JP2020104462A - 透明積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面の粗さが低い透視用若しくは採光用の透明積層体の表面の改質方法を提供する。【解決手段】透明積層体10は、樹脂基板1とシリコーン系樹脂層3とポリシラザン層4とを有する。シリコーン系樹脂層3は、樹脂基板1上に形成され、その表面にポリシラザンが塗布される。ポリシラザンを硬化させてシリカに転化した硬化ポリシラザン膜8とし、硬化ポリシラザン膜8の上から波長200nm以下の真空紫外線を照射する。硬化ポリシラザン膜8を通した真空紫外線は、シリコーン系樹脂層3の一部を二酸化ケイ素の改質膜(改質シロキサン膜6)に改質する。【選択図】 図1
Description
本発明は、自動車や鉄道等の車両、飛行機、船舶等の輸送機器の風防として使用される透視用若しくは採光用の透明積層体の製造方法に関する。
自動車や鉄道等の車両、飛行機、船舶等の輸送機器の風防ガラスは、屋外環境下に晒され、或いはワイパーにより継続的に摩擦される環境下において使用される。ポリカーボネート等の樹脂基板は、ガラス製の基板に比べて軽量であり、透視用及び採光用等の窓材料としてガラス製の基板に代わるものと期待されている。樹脂基板は、成形性に優れる一方で、表面は非常に傷がつきやすい。そこで樹脂基板を風防ガラスのような過酷な環境でも使用できるように、樹脂基板上に二酸化ケイ素を主成分とする改質膜を形成し、耐擦傷性の向上を図ることが行われている。この改質層は、樹脂基板の表面にアクリル樹脂あるいはハードコートを塗布形成し硬質薄膜を形成することによって行われる。
例えば、特許文献1によれば、シロキサン樹脂を、ディップコーティング法により塗布し、その表面に真空紫外線を照射することにより、二酸化ケイ素を主成分とする改質膜を形成する。同文献によれば、改質膜の膜厚を0.6μm以上に膜厚を増すとクラックが生ずるという問題が開示されている。
特許文献2によれば、車両用の窓材として、プラスチック基材上にシロキサン系重合体成分と有機系重合体成分を含むハードコート層(I)が積層され、ハードコート層(I)上にポリシラザン(Polysilazane)から転化したシリカ膜(II)を更に形成した積層体が開示されている。ポリシラザンは、−(SiH2NH)−を基本ユニットとする有機溶剤に可溶な無機ポリマーである。
同特許文献による積層体では、ハードコート層(I)内において、シリカ膜(II)と接する側にシロキサン系重合体成分が相対的に多く存在し、基材側に有機系重合体成分が相対的に多く存在するように形成されている。このようなハードコート層(I)の形成は、ハードコート層を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化させることにより行う。
同文献によれば 活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、真空紫外線、紫外線及び電子線が挙げられる。活性エネルギー線の具体例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー及び太陽光を光源とする光が挙げられる。これらの中で、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯及びメタルハライドランプを光源とした光が好ましいとされている。
その後、湿式成膜法でのシリカ膜を形成する。シリカ膜の形成方法としては、ポリシラザン含有被覆組成物を塗布することにより得られる方法が示されている。ポリシラザンは水または水蒸気存在下で分解、反応してシリカが形成される。硬化方法としては、溶剤を揮発させた後、50〜150℃の低温で加熱する方法、水蒸気存在下で加熱する方法、水に浸漬する方法、数〜20日程度常温環境下で放置する方法などがあげられ、単独でも複数の方法の組み合わせでも良い。また紫外線などの活性エネルギー線照射を組み合わせることが開示されている。シリカ膜(II)と接する側にシロキサン系重合体成分が相対的に多く存在させることにより、シリカ膜(II)との接着性を向上させている。
特許文献3によれば、ポリシラザンを含有する組成物の塗布液を隣接層上に塗布した後、真空紫外線照射による改質処理を施すことで、無機物を含むバリア層を形成する。ポリシラザン塗布膜を0.1%以下の低酸素濃度雰囲気下、かつ低湿度下で真空紫外線を照射すると、ポリシラザン塗布膜は緻密な膜に改質して、優れたガスバリア性が得られることが示されている。
また、同文献によれば、隣接層を設けることにより、真空紫外線照射前のポリシラザン塗布膜中にシラノール基等が生成せず、その後の真空紫外線照射により、ポリシラザンの分子結合を切断し、塗膜表面のセラミックス化(シリカ改質)がなされる。隣接層としては、 例えば、メチルヒドロポリシロキサン、メチルシルセスキオキサン、ヒドロシルセスキオキサン(小西化学社製)、テトラシラノフェニルPOSSなど籠状の有機シルセスキオキサン、ポリジエトキシシロキサン、ジエトキシシロキサン−エチルチタネートコポリマー、ポリジブチルチタネート、有機ポリシラザンなどを挙げている。
そして、同文献によれば、ポリシラザン膜の膜厚150nmのとき、5〜100nm(SiO2熱酸化膜換算値)程度の領域で、Si、N、O原子の比率がほぼ一定となる連続領域が深さ方向に2nm以上存在するフィルムが作成されているとしている。
本出願人は、図2に関して後述するように、シロキサン結合を有するポリマーによるシリコーン系樹脂層(ハードコート層)を形成して真空紫外線を照射すると、ポリマーの有機物がシリコーン系樹脂層の表面から揮発して、二酸化ケイ素を主成分とする改質膜の表面の粗さが大きくなると言う現象を観察した。詳細は図2、図3を用いて後述するが、ポリカーボネート基板上にプライマー層を塗布し、その上にシロキサン樹脂を塗布して硬化させシリコーン系樹脂層を設けたサンプル(図2における比較例)は、真空紫外線の照射時間(照射エネルギーの積算値)が大きくなるにつれ、表面が粗くなった。一方、このサンプルに対するメタルハライドランプによる超促進耐候試験(SUV)の結果は、図12に示すとおり、照射エネルギーが増加して表面の粗さが大きくなるに従って、クラック・剥離までの時間が短くなるという結果になった。表面の粗さがきっかけになり、クラックが生じやすくなったと考えられる。二酸化ケイ素を主成分とする改質膜は、耐擦傷性を向上させるものであるが、SUV耐性におけるさらなる性能の向上には、この表面の粗さを少なくすることが対策になると考えた。
ポリシラザンから転化したシリカ膜は耐擦傷性発現が期待できるが、一方でプラスチック基材や有機ポリマー系プライマーには密着性が乏しく、さらにガラス、熱硬化のシロキサン系無機被膜等には密着性を示さない傾向にある。特許文献2では、シリコーン系樹脂層に対して活性エネルギー線硬化性のシロキサン系無機被膜にしておくことで、ポリシラザンから転化したシリカ膜が非常に良い密着性を示すこと示唆している。
同文献において、シリコーン系樹脂層の硬化の方法として、数多く例示された方法の内、真空紫外線が例示され、エキシマレーザーの使用が示唆されている。エキシマレーザーは、波長200nm程度の紫外線であるが、真空紫外線をシリコーン系樹脂層に照射すると表面が粗くなることは前述のとおりである。
このような粗い表面にポリシラザンを塗布すると、ポリシラザンがその粗さを埋めることは期待できる。一方、特許文献2によれば、ポリシラザン膜の膜厚が10μm以下であれば、クラックが発生しにくい傾向である旨述べられているが、本出願人として想定している厚さはそれよも遙かに薄く、改質後のシリコーン系樹脂層の表面の粗さのオーダーに近いのでポリシラザンの膜厚の不均一化につながる。
本発明の目的は、表面の粗さが低い透視用若しくは採光用の透明積層体の表面の改質方法を提供する。
本発明の透明積層体の製造方法は、樹脂基板上に形成されたシリコーン系樹脂層の表面にポリシラザンを主成分とする組成物を塗布し、これを硬化させてシリカに転化した硬化ポリシラザン膜とし、前記硬化ポリシラザン膜の上から波長200nm以下の真空紫外線を照射することにより、前記硬化ポリシラザン膜を通してシリコーン系樹脂層の一部を二酸化ケイ素の改質膜に改質することを特徴とする。
本発明によれば、樹脂基板上に形成されたシリコーン系樹脂層に、ポリシラザンを主成分とする組成物を塗布し硬化させてシリカ膜とし、シリカ膜の上から波長200nm以下の真空紫外線を照射することによりシリカ膜とシリコーン系樹脂層の一部を改質して二酸化ケイ素膜を構成することにより、シリカ膜とシリコーン系樹脂層とが良好に密着した透明積層体を得ることができる。
また、紫外線照射後のポリシラザン層の膜厚を10〜100nmとすることにより、SUV耐候性に優れた透明積層体を得ることができる。
図1は、本発明の改質方法によって製造された透明積層体10の断面を模式的に示した図である。樹脂基板1と、その上に形成されたプライマー層2と、その上に形成されたシリコーン系樹脂層3と、その上に形成されたポリシラザン層4から構成される。
樹脂基板1としては、特に制限はないが、素材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート基板、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はスチレン系重合体等の樹脂、あるいは各種オレフィン系樹脂が好適に挙げられる。
プライマー層2としては、樹脂基板1とシリコーン系樹脂層3との密着性の向上、耐衝撃性の向上等の目的で設けられるが、本発明に於いては、樹脂基板1の表面に生じている傷を消失する効果も有する。このようなプライマー層2は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等の各樹脂をディップコーティング法により塗布し、硬化して形成することが可能である。
プライマー層2としては、樹脂基板1とシリコーン系樹脂層3との密着性の向上、耐衝撃性の向上等の目的で設けられるが、本発明に於いては、樹脂基板1の表面に生じている傷を消失する効果も有する。このようなプライマー層2は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等の各樹脂をディップコーティング法により塗布し、硬化して形成することが可能である。
シリコーン系樹脂層3は、具体的には、アルコキシシランをベースとして、縮合反応を経由して得られたシロキサンゾルを加水分解して得られるシロキサン樹脂を、ディップコーティング法により塗布し、硬化して形成することが可能である。尚、シリコーン系樹脂層3として、シロキサン結合を有する他のポリマーを用いても良い。シロキサン結合を有するポリマーとは、シロキサン結合を有するハードコートのほかに、シロキサン結合を有するアクリルポリマーなどがある。但し、シロキサン結合を有するアクリルポリマーを用いる場合、プライマー層2は不要である。
ポリシラザン層4は、膜厚調製、粘度調整などのため、適宜溶剤で希釈したポリシラザン含有被覆組成物を、シリコーン系樹脂層3にディップ法、スプレー法、スピンコート法などで塗布して、硬化させることによりシリカの膜に転化したものである。硬化は数日の室温放置で良い。特許文献3に示されるような、真空紫外線照射前にポリシラザンの加水分解反応をいかに起こさせないかを考慮する必要もない。
また、ポリシラザンは、(−Si−N−)の結合を有する重合体であり、この化学式においてケイ素、窒素原子の結合以外の残りの結合手には、それぞれ水素原子や有機基(アルキル基など)が結合している。また、上記繰り返し単位のみからなる線状構造の重合体ばかりでなく、環状構造が形成されていてもよい。重合体は環状構造のみの繰り返しからなっていてもよく、一部に環状構造を有する線状の重合体であってもよい。
ポリシラザンとしては、有機基を含まないポリシラザン(パーヒドロポリシラザン)が望ましい。また、アルコキシ基などの加水分解性基がケイ素原子に結合したポリシラザン、ケイ素原子や窒素原子にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラザンなどがあり、本発明においてはいずれのポリシラザンも選択することができるが、被膜の緻密性、硬さの点で劣る。
波長200nm以下の真空紫外線、例えばキセノンエキシマランプ(真空紫外線、波長172nm)をポリシラザン層4の上から照射する。真空紫外線は、ポリシラザン層4を透過して、シリコーン系樹脂層3の上部から二酸化ケイ素を主成分とする膜に改質する。
以降、本明細書においては、ポリシラザンが硬化して形成されたシリカの膜を「硬化ポリシラザン膜8」と呼ぶことにし、真空紫外線により「硬化ポリシラザン膜8」に真空紫外線を照射したシリカ層を「照射ポリシラザン膜5」と呼び、両者を合わせて「ポリシラザン層4」と呼ぶことにする。真空紫外線によりシリコーン系樹脂層3のシロキサンを二酸化ケイ素に改質したシリカ層を「改質シロキサン膜6」と呼ぶことにする。
図2は、原子間力顕微鏡(AFM)による表面画像を示している。横軸に、シリコーン系樹脂層3のみのサンプル(比較例)、シリコーン系樹脂層3に10nmの厚さのポリシラザン層4を設けたサンプル(資料1)、シリコーン系樹脂層3に90nmの厚さのポリシラザン層4を設けたサンプル(資料2)について、波長200nm以下の真空紫外線の照射エネルギーを縦軸に示すように増やした各サンプルの表面画像である。図3は、サンプル表面の粗さを測定した図である。照射エネルギーは、照射時間による積算値である。
真空紫外線の照射前の状態においては、シリコーン系樹脂層3の表面の粗さはポリシラザンを塗布することにより平滑化される。ここにおいて、資料1と資料2の比較においても、ポリシラザン層4の表面に転写される粗さはさほど差が無い。
比較例の場合、照射エネルギーが増加するに従って、シリコーン系樹脂層3の表面から有機物が気化して失われてゆき、表面の粗さが粗くなってゆく。照射エネルギーが8400mJ/cm2に達すると表面粗さ(Rmax)は、10nmを超える。一方で、資料1と資料2とも表面粗さ(Rmax)は、3nm以下であり殆ど変化しない。
図4は、比較例と資料2について、真空紫外線の照射により改質されて形成された二酸化ケイ素膜7の膜厚を示している。資料2については、ポリシラザンを硬化させた段階で既に硬化ポリシラザン膜8はシリカ(二酸化ケイ素)の膜となっているので、真空紫外線の照射前から90nmの厚さで計測されている。真空紫外線を照射した結果、二酸化ケイ素膜7の膜厚を増加させているのは改質シロキサン膜6の膜厚である。
図2に戻り、シリコーン系樹脂層3の有機物が気化すると、各サンプルの表面が粗く変化するはずであるが、資料1、2については真空紫外線の照射エネルギーが増えても表面には殆ど変化は見られない。また、図3の表面粗さにも変化がない。これは、ポリシラザン層4のガスバリア性により、揮発したガスが樹脂基板1側に拡散し、ポリシラザン層4を荒らすことがなかったと考えられる。
次に、二酸化ケイ素膜7として、好適な照射ポリシラザン膜5の膜厚について検討した。
モメンティブ製アクリルプライマーSHP470FT-2050をディップコーティング法により3μm形成した後、摂氏130度30分の熱硬化を行う。次いで、シリコーン系熱硬化型ハードコートAS4700Fをディップコーティング法により8μmの厚みで形成し、熱風乾燥炉中には摂氏125度30分の熱硬化を行う。
モメンティブ製アクリルプライマーSHP470FT-2050をディップコーティング法により3μm形成した後、摂氏130度30分の熱硬化を行う。次いで、シリコーン系熱硬化型ハードコートAS4700Fをディップコーティング法により8μmの厚みで形成し、熱風乾燥炉中には摂氏125度30分の熱硬化を行う。
さらに、サンワ化学製のパーヒドロポリシラザン(トレスマイルANAX120)(固形分濃度20%)と、これを希釈剤(レスマイルシンナー)にて0.5、2、5、10%に調製したものを準備し、回転数を500、1000、3000rpmのいずれかの条件で30秒間スピンコートした。これを、48時間室温に放置した。なお、以降の試料の作成は、上記の手順に従う。
さらに、波長172nmのキセノンエキシマランプを2000mJ/cm2の積算照度にて照射し、表面に膜厚約500nmの二酸化ケイ素膜を形成した。よって、二酸化ケイ素膜は、ポリシラザン膜の膜厚以外の部分は改質シロキサン膜により構成されている。このときランプの照射面には5L/minの流量で窒素(N2)を導入し不活性ガス雰囲気とした。窒素の導入は、酸素による光の吸収を抑えるためと、生成される二酸化ケイ素の欠陥を抑制するためでもある。
このときポリシラザンが転化して生成される二酸化ケイ素の厚みと屈折率を測定するために、シリコン半導体基板を用意し、これに先に示したハードコート上と同一の条件にてポリシラザンの塗布およびエキシマランプによる改質を行った。二酸化ケイ素の厚みはシリコン半導体基板上に形成した二酸化ケイ素をエリプソメーターにて測定して得た。
以上の試料に対し、耐久試験として摂氏110度の大気熱風炉、およびメタルハライドランプによる超促進耐候試験(SUV)を行い、クラックや膜の剥離が生ずるまでの時間を測定した。SUV試験においては、照射、暗黒、水スプレーを組み合せて12時間を1サイクルとした試験を行い、両者とも1000時間を目標とした。また、膜の密着性を評価するため、JIS K5600-5-7のプルオフによる付着性試験により、引張剥離限界を求めた。また、機械物性の評価として、ASTM D1044に基づくテーパー摩耗試験、JIS K7171に基づく曲げ応力歪試験、ASTM D673による落砂試験を行った。結果を図5Aに示す。図5Aをグラフ化したものが図5Bである。図5Aにおいて、望ましい数値を示した場所に網掛けを付してある。なお、図7、図8、図10においても同様である。図5Bに示すように、ポリシラザン層の膜厚が100nmを超えたあたりから、急激にSUV耐候性が劣化する。
図6に試験後の試料の様子を示す。図6Aはポリシラザン膜厚10nmと478nmの試料の耐候性試験後の外観であり、図6Bは耐熱性試験後の外観である。
ポリシラザンから転化して形成される二酸化ケイ素には残留応力を有するため、膜厚を増すと耐摩耗、曲げ歪、落砂等の機械物性が低下する。また、改質深さがポリシラザン膜中にとどまると密着性が悪くなるという傾向を得た。すなわち、硬化ポリシラザン膜とシリコーン系樹脂層の界面はもともと密着性がよくないが、この界面に真空紫外線が到達すると、界面反応を誘起し密着性が改善されるものと考えられる。耐熱性と耐候性は最適な膜厚範囲があることが示唆された。以上を総合すると、改質ポリシラザン層の厚みは概ね10〜180nm、望ましくは35〜88nmとするのがよいことがわかる。
次に、ポリシラザン層の膜厚を固定して、改質シロキサン膜の膜厚を変化させる。
ポリシラザン層の厚みを88nm(約90nm)に形成し、波長172nmの積算照度が900〜4500mJ/cm2になるよう照射時間を変化させた。このとき光改質により得られる二酸化ケイ素の膜厚範囲は、180〜750nmとなる(図4)。テーパー摩耗試験の結果を図7に示す。望ましい数値を示した場所に網掛けを付してある。1000回転後のΔヘイズで、2〜0.9%が得られ、膜厚の増加と共に耐摩耗性が向上することが明らかとなったが、耐熱性、耐候性および曲げクラック耐性は二酸化ケイ素の膜厚が増すほど低下することが分かった。
ポリシラザン層の厚みを88nm(約90nm)に形成し、波長172nmの積算照度が900〜4500mJ/cm2になるよう照射時間を変化させた。このとき光改質により得られる二酸化ケイ素の膜厚範囲は、180〜750nmとなる(図4)。テーパー摩耗試験の結果を図7に示す。望ましい数値を示した場所に網掛けを付してある。1000回転後のΔヘイズで、2〜0.9%が得られ、膜厚の増加と共に耐摩耗性が向上することが明らかとなったが、耐熱性、耐候性および曲げクラック耐性は二酸化ケイ素の膜厚が増すほど低下することが分かった。
次に、真空紫外線の波長を変化させる。
ハードコートおよびポリシラザンの塗布膜の条件は上記と同じで、光改質に使用する光源として波長157nmのフッ素レーザーを用いた。波長が短くなるとハードコート中の光吸収が増し、光が透過しにくくなる。すなわち同じ照射エネルギーでも、波長が短くなることにより、形成される二酸化ケイ素の厚みは薄くなると考えられる。結果を図8に示す。望ましい数値を示した場所に網掛けを付してある。ポリシラザンを改質して得た二酸化ケイ素の厚みを10〜100nm程度にすれば、フッ素レーザーを使用しても、耐久性や密着性、機械物性を維持できることが、この結果よりわかる。
ハードコートおよびポリシラザンの塗布膜の条件は上記と同じで、光改質に使用する光源として波長157nmのフッ素レーザーを用いた。波長が短くなるとハードコート中の光吸収が増し、光が透過しにくくなる。すなわち同じ照射エネルギーでも、波長が短くなることにより、形成される二酸化ケイ素の厚みは薄くなると考えられる。結果を図8に示す。望ましい数値を示した場所に網掛けを付してある。ポリシラザンを改質して得た二酸化ケイ素の厚みを10〜100nm程度にすれば、フッ素レーザーを使用しても、耐久性や密着性、機械物性を維持できることが、この結果よりわかる。
次に、光改質のための光源として波長193nmのArFエキシマレーザーを用いた例を示す。この波長は、酸素の解離が十分に行われないため、シロキサンの解離によって生じた低分子シロキサンや炭素化合物が表面に蓄積し茶色に着色しやすく、図9に示す光化学反応式に示す二酸化ケイ素形成まで反応が進まない。この問題を解決するために、窒素で1000ppmに希釈したオゾンを、オゾン発生器より光照射される試料表面に1L/minの流量で導入した。ArFレーザーの照射エネルギーは10mJ/cm2、パルス幅20ns、パルス繰り返し周波数10Hzとした。オゾンが漏れないように試料周辺はチャンバーで覆い、ガスの排出口は除害装置に接続した。酸素原子の生成律速により、一連の反応を進めることにより、機械物性に優れた二酸化ケイ素を形成することができる。尚、シリコーンの開裂が律速になると、酸素過多欠陥が誘起しやすくなり機械物性が低下する。
試験結果を図10に示す。図10において、望ましい数値を示した場所に網掛けを付してある。ポリシラザン層の膜厚は、10〜34nmが最も望ましい。ポリシラザン層の厚みが増すとガスバリア性が増し、酸素原子がハードコートの改質領域まで拡散しにくくなるため、ポリシラザンの厚みは100nm未満がよい。
図11に、シリコーン系樹脂層に対する波長における光の吸収係数と侵入長を示す。合成石英基板上に熱硬化型シリコーン系樹脂を一定膜厚に塗布し通常の熱硬化条件にて硬化したものを、さらに157nmのフッ素レーザーにより二酸化ケイ素に改質した膜の分光透過率を測定し、測定結果から基板の影響を計算により排除した膜単体の分光透過率特性から、各波長における光の吸収係数と侵入長を得た。
シリコーン系樹脂層(ハードコートA)には紫外線吸収剤が添加されていないが、シリコーン系樹脂層(ハードコートB)には耐候性向上を目的として、紫外線吸収剤が添加されている。図11AはハードコートA、図11BはハードコートBの測定結果である。紫外線吸収剤の添加により、ハードコートBはAよりも各波長における吸収係数の値は大きく、これにより侵入長も短い値となった。いずれにしてもハードコートAの侵入長は1〜1.7μmでこれを光改質した二酸化ケイ素は0.7〜1μmに短くなった。最大得られる二酸化ケイ素層の厚みは1〜2μmに制限され、これ以上の厚みは得られないと推測される。ハードコートBにおいては得られる最大の二酸化ケイ素厚はさらに薄くなると推測される。実際に積算エネルギーが10J/cm2以上の光を照射しても、ハードコートAにおいては約1.3μm、ハードコートBにおいては1μm程度の厚みに至るとその後は、光照射時間に対し二酸化ケイ素の成長速度は極端に遅くなることがわかっている。
ところで、ポリシラザンを硬化して生成される二酸化ケイ素の吸収係数は、例えば波長172nmにおいて1000cm−1以下であり、光はほとんど損失なくシリコーン系樹脂層界面に到達することができる。すなわち、ポリシラザンが二酸化ケイ素に転化するために必要な光エネルギーはごくわずかであり、ほとんどのエネルギーはこの二酸化ケイ素層を透過してハードコートの転化に活用される。トータルの二酸化ケイ素の厚みはポリシラザン層の厚みに改質シロキサン膜を加えたものとしてよく、両者は強固な共有結合により一体化されるため、摩耗試験等の機械物性をさらに高めることができる。
本実施例によれば、樹脂基板1上に形成されたシリコーン系樹脂層の表面にポリシラザンを主成分とする組成物を塗布し、これを硬化させてシリカに転化した硬化ポリシラザン膜8とし、硬化ポリシラザン膜の上から波長200nm以下の真空紫外線を照射することにより、硬化ポリシラザン膜8を通してシリコーン系樹脂層の一部を二酸化ケイ素の改質膜(改質シロキサン膜6)に改質することにより、ポリシラザン層4とシリコーン系樹脂層3とが良好に密着した透明積層体10を得ることができる。
本実施例によれば、紫外線照射後の照射ポリシラザン膜5の膜厚を10〜100nmとすることにより、SUV耐候性に優れた透明積層体10を得ることができる。また、真空紫外線照射後の表面粗さ(Rmax)が3nm以下の透明積層体10を得ることができる。
本実施例においては、200nm以下の紫外線として、波長157nm(F2レーザー)、172nm(Xe2)、193nm(ArF)のエキシマレーザーあるいはエキシマランプにより得られる光を用いることができる。ポリシラザン層4の厚みよりも、真空紫外線のシリコーン系樹脂層3への侵入深さが長くすることにより、シリコーン系樹脂層3側に多くの割合を有する二酸化ケイ素膜(改質シロキサン膜6)を形成することができる。
本実施例においては、シリコーン系樹脂層3を改質して得られる二酸化ケイ素膜(改質シロキサン膜6)とポリシラザンから転化した二酸化ケイ素膜(硬化ポリシラザン膜8若しくは照射ポリシラザン膜5)の厚みの総和(二酸化ケイ素膜7の膜厚)が90nm以上でありかつ、真空紫外線のシリコーン系樹脂層3への侵入深さ以下とする透明積層体10を得ることができる。
1 樹脂基板
2 プライマー層
3 シリコーン系樹脂層
4 ポリシラザン層
5 照射ポリシラザン膜
6 改質シロキサン膜
7 二酸化ケイ素膜
8 硬化ポリシラザン膜
10 透明積層体
2 プライマー層
3 シリコーン系樹脂層
4 ポリシラザン層
5 照射ポリシラザン膜
6 改質シロキサン膜
7 二酸化ケイ素膜
8 硬化ポリシラザン膜
10 透明積層体
Claims (6)
- 樹脂基板上に形成されたシリコーン系樹脂層の表面にポリシラザンを主成分とする組成物を塗布し、これを硬化させてシリカに転化した硬化ポリシラザン膜とし、前記硬化ポリシラザン膜の上から波長200nm以下の真空紫外線を照射することにより、前記硬化ポリシラザン膜を通してシリコーン系樹脂層の一部を二酸化ケイ素に改質した透明積層体の製造方法。
- 請求項1の透明積層体の製造方法において、硬化ポリシラザン膜の厚さを10〜100nmとすることを特徴とした透明積層体の製造方法。
- 請求項1の透明積層体の製造方法において、ポリシラザンを塗布した状態で真空紫外線照射後の表面粗さ(Rmax)が3nm以下であることを特徴とした透明積層体の製造方法。
- 請求項1の透明積層体の製造方法において、前記200nm以下の真空紫外線は、波長157nm(F2)、172nm(Xe2)、193nm(ArF)のエキシマレーザーあるいはエキシマランプにより得られる光であることを特徴とした透明積層体の製造方法。
- 請求項4の透明積層体の製造方法において、前記200nm以下の真空紫外線の波長における侵入深さが、ポリシラザン塗布膜の厚みよりも長いことを特徴とした透明積層体の製造方法。
- 請求項5の透明積層体の製造方法において、シリコーン系樹脂を改質して得られる二酸化ケイ素とポリシラザンが転化して得られる二酸化ケイ素の厚みの総和が90nm以上でありかつ、前記侵入深さ以下であることを特徴とした透明積層体の製造方法。
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