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JP2020111788A - バルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造 - Google Patents

バルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造 Download PDF

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JP2020111788A JP2019003366A JP2019003366A JP2020111788A JP 2020111788 A JP2020111788 A JP 2020111788A JP 2019003366 A JP2019003366 A JP 2019003366A JP 2019003366 A JP2019003366 A JP 2019003366A JP 2020111788 A JP2020111788 A JP 2020111788A
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公彦 安藤
雄貴 鴨
Yuki Kamo
雄貴 鴨
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Takayuki Yamada
貴之 山田
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Natsuki Sugiyama
夏樹 杉山
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Hajime Kato
元 加藤
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Tadashi Oshima
正 大島
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Abstract

【課題】バルブシートとエンジンバルブとの接触による摩耗が抑制されるバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造を提供する。【解決手段】本発明は、バルブシート及びバルブシートと接触しているエンジンバルブの組み合わせ構造であって、エンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分が、特定の元素を含む銅基合金であり、バルブシートと接触しているエンジンバルブの盛金部が、特定の元素を含むコバルト−クロム−モリブデン基合金であり、銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径が、コバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きい組み合わせ構造に関する。【選択図】図4

Description

本発明は、バルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造、具体的には、銅基合金で形成又は肉盛されているバルブシートとコバルト−クロム−モリブデン基合金で肉盛されているエンジンバルブとの組み合わせ構造に関する。
従来の銅基合金は凝着の問題を回避するために、金属表面に酸化膜を形成させる等の何らかの表面処理がなされてきた。例えば、200℃を超える高温の摩擦摩耗条件下において、特に融点の低い材料においては金属同士の接触により高い確率で凝着摩耗が発生する。しかし、その表面処理は、通常熱処理工程により実施されるのが一般的であり、かつ時間も製造コストもかかるという問題があった。
特に銅基合金をガソリン等のエタノール含有燃料の排気バルブシートの肉盛材料として用いる場合には、水素の還元作用が強く働く還元雰囲気下に置かれるため、耐摩耗性に寄与するモリブデン、タングステン及びバナジウムのいずれか一種と炭化ニオブ等から形成される硬質粒子の酸化膜形成が促進されず、金属接触による凝着摩耗が生じやすい。このように耐摩耗性が低下すると、バルブシートが機能する限界を超えるような摩耗が発生する場合もある。
また、耐食性を向上させる目的でクロムを添加した場合、銅基合金の材料表面にクロム不動態酸化膜が形成されることにより耐食性は向上するものの、前記と同様に硬質粒子の酸化膜が形成されにくくなり、耐摩耗性が低下するという問題があった。
そこで、例えば、特許文献1には、モリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群から選択される少なくとも1種と炭化ニオブを含み、クロムの含有量が質量%で1.0%未満であり、マトリックスとマトリックスに分散した硬質粒子とを備えており、硬質粒子が、炭化ニオブと、その周辺にNb−C−Mo、Nb−C−W及びNb−C−Vからなる群から選択される少なくとも1種とを含む、耐摩耗性銅基合金が記載されている。
特開2017−36470号公報
一方で、バルブシートとエンジンバルブとの接触において、バルブシートの接触部分の銅基合金に含まれる硬質粒子がエンジンバルブの摺動面の酸化膜を摩耗させることもまた、耐摩耗性の低下の一因であった。
したがって、本発明は、バルブシートとエンジンバルブとの接触による摩耗が抑制されるバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造を提供することを課題とする。
バルブシートの接触部分の銅基合金に含まれる硬質粒子によるエンジンバルブ摺動面の酸化膜の摩耗は、バルブシート及びエンジンバルブの組織の組み合わせに影響を受ける。エンジンバルブの肉盛合金が硬質相及び軟質相の2相を含む場合、バルブシートの接触部分の銅基合金に含まれる硬質粒子の粒子サイズが大きいと、当該バルブシートの硬質粒子は、エンジンバルブの硬質相及び軟質相と同時に接触しやすいのに対し、バルブシートの接触部分の銅基合金に含まれる硬質粒子の粒子サイズが小さいと、当該バルブシートの硬質粒子は、エンジンバルブの軟質相のみと接触しやすくなり、軟質相に生成した酸化膜を摩耗して、その結果、金属同士の接触、さらに凝着摩耗が生じる。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、特定の元素から構成されている銅基合金で形成又は肉盛されているバルブシート及びバルブシートと接触している特定の元素から構成されているコバルト−クロム−モリブデン基合金で肉盛されているエンジンバルブの組み合わせ構造において、銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径を、コバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きくすることにより、当該組み合わせ構造の摩耗量を低減できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)バルブシート及びバルブシートと接触しているエンジンバルブの組み合わせ構造であって、
エンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分が、Ni:5質量%〜18質量%、Si:0.5質量%〜3質量%、Fe:3質量%〜10質量%、Mo:6質量%〜20質量%、Nb:0.2質量%以下、並びに残部:Cu及び不可避不純物を含む銅基合金であり、
バルブシートと接触しているエンジンバルブの盛金部が、Cr:22質量%〜27質量%、Mo:11質量%〜30質量%、W:2.0質量%〜6.0質量%、C:0.40質量%〜1.3質量%、Si:3.0質量%以下、Ni:15質量%以下、Fe:30質量%以下、Mn:1.0質量%以下、並びに残部:Co及び不可避不純物を含むコバルト−クロム−モリブデン基合金であり、
銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径が、コバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きい
組み合わせ構造。
本発明によって、バルブシートとエンジンバルブとの接触による摩耗が低減されるバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造が提供される。
バルブシートの組織を示す走査型顕微鏡写真である。 バルブシートの銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径と√硬質粒子最大径の関係を示すグラフである。 単体摩耗試験機の模式的概念図である。 バルブシートの銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径と摩耗量の関係を示すグラフである。 エンジンバルブの盛金部の組織を示す走査型顕微鏡写真である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明のバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
本発明は、バルブシート及びバルブシートと接触しているエンジンバルブの組み合わせ構造であって、エンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分が、特定の元素を含む銅基合金であり、バルブシートと接触しているエンジンバルブの盛金部が、特定の元素を含むコバルト−クロム−モリブデン基合金であり、銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径が、コバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きい組み合わせ構造に関する。
(バルブシート)
本発明におけるエンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分は、銅基合金からなり、当該銅基合金では、Niが、5質量%〜18質量%、好ましくは5質量%〜16質量%であり、Siが、0.5質量%〜3質量%、好ましくは0.5質量%〜2.2質量%であり、Feが、3質量%〜10質量%、好ましくは4質量%〜8質量%であり、Moが、6質量%〜20質量%、好ましくは9質量%〜15質量%であり、Nbが、0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。当該銅基合金の残部は、Cu及び不可避不純物を含む。
さらに、当該銅基合金では、Cが、通常0.05質量%以下、好ましくは0.02質量%以下である。
本発明におけるエンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分の銅基合金(単に「銅基合金」ともいう)の各成分量を前記範囲にすることによって、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径を一定範囲に制御することが可能になる。
これは、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径が、銅基合金の各成分量から、以下の式により推定できることに基づく。
√硬質粒子最大径推定値(√μm)=12.044+0.953×Mo量(質量%)−6.475×Nb量(質量%)+1.458×C量(質量%)−0.117×Ni量(質量%)−0.882×Si量(質量%)−0.084×Fe量(質量%)
銅基合金の成分量により硬質粒子の√硬質粒子最大径を推定できる理由として、以下で説明する実施例の実験結果に加え、以下の理論が考えられるが、本発明の範囲は、以下の理論に拘束されない。
銅基合金は、Cu基のマトリックス中に2液分離反応により主成分FeMoSiの硬質粒子が分散している組織を有する。
銅基合金は、所定の温度になると、Cuを含む合金液相(「Cu系合金液相」ともいう)と、Mo、W及びNbの一種以上の元素(単に「第2元素」ともいう)を含む合金液相(「第2液相」ともいう)とが分離した状態(「2液相分離状態」という)となる。この2液相分離状態時に強撹拌されて急冷凝固されると、Cu系合金液相が凝固したマトリックス(「Cu基マトリックス」という)中に、第2液相が凝固した硬質粒子がほぼ均一的に分散した複合組織が得られる。したがって、硬質粒子は、主に第2元素の合金(化合物)からなり、その硬質相は、Ni、Si及びFeを多く含むラーベス(Laves)相、又はμ相などと考えられる。
このように形成される銅基合金の各成分量と、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径との関係を多変量解析すると、前記式の関係を得ることができる。
なお、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径は、以下のように測定することができる。
(1)バルブシートを樹脂に埋め込み、研磨する。
(2)(1)で研磨した試料について、走査型顕微鏡の反射電子像(倍率:200倍)を撮影し、撮影された画像を、解析ソフト、例えばWinROOFを用いて2値化して、主にFe、Mo及びSiからなる硬質粒子を選別する。
(3)(2)で選別された各硬質粒子について、円相当径を求める。
(4)(3)で得られた各硬質粒子の円相当径の中から最大値を求める。
(5)(1)〜(4)までのステップを2回〜4回繰り返す。
(6)(5)で得られたそれぞれの画像における硬質粒子の円相当径の最大値を平均化し、硬質粒子最大径とする。
(7)(6)で得られた硬質粒子最大径の平方根を計算することで、√硬質粒子最大径を求める。
銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径測定値は、前記式により推定される√硬質粒子最大径推定値とほぼ同等の値になる。
したがって、繰り返しになるが、本発明における銅基合金の各成分量を前記範囲にすることによって、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径を一定範囲に制御することが可能になる。
言い換えれば、本発明における銅基合金の各成分量は、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径推定値が、通常6√μm以上、例えば10√μm〜20√μm、好ましくは15√μm〜20√μmになるように決定することもできる。
さらに、銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径は、当該硬質粒子の平均粒径と比例関係にある。
銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径は、通常8μm以上、例えば8μm〜16μm、好ましくは12μm〜16μmである。
なお、銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径は、以下のように測定することができる。
(1)バルブシートを樹脂に埋め込み、研磨する。
(2)(1)で研磨した試料について、走査型顕微鏡の反射電子像(倍率:200倍)を撮影し、撮影された画像を、解析ソフト、例えばWinROOFを用いて2値化して、主にFe、Mo及びSiからなる硬質粒子を選別する。
(3)(2)で選別された各硬質粒子について、円相当径を求める。
(4)(3)で得られた各硬質粒子の円相当径の平均値を求める。
(5)(1)〜(4)までのステップを2回〜4回繰り返す。
(6)(5)で得られたそれぞれの画像における硬質粒子の円相当径の平均値を平均化し、硬質粒子の平均粒径とする。
したがって、本発明における銅基合金の各成分量を前記範囲にすることによって、銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径を一定範囲に制御することでき、結果として、当該硬質粒子の平均粒径を、下記で説明するコバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きくすることができる。
本発明におけるエンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分の銅基合金は、対象物に肉盛される肉盛合金として用いることができる。肉盛方法としては、レーザビーム、電子ビーム、アーク等の高密度エネルギ熱源を用いて溶着して肉盛する方法が挙げられる。肉盛の場合には、本発明における銅基合金を粉末化して肉盛用素材とし、その粉末を被肉盛部に集合させた状態で、前記したレーザビーム、電子ビーム、アーク等の高密度エネルギ熱源を用いて溶着して肉盛することができる。また前記した銅基合金は、粉末化に限らず、ワイヤ化、棒状化した肉盛用素材としてもよい。レーザビームとしては炭酸ガスレーザビーム、YAGレーザビーム等の高エネルギ密度をもつものが例示される。肉盛される対象物の材質としてはアルミニウム、アルミニウム系合金、鉄又は鉄系合金、銅又は銅系合金等が例示される。対象物を構成するアルミニウム合金の基本組成としては鋳造用のアルミニウム合金、例えば、Al−Si系、Al−Cu系、Al−Mg系、Al−Zn系等のいずれかを例示できる。対象物としては内燃機関等の機関が例示される。内燃機関の場合には動弁系材料が例示される。この場合には、排気ポートを構成するバルブシートに適用してもよく、また吸気ポートを構成するバルブシートに適用してもよい。この場合には、本発明における銅基合金でバルブシート自体を構成してもよく、また本発明における銅基合金をバルブシートに肉盛することにしてもよい。本発明における銅基合金は、亜鉛やスズを積極的元素として含まないため、肉盛する場合であっても、ヒューム等の発生を抑えることができる。本発明における銅基合金は、アルミニウムを積極的元素として含まないため、Cu及びAl間で化合物が生成することが抑制され、これにより延性を維持することができる。
(エンジンバルブ)
本発明におけるエンジンバルブでは、バルブ本体に盛金部が形成されており、盛金部の表面は、バルブシートに接触するバルブフェースとなっている。盛金部は、プラズマ肉盛方法等で、下記で詳述する特定の組成を含む肉盛用合金粉末を溶融し、溶融した肉盛用合金粉末(盛金材)が肉盛られた部分である。
本発明において、エンジンバルブのバルブ本体は、金属材料として鋳鉄又は鋼材等を挙げることができ、好ましくは、オーステナイト系耐熱鋼(JIS規格:SUH35、SUH36、SUH660、NCF750、NCF751、NCF800)、マルテンサイト系耐熱鋼(JIS規格:SUH1、SUH4、SUH11)等を挙げることができる。
なお、バルブ本体の全体を100質量%とした場合、バルブ本体のCrの含有量は16%質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。ここで、Crの含有量が16質量%未満であると、盛金部の成形時に、バルブ本体に盛金部のCrが固溶・拡散し、盛金部のCr含有量が低下する。これにより、盛金部のCo基のマトリックスに固溶するCrの量が低下するので、盛金部の表面に、Cr酸化膜の安定的な形成を確保することができないことがある。
本発明におけるバルブシートと接触しているエンジンバルブの盛金部は、コバルト−クロム−モリブデン基合金からなり、当該コバルト−クロム−モリブデン基合金では、Crが、22質量%〜27質量%であり、Moが、11質量%〜30質量%であり、Wが、2.0質量%〜6.0質量%であり、Cが、0.40質量%〜1.3質量%であり、Siが、3.0質量%以下であり、Niが、15質量%以下であり、Feが、30質量%以下であり、Mnが、1.0質量%以下である。当該コバルト−クロム−モリブデン基合金の残部は、Co及び不可避不純物を含む。
以下に、エンジンバルブの盛金部の各元素と元素の数値範囲の根拠について、詳細に説明する。
・Cr(クロム):22質量%〜27質量%
Crは、盛金部のCo基のマトリックスの表面に、Cr酸化膜(不動態酸化膜)を形成することにより、エンジンバルブの耐食性を発揮する元素である。また、このCr酸化膜は、盛金部とバルブシートとの凝着を防止する。ここで、Crが22質量%未満であると、Co基のマトリックスの表面にCr酸化膜の安定的な形成を確保できず、耐食性が発揮されない。よって、本実施形態では、Crの下限値を22質量%に規定している。一方、Crが27質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部の靭性が低下する。よって、本実施形態では、Crの上限値を27質量%に規定している。なお、本発明でいう「盛金性」とは、肉盛時に、バルブ本体に対する濡れ性、及び溶融状態の盛金部の形状安定性のことをいい、盛金性の悪化とは、肉盛時に盛金部の形状(具体的にはビードの形状)を所望の形状に保てないことをいう。
・Mo(モリブデン):11質量%〜30質量%
Moは、盛金部のCo基のマトリックスに固溶することで、Cr酸化膜の形成を促進し、Cr酸化膜が破壊された場合は、Cr酸化膜の再生を促進する元素である。これにより盛金部の耐食性を確保するとともに、相手材であるバルブシートの凝着を抑えることができる。ここで、Moが11質量%未満であると、盛金部の表面に、安定してCr酸化膜を形成することができず、この結果、盛金部の耐食性が低下する。よって、本実施形態では、Moの下限値を11質量%に規定している。一方、Moが30質量%を超えると、盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部の靭性が低下することから、本実施形態では、Moの上限値を30質量%に規定している。
・W(タングステン):2.0質量%〜6.0質量%
Wは、盛金部の耐凝着性の向上に寄与する元素である。ここで、Wが2.0質量%未満であると、盛金部に存在する炭化タングステンの量が十分でなく、Cr酸化皮膜の下地の硬さを十分に確保することができない。そのため、Cr酸化皮膜が破壊されやすい。この結果、盛金部とバルブシートとの金属部分が凝着し、これらの摩耗が促進される。よって、本実施形態では、Wの下限値を、2.0質量%に規定している。一方、Wが6.0質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部の靭性が低下する。よって、本実施形態では、Wの上限値を6.0質量%に規定している。
・C(炭素):0.40質量%〜1.3質量%
Cは、盛金部に炭化物を形成し、盛金部の強度及び耐摩耗性を向上させる元素である。ここで、Cが0.40質量%未満であると、盛金部に硬質な炭化物相が形成されないため、Cr酸化皮膜の下地の硬さを十分に確保することができず、盛金部が摩耗し易い。これに加えて、この下地の硬さが確保できないため、バルブシートとCr酸化皮膜が接触した際に、Cr酸化皮膜が破壊されやすい。これにより、盛金部とバルブシートとの金属部分が凝着し、バルブシートの摩耗が促進される。よって、本実施形態では、Cの下限値を、0.40質量%に規定している。一方、Cが1.3質量%を超えると、炭化物相の形成が過多となり、Co基のマトリックスに固溶するCr及びMoが減少するため、Cr酸化膜が十分に形成されず、盛金部の耐食性が低下する。その結果、盛金部の表面が粗くなり、バルブシートに対する相手攻撃性が増加する。よって、本実施形態では、Cの上限値を1.3質量%に規定している。
・Si(シリコン):3.0質量%以下
Siは、盛金性を改善する元素である。Siが3.0質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部の靭性が低下する。また、盛金部のバルブシートへの攻撃性が増加する。よって、本実施形態では、Siの上限値を3.0質量%に規定している。
・Ni(ニッケル):15質量%以下
Niは、盛金部の靭性及び耐食性の向上に寄与する元素である。ここで、Niが15質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部の耐摩耗性が低下する。よって、本実施形態では、Niの上限値を15質量%に規定している。
・Fe(鉄):30質量%以下
Feは、盛金部の靭性の向上に寄与する元素である。ここで、Feが30質量%を超えると耐食性が低下する。よって、本実施形態では、Feの上限値を30質量%に規定している。
・Mn(マンガン):1.0質量%以下
Mnは、盛金性の改善に寄与する元素であり、必要に応じて添加される元素である。Mnが1.0質量%を超えると、耐摩耗性が低下する。よって、本実施形態では、Mnの上限値を1.0質量%に規定している。
・Co(コバルト):残部
Coは、肉盛用合金粉末のマトリックスであり、上述した組成を含むことを前提に、残部として肉盛用合金粉末に含まれる。なお、残部には不可避不純物が含まれてもよい。
本発明において、コバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)とは、コバルト−クロム−モリブデン基合金の硬質相である共晶炭化物からなる相と軟質相である軟質マトリックス(Co固溶体)からなる相とを交互に含む組織(2次デンドライトアーム)における、硬質相と硬質相の間の最短距離、すなわち、軟質相の短辺の長さを意味する。
本発明では、コバルト−クロム−モリブデン基合金のDAS値は、通常3μm〜6μm、好ましくは4μm〜5μmである。
DAS値は、5個以上連続した2次デンドライトアームを3組程度ランダムに選定し、それぞれのアーム間距離を求めて、その平均値をDAS値とする。肉盛用素材に粉末を用いると、棒状素材を用いた場合と比較して冷却速度が速くなり、DAS値が小さくなる。
(バルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造)
本発明は、上述したバルブシートと、当該バルブシートと接触する部分(すなわちバルブフェース)に、肉盛用合金粉末を肉盛したエンジンバルブと、を組み合わせた組み合わせ構造に関する。
本発明では、上述したエンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分の銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径は、上述したエンジンバルブの肉盛合金(盛金部)のコバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きい。例えば、当該銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径は、当該コバルト−クロム−モリブデン基合金のDAS値よりも、通常5μm以上、好ましくは8μm以上大きい。
上述したエンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分の銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径が上述したエンジンバルブの肉盛合金(盛金部)のコバルト−クロム−モリブデン基合金のDAS値よりも大きくなることで、当該バルブシートの硬質粒子が当該エンジンバルブの硬質相である共晶炭化物と軟質相である軟質マトリックスと同時に接触するため、当該バルブシートの硬質粒子が当該エンジンバルブの軟質マトリックスのみに接触することが抑制される。したがって、当該バルブシートの硬質粒子による当該エンジンバルブの軟質相に生成した酸化膜の摩耗が抑えられ、凝着摩耗が抑制される。
本発明のようなバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造を備えたエンジンでは、エンジン用の燃料として、ガソリン、エタノール、エタノール混合ガソリン、CNG(圧縮天然ガス)、又はLPG(液化石油ガス)のいずれか一種を適用してもよい。
エタノール又はエタノール混合ガソリン等を使用した場合には、エタノールから生成するギ酸によるエンジンバルブ摺動面の酸化膜の還元等、ガソリンに比して厳しい腐食環境になるが、本発明におけるバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造を備えれば、このような環境下であっても、バルブシートとエンジンバルブとの間の凝着摩耗を抑制することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
1.バルブシートの銅基合金の各成分量とバルブシートの銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径との関係式の算出
表1及び2に示す組成を有する合金粉末をレーザ盛金することにより調製した各バルブシートにおける90度間隔の4断面について、以下に示す測定方法に基づいて、銅基合金の盛金組織から、主にFe、Mo及びSiからなる硬質粒子の√硬質粒子最大径を調査した。図1に代表例として、実施例1のバルブシートの銅基合金の盛金組織を示す。
(1)バルブシートを樹脂に埋め込み、研磨した。
(2)(1)で研磨した試料の1断面について、走査型顕微鏡の反射電子像(倍率:200倍)を撮影し、撮影された画像を、WinROOF解析ソフトを用いて2値化して、主にFe、Mo及びSiからなる硬質粒子を選別した。
(3)(2)で選別された各硬質粒子について、円相当径を求めた。
(4)(3)で得られた各硬質粒子の円相当径の中から最大値を求めた。
(5)(1)〜(4)までのステップを残りの3断面について繰り返した。
(6)(5)で得られたそれぞれの画像における硬質粒子の円相当径の最大値を平均化し、硬質粒子最大径とした。
(7)(6)で得られた硬質粒子最大径の平方根を計算することで、√硬質粒子最大径を求めた。
各バルブシートの銅基合金の各成分量と得られた各バルブシートの銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径との関係を多変量解析し、下記式の関係を得た。
√硬質粒子最大径(√μm)=12.044+0.953×Mo量(質量%)−6.475×Nb量(質量%)+1.458×C量(質量%)−0.117×Ni量(質量%)−0.882×Si量(質量%)−0.084×Fe量(質量%)
2.バルブシートの銅基合金に含まれる硬質粒子の√硬質粒子最大径と平均粒径の関係
表1におけるNo.7〜No.23のバルブシートにおける90度間隔の4断面について、以下に示す測定方法に基づいて、銅基合金の盛金組織から、主にFe、Mo及びSiからなる硬質粒子の平均粒径を調査した。
(1)バルブシートを樹脂に埋め込み、研磨した。
(2)(1)で研磨した試料の1断面について、走査型顕微鏡の反射電子像(倍率:200倍)を撮影し、撮影された画像を、WinROOF解析ソフトを用いて2値化して、主にFe、Mo及びSiからなる硬質粒子を選別した。
(3)(2)で選別された各硬質粒子について、円相当径を求めた。
(4)(3)で得られた各硬質粒子の円相当径の平均値を求めた。
(5)(1)〜(4)までのステップを残りの3断面について繰り返した。
(6)(5)で得られたそれぞれの画像における硬質粒子の円相当径の平均値を平均化し、硬質粒子の平均粒径を求めた。
図2に、バルブシートの銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径と√硬質粒子最大径の関係を示す。図2より、硬質粒子の平均粒径と√硬質粒子最大径は比例関係であることがわかる。
3.単体摩耗試験
図3に示す単体摩耗試験に係る摩耗試験機を使用して、表2に示す組成を有する合金粉末をレーザ盛金することにより調製したバルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造における摩耗量を調査した。
なお、エンジンバルブとしては、Co、22質量%のCr、11.9質量%のMo、7.3質量%のNi、3.6質量%のW、0.77質量%のC、0.8質量%のSi、0.86質量%のFeの合金粉末をプラズマ盛金したバルブを使用した。
試験では、プロパンガスバーナーを加熱源に用い、盛金部と、バルブシートとの摺動部をプロパンガス燃焼雰囲気とした。バルブシートの温度を200℃に制御し、スプリングにより盛金部とバルブシートとの接触時に25kgfの荷重を付与し、42回/分の割合で盛金部とバルブシートを接触させて2時間の摩耗試験を行った。この摩耗試験において、基準位置からのバルブの沈み量を測定した。このバルブの沈み量は、エンジンバルブがバルブシートと接触することによって双方が摩耗した摩耗量(摩耗深さ)に相当するものである。
結果を表2及び図4に示す。図4より、実施例1及び2における硬質粒子の√硬質粒子最大径は12√μm以上であり、実施例1及び2の摩耗量は、比較例1〜6の摩耗量と比較して小さいことがわかる。
また、表2より、実施例1及び2における硬質粒子の平均粒径は、それぞれ14μm以上であることがわかるが、硬質粒子の平均粒径と√硬質粒子最大径の関係を示す図2からみても、硬質粒子の√硬質粒子最大径が12√μmであれば、硬質粒子の平均粒径は最小でも6μmであると推定することができる。
一方で、図5に示すエンジンバルブの盛金部の組織を示す顕微鏡写真より、エンジンバルブの軟質マトリックス間隔(DAS値)は約4μmと算出することができる。
以上の結果より、実施例1及び2では、バルブシート及びエンジンバルブの組み合わせ構造において、バルブシートに含まれる硬質粒子の平均粒径がエンジンバルブのDAS値より大きくなったため、当該バルブシートの硬質粒子が当該エンジンバルブの硬質相である共晶炭化物と軟質マトリックスと同時に接触しやすくなり、これにより、当該バルブシートの硬質粒子が当該エンジンバルブの軟質マトリックスのみと接触することが抑制され、当該バルブシートの硬質粒子により当該エンジンバルブの軟質マトリックスの酸化膜が削られにくくなり、凝着摩耗が減少したと考えられる。

Claims (1)

  1. バルブシート及びバルブシートと接触しているエンジンバルブの組み合わせ構造であって、
    エンジンバルブと接触しているバルブシートの接触部分が、Ni:5質量%〜18質量%、Si:0.5質量%〜3質量%、Fe:3質量%〜10質量%、Mo:6質量%〜20質量%、Nb:0.2質量%以下、並びに残部:Cu及び不可避不純物を含む銅基合金であり、
    バルブシートと接触しているエンジンバルブの盛金部が、Cr:22質量%〜27質量%、Mo:11質量%〜30質量%、W:2.0質量%〜6.0質量%、C:0.40質量%〜1.3質量%、Si:3.0質量%以下、Ni:15質量%以下、Fe:30質量%以下、Mn:1.0質量%以下、並びに残部:Co及び不可避不純物を含むコバルト−クロム−モリブデン基合金であり、
    銅基合金に含まれる硬質粒子の平均粒径が、コバルト−クロム−モリブデン基合金の軟質マトリックス間隔(DAS値)よりも大きい
    組み合わせ構造。
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