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JP2019163215A - 人工象牙質の作製方法 - Google Patents

人工象牙質の作製方法 Download PDF

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JP2019163215A JP2018051417A JP2018051417A JP2019163215A JP 2019163215 A JP2019163215 A JP 2019163215A JP 2018051417 A JP2018051417 A JP 2018051417A JP 2018051417 A JP2018051417 A JP 2018051417A JP 2019163215 A JP2019163215 A JP 2019163215A
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一雄 小沼
Kazuo Konuma
一雄 小沼
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Abstract

【課題】人工象牙質、又は、人工象牙質及び人工エナメル質を備えた人工歯の新規で簡便な形成方法を提供する。【解決手段】アモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンを含み、径が500nm以下のナノ粒子の充填体からなる基材を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する母液に浸漬することにより人工象牙質を作製する。前記母液を、カルシウムイオン、リン酸イオン、及び、フッ素イオンを含むものとし、前記基材を少なくとも一部に平坦な表面を有するものとして、前記母液への浸漬により該平坦な表面に人工エナメル質を形成し、人工象牙質と人工エナメル質とを備えた人工歯を作製する。【選択図】図15

Description

本発明は、アモルファスナノ粒子を利用した人工象牙質の作製方法、及び、人工象牙質と人工エナメル質を備えた人工歯の作製方法に関するものである。
ヒト歯は、表面のエナメル質、エナメル質内側の象牙質などから構成されている。そのうち、エナメル質はc軸方向に配向し、水酸基の一部をフッ素置換した高結晶性水酸アパタイト(以下、「HAP」ということがある。)のナノロッド(約60nm幅)からなり、その階層的な束状構造は高い弾性率(約60〜110GPa)と高硬度(約2〜6GPa)を呈する。エナメル質類似構造の構築は20年以上に渡って重要な研究テーマであり、多くの手法が提案されている(非特許文献1参照)。この研究の目的の一つは、言うまでもなく人工エナメル質を欠損歯、特に虫歯の治療に利用することであろう。
一方、象牙質は、低結晶性HAPとコラーゲン繊維などからなり、歯の大部分を占め、エナメル質より柔らかく、高硬度でもろいエナメル質を内側から支えている。しかも、象牙質は、エナメル質よりも虫歯の進行が速いので、人工エナメル質と同等以上に虫歯の治療などに有用な人工象牙質の研究が求められていると言える。
エナメル質を構成するHAPのナノロッド結晶自体については、少量のフッ素を含んだリン酸カルシウム溶液から形成可能なことが、既に知られている(例えば、非特許文献2参照)。従って、人工エナメル質を作製するにあたっての解明すべき課題は「一方向に配向したHAPナノロッド結晶群(すなわちエナメル質構造)を基板上に如何に迅速構築するか」、である。この課題を克服するため、リン酸カルシウムからなるホモ基板、あるいはHAPを誘導する性質を持つ(リン酸カルシウム以外の)ヘテロ基板を用いて、一方向配向したHAPナノロッド構造を構築する研究が続けられてきた。しかし、過去のアプローチは配向ナノロッド構造を構築するために非常に複雑なプロセスを必要とした。それらは、極端に低い溶液pH(非特許文献3参照)、高温(例えば、非特許文献4)、エナメルタンパク質や真珠層から抽出した水溶性有機マトリックスの溶液中への添加(非特許文献5)、HAPを誘導するための基板表面の修飾(非特許文献6)、等である。更に、これらの複雑な手法を駆使しても、成長したHAPナノロッド層は薄く、場合によっては配向度が非常に低いこともあった。
特願2017−80505号公報 特許第4654427号公報
Hench, L. L. Bioceramics: From concept to clinic. J. Am. Ceram. Soc. 74, 1487-1510 (1991) Zhang, H. G. & Zhu, Q. Surfactant-assisted preparation of fluoride-substituted hydroxyapatite nanorods. Mater. Lett. 59, 3054-3058 (2005) Yamagishi, K. et al. A synthetic enamel for rapid tooth repair. Nature 433, 819 (2005) Chen, H. et al. Acellular synthesis of a human enamel-like microstructure. Adv. Mater. 18, 1846-1851 (2006) Fowler, C. E., Li, M., Mann, S. & Margolis, H. C. Influence of surfactant assembly on the formation of calcium phosphate materials-A model for dental enamel formation. J. Mater. Chem. 15, 3317-3325 (2005). Hayakawa, S. et al. Preparation of nanometer-scale rod array of hydroxyapatite crystal. Acta Biomater. 5, 2152-2160 (2009) J. de Dios Teruel, A. Alcolea, A. Hernandez, A. J. O. Ruiz, "Comparison of chemical composition of enamel and dentine in human, bovine, porcine and ovine teeth" Arch. Oral Biology 60 (2015) 768-775.
本発明者は、上述のような過去の人工エナメル質の研究について調査する過程で、過去のアプローチは、配向ナノロッド構造を構築するために、人体等の生命体が許容し得ない形成条件や非常に複雑なプロセスを必要とするという問題点を有することを認識した。
そこで、本発明者は、人工エナメル質構造を、溶液中に一切の高分子添加物なしに擬似生理環境場で構築する研究を進め、カルシウム塩のアモルファスナノ粒子の充填体からなる基材を、カルシウムイオン、リン酸イオン、フッ素イオンを含有する母液に浸漬することにより基材表面に人工エナメル質を形成する技術を開発した(特許文献1)。
この技術は、人工エナメル質を、人体等の生命体に対し許容可能な条件下において、簡易かつ効率的に形成乃至製造できる点で非常に有用なものであるが、同時に、欠損歯、虫歯の治療や義歯の製造などへの利用には、人工エナメル質と同等以上に人工象牙質も必要であることを認識した。
本発明は、上述のような過去の研究や本発明者の前記認識などを背景としてなされたものであり、人工象牙質、又は、人工象牙質及び人工エナメル質を備えた人工歯の新規で簡便な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題のもと、カルシウム塩のアモルファスナノ粒子の充填体からなる基材を母液に浸漬することにより基材表面に人工エナメル質を形成する技術について、さらに研究を進める過程で、アモルファスリン酸カルシウムナノ粒子の充填体からなる基材を用いると、母液に浸漬することより該基材が象牙質類似体に相転移することを知見した。
本発明は、そのような知見に基づいて完成したものであり、本件では、次のような発明が提供される。
<1>アモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンを含み、径が500nm以下のナノ粒子の充填体からなる基材を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する母液に浸漬することを含む人工象牙質の作製方法。
<2>前記母液は、カルシウムイオン濃度が0.2〜5mM、リン酸イオン濃度が0.2〜5mMの水溶液である<1>に記載の人工象牙質の作製方法。
<3>カルシウムイオン濃度が0.2〜2mM、リン酸イオン濃度が0.2〜2mMの場合に、基材を浸漬中の母液を撹拌する<2>に記載の人工象牙質の作製方法。
<4>前記母液は、フッ素イオン濃度が0〜100ppmである<1>〜<3>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法。
<5>前記母液の温度が0〜60℃である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法。
<6><1>〜<5>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法において、アモルファスリン酸カルシウムナノ粒子、コラーゲンを含むアモルファスリン酸カルシウムナノ粒子、及び、コラーゲンからなる群からアモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンが必須成分となるように選択される1種、又は、2種以上の混合物を圧縮成形し、アモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンを含む前記基材を調製することを含む人工象牙質の作製方法。
<7>前記圧縮成形時の圧縮圧力が1MPa以上である<6>に記載の人工象牙質の作製方法。
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法において、前記母液を、カルシウムイオン、リン酸イオン、及び、フッ素イオンを含むものとし、前記基材を少なくとも一部に平坦な表面を有するものとして、前記母液への浸漬により該平坦な表面に人工エナメル質を形成することを含む、人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
<9><8>に記載の人工歯の作製方法において、前記母液は、フッ素イオン濃度が0.9〜100ppmである人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
<10><8>又は<9>に記載の人工歯の作製方法において、前記圧縮成形時の圧力を調整することにより、人工エナメル質を構成する水酸アパタイトナノロッドの幅を調整することを含む、人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
本発明は、次のような態様を含むことができる。
<11><2>に記載の人工象牙質の作製方法において、カルシウムイオン濃度が2mM超5mM以下、リン酸イオン濃度が2mM超5mM以下の場合に、母液を無撹拌とすることを含む人工象牙質の作製方法。
<12>前記母液は、カルシウムイオン濃度が3〜5mM、リン酸イオン濃度が3〜5mMである<2>又は<11>に記載の人工象牙質の作製方法。
<13>前記母液は、フッ素イオン濃度が1〜50ppmである<4>に記載の人工象牙質の作製方法。
<14>前記圧縮成形時の圧縮圧力が5〜100MPaである<7>に記載の人工象牙質の作製方法。
<15>アモルファスリン酸カルシウムナノ粒子の径が200nm以下である<1>〜<7>、<11>〜<14>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法。
<16>母液の温度が20〜40℃である<5>に記載の人工象牙質の作製方法。
<17>前記基材が基板である<1>〜<7>、<11>〜<16>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法。
<18><11>〜<17>のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法において、前記母液を、カルシウムイオン、リン酸イオン、及び、フッ素イオンを含むものとし、前記基材を少なくとも一部に平坦な表面を有するものとして、前記母液への浸漬により該平坦な表面に人工エナメル質を形成することを含む、人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
<19>母液に浸漬する前記平坦な表面は、平面度が200nm以下及び/又は二乗平均平方根粗さRqが200nm以下である<8>〜<10>、<18>のいずれか1項に記載の人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
本発明によれば、人工象牙質を簡易に効率的に製造することができる。また、本発明によれば、人工象牙質と人工エナメル質とを備えた人工歯を簡易に製造することができる。
母液に浸漬前のACP基板についての測定結果と、浸漬後の成長層(GL)を含む基板断面の光学顕微鏡像を示す図面。(a)成形前のACPナノ粒子のXRDパターン(上側)と圧縮成形後の基板断面のM-XRDパターン(下側)。黒丸で示したスパイクピークは、イメージングプレートの傷によるもので、サンプルに由来するものではない。(b)基板の断面SEM像。ナノ粒子のサイズは、80nm以下(白金コーティング層の厚み約15nmを考慮)。(c)破砕サンプルを用いて観察した基板のナノ粒子のTEM像。(d)ナノ粒子のSAEDパターン。(e)基板のSTEM-EDSによる元素分析結果。基板の平均Ca/P元素%比は1.33±0.02。銅は、TEMグリッドのメッシュを構成する物質に由来する。(f)20時間母液に浸漬後の成長サンプルの共焦点微分干渉顕微鏡による断面像。 ACP基板を母液に20時間浸漬後の測定結果を示す図面。(a)GLのSEM鳥瞰図。(b)GL表面付近の断面SEM像。(c)GL底面付近の断面SEM像。(矢印:中間層(IL);SUB:基板;破線:ILとSUBの境界部分)。(d)GLのXRDパターン(上側)及びM-XRDパターン(下側)。(e)成長結晶のSAEDパターン。(f)SAEDパターンに対応する格子像。(g)HAPナノロッド結晶の格子像とそれに融合する遷移層の一部。(h)GL及びILのSTEM-HAADF像。(i)不均質下部基板領域のSTEM-HAADF像。(j)GLのSAEDパターン。(k)ILのSAEDパターン。(l)不均質下部基板領域のSAEDパターン。 成形圧力を三段階で変えたACP基板についてのAFM像と該基板を20時間母液に浸漬した後のGLの測定結果を示す図面。(a)成形圧力5MPa基板の表面AFM像と二乗平均平方根粗さ(Rq)及びその分散。(b)5MPa基板の表面を浸漬後のGLのXRDパターン。(c)5MPa基板の表面を浸漬後のGLのSEM鳥瞰図。(d)成形圧力20MPa基板の表面AFM像と二乗平均平方根粗さ(Rq)及びその分散。(e)20MPa基板の表面を浸漬後のGLのXRDパターン。(f)20MPa基板の表面を浸漬後のGLのSEM鳥瞰図。(g)成形圧力60MPa基板の表面AFM像と二乗平均平方根粗さ(Rq)及びその分散。(h)60MPa基板の表面を浸漬後のGLのXRDパターン。(i)60MPa基板の表面を浸漬後のGLのSEM鳥瞰図。 ACP基板を母液に20時間浸漬後の基板と中間層(IL)の測定結果を示す図面。(a)浸漬後の基板のM-XRDパターン。(b)ILのTEM像とそれに対応する高速フーリエ変換パターン。IL内には10〜20nmサイズのナノ粒子が観察される。(c)ナノ粒子の高分解能TEM(HR-TEM)像。HAP(002)面の面間隔に対応する干渉縞が観察される。(d)不均質コントラストを呈する下部基板領域におけるファイバー状結晶。(e)ファイバーのHR-TEM像。破線はファイバーの境界を示す。 ACP基板を母液に20時間浸漬したもののSTEM-EDS分析結果を示す図面。(a)左図:FIB処理した成長サンプル断面薄片のSTEM-HAADF像。(GL:成長層;IL:中間層;US:上部基板領域(均質領域);LS:下部基板領域(不均質領域))。破線はそれぞれの境界。右図:GL、IL、US、及び、LSに対応するSTEM-EDSスペクトル。Mo、W、Na、及び、GaはTEMグリッドのメッシュ物質、FIBサンプルを作成する際の保護膜、溶液中の酢酸ナトリウムバッファー、分析の際のビーム源に由来する。(b)一次元フッ素含有量のGLから基板への深さ方向依存性。GLとILの間のベルト層は、遷移層に対応する。 ACP基板を母液に浸漬した際の時間分割SEM観察及び薄膜XRD測定結果を示す図面。(a)〜(g):浸漬後1分、3分、5分、10分、20分、30分、1時間の成長表面のSEM像。表面は3分後に木の根構造を呈し、それが5〜20分の間にナノ粒子群へと変化する。それらのナノ粒子は30分後にナノロッドに変わる。(h)〜(l):浸漬後5分、10分、20分、30分、1時間の成長断面SEM像。(m):時間分割薄膜XRDパターン。 ACP基板を母液中に2日浸漬した後のHAP層に関する機械的強度測定結果を示す図面。(a)サンプルの模式図とインデンテーション方向。HAP層の厚みは35〜40μm。(b)インデンテーションした後のHAP層(矢印がインデンテーション圧痕)。(c)ロード力vs変位曲線。(d)弾性率vsインデンテーション深さプロファイル(代表的な8つのデータを記載)。(e)硬度vsインデンテーション深さプロファイル(代表的な8つのデータを記載、サンプルはdと同じ)。 ACP基板をフッ素非含有母液に20時間浸漬したものの測定結果を示す図面。(a)成長層の表面SEM像。(b)成長結晶のSAEDパターン(スーパーインポーズした右上画像、<110>晶帯軸方向からの観察;スケールバーは2nm-1)と対応する格子像。(c)断面SEM像(矢印:フラグメント状結晶)。(d)フラグメント結晶直下領域のTEM像。ファイバー結晶が至る所で観察される。中間層(IL)は観察されない。(e)基板深部領域のTEM像(f)基板のSAEDパターン。図2(l)と一致する(ランダム配向した低結晶性HAP)。スケールバーは2nm-1。(g)基板内に見られるファイバー状のHR-TEM像。縞間隔はHAP(002)面の面間隔に対応する。 ACP基板をフッ素非含有母液に浸漬した場合の測定結果と時間分割SEM観察結果を示す図面。(a)20時間浸漬後の成長層のXRD(上段パターン)、M-XRD(中段パターン)、基板のM-XRD(下段パターン)。白丸はOCP特有のピークに、黒丸はHAP特有のピークに対応する。(b)〜(g):それぞれ浸漬後1分、3分、5分、10分、30分、1時間の表面SEM像。浸漬後1分で観察されたフラグメントは数を増して融合し、3〜5分の間に木の根構造を形成する。しかし木の根はナノ粒子へと変化せず10分後には不規則な板状を呈する。板は成長して30分から1時間後には最終的なOCP結晶と同じ形態になる。 ACP基板を20時間母液に浸漬後の、基板表面から約3μm内部の断面TEM像。白実線矢印がHAPナノファーバー結晶に、白点線矢印がHAPナノ粒子結晶に対応する。基板はナノファイバーとナノ粒子がランダムに配向した構造を示す。 相転移後の基板に見られるナノファイバーのHR-TEM像。白実線はファイバーの境界を示す。ファイバー内部では伸張方向に平行な格子縞が観察され、縞の最小間隔は0.272 nm、3倍周期の強度が高い縞の間隔は0.816 nmである。これらの間隔はそれぞれHAPの(300)及び(100)面の面間隔に対応する。 相転移後の基板に見られるナノ粒子群のHR-TEM像。白実線はナノ粒子の境界を、点線は他のナノ粒子との接合部を示す。ナノ粒子内部に観察される縞の最小間隔は0.270 nm、3倍周期の強度が高い縞の間隔は0.810 nmである。これらの間隔はそれぞれHAPの(300)及び(100)面の面間隔に誤差範囲(1%以下)で対応する。 相転移後の基板に対するSAEDパターン。特徴的な2つのDebye ring(白実線と点線矢印)が観察され、基板がランダム配向した結晶群から構成されていることが判明した。中心からリングまでの距離から、これらのリングはHAP(001)及び(211)あるいは(121)面の面間隔に一致することが示された。 ACP基板を20時間母液に浸漬後の基板に対するマイクロビームXRDパターン。2θ=10.8°にHAPに特有のピークが見られる。また32°付近のピークがブロードで分離していないことから、基板は結晶性の悪いHAPであると判断される。 ACP基板を20時間母液に浸漬後の基板に対するSTEM-EDSスペクトル。このスペクトルから、基板を構成するナノファイバー及びナノ粒子HAPの平均Ca/P atomic %比は1.50±0.01と計算される。 ヒト大臼歯象牙質のTEM画像。実線矢印はHAPのナノファイバー、点線矢印はHAPのナノ粒子の一例を示す。 ACCの測定結果を示す図面。(a)ACCナノ粒子のXRDパターン。(b)ACCナノ粒子を圧縮成形した基板の断面SEM像。 ACC基板を20時間母液に浸漬した場合の測定結果を示す図面。(a)GLのXRDパターン(上側)及びM-XRDパターン(下側)(図2(d)のパターンと同じ)。(b)基板のM-XRDパターン。黒丸:カルサイト、白丸:パテライトに対応する。(c)中間層(IL)のSAEDパターン(FIB処理サンプルを使用)。図2(l)と同様のパターンを示す。(d)IL中のHAPナノ粒子のTEM像。(e)基板に見られたサイコロ状結晶のSAEDパターン。カルサイト{104}面に対応する面間隔が明瞭に観察される(<4-4-1>晶帯軸からの観察)。(f)(e)に対応するHR-TEM像。(g)カルサイト結晶とその上に付着するロッド状結晶のHR-TEM像。ロッド状結晶にはHAPに対応する格子が観察される。 ACC基板を母液に20時間浸漬したもののSEM観察結果及びSTEM-EDS分析結果を示す図面。(a)成長表面のSEM鳥瞰図。(b)サンプルの断面SEM像(GL:成長層;上側矢印:カルサイト;下側矢印:バテライト)。(c)(b)の拡大SEM像。破線:GLとILの境界;矢印:HAP。(d)FIB処理で作成した断面薄片のSTEM-HAADF像。(e)STEM-EDS分析による炭素量マッピング。HAADF像と同じ領域を分析。(f)一次元炭素含有量の深さ方向プロファイル。(e)図の点線に沿って分析。 ACC基板を母液に浸漬した際の時間分割SEM観察結果とSTEM-EDS分析結果を示す図面。(a)〜(f):カルサイト結晶が存在しない領域に対する時間分割表面SEM像。それぞれ浸漬後1分、3分(表面が溶解)、5分(表面が溶解)、10分(木の根構造が出現)、30分(ナノ粒子の垂直方向への伸長)、1時間(先端先細りのナノロッド形成)。(g)左図:ACC基板を20時間浸漬後の成長サンプル(FIB処理にて作成)のHAADF像(GL:成長層;IL:中間層;破線領域はSTEM-EDS分析エリア)。右図:STEM-EDSによる元素分析スペクトル(上側:GL、下側:IL)。 ACPナノ粒子基板及び結晶性ナノ粒子基板を母液に20時間浸漬した後の成長サンプルのXRD測定結果及びSEM観察結果を示す図面。(a)〜(d):浸漬後の成長層(GL)のXRDパターン。用いた基板はそれぞれ、ACP、結晶性HAP、結晶性β-三リン酸カルシウム、及び、結晶性TiO2(アナターゼとルチルの混合物)。(e)〜(h):浸漬後のサンプルのSEM像(上段:断面、中段:低倍率表面、下段:高倍率表面)。用いた基板はそれぞれACP、結晶性HAP、結晶性β-三リン酸カルシウム、及び、結晶性TiO2。ACP基板以外では、ナノロッドの球晶状成長が煩雑に観察される。GLの厚み、均質性、ナノロッドの密充填度及びc軸配向性は、ACP基板を用いた場合が格段に優れている。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
本明細書において使用される用語「ナノロッド」、「ナノロッドが密集している」、「同方向に配向」、「高結晶性」、「人工象牙質類似体」、「人工象牙質」の意味は、次のとおりである。
「ナノロッド」:SEM等で観察した幅が10nm以上400nm以下の柱状体。
「ナノロッドが密集している」:SEM等によるナノロッド群の鳥瞰視の観察像について、任意の方向に隣接するナノロッド間の先端先細り部以外の間隔を順次測定した際に、測定数の90%以上の間隔が50nm以下であること。
「同方向に配向」:HAPナノロッドの平均的配向方向と見なせる方向からX線を入射して2θを変化させたXRD測定を行った場合において、支配的な結晶学的配向方向に対応する最低面指数のピーク強度と、支配的配向方向以外からの回折に対応するピーク強度、特に粉末XRDにおいてHAPの最強回折線に相当する(211)回折に対応するピーク強度、との比が10:1以上、好適には40:1以上であること、又は/及び、SEM等によるナノロッドの平均的配向方向に略平行な面の観察像について、各ナノロッドの観察平面内の配向方向を測定した際に、90%以上が平均の配向方向からのずれ角度が10°以下の範囲内であること。
「高結晶性」:XRDあるいはM-XRD測定パターンにおいて、全てのピークがHAPに帰属できること、2θが10.8°付近にHAP特有のピークを持つこと、及び2θが31〜33°付近のピーク(HAPの(211),(112)、(300)回折に対応する領域)が二つないし三つに分離していること。
「人工象牙質類似体」:ヒト歯の象牙質を構成するHAPと同等の結晶形態を持ち且つ化学組成(特にカルシウム/リン酸モル比:Ca/P比)が類似のHAP集合体。
「人工象牙質」:ヒト歯の象牙質を構成するHAPと同等の結晶形態を持ち且つ化学組成(特にカルシウム/リン酸モル比:Ca/P比)が類似のHAPと、約20%の有機物とを含み、該有機物のうち80%以上が1型コラーゲンであるHAP-有機物複合体。
本明細書で使用する主な略号とその意味は、次のとおりである。
ACC(amorphous calcium carbonate):アモルファス炭酸カルシウム
ACP(amorphous calcium phosphate):アモルファスリン酸カルシウム
FIB(focused-ion-beam):収束イオンビーム
FE-SEM(field emission SEM):電界放出電子銃を搭載したSEM
GL(grown layer):成長層
HAP(hydroxyapatite):水酸アパタイト
HR-TEM (High-resolution TEM):高分解能透過型電子顕微鏡
IL(intermediate layer):中間層
LS(lower substrate):基板の下部領域
M-XRD(Micro-beam XRD) :マイクロビームX線回折
OCP(octacalcium phosphate):リン酸八カルシウム
SAED(selected area electron diffraction):制限視野電子線回折
SEM (scanning electron microscope):走査電子顕微鏡
STEM-EDS(Scanning-TEM energy dispersion spectroscopy):走査透過電子顕微鏡エ ネルギー分散分光分析
STEM-HAADF(Scanning-TEM high-angle annular dark field):走査透過電子顕微鏡高 角度環状暗視野場観察
SUB(substrate):基板
TEM (transmission electron microscope):透過電子顕微鏡
US(upper substrate):基板の上部領域
XRD (X-ray diffraction):X線回折
本発明の象牙質の作製方法では、アモルファスリン酸カルシウム(ACP)とコラーゲンを含み、径が500nm以下のナノ粒子の充填体からなる基材(好ましくは、基板)をカルシウムイオン及びリン酸イオンを含む母液に浸漬することにより、前記基材は、低結晶性のHAPとコラーゲンからなる人工象牙質に形成される。
また、本発明では、さらに、前記母液をフッ素イオンをも含むものとし、前記基材を少なくとも一部に平坦な表面を有するものとして、前記母液への浸漬により該平坦な表面に人工エナメル質を形成し、人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯を作製乃至製造する。
本発明において、人工象牙質や人工歯を作製する際には、ACPとコラーゲンを含み、径が500nm以下のナノ粒子の充填体からなる基材を使用する。
該基材は、(ア)ACPナノ粒子、(イ)コラーゲンを含むACPナノ粒子、及び、(ウ)コラーゲンからなる群から1種、又は、2種以上の混合物をACPとコラーゲンが必須成分となるように選択して圧縮成形することにより調製することができる。コラーゲンを含むACPナノ粒子の調製方法は、限定するものではないが、例えば、特許文献2に記載の組織構築法を応用して調製することができる。
人工象牙質を必要とせず、基材表面に人工エナメル質を形成すれば良い場合には、基材はコラーゲンを含む必要がなく、また、ACPナノ粒子の替わりに他の水溶性カルシウム塩のアモルファスナノ粒子も使用できる。例えば、アモルファス炭酸カルシウム(ACC)や、アモルファス硫酸カルシウム、アモルファス硝酸カルシウム等も使用できると考えられる。
そのようなアモルファスナノ粒子は、後述の実施例や比較例から明らかなように水溶性を有する。その水溶性の程度は、室温で純水中に1μM濃度以上であると考えられる。
基材を形成するナノ粒子が反応性に乏しい結晶性を有する場合、後述の比較例に見られるように、基材表面に形成されるHAPナノロッド群の成長速度は遅く且つ球晶状組織が発達し、アモルファスナノ粒子を用いた場合のような均質な人工エナメル質は形成されない。
ACPナノ粒子、コラーゲンを含むACPナノ粒子、ACCナノ粒子等のアモルファスナノは、径が500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下のものを用いる。下限の径は限定する必要はないが、使用の容易性から5nm以上とすることができる。ナノ粒子の径Dは、SEMなどによる観察により確認することができ、D=(長径+短径)/2 として求めることができる。径が500nm超や200nm超、100nm超等の設定された径を超える粒子を含む場合、フィルターを用いた濾別や遠心分離などの適宜の手法により、設定された径を超える粒子を除去することができる。
ナノ粒子がアモルファスであることは、XRD、M-XRD及びSAEDパターン、TEMによる粒子内部観察により確かめることができる。
表面に人工エナメル質を形成する場合の基材は、アモルファスナノ粒子などを圧縮成形する際に、少なくとも一部の表面が平坦な表面になるように調製する。平坦な表面とは、JISB0621で規定される平面度(幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさ)が200nm以下(好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm)、及び/又は、JISB0601で規定される二乗平均平方根粗さRqが200nm以下(好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下)のものをいう。平面度は、フラットネステスタ等の公知の手段により測定することができる。
基材として基板を用いる場合、基板の両面を平坦に形成しても良いし、一方の面の全面や一部を平坦に形成しても良い。
圧縮成形時の温度や湿度等の条件は、結晶相への相転移が生起しない範囲内であれば許容される。好ましくは低湿度(20%以下)の常温である。
圧縮成形時の圧縮の圧力は、ナノ粒子の充填体からなる基材が成形できる範囲内であれば許容される。通常、1MPa以上である。圧縮圧力の上限は限定する必要はないが、一般的には、使用する成形機械や型などにより、100MPa、150MPa、200MPa等のように許容上限を設定することもできる。後述の実施例にみられるように、前記範囲内で圧力を高くした場合、低くした場合よりも、基材表面に形成される人工エナメル質の配向ナノロッドの幅が小さくなる。
人工象牙質を作製する際に使用する基材浸漬用の母液は、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含むものであれば良く、フッ素イオンを含む必要はないが、基材の表面に人工エナメル質を形成する場合には、母液はフッ素イオンをも含むものとする。
カルシウムイオンとリン酸イオンの濃度は、0.2mM以上、好ましくは、1mM以上である。濃度が0.2mM未満であると、配向ナノロッドが形成しない、あるいは形成速度が遅くなる。一方、濃度が高いと、人工エナメル質の形成速度が速くなるが、濃度が高すぎると、基材浸漬中に均質核形成(析出)が生起しやすくなり、c軸方向に配向した高結晶性HAPが得られにくくなる。基材浸漬中に均質核形成(析出)が生起しないカルシウムイオンとリン酸イオンの濃度の上限は、母液のpHや母液撹拌の有無などにも依存する。母液のpHが6.2程度の比較的低い場合には、濃度の上限は4mM程度であるが、pHが7.4程度と比較的に高い場合には、1mM以下程度まで下げる必要がある。また、母液を攪拌すると、均質核形成(析出)を生起しやすくなるが、pH 6.2程度の場合には濃度が2mM以下であれば、人工エナメル質の形成速度を速めるために母液を攪拌することも許容される。人工エナメル質の形成中、カルシウムイオンとリン酸イオンが低下し、人工エナメル質の形成速度が低下する場合には、カルシウムイオンとリン酸イオンを母液に補充することもできる。
フッ素イオンの濃度は、0.9〜100ppm(好ましくは、1〜50ppm、より好ましくは2〜20ppm)である。母液がフッ素イオンを含まなかったり、フッ素イオンの濃度が0.9ppm未満である場合、カルシウムイオンとリン酸イオンが人工エナメル質形成に好ましい濃度であったとしても、HAPナノロッドは形成されない。
母液中に浸漬される基材は、好ましくは、容器の底に載置するのが好ましい。その際、容器の底と基材表面とが水平になるように設置するのが好ましい。浸漬時間は限定するものではないが、必要な人工エナメル質層の厚みに応じて、1時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、5日、10日等、0.5時間〜30日程度の範囲のように適宜に設定することができる。
人工象牙質や人工エナメル質を形成する際の母液は、pHが通常6〜7程度であるし、また、母液温度は0〜60℃(好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃)において可能である。それ故、母液温度を20〜40℃の範囲内に設定すれば、上記pHの数値と併せて、人体等の生命体に許容可能な条件下(すなわち、擬似生理環境場)において、人工象牙質や人工エナメル質を簡易にかつ効率的に形成乃至製造できると言える。
形成された人工エナメル質は、多数のHAPナノロッドが密集して同方向に配向した構造を有している。HAPナノロッドの幅は10nm以上400nm以下程度である。HAPナノロッドの長さは、浸漬期間によるが、後述の実施例では、20時間の浸漬で数μm程度(長さ/幅が10以上)のものが得られている(各ナノロッドの長さは数μm。成長層はいくつものナノロッドが段階的に積み重なっており、一つのナノロッドが成長層の初めから終わりまで必ずしも繋がっている訳ではない)。また、ナノロッドが積み重なった成長層の形成速度(約20時間で20〜25μmの厚み)は、従来技術に比べ格段に優れたものであり、本発明の人工エナメル質の形成方法は、非常に効率的なものと言える。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明の内容はこの実施例に限定されるものではない。
<<実施例で用いた測定乃至分析機器、測定・分析のための処理方法、サンプル>>
本発明に関する実施例や比較例で用いた測定乃至分析機器、測定・分析のための処理方法、サンプルなどは、次のようなものである。
(XRD)
フッ素含有母液又はフッ素非含有母液に20時間浸漬後の基板を、粉末XRD装置(40kV, 100mA)で評価した。サンプルは無反射石英基板上に設置し、HAPナノロッドの平均的配向方向と見なせる方向からX線を入射し、スキャン速度2°min-1で2θ=3〜60°の範囲で走査した。得られたパターンのピーク位置をJCPDSカードに登録されたリン酸カルシウム類及び炭酸カルシウム類のそれらと比較し、サンプルの同定を行った。
(M-XRD)
成長サンプルや基板を基板表面に垂直にカットし、M-XRDにより評価した(カットしたサンプルの厚みは200〜400μm)。X線装置のビームはコリメータにより100μmに集光し、GLあるいは基板の薄片表面に垂直方向から照射する。その際の電圧と電流は50 kV, 30 mAである。測定サンプルは両面テープでガラスキャピラリー先端に固定し、回折X線はイメージングプレート上に記録する。イメージングプレート上のデジタルデータは、DISPLAYソフトウエアを使って強度対2θの関係に変換する。最終的なピーク位置はJCPDSカードに登録されたリン酸カルシウム類及び炭酸カルシウム類のそれらと比較し、サンプルの同定を行う。
(薄膜XRD)
成長サンプルの表面を薄膜XRDで評価した。その際の電圧、電流条件は45kV, 200mAである。薄膜XRD測定に使用した基板サイズは2x5x0.5mmである。X線の入射角は基板表面に対して0.2°であり、スキャン速度0.1°min-1で2θχ=3〜50°の範囲で走査した。最終的なピーク位置はJCPDSカードに登録されたリン酸カルシウム類及び炭酸カルシウム類のそれらと比較し、サンプルの同定を行う。
(FE-SEM)
サンプル(GLあるいは基板)を白金コーティングした後、加速電圧5 kVでFE-SEM観察した。サンプルのチャージアップを防ぐため、コーティングした白金層の厚みは約15 nmとした。
(TEM観察用のクラッシュサンプル)
GLあるいは基板を99.5%エタノールに浸し、メノウ乳鉢で粉砕する。GL観察用には、あらかじめ基板とGLの境界部分を、医療用メスを用いて顕微鏡下で分離しておく。破砕サンプルはエタノール溶液中に混合し、超音波バスを用いて40kHzで5分間分散させる。この溶液を少量採取し、銅メッシュを使ったTEMサンプルグリッド上に設置した後、大気中で自然乾燥させる。
(TEM観察のためのFIB処理サンプル作成)
Gaイオンを用いたFIB装置によって断面サンプルの薄片を作成する。サンプルは40kVの加速電圧で約150nmまで薄片化した後、10kVの加速電圧で約100nmまで更に薄片化する。処理サンプルはモリブデンメッシュを用いたTEMサンプルグリッド上に設置する。
(TEM観察のためのミクロトーム超薄片作成)
サンプルをエポキシ樹脂で埋包し、50℃インキュベータ中で72時間固化させる。固化ブロックをダイアモンドナイフで厚さ70〜100nmにスライスする。スライスしたサンプルは銅メッシュを用いたTEMサンプルグリッド上に設置する。
(TEM)
サンプル観察は、分析TEMを用いて加速電圧200kVで行った。SAED測定は通常800nmφのエリアで行うが、遷移層観察の際は200nmφでの測定を併用した。
(STEM-EDS分析)
サンプルの二次元高速元素分析を、Super-X EDSシステムを備えたTEMで行った。4つのX線検出器(シリコンドリフト型検出器)をサンプル近くに設置し、高速かつ正確な分析を行った。STEMモードでの元素マッピングに使用する電子線プローブの直径は約0.5nmであり、プローブの電流値は約0.55nAである。プローブビームの測定点滞留時間は10μsであり、元素マッピングは5分で終了する。マッピングデータは、ピーク分離法を用いてエネルギー依存スペクトルに変換する。最終的な元素値の分散誤差は、ピーク分離の際に起こる計算誤差に起因する。
(STEM-HAADF)
TEMのpre-specimenレンズによって電子線ビームを直径約1nmに絞り、FIB処理によって準備された断面薄片サンプルの表面をラスタースキャンする。HAADF像は、透過電子の内、高角度に散乱されたものを環状検出器によって補足し画像化する。
(光学顕微鏡)
共焦点微分干渉顕微鏡を白色光で使用した。観察サンプルは、20時間母液に浸漬した後のACP基板を断面カットしたものである。
(原子間力顕微鏡)
MultiMode-8原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、初期圧縮圧力の違いによって基板表面の荒さがどう変化するかを調べた。AFM観察はシリコン単結晶カンチレバーを用いて(バネ定数 = 0.4 Nm-1, チップ先端曲率半径 約2nm)、ピークフォースタッピングモードで行った。典型的な走査条件は、2Hz、512ラインである。基板中心付近の10か所の約5x5μmエリアを選定し、観察を行って表面荒さを求めた。表面荒さの計算にはNanoScope分析ソフトウエアを用い、元画像の傾斜補正後に荒さ計算を行った。平均荒さ(Rq値)とその分散値を求めた。
(機械的強度測定)
ACP基板を2日間母液に浸漬させた後、形成したGLの弾性率と硬さをナノインデンターにより測定した。測定に使用したプローブはベルコビッチ型端子である。装置は測定前に合成シリカ基板を用いて補正を行った。端子の先端直径は20nm、先端の三角形ピラミッドの角度は135°である。測定は連続剛性モードで行い、ロード対深さ曲線の解析から、弾性率と硬度のインデンテーション深さ依存性を求めた。インデンテーション方向はHAP層を形成する各ナノロッドの伸長方向に垂直である。3つのサンプルに対して総計14ポイントでの測定を行い、平均弾性率及び硬度とそれらの分散を算出した。
<<ACP基板を用いた人工象牙質の作製、人工象牙質と人工エナメル質を備えた人工歯の作製>>
(1.ACPナノ粒子作成に使用するリン酸カルシウム溶液の調製)
試薬グレードのCaCl2及びNa2HPO4を10mM濃度になるようにそれぞれミリQ水(超純水、比抵抗:18.2MΩ、TOC:3ppb)に溶解した。作成した溶液は4℃インキュベータ中に一時保管した後、撹拌しながら両溶液を体積比1:1で1分間混合した。混合溶液は0.22μmフィルターを用いて、室温で真空引きフィルタリングした。フィルター上に残った析出物(ACP)を素早くミリQ水で洗浄し、残存ダストを取り除いた後、99.5%エタノールで洗浄して反応を停止させた。ACPナノ粒子は-70℃で30分間凍結した後、真空中で一晩乾燥させ、乾燥インキュベータ中に保管した(湿度約20%、温度約23℃)。
(2.ACP基板の作製)
約10mgのACPナノ粒子を、水圧駆動オイルコンプレッサーを用いて20MPaで10分間常温で圧縮成形し、2x10x0.5mmの基板を形成した。この基板を、医療用メスを用いて2x2x0.5mmのサイズに加工して使用する。ナノ粒子を基板へと成形する直前にXRD測定を行い、ナノ粒子調製直後に測定したXRDパターンと比較して同一であることを確認した。
(3.基板を浸漬する母液の調製)
各試薬をミリQ水に溶解することにより、1.00M CaCl2, 0.50M K2HPO4, 0.50M KH2PO4, 1.00M CH3COOH, 0.10M CH3COONa, 52.6mM (1000 ppmに対応)NaFのストック溶液を準備した。
各溶液は、0.22μm酢酸セルロースフィルターでフィルタリングした。その後、K2HPO4溶液とKH2PO4溶液を1:1の体積比で混合して4.00mMのリン酸溶液を作成した。この溶液はCH3COONa溶液とCH3COOH溶液を用いてpH 6.30±0.01 (25℃)に調整した。調整リン酸バッファー溶液中の酢酸イオン濃度は50mMである。微量のCaCl2溶液を上記のリン酸バッファー溶液中に体積比1:249で混合した。この操作により混合リン酸カルシウム溶液中のカルシウムイオン濃度は4.00mM、リン酸イオン濃度は3.98mMになる。最後に、上記のリン酸カルシウム溶液中にNaF溶液を1:99の体積比で混合し、最終的な母液を得た。母液中のカルシウムイオン濃度は3.96mM、リン酸イオン濃度は3.94mM、フッ素イオン濃度は0.526mM(10ppmに対応)である。約4mMのカルシウム及びリン酸イオン濃度は、溶液を2日間、析出なしに保持できる上限濃度に近い。調製した母液約35mLをポリスチレン容器(約50mLの容積)に注ぎ、蓋をしてインキュベータ中に保持した(37.0±0.5℃)。基板は容器の底に置くが、その際容器の底と基板表面が水平になるように設置する。母液と基板の体積比は、約17,500:1である。基板を浸漬させている間は、母液は撹拌しない。目標の浸漬時間に達したら、基板を素早く溶液から取り出してミリQ水で洗浄し、更に99.5%エタノール溶液で洗浄した後、乾燥させる。
(4.ACP基板の表面に形成された成長層を備えた構造体の作製)
ACP基板を、0.526mM(10ppmに対応)フッ素を含有するリン酸カルシウム母液に20時間浸漬すると、基板(SUB)表面に約20μm厚みの成長層(GL)が形成された構造体が得られた(図1f)。
以下では、まず、基板表面に形成された成長層は、その観察や各種測定に基づき、人工エナメル層であることを明らかにし、次に、構造体の基板は、その観察や各種測定に基づき、人工象牙質類似体に変化したものであることを明らかにする。
(5.基板表面に形成された透明層の観察、測定等(人工エナメル層の形成の確認))
前記基板表面に形成された透明層についてのSEM鳥瞰図から、成長層(GL)は、先端が先細りしたナノロッド(幅300nm以下)の密充填構造(隣接するナノロッド間の先細り部以外の間隔が20nm以下程度)を呈することがわかった(図2a)。成長サンプルの断面観察から、GLはマイクロメートル長さのアスペクト比が非常に高い(長さ/幅が10以上)ロッドの集合からなり、個々のロッドは成長初期から最終期まで一方向に配列している(図2b, c)。基板とGLの間には厚みが1.2μm程度の密な中間層(IL)が観察される(図2c)。ILのコントラストは基板のコントラストより暗く、構造的には基板と一体化している。
ミクロトーム超薄片を用いたTEM及びSAED観察から、ILはアモルファスではなく配向がランダムな結晶性物質であることが判明した。SAED測定は、更に、ILとロッド結晶との間に遷移層(約300nm)が存在し、この層では結晶方位がランダムから徐々に配向したものに変化していることを示した。遷移層はその後、完全配向したナノロッド結晶層へとスムーズに移行する。
成長サンプルのXRDパターンは2θ = 25.9と53.3°に非常に強いピークを持ち、それ以外のピークはほとんど観察されない(図2d, 上側パターン)。支配的な結晶学的配向方向に対応する最低面指数(002)のピーク強度と、完全にランダム配向のHAP粉末をXRD測定した場合の(211)のピーク強度との強度比は50:1以上であった。このことから、GLを構成する多数のHAPナノロッドは、同方向に配向していると言える。また、GLに対するM-XRDパターンはHAPに特有の2θ = 10.8°にピークを持ち、2θ = 31〜33°の間でピークが3つに分離している(図2d, 下側パターン)。これらの事実は、GLがc軸配向した高結晶性HAPのナノロッドからなることを示す。XRDデータは平均的な情報を与える。GL内の個々の結晶が本当に結晶性の良いHAPであるかを確認するため、粉砕したGLサンプルを用いて高分解能TEM(HR-TEM)観察とSAED測定を行った。その結果、ナノロッド型結晶は規則正しい原子配列を持ち、0.819及び0.693nmの面間隔が観察された。これらは、それぞれHAPの(100)及び(001)面間隔に相当する(図2e, f)。ナノロッド型HAPは、根本のところで遷移層のナノ粒子と融合しており、これは低倍率TEM像の結果と一致する。HAPナノロッド構造形成は、浸漬前のACP基板表面の荒さに影響を受けない。基板形成時の圧縮圧力を5-60MPaの範囲で変化させても、基本的なナノロッド型構造は同じであったが(図3) 、圧縮圧力が高い方がナノロッドの幅が減少していることが観察された(図3c,f,i)。
ミクロトーム処理はしばしば成長サンプルを破壊してしまうため、断面薄片をFIB処理によって作成した。この薄片のTEM観察、及びGLから基板へ約500nmのステップでのSAED測定を実施した。STEM-HAADF像から、ILは多くのボイドを有するにもかかわらず均質なコントラストを呈すること(図2h)、一方で基板領域は均質なコントラストを示す上部領域(US)と、ファイバー状パターンが原因となって不均質なコントラストを呈する下部領域(LS)に分類できることが判明した(図2i)。GLに対するSAEDパターン(図2j)とは異なり、ILのSAEDパターンは基本的に基板のそれと同一であり、ランダム配向した結晶性構造を示す(図2k, l)。
基板に対するM-XRDは基本的にGLのそれと同一である。HAP(002)に対応する2θ = 25.8°、及び(100)に対応する2θ = 10.8°のピークが観察される。しかしGLと異なるのは、2θ = 32°のピーク幅が広く、3つに分離していないことである(図4a)。この事実は基板が低結晶性HAPであること、従ってILもまた低結晶性HAPであることを示す(SAEDパターンが同一なため)。
HR-TEM観察から、IL内部には10〜20nmの粒子群が認められた。画像の高速フーリエ変換パターンは、中心から2.90nm-1の位置に低強度のリングが、3.57nm-1の位置に高強度のリングが存在することを示した(図4b, c)。これらはILに対する(広領域の)SAEDパターンと一致する。すなわち、ILは10〜20nmのナノ粒子によって構成されている。基板の残りの部分には幅20nm以下のファイバー状結晶が頻繁に出現する。特にSTEM-HAADF像が不均質コントラストを呈するLS領域は、非常に多くのファイバーを持つ(図4d, e)。これらの観察から、溶液が基板ACP粒子間の間隙に浸透することで、基板がACPからHAPに相転移したことは明らかである。問題は、ILがACPの相転移によって形成されたか、あるいは溶液からのHAPナノ粒子の直接析出によって形成されたか、である。この解答を得るため、成長サンプルのSTEM-EDS分析、成長過程の時間分割SEM観察及び薄膜XRD測定を行った。
(5−1.成長HAP層のSTEM-EDS分析)
STEM-EDS分析からGLとILはフッ素を含有する一方、基板、特にLS領域はフッ素をほとんど含まないことが判明した(図5a)。平均的なCa/P元素%比は、GL=1.64±0.02、IL=1.46±0.02、US=LS=1.50±0.03であった。ILのCa/P比は基板のそれに近い。また、平均のフッ素含有量(元素%)は、GL=2.87±0.28, IL=0.76±0.14, US=0.46±0.12, LS=0.13±0.09%であった。GLからLSまでの一次元フッ素含有量プロファイルを見ると、フッ素量は遷移層で急激に減少し、ILからUSにかけて、ゆっくりと減少することがわかる(図5b)。これらのデータは、IL中のナノ粒子が溶液からの直接析出で形成したものではないことを示唆する。
(5−2.ナノロッド構造形成過程に関する時間分割SEM観察及び薄膜XRD測定)
ILの形成が起こる成長初期過程の解明を行うため、時間分割SEM観察と薄膜XRD測定を行った。表面SEM像から、基板を溶液に浸漬して1分で基板表面が僅かに溶解し、50〜80nmの粒子がはっきりと観察された(図6a)。表面は引き続いて3分後に木の根構造に移行し(図6b)、これらの木の根は融合して5分後に粒子様の構造を形成する(図6c)。浸漬後10〜20分の間に表面は50nm以下のナノ粒子に覆われる(図6d, e)。これらのナノ粒子は30分後にナノロッド構造へと変化し、ロッドの幅及び長さが30分から1時間の間に増加する(図6f, g)。サンプルの断面SEM観察から、5分後にはILが形成されている様子が明確にわかる(図6h)。10分後にはナノ粒子の垂直方向への成長が起こり、20分後には成長が加速されてカラム様の形態を呈する(図6i, j)。カラムは30分後に先端が先細りのナノロッド(約60nm幅、約500nm長さ)へと変化し(図6k)、これらのロッドは1時間後には幅約120nm、長さ約900nmへと成長する(図6l)。薄膜XRDの結果は、最初の5分間で表面がACPから低結晶性HAPへと変化することを示した(図6m)。2θχ約30°付近のピークは、浸漬3分後にアモルファス特有の位置から結晶特有の位置へとシフトする。すなわち、木の根構造の出現は、10〜20nmの低結晶性HAPナノ粒子の形成開始(=ILの形成開始)を意味している。
これらの事実を考えると、結晶性ILはACPナノ粒子からの相転移によって形成されたと結論される。薄膜XRDパターンは、浸漬後30分から1時間の間にHAPナノロッドの結晶性が徐々に向上し、1時間後にはエナメル質と本質的に同じ構造が確立されることを示している。
(5−3.初期母液のCa/Pモル比がHAPナノロッド構造に与える影響調査)
初期母液のCa/Pモル比(1.01)が最終的なHAPナノロッド構造にどのような影響を及ぼすかを検証した。[Ca2+]x[PO4 3-]=15mM2を維持したまま母液のCa/P比を1.67と0.60に変更し、ACP基板を20時間に浸漬する手法をとった。その結果、初期溶液のCa/Pモル比は最終的なHAPナノロッド構造に影響を与えないことが判明した。
(5−4.成長HAP層の弾性率と硬度測定)
HAPナノロッド成長層はc軸配向を維持したまま、2日後には約40μmの厚みに達する。ナノインデンテーション手法を用いてこの成長層の弾性率と硬度を結晶のc軸に垂直方向から測定した。その結果、弾性率(各サンプルのインデンテーション深さ400〜600nm間のデータを平均したもの)が63.4±9.2 GPa、硬度(各サンプルのインデンテーション深さ400〜600nm間のデータを平均したもの)が2.87±0.41GPaであった(図7)。測定方向がc軸に平行方向であった場合、弾性率は25〜35GPaに減少する。この傾向は自然歯のエナメル質とは逆の様相である。その理由は、自然歯のエナメル質に見られる束状構造が今回の人工エナメル質には欠けていること、HAP結晶の形状が先細りのため、c軸に平行に測定プローブを押し付けた時には力が分散されてしまうためと考えられる。今回の人工エナメル質の硬度(c軸垂直方向からの測定)も、やはり自然歯エナメル質のそれより若干低い。
(5−5.フッ素を含有しない母液から成長する層)
母液中のフッ素がILの形成とそれに続くエナメル質構造の形成にどのような影響を及ぼすかを検証した。ACP基板をフッ素非含有母液に20時間浸漬したところ、表面の形態は劇的に変化した。すなわち、10〜15μm幅の薄い板状析出物が形成された(表面SEM像参照)(図8a)。XRD及びM-XRD測定から、GLはc軸配向した高結晶性八リン酸カルシウム(OCP)からなることがわかった。ただし、c軸配向度はHAPナノロッドの場合より低い。これは、(002)及び(004)に対応するピークの他に、2θが32°付近にピークが観察されることから明らかである(図9a, 上段パターン)。GLを破砕した後、SAED及びHR-TEM観察を行った結果、0.949及び0.690nmの面間隔に相当する回折スポットと格子縞が観察された(図8b)。これらの面間隔はそれぞれOCP結晶のb及びc軸の面間隔と一致する。ただし、b軸方向には約5%伸張している。これは恐らく、溶液中の酢酸分子がOCP構造中の水分子位置に入り込んだためと思われる。
フッ素非含有溶液ではなぜHAPが形成されないかを解明するため、浸漬後の基板の評価を詳細に行った。20時間浸漬後の基板に対するM-XRD測定の結果、基板は低結晶性HAPに相転移しており、少量のOCPが混在することが判明した(2θ = 4.7°のOCP特有のピークから)(図9a, 下段パターン)。これは成長層(GL)がOCPのみであることと対照的である。2θ = 4.7°のOCP特有のピークは、基板を30分あるいは1時間浸漬した状態では出現しないため、初期成長過程でACPからOCPを経てHAPに相転移した可能性はない。基板内のOCPは、HAPが形成された後に形成したものである。成長サンプルの断面SEM観察から、基板は全ての領域で均質なコントラストを持ち、基板上へフラグメント結晶(図8cの矢印部分)が形成した後、OCPが直接成長したことが判明した(図8c)。フラグメント結晶が出現する領域はHAPナノロッド形成時に見られた遷移層に相当するが、このフラグメント結晶直下にILは存在しない。すなわち、ILが存在するか否かが基板上にHAPが形成するか否かを支配していると示唆される。これを検証するため、GL形成過程の時間分割SEM観察及び薄膜XRD測定を実施した。
基板をフッ素非含有母液に浸漬後1分で、表面には多くのフラグメント状物質の析出が起こる(図9b)。ACP基板表面の本来のナノ粒子は観察されているため、表面はゆっくりと溶解している。浸漬後3分経過するとフラグメントの数が増大し、表面を覆う(図9c)。この時、HAP成長時に見られた木の根構造と類似の構造が発達するが(図9c, d)、それらはナノ粒子へと変化せず、従ってその後のナノ粒子の基板垂直方向への伸張も見られない。これは、析出したフラグメントの成長が非常に速いためである。基板浸漬後10分経過すると、フラグメントは融合し板状構造を呈する。この時点では板のエッジは明瞭ではないが、板状構造自体は最終的なOCP結晶(1時間経過後)と同一である(図9e-g)。
時間分割薄膜XRD測定の結果、基板表面は徐々にACPからOCPへと変化し、途中にHAPの出現は確認されない。これらの結果から、我々は初期のフラグメント状析出物が低結晶性OCPであると結論する。これらの析出物が急速に成長し、高結晶性OCPへと変化することで、HAPナノ粒子の形成(ILの形成)及びその後の基板垂直方向への伸張を阻害している。
(6.構造体基板の観察、測定等(人工象牙質類似体の形成の確認))
上記4.においてACP基板を用いて作製された成長層を備えた構造体の基板について、以下、各種の観察、測定を行った。
(6−1.構造体基板のTEM、HR-TEMによる観察)
図10は浸漬後の基板の割断面に対する透過電子顕微鏡像(TEM像)である。試料はFIB処理により作成した。基板中部から深部領域(基板表面から2μm以上深い領域を指す)は、ACPナノ粒子が特徴的な形態を持つ結晶に変化している。すなわちナノファイバーとナノ粒子の集合体である。ナノファイバーのサイズは幅20nm以下、長さは200nm以下のものが大部分を占める。一方、ナノ粒子は直径100nm以下程度のものが多い。
図11、12はナノファイバー(図11)及びナノ粒子(図12)の高分解能TEM像である。両者の内部には、最小間隔を持つ格子縞の3倍周期に相当する、特徴的な強度の高い格子縞が観察された。その間隔はHAP(100)面の面間隔、0.816nm、と誤差範囲(1%)で一致する。
(6−2.構造体基板のSAEDパターン分析)
図13は、上記ナノファイバー及びナノ粒子から構成される基板に対して、800nmφ領域で測定した制限視野電子線回折(SAED)パターンである。イメージはDebye ringとなり、リン酸カルシウム溶液に浸漬後のACP基板が、ランダム配向した結晶性物質に相転移していることを示す。特徴的な2つのring(白実線及び破線矢印)の中心からの距離を解析すると、これらのリングはHAP結晶の(001)及び(211)あるいは(121)面に対応すると結論された。
(6−3.構造体基板割断面のM-XRDパターン分析)
図14は割断面基板のM-XRDパターンである。測定領域は凡そ100μmφ程度であり、基板広領域の物質同定を行う。回折パターンは2θ = 10.8°にピークを持つHAPに特有のものであり、また2θ = 32°付近のピーク幅が広くピーク分離が見られないことから、基板を構成する物質の大部分は低結晶性HAPであると結論された。
(6−4.6−1〜6−3の観察、測定、分析結果のまとめ)
作製された構造体の基板の以上のような観察、測定結果まとめると、マイクロビームX線回折法による浸漬後基板の広領域での評価、及びTEMによる局所領域での評価から、ACP基板はリン酸カルシウム溶液浸漬後に、ナノファイバーとナノ粒子の形態を持つランダム配向した低結晶性HAPに相転移していることが分かった。
(6−5.相転移後のHAP結晶の化学組成分析)
図15は相転移後の基板中部から深部領域に対して(基板表面から2μm以上内部)、走査型TEMエネルギー分散X線分光分析(STEM-EDS)測定を行った結果である。スペクトルの解析から、転移後の基板の平均Ca/P atomic%比(これはCa/Pモル比に等しい)は1.50±0.01であることが判明した。
(6−6.ヒト大臼歯象牙質との比較)
ヒト歯の象牙質を構成するHAPは、次の1)〜3)のような特徴を有している。
1)エナメル質を構成するHAPに比べて低結晶性である。これはX線回折パターンにおける2θ=32°付近のピークの分離の有無により判断される。
2)各HAP結晶は、エナメル質HAPと異なりランダム配向状態にある。
3)ヒト歯象牙質を構成するHAPの平均Ca/P比は、エナメル質のそれよりかなり低い(非特許文献7参照)。具体的にはCa/P=1.53程度である。
図16はヒト大臼歯象牙質のTEM画像である(提供:鶴見大学歯学部生化学講座教授 山越康雄、鶴見大学歯学部口腔解剖学講座技術士 千葉敏江)。サンプル薄膜はウルトラミクロトーム法にて作成した。歯の象牙質は上述したように結晶性の悪いランダム配向HAP結晶群から構成されているが、図16を見るとそのHAPはナノファイバー及びナノ粒子の集合体であることが明白である。各ファイバーの幅は10-20nm、長さは数百nm以下であり、またナノ粒子のサイズも100nm以下であると判断できる。
このHAP群の形態は、上記6−1〜6−4で述べた相転移後の基板内に観察されたHAPと全く同一である。さらに、非特許文献7から象牙質の平均Ca/Pモル比は1.53であり、この値は上記6−5で分析した相転移後のHAPとほぼ同一である。従って、今回のACPナノ粒子圧縮成形基板をリン酸カルシウム溶液に浸漬させる手法で、「ヒト歯象牙質と形態的、構造的、化学組成的に類似のHAP結晶群を形成することが可能である」。
(7.ヒト歯象牙質の完全模倣に関して)
ヒト成熟歯象牙質はエナメル質と異なりHAP以外に約20%の有機物を含み、これらの有機物のうち80%以上は1型コラーゲンであることが知られている。従って、象牙質の完全模倣のためには、最終的に形成したナノファイバー及びナノ粒子からなるHAPにコラーゲンが混在した組織を構築する必要がある。この組織構築は、本出願人が過去に取得した特許第4654427号(特許文献2)を応用すれば容易に達成できる。
特許第4654427号において、ACP粒子とタンパク質分子(あるいは分子会合体)は共沈析出させられる。この析出物は、擬似生理環境場にあるリン酸カルシウム溶液中でACP粒子が構造相転移によってHAP粒子に転化し、最終的にHAP-タンパク質分子(あるいは分子会合体)からなる複合体が形成する。コラーゲンもタンパク質の一種であるので、今回のACPナノ粒子作成溶液中に適宜濃度のコラーゲンを共存させた後にACPナノ粒子を析出させれば、ACP-コラーゲン複合体が形成する。この複合体を圧縮成形基板とし、その後リン酸カルシウム溶液に浸漬すれば、最終的に上記(6−1)〜(6−5)に述べたHAP結晶群とコラーゲンの複合体が得られることは明白である。この複合体は形態・構造的及び化学組成的にも明らかにヒト歯象牙質と同等のものであるため、最終的に「ヒト歯象牙質と同等物を人工的に作製可能である」。
また、上記5、5−1〜5−4から基板表面に人工エナメル質が形成されていることから、人工象牙質と人工エナメル質を備えた人工歯を作製可能である。
<<参考例:ACC基板を用いた人工エナメル質の形成>>
(ACCナノ粒子作成に使用する炭酸カルシウム溶液の調製)
試薬グレードのCaCl2及びNa2CO3を20mM濃度になるようにそれぞれミリQ水に溶解した。作成した両溶液は、4℃環境下で撹拌しながら体積比1:1で1分間混合した。その後のACCナノ粒子作成プロセスは、ACPナノ粒子の場合と同様である。最終的なACCナノ粒子は-20℃で保存する。これは、ACCから結晶性カルサイト及びバテライトへの相転移を防ぐためである。
(ACC基板の作製)
ACPナノ粒子の替りにACCナノ粒子を用いた以外は上述のACP基板の作製、加工と同様にして、ACC基板を作製し、加工した。ナノ粒子を基板へと成形する直前にXRD測定を行い、ナノ粒子調製直後に測定したXRDパターンと比較して同一であることを確認した。
(アモルファス炭酸カルシウム基板上へのHAPナノロッド構造の構築)
ILの形成がACP基板に特有の現象であるか否かを検証するため、アモルファス炭酸カルシウム(ACC)からなるヘテロ基板を準備し(図17)、ACP基板の時と同様の母液(0.526mMのフッ素を含有)に浸漬させた。20時間浸漬後のACC基板の表面SEM像を見ると、ACPの時と同様のナノロッド構造が観察される。断面SEM像から判断したGLの厚みは約25μmであり、XRD及びM-XRD測定から、GLは高結晶性のc軸配向構造を持つHAPであることが判明した(図18a)。また、支配的な結晶学的配向方向に対応する最低面指数(002)のピーク強度と、完全にランダム配向のHAP粉末をXRD測定した場合の(211)のピーク強度との強度比は約40:1であった。このことから、GLを構成するHAPナノロッド群は、同方向に配向していると言える。
ACC基板自体は浸漬により結晶相へと転移する。サイコロ状(図19b上側矢印)、及び球晶状(下側矢印)物質が基板内に観察される。基板に対するM-XRD測定の結果、カルサイト及びバテライトに相当するピークが観察された(図18b)。断面サンプルの拡大SEM像を見ると、HAP層(GL)の直下にmassiveな層が存在することがわかる(図19c)。FIB処理サンプルを用いたHR-TEM観察及びSAED測定から、このmassive層はACP基板使用時に出現したILと同様の性質を持つことが判明した。すなわち、層はランダム配向した10〜20nmの低結晶性HAPナノ粒子からなる(図18c, d)。基板内に見られたサイコロ状物質に対するHR-TEM観察及びSAED測定から、これらはカルサイト結晶であることが確認された(図18e, f)。カルサイト結晶の上にはHAPに相当する格子縞が見られることから(図18g)、SEM像においてサイコロ状物質の上に析出した低アスペクト比のナノロッド(図19c矢印)はHAPである。
ACC基板を用いたHAPナノロッド構造形成の時間分割SEM観察から、基板表面のACCナノ粒子は反応初期過程(10分以内、図20a-c))において溶解を起こし、10分後には木の根構造が形成されることが判明した(図20d)。木の根構造は徐々にナノ粒子に変化するが(図20e)、この過程において溶液からのランダム析出は起こっていない。ナノ粒子は成長し、基板に垂直方向へと伸長し、1時間後には先端が先細りのナノロッドに変化する(図20f)。このナノロッド形成プロセスは、本質的にACP基板において観察されたそれと同一である。時間分割SEM観察から以下のプロセスが考えられた。すなわち、反応初期に溶解したACCナノ粒子がカルシウムイオンと炭酸イオンを表面近傍で放出し、それがHAPに対する過飽和度を上昇させる。このため、ACC粒子の周囲にHAPがovergrowthし、最終的にILを形成する。
FIB処理サンプルを用いてGLから基板までのSTEM-EDS分析を行った結果、GL及びILの平均Ca/P元素%比は、ACP基板を用いたものと異なっていた(図20g)。すなわち、GL=1.69±0.02, IL=1.96±0.03である。炭素に関する元素マッピング及び一次元含有量測定から、炭素量はILの方がGLよりかなり多く含むことが判明した(図19d-f)。これは、ILを構成するHAPのナノ粒子がACCナノ粒子周囲へのovergrowthによって形成した推論を支持する。一方、GLにおけるフッ素含有量は2.75±0.27%であり、ACP基板を用いた場合とほぼ等しい。しかし、ILのフッ素含有量は1.36±0.17%で、ACP基板を用いた場合より1.8倍高い。この事実も、HAPナノ粒子がACCナノ粒子周囲にovergrowthして形成した仮説を支持する(図20g)。この形成過程は、ACP基板使用時において、IL中のHAPナノ粒子がACP-HAP直接相転移により形成した機構とは異なる。ACCナノ粒子ではなく、基板としてカルサイト結晶の(10-14)面、あるいは圧縮成形したカルサイト微結晶を用いると、高結晶性c軸配向HAPナノロッド構造は形成しない。この事実は、アモルファスナノ粒子がHAPナノロッド構造形成に重要な役割を果たしていることを示す。
<<比較例1:結晶性ナノ粒子基板を用いた比較実験>>
(結晶性ナノ粒子基板の作製)
約10 mgの市販HAPナノ粒子(サイズ100nm以下)、β-三リン酸カルシウムナノ粒子、市販TiO2ナノ粒子(サイズ10〜15nm、アナターゼとルチルの混合物)をそれぞれ20MPaで圧縮成形し、基板とした。β-三リン酸カルシウムナノ粒子は、市販のβ-三リン酸カルシウム微結晶をZrO2ビーズ(直径約30μm)を用いて99.5%エタノール溶液中で粉砕し、粉砕物を含んだスラリーを4℃環境下、15,000rpmで30分間遠心した後、上澄み液をフィルタリングして乾燥することにより得たもので、その平均サイズは60nm以下であった。
(結晶性ナノ粒子基板を用いた結晶成長実験)
ACP基板の替りに、結晶性HAPナノ粒子基板、結晶性β-三リン酸カルシウムナノ粒子基板、又は、結晶性TiO2ナノ粒子基板を用いた以外は、上述の(ACP基板上への高結晶性HAPナノロッド構造の構築)と同様にして、各基板を0.526mMフッ素を含有するリン酸カルシウム母液に20時間浸漬した後、観察した。その結果、HAPナノロッド構造に類似した構造は形成されていたものの、ACP基板やACC基板を用いた場合よりも全ての例でGLの厚みが薄い、すなわち形成速度が大幅に低く、球晶状構造が頻繁に観察されることからわかるように、ナノロッド群の均質性がアモルファスナノ粒子基板使用時に比べて遥かに劣っていた。なお、結晶性HAPナノ粒子基板、結晶性β-三リン酸カルシウムナノ粒子基板、又は、結晶性TiO2ナノ粒子基板を用いた場合の支配的な結晶学的配向方向に対応する最低面指数(002)のピーク強度と、完全にランダム配向のHAP粉末をXRD測定した場合の(211)回折に対応するピーク強度との強度比は、全て40:1以下であった。
<<実施例、参考例、比較例についての考察>>
溶液中にフッ素を含有した場合と含有しない場合におけるACP基板の反応比較から、人工エナメル質構造形成に寄与する二つの要因が明らかになった。それらは、ある濃度レベルのフッ素イオンとILの存在である。これら二つの要因は、互いに相関を持つ。密充填(密集構造を呈し、結晶性を持つIL中のナノ粒子は、geometrical selectionによって基板に垂直方向へと成長し易い。これは遷移層の存在によって明らかである。成長中にナノ粒子内部に徐々にフッ素イオンが取り込まれるが、これはHAPナノ粒子の結晶性を高め、c軸方向への成長を更に加速する(図6)。その結果、配向したHAPナノロッド構造が形成する。成長初期の時間分割SEM観察及び薄膜XRD測定から(図6)、IL形成時にHAPナノ粒子が溶液から直接析出した証拠は認められない。全てのデータは、ACPナノ粒子が微小溶解した後、HAPナノ粒子へと直接相転移したことを示している。この形成プロセスは、ACP-HAP相転移に関する我々の過去の光散乱実験結果と調和する。溶液中のフッ素イオンの存在は、溶液のpHがOCP形成に有利な条件であっても、熱力学的安定相としてフッ素置換HAPの形成を促す。これは、フッ素非含有溶液からはOCPが形成することから明らかである(図8)。HAPが優先的に形成する理由は、OCPよりもフッ素置換HAPの溶解度がかなり低いためである。37℃におけるOCP, HAP, FAP(フッ化アパタイト)の純水中での溶解度は(-log(Ksp)表示で)、それぞれ98.6, 117.2, 122.3であり、OCPはFAPよりかなり溶解度が高い。
フッ素置換HAPの溶解度に関する初期の研究から、(Ca10(PO4)6(OH)2-x(F)x)組成を持つHAPはx=1.12で溶解度が最小になることが判明している。今回のHAPナノロッドに関するSTEM-EDS測定から、xは約0.8であることが示された。我々は、今回のフッ素置換HAPナノロッドが母液中で最安定相として成長していると結論する。
HAPナノロッド形成が始まった後は、個々のナノロッド上に新たなHAPが核形成し、ホモエピタキシャル成長を繰り返して厚いエナメル質様のHAP層を形成する。この成長ステージでも、当然ながら(巨視的な)geometrical selectionによって、個々の結晶が効果的に基板に垂直方向に成長する。
反応性に乏しい様々なサイズの結晶性ナノ粒子(HAP, β-三リン酸カルシウム, 及び TiO2)を基板として用いた場合でも、HAPナノロッド構造は構築可能である。しかし形成過程では頻繁に球晶状の成長が起こり、その結果アモルファスナノ粒子を用いた場合に比べて、GLのc軸方向配向度及び均質性は劣る(図21)。この実験結果は、HAPナノロッド構造の形成が単純にナノ粒子のサイズに支配されているわけではないことを示す。ただし、ナノ粒子自体はナノロッド構造構築に関する重要な要因である。結晶性ナノ粒子基板で均質なHAPナノロッド層が形成しない理由に関しては、基板内のフッ素を含まない結晶性ナノ粒子と、フッ素を含んだHAPナノロッド間における表面エネルギー差によって、成長初期段階で効率的なgeometrical selectionが妨げられたためと考えられる。均質な結晶性ナノ粒子の調整には非常に多くの手間と時間がかかることを考慮すると、調整の容易い反応性に富むアモルファスナノ粒子は、人工エナメル質構造形成に関して非常に大きな利点を持っていると結論される。
過去の常識に反して、我々の研究は、HAPナノロッド形成にナノスケールで表面デザインされた基板や高度に配向した単結晶表面が必要ないことを示した。カルシウムイオンを含んだ反応性に富むアモルファスナノ粒子を圧縮成形した基板をフッ素イオンを含むリン酸カルシウム溶液に浸漬するだけで、密充填した結晶性HAPナノ粒子(配向はランダム)からなるILが形成され、その上に直ちにエナメル質類似構造が発達する。この反応は、擬似生理環境場でも進行可能である。基板のアモルファスとしての性質は、基板の種類よりも遥かに重要である。一般に、アモルファスナノ粒子の調整は結晶性ナノ粒子の調整より遥かに簡単であるため、我々が開発した手法は、HAPを含む様々な種類のナノロッド構造形成に応用できる。
本発明によれば、低結晶性HAPとコラーゲンを含む人工象牙質や、人工象牙質と人工エナメル質を備えた人工歯を、人体等の生命体に対し許容可能な条件下において、簡易かつ効率的に作製乃至製造できるので、欠損歯、虫歯の治療や義歯の製造などへの利用が期待される。

Claims (10)

  1. アモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンを含み、径が500nm以下のナノ粒子の充填体からなる基材を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する母液に浸漬することを含む人工象牙質の作製方法。
  2. 前記母液は、カルシウムイオン濃度が0.2〜5mM、リン酸イオン濃度が0.2〜5mMの水溶液である請求項1に記載の人工象牙質の作製方法。
  3. カルシウムイオン濃度が0.2〜2mM、リン酸イオン濃度が0.2〜2mMの場合に、基材を浸漬中の母液を撹拌する請求項2に記載の人工象牙質の作製方法。
  4. 前記母液は、フッ素イオン濃度が0〜100ppmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法。
  5. 前記母液の温度が0〜60℃である請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法において、アモルファスリン酸カルシウムナノ粒子、コラーゲンを含むアモルファスリン酸カルシウムナノ粒子、及び、コラーゲンからなる群からアモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンが必須成分となるように選択される1種、又は、2種以上の混合物を圧縮成形し、アモルファスリン酸カルシウムとコラーゲンを含む前記基材を調製することを含む人工象牙質の作製方法。
  7. 前記圧縮成形時の圧縮圧力が1MPa以上である請求項6に記載の人工象牙質の作製方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の人工象牙質の作製方法において、前記母液を、カルシウムイオン、リン酸イオン、及び、フッ素イオンを含むものとし、前記基材を少なくとも一部に平坦な表面を有するものとして、前記母液への浸漬により該平坦な表面に人工エナメル質を形成することを含む、人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
  9. 請求項8に記載の人工歯の作製方法において、前記母液は、フッ素イオン濃度が0.9〜100ppmである人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。
  10. 請求項8又は9に記載の人工歯の作製方法において、前記圧縮成形時の圧力を調整することにより、人工エナメル質を構成する水酸アパタイトナノロッドの幅を調整することを含む、人工象牙質と人工エナメル質とを備える人工歯の作製方法。


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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115605160A (zh) * 2020-03-26 2023-01-13 株式会社哈斯(Kr) 具有类似于自然牙的结构的口腔修复体及其制作方法
CN116375341A (zh) * 2022-12-28 2023-07-04 武汉苏泊尔炊具有限公司 制备搪瓷不粘材料的方法、搪瓷不粘材料及锅具
WO2023180479A1 (en) * 2022-03-23 2023-09-28 Universite De Geneve Compositions for use as dentine substitute

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