以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
[作業機械の第1例(ショベル)]
最初に、図1〜図3(図3A、図3B)を参照して、本実施形態に係る作業機械の第1例としてのショベルについて説明する。
<ショベルの概要>
まず、図1を参照して、作業機械の第1例としてのショベルの概要を説明する。
図1は、本実施形態に係るショベルを示す側面図である。
本実施形態に係るショベルは、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、作業装置としてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、オペレータが搭乗するキャビン10を備える。
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(図2参照)で油圧駆動されることにより、自走する。
上部旋回体3は、後述する旋回用電動機21(図2参照)により電気駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
キャビン10は、上部旋回体3の前部左側に搭載され、その内部には、オペレータが着座する操縦席や後述する操作装置26等が設けられる。
<ショベルの構成>
次に、図1に加えて、図2を参照して、本実施形態に係るショベルの構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るショベルの駆動系を中心とする構成の一例を示すブロック図である。
尚、図中にて、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。
本実施形態に係るショベルの油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。また、本実施形態に係る油圧駆動系は、主に、エンジン11と、電動発電機12と、減速機13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。
尚、電動発電機12については、ショベルの電気駆動系の説明部分で詳述する。
エンジン11(動力源の一例)は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、上部旋回体3の後部に搭載される。エンジン11は、後述するエンジンコントローラ(ECM:Engine Control Module)30Cの制御下で、所定の目標回転数で定回転する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、減速機13を介してメインポンプ14、パイロットポンプ15を駆動する。また、エンジン11は、減速機13を介して電動発電機12を駆動し、電動発電機12に発電させることができる。
減速機13は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、エンジン11及び後述する電動発電機12が接続される2つの入力軸と、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が直列に同軸接続される1つの出力軸を有する。減速機13は、エンジン11及び電動発電機12の動力を所定の減速比でメインポンプ14及びパイロットポンプ15に伝達することができる。また、減速機13は、エンジン11の動力を所定の減速比で、電動発電機12とメインポンプ14及びパイロットポンプ15とに分配して伝達することができる。
メインポンプ14(油圧ポンプの一例)は、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、エンジン11、或いは、エンジン11及び電動発電機12により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するショベルコントローラ30Aの制御下で、レギュレータ(不図示)が斜板の角度(傾転角)を制御する。これにより、メインポンプ14は、ピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。
コントロールバルブ17は、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作入力に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ1A(右用),1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に供給可能に構成される。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットである。
本実施形態に係るショベルの電気駆動系は、油圧駆動系をアシストする構成要素として、電動発電機12と、電流センサ12s1と、電圧センサ12s2と、インバータ18Aを含む。また、本実施形態に係るショベルの電気駆動系は、被駆動要素(具体的には、上部旋回体3)の電気駆動に関する構成要素として、旋回用電動機21と、電流センサ21sと、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24と、インバータ18Bを含む。
電動発電機12(動力源及び電動機の一例)は、油圧駆動系に対するアシスト動力源であり、上部旋回体3の後部に搭載される。電動発電機12は、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータである。電動発電機12は、インバータ18Aを介してキャパシタ19を含む蓄電系120や旋回用電動機21と接続される。電動発電機12は、インバータ18Aを介してキャパシタ19や旋回用電動機21から供給される三相交流電力で力行運転し、エンジン11をアシストする態様で、減速機13を介してメインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。また、電動発電機12は、エンジン11により駆動されることにより発電運転を行い、発電電力をキャパシタ19や旋回用電動機21に供給することができる。電動発電機12の力行運転と発電運転との切替制御は、後述するハイブリッドコントローラ(以下、「HBコントローラ」)30Bの制御下で、インバータ18Aにより実現されてよい。
電流センサ12s1は、電動発電機12の三相(U相、V相、W相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ12s1は、例えば、電動発電機12とインバータ18Aの間の電力経路に設けられる。電流センサ12s1により検出される旋回用電動機21の三相それぞれの電流に対応する検出信号は、一対一の通信線やCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを通じて、インバータ18Aに取り込まれる。また、当該検出信号は、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワークを通じて、一度、HBコントローラ30Bに取り込まれ、HBコントローラ30B経由で、インバータ18Aに入力されてもよい。以下、電圧センサ12s2の検出信号についても同様である。
電圧センサ12s2は、電動発電機12の三相のそれぞれの印加電圧を検出する。電流センサ21sは、例えば、電動発電機12とインバータ18Aの間の電力経路に設けられる。電圧センサ12s2により検出される旋回用電動機21の三相それぞれの印加電圧に対応する検出信号は、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワークを通じて、インバータ18Aに取り込まれる。
インバータ18Aは、HBコントローラ30Bの制御下で、電動発電機12を駆動制御する。インバータ18Aは、例えば、直流電力を三相交流電力に変換したり、三相交流電力を直流電力に変換したりする変換回路と、変換回路をスイッチ駆動する駆動回路と、駆動回路の動作を規定する制御信号(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号)を出力する制御回路を含む。
具体的には、インバータ18Aの制御回路は、電流センサ12s1及び電圧センサ12s2の検出信号に基づき、逐次、電動発電機12の回転軸の回転角等を推定してよい。例えば、当該制御回路は、例えば、既知の拡張誘起電圧(EEFM:Extended Electromotive Force)モデルに基づき、電動発電機12の回転軸の回転角や回転速度等を推定する。そして、当該制御回路は、逐次導出される回転角や回転速度の推定値に基づき、電動発電機12の動作状態を把握しながら、電動発電機12の駆動制御(以下、「センサレス制御」)を行ってよい。これにより、電動発電機12には、回転角や回転位置を検出する所定のセンサ(例えば、ロータリエンコーダ等)が設けられる必要が無い。そのため、メカニカルなセンサを削減することができ、ショベルのコストを抑制することができると共に、センサの汚れ等による検出不良を抑制することができる。
尚、インバータ18Aの制御回路は、電圧センサ12s2による電動発電機12の印加電圧の検出値の代わりに、HBコントローラ30Bから入力される、或いは、自身が制御の過程で生成する電動発電機12の電圧指令値を用いて、電動発電機12の回転軸の回転角等を推定してもよい。この場合、電圧センサ12s2は、省略されうる。また、インバータ18Aの制御回路は、電動発電機12の回転角を検出するセンサの検出信号に基づき、電動発電機12を制御してもよい。この場合、電動発電機12には、例えば、ロータリエンコーダやレゾルバ等の回転軸の回転角を検出するセンサが搭載される。また、インバータ18Aの駆動回路及び制御回路の少なくとも一方は、インバータ18Aの外部に設けられてもよい。
旋回用電動機21は、下部走行体1と上部旋回体3との間を接続する旋回機構2に設けられ、HBコントローラ30Bの制御下で、上部旋回体3を旋回駆動する力行運転、及び回生電力を発生させて上部旋回体3を旋回制動する回生運転を行う。旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して蓄電系120に接続され、インバータ18Bを介してキャパシタ19や電動発電機12から供給される三相交流電力により駆動される。また、旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して、回生電力をキャパシタ19や電動発電機12に供給する。これにより、回生電力で、キャパシタ19を充電したり、電動発電機12を駆動したりすることができる。旋回用電動機21の力行運転と回生運転との切替制御は、HBコントローラ30Bの制御下で、インバータ18Bにより実現されてよい。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。
電流センサ21sは、旋回用電動機21の三相(U相、V相、W相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ21sは、例えば、旋回用電動機21とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電流センサ21sにより検出される、また、旋回用電動機21の三相それぞれの電流に対応する検出信号は、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワークを通じて、直接、インバータ18Bに取り込まれる。また、当該検出信号は、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワークを通じて、HBコントローラ30Bに取り込まれ、HBコントローラ30B経由で、インバータ18Bに入力されてもよい。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転位置(回転角)等を検出する。レゾルバ22により検出された回転角に対応する検出信号は、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワーク等を通じて、HBコントローラ30Bに取り込まれ、HBコントローラ30B経由でインバータ18Bに入力される。また、当該検出信号は、直接的に、インバータ18Bに取り込まれてもよい。
メカニカルブレーキ23は、HBコントローラ30Bの制御下で、旋回用電動機21の回転軸21Aに対して、機械的に制動力を発生させる。これにより、メカニカルブレーキ23は、上部旋回体3の旋回制動を行ったり、上部旋回体3の停止状態を維持させたりすることができる。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aと接続され、旋回用電動機21の出力(トルク)を所定の減速比で減速させることにより、トルクを増大させて、上部旋回体3を旋回駆動する。即ち、力行運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して、上部旋回体3を旋回駆動する。また、旋回減速機24は、上部旋回体3の慣性回転力を増速させて旋回用電動機21に伝達し、回生電力を発生させる。即ち、回生運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して伝達される上部旋回体3の慣性回転力により回生発電を行い、上部旋回体3を旋回制動する。
インバータ18Bは、HBコントローラ30Bの制御下で、旋回用電動機21を駆動制御する。インバータ18Bは、例えば、直流電力を三相交流電力に変換したり、三相交流電力を直流電力に変換する変換回路と、変換回路をスイッチ駆動する駆動回路と、駆動回路の動作を規定する制御信号(例えば、PWM信号)を出力する制御回路を含む。
具体的には、インバータ18Bの制御回路は、電流センサ21s及びレゾルバ22の検出信号に基づき、旋回用電動機21に関する速度フィードバック制御及びトルクフィードバック制御を行う。
本実施形態に係るショベルの蓄電系120は、キャパシタ19と、昇降圧コンバータ100と、DCバス110を含む。蓄電系120は、例えば、電気駆動系のインバータ18A,18Bと共に、上部旋回体3の右側前部に搭載される。
キャパシタ19は、電動発電機12や旋回用電動機21に電力を供給すると共に、電動発電機12や旋回用電動機21の発電電力を充電する蓄電装置の一例である。また、キャパシタ19と昇降圧コンバータ100を含む負荷側のメイン回路との間を遮断するリレー(以下、「遮断リレー」)が設けられる。これにより、キャパシタ19は、ショベルの停止時やショベルの異常時(例えば、転倒等の事故発生時)に、HBコントローラ30Bによる制御下で、メイン回路と切り離される。そのため、オペレータの不在時の異常や、オペレータの在席時の異常に起因して、キャパシタ19に非常に大きな短絡電流が流れるような事態を抑制することができる。遮断リレーは、例えば、キャパシタ19と昇降圧コンバータ100との間の正極側及び負極側の双方の電力経路に設けられる。
昇降圧コンバータ100は、キャパシタ19の電力を昇圧し、DCバス110に出力したり、DCバス110に供給される電力を降圧し、キャパシタ19に蓄電させたりする。昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス110の電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える。昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス110の電圧検出値、キャパシタ19の電圧検出値、及びキャパシタ19の電流検出値に基づき、HBコントローラ30Bにより実現されてよい。
DCバス110は、インバータ18A,18Bと昇降圧コンバータ100との間に設けられ、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。
また、本実施形態に係るショベルの操作系は、パイロットポンプ15、操作装置26、圧力センサ29等を含む。
パイロットポンプ15は、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11、或いはエンジン11及び電動発電機12により駆動される。
操作装置26は、例えば、レバー26A,26Bと、ペダル26Cを含む。操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータがそれぞれの被駆動要素(例えば、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、それぞれの被駆動要素を駆動する油圧アクチュエータ(例えば、走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)や電動アクチュエータ(旋回用電動機21等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26(レバー26A,26B、及びペダル26C)は、油圧ライン27を介して、コントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、各油圧アクチュエータを駆動することができる。また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29に接続される。
圧力センサ29は、上述の如く、油圧ライン28を介して操作装置26と接続され、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26における各動作要素の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。圧力センサ29は、ショベルコントローラ30Aに接続され、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じた圧力信号(圧力検出値)は、ショベルコントローラ30Aに取り込まれる。
本実施形態に係るショベルの制御系は、制御装置30と、他の制御対象ユニット40と、HMI(Human Machine Interface)50を含む。
制御装置30は、ショベルコントローラ30Aと、HBコントローラ30Bと、エンジンコントローラ30Cを含む。
ショベルコントローラ30A、HBコントローラ30B、及びエンジンコントローラ30C等は、それぞれの機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、ショベルコントローラ30A、HBコントローラ30B、及びエンジンコントローラ30C等は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置(主記憶装置)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置と、I/O(Input-Output)インタフェース装置等を含むマイクロコンピュータを中心に構成されてよい。
ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30B及びエンジンコントローラ30Cを含む各種コントローラと連携し、ショベルの駆動制御を行う。例えば、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30B及びエンジンコントローラ30C等の各種コントローラとの双方向通信に基づき、ショベル全体(ショベルに搭載される各種機器)の動作を統合的に制御してよい。
HBコントローラ30Bは、ショベルコントローラ30Aから入力される各種情報(例えば、操作装置26の操作状態に対応する圧力センサ29の検出値を含む制御指令等)に基づき、電気駆動系の駆動制御を行う。例えば、HBコントローラ30Bは、圧力センサ29により検出される、操作装置26の操作状態に対応する検出値に基づき、インバータ18Aを駆動し、電動発電機12の運転状態(力行運転及び発電運転)の切替制御を行う。また、例えば、HBコントローラ30Bは、圧力センサ29により検出される、操作装置26の操作状態に対応する検出値に基づき、インバータ18Bを駆動し、旋回用電動機21の運転状態(力行運転及び回生運転)の切替制御を行う。また、例えば、HBコントローラ30Bは、圧力センサ29により検出される、操作装置26の操作状態に対応する検出値に基づき、昇降圧コンバータ100を駆動し、昇降圧コンバータ100の昇圧運転と降圧運転、換言すれば、キャパシタ19の放電状態と充電状態との切替制御を行う。
また、HBコントローラ30Bは、電気駆動系に関する自己診断機能を有し、電気駆動系に関する各種異常を検出してもよい。
具体的には、HBコントローラ30Bは、電動発電機12の異常やインバータ18Aに関する異常、つまり、電動発電機12に関する異常を検出してよい。例えば、HBコントローラ30Bは、電動発電機12やインバータ18Aの温度、電流、電圧等をモニタリングすることにより、温度異常、電流異常(例えば、過電流)、電圧異常(例えば、過電圧)等を検出してよい。また、HBコントローラ30Bは、インバータ18Aの半導体スイッチ、抵抗、コンデンサ、ダイオード等の構成要素の異常等を検出してもよい。
エンジンコントローラ30Cは、ショベルコントローラ30Aから入力される各種情報(例えば、エンジン11の設定回転数やエンジン11の設定回転数に対応するショベルの運転モード等を含む制御指令)に基づき、エンジン11の駆動制御を行う。具体的には、エンジンコントローラ30Cは、制御対象のエンジン11のスタータモータや燃料噴射装置等のアクチュエータに制御指令を出力することで、エンジン11の駆動制御を実現する。
また、エンジンコントローラ30Cは、エンジン11に関する自己診断機能を有し、エンジン11に関する各種異常を検出してもよい。例えば、エンジンコントローラ30Cは、エンジン11の燃料噴射装置等の各種アクチュエータの異常、クランク角センサ等の各種センサの異常、排気系の異常等を検出してよい。
他の制御対象ユニット40は、ショベルの動作に関連する、制御装置30の制御対象の構成要素のうち、電動発電機12に関する構成要素(具体的には、電動発電機12及びインバータ18A等)以外の構成要素である。例えば、他の制御対象ユニット40は、エンジン11や旋回用電動機21を駆動するインバータ18B等を含んでよい。また、例えば、他の制御対象ユニット40は、油圧駆動系のメインポンプ14、コントロールバルブ17、及びコントロールバルブ17を制御するための各種バルブ(例えば、ゲートロック弁や、操作装置26の二次圧を調整する減圧弁等)の少なくとも一つを含んでもよい。
HMI50は、キャビン10内に設けられ、オペレータと、ショベルとの間のインタフェース機能を担う。HMI50は、通知(表示)手段(例えば、警告灯等を含む計器盤やディスプレイ等)や操作手段(例えば、操作装置26、ディスプレイのタッチパネル、操縦席周辺に配置される各種ボタン、スイッチ、トグル等)を含む。
<異常発生時におけるショベルの動作>
次に、図3(図3A、図3B)を参照して、異常発生時におけるショベルの動作について説明する。
図3A、図3Bは、所定の異常(電動発電機12に関する異常)が発生した場合のショベルの動作の具体例を示すシーケンス図である。具体的には、図3Aは、所定の異常の発生後、正常復帰できる場合のショベルの動作の具体例を示すシーケンス図であり、図3Bは、所定の異常の発生後、正常復帰できずに停止する場合のショベルの動作の具体例を示すシーケンス図である。
尚、図3A、図3Bは、ステップS102〜S118の処理が共通であるため、図3Bについては、図3Aと異なる処理(ステップS130〜S138)の部分を中心に説明する。また、図3A、図3BのHBコントローラ30Bによる処理は、代わりに、インバータ18Aの制御回路によりおこなわれてもよい。
図3Aに示すように、ステップS102にて、HBコントローラ30Bは、自機診断機能に基づき、電動発電機12に関する異常を検出している。
ステップS104にて、HBコントローラ30Bは、電動発電機12に関する異常発生に伴い、異常時処理を開始する。
HBコントローラ30Bは、ステップS106にて、電動発電機12に関する異常が発生したことを示す通知(以下、「異常発生通知」)をショベルコントローラ30Aに送信し、ステップS108にて、電動発電機12(つまり、インバータ18A)を停止させる。これにより、電動発電機12からメインポンプ14へのアシスト動力の伝達や電動発電機12から旋回用電動機への発電電力の供給は停止される。つまり、ショベルは、メインポンプ14がエンジン11の動力だけで駆動され、旋回用電動機21が蓄電系(キャパシタ19)からの電力だけで駆動される動作状態に移行する。
一方、ステップS110にて、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bから異常発生通知を受信すると、他の制御対象ユニット40の動作を制限させることを示す通知(以下、「動作制限通知」)を他の制御対象ユニット40及びHMI50に送信する。電動発電機12からメインポンプ14へのアシスト動力の伝達や電動発電機12から旋回用電動機21への発電電力の供給が停止され、メインポンプ14や旋回用電動機21の応答速度や最大出力が低下するからである。このとき、ショベルコントローラ30Aからの動作制限通知は、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワークを通じて、直接、他の制御対象ユニット40やHMI50に送信されてもよいし、他の制御対象ユニット40やHMI50を直接の支配下に置く他のコントローラ(例えば、エンジン11に対応するエンジンコントローラ30Cや、旋回用電動機21に対応するHBコントローラ30B)を経由して他の制御対象ユニット40やHMI50に送信されてもよい。以下、後述するステップS124,S130の通知についても同様である。
ステップS112にて、他の制御対象ユニット40は、ショベルコントローラ30Aからの動作制限通知(つまり、制御信号)の受信に応じて、その動作が制限される。例えば、コントロールバルブ17やコントロールバルブ17に作用するパイロット圧を調整する各種バルブは、操作装置26への操作入力に対する油圧アクチュエータの応答や動作速度が通常よりも遅くなるになるように動作制限されてよい。また、例えば、インバータ18Bは、例えば、操作装置26への操作入力に対する旋回用電動機21の応答や動作速度が通常よりも遅くなるように動作制限されてよい。
また、ステップS114にて、HMI50は、ショベルコントローラ30Aからの動作制限通知(つまり、制御信号)の受信に応じて、視覚的な方法(表示)や聴覚的な方法(音)等でキャビン10内のオペレータに電動発電機12に関する異常発生の警告を通知する。換言すれば、HMI50は、オペレータに、当該異常発生に伴いショベルの動作制限され制限運転状態であることを示す警告(以下、「動作制限警告」)を通知する。
尚、ステップS114にて、HMI50は、更に、ショベルの操作装置26を通じた操作を抑制するように促す(例えば、操作速度を緩やかにするように促す)警告(以下、「操作抑制警告」)を行ってもよい。これにより、他の制御対象ユニット40の動作制限に加えて、他の制御対象ユニット40を動作させるための操作自体を抑制させることができる。また、他の制御対象ユニット40の動作制限に代えて、オペレータへの操作抑制警告の通知だけが行われてもよい。これにより、ショベルの制御系で自動的に動作制限をかける代わりに、オペレータによる操作装置26の操作を抑え気味にさせることができ、同様の効果を奏する。
電動発電機12の停止(ステップS108)の後、ステップS116にて、HBコントローラ30Bは、電動発電機12の再起動を試行する処理(以下、「再起動処理」)を行う。具体的には、HBコントローラ30Bは、インバータ18Aを再起動させ、電動発電機12に関する自己診断機能に基づく処理(以下、「自己診断処理」)を行う。
ステップS118にて、HBコントローラ30Bは、再起動が成功であるか否か、つまり、再起動に伴う自己診断処理を通じて電動発電機12に関する異常が解消されていることが確認されたか否かを判定する。本例では、電動発電機12に関する異常が解消されており、HBコントローラ30Bは、再起動が成功であると判定している。
尚、電動発電機12に関する異常が解消されていない場合、予め規定された回数を上限として、異常が解消されていることが確認されるまで、ステップS108の処理及びステップS116の処理を繰り返されてもよい。
ステップS120にて、HBコントローラ30Bは、電動発電機12の再起動の成功、つまり、電動発電機12の正常復帰に伴い、再起動が成功したことを示す通知(以下、「再起動成功通知」)をショベルコントローラ30Aに送信する。
そして、ステップS122にて、HBコントローラ30Bは、インバータ18Aを制御し、電動発電機12の通常運転を再開する、つまり、インバータ18Aによるサーボ制御を再開する。
一方、ステップS124にて、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bからの再起動成功通知の受信に応じて、他の制御対象ユニット40の動作制限を解除させる旨の通知(以下、「動作制限解除通知」)を他の制御対象ユニット40及びHMI50に送信する。
ステップS126にて、他の制御対象ユニット40は、ショベルコントローラ30Aからの動作制限解除通知(つまり、制御信号)の受信に応じて、動作制限を解除し、通常運転に復帰する。
また、ステップS128にて、HMI50は、動作制限解除通知の受信(つまり、制御信号)の受信に応じて、オペレータに対する通知が継続している警告を解除する。これにより、HMI50は、オペレータに対して、ショベルの動作制限が解除されたことを通知することができる。
これに対して、図5Bに示すように、本例では、ステップS118にて、HBコントローラ30Bは、再起動が失敗であると判定している。そのため、ステップS130にて、HBコントローラ30Bは、電動発電機12の再起動の失敗に伴い、再起動が失敗したことを示す通知(以下、「再起動失敗通知」)をショベルコントローラ30Aに送信し、ステップS132にて、電動発電機12(つまり、インバータ18A)を停止させる。
一方、ステップS134にて、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bからの再起動失敗通知の受信に応じて、他の制御対象ユニット40を停止させることを示す通知(以下、「動作停止通知」)を他の制御対象ユニット40及びHMI50に送信する。
ステップS136にて、他の制御対象ユニット40は、ショベルコントローラ30Aからの動作停止通知(つまり、制御信号)の受信に応じて、停止する。これにより、エンジン11や電気駆動系等が全て停止し、ショベルが停止する。
また、ステップS138にて、HMI50は、ショベルコントローラ30Aからの動作停止通知に応じて、電動発電機12に関する異常に基づきショベルが停止したことを示す警告をキャビン10内のオペレータに通知する。
このように、本例では、制御装置30は、電動発電機12に関する異常が発生した場合に、ショベルの動作を制限しながら、ショベルの運転を継続させる。これにより、ショベルは、エンジン11の動力及び蓄電系120(キャパシタ19)の電力で運転を継続し、異常発生時における作業効率の低下を抑制することができる。
尚、制御装置30は、油圧駆動系に関する他方の動力源、つまり、エンジン11に関する異常が発生した場合に、同様の制御を行ってもよい。つまり、制御装置30は、エンジン11に関する異常が発生した場合に、ショベルの動作を制限しながら、電動発電機12の動力でショベルの運転を継続させてもよい。また、制御装置30は、キャパシタ19(蓄電系120)に関する異常が発生した場合に、同様の制御を行ってもよい。つまり、制御装置30は、キャパシタ19に関する異常が発生した場合に、ショベルの動作を制限しながら、電動発電機12の電力で、旋回用電動機21を駆動し、旋回用電動機21の回生電力で電動発電機12を駆動する態様でショベルの運転を継続させてもよい。
また、本例では、制御装置30は、電動発電機12に関する異常が発生した場合に、ショベルの動作を制限すること、及び、ショベルに関する操作入力(つまり、操作装置26に対する操作入力)を抑制するように促す通知を行うことの何れか一方を行い、ショベルの運転を継続する。これにより、制御装置30は、電動発電機12に関する異常に伴う、メインポンプ14や旋回用電動機21の応答や出力の低下に合わせて、ショベルの動作を制限させ、移動式クレーンの運転継続を実現できる。
また、本例では、制御装置30は、電動発電機12に関する異常が発生した場合に、ショベルの動作を制限しながらショベルの運転を継続させると共に、当該異常からの復帰を試行し、当該異常からの復帰に成功した場合に、動作制限を解除する。これにより、制御装置30は、安全性等を確保しつつ、ショベルを制限運転から通常運転に復帰させることができる。
[作業機械の第2例(移動式クレーン)]
次いで、図4(図4A、図4B)、図5を参照して、本実施形態に係る作業機械の第2例として、移動式クレーンについて説明する。
<移動式クレーンの概要>
まず、図4A、図4Bを参照して、移動式クレーンの概要について説明する。
図4A、図4Bは、本実施形態に係る移動式クレーンの一例の正面図及び側面図をそれぞれ示す。
図4A、図4Bに示すように、本実施形態に係る移動式クレーンは、複数の柱141A及び複数の柱141Aに支えられる桁141B等で構成される門型フレーム140と、門型フレーム140(柱141A)の下端に取り付けられる車輪142を含む。移動式クレーンは、車輪142を用いて、レール143に沿って移動することができる。
また、本実施形態に係る移動式クレーンは、桁141に搭載されるトロリー145を含み、トロリー145には、巻き上げ機146が搭載される。
巻き上げ機146は、後述する巻き上げモータ153の動力で、ワイヤ147Aとワイヤ147Aの先端に取付られるフック147Bを含む吊り作業部147を巻き上げたり、巻き下げたりする。
<移動式クレーンの構成>
次に、図4A、図4Bに加えて、図5を参照して、移動式クレーンの構成について説明する。
本実施形態に係る移動式クレーンの電気駆動系は、交流電源160と、整流器163と、電力変換装置165と、蓄電装置167及び電力変換装置168等で構成される蓄電系190と、DCバス170を含む。また、本実施形態に係る移動式クレーンの電気駆動系は、走行用モータ151と、横行用モータ152と、巻き上げモータ153と、インバータ154〜156と、電力変換装置157〜159を含む。移動式クレーンの電気駆動系に係る構成要素は、それぞれ、門型フレーム140に搭載される。
交流電源160は、整流器163及び電力変換装置165を介してDCバス170に接続され、蓄電装置167は、電力変換装置168を介してDCバス170に接続される。また、走行用モータ151、横行用モータ152、及び巻き上げモータ153は、インバータ154及び電力変換装置157、インバータ155及び電力変換装置158、並びに、インバータ156及び電力変換装置159を介して、DCバス170に接続される。
交流電源160は、エンジン161と、エンジン161により駆動される発電機162(動力源の一例)を含む。
整流器163は、交流電源160から出力される発電電力(交流)を整流し、直流電力を電力変換装置165に出力する。
電力変換装置165は、コントローラ180の制御下で、整流器163経由で供給される交流電源160の発電電力(直流)を所定の目標電圧に変換してDCバス170に出力する。
蓄電装置167(動力源の一例)は、電力変換装置168を経由してDCバス70と接続され、DCバス170に直流電力を供給したり、DCバス170から供給される直流電力(巻き上げモータ153の回生電力或いは交流電源160の発電電力)を充電したりする。蓄電装置167は、例えば、リチウムイオン電池モジュールである。
電力変換装置168は、コントローラ180の制御下で、蓄電装置167の直流電力を昇圧してDCバス170に放電させたり、DCバス170の直流電力を降圧して蓄電装置167に充電させたりする。
DCバス170は、正側母線170P及び負側母線170Nを含み、正側母線170P及び負側母線170Nの間には、平滑コンデンサ172が設けられる。
走行用モータ151(アクチュエータ及び電動アクチュエータの一例)は、車輪142を駆動し、移動式クレーンを前後方向に走行させる。
横行用モータ152(アクチュエータ及び電動アクチュエータの一例)は、トロリー145に搭載され、トロリー145、つまり、巻き上げ機146及び吊り作業部147を桁141Bに沿って横行方向(つまり、左右方向)に移動させる。
巻き上げモータ153(アクチュエータ及び電動アクチュエータの一例)は、吊り作業部147(ワイヤ147A)の巻き上げ及び巻き下げを行う。
インバータ154〜156は、それぞれ、コントローラ180の制御下で、走行用モータ151、横行用モータ152、及び巻き上げモータ153を駆動する。具体的には、インバータ154〜156は、それぞれ、電力変換装置157〜159経由で供給される直流電力を交流電力に変換し、走行用モータ151、横行用モータ152、及び巻き上げモータ153に出力する。また、インバータ156は、巻き上げモータ153の巻き下げ動作時において、巻き上げモータ153で発生する回生電力(交流)を直流電力に変換し、電力変換装置159経由で、DCバス170に出力する。
電力変換装置157〜159は、コントローラ180の制御下で、DCバス170の電圧を昇圧し、昇圧された直流電力をインバータ154〜156にそれぞれ出力する。また、電力変換装置159は、巻き上げモータ153の巻き下げ動作時において、コントローラ180の制御下で、巻き上げモータ153からインバータ156経由で供給される回生電力(直流)を降圧してDCバス170に出力する。
本実施形態に係る移動式クレーンの制御系は、コントローラ180を含む。
コントローラ180(制御装置の一例)は、上述の如く、インバータ154〜156、電力変換装置157〜159、電力変換装置165、及び電力変換装置168を制御することで、走行用モータ151、横行用モータ152、巻き上げモータ153の動作を制御したり、蓄電装置167の充放電を制御したりする。
また、コントローラ180は、電気駆動系に関する自己診断機能を有し、電気駆動系の各種異常を検出する。
具体的には、コントローラ180は、交流電源160に関する異常、つまり、発電機162に関する異常を検出してよい。例えば、コントローラ180は、発電機162の温度、電流、電圧をモニタリングすることにより、温度異常、電流異常(例えば、過電流)、電圧異常(例えば、過電圧)等を検出してよい。また、コントローラ180は、発電機162を駆動するエンジン161の異常(例えば、燃料噴射装置等の各種アクチュエータの異常、クランク角センサ等の各種センサの異常、排気系の異常等)や、整流器163や電力変換装置165の異常(例えば、温度異常、電流異常、電圧異常等や、半導体スイッチ、抵抗、コンデンサ、ダイオード等の構成要素の異常等)を検出してもよい。
また、コントローラ180は、蓄電系190の異常、つまり、蓄電装置167に関する異常を検出してよい。例えば、コントローラ180は、蓄電装置167の温度、電流、電圧をモニタリングすることにより、内部抵抗異常、劣化異常、温度異常、電流異常、電圧異常等を検出してよい。また、コントローラ180は、電力変換装置168の異常(例えば、温度異常、電流異常、電圧異常等や、半導体スイッチ、抵抗、コンデンサ、ダイオード等の構成要素の異常等)を検出してもよい。
<異常発生時における移動式クレーンの動作>
次に、異常発生時における移動式クレーンの動作について説明する。
コントローラ180は、上述のショベルの場合と同様、複数の動力源としての発電機162及び蓄電装置167の何れか一方の異常を検出すると、自機(移動式クレーン)の動作を制限しながら他方の電力で自機の運転を継続させてよい。これにより、移動式クレーンは、異常に対応する動力源とは異なる他方の電力で運転を継続し、異常発生時における作業効率の低下を抑制することができる。
また、コントローラ180は、上述のショベルの場合と同様、発電機162及び蓄電装置167の何れか一方に関する異常が発生した場合に、移動式クレーンの動作を制限すること、及び、移動式クレーンに関する操作入力(つまり、走行用モータ151、横行用モータ152、及び巻き上げモータ153に関する操作入力)を抑制するように促す通知を行うことの何れか一方を行い、移動式クレーンの運転を継続する。これにより、コントローラ180は、発電機162及び蓄電装置167の何れか一方に関する異常に伴う、走行用モータ151、横行用モータ152、及び巻き上げモータ153の応答や出力の低下に合わせて移動式クレーンの動作を制限させ、移動式クレーンの運転継続を実現できる。
また、コントローラ180は、発電機162及び蓄電装置167の何れか一方に関する異常が発生した場合に、移動式クレーンの動作を制限しながら移動式クレーンの運転を継続させると共に、当該異常からの復帰を試行し、当該異常からの復帰に成功した場合に、動作制限を解除してよい。これにより、コントローラ180は、安全性等を確保しつつ、移動式クレーンを制限運転から通常運転に復帰させることができる。
[本実施形態の作用]
次いで、本実施形態に係る作業機械の作用について説明する。
本実施形態に係る作業機械は、所定の異常が発生した場合に、オペレータに対し自機の操作を抑制するように促す通知を行うこと、及び、操作入力に対する自機の動作を制限する状態に自動で移行することの少なくとも一方を行い、自機の運転を継続する。
これにより、作業機械は、所定の異常が発生した場合であっても、動作を制限したり、オペレータに操作の抑制を促したりすることで、安全性等を確保しつつ、作業機械の動作を継続させることができる。よって、異常の発生に応じて、作業機械を停止させてしまうような場合に比して、作業機械の作業効率の低下を抑制することができる。
尚、作業機械は、自機の操作を抑制するように促したり、操作入力に対する自機の動作を制限する状態に自動で移行するだけでなく、HMI50等を通じて、作業を中断し(つまり、操作装置26の操作を中断し)、相対的に安全な場所や他の作業機械の邪魔にならない場所への自機の退避を促す通知を行ってもよい。これにより、作業機械や作業機械が作業を行う作業現場の安全性を更に向上させることができる。
また、本実施形態に係る作業機械は、所定の異常が発生した場合に、その動作を制限しながら運転を継続し、その後、動作制限を解除する。
これにより、作業機械は、所定の異常が発生した場合であっても、その動作を制限し、安全性等を確保しつつ、運転を継続し、最終的に、動作制限を解除し、通常運転に復帰することができる。よって、異常の発生に応じて、作業機械を停止させてしまうような場合に比して、作業機械の作業効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る作業機械は、所定の異常が発生した場合に、前記所定の異常からの復帰を試行し、前記所定の異常からの復帰に成功した場合に、動作制限を解除してよい。
これにより、本実施形態に係る作業機械は、安全性等を確保しつつ、制限運転から通常運転に復帰することができる。
尚、作業機械は、所定の異常が発生した場合に、安全性等が確保される限り、通常運転を継続しつつ、所定の異常からの復帰を試行してもよい。具体的には、作業機械は、異常が発生した構成要素以外の構成要素(例えば、他の制御対象ユニット40)について、動作制限をせず、通常運転を継続させもよい。また、作業機械は、所定の異常が発生した場合に、通常運転を継続すると共に、その後、自機の状況に応じて、その動作を段階的に制限してもよい。具体的には、作業機械は、異常が発生した構成要素以外の他の構成要素について、通常運転を継続させると共に、当該他の構成要素或いは当該他の構成要素の関連構成要素の状況に応じて、段階的に動作を制限させてもよい。例えば、作業機械(ショベル)は、電動発電機12に関する異常が発生した場合、キャパシタ19の残容量が所定閾値以上であるときに、旋回用電動機21の通常運転を継続し、キャパシタ19の残容量が所定閾値以下であるときに、旋回用電動機21の動作制限を行ってよい。また、旋回用電動機21は、インバータ18Bの制御下で、キャパシタ19の残容量の低下に応じて、その動作制限度合いを高くする態様であってよい。これにより、作業機械は、電動発電機12に関する異常からの復帰するまでの期間で、キャパシタ19の残容量がゼロになり、上部旋回体3の旋回動作を継続させることができなくなるような事態を抑制することができる。
また、本実施形態に係る作業機械は、自機を動作させるアクチュエータの複数の動力源を備える。そして、本実施形態に係る作業機械は、所定の異常としての複数の動力源のうちの一部の動力源の異常が発生した場合に、複数の動力源のうちの残りの動力源による運転を継続してよい。
これにより、作業機械は、複数の動力源の一部に異常が発生した場合であっても、その動作を制限させつつ、残りの動力源からの動力で運転を継続することができる。
また、本実施形態に係る作業機械は、油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプと、複数の動力源として、該油圧ポンプを駆動するエンジン及び電動機を備える。そして、本実施形態に係る作業機械は、所定の異常として、エンジン及び電動機の何れか一方に関する異常が発生した場合に、何れか他方の動力による自機の運転を継続してよい。
これにより、作業機械は、エンジン及び電動機の双方の動力で油圧ポンプを介して油圧アクチュエータを駆動可能な場合に、エンジン及び電動機の何れか一方に関する異常が発生した場合であっても、他方の動力により油圧ポンプを駆動させ、自機の運転を継続することができる。
また、本実施形態に係る作業機械は、複数の動力源として、電動アクチュエータに電力を供給する発電機及び蓄電装置が含まれる。そして、本実施形態の作業機械は、所定の異常として、発電機及び蓄電装置の何れか一方に関する異常が発生した場合に、何れか他方の動力による自機の運転を継続する。
これにより、作業機械は、発電機及び蓄電装置の双方の動力(電力)で電動アクチュエータを駆動可能な場合に、発電機及び蓄電装置の何れか一方に関する異常が発生した場合であっても、他方の動力(電力)で電動アクチュエータを駆動させ、自機の運転を継続することができる。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述の実施形態において、作業機械は、キャビン10内のオペレータにより操作される代わりに、作業機械の外部からリモート操作されてもよい。例えば、作業機械は、所定の外部装置と通信可能な通信デバイスを有し、通信デバイスを通じて、外部装置からリモート操作に関する操作信号が受信され、操作信号に応じて、コントロールバルブ17やインバータ18A,18Bが制御される態様であってよい。この場合、上述した実施形態のHMI50の通知内容(各種警告)は、外部装置に設置されるHMI(例えば、ディスプレイ等)を通じて、リモート操作を行うオペレータが確認可能な態様であってよい。
また、上述の実施形態及び変形例において、作業機械は、キャビン10内のオペレータによる操作や、外部装置からの操作情報に基づくリモート操作に依らず、自律的に所定の作業を行ってもよい。この場合、作業機械は、例えば、所定の異常の発生した場合、自律的に、動作を制限しながら所定の作業を継続する。