JP2019521319A - 神経系疾患または損傷を診断および治療するための方法並びにキット - Google Patents
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Abstract
以下から成る群から選択されるタンパク質の少なくとも1つのタンパク質に特異的なまたはそれと結合できる自己抗体のレベル若しくは存在を対象者のサンプルで測定することによる、神経系の損傷または疾患の診断方法:グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)、NF200(NFH)、NF160(NFM)、NF68(NFL)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、およびS100Bタンパク質。本方法はまた、これらタンパク質の2つ以上の組合せに特異的な自己抗体のレベルの測定を含む。本方法を実施するためのキットもまた提供される。
Description
(関連特許出願の相互引用)本出願は、米国仮特許出願No.62/332,689(2016年5月6日出願(前記内容は参照によってその全体が本明細書に含まれる))に関し優先権を主張する。
(配列表)本出願は、EFS-Webにより電子出願されてあり、.txt形式で電子提出された配列表を含む。当該.txtファイルは、"2017-05-08_5667-00399_Sequence_Listing_ST25.txt"の表題の配列表(2017年5月8日作成、サイズは62,431バイト)を含む。前記.txtファイルに含まれる配列表は本明細書の部分であり、参照によってその全体が本明細書に含まれる。
(技術分野)
本発明は全般的に脳損傷を診断するための方法およびキットに関する。より具体的には、本発明は、神経系疾患(湾岸戦争障害、パーキンソン病、有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)またはヒ素への暴露による神経系傷害、卒中、自閉症、および外傷性脳損傷(TBI)を含むが、ただしこれらに限定されない)を診断および治療するための自己抗体バイオマーカーの使用に関する。
(配列表)本出願は、EFS-Webにより電子出願されてあり、.txt形式で電子提出された配列表を含む。当該.txtファイルは、"2017-05-08_5667-00399_Sequence_Listing_ST25.txt"の表題の配列表(2017年5月8日作成、サイズは62,431バイト)を含む。前記.txtファイルに含まれる配列表は本明細書の部分であり、参照によってその全体が本明細書に含まれる。
(技術分野)
本発明は全般的に脳損傷を診断するための方法およびキットに関する。より具体的には、本発明は、神経系疾患(湾岸戦争障害、パーキンソン病、有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)またはヒ素への暴露による神経系傷害、卒中、自閉症、および外傷性脳損傷(TBI)を含むが、ただしこれらに限定されない)を診断および治療するための自己抗体バイオマーカーの使用に関する。
神経系の損傷は、疾患もしくはそれに続く神経毒性物質への暴露または頭部外傷から生じ得る。急性でも慢性でもニューロン変性のような形態を患者で診断することは非常に困難であり得る。湾岸戦争障害(GWI)はそのような損傷の一例である。1990年8月から1991年6月まで湾岸戦争(GW)に従軍した697,000人の米国軍人の約1/3が、配備中および当該戦争後長年にわたって持続的症状を訴えている。これらの複合的症状(GWIとして知られている)には、記憶および注意力の問題、強い疲労感、慢性的な筋肉および関節の痛み、激しい頭痛、持続性下痢、呼吸困難および皮膚発疹が含まれる。
GW復員軍人の脳画像調査を含む疫学調査は、CNS損傷に特徴的な持続的徴候および症状を示した。しかしながら、この復員グループの脳損傷の急性及び慢性後遺症を同定する検証済みの客観的診断検査は存在しない。頭蓋内コンピュータ断層撮影(CT)スキャンおよび磁気共鳴画像(MRI)技術(例えば拡散強調画像(DTI))を用いる脳損傷の診断は、GWIを有する復員軍人を臨床的に診断することはできなかった。なぜならば、診断検査マーカーに見合う必要な感度/特異性を提供することができる、容量測定的パラメーターまたは他の画像パラメーターのための証明済みカットオフ値が無かったからである。画像調査は、GWIを有する復員軍人と健康なコントロールとの間の相違および変化したCNS機能を示すことができたが、そのような調査は、それらグループ間の顕著なオーバーラップのためにそれらグループを診断的に同定することは未だにできていない。
GWIと同様に、他の神経系症状(パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)またはヒ素への暴露による神経系傷害を含むが、ただしこれらに限定されない)もまた診断が困難である。これらの症状のための検証済みの診断検査が全く存在しないとき、これらの症状の検出および治療のために臨床で利用できる簡単で安価なバイオマーカーの開発が当業界で希求されている。
GW復員軍人の脳画像調査を含む疫学調査は、CNS損傷に特徴的な持続的徴候および症状を示した。しかしながら、この復員グループの脳損傷の急性及び慢性後遺症を同定する検証済みの客観的診断検査は存在しない。頭蓋内コンピュータ断層撮影(CT)スキャンおよび磁気共鳴画像(MRI)技術(例えば拡散強調画像(DTI))を用いる脳損傷の診断は、GWIを有する復員軍人を臨床的に診断することはできなかった。なぜならば、診断検査マーカーに見合う必要な感度/特異性を提供することができる、容量測定的パラメーターまたは他の画像パラメーターのための証明済みカットオフ値が無かったからである。画像調査は、GWIを有する復員軍人と健康なコントロールとの間の相違および変化したCNS機能を示すことができたが、そのような調査は、それらグループ間の顕著なオーバーラップのためにそれらグループを診断的に同定することは未だにできていない。
GWIと同様に、他の神経系症状(パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)またはヒ素への暴露による神経系傷害を含むが、ただしこれらに限定されない)もまた診断が困難である。これらの症状のための検証済みの診断検査が全く存在しないとき、これらの症状の検出および治療のために臨床で利用できる簡単で安価なバイオマーカーの開発が当業界で希求されている。
本発明は、全般的に神経系の損傷または疾患を診断するための方法およびキットに関する。より具体的には、本発明は、神経系症状(例えば、湾岸戦争障害、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)またはヒ素への暴露による神経系傷害を含むが、ただしこれらに限定されない)を診断するための自己抗体バイオマーカーの使用に関する。
ある特徴では、神経系の損傷または疾患を診断する方法が提供される。前記方法は、対象者からサンプルを入手する工程、および以下と結合することができる少なくとも1つの自己抗体のレベルを前記サンプルで測定する工程を含む:グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)(ニューロフィラメント重、中および軽タンパク質(NFHまたはNF200、NFMまたはNF160、NFLまたはNF68)を含む)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、S100Bタンパク質、または前記の任意の組合せ。自己抗体のレベル変化は神経系の損傷または疾患の指標であり、前記種々のタンパク質に対する自己抗体の弁別的レベルは神経損傷または疾患の具体的なタイプの指標となり得る。したがって、本方法は、湾岸戦争障害、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、または有毒物質(例えば有機リン酸物質、排気ガスまたはヒ素)への暴露の診断を可能にし、および/またはこれらの症状間でこれらを弁別するためにまたはこれらの症状を他のタイプの神経系損傷若しくは疾患と弁別するために用いられ得る。
別の特徴では、神経系の損傷または疾患の診断のためのキットが提供される。前記キットは、GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、MBP、NFP(NFH、NFM、NFL)、チューブリン、a-シヌクリン(SNCA)、およびS100Bタンパク質から成る群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含むことができる。
ある特徴では、神経系の損傷または疾患を診断する方法が提供される。前記方法は、対象者からサンプルを入手する工程、および以下と結合することができる少なくとも1つの自己抗体のレベルを前記サンプルで測定する工程を含む:グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)(ニューロフィラメント重、中および軽タンパク質(NFHまたはNF200、NFMまたはNF160、NFLまたはNF68)を含む)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、S100Bタンパク質、または前記の任意の組合せ。自己抗体のレベル変化は神経系の損傷または疾患の指標であり、前記種々のタンパク質に対する自己抗体の弁別的レベルは神経損傷または疾患の具体的なタイプの指標となり得る。したがって、本方法は、湾岸戦争障害、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、または有毒物質(例えば有機リン酸物質、排気ガスまたはヒ素)への暴露の診断を可能にし、および/またはこれらの症状間でこれらを弁別するためにまたはこれらの症状を他のタイプの神経系損傷若しくは疾患と弁別するために用いられ得る。
別の特徴では、神経系の損傷または疾患の診断のためのキットが提供される。前記キットは、GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、MBP、NFP(NFH、NFM、NFL)、チューブリン、a-シヌクリン(SNCA)、およびS100Bタンパク質から成る群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含むことができる。
本発明は、全般的に神経系の損傷または疾患の客観的バイオマーカー、特に複数の症状(例えば、湾岸戦争障害(GWI)、パーキンソン病、有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)、排気ガスまたはヒ素への暴露による神経系傷害、卒中、自閉症、および外傷性脳損傷(TBI)を含むが、ただしこれらに限定されない)を診断するために重要なバイオマーカーの発見に関する。理論に拘束されないが、本研究は、多様な神経系の症状が特異的な神経タンパク質の循環中への血液脳関門漏出をもたらし、その後これらのタンパク質に対して特定レベルの自己抗体(AB)が形成されることを示唆する。本発明者らは、そのような自己抗体を定量し、多様な神経系の疾患及び損傷の形態の判断のための鋭敏なバイオマーカーとして用いることができることを発見した。
非限定的な実施例1で、本発明者らは、GWI対象者および症候コントロールの血清におけるいくつかの脳タンパク質(ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)、チューブリン、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、およびグリアS100Bタンパク質を含む)に対する循環IgGクラスの自己抗体のレベルを測定した。これらニューロン型特異的およびグリア型特異的タンパク質のいくつかに対して、GWIを有する復員軍人サンプルに由来する血清では、非復員軍人症候コントロールと比較して自己抗体の有意な上昇レベルが見いだされた。
同様に、非限定的実施例2−8で、いくつかの神経タンパク質に対して有意に上昇する自己抗体レベルが、多様な神経系損傷および/または疾患(パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)、排気ガスまたはヒ素への暴露による神経系傷害を含む)を有する対象者の血清で見いだされた。
同様に、非限定的実施例2−8で、いくつかの神経タンパク質に対して有意に上昇する自己抗体レベルが、多様な神経系損傷および/または疾患(パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)、排気ガスまたはヒ素への暴露による神経系傷害を含む)を有する対象者の血清で見いだされた。
ここに示す自己抗体の同定および使用は重要な診断価値を有する。自己抗体のこの相対的で非侵襲性、低コストおよびダイナミズムは、多様な神経系症状の診断検査を日常的な健康管理に取り入れるために大いに適している。そのような診断検査を用いれば、利用しやすい初期スクリーニングを確立させることができ、有効な治療を受けるために対象者自身をより適切な位置に置くことができる。ここで同定される自己抗体バイオマーカーはまた、特定の神経毒性物質(例えば有機リン酸物質、ヒ素または排気ガス)への暴露によって誘発される神経毒性を“フィンガープリンティング(fingerprinting)”するために用いることができる。
いくつかの実施態様では、本明細書で提供される方法は、対象者からサンプルを入手する工程および前記サンプルで神経タンパク質と結合できる少なくとも1つの自己抗体のレベルを測定する工程を含むことができる。前記方法を用いて、対象者における神経系の損傷または疾患を診断できる。さらにまた前記方法は、サンプル中の少なくとも1つの自己抗体のレベルを前記自己抗体の参照レベルと比較する工程、および/または参照レベルと比較して少なくとも1つの自己抗体が上昇する場合に前記対象者が神経系の損傷または疾患を有すると診断する工程を含むことができる。自己抗体のレベル変化(特にレベル増加)は神経系の損傷または疾患の指標であり、さらに、種々のタンパク質に対する自己抗体の弁別的レベルは神経系の損傷または疾患の具体的タイプの指標であり得る。
本明細書で用いられるように、“神経タンパク質”は神経系の細胞内でまたは細胞上で特異的に発現される任意のタンパク質を含むことができる。神経系タンパク質は、神経系の細胞(ニューロンおよびグリア細胞を含むが、ただしこれらに限定されない)の任意のタイプに由来し得る。
本明細書で用いられるように、“神経タンパク質”は神経系の細胞内でまたは細胞上で特異的に発現される任意のタンパク質を含むことができる。神経系タンパク質は、神経系の細胞(ニューロンおよびグリア細胞を含むが、ただしこれらに限定されない)の任意のタイプに由来し得る。
本明細書で提供される方法は、対象者からサンプルを入手する工程、および以下と結合することができる少なくとも1つの自己抗体のレベルを前記サンプルで測定する工程を含むことができる:グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)(NFH、NFMおよびNFLを含む)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、S100Bタンパク質、または前記の任意の組合せ。前記方法を用いて、対象者における神経系の損傷または疾患を診断することができる。前記方法は、さらにまたサンプル中の少なくとも1つの自己抗体のレベルを前記自己抗体の参照レベルと比較する工程、および/または参照レベルと比較して少なくとも1つの自己抗体のレベルが上昇する場合に前記対象者が神経系の損傷または疾患を有すると診断する工程を含むことができる。自己抗体のレベル変化は神経系の損傷または疾患の指標であり、さらに、種々のタンパク質に対する自己抗体の弁別的レベルは神経系の損傷または疾患の具体的タイプの指標であり得る。したがって、前記方法は、例えば湾岸戦争障害、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および毒性物質(例えば有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)、排気ガス、送気管有毒物質、またはヒ素)への暴露による神経系傷害の診断を可能にし、および/またはこれらの症状を他のタイプの神経系の損傷または疾患と弁別するために用いることができる。例えば、S100Bに対する自己抗体は概ね卒中または外傷性脳損傷の後で対象者で上昇するが、湾岸戦争障害を有する対象者では概して上昇しない。したがって、前記方法は、これらの脳損傷の弁別的診断のために用いることができる。とりわけ、そのような弁別的診断は、神経系の損傷または疾患のタイプに基づく別個の治療選択肢を医療専門家に提供することができる。
グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)(NFH、NFMおよびNFLを含む)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、S100Bタンパク質、または前記の任意の組合せと結合できる自己抗体を検出する方法は、対象者からサンプルを入手する工程、および前記サンプルが示されたタンパク質のいずれかに対する自己抗体を含むかどうかを決定する工程を含む。前記方法は、上記リストのタンパク質の少なくとも5つに対する抗体を検出する工程を含むことができる。前記方法は、上記リストのタンパク質の少なくとも7つに対する抗体を検出する工程を含むことができる。前記方法は、上記リストのタンパク質の全部に対する抗体を検出する工程を含むことができる。存在する場合には前記自己抗体は脳損傷の指標であり、さらに前記抗体を用いて脳の損傷または疾患のタイプを決定することができる。したがって、前記方法を用いて、対象者が、湾岸戦争障害、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および毒性物質(例えば有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)、排気ガス、送気管有毒物質、またはヒ素)への暴露による神経系傷害を有するか否かを診断することができる。加えて、前記疾患または損傷の1つを有すると診断された対象者は、免疫抑制剤若しくは鎮痛剤または前記疾患を治療するための他の医薬を用いて治療され得る。
本明細書で用いられるように、“神経系の損傷または疾患”は神経系の任意の損傷または疾患を指し、前記には、疾患から生じ得る、または神経毒性物質若しくは外傷への神経系の暴露に続く慢性若しくは急性損傷が含まれるが、ただしこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、神経系の損傷または疾患は、湾岸戦争障害(GWI)、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、または毒性物質(例えば有機リン酸物質(すなわちクロルピリホス)、排気ガス、またはヒ素)への暴露による神経系傷害を含む。
GPIは、数千人の湾岸戦争軍人が配備中及び戦後多年にわたって経験した複合的な症状群を指す。前記対象者にはまた、ペルシャ湾領域での軍事衝突のいずれかの最中に前記領域で時を過ごした職員、例えば軍隊補助職員または私的な契約者が含まれ得る。これらの複合的な症状には、記憶および注意力の問題、強い疲労感、慢性的な筋肉および関節の痛み、激しい頭痛、持続性下痢、呼吸困難および皮膚発疹が含まれる(ただしこれらに限定されない)。
本明細書で用いられるように、“対象者”および“患者”は互換的に用いられ、人間および人間ではない動物の両方を指す。本開示で用いられる“人間ではない動物”という用語には、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物(例えば、人間ではない霊長動物、ヒツジ、イヌ、ネコ、乳牛、ニワトリ、両生動物、爬虫類など)が含まれる。適切には、対象者は人間である。いくつかの実施態様では、人間の対象者は、湾岸戦争に従軍したか、および/または毒性物質(例えばピリドスチグミン臭化物(PB)、サリン、ソマン、DEET(昆虫駆除薬)、ペルメトリン、および/または有機リン酸物質(例えばクロルピリホス)、排気ガスまたは航空産業で使用される化学物質、またはヒ素が含まれるが、ただしこれらに限定されない)に暴露されたことが疑われ得る。
GPIは、数千人の湾岸戦争軍人が配備中及び戦後多年にわたって経験した複合的な症状群を指す。前記対象者にはまた、ペルシャ湾領域での軍事衝突のいずれかの最中に前記領域で時を過ごした職員、例えば軍隊補助職員または私的な契約者が含まれ得る。これらの複合的な症状には、記憶および注意力の問題、強い疲労感、慢性的な筋肉および関節の痛み、激しい頭痛、持続性下痢、呼吸困難および皮膚発疹が含まれる(ただしこれらに限定されない)。
本明細書で用いられるように、“対象者”および“患者”は互換的に用いられ、人間および人間ではない動物の両方を指す。本開示で用いられる“人間ではない動物”という用語には、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物(例えば、人間ではない霊長動物、ヒツジ、イヌ、ネコ、乳牛、ニワトリ、両生動物、爬虫類など)が含まれる。適切には、対象者は人間である。いくつかの実施態様では、人間の対象者は、湾岸戦争に従軍したか、および/または毒性物質(例えばピリドスチグミン臭化物(PB)、サリン、ソマン、DEET(昆虫駆除薬)、ペルメトリン、および/または有機リン酸物質(例えばクロルピリホス)、排気ガスまたは航空産業で使用される化学物質、またはヒ素が含まれるが、ただしこれらに限定されない)に暴露されたことが疑われ得る。
本発明の方法は対象者からサンプルを入手する工程を含むことができる。サンプルは細胞を含むことも含まないこともある。特に、本明細書に記載する方法は、組織サンプルまたは生検を要求することなく実施できる。“サンプル”は、細胞、組織または体液(前記で自己抗体レベルを検出できる)の任意のサンプリングを含むことが意図される。そのようなサンプルの例には、血液、血清、尿、滑液、唾液、若しくは任意の身体分泌物または前記の誘導体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。血液には全血、血漿(クエン酸塩、EDTA、ヘパリン)、血清、または任意の血液誘導物が含まれ得る。サンプルは、当業者が利用できる多様な技術によって患者から入手できる。いくつかの実施態様では、サンプルは血清または血漿である。
本方法はサンプル中の少なくとも1つの自己抗体のレベルを測定する工程を含むことができる。“自己抗体”は、対象者で見いだされるタンパク質と結合できる、前記対象者で生成される抗体である。自己抗体は、IgA、IgG、IgM、IgEまたはIgD免疫グロブリン(ただしこれらに限定されない)を含む抗体クラスの任意の1つであり得る。適切には、自己抗体はIgG免疫グロブリンである。
自己抗体のレベルを測定するために当業界で利用できる任意の方法が本明細書に包含される。例えば、サンプル中の自己抗体のレベルは、前記自己抗体に特異的な抗原タンパク質を用いて測定できる。例えば、自己抗体は、サンプルを固相に結合または架橋させたタンパク質とインキュベートし(例えばELISAまたはウェスタンブロット)、続いて検出可能な標識に連結した二次抗体を用いて検出することよって検出できる。そのような抗体は市場で入手できる。“〜のレベルを測定する”とは、サンプル中の自己抗体の量または存在を決定することを意味することが意図される。したがって、“〜のレベルを測定する”とは、生成不首尾のためにまたはアッセイの検出限界より低い生成のために自己抗体を検出できないと決定される事例を包含し、“〜を測定する”はまた低レベル、正常レベルおよび高レベルの検出を包含する。したがって、相対レベルまたは存在する若しくは存在しないは、レベルを測定するときに決定できる。これは、サンプルが本明細書で提供する神経タンパク質リストの特定のタンパク質に対するいずれかの抗体を有するか否かを決定することを含むことができる。
自己抗体の“レベルを測定する”ために適切な方法は当業者には公知であり、前記には、ウェスタンブロット、ELISA、免疫蛍光、FACS分析、ドットブロット、磁性免疫アッセイ、質量分析、ゲル電気泳動、抗原性タンパク質マイクロアレーおよび非抗原性タンパク質系マイクロアッセイまたはこれらの方法の組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明の自己抗体は神経タンパク質と結合する能力を有し得る。神経タンパク質は、サンプル中のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)(NFH、NFMおよびNFLを含む)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、S100Bタンパク質、または前記の任意の組合せを含むことができる。いくつかの実施態様では、これらのタンパク質の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、または12と結合できる自己抗体のレベルが測定される。
本発明の自己抗体は、サンプル中のGFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、S100Bまたは前記の任意の組合せと結合する能力を有し得る。いくつかの実施態様では、これらタンパク質の少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つと結合できる自己抗体のレベルが測定される。いくつかの実施態様では、GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KIIおよびS100Bタンパク質と結合できる自己抗体のレベルが測定される。自己抗体のレベルは、個々に決定されるか、または2つ以上のタンパク質の一セットを認識できる自己抗体の総数を測定することによって決定できる。例えば、2つ以上のタンパク質の一セットを認識できる自己抗体の総数を測定するときは、前記2つ以上のタンパク質を一緒にして特定のアッセイに適合させることができる(アッセイには、ウェスタンブロット、ELISA、免疫蛍光、FACS分析、ドットブロット、磁性免疫アッセイ、質量分析、ゲル電気泳動、抗原性タンパク質マイクロアレーおよび非抗原性タンパク質系マイクロアッセイまたはこれらの方法の組合せが含まれるが、ただしこれらに限定されない)。
本明細書に開示する神経タンパク質は、別個の機能を有するニューロンまたはグリア細胞の多様な解剖学的領域を示す。本明細書で用いられるように、“ポリペプチド”または“タンパク質”または“ペプチド”は互換的に用いられ、アミノ酸のポリマーを指す。本明細書で意図される“タンパク質”は、典型的には天然に出現するアミノ酸のポリマーを含む(アミノ酸は、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンである)。本明細書に記載するタンパク質は下記に述べるように当業者に公知であり、市販タンパク質として入手できる。ヌクレオチドおよびタンパク質の配列もまた公開されて入手可能である。本方法で使用するタンパク質は市場の供給源から入手するか、または当業者に利用可能な任意の手段によって本方法での使用のために生成することができる。完全長タンパク質の部分もまた、完全長タンパク質の当該部分に対する自己抗体の検出に用いることができる。当業者は承知していようが、抗体は全般的に6から10アミノ酸の短いエピトープ(線状または立体構造性であり得る)を認識し、さらに前記タンパク質に対する多様な改変(メチル化、アシル化および糖部分の付加を含むが、ただしこれらに限定されない)の認識を含むことができる。したがって、前記タンパク質の小部分を本明細書に記載する方法で用いることができ、前記タンパク質はこれら改変を含むことも含まないこともある。前記タンパク質の対立遺伝子の混合物を含むタンパク質もまた用いることができる。例に記載するように、ウシまたは他の哺乳動物の前記タンパク質を用いてヒトの自己抗体を検出することができる。
グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)は、ほぼ独占的にアストロサイトで発現され、そこで前記は神経損傷によって誘発され、前記アストロサイトの細胞骨格の崩壊時に放出される。GFAPは、形状維持およびアストロサイト系プロセスの自動性に本質的な役割を果たし、白質構築様式(architecture)、ミエリン化および血液脳関門(BBB)の完全性に貢献する。前記GFAPタンパク質は、配列番号:1のヒトGFAPタンパク質配列または配列番号:1と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
微小管関連tauタンパク質(Tau)は正常な軸索タンパク質であり、前記は軸索微小管の安定化及び組み立てに必要とされる。前記Tauタンパク質は、配列番号:2のヒトTauタンパク質配列または配列番号:2と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
微小管関連タンパク質-2(MAP-2)はニューロンの樹状区画内で見いだされる。前記MAP-2タンパク質は、配列番号:3のヒトMAP-2タンパク質配列または配列番号:3と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
ミエリン関連糖タンパク質(MAG)は、軸索周囲シュワン細胞およびミエリン鞘の希突起グリア細胞膜に選択的に局在し、前記が、PNSおよびCNSの両方においてグリア-軸索相互作用で機能することを示唆している。前記MAGタンパク質は、配列番号:4のヒトMAGタンパク質配列または配列番号:4と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
微小管関連tauタンパク質(Tau)は正常な軸索タンパク質であり、前記は軸索微小管の安定化及び組み立てに必要とされる。前記Tauタンパク質は、配列番号:2のヒトTauタンパク質配列または配列番号:2と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
微小管関連タンパク質-2(MAP-2)はニューロンの樹状区画内で見いだされる。前記MAP-2タンパク質は、配列番号:3のヒトMAP-2タンパク質配列または配列番号:3と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
ミエリン関連糖タンパク質(MAG)は、軸索周囲シュワン細胞およびミエリン鞘の希突起グリア細胞膜に選択的に局在し、前記が、PNSおよびCNSの両方においてグリア-軸索相互作用で機能することを示唆している。前記MAGタンパク質は、配列番号:4のヒトMAGタンパク質配列または配列番号:4と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaN-KII)は、骨格タンパク質(例えばMAP-2、tau、チューブリン)をリン酸化する。CaMKIIは脳の全タンパク質の12%を占める。CaMKIIは、上流のCa2+および反応性酸素種(ROS)シグナルと協調的に働き、それらを神経系並びに心脈管の生物学および病的状態における生理学的および病生理学的な下流の応答に変換する能力を有する。前記CaM-KIIタンパク質は、配列番号:5のヒトCaM-KIIタンパク質配列または配列番号:5と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
ミエリン塩基性タンパク質(MBP)は、CNSでは希突起グリアによってPNSではシュワン細胞によって生成される豊富なミエリン膜プロテオリピドであり、ニューロン変性疾患(例えば多発性硬化症および卒中)の臨床的判断を確認することができる。前記MBPタンパク質は、配列番号:6のヒトMBPタンパク質配列または配列番号:6と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
ミエリン塩基性タンパク質(MBP)は、CNSでは希突起グリアによってPNSではシュワン細胞によって生成される豊富なミエリン膜プロテオリピドであり、ニューロン変性疾患(例えば多発性硬化症および卒中)の臨床的判断を確認することができる。前記MBPタンパク質は、配列番号:6のヒトMBPタンパク質配列または配列番号:6と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)は、ニューロンの細胞骨格の主要な成分である3つの主要なニューロフィラメントサブユニットの全てまたは任意の1つを指す。前記NFPタンパク質は、配列番号:7のヒトNFPタンパク質配列(前記はまたNFH、NF200または重鎖と呼ばれることもある)または配列番号:7と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。2つのニューロフィラメントタンパク質、NFM(NF160;配列番号:10)およびNFL(NF68;配列番号:11)もまた含まれ、それらは、配列番号:10または11と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質である。
チューブリンは微小管の主要成分であり、軸索移動および縦方向への成長に必要であり、さらに軸索輸送に関与する。チューブリンは実質的に全ての真核細胞に存在するが、最も豊富な供給源は脊椎動物の脳であり、そこでは、チューブリンはその全可溶性タンパク質の約10−20%から成る。前記チューブリンタンパク質は、配列番号:8のヒトチューブリンタンパク質配列または配列番号:8と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
チューブリンは微小管の主要成分であり、軸索移動および縦方向への成長に必要であり、さらに軸索輸送に関与する。チューブリンは実質的に全ての真核細胞に存在するが、最も豊富な供給源は脊椎動物の脳であり、そこでは、チューブリンはその全可溶性タンパク質の約10−20%から成る。前記チューブリンタンパク質は、配列番号:8のヒトチューブリンタンパク質配列または配列番号:8と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
S100Bタンパク質は、脳組織中のその濃度に応じて有害作用および神経栄養作用の両方を示す。例えば、放出後、S100はセロトニン作動性ニューロンに対して栄養性因子として機能し、さらに発生時に軸索成長及びシナプス形成で役割を果たす。前記S100Bタンパク質は、配列番号:9のヒトS100Bタンパク質配列または配列番号:9と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
α-シヌクレイン(SNCA)は脳に豊富に存在し、主としてシナプス前終末の神経細胞の先端で見いだされる。前記タンパク質はパーキンソン病およびアルツハイマー病の病理発生で役割を果たし得る。前記SNCAタンパク質は、配列番号:12のヒトSNCAタンパク質配列または配列番号:12と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
α-シヌクレイン(SNCA)は脳に豊富に存在し、主としてシナプス前終末の神経細胞の先端で見いだされる。前記タンパク質はパーキンソン病およびアルツハイマー病の病理発生で役割を果たし得る。前記SNCAタンパク質は、配列番号:12のヒトSNCAタンパク質配列または配列番号:12と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
本明細書に記載する多くのタンパク質が軸索構造および機能に関与し、ニューロンの多様な領域の神経変性の生成物として放出される。MAP-2は樹状突起に存在し;CaMKII、tau、チューブリン、およびニューロフィラメントタンパク質は軸索に位置し;ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびミエリン関連糖タンパク質(MAG)はミエリンの不可欠な部分である。さらにまた、中枢神経系に特異的なグリアタンパク質、GFAPおよびS-100Bは、ニューロン損傷後にアストロサイトによって分泌される。ここに示すように、神経毒性物質への暴露または外傷に続いて、これらニューロンタンパク質およびグリアタンパク質は放出されいったん循環中に入ると、活性化されたリンパ球はこれらのタンパク質に対して自己抗体を形成するに至る。正常では、これらのタンパク質は脳内でのみ見いだされ免疫系から防御されるが、神経系の損傷または疾患が生じるとき、これらのタンパク質は血液脳関門をすり抜け、初めて免疫系に暴露されて自己抗体の生成をもたらす。
本明細書で提供される自己抗体の検出方法で用いられるタンパク質は完全長ポリペプチドでも前記完全長ポリペプチドのフラグメントでもよい。本明細書で用いられるように、“フラグメント”とはあるアミノ酸配列の部分であり、前記は配列は同一であるが、参照配列よりも長さは短い。フラグメントは、少なくとも1つのアミノ酸残基を減じた前記参照配列の全長までを含むことができる。いくつかの実施態様では、フラグメントは、参照タンパク質の連続する5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、または500アミノ酸残基を含むことができる。フラグメントは、好ましくはある分子の一定領域から選択できる。“少なくとも1つのフラグメント”という用語は、完全長ポリペプチドを包含する。タンパク質のフラグメントは、前記完全長タンパク質のアミノ酸配列の連続する部分を含むかまたは本質的に前記から成る。フラグメントは、完全長野生型タンパク質に対してN-末端切捨て、C-末端切捨てまたは両方の切捨てを含むことができる。適切には、フラグメントは免疫原性である。
本方法では、対象者のサンプルの自己抗体レベルは参照自己抗体レベルと比較できる。参照レベルは経験的に、例えば実施例で例証するように、既知の臨床的結末を有するかまたは神経系の損傷若しくは疾患を持たないことが判明している複数の対象者の複数のサンプルの一セットで見いだされる複数のレベルと比較することによって決定できる。また別には、参照レベルは、複数のサンプル(例えば血清サンプル)で見いだされる前記自己抗体の1つのレベルであってもよく、前記はスタンダードとなり、新しいサンプルのための予測物質として用いることができる。対象者のサンプルの自己抗体レベルは参照レベルと比較して増加し得る。
本明細書に記載する予測方法を組み合わせて有意性が増した結果を提供することができる。例えば、対象者の1つのサンプルで多数の自己抗体のレベルを決定することができ、それらの結果は付加的な検出力または予測力を持つことができる。複数のレベルを比較して、神経系の損傷または疾患の診断または予測を行うことができる。
本明細書に記載する予測方法を組み合わせて有意性が増した結果を提供することができる。例えば、対象者の1つのサンプルで多数の自己抗体のレベルを決定することができ、それらの結果は付加的な検出力または予測力を持つことができる。複数のレベルを比較して、神経系の損傷または疾患の診断または予測を行うことができる。
本方法はさらにまた、前記対象者が神経系の損傷または疾患を有すると診断されたならば、免疫抑制剤または抗炎症剤または抗痛剤または前記の組合せを前記対象者に投与する工程を含むことができる。免疫抑制剤には、プレドニゾン、アザチオプリン、シクロスポリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブ、コルチコステロイド、グルココルチコイド、メトトレキセート、シクロホスファミド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、a-メタプレド、メドロール、Depo-メドロール、Solu-メドロール、コトローン(cotolone)、プレドニコト(prednicot)、ステラプレド(sterapred)、プレローン(prelone)、ヴェリプレド(veripred)、ミリプレド(millipred)、オラプレド(orapred)、flo-プレド、ステラプレド、およびメチルプレドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。抗炎症剤には、NSAIDS(非ステロイド系抗炎症剤)、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブおよび多くの他のものが含まれ(ただし前記に限定されない)、さらにステロイド系抗炎症剤もまた含まれる。適切な抗痛剤には、非オピオイド鎮痛剤(例えばアセトアミノフェン)、オピオイド鎮痛剤、および補助鎮痛剤が含まれるが、ただし前記に限定されない。
本方法はさらにまた、診断された具体的な神経系の損傷または疾患を治療するために用いられる治療薬剤を投与する工程を含むことができる。例えば、パーキンソン病と診断された対象者は、以下を含む(ただしこれらに限定されない)治療薬剤で処置され得る:L-ドーパ(またはドーパミンの他の形態(例えばカルビドーパ-レボドーパ))、ドーパミンアゴニスト、MAO-B阻害剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、抗コリン作動薬、アマンタジン。卒中と診断された対象者は以下を含む(ただしこれらに限定されない)治療薬剤で処置され得る:NSAIDS(非ステロイド系抗炎症剤)、例えばアスピリン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、ワーファリン、またはクロピドグレル。
この後の考察で述べるように、アッセイ(キットおよびそれらを使用する方法)を開発して、本明細書に記載したタンパク質を用いて神経系の損傷または疾患の多様なタイプを弁別的に診断し、さらに対象者のサンプルでこれらのタンパク質に対する自己抗体の存在およびレベルについて特異的にスクリーニングできることは当業者には理解されよう。前記方法は、列挙したタンパク質の2つ、3つ、4つまたは5つ以上に対する自己抗体のレベルをスクリーニングする工程を含む。多様な神経系の損傷または疾患を示して、特異的なタンパク質セットに対する自己抗体(または自己抗体の欠如)の“フィンガープリント”を提示し、前記フィンガープリントはその下に横たわる損傷または疾患の診断および治療に用いることができる。ある実施態様では、GFAP、Tau、チューブリン、MAP、MBP、NFP、MAG、CAMKIIから成る群から選択されるタンパク質の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つに特異的な自己抗体が測定され、そのレベルが参照レベルと比較して増加するならば、対象者は湾岸戦争障害を有すると診断される。前記レベルは参照レベルに対して2倍、3倍またはそれ以上増加することがある。サンプル中のS100B特異的自己抗体のレベルもまた測定でき、前記自己抗体レベルが2倍未満の増加であるならば、それは湾岸戦争障害の診断と一致し、前記診断の指標である。
別の実施態様では、MBP、MAP-2、GFAPまたはS100Bの少なくとも2つ、3つまたは4つ全部に特異的な自己抗体が参照自己抗体レベルと比較して増加し、そのとき前記対象者はTBIを有すると診断される。その増加は、参照レベルと比較して2倍、3倍、4倍若しくは5倍さえまたはそれ以上のこともある。
別の実施態様では、NFP、Tau、チューブリン、MBPおよびGFAPの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照のレベルと比較して増加するならば、前記対象者はパーキンソン病を有すると診断される。そのレベルは、参照レベルと比較して2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ以上増加することがある。サンプル中のS100B特異的自己抗体のレベルもまた測定することができ、自己抗体のレベルが4倍、3倍、または2倍未満の増加であるならば、それはパーキンソン病の診断と一致し、前記診断の指標である。
別の実施態様では、NFP、Tau、チューブリン、MBPおよびGFAPの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照のレベルと比較して増加するならば、前記対象者はパーキンソン病を有すると診断される。そのレベルは、参照レベルと比較して2倍、3倍、4倍、5倍またはそれ以上増加することがある。サンプル中のS100B特異的自己抗体のレベルもまた測定することができ、自己抗体のレベルが4倍、3倍、または2倍未満の増加であるならば、それはパーキンソン病の診断と一致し、前記診断の指標である。
別の実施態様では、NFMおよびNFHの少なくとも一方または両方に特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照レベルと比較して対象者で増加するならば、前記対象者は有機リン酸物質暴露を有すると診断される。前記レベルは参照レベルに対して2倍、3倍、4倍、5倍、またはそれ以上増加することがある。
別の実施態様では、NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2およびGFAPの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全部に特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照レベルと比較して対象者で増加するならば、前記対象者は有毒ガスへの暴露を有すると診断される。そのレベルは参照に対して2倍、3倍、4倍またはそれ以上増加することがある。S100B特異的自己抗体のレベルもまた測定することができ、前記自己抗体レベルが2倍未満増加するならば、それは有毒ガス(例えば送気管排気ガス)への暴露の診断と一致し、前記診断の指標である。
別の実施態様では、NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2およびGFAPの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全部に特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照レベルと比較して対象者で増加するならば、前記対象者は有毒ガスへの暴露を有すると診断される。そのレベルは参照に対して2倍、3倍、4倍またはそれ以上増加することがある。S100B特異的自己抗体のレベルもまた測定することができ、前記自己抗体レベルが2倍未満増加するならば、それは有毒ガス(例えば送気管排気ガス)への暴露の診断と一致し、前記診断の指標である。
別の実施態様では、NFLまたはTauの少なくとも一方または両方に特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照レベルと比較して増加するならば、前記対象者はヒ素への暴露を有すると診断される。そのレベルは参照に対して2倍、3倍、4倍またはそれ以上増加することがある。
別の実施態様では、NFP、チューブリン、MBP、MAG、S100BおよびGFAPの少なくとも2つ3つ、4つまたは5つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照レベルと比較して対象者で増加するならば、前記対象者は卒中を有すると診断される。そのレベルは参照に対して2倍、3倍、4倍、またはそれ以上増加することがある。
別の実施態様では、NFP、チューブリン、MBP、MAG、S100BおよびGFAPの少なくとも2つ3つ、4つまたは5つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが参照レベルと比較して対象者で増加するならば、前記対象者は卒中を有すると診断される。そのレベルは参照に対して2倍、3倍、4倍、またはそれ以上増加することがある。
別の実施態様では、NFP、MBP、MAP-2、MAG、a-シヌクレイン、Tau、S100BおよびGFAPの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つ以上に特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体レベルが、参照レベルと比較して対象者で増加するかまたは対象者の母親で増加するならば、前記対象者は自閉症と診断される。そのレベルは参照に対して2倍、3倍、4倍またはそれ以上増加することがある。自閉症の小児の母親もまた評価することができる。母親のサンプルでGFAP、MAP2、NFP、MBPの少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つ全部に特異的な自己抗体が参照レベルに対して少なくとも2倍増加すれば、子供が自閉症を有することの指標である。
神経系の損傷または疾患を診断するためのキットが提供される。前記キットは、GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、MBP、NFP(NFH、NFM、NFL)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、およびS100Bタンパク質から成る群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のタンパク質を含むことができる。前記キットはまた、GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、およびS100Bから成る群から選択される少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つのタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様では、前記キットはGFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、およびS100Bタンパク質を含む。
本開示のキットはさらにまた、自己抗体と結合することができ、検出可能な標識に結合された抗対象者抗体(例えば抗IgG)を含むことができる。前記抗対象者抗体は任意の脊椎動物種(霊長動物、マウス、ラット、ヤギ、ニワトリ、ウサギ、ロバなどを含むが、ただしこれらに限定されない)で作成でき、前記は、免疫グロブリン(例えばIgA、IgG、IgM、IgEまたはIgD免疫グロブリンであるが、ただしこれらに限定されない)に特異性であってもまたは汎特異性でもよい。好ましくは、抗対象者抗体は、検出可能な標識に結合された抗ヒトIgG抗体である。前記検出可能な標識は、実験室的方法を用いて検出でき、前記抗対象者抗体と自己抗体との結合に実質的に干渉しない任意の標識であり得る。そのような抗体は市場で入手可能であり、さらに当業者が作成することができる。適切な検出可能標識には、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP))、蛍光標識、および放射能標識が含まれる。
本開示は、本明細書で示す構築、成分の配置、または方法工程の具体的詳細に限定されない。本明細書に開示する組成物および方法は、以下に続く開示を考慮して当業者に明白な多様な態様で作成、実施、使用、実行および/または形成できる。本明細書で用いられる表現法および用語は単に記載を目的とし、特許請求の範囲の限定とみなされるべきではない。本文および特許請求の範囲で用いられる序数標識(例えば第一、第二、および第三)は多様な構造または方法工程を指し、いずれかの具体的な構造若しくは工程、またはそのような構造若しくは工程に対するいずれか特定の順序若しくは構成の指示と解釈されることを意図しない。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で特段の指示がないかぎりまたは文脈から明らかに矛盾しないかぎり、任意の適切な順序で実施することができる。任意のおよび全ての例の使用、または本明細書で提供する例示の言葉(例えば“such as(例えば)”)は、単に本開示を容易にすることを意図し、特段の要請がなければ、本開示の範囲に関して何らかの制限を示唆するものではない。本明細書のいずれの言葉も図面に示されるいずれの構造も、特許請求されていないいずれかの成分が本開示の主題の実施にとって本質的であることを示していると解されるべきではない。“including(含む)”、“comprising(含む)”または“having(有する)”という用語および前記用語の変形の本明細書での使用は、その後に列挙される成分およびその同等物を追加の成分と同様に包含することを意味する。ある種の成分を“including(含む)”、“comprising(含む)”または“having(有する)”として列挙される実施態様もまた、それらある種の成分から“consisting essentially of(本質的に成る)”および“consisting of(成る)”ことが意図される。
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で特段の指示がないかぎり、単にある範囲内に入る別個の各値を個々に言及する簡潔な表記方法として機能させることを意図し、各別個の値はあたかも本明細書に個々に記載されたかのように本明細書に含まれる。例えば、濃度の範囲が1%から50%と記述されている場合、例えば2%から40%、10%から30%、または1%から3%などの値が本明細書に明確に列挙されていることが意図される。これらは具体的に意図されることの単なる例であり、列挙された値の間の数値(最低値および最高値を含む)の全ての可能な組合せが、本開示で明確に記述されていると考えられるべきである。列挙された特定の量または量の範囲を記載するための“約”という語の使用は、前記列挙された量に非常に近い値(例えば測定実施における製造公差、装置及び人的誤差などによると考えられるまたはそのために自然に生じ得る値)が当該量に含まれることを指示していること意味する。量を指す全てのパーセンテージは特段の指示がなければ重量による。
いずれかの参考文献(本明細書に引用された任意の非特許または特許資料を含む)が先行技術を構成するということは認められない。特に、特段の指定がないかぎり、本明細書におけるいずれかの資料の言及は、これら資料のいずれかが合衆国または他のいずれかの国の通常的一般知識の部分を形成することの容認を構成しないことは理解されよう。これら参考文献に関するいずれの考察もそれらの著者が主張するものを記述し、本出願人は、本明細書に引用するいずれの資料の正確性及び妥当性にも挑む権利を保留する。本明細書に引用される全ての参考文献は、特段の指示がないかぎり参照によってその全体が本明細書に含まれる。引用された参考文献で見いだされるいずれかの定義および/または記述の間で何らかの相違が存在する場合においては本開示が優先するであろう。
文脈によって特段に規定または指示されなければ、“a”、“an”および“the”という用語は“one or more(1つ以上)”を意味する。例えば“a protein(1つのタンパク質)”または“an RNA(1つのRNA)”は、 “1つ以上のタンパク質”または“1つ以上のRNA”をそれぞれ意味する。
下記の例は単に例証することを意図し、本発明または添付の特許請求の範囲の制限を意図しない。
文脈によって特段に規定または指示されなければ、“a”、“an”および“the”という用語は“one or more(1つ以上)”を意味する。例えば“a protein(1つのタンパク質)”または“an RNA(1つのRNA)”は、 “1つ以上のタンパク質”または“1つ以上のRNA”をそれぞれ意味する。
下記の例は単に例証することを意図し、本発明または添付の特許請求の範囲の制限を意図しない。
実施例1
湾岸戦争障害を有する復員軍人における新規な中枢神経系バイオマーカーのスクリーニング
湾岸戦争障害(GWI)は主として症状報告によって診断され、GWIを有する人々を識別する客観的なバイオマーカーが必要とされる。配備時における先の化学物質の暴露は、疫学的調査でGWIを有する復員軍人における脳神経系機能の変化と密接に関係していた。我々グループの以前の研究は、必須のニューロンタンパク質およびグリアタンパク質に対する自己抗体が脳損傷を有する患者に存在することを示し、複数の自己抗体がGWIを識別することができる客観的なマーカー候補として同定された。我々は、GWIを有する20人の復員軍人の血清、および10人の非復員軍人症候(背下部痛)コントロールの血清をそのような自己抗体の存在についてスクリーニングした。以下のタンパク質に対してウェスタンブロット分析を用いた:ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)、チューブリン、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaMKII)およびグリアS-100Bタンパク質。血清の反応性は恣意的化学発光単位として測定した。グループとして、GWIを有する復員軍人は、S-100Bを除くすべてのタンパク質で統計的に有意に高い自己抗体反応性レベルを有した。コントロールに対する症例の倍数増加は高いものから順に以下の通りであった:CaMKII 9.27、GFAP 6.60、Tau 4.83、チューブリン 4.41、MAG 3.60、MBP 2.50、NFP 2.45、MAP-2 2.30、S-100B 1.03。これらの結果は、これらの復員軍人におけるニューロン損傷/神経膠症の持続的存在を確認し、当該戦争から25年を経て、GWIを有する復員軍事の健康は改善せず悪化し得ること示す最近の報告と一致する。そのような血清自己抗体は、より大きなコントロールを用いた所見の検証で、GWIのバイオマーカーとして有用であることを証明し得る。
湾岸戦争障害を有する復員軍人における新規な中枢神経系バイオマーカーのスクリーニング
湾岸戦争障害(GWI)は主として症状報告によって診断され、GWIを有する人々を識別する客観的なバイオマーカーが必要とされる。配備時における先の化学物質の暴露は、疫学的調査でGWIを有する復員軍人における脳神経系機能の変化と密接に関係していた。我々グループの以前の研究は、必須のニューロンタンパク質およびグリアタンパク質に対する自己抗体が脳損傷を有する患者に存在することを示し、複数の自己抗体がGWIを識別することができる客観的なマーカー候補として同定された。我々は、GWIを有する20人の復員軍人の血清、および10人の非復員軍人症候(背下部痛)コントロールの血清をそのような自己抗体の存在についてスクリーニングした。以下のタンパク質に対してウェスタンブロット分析を用いた:ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)、チューブリン、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaMKII)およびグリアS-100Bタンパク質。血清の反応性は恣意的化学発光単位として測定した。グループとして、GWIを有する復員軍人は、S-100Bを除くすべてのタンパク質で統計的に有意に高い自己抗体反応性レベルを有した。コントロールに対する症例の倍数増加は高いものから順に以下の通りであった:CaMKII 9.27、GFAP 6.60、Tau 4.83、チューブリン 4.41、MAG 3.60、MBP 2.50、NFP 2.45、MAP-2 2.30、S-100B 1.03。これらの結果は、これらの復員軍人におけるニューロン損傷/神経膠症の持続的存在を確認し、当該戦争から25年を経て、GWIを有する復員軍事の健康は改善せず悪化し得ること示す最近の報告と一致する。そのような血清自己抗体は、より大きなコントロールを用いた所見の検証で、GWIのバイオマーカーとして有用であることを証明し得る。
1990年8月から1991年6月まで湾岸戦争(GW)に従軍した697,000人の米国軍人の約1/3が、当該戦争後長年にわたって持続的症状を訴えている。この複合症状(湾岸戦争障害(GWI)として知られている)には、記憶および注意力の問題、強い疲労感、慢性的な筋肉および関節の痛み、激しい頭痛、持続性下痢、呼吸困難および皮膚発疹が含まれる。GWIは主として症状の報告によって診断され、コントロールから症例を完全に分離する検証された客観的な診断バイオマーカーは現在のところ存在しない。本研究は、GW復員軍人に関する以前の臨床研究から、およびGW復員軍人が経験した化学物質暴露のモデルであった動物実験から得られた手掛かりを用いて、GWIの客観的な中枢神経系(CNS)バイオマーカーを同定するために設計された。
臨床研究は、認知機能の障害およびMRI体積の減少および白質微細構造の完全性の変化を、有機リン酸(OP)農薬(pesticide)、サリン神経剤、およびピリドスチグミン臭化物(PB)抗神経ガスピルに暴露されたGW復員軍人コホートで報告した(White et al., 2016;Sullivan et al., 2013;Chao et al., 2010;Heaton et al., 2007;Proctor et al., 2006;Sullivan et al., 2003)。動物試験は、高用量の予防ピルピリドスチグミン臭化物(PB)、昆虫駆除薬、DEET、および殺虫剤ペルメトリンおよび/またはクロルピリホスへの暴露は、GWIの動物モデルで顕著な脳傷害をもたらすことを示した(Abou-Donia et al., 1996a,b)。GWIのラットモデルでDEETおよびペルメトリン(単独または併用)への60日間の準慢性的皮膚暴露(用量レベルは湾岸戦争中に生じた暴露とほぼ等しい)を用いた更なる実験は以下を引き起こした:(1)運動皮質、海馬体の種々の部分野、および小脳のプルキンエ細胞層におけるびまん性のニューロン細胞の死、感覚運動不全を伴う;(2)生存ニューロンの樹状突起におけるMAP-2の非定型的発現を示す大脳皮質内のMAP-2陽性免疫反応性構造の顕著な減少、および数珠状に連なった、破壊されたまたは起伏性の外観を特徴とする海馬;(3)海馬、運動皮質および歯状回のCA3部分野の構造におけるGFAP陽性発現の顕著なアップレギュレーション(Abdel-Rahman et al., 2001, 2002a,b, 2004a,b;Abou-Donia et al., 2000, 2001, 2002, 2004;Terry et al., 2003)。同様な結果が、サリン単独でまたは上記に引用した化学物質を伴って処置され、ストレスを与えられまたは与えられなかった動物で示された(Abdel-Rahman et al., 2004a)。
臨床研究は、認知機能の障害およびMRI体積の減少および白質微細構造の完全性の変化を、有機リン酸(OP)農薬(pesticide)、サリン神経剤、およびピリドスチグミン臭化物(PB)抗神経ガスピルに暴露されたGW復員軍人コホートで報告した(White et al., 2016;Sullivan et al., 2013;Chao et al., 2010;Heaton et al., 2007;Proctor et al., 2006;Sullivan et al., 2003)。動物試験は、高用量の予防ピルピリドスチグミン臭化物(PB)、昆虫駆除薬、DEET、および殺虫剤ペルメトリンおよび/またはクロルピリホスへの暴露は、GWIの動物モデルで顕著な脳傷害をもたらすことを示した(Abou-Donia et al., 1996a,b)。GWIのラットモデルでDEETおよびペルメトリン(単独または併用)への60日間の準慢性的皮膚暴露(用量レベルは湾岸戦争中に生じた暴露とほぼ等しい)を用いた更なる実験は以下を引き起こした:(1)運動皮質、海馬体の種々の部分野、および小脳のプルキンエ細胞層におけるびまん性のニューロン細胞の死、感覚運動不全を伴う;(2)生存ニューロンの樹状突起におけるMAP-2の非定型的発現を示す大脳皮質内のMAP-2陽性免疫反応性構造の顕著な減少、および数珠状に連なった、破壊されたまたは起伏性の外観を特徴とする海馬;(3)海馬、運動皮質および歯状回のCA3部分野の構造におけるGFAP陽性発現の顕著なアップレギュレーション(Abdel-Rahman et al., 2001, 2002a,b, 2004a,b;Abou-Donia et al., 2000, 2001, 2002, 2004;Terry et al., 2003)。同様な結果が、サリン単独でまたは上記に引用した化学物質を伴って処置され、ストレスを与えられまたは与えられなかった動物で示された(Abdel-Rahman et al., 2004a)。
CNSの細胞構築様式(cytoarchitecture)は、適切に機能するために適切な情報伝達を維持する必要がある、ニューロン細胞およびグリア細胞を巻き込む複雑な細胞環境によって維持される(Abou-Donia and Lapadula, 1990;McMurray, 2000)。CaMKIIは細胞骨格タンパク質(例えばMAP-2、tauおよびチューブリン)をリン酸化する。CaMKIIは脳内の全タンパク質の12%を占める。CaMKIIは、上流のCa2+および反応性酸素種(ROS)シグナルと協調的に働き、それらを神経系並びに心脈管の生物学および病的状態における生理学的および病生理学的な下流の応答に変換する能力を有する(Abou-Donia, 1995;Erickson et al., 2011)。チューブリン(微小管の主要成分)は、軸索移動および縦方向への成長に必要であり、さらに軸索輸送に関与する。チューブリンは実質的に全ての真核細胞に存在するが、最も豊富な供給源は脊椎動物の脳であり、そこでは、チューブリンはその全可溶性タンパク質の約10−20%から成る(McMurray, 2000)。微小管関連タンパク質-2(MAP-2)はニューロンの樹状突起区画内で見いだされる。MAP-2の消失は不可逆的な神経病変の確実な指標であり、発作関連脳損傷の鋭敏なマーカーである(Ballough et al., 1995)。Tauタンパク質(正常な軸索タンパク質)は軸索微小管の安定性および組み立てに関与する。Tauタンパク質のレベルは脳脊髄液(CSF)および後の続くTBIで上昇し(Liliang et al., 2011)、増加レベルはアルツハイマー病の診断に用いられている。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)は、CNSの希突起グリア細胞およびPNSのシュワン細胞によって生成される豊富なミエリン膜プロテオリピドであり、ニューロン変性疾患(例えば多発性硬化症および卒中)の臨床的判断を確認することができる(Jauch et al., 2006)。ミエリン関連糖タンパク質(MAG)は、軸索周囲シュワン細胞およびミエリン鞘の希突起グリア細胞膜に選択的に局在し、前記が、PNSおよびCNSの両方においてグリア-軸索相互作用で機能することを示唆している(Schachner and Bartsch, 2000)。グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)は、ほぼ独占的にアストロサイトで発現され、そこで前記は神経損傷によって誘発され、前記アストロサイトの細胞骨格の崩壊時に放出される(Rempe and Nedergaard, 2010)。GFAPは、形状維持およびアストロサイト系プロセスの自動性に本質的な役割を果たし、白質構築様式(architecture)、ミエリン化および血液脳関門(BBB)の完全性に貢献する(O'Callaghan et al., 2015)。外傷性脳損傷(TBI)後に、GFAPの血清濃度は2−6時間でピークとなり、<2日の半減期を有する(Diaz-Arrastia et al., 2014)。S-100Bは、脳組織中のその濃度に応じて有害作用および神経栄養作用の両方を示す(Adami et al., 2001)。放出後、S-100Bはセロトニン作動性ニューロンに対して栄養性因子として機能し、さらに発生時には軸索成長及びシナプス形成で役割を果たす。したがって、外傷性急性損傷は、S-100Bの血漿中への大規模放出(50から100倍)をもたらすアストロサイトの大崩壊を生じるが、一方、精神障害におけるS-100Bレベルはコントロールと比較して患者で約3倍高かっただけで(Uda et al., 1998;Arolt et al., 2003)、その神経保護作用と良好な相関性を示す。具体的には、S-100BはtauおよびMAP-2を安定化させる。血清中のその半減期は2時間である(Zurek and Fedora, 2012)。
有機リン酸エステルを含むエンジンオイルおよび油圧油の燃焼を介して有機リン酸物質に慢性的に暴露される航空機パイロットおよび他の航空機乗務員の最近の研究は、GW復員軍人が報告したものと同様な症状(疲労感、頭痛、意識障害および記憶に関する問題)をもたらした。興味深いことに、これらの乗務員は、CNS傷害のマーカーである自己抗体の数が彼らの血清で有意に増すことを示した。前記マーカーには、軸索輸送に関連するもの(微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、チューブリン、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)および微小管関連タンパク質-tau(tauタンパク質))並びにもっぱらCNSグリア活性化およびニューロン炎症に関連するもの(ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびグリア原線維酸性タンパク質(GFAP))が含まれる(Abou-Donia et al., 2013)。組織病理学的剖検の追跡調査が有機リン酸物質暴露により死亡したパイロットで実施され、CNS傷害および脱メチル化が確認された(Abou-Donia et al., 2014)。具体的には、組織病理学の結果は軸索の変性および脱メチル化を示し、さらに検視及び神経系の病理学的試験は自己抗体バイオマーカーの結果を確認した。
脳画像および認知に関する調査を含む、GW復員軍人に関する最近の研究は、CNS損傷に特徴的な持続的な徴候および症状を示している(White et al., 2016;Chao et al., 2010, 2011, 2014, 2016;Heaton et al., 2007;Sullivan et al., 2003)。しかしながら、この復員軍人グループの急性又は慢性後遺症を同定するための検証された客観的診断検査は存在しない。頭蓋内コンピュータ断層撮影(CT)スキャンおよび磁気共鳴画像(MRI)技術(例えば拡散強調画像(DTI))を用いる脳損傷の診断は、GWIを有する復員軍人を臨床的に診断することはできなかった。なぜならば、診断検査に必要な症例をコントロールと区別するために個々のレベルで感度/特異性の関係で要求される100%近い正確さを提供することができる、容量測定的パラメーターまたは他の画像パラメーターのための証明済みカットオフ値が無かったからである。画像調査は、GWIを有する復員軍人と健康なコントロールとの間の相違および変化したCNS機能を示すことができたが、そのような調査は、それらグループ間の顕著なオーバーラップのためにそれらグループを診断的に同定することは未だにできていない(Chao et al., 2010, 2011, 2014, 2016;Heaton et al., 2007)。したがって、GWIにおけるCNS傷害の診断および経時的進行の理解に不可欠なニューロンおよびグリアの損傷を検出するために、臨床で利用できる簡単で高価ではないバイオマーカーを開発することが重要である。最近、軸索変性から生じる血清バイオマーカー(例えば細胞骨格タンパク質)が、脳損傷(特に外傷性脳損傷)の診断で用いられている。これらのバイオマーカーの使用は、それらの半減期が短いために通常は脳損傷後まもなく血清で測定される(Zurek and Fedora, 2011;Diaz-Arrastia et al., 2014)。
しかしながら、GW復員軍人が配備から帰還ししたがって病気に陥ってからは長年が経過し、前記の特定のアプローチはGWIには適用できない。慢性および急性損傷の結果に基づいて、我々は、上記に記載した我々の新規な一組の自己抗体バイオマーカーを用いて、慢性GWIを有する復員軍人のCNS傷害の指標について検査した(Abou-Donia et al., 2013, 2014)。1つの先行研究がGW復員軍人のミエリン塩基性タンパク質(MBP)の自己抗体および横紋筋抗体を比較し、高いMBPおよび筋肉抗体を報告した(Vojdani and Thrasher, 2004)。自己抗体はGWIの潜在的な客観的バイオマーカーとして以前に認識されている(Golomb, 2012)。したがって我々は以下のように仮説を立てた:GWIを有する復員軍人における配備時の農薬、抗神経ガスピルおよび/またはサリン神経ガスへの化学物質暴露は、興奮毒性カスケード(潜在的グルタミン酸作動性、酸化性ストレスおよび前炎症性サイトカインシグナルを介する)を引き起こしてニューロン変性および脳細胞のアポトーシス性消失をもたらし、特異的なニューロンタンパク質およびグリアタンパク質の血液脳関門から循環中への漏出を生じ、続いてこれらタンパク質に対する自己抗体(AB)が形成される(Abou-Donia et al., 2013;Banks and Lein, 2012;Golomb, 2008;Terry, 2012;Binukumar and Gill, 2010;Soltaninejad and Abdollahi, 2009)。本研究では、我々は20例のGWI症例および10例の症候(背下部痛)コントロールの血清で以下の9つの脳タンパク質に対する循環IgGクラスの自己抗体を決定した:ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)、チューブリン、微小管関連タンパク質-tau(tauタンパク質)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、カルシウム/カルモデュリンキナーゼII(CaMKII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)およびS-100B。
材料と方法
材料
タンパク質の供給源は以下の通りであった:NFP(ウシ脊髄)、tauタンパク質(ヒト)、MAP-2(ウシ血清)、チューブリン(ウシ脳)、およびMBP(ヒト脳)はシグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich(Saint Louis, Missouri)から;CaMKII(ヒト)組換えタンパク質およびMAG組換えタンパク質はノバスバイオロジカルズ(Novus Biologicals, Littleton, CO)から;GFAP(ヒト)はバイオトレンドケミカリエン社(Biotrend Chemikalien GmbH, Cologne, Germany)から;S-100B(ヒト脳)はアメリカンクォレクスインターナショナル社(American Qualex International, Inc., San Clemente, California)から。セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトおよび化学発光強化試薬はアマーシャムファルマシアバイオテク(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, New Jersey)から入手した。SDSゲル、2−20%グラディエント(8x8)、およびトリス-グリシン15mMはインビトロゲン(Invitrogen, Carlsbad, California)から入手した。他の全ての材料はアマーシャムから購入した。
材料
タンパク質の供給源は以下の通りであった:NFP(ウシ脊髄)、tauタンパク質(ヒト)、MAP-2(ウシ血清)、チューブリン(ウシ脳)、およびMBP(ヒト脳)はシグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich(Saint Louis, Missouri)から;CaMKII(ヒト)組換えタンパク質およびMAG組換えタンパク質はノバスバイオロジカルズ(Novus Biologicals, Littleton, CO)から;GFAP(ヒト)はバイオトレンドケミカリエン社(Biotrend Chemikalien GmbH, Cologne, Germany)から;S-100B(ヒト脳)はアメリカンクォレクスインターナショナル社(American Qualex International, Inc., San Clemente, California)から。セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトおよび化学発光強化試薬はアマーシャムファルマシアバイオテク(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, New Jersey)から入手した。SDSゲル、2−20%グラディエント(8x8)、およびトリス-グリシン15mMはインビトロゲン(Invitrogen, Carlsbad, California)から入手した。他の全ての材料はアマーシャムから購入した。
倫理に関する記載
本研究のために保存血液サンプルを使用することについての承認はデューク大学医療センター学内審査委員会(Duke University Medical Center Institutional Review Board)から得た。
本研究のために保存血液サンプルを使用することについての承認はデューク大学医療センター学内審査委員会(Duke University Medical Center Institutional Review Board)から得た。
症例サンプルおよびコントロールサンプル
GWIを有する20のGWI症例および背下部痛を有する10例の非復員軍人症候コントロールの血清サンプルを本パイロット研究で試験した。GW復員軍人の血清サンプルは、2010年から2012年のGWIを有する復員軍人の鍼治療の研究(Conboy et al., 2012)から収集された。コントロール血清サンプルは、慢性背下部痛を有する非復員軍人の別個の研究に由来した(前記は‘背下部痛症候’コントロールとして2011年から2013年に供された(Jacobson et al., 2015))。GWIを有する復員軍人を‘症例’と称し、背下部痛の症候コントロールを‘コントロール’と称する。
GWIを有する20のGWI症例および背下部痛を有する10例の非復員軍人症候コントロールの血清サンプルを本パイロット研究で試験した。GW復員軍人の血清サンプルは、2010年から2012年のGWIを有する復員軍人の鍼治療の研究(Conboy et al., 2012)から収集された。コントロール血清サンプルは、慢性背下部痛を有する非復員軍人の別個の研究に由来した(前記は‘背下部痛症候’コントロールとして2011年から2013年に供された(Jacobson et al., 2015))。GWIを有する復員軍人を‘症例’と称し、背下部痛の症候コントロールを‘コントロール’と称する。
患者コホートの説明:
GWI症例コホート
“湾岸戦争障害の治療における鍼の有効性”PI:Conboy、(8/21/2010−12/26/2012)N=104、調査場所:ニューイングランド鍼学校(New England School of Acupuncture(NESA))。
症例は、防衛人員データベース(Defense Manpower Data Base(DMDC))職員リストおよび広告を通して集めた。GWIについて症例をスクリーニングし、親研究及び現研究への包含のために慢性多症状障害(CMI)についてのCDC診断基準を満たすことを要求した(Conboy et al., 2012;Fukuda et al., 1998)。現研究に包含するためにはまた、復員軍人が1990−1991年の湾岸戦争に配備されたことが要求した。CMIは、3つの症状カテゴリー(1)疲労感;2)気分-認知;3)筋骨格痛)の少なくとも2つにおける1つ以上の症状が少なくとも6か月間に及ぶことを特徴とする。
症状が湾岸戦争配備中にまたは配備後に開始したことは必ずしも要求されなかった。排除基準には以下が含まれた:復員軍人が1)現在別の臨床試験に登録されていること、2)前記症状の説明におそらくなり得る別の疾患を有すること(メディカルモニターが決定する)、3)重篤な精神障害(過去2年間における精神病院入院、自殺未遂、アルコールまたは薬物乱用、抗精神薬の使用)、4)メディカルモニターの評価に基づけば本プロトコルを完了させることができないこと。
GWI症例コホート
“湾岸戦争障害の治療における鍼の有効性”PI:Conboy、(8/21/2010−12/26/2012)N=104、調査場所:ニューイングランド鍼学校(New England School of Acupuncture(NESA))。
症例は、防衛人員データベース(Defense Manpower Data Base(DMDC))職員リストおよび広告を通して集めた。GWIについて症例をスクリーニングし、親研究及び現研究への包含のために慢性多症状障害(CMI)についてのCDC診断基準を満たすことを要求した(Conboy et al., 2012;Fukuda et al., 1998)。現研究に包含するためにはまた、復員軍人が1990−1991年の湾岸戦争に配備されたことが要求した。CMIは、3つの症状カテゴリー(1)疲労感;2)気分-認知;3)筋骨格痛)の少なくとも2つにおける1つ以上の症状が少なくとも6か月間に及ぶことを特徴とする。
症状が湾岸戦争配備中にまたは配備後に開始したことは必ずしも要求されなかった。排除基準には以下が含まれた:復員軍人が1)現在別の臨床試験に登録されていること、2)前記症状の説明におそらくなり得る別の疾患を有すること(メディカルモニターが決定する)、3)重篤な精神障害(過去2年間における精神病院入院、自殺未遂、アルコールまたは薬物乱用、抗精神薬の使用)、4)メディカルモニターの評価に基づけば本プロトコルを完了させることができないこと。
cLBPコホート
“慢性背下部痛のための構造的身体統合(Structural Integration)”PI:Jacobson,(3/4/2011−6/21/2013)N=46、調査場所:スポールディングリハビリ病院(Spaulding Rehabilitation Hospital(SRH))。このコホートでは、慢性の非特異的背下部痛を有するボストン界隈の46人の外来患者を任意抽出して、外来リハビリ(OR)単独に対して構造的身体統合(SI)プラスORの20週長治療グループに対応させた。この研究の詳細は最近の刊行物(Jacobson et al., 2015)に記載されている。親研究のための包含基準には以下が含まれた:(i)18−65歳の男女;(ii)6か月以上の期間のcLBPであり、感染、新形成、重篤な神経根障害(脚下方の放射状の頻繁な強い痛みによって示される)、骨折、または炎症性リウマチ性プロセスに起因しないこと;(iii)平均して6か月を超えて11点(0=無し、10=想像する限りで最悪)順序尺度で3以上の自己判定背部痛に悩まされていること;(iv)ボストン界隈のリハビリクリニックで背下部痛のための外来理学療法コース受診が以前に取り決められていること;(v)インフォームドコンセントを提示し当該研究に参加するために十分である堪能な英語力および精神的能力を有すること。本研究の排除基準には以下が含まれた:(i)本研究への参加を妨げるに足る、聞き話し見る能力および運動性の障害;(ii)労働者災害補償または背下部痛に起因する身体障害のための他の保険から現在または将来における支払いの受け取り;(iii)何らかのSI療法による以前の治療;(iv)本研究期間中に外来リハビリ治療以外に背部痛のために追加の治療を開始する予定があること(特にマッサージまたは他の手を使う治療、例えばカイロプラクティックまたは整骨操作);(v)安全性のための排除:下部脚における解決されていない筋骨格の病気、妊娠中、何らかの医療装置の埋め込み、骨粗しょう症、何らかの高凝固症状、湿疹、皮膚感染、深部静脈塞栓症、火傷または他の急性外傷(治癒していない骨折または開いたままの創傷、乾癬、統御が良好でない精神疾患、または大うつ病性障害の悪化による現時点におけるエピソード。
“慢性背下部痛のための構造的身体統合(Structural Integration)”PI:Jacobson,(3/4/2011−6/21/2013)N=46、調査場所:スポールディングリハビリ病院(Spaulding Rehabilitation Hospital(SRH))。このコホートでは、慢性の非特異的背下部痛を有するボストン界隈の46人の外来患者を任意抽出して、外来リハビリ(OR)単独に対して構造的身体統合(SI)プラスORの20週長治療グループに対応させた。この研究の詳細は最近の刊行物(Jacobson et al., 2015)に記載されている。親研究のための包含基準には以下が含まれた:(i)18−65歳の男女;(ii)6か月以上の期間のcLBPであり、感染、新形成、重篤な神経根障害(脚下方の放射状の頻繁な強い痛みによって示される)、骨折、または炎症性リウマチ性プロセスに起因しないこと;(iii)平均して6か月を超えて11点(0=無し、10=想像する限りで最悪)順序尺度で3以上の自己判定背部痛に悩まされていること;(iv)ボストン界隈のリハビリクリニックで背下部痛のための外来理学療法コース受診が以前に取り決められていること;(v)インフォームドコンセントを提示し当該研究に参加するために十分である堪能な英語力および精神的能力を有すること。本研究の排除基準には以下が含まれた:(i)本研究への参加を妨げるに足る、聞き話し見る能力および運動性の障害;(ii)労働者災害補償または背下部痛に起因する身体障害のための他の保険から現在または将来における支払いの受け取り;(iii)何らかのSI療法による以前の治療;(iv)本研究期間中に外来リハビリ治療以外に背部痛のために追加の治療を開始する予定があること(特にマッサージまたは他の手を使う治療、例えばカイロプラクティックまたは整骨操作);(v)安全性のための排除:下部脚における解決されていない筋骨格の病気、妊娠中、何らかの医療装置の埋め込み、骨粗しょう症、何らかの高凝固症状、湿疹、皮膚感染、深部静脈塞栓症、火傷または他の急性外傷(治癒していない骨折または開いたままの創傷、乾癬、統御が良好でない精神疾患、または大うつ病性障害の悪化による現時点におけるエピソード。
サンプルの収集及び保存
GWIコホートおよびcLBPコホートのサンプルは、2010年から2013年の同じ時期に2つの異なるサイトでボストン界隈から収集された。全てのサイトが、厳密に同じ静脈穿刺、血液取り扱い、血清分離、分注(aliquoting)および-80℃での保存プロトコルにしたがった。同じ静脈切開プロトコルおよびサンプルプロトコルが全サイトに書き物として配布された。分析される全てのサンプルが介入療法前に収集された基準血液サンプルであった。この研究で用いられたサンプルは以前に解凍されたことはなく、目視によれば溶血は存在しない(Tuck et al., 2009)。
GWIコホートおよびcLBPコホートのサンプルは、2010年から2013年の同じ時期に2つの異なるサイトでボストン界隈から収集された。全てのサイトが、厳密に同じ静脈穿刺、血液取り扱い、血清分離、分注(aliquoting)および-80℃での保存プロトコルにしたがった。同じ静脈切開プロトコルおよびサンプルプロトコルが全サイトに書き物として配布された。分析される全てのサンプルが介入療法前に収集された基準血液サンプルであった。この研究で用いられたサンプルは以前に解凍されたことはなく、目視によれば溶血は存在しない(Tuck et al., 2009)。
参加者の人口統計データ
参加者の人口統計データは、GWIを有する総数20人の復員軍人(男性18人および女性2人)に対し本研究に参加した10人のcLBPコントロール(うち6人は女性)を示している。GWI症例の年齢は38から61の範囲(平均±SD 46.0±6.8)であり、対してコントロールについては25から64歳(平均±SD 50±11.4)であった。全ての研究参加者は白人であった(表1)。GWIを有する復員軍人の70%が戦争中のPBピルの服用を報告した(n=14)。これらグループは性別に関して相違し(X2=8.5;p b 0.05)、コントロールグループでは女性が有意に多いが年齢に関しては相違はなかった(t-値=-1.3;p N 0.05)。
参加者の人口統計データは、GWIを有する総数20人の復員軍人(男性18人および女性2人)に対し本研究に参加した10人のcLBPコントロール(うち6人は女性)を示している。GWI症例の年齢は38から61の範囲(平均±SD 46.0±6.8)であり、対してコントロールについては25から64歳(平均±SD 50±11.4)であった。全ての研究参加者は白人であった(表1)。GWIを有する復員軍人の70%が戦争中のPBピルの服用を報告した(n=14)。これらグループは性別に関して相違し(X2=8.5;p b 0.05)、コントロールグループでは女性が有意に多いが年齢に関しては相違はなかった(t-値=-1.3;p N 0.05)。
表1:研究参加者の人口統計データa
血液が収集された2010年から2013年の年齢範囲:症例=38−61歳およびコントロール=25−64歳。
a 本研究に参加した総数は20人の対象者及び10人のコントロール
* 症例は性別に関してコントロールと有意に相違した(p<0.05)が、年齢では相違しなかった。
血液が収集された2010年から2013年の年齢範囲:症例=38−61歳およびコントロール=25−64歳。
a 本研究に参加した総数は20人の対象者及び10人のコントロール
* 症例は性別に関してコントロールと有意に相違した(p<0.05)が、年齢では相違しなかった。
ウェスタンブロットアッセイ
一組のタンパク質に対する自己抗体の存在をスクリーニングするために、我々は以前に報告したようにウェスタンブロットアプローチを利用した(Abou-Donia et al., 2013)。各血清サンプルをトリプリケートで分析した。各タンパク質を10ng/レーンとしてローディングしたが、ただしIgGは100ng/レーンとしてローディングされた。タンパク質を変性させ、インビトロゲン(Carlsbad, CA)から購入したSDS-PAGE(4%から20%のグラディエント)で電気泳動した。各血清サンプルについて1つのゲルを用いた。タンパク質をフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(Amersham Pharmacia Biotech Piscataway, New Jersey)に移した。非特異的結合部位を5%の脱脂粉乳を含むトリス緩衝食塩水-トゥイーン(TBST)(40mMトリス[pH 7.6]、300mM NaClおよび0.1%トゥイーン20)を用い22℃で1時間遮断した。3%脱脂粉乳含有TBSTで1:100に希釈した血清サンプルとともに膜を4℃で一晩インキュベートした。TBSTで5回洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, New Jersey)の1:2000希釈で前記膜をインキュベートした。ドットブロットは抗ヒトIgG(H+L) HRP結合抗体(Cat.No.31410, Thermo Fisher Scientific Inc., Pittsburgh, PA, USA)で1時間、RTでプローブし、ECL試薬(Cat.No.34096)とともにインキュベートした。製造業者(Amersham Pharmacia Biotech)のプロトコルにしたがい強化化学発光およびタイフーン(Typhoon)8600可変モードイメージャーを用いて膜をデベロップした。シグナル強度はBio-Radイメージソフトウェア(Hercules, California)を用いて定量した。全ての試験が参加者の診断を知らされていない研究者によって実施された。
一組のタンパク質に対する自己抗体の存在をスクリーニングするために、我々は以前に報告したようにウェスタンブロットアプローチを利用した(Abou-Donia et al., 2013)。各血清サンプルをトリプリケートで分析した。各タンパク質を10ng/レーンとしてローディングしたが、ただしIgGは100ng/レーンとしてローディングされた。タンパク質を変性させ、インビトロゲン(Carlsbad, CA)から購入したSDS-PAGE(4%から20%のグラディエント)で電気泳動した。各血清サンプルについて1つのゲルを用いた。タンパク質をフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(Amersham Pharmacia Biotech Piscataway, New Jersey)に移した。非特異的結合部位を5%の脱脂粉乳を含むトリス緩衝食塩水-トゥイーン(TBST)(40mMトリス[pH 7.6]、300mM NaClおよび0.1%トゥイーン20)を用い22℃で1時間遮断した。3%脱脂粉乳含有TBSTで1:100に希釈した血清サンプルとともに膜を4℃で一晩インキュベートした。TBSTで5回洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, New Jersey)の1:2000希釈で前記膜をインキュベートした。ドットブロットは抗ヒトIgG(H+L) HRP結合抗体(Cat.No.31410, Thermo Fisher Scientific Inc., Pittsburgh, PA, USA)で1時間、RTでプローブし、ECL試薬(Cat.No.34096)とともにインキュベートした。製造業者(Amersham Pharmacia Biotech)のプロトコルにしたがい強化化学発光およびタイフーン(Typhoon)8600可変モードイメージャーを用いて膜をデベロップした。シグナル強度はBio-Radイメージソフトウェア(Hercules, California)を用いて定量した。全ての試験が参加者の診断を知らされていない研究者によって実施された。
血清自己抗体の特異性
以前に、我々は、血清に標的タンパク質またはペプチドを添加したペプチド/抗原競合アッセイを実施することによって、血清自己抗体の特異性をチェックした(Abou-Donia et al., 2013)。無作為の健康なコントロールの血清にtau、MAPまたはMBPを混合するかまたは混合しなかった。血清/タンパク質混合物を15,000rpmで遠心分離し、一切の免疫複合物をペレットにした。続いて上清を注意して除去し、ウェスタンブロットで用いた。
以前に、我々は、血清に標的タンパク質またはペプチドを添加したペプチド/抗原競合アッセイを実施することによって、血清自己抗体の特異性をチェックした(Abou-Donia et al., 2013)。無作為の健康なコントロールの血清にtau、MAPまたはMBPを混合するかまたは混合しなかった。血清/タンパク質混合物を15,000rpmで遠心分離し、一切の免疫複合物をペレットにした。続いて上清を注意して除去し、ウェスタンブロットで用いた。
計算
トリプリケートの試験から得た光学密度測定の平均値を各被検血清サンプルのために用い、総IgGによって標準化した。したがって、結果は、総血清IgGに対して標準化された恣意的光学密度単位のトリプリケートアッセイにおける平均値として表される。
トリプリケートの試験から得た光学密度測定の平均値を各被検血清サンプルのために用い、総IgGによって標準化した。したがって、結果は、総血清IgGに対して標準化された恣意的光学密度単位のトリプリケートアッセイにおける平均値として表される。
検定力分析
総計20のGWI症例がこの簡便サンプルの試験で利用可能であった。効果量計算はグループ間の共通標準偏差を仮定する2サンプルt検定を基準にした。検定力分析は、症例およびコントロールは一致しないと仮定する。2つの独立した平均間の相違、選別力80%、両側(2-sided)アルファ0.05、および20対10のサイズのt検定では、本研究は、少なくとも1.12のSDの場合のみ効果を検出する検定能力を有した。
総計20のGWI症例がこの簡便サンプルの試験で利用可能であった。効果量計算はグループ間の共通標準偏差を仮定する2サンプルt検定を基準にした。検定力分析は、症例およびコントロールは一致しないと仮定する。2つの独立した平均間の相違、選別力80%、両側(2-sided)アルファ0.05、および20対10のサイズのt検定では、本研究は、少なくとも1.12のSDの場合のみ効果を検出する検定能力を有した。
統計
グループのデータは平均±SDとして報告される。症例の値を、t検定およびピアソン相関分析(SigmaStat, Systat Software)を用いてコントロールグループと比較し、p値を計算した。9つのバイオマーカー間のペアワイズ相関を査定した。両側p値<0.05は有意とみなされた。このパイロット試験の予備調査的性質のために、分析では多重比較のための調整を実施しなかった。
グループのデータは平均±SDとして報告される。症例の値を、t検定およびピアソン相関分析(SigmaStat, Systat Software)を用いてコントロールグループと比較し、p値を計算した。9つのバイオマーカー間のペアワイズ相関を査定した。両側p値<0.05は有意とみなされた。このパイロット試験の予備調査的性質のために、分析では多重比較のための調整を実施しなかった。
結果
以前に記載したように、我々は、血清に標的タンパク質またはペプチドを添加したペプチド/抗原競合アッセイを実施することによって、血清自己抗体の特異性を査定した。Tauと結合した血清はウェスタンブロットでtauバンドを除去したが(図1参照)、MAP-2またはMBPのバンドは存在し影響を受けなかった。MAP-2と結合した血清はウェスタンブロットでMAP-2バンドを除去したが、tauまたはMBPのバンドは存在した。MBPと結合した血清はウェスタンブロットでMBPバンドを除去したが、tauまたはMAP-2のバンドは存在した。これらの結果は、血清中の各自己抗体は血清サンプル中のその標的タンパク質によって特異的に中和され、ウェスタンブロットでは前記タンパク質に存在するエピトープと結合するためにもはや利用不能であったことを示している。これは、本研究に用いられるアッセイは特異的であり、被検タンパク質に対する血清サンプル中の自己抗体を正確に決定することを確認した。
血清中の自己抗体を検出するために、我々は個々の血清サンプルを用いてウェスタンブロットを精査した。総計30のヒト血清サンプル(GWIを有する20人の復員軍人および10人の非復員軍人背下部痛症候コントロール)で、9つのニューロン特異的およびグリア特異的タンパク質に対する血清循環IgGクラス自己抗体のレベルの測定を実施した。表2は、化学物質暴露および環境暴露を受けたGWI症例の数を示す。前記の表は、14症例(70%)が神経物質への可能な暴露に対する予防としてPBを用い、9症例が神経剤サリンへの暴露を報告したことを示す。加えて、総計8症例が、イラクのハーミシーア地下武器貯蔵庫(貯蔵化学兵器が1991年3月に破壊された(US DOD, 2002))に接近したためにサリンおよび他の化学物質に暴露された可能性があるという、国防省(DOD)からの通知を受け取ったことを報告した。8症例が劣化ウランへの暴露を報告した。症例の全てが、1つ以上の殺虫剤または農薬混合物(有機リン酸物質、カルバメート、ピレスロイドおよび有機塩素剤を含む)への暴露を報告した。11症例が昆虫駆除薬DEETを用いた。全ての症例が表2に列挙した環境暴露および他の暴露を受けた。当該症例が暴露を報告した他の化学物質には油井火災(oil well fire)、砂、テントヒーター、ジェット燃料および溶媒が含まれた。幾人かの復員軍人はマラリアへの暴露を報告し、18人はワクチン接種を受けたことを報告した。GWI症例の血清は、非復員軍人症候(背下部痛)コントロールと比較して全ての細胞骨格タンパク質(S-100Bを除く)に対する自己抗体で有意なレベル増加を示した(表3)。症例とコントロール間の性別における相違のために、グループの男性のみによる分析もまた実施した。コントロールグループにはほんの少数の男性しか存在しないが(このことはこのタイプの分析では問題が多い)、この比較の結果は全自己抗体における有意な相違と同様なパターンを示した(GFAP p<0.001;Tau p<0.001;MAP p<0.002;MAG p<0.001;PNF p<0.006;チューブリンp<0.003;MBP p<0.01;S-100B p=0.31)。GWI血清の大半は神経タンパク質と強く反応したが、一方、大半のコントロール血清は弱い反応を示すかまたは全く反応を示さなかった。図1Aおよび1Bは、これら3つの代表的なGWI症例および3つのコントロールのウェスタンブロットの結果を提示する。総血清IgG光学密度に対して標準化したトリプリケートアッセイでの恣意的光学密度単位の平均値±SDとして表された神経特異的タンパク質に対するGWI症例およびコントロールにおける血清自己抗体のレベルは、表3に列挙されさらに図2に示されている(前記平均値は、コントロールにおけるS-100Bの0.30およびGFAPの0.62と比較して症例ではそれぞれ0.30および4.09の範囲であった)。症例における神経タンパク質に対する自己抗体のパーセンテージは(多いものから順に)以下の通りであった:CaMKII 927、GFAP 660、Tau 483、チューブリン 441、MAG 360、MBP 250、NFP 245、MAP-2 230、S-100B 103。図3は、コントロールと比較した、症例における神経タンパク質に対する自己抗体の倍数増加の平均±SD(p b 0.001)を提示する。コントロールの血清では、神経系特異的バイオマーカーに対する循環自己抗体レベルは存在しないかまたは低かった。CaMKIIに対する自己抗体はコントロール血清よりも症例血清で優勢であった(図3)。
以前に記載したように、我々は、血清に標的タンパク質またはペプチドを添加したペプチド/抗原競合アッセイを実施することによって、血清自己抗体の特異性を査定した。Tauと結合した血清はウェスタンブロットでtauバンドを除去したが(図1参照)、MAP-2またはMBPのバンドは存在し影響を受けなかった。MAP-2と結合した血清はウェスタンブロットでMAP-2バンドを除去したが、tauまたはMBPのバンドは存在した。MBPと結合した血清はウェスタンブロットでMBPバンドを除去したが、tauまたはMAP-2のバンドは存在した。これらの結果は、血清中の各自己抗体は血清サンプル中のその標的タンパク質によって特異的に中和され、ウェスタンブロットでは前記タンパク質に存在するエピトープと結合するためにもはや利用不能であったことを示している。これは、本研究に用いられるアッセイは特異的であり、被検タンパク質に対する血清サンプル中の自己抗体を正確に決定することを確認した。
血清中の自己抗体を検出するために、我々は個々の血清サンプルを用いてウェスタンブロットを精査した。総計30のヒト血清サンプル(GWIを有する20人の復員軍人および10人の非復員軍人背下部痛症候コントロール)で、9つのニューロン特異的およびグリア特異的タンパク質に対する血清循環IgGクラス自己抗体のレベルの測定を実施した。表2は、化学物質暴露および環境暴露を受けたGWI症例の数を示す。前記の表は、14症例(70%)が神経物質への可能な暴露に対する予防としてPBを用い、9症例が神経剤サリンへの暴露を報告したことを示す。加えて、総計8症例が、イラクのハーミシーア地下武器貯蔵庫(貯蔵化学兵器が1991年3月に破壊された(US DOD, 2002))に接近したためにサリンおよび他の化学物質に暴露された可能性があるという、国防省(DOD)からの通知を受け取ったことを報告した。8症例が劣化ウランへの暴露を報告した。症例の全てが、1つ以上の殺虫剤または農薬混合物(有機リン酸物質、カルバメート、ピレスロイドおよび有機塩素剤を含む)への暴露を報告した。11症例が昆虫駆除薬DEETを用いた。全ての症例が表2に列挙した環境暴露および他の暴露を受けた。当該症例が暴露を報告した他の化学物質には油井火災(oil well fire)、砂、テントヒーター、ジェット燃料および溶媒が含まれた。幾人かの復員軍人はマラリアへの暴露を報告し、18人はワクチン接種を受けたことを報告した。GWI症例の血清は、非復員軍人症候(背下部痛)コントロールと比較して全ての細胞骨格タンパク質(S-100Bを除く)に対する自己抗体で有意なレベル増加を示した(表3)。症例とコントロール間の性別における相違のために、グループの男性のみによる分析もまた実施した。コントロールグループにはほんの少数の男性しか存在しないが(このことはこのタイプの分析では問題が多い)、この比較の結果は全自己抗体における有意な相違と同様なパターンを示した(GFAP p<0.001;Tau p<0.001;MAP p<0.002;MAG p<0.001;PNF p<0.006;チューブリンp<0.003;MBP p<0.01;S-100B p=0.31)。GWI血清の大半は神経タンパク質と強く反応したが、一方、大半のコントロール血清は弱い反応を示すかまたは全く反応を示さなかった。図1Aおよび1Bは、これら3つの代表的なGWI症例および3つのコントロールのウェスタンブロットの結果を提示する。総血清IgG光学密度に対して標準化したトリプリケートアッセイでの恣意的光学密度単位の平均値±SDとして表された神経特異的タンパク質に対するGWI症例およびコントロールにおける血清自己抗体のレベルは、表3に列挙されさらに図2に示されている(前記平均値は、コントロールにおけるS-100Bの0.30およびGFAPの0.62と比較して症例ではそれぞれ0.30および4.09の範囲であった)。症例における神経タンパク質に対する自己抗体のパーセンテージは(多いものから順に)以下の通りであった:CaMKII 927、GFAP 660、Tau 483、チューブリン 441、MAG 360、MBP 250、NFP 245、MAP-2 230、S-100B 103。図3は、コントロールと比較した、症例における神経タンパク質に対する自己抗体の倍数増加の平均±SD(p b 0.001)を提示する。コントロールの血清では、神経系特異的バイオマーカーに対する循環自己抗体レベルは存在しないかまたは低かった。CaMKIIに対する自己抗体はコントロール血清よりも症例血清で優勢であった(図3)。
表2:湾岸戦争時の対象者の化学物質暴露、環境暴露および他の暴露a
a 本研究に参加したGWIを有する総計20人の復員軍人
a 本研究に参加したGWIを有する総計20人の復員軍人
表3:神経特異的タンパク質cに対する症候コントロールb及びGWI症例bにおける血清自己抗体(AA)のレベルaの対応のない統計分析
a 結果は、健康なコントロールに対する倍数として、IgG光学密度に対して標準化した恣意的光学密度単位のトリプリケートアッセイにおける平均値として表される。
b 症例の値をt検定を用いてコントロールグループと比較し、大半は大いに有意であったが(p<0.001(両側))、ただしS-100Bは除かれる(前記はコントロールと有意には相違しなかった)。症例は性別に関してはコントロールと有意に相違したが(p<0.05)、年齢に関してはそうではなかった。
a 結果は、健康なコントロールに対する倍数として、IgG光学密度に対して標準化した恣意的光学密度単位のトリプリケートアッセイにおける平均値として表される。
b 症例の値をt検定を用いてコントロールグループと比較し、大半は大いに有意であったが(p<0.001(両側))、ただしS-100Bは除かれる(前記はコントロールと有意には相違しなかった)。症例は性別に関してはコントロールと有意に相違したが(p<0.05)、年齢に関してはそうではなかった。
図4は、チューブリンおよびGFAPが、コントロールと比較してGWI症例で最高値を有したことを示す。9つの自己免疫バイオマーカー間のペアワイズ相関はTauおよびMBPペアについてのみ有意であった。各ペア間の相関性を比較しとき、tauおよびMBPのみが互いに有意な線形相関を示した(図5)。図5は、これら2つのバイオマーカーのコントロール値は光学密度ユニット<1であったことを示し、一方、GWI症例は互いに強く線形相関する値を有し、平均してtauはいくつかのGWI症例ではコントロールよりも10倍まで上昇し、MBPもまた同じ症例対コントロールで5倍まで上昇した。
最後に、グループの識別のために、各バイオマーカーを個々の症例およびコントロール間で別々に潜在的倍数増加カットポイントについて比較したとき、結果は、チューブリン値は個々のGWI症例で個々のコントロール値と比較して最高の倍数増加値のいくつかを有するが、当該個々の症例の60%のみ(n=12)がその効果を示しめすことを明示した(図6A)。しかしながら、(20症例のうち)9症例で、チューブリンは、コントロールよりも3−9倍高い因子で上昇した。図6Bでは、GFAPはコントロールと比較して症例で最も高く上昇した。実際、GFAPは全てのコントロールと比較して症例の全てで高く、20症例のうち20症例がコントロールの平均よりも2から7倍高い値を有した。したがって、GFAP値は完全にコントロールから症例を区別した。GFAP値はこの小さなサンプルでは症例対コントロールでオーバーラップしなかったが、しかしながら、範囲内の分離は実質的な標準偏差に対して小さかった。図6Cでは、tauは、18症例でコントロールより高く、症例の50%がコントロールと比較して2倍のtau値を有した。図6Dでは、MAPは、15症例でコントロールより高く、症例の75%がコントロールより0.5から11倍高い値を有した。図6Gでは、MAGは、15症例でコントロールより高く、症例の75%がコントロールより10倍まで高い値を有した。図6Fでは、NFPは症例の50%のみ(n=10)でコントロールより高く、それらはコントロールよりも0.5−11倍高い値を示した。図6Eでは、MBPは、12症例でコントロールより高く、症例の60%がコントロールよりも2から5倍高い値を有してコントロールよりも高かった。図6Hでは、CAMKIIは16症例でコントロールよりも高く、症例の50%がコントロールよりも3から30倍高い値を有した。S-100B値は、図6Iに示すように、その値が症例とコントロールでオーバーラップしたように統計的に有意ではなかった。
最後に、グループの識別のために、各バイオマーカーを個々の症例およびコントロール間で別々に潜在的倍数増加カットポイントについて比較したとき、結果は、チューブリン値は個々のGWI症例で個々のコントロール値と比較して最高の倍数増加値のいくつかを有するが、当該個々の症例の60%のみ(n=12)がその効果を示しめすことを明示した(図6A)。しかしながら、(20症例のうち)9症例で、チューブリンは、コントロールよりも3−9倍高い因子で上昇した。図6Bでは、GFAPはコントロールと比較して症例で最も高く上昇した。実際、GFAPは全てのコントロールと比較して症例の全てで高く、20症例のうち20症例がコントロールの平均よりも2から7倍高い値を有した。したがって、GFAP値は完全にコントロールから症例を区別した。GFAP値はこの小さなサンプルでは症例対コントロールでオーバーラップしなかったが、しかしながら、範囲内の分離は実質的な標準偏差に対して小さかった。図6Cでは、tauは、18症例でコントロールより高く、症例の50%がコントロールと比較して2倍のtau値を有した。図6Dでは、MAPは、15症例でコントロールより高く、症例の75%がコントロールより0.5から11倍高い値を有した。図6Gでは、MAGは、15症例でコントロールより高く、症例の75%がコントロールより10倍まで高い値を有した。図6Fでは、NFPは症例の50%のみ(n=10)でコントロールより高く、それらはコントロールよりも0.5−11倍高い値を示した。図6Eでは、MBPは、12症例でコントロールより高く、症例の60%がコントロールよりも2から5倍高い値を有してコントロールよりも高かった。図6Hでは、CAMKIIは16症例でコントロールよりも高く、症例の50%がコントロールよりも3から30倍高い値を有した。S-100B値は、図6Iに示すように、その値が症例とコントロールでオーバーラップしたように統計的に有意ではなかった。
考察
このパイロット研究は、GWIを有する20人の復員軍人およびCNS症状ではなく筋骨格症状を有する10人の非復員軍人症候(背下部痛)コントロールの血清中の神経型およびグリア型特異的タンパク質に対する自己抗体の有意なレベル上昇を報告する。コントロールと比較してGWI症例における増加レベルの範囲は、CaMKIIの9.27倍からGFAPの6.6倍、ニューロフィラメントの2.45倍であった。S-100Bに対する自己抗体のレベルはコントロールとGWI症例で相違はなく(1.03倍)、これは、その神経保護的役割と一致しさらにGWIを有する復員軍人で慢性損傷が存在することおよび急性脳損傷が存在しないこととも一致する(Zurek and Fedora, 2011;Diaz-Arrastia et al., 2014;Stalnacke et al., 2006, 2004;Coch and Leube, 2016)。GWIの動物モデルを用いた以前の研究は、GW環境に存在する神経毒性物質への暴露は、ニューロンおよびグリアの変性を伴う行動的表出の欠陥を引き起こすことを示した(Abdel-Rahman et al., 2001, 2002a,b, 2004a,b;Abou-Donia et al., 2000, 2001, 2004)。ニューロン変性に続いて、細胞の神経学的老廃物またはデブリ(例えば有毒で安定的な凝集物を形成する間違って折り畳まれたタンパク質または過剰リン酸化タンパク質)が蓄積する(Nedergaard, 2013;Edgar et al., 2004)。この細胞デブリは傷害信号を発し、前記信号はCNS-免疫細胞-ミクログリアを活性化させさらに強力な抗原提示細胞として機能させ、前記細胞は、前炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-αおよびIL-6)および媒介物質(反応性酸素種、ROS)を分泌してT-リンパ球の補充をもたらす(Milligan and Watkins, 2009;Banks and Lein, 2012)。これら老廃タンパク質の多重暴露は、ミクログリアおよびアストロサイトをプライミングして、その後に続くそれぞれの暴露後の反応をより強化させることができる(Watkins andMaier, 2003)。これらは、慢性的な健康に関する症状(例えばGW復員軍人に認められる症状)に寄与する持続的な神経免疫応答および慢性的なニューロン炎症をもたらし得る(Johnson et al., 2016;Milligan and Watkins, 2009;Maier and Watkins, 1998;Watkins and Maier, 2003)。これらの老廃タンパク質は、アストロサイトの変化によって誘発される脳血液関門の欠損のために最終的には循環に放出される。脳内の老廃タンパク質は、それらがそこで分解される“グリンファティック系”として知られるメカニズムを介して最終的には肝臓に達する(Nedergaard, 2013)。しかしながら、マーカーとして機能する可能性がある放出タンパク質は短期間存在し、慢性GWIの症例ではバイオマーカーとして用いることはできない(Zurek and Fedora, 2011; Diaz-Arrastia et al., 2014)。したがって、自己抗体の検出は、本研究に記載するようにこれら循環老廃タンパク質のための代用マーカーとして機能することができる。
このパイロット研究は、GWIを有する20人の復員軍人およびCNS症状ではなく筋骨格症状を有する10人の非復員軍人症候(背下部痛)コントロールの血清中の神経型およびグリア型特異的タンパク質に対する自己抗体の有意なレベル上昇を報告する。コントロールと比較してGWI症例における増加レベルの範囲は、CaMKIIの9.27倍からGFAPの6.6倍、ニューロフィラメントの2.45倍であった。S-100Bに対する自己抗体のレベルはコントロールとGWI症例で相違はなく(1.03倍)、これは、その神経保護的役割と一致しさらにGWIを有する復員軍人で慢性損傷が存在することおよび急性脳損傷が存在しないこととも一致する(Zurek and Fedora, 2011;Diaz-Arrastia et al., 2014;Stalnacke et al., 2006, 2004;Coch and Leube, 2016)。GWIの動物モデルを用いた以前の研究は、GW環境に存在する神経毒性物質への暴露は、ニューロンおよびグリアの変性を伴う行動的表出の欠陥を引き起こすことを示した(Abdel-Rahman et al., 2001, 2002a,b, 2004a,b;Abou-Donia et al., 2000, 2001, 2004)。ニューロン変性に続いて、細胞の神経学的老廃物またはデブリ(例えば有毒で安定的な凝集物を形成する間違って折り畳まれたタンパク質または過剰リン酸化タンパク質)が蓄積する(Nedergaard, 2013;Edgar et al., 2004)。この細胞デブリは傷害信号を発し、前記信号はCNS-免疫細胞-ミクログリアを活性化させさらに強力な抗原提示細胞として機能させ、前記細胞は、前炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-αおよびIL-6)および媒介物質(反応性酸素種、ROS)を分泌してT-リンパ球の補充をもたらす(Milligan and Watkins, 2009;Banks and Lein, 2012)。これら老廃タンパク質の多重暴露は、ミクログリアおよびアストロサイトをプライミングして、その後に続くそれぞれの暴露後の反応をより強化させることができる(Watkins andMaier, 2003)。これらは、慢性的な健康に関する症状(例えばGW復員軍人に認められる症状)に寄与する持続的な神経免疫応答および慢性的なニューロン炎症をもたらし得る(Johnson et al., 2016;Milligan and Watkins, 2009;Maier and Watkins, 1998;Watkins and Maier, 2003)。これらの老廃タンパク質は、アストロサイトの変化によって誘発される脳血液関門の欠損のために最終的には循環に放出される。脳内の老廃タンパク質は、それらがそこで分解される“グリンファティック系”として知られるメカニズムを介して最終的には肝臓に達する(Nedergaard, 2013)。しかしながら、マーカーとして機能する可能性がある放出タンパク質は短期間存在し、慢性GWIの症例ではバイオマーカーとして用いることはできない(Zurek and Fedora, 2011; Diaz-Arrastia et al., 2014)。したがって、自己抗体の検出は、本研究に記載するようにこれら循環老廃タンパク質のための代用マーカーとして機能することができる。
自己抗体の最高の増加はCaMIIに対するものでコントロールの自己抗体の9.27倍で、その後に続くGFAPはコントロールの6倍であった。この結果は、復員軍人が湾岸戦争に配備されている間に彼らが有機リン化合物(例えば農薬)および神経剤サリンに暴露されたことと一致する。前記薬剤は、CaMKIIの活性およびmRNA発現(Patton et al., 1983, 1985, 1986;Gupta et al., 1998;Barbier et al., 2009)とともにNFP、チューブリンのCaMKII誘発リン酸化強化(Serrano et al., 1986)並びにtau活性を増加させて、NFP(Abou-Donia et al., 1993;Norgren et al., 2003)および軸索のチューブリン(Abou-Donia, 1993;Jensen et al., 1992;Gupta et al., 2000;Grigoryan and Lockridge, 2009)の凝集、脱制御および蓄積をもたらすことが示されている。凝集したニューロフィラメントは、GW関連動物および細胞神経毒性物質モデルで示されたように軸索輸送の鈍化をもたらす(Gupta et al., 1997;Reagan et al., 1994;Terry et al., 2012;Gao et al., 2016;Edgar et al., 2004)。GW関連暴露モデルはまたアストロサイト活性化と密接に関係している(Zakirova et al., 2015;Ojo et al., 2014)。
このパイロット分析で調査したニューロンタンパク質は別個の機能を有するニューロンの多様な解剖的領域を表し、前記はGWIの病理学に関して教示的であり得る(Lapadula and Abou-Donia, 1992)。用いられたタンパク質の全てが軸索の構造及び機能に必要とされ、ニューロンの多様な領域の神経変性の生成物として放出される。MAP-2は、樹状突起に存在し、CaMKII、tau、チューブリンおよびニューロフィラメントタンパク質は軸索に位置し、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびミエリン関連糖タンパク(MAG)はミエリンの不可欠な部分である(McMurray, 2000)。さらにまた、中枢神経系特異的グリアタンパク質、GFAPおよびS-100Bはニューロン損傷後にアストロサイトによって分泌される(McMurray, 2000)。軸索およびミエリンの変性に続いて、ニューロンタンパク質およびグリアタンパク質が放出され、いったん循環に入ると、活性化されたリンパ球(BおよびT細胞)はこれらタンパク質に対する自己抗体の形成をもたらす(Schwartz and Shechter, 2010a,b)。
このパイロット分析で調査したニューロンタンパク質は別個の機能を有するニューロンの多様な解剖的領域を表し、前記はGWIの病理学に関して教示的であり得る(Lapadula and Abou-Donia, 1992)。用いられたタンパク質の全てが軸索の構造及び機能に必要とされ、ニューロンの多様な領域の神経変性の生成物として放出される。MAP-2は、樹状突起に存在し、CaMKII、tau、チューブリンおよびニューロフィラメントタンパク質は軸索に位置し、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびミエリン関連糖タンパク(MAG)はミエリンの不可欠な部分である(McMurray, 2000)。さらにまた、中枢神経系特異的グリアタンパク質、GFAPおよびS-100Bはニューロン損傷後にアストロサイトによって分泌される(McMurray, 2000)。軸索およびミエリンの変性に続いて、ニューロンタンパク質およびグリアタンパク質が放出され、いったん循環に入ると、活性化されたリンパ球(BおよびT細胞)はこれらタンパク質に対する自己抗体の形成をもたらす(Schwartz and Shechter, 2010a,b)。
神経系特異的タンパク質に対する自己抗体の増加は以下のように多様な領域における構造的結果をもたらす:ニューロフィラメントタンパク質、tau、CaMKIIおよびチューブリンに対する自己抗体の増加は軸索変性の指標であり、MAGおよび/またはMBPに対する自己抗体の増加は脱ミエリン化を示唆し、MAP-2に対する自己抗体の増加は樹状突起の変性を示唆し、GFAPに対する自己抗体の増加は神経膠症を示唆し、S-100Bに対する自己抗体の低レベルまたは非増加レベルは化学物質誘発脳損傷に一致する(Zurek and Fedora, 2011;Diaz-Arrastia et al., 2014;Stalnacke et al., 2006, 2004)。本研究のtauおよびMBPの線形相関パターンは、軸索変性とその後に続く脱ミエリン化の重要な潜在的作用を示唆し、前記は神経毒性物質に暴露されたGW復員軍人における以前の神経画像研究と一致しよう(Heaton et al., 2007;Chao et al., 2010)。さらにまた、神経系のこれらの構造的変化は機能的変化をもたらす。したがって、大脳皮質の軸索変性は、運動および感覚異常、運動失調、以下における不全(姿勢、歩行および技量を要する精密な動きの運動(運指、発話、顔の表情))、および脆弱をもたらし;辺縁系(海馬を含む)の変性は、学習および記憶不全、並びに神経行動的(気分、情緒および判断力)異常をもたらし;MAP-2に対する自己抗体の増加は、小脳の樹状突起が豊富なプルキンエ細胞への傷害を示唆し、前記は、歩行協調運動の異常、よろめき歩行および運動失調をもたらす(McMurray, 2000; Abou-Donia, 2015)。GFAPに対する自己抗体の増加は神経膠症および潜在的なニューロン炎症および/またはグリアの瘢痕化を示す。GFAPは、白質構築様式、ミエリン化および血液脳関門(BBB)の完全性に寄与する(O'Callaghan and Sriram, 2005;Amourette et al., 2009;Lamproglou et al., 2009)。結果として、健康な個体のGFAPの血液レベルは非常に低い。GFAPレベルはGWI症例で高く、本研究では症例とコントロール間を完全に識別した。これは特に重要である。なぜならば、より高レベルのGFAPを有する異常には、記憶異常(例えばアルツハイマー病)および血管性痴呆(軸索のニューロン変性およびニューロン炎症を有する)が含まれるからである(Mecocci et al., 1995)。S-100Bに対する自己抗体の増加は外傷性脳傷害を示唆し、急性及び慢性脳損傷間の弁別に役立ち得る(Stroick et al., 2006;Stalnacke et al., 2006, 2004;Zurek and Fedora, 2011;Diaz-Arrastia et al., 2014;Coch and Leube, 2016)。本研究でそれらの増加がないことは、GWIを有する復員軍人は急性外傷性脳損傷ではないことを示唆する。
これらのGW関連神経毒性物質の動物および細胞研究から得られる重要な機構的手掛かりは、軸索輸送不全とともにニューロフィラメントおよび微小管(前記は軸索輸送のための構造的鉄路である)の異常を示した(Gupta and Abou-Donia, 1995a, b;Gearhart et al., 2007;Grigoryan and Lockridge, 2009;Prendergast et al., 2007, Jiang et al., 2010)。ミトコンドリアもまた軸索輸送によってデリバリーされ、軸索が機能するために必要な生化学反応の動力として要求されるエネルギーを提供し、GW関連神経毒性モデルでは機能の変化を示した(Middlemore-Risher et al., 2011)。GW関連有機リン酸物質の慢性低レベル暴露はまた、酸化ストレス誘発によるミトコンドリア不全および細胞傷害または細胞死を招くニューロン炎症と密接に関係し、細胞外間隙に老廃タンパク質のデブリを生じる(Laetz et al., 2009;Kaur et al., 2007;Banks and Lein, 2012)。実際、GWIの1つの仮説は、脳および周辺におけるミトコンドリア傷害および酸化ストレスはGWIの慢性症状を引き起こすと提唱し、自己抗体の増加がこのモデルの客観的マーカーおよび媒介物質の中でとりわけ明確に例証された(Golomb et al., 2014;Golomb, 2012;Koslik et al., 2014)。
GWIの別の仮説は、神経毒性物質は相乗的に機能して自己永続的なニューロン炎症状態を作り出し、前記は、順番に脳細胞(ニューロン(微小管、モータータンパク質、ミトコンドリア)およびグリア(ミクログリア、アストロサイト、希突起細胞)を含む)および血液脳関門機能に進行する負の衝撃を与えると提唱する(O'Callaghan and Sriram, 2005)。臨床研究でもまたGW復員軍人コホートに関して一貫した結果が見いだされた。前記コホートは、OP農薬、サリン神経剤およびPBピル暴露コホートのMRIで、認知機能障害並びに縮小体積および白質微細構造の完全性の変化を示した(White et al., 2016;Sullivan et al., 2013;Chao et al., 2010;Heaton et al., 2007;Proctor et al., 2006;Sullivan et al., 2003)。これらの以前の結果は、神経毒性物質に暴露されたGW復員軍人の明瞭なCNS変化を示唆する(前記CNSの変化は、ニューロン変性に関連する行動表出、並びにおそらくは慢性ニューロン炎症説およびミトコンドリア/OS説の両方と相関関係を有した)。
GWIの別の仮説は、神経毒性物質は相乗的に機能して自己永続的なニューロン炎症状態を作り出し、前記は、順番に脳細胞(ニューロン(微小管、モータータンパク質、ミトコンドリア)およびグリア(ミクログリア、アストロサイト、希突起細胞)を含む)および血液脳関門機能に進行する負の衝撃を与えると提唱する(O'Callaghan and Sriram, 2005)。臨床研究でもまたGW復員軍人コホートに関して一貫した結果が見いだされた。前記コホートは、OP農薬、サリン神経剤およびPBピル暴露コホートのMRIで、認知機能障害並びに縮小体積および白質微細構造の完全性の変化を示した(White et al., 2016;Sullivan et al., 2013;Chao et al., 2010;Heaton et al., 2007;Proctor et al., 2006;Sullivan et al., 2003)。これらの以前の結果は、神経毒性物質に暴露されたGW復員軍人の明瞭なCNS変化を示唆する(前記CNSの変化は、ニューロン変性に関連する行動表出、並びにおそらくは慢性ニューロン炎症説およびミトコンドリア/OS説の両方と相関関係を有した)。
我々が認識している、GW復員軍人でCNS自己抗体を比較したただ1つの研究は、MBP並びに横紋筋および平滑筋自己抗体を比較して、GWIを有する復員軍人のMBPおよび筋肉抗体がコントロールと比べて高いことを報告した(Vojdani and Thrasher, 2004)。現在の研究は以前のMBPに関する発見を立証し、8つの追加CNS自己抗体マーカーのより大きな一組を用いてそれら発見をさらに詳しく説明する。総合すれば、これらの発見は、MBPに対する循環抗体によって証明されるように、白質における変化がGWIと密接に関係するらしいということを示唆する。この発見は、白質の変化がグリア活性化並びに前炎症性サイトカインおよび酸化ストレスのシグナリングの結果として酸化ストレスおよびニューロン炎症と密接に関係があるということを条件として、GWIについての先導的な両仮説と一致する(Milligan and Watkins, 2009)。GWI症例ではより高いTau自己抗体レベルはより高いMBP自己抗体レベルと有意な線形相関を有するという、本研究の追加の発見は、軸索変性はGWIを有する復員軍人では脱ミエリン化の前に生じている可能性があることを示唆し、より強くミエリン特異性有毒物質性白質脳症からGWIを識別するためにより決定的である更なる試験を正当化する(Schmahmann et al., 2008;Filley, 2013)。これらの発見はまた、神経毒性物質に暴露されたGW復員軍人での白質および灰白質の両方の脳体積の相違に関するMRI所見と一致する(Heaton et al., 2007;Chao et al., 2010, 2011, 2014, 2016)。これらの所見はまた、GWI症例で顕著に高いGFAPレベルを有するGWIでは、特にグリアおよびアストロサイトの更なる調査を実施すべきであることを強く提唱する(前記は、以前のGWI動物モデルと一致し(Abdel-Rahman et al., 2001, 2002a, 2002b, 2004a, 2004b;Abou-Donia et al., 2000, 2001, 2002, 2004;Zakirova et al., 2015;Ojo et al., 2014)さらに傷害されたニューロンにアストロサイトがミトコンドリアを付与する能力を示す最近の研究(Hayakawa et al., 2016)と一致する)。
これらの結果は、GWIの客観的バイオマーカーの更なる開発のための可能性のある新たな道を提唱する。本研究で提示した強力な結果(9倍高いCAMKIIのレベル、6倍高いGFAPのレベル、および4倍高いtauおよびチューブリンのレベルを含む)は、より大きなよく特徴が判明した復員軍人コホートにおけるGWIの血液系客観的マーカーのための更なる研究を担保する。これらの結果は、GWIの客観的バイオマーカーの更なる開発のための可能性のある新たな道を提唱する。GWIにおけるこの小さな一組の神経特異的自己抗体バイオマーカーの同定は、より大きな調査サンプルでの更なる立証を保証する。前記より大きな調査サンプルは、対象者の人口統計的データ(特に年齢)、異なるタイプのコントロールグループ(すなわち健康なグループおよびCNS症候グループ)についてさらに注意深く適合され、さらにCDCおよびより特異的なKansas GWI基準によって症例を分類する(前記Kansas GWI基準はまた、特定のOPに対応し得る配備期間および他の配備関連暴露を規定する(Steele, 2000;Fukuda et al., 1998))。将来の目的は、これらのCNS自己抗体マーカーを特異的な行動的表出(認知能力を含む)並びに灰白質および白質体積の脳画像並びに微細構造完全性と比較して、これらの疑わしい脳-免疫-行動表出をさらに検証することであろう。
結論すれば、このパイロット試験で、GWIは、8つのニューロン特異的およびグリア特異的タンパク質(CaMKII、GFAP、Tau、チューブリン、MAG、MBP、NFP、MAP-2)に対して2−9倍増加する血清自己抗体と有意な関係を有し、急性の傷害マーカー(S-100B)とは有意な関係はなかった。GWIで上昇することがここで見いだされた自己抗体は、ニューロンの構造及び機能(軸索輸送およびミエリン化を含む)で重要な役割を果たすタンパク質/抗原を標的とした。それらの多くはニューロン変性疾患の明白なマーカーであり、ミエリン化ニューロンの軸索およびミエリン変性並びに神経膠症、細胞シグナリングおよびニューロン炎症と一致する。これらのサンプルタンパク質は、同様な有機リン酸物質およびカルバメート暴露を有する他の臨床グループおよび動物モデルで影響を受けることが示されている(Abou-Donia et al., 2013, 2014)。これらの結果は、GWI症例におけるMBP自己抗体の増加に関する以前の報告を立証し、さらに、希突起細胞シグナリング、グリア及び白質変化についてGWIでさらに研究を継続して、症状及び行動表出により立証されるべきであることを提唱する(Vojdani and Thrasher, 2004)。これらの結果はまた、GWIを有する復員軍人は脳のニューロン変性およびグリア活性化を提示し続けている可能性があることを示し、それは、これら復員軍人の慢性的に持続する症状およびいくつかの症例では症状の悪化が最近報告されていることと一致するであろう(Smith et al., 2013;Ozakinci et al., 2006;Li et al., 2011;Kang et al., 2009;Dursa et al., 2016;White et al., 2016)。
実施例1の参考文献
実施例2:パーキンソン病のバイオマーカーシグナチャー
パーキンソン病では、神経伝達物質ドーパミンを生成するニューロンが大脳基底核(身体の動きを制御する脳の領域)で死に絶える。我々は、パーキンソン病を有する患者の血清で、神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルをウェスタンブロットを用いて精査した(図7参照)。図に示すように、これらタンパク質の各々に特異的な自己抗体は、コントロールと比較してパーキンソン病を有する患者で増加した。NFP、Tau、チューブリン、MBPおよびGFAPはいずれも少なくとも10倍増加し、これらはパーキンソン病の同定および診断のバイオマーカーであり得る。
パーキンソン病では、神経伝達物質ドーパミンを生成するニューロンが大脳基底核(身体の動きを制御する脳の領域)で死に絶える。我々は、パーキンソン病を有する患者の血清で、神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルをウェスタンブロットを用いて精査した(図7参照)。図に示すように、これらタンパク質の各々に特異的な自己抗体は、コントロールと比較してパーキンソン病を有する患者で増加した。NFP、Tau、チューブリン、MBPおよびGFAPはいずれも少なくとも10倍増加し、これらはパーキンソン病の同定および診断のバイオマーカーであり得る。
実施例3:有機リン酸物質暴露のバイオマーカーシグナチャー
ウェスタンブロットを用いて、我々は、有機リン殺虫剤(クロルピリホス)に暴露された5歳齢の患者の血清で、神経タンパク質(NF200(NFH)、NF160(NFM)およびNF68(NFL))に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(図8参照)。これらのレベルを患者の肉親の他のメンバー(6歳の兄弟、9歳の兄弟、患者の父親および患者の母親を含む)と比較した。
これらの結果は、クロルピリホスに暴露された患者で、NFMおよびNFHタンパク質(ニューロフィラメントトリプレットタンパク質の中間層及び外層を表す)に対する自己抗体の有意な増加を示した。コアNFLタンパク質に対する自己抗体はこの患者では検出されなかった。これらの結果は、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質は部分的に分解されること、および/またはNFLは痕跡を残さず完全に分解されることを示唆する。ニューロン自己抗体およびグリア自己抗体の有意な増加という結果は神経系の軸索変性と一致する。これらの結果はさらにまた、有機リン酸物質誘発遅延型神経障害(OPIDN)(中枢/抹消軸索変性症を特徴とし軸索変性およびミエリン変性を伴う)を引き起こすクロルピリホスの作用と一致する。NFHおよびNFMに特異的な自己抗体の存在はOPIDNの指標であり、その診断に用いることができる。
ウェスタンブロットを用いて、我々は、有機リン殺虫剤(クロルピリホス)に暴露された5歳齢の患者の血清で、神経タンパク質(NF200(NFH)、NF160(NFM)およびNF68(NFL))に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(図8参照)。これらのレベルを患者の肉親の他のメンバー(6歳の兄弟、9歳の兄弟、患者の父親および患者の母親を含む)と比較した。
これらの結果は、クロルピリホスに暴露された患者で、NFMおよびNFHタンパク質(ニューロフィラメントトリプレットタンパク質の中間層及び外層を表す)に対する自己抗体の有意な増加を示した。コアNFLタンパク質に対する自己抗体はこの患者では検出されなかった。これらの結果は、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質は部分的に分解されること、および/またはNFLは痕跡を残さず完全に分解されることを示唆する。ニューロン自己抗体およびグリア自己抗体の有意な増加という結果は神経系の軸索変性と一致する。これらの結果はさらにまた、有機リン酸物質誘発遅延型神経障害(OPIDN)(中枢/抹消軸索変性症を特徴とし軸索変性およびミエリン変性を伴う)を引き起こすクロルピリホスの作用と一致する。NFHおよびNFMに特異的な自己抗体の存在はOPIDNの指標であり、その診断に用いることができる。
実施例4:航空機排ガス暴露のバイオマーカーシグナチャー
ウェスタンブロットを用いて、我々は、34人のパイロットおよび客室乗務員のグループの血清中の神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(前記グループは、申告によれば、航空機エンジンまたは補助動力ユニット(APU)から抜き取られる非フィルター換気空気供給中の大気排出物(エンジンオイル汚染物、すなわち熱分解されたエンジンオイルの気体状、蒸気状および粒子状成分)に暴露された)(図9参照)。図に示すように、被検タンパク質の全て(S100Bを除く)に対する自己抗体のレベルは、長期の航空機排ガスへの暴露後に、コントロール個体と比較して少なくとも5倍増加した。
ニューロンタンパク質およびグリアタンパク質に対する抗体の増加というこれらの結果は、有機リン酸物質への暴露、OP神経毒性の組織病理学的特色、およびOP暴露から生じる症状と一致する。本研究は、パイロット及び客室乗務員の飛行機の排ガスへの暴露がパイロット及び客室乗務員の疾患を引き起こしたという申し立てを確証する。
ウェスタンブロットを用いて、我々は、34人のパイロットおよび客室乗務員のグループの血清中の神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(前記グループは、申告によれば、航空機エンジンまたは補助動力ユニット(APU)から抜き取られる非フィルター換気空気供給中の大気排出物(エンジンオイル汚染物、すなわち熱分解されたエンジンオイルの気体状、蒸気状および粒子状成分)に暴露された)(図9参照)。図に示すように、被検タンパク質の全て(S100Bを除く)に対する自己抗体のレベルは、長期の航空機排ガスへの暴露後に、コントロール個体と比較して少なくとも5倍増加した。
ニューロンタンパク質およびグリアタンパク質に対する抗体の増加というこれらの結果は、有機リン酸物質への暴露、OP神経毒性の組織病理学的特色、およびOP暴露から生じる症状と一致する。本研究は、パイロット及び客室乗務員の飛行機の排ガスへの暴露がパイロット及び客室乗務員の疾患を引き起こしたという申し立てを確証する。
実施例5:ヒ素誘発神経損傷のバイオマーカーシグナチャー
ウェスタンブロットを用いて、我々は、バングラデシュミャンプールの高度にヒ素で汚染された村の14人の対象者グループの血清中の神経タンパク質(NFL、NFM、NFH、MAP-2およびTau)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した。これらのレベルを8人の健康なコントロールの適合グループと比較した。図10に示すように、NFLおよびTauに対する自己抗体のレベルは、ヒ素に暴露されていないコントロールと比較して5倍を超えて増加した。
これらの結果は、血清の自己抗体のレベルとヒ素誘発脳損傷との間の良好な相関性を示した。コアニューロフィラメントトリプレットタンパク質NFLはコントロールのそれより9倍を超える増加を示した。この後に、Tau、NHFおよびMAP-2に対する自己抗体の有意な増加が続いた。NFMに対する自己抗体はコントロールと相違しなかった。(神経系傷害ではなく)ヒ素中毒を有する対象者は、血清の神経系自己抗体の増加を示さなかった。
ウェスタンブロットを用いて、我々は、バングラデシュミャンプールの高度にヒ素で汚染された村の14人の対象者グループの血清中の神経タンパク質(NFL、NFM、NFH、MAP-2およびTau)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した。これらのレベルを8人の健康なコントロールの適合グループと比較した。図10に示すように、NFLおよびTauに対する自己抗体のレベルは、ヒ素に暴露されていないコントロールと比較して5倍を超えて増加した。
これらの結果は、血清の自己抗体のレベルとヒ素誘発脳損傷との間の良好な相関性を示した。コアニューロフィラメントトリプレットタンパク質NFLはコントロールのそれより9倍を超える増加を示した。この後に、Tau、NHFおよびMAP-2に対する自己抗体の有意な増加が続いた。NFMに対する自己抗体はコントロールと相違しなかった。(神経系傷害ではなく)ヒ素中毒を有する対象者は、血清の神経系自己抗体の増加を示さなかった。
実施例6:卒中のバイオマーカーシグナチャー
ウェスタンブロットを用いて、我々は、卒中を発した対象者グループの血清中の神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAG、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(図11参照)。これらのレベルを健康なコントロールの適合グループと比較した。特に、NFP、チューブリン、MBP、MAG、およびGFAPに対する自己抗体レベルはいずれも、コントロール対象者と比較して少なくとも9倍増加した。
ニューロンタンパク質に対するニューロン系自己抗体のきわめて有意な増加というこれらの結果は卒中による脳損傷を示す。
ウェスタンブロットを用いて、我々は、卒中を発した対象者グループの血清中の神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAG、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(図11参照)。これらのレベルを健康なコントロールの適合グループと比較した。特に、NFP、チューブリン、MBP、MAG、およびGFAPに対する自己抗体レベルはいずれも、コントロール対象者と比較して少なくとも9倍増加した。
ニューロンタンパク質に対するニューロン系自己抗体のきわめて有意な増加というこれらの結果は卒中による脳損傷を示す。
実施例7:外傷性脳損傷のバイオマーカーシグナチャー
ウェスタンブロットを用いて、我々は、外傷性脳損傷(TBI)を有する10人の対象者グループの血清中の神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(図12参照)。これらのレベルを8人の健康なコントロールの適合グループと比較した。
ニューロンタンパク質に対するニューロン系自己抗体のきわめて有意な増加というこれらの結果は脳損傷を示す。特に、MBP、MAP-2およびGFAPに対する自己抗体はいずれも、コントロールと比較して5倍を超えて増加した。S100Bに対する自己抗体の有意な増加は、TBIは最近の損傷ではなかったこと、さらにある程度の期間が過ぎてS100Bがその神経栄養作用を示すことを可能にしたことを示唆する。
ウェスタンブロットを用いて、我々は、外傷性脳損傷(TBI)を有する10人の対象者グループの血清中の神経タンパク質(NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2、GFAPおよびS-100B)に対する自己抗体の相対的レベルを精査した(図12参照)。これらのレベルを8人の健康なコントロールの適合グループと比較した。
ニューロンタンパク質に対するニューロン系自己抗体のきわめて有意な増加というこれらの結果は脳損傷を示す。特に、MBP、MAP-2およびGFAPに対する自己抗体はいずれも、コントロールと比較して5倍を超えて増加した。S100Bに対する自己抗体の有意な増加は、TBIは最近の損傷ではなかったこと、さらにある程度の期間が過ぎてS100Bがその神経栄養作用を示すことを可能にしたことを示唆する。
実施例8:自閉症のバイオマーカーシグナチャー
本実施例は、自閉症を有する10人の小児および彼らの母親、並びにコントロールとして10人の年齢が適合する健康な小児および彼らの母親の血清で、一組の神経系関連10タンパク質に対する循環自己抗体を検出するために実施されたアッセイの結果を報告する。用いられたタンパク質は、神経細胞に存在しニューロン変性によって影響を受ける多様なタイプのタンパク質を代表するように選択された。ウェスタンブロットを用いて、全グループの血清サンプルで、以下に対する免疫グロブリンIgGを測定した;ニューロンタンパク質:ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFPまたは図ではPNF)、チューブリン、微小管関連tauタンパク質(tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク(MAGまたは図ではBBB)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaMKII)、およびα-シヌクレイン(SNCP);並びにアストロサイトタンパク質:グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、およびS100Bタンパク質(図13および14参照)。
本実施例は、自閉症を有する10人の小児および彼らの母親、並びにコントロールとして10人の年齢が適合する健康な小児および彼らの母親の血清で、一組の神経系関連10タンパク質に対する循環自己抗体を検出するために実施されたアッセイの結果を報告する。用いられたタンパク質は、神経細胞に存在しニューロン変性によって影響を受ける多様なタイプのタンパク質を代表するように選択された。ウェスタンブロットを用いて、全グループの血清サンプルで、以下に対する免疫グロブリンIgGを測定した;ニューロンタンパク質:ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFPまたは図ではPNF)、チューブリン、微小管関連tauタンパク質(tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク(MAGまたは図ではBBB)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaMKII)、およびα-シヌクレイン(SNCP);並びにアストロサイトタンパク質:グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、およびS100Bタンパク質(図13および14参照)。
結果は、コントロールと比較して、自閉症を有する小児グループで循環IgGクラスの自己抗体の有意な上昇レベルを示す。自閉症小児の神経タンパク質に対する自己抗体のコントロールに対する倍数増加は、大きいものから順に以下の通りであった:MAP-2 4.78、NFP 4.45、MBP 4.29、MAG 3.83、α-シヌクレイン 3.6、S100 3.2、GFAP 2.29、Tau 1.70、CaMKII 1.55(図14A参照)。対照的に、Tauおよびチューブリンに対する自己抗体はコントロールと統計的に有意には相違しなかった。自閉症小児の母親は、彼らの自閉症の子供と比較して、全ての神経タンパク質(TauおよびCaMKIIを除く(前記はコントロールと有意には相違しなかった))に対してより小さな自己抗体のレベル増加を示した(図14B参照)。我々は、ASDのいくつかの症例は神経タンパク質に対する母親由来自己抗体の影響を受けることがあり、またはそれらによって引き起こされることすらあり得ると仮説を立てる。さらにまた、この予備的な研究は、これらの血清循環抗体は自閉症の診断のためのバイオマーカーとして用い得ること、および/または自閉症の診断を確証し得ることを示唆している。
Claims (35)
- 対象者における神経系の損傷または疾患を診断する方法であって、
対象者からサンプルを入手する工程;
グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、微小管関連tauタンパク質(Tau)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、カルシウム-カルモデュリンキナーゼII(CaM-KII)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ニューロフィラメントトリプレットタンパク質(NFP)、NF200(NFH)、NF160(NFM)、NF68(NFL)、チューブリン、α-シヌクレイン(SNCA)、およびS100Bタンパク質から成る群から選択されるタンパク質と結合することができる、サンプル中の自己抗体のレベルを測定する工程;
前記サンプル中の自己抗体のレベルを前記自己抗体の参照レベルと比較する工程;および
前記抗体のレベルが前記参照レベルと比較して変化するならば、前記対象者は脳損傷を有すると診断する工程を含む、前記方法。 - 前記対象者が、ペルシャ湾領域で軍隊の任務についた人間である、請求項1に記載の方法。
- 前記タンパク質の少なくとも2つと結合できる自己抗体のレベルが測定される、請求項1−2のいずれか1項に記載の方法。
- 参照レベルと比較した自己抗体の少なくとも2つのレベルの比が、湾岸戦争障害から生じる神経系損傷を他の脳損傷と弁別する診断、外傷性脳損傷(TBI)から生じる神経系損傷を他の脳損傷と弁別する診断、環境性有毒物質(有機リン酸物質、有毒ガスまたはヒ素)への暴露から生じる神経系損傷を他の脳損傷と弁別する診断、パーキンソン病を他の脳損傷から弁別する診断、卒中を他の脳損傷と弁別する診断、または自閉症を他の脳損傷と弁別する診断を可能にする、請求項3に記載の方法。
- GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、チューブリン、およびS100Bから成る群から選択されるタンパク質の少なくとも2つと結合できる自己抗体の少なくとも2つのレベルが測定される、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
- GFAP、Tau、MAP-2、MAG、チューブリン、CaM-KII、およびS100Bタンパク質と結合できる自己抗体のレベルが測定される、請求項1−5のいずれか1項に記載の方法。
- GFAP、tau、チューブリン、およびCaM-KIIタンパク質と結合できる自己抗体のレベルが測定される、請求項1−6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記タンパク質の1つに対して検出された抗体のレベルに基づいて脳損傷または疾患のタイプを診断する工程をさらに含む、請求項1−7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記対象者が神経系の損傷または疾患を有すると診断されたならば、前記対象者に免疫抑制剤または抗炎症剤を投与する工程をさらに含む、請求項1−8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの自己抗体がELISAアッセイまたはウェスタンブロット分析を用いて測定される、請求項1−9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記サンプルが血清または血漿である、請求項1−10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記神経系の損傷または疾患が、湾岸戦争障害、パーキンソン病、卒中、自閉症、外傷性脳損傷(TBI)、および有機リン酸物質、排気ガスまたはヒ素への暴露による神経系傷害から成る群から選択される症状を含む、請求項1−11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記診断が神経系の損傷または疾患のタイプを識別することができる、請求項1−12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記脳損傷が、湾岸戦争障害、外傷性脳損傷および卒中から成る群から選択される症状である、請求項1−13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記タンパク質の1つに特異的な自己抗体のレベルが神経系の損傷または疾患のタイプの指標である、請求項13または14のいずれか1項に記載の方法。
- GFAP、Tau、チューブリン、MAP、MBP、NFP、MAG、CAMKIIから成る群から選択されるタンパク質の少なくとも3つに特異的な抗体が測定され、対象者で前記レベルが自己抗体の参照レベルよりも少なくとも2倍高いならば、前記対象者が湾岸戦争障害を有すると診断される、請求項1−15のいずれか1項に記載の方法。
- MBP、MAP-2、GFAPまたはS100Bの少なくとも2つに特異的な自己抗体が自己抗体の参照レベルと比較して増加すると、前記対象者がTBIを有すると診断される、請求項1−16のいずれか1項に記載の方法。
- NFP、Tau、チューブリン、MBPおよびGFAPの少なくとも3つに特異的な自己抗体が測定され、対象者で前記自己抗体のレベルが参照レベルよりも少なくとも5倍高いならば、前記対象者がパーキンソン病を有すると診断される、請求項1−17のいずれか1項に記載の方法。
- NFMおよびNFHの少なくとも1つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体のレベルが参照レベルと比較して前記対象者で増加するならば、前記対象者が有機リン酸物質暴露を有すると診断される、請求項1−18のいずれか1項に記載の方法。
- NFP、Tau、チューブリン、MBP、MAP-2およびGFAPの少なくとも3つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体のレベルが参照レベルと比較して前記対象者で増加するならば、前記対象者が有毒ガスへの暴露を有すると診断される、請求項1−19のいずれか1項に記載の方法。
- NFLまたはTauの少なくとも1つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体のレベルが参照レベルと比較して前記対象者で増加するならば、前記対象者がヒ素への暴露を有すると診断される、請求項1−20のいずれか1項に記載の方法。
- NFP、チューブリン、MBP、MAGおよびGFAPの少なくとも3つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体のレベルが参照レベルと比較して前記対象者で増加するならば、前記対象者が卒中を有すると診断される、請求項1−21のいずれか1項に記載の方法。
- NFP、MBP、MAP-2、MAG、a-シヌクリン、S100BおよびGFAPの少なくとも3つに特異的な自己抗体が測定され、前記自己抗体のレベルが参照レベルと比較して前記対象者または前記対象者の母親で増加するならば、前記対象者が自閉症を有すると診断される、請求項1−22のいずれか1項に記載の方法。
- GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、MBP、NFP(NFM、NFH、NFL)、チューブリン、α-シヌクリン(SNCA)、およびS100Bタンパク質から成る群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含むキット。
- 請求項1−23に記載の方法を実施するための指示書をさらに含む、請求項24に記載のキット。
- 前記タンパク質の少なくとも3つを含む、請求項24−25のいずれか1項に記載のキット。
- GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KIIおよびS100Bから成る群から選択される少なくとも2つのタンパク質を含む、請求項24−26のいずれか1項に記載のキット。
- GFAP、Tau、CaM-KIIおよびS100Bタンパク質を含む、請求項24−27のいずれか1項に記載のキット。
- 前記タンパク質の少なくとも1つに特異的なコントロール自己抗体をさらに含む、請求項24−28のいずれか1項に記載のキット。
- 検出可能な標識と結合された抗ヒトIgG抗体をさらに含む、請求項24−29のいずれか1項に記載のキット。
- 対象者からサンプルを入手する工程;GFAP、Tau、MAP-2、MAG、CaM-KII、MBP、NFP(NFM、NFH、NFL)、チューブリン、α-シヌクリン(SNCA)、およびS100Bタンパク質から成る群から選択される少なくとも3つのタンパク質と結合できる自己抗体のレベルをサンプルで測定する工程を含む方法。
- 前記タンパク質の少なくとも5つと結合できる自己抗体のレベルがサンプルで決定される、請求項31に記載の方法。
- 自己抗体の存在が神経系の損傷または疾患の指標である、請求項31または32のいずれか1項に記載の方法。
- タンパク質の少なくとも3つと結合できる自己抗体のレベルに基づいて前記対象者が神経系の損傷または疾患を有すると診断する工程をさらに含む、請求項31−33のいずれか1項に記載の方法。
- 神経系の損傷または疾患を有すると診断された前記対象者を免疫抑制剤または鎮痛剤で治療する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
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