[go: up one dir, main page]

JP2020061381A - 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020061381A
JP2020061381A JP2020001306A JP2020001306A JP2020061381A JP 2020061381 A JP2020061381 A JP 2020061381A JP 2020001306 A JP2020001306 A JP 2020001306A JP 2020001306 A JP2020001306 A JP 2020001306A JP 2020061381 A JP2020061381 A JP 2020061381A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
polymer compound
active material
lithium
binder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020001306A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6871436B2 (ja
Inventor
利絵 寺西
Rie Teranishi
利絵 寺西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sekisui Chemical Co Ltd filed Critical Sekisui Chemical Co Ltd
Priority to JP2020001306A priority Critical patent/JP6871436B2/ja
Publication of JP2020061381A publication Critical patent/JP2020061381A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6871436B2 publication Critical patent/JP6871436B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】優れた容量維持率及び強度のうち少なくとも一方を有する電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法の提供を課題とする。【解決手段】集電体と、前記集電体上に形成された電極活物質層とを備え、前記電極活物質層は、活物質及びバインダーを含み、前記バインダーは、第一の高分子化合物と、前記第一の高分子化合物よりも重量平均分子量(Mw)が小さい第二の高分子化合物とを含み、[前記第一の高分子化合物のMw/前記第二の高分子化合物のMw]で表されるMw比が、1.5〜10である電極;並びに、活物質及びバインダーを含む電極材を集電体又は基材に塗布した後、乾燥することによって電極活物質層を形成する工程を有する前記電極の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
一般に、リチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解質を備える。以下、正極と負極を併せて単に「電極」と呼ぶ。電極は、集電体上に電極活物質層が形成されてなり、該電極活物質層は、活物質、導電助剤及びバインダーが配合された電極材からなる。特許文献1には、ケイ素化合物を用いた負極が記載されている。活物質としてケイ素化合物を含有する負極は、充放電に伴う膨張と収縮が繰り返されることによって、電極活物質層が劣化し、剥離する等の構造的な破損が生じる。この結果、放電容量や容量維持率等の充放電特性が低下するという問題がある。
特開2014−211977号公報
充放電が繰り返されるリチウムイオン二次電池には、さらなる容量維持率(サイクル特性)の向上と、電極の構造的な強度の向上が求められている。
本発明は、優れた容量維持率及び強度のうち少なくとも一方を有する電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法の提供を課題とする。
[1] 集電体と、前記集電体上に形成された電極活物質層とを備え、前記電極活物質層は、活物質及びバインダーを含み、前記バインダーは、第一の高分子化合物と、前記第一の高分子化合物よりも重量平均分子量(Mw)が小さい第二の高分子化合物とを含み、[前記第一の高分子化合物のMw/前記第二の高分子化合物のMw]で表されるMw比が、1.5〜10である、電極。
[2] 前記Mw比が5〜10である、上記[1]に記載の電極。
[3] 前記第二の高分子化合物のMwが1万〜400万である、上記[1]又は[2]に記載の電極。
[4] 前記第二の高分子化合物のMwが10万〜100万である、上記[1]又は[2]に記載の電極。
[5] 前記バインダーの総質量に対して、第一の高分子化合物の含有比率が30〜80質量%であり、
第二の高分子化合物の含有比率が20〜70質量%である、上記[1]〜[4]の何れか一項に記載の電極。
[6] 前記活物質と前記バインダーの質量比(活物質/バインダー)が1〜10である、上記[1]〜[5]の何れか一項に記載の電極。
[7] 前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がカルボキシル基を有する、上記[1]〜[6]の何れか一項に記載の電極。
[8] 前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩である、上記[1]〜[7]の何れか一項に記載の電極。
[9] 前記活物質はリチウムを吸蔵可能な炭素材料又は金属酸化物を含む、上記[1]〜[8]の何れか一項に記載の電極。
[10] 前記活物質は酸化ケイ素である、上記[9]に記載の電極。
[11] 上記[1]〜[10]の何れか一項に記載の電極と、対極と、電解質とを有するリチウムイオン二次電池。
[12] 活物質及びバインダーを含む電極材を集電体又は基材に塗布した後、乾燥することによって電極活物質層を形成する工程を有する電極の製造方法であって、
前記バインダーは、第一の高分子化合物と、前記第一の高分子化合物よりも重量平均分子量(Mw)が小さい第二の高分子化合物とを含み、
[前記第一の高分子化合物のMw/前記第二の高分子化合物のMw]で表されるMw比が、1.5〜10である、電極の製造方法。
[13] 前記活物質と前記バインダーとを溶媒に分散することによって前記電極材を得る工程を有する、上記[12]に記載の電極の製造方法。
[14] 前記の塗布された電極材を30〜140℃で乾燥する、上記[12]又は[13]に記載の電極の製造方法。
[15] 前記の塗布された電極材を乾燥し、形成される電極活物質層に含まれる溶媒の量を、前記電極活物質層の総質量に対して100ppm以下にする、上記[12]〜[14]の何れか一項に記載の電極の製造方法。
[16] 前記電極材に含まれる前記活物質と前記バインダーの質量比(活物質/バインダー)が1〜10である、上記[12]〜[15]の何れか一項に記載の電極の製造方法。
[17] 前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がカルボキシル基を有する、上記[12]〜[16]の何れか一項に記載の電極の製造方法。
[18] 前記活物質は、リチウムを吸蔵可能な炭素材料又は金属酸化物を含む、上記[12]〜[17]の何れか一項に記載の電極の製造方法。
[19] 前記活物質は酸化ケイ素である、上記[12]〜[18]の何れか一項に記載の電極の製造方法。
[20] 前記のカルボキシル基を有する高分子化合物は、少なくとも一部のカルボキシル基の水素原子が、リチウムイオンによって置換されている、上記[17]に記載の電極の製造方法。
[21] 前記のカルボキシル基を有する高分子化合物は、リチウムイオンによる前記水素原子の置換率が10〜50モル%である、上記[20]に記載の電極の製造方法。
[22] 前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩である、上記[12]〜[21]の何れか一項に記載の電極の製造方法。
[23] 上記[12]〜[22]の何れか一項に記載の電極の製造方法によって電極を得る工程と、前記電極と対極との間に電解質を設置する工程を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
本発明は、優れた容量維持率及び強度のうち少なくとも一方を有する電極、及びその電極を備えたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の実施形態の一例を示す模式断面図である。
《電極》
本発明の電極は、集電体と、前記集電体上に形成された電極活物質層とを備える。前記電極活物質層は、活物質及びバインダーを含む。前記バインダーは、第一の高分子化合物と、前記第一の高分子化合物よりも重量平均分子量(Mw)が小さい第二の高分子化合物とを含み、[前記第一の高分子化合物のMw/前記第二の高分子化合物のMw]で表されるMw比が、1.5〜10である。
前記Mw比が1.5〜10、好ましくは5〜10であることによって、優れた容量維持率と強度が得られる。
第二の高分子化合物のMw(第二のMw)は、好ましくは1万〜400万、より好ましくは10万〜100万であることによって、より優れた容量維持率と強度が得られる。
製造された電極に含まれる2種類の高分子化合物のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、ポリスチレン標準物質を用いて測定される。
電極を構成するバインダーの総質量に対して、第一の高分子化合物の含有比率が30〜80質量%であり、第二の高分子化合物の含有比率が20〜70質量%であることが好ましい。上記構成であると、より優れた容量維持率と強度が得られる。
電極を構成する第一の高分子化合物と第二の高分子化合物との質量比は、9:1〜1:9が好ましく、8:2〜2:8がより好ましく、6:4〜4:6がさらに好ましい。
上記質量比であると、電極の容量維持率と強度をより一層高めることができる。
電極を構成する活物質とバインダーの質量比(活物質/バインダー)が1〜10であると、より優れた容量維持率と強度が得られる。
第一の高分子化合物及び第二の高分子化合物の少なくとも一方がカルボキシル基を有することが好ましい。第一の高分子化合物及び第二の高分子化合物の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩であることが好ましい。バインダーがこれらの高分子化合物を含むと、より優れた容量維持率と強度が得られる。
前記活物質はリチウムを吸蔵可能な炭素材料又は金属酸化物を含むことが好ましい。活物質がこれらの材料であると、より優れた容量維持率と強度が得られる。
前記活物質は酸化ケイ素であることが好ましい。活物質が酸化ケイ素であると、より優れた容量維持率と強度が得られる。
本発明にかかる電極の好適な材料について、以下に、本発明にかかる電極の製造方法と共に説明する。
≪電極の製造方法≫
本発明の電極の製造方法は、活物質及びバインダーを含む電極材を集電体又は基材に塗布した後、乾燥することによって電極活物質層を形成する工程を有する電極の製造方法である。
前記電極は、正極、負極の何れであってもよい。前記電極の用途はリチウムイオン二次電池の他、種々の電気化学デバイスに使用することができる。
前記活物質としては、電解質に含まれる電荷輸送体を吸蔵(吸収)及び放出することが可能な物質であればよく、例えば、リチウムイオン二次電池において、リチウムイオンを吸蔵(吸収)及び放出することが可能な、公知の負極活物質、正極活物質が挙げられる。
前記バインダーとしては、前記活物質同士を結着し、集電体又は基材に接合することが可能な高分子化合物であればよく、例えば、リチウムイオン二次電池の正極又は負極に使用されるバインダーが挙げられる。
前記電極材は、前記活物質と前記バインダーとを溶媒に分散することによって調製される。溶媒の種類は、活物質とバインダーを分散可能であれば特に限定されず、公知の溶媒から適宜選定される。分散方法としては、例えば、ブレンダー、ミキサー等の公知の混合機を使用して、溶媒中に活物質とバインダーを投入しながら撹拌する方法が挙げられる。
この際、活物質を先に投入してもよいし、バインダーを先に投入してもよいし、活物質とバインダーを同時に投入してもよい。また、活物質とバインダーのそれぞれを個別の容器中で溶媒に分散し、それぞれの分散体を後で混合して、活物質及びバインダーを含む分散体(電極材)を得てもよい。
本発明において、前記バインダーとして、重量平均分子量(Mw)が相違する2種類の高分子化合物、第一の高分子化合物及び第二の高分子化合物を含むバインダーを使用する。ここで、各高分子化合物のMwは、ポリスチレン標準物質を使用した公知のゲル濾過クロマトグラフ法(GPC法)によって測定された値である。
本発明において、前記2種類の高分子化合物のうち、相対的に大きい第一のMwを有するものを第一の高分子化合物と呼び、相対的に小さい第二のMwを有するものを第二の高分子化合物と呼ぶことがある。即ち、第一のMw>第二のMwである。
本発明において、第一の高分子化合物のMw(第一のMw)と、第二の高分子化合物のMw(第二のMw)の比(第一のMw/第二のMw)は1.5〜10であり、好ましくは5〜10である。
Mwの比が上記範囲であることにより、優れた容量維持率と強度を有する電極が得られる。また、前記電極材を調製する際に、第一の高分子化合物と、第二の高分子化合物とを溶媒に分散させることにより、塗布に適した粘度を有する電極材が得られる。
第一の高分子化合物のMwとしては、5万〜400万が好ましく、15万〜200万がより好ましく、20万〜150万がさらに好ましい。
上記範囲であると、電極の容量維持率と強度をより一層高めることができる。
第二の高分子化合物のMwとしては、1万〜200万が好ましく、5万〜100万がより好ましく、7万〜60万がさらに好ましい。
上記範囲であると、電極の容量維持率と強度をより一層高めることができる。
第一の高分子化合物と第二の高分子化合物の平均分子量Aは、22万〜50万であることが好ましい。より好ましくは、25万〜45万、更に好ましくは30万〜35万である。
平均分子量Aが22万〜50万である場合、剥離強度に優れる。これにより活物質の剥離が抑制され、容量維持率の低下を抑制することが可能となると考えられる。
平均分子量Aは、“k×p+l×q”で算出される値である。
第一の高分子化合物と第二の高分子化合物の質量の合計を1とした場合の第一の高分子化合物の比率をp、第二の高分子化合物の比率をqとする。
第一の高分子化合物のMwをk、第二の高分子化合物のMwをlとする。
前記電極材を調製する際の各高分子化合物の配合量としては、前記バインダーの総質量に対して、第一の高分子化合物の配合比率が30〜80質量%であり、第二の高分子化合物の配合比率が20〜70質量%であることが好ましい。
上記配合比率であると、電極材の粘度が塗布に適したものとなり、電極の容量維持率と強度をより一層高めることができる。
前記電極材を調製する際の第一の高分子化合物と第二の高分子化合物との配合の質量比は、9:1〜1:9が好ましく、8:2〜2:8がより好ましく、6:4〜4:6がさらに好ましい。
上記配合の質量比であると、電極の容量維持率と強度をより一層高めることができる。
前記電極材を調製する際の前記活物質と前記バインダーの質量比(活物質/バインダー)は、1〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜6がさらに好ましい。
上記質量比であると、電極材の粘度が塗布に適したものとなり、電極の容量維持率と強度をより一層高めることができる。
前記バインダーに含まれる第一の高分子化合物及び第二の高分子化合物の少なくとも一方がカルボキシル基(−COOH)を有することが好ましく、両方がカルボキシル基を有することがより好ましい。
高分子化合物がカルボキシル基を有すると、活物質と高分子化合物の結合力が向上し、より一層強度に優れた電極が得られる。
前記高分子化合物が有する複数のカルボキシル基の水素原子は非置換であってもよいし、前記水素原子の少なくとも一部が置換されていてもよい。また、前記高分子化合物は、前記高分子化合物が有する複数のカルボキシル基の水素原子が非置換である高分子化合物と、前記水素原子の少なくとも一部が置換されている高分子化合物との混合物であってもよい。前記水素原子を置換する物質としては、例えば1価以上のカチオンが挙げられる。
具体的には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが挙げられる。前記水素原子の一部又は全部を置換する好適なイオンとして、例えば、リチウムイオンが挙げられる。
前記のカルボキシル基を有する高分子化合物は、少なくとも一部のカルボキシル基の水素原子が、リチウムイオンによって置換されている、即ち、カルボキシル基がリチウム塩を形成している、ことが好ましい。
前記高分子化合物が有する複数のカルボキシル基の少なくとも一部の水素原子がリチウムイオンによって置換されている場合、前記水素原子の置換率は10〜50モル%であることが好ましく、20〜40モル%がより好ましく、25〜35モル%が更に好ましい。
ここで、前記水素原子のリチウムイオンによる置換率は、公知の酸・塩基滴定によって測定して求められる数値である。
前記置換率が10〜50モル%であることにより、電極の容量維持率を一層向上させることができる。このメカニズムとして、前記置換によりカルボキシル基同士の相互作用が抑制されるため、前記高分子同士の凝集が抑えられ、分散性が向上するためである考えられる。
前記置換率を10〜50モル%に調整する方法としては、例えば、未置換の高分子化合物を置換された高分子化合物に適当量混合することによって、調整することができる。
前記バインダーに含まれる第一の高分子化合物及び第二の高分子化合物の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩であることが好ましい。
ここで、「ポリ(メタ)アクリル酸」の用語は、「アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも何れか一方をモノマーとして含む重合体」の意味で使用する。ポリ(メタ)アクリル酸には、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうち少なくとも何れか一方が、アクリル酸又はメタクリル酸と共重合するモノマーとして含まれていてもよい。ポリ(メタ)アクリル酸には、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも何れか一方が50モル%以上、好ましくは80モル%以上のモノマー組成比で含まれていることが好ましい。
ポリ(メタ)アクリル酸の塩としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸が有するカルボキシル基の水素原子の少なくとも一部がアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンによって置換されたものが挙げられる。なかでも、充放電特性を向上させる観点から、リチウムイオンの塩であるポリ(メタ)アクリル酸リチウムが好ましい。
ポリアクリル酸リチウムは例えば以下の方法で得られる。
水溶液中でポリアクリル酸(アルドリッチ社製、型番:416002-500ML)と水酸化リチウム(和光純薬工業社製、型番:169-18591)をモル比で100:20となるように混ぜて反応させることによって、全酸基の20モル%がリチウム塩となったポリアクリル酸リチウムを調製することができる。充放電特性を向上させる観点から、ポリアクリル酸リチウムは、その全酸基(全カルボキシル基)の10〜50モル%がリチウム塩になっていることが好ましい。
カルボキシル基を有しない高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)等が例示できる。
前記電極材には、前記活物質の他に導電助剤を添加してもよい。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、フラーレン、ナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。
前記電極材を塗布する集電体としては、公知の正極集電体、負極集電体が挙げられる。
リチウムイオン二次電池の用途においては、例えば、アルミニウム箔製の正極集電体と、銅箔性の負極集電体が挙げられる。前記集電体に代えて、他の基材を使用してもよい。
前記電極材を集電体又は基材に塗布する方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、リップコーター等の各種コーターを用いる方法;ドクターブレード法;ディッピング法等の、各種塗布方法が挙げられる。
前記電極材を塗布する際の厚みとしては、例えば、1μm〜500μmが挙げられる。
塗布した電極材を乾燥し、不要な溶媒を除去することによって、集電体又は基材上に前記電極材からなる電極活物質層を形成することができる。
集電体上に電極活物質層を形成する場合は、乾燥後に、集電体及び電極活物質層からなる電極が得られる。
基材上に電極活物質層を形成する場合は、乾燥後に、基材上から電極活物質層を剥がして、別に準備した集電体に当該電極活物質層を設置することにより、集電体及び電極活物質層からなる電極が得られる。
前記電極材を乾燥する温度としては、バインダーの種類にもよるが、例えば、30〜140℃が好ましい。
30℃以上であると、乾燥速度が充分となり、水分や電極材の溶媒を充分に除去することができる。
140℃以下であると、バインダーである高分子化合物の劣化を防止し、電極活物質層にひび割れや剥がれ等が生じることを防止することができる。
電極材を乾燥する程度としては、例えば、乾燥後の電極材からなる電極活物質層に含まれる溶媒の量が、当該電極活物質層の総質量に対して100ppm以下(即ち、0.01質量%以下)となる程度が好ましい。100ppm以下であると、電極活物質層の構造的な安定性が高まるとともに、良好な導電性が得られ易くなる。ここで、上記溶媒の量は、カールフィッシャー法により測定される値である。
《負極の製造方法》
以下、本発明にかかる電極の製造方法の一実施形態として、リチウムイオン二次電池に適用可能な負極の製造方法を説明する。
具体的には、リチウムを吸蔵可能な金属酸化物、及び官能基としてカルボキシル基を有するバインダーを含む負極材を集電体に塗布した後、前記負極材を30〜140℃で乾燥する工程を有する方法を説明する。
(負極材の乾燥温度)
集電体上に塗布した負極材(負極用の電極材)の乾燥温度を30〜140℃で実施することにより、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。ここで推測されるメカニズムとして、30℃以上にすることで負極材に残存した水分を取り除くことができるとともに、140℃以下で乾燥することによって負極材中のバインダーが有するカルボキシル基の脱水反応及び脱水縮合反応が抑制されるために、金属酸化物の表面水酸基とカルボキシル基の相互作用点が増加することで、金属酸化物表面との結着性が向上するため、サイクル特性が向上すると考えられる。
上記のメカニズムを考慮して、負極材の乾燥温度は、35〜140℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、80〜100℃が更に好ましい。
(負極材の乾燥時間)
集電体上に塗布した負極材の乾燥時間は、30〜140℃の温度範囲において、4時間〜30時間が好ましく、5時間〜20時間がより好ましく、6時間〜12時間が更に好ましい。
4〜6時間以上の乾燥処理を行うことにより、例えば18〜35μm程度の厚みで塗布された負極材を充分に乾燥し、集電体上に固定することができる。
12〜30時間以下で乾燥処理を行うことにより、負極材中のバインダーが有するカルボキシル基の脱水反応及び脱水縮合反応を抑制することができる。
(負極における溶媒の含有量)
乾燥処理を終了する目安の一つとして、負極材中の溶媒の含有量が充分に低下していることが挙げられる。つまり、負極材に溶媒が含まれる場合、乾燥処理で溶媒を除くことによって、乾燥後に得られた負極に含まれる溶媒の量は100ppm以下にすることが好ましく、50ppm以下にすることがより好ましく、10ppm以下にすることが更に好ましい。負極に含まれる溶媒を充分に除くことによって、溶媒による電池性能への悪影響を除くことができる。
(バインダー)
本実施形態の製造方法において使用するバインダーは、前述した通り、Mwが相違する2種類の高分子化合物である。
官能基としてカルボキシル基を有する高分子化合物として、例えば、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、ポリメタクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)等、リチウムイオン二次電池の分野で使用される公知のバインダーが挙げられる。
集電体上に塗布した負極材からなる負極活物質層の構造的強度及び当該負極活物質層を備えた二次電池のサイクル特性の両方を向上させる観点から、ポリ(メタ)アクリル酸を含むバインダーを使用することが好ましい。当該バインダーに含まれるポリ(メタ)アクリル酸の含有量は、バインダーの総質量に対して50〜100質量%であることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、負極材を構成するバインダーの全質量に対して、カルボキシル基を有するバインダーの含有量は、10〜95質量%が好ましく、30〜85質量%がより好ましく、50〜80質量%が更に好ましい。カルボキシル基を有するバインダーを50質量%以上の含有量で使用することにより、ケイ素系の活物質との親和性が向上する。
(リチウムイオンを吸蔵可能な金属酸化物)
本実施形態の製造方法において、前記金属酸化物の種類は特に制限されず、公知のリチウムイオン二次電池の電極材料として使用される、リチウムイオンを吸蔵可能な金属酸化物が適用できる。好適な具体例として、酸化ケイ素が挙げられる。
(酸化ケイ素)
本実施形態の製造方法において使用する酸化ケイ素としては、一般式「SiO(式中、zは0.5〜1.5のいずれかの数である。)」で表される酸化ケイ素が例示できる。
ここで酸化ケイ素を「SiO」単位で見た場合、このSiOは、アモルファス状のSiOであるか、又はSi:SiOのモル比が約1:1となるように、ナノクラスターのSiの周囲にSiOが存在する、Si及びSiOの複合物である。SiOは、充放電時におけるSiの膨張及び収縮に対して緩衝作用を有すると推測される。
前記酸化ケイ素は、粉末状であることが好ましく、粒子状であることがより好ましく、例えば、平均粒子径が30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが特に好ましく、2.0μm以下であることが最も好ましい。また、酸化ケイ素とバインダーの配合比率にもよるが、前記平均粒子径が1.0μm以下であると最も好ましい傾向がある。このような微粉末状の酸化ケイ素を用いることで、後述する粒子状導電助剤及び繊維状導電助剤の併用による効果が、より顕著に得られる。
前記酸化ケイ素の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡を用いて、任意の酸化ケイ素の粒子約100個について粒子径を計測し、その平均値を算出することで求められる。
酸化ケイ素は、例えば、ボールミル等を用いる公知の手法で粉砕することにより、平均粒子径を所望の値に調節できる。
(負極材中の金属酸化物とバインダーの質量比)
本実施形態の製造方法において使用する負極材中の金属酸化物とバインダーの質量比(金属酸化物/バインダー)は、1〜10であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。
上記1〜10の範囲のうち、更に好ましい3〜8の範囲に近い程、金属酸化物及びその他の負極活物質を充分に集電体上に固定でき、金属酸化物の含有量比を増やすことができるため、高いエネルギー密度が得られる。また、金属酸化物の表面がバインダーによって被覆された割合を高めることができる。前記割合を高めることによって、ポリアクリル酸等のバインダーが金属酸化物の表面保護膜として機能し、金属酸化物と電解質との過剰な反応を防いで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性をより向上させることができる。
前記被覆された割合としては、例えば前記表面の5割以上が被覆されていることが好ましく、7割以上が被覆されていることがより好ましい。
(導電助剤)
本実施形態の製造方法において使用する負極材には、負極の導電性を高めるために導電助剤が含まれていることが好ましい。導電助剤の種類は特に制限されず、公知のリチウムイオン二次電池に使用される導電助剤が適用できる。具体例として、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤が挙げられる。
前記負極材において、前記金属酸化物、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤及びバインダーの総質量に対する、前記金属酸化物の含有量は、40〜89質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。前記金属酸化物の含有量が40質量%以上であると、リチウムイオン二次電池の放電容量がより向上し、前記金属酸化物の含有量が89質量%以下であると、より安定な負極構造が得られる。
(粒子状導電助剤)
前記粒子状導電助剤は、導電助剤として機能する粒子状のものであれば特に限定されないが、好ましいものとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;黒鉛(グラファイト);フラーレン等が例示できる。
粒子状導電助剤は、平均粒子径が10nm〜100nmであることが好ましく、15nm〜60nmであることがより好ましい。また、粒子状導電助剤は、各々の粒子が数珠つなぎになった様な、粒子同士が互いに連なった構造を有することが好ましい。このような平均粒子径又は構造を有する粒子状導電助剤を用いると、繊維状導電助剤との併用による効果がより顕著に得られる。
粒子状導電助剤の平均粒子径は、上記の酸化ケイ素の平均粒子径の場合と同様の方法で求められる。また、粒子状導電助剤の平均粒子径を調節する方法は、一般的な微粒子の平均粒子径を調節する方法が適用できる。
粒子状導電助剤は、後述する負極活物質層中において粒子同士が連なった構造を有し、前記金属酸化物及び後述する繊維状導電助剤の少なくとも一方との接触面積を高めることによって、負極の導電性の向上に寄与していると推測される。
本実施形態の製造方法において、前記粒子状導電助剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜調整すればよい。
前記負極材において、前記金属酸化物、粒子状導電助剤、後述する繊維状導電助剤及びバインダーの総質量に対する、前記粒子状導電助剤の含有量は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。前記粒子状導電助剤の含有量が3質量%以上であると、粒子状導電助剤を用いたことによる効果がより顕著に得られ、前記粒子状導電助剤の含有量が30質量%以下であると、繊維状導電助剤との併用による効果がより顕著に得られる。
(繊維状導電助剤)
前記繊維状導電助剤は、導電助剤として機能する繊維状のものであれば特に限定されないが、好ましいものとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンが例示できる。
繊維状導電助剤は、平均繊維径が5nm〜300nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。また、繊維状導電助剤は、平均繊維長が0.1μm〜30μmであることが好ましく、0.5μm〜20μmであることがより好ましい。このような繊維状導電助剤を用いることで、粒子状導電助剤との併用による効果がより顕著に得られる。
繊維状導電助剤の平均繊維径は、例えば、電子顕微鏡を用いて、任意の繊維状導電助剤約100本について繊維径を計測し、その平均値を算出することで求められる。同様に、繊維状導電助剤の平均繊維長は、例えば、電子顕微鏡を用いて、任意の繊維状導電助剤約100本について繊維長を計測し、その平均値を算出することで求められる。
繊維状導電助剤は、後述する負極活物質層中において、好ましくは負極活物質層全体に、網目構造を形成することで、負極活物質層の構造安定化に寄与すると共に、負極活物質層中に導電ネットワークを形成して、導電性の向上に寄与していると推測される。
本実施形態の製造方法において、前記繊維状導電助剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜調整すればよい。
前記負極材において、前記金属酸化物、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤及びバインダーの総質量に対する、繊維状導電助剤の含有量は、1〜25質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましい。前記繊維状導電助剤の含有量が1質量%以上であると、繊維状導電助剤を用いたことによる効果がより顕著に得られ、前記繊維状導電助剤の含有量が25質量%以下であると、粒子状導電助剤との併用による効果がより顕著に得られる。
本実施形態の製造方法で使用する前記負極材において、「粒子状導電助剤:繊維状導電助剤」の配合量の質量比率(配合質量比)は、90:10〜30:70であることが好ましく、80:20〜40:60であることがより好ましい。粒子状導電助剤及び繊維状導電助剤の配合質量比がこのような範囲であることで、粒子状導電助剤及び繊維状導電助剤の併用による効果がより顕著に得られる。
(その他の成分)
前記負極材は、酸化ケイ素、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤及びバインダー以外に、これらに該当しないその他の成分がさらに配合されてなるものでもよい。
前記その他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。例えば、好ましい成分としては、前記配合成分(酸化ケイ素、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤、バインダー)を溶解又は分散させるための溶媒が例示できる。
溶媒が配合されてなる負極材は、使用時において流動性を有する液状組成物であることが好ましい。
前記溶媒は、前記配合成分の種類に応じて任意に選択できる。例えば、好ましい溶媒としては、水、有機溶媒が例示できる。
前記有機溶媒で好ましいものとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の鎖状又は環状アミド;アセトン等のケトンが例示できる。
前記溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
負極材における前記溶媒の配合量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、溶媒が配合された液状組成物である負極材を塗工及び乾燥させて、後述する負極活物質層を形成する場合には、この液状組成物が塗工に適した粘度となるように、溶媒の配合量を調節すればよい。具体的には、負極材において、配合成分の総量に対する、溶媒以外の配合成分の総量の割合が、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜35質量%となるように、溶媒の配合量を調節するとよい。
前記その他の成分として、前記溶媒以外の成分(その他の固体成分)を配合する場合、前記負極材において、溶媒以外の配合成分の総量に対する、その他の固体成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
前記負極材は、前記粒子状導電助剤がカーボンブラックであり、前記繊維状導電助剤がカーボンナノチューブである負極材が特に好ましい。
前記負極材は、前記酸化ケイ素、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤、バインダー、及び必要に応じてその他の成分を配合することで製造できる。
各成分の配合時には、各成分を添加して、各種手段により十分に混合することが好ましい。各成分を個別に順次添加しながら混合してもよいし、全成分を一度に添加してから混合してもよく、各成分が均一に混合されることが好ましい。
前記その他の成分として前記溶媒を配合する場合、この溶媒は、少なくとも一部を、前記酸化ケイ素、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤、バインダー、及びその他の固体成分からなる群から選択される一種以上とあらかじめ混合して、その選択された成分の溶液又は分散液として、配合されてもよい。前記溶液又は分散液の調製に用いる溶媒は、配合する溶媒の全量であってもよい。
各成分の混合方法は、特に限定されず、例えば、撹拌子、撹拌翼、ボールミル、スターラー、超音波分散機、超音波ホモジナイザー、自公転ミキサー等を使用する公知の方法を適用することができる。また、複数種の方法を組み合わせて混合してもよい。
混合温度、混合時間等の混合条件は、各種方法に応じて適宜設定すればよい。通常は、混合時の温度は10〜50℃であることが好ましく、15〜35℃であることがより好ましい。また、混合時間は3〜40分程度が好ましく、5〜20分程度がより好ましい。
各成分を混合して得られた組成物は、そのまま負極材として用いてもよいし、例えば、配合した前記溶媒の一部を留去等によって除去するなど、得られた組成物に何らかの操作を追加して行って得られたものを、負極材として用いてもよい。
[負極]
本実施形態の製造方法によって得られた負極は、前記負極材が集電体上に塗布され、乾燥されてなる。前記負極は、前記集電体上に前記負極材によって構成された負極活物質層を有することが好ましい。また、電池の容量発現率を高める観点から、前記負極活物質層にはリチウムがプレドープされていることが好ましい。前記負極のその他の構成は、公知の負極と同様の構成が適用できる。
集電体は、リチウムイオン二次電池の分野で使用される公知の集電体が適用できる。具体例として、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
集電体の形状は特に制限されないが、シート状であることが好ましい。シート状集電体の厚みは特に制限されないが、例えば5〜20μmの厚みが挙げられる。
負極材が乾燥されてなる負極活物質層の厚みは、特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。
負極活物質層を構成する負極材を集電体上に塗布(塗工)する方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、リップコーター等の各種コーターを用いる方法;ドクターブレード法;ディッピング法等の、各種塗布方法が例示できる。
集電体上に塗布した負極材の乾燥は、公知の方法で常圧下又は減圧下で行うことができる。乾燥温度及び乾燥時間は、前述した通りである。
負極活物質層は、集電体上に直接形成してもよいし、他の基材上に形成してから集電体上に移動し、集電体上に圧着させてもよい。集電体上に直接形成された負極活物質層を圧着しても構わない。
負極活物質層にリチウムをプレドープする方法は、特に限定されないが、例えば、負極活物質層を、電解液を介して金属リチウムに接触させる方法が挙げられる。このプレドープ方法によれば、負極活物質層の広範囲にリチウムをプレドープすることができる。前記電解液は、この負極を用いてリチウムイオン二次電池を製造する際に用いる電解液と同じであることが好ましい。接触させる金属リチウムは、シート状(金属リチウム箔)であることが好ましい。なお、リチウムのプレドープは、リチウムイオン(Li)ではなくリチウム金属(Li)を用いて行う必要がある。
また、リチウムをプレドープする他の方法として、活物質スラリー(負極活物質層を形成する材料の組成物)の中にリチウム金属またはリチウム合金を混ぜ込むことでプレドープする方法が挙げられる。さらに、外部電源を用いて電気化学的にプレドープする公知方法が挙げられる。
負極にプレドープされたリチウムの量は、負極活物質層中の二酸化ケイ素(SiO)に対して、1〜4倍モル量であることが好ましく、2〜4倍モル量であることがより好ましく、3〜4倍モル量であることが特に好ましい。
負極にプレドープされたリチウムは負極活物質層中の二酸化ケイ素と不可逆的に反応して、リチウムシリケート(LiSiO)を生成すると推測される。このプレドープが施された負極を備えたリチウムイオン二次電池においては、初期充電工程で負極にリチウムが吸蔵される際に、負極活物質層中の酸化ケイ素との上記反応が抑制されるため、放電時のリチウムの放出が妨げられることがなく、放電容量の低下が抑制される。
《正極の製造方法》
本発明にかかる電極の製造方法によって、リチウムイオン二次電池に適用可能な正極を製造することもできる。正極は、負極材に代えて正極材を用いる点以外は、負極の場合と同様の方法で製造することができる。具体的には、例えば、正極活物質、バインダー及び溶媒、並びに必要に応じて導電助剤を配合してなる正極材を集電体に塗布した後、前記正極材を乾燥することによって、集電体上に正極活物質層を備えた正極が得られる。正極活物質層は、例えば、20〜60μmの厚さで形成することができる。
正極におけるバインダー、溶媒及び集電体は、いずれも負極におけるバインダー、溶媒及び集電体と同様のものが適用できる。
正極における好適な導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック等の炭素系材料が挙げられる。
正極における前記導電助剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
正極活物質としては、公知の金属リチウム化合物が例示できる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、オリビン型リン酸リチウム等が例示できる。正極活物質は、一種が単独で使用されてもよいし、二種以上が併用されてもよく、二種以上が併用される場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記正極材に配合された各成分の総質量に対する、正極活物質、バインダー、溶媒、及び導電助剤のそれぞれの成分の含有量は、前記負極材に配合された各成分の総質量に対する、前記負極活物質、バインダー、溶媒、及び導電助剤のそれぞれの成分の含有量と同様であってもよいし、異なっていてもよい。
≪リチウムイオン二次電池の製造方法≫
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、前述した電極の製造方法によって電極を得る工程と、対極(対向電極)との間に電解質を設置する工程を有する。
前記電極が負極である場合、前記対極は正極であり、前記電極が正極である場合、前記対極は負極である。前記対極は、前述した本発明にかかる電極の製造方法によって得られた対極であってもよいし、他の方法で製造された対極であってもよい。
本発明に係る製造方法により得られたリチウムイオン二次電池は、本発明に係る電極の製造方法によって得られた電極を備えたことを特徴とする。この電極を備えた点以外は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成が適用できる。前記構成としては、例えば、負極及び正極、並びに、電解液(電解質溶液)、ゲル電解質、固体電解質等の電解質を備えた構成が挙げられる。さらに、負極と正極との間に、セパレータを備えていてもよい。
[電解液]
前記電解液としては、従来のリチウムイオン二次電池で使用される電解液が使用できる。例えば、カルボン酸リチウム塩を電解質として含む電解液が好ましい。
カルボン酸リチウム塩としては、例えば、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、等の1価カルボン酸のリチウム塩;シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム等の2価カルボン酸のリチウム塩;乳酸リチウム等の水酸基を有する1価カルボン酸のリチウム塩等が例示できる。これらの中でも、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、コハク酸リチウムがより好ましく、シュウ酸リチウムが特に好ましい。
カルボン酸リチウム塩は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
カルボン酸リチウム塩と錯形成反応が可能な三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素錯体をカルボン酸リチウム塩と共に電解質として使用することも例示できる。
好ましい三フッ化ホウ素錯体としては、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体(BF・O(CH)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、等の三フッ化ホウ素アルキルエーテル錯体;三フッ化ホウ素メタノール錯体(BF・HOCH)、三フッ化ホウ素プロパノール錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体等の三フッ化ホウ素アルコール錯体が例示できる。
前記電解液を構成する有機溶媒は特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル及びスルホランからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
前記電解液における有機溶媒の配合量は特に限定されず、例えば、電解質の種類に応じて、適宜調節すればよい。通常は、リチウム原子(Li)の濃度が、好ましくは0.2〜3.0モル/kg、より好ましくは0.4〜2.0モル/kgとなるように、配合量を調節することが好ましい。
また、前記電解液としては、電解質として六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ素リチウム、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム等の公知のリチウム塩が有機溶媒に溶解されてなるものも例示できる。
前記電解液に公知のマトリクスポリマーが含有されて、当該電解液がゲル状態になった公知のゲル電解質を本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造に使用してもよい。また、前記電解液又はゲル電解質を構成する溶媒が乾燥除去されて固体状態になった公知の固体電解質を本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造に使用してもよい。
[セパレータ]
前記セパレータの材質は特に限定されないが、微細孔を有する高分子膜、微細孔を有する無機質膜、不織布、ガラスファイバー等が例示でき、これら材質からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
図1は、本発明によって得られたリチウムイオン二次電池の実施形態の一例を示す断面模式図である。ここに例示するリチウムイオン二次電池1は、シート状の負極13及び正極11が、セパレータ12を介して積層されたものである。セパレータは、単層であってもよいし、二層以上が積層された複数層であってもよい。図1において、電解質はセパレータ12に含浸されている。電解質は電解液、ゲル電解質又は固体電解質の何れの形態であってもよい。ここでは、負極13及び正極11がそれぞれ1枚ずつ積層された構成が示されているが、他の構成として、例えば、負極13、セパレータ12及び正極11がこの順に積層された積層体が、間にさらにセパレータ12を介して、複数個繰り返し積層された構成であってもよい。
前記リチウムイオン二次電池は、公知の方法に従って、例えば、グローブボックス内又は乾燥空気雰囲気下で、前記電解液、ゲル電解質又は固体電解質、及び電極等を用いて製造すればよい。
例えば、ゲル電解質を備えたリチウムイオン二次電池であれば、加熱して液状としたゲル電解質を、負極及び正極のいずれか一方又は両方の電極面上に塗工し、次いで、このゲル電解質を備えた負極及び正極を、これらの電極面が対向するようにゲル電解質を介して積層し、必要に応じてこれらの電極面間にセパレータを介在させることで、容易に製造できる。液状のゲル電解質は、例えば、バーコーター等の各種コーターを用いる方法で、電極面上に塗工できる。
また、例えば、電解液を備えたリチウムイオン二次電池であれば、ゲル電解質に代えてこの電解液を、負極及び正極の電極面に接触するように配置すること以外は、上記のゲル電解質を備えたリチウムイオン二次電池と同様の方法で、容易に製造できる。
前記リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、角型、コイン型、シート型等、種々のものに調節できる。
リチウムイオン二次電池は、カルボン酸リチウム塩並びに三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、あるいはカルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体を用いた場合、初期充電時に負極表面上において、フッ化リチウム(LiF)を含む界面皮膜(以下、「SEI」と略記する)を形成する。このSEIは、充放電時にリチウムイオンに溶媒和された溶媒分子が負極中に進入するのを阻止し、負極構造の破壊を抑制して、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上に寄与する。
本発明によって製造されたリチウムイオン二次電池は、酸化ケイ素、粒子状導電助剤、繊維状導電助剤及びバインダーが配合されてなる負極材を用いて形成された負極活物質層を有し、且つリチウムがプレドープされている負極を備えていることが好ましい。
前記リチウムイオン二次電池は、粒子状導電助剤及び繊維状導電助剤を併用し、さらにリチウムがプレドープされている負極を用いたことにより、容量発現率と、充放電を繰り返し行ったときの容量維持率とが共に高く、充放電特性に優れる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(1)使用した原料
本実施例で使用した原料を以下に示す。
・導電助剤
アセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」、平均粒子径48nm)
カーボンナノチューブ(保土谷化学社製「NT−7」、平均繊維径65nm、平均繊維長6μm以上)
・バインダー
スチレン−ブタジエン樹脂(以下、「SBR」と略記する)(JSR社製)
ポリアクリル酸(10万)(重量平均分子量Mw=10万、アルドリッチ社製)
ポリアクリル酸(25万)(重量平均分子量Mw=25万、アルドリッチ社製)
ポリアクリル酸(100万)(重量平均分子量Mw=100万、アルドリッチ社製)
水酸化リチウム(和光純薬工業社製)
・カルボン酸リチウム塩
シュウ酸リチウム(Alfa社製)
・三フッ化ホウ素錯体
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF・O(C)(アルドリッチ社製)
・有機溶媒
エチレンカーボネート(以下、「EC」と略記する)(キシダ化学社製)
プロピレンカーボネート(以下、「PC」と略記する)(キシダ化学社製)・溶媒
ジメチルカーボネート(以下、「DMC」と略記する)(キシダ化学社製)
<有機酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体の合成>
[合成例1](シュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体の合成)
シュウ酸リチウム(22.3g、223mmol)を丸底フラスコに量り取り、これを200mLのDMCに懸濁させた。これに23℃で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(63.3g、446mmol)をゆっくりと滴下した後、室温(23℃)で24時間撹拌し、反応液が透明になって不溶物が見られず、均一な溶液となったことを確認した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いて、反応液から溶媒及び不純物を留去した。その後、析出した白色の固体を50℃にて乾燥させることにより、白色粉末のシュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体((COOLi)・(BF)を得た(収率96.5%)。
<リチウムイオン二次電池の製造>
[試験例1]
(負極材の製造)
一酸化ケイ素(SiO、平均粒子径1.0μm、69質量部)、アセチレンブラック(10質量部)、カーボンナノチューブ(6質量部)、ポリアクリル酸(10万)(以下、「PAA(10万)」と略記することがある、10質量部)、及びSBR(5質量部)を試薬瓶に入れ、蒸留水を添加して濃度調整した後、自公転ミキサーを用いて2000rpmで3分間混合した。次いで、得られた混合物を超音波ホモジナイザーによって10分間分散処理し、得られた分散物を自公転ミキサーによって2000rpmで3分間混合し、負極材を得た。以上の操作は、すべて25℃で行った。
(電解液の製造)
有機溶媒として、EC及びPCの混合溶媒(EC:PC=30:70(体積比))をサンプル瓶に量り取り、ここにシュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体(1.82g)を加えて、シュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体中のリチウム原子の濃度が1.0モル/kgとなるようにし、23℃で混合することにより、電解液を得た。
(負極の製造)
バーコーターを用いて、厚さ18μmの銅箔の両面に負極材を塗布し、60℃のホットプレート上で乾燥させた後、ロールプレス機を用いて1kNでプレスすることにより、集電体である銅箔上に厚さ25μmの負極活物質層を形成し、負極前駆体を得た。さらに、残存水分を十分に除去するためにリチウム電池の作製前に電極を真空下で、50℃で6時間乾燥させた。
形成した負極活物質層上に、電解液を50μL/cmで滴下し、その上に厚さ200μmのリチウム金属箔を重ねた。この状態を24時間静置することにより、負極活物質層にリチウムをプレドープし、負極を得た。プレドープ後に残ったリチウム金属箔を取り除いた。
(正極の製造)
ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(Ni:Co:Mn=1:1:1、LiNMC)(93質量部)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(3質量部)と、導電助剤であるカーボンブラック(4質量部)の混合し、得られた混合物をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させて、正極材(スラリー)を得た。次いで、バーコーターを用いて厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に正極材を塗布し、100℃、0.1MPa、10時間の条件で減圧乾燥させた後、ロールプレスすることにより、集電体であるアルミニウム箔上に厚さ60μmの正極活物質層が形成された正極を得た。
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記で得た負極及び正極を直径16mmの円盤状に打ち抜いた。また、ガラスファイバーからなるセパレータを直径17mmの円盤状に打ち抜いた。これら円盤状の正極、セパレータ及び負極を、この順にSUS製の電池容器(CR2032)内で積層し、上記で得た電解液を、セパレータ、負極及び正極に含浸させ、さらに負極上に、SUS製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)を載せ、蓋をすることにより、コイン型のリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例2]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、ポリアクリル酸(25万)(以下、「PAA(25万)」と略記することがある。)を10質量部使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例3]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、ポリアクリル酸(100万)(以下、「PAA(100万)」と略記することがある。)を10質量部使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例4]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(25万)9質量部と、PAA(100万)1質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例5]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(25万)7質量部と、PAA(100万)3質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例6]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(25万)5質量部と、PAA(100万)5質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例7]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(25万)3質量部と、PAA(100万)7質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例8]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(25万)1質量部と、PAA(100万)9質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例9]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)9質量部と、PAA(100万)1質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例10]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)7質量部と、PAA(100万)3質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例11]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)5質量部と、PAA(100万)5質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例12]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)3質量部と、PAA(100万)7質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例13]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)1質量部と、PAA(100万)9質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例14]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)9質量部と、PAA(25万)1質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例15]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)7質量部と、PAA(25万)3質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例16]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)5質量部と、PAA(25万)5質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例17]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)3質量部と、PAA(25万)7質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
[試験例18]
負極の製造において、PAA(10万)10質量部に代えて、PAA(10万)1質量部と、PAA(25万)9質量部と、を混合して使用した以外は、試験例1と同様にリチウムイオン二次電池を製造した。
試験例1〜3のリチウムイオン二次電池は、1種類のバインダーを含む負極を備えた比較例の二次電池である。
試験例4〜18のリチウムイオン二次電池は、重量平均分子量が異なる2種類のバインダーを含む負極を備えた実施例の二次電池である。
<リチウムイオン二次電池の充放電特性の評価>
各試験例で作製したリチウムイオン二次電池について、25℃において0.2Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vとして電流値が0.1Cに収束するまで行った後、0.2Cの定電流放電を2.5Vまで行った。次いで、充放電電流を1Cとして同様の方法で、充放電サイクルを3回繰り返し行い、リチウムイオン二次電池の状態を安定させた。
次いで、充放電電流を1Cとして同様の方法で、充放電サイクルを繰り返し行い、100サイクルでの容量維持率({[100サイクル目の放電容量(mAh)]/[1サイクル目の放電容量(mAh)]}×100)(%)を算出した。その結果を表2〜表4に示す。
<負極の剥離強度の評価>
各試験例で作製した負極について、90度剥離試験機(TE−3001:テスター産業(株)製)にて、剥離強度を測定した。
試験機の測定部であるアルミ板の基台に巾19mmの両面テープ(SPG−19:スリーエム ジャパン(株)製)を貼り付け、その上に負極を貼り付けて圧着した。JIS
Z 0237(2000)を参照し、圧着は金属ローラーで行った。
続いて、貼り付けた負極の端部を挟み、引っ張る動作を一度行った。剥離速度は、30mm/分とし、剥離角度は90度とし、剥離時の剥離強度を測定した。剥離強度の数値が大きい程、外部からの応力に対する耐性が優れることを示す。その結果を表2〜表4に示す。
Figure 2020061381
Figure 2020061381
Figure 2020061381
上記の結果から、次のことが明らかである。
・試験例4,5,10,18の容量維持率及び剥離強度が優れる。
1…リチウムイオン二次電池、11…正極、12…セパレータ及び電解質、13…負極、
14…筐体(ケース)、15…絶縁性ガスケット、16…キャップ
上記の結果から、次のことが明らかである。
・試験例4,5,10,18の容量維持率及び剥離強度が優れる。
試験例4,5,10は実施例であり、試験例1〜3及び試験例6〜9,11〜18は比較例である。

Claims (20)

  1. 集電体と、前記集電体上に形成された電極活物質層とを備え、前記電極活物質層は、活物質及びバインダーを含み、
    前記バインダーは、第一の高分子化合物と、前記第一の高分子化合物よりも重量平均分子量(Mw)が小さい第二の高分子化合物とを含み、
    [前記第一の高分子化合物のMw/前記第二の高分子化合物のMw]で表されるMw比が、1.5〜10である電極であって、
    前記バインダーの総質量に対して、前記第一の高分子化合物の含有比率が30〜80質量%であり、前記第二の高分子化合物の含有比率が20〜70質量%であり、
    前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がカルボキシル基を有し、
    前記カルボキシル基を有する高分子化合物は、一部のカルボキシル基の水素原子がリチウムイオンによって置換されている、電極。
  2. 前記水素原子のリチウムイオンによる置換率が10〜50モル%である、請求項1に記載の電極。
  3. 前記Mw比が5〜10である、請求項1又は2に記載の電極。
  4. 前記第二の高分子化合物のMwが1万〜400万である、請求項1〜3の何れか一項に記載の電極。
  5. 前記第二の高分子化合物のMwが10万〜100万である、請求項1〜4の何れか一項に記載の電極。
  6. 前記活物質と前記バインダーの質量比(活物質/バインダー)が1〜10である、請求項1〜5の何れか一項に記載の電極。
  7. 前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩である、請求項1〜6の何れか一項に記載の電極。
  8. 前記活物質はリチウムを吸蔵可能な炭素材料又は金属酸化物を含む、請求項1〜7の何れか一項に記載の電極。
  9. 前記活物質は酸化ケイ素である、請求項8に記載の電極。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載の電極と、対極と、電解質とを有するリチウムイオン二次電池。
  11. 活物質及びバインダーを含む電極材を集電体又は基材に塗布した後、乾燥することによって電極活物質層を形成する工程を有する電極の製造方法であって、
    前記バインダーは、第一の高分子化合物と、前記第一の高分子化合物よりも重量平均分子量(Mw)が小さい第二の高分子化合物とを含み、
    [前記第一の高分子化合物のMw/前記第二の高分子化合物のMw]で表されるMw比が、1.5〜10であり、
    前記バインダーの総質量に対して、前記第一の高分子化合物の含有比率が30〜80質量%であり、前記第二の高分子化合物の含有比率が20〜70質量%であり、
    前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がカルボキシル基を有し、
    前記のカルボキシル基を有する高分子化合物は、一部のカルボキシル基の水素原子が、リチウムイオンによって置換されている、電極の製造方法。
  12. 前記水素原子のリチウムイオンによる置換率が10〜50モル%である、請求項11に記載の電極の製造方法。
  13. 前記活物質と前記バインダーとを溶媒に分散することによって前記電極材を得る工程を有する、請求項11又は12に記載の電極の製造方法。
  14. 前記の塗布された電極材を30〜140℃で乾燥する、請求項11〜13の何れか一項に記載の電極の製造方法。
  15. 前記の塗布された電極材を乾燥し、形成される電極活物質層に含まれる溶媒の量を、前記電極活物質層の総質量に対して100ppm以下にする、請求項11〜14の何れか一項に記載の電極の製造方法。
  16. 前記電極材に含まれる前記活物質と前記バインダーの質量比(活物質/バインダー)が1〜10である、請求項11〜15の何れか一項に記載の電極の製造方法。
  17. 前記活物質は、リチウムを吸蔵可能な炭素材料又は金属酸化物を含む、請求項11〜16の何れか一項に記載の電極の製造方法。
  18. 前記活物質は酸化ケイ素である、請求項11〜17の何れか一項に記載の電極の製造方法。
  19. 前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩である、請求項11〜18の何れか一項に記載の電極の製造方法。
  20. 請求項11〜19の何れか一項に記載の電極の製造方法によって電極を得る工程と、前記電極と対極との間に電解質を設置する工程を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
JP2020001306A 2020-01-08 2020-01-08 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法 Active JP6871436B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020001306A JP6871436B2 (ja) 2020-01-08 2020-01-08 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020001306A JP6871436B2 (ja) 2020-01-08 2020-01-08 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015198042A Division JP6645792B2 (ja) 2015-10-05 2015-10-05 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020061381A true JP2020061381A (ja) 2020-04-16
JP6871436B2 JP6871436B2 (ja) 2021-05-12

Family

ID=70219077

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020001306A Active JP6871436B2 (ja) 2020-01-08 2020-01-08 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6871436B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20230207792A1 (en) * 2021-12-23 2023-06-29 Murata Manufacturing Co., Ltd. Negative electrode for secondary battery, and secondary battery

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004079327A (ja) * 2002-08-16 2004-03-11 Hitachi Maxell Ltd 非水二次電池および非水二次電池用正極とその製造方法
JP2007287570A (ja) * 2006-04-19 2007-11-01 Iwate Univ リチウムイオン二次電池
JP2009252348A (ja) * 2008-04-01 2009-10-29 Panasonic Corp 非水電解質電池

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004079327A (ja) * 2002-08-16 2004-03-11 Hitachi Maxell Ltd 非水二次電池および非水二次電池用正極とその製造方法
JP2007287570A (ja) * 2006-04-19 2007-11-01 Iwate Univ リチウムイオン二次電池
JP2009252348A (ja) * 2008-04-01 2009-10-29 Panasonic Corp 非水電解質電池

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20230207792A1 (en) * 2021-12-23 2023-06-29 Murata Manufacturing Co., Ltd. Negative electrode for secondary battery, and secondary battery

Also Published As

Publication number Publication date
JP6871436B2 (ja) 2021-05-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101460930B1 (ko) 축전 디바이스용 전극, 전극용 슬러리, 전극용 바인더 조성물 및 축전 디바이스
KR102107373B1 (ko) 비수계 이차 전지 부극용 활물질 그리고 그것을 사용한 부극 및 비수계 이차 전지
JP6302322B2 (ja) リチウムイオン二次電池
JP6245173B2 (ja) 二次電池用負極及び二次電池
EP3493304B1 (en) Conductive resin composition for electrodes, electrode composition, electrode using same and lithium ion battery
KR20140082975A (ko) 셀룰로오스 화이버를 바인더로서 함유하는 리튬 2차전지 전극형성용 슬러리 조성물 및 리튬 2차전지용 전극
EP2924785A1 (en) Binder for use in positive electrode for lithium ion secondary battery, positive electrode for lithium ion secondary battery containing said binder, lithium ion secondary battery using said positive electrode, and electrical machinery and apparatus
JPWO2011078263A1 (ja) 二次電池用電極及び二次電池
US12266780B2 (en) Method for manufacturing electrode for lithium ion battery
JP2017520892A (ja) リチウム電池用正極
US20230042519A1 (en) Negative electrode material, negative electrode plate, electrochemical apparatus, and electronic apparatus
JP6167548B2 (ja) 非水系二次電池負極用活物質並びにそれを用いた負極及び非水系二次電池
JP6645792B2 (ja) 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法
JP2015043316A (ja) 非水系二次電池負極用活物質並びにそれを用いた負極及び非水系二次電池
JP6391384B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池の製造方法
JP5632246B2 (ja) リチウムイオン二次電池
WO2025051071A1 (zh) 负极片和钠离子电池
JP6539029B2 (ja) リチウムイオン二次電池の製造方法
JP6871436B2 (ja) 電極、リチウムイオン二次電池、電極の製造方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法
WO2025130004A1 (zh) 正极极片、正极极片的制备方法以及锂离子电池
JP2015035316A (ja) 非水系二次電池負極用活物質並びにそれを用いた負極及び非水系二次電池
JP2005216502A (ja) リチウムイオン二次電池
JP2011181463A (ja) 高分子電解質、二次電池及び二次電池の製造方法
JP7650016B2 (ja) 二次電池用電極
KR102837465B1 (ko) 고체 이차 전지용 슬러리, 고체 이차 전지용층 형성 방법 및 고체 이차 전지

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200203

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200203

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210326

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210415

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6871436

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250