら第2の有機化合物が、N,N−ビス(4−ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。以上のような第2の有機化合物としては、具体的には、N−(4−ビフェニル)−6,N−ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−8−アミン(略称:BnfABP)、N,N−ビス(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−8−アミン(略称:BBABnf)、4,4’−ビス(6−フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−8−イル−4’’−フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N−ビス(4−ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−アミン(略称:BBABnf(6))、N,N−ビス(4−ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−8−アミン(略称:BBABnf(8))、N,N−ビス(4−ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3−d]フラン−4−アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N−ビス[4−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル]−4−アミノ−p−ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−N−フェニル−4−ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4−(2−ナフチル)−4’,4’’−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−4’,4’’−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’−ジフェニル−4’’−(6;1’−ビナフチル−2−イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’−ジフェニル−4’’−(7;1’−ビナフチル−2−イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB−03)、4,4’−ジフェニル−4’’−(7−フェニル)ナフチル−2−イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB−03)、4,4’−ジフェニル−4’’−(6;2’−ビナフチル−2−イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’−ジフェニル−4’’−(7;2’−ビナフチル−2−イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B−03)、4,4’−ジフェニル−4’’−(4;2’−ビナフチル−1−イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’−ジフェニル−4’’−(5;2’−ビナフチル−1−イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB−02)、4−(4−ビフェニリル)−4’−(2−ナフチル)−4’’−フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4−(3−ビフェニリル)−4’−[4−(2−ナフチル)フェニル]−4’’−フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4−(4−ビフェニリル)−4’−[4−(2−ナフチル)フェニル]−4’’−フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4−フェニル−4’−(1−ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’−ビス(1−ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−[4’−(カルバゾール−9−イル)ビフェニル−4−イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’−[4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]トリス(1,1’−ビフェニル−4−イル)アミン(略称:YGTBi1BP−02)、4−ジフェニル−4’−(2−ナフチル)−4’’−{9−(4−ビフェニリル)カルバゾール)}トリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル] −N−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9,9’−スピロビ(9H−フルオレン)−2−アミン(略称:PCBNBSF)、N,N−ビス(4−ビフェニリル)−9,9’−スピロビ[9H−フルオレン]−2−アミン(略称:BBASF)、N,N−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−9,9’−スピロビ[9H−フルオレン]−4−アミン(略称:BBASF(4))、N−(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビ(9H−フルオレン)−4−アミン(略称:oFBiSF)、N−(4−ビフェニル)−N−(ジベンゾフラン−4−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(略称:FrBiF)、N−[4−(1−ナフチル)フェニル]−N−[3−(6−フェニルジベンゾフラン−4−イル)フェニル]−1−ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)、N−(1,1’−ビフェニル−4−イル)−9,9−ジメチル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−9H−フルオレン−2−アミン(略称:PCBBiF)等を挙げることができる。
正孔注入層111における第1の物質と第2の有機化合物との組成は、1:0.01乃至1:0.15(重量比)であることが好ましい。なお、より好ましくは1:0.01乃至1:0.1(重量比)である。
正孔輸送層112は、第1の正孔輸送層112−1と第2の正孔輸送層112−2を有することが好ましい。第1の正孔輸送層112−1は第2の正孔輸送層112−2よりも陽極101側に位置するものとする。なお、第2の正孔輸送層112−2は電子ブロック層の機能を同時に担う場合もある。
第1の正孔輸送層112−1は第3の有機化合物を、第2の正孔輸送層112−2は第4の有機化合物を有している。
第3の有機化合物および第4の有機化合物は正孔輸送性を有する有機化合物であることが好ましい。第3の有機化合物および第4の有機化合物は上記第2の有機化合物として用いることが可能な有機化合物を同様に用いることができる。
第2の有機化合物のHOMO準位と第3の有機化合物のHOMO準位では、第3の有機化合物のHOMO準位の方が深く、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択することが好ましい。
また、第3の有機化合物のHOMO準位と、第4の有機化合物のHOMO準位では、第4の有機化合物のHOMO準位の方が深いほうが好ましい。さらに、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択するとよい。第2の有機化合物乃至第4の有機化合物のHOMO準位が以上のような関係であることによって、各層にスムーズに正孔が注入され、駆動電圧の上昇や発光層における正孔の過少状態を防ぐことができる。
なお、第2の有機化合物乃至第4の有機化合物は、各々正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、これら有機化合物のHOMO準位が浅くなりすぎないカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格が好ましい。また、これら正孔輸送性骨格が隣り合う層同士の材料(例えば第2の有機化合物と第3の有機化合物または第3の有機化合物と第4の有機化合物)で共通していると、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。特にこれらの正孔輸送性骨格としては、ジベンゾフラン骨格が好ましい。
また、隣り合う層に含まれる材料(例えば第2の有機化合物と第3の有機化合物または第3の有機化合物と第4の有機化合物)が同じ材料であるとより正孔の注入がスムーズとなるため好ましい。特に第2の有機化合物と第3の有機化合物が同じ材料である構成が好ましい。
発光層113は第5の有機化合物と第6の有機化合物を有している。第5の有機化合物は発光中心物質であり、第6の有機化合物は、第5の有機化合物を分散するためのホスト材料である。なお、発光層113は、第5の有機化合物および第6の有機化合物とも異なるその他の材料を同時に含んでいても構わない。また、組成の異なる2層の積層であっても良い。
発光中心材料は蛍光発光物質であっても、りん光発光物質であっても、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質であっても、その他の発光材料であっても構わない。また、単層であっても、複数の層からなっていても良い。なお、本発明の一態様は、発光層113が蛍光発光を呈する層、特に、青色の蛍光発光を呈する層である場合により好適に適用することができる。
発光層113において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
5,6−ビス[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−2,2’−ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6−ビス[4’−(10−フェニル−9−アントリル)ビフェニル−4−イル]−2,2’−ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(1,6−ピレン−ジイル)ビス[(6−フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン)−8−アミン](略称:1,6BnfAPrn−03)、3,10−ビス[N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−2−イル)−N−フェニルアミノ]ナフト[2,3−b;6,7−b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)−02)、3,10−ビス[N−(ジベンゾフラン−3−イル)−N−フェニルアミノ]ナフト[2,3−b;6,7−b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)−02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn−03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
発光層113において、発光中心材料としてりん光発光物質を用いる場合、用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
トリス{2−[5−(2−メチルフェニル)−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−κN2]フェニル−κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz−dmp)3])、トリス(5−メチル−3,4−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])、トリス[4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz−3b)3])のような4H−トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)3])、トリス(1−メチル−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Me)3])のような1H−トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac−トリス[(1−2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−フェニル−1H−イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)3])、トリス[3−(2,6−ジメチルフェニル)−7−メチルイミダゾ[1,2−f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt−Me)3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
また、トリス(4−メチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4−t−ブチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6−(2−ノルボルニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nm〜600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6−ビス(3−メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6−ビス(3−メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6−ジ(ナフタレン−1−イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
また、以上で述べたりん光性化合物の他、公知のりん光性発光材料を選択し、用いてもよい。
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル−フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III−4Me))、オクタエチルポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン−塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
また、以下の構造式に示される2−(ビフェニル−4−イル)−4,6−ビス(12−フェニルインドロ[2,3−a]カルバゾール−11−イル)−1,3,5−トリアジン(略称:PIC−TRZ)や、9−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−9’−フェニル−9H,9’H−3,3’−ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、9−[4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]−9’−フェニル−9H,9’H−3,3’−ビカルバゾール(略称:PCCzPTzn)、2−[4−(10H−フェノキサジン−10−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(略称:PXZ−TRZ)、3−[4−(5−フェニル−5,10−ジヒドロフェナジン−10−イル)フェニル]−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール(略称:PPZ−3TPT)、3−(9,9−ジメチル−9H−アクリジン−10−イル)−9H−キサンテン−9−オン(略称:ACRXTN)、ビス[4−(9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC−DPS)、10−フェニル−10H,10’H−スピロ[アクリジン−9,9’−アントラセン]−10’−オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−9H−カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
また、TADF材料を発光中心材料として用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
発光層のホスト材料としては、電子輸送性を有する材料や正孔輸送性を有する材料、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。
正孔輸送性を有する材料としては、アミン骨格やπ電子過剰型複素芳香環骨格を有する有機化合物が好ましい。例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9−ジメチル−N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]フルオレン−2−アミン(略称:PCBAF)、N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)−9−フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)、2,8−ジフェニル−4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−III)、4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−6−フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P−II)、4−{3−[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi−II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、上記第2の有機化合物の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
電子輸送性を有する材料としては、例えば、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6−ビス[3−(フェナントレン−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6−ビス〔3−(4−ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm−II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、先にTADF材料として挙げたものを同様に用いることができる。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光中心物質へエネルギー移動することで、発光素子の発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光中心物質がエネルギーアクセプターとして機能する。
これは、上記発光中心物質が蛍光発光物質である場合に、非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
また、効率よく三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送やキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
蛍光発光物質を発光中心物質として用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を蛍光発光物質のホスト材料として用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。ホスト材料として用いるアントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10−ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。したがって、さらにホスト材料として好ましいのは、9,10−ジフェニルアントラセン骨格およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格やジベンゾカルバゾール骨格)を同時に有する物質である。なお、上記の正孔注入・輸送性の観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格やジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、3−[4−(1−ナフチル)−フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCPN)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、7−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9−フェニル−10−{4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)ビフェニル−4’−イル}アントラセン(略称:FLPPA)、9−(1−ナフチル)−10−[4−(2−ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN−βNPAnth)等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい選択である。
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19〜19:1とすればよい。
なお、上記混合された材料の一部として、りん光発光物質を用いることができる。りん光発光物質は、発光中心材料として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、りん光発光物質であってもよい。そうすることで、三重項励起エネルギーを逆項間交差によって効率よく一重項励起エネルギーへ変換することができる。
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料ののLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
電子輸送層114は、図1(A−1)のように発光層113に接して設けられ第7の有機化合物と第2の物質を有することが好ましい。第7の有機化合物は、正孔輸送性よりも電子輸送性が優勢な有機化合物であり、且つその電子移動度が電界強度[V/cm]の平方根が600において1×10−7cm2/Vs以上5×10−5cm2/Vs以下の有機化合物であることが好ましい。電子輸送層における電子の輸送性を落とすことにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。
また、第7の有機化合物はアントラセン骨格を有する有機化合物であることが好ましく、また、アントラセン骨格と複素環骨格の両方を含む有機化合物であることがより好ましい。当該複素環骨格としては、含窒素5員環骨格が好ましく、当該含窒素5員環骨格としては、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環のように2つの複素原子を環に含む含窒素5員環骨格を有することが特に好ましい。
第2の物質はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、有機錯体または化合物のいずれかであり、例えば、Li、Li2Oなどを挙げることができる。特に、リチウムの有機錯体が好ましく、中でも、8−ヒドロキシキノリナト−リチウム(略称:Liq)が好ましい。
なお、電子輸送層114は、その厚さ方向において第7の有機化合物と第2の物質との混合比が異なる部分が存在する。当該混合比は、陰極側における第2の物質の混合比が小さいことが好ましく、当該混合比の大小に関しては、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF−SIMS:Tim
e−of−flight secondary ion mass spectrome
try)で得られる原子や分子の検出量により推察できる。同じ二種類の材料で構成された混合比の異なる部分において、ToF−SIMS分析によってそれぞれ検出された値の大小は、注目する原子や分子、イオンの存在量の大小に相当する。そのため、第7の有機化合物や第2の物質の検出量を比較することによって、混合比の大小の見当もつけることが可能となるのである。
すなわち、電子輸送層114には、第7の有機化合物の存在量が多い部分よりも発光層側に第7の有機化合物の存在量が少ない部分が存在することになり、また、換言すると、電子輸送層114には、第2の物質の存在量が少ない部分よりも発光層側に第2の物質の存在量が多い部分が存在するということができる。
なお、上記第7の有機化合物の存在量が多い部分(第1の物質の存在量が少ない部分)における電子移動度は、電界強度[V/cm]の平方根が600において1×10−7cm2/Vs以上5×10−5cm2/Vs以下であることが好ましい。
なお、電子輸送層114としては、図1(A−2)のように、発光層113側から第1の電子輸送層114−1および第2の電子輸送層114−2といったように複数の組成の異なる層を有することが好ましい。第1の電子輸送層114−1と第2の電子輸送層114−2は、第7の有機化合物と第2の物質の混合比が異なる層であり、第1の電子輸送層114−1における第7の有機化合物と第2の物質の混合比は、第2の電子輸送層114−2における第7の有機化合物と第2の物質の混合比と異なる。具体的には、第1の電子輸送層114−1における第2の物質の混合比は第2の電子輸送層114−2における第2の物質の混合比よりも高く、第1の電子輸送層114−1における第7の有機化合物の混合比は第2の電子輸送層114−2における第7の有機化合物の混合比よりも低いことが好ましい。なお、これら混合比は、上述のようにToF−SIMS分析で得られる原子や分子、イオンの検出量により推察することが可能である。すなわち、第1の電子輸送層114−1における第2の物質の存在量は第2の電子輸送層114−2における第2の物質の存在量よりも大きく、第1の電子輸送層114−1における第7の有機化合物の存在量は第2の電子輸送層114−2における第7の有機化合物の存在量よりも小さいことが好ましい。
また、第1の電子輸送層114−1は第2の電子輸送層114−2よりも発光層113側に設けられていればよく、第1の電子輸送層114−1と第2の電子輸送層114−2との間に他の層が存在していても良い。
また、第7の有機化合物と第2の物質との存在比は、図1(A−1)のように、明確な層としての境界が無い場合、図23(A−1)(A−2)のように連続的に変化していても良いし、図1(A−2)のように層として分かれていることがわかる場合は、図23(B−1)(B−2)のように階段状に変化していてもよい。いずれにせよ、電子輸送層114において、電子移動度の律速となる第2の物質の濃度の低い領域よりも発光層113側に第2の物質の濃度の高い領域が設けられている、換言すると電子輸送層114において、陰極側から陽極側に向かって、第2の物質の存在量(濃度)が上昇している領域が存在する、または、電子輸送層114において第2の物質の存在量(濃度)が最も大きい領域が、最も小さい領域よりも陽極側に存在することが肝要である。なお、本明細書中では、便宜的にToF−SIMSによる存在量や濃度、混合比の推定方法を示したが、その他の検出方法により、これらが証明できるようであればどのような方法を用いても構わない。
ここで、図24に本発明の一態様の発光デバイスを、ToF−SIMS分析によって分析した結果を示す。図24は、m/z=17のアニオン、すなわち、水酸化物イオン(OH−)について検出した結果である。測定はEL層を陰極側より掘り進めながら行われ、図24中、丸付数字1および丸付数字2が電子輸送層を表している。水酸化物イオン(OH−)の検出量は第2の物質であるLiqの存在量に対応して変化しており、素子構造と混合比を反映した検出強度となっていることがわかる。
なお、第7の有機化合物は、電子輸送性を有し且つそのHOMO準位が−6.0eV以上であることが好ましい。
その他第7の有機化合物として用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物としては、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物、または上記蛍光発光物質のホスト材料として用いることが可能な有機化合物として挙げたものを用いることができる。
また、第7の有機化合物の電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度は、第6の有機化合物または発光層113のそれよりも小さいことが好ましい。
発光層が電子過多の状態になると、図2(A)に示したように発光領域113−1が一部に限定さることによりその部分の負担が大きくなり、劣化が促進されてしまう。また、再結合できずに発光層を電子が通過してしまうことでも、寿命や発光効率が低下する。本発明の一態様では、電子輸送層114における電子の輸送性を落とすことにより、図2(B)のように発光領域113−1を広げ、発光層113を構成する材料への負担を分散させることで、寿命が長く発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。
また、このような構成を有する発光デバイスでは、電流密度一定の条件における駆動試験によって得られた輝度の劣化曲線において、極大値を有する形状を示す場合がある。すなわち、本発明の一態様の発光デバイスの劣化曲線は、時間の経過に従って輝度が上昇する部分を有する形状となる場合がある。このような劣化挙動を示す発光デバイスは、いわゆる初期劣化と呼ばれる駆動初期の急激な劣化を当該輝度上昇により相殺することが可能となり、初期劣化が小さく、且つ非常に良好な駆動寿命を有する発光デバイスとすることが可能となる。このような発光デバイスの事をRecombination−Site Tailoring Injection素子(ReSTI素子)と呼ぶものとする。
なおこのような極大値を有する劣化曲線の微分を取ると、その値が0である部分が存在することになる。そのため、劣化曲線の微分に0となる部分が存在する本発明の一態様の発光デバイスは初期劣化が小さく、非常に寿命が良好な発光デバイスであるということができる。
上述のような劣化曲線の挙動は、図3(A)に示したように、電子輸送層における電子移動度が小さいことによって発光に寄与しない再結合が非発光再結合領域120で生じることが原因で現れる現象と考えられる。上述の構成を有する本発明の発光デバイスでは、駆動始期では正孔の注入障壁が小さいこと、および電子輸送層114の電子輸送性が比較的低いことにより、発光領域113−1(すなわち再結合領域)が電子輸送層114側に寄った状態で形成される。また、電子輸送層114に含まれる第7の有機化合物のHOMO準位が−6.0eV以上と比較的高いことから、正孔が一部電子輸送層114まで達しており、電子輸送層114でも再結合が起こり、非発光再結合領域120が形成される。なお、再結合領域が電子輸送層114内部にまで達することから、第6の有機化合物と第7の有機化合物のHOMO準位の差は0.2eV以内であることが好ましい。
ここで、本発明の一態様の発光デバイスでは駆動時間が経過するにしたがって、キャリアバランスが変化し、図3(B)のように発光領域113−1(再結合領域)が正孔輸送層112側に移動してゆく。非発光再結合領域120が減少することで、再結合したキャリアのエネルギーを有効に発光に寄与させることが可能となり、駆動始期と比較して輝度の上昇が起こる。この輝度上昇が発光デバイスの駆動初期に現れる急激な輝度低下、いわゆる初期劣化を相殺することで初期劣化が小さく、また駆動寿命の長い発光素子を提供することが可能となるのである。
本発明の一態様の発光デバイスにおけるキャリアバランスの変化は、電子輸送層114の電子移動度の変化によってもたらされると考えられる。本発明の一態様の発光デバイスは、電子輸送層114内部にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体または化合物(第2の物質)の濃度差が存在するが、その濃度が低い領域と発光層との間に、濃度が高い領域を有する構成となっている。すなわち、第2の物質の濃度が低い領域が濃い領域よりも陰極側に位置する構成を有する。電子輸送層114の電子移動度はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体または化合物の濃度が濃いほど高いため、当該電子輸送層114の電子移動度は、その濃度が低い領域に律速されていることになる。
ここで、本発明者らは当該発光デバイスに電圧をかけて駆動すると、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体または化合物(第2の物質)が、電圧によって陽極側から陰極側(濃度の濃い領域から薄い領域)へと拡散してゆくことを見出した。すなわち、第2の物質の濃度が高い領域が低い領域よりも陽極側に存在することによって、駆動に伴って電子輸送層の電子移動度を向上しているのである。これにより、発光デバイス内部でキャリアバランスの変化が起こり、再結合領域が移動し、上述のような劣化曲線の形状をした寿命の長い発光デバイスを得る事ができた。
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、非常に寿命の良好な発光デバイスとすることが可能である。特に、LT95程度までの劣化が極小さい領域における寿命を大幅に伸ばすことが可能である。
なお、初期劣化を抑えることが可能であることで、有機ELデバイスの大きな弱点の一つとして未だ論われる焼き付きの問題、その低減のためになされる出荷前のエイジングの手間を大きく低減することが可能となる。
(実施の形態2)
続いて、上述の発光デバイスの詳細な構造や材料の例について説明する。本発明の一態様の発光デバイスは、上述のように陽極101と陰極102の一対の電極間に複数の層からなるEL層103を有し、当該EL層103は少なくとも陽極101側より、正孔注入層111、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2、発光層113および電子輸送層114を含む。
EL層103に含まれるそれ以外の層については特に限定はなく、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、励起子ブロック層、電荷発生層など、様々な層構造を適用することができる。
陽極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお、ここでは仕事関数が大きく、陽極を形成する材料として代表的な物質を列挙したが、本発明の一態様では、正孔注入層111に、正孔輸送性を有する有機化合物と、当該有機化合物に対し電子受容性を示す物質とを含む複合材料を用いるため、仕事関数に関わらず電極材料を選択することができる。
EL層103の積層構造については、本実施の形態では、図1(A−1)(A−2)に示すように、正孔注入層111、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2、発光層113、電子輸送層114(第1の電子輸送層114−1、第2に電子輸送層114−2)に加えて電子注入層115を有する構成、及び図1(B)に示すように、電子注入層115に代えて電荷発生層116を有する構成の2種類の構成について説明する。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
正孔注入層111、正孔輸送層112(正孔輸送層112−1、正孔輸送層112−2)、発光層113および電子輸送層114(電子輸送層114−1、電子輸送層114−2)に関しては、実施の形態1で詳述したため、繰り返しとなる記載を省略する。実施の形態1の記載を参照されたい。
電子輸送層114と陰極102との間には、電子注入層115として、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含む層を設けても良い。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものや、エレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。
また、電子注入層115の代わりに電子注入層115と陰極102との間に電荷発生層116を設けても良い(図1(B))。電荷発生層116は、電位をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、少なくともP型層117が含まれる。P型層117は、上述の正孔注入層111を構成することができる材料として挙げた複合材料を用いて形成することが好ましい。またP型層117は、複合材料を構成する材料として上述したアクセプタ材料を含む膜と正孔輸送材料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層117に電位をかけることによって、電子輸送層114に電子が、陰極である陰極102に正孔が注入され、発光デバイスが動作する。
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッファ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117における電子受容性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質と電子供与性物質を含んで形成される場合には、電子供与性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
陰極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極102と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を陰極102として用いることができる。
これら導電性材料は、真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
なお、陽極101と陰極102との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、陽極101および陰極102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における再結合領域に近いキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光材料もしくは、発光層に含まれる発光材料が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の発光デバイス(積層型素子、タンデム型素子ともいう)の態様について、図1(C)を参照して説明する。この発光デバイスは、陽極と陰極との間に、複数の発光ユニットを有する発光デバイスである。一つの発光ユニットは、図1(A−1)または(A−2)で示したEL層103とほぼ同様な構成を有する。つまり、図1(C)で示す発光デバイスは複数の発光ユニットを有する発光デバイスであり、図1(A−1)(A−2)、図1(B)で示した発光デバイスは、1つの発光ユニットを有する発光デバイスであるということができる。
図1(C)において、陽極501と陰極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。陽極501と陰極502はそれぞれ図1(A−1)における陽極101と陰極102に相当し、図1(A−1)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
電荷発生層513は、陽極501と陰極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。すなわち、図1(C)において、陽極の電位の方が陰極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
電荷発生層513は、図1(B)にて説明した電荷発生層116と同様の構成で形成することが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔注入層を設けなくとも良い。
また、電荷発生層513に電子注入バッファ層119を設ける場合、当該電子注入バッファ層119が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、陽極側の発光ユニットには必ずしも電子注入層を形成する必要はない。
図1(C)では、2つの発光ユニットを有する発光デバイスについて説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスについても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光デバイスのように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光デバイス全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光デバイスにおいて、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることも可能である。また、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスの構成としては、例えば、第1の発光ユニットが第1の青色の発光層を有し、第2の発光ユニットが黄色または黄緑色の発光層と、赤色の発光層とを有し、第3の発光ユニットが第2の青色の発光層を有するタンデム型デバイスとすることができる。当該タンデム型デバイスは、上述の発光デバイスと同様に、白色の発光を得ることができる。
また、上述のEL層103や第1の発光ユニット511、第2の発光ユニット512及び電荷発生層などの各層や電極は、例えば、蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、塗布法、グラビア印刷法等の方法を用いて形成することができる。また、それらは低分子材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子材料を含んでも良い。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いた発光装置について説明する。
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いて作製された発光装置について図4を用いて説明する。なお、図4(A)は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光デバイスの発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
素子基板610はガラス、石英、有機樹脂、金属、合金、半導体などからなる基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いて作製すればよい。
画素や駆動回路に用いられるトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、逆スタガ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型のトランジスタでもボトムゲート型トランジスタでもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、窒化ガリウム等を用いることができる。または、In−Ga−Zn系金属酸化物などの、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよい。
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
ここで、上記画素や駆動回路に設けられるトランジスタの他、後述するタッチセンサ等に用いられるトランジスタなどの半導体装置には、酸化物半導体を適用することが好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ状態における電流を低減できる。
上記酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、In−M−Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む酸化物半導体であることがより好ましい。
ここで、本発明の一態様に用いることができる酸化物半導体について、以下に説明を行う。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nano crystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
また、CAAC−OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)など)の少ない酸化物半導体ともいえる。したがって、CAAC−OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する酸化物半導体の一種である、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
また、上述の酸化物半導体以外として、CAC(Cloud−Aligned Composite)−OSを用いてもよい。
CAC−OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC−OSを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSに付与することができる。CAC−OSにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、CAC−OSは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC−OSにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC−OSは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−OSは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−OSをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC−OSは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
半導体層として上述の酸化物半導体材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
また、上述の半導体層を有するトランジスタはその低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された電子機器を実現できる。
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜を設けることが好ましい。下地膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。下地膜はスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。なお、下地膜は、必要で無ければ設けなくてもよい。
なお、FET623は駆動回路部601に形成されるトランジスタの一つを示すものである。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成すれば良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された陽極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
なお、陽極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリルを用いることにより形成することができる。
また、後に形成するEL層等の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
陽極613上には、EL層616、および陰極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616は、実施の形態1および実施の形態2で説明したような構成を含んでいる。また、EL層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
さらに、EL層616上に形成された陰極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物(MgAg、MgIn、AlLi等)等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が陰極617を透過させる場合には、陰極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
なお、陽極613、EL層616、陰極617でもって、発光デバイスが形成されている。当該発光デバイスは実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスである。なお、画素部は複数の発光デバイスが形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスと、それ以外の構成を有する発光デバイスの両方が含まれていても良い。
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光デバイス618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材で充填される場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けことで水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
図4には示されていないが、陰極上に保護膜を設けても良い。保護膜は有機樹脂膜や無機絶縁膜で形成すればよい。また、シール材605の露出した部分を覆うように、保護膜が形成されていても良い。また、保護膜は、一対の基板の表面及び側面、封止層、絶縁層、等の露出した側面を覆って設けることができる。
保護膜には、水などの不純物を透過しにくい材料を用いることができる。したがって、水などの不純物が外部から内部に拡散することを効果的に抑制することができる。
保護膜を構成する材料としては、酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物、三元化合物、金属またはポリマー等を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムシリケート、酸化ランタン、酸化珪素、チタン酸ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化バナジウムまたは酸化インジウム等を含む材料や、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化珪素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ジルコニウムまたは窒化ガリウム等を含む材料、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む酸化物、アルミニウムおよび亜鉛を含む酸化物、マンガンおよび亜鉛を含む硫化物、セリウムおよびストロンチウムを含む硫化物、エルビウムおよびアルミニウムを含む酸化物、イットリウムおよびジルコニウムを含む酸化物等を含む材料を用いることができる。
保護膜は、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良好な成膜方法を用いて形成することが好ましい。このような手法の一つに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある。ALD法を用いて形成することができる材料を、保護膜に用いることが好ましい。ALD法を用いることで緻密な、クラックやピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える保護膜を形成することができる。また、保護膜を形成する際に加工部材に与える損傷を、低減することができる。
例えばALD法を用いて保護膜を形成することで、複雑な凹凸形状を有する表面や、タッチパネルの上面、側面及び裏面にまで均一で欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
以上のようにして、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いて作製された発光装置を得ることができる。
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは寿命の長い発光デバイスであるため、信頼性の良好な発光装置とすることができる。また、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いた発光装置は発光効率が良好なため、消費電力の小さい発光装置とすることが可能である。
図5には白色発光を呈する発光デバイスを形成し、着色層(カラーフィルタ)等を設けることによってフルカラー化した発光装置の例を示す。図5(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光デバイスの陽極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光デバイスの陰極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
また、図5(A)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、ブラックマトリクス1035をさらに設けても良い。着色層及びブラックマトリクスが設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及びブラックマトリクス1035は、オーバーコート層1036で覆われている。また、図5(A)においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、緑、青となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
図5(B)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられていても良い。
また、以上に説明した発光装置では、FETが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型の発光装置の断面図を図6に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。FETと発光デバイスの陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の公知の材料を用いて形成することができる。
発光デバイスの陽極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽極であるが、陰極として形成しても構わない。また、図6のようなトップエミッション型の発光装置である場合、陽極を反射電極とすることが好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態1および実施の形態2においてEL層103として説明したような構成とし、且つ、白色の発光が得られるような素子構造とする。
図6のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するようにブラックマトリクス1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)やブラックマトリックスはオーバーコート層1036によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いることとする。また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、黄、緑、青の4色や赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。
トップエミッション型の発光装置では、マイクロキャビティ構造の適用が好適に行える。マイクロキャビティ構造を有する発光デバイスは、陽極を反射電極、陰極を半透過・半反射電極とすることにより得られる。反射電極と半透過・半反射電極との間には少なくともEL層を有し、少なくとも発光領域となる発光層を有している。
なお、反射電極は、可視光の反射率が40%乃至100%、好ましくは70%乃至100%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ωcm以下の膜であるとする。また、半透過・半反射電極は、可視光の反射率が20%乃至80%、好ましくは40%乃至70%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ωcm以下の膜であるとする。
EL層に含まれる発光層から射出される発光は、反射電極と半透過・半反射電極とによって反射され、共振する。
当該発光デバイスは、透明導電膜や上述の複合材料、キャリア輸送材料などの厚みを変えることで反射電極と半透過・半反射電極の間の光学的距離を変えることができる。これにより、反射電極と半透過・半反射電極との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができる。
なお、反射電極によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、発光層から半透過・半反射電極に直接入射する光(第1の入射光)と大きな干渉を起こすため、反射電極と発光層の光学的距離を(2n−1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数、λは増幅したい発光の波長)に調節することが好ましい。当該光学的距離を調節することにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることができる。
なお、上記構成においては、EL層に複数の発光層を有する構造であっても、単一の発光層を有する構造であっても良く、例えば、上述のタンデム型発光デバイスの構成と組み合わせて、一つの発光デバイスに電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成に適用してもよい。
マイクロキャビティ構造を有することで、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。なお、赤、黄、緑、青の4色の副画素で映像を表示する発光装置の場合、黄色発光による輝度向上効果のうえ、全副画素において各色の波長に合わせたマイクロキャビティ構造を適用できるため良好な特性の発光装置とすることができる。
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは寿命の長い発光デバイスであるため、信頼性の良好な発光装置とすることができる。また、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いた発光装置は発光効率が良好なため、消費電力の小さい発光装置とすることが可能である。
ここまでは、アクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、以下からはパッシブマトリクス型の発光装置について説明する。図7には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図7(A)は、発光装置を示す斜視図、図7(B)は図7(A)をX−Yで切断した断面図である。図7において、基板951上には、電極952と電極956との間にはEL層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光デバイスの不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いており、信頼性の良好な発光装置、又は消費電力の小さい発光装置とすることができる。
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光デバイスをそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光装置である。
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを照明装置として用いる例を図8を参照しながら説明する。図8(B)は照明装置の上面図、図8(A)は図8(B)におけるe−f断面図である。
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、陽極401が形成されている。陽極401は実施の形態2における陽極101に相当する。陽極401側から発光を取り出す場合、陽極401は透光性を有する材料により形成する。
陰極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
陽極401上にはEL層403が形成されている。EL層403は実施の形態1および実施の形態2におけるEL層103の構成、又は発光ユニット511、512及び電荷発生層513を合わせた構成などに相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
EL層403を覆って陰極404を形成する。陰極404は実施の形態2における陰極102に相当する。発光を陽極401側から取り出す場合、陰極404は反射率の高い材料によって形成される。陰極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給される。
以上、陽極401、EL層403、及び陰極404を有する発光デバイスを本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光デバイスは発光効率の高い発光デバイスであるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。
以上の構成を有する発光デバイスが形成された基板400と、封止基板407とをシール材405、406を用いて固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406(図8(B)では図示せず)には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
また、パッド412と陽極401の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、EL素子に実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いており、信頼性の良好な発光装置とすることができる。また、消費電力の小さい発光装置とすることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスをその一部に含む電子機器の例について説明する。実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは寿命が良好であり、信頼性の良好な発光デバイスである。その結果、本実施の形態に記載の電子機器は、信頼性の良好な発光部を有する電子機器とすることが可能である。
上記発光デバイスを適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
図9(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスをマトリクス状に配列して構成されている。
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
図9(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスをマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。図9(B1)のコンピュータは、図9(B2)のような形態であっても良い。図9(B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式となっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。
図9(D)は、携帯端末の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスをマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。
図9(C)に示す携帯端末は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
また、携帯端末内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯端末の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
以上の様に実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを備えた発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いることにより信頼性の高い電子機器を得ることができる。
図10(A)は、掃除ロボットの一例を示す模式図である。
掃除ロボット5100は、上面に配置されたディスプレイ5101、側面に配置された複数のカメラ5102、ブラシ5103、操作ボタン5104を有する。また図示されていないが、掃除ロボット5100の下面には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット5100は、その他に赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなどの各種センサを備えている。また、掃除ロボット5100は、無線による通信手段を備えている。
掃除ロボット5100は自走し、ゴミ5120を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
また、掃除ロボット5100はカメラ5102が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ5103に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ5103の回転を止めることができる。
ディスプレイ5101には、バッテリーの残量や、吸引したゴミの量などを表示することができる。掃除ロボット5100が走行した経路をディスプレイ5101に表示させてもよい。また、ディスプレイ5101をタッチパネルとし、操作ボタン5104をディスプレイ5101に設けてもよい。
掃除ロボット5100は、スマートフォンなどの携帯電子機器5140と通信することができる。カメラ5102が撮影した画像は、携帯電子機器5140に表示させることができる。そのため、掃除ロボット5100の持ち主は、外出先からでも、部屋の様子を知ることができる。また、ディスプレイ5101の表示をスマートフォンなどの携帯電子機器で確認することもできる。
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ5101に用いることができる。
図10(B)に示すロボット2100は、演算装置2110、照度センサ2101、マイクロフォン2102、上部カメラ2103、スピーカ2104、ディスプレイ2105、下部カメラ2106および障害物センサ2107、移動機構2108を備える。
マイクロフォン2102は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ2104は、音声を発する機能を有する。ロボット2100は、マイクロフォン2102およびスピーカ2104を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
ディスプレイ2105は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット2100は、使用者の望みの情報をディスプレイ2105に表示することが可能である。ディスプレイ2105は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、ディスプレイ2105は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット2100の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
上部カメラ2103および下部カメラ2106は、ロボット2100の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ2107は、移動機構2108を用いてロボット2100が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット2100は、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。本発明の一態様の発光装置はディスプレイ2105に用いることができる。
図10(C)はゴーグル型ディスプレイの一例を表す図である。ゴーグル型ディスプレイは、例えば、筐体5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、操作キー5005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子5006、センサ5007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、表示部5002、支持部5012、イヤホン5013等を有する。
本発明の一態様の発光装置は表示部5001および第2の表示部5002に用いることができる。
図11は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを、照明装置である電気スタンドに用いた例である。図11に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002としては、実施の形態3に記載の照明装置を用いても良い。
図12は、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを、室内の照明装置3001として用いた例である。実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは信頼性の高い発光デバイスであるため、信頼性の良い照明装置とすることができる。また、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは、薄型であるため、薄型化した照明装置として用いることが可能となる。
実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは、自動車のフロントガラスやダッシュボードにも搭載することができる。図13に実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。表示領域5200乃至表示領域5203は実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを用いて設けられた表示である。
表示領域5200と表示領域5201は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを搭載した表示装置である。実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスは、陽極と陰極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
表示領域5202はピラー部分に設けられた実施の形態1および実施の形態2に記載の発光デバイスを搭載した表示装置である。表示領域5202には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示領域5203は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
表示領域5203はまたナビゲーション情報、速度計や回転計、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示領域5200乃至表示領域5202にも設けることができる。また、表示領域5200乃至表示領域5203は照明装置として用いることも可能である。
また、図14(A)、(B)に、折りたたみ可能な携帯情報端末5150を示す。折りたたみ可能な携帯情報端末5150は筐体5151、表示領域5152および屈曲部5153を有している。図14(A)に展開した状態の携帯情報端末5150を示す。図14(B)に折りたたんだ状態の携帯情報端末を示す。携帯情報端末5150は、大きな表示領域5152を有するにも関わらず、折りたためばコンパクトで可搬性に優れる。
表示領域5152は屈曲部5153により半分に折りたたむことができる。屈曲部5153は伸縮可能な部材と複数の支持部材とで構成されており、折りたたむ場合は、伸縮可能な部材が伸び。屈曲部5153は2mm以上、好ましくは3mm以上の曲率半径を有して折りたたまれる。
なお、表示領域5152は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。本発明の一態様の発光装置を表示領域5152に用いることができる。
また、図15(A)〜(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。図15(A)に展開した状態の携帯情報端末9310を示す。図15(B)に展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。図15(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示パネル9311に用いることができる。
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイス1乃至発光デバイス3および比較発光デバイス1について説明する。発光デバイス1乃至発光デバイス3および比較発光デバイスで用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
(発光デバイス1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、陽極101を形成した。なお、その膜厚は70nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
次に、陽極101が形成された面が下方となるように、陽極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、陽極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式上記構造式(i)で表されるN,N−ビス(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−8−アミン(略称:BBABnf)と、ALD−MP001Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20180314)(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20170124)とを、重量比で1:0.1(=BBABnf:ALD−MP001Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20180314))となるように、10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
次に、正孔注入層111上に、第1の正孔輸送層112−1として、BBABnfを20nmとなるように蒸着した後、第2の正孔輸送層112−2として、上記構造式(ii)で表される3,3’−(ナフタレン−1,4−ジイル)ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCzN2)を10nmとなるように蒸着して正孔輸送層112を形成した。なお、第2の正孔輸送層112−2は電子ブロック層としても機能する。
続いて、上記構造式(iii)で表される9−(1−ナフチル)−10−[4−(2−ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN−βNPAnth)と(iv)で表される3,10−ビス[N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−2−イル)−N−フェニルアミノ]ナフト[2,3−b;6,7−b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)−02)とを、重量比1:0.015(=αN−βNPAnth:3,10PCA2Nbf(IV)−02)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
その後、発光層113上に、上記構造式(v)で表される2−{4−[9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−2−アントリル]フェニル}−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)と上記構造式(vi)で表される8−ヒドロキシキノリナト−リチウム(略称:Liq)(ケミプロ化成製(シリアル番号:181201))とを重量比0.9:1(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着した後、重量比1:0.9(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着し、電子輸送層114を形成した。
電子輸送層114を形成した後、Liqを膜厚1nmとなるように蒸着して電子注入層115を形成し、続いてアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで陰極102を形成して本実施例の発光デバイス1を作製した。
(発光デバイス2の作製方法)
発光デバイス2は電子輸送層114を、ZADN:Liq=0.7:1(重量比)となるように12.5nm共蒸着した後、重量比1:0.7(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着し形成した他は発光デバイス1と同様に作製した。
(発光デバイス3の作製方法)
発光デバイス3は電子輸送層114を、ZADN:Liq=0.5:1(重量比)となるように12.5nm共蒸着した後、重量比1:0.5(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着し形成した他は発光デバイス1と同様に作製した。
(比較発光デバイス1の作製方法)
比較発光デバイス1は電子輸送層114を、ZADN:Liq=1:1(重量比)となるように25nm共蒸着し形成した他は発光デバイス1と同様に作製した。
発光デバイス1乃至発光デバイス3および比較発光デバイス1の素子構造を以下の表にまとめる。
ここで、本実施例で使用した有機化合物のHOMO準位、LUMO準位および電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度をまとめた表を以下に示す。
これら発光デバイスを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光デバイスの初期特性及び信頼性について測定を行った。なお、測定は室温で行った。
発光デバイス1乃至発光デバイス3および比較発光デバイス1の輝度−電流密度特性を図16に、電流効率−輝度特性を図17に、輝度−電圧特性を図18に、電流−電圧特性を図19に、外部量子効率−輝度特性を図20に、発光スペクトルを図21に示す。また、発光デバイス1乃至発光デバイス3および比較発光デバイス1の1000cd/m2付近における主要な特性を表3に示す。
図16乃至図21及び表3より、本発明の一態様である発光デバイス1乃至発光デバイス3および比較発光デバイスは、良好な初期特性を有する青色発光デバイスであることがわかった。
また、電流密度50mA/cm2における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図22に示す。図22で示すように、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス1乃至発光デバイス3は、駆動後に輝度が上昇し初期輝度よりも高い輝度を示してから緩やかに下降していることがわかる。すなわち、劣化曲線に極大点を持っている。このことより特に2〜5%劣化程度の少ない劣化状態を基準とした駆動寿命を大幅に向上することができた。また、電子輸送層におけるZADNとLiqの比率を変更することによって輝度上昇の程度もコントロールすることができることもわかった。
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイス4、5について説明する。発光デバイス4、5で用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
(発光デバイス4および発光デバイス5の作製方法)
まず、ガラス基板上に、反射電極として、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金膜(Ag−Pd−Cu(APC)膜)をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜した後、透明電極として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、85nmの膜厚で成膜して陽極101を形成した。なお、その電極面積は4mm2(2mm×2mm)とした。
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
次に、陽極101が形成された面が下方となるように、陽極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、陽極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式上記構造式(i)で表されるN,N−ビス(4−ビフェニル)−6−フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−8−アミン(略称:BBABnf)と、ALD−MP001Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20180314)(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20170124)とを、重量比で1:0.05(=BBABnf:ALD−MP001Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20180314))となるように、10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
次に、正孔注入層111上に、第1の正孔輸送層112−1として、BBABnfを25nmとなるように蒸着した後、第2の正孔輸送層112−2として、上記構造式(ii)で表される3,3’−(ナフタレン−1,4−ジイル)ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:PCzN2)を10nmとなるように蒸着して正孔輸送層112を形成した。なお、第2の正孔輸送層112−2は電子ブロック層としても機能する。
続いて、上記構造式(iii)で表される9−(1−ナフチル)−10−[4−(2−ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN−βNPAnth)と(iv)で表される3,10−ビス[N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−2−イル)−N−フェニルアミノ]ナフト[2,3−b;6,7−b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)−02)とを、重量比1:0.015(=αN−βNPAnth:3,10PCA2Nbf(IV)−02)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
その後、発光層113上に、上記構造式(v)で表される2−{4−[9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−2−アントリル]フェニル}−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)と上記構造式(vi)で表される8−ヒドロキシキノリナト−リチウム(略称:Liq)(ケミプロ化成製(シリアル番号:181201))とを重量比0.7:1(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着した後、重量比1:0.7(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着して、電子輸送層114を形成した。
電子輸送層114を形成した後、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との体積比を1:0.1、膜厚15nmとなるように蒸着することで陰極102を形成して発光デバイス4および発光デバイス5を作製した。なお、陰極102は光を反射する機能と光を透過する機能とを有する半透過・半反射電極であり、本実施例の発光デバイス4および発光デバイス5は陰極102から光を取り出すトップエミッションの素子である。また、陰極102上には上記構造式(vii)で表される1,3,5−トリ(ジベンゾチオフェン−4−イル)−ベンゼン(略称:DBT3P−II)を80nm蒸着して、取出し効率を向上させている。
発光デバイス4および発光デバイス5の素子構造を以下の表にまとめる。
ここで、本実施例で使用した有機化合物のHOMO準位、LUMO準位および電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度をまとめた表を以下に示す。
この発光デバイスを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光デバイスの初期特性及び信頼性について測定を行った。なお、測定は室温で行った。
発光デバイス4および発光デバイス5の輝度−電流密度特性を図30に、電流効率−輝度特性を図31に、輝度−電圧特性を図32に、電流−電圧特性を図33に、外部量子効率−輝度特性を図34に、発光スペクトルを図35に示す。また、発光デバイス4および発光デバイス5の1000cd/m2付近における主要な特性を表6に示す。
図30乃至図35及び表6より、本発明の一態様である発光デバイス4および発光デバイス5は、特性の良好な青色発光デバイスであることがわかった。
また、初期の輝度を1450cd/m2とした際の電流密度一定の条件における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図36に示す。図36で示すように、本発明一態様の発光デバイスである発光デバイス4および発光デバイス5は、駆動後に輝度が上昇し初期輝度よりも高い輝度を示してから緩やかに下降していることがわかる。すなわち、劣化曲線に極大点を持っている。このことより駆動開始後450時間を経過しても初期輝度の101%を保っており、少ない劣化状態を基準とした駆動寿命を大幅に向上することができた。
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスをToF−SIMSによりm/z=17のアニオン、すなわち水酸化物イオン(OH−)に関して陰極側から深さ方向分析した結果を示す。測定に用いた発光デバイスの構造を表7に示す。作製方法に関しては実施例1および実施例2における発光デバイス1乃至5と同様であるので記載を省略する。なお、Liqはケミプロ化成製(シリアル番号:181201)を用いた。
装置は飛行時間二次イオン質量分析計を用い、一次イオン源はBi3 ++を用い、スパッタイオン原はガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用いた。測定は、発光デバイスの陰極を除去した後に、EL層を陰極側より掘り進みながら行った。
結果を図37に示す。縦軸は検出カウント数、横軸は深さである。なお、図中丸付数字は、表7における丸付数字に対応している。OH−は、発光デバイス中の酸素分子に由来して検出されると考えられ、電子輸送層114中の第2の物質であるLiqの濃度差を反映して検出された。このように、電子輸送層中の第2の物質の濃度の違いをOH−の濃度(存在量)の差として検出することができる。
本実施例における発光デバイスは、図37からわかるように、電子移動度の律速となる第2の物質の濃度の低い領域よりも発光層113側に第2の物質の濃度の高い領域が設けられている、換言すると電子輸送層114において、陰極側から陽極側に向かって、第2の物質の存在量(濃度)が上昇している領域が存在する、または、電子輸送層114において第2の物質の存在量(濃度)が最も大きい領域が、最も小さい領域よりも陽極側に存在することが肝要である。
<参考例>
本参考例では、各実施例で用いた有機化合物のHOMO準位、LUMO準位および電子移動度の算出方法について説明する。
HOMO準位およびLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出することができる。
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化−還元波の中間電位とし、Ecは還元−酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=−4.94−Ea、LUMO準位[eV]=−4.94−Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
電子移動度はインピーダンス分光法(Impedance Spectroscopy:IS法)により測定することが可能である。
EL材料のキャリア移動度の測定は、過渡光電流法(Time−of−flight:TOF法)や空間電荷制限電流(Space−charge−limited current:SCLC)のI−V特性から求める方法(SCLC法)などが古くから知られている。TOF法は実際の有機EL素子と比較してかなり厚い膜厚の試料が必要となる。SCLC法ではキャリア移動度の電界強度依存性が得られないなどの欠点がある。IS法では、測定に必要とする有機膜の膜厚が数百nm程度と薄いため、比較的少量のEL材料でも成膜することが可能であり、実際のEL素子に近い膜厚で移動度を測定できることが特徴であり、キャリア移動度の電界強度依存性も得ることができる。
IS法では、EL素子に微小正弦波電圧信号(V=V0[exp(jωt)])を与え、その応答電流信号(I=I0exp[j(ωt+φ)])の電流振幅と入力信号との位相差より、EL素子のインピーダンス(Z=V/I)を求める。高周波電圧から低周波電圧まで変化させて素子に印加させれば、インピーダンスに寄与する様々な緩和時間を有する成分を分離、測定することができる。
ここで、インピーダンスの逆数であるアドミタンスY(=1/Z)は、下記式(1)のようにコンダクタンスGとサセプタンスBで表すことができる。
さらに、単一電荷注入(single injection)モデルにより、それぞれ下記式(2)および(3)を算出することができる。ここで、g(式(4))は微分コンダクタンスである。なお、式中Cは静電容量(キャパシタンス)、θはωtであり走行角、ωは角周波数を表す。tは走行時間である。解析には電流の式、ポアソンの式、電流連続の式を用い、拡散電流およびトラップ準位の存在を無視している。
静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法が−ΔB法である。また、コンダクタンスの周波数特性から移動度を算出する方法がωΔG法である。
実際には、まず、電子移動度を求めたい材料の電子オンリー素子を作製する。電子オンリー素子とは、キャリアとして電子のみが流れるように設計された素子である。本明細書では、静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法(−ΔB法)を説明する。用いた電子オンリー素子の模式図を図42に示す。
今回、測定用に作製した電子オンリー素子の構造は、図25に示したように陽極201と陰極202との間に第1の層210と第2の層211と第3の層212を有する。電子移動度を求めたい材料は第2の層211の材料として用いれば良い。今回はZADNとLiqの1:1(重量比)の共蒸着膜についてその電子移動度を測定した例を挙げて説明する。具体的な構成例は以下の表にまとめた。
ZADNとLiqの共蒸着膜を第2の層211として作製した電子オンリー素子の電流密度−電圧特性を図26に示す。
インピーダンス測定は、5.0V〜9.0Vの範囲で直流電圧を印加しながら、交流電圧が70mV、周波数が1Hz〜3MHzの条件で測定を行った。ここで得られたインピーダンスの逆数であるアドミタンス(前述の(1)式)からキャパシタンスを算出する。印加電圧7.0Vにおける算出されたキャパシタンスCの周波数特性を図27に示す。
キャパシタンスCの周波数特性は、微小電圧信号により注入されたキャリアによる空間電荷が微小交流電圧に完全には追従できず、電流に位相差が生じることにより得られる。ここで、膜中のキャリアの走行時間は、注入されたキャリアが対向電極に到達する時間Tで定義され、以下の式(5)で表される。
負サセプタンス変化(−ΔB)は、静電容量変化−ΔCに角周波数ωを乗じた値(−ωΔC)に対応する。その最も低周波側のピーク周波数f’max(=ωmax/2π)と走行時間Tとの間には、式(3)より、以下の式(6)の関係があることが導出される。
上記測定から算出した(すなわち直流電圧が7.0Vの時の)−ΔBの周波数特性を図28に示す。図28より求まる最も低周波側のピーク周波数f’maxは、図中の矢印で示した。
以上の測定および解析から得られるf’maxから、走行時間Tが求まるため(上記式(6)参照)、上記式(5)より、今回で言えば電圧7.0Vにおける電子移動度を求めることができる。同様の測定を、直流電圧5.0V〜9.0Vの範囲で行うことで、各電圧(電界強度)での電子移動度が算出できるため、移動度の電界強度依存性も測定できる。
以上のような算出法により、各有機化合物の最終的に得られた電子移動度の電界強度依存性を図29に、図から読み取った電界強度[V/cm]の平方根が600[V/cm]1/2の時の電子移動度の値を表9にそれぞれ示す。
以上のように電子移動度を算出することが可能である。なお、詳しい測定方法に関しては、Takayuki Okachi 他 ”Japanese Journal of Applied Physics” Vol. 47, No. 12, 2008, pp. 8965−8972を参照されたい。