以下に、本願の開示する劣化評価プログラム、劣化評価装置および劣化評価方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、実施例により限定されるものではない。
[実施例に係る劣化評価装置を含む劣化評価システムの構成]
図1は、実施例に係る劣化評価装置を含む劣化評価システムの構成を示す機能ブロック図である。図1に示す劣化評価装置1は、橋梁(橋)の床版の傾斜角と、床版の上下の温度とを用いた床版の劣化に関する予測モデルを構築し、当該予測モデルを用いて、床版の劣化を温度による影響を除外して評価する。ここでいう床版とは、車両の荷重が直接かかる床にあたる箇所のことをいう。
ここで、床版の傾斜角だけでは、床版の劣化状況を適切に評価することができないことについて、図2を参照して説明する。図2は、温度差と床版の伸縮を説明する図である。図2のグラフに示すように、床版の上面と下面の温度変化は、季節により異なる。
図2左図に示すように、夏季において、昼間では、床版の上面の温度が60℃前後まで上昇し、夜間でも、コンクリートの蓄熱の影響で、外気温より高くなる。すると、床版の上部が伸び、下部が縮む。温度が上昇すれば、床版の撓みが大きくなり、傾斜角も大きくなるが、前記現象により、床版の傾斜角が外気温や床版の平均温度の傾斜角より小さくなる。
また、図2右図に示すように、冬季において、夜間では、床版の上面の温度が、放射冷却の影響で、路面凍結が起こるように、下面の温度よりも低くなる。すると、床版の上部が縮み、下部が伸びる。温度が低下すれば、床版の撓みが小さくなり、傾斜角も小さくなるが、前記現象により、床版の傾斜角が外気温や床版の平均温度の傾斜角より大きくなる。
したがって、劣化評価装置1は、床版の傾斜角を単純に温度補正するだけでは、床版の劣化を適切に評価することができない。そこで、以降では、床版の傾斜角のみならず、床版の上下の温度を用いた評価モデルを構築し、構築した評価モデルを用いて、床版の劣化を評価する劣化評価装置1について説明する。
図1に戻って、劣化評価システム9は、劣化評価装置1、温度センサ2および傾斜センサ3を有する。劣化評価装置1は、温度センサ2および傾斜センサ3を、それぞれネットワーク4を介して接続する。
温度センサ2は、床版の上下の表面温度を検出する。床版の上面の温度は、床版の日照部分の表面温度を検出するためである。床版の下面の温度は、床版の日照部分でない箇所の表面温度を検出するためである。なお、温度センサ2は、床版の上面の温度および床版の下面の温度を検出可能な位置に設置される。
傾斜センサ3は、床版単体の傾斜角を算出するために、床版の上面の水平方向に対する傾斜角を検出するとともに、桁の水平方向に対する傾斜角を検出する。傾斜センサ3は、例えば、加速度センサであるが、これに限定されず、傾斜角センサ、角速度センサなどの傾斜を測定できるセンサであれば良い。なお、傾斜センサ3は、床版の傾斜角および桁の傾斜角を検出可能な位置に設置される。
ここで、温度センサ2および傾斜センサ3の設置位置の一例を、図3を参照して説明する。図3は、温度センサおよび傾斜センサの設置位置の一例を示す図である。図3に示すように、橋梁B0が示されている。橋梁B0は、床版B1と、桁B2と、橋脚B3とを含む。床版B1は、例えば、橋の上を通る車両の重みを桁B2や橋脚B3に伝えるための床板のことをいう。桁B2は、例えば、床版B1を支える材のことをいう。橋脚B3は、橋を支える構造物のことであり、橋台であっても良い。
温度センサ2−1は、床版B1の上面に設置される。また、温度センサ2−2は、床版B1の下面に設置される。これにより、劣化評価装置1は、床版B1の上下面の温度を取得することが可能となる。
傾斜センサ3−1は、桁B2の下面に、傾斜センサ3−2は、床版B1の下面に、それぞれ設置され、且つ、前記2センサの位置関係は、桁B2の長手方向と直行する方向に設置される。これにより、劣化評価装置1は、床版B1の傾斜角とともに桁B2の傾斜角を取得することが可能となる。床版B1の傾斜角のみならず桁B2の傾斜角を取得するのは、床版B1単体の傾斜角を算出するためである。すなわち、桁B2は、床版B1を支えているので、桁B2が傾斜すると、桁B2の傾斜角が床版B1の傾斜角に加算される。したがって、劣化評価装置1は、床版B1の傾斜角のみならず桁B2の傾斜角も取得する。この結果、劣化評価装置1は、床版B1の傾斜角と、桁B2の傾斜角とにより、床版B1単体の傾斜角を算出することが可能となる。なお、床版B1単体の傾斜角は、床版B1の傾斜角から桁B2の傾斜角を差し引けば良い。
図1に戻って、劣化評価装置1は、制御部10および記憶部20を有する。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路に対応する。そして、制御部10は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部10は、データ取得部11、評価関数構築部12および評価部13を有する。なお、データ取得部11は、取得部の一例である。評価関数構築部12は、構築部の一例である。評価部13は、評価部の一例である。
記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。記憶部20は、上面温度データ21、下面温度データ22、桁傾斜角データ23、床版傾斜角データ24、床版単体傾斜角データ25および評価モデル26を有する。
上面温度データ21は、予測モデルを構築するための学習用の温度データであり、床版B1の上面の温度データである。上面温度データ21は、床版B1における上面の温度および下面の温度との関係が変化するような期間分を学習期間とする上面の温度データである。かかる期間は、例えば、夏季から冬季までの期間、または冬季から夏季までの期間である。なお、かかる期間は、これに限定されず、夏季および冬季を含む期間であれば良く、1年であっても良いし、仮に床版B1に劣化があっても無視できる期間であれば良い。上面温度データ21は、例えば、データ取得部11によって記憶される。
下面温度データ22は、予測モデルを構築するための学習用の温度データであり、床版B1の下面の温度データである。下面温度データ22は、上面温度データ21と同じ期間分の床版B1の下面の温度データである。なお、下面温度データ22は、例えば、データ取得部11によって記憶される。
桁傾斜角データ23は、予測モデルを構築するための学習用の傾斜データであり、桁B2の傾斜角データである。桁傾斜角データ23は、上面温度データ21や下面温度データ22と同じ期間分の桁B2の傾斜角データである。なお、桁傾斜角データ23は、例えば、データ取得部11によって記憶される。
床版傾斜角データ24は、予測モデルを構築するための学習用の傾斜データであり、床版B1の傾斜角データである。床版傾斜角データ24は、上面温度データ21、下面温度データ22や桁傾斜角データ23と同じ期間分の床版B1の傾斜角データである。なお、床版傾斜角データ24は、例えば、データ取得部11によって記憶される。
床版単体傾斜角データ25は、予測モデルを構築するための学習用の傾斜データであり、床版B1単体の傾斜角データである。床版単体傾斜角データ25は、上面温度データ21、下面温度データ22や、桁傾斜角データ23や床版傾斜角データ24と同じ期間分の床版B1単体の傾斜角データである。床版単体傾斜角データ25は、同じ観測点ごとに、床版B1の傾斜角から桁B2の傾斜角を差し引いたデータである。なお、床版単体傾斜角データ25は、評価関数構築部12によって記憶される。
評価モデル26は、床版の劣化を評価するために用いられる学習モデルである。評価モデル26は、床版単体の傾斜角、床版の上面温度および床版の下面温度の関係に関する評価関数により表わされる。なお、評価モデル26は、評価関数構築部12によって構築される。
データ取得部11は、床版B1の上面および下面の温度情報と、桁B2と床版B1に設置された傾斜センサ3による傾斜情報とを含む学習用のデータ(以降、学習用データ)を、床版B1の上面の温度および下面の温度との関係が変化するような期間分取得する。
例えば、データ取得部11は、経時的に、傾斜センサ3−1から桁B2の傾斜角データを取得する。データ取得部11は、経時的に、傾斜センサ3−2から床版B1の傾斜角データを取得する。データ取得部11は、経時的に取得した、桁B2の傾斜角データおよび床版B1の傾斜角データを用いて、車両が走行していない期間を抽出する。一例として、データ取得部11は、経時的に取得した、桁B2の傾斜角データおよび床版B1の傾斜角データの変動が基準値未満である場合には、車両が走行していないと判断する。そして、データ取得部11は、車両が走行していない期間の桁B2傾斜角データおよび床版B1の傾斜角データを取得する。
そして、データ取得部11は、車両が走行していない期間に、温度センサ2−1から床版B1の上面の温度データを取得する。データ取得部11は、車両が走行していない期間に、温度センサ2−2から床版B1の下面の温度データを取得する。
そして、データ取得部11は、車両が走行していない期間に取得された、床版B1の上面の温度データ、床版B1の下面の温度データを学習用温度データとして記憶部20の上面温度データ21および下面温度データ22に格納する。データ取得部11は、車両が走行していない期間に取得された、桁B2の傾斜角データおよび床版B1の傾斜角データを学習用傾斜データとして記憶部20の桁傾斜角データ23および床版傾斜角データ24に格納する。
評価関数構築部12は、床版B1単体の傾斜角、並びに、床版B1の上面の温度および下面の温度の関係に関する予測モデル(評価関数)を構築するために、学習用データ(学習用温度データ、学習用傾斜データ)を加工する。
例えば、評価関数構築部12は、学習用傾斜データに含まれる桁傾斜角データ23および床版傾斜角データ24を用いて、同じ観測点ごとに、床版B1単体の傾斜角を算出する。すなわち、評価関数構築部12は、同じ観測点の床版B1の傾斜角から桁B2の傾斜角を差し引いた値をこの観測点の床版B1単体の傾斜角として算出する。そして、評価関数構築部12は、床版B1単体の傾斜角データを学習用傾斜データとして記憶部20の床版単体傾斜角データ25に格納する。
そして、評価関数構築部12は、学習用温度データに含まれる上面温度データ21について、日ごとの平均温度を算出し、上面温度データ21に追加する。評価関数構築部12は、学習用温度データに含まれる下面温度データ22についてについて、日ごとの平均温度を算出し、下面温度データ22に追加する。評価関数構築部12は、学習用傾斜データに含まれる床版単体傾斜角データ25について、日ごとの平均傾斜角を算出し、床版単体傾斜角データ25に追加する。
ここで、上面温度データ21、下面温度データ22、桁傾斜角データ23、床版傾斜角データ24および床版単体傾斜角データ25の一例を、図4および図5を参照して説明する。なお、図4および図5では、上面の温度および下面の温度との関係が変化するような期間を、夏季から冬季までの期間とする。
図4は、床版の上下面温度データの一例を示す図である。
図4左図には、X軸を日とし、Y軸を温度とした、床版B1の上面温度データ21が示されている。ここでは、0日を夏季の所定の日として、0日から日ごとの床版B1の上面温度が示されている。この上面温度データ21から、例えば最小二乗法により、上面温度の一次関数y=−0.1848x+39.506が算出される。
図4右図には、X軸を日とし、Y軸を温度とした、床版B1の下面温度データ22が示されている。ここでは、0日を上面温度データ21の0日と同日として、0日から日ごとの床版B1の下面温度が示されている。この下面温度データ22から、例えば最小二乗法により、下面温度の一次関数y=−0.1462x+29.878が算出される。
図5は、床版単体の傾斜角データの一例を示す図である。
図5上左図には、X軸を日とし、Y軸を角度として、桁B2の桁傾斜角データ23が示されている。ここでは、0日を上面温度データ21や下面温度データ22の0日と同日として、0日から日ごとの桁B2の傾斜角が示されている。
図5上右図には、X軸を日とし、Y軸を角度として、床版B1の床版傾斜角データ24が示されている。ここでは、0日を上面温度データ21、下面温度データ22や桁B2の桁傾斜角データ23の0日と同日として、0日から日ごとの床版B1の傾斜角が示されている。
図5下図には、X軸を日とし、Y軸を角度差として、床版単体傾斜角データ25が示されている。ここでは、0日を上面温度データ21、下面温度データ22、桁B2の桁傾斜角データ23や床版B1の床版傾斜角データ24の0日と同日として、0日から日ごとの床版B1単体の傾斜角が示されている。すなわち、データ取得部11は、日ごとに、床版B1の傾斜角から桁B2の傾斜角を差し引いた角度差を、床版単体傾斜角データ25に追加する。この床版単体傾斜角データ25から、例えば最小二乗法により、床版B1単体の傾斜角の一次関数y=−0.0027x+0.6693が算出される。
図1に戻って、評価関数構築部12は、加工後の学習用データから、床版B1単体の傾斜角、並びに、床版B1の上面の温度および下面の温度の関係に関する予測モデル(評価関数)を構築する。
例えば、評価関数構築部12は、加工後の学習用データを用いて、式(1)のように、床版B1の上面の温度T2および下面の温度T1への重み付けを行って、床版B1単体傾斜角θに加算した評価関数fを構築する。学習用データは、床版B1の上面の温度および下面の温度との関係が変化するような期間(学習期間)のデータを用いる。なお、式(1)のθ,T1,T2は、それぞれ床版B1単体の傾斜角,床版B1の下面の温度,床版B1の上面の温度である。また、w1、w2は、それぞれ下面の温度への重み、上面の温度への重みである。
f(θ,T1,T2)=θ−w1×T1−w2×T2・・・式(1)
すなわち、評価関数構築部12は、床版B1単体の傾斜角θ、並びに、床版B1の上面の温度T2および下面の温度T1をパラメータとする評価関数fを構築するために、学習期間の学習用データを用いて重みw1,w2を決定する。
一例として、学習期間が、夏季から冬季までの期間であるとする。すると、学習期間において、床版B1の上面の温度、床版B1の下面の温度および床版B1単体の傾斜角については、いずれも低下し、それぞれ一次結合で表すことができる。すなわち、評価関数構築部12は、学習期間の床版単体傾斜角データ25を用いて、床版B1単体の傾斜角の一次結合(線形近似)を算出する。評価関数構築部12は、学習期間の下面温度データ22を用いて、床版B1の下面の温度の一次結合(線形近似)を算出する。評価関数構築部12は、学習期間の上面温度データ21を用いて、床版B1の上面の温度の一次結合(線形近似)を算出する。ここで、床版B1単体の傾斜角を、時間tを変数とする一次結合α0t+β0で表わすとする。床版B1の下面の温度を、時間tを変数とする一次結合α1t+β1で表わすとする。床版B1の上面の温度を、時間tを変数とする一次結合α2t+β2で表わすとする。
そして、学習期間が、夏季から冬季までの期間であれば、仮に床版B1に劣化があっても無視できる期間であると推定される。したがって、評価関数構築部12は、式(1)の評価関数が一定となるように、重みw1,w2を決定する。すなわち、評価関数構築部12は、式(1)のθに一次結合α0t+β0を代入し、式(1)のT1に一次結合α1t+β1を代入し、式(1)のT2に一次結合α2t+β2を代入して、式(2)で示されるg(t|w1,w2)の重みw1,w2を算出する。なお、式(2)のconstは、定数であることを示す。
g(t|w1,w2)=α0t+β0−w1×(α1t+β1)−w2×(α2t+β2)=const・・・式(2)
式(2)を解くためには、以下に示す式(3)の制約条件が出される。式(3)の制約条件の意味は、式(2)が定数(const)となるためには、変数tがいかなる値であっても0になる必要があるということである。
加えて、式(2)を解くためには、以下に示す式(4)の制約条件が出される。式(4)の制約条件の意味は、尤度として示されるw1,w2を求めるために、fとgとの差の2乗を最小二乗法により最小化するということである。なお、式(4)について、iは、学習用データの中の各サンプルの観測点を表し、nは、サンプルの最大数を表す。一例として、上面温度データ21、下面温度データ22および床版単体傾斜角データ25では、日を表し、nは最大日数を表す。
式(3)により、重みw2が、式(5)と算出される。
そして、重みw2を式(4)に代入したうえで、式(6)のように、重みw1に対して偏微分した結果を0とする。これは、重みw1に対して偏微分した結果が0となるとき、fとgとの差の2乗が最小となるからである。
式(6)により、重みw1が、式(7)と算出される。
一例として、学習用データが、図4の上面温度データ21、図4の下面温度データ22、図5の床版単体傾斜角データ25である場合には、重みw1は、0.0469と算出され、重みw2は、−0.0224と算出される。
また、評価関数構築部12は、評価関数の閾値を計算する。例えば、評価関数構築部12は、予め定められた、対策が必要な区分(要対策区分)の残留変形角を利用して、評価関数の閾値を計算する。要対策区分の残留変形角を利用するのは、健全な床版の傾斜角であるか否かの限界角とするためである。一例として、評価関数構築部12は、評価関数fについて、床版の要対策区分の残留変形角を単体傾斜角θとして、学習期間の中で最低の下面温度を下面温度T1として、下面温度T1の観測点の上面温度を上面温度T2として、評価関数fの閾値THを算出する。学習期間の中で最低の下面温度の観測点を利用するのは、下面温度が最低のときが、床版の傾斜角への温度による影響が顕著となると推測されるからである。言い換えれば、床版が実際の撓みより一番激しい撓みとなると推測されるからである。
また、評価関数構築部12は、構築された評価関数および閾値を評価モデルとして、記憶部20の評価モデル26に格納する。
評価部13は、評価関数構築部12によって構築された予測モデル(評価関数)を用いて、床版の劣化を評価する。例えば、評価部13は、評価用の床版単体傾斜角のデータ、評価用の床版の上面温度のデータおよび評価用の床版の下面温度のデータを受け取る。評価部13は、受け取ったデータを評価関数fに代入し、評価値を算出する。評価部13は、評価値が閾値THより大きいか否かを判定する。評価部13は、評価値が閾値THより大きいと判定した場合には、評価結果を異常と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していると評価する。評価部13は、評価値が閾値TH以下であると判定した場合には、評価結果を正常と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していないと評価する。これにより、評価部13は、床版の劣化状況を、温度による影響を除外して、評価することができる。なお、評価部13は、評価値を用いて床版がどれだけ劣化しているかを評価するようにしても良い。
[実施例に係る劣化評価の一例]
次に、実施例に係る劣化評価の一例を、図6を参照して説明する。図6は、実施例に係る劣化評価の一例を示す図である。なお、図6では、図4の上面温度データ21および下面温度データ22、図5の床版単体傾斜角データ25を用いて構築された評価関数fを利用して、床版の劣化評価を行った場合である。すなわち、評価関数fの重みw1は、0.0469であり、重みw2は、−0.0224である。
図6の上図には、評価関数構築部12によって算出された評価関数スコア(閾値)が表わされている。例えば、評価関数構築部12は、評価関数fについて、以下のデータを用いて、評価関数fの評価関数スコア(閾値)を算出する。評価関数fについて、床版単体傾斜角θを床版の要対策区分の残留変形角(tanθ)1/400である0.14degreeとし、下面温度T1を学習期間の中で最低の下面温度1.3℃とし、上面温度T2を下面温度T1の観測点の上面温度4.55℃とする。この結果、評価関数スコア(閾値)THは、0.18と算出される。
まず、<1>の健全な床版(対策区分判定:A)の場合について、評価関数fおよび閾値THを適用する。かかる床版の観測された床版単体傾斜角は、0.55degree、床版の下面温度は、25℃、床版の上面温度は、35℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.55(degree)をθに代入し、25(℃)をT1に代入し、35(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.16と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.16が閾値0.18より小さいので、評価部13は、評価結果を「正常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していないと評価する。したがって、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(健全床版)と同一の結果となる。かかる場合では、温度が全体的に上昇すると、床版が撓むため、床版単体の傾斜角が大きくなったとしても、評価結果が正常と判定される。
次に、<2>の不健全な床版(対策区分判定:B)である場合について、評価関数fおよび閾値THを適用する。かかる床版の観測された床版単体傾斜角は、0.65degree、床版の下面温度は、30℃、床版の上面温度は、43℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.65(degree)をθに代入し、30(℃)をT1に代入し、43(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.21と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.21が閾値0.18より大きいので、評価部13は、評価結果を「異常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していると評価する。したがって、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(不健全床版)と同一の結果となる。かかる場合では、上面温度が上昇すると、上部が伸び、下部が縮み、床版の傾斜角が実際より小さくなる。言い換えると、上面温度が上昇すると、床版が撓みにくくなる。本来床版が劣化していなければ、傾斜角(撓み)は小さくなるはずであるが、傾斜角が0.65degと大きいのは、床版が劣化しているからであり、評価結果が異常と判定される。
なお、以降では、上面温度を使わないで下面温度のみで評価関数を構築した場合の劣化評価の参考例、学習期間を上面温度および下面温度との関係が変化しないような期間とした場合の劣化評価の参考例について説明する。
[下面温度のみで評価関数を構築した場合の劣化評価]
図7は、下面温度のみで評価関数を構築した場合の劣化評価の参考例を示す図である。評価関数fの重みw1は、0.0186であり、重みw2は、0である。
図7の上図には、評価関数構築部12によって算出された場合の評価関数スコア(閾値)が表わされている。例えば、評価関数構築部12は、評価関数fについて、図6上図で示したデータを用いて、評価関数fの評価関数スコア(閾値)を算出する。すなわち、評価関数fについて、単体傾斜角θを床版の要対策区分の残留変形角1/400ラジアン(rad)である0.14degreeとし、下面温度T1を学習期間の中で最低の下面温度1.3℃とし、上面温度T2を下面温度T1の観測点の上面温度4.55℃とする。この結果、評価関数スコア(閾値)THは、0.12と算出される。
図6で示した<1>の健全な床版(対策区分判定:A)と同じ床版について、評価関数fおよび閾値THを適用する。すなわち、かかる床版の観測された床版単体傾斜角は、0.55degree、床版の下面温度は、25℃、床版の上面温度は、35℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.55(degree)をθに代入し、25(℃)をT1に代入し、35(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.085と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.085が閾値0.12より小さいので、評価部13は、評価結果を「正常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していないと評価する。したがって、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(健全床版)と同一の結果となる。
次に、図6で示した<2>の不健全な床版(対策区分判定:B)と同じ床版について、評価関数fおよび閾値THを適用する。すなわち、床版単体傾斜角は、0.65degree、床版の下面温度は、30℃、床版の上面温度は、43℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.65(degree)をθに代入し、30(℃)をT1に代入し、43(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.09と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.09が閾値0.12より小さいので、評価部13は、評価結果を「正常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していないと評価する。ところが、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(不健全床版)と矛盾した結果となる。下面温度のみで評価関数を構築した場合では、上面温度が上昇すると、矛盾した結果となりやすい。
[夏季のみで評価関数を構築した場合の劣化評価]
図8は、夏季のみで評価関数を構築した場合の劣化評価の参考例を示す図である。評価関数fの重みw1は、−0.0078であり、重みw2は、0.012である。
図8の上図には、評価関数構築部12によって算出された場合の評価関数スコア(閾値)が表わされている。例えば、評価関数構築部12は、評価関数fについて、以下のデータを用いて、評価関数fの評価関数スコア(閾値)を算出する。評価関数fについて、単体傾斜角θを床版の要対策区分の残留変形角(tanθ)1/400である0.14degreeとし、下面温度T1を夏季の学習期間の中で最低の下面温度22.6℃とし、上面温度T2を下面温度T1の観測点の上面温度29.4℃とする。この結果、評価関数スコア(閾値)THは、−0.044と算出される。これは、学習用データの床版単体傾斜角に、高温域の影響(床版が撓んだ状態)が多く含まれてしまい、評価関数スコア(閾値)が負の値となったものである。
図6で示した<1>の健全な床版(対策区分判定:A)と同じ床版について、評価関数fおよび閾値THを適用する。すなわち、かかる床版の観測された床版単体傾斜角は、0.55degree、床版の下面温度は、25℃、床版の上面温度は、35℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.55(degree)をθに代入し、25(℃)をT1に代入し、35(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.032と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.032が閾値−0.044より大きいので、評価部13は、評価結果を「異常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していると評価する。ところが、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(健全床版)と矛盾した結果となる。夏季のみで評価関数を構築した場合では、正常な橋梁も異常評価となってしまう。
[冬季のみで評価関数を構築した場合の劣化評価]
図9は、冬季のみで評価関数を構築した場合の劣化評価の参考例を示す図である。評価関数fの重みw1は、0.0078であり、重みw2は、−0.0016である。
図9の上図には、評価関数構築部12によって算出された場合の評価関数スコア(閾値)が表わされている。例えば、評価関数構築部12は、評価関数fについて、図6上図で示したデータを用いて、評価関数fの評価関数スコア(閾値)を算出する。すなわち、評価関数fについて、単体傾斜角θを床版の要対策区分の残留変形角1/400ラジアン(rad)である0.14degreeとし、下面温度T1を学習期間の中で最低の下面温度1.3℃とし、上面温度T2を下面温度T1の観測点の上面温度4.55℃とする。この結果、評価関数スコア(閾値)THは、0.14と算出される。
<3>の健全な床版(対策区分判定:A)である場合について、評価関数fおよび閾値THを適用する。かかる床版の観測された床版単体傾斜角は、0.13degree、床版の下面温度は、8.8℃、床版の上面温度は、11℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.13(degree)をθに代入し、8.8(℃)をT1に代入し、11(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.079と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.078が閾値0.14より小さいので、評価部13は、評価結果を「正常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していないと評価する。したがって、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(健全床版)と同一の結果となる。
次に、図6で示した<1>の健全な床版(対策区分判定:A)と同じ床版について、評価関数fおよび閾値THを適用する。すなわち、かかる床版の観測された床版単体傾斜角は、0.55degree、床版の下面温度は、25℃、床版の上面温度は、35℃である。すると、評価部13は、評価関数fについて、0.55(degree)をθに代入し、25(℃)をT1に代入し、35(℃)をT2に代入し、評価関数スコアを算出する。ここでは、評価関数スコアは、0.41と算出される。
そして、評価部13は、評価関数スコアが閾値THより大きいか否かを判定する。ここでは、評価関数スコア0.41が閾値0.14より大きいので、評価部13は、評価結果を「異常」と評価する。すなわち、評価部13は、床版が劣化していると評価する。したがって、評価関数fによって評価された評価結果は、実際の結果(健全床版)と矛盾した結果となる。
冬季のみで評価関数を構築した場合では、冬季では、正常な評価が行えるが、夏季の温度が考慮されていないため、夏季では、正常な評価が行えない。
したがって、評価関数構築部12は、床版B1の上面温度および下面温度との関係が変化するような学習期間の上面温度、下面温度および床版単体傾斜角を用いて、評価関数fを構築することが必要である。
[データ取得処理のフローチャート]
次に、実施例に係るデータ取得処理のフローチャートを、図10を参照して説明する。図10は、実施例に係るデータ取得処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、傾斜センサ3−1は、桁B2に設置され、傾斜センサ3−2は、床版B1の下面に設置されている。温度センサ2−1は、床版B1の上面に設置され、温度センサ2−2は、床版B1の下面に設置されている。
図10に示すように、データ取得部11は、傾斜センサ3−1,3−2をモニタリングする(ステップS11)。データ取得部11は、モニタリングしている傾斜角データを用いて、車両が無走行であるか否かを判定する(ステップS12)。車両が無走行でないと判定した場合には(ステップS12;No)、データ取得部11は、車両が無走行となるまで、判定処理を繰り返す。
一方、車両が無走行であると判定した場合には(ステップS12;Yes)、データ取得部11は、桁B2に設置された傾斜センサ3−1および床版B1の下面に設置された傾斜センサ3−2からそれぞれ傾斜角データを取得する(ステップS13)。そして、データ取得部11は、床版B1について、上面に設置された温度センサ2−1および下面に設置された温度センサ2−2からそれぞれ温度データを取得する(ステップS14)。
そして、データ取得部11は、例えば制御部10から日時データを取得する(ステップS15)。そして、データ取得部11は、日時データと対応付けて、取得した傾斜角データおよび温度データを学習用データとして記憶部20に保存する(ステップS16)。すなわち、データ取得部11は、上面温度を上面温度データ21に保存し、下面温度を下面温度データ22に保存する。データ取得部11は、桁B2に設置された傾斜センサ3−1から取得した傾斜角データを桁傾斜角データ23に保存し、床版B1の上面に設置された傾斜センサ3−2から取得した傾斜角データを床版傾斜角データ24に保存する。
そして、データ取得部11は、傾斜センサ3−1,3−2のモニタリングを停止したか否かを判定する(ステップS17)。モニタリングを停止していないと判定した場合には(ステップS17;No)、データ取得部11は、モニタリングをすべく、ステップS11に移行する。
一方、モニタリングを停止したと判定した場合には(ステップS17;Yes)、データ取得部11は、データ取得処理を終了する。
[評価関数構築処理のフローチャート]
次に、実施例に係る評価関数構築処理のフローチャートを、図11を参照して説明する。図11は、実施例に係る評価関数構築処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、学習用傾斜データおよび学習用温度データが、床版B1の上面の温度および下面の温度との関係が変化するような期間分、床版傾斜角データ24、桁傾斜角データ23、下面温度データ22および上面温度データ21に保存されているとする。
評価関数構築部12は、学習用傾斜データを桁傾斜角データ23および床版傾斜角データ24から読み込む(ステップS21)。評価関数構築部12は、学習用温度データを上面温度データ21および下面温度データ22から読み込む(ステップS22)。
そして、評価関数構築部12は、読み込んだ学習用傾斜データを用いて、同じ観測点ごとに、床版単体傾斜θを算出する(ステップS23)。例えば、評価関数構築部12は、同じ観測点の床版B1の傾斜角から桁B2の傾斜角を差し引いた値を、この観測点の床版B1単体の傾斜角θとして算出する。そして、評価関数構築部12は、床版B1単体の傾斜角θを学習用傾斜データとして床版単体傾斜角データ25に格納する。
そして、評価関数構築部12は、学習用温度データおよび学習用傾斜データの全データの日平均を算出する(ステップS24)。
続いて、評価関数構築部12は、学習用傾斜データを用いて、床版単体傾斜角の線形近似を算出する(ステップS25)。例えば、評価関数構築部12は、床版単体傾斜角データ25の日平均を用いて、時間tを変数とする一次結合α0t+β0のα0,β0を算出する。
そして、評価関数構築部12は、学習用温度データを用いて、上面温度および下面温度の線形近似を算出する(ステップS26)。例えば、評価関数構築部12は、下面温度データ22の日平均を用いて、時間tを変数とする一次結合α1t+β1のα1,β1を算出する。評価関数構築部12は、上面温度データ21の日平均を用いて、時間tを変数とする一次結合α2t+β2のα2,β2を算出する。
そして、評価関数構築部12は、制約条件から式(1)で表わされる評価関数の重みw1およびw2を決定する(ステップS27)。例えば、評価関数構築部12は、式(1)のθに一次結合α0t+β0を代入し、式(1)のT1に一次結合α1t+β1を代入し、式(1)のT2に一次結合α2t+β2を代入して、式(2)を出力する。評価関数構築部12は、式(2)を解くために、式(3)の制約条件を出力する。加えて、評価関数構築部12は、式(2)を解くために、式(4)の制約条件を出力する。そして、評価関数構築部12は、式(3)の制約条件および式(4)の制約条件からw1,w2を算出する。
そして、評価関数構築部12は、式(1)で表わされる評価関数の閾値THを定義する(ステップS28)。例えば、評価関数構築部12は、評価関数について、床版要対策区分の残留変形角を単体傾斜角θに代入し、観測区間(学習期間)の最低の下面温度をT1に代入し、T1の観測点の上面温度をT2に代入して、評価関数の閾値THを算出する。なお、床版要対策区分の残留変形角は、例えば0.14である。
そして、評価関数構築部12は、評価関数構築処理を終了する。
[評価処理のフローチャート]
次に、実施例に係る評価処理のフローチャートを、図12を参照して説明する。図12は、実施例に係る評価処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、式(1)で表わされる評価関数f(θ,T1,T2)は、構築されたものとする。また、評価関数fの閾値THは、定義されたものとする。
評価部13は、評価用の傾斜データθを読み込む(ステップS31)。ここでいう傾斜データは、床版単体傾斜角である。評価部13は、評価用の温度データT1,T2を読み込む(ステップS32)。ここでいう温度データT1は、床版の下面温度であり、温度データT2は、床版の上面温度である。
そして、評価部13は、評価用の傾斜データθおよび評価用の温度データT1,T2を式(1)で表わされる評価関数f(θ,T1,T2)に代入して、評価値を算出する(ステップS33)。
そして、評価部13は、f(θ,T1,T2)の計算結果である評価値が閾値THより大きいか否かを判定する(ステップS34)。f(θ,T1,T2)の計算結果である評価値が閾値TH以下であると判定した場合には(ステップS34;No)、評価部13は、評価結果を正常と評価する(ステップS35)。すなわち、評価部13は、床版が劣化していないと評価する。
一方、f(θ,T1,T2)の計算結果である評価値が閾値THより大きいと判定した場合には(ステップS34;Yes)、評価部13は、評価結果を異常と評価する(ステップS36)。すなわち、評価部13は、床版が劣化していると評価する。
そして、評価部13は、評価処理を終了する。
[実施例の効果]
上記実施例によれば、劣化評価装置1は、劣化を評価する評価対象の床版の上面および下面の温度情報と、評価対象の桁と床版に設置された傾斜センサによる傾斜情報とを含む観測データを、上面の温度および下面の温度との関係が変化するような期間分取得する。劣化評価装置1は、観測データから、床版の単体の傾斜角、並びに、床版の上面の温度および下面の温度の関係に関する予測モデルを構築する。劣化評価装置1は、予測モデルを用いて、床版の劣化を評価する。かかる構成によれば、劣化評価装置1は、例えば橋梁の床版の劣化状況を、温度による影響を除外して、評価することができる。
また、上記実施例によれば、劣化評価装置1は、観測データの中の温度情報を、1日の平均温度の温度情報に加工し、加工した温度情報を用いて、予測モデルを構築する。かかる構成によれば、劣化評価装置1は、予測モデルを構築する際に、温度情報を1日の平均温度の温度情報に加工して用いることで、効率的に予測モデルを構築することができる。
また、上記実施例によれば、観測データを取得する期間は、夏の期間および冬の期間を含む期間である。かかる構成によれば、劣化評価装置1は、夏でも冬でも汎用的な予測モデルを構築することができる。
また、上記実施例によれば、劣化評価装置1は、評価対象が橋梁である場合、橋梁を車両が通過していない状態で、観測データを取得する。かかる構成によれば、劣化評価装置1は、精度の良い予測モデルを構築することができる。
[その他]
なお、実施例では、劣化評価装置1は、橋梁の床版の傾斜角と、床版の上下の温度とを用いた床版の劣化に関する予測モデルを構築し、当該予測モデルを用いて、橋梁の床版の劣化を評価する。しかしながら、劣化評価装置1は、評価対象を橋梁の床版に限定されず、高架橋の床版や歩道橋の床版を評価対象として、床版の上下の温度とを用いた床版の劣化に関する予測モデルを構築し、当該予測モデルを用いて、該当する床版の劣化を評価しても良い。また、劣化評価装置1は、家屋の床版を評価対象としても良い。
また、図示した劣化評価装置1の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、劣化評価装置1の分散・統合の具体的態様は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、データ取得部11と評価関数構築部12とを1つの部として統合しても良い。また、評価関数構築部12を、学習用データを加工する加工部と、加工後の学習用データから予測モデル(評価関数)を構築する構築部とに分離しても良い。また、記憶部20を劣化評価装置1の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。
また、上記実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図1に示した劣化評価装置1と同様の機能を実現する劣化評価プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図13は、劣化評価プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
図13に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU203と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置215と、表示装置209を制御する表示制御部207とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラムなどを読取るドライブ装置213と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行う通信制御部217とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するメモリ201と、HDD(Hard Disk Drive)205を有する。そして、メモリ201、CPU203、HDD205、表示制御部207、ドライブ装置213、入力装置215、通信制御部217は、バス219で接続されている。
ドライブ装置213は、例えばリムーバブルディスク210用の装置である。HDD205は、劣化評価プログラム205aおよび劣化評価処理関連情報205bを記憶する。
CPU203は、劣化評価プログラム205aを読み出して、メモリ201に展開し、プロセスとして実行する。かかるプロセスは、劣化評価装置1の各機能部に対応する。劣化評価処理関連情報205bは、上面温度データ21、下面温度データ22、桁傾斜角データ23、床版傾斜角データ24、床版単体傾斜角データ25および評価モデル26に対応する。そして、例えばリムーバブルディスク210が、劣化評価プログラム205aなどの各情報を記憶する。
なお、劣化評価プログラム205aについては、必ずしも最初からHDD205に記憶させておかなくても良い。例えば、コンピュータ200に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、光磁気ディスク、IC(Integrated Circuit)カードなどの「可搬用の物理媒体」に当該プログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ200がこれらから劣化評価プログラム205aを読み出して実行するようにしても良い。