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JP2020022941A - 吸着材及びそれを用いた標的物質の精製方法 - Google Patents

吸着材及びそれを用いた標的物質の精製方法 Download PDF

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JP2020022941A
JP2020022941A JP2018149695A JP2018149695A JP2020022941A JP 2020022941 A JP2020022941 A JP 2020022941A JP 2018149695 A JP2018149695 A JP 2018149695A JP 2018149695 A JP2018149695 A JP 2018149695A JP 2020022941 A JP2020022941 A JP 2020022941A
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七重 山下
Nanae Yamashita
七重 山下
優史 丸山
Yuji Maruyama
優史 丸山
正樹 松森
Masaki Matsumori
正樹 松森
博史 吉田
Hiroshi Yoshida
博史 吉田
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Abstract

【課題】標的物質の吸着部位として低分子化合物が用いられ、且つ標的物質の吸着容量が高い吸着材を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、担体5と、担体5に固定化されたリガンド1とを含む吸着材10であって、リガンド1は、標的物質4を吸着する吸着部位3を含み、吸着材10を誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際に、それぞれの溶媒に対する吸着材10の分散性を示す評価値から算出される指標Aが、2.5より大きいことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、吸着材及びそれを用いた標的物質の精製方法に関する。
タンパク質や抗体のような生体分子を標的物質としたアフィニティ精製は、アフィニティ吸着材への標的物質の特異的な吸着工程、非特異的な吸着成分の洗浄工程、そして溶離液による吸着材からの標的物質の回収工程からなる。吸着材は、ビーズ状やモノリス状等の担体の表面上にリガンドと呼ばれる標的物質を吸着する分子を固定化して構成される。リガンドとして、例えば低分子化合物を吸着部位として用いた吸着材が報告されている(特許文献1)。
低分子化合物を用いたリガンドは溶媒耐性が高く、かつ組み替えタンパク質等を用いないことから、リガンド部の低価格化が可能である。しかし、このような低分子化合物を適用した吸着材は、標的物質と特異的に相互作用するプロテインA等のタンパク質を用いた吸着材と比較して、標的物質の吸着容量が低い点で課題がある。
低分子化合物を吸着部位とするリガンドを適用した従来技術として、タンパク質を効率良く吸着する条件を見出し、標的物質の吸着率を向上させた例が報告されている(特許文献2)。しかし、特許文献2では、吸着材と標的物質とを静的な条件下(カラム等への実装評価ではない)で接触させているので、実質的な吸着率の向上が達成されたとは言い難い。
特表平10−500615号公報 特開2007−29511号公報
上述のように、低分子化合物を用いた吸着材では標的物質の吸着容量が十分ではない。そこで本発明は、標的物質の吸着部位として低分子化合物が用いられ、且つ標的物質の吸着容量が高い吸着材、及びこの吸着材を用いた標的物質の精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、誘電率の異なる溶媒に吸着材を分散させた際に、それぞれの溶媒に対する吸着材の分散性を示す評価値から算出される指標Aを定義し、その指標Aが特定の範囲内であるような吸着材を用いることにより、担体とその他構成要素との親水・疎水性のバランスが良好となり、タンパク質等の標的物質に対し高い動的吸着能を示すことを見い出し、発明を完成した。
すなわち、本発明の吸着材は、担体と、前記担体に固定化されたリガンドとを含む吸着材であって、前記リガンドは、標的物質を吸着する吸着部位を含み、前記吸着材を誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際に、それぞれの溶媒に対する前記吸着材の分散性を示す評価値から算出される指標Aが、2.5より大きいことを特徴とする。
本発明によれば、タンパク質等の標的物質に対し高い動的吸着能を得ることができる。前記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明に係る吸着材の一実施形態を示す模式図である。 指標Aと標的物質の動的吸着容量との関係を示すグラフである。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。
本実施形態に係る吸着材は、担体と、担体に固定化されたリガンドとを含む。そして、リガンドは、標的物質を吸着する吸着部位(以下、単に吸着部位とも記載する)を含む。好ましくは、複数のアミノ基を有する高分子(以下、単に高分子とも記載する)に吸着部位が導入されている。その場合、吸着部位は複数のアミノ基を有する高分子1分子に対して複数個導入されていることが好ましい。本実施形態に係る吸着材は、外部環境の変化によって吸着材と標的物質との相互作用が変化し、それによって標的物質が吸着され、さらには標的物質が脱離する。
図1に、本実施形態に係る吸着材の模式図を示す。図1に示すように、吸着材10は、担体5と、担体5に固定化されたリガンド1とを含む。リガンド1は、複数のアミノ基を有する高分子2に、標的物質4を吸着する吸着部位3が複数個導入されたものである。なお、図1では、高分子のある電荷の状態を例示しているが、高分子は、pH変化や塩濃度変化等の外部環境によって様々な電荷の状態となり得る。
本実施形態の吸着材は、前記の各成分を備え、特にリガンドが、複数のアミノ基及び複数の吸着部位を有することにより、外部環境の変化に応じて標的物質と吸着部位間での物理的な相互作用が変化し、標的物質が吸着又は脱離する。
吸着部位が疎水性であると、疎水性である標的物質との間で物理的な相互作用、すなわち疎水性相互作用を示す。また、高分子1分子に対して吸着部位が複数個導入されていることから、少なくとも1つの吸着部位は、リガンドと外部との界面において外側を向くように配置された構造を有している。
本実施形態に係る吸着材が充填されたカラムに、標的物質を含む溶液を通液することにより、従来技術に比べてより多くの標的物質を吸着することができる。そのメカニズムとして以下が考えられる。上述のように、本実施形態では、リガンドにおける高分子に複数個の吸着部位が導入されている。少なくとも1つの吸着部位は、リガンドと外部との界面において外側を向くように、すなわち標的物質に接触する形で配置されている。これにより、界面外側に向いて配置された吸着部位と標的物質との接触する確率が高まり、高い吸着能を示すことができる。
外部環境の変化は、リガンドの電荷の状態及び吸着部位と標的物質との間の相互作用を変化させ得るものであれば特に限定されず、例えば、吸着材が接触している溶液の塩濃度、誘電率、pH又は温度等の変化が挙げられる。例えば、塩濃度が変化すると静電遮蔽効果が変化し、溶媒や溶質の種類の変化によって誘電率が変化し、また、pHが変化すると電荷の平衡移動が起こり、これらによって電荷密度が変化する。本実施形態において、外部環境の変化は、好ましくは、吸着材が接触している溶液の塩濃度、温度、誘電率又はpHの変化であり、塩濃度の変化及びpHの変化であることがより好ましい。これらの外部環境の変化は複数種の変化が組み合わされても良い。外部環境の変化によってリガンドの電荷密度及び吸着部位と標的物質間の相互作用が変化し、標的物質が吸着又は脱離することから、本実施形態の吸着材は、外部環境の変化に対して応答性を有する吸着材であり、例えば、外部環境の変化がpHの変化である場合には、pH応答性吸着材となり、外部環境の変化が塩濃度、誘電率又は温度の変化である場合には、それぞれ、塩濃度応答性、誘電率又は温度応答性の吸着材となる。
外部環境の変化は、標的物質とリガンド内の吸着部位の相互作用の強さを変化させて、吸着特性を変化させることができる程度の変化であれば良い。例えば、外部環境の変化が、吸着材が接触している溶液のpHの変化である場合、pH2〜12の範囲内で変化させることが好ましく、pH7〜11の範囲内で変化させることがより好ましい。具体的には、吸着材が接触している溶液のpHを、pH7〜8からpH9〜10程度へと変化させることが好ましい。
本実施形態において、リガンドは、複数のアミノ基を有する高分子に標的物質を吸着する吸着部位が好ましくは複数個導入されたものである。吸着部位は、通常、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と結合している。好ましくは、複数のアミノ基を有する高分子におけるアミノ基の一部が吸着部位と結合している。
吸着部位の種類・構造は、吸着する標的物質に応じて適宜選択することができる。本実施形態では、リガンドの電荷密度の変化を利用しリガンドの構造変化によって標的物質の吸着・脱離を制御するため、吸着部位は、リガンドの電荷密度の変化による物性の変化を受け易いことが好ましく、高分子よりも疎水性の吸着部位であることが好ましい。このような吸着部位としては、例えば、ヘテロ環を有し、高分子のアミノ基と反応してアミド結合を形成し得る部分構造が好ましい。
標的物質は、吸着部位に吸着し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、タンパク質、生体分子、細胞、等が挙げられる。タンパク質としては、フィブロネクチン、プロテオグリカン、コラーゲン、免疫グロブリンや血清アルブミン、カドヘリン、ヘモシアニン、ラミニン、インスリン、宿主由来のタンパク質、ホルモン、酵素等が挙げられ、生体分子としてはDNA、RNA等の核酸、ビタミン、脂質、ホルモン、糖、アミノ酸等を挙げることができる。また、細胞としては、動物細胞、植物細胞等が挙げられる。その中でも特に、標的物質は抗体であることが好ましい。抗体としては特に限定されず、例えば免疫グロブリン等を挙げることができる。
担体は、多孔質及び非多孔質のいずれの形状であっても良い。担体の形状としては、例えば、板状、ビーズ(粒子)状、不織布や織物等の繊維状、膜状、モノリス状及び中空糸状等が挙げられ、特に限定されるものではない。また、担体は、いわゆるコアシェル構造を有するものであっても良い。
本実施形態に係る吸着材は、リガンドを担体に固定化して製造することができる。リガンドは、好ましくは、化学結合を介して担体に結合させることによって担体に固定化する。すなわち、一実施形態において、吸着材は、リガンドと担体とが化学結合を介して固定化されている。吸着部位は、複数のアミノ基を有する高分子を担体に固定化する前、あるいは固定化した後のいずれの時点で導入しても良い。すなわち、吸着部位を複数のアミノ基を有する高分子に導入し、その後、吸着部位が導入された高分子を担体に固定化しても良く、あるいは、吸着部位を有さない複数のアミノ基を有する高分子を担体に固定化した後で、高分子に吸着部位を導入しても良い。また、吸着部位を導入した後の、高分子中に残存するアミノ基に対して、親水もしくは疎水的な置換基をさらに導入しても良い。例えば、残存するアミノ基に対して酢酸やメトキシ酢酸等を反応させ、吸着材全体の指標Aを調整することができる。
以下に、動的結合容量(DBC)の増大化が認められる吸着材の条件について述べる。本発明では、低分子化合物を吸着部位とするリガンドを用いてDBCを増大させるため、吸着材の溶媒に対する分散性を示す指標Aが2.5より大きいことを条件とする。好ましくは、指標Aは3.0以上である。下記に、指標Aの算出方法を具体的に記載する。
まず、指標Aを見出す過程において、本発明者らは、誘電率の異なる有機溶媒相として、水(誘電率:80.4、以下、括弧内は誘電率)、メタノール(32.6)、エタノール(24.3)、2−プロパノール(18.9)及びオクタノール(10.3)の計5種の溶媒を用意した。各溶媒へ吸着材をそれぞれ分散させ、吸着材と溶媒が混合するよう攪拌した。この際、吸着材が溶媒中に充分分散するよう留意した。その後、各溶媒中に分散した吸着材の分散性を以下の指標に基づき5段階で評価した。
なお、指標Aを定義するため実施した実験に関し、詳細は以下のとおりである。
各種吸着材の分散液3mLを、ガラス製シャーレ(長径=35mm)に展開し、室温で10分静置させた。その後、光学顕微鏡の倍率20倍のレンズで、各種吸着材に焦点を合わせ、1サンプルにつき5箇所撮像した。得られた像(20mm×27mm)の視野中に観測される粒子の凝集体部分を、画像ソフトウェア(ImageJ)にて二値化処理した。前記画像の凝集体部分を黒色、その他を白色に処理し、黒色で得られた凝集体部分の粒径、特に長軸の長さを吸着材1つの担体径で割った値をφと定義し、φの値に従って評価1〜5までの5段階で分類した。但し本発明では、吸着材の担体径が30〜200μmのものを用いた場合を想定する。φの値は、1つのサンプルにつき5箇所撮像した画像から得られた値の平均値を採用した。さらに、上記の実験を1つのサンプルに対し2回繰り返し、各回について求めた評価値の2回の平均値をその吸着材の評価値とした。すなわち、0.5等の値は、中間的な評価値を意味し、例えば、評価3と評価4の中間の値として3.5が位置づけられる。
評価5:溶媒に対し吸着材が安定して良く分散する(φ=0.2以上8.3未満)
評価4:吸着材を良く混合することによって溶媒に対し一部が分散し、小さな凝集体、及び孤立した粒子の双方が混在する(φ=8.3以上17未満)
評価3:溶媒に対し吸着材の一部が分散し小さな凝集体を形成する(φ=17以上27未満)
評価2:溶媒に対し吸着材がほとんど分散せず、大きな凝集体を形成する(φ=27以上40未満)
評価1:溶媒に対し吸着材が分散せず、大きな凝集体を形成する(φ=40以上)
上記の基準に沿って、溶媒に分散させた際の吸着材の分散性を評価した。また、リガンドが固定化された各種吸着材の評価値から、担体のみの評価値を差し引くことで、担体上に固定化されたリガンド部の評価値(リガンド部評価値)を求めた。
そして、リガンドの効果を評価するための指標について検討した。その結果、オクタノール溶媒に分散させた吸着材のリガンド部評価値から、エタノール溶媒に分散させた吸着材のリガンド部評価値を差し引いた値が、リガンド部を評価するのに最適であることが分かった。そこで、誘電率の値が異なるオクタノール(誘電率ε:10.3)及びエタノール(誘電率ε:24.3)に各種吸着材をそれぞれ分散させて求められるリガンド部評価値(リガンド部評価値εオクタノール、リガンド部評価値εエタノールと記載する)から、以下の式(1)に従い、指標Aを定義した。
A=リガンド部評価値εオクタノール−リガンド部評価値εエタノール (1)
指標Aが2.5より大きく、好ましくは3.0以上である上記吸着材を用いて、標的物質を精製することができる。一実施形態では、標的物質の精製方法は、吸着材が充填されたカラムを用いて実施される。具体的には、カラム内部に充填された吸着材へ標的物質を含む溶液を通液させ、必要に応じて、非特異的に吸着した成分を洗浄し、その後に溶離液を用いて吸着材に吸着した標的物質を回収することにより精製を行うことができる。通液する標的物質の溶液は、pHが7〜8の範囲であることが好ましい。本実施形態では、吸着材の分散性を示す指標Aが2.5より大きくなるように制御することにより、溶液の流れがある中で標的物質を吸着する能力、すなわち動的結合容量(DBC)が高く、実際の医薬品製造プロセスへ適用することが可能である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.リガンドの合成
<リガンド1>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用い、吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾール酢酸(MBTA、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸)を導入した。なお、MBTAは、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
具体的には、EPL(一丸ファルコス社製、ポリリジン10)の水/DMF(体積比1:2)溶液に、MBTA(0.7当量)及び脱水縮合剤の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)(1.2当量)を加え、室温で5時間撹拌し、EPLのアミノ基とMBTAのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにMBTAを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析することで未反応物を除去した。その後、生じた沈殿を濾別し、凍結乾燥することでリガンド1を固体として得た。
<リガンド2>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用い、吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾールプロパン酸(MBT、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸)を導入した。なお、MBTは、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
具体的には、EPLの水/DMF溶液に、MBT(0.7当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間撹拌し、EPLのアミノ基とMBTのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにMBTを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することでリガンド2を固体として得た。
<リガンド3>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用い、吸着部位として4−ピリジルチオ酢酸(PyS)を導入した。なお、PySは、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
EPLの水/DMF溶液に、PyS(0.7当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で3時間撹拌し、EPLのアミノ基とPySのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにPySを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することでリガンド3を固体として得た。
<低分子化合物>
リガンド1〜3に対する比較例として、刺激に応答する低分子化合物である、メルカプトベンゾチアゾールプロピオン酸(MBT、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸)を、担体上のカルボン酸置換基と反応させることで直接担体表面上へ導入した。
リガンド1〜3及び上記低分子化合物について、その組成及び吸着部位導入率を以下の表1に示す。表1において、組成については、吸着部位の導入に用いた原料化合物を記載している。また、吸着部位導入率は、リガンド1〜3については複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基量に対する吸着部位により占有された割合を示し、H−NMR測定によって求めた。低分子化合物の場合は、それ自体が吸着部位となるので、吸着部位導入率は100%である。
Figure 2020022941
2.吸着材の調製
<実施例1>
THF/水混合溶液を溶媒として適用し、リガンド1の1重量%溶液を調製した。このリガンド1の溶液と、カルボキシル基を表面に有するセファロース(架橋アガロース)担体(GEヘルスケア社製、CM Sepharose 4 Fast Flow)とDMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させ、THF/水混合溶媒にて洗浄し、リガンド1が担体に固定化された実施例1の吸着材を得た。
<実施例2〜3>
リガンド1に代えてリガンド2〜3をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、リガンド2〜3が担体に固定化された実施例2〜3の吸着材を得た。
<比較例1>
リガンドと担体の最適な組み合わせによりDBCの増大化が得られるか否かを確認するため、多糖類由来の担体とは異なる材質の担体にて下記実験を実施した。多孔質構造を有するポリスチレン粒子(PS粒子)が架橋アガロースで被覆され、約150μmol/mLのカルボキシル基を有する担体を用いた以外は、実施例1と同様にして、リガンド1が担体に固定化された比較例1の吸着材を得た。
<比較例2>
比較例1と同様の目的で、メタクリレート基材に約110μmol/mLのカルボキシル基が官能基として存在する担体を適用し、実施例1と同様の方法によりリガンド1が固定化された比較例2の吸着材を得た。
<比較例3>
リガンドがDBCの増大化に与える効果を確認するため、低分子化合物(MBT)を直接担体へ固定化した。具体的には、CM Sepharose(GEヘルスケア社製)を水/DMF溶液に分散させ、エチレンジアミン(1.0当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間撹拌し、エチレンジアミンのアミノ基とCM Sepharoseのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、CM Sepharoseにアミノ基を導入した。得られた担体を薄い塩酸にて洗浄し、余剰のエチレンジアミンを除去し、水で置換することで水溶液を中性にした。その後、アミノ基を修飾したCM Sepharoseを水/DMF溶液に分散させ、MBT(1.0当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間撹拌し、担体上のアミノ基とMBTのカルボキシル基とを反応させ、アミド結合にて固定化した。水/DMF溶液にて十分に洗浄することでリガンドを固定化した比較例3の吸着材を得た。
<比較例4>
実施例1〜3の効果を確認するため、弱酸にて標的物質を回収可能なプロテインA模倣低分子化合物である、トリアジン誘導体(A2Pと以下記載)を架橋アガロース担体(ピュラビーズ(商標))上に固定化した、Prometic Biosciences社製MAbsorbent担体を購入し、比較例4の吸着材とした。
<比較例5>
リガンドを固定化させる際のリガンド溶液の濃度を0.1重量%に減少させた以外は、実施例1の吸着材と同様の作製手順により、リガンド固定化容量が10mg/mLである比較例5の吸着材を得た。
<比較例6>
実施例1〜3の効果を確認するため、参照試料としてリガンドが固定化されていないSepharose担体を用い、比較例6の吸着材とした。
実施例1〜3及び比較例1〜6の吸着材について、リガンドの組成、担体の種類(担体(表面)材質/官能基)、担体の官能基密度及びリガンドの固定化容量を表2に示す。表2において、リガンド組成については、吸着部位の導入に用いた原料化合物を記載している。
Figure 2020022941
3.試験
<試験例1>
実施例1〜3及び比較例1〜6の吸着材について、標的物質の吸着特性をカラム中で測定した。ここでは標的物質の代表的な例として、ヒト免疫グロブリンG(IgG)を適用し、評価した。
具体的には、実施例1〜3及び比較例1〜6の吸着材をそれぞれカラム容器内に充填し、1重量%の所定のヒトIgGを含むpH7.4のPBS緩衝液(リン酸5mM又は30mM、塩化ナトリウム37.5mM)を5mL通液し、カラムから溶出される溶液内のヒトIgG濃度を、波長280nmにおける吸収によって分光計にてモニタリングし、カラムへ導入したヒトIgGの10%分が漏れ出た点の標的物質の動的吸着容量を算出した(以下、10%DBCと記載)。その結果を表2の10%DBC欄に示す。
表2より、実施例1〜3の吸着材ではいずれも、高分子部位を有さない比較例3及び4の吸着材に比べて高い標的物質の10%DBCが得られた。その理由として、担体上に固定化されたリガンドの構造が低分子化合物である場合と比較して、実施例1〜3ではより嵩高い高分子と吸着部位とがミクロに相分離を起こすことが可能であるため、吸着部位がリガンドと液体の界面上に配列でき、標的物質の吸着能が向上したものと考えられる。
また、実施例1〜3の吸着材はいずれも、担体が異なる比較例1及び2の吸着材に比べて10%DBCは大きい値を示した。担体が異なる実施例1並びに比較例1及び2の吸着材では、実施例1の吸着材における標的物質の10%DBCが最も大きかった。比較例1及び2の吸着材では、担体の材質が異なることにより、担体の材質と吸着材の吸着部位とが疎水性相互作用、相分離等の何かしらの相互作用を受け、それによって、吸着材に導入された吸着部位が担体界面に偏析し、吸着に十分寄与しなかったものと推測される。
吸着部位が異なる実施例1〜3の吸着材において、吸着部位がメルカプトベンゾチアゾール酢酸(MBTA)由来の部位である実施例1の吸着材は、吸着部位がそれぞれメルカプトベンゾチアゾールプロパン酸(MBT)及びピリジルチオ酢酸(PyS)である実施例2及び3の吸着材と比較して標的物質の吸着容量が大きかった。このことから、MBTA、MBT及びPySの中では、MBTAが、DBCという観点においては最もヒトIgG吸着能の高い吸着部位であることが示された。
実施例1の吸着材と比較例5の吸着材とを比較すると、比較例5では担体上に固定化されるリガンド量が少なく、得られた10%DBCの値は1.1mg/mLと実施例1の吸着材と比べ少なかった。つまり、DBC向上には多くのリガンド固定化容量が必要であることが分かった。
参照試料である比較例6の結果によれば、Sepharose担体のみにヒトIgGを含む溶液を通液させても、IgGの吸着は確認されなかった。つまり、実施例1〜3及び比較例1〜5におけるIgGの吸着は、担体上に固定化されたリガンド、もしくは低分子化合物に由来する吸着であるといえる。
実施例2の吸着材と比較例3の吸着材では、用いている吸着部位はMBTと同様であるが、固定化されるMBTの量が異なり、そしてMBTの固定化される形態が同一ではない。そのため、実施例2の吸着材と比較して比較例3の吸着材における10%DBCは低い値を示した。
比較例4の吸着材は実際に製品としてすでに販売されているが、10%DBCは10mg/mL程度であり、十分な10%DBCではないと考えられ、現状では医薬製造プラントでは利用されていない。つまり、実際に用いる場合には10%DBCは15mg/mL以上有することが求められる。
以上の試験例1の結果によれば、リガンドを用いた場合では実施例1の吸着材(EPL−MBTAリガンド、及び多糖類担体を組み合わせた系)を適用することで、より多くの標的物質の吸着、すなわち高いIgG動的結合容量を示すことが分かった。
<試験例2>
実施例1〜3及び比較例1〜6の吸着材について、各溶媒に対する分散性を示す評価値から算出される指標Aと動的吸着容量との関係を調べるため、以下の実験を行った。誘電率が異なる5種の溶媒、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、オクタノールをそれぞれ5mL計りとり、バイアル瓶へ移した。その後、300μLの実施例1〜3の吸着材及び比較例1〜6の吸着材を各溶媒中に入れ、攪拌して溶媒置換を行った。十分攪拌した後、各種吸着材の分散液3mLを、ガラス製シャーレ(長径=35mm)に展開し、室温で10分静置させた。その後、光学顕微鏡の倍率20倍のレンズで、各吸着材に焦点を合わせ、1サンプルにつき5箇所撮像した。撮像した画像をImageJにて二値化処理し、得られたφ値から吸着材の分散性を示す評価値を求めた。その後、各実施例、及び比較例の評価値から比較例6の評価値を差し引くことでリガンド部評価値を算出した。その結果を表3に示す。
また、上述の式(1)に基づき、エタノール、及びオクタノールに吸着材を分散させた際のリガンド部評価値から求められる指標Aを表3に示す。さらに、試験例1で測定した10%DBCをY軸、本試験例で得られた指標Aの値をX軸にとりプロットしたものを図2に示す。
実施例1及び比較例5の比較から、リガンド固定化容量が多いほど指標Aは大きく、DBCが高いことが判明した。また、実施例1と比較例1及び2の吸着材を比較すると、担体がPSやアクリル等の樹脂基材よりもSepharose担体を用いる方が指標Aは大きく、またDBCも高いことが分かった。実施例1と比較例3及び4の吸着材を比較すると、低分子化合物を担体に直接固定化した吸着材と比べ、高分子を含むリガンドを固定化することで、指標Aは大きく、かつDBCが高くなることが分かった。
試験例2の結果から、指標Aが大きいほど得られるDBCが高いことが明らかとなった。具体的には、10%DBCの増大化に寄与しうる指標Aの好ましい範囲は、2.5よりも大きい。さらにDBCの増大化が得られる指標Aのより好ましい範囲は、3.0以上であり、指標Aが上記範囲内である場合に標的物質に対し高い動的吸着容量を示すことが明らかとなった。
Figure 2020022941
10 吸着材
1 リガンド
2 複数のアミノ基を有する高分子
3 吸着部位
4 標的物質
5 担体

Claims (7)

  1. 担体と、前記担体に固定化されたリガンドとを含む吸着材であって、
    前記リガンドは、標的物質を吸着する吸着部位を含み、
    前記吸着材を誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際に、それぞれの溶媒に対する前記吸着材の分散性を示す評価値から算出される指標Aが、2.5より大きい前記吸着材。
  2. 前記指標Aが3.0以上である請求項1に記載の吸着材。
  3. 前記リガンドが、標的物質を吸着する吸着部位が導入された、複数のアミノ基を有する高分子を含む請求項1に記載の吸着材。
  4. 前記吸着部位が、高分子1分子に対して複数個導入されている請求項3に記載の吸着材。
  5. 請求項1に記載の吸着材が充填されたカラムに、標的物質を含む溶液を通液する工程と、
    溶離液を用いて前記吸着材に吸着した標的物質を回収する工程と、
    を含む標的物質の精製方法。
  6. 前記標的物質が、タンパク質、生体分子、細胞又はウイルスである請求項5に記載の精製方法。
  7. 前記標的物質が、抗体である請求項5に記載の精製方法。
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