JP2020122121A - ポリイミド系樹脂粉体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリイミド系樹脂粉体を製造する際にメタノール等のアルコール系溶媒を効率的に除去することが可能な、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法を提供する。【解決手段】(1)ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程、(2)得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物(a)を得る工程、及び、(3)ポリイミド系樹脂組成物(a)を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程を少なくとも含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法に関する。
現在、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置は、テレビのみならず、携帯電話やスマートウォッチといった種々の用途で広く活用されている。こうした用途の拡大に伴い、フレキシブル特性を有する画像表示装置(フレキシブルディスプレイ)が求められている。
画像表示装置は、液晶表示素子又は有機EL表示素子等の表示素子の他、偏光板や位相差板及び前面板等の構成部材から構成される。フレキシブルディスプレイを達成するためには、これら全ての構成部材が柔軟性を有する必要がある。
これまで前面板としてはガラスが用いられている。ガラスは、透明度が高く、ガラスの種類によっては高硬度を発現できる反面、非常に剛直であり、割れやすいため、フレキシブルディスプレイの前面板材料としての利用は難しい。
そのため、ガラスに代わる材料として高分子材料の活用が検討されている。高分子材料からなる前面板はフレキシブル特性を発現し易いため、種々の用途に用いることが期待できる。柔軟性を有する樹脂としては種々のものが挙げられるが、例えばポリイミド系樹脂がある。
ポリイミド系樹脂を使用して、例えばフィルムなどの高分子材料を製造する際、輸送時に容積を少なくすることができる観点からポリイミド系樹脂を粉体として製造し、該粉体を成膜場所まで輸送し、該粉体を用いて調製されたポリイミド系樹脂のワニスを用いて成膜が行われている。
このようなポリイミド系樹脂の粉体の製造方法として、ポリイミド系樹脂を含有する溶液に、メタノール、エタノール等を添加し、ポリイミド系樹脂の粉体を析出させることが行われている(例えば特許文献1)。しかし、特許文献1の段落[0030]にも記載されるように、メタノール等のヒドロキシ基を有する貧溶媒を用いた場合、該貧溶媒を含むポリイミド系樹脂粉体を乾燥すると、該粉体を用いて得られるフィルムの耐熱性の低下、及び/又は、フィルムの着色といった問題が生じる場合があった。例えば特許文献1では、上記のような耐熱性の低下及び着色を回避するために、ポリイミド粉体中の揮発成分が5%未満程度になるまで、100℃未満の温度で長時間かけて乾燥させることが記載されている。
本発明は、上記の背景技術のもと、ポリイミド系樹脂粉体を製造する際にメタノール等のアルコール系溶媒を効率的に除去することが可能な、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、ポリイミド系樹脂粉体の製造条件に着目し、鋭意検討を行った。その結果、所定の溶媒でポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程を少なくとも含む製造方法により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の好適な態様を含む。
〔1〕(1)ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程、
(2)得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
(3)ポリイミド系樹脂組成物(a)を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程
を少なくとも含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法。
〔2〕ポリイミド系樹脂粉体の色度が、L*a*b*表色系に基づく色差測定において、L*≧90、−10≦a*≦10、及び−10≦b*≦10を満たす、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕ポリイミド系樹脂はフッ素原子を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕ポリイミド系樹脂は芳香族系のポリイミド系樹脂である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕ポリイミド系樹脂のイミド化率は90%以上である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法
〔6〕工程(3)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)の質量をW1とし、該ポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる水を主成分とする溶媒の質量をW2とすると、W1に対するW2の割合(W2/W1)は4以上であり、接触時間は10分以上である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕工程(3)の後に、
(4)固液分離して、ポリイミド系樹脂組成物(b)を得る工程を含む、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕前記ポリイミド系樹脂組成物(b)における水の含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して10質量%以上であり、かつ、炭素数1〜4のアルコールの含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物(b)の総質量に対して3質量%未満である、前記〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕工程(2)の前に、工程(1)で得た混合物と、水を含む溶媒とを接触させて、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程(X)をさらに含む、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔10〕工程(3)の前に、工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)を、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒と接触させる工程をさらに含む、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕ポリイミド系樹脂及び水を少なくとも含むポリイミド系樹脂組成物であって、該ポリイミド系樹脂組成物における水の含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して10質量%以上であり、かつ、炭素数1〜4のアルコールの含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して3質量%未満である、ポリイミド系樹脂組成物。
〔12〕炭素数1〜4のアルコールの含有量が、ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して0.001質量%以上である、前記〔11〕に記載のポリイミド系樹脂組成物。
〔1〕(1)ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程、
(2)得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
(3)ポリイミド系樹脂組成物(a)を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程
を少なくとも含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法。
〔2〕ポリイミド系樹脂粉体の色度が、L*a*b*表色系に基づく色差測定において、L*≧90、−10≦a*≦10、及び−10≦b*≦10を満たす、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕ポリイミド系樹脂はフッ素原子を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕ポリイミド系樹脂は芳香族系のポリイミド系樹脂である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕ポリイミド系樹脂のイミド化率は90%以上である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法
〔6〕工程(3)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)の質量をW1とし、該ポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる水を主成分とする溶媒の質量をW2とすると、W1に対するW2の割合(W2/W1)は4以上であり、接触時間は10分以上である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕工程(3)の後に、
(4)固液分離して、ポリイミド系樹脂組成物(b)を得る工程を含む、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕前記ポリイミド系樹脂組成物(b)における水の含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して10質量%以上であり、かつ、炭素数1〜4のアルコールの含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物(b)の総質量に対して3質量%未満である、前記〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕工程(2)の前に、工程(1)で得た混合物と、水を含む溶媒とを接触させて、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程(X)をさらに含む、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔10〕工程(3)の前に、工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)を、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒と接触させる工程をさらに含む、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕ポリイミド系樹脂及び水を少なくとも含むポリイミド系樹脂組成物であって、該ポリイミド系樹脂組成物における水の含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して10質量%以上であり、かつ、炭素数1〜4のアルコールの含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して3質量%未満である、ポリイミド系樹脂組成物。
〔12〕炭素数1〜4のアルコールの含有量が、ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して0.001質量%以上である、前記〔11〕に記載のポリイミド系樹脂組成物。
本発明によれば、ポリイミド系樹脂粉体を製造する際にメタノール等の貧溶媒を効率的に除去することが可能な、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明のポリイミド系樹脂粉体の製造方法(以下において、「本発明の製造方法」とも称する)は、
(1)ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程、
(2)得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
(3)該ポリイミド系樹脂組成物(a)を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程
を少なくとも含む。
(1)ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程、
(2)得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
(3)該ポリイミド系樹脂組成物(a)を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程
を少なくとも含む。
<工程(1)>
本発明のポリイミド系樹脂粉体の製造方法は、ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る、工程(1)を少なくとも含む。
本発明のポリイミド系樹脂粉体の製造方法は、ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る、工程(1)を少なくとも含む。
(ポリイミド系樹脂溶液)
工程(1)において炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒と接触させるポリイミド系樹脂溶液は、ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解した溶液である。ここで、本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、及び、ポリアミドイミド前駆体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を表す。ポリイミド樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂であり、ポリアミドイミド樹脂は、イミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂である。また、ポリイミド前駆体樹脂及びポリアミドイミド前駆体樹脂は、それぞれ、イミド化によりポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂を与える、イミド化前の前駆体であり、ポリアミック酸とも称される樹脂である。本明細書において、上記ポリイミド前駆体樹脂及び上記ポリアミドイミド前駆体樹脂を合わせて、「ポリアミック酸樹脂」とも称する。
工程(1)において炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒と接触させるポリイミド系樹脂溶液は、ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解した溶液である。ここで、本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、及び、ポリアミドイミド前駆体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を表す。ポリイミド樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂であり、ポリアミドイミド樹脂は、イミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂である。また、ポリイミド前駆体樹脂及びポリアミドイミド前駆体樹脂は、それぞれ、イミド化によりポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂を与える、イミド化前の前駆体であり、ポリアミック酸とも称される樹脂である。本明細書において、上記ポリイミド前駆体樹脂及び上記ポリアミドイミド前駆体樹脂を合わせて、「ポリアミック酸樹脂」とも称する。
ポリイミド系樹脂溶液は、ポリイミド系樹脂の原料モノマーを溶媒(特にポリイミド系樹脂に対する良溶媒)中で重合させて得た反応溶液であってもよいし、単離したポリイミド系樹脂を良溶媒に溶解させて得た溶液であってもよい。ポリイミド系樹脂の合成からポリイミド系樹脂粉体を製造するまでの工程を効率的に実施しやすい観点からは、モノマーの重合反応を後述する良溶媒中で行い、得られた反応溶液をポリイミド系樹脂溶液として用いることが好ましい。
ポリイミド系樹脂溶液に含まれる良溶媒は、ポリイミド系樹脂を溶解させやすい溶媒であり、例えばポリイミド系樹脂に対する室温(20〜30℃)での溶解度が1質量%以上の溶媒をいう。ポリイミド系樹脂溶液に含まれる良溶媒は、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。良溶媒としては、例えば、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(GBL)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。なお、使用する溶媒が良溶媒であるか否かは下記の方法で確認することができる。溶媒にポリイミド系樹脂を1質量%となるように加え、必要に応じて加熱・撹拌等することにより溶媒に樹脂を溶解させ、室温(20〜30℃)状態での溶液が均一に透明になっていれば該溶媒は良溶媒であり、溶液が均一に透明になっていなければ、該溶媒は良溶媒ではなく貧溶媒である。例えば本実施例においては、容器に溶媒を測りとり、撹拌し、そこに、1質量%になるようにポリイミド系樹脂を入れ、室温(24℃)で3時間撹拌を行った。その結果、溶け残りがなく、溶液が均一に透明になっていれば良溶媒であり、溶け残りが存在した場合は良溶媒ではなく、貧溶媒であると判断できる。
良溶媒のポリイミド系樹脂に対する溶解度は、容積効率の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。良溶媒のポリイミド系樹脂に対する溶解度の上限は特に限定されないが、貧溶媒の使用量を削減できる観点からは、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。なお、本明細書において、ある溶媒Aのポリイミド系樹脂に対する溶解度は、X質量部の溶媒Aに溶解可能なポリイミド系樹脂の量がY質量部である場合、溶解度(%)=Y/(X+Y)×100の式により算出される値である。
ポリイミド系樹脂溶液における良溶媒の含有量は、操作上、扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。また、ポリイミド系樹脂溶液における良溶媒の含有量は、貧溶媒の使用量を削減できる観点から、ポリイ系樹脂溶液の総量に対して好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
ポリイミド系樹脂溶液におけるポリイミド系樹脂の含有量は、容積効率の観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。また、ポリイミド系樹脂溶液におけるポリイミド系樹脂の含有量は、操作上、扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
(炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒)
工程(1)において、上記のポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させ、ポリイミド系樹脂を析出させる。炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒は、ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒である。炭素数1〜4のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
工程(1)において、上記のポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させ、ポリイミド系樹脂を析出させる。炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒は、ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒である。炭素数1〜4のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒は、炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒であることが好ましい。本明細書において、主成分とするとは、70質量%以上を占めることを意味する。炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒、好ましくは炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒を貧溶媒として用いることで、効果的にポリイミド系樹脂を析出させやすくなる。炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒における炭素数1〜4のアルコールの割合は、ポリイミド系樹脂を析出させやすい観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは75質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。工程(1)においてポリイミド系樹脂と接触させる溶媒は、1種類の炭素数1〜4のアルコールであってもよいし、2種以上の炭素数1〜4のアルコールの混合物であってもよいし、1種類又は2種以上の炭素数1〜4のアルコールと他の溶媒との混合物であってもよい。本明細書において、「炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒」を「アルコール系溶媒」とも称する。
ポリイミド系樹脂溶液と、アルコール系溶媒とを接触させることにより、ポリイミド系樹脂が析出し、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物が得られる。ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒を接触させると、溶媒全体としてのポリイミド系樹脂の溶解度が下がることにより、溶解しきれなくなったポリイミド系樹脂が析出する。ポリイミド系樹脂溶液と、アルコール系溶媒とを接触させる方法としては、これらが接触する限り特に限定されないが、例えば、ポリイミド系樹脂溶液にアルコール系溶媒を添加する方法、又は、アルコール系溶媒にポリイミド系樹脂溶液を添加する方法が挙げられる。粉体を得やすい観点からは、ポリイミド系樹脂溶液とアルコール系溶媒との接触を、ポリイミド系樹脂溶液にアルコール系溶媒を添加することにより行うことが好ましい。また、添加速度を調整しやすい観点から、滴下により添加を行うことがより好ましい。上記接触により、ポリイミド系樹脂が析出し、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物が得られる。なお、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物において、ポリイミド系樹脂溶液中に溶解していたポリイミド系樹脂の少なくとも一部のポリイミド系樹脂が析出していればよい。
ポリイミド系樹脂溶液にアルコール系溶媒を添加する方法により接触を行う場合、添加方法にもよるが、添加直後は局所的にアルコール系溶媒の濃度が高い部分が生じ、その後ポリイミド系樹脂溶液全体に広がる。アルコール系溶媒の濃度が局所的に高くなりすぎると、局所的にポリイミド系樹脂粉体が急激に析出し、ポリイミド系樹脂粉体に不純物が混入しやすくなったり、固体化したポリイミド系樹脂が溶媒を包含したりすることにより粉体を得にくくなる場合がある。そのため、できるだけ局所的な析出が生じないように添加方法や添加速度を選択することが、効率的に高い精度でポリイミド系樹脂粉体を析出させやすい観点から好ましい。局所的なポリイミド系樹脂粉体の析出を抑制する観点からは、アルコール系溶媒の局所的な濃度上昇を抑制できる方法が好ましく、ポリイミド系樹脂粉体の製造効率を高めやすい観点からは、アルコール系溶媒の添加速度を早くできる方法が好ましい。これらの観点から、ポリイミド系樹脂溶液にアルコール系溶媒を添加する好ましい方法としては、例えば複数のノズル又は複数の枝分かれを有するノズルを用いて、ライン分割して添加する方法、シャワーノズルを用いて添加する方法、アルコール系溶媒の吐出口がポリイミド系樹脂溶液中に浸漬された状態で添加を行うディップ法、ノズルの先に分散板を取り付ける方法などが挙げられる。
工程(1)において、ポリイミド系樹脂溶液中のポリイミド系樹脂の量をM質量部、良溶媒の量をN質量部とし、工程(1)においてポリイミド系樹脂溶液と接触させるアルコール系溶媒の量をZ質量部とした場合、各成分の質量比が関係式(i)及び(ii):
5 ≦ N/M ≦ 40 (i)
20 ≦ Z/M ≦ 100 (ii)
を満たすことが好ましい。
5 ≦ N/M ≦ 40 (i)
20 ≦ Z/M ≦ 100 (ii)
を満たすことが好ましい。
式(i)中のN/Mは、ポリイミド系樹脂溶液中の良溶媒の量とポリイミド系樹脂の量との関係を表す。なお、良溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計質量をNとする。N/Mは、ポリイミド系樹脂溶液中でポリイミド系樹脂を溶解させ、取り扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。N/Mは、アルコール系溶媒及び水系溶媒を添加してポリイミド系樹脂を析出させる工程において、ポリイミド系樹脂を析出させやすい観点から、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下である。
式(ii)中のZ/Mは、ポリイミド系樹脂溶液中のポリイミド系樹脂の量と、ポリイミド系樹脂溶液と、工程(1)において接触させるアルコール系溶媒の量との関係を表す。なお、アルコール系溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計質量をZ1とする。Z/Mは、ポリイミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。Z/Mは、廃液量削減の観点から、好ましくは90以下、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。
<工程(X)>
本発明の製造方法は、工程(1)に次いで、工程(2)の前に、工程(1)で得た混合物と、水を含む溶媒とを接触させる工程(X)をさらに含んでよい。工程(1)に次いで工程(X)を行うことにより、析出するポリイミド系樹脂粉体が互いに溶着することを抑制しやすい。その結果、ポリイミド系樹脂粉体を効率的に製造しやすくなる。水を含む溶媒は、水を主成分とする溶媒であることが好ましい。水を含む溶媒、好ましくは水を主成分とする溶媒と接触させる工程(X)を行うことにより、ポリイミド系樹脂粉体同士の溶着を防止し、析出させやすくなる。工程(X)で接触させる水を含む溶媒中の水の量は、析出するポリイミド系樹脂粉体中に包含される良溶媒及び炭素数1〜4のアルコール等の量を低下させやすい観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは75質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。本明細書において、「水を含む溶媒」を「水系溶媒」とも称する。
本発明の製造方法は、工程(1)に次いで、工程(2)の前に、工程(1)で得た混合物と、水を含む溶媒とを接触させる工程(X)をさらに含んでよい。工程(1)に次いで工程(X)を行うことにより、析出するポリイミド系樹脂粉体が互いに溶着することを抑制しやすい。その結果、ポリイミド系樹脂粉体を効率的に製造しやすくなる。水を含む溶媒は、水を主成分とする溶媒であることが好ましい。水を含む溶媒、好ましくは水を主成分とする溶媒と接触させる工程(X)を行うことにより、ポリイミド系樹脂粉体同士の溶着を防止し、析出させやすくなる。工程(X)で接触させる水を含む溶媒中の水の量は、析出するポリイミド系樹脂粉体中に包含される良溶媒及び炭素数1〜4のアルコール等の量を低下させやすい観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは75質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。本明細書において、「水を含む溶媒」を「水系溶媒」とも称する。
工程(1)及び工程(X)を含む本発明の製造方法の好ましい一実施形態においては、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒との接触工程(工程(1))において必ずしもポリイミド系樹脂が析出する必要はなく、水を含む溶媒との接触工程(工程(X))において、ポリイミド系樹脂溶液中に溶解していたポリイミド系樹脂の少なくとも一部のポリイミド系樹脂が粉体として析出すればよい。したがって、工程(1)に次いで工程(X)を行う場合、これらの工程をまとめて、工程(1X):ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させて混合物を得て、次いで、該混合物と、水を含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程としてよい。
工程(X)において、工程(1)で得た混合物と水を含む溶媒とを接触させる方法も特に限定されず、工程(1)について上記に記載した接触方法を同様に用いてよい。ポリイミド系樹脂粉体を析出させやすい観点からは、工程(1)で得た混合物と水を含む溶媒との接触を、該混合物に水を含む溶媒を添加することにより行うことが好ましい。
ポリイミド系樹脂溶液を、工程(1)においてアルコール系溶媒と接触させた後、工程(X)において水系溶媒と接触させる、本発明の製造方法の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂溶液中のポリイミド系樹脂の量をM質量部、良溶媒の量をN質量部とし、工程(1)においてポリイミド系樹脂溶液と接触させるアルコール系溶媒の量をZ1質量部、工程(X)において接触させる水を含む溶媒の量をZ2質量部とした場合に、各成分の質量比が関係式(i)、(iii)及び(iv):
5 ≦ N/M ≦ 40 (i)
10 ≦ Z1/M ≦ 50 (iii)
3 ≦ Z2/M ≦ 30 (iv)
を満たすことが好ましい。
5 ≦ N/M ≦ 40 (i)
10 ≦ Z1/M ≦ 50 (iii)
3 ≦ Z2/M ≦ 30 (iv)
を満たすことが好ましい。
式(i)中のN/Mは、工程(1)について上記に述べた通りである。
式(iii)中のZ1/Mは、ポリイミド系樹脂溶液中のポリイミド系樹脂の量と、ポリイミド系樹脂溶液と、工程(1)において接触させるアルコール系溶媒の量との関係を表す。なお、アルコール系溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計質量をZ1とする。Z1/Mは、続く工程(X)において、ポリイミド系樹脂の溶解度の急激な変化を抑制しやすい観点から、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上である。Z1/Mは、工程(1)においてポリイミド系樹脂が析出しすぎることを防止し、工程(2)において精度よくポリイミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。
式(iv)中のZ2/Mは、ポリイミド系樹脂溶液中のポリイミド系樹脂の量と、工程(X)において接触させる水系溶媒との関係を表す。なお、水系溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計質量をZ2とする。Z2/Mは、ポリイミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。Z2/Mは、粉体を乾燥させる条件を和らげやすく、また廃液量を削減できる観点から、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは22以下である。
<工程2>
次に、工程(2)において、工程(1)で得た混合物、又は、工程(1)及び工程(X)を経て得た混合物を固液分離して、該混合物中に含まれる析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を得る。なお、工程(2)において、工程(1)で得た混合物を固液分離すると、該混合物中に含まれていた析出したポリイミド系樹脂と該混合物中に含まれていた一部の溶媒とを含む、ポリイミド系樹脂組成物を得ることができる。該ポリイミド系樹脂組成物は、ウェットケーキとも称される組成物であり、ポリイミド系樹脂粉体を得るための中間体である。本明細書において、工程(2)において得られるポリイミド系樹脂組成物を、「ポリイミド系樹脂組成物(a)」と称する。
次に、工程(2)において、工程(1)で得た混合物、又は、工程(1)及び工程(X)を経て得た混合物を固液分離して、該混合物中に含まれる析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を得る。なお、工程(2)において、工程(1)で得た混合物を固液分離すると、該混合物中に含まれていた析出したポリイミド系樹脂と該混合物中に含まれていた一部の溶媒とを含む、ポリイミド系樹脂組成物を得ることができる。該ポリイミド系樹脂組成物は、ウェットケーキとも称される組成物であり、ポリイミド系樹脂粉体を得るための中間体である。本明細書において、工程(2)において得られるポリイミド系樹脂組成物を、「ポリイミド系樹脂組成物(a)」と称する。
固液分離の方法は特に限定されず、例えば、一般的にろ過と称される方法、具体的には、析出物と溶媒の透過性が異なるフィルターを介して、重力により分離する方法、遠心力により分離する方法、圧力差により分離する方法が挙げられる。使用可能なろ過器の例としては、遠心ろ過器、ドリュックフィルターろ過器、吸引ろ過器、減圧ろ過器等が挙げられる。このようにして得たポリイミド系樹脂組成物(a)には、析出したポリイミド系樹脂粉体、良溶媒及び工程(1)で接触させたアルコール系溶媒に由来する炭素数1〜4のアルコールが含まれている。ポリイミド系樹脂組成物(a)を乾燥させることによりポリイミド系樹脂粉体を得ることも可能ではあるが、ポリイミド系樹脂組成物(a)には比較的多量のアルコールが含まれている。そのため、ポリイミド系樹脂組成物(a)を単に乾燥させるだけでは、フィルムの耐熱性の低下、及び/又はフィルムの着色といった問題を回避することはできず、例えば特許文献1にも記載されるように、アルコール等の揮発成分の含有量が例えば5%未満程度となるまで、低温で時間をかけて乾燥を行う必要があり、生産効率が低下する傾向があった。本発明の製造方法においては、後述する工程(3)を経て得られるポリイミド系樹脂組成物(b)を乾燥させることにより、ポリイミド系樹脂粉体を製造することができる。ポリイミド系樹脂組成物(b)においては、アルコール等の成分の含有量は既に低くなっているため、上記のような問題が生じにくい。
<工程3>
本発明の製造方法においては、ポリイミド系樹脂組成物を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程をさらに含む。工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)、又は、工程(2)及び後述する工程(Y)を経て得たポリイミド系樹脂組成物(a’)を、水を主成分とする溶媒と接触させることにより、析出したポリイミド系樹脂と共にポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれていたアルコール濃度を効率的に低減することができる。以下、ポリイミド系樹脂組成物(a)について説明するが、ポリイミド系樹脂組成物(a)は、後述するポリイミド系樹脂組成物(a’)であってもよい。水を主成分とする溶媒と接触させる方法は特に限定されないが、例えば、ポリイミド系樹脂組成物(a)に、水を主成分とする溶媒を添加して接触させてもよいし、ポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒を混合して接触させてもよい。これにより、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるアルコールが希釈される、及び/又は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるポリイミド系樹脂粉体が洗浄される。このような操作を行うことにより、析出したポリイミド系樹脂及び水系溶媒を少なくとも含む混合物が得られる。
本発明の製造方法においては、ポリイミド系樹脂組成物を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程をさらに含む。工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)、又は、工程(2)及び後述する工程(Y)を経て得たポリイミド系樹脂組成物(a’)を、水を主成分とする溶媒と接触させることにより、析出したポリイミド系樹脂と共にポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれていたアルコール濃度を効率的に低減することができる。以下、ポリイミド系樹脂組成物(a)について説明するが、ポリイミド系樹脂組成物(a)は、後述するポリイミド系樹脂組成物(a’)であってもよい。水を主成分とする溶媒と接触させる方法は特に限定されないが、例えば、ポリイミド系樹脂組成物(a)に、水を主成分とする溶媒を添加して接触させてもよいし、ポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒を混合して接触させてもよい。これにより、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるアルコールが希釈される、及び/又は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるポリイミド系樹脂粉体が洗浄される。このような操作を行うことにより、析出したポリイミド系樹脂及び水系溶媒を少なくとも含む混合物が得られる。
工程(3)で使用する「水を主成分とする溶媒」は、該溶媒全体に対して70質量%以上の水を含む溶媒を意味する。該溶媒における水の割合は、析出したポリイミド系樹脂と共にポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるアルコールを除去しやすい観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。工程(3)においてポリイミド系樹脂と接触させる溶媒は、水であってもよいし、水と他の溶媒(例えば他の貧溶媒)との混合物であってもよいが、水を主成分とする溶媒におけるアルコールの含有量は、溶媒全体に対して、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
工程(3)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)の質量をW1とし、該ポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる水を主成分とする溶媒の質量をW2とすると、W1に対するW2の割合(W2/W1)は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるアルコールを除去しやすい観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、特に好ましくは7以上である。また、割合(W2/W1)は、廃液量低減の観点からは、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である。接触時間は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるアルコールを除去しやすい観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上である。接触時間は、製造効率の観点からは、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは80分以下である。
工程(3)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒との接触は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に、水を主成分とする溶媒を1回接触させて行ってもよいし、水を主成分とする溶媒を複数回に分けて接触させて行ってもよいし、ポリイミド系樹脂組成物(a)に水を主成分とする溶媒を連続的に接触させて行ってもよい。水を主成分とする溶媒を連続的に、もしくは複数回に分けてポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる場合、上記水を主成分とする溶媒の質量W2は、連続的に、もしくは複数回に分けて接触させた、水を主成分とする溶媒の合計質量であり、接触時間も、合計の時間である。ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれるアルコールを効率的に除去しやすい観点からは、ポリイミド系樹脂組成物(a)に水を主成分とする溶媒を2回以上に分けて接触させることが好ましい。
<工程4>
本発明の製造方法は、工程(3)において水を主成分とする溶媒と接触させて得られたポリイミド系樹脂を含む混合物を固液分離し、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を得る工程(4)をさらに含んでいてよい。工程(4)において得られるポリイミド系樹脂組成物を、「ポリイミド系樹脂組成物(b)」とも称する。工程(3)における接触及び工程(4)における固液分離は、一般的にろ過と称される方法、具体的には、析出物と溶媒の透過性が異なるフィルターを介して、重力により分離する方法、遠心力により分離する方法、圧力差により分離する方法が挙げられる。使用可能なろ過器の例としては、遠心ろ過器、ドリュックフィルターろ過器、吸引ろ過器、減圧ろ過器等が挙げられる。具体的には、工程(3)及び工程(4)を、ポリイミド系樹脂組成物(a)に水を主成分とする溶媒を添加しながら、同時にろ過することにより固液分離して行ってもよいし、ポリイミド系樹脂組成物(a)に水を主成分とする溶媒を添加して混合した後、混合物を固液分離して行ってもよい。
本発明の製造方法は、工程(3)において水を主成分とする溶媒と接触させて得られたポリイミド系樹脂を含む混合物を固液分離し、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を得る工程(4)をさらに含んでいてよい。工程(4)において得られるポリイミド系樹脂組成物を、「ポリイミド系樹脂組成物(b)」とも称する。工程(3)における接触及び工程(4)における固液分離は、一般的にろ過と称される方法、具体的には、析出物と溶媒の透過性が異なるフィルターを介して、重力により分離する方法、遠心力により分離する方法、圧力差により分離する方法が挙げられる。使用可能なろ過器の例としては、遠心ろ過器、ドリュックフィルターろ過器、吸引ろ過器、減圧ろ過器等が挙げられる。具体的には、工程(3)及び工程(4)を、ポリイミド系樹脂組成物(a)に水を主成分とする溶媒を添加しながら、同時にろ過することにより固液分離して行ってもよいし、ポリイミド系樹脂組成物(a)に水を主成分とする溶媒を添加して混合した後、混合物を固液分離して行ってもよい。
<工程Y>
工程(3)においてポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒とを接触させる前に、工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)を、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒、好ましくは炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒と接触させ、得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を得る工程(Y)を行ってもよい。工程(Y)で得たポリイミド系樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物(a’)とも称する。工程(Y)を行うことにより、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれていた不純物等を除去することができ、最終的に得られるポリイミド系樹脂フィルムの透明性を高めやすく、YI値を低下させやすい。接触時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上である。工程Yで使用する炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒としては、工程(1)について記載した溶媒が同様にあてはまる。接触方法も特に限定されず、工程(3)におけるポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒との接触について上記に記載した方法が同様に当てはまる。
工程(3)においてポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒とを接触させる前に、工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)を、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒、好ましくは炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒と接触させ、得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物を得る工程(Y)を行ってもよい。工程(Y)で得たポリイミド系樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物(a’)とも称する。工程(Y)を行うことにより、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれていた不純物等を除去することができ、最終的に得られるポリイミド系樹脂フィルムの透明性を高めやすく、YI値を低下させやすい。接触時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上である。工程Yで使用する炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒としては、工程(1)について記載した溶媒が同様にあてはまる。接触方法も特に限定されず、工程(3)におけるポリイミド系樹脂組成物(a)と水を主成分とする溶媒との接触について上記に記載した方法が同様に当てはまる。
工程(Y)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)の質量をW3とし、該ポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒の質量をW4とすると、W3に対するW4の割合(W4/W3)は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれる不純物を除去しやすい観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは4以上である。また、割合(W4/W3)は、廃液処理低減の観点からは、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下、特に好ましくは40以下である。接触時間は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれる不純物を除去しやすい観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上である。接触時間は、製造効率の観点からは、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下、さらに好ましくは40分以下である。
工程(Y)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)とアルコール系溶媒との接触は、ポリイミド系樹脂組成物(a)に、アルコール系溶媒を1回接触させて行ってもよいし、アルコール系溶媒を複数回に分けて接触させて行ってもよいし、ポリイミド系樹脂組成物(a)にアルコール系溶媒を連続的に接触させて行ってもよい。アルコール系溶媒を連続的に、もしくは複数回に分けてポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる場合、上記アルコール系溶媒の質量W4は、連続的に、もしくは複数回に分けて接触させた、アルコール系溶媒の合計質量であり、接触時間も、合計の時間である。ポリイミド系樹脂組成物(a)に含まれる不純物を効率的に除去しやすい観点からは、ポリイミド系樹脂組成物(a)にアルコール系溶媒を2回以上に分けて接触させることが好ましい。
<乾燥工程>
工程(3)の後に得られるポリイミド系樹脂組成物(b)を乾燥することにより、ポリイミド系樹脂粉体が得られる。該ポリイミド系樹脂組成物(b)は、ウェットケーキとも称される組成物であり、ポリイミド系樹脂粉体を得るための中間体である。ポリイミド系樹脂組成物(b)における水の含有量は、ろ過方法により異なるが、一般的に、該ポリイミド系樹脂組成物(b)の総質量に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。水の含有量の上限は、乾燥によりポリイミド系樹脂粉体を製造しやすい観点からは、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
工程(3)の後に得られるポリイミド系樹脂組成物(b)を乾燥することにより、ポリイミド系樹脂粉体が得られる。該ポリイミド系樹脂組成物(b)は、ウェットケーキとも称される組成物であり、ポリイミド系樹脂粉体を得るための中間体である。ポリイミド系樹脂組成物(b)における水の含有量は、ろ過方法により異なるが、一般的に、該ポリイミド系樹脂組成物(b)の総質量に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。水の含有量の上限は、乾燥によりポリイミド系樹脂粉体を製造しやすい観点からは、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
工程(3)の後に得られるポリイミド系樹脂組成物(b)における、炭素数1〜4のアルコールの含有量は、ポリイミド系樹脂粉体を効率的に製造しやすく、得られるフィルムの耐熱性の低下、及び、着色を防止しやすい観点から、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満である。炭素数1〜4のアルコールの含有量の下限値は特に限定されず、少ない方が好ましい。
工程(3)の後に得られるポリイミド系樹脂組成物(b)における、良溶媒の含有量は、ポリイミド系樹脂粉体を効率的に製造しやすく、得られるフィルムの耐熱性の低下、及び、着色を防止しやすい観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、ことさら好ましくは0.5質量%以下、ことさらさらに好ましくは0.3質量%以下である。良溶媒の含有量の下限値は特に限定されず、少ない方が好ましい。
本発明の製造方法において、工程(3)を経て得たポリイミド系樹脂組成物(b)を乾燥させて溶媒を除去することにより、ポリイミド系樹脂粉体を製造することができる。ポリイミド系樹脂組成物(b)においては、アルコールの含有量が既に低減されているので、フィルムの耐熱性の低下、及び/又は、フィルムの着色を防止するための100℃未満の温度条件でのアルコールの除去工程は、もはや不要となる。本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂組成物を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程(3)の後に、工程(3)で得た混合物を固液分離してポリイミド系樹脂組成物(b)を得る工程(4)をさらに含んでよく、得られたポリイミド系樹脂組成物(b)を乾燥させ、ポリイミド系樹脂粉体を得る乾燥工程をさらに含んでよい。乾燥条件は、ポリイミド系樹脂組成物(b)中の溶媒が除去される限り特に限定されず、例えば、減圧又は大気圧条件下、約50〜250℃程度の温度で1〜48時間程度加熱する等の条件であってよい。生産効率を高めやすい観点からは、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上の温度で、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜5時間加熱して、乾燥を行ってよい。
<ポリイミド系樹脂粉体>
本発明の製造方法により製造されるポリイミド系樹脂粉体は、L*a*b*表色系に基づく色差測定(JIS Z 8781−4:2013に準拠)において、L*≧90、−10≦a*≦10、及び−10≦b*≦10を満たすことが好ましい。上記色差測定におけるL*は、最終的に得られる高分子材料の透明性、視認性を高めやすい観点から、好ましくは90以上、より好ましくは93以上、さらに好ましくは95以上である。L*の上限は特に限定されず、100以下であればよい。上記色差測定におけるa*は、赤みの指標を表し、最終的に得られる高分子材料の視認性を高めやすい観点から、好ましくは−10以上10以下、より好ましくは−7以上7以下、さらに好ましくは−5以上5以下である。上記色差測定におけるb*は、青みの指標を表し、最終的に得られる高分子材料の視認性を高めやすい観点から、好ましくは−10以上10以下、より好ましくは−5以上10以下、さらに好ましくは−3以上7以下である。上記色差は、色差計を用いて測定することができ、例えば実施例に記載する方法により測定することができる。
本発明の製造方法により製造されるポリイミド系樹脂粉体は、L*a*b*表色系に基づく色差測定(JIS Z 8781−4:2013に準拠)において、L*≧90、−10≦a*≦10、及び−10≦b*≦10を満たすことが好ましい。上記色差測定におけるL*は、最終的に得られる高分子材料の透明性、視認性を高めやすい観点から、好ましくは90以上、より好ましくは93以上、さらに好ましくは95以上である。L*の上限は特に限定されず、100以下であればよい。上記色差測定におけるa*は、赤みの指標を表し、最終的に得られる高分子材料の視認性を高めやすい観点から、好ましくは−10以上10以下、より好ましくは−7以上7以下、さらに好ましくは−5以上5以下である。上記色差測定におけるb*は、青みの指標を表し、最終的に得られる高分子材料の視認性を高めやすい観点から、好ましくは−10以上10以下、より好ましくは−5以上10以下、さらに好ましくは−3以上7以下である。上記色差は、色差計を用いて測定することができ、例えば実施例に記載する方法により測定することができる。
本発明の製造方法により製造されるポリイミド系樹脂粉体の粒度分布は、該粉体を用いて高分子材料を製造する際に、該粉体を溶媒に溶解させやすい観点から、D50が、好ましくは20〜800μm、より好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは100〜300μmである。粒度分布は、粒度分析計を用いて測定することができ、例えば実施例に記載する方法により測定することができる。粉体の飛散性の観点からは、D10が、好ましくは5〜500μm、より好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは70〜200μmである。また、ダマの発生を抑制する観点からは、D90が、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは100〜700μm、さらに好ましくは200〜500μmである。
<ポリイミド系樹脂>
本発明の製造方法において、ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリアミック酸樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であってよい。ポリイミド系樹脂は、1種類のポリイミド系樹脂であってもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂であってもよい。ポリイミド系樹脂は、製膜性の観点から、好ましくはポリアミドイミド樹脂である。ポリイミド系樹脂は、芳香族系のポリイミド系樹脂であることが好ましい。ポリイミド系樹脂が芳香族系であるとは、ポリイミド系樹脂を構成する構成単位の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは100モル%が、芳香族系の構造を含む構成単位であることを表す。
本発明の製造方法において、ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリアミック酸樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であってよい。ポリイミド系樹脂は、1種類のポリイミド系樹脂であってもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂であってもよい。ポリイミド系樹脂は、製膜性の観点から、好ましくはポリアミドイミド樹脂である。ポリイミド系樹脂は、芳香族系のポリイミド系樹脂であることが好ましい。ポリイミド系樹脂が芳香族系であるとは、ポリイミド系樹脂を構成する構成単位の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは100モル%が、芳香族系の構造を含む構成単位であることを表す。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、又は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。以下において式(1)及び式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミドイミド樹脂に関する。
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。ポリイミド系樹脂が、芳香族系のポリイミド系樹脂である本発明の好ましい一態様において、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を構成する、テトラカルボン酸化合物、ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物の少なくとも1つが、芳香族化合物(芳香族テトラカルボン酸化合物、芳香族ジアミン化合物及び/又は芳香族ジカルボン酸化合物)であることが好ましい。
式(2)において、Zは、2価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよい、炭素数4〜40の2価の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基である。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。Zの有機基として、後述する式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示され、Zのヘテロ環構造としてはチオフェン環骨格を有する基が例示される。光学フィルムの黄色度を抑制(YI値を低減)しやすい観点から、式(20)〜式(27)で表される基、及び、チオフェン環骨格を有する基が好ましい。
本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、ポリイミド系樹脂粉体から得られるフィルムの表面硬度を高めやすい観点及び光学特性を向上させやすい観点から、Zの少なくとも一部が、式(3)
[式(3)中、R1〜R8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R1〜R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−S−、−CO−又は−N(R9)−を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることが好ましい。
Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−S−、−CO−又は−N(R9)−を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることが好ましい。
式(3)において、Aは、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−S−、−CO−又は−N(R9)−を表し、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの耐屈曲性の観点から、好ましくは−O−又は−S−を表し、より好ましくは−O−を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び柔軟性の観点から、R1〜R8は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R1〜R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、複数種のAを含み得、複数種のAは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び柔軟性の観点から、R1〜R8は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R1〜R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、複数種のAを含み得、複数種のAは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(3)において、mは、0〜4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの耐屈曲性や弾性率が良好になりやすい。また、式(3)において、mは、好ましくは0〜3の範囲の整数、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。mがこの範囲内であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの耐屈曲性や弾性率を向上させやすい。また、Zは、式(3)で表される構成単位を1種又は2種類以上含んでいてもよく、光学フィルムの弾性率及び耐屈曲性の向上、黄色度(YI値)低減の観点から、特にmの値が異なる2種類以上の構成単位、好ましくはmの値の異なる2種類の構成単位を含んでいてもよい。その場合、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの高い弾性率、耐屈曲性及び低い黄色度(YI値)を発現しやすい観点から、樹脂がZにおいて、mが0である式(3)で表される構成単位を含有することが好ましく、該構成単位に加えてmが1である式(3)で表される構成単位をさらに含有することがより好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR5〜R8が水素原子である構成単位を有する。より好ましい本発明の一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR5〜R8が水素原子である構成単位と、式(3’):
で表される構成単位を有する。この場合、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び耐屈曲性を向上させやすく、黄色度を低減しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、式(3)で表される構成単位の割合は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。式(3)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性や弾性率を高めやすい。式(3)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
また、ポリアミドイミド樹脂がm=1〜4である式(3)の構成単位を有する場合、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、mが1〜4である式(3)の構成単位の割合は、好ましくは2モル%以上、より好ましくは4モル%以上、さらに好ましくは6モル%以上、特に好ましくは8モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、さらにより好ましくは15モル%以下、特に好ましくは12モル%以下である。mが1〜4である式(3)の構成単位の割合が上記の下限以上であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい。mが1〜4である式(3)の構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお、式(1)、式(2)又は式(3)で表される構成単位の含有量は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度を高めやすいと共に、耐屈曲性及び弾性率も高めやすい。また、ポリアミドイミド樹脂中のZの100モル%以下が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、mが0〜4である式(3)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、特に好ましくは12モル%以上が、mが1〜4である式(3)で表される。ポリアミドイミド樹脂のZの上記の下限以上が、mが1〜4である式(3)で表されると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性及び弾性率を高めやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、特に好ましくは30モル%以下が、mが1〜4である式(3)で表されることが好ましい。Zの上記の上限以下が、mが1〜4である式(3)で表されると、mが1〜4である式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお樹脂中のmが1〜4である式(3)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
式(10)〜式(18)中、*は結合手を表し、
V1、V2及びV3は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−CO−又は−N(Q)−を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、R9について上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V1及びV3が単結合、−O−又は−S−であり、かつ、V2が−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−又は−SO2−である。V1とV2との各環に対する結合位置、及び、V2とV3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位又はパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
V1、V2及びV3は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−CO−又は−N(Q)−を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、R9について上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V1及びV3が単結合、−O−又は−S−であり、かつ、V2が−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−又は−SO2−である。V1とV2との各環に対する結合位置、及び、V2とV3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位又はパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
式(10)〜式(18)で表される基の中でも、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)及び式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)及び式(16)で表される基がより好ましい。また、V1、V2及びV3は、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立に、単結合、−O−又は−S−であることが好ましく、単結合又は−O−であることがより好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部は、式(4):
[式(4)中、R10〜R17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R10〜R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び透明性を高めやすい。
で表される構成単位である。式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び透明性を高めやすい。
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として例示のものが挙げられる。R10〜R17は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R10〜R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10〜R17は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、透明性及び耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR10、R12、R13、R14、R15及びR16が水素原子、R11及びR17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、特に好ましくはR11及びR17がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
で表される構成単位であり、すなわち、複数のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、特に式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、特に式(4’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格により樹脂の溶媒への溶解性が向上されやすく、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、特に式(4’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂中のXは式(4)、特に式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)において、Yは4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Yとしては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
式(20)〜式(29)中、
*は結合手を表し、
W1は、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−Ar−、−SO2−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH2−Ar−、−Ar−C(CH3)2−Ar−又は−Ar−SO2−Ar−を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
*は結合手を表し、
W1は、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−Ar−、−SO2−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH2−Ar−、−Ar−C(CH3)2−Ar−又は−Ar−SO2−Ar−を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
式(20)〜式(29)で表される基の中でも、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び耐屈曲性の観点から、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、W1は、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすく、黄色度を低減しやすい観点から、互いに独立に、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−であることが好ましく、単結合、−O−、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−であることがより好ましく、単結合、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−であることがさらに好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)中の複数のYの少なくとも一部は、式(5):
[式(5)中、R18〜R25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R18〜R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)中の複数のYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、ポリイミド系樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの加工性を向上しやすい。また、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)中の複数のYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、ポリイミド系樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの加工性を向上しやすい。また、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及び炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として上記に例示のものが挙げられる。R18〜R25は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R18〜R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R18〜R25は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、耐屈曲性及び透明性を向上しやすい観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、よりさらに好ましくはR18、R19、R20、R23、R24及びR25が水素原子、R21及びR22が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR21及びR22がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
本発明の好ましい一実施形態においては、式(5)で表される構成単位は、式(5’):
で表される基であり、すなわち、複数のYの少なくとも一部は、式(5’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの光学特性を向上させやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。ポリイミド系樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
ポリイミド系樹脂は、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含む樹脂であってもよく、式(1)及び式(2)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含む樹脂であってもよい。
式(30)において、Y1は4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y1としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY1を含み得、複数種のY1は、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(31)において、Y2は3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y2としては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY2を含み得、複数種のY2は、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(30)及び式(31)において、X1及びX2は、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X1及びX2としては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それら式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)及び/又は式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される構成単位からなる。また、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの光学特性、表面硬度及び耐屈曲性の観点から、上記ポリイミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の一実施形態において、該ポリイミド系樹脂を含むフィルム中におけるポリイミド系樹脂の含有量は、該フィルム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。ポリイミド系樹脂の含有量が上記範囲内であると、フィルムの光学特性及び弾性率を向上させやすい。
ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい観点から、標準ポリスチレン換算で、好ましくは230,000以上、より好ましくは250,000以上、さらに好ましくは270,000以上、特に好ましくは300,000以上である。また、ポリイミド系樹の溶媒に対する溶解性を向上しやすいと共に、フィルムの延伸性及び加工性を向上させやすい観点から、該樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは700,000以下、特に好ましくは500,000以下である。重量平均分子量は、例えばGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出してよい。
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、特に好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、光学フィルムの加工性を向上させやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの弾性率を向上させ、かつ黄色度(YI値)を低減させやすい。フィルムの弾性率が高いと、該フィルムを例えばフレキシブル表示装置において使用する際に、該フィルムにおける傷及びシワ等の発生を抑制しやすい。また、フィルムの黄色度が低いと、該フィルムの透明性及び視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
ポリイミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、黄色度をより低減し、透明性及び視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、樹脂の合成がしやすくなる。
ポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば、NMR法においては、実施例に記載の方法により測定できる。
ポリイミド系樹脂は、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI−MX300F等が挙げられる。
<樹脂の製造方法>
ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造できる。ここで、ジカルボン酸化合物は少なくとも式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
[式(3”)中、R1〜R8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R1〜R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−S−、−CO−又は−N(R9)−を表し、
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
R31及びR32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基又は塩素原子を表す。]
ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造できる。ここで、ジカルボン酸化合物は少なくとも式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
Aは、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−S−、−CO−又は−N(R9)−を表し、
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
R31及びR32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基又は塩素原子を表す。]
本発明の好ましい一実施形態において、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物である。ジカルボン酸化合物として、mが0である式(3”)で表される化合物に加えて、Aが酸素原子である式(3”)で表される化合物を使用することがより好ましい。また、別の好ましい一実施形態においては、ジカルボン酸化合物は、R31、R32が塩素原子である、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。
樹脂の製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
上記ジアミン化合物の中でも、光学フィルムの高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性及び低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがよりさらに好ましい。
樹脂の製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学フィルムの高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性、及び低着色性の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましく、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物がより好ましく、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)がさらに好ましい。
樹脂の製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸、4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物が用いられる。テレフタル酸や4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物に加えて、他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−若しくはフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、テレフタロイルクロリドが好ましく、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)とテレフタロイルクロリドとを組合せて用いることがさらに好ましい。
なお、上記ポリイミド系樹脂は、光学積層体の各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、−O−、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及び/又はジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミド系樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば5〜350℃、好ましくは20〜200℃、より好ましくは25〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分〜10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧及び/又は不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
ポリイミド系樹脂の製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−ブチルピペリジン、及びN−プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2−メチルピリジン(2−ピコリン)、3−メチルピリジン(3−ピコリン)、4−メチルピリジン(4−ピコリン)、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3,4−シクロペンテノピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
ポリイミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様では、透明ポリアミドイミド樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体は、例えば光学部材として使用することができる。光学部材としては、例えば光学フィルムが挙げられる。該光学部材は、柔軟性、屈曲耐性及び表面硬度に優れるため、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として適当である。光学部材は単層であってもよく、複層であってもよい。光学部材が複層である場合、各層は同一の組成であってよく、異なる組成であってもよい。
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体を光学部材として使用する場合、光学部材中におけるポリイミド系樹脂の含有率は、光学部材の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。ポリイミド系樹脂の含有率が上記の下限以上であると、光学部材の屈曲耐性が良好である。なお、光学部材中におけるポリイミド系樹脂の含有率は、光学部材の全質量に対して、通常100質量%以下である。
(無機材料)
光学部材には、ポリイミド系樹脂の他に無機粒子等の無機材料を更に含有してもよい。無機材料として、例えば、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子等の無機粒子、及びオルトケイ酸テトラエチル等の4級アルコキシシラン等のケイ素化合物等が挙げられる。光学部材を製造するためのポリイミド系樹脂を含むワニスの安定性の観点から、無機材料は無機粒子、特にシリカ粒子であることが好ましい。無機粒子同士は、シロキサン結合を有する分子により結合されていてもよい。
光学部材には、ポリイミド系樹脂の他に無機粒子等の無機材料を更に含有してもよい。無機材料として、例えば、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子等の無機粒子、及びオルトケイ酸テトラエチル等の4級アルコキシシラン等のケイ素化合物等が挙げられる。光学部材を製造するためのポリイミド系樹脂を含むワニスの安定性の観点から、無機材料は無機粒子、特にシリカ粒子であることが好ましい。無機粒子同士は、シロキサン結合を有する分子により結合されていてもよい。
無機粒子の平均一次粒子径は、光学部材の透明性、機械物性、及び無機粒子の凝集抑制の観点から、通常1〜100nm、好ましくは5〜80nm、より好ましくは7〜50nm、特に好ましくは10〜30nmである。本発明において、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡による定方向径の10点平均値を測定することにより決定することができる。
光学部材中の無機材料の含有率は、光学部材の全質量を基準として、好ましくは0質量%以上90質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。無機材料の含有率が上記範囲内であると、光学部材の透明性及び機械物性を両立させやすい傾向がある。
(紫外線吸収剤)
光学部材は、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。光学部材が紫外線吸収剤を含有することにより、ポリイミド系樹脂の劣化が抑制されるため、光学部材の視認性を高めることができる。
なお、本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
光学部材は、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。光学部材が紫外線吸収剤を含有することにより、ポリイミド系樹脂の劣化が抑制されるため、光学部材の視認性を高めることができる。
なお、本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
光学部材が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有率は、光学部材の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。好適な含有率は用いる紫外線吸収剤により異なるが、400nmの光線透過率が20〜60%程度になるように紫外線吸収剤の含有率を調節すると、光学部材の耐光性が高められるとともに、透明性の高い光学部材を得ることができる。
(他の添加剤)
光学部材は、更に他の添加剤を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤及びレベリング剤等が挙げられる。
光学部材は、更に他の添加剤を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤及びレベリング剤等が挙げられる。
他の添加剤の含有率は、光学部材の質量に対して、好ましくは0質量%以上20質量%以下、より好ましくは0質量%以上10質量%以下である。
光学部材、特に光学フィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、通常10〜1000μm、好ましくは15〜500μm、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは25〜300μmである。なお、本発明において、厚さは接触式のデジマチックインジケーターによって測定することができる。
光学部材において、JIS K 7105:1981に準拠した全光線透過率Ttが好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。光学部材の全光線透過率Ttが上記の下限以上であると、光学部材を画像表示装置に組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、光学部材の全光線透過率Ttの上限値は通常100%以下である。光学部材におけるヘーズ(Haze)は、スガ試験機(株)製の直読ヘーズコンピュータ(型式HGM−2DP)で測定して、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらにより好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。光学部材のヘーズが上記の上限以下であると、光学部材を画像表示装置等のフレキシブル電子デバイスに組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、上記ヘーズの下限値は特に限定されず、0%以上であればよい。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリイミド系樹脂、及び/又は、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記全光線透過率Tt及び/又はヘーズを有することが好ましい。ポリイミド系樹脂及びポリイミド系樹脂粉体の全光線透過率Tt及び/又はヘーズは、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。測定試料の作成方法及び測定方法の詳細は、実施例に記載するとおりである。
(光学部材の製造方法)
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体を用いて、上記のような光学部材、例えば光学フィルムを製造することができる。製造方法は特に限定されない。例えば以下の工程:
(a)ポリイミド系樹脂粉体を溶媒に溶解させて得たポリイミド系樹脂を含む液(ポリイミド系樹脂のワニス)を基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、及び
(b)塗布された液(ポリイミド系樹脂のワニス)を乾燥させて光学部材、特に光学フィルム(ポリイミド系樹脂フィルム)を形成する工程(形成工程)
を含む製造方法によって光学部材を製造することができる。工程(a)及び(b)は、通常この順で行うことができる。
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体を用いて、上記のような光学部材、例えば光学フィルムを製造することができる。製造方法は特に限定されない。例えば以下の工程:
(a)ポリイミド系樹脂粉体を溶媒に溶解させて得たポリイミド系樹脂を含む液(ポリイミド系樹脂のワニス)を基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、及び
(b)塗布された液(ポリイミド系樹脂のワニス)を乾燥させて光学部材、特に光学フィルム(ポリイミド系樹脂フィルム)を形成する工程(形成工程)
を含む製造方法によって光学部材を製造することができる。工程(a)及び(b)は、通常この順で行うことができる。
塗布工程においては、ポリイミド系樹脂粉体を溶媒に溶解させ、必要に応じて上記紫外線吸収剤及び他の添加剤を添加し、撹拌することにより、ポリイミド系樹脂を含む液(ポリイミド系樹脂のワニス)を調製する。
ワニスの調製に用いられる溶媒は、ポリイミド系樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せが挙げられる。これらの溶媒の中でも、アミド系溶媒又はラクトン系溶媒が好ましい。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。
次に、例えば公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、樹脂基材、SUSベルト、又はガラス基材等の基材上に、ポリイミド系樹脂のワニスを用いて、流涎成形等によって塗膜を形成することができる。
形成工程において、塗膜を乾燥し、基材から剥離することによって、光学部材を形成することができる。剥離後に更に光学部材を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。塗膜の乾燥は、通常50〜350℃の温度にて行うことができる。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において塗膜の乾燥を行ってよい。
光学部材の少なくとも一方の表面に、表面処理を施す表面処理工程を行ってもよい。表面処理としては、例えばUVオゾン処理、プラズマ処理及びコロナ放電処理が挙げられる。
樹脂基材の例としては、PETフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム及びポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム及び他のポリアミドイミドフィルムが好ましい。さらに、光学部材との密着性及びコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
本発明の製造方法により得たポリイミド系樹脂粉体を用いて、光学部材を製造することができる。このような光学部材は、高い弾性率と柔軟性を有する。本発明の好適な実施態様において、上記光学部材の弾性率は、好ましくは3.0GPa以上、より好ましくは4.0GPa以上、さらに好ましくは5.0GPa以上、特に好ましくは6.0GPa以上、好ましくは10.0GPa以上、より好ましくは8.0GPa以上、さらに好ましくは7.0GPa以下である。光学部材の弾性率が上記上限以下であると、フレキシブルディスプレイが屈曲する際に、上記光学部材による他の部材の損傷を抑制することができる。弾性率は、例えば(株)島津製作所製オートグラフAG−ISを用いて、10mm幅の試験片をチャック間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で応力−歪曲線を測定し、その傾きから測定することができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリイミド系樹脂、及び/又は、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記弾性率を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂及びポリイミド系樹脂粉体の弾性率は、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。測定試料の作成方法及び測定方法の詳細は、実施例に記載するとおりである。
上記光学部材、特に光学フィルムは、優れた屈曲耐性を有する。本発明の好適な実施態様において、光学部材は、R=1mmで135°を加重0.75kgfで速度175cpmにて測定した際に破断するまでの往復折り曲げ回数が、好ましくは10,000回以上、より好ましくは20,000回以上、さらに好ましくは30,000回以上、特に好ましくは40,000回以上、非常に好ましくは50,000回以上である。
光学部材の往復折り曲げ回数が上記の下限以上であると、光学部材を屈曲した際に生じ得る織り皺をさらに抑制することができる。なお、光学部材の往復折り曲げ回数は制限されないが、通常1,000,000回の折り曲げが可能であれば十分実用的である。往復折り曲げ回数は、例えば(株)東洋精機製作所製MIT耐折疲労試験機(型式0530)で厚さ50μm、幅10mmの試験片(光学部材)を用いて求めることができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリイミド系樹脂、及び/又は、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記屈曲耐性を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂及びポリイミド系樹脂粉体の屈曲耐性は、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。
光学部材の往復折り曲げ回数が上記の下限以上であると、光学部材を屈曲した際に生じ得る織り皺をさらに抑制することができる。なお、光学部材の往復折り曲げ回数は制限されないが、通常1,000,000回の折り曲げが可能であれば十分実用的である。往復折り曲げ回数は、例えば(株)東洋精機製作所製MIT耐折疲労試験機(型式0530)で厚さ50μm、幅10mmの試験片(光学部材)を用いて求めることができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリイミド系樹脂、及び/又は、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記屈曲耐性を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂及びポリイミド系樹脂粉体の屈曲耐性は、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。
上記光学部材は、優れた透明性を発現することができる。そのため、上記光学部材は、画像表示装置、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として非常に有用である。本発明の好適な実施態様において、光学部材は、JIS K 7373:2006に準拠した黄色度YIが、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。黄色度YIが上記の上限以下である光学部材は、表示装置等の高い視認性に寄与することができる。なお、上記光学部材の黄色度は好ましくは0以上である。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリイミド系樹脂、及び/又は、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記黄色度YIを有することが好ましい。ポリイミド系樹脂及びポリイミド系樹脂粉体の黄色度YIは、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。測定試料の作成方法及び測定方法の詳細は、実施例に記載するとおりである。
上記の光学部材は、紫外線吸収層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層等の機能層、ハードコート層を備えてもよい。
本発明のポリイミド系樹脂粉体を用いて製造した光学部材(例えば光学フィルム)は、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として有用である。上記光学部材は、画像表示装置、特にフレキシブルディスプレイの視認側表面に前面板として配置することができる。この前面板は、フレキシブルディスプレイ内の画像表示素子を保護する機能を有する。上記光学部材を備える画像表示装置は、高い柔軟性及び屈曲耐性を有すると同時に、高い表面硬度を有するため、屈曲した際に他の部材を損傷することがなく、また光学部材自体にも折り皺が生じ難く、さらに表面の傷つきを有利に抑制できる。
画像表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計及びスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。フレキシブルディスプレイとしては、フレキシブル特性を有する画像表示装置、例えばテレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計及びウェアラブルデバイス等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部を意味する。
(重量平均分子量(Mw)の測定)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定を行った。測定試料の調製方法及び測定条件は下記の通りである。
(1)試料調製方法
樹脂を20mg秤りとり、10mLのDMF(10mmol臭化リチウム)を加え、完全に溶解させた。この溶液をクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC−8020GPC
カラム:ガードカラム+TSKgelα−M(300mm×7.8mm径)×2本+α−2500(300mm×7.8mm径)×1本
溶離液:DMF(10mmolの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定を行った。測定試料の調製方法及び測定条件は下記の通りである。
(1)試料調製方法
樹脂を20mg秤りとり、10mLのDMF(10mmol臭化リチウム)を加え、完全に溶解させた。この溶液をクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC−8020GPC
カラム:ガードカラム+TSKgelα−M(300mm×7.8mm径)×2本+α−2500(300mm×7.8mm径)×1本
溶離液:DMF(10mmolの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
(イミド化率の測定)
イミド化率は、1H−NMR測定により、以下のようにして求めた。
(1)前処理方法
ポリイミド樹脂A又はポリアミドイミド樹脂Aを重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解させて2質量%溶液としたものを測定試料とした。
(2)測定条件
測定装置:日本電子(株)製 400MHz NMR装置 JNM−ECZ400S/L1
標準物質:DMSO−d6(2.5ppm)
試料温度:室温
積算回数:256回
緩和時間:5秒
(3)解析方法
(3−1)ポリイミド樹脂Aのイミド化率
ポリイミド樹脂Aを含む測定試料で得られた1H−NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来するベンゼンプロトンAの積分値をIntAとした。
また、観測されたポリイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来するアミドプロトンの積分値をIntBとした。これらの積分値から以下の式に基づいてポリイミド樹脂Aのイミド化率を求めた。下記式において、αはポリアミド酸(イミド化率0%)の場合におけるアミドプロトン1個に対するベンゼンプロトンAの個数割合である。
イミド化率(%)=100×(1−α×IntB/IntA)
イミド化率は、1H−NMR測定により、以下のようにして求めた。
(1)前処理方法
ポリイミド樹脂A又はポリアミドイミド樹脂Aを重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解させて2質量%溶液としたものを測定試料とした。
(2)測定条件
測定装置:日本電子(株)製 400MHz NMR装置 JNM−ECZ400S/L1
標準物質:DMSO−d6(2.5ppm)
試料温度:室温
積算回数:256回
緩和時間:5秒
(3)解析方法
(3−1)ポリイミド樹脂Aのイミド化率
ポリイミド樹脂Aを含む測定試料で得られた1H−NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来するベンゼンプロトンAの積分値をIntAとした。
また、観測されたポリイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来するアミドプロトンの積分値をIntBとした。これらの積分値から以下の式に基づいてポリイミド樹脂Aのイミド化率を求めた。下記式において、αはポリアミド酸(イミド化率0%)の場合におけるアミドプロトン1個に対するベンゼンプロトンAの個数割合である。
イミド化率(%)=100×(1−α×IntB/IntA)
(3−2)ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率
ポリアミドイミド樹脂Aを含む測定試料で得られた1H−NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けないベンゼンプロトンCの積分値をIntCとした。また、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けるベンゼンプロトンDの積分値をIntDとした。得られたIntC及びIntDから以下の式によりβ値を求めた。
β=IntD/IntC
次に、βをイミド化率に換算する相関式を得るために、イミド化率の異なる複数のポリアミドイミド樹脂について、上記と同様にしてβ値を求めると共に、HSQCスペクトルを用いてイミド化率を求め、これらの結果から以下の相関式を得た。
イミド化率(%)=k×β+100
上記相関式中、kは定数である。
次いで、ポリアミドイミド樹脂Aについて得たβを、上記相関式に代入して、ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率(%)を得た。
ポリアミドイミド樹脂Aを含む測定試料で得られた1H−NMRスペクトルにおいて、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けないベンゼンプロトンCの積分値をIntCとした。また、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けるベンゼンプロトンDの積分値をIntDとした。得られたIntC及びIntDから以下の式によりβ値を求めた。
β=IntD/IntC
次に、βをイミド化率に換算する相関式を得るために、イミド化率の異なる複数のポリアミドイミド樹脂について、上記と同様にしてβ値を求めると共に、HSQCスペクトルを用いてイミド化率を求め、これらの結果から以下の相関式を得た。
イミド化率(%)=k×β+100
上記相関式中、kは定数である。
次いで、ポリアミドイミド樹脂Aについて得たβを、上記相関式に代入して、ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率(%)を得た。
(色度の測定)
ポリイミド系樹脂粉体をシャーレに入れたものを測定試料とし、コニカミノルタ(株)製の色彩色差計「CR−5」を用いて、次の測定条件で色度(JIS Z 8781−4:2013に準拠)を測定した。
<測定条件>
観察条件:2°視野(CIE1931)
観察光源:C
表色系:L*a*b*色空間
色差式:ΔE*ab(CIE1976)色差式
インデックス:なし
測定タイプ:シャーレ測定
測定径φ:30mm
ポリイミド系樹脂粉体をシャーレに入れたものを測定試料とし、コニカミノルタ(株)製の色彩色差計「CR−5」を用いて、次の測定条件で色度(JIS Z 8781−4:2013に準拠)を測定した。
<測定条件>
観察条件:2°視野(CIE1931)
観察光源:C
表色系:L*a*b*色空間
色差式:ΔE*ab(CIE1976)色差式
インデックス:なし
測定タイプ:シャーレ測定
測定径φ:30mm
(粒度分布)
ポリイミド系樹脂粉体を測定試料とし、マイクロトラック粒度分析計 MT−3100II(日機装(株)製)を用いて、次の測定条件で粒度分布(D10、D50及びD90)を測定した。
<測定条件>
粒子屈折率:1.53
測定方法:乾式レーザー回折法
ポリイミド系樹脂粉体を測定試料とし、マイクロトラック粒度分析計 MT−3100II(日機装(株)製)を用いて、次の測定条件で粒度分布(D10、D50及びD90)を測定した。
<測定条件>
粒子屈折率:1.53
測定方法:乾式レーザー回折法
(ガスクロマトグラフ:DMAc、メタノール濃度の測定)
ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定を行った。
(1)試料調整方法
樹脂1gにイソプロパノール4gを加えて、超音波処理を30分間実施し、これをクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過したものを測定試料とした。
(2)DMAcの測定条件
装置:Agilent 6890
カラム:DB−WAX(250μm×30m、0.25μm)
注入口温度:150℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:He
流量:1.0mL/分(コンスタントフロー)
注入量:1.0μL
検出:FID
定量:絶対検量線法
オーブン温度プログラム:0〜5分:50℃、5〜25分:50℃→250℃、25〜35分:250℃
(3)メタノールの測定条件
装置:Agilent 6890
カラム:DB−5(250μm×30m、0.25μm)
注入口温度:150℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:He
流量:1.0mL分(コンスタントフロー)
注入量:1.0μL
検出:FID
定量:絶対検量線法
オーブン温度プログラム:0〜5分:50℃、5〜32分:50℃→320℃、32〜40分:320℃
ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定を行った。
(1)試料調整方法
樹脂1gにイソプロパノール4gを加えて、超音波処理を30分間実施し、これをクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過したものを測定試料とした。
(2)DMAcの測定条件
装置:Agilent 6890
カラム:DB−WAX(250μm×30m、0.25μm)
注入口温度:150℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:He
流量:1.0mL/分(コンスタントフロー)
注入量:1.0μL
検出:FID
定量:絶対検量線法
オーブン温度プログラム:0〜5分:50℃、5〜25分:50℃→250℃、25〜35分:250℃
(3)メタノールの測定条件
装置:Agilent 6890
カラム:DB−5(250μm×30m、0.25μm)
注入口温度:150℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:He
流量:1.0mL分(コンスタントフロー)
注入量:1.0μL
検出:FID
定量:絶対検量線法
オーブン温度プログラム:0〜5分:50℃、5〜32分:50℃→320℃、32〜40分:320℃
(カールフィッシャー:水分量の測定)
カールフィッシャー法を用いて測定を行った。
装置:(株)三菱化学アナリテック製 CA−200
測定方式:気化式電量法
加熱条件:200℃、30分
試料量:約150mg
陽極液:アクアミクロンAX
陰極液:アクアミクロンCXU
カールフィッシャー法を用いて測定を行った。
装置:(株)三菱化学アナリテック製 CA−200
測定方式:気化式電量法
加熱条件:200℃、30分
試料量:約150mg
陽極液:アクアミクロンAX
陰極液:アクアミクロンCXU
(TG−DTA:乾燥粉体中の溶媒残量)
示差熱・熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製TG/DTA6200)を用いて、乾燥粉体中に残存する溶媒残量を測定した。具体的には、アルミニウム製のパンに25mgのポリイミド系樹脂粉体を仕込み、窒素雰囲気中で10℃/分の速度で昇温して、200℃でのポリイミド系樹脂粉体の質量(M1)及び300℃でのポリイミド樹脂粉体の質量(M2)を測定し、下記の式から200〜300℃での質量減少率を求め、これを溶媒残量とした。
200〜300℃の質量減少率(%)=(M1−M2)/M1×100
示差熱・熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製TG/DTA6200)を用いて、乾燥粉体中に残存する溶媒残量を測定した。具体的には、アルミニウム製のパンに25mgのポリイミド系樹脂粉体を仕込み、窒素雰囲気中で10℃/分の速度で昇温して、200℃でのポリイミド系樹脂粉体の質量(M1)及び300℃でのポリイミド樹脂粉体の質量(M2)を測定し、下記の式から200〜300℃での質量減少率を求め、これを溶媒残量とした。
200〜300℃の質量減少率(%)=(M1−M2)/M1×100
[樹脂の溶媒への溶解性の確認]
下記合成例1に記載する樹脂粉体について、下記の方法で溶媒への溶解性を確認した。
30mLのガラス製スクリュー管に溶媒を9.9g量りとり、さらにマグネチックスターラーを入れて撹拌した。そこに上記樹脂粉体を0.1g加え、室温(24℃)で3時間撹拌し、溶解性を確認した。
結果、DMAcには溶解したが、メタノールとイオン交換水には溶解しなかった。したがって、DMAcは良溶媒であり、メタノールとイオン交換水は貧溶媒である。
下記合成例1に記載する樹脂粉体について、下記の方法で溶媒への溶解性を確認した。
30mLのガラス製スクリュー管に溶媒を9.9g量りとり、さらにマグネチックスターラーを入れて撹拌した。そこに上記樹脂粉体を0.1g加え、室温(24℃)で3時間撹拌し、溶解性を確認した。
結果、DMAcには溶解したが、メタノールとイオン交換水には溶解しなかった。したがって、DMAcは良溶媒であり、メタノールとイオン交換水は貧溶媒である。
[合成例1:ポリイミド系樹脂の合成]
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。反応容器内を10℃に冷却し、ジメチルアセトアミド(DMAc)1567.4部を容器に入れ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)91.8部と4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)38.6部を加え、3時間撹拌した。
次いで、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)4.3部とテレフタロイルクロリド(TPC)15.9部を加え、30分撹拌し、同量のOBBC及びTPCを添加し、同時間撹拌した。生成した反応液にDMAcを1567.4部、TPC3.5部を加え、更に10℃で2時間撹拌した。
次いで、ジイソプロピルエチルアミン26.2部、及び無水酢酸62.1部を加え、10℃に保ったまま30分間撹拌した後、4−ピコリン18.9部を加え、反応容器を75℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、ポリイミド系樹脂を含む反応液(1)を得た。
反応液(1)を冷却し、40℃以下に下がったところで、メタノール940.4部を加え、反応液(2)を得た。
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。反応容器内を10℃に冷却し、ジメチルアセトアミド(DMAc)1567.4部を容器に入れ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)91.8部と4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)38.6部を加え、3時間撹拌した。
次いで、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)4.3部とテレフタロイルクロリド(TPC)15.9部を加え、30分撹拌し、同量のOBBC及びTPCを添加し、同時間撹拌した。生成した反応液にDMAcを1567.4部、TPC3.5部を加え、更に10℃で2時間撹拌した。
次いで、ジイソプロピルエチルアミン26.2部、及び無水酢酸62.1部を加え、10℃に保ったまま30分間撹拌した後、4−ピコリン18.9部を加え、反応容器を75℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、ポリイミド系樹脂を含む反応液(1)を得た。
反応液(1)を冷却し、40℃以下に下がったところで、メタノール940.4部を加え、反応液(2)を得た。
撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。20℃で撹拌しながら反応容器内に上記反応液(2)を1452.2部入れた。次いで、メタノールを30部/分の速度で1253.9部滴下し、次いでイオン交換水を7部/分の速度で783.7部滴下し、白色固体を析出させた。析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを減圧下、78℃で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂粉体52部を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は343,000であり、イミド化率は97.0%であった。
[樹脂溶液の作製]
合成例1で得た樹脂粉体25部を475部のDMAcに溶解させて、ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液を作製した。なお、以下の実施例においては、合成例1で得た樹脂粉体を良溶媒に溶解させて得たポリイミド系樹脂溶液を用いているが、合成例1の反応液(1)をそのままポリイミド系樹脂溶液として使用してもよく、その場合にも同様の結果が得られる。
合成例1で得た樹脂粉体25部を475部のDMAcに溶解させて、ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液を作製した。なお、以下の実施例においては、合成例1で得た樹脂粉体を良溶媒に溶解させて得たポリイミド系樹脂溶液を用いているが、合成例1の反応液(1)をそのままポリイミド系樹脂溶液として使用してもよく、その場合にも同様の結果が得られる。
[実施例1:晶析及び洗浄工程]
作製したポリイミド系樹脂溶液200部をガラスビーカーに秤り入れた。ステンレス製の撹拌羽で撹拌しながら、メタノールを301部滴下したところ、滴下途中で液が白濁した。次いで、水を150部滴下したところ、白濁の程度がさらに濃くなった。吸引ろ過により、ガラスろ過器を用いて粒子を捕集した。
次にガラスろ過器の出口にシリコン栓をして、ろ過器に入れた溶媒が流出しないようにしたうえで、メタノールを150部入れ、粒子が完全に浸漬されている状態で30分保持してから、シリコン栓を外して、固液を分離した。この作業を2回繰り返した。2度目は液が出なくなるまで吸引ろ過を行った。
次に、同様にシリコン栓をし、水を150部入れ、粒子が完全に浸漬された状態で30分保持してから、シリコン栓を外して、固液を分離した。この作業を3回繰り返した。3度目は液が出なくなるまで吸引ろ過を行った。このようにして、樹脂と溶媒とを含む樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、ガスクロマトグラフィー法により有機溶媒量を測定し、カールフィッシャー法により水分量を測定した。
作製したポリイミド系樹脂溶液200部をガラスビーカーに秤り入れた。ステンレス製の撹拌羽で撹拌しながら、メタノールを301部滴下したところ、滴下途中で液が白濁した。次いで、水を150部滴下したところ、白濁の程度がさらに濃くなった。吸引ろ過により、ガラスろ過器を用いて粒子を捕集した。
次にガラスろ過器の出口にシリコン栓をして、ろ過器に入れた溶媒が流出しないようにしたうえで、メタノールを150部入れ、粒子が完全に浸漬されている状態で30分保持してから、シリコン栓を外して、固液を分離した。この作業を2回繰り返した。2度目は液が出なくなるまで吸引ろ過を行った。
次に、同様にシリコン栓をし、水を150部入れ、粒子が完全に浸漬された状態で30分保持してから、シリコン栓を外して、固液を分離した。この作業を3回繰り返した。3度目は液が出なくなるまで吸引ろ過を行った。このようにして、樹脂と溶媒とを含む樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、ガスクロマトグラフィー法により有機溶媒量を測定し、カールフィッシャー法により水分量を測定した。
[乾燥工程]
得られた樹脂組成物をアルミ製のカップに秤とり、送風乾燥機(ヤマト科学(株)製 DKN302)を用いて、200℃で3時間乾燥し、白色の粉体を得た。
得られた粉体について、TG−DTA法により溶媒残量を測定し、色彩色差計により色度を測定し、粒度分析計により粒径を測定した。
得られた樹脂組成物をアルミ製のカップに秤とり、送風乾燥機(ヤマト科学(株)製 DKN302)を用いて、200℃で3時間乾燥し、白色の粉体を得た。
得られた粉体について、TG−DTA法により溶媒残量を測定し、色彩色差計により色度を測定し、粒度分析計により粒径を測定した。
[参考比較例1:晶析及び洗浄工程]
作製したポリイミド系樹脂溶液200部をガラスビーカーに秤り入れた。ステンレス製の撹拌羽で撹拌しながら、メタノールを301部、水を150.7部滴下したところ、粒子が析出し、白濁した液が得られた。吸引ろ過により、ガラスろ過器を用いて粒子を捕集した。
次にガラスろ過器の出口にシリコン栓をして、ろ過器に入れた溶媒が流出しないようにしたうえで、メタノール150部を入れ、粒子が完全に浸漬されている状態で30分保持してから、シリコン栓を外して、液を出した。この作業を2回繰り返した。2度目は液が出なくなるまで吸引ろ過を行った。このようにして樹脂と溶媒とを含む樹脂組成物を得た。
作製したポリイミド系樹脂溶液200部をガラスビーカーに秤り入れた。ステンレス製の撹拌羽で撹拌しながら、メタノールを301部、水を150.7部滴下したところ、粒子が析出し、白濁した液が得られた。吸引ろ過により、ガラスろ過器を用いて粒子を捕集した。
次にガラスろ過器の出口にシリコン栓をして、ろ過器に入れた溶媒が流出しないようにしたうえで、メタノール150部を入れ、粒子が完全に浸漬されている状態で30分保持してから、シリコン栓を外して、液を出した。この作業を2回繰り返した。2度目は液が出なくなるまで吸引ろ過を行った。このようにして樹脂と溶媒とを含む樹脂組成物を得た。
得られた組成物中の有機溶媒量は、ガスクロマトグラフィー法により、水分量はカールフィッシャー法により、それぞれ測定された。
表1に示すように、本発明の製造方法により得た樹脂組成物(b)は、アルコール系溶媒の残量が低減されていた。当該樹脂組成物を200℃で3時間かけて乾燥したところ、ポリイミド系樹脂粉体が得られた。乾燥後のポリイミド系樹脂粉体の溶媒残量(200〜300℃の質量減少率)は0.08%であり、色度は、L*a*b*表色系に基づく色差測定において、L*=97.83、a*=−2.96、b*=7.94であり、粒度分布は、D10=174μm、D50=225μm、D90=284μmであった。一方、比較例1の製造方法により得た樹脂組成物は、アルコール系溶媒の含有量が非常に多く、例えば特許文献1において、フィルムの耐熱性の低下及び着色を回避するために、ポリイミド系樹脂粉体中の揮発成分が5%未満程度になるまで、100℃未満の温度で乾燥させることが必要とされているようなものであった。したがって、本発明の製造方法によれば、メタノール等のアルコール系溶媒を効率的に除去することが可能であることが確認された。
Claims (12)
- (1)ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂溶液と、炭素数1〜4のアルコールを含む溶媒とを接触させてポリイミド系樹脂を析出させ、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程、
(2)得られた混合物を固液分離して、析出したポリイミド系樹脂を含むポリイミド系樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
(3)ポリイミド系樹脂組成物(a)を、水を主成分とする溶媒と接触させる工程
を少なくとも含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法。 - ポリイミド系樹脂粉体の色度が、L*a*b*表色系に基づく色差測定において、L*≧90、−10≦a*≦10、及び−10≦b*≦10を満たす、請求項1に記載の製造方法。
- ポリイミド系樹脂はフッ素原子を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
- ポリイミド系樹脂は芳香族系のポリイミド系樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- ポリイミド系樹脂のイミド化率は90%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 工程(3)において、ポリイミド系樹脂組成物(a)の質量をW1とし、該ポリイミド系樹脂組成物(a)と接触させる水を主成分とする溶媒の質量をW2とすると、W1に対するW2の割合(W2/W1)は4以上であり、接触時間は10分以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 工程(3)の後に、
(4)固液分離して、ポリイミド系樹脂組成物(b)を得る工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。 - 前記ポリイミド系樹脂組成物(b)における水の含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物(b)の総質量に対して10質量%以上であり、かつ、炭素数1〜4のアルコールの含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物(b)の総質量に対して3質量%未満である、請求項7に記載の製造方法。
- 工程(2)の前に、工程(1)で得た混合物と、水を含む溶媒とを接触させて、析出したポリイミド系樹脂を含む混合物を得る工程(X)をさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 工程(3)の前に、工程(2)で得たポリイミド系樹脂組成物(a)を、炭素数1〜4のアルコールと接触させる工程(Y)をさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
- ポリイミド系樹脂及び水を少なくとも含むポリイミド系樹脂組成物であって、該ポリイミド系樹脂組成物における水の含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して10質量%以上であり、かつ、炭素数1〜4のアルコールの含有量が、該ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して3質量%未満である、ポリイミド系樹脂組成物。
- 炭素数1〜4のアルコールの含有量が、ポリイミド系樹脂組成物の総質量に対して0.001質量%以上である、請求項11に記載のポリイミド系樹脂組成物。
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