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JP2020049466A - 複合半透膜 - Google Patents

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JP2020049466A
JP2020049466A JP2018183738A JP2018183738A JP2020049466A JP 2020049466 A JP2020049466 A JP 2020049466A JP 2018183738 A JP2018183738 A JP 2018183738A JP 2018183738 A JP2018183738 A JP 2018183738A JP 2020049466 A JP2020049466 A JP 2020049466A
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志村晴季
Haruki Shimura
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Abstract

【課題】原水中存在しうる重金属や過酸化物、紫外線、薬剤、またはそれらの複合的な効果として生じるラジカル等のさまざまな酸化物質による除去性能の低下を抑制した、複合半透膜の提供。
【解決手段】微多孔性支持層上に設けられ、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドとの重合物である架橋ポリアミドを含有し、かつ前記被覆層はポリマーを含有する分離機能層と、主鎖にポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンのいずれかを含み、分離機能層に含まれる架橋ポリアミドと共有結合している特定の構造を有し、ラジカル除去能のある化合物を含む被覆層を分離機能層上に設ける。
【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な半透膜に関し、高い耐酸化性に優れた複合半透膜に関するものである。
液状混合物の膜分離に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば塩分、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、中でも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を微多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
しかし、複合半透膜を使用し続けると、膜表面に汚れ物質が付着し、膜の透過流束が低下し易く、ある期間運転後に酸、アルカリなどによる薬液洗浄が必要となるが、それにより膜性能が低下する問題があり、長期間にわたって安定な運転を継続するために、汚れ物質が付着しにくく、かつ、薬液洗浄前後での性能変化の少ない複合半透膜が望まれている。
汚れの付着を改善する方法として、ポリビニルアルコールを分離機能層表面に被覆することで荷電状態を中性にして、ファウリングを抑制する方法(特許文献1参照)、ポリアルキレンオキシドを含有する被覆層を形成するなどの方法(特許文献2,3)が提案されている。
国際公開第97/34686号公報 特表2003−501249号公報 特表2015−516876号公報
複合半透膜を用いて実際に原水をろ過するにあたり、原水中にはさまざまな酸化物質が存在しうる。重金属や過酸化物、紫外線、薬剤、またはそれらの複合的な効果として生じるラジカルはその一つである。従来の技術では、ラジカルを含む原水中で運転された場合、複合半透膜の除去性能が低下するという課題があった。
上記課題を解決するために、本発明は、下記(1)〜(5)のいずれかの構成を備える。
(1) 微多孔性支持層と、
前記微多孔性支持層上に設けられ、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドとの重合物である架橋ポリアミドを含有し、かつ前記被覆層はポリマーを含有する分離機能層と、
前記分離機能層上に設けられ、下記一般式(I)または(II)で示される構造を含むポリマーを含有する被覆層と、
を備える複合半透膜。
Figure 2020049466
(2)前記被覆層のポリマーが、主鎖にポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンのいずれかを含む、請求項1に記載の複合半透膜。
(3)前記被覆層のポリマーが、前記分離機能層に含まれる架橋ポリアミドと共有結合していることを特徴とする、(2)または(3)に記載の複合半透膜。
(4) 温度25℃、pH6.5の3.5重量%NaCl水溶液を5.5MPaの圧力で24時間透過させた後の100cmの前記複合半透膜の被覆層上に、3.0×10-5 mol/Lのヒドロキシラジカルを含むpH7の水溶液10mLを25℃で3分間接触させ、ESRを用いて測定した該水溶液中のヒドロキシラジカル濃度が1.0×10-5 mol/L以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜。
本発明によって、ラジカルが含まれる原水中で運転された際の除去性能の低下幅が小さい複合半透膜が得られる。
[1.複合半透膜]
本発明に係る複合半透膜は、支持膜と、支持膜上に形成される分離機能層とを備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、支持膜は水を透過するものの実質的にイオン等の分離性能を有さず、分離機能層に強度を与えることができる。
(1)支持膜
本実施形態では、支持膜は、基材および微多孔性支持層を備える。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、支持膜は、基材を持たず、微多孔性支持層のみで構成されていてもよい。
(1−1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、及びこれらの混合物又は共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、さらには織編物を好ましく用いることができる。
(1−2)微多孔性支持層
本発明において微多孔性支持層は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、分離性能を実質的に有する分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持層の孔のサイズや分布は特に限定されない。例えば、均一で微細な孔、又は分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持層が好ましい。支持層に使用する材料やその形状は特に限定されない。
微多孔性支持層の素材には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、及びポリフェニレンオキシド等のホモポリマー又はコポリマーを、単独で又は混合して使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられる。さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
ポリスルホンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でN−メチルピロリドンを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定した場合の質量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以上100000以下である。
ポリスルホンのMwが10000以上であることで、微多孔性支持層として好ましい機械的強度および耐熱性を得ることができる。また、Mwが200000以下であることで、溶液の粘度が適切な範囲となり、良好な成形性を実現することができる。
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、密に織ったポリエステル布又は不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する微多孔性支持層を得ることができる。
基材と微多孔性支持層の厚みは、複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度及び充填密度を得るためには、基材と微多孔性支持層の厚みの合計が、30μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上220μm以下であるとより好ましい。また、微多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。なお、本書において、特に付記しない限り、厚みとは、平均値を意味する。ここで平均値とは相加平均値を表す。すなわち、基材と微多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向(膜の面方向)に20μm間隔で測定した、20点の厚みの平均値を算出することで求められる。
(1−3)支持膜の形成方法
本発明に使用する微多孔性支持層は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することができる。
(2−1)分離機能層の化学構造
分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを含有する。特に、分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを主成分として含有することが好ましい。主成分とは分離機能層の成分のうち、50重量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋芳香族ポリアミドを50重量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。また、分離機能層における架橋芳香族ポリアミドの含有率は80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
架橋芳香族ポリアミドは、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを化学反応させることにより形成できる。ここで、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドの少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。これにより、剛直な分子鎖が得られ、水和イオンやホウ素などの微細な溶質を除去するための良好な孔構造が形成される。
多官能芳香族アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有し、かつ、アミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基である芳香族アミンを意味する。多官能芳香族アミンとしては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、o−ジアミノピリジン、m−ジアミノピリジン、p−ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。特に、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、及び1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAとも記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能芳香族アミンは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
多官能芳香族酸クロリドとは、一分子中に少なくとも2個のクロロカルボニル基を有する芳香族酸クロリドをいう。例えば、3官能酸クロリドでは、トリメシン酸クロリドなどを挙げることができ、2官能酸クロリドでは、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどを挙げることができる。膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸クロリドであることが好ましい。
(2−2)分離機能層の形成方法
分離機能層は、多官能芳香族アミン、多官能芳香族酸クロリドを化学反応させることにより架橋芳香族ポリアミドを形成することで得られる。化学反応の方法として、界面重合法が生産性、性能の観点から最も好ましい。以下、界面重合の工程について説明する。
界面重合の工程は、(a)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を多孔性支持層上に接触させる工程と、(b)多官能芳香族アミンを含有する水溶液を接触させた多孔性支持層に多官能芳香族酸クロリドを溶解させた溶液Aを接触させる工程と、(c)さらに多官能芳香族酸クロリドを溶解させた有機溶媒溶液Bを接触させる工程と、(d)反応後の有機溶媒溶液を液切りする工程、を有する。
なお、本欄では、支持膜が基材と微多孔性支持層とを備える場合を例に挙げるが、支持膜が別の構成を備える場合は、「微多孔性支持層」を「支持膜」と読み替えればよい。
工程(a)において、多官能芳香族アミン水溶液における多官能芳香族アミンの濃度は0.1重量%以上20重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下の範囲内である。多官能芳香族アミンの濃度がこの範囲であると十分な溶質除去性能および透水性を得ることができる。
多官能芳香族アミン水溶液の接触は、微多孔性支持層上に均一かつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層にコーティングする方法や、微多孔性支持層を多官能芳香族アミン水溶液に浸漬する方法などを挙げることができる。微多孔性支持層と多官能芳香族アミン水溶液との接触時間は、1秒以上10分間以下であることが好ましく、10秒以上3分間以下であるとさらに好ましい。
多官能芳香族アミン水溶液を微多孔性支持層に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、微多孔性支持層形成後に液滴残存部分が膜欠点となって除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能芳香族アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
有機溶媒溶液(溶液Aおよび溶液B)中の多官能芳香族酸クロリドの濃度は、0.01重量%以上10重量%以下の範囲内であると好ましく、0.02重量%以上2.0重量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能芳香族酸クロリドを溶解し、支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能芳香族アミンおよび多官能芳香族酸クロリドに対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカンなどの炭化水素化合物および混合溶媒が挙げられる。
多官能芳香族酸クロリドの有機溶媒溶液の多官能芳香族アミン水溶液と接触させた微多孔性支持層への接触の方法は、多官能芳香族アミン水溶液の微多孔性支持層への被覆方法と同様に行えばよい。また、工程(c)において多官能芳香族酸クロリドを溶解させた溶液Bを接触させた後、膜を加熱して反応を促進してもよい。
工程(d)において、反応後の有機溶媒溶液を液切りする工程により、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
(3)被覆層
(3−1)被覆層の物性
複合半透膜は、表面に被覆層を有する。被覆層は、実質的に汚れの付着を抑制する機能を有するとともに、ラジカルから分離機能層を保護する役割を有し、さらに、水を透過する機能を併せ持つ。被覆層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、300 nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。この範囲であることにより、複合半透膜が実用的な透水性を発揮することができる。また、分離機能層を保護するために、被覆層の厚みは5nm以上であることが好ましく、被覆層は膜表面に一様に分布していることが好ましい。
被覆層は、水中における耐汚れ性と透水性を有し、かつ、運転によって流出しないことが求められるため、親水性ポリマーであることが好ましい。本発明において親水性ポリマーとは、25℃の条件下で水1Lに対し0.5g以上溶解する高分子である。親水性ポリマーは、カルボキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、4級アンモニウム基、イミダゾリウム基のうちの1つまたは、2つ以上が含むことが好ましい。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリドーパミンを基本骨格として有するポリマーや、その共重合体がより好ましい。
被覆層は、ラジカルが分離機能層に接触する前に捕捉し、無害化することで、分離機能層を保護する機能を有する。被覆層は複合半透膜の状態で、100cmの膜の被覆層上に3.0×10-5 mol/Lのヒドロキシラジカルを含むpH7の水溶液10mLを25℃で接触させ静置した3分後に、ESRを用いて測定した該水溶液中のヒドロキシラジカル濃度が1.0×10-5 mol/L以下まで低減できることが好ましく、0.8×10-6 mol/L以下まで低減できることがより好ましい。このために、被覆層はラジカルを捕捉できる部位として、アミノ基、ヒドロキシ基を有することが好ましい。ラジカルを低減する能力を発揮するために、ヒドロキシ基はフェノール性ヒドロキシ基であることが好ましく、さらにヒドロキシ基やアミノ基の近傍にかさ高い官能基が存在することがより好ましい。具体的には、(I)や(II)に示される構造を部分構造として含むポリマーが挙げられる。該構造を導入したポリマーは、該構造を有するモノマーを重合・縮合して合成しても良いし、ポリマーの末端基と該構造を有する低分子化合物を反応させて導入する方法で合成しても良い。
なお、酸化防止剤の低分子を混合したポリマーは、通水によって酸化防止剤が流出しうるため、本用途の被覆層には適さない。
(3−2)被覆層の形成方法
被覆層は、分離機能層表面に形成される。その際、原料化合物を分離機能層表面で直接反応させ、被覆層を形成してもよいし、予め合成されたポリマーを含む溶液を分離機能層上にコーティングして被覆層を形成してもよい。または、予め合成されたポリマーを含む溶液に分離機能層を含む膜を浸漬して被覆層を形成してもよい。さらに、後述する複合半透膜エレメントを作成してからポリマー溶液を通液処理して、被覆層を形成しても良い。
(3−3)被覆層と分離機能層との間の化学結合
被覆層と分離機能層は、互いに化学結合により繋がっていてもよい。被覆層と分離機能層が化学結合を形成している場合、通水時に被覆層が安定的に存在できるので、より好ましい。被覆層と分離機能層との間の化学結合は、共有結合であることが好ましい。分離機能層はポリアミドであるので、ポリアミドの末端官能基を利用した共有結合として、アミド、イミド、エステル結合等を用いることができる。
被覆層と分離機能層との間の共有結合形成の反応時間および濃度は、使用する溶媒、ポリマー、添加剤、触媒、芳香族ポリアミドの化学構造等により、適宜調整可能であるが、生産性の観点から、反応時間は24時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、10分以内がさらに好ましく、3分以内が特に好ましい。反応終了後、水、熱水または適切な有機溶媒により、得られた複合半透膜を洗浄し、反応性の化合物を除去することが好ましい。
[2.複合半透膜の利用]
複合半透膜は、プラスチックネットなどの供給水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに供給水を供給するポンプや、その供給水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明に係る複合半透膜によって処理される供給水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
流体分離装置の操作圧力は高い方が溶質除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると溶質除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHが高くなると、海水などの高溶質濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
(1)膜の作製
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気量2.0cc/cm2/sec)上にポリスルホン(PSf)の16.0質量%DMF溶液を25℃の条件下で200μmの厚みでキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持膜を作製した。
得られた多孔性支持膜をm−フェニレンジアミン(m−PDA)の3質量%水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、室温40℃に制御した環境で、トリメシン酸クロリド(TMC)0.165質量%を含む40℃のデカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置したのち、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、80℃で1分間加熱乾燥することで、架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を得た。
(実施例1)
化合物(III)を、濃度4000ppmで純水中に溶解した後、縮合剤として4―(4,6―ジメトキシ―1,3,5−トリアジン―2―イル)―4―メチルモルホリニウムクロリドを1000ppmの濃度となる様に溶解し、25℃で1時間攪拌し、ポリマー溶液を作製した。得られたポリマー溶液を、(参考例1)で得られた架橋芳香族ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜の分離機能層側表面に塗布し、25℃で10分間静置した後、純水で洗浄することで、被覆層を有する複合半透膜を作製した。
(実施例2)
化合物(III)の濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(実施例3)
化合物(III)の濃度を1000ppmとし、縮合剤を使用しない以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(実施例4)
化合物(III)の代わりに化合物(IV)を用い、濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(実施例5)
化合物(III)の代わりに化合物(V)を用い、濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(実施例6)
化合物(III)の代わりに化合物(VI)を用い、濃度を1000ppmとし、縮合剤を使用しない以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(実施例7)
化合物(III)の代わりに化合物(VII)を用い、濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(実施例8)
化合物(III)の代わりに化合物(VIII)を用い、濃度を1000ppmとし、縮合剤を使用しない以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(比較例1)
化合物(III)の代わりにポリアクリル酸(重量平均分子量1万)を用い、濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(比較例2)
化合物(III)の代わりにポリエチレンイミン(重量平均分子量2000)を用い、濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(比較例3)
化合物(III)の代わりにポリビニルアルコール(けん化度99%, 重合度2000)を用い、濃度を1000ppmとした以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(比較例4)
化合物(III)の代わりにポリアクリル酸(重量平均分子量1万)を用い、濃度を1000ppmとし、さらに化合物(IX)を100ppm混合した以外は実施例1と同様に複合半透膜を作製した。
(比較例5)
参考例1の複合半透膜をそのまま用いた。
(2)ラジカル濃度測定
得られた複合半透膜に、温度25℃、pH7に調整した海水(TDS濃度3.5%)(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を操作圧力5.5MPaで供給して膜通水を24時間行った。クロスフローろ過とし、濃縮水流量は3.5L/minとした。その後、100cmの膜の被覆層上に3.0×10-5 mol/Lのヒドロキシラジカルを含むpH7の水溶液10mLを25℃で接触させ静置した。ラジカル濃度は、電子スピン共鳴(ESR)を用いて測定した。装置はESP350E(BRUKER社製)、マイクロ波周波数カウンターはHP5351B(HEWLETT PACKARD社製)を用いた。測定温度は25℃、磁場掃引範囲は3385〜3595G、変調は100kHz、1G、マイクロ波は4mW、9.81GHz、掃引時間は41.94秒で、1回測定した。時定数は81.92 ms、データポイント数は1024ポイント、キャビティはTM110,円筒型であった。スピントラップ試薬として,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide(DMPO)を用い、ヒドロキシラジカルとのスピンアダクトを解析することで、ヒドロキシラジカルの濃度を定量した。ヒドロキシラジカルは塩化鉄(II)約100ppmと過酸化水素水約0.3重量%を混合することで発生させ、上記のESRを用いた測定を用いることで、所望のラジカル濃度になるよう適宜塩化鉄と過酸化水素水の濃度条件を調整した。被覆層上にラジカル溶液を接触させた3分後に、同様にESRを用いて測定した該水溶液中のヒドロキシラジカル濃度を表1に示す。
(3)複合半透膜の性能評価
得られた複合半透膜を、温度25℃、過酸化水素濃度0.2重量%, 塩化鉄(II) 2.5 ppmの溶液に72時間浸漬した後、温度25℃、pH7に調整した海水(TDS濃度3.5%)を操作圧力5.5MPaで供給して膜通水試験を行い、製造時性能を求めた。
次の式から塩除去率を求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
また、上述の条件下で得られた、膜面1平方メートル当たりの1日の透水量(立方メートル)から、透過水量(m/m/日)を求めた。
以上の実施例、比較例で得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。実施例に示すように、本発明により、ラジカルが含まれる原水中で運転された際の除去性能の低下幅が小さい複合半透膜が得られる。
Figure 2020049466
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Claims (4)

  1. 微多孔性支持層と、
    前記微多孔性支持層上に設けられ、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸クロリドとの重合物である架橋ポリアミドを含有し、かつ前記被覆層はポリマーを含有する分離機能層と、
    前記分離機能層上に設けられ、下記一般式(I)または(II)で示される構造を含むポリマーを含有する被覆層と、
    を備える複合半透膜。
    Figure 2020049466
  2. 前記被覆層のポリマーが、主鎖にポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンのいずれかを含む、請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記被覆層のポリマーが、前記分離機能層に含まれる架橋ポリアミドと共有結合していることを特徴とする、請求項2または3に記載の複合半透膜。
  4. 温度25℃、pH6.5の3.5重量%NaCl水溶液を5.5MPaの圧力で24時間透過させた後の100cmの前記複合半透膜の被覆層上に、3.0×10-5 mol/Lのヒドロキシラジカルを含むpH7の水溶液10mLを25℃で3分間接触させ、ESRを用いて測定した該水溶液中のヒドロキシラジカル濃度が1.0×10-5 mol/L以下である、
    請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜。
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