JP2019517503A - 遺伝子編集戦略によるhiv−1のネガティブフィードバック調節 - Google Patents
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Abstract
ガイドRNA(gRNA)によって認識される二本鎖DNAに切れ目を導入するエンドヌクレアーゼによる切断のために、特異的なウイルス配列を標的化するためのgRNAを含む、CRISPR−エンドヌクレアーゼ遺伝子編集組成物。例えばHIVの5’−LTRに広がる最小限プロモーターの制御下にCas9をコードする遺伝子を置くことで、HIV−1のトランス活性化因子タンパク質Tatによる活性化がもたらされる。例えばHIVに特異的な多重のgRNAs及びエンドヌクレアーゼ(例えばCas9)の両者が細胞で同時発現すると、ウイルスDNAセグメントの修飾及び/又は切除がもたらされ、結果としてインビトロ及びインビボでのウイルスの根絶が導かれる。【選択図】図1A
Description
国家に支援された研究に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金番号P30MH092177(Khalili)、P01DA037830(Khalili)、R01MH092371(Khalili)、及びR01NS087971(Khalili and Hu)による政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金番号P30MH092177(Khalili)、P01DA037830(Khalili)、R01MH092371(Khalili)、及びR01NS087971(Khalili and Hu)による政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明の実施形態は、対象におけるレトロウイルス感染の予防、治療及び根絶における遺伝子編集複合体に関する。特に、遺伝子編集複合体は、ウイルス転写調節因子によって条件付きで活性化される最小限のウイルスプロモーターの制御下にある、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats, CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼを含む。
HIV-1感染の直後に、ウイルスゲノムは宿主染色体に組み込まれ、CD4+T細胞で急速に発現される。HIV-1複製は、CD4+T細胞の著しい減少につながる(Alimonti, J.B., et al. J. Gen. Virol. 84, 1649-1661 (2003)、Okoye, A. A., Picker, L.J. Immunol Rev 254, 54-64 (2013))。しばしば、急性感染期の後、ウイルスは潜伏期と呼ばれる新たな段階に入り、組み込まれたプロウイルスDNAが発現され続け、ウイルス複製が非常に低いレベルで進行する。このような状況下では、持続的なウイルス複製によって弱化した免疫系がAIDS及び広範囲の日和見感染症の発症へ進み、未治療の場合には3年以内に死に至る(3)。分子レベルでは、急性期及び無症候期の両方でのウイルスゲノムの発現及びその複製は、5’-末端反復配列(LTR)の450ヌクレオチドに広がるウイルスプロモーターによって制御される(Garcia, J.A., et al. EMBO J. 8, 765-778 (1989)、Reddy, E.P., Dasgupta, P. Pathobiology 60, 219-224 (1992))。5’-LTRのU3領域内におけるDNA配列を認識する一連の細胞転写因子と、ウイルスの転写リーダー領域内に位置するTAR RNA配列と相互作用するHIV-1最初期転写活性化因子(Tat)との間で、協同作用が生じる。これらの相互作用は、ウイルスDNAの組み込まれたコピーからの転写において強力な開始及び効率的な伸長のために必要である(Marcello, A., et al. IUBMB Life 51, 175-181 (2001)、Roebuck, K.A. et al, Gene Expr 8, 67-84 (1999))。現在の抗レトロウイルス薬は、ウイルスの感染サイクルを抑制するのに有効であるが、転写レベルでのウイルスゲノムの発現を阻害するいずれの成分も未だ含んでおらず、この事実は、ARTを受けているHIV-1+患者において、ウイルスの組み込まれたコピーが、非常に低いレベルではあるがウイルスゲノムを発現し続けているかもしれないという意見を裏付けている(Hatano, H., et al. AIDS 24, 2535-2539 (2010)、Pasternak, A.O., et al. J. Clin. Microbiol. 46, 2206-2211 (2008))。実際に、ウイルス遺伝子の発現はARTの中止により劇的に上昇し、Tatのようなウイルスの早期調節タンパク質の産生を可能にして、ウイルスゲノムの生産的な複製を組織化する。
近年、HIV-1/AIDS治療のための効果的かつ安全な戦略の開発に、より多くの注意が払われている。この点において、ショック・アンド・キル戦略として知られる、休眠ウイルスの活性化及び免疫細胞の増強によるウイルスリザーバーとして働く潜伏感染細胞の排除を含む、いくつかのアプローチがある。この戦略は当初は期待されていたが、限定的な有効性及び矛盾する結果を示した(Archin, N.M., et al. J. Infect. Dis. 210, 728-735 (2014)、Manson McManamy, et al. Antivir. Chem. Chemother. 23, 145-149 (2014)、Siliciano, J.D. et al. J. Allergy Clin. Immunol. 134, 12-19 (2014))。より最近には、新規な遺伝子編集技術の発見が、HIV-1感染を支えるウイルスゲノム及び/又は細胞遺伝子のさまざまな領域内に突然変異を導入することでウイルスDNAを不活性化させることに向けて、実現性を検討するようにいくつかの研究所を促した(Khalili, K., et al. J. Neurovirol. 21, 310-321 (2015); White, M.K., et al. Discov. Med. 19, 255-262 (2015); Yin, C., et al. AIDS 30, 1163-1170 (2016))。
本発明の実施形態は、再活性化の初期段階におけるCRISPR/Casの条件付き活性化のための組成物に関する。これらの組成物は、ウイルスプロモーター及び/又はウイルスコード配列に広がるウイルス遺伝子のセグメントを取り除くことによって、生産的なウイルスの複製に先立ってウイルス複製を完全に及び永久に除去する。実施形態において、組成物は、最初期転写活性化因子の制御下にある機能的で最小限のウイルスプロモーターに作動可能に連結された、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピートに関連したエンドヌクレアーゼ(CRISPR/Cas)をコードする核酸配列を含み、これによりウイルス複製の初期段階でCRISPR/Casを条件的に活性化する。単離された核酸は、さらに、ウイルスの中にある標的核酸配列に相補的である少なくとも1つのガイドRNAを含む。CRISPR/Casは、ウイルスゲノムのセグメント、例えば、ウイルスプロモーター及び/又はウイルスコード配列に広がるセグメントを切除する。これらの実施形態では、組成物は、任意のウイルスを切除するように調整される。特定の実施形態では、ウイルスはレトロウイルスである。
他の側面は以下に記載される。
詳細な説明
本発明の実施形態は、HIV-1転写活性化因子、Tatによるウイルス再活性化の初期段階において、CRISPR/Cas9の条件付き活性化のための組成物、及び方法におけるその使用に関する。これらの組成物は、ウイルスプロモーター及び/又はウイルスコード配列に広がるウイルス遺伝子のセグメントを取り除くことによって、生産的なウイルスの複製に先立って、ウイルスの複製を永久に除去する。さらに、本明細書に具体化された方法におけるこれらの組成物の使用は、細胞中の不必要かつ持続的なCas9の高いレベルの発現によって起こり得る、不測の合併症に起因するあらゆる懸念を緩和する。
本発明の実施形態は、HIV-1転写活性化因子、Tatによるウイルス再活性化の初期段階において、CRISPR/Cas9の条件付き活性化のための組成物、及び方法におけるその使用に関する。これらの組成物は、ウイルスプロモーター及び/又はウイルスコード配列に広がるウイルス遺伝子のセグメントを取り除くことによって、生産的なウイルスの複製に先立って、ウイルスの複製を永久に除去する。さらに、本明細書に具体化された方法におけるこれらの組成物の使用は、細胞中の不必要かつ持続的なCas9の高いレベルの発現によって起こり得る、不測の合併症に起因するあらゆる懸念を緩和する。
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似、又は等価な任意の方法及び材料を本発明の試験の実施に使用できるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。本発明の明細書及び請求項(describing and claiming)において、以下の用語が使用される。
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似、又は等価な任意の方法及び材料を本発明の試験の実施に使用できるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。本発明の明細書及び請求項(describing and claiming)において、以下の用語が使用される。
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
冠詞「1の」(“a” and “an”)は、本明細書において、1又は1を超える(すなわち、少なくとも1の)その冠詞の文法的目的語を指すために使用される。例として、「1の要素」(an element)は、1の要素又は1を超える要素を意味する。したがって、「細胞」(a cell)の列挙は、例えば、複数の同じ型(type)の細胞を含む。さらに、「含んでいる」(including)、「含む」(includes)、「有している」(having)、「有する」(has)、「と共に」(with)、又はそれらの変化形が、詳細な明細書及び/又は特許請求の範囲において使用される限りにおいて、そのような用語は、用語「含む」(comprising)に類似した方法で含んでいることを意図されている。
本明細書で使用されるように、「含んでいる」(comprising)、「含む」(comprise)又は「含まれた」(comprised)という用語及びそれらの変化形は、項目、組成物、装置、方法、プロセス、システム、その他の定義された、又は記載された要素に関して、包括的である装置、方法、プロセス、システムなどが、それらの指定された要素――又は、必要に応じて、それらの均等物を含むこと――及び他の要素が含まれ得ることを指し、定義された項目、組成、装置、方法、プロセス、システムなどの範囲/定義も含まれ得ることも指す。
量、持続時間、及びその他の測定可能な値に言及する際に、本明細書で使用する「約」(About)という用語は、指定された値から+/−20%、+/−10%、+/−5%、+/−1%、又は+/−0.1%の変動を含むことが意図されており、このような変動は、開示された方法を行うのに適している。あるいは、特に生体系又は生物学的プロセスに関して、この用語は、ある値の5倍以内、及び2倍以内の指標内を意味し得る。特定の値が出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、他に提示されていない限り、特定の値に対して許容できる誤差の範囲内の「約」(about)という用語を想定すべきである。
本明細書で使用される「抗ウイルス剤」という用語は、ウイルスの治療に使用されるいかなる分子、及びウイルスに付随するいかなる症状も緩和する薬剤、例えば解熱剤、抗炎症剤、化学療法剤、及びその他を指す。抗ウイルス剤には、限定されない場合、以下のものが含まれる:抗体、アプタマー、アジュバント、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、ケモカイン、サイトカイン、免疫刺激剤、免疫調節剤、B細胞モジュレーター、T細胞モジュレーター、NK細胞モジュレーター、抗原提示細胞モジュレーター、酵素、siRNA、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プリン・ヌクレオシド、ケモカイン受容体アンタゴニスト、インターロイキン、又はそれらの組み合わせ。
本明細書で使用される、レトロウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)の「根絶」という用語は、そのウイルスが複製不可能であること、ゲノムが欠失、フラグメント化、分解、遺伝的に不活性化されること、又はウイルスが任意の他の細胞若しくは対象に、伝染若しくは感染することを阻害して、インビボでウイルスのクリアランスという結果になる、他の物理的、生物学的、化学的若しくは構造的発現を意味する。いくつかの症例では、ウイルスゲノムのフラグメントが検出可能であり得るが、ウイルスは複製又は感染、その他が不可能である。
本明細書で使用される「有効量」は、治療的又は予防的利益を提供する量を意味する。
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)又は定義されたアミノ酸配列、及びそれらから生じる生物学的特性のどちらかを有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマー及び巨大分子の合成のための鋳型として働く、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド、例えば遺伝子、cDNA、又はmRNAの特定の配列における固有の特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生物学的システム(biological system)においてタンパク質を産生する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。コード鎖、すなわちmRNA配列と同一であり、通常は配列表中に提供されるヌクレオチド配列、及び遺伝子又はcDNAの転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方は、タンパク質又はその遺伝子の他の産物又はcDNAをコードするものとして示され得る。
本明細書で用いられる用語「発現」は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳と定義される。
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に作動可能に連結された、発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシスに作用性のある要素を含む;発現のための他の要素は、宿主細胞によって、又はインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み込む、コスミド、(例えば、むき出し(naked)又はリポソームに含有された)プラスミド及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)のような、当技術分野で既知のすべてのものが含まれる。
「単離された」とは、自然状態から変更又は取り除かれたことを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸又はペプチドは「単離されて」いないが、その自然状態の共存物質から、部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸若しくはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、又は非天然環境、例えば宿主細胞中に存在し得る。
「単離された核酸」とは、自然発生的な状態で、側面にある配列から分離された核酸セグメント又はフラグメント、すなわち、通常はフラグメントに隣接している配列から取り除かれたDNAフラグメント、すなわち、自然に生じるゲノム中のフラグメントに隣接する配列を示す。この用語は、核酸に自然に付随する他の成分、すなわち、細胞内で自然に核酸に付随するRNA又はDNA又はタンパク質から実質的に精製された核酸にもまた適用される。この用語は、したがって、例えば、ベクター、自律複製プラスミド若しくはウイルス、若しくは原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた、又は他の配列から独立している分離された分子(すなわち、PCR若しくは制限酵素の消化によって生成されたcDNA、又はゲノムフラグメント又はcDNAフラグメント)として存在する、組み換えDNAを含む。また、以下のものを含む:デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらが置換されαアノマー化した形態、ペプチド核酸(PNA)、固定された核酸(LNA)、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、その他を含む、追加のポリペプチド配列、相補的DNA(cDNA)、直鎖若しくは環状オリゴマー、又は自然及び/又は修飾モノマー若しくはリンケージをコードする、ハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNA。
核酸配列は、「キメラ」でもよく、すなわち、異なる領域から構成されていてもよい。本発明の文脈において、「キメラ」化合物は、2又はそれ以上の化学領域、例えばDNA領域、RNA領域、PNA領域などを含むオリゴヌクレオチドである。それぞれの化学領域は、少なくとも1のモノマー単位、すなわちヌクレオチドから構成される。これらの配列は、典型的には、1又はそれ以上の望ましい特性を示すために配列が修飾された、少なくとも1の領域を含む。
用語「標的核酸」配列は、オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリダイズするように設計された核酸(しばしば生物学的試料に由来する)を指す。標的核酸は、標的に向けられた対応するオリゴヌクレオチドの核酸配列に相補的な配列を有する。標的核酸という用語は、オリゴヌクレオチドが向けられる大きな核酸の特定の部分配列、又は全体の配列(例えば、遺伝子又はmRNA)を意味し得る。使用法の差異は文脈から明らかであろう。
本発明の文脈において、一般的に生じる核酸塩基には以下の略語が使用され、すなわち「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、そして「U」はウリジンを指す。
他に特定しない限り、アミノ酸配列「をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするフレーズヌクレオチド配列は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、いくつかのバージョンにおいてイントロンを含み得る範囲でイントロンをまた含み得る。
免疫原性組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s. c.)、静脈内(i. v.)、筋肉内(i. m.)、又は胸骨内注射、又は注入技術が含まれる。
「患者」又は「個体」又は「対象」という用語は、本明細書中では互換的に使用され、処置されるべき哺乳動物の対象を指し、ヒトの患者が好ましい。いくつかの症例では、本発明の方法は、実験動物、獣医学的用途、及び、これらに限定されるものではないが、マウス、ラット、及びハムスターを含むげっ歯類若しくは霊長類を含む、疾患の動物モデルの開発に使用される。
「ポリヌクレオチド」という用語は、「核酸」としても知られているヌクレオチドの鎖である。 本明細書中で使用される場合、ポリヌクレオチドは、これらに限定されるものではないが、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られ、天然に生じる核酸及び合成核酸の両方を含むすべての核酸配列が含まれる。
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」とは、互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2のアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合された2又はそれ以上のアミノ酸を含む、いかなるペプチド又はタンパク質も含まれる。本明細書中で使用される場合、この用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとしても言及される短鎖と、当技術分野で一般的にタンパク質として言及され、多くの種類がある長鎖の両方を示す。「ポリペプチド」は、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然のペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
用語「トランスフェクションされた」(transfected)又は「形質転換された」(transformed)又は「形質導入された」(transduced)とは、外因性の核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを意味する。「トランスフェクションされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性の核酸によりトランスフェクション、形質転換又は形質導入された細胞である。トランスフェクション/形質転換/形質導入細胞は、主要な対象細胞及びその子孫を含む。
「治療」とは、疾患の進行を防ぐ、又は病状若しくは兆候を改める意図で行われる介入である。したがって、「治療」は、治療的処置及び予防的又は防止的手段の両方を指す。「治療」は、緩和ケアとして指定することもできる。治療を必要とする者には、すでに疾患を有する者及び疾患を予防すべき者が含まれる。したがって、ある状況、疾患又は状態の「治療する」又は「治療」は、以下を含む:(1)当該状況、疾患又は状態に罹患している、又はその傾向があるが、当該状況、疾患又は状態の臨床症状若しくは亜臨床症状をまだ経験又は示していない、ヒト若しくは他の哺乳動物で進行する、当該状況、疾患又は状態の臨床症状の出現を予防又は遅延させること;(2)当該状況、疾患又は状態を阻害すること、すなわち、疾患若しくはその再発(維持療法の場合)、又はその少なくとも1の臨床症状又は亜臨床症状を阻止、低減又は遅延させること;又は(3)疾患を緩和すること、すなわち、当該状況、疾患若しくは状態、又は少なくとも1のその臨床症状若しくは亜臨床症状を退行させること。治療されるべき個体の利益は、統計学的に有意であるか、又は少なくとも患者又は医師に知覚可能である。
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る組成物である。ベクターの例には、これらに限定されるものではないが、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスが含まれる。したがって、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。この用語は、核酸の細胞への移動を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えばポリリジン化合物、リポソーム及びその他を含むと解釈される。ウイルスベクターの例には、これらに限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、その他をまた含む。
用語「パーセント配列同一性」、又は「配列同一性」を有するとは、任意に与えられたクエリー配列と対象配列との間の同一性の程度を指す。
用語「外因性の」は、核酸又はポリペプチドが組み換え核酸構築物の一部であるか、又は組み換え核酸構築物によってコードされるか、又はその自然環境にないことを示す。例えば、外因性の核酸は、ある種から別の種に取り込まれた配列、すなわち異種核酸であり得る。典型的には、そのような外因性の核酸は、組み換え核酸構築物を介して他の種に取り込まれる。外因性の核酸は、生物に固有であり、その生物の細胞に再度取り込まれた配列でもあり得る。天然の配列を含む外因性の核酸は、外来核酸に連結された非天然の配列、例えば、組み換え核酸構築物中の天然の配列に隣接する非天然の調節配列の存在によって、天然の発生的な配列としばしば区別され得る。加えて、安定的に(stably)形質転換された外因性の核酸は、典型的には、天然の配列が見出される位置以外の位置に組み込まれる。
「薬学的に許容される」(又は「薬理学的に許容される」)という用語は、必要に応じて、動物又はヒトに投与した場合に、不都合な、アレルギー性の、又はその他の有害な反応を生じない分子実体及び組成物をいう。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される物質のための培地として提供され得る、任意の及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、滑剤、ゲル、界面活性剤、その他を含む。
いずれかのアミノ酸配列が特にSwiss Prot.又はGenbank受託番号によって言及される場合、この配列は参照により本明細書に組み込まれる。シグナルペプチドの同定、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、プロモーター配列及び翻訳開始などのアクセッション番号に関連する情報も、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
遺伝子:本明細書中に開示されるすべての遺伝子、遺伝子名及び遺伝子産物は、本明細書に開示される組成物及び方法が適用可能な、任意の種由来の相同体に対応することが意図される。特定の種に由来する遺伝子又は遺伝子産物が開示される場合、本開示は例示的なものに過ぎず、それが明らかに現れる文脈が明示しない限り、限定するものとして解釈されないことが理解される。したがって、例えば、本明細書中に開示される遺伝子又は遺伝子産物に関して、相同遺伝子及び/又はオーソロガス遺伝子及び他の種由来の遺伝子産物を包含することが意図される。
範囲:本開示を通じて、本発明の様々な側面を範囲の形式で提示することができる。範囲の形式での記載は、便宜及び簡潔さのためだけのものであり、本発明の範囲に対し柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能なサブ範囲及び個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1〜6といった範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのサブ範囲が具体的に開示されたものと考えるべきであり、その範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6を含む。このことは範囲の幅にかかわらず適用される。
組成物
抗レトロウイルス療法は、低レベルのウイルスゲノム発現を抑制しないし、休止記憶T細胞、単球、マクロファージ、ミクログリア、星状膠細胞及び腸に関連したリンパ系細胞のような潜伏感染細胞を効率的に標的化しない。本発明に先立って利用可能な治療法とは対照的に、本明細書に開示された方法及び組成物は、感染のいかなる段階で感染した対象又はHIV感染のリスクがある非感染対象において、HIVを治療及び根絶するのに有用である。
抗レトロウイルス療法は、低レベルのウイルスゲノム発現を抑制しないし、休止記憶T細胞、単球、マクロファージ、ミクログリア、星状膠細胞及び腸に関連したリンパ系細胞のような潜伏感染細胞を効率的に標的化しない。本発明に先立って利用可能な治療法とは対照的に、本明細書に開示された方法及び組成物は、感染のいかなる段階で感染した対象又はHIV感染のリスクがある非感染対象において、HIVを治療及び根絶するのに有用である。
したがって、開示された方法及び組成物は、感染の潜伏期にあるHIV感染対象にとって有用である。さらに、ガイドRNAが、本明細書中に開示されるTatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結されたCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼと会合する場合、HIVゲノムは宿主細胞から切除され、根絶され得る。組成物が核酸として投与される場合、又は発現ベクター内に含まれる場合、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列と同じ核酸又はベクターによってコードされ得る。あるいは、又は加えて、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列とは物理的に別個の核酸又は別個のベクターにコードされ得る。
本発明者らは、CRISPR/Cas9技術を用い、初めて潜伏感染細胞の宿主染色体から5’-及び3’-LTR間で全体のHIV-1ゲノムを初めて切除し、細胞を再感染から保護した、HIV-1に特異的な遺伝子編集分子を開発した(Khalili, K., et al. J. Neurovirol. 21, 310-321 (2015); Hu, W., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 11461-11466 (2014); Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))。切除の方法には、5’-及び3’-LTR DNA配列の様々な領域を認識する多重の特異的ガイドRNA、及び、ガイドRNAに相補的な部位で二本鎖DNAに切れ目を導入するCas9エンドヌクレアーゼの使用が含まれる(Hu, W., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 11461-11466 (2014); Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))。ウイルスDNAの除去後、残存する細胞DNAは、細胞DNA修復により再結合する(Khalili, K., et al. J. Neurovirol. 21, 310-321 (2015); White, M.K., et al. Discov. Med. 19, 255-262 (2015); Hu, W., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 11461-11466 (2014); Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))。CRISPR技術によってHIV-1ゲノムを編集するためのgRNAの多重の使用は、最初のgRNA処置に耐性のあるウイルスの出現に関係するあらゆる懸念を緩和するために特に重要である。CRISPR/Cas9技術に加えて、より最近では、宿主ゲノムからHIV-1 DNA配列を編集する能力と共に、組み換えベースの手順が開発されている(Karpinski, J. et al. Nat. Biotechnol. 34, 401-409 (2016))。
ネガティブフィードバック調節:ウイルスゲノム、例えば、 感染宿主細胞のゲノムに組み込まれたHIVは、RNAにガイドされた、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼ、例えばCas9を利用してそのようなHIVに感染した細胞から排除され得る。CRISPR/Cas9酵素及びガイドRNAを用いた、成功した治療上の遺伝子編集は、標的細胞におけるCas9酵素及びガイドRNAの効率的かつ特異的な送達及び発現を必要とする。高活性抗レトロウイルス療法(HAART)を受けている患者のHIVに感染した細胞のように、組織又は細胞集団における受容細胞の頻度が低い場合、これは困難である。
本発明によれば、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、例えばCas9は、Tatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターの制御下に置かれる。エンドヌクレアーゼの発現は、それによって、Tatタンパク質を含有する細胞において活性化される。エンドヌクレアーゼがTatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターの制御下に置かれている場合、(例えば、トランスフェクションによって)外因的に産生された、及び(例えば、潜伏ウイルスの再活性化によって)内因的に産生されたTatは、(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)の発現を細胞株において活性化し得る。実施例の節でさらに詳細に提示されている研究では、組成物は、HIV-1転写活性化因子、Tatによるウイルスの再活性化の初期段階におけるCRISPR/Cas9の条件付き活性化を可能にする。
この戦略は、ウイルスプロモーター及び/又はウイルスコード配列に広がるウイルス遺伝子全体又はウイルス遺伝子セグメントを取り除くことによって、生産的なウイルスの複製に先立って、ウイルスの複製を完全及び永久に除去する。
図1Aは、全長のHIV-1 LTR、並びにエンハンサー及びコア領域内の種々の調節モチーフ、及び部分的なGag遺伝子の模式図である。Cas9の発現のために作製されたLTR欠失変異体の範囲が示されている。gRNAの標的配列の位置、及び互いからのそれらの距離が示されている。HIV-1 LTRは、長さにして約640bpであり、U3、R及びU5領域に分けられる。HIV-1ゲノムの転写は、5’末端のウイルスゲノムの末端反復領域に広がる一連のシスに作用する(cis-acting)調節モチーフによって制御される。ウイルスプロモーターのU3領域は、転写開始部位+1に対して-1〜-454のヌクレオチドを占め、3のサブ領域を有する:調節、エンハンサー、及びコア。エンハンサーは、NF-κB結合部位(-127〜-80)を含む。コアドメインは、GCリッチなTATAボックス(-80〜+1)を含む。LTRのR領域(+1〜+98)は、発現されたRNAがステムループ構造を形成し、ウイルス転写活性化因子のための結合部位を提供する領域であるTARを含む(Krebs et al, Lentiviral LTR-directed expression, sequence variation, disease pathogenesis. Los Alamos National Laboratory HIV Sequence: Compendium, pp. 29-70.2002)。
LTRは、遺伝子発現に必要なシグナルのすべてを含み、宿主細胞のゲノムへのプロウイルスの組み込みに関与している。例えば、コアプロモーター、エンハンサー及び調節領域はU3内に見出される一方、TARは図1Aに示されるようにR内に見出される。Tatタンパク質及び細胞タンパク質の結合部位であるTARは、HIV-1中のウイルスmRNAのおよそ最初の45のヌクレオチドからなり、ヘアピンステムループ構造を形成する。HIV-1では、U5領域はいくつかのサブ領域、例えば、二量体化及びゲノムパッケージングに関与するポリA、PBS又はプライマー結合部位、Psi又はパッケージングシグナル、及びDIS又は二量体開始部位を含む。
CRISPR/Cas9によるHIV-1のネガティブフィードバック調節が図6に示されている。ウイルスの複製の初期段階では、ウイルスゲノムの基礎転写がTatタンパク質の産生という結果になる。バッジ(budge)でのウイルスの転写リーダー内におけるTatとTARステムループ構造との関連は、ウイルスの転写を誘導するいくつかの細胞調節タンパク質の動員につながる(実線の太い矢印)。初期段階において、Tatは、Cas9遺伝子の転写を駆動する最小限のウイルスプロモーター(ltrとして示される)をまた刺激する。様々なHIV-1特異的gRNAと関連して新たに合成されたCas9は、順に、ウイルスゲノムを切断し、ウイルスDNAの大きなセグメントを切り出してHIV-1遺伝子の発現及び複製を停止させることにより、LTR活性を永久的に不活性化する。
LTRの最小限のプロモーター:本発明によれば、HIV LTRプロモーターの、少なくともコア領域及びTAR(トランス活性化に応答する要素)領域を含むHIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結されたCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする、単離された核酸を含む組成物が提供される。HIV LTRの最小限のプロモーターとは、全長のHIV LTRプロモーターより短いものを含む、作動可能で機能的なプロモーターを指す。特定の実施形態では、最小限のプロモーターはTAR領域を含む。特定の実施形態では、最小限のプロモーターは、コア領域及びTAR領域を含む。特定の実施形態では、最小限のプロモーターは、調節領域及び/又はエンハンサー領域のすべて、又は実質的にすべてを伴わないコア領域及びTAR領域を含む。別の実施形態では、HIV LTRの最小限のプロモーターは、コア領域、TAR領域、及びすべての、又は実質的にすべてのエンハンサー領域を含むが、いずれの調節領域も含まない。特定の実施形態では、HIV LTRの最小限のプロモーターは、1又はそれ以上の突然変異、修飾された塩基、変異体、それらの架橋型(locked)核酸の組み合わせを含む。HIV LTRの最小限のプロモーターは、Tatタンパク質に応答性がある。すなわち、Tatは、HIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結されたCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、例えばCas9の発現を活性化することができる。開示された組成物は、インビトロ又はインビボで宿主細胞内のHIVを根絶するため、哺乳動物の細胞中でHIVを不活性化するため、HIV感染を有する対象を治療するため、感染リスクのある対象におけるHIV感染のリスクを低減するため、及び/又はHIVに感染した母親からその子にHIVが伝染するリスクを減らすために、利用され得る。本明細書に開示される治療方法は、他の抗レトロウイルス療法、例えばHAARTと関連して実施され得る。該組成物は、診断、研究、及び/又は治療の適用のためのキットの一部として含まれ得る。
HIV LTRプロモーターのコア領域及びTAR領域を含むHIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結されたCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする配列を含む組成物によって、いくつかの利点が実現され得る。CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼの発現を、HIV遺伝子の発現及び/又は複製を有する細胞に限定することによって、連続する発現によって引き起こされる毒性作用の潜在的リスクを緩和及び/又は排除することができる。例えば、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼの免疫原性のために毒性が誘発される可能性は、本発明によるエンドヌクレアーゼの低い、及び/又は断続的な発現のために軽減することができ、同時に感染した個体におけるHIVゲノムの排除、又は自己破壊を引き起こすことができる。加えて、本発明は、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼの持続的な発現を最小限にするため、リスクのある個体に対する予防的な戦略を提供し得る。したがって、Tatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターによって駆動されるCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼは、HIVに感染した対象の安全な治療を提供するため、及び感染のリスクがある未感染の個体にワクチンを接種するために利用され得る。
HIV-1 LTRの最小限のプロモーターは、HIV-1 LTRプロモーターの-80から+ 66までの位置のヌクレオチドを含む核酸を含み得る。ある実施形態では、HIV-1 LTRの最小限のプロモーターは、HIV-1 LTRプロモーターの-120から+ 66までの位置を含む核酸を含み得る。好ましくは、HIV-1 LTRの最小限のプロモーターは、調節領域に由来する配列を含まない。いくつかの実施形態では、プロモーターは、1又はそれ以上の変異、欠失、挿入、変異体、誘導体又はそれらの組み合わせを含む。プロモーターは、1又はそれ以上のキメラ化合物を含むキメラでもあり得る。
CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼを、本明細書に記載のHIV LTRの最小限のプロモーターの制御下に置くことは、より小さいサイズの核酸を、遺伝子治療(例えば、レトロウイルス)に適した送達機構へ容易にパッケージングできるため、また有益である。調節領域を含むプロモーター構築物は、例えば、そのサイズ及び/又はCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼの転写に対する可変的な効果のために、遺伝子治療にあまり適していない可能性があり得る。
上記のように、HIVゲノムは、HIVに感染した個体の宿主ゲノムに組み込まれる。この組み込まれた配列は、それから宿主によって複製される。潜伏期間においてさえ、Tatは細胞によって産生され得る。本発明の組成物は、宿主中のプロウイルスポリヌクレオチドの存在を排除及び/又は低減する。CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼは、本発明によるTatに応答性のあるプロモーターにより駆動されるので、Tatが(例えば、感染細胞によって産生されて)存在するいかなる時も、エンドヌクレアーゼが産生され、新生ポリヌクレオチドを分解する。ウイルスが活性でない場合、エンドヌクレアーゼは産生されない。したがって、エンドヌクレアーゼの連続発現が細胞及び/又は宿主に及ぼし得る、潜在的な毒性効果が回避される。
CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ:本明細書に開示される組成物は、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、例えばCas9をコードする核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、HIVの標的配列に相補的な1又はそれ以上のガイドRNAもまたコードされ得る。細菌において、CRISPR/Cas遺伝子座は、移動性のある遺伝子要素(ウイルス、転移可能要素及び接合プラスミド)に対して、RNAにガイドされる適応免疫系をコードする。CRISPRシステムの3のタイプ(I〜III)が確認されている。CRISPRのクラスターはスペーサー、すなわち先行する移動性のある要素に相補的な配列を含む。CRISPRのクラスターは転写され、成熟したCRISPR RNA(crRNA)にプロセシングされる。CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼであるCas9は、II型CRISPR/Casシステムに属し、標的DNAを切断する強力なエンドヌクレアーゼ活性を有する。Cas9は、約20塩基対(bp)の特有の標的配列(スペーサーと呼ばれる)、及び、pre-crRNAのリボヌクレアーゼIIIに補助されたプロセシングのためのガイドとして働く、短鎖のトランスで活性化されたRNA(tracrRNA)を含む、成熟したcrRNAによってガイドされる。crRNA対tracrRNAの二重鎖は、crRNA上のスペーサーと標的DNA上の相補的配列(プロトスペーサーと呼ばれる)との相補的塩基対形成を介して、Cas9を標的DNAに向ける。Cas9は、切断部位(PAMに由来する第3のヌクレオチド)を特定するために、トリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサーに隣接するモチーフ(PAM)を認識する。crRNA及びtracrRNAは、天然のcrRNA/tracrRNAによる二本鎖を模倣するために、合成のステムループ(AGAAAU)を介して、別々に発現、又は人工の融合低分子ガイドRNA(sgRNA)を操作することができる。そのようなsgRNAは、shRNAと同様に合成され得るし、又は直接のRNAトランスフェクションのためにインビトロで転写され得るし、又はU6若しくはHIにプロモートされたRNA発現ベクターから発現され得るが、人工のsgRNAの切断効率は、別々に発現されるcrRNA及びtracrRNAを有するシステムの切断効率よりも低い。
CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼであり得る。Cas9ヌクレアーゼは、野生型の化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)配列と同一のヌクレオチド配列を有することができる。CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼは、他の種、例えば、他のレンサ球菌属からの配列、例えばthermophilesであってもよい。Cas9ヌクレアーゼ配列は、以下のほかの種に由来していてもよく、しかしこれらに限定するものではない:Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinaespiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptomyces roseum、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas属、Crocosphaera watsonii、Cyanothece属、Microcystis aeruginosa、Synechococcus属、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor becscii、Candidatus desulforudis、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、Clostridium difficle、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter属、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、ネンジュモ(Nostoc)属、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira属、Lyngbya属、Microcoleus chthonoplastes、ユレモ(Oscillatoria)属、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanus、又はAcaryochloris marina。Psuedomona aeruginosa、大腸菌(Escherichia coli)、又は他の配列が決定された細菌ゲノム及び古細菌、又は他の原核微生物もまた、本明細書に開示される実施形態において利用されるCas9配列の供給源であり得る。
野生型の化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9配列は修飾することができる。核酸配列は、哺乳動物細胞における効率的な発現のためにコドンを最適化、すなわち「ヒト化」することができる。配列は、例えば、Genbank登録番号KM099231.1 GI:669193757;KM099232.1 GI:669193761;又はKM099233.1 GI:669193765に列挙されたいずれかの発現ベクターによってコードされるCas9ヌクレアーゼ配列であり得る。あるいは、Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Addgene(Cambridge, MA)のPX330又はPX260のような市販のベクター内に含まれる配列であり得る。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、Genbank登録番号KM099231.1 GI:669193757;KM099232.1 GI:669193761;又はKM099233.1 GI:669193765のCas9エンドヌクレアーゼ配列、又はPX330若しくはPX260(Addgene, Cambridge, MA)のCas9アミノ酸配列のいずれかの変異体、又はフラグメントであるアミノ酸配列を有することができる。Cas9ヌクレオチド配列は、Cas9の生物学的に活性な変異体をコードするよう修飾することができ、これらの変異体は、例えば、1又はそれ以上の変異(例えば、付加、欠失又は置換変異又はそのような変異の組合せ)を含むことにより、野生型のCas9とは異なるアミノ酸配列を有し得る、又は含み得る。1又はそれ以上の置換変異は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)であり得る。例えば、Cas9ポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、野生型のCas9ポリペプチドに対して、少なくとも又は約50%の配列同一性(例えば、少なくとも又は約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性)のアミノ酸配列を有することができる。保存的アミノ酸置換は、典型的には、以下の群内の置換を含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン、及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン;リジン、ヒスチジン及びアルギニン;フェニルアラニン及びチロシン。Cas9アミノ酸配列中のアミノ酸残基は、天然に存在しないアミノ酸残基であり得る。天然に存在するアミノ酸残基には、遺伝コード並びに非標準アミノ酸(例えば、L体の代わりにD体を有するアミノ酸)によって天然にコードされるものが含まれる。本発明のペプチドは、標準残基の修飾型であるアミノ酸残基(例えば、リジンの代わりにピロリジンが使用され、システインの代わりにセレノシステインが使用され得る)をまた含み得る。天然に存在しないアミノ酸残基は、天然には見出されないものであるが、アミノ酸の基本式に適合し、ペプチドに組み込むことができるものである。これらには、D-アロイソロイシン(2R, 3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸及びLシクロペンチルグリシン(S)-2-アミノ-2-シクロペンチル酢酸が含まれる。他の例としては、テキストやワールドワイドウェブ(カリフォルニア工科大学が現在管理しているサイトは、機能性タンパク質にうまく取り込まれた非天然アミノ酸の構造を表示する)を参照することができる。
ガイドRNA配列:本発明の組成物及び方法は、HIV中の標的配列に相補的なガイドRNAをコードする配列を含み得る。HIVの遺伝的多様性は、記述してきた複合的なグループ及びサブタイプに反映されている。HIV配列のコレクションは、Los AlamosのHIVデータベース及び一覧(すなわち、配列のデータベースのウェブサイトはhitp://www.hiv.lani.govである)にまとめられている。本発明の方法及び組成物は、これらの様々なグループ、サブタイプ、及び循環型組み換え形態(circulating recombinant forms)のいずれかからのHIVに適用することができる。これらは、例えば、HIV-1の主要グループ(しばしばグループMと呼ばれる)並びに少数グループ、すなわちグループN、グループO及びグループP、並びに、これらに限定されるものではないが、以下のサブタイプA、B、C、D、F、G、H、J及びK。又はHIVのグループ(例えば、これらに限定されるものではないが、以下のグループ、N、O及びPのいずれか)を含む。
ガイドRNAは、コード配列又は非コード配列(すなわち、標的配列)に相補的な配列であり得る。例えば、ガイドRNAは、Cas9遺伝子に作動可能に連結されているTatに応答性のある最小限のプロモーターに知らせる(inform)ために利用される部分以外のHIVの末端反復(LTR)領域に相補的な配列であり得る。ガイドRNAは、本明細書に開示されるようなTatに応答性のあるHIV-1 LTRの最小限のプロモーターに対応する配列を標的化することができないが、それは、構築物自体の分解という結果になり、そのため、HIV LTRの最小限のプロモーターによって駆動されるCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼによって潜在的に利点(advantage)を除去されるためである。したがって、ガイドRNAは、Tatに応答性のあるHIVの最小限のプロモーターの一部である配列を選択することなく、HIV-1 U3、R及び/又はU5領域の参照配列又はコンセンサス配列内に見出される配列を含むことができる。
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、コード配列に相補的な配列、例えば1又はそれ以上のウイルス構造タンパク質(例えば、gag、pol、env及びtat)をコードする配列であり得る。したがって、この配列は、gagポリタンパク質、例えば、MA(マトリックスタンパク質、p17);CA(カプシドタンパク質、p24); NC(ヌクレオカプシドタンパク質、p7);及びP6タンパク質;pol、例えば逆転写酵素(RT)及びRNase H、インテグラーゼ(IN)、及びHIVプロテアーゼ(PR);env、例えばgp160、又はgp160の切断産物、例えばgp120又はSU、及びgp41又はTM;又はtat、例えば72-アミノ酸1-エキソンTat又は86-101アミノ酸2-エキソンTat内の配列に相補的であり得る。いくつかの実施形態において、ガイドRNAは、例えば、vif、n willef(陰性因子)vpu(ウイルスタンパク質U)及びtevを含む、アクセサリータンパク質をコードする配列に相補的な配列であり得る。
いくつかの実施形態において、ガイドRNA配列は、構造又は調節要素(すなわち、標的配列)、例えばRRE、PE、SLIP、CRS(シスに作用性のある抑制配列)及び/又はINSに相補的な配列であり得る。RRE(Revに応答性のある要素)は、HIVのenv領域内にコードされたRNAの要素であり、およそ200ヌクレオチド(gp120及びgp41の境界に広がる、HIV-1における転写の開始からの7710から8061までの位置)を含む。PE(Psiの要素)は、Gagの開始コドンに先行、重複する4のステムループ構造のセットに対応する。SLIPはTTTTTTの「滑りやすい部位」であり、その後にステムループ構造が続く。CRS(シスに作用性のある抑制配列)、INS(阻害性/不安定性RNA配列)は、例えば、HIV-1におけるgag領域の414から631のヌクレオチドに見出され得る。
ガイドRNA配列は、センス配列又はアンチセンス配列であり得る。ガイドRNA配列は、一般にPAMを含む。PAMの配列は、使用されるCRISPRエンドヌクレアーゼの特異性要件によって左右されて変化し得る。化膿レンサ球菌(S. pyogenes)由来のCRISPR-Casシステムでは、標的DNAは、典型的には、5’-NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前に存在する。従って、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)のCas9については、PAM配列はAGG、TGG、CGG又はGGGであり得る。他のCas9のオルソログ(orthologue)は、異なるPAM特異性を有し得る。例えば、S. thermophilus由来のCas9は、CRISPR 1には5’-NNAGAAを、CRISPR 3)には5’-NGGNGを必要とし、髄膜炎菌(Neiseria meningitidis)は5’-NNNNGATT)を必要とする。ガイドRNAにおける特定の配列は変化し得るが、配列にかかわらず、有用なガイドRNA配列は、ゲノムに組み込まれたHIVプロウイルスの高効率及び完全な切除を達成しつつ、オフターゲット効果を最小限にする配列である。ガイドRNA配列の長さは、約20〜約60又はそれ以上のヌクレオチド、例えば約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約45、約50、約55、約60又はそれ以上のヌクレオチドにより変化し得る。有用な選択方法は、外来ウイルスゲノムと、内在性レトロウイルスDNAを含む宿主細胞ゲノムとの間に極めて低い相同性を有する領域を同定することであり、オフターゲットのヒトトランスクリプトーム又は(まれではあるが)非翻訳ゲノム部位を排除するための12-bp+NGG標的選択基準を用いる生物情報学的スクリーニング;HIV-1 LTRプロモーター(潜在的には宿主ゲノム中で保存されている)内の転写因子の結合部位を回避すること;LTR-A-及び-B-誘導の、30bpガイドRNA及び、また、20bpのガイドRNA-、キメラcrRNA-tracRNAベースのシステム及びWGSに対する特異性/効率を高めるために、元の細菌免疫機構を反映するプレcrRNAシステム、潜在的なオフターゲット効果を同定及び排除するための、サンガー法シーケンシング及びサーベイヤー(SURVEYOR)アッセイの選択を含む。
ガイドRNA配列は、単一の配列として、又は1若しくはそれ以上の異なる配列の組み合わせ、例えば、多重構造として構成することができる。多重構造は、Tatに応答性のあるHTVの最小限のプロモーターの一部である配列の選択することなしに、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なるガイドRNAの組み合わせ、例えばU3、R又はU5内の配列の組み合わせを含むことができる。組成物が発現ベクターに投与される場合、ガイドRNAは単一のベクターによってコードされ得る。あるいは、複数のベクターを、それぞれが2又はそれ以上の異なるガイドRNAを含むように操作することができる。有用な構造は、HIVゲノム又はHIVタンパク質発現の除去という結果になる、切断部位間のウイルス配列の切除をもたらす。したがって、2又はそれ以上の異なるガイドRNAの使用は、CRISPRエンドヌクレアーゼによって認識される切断部位間のウイルス配列の切除を促進する。切除された領域は、単一のヌクレオチドから数千のヌクレオチドまで、サイズが異なり得る。
修飾又は変異した核酸配列:いくつかの実施形態では、核酸配列のいずれかは、例えば変異、欠失、置換、核酸塩基の修飾、骨格、その他の導入によって、天然の核酸配列から修飾又は誘導し得る。核酸配列には、ベクター、遺伝子編集剤、gRNAなどが含まれる。本発明のために想定されるいくつかの改変された核酸配列の例には、改変骨格、例えばホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル又はシクロアルキル糖結合、又は短鎖ヘテロ原子結合又は複素環式糖鎖結合を含むものが含まれる。いくつかの実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するもの及びヘテロ原子骨格、CH2--NH--O--CH2, CH,--N(CH3)--O--CH2[メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られる]、CH2--O--N(CH3)--CH2, CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2及びO--N(CH3)--CH2--CH2骨格を有するものが含まれ、天然のホスホジエステル骨格はO--P--O--CH,)として表される。De Mesmaeker et al. Acc. Chem. Res. 1995, 28:366-374によって開示されたアミド骨格も、本明細書にまた具体化されている。いくつかの実施形態において、モルホリノ骨格構造(Summerton and Weller, U.S. Pat. No. 5,034,506)、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格がポリアミド骨格で置換されたペプチド核酸(PNA)骨格を有する核酸配列、ポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接的又は間接的に結合する核酸塩基(Nielsen et al. Science 1991, 254, 1497)。核酸配列は、1又はそれ以上の置換された糖部分をまた含み得る。核酸配列は、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣物をまた有していてもよい。
核酸配列は、追加で、又は代わりとして、核酸塩基(しばしば当該技術分野では単に「塩基」(base)と呼ばれる)の修飾又は置換をまた含み得る。本明細書中で使用される場合、「未修飾の」又は「天然の」核酸塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、天然の核酸においてまれに又は一時的にしか見出されない核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン、特に(5−メチル−2’デオキシシトシンとも呼ばれ、しばしば当該技術分野では5-Me-Cと言及される)5−メチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC及びゲントビオシルHMC、同様に合成の核酸塩基、例えば2−アミノアデニン、2−(メチルアミノ)アデニン、2−(イミダゾリルアルキル)アデニン、2−(アミノアルキルアミノ)アデニン又は他の他のヘテロ置換アルキルアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニン及び2,6−ジアミノプリンも含む。Kornberg, A., DNA Replication, W. H. Freeman & Co., San Francisco, 1980, pp75-77; Gebeyehu, G., et al. Nucl. Acids Res. 1987, 15:4513)。当技術分野で既知の「普遍的な」(universal)塩基、例えばイノシンが含まれていてもよい。5-Me-C置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃上昇させることが示されている。(Sanghvi, Y. S., in Crooke, S. T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)。
本発明の核酸配列の別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、又は細胞の取り込みを増強する、1若しくはそれ以上の部分又は複合体を核酸配列に化学的に連結することを含む。そのような部分には、これらに限定されるものではないが、以下のような脂質部分を含む:コレステロール部分、コレステリル部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al. Bioorg. Med. Chem. Let. 1994, 4, 1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1992, 660, 306; Manoharan et al. Bioorg. Med. Chem. Let. 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res. 1992, 20, 533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al. EMBO J. 1991, 10, 11 1; Kabanov et al. FEBS Lett. 1990, 259, 327; Svinarchuk et al. Biochimie 1993, 75, 49)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2-ジ-0-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 3651; Shea et al. Nucl. Acids Res. 1990, 18, 3777)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al. Nucleosides & Nucleotides 1995, 14, 969)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 3651)。任意の核酸配列中のすべての位置が一様に修飾される必要はなく、実際には上記の修飾の1又はそれ以上が単一の核酸配列中に組み込まれていてもよいし、核酸配列内の単一のヌクレオシド内に組み込まれてさえいてもよい。
いくつかの実施形態では、RNA分子、例えばcrRNA、tracrRNA、gRNAは、1又はそれ以上の修飾核酸塩基を含むように設計される。例えば、RNA分子の既知の修飾は、例えば、Genes VI, Chapter 9 (”Interpretting the Genetic Code”), Lewis, ed. (1997, Oxford University Press, New York)、及びModification and Editing of RNA, Grosjean and Benne, eds. (1998, ASM Press, Washington DC)に見出される。修飾されたRNAの成分は以下のものを含む:2'-O-メチルシチジン;N4-メチルシチジン;N4-2'-O-ジメチルシチジン;N4-アセチルシチジン;5-メチルシチジン;5,2'-O-ジメチルシチジン;5-ヒドロキシメチルシチジン;5-ホルミルシチジン;2'-O -メチル-5-ホルミルシチジン;3-メチルシチジン; 2-チオシチジン;リシジン;2'-O-メチルウリジン;2-チオウリジン;2-チオ-2'-O-メチルウリジン;3,2'-O-ジメチルウリジン;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン;4-チオウリジン; リボシルチミン;5,2'-O-ジメチルウリジン;5-メチル-2-チオウリジン;5-ヒドロキシウリジン;5-メトキシウリジン;ウリジン5-オキシ酢酸;ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル;5-カルボキシメチルウリジン;5-メトキシカルボニルメチルウリジン;5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチルウリジン;5-メトキシカルボニルメチル-2'-チオウリジン;5-カルバモイルメチルウリジン;5-カルバモイルメチル1-2'-O-メチルウリジン;5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン;5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル;5-アミノメチル-2-チオウリジン;5-メチルアミノメチルウリジン;5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン;5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン;ジヒドロウリジン;ジヒドロリボシルチミン;2'-メチルアデノシン;2-メチルアデノシン;N6Nメチルアデノシン;N6,N6-ジメチルアデノシン;N6,2'-O-トリメチルアデノシン;2メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン;N6 -(シス-ヒドロキシイソペンテニル)-アデノシン;2メチルチオ-N6-(シス--ヒドロキシイソペンテニル)-アデノシン;N6-グリシニルカルバモイル)アデノシン;N6トレオニルカルバモイルアデノシン;N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン;2-メチルチオ-N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン;N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2'-O-リボシルアデノシン(リン酸);イノシン;2'O-メチルイノシン;1-メチルイノシン;1,2'-O-ジメチルイノシン;2'-O-メチルグアノシン;1-メチルグアノシン;N2-メチルグアノシン;N2,N2-ジメチルグアノシン;N2,2'-O-ジメチルグアノシン;N2,N2,2'-O-トリメチルグアノシン;2'-O-リボシルグアノシン(リン酸);7-メチルグアノシン;N2,7-ジメチルグアノシン;N2,N2;7-トリメチルグアノシン;ワイオシン;メチルワイオシン;未修飾ヒドロキシワイブトシン;ワイブトシン(wybutosine);ヒドロキシワイブトシン;ペロキシワイブトシン;キューオシン;エポキシキューオシン;ガラクトシル-キューオシン;7-シアノ-7-デアザグアノシン;アラキオシン[7-ホルムアミド-7-デアザグアノシンとも呼ばれる];及び7-アミノメチル1-7-デアザグアノシン。
単離された核酸配列は標準的な技術により産生される。例えば、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離された核酸配列を得るために、PCR技術を使用することができる。PCRはRNA同様にDNAから、ゲノムDNA又は完全な細胞RNAからの配列を含む、特定の配列を増幅させるために使用することができる。様々なPCR方法が、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Dieffenbach and Dveksler, eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995に記載されている。一般的に、目的の、又はそれを超える領域の末端からの配列情報は、増幅すべき鋳型と反対の一本鎖と同一又は類似である、オリゴヌクレオチドプライマーを設計するために用いられる。様々なPCR戦略が、部位に特異的なヌクレオチド配列の修飾が鋳型の核酸に取り込まれ得ることにより、また利用可能である。
単離された核酸は、単独の核酸分子(例えば、ホスホラミダイト技術を用いて、3’から5’までの方向で、自動DNA合成を用いる)として、又は一連のオリゴヌクレオチドとして、科学的にまた合成され得る。例えば、1又はそれ以上の組の長いオリゴヌクレオチド(例えば、>50-100のヌクレオチド)は、それぞれの組が相補性のある短いセグメント(例えば、約15のヌクレオチド)を含み、オリゴヌクレオチドの組がアニール(anneal)されると二本鎖が形成されるような、望ましい配列を含むように合成され得る。DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドを延長するために用いられ、オリゴヌクレオチドの組ごとに単独の二本鎖核酸分子という結果になり、それからベクターにライゲーションされ得る。本発明の単離された核酸は、変異生成、例えば、Cas9をコードするDNAの自然発生的な部分により、また得ることができる。
2の核酸又はそれらがコードするポリペプチドは、互いに特定の程度の同一性を有するものとして記載され得る。例えば、Cas9タンパク質及びその生物学的に活性な変異体は、特定の程度の同一性を示すものとして記載され得る。タンパク質情報研究(Protein Information Research、PIR)サイト(pir.georgetown.edu)において、短いCas9配列を配置し、続いてNCBIウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov/blast)の「短く近接した同一の配列」(short nearly identical sequences)の基礎的局所配列ツール(Basic Local Alignment Search Tool、BLAST)アルゴリズムを用いた分析により、アラインメントは整理され得る。
Cas9に対するパーセント配列同一性は決定することができ、同定された変異体は、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼとして利用することができ、及び/又は、医薬組成物としての有用性を測定することができる。自然発生的なCas9は、クエリー配列であってもよく、Cas9のタンパク質のフラグメントは対象の配列であってもよい。同様に、Cas9のタンパク質のフラグメントはクエリー配列であってもよく、その生物学的に活性な変異体は対象の配列であってもよい。配列同一性を決定するために、クエリー核酸又はアミノ酸配列は、それぞれ、全長(広範囲のアラインメント)にわたってもたらされる核酸又はタンパク質配列のアラインメントが可能となる、コンピュータープログラムClustalW(バージョン1.83、初期規定のパラメーター)を用いて、1又はそれ以上の対象核酸又はアミノ酸配列に対してアラインメントすることができる。Chenna et al., Nucleic Acids Res. 31:3497-3500, 2003を参照。
組み換え構造物及び送達媒体(delivery vehicles):組み換え構造物が、また本明細書に提供されており、Tatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターの制御下でCas9を発現させるために、細胞を形質転換するために使用され得る。組み換え構造物は、同様に、HIV中の標的配列と相補的なガイドRNAを発現させるために利用され得る。組み換え核酸構造物は、Cas9及び/又は細胞におけるHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAを発現させるのに適している調節領域に作動可能に連結された、Cas9及び/又は本明細書中に記載のHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAをコードする核酸を含む。多量の核酸が特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得ることが理解されるであろう。遺伝コードの退化が当該分野に公知である。多くのアミノ酸には、アミノ酸のコドンとして働く、1を超えるヌクレオチドのトリプレットがある。例えば、Cas9のコード配列におけるコドンは、その生体に適切なコドンバイアスの表を用いて、特定の生体が所有する最適な発現に改変され得る。
本明細書に記載の核酸は、ベクターに含まれ得る。ベクターは例えば、複製の起点、足場連結領域(scaffold attachment regions, SARs)及び/又はマーカーを含むことができる。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を与えることができる。例えば、マーカーは殺生物剤への抵抗力、例えば抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、又はハイグロマイシン)に対する抵抗力を与えることができる。発現ベクターは、発現されるポリペプチドの操作又は検出(例えば、精製又は局在化)を容易にするために設計されたタグ配列を含むことができる。タグ配列、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、又はFLAGTMタグ(Kodak, New Haven, CT)配列は、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合として発現される。このようなタグは、カルボキシル又はアミノ末端のどちらもを含む、ポリペプチド内のどこにでも挿入することができる。
追加の発現ベクターは、例えば、染色体、非染色体のセグメント及び合成のDNA配列をまた含むことができる。適したベクターは、SV40の誘導体及び、既知の細菌プラスミド、例えば、大腸菌(E. coli)プラスミドcol El、pCR1、pBR322、pMal-C2、pET、pGEX、pMB9及びそれらの変異体、プラスミド、例えばRP4;ファージDNA、例えば、ファージ1の多数の誘導体、例えば、NM989、及び他のファージDNA、例えば、M13及びフィラメント状の一本鎖ファージDNA;イースト菌プラスミド、例えば2μプラスミド又はその誘導体、真核細胞に有用なベクター、例えば昆虫又は哺乳動物に有用なベクター;プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、例えばファージDNA又は他の発現制御配列を用いるために修飾されたプラスミドを含む。
いくつかの送達方法が、インビトロ(細胞培養)及びインビボ(動物及び患者)システムのために、Cas9の遺伝子に作動可能に連結されたTatに応答性のある最小限のHIV LTRプロモーターと併せて利用され得る。ある実施形態では、レンチウイルス遺伝子の送達システムが利用され得る。このようなシステムは、広い向性及び大きなDNA挿入のための容量を有する分裂又は非分裂細胞において、遺伝子の安定的な、長期間の存在を提供する。(Dull et al, J Virol, 72:8463-8471 1998)。ある実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)が送達方法として利用され得る。AAVは非病原性の、一本鎖のDNAウイルスであり、近年、治療用遺伝子をインビトロ及びインビボシステムに送達するために、積極的に用いられる(Choi et al, Curr Gene Ther, 5:299-310, 2005)。非ウイルス送達方法の一例は、ナノ粒子技術を利用し得る。このプラットフォームは、医薬的インビボとして有用性を示してきた。ナノ技術は、密接した(tight)上皮及び内皮バリアを越えて(across)、薬のトランスサイトーシスを改良した。それは、特定の方法で、細胞及び組織にそのペイロード(payload)の標的化された送達を提供する(Allen and Cullis, Science, 303:1818-1822, 1998)。
ベクターは調節領域を含むことができる。用語「調節領域」(regulatory region)は、転写又は翻訳の開始及び速度(rate)、転写又は翻訳産物の安定性及び/又は移動性に影響する、ヌクレオチド配列を指す。調節領域は、制限なしに、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答性のある要素、タンパク質の認識部位、誘導性のある要素、タンパク質の結合配列、5’及び3’の未翻訳領域(UTRs)、転写開始部位、末端配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル、及びイントロンを含む。
用語「作動可能に連結された」は、調節領域及び核酸中の転写されるべき配列の、そうした配列の転写及び翻訳に影響するための配置を指す。例えば、コード配列をプロモーターの制御下に届けるために、ポリペプチドにおける翻訳の読み枠(translational reading frame)の翻訳開始部位が、典型的には、プロモーターの下流の1と約50のヌクレオチドの間に配置される。プロモーターは、しかしながら、翻訳開始部位の上流にある5,000ものヌクレオチド、又は翻訳開始部位の上流の約2,000のヌクレオチドに配置され得る。プロモーターは、典型的には、少なくとも1のコア(基本)プロモーター(core (basal) promoter)を含む。プロモーターは、少なくとも1の制御性のある要素、例えばエンハンサー配列、上流の要素又は上流の活性化領域(UAR)をまた含み得る。含まれるべきプロモーターの選択はいくつかのファクターに依存し、当該ファクターは、効率性、選択性、誘導性、望ましい発現レベル、及び細胞又は組織の選択的(preferential)発現を含むが、これらに限定されない。コード配列に関連するプロモーター及び他の調節領域を、適切に選択して配置することにより、コード配列の発現を調節するのは、当業者にとって日常的な事柄である。
ベクターは、例えば、ウイルスベクター(例えばアデノウイルスAd、AAV、レンチウイルス、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)及びレトロウイルス)、リポソーム及び他の脂質を含む複合体、並びにポリヌクレオチドを宿主細胞へ送達することを仲介できる他の高分子複合体を含む。ベクターは、さらに遺伝子の送達及び/又は遺伝子の発現を調節する、又はさもなければ標的化された細胞に有益な特性を提供する、他の成分又は機能性をまた含むことができる。下記により詳細に記載、及び説明されているように、このような他の成分は、例えば、細胞の結合又は標的化に影響する成分(細胞型又は組織に特異的な結合を仲介する成分を含む);ベクター核酸の細胞による摂取に影響する成分;接種後の細胞内におけるポリヌクレオチドの局在化に影響する成分(例えば核の局在化を仲介する剤);ポリヌクレオチドの発現に影響する成分を含む。このような成分はマーカー、例えば、採取した細胞を検出又は選択するのに使うことができ、ベクターに送達された核酸を発現している、検出可能及び/又は選択可能なマーカーをまた含み得る。このような成分は、ベクターの天然の特性(例えば、結合及び摂取を仲介する成分、又は機能性を有する、特定のウイルスベクターの使用)として提供され得るし、又はベクターはこのような機能性を提供するために修飾され得る。他のベクターはChen et al; BioTechniques, 34: 167-171 (2003)に記載されているものを含む。このようなベクターの広範囲の多様性は、当該分野には既知であり、一般的に利用可能である。「組み換えウイルスベクター」は、1又はそれ以上の異種遺伝子産物又は配列を含むウイルスベクターを指す。多くのウイルスベクターがパッケージングに関連するサイズ制限を示すので、異種遺伝子産物又は配列は、典型的に、1又はそれ以上のウイルスゲノムの部分に置き換わることで導入される。このようなウイルスは複製の欠陥になることがあり、ウイルスの複製及びエンカプシデーションの間の送達中に(例えば、複製及び/又はエンカプシデーションに必要な遺伝子産物を運ぶヘルパーウイルス又はパッケージング細胞株を用いることにより)トランスで提供されるべき欠失機能を必要とする。ポリヌクレオチドが送達するべき修飾ウイルスベクターは、ウイルス粒子の外側を運ばれることもまた記載されている(例えば、Curiel, D T, et al. PNAS 88: 8850-8854, 1991を参照)。
追加のベクターはウイルスベクター、融合タンパク質及び科学的複合体を含む。レトロウイルスベクターはモロニーマウス白血病ウイルス及びHIVに基づくウイルスを含む。1のHIVに基づくウイルスベクターは、少なくとも2のベクターを含み、gag及びpol遺伝子はHIVゲノムに由来し、env遺伝子は別のウイルスに由来する。DNAウイルスベクターは、水痘ベクター、例えばオルトポックス又はアビポックスベクター、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターのようなヘルペスウイルスベクター[Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64: 487 (1995); Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U. S. A.:90 7603 (1993); Geller, A.I., et al., Proc Natl. Acad. Sci USA: 87:1149 (1990)]、アデノウイルスベクター[LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993); Davidson, et al., Nat. Genet. 3: 219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69: 2004 (1995)]、並びにアデノ随伴ウイルスベクター[Kaplitt, M.G., et al., Nat. Genet. 8:148 (1994)]を含む。
本明細書に記載のポリヌクレオチドは、マイクロ送達媒体、例えばカチオン性リポソーム及びアデノウイルスベクターと共に使用され得る。リポソームの生成、標的化及び内容物の送達のための手順の検討には、Mannino and Gould-Fogerite, BioTechniques, 6:682 (1988)を参照。また、Felgner and Holm, Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):21 (1989)及びMaurer, R.A., Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):25 (1989)を参照。
複製に欠損のある組み換えアデノウイルスベクターは、既知の技術に従って産生できる。Quantin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:2581-2584 (1992);Stratford-Perricadet, et al., J. Clin. Invest., 90:626-630 (1992);及びRosenfeld, et al., Cell, 68:143-155 (1992)を参照。
別の送達方法は、細胞内で発現される産物を産生できるベクターを産生する一本鎖のDNAを使用することである。例えば、Chen et al, BioTechniques, 34: 167-171 (2003)を参照とし、参照によって、全文が本明細書中に組み込まれる。
別の送達方法は、細胞内で発現される産物を産生できるベクターを産生する一本鎖のDNAを使用することである。例えば、Chen et al, BioTechniques, 34: 167-171 (2003)を参照とし、参照によって、全文が本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載のポリヌクレオチドは、マイクロ送達媒体、例えばカチオン性リポソーム及びアデノウイルスベクターと共に使用され得る。リポソームの生成、標的化及び内容物の送達のための手順の検討には、Mannino and Gould-Fogerite, BioTechniques, 6:682 (1988)を参照。また、Felgner and Holm, Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):21 (1989)及びMaurer, R.A., Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):25 (1989)を参照。
本発明の特定の実施形態には、非ウイルスベクターがトランスフェクションを生じさせるために使用され得る。核酸の非ウイルス送達方法は、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃(biolistics)、ビロソーム(virosome)、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン(polycation)又は脂質;核酸の複合体、むき出しのDNA、人工のビリオン、及び薬剤で強化したDNAの摂取を含む。リポフェクションは、例えば、米国特許公報第5,049,386号、第4,946,787号:及び第4,897,355号)に記載されており、リポフェクションの試薬は市販されている(例えば、Transfectam及びLipofectin)。ポリヌクレオチドの十分な受容体を認識するリポフェクションに適したカチオン性及び中性の脂質は、Jesseeの米国特許公報第7,166,298号、又はJesseの米国特許公報第6,890,554号に記載のものを含み、それぞれの内容は参照により組み込まれる。送達は、細胞(例えば、インビトロ又はエクスビボでの投与)又は標的組織(例えば、インビボでの投与)に対してであり得る。
合成ベクターは、典型的に、100nmの指標の直径内で粒子を形成するために、負に帯電した核酸と複合し得るカチオン性脂質又はポリマーである。複合体は、ヌクレアーゼによる分解から核酸を保護する。さらに、細胞及び局在的な送達戦略は、適切な細胞内コンパートメントにおける内在化、放出、分配の必要性を処理しなくてならない。合成の送達戦略は、さらなる困難、例えば、カチオン性の送達媒体と血液成分との相互作用、細網内皮系による摂取、肝臓の濾過、毒性及び目的の細胞に担体の標的化する能力と遭遇する。カチオン性非ウイルスの表面を修飾することは、血液成分との相互作用を最小限にし、細網内皮系の摂取を低減、毒性を減少、標的細胞との性合親和性を増すことができる。血漿タンパク質の結合(同様にオプソニン化と呼ばれる)は、循環型ナノ粒子を認識するためのRESに主要なメカニズムである。例えば、マクロファージ、例えば肝臓におけるクッパー細胞は、スカベンジャー受容体を介してオプソニン化ナノ粒子を認識する。
本発明の核酸配列は、対象の適切な細胞へ送達され得る。このことは、例えば、又は食細胞、例えばマクロファージによる食作用を最適化する大きさの、ポリマーの、生分解性マイクロ粒子又はマイクロカプセルの送達媒体の使用により達成され得る。例えば、直径約1〜10μmのPLGA(ポリ−ラクト−コ−グリコリド)マイクロ粒子が使用され得る。ポリヌクレオチドはこうしたマイクロ粒子に封入され、マクロファージに摂取されて徐々に細胞内で生分解され、それによってポリヌクレオチドを放出する。一度放出されると、DNAは細胞内で発現される。マイクロ粒子の第二の型は、細胞によって直接摂取されることを意図されていないが、マイクロ粒子から放出される際に、生分解を通して細胞に摂取される核酸の持続放出性のある保有宿主として主に働くよう意図されている。これらのポリマー粒子は、それゆえに、食作用を排除するのに十分なほど大きくなければならない(すなわち、5μmよりも大きく、好ましくは20μmよりも大きい)。核酸の摂取を達成する別の方法は、標準的な方法で生成したリポソームを使用することである。核酸は、これらの送達媒体に単独で組み込まれ得るし、又は、組織特異的抗体、例えば、一般的にHIV感染の潜伏感染保有宿主である標的細胞型の抗体、に相互に組み込まれ得る。あるいは、プラスミド、又は静電力又は共有結合力によってポリ-L-リジンに付随する他のベクターから構成される分子複合体を生成することができる。ポリ-L-リジンは標的細胞の受容体に結合し得る配位子と結合する。(すなわち、送達媒体を伴わない)「むき出しのDNA」の筋肉内、皮内、又は皮下部位への送達は、インビボでの発現を達成する別の方法である。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、上記にに記載のCRISPR/Cas及び/又はHIVの標的配列に相補的なガイドRNAをコードする配列を含む、単離された核酸配列をコードする核酸配列。
いくつかの実施形態では、本発明の複合体は、ナノ粒子、例えば、DNAと複合され、ポリエチレングリコールに修飾された(PEGylated)低分子量のLPEIの殻(shell)に囲まれた、高分子量の直線状ポリエチレンイミン(LPEI)の核を含むナノ粒子として製剤化し得る。いくつかの実施形態では、複合体は、本明細書に具体化されている複合体をカプセルに封入しているナノ粒子として製剤化し得る。L-PEIは、広範囲の器官、例えば、肺、脳、膵臓、網膜、膀胱、及び腫瘍へ、インビボで遺伝子を効率的に送達するために使用されてきた。L-PEIはインビトロ及びインビボで、効率的に核酸を凝縮、固定及び送達できる。
いくつかの実施形態では、ベクターの送達は、エキソソームによってもまた仲介され得る。エキソソームは多くの細胞型によって放出される脂質ナノ小胞である。これらは、細胞間で核酸及びタンパク質を輸送することにより、細胞間のコミュニケーションを仲介する。エキソソームは、エンドサイトーシス経路に由来するRNA、miRNA、及びタンパク質を含む。これらはエンドサイトーシス、融合、又はその両方によって標的細胞に摂取され得る。エキソソームは特定の標的細胞に核酸を送達するのを抑制し得る。
本発明の発現構築物は、ナノクルー(nanoclew)を用いて送達し得る。ナノクルーは、繭状のDNAナノコンポジットである(Sun, et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136:14772-14725)。それらは、標的細胞に摂取され、標的細胞質内で放出させるための核酸に搭載(load)され得る。ナノクルーを構築し、それらを搭載し、放出される分子を設計する方法は、Sun, et al.に見出され得る(Sun W, et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136:14772-14725;Sun W, et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2015: 12029-12033)。
核酸及びベクターは、装置(例えば、カテーテル)の表面にまた適用され得るし、又はポンプ、パッチ、若しくは他のどの薬剤の送達装置にも含まれ得る。本明細書で開示される核酸及びベクターは、薬学的に許容される賦形剤又は担体(例えば、生理食塩水)の存在下で、単独で、又は、混合物中で、投与し得る。賦形剤又は担体は、投与の様式及び経路に基づいて選択される。適した薬学的担体、及び薬学的処方の用途のための薬学的必需品は、当該分野で公知の参照文献であるRemington’s Pharmaceutical Scienses(E. W. Martin)、及びUSP/NF(United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
本発明のいくつかの実施形態では、リポソームは、細胞又は組織にトランスフェクションを生じさせるために用いられる。核酸のリポソーム処方の薬効薬理は、どの核酸がリポソームの二重層内に封入されているかによって大部分は決定される。封入された核酸はヌクレアーゼ分解から保護されるが、リポソームの表面と関連しているだけのものは保護されない。封入された核酸は、損なわれないリポソームの延長された循環寿命及び生体内分布を共有するが、表面で関連しているものは、リポソームから分離すると、むき出しの核酸の薬理学を導入する。核酸は、慣習的な受動搭載技術、例えば、(SALPのような)エタノール液滴法、逆相蒸着法、(SNALPのような)エタノール希釈法によって、リポソームに封入され得る。
リポソームの送達システムは、安定的な処方を提供し、改善された薬物動態、及び組織に対するある程度の「受動」又は「生理的」標的化を提供する。親水性及び疎水性物質、例えば、見込みのある化学療法剤の封入が知られている。合成脂質を含む非経口投与でのリポソーム処方を開示する、Schneiderの米国特許公報第5,466,468号;リン脂質と結合したヌクレオシド類似体を開示する、Hostelerの米国特許公報第5,580, 571号;薬学的に活性な化合物が、少なくとも1の両親媒性及び極性脂質成分、並びに少なくとも1の非極性脂質成分を含む、明確な脂質系を含んでいる、ヘパリン又はそのフラグメントである医薬組成物を開示する、Nyqvistの米国特許公報第5, 626, 869号を参照。
リポソーム及びポリメロソーム(polymerosomes)は、複数の溶液及び化合物を含むことができる。特定の実施形態では、本発明の複合体は、ポリマーソーム(polymersomes)に連結又は封入されている。人工小胞の部類として、ポリマーソーム(polymersomes)は、小胞膜を形成するために両親媒性合成ブロック共重合体を用いて作られる、溶液を内包する、微小の中空珠である。一般的なポリマーソーム(polymersomes)は、水溶液を核に含んでおり、反応性のある分子、例えば薬剤、酵素、他のタンパク質及びペプチド、並びにDNA及びRNAフラグメントを封入して保護するのに有用である。ポリマーソーム(polymersomes)膜は、封入物質を外部の物質から単離させる物的障壁、例えば生物学的システム内に見出されるものを提供する。ポリメロソーム(Polymerosomes)は、既知の技術により、二重乳剤(double emulsions)から生じさせることができるので、Lorenceau et al., 2005, Generatoin of Polymerosomes from Double-Emulsions, Langmuir 21(20):9183-6を参照されたい。
本発明のいくつかの実施形態では、非ウイルスベクターは、標的化された送達及びトランスフェクションを生じさせるために修飾されている。PEGylation(すなわち、ポリエチレングリコールで表面を修飾すること)は、非ウイルスベクターのオプソニン化、及び凝集を低減させ、細網内皮系によってクリアランスを最小限にするために用いられる支配的な方法であり、静脈(i. v.)投与後に延長された循環寿命をもたらす。PEGlylatedナノ分子は、そのために、しばしば「ステルス」ナノ分子と呼ばれる。循環から迅速に除去されないナノ分子は、感染した細胞と遭遇する見込みがある。
本発明のいくつかの実施形態では、組織の特有の環境及び外部刺激に応答する、標的化された制御放出システムが利用される。金ナノロッドは近赤外領域に強力な吸収帯を有しており、吸収された光エネルギーは、それから金ナノロッドによって熱に変化させられ、これがいわゆる「光熱効果」である。近赤外光は組織に深く貫通し得るため、金ナノロッドの表面は制御放出のための核酸で修飾することもできる。修飾された金ナノロッドが近赤外光を照射されると、光熱効果によって促される熱分解のために、核酸が放出される。放出される核酸の量は、光の照射の力及び露光時間によって左右される。
組成物が核酸又はポリペプチドとして投与されるかどうかにかかわらず、それらは哺乳動物の細胞による摂取を促進するような方法で処方される。有用なベクターシステム及び処方が上記に記載されている。いくつかの実施形態では、ベクターは組成物を特定の細胞型に送達し得る。本発明を制限するものではないが、DNA送達の他の方法、例えば、化学的トランスフェクション、例えばリン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポソーム、リポプレックス(lipoplex)、界面活性剤、及びペロフルオロ液体薬品を、物質的送達方法、例えば、電気穿孔法、マイクロインジェクション、弾道粒子(ballistic particles)、及び「遺伝子銃」(gene gun)システムとして用いることがまた意図される。
他の実施形態では、組成物は、1又はそれ以上のCRISPR/Casベクター及びgRNAに形質転換又はトランスフェクションされた細胞を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法はエクスビボで適用し得る。すなわち、対象の細胞を体から取り出して、例えば、HIV配列を切除するために、培養液中で組成物と処置し、対象の体に処置した細胞を戻すことができる。細胞は対象の細胞であってもよく、又は一致したハプロタイプ又は細胞株であってもよい。細胞は複製を阻害するために照射され得る。いくつかの実施形態では、細胞はヒトの白血球抗原(HLA)に一致した、自己移植の、細部株、又はそれらの組み合わせである。他の実施形態では、細胞は幹細胞であり得る。例えば、胚幹細胞又は人工多能性幹細胞(誘発多能性幹細胞(iPS細胞))。胚幹細胞(ES細胞)及び人工多能性幹細胞(誘発多能性幹細胞(iPS細胞)は、ヒトを含む、多くの動物種から確立されてきた。これらの細胞は、多能性を保ったまま、活発に分裂する能力を保有して、その分化に適切な誘導によって、ほとんどすべての器官に分化できるため、これらの型の多能性幹細胞は、再生医療のための最も有用な細胞の源となり得る。iPS細胞は、とりわけ、自己由来の体細胞から構築することができ、それゆえに、胚の破壊により生み出されるES細胞と比較すると、倫理的又は社会的問題を引き起こしにくい。さらに、iPS細胞は、自己由来の細胞であり、再生医療又は移植療法に対する最大の障害である、拒絶反応を回避することができる。
形質導入細胞は、確立された方法により再注入のために生成される。培養液中で約2〜4週間の期間後、細胞は1×106及び1×1010の間の数量に達し得る。この点において、細胞の生育特性は、患者ごと、及び細胞型ごとに異なる。形質導入細胞の再注入に先立って約72時間前に、表現型、及び治療剤を発現する細胞のパーセンテージの分析のために、1アリコートが採取される。投与のために、本発明の細胞は、細胞型のLD50、並びに患者の大部分及び全般的な健康に合わせて、様々な濃度での細胞型の副作用によって決定された比率で投与され得る。投与は単回投与又は分割投与を介して達成され得る。大人の幹細胞は、その産生を刺激し、これらに限定するものではないが、骨髄又は脂肪組織を含み得る組織又は空間から退出する、体外から投与された要素を用いて、また結集され得る。
医薬組成物
上記に記載のように、当業者に公知の様々な方法で、本発明の組成物は生成され得る。それらの一次資料(original source)又はそれらが入手される方法にかかわらず、本明細書に開示される組成物はその使用に合わせて製剤化される。例えば、上記に記載の核酸及びベクターは、組織培養中の細胞への適用のため、又は患者及び対象への投与のために、組成物内に製剤化し得る。本発明のいずれの医薬組成物も、薬剤の調合時に使用のために製剤化することができ、特定の使用は、治療、例えば、HIV感染を有する、又はHIV感染罹患した及びHIV感染のリスクのある対象の治療と関連して、以下に示され得る。薬剤として使用される場合、いずれの核酸およびベクターも、医薬組成物の形態で投与され得る。これらの組成物は、医薬分野で公知の方法で生成することができ、局在的又は全身性のどちらの治療が望ましいか、及び治療すべき範囲に左右されて、様々な経路によって投与することができる。投与は、局所的(眼科的、並びに鼻腔内投与、膣内投与、直腸内投与を含む粘膜に対してを含む)、肺(例えば、噴霧器を含む粉末若しくはエアロゾルの吸入又は吹送;気管内、鼻腔内、表皮性、経皮性)、眼球、経口、非経口によるものであり得る。眼球への送達方法は、局所投与(点眼薬)、結膜下、眼周囲、硝子体内注射、又はバルーンカテーテルによる導入、又は結膜嚢に外科的に配置された眼科用挿入物を含み得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又は注入;又は頭蓋内、例えば、髄腔内若しくは脳室内投与を含む。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であることができ、又は、例えば、連続注入ポンプによってであり得る。医薬組成物及び局所投与のための製剤は、経皮貼付、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、粉末、及びその他を含み得る。慣習的な医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤及びその他が、必要、又は望ましくあり得る。
上記に記載のように、当業者に公知の様々な方法で、本発明の組成物は生成され得る。それらの一次資料(original source)又はそれらが入手される方法にかかわらず、本明細書に開示される組成物はその使用に合わせて製剤化される。例えば、上記に記載の核酸及びベクターは、組織培養中の細胞への適用のため、又は患者及び対象への投与のために、組成物内に製剤化し得る。本発明のいずれの医薬組成物も、薬剤の調合時に使用のために製剤化することができ、特定の使用は、治療、例えば、HIV感染を有する、又はHIV感染罹患した及びHIV感染のリスクのある対象の治療と関連して、以下に示され得る。薬剤として使用される場合、いずれの核酸およびベクターも、医薬組成物の形態で投与され得る。これらの組成物は、医薬分野で公知の方法で生成することができ、局在的又は全身性のどちらの治療が望ましいか、及び治療すべき範囲に左右されて、様々な経路によって投与することができる。投与は、局所的(眼科的、並びに鼻腔内投与、膣内投与、直腸内投与を含む粘膜に対してを含む)、肺(例えば、噴霧器を含む粉末若しくはエアロゾルの吸入又は吹送;気管内、鼻腔内、表皮性、経皮性)、眼球、経口、非経口によるものであり得る。眼球への送達方法は、局所投与(点眼薬)、結膜下、眼周囲、硝子体内注射、又はバルーンカテーテルによる導入、又は結膜嚢に外科的に配置された眼科用挿入物を含み得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又は注入;又は頭蓋内、例えば、髄腔内若しくは脳室内投与を含む。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であることができ、又は、例えば、連続注入ポンプによってであり得る。医薬組成物及び局所投与のための製剤は、経皮貼付、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、粉末、及びその他を含み得る。慣習的な医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤及びその他が、必要、又は望ましくあり得る。
医薬組成物は、有効成分として、1又はそれ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて、本明細書に記載の核酸及びベクターを含み得る。本発明の組成物を作るには、有効成分が、典型的に、賦形剤と混合されている、賦形剤によって希釈されている、又は、例えば、カプセル、錠剤、包(sachet)、紙、若しくは他の容器の形態で、担体内に封入されている。希釈剤として賦形剤が働く場合は、それは有効成分のために媒体、担体又は媒介(medium)として働く、固形、半固形、液体物質(例えば、生理食塩水)であり得る。このように、組成物は、錠剤、丸薬、粉末、トローチ、包、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、(固形又は液体媒体としての)エアロゾル、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ソフト又はハードゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射液剤、及び滅菌包装粉末の形態であり得る。当該分野では既知の通り、希釈剤の型は意図した投与経路によって異なり得る。結果として生じる組成物は、追加の薬剤、例えば防腐剤、を含み得る。いくつかの実施形態では、担体は、脂質ベース若しくはポリマーベースのコロイドをであり得るし、又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、担体物質は、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はブロック共重合体ミセルとして製剤化されたコロイドであり得る。上述のように、担体物質はカプセルを形成でき、その物質はポリマーベースのコロイドであり得る。
本発明の核酸配列は、対象の適切な細胞に送達され得る。このことは、例えば、食細胞、例えばマクロファージによる食作用を最適化する大きさの、ポリマーの、生分解性マイクロ粒子又はマイクロカプセルの送達媒体の使用によって達成できる。例えば、直径約1〜10μmのPLGA(ポリ−ラクト−コ−グリコリド)マイクロ粒子が使用され得る。ポリヌクレオチドは、これらのマイクロ粒子に封入され、マクロファージに摂取されて徐々に細胞内で生物分解され、それによってポリヌクレオチドを放出する。一度放出されると、DNAは細胞内で発現される。マイクロ粒子の第二の型は、細胞によって直接摂取されることを意図されていないが、生分解を通してマイクロ粒子から放出されるときのみに細胞に摂取される、核酸の持続放出性の保有宿主として、主として働くように意図されている。これらのポリマー粒子は、それゆえに、食作用を妨げるに十分なほど大きく(すなわち、5μmより大きく、好ましくは20μmより大きく)なければならない。核酸の摂取を達成する別の方法は、標準的な方法で生成されたリポソームを用いることである。核酸は、これらの送達媒体に単独で組み込まれることができ、又は組織特異的抗体、例えば、一般的にHIV感染の潜伏感染保有宿主である標的細胞型、例えば、脳マクロファージ、ミクログリア、星状膠細胞、及び胃腸管関連のリンパ球様細胞と、併せて組み込まれる(co-incorporated)ことができる。あるいは、プラスミド、又は静電気力又は共有結合力によってポリ−L−リジンに付着する他のベクターを含む分子複合体を生成できる。ポリ−L−リジンは、標的細胞において受容体と結合し得る配位子と結合する。「むき出しのDNA」(すなわち、送達媒体を持たない)の筋肉内、皮内、又は皮下部位への送達は、インビボ発現を達成する別の方法である。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする配列を含む単離された核酸配列をコードする核酸配列、及び任意にガイドRNAが、上記に記載の通りに、Tatに応答性のある最小限のHIV LTRプロモーターと作動可能に連結している。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物はナノ粒子、例えば、DNAと複合した高分子量の直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)の核を含み、ポリエチレングリコールに修飾された(PEGylated)低分子量LPEIの殻に囲まれた、ナノ粒子として製剤化し得る。
核酸及びベクターは、装置(例えば、カテーテル)の表面にまた適用し得るし、又はポンプ、パッチ、若しくは他の薬剤の送達装置に含まれ得る。本明細書に開示される核酸及びベクターは、薬学的に許容される賦形剤又は担体(例えば、生理食塩水)の存在下において、単独で、又は混合物中で、投与され得る。賦形剤又は担体は、投与の様式及び経路に基づいて選択される。適した薬学的担体、及び薬学的処方における使用のための薬学的必需品は、当該分野の公知の参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences(E. W. Martin)、及びUSP/NF(United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
いくつかの実施形態では、組成物はHIVの性感染を防ぐための局所的ゲルとして製剤化され得る。局所的ゲルは、性的行為に先立って、男性又は女性の性器部分の肌又は粘膜に直接塗布することができる。あるいは、又は加えて、局所的ゲルは、表面に塗布、又は男性用又は女性用のコンドーム又はペッサリー内に含まれ得る。
いくつかの実施形態では、組成物は、HIV LTRプロモーターと作動可能に連結されたCas9又はCas9変異体をコードする核酸を封入するナノ粒子として、製剤化され得る。核酸は、加えて、標的HIVに相補的なガイドRNA配列をコードし得る。
本発明の製剤は、標的HIVに相補的なCas9及びガイドRNAをコードするベクターを含み得る。ガイドRNA配列は単独の標的領域に相補的な配列を含み得るし、又は上記に記載されている多重の標的領域に相補的な配列のどの組み合わせも含み得る。あるいは、HIV LTRの最小限のプロモーターに駆動されてCas9をコードする配列、及びガイドRNA配列をコードする配列は、別々のベクターであり得る。
本明細書で開示される組成物は、一般的に、及び様々に、HIV感染を有する対象の治療のために有用である。当該方法は、いずれのHIV、例えば、HIV-1及びHIV-2、及びSIV、並びにそれらのいずれの循環型組み換え形態をも、標的化するのに有用である。対象は、臨床的に有益な結果がいつ生じるかにかかわらず、効率的に治療される。このことは、例えば、疾病の症状の完全な解決、疾病の症状の重篤性を減少させること、又は疾病の進行を遅らせることを意味し得る。これらの方法は、a)HIV感染を有する対象(例えば、患者、より厳密に言えば、ヒトの患者)を同定すること;及びb)Tat応答HIVの最小限のプロモーターの制御下で、CRISPRに関連したヌクレアーゼ、例えばCas9をコードする核酸を含む組成物を対象に提供することの段階をさらに含み得る。これらの方法は、HIVの標的配列、例えばHIV LTRに相補的なガイドRNAをコードする配列を対象に提供することをさらに含み得る。
標準的な臨床試験、例えば、対象の血清中にHIV抗体又はHIVポリペプチドp24の存在を見出すイムノアッセイを用いて、又はHIV核酸の増幅分析を通して、対象は同定され得る。感染症状の完全な解決、感染の症状の重篤性の減少、又は感染の進行を遅らせるという結果になる、対象に提供されるこのような組成物の量は、治療上の有効量と考えられる。本発明の方法は、投薬及びスケジューリングを最適化すること、及び結果を予想することを助けるための測定段階を、また含み得る。本発明のいくつかの方法では、まず患者が潜在的HIV感染を有しているのかどうかを決定し、それから1又はそれ以上の本明細書に記載の組成物を、対象に処置するかしないかを決定することができる。測定することは、薬剤耐性の発現を見出すため、及び無反応の患者から反応のある患者を迅速に区別するために、また用いられ得る。いくつかの実施形態では、当該方法は、患者によってかばわれた(harbored)特定のHIVの核酸配列を決定し、ガイドRNAがそれらの特定の配列と相補的になるように設計する段階をさらに含み得る。例えば、対象のLTR U3、R、又はU5領域の核酸配列を決定し、それから、Tat応答HIVの最小限のプロモーターの一部となる配列をさらに選択することなしに、患者の配列に正確に相補的な1又はそれ以上のガイドRNAを設計することができる。
組成物は、治療、例えば、レトロウイルス感染、例えば、HIV感染を有するリスクのある対象の予防的治療にまた有益である。これらの方法はa)HIV感染を有するリスクのある対象を同定する;b)Tat応答HIV-1 LTRの最小限のプロモーターの制御下にある、CRISPRに関連したヌクレアーゼ、例えばCas9をコードする核酸を含む組成物を対象に提供する段階をさらに含み得る。配列は、加えて、HIVの標的配列、例えばHIV LTRに相補的なガイドRNAをコードし得る。HIV感染を有するリスクのある対象は、例えば、無防備な性行為、すなわちコンドームの使用なしに性的行為に関与する、性的に活発な個体;別の性感染症を有する性的に活発な個体;静注薬物(intravenous drug)の使用者;又は割礼を受けていない男性であり得る。HIV感染を有するリスクのある対象は、例えば、職業によってHIVに感染した人々と接触し得る個体、例えば、医療従事者又は第一応答者であり得る。HIV感染を有するリスクのある対象は、例えば、矯正環境(correctional setting)の収容者、又はセックスワーカー、すなわち、職業収入若しくは非貨幣的事項、例えば、食物、薬物、又は住まいのために、性的行為を用いる個体であり得る。
組成物は、母体から子へのHIVの感染の可能性を低減させるために、HIV感染を有する、妊娠中、又は授乳中の女性に投与し得る。HIVに感染している妊娠中の女性は、子宮内で胎盤を経由して、出産の際に産道を通して、又は出産後に母乳を通して、子にウイルスを感染させ得る。本明細書に開示される組成物は、HIVに感染した母体に、出生前、周産期、生後、授乳期間中、又は出生前、周産期、生後のどの組み合わせでも投与され得る。組成物は、以下に記載されている標準的な抗ウイルス療法と共に母体に投与され得る。本発明の組成物は、いくつかの実施形態では出産後すぐに、いくつかの実施形態ではその後周期的に、乳児にまた投与され得る。乳児は、標準的な抗ウイルス療法をまた受けることができる。
組成物は、HIVに感染していない個体に、HIVの感染を防ぐために投与され得る。組成物は、医薬組成物の治療上の有効量を送達することを含み得る。医薬組成物は、上記に記載されている、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、及び少なくともHIV LTRプロモーター及びTat応答HIV LTRの最小限のプロモーターのTAR領域をコードする配列を含み得る。
本明細書に開示される方法は、広い範囲の種、例えば、ヒト、ヒトでない霊長類(例えばサル)、ウマ又は他の家畜、イヌ、ネコ、フェレット又はペットとして飼われる他の哺乳動物、ラット、マウス、又は他の実験動物に適用され得る。
本発明の方法は、薬剤の調合の観点から発現され得る。それゆえに、本発明は、薬剤の調合において、本明細書に記載の薬剤及び組成物の使用を含む。本明細書に記載の化合物は、治療組成物及びレジメンにおいて、又は本明細書に記載の疾病若しくは疾患の治療における使用のための薬剤の製造のために有用である。
本明細書に記載のいずれの組成物も、その後の標的細胞への送達のために、宿主の体のどの部分にも投与され得る。組成物は、制限なしに、哺乳動物の脳、脳脊髄液、関節、鼻粘膜、血液、肺、腸、筋肉組織、肌、又は腹腔に送達され得る。送達経路の観点から、組成物は静脈内、頭蓋内、腹腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、直腸内、膣内、髄腔内、気管内、皮内、又は経皮性注射によって、経口投与又は経鼻投与によって、又は長時間の段階的かん流によって投与され得る。さらなる例として、組成物のエアロゾル製剤(preparation)が吸入によって宿主に与えられ得る。
必要な用量は、投与経路、製剤の性質、患者の病気の性質、患者の大きさ、体重、表面積、年齢、性別、投与されている他の薬剤、及び担当臨床医の判断によって左右され得る。必要な用量における広い変動が、細胞の標的の多様性、及び様々な投与経路における異なる効率の観点から期待されるべきである。これらの用量レベルにおける変動が、当該分野でよく理解されているように、最適化のために標準的な経験によるルーティンを用いて調整され得る。投与は単回又は複数回(例えば、2倍又は3倍、4倍、6倍、8倍、10倍、20倍、50倍、100倍、150倍、又はそれ以上)であり得る。適した送達媒体(例えば、ポリマーマイクロ粒子又は埋め込み型装置)内への化合物の封入は、送達の効率を増し得る。
本明細書で提供されるいずれの組成物を用いた治療の持続時間も、1日と同じくらいの短さから、宿主の寿命(例えば、長年)と同じくらいの長さまで、どんな時間の長さにもすることができる。例えば、化合物は、1週間に1回(例えば、4週間から数ヶ月又は長年まで);1ヶ月に1回(例えば、3〜12ヶ月又は長年まで);5年間、10年間、又はそれより長い間に1年に1回、投与され得る。治療の頻度も変化しやすいものであり得ることもまた注意されたい。例えば、本発明の化合物は、1日、1週間、1ヶ月、1年に1回(又は2回、3回、等)投与され得る。
本明細書で提供されるいずれの組成物の有効量も、治療の必要のある個体に投与され得る。有効量は、特定の組成物の既知の量を投与後に、患者の反応を評価することによって決定され得る。加えて、毒性のレベルがもしあれば、特定の組成物の既知の量を投与する前と後の、患者の臨床症状を評価することによって決定され得る。患者に投与される特定の組成物の有効量が、望ましい結果、並びに患者の反応及び毒性のレベルによって調整され得ることに注意されたい。有意な毒性は、それぞれの特定の患者によって変化し得るし、制限なしに、患者の病状、年齢、及び副作用への耐性を含む、複合的な要素に左右される。
当業者に既知のいずれの方法も、特定の反応が引き起こされたら、決定するために用いられ得る。特定の病状の程度を評価し得る臨床方法が、反応が引き起こされたら決定するために用いられ得る。反応を評価するために用いられる特定の方法は、患者の疾患、患者の年齢及び性別、他に投与されている薬剤、並びに担当臨床医の判断の性質により左右され得る。
組成物は別の治療用薬剤、例えば、HAARTで用いられる抗レトロウイルス剤、化学療法剤、HIVの転写活性化因子、例えばPMA、TSA、その他とまた投与され得る。抗レトロウイルス剤は、反転転写酵素阻害剤(例えば、ヌクレオシド/ヌクレオチド反転転写酵素阻害剤、ジドブジン、エントリシタビン(emtricitibine)、ラミブジン、テノフォビル;及び非ヌクレオシド反転転写酵素阻害剤、例えば、エファビレンツ、ネビラピン、リルピビリン);プロテアーゼ阻害剤、例えば、チピラビル(tipiravir)、ダルナビル(darunavir)、インジナビル;侵入阻害剤、例えば、マラビロク;融合阻害剤、例えば、エンフビルチド(enfuviritide);又はインテグラーゼ阻害剤、例えば、ラルテグラビル(raltegrivir)、ドルテグラビル(dolutegravir)を含み得る。抗レトロウイルス剤は、複数の種類を組み合わせた薬剤(multi-class combination agents)、例えば、エントリシタビン、エファビレンツ、及びテノフォビルの組み合わせ;エントリシタビンの組み合わせ;リルピビリン、及びテノフォビル;又はエルビテグラビル、コビシスタット、エントリシタビン及びテノフォビルの組み合わせもまた含み得る。
加えて、ウイルス感染と関連し得る他のいずれの症状、例えば、熱、悪寒、頭痛、二次感染をも緩和する1又それ以上の薬剤は、合わせて、又は医薬組成物の一部として、又は別々の時間に、投与され得る。これらの薬剤は、制限なしに、解熱剤、抗炎症剤、化学療法剤、又はそれらの組み合わせを含む。
特定の実施形態では、抗ウイルス剤は以下の治療上の有効量を含む;抗体、アプタマー、アジュバント、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、ケモカイン、サイトカイン、免疫刺激剤、免疫調節剤、B細胞モジュレーター、T細胞モジュレーター、NK細胞モジュレーター、抗原提示細胞モジュレーター、酵素、siRNA、インターフェロン、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プリン・ヌクレオシド、ケモカイン受容体アンタゴニスト、インターロイキン、ワクチン又はそれらの組み合わせ。
免疫調節分子は、限定するものではないが、サイトカイン、リンフォカイン、T細胞共刺激配位子等を含む。免疫調節分子は、体液性及び/又は細胞免疫系、特にその細胞及び/又は非細胞成分、その機能、及び/又は他の生理学系とのその相互作用に、正及び/又は負に影響する。免疫調節分子は、以下を含む群から選択され得る:サイトカイン、ケモカイン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF;とりわけ、Bernhagen(1998), Mol Med 76(3-4); 151-61又はMets (1997), Adv Immunol 66, 197-223に記載されている)、T細胞受容体又は溶解性MHC分子。このような免疫調節エフェクター分子は当該分野で公知であり、とりわけ、Paul, “Fundaental immunology”, Raven Press, New York (1989)に記載されている。特に、既知のサイトカイン及びケモカインはMeager, “The Molecular Biology of Cytokines” (1998), John Wiley & Sons, Ltd., Chichester, West Sussex, England;(Bacon (1998). Cytokine Growth Factor Rev 9(2):167-73;Oppenheim (1997). Clin Cancer Res 12, 2682-6;Taub, (1994) Ther. Immunol. 1(4), 229-46又はMichiel, (1992). Semin Cancer Biol 3(1), 3-15)に記載されている。
測定され得る免疫細胞活性は、これらに限定するものではないが、以下を含む:(1)DNA複製を測定することによる細胞増殖;(2)サイトカイン、例えばIFN-γ、GM-CSF、又はTNF-αの特定の(specific)測定を含む、改良されたサイトカイン産生、(3)標的を殺す、又は溶解することを仲介する細胞;(4)細胞分化;(5)イムノグロブリン産生;(6)表現型の変化;(7)化学走化性因子、又は、走化性を有するケモタクチン(chemotactin)に応答する能力を意味する走化性の産生、(8)いくつかの他の免疫細胞型の能力を阻害することによる免疫抑制、(9)異常活性化の兆候時に、特定の状況下で活性化した免疫細胞をフラグメント化させることを指すアポトーシス。
細胞傷害性Tリンパ球、又はLAK細胞を標的へ送達する溶解性パッケージ中の、本発明の酵素もまた目的のものである。パーフォリン、孔形成タンパク質、及びFas配位子は、これらの細胞中の主要な細胞溶解分子である(Brandau et al., Clin. Cancer Res. 6:3729, 2000; Cruz et al., Br. J. Cancer 81:881, 1999)。CTLは、4の主な基質特異性(primary substrate specifities)を有する、グランザイムと呼ばれる少なくとも11のセリン・プロテアーゼの群をまた発現する(Kam et al., Biochim. Biophys. Acta 1477:307, 2000)。低濃度のストレプトリジンO及び肺炎球菌溶血素は、グランザイムBに依存するアポトーシスを促進する(Browne et al., Mol. Cell Biol. 19:8604, 1999)。
他の適したエフェクターは、それ自身が細胞に対して毒性はないが、細胞を代謝的に変化させること、非毒性のプロドラッグを致死薬剤に変化させることのどちらかによって、細胞に他の非毒性化合物に対する反応性を持たせる能力を有するポリペプチドをコードする。例示的には、単純ヘルペスウイルス、及び触媒的に同等な変異体に由来するようなチミジンキナーゼ(tk)である。HSV tkは、抗ヘルペス剤ガンシクロビル(GCV)を、増殖細胞におけるDNA複製に干渉する毒性産物に変化させる。
2又はそれ以上の治療剤の同時(Concurrent)投与は、薬剤が治療上の効果を発揮する期間に重なりがある限り、薬剤が同じ時に、又は同じ経路によって投与されることを要求しない。同時期の(Simultaneous)、又は連続した(sequential)投与は、異なる日や週に投与されると考えられる。治療剤はメトロノーム的レジメン、例えば治療剤の継続的な低用量下で投与され得る。
こうした組成物の用量、毒性及び治療上の有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致命的な用量)及びED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するために、細胞培養又は実験動物中の標準的な調合の手順によって決定され得る。毒性効果と治療効果の用量比とは、治療指数であり、LD50/ED50として表現され得る。
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲を考案するために使用され得る。こうした組成物の用量は、好ましくは、わずかの毒性を含む、又は毒性を含まないED50を含む血中濃度の範囲内に位置する。用量は使用される投与形態、及び利用される投与経路に左右される範囲内で変化し得る。本発明の方法に使用されるいずれの組成物も、治療上の有効量は細胞培養アッセイから初めに見積もられ得る。用量は、細胞培養中に決定されるように、IC50(すなわち、症状の抑制を最大の半分(half-maximal)達成する試験化合物の濃度)を含む循環する血漿濃度の範囲を達成するために、動物モデルにおいて考案され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いられ得る。血漿のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography)によって測定され得る。
記載の通り、組成物の治療上の有効量(すなわち、有効量)は、治療上(例えば、臨床的に)望ましい結果を提供するのに十分な量を意味する。組成物は、1日おきに1回を含む、1日に1又はそれ以上の回数から、1週間に1又はそれ以上の回数まで投与され得る。これらに限定するものではないが、疾病又は疾患の重篤性、過去の治療、全体的な健康及び/又は対象の年齢、並びに他の現在の疾病を含む特定の要素が、対象を効果的に治療するのに必要な用量及びタイミングに影響し得ることを、当業者は理解できるであろう。さらに、本発明の組成物の治療上の有効量を用いた対象の治療は、単独の治療又は一連の治療を含み得る。
本明細書に記載の組成物は、上記に記載の薬剤送達システムの多様性における使用に適している。加えて、投与される化合物のインビボ血清半減期を強化する(enhance)ために、組成物は封入され、リポソームの内腔に導入され、コロイドとして生成され得るし、又は、組成物の延長された血清半減期を提供する他の慣習的な技術が使用され得る。例えば、それぞれが引用によって本明細書に組み込まれる、Szoka, et al.の米国特許公報第4,235,871号、第4,501,728号及び第4,837,028号に記載されているように、様々な方法が、リポソームを生成するために使用可能である。さらに、標的化された薬剤送達システム、例えば、組織に特異的な抗体にコーティングされたリポソームにおいて薬剤を投与し得る。リポソームは標的化され、器官によって選択的に摂取される。
レトロウイルス、例えば、レンチウイルス、例えば、哺乳動物細胞中のヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、又はウシ免疫不全ウイルスを不活性化する方法もまた提供される。ヒト免疫不全ウイルスは、HIV-1又はHIV-2であり得る。ヒト免疫不全ウイルスは、染色体に取り込まれたプロウイルスであり得る。哺乳動物細胞は、これに限定するものではないが、CD4+リンパ球、マクロファージ、繊維芽細胞、単球、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、樹枝状細胞、例えばランゲルハンス細胞及び小胞樹枝状細胞、造血幹細胞、内皮細胞、脳ミクログリア細胞、星状膠細胞及び消化管上皮細胞を含む、HIVに感染したどのような細胞であってもよい。このような細胞型は、一次感染中に典型的に感染した細胞型、例えば、CD4+リンパ球、マクロファージ、単球又はランゲルハンス細胞、及び潜伏HIV保有宿主、すなわち、潜伏感染細胞を構成する細胞型を含む。
当該方法は、コア領域及びHIV LTRプロモーターのTAR領域を含む、HIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結された、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする単離された核酸を含む組成物に対して細胞を露出させること、及び/又は接触させることを含み得る。単離された核酸は1又はそれ以上のガイドRNAをさらに含むことができ、ガイドRNAはレトロウイルス中の標的核酸配列に相補的である。接触させる段階はインビボで行われ得る、すなわち、組成物はHIV感染を有する対象に直接的に投与され得る。しかし、方法はそれに限定されないので、接近させる段階はエクスビボでも行われ得る。例えば、1の細胞若しくは複数の細胞、又は組織外植片(tissue explant)が、HIV感染を有する対象から除去され、培養液中に置かれ、それから、HIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結されたCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、及び任意にガイドRNAがHIV中の核酸配列に相補的なガイドRNAを含む組成物に接触され得る。上記に記載されている通り、医薬組成物はTatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結されたCRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする核酸を含み得る。
哺乳動物の細胞による摂取を促進するための方法において、組成物は考案される。有用なベクターシステム及び処方が上記に記載されている。いくつかの実施形態では、ベクターが組成物を特定の細胞型に送達し得る。本発明をそのように限定するものではないが、DNA送達の他の方法、例えばリン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポソーム、界面活性剤、ペルフルオロ液体薬品を用いる科学的転移もまた考えられ、物質的送達方法、例えば、電気穿孔法、マイクロインジェクション、弾道粒子、及び「遺伝子銃」システムも考えられる。
標準的な方法、例えば、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼを見出すためのイムノアッセイ、又は核酸ベースアッセイ、例えばガイドRNAを見出すPCRが、細胞が摂取されたこと、及び/又は、取り込まれたタンパク質が発現したことを確認するために用いられ得る。設計された細胞は、それから下記に記載されているように、それらが由来している対象に再取り込みされ得る。
他の実施形態では、組成物は、1又はそれ以上のCas9/Tatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターベクターによって、形質転換又はトランスフェクションされた細胞を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法はエクスビボで適用し得る。すなわち、対象の細胞は体内から除去され、HIV配列を切除するために培養液中で組成物を用いて処置され、処置された細胞が対象の体に戻され得る。細胞は対象の細胞であり得るし、又はハプロタイプ若しくは細胞株が一致し得る。細胞は複製を妨げるために放射線照射され得る。いくつかの実施形態では、細胞はヒト白血球抗原(HLA)と一致した、自己移植の、細胞株、又はそれらの組み合わせである。他の実施形態では、細胞は幹細胞であり得る。例えば、胚幹細胞又は人工多能性幹細胞(誘発多能性幹細胞(iPS細胞))。胚幹細胞(ES細胞)及び人工多能性幹細胞(誘発多能性幹細胞(iPS細胞))は、ヒトを含む、多くの動物種から構築されてきた。これらの細胞は、多能性を保ったまま、活発に分裂する能力を保有して、その分化に適切な誘導によって、ほとんどすべての器官に分化できるため、これらの型の多能性幹細胞は、再生医療のための最も有用な細胞の源となり得る。iPS細胞は、とりわけ、自己由来の体細胞から構築することができ、それゆえに、胚の破壊により生み出されるES細胞と比較すると、倫理的又は社会的問題を引き起こしにくい。さらに、iPS細胞は、自己由来の細胞であり、再生医療又は移植療法に対する最大の障害である、拒絶反応を回避することができる。
本明細書に記載の組成物は、例えば、レトロウイルス感染、例えば、HIV感染を有する対象、又はレトロウイルス感染、例えばHIV感染にかかっている対象を治療するための療法としての使用に分類される、適した容器に包装され得る。容器は、上記に記載されている、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ、及びTatに応答性のあるHIV LTRの最小限のプロモーターをコードする核酸配列を含む組成物を含み得る。配列は、加えて、HIV中の標的配列に相補的なガイドRNA、又は核酸をコードするベクター、又は1若しくはそれ以上の適した安定剤、担体分子、香味料、及び/又は意図した使用のために適切なその他をコードし得る。加えて、少なくとも1の開示された組成物を含む、包装された製品(例えば、濃縮された、若しくはすぐに使える濃度で、保管、発送、又は販売のために包装された、本明細書に記載の組成物の1又はそれ以上を含む滅菌容器)及びキット。製品は、本発明の1又はそれ以上の組成物を含む容器(例えば、バイラル、瓶、ボトル、袋又はその他)を含み得る。加えて、製造品は、包装材料、使用説明書、注射器、送達装置、緩衝材、又は予防又は治療が必要な疾患の治療又は測定のための、その他のコントロール試薬をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、1又はそれ以上の追加の抗レトロウイルス剤、例えば、反転転写阻害剤、プロテアーゼ阻害剤又は侵入阻害剤を含み得る。追加の薬剤が、HIV LTRの最小限のプロモーターに作動可能に連結された、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列、及び任意にHIV中の標的配列と相補的なガイドRNA、又は当該核酸をコードするベクターと同じ容器に共に封入され得るし、又は別々に封入され得る。
製品は、説明文(例えば、印刷されたラベル、又は挿入物、又は製品の使用を記載した他の媒体(例えば、オーディオテープ又はビデオテープ))もまた含み得る。説明文は、容器に関連付けられ得る(例えば、容器に添付される)し、組成物が投与されるべき様式(例えば、投与の頻度と経路)、そのための指示、及び他の使用を記載し得る。組成物は、投与のための準備ができている状態であり得る(例えば、用量が適切なユニット中に存在する)し、1又はそれ以上の追加の薬学的に許容されるアジュバント、担体又は他の希釈剤及び/又は追加の治療剤を含み得る。あるいは、組成物は、希釈剤及び希釈のための指示と共に濃縮形態で提供され得る。
本発明の様々な実施形態が上記に記載されているが、それらは例示によってのみ提示されたのであり、限定するものではないと理解されるべきである。開示された実施形態に対する無数の変更を、本明細書の開示に従って、本発明の精神又は範囲から離れずに行うことができる。このように、本発明の広さ及び範囲は、上記に記載のいずれの実施形態にも限定されるべきではない。
本明細書に言及されたすべての文献は、引用により明細書中に組み込まれる。本出願で引用されたすべての公開公報及び特許文献は、それぞれの個別の公開公報又は特許文献が個別に示されているのと同じ限りのすべての目的で、引用により組み込まれる。本書中の様々な引用の言及により、出願人はいずれの特定の引用も本発明の「先行技術」(prior art)であると認めるものではない。
実施例
以下の非限定的な実施例は、本発明の選択された実施形態を説明するために提供される。示された構成部分の要素の改変及び割合の変化は当業者にとって明らかであり、本発明の実施形態の範囲内にある。
以下の非限定的な実施例は、本発明の選択された実施形態を説明するために提供される。示された構成部分の要素の改変及び割合の変化は当業者にとって明らかであり、本発明の実施形態の範囲内にある。
実施例1:遺伝子編集によるHIV−1のネガティブフィードバック調節
本明細書で提示される研究では、遺伝子編集の技術が改良され、HIV−1の転写活性化因子であるTatによる、ウイルス再活性化の初期段階でのCRISPR/Cas9の条件付き活性化を可能にする新たな戦略が開発された。この新たな戦略は、ウイルスのプロモーター及び/又はウイルスのコード配列に広がるウイルス遺伝子のセグメントを取り除くことによって、生産的なウイルスの複製に先立ってウイルスの複製を永久に除去する。さらに、この戦略は、細胞内での不要で持続的なCas9の高レベルな発現によって生じるかもしれない予見できない複雑な状態に起因する何らかの懸念を多少なりとも解決する。
本明細書で提示される研究では、遺伝子編集の技術が改良され、HIV−1の転写活性化因子であるTatによる、ウイルス再活性化の初期段階でのCRISPR/Cas9の条件付き活性化を可能にする新たな戦略が開発された。この新たな戦略は、ウイルスのプロモーター及び/又はウイルスのコード配列に広がるウイルス遺伝子のセグメントを取り除くことによって、生産的なウイルスの複製に先立ってウイルスの複製を永久に除去する。さらに、この戦略は、細胞内での不要で持続的なCas9の高レベルな発現によって生じるかもしれない予見できない複雑な状態に起因する何らかの懸念を多少なりとも解決する。
材料及び方法
プラスミドの調製。全長及び切断型のLTRプロモーター配列が、鋳型としてのpNL4-3 HIVベクター(NIH AIDS Reagent Program #114)及び表1に記載されたプライマー(配列番号:1−4)を用いてPCRにより取得された。PCR産物がゲル精製され、TAベクター(Invitrogen)に直接サブクローニングされ、Kpn1又はXba1及びNco1制限酵素で切除され、Kpn1-Nco1又はXba1-Nco1消化されたpX260-U6-DR-BB-DR-Cbh-NLS-hSpCas9-NLS-H1-shorttracr-PGK-puroプラスミド(Addgene #42229)に連結された。結果的に、pX260プラスミドの元のCbhプロモーター(Xba1-Kpn1-Cbh-Nco1)が取り除かれ、LTRプロモーター(Xba1-又はKpn1-LTR-Nco1)のうちの一つで置き換えられた。レンチウイルスLTR-Cas9構築物の作製のために、レンチCas9-Blast(Addgene #52962)がNhe1/Xba1で処理され、結果的に、EFSプロモーター配列が取り除かれ、PCR産物を消化したNhe1-LTR-80/+66-Xba1によって置換され、Lenti-LTR-80/+66 -Cas9-Blastプラスミドが作製された(表1、配列番号:5、6)。pKLV-U6-LTR A/B-PGKpuro2ABFPレンチウイルスプラスミドは、以前に記載された(Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))。pcDNA3.1対照ベクターはInvitrogenから購入され、pCMV-Tat86は以前に記載されている(Gallia, G.L., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 11572-11577 (1999))。pKLV-U6-LTR A/B-PGKpuro2ABFPは、pMDLg/pRRE(Addgene 12251)、pRSV-Rev(Addgene 12253)及びpCMV-VSV-G(Addgene 8454)を用いて、HEK293T細胞を同時トランスフェクションすることによりレトロウイルス粒子にパッケージされた。レンチウイルス粒子にCas9をパッケージングするために、以下のベクター、Lenti-LTR-80/+66 -Cas9-Blast、psPAX2(Addgene 12260)及びpCMV-VSV-G(Addgene 8454)が使用された。
プラスミドの調製。全長及び切断型のLTRプロモーター配列が、鋳型としてのpNL4-3 HIVベクター(NIH AIDS Reagent Program #114)及び表1に記載されたプライマー(配列番号:1−4)を用いてPCRにより取得された。PCR産物がゲル精製され、TAベクター(Invitrogen)に直接サブクローニングされ、Kpn1又はXba1及びNco1制限酵素で切除され、Kpn1-Nco1又はXba1-Nco1消化されたpX260-U6-DR-BB-DR-Cbh-NLS-hSpCas9-NLS-H1-shorttracr-PGK-puroプラスミド(Addgene #42229)に連結された。結果的に、pX260プラスミドの元のCbhプロモーター(Xba1-Kpn1-Cbh-Nco1)が取り除かれ、LTRプロモーター(Xba1-又はKpn1-LTR-Nco1)のうちの一つで置き換えられた。レンチウイルスLTR-Cas9構築物の作製のために、レンチCas9-Blast(Addgene #52962)がNhe1/Xba1で処理され、結果的に、EFSプロモーター配列が取り除かれ、PCR産物を消化したNhe1-LTR-80/+66-Xba1によって置換され、Lenti-LTR-80/+66 -Cas9-Blastプラスミドが作製された(表1、配列番号:5、6)。pKLV-U6-LTR A/B-PGKpuro2ABFPレンチウイルスプラスミドは、以前に記載された(Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))。pcDNA3.1対照ベクターはInvitrogenから購入され、pCMV-Tat86は以前に記載されている(Gallia, G.L., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 11572-11577 (1999))。pKLV-U6-LTR A/B-PGKpuro2ABFPは、pMDLg/pRRE(Addgene 12251)、pRSV-Rev(Addgene 12253)及びpCMV-VSV-G(Addgene 8454)を用いて、HEK293T細胞を同時トランスフェクションすることによりレトロウイルス粒子にパッケージされた。レンチウイルス粒子にCas9をパッケージングするために、以下のベクター、Lenti-LTR-80/+66 -Cas9-Blast、psPAX2(Addgene 12260)及びpCMV-VSV-G(Addgene 8454)が使用された。
細胞の培養。TZM-blレポーター細胞株を、国立衛生研究所(NIH)の国立アレルギー・感染症研究所AIDS部門のNIH AIDS Reagent Programから入手した。Jurkat, Clone E6-1及びU937を、ATCC(TIB-152TM及びCRL1593.2TM)から購入した。Jurkat 2D10レポーター細胞株は、以前に記載されている(Pearson, R., et al. J. Viral. 82: 12291-12303 (2008))。TZM-bl細胞を、10%FBS及びゲンタマイシン(10μg/ml)を加えた高グルコースDMEMで培養した。Jurkat細胞及びJurkat 2D10細胞を、10%FBS及びゲンタマイシン(10μg/ml)を含むRPMI培地で培養した。ヒトの星状膠細胞及び小膠細胞の初代培養を、フィラデルフィアにあるテンプル大学のLewis Katz School of MedicineのDepartment of NeuroscienceのComprehensive NeuroAIDS Center (CNAC)のTissue Culture Core facilityから入手した。
安定な細胞株及びサブクローニング。TZM-bl細胞が、1×105 cells/wellで6 wellプレートに入れられ、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いて1μgのpX260-LTR(-80/+66)-Cas9プラスミドでトランスフェクトされた。翌日、細胞が100-mmディッシュに移され、濃度1μg/mlのピューロマイシン(Sigma)存在下で培養された。2週間後、生存しているクローンがクローニングシリンダー(Corning)を用いて単離された。200万個のJurkat 2D10細胞が、10μgのpX260-LTR(-80/+66)-Cas9プラスミドでエレクトロポレーションされた(Neon System, Invitrogen,3回 10ms/1350Vインパルス)。48時間後、培地が0.5μg/mlのピューロマイシンを含む培地で置換された。1週間後、選択用のピューロマイシンが除去され、細胞がさらに1週間生育された。次に、細胞が、10 cells/mlの濃度に希釈され96-wellプレートに50μl/wellで入れられ、2週間培養された。TZM-bl pX260-LTR(-80/+66)-Cas9及びJurkat 2D10 pX260-LTR(-80/+66)-Cas9の両者の単一細胞クローンが、対照の空のpCMVプラスミド(pcDNA3.1)又はpCMV-Tatプラスミドを用いたトランスフェクション後のCas9-FLAG発現について、ウエスタンブロットによって選択された。コントロール条件下ではCas9が検出できない/非常に低いレベルであり、Tatの過剰発現下ではCas9が非常に高いレベルである単一細胞クローンが増やされ、更なる実験に使用された。
レンチウイルスのパッケージング。HEK 293T細胞が、クロロキン(50μM)の存在下でCaPO4沈殿法を用いて、パッケージングレンチウイルスベクター混合物を30μg全DNA/2.5×106 cells/100 mmディッシュの濃度で同時トランスフェクションされた。翌日、培地が置換され、24時間及び48時間後に上清が回収され、10分間3000 RPMで清澄化され、0.45μmフィルターで濾過され、(2時間、25000 RPMI、20%ショ糖クッションを用いた)超遠心分離法で濃縮された。レンチウイルスの沈殿物は、一晩穏やかな攪拌によりHBSSに再懸濁され、一定量に分けられ、HEK 293T細胞で力価が測定された。Lenti-LTR(-80/+66) Cas9-Blastレンチウイルスは、FLAG免疫細胞化学によって力価が測定され、pKLV-U6-LTR A/B-PGKpuro2ABFPレンチウイルスは、BFP蛍光顕微鏡法で力価が測定された。
ウイルスのストック。HIV-1NL4-3-EFGP-p2A-Nefを作製するために、融合PCR(Heckman, K.L., et al. Nat. Protoc. 2, 924-932 (2007))が、EGFP遺伝子、P2A自己切断型ペプチド(Kim, J.H., et al. PLoS One 6, e18556 (2011))、及び本来のHIV-1 Nefが発現するためのHIVスプライスアクセプターとインフレームであるHIV-1 NefのN末端を増幅するために使用された。その後、DNAは、HIV-1プロウイルスクローンであるpNL4-3(Adachi, A., et al. J. Viral. 59, 284-291 (1986))のBamHI及びXhoII制限酵素部位にクローン化された。GFPとNefの間に存在する、ブタテッショウウイルス−1由来の自己切断型P2Aペプチドが、全長でのHIV-1 Nefの発現を可能にした(Edmonds, T.G., et al. PBMC. Virology 408, 1-13 (2010))。以前に発表された遺伝子操作戦略に続いて(Potash, M.J., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 3760-3765 (2005))、pEcoHIV-NL4-3-EGFPを作製するために、HIV-1NL4-3のgp120のコード領域が、pHCMV-EcoEnvからPCR増幅された、エコトロピックマウス白血病由来のgp80で置換された(Sena-Esteves, M., et al. J. Viral. Methods 122, 131-139 2004、Addgene plasmid 15802)。
HIV-1NL4-3-EGFP-P2A-Nefレポーターウイルスを、pNL4-3-EGFP-P2A-Nefプラスミド(ピッツバーグ大学医学部)でHEK 293T細胞をトランスフェクトすることによって調製し、レンチウイルスストックのように(上記を参照)処理して、Jurkat細胞株でのGFP-FACSによって力価を測定した。使用されたHIV-1 JRFL及びSF162の粗ストックは、6日間HIV-1で感染されたPBMCsの上清から調製され、10分間3000 RPMで清澄化され、0.45μmフィルターで濾過された。ウイルスは、Gag p24 ELISAを用いて力価が測定された。
HIV-1NL4-3-EGFP-P2A-Nefレポーターウイルスを、pNL4-3-EGFP-P2A-Nefプラスミド(ピッツバーグ大学医学部)でHEK 293T細胞をトランスフェクトすることによって調製し、レンチウイルスストックのように(上記を参照)処理して、Jurkat細胞株でのGFP-FACSによって力価を測定した。使用されたHIV-1 JRFL及びSF162の粗ストックは、6日間HIV-1で感染されたPBMCsの上清から調製され、10分間3000 RPMで清澄化され、0.45μmフィルターで濾過された。ウイルスは、Gag p24 ELISAを用いて力価が測定された。
インビトロでのHIV-1の感染。Jurkat細胞及びU937細胞が、8μg/mlのポリブレンを含む500μlの接種材料中で2時間2700 RPMでのspinoculation法によって感染され、次に再懸濁され、4時間放置され、その後500μlの成長培地が添加された。翌日、細胞がPBSで3回洗浄され、成長培地に再懸濁された。星状膠細胞及び小膠細胞の感染のために、初代ヒト胎児脳細胞が、ポリブレン(8μg/ml)の存在下にOpti-MEM培地で希釈されたウイルスストックと共に4時間インキュベートされ、次いで1 mlの成長培地が添加されて一晩インキュベートされることにより、形質導入/感染された。翌日、細胞はPBSで3回洗浄され、新たな成長培地が添加された。
HIV-1 DNAの検出及び定量化。ゲノムDNAが、NUCLEOSPIN Tissue kit(Macherey-Nagel Inc. Bethlehem, PA)を用いて製造者のプロトコールに従って細胞から分離された。LTR特異的なPCRのために(表1を参照、配列番号:7−14、βアクチンのフォワード(F)及びリバース(R)はそれぞれ配列番号:15、16)、100 ngの抽出されたDNAが、FAILSAFETM PCR kit及びbuffer D(Epicentre Technologies Corp., Madison, WI)を用いて、以下のPCR条件でPCRに供された。98℃5分間、30サイクル(98℃30秒間、55℃30秒間、72℃30秒間)、72℃7分間、及び2%アガロースゲルで分離。PCR産物はアガロースゲル電気泳動に供され、ゲル精製され、TAベクター(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)にクローン化され、サンガー法による塩基配列決定のために送付された(GENEWIZ Global, South Plainfield, NJ)。HIV-1 DNAは、参照として細胞のベータ−グロビン遺伝子とHIV-1の5'-UTR及びEnv遺伝子に特異的なTAQMANTM qPCRを使用して定量化された(表1、配列番号:17−25)。qPCRに先立ち、感染細胞からのゲノムDNAが10 ng/μlに希釈され、次に5μl(=50 ng)が各ウェルの反応につき必要とされた。反応混合物が、Platinum TAQ DNA Polymerase(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を用い簡易化された手順(Liszewski, M.K., et al. Methods 47, 254-260 (2009))に従って調製された。U1細胞ゲノムDNAは、二倍体ゲノム当たりHIV-1プロウイルスの単独コピーを、ベータ−グロビン遺伝子のコピー数と等しく2つ含んでいるので、標準物質がU1細胞ゲノムDNAの一連の希釈物から調製された。qPCRの条件は、以下のとおりである。98℃5分間、45サイクル(98℃15秒間、採取を伴う62℃30秒間、72℃1分間)。反応が実施され、データがLIGHTCYCLER480TM(Roche Holding AG, Basel, Switzerland)で解析された。
逆転写及びPCR。全RNAが、カラム上でのDNAse I消化を伴うRNEASY kit(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して、細胞から抽出された。次に、1μgのRNAが、M-MLV逆転写反応(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)に用いられた。cDNAが希釈され、参照として細胞のベータ−アクチン遺伝子とHIV-1のGag及びEnv遺伝子に特異的なTAQMANTM qPCRを使用して(表1、配列番号:17−25)、相対定量で解析したことを除きゲノムDNAと同様のプロトコールで定量化された。
フローサイトメトリー。Jurkat 2D10細胞でのGFPの発現が、GUAVA EASYCYTE Mini flow cytometer(Guava Technologies, Inc., Billerica, MA)を用いて生細胞で定量化された。HIV-1NL4-3-GFP-P2A-Nefが感染したJurkat細胞が先ず2%パラホルムアルデヒドで10分間固定され、次にPBSで3回洗浄された。細胞の生存率は、ヨウ化プロピジウム染色を使用して評価された。200μlの生細胞懸濁液に、PI溶液が最終濃度10μg/mlとなるように添加された。試料が暗所で室温にて5分間インキュベートされた。インキュベーション後、試料がGUAVA EASYCYTE Mini flow cytometerを用いて得られた。
ウエスタンブロット。全細胞溶解液が、Jurkat細胞を、氷上で30分間、TNN緩衝液[50 mM Tris pH 7.4, 150 mM NaCl, 1%Nonidet P-40, 5 mM EDTA pH8, 1×哺乳動物細胞に対するプロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma)]でインキュベーションすることで調製され、その後4℃で10分間、最高速度での回転により前清澄化された。50μgの溶解液が、1×Laemli緩衝液で変性され、Tris-グリシン緩衝液中でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離され、ニトロセルロース膜(Bio-Rad Laboratories Inc., Hercules, CA)上に転写された。膜が、5%ミルク/PBSTで1時間ブロッキングされ、その後マウス抗flag M2モノクローナル抗体(1:1000、Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)又はマウス抗α-チューブリンモノクローナル抗体(1:2000)でインキュベートされた。PBSTで洗浄後、膜が室温で1時間、結合型ヤギ抗マウス抗体(1:10,000)でインキュベートされた。膜が、Odyssey Infrared Imaging System(LI-COR Biosciences, Lincoln, NE)を用いてスキャンされ分析された。
結果
Tatへの反応性を残すがHIV-1 DNAを編集するために最初に使用されるgRNAs A及びBに対応する配列を欠くウイルスプロモーターの最小限のDNA要素を同定するために、5’-LTRのU3からR領域に広がるHIV-1プロモーターの3つの異なるセグメントを含むpX260発現ベクター中に、Cas9遺伝子に対応するDNAコード配列が置かれた(図1A)。それぞれの構築物のDNAを配列決定することによってこのクローニング戦略を検証した後、それぞれのベクターによるCas9の発現とベクターのTatへの応答性のレベルが、pX260又はpX260-LTR-Cas9とCMV-Tatとを同時トランスフェクトされたTZM-bl細胞で試験された。ウエスタンブロットからの結果は、-80から+66の間に位置する最小限のDNAプロモーター配列を包含するプラスミドを含む3つの構築物の全てでCas9発現の活性化を示した(図1B)。プロモーター配列がgRNAs A及びBに対応するDNA配列の外側に存在するので、この結果は本研究にとって特に重要であった(図1B)。次に、Tatタンパク質が、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現する組み込まれたHIV-1 DNAのコピーの編集に与える影響を評価するために、LTR(-80/+66)-Cas9に対応するDNAフラグメントがレンチウイルスベクター(LV)にクローン化され、TZM-bl細胞への形質導入に使用された。LTRのPCR増幅からの結果は、gRNAs A及びB並びにTatタンパク質を発現する細胞で205 bpのDNAフラグメントの検出を明らかにした(図1C、レーン1−5とレーン6−8との比較)。PCR増幅に用いられたプライマーの位置と期待されるアンプリコンが図1Aに図示される(同様に図7を参照)。Cas9、Tat及びα-チューブリン(同量のロードのための対照)の発現は図1Dに示される。
Tatへの反応性を残すがHIV-1 DNAを編集するために最初に使用されるgRNAs A及びBに対応する配列を欠くウイルスプロモーターの最小限のDNA要素を同定するために、5’-LTRのU3からR領域に広がるHIV-1プロモーターの3つの異なるセグメントを含むpX260発現ベクター中に、Cas9遺伝子に対応するDNAコード配列が置かれた(図1A)。それぞれの構築物のDNAを配列決定することによってこのクローニング戦略を検証した後、それぞれのベクターによるCas9の発現とベクターのTatへの応答性のレベルが、pX260又はpX260-LTR-Cas9とCMV-Tatとを同時トランスフェクトされたTZM-bl細胞で試験された。ウエスタンブロットからの結果は、-80から+66の間に位置する最小限のDNAプロモーター配列を包含するプラスミドを含む3つの構築物の全てでCas9発現の活性化を示した(図1B)。プロモーター配列がgRNAs A及びBに対応するDNA配列の外側に存在するので、この結果は本研究にとって特に重要であった(図1B)。次に、Tatタンパク質が、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現する組み込まれたHIV-1 DNAのコピーの編集に与える影響を評価するために、LTR(-80/+66)-Cas9に対応するDNAフラグメントがレンチウイルスベクター(LV)にクローン化され、TZM-bl細胞への形質導入に使用された。LTRのPCR増幅からの結果は、gRNAs A及びB並びにTatタンパク質を発現する細胞で205 bpのDNAフラグメントの検出を明らかにした(図1C、レーン1−5とレーン6−8との比較)。PCR増幅に用いられたプライマーの位置と期待されるアンプリコンが図1Aに図示される(同様に図7を参照)。Cas9、Tat及びα-チューブリン(同量のロードのための対照)の発現は図1Dに示される。
次に、ルシフェラーゼアッセイにより、ウイルスDNAの切除がウイルスのプロモーター活性に与える影響について試験された。結果は、TatによるCas9の活性化に応じてルシフェラーゼ活性が徐々に減少することを示し、DNAアッセイからの結果を裏付け、DNAの切断がこれらの細胞でウイルスのプロモーター活性の阻害を引き起こすことを示唆した(図1E)。追加の研究では、HIV-1によるTZM-bl細胞の感染でCas9が活性化することが詳細に調べられた。この目的を達成するために、LTR(-84/+66)-Cas9レポーターTZM-bl細胞が、LV-gRNAs A/Bによって24時間形質導入され、その後に細胞が3つの異なるMOIでHIV-1JRFL又はHIV-1SF162により感染された。48時間後、細胞は、PCRによるDNA切除の評価、ルシフェラーゼアッセイによる組み込まれたプロモーター配列の発現の評価、及びウエスタンブロットによるCas9の発現の評価のために採取された。これらの実験の結果は、HIV-1JRFL又はHIV-1SF162により感染された細胞で切断後の205 bpのDNAフラグメントが検出されたことを明らかにし、これらの細胞でHIV-1JRFL又はHIV-1SF162によるTatの産生がLTR(-80/+66)プロモーター及びCas9の産生をトランス活性化したことを示唆した(図2A)。さらに、ルシフェラーゼアッセイからの結果は、細胞内でのルシフェラーゼ活性の顕著な減少を明らかにし、HIV-1JRFL又はHIV-1SF162による感染で産生されたTatによってCas9が活性化し、組み込まれたHIV-1ルシフェラーゼ遺伝子の活動を停止させる点で有効性があることが、この実験でも再び実証された。感染された細胞でのCas9の誘導は図2Bに示される。ウエスタンブロットからの結果は、HIV-1JRFL又はHIV-1SF162での細胞の感染により、切断型のLTRプロモーターであるLTR(-80/+66)が活性化し、細胞でのCas9タンパク質の産生がもたらされたことを明らかにした(図2C)。
追加の実験では、gRNAs A/Bを伴う、Tatが媒介するLTR-Cas9の活性化の能力が、ヒトTリンパ球細胞株2D10で(Pearson, R., et al. J. Viral. 82: 12291-12303 (2008))、HIV-1ゲノムを排除することに関して試験された。2D10細胞は、Gag及びPol遺伝子の一部をそのゲノムから欠失し、Nef遺伝子がレポーター緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子によって置換されている、再感染しない(single round)HIV-1NL4-3の組み込まれたコピーを潜伏状態で有している。2D10細胞中でのTatタンパク質の増強されたレベル及びCas9の活性化(図3Aに示される)は、LV-gRNAs A/Bを形質導入された細胞でのCas9の活性化によるウイルスLTRの編集を引き起こした(図3B、同様に図8のレーン1−8を参照)。したがって、GFP陽性細胞の数の顕著な減少は、Tat存在下で検出され(図3C)、このことは、Tatの活性化が、ウイルスDNAの発現に関して切断されたプロモーターの能力を失わせ、それにより、GFP陽性細胞でのGFPの抑制を引き起こしたことを示唆した。gRNAs、DNAフラグメントの切除及びPCRプライマーの位置に対応するDNA配列は、図9A−9C、配列番号:26−40に示される。Cas9の発現及びウイルスDNA切除の基底レベルは、潜伏状態の2D10細胞株における、構成的ではあるが最低ではないTatの発現に起因すると考えることができる。
2D10細胞に組み込まれたプロウイルスDNAのコピーを刺激するPMA及び/又はTSAの能力を示唆する以前の観察結果(Pearson, R., et al. J. Viral. 82: 12291-12303 (2008))を考慮して、PMA及びTSAの影響が、潜伏感染したT細胞モデルでのCas9の活性化について評価された。図4Aから明らかなように、PMA及びTSAの単独又は組合せで2D10細胞を処理すると、Cas9の発現レベルが増加した。平行した実験では、PCR分析がLTR DNAを検出するために実施され、205 bp DNAフラグメントの出現によって証明されるように(図8のレーン9−14を参照)、ウイルスDNAの切除レベルが明らかに増加することを示した(図4B)。ウエスタンブロットを用いた細胞のGFPレベルの測定又はウイルス活性化の指標となる緑色蛍光細胞の蛍光顕微鏡での定量化(図4C)によるウイルス活性化の試験は、ウイルスの遺伝子発現のレベルの劇的な減少を示した。このように、サイレントなプロウイルスDNAの再活性化で発現するTat又はPMA及びTSAにより発現するTatの何れかによる、最小限のウイルスプロモーター(-80/+66)の活性化に基づくCas9の産生は、gRNAs A及びBを含む細胞において組み込まれたウイルスDNAのコピーの編集を引き起こし潜伏するウイルスゲノムの発現に負の効果を発揮する。
次の一連の実験では、LTR-Cas9を含むJurkatT細胞のHIV-1複製レベルが試験された。細胞は、gRNAs A及びBとLTR-88/+60-Cas9を発現するレンチウイルスベクター(LV)で形質導入された。24時間後、形質転換された細胞が、HIV-1NL4-3-EGFP-P2A-Nefで感染され、3及び5日後、細胞が採取され、ウイルスDNAがgRNA A及びB標的配列に広がる190 bp DNAフラグメントの切除について試験された。図5A及び5Bに示されるように、HIV-1による細胞の感染は、感染から3日で205 bpのアンプリコンの出現をもたらし、5日の時点でその強度が増加した(図5A及びB)。この観察は、図3A−3Cに示される結果と同様に、HIV-1感染の経過中でのTatのレベルの増加がLTR-Cas9の発現を刺激し、それによりLTR DNAが切断されることの証拠を提供する。5日目にみられる205 bpのバンドを直接配列決定したところ、5’及び3’融合部位の結合で検出される種々の挿入欠損(InDel)変異を引き起こす、Cas9/gRNA A及びCas9/gRNA BによるLTR内の切断部位が明らかとなった(図5C)。5-UTR(nt +97から+235)及びエンベロープ(env)遺伝子(nt +5828から+5977)は何れも5’ LTR及び3’ LTRの間に位置するが、それぞれの領域に対応するウイルスDNAのセグメントの試験は、3日目と比較して5日目に、5’-UTRに対応する139 bpアンプリコン及びenv遺伝子に対応する150 bpアンプリコンの強度の実質的な減少を示した(図5D)。これらの観察は、(5’ LTRでの)Cas9/gRNA Aによる切断及び(3’ LTRでの)Cas9/gRNA Bによる切断によって5’ LTR及び3’ LTRの間に広がるHIV-1ゲノムのより大きなDNAフラグメントの切除も、Cas9並びにgRNAs A及びBでの細胞の処理によって生じ得ることの証拠を提供するが、この現象は以前にも報告されている(Hu, W., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 11461-11466 (2014)、Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))。ウイルス遺伝子の活性化の指標であるレポーターGFPの発現を示すフローサイトメトリーからの結果の定量的な分析は、3日目のGFP陽性細胞の実質的な阻害(64%)及び5日目(84%)、8日目(88%)の更なる阻害を明らかにする。gRNAs及びマーカーBFPをコードする遺伝子を有するレンチウイルスの存在、及び細胞におけるGFPの発現は、蛍光顕微鏡法によってモニターされ、細胞培養物の性質は位相差顕微鏡法で試験された(図10A)。定量的な分析によると細胞の総数には変化がなく、このことは、以前の観察と同様に(Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))、この切除戦略に関連する毒性がないことを示唆した。(図5Dに示される)PCRゲル分析からの結果と一致して、qPCR及びqRT-PCTからの結果は、Gag遺伝子に対応するウイルスDNAのコピー数レベルの顕著な減少、すなわち感染後3日目に55%、5日目に84%、及びGag RNAレベルの顕著な減少、すなわち感染後3日目に91%、5日目に96%を示した(図5F及び5G)。ヒト小膠細胞及び星状膠細胞の初代培養における、同様の一連の研究も実施された。これらの研究からの結果は、(図11A−11Cに示されるように)LTR-Cas9及びgRNAsを発現するLVsで形質導入されたHIV-1感染細胞において、ウイルスの遺伝子発現とウイルスDNAの存在が顕著に抑制されたことを示した。要するに、これらの観察は、Tatを含むウイルスタンパク質を採用することによる新規な自己調節現象の使用が、ウイルスゲノムを切除してウイルスの複製を永久に抑制するCRISPR/Cas9を用いた編集戦略を始動させるという証拠を提供する。
考察
1985年に発見されて以来(Arya, S.K., et al. Science 229: 69-73 (1985)、Sodroski, J., et al. Science 227, 171-173 (1985))、HIV-1のTatトランス活性化因子タンパク質は、転写レベルでのウイルスゲノムの発現に果たす役割と非感染細胞に及ぼす病原性の影響により、非常に重要な制御タンパク質であることが示されてきた。メカニズムによると、Tatは転写開始部位の下流に位置するRNA配列(ヌクレオチド+1から+59)、いわゆる転写応答性領域すなわちTARと結合する。TatのTARへの結合は、転写開始部位(ヌクレオチド+1)に近接したところで転写開始前及び開始複合体の形成をもたらす一連の分子的な及び生化学的な現象の引き金となる。この複合体は、pTEF及びRNAポリメラーゼIIを含む複合体の構成部品をリン酸化又はアセチル化する能力を有する一連の細胞タンパク質を含んでいて、RNAの転写伸長を促進する(総説としてMbonye, U., et al. Virology 454-455, 328-339 (2014)、Taube. R., et al. Viruses 5, 902-927 (2013)を参照)。さらに、Tatと、NF-κB(Taylor, J.P., Khalili, K. Adv. Neuroimmunol. 4, 291-303 (1994))、p300/CBP及びGCN5(Calm E., et al. J. Biol. Chem. 276, 28179-28184 (2001)、Kiernan, R.E., et al. EMBO J. 18, 6106-6118 (1999)、Ott, M., et al. Curr. Biol. 9, 1489-1492 (1999))を含む種々の転写因子との相互作用は、HIV-1陽性AIDS患者にみられる疾患スペクトラムの一因となる全ての他のウイルス遺伝子及び細胞遺伝子の転写に影響を及ぼすことができる(Gibellini, D., et al. New Microbial. 28, 95-109 (2005))。また、Tatは、ひとたび再活性化されたウイルスプロモーターからの転写が初回のウイルスの転写とTatの産生をもたらすと、ウイルスリザーバーで潜伏しているウイルスの生産的な複製に重要な役割も果たす。HIV-1複製とAIDSの発症機序におけるTat独自の重要性は、ワクチンの開発のみならず薬剤の発見に対する潜在的なターゲットとなるための強い論理的根拠を提供する。現実に、いくつかの強力な阻害剤、あるものはTat-TAR相互作用を妨げる能力を有し、またあるものはTatとその細胞内パートナーとのコミュニケーションを阻止するが、それらは、HIV-1複製へ作用するときにさまざまな程度で有効性を示した(Tabarrini. O., et al. Future Med Chem 8, 421-442 (2016))。本研究で利用した戦略は、Cas9の発現を刺激し、ウイルスゲノムのセグメントの切除を促進し、生産的な又は潜伏しているHIV-1を有する細胞でのHIV-1遺伝子の転写と複製を永久に除去するために、Tatを採用することである。ここで、HIV-1の自殺経路は、Tatによって誘発され、CRISPR/Cas9技術を用いたウイルスのゲノム編集を含むように設計された(図6に図示される)。この経路によると、細胞でのTatの産生は、全長の5’-LTR配列で自身のプロモーターを刺激することに加えて、GCリッチ、TATAボックス及びTAR(-80から+66)領域に広がる切断型の最小限プロモーター配列によって同じメカニズムを介して、Cas9の発現を増強する。Cas9の産生、及びCas9と(-80から+66)の外側のLTR DNA配列を標的とするように設計されたgRNAsとの結合は、遺伝子セグメントを切除し、全長のウイルスプロモーター内に挿入欠損(InDel)変異を誘導して、細胞でHIV-1を永久に根絶することができる。全長のLTR配列を表す期待される417 bp DNAフラグメントに加えて、LTR DNAの短い範囲の増幅による結果は、Tat発現細胞のみで見出されるサイズが227 bpの第2のDNAフラグメントを示した。この227 bp DNAフラグメントは、5’-LTR又は3’-LTRの何れかでのCas9/gRNA Aによる切断後、残余の5’-LTRを残っている3’-LTRに結合することによって生じた。Cas9/gRNAによる切断後の5’-LTRに由来する残りのDNAフラグメントを3’-LTRに由来する残りのDNAフラグメントと連結させることは、遺伝子増幅のための新たな鋳型を作り出し、以前に報告されているような(Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))同様のサイズ(227 bp)のアンプリコンを出現させるようである。
1985年に発見されて以来(Arya, S.K., et al. Science 229: 69-73 (1985)、Sodroski, J., et al. Science 227, 171-173 (1985))、HIV-1のTatトランス活性化因子タンパク質は、転写レベルでのウイルスゲノムの発現に果たす役割と非感染細胞に及ぼす病原性の影響により、非常に重要な制御タンパク質であることが示されてきた。メカニズムによると、Tatは転写開始部位の下流に位置するRNA配列(ヌクレオチド+1から+59)、いわゆる転写応答性領域すなわちTARと結合する。TatのTARへの結合は、転写開始部位(ヌクレオチド+1)に近接したところで転写開始前及び開始複合体の形成をもたらす一連の分子的な及び生化学的な現象の引き金となる。この複合体は、pTEF及びRNAポリメラーゼIIを含む複合体の構成部品をリン酸化又はアセチル化する能力を有する一連の細胞タンパク質を含んでいて、RNAの転写伸長を促進する(総説としてMbonye, U., et al. Virology 454-455, 328-339 (2014)、Taube. R., et al. Viruses 5, 902-927 (2013)を参照)。さらに、Tatと、NF-κB(Taylor, J.P., Khalili, K. Adv. Neuroimmunol. 4, 291-303 (1994))、p300/CBP及びGCN5(Calm E., et al. J. Biol. Chem. 276, 28179-28184 (2001)、Kiernan, R.E., et al. EMBO J. 18, 6106-6118 (1999)、Ott, M., et al. Curr. Biol. 9, 1489-1492 (1999))を含む種々の転写因子との相互作用は、HIV-1陽性AIDS患者にみられる疾患スペクトラムの一因となる全ての他のウイルス遺伝子及び細胞遺伝子の転写に影響を及ぼすことができる(Gibellini, D., et al. New Microbial. 28, 95-109 (2005))。また、Tatは、ひとたび再活性化されたウイルスプロモーターからの転写が初回のウイルスの転写とTatの産生をもたらすと、ウイルスリザーバーで潜伏しているウイルスの生産的な複製に重要な役割も果たす。HIV-1複製とAIDSの発症機序におけるTat独自の重要性は、ワクチンの開発のみならず薬剤の発見に対する潜在的なターゲットとなるための強い論理的根拠を提供する。現実に、いくつかの強力な阻害剤、あるものはTat-TAR相互作用を妨げる能力を有し、またあるものはTatとその細胞内パートナーとのコミュニケーションを阻止するが、それらは、HIV-1複製へ作用するときにさまざまな程度で有効性を示した(Tabarrini. O., et al. Future Med Chem 8, 421-442 (2016))。本研究で利用した戦略は、Cas9の発現を刺激し、ウイルスゲノムのセグメントの切除を促進し、生産的な又は潜伏しているHIV-1を有する細胞でのHIV-1遺伝子の転写と複製を永久に除去するために、Tatを採用することである。ここで、HIV-1の自殺経路は、Tatによって誘発され、CRISPR/Cas9技術を用いたウイルスのゲノム編集を含むように設計された(図6に図示される)。この経路によると、細胞でのTatの産生は、全長の5’-LTR配列で自身のプロモーターを刺激することに加えて、GCリッチ、TATAボックス及びTAR(-80から+66)領域に広がる切断型の最小限プロモーター配列によって同じメカニズムを介して、Cas9の発現を増強する。Cas9の産生、及びCas9と(-80から+66)の外側のLTR DNA配列を標的とするように設計されたgRNAsとの結合は、遺伝子セグメントを切除し、全長のウイルスプロモーター内に挿入欠損(InDel)変異を誘導して、細胞でHIV-1を永久に根絶することができる。全長のLTR配列を表す期待される417 bp DNAフラグメントに加えて、LTR DNAの短い範囲の増幅による結果は、Tat発現細胞のみで見出されるサイズが227 bpの第2のDNAフラグメントを示した。この227 bp DNAフラグメントは、5’-LTR又は3’-LTRの何れかでのCas9/gRNA Aによる切断後、残余の5’-LTRを残っている3’-LTRに結合することによって生じた。Cas9/gRNAによる切断後の5’-LTRに由来する残りのDNAフラグメントを3’-LTRに由来する残りのDNAフラグメントと連結させることは、遺伝子増幅のための新たな鋳型を作り出し、以前に報告されているような(Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016))同様のサイズ(227 bp)のアンプリコンを出現させるようである。
CRISPR/Cas9遺伝子編集戦略は、正確かつ高い効率でゲノムを編集できるという類い希なる能力と、実施が容易であり適用性があることから、近年の生物医学研究で注目を集めている。しかしながら、周到な注意を要求するいくつかの領域がある。例えば、最も特異的で効果的なgRNAsを設計することは、オフターゲット効果を避けるために重要である。本明細書で開発された戦略は、特異性を最大化しオフターゲット編集を避けるために採用され、ゲノム全体の非常に深く読んだ配列決定(ultra-deep sequencing)、及び記載されているようなさまざまな他の試験(Hu, W., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 11461-11466 (2014)、Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6:22555 (2016))によって検証された。単一のRNAでの細胞の処理は、切断部位での正確でないNHEJ修復の結果として突然変異体HIV-1の出現を引き起こすかもしれず、最初に用いた単一のgRNAに耐性となる突然変異体ウイルスの発生を引き起こす可能性があり得る(Wang, G., et al. Mol. Ther. 24, 522-526 (2016a)、Wang, Z., et al. Cell Rep. 15,481-489 (2016b))。多重のgRNAsを採用すると、HIV-1ゲノムの各所に多重の二本鎖の切れ目が導入されることで宿主ゲノムからより大きなウイルスDNAセグメントの切除が引き起こされるので、前記の懸念が多少なりとも解決され、複製可能なウイルスが発生する如何なる機会も永久に排除される(Khalili, K., et al. J. Neurovirol. 21, 310-321 (2015)、Hu, W., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 11461-11466 (2014)、Kaminski, R., et al. Sci. Rep. 6: 22555 (2016)、Ebina, H., et al. Sci. Rep. 3, 2510 (2013)、Liao, H.K., et al. Nature Comm. 6, 6413 (2015))。第二の問題は、長期間にわたり宿主ゲノムを非特異的に傷つける及び/又は免疫応答を誘導するかもしれないCas9タンパク質の発現が不必要に持続することを避けるために、Cas9の制御された発現に関する。HIV-1 Tatを用いたCasの条件付き発現に関する本明細書での戦略は、ウイルスの再活性化の初期段階で発現しHIV-1 DNAを切除するためのサイレントな遺伝子編集分子を刺激するための新規なアプローチを提供するだろう。
Claims (45)
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)プロモーター内にあり転写トランス活性化因子(Tat)に応答性の要素を含有してなるHIV LTRの最小限プロモーターに作動可能に結合された、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼをコードする単離された核酸配列、及び/又は
少なくとも1つのガイドRNAをコードする少なくとも1つの単離された核酸であって、該少なくとも1つのガイドRNAはHIVの中にある標的核酸配列に相補的である核酸、
を含有してなる、医薬組成物。 - ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、さらにコア配列を含有してなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−120の位置から約+66の位置までの核酸配列に少なくとも約75%の配列同一性を有する核酸配列を含有してなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−120の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の医薬組成物。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−80の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項1〜4の何れか一項に記載の医薬組成物。
- HIVの中にある標的核酸配列が、HIVのコード領域又は非コード領域内の配列を含有してなる、請求項1に記載の医薬組成物。
- 非コード領域が、HIVの末端反復配列又はHIVの末端反復配列内の配列を含有してなる、請求項6に記載の医薬組成物。
- HIVの末端反復配列内の配列が、HIV LTRの最小限プロモーターの何れかの配列を除く、U3、R又はU5領域内の配列を含有してなる、請求項7に記載の医薬組成物。
- さらに、HIVの複数の標的核酸配列に相補的である複数のガイドRNA核酸配列を含有してなる、請求項1〜8の何れか一項に記載の医薬組成物。
- CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼが、Cas9である、請求項1〜9の何れか一項に記載の医薬組成物。
- CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼが、ヒト細胞での発現に最適化されている、請求項1〜10の何れか一項に記載の医薬組成物。
- さらに、短鎖のトランス活性化型RNA(tracrRNA)をコードする配列を含有し、該tracrRNAがガイドRNAをコードする配列に融合されている、請求項1〜11の何れか一項に記載の医薬組成物。
- 単離された核酸配列が、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターを含有してなる発現ベクターに作動可能に結合される、請求項1〜12の何れか一項に記載の医薬組成物。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)プロモーター内にあり転写トランス活性化因子(Tat)に応答性の要素を含有してなるHIV LTRの最小限プロモーターに作動可能に結合された、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼをコードする配列を含有してなる、単離された核酸配列。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、さらにコア配列を含有してなる、請求項14に記載の単離された核酸配列。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−120の位置から約+66の位置までの核酸配列に少なくとも約75%の配列同一性を有する核酸配列を含有してなる、請求項15に記載の単離された核酸配列。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−120の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項15に記載の単離された核酸配列。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−80の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項15に記載の単離された核酸配列。
- CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼが、Cas9である、請求項14〜18の何れか一項に記載の単離された核酸配列。
- CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼが、ヒト細胞での発現に最適化されている、請求項14〜19の何れか一項に記載の単離された核酸配列。
- 単離された核酸配列が、発現ベクターに作動可能に結合され、該発現ベクターが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターを含有してなる、請求項14〜20の何れか一項に記載の単離された核酸配列。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)プロモーター内にあり転写トランス活性化因子(Tat)に応答性の要素を含有してなるHIV LTRの最小限プロモーターに作動可能に結合された、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼをコードする単離された核酸配列、及び/又は、少なくとも1つのガイドRNAをコードする少なくとも1つの単離された核酸であって、該少なくとも1つのガイドRNAはHIVの中にある標的核酸配列に相補的である核酸、を含有してなる組成物をHIVに感染している対象に投与することを含有してなる、HIVに感染している対象を治療するための方法。
- HIVの感染が、活動性感染又は潜伏感染である、請求項22に記載の方法。
- 医薬組成物が、局所的に又は非経口的に投与される、請求項22に記載の方法。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、さらにコア配列を含有してなる、請求項22に記載の方法。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−120の位置から約+66の位置までの核酸配列に少なくとも約75%の配列同一性を有する核酸配列を含有してなる、請求項22に記載の方法。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−120の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項22〜26の何れか一項に記載の方法。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−80の位置から約+66の位置までの核酸配列に少なくとも約75%の配列同一性を有する核酸配列を含有してなる、請求項22〜27の何れか一項に記載の方法。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−80の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項22〜28の何れか一項に記載の方法。
- CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼが、Cas9である、請求項22〜29の何れか一項に記載の方法。
- CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼが、ヒト細胞での発現に最適化されている、請求項22〜30の何れか一項に記載の方法。
- 発現ベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)プロモーター内にあり転写トランス活性化因子(Tat)に応答性の要素を含有してなるHIV LTRの最小限プロモーターに作動可能に結合された、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする単離された核酸配列、及び、少なくとも1つのガイドRNAをコードする少なくとも1つの単離された核酸であって、該少なくとも1つのガイドRNAはHIVゲノムの中にある標的核酸配列に相補的である核酸、を含有してなる、請求項22〜31の何れか一項に記載の方法。
- 第1の発現ベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)プロモーター内にあり転写トランス活性化因子(Tat)に応答性の要素を含有してなるHIV LTRの最小限プロモーターに作動可能に結合された、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼをコードする単離された核酸配列を含有してなり、第2の発現ベクターが、少なくとも1つのガイドRNAをコードする少なくとも1つの単離された核酸であって、該少なくとも1つのガイドRNAはHIVゲノムの中にある標的核酸配列に相補的である核酸、を含有してなる、請求項22〜32の何れか一項に記載の方法。
- 第1の発現ベクター及び第2の発現ベクターが、インビトロ又はインビボで宿主細胞において同時発現される、請求項33に記載の方法。
- 発現ベクターが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターを含有してなる、請求項32又は33に記載の方法。
- 1つの発現ベクターが複数のガイドRNAをコードする、及び/又は、複数の発現ベクターがそれぞれ1つ又はそれ以上のガイドRNAをコードする、請求項32又は33に記載の方法。
- さらに、1つ又はそれ以上のTat活性化因子、抗ウイルス剤又はそれらの組合せを投与することを含有してなる、請求項22〜37の何れか一項に記載の方法。
- 発現ベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)プロモーター内にあり転写トランス活性化因子(Tat)に応答性の要素を含有してなるHIV LTRの最小限プロモーターに作動可能に結合された、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼ、及び/又は、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であってプロウイルスDNAの中にある標的配列に相補的であるgRNA、をコードする少なくとも1つの単離された核酸配列を含有してなり、潜伏感染した宿主細胞のゲノムに組み込まれたHIVを根絶する、HIVがインビトロ又はインビボで潜伏感染した宿主細胞のゲノムに組み込まれたHIV核酸配列を根絶するための発現ベクター。
- gRNA核酸配列が、プロウイルスDNAの中にある第1の標的配列に相補的であるの第1のガイドgRNA及びプロウイルスDNAの中にある第2の標的配列に相補的である第2のガイドgRNAを少なくとも1つ含む、請求項38に記載の発現ベクター。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−80の位置から約+66の位置までの核酸配列に少なくとも約75%の配列同一性を有する核酸配列を含有してなる、請求項38に記載の発現ベクター。
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターが、約−80の位置から約+66の位置までの核酸配列を含有してなる、請求項38〜40の何れか一項に記載の発現ベクター。
- 最小限の機能的なウイルスプロモーターに作動可能に結合され、それにより最小限ウイルスプロモーターが最初期転写活性化因子の制御下にある、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼ(CRISPR/Cas)をコードする、単離された核酸配列。
- 最小限の機能的なウイルスプロモーターに作動可能に結合され、それにより最小限ウイルスプロモーターが最初期転写活性化因子の制御下にある、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)に関連したエンドヌクレアーゼ(CRISPR/Cas)をコードする、単離された核酸配列、及び/又は
ウイルスの中にある標的核酸配列に相補的である少なくとも1つのガイドRNAを含有してなる単離された核酸、
を含有してなる、組成物。 - さらに、最小限のウイルスプロモーターに作動可能に結合された、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼ(CRISPR/Cas)を含有してなる単離された核酸配列、及び、少なくとも1つのガイドRNAをコードする少なくとも1つの単離された核酸であって該少なくとも1つのガイドRNAはウイルスゲノムの中にある標的核酸配列に相補的である核酸、をコードする発現ベクターを含有してなる、42に記載の組成物。
- 第1の発現ベクターが、ウイルスHIVの末端反復配列(LTR)の最小限プロモーターに作動可能に結合された、CRISPRに関連したエンドヌクレアーゼを含有してなる単離された核酸配列を含有してなり、第2の発現ベクターが、少なくとも1つのガイドRNAをコードする少なくとも1つの単離された核酸であって該少なくとも1つのガイドRNAがウイルスゲノムの中にある標的核酸配列に相補的である核酸を含有してなる、請求項42に記載の組成物。
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